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1965-03-05 第48回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月五日(金曜日)    午前十一時六分開会     —————————————    委員の異動  三月五日     辞任         補欠選任      中野 文門君     山崎  斉君      佐野  廣君     大竹平八郎君      向井 長年君     高山 恒雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 大谷藤之助君                 迫水 久常君                 日高 広為君                 村山 道雄君                 中村 順造君                 藤田  進君                 鈴木 一弘君                 田畑 金光君     委 員                 植垣弥一郎君                 植竹 春彦君                 江藤  智君                 大竹平八郎君                 太田 正孝君                 草葉 隆圓君                 古池 信三君                 郡  祐一君                 櫻井 志郎君                 白井  勇君                 田中 啓一君                 鳥畠徳次郎君                 野本 品吉君                 前田佳都男君                 森 八三一君                 山崎  斉君                 吉江 勝保君                 阿具根 登君                 亀田 得治君                 木村禧八郎君                 鈴木  壽君                 瀬谷 英行君                 千葉千代世君                 戸叶  武君                 羽生 三七君                 横川 正市君                 米田  勲君                 小平 芳平君                 中尾 辰義君                 高山 恒雄君                 向井 長年君                 佐藤 尚武君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  高橋  等君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        厚 生 大 臣  神田  博君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   櫻内 義雄君        運 輸 大 臣  松浦周太郎君        郵 政 大 臣  徳安 實藏君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  小山 長規君        自 治 大 臣  吉武 恵市君        国 務 大 臣  小泉 純也君        国 務 大 臣  高橋  衛君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣官房長官  竹下  登君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        総理府総務長官  臼井 莊一君        内閣総理大臣官        房公務員制度調        査室長      岡田 勝二君        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        防衛庁防衛局長  海原  治君        防衛庁参事官   麻生  茂君        法務省入国管理        局長       八木 正男君        外務大臣官房長  高野 藤吉君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省アメリカ        局長       安川  壯君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        大蔵政務次官   鍋島 直紹君        大蔵省主計局長  佐藤 一郎君        大蔵省主税局長  泉 美之松君        大蔵省理財局長  佐竹  浩君        文部省社会教育        局長       蒲生 芳郎君        農林政務次官   谷口 慶吉君        農林大臣官房長  中西 一郎君        農林省農林経済        局長       久宗  高君        農林省農政局長  昌谷  孝君        農林省畜産局長  桧垣徳太郎君        水産庁次長    和田 正明君        通商産業省通商        局長       山本 重信君        中小企業庁長官  中野 正一君        労働大臣官房労        働統計調査部長  大宮 五郎君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省婦人少年        局長       谷野 せつ君        労働省職業訓練        局長       松永 正男君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上衆議院送付の三案を一括議題とし、昨日に引き続き質疑を行ないます。
  3. 藤田進

    藤田進君 当予算委員会は、昨日、亀田委員三矢計画に関する資料要求に関連いたしまして休憩となり、理事間でいろいろ折衝を持ったわけであります。この際、内閣総理大臣に二、三の点についてお伺いをいたしたいと思うのであります。  わが国最高機関といわれている国会に対して、重要であればあるほど、その的確な資料、記録あるいは報告をなさるのが至当であろうと思う。ところで、昨日来質疑をかわしましたところですと、内閣総理大臣におかれては、次のような、速記によりますと、答弁がなされております。すなわち、「先ほど防衛庁長官がお答えいたしましたように、ただいま考慮中ということでございますが、私、総理として考えますのに、審議には私ども協力したい、かような立場でございますので、できるだけ資料提出するようにいろいろ督励はいたしております。」——督励はしておるのです、出すように。「ただいままでのところ、先ほど来申しましたような原則に立ちまして、まだ結論が出てない、かような状態でございますので、その点はいましばらく、結論を出すまでお待ちいただきたいと思います。ただいまの考慮中というのはさような意味でございます。」——こう答えられておるのであります。このことは、当然前向きに、議会と行政府関係とを論ずるまでもなく、的確な資料を、しかもすみやかにお出しになるという、その態度考慮をされるものと私どもは解しております。この昨日の御答弁については、本日のところ、ごうも変更はないと思われるが、この点、まずお伺いいたしたい。
  4. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  国会政府、これはそれぞれが責任を持っておりますが、国会審議に対して政府自身が御協力申し上げることは、これは当然でございます。しかし、政府自身には、最初に申し上げましたように、責任の持てるもの、また、政府自身がいろいろの影響等考えて、みずからこれは出せないもの、こういうものがあるわけでございます。したがいまして、こういう点について、とくと考慮して審議協力するというその立場において、冒頭に申しましたような原則がありましても審議協力する、こういう立場において、できるだけのことはしたい、昨日申し上げたとおりでありまして、今日もこの考えに変わりはございません。
  5. 藤田進

    藤田進君 一点、重ねてお伺いをいたしますが、いろいろな影響等、それと、責任の持てないというところで、具体的に総理考えておられると思われる、審議協力し、できるだけ資料を出すというものがひん曲げられている。だとすれば、国会自体にも、政府要求があれば特に会議秘密会にすることもできる。そのような、何ら考慮を払われないところに、われわれもふに落ちないものがあるのであります。このままほおかむりでいこうという考えなんでしょうか、お伺いしたい。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 皆さん方審議の経過でよく御存じだと思います。たとえば、外交問題だとか、あるいは警察、あるいは検察の問題、あるいはまた防衛上の問題だとか、こういうようなものは、ときに政府自身が、ただいま交渉中だとか、あるいはまた、ただいまどういう関係にあるとか、あるいはまた、それを公表することが国政の運営上に悪影響を及ぼすとか、こういうことが過去においてもありました。また、その点はよく御承知だと思います。しかし私は、そういうことがありましても審議には協力するという立場で、これは誠意をもって、こういう問題を解決していこう、この熱意は、先ほど来御説明申し上げておるのであります。もちろん国会も、参議院あり、衆議院あり、それぞれその両院に対しまして、私ども態度も公正でなければならない。一院に対してどういう処置をとり、他のほうに対してまた別の処置をとる、こういう政府態度では許されないと思います。そういう点もありますので、防衛庁といたしましても、ただいまのところ、いろいろ考究しておる、こういう状況でございますので、これらの間の事情は、もう長い議員生活でいらっしゃいますので、私が申し上げるまでもなく御了承がいただける、かように私は存ずる次第でございます。何とぞよろしくお願いいたします。
  7. 藤田進

    藤田進君 審議協力するということであるので、亀田委員が具体的にはお伺いをし、その審議協力の本体というものは逐次事実が証明すると思います。  ところで、昨日、参議院予算委員会理事会は、鋭意事態収拾につとめておりましたところ、橋本官房長官は、昨日正午記者会見されましたみぎり、資料は一切出さないという趣旨談話を、ことさらに発表されていることが、それぞれの有力紙によって報道されているのであります。橋本官房長官におかれては、「吉田書簡関知せず」、総理は、「いや、これはそうはいかない」——その他事例をあげれば、日浅しといえども、かなりあると思われる。(「それはおかしい」と呼ぶ者あり)おかしかったら聞いてください。(「おかしいから質問している」と呼ぶ者あり)  この点は、ただいま総理に直接確かめてみると、昨日同様に、資料提出については協力するというたてまえで、具体的には本件考慮中である、いましばらく待ってくれということであるようであります。にもかかわらず、内閣官房長官はわざわざ記者会見をして、事態収拾のさなかに、このような談話発表の形式をもって、全く話し合いを行き詰まらせるということは、一体どこに意図があるのか。総理大臣官房長官の間にどのような連絡があったのだろうか。私は、今後の議会運営について、当予算委員会運営について重大な問題であると解します。この際、その真相を明らかにしていただきたいと思う。
  8. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) ただいま、藤田委員からの御質問でありまするが、先ほど総理がお答え申し上げた考え方と全く同じでありまするが、新聞談話等で私の説明の不十分なところもあったろうと思います。それが、あるいは誤解の原因にもなったろうと思いますが、もちろん、国会審議につきましては、当然審議権を尊重し、かつ協力するたてまえにはもちろん変わりはありません。したがって、ここで申し上げることが公的な立場で申し上げるのでありまするが、総理先ほど申されましたように、国会審議権を尊重し、かつまた国会考え方についても、われわれできるだけの協力をするというたてまえで、総理のおっしゃられたとおりに、私も考え方が同じである。御了解をお願い申し上げたい次第であります。
  9. 藤田進

    藤田進君 時間的に考慮を払いまして、内容は読みませんでしたが、次のように報道されております。「政府としては社会党が要求しているような資料は題目も含めて一切出す考えはない。提出しないことによって予算審議が渋滞するとは思えない。三矢研究予算関係ないので」——関係ないので、「審議審議として進めてほしい」——予算委員会特殊性は、国政全般について、国民にかわって慎重審議する場であると私は理解する。本件三矢計画なるものは予算関係がないので、そういういわば、越権、所管でもない委員会がとやかくする、ということが、これまた、資料を出す出さないにウエートがあるようにも解されるのである。ことば足らずとおっしゃるけれども議会を通じて国民事態を明らかにする場合と、直接報道のいわゆるマスコミを通じて国民事態を明らかにする場合と、いろいろありましょう。その両刀使いで、一面、議会においては、総理答弁同様であると言い、院外においては、全くこれを否定する発言がなされるということは、私は重大な問題であると思う。これが、一度ならず、重なってまいっているのであります。お渡しいたしますから、よく読まれて、事実誤報であるならば誤報である、その措置はどうする。明らかにしてもらいたい。
  10. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) ただいまの藤田委員の御質問でありまするが、用語の不十分な点はもちろんあったと思いますけれども、その他の二、三の新聞をごらんになってもらいますれば御理解願えると思いまするが、三矢研究に関する資料の提供については検討中である、かように三、四の新聞が書いておられます。のみならず、先ほどから、私自身が積極的な発言をしたようにお話しでありまするが、御承知のように、当委員会が中断されておりまして、そこで記者会見の際に、どういう事情で中断されたかということから起きたのであって、私が積極的にいわゆる外部にものを言わんがために申し上げたのではないのでありますから、それは、いずれにいたしましても、私の十分なる真意を伝えておらない点は、これは注意をいたしまするが、考え方は全く総理同一考え方である点を御了承願いたいと思います。
  11. 藤田進

    藤田進君 これ、うやむやになってしまうんです。これでは国民は迷うです。そうすれば、端的に聞きますが、そのお渡しいたしました新聞報道は全く誤報である、こういうことは言っていない、それでよろしゅうございますか。総理と全く同じ考えであって、その報道——それはまるっきり逆ですからね。誤報である、よろしゅうございますか。
  12. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 先ほど来申し上げましたように、私のことばの不十分な点はあろうと思いまするが、これを一がいに誤報であると申し上げるよりは、私の説明の不十分な点があった、しかしその真意は、総理と全く考えは同じである、かように公の席上で申し上げたのでありますからして、これをもって御了承を願いたいと思います。
  13. 藤田進

    藤田進君 それは、ことばが足りないとかなんとか言われますが、ことばははっきりと足りているんでしょうが。予算委員会でそんなものは審議するべきものじゃないということが一つ資料は出さないという断定をされている。ことばが足りる足りないの問題じゃないんです。資料は出さないと言った覚えはない、目下考慮中であると言ったのにこう書いてある、予算委員会でそのようなものを審議すべきではない、関係ないと言った覚えはない、それなのに新聞は書いている、こうなんじゃありませんか。私は将来の問題があるので明確にしてもらいたいのであります。
  14. 橋本登美三郎

    政府委員橋本登美三郎君) 先ほども申し上げましたように、この当委員会は公の席上でありますから、この公の席上において私はいわゆる総理考え方と全く同じであると申し上げたのでありますからして、それで御了承を願いたいのであります。
  15. 藤田進

    藤田進君 しかしそれは、これほど問題になっている三矢計画資料に関して、そして今日の新聞その他のウエートというものを感じますと、議会で言っているのがほんとうであって、外で言うのは責任もなにもないので、何を言おうと、それは自由であるかのような言い回しです。そうであってはならないんじゃありませんか。明確にしていただきたい。総理はどう思いますか。あれを見てくださいよ。あなた新聞を読まれるでしょうから。誤りなら誤りであると、どっちか明確にしてくださいよ。
  16. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 官房長官の記事は私も見ました。これはいろいろ誤解を受けるだろう、そのように私も考えておりまして、きょうこの席でお尋ねがあるのは当然だと思います。私は先ほど来、政府態度最高責任者として国会において申し上げたのでございまして、また官房長官言い回しその他において不十分であった、かように申してはおりますが、この席上において、私と全然同一考え方だ、かように申しておりますので、この国会最高審議機関である、その立場に立って御判断をいただき、また外でしゃべることにつきましても十分今後は注意をするだろう、かように思いますので、御了承をいただきたいと思います。
  17. 藤田進

    藤田進君 まあ、期待可能性があるかどうか。——今後注意するだろうということですが、注意するのですか、どうですか。内と外と違うというようなことは、あまりにも内閣官房長官として不見識です。新聞誤報であるということが実体的にわかりました。あのような発言のことがみじんも胸中にあっては困ると思います。特に、予算委員会審議すべきものでないごとき、ものの言い回しは了解できません。総理答弁がもちろん内閣を代表せられたものであると理解いたしますが、まあ以下、亀田委員が逐次実体について究明いたすでございましょうが、その御答弁を期待して、私は終わりたいと思います。     —————————————
  18. 平島敏夫

  19. 亀田得治

    亀田得治君 昨日に引き続きまして、三矢問題につきまして質問をいたします。  研究課題として二十四あるということは、昨日、答弁で明確になっておるわけでありますが、時間の関係等考慮いたしまして、その中のナンバー一〇並びにナンバー一二、この点についてだけ私が持っておる資料によりましてお尋ねをしたいと思います。  その資料によりますと、ナンバー一〇の研究課題というのは、読み上げます。「七月二十日までの状況に対し、逐次とった統幕、各藩としての措置ならびに防衛庁及び政府レベルにおいてとらるべき措置について、主要事項を列挙し、その骨子を述べよ。」、こういうものであります。ナンバー一二は「七月二十一日臨時閣議において決定されたわが国防衛基本方針ならびに所要国家施策についてその骨子を述べよ」、こうなっておるわけでありますが、この点は、防衛庁にある三矢資料、その中の研究課題同一であると考えるわけでありますが、いかがでしょう。
  20. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) ただいま亀田委員からの御指摘と、おおよそ同じような内容のものがございます。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 「おおよそ」というのは、どういうのです。
  22. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 一字一句そのままのものであるということを申し上げるわけにいきませんので、大体そういうような内容のものはあるということを承知いたしておりますので、そのように申し上げたのであります。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 ナンバー一〇の中に「政府レベルにおいてとらるべき措置」、こういうことばがあります。ナンバー一二の中には「所要国家施策」、こういうことばがある。この二つことばは、おのおのございますか。
  24. 海原治

    政府委員海原治君) ただいま先生がおっしゃいましたおことばはございます。  なお、先ほど大臣の御説明を補足いたしますと、この、まとめましたレポートの場所によりましては、先生と同じようなことばを使っているところもございますし、さらに、まとめて問題として出してありますところには別のことばも使ってございます。したがいまして、大臣からは、おおむねそのような内容のものだ、こういうふうに御答弁に相なったわけでございます。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 ナンバー一二の研究課題に関連して出ておる回答に触れてみたいと思います。  これもたくさん問題があるわけですが、そのうち二つの点だけについて触れまして、私がいま読み上げるようなことがあるかどうか明らかにしてほしいと思います。  その一つは、「用兵基本に関する事項」、この中の1の(3)、「自衛隊の用兵地域は、わが国施策下にある全領域並びにその周辺海空域とし、海空の部隊がその外域に作戦する必要がある場合は、あらかじめ定めてあるものを除き、その都度指示する。」、これはどうです。
  26. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) ただいま御指摘のものにつきましては、お答えを申し上げるわけにいきません。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 答えられない理由、はっきりしてもらいましょう。
  28. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 国会の場においてお答え申し上げるものと、また国家機密をいろいろな面からお答えできない面もあるのでございまして、この場合、お答え申し上げるわけにはいかないと申し上げたのであります。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 もう一つ確かめます。「外交及び安保条約運営に関する事項」、この中の2の(4)、「将来核兵器日本国内持ち込みが、ただちに必要な情勢となった場合は、持ち込まれた核兵器の使用に関しては事前に必らず日米両国政府の完全なる合意を必要とする条件のもとに承認する予定である。」、こう書いてある。きわめて重大なことです。従来の政府の政策に反する。こういう文章はあるはずでございますが、いかがですか。
  30. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 三矢研究内容その他資料につきましても、昨日来総理大臣からも私からも考慮中である旨をお答え申し上げておりまして、本日も総理大臣におかれましても、審議にできるだけ協力をしたい、そういう意味において考慮をいたしておる旨の御答弁がございました。私におきましても、三矢研究実体を明らかにしていきたいという希望を持ち、もちろん国会審議に御協力をいたさなければならないのでございまして、そういうこと一切を含めて、どういう時期にどういうものを資料として御提出を申し上げるかというようなことまで、一切を含めて考慮中でございますので、そういうことに対しまして、ただいまのところ御答弁申し上げるわけにはまいりません。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 できるだけひとつ早い時期にこちらの要求しておる全資料、これを明らかにしてほしいと思います。ここで強く総理防衛庁長官に要請しておきます。(「委員長からも要請してくれ」と呼ぶ者あり)
  32. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいま亀田君から資料提出に対しまして御要望がありましたが、委員長からも、三矢研究関係資料提出についてはできるだけ早く措置していただきたいと思います。   〔藤田進発言の許可を求む〕
  33. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 藤田君。
  34. 藤田進

    藤田進君 理事会で劈頭いろいろ協議いたしました際に申し上げた、委員長からも再度要求するということに相なっておりましたが、いま委員長がすみやかに措置されたいという趣旨は、昨日劈頭、委員長から政府要求せられたと同趣旨で、すみやかに提出すべきであるという趣旨に解しますが、よろしゅうございますか、委員長
  35. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 意味はそのとおりであります。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 資料のことでたいへん手間どりましたが、中身の質疑資料を見ていずれの機会かにいたしますが、外形的な事実関係につきましてもう少し確かめておきたいと思います。  一つは、研究の行なわれた場所を明確にしてほしい。
  37. 海原治

    政府委員海原治君) 研究の行なわれました場所につきましては、昨日冒頭御説明いたしましたように、各自の自室と、それから最終段階におきましては市ケ谷に合同で図上演習を——図演を行ないます講堂があります、この市ケ谷の図演講堂において行ないました。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 各自の自室というのは、防衛庁内の各自の部屋……。
  39. 海原治

    政府委員海原治君) 防衛庁内の各自の部屋及びそれぞれ所属の各部が会議の部屋を持っております、この両方でございます。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 時間はどういう時間にやられたのですか、私の聞くのは勤務時間内にやられておるのかどうか。
  41. 海原治

    政府委員海原治君) 私の承知いたしておりますところでは勤務時間内であります。ただし昨日も申し上げましたように、問題を与えまして、これの答案を出させておりますので、場合によりましては自宅に持ち帰って勉強して答案を書いた、こういう例もございます。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 この参加者は、特別腕章等を巻いてやられたようにも聞くわけですが、明らかにしてほしい。
  43. 海原治

    政府委員海原治君) 市ケ谷の図演講堂におきます合同研究の際には、それぞれの身分と申しますか、立場と申しますか、職責を明らかにするための標識をつけて実施いたしました。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 どんな標識です。
  45. 海原治

    政府委員海原治君) 赤とか青とかの腕章をつけたと聞いておりますが、正確には現在覚えておりません。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 これは調べて適当なときに答えてください。
  47. 海原治

    政府委員海原治君) お申し出のようにいたします。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 集計された研究の結果はどの程度の大きさのものですか。
  49. 海原治

    政府委員海原治君) この研究の結果は第一部、第二部に分かれておりまして、第一部というのが一冊で、これは研究の概要を取りまとめたものでございまして、第二部は四つの分冊になっております。これは昨日も申し上げました、第一から第七の段階に応じまして、二十四の問題が出ております。この問題と答案とを取りまとめたものでございまして、この全部を合計いたしますると千四百十九ページでございます。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 千四百十九ページのものが何部作成されておるのですか。
  51. 海原治

    政府委員海原治君) 何部作成したかについてお答えいたします前に、少し説明を申し上げますと、これは演習が六月の二十二日に終了いたしております。問題を与えまして答案を出させて研究をしますと、そのつど関係のものは全部引き上げております。その演習実施の際には、約六十部を基準にしましていろいろ印刷をしております。これが演習を終わりましたあとでは、必要部数だけを残しまして、あとは全部焼却いたしております。その残りましたものを取りまとめましたものが若干部数保管されておる、こういうことが実態でございます。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 若干というのは五ですか六ですか。どういう数字なのですか。重要なものだから、わずかのものだからわかるでしょう。
  53. 海原治

    政府委員海原治君) 先ほど申し上げました第一部が十六部でございます。第二部は九部でございます。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 防衛庁でも三矢研究ということばをお使いになり、略称となっているようですが、三矢ということばについては巷間いろいろ説があるわけですが、責任のある防衛庁の、そういう名前をつけた理由はどういうことなのか、明らかにしてほしい。
  55. 海原治

    政府委員海原治君) 三矢という名前をつけました理由でございますが、これは昨日も御説明いたしましたように、演習の関係者が自分の演習についてつけた名前でございます。統裁官をいたしておりました田中陸将に私が聞きましたところでは、これは昭和三十八年度の研究、「三八」というのは「みつや」になるわけです。同時にいわゆる三つの矢、すなわち毛利元就の三つの矢というのもございますし、さらには陸海空の三つの矢という、このいろいろなことがございますが、略称三矢ということを用いた、こういうことでございます。おそらくこれが真相であろうと思います。  なお、この際申し上げておきますが、衆議院におきましても、当院におきましても、いわゆる三矢作戦ということばをお使いになりました。これが昨年の秋に出ましたある有力な雑誌には、米軍の三つの矢の作戦、すなわちスリー・アロー作戦と同じような形において取り扱われておりますが、これは全くの誤りでございます。米軍にはスリー・アロー作戦というのはございません。したがいまして、私ども三矢研究というのは、いま申しましたようなことで名称をつけられたわけでございますが、たまたま三つの矢というのが同じでございます。巷間におきましては、防衛庁三矢研究と米軍のいわゆるスリー・アロー作戦なるもの、この二つが混同されまして行なわれておりますが、この点は、そのように全然別個のものであり、何らの関係もないものだということを御認識いただきたいと思います。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 そこで総理お尋ねするわけですが、この問題が起きてから、総理はこの文章をお調べになられたですか。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 文章全部は調べてはおりませんが、その大綱、この演習はどういうことでやったのか、先ほど防衛局長説明したような筋、またそれに基づてレポートを集計したのか、こういうことで、いわゆる政府責任の持てないものだということだけははっきりいたしました。私は全部は読んでおりません。しかしながら、図上演習であるとか、その実態、並びにこれがその一部の連中の報告を集めたものだ、そういう意味で、政府自身責任の持てないものだということははっきりいたしました。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 そういう中身の評価については、これはまた資料を見た上で私たちはやります。いまお聞きしておるのは、総理はそういう説明を部下からお聞きになったということですか、あるいは直接文章を手に取ってお調べになっておられるのか、どちらですか。
  59. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申し上げましたように、千四百ページ全部は読んでおりません。一部は私も見ました。
  60. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。問題は、先日来、衆議院、参議院を通じて、総理が今後の調査ということは、おっしゃっておるからよくわかりますが、調査した結果、政府として何らかの考え方国民の前に明らかにする意思はないのでありますか。うやむやに、このまま何のことかわからずに済んでしまうのか、国会答弁を通じてだけでなしに、政府自身として何らかの対外的な考慮を払う必要はありませんか、国民に対しての面。
  61. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国会で問題になりましたが、同時に国会に対しましても十分説明をしたい。また、そういう意味審議に御協力申し上げたい、こういうことを考えております。先ほど来申しましたように、国会は二院制度でありますので、その一院だけ、いかような処置というわけにはいかない。これは両院に対しまして同一の処遇をするつもりでございます。そういう意味の審査に協力するというたてまえでございます。同時にまた、この問題をめぐりまして、国民多数もたいへん心配しておることだと思います。私は政府責任におきましても、ただいまお尋ねになりましたような機会をつかむことが適当ではないだろうかただいま研究しておる。まだ最終的結論は出しておりませんが、ただいまそういうことを考えるべきではないだろうか、かように私は思っております。
  62. 阿具根登

    ○阿具根登君 関連。総理答弁の中で、たびたび政府責任を持てないということを言っておられるわけです。いまの答弁でも千四百十九ページに及ぶものを一々見ておらないけれども、これはまあ必要なところを全部見たけれども政府責任を持てないものだということがわかったと言われる。政府責任を持てないものを、政府の管轄内でやっておる場合に、どういう処分をされるのか、政府責任を持てないということを、あなたの指揮下にある自衛隊が研究をやっておるということに対しては、あなたは最高責任者としてどういう考えをお持ちになっておるのか、この点をお聞きしたい。
  63. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、亀田君からもその点の内容についてはいずれ明白にするから、かようなお話をしておられます。私は私なりの考え方先ほど来の答弁をいたしたわけであります。いずれ国会におきましても、そういう点についての論議は自由にかわされるだろうと、私はかように考えております。ただ、申し上げたいのは、私が最高責任者ではございますけれども、多数の公務員がおる、それらの者が自分たちでいろいろ研究をしておる、そうしてそのものを政府が取り上げて、政府責任において一つの決定をした、こういうものであるならば、政府はもちろん責任をとるものだ、かように私は思います。幾らだれがどういうことをしたにいたしましても、その最終的決定なしに、その中間におていの図上演習のそのものを、それで政府責任が負えない、かようなことを申し上げておるのです。いずれこういう点はさらに審議で明確になるだろう、私はかように思っております。またそれを期待いたしております。
  64. 阿具根登

    ○阿具根登君 明快じゃないのです。これだけの人が、五十三名ですよ、この図上作戦に参加されておる方は。(「五十七名だ」と呼ぶ者あり)この書類では五十三名ということです、いまいただいておるのでは。これはほとんど最高幹部の方です、全部。将官から最低で二佐です。そういう人たちが、これだけ国民の疑惑を持ち、衆参両院でこれだけの時間を費して審議しなければならないような重大な問題なんです。それを一官僚のどこかが何かをやったけれども政府責任を持たぬのだというような軽い考えでやっておられたら困る。これだけ疑惑を持たれておるとするならば、しかもその内容も知っておられる総理大臣が、これは政府として責任が持てないとするならば、そういう持てないものをこれだけの人が計画をし、研究したということに対して、どうあるべきかという総理のここにはっきりした私は説明が要ると思う。あなた全部知っておられるのです。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 誤解は困りますが、もちろん自衛隊が図上作戦をする、演習することはこれは当然の職務だと、かように思います。この点はだれも御異議はないだろう。演習自身もしちゃいかぬ、そういう自衛隊はないだろうと思います。国防のことについて社会党の方も特に真剣に考えられておる、かように私思いますので、自衛隊が本来の職務について、そうして演習をすること、これは自由だとかように思います。その演習をした、その報告をした、その報告自身政府の決定であるあるいは自衛隊自身防衛庁自身がこれをとり上げて決定をしたというようなものであるならば、もちろん政府責任をとります。しかしながら、これはただ単に報告の集計だ、かように申しておる限りにおいては、政府は決定ではございません。この点ははっきり申し上げておる。したがって、私はこの三矢研究なるものの自体について、いろいろの論議がかわされております。しかし自衛隊がやっておる平素の職分についてただいまのように自衛隊は何をしちゃいかぬとか、演習までしちゃいかぬとか、かような考え方が一部にあるようですから、そういうことの誤解は解きたい、私はただいま申し上げるような考え方でございます。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 たとえ研究といえども許せない、こういう問題も世の中にはたくさんあるわけなんです。総理はこの文書をお調べになったとおっしゃるわけですが、どの点を具体的に、たとえこれは研究といえども行き過ぎだ、不当だという点があったかどうか、その点を御指摘を願いたいわけなんです。
  67. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも中身に触れないでいま議論をしておりますので、いろいろ誤解を受けるように思います。私が衆議院において岡田議員から質問を受けまして、そうしてこれは自衛隊内におけるクーデターだと、こういうようなお話がありました。もしもそういうことがあるならば、それは許せない、かように私は申しました。またこの研究自身を、これは三矢計画だと、かようなお話もございましたが、自衛隊自身さような計画は持ってはおりません。こういう意味で、その点ははっきりいたしたわけでございますが、いずれにいたしましても、この内容について御審議をいただき、あまりにもそれが空想めいたものあるいは妄想めいたもの、こういうことであるならば、その研究は行き過ぎだと、もちろん注意すべきことだと思います。ただいま申し上げますように、防衛庁自身においてこれを取り上げておらない、これを決定しておらない、こういう点をやはり皆さん方にも十分御研究をいただきたいものだと、かように私は思うのでありまして、先ほど関連質問からお尋ねがございましたが、そういう意味で私の所信を明らかにしたわけであります。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 私のほうから具体的に聞きます。たとえばこの文書の中には、海外派兵、核兵器の導入、徴兵制と実体的に同じこと、戦時諸立法の制定、こういったようなことが多々含まれておるわけであります。現在の憲法とはなはだ矛盾するものがたくさんある。こういう点については佐藤総理どういうふうにお考えになりますか。
  69. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申し上げますように、これは決定ではございませんから、まず図上演習だとかようにお考えをいただいて、いかにも決定であるかのような断定でお話しになりますと違います。これは決定ではない。したがいまして、ただいま言われたような点、こういうことがはたして文官優位と、こういう立場のものであるかどうか、これが私が国防会議最高責任者は私だということをたびたび申し上げたゆえんであります。私がこういう事柄について責任をとって、そして最終的決定をすべきものだ、そしてしかも決定する場合においては、私がしばしば国会において声明しておるごとく、平和憲法の規定でそういうことは日本の国でできないことだ、これはもうはっきりしておる。だからそういう点も同時にあわせてお考えをいただきたいと思うわけであります。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 先ほどの関連質問とも関連するわけですが、つまり憲法上認められぬようなことを、公務員が——憲法を守る義務のある公務員が、公務中にやられておるわけなんです。そのことだけは少なくともはっきりしておるはずなんです。こまかい資料提出を願わなくとも、その点についての処置というものは、とりあえず、私は総理として要るんじゃないか、それが私は口でシビリアン・コントロールということを繰り返すよりも、きちんと姿勢が正される最大の私は方法だと思う。どうお考えになりますか。
  71. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今日まで防衛問題につきまして、いかにもシビリアン・コントロールということを申していながら、それが不徹底であったんではないか、こういう御指摘については、政府も十分反省するつもりであります。私はこういう点がいままで十分軌道に乗らない、一つの基準を示されない、こういうところにも一つの問題があったんではないかと思います。私はこういうものもただしてまいるつもりでおります。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 もう一点聞いておきます。三矢研究は私は単なるこれは研究ではないと、こう考えております。研究に参加した人たちの身分というふうな点から判断いたしましても、現実の自衛隊の動向というものとを切り離して私は考えられぬと思う。国民は、これはみんなそういう目で見ております。その証拠として私は三つの文書をこの際指摘しておきたいのですが、防衛庁長官答弁を求めます。  一つは、昭和三十八年十月でありますが、防衛庁内部で、「国防基本法私案」、こういうものがつくられております。それから第二は、昭和三十九年七月八日、「国防の総合計画を策定するための検討事項基本計画」、こういうものがつくられております。それからさらに、昭和四十年、日米共同作戦計画の中に、これは正式のナンバーまで打たれておる文書でありますが、「統幕三統第三十九甲心理作戦」と、こういう計画文書ができております。この内容を若干拝見いたしますと、これらのものは三矢研究の中で扱われた考え方、それに立って、その後具体化されてきておるというふうに私たちは考える。長官、どうです。
  73. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 三矢図上研究とは全く関係がございません。なおまた、詳しいことは政府委員から答弁いたさせます。
  74. 海原治

    政府委員海原治君) ただいま亀田先生から三つの文書についてのおことばがございましたが、第一の臨時国防基本法案私案、これにつきましては、昨年の当委員会の席上で私から御説明したと記憶いたしておりますが、これは全く別個のものでございます。当時御説明しましたように、これは航空幕僚幹部の一事務官の私案でございまして、私が御説明しました結果、そういう文書の性質については、十分御了解を得たものでございます。  第二の点につきましては、こういう文書はございません。  第三の点につきましても、これは衆議院予算委員会において岡田議員から御指摘ございましたが、私からはっきりと、現在、日米の共同作戦計画というものは存在していないということはお答えしてございます。(「委員長、関連、いまの答弁違っている」と呼ぶ者あり)
  75. 亀田得治

    亀田得治君 いまの、何か答弁が違っているらしい。違っていることをほうっておいてはいかぬ。委員長、許しなさい。答弁が違う。
  76. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 岩間君、簡単に願います。
  77. 岩間正男

    ○岩間正男君 ただいまの海原防衛局長答弁は事実に反しているだろうと思うのです。昨年の当委員会で問題になったということを臨時国防基本法私案なるものについて言っていますけれども、昨年の当委員会では、そういうことは問題になっておりません。これは別な問題だ。おそらくこれは、あのとき問題になった基本的見解だろう、航空幕僚がつくった「防衛力整備計画に関する基本的見解」のことをあなたは言っておる。これについてはいまのようなあなたたちは説明をした。しかし、臨時国防基本法案が世間で問題になったのは、はっきり八月二十四日以後でしょう。したがって、あなたは、衆議院でも大出委員質問に対して、そのような答弁を、この前、内閣委員会でやっています。私は速記録で見た。事実と全く食い違っておる。そういう答弁をぬけぬけとやって通そうとしてもいけない。違います。はっきり指摘しておきます。
  78. 海原治

    政府委員海原治君) ただいま岩間委員から、この席で問題になって私がお答えしたのは基本的見解だ、こういうおことばがございました。これにつきましても確かに私からこの席で、たしか岩間議員からの御質問に対してお答えしたと記憶しでおります。現在、先ほど指摘がございました臨時国防基本法案(私案)というのは、私の記憶が正しければ、昨年の国会の当委員会、この席におきまして、社会党の議員から質問があったと思っております。あるいはこれは私の記憶違いかもしれませんが、さらに衆議院内閣委員会におきましても石橋議員からやはり御質問ございました。これは今度の国会でございます。そのときにおきまして、この問題はすでに昨年私からるる御説明したことでありますので、ひとつそのときの事情をよく御了察を願いたいということで、衆議院内閣委員会は終わっております。したがいまして、私が先ほど申し上げ、いままた申し上げました、昨年の当委員会というのは、あるいは間違いかもしれませんが、この点は、なお帰りまして調査いたします。しかし参議院の委員会におきましても、この点について御説明したことは、これは事実でございます。
  79. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう一つ、いまの問題について、私は両院の委員会を調べた。実際ないのです。そういうことは。昨年委員会で問題になったということを言いましたけれども、事務局から、それから調査室から、みな調べてもらった。ところがないのです。あなたは十二月十八日の内閣委員会で、社会党の大出委員質問に対してそういうことを答弁しておる。非常にこれは違う。そんなうろ覚えのような答弁事態をごまかされても、ごまかされませんぞ。もっとはっきりしなければいけません。したがって、いまのははっきり取り消すべきだと思います。あなたは間違いです。間違っています。あなたは、いま言ったようにうろ覚えです。取り消しなさい。
  80. 亀田得治

    亀田得治君 私が三つ指摘したうちで、二つは、そういうものはないとおっしゃる。これはいずれ三矢資料が出される、それと合わせて私たちのほうからもまた努力をしたいと思います。第一の国防基本法私案、これは私案でありますが、存在を認められたようであります。これをひとつ資料として出してもらいたいと思う。これは三矢研究と結びつくので、新しい角度から実は検討の要があるわけなんです。この資料は出ますね。
  81. 海原治

    政府委員海原治君) 先ほどお答えしたことと同じことでございますが、これは一事務官が、ある演習に際しまして、その資料として用意したものであって、表題にも私の案と書いたものである。したがいまして、こういうものは政府といたしまして、防衛庁といたしまして責任の持てないものであるということを、当時私からも、るる御説明しまして、御納得のいただいたものでございますので、ひとつぜひそのようにお願いいたします。なお、先ほど質問がございました演習に際しましての腕章でございますが、申し上げます。統裁官は赤白赤、統裁部員は赤、研究部員は白、管理班員は、管理と申しますのは、印刷いたしたり、運転手でございます。これは青、見学者は黄色、赤白赤、赤、白、青、黄色、こういうものでございまして、これは全部布でつくりました幅十五センチぐらいのものでございます。ちょうど交通整理の警察官の持っておりますのと同じもののようになっております。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 これであまり時間をとりたくありませんので、国防基本法私案の提出問題は、理事会でひとつ御検討願いたいと思う。いいですね。
  83. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 資料の研究ですね……。
  84. 亀田得治

    亀田得治君 農林大臣に聞きます。漁業交渉の妥結の見通し。
  85. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いま交渉に入ったばかりでございまして、見通しをいまから申し上げる自信がございません。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 問題点はどこなんです。
  87. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 問題点は専管水域をつくるということにつきまして、専管水域のもととなる基線の引き方、その基線の引き方の中で特に問題になっているのは済州島の近辺でございます。  第二は、その外側に共同規制区域をつくりますから、その共同規制水域の中において漁獲する量、それについてどれくらいの船を、隻数を出したらいいかという話し合いの点がきまっておりません。  それから第三点は、漁業協力、これは日韓会談の大平・金メモですかの三億……二億ドル……一億ドル以上の供与ということの約束をしておりますが、その一億ドル以上の供与の中で、漁業協力資金をどれだけ出すかという問題です。大体この三点が問題になっております。
  88. 亀田得治

    亀田得治君 李ライン問題はきわめて重大なんですが、これはどうなっているのです。
  89. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 季ライン問題は、当然私のほうでは認めていないものでございます。でありますが、これは事実上ありますから、これはなくなることを前提として交渉を進めておりますので、この李ラインがそのまま残るということであるならば、この交渉は無意味であるという態度で交渉に臨んでおります。
  90. 亀田得治

    亀田得治君 李ライン問題自身をきちんとこの議題にのせていないのですか。
  91. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) のせております。交渉の経過において、共同規制区域の外側の線がきまってくれば、李ラインというものはおのずからなくなるというような話し合いから、議題としてとって、議題として話し合っておるわけであります。
  92. 亀田得治

    亀田得治君 韓国では李ラインの合法性ですね、これは現在でも確信を持っているのじゃありませんか。
  93. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 韓国側のことでございますので、私のほうからどういうふうな見解を持っているかというようなことは、ちょっと申しにくいと思いますが、新聞等を通じて見るのに、漁業の共同規制水域というような考え方もあるようでございます。そういう考え方でいたしますならば、一方的にそういう規制を日本側にしいるというようなことは、これは認められません。でございますので、私は、本心は合法的なものだとは思わないのじゃないかと思っておりますけれども、向こうの見解はどういうふうでございますか、まだ確かめておりません。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 当然赤城さんとして、君のほうは李ラインの法的な性格をどう考えているのか、突っ込んで聞くべき問題じゃありませんか。どうなんです。
  95. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私のほうでは、これは合的法ではない、もちろん不法、不当なものである、こういうふうに考えているからということは、向こうに再々言っております。でありますので、向こうの見解がどうであるかということにつきましては、私は聞きたださない、返事はとっておりませんが、私のほうでは、これは認めていないということを強く主張しているわけです。
  96. 亀田得治

    亀田得治君 そういうあいまいなことではだめでして、たとえばここに李ラインの宣言があるわけですが、これは名称が変わろうと、そんなことはどうでもいいわけですが、この宣言の前文並びに第四項、ここでは国際法上完合に合法的なものであるということを、わざわざここで断わってこの宣言を出している、赤城さんとして、これはどういうふうに見ているのですか。
  97. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 先方は合法的なように言っているけれども、私のほうでは非合法であると、こういうような見方をしております。
  98. 亀田得治

    亀田得治君 この前文の一部を読んでみますと、大統領宣言はじめに、「十分に確立されている諸国際先例に依拠し」と、国際先例によってやっている、それから第四項では、「公海における航海の自由の諸権利と抵触するものではない。」、こうはっきり言い切っているのです。この李ラインについてのことばを、農林大臣はどういうふうに理解しますか。
  99. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 国際的に認められていることではない。慣行も、そういうことは不敏にして聞いておりません。それから公海の自由を制限するものではないというような見解も間違っていると思います。公海の自由を非常に制限している、でありますので、その見解と私の見解とは全く相反することであります。
  100. 亀田得治

    亀田得治君 そうなると、総理ことばを使うと、これこそ全く妄想ですね、そういう重大なことがあるのに、なぜこの李ライン問題というものを、四つの議題を設けるならば、その第一に置いて、取っ組まぬのですか。当然じゃないですか。
  101. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 第一の議題としているのではなくて、全体の議題として李ラインの撤回、こういうことがもう前提でございます。でありますから、先ほど申し上げましたように、それが成立しない、撤回ということが成立しない以上は、ほかの話もみんな御破算、こういう話し合いをしているわけでございます。
  102. 亀田得治

    亀田得治君 総理も同じ意見ですか。
  103. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもうたびたび申し上げましたように、いわゆる李ラインなるものは、国際法上不法、不当なものである、こういうわがほうの主張ははっきりいたしておるのでございます。この点は、こういう主張をして、しかも日韓間の交渉を妥結しよう、こういうところに実はたいへん苦心があるわけでございます。ただいま亀田さんは一番先にこの問題を取り上げたらいいじゃないか、こういうお話でしたが、外交上の技術的な交渉上の問題、これはひとつ政府がやっておりますから、しばらくそのよしあしは、こちらにおまかせいただきたい。先ほど来農林大臣説明しておりますように、わがほうの主張はたいへんはっきりいたしておりますから、この点は誤解のないように願っておきます。
  104. 亀田得治

    亀田得治君 農林大臣は、あの韓国国内法の漁業資源保護法、捕獲審判令、これは御存じですか。
  105. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) そういうものがあることを承知しております。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 いや、内容……。
  107. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 内容を詳しくは承知しておりませんが、そういうことがあることを承知しております。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 これは交渉の当事者が、こういう重要な先方の手の内というものを十分検討してもらう必要がある。大体補佐役が悪い。この保護法によりますと——これは李ラインとうらはらの法律なんです。そして保護法によると、その第二条によって農林部長官ですか、主務部長官と書いてありますが、その許可を受けてそこへ船が入る、こうなっておるわけです。それに反したものは処罰していくと、三条、四条で書いている。それから捕獲審判令、これはきわめて民主的でない裁判のしかたがここに書かれておる。李ラインというのは決してそういう宣言だけで、空なものじゃない。向こうの国内法体系にきちんとでき上がっているわけです。だからそれを韓国が直すということが伴ってこなければ、結果としては、李ラインについての、それを国防ラインだとかなんとか名前を変えてみたところで、結局は日本の船が入る場合には、向こうの長官の許可を得てそこへ入漁するのだ、こういうかっこうになるのですよ。知らぬのはこっちだけだ。だから李ラインと一体となっておる韓国の中の法体系というものをくずしてもらわなければだめだ。そういう点まで突っ込んで一体やられているのですか、どうなんです。
  109. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) そういうような事情でありますので、こちらの共同規制区域内において魚をとるということが、入漁権を認めるごときことであっては、これはならないということを主張しております。向こうが入漁権を認めるのだ、そういうようなかっこうであっては、これは李承晩ラインがあるのと同じ。それからまた、その捕獲令等によりまして、共同規制区域内におきましてこの話ができた場合に、捕獲をするというようなこと、そもそも、その区域においても捕獲をするというようなことであっては、これは李ラインがあるということになります。そういうことがあってはならないという話し合いをしております。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、こういうふうに理解していいですか。李ラインはもちろん撤廃される、同時に韓国内の漁業資源保護法並びに捕獲審判令というものが日本の漁船には適用がない、これが条件ということになりますね。
  111. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) そのとおりでございます。それが適用あっては、事実上李ラインを撤廃したということには私たちは認められません。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 昨日李ライン問題に若干話のついでにお触れになったようでありますが、農林部長官は、あなたの意見に同意されなかったようですね。
  113. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 交渉の過程がありますので、その内容等については、しばらく発表といいますか、お話し申し上げることを差し控えさせていただきます。
  114. 亀田得治

    亀田得治君 これは非常に重大な問題でして、隻数だとかあるいはその基線の引き方とか、そういうことがまとまった、そこまで来たのだから何とかこの李ラインも両方の言い分がおのおので適当に説明ができるやり方でやろうといったようなことが、もしありますと、非常にこれは禍根を残す。この韓国の水域でそういうことを認めれば、日本は漁船があっちこっちたくさん行っておりますから、それが一つの前例になるわけですから、そういうあいまいなことは絶対しないとここで断言していいわけですね。
  115. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) これは基本的な問題でございまするから、あいまいな態度で済まされる問題ではないと思います。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 重要ですから、ちょっと総理の見解ももう一度はっきりしていただきたい。
  117. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま農林大臣からお答えのとおりでございまして、もちろん、わがほうとしても基本的の主張はございます。その基本的な主張は貫くつもりでただいま交渉をいたしておるわけであります。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 外務大臣に次にお尋ねいたします。  李ラインに関する先ほど総理、農林大臣のお答えがあったわけですが、外務大臣も同じ考えですね。
  119. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 同様でございます。
  120. 亀田得治

    亀田得治君 基本条約の第二条につきましてお聞きします。  この旧条約が無効になった時点ですね、衆議院と参議院で外務大臣は異なった答弁をしておりますが、どれがほんとうなのかはっきりしてほしい。
  121. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 合併の条約は、この条約の趣旨に反する事態が発生した時点、すなわち一九四八年の独立宣言、これによってこの条約は失効するわけであります。それから合併条約以前の条約は、その条約自体に書いてあることの発生がすなわち条約を失効せしめる時点である、または合併条約というものが成立した時期に失効する、こういうことを私は終始申し上げております。
  122. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、一九四八年の八月五日というわけですか。
  123. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 八月十五日ですね。一九四八年の八月十五日に大韓民国独立宣言が行なわれた。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 この点は、韓国側と完全に意思が一致しているのですか。
  125. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは話ししておりませんが、独立宣言が行なわれたときに従来の合併の条約が失効する、こういう解釈をとっております。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 韓国はできたら当初からこんなものは無効だという考えですが、少なくとも一九四五年八月九日という時点を韓国側は最小限考えているんと違いますか。
  127. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) われわれは条約の解釈上、独立宣言が行なわれた時点に従来の条約が失効する、かような解釈をしております。別に韓国側と話し合う必要はない、条約の解釈上さような見解をとっております。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 韓国は、たとえば対日請求権の八項目の要求等を見ましても、日本がポツダム宣言を受諾した、まあ受諾の日については若干問題があるわけですが、その時点というものを、韓国は従来ほかの場面では主張しておるわけなんです。この大事な基本条約のときに、それよりもおくらすということは私はあり得ないと思うのですが、したがって、そういう点ではあなたのほうの解釈は一方的じゃないかというふうに考えられるわけなんですが、どうなんですか。あとに禍根を残すから私確かめるわけです。
  129. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約の解釈でございますが、条約局長から詳しく申し上げます。
  130. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 期日のとり方は、その事柄のおのおのの内容によりまして変わってくるわけでございます。いまの併合条約の失効の時点につきましては、併合条約が、日韓併合というそのことのみならず、その後において韓国の皇室、皇族の処遇の問題だとか、韓国人の取り扱いの問題だとかということについて、日本がこうしなくちゃならないような義務を規定いたしております。そういう義務は、条約の相手方がなくなったあとではございますけれども、やはりこれは約束は約束したことでございますから、その併合が済んだあとでも日本としては順守しなくちゃならないことだろうと、こういうことで、それじゃその義務がいつなくなったかといいますと、法律的には大韓民国が独立したときをもってなくなったと、こう解釈するのが一番国際法上正当であろう、かように考えておるわけでございます。
  131. 亀田得治

    亀田得治君 そういう解釈について韓国側も了承しているかと、こう聞いているんです。……大臣答えなさい。あんたじゃ、そんなこと答えられぬでしょう、責任者が答えなきゃ。条約の解釈じゃない、私が言っていることを向こうが了解しているのかと……。
  132. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約局長に答えさせます。ただし、私はその問題については話し合っていないということをすでにもう御答弁済みでありますから。
  133. 亀田得治

    亀田得治君 そんなことを一体話し合っていないというのはおかしいじゃないですか、何で話し合わないのです。話し合っていないというのはそれは全くおかしいじゃないですか。そんなことあり得ますか、あなたが行かれたときもだいぶもめた問題でしょう。
  134. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 合併条約が失効するのはいつかというお尋ねでございますから、条約の解釈上、独立宣言が行なわれた時点に条約が失効する、条約上の解釈をかようにいたしておる、その問題については特別に合意をいたしません。ただ、従来の条約というものは初めからなかったものというようなことは、非常に事態をあいまいにする、混乱を招くおそれがありますので、それはかつて有効に存在したものであるけれども、もはやいまはないと、こういうことの表現については話し合った。その条約の失効した時期はいつであったかということは、これはもう厳正な条約の解釈上の問題でありますから、それは話ししなかった、こう申し上げた。
  135. 亀田得治

    亀田得治君 たいへんな条約の結び方でね、だめですよ、そういうことじゃ。韓国がじゃ一九四五年八月だと、こういう態度をとったらどうする、三年のズレができるわけでしょう。椎名さんの説明からいくと、この三年間というものはまだ旧併合条約が有効であったと、こうなるわけなんです。その間における韓国内におけるいろいろな財産問題なり、公法上、私法上いろいろな問題があります、予想される。その関係は一体どうなるのです。
  136. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 人間が生まれて出生届を出すのは、あくまでその事実に基づいて出生届を出す。でありますから、独立宣告をした後においては、お互いの間でどう申し合わせしようと事実は事実でありますから、独立宣告したときをもって従来の併合条約はその存在の価値を失なう、失効するわけです。それを申し上げております。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 委員長、こんなわけのわからぬ答弁じゃ困りますよ。そういうことを韓国が了承するわけがないじゃないですか。ポツダム宣言受諾してさらに三年間旧条約がなお生きておると、そんなことを韓国が了承するわけがないでしょう。
  138. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 領土の処分とかいうような点につきましては、条約の効力はその処理が行なわれたときをもって終了するという説もありますし、その領土の状態が続いている限りは効力を存続するというような学説もあります。これは学説の争いの問題でございますが、この日韓併合条約につきましては、その領土の処分のみならず、先ほども申し上げましたように、皇室、皇族の処遇とか、韓国人の取り扱いとか、官吏登用の権利とか、そういうようないろいろな日本の義務になるようなことが規定されておるというわけでありまして、そういうような内容の義務は、韓国側の義務というものはもちろんないわけでございます。韓国というものはなくなったわけでございます。そういう義務は、日本が義務を履行し得る法律的な状態が続く限りは続いていると考えるのが、一番日本としてはまっとうな考え方だろうというわけでございまして、その義務が早くなくなったということを韓国側で希望するということはあり得ないだろうと私はこの事柄の内容から考える次第でございます。
  139. 亀田得治

    亀田得治君 そんなことになりませんよ。それじゃこういうふうにはっきり外務大臣から聞いておきましょう。終戦後三年間、一九四八年五月十五日まで旧韓国併合条約は有効であったのだ、そう理解していいですね……。それは大臣答えなさいよ。あなたの説明なんかいいです。いま事務的な説明なんかいいですよ。私はあなたに聞いているのじゃない。委員長とめなさい。
  140. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) そのとおりでございます。
  141. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約の解釈の問題でありますから、条約局長をして答弁させます。
  142. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) そのとおりでございます。
  143. 亀田得治

    亀田得治君 条約の問題と違うでしょう。そんなことで韓国が了承するわけがない、そんなものを了承するような韓国政権だったら、国民をごまかしているはずなんだ。旧条約は北鮮との関係ではどうなるのです、大臣。旧条約は朝鮮半島全部に対する関係なんです。  あの、条約局長、あなたに答弁求めているんじゃないですから、こまかいことはあなたに私は必要な場合聞きますよ。大臣にあなた教えなさい、必要があれば。だめですよ、そんなことは、こちらが要求せぬうちに。こまかいことは聞きますよ。委員長、だめですよ。
  144. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 条約の効力を失ったわけでありまして……(「局長に何も聞いているのではない、責任者に聞いておる」と呼ぶ者あり)
  145. 亀田得治

    亀田得治君 大臣出なさい。基本的なことなんです。
  146. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約局長をして答弁させます。(「そんなばかな答弁があるか」と呼ぶ者あり)
  147. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 併合条約がそのものとして効力を失うわけでありまして、どの国との関係でということはないのでございますから、北鮮との関係でどうなるか、あるいはどこの地域との関係でどうなるかということはないわけでございます。
  148. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、北鮮の地域につきましても、一九四八年八月十五日まで生きておることになるのですよ。そんな筋の通らぬことがありますか。北鮮をあなたたちが認めておる認めておらぬの問題じゃないですよ。北鮮に対しても三年間併合条約有効なんですか、どうなんですか。そんなあいまいな条約を結んでくるからわけのわからぬようなことになってくる。
  149. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約局長をして答弁させます。
  150. 亀田得治

    亀田得治君 だめだよ。委員長、もっと外務大臣勉強して出てぐるように。
  151. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) どの地域について有効ということでなくて、条約が全体として八月十五日に失効したということでございます。
  152. 亀田得治

    亀田得治君 だめです、それじゃ。ともかく答弁がなっておらぬものだから、いたずらに時間がかかるのです。  それから、条約第一条によると、韓国に大使館を設置するとなっておりまして、この場合には防衛駐在官をやはり置くことになるのですか、大臣
  153. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それはそのときの情勢によって置くとも置かぬともきまる問題でございまして、ただいまのところはその必要はないように予想しております。
  154. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、置かぬと言えるのですか。
  155. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ基本条約にイニシアルを交換しただけでありまして、まだ本式の条約にはなっておりません。その上で置く置かぬということが具体的にきまる。その内容についてはただいま申し上げる段階ではない。
  156. 亀田得治

    亀田得治君 現在、この在外公館に防衛駐在官を置いておるのはどことどこなんですか。
  157. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 事務当局をして答弁させます。
  158. 亀田得治

    亀田得治君 それはよろしい、そういうのは。
  159. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) お答えをいたします。  現在、防衛駐在官がおるところは、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ソ連、タイ、中華民国、インド、トルコでございます。
  160. 亀田得治

    亀田得治君 何名ですか。
  161. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 全部で十四名でございます。
  162. 亀田得治

    亀田得治君 各国別にいまの人数もう一ぺん言ってください。ちょっとゆっくり言って。
  163. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) アメリカが五名でございます。それからソ連が二名、あとは全部一名でございます。
  164. 亀田得治

    亀田得治君 もう一ぺん繰り返してください。あと。
  165. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) あとはイギリス、フランス、ドイツ、タイ、中華民国、インド、トルコ、これが各一名でございます。
  166. 亀田得治

    亀田得治君 これは自分的にはどういう形式で出ているのですか。
  167. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 大使館の書記官兼防衛駐在官という名前で出ております。
  168. 亀田得治

    亀田得治君 外務省に出向しておる形はとっておるが、書記官という地位はなにと違いますか。私の調べたところでは、自衛官、防衛駐在官、こういうことで出ているやに私の調べではなっているがどうなんですか。
  169. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 書記官兼防衛駐在官であります。
  170. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、先ほどのあげられた国をずっと見ますると、当然これは韓国にも防衛駐在官を派遣するということにならなきゃ皆さんの筋が通らぬかっこうに見えるわけなんです。それはどうなんです、総理防衛駐在のやっぱり大使館ができたら派遣しなければならぬのでしょう。どうなんです。
  171. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 具体的にはまだ問題がきまっておりませんので、そういうことを考える段階にはいまないのでありますが、しかし、おそらく置く必要がないのではないか、かようにまあ私は推測しておりますが、ただいま具体的に決定する段階にございませんから、確定的には申し上げかねます。
  172. 亀田得治

    亀田得治君 大体置かないのだというふうに理解していいのですか。これは総理の大きな方針だ。
  173. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 全然まだ具体的に考えておりません。
  174. 亀田得治

    亀田得治君 第三条の関係について外務大臣にさらに聞きます。第三条につきましても、いろいろ問題点があるわけですが、端的にあなたに聞きますがね、この第三条のようなことがありましても、将来日本が北鮮と接触する妨げにはならないのだと、こういうふうに理解していいのですか。
  175. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 第三条は、国連決議を援用しております。その国連決議の内容は、韓国政府は朝鮮人民の大多数が居住しておる部分に成立した合法政権であるということをうたっておりますが、その朝鮮人民の大部分が居住する部分ということは、まあ結局、三十八度線あるいはまた休戦ライン、それ以南ということになるのでございまして、何らそれから以北のことに言及しておらない、かように御了承願います。
  176. 亀田得治

    亀田得治君 非常に重要な点ですから、もう一度確かめておきます。  いろいろ情勢の推移によって、日本が朝鮮民主主義人民共和国とも各種の接触をしなければならぬというふうな事態に進展する場合に、決してこの第三条にある「唯一の合法的な政府」といったような表現は障害にはならないのだ。これにはまあいろいろ説明なり見方があるわけですが、結論的には、私ここ確かめておきたい。どうですか。
  177. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いろいろな接触というおことばでございますが、経済的に、あるいは文化的に、その他いろいろな接触が行なわれることを予想してどうかと、こういうようなお話でございますが、大体において妨げないように私は考えております。
  178. 亀田得治

    亀田得治君 大体において妨げないという……。大体椎名さんはあいまいなことばが多いわけですが、佐藤総理の意見、これは非常に重要ですから確かめておきたい。
  179. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 第三条に国連の決議を引用したということで、この点ははっきりいたしておると思います。三十八度線以北に現実に政府のあること、これは私ども十分念頭に置いてすべての交渉をしているというのが現状でございます。
  180. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、接触ということばを私先ほど申し上げましたが、一歩進めて、北鮮と正規の外交関係を結んでも少しも矛盾はしないと、こう理解していいですね。
  181. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国連決議の趣旨に沿うて、この種の唯一の合法政権としてこれを認めておりまして、韓国と関係を持つ場合には、この国連の決議を考慮してこれを尊重して関係を持つということを国連から勧告されております。この勧告の趣旨に従って韓国政府を相手にただいま全面会談を行なっておるわけでございまして、この勧告の趣旨に沿わない場合には、これはこの勧告の趣旨に違反して、違背して北方の政権と接触を持つということは、それは日本としてはできないたてまえでございます。
  182. 亀田得治

    亀田得治君 どうも私の質問とこうぴったり合わぬもんですから、非常な質問時間にむだができて困るんです。私が言っておるのは、第三回国連決議の勧告の内容もみんな知っております。情勢が変わって、そうして……
  183. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 亀田君、立って御発言願います。
  184. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、さっきのやつを念を押すわけです。食い違っておるわけですよ。実際に情勢上、北鮮と外交関係を結んでもいいというような情勢になった場合には、法律的に障害にならぬだろう、この唯一合法の政府ということが。そこを確かめておきたい。
  185. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国連の趣旨に沿うて南北が自由選挙を行なって、そして統一された場合には、これは問題ありません。しからざる場合において韓国と並んで北鮮と国交を回復するということは、日本は考えておりません。
  186. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことになりますかね。それじゃ、中国の二の舞いじゃないですか。総理答弁を求めます。
  187. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この南北韓国の問題、これは同一民族がこういう状態であるということはまことに私は民族として情けない状態だと、かように思います。そこで、どういう国連決議、国連方式なるものが採用されたわけであります。私は、国連方式というものを日本も賛成をしておるし、大韓民国もこれを賛成しておる。そういう意味で、ただいま基本条約を結んだことが、あるいは南北統一に支障があるかどうかということを十分検討いたしましたが、私はその支障はないと、かように考えております。ただいまのところは、国連方式による民族の統一、これを念願しておるのが現状でございます。ただいまお尋ねになりましたような事態、これは将来そういう事態が起こればこれまた別でございます。いわゆる国連方式なるものが変わった形になれば、これはまた別だということを御了承願いたいのであります。
  188. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、国連方式といいましても、これはもうずいぶん古い決議です。しかも、これは勧告なんです。判決、法律のような拘束力がないことは皆さん御存じなんだ。そういうわけでして、当然これは北朝鮮とも、日本の姿勢がちゃんとしておれば、いろんな交渉ができるわけでよ、接触が。そういうことにじゃまにならぬか。もし、何でしょう、いろんな事情がよくなって、そうして北朝鮮とも正規の外交関係を結べるということになれば、けっこうなことなんでしょう。そういう場合に、この三条があるために支障を来たすことはないと、事情が変われば北鮮とも正規の外交関係を結んでいいということになるかと、そこを聞いているわけです。
  189. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どういう事情の変更か私はわかりませんが、とにかく朝鮮半島における唯一の合法政権としてこれを認め、これを相手にして国交を正常化しようとしております。現在の情勢が変わらざる限りは、この方針でまいりたいと存じます。
  190. 亀田得治

    亀田得治君 だめだ。これは同じことばかしで。あんたの答弁とも食い違っている。椎名さんが最初に言っておったことといまの答弁と違う。
  191. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま外務大臣が答えたとおりでございます。亀田さんは、ただいま、事情が変わったら、また、こういう事態が起きたら、そのときには北鮮と交渉を持って差しつかえないか、こういう実は仮定のお話をしていらっしゃいます。まあ、昔ならしばしば、仮定の状態にはお答えをいたしませんというのが筋だろうと思うのですが、私は先ほど来申し上げましたように、ただいまのところ私どもは国連方式、それを採用し、そうして南北の統一を心から念願しておる。そういう事態の起こることを一番希望いたしておりますので、ただいまのような別の方向、結論を生ずるような事柄は、私がただいま答弁をする限りではない、かように私は思っております。先ほど来、椎名外務大臣がお答えしたのもそのとおりだと、かように私は思います。
  192. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ、次の問題に移ります。  請求権については、従来、金・大平メモというものが出ておるわけですが、韓国内には、白紙に返せという意見もずいぶんあるわけでございますが、この点は現在でもきちんと両国間で一致しておるものでしょうか。
  193. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは両国において、いわゆる大平・金メモなるものに基づいて両国政府において慎重に研究をいたしまして、そして大体合意されておるものでございまして、これはあくまで尊重してまいりたいと、かように考えております。
  194. 亀田得治

    亀田得治君 今度外務大臣が訪韓されたときにはこの確認をされておるわけですか。二年間もたちますとずいぶん情勢が違うわけですからね。どうなっているのですか。
  195. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この問題は話し合いの問題にならなかったのであります。いわゆる請求権の問題は話し合いをいたしません。
  196. 亀田得治

    亀田得治君 この北鮮の請求権の問題は、池田総理のときにもその存在を肯定していたわけですが、これは佐藤総理同じ考えですか。
  197. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 施政権の及ばないところ、問題を話し合うはずはございません。
  198. 亀田得治

    亀田得治君 施政権とは。
  199. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) おわかりにくかったら、ただいま大韓民国と交渉した筋のものでございます、この大韓民国が施政権の及んでないものについて話し合うはずはございません。かように答えたのであります。
  200. 亀田得治

    亀田得治君 いや、私お尋ねしたのは、池田総理は北鮮にも平和条約四条による請求権は存在しておるんだということを国会ではっきりお認めになっておるわけなんです。その考え佐藤総理としてもお変わりにならぬかということを確かめておる。   〔委員長退席、理事村山道雄君着席〕
  201. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 北鮮の問題はただいまお答えしたとおりでございますが、池田総理がお答えしたと同じ考え方をただいまも持っております。
  202. 亀田得治

    亀田得治君 北鮮が請求権の交渉をしてきた場合にそれに応じますね。
  203. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 韓国との会談が、韓国政府の支配の及ばない、つまり北鮮というのは事実上そこに存在しておるということを常に念頭に置いて交渉しておるのでございますが、これを合法政権として認めるといういま方針は全然ございません。したがって、北鮮から請求権が出るとか、あるいはその他の問題に対して韓国と折衝しておるような問題に対して申し入れがありましても、われわれはこれを受け付けない、相手になるわけにはまいらぬ、こういう状態でございます。
  204. 亀田得治

    亀田得治君 筋が全く通らぬじゃないですか。事実上北鮮のオーソリティーのあることを認め、これが従来の政府態度、それから、ただいまもこの請求権自体については確認されておるわけなんです。そうすれば、向こうからはこれについて話し合いたい、わしのほうも請求したいと言うてきたら、あなた話し合いに応ずるのあたりまえじゃないですか。それは、あなた、日本政府が公式に北鮮の政府を認めた、認めぬということと全然違いますよ、これは。権利のあるものは、たとえ無国籍人だって相手にしなくちゃだめです、権利を認める以上は。どうなんです。請求権を認めていることと矛盾するじゃないですか。
  205. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 全然それは相手にするわけにいかぬという立場を御了承願います。
  206. 亀田得治

    亀田得治君 そんなことをどうして了承できる。それなら請求権を認めないということになるじゃないですか、事実上。総理もやはり同じ考え方ですか。総理はさっき請求権を認めた。
  207. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまのは、北のほうは全然白紙の状態に置かれてあるのでありまして、居住権であるとか、請求権であるとかというような具体的な交渉案件については全然白紙の状態である。南鮮の支配の及ぶことを考慮に入れて、そしてわれわれは韓国を相手にしておるのでありまして、北方に事実上の政権のあることは念頭に置いておりますけれども、これは全然白紙の状態である。政権を認めるという考え方もございません。したがって、その前提に立って韓国と同じような請求権をかりに行使してまいっても、全然これは受け付けるわけにはいかぬ。こういう状態でございます。
  208. 亀田得治

    亀田得治君 同じことを繰り返すの、こっちがいやになっちゃう。  まあ、次の問題移りますが、首尾一貫してない。そんな筋の通らぬことを言っていると、それはなんですよ、軽く見られますよ、日本政府自体が。請求権と事実上の存在を認めながら、その要求をしてきたらそれを受け付けぬ。そんな乱暴なことありますか。  竹島問題は、これもたびたび言われてきている問題ですが、現段階ではどういうふうに処理する考えです。
  209. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 請求権、法的地位の問題、あるいは漁業の問題、いろいろございまして、そのうちの一項目として竹島の所属問題があります。これは両国においてその領土権を主張しておるのでございまして、一応これは別個の扱いにして、そして会談の基本条約の従って第三条からは一応除外いたしまして、そして全面会談の際に一括してこの問題を処理したい。かように考えております。
  210. 亀田得治

    亀田得治君 その処理の腹案はどういうことなのです。
  211. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまのところは、これを終局的に結論を出すということが非常にむずかしいと思われますので、少なくとも終局的にきめ得る方法について合意をして、そしていわゆるめどをつけて処理したい。こう考えております。
  212. 亀田得治

    亀田得治君 それ、もっと具体的に言ってください。それは何らかの腹案があるはずですわ。
  213. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいま考えておる方法としては、国際司法裁判所に提訴いたしまして、そして国際裁判所において明確に規定、決定をしてもらう、こういうことがまあ最も適当な方法である。かように考えております。
  214. 亀田得治

    亀田得治君 その点については韓国側とは大体了解がついているわけですか。
  215. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだこれから折衝するわけであります。
  216. 亀田得治

    亀田得治君 基本条約を交換されたときに、この問題については全然触れておらぬのでしょうか、ほんとうに。
  217. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この問題には全然触れておりません。
  218. 亀田得治

    亀田得治君 領土問題というのは、それこそ基本条約的なものなんです。話し合ったけれども、どうも処理がむずかしかったというふうなお答えであれば若干了解もできるが、全然触れておらないといったようなことは、一体どういうことなんですか。ほんとうに触れておらぬのですか。どうなんですか。
  219. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ほんとうに触れておりません。
  220. 亀田得治

    亀田得治君 触れなければだめじゃないですか。話にならぬ。  それから次に、法務大臣、法的地位の問題がだいぶ煮詰まった点もあるようでございますが、煮詰まった点と残っておる点とまず明らかしてほしいと思います。
  221. 高橋等

    国務大臣高橋等君) ただいま法的地位についていろいろ折衝いたしております。が、その内容につきましては、折衝中でございますので、いまここで申し上げるわけにはまいりません。
  222. 亀田得治

    亀田得治君 退去強制の問題については大体話が煮詰まったんじゃないですか。煮詰まったものは発表してもらいたい。
  223. 高橋等

    国務大臣高橋等君) いろいろと話は進んでおりますが、いまそのことを申し上げるのは適当でないと思います。
  224. 亀田得治

    亀田得治君 いや、きまったように私たちはこう聞くわけですが、きまっておるものはおっしゃってもらっていいと思う。きまっておらぬのかどうか、まず聞きましょう。
  225. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 相当話は進んでおりますけれども、法的地位の問題、一括していま話を進めておる最中でございますから、その内容等につきましては交渉中でございますので、ただいま申し上げましたとおりでございます。
  226. 亀田得治

    亀田得治君 国会に来てそないに隠してもらっちゃ困りますよ。一体、法的地位の問題では何と何をしからば議題にしているのですか。
  227. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 法的地位として問題の点は、一つは永住権を与える人の範囲の問題でございます。また、ただいまお話しになりましたように、永住権を与えた者の退去強制に関する問題でございます。また、この永住権を与えた人々に対しまする処遇の問題、こういうことを中心にしていま話を進めておるわけであります。
  228. 亀田得治

    亀田得治君 事実上韓国から、いわゆる不法入国者として入ってきておる人が相当数ありますね。こういう問題もこの中で処理される予定でしょうか。
  229. 高橋等

    国務大臣高橋等君) こういうことも話の中にに出てまいると思います。しかし、どういう線で取りきめていくかということは、ただいま申し上げるわけにはまいらないのでございます。
  230. 亀田得治

    亀田得治君 討議の正式の議題になっておるのかおらぬのか。どうなんです。
  231. 高橋等

    国務大臣高橋等君) ただいま申し上げましたように、永住権を与える範囲ということでいろいろ検討はされると思います。
  232. 亀田得治

    亀田得治君 委員長からやはりちょいちょいうまく進行してください。だめですよ。議題になっているか、なっていないか、不法入国者を独立の議題としてね。
  233. 高橋等

    国務大臣高橋等君) いま議題となっておりまする永住権の範囲の問題の中には、いろいろな問題が包含されておるのでございます。しかし、どういう問題を取り上げてここでやっておるかということは、いま交渉の途中でございますので、ここで申し上げるわけにまいらない。その点は御了承願っておきます。
  234. 亀田得治

    亀田得治君 そんな、議題になっておるか、ならぬのか、どうして言えないのですか。そんなことは委員長から注意してください。三矢問題と違う。
  235. 高橋等

    国務大臣高橋等君) とにかくいろいろの問題が議題となっておるのでございます。が、いまのお尋ねの件は、この話にはまだ全然出ておりません。
  236. 亀田得治

    亀田得治君 これは議題にする方針はありますか、日本側として。
  237. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 交渉の内容にわたる問題でございますので、これはこちらのいろいろな、どういうことを交渉の内容にしようかということは、お答えをすることが適当でないと思います。
  238. 亀田得治

    亀田得治君 じゃあ、もう一つ最後に聞きましょう。この北鮮国籍を主張する方がずいぶんあるわけですね、朝鮮人の方で。こういう人たちにも今度きまる法的地位というものが準用されるということになるのかどうか。
  239. 高橋等

    国務大臣高橋等君) この国交が回復した国の人々とそうでない人々との間では、形式的にいろいろな違いができますことは、これはやむを得ません。しかし、従来日本人としてわが国に住んでそして基盤を築いた人たち、そしてそれがこの平和条約によりまして日本人としての国籍を失った。こういうような観点から考えまして、いまいろいろ考慮いたしておるのでございまするが、韓国の国籍を取った人々につきましても、そういう考え方で、あまりたいした差異のないように扱っていきたいというようなつもりでありますが、これは今度の協定が成立した後におきまして十分考えていく。考え方基本はそこでございます。   〔理事村山道雄君退席、委員長着席〕
  240. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、前段のほうの答弁、あいまいだったが、なかなかいまの答弁は私はきちんとしていると思う。これは国交が回復しておるとかおらぬとか、そんな問題じゃない。人権に関する性格の問題が多いわけなんです。だから、そういう場合において北鮮の政府を認めておるとかおらぬとか、そういう観点を取り入れてくることは、はなはだ私はいかぬと思うんです。だから、ぜひいまお答えになったような方針で、やはり前向きに考えてもらいたい。これは総理にも要望しておきますが、いま法務大臣がお答えになったような考え方総理も御了承願えますか。
  241. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりでございます。
  242. 亀田得治

    亀田得治君 では、最後に、沖繩問題につきまして若干お尋ねいたします。  沖繩問題も多々角度があるわけでございますが、私がお尋ねしたいのは、沖繩の施政権の返還というものは即時総理からアメリカに対して要請をすべきじゃないかという一点に尽きるわけなんです。せんだってのジョンソン大統領との共同声明等を見ても、あるいは総理国会答弁を拝見しても、そういう要望は向こうに伝えた、熱烈な要望のあることはと、それに終わっておるわけなんです。なぜ率直に、人の要望を伝えるということじゃなしに、返還そのものを要求しないのかということなんです。私は、そういうことを申し上げるのは、この米国の沖繩施政というものは違法である、現状では。違法なものをほかの政治的な考慮でもって曲げることは許されぬ。ほかの事情があれば、それは別個に問題を処理すべきものであって、違法な状態を、しかもこれだけの強い要求があるのに、いつまでもそのまま続けておるということは許されぬことだという立場からこれはお尋ねをしておるわけです。
  243. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 終戦後二十年、その状態がいまなお続いている。これは、沖繩住民はもちろんのこと、われわれ日本国民の念願でございます、熱願でございます。そういう意味で、ジョンソン大統領にわがほうのこの民族的な要望を率直に披露したわけであります。ただいま、しかし、終戦後の状態が二十年続いておるということを申しましたが、これは亀田さんとは遺憾ながらその違法だというそうきめつけるというものでは私はないように思っておりますので、その点は意見を異にいたしますが、しかし、私どもの民族的な要望、これは間違いなく十分伝えたわけであります、要求したわけであります。また、それにこたえるジョンソン大統領、アメリカ側におきましても、まじめに真剣に私はこたえてくれたと、かように思っておるのであります。ただいま共同コミュニケその他においてその後の作業等をごらん願えればよく事情はわかってくれるものと、かように思います。
  244. 亀田得治

    亀田得治君 政治問題はちょっとしばらく横にやりますが、総理は違法でないというふうなことをこの公式の席上で言われることは、これははなはだ軽率ではないかと私実は考える。そういう点もあるかもしれんが、ほかに軍事的、政治的な理由等があって踏み切れないんだとか、そういうことならこれは若干また別な角度が出てくるわけなんです。これは専門家の間に問題になっているんですよ。御存じでしょう。そういう問題について、あたかも違法でない、合法的というふうな断定をされることは、これは後々にまで非常な災いを残すのじゃないか。ちょっとその点は訂正をしてもらっておく必要があるのじゃないかと思う。将来どういう時点で沖繩施政権返還ということが出てくるかしれぬ。その際に、佐藤総理みずから国会でこういうふうに言っているじゃないかと言われたんでは、これは立つ瀬がないわけでしょう。どうなんですか。
  245. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この点ではいろいろ議論もあることでございます。これは議論のあることも私承知いたしております。ただ、私自身は、ただいま亀田さんの御意見どおりではないと、かようなことを申し上げたのであります。しかし、いずれにいたしましても、民族の願望、しかも二十年そういう状態が続いておる。もう戦後ではないのだと、そういう観点に立って改めてほしいと、かように私は思って要望を出したわけでございます。
  246. 亀田得治

    亀田得治君 アメリカが沖繩の施政権を実行しておるのは、平和条約三条によっておるわけですね、御承知のとおり。ところが、平和条約三条は、これも明確なことですが、沖繩を信託統治にするんだと、これが前提なんです。その信託統治にするまでの間一時的にこの沖繩に対するアメリカの施政権を認めるんだと、これはもう疑いのない書き方になっておるわけなんです。そういう条件つきなんです。ところが、この平和条約三条の規定自身に対してそのようなことを規定したのは国連憲章七十六条、七十七条に反するものではないかと、こういう専門家の批判があるわけなんですね。これは私はそのとおりだと思う、信託統治制度の由来から見ても。これは反していますよ、国連憲章の精神に。ところが、さらにそれに加わって日本がその後昭和三十一年十二月十八日に国連に加盟したわけですね。そういたしますと、国連の加盟国間におきましては信託統治制度というものはあり得ないということがさらに憲章の七十八条に明確にこれは規定されておるわけなんです。だから、二重に平和条約三条というものはそういう意味で批判を受けておるわけなんです。だから、そういう状態でありますから、私は少なくとも国連に日本政府が加盟した時点において米国の沖繩施政権というものは違法になったものだと思う。事実があるからといって何も違法なものが合法的になるわけじゃない。法律的にはやはりそう解釈すべきではないか。どうなんですか。
  247. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 法制局長官に答えさしたほうがいいかと思いますが、私の感じでは、ただいまのお説も一つのりっぱな学説と言っちゃ失礼でございますが、主張のあるところ、論拠のあるところと、かように思いますが、政府考え方は後ほど法制局長官に説明させますけれども、やや違っておりますので、この点を説明させます。
  248. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいまお話しのような議論は、実は私もよく承知いたしております。いままでもそういう観点について申し上げたことがございます。しかし、あらためて簡単に申し上げさせていただければ、政府の解釈といたしましては、日本国との平和条約の第三条における——指摘の第一点でございますが、第三条における条項といたしまして、亀田委員の仰せになりますのは、合衆国がそういう義務を持っているといいますか、条件つきである、こういうふうにごらんになるわけでございますが、この第三条によりますれば「信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。」というわけで、その提案をするかどうかということについては、少なくともこの三条の規定そのものから完全に義務がある、完全に条件づきであるというふうにきめつけることがどうであろうかという点が一つでございます。  それからもう一つは、国連憲章上のそれぞれの規定を御引用になりまして、特に第七十八条に言及をされましたが、この第七十八条は確かに一つの問題のある条項かと思いますけれども、これは一つの国家社会、社会地域というものがあげて一つの国連加盟国となるという場合の規定である。これは先例に徴してもそういうふうに解釈されるわけでございます。したがって、御指摘の問題は確かに問題点としてはあると思いますが、政府の解釈といたしましてはそのような解釈をとっておらない、こういうわけでございます。
  249. 亀田得治

    亀田得治君 説得力も何もない議論ですわ。そういうことを言っているから、自主性がないと、こう言われるわけなんです。筋は筋としてちゃんと主張しなければだめですよ。そういう学説もごもっともだといったようなことを言われますが、この問題についての分析をやられた多々日本の学者があるわけですが、たとえば東大の高野教授、上智大学の皆川教授、神戸大学の嘉納教授、法政大学の講師の杉山さん、いろいろな人がもう疑いのない結論としてはっきりこれは自信を持って出しておるわけです。違った見解なんか出ておりませんよ、これでは。それは違った見解を出しているのはそういう役所だけなんです。それから米国側にいたしましても、アイク時代からすでに潜在主権ということは言っていた。ケネディになりましてもっとはっきり日本領土の一部だということを認めておる。したがって、これはもう信託統治にはいたしませんと、これははっきりしているわけですね。だから、理論的にもそういう批判があり、また、事実上の立場から見てもアメリカがそれを信託統治にしない、こうはっきり意思表示をしておるのに、そのままの状態でそれをつかんでおる。こんなことはあなた全く筋が通らぬじゃないですか、理論的にも実際上も。もう少し待ってくれ、多少国連憲章の解釈上無理があるかもしれぬが、そのうちに信託統治にする気持ちがまだあるんだという気持ちがアメリカにあるなら、これはまた多少論点も変わります。それも全然ない。そうしたら、当然即時返すべきじゃないですか。どうですか、佐藤さん。こんなことは、法制局長官じゃなしに、しろうとでもわかるはずです。
  250. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま法制局長官に理論的な説明をさしたつもりでございます。しかし、事柄は日米間の問題であり、しかも、私が冒頭に申しますように、戦後二十年もこういう状態が続いたと、こういうことに対する国民的な祖国復帰といいますか、これを一日も早くと、この立場においての主張、これが私は理屈を申すよりも日米間の間においては最も望ましいことだ。もちろんこれにはただいま言われるような理論づけも必要でありましょう。しかし、もっとその理論よりも前に日米間においてこれは率直に話し合いのできることだ。また、そういう意味で潜在主権を認めてくれた。その後着々とそういう方向でも進んでおる。現にこの地の小学校をはじめとして日本語を使っている。そうして教育もしておる。こういうような事柄自体を考えまして、これは一日も早く祖国復帰が実現すると、こういうことをすべきだ。また、政府はその責任があるのである。私はその点が、ただいま仰せになるような理屈、あるいは法律的根拠、それだけで問題を解決するよりも、本来の本筋、日米間においてはもっと基本的なものもありますので、そういう意味の理解を求めるということで最善の努力をしてまいったような次第でございます。
  251. 亀田得治

    亀田得治君 まあいろいろな努力はしてもらわなきゃならぬわけですが、ただ、その前提として、根拠になっておるところの条約の条項というものが違ってきているのだということは出発点にしなきゃいかぬじゃないですか。その点を日米間ではっきり確認して、それからの話なんだ、話し合いというものは。私はたくさんの文献を持って来たわけですが、念のため一つだけ御披露しておきますが、これは「南方諸島の法的地位」という書物で、そこに皆川教授が書いておる論文の最後のほうでありますが、こう書いてあるわけです。合衆国による統治権のそれ以上の行使はもはや条約上の根拠を失い、他国の領土において不当に展開されるところの単純な事実上の権力行使に転化するであろう、こう断定しているわけだ。根拠を失って単純な事実上の権力行使だと。皆川さんという人は、上智大学の教授で、それほどきつくおっしゃる方ではありませんが、ずっと理論的に分析されて、結論としてそういうふうにはっきりこの点はおっしゃっておるくらいなんです。だから、こういうことは日米交渉の前提としてアメリカ側にやはり承認させる私は必要があると思う。どうなんです。
  252. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお読みになりました点、また亀田さんの御意見、先ほど来私は百万の味方を得たような感じでただいまのお話を伺っております。私は、日米間のこの沖繩の問題については、これはもう与野党とも一致した国民の要望であるということをはっきり申し上げておきます。これは私は理屈を申すよりも、日米間においてはまた考え方も違いますが、その根拠になるものはただいま言われるような理論も教えてやるとおっしゃるのでありますが、これはありがたく私ちょうだいしておきます。ただいまの資料も後ほど私読ましていただくようにお願いしておきます。
  253. 亀田得治

    亀田得治君 まあ初めてほめてもろたんだが、(笑声)そこでですね、もう一つそれじゃ総理にこれは要請しておきますが、この平和条約では、幸い、こういう問題に関しての条約当事国間の紛糾があった場合には、平和条約二十二条、ここにちゃんと規定がありまして、国際司法裁判所に持っていこう、こう書かれておるわけなんです。これを活用してほしいと思う。普通、国際司法裁判所への持ち出しは、合意、これが前提になるわけですが、それは不必要なんです。ちゃんとこう法律上管轄権というものを明確にしてあるわけなんです。ぜひ私はこれを持ち出してもらえば、国際司法裁判所はこれは法律家の集まりですから、そんな政治的な考慮なしにきちんとこの点は出ます。そのほうが佐藤さんがジョンソン大統領に交渉する場合にこれこそ大きな根拠になるんですよ。この二十二条をあなた行使したらどうなんです。
  254. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 具体的方法は、私は私なりの行き方が望ましいと、かように思っておりますので、先ほど来御説明いたしております。ただいま亀田さんのお話は、そのまままことに有益なるお話として伺っておきます。
  255. 亀田得治

    亀田得治君 あと一分でございますので、最後の発言になろうかと思いますが、ともかく沖繩返還については国会でたびたび決議があり、また、沖繩の立法院も決議をいたしております。これは何としてもそんな願望を伝えるといったようなものじゃなしに、もっとひとつ姿勢を考え直してほしい。先ほど違法ではないというような趣旨のことがございましたが、あの点はやはり再検討が要るんじゃないか。これは国会の議事録に残りますからね。国際司法裁判所に持っていったわ、お前のところの大将こう言っておるじゃないかといったようなことをやられたんじゃぐあいが悪い。それは幾ら総理大臣がそうおっしゃったからといって、総理大臣の解釈が専門家から見たら間違いだということになれば——またそれでもいいわけですけれども、それではあなたの顔が悪くなる。だから、そういうことはもっと慎重に、これは専門家が問題にしておるところなんです。政治的な立場を私は踏んまえてきょうは言うておるのじゃない。そういう立場ですから、あの点はもうちょっと何かニュアンスのある表現にしておいてもらいませんと、これはあと二十秒ほどでございますが、これで終わるわけにはいかぬと私は思う。
  256. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の意見は私が述べましたが、さらに御注意がございますから、十分検討してみたいと、かように思っております。
  257. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 亀田君の質疑は終了いたしました。  二時三十分に再開することにし、これにて休憩いたします。    午後一時四十三分休憩      —————・—————    午後二時五十分開会
  258. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより予算委員会を開会いたします。  委員の変更がございました。  中野文門君、佐野廣君が辞任され、山崎斉君、大竹平八郎君が選任されました。     —————————————
  259. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 休憩前に引き続き質疑を行ないます。戸叶武君。
  260. 戸叶武

    戸叶武君 私は、ことしから二、三年の間が世界的な大変動期だと思います。トィンビーがアメリカで、「世界革命とアメリカ」という講演を通じて、植民地独立を行なって以来二百年の間にその独立の精神を失ったことを非難しておりますが、日本もアジア・アフリカの先駆的な役割りをしながら、明治維新後百年間に、アメリカと同様に、いま世界の諸民族が苦悩している現実というものに対する理解を欠く点が多々あるのではないかと思うのであります。佐藤首相のアメリカのプレス・クラブにおける演説等においては、若干いままでとは違ったような新味も出しておりますけれども、その後のいろいろな見解を通じて、私たちが危惧する点も多々ありますので、きょうは具体的な問題を通じて質問を行ないます。  去る三月二日の米空軍の北ベトナム爆撃は、この一カ月間に四回目の爆撃であります。今回の大爆撃は、過去三回の報復爆撃と異なり、攻撃爆撃であります。政府はこの事態をどのように見ているか、佐藤首相並びに椎名外相から見解を承りたいと思います。
  261. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のように、今回の爆撃につきまして、大統領の報道官リーディ氏も、今回の爆撃は具体的な挑発行為に対する報復措置ではなく、北からの継続的侵略に対抗する目的を持って行なわれたということを認めておるのでございます。しかし、米国及び南ベトナム共同声明にありましたとおり、最近陸路のみならず海上からも多数の武器弾薬が南ベトナムのほうに運ばれておる、そして連日小さい規模ながら領民がこのたびに死んでおる、二週間に百数十人の死者を出した、こういうような事実をあらゆる角度から証明しておるのでありまして、かような状況をもって侵略の継続であるとみなして、事前にこれに対する措置をとったものと考えられるのでございまして、現状においてはこれはやむを得ないものである、従来の報復措置とその性質を特に異にするものでない、かように考えておる次第でございます。
  262. 戸叶武

    戸叶武君 いまの外務大臣の話を聞いていると、日本の外務大臣かアメリカの大使かわからなくなってしまっております。そういう一方的な見解を披瀝するのでなく、日本の外務省として、あのアメリカの行為が、世界各国、特にソ連や中国やフランス等にどういう影響を持ったか、そういうことを私は知りたいと思います。
  263. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) なお、これは依然として限定的な措置であって戦争の拡大を絶対に意図しておらぬということをアメリカも認めておるのでありますが、これらに対して、各国はそれぞれ、批判的な態度をとっておるところもあり、またやはりやむを得ざる措置であると認めておるところもあるようでございます。
  264. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど戸叶君から、明治維新から百年だと、こういうことを言われましたが、私は、明治維新もさることながら、新しい日本、これは終戦後、前大戦後から新しく発足した。そこで、誤解を招かないように、新生日本の姿を十分頭に描いて、そしてしかる上で、今日の流動する国際社会、それに対応するわが国態度を宣明したい、かように思います。もうすでに戦後二十年たっております。しかしながら、この二十年の間、私どもはほんとうに民主主義に徹し、同時に平和を念願し、その意味においての自由を守り、繁栄への道を歩んできた、かように私は確信をいたしております。また、今後もかような方向で、世界の平和、同時に各民族の繁栄、これに寄与したい、かように私念願しておるのでございます。その観点に立ちまして、今日起こっておるベトナムの問題を見ます際、これはしばしばお答えいたしたのでありますが、私どもは、一日も早く戦火がおさまり、そうしてベトナム住民がその生活を楽しめるように、そういう方向へ行くことを念願しております。ただいままでのところ、不幸にして、この戦火、またこの紛争の不拡大、こういう態度を堅持しながらも、なお爆撃が四回も続いており、またその後も軍事行動がとられておる、かような状態はできるだけ早く終息さすべきだ。私は、本会議その他の席上におきまして不拡大を心から願うということを申しましたが、もう今日の状況になれば、戦火がおさまることを心から実は願っておるわけであります。この意味において、各国の反響もあるわけでございます。ただいま椎名外務大臣が申しますように、この問題をめぐって、各国それぞれの立場に立ってのそれぞれの意見を申し述べておると、かように思います。しか、私どもは、これが大戦になるとか、そういうことはまずないだろうと思いますけれども、一日も早く話し合いにより戦火のおさまること、これを心から念願してやみません。ことに、これはアジアに位する日本といたしまして、東南アジアの諸地域、そこらの平和なくしてわが国の安全もまた確保することは容易でない、かように考えますので、心からこういう事態がおさまることを、早期に解決することをほんとうに念願してやまないのであります。そういう意味においての私どものあり方等につきましても、すでに二回にわたってわが党の人が現地に行った、こういうような事柄を通じましても、特に実情の把握について私ども真剣である。また、われわれがこれを平静に帰することについて役立つことがあるならば努力したい、かように思っておりますが、もともと沿革的に見ましても、ジュネーヴ十四カ国会議においてまず取り上げられるのが筋ではないかと、かように思いますが、そういう意味の動きもある、かように考えますが、その動きと並行いたしまして、とにかく一日も早く戦火がおさまり、そうして平和がこの地にもたらされるように心から念願しておる次第でございます。
  265. 戸叶武

    戸叶武君 佐藤さんは、まずジュネーヴ会議において取り上げられるのが本筋じゃないかと言われておりますが、このアメリカの今回の行為というものは一九五四年のベトナム問題に関するジュネーヴ協定及び国際法に対する違反行為ではないかと思いますが、外務大臣はどう思いますか。
  266. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ジュネーヴ協定の違反だと申されましたが、これはアメリカもしばしば言明しておるとおり、南ベトナムに現在アメリカの軍隊がとどまっておるのは、友好国が共産侵略に対抗するために援助を要請してきたからである、その援助に基づいて駐留しておるのであるということを言っておりますが、われわれもその事実を認めておる次第であります。
  267. 戸叶武

    戸叶武君 国連憲章の冒頭において、言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救うためにということばが冒頭に述べられて、そうして国連憲章第二条四項に、すべての加盟国は、その国際関係において、いかなる国の領土保全もしくは政治的独立に対しても、また国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によっても、武力の行為または行使を慎まなければならない、こういう規定をもとに、安保理事会はこれに基づいて調査を行なうことができる規定がありますが、そういう方法にでも入らないとあの問題の収拾はできないのじゃないでしょうか。
  268. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この事態を鎮静させるためには、私は武力行為だけでは十分ではないのでありまして、必ず政治的な話し合いというものに入らなければならぬと思うのであります。しかし、現状においてはやはりその環境になっておらぬと、一応この戦火のちまたを静めて、しかる後に政治的会談に入るべきものであると、かように考えております。
  269. 戸叶武

    戸叶武君 外務大臣は、国連憲章第三十四条の規定——調査の規定をどのように解釈しておりますか。
  270. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政府委員から答弁させます。
  271. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) トンキン湾事件のあとでアメリカが安全保障理事会に報告しまして、それに応じまして安全保障理事会が開かれました。その際、すべての関係国が賛成しまして、北及び南のベトナムの代表を呼ぼうということになったのでありますが、北側がこれに応じなかったという経緯があるわけでございまして、それ以来安全保障理事会としましては何らこの問題について実質的な審議ができないままになっておるわけでございます。
  272. 戸叶武

    戸叶武君 いまの説明で、国連の安全保障理事会が何もしなかったのではないということはわかったのですが、この長きにわたるベトナムの紛争というものを、われわれはアジアにある国として黙視することができないのです。かつて日本の軍部が満州事変を起こしたときに、国際連盟の時代においても、リットン卿を派遣して調査を行なっているのであります。国連憲章第三十四条に、安保理事会は、いかなる紛争も、国際的摩擦に導きまたは紛争を発生させそうないかなる事態も、その紛争または事態の継続が国際の平和及び安全の維持を危うくするおそれがないかを決定するために調査することができるという規定があります。政治的な話し合いだけでは、いまとっているアメリカの感情的にまで高ぶっているところの軍部の行動を阻止することはできないと思うのです。やはり国連が、この三十四条の規定によって、南ベトナムの代表を呼ぶとか北ベトナムの代表を呼ぶとかいうのではなくて、私は現地の実態をやはり調査することが急務だと思うのですが、外務大臣はいかような見解ですか。
  273. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 安保理事会がさような権限を行使すべきであると言われましたが、安保理事会の常任理事国の間にかような問題に対する意見の対立がある間は円滑な運営はほとんど不可能になっておる、こういうような状況でありますから、私はこの点をまず将来適当に是正すべきである、かように考えます。さしあたりのところは、安保理事会に期待するということが非常に至難である、かように考えております。
  274. 戸叶武

    戸叶武君 安保理事会の常任理事国の名のもとにおいて、大国の横暴が度を過ぎて、アジア・アフリカの諸民族の期待にこたえることができない麻痺状態におちいっているから、インドネシアにおけるところの国連脱退のようなことも起きるのであります。日本は、こういう切迫した情勢のもとにおいて、ただ安保理事会によるところの国連運営ということだけを考えずに、アジアにおける先進国としての責任においてこの問題の処理に当たっていかなければならないと思います。ベトナムにおけるところの米軍の今次の行動というものは、外務大臣が認識しているような形において世界の人々はそれを受け取っていないのであります。いままでアメリカの軍は、ベトナムにおける顧問団として来ていたはずです。戦争を目的として来ていたのではなくて、ベトナム軍隊に対するアドバイザーとして来ていたのであります。それが、今回はみずから他国の領土に爆撃の戦闘行動を行なっております。二日以降の爆撃は、テーラー大使が言明したごとく、報復行為でない。北からの侵略に対抗すると称する侵略行為であると私は思うのです。これは、アメリカに遠慮している限りにおいては、アメリカのこの行き過ぎを是正することはできないと思うのであります。今回のこの北ベトナムの大爆撃以来、アメリカ軍の性格がこの暴挙によって質的に変化を遂げたと私は見なければならない。明らかに実質的には交戦団体の一員となっておる。しかも、アメリカが近く陸上部隊まで基地を守るために上陸させるということをうたっているではありませんか。こういうふうにベトナムにおけるアメリカの軍がみずから交戦団体の一員となったというようなことは、今後、アメリカに協力している、また安保条約において制約を受けている日本としては、その影響がきわめて重大だと思いますが、この問題に対する佐藤首相の御見解を承りたい。
  275. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の基本態度は、先ほど申し上げたとおりでございます。ただいま米軍がやっておる行為——爆撃行為あるいはその他の行動、これにつきましては、いろいろの立場からいろいろに御批判があろうと思います。ただいまの戸叶さんのお考え方戸叶さんの御出張かと考えますが、いずれにいたしましても、とにかく早く平和をここへ復活さす、取り戻す、これが一番の大事なことと思います。先ほど国連のお話も出ておりましたが、国連もそういう意味においては協力している。また、ソ連も、フランスも、イギリスも、すべてがただいま、どうしたら平和になるだろうか、そういう意味でいろいろその道を見つけつつある。ただ今日の行動自身を批判するだけではなくって、それよりも、どういうような道をたどるべきかという、その平和への道をただいま各国ともさがしておるというのが現状ではないかと思います。私は、さような意味合いにおいて、先ほども、日本として果たすべき点、そういう役割りは果たしたい、かように申しておるわけでございます。
  276. 戸叶武

    戸叶武君 これは、外国だけでなく、アメリカの国内でも、三日コロンビア大学で開かれた討論会を皮切りといたしまして、全米の約四十の大学で討論会やゼミナーの集会という形で、一般市民に南ベトナムの戦争の無意味さと平和の解決を求めるところの運動が展開されだしたということであります。アメリカの知識人ですらも、自国の政府並びに軍部が行なってるこの行動というものをどうやって阻止しようかといって、すでにもう行動に出ておるのです。しかも、南ベトナムの、いままで穏健と言われた仏教徒の人たちも、悲痛な叫び声を上げて、アメリカは反共の名によって他国に入ってきて戦争をしかけていると言って訴えているのであります。こういう事態に入って、私たちはこれを黙視するわけにはいかないと思うのですが、先ほど佐藤首相はジュネーヴ会議の再開のことに触れましたが、現在、ウ・タント事務総長が模索しているところの動き、あるいはフランスのドゴールが叫んでるところの関係国会議の招集、あるいは国連の安保理事会の活用、そういう幾つかの糸口はあると思うんですが、それに対して、外務大臣のように、安保理事会でも常任理事国が拒んでる限りにおいてはどうにもならぬというような形で投げ出すんじゃなくて、最も根強く日本あたりがこのことを強調して、どこからかこの平和解決への私は突破口をつくらなきゃならないと思うのですが、総理大臣はさきにジュネーヴ会議の再開ということを言いましたが、その再開に対してはどういうような腹案を持っておいでですか。
  277. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、ただいまお話しのように、各国とも各国がそれぞれの立場においていろいろの行き方をやっておるようでございます。私どもも、平和への道、そういう意味では私どもと主張をともにする——行き方は別といたしまして本、とにかく平和への道が一番大事だと、こういう国が幾つもございますので、そういう国と協同してこの問題が早く鎮静するように努力いたしたいものだと思います。現地報告——これはまあ新聞報道でございますが、日本などがこの問題について一番入り得る、一番きれいな国だと、かようなことも言っておりますので、私は、そういう意味立場につきましても十分国民の理解を得た上で、そうして国民の支援のもとに平和への道をたどっていきたい、またその道を見つけるように努力したい、かように考えております。
  278. 戸叶武

    戸叶武君 いま佐藤さんが言われたように、現地の人々が、かつて日本が太平洋戦争の際に仏印に進駐したことを忘れて、今日においては手のよごれない国としてその助けを求めてるような状態で、これを私は黙視してはならないと思うのであります。椎名外相は三日衆議院予算委員会で、日米会談で佐藤首相はジョンソン大統領に対して適当な限界をこえて拡大行動に出ないように申し入れてあり、米側も賛成を表したと答弁しておりますが、その内容はどういうようなものですか。現実はその佐藤さんの意図したものとは逆な方向に進んでいると思うのでありまして、佐藤さんの意見なりなんなりがアメリカに聞かれたか聞かれなかったかという証拠にもなりますから、そのアメリカにおける発言内容を発表してもらいたいと思います。
  279. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、ジョンソン大統領との会見の際に最も主張したことは、日本は平和愛好国であり、また自国の安全を確保するその立場に立ってすべてを見たい、ことにアジアの諸国はそういう意味では最も問題が多いように思う、こういう事柄が日本の安全へも悪影響を与えるのだ、かように私は考えますから、その意味において事の起こらないことを心から願うのだ、こういうお話をしたわけであります。ジョンソン大統領また、御承知のように、アメリカの兵隊が名目は何にしろベトナムに出かけていく、この事態は御承知のことだと思います。これは当時の安保理事会で、国連軍が出ていくということであったように思いますが、しかしソ連の反対で一致した行動はとれなかった。その後、ベトナム政府から要請があり、そうして米軍が出かけていっているということでございます。そうして、ただいま仏教徒その他は平和を愛好している、これはそのとおりでありますが、これまた米軍を支持している、アメリカを支持している、かような状態でございますから、私は、おそらくこの事態は、いわゆる間接侵略をやるとか、こういうことになってくると、事態がよほど変わってくるのじゃないか、かように思います。ちょうど卵と鶏との関係みたような議論をいたしましてもしかたがないことであります。心から願う平和、それへの努力をわれわれは続けていくと、こういうことでございます。ジョンソン大統領もその大筋においては理解してくれた、かように思っております。しかしながら、その後において不幸にして爆撃が次々に行なわれている、これはまことに私は残念なことのように思っております。
  280. 戸叶武

    戸叶武君 テーラー大使の今回の行動というものは、明らかに朝鮮事変のときのマッカーサーの越境爆撃の主張と類似した行為だと思います。あのときにおいては、アメリカの大統領の見識において、マッカーサーの罷免によって戦火の拡大を押えることができたのですが、今日においては、ソ連も中国も出てこないであろうというような想定のもとに、アメリカが今日北ベトナムの爆撃行為を行なっているのであります。悪質です。ジョージ・ケナン氏がアメリカの上院の公聴会で、アメリカ政府の作戦に、ソ連を中共側に追い込むおそれがある、アメリカが孤立する危険性があるというふうに警告したのは、こういう点だと思います。アメリカの内部においても、ケナン氏のように見識ある人が、国会の公聴会で堂々とそうした政府に対する批判をやっているのです。日本はみずからが、佐藤さんたちはアメリカのパートナーだと言っているが、パートナーだというのは、友人が間違いを犯したときに、少なくともアジアの問題に対しては、日本の見識でもって、そういうことはやめなさい、あなたのためにもなりませんよときつく抗議するだけの見識があって初めてパートナーとしての価値があるのだと思いますが、今回のベトナムの問題に対しては、国民感情としても、もはやアメリカのやることは許せぬというところまできたと思います。アメリカの内部においてすら、全大学がこぞって集会を開いて、そうして戦争の拡大を食いとめようという良心的な動きが起きたのです。日本の全学連はいまのところ眠っておりますが、日本の仏教徒もいまのところ眠っておりますが、ほんとうに平和を念願するならば、日本国内の、創価学会であろうが、全学連であろうが、みな立ち上がって抗議集会を開いて、そうしてこのアジアにおける道義的抵抗の運動を起こしていかなければ、政府がこういう腰抜け状態であってはだめだと思うのですが、みずから率先して、明治維新の先駆者を持つ山口県、長州の佐藤さんですから、先輩に恥じないだけのひとつ見識ある行動をとっていただきたいと思いますが、どうですか。
  281. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来何度もお答えいたしましたように、私は、明治維新を引き合いに出されるよりも、終戦後の日本の新しい行き方、それをひとつ引き合いに出していただき、その立場に立って、皆さま方の御協力を得て果たすべき役割りは果たしてまいりたい、かように私考えております。
  282. 戸叶武

    戸叶武君 私は、この二十年間の間に日本がほんとうに、植民地的な、黒船によって脅かされたあの苦悩の中から攘夷、開国の苦悩を経て立ち上がったときのその精神的な抵抗というものを忘れているから、あえて私は明治維新を言うのです。中国に対しても、いまの中国のアメリカ帝国主義打倒は一種の攘夷党的な行き方です。しかし、百二十年間アヘン戦争以後さいなまれてきた中国国民の感情として、明治維新の攘夷党以上に帝国主義に対する憎しみと抵抗の気持ちというものは根深いものがあるとということを理解してやるだけの寛容さがなければ、日本はアジアの諸民族の抵抗というものを理解することができないと思うのです。あれほどがんこな攘夷党ですらも、世界があたたかく日本を孤立化から脱出させるために協力したときには、日本は近代国家をつくる方向に前進していったじゃありませんか。固定していないのです。アジアの苦悩を理解するためには、ワイマール体制的なこの二十年間におけるところの口先だけの民主主義や自由主義じゃなくて、民族が苦悩したどん底の苦悩というものへ帰って、そうして諸民族の苦悩を理解してやらなければならないと思ったのですが、どうももう一度佐藤さんも長州へ帰って吉田松陰の墓でもお参りしてきたほうがいいんじゃないかと思うのですが、そこで、日韓会談の問題はすでに午前中にいろいろ論議されましたが、だから私はこの問題に入るのを省略いたしますが、この日韓会談の早期妥結を急ぐのは、佐藤さんがアメリカに行ってきてから急ピッチになりましたが、やはり私はアメリカの要請というものに浮かされているんじゃないかという感じがしてならないのです。いま朝鮮民族の悲願というものは、南北朝鮮の統一だと思います。ベトナムにおいてもそうだと思います。台湾においてもそうです。そういうときに、この日韓会談を通じて韓国を承認するということは、南北朝鮮の統一の機運に水をさすような結果にならないか。先ほど佐藤さんは統一を阻害するようなことはないと言っていますが、その問題が一番私は朝鮮の民衆にとっては疑惑をはさまれている点ではないかと思うのです。この点を明快にしてもらいたいと思います。
  283. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) アメリカへ行って日韓交渉の促進をはかった、こういうわけではございません。私は、組閣と同時に、日韓交渉は早期に妥結したい、こういう希望を述べておりますし、本来隣の国同士がいままでのような関係に置かれていることはまことに不自然です。別に私は多くの理屈を申しませんが、とにかく隣同士が仲よくするという、これはもう自然の道であります。そういう意味において日韓間の交渉は妥結して、そうして国交の正常化をはかる、これが私の念願であります。幸いにしてそういう点は、ただいま基本条約その他をはじめ前進をしつつあるように思います。まだまだもちろん残っておる問題もございますので、そういう点から、今日この交渉が早期に妥結するかどうか、これは一に今後の交渉にかかっておる問題でありますから、これはただいまから私ども申し上げることは早い、かように思いますが、いずれにいたしましても正常化することは、これは自然の姿だと、かように思います。そうして、今日までやられておりますことも、アメリカから何か話をされたのではないか、という一部に誤解がございますが、私は特に日米間の共同コミュニケにもこういう話を出しておらないのであります。これは本来日韓間だけの問題だ、アメリカにとやかく相談すべき筋のものでない、そういう立場からかような取り扱いにいたしたわけであります。また、先ほど来、戦後二十年この国はりっぱに民主国家として成長したと私申しましたが、どうも年齢の相違があり、とかくコンプレックスを感じておるのじゃないか。最近の若い方、二十代あるいは三十そこそこの人、こういう方は、ほんとうにりっぱな一人前になって、どこからも干渉がましいことは言われない、みずからの道を自己の主張を通していく、そういうことで、実にりっぱな見上げたものだと、私は若い方に期待をかけております。そういう意味で、先ほど来のお話にいたしましても、やはり日本独自の、平和を愛好する日本の真の姿、これを代表して、若い方はどんどん活動しておる。そういう意味では、どこに出しても何ら遠慮するところはない。この気持ちを育てていきたい。これは私も政治家のつとめであると思います。  ただいま、南北の統一を阻害するのではないかというお話がございましたが、きょうも午前中に申し上げましたごとく、南北の統一、これが民族の念願に違いない。だれも他国からこれを妨げるべき筋のものではないのだ。さような意味におきまして、一日も早く南北が統一されることを念願しております。これは、その当時も説明いたしましたように、国連方式なるものを日本も賛成しておるのだ。その立場に立ってただいまの日韓交渉の妥結をしていく、必ずこれは支障はないのだ、かように私ども考えてただいまの大韓民国との交渉を進めておる、このことを、何度も申し上げましたが、重ねて申し上げましてお答えといたします。
  284. 戸叶武

    戸叶武君 南北統一を阻害しない、国連方式で統一への道を歩んでいこうとしているのだというお話ですが、佐藤さんが言われたように、隣の国と仲よくするということは、いずこの国とでもこれは必要なことだと思います。しかし、隣の国と仲よくする場合にも、隣の国の事情はやはり理解してなくちゃいけないと思うのです。近所隣のつきあいといいますが、隣で夫婦げんかをやったり兄弟げんかをやっておるときに、隣のおやじがおん出るときに、隣の奥さんと仲よくなるなんというのは、それはやはり誤解を招くことです。兄弟げんかをやっている片方と仲よくして片方を排斥するというような形では、その家庭の紛争をやはり助長させることになるので、そういうような心理的な感覚を失っておるところに、日本のいままでの霞ケ関の外交というものがいつもかすみのかかっておる点ではないかと思うのですが、私たちは、もっとすっきりとした形で、南だ北だと言わないで、そうして来たる者は拒まず、去る者は追わずというような形で、もっと大きな形で朝鮮問題の解決に当たらなければいけない。朝鮮は日清戦争の前後においても、日露戦争の前後においても、今日においても、常に、強国がひしめき合っておるときには、国内が分裂状態になって、いつでも喜劇的な政争を繰り返しておるのですが、そういう朝鮮のあり方、極東のバルカンとも言われたような朝鮮のあり方の不幸な面を日本が除去することにつとむべきであって、その一方に加担して一方は排斥するというような考え方は、私はよしていってもらいたいと思うのです。私がやはり心配するのは、いまアメリカの要請を受けて韓国の軍隊が南ベトナムに派兵されていくというようなあの動きを見ても、アメリカは何か、SEATOというものが無力化してきてしまった、そこで韓国兵でも入れて少しそこに気合いを分けようというような企てをしておるのだと思います。日本をいざなっても、日本はこのごろどうもおかしな三矢事件というものがあって、変な動きをしそうですが、あの程度でまだ誘い込むことはできない、韓国なら持っていくことができる、そういうので、まず三矢さんのほうはあとにして韓国のほうをというわけで、このベトナムの問題にも入っておるのですが、こういうところに、この無力化したSEATO、いま日本、韓国、台湾、こういうNEATO的な構想と結びつけて、そうして極東におけるアメリカの中国包囲政策というものを立て直そうというような模索がなされているような感じがしてならないのです。そこで、佐藤さんにお聞きしますが、アメリカの中国包囲政策というものは全く愚かなる政策であります。この認識の上に立って片棒をかつぐようなことはしないで、そうして佐藤さんがアメリカでも瀬踏み的に言ったように、共産主義に対抗するのでも、軍事的対抗でなくて、アジアの貧困をなくさせることが第一の問題です。アジアの近代化を求めていくことが第一の問題です。そういう点をアメリカに相当私は佐藤さんも突っ込んで話したんじゃないかと思いますが、共同声明や何かを通じてでは、どうも上のほうきりしかちらついて見えませんから、どういうところをアメリカに言ったか、その点も説明願いたいと思います。
  285. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ジョンソン大統領と話し合ったことで、差しつかえないものはもちろん私も皆さま方の御理解を得たいと思いますので、そういう意味でお話をするので、全部についての話をここで御披露するわけにもまいりません。これは国際外交慣例上当然のことだと思います。  私が一番心配しておりますことは、アジア人のサイコロジイというものは、必ずしも欧米の人々にはそれはそのまま理解できない。そこで別な行き方というか、とにかくいまアジアの民衆、民族が一番困っておることは、これは貧困あるいは病気との戦いだ、これに力をかすことだ。そうしてこれらの方々が、これらの民族が生活が楽しめるような、もっと楽になる、そうして病気から救われる、同時に貧困から救われる、ここに本来の主要な目標を置いて、しかる上でアジアの安定をはかるというような考え方になってほしい、こういうことを実は申したのであります。これでおわかりができるか、あるいはまた別な考え方があるかとも思います。ただ、私これにつけ加えまして、ただいま韓国の問題について、隣りが夫婦げんかをした、まここに卑近な例を引いておられる。その際に、その夫婦のうちの一方だけと仲よくすることは、これはたいへんなことだ、かえってその紛争を激化するゆえんだ、こういうお話をされております。これも一つの当たった見方だろうと思います。私どもがいま国連の決議あるいは国連方式というものをここにわざわざ出してきましたのは、いわゆるこれが国際常識になっているんじゃないか。あるいは国際通念になっているんじゃないか。ひとりよがりの考え方でないのだ、やはり国際的にどういうように見ているか、その立場に立って日本も協力しておるのだ、こういう実は考え方でございます。中国問題、中共政府に対する態度にいたしましても、日本が行動する場合に、ただいま御承知のように政経分離でやっておりますが、しかし、国際常識というものが別な方向になれば、もちろんその常識それを私どももつかみ、そうして日本の行き方も間違わないようにしたい、かように思います。そういう意味でアメリカ側にも十分理解をしていただきたい、かように思います。したがって、今日まで中国に対してとっておるいわゆる封じ込め政策なるものに日本が賛成していないということも、ただいま申し上げるような国際常識から日本が行動しておる、かように御理解をいただきたいのであります。
  286. 戸叶武

    戸叶武君 私は、アジアの問題に対しては、日本と中国が一番大きな責任を持たなければならないと思います。日本なくしてアジアなく、中国を除いてアジア問題の解決はあり得ないのです。そういう意味において、近く中国では対日政策の中心人物の廖承志氏が日本に来朝したいという意向も持っており、自民党の先輩である松村謙三さんや石橋湛山さんが、廖承志氏が来朝したなら手厚く迎えるようにということを佐藤さんにも進言しているようですが、いま廖承志氏の置かれている立場からするならば、その実現は困難だと思います。それは中国に対するプラント輸出の延べ払いに、輸銀融資が、吉田書簡をたてにとって台湾政府の抗議で阻止されているという現状のもとでは困難だと思いますが、佐藤さんはどのように考えておりますか。
  287. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 廖承志さんの日本への旅行というものは、せんだって私石橋先輩からその話を聞きました。近くそういう招きをいたしたい、かように思うのだということでございました。私のほうには異存はございませんので、異存はないと話をしました。もちろん、廖承志さんがいままで日本の実情をよく知っておる、こういう意味で、こういう方が出てくれるならば、一そう日中間の交渉には役立つだろう、かように私は私の所見を申し述べたわけであります。ただいまお話によれば、廖承志さんなかなか日本には来れない、もちろんそれはただいまの延べ払いに輸銀を使わない、そういうことだと、こういうお話がございます。私は日中間の貿易拡大、これはもうかねてから念願しておるところでありますので、この点について基本的な態度誤解を受けるものはないと、かように私感じております。その立場に立ちまして、ニチボーのプラント輸出につきましても、これを許可したわけであります。日本政府としてはプラント輸出ができる、またそれはその話し合いを許すべき筋だ、またそれが必ず実現するように努力する、こういう意味でこれを許可したわけであります。私は、その決済方法が何でなければならないというのれは、ややかたくなな立場ではないだろうか。この点は私どものほんとうの内政上の問題であります。もしも日本国内の決済方法が、このプラント輸出をして困難ならしめるとか、あるいはその条件を変えなければならないようにしておる、こういうような事態があるならば、私は責められてしかるべきだと思いますが、しかしながら、日中貿易は拡大したい、貿易は進めたいというその立場に立ってただいま申し上げるようなプラント輸出はこれは許可した。その次元において、それがいかなる方法でとられるか、これは円滑に遂行されるならば、私はとやかく言われないほうがいいのじゃないか、こういうことこそ、自主的に国内問題として処理すべきものだと、かように私は考えております。これは中共に対して申し上げるばかりではございません。国民政府に対しましても、私すでにそういう点をはっきり申し上げております。私は吉田先輩、いわゆる吉田書簡なるもの、これは道義的に拘束される、そういう意味において私は尊重はしますと、尊重はしますが、一切それをやってはならない、かように他国から指示を受ける筋のものではない、こういうことを申し上げておるのでありまして、そういう点については、国民の皆さま方も、わが方の自主的な問題だと、かようにお考えをいただいて、そうして本筋の日中貿易を拡大する、増進していく、そういう点について、はたしてこれが支障ありやいなやということを十分御検討いただきたいものだと、かように思います。
  288. 戸叶武

    戸叶武君 廖承志君がこの問題に関して「武士は食わねど高楊子」ということで中国のメンツを主張しておりますが、「士は己を知る人のために死す」というほどきびしい知己の求め方をしている中国、さっき佐藤さんは、アジアの問題にはサイコロジーの問題があると言いましたが、そういう中国の文化道統というものを理解するならば、いま日本の政府のやっている態度は、私は反省すべきだと思います。中国側の態度は、陳毅外相が岡崎嘉平太氏に、日中貿易に台湾が介入するようでは、日本からプラント輸出を受けるわけにはいかないと語った態度で貫かれております。政府はさきに倉敷レイヨンには輸銀資金を認めながら、ニチボーのビニロンプラント、これには認めないという態度は、そのことに具体的に言及した吉田書簡に制約を受けている。また台湾側からの抗議もこれも理由の一つにしている。そういう経緯がわかっているのであって、それで動かされたのではないと言っても、私は中国側としてはそう受け取るよりしかたがないのじゃないかと思います。佐藤首相は、対中国問題では、現在の国際政治において中国の問題の占める重要性がきわめて大きいという認識のもとに、その施政方針演説において自主的な観点から慎重に対処する、現在の段階では正規の外交関係を有している中華民国との友好関係を維持しつつ、中共に対しては政経分離の基本方針に立って経済及び文化面での交流を促進していきたい、こういうふうに断言しているのです。自主的といい、政経分離とみずから言っていながら、佐藤内閣の中共貿易に対する態度は、自分から政経分離というものを混乱させるのじゃないかと思いますが、どうですか。
  289. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの日米共同コミュニケ、これでわが国態度を宣明したわけであります。これはひとりアメリカに対しての共同コミュニケというだけではなく、これを通じて世界に態度を宣明した、私はそういう意味においてたいへん価値のある意義のあることだ、かように私は確信をいたしております。戸叶さんもやはり日中間の貿易の拡大を心から願っておられるに違いない。またそういう意味の日本の政府態度に対しましては、そういう意味で御協力が願えるものだと私は思います。私は中共の諸君のいわゆるメンツにとらわれた行き方が、これが東洋流の行き方である、こういう説には必ずしももう賛成をいたしません。もちろんメンツも大事でございます。しかしながら貿易拡大、こういう事柄になれば、もう少しその点はもっと余裕があってもしかるべきではないか、かように私は思いますので、もちろん私はメンツをそこなわないように努力するつもりでございますが、そういう立場に立って日本が自主的にきめること、これをやはり十分理解していただきたい。今回の問題がいわゆる台湾が介入することによってそういう処置になったわけではない。これは先ほど国民政府に対しても、私のほうでそういう話をしておるということをはっきり申しました。そうすればわがほうの態度というものはおわかりが願える。いわゆる戸叶さんも日本政府のこの貿易拡大への熱意、これをひとつ御了承いただいて、日本政府に御協力賜わるように心からお願いをいたします。
  290. 戸叶武

    戸叶武君 確かに日米共同コミュニケにおいては、中共貿易に対する態度を世界に宣明していると思います。その中で中国大陸とは、政経分離の原則に基づき現在行なわれている貿易などの分野における民間ベースの接触を引き続き進めていくことが、日本政府基本政策である旨表明している。この問題は民間ベースですが、民間ベースの解釈でやはり輸銀の活用の問題というものが、若干停滞しているのじゃないかと思うのですが、この点はもう少し佐藤さんがむしろメンツにとらわれ過ぎているので、ふぬけたほうがいいんじゃないかと思います。やはり相手のこわばった表情をくずすのには、こっちからこわばった姿勢をくずしていくよりほかに、外交の手というものはないのじゃないかと思うのですが、佐藤さんの今回アメリカに行った行き方というものは、岸さんや池田さんよりは若干私は評判よかったと思うのです。これはワシントン・ポストのクルズマン氏が日米両国が中共へのアプローチを異にすることに合意された、それからまたニューヨーク・タイムスのレストン氏が、ジョンソン大統領は日本と中国との文化的、経済的接触の増大に反対しなかった、仲よい同盟国でさえ、単に米国に追従するものでないということが、この会談で示されているというふうに受け取っているぐらい、いままで少し、歴代の内閣総理大臣が腰が抜けていたのが、すっきりなりかかったようなところまできていると思うのです。しかしベトナムに対する態度、今回の韓国に対する態度、また中共貿易に対する態度、ちょっとたよりげがないと思うのです。やはり私は、佐藤さんの特徴は、目にあると思うのですが、問題は目ですけれども、ネコの目の変わるようにやたらにプラント輸出、延べ払いの問題も変わっていたのでは困るのですね。ネコの目ならそれほど目立ちませんが、佐藤さんぐらいの団十郎ばりの目のたまがネコの目のように変わっていったのじゃ、どっちを佐藤さん向いているのだかわからなくなっちまうと思います。で、ここは佐藤さんばかり聞いちゃいけませんから、貿易の当事者である通産省の見解がこのごろはなかなか常識的で、私は経験からきてよくなっていると思うのですが、通産大臣から、日本の延べ払い輸出は、すべて輸銀資金によることになっているから、輸銀資金を使っても民間ベースと言えると私は思いますが、そういうのと同じような見解の上に通産省は立っているのじゃないかと思いますが、ひとつこれは通産省からだけじゃなく、あとから佐藤さんからもその見解を述べてもらいたいと思います。
  291. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 延べ払い輸出につきまして、輸銀資金を、これを活用しておるということは、御説明申し上げるまでもないわけであります。通産省は貿易の拡大のために、できるだけこの輸銀資金を確保したい、こういうことで一千九年度当初には千六百億円の輸銀資金でございましたが、今回は四十年度当初千九百四十五億円の資金を確保いたしまして延べ払いを促進していきたいと、かように思っております。  なお、ただいま中共貿易に関連してのお尋ねでございますが、これは先ほど総理がお答えしたとおり、私ども自主的な判断をしてまいりたいと、こう思います。
  292. 戸叶武

    戸叶武君 船舶や機械のプラントの輸出は、延べ払いになっているのが国際的な常識です。その上、日本は外国よりも金利が高いので、他国のプラントの輸出の競争の際には、金利の低い特別な金融機関が必要であります。そういう目的で輸銀はつくられたのであり、また輸銀はその性質上純経済機関であり、通常の通商ベースであると思う。その資金源も、郵便貯金などの民間資金に依存していると思うのであって、これを使っても何ら差しつかえないと思うのですが、政経分離をたてまえとする政府が、中国だけ差別するという態度を改めない限り、中共貿易の発展はないと思いますが、佐藤さん、これはどうですか。
  293. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来お答えいたしたとおり、また重ねてお答えするのでございますが、ただいま問題になっておりまするニチボーのプラント輸出、ビニロンプラントの輸出、これを許可いたしました。もしもこれが特定の機関を使わないために、ニチボー自身がこの契約の履行ができない、その約束したとおりができない、こういうものでは実はないのであります。その点を先ほど来私が申し上げた。それで輸出入銀行の持つ機能は、ただいま通産大臣がお答えしたとおりであります。それをとやかく言わないことが、まず第一に貿易拡大への道ではないか。お互い貿易拡大ということは、お互い貿易によりまして双方が利益を受けるものであります。この双方の利益をそこなわないそういう道があるならば、それでけっこうなんじゃないか、かように私は申し上げておるのでございます。その点を御了承いただきます。
  294. 戸叶武

    戸叶武君 倉敷レイヨンには許して、ニチボーのプラント輸出には許さぬというところに、やはり誤解を招く点があると思いますが、去る二月十五日、東京商工会議所ビルで開かれた三十九年度下期の最高輸出会議における佐藤さんの演説というものは、いまの答弁よりは若干、前進しているのじゃないでしょうか。延べ払い資金の調達方法は純国内問題で、国府、中国からとやかく言われる筋合いではない。輸出承認を受けながら、延べ払い資金の調達に関して輸出をためらっている向きが二、三あるが、純国内問題として処理する、いまの純国内問題として処理する、いま言ったことばもそれに結びついているのですが、問題はその内容です。純国内問題として処理するというのは、金利が安く、輸銀を使わなくても処理できる方法があるのかどうか、それを承りたいと思います。
  295. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最高輸出会議で話したことと、きょう、この席において話していることと、これは別に後退も前進もございません。同一なことを申し上げておるのでございます。私はそういう点について、業界において、特に十分くふうされたらいいんじゃないのか、現に西欧諸国の中には、いわゆる民間の銀行の金融の話し合いによって、そしてこういう長期クレジットを設定する、こういうような方法をとっておる国もあるのであります。私は必ずしも輸出入銀行だけが唯一の道だと、かようには私は考えてない、そういうことを申し上げておるのであります。
  296. 戸叶武

    戸叶武君 通産大臣から、ここ数年間における日本の貿易、その中における共産圏の貿易の占める位置、特に中国貿易の問題について説明願いたいと思います。
  297. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 中国関係の貿易、すなわち中共貿易は、昨年度非常に伸びまして、三億九百万ドル程度になっております。六三年につきましては輸出が六千二百万ドル、輸入は七千五百万ドルでございます。それが昨年におきましては、輸出が一億五千二百万ドル、輸入が一億五千七百万ドル、こういうふうに大きく飛躍したわけでございまして、なお、昨年十二月に、鉄鋼、肥料等の貿易協定もできておりますので、今年も順調にいきますならば、相当な伸びが期待できると思います。
  298. 戸叶武

    戸叶武君 ソ連及び北鮮との関係はどうなっています。
  299. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ソ連の関係におきましては、六三年が輸出一億五千八百万ドル、輸入一億六千二百万ドルでございまして、昨年は往復で四億七百万ドルほどになっておりますが、輸出が一億八千万ドル、輸入が二億二千六百万ドルでございます。なお、本年の六五年につきましては、先般貿易協定の話し合いができまして、三億五千八百万ドル、こういうふうな目標ができております。  北鮮につきましては、きわめてわずかでございます。六三年、輸出五百万ドル、輸入九百万ドル、昨年におきましては、わずかではございますが、相当に伸びまして、一千百万ドルが輸出、輸入が二千万ドル、こういうことになっております。
  300. 戸叶武

    戸叶武君 御承知のように、社会主義国家は、みな国家計画経済を推し進めておるのであります。中国は来年度から第三次五カ年計画に入るのだと思いますが、そのために現在、やはり備えて、経済建設の足場をつくっておるのでありまして、いまソ連や中国の貿易は、これがために、昨年と比較して五〇%伸びるだろうというふうにイギリスでも見ておりますが、西欧各国はやはり共産圏に対するところの貿易競争において、安い金利を活用しながら延べ払い方式で、ソ連に対しても、東欧諸国に対しても、私は東欧諸国を見てまいりましたが、中国に対しても相当突っ込んでいると思いますが、そういうときに、この計画経済によって、長期的見通しの上に立って準備段階に入っているときに、いまの日本政府で、通産省の言うことに対して外務省が足を引っぱる。また大蔵省も優柔不断で、通産省の言い分を支持してくれることもできない。佐藤さんも大体の方向においては踏み切っているようだが、さっぱり踏み切ったような形も見えない。こういう形で低迷しておっては、この社会主義的な計画経済の国と私は貿易というものはなかなかできなくなるのではないかと思うのです。これは共産主義と社会主義とを問わず、資本主義とを問わず、貿易関係は信用です。ぐうたらとはつき合いができぬというのが、信用の原則です。やはり日本の政治の姿勢というものを、もっと私はき然とした態度をとってもらいたいと思うのですが、これはあえて佐藤さんに要請するのですが、こういうような形だと、ほんとうにどこの国からも私は相手にされなくなってしまうのではないかと思いますが、早くその点割り切ってもらいたいと思います。
  301. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど通産大臣から御説明いたしましたが、大体六〇年以来毎年、実情を見ますると、輸出よりも輸入のほうが多いのであります。いわゆる輸入超過になっている。六三年にいたしましても六千二百万ドルに対して輸入が七千五百万ドル、またソ連自身も一億五千八百万ドルに対して一億六千二百万ドル——社会主義といいますか共産主義の国も、貿易についてはなかなかじょうずであります。私、ソ連との貿易協定をかつて試みたことがありますが、この種の国との交渉におきましては、輸出入のバランスをとる、そういう立場に立って交渉を進めたのでありますけれども、毎年輸入超過になっております。こういう状態でございますので、ただいま仰せになりますような、当方からの輸出をもう少し進めていかないことには、そのバランスはとれない、こういう立場でございます。私は輸入を押えろという意味ではない、当方の輸出をもう少しふやしていく。それによってバランスをとる、そういう立場で貿易を拡大していきたい、かように考えますので、先ほど来の決済方法等につきましても、そういう立場で私自身がおりますので、そこに誤解を受けないようにいたしたいものだと、かように思います。いずれにいたしましても、特殊な国との輸出入、これはバランスをとることが一番大切だと、かように考えて交渉の重点をそこに置いておりますから、わが国からの輸出、これは伸びていくように一そうの努力をいたしたいと、かように考えます。
  302. 戸叶武

    戸叶武君 佐藤内閣の使命は、池田内閣の高度経済成長政策の強行の結果できたひずみの是正というものが、一つの大題目であったと思います。そうして佐藤さん自身国民生活に密接な関係のあるところの諸物価の値上がりを抑制するということを呼号してまいったのですが、最近の傾向として、ガスでも、水道でも、バスでも、公共料金、また生活必需品が手当たり次第に値上がりをしておるのですが、これに対する政府の抑制対策というものは、具体的にどのような点で成果をあげているか、それを示してもらいたいと思います。
  303. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 御承知のとおり、三十六年から三十八年まで非常に急速な消費者物価の上昇を示してまいったのでございますが、昭和三十九年——暦年でございますけれども昭和三十九年におきましては、昭和三十八年の、暦年で、七・六の上昇でございましたのに対しまして、昨年は三・八でとどまった次第でございます。しこうして、三十九年度といたしましては、年度当初四・二を見込んでおったのでございますが、実質成長率がその後、七%から、今日、九・四という成長を見込む段階に実際の経済の経緯がなってまいりましたような関係もございまして、これを四・八と改訂をいたしました。しこうして昭和四十年度につきましては、ただいまのところ、四・五の上昇率と、こういうふうに見ておる次第でございますが、いずれにいたしましても、年々安定的な状態にぜひこれを持っていきたいということで、本年の一月に十項目にわたるところの物価安定に関するところの閣議決定をいたしました。その各項目について各省庁協力して鋭意これに努力いたしておる次第でございます。ただ公共料金の一年間のストップという措置を、期限がまいりましたので、これを取りやめたわけでございます。もとより公共料金の抑制という基本的な態度は、これは依然とそのまま変わらずに続けてまいっておるわけでございますが、何でもかんでも押えるという措置は、その押えるほうの企業にとりまして、これは私企業であろうと、公営企業であろうと、非常な困難な事態に追い込むことになる次第でございますので、これはそういう措置は取りやめましたけれども、抑制するという基本的な態度は続けてまいっておるような次第でございます。しこうして、ただいま御指摘のとおり、各地方公共団体ともに、たとえば水道であるとか、バス、その他公営企業につきまして来年の七月からそれぞれこれを引き上げようという様子が、各公共団体に起こってまいっておるのでございます。もちろん各地方公共団体とも、これは、バスその他運輸関係のものにつきましては、政府がその料金について認可する権限は持っておりますけれども、その他のものにつきましては、それぞれ各地方公共団体が自主的におきめになる筋合いのものでございますので、政府の権限としてこれを抑えることはできないわけでございますが、何と申しましても物価の安定という問題につきましては、政府も地方公共団体も相協力して、同じような考え方でこれに努力をしていくのでなければ、とうていその目的は達成できない次第でございます。ことに政府の財貨サービスの購入のうち、地方公共団体が約三分の二に当たる部分を占めておるような次第でございますので、政府といたしましては、地方公共団体に対して、政府のこの物価安定に対するところの強い態度と申しますか、考え、決意を地方公共団体にもお訴えをいたしまして、そうして協力方をお願いをいたしておる次第でございます。
  304. 戸叶武

    戸叶武君 政府の物価安定に対する強い態度というけれども、実際地方公共団体としても、政府の政策が間違いをおかしているので物価がどしどし上昇して、政府の言うことを聞いていてはやっていけなくなってしまったので物価を上げるという悪循環になっているので、これは責任を地方公共団体に転嫁してみたり、あるいは協力を求めても、これは私は非常に困難ではないかと思うのです。東洋の政治哲学のことばに、「衣食足って礼節を知る」ということばがありますが、今日私たちは衣食住の問題の中で一番困っているのは、やはり食料がどんどん値上がりしていることと、それから住宅難に苦しめられていることだと思います。これはやはり政府も気にしていると見えて、食料の値上がりというものをそれほどでもないという証拠を示すのかどうか、大蔵省から先般発表した食料費の数字の発表がありましたが、あれは近くうそクラブで入賞するということですが、(笑声)あの数字の根拠は、一体どういうところから出たのか。大蔵省もずいぶん知恵をしぼって出した数字だと思いますが、その根拠を示してもらいたい。
  305. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 成年男子が一日にとらなければならないカロリーの量を二千五百カロリーといたしまして、二千五百カロリーでつくれる献立をつくってもらいたいということで、国立栄養研究所でつくったものが大蔵省献立、こういうことでございます。
  306. 戸叶武

    戸叶武君 防衛庁と同じく国立栄養所の数字というものは、ずいぶん政府の金を使うからくりであんな安い数字が出るんだと思いますが、現にこの下の国会の食堂でももう逃げ出そうとしている。いまのような値段じゃとても赤字でやっていけないから、あの倍以上に値上げしなければ、どんなに頼まれても参議院の食堂はやれませんよと言って、これは議運のほうでも弱っているくらいです。ひとつそれは佐藤さんにお願いして、今度は国立栄養所のほうでやってもらわなければ引き受けるところがなくなると思うんですが、こういうふうに政府の発表の数字というものがだんだん権威がなくなって、やはり政府のほうに都合のいいような数字をどこかででっちあげる。池田さん以来、政府の発表する数字というものには、非常に疑惑を国民が持っていると思うんです。私たちはその疑惑の一つとしても、政府が中期経済計画によって発表した主張によると、四十三年度に食糧の自給度を八〇%くらいとして、食糧輸入の見通しは二〇%というふうに出しておりますが、赤城農林大臣から過去数年間の食糧輸入の数量と金額を承りたいと思います。
  307. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 食糧の輸入額でございますが、三十五年に六億二千八百万ドル、三十六年に七億三千三百万、三十七年に八億七百万、三十八年に十一億七千四百万、三十九年の概算は十四億七千一百万、こういうことでございます。
  308. 戸叶武

    戸叶武君 通産大臣からお願いします。どうもいまのは、農林省のほうのは、非常に狭い範囲の食糧輸入の数字じゃないかと思いますが、広い範囲の食糧輸入の数字を出してもらいたいと思います。
  309. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま農林大臣がお示しになった数字で大体合っております。綿花、羊毛を除いた数字ということで、いまの数字になろうと思います。
  310. 戸叶武

    戸叶武君 農林大臣にお願いいたします。食糧自給度はどういうふうになっておりますか、この数年間。
  311. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 三十八年度におきまするわが国の農産物自給率は八一%、水産物を含めた食糧の自給率は八六%となっております。三十七年以前は八四%ということでございましたが、三十八年度は減りました。
  312. 戸叶武

    戸叶武君 八〇%以上の自給度があるのに、今後においてこれをずっと押えた数字を中期経済計画において出したのは、どういう理由に基づくのですか。
  313. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 生産の増しを年率三%と見まして、そういう見方から、四十三年度の自給率を約八〇%、こういうふうに見ております。
  314. 戸叶武

    戸叶武君 政府は、食糧自給計画というものを昭和二十八年以来大体放棄しているのです。MSA協定を結び、余剰農産物受け入れをやって以来、食糧増産費、土地改良費というものを削減してしまって、昭和二十八年におきましては、農林予算というものは、国の予算の中において一六・五%を占めているのに、今日においては、食管会計を取り除くと、七・四%程度にまで、半分以下に低落しているのです。こういうふうに落ち込んでいるところの農業というものに対して、積極的な保護政策をやっていないところに問題があるのだと思いますが、現在の食糧輸入額というものは、輸入総額の何割に当たっているか。そうして、この食糧輸入額の各国別の表、特に私はアメリカに片寄っているのではないかと思うので、それを通産大臣から御説明願いたいと思います。
  315. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 食糧の主要な輸入先は、アメリカが四億三千万ドルでございます。オーストラリアが一億二千万ドル、台湾が一億二千万ドル、カナダが一億二千万ドル、こういうことになっております。
  316. 戸叶武

    戸叶武君 東南アジア方面はどうですか、東南アジア、中国。
  317. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは六三年の数字でございますが、ビルマが——ちょっとこの数字、私にわかりにくいので、通商局長からお答えいたさせます。
  318. 山本重信

    政府委員(山本重信君) 台湾が一億六百万ドル、琉球が五千九百万ドル、タイが四千万ドル、インドが二千万ドル、中共が千九百万ドル、ビルマが千五百万ドル、以上のようになっております。
  319. 戸叶武

    戸叶武君 日本では、国連その他で、東南アジア諸国、後進地域との協力を求められているにもかかわらず、農作物以外にほとんど輸出すべきものがないといわれる東南アジア諸国からは、なぜこんな少ししか買わないで、アメリカからばかり買うようなことをやっているのでしょうか。ひとつ通産大臣からお願いします。
  320. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 輸入の方針といたしましては、安定した良質のものを買い付ける、こういうような方針でまいりましたので、そのために、従来東南アジア関係の輸入については、いま御指摘のような物資について、思わしくない点がございます。しかしながら、最近におきましては、トウモロコシのごとく、タイ国から順調に輸入をしている面もございます。
  321. 戸叶武

    戸叶武君 農林大臣お尋ねいたします。  政府の農業基本法のねらいは、農業の生産性の向上、農業所得の増大による他産業との格差是正というものが最大のねらいではなかったかと思います。ところが、最近発表された農業白書によると、この目的は一つも達成されていないで、依然として生産性において、所得において、他産業との格差が三分の一も広がったままになっているのです。これでは、農業基本法をつくった意義というものが一つもないと思うのです。ドイツでは一九五五年に、いまの大統領のリュプケ氏が食糧農業大臣のときに、農業基本法を制定し、その翌年の一九五六年には、農業予算が一・八倍にふえ、その翌年には、さらに二・五倍にふえて、落ち込んでいる農業というものを持ち上げるために、他産業との、特に賃金面の三〇%のアンバランスを是正するために全力を注いで、その成果をあげることにつとめたんです。日本では、農業基本法は自立経営農家を育成するんだということでごまかして、絵にかいたぼたもちのように、一つ予算の裏づけなり、財政投融資を十分にしないで、今日のような低迷した状態に置かれているんですが、農林大臣として、この問題に対してどのような責任を感ずるか。これは農林大臣ばかりいじめちゃ気の毒だから、大蔵大臣も、その次に重ねて答弁してもらいたいと思います。
  322. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 確かに、農業基本法におきましては、他産業との生産性の格差、生活水準の格差是正ということを中心課題としております。その線に沿いまして農林政策の総合的推進をはかっておるのでございますが、その裏づけである予算の点について十分でないじゃないか、こういうお尋ねでございます。私も十分その裏づけがされておるとは考えません。いまドイツの例が引かれましたが、そういうぐあいにはいっておらないけれども、年々関係予算につきましては、拡充強化をはかってきた次第であります。  ちなみに、昭和四十年度の農林予算を、農業基本法制定の前年度である三十五年度の農林予算に比較しますると、二・八倍になっておりまするし、国の総予算の伸び率二・三倍に比してかなり高い率を示しておる。また、全体のワクとは別に、その内容を見ていただきまするというと、重要施策については、農業生産基盤の整備とか、農業の構造改善の推進、農業生産の選択的拡大、農産物の価格安定と流通の改善合理化、農林金融の拡充強化等に要する経費は、年々これを増額してきておりまするし、これらの施策によって農業の近代化を推進しているわけですが、先ほど申し上げましたように、十分な裏づけがないということは、私も遺憾に存じておりますが、その予算の範囲内におきまして、農業基本法の方針を推進しておる、こういう次第でございます。
  323. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) おおむね、農林大臣が述べたとおりでございます。西ドイツは、先ほど指摘のとおり、農業基本法をつくりました前年予算に比べまして、五八年には、財投と連邦財政を合わせて二五九・一%ということになっております、約二・六倍になっておるわけであります。日本におきましても、これが、これでいいんだという考えではございませんが、乏しい財政の中から、農業基本法の精神に基づきまして、農業予算に対しては特段の配慮をいたしておるわけであります。ちょうど農業基本法ができました前年、すなわち、昭和三十五年度の一般会計予算で見ますと千三百十九億、これを一〇〇といたしまして、今年の農業予算三千七百億、すなわち二八〇・五という数字でございます。財政投融資も同じく四百七十五億、三十五年を一〇〇といたしまして、四十年度の千百六十九億、すなわち二四六ということでございます。いずれにしましても、農業予算の増に対して格段の配慮をいたしておる次第であります。
  324. 戸叶武

    戸叶武君 赤城さんのあげた数字も、田中さんのあげた数字も、インチキです。インチキと言ってはおこるかもしれませんが、西ドイツでは、物価の一割値上がりなんということはたいへんなことであって、貨幣価値は下がっていません。日本においては、国の予算のワクの拡大と比較してみなければ、農林予算が伸びたということは言えない。数字を並べただけでは、いかにも伸びたようでございます。昔、月給一万円もらっている人の場合、いま十万円もらっている人より生活は楽なんです。これが数字のマジックでもってごまかしちゃいけないので、問題は、本年度における農林予算においては、政府は国の予算のワクの一〇・一%だと言うけれども、実際、前年度においては一〇・三%であって、それから食管会計の繰り入れ金の一千九十六億円を引くと、実質は七・四%だ。そういうふうに二十八年度においては、国の予算の二八・五%もあった農林予算というものが、ぐっと落ち込んでしまっているのです。  それから財政投融資のほうの問題にいきましても、輸出入銀行に対しては、産業投資計画総量五百五十四億円のうち、五二%の二百九十億も出資しているのに、農林金融公庫には二八%の百五十六億円しか出資していないのです。こういうやり方に対して、大蔵大臣はどのようにお考えですか。
  325. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども申し上げましたが、これで最良であり足れりと言っておるのではございませんが、財政事情多端なおりから、農業政策に対しては、可能な限り最大の努力を傾けております。こういうお答えをしておるのであります。
  326. 戸叶武

    戸叶武君 大蔵大臣は、衆議院段階の答弁におきまして、輸銀につきましては強い関心を持っておる。ガットの規定等によりまして、補助金等の制度がとれないので、こういうふうに金をたんと回したと言うのですが、私たちは、輸出に対して、金利の高い日本が外国と対抗していくためには、あのやり方をやはり強化していかなければならないというのは、よくわかります。しかし、いま外国では、三〇%のアンバランスが、ドイツで農業基本法ができる動機になったのに、日本では、所得が三対一というくらい開いておる。そういう落ち込んでいる農業を盛り上げるためには、いまのような予算なり、あるいは金融措置では、私はいつまでたっても底ばいでいくだけであって、農業というものは立ち上がっていけないのじゃないかと思いますが、これはひとつ農林大臣お尋ねします。大蔵大臣からもお聞きします。
  327. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 予算等の点につきましては、先ほど申し上げたとおりでありますが、財政投融資の御指摘かと思います。私も金融面を拡大して、そして農業の体質を改善していくことが必要だろうと思います。でありますので、金融面等につきまして、三十九年度におきましても改善を加えてきました。四十年度の予算におきましても、たとえば公庫金融が千二百四十億、あるいは近代化資金が七百億、あるいは改良資金が五十七億というふうに、農業金融のワク等も拡大しまして、それを十分に活用してもらうという方途をとっておるわけでございます。先ほど申し上げまするように、多々ますます弁ずといいますか、いまの農業の状況から見ますならば、財政画におきましても多くを必要とするのでございますが、国全体の財政の状況等から見まして、そういう面で、その範囲内で四十年度は効率的にやっていこう、こういうようなつもりでございます。
  328. 戸叶武

    戸叶武君 日本の農政は、俗にいままでは三割農政と言われておりました。それは、政府が自立経営農家の育成というものに重点を置いて、専業農家を対象としておったからであります。しかし、その専業農家なり兼業農家の位置というものが、今日においては非常に変わってまいりまして、三十年前の昭和十年ごろにおきましては、専業農家が七四%、それが、三十八年度には二四%、兼業農家が昭和十年ごろには二六%なのが、今日は七六%となってしまったのであります。このようにして、もはや専業農家というものは二四%にすぎなくなったのです。三割農業どころか、四分の一農業と言われてもいいほど、この人たちを対象としてのみ日本の保守党の農政というものは推し進められているような気がしてならないのです。赤城農林大臣国会答弁におきましても、経営規模が拡大すると経営の質が大きくなり、所得の面は七七%でも、一町五反以上のものは九〇%以上の所得を確保すると言って、その面だけを強調しておりますが、それは四分の一どころか、一握りの私は富農層だけしか政府の農政の恩恵にはあずかれなくなったと思うのです。この段階において、こういう偏向した四分の一農政というものを私は反省してみる必要があると思うのですが、赤城さんはどのように考えておりますか。
  329. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農政の目的が、国民の食糧を確保していくということに一つの面がありまするので、農業生産が増大していくということが必要でございます。また一面、農業者の所得、生活を安定していくということが必要でございます。でございますので、国民の食糧をまかなっていくという面から考え、あるいはまた、農家の所得が増大するという面から考えまするならば、自立専業農家が数多くできるように推進していくことが大きな線だろうと思います。でありますので、自立経営農家の育成ということを大きなねらいとして農政を行なっています。さりながら、農業者のふところぐあい、所得という面、これも農政として十分考えなくてはなりません。そういう面から考えまするならば、兼業農家は一面におきまして、ふところぐあいといいますか、所得の面におきましては、間々、専業農家よりも多いものが多いのでございます。でございますので、この兼業農家を無視して農政を行なうということは、これは農政のやはり邪道だと思います。そういう意味におきまして、自立専業農家の育成ということが大きな線ではございますけれども、兼業農家に対する農業対策というものをおろそかにしてはならない、こう思います。そこで、所得の面等におきましても、兼業農家の所得が得られる機会を与えるということが一つでありまするし、同時に、生産面から言いまするならば、兼業農家を含めて協業化を進めて、農業生産にも支障のないように、また、農業もやっていけるような方途を講じていくべきだと、こういうふうに考えまして、その両面から農業政策を進めておる次第でございます。
  330. 戸叶武

    戸叶武君 今度は佐藤さんにお尋ねします。  いま赤城農林大臣説明したように、日本の農業構造というものは大きく変わっているのです。ちょうど十九世紀末におけるイギリスの状態と似ているように、技術革新に伴う高度経済成長政策にゆすぶられながら、日本の農業というものは変貌しておるのです。しかも、日本の特徴として、すでに農業所得が四九%、農外所得が五一%というふうに落ち込んでしまったのです。農家の経営というものが、農業所得だけでやっていけない。むしろ農外所得に依存しなければならないという状態、そういうところに、この兼業農家、特に第二種兼業農家の問題が深刻に出てきたのと同時に、もう一つは、出かせぎ人が、要するに、農村においては金が取れない、麦なんかつくっているのでは食っていけない。麦なんかをつくるために人なんか雇った日には破産してしまう。みずから土木建築にでも参加して、そして働いてこようというような出かせぎ人というものが、労働省においては三十万くらいに数えていますが、石田さんあたりでも、五、六十万あるだろう。社会党の農林部会あたりで調査したのでは、百万をこえるだろうというところにまで来たのだと思います。こういうところに、私は、日本の農業というものの窮乏化というか、変化というものが深刻に出てきたと思うのです。それをいまのような、池田さんは言うことだけは革命的施策をやると言いましたが、何の革命もしないで、すっと消えてしまいましたが、ほんとうに抜本的なこれは対策を講じないと、日本の農業問題というものは行きつくところに私は来たと思うのです。佐藤さん、これに対してどういう対策をお持ちですか。
  331. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも農業の専門家に対して私がお答えするというのはいかがかと思いますが、しかし、お名ざしでございますから、私もお答えいたしてみたいと思います。  ただいま農林大臣から、現状については、るるお話をいたしました。ただいままでのところ、いわゆる自立農家、これをつくることが一番農業そのものとしては成績がいいようでありますから、自立農家をつくることに特に力を入れて、この自立農家が必ずしも専業農家を全部あらわしておるわけではもちろんありません。そういう意味で、自立農家をだんだんふやすこと、そこに農業専門のあり方があるだろうと思います。同時にまた、日本の農業の実態から申しまして、土地に対する特殊の関心を持っておる。そういう意味から、第一種あるいは第二種兼業農家、この育成強化ということについても、協業その他によって、いわゆる機械化をはかっておるようでございます。私は、ただいまとっておる政策は、これは望ましい政策ではないか。たとえば第二種兼業農家を、その就職の機会を多くするという意味において、地方開発を行なったり、あるいは工場誘致をしたりする、こういうことも実情に合った現状でございますから、第二種兼業農家がこれはまずいのだとか、あるいはそういうものはいわゆる農業でなくなるのだ、こういうように、いきなり断定することもどうかと思います。  何だか私もよく存じませんけれども、日本では、農業といえば、一年のうち六十日就業すれば農家のうちに入るといわれておるように聞いておりますけれども、六十日ないし百五十日、こういうように統計の資料も、やっぱり農業として考えるのに、これがはたして適当なりやいなや、これも一つ問題ではないだろうかと思います。だから、ただいままでの統計資料そのものも、いろいろまちまちであります。そうして、いわゆる第二種兼業は全部零細農業である、こういうように一方的にきめられても、これは実情に合わないのではないだろうか。やっぱり第二種兼業農家が、ただいま申すように、六十日も就業すれば農家といわれる、そういうところにも目を置き、同時に、農民が土地に対する特別に執着を持っている、そういう意味から、やはり農家としての存在であるのだ、こういう点も考え方をまとめていただきたい。私は、ただいままで農林大臣がとっております、いわゆる自立農家を中心にして、そうして、いわゆる専業農家を育成強化していく、同時にまた、現状においては、第二種並びに第一種兼業農家について特殊なくふうをしていく、この行き方について、これは私もおおよそあるべき姿ではないだろうか。ことにまた、通産省その他の関係省等におきましても、この第二種兼業農家の就職の機会を多くする、こういう意味の地方開発なり、あるいは工場誘致なりについても、もちろん手助けをすべきではないだろうか。また、ただいま御指摘になりました、いわゆる出かせぎ農家というもの、この問題につきましては、これは政治問題であり、あるいは社会問題である。ただいまたいへん困難な状態を来たしつつある。こういう事柄については、十分労働省等におきましても、その就職の機会等に、正式のルートを通るように指導しておるようでございますが、それによりまして、いわゆる出かせぎ問題が社会問題にならないように、十分気をつけてまいるべきではないだろうか、かように思います。
  332. 戸叶武

    戸叶武君 農村の出かせぎ者ほど悲惨な状態に置かれているものはないのです。臨時雇い的な形において、賃金も安いし、いろいろな生活も保障されていないのですが、これは労働省の管轄としても、一番私はむずかしいところにあるのだと思いますけれども、今日においては重大な社会問題になっておるし、特に東北において深刻でありますから、苦労人の石田労働大臣から、きめのこまかい具体的な対策を承りたいと思います。
  333. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 先ほど戸叶さんの御発言にございましたように、出かせぎ労働者の実数というものは、なかなか正確につかみにくいものがございます。農林省の調査では、一応三十万という数字が出ておりますが、これは六カ月未満の出かせぎ者を対象といたしておりますので、それより長期にわたる人々を加えますと、五十万から六十万ぐらいになるのではないかと推定されております。そのうちで、職業安定所を通っております数が約十八万でございます。  出かせぎ労働の問題に対処いたしますのには、いろいろ問題がございますが、まず第一は、その働きに出た人々が働いている場所において、賃金、時間、あるいは飯場等の環境等が適切であるかどうかという問題でございます。同時に、それに関連をいたしました賃金不払いその他の基準法違反事件をどうなくしていくかという問題でございます。これにつきましては、何をおきましても正規のルートを通ってもらうということが大切なんでありまして、職業安定所はもとより、市町村、農業協同組合等に委嘱をしてございます職業安定協力員等の御活動を願いまして、でき得る限り多く正規のルートへ乗せていくようにいたしておるのでございます。  それから、出かせぎ地における労働条件の維持向上のためには、まず事業におきましては、労働条件をあらかじめ明示さしておくということ、それから職業安定所——居住地の職業安定所、出かせぎ地の安定所及び基準監督署との連絡を強化する。同時に、基準監督署におきましては、建設業等に対する飯場等の監督もやはりいたしておる次第でございます。  それから未払いの件でございますが、これは大体現在まで、建設業等におきましては約千三百六十件ぐらい出ておりまして、これは全部の未払い事件の件数においては約半分でございます。しかしながら、金額は比較的少ないのでありますが、これは早期発見につとめますと同時に、厳重にそういう事態のないようにいたさせております。いま一つは、安定所を通さないいわゆるやみ職安と申しますか、手配師、そういう人々の取り締まりの強化にもつとめておるところでございます。  それから同時に、留守家族の援護等でございますが、それに対しましては、最近、出かせぎに行ったまま家族と連絡を断つという事件もぼつぼつ出てまいりました。秋田県等の調査では三百九十件という数字が出ております。これは実数はもっと多いのじゃないかと思うのでありまして、これに対しましては、本年度予算に、この留守家族に対する相談員を出かせぎ者の多い地域に配置をいたしまして、相談に応ずるように努力をしておるところでございます。しかし、根本は、こういう労働の形態は、やはりあまり好ましい形態ではないのでございますから、先ほど総理の御発言にありましたように、地方に産業を誘致し、その地方で働く場所を見つけるようにしていくことが政策的な基本でなければならないと思っておる次第でございます。
  334. 戸叶武

    戸叶武君 赤城さんは三回ほどたしか農林大臣をやっておりますが、一番最初に農林大臣になったときに、米麦本位から畜産、園芸作物への選択拡大を強調されたのではないかと思います。政府の奨励によって、今日においては畜産、園芸作物というものはすばらしい伸びを示していると思います。現在農林省で把握しているところの家畜飼育数というものは、乳牛なり、豚なり、鶏なりはどのようになっておりますか。この数年間の伸びを示してもらいたいと思います。
  335. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ただいま私の手元にありませんから、政府委員から御報告させます。
  336. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) お答え申し上げます。乳牛で申しますと、三十八年が百十四万五千頭でございますが、三十九年度には百二十八万四千頭でございます。それから肉牛は、三十八年度三百三十三万七千頭、これが三十九年度は二百二十二万頭でございます。それから豚は、三十八年度百二十九万六千頭、これが三十九年度は三百四十万頭でございます。それから鶏につきましては、三十八年度九千八百万羽でございますが、三十九年度は一億二千五十万羽でございます。
  337. 戸叶武

    戸叶武君 過去十年間ほどの統計を取ってみると、畜産においては、乳牛でも、豚でも、鶏でも三倍ないし四倍も伸びていると思うのです。伸びたのはいいが、政府は、奨励はしっぱなしで、こういう主要農産物というか、畜産にしても、こういうものの価格の安定に対しては責任を持っていないのです。赤城農林大臣は、主要農作物の七〇%は支持価格になっていると言うけれども、その支持価格でもって生産農民が若干満足しているのは米ぐらいじゃないかと思いますが、今後こういう主要農作物の価格安定に対して、どういう施策を行なおうとしているか、それを承りたいと思います。
  338. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ただいま御指摘のように、農産物の七割には価格支持政策ができておるわけでございます。そのうちで一番強いといいますか、米麦等には強い支持政策ができております。弱い方面が、御指摘の畜産物とか、生鮮食料品でございます。野菜等の点につきましても、安定基金制度等によって支持していくような方向でいま進めて、小部分ながらやっております。また畜産物等につきましては、牛乳等につきまして間接的な支持政策をとっておりますけれども、これから直接的な方法によって牛乳の価格支持対策をとっていこうということで、せっかく検討中でございます。
  339. 戸叶武

    戸叶武君 牛乳の問題に対して、間接的な支持政策から直接的な支持政策へ入りたいと思っておるということですが、日本ほどこの価格と配分の問題で矛盾に満ちておるのはないのです。それは流通機構の中に矛盾があるのでしょうが、政府の私は行政指導というものもきわめて怠慢だと思います。世界のどこの統計を見ても、末端で市販されている牛乳の値段の半分以上は生産農家の手取りになっているのです。日本で市販でもって一合二十円で売られていながら、それでは十円が農家の手取りになるかというと、大体七円から七円二十銭ぐらいでたたかれているのです。そういうものに対する統計を、外国には全部あるのだし、農林省さえしっかりしているならば、いろいろな統計事務所もあるのだから、米、麦のことばかりを対象としないで、私はやはり牛を飼い、えさを食べさせ、そうして牛乳をしぼって、そしてメーカーのところへ出して、メーカーから小売りを経て市販される、その過程の統計を全国的にとってもらいたいと、十年くらい口をすっぱくして言っていても、農林省はとってくれない。そうしてそれを是正もしてこない。私は、いつまでたってもこんなふうじゃだめだと思うのです。それで、それでは明治なり森永なりもうけてないかというと、えらいもうけをしているのです。特に夏場においては少し値を上げますけれども、去年あたりはあのひでりでもってアイスクリームやなんかでもってえらいもうけをしております。そういうふうに、独占のほうはもうかるが、牛乳をつくっている畜産農家においてはもうけがない。そういうところに畜産が伸ぶべくして伸び悩んでおる面があるのじゃないかと思っております。今度あたりは少し足りないというふうにいわれ出してくると、今度は脱脂粉乳をアメリカから入れるというようなやり方をするのじゃないかと思いますが、この牛乳と鶏卵の問題、鶏卵だってあれほど政府が奨励したので、人間の数より多い鶏が育ってきたのですけれども、ほんとうに農家では、もとは鶏卵といって嘆いておるほど今日においては養鶏農家の倒産が続出しておるのです。こういうものに対してもっと具体的な緊急措置を講じていかないと、政府のやった政策どおりやると農民はひどい目にあうという印象が強くなると思いますが、農林大臣はどういう対策を持っておりますか。
  340. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 牛乳につきましては、お話のような線に沿うて、輸送の方面につきましても、あるいは消費者の価格の面につきましても、容器等をあらためていくというような方法、価格の点につきましては直接支持対策を講じていく、あるいはまた消費をふやす部面におきまして、学校給食の量がことしは四十万石でございますが、四十年度においては七十万石というふうに入れていくというような対策を講じております。卵の点につきましては、いまやや安定しております。これはやはり消費と供給とがアンバランスといいますか、供給がいささか過剰になったという点に値下がりの原因があるのは御承知のとおりでございます。でございますので、これにつきましては、生産と消費との調整をはかることにいたしております。なお、緊急的な対策といたしましては、生産者による調整保管をいたすことにいたします。そういう面におきまして、最近やや安定しておるというようなところでございます。
  341. 戸叶武

    戸叶武君 もう時間がありませんから、最後に一点だけ飼料問題をお聞きします。  飼料の問題は、畜産が伸びれば飼料が伸びるのは当然でありまして、これは濃厚飼料の輸入が非常にふえておると思いますが、通産大臣から、どんなふうに伸びてきたか。それから、この飼料の対策に対してはいろいろな不明朗な点があります。これはあらためて別な機会に飼料問題をじっくり追及するつもりですが、今日においては、農民にとっては肥料以上に飼料の値上がりというものに苦しめられているのです。飼料の需給対策に政府が怠慢であったこと。それから、飼料輸入に対するところの対策においてもいろいろな手落ちがあると思う。それから、配合飼料がでたらめで、検査なり規格がきわめてでたらめになっています。そういう点をどういうふうに変えていくか、この飼料行政全般の刷新について農林大臣から、それから濃厚飼料その他の飼料輸入の現状に対して通産大臣から説明願いたいと思います。
  342. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 飼料の輸入の現状につきましては、資料で差し上げたいと思います。しかし、現在農村におきまして飼料の値上がりも激しいことでございますので、最近緊急輸入をいたしました。大豆かす三万トン、大麦三万九千トン、小麦十万七千トンというような手配をいたしておりますので、値上がりの抑制にはなろうと思います。
  343. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 輸入飼料につきましては、トウモロコシ、マイロ等、大半の物資は自由化されておりまして、その輸入に当たりましては、配合飼料メーカー、輸入商社によって、世界各地から安定的に低廉な輸入源を求めるように努力が行なわれております。これは特に東南アジア、先ほどもお話がありましたが、タイその他アフリカ、南米等からなお入れるように、向こうのほうへアメリカの方面から転換していきたい、こういうふうに思っております。その輸入飼料につきまして、疑惑があるのではないかというふうな御指摘でございますが、政府輸入を行なっておる麦類とか、ふすま等の飼料につきましても、適正に適正な買い付けが行なわれておりまして、問題があるとは思われません。また、輸入飼料の、その他の飼料の検査でございますが、流通飼料につきましては、飼料品質改善法という法律がありまして、その法律に基づきまして、国の肥飼料検査所及び都道府県の検査施設によって品質検査が行なわれておることは御承知のとおりであります。流通飼料の数量が年々急速に増大しておりますので、検査体制の充実が必要視されておりますが、六カ所の国の検査所についても、年々予算、人員の拡充につとめておるような次第であります。また、都道府県の検査施設につきましても、三十六年度以降四カ年計画によりまして、施設の整備に対する助成を行なってきましたため、検査体制は充実しておりますが、今後一そう適正な検査が行なわれるよう指導していきたい、こう考えております。
  344. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 戸叶君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  345. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいま委員の変更がございました。向井長年君が辞任され、高山恒雄君が選任されました。     —————————————
  346. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、植竹春彦君。
  347. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 私は、自由民主党を代表いたしまして、政府質問するにあたりまして、私は、佐藤内閣の施政内容については、施政方針、また提出予算案、本日の当委員会におきまして各般の応答によりまして承知はいたしましたものの、参議院の自由民主党として国会の内外に向かって、政府からさらに明らかにしていただきたい点につきまして、できるだけ前質問者との反復を避けながら質問を進めてまいりたいと存じます。  佐藤内閣は、高度成長政策による深刻なひずみのあと始末という大きな重荷をしょって組閣せられたので、全国民は深い同情と、理解と、大きな期待を持ったのでありましたけれども、組閣以来もはや三カ月を経過いたしましたので、国民の眼は同情と理解から転じて、漸次期待と批判との時期に移りつつあるものと考えます。そこで、いま佐藤内閣はいよいよその独自の持ち味によってこの国民の期待にこたえるために、強い挙党態勢を結集して、さらに国民の英知を集めて、非常の決意をもって現下の経済不況から安定へという難問題を突破解決されまして、終戦後の政治史上に不滅の業績を立てていただきたいので、私は、総理がこの難関突破の関頭に立って国民の期待にこたえんとする政治姿勢につきまして、まず、総理の御決意を承りたいのであります。もっともその一端は、すでに施政方針で伺いましたが、企業はいまもなお続々としてひんぱんに倒産していくただいまの時点におきまして、御決意をあらためて承りたいのであります。
  348. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の所信は、ただいま御指摘になりましたように、施策演説その他によりまして明確にいたしております。また、ただいま御審議いただいております予算、四十年度予算は、これは私の手によってつくったものでございますので、これの実行にあたりまして順次明らかになると思います。しかし、いまお尋ねがございますので、私の基本態度について申し上げたいと思います。  もちろん前内閣と、私ども佐藤内閣も、自民党の内閣のもとにおいてその基本的な態度に変わりはないと思います。ただいままでのところ、高度経済成長のひずみを是正していく。ただ、ひずみを是正するというばかりでなく、その際に大事なことは、いわゆる社会開発の理念を取り入れ、同時にまた人間尊重のもとにこの政治を行なっていく。人間尊重は申すまでもなく人格の尊重であります。ここに個人と個人、いわゆる人格の尊重の問題が出てくるわけであります。同時に、かような立場に立ちました際、全体としての調和、これはひとり経済あるいは政治の問題ばかりでなく、あらゆる面において調和の思想に徹する、こういう考え方であります。そうしていわゆる民主主義に立ち、自由を守り、平和に徹した政治をしていく、そうしてわが国の繁栄を続けていく、これが私の基本態度であります。
  349. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 私は、ただいま総理大臣の御決意を承りましたので、この御決意の前提のもとに、個別の政策につきまして以下質問を進めてまいります。  その第一点として、経済問題について質問をいたします。まず佐藤内閣は、政治の姿勢といたしましてただいまお述べになり、また、組閣の当時に御発表になりましたように、調和の政治を提唱せられ、また、社会開発、人間尊重の政策を打ち出されておりますのでありますけれども、ただいま日本の実情をみますると、不調和に満ちておると私たちは観察いたします。第一には、大都市と地方との生活上の格差と不調和。第二には、大企業と中小企業とのアンバランス、経営上のアンバランスから、労務士、賃金、待遇上のアンバランスがあります。第三には、卸売り物価と消費者物価との不調和。第四には、経済開発と社会開発との不均衡、生産資本と社会資本との格差、経済投資と公共投資の不均衡。第五番目には、青少年の非行にもあらわれておりますが、精神生活と物質生活とのアンバランスの問題があります。  そこで、私は、以上の指摘いたしました数多の不調和のうち、まず、地方と都会との生活上の不調和について質問をいたしたいのでありましたが、農林大臣はよんどころない公務のために退席いたされましたし、かつまた、前質問者から詳細な質問と応答がございましたので、この問題につきましては、簡単にただ一点だけ総理大臣お尋ねいたしたいと思います。  今日の大都市と地方、すなわち農村との間の収入上、生活上の格差の原因は、私としては、これは産業構造とその運営、さらには、長年にわたる惰性によることと思います。私は、この問題解決についての産業政策上の御方針をただいま農林大臣から、さらに、締めくくりとして総理大臣から伺いました。ことに第一次産業の構造改革の今後の御方針についても承知いたしたのでありますけれども、やはり第一次産業における、ことに専業農家につきましては、その農家の性格上、この格差是正はなかなか困難な問題が今後も横たわっておると思います。今日の経済構造ではなかなか困難であって、たとえば食糧にいたしましても、海産物の画期的な利用とか、クロレラの発明のような非常に技術革新的なものがなければなかなか達成できないのではなかろうか。この構造上の農業の欠陥を是正して格差を縮めていくということは容易ならざる農業政策を要すると思いますので、このギャップをどうやって埋めていくかということを総理大臣から御答弁を願いたいのであります。  高度成長経済の発足にあたりましては、この高度成長政策の運営途上に、一体この格差は吸収されて解消されるはずであったのに、今日では逆に格差がひどくなっておりまするので、安定成長政策がとられたことであるし、社会開発もこの問題解決の一端としてもまた考えることであると存じまするので、その調整策、具体策はどうやっていくかということをお尋ねいたそうと思いましたが、この兼業農家の方針、工場の農村誘致、兼業農家の奨励といったような御方針をすでに御答弁を承っておりますが、この第一次産業の性格上からくるお見通しについて、総理大臣から、今後必ずこの格差はなくし得るというお見通しであるかどうかということを、一点だけこの問題については承りたいと存じます。
  350. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 冒頭にお話しのごとく、これを調和という観点から、あらゆる現象をみました際に、たいへんな不調和が至るところにあることにつきましては、私もそのとおりだと思います。まず、積極的な調和をはかるまで、少なくとも不調和をなくする。こういう態度でありたいものだと、しかしながら、これが急速に行なわれますと、しばしば意外の結果を招くのであります。今日一番の悩みはやはり所得の平準化、これは悪いことじゃありません、当然所得の平準化をやらなければならない、また、賃金の平準化、これもやらなければならない。その観点に立ちまして、これがあまりにも急速に、生産性を無視して、所得の平準化あるいは賃金の平準化が行なわれたことが、同時に、今日のひずみ、不調和を一そう激化した。この点も私ども考えていかなければならない。したがいまして、農業の問題あるいは地方と中央との格差の問題にいたしましても、こういう観点に立ちましてやはりそのもとを正していくと、そうして、生産性を向上していく、こういう態度でないと、この格差はなかなか解消するものではない、もしも扱い方が間違うならばむしろ格差をなくしようとして一そうそのひずみが大きくなる、こういう結果を招来すると思います。  ただいま農業の問題についてのいろんなお話がございましたが、これにつきましても、先ほど戸叶君にお答えいたしましたように、いわゆる自立農家をつくること、そうすれば確かに自立農家としての格差はいまよりもよほど改善されるし、また、五万程度の都市における勤労者との間には格差はなくなる。むしろ自立農家のほうがあらゆる面において、その所得において、また、家計においても豊かだと、かような状態が出てくると、これは統計が示しております。なおまた、ただいま第二種兼業農家の問題がございますけれども、これは先ほどお答えいたしましたように、いわゆる第二種兼業農家必ずしも全部が零細農業というものではない。これはむしろ農民の土地に対する執着、こういう点から先ほど説明いたしましたように、わずか六十日就業することによって、おれは農家だと、かように言われているところにも、この統計上の内容的な不備があるじゃないかと、私はかように思います。とにかく積極的にこの格差をなくする、そうしてひずみを是正していくこと、これが私どもの政治のあり方であります。まだしばらく時間をかしていただくということでないと、十分目的を達することができないと、かように私は考えます。
  351. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 次に、不況対策についてお尋ねいたします。  今日は、物価問題、通貨価値の安定問題もきわめて大切な問題でありますけれども、それよりも福祉国家として生活水準の向上、また、完全雇用に通ずる不況の追放、この二点がむしろ通貨価値の問題以上ということばを使いたいほど大切な政治目標として考えられるのであります。  さて、不況のきわめて深刻な時点に組閣せられました佐藤内閣は、高度成長政策のひずみのしわ寄せの谷間に倒産して沈んでまいります中小企業対策としても、かつまた、大企業のためにも、安定施策として預金準備率の緩和、公定歩合の引き下げを矢つぎばやに断行せられましたことは、まことに当を得た施策であって、このため年末金融の切り抜けもできましたし、経済界もやや上昇に転じつつあり、佐藤内閣誕生以来、一時は不況感の一掃についてやや明るさを取り戻したのでありますけれども、その後時間が経過いたしますときに、この公定歩合引き下げは、大企業には確かに効果があげられたと思われますが、中小企業までには必ずしも十分には浸透していない実情にあるように思われます。たとえば中小企業の並み手形の金利などは下がっていないばかりでなく、金融機関はむしろ選別融資を強化しているように思われますし、売り掛け金の回収のごときも二十四カ月手形などというのが今日ではずいぶんと横行いたしておりますし、不良債券の発生事態が生じていることを見のがすことはできません。大口の倒産の影響が連鎖的に尾を引いているように思われまするので、この事態につきまして政府の対策として、少なくとも黒字倒産のごときは、これはきめのこまかい対策の必要があると思いますが、この点、この実情に対しまして大蔵大臣の御所見と、行政指導をどういうふうに進められていかれるか承りたいのであります。
  352. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 公定歩合一厘引き下げが行なわれましてから経済情勢を考えますと、輸出も伸びておりますし、また輸出期である一−三月を見ましても国際収支も好転をいたしておることは事実でございます。また、企業の投資意欲も落ちつきを示しておりますし、だんだんと所期の目的が達成せられつつある段階であります。私は、いまの段階に際しまして、最後の調整段階であり、やがてゆるやかな好況の時代を迎えるときだと考えておるのであります。しかし、一面におきまして在庫水準もまだ低いし、また生産水準もある意味においては高い現状でございます。そういう意味において慎重な態度を持しておるわけでございます。しかし、その反面非常な不況感、いわゆる御指摘になりました中小企業の倒産、しかも大きな専門メーカー等の倒産において中小企業が連鎖的な状態も起こっておりますので、これらの一面においてはまだ水準は高い、また一面においては非常な不況感、こういう相反する二つのものを十分直視をしながら、これに対して適切な施策をとってまいるつもりでございます。中小企業の倒産につきましては、特にサンウェーブの倒産とか日本特殊鋼の倒産とか、また、きょうあすあたりも、更生法を適用するような会社があるようでありますし、こういう事態に対しましては、大蔵省また通産省等、政府三機関の融資はもとよりのこと、日銀から各金融機関に対しましても、連鎖倒産、黒字倒産というものを絶対に起こさないように各段の協力を求めておるわけでございます。この倒産も十一月十二月に比べますと相当数も少なくなりましたし、また、負債金額も少なくなったとはいいながら、まだまだ安心できない状態でございますので、金融機関はあげてこれらの問題を十分事前に察知をしながら、できるだけ倒産にまで追い込まないように十分の努力を払いたいと考えておるわけでございます。
  353. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 ただいま大蔵大臣のお述べになりましたとおり私も考えておりますので、そこで、それならばなおさら、もう公定歩合の再引き下げを行なってもいいような情勢にきていると私は考えます。私は、公定歩合の再引き下げは、ただいま大蔵大臣のお述べになりましたような情勢下にございまするので、なおさら早いほうがいいと思います。すでに大蔵大臣がお述べになったことではありますが、その理由については承りませんけれども、現在の情勢をただいま承ったばかりでございまするから、私としては早期再引き下げの必要の理由といたしまして、第一には、国際収支は戦後最高の二十億四千万ドルに達しておりますし、また、輸出も七十億ドルですから、輸入よりずっと多くなってきた。また、製品在庫の指数も、ただいま大蔵大臣が、水準も低いしということをお述べになっていらっしゃいますが、そのとおり下向きになってきております。また、生産投資態度も、投資家が、皆企業家が慎重になってきております。企業経営者は十分経営状態について反省期に入っておりますし、安定成長政策に対しましては十分の理解を持っております。このために輸入諸原料の使い方といたしましても、輸入にドライブがかかるようなことの心配もないように思います。また、製品在庫指数への理解もございまするので、生産動向も落ちついてまいりましたし、設備投資の落ちつきから見ましても、資金は設備投資にはもう大体いかないと見て差しつかえないのではないか。また、中小企業では資金が緩和されてもベースアップになかなかいくだけの余裕がない、もっぱら企業の強化に資金は使われていくような状態で、これももし行き過ぎがあれば窓口規制で押えていくこともできるのであるから、こういった情勢を総合いたしますると、もう公定歩合の再引き下げをやってもいいのじゃないか、政府筋では、構造的要因すなわち過剰設備の調整、進捗状態を見きわめた上で再引き下げをするような御発言、これに対しまして日銀総裁も、時期尚早の新聞発表をせられましたけれども、再引き下げをしても、企業の金利負担をさらに緩和していきたい旨、これは業界の大きな期待が見受けられますので、この点についての政府の御所信を大蔵大臣から承りたいのでありますけれども、今後はそれではどういう方法で過剰投資の調整をせられていくのであるか。戦前ならば、生産過剰のときには製品を市場でダンピングすればいい、また、どんどん首切りをやってその従業員を整理いたしますれば、自然と需給が調整できまして、また、失業問題など大した問題では戦前は——大した問題でないというと言い過ぎでございますが、戦前と戦後とはまるで違いまして、戦前にはずいぶんひどい失業問題などが起こっても放置されていたような時代などもあったし、この当然と思われていたような需給調整によっての景気調整というものは、もう戦後はそういう時代でなくなりまして、現時点におきましてのこの構造的な要因からまいりまする過剰投資の調整につきましては、具体的にはどういうふうな方法でもって御調整になりますのか、この公定歩合再引き下げの時期についても、もう具体的にお示しをいただける時期ではなかろうかと思いますので、大蔵大臣からその再引き下げの時期につきましてのお答えと、ただいまの過剰投資の調整の具体的方策について、この一つの点を承りたいと存じます。
  354. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 金融は緩和の方向にあるということは御指摘のとおりでございますが、しかし、いつ公定歩合を引き下げるかというような問題につきましては、情勢の推移を慎重に見守りながら、先ほど申し上げましたが、最終仕上げの段階だ、こういう認識を持っておる次第でございます。まあ、一面においては非常に落ちついておりますし、国際収支もよくなっておりますが、まだポンドの問題とか、いままで非常に高い輸出水準にございましたが、海外市況の推移を見ながら、一体引き続きいままでのような輸出の高水準を維持できるかどうかという問題もございます。また、企業の内部の問題も新しい開放態勢に対処しながら、真に国際水準で太刀打ちができるように、いま企業の体質改善自身も労使の間において積極的に取り組んでおる時代でもございます。でありますから、なまはんかな状態でまた逆戻りをするというようなことは避けなければならない。特に国際収支が悪くなった場合、為替管理のような方法ができる事態ではありません。昨年の四月一日から八条国へ移行しまして逆戻りができないという事態でありますので、これが最終的仕上げに対しては特に慎重な態度をとっておるわけであります。しかし、中小企業その他の問題もございますし、そういう面につきましてはきめのこまかい施策をとりながら、アンバランス面の是正だけはどうしてもはかってまいらなければならない、こういう見方をしておるわけでございます。公定歩合の問題をいつ下げるか、いつごろかということは、私はこんなところで申し上げられないことでございますので、以上の問題につきましては御理解願いたいと思います。
  355. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 お答えのとおり、ここで具体的にはむろんなかなか承れないでありましょうが、大体それで見当はついたつもりではおりますが、ポンドの問題につきましても、大体前途のお見込みもお立ちになったことと思いますし、ただいまのいろいろお述べいただきました要因はほとんど解消されて、逆戻りはどうも、する心配もないようにも思われますので、質問としてはこれ以上お尋ねいたしませんけれども、何分の御配慮を要望いたしましてこの問題を打ち切って、次の問題にまいります。  次に、物価問題についてお尋ねいたします。私は、日本経済は明治、大正、昭和を通じまして緩慢なインフレの一途をたどっている国柄だと考えております。むろん物価には高低の幅もございましたけれども、その高低の幅で帯状に緩慢なインフレを今日まで——戦前までは続けてきた。今日もやはりそうではあるけれども、しかし、戦前と戦後とでは、物価騰落の要因が、不況問題のときにも述べましたとおりに、戦前と戦後ではたいへん違っておりますから、戦前におきまして、日本が緩慢なインフレの一途をたどった、それは日本の経済が成長と繁栄の一途をたどった輝かしい日本経済の歴史だといって、だからこの戦後の経済構造、経済の運営のやり方の、今日同じような考えでこの今日の不況というものも、もう安定調整期に入ったとして、ただなるようにまかしたいといっておいたのでは、今日の物価問題の解決にもならなければ、不況の打開にもならない、いま一歩この物価問題に対しましては前向きの姿勢で前進して、新しい施策を行なっていかなければ解決いたさないと考えるのであります。そこで、ただいまの経済界は確かに生産設備が過大で、製品が過剰で、まだ下向きと申しましても、製品はまだ過剰になっておりますし、賃金が上昇した半面に、卸売り物価が平衡を保っているのに、消費者物価だけが上昇して、戦前から見ますと変調を来たしておるわけでありますが、逆に株価は下降、暴落いたしまして、まだダウ平均が千二百円を低迷しているような状態でございます。しかも過大設備の調整も行なわれつつ行政指導はしていらっしゃるものの、やはり生産指数の下向きという点を見ても、企業界の反省が進行しているという点を見ましても、また、物価の調整策として流通機構の改革を、一部には法律案もすでに御提出になって、参議院で継続審議になっておる部面もございまするし、また、他面、コストダウンをはかって公定歩合を再引き下げをしてまいりましたならば、金融の行き詰まりを打開して黒字倒産救済に力を入れてまいりますれば、経済界は私は立ち直ると考えておるのでありますが、確かにもう今日では、佐藤内閣が発足せられまして、冒頭に申し上げましたように、この矢つぎばやの各種の手をお打ちになった結果もうただいまは不況期と申しますよりは景気調整期に入ったものと、全体としてはさように考えます。しかし、まだこの倒産趨勢は、統計にあらわれてまいりましたとおりにきわめて数多いことでありまするから、この問題につきましていま少し質問を続けてまいりたいと思います。もともと生産設備が拡大して、生産性が向上して、賃金も上がっているしコストも上がっているときに、物価を下げようと施策いたしましても、金融政策や需要供給の単純な調整原則だけでは、戦後の今日はなかなか物価は下がらない。しかも二重構造、二重価格、政策価格等が行なわれております今日は、上がってしまった物価を抑えるよりも、むしろ上昇している消費者物価と卸売り物価との均衡をはかるために、流通機構の改善合理化や金融措置を講ぜられまして、また、多少のイタチごっこになろうとも、公共料金も抑制一方ではなしに、先ほど高橋長官の述べられましたとおりに、水道料金のごとく地方起債といったようなこともございますけれども、地方起債はやはり悪いあと味を結局残すわけでありますから、地方起債のみに依存しないで、やはり公共料金の中で消費者物価にあまり悪影響を及ぼさないものは、公共料金をケース・バイ・ケースで引き上げていくべきではなかろうかと考えます。そして他面におきましては、公共事業の安定と採算をはかり、かつ賃金の均衡をはかってまいりまして、労使間の総合的の所得政策を行なうことが必要であろうと考えます。私の申し上げましたことを要約いたしますれば、私の物価高問題解決の結論は、物価を引き下げる努力より本、今日の物価をこれ以上に上昇させぬ努力をすると同時に、むしろいまの物価に合わせた物価構成のいろいろな要因のバランスを総合的にはかっていくことが大切であろうと思う次第でございますので、この点は高橋長官から、高橋長官に出席要求を申し上げなかったんでありますが、幸いおられますので、御答弁お願いできればしあわせです。
  356. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) ただいまお述べになりましたようないろんな経済諸元の影響が物価という形になってあらわれてまいっておるのでございまして、政府といたしましては非常な決意をもって物価を安定的な方向に持っていこうということで努力をいたしておる次第でございます。しこうして植竹さんにこういうことを申し上げるのはいかがかと存じますが、物価上昇の原因が二方面から考えられると思うのであります。一つは、総需要があまりに大きくなると、つまり成長の速度があまりに大きい場合においては、どうしても需要に引きずられて全体として物価が上昇するということ、いま一つは、コストが上昇することによって、コストによって押し上げられて物価が上昇すると、二つの面があろうと存じます。そういうふうな観点から経済の成長を安定的な基調にもってゆくということを、まず第一に昭和四十年度の経済運営の方針といたしましてもそれを基本的な態度といたしておる次第でございます。したがって、先ほど来大蔵大臣からも御答弁申し上げましたように、経済の運営については非常に慎重な態度をもって臨んでおるということを、まず最初に申し上げておきたいと思います。  それから、いま一つ、しばしばお答え申し上げておる点でございますが、中小企業なり、農業等におきましては、どうしても大企業との間に、生産性の格差が大きく存在しておる次第でございます。政府といたしましては、この生産性の上昇のために、非常な努力をして予算上も措置をしてまいっておるわけでございますが、この効果は、そう急速にあらわれるものじゃございません。ところが、大企業におけるところの、つまり製造業を中心とした大企業におけるところの賃金の上昇が、平準化の作用によりまして、どうしても中小企業、農業等に及び、その結果、農業等につきまして申し上げますれば、生産性の向上によってカバーできぬ部分は、価格政策に依存しなければならない。言いかえれば、七〇%まで農業生産物は、政府の支持し得る価格になっておるわけでございますが、その価格を引き上げることによって、農民の所得を他の産業との格差を狭める方向に持っていかざるをえないというのが現実の姿でございます。そういうことで、つまり、全体としての成長を安定的な基調に持っていくということと、いま一つは、そういうふうなおくれた産業におけるところの生産性の上昇に、政策的にあらゆる力を傾注していく。この二つの方面から、物価も漸次、安定的な基調に持っていきたい、かように存じておる次第でございます。  ところで、先ほども価格、物価、賃金その他について、バランスのとれた運営が望ましいというお話でございまして、その点は御指摘のとおりでございますが、過去の実績等を調べてみますると、昭和三十年ごろから三十五年ころまでは、製造業だけの数字でございますけれども、製造業で、しかも確実な数字の得られますところの三十人以上の工場、事業場につきまして、生産性の上昇の割合と、それから賃金の指数というものを比較してみますると、昭和三十年から三十五年までの間において、賃金の上昇は二五・五でございましたが、生産性の上昇が三五・五でございました。その関係も大きく影響したと存じますが、昭和三十年から三十五年までは、成長は相当急速度でございましたけれども、卸売り物価はもとより安定しておったのでございますが、消費者物価もそれほど上昇は見せなかったというのが、御承知のとおりの状況でございます。ところが、三十五年を境として、三十五年から三十九年までの数字をとってみますると、三十五年に対して三十九年の現金給与の総額の上昇率は、四九・三になっておるわけでございます。これに対して、労働生産性の指数は四〇・九ということで、この場合には、労働生産のほうが賃金の上昇率を相当に下回っているというのが実態のようでございます。これだけが消費者物価に影響するとは申し上げられぬのでございますが、こういうふうにアンバランスが生じましたことが、やはり消費者物価の上昇の相当重要な原因の一つになっておるかと、かように存じておる次第でございます。
  357. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 先を急いで、質問のピッチを少し早めてまいりたいと存じます。  次に、企業基盤に対する政府の行政指導について伺いたいと思います。  いま、日本の諸企業は、社内留保がたいへん少なくなっております。他人資本が多くて、自己資本が少ないことは、ことに終戦以後の日本の企業界の困った実情であると思います。これを直すことが、日本経済の体質を強化することになるわけですが、それだのに、現在では、収益の配分が、あらかた労賃や償却とか金利負担に回ってしまって、内部留保に回ってまいりません。そのために企業の体質が弱いのであるから、これを直していかなくちゃいけない。中期計画にしても、長期計画にいたしましても、今回のプランは、とかく指数によるプランと申しますか、デスク、プランと申しますか、数字による立案が主であるとの批判の声もあるようでありますけれども、現に、当面の激しい倒産数、それも黒字倒産の実情にかんがみまして、今後の行政指導として、経済界の振興のためには、経済の実態の動き、実際指数から見ればたいへん経済が上向きになっているように見えますが、実際倒産の数が多いというこの事実を基調とした安定成長に持っていくことが大切かと存じますが、これについての御所信を簡単でけっこうでございますから、伺いたいと思います。大蔵大臣から、簡単でけっこうです。
  358. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 企業の自己資本比率が非常に悪くなっているということは御指摘のとおりでございます。戦前六一%でございましたものが、現在は二三%を割っておる。これを二五%、三〇%に引き上げるということは非常に困難な情勢でございます。でございますので、過去において企業資本充実法をつくりましたり、また四十年度の税制改正に資本市場の育成をはかったり、また公社債市場の育成をはかるために税制上特別な措置を行なったわけでございます。いま倒産をしておるような事業を見ますと、ほとんど自己資本比率が非常に悪い。自己資本の十倍、二十倍、多いのは百倍というような大きい負債を持っているわけでございます。こういう事態に対して、自己資本を充実していくということは現時点においては最も重要な施策だというふうに理解をしております。
  359. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 それについてはいろいろな社内留保のさせ方の行政指導があると思います。税金のほうも関係してまいりますでしょうし、いろいろな指導があろうと思いますが、さらに質問を進めてまいります。  次に、これは総理大臣お尋ねいたしたいのでございますが——総理大臣お帰りになったようでありますから、それでは大蔵大臣からひとつ。  海外への経済伸長に関して、東南アジアの問題についてお尋ねいたしたいのでありますが、高度安定政策を遂行してまいりますに当たって、東南アジア各国の要望を満たすためにも、すなわち日本が東南アに輸出を伸ばしていく、また東南アの原料を輸入して東南アに対する資金援助を円滑にするためには、前内閣当時つくられました開発基金や民間ベースのみならず、政府協力して、ちょうどEECみたいなものを東南アで、各東南アの国々と相協力して、そういったような組織づくりをするお考えはおありになるかどうか。
  360. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御承知の昨年の国連貿易開発会議におきまして、低開発国に対しましては、国民所得の一%程度の援助を行おうという決議がなされたわけであります。日本もこの問題に対して発言をいたしまして、特に低開発国援助、東南アジアを中心とした援助を拡大しなければならぬという姿勢をとっております。三十六年、七年当時は、東南アジア諸国に対しましては、御承知のとおり賠償問題、賠償に付随した経済協力がございましたので、両年度にわたりましては、世界で五番目程度の援助の量であったわけでありますが、八年、九年は多少落ちております。こういう問題に対しましては、日本は特に一五%以上の輸出が出ておりますが、先進諸国と違いまして、低開発国向けの片貿易、いわゆる輸出が非常に伸びているということでございます。しかし、この輸出を伸ばしていくためには、当然、東南アジアや後進国の援助をして、輸出が伸ばせるような態勢をとらなければならないわけでありますので、これは国連貿易開発会議における各国の協力申し合わせだけではなく、日本の貿易に対する特殊性から考えましても、東南アジアを中心にした後進国に対する技術協力、また資金援助、クレジットの提供、こういう問題に対しまして積極的な姿勢をとるべきであります。また、アジア開発銀行の構想も現に議論をせられておりますし、佐藤総理の訪米を機会に、本件については積極的な姿勢で協力をしたいということでございますので、域内はもちろん、域外のアメリカやヨーロッパ先進国各国との東南アジア全体に対するコンソーシアムをつくるというような立場で推進をしてまいりたい、日本も有力な一員としてこれが開発に対して積極的な態勢をとってまいりたいと思います。
  361. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 ただいまの問題につきましては、そのEECみたいな組織をおつくりになるお考えかどうかと承りましたが、その内容について御答弁がございましたので、この問題はこの程度にして、次に進んでまいります。  日中問題は、前質問者から詳細に質疑応答がございましたので、これは全部省略いたします。  沖繩の問題を二点だけお伺いしたいと思います。総理は、東南アをこの秋に訪問せられ、また、ソ連にはことしは行く予定をつくることが困難であろうという旨の御発言がございましたが、沖繩については適当なときに行く旨の御発言がありましたので、沖繩御訪問の時期を明確にしていただきたいと思うのであります。私たちはしばしばこれは体験していることでございますが、あの国民体育大会とか、いろいろな全国的なスポーツ大会の入場式の行進を見ますと、沖繩県の選手役員の入場順序はいつも鹿児島県の次、つまり最後列、一番びりっこけに入場してまいります。ところが、この役員選手の人数はわずか五、六人しか派遣されていない沖繩県代表であるのにかかわらず、あの旗が見えます、あの選手が見えますと、とたんに全観衆から割れんばかりの歓呼と拍手がまき起こる。これはいつもながらの感激的の情景であるのであります。これは、まさに沖繩県民に対する全国民の素朴な親愛感情の爆発であると、そういうふうに私たちはいつも感激的にながめております。近くは春の選抜高校野球が甲子園でございますが、そのときもこの美しい情景が再び再現されることを予想いたされるのであります。いま沖繩県民は、砂糖の買い上げにつきましても切実な陳情を政府に訴えておることを承知しておりますけれども、この問題のごときも、あたたかい解決がむろん大切であるかと思いますけれども、さらに沖繩県と本土とをつなぎます精神的の強靱なきずなを渇望している沖繩県の実情を十分に総理はおくみ取りいただきたい。しかるに、本土と施政権の分離された以後の、すなわち戦後の歴代の総理というものは、いまだ沖繩を訪問なさった総理があることを聞かないこのときこの際において、佐藤総理が同県を訪問されることは、全国民、全沖繩県民の感情を総理のはだにじかに感じとる政治であると私は確信するのであります。これこそ、総理の言われる国民とともに進む政治ではないかと私は思う。沖繩県民は、佐藤総理に期待をかけて、一日千秋の思いで鶴首しておるのです。どうかすみやかに親しく訪問されまして、百聞と一見とを御比較願いたい。この要望を心に抱きながら、総理の沖繩訪問の時期を具体的にお示し願いたいのであります。
  362. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖繩訪問はぜひとも実現したい、かように考えております。ただいまのところ、いつ行くかということはまだきめておりません。必ず実現させたい、かように考えております。
  363. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 むろん総理もできれば早急に行きたいお気持は御理解いただいておるかと思いますが、具体的の時期はいろいろな御関係がありましょうから、この席ではこの質問はこの程度にいたしたいと思います。  次に、文部大臣伺いたいのでありますが、私は社会開発の諸懸案につきましてはいろいろ承りたいことがございますけれども、時間の関係上、青少年教育の問題にしぼって政府の御所見を文部大臣伺いたいと思います。  今日、非行少年が町に農村にはんらんしておりまして、政府もこれに対しては十分の施策を考えて実施しておられることは承知いたしておりまするけれども、さらに私には質問申し上げたい点が一つございます。今日の青少年の中には、社会生活の基準と秩序とを理解して、これを守っていこうという観念と修練とがともに不足している者がたくさんございます。これは青少年の精神生活と物質生活との不調和からきたものが多いので、政府は青少年の知育、徳育、体育の不調和をすみやかに是正しなければならないと思うのであります。体育につきましては、東京にはりっぱな体育施設がオリンピックのときにできましたが、各地方にも各地方に適したような小さな施設でよろしいので、これは全国的にひとつ増設をしていただきたいと思う。徳育につきましては、特に意を用いてその施設運営の充実をはかるべきであろうと思います。この際、政府としては、はんらんする非行少年に対して、単に警察による予防とか検察強化だけではいかにも不十分でありますから、青少年には非行におちいらない前の教育、すなわち犯罪の事前の教育指導と申しましょうか、教育と修練とが最も大切であろうと思います。そこで、抜本的の方策の一つとして考えますことは、今日の少年の心身発育の実情から見まして、成人の責任年齢を早める議論もさることながら、むしろ中学卒業後、十八歳ないし——これはひとつ総理にもお聞き取りおき願いたいと思うのでありますが、中学卒業後、十八歳ないし二十歳程度の者に対しまして、これらに義務教育的な社会教育として半年ぐらいの間、地域的に分けまして、全部青年を合宿させて団体的規律生活をさせて、全国の青年に団体修練の機会を与えて、社会教育にあわせて社会秩序を守る修練を実践させることも一方法かと思いますので、文部大臣の御所見を承りたいと存じます。
  364. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 全くごもっともな御発言でございまして、全然私も同感でございます。詳しく申し上げると切りがございませんけれども、端的にお尋ねになりました点を申上げますと、四十年度におきましては、ただいまお述べになりましたような御趣旨の一端に沿うかと思いますけれども、いま御承知のように、地方青年の家というのがだいぶ拡充されましたが、ここを中心といたしまして、中学を卒業して直ちに社会に出て就職をしておる、こういう若い人たちの研修を行なうことにいたしまして、四十年度からある程度の予算の計上もいたしたわけでございます。その他いろいろございますけれども、ただいまの御趣旨を体しまして、今後十分な努力を続けてまいりたいと思います。
  365. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 次に、給与問題をかいつまんで質問いたします。増原担当大臣にお伺いいたします。  警察官とか消防署員、税務職員、海上保安庁の職員と郵政監察に携わる職員、これらの社会不安を除去したり民生の安定に尽くす職種とか、あるいは特殊の緻密な知能職務に携わる者は特に優遇すべきではないか。これは大蔵大臣の御配意によりまして、たとえば税務職員とか、警察官とかは多少、おかげで御配慮が予算上に盛られて、非常にそれだけでもいま税務職員、警察官、感激しております。私のところにもその報告がひんぴんと参ります。しかし、まだまだこれでは不足と思いますので、出張旅費等、いろいろな面におきまして方法もあるかと存じますので、これらの特殊な職種に対しましては、くれぐれもお願い申し上げたいと思います。なお、大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  366. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 税務職員とか税関職員、また警察官、会計検査院の職員、非常にめんどうな仕事、困難な仕事をがまんをしてやっていただいておりますこういう方々に対しましては、特別な手当てを出したいということで、いろいろ人事院とお話をしたりいたしまして、人事院勧告のときに、こういう特別な業務に携わっておられる方々に対しては、何がしかずつ是正をいたしております。万全なものとは考えておりませんが、なかなか権衡の問題とかいろいろございまして、人事院当局も苦心をいたしておるようでございます。今後の問題に対しては、勧告を待ちながら、可能な限り考慮してまいりたいという次第であります。
  367. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 増原大臣お尋ねいたします。教育関係の職務に携わる者の給与面でありますが、これは青少年の非行問題にも関連することでありますけれども、社会教育、学校教育、家庭教育の均衡をはかるようにいたしたい。ことに学校教育では、いい先生の助長を必要とすると思います。それだのに、教育の専門学府である教育大とか、学芸大の卒業生は必ずしも教育界にいかない。待遇のいい民間にいってしまう者が多い。また、研究施設についても待遇があまりよくない。かつて日本の医学が世界的の水準に達し、さらに世界の水準を追い越して、まあ世界の最高峰に達したというのも、これも社会がお医者さんを尊敬して、待遇したから、学校を出ると病院くらい自分で建てられるようになる、そういったようなことであるし、医者を尊敬した、待遇した、こういうことであったのであろうと思います。昨日も早朝からラジオで教員の重犯罪を伝えております。教員の犯罪問題にいたしましても、待遇問題と全然関係なしとは言いがたい場合もあるように思われるのであります。それでアルバイトしなければ食べていかない先生も中にはある。そうすると、アルバイトを主にして、本来の教育任務が従になっているといううわさのある者もあるわけであります。子供の教育に誠心誠意を打ち込めるような待遇にしていただきたいと思うので、ことにまた大学教授の給与等も改めていただきたい。これは増原大臣ですか、文部大臣ですか、ひとつ御担当の大臣から……。
  368. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これも全くごもっともな御発言でございますが、この機会に最近における状況を簡単に御説明申し上げたいと思います。  教育関係の職員の給与改善につきましては、先般の一般職の給与法改正におきまして、一つは初任給を高率に引き上げてもらうことにいたしまして、行政職が一一・七%に対しまして教育職が一二・二%になっております。それから若手教官の給与を大幅に改善してもらうことになりました。それから大学の助手、教務職員、小中学校の助教諭等の昇給間差額を特段に拡大することになりました。それから各国立大学の学長に対する指定職の俸給表の適用を実現いたしたほか、博士課程担当教授に対しまする昇給調整額の支給率を引き上げまして、それから俸給の特別調整額の支給対象を拡大し、かつ、支給率を若干引き上げたわけでございます。これがごく最近におけるところの改善の措置でございます。もちろん私どもといたしまして、これで十分とは決して思っておりません。なお、今後とも努力を続けなければならないと考えております。なお、いわゆる研究職につきましても、大体この教育関係職員に準じまして若干の給与改善が行なわれましたが、これにつきましても、今後さらに一そう拡充いたしたいと考えております。
  369. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 次に、司法官試験の合格者も同様であります。司法官にならないで弁護士になってしまう者が多い。これなども裁判の遅延の遠因、予算と待遇の悪い点にあるんじゃないかと思いますので、時間の関係上、これは増原大臣からですか、お答えをいただきたいと思います。
  370. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 教育職については、いま文部大臣からお答えをしたとおりであります。現在のところ、給与の問題は一応第三者的な立場にある人事院の勧告に待って是正を実施していくというたてまえをとっておるわけでございます。仰せのとおり司法官等につきましても、弁護士等の関係においてなかなか適格者の得にくいという面がございます。教育職、研究職みなしかりでございます。医官についても、なかなか適任者を得がたい状況でありまするので、これは全体として民間給与との適正なバランスをとるという意味において、さらに人事院にもよく相談をいたしまして、適正な改善方に努力をしてまいりたい、かように考えております。
  371. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 次に、春闘に対する給与問題でありますが、これは時間もかかります。私の時間の関係上割愛いたします。労働大臣もおられませんので割愛いたします。  それから次に、給与改訂問題につきましては、人事院勧告の時期について、このごろは人事院勧告の時期がいまは八月八日か十日前後に、内容は必ず五月にさかのぼって実施を要請している。これに対して勧告の実施は十月の一日、まあ去年は九月一日、これを何とか勧告する側も受ける政府のほうにも都合のよい時期に改めることはどうなっているかという点、すなわち勧告の時期を予算編成期以前にすることはできないかどうかという、これは時間の関係上、要望だけを申し上げまして、御答弁は要りません。  それから次に、防衛の問題について伺います。これは総理大臣防衛に関しまする最終責任者でいらっしゃいますので、総理大臣から伺いたいと思います。  それは自衛隊の指揮権の問題と国防会議の問題であります。なお、国防会議には通産大臣は、これは物的動員の関係で当然お入りになっていらっしゃるべきだと思うのですが、入っておらないように思われますが、これはぜひ国防会議の法律を改正して……、入っていらっしゃるのですか、——ああそうですか。何か入っておられないように……。企画庁長官ですか、何か入っておられないのがあると思いますが、それをひとつ御検討いただきまして、当然入れるべき閣僚があったらお入り願いたい。  次に、自衛隊の指揮権の問題でありまするけれども、自衛隊の指揮権は、もっぱら内閣総理大臣の専断にまかされております。それは国防会議の諮問を経ることになっておりますが、私は国防会議は決議機関にすべきである。もっとも、審議会というものがすべて諮問機関である場合におきましても、審議の結果は、今後尊重していくという政治情勢になってきているかとは思いますが、これはやはり法的措置としても、国防会議は私は決議機関にしなければならない、さように考えます。それは指揮権を総理大臣一個に集中いたしますると、かえって思わざる不測の事態が勃発するおそれもある。自衛隊が一政党の私兵化を来たして、かえって治安が撹乱さるる場合も想定さるるのであります。たとえば暴動みたいなものが起きましたときに、鎮圧に名をかりて、動員した自衛隊を途中から、敵は本能寺だときびすを返して、かえって革命達成を助長する場合があるかと思います。逆に不作為の間に、まだ自衛隊を指揮権発動する必要はない、発動する必要はないといって、逆に不作為の間に革命を達成させらるるような場合も考えられますので、この国防会議の構成というものは決議機関にすると同時に、国防会議の議員を七年、五年、三年、一年というふうに段階的にいたしまして、たとえ内閣が急変いたしましてラジカルな内閣になりましても、決議機関である国防会議の構成が、このしっかりした、安定した、りっぱなわれわれ全国民が信頼し得るような国防会議が急変しないようにする法的措置が必要であろうかと存じます。これに対しまする総理大臣のお答えをお願いいたします。
  372. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国防会議のあり方がいまのようでいいか悪いか、これは絶えず私ども研究してまいりたいと思います。ただ、その御意見のうちにありましたように、非常に過激な政党と言われるのは、どういうことを意味しておられるのか私はわかりませんが、私は今日存在する政党はすべて民主主義の政党である、かように固く信じております。また、この総理の権限でクーデターを起こすようなものはまず考えられないと、かように考えますので、そういう点は十分信頼されて、そうして制度を十分うまく運用していくように各方面の御協力を得たい、かように私は思います。
  373. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 これはひとり選挙によりましてこの問題が解決する問題とも考えられませんので、日本の長い将来のために、総理もこの問題についてはさらに御検討を願いたいと御要望申し上げます。  私の最後の質問は、再び佐藤内閣の政治姿勢の問題に戻って、希望を含めた質問をもって終了いたしたいと存じます。  佐藤総理国民とともに政治を進める御方針とお見受けいたしますが、このため、あるいは市場を視察したり、ラッシュの駅頭に群衆にもまれながら、国民のはだにじかに触れながら、交通の過密を苦労とを国民とともに体験せられたことはまことに心あたたまる思いがいたしております。しかし、私は国民のはだに総理の肌がじかに触れるときに、一つのしっかりしたその政治的ビジョンの息吹きを大衆に吹き込んでいただくことを強く要望申し上げる次第であります。それは今日の国民はあまりに自由をたんのうし過ぎて、これが群衆ともなり大衆ともなるときは、かつての日本民族が世界に誇ったような秩序の尊重、高潔な道徳律、国民が自分の国を愛するといったような精神、さらに民主主義のルール等につきましては、全く無理解であって、非人道的な犯罪の多い青少年に対しまして、大衆にもまれながら総理はこの点どう御観察になったか、どういうような感触を得られたか。ただいまの時点におきまして、国民にとって、また政治家として、戦争に心を向けないで済む日本では、ふらつかない、国の確固たる目途、ビジョンは、まさに経済的の国力の伸張と精神的な道徳的な国を築きあげていくことだ、それには国民をあげてこのビジョンの実現に邁進していくんだという息吹きを大衆のはだに吹き込んでいただきたいという私の希望でございます。経済は成長したけれども不況になったのでは国民は困るし、さらに、精神的にも国民がせつな主義にならないように、消費ブームやレジャー・ブームに浮かされないで、もっと堅実な、むしろこれは決して昔に逆行という意味ではありませんが、新しい世代の新しい考え方、勤倹力行型のしっかりした国民をつくってほしい。佐藤内閣によって築かれてまいりますしっかりした経済基盤の上に、脆弱な経済体質から脱皮して、しっかりした経済基盤をさらに積み重ねていただきたい。この政治の理想、経済政策のビジョンとともに、国民の精神生活の将来に対しまして、総理の御所見と御所信を承りまして私の質問を終わりたいと思います。
  374. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政治の姿勢は冒頭に申しました。ただいままた大へん注意周到な御意見を拝承いたしました。ただ問題は、今後私どもが民主主義に立ってそして有言実行、実行していく、き然たる態度で実行に重きをおく、こういうことだろうと思います。そういう意味で御協力のほどをお願い申し上げます。
  375. 植竹春彦

    ○植竹春彦君 じゃ質問を終了いたします。
  376. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 植竹君の質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたし、明六日は、都合によりまして午後一時に委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時五分散会