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1965-03-08 第48回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月八日(月曜日)    午前十時三十四分開会     —————————————    委員の異動  三月八日     辞任         補欠選任      大竹平八郎君     佐野  廣君      森 八三一君     森部 隆輔君      横川 正市君     大倉 精一君      曾祢  益君     向井 長年君      高山 恒雄君     田畑 金光君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 大谷藤之助君                 迫水 久常君                 日高 広為君                 村山 道雄君                 中村 順造君                 藤田  進君                 鈴木 一弘君                 高山 恒雄君     委 員                 植垣弥一郎君                 植竹 春彦君                 江藤  智君                 太田 正孝君                 木村篤太郎君                 草葉 隆圓君                 栗原 祐幸君                 木暮武太夫君                 古池 信三君                 郡  祐一君                 佐野  廣君                 白井  勇君                 田中 啓一君                 鳥畠徳次郎君                 中野 文門君                 野本 品吉君                 前田佳都男君                 森部 隆輔君                 吉江 勝保君                 阿具根 登君                 稲葉 誠一君                 木村禧八郎君                 鈴木  壽君                 瀬谷 英行君                 千葉千代世君                 永岡 光治君                 羽生 三七君                 横川 正市君                 米田  勲君                 小平 芳平君                 曾祢  益君                 向井 長年君                 佐藤 尚武君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  高橋  等君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        厚 生 大 臣  神田  博君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   櫻内 義雄君        運 輸 大 臣  松浦周太郎君        郵 政 大 臣  徳安 實藏君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  小山 長規君        自 治 大 臣  吉武 恵市君        国 務 大 臣  小泉 純也君        国 務 大 臣  高橋  衛君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        防衛庁参事官   麻生  茂君        科学技術庁研究        調整局長     高橋 正春君        法務省入国管理        局長       八木 正男君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省アメリカ        局長       安川  壯君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        大蔵省主計局長  佐藤 一郎君        大蔵省主税局長  泉 美之松君        大蔵省関税局長  佐々木庸一君        大蔵省理財局長  佐竹  浩君        大蔵省国有財産        局長       江守堅太郎君        大蔵省国際金融        局長       渡邊  誠君        文部省初等中等        教育局長     福田  繁君        文部省大学学術        局長       杉江  清君        文部省体育局長  前田 充明君        文部省管理局長  齋藤  正君        厚生大臣官房会        計課長      戸澤 政方君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        厚生省医務局長  尾崎 嘉篤君        厚生省薬務局長  熊崎 正夫君        厚生省社会局長  牛丸 義留君        厚生省児童家庭        局長       竹下 精紀君        厚生省保険局長  小山進次郎君        社会保険庁医療        保険部長     坂元貞一郎君        水産庁次長    和田 正明君        通商産業省通商        局長       山本 重信君        通商産業省企業        局産業立地部長  馬郡  巖君        中小企業庁長官  中野 正一君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省婦人少年        局長       谷野 せつ君        自治省財政局長  柴田  護君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  本日、大竹平八郎君、森八三一君が辞任され、佐野廣君、森部隆輔君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上衆議院送付の三案を一括議題とし、一昨日に引き続き質疑を行ないます。鈴木一弘君。
  4. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は公明党を代表しまして、本日は財政収入問題、それから医療費中小企業等について若干の質問をいたしたいと思います。  初めに、財政収入についてでありますけれども総理衆議院予算委員会の席上で、日本経済の発展を進めるため、無理を知りながら経済実質成長率七・五%を上回る一二・四%の伸びを示した予算を今回は編成した。このように言っておりますが、財源難というのは今回の予算編成に始まった問題ではありません。  そこで、まずお伺いしたいことは、四十年度予算前提となる三十九年度予算状況はどうかということであります。それについて言えば、一昨日、木村委員からの質問で、一月末累計からみた昨年度決算に対する収入ぐあいから計算しますと、八百六十六億七千万、約八百六十七億の歳入欠陥を生ずるという指摘があったわけでありますけれども徴税強化をやれば大蔵大臣の言われるように何とか三十九年度補正予算に対して一ぱいまでこぎつけるかもしれませんが、一番大事なのは、このところで見通し状況判断がよくなかったということではないかと思うわけであります。そこで酒税とか砂糖消費税揮発油税あるいは物品税というような消費税で二百八十億見当不足となるという計算が、やってみますと出てまいりますわけでありますけれども、このような当初見積もり予算に対して不足してくるということについて——現在から計算すると不足するわけですけれども、どういう情勢変化から変わっているのか、消費水準は順調に伸びているようでありますが、その点についての情勢変化というものを大蔵大臣からひとつ聞きたいと思います。
  5. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 前回も申し上げましたとおり、三十九年度歳入につきましてはおおむね順調でございまして、何とか政府が企図しております歳入が確保できるだろうという考えでございますけれども、それは予算編成当初は御承知のとおり実質七%の成長でございまして、名目九・七%でございました。しかし、その後の情勢十分調査をいたしました結果、実質九・四%という経済成長見通しでございますので、前回も申し上げたとおり、法人決算等の税の延納等がございますが、三月三十一日の年度内の税収考えますと、おおむね六百五十億の補正額を合わせて収入があるものと、こういう考えでございまして、大きな歳入欠陥が生ずるとは考えておりません。しかし、徴税強化をしてつじつまを合わせるというような考え方は全くございません。
  6. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの大臣答弁からわかるわけですが、歳入の大宗をなしているのは法人税でありますから、この法人税徴収いかんは今後これはきまってくるわけですけれども、そうでないいま申し上げたような消費税の問題ですけれども、このほうの状態はどうなっているのか。
  7. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 税収のこまかいことでございますので、便宜私からお答え申し上げます。  酒税につきましては現在の状況からいたしますと、別段収入実績がそれほど悪い状況ではございませんで、ただ前年同期の収入ぐあい八四%に対しましては一月末現在におきまして八二・六%で約一・四%昨年より下がっておりますけれども、十二月中の売れ行きが相当よかったものが、これが二月の収入に入ってまいりますので、私どもといたしましては、酒税につきましては当初見積もり額より若干多い収入年度末までにはあげることができるのではないか、二、三十億近い増収が出るのではないかと、かように期待いたしております。  それから、砂糖消費税につきましては昨年の収入実績の八五%に比較いたしまして、本年の一月末は七八・六%と、約六・四%、かなり下がっておる状況にございます。しかし、これは一昨年十二月税制を改正いたしまして五円砂糖消費税を引き下げましたので、昨年の場合には減税による減収影響が少なかった。それが本年はフルに減税影響が出てくるために、率が下がっているわけでございまして、このような状況になっておりますが、これにつきましても、現在の見積もりでは二月、三月にかなり入ってまいりますので、砂糖消費税全体としては二、三億の当初予算に対する減収になるかと存じますが、さほど大きな減収にはならない見込みでございます。ただ、揮発油税につきましては、御承知のとおり今回税法改正を提案いたしておりますが、最近揮発油使用自動車からプロパン使用の、LPG使用自動車に転換が行なわれまして、揮発油税の対象になります揮発油消費伸びがやや鈍化いたしております。そのために揮発油のほうにおきましては四十億近い減収が出るのではないか、かように予測いたしておるような次第でございます。次に物品税でございますが、物品税につきましては、昨年の八一・二%に対しまして本年は七五・八%でございまして、これまた五・四%ほど収入が下回っております。これは最近の経済動向からいたしまして、特にオリンピック終了後テレビその他の消費伸び悩んでいるというような状況がございまして、そのために補正予算につきまして若干減収を見込んだのでございますが、なおそれに比べまして本年度末までにやはり若干の減収を生ずるのではないか、かように予測いたしております。主として最近の経済動向を反映いたしまして消費が行き悩んでいるといった状況によるものでございます。現在の見通しでは約六、七十億の減収になるのではないか、かように予測をいたしております。
  8. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 法人税のほうは大蔵大臣の言われるように心配がないとしても、いまの主税局長からの話によると揮発油税物品税で約百億近い減収になるわけであります。そうすると、大体百億近い歳入欠陥というものが考えられるということにならないですか。
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 補正後の所得税の総額は八千三百九十三億、法人税が一兆三十億、消費税が七千六百九十五億、こういうことでございますが、歳入欠陥が百億をこすというような状態にはないと思いますが、政府が企図した総合的な総計におきましては、ほぼ歳入を満たすことができるだろうということでございます。しかし、三月三十一日までになってみませんと明確なことは申し上げられませんが、主税当局との話し合いでは現在の状態では補正後の六百五十億、まあとんとんぐらいにはなるだろうという見通しでございます。
  10. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 大蔵大臣もこれから先のことで、十分自信がないようでありますが、その原因をひとつみてみますというと、過去八年間の国民所得平均伸び率というものがございますが、それが約一三・三%、税収入平均伸び率が二二・二%という伸びであります。そういう平均伸び率の上から計算してみると、補正後の予算である二兆九千六百九十三億円、それに対する税収確保のためには、逆算してみますと、国民所得が一三%伸びなければならない、こういう計算になってきます。ところが、当初の一月二十二日の閣議決定経済見通しを変更したわけでありますけれども、それによれば一二・一%という国民所得伸びを予想している。一三%なければ確保できないものを一二・一%の伸びということに予想したところあたりに間違いがあったのではないか。補正後の、補正予算を組むためにかなり無理をしたということからわかるわけでありますけれども、そのことから考えても、とうてい予算額までは到達できない、このように思うのでありますが、そういうような状態になったのは、見通しが甘かったからではないかと思いますが……。
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども申し上げましたが、当初は名目九・七%、実質が七%でございましたが、一月二十二日に決定いたしました見通しでは名目一二・九%、それから実質九・四%、こういうふうにいたしたわけでございます。一二・一%ではなく、一二・九%でありますから、一三%といえば〇・一%不足ということでございますが、その後の経済動向はほぼ政府見通しの線に沿って推移いたしておりますので、何とか一ぱい一ぱいには収入があるのではないか、こう申し上げているわけであります。
  12. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 四十年度予算の自然の増収はどのくらいにごらんになっていらっしゃいますか。国民所得や何かから計算しますというと、約千二百五十億程度が自然増という計算が出てくるわけでありますが、政府見通しでは何億ぐらい自然増が出てくるという予定でありますか。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四十年度税収全体といたしましては、前年度当初予算に対して四千六百四十七億円の自然増収を見込んでいるわけでございます。
  14. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、相関係数から計算して、ずいぶん少ないという結論を得たわけでありますけれども、この四千六百四十七億円という自然増がはたして確保できるかどうか、計算の上からみると不安なのでありますが、総理大臣にここで伺いたいのですが、再び今年度補正にみられたように、国民所得計算上アップして、そしていわゆる税収の予想を高め、これから予想される公務員のベースアップであるとか、医療費であるとかいうものを埋め合わせられようとする、私はその辺の対策というものは非常に困難なような感じを受けるわけでありますけれども、それに対しての抱負を承りたいと思います。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、三十九年度税収見通し等につきましても、考え方として政府の見方は間違っているのじゃないか、こういう御指摘でございますが、政府といたしましては、これはやはり過去の実績並びに経済成長率等を勘案して、各税目別に集計したものでございまして、大きな間違いはもちろんあるわけはございませんが、最近の経済状況等に対応いたしましても、なかなか余裕があるということはできないかもわからないが、ただいまの補正等による増加で、これをまかなうだけの財源は出てくるであろう。ただいま大蔵大臣が答えたとおりであります。そういう三十九年の税収見通しを基礎にし、さらにまた四十年度予算を編成してまいるのでございます。四十年度は必ず経済変動の時期だと、こういうことが前提考えられ、また、それに対応する諸施策を勘案してまいっておりますので、四十年度の税の増収見通し、これは非常に余裕のある、かようなものではない。が、もちろん正確な計算の上に立っておるということで、その見通し等について私は間違いがあるとは思えません。在来からも主税局計算のしかたで大きな間違いはないし、いつもこれはある程度余裕は残しておる、かような状態でございますから、この過去の実績を信頼して、今回も——特別の処置をとったらそれは別でございますが、在来予算編成の際に採用しております見積もりの方法をそのまま採用しておりますから、これはそのまま信用していいんではないかと思います。  ただ、いま言われるごとく、ベースアップだとか、あるいは社会保険だとか、いろいろの問題が出ておりますから、これらのものが今後いかなる結論を出してまいりますか、その結論によりましても、大きな変化がないならば、これは私どもこれに対処し得ると、かように実は確信を持って御審議をただいまいただいておるような次第でございます。
  16. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、医療費について伺いたいんですが、二日の夕刻に、自民党と社会党との国対委員長間でもって医療費問題に関する約束が、口約束かもわかりませんが、なされた、それによって衆議院予算委員会の進展がはかられたように伺っておりますが、どういうような内容というか、あるいはあったのか、なかったのか、ということであります。まあ、これは総裁である総理にお答えを願いたいと思います。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 実は、両党の国会対策委員長会談で、これはいろいろ話し合った。別に書面を交換したという筋のものではございません。しかしながら、それは、了解に達しましたものは、御承知のように、医療費に関する三法が成立をいたしておりませんので、まだ全然その結論を出しておりません。こういう状態におきましては、保険会計運営支障を来たさないように政府はできるだけ借り入れ金等あっせんをする、こういうのが第一項でありますし、また第二項といたしまして、社会保険審議会の答申は尊重していく、もちろん国庫負担等の事態が生ずるなら、増額等についてもできるだけ要望に沿うように努力する、かような申し合わせであったと思います。
  18. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その中で最初の第一項目でありますけれども予算措置がとられるまで借り入れ金やあるいは利子補給等措置をもって医療関係特別会計運営支障のないようにすると言っているが、その問題になりますと、それが事実上とすれば、これはここで総理にはっきり伺っておきたいことは、党と党との間の約束ごとでありますから、その約束ごとに、はたして拘束されるかどうかということであります。一昨日の藤田委員質問に対する総理答弁では、両党間において話し合うことがあるけれども、そのような事柄においては忠実に責任を負うという立場政府はあると、まあこのように言われておりますけれども、党と党との約束に忠実に責任を負うということは、政府が拘束されるという立場なのか、それとも、全然拘束されない、尊重はする、あるいは責任は負うけれども政府の思うような裁量でできるというようなことになれば、これはほごというようなことになりますし、拘束されるということになれば、これでまた一つの問題が起きてくる、その点の見解を伺いたいと思います。
  19. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは理屈を言えば、鈴木さんも御承知のように、いろいろなたてまえがあるだろうと思います。政府政府責任をもってやるんだから政府の関知することではないとか、党の約束約束だろう、これでは仕事にならないと思います。ことに私は、ただいま申し上げますように、問題は社会保険に関する問題であります。社会保険に対しは国民全般が非常な関心のある、また生活に直結する問題であります。そういう意味で両党が話し合いをしたこと、これはできるだけその線に沿うように政府は努力していく、これが望ましい姿ではないかと思います。ただいま言われますごとくに、政府におきまして借り入れ金あっせんをすると、こういうような事柄は、これは当然していいことなんで、したがいまして、一般的の約束事項だとか、あるいは申し合わせ事項だとか、こういうこととは違って、この問題に関しては、政府もただいま、予算ができるまで、また三法ができ上がらない状態において、あらゆる努力をすることは、これは当然でございます。こういう事柄は、あまり理屈っぽく問題を取り扱わない、そうして円滑な遂行のできるように、すべてのものが協力していくということが望ましいと、かように私は思います。
  20. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理の、理屈っぽく扱わないでいこうという、それはよくわかるのでありますけれども、私が重要視しておりますのは、これは国民の目に映る問題でありますから、最議院の段階で自社両党だけの取引に終始して——いわゆる公然たる予算委員会の席上なり、あるいはそのほかの席上の審議の場においてなされるというのが国会の正常な姿であります。そういう国会運営の場においてなされないということになりますと、公然の場でないということになると、国民の目には、やみ取引のような感じを受けざるを得ない。そこで、これははっきりしておきたいと思うのですが、その点もう一度総理の所感を伺いたいと思います。
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの自社党国会対策委員長話し合い、これはもちろん自社両党だけの問題でございますが、おそらく、この問題につきましては各党の方も御賛成だろうと思います。各党これが御賛成だと、こういうことであれば、政府は、ただいま申し上げた事柄について処理していく上において一そう力を得るわけでございます。ただいまお尋ねでございましたが、おそらくこの大筋のことについては、公明党の方も、また民主社会党の方も、その他の方も御賛成に違いない、私はかように確信をいたしておりますから、もしそういう意味で、賛成だと、だから今回は予算委員会の席上において、政府がその線で協力しろと、こういうことをお申し出になれば、私はまたそれに対しての答えができるかと、かように思います。
  22. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それは、国庫負担をするということは私ども賛成でありますけれども、そこでその問題はそれくらいにしまして、昭和四十年度政府管掌健康保険、これは制度改正がないときには赤字が六百五十九億円である、こういうふうに見られておりますが、実際支払い側との話し合いでも、極力国庫負担増額等の必要な措置を行なう、これに対して支払い者側が六百億円を要求しておる。また、先ほどの自社両党のいわゆる話し合いにつきましても、国庫負担等のことをやっておるわけでありますけれども、それは補正約束していると見なければならなくなると思うんです。  そこで伺いたいのは、補正をする予定でいるのか、それとも、借り入れ金だけでまかなうような方向でいくのか、もし補正を行なうとすれば、一体財源はあるのか、どのくらいまで出せるのか、ということであります。その点について伺いたいのですが。
  23. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 医療費の問題につきましては、政府案を審議会に提示をしておりまして、御審議をいただいておるわけでございます。すべては答申待ちというところでございまして、答申が出ないうちに、政府が何らかのことで、このくらいしかありませんからと言えば、その範囲内で答申しなければならぬということになりますし、何もありませんと言えば、答申を出しても尊重しないということになりますし、これは相手を拘束することになりますので、すべて答申待ち、答申が出てから大いに検討すると、こういうことに御理解いただきたいと思います。
  24. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 答申待ちはけっこうでありますけれども、現在予算案が、ここでこの席上で審議中であります。その最中に、その答申のいかんによっては補正をしなければならぬということになるわけです。そういう約束がなされたと見なければならない。で、予算案を審議中に補正約束をするということは、これは完全な議会軽視じゃないか。まあ、それは審議会の答申によらなければわからないかもしれませんけれども、六日の徳永厚生政務次官の審議会における発言は、補正というものを含んでいるような発言にとられております。このように、補正約束を、もししたというニュアンスであるならば、なぜ修正した予算をこちらへ回してよこさなかったのか。政府原案の修正ということを当然すべきだった。そうでないと、衆議院の段階でそういう約束をして持ってきたということだけでは、参議院の軽視ということにもなるわけであります。これについては、議会人である総理に伺いたいのですが。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま大蔵大臣が答えたとおりでございます。これはもちろん、予算審議中でございますし、ただ、いま問題になりますのは、いわゆる審議会の答申が出ておらない。その答申を尊重する、そういうたてまえでただいまやっておりますので、この辺の説明が、いかにも政府として弱い。だから、いろいろの誤解を受けやすいのであります。しかし、ただいま大蔵大臣が答えましたような考え方で、答申待ち、その審議の結果を待ってという、それより以上のことが実際ないのでございます。この点は、衆議院等におきましても、この事情をよく勘案されまして、先ほど来申しますように、各種保険について、その運営支障を来たす、こういうようなことがありますれば、政府はそれに協力をするということでございまして、新しい進んだものではございません。だからその辺誤解のないようにお願いをいたします。
  26. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 補正の必要があればやらなければならぬということになると、何となく私はすっきりできないのでありますが、そういうような、うかつな、というとおかしいのでありますけれども予算審議中に次の補正約束をするというふうに受け取られる行き方、こういう姿勢は当然直さなければいけない。そうでないと、今後いろいろな審議にあたって協力できないということになってくる。  もう一つここで——官房長官来ておりますか、伺いたいのですが、政府支払い側との会談に官房長官だけが出席をして、了解事項を取りつけております。そのときに、担当責任者であるところの厚生大臣は出席しておりません。これは、事前に官房長官と厚生大臣との間に承諾、了解、そういうものが十分になされていたのかどうか。それとも、厚生大臣は出席していなかったのだから、政府支払い側との間にいろいろな了解事項がありますけれども、そういうものはまるっきり関知しないということなのか、厚生大臣としては。その点について、官房長官と厚生大臣と、両方から答弁を願いたいと思います。
  27. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 鈴木さんも御承知のように、医療問題は、これは国民の生活に直接関係のある重大問題であります。したがって、正月以来といいましょうか、その前からでありますが、医療問題が相当困難な状態になってまいりまして、なお、一月の中医協が、現実的に支払い者側の出席拒否によって混乱の状態におちいっておったことは御承知のとおりであります。で、総理大臣からして、この問題は国民生活に大きな影響があり、かつまた近代国家として、当然これは前向きに解決をしなければならぬ問題である、したがって、政府を代表して支払い者側の意見を十分に聞き、かつまた、政府の意のあるところを十分に理解を遂げるようにという指示を得て、私が政府の代表として、支払い者側の八団体、もしくは七団体でありまするが、会見をいたしまして、十数時間にわたって、といいますか、二十時間以上にわたっての詳細なる懇談を遂げたのであります。したがって、支払い者側と私並びに幹事長、政調会長がこれに同席をいたしましたが、もちろん、これは総理大臣の指示を得、かつまた、必要に応じて厚生大臣とも連絡をとり、そこで、御承知のような八項目にわたる決定を見たわけであります。合意を見たわけであります。で、この八項目にわたる合意に達しました点は、ごらんになればわかりまするように、医療問題全体にわたっての政府の姿勢を申し上げております。したがって、具体的の予算問題等はもちろんこれは大蔵大臣、あるいは事務的の問題につきましては厚生大臣がこれを考慮すべきものでありますけれども、全体の姿勢として、基本方針として、医療問題を国民経済の見地からこれを考えなければならぬ、同時にまた、医療問題というものは、新しい意味での近代社会、社会開発の観点からこれを考えていくべきである、こういう姿勢、態度を、この八項目のお互いの妥協によって、解決によって、われわれは示すことができた、こう御了解願いたいのであります。したがって、もちろん、これは厚生大臣、あるいは事情によっては総理大臣と連絡の上、政府の正式の態度として合意に達したものである、こう御了解願いたいのであります。
  28. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  ただいま官房長官から御答弁のとおりでございまして、その大綱につきましては、私にも十分連絡がございましたので、これを尊重して扱ってまいりたい、こう考えております。
  29. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その支払い側との了解の第一項目に、今次の医療問題収拾の取り扱いについては総理に預けるという了解がある、このように聞いておりますが、これはまさに、当事者である厚生大臣を差しおいているわけであります。はっきり申し上げれば、厚生大臣の不信任が支払い者側からあったということです。そこで、このように支払い側と担当大臣である厚生大臣との間に不信任問題が起きるということであれば、今後の医療行政の抜本的な解決というものはとうていできない。そこで、そのために、相互不信の点を除くことが非常に重要でありまするが、その不信感除去については、総理大臣、どのようにお考えになられるか。その具体策があれば聞かしていただきたいと思います。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 第一項に書いてあるとおりでございまして、もちろん私の責任におきまして誠意をもって処理する、善処すると、こういう考え方でございます。同時にまた、これは医療費全般の問題として、政府の姿勢に対する批判でもあるのでございます。こういう点については、その第二項におきまして、政府自身がこの問題と真剣に取っ組むという態度を表明し、そしてよく事情を説明し、御了承を得たわけでございます。私は、今回のこの事件をして、いわゆる禍を転じて福となす、かような意味合いで真剣に取っ組んでまいりたい、かように考えている次第でございます。御協力のほどをお願いいたします。
  31. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 相互不信を取り除くのに真剣に前向きにおやりになるようですから、ぜひそのようにお願いしたいと思います。  いま一つ、ここで総理に伺いたいんですが、日雇い健保あるいは政府管掌の健康保険、この両方とも三十八年から赤字傾向にあったのは明らかであります。当然、昨年度において手当てすべき問題であったということもはっきりしております——年度でございますが。それを延ばしたのが結局今回の混乱の第一の原因になっている。昨年四年に中医協から答申がなされて、それを延ばして、緊急是正であるのにかかわらず、十二月までも延ばしておいた、そのあげく一・五%アップという九・五%の諮問をしたわけであります。十二月二十二日に諮問をして、一月九日に、結論が思うように出ないということで、公益委員だけの報告で職権告示をした。これは大体無理だったのじゃないか。そういうような混乱を起こしたということについては、厚生大臣としての責任は非常に重大である、このように考えざるを得ないわけです。前の昨年の四月の問題ではと言われるかもわかりませんが、総理は、前の池田首相のときのことであるからといって責任はないわけではない、同じ自民党の内閣であり、閣僚も継続しているわけであります。責任は全く同じように追随してきていると見なければなりませんけれども、その政治責任についてどういうふうに見ているか、ここで国民の前に明らかにしていただきたい、このように思います。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は別に責任をのがれるという意味ではございませんが、問題はやはり前向きにこういう問題を解決していこう、そのことがやはり過去の責任をとるゆえんでもあるだろう、かように私は思います。今回、答申を尊重し、その線で進んでまいりますと、かように申しておる。これが今回の過去の責任、同時に今度に対する責任の所在を明確にするゆえんだと、かように思いますので、どこまでも各界の協力を得て、そうしてこの問題と真剣に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  33. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 前向きに取り組むことが責任の所在をはっきりしたことだ、まあこのように言われるわけでありますが、鋭意努力をして解決をはかっていただきたいと思います。  そこで厚生大臣に伺いたいんですが、支払い者側は二月二十七日の会談で了解事項に達しておりますけれども、九・五%のアップ、値上げを認めたわけではないと思う。そこで、答申の八%というものに一応戻って、その線に沿って白紙に返して医療行政全体を考え直す気はないかどうか。
  34. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。御承知のように、昨年の四月の中医協の答申が必ず八%にしろという答申であったわけではないのでございます。八%を下回るかもしらぬし、八%を上回るかもしらぬというかっこう、上回ったとしても一〇%をこえないということは有沢委員長の談話に明らかにされておるわけでございます。四月に計算すべきところでございますが、その後おくれたことは御承知のとおりでございます。そこで、その時点で考えますと、いろいろの物価の変動等がございまして、九・五という数字になるわけでございます。これは自動的にそういうような経済情勢変化に応じてなった数字でございまして、この時点でこれを考慮するとなりますと、九・五ということになるわけでございます。そこで、まあお話がございました無理があったんじゃないか、九・五としたことに無理があったんじゃないかということにつきましては、御承知のように中医協の審議が、十分していただいたと、しかも十分な答申を得られなかったということは、まあ御承知のとおりでございます。診療側は消極的な賛成意見でございました。支払い側は、八%については了承するが残りの一・五についてはもっと検討したいということでございました。それから公益委員におきましては一致して、この時点においては九・五をやるべきだ、こういうことでございました。その他診察料とか、あるいは入院料につきましては修正の御意見でございました。そこで、中立委員の当時の意見を申し上げますと、この時点においてこれ以上会合を重ねても、これ以上進むことが見通しが困難である、この段階においてやるべきものだ、こういうような答申でございましたものですから、厚生省といたしましては、それを尊重してそのとおりやった、こういうことでございます。この時点でやりました処分を取り消して白紙に戻すということは、なかなか他の混乱をまた起こし、また他の重大な混乱を起こすというような問題がございまして、これはなかなか容易じゃないと考えております。
  35. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私としては無理やりわずかの日数で、十分な答申の期間、研究の期間も与えないで職権告示なされた、そこに問題があると思うのです。そこで、ですから、時点というものを一ぺん戻して八%にするべきだったわけでありますけれども、職権告示を引っ込めて、一ぺん八%なら八%に戻して再出発するというのが本筋だと思う。それがいまのお話しだと、八%に戻すというと別の重大な混乱を巻き起こすであろうと言われたわけであります。別の重大な混乱というのはどういうものですか。
  36. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。御承知のように、行政処分をしてしまったあとでありますから、行政処分に重大な瑕疵があったとか、手落ちがあったということであれば、また考慮の余地があると思いますが、そういうふうには考えておりませんので、そこを申し上げているわけであります。
  37. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 重大な誤りがあったということから、はっきり言えば混乱が起きたのじゃないですか。その点あやまちを改めることにはばかることなかれであります。本来ならば厚生大臣として姿勢をただすならば、その急激なアップというものが、九・五%アップというものが混乱を招いた。これは誤りであったら誤りであったと認めて、そうしてこれを戻すべきであった、私はこのように思うのです。その辺がどうも、一たん行政措置として出したものは引っ込められないということになると、本格的にこの問題に取り組んでいくという意欲があるのかどうか、その点までが疑わしくなるわけであります。もう一度、厚生大臣としての抱負を伺っておきたいと思います。
  38. 神田博

    国務大臣(神田博君) 決して過去の処分にこだわっているとか、こういう気持ちはないのでございまして、厚生省といたしましては十分検討を加えまして、そうして九・五がこの段階においては正しい、こういう考えでございまして、しかも中医協に諮問をいたしまして、中医協が御承知のようなとおりになったことははなはだ遺憾でございますが、しかし従来に比べますると相当の日数、長時間をかけて検討をしていただいて、それぞれの意見がわかったわけでございます。それらも検討いたしまして、この段階においては、緊急是正であるからやむを得ないというようなことでございました。それをその後の経過から見ますと、いまお話しのようなことでございまして、これは遺憾でございます。この点私も率直にそう考えておりますが、しかし、そこでなおさかのぼって取り消していったらどうかという御注意はありがたいのでございますが、そういたしますと、いろいろな点におきまして新たな紛争が起きてまいる、こういうことを申し上げたわけであります。
  39. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 その問題はそのくらいにします。  政府支払い側との会談でもって了解事項で、医療機関の実態調査を行なうことを了解しておりますが、これは御承知のように、二十七年以降、医師会等の圧力でもって行なっております。すべての基準が二十七年ということになっている。そこでこの医療機関の実態調査を行なうことについて具体的な方策は現在あるのか、本気になってやる気であるのかどうか、やるとすればどういうような機関を設けてやっていく気なのか、その辺のところを伺いたいのです。
  40. 神田博

    国務大臣(神田博君) 実態調査の必要であることは、もう、いまお述べになったとおりでございます。厚生省といたしましても、実態調査をしたいというので、所要予算も御承認を得たような事情でございまして、この調査につきましては鋭意検討をいたしておりまして、やりたいと、こういうことでございます。ただ、そこに困難な事情があっておくれておるのは、御承知のように、何しろ事柄が専門的にわたるものでございますから、医師会——特に日本医師会の共同調査というものになりますか、御協力を得ないと、なかなか完全な調査ができないわけであります。そういう意味で、その方面と十分連絡をしてそして軌道に乗せたい、こういう所存でございます。
  41. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 医師会の協力を得なければできないと、それはわかりますけれども、その医師会が入っていけば、いままでのような実態調査ができなくなったのと同じ状態になるじゃないか、こういう心配があります。で、あくまでも、その中医協に参加しているものを除いた第三者機関というものをつくってやる必要があるのではないか、そうして当然、医師会の協力も得る、支払い側の協力も得るというふうにして調べていかなきゃできないことであります。だから、医師会を大宗にして、その協力を得てやりたい、また、医師会にまかせるというようなことになれば、いままでと変わりのないようなことになってしまう。実態調査が実態調査なのか、あるいは、いわゆる報告書だけは実態調査であっても、内容はそうでないというものになりかねない。そこで、あくまで第三者機関というものを考えるべきである。私はこのように思うわけでありますが、厚生省が入るということ、厚生省自体がやるということも無理だろうと思います、当事者でありますから。その点について、これは厚生大臣、最終的には総理から伺いたいと思います。
  42. 神田博

    国務大臣(神田博君) 実態調査についてのいろいろの考え方鈴木さんのお考え、お述べになったような事情も私もよく考えております。何しろ実態調査を十分にするということは、医師の生活そのものに立ち入った調査を十分しないと、これは所要の効果を求めるわけにはまいりませんので、そういう点につきまして、日本医師会と十分連絡していただいて、しかも専門的なことでございますから、完ぺきを期したいと、こういう考えを持っております。しかしなかなか、いまそのこと自体むずかしい点も、鈴木さん御承知のとおりでございます。あるいは第三者でどうかというような御議論でございましたように承りましたが、十分検討さしていただきたいと思います。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま厚生大臣からお答えしたので、それで御満足かと思いますが、問題はやはり、こういう事柄を円満に遂行していくということが、まず第一大事なことだと思います。関係者といたしましては、いずれにいたしましても、法令で定める、それを円満に遂行できる、こういうような話し合いをしたいというのが、官房長官の申し合わせでもございますし、またこの件を進めていく上に、いずれにいたしましても支払い者側、また受け取り側等の協力を得なければなりません。こういう意味で、円満な解決をする話し合いをしていく、こういうことが、まず第一に私ども考えるべきことだ、かように考えます。ただいまの御意見は、御意見として伺っておきますが、ただいま申し上げましたように、すべてを円満に、そうして監査の目的を達するようにいたしたいと、かように考えます。
  44. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 あくまで公正な実態調査ができるように、これは中医協参加者を考えないところの第三者機関というものがないというと、思うようにいかないわけでありますから、十分考慮していただきたいと思うのです。  薬価基準の引き下げの三%、約三百億円程度になると思いますが、これについては職権告示をなさらなかった、この三%については、一体、保険料のほうに入れようという気なのか、技術料のほうに入れようという気なのか、私としては当然保険料のほうに戻すべきだと思うのでありますが、その点について考え方をお聞きしたい。
  45. 神田博

    国務大臣(神田博君) 薬価基準の改訂がおくれておりまして、実際の売価に沿うてないということは、いまお述べになったとおりでございます。そこで、これを改訂しようという問題でございますが、その前に、昨年の四月に中医協の有沢委員長からの答申がございまして、いままでの分は、これを医師の技術料にひとつ振りかえるべきだと、こういうような答申をいただいております。医師の技術料というものを保険でこれを評価しておらない。そこで、この薬価基準の引き下げに見合う分は、医師の技術料として振りかえるべきものだという答申をいただいておりますので、厚生省といたしましては、これを医師の技術料に今回の分はひとつ持っていきたい、こういう配慮のもとに、昨年の暮れの十二月二十二日でございますか、中医協にそれをいま御諮問している、諮問中でございます。
  46. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理にお伺いしますが、組合健保あるいは政府管掌健保に対して薬剤費の半額負担、総報酬制というものを伴うところの健保の改正案というものを社会保険審議会にかけております。当然いままでの了解事項、そのほかのことから考えれば、その原案というものをここで修正しなければならない、そういうときにきていると思いますが、その政府原案を修正して再び諮問のやり直しをする、こういうような考え方はないか。
  47. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 医療費の問題全般で考えてまいりますと、お説のように健保と国保がある。また健保の場合でも企業別、さらに組合に健保がある、保険がある、こういうことでたいへん医療費の問題は複雑でございます。それぞれの立場において、それぞれの沿革的な発展を遂げてきております。そういう段階において今回のように政府管掌保険、それだけでも何とかしようじゃないか、こういうような取り組み方も一つある、したがって、将来の問題として、その医療費の問題はいかにあるべきか、これはもう根本の問題のように実は考えております。ただ、いまでも政府管掌保険について政府が積極的に補助するならば、組合保険についても特別の補助をくれとか、こういうような話も出ております。これはたいへん基本の問題として考えていけば、これは際限のない問題でございます。しかし、こういう事柄をおろそかにしていくわけにはまいりません。だから、政府が七団体と話し合った、そのうちに、将来の医療費問題はいかにあるべきかというようなことについて真剣に考えていく、かように申しておるのであります。しかし、ただいま当面する問題としては、政府管掌保険についてこれを何とか処理しなければならない、また国保についても何とかしなければならぬだろう、こういう立場でございますから、ただいますぐ範囲を拡大していくと、かようなわけにはまいりませんが、当面する問題から片づけてまいりたい、かように考えます。
  48. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいま社会保険審議会、社会保障審議会に諮問をいたしております政府の原案をあらためて諮問をし直したらどうかと、こういうような意味に承ったのでございます。御承知のように、繰り返すようでございますが、諮問をいまいたしまして、そして御意見を聞きたいと、ついては先ほど来、この御審議を通じまして御議論がございましたように、政府としては審議会の御意見を、答申を尊重する、こういうことを申しておりますから、そういう際に、また原案を引っ込めて、また再提出するというようなことは、かえって混乱をすると考えております。そこで、私どもこの段階におきましては、いまの諮問案で十分御審議を願いたい。その結果、答申を待ちまして、その答申を尊重してものごとを処理していきたい、またお願いいたしたいと、こう考えております。
  49. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの諮問の原案でありますけれども、その中に総報酬制の問題がございます。総報酬制ということになると、所得税と変わらない、総報酬に対してかかってくる。結局、所得税の付加税ということになってくるわけであります。この総報酬制というたてまえがおそらくずれるんではないかという見通しがあります。現在のところは上限もありまして、二千円以上はかからないということになっておりますけれども、それがもしも総報酬制ということになれば、これは総理約束された三千億減税ということについても、かえって所得税の付加税のような形になって、まあえらい約束違反であるということになってまいりますし、また社会開発の面から見ても、上限を切るということになりますと、これはその精神にそむいてくると、こういうように考えられるわけですが、総報酬制というものについては、もしも社会保険審議会からの答申でくずせるということになれば、政府はそのまま尊重して、総報酬制をくずす気であるかどうか。
  50. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいま御審議を願っておりますのは、お話がございましたような総報酬制でございます。まあ総報酬制がいいか標準方式がいいかということにつきましては、いろいろの議論がございます。私どもも十分この両者につきましてその利害得失を検討いたしたわけでございます。御承知のように職場保険でございますから、職場におきまして給料を主とする場合、あるいはまた賞与に重点を置くというような、それぞれ職場の経営が、その経営者あるいは労働者との調停によって異なっております。そこで、標準方式でまいりますと、そういう異なった事情で負担の適正を期するわけにいかない。そこで、全収入を対象とした総報酬制に改めたい、で、最高の頭打ちをしたい、こういう考えでございましたが、しかし、これにつきまして、いま鈴木さんがお述べになったような御意見と申しましょうか、御議論のあることも十分私ども考えております。  そこで、諮問に対して答申が標準方式に直ったならば、それは採用するかどうかと、こういうようなお尋ねに承ったのでございます。これは先ほどからお答え申し上げておりますとおり、答申は尊重して、そして処理したいと、こう考えております。そういうふうに御了承願いたいと思います。
  51. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総報酬制がくずれることがあればそれを実行するというふうに私は受け取っておきます。  次に、支払い基金の問題でありますが、その支払い基金の監査についてですけれども、審査委員の数と年間の診療報酬の請求書の枚数であります。これについて言っていただきたいと思います。御承知のように、支払い基金を通して支払うわけでありますから、その支払い基金の監査が甘ければたいへんなことになる。それについて。
  52. 神田博

    国務大臣(神田博君) 支払い基金の運用の面におきましていろいろ御希望のあることは、いま鈴木委員のお述べになったとおり私も承知いたしております。今度のこうした機会を通じまして、今後なお適正に行なわれるよう十分配慮したい、こういうふうに考えております。
  53. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 数と請求書の枚数、お願いいたします。
  54. 神田博

    国務大臣(神田博君) それは政府委員から答弁させたいと思います。
  55. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 現在支払い基金を通じて支払っておりますものは、政府管掌健康保険、組合管掌の健康保険、それに共済組合関係の医療保険、船員保険、日雇い健康保険等でございまして、国民健康保険は別建ての仕組みを各県ごとにつくって支払っているわけでございます。したがって、ごく大まかに申し上げまして、総体の医療費のおよそ六、七割に近いものがこの機関を通じて支払われる、こういう状況でございます。  その際に、ただいま仰せの審査というものが十分に行なわれないために非常にルーズになっている、こういうような批判があるわけでございますが、実績から申しますと、ルーズだという批判を受けなかった昭和三十二、三年当時と比べまして、いわゆる審査による査定率というのはほぼ同じでございます。ほぼ一%足らずが査定を受けまして、ほかは大体いい、こういうことになっているわけであります。  したがって、問題は、そういう数字にあらわれた問題よりも、ものごとの処理が何となく一方側の言い分というものに傾いているような印象を与えている、こういう点であろうと思いますが、この点は私ども十分に気をつけてまいらなければならぬ、かように考えまして、昨年の夏以来特に支払い基金の本部を通じまして、各府県における審査委員会の審査について、よりしっかりやるように、特にこの審査委員会の審査委員の中には支払い側の推薦による委員というのが三分の一いるのであります。こういった人々には、自分がやっている審査が正しいと考えたならば、その事情を自分を推薦した人々によくわからせるようにしてもらう、同時にまた、その方面の要望もよく聞いて事が動くようにしてほしい、こういう点に努力をしている、こういう状況でございます。
  56. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私の質問しなかったこと、だいぶ答弁していただいたわけでありますが、審査委員の数と年間の診療報酬請求書の枚数を知らせてほしいのです。
  57. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 申し上げます。審査委員は専任と非専任がございますが、専任の数は三十九年度で百九十八名、それから各府県の状況に応じまして話し合いでさらに非専任を置いておりますが、これが二千五十二名、したがって合計いたしまして二千二百五十名、一人の処理件数は八千四百二十一件。なお、総数は、三十九年度は目下進行中でございますが、三十八年度実績社会保険関係で一億九千九百五十万件でございます。それから、これ以外に、生活保護法その他いわゆる諸法といわれるものを扱っておりますが、これが一千三百五十万件、こういう状況でございます。
  58. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 合計すると幾ら。
  59. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 合計をいたしますと、ほぼ二億件強でございます。
  60. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 審査委員の数が専任と非専任を入れて二千二百五十名、請求書の枚数が約二億枚をこえております。一月に一人当たりの件数がいまのように約八千四百件ということになると、時間で割っていくというと、ものすごい、一時間に何十枚、何百枚と見なければならぬことになってまいります。これでは検査がルーズになるといわれてもしかたがないのではないか。この点も赤字累積の要因になっているのではないかということも考えられるわけです。そのルーズにさせないという処置をしなければならぬ。これはかなり厳重にすべきだと思います。厚生大臣はこの問題についてかなり取っ組みたいような意向でありますが、政府責任者である総理としてはどういうお考えですか。
  61. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  政府としてあげて意欲的に考えております。
  62. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 あげて意欲的に考えるということは、審査委員の数をどのくらいにしたいというふうに、また処理件数を一人当たりどのくらいにしようと——実情は、審査と計算が一緒になっているようないまの状態であります。前には別になっていたものが一緒になってきて、これではおかしい。いわゆるルーズな計算になるのは当然です。だから、どのくらいに審査委員をふやすという意向ですか。
  63. 神田博

    国務大臣(神田博君) 審査の適正をはかるということは、もちろんこれはお述べになりましたような審査委員をふやす、量をふやしてその負担を軽くして、内容の検討を十分にするということももちろんこれは必要でございますが、同時に、また適当な人を得ると申しましょうか、質の問題が一そう大事じゃないか、こう考えております。第三には、やっぱり制度としてもっと掘り下げて考えるべきものではないか、こういう点があろうかと思います。それらの点にわたりまして十分検討してみたいと思っております。いまの段階で何人ふやすかというようことまでまだ入っておりませんことを遺憾に思います。
  64. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの段階では何人ふやすかということは言えないかもわかりませんけれども、こういうふうな赤字累積の要因というものを一つ一つ除かないで、かえって国民に負担をかける、大衆に負担をかけるような総報酬制というものを考えていこうというのがいけない。体質の改善をきちっとはかって臨んでいくということが好ましいわけです。そういう考え方で今後いっていただきたいと思うのです。  次に、保険料の値上げであるとか、薬剤費の半額負担というようないわゆる患者負担、一部負担の増加というものは、ボーダーライン層というようないわゆる低所得層に一番響いてくることであります。現在の一番影響を受けると考えられるのは、生活保護適用者、これは問題ありません、医療補助になりますから。それより少しましな階級に対して、いわゆる現在の医療扶助の基準といいますか、そういうものから考えますというと、生活保護のレベルまでおっこってくるような状態、あるいはわずかにオーバーすると、新聞配達をやっているような少年等については考えてあげるというようなのはあるようですが、そういうような程度にまでしか考えられていない。ですから、保護基準というものはございませんけれども、かなり上の層まで医療扶助でやっていけるように考えるべきである、このように思うわけです。特にこれは人間尊重ということを重視されている総理のことでありますから、十分お考えだと思いますけれども総理の所信をお願いいたしたいと思います。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま鈴木君が御指摘のような階層、これが一番困るだろう、こういう意味で今回の問題につきましてもいろいろ是非を考えたわけでございます。私が一歩後退二歩前進ということばを使いましたが、とにかく保険制度そのものが強固にならない限り制度の拡充はないんだ、ただいまそういう意味でこの問題と取り組んでまいろう、これが今回改正を意図した本来の姿でございます。  先ほど来、税とやはり医療制度と結びつけられて、どうも減税にならないんじゃないか、こういうお話ございましたが、この種のものはこれは税とは違う、いわゆる医療制度としてそのりっぱな成長考えていく、こういうことでなければならない。だから、受益者の負担というものもこれは考えていかなければならぬだろうと、かように私は考えておるのでございます。  ただいま御指摘になりました点は基本的な問題でもあるし、一般の医療制度からさらに、大にしていわゆる社会保障、そういう立場に立ってくると、いろいろ議論もあるのではないかと、かように私は考えます。いずれにいたしましても、審議会の答申によりましてそういう点にも批判が加わるものだと、これを私は期待いたしております。
  66. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 四十年度予算案における国保関係の、国民健康保険ですが、その関係の医療費の負担割合というものは、保険料と患者負担、公費負担で、何%ずつおおむね見ておりますか。
  67. 神田博

    国務大臣(神田博君) 政府委員からこまかく答弁させたいと思います。
  68. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 昭和四十年度国民健康保険関係の医療費は二千八百九十七億と推計されておりますが、このうち国庫で一千九十五億持つことにいたしております。
  69. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは国民健康保険ということになれば、これは保険の中で一番いわゆる保険者も多いわけであります。それの四十年度予算案における保険料と患者負担と公費負担というものを何%ずつに考えているかということも厚生大臣が直ちに答弁できないようでは、これは大衆からいえば離反しているということを思わざるを得ない。非常に憂うべき現象です。いまの答弁では、国庫の数字だけをあげられたわけでありますけれども、私の聞いているのはパーセンテージです。質問に対して適当に答えていただきたいと思います。
  70. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) ただいま申し上げました国庫負担は、総体との関係で申しまして、定率の分が二割五分、その上に調整交付金が一割、そのほかに家族の七割給付をやる分につきましてその分の三分の二、こういう複雑な構成になっておりますので、一がいに申しかねますけれども、およそ三割三分強の負担をしていると思います。それから、いま申し上げました数字のうちの患者負担は千百二十八億でございます。これは国庫負担よりもやや多い割合、四割五分程度負担していることになると思います。それから、保険料の負担は六百七十三億でございます。これは全体の四分の一強の負担になっている勘定でございます。
  71. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、現在の国保の赤字というものは事務費と療養給付費とに分けてどのくらいになりますか、三十九年度末の見込みはどのようになっているか。
  72. 神田博

    国務大臣(神田博君) 約百三十億でございます。
  73. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 それは事務費ですか、両方合わせて。
  74. 神田博

    国務大臣(神田博君) ええ、両方合わせて。
  75. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 事務費は、被保険者一人当たり百五十円から今度二百円に政府原案は上がっております。そういうふうに引き上げておられますけれども、それでも赤字を生んでおる。さらに九・五%アップに対してはどうかといえば、国庫負担の特別療養給付費補助金というのが今回は約十五億円出ていると思いましたが、これはいつまでの分を見ているわけですか。
  76. 神田博

    国務大臣(神田博君) 四月から七月まででございます。それから、ことしの一月から三月までの分は三十九年度の追加予算ですでに御承認を願っております。合計で半年、こうなっております。
  77. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、九・五%アップについては六月分までしか考えていない。社会保険審議会の答申を得て、再びこれに特別療養給付費の補助金として国庫負担を出すというお考えかもわかりませんけれども、地方団体側からすれば、六月分あるいは七月分までしかみていないということになれば、再び国保の保険料の引き上げ、再引き上げを考えなければならない。現在値上げの運動もやっておるようでありますけれども、それをさらに上げなければならないということになってまいります。その点について、この赤字問題でありますが、こういう姿勢については自治大臣はどういうふうにお考えですか。
  78. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 今度の保険料の引き上げに伴いまする処置でございまするが、これはいま厚生大臣がお答えいたしましたように、保険料にかかってくると思われる分につきましては、四、五、六月分を国庫において予算化されております。こういうことは保険制度の中でまかなっていくというたてまえをとらざるを得ないと思うのであります。したがいまして、七割給付になりますれば、三割は自己負担になるし、それから、保険料としての現在までの二〇%を保険料でみる。政府は、先ほどお答えがありましたように、二五%を国庫がみ、さらに調整交付金として一〇%をみる。七割給付に伴う分につきましてはこれを補助としてみる、こういうたてまえになっておりまするから、一応私どもとしては、そのたてまえの上で、これを吸収すると申しますか、まかなっていくということにならざるを得ない、かように存じております。したがいまして、目下のところ、七月以降につきましては、それぞれの分について、国庫が負担すべきものは国庫、保険料でみるものは保険、自己負担でみるものは自己負担、このようにならざるを得ない、かように存じております。
  79. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうすると、七月以降になると、再び保険料の再値上げということを考えなければならないということになってまいります。六月までしか考えないというのではなくて、すでに三十九年度補正、それから、四十年度においては六月分まで九・五アップ分については考えているわけなんでありますから、それ以後についてもこれは考えなければならないわけでありますが、年間を通じてどうして考えられないか。これは悪く言えば、六月までしかみていないということになれば、これは参議院選挙に対するところの対策予算というようなかっこうになってくる、そういうそしりを免れないと思うのでありますが、これについては厚生大臣大蔵大臣の両方からお伺いしたいと思います。
  80. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  この医療費の引き上げに伴う国保等の政府の負担する場合については、従来の例がございまして、大体地方公共団体が予算措置をする準備期間と申しますか、おおむね半年くらいしかみておりません。今回もその前例に見合いまして、両年度にまたがるのでございますが、通算して半年をみた、こういうことでございまして、参議院選挙を意識して事を運んだ、そういうようなことは絶対にございませんので、御了承願いたいと思います。
  81. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 十五億は六月まで選挙目当てに出したのではありません。これは御承知の、一カ月幾らというのではなく、根っこに三割五分の国の負担がございまして、奨励的な意味で十五億という使い道といいますか、いずれにいたしましても、一カ月幾らということで出したものではございません。
  82. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 国保が一番現在では保険の中で苦しいわけでありますが、九・五アップについては、特別な今回の緊急是正でありますから、当然のこと六月までで十五億ならば、一年間通じて見ても六十億でございます。その程度のことは考えてあげなければ、それが一つの大きな理由となって保険料の値上げということにつながってくるのではないかと考えるわけであります。特に今度は格段の措置ということを両党の間でいわれたようでありますけれども、その国保に対する措置というものは、内容はどういうものにしていこうというお考えですか。
  83. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  国保の財政措置をどうしようか、これは非常に重大な問題でございます。大蔵省等とそれぞれ相談をいたしておる段階でございます。  それから、先ほど鈴木委員からお尋ねのございました、いま諮問しておりますのは健康保険関係でございまして、国保のほうはしておりません。そこで私のほうと大蔵省で御相談しておる、こういう際であります。自治省ではもちろん入ります。
  84. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 九・五アップ分について積極的に考えてほしいと思うのです。  次に、この根本的な医療問題に対する姿勢について伺いたいのですが、現在の国民のほうはほとんどは皆保険になっており、適用者が九千六百万人をこえておるというような状態でありますので、そういうような現在におきまして、薬剤の制限診療というものはほとんどなくなった。そうなりますと、もうこの段階では、医療問題の根本的解決ということになれば、医薬分業ということを考えざるを得ない。医師の技術料ということも、これは年数や経験ということを十分加味したり考慮していけばいいと思うのであります。また、そういうことも非常に複雑かもしれませんが、外国ですでに医薬分業が行なわれているところもある。なぜ行なわないのか。当然これはするべきであるというような考えでありますが、これは総理について伺いたいと思います。
  85. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御承知のように、二十六年にこの問題が取り上げられ、医師法並びに歯科医師法及び薬事法等の改正をいたしまして、いわゆる医薬分業、そういうものを三十一年から実施されております。これが当初はなじみにくい制度のようでございましたが、最近におきましてはだんだんそれが普及して、そうして各方面で利用されておる。その数字などは事務当局から説明いたしますが、私もそういう方向が望ましいのじゃないか、かように考えますので、とくとその利用の状況などは事務当局からお聞き取りいただきたいと思います。
  86. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 医薬分業に伴いますその後の社会保険分の処方せんの枚数及び金額等につきましてでございますが、枚数においては三十四年当時平均約三万一千枚でございましたのが、三十八年は月平均約十六万枚ということで、五倍くらいにふえております。金額においては、同じく三十四年は月平均二千百万が、三十八年では平均約一億七千万というように六倍程度にふえておりまして、医薬分業の制度の趣旨はかなり浸透しておるのではないかと私ども考えております。
  87. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理、一体いつごろをめどに完全に医薬分業を実施するお考えですか。
  88. 神田博

    国務大臣(神田博君) 医薬分業をいつまでに完全にやっていくかというようなお尋ねに承ったのでございますが、これはいま総理からもお答えございましたとおり、また、事務当局からもお答えございましたように、逐次医薬分業をするような方向にのぼっておりますが、いまの段階におきまして、すぐ何年先にやる、最近の機会でそういうことをやるということは、なかなかこれは大きな問題であろうと思っております。与党におきましても、今度、懇談会と申しましょうか、調査会をつくりまして、十分それらの大きな問題を検討いたしたい、こう言っておる段階でございまして、それらの機関で相当なこれは日数をかけて見通しをつけませんと、また、やる方法等につきましても、十分これは検討の要があると考えておりますので、そういうような仕組みで考えたいと、こう思っております。
  89. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 逐次広げていくというお話でありました。ですが、実際問題として、めどのないところの方向なんということは、これはつかめないことです。終点のないマラソンなんということはとうていあり得ないわけでありますから、そういうような感じを受ける。医薬分業でないと、実際問題として実際のところを言えば、薬剤師の免状もない者が薬を調合してよこすということになりかねない、錠剤機も持たないようなところばかりである。こういうような状態ではほんとうの医療行政というものの確立はできないと思う。きちっとめどをつけるようにして、早急にいつごろまでという方向をきめる必要があると思います。  次に、同じく根本的な問題でありますけれども、すでに社会保障制度審議会から昭和三十七年の八月に答申が出ておりますけれども、総合調整の問題であります。各保険というものを一本化にしていく必要がある。池田前首相も、総合調整の早急な具体化ということを唱えてきたわけでありますけれども、どのように決意されているか。特に国民健康保険と政府管掌について、被用者保険のプール制だけということでは、保険の大どころを占めている国保との格差というものはますます広がってくるばかりです。そういう点についての決意を伺いたいと思います。
  90. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいま鈴木委員のお尋ねでございました各種保険の統合強化ということは、これは非常に重大なことであり、また、必要なことと考えております。社会保障制度審議会から答申のあったこともいま提示されたとおりでございます。そこで、これはなかなか国民皆保険を進めてまいる、国民の健康を守るという段階からまいりまして、これは当然のことでございますが、御承知のように、それぞれ沿革があって今日のような状態になっておるわけでございます。先ほどもちょっと申し上げたのでございますが、これらの問題も、党に医療問題調査会というものをつくって、そこでひとつ十分検討いたしたいと、こういうことでございまして、それぞれ準備を進めたいと、こう考えております。
  91. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 総理に伺いたいのですが、答申を尊重するために答申というものを求めたわけです。諮問を行なったわけです。そうすると、このような社会保障制度審議会から、特に皆保険ということで、全体的に一本化しろというような総合調整のことが言われている。したがって、答申を尊重するということになれば、一本化への具体的な期日というものがなければならないわけであります。一体、大段でよいから、もし示されるならば大体どの時期ということ、どういう時期にこれはきちっと行なっていきたい、これを国民の前にきちっとした約束をしていただきたい。
  92. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは先ほどもちょっと触れたのでございますが、健康保険と国保との関係、これは大まかに二通りある、また、健康保険の内部におきましても、各企業別に、また、組合制度もある、こういうようなわけで、その沿革を無視して、そうして今日メスを入れようといっても、なかなかそう簡単に結論が出るものではございません。ことに皆保険をやっております外国の保険料率などと日本の場合を比べてみますと、日本がいずれも低いのです。これはもう他の国の皆保険、かような立場に立っておる英米独仏等と比べましても、日本の保険率、また同時に負担率というものは、これはたいへん低い状況にございます。しかし、この状況のもとにおいて今日日本の皆保険がスタートしておるのだ、かようなわけでございますので、ただいまその財政だけの観点からもなかなかきめかねる、ここにそのむずかしさがある。ただいま簡単に理論的に割り切って、これは政治問題だけだ、政治問題で片づけろ、こういうことのように御意見の論旨の骨子を聞き取りますけれども、おそらくこれは政治問題であり、同時に社会問題である、また、法制も基本的な憲法にも関連する問題だし、また、国の財政の面から見ましても、外国のそれとも比較してみなければ、ほんとうに制度を完全にスタートさしていく、拡充していくと、こういうことはなかなか困難なことだと、かように私は思います。ただいま結論を急いで、いついつまでにこれを片づける、こういうことを明言しろとおっしゃいますが、いずれにいたしましても、とくと審議会等において十分審査していただかないと、それぞれのものがみな沿革的な、また、歴史的な発展を遂げているものでございますだけに、これは簡単ではない。ただいま私はこの問題と真剣に取り組んではまいりますが、また、ぜひともりっぱなものにしたい、かようには考えますが、しかしながら、ただいまのところ、まだまだ非常に困難な問題がある、実情等につきましても特に注意していかなければならないものが幾つもあるだろうと思います。ただいままでの論旨でもその実情に触れておられる。これは私たいへん鈴木さんが研究していらっしゃると思います。たとえば最近の医薬分業の問題であるとか、あるいはまた乱診乱療だとか、こういうような弊害におちいらないようにとか、こういう問題だとか、あるいは病院制度、あるいは開業医の問題だとか、いわゆる医療担当者だけの問題におきましても非常にむずかしいものがあるのでございますから、これはじっくりかまえて、そうして結論を出して、そうしてあやまちのないようにしたい、このことが最も大事なことだ、かように思います。しかし、私は、この問題が今回の政府管掌保険の三法をめぐって問題が提起されたこういう機会に、あらためて医療費問題と取り組む、同時に、大にしては社会保障制度全般としての医療費のあり方というような点も考えていくべきではないか、私かように考える次第でございます。
  93. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 次に、これは科学技術庁長官に伺いたいのですが、中性洗剤の問題でありますが、科学技術庁で中性洗剤、いわゆる合成洗剤の関係でありますが、その害毒を調査したいわゆる報告書が、三カ年たってようやく近々報告書を大きくまとめまして報告を出されるということでございますけれども、これはほんとうでございますか。
  94. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 中性洗剤の問題につきましては、科学技術庁といたしましては、三十七年度に厚生省、労働省等の協力を得まして、いわゆる特調費というものを、三十七年度にこうした関係省に交付いたしまして、中性洗剤の毒性の有無について試験研究をやってもらったわけであります。したがいまして、昭和三十七年度中から研究を始めまして、そうしてその結論といたしましては、——ここまでお尋ねがなかったわけでございますけれども、ついでに申し上げますと、その調査の結果としては、「洗浄の目的を著しく逸脱しない限り、野菜、果物類、食器等の洗浄に使用することは人の健康を害するおそれがない」ということが食品衛生調査会におきましても結論づけられたものでありますから、そのことを、所管の厚生大臣に答申をいたしておるというのが今日までの状況でございます。
  95. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 最近報告書が出るということはまあ事実だろうと思いますが、いままで出た報告書はここにございますが、「この中性洗剤特別研究報告」の——読んでまいりますというと、有害だけれども無害であるというような奇妙な報告書になっております。たとえてみれば、これは皮膚障害のほうの報告の二八ページでありますけれども、これは非常に皮膚障害を起こした患者がふえている。それを調べていったところが、主婦の外来患者八十六例のうち、洗剤の濃度をきちっと正しくやっていた者は九例である。大部分の者は規定以上の高濃度で使っている。したがって、高濃度だからそのようになったのであって、合成洗剤だけによるものではない。こういうような報告です。ところが、実際に主婦の場合を見ますと、あのライポンFであるとか、そういうのに使用規定が書いてある。わずかの小さいグラス一ぱいを二リットルの水に溶かす、いわゆる四百倍ぐらいにして使えということがありますけれども、実際の主婦の使用状態というものは、この報告書にあるように、原液のまま、あるいは原液をすこし希釈した程度でもって使っている。これでは、この報告書にあるように、有害であるということになるわけでありますが、今度出る総まとめには、その大衆使用の状況からということで考えて、実際には使用されている状態から考えて有毒である、こういうように報告すべきがほんとうであると思うのですけれども、それは科学技術庁長官どうですか。
  96. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) こうした人間の衛生に直接の関係のある問題でございますから、今後における調査におきましても、ただいま御指摘のような点は十二分に考慮に入れまして、責任のある調査の発表をいたしたいと思っております。ただ、先ほど申しましたように、この直接野菜その他の洗浄に使う場合、それから上水道の中にどういう影響があるかという場合、あるいは洗浄等をやった場合に下水道に流された場合、いろいろの場合があるようでございますから、これらのそれぞれの場合につきまして的確に究明をして、的確な発表と、使用についての注意というようなことも十分配慮いたしたいと思っておりますが、これらの点につきましては、科学技術庁としては、科学的な調査を科学的に公正にやる。そうしてその結果を厚生省その他の実施官庁におきまして適切に実施をするというような仕事の配分になっておりますので、御必要がございましたら厚生省事務当局等からまた御答弁をさせていただきたいと思います。
  97. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 洗浄の目的を著しく逸脱しない限りは無害であるということ、そういう報告がされて、そうして厚生省からは、それを使うに際して、いわゆる厚生省から推奨されたものである、大腸菌や、あるいは回虫卵というものが取り除かれるので、非常に使用するのには衛生的であるから野菜洗浄に使えということがいわれているわけですが、この報告書全部を読んでみますというと、人体に塗布した場合、あるいはそのほかに塗った場合、塗った場合に、どういうところに中性洗剤が沈降していくか、とどまっていくか、害を与えるかということは、ラジオアイソトープあたりを使って研究している。ところが、実際に野菜を洗浄したときのは、アイソトープ等を使って追跡をしていない。ほかの研究の例を見ますというと、アイソトープを使って見るというと、明らかに野菜なら野菜の繊維の中に全部中性洗剤が入ったきりになっております。そのまま実際には食事に使われている。御承知のように分解しないものでありますから、現在のは……。からだの中で分解しないで、肝臓へ行っても分解されない、そういうことで障害が起きている。まあ死亡例もあるぐらいでありますが、なぜ、そういうような野菜洗浄というような実際の場合がありますのに、ラジオアイソトープ等を使っての追跡の報告をしなかったのか、追跡をやらなかったのか、今後やっていくお考えがあるのか。
  98. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ラジオアイソトープの調査をやったかどうかというようなこまかい点になりますと、私も承知いたしておりませんが、今後十分、それらの点について十分な配慮をした調査究明をいたしたいと思います。ただ、先ほど申しましたように、これは科学技術庁だけの力でよくできませんことでございますので、その点は関係各省と十分よく連係をとりまして、純粋科学的な調査と、それに対する施策を誤りなくやりたい、かように考えております。
  99. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 まあ先ほど申し上げましたように、規定濃度で使えばいいというような報告であります。また、それに従って厚生省からは推奨品のように言っているわけでありますけれども、使用書にも出ておりますが、実際には規定濃度で使っていない。これは当然規定濃度の四百倍に薄めて売るべきものじゃないか、それがほんとうだと思う。それを原液のまま売らしていくというところに、多くの家庭の主婦が、特に若いうちはよろしゅうございますけれども、年配になってくれば、障害を起こしている。炊事婦、いわゆる学校給食婦あたりは肝臓やられて、月の回りにくまができているという実例が出ている。こういうようなことから考えて、これは規定の濃度にして売るというようにするというのがほんとうだと思うのでありますが、厚生大臣と通産大臣から答弁を願いたいと思います。
  100. 神田博

    国務大臣(神田博君) いま鈴木委員から、薄めた濃度でひとつ販売させるような処置をとったらどうかという御注意承りました。これはいろいろ検討の要があろうかと思います。ここですぐどうこうということをお答え申し上げるよりも、いろいろ御発言になりましたことを参考にいたしまして、技術的に十分ひとつ検討してみたいと思います。
  101. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま、厚生大臣のお考えのとおりだと私思います。ただ、通産省のほうの立場から申しますと、消費者の擁護のために、家庭に影響がある、こういうことでありますから、できるだけそういうことのないようにいたしたいという、気持の上ではさように考えますが、ただいま厚生大臣のお答えのとおりでございます。
  102. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 実際にラベルの中にはきちっと注意書きもあります。規定濃度に薄めろというようなことも具体的に指示されておりますが、家庭の主婦であるとか、一般の人等は、そういうこととは関係なく使うというのが現状です。実情に合わせたようにもっていかないということは、これは非常におそろしいことだと思う。そういうような、いわゆる政府が利用されているような——無害であるとかというような、宣伝利用されているというような状態は、これはよくない。  そこで、総理に伺いたいのですが、この問題はこまかくなりますので、あとは別のほうでやりたいと思いますが、この研究を一回だけで打ち切らないで、継続して研究をされて、有害、無害の問題と、実際の使用例についての調査を専門的に進めていただきたいことと、アメリカではすでにこの中性洗剤の製造販売というものを禁止する法律が上院を通過しております。西ドイツにおいても立法されている。これは実際になっております。そのように禁止になっておる。わが国においても、下水道の処理等が非常に困難をきわめておる状態でもありますし、実際問題として、有害だけれども無害だなんというへんな報告書だけで、無害であるという断定はできないのでありますから、疑わしいものは、国民の生命に危険のあるようなものは、たとえその規定濃度で使えば心配がないとしても、禁止の立法をするべきである、このように考えるわけでありますが、その辺の所信を伺いたいと思います。
  103. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 事柄は中性洗剤についてでございますが、また、その他にもいろいろこういうような大衆に使われるものというものがあるだろうと思います。鈴木さんの御注意はごもっともでございます。やはり大衆家庭、そういうようなところで使われるには、それに使われるようなものを売ることが本来の姿だろうと思います。もちろん、これが上水道で使うとか、あるいは大量の市場で使うとか、こういうような場合はまた別でございますが、家庭に入っておる、そういうような場合には家庭の実情に合うように、そういう品物を売るようにするのがいいだろう、かように思います。ただいま厚生大臣並びに通産大臣からお答えをいたしましたように、おそらくこれもこういう意味で研究をするだろうと、かように思います。
  104. 藤田進

    藤田進君 関連して。私もかねてからこの毒性洗剤について鋭意厚生大臣の善処を求めたいと思っていたところですが、各国の実情を調べてみても、非常にこの合成洗剤については関心が高いし、それぞれ毅然たる措置をしているとおおむね見受けるわけであります。わが国の場合はいま鈴木委員指摘されるように、どうも厚生行政の段階で少し一本ゆるんだものがあるのではないだろうか。アンプルかぜ薬が全国に出回ったころにいろいろ問題が起きて初めてこれを処置するという、非常な被害例が出てきて、これに手を下す。今度の中性洗剤の場合でも、それだけでりっぱな調査書ができているくらい——これはお読みになったと思いますが、国民に与える害毒を例証しながら、どうもいま厚生省が立ち上がると、メーカーのほうでどうにもならなくなるというようなことが理由で、これに対する対策がないのだとさえ結んでいるのであります。私は必ずしも誇大していないと思う。私は関連なので、時間がございませんから、いずれ持ち時間でやりたいと思いますが、こういったことについてもう少し根本的に、国民の保健行政としても考えてもらいたいと思います。仕組みについても、営利企業への就職の承認といったようなものは、三十九年度のが手元に来ておりますが、これあたりから見ても、どうも厚生省の取り締まるべき技官、医官等がどういうようになられたか行くえがわかりません、公式には。が、いろいろなことを総合してみると、結局手が出ないようなことになっているのではないだろうかと憶測さえするわけであります。売薬段階あるいはメーカーの段階等についても、私は具体的には言いませんが、総理もせっかくいまのように御答弁になったのですから、科学技術庁は分析されるでしょうが、それを待つまでもなく、厚生保健行政の中でいち早く手をつけてもらいたい。その一つとして私は中性洗剤についても考えてもらいたいと思うのであります。相当な被害も出ている。そして、これがとことんまでいかなければ対策が講じられないというのでは因るのであります。御答弁いただきたい。
  105. 神田博

    国務大臣(神田博君) ただいま藤田委員から、先ほど来鈴木委員の、中性洗剤についての御発言に追加をされまして、非常にうんちくのあると申しますか、われわれ保健行政に携わる者といたしまして重大な関心と、また注意をしなければならぬ点につきましてお述べになりましたこと、よく了承いたしました。アンプルの問題につきまして、これは非常に御迷惑をかけております。また中性洗剤の問題も、ただいま総理からもお答えがございましたように、私も先ほどお答え申し上げましたように、十分ひとつ検討を重ねまして、そうした疑いのあるものは世間に誤解を招きますから、ひとつ姿勢を正してきちんとしたものに持っていきたい、こう考えております。
  106. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 このことで文部大臣にひとつ伺っておきたいのですが、横浜国大の山越という教授がこの問題を取り上げたところが、今回の横浜国大の寄付の問題にからんで、中性洗剤関係の会社からでありましょうが、そういう教授を罷免しなければとうてい寄付はできないというようなことを言ってきた。非常な圧力がかかったわけであります。その中を耐え忍んでがんばり続けているわけでありますけれども、そのような不当な圧力に対して、特に学校の建設あるいは増築に関する問題でありますから、十分な保護の手を伸べてもらいたいと思うのでありますが、その見解を伺いたい。
  107. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいま具体的におあげになりました件につきましては、私申しわけございませんが、ここに詳細な資料を持っておりませんけれども、一般論といたしまして、全く御同感でございます。一切の不当な圧力に屈する、あるいはそれと引きかえの寄附というようなことは絶対に容認すべきものではない、かような固い決意を持っております。
  108. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そのとおりやっていただきたいと思います。  次に、大蔵大臣に国有財産のことで伺いたいんですが、現在各都道府県に国有の建物で共同住宅あるいは県営住宅として借り上げさしているものがございます。その施設の状況というものを具体的に見ますというと、生活困窮者が大半であります。そういう状態です。七五%くらい生活困窮者である。先日も神奈川の金沢にある建物を見たんですが、とにかく危険火災発生の建物として見る以外にないような状況です。便所も外であれば、炊事場も外である。終戦時のままの状態で、窓から炊事をやっているという状態ですが、この建築はすでに三十数年たっている、建てられてから。政府としてはどういうふうに考えているか。これは当然払い下げを希望しておりますし、中層耐火に建てかえなければならぬわけでありますから、その点についての見解を伺いたい。
  109. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公営住宅につきましても、払い下げをやるようにということは採用いたしております。いままでは非常に安い価格で払い下げを受けるよりも安い賃貸のままのほうがいいというような状態で、なかなか時価で払い下げられないということでございましたが、どうせ居住権もあるわけでありますし、その間の事情を十分勘案をしながら、払い下げの方向でやってもらいたいということで、このごろは払い下げる方向に進んでいると思います。それから払い下げられないもの、また土地が非常に大きいにかかわらず、戦後平家建てでもってつくっているために、土地の高度利用ができないというような場合には、新らしいものをつくってそれに移るというようなことで、より効率的な運営をしてもらうということでございます。また、当該のものに国有地が使用されているというものにつきましては、そのまま府県市町村が使う場合には低廉な、二分の一以内で払い下げるというような特例を開いております。民間に払い下げるという場合には、特別な価格で払い下げるということはいたしておりませんが、各地方公共団体の要請に応じて払い下げていくという方針であります。
  110. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ちょっと誤解されたようでありますが、私が言うのは、そういう地方公共団体のほうでは、借り上げているものを国から払い下げを受けてですね。それを中層耐火にしていく。それがスラム街の解消にもなるし、危険火災発生の防止にもなるわけですから、積極的に進めていただきたい。  それに関連してですが、現在の中層耐火の補助金というものは、非常に少ないわけでありますが、建築に対する工事費の単価について官庁営繕、公営住宅、文教施設について言っていただきたいと思います。
  111. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 一律には申し上げられないと思います。また、地域的にも規模や、構造によっても単価が違いますが、いずれにしても、公営住宅の単価は幾ら、官庁営繕でおおむね公営住宅と同列のものの単価は幾らということは、調べて申し上げます。
  112. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは、最後になりますが、現在の辻堂の演習場のあと地であります。これが十八万平方メートルございますけれども、神奈川県議会のほうでは、これを都市公園にすべきであるという意見書を知事に出している。ところが、ふしぎなことに、知事のほうでは、これをサイエンスランドというような会社に払い下げて、いわゆるレジャーセンターにするというような方向に動いているらしいのでありますけれども、国が、こういうような公共でないところの営利目的のための計画に対してどう考えているか、地元の県議会あたりが、これを都市公園にするべきである——非常な景勝の地であります。当然そういうふうにすべきであると思うのでありますけれども、科学技術振興というような名目でもってレジャーセンターをつくるというようなことは、とうてい考えられない。なかなか風光明媚な風致地区というものはないわけでありますから、その点について、大蔵大臣の所信を伺いたいと思います。
  113. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘の土地は、旧海軍砲術学校辻堂演習用地というものの一部であります。戦後米軍に提供中であったものが、昭和三十四年六月二十五日に返還をされ、その土地の利用につきましては、審議会の議を経て、大体学校その他に使われておるわけでありますが、残りの部分、すなわち、坪数はよくわかりませんが、御指摘のものだと思います。これは審議会にかけましたときには、公園用地としてこれを使用するということでありましたが、昨年の十一月ごろだと思いますが、神奈川県当局から、これを公園にしない、こういうことを言ってきたわけであります。この土地については、現在サイエンスランドという株式会社が、これを払い下げてくれという申請がございます。もう一つは、住宅公団から、これを住宅用地として払い下げてくれというものもございます。それからもう一つは、学校から、払い下げるようにというようなものもございます。本件につきましては、審議会の議を経まして、慎重に検討しなければならないという基本的な態度をとっております。
  114. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 先ほどのは……。
  115. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公営住宅を申し上げますと、中高層の耐火、三十九年が六万九千三百円でございましたものが、四十年が七万二千三百円、それから公庫住宅の中耐で申し上げますと、三十九年が七万一千、それから四十年が七万三千円でございます。
  116. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 時間がありませんからこちらから申し上げますと、木造平家の官庁営繕は七万七千二百円というような状態、それに対して公営住宅は、中層耐火でもって七万二千三百円、文教施設の場合は、鉄筋で小中学校のときは七万九千八百円、官庁営繕の木造平家とほとんど変わりないというのが実際の単価です。これでは、地方団体としての財政の圧迫が当然考えられるわけですが、これについて、これを上げていく方針はないのか。  それから、先ほどの辻堂の演習地の問題でありますけれども、大衆の声として、県議会が都市公園にしろと言っているのでありますから、その方向に向けられるように、審議会に依存することなく、努力していただきたいと思うのです。
  117. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公営住宅等の単価につきましては、実情に合うように、年々坪当たり単価の補正を行なっているわけでございます。今年度は、木造家屋四・六%、ブロック建て平家につきまして四・九%、ブロック二階建て五・二%、鉄筋コンクリートづくり四・三%というように引き上げているわけであります。  第二の、辻堂演習場あとの利用に対しは、慎重に検討をいたし、審議会の十分なる御意見を聞いてから決定いたしたいと思います。
  118. 小平芳平

    ○小平芳平君 開運。大蔵大臣、いまの鈴木委員質問に、ただ上げた、上げたというお答えだけなさったのですが、いまの質問鈴木委員が御指摘したとおりがよろしいのですか、その単価は、木造が幾ら、耐火建築が幾らというふうに。そうして、もしその鈴木委員指摘したとおりの単価とすれば、木造と耐火建築の場合と、そういうような単価でよろしいわけですか。それを適正に引き上げたというふうにおっしゃったわけです。
  119. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) だんだん適正に毎度やっておりますと、こういうことを申し上げたわけでございます。  それから、いま鈴木さんが申された、学校の建築は幾ら、公営住宅は幾ら、公団の住宅は幾らという問題につきましては、資料が必要であれば資料をつくってから申し上げます。  ただ、耐火構造の学校と、それから木造の住宅というものを考えますと、学校のほうが非常に高くなければならないというふうにきっとお考えになると思いますが、これは設計、構造によって、同じ坪数でも非常に安いものもございます。木材で対比をいたしましても、学校は坪当たり二石ぐらいとか、住宅の場合は三石半とかいうふうに、材料費が非常に違う、工賃も非常に違うということで、必ずしも坪単価で比較はできないと思います。必要があれば申し上げます。
  120. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 鈴木君の質疑は終了いたしました。  一時三十分再開することにいたし、これにて休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      —————・—————    午後一時四十六分開会
  121. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。曾祢益君。
  122. 曾禰益

    曾祢益君 私は、外交問題に限って二、三の問題について、特に総理大臣を中心に所見を伺いたいと思います。  最初に、インドシナの危機がますます深まっておるように感じます。きょうもダナンにアメリカの海兵隊の上陸が始まっているようであります。全世界はあげて、このインドシナの危機がますますエスカレートして米中の大戦等に発展しては困るという暗雲におおわれていると思うのであります。特に、米中両国にはさまれたわが国として、また、その米軍に基地を貸している日本として、この問題に深刻な悩みを持っていると思います。この事態の推移については、まことに憂慮にたえませんが、同時にまた、あまり先ばしった考え方もいささかどうかと思うのであります。軍事的に見ると、インドシナの戦いというものは、地上軍、特にゲリラ対アメリカの海空軍という特殊の戦いでありますので、したがって、そこには必ずしもはっきりしたショーダウン、決戦というものがないような、変などろ沼的戦争だと思うのであります。両方とも国際的には、アメリカは、ベトコンの侵略がおさまるなら話し合いに応じてもいい、北ベトナム、中共等は、アメリカの撤兵が前提である、こういう主張をしておりまするが、両方とも、軍事的の解決ということは困難であるという、最後には政治的解決が必要であるということを案外察知しておるのではないかと思うのであります。  そこで問題は、どうしたならば双方に対して停戦をさせ、そして国際会議で平和的に解決ができるのか、ここに問題があろうと思うのであります。総理は、本委員会におきまして、先般も同僚委員質問に対し、平和を求める国が協力してやることが必要で、そういう方向で努力したい、こう答弁しておられます。むろん、そのこと自身にだれも反対はないと思います。しかし、ただそれだけでは、祈るだけでは不十分だと思うのであります。また、他の委員に対する質問に対しては、ジュネーヴ会議でこの問題を取り上げることが筋だと思うと言っておられます。しかし、私は、必ずしもジュネーヴ十四九国という特定な会議である必要はないのではないか。インドシナ関係国、並びにおもなる関係国である北ベトナム、中共、アメリカ、イギリス、フランス、ソ連等が加わることは必要であるけれども、必ずしもジュネーヴ会議という形式が必要かどうかということは、もっと検討を要するのではないか。要は、そういう関係国会議にどう持っていくかというところにあろうかと思うのであります。これについて各国が非常にこの問題で動いておるようであります。イギリスのウィルソン首相は、秘密裏にいろいろなことをやっているということを議会を通じて言っております。私はこの際、総理から、どういうふうにこの平和会議に持っていく努力を日本の外交としてやっておられるのかどうか、あらましでもけっこうでありまするから、もう少し具体的にお示しを願いたいと思います。
  123. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本がアジアの一国であり、東南アジアにかような事態が起こり、そのために、それが波及するおそれがある、拡大するおそれがある、こういうことでたいへん心配しておることは、これはもう何度も申し上げておるのでよく御承知のことと思います。  私がジュネーヴ十四カ国会議、これがまず取り上げるべきではないかと言ったのは、沿革的に申せばと、かような条件があるわけでございます。私どもしばしば申し上げておりますように、これはそれぞれの国々すべてが実は非常に心配しておる問題であります。この心配というものが大きくなる限り、戦火が拡大するということは、これは私は避けられるのだろうと、かようにも思いますけれども、しかし、積極的に何かの機縁をつかまえて、そして、その機縁によって行動を出してこないと、十分の効果をあげることはできないんではないか、これがただいまの曾祢さんのお話だと思います。私どもも二回にわたって人を派し、そして実情なども探っております。また、新たな計画等もあるやに伺いますが、とにかく、もっと日本の持つ力といいますか、これは御承知のように、平和憲法を守っておるので、平和的解決、それ以外にないのでありますから、もうあらゆる機会を通じてこの声を大にする。そうして平和解決をする、これを願う、これ以外に実は私どもにはないように思います。ただ、私どもは、この次にもだれか適当な人がおれば、これをやはり現地にも派遣し、現地においてそういう機運をつくる協力もしたいと、かように私は考えております。
  124. 曾禰益

    曾祢益君 現地調査もけっこうでありましょうし、南ベトナムとの連絡もけっこうと思いますが、問題はむしろ、国際外交の舞台において、あるいは舞台裏のほうがいいかもしれませんが、国連の場、あるいは国連の場でなければ、国連事務総長、あるいはイギリス、フランス、ソ連、カナダ、これらの国々と多角的な外交を進めることによって、いま総理が言われたチャンスをつかむ。チャンスはなかなか来ませんけれども、チャンスをねらってそういう外交を進めていただきたいと思うのです。  第二に申し上げたいのは、会議までこぎつけたとして、一体何を会議できめるのか。むろん停戦だと思います。ことにアメリカだけを撤退させるというようなことは、これは問題になりません。カナダのピアソン首相が言っているように、やはり北からも侵略があることは事実なんでありまして、したがって、両方が軍事的行動をやめる。それと同時に大切なことは、この会議において安全を、独立と中立を保障する、関係各国が。このはっきりした保障のないところに、ラオスの悲劇があったと思うのです。したがって、ただ会議を開けばいいのではなくて、会議において大国、特に中共とアメリカを拘束するようなやはり保障を取りつける、独立と中立を尊重する、これが私は必要だ。  それからいま一つは、やはり軍隊の撤退と、それからゲリラの武装解除、あるいは、これもピアソン首相が言っているように、国境を閉鎖する。そういうところにはどうしても、御承知のように、何らかの国連平和維持部隊みたいなものがいることが望ましいのではないか。これはウ・タント事務総長も言っておるのでありますが、これらの停戦、平和保障、兵力の引き離し、安全保障、それに国連平和維持部隊の派遣、これらについての総理の基本的なお考えを伺いたいと思います。
  125. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなか具体的方策というものはむずかしい、かように思いますが、きょうもこれは社会党が招待されたのだと思いますが、ユーゴの方が見えておりますが、ユーゴスラビアでもやはりこの問題にたいへんな関心を持っておられる。私と会いました際に、いろいろな話が出ましたが、同時に、ベトナム問題についてはどういうように考えるのだ、こういうようなお話が出ております。かねてから申し上げたようなわが国の基本的態度を説明いたしておりますが、しかし、私はその際に、これは個人的な意見ではございますが、ちょうど朝鮮半島にもこういう事態があったのだ、そうして、このほうは三十八度線ができて、そうして、それぞれの国がその分を守る、こういうことで、ただいまは平和になっておるのだ。ベトナムにおいても、同じ民族が二つに分かれるということはまことに残念なことだ。しかしながら、それぞれが一応その分野を守る、こういうことになるならば、それは少なくとも現状に対する変化が期待できるのではないか。しかし、とにかく、いずれにいたしましても、こういう事態が、それぞれの分野を守るということによって、そうして停戦することが望ましい、私はかように申したのであります。  ただいまお話しになります国連軍の平和維持部隊はどうか——これはかつて一度議論されたように私は伺っております。そのときは、米ソの間で意見がまとまらなかった、こういうことで、国連軍が出ていくことは当時やめになったように私聞いておりますが、その後、ずいぶん歳月もたっておりますし、もう、また変わった考え方も出てくるのではないか、かようにも思います。しこうして、いずれの国も関心を持つことは非常に望ましいことだ。これは平和に対して関心を持つということである。しかしながら、それぞれの国の政情についていろいろ立ち入ったことをすることが、問題を紛糾させるゆえんではないか、私はかように思いますので、そういう点がいろいろ協商の場において話し合われるということは望ましいのではないか。ただいま米国の兵隊があそこに行っておりますことは、これはベトナム政府から要求され、そうして、それに応じてアメリカが行っているので、ただいまアメリカが一方的に進駐していると、かように考えることは、これは私は事態を曲げて解釈するものだ、かように考えますけれども、いずれにいたしましても、戦火が拡大することは好ましいことではありませんし、また、民族の立場から見れば、これは長い戦火に自分たちの生活が破壊されておる。こういう事態については、心から同情する。そういう立場でものごとを見ていくならば、おそらく協商の場、それに、ただいま曾祢さんが御指摘のような方法もあるだろうと思いますし、あるいは、もっと他の方法が出てくるか、あるいは、いろいろの案が必ず政治的な場において出てくるものと、それを私は期待している、かように申し上げます。
  126. 曾禰益

    曾祢益君 もう一ぺん伺いますが、やはりインドシナの安定には、インドシナ、ことに南北ベトナム両国の中立と独立が保障されることが必要である。ただ停戦と撤退だけでは問題は片づかない。これが第一点。  第二点は、そういう大国の保障のほかに、現実に火消し役的な国連軍といいましても、本格的でなくて、いわゆる中小国ですね、小さい国々から供出するような待機部隊、平和維持部隊、これは警察軍であって戦闘するのではございませんが、協定の履行を監視する、兵力を引き離す、そういうような部隊を出すことがいいのではないか。これは平和憲法の日本の国といえども、私はほんとうならば日本が戦術部隊で戦闘部隊でないものが加わってもいいのではないかという私見は持っておりますが、それは別として、そういうような国連平和維持部隊というようなものをこの際使って、そうして兵力の引き離しと治安の維持に当ったらどうか、この意見についての総理の御見解を伺っているわけです。もう一ぺん伺います。
  127. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまおっしゃることは、私もよくわかるということを申し上げたいのでございます。問題は、やはり民族が一つであるということ、そういうところに、その独立を尊重すると申しましても、そこに問題が一つあるのではないか、かように思いますので、こういう点はベトナム人民としてはやはり問題を残しておる。どこからどこまでがベトナムだ、かようにもなかなか言いにくいのではないか、かように思います。いずれにいたしましても、独立を尊重しないという、そういうことは起こるのでございますから、ただいま言われることは、一つの解決策として、積極的な考え方として、私はたいへんけっこうなことじゃないかと、かように思います。
  128. 曾禰益

    曾祢益君 もう一つ申し上げたいのは、いかなる政治的の保障も、国連警察軍が現地にあっても、根本は、アジアの貧困と民主主義がおくれていること、民族のほんとうの独立の訴え、それに与えるものがないというところに問題があるわけですから、したがって、この恒久策としては、やはり、アジア開発銀行もけっこうでありまするが、わが国が、東南アジアの民主主義がおくれた国、経済レベルの低い国、これがいわゆる共産陣営のほうに傾かぬように、政治的ではなくて、文化的、経済的、技術的に援助していく、特にわが国の国民所得の一%くらいはその方面に向けていくのだ、こういう基本的なかまえがなければアジアの安定はほんとうは期し得ないのではないか、こう考えますので、そういうような経済技術援助に対する政府の心がまえを伺いたいと思います。
  129. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 東南アジア開発について、ただいま御指摘になりますように、貧困からこれを救う、もう一つはやはり病気からこれを救ってやる、こういうことが望ましいのではないか、そうして生活を安定さし向上さす、それにわれわれが協力する、そういう姿でありたいと思います。ただいま御指摘になりましたように、東南アジア開発、あるいは低開発国に対するいわゆる先進国の義務として、ただいま仰せになるような一%くらいはやるべきじゃないか、かような状態のことはすでに日本もその線で努力はしております。しかしながら、一%はなかなか多額になりますし、また適当な方法もなかなか見つからない、ただいまのところは半分程度だ、かように考えておりますが、さらにその質を、またその量もふやしていくように努力すべきだと思いますし、ただいま、昨年派遣いたしました医療団などは、そういう意味で、これはベトナムに限られておるようでありますが、たいへん歓迎された、かようにも考えますので、われわれは平和の面において、そうして生活の安定、また向上へ寄与するように努力したいものだと、かように考えます。
  130. 曾禰益

    曾祢益君 次に私は、中国問題について伺いたいと思います。  佐藤内閣は、成立の初めには、中国問題の解決が使命であるというような、非常に積極的な姿勢を示されたのであります。しかし、現実のその後の歩みを見ておりますと、その積極性は、単なるポーズと言っては少し失礼過ぎるかもしれませんが、これは不用意な気負いであったり、場当たりの思いつきであったりして、一貫性がない。結果的には、歴代保守党内閣の敷いた台湾、アメリカ追随の路線に対してときどき不協和音を発してみる程度にとどまったのではないか——いなむしろ、しばしば党内、閣内の不統一をさらけ出し、これがために新内閣の方針、わが国の外交が動揺し、混乱しているような印象を与え、国民の期待を裏切り、外国に疑惑を招き、あまつさえ外国の干渉をいざなったのではないかという気がするのであります。実例をあげるならば、総理みずから一つの中国と言って、最近は一つの中国、二つの政権と言い直しておられます。また、国連代表権問題について、重要事項指定方式に関連して、首相が外相の発言を訂正されました。中共輸出について、吉田書簡のいわゆる拘束力をめぐって、官房長官の発言を総理みずから訂正するなど、この最たるものだと思います。こういったような不用意、不統一に対して、一体総理はどうお考えなのか、われわれはもっと外交というものはしっかりした心がまえ、——バックボーンがなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  131. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お説のごとく、中国問題、これは今日の世界の問題、また明日の問題でもある、かように私は考えております。ことにこの中国に隣している日本として、日本のあり方、しかも平和に徹している日本として、この問題と真剣に取り組まなければならないと、いまなお考えております。しかしながら、事柄は、ただいま仰せのごとく、たいへん深い問題もございまするので、一朝一夕にこの問題はなかなか解決されないのであります。一昨日、迫水君の質問に、私もお答えをいたしまして、あらゆる事態が解決して、そうして中国が国連に加入ができると、こういう事態はたいへん望ましいことだと、かような発言もいたしましたが、私自身考えてみますのに、ただいままでの中国問題、これは国際世論がまだきまっておりません、なかなかきまろうとしない、こういうところに問題があるのでありまして、私どもが、日本は中国の隣だと、かような意味ですぐ結論を出せと、かように仰せられましても、これはなかなかできることではない。私は、ジョンソン大統領と会いました際に、すでにわが国の態度を宣明いたしたわけであります。国民政府との関係、同時に中国に対するただいまの状況のもとにおけるわが国の態度、これは、ただ単に日米間の共同コミュニケというだけでなしに、世界にわが国の態度を宣明したものだ、かように御理解をいただきたいのであります。私は、そういう意味では、日本の態度は別に誤解は受けておらない、日本の態度というものははっきりしている、かようにみずからは考えております。
  132. 曾禰益

    曾祢益君 私は、中国問題は非常に重大な問題であるから場当たりや思いつきはやめてほしい、決してあなたが言っておられるような簡単なものでないということを承知すればこそ申し上げたのであります。外相は、世界情勢の推移を見きわめつつ、アジアに平和と安定をもたらし、ひいては世界平和の樹立に貢献する方向に沿って中国問題に対処してまいる——まことにりっぱな文章でありますが、一体これは大勢順応主義以外の何ものであるのかどうか。一体、こういう現段階では、総理は、いたずらに結論を急ぐことなく、自主的な観点から慎重に対処する——これはスタートの積極性とずいぶん違ってきたわけですが、慎重であることに必要でありまして、私もいまそれは申し上げましたが、一体ただこういうふうな間違っている大勢順応主義だ、慎重だだけでは、中国の核実験、ベトナムに端を発する戦争拡大の危機、国連における中国代表権問題などの事態の進展推移に伴うわが国の中国対策としてはあまりにも貧弱ではないか、こう考えるのでありまするが、まず一番問題である政経分離の原則というものについて伺います。  総理はみずから、衆議院における西尾わが党委員長質問に対して、政経分離の基本方針と言うけれども、ややゆとりがある。はなはだしきに至ってはやや乱れつつある。総理みずから立てた基本方針がやや乱れつつある。基本方針である以上は、乱れつつあったのでは困るのではないでしょうか。また、当院における戸叶委員に対する答弁についても、中共に対する行動も現在は政経分離のたてまえをとっているが、国際常識の変化につれて日本の方向を間違えないようにしていきたい——一体政経分離とは何なのか、中共は承認しないけれども商売をやるということなのですか、もっとはっきりしていただきたいのです。
  133. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いわゆる政経分離をめぐりまして、それぞれの立場でそれぞれの考え方をしていらっしゃるようでございます。ただいま言えることは、私ども政府間の交渉は持たない、しかしながら貿易あるいは文化の交流等についてはこれは続けていくのだと、かような考え方を申すのでございます。
  134. 曾禰益

    曾祢益君 通産大臣来られましたが、若干おくれるのはけっこうですけれども、もうそろそろ……、二時半までに来られますか。さっき二十分と言ったじゃないの。
  135. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 向こうは出たそうです。
  136. 曾禰益

    曾祢益君 じゃこのまま待っています。
  137. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。いまの曾祢さんの質問に直接は関連しないのですが、衆議院のどなたかの御答弁総理は、日中関係で郵便と気象——気象でもないですな、郵便と何といったか協定は、政府間協定につながるからこれはむずかしいということを御答弁なさっているのです。ところが、これはもう数年前、池田さんが初めて組閣されたときに、この当委員会で私質問して、それは政府間協定につながらないから郵便・気象協定はいつでも結びましょう、こう答弁されたけれども、中国側の受け入れるところとならなくて、これは中断したことがあります。ですから、あれは総理の誤解ではないか。政府間協定にはつながらぬと思いますが、いかがですか。
  138. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 航空協定はつながる。ただいま郵便協定あるいは気象というようなことについて、そういう点が私の発言であれば、それは訂正さしていただきます。
  139. 曾禰益

    曾祢益君 何を訂正するのですか。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いや、これはつながらないということ。
  141. 曾禰益

    曾祢益君 関係ない。
  142. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 暫時休憩いたします。    午後二時三十五分休憩      —————・—————    午後二時五十二分開会
  143. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。
  144. 高山恒雄

    高山恒雄君 きょうの委員会において、私は各大臣がおられることについては、当然のことだろうと考えますが、しかし、通産大臣が二十分間おくれるということは、私は聞いておりました。ところが、二十分が四十分になり一時間になっても見えないという現実がここにあったわけです。こういうことで、この予算委員会を進行するということについては、これは非常に委員会としての権威を失するものだと私は考えるのです。当然、関係大臣はこれに対しての陳謝をされると同時に、今後そういう事態が起こる場合には、もっと時間を的確に把握して、そうして議事の運営を進める。こういうことにならなければ、予算委員会としての権威を失するものと私は信ずるのであります。そういう取り計らいを委員長としてもやっていただくということを要望いたします。
  145. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 私が予定した時間どおりにならずにおくれまして委員会が中断したことは、委員会の皆さんにたいへん申しわけないと思います。また、政府の関係において私が非常に責任感がないようでまことに申しわけないのでありますが、これはうそも隠しもなく、実際歯医者へ行っておって実は見てもらったところが、私が予定した時間とは違い、レントゲンをとるとかどうとかいうような事態が起きて、その間に私がそれだけのことを連絡をする不注意のためにこういうことが起きたことを、まことに申しわけないと思う次第であります。
  146. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 委員長もはなはだ遺憾に思います。今後こういうことのないように御注意のほどを願います。曾祢益君。
  147. 曾禰益

    曾祢益君 私はいわゆる政経分離の原則というものは、中共とは商売はする、しかし承認はできない、大体そういうふうに考えてきたわけであります。もしそうだとすると、昨年、倉敷紡のビニロン・プラントの輸出延べ払いにあたっての輸銀に関与したということについて、台湾国民政府からの抗議を受け入れたということは、私は筋が通らないと思うのです。むろん、これは前内閣のことでありまするが、さて、そういう問題がそこにペンディングであるのに、佐藤内閣はこの種の問題について党内、閣内にまたがった明確な方針をきめないままにニチボー・ビニロン・プラントの問題に対処した。したがって、そこに中共から足元が定まっていないということを見すかされて、一喝を食らったのだろうと思うのです。確かに、ニチボーが日本国内でいかなる金融を受けるかは、形式的だけにいうならば、これはあくまで日本国内の問題です。中共が口をはさむのは、理屈から言えば筋が立たない。ところが、このどうかつにあわてた官房長官は、吉田書簡に拘束されずと、さっそく言明してしまった。これは私は醜態だと思う。らさに醜態なことは、その翌日に首相がこれを取り消して、間接的といいますか、あるいは道義的といいますかは知りませんが、吉田書簡に拘束されるという、さらに言い直しをしておるのであります。私はこれは恥の上塗りというものだと思います。一体、日本政府は、この首相のことばにある二つの中国政府にほんろうされておるのではないか、どこに自主性とバック・ボーンがあるかということを問いたいのであります。問題は、吉田書簡の効力の問題だとは思いません。いかに国の長老の吉田さんであっても、私人吉田さんの書簡が、政府なり国を拘束する理由はないと思います。問題は、前の内閣がどんな約束を国府にしたのか、またしたとすれば、その効力はどうなるか、いつまで期限がついておるのか、そこに問題があると思います。したがって、いかなる約束を前の政府がしたのか、あるいはいまの政府がしておるのか、まずその点を伺いたい、政府約束総理大臣からお答えを願いたい。
  148. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま吉田書簡の問題が出ましたが、そのお話にもありますように、本席において吉田書簡は論ずべき筋のものではないように私は思います。また具体的な両国政府間に約束が、どうするというような約束があったとは、私は思いません。
  149. 曾禰益

    曾祢益君 そういたしますると、前の政府時代から今日まで、いわゆる中共貿易に対する輸銀の融資の問題について、これをしないとか、そういったような政府間の約束はない。だがしかし、いろいろな関係から、まあ道義的に拘束されると言っておられるようですが、しからば政府約束はないけれども政府はどうする基本的な態度か、私はこまかいテクニックを伺おうとは思いません。私は輸銀を使ってやっても、中共だけに輸銀を使わないということは、中共の抗議は別として、日本の政策として適当でない。当然にそういう制約はなかるべきものだと思いまするが、さらに輸銀のいままでの形式がいいか、多少形を変えるかということは、これは私は政治、外交のテクニックだと思いまするが、詳しいどうやらこうやら言いませんが、基本的にはほかの国に対する輸出——むろん戦略物資は別です。戦略物資でないものに関しては、ほかの国に対する輸出信用供与と同じ程度のものは、中共であろうが、どこであろうがやっていいんだ、この基本的態度でいくべきではないかと思う。その政府の基本的方針を伺いたい。
  150. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来申し上げておりますように、政経分離、これは政府がタッチしない、そういう関係が中国と交渉を持つ、接触をするこれが本来のたてまえであります。そういう意味から国民政府に対しましても、日本政府は政経分離で中国との貿易を進めるだろう、またしからばどういうような期待が持てるか、こういうようなことは、国民政府にもあるだろうと思います。しかし、それは国民政府のことでありますし、今回私どもがその点をさらに明確にする、かような立場に立ちまして、本来いかなる決済機関を使うかということは、わが国のことでありまして、これは第三国である国民政府においても、また中共政府においてもとやかく言う筋のものではない、これを自主的にきめていく、こういう態度を、誤解があるようでございますから、今回はっきりさした、かような考え方でございます。  私はこの席におきましてもしばしば申し上げておりますように、中共との貿易にしても、これは拡大方向に進めていきたい、ただいままでの決済方法その他が、特殊な決済機関を使わない限りその拡大ができない、かような状態であるかどうか、そこは関係の方々で十分考えてもらいたい。ただいま問題になっておりますニチボーのビニロン・プラントにいたしましても、これが私どもは十分他の決済方法によって、決済機関によって完全に履行できる、かように考えておるのであります。貿易を阻害するという、そういう立場じゃないんだから、どうかその点も中共政府においても御理解をいただきたいし、国民政府においてもこれもまた十分に国内問題としてのこの処置をとっていく、そういう立場においては十分の理解をいただきたい、かような態度をとっておるのでございます。
  151. 曾禰益

    曾祢益君 通産大臣に伺います。基本的にはいま総理から御答弁があったんですが、要約すると、いずれの政府であろうと、国民政府、中共政府、いずれであろうと、日本のつける金融の内容について口を出すべきではない、日本としてはいわゆる政治的関与ではなくて、輸銀を含めて妥当な、どこの国にもやるような、輸銀を含めてのこの金融ならばやっていいという大体方向だと思うのです。そういう方向で輸出に関するやはり最高の責任者である通産大臣の所見を伺いたい。こまかいテクニックは要りません。
  152. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 私としては、日本の国是ともいうべき貿易の拡大には、鋭意努力をしてまいっておるのでございます。幸い日中間の貿易も、予想外に伸びておるおりからでございまして、ただいま問題になっておるニチボーのプラントにしても、日立の船舶輸出にいたしましても、前向きの姿勢でさらに誠心誠意努力をしてまいりまして、輸出の拡大につとめたいと思います。
  153. 曾禰益

    曾祢益君 私は以上のような意味から言っても、かりに政経分離という方針を認めるにしても、何かにつけてすぐに政府が関与する、政治的なことをするとすぐにいけない、こういうふうに考えることは間違っている。そういう批判に対しては、これをはね返していかなきゃならないのではないか、これは単にわれわれ日本側の理屈だけでなくて、大体日華平和条約というものをわれわれは尊重していかなければならない。日華平和条約を破棄して中共と国交調整をやれという意見がありますが、私はそれに賛成ができません。しかし、日華平和条約を尊重するたてまえに立って、なおかつ日華平和条約については、御承知のように付属交換公文第一号によってこの条約の適用地域というものは、現に国民政府が支配する地域に限るという、いわゆる限定承認という、これは基本的態度であります。その点から言うならば、純粋な理論を推し進めるならば、大陸の政府と政治的条約をつくっても悪くないという理屈だって出ると思います。私はそれが必ずしも直ちにはいいとは言いません。しかしあまりにも、ちょっと中共と何か政治的なことをやると、すぐ政経分離だという政府のいままでの自縄自縛に縛られてみたり、あるいは国民政府からも文句を聞くというならば、むしろ条約論から言えば、中共と政治的なかわりを持つこと自身が、直ちに条約に禁止されたものじゃないのだ。逆に言うならば、日本政府の方針は、国府との条約は尊重する、友好を続けていく。しかし、中共に対しても、必要な接触は政治的なものでもやるのだということを逆に明らかにすべきではないか、こう考えるのですが、総理のお考えを伺いたい。
  154. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国際間で大事なことは、ただいま言われた条約、この条約を守るということ、そのことは基本的にはそのとおりだと思います。同時に、私どもは、やはり大事なことは、国際的な信頼を裏切る、これはよくないことだ。やはり相互信頼、これはやっぱりどこまでも続けていかなければならない、かように思いします。そういう意味で、国民政府との関係におけるいままでの友好な関係に立ってものごとをすべて考えていかなければならない、かように私は思います。ただいまも、直ちに中国大陸との交渉を持つというわけじゃないがと、こう曾祢さんも言っておられるが、おそらくわがほうの基本的方針、それがただいま申し上げるような国際的信頼、そのことを大事に考えていく。そして同時に中国大陸、いわゆる中共政府との考え方、これは私が何度も申し上げますように、世界に声明した日本の態度、いわゆる政経分離でこれとは接触を持つのだ。そうして、しかも、その関係におきましては、これはもう自主的に進めていくことでありまして、どこからもとやかく言われる筋のものではない、かように私は考えております。しかしいずれにいたしましても、中国の問題は、ただいまの北京政府国民政府との関係がなかなか複雑でございます。微妙でございます。そういう関係に私どもが巻き込まれる、ともすると巻き込まれやすい。そうして一面において信頼を裏切ったり、あるいは他方において当然なすべき事柄もしなかったり、かようなことが起こるのではないか。かようなことを実は心配をいたしますので、私は、この際はわが国の基本的態度、どこまでも自由を守り平和を愛するという、その基本的態度を貫いて、そうしてこの平和を守っていく。こういう立場に立ちますと、いずれの国とも仲よくしていくのでありますから、そういう意味で親善関係、仲よくしていく、それをそこなわないようなあらゆる接触は、やはりいずれの国とやってもこれは当然ではないだろうか。また、他国からその点についての誤解は受けなくても済むのじゃないか、かような私の考え方でございます。先ほど来お話のございました、一々それぞれまた疑惑を受け、また誤解を招きやすい関係でございますが、それらのことは多くはこの中国の内部の問題だと思います。したがって、私は内部の問題をまた他方でとやかく言うことは差し控えなければならない。ただ、私どもはどこまでも国民政府との間に条約的な義務があり、またそれを尊重していくし、同時にまた、その条約のない関係においても、ただいまの政経分離の政策で進めていく、これがわが国の態度であり、あとは中国内部の問題、それについてはとやかく私どもは言わないというのが、現状の私どもの態度であります。
  155. 曾禰益

    曾祢益君 総理の言われるところは、国民政府との間には信義の関係を保っていく、友好関係を保っていく、条約は尊重する。しかし、日本の、各国と平和関係を設立し、維持発展していくという意味からいえば、中共とのことも考えて必要なことはやるというふうに考えたいのであります。大体承認問題もあまり——承認といったらどんぴしゃり白、黒というようなものじゃございません。したがって、何かするとすぐ中共の承認になるからいかぬというような、これは逃げ口上であって政治ではない。政策ではない。先ほど同僚羽生委員の適当な御質問がございましたが、たとえば義務上の郵便協定あるいは業務上の気象協定のごときは、両業務当局間でやっても、これは政府の承認にならないということは、国際法のABCで、その点を総理もそのとおりだと言われたと思う。事航空協定となるとちょっと厄介のようでございます。しかし、航空乗り入れの事実上の話は私はやってもいいのじゃないかと思います。貿易協定にしても、必ず民間協定でなければならないということは、まことに窮屈きわまる考えで、通商航海条約ならいざ知らず、両国間の貿易量をこれこれにしよう、内容はこうしようというようなことは、政府間で協定しても、それは承認にならないというのが、私は正しい国際法の解釈ではないか、少なくともそういう解釈は、五十歩百歩の議論ができる、こう考えているわけです。そういう意味で、これらの政府間協定あるいは業務当局間の協定ぐらいはやっていくんだ、こういう前向きの姿勢をとっていただきたいと思うのですが、あらためて御所見を総理から伺います。
  156. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外交の先輩であり、その方面の権威である曾祢さんのおっしゃるとおりで、業務担当者の話し合い、それはちっとも差しつかえない。ただいまもいろいろ業務担当者間でくふうしておる問題もあるようです。まだ正式に話し合いが最終的につかないものですから、この席では申し上げることを差し控えましたが、ただいまいろいろ業務当局者間では話をしているものがある。航空協定につきましては、ただいまお話がありましたが、いましばらく模様を見たいものでございます。これにいたしましても、臨時的なものならどうかというような話が出ておりますが、これは実際具体的な問題として、そのつどきめるべきもののように思いますので、まだ、ただ抽象的に前提論で議論するわけにはいかない、かように申しておるわけであります。また、ただいままで実際に貿易を担当しておるLT事務所、これだって全然関係しない、いわゆる政府間協定による通商協定ではないにしろ、LT事務所は、私どももそれを承認しておりますし、また両国間におきまして、当方からはしばしば政治家がお出かけになる、これらの方々が全然商売の話だけなさるのか、かように考えますと、そうでもない。だから、政治家は政府と、かようには申しませんけれども政府の関係ではなしに、それぞれの方もお出かけになっていらっしゃる。こういうような積み重ねがだんだん進んでまいれば、いろいろ誤解もなく、また両者の親善関係もそのうちに樹立されるのじゃないか。一番大事なことは、何といいましても、国際常識、これが、この問題を取り上げて、そうして国際常識上かくあるべしと、こういうことになり、そうして北京政府においても、国民政府においても、そういう多数の国際間の意見に従う、こういうような気がまえになってくると、この関係はよほど変わってくるのではないだろうか。私どもは、いま直接に、あまりにも近接であり、あまりにも身近の問題でありますだけに、そういう点についての発言を遠慮しておりますが、ただいま申し上げ得ることは、ただいま申し上げるように、自然に国際間の考え方も一致してくるんではないだろうか。また、そういうときを私どもも待っておるといいますか、また、積極的にそういうものができることを望んでおる。しばしば国際連合において、この両国間の問題が議せられる、中国問題が議せられる、こういうことが必ずやそのうちに結論を出すだろう、そのときを私どもが待っておるというような状況でございます。
  157. 曾禰益

    曾祢益君 国連総会が不幸にして九月まで休会のようでありますし、しかし、だからといって、この国連における中国の代表権問題についての検討なり施策を怠ってはならないと思います。積極的な理由としては、中共の国連の議席獲得は、核禁協定あるいは軍縮問題、東南アジア問題の平和的処理、あるいは国連の権威維持からいっても、私はプラスだと思う。また、二つの中国政府の問題は、わが国の対中国のバイラテラルの関係だけでは解決非常に困難である。国際世論の場で多数できめるというほうがスムーズな場合もあり得る。こういうような積極的な理由から、われわれが国連の場で中国問題の発展的解決に努力するというのは非常に理由がある。また消極的には、次の総会とも相なれば、もはや重要事項指定方式一点ばりのたな上げ論ではいかなくなる。少なくとも心細くなる。そうして引き延ばしの結果は、ただ一方的に台湾が追い出されるというみじめなことになるんじゃないか。したがって、総理がこの委員会で言ったように、国連が変わって、中共が国連に加盟する日が一日も早からんことを期待する、——私はその期待はいいと思うのですが、期待だけではいかない。何らかのわが国の施策がなければいかぬ。それは周到な準備と多角的な交渉を積み重ねていくことでなければならない。少なくとも西欧陣営の大部分、特にイギリス、フランス、カナダまたスカンジナビア諸国、まだありまするけれども、相当数の国と、新興国の中に相当数には、一つの中国、一つの台湾、こういう議論がある。われわれはこういう議論を結集し、アメリカを説得して、それで国連の多数を占めるという方向に日本外交が向いていかなきゃいけないのではないか。この折衝には相当時間をかけて、いま問題が焦眉の急になっていないときこそ、その準備期間ではないかと思う。非常にデリケートなことであるが、基本的には、総理が言う一日も早からんことを期待するだけでなくて、日本として国連の場で中国問題を解決するんだという気がまえでいかれるかどうか、その点を伺いたい。
  158. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中国問題を解決することは、冒頭に申しますように、日本としても望むところであります。しかし、ただいま仰せになるような結論、あるいは国連の加盟国の一部がさように申しておりますが、この説には、北京政府国民政府も、いずれもが反対であります。私どもはやはり、中国国内における両政府が反対しておるような方向では、なかなか解決はしにくいんじゃないのか、かように思いまして、私どもはこれに対する慎重なる態度をとっております。この点御了承いただきたいと思います。
  159. 曾禰益

    曾祢益君 慎重なる態度と周到なる外交的な、何といいますか、措置も必要でありまするが、基本的には、二つの政府の意見が完全に食い違っているのでありまして、それを尊重したところには何らの解決のめどはないという点を考えて、われわれは勇断をもって前向きの姿で、この中共を国連に迎え入れ、ただ台湾をどうするかということを十分に深く考慮して進んでいく必要があると思いますが、これは意見でありますので、次に、日韓問題に焦点を移して伺いたいと思います。  私どもは、日韓問題の基本的考えとしては、懸案を一括解決する、そうしてその結果として、韓国、すなわち国連が唯一の合法政府と認めて、世界多くの国がすでにこれを承認している、また、日本ともより深い関係のある韓国との間に、日本が独立を承認し、朝鮮の代表政府として国交を持つことは、積極的に前向きで賛成でございます、基本的に。ただ、しかし、それに当たる、交渉に当たる態度というものが非常に私は重要だ。それは一言にして言うならば、安易な妥協と拙速は避けなきゃいかぬ。安易な妥協、これは言うまでもございません。足して二で割る、将来どうなるかわからぬ、拙速、これは非常に危険であります。特に相手方の政情が非常に複雑であるので、かりにわれわれが誠意を持って相当譲ったと思っても、向こうの政府が非常に強い世論の前にゆるぐような事態が間々ありがちであります。したがって、拙速は禁物である。安易な妥結もいけない。筋を通し、懸案を一括解決し、慎重に情勢を見きわめて、慎重に進める、こういう態度でなければならぬと思うのですが、まず、基本的な心がまえについて、総理の御所信を伺います。
  160. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お説のとおりであると思います。私どもは、日韓間の外交の正常化をはかろう、そうして将来長きにわたる親善友好の基礎をつくろう、これが今回の日韓交渉妥結の場合の基本的態度であります。したがいまして、ただいま仰せのごとく、急ぐままにまた妥協に堕するとか、こういうことのないように、これは正しい考え方のもとに初めて両国の親善友好関係ができ上がる、この基本線はどこまでも守っていきたいと思います。ただ、私が一言申し上げて、つけ加えさせていただきたいのは、ただいま幸いにしてこの日韓間の正常化をはかろう、こういう機運が両国に強く起こっております。こういう際こそ、やはりその時期、そのチャンスがありますので、これはやはり外交のチャンスとしていいときだと、かように思います。しかし、それにいたしましても、急ぐばかりが能ではございません。ただいま仰せのごとき趣旨において、両国の真の親善関係を打ち立てる、かような立場でただいま交渉を進めております。
  161. 曾禰益

    曾祢益君 ことばの上では合っているようですが、現実には、やはり当局者というものは急ぐのではないか。先般の外相の訪韓中に基本条約をイニシアルされた。私はやはりイニシアルというものの法律的な意味もわかりますし、これは協定そのものではない、だから一括解決に反しない、いろいろ理屈はありますが、あまりにムードづくりに少し力を入れ過ぎる。両国当局間には確かに一つの上げ潮ムードがあるかもしれませんが、しかし、ああいう複雑な国ですから、いわば外務大臣は、ほうはいたる野党の屈辱外交の反対のこの波の中に、むりやりに基本条約のイニシアルをしてきたというきらいすらあります。これは拙速でないと私は言えないと思います。私はその意味で、こういうような態度はよろしくない。ことに漁業問題等の難件は、いつでもあと回し、安易なほうからまずまず片づけていく。協定のことですから、最後には同時発効すればいいという理屈で、かつては有償無償三億、二億ドルのいわゆる大平・金会談で請求権問題をまず向こうでやってしまう。いいものをどんどんやってしまう、最後に難件が残る、こういうやり方は、私は安易な妥協であって、拙速ではないか、こう思うのですが、外務大臣の御所見を伺います。
  162. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私は、先般の訪韓は主として親善に重きを置いて参ったのであります。ただ、全面会談がすでに始まっておるのでありますから、向こうの関心のある問題については、誠意をもってこれに応ずるという姿勢はとったのであります。さような成り行きで、しかも、基本条約だけはイニシアルの交換ができた、こういうのでございまして、特にムードづくりに急ぎ過ぎたというような考え方は持っておりません。
  163. 曾禰益

    曾祢益君 それでは伺いますが、いわゆるこの基本条約の調印ができて、韓国政府の管轄権の問題については、大体政府では、韓国政府が三十八度線または休線ライン以南を管轄する政府であって、北鮮政権が存在することを——北鮮政府が別に存在するということを、やはり何らかの意味で留保しておきたかった。韓国政府が全朝鮮を有効に支配する政府でないという趣旨のことを何らかの形で残しておきたかった、こういうふうに考えるのですが、はたしてその目的が、基本条約の前文と第三条の中において、一九四八年の第三回国連総会決議百九十五号の(III)を引用しただけで、その目的を達成しているとお考えであるかどうか、これも外務大臣から伺います。
  164. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あの百九十五号(III)の決議を引用したことによりまして、私は十分だと考えております。
  165. 曾禰益

    曾祢益君 申すまでもないことですが、日本の外務大臣がそうお考えになっていても、韓国側はそうでなく考えているのじゃないかと疑わざるを得ないわけです。韓国側はおそらく、この決議を引用したけれども、それは韓国側だけが唯一の合法政府だという点だけを認めて、いわゆる朝鮮人民の大多数が居住している朝鮮の部分に云々という、地域的な境界という点については、まあほおかぶりしてしまう、管轄権に関係なしと、こういう解釈をとっているのではないか。両者の解釈が全然食い違いのまま、妥協的イニシアルをしてきた、こういうきらいはないのですか。あなたは先ほど、急いだことはないと言われたけれども、第一、これは先ほども私が申したように、ほうはいたる野党の屈辱外交反対のデモ、あの中にあなたはイニシアルしてこられた。ですから、こちら側のこの気持ちだけでそれでうまくいくというのは、これは甘いのじゃないですか。したがって、あなたはこれで北鮮の関係は十分に考慮しておると言われても、韓国側がそういう主張をやらないというめどと保障は一体どこにあるのですか。
  166. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この国連の決議は、もちろん十分お読みになっておられるものと考えますから申し上げるまでもないのでありますが、朝鮮人民の大多数が居住しておる部分、それを支配する政府と、こういうことになっておりまして、その部分とは、申すまでもなく三十八度線あるいは休戦ライン、それ以南であるということは、事実の上においてはっきりしておる。そういうことは向こうのほうも、何らこまかい論及はいたしませんけれども、十分にそのこと自体が明瞭であると私は考えます。
  167. 曾禰益

    曾祢益君 もし限定承認というならば、先ほども申し述べました国民政府との平和条約の前例もあるわけです。これは御承知のように、同政府が現に支配しておる、あるいは将来支配することあるべき地域に限って条約は有効である、——まあていさいは別としても、韓国政府と同じくらい、あるいはそれ以上にメンツを重んずる国との間にも、こういう明確な——形は付属交換公文の形になっているけれども、はっきり限定承認する例もある。なぜ今度はそのくらいのことができなかったか、国連の決議というその趣旨はわかります。しかし、やはり韓国では唯一の合法政権ということを取りつけたのだという逃げ口上をするのにきまっている。支配地域というものを限定されていないという、そういう理屈も、へ理屈であっても一応できる。なぜ限定承認の中国の例、国民政府の例が対照できなかったのか、この御説明を願いたい。
  168. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 基本条約は、条約の適用範囲につきまして特に規定を設ける必要がないために、そのための必要規定を設けなかったというだけのことでございますから、日華平和条約の規定ぶりと比較して、より譲歩しているというふうには、われわれは考えておらないのであります。
  169. 曾禰益

    曾祢益君 どうも主観が入るばかりで、条約は客観性がなければ困りますよ、相手をどうしばるかということなんですから。そこで今度は逆に、この条約及び協定が、一体北鮮側に対する効力というものはどうお考えになるのか。これを請求権と在日朝鮮人と二つに分けて御説明願いたいと思います。
  170. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 北方に事実上政権があるということは考慮しながら韓国政府との接触を持っておるような状況でございますから、請求権の問題等につきましても、韓国の管轄権のない地域に対しては全く白紙の状態であるのであります。  それから在日朝鮮人の法的地位の問題はただいま折衝の最中でございまして、あまり立ち入った御説明を申し上げることのできないことをまことに遺憾といたしますが、在日鮮人の中には北鮮の事実上の政権を支持しておる者もあります。そういうようなことを十分に考慮して、ただいま法的地位の問題についての折衝を行なっておる次第でございます。
  171. 曾禰益

    曾祢益君 在日朝鮮人の問題は、あとで法的地位の問題でさらに御質問いたします。  そこで第二条の旧条約についての取り扱いでありまするが、もはや無効というのは一体いつから無効になったのか、またそれが遡及するのであるかしないのか、これをお示し願いたい。
  172. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 併合条約については、韓国政府が独立を宣言した一九四八年の八月十五日、つまり併合条約と相いれない矛盾する事実が発生したときに併合条約は失効する。それから併合以前の条約につきましては、その条約それ自体の中に失効条件というものが書いてある場合には、その条件の事実が発生した場合、それからしからざる場合でも併合条約の効力が発生と同時に失効する、かように考えております。  なお、日本が韓国政府を承認した時期と、それから独立宣言をした時期との期間につきましては、これは法律上の解釈の問題でございますから、条約局長から申し上げます。
  173. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 一般に国家の承認の場合には、その国が独立した期日と、ほかの国がこれを承認した期日との間に開きができることは申し上げるまでもないことでございます。たまたま大韓民国と日本の場合には、その期間が四年間近くの長きにわたったというだけでございまして、理論的にはほかの場合と同様に考えております。つまり日本が大韓民国の独立を法的に承認したのは一九五二年四月二十八日、平和条約の効力の発生のときであるけれども、これは一九四八年八月十五日に大韓民国が独立したという歴史的事実をその四年間について否認するものではない。それは一般の場合と同じように解さるべきものである、かように考えております。
  174. 曾禰益

    曾祢益君 そうすると、少なくとも一九四八年ですか、その前にまで遡及するというようなことは、これはもうむろん日本としてはないわけですが、韓国側もそれは認めているんですか。
  175. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 併合条約の規定の中身になりますが、これは併合するということ、その根本の事柄と、それからそのほかに、併合後に韓国の皇室、皇族に対する処遇の問題とか、あるいは韓国人の取り扱い、福祉をはかる、あるいは優秀なる者を帝国官吏に登用する、そういうような併合後の取り扱いに関する規定、この二つがあるわけでございます。その併合それ自体に関する規定は、いわば併合が行なわれることによって目的を達して消滅したと見ても差しつかえないわけでございます。その点は学説上も争いのあるところでございます。そのほかの韓国人、あるいは韓国皇室、皇族に対する取り扱い、そういうものは、実は国際約束の相手方は消滅してしまっておるわけでございますけれども、一応約束した以上は、それに基づく日本の義務というものは、それが日本国として行なえる限りは存続しておったと、かように解するのが一番まともな取り方であろう。これはみんな日本側の義務になることばかりでございまして、その前に遡ってこれが失効したと認めないと、韓国側でどうのこうのというような性質のものではないわけでございます。
  176. 曾禰益

    曾祢益君 あまりこまかい法律的なことを聞いているんじゃなくて、大きく政治的にいって、韓国側にしてみれば、初めからこんな併合条約は無効だという主張だろうと思うのです。政治的にはわかるけれども、すでに何十年間の法律の事態というのがあったのに、それをいまからひっくり返したような印象を与え、その結果、たとえば文化財の返還とか、そういう問題にまで、請求権その他にもいろいろな問題を起こす可能性があることは否定視できない。ですから、そういう無限な遡及を許さない、いいところで韓国側に遡及の問題を抑えたというなら、それだったらいいだろう。そこら辺のところを、大まかな点を聞いておるわけです。
  177. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) これまでの韓国側との交渉で問題になりました諸懸案のうちで、併合条約の失効の時期の取り方いかんによって影響を受けるような問題はございません。
  178. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約局長の申し上げたとおりであります
  179. 曾禰益

    曾祢益君 次に、漁業協定について若干の問題を伺いたいと思います。  最初に、今度の協定の案文はまだできてないのですけれども、漁業専管区域十二海里と、こうあっさりやっているようですけれども、私は非常に問題があるのではないか。日本の従来の主張は領海三海里でありまするけれども、少なくとも一九五八年——六〇年の国連国際海洋法会議などにおいての日本の態度から見れば、領海六海里プラス専管区域六海里、こういうふうな方針があると思う。またそうでないと、非常に問題を起こすのではないか。領海問題と漁業専管区域の問題との関連について、これは農林大臣と外務大臣と双方から政府の態度を、御方針を伺いたいと思います。
  180. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今回の漁業会談におきましては、領海問題に触れない、専管水域の問題として取り扱っております。
  181. 曾禰益

    曾祢益君 触れないといっても、ただ低潮線から十二海里までを専管区域とするともし書いてあるとすれば、領海はどこかにふっ飛んでしまうという解釈もできるわけでしょう。その点は十分に考慮した案文をお考えかと思いますが、もう一ぺん念のために伺います。大臣、そのくらいのことわからないのか。
  182. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ案文をつくる段階になっておりませんので、いろいろ考究をしております。
  183. 曾禰益

    曾祢益君 日本の領海に対する主張は貫いていただきたい、要望を強くいたしておきます。  次に、基線の問題ですが、どうも新聞等に伝わるところによると、基線というものは大体低潮線で引くのが当然であるのに、もう直線基線を乱用に乱用を続けている。朝鮮は島が多いですから、どんどんどんどん先にいって、いつの間にか済州島は完全にこの基線の中に入っている。これでは赤城試案なるものの東と西だけをどうやってみても、現実には非常に広大な地域を直線基線で韓国のいわゆる専管区域に認めちゃっているのではないか、いや、領海といいますか、これは非常に問題だと思うのです。基線の引き方についての基本的な考え方を、これはひとつ重大な問題ですから、総理の基本方針を伺いたい。
  184. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま交渉中の一番大事な点でございますが、したがいまして、これは全部申し上げるわけにはまいりませんが、ただいま済州島云々というように問題の点を指摘されて議論をしておられますから、折衝しております農林大臣からお聞き取りをいただきたいと思います。
  185. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私から外交の権威者に申し上げることもどうかと思いますが、専管水域にわたる基線につきましては、いまお話しのように、原則として沿岸低潮線を採用する、こういうことに話をしております。ただ韓国の西海岸及び南海岸におきましては、海岸線の屈曲が激しいので、また海岸に一連の島嶼があるという沿革にかんがみまして、例外として一九五八年の領海及び接続水域に関する条約の趣旨及び国際先例に合致すると認められる合理的な範囲で直線基線の採用を認めるのもやむを得ない、こういうことで全体的の基線の引き方について相談をしておる最中であります。  ところで済州島につきましては、これは直線基線を引くべきではない、低潮線からはかっていくべきだと、こういう主張で進んでおるわけでございます。いまお話しの赤城試案というのは、その線に沿うて、南海岸は直線基線、済州島は低潮線、こういうことで合致するところがあります。そこに入り込んだところについてどういう扱いをするかというようなことの話し合いをしておる次第でございます。考え方、方針につきましては、いま御指示のような直線基線はやむを得ない場合には低潮線をもってやるべきだと、こういうふうな考え方で交渉に臨んでおる次第でございます。
  186. 曾禰益

    曾祢益君 共同規制区域というものは、ほんとうに日韓双方が共通の制限に服する区域でなければならぬと思う。共同規制区域というけれども、日本だけがしばられるということが断じてあってはならない。いま一つは、赤城試案ですが、せっかく交渉の一番山ですから、あまり申し上げるのはどうかと思いますけれども、ぜひお考え願いたいのは、かりに一時的にもせよ、日本側だけが一方的に制限される区域を認めることは、これは釈迦に説法で恐縮ですけれども、北太平洋漁業協定等において日本が自発的抑止ということはもういかぬといっておる原則から見ても、そういうことはやってほしくない。そういう特例は認めないでほしい、この点を赤城さんに要望しておきます。御所見を伺います。
  187. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) まことにそのとおりだと思います。共同規制水域は、両国が公平妥当に規制されるべきものでなければならない。一方的に、日本だけの規制ということになると入漁権というような観念になります。その点は私もお話しのように、公平に両方とも規制さるべきものでなくてはならない、公海でございますから。そういう考え方で進んでおります。  それから済州島付近の問題につきましては、お話しの点を十分頭に入れて交渉していきたい、こう考えております。
  188. 曾禰益

    曾祢益君 漁獲量による規制というのは適当でないと思うのです、魚の性質等からいって。これは量は単なる参考であって、やはり隻数その他の漁獲方法等による規制でいくという方針を貫いていただけるかどうか、伺いたい。
  189. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いまの点は意見の一致しない点でございます。私も共同水域におけるわが国の漁獲をすべきことをきめていくのにつきましては、隻数、船の数でいくべきだ、そうでないとお互いに自国で取り締まる場合に、漁獲量でいきますと非常に取り締まりの困難がございます。でございますから、漁獲の量は船の数を決定する基準であって、それが割り当てのような課題できめらるべきではない、こういう主張をいたしておりますので、この点はいま一致していないところでございますけれども、わがほうの考え方は船の隻数できめていくべきだと、こういう態度で臨んでおります。
  190. 曾禰益

    曾祢益君 共同規制区域でもう一つの心配な点は、韓国のほう、沿岸のほうから一体どこまで共同規制区域になるのか、これは私はしりが抜けておると思うのです。そういうところに関連して、韓国側がいち早くも李承晩ラインの付近は別に調査区域というようなことで、何か李承晩ライン的なものを残そうと、これは単なる面子の問題だけでなくて、非常に私は将来災いを残す。したがって、共同規制区域の沖へ向けての限界、これをはっきりしてもらいたい。そして李承晩ラインなるものがいかなる名目たるを問わず、結果においてでけっこうですから、結果的に絶対そういうものは認めない、撤廃させる、この原則は貫いていただけるかどうか、これは総理大臣からひとつ確たる御方針を伺いたい。
  191. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 先に申し上げます。  共同区域のその後の線でございます。いま、両方で話し合っている線は、いわゆる李承晩ラインの内側でございます。十二海里の専管水域の外側から約四十海里外へ出ますけれども、これは李ラインの内側になります。しこうして、その李ラインは、いまお話のように、私は、これの撤回が前提で、これができなければ、この漁業条約というものは全く意味をなさない、こう考えておりますので、結果的に、それが何らかの意味におきましてなくなったということにならなければ、この漁業条約の妥結というものは得られない、こういう考え方で進めております。
  192. 曾禰益

    曾祢益君 漁業問題で、最後にぜひ一つ、補償問題についても、拿捕船舶の補償、これを完遂していただきたいと思います。  それから漁業協力につきましても、何か外務大臣のほうは、民間一億ドルといいますか。三億ドル、二億ドルの外に、別に借款があってもいいように考えたということが新聞に伝えられておりましたが、従来からの政府の一貫した方針は、これはいわゆる民間協力借款の範囲内である、こういうふうに伺っておったのですが、その点は明確であるかどうか、外務大臣から伺いたい。
  193. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) さような方針で折衝に当たりたいと思います。
  194. 曾禰益

    曾祢益君 竹島の問題については、解決の方法については、条約で、かりにそれ自身が解決しなくても、解決の方法、たとえば国際司法裁判所に提訴する、あとであとくされがないように、解決の方法だけはきちっときめて、あとは時間が自然に解決するような、そこまではっきりと解決のめどをつけるということはお約束できますか。外務大臣どうですか。
  195. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一括解決の方針、大方針に従いまして、少なくとも解決のめどをはっきりと定めるというふうにしたいと考えております。
  196. 曾禰益

    曾祢益君 時間が参ったそうで、最後に、在日朝鮮人の法的地位の問題ですが、これは非常に重要な問題だと思うのです。したがいまして、私どもは、かつて日本人であった、戦前から日本におった人たちに、いわゆる永住権を与える、日本人待遇に近いものをやる。これは、私は合理的だと思います。人道的だと思います。ただ、永住権の範囲を、それから今度協定ができてから五カ年後に生まれる者にまでやると、これは少し行き過ぎではないか。加えてさらに二世、三世にまで永住権をよこせという要求があるようですが、これははなはだ適当でない。やはり二世、三世は、成年に達したならば外国人になるか、それとも帰化の条件が整うのではないかと思うから日本の国箱を取得する、そういうところは、やはりあとくされがないように筋道を立てていただきたいと思います。  続けて、法務大臣、外務大臣から伺えればいいかと思いますが、まず永住権の範囲、二世、三世にまで及ぼすなという私の意見、それから事実上、いままで外国人としては得られない私権を享有しておったと、事実上の利益といいますか、生活保護あるいは公立小学校、中学校等で義務教育の場合にめんどうを見てやる、しかし、あまりにそれもすべての国民年金から社会保障まで全部よこせと、これは少し甘えていると思うので、その範囲もあまりに乱用せぬようにしていただきたい。  第三に、そういう永住権のある朝鮮人に対しては、強制国外退去の条件を緩和するということも、これもやむを得ないと思いまするが、逆に密入国をした者とか、その他についてはきちっきちっとやるべきものは、北鮮であろうと南鮮系であろうと、はっきり秩序をただしてもらいたい。  最後に、先ほどちょっと外務大臣と応酬がございました実は在日北鮮系の人たちの処遇です。私はこの条約が北鮮側に直接効力はないとしても、実際上在日北鮮系の人たちに、事実上にその待遇を均てんさせないわけにはいかないだろう。しかし、その場合に、均てんはさせてやる、しかし、だれが監督するのだ、そういう場合に、韓国側の管轄権を国内で認めるということは筋かもしれない。そうすればかえってやっかいなトラブルを日本がしょい込むことになる。そこら辺の北鮮系の取り扱いについてどうお考えであるか。緩急よろしきを得なければならないが、それについての処遇を伺いたい。以上、法務大臣及び外務大臣から伺いたい。
  197. 高橋等

    国務大臣高橋等君) いろいろ御指摘の点は、いまちょうど交渉中でございます。十分御意見のところは参考にさしていただきたいと思います。  なお、北鮮系の問題でありますが、御指摘のように、過去において日本人であり、自己の意思に沿わないで日本人の地位を離れた人々であります。こういう点を考慮いたしながら、十分なる措置をやっていかなきゃならぬと考えておりますが、いずれにしましても、これらのいまお尋ねの問題を含めまして、日韓交渉がまとまりましてから、具体的措置、方法等につきまして検討いたすと、こういう考えでございます。
  198. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 法務大臣がいまお答えしましたが、ただいま詳細について折衝中でございますので、御意見のあるところは十分に拝承して、折衝に当たりたいと考えます。
  199. 曾禰益

    曾祢益君 最後に、総理に伺いますが、冒頭に日韓問題で申し上げましたように、あくまでも、この問題は非常に長い間懸案であります。円満に一括解決で、合理的な解決ができて、韓国側の政情ががたがたしないならば、方向としてはけっこうだと思いますけれども、最後の詰めが大切でありまして、あくまで安易な妥協と拙速を避けていただきたい。これが私の要望です。  それからもう一つ、これは質問ですが、かりにとんとん拍子で、すべての協定ができた。基本条約のほかに一括解決のめどがついて協定ができたという場合には、政府は、その協定を国会にいつ提案するつもりであるかどうか、この通過に対していかなる覚悟で臨むかということを伺いたい。  それで、以上で私の質問を終わります。
  200. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日韓交渉についての詳細な御意見、たいへん私は参考になったと思います。ことにその態度において、冒頭に言われたこと、これはただ単に政府に対する要望だと言われるけれども政府はもちろんその態度で臨むつもりでございます。ただいま法的地位の問題あるいは漁業等の問題についてお触れになりましたが、いずれもただいま交渉中の案件でございます。したがいまして、政府側の説明、お答えでは、これはたいへん御不満であろうと思いますが、しかし、それにもかかわらず、ただいま質疑を進められたその間において、それぞれ問題点の所在は、法的地位の場合にこういう点があるのだ、ただいま漁業の場合にはこういうことがあるのだ、そのいずれもが私たちが採用すべき、また特にそれらの点について考究すべき点のように思います。在来の日韓間の交渉の場合に、多くは韓国側も立場がむしろ日本側に要求するような場合があったと思いますが、今回残っておりますような漁業問題並びに法的地位の問題、こういうことになりますと、事柄が私ども国民の問題としても真剣に取り上げなければならない、こういう意味国民の期待も非常に大きいのであります。そういう点から見ましても、残っておる問題、これはまことに重大な意義をわが国にもたらすものである。かような立場で真剣に取り組んでまいるつもりであります。もちろんそういう際に妥協あるいは結論を急ぐために十分の用意がない、こういうことのないように十分戒心してまいるつもりでございます。したがいまして、ただいまでき上がって、いつ国会に出す、こういうお話でございますが、一部新聞等の報道では、韓国側においても非常に早急に解決の見通しがあるやに伝えておりますけれども、わがほうといたしましても早急な解決は望ましいことではありますが、ただいま申し上げます案件が、いずれもなかなか重要な問題でありまして、まだただいまのところ早急に妥結するとも考えられないような関係にございますので、その後の扱い方についてはただいま申し上げるわけにまいりません。もちろんこれらの問題については、事柄が日韓間の問題でありますから、政府はそういうことで妥結ができれば、できるだけ早い機会に国会の御審議をいただいて、そうして批准を求める、こういう抽象的な態度に変わりはございませんけれども、ただいまかようにするかということを申し上げる段階でないということを御了承いただきたいと思います。
  201. 曾禰益

    曾祢益君 これで質問を終わります。
  202. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 曾祢君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  203. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に千葉千代世君。
  204. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は、日本社会党を代表いたしまして、主として日韓問題、内職、教育関係について総理大臣並びに関係各大臣質問いたします。   〔委員長退席、理事村山道雄君着席〕  昨年の秋、佐藤内閣が誕生いたしましたときに、ラジオを通じて国民の声として第一番に流れてきましたのは、物価高に悩んでいる主婦の声でございました。佐藤内閣について何か希望がありますかという、こういう問いに答えて、楽しい買いものができるようにしてほしい、私ども主婦は物を買いに行くたびに非常に頭を悩まし、がまぐちの中が心配でたまらない。びくびくして物を買わなければならぬ。何とかして楽しい買いものができるようにしてほしい。こういう声でございましたが、それに続いて中小企業の方の声でございますが、もう何にも言うことはない、お金を貸してほしい、これだけしか言うことがない。こういう悲痛な声で、私たいへん心を打たれたのでございますが、当時は非常に倒産が続いておって、戦後最高という記録を毎月更新しておった。この中小企業に対する内閣の対策ということについて非常な痛烈な批判があり、要求があったわけでございますけれども、この中小企業対策に対しまして倒産を防ぐ手だてをどのようにお打ちになったでしょうか。佐藤総理にお伺いいたします。
  205. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 中小企業に対しましては倒産が多い、これは私ども特別な年末金融、さらにまた、最近も特別な考慮を払って特別にめんどうを見る、大蔵大臣特に気をつけて見ておりますし、また、今回の予算編成にあたりましても、中小企業に対しては、特殊な配慮をいたしたつもりでございます。ただ、いま経済界の実情等を見ましても、中小企業の本来の倒産もあるが、連鎖倒産もあるのではないか、こういうことで、心配いたしております。したがいまして、私どもがしばしば通産、大蔵当局等に申しておりますことは、いわゆる連鎖倒産あるいは黒字倒産、かように言われるものについては特別な配慮をするように、そうしてこれを助けていくようにということで、過去におきましても、サンウェーブであるとか、あるいは日本特殊鋼であるとか、また、今回の山陽特殊鋼の倒産等にも中小企業に悪影響がないように、できるだけこれを小範囲にとどめるように最善の努力をするつもりでございます。
  206. 千葉千代世

    千葉千代世君 昨年の暮れに、北九州における連倒産三十社に及んだ、そのときに金融の手当てをして徐々にこれを回復していくからというようなお話であったわけです。ところが、一昨日の迫水委員質問の中に、この中小企業の倒産についてはいろいろ原因があるけれども、甘い見通しだとか、それからそのいわゆる政府責任がないような経営者自体の放漫政策によるというようなことも触れられておったわけでございますが、現実に山陽製鋼の倒産などを見てまいりますというと、七十三億八千万の資本に対して五百億の負債がある、しかも十億の手形で、これが倒産していくという、こういう中でこの連続倒産はどのくらいに見積もっていらっしゃるのでございますか。下請企業その他について非常な犠牲が及んでくるというようなことも新聞に出ておったのでありますが、的確なところはどの辺でございますか。
  207. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 確たることはわかりませんから、通産大臣からお答えいたします。
  208. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) まだ的確な資料がございませんけれども、大まかなところで三百社見当に及んでいるんじゃないか、こういうふうに見られております。
  209. 千葉千代世

    千葉千代世君 いままでの倒産は、大体いま一千万円前後というようなこういうものが多かったわけでございますけれども、最近の例では、この山陽製鋼に見られますように、非常な大資本の会社が倒れているという、こういうふうになっていきますというと、少しばかりの手当てをしたといっても、これはやはり九牛の一毛にすぎなくて、なかなか根が深いように思っておりますけれども、この原因は一体どこにあるのでございましょうか。  これは総理大臣に。国の経済政策の基本でございますから、お答え願いたいと思います。
  210. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま例にあげました山陽特殊鋼とか、あるいは日本特殊鋼とか、サンウェーブとか、こういうのはいわゆる中小企業ではなくして、大企業とは申せませんが、非常な高い順位のところもあるわけであります。したがいまして、関連する産業、下請産業、これが非常に多い。ただいま通産大臣が申し述べましたように、大体中小企業が三百程度ではないだろうかということでございます。最近の二月までの倒産の件数並びに負債の額等を気をつけて見ておりますと、一月末までは一億以上の負債の会社が相当の数を占めておりました。しかし、二月の統計では、その金額がやや少なくなりまして、八千万台の倒産があるようでございます。ところで、この山陽特殊鋼というのは、今回この三月に入りまして突然この種の倒産ができた。これは更生会社になるわけですが、更生申請をした。そういう特殊な関係がございますから、もちろん私どもは予断は許さない。楽観はしておりません。ただいま説明いたしましたように、二月までの傾向では、やや倒産件数も減り、また、倒産の内容も、金額的には減ってきた、かように考え、いわゆる中小企業に対する金融措置が漸次及んできたのではないだろうか、影響してきて、そうして好結果をもたらしたのではないか、かように実は判断いたしておりましたが、この三月に入りまして、山陽特殊鋼などがただいまのようなことになりますと、これまた私どもは楽観していなかったが、一そう気をつけていかなければならない、かように私は考える次第でございます。これらの原因が一体那辺にあるのか。これにつきましてはいろいろの見方をする方があります。これがいわゆる景気循環による破産なりや、あるいは最近の経済構造の変化によるものなりや、そういう、人によって前者を主たる原因にする者と、後者を主たる原因にする者といろいろあるようであります。しかして私は、いわゆる景気変動並びに産業構造変革に伴う破産といいますか、そういう事態ではないだろうか。ただ、その原因が幾らわかりましても、ただいま現実にどんどん破産をいたしておりますから、こういうものに対する施策を立てなければならない。そういう意味で、一そう経済を安定成長へ持っていくこと、その基調に乗せること、同時にまた、企業の近代化、高度化等の生産性を高めるような方向に一そうの指導をすること等がこの際は望ましい方法ではないだろうか、かように考えますが、最近次々に破産、倒産等の事件が出ておること、そうしてその案件がなかなか減らないこと、これはたいへん私も心配しておるような次第でございます。
  211. 千葉千代世

    千葉千代世君 連続倒産が三百社に及ぶという、こういう想像をおっしゃったわけですけれども、新聞の報道でございますけれども、山陽製鋼で倒産しますと、大体三千五百人の従業員が路頭に迷う。そうすると、この下請工場その他を含めて三百社に及ぶということになりますというと、これは労働者にたいへんな犠牲がまた出てくるわけですけれども、大体その人数はどのくらいに波及する予定ですか。
  212. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの会社更生法を適用するということで、山陽特殊鋼、これはいままでの借金を一応たな上げする、むしろ生産は続けていく。これは、生産を続けていかなければ、特殊鋼であるだけに、自動車工業その他に影響するというので、せんだっても説明したところであります。したがいまして、山陽特殊鋼が会社更生法の適用を受けたといって直ちに失業者が出る、こういうことではございません。ただ、この会社に納入をしておる下請という関係にある中小企業、こういうところにおきまして、その負債等が山陽特殊鋼と同じような整理を受けないために、こういうところがたいへん特殊な金融を見ない限り困るだろうというので、こういうところが連鎖倒産をしないように、また黒字倒産にならないようにということで、特別金融をするように、ただいま大蔵大臣なり通産大臣なりが気をつけてめんどうを見ておるということでございます。ただいまお話がありましたが、最近の破産、倒産と、かように申しましても、いわゆる失業者が出てきていない。かつての、昨年の日本特殊鋼などは、これはかえって最近は非常な成績をあげておる、こういうようにも言われておりますし、最近の破産、倒産、こういう大企業の会社更生法適用のものは特別な状況を出しておりますので、昔のような考え方とは違っておりますから、その点誤解のないように願います。
  213. 千葉千代世

    千葉千代世君 会社更生法の適用を申請した、そうして、その会社の本社自体はまずいいけれども、子会社等に対する影響というものについてはそんなにひどくないようなことをおっしゃったのですが、特別な処置をしたということは、一体大蔵大臣どういう特別な処置をさなっておるのですか。
  214. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 山陽特殊製鋼につきましては、本社はもとより、三百社に及ぶ関連産業等の問題を勘案いたしまして、日銀総裁にも話をいたしまして、日銀総裁は特別談話を出されて、関係金融機関に手配を依頼いたしまして、連鎖倒産ということがないように格段の措置を講ずるように要望せられまして、また、私からも銀行局長を通じまして、全銀協に話を持ち込みまして、日銀も特別融資を考えてもいいと言っておるのだから、各金融機関はあげてこれが連鎖倒産等を防ぐべし、こういうことで強い行政指導をいたしておるのであります。なお、通産大臣ともお話をいたしまして、政府三機関の融資の面におきましても、関連産業の連鎖倒産等を起こさないように格段の処置をとるように手配をいたしております。
  215. 千葉千代世

    千葉千代世君 本社に対する手当はそれとしましても、今度は関係子会社に対しては、たとえば中小企業金融公庫の融資とか市中銀行の融資についてはどういう処置をされておりますか。
  216. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ただいま申し上げましたように、中小企業金融公庫を含めました政府三機関にこれら産業に対しての手当をするように要求をいたしておりますし、なお、日銀及び大蔵省から全国銀行協会に対しまして、先ほど申しましたように、資金的に万全の措置を依頼しております。
  217. 千葉千代世

    千葉千代世君 この問題は、そう政府の言うように簡単なことではないと思うのです。というのは、昨年北九州に、一社がつぶれて三十社の連続倒産があった。そのあと始末については、まだまだ問題がたくさん残っているわけでありますが、きょうは時間がないので触れませんけれども、これはそう簡単にいくものじゃなくて、やはり日本の経済機構の中で一番安定性を欠いているということが一つの証拠じゃなかろうか。それはとりもなおさず、池田内閣のいわゆる所得倍増というかけ声のこの経済政策の失敗のしわ寄せがここに出てきて、まだまだこれが根を引いていくということを私は考えますけれども、いかがですか、その点。
  218. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういう見方を持つ方もございますが、私のほうは必ずしもそうだとは考えておりません。いままで倒産しました内容を十分検討いたしておりますが、過小資本であるもの、あるいは同じような品物がもうかるからといって、新らしくそういう部門を非常に大きく拡大すること等々、いろいろの問題がございまして、高度成長政策というものが、直ちに中小企業の倒産につながっておるのではないと考えます。
  219. 千葉千代世

    千葉千代世君 これは単なる過当生産であるとか、経済流通機構の問題であるとかという簡単なものではなくて、やはりこれはよって来たる原因がかなり遠いわけなんです。そういう意味合いにおきまして、やはり今後倒産が再びないように、絶無というわけにはいかないでしょうけれども、まだまだ倒産寸前の会社がかなりあると聞いておりますのですけれども、そういう会社の財政状態で、大体一千万円以上の資本金を持った会社で、倒産寸前の会社がどのぐらいいまございますか。
  220. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 倒産をしてみないとなかなかこういうものは表に出ませんので、倒産をしてみてから初めてわかるわけであります。しかも、通産局や財務局でもこの種の問題に対しては事前に相談を受けるように、事前に相談を受ければ金融機関等も十分検討をするようにいたしておりますが、なかなか持ち込んでこないのであります。今度の倒産などは、倒産をするまでに半年間専門の金融機関から調査を続けたけれども、内容がよくつかめない。社長は知っておるのかというと社長も知らない。一流銀行から三人の経理担当常務が行っておるんですが、どうも内容がわからない。こういうところがどういうことかというと、やはり経営責任の欠除とはっきり言っていいと思います。私は、そういうところにも大きな問題があるわけでありいまして、こういう問題は開放経済下に対処して、もっと経営者が自己責任に徹するということも必要だと思います。いまどのぐらいあるのか、こういうことはわかりませんし、こんなことを言ったらたいへんなことになりますので、ひとつ御了解願います。
  221. 千葉千代世

    千葉千代世君 わからないことはないと思うのです。というのは、少しあぶない会社になりますというと、銀行がみんな飛び出していって、そうしていろんな収支についての監督をしたり、ひどいところになりますと、銀行が一切の権限を取り上げてしまう。たとえば重役とかそういうものを、会社の重役ですか、そういう方になってしまうと、こういうふうになっておりますから、銀行のほうで金を貸しても何とかこれは焦げつかないなあという程度に、まあまあ抑えているというところがかなりあると聞いております。それがわからなければ銀行をどうしてあなた監督していくのですか。
  222. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大蔵大臣は個々のものを監督してはならないということでございまして、銀行の自主性を大いに尊重しておる。まあしかし、倒産は非常に大きなものでございますので、倒産に対しては事前に十分調査をして倒産を未然に防ぐべし、こういう行政指導をしておりますので、各金融機関を集計すればあぶないというのではなく、金がもっと要るというのはあると思いますが、しかし、ここでお話を申し上げられるようなものではございません。
  223. 千葉千代世

    千葉千代世君 それでは、わかる範囲でけっこうですが、なるべく早いうちにそういう資料を提出していただきたいと思うんですけれども
  224. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 提出できる資料とできない資料がございます。これはとてもむずかしいということはひとつ御理解いただきたいと思います。
  225. 千葉千代世

    千葉千代世君 次に、いま公共料金についてこれは自治大臣にお尋ねいたしますけれども……。
  226. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 中小企業にちょっと関連して。  ただいま千葉さんの中小企業に関する質問を聞いていますと、最近の非常な倒産について、政府はほとんど何か責任がないようなお話ですけれども、高度経済成長政策の破綻に原因がないと言われていますが、少なくとも、この中小企業の倒産が非常にふえた一つの原因として、金融引き締めが原因になっていないということは言えないと思うのです。それは景気変動とか構造的変化もあります。具体的に申しますれば、三十八年ごろから非常に急速に急に金融を引き締めた。そこに一つ問題があるのです。なぜ三十八年から急に金融を引き締めざるを得なくなったかと申しますれば、御承知のように、三十八年には高度経済成長の行き過ぎからものすごい国際収支の赤字が出たわけです。この国際収支の赤字は何に責任があったですか。政府が高度経済成長政策で安定ムードをあおったんじゃないですか。また、金融面についても、金利を下げて、成長政策と称しまして非常な放漫な貸し付けをやったんですよ。ここに原因がないとどうして言えますか。これは少なくとも金融政策に一つの問題があるのですよ。そうして、そんなに急激に金融を引き締めなければ、徐々に締めれば、その間に指導をしまして、つぶれなくて済んだものもつぶれているのですよ。これはよく実態を御調査になればはっきりします。ですから、政府は何か全然もう責任がないような言い方は、これは私は訂正されるべきです。いままでの政策に全部政府責任でなかった分もあるかもしれません。しかし、やはり金融引き締めに一つの大きな原因があるということは認めて、今後あの高度経済成長政策の誤りを直すために中期経済政策をとっているのじゃありませんか。安定成長に転換しているのは、すなわち高度経済成長政策が失敗したということを、それをそのマイナスの面があったということをあなた認めているわけでしょう。どうもいまの御答弁を聞いていますと、これはもう国民が聞いていまして納得できません。千葉さんは全然納得できないと言われていますが、これは千葉先生だけじゃないのです。国民全体がいまの御説明では納得できませんよ。やはり政府にもこれまでの責任があった、これについては十分反省するつもりだ、そのくらいのことは誠意のある御答弁をさるべきじゃないかと思います。そんなに重大化しているじゃありませんか。こんな重大問題について、政府責任が全然ないかのごとき御答弁をしては、これは了承できません。
  227. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 木村さんから関連質問でお話がございました高度経済成長、これはもうたびたび申しておるように、それなりにりっぱな功績をあげてまいりました。しかしながら、一昨年来、この高度経済成長に対してこれは引き締めをすることが望ましい、そうして経済を安定成長の基調へ乗せよう、こういう努力は払ってまいりました。このこともその当時としてはこれはけっこうなことだ、こういうことで、各方面から御賛成を得、そういう意味で金融引き締めを実施いたしたわけであります。私になりましてからはむしろ金融はゆるめた。こういう状況であり、この金融をゆるめたことについてむしろ逆な批判がある。ただいまの経済はもっと責任性をはっきりしなければだめじゃないか、かような意味からもおしかりを受けておるというのがいまの現状でございます。ただ、私は千葉さんに対するお答えも、ただいま中小企業の倒産なんか、あるいはいわゆる開運あるいは下請産業としての失業なのか、そういう点を十分ひとつ分けて考えていただきたいと思うのです。先ほど来あげましたような、会社が更生に入る。そのためにその下請産業として存在していた中小企業、それらのものが非常な影響を受ける、これを何とかして救済しよう、かように実は申しておるのでありまして、いわゆる一般中小企業に対する対策、これは大企業も同じでありますが、もちろん責任をもって経営に臨んでもらわなければならない。しかしながら、今回のような大企業が倒れることによって、その企業に依存して、そうして下請の形において中小企業を経営している、これには全然責任は実はないのであります。そういうものがいわゆる連鎖倒産という形で倒産されることは、いかにもそのままほうっておくわけにはいかないじゃないか、だから、こういうものに対しては特別に金融の措置をとろうじゃないかというので、そういうものはめんどうを見ておるということを実は申しておるのであります。  一千万円以上の資本金のもので中小企業は一体どういう実情にあるか、こういうことを仰せになりますが、私は中小企業も一がいに簡単には言えない。その経営自身におきましても、十分その責任のとれるような立場にある中小企業もあるし、ただいま申し上げるような、下請産業としてその存在が許されていた、そういう場合はどちらかというと、大企業——自分がたよっている親企業自身が倒れた、何ら責任がないのだ、こういうところのものを私どもは救済しなければならない。中小企業の中にこれはほとんど一〇〇%その企業にたよっておるというものがある。自分ところの製品納入先はその会社だけだ。こういう場合には、そういう企業について心からの同情を示す特殊な金融をしなければならない、かように思います。しかして、一般の企業については、冒頭に申しましたように、それは年末金融の施策なりあるいは盆の施策なりで特殊に金融の量はふやしてそれぞれめんどうを見ておる。また、今回の予算編成にあたっても、中小企業対策というものを特別にやっておる。これでよくおわかりだと思いますし、また、一般の中小企業の方も御理解がいただけるのじゃないか。ただ、ただいま申し上げるいわゆる連鎖倒産、こういうものについては私ども特に気をつけていかなきゃならない。もう一つは、一般経済界の問題でいわゆる黒字倒産、こういうようなものに追い落とされておる中小企業もあるし、そういうものに対しては、その特殊性にかんがみまして、私どもが格別に救いの手を差し伸べる、これが当然のことだと、こういう意味で、大蔵大臣なり通産大臣がいろいろ努力しておる。どうか誤解のないようにお願いをしておきます。
  228. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま総理大臣からかなり長い御答弁がありましたが、私の質問に答えていないんですよ。それは、佐藤内閣になってからは金融をゆるめるようになってむしろ批判があると言われる。しかし、佐藤内閣は池田内閣をこれは踏襲するということになっているのです。高度成長は高度成長なりに成果をおさめたと言われますが、   〔理事村山道雄君退席、委員長着席〕 なるほど設備はものすごく拡大した、成長率はヨーロッパ以上に拡大したということはそのとおりです。しかし、池田内閣のもとでも、その末期においては、そのために中小企業や農業は立ちおくれたと、このことははっきり認めているわけです。また、物価が非常に上がって国民にひずみをもたらしたと認めているわけです。そのことはやはり高度成長のマイナス面です。そうして、国際収支が大幅な赤字になり、金融を引き締めざるを得なくなった。そのために企業の倒産があのころから統計的に非常にふえてきている。だから、私は何もいま責めるばかりが能じゃない。問題は今後にあるわけです。過ぎ去ったことを、死児のよわいを数えてもしようがありませんけれども、過去の経験を学ばなければいけないし、過去の失敗はやはり今後の政策に生かすためにこれは反省しなければならない。いつでも政府はいままでずっと中小企業対策来は大切だ、大切だ——自民党は中小企業の味方でやってきましたのです。三十八年に中小企業基本法をつくったんでしょう。それで中小企業は安定しましたか。だから、その場限りのスローガン的に中小企業が大切だと言うのじゃなしに、中小企業基本法をつくったら、ほんとうに中小企業は金融を引き締めても倒産がふえないような安定的な政策がとられなければならないはずであります。ですから、私は、ただいまの総理の御答弁はただこれからどうしようということだけです。やっぱりそこは謙虚に、なるほどいままでの自民党の政策を通じて批判すべき点があったし、反省すべき点があったと、もっと率直にお認めになって、今後そういうことのないように努力したいとおっしゃれば私どもも了解できないわけないですよ。その点、はっきり言ってください。
  229. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 池田内閣の末期において金融の引き締めをして経済成長を適度にしようと、こういう政策をとったことを私申し上げました。それをもっと詳しく説明しろということですが、それはお説のとおり、それから後に生じておりますことは、われわれ当面する問題は、物価あるいは地域格差あるいは産業格差、そういういわゆる経済のひずみを是正すると、こういう態度にただいまなっておるわけであります。ただいま、こういうようなひずみが生じたりあるいは物価問題が起きたりする、これは高度経済成長の結果ではないか、もたらした悪い面ではないか、かように仰せになるのは、これは木村さんの御自由だ、かように私は思いますが、ただいま申し上げるような事態が起きて、これを池田内閣におきましてもこれと真剣に取り組んでひずみ是正をする、かように申しておりますから、そういう点を、高度経済成長から生じた結果について認識は誤ってはおらない。もちろん、それがひずみという形においてこれを承認しておる。そのひずみを是正しようと、こういうので取り組んできている。私の内閣ができましても、もちろん当面するのはこの物価問題、並びに経済上のひずみを是正すること、こう言って、私がいの一番に組閣してからその点に触れたのでございます。ただいま御指摘になったような結果をもたらしておる、これは私も認めることにやぶさかではございません。
  230. 千葉千代世

    千葉千代世君 公共料金の値上げについてでございますけれども、その中で水道の問題について。自治大臣質問したいと思いますけれども、東京都の水道の料金が値上げされる。しかも、それが六四・三%の値上げだ。都議会では非常な問題になって、あげて質問しておったわけですけれども、その中で工業用水の問題、飲料水の問題等もいろいろありましたけれども、夏の水不足についての対策はどうかという質問に対して、科学者として云々というので、責任の持てないようなことをおっしゃったのです。けさ六時のラジオのニュースを聞いたのですが、その中に、ことしの夏もまた水飢饉だ、利根川の用水から水を取るといっても、農業期に差しかかれば農業用の水が優先するのであって、飲むのは二の次だ、だからこれは保証できない、またも水飢餓かというようなニュースであったわけなんですけれども、自治大臣それに対してどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  231. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 東京都の水道の問題でございますが、昨年の夏は、御承知のように、たいへん水不足で困りました。そこで、東京都としては、実は三年ぐらい前からこの水道の拡張の問題に取り組んでやっていたわけでありますが、御承知のように、人口がどんどんふえてまいりまするので、水道を拡張いたしましても、なかなか追いついていけないというのが現状でございます。しかし、御承知のように、昨年夏、ようやく荒川の水を引きまして、これが三十万トン入るようになりましたし、また、先日利根川から荒川へ落とす水路もでき上がりましたので、私は相当これによって補うことができると思いますが、何ぶん膨大な人口、それから一人当たりの使用量は非常に増加しておりまするので、ことしの夏一挙に解決するとは思いませんが、目下東京都においては利根川の河口ぜきも計画しておることでありまするので、四十一年、四十二年になれば、大体不足のないような状況に立ち至るであろう、かように存じておる次第でございます。
  232. 千葉千代世

    千葉千代世君 東京都の人口は大体日本じゅうの人口の一割を占めておりますので、単に東京都の水道料金という問題ではなくて、やはり日本全体のこの水道関係あるいは公共料金に関係すると思うので質問いたしますけれども、東京都が今回の値上げについて、その値上げの理由とするところはどんなことであったでしょうか。
  233. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 東京都の今回の水道料金の値上げにつきましては、実は三十八年度におきましてすでに十五億の赤字を出しておるわけであります。三十九年度になりますと、これが五十五億の赤字になるのであります。四十年度になりますと百億の赤字がでてくるわけであります。したがいまして、四十、四十一、四十二の三カ年をとりましてこれを健全化したいというところで今回の値上げ案が出ておる次第でございます。で、私どもといたしましては、水道はやはり独立採算制をとっておりまするので、その中において受益者負担をしていくということでありたいと思っております。で、私どもは昨年の夏、これらの問題を含めまして地方公営企業制度調査会というものをつくりまして、これは水道のみではございませんが、交通その他も合わせまして、一体今日のこの公営企業の赤字をどうしたらいいか、今後どうあるべきかということを諮問しておるのであります。目下審議中ではございますが、しかし、昨年の十一月に中間答申がなされまして、その答申の要旨は、第一は、料金はストップしてはいけない、適正なる改訂は行なうべきである、これが第一であります。第二は、同時に、節約をしなければいけない。合理化をしなければいけない。ただ赤字が出たからそれを料金におっかぶせるというようなことでなしに、合理化をあわせやるようにということが第二であります。第三は、水道というのは相当長期にわたっての投資を要する問題であるから、これを短期の資金でまかなうということにいたしまするというと、利子が高くなり、また、借りかえをしなければなりませんから、政府は長期資金を低利にひとつあっせんをするようにという、この三つの答申がなされておるのであります。私どもその線に沿いましていま取っ組んでおるわけでございます。そこで、東京都も大阪も料金の改定の問題が起こっておるのでありますが、私どもはできるだけ節約をして料金にはね返る分を少なくするように、国民の負担はできるだけ少なくするようにということで、せんだっても慎重に取り扱うようにという通牒を出したわけでございますが、ただ、参考に申し上げまするというと、東京都の水は、実はほかの府県から比べますると安いのであります。十トン当たりが現在百四十円でございます。今度の値上げによりまして一般の需要家につきましてはこれが二百円になるのでありますが、埼玉地方、千葉地方等におきましてはすでに二百円から二百五十円あたりが普通の水道料金でございます。それであるから今回の料金がよろしいという意味じゃございませんけれども、決して普通より高くなっておるという事情ではございません。ただ、しかし、私どもは合理化を押し進めていただきまして、できるだけ国民の負担というものを重くならぬようにという指導をしておる次第でございます。
  234. 千葉千代世

    千葉千代世君 これは水道局の資料を拝見したのですけれども、四十、四十一、四十二の三年間の小計の中で、たとえば水道料金が全体で四百七十一億と想定される。そうすると、利子に二百九十四億払わなければならない、それから元金を返すのについて百二億、三百九十六億、これはどうしても払わなければならぬ、こうなります。そうすると、これは料金をあなたのおっしゃるように上げていってそれで解消しろというのではとても解決できないし、特に独立採算制の問題でかなり論議があるわけなんですが、その関連をどのようにお考えになっておりますか。
  235. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 先ほど申しましたように、東京都におきましては御承知のように水不足でもう拡張拡張に追われておるわけであります。私どもは、東京都知事に対しましては、ずいぶん思い切ってひとつ拡張してください、それでなければ水不足不足で困るのだから、起債は幾らでも認めて差し上げましょうというようなことで、実は工事に追われておるような状況でございまして、ここ四十、四十一、四十二、さらにまた一、二年間はそういった大きい投資に追われるだろうと思います。しかしながら、これを短期に償還をしよう、そうしまするというと、それは相当大きい金が水道料金にはね返ってまいりまするから、先ほど申しました中間答申にもありまするように、長期にわたる資金をみていくようにということであろうと思います。水道は耐用年数が五十年だといっておるのでございまするから、五十年間の償還の起債というわけにはまいりませんけれども政府資金をできるだけ多くしてその期間もできるだけ長くして長い間に償還をさせるという方法をとりますれば水道料金にはね返るものも少なくて済むという方針でいま進んでおる次第でございます。
  236. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、やはりあくまでも独立採算制ということがもとになったやり方でございますね。
  237. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) さようでございます。
  238. 千葉千代世

    千葉千代世君 水道の値段の問題をおっしゃったのですけれども、東京都の工業用水に対する国、都の出しておるお金、それから一般の飲用水に対してはどのように処置しておりますか。
  239. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 工業用水の点は私のほうでございませんのでわかりませんが、(「通産大臣」と呼ぶ者あり)これは地盤沈下その他の点を考慮されまして、たしか二割五分でございましたか、助成がございます。水道のほうは、農村の簡易水道には厚生省から補助が出ておりまするが、一般の飲料水には、先ほど申しましたように独立採算制、利用者が負担するというたてまえをとっておりまするので、補助は出ていないのでございます。
  240. 千葉千代世

    千葉千代世君 都と国がそれぞれ四分の一ずつの補助をしているわけなんでございますけれども、その補助の率ですね。工業用水は地盤沈下などの関係があるので補助したと、こういうわけです。というのは、こうですか。たとえば東京都内で工場がどんどんできると、そこで恥下水を掘り上げてしまって地盤沈下が来るから、その対策として工業用水については補助をし、安いお金で供給すると、こういう意味ですか、地盤沈下の問題と開運しておっしゃったのですけれども。だれでもいいですよ、わかっている方なら。
  241. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 東京都につきましては、特別に工業用水の施策をしておりません。
  242. 千葉千代世

    千葉千代世君 工業用水につきましては、東京都のほうも補助しているし、国も四分の一補助ということになっておりますけれども、これは違うのですか、この書いたものは。
  243. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 工業用水につきましては、数字はあとからお答えいたしますが、大体地盤沈下地域で地下水のくみ上げを規制いたしておりますところに対して補助をしておるということでございます。東京都は一般的には補助しておりません。しておりませんが、単独事業等で補助があるものがあるかもしれませんが、そういうものについては調べた後お答えいたします。
  244. 千葉千代世

    千葉千代世君 独立採算制のたてまえをくずさないようにしてそして償還期限なんか長くして処置していきたいと、こうおっしゃったのですが、東京都民全体が大体八八%くらいでしょうか、もう利用しているわけですね。昭和四十五年になりますと、九八%くらいの予定だと、こういわれております。そうした場合にはそろそろ一般会計のほうからこれをまかなっていくというふうに切りかえていくということのほうがいいのじゃないでしょうか。どうでしょうか。
  245. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 水道については一般が使うから一般会計で補ったらどうかという御議論はございます。ございますけれども、まあやはり一つの公営企業でございまするから、利用者が負担をするというたてまえでいったらどうかということで現在までもそれでいっているわけであります。ただ、一切がっさい全部独立採算というわけにまいりませんので、先ほど申しました農村に簡易水道をつくるとか、あるいは離島に簡易水道をつくるとか、こういうような特殊なものにつきましては一般会計から補うということも現在もやっているわけでございます。大都市等における水道につきましては、私は、やはり利用者の使用量につきましても相当の差のあることでもございまするし、まあ非常に低所得者について料金等において考慮されることはけっこうでございまするけれども、原則的には独立採算でいくべきじゃないか、かように思っているわけでございます。
  246. 千葉千代世

    千葉千代世君 私はこの間都の水道関係でおかあさん方と一緒に貯水池それから浄水場を見に行ったわけですが、たとえば淀橋の浄水場、これはもう要らないからこれを処分してそして借金に充てたらどうかという話もかなり出たわけなんです。東京都ではそろそろ身売りの話をしている、こういうわけなんです。そうした場合にこれを処分していくというと大体いままでの不足分がかなり補っていけるのじゃなかろうか、こういう話であった。この東京都自体のやり方について、国ではそれは干渉できないかもしれませんが、国の助成金と並んで何か方法は考えていかれないでしょうか。
  247. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 東京都において淀橋の浄水場のあとを処分してそして赤字をある程度埋めようかという計画もあるようでございます。私は、そういう方法がとられれば、それはそれでけっこうだと思います。また、いままでも、交通関係でも、交通関係の赤字を交通関係の土地等を処分して埋めた例もございます。たしか東京都は先年そういう処置も講ぜられたと思いますけれども、しかし、そういうところがあればけっこうでございまするけれども、なかなかそうどこにもあるというわけにもまいりませんので、やはりこれは料金の改定ということで、その改定も急激にふやすということでなしに、徐々に適切に変えていくということが私は望ましいんじゃないかと、かように存じます。先ほど申しましたように、大阪でも東京でも、ほかの地域より非常に高いといえば別でございまするけれども、ほかから比べまするというと実は安いわけでございます。安いからいいというわけではございませんけれども、まあそういう事情で、やはり適切な時期に改定をしていくという行き方を私はとっていくべきじゃないかと、かように存ずるわけでございます。
  248. 千葉千代世

    千葉千代世君 お米と水道は、これは一日も欠くことはできないのであって、生きていく一番もとなわけなんです。ですから、この値上がりということは非常にみんな関心を持っている。いま徐々に適切に改定していくとおっしゃったのですけれども、六四・三%の値上げは適切と思うのでございましょうか、いかがですか。
  249. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 適切かどうかと言われますと、ちょっと私もどうとも返事がしにくいのでございますが、東京都の今度の値上げは全体としては六四%の値上げでございます。一般家庭用につきましてはたしか四八%ぐらいの程度じゃなかったかと思います。大きいビルその他の大口需要を相当高くいたしまして調整をしておるようでございます。大阪の料金の改定もはっきりまだ私のほうに相談はございませんけれども、これなども見ましてやはり低所得者には相当の配慮をしておるようでございまするから、そういう配慮が望ましいというふうに存ずるわけでございます。
  250. 千葉千代世

    千葉千代世君 工業用水についての補助の問題の答弁がまだございませんけれども、一般飲料水と工業用水の値上げの率は違いますけれども、たとえば工業用水が値が上がれば、それがやはり一般の物価にはね上がってくるわけです。製品その他にずっとついて回るわけですね。おふろにしても何にしてもついてくるわけですから、これはもう決して無関心ではないわけなんです。これは水道の料金は私は上げないでやる方法があるんじゃなかろうかということを考えておりますのですけれども経済企画庁長官は、水道の料金を上げないでそうして都民が安心して生活のできるという何か、これはあなたがこう希望しているということでもけっこうですけれども、たとえば法律を改正して補助金制度について云々とか、そういうことでもけっこうですがございますかどうですか。
  251. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) お答え申し上げますが、先日もお答えを申し上げた次第でございますが、水道料金につきましては独立採算制をとっている。したがって、その関係からどうしてもある程度の値上げを必要とするということで、各地方公共団体とも、ちょうどただいま地方議会の開会中でございますが、あっちこっちで御提案があるようでございます。ところで、私どもといたしましては、一年間ストップしていただきました後でございますので、何でもかんでもやろうということも言いかねる次第でございます。もちろんこれはそういう独立採算制を基本としておる制度のたてまえの上から申しまして、ある程度の値上げはやむを得ないんじゃないかと、かように考えますけれども、しかし、何と申しましても国民生活に最も必需な水というものでございまするし、これが一時にたとえば東京都のように六四・三%も上がるということは常識的に考えましていかにもどうもひどいじゃないかという感じがいたす次第でございます。先般も東京都の知事がお見えになりまして、その話が事後にございましたが、その際もそのことを特に申し上げた次第でございます。これは政府といたしましては非常な強い決意をもって物価の安定に努力をいたしております際でございますが、政府のつまり地方公共団体を通じての消費というものは、いわゆる政府の財貨サービスの消費というものは、そのうちの三分の二が結局地方公共団体を通じて使用されているのが現実の姿でございます。したがって、地方公共団体におかれましても、これは権限として政府が左右できる問題ではございません、独立の機関でございますから。しかしながら、やはり政府のこの何とかして物価を安定させていこうという強い決意に対して同調していただきまして、これに協力していただくということをどこまでもお願いしてまいっておる次第でございます。
  252. 千葉千代世

    千葉千代世君 工業用水の補助の問題は……。
  253. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 先ほどの私の答弁は間違っております。東京都の工業用水に対しまして、江東系に対しまして三十五年から三十九年にかけまして二割四分の補助率を出しました。十八億一千五百万になっております。それから城北系については、三十八年度以降の継続事業でございまして、三十八年度分六千万、三十九年度分五億五千万、すなわち、三十八年度分については二割、三十九年度分については二割五分の補助をいたしております。
  254. 千葉千代世

    千葉千代世君 そうしますと、工業用水のそのまあ建設資金で国が四分の一、都が四分の一と、こういう補助金を出している。それでありますから、この用水の料金はトン当たり五円五十銭以上に上げないことになっているわけなんですね。そのとおりでしょうか。
  255. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 江東系という分については、たしか四円五十銭だと思います。それから城北系については、これは五円五十銭だと思います。
  256. 千葉千代世

    千葉千代世君 そこで、東京都のほうとしては、やはり都議会の答弁質問を見ましたのですけれども、終始一貫して独立採算制というものをこれは譲らないというようになっております。ですから、これは都そのものにまかせるだけではなくて、国としてやはり対策を立てていかなければならないのではないか。先ほど私がちょっと申し上げたように、たとえば、水道会計に対して国及び一般会計から繰り入れができるように法律の改正を行なっていくということとか、あるいは、建設資金は国及び一般会計で補助出資をしていくとか、あるいは、起債の利率の引き下げと利子の補給とか、起債の償還期限の延長——先ほど起債の償還期限の延長については長い間で返していくというようなことを触れられたわけなんですが、大体おかあん方の要望を聞いてみますと、この四つにしぼられているようなんですけれども、それに対して国としての処置はどのように考えていらっしゃるでしょうか。
  257. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 上水道は地方の仕事と、こういうことにもう昔からなっておりまして、国がこれに補助をすると、こういう考え方はございません。また、利子補給ということも御発言がございましたが、利子補給等はできるとは思っておりません。しかし、水道起債は現在二十五年だと思います。これは二十年を二十五年に一年ばかり前に延ばしたのだと思いますが、こういう問題、借り入れ金、そういうものに対して可能な限り努力をいたすつもりでございます。
  258. 千葉千代世

    千葉千代世君 この水道の問題で、やはり何といっても料金の上がることはこれは困ることですけれども、それから同時に、夏になって水が出ないという不安、これはやはり何とか国と東京都と連絡をとって解消していくということで、料金の値上げはその次の問題で、金ばかりよこせよこせって、水を出ないようにしておいて不安にしておいてよこせということは強盗と同じだと思うのですけれども、そういう点についてやはり国が一段と努力してほしいと思うのです。努力するのかしないのか、それだけ。
  259. 神田博

    国務大臣(神田博君) いまのお尋ねは、まことにごもっともだと存じております。昨年の夏のような東京都その他に起きましたような水不足は、もう非常にこれは不都合だと考えております。そこで、至急にそういう水不足のないように処置するように厳重な指示をいたしております。なおまた、料金の急激な値上がりは、これは物価政策からまいりましても、また庶民の負担関係を考えましても、まことに穏当を欠くものでございまして、これらにつきましても厳重に注意を喚起いたしまして、いまお述べになったような方向で処置をしてまいりたい。いま自治大臣等からも答弁がございましたように、起債の年限を大幅にひとつ延長したい、あるいはまた、政府資金の貸し出しによって利率を緩和したい、そういう面からひとつ負担の軽減をできるだけしてまいりたいと、こう考えております。
  260. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 東京都の水の供給に関しましては、実は私のほうの所管で水資源開発公団というのがございまして、利根川を開発水系に指定をいたしておりまして、御承知のとおり、昨年の八月には荒川から四十万トンの取水ができる工事をいたしました。また、今年の二月に繰り上げまして利根川からの取水の工事をいたした次第でございます。もちろん、この利根川からの取水につきましては、上流に矢木沢のダム、下久保のダムをそれぞれただいま建設中でございます。それぞれ四十二年度及び四十三年度に完成いたしますので、また、利根川の河口せきについても今年度から着工いたすことにいたしておりますが、これらのものが完成しました暁におきましては利根川から百二十万トンの水が取水できることに相なっておる次第でございます。しこうして、今年度におきましても、非常な突貫工事と申しますか、工事の繰り上げをいたしまして、当初の計画は三月一ぱいで利根川からの取水工事ができる予定になっておりましたのを、二月に繰り上げました次第でございます。これは農業用水との関係もございまして、二月に繰り上げますと、三月分はこれは農業用水との関係なしに十分に取水しておけるというふうな関係から特に繰り上げて工事をいたしたような次第でございます。したがって、もちろんこれは天候その他の気象条件との関係も相当ございますが、昨年のようなことは絶対に今年はなかろうかと、かように考えておるような次第でございます。もちろん今後の対策につきましては、十分対策を東京都と協力いたしまして講じていきたいと、かように考えておる次第でございます。
  261. 千葉千代世

    千葉千代世君 昨年のようなことはないというのでたいへん心強いわけですが、昨年のひどさにまたなるなんということを考えたら、それはもう耐えられるものではございませんで、昨年のようなひどさではなくて、ことしは絶対にないように努力をするというふうに御訂正をいただきたいのです。
  262. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) どうも気象条件というものは、昨年も通常の気象の条件であればあんなことにならなかったわけでございますが、ああいうふうなことが何十年かに一回あるものでございますから、人間の知恵ではなかなかいかぬ場合もございますので、先ほどそういうふうなお答えをいたしました次第でございますが、まず今年は相当に緩和された状態になり、さほど心配をかけることはなかろうかという考えを持っている次第でございます。
  263. 千葉千代世

    千葉千代世君 次に、家内労働の問題に移りたいと思うのですけれども、その前に、厚生大臣にお尋ねいたしますけれども、昨年の六月厚生省の生活実態調査というものが発表されたわけなんですが、その中に、国民相の五七%を占める勤労者、三〇%を占める農民者の中で、勤労者中八百万人は低賃金労働者であり、年収二十万円以下の生活困窮者、ボーダー・ライン層は実に二千万人に及んでいます。また、年収二十四万円から三十六万円という世帯が全国民の二分の一に達していると、こういう現状だということを報告して、東北、四国、九州は、東海、近畿に比して約二倍の低所得層をかかえていると、こういうふうに発表されていますが、これは事実でございますか。
  264. 神田博

    国務大臣(神田博君) いまお述べになりましたことは、私もそういうふうに聞いております。事実でございます。
  265. 千葉千代世

    千葉千代世君 そこでお尋ねいたしますけれども、このように勤労者の賃金がたいへん安いために、いま内職をしている方々がずいぶん多いわけなんですけれども、大体日本じゅうで内職をしていらっしゃる方の数はどのくらいと把握していらっしゃるでしょうか。
  266. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) おおよそ六十七万ぐらいだろうと考えております。
  267. 千葉千代世

    千葉千代世君 その六十七万ぐらいというのは、どこを根拠にお調べになったのでしょうか。私は、大体百五十万か二百万ということを聞いているのですけれども
  268. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私どものほうで内職職業補導所がございます。それから厚生省のほうでも同様の施設がございます。そういうところを通しておりまするもの、それからあるいは発注者の側からわれわれのほうで把握できるもののおおよその数字でございます。ただ、これは非常につかみにくいのが実情でありまして、その調査が非常にむずかしいところに内職の問題あるいは家内労働の問題の困難さがございますが、私どものほうで出ております数字、これは非常に調査がかなり古い調査であります。三十七年か八年と記憶いたしておりまするが、なお詳細は基準局長からお答えいたします。
  269. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 家内労働者と一口に申しますが、いろいろな種類がございまして、私ども便宜的に三つに分類いたしております。第一は、たとえば洋食器の研摩のように所帯主が家内労働者を使いまして行なっているもの、専業的家内労働と、こう申しておりますが、それが約十万人程度、それから家庭の主婦とか未亡人がやっておりますいわゆる内職でございますが、これは六十七万人、先ほど大臣が御答弁いたしましたのはこの内職者であります。それから農業に従事いたしております者が農閑期にたとえばアケビ細工だとかシュロ細工といったような副業的な家内労働をいたしますが、これを私ども副業的家内労働と、かように申しておりますが、その数約四万ございます。大臣が御答弁されましたようにやや古く、昭和三十七年末の調査でございますが、行政機関、私どもの第一線機関を使いまして調査した数字でございます。合計八十二万、こういう数字でございます。
  270. 千葉千代世

    千葉千代世君 私は主として内職関係で質問したいと思っております。いまの家内労働の中の主婦の内職という点にしぼって質問したいと思いますが、主婦が内職をしなければ過ごしていけないということは、一般の賃金が安いからだということになると思うのですけれども、具体的には、御承知のたとえばテレビを一台求めるのに必要な労働時間などを計算してみますというと、米国では四十一時間働けばテレビが買えるとか、西独では百五十一時間、日本では二百七十三時間働かないというと同じ値段のテレビが買えない。これを比較して見ていきましても、日本の賃金がいかに安いかということになるわけなんです。それに加えて、賃金の安いところへもっていって、税金は高いし、物価は上がってくる。お米から水道、おとうふ、何から何まで一切がっさい物価が上がっていくと、こういう中で必然的に生活のしわ寄せというものが毎日のやりくりをしていらっしゃる主婦の肩にかかってきて、その上に今度は幼稚園から大学まで入学試験の地獄で、相当お金がなければ、これまた私立の学校にも行けないと、こういう二重にも三重にも苦しい中で、何とか内職をして解決していこうと必死になっているおかあさん方、大体その内職の世帯数が百五十万くらいだといわれておる。その九割が既婚者だということを聞いているわけですけれども、その地域は、やはり東京などが筆頭で、全体の二割ぐらいになっているという。この二割というのは内職公共職業補導所の調べになっておりますけれども、そういう中で、おかあさんたちが一体一日働いてどのくらいの収入を得ているとお考えになるでしょうか、労働大臣にお尋ねいたしますけれども、それは、いろいろしております種類によっても違いますけれども、おおよそのところ。
  271. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 詳細な数字は事務当局からお答えをいたしますが、私が承知いたしておりますのは、五時間ないし六時間の労働で二百九十九円以下が大体六割を占めておるように承知をいたしております。
  272. 千葉千代世

    千葉千代世君 事務当局に答えていただく内容を申し上げたいのですが、いま労働大臣は大まかなお答えをされたのですが、たとえば一回の工賃とか、それから一個つくるのにどれくらい時間がかかるとか、一日に働く時間はどのくらいであるとか、一カ月の収入はどのくらいであるとか、こういうごく簡単なことについてお答えいただきたいのですが。
  273. 谷野せつ

    政府委員(谷野せつ君) 内職公共職業補導所の調査によりまして申し上げたいと存じますが、一がいに内職と申しましても、地域や職種によりましてたいへん違いがございます。まず地域の調査から申し上げてみますと、札幌市では大体内職の平均月収が五千三十円となっておりまして、日収が二百六十三円、一日の労働時間が六時間ということでございいます。また、秋田市でございますと平均月収が三千九百八十六円、内職の日収が二百五円、一日の労働時間が五・四時間ということでございます。東京都で申し上げますと平均月収が四千九百五十八円、日収が二百四十九円、一日の労働時間が五・四時間でございます。名古屋市におきましては月収が四千二百七十八円、それから日収が二百八円、労働時間が五・八時間。高知市におきましては平均月収が二千三百七円、日収が百三十円、一日の労働時間が四・六時間。長崎市におきまして二千九百八十二円が月収でございまして、日収が百七十九円、一日の労働時間が五・七時間ということでございます。
  274. 千葉千代世

    千葉千代世君 たいへん詳しい御説明がありましたんですが、お聞きになってもわかりますとおり、たいへん低賃金です。全くお話にならない賃金で働いているわけなんです。私も個々に当たりまして、たとえばげたの鼻緒の内職は幾らとか、あるいはネックレスの金をつなぐのに幾らであるとか、クリスマス・カードについてはどうであるとか、造花とか、あるいは荷札とか、ずっと具体的に個人に当たって調べてみたのですけれども、ほんとうにお話にならない賃金で、しかも一生懸命になって働いているわけです。しかも、このおかあさんは幼稚園へ子供を入れたい。私立幼稚園に入れるについては、これは年間大体一万円ぐらいかかる、こういうお話であったわけです。容易ではない、こういうことで、たいへん心配していらっしゃるのですけれども、とにもかくにもこんなに安い賃金で放置しておくというのは、やはり国の政策上まずいことではないか。そこで、私お尋ねしたいのですけれども、諸外国では大体いま家内労働法などをどのようにしていらっしゃるのでしょう。最低賃金制との関連についてお尋ねしたいと思うのです。
  275. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 御指摘のように、内職の工賃は発注者が零細企業であるということと、それから従事しておる人たちが散在をしておりまして、つかみにくいというようなことがございまして、非常に安い賃金でございます。したがって、これを是正いたしますためには、まだ数が少ないのでありますが、全国に現在三十六ございまして、今度の予算で二カ所の増設をお願いしておりますが、内職公共職業補導所、これを活用いたして、適正な賃金の指導、内職のあっせん等に、できる限りのことをいたしておるのであります。しかし、まだまだむろん及びません。そこで、家内内職も含んだ家内労働一般につきまして適正な賃金を求めてまいりまするためには、最低賃金法の中の第二十条にきめてございます最低工賃の決定という方法が一つございますが、これもむろん進めてまいらなければならないのでありますけれども、そのためには、そのほかそれに至るまでの条件整備が必要であります。法十条、十一条あるいは十六条の規定における最低賃金の決定、あるいはその決定のために家内労働の賃金に悪い影響を及ぼすというようなことが、いろいろな状態の上で出るようになっておりますが、そういうことを考慮しつつ最低工賃の決定にも努力をしてまいりたいと思っております。  いま一つは、内職補導所を通じまして、標準賃金を決定することによって、標準賃金の行政指導によりまして賃金の上昇につとめてまいりたいと思っております。  最後に、御質問の家内労働法でございますが、わが国におきましても昭和三十四年に家内労働調査会を設けまして、家内労働法の制定を目ざして努力をいたしております。この家内労働調査会は、ちょっといろいろな事情がございまして、昨年から活動が少し鈍っております。これはたいへん遺憾なことに存じておりますので、至急その活動を開始させるように慫慂いたしておるところでございますが、なかなか問題の所在が複雑でありまして、適切な立法をいたしますのに困難をいたしておりますが、この困難を乗り切って、できるだけ早く家内労働法の制定にこぎつけていきたいと思っております。外国の例でございますが、詳しくは事務当局からお答えいたしますが、おおよその私の承知しております範囲では、単独で家内労働法を制定しております国が十三ばかりございます。それから一般の労働法の中で家内労働にこれを援用するような法律制度を設けております国が二十五、六あるように記憶をいたしておるのでございます。
  276. 千葉千代世

    千葉千代世君 いま、家内労働調査会の半身不随になったという話があったですね。いろいろな事情というのは財界からのですか、具体的に言えば。ちょっとそれを答えてください。
  277. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) そうじゃありません。そういう方面の事情という意味ではございません。三十四年以来、毎年、年九回ずつぐらいの総会を設けまして熱心にやっておりましたのでございますが、しかし、問題の所在の非常に複雑なのと、それからもう一つは、法制定前にやるべき行政指導がありまして、その法制定前にいろいろな行政指導をやるようにという指示を一たん決定いたしまして、それに従ってできる限りの行政指導を私どものほうではやっておりますのでございますが、その行政指導をやると一たん決定したということのほかに、これは公にすべきことかどうか知りませんが会長が御病気であったり、そういうような事情のために、昨年は開会が非常におくれた。私、就任以来、これをすみやかに開会していただきますようにお願いをいたしまして、ごく近い機会から再開をいたすことに相なっております。
  278. 千葉千代世

    千葉千代世君 私、いま財界からかというのを伺ったのは、最近、年少労働者などが得られないものですから、下請工場に出すのを主婦の内職にゆだねておるという、たとえばトランジスタとかいろいろな部分品なんかを全部ゆだねておるところが多いわけです。そういうふうにすりかえられていって、安い賃金でまた働く。賃金が安いから時間も多くしなければならないと、悪循環にして、全体の賃金を下げていくというような方向もないではないわけです。そういう点で、やはり安心して内職ができるという——内職はほんとうはない世の中がほしいわけですけれども、現実にあるならば、やはり最低の保障がされていくという、こういう方向で、とりあえずやはり家内労働法などについて特に御配慮いただきたいと思っております。
  279. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) いろいろ労働力の不足やその他の事態から、ただいまの御指摘のように、相当な企業でも内職に出すという事例も出てまいりました。したがって、そういう面から、いわゆる適正な労働賃金を維持し、それを向上させるという観点からも、家内労働の賃金の適正化ということは、これは必要だと思っております。したがって、できるだけ早く法制定に向かって進みたいと存じておるのでありますが、御承知のごとく、先ほど基準局長が申しましたように、家内労働自体の業態に三通りあります。しかもその対象業種が非常にたくさんございます。そうして特に内職関係では、継続してやられている場合とそうでない場合とございます。いろいろな複雑な条件がございまして、それが法制定を困難にしておるのでありまして、よそからの圧力ということはございません。たとえございましても、そういうものに影響されることはないことを申し上げておきたいと思います。
  280. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  281. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 速記を起こして。  本日はこの程度にいたしまして、明九日午前十時に委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十二分散会