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1965-01-30 第48回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年一月三十日(土曜日)   午前十一時四十九分開会     —————————————    委員異動  十二月二十三日     辞任         補欠選任      北村  暢君     横川 正市君      瀬谷 英行君     岡  三郎君  一月二十一日     辞任         補欠選任      山本伊三郎君     中村 順造君      米田  勲君     永岡 光治君      稲葉 誠一君     千葉千代世君      岡  三郎君     阿具根 登君      横川 正市君     大倉 精一君      豊瀬 禎一君     久保  等君      加瀬  完君     大和 与一君  一月二十九日     辞任         補欠選任      後藤 義隆君     中野 文門君      仲原 善一君     斎藤  昇君      館  哲二君     日高 広為君      奥 むめお君     高瀬荘太郎君  一月三十日     辞任         補欠選任       斎藤  昇君    仲原 善一君       阿具根 登君    北村  暢君       久保  等君    鈴木  強君     —————————————    委員異動 一月二十九日寺尾豊委員長辞任につきその補 欠として平島敏夫君を議院において委員長に選 任した。     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 大谷藤之助君                 日高 広為君                 村山 道雄君                 藤田  進君                 中村 順造君                 鈴木 一弘君                 高瀬荘太郎君     委 員                 植垣弥一郎君                 植竹 春彦君                 江藤  智君                 太田 正孝君                 木村篤太郎君                 草葉 隆圓君                 木暮武太夫君                 郡  祐一君                 佐野  廣君                 白井  勇君                 杉原 荒太君                 田中 啓一君                 豊田 雅孝君                 中野 文門君                 仲原 善一君                 吉江 勝保君                 北村  暢君                 鈴木  強君                 小平 芳平君                 向井 長年君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  高橋  等君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        厚 生 大 臣  神田  博君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   櫻内 義雄君        運 輸 大 臣  松浦周太郎君        郵 政 大 臣  徳安 實藏君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  小山 長規君        自 治 大 臣  吉武 恵市君        国 務 大 臣  小泉 純也君        国 務 大 臣  河野 一郎君        国 務 大 臣  高橋  衛君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣官房長官  竹下  登君        総理府総務長官  臼井 莊一君        経済企画庁調整        局長       高島 節男君        大蔵政務次官   鍋島 直紹君        大蔵省主計局長  佐藤 一郎君        大蔵省主税局長  泉 美之松君        大蔵省理財局長  吉岡 英一君    事務局側        常任委員会専門        委員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣送付予備審  査) ○昭和四十年度特別会計予算内閣送付予備審  査) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣送付、予  備審査)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。  このたび私、予算委員長に選任されました。委員皆さま方の御協力を賜わりまして、その任を全うしたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) まず、委員の変更について御報告いたします。  昨年十二月二十一日、佐藤尚武君が辞任され、奥むめお君が選任されました。  同月二十三日、北村暢君、瀬谷英行君が辞任され、横川正市君、岡三郎君が選任されました。  本年一月二十一日、山本伊三郎君、米田勲君、稲葉誠一君、岡三郎君、横川正市君、豊瀬禎一君、加瀬完君が辞任され、中村順造君、永岡光治君、千葉千代世君、阿具根登君、大倉精一君、久保等君、大和与一君が選任されました。  昨二十九日、後藤義隆君、仲原善一君、館哲二君、奥むめお君が辞任され、中野文門君、斎藤昇君、日高広為君、高瀬荘太郎君が選任されました。  また本日、斎藤昇君、阿具根登君、久保等君が辞任され、仲原善一君、北村暢君、鈴木強君が選任されました。     —————————————
  4. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、理事補欠互選を行ないたいと存じます。  現在、当委員会におきましては、理事が六名欠員になっておりますが、本日は都合によりまして五名の理事補欠互選を行ないたいと存じます。その互選につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認めます。  それでは日高広為君、中村順造君、鈴木一弘君、田畑金光君、高瀬荘太郎君を理事に指名いたします。     —————————————
  6. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上予算審査の三案を一括議題といたしまして、田中大蔵大臣から提案理由説明を承ることにいたしたいと存じます。田中大蔵大臣
  7. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昭和四十年度予算編成基本方針及びその大綱につきましては、先日、本会議におきまして御説明いたしましたが、予算委員会において本日から御審議をお願いするに当たり、あらためてその概要を御説明いたします。  昭和四十年度財政運営は、本格的な開放経済体制のもとで、通貨価値の維持と国際収支均衡確保しつつ、わが国経済長期にわたる安定成長をはかることを主眼といたしております。  このため、引き続き健全均衡財政を堅持しつつ、所得税及び法人税中心として、大幅な減税を行なうとともに、現下の要請にこたえて、社会開発推進する諸施策を積極的に展開することを予算編成基本方針といたしております。  この基本方針に基づき編成されました昭和四十年度一般会計予算総額は、三兆六千五百八十一億円でありまして、前年度当初予算に対して四千二十六億円、補正(第一号)後の予算に対して、三千百七十六億円の増加となっております。  また、財政投融資計画総額は、一兆六千二百六億円でありまして、前年度当初計画に対して、二千八百四億円の増加となっております。  まず、一般会計予算について申し上げます。  歳入のうち、租税及び印紙収入は、三兆二千八百七十七億円でありまして、前年度当初予算に対し三千八百三十四億円、補正(第一号)後予算に対し、三千百八十四億円の増加となっております。これは、現行税法前提とする四十年度収入見込み額三兆三千六百九十億円から、税制改正による減収額八百十三億円を差し引いた額であります。  四十年度税制改正につきましては、最近の国民負担現状及び経済情勢の推移に顧み、中小所得者重点をおいて所得税負担軽減いたしますとともに、企業体質改善国際競争力強化に資するため、企業課税軽減を行ないますほか、当面要請されている諸施策に対応する税制上の措置を講ずることとし、また、関税定率法等につきましても、所要調整を行なうことといたしました。これにより一般会計における減収は、平年度千百五十一億円、初年度八百十三億円にのぼる次第であります。  租税及び印紙収入以外の歳入は、総額三千七億円でありまして、前年度当初予算に比べ、二百五十六億円の増加となっております。増加のおもな内訳は、日本専売公社納付金の増八十二億円、日本銀行納付金の増七十億円であります。  前年度剰余金の受け入れにつきましては、すでに総額六百九十七億円と確定いたしておりまして、前年度予算に比べ六十四億円の減少となっております。  次に、歳出のうち、おもな経費につき、その概要を申し上げます。  社会保障関係といたしましては、総額五千百六十四億円を計上し、経済力と調和のとれた国民福祉向上に資することといたしております。  すなわち、生活保護費におきまして、生活扶助基準を一二%引き上げますほか、社会福祉費において、児童、老人、身体障害者及び母子保健対策等強化いたしますとともに、施設職員処遇改善をはかることとし、低所得者層等に対する施策の一そうの充実をはかっております。  社会保険費におきましては、国民健康保険世帯員に対する七割給付の着実な推進をはかりますほか、福祉年金につき、年金額引き上げ扶養義務者所得制限緩和等の大幅な改善を行なうことといたしました。また、医療保険につきましては、既定方針に従い、財政再建対策を講じますとともに、この対策を円滑に遂行するため、政府管掌健康保険等について、特別の補助を行なうこととしております。  文教及び科学振興費におきましては、総額四千七百五十七億円を計上して、次の世代をになう青少年の健全な育成と、経済社会近代化に即応した科学技術振興をはかることといたしております。  まず、義務教育につきましては、いわゆる改正標準法を着実に実施して、教職員定数充実教育水準向上に資するとともに、引き続き公立文教施設費増額して、教育環境の一そうの整備につとめることといたしておりますほか、義務教育教科書無償給与範囲拡大学校給食拡充僻地教育及び特殊教育振興遠距離通学者に対する通学費補助新設等、各般にわたり、きめこまやかに配慮いたしております。  また、大学入学志願者急増問題につきましては、国立大学における学部、学科等の大幅な拡充による入学定員増加とこれに即応した施設設備拡充等対策を講じますほか、私立学校振興会に対する財政投融資を大幅に増額する等、所要財政措置を講じております。  科学技術振興費につきましては、原子力平和利用産業公害及び自然災害防止等重要研究重点をおいて、その積極的推進をはかっております。  恩給関係費といたしましては、千六百七十一億円を計上いたしております。  恩給につきましては、今回、民生安定の一環として、四十年十月から三カ年計画恩給年額の改定を実施することとし、約二〇%のベースの引き上げ公務扶助料の倍率の引き上げ及び傷病年金間差是正等を行なうことといたしております。  次に、地方交付税交付金といたしましては、国税三税の収入見込み額の二九・五%に相当する七千百六十二億円を計上いたしております。  地方財政は、ここ数年来、地方税等の増収と財政健全化の諸施策に支えられて漸次好転し、その基盤も強固なものとなってきたのでありますが、最近、歳出面における人件費等義務的経費著増、税収の伸び鈍化等により、ようやく悪化の傾向が見られるに至っております。  今後における地方財政運営は、歳入確保をはかりつつ、経費使用徹底的合理化を行なう等、地方団体自身財政健全化のための努力にまつべき点が多いのでありますが、国といたしましても、この際、交付税の率を〇・六%引き上げて、地方財政健全化を一そう推進することといたしております。  また、地方債におきましても相当な増額を行ない、生活環境施設整備産業基盤拡充等をはかることといたしております。  さらに、新産業都市建設及び工業整備特別地域整備のため、新たに特別の財政援助を行なうこととし、予算及び財政投融資重点的配分と相まって、地域開発推進をはかりますほか、離島・山村等開発地域につきましても特段配慮を加えて、地域格差是正につとめることといたしました。  防衛関係予算につきましては、従来とも、第二次防衛力整備計画に沿った自主防衛力強化をはかってきたところでございますが、四十年度におきましても、他の重要施策との均衡を勘案しつつ、その整備充実をはかるとともに、基地対策強化につとめることとし、防衛関係費として三千十四億円を計上いたしております。  公共投資につきましては、引き続き社会資本計画的に整備し、国力発展基盤充実するとともに、国土保全をはかる等のため、その拡充につとめることとし、公共事業関係費といたしまして、総額六千九百二十七億円を計上いたしております。  まず、治山治水対策につきましては、現行の十カ年計画にかえて、四十年度初年度とする総額一兆一千億円の治水事業五カ年計画及び総額千五百億円の治山事業五カ年計画をそれぞれ策定することとし、これによって国土保全を強力に推進することにいたしました。  また、道路整備につきましては、四十年度より創設する石油ガス税をも特定財源に加え、一般財源の大幅な増額ともあわせて、道路整備財源充実確保につとめますとともに、道路整備五カ年計画の着実な推進をはかることにしております。  さらに、港湾につきましても、最近における港湾貨物取り扱い量増大傾向に対処して、新たに四十年度初年度とする総額五千五百億円の港湾整備五カ年計画を策定し、事業の大幅な進捗を期しておりますほか、空港につきましても、将来の国際航空輸送増大に対処して、新東京国際空港建設するため、新たな公団の設立を予定いたしております。  なお、鉄道輸送力を増強し、安全輸送確保等をはかるため、日本国有鉄道日本鉄道建設公団設備投資を大幅に拡充いたしますとともに、旺盛な電話需要に対処して、日本電信電話公社電話建設を促進することとし、財政投融資等により、所要資金確保につとめることといたしました。  戦後二十年を経て、国民の衣食は著しく改善されましたが、住宅及び生活環境施設については、なお一段と整備につとめなければなりません。このため、四十年度におきましては、予算及び財政投融資を大幅に増額し、その整備を積極的に推進することにいたしております。  まず、一般会計住宅対策費として、三百六十五億円を計上し、公営住宅建設戸数増加とその質の向上等をはかりますとともに、財政投融資計画においても、日本住宅公団住宅金融公庫等に対する財政資金投入民間資金活用を積極的に行なうこととし、政府施策住宅の大幅な拡充をはかることといたしました。  なお、このほか四十年度から、主として都道府県単位に、住宅供給公社を発足させることを予定し、勤労者持ち家住宅建設にも資することにいたしております。  生活環境施設につきましては、生活環境施設整備緊急措置法に基づく長期計画を策定し、上下水道、終末処理施設し尿処理施設等整備を促進いたしますほか、公害防止事業団新設する等、公害対策強化にも特段配慮を加えることにいたしました。  貿易振興及び経済協力につきましては、財政投融資計画において、日本輸出入銀行に対し、千二百九億円にのぼる財政資金投入を行なって、輸出金融拡充円滑化をはかりますほか、税制面におきましても、法人税率引き下げ等企業課税軽減を行なうことにより、企業国際競争力強化に資することにいたしておるのであります。  一般会計におきましても、日本貿易振興会等による海外市場調査貿易あっせん等の諸施策を引き続き強化して、輸出市場拡大をはかりますほか、海外経済協力基金に対する追加出資等施策を通じ、経済協力の一そうの推進を期することにいたしました。  また、貿易外収支改善に資するため、海運業再建整備外航船腹の大幅な拡充をはかりますほか、国際観光事業国際航空事業等につきましても、その態勢の強化と内容の充実を期することとして、所要措置を講ずることといたしおります。  中小企業につきましては、中小企業基本法の定める方向に沿い、設備近代化構造高度化経営協業化等推進して、他産業との格差是正し、もって国民経済均衡ある発展を期するため、財政税制金融の諸施策を総合的に推進することにいたております。  まず、一般会計におきましては、中小企業対策費として二百十八億円を計上し、中小企業高度化資金融通特別会計への繰り入れを飛躍的に拡充するとともに、設備近代化補助金増額して、その高度化近代化を促進いたしますほか、小規模事業対策中小企業診断指導事業重点を置いて予算増額し、特に小規模事業につきましては、従来の諸施策のほか、小規模企業共済事業団新設特別小口保険制度の創設により、その対策積極的充実をはかっております。  また、税制面におきましては、中小企業負担軽減をはかるため、国税において、平年度二百三十八億円の減税を行ないますほか、財政投融資計画におきましても、中小金融機関貸し付けワクを約二〇%拡大して、中小企業金融拡充円滑化配慮いたしました。  農林漁業につきましては、農業基本法林業基本法及び沿岸漁業等振興法の定める方向に沿いつつ、農業構造改善事業農業基盤整備事業拡充林業構造改善対策事業新規着手沿岸漁業構造改善対策事業推進等中心として、予算及び財政投融資を大幅に拡充いたしております。  農業につきましては、立地に即した主産地の形成と生産基盤強化を通じ、生産選択的拡大生産性向上経営近代化等のための施策を積極的に推進することといたしておりますが、特に、新たに農地管理事業団を設立し、自立経営農家の積極的な育成をはかることにいたしました。  なお、かねてより議論のありました農林漁業用揮発油税の減免問題につきましては、十分慎重に検討いたしましたが、税制調査会の答申におきましても、これを税制上の措置として解決いたしますことは、実行上種々難点があるほか、税務職員の増員の困難性の問題もあり、他の適切な措置を講ずべきであるとされておりますので、減免にかわる措置として、五十億円の予算をもって、農道整備林道整備漁港関連道整備及び農業改良資金助成の各事業を強力に推進することといたしております。  また、農林漁業金融公庫につきましては、その新規貸し付け計画額を千二百四十億円へと大幅に拡大いたしますとともに、農業近代化資金及び農業改良資金新規融資ワク拡大と相まって、農林漁業金融拡充円滑化に資することといたしました。  食糧管理特別会計への繰り入れにつきましては、調整資金状況等を勘案し、一般会計から千九十六億円を繰り入れることといたしております。  産業投資特別会計への繰り入れは、百二十五億円でありまして、同特別会計におきましては、この繰り入れ額に、その保有している資金等を合わせ、これを財源として、日本輸出入銀行農林漁業金融公庫住宅金融公庫その他九機関に対し、総額五百五十七億円の出資を行なう予定となっております。  以上、主として一般会計予算について申し述べましたが、特別会計及び政府関係機関予算につきましても、一般会計に準じ、経費及び資金重点的配分効率的使用につとめ、事業の円滑な遂行を期することにいたしておるのであります。  財政投融資につきましては、以上のそれぞれの項目において御説明いたしておりますが、その原資としましては、出資原資として産業投資特別会計五百五十七億円、融資原資として、資金運用部資金一兆六百三十九億円及び簡保資金千百億円、合計一兆二千二百九十六億円の財政資金のほか、局間資金等活用三千九百十億円を見込み総額一兆六千二百六億円を予定いたしております。  運用計画の策定にあたりましては、住宅建設及び生活環境施設整備農林漁業及び中小企業関係金融充実重点を置くとともに、輸出振興及び道路鉄道等社会資本強化等にも特に配意をいたしました。  以上、昭和四十年度予算及び財政投融資計画につきまして、その概略を御説明いたしましたが、なお詳細にわたりましては、政府委員をして補足説明いたさせます。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同いただきたいと存じます。
  8. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまの大蔵大臣説明に関し、これより順次政府委員から補足説明を聴取いたしたいと存じます。佐藤主計局長
  9. 佐藤一郎

    政府委員佐藤一郎君) 昭和四十年度予算編成にあたっては、政府の面からも経済安定成長確保するという要請にこたえまして、健全均衡財政方針を堅持し、予算規模の圧縮につとめたのでありますが、他方、わが国経済社会現状から見て、社会開発推進する重要諸施策を積極的に展開するため、財政需要は従来にも増して旺盛なものがあったのであります。  さらに、経済安定成長前提とする以上、租税及び印紙収入増加にあまり多くを期待することはできなかったのでありますが、引き続き大幅な減税を実施することといたしましたので、さきに申し上げました事情ともあわせ、歳出予算につきましては、極力その重点化効率化配意することといたしました。  すなわち、非効率補助金の整理、合理化欠員補充措置継続等によりまして、既定経費の節減につとめますほか、財政法の規定による前年度剰余金国債費繰り入れを従来の二分の一から五分の一に切り下げ、また、産業投資特別会計出資についてもその削減をはかる等、いわば超均衡的な歳出につき再検討を加えることとして、限られた経常財源範囲内における予算合理化を一段と推進することといたしました。  このようにして編成された昭和四十年度一般会計予算規模は三兆六千五百八十一億円でありまして、その前年度当初予算に対する伸び率一二・四%は、三十八年度予算の一七・四%、三十九年度予算の一四・二%というそれぞれの前年度当初予算に対する伸び率を下回るのみならず、三十六、三十七両年度予算における二四%台の伸び率の約半分にすぎないのであります。  さらに、その四十年度における国民所得見込みに対する比率は一六・一%でありまして、過去における当初予算規模国民所得の当初見込みに対する比率、三十七年度一七%、三十八年度一七・一%、三十九年度一六・四%と対比いたしましても、これをそれぞれ下回っているのであります。  したがいまして、四十年度予算規模は適度なものとなっており、経済安定成長に資することができるものと信ずるのでありますが、なおその運用にあたりましては、金融政策の適切な運営と相まって、経済の動向に配意しつつ、弾力的な執行につとめてまいりたいと存じます。  次に、一般会計歳出のうち、そのおもなものについて御説明申し上げます。  社会保障関係費といたしましては、五千百六十四億円を計上いたしております。その前年度当初予算に対する増加額は八百五十七億円、伸び率は一九・九%でありまして、一般会計予算額中に占める比率一四・一%は、過去の最高となっております。  社会保障関係費につきましては、引き続く医療給付費の増高傾向に加えて、四十年一月から実施された医療費改定の平年度化及び国民健康保険における世帯員七割給付の平年度化等、医療費を中心として、経費のいわば当然増がきわめて大きくなっておりますが、社会保障制度の一そうの充実を期するため、各般にわたり、施策改善強化をはかることといたしております。  まず、生活保護費におきましては、生活扶助基準を一二%引き上げるとともに、教育扶助につきましても基準の改定を行ない、医療扶助、住宅扶助の増額と相まって、前年度当初予算に比べ百四十三億円増の千六十一億円を計上いたしております。  社会福祉費におきましては、児童、老人、身体障害者等、施設収容者の飲食物費、日常諸費を増額して生活内容の向上を期しますとともに、施設職員の処遇の改善をはかりますほか、新たに、低所得階層の妊産婦・乳幼児に対し、ミルクの無償給付を開始する等、母子保健対策強化につとめることといたしております。  また、社会保険費におきましては、国民健康保険世帯員七割給付四カ年計画の第二年度として、その着実な実施をはかりますとともに、かねてより準備を進めておりました厚生年金給付額の引き上げを四十年五月からと予定し、所要措置を講じております。このほか、国民年金につき、福祉年金額の引き上げ、重度精神薄弱者に対する障害年金の支給、本人及び扶養義務者所得制限緩和等、大幅な改善を行なうこととし、さらに、国民健康保険及び国民年金の事務費単価につきましても、これを大幅に引き上げることといたしております。  なお、さきに申し述べましたような著しい医療費増高傾向により、医療保険財政の健全性を維持することがきわめて困難となっている状況に顧み、その再建対策を講ずることとし、既定方針に従い、被保険者薬剤費の一部自己負担、保険料算定基準についての総報酬制の採用等を見込みますとともに、これが円滑な実施に資するため、政府管掌健康保険事業等に対し、特別の補助を行なうこととしております。  以上により、社会保険費といたしましては、前年度当初予算千六百三十六億円に対し、四百五十九億円を増額して、二千九十五億円を計上しております。  次に、保健衛生対策費におきましては、結核及び精神衛生対策、原爆被爆者対策、疾病予防対策等に重点を置いて予算増額し、施策充実を期しております。  また、失業対策費におきましても、失業対策事業の賃金日額を一一・九%引き上げて五百六十一円七十銭といたしますとともに、中高年齢失業者等に対する就職指導、職業訓練を引き続き推進する等、労働力の流動化と雇用対策強化につとめることといたしております。  文教及び科学振興費といたしましては、前年度当初予算に比べ一五%、六百二十二億円増の四千七百五十七億円を計上しております。  まず、義務教育費国庫負担金におきましては、いわゆる改正標準法の着実な実施及び特殊学級の増設等により、小・中学校における教職員定数充実を期しますほか、教材費単価の引き上げを行なって、教育内容の向上をはかっております。  文教施設費におきましても、学校統合、危険校舎改築等に重点を置いて、事業量の増加をはかりますとともに、補助単価、鉄筋比率につき所要改善を加えることとして、質・量両面にわたり教育環境整備につとめております。  教育振興助成費におきましては、義務教育教科書無償給与の範囲を小学校六年生までに拡大し、低所得階層の児童生徒の援助を強化する等、父兄負担軽減配意いたしますほか、学校給食につきましても、なま乳七十万石を取り入れることとして、その改善をはかっております。さらに、恵まれぬ児童に対しては、特殊教育及び僻地教育振興等をはかるとともに、遠距離通学者に対し通学費の補助を行なう市町村に、新たにその経費の一部を補助することといたしました。  国立学校につきましては、国立学校特別会計への繰り入れを大幅に増額して、引き続き教官研究費、学生経費充実をはかりますほか、特に学部・学科等を積極的に拡充し、入学定員を三千三百九十四人増加いたしますとともに、これに即応した施設設備整備を行ない、昭和四十年度以降予想される大学入学志願者の急増に対処することといたしております。なお、大学入学志願者急増対策といたしましては、このほか、私立大学については、私立学校振興会に対する財政投融資を百十億円に増額し、公立大学については、地方債の大幅拡充をはかる等により、それぞれ施設設備充実を期することといたしております。  科学技術振興につきましては、原子力研究所、原子燃料公社等、原子力研究施設の建設推進いたしますほか、産業公害防止、自然災害防止、宇宙開発、対ガン診療治療等、各分野にわたる重要研究重点を置いて、各省試験研究機関整備強化につとめております。  次に、地方交付税交付金といたしましては、七千百六十二億円を計上いたしております。  これは、四十年度において、地方交付税の率が、国税三税の収入見込み額の二九・五%に引き上げられることになりましたので、その収入見込み額二兆四千百三十八億円の二九・五%に相当する額七千百二十一億円に、三十八年度の地方交付税の精算追加額四十一億円を加算したものであります。  また、新産業都市建設及び工業整備特別地域整備等を推進するため、新たに、道県については起債充当率の引き上げと利子補給、市町村については補助率のかさ上げを行なうことといたしまして、予算及び財政投融資重点的配分と相まって、事業の円滑な進捗を期しております。  公共事業関係費といたしましては、六千九百二十七億円を計上いたしております。その前年度当初予算に対する増加額は九百二十三億円、その伸び率は一五・四%となっております。  特に、四十年度におきましては、新たに、治山、治水、港湾等につきまして、中期計画と調和をとりつつ、長期計画を策定し、事業重点的、計画的に促進することといたしました。  まず、治水対策につきましては、新たに、四十年度初年度とする総額一兆一千億円の五カ年計画を策定するとともに、水系一貫管理を規定した新河川法に基づき、一級水系として、利根川、淀川等十五水系を指定することを予定いたしております。  五カ年計画事業区分は、治水事業八千五百億円、災害関連及び地方単独事業等千五百億円、予備費千億円となっております。  次に、治山対策につきましては、治水対策と同じく、四十年度初年度とする総額千五百億円の新五カ年計画を策定し、事業の強力な推進をはかることとしており、その事業区分として、治山事業千三百億円、災害関連及び地方単独事業等五十億円、予備費百五十億円を予定いたしております。  以上のほか、災害復旧事業につきましても、その円滑な実施をはかることとし、これらの措置を通じて、国土保全に万全を期することといたしております。  道路整備につきましては、総額四兆一千億円の道路整備五カ年計画の第二年度として、事業の着実な推進をはかることとし、道路整備財源充実強化につとめることといたしております。すなわち、従来からの揮発油税収入のほか、新たに石油ガス税、一キログラム当たり十七円五十銭を設けて、その収入見込み額の二分の一に相当する四億円を国の特定財源に加えますとともに、一般財源を大幅に増額することとし、道路整備事業費として三千百七十億円を計上いたしております。  また、港湾整備につきましては、港湾貨物取り扱い量増大に対処して、新たに、四十年度初年度とする総額五千五百億円の五カ年計画を策定し、主要外国貿易港湾、地方開発のための主要港湾、主要航路等に重点を置いて、事業の進捗を期することといたしております。  五カ年計画事業区分は、港湾整備事業四千八百五十億円、地方単独事業六百五十億円でありますが、このほか、上屋、荷役機械等の機能施設整備事業が千億円ございますので、これをも合わせますと、全体計画額は六千五百億円と相なります。  さらに、漁港につきましては、第一種及び第二種漁港の補助率を限時的に引き上げて、事業の促進をはかりますほか、空港につきましては、新たに、公団を設立して、新東京国際空港建設に着手いたしますとともに、ローカル空港整備にも配意しております。  次に、住宅対策について申し上げます。  まず、一般会計住宅対策費といたしましては、前年度当初予算に対し二一・七%を増額して、三百六十五億円を計上し、公営住宅及び改良住宅六万九千五百戸を建設するとともに、建設単価、一戸当たり坪数、鉄筋高層化等の点につきましても、それぞれ改善を加えることとし、低家賃住宅の供給の増大をはかることとしております。  また、財政投融資におきましても、住宅金融公庫及び日本住宅公団に対し、千二百五十四億円という巨額の財政資金投入するほか、五百四十億円にのぼる民間資金の積極的活用をはかることといたしております。これにより、特に、分譲住宅建設戸数を大幅に増加し、住宅供給公社制度の創設ともあわせて、中堅勤労者向け持ち家住宅建設に資することといたしております。  このほか、政府住宅施策といたしましては、厚生年金還元融資を通ずる住宅建設等がございますが、これらを合わせ、四十年度における政府施策住宅全体の建設戸数といたしましては、前年度に対し、二万四千戸増の三十四万一千戸を予定いたしております。  なお、近来極度に不足している宅地につきましては、日本住宅公団等におきまして、その造成事業を大幅に拡充して、宅地供給の増大をはかることとしております。  生活環境施設建設を促進するため、今回、生活環境施設整備緊急措置法に基づき、昭和三十八年度初年度とする総額五千五百億円の生活環境施設整備五カ年計画を策定することといたしました。その事業区分は、下水道三千三百億円、終末処理施設千百億円、し尿処理施設六百五十億円、ごみ処理施設四百五十億円となっております。  この五カ年計画に応じ、一般会計におきましては、下水道、終末処理施設、し尿処理施設に重点を置いて、環境衛生対策費及び公共事業関係費の中の下水道事業費を合わせ、二百二十四億円の予算を計上するほか、現下の課題である公害対策につきましては、ばい煙規制の強化、大気汚染測定網の整備、公害防止研究の充実公害防止事業団新設等、格段の配慮を加えております。  また、財政投融資におきましても、地方債を大幅に増額して、上下水道、清掃施設を中心に、その積極的整備推進することといたしております。  貿易振興及び経済協力費におきましては、前年度当初予算に比べ二六・四%増の百二十九億円を計上して、引き続き、日本貿易振興会等による貿易あっせん、海外市場調査、海外展示事業強化等をはかって、輸出の伸長を期しますほか、コロンボ・プランを中心とする技術協力拡充、日本青年海外協力隊の創設等により、対外経済協力を一そう推進することとしております。特に、海外経済協力基金につきましては、一般会計において追加出資十億円を計上するとともに、新たに、財政投融資を通ずる借入金の道を開くことにより、同基金の一そうの活用をはかることといたしました。  また、貿易外収支改善のため、国際観光事業、国際航空事業に対し、所要の助成を行なって事業態勢の強化を期することといたしますほか、海運対策費といたしましては、百三十七億円を計上して、海運業再建整備、三国間輸送の助成等をはかりますとともに、財政投融資計画におきましても、四十年度の外航船舶建造量を百五十万総トンに拡充するための措置を講じております。  このほか、輸出金融につきましては、日本輸出入銀行貸し付けワクを千九百四十五億円に拡大し、産業投資特別会計からの出資二百九十億円を含めて千二百九億円の財政資金投入することにより、船舶輸出、プラント輸出等を中心とする輸出金融等の円滑化配意いたしております。  中小企業対策費といたしましては、前年度当初予算に比べ五十二億円、三一・六%増の二百十八億円を計上し、特に、中小企業高度化近代化の促進、小規模事業対策強化重点を置いて、施策推進をはかっております。  まず、中小企業高度化近代化をはかるため、中小企業高度化資金融通特別会計への繰り入れを前年度四十四億円から六十七億円へと飛躍的に増額するとともに、貸し付け条件を大幅に改善して、工場等集団化、商業集団化等及び商工業協業化を推進するほか、設備近代化補助金五十億円を計上し、中小企業生産性向上を期することといたしております。  小規模事業対策につきましては、引き続き、経営指導事業等の強化につとめますほか、小規模企業者の相互扶助精神に基づき、小規模企業共済事業団新設するとともに、零細企業者の資金調達の円滑化をはかるため、特別小口保険制度を創設する等、施策の一そうの充実につとめることといたしました。  中小企業金融につきましては、中小企業信用保険公庫融資基金へ六十億円を出資して、信用補完制度を質量ともに拡充いたしますとともに、財政投融資計画におきましても、国民金融公庫、中小企業金融公庫及び商工組合中央金庫の貸し付け規横を約二〇%拡大することとし、これに必要な資金確保につとめております。  四十年度における農林関係予算総額は、三千七百億円でありまして、食糧管理特別会計への繰り入れ、災害復旧等事業費及び農業近代化助成資金への繰り入れを除いた実質予算規模を前年度当初予算と比較いたしますと、その伸びは三百七十三億円、一八・一%となり、相当な拡充がはかられております。  まず、農業基盤整備費につきましては、九百二十億円を計上しで圃場整備農道整備、草地改良等を中心生産基盤強化につとめますとともに、農業構造改善対策費につきましても、百六十億円を計上して、継続事業の進捗と四百五十地域における新規事業の着手をはかることといたしております。  さらに、自立経営を志向する農家の経営規模拡大を助長するため、新たに農地管理事業団を設立することとし、四十年度については、パイロット的に百市町村一千町歩において、農地取得のあっせん、長期低利資金の貸し付け等を行なうことを予定いたしております。  また、林業につきましては、林道事業の大幅な拡充をはかりますほか、四十年度から、九十二市町村において、新たに、林業構造改善対策事業に着手することとし、漁業につきましても、漁港整備計画の着実な推進とあわせて、沿岸漁業構造改善対策事業、内水面漁業振興対策事業等の拡充につとめることといたしました。  農林漁業金融につきましては、農業近代化資金新規融資ワクを前年度の六百億円から七百億円へと増額して、系統資金活用をはかりますほか、無利子の農業改良資金新規融資ワクを五十七億円に拡大いたしますとともに、農林漁業金融公庫新規貸し付け計画額につきましても、前年度の千七十億円から千二百四十億円へと大幅に拡大して、所要資金確保につとめております。  食糧管理特別会計への繰り入れといたしましては、千九十六億円を計上いたしております。  その内訳は、食糧管理勘定の損失見込み調整資金の残等を勘案して、調整勘定へ繰り入れられる千五十五億円と、輸入飼料勘定の損失を補てんするため同勘定へ繰り入れる四十一億円とであります。  産業投資特別会計への繰り入れは、百二十五億円でありまして、前年度に比べ四百四十七億円の大幅減少となっておりますが、これは、同会計がすでに保有している三百九十九億円の資金を全額産業投資支出に充てることとしていること及び住宅金融公席外二機関につきまして、新たに、利子補給の措置を講ずることとしましたこと等によるものであります。  すなわち、住宅金融公庫日本住宅公団及び農林漁業金融公庫につきましては、その資金コストを低減し、あわせてその運用原資確保するため、従来、産業投資特別会計から出資を行行なってきたのでありますが、その額は事業規模拡大とともに年々膨大なものとなってまいりました。  しかしながら、このような超均衡的意味を持つ出資方式を続けてまいりますことは、経済安定成長下における今後の財源見通しからいっても、次第に困難となることは明らかでもありますので、予算合理化効率化をはかる見地から、これを再検討して、出資の削減をはかったものであります。  最後に、予備費につきましては、前年度予算に比べ二百億円を増強して、五百億円を計上しております。  これは、最近における災害復旧事業その他に対する予備費の使用状況と予算規模等を勘案して増額いたしたものであります。   以上であります。
  10. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に泉主税局長
  11. 泉美之松

    政府委員(泉美之松君) 昭和四十年度租税及び印紙収入の見積もりにつきまして、大臣の御説明を申し上げます。  お手元に、「昭和四十年度租税及び印紙収入予算説明」と申しますこういう小冊子を御配付申し上げておるはずでございます。これをごらんいただきながらおもな点だけをかいつまんで御説明を申し上げたいと存じます。  まず三ページの表をお開き願いたいと存じます。ここに各税目別に三十九年度予算額と昭和四十年度の、現行法による場合の見積もで額、税制改正による減収額税制改正後の収入見込み額などの表が掲げられてございます。  まず第一の表をごらんいただきますと、まん中より下に合計のところがございます。昭和三十九年度の当初予算は、カッコの中にございますように、租税及び印紙収入におきましては、二兆九千四十三億円を見込んでおったのでございますが、先般補正によりまして六百五十億円を増額いたしまして、二兆九千六百九十三億円の見積もりになっておるのでございます。これに対しまして、昭和四十年度におきましては、現行法による場合は、三十九年度当初予算に対しまして、カッコの中にありますように、四千六百四十七億円の自然増収を見込んだのでございます。この金額は、補正後の見積もりに対しまして、三千九百九十七億円の増加に相なっております。この四千六百四十七億円の自然増収見込み額につきましては、三十九年度の際の自然増収の見込み額が六千八百二十六億円でございましたところから、やや低きに過ぎるのではないかとの御意見があろうか存じますが、三十九年度の場合におきましては、三十八年度中にすでに出ておりました自然増収の額が二千二百四十九億円ございましたので、それを差し引きいたしますと、三十九年度年度といたしましては、四千五百七十七億円を見込んでおったことに相なります。これに対しまして、四十年度におきましては、四千六百四十七億円のほかに、三十九年度からの税制改正による平年度化による減収が四百億円ございますので、それを加えますと、五千四十七億円になります。そこから三十九年度補正に計上いたしました自然増収の見積もり額六百五十億円を差し引きいたしますと、四千三百九十七億円と相なります。三十九年度年度見込みました自然増収の額とさほど違わないことに相なるのでございます。これは最近御承知のとおりの経済情勢からいたしまして、収入の増加がやや鈍ってまいっておりますのでこのような見込みに相なっておる次第でございます。  なお、四千六百四十七億円の自然増収は各税目別に見積もり計算をいたしたのでございますが、その際使用いたしました経済諸指標は、後に経済企画庁のほうから御説明があると存じますが、簡単に申し上げますと、国民生産が名目一一%、実質七・五%増加するものとしてこれらの経済指標を基礎として見込んでおります。各税目別の詳細は省略させていただきますが、おもな税目につきまして簡単に申し上げますと、お手元の冊子の一ページの一番下から二行目以下に掲げてございますが、まず所得税のうち、源泉所得税の給与所得につきましては、雇用が約四%、賃金水準が約九%上昇するものと見込んで計上いたしました。利子所得及び配当所得におきましても、それぞれ最近の情勢を織り込んで計上いたしました。  申告所得税につきましては、営業所得は前年に対し一一%増加するものとして計上いたしました。農業所得につきましては、近年における作況を勘案いたしました収穫量などを基礎にして四%増加するものと見込んでおります。  次に法人税については、最近における法人企業生産量、販売価格、所得率の動向等を勘案いたしまして、申告所得は前年度の実績見込みに対しまして一二・八%増加するものとして計算いたしてございます。  間接税につきまして、まず酒税につきましては、清酒は百二十六万キロリットル、すなわち六百九十九万石、前年の消費実績見込みに対しまして七・五%増加するものと見込みました。次に合成清酒及びしょうちゅうにつきましては、近年その消費が年々少なくなっておりますので、合成清酒につきましては七万キロリットル、四十万石、前年に対し九〇%、しょうちゅうは二十一万キロリットル、百十九万石、前年に対し九五%を見込みました。これに対しまして、ビールは最近年々消費が上昇いたしておりますので、二百三十二万キロリットル、千二百八十八万石、すなわち前年に対し一六%増加するものと見込んで計算してございます。  次に砂糖消費税につきましては、課税見込みの砂糖が百七十六万トン、前年の実績見込みに対しまして、六・七%増加するものと見込みました。揮発油税につきましては、揮発油が千九十七万キロリットル、すなわち前年実績に対しまして一四・五%増加するものと見込んで計算してございます。  そのほか、物品税、入場税、印紙収入等につきまして、最近における課税実績及び今後における消費の動向等を勘案して計算したのでございます。  物品税のうち、おもな品目につきまして申し上げますと、小型乗用車につきましては、最近の自動車ブームを反映いたしまして、消費の状況が良好でありますので、前年の実績見込みに対しまして二二%増加するものと見込みました。小型テレビにつきましては、昨年はオリンピックの関係で相当増加いたしましたのでございます。本年はやや生産及び消費が若干減るものと見込んでおります。次に、冷蔵庫及び写真機につきましては、最近の情勢からいたしまして、前年同額程度の出荷があるものと見込んで計算いたしました。さらに関税につきましては、最近における課税実績と今後の輸入見込み等を勘案いたしまして計上いたしたのでございます。以上のような収入見積もりをいたしまして、現行法による場合は三兆三千六百八十九億九千四百万円を見込みまして、そこから税制改正を行なったのでございます。  税制改正の内容につきましては、お手元の資料の二十五ページから二十八ページにその要綱が掲げてございますが、今回の税制改正重点は三点ございます。  すなわち、第一は所得税、特に中小所得者負担軽減重点を置きます所得税の各種控除の引き上げをはかったのでございます。すなわち、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、給与所得控除及び専従者控除を引き上げ、さらに医療費控除の限度額を引き上げまして、平年度九百二十二億円、初年度八百二億円の減税を実施しているのでございまして。この減税は、財源の乏しいおりから相当大きな減税でございまして、三十九年度所得税減税額が平年度七百三十七億円、初年度六百四十九億円でございましたのに比較いたしましても、相当多額に相なっております。このような所得税減税の結果、負担がどのように軽減されますかにつきましては、お手元の冊子の三十ページから三十六ページにかけまして表を掲げてございますのでごらんいただきとうございますが、まず課税最低限につきましては、夫婦子供三人の標準世帯におきましては、現行法による最低限四十八万五千三百六十九円が、今回の改正によりまして、昭和四十年分につきましては五十四万四千二百五十九円、平年分といたしまして五十六万四千二百四十五円と相なります。平年分の際には約八万円課税最低限が引き上げられることに相なるのでございます。  なお、各所得階層別の負担軽減状況は三十二ページから三十六ページまでに掲げてあるとおりでございます。  減税の第二の重点は、企業課税減税を行なうことにしたことでございます。これは、企業体質改善及び国際競争力強化に資する見地からいたしまして、留保分に対する法人税率を一%下げまして、三八%の税率を三七%にいたしますとともに、特に中小所得に対する負担軽減するために、年三百万円以下の所得に適用される軽減税率の三三%につきましては二%引き下げまして三一%にすることにいたしてございます。  そのほか、同族会社の留保所得課税の軽減をはかることにいたしまして、法人税におきまして平年度三百十四億円、初年度百八十四億円の減税をいたしております。  次に、現在の経済諸情勢に即応いたしまして租税特別措置をとることにいたしているのでございます。まず、このうち利子所得につきましては、貯蓄の奨励が必要であるとの見地から、少額貯蓄の非課税限度を引き上げ、元本五十万円を百万円に引き上げますとともに、配当所得につきましては、最近の証券市場の状況にかんがみ、資本市場の育成強化をはかりますために、一銘柄五万円までは確定申告を必要としないとともに、一定限度までの配当につきましては一五%の税率による源泉選択の道を開くことにいたしました。なお、利子配当につきましては、その源泉徴収税率が他の所得に比べましてやや低目でございましたので、五%の源泉徴収税率を一〇%に引き上げることにいたしております。そのほか鉱業に対しましては、探鉱準備金及び探鉱費の特別控除制度を設けるなど、現下の諸情勢に即応する各種の特別措置を講ずることといたしております。  このような減税のほか、最近揮発油等の消費の傾向からいたしまして、石油ガスが課税されておりませんために、その消費が急激に伸び、揮発油の消費が伸び悩み状況にございますので、一キログラム十七円五十銭の税率によりまして石油ガス税を創設して、昭和四十一年一月分から課税することといたし、その収入の半額は地方の道路財源として地方団体に譲与することといたしております。  以上のような税制改正の結果、平年度千百五十一億円、初年度八百十三億円の減税に相なるのでございます。もう一度三ページの表をごらんいただきますと、関税におきまして七億飛んで九百万円の増収が行なわれますために、一般会計としては八百十二億八千五百万円の減税と相なるのでございます。関税のほうは電子計算機の税率引き上げによりまして約十二億円の増収に相なるのでございます。肥料製造用揮発油に対する関税の新規還付、二輪自動車、酸化アルミニウム、 コークス、映画用カラーフィルム等の税率の軽減によりまして約五億円の減収、差し引き七億飛んで九百万円の増収と相なるのでございます。この減税を行ないました結果、国民所得に対する国税、地方税を合わせました租税負担率は、お手元の冊子の三十八ページに表が出ておりますが、昭和三十九年度の場合の二二・二%に対しまして、二二・一%と、わずかではございますが、下がることに相なっております。なお、税制改正の結果、国税の直接税及び間接税の割合は、昭和四十年度におきましては直接税が五八・九%、間接税が四一・一%と相なっておりまして、そのことは三十九ページの表に出ておりますが、三十九年度補正後の数字に比べまして、直接税の割合が若干下がり、間接税の割合が若干上がっておるという状況に相なっております。  なお、三ページの表で減収額八百十二億八千五百万円の税目別の内訳をごらんになるとき、誤解のないように申し上げておきたいのでございますが、所得税の源泉分で二百九億三千三百万円の減収にしかなっておりません。それはその次の四ページないし五ページの見開きの表にございますように、所得税の一般減税におきましては、源泉所得税におきまして六百七十六億二千万円の減税が行なわれるのでございます。先ほど申し上げましたように、個人及び法人の利子の源泉徴収税率を引き上げ、個人及び法人の有する配当についての源泉徴収税率を引き上げる、こういった関係上、差し引きいたしますと、源泉分の所得税が二百九億三千三百万円に相なるのでございまして、給与所得者の減税は、一般減税のほうの六百七十六億二千万円のほうでごらんいただきたいのでございます。  以上、はなはだ簡単でございましたが、租税及び印紙収入予算の内容につきまして、補足説明を申し上げました。
  12. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、吉岡理財局長
  13. 吉岡英一

    政府委員(吉岡英一君) 昭和四十年度財政投融資資金計画及び財政資金の対民間収支見込みについて、補足説明を申し上げます。  お手元に配付してあります昭和四十年度予算説明をごらん願いたいと思いますが、その六十七ページをごらん願いたいと存じます。六十七ページの「第5財政投融資」というところでございますが、その右の上のほうに「I原資見込」という表がございます。その表をごらんになりながらお聞き取り願いたいと存じますが、その合計の数字のとおり、昭和四十年度財政投融資資金計画は、総額一兆六千二百六億円でありまして、三十九年度当初計画額一兆三千四百二億円と比較いたしますと、増加額が二千八百四億円、増加率二〇・九%と相なっております。三十九年度の当初計画が、三十八年度の当初計画に対し二〇・八%の増加率でありましたので、ここ二年間ほぼ同じ増加率ということになっておるわけでございます。  次に、原資ごとに御説明を申し上げます。  まず、産投会計出資でありますが、一般会計財源難等もあり、四十年度におきましては、農林公庫、住宅公庫、住宅公団等の特に低利資金を必要とする事業について、出資方式を利子補給方式に切りかえることといたしました。その結果、三十九年度より二百五十五億円減の五百五十七億円となっております。この出資財源——出資をまかなう財源といたしまして、産投会計の資金三百九十八億円を全額繰り入れますとともに、一般会計から百二十五億円を繰り入れることといたしております。三十九年度計画におきましては、一般会計からの繰り入れは五百七十二億円でありましたので、これに比べますと四十年度一般会計からの繰り入れは四百四十七億円の減収となっております。  次に、資金運用部資金につきましては、一兆六百三十九億円、三十九年度に比べ二千五百八十五億円の増加を見込んでおります。その大宗をなしますのは郵便貯金と厚生年金でありますが、郵便貯金にきつましては、三十九年度に比べ一千百億円の増三千八百億円を見込んでおります。郵便貯金の増加は最近非常に好調でありまして、ただいまの状況が続きますと、三十九年度二千七百億円と見込みました増加額が三千五百億円に達する見込みでありまして、四十年度の三千八百億円の増加見込みは十分達成し得る金額であると考えております。  また、厚生年金につきましては、制度改正が四十年五月から実施されることを前提といたしまして、三十九年度に比べ千八十億円増の三千二百六十億円を見込んでおります。  次に、簡保の資金は、集中満期の関係がありまして、三十九年度に比べ四百億円減の千百億円を見込んでおります。  次の公募債借入金等につきましては、三千九百十億円を予定いたしまして、三十九年度に比べまして八百七十四億円の増加を見込んでおります。このうち国内民間資金は、政府保証債、公募地方債、借入金の三項目でありますが、合計三千二百六十億円でありまして、三十九年度に比べ増加額は七百六十億円、増加率三〇・四%を予定いたしております。これに対しまして、三十九年度のこの三項目合計は二千五百億円でありまして、三十八年度に比べ増加額は六百十八億円、増加率三二・八%であったわけであります。  三十九年度財政投融資計画は、三十八年度十二月に預金準備率の引き上げが行なわれ金融引き締めに入った情勢を背景として策定されたのに対しまして、四十年度財政投融資計画は、預金準備率の引き下げ、公定歩合の引き下げが行なわれました情勢を背景として策定されておる点を考慮いたしますと、四十年度七百六十億円の増加見込みは決して無理のない範囲のものと考えております。なお、この金額につきましては、一月十九日の金融機関資金審議会におきまして、関係各界からその消化に協力する旨の御了承を得ておるところでありまして、これによって特に民間資金を圧迫するということはないと考えております。  なお、民間資金の内訳を申しますと、その主体をなす政府保証債の発行額は二千二百七十億円で、三十九年度当初計画千八百十億円に対して四百六十億円の増額となっております。このうち、新たに農林中金で百億円、厚生年金改正に伴う調整年金等で六十億円消化される予定でありまして、従来の消化先に期待する増加額は三百億円にとどまっておりまして、三十九年度増加額四百七十八億円に比し、むしろ少額にとどまっておるわけであります。  また、公募地方債は四百六十億円と、三十九年度に比べ百億円の増加を見込んでおりますが、この増加額は三十九年度増加額百億円と同額であります。借入金につきましては、従来から住宅公団が生命保険から借り入れを行なっておりますが、これを四十年度四百三十億円と、三十九年度に比べ百億円増額するとともに、今回新たに信託銀行からの借り入れを百億円予定いたしております。  次に、外貨債等につきましては、六百五十億円を計上いたしておりますが、三十九歴年中の外貨債の発行実績が一億二千七百万ドルでありましたような外国市場の状況にかんがみまして、ほぼ三十九年度並みの一億三千万ドルの発行を予定いたしまして、その半分の六千五百万ドルを産投国債、残りの半分の六千五百万ドルを政府保証外債に予定をいたしております。政府保証外債につきましては、市場の状況から、現段階で発行銘柄及び銘柄ごとの金額を特定いたしますことは困難でもありますし、また適当でもないと判断されますので、現段階ではまだ特定をいたしておりません。また世銀借款につきましては、すでに内諾を得ております一億五千万ドルの新規借款契約を予定しておりますが、これまた対象機関の特定につきましては、現在世銀と交渉中でございます。  以上の原資合計いたしまして一兆六千二百六億円と相なっておるのでございますが、いずれも御説明申し上げましたとおり、通常の原資を見込んだものでありまして、無理な金額ではないと考えているわけであります。  この原資をもちまして四十年度財政投融資運用を行なうのでありますが、その運用につきましては、同じく六七ページ下欄の「II資金計画」という表に各対象機関ごとに資金別に数字が掲げてあります。これを一々御説明いたしますことは繁雑でもありますし、先ほどの大臣の説明及び主計局長補足説明と重複いたしますので、省略させていただきます。  ただ、一枚まくっていただきまして、次の六九ページの下欄のほうに「III使途別分類表」という表が掲げてありますが、それについて一言申し上げておきたいと存じます。使途別分類表の(1)から(6)までの項目、すなわち、住宅、生活環境整備、厚生福祉施設、文教施設、中小企業及び農林漁業と、いわゆる国民生活に最も密接な関係を持っております部門に対する投融資の合計額は、その小計欄の右の端の数字のとおりに、三十九年度の六千八百十二億円に対しまして四十年度は八千五百六十一億円、増加額が千七百四十九億円、増加率が二五・七%と相なっておりまして、財政投融資全体の伸び率二〇・九%を上回る率を示しているわけであります。その結果、この六項目の財政投融資全体に占める比重は、三十九年度の五〇・八%からさらに上昇いたしまして五二・八%となっております。これに対しまして、次のページになりますが、次のページの(11)の基幹産業の数字をごらん願いますと、三十九年度の千九十七億円に対しまして千二百六十二億円、増加額百六十五億円、増加率一五%にとどまっております。要するに、財政投融資全体の傾向といたしまして、基幹産業的な部門の比重が減りまして、国民生活により密接な関係を持つ部門に比重が移りつつあるここ数年来の傾向を、さらに本年も強化しておるということが言えるかと存じます。  以上、財政投融資の御説明を終わりまして、次に、財政資金の対民間収支の見込みについて御説明を申し上げます。やはりお手元に配付してあります薄い二枚紙の「昭和四十年度予算に関する参考資料」という表があると存じますが、この「昭和四十年度予算に関する参考資料」の表をごらんになっていただきたいと思います。  昭和四十年度の国庫収支の見込みでございますが、その表の合計欄の数字のとおり、千五百五十億円の散布超過と見込んでおります。これは、一般会計におきまして三十八年度剰余金の使用によれまして六百九十七億円の散布超過、食管会計におきまして食糧証券の発行超過による二百十三億円の散布超過、資金運用部、産投会計におきまして産投資金の全額を取りくずして財投原資に使用することによります三百九十八億円の散布超過、さらに「その他」の欄でありますが、日銀との収支調整、あるいは各特別会計の収支を総合いたしまして二百四十二億円の散布超過、合計千五百五十億円の散布超過と見込んでおるわけであります。  外為資金につきましては、昭和四十年度国際収支均衡するものと見込まれておりますので、円収支におきましてもこれに見合って収支均衡するものと見込んでおります。  以上の数字は、いずれもこの予算がそのとおり実行されるものということを前提としての見込みでございます。  以上、説明を終わります。
  14. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、高島調整局長
  15. 高島節男

    政府委員(高島節男君) 予算の御審議の御参考といたしまして、三十九年度経済情勢と四十年度経済運営の基本的態度、いわゆる経済見通しにつきまして若干御説明申し上げます。  お手元に「昭和四十年度経済見通しと経済運営の基本的態度」としました横書きの印刷物が配付いたしてあると思いますが、これに即しまして御説明いたしてまいります。  まず、三十九年度経済情勢でございますが、御承知のように、三十八年の末以来、国際収支が悪化いたしまして、これの改善と、また、数年来続いた消費者物価の安定ということをはかっていく基調に立ちまして、経済を引き締めぎみに運営いたしてまいりましたが、その効果は漸次経済各分野に浸透いたしてまいりまして、国内経済は漸次落ちつきを取り戻してまいりました。また、国際収支も、輸出の好調を主たる原因といたしまして、大幅に改善方向に向かっているわけでございます。  このような経済情勢の動きを背景といたしまして、三十九年度のわが国の経済の実績見込みというものを見てまいりますと、まず、鉱工業の生産でございますが、前年度以来非常に高い水準で推移いたして三十九年度の前半を過ごしてまいりましたが、この秋以後、引き締めの措置が浸透いたしてまいりました結果、伸び率は鈍化いたしてまいっております。それでも、前半における上昇率が高かったために、前年度に比べまして一五%程度の増加ということにはなるのではないかという見通しでございます。他方、こういう生産活動をささえております需要面のほうの状況は、個人消費支出、あるいは政府支出、あるいは個人住宅建設といったような面は、引き続き堅調であります。在庫投資は、前年度の水準をむしろ下回るのではないかという見通しであり、問題の国際収支とからみまして議論されました設備投資も、三十八年度以来上昇をいたしておりましが、三十九年度に入りまして特にその下期において鎮静化のきざしが見えてまいりまして、機械受注統計その他でも、弱含み、横ばい状態になってきたように感じられるのでございます。大体、年度間で四兆六千五百程度のところにとどまるのではないかと見ております。  こういう国内経済の裏をなします国際収支の状態は、輸入は、この鉱工業生産を反映いたしまして高水準ではありますが先行き落ちついてまいる見通しが出てまいりまして、六十六億五千万ドル程度で年度内におさまるのではないか。これに対する輸出は、世界環境が非常にによかったこと、また国内の産業が数年間にわたる設備投資合理化投資の効果もあらわれて相当の競争力をたくわえておったこと、さらに、国内の経済が引き締めぎみに運営されまして輸出意欲が相当かき立てられておったという情勢を反映いたしまして、予想以上に増加いたしました。その結果、貿易収支は年度間で一億五千万ドル程度の黒字という見込みに相なってまいっております。ただ、貿易外の収支の赤字が逐次拡大傾向にございまして、三十九年度においても五億ドル程度の赤字が出てまいるのではないか。結局、経常収支として三億五千万ドル程度の赤字は避けられない状態でございます。他方、資本取引の面での資本の導入がございますので、これがございますために、年度間の総合収支としてはまずとんとんで均衡するというところに落ちつくかと見ております。  また、物価のほうの動向でございますが、これは卸売り物価は落ちついた推移を見せております。問題の消費者物価は、三十八年の十月以降、生鮮食料品あるいは冬物衣料というものが一時値下がりの傾向、落ちつきを見せてまいっておりまして、概して落ちついた基調が出かかっております。ただ、その間にも、住居費とか雑費とかいうものが依然として根強いじりじり上がりの傾向を示しております。そこに、三十九年度の秋口、三十九年の十月あるいは九月といったころから野菜の価格が夏の干ばつやあるいは例年よりも秋冷が早かったという点を反映して、相当の急騰を示しました。これがためにかなりまた高い水準に上がっておる。十一、十二月には季節的なこういうものの出回り期でございますので、若干価格が下落いたしてまいっておりますが、前年度の同期間に比べますと、前年が非常に落ちついた時期でございましたために、相当の高水準にございます。このような情勢のために、本年度の消費者物価の対前年度値上がり率は、大体四・八%程度というところにいくのではないかと見通しを持っております。  以上のような経済情勢のもとで、三十九年度国民生産はほぼ二十五兆三千六百億円という規模になりまして、経済成長率としては、実質九・四%、名目で一二%・九%という程度のところにいくのではないかと、こういう見通しを持っております。  それで、二ページ以降に、そういう三十九年度現状を基礎にいたしました四十年度における経済運営の基本的な態度及びその間の前提となる情勢判断を掲げてございますが、まず、わが国経済をめぐる最近の国際経済情勢を見渡してみますと、イギリスにおいてポンドの防衛措置が強く打ち出されて、公定歩合も二%引き上げということがあり、アメリカ、カナダ等にこれが波及いたしてまいっておりまして、わが国の国際市場における立場というものはまことに楽観を許さぬものが出てまいっております。  他方、国内的には、すでに申し上げましたように、消費者物価に騰勢気配が続いております。さらに、若年労働者、技能労働者を中心にします労働力の需給の逼迫という大きな構造的な変化も進んでおります。あるいは、中小企業農業といった部面の低生産性部門の近代化のおくれや、住宅生活環境施設の不足、あるいは地域間格差の問題といったような各種の不均衡が生じていることは御承知のとおりでございます。  したがいまして、四十年度経済運営といたしましては、財政金融政策中心にしたいわゆる安定成長路線というものは経済を導くことを第一義といたしまして、国際収支均衡と消費者物価の安定という二本の柱をねらって安定成長路線に努力をいたしてまいりたい。したがいまして、経済各分野における生産活動を慎重ならしめてまいりますと同時に、質的な充実に意を用いて、経済均衡ある成長と、それと調和のとれた社会開発というあたりに大きな重点を置いてまいることといたしたわけでございまして、その内容は三ページから四ページにかけまして政策の柱数本を打ち出しておりますが、要するに、輸出振興と物価の安定、第三に農業中小企業近代化、第四に社会開発というものが大きな柱となっておりますが、先刻来予算の内容としてるる御説明がございましたので、内容については省略さしていただきたいと存じます。  四ページに参りまして、こういう運営態度で臨みました場合の四十年度経済の姿というものが3のところ以下に想定してございますので、これについて若干御説明いたします。  国民生産規模といたしましては、二十八兆一千六百億円、先ほどお話がございましたように、名目で一一%、実質で七・五%という程度の経済成長を予定いたしました。国民各層の慎重かつ健全な態度が定着してまいりまして安定成長路線に乗っていくことを基本の姿勢として期待いたしておるわけでございます。  これに伴いまして各主要項目ごとの内容に若干触れてまいりますと、まず、個人消費支出でございますが、経済がこのような安定的な推移をたどるならば、各種の所得の伸びの全体が落ちついてまいることも期待できますので、名目伸び率、個人消費としては一二、三%程度のところを見通しといたしております。  設備投資につきましては、最近若干鎮静化の方向にございますが、他面、農業中小企業といったような低生産性部門の近代化の必要や、あるいは基幹産業における日進月歩の世界情勢、技術革新等に伴う国際競争力強化や、あるいは構造的変化でございます労働コストのアップに伴うそれが節約のための合理化近代化等、各般に政策的に考えましても設備投資の必要性というものも認められるわけでございまして、企業及び金融機関の従来のような慎重さを欠いた態度は今回の引き締め措置に伴って鎮静いたしてまいっておるわけでございますので、それとこういった必要性と結びつきまして、投資規模全体としてはおおむね五、六%程度の伸び、四兆九千億円——五兆円に達しない程度のところにおさまっていくのが妥当な姿ではないかと考えられます。  それから在庫投資につきましては、鉱工業生産はもちろん若干ともしり上がりに上がってはまいりますが、その上昇テンポはゆるやかでございます。一方、製品在庫投資の若干の下がりもありますので、この間、在庫関係においては、プラス、マイナスいたしましておおむね前年度の横ばいという程度のことになるのではないかと見ております。  それから政府の財貨サービス部門の今回の予算との関連でございますが、先ほど来御説明のありました一般会計三兆六千五百、財投の一兆六千二百という数字を基礎にいたしまして、地方まで含めまして六兆三百億円という程度に整理をいたしております。おおむね一〇%程度の増と相なります。  それから個人の住宅建設につきましては、三十九年度においても大きく伸びておりましたが、二〇%をこす大幅な増加を期待いたしております。  このような諸要素に対応いたしまして、五ページの下から鉱工業生産の活動状況の予想を立てておりますが、上昇のテンポは現にすでにこの第四四半期にかけましてきわめてゆるやかになっております。十一月、十二月の水準は横ばいぎみに相なりつつありますが、そういうテンポを受けまして、第四四半期、続いて第一四半期あたりは、上昇がかなり鈍化するのではないかと見ておりますが、年度間を通じまして対三十九年度おおむね一〇・五%という程度の上昇にとどまると見ております。  農林水産業の関係につきましては、米の高水準の生産、あるいは畜産物、果実、野菜等の需要の強調という辺に順調な生産伸びが期待されますので、大体三%程度の増加というように見ているわけであります。  こういう国内活動の裏打ちになります、むしろ前提にもなってまいります国際収支でございますが、輸出につきましては、三十九年度におけるような対三十八年度二二%の増加というような大幅な増加を期待することは、世界情勢の変化その他にかんがみきわめてあぶないわけでございまして、来年度としては大体一二・五%ぐらいの見当の伸びを見まして、三十九年度に比べて伸び率としては相当鈍化するというように見ております。しかも、先進諸国間の輸出競争は、国際情勢を反映してきわめて激化してまいるかと存じます。このような情勢のもとで、日本の輸出がどう伸びていくか、非常に予測も困難でございますが、情勢楽観を許さない——政府、民間の一致協力した輸出努力でやってまいりまして大体七十六億五千万ドルという程度の輸出達成を可能とし、また、そこに努力を集中するということで、これがむしろ経済規模を決定するものとして描いているわけでございます。  一方、輸入のほうは、国内経済活動が、鉱工業生産一〇・五%程度の伸びということを前提にいたしてはじいてありまして、大体一〇%程度の増加というように予測をいたしております。その結果、貿易収支は三億五千万ドル程度の黒字が出てまいる予測になるわけでございます。他方、貿易外収支の赤字はなかなか改善がむずかしく、赤字幅の拡大をある程度とどめるという方向でおさまっていく性質のものでもございますので、三十九年度よりやや増加いたしまして六億ドル程度の赤字があるかと思われます。したがって、経常収支全体としては、三十九年度よりやや改善されまして、二億五千万ドルぐらいの赤字にとどまると考えております。  一方、資本取引のほうは、いろいろと情勢が悪いことは御承知のとおりでございますが、健全な長期外資の導入促進を中心にいたして見てまいりましても、三十九年度の水準をかなり下回る二億五千万ドル程度の受け取り外貨という辺ではないかと思われますので、結局、国際収支としては経常収支に資本取引の導入分を加えましてバランスをするという程度のところが見込みであろうかと思われます。  次に、物価の関係では、卸売り物価はほぼ横ばい状態で推移してまいるかと思っておりますが、消費者物価については、先ほど申しましたように、非常に楽観を許さない要素が多いわけでございます。しかし、経済運営基調を安定成長の路線に乗せまして、それを逸脱しないように慎重な配慮を行なってまいりまして、かつ、先般閣議においても総合物価対策十項目の御決定がございましたが、こういった各種の実効のある物価対策というものを強力に推進いたすことによりまして、三十九年度に比較いたしまして四十年度の消費者物価の上昇程度を四・五%程度というところにおさめてまいりたい、そこに努力を結集していきたい、こういう考え方でございます。  以上、簡単でございますが、四十年度経済見通しにつきまして御説明申し上げました次第でございます。
  16. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 以上をもちまして、総予算三案に対する説明は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十九分散会      —————・—————