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国務大臣(
高橋衛君) ただいまお述べになりましたようないろんな経済諸元の影響が物価という形になってあらわれてまいっておるのでございまして、
政府といたしましては非常な決意をもって物価を安定的な方向に持っていこうということで努力をいたしておる次第でございます。しこうして植竹さんにこういうことを申し上げるのはいかがかと存じますが、物価上昇の原因が二方面から
考えられると思うのであります。
一つは、総需要があまりに大きくなると、つまり成長の速度があまりに大きい場合においては、どうしても需要に引きずられて全体として物価が上昇するということ、いま
一つは、コストが上昇することによって、コストによって押し上げられて物価が上昇すると、
二つの面があろうと存じます。そういうふうな観点から経済の成長を安定的な基調にもってゆくということを、まず第一に
昭和四十年度の経済運営の方針といたしましてもそれを
基本的な
態度といたしておる次第でございます。したがって、
先ほど来大蔵
大臣からも御
答弁申し上げましたように、経済の運営については非常に慎重な
態度をもって臨んでおるということを、まず最初に申し上げておきたいと思います。
それから、いま
一つ、しばしばお答え申し上げておる点でございますが、中小企業なり、農業等におきましては、どうしても大企業との間に、生産性の格差が大きく存在しておる次第でございます。
政府といたしましては、この生産性の上昇のために、非常な努力をして
予算上も
措置をしてまいっておるわけでございますが、この効果は、そう急速にあらわれるものじゃございません。ところが、大企業におけるところの、つまり製造業を中心とした大企業におけるところの賃金の上昇が、平準化の作用によりまして、どうしても中小企業、農業等に及び、その結果、農業等につきまして申し上げますれば、生産性の向上によってカバーできぬ部分は、価格政策に依存しなければならない。言いかえれば、七〇%まで農業生産物は、
政府の支持し得る価格になっておるわけでございますが、その価格を引き上げることによって、農民の所得を他の産業との格差を狭める方向に持っていかざるをえないというのが現実の姿でございます。そういうことで、つまり、全体としての成長を安定的な基調に持っていくということと、いま
一つは、そういうふうなおくれた産業におけるところの生産性の上昇に、政策的にあらゆる力を傾注していく。この
二つの方面から、物価も漸次、安定的な基調に持っていきたい、かように存じておる次第でございます。
ところで、
先ほども価格、物価、賃金その他について、バランスのとれた運営が望ましいというお話でございまして、その点は御
指摘のとおりでございますが、過去の実績等を調べてみますると、
昭和三十年ごろから三十五年ころまでは、製造業だけの数字でございますけれ
ども、製造業で、しかも確実な数字の得られますところの三十人以上の工場、事業場につきまして、生産性の上昇の割合と、それから賃金の指数というものを比較してみますると、
昭和三十年から三十五年までの間において、賃金の上昇は二五・五でございましたが、生産性の上昇が三五・五でございました。その
関係も大きく影響したと存じますが、
昭和三十年から三十五年までは、成長は相当急速度でございましたけれ
ども、卸売り物価はもとより安定しておったのでございますが、消費者物価もそれほど上昇は見せなかったというのが、御
承知のとおりの
状況でございます。ところが、三十五年を境として、三十五年から三十九年までの数字をとってみますると、三十五年に対して三十九年の現金給与の総額の上昇率は、四九・三になっておるわけでございます。これに対して、労働生産性の指数は四〇・九ということで、この場合には、労働生産のほうが賃金の上昇率を相当に下回っているというのが実態のようでございます。これだけが消費者物価に影響するとは申し上げられぬのでございますが、こういうふうにアンバランスが生じましたことが、やはり消費者物価の上昇の相当重要な原因の
一つになっておるかと、かように存じておる次第でございます。