○矢山有作君 私は
日本社会党を代表し、ただいま提案されました
加工原料乳生産者補給金等暫定措置法案に対し、
総理並びに
関係各大臣にお尋ねいたします。
まず、
佐藤総理の酪農振興に対する基本
方針についてであります。
いま、わが国の農業と農民は、自民党
政府の強行する貿易自由化体制の中で、その経営と生活は破壊されようとしており、農民の人間性を疎外し、食料の自給体制を放棄する自民党農政は、みずから最大の成長部門と宣伝する酪農をも崩壊の危機に追い込んでおります。生産者乳価は値下げされ、これに追い打ちをかけるように、学校給食用脱脂粉乳など大量の乳製品が輸入されている。また、このような乳価の不安定とは逆に、飼料価格は著しい値上がりを続けている。しかも、濃厚飼料の輸入は増大の一途をたどり、その輸入依存度は七〇%にも達している。反面、
国内の飼料生産は停滞し、麦作転換政策と相まって、麦作放棄を含む不耕作地は二百五十万町歩にも及ぼうとしている。さらに、牛乳、乳製品の生産、加工、処理の体制は、零細経営が大部分で、弱体そのものであり、加うるに、牛乳の流通、特に集送乳、販売、小売り等の形態は不合理きわまる。そのため、生産者には低乳価を、消費者には高価格を押しつける結果となり、いたずらに中間経費を増大する一原因をなしている。従来、酪農対策の方向は、乳業資本の主導にまかされ、酪農政策はこれを容認し、追従してきた。そのため、わが国の酪農政策は、諸外国に比して著しく立ちおくれ、とりわけ、流通、価格対策が不合理なため、生産者と消費者に犠牲をしいてきたのである。最近、大手乳業会社による市場独占がますます強化される中で、その矛盾は一そう
拡大されてきている。さらに
政府は、原料乳の価格保障の名のもとに、今回本法案を提案したのであるが、その意図するところを一言にして言えば、表面、「農民に、現行畜安法体制より前進し、農民保護を強めるかのごとき幻想を与えつつ、実体はこれより後退をし、乳製品自由化への道を準備し、農民の犠牲強化の中で乳業資本の収奪を一そう強めようとするもの」であり、まさに羊頭を掲げて狗肉を売る典型的なものである。これに対しわれわれは、食料自給体制の確立を前提とし、国民の食生活を質的に高めるとともに、農業の発展と農民所得の増大をはかるため、いまこそ酪農業の飛躍的発展を期さなければならないと
考える。このために、これを阻害する諸原因を除去し、国の責任による総合的かつ強力な酪農振興基本政策の確立を強く主張し続けてきたのである。しかるに、
政府の農民不在の政策は、われわれのこの主張を無視し続け、その結果は、今日のごとく酪農を危機的
状態におとしいれたのである。現在のわが国酪農の実態を踏まえ、今後の
佐藤総理の基本的方策を承りたい。
去る六日の
衆議院本
会議での
総理答弁は、
総理が今日の
日本酪農の
現状なり問題点を十分把握されているのかどうか、強い疑惑を抱かざるを得ない不得要領のものであったと感じている。少なくとも
総理たるもの、わが国酪農の実態を十分に認識され、的確な御
答弁を願いたいと思う。でなければ、
総理が
衆議院本
会議で言っておられるように、いかに「
政府の
方針を信頼してくれ」と言われても、信頼のしようがない。ましてや、これまで自民党農政のもとで裏切り続けられてきた農民は、信頼しっこない。むしろ、従来もいわれていることだが、
政府の言うことと反対のことをやっていたほうが安全だとの気持ちを、より強めるが関の山と思われます。
次に、赤城農林大臣にお尋ねします。
第一にお伺いしたいのは、国民の最大の関心は、本法案が現実に動き出したとき、加工原料乳の保証価格、保証
対象数量、基準取引価格、指定乳製品の安定指標価格、及び、それらによって算出される生産者補給金の額がどうなるかということであり、したがって、それぞれについて、本法案が実施に移された場合の数字をお示し願いたい。また、乳製品の輸入差益金はどのくらいになり、補給金財源に充当し得る額は幾らであるか。三十九年実績及び四十年度見込みについて示されたい。本制度運用の実態を推察するのに重要なよりどころとなるものであるから、右の点については特に明確に答えられたい。
第二に、本法案によれば、補給金交付の
対象となる加工原料乳の数量は、政令により、都道府県知事の認定する数量とし、また、当事者の取引価格を混合乳価制から用途別乳価制に改める、としているが、今日のように、原料乳の需給調整機能が大手乳業資本によって一手に掌握され、需給操作の実態は企業機密として外部にはわからぬ仕組みになっているため、保証
対象数量が乳業資本の言いなりに決定され、
対象外の生乳は価格が保証されず、買いたたきの
対象となり、生産者の受け取る総体乳価は切り下げられるのではないか。また、乳業資本が、加工原料乳の基準取引価格またはそれ以下の低い乳価で買い取った原料乳を、工場間転送して、市乳地帯に持ち込むケースが多くなり、これが市乳地帯の乳価暴落を引き起こすことになり、市乳化促進を阻害することになると思われるがどうか。また、用途別乳価制度の実施は、加工原料乳と市乳原料乳の両生産地帯の農民の団結を弱め、乳業資本の農民分断支配を容易にするのみで、生産農民に益するところはないではないか。したがって、われわれは、一物一価の原則により、全生乳を全国同一価格によって保証すべきであると
考えるのであるが、大臣のこれらに対する御所見を承りたい。
第三に、わが国酪農における最大の病根は、生乳の生産者と乳業資本とのはなはだしい力の不均衡に起因する不明朗な生乳取引
関係と、不当な低乳価による農民収奪であるが、本法案は、かかる問題の本質に触れることを避け、
現状肯定の上に施策を講じようとしている。すなわち、生乳生産者団体の指定にあたり、牛乳の流通実態を無視して、都道府県ごとに、また、自然的経済的
条件によっては、これをさらに細分化して指定するものとしていることは、農民の共販体制の推進を阻害し、その力を分断し、従前の乳業資本による農民の従属的集乳地盤をそのまま温存し、乳業資本による農民収奪を放置せんとするものにほかならぬ。私は、生乳生産者の全国一本の一元集荷、共同販売の体制をつくり上げ、これに国の強力な助成のもとに、処理加工施設、牛乳調整工場、集乳車、タンクローリー、クーラーステーション等の集送乳設備を完備させ、生乳の集送乳を一元化し、工場までの流通合理化をはかり、生乳の需給調整を行なわせ、少なくとも、生乳生産者団体が乳業資本と対等の力を持ち、適正な取引のできるように指導育成すべきであると思うが、これに対する大臣の所見を具体的に承りたい。また、当初、農林省案では、生乳生産者団体は都道府県別に指定することになっていたのが、本法案では「自然的経済的
条件」によってはさらに細分化して指定ができるようになっているが、これは従来の集乳圏を確保温存しようとする意図のもとに、某有力乳業メーカーから強力な働きかけがなされた結果と聞いているが、事実かどうか。もし事実でないと言われるならば、このような従来の乳業資本の集乳圏を温存するような方向になぜ改悪をしたのか、その理由を明確に説明願いたい。
第四に、国際的に見て、わが国の生乳価格はそれほど高いとは言えない。大体、諸外国並みかそれ以下であるのに、牛乳、乳製品の消費者価格はきわめて高いが、その理由の一つは、加工、処理工場の規模の零細なものが多いこと、特に飲用牛乳については、零細な小売り店が資本系列別に交錯販売をしていること等により、処理、加工、販売の中間経費が増大していることによると思われるが、この対策について御所見を承りたい。
第五に、
衆議院における、乳製品の安定指標価格が国際価格との見合いで低くきめられ、それが乳価を低くし、酪農民に不利になるのではないかとの
意味の
質問に答えて、大臣は、加工原料乳を不足払いによって価格を支持していく、こういうことですので、むしろ国際価格の波を遮断することとなると言っておられますが、農林省内には、安定指標価格は国際価格及び
国内価格を勘案して定めるとか、乳製品の
国内消費増進に資する見地から漸次低下をはかるとの
意見があると聞いているので、この際、大臣は、酪農民の不安を除去するため、酪農対策の強化により、わが国の酪農が国際競争に耐えられるようになるまでは、輸入
制限により国際価格の影響を
国内価格に及ぼすことはしないということを、あらためて明確に示すべきである。
第六に、大臣は
衆議院で、保証価格については、主要な加工乳原料地帯の生産費を補償することを旨として定めるのが適当であると答えておられるが、保証価格については、
政府部内において、乳製品の需給事情等を反映した抑制係数の採用等、不足払い額が乳製品の需給実勢に
関係なく増加することを抑制する仕組みを考慮すべきであるとの
意見があると聞くが、この
意見はどこから出た
意見か。また、この
見解と大臣
答弁との
関係はいかに理解したらよいのか。われわれは、このような
見解がある限り、保証価格は従来のように生産実態を無視した低位にきめられ、ますます
日本酪農を破滅におとしいれていくことを憂慮するものである。真に酪農の
拡大発展を思うならば、まず、保証価格は生産費所得補償方式により、酪農民の所得を増大し、酪農生産の合理化を進めるべきではないか。御所見を承りたい。
次に、田中大蔵大臣にお尋ねします。
第一に、補給金の財源は、第二十一条において、予算
範囲内で一般会計から交付する道は開かれております。しかし、補給金の財源として乳製品輸入差益金を充てるということがある以上、国家財政の都合で、補給金財源として輸入差益に依存することが多くなり、乳製品輸入増大を来たし、
国内酪農を圧迫することになるのではないか。特に、大蔵省
関係者が、第二食管になるおそれがあるとして強く補給金制度に反対していたと聞いているだけに、この疑念が強いのである。そこで、
政府は酪農を選択的
拡大の
中心として進めてきた責任からも、生産費所得補償方式のもとで補給金は全額一般会計でこれを負担し、乳製品輸入差益金は、飼料自給基盤の強化その他の酪農振興対策に充てるようにすべきではないか。次に、本制度が実施されたとして、大体一般会計からの補給金負担割合を将来どの程度と
考えているのか。
第二に、牛乳は将来国民の食生活の上から米に次ぐ重要な
地位を占めるものである。したがって、思い切ってこの際、牛乳管理特別会計を設けて、米に準じ国家管理を実施し、需給及び価格の調整をはかる
意思はないか、お尋ねをしたい。
次に、機内通産大臣にお伺いをしたい。
大臣は、
衆議院において、指定乳製品の需給、価格の安定に影響がなければ、例外的に政令で畜産振興事業団以外の者の輸入を認めても別に差しつかえないとの
発言をしておられるが、当初農林省では、乳製品輸入は事業団が一元的に行なうこととしておったのに、この例外規定を設けたのは、乳製品の輸入増大、さらに自由化をねらう通産省の意図から出たものではないか。われわれは、輸入は
国内酪農に悪影響のないよう、きびしい
制限のもとに完全に一元化をし、
計画的に行なうべきであると
考えるのであるが、御所見を承りたい。
最後に、神田厚生大臣にお伺いをしたい。
第一に、現行食品衛生法規では、他の生鮮食料品に比し、飲用牛乳の製造、包装、販売施設等にきわめて厳重な規制がなされ、そのため、製造、販売費などの中間経費の増大の一原因となり、これが牛乳の消費増進を著しくはばんでいるのである。これに対し、三十年一月環境衛生部長通達、また、三月には公衆衛生局長通達が知事あてに出され、集団飲用の場合、簡易な高温殺菌や、罐装による販売等が認められた。しかし、局部長通達に過ぎず、その
内容においてもかなり厳格に縛っているため、ほとんど用をなしていない
状況であり、したがって、牛乳消費増進の上からこれが改正が必要であるが、これについての大臣の所見を承りたい。
第二に、飲用牛乳についてはきびしい規制をしているが、色物牛乳、還元牛乳等の牛乳擬装品は野放し
状態である。したがって、これらについて、その含有成分に規格を設け、牛乳成分の含有量を表示させるとともに、牛乳の名称を
使用させない等、きびしい規制をすべきであると
考えるが、御所見を承りたい。
以上、各大臣の責任ある明確な御
答弁を期待いたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕