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柳岡秋夫君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案のありました
公害防止事業団法案について、
総理並びに
関係大臣に若干の
質問をいたすものであります。
公害は人災であり、社会的犯罪であります。
生産第一
主義の経済成長
政策は、金や物を
尊重し、人の
生命や
生活を無視してきたのであります。ここ数年間、ばい煙、粉じん、臭気
ガス、汚水、地盤沈下、騒音などの工場公害は至るところで
発生し、交通
事故、じんあい、し尿等々の都市公害も激増して、いまや日本の緑の国土は公害によって著しく荒廃され、住民の日常
生活は重大な脅威を受けているのであります。東京、大阪等、大都市における大気の汚染は、広範囲にわたって住民の
生活を脅かし、四日市においては、いわゆる四日市ぜんそくが
発生しております。また、河川の汚濁も、すでに隅田川は死の川と化し、その他
全国の大小河川も工場排液等による汚濁が進行しているのであります。
事態は重大であり、深刻であります。今日の階段で、規制と投資の両面において強い政治的決意をもって有効適切な
対策を講じなければ、将来、破局的な局面に向かわないとは保障できないのであります。
そこで、まず
総理に、公害
対策の理念と、その基本方針について
質問をいたします。
第一に、
総理はしばしば社会開発を強調されますが、その概念はきわめてあいまいであり、具体的
施策においても体系がなく、計画性もないように思うのであります。
政府は、公害
対策を社会開発の一環として推進するということでありますが、これを社会開発の中でどのように位置づけようとするのか。私は、社会開発は福祉計画がその中枢的位置を占めなければならないと思うのであります。しかも、その中でも、
国民の日常
生活を、精神的、肉体的、経済的にむしばむ公害の防止こそ、
政府がその目標としている福祉国家建設には不可欠の問題であると思うのであります。にもかかわらず、四十年度
予算を見ると、公害
対策関係費は、一般会計において百五十二億、財政投融資は四十六億という少額であり、社会開発をキャッチフレーズとしている佐藤内閣が本気で取り組もうとするのか、疑わざるを得ないのであります。
第二に、公害防止の
責任の所在であります。
政府の公害
対策は主として産業
政策の
観点からとられ、住民の
生命、健康、
生活環境は第二義的なものとなっております。したがって、
企業は、
政府の
企業擁護
主義に隠れて、その社会的
責任を自覚せず、一方、
政府や地方自治体の取り締まりは、ゆるやかに過ぎているのであります。私は、公害防止の
責任は、その
発生源たる
企業が負うべきであり、
企業の社会的
責任を明確にして、人権擁護、住民福祉の立場から進めなければならないと思うのであります。公害防止に対する国、地方自治体、
企業のそれぞれの
責任の境界と、その取り組む姿勢について所見を伺いたいのであります。
第三に、公害
行政の一元化についてであります。現在、公害防止
行政機構は、厚生省、
通産省をはじめ、ほとんどの省庁に分かれております。これらの
所管の分立は、
行政の一元性を欠き、公害
対策推進の中心的機能の不存在を示すものであります。
政府は、
昭和三十九年三月、公害関係機関相互の連絡調整をはかるという名目で、
総理府に公害関係機関連絡
会議を設置しております。この連絡
会議は、
各省庁の事務次官で構成されているために、船頭多くして船山に登るのたぐいで、設置の趣旨である連絡調整の実をあげ得ないのみならず、活動の
実態を見ても、騒音、振動等の未規制公害の若干の研究にとどまっているのであります。私は、公害がかくも重大な社会的問題になるまで放置され、その
対策が遅々として進まなかった主要な
原因の一つは、公害
行政の一元性の欠除にあったのではないかと思うのであります。本法案の提案にあたっても、衆議院においては厚生大臣、本院においては
通産大臣と、共管という名目のもとに、実は
各省間のなわ張り争いに
国民が
犠牲になっておるのではないでしょうか。
総理は、このような欠陥を是正し、公害
行政を効率的かつ迅速に進めるために、
行政の一元化についてどのような構想を持っておられますか。また、臨時
行政調査会の答申によれば、
行政需要の増大する
行政機構は
拡充すべきだと言っております。公害関係
行政機構の人員、
予算をふやすべきではないか。そうしてこれら公害関係
行政機関を統合し、公害
対策の実施官庁を設置すべきと
考えるのでありますが、いかがでございますか。
第四に、公害の事前防止
対策の強化についてでありますが、公害防止
対策は、事後の
対策よりは
発生を未然に防止することが真の
対策であります。したがって、新産業都市の建設、工業整備特別地域の建設等、新しい都市づくり、新しい工場立地の計画段階で、公害
発生の予防
措置を講ずべきであります。公害の事前防止の立場から、都市計画法はじめ関係法律の整備を行ない、地域開発計画、都市計画、ないしは国土計画等、総合的計画と関連づけた公害防止
対策を、この際、樹立すべきと思うのでありますが、
総理の所見を伺います。
第五に、今国会に公害基本法をなぜ提出しないかということであります。公害の定義を明らかにし、乱立する公害
行政を統一し、国の体系的な
対策を
確立するためにも、公害防止
対策の総合立法をすべきと思うのであります。基本的理念と方針を持たずして本法案の完全な運用を期することはできないでありましょう。
最後に、国際条約についてでありますが、最近における石油貿易の増大に伴い、船舶の廃油による海水の汚濁が著しく、水産に対する被害が生ずるとともに、公衆衛生上も好ましくない
事態となっております。現在、これらの廃油の投棄行為の規制は、国内法では港則法によって行なわれておりますが、さしたる実効があがっておりません。海水の油による汚濁を防止するためには、国内法の整備が必要なことは言うまでもございませんが、それと同時に、一九五四年、世界の四十二ヵ国の国際
会議で成立しました油による海水の汚濁防止のための国際条約を、わが国も批准することによって、汚濁防止の
完ぺきを期する必要があると
考えます。世界有数の貿易国、工業国たるわが国としても、主要海運国二十カ国が本条約を批准している
実情にかんがみ、早急に批准すべきと思うのでありますが、御所見をお伺いいたします。
次に、大蔵大臣に
質問いたします。
第一は、公害防止のための財政投融資計画についてであります。四十年度の公害
対策関係として、事業団に二十億円、
中小企業設備近代化資金として六億円、日本開発銀行融資二十億円となっておりますが、ある製鉄会社の集じん設備だけでも五十四億円を要するというのに、わずか五十億円にも満たない公害関係投融資で、はたして実効ある
対策ができるでしょうか。欧米諸国においては総
生産設備投資の約五%を公害防除設備に投資しているといわれております。将来の公害防止資金計画について具体的に
お答え願いたいと思います。
第二に、中小零細
企業に対する助成についてでありますが、
企業にとって、再
生産効果も薄く、コスト高の要因となる公害防止施設を設置することは、特に中小零細
企業にとって大きな負担であります。したがって、その経営の
実態等にかんがみ、貸し付け条件等について、より低利、かつ長期の資金が優先的に配分されるように考慮すべきと
考えるのでありますが、御
意見を伺いたいと思います。
次に、
通産大臣に
質問いたします。
公害防止事業団の事業資金二十億円は、わが国の産業公害防止施設の設置に要する全費用に対して、九牛の一毛にすぎないと思うのであります。現在の全産業に公害防止施設を設置するとすれば、おおよそどれくらいの資金を必要とすると
考えますか。産業公害
対策を年次計画をもって推進するためには、今後の産業の発達、産業活動の増大、それに伴う公害
発生の予測、防除施設に対する資金の需要量を見込んで、有効適切な
施策を講ずべきものと思うのであります。これらに関する計画があるかどうか、お伺いをいたします。
第二に、公害防止
技術の開発についてでありますが、公害防止
対策にあたっては、科学的
調査と防止
技術の開発が重要であることは申すまでもございません。四日市ぜんそくの
原因となっている排
ガス中の亜硫酸
ガスを除去する
技術は、わが国ではいまだ開発されておりません。防止
技術開発投資は、
生産技術と異なって、利潤の伴わない投資であるだけに、
企業には限界があると思うのであります。したがって、
政府の積極的な投資と組織的研究開発が必要と思うのであります。現在、
各省ばらばらになっておりまする公害防止
技術の担当部門の組織的一元化をはかる
考えはないか、お伺いをいたします。
次に、厚生大臣に
質問をいたします。
第一に、現行のばい煙規制法、水質二法は、排出基準を規定しているにとどまりまして、大気や河川流水等の一般的環境基準が規定されていないのであります。したがって、各
企業が幾ら排出基準を守っても、工業、事業場の密集が強まれば、全体の汚染度が増大するのであります。ざる法と呼ばれるゆえんがここにあります。これらの弊害を除くためには、環境基準の設定が必要と
考えますが、どうか。
第二に、事業団資金二十億円のうち、十億円が厚生年金の積み立て金から出されているが、本来、厚生年金の積み立て金は、被保険者の直接の福祉のために使われるべきものであって、公害防止のためとはいえ、
企業の設備投資に使われるのは筋違いであると思うのであります。この点については、大蔵大臣の御
意見も聞きたいのであります。
第三に、未規制公害
対策についてでありますが、現在、規制の対象となっていない自動車の排
ガス、家庭暖房等のばい煙、下水放流、騒音、振動、悪臭、地盤沈下等については、地方条例で規制している以外は、ほとんど野放しの
状態であります。自動車の排
ガスは、大気汚染の重要な要因であり、市街地路上の汚染は、交通巡査に対する影響に見られますように、許容限度に達しております。家庭下水についても、産業排水と並んで水質汚濁の主要因であります。これら公害についての
発生防止のために、いかなる
具体策と計画があるか伺いたいのであります。
最後に、経済企画庁長官に
質問をいたします。
現在、工場、事業場からの排水、公共下水道、都市下水路からの排水の規制については、規制水域の指定と排水の水質基準の設定によって、公共水域の汚濁を規制しておりますが、本年二月一日までに、江戸川をはじめとする九つの水域が指定されただけで、その他の河川の指定が非常におくれております。水域の
調査基本計画による
調査から、水域指定、水質基準の設定に至るまで、三カ年もかかるようでは、最近における河川の急速な汚濁に対処できないと思うのであります。指定の促進について、どのような
対策と計画があるのかお伺いをいたしまして、私の
質問を終わりたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕