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1965-04-14 第48回国会 参議院 本会議 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月十四日(水曜日)    午後一時五十一分開議     —————————————議事日程 第十四号   昭和四十年四月十四日    午後一時開議  第一 事務総長辞任の件  第二 国務大臣報告に関する件(日鉄伊王島   炭鉱爆発について)  第三 公害防止事業団体法案趣旨説明)  第四 労働者災害補償保険法の一部を改正する   法律案趣旨説明)  第五 電力用炭代金精算株式会社法の一部を改   正する法律案内閣提出衆議院送付)     ————————————— ○本日の会議に付した案件   一、日程第一 事務総長辞任の件   一、事務総長選挙   一、日程第二 国務大臣報告に関する件(日   鉄伊王島炭鉱爆発について)   一、日程第三 公害防止事業団法案趣旨説明)   一、日程第四 労働者災害補償保険法の一部を   改正する法律案趣旨説明)   一、日程第五 電力用炭代金精算株式会社法の    一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送   付)     —————————————
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、事務総長辞任の件、  事務総長河野義克君から、事務総長を辞任いたしたいとの申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。    〔河野義克事務総長席を退く〕      〔拍手〕     〔参事宮坂完孝事務総長席に着く〕      ——————————
  5. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) つきましては、この際、日程に追加して、  事務総長選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議な、と認めます。
  7. 亀井光

    亀井光君 事務総長選挙は、その手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
  8. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 私は、ただいまの亀井君の動議に賛成いたします。
  9. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 亀井君の動議に御異議ござ  いませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。  よって議長は、事務総長宮坂完孝君を指名いたします。    〔拍手〕      ——————————
  11. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第二、国務大臣報告に関する件(日鉄伊王島炭鉱爆発について)、  通商産業大臣から発言を求められております。発言を許します。櫻内通商産業大臣。    〔国務大臣櫻内義雄登壇拍手
  12. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 伊王島炭鉱災害について御報告を申し上げます。  初めに、このたび長崎伊王島炭鉱において発生した災害によって犠牲者となられた方々に対し、深く哀悼の意を表するとともに、負傷をせられた方々の一日も早い御回復を心からお祈りいたします。  先般の夕張炭鉱災害後間もない今回の伊王島災害で、多数の犠牲者を生ずるような事態に至りましたことにつきましては、まことに遺憾のきわみと存じている次第でございます。私も現地事故の惨状をつぶさに拝見いたし、今後このような災害を繰り返さないため、考えられる限りのあらゆる手段を尽くして、炭鉱災害を絶滅しなければならないとの決意を新たにしてまいったのであります。  災害の概況について申し上げますと、四月九日午前六時十分ごろ、日鉄鉱業株式会社経営伊千島炭鉱において爆発事故発生し、当日三番方として当該区域において作業に従事していた鉱山労働者四十五名中、三十二名が坑内に閉じ込められたのであります。災害発生と同時に救護隊を招集し、救出作業に全力を尽くしたのでありますが、死亡者三十名、重軽傷者十四名の犠牲者を出したのであります。政府といたしましては、災害発生と同時に、現地監督署福岡鉱山保安監督局長及び本省の鉱山保安局長現地に急派するとともに、関係政府職員で構成する伊王島炭鉱爆発調査団現地への派遣、臨時伊王島炭鉱災害協議会の設置を行ない、各省庁の緊密な連絡のもとに、罹災者に対する医療対策遺家族対策等につき、適切な措置を講ずることといたしました。  昨日の閣議の了承を得て、通産省といたしましては、今後の災害発生を未然に防ぎ、鉱山保安状況を抜本的に改善するため、石炭鉱山保安緊急対策を実施することとし、五月一ぱい全国的に一せい総合検査を行ない、それに伴って、従来の施策に加えて積極的な施策を講じます。  今回の不幸な災害をきびしい心のむちとし、今後の保安確立のため、徹底的に原因を究明し、それに伴って十分な対策確立をはかることを重ねて申し上げ、報告とする次第であります。(拍手
  13. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。阿具根登君。    〔阿具根登登壇拍手
  14. 阿具根登

    ○阿具根登君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま報告のありました長崎日鉄伊王島炭鉱ガス爆発事故に関して、総理通産労働の各関係大臣質問を行ないます。  質問に先立ち、このたびの災害で殉職された三十名の方々の御冥福を祈るとともに、十五名の雷軽傷者方々の一日も早き回復を祈念いたしたいと存じます。  まず、総理大臣にお尋ねいたします。一昨年十一月、三池炭鉱において発生した、戦後最大といわれる、一瞬にして四百五十八名の生命を奪った天惨事は、今日なお、そのつめあとを残し、病床呻吟ずる多数の一酸化炭素中毒患者がおりますことは、御承知のとおりであります。また、去る一月二十二日夕刻には、北海道夕張炭鉱で六十一名の犠牲者を出す惨事発生しております。二カ月もたたぬ今日、重ねて日鉄伊王島炭鉱でこの災害発生いたしましたことは、炭鉱労働者のみならず、全国民の方々の、政府政策並びに炭鉱経営者責任を問う声は、新聞紙上を見るまでもありません。私は、三池災害ほかこの種災害で、数回この壇上から質問を続けております。夕張炭鉱災害では、同僚大矢議員から質問をいたしておりますが、そのつど、各総理は、検討をしたい、くふうをしたい、あるいは保安生産は車の両輪ではなく、保安が優先だということまで池田総理は言っておりますが、今日の状態を見るときに、こういう災害が起こった場合に、そういう同じようなことを並べられただけで、何を具体的な対策を立てられたか。ただいまも通産大臣は、緊急対策積極的対策と言われましたが、具体的には何があるか、どうするつもりなのか、それをはっきりとお聞かせ願いたいと思います。抽象的な今日までの言われた答弁は十分おかっております。問題は、どうするかということです。はっきりお聞かせ願いたいと思います。  今日の石炭産業は、相次ぐ閉山に伴う予想以上の出炭減と、逆に、出炭減を補うための増産態勢、すなわち、企業の面からのみとらえられ、人命無視生産第一主義となってあらわれております。ここに重大な問題点があると思います。出炭計画を完全に実現させるために保安がおくれている、これが今日の災害を起こす第一の原因だと思います。総理はどうお考えになるか。  さらに、一たび災害が起これば、その原因を、電気スパークか、あるいはマイトではないか、あるいは機械器具スパークか、極端な人は、鉱員坑内で、たばこをのんだのではないか、鉱員のポケットまで調べねばならぬと言う人までいる。現在の炭鉱でそういうことが、たばこをのむようなことが許されるかどうか。こういうことは絶対あり得ない。すべてこういうことは、責任を他に転嫁せんとしていることなんであります。坑内においてマイトを打つことは当然のこと、電気を使うことも当然のこと、使えばスパークが出ることはあたりまえ、そういう場合にも爆発が起こらないように、ちゃんと法規は示してある。爆発をしたということは、五%以上の、ガスがあったことであります。ガスがなかったならば、どんなスパークが出ても爆発はしない。五%以上あったならば、マイトを使うこともできません。はっきりきまっている。それが爆発したということは、五%以上のガスがあったことなんだ。それが不可抗力的にどうにもできなくて出たガスであるかどうであるかということは、専門家の皆さんが見ればすぐわかるはず。防ごうと思えば防げたはず、今度のガス爆発も。私は現場には入っておりませんが、現地十分事情を聞かせてもらった。その点からいっても、どういう状況であったかということはわかる。原因マイト、あったか、あるいは何のスパークであったかというのは枝葉末節——それも調査の必要はありますけれども、それを今日まで調べて、三池の場合でも夕張の場合でも、わかりましたか。今日まで数多いガス爆発で、原因が何であったかということがわかったことがありますか。そういうことに責任を転稼せずに、なぜ爆発するだけのガスがあったか、なぜこれを動かすことができなかったかということを、十分ひとつお考えになって、御答弁を願いたいと思います。  特にわが党は、終始、労働者生命を守るのは労働省がやるべきであると主張してまいりました。いつの場合でも、答弁は、総理通産大臣も、通産省にあって、特に炭鉱という所は、生産考える場合には、保安考えなくては生産は成り立たないというようなことを言っておられるが、それではなぜ労働省にやることができないのか。労働省保安を担当したならば保安が後退するのかどうか。後退するならばどういう理由で後退するのか。生産は落ちるかもしれません。しかし、人命が第一、保安が第一とするならば、なぜ労働省に移管ができないのか。通産省生産を担当する省です。人命保安は、労働省が当然やるべきだ。労働省がやったならばなぜできないか、その理由をはっきりしてもらいたい。労働省が担当したとしても、この種災害が絶無と私は申し上げているのじゃない。しかし、少なくともこれが前進であるとするならば、当然そうあるべきであると思う。この点についてどうお考えになるか。  さらに、その点は労働大臣にもお尋ねいたします。労働省はこれに対して積極的でない。何か責任をのがれている。この種炭鉱鉱山のみが、なぜ通産省所管にあらねばならぬかという問題につきまして、労働省が積極的でないのは、労働省がこの種の災害に対する責任をおそれて避けているのではないかと、私はかように考えるが、いかがですか、お答え願います。  さらに、通産大臣にお尋ねいたしますが、全国保安監督官が二百八十七名、九州では九十五人で、八十二社百三十八の炭鉱を受け持っております。このうち六十五の炭鉱は、きわめて危険な状態であるということが、新聞にも発表されている。ところが、今度の予算で見ますと、わずか六名の増員でございます。一体これで保安の万全を期することができるかどうか、通産大臣お答えを願います。  次に、労働条件について私見を申し述べて、御答弁を伺いたいと思います。太陽に接することもなく、天井の落盤と炭車の逸走、ガス爆発等の恐怖におびえながら、もうもうたる炭じんの中で働いている炭鉱労働者の姿を、そのまま地上で見ることができたならば、一体、世の中の人はこれを何と言うでしょう。聞くところによれば、総理大臣は、はなやかに文化人を集めて豪奢なパーティを開かれて、幸福な人々の話をお聞きになったと聞いております。それもけっこうだと思います。しかし、その自分たちが立っている地の底で、生命の危険に精神をすり減らしながら働いている人々、及びその家族は、無事な夫の顔を見るまでは安心できなくて、せめてわが子だけは炭鉱夫にしたくないと祈っている妻、こういう人々総理は話をする気はございませんか。人間尊重総理はどうお考えになりますか。こういう人々は、決してはなやかなパーティなど考えておりません。私は世の中がさかさまになっているように思うのです。今国会でも祝祭日をふやすということが論議されております。名目は何であれ、それは机の上で、冷暖房の中で、国民の税金によって、いわゆる公僕と言われる人の給料をもらってのお休みではないか。民間産業や、中小企業や、農民に、何の恩恵があるのでしょうか。祭日の日に休んだら、だれが生活のめんどうを見てくれるのでしょう。公僕は半ドンがあり、祭日がある、レジャーを楽しむ。汗とあぶらと泥にまみれて生産に従事している人々は、たまの日曜日も休めないのが実態ではありませんか、この現実を総理はどうお考えになりますか。私は、言い過ぎかもしれませんが、炭鉱労働者があぶらと汗でささえている舞台の上で、ゴルフやパーティやを一部の人が踊っているような気がする。そうして、その下敷きとなって死んでいっているのが今日の災害実態のような気がいたします。総理や労相も、なぜ下をもっと見てくれないか。人間なら、人間尊重を叫ぶなら、この人たちにこそ労働時間の短縮や待遇の改善をまず考えるべきであろうと私は思う。(拍手)できぬということは、いまの炭鉱は、私企業では、やっていけぬということです。そこに企業労働者も追い込まれて、無理な生産という今日のたび重なる重災害原因があると思いますが、総理労働大臣通産大臣は、御自分犠牲者の立場に立って御答弁を願いたいと思います。  以上で私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 夕張炭鉱爆発に次いで、日ならずしてまた今日も伊王島災害が発出いたしましたことは、まことに残念にたえません。今回の災害犠牲者となられました方々に対して、衷心から哀悼の意を表し、御冥福を祈る次第でございます。  ただいま阿具根君からいろいろ実情を訴えられ、ほんとうに私どもの肺腑を貫くようなものがございます。私はかねてから、われわれの生活々より向上さしたい、その意味において働く、これはひとり炭鉱労務者ばかりではありません。すべての者が、自分たち生活をより向上さすと、こういう意味で、苦労と戦いながらも働いておるのであります。この目的に働きながら、しかもとうとい生命をその職場で失う。これは一体どうしたことだ。ただいまお話のごとく、産業自体に対して十分の理解がない、あるいはまたそういう意欲について十分の理解がない、またいろいろの見方があるだろうと思います。ただいま申し上げたように、本来、働くということは、われわれの生活を守るため、よりよくするためなんです。そこで生命を失うというような事故が起こることはないはずであります。そういうことは絶対にないという、そういうもとにおいて、自分たち生活を築き、向上をはかっていくのだと思いますが、いま、石炭産業自体につきまして、生産第一で、保安が忘れられている、かような意味合いの御批判がございました。今日の科学技術をもってしても十分対策が講ぜられないものがある、人力の尽くし得ざるものがある、こういうことならば、何をか言わんやでありますが、ただいま言われるごとく、生産に没頭して、保安をないがしろにした結果がかような事態を引き起こしたのだ、かようなことがあっては済まないはずである。また、労働者自身も、自分たち生活を守るため、生命の安全を確保するために働いているのだ。かような意味におきまして、この保安については特別な関心が払われているはずであります。私は、幾ら今日の資本主義経済のもとだといっても、利潤追求のもとだといっても、この本来の生産あるいは経済活動自身がお互いの生活向上目的としている、かように考えますならば、まず第一に、生命自身に危険を感じないという、それだけのことは、基礎的条件基本的条件として考えられると思います。私は、こういう観点に立って、ただいま生産に携わっている者も、労働行政に携わっている者も、あらゆる面から真剣に取り組んでおると思います。今日、この地下産業である石炭産業について、通産省保安も一緒にやっておる、これは私が申すまでもなく、阿具根さんよく御承知のことだと思いますが、地下産業実態を十分把握して、そのもとにおいて、初めて保安体制もでき上がるのだと私は思います。地下産業は、生産条件がそれぞれ変わっております。また、刻々変わるものであります。そういう場合に、それに対して万全の保安体制を立てるという、それは、産業自身、これを監督する者が最もよく知っておるのではないか、私はかように考えます。かような意味合いにおいて、現在の機構、これを一応私は、このもとにおいて災害をなくすることを考えてまいりたいと思いますが、もちろん、労働省自身が、一般労働条件あるいは労働環境その他労働災害等について、総括的な責任を持つ官庁でありますから、通産省労働省、両省が緊密な連携をとって、十分の対策を立てていただくことは、これはもちろんであります。しかもなお、行政制度調査会等におきましても、各省所管事項等について、それぞれの御意見が出ております。こういう点をも十分取り入れまして、尊重して、ただいま御指摘になりましたような点は、十分将来について検討してまいるつもりでございます。ただいま申し上げますように、現状においては、通産省がこれを所掌することが望ましい、かように思いますが、しかし、こういう問題は基本的な問題でありますから、あらゆる面で十分意見を聞く、また検討する、こういうことはお約束いたしたいと、かように思います。  以上、お答えといたします。(拍手)    〔国務大臣櫻内義雄登壇拍手
  16. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 夕張炭鉱災害後、監督局部及び各会社に対し、厳重な警告を発するとともに、鉱山保安重要性にかんがみまして、四十年度予算を通じ、財政金融措置をいたし、監督検査強化拡充保安融資制度拡充保安技術開発普及保安教育徹底等施策を講じてまいった次第でありますが、今次の災害にかんがみまして、さらに、関係各省協議の上、助成金融措置を強化いたしたいと思います。特に、ただいまのガス爆発についての御見解は、私として厳正に反省をし、お聞きをいたしました。ガス量警戒量以上の自動発見装置装備につき、すみやかに助成金融措置等を講じたいと思います。  保安行政については、ただいま総理よりお答えがありましたが、現に保安に対する責任を持っておる私といたしましては、石炭産業は、生産に先立ち、保安を最優先的に考え行政に当たってまいることは当然だと思います。最近の災害実情より、監督官増員をさらに考えるべきだということは、御指摘のとおりだと思います。現時点においては、鉱務監督官現場における措置適確に、迅速に行なわれるよう、十分な訓練、教育等を実施するとともに、監督装備を強化して、監督行政の質的な充実をはかることによりまして、鉱山保安の確保に万全を期してまいる考えでございます。(拍手)    〔国務大臣石田博英登壇拍手
  17. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 毎回同じような発言をしなければならぬことはたいへん遺憾でございますが、お答えをするにあたりまして、今回の事故犠牲になられた方々の御冥福を祈りたいと存じます。  私に対する御質問の第一点は、所管問題について労働省積極性がない、責任をのがれているのではないかという点でございました。この鉱山保安所管の問題は、災害が起こるたびごとに、人命尊重をたてまえとする、労働者保護の責めに任ずる労働省が担当すべきだという御議論がございます。十分承っております。この問題は、そもそも基準法施行のときに問題になりまして、そのとき現在のような状態になりましたのは、まず第一に、経過的に申しまして、ずっと以前から商工省が担当してまいったということ、第二は、この保安監督には特別の技術が要る、その技術通産省が持っておるということ、第三は、これは私はきわめて重大なことだと思うのでありますが、そのとき、ちょうど石炭増産ということが、その時代の国の政策の大きな重点でございました。そういうような事情から通産省所管と相なったのでありますが、すでにしばしばこの種の事件が発生し、生産より安全を第一にすべきだという議論には、今日何人も異論をはさまなくなりました。したがって、その所管の問題については、私は、ただいまの御議論の方向に向かって検討を開始すべき時期であると考えておる次第でありまして、決して消極的な態度をとっておるわけでもございませんし、また、むろん責任を回避する意味でもありません。そういう態勢に応ずる覚悟と準備を進めておることを申し上げておきたいと存じます。  それから石炭労働者諸君労働条件の問題につきましては、私ども日ごろから、特別の労働条件のもとにあるところであるから、特別の配慮が必要であると考えまして、労働者諸君と接し、あるいは、働いておられるその実情自分の目で見る努力をしてまいりました。今回就任いたしまして、まだその機会を得ませんが、前二回は、できるだけ炭鉱をおたずねを申し上げたつもりでございますし、今回も、機会を得まして、炭鉱へ参りまして、御意見、御希望等を承りたいと思っておりまするが、そもそも国の石炭政策の中におきまして、坑内労働石炭労働特殊条件を配慮し、それが他の基幹産業労働条件と比較をいたしまして、いかなる地位にあるべきかということを、明らかにする必要があろうと存じます。私どもは、各国の例及びその労働の質と量の観点からいたしまして、基幹産業平均の上位にあるべきであるという主張を、石炭調査団その他に対して、しばしば申しておる次第でありまして、その実現に努力をいたしたいと考えております。(拍手)     —————————————
  18. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 鬼木勝利君。    〔鬼木勝利登壇拍手
  19. 鬼木勝利

    鬼木勝利君 去る九日早朝、長崎伊王島日鉄伊王島鉱業所におけるガス爆発事故につきまして、私は公明党を代表いたしまして、総理通産労働の各関係大臣に対しまして質問を行なわんとするものであります。  それに先立ちまして、今回の災害により、とうとい一命を失われました三十名の方々の御冥福をひたすらお祈りいたしますとともに、十四名の重軽傷方々が、すみやかに御全快されんことを心からお祈りするものであります。  まず、質問の第一点は、通産省は、北炭夕張鉱事故二日後の二月十四日に、今年度の鉱山保安監督方針として、「人命尊重」と「社会福祉向上」を柱に、災害防止に格段の努力をするよう、各保安監督局長に指示したと承っておりまするが、全国炭鉱に、いかなる災害防止具体策を指示されたのか、その内容について詳細に承りたいと思うのであります。  その第二点は、炭鉱災害は、ほとんど大手ビルド鉱という優秀鉱のみに起こっているのでありまするが、その原因は一体那辺にあるのか。思うに、大手ビルド鉱であり、優秀鉱であるのだという安心感と、生産第一主義、したがって保安を軽視するというような弊風があったのではないか。したがいまして、日常の保安と、検査のための保安と、いわゆる二重立てというような事実があったのではないか。山元におきまして検査期日をあらかじめ承知し、検査の前後は、山自体が非常に緊張いたしますが、その中間においては、あるいは油断をしたり、手を抜くというような、いわゆる惰性に流れるがごとき、保安上に欠陥があったのではないか、さようにも考えられるのでありますが、その点について通産大臣の御所見を承りたいと思います。  その第三点として、これは先ほども質問があっておったと思いますが、全国で約二百七十の炭鉱があると、かねて聞いておりますが、保安官は、わずかに二百七十五名で、新年度において七名の増、補充官が二名、この点に関しましては、過ぐる予算委員会で、これだけの増員では、とうてい保安完ぺきを期することはできないのではないか、かように私は通産大臣にお尋ねいたしましたところ、通産大臣は、「万全を尽くして、これが完ぺきを期しますので、御安心ありたい」かように答えられております。現在、保安官は、四半期に一回、巡回指導監督を行なっておると、先日も私は直接聞いたのでありますが、そんなことで保安の確保ができると、大臣はお考えになっているのか。ガス発生の多い鉱山とか、あるいはまた非常に危険性の多いと思われるような鉱山などにおいては、常時監督すべきではないか。その他、全炭鉱保安確保のためには、最低月二回程度の巡回指導監督を行なうべきではないか。そのためにも保安官の現在数をもってしては、とうてい私はその完ぺきを期することはおぼつかないと思うのであります。この点、通産大臣は、保安官の大幅増員というようなお考えはないのか承りたいと思うのであります。  次に質問の第四点は、三池夕張に次ぎ、今回のごとき大災害を起こした炭鉱経営者責任の所在を明らかにする必要があると、かように考えるのでありまするが、その点、どう思われるか。従来ややともいたしますると、現場の一課長だとかあるいは所長の責任に転嫁するがごとききらいがあったのであります。こうした点におきましても、事故があとを断たないその一因があるのではないか。かかる大事故を起こした場合は、すべからく経営の責任者たる社長取締役以下最高幹部に、強くその責任をとらすべきではないか。この点に関して、総理の御所見を私は承りたいと思います。  その第五点といたしまして、保安の確保につきましては、労使が互いに不離一体となり協力してこそ、その完全が期せられるのであると、このように考えまするが、今回の災害発生と同時に、私は石炭対策特別委員といたしまして、現地に急行し、関係筋より詳細にその事情を承ったのでありますが、保安上のことに関しては、労組に対しては何の相談もなく、何らの連絡、打ち合わせもなかったかに聞いております。労組幹部諸君の切々たる私はその訴えに接したのでありますが、この点、通産大臣はどのようにお考えであるか。  その第六点といたしまして、思うに今回の惨事は、その原因ガス爆発によると思われるのでありまするが、爆発原因は、ガスそのものよりも発火源にあると、かように私は考えます。坑内における発火源となるものは、おそらく電気機械器具よりほかには考えられない。たとえて申しますならば、古いコードを使用してショートしたとか、あるいは、いたんだコンセントを使用したために、スパークしてガスに引火爆発することも、私は十分考えられると、かように思っております、したがって、従来坑内における電気機械器具等の検査基準はどのように徹底されておったか。この機会において、私は、将来は一段と厳重にこれらの検査を行なうべきであると、かように思いまするが、大臣はいかがにお考えであるか。  質問の第七点は、伊王島鉱業所は、過去数たびにわたりまして、保安安全鉱として、通産大臣の表彰を受けておると承っておりますが、一体その表彰基準はどこにあるのか。その点を明らかにしていただきたいと思います。  次に、相次ぐ炭鉱事故による労働者の将来への不安を一掃いたしまして、安んじて就労できるよう、かつまた、石炭産業の発展を期する上からも、すみやかに原因を徹底的に究明し、再びかかる不祥寺を惹起せぬよう、政府は、誠意を持って、私は国民に誓うべきであると思う。総理並びに通産大臣の御所見を承りたいと思います。  最後といたしまして、今回の殉職者並びに遺家族に対しまして、その援護措置に対してお尋ねをいたしたい。
  20. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 鬼木君、時間が超過しております。簡単に願います。
  21. 鬼木勝利

    鬼木勝利君(続) 遺族の補償については、最低九十万円、最高百八十万円、平均百四十万余と聞き及んでおりまするが、これで、前途暗たんたる、気の毒な遺家族の方々の補償は十分だと考えられているか。また、その後に来たる就職のあっせん等におきましても、同情ある策が樹立されているかどうか。
  22. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 時間が超過しております。すみやかに願います。
  23. 鬼木勝利

    鬼木勝利君(続) 佐藤総理人間尊重の立場からも、十分あたたかい政治姿勢を示すべきであると思いますが、具体的に、今回いかなる処置をとられたか、総理並びに労働大臣にお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  24. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどもお答えいたしましたが、たれよりも一番よく実情を知り、また、みずからが一番、生命をも失うのでありますから、危険にさらされているということを痛感しているのは、その現場で働いている諸君だと、私はかように思います。これらの方々が十分実情を知りながら、しかも今日は無理やりにその危険なる作業をしいるような労働環境ではございませんのに、しかも、なおかつ、この種の災害が次々に起こる。まことに私は残念にたえないのでありすす。先ほど来申し上げているのもこの点でございます。  で、ただいま、かような大きな事故を引き起こしたところの会社の最高責任者の、重役の責任を追及しろと、こういうお話がございます。もちろん、ただいま原因を究明している最中でございますから、その処分等について、私どもが軽率に判断を下すわけにはまいりません。地検あるいは県警等も十分連絡をとりまして、その責任の所在も明らかにしておるようであります。しかし、ただいま仰せになりますものは、いわゆる社会的責任あるいは政治的責任があるのではないか、かような意味のお考えではないかと思います。もちろん、政府といたしましては、かような意味合い責任が不明確な状態のもとにおいて、政府自身がこの責任追及というような、いわゆる重役の、最高幹部の責任追及というようなことをしないことも、これまた御承知だろうと思います。しかし、この原因が究明され、そしてそれが明らかになってまいりますと、そこでいわゆる社会的な責任等が論ぜられるだろうと、私はかように思います。  最後に、この援護措置について万全を期せということでございますが、もちろん、万全を期しておるつもりでございますし、その詳細は労働大臣からお聞き取りをいただきたいと、かように思います。(拍手)    〔国務大臣櫻内義雄登壇拍手
  25. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 第一点は、夕張炭鉱爆発以降。通産省鉱山に対しての指示事項について詳細に話せということでございました。その趣旨は、第一点は、労働者生命尊重は至上の要請であって、かりそめにも鉱山保安軽視の風があったとすればそれは絶対に許されない、これが一点であります。今回のごとき災害を再び起こさないため、石炭鉱業各社は、鉱山保安法規の順守、保安体制の強化、保安教育の徹底、保安施設の整備等について全力を傾注してもらいたい、こういう指示をいたしました。  大手ビルド鉱爆発事故が多いではないかというお尋ねでございましたが、石炭鉱山においては、千変万化する自然条件の中で生産が行なわれ、また、生産現場が絶えず移動しているので、生産の伸展により常に新たな保安問題が生じており、このような状況の中で常に保安を確保していくという点に非常に困難な問題点があろうかと思います。  保安官の大幅増員については、先ほどお答えしたとおりでございます。  保安の確保について労使協調してやれと、こういうことについてはもとよりのことでございまして、現在、鉱山保安法により、労使双方により構成される保安委員会の設置が定められており、また、先般の法改正により、保安監督員補佐員制度を設けまして、また、鉱務監督官監督検査の直後に、その結果を鉱山労働者の代表に直接通知することについて、これから検討を積極的にいたしていきたいと思います。  それから、電気器具について厳重に検査すべきではないか、これはまあ当然でありますが、電気器具等の施設についての急迫の危険と結びついた法規違反がある場合には、施設の使用停止命令を含む強力な措置により、早急に改善措置を講じたいと思います。  それから、保安表彰の基準についてのお尋ねでございましたが、過去一年間の災害率を所定の算式により採点し、これに重要災害、鉱害等の発生につき一定の減点をした後、法規の順守状況、過去三カ年間の災害実績その他の事項を考慮加算して、高い点数の鉱山を表彰することとなっております。(拍手)    〔国務大臣石田博英登壇拍手
  26. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 私に対するお尋ねは、遺族の補償の問題であると存じます。今回の災害によって、遺族は、未亡人、子供、両親ほかを含めまして百十人にのぼります。労災補償保険法によります補償金及び葬祭料の準備はすでに終わっておりまして、四月十七日に支払うことに相なっております。それから傷病者の方々についての治療の万全を期しておる次第でございますが、現在の補償金は、制度上、法規上は先ほど御指摘のとおりでございます。そこで、今回労災法改正案を国会に提出いたしておりますが、この改正案によりまして、これを年金化いたしまして、ほぼ倍額の支給が行なわれるようになっておるのでございます。  なお、遺族の方々の職業のあっせん、あるいは職業の訓練というものにつきましては、遺憾なきを期するよう準備を進めておる次第でございます。(拍手
  27. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  28. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第三、公害防止事業団法案趣旨説明)、  本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。機内通商産業大臣。    〔国務大臣櫻内義雄登壇拍手
  29. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 公害防止事業団法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  近年におけるわが国の経済成長は、まことに目ざましいものがありますが、産業活動の急速な発展に伴い、東京、大阪等に見られますように、産業活動が集中して行なわれる地域におきまして、大気汚染、水質汚濁による生活環境の悪化が重大な社会問題となっており、また、それが産業の健全な発展を阻害する要因ともなっておりますことは、御承知のとおりであります。  政府といたしましては、従来、公害防止のための施策といたしまして、ばい煙の排出の規制等に関する法律、工場排水等の規制に関する法律等により規制を行なう一方、企業に対する助成措置といたしましては、中小企業近代化資金、日本開発銀行等による融資、税法上の優遇措置等を行なってきました。    〔議長退席、副議長着席〕  ところで、最近特に問題となっております産業集中地域の産業公害は、既成工業地域に見られるように工場と住宅の無秩序な乱立によるもの、あるいは近年における技術革新の進展による大規模工場の集中立地化に伴うものでありまして、深刻にして複雑、かつ、広域的性格を有しているものであります。  したがいまして、政府といたしましても、従来の助成措置の強化と並びまして、このような産業集中地域における公害を早急に解消するために、積極的に効果的な対策を実施する必要に迫られている現状にあります。  かかる現状にかんがみまして、産業集中地域における産業公害を防止するために、長期低利の財政資金を重点的に活用し、共同公害防止施設、共同利用建物、工場移転のための敷地、公害防止のための緩衝施設等の設置、譲渡、公害防止施設に対する融資等の事業を行なう公害防止事業団を新設することといたした次第でありまして、昭和四十年度におきましては、厚生年金還元融資十億円を含む資金運用部資金二十億円を事業資金として発足することといたしております。  この法律案は、このような事業団設立の趣旨に基づきまして、事業団の目的、業務の範囲を定めるとともに、役職員の任命など事業団の組織に関すること、予算、決算その他会計の方法、事業団の業務についての厚生大臣及び通商産業大臣の監督等について規定しているものであります。  以上がこの法律案の趣旨であります。(拍手
  30. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。柳岡秋夫君。    〔柳岡秋夫登壇拍手
  31. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案のありました公害防止事業団法案について、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたすものであります。  公害は人災であり、社会的犯罪であります。生産第一主義の経済成長政策は、金や物を尊重し、人の生命生活を無視してきたのであります。ここ数年間、ばい煙、粉じん、臭気ガス、汚水、地盤沈下、騒音などの工場公害は至るところで発生し、交通事故、じんあい、し尿等々の都市公害も激増して、いまや日本の緑の国土は公害によって著しく荒廃され、住民の日常生活は重大な脅威を受けているのであります。東京、大阪等、大都市における大気の汚染は、広範囲にわたって住民の生活を脅かし、四日市においては、いわゆる四日市ぜんそくが発生しております。また、河川の汚濁も、すでに隅田川は死の川と化し、その他全国の大小河川も工場排液等による汚濁が進行しているのであります。事態は重大であり、深刻であります。今日の階段で、規制と投資の両面において強い政治的決意をもって有効適切な対策を講じなければ、将来、破局的な局面に向かわないとは保障できないのであります。  そこで、まず総理に、公害対策の理念と、その基本方針について質問をいたします。  第一に、総理はしばしば社会開発を強調されますが、その概念はきわめてあいまいであり、具体的施策においても体系がなく、計画性もないように思うのであります。政府は、公害対策を社会開発の一環として推進するということでありますが、これを社会開発の中でどのように位置づけようとするのか。私は、社会開発は福祉計画がその中枢的位置を占めなければならないと思うのであります。しかも、その中でも、国民の日常生活を、精神的、肉体的、経済的にむしばむ公害の防止こそ、政府がその目標としている福祉国家建設には不可欠の問題であると思うのであります。にもかかわらず、四十年度予算を見ると、公害対策関係費は、一般会計において百五十二億、財政投融資は四十六億という少額であり、社会開発をキャッチフレーズとしている佐藤内閣が本気で取り組もうとするのか、疑わざるを得ないのであります。  第二に、公害防止の責任の所在であります。政府の公害対策は主として産業政策観点からとられ、住民の生命、健康、生活環境は第二義的なものとなっております。したがって、企業は、政府企業擁護主義に隠れて、その社会的責任を自覚せず、一方、政府や地方自治体の取り締まりは、ゆるやかに過ぎているのであります。私は、公害防止の責任は、その発生源たる企業が負うべきであり、企業の社会的責任を明確にして、人権擁護、住民福祉の立場から進めなければならないと思うのであります。公害防止に対する国、地方自治体、企業のそれぞれの責任の境界と、その取り組む姿勢について所見を伺いたいのであります。  第三に、公害行政の一元化についてであります。現在、公害防止行政機構は、厚生省、通産省をはじめ、ほとんどの省庁に分かれております。これらの所管の分立は、行政の一元性を欠き、公害対策推進の中心的機能の不存在を示すものであります。政府は、昭和三十九年三月、公害関係機関相互の連絡調整をはかるという名目で、総理府に公害関係機関連絡会議を設置しております。この連絡会議は、各省庁の事務次官で構成されているために、船頭多くして船山に登るのたぐいで、設置の趣旨である連絡調整の実をあげ得ないのみならず、活動の実態を見ても、騒音、振動等の未規制公害の若干の研究にとどまっているのであります。私は、公害がかくも重大な社会的問題になるまで放置され、その対策が遅々として進まなかった主要な原因の一つは、公害行政の一元性の欠除にあったのではないかと思うのであります。本法案の提案にあたっても、衆議院においては厚生大臣、本院においては通産大臣と、共管という名目のもとに、実は各省間のなわ張り争いに国民犠牲になっておるのではないでしょうか。総理は、このような欠陥を是正し、公害行政を効率的かつ迅速に進めるために、行政の一元化についてどのような構想を持っておられますか。また、臨時行政調査会の答申によれば、行政需要の増大する行政機構は拡充すべきだと言っております。公害関係行政機構の人員、予算をふやすべきではないか。そうしてこれら公害関係行政機関を統合し、公害対策の実施官庁を設置すべきと考えるのでありますが、いかがでございますか。  第四に、公害の事前防止対策の強化についてでありますが、公害防止対策は、事後の対策よりは発生を未然に防止することが真の対策であります。したがって、新産業都市の建設、工業整備特別地域の建設等、新しい都市づくり、新しい工場立地の計画段階で、公害発生の予防措置を講ずべきであります。公害の事前防止の立場から、都市計画法はじめ関係法律の整備を行ない、地域開発計画、都市計画、ないしは国土計画等、総合的計画と関連づけた公害防止対策を、この際、樹立すべきと思うのでありますが、総理の所見を伺います。  第五に、今国会に公害基本法をなぜ提出しないかということであります。公害の定義を明らかにし、乱立する公害行政を統一し、国の体系的な対策確立するためにも、公害防止対策の総合立法をすべきと思うのであります。基本的理念と方針を持たずして本法案の完全な運用を期することはできないでありましょう。  最後に、国際条約についてでありますが、最近における石油貿易の増大に伴い、船舶の廃油による海水の汚濁が著しく、水産に対する被害が生ずるとともに、公衆衛生上も好ましくない事態となっております。現在、これらの廃油の投棄行為の規制は、国内法では港則法によって行なわれておりますが、さしたる実効があがっておりません。海水の油による汚濁を防止するためには、国内法の整備が必要なことは言うまでもございませんが、それと同時に、一九五四年、世界の四十二ヵ国の国際会議で成立しました油による海水の汚濁防止のための国際条約を、わが国も批准することによって、汚濁防止の完ぺきを期する必要があると考えます。世界有数の貿易国、工業国たるわが国としても、主要海運国二十カ国が本条約を批准している実情にかんがみ、早急に批准すべきと思うのでありますが、御所見をお伺いいたします。  次に、大蔵大臣に質問いたします。  第一は、公害防止のための財政投融資計画についてであります。四十年度の公害対策関係として、事業団に二十億円、中小企業設備近代化資金として六億円、日本開発銀行融資二十億円となっておりますが、ある製鉄会社の集じん設備だけでも五十四億円を要するというのに、わずか五十億円にも満たない公害関係投融資で、はたして実効ある対策ができるでしょうか。欧米諸国においては総生産設備投資の約五%を公害防除設備に投資しているといわれております。将来の公害防止資金計画について具体的にお答え願いたいと思います。  第二に、中小零細企業に対する助成についてでありますが、企業にとって、再生産効果も薄く、コスト高の要因となる公害防止施設を設置することは、特に中小零細企業にとって大きな負担であります。したがって、その経営の実態等にかんがみ、貸し付け条件等について、より低利、かつ長期の資金が優先的に配分されるように考慮すべきと考えるのでありますが、御意見を伺いたいと思います。  次に、通産大臣質問いたします。  公害防止事業団の事業資金二十億円は、わが国の産業公害防止施設の設置に要する全費用に対して、九牛の一毛にすぎないと思うのであります。現在の全産業に公害防止施設を設置するとすれば、おおよそどれくらいの資金を必要とすると考えますか。産業公害対策を年次計画をもって推進するためには、今後の産業の発達、産業活動の増大、それに伴う公害発生の予測、防除施設に対する資金の需要量を見込んで、有効適切な施策を講ずべきものと思うのであります。これらに関する計画があるかどうか、お伺いをいたします。  第二に、公害防止技術の開発についてでありますが、公害防止対策にあたっては、科学的調査と防止技術の開発が重要であることは申すまでもございません。四日市ぜんそくの原因となっている排ガス中の亜硫酸ガスを除去する技術は、わが国ではいまだ開発されておりません。防止技術開発投資は、生産技術と異なって、利潤の伴わない投資であるだけに、企業には限界があると思うのであります。したがって、政府の積極的な投資と組織的研究開発が必要と思うのであります。現在、各省ばらばらになっておりまする公害防止技術の担当部門の組織的一元化をはかる考えはないか、お伺いをいたします。   次に、厚生大臣に質問をいたします。  第一に、現行のばい煙規制法、水質二法は、排出基準を規定しているにとどまりまして、大気や河川流水等の一般的環境基準が規定されていないのであります。したがって、各企業が幾ら排出基準を守っても、工業、事業場の密集が強まれば、全体の汚染度が増大するのであります。ざる法と呼ばれるゆえんがここにあります。これらの弊害を除くためには、環境基準の設定が必要と考えますが、どうか。  第二に、事業団資金二十億円のうち、十億円が厚生年金の積み立て金から出されているが、本来、厚生年金の積み立て金は、被保険者の直接の福祉のために使われるべきものであって、公害防止のためとはいえ、企業の設備投資に使われるのは筋違いであると思うのであります。この点については、大蔵大臣の御意見も聞きたいのであります。  第三に、未規制公害対策についてでありますが、現在、規制の対象となっていない自動車の排ガス、家庭暖房等のばい煙、下水放流、騒音、振動、悪臭、地盤沈下等については、地方条例で規制している以外は、ほとんど野放しの状態であります。自動車の排ガスは、大気汚染の重要な要因であり、市街地路上の汚染は、交通巡査に対する影響に見られますように、許容限度に達しております。家庭下水についても、産業排水と並んで水質汚濁の主要因であります。これら公害についての発生防止のために、いかなる具体策と計画があるか伺いたいのであります。  最後に、経済企画庁長官に質問をいたします。  現在、工場、事業場からの排水、公共下水道、都市下水路からの排水の規制については、規制水域の指定と排水の水質基準の設定によって、公共水域の汚濁を規制しておりますが、本年二月一日までに、江戸川をはじめとする九つの水域が指定されただけで、その他の河川の指定が非常におくれております。水域の調査基本計画による調査から、水域指定、水質基準の設定に至るまで、三カ年もかかるようでは、最近における河川の急速な汚濁に対処できないと思うのであります。指定の促進について、どのような対策と計画があるのかお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 公害問題は、ただいま御指摘にありましたごとく、地元住民の福祉増進のためにも、また、国民生活の安定向上のためにも、国民の保健衛生の点からも、たいへん緊急にこれと取り組まなきゃならない緊要な事柄だと思います。ただいま、社会開発としてこの点を取り上げるのだろう、やはり福祉国家建設、こういう立場において特に力点を置けと、こういうお話でございましたが、ただいま私が申し上げるような点からも、緊急にこれと取り組んでまいらなければならないと、かように私は思います。したがいまして、公害防止に関する科学技術の振興、また、発生しておるものについては、これを除去することに最善を尽くさなければなりません。新産都市や工業整備地域等において基本計画策定の場合におきましても、この防止に特段の配意をすべきだと、かように思います。  第二にお尋ねになりました国、地方団体、企業責任の分野の問題であります。もちろん、御指摘になりましたように、企業責任を持ってやることだが、しかしながら、国自身も、立法その他によりまして、あるいは融資、財政的措置をするとかいうことで、この企業努力することを助けることも必要だと思いますし、また、地方団体におきましても、上下水道をつくったりその他の施設をすることによりまして、この公害の防除ができるのでございますから、いわば、国、地方団体、企業、三者一致協力いたしまして、この問題と真剣に取り組むべきものだと、かように思います。  行政の一元化についてお尋ねがございましたが、ただいま公害対策推進連絡会議、これを設けております。船頭多くして山に登るのではないかという御心配がございますが、しかし、公害と申しますものは各省にまたがる問題でございまして、その一省だけではなかなか解決ができない、しかも、また一省だけで新しいものをつくってこれをまとめて処理しようといたしましても、それぞれの各省と十分連係を緊密にしないと効果があがるものではございません。したがいまして、私は、ただいま、この推進連絡会議、これを中心にいたしまして、通産、厚生両省がその中心になって関係各省協議をして、そうして対策を立てることが望ましい実際的な方法ではないかと、かように私は思います。また、かような意味合いから、ただいま新しい機関をつくるような考え方はございません。  次に、公害対策について基本法を設けたらどうか、こういうお話でございますが、ただいまようやく公害対策と取り組もうといたしたばかりでございまして、公害対策推進連絡会議が現状を十分把握し、将来のあり方等を見きわめる、そういう際に、初めて、基本法が必要なりやいなや、かような段階になるものだと思います。もちろんただいまから研究するつもりではございますけれども、したがいまして、今日基本法をつくるとかつくらないとか、かように申すことは、やや早いのじゃないか、かように私は思います。(拍手)    〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  33. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私がお答えいたしますものは三点であります。  その一点は、公害防止事業団につきまする資金計画についての御質問でございます。産業公害は、本来、企業責任においてなすべきものであるということはそのとおりでございますが、国民生活に重要な影響がございますので、四十年度予算編成に際しまして事業団の発足をいたし、中堅以下の企業に対して、共同施設等の建設のために必要な融資を行なう道を開いたわけでございます。四十年度は財政資金といたしまして二十億を予定いたしております。また、この機関だけではなく、公害の防止施設につきましては、開発銀行及び中小企業金融公庫からも融資の道が開かれているわけでございます。将来とも公害施設の融資については、万全の措置を講じてまいりたいと存じます。  第二点は、公害防止施設に長期低利の融資の道をいまよりも拡充せよということでございます。御承知のとおり、中小企業金融公庫では一般通常の金利が九分でございますが、公害施設につきましては、低利の意味で金利七分で提供をいたしておるわけでございます。特に零細企業に対しましては、中小企業設備近代化資金におきまして、公害施設に対しましては無利子の制度を開いておるわけでございます。特に四十年度の予算編成に際しまして、償還期限現在七年のものを九年に延長をいたしたわけでございます。  第三点目は、公害防止事業団に対する政府出資のうち十億円が厚生年金の還元融資を充てておるということは、妥当な扱いでないということに対する私の考えをただされたわけでございます。確かに四十年度事業資金中十億円は厚生年金の還元融資を充てることにいたしておるのでございます。国民生活の環境の維持改善をはかるものでありますし、特に国民生活の安定向上国民福祉の増進に対して直接役立つ面に対する融資でございますので、還元融資の趣旨にかなっておるものと考えておるのであります。(拍手)    〔国務大臣櫻内義雄登壇拍手
  34. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私に対する御質問は、年次計画の点と技術の関係であったと思います。  公害防止のためには各般の施策が総合的に実施される必要があるわけでございまして、そのうち、公共下水道の整備など、公共事業で実施する分野については年次計画によって強化拡充されているところでございます。企業に対する対策としては、ばい煙規制法、水質二法により、逐次指定地域や指定水域に指定して厳格な規制を実施するとともに、公害防止施設の設置の促進をはかるため、各種の助成措置を講じているところでございます。特に緊急に公害対策が必要となっている地域については、この公害防止事業団を中心に、その改善をはかりたいと考えております。  産業公害対策技術確立については、通商産業省の工業技術院の各試験所において、それぞれ分担して鋭意研究を進めて、相当効果をあげております。四十年度についても産業公害関係の特別研究費を一挙に三倍程度に増加をいたしました。  また、資源技術試験所に産業公害防止技術部な新設して、実用化のための大規模な実験等を行なっておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣神田博君登壇拍手
  35. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答え申し上げます。  私にお尋ねでございました第一点は、いわゆる環境基準の設定についての御質問でございますが、環境基準としての許容限度の問題は、公害対策の基本的な課題でございまして、これを定めたければ公害対策が実施できないということは、これはもう重大な問題でございます。現在、排出基準により規制を進めておりますが、今後この設定につきましては、積極的に検討して実施してまいりたいと、かように考えております。  第二の点は、事業団資金の内容が、いわゆる労使の積み立てによっておりまする厚生年金資金より十億円行っているが、これはこの趣旨に沿わないのではないかというお尋ねでございました。これはただいま大蔵大臣から答弁ございましたように私もそのように考えておりますので、さように御了承願いたいと思います。  第三点は、未規制公害対策についての御質問でございました。騒音、振動、自動車排ガス等の規制外公害についても、将来立法化について検討いたしておりますが、その実態が科学的に十分把握することがなかなかむずかしいのでございまして、四十年度におきましては、騒音の実態、自動車排ガスの人体影響についての調査を実施する所存でございます。  また、これらの公害防止の機械であるとか技術の開発、あるいは土地の利用等についての各方面の検討が要求されておりますことも、お述べになったとおりでございます。これらのことにつきましては、総理府に設置しております公害対策推進連絡会議もございますので、ここと十分連絡いたしまして検討いたしてまいりたい、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣高橋衛君登壇拍手
  36. 高橋衛

    国務大臣(高橋衛君) 水質保全法を制定されましてから約三カ年、ただいま御指摘のとおり、今日までに水質基準を設定いたしましたものが九件にすぎないのでございます。しかしながら、その当時、調査基本計画で予定いたしましたものが百二十一水域になっておるのでございますが、当初のうちはなかなか、仕事を始めたばかりでございましたので、能率もわりあいにあがらなかったのでございますが、今日までにすでに調査の実施をいたしましたものは四十五件にのぼっており、また、今日、水質審議会で審議中のものが八件でございます。これは多摩川等八件でございます。それから近く間もなくここに付議する予定になっておりますものが荒川など四件、なおまた、調査の結果を分析整理いたしまして、これを水質審議会にかけようとして準備を進めておりますのが七件、合計十九件については、わりあいに早く水質基準の設定をいたすような手配に相なっておるような次第でございます。今後は、漸次能率もあがってまいりましたので、急速にこの予定された百二十一水域についての指定を進めたいと、かように存じておる次第でございます。(拍手
  37. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  38. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第四、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案趣旨説明)、  本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。石田労働大臣。    〔国務大臣石田博英登壇拍手
  39. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説申し上げます。  労働者災害補償保険制度は、昭和二十二年に創設されて以来、労働災害をこうむった労働者及びその遺族に対し災害補償を行ない、あわせて労働者の福祉に必要な施設を行なうことによって、労働者及びその遺族の保護に力を尽くしてまいりました。この間、わが国経済の成長と相まって、労災保険加入事業場数も逐年増加し、保険経済の規模も拡大の一途をたどり、現在、労災保険の適用事業場数は約八十八万、労働者数は約二千万人でありまして、年間約百万人の労働者及び遺族に対し、約五百億円にのぼる保険給付が支給されております。  しかしながら、従業者五人未満の零細事業場や商業・サービス業などの任意適用事業に働く労働者等でいまだ労災保険の保護の外にある者も決して少なくない現状であり、最近における社会経済情勢の変化により、これらの労働者の保護をはかるため、労災保険の適用の拡大が強く望まれるに至っております。  また、労働災害をこうむった労働者及びその遺族に対して、必要な期間、必要な補償を行なうという見地から、障害者と遺族に対する保険給付については、原則として年金制を採用し、これによってその生活の安定をはかるとともに、労災医療及びリハビリテーション施設の充実と相まってその社会復帰に資することが必要で到ると考えるのであります。このことについては、去る昭和三十五年における労災保険法の改正の際においても、衆議院及び参議院の附帯決議におきまして、遺族年金制の採用等について要望されたところであります。  さらに、労災保険法施行十数年の経験及び最近の諸情勢に徴して、保険給付、保険制度及びその運営につきまして、なお改善すべき点がしばしば指摘されているのでありますが、特に労災保険の適用範囲がますます拡大されようとする事態に対処して、労災保険の事務手続を簡素化して、事業主の負担を軽減するとともに、保険者たる政府の保険運営を能率的にすることが強く要請されており、このためにも、施設の充実、運用の改善と並んで、現行法令の整備が必要であると考えるのであります。  政府におきましては、これらの問題を含め、労災保険制度の全般にわたって検討を進めてきたのでありますが、同時に、労災保険審議会においても、労災保険制度の問題点について調査研究が行なわれ、昭和三十八年十月にその結果を労働大臣報告されたのであります。  このような諸事情を考慮し、政府といたしましては、昭和三十八年十二月に、労災保険審議会に対し、労災保険制度の改善につき諮問をいたし、昨年七月、法改正の方向に関する答申を得たのであります。この答申に基づき、労災保険法改正要綱案を作成し、これを同審議会及び中央労働基準審議会に諮問し、昨年十二月にそれぞれ答申を得ました。本年一月右要綱案に若干の修正を加えた要綱を社会保障制度審議会に付議し、その了承を得、その結果に基づいて、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を作成し、国会に提案いたした次第であります。  次に、その内容につきまして概略御説明申し上げます。  この法律案の内容は多岐にわたりますが、諸般の準備を整えた上、逐次これを実施に移すこととして、施行期日別に三カ条に区分しております。すなわち、第一条は適用関係、療養補償休業補償、支給制限、保険料等に関する改正規定でありまして昭和四十年八月一日から、第二条は労災保険事務組合、特別加入等に関する規定でありまして昭和四十年十一月一日から、それぞれ施行することとし、第三条は保険給付の年金化を中心とする改正規定でありまして昭和四十一年二月一日から施行を予定しております。以下、この区分に従って、法律案のおもな内容を御説明申し上げます。  第一に、改正法案第一条の規定による改正のうち、適用範囲につきましては、強制適用事業の範囲について、従来のもののほか政令で定めるものを加え、漸次拡大をはかることとするとともに、従業員五人未満の零細事業所等へのいわゆる全面適用については、二年以内に成果を得ることを目途として調査研究を行ない、その結果に基づいてすみやかに必要な措置を講ずることといたしております。  次に、保険給付につきましては、給付基礎日額の算定にあたって、平均賃金を用いることが不適当な場合には、労働大臣が別途これを定めることとして、特殊事情によって賃金額が不当に低くなる場合等における救済をはかることといたしております。また、療養補償については、従来給付の対象としなかった少額の療養費をも支給することとするとともに、休業補償についても、待期期間を三日間とするように改めております。  さらに、事業主の責に帰すべき事由による支給制限を廃止し、その場合にも労働者には保険給付をし、事業主からはその費用の全部または一部を徴収することができることに改めるとともに、労働者の責に帰すべき場合の支給制限についての規定を整備することといたしております。  その他、保険料の算定、納付の方法等を簡便なものに改めるほか、技術的な事項について所要の整備を行なって、保険加入者及び保険者たる政府の事務の簡素化、合理化をはかっております。  第二に、改正法案第二条の規定による改正のうち、労災保険事務組合につきましては、失業保険事務組合の例にならって、中小企業等協同組合その他の事業主団体が、その構成員である事業主の委託を受けて、事業主の行なうべき労災保険事務を一定の条件のもとに代行することを認めることとし、もって中小企業事業主及び保険者たる政府の保険事務の負担の軽減をはかっております。  次に、大工、左官等のいわゆる一人親方、自営農民、小規模事業主及びこれらの者の家族従業者等、労働者と同様な状態のもとに働き、同様な業務災害をこうむる危険にさらされている人々についても、申請に基づき、一定の条件のもとに、特別に労災保険に加入することを認め、保険給付を受けることができるように、特別加入の制度を創設することといたしております。  第三に、改正法案第三条の規定による改正のうち、保険給付の年金化につきましては、まず、障害補償の年金の範囲を大幅に拡大することといたしました。すなわち、従来は障害等級第一級から第三級までの重度障害者にのみ年金を支給していたのを改め、第一級から第七級までについて年金を支給することとし、身体障害者が必要とする期間必要な補償を行なうこととしております。  次に、従来一時金であった遺族補償は、原則として年金とし、一定の範囲の遺族に対し給付基礎年額の三〇%ないし五〇%の額の年金を支給することとし、もって遺族の保護の徹底をはかっております。なお、年金を受けることができる遺族がない場合等には、給付基礎日額の四百日分の一時金をその他の遺族に支給することといたしております。  また、長期傷病者に対する補償につきましては、従来の複雑な体系に改め、その内容を従来のような通院及び入院の区別を廃止して、一律に療養の給付を行ない、かつ、給付基礎年額の六〇%の年金を支給することとしております。また、厚生年金保険等の年金と労災保険の年金とが併給される場合の調整につきましては、厚生年金等の六年間併給停止の制度を廃止し、当初から厚生年金等は金額を支給するとともに、労災保険の年金については、従来の方式に準じ厚生年金等の一定率相当分を減じて併給することといたしております。  以上のほか、本改正案においては、労災保険事業に要する費用に対する国庫補助等につき所要の規定を設けるとともに、その附則において以上の改正に伴う経過措置、制度の切りかえに伴う暫定措置及び関係諸法律の条文につき所要の整備をいたしております。  以上がこの法律案の趣旨であります。(拍手
  40. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。杉山善太郎君。    〔杉山善太郎君登壇拍手
  41. 杉山善太郎

    ○杉山善太郎君 私は、ただいま趣旨説明のありました労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に関しまして、日本社会党を代表いたしまして、総理並びに関係の各大臣に、若干の質問を展開するものであります。  まず最初に、総理の政治上の姿勢についてお伺いするわけでありますが、と申しますのは、政策、人事ともに、池田路線をそのまま踏襲された佐藤内閣であっても、政治上のキャッチフレーズとして、いわゆる社会開発、人間尊重、言うならば、歩行者優先の政治姿勢こそは、その言うところ、まことによしと言わざるを得ないのであります。そこで、私は、総理に単刀直入にお伺いするのでありますが、たとえば、新たに法律をつくったり、あるいは既存の法律を、内外情勢の推移は毛とより、国民の世論、時勢の風潮に伴って、その一部を改正する等の場合において、立法上のテクニックはさることながら、要は、法改正のルールとして、政府は、権威ある各級諮問機関の答申を名実ともに尊重し、しかも、これをいかに活用するかにかかっておるかと思うのであります。たとえば、首相の諮問機関である社会保障制度審議会は言うに及ばず、新設の社会開発懇談会及び産業経済会議等、いわゆる政府諮問機関の活用について問題なのは、せっかくの答申や意見具申が行なわれたとしても、政府の意に反するものは、これを平然と無視し、あるいは黙殺されることであります。すなわち、さきの中央医療協議会の答申に対する措置が、その後の医療行政を大混乱におとしいれさせた等の例も、いまここであげるまでもないのであります。政府は、民間各階層の見識と権威に対して、もっと謙虚にこれを尊重すべきであり、これこそが、各種各様の諮問機関を活用する最も大切な基本的な心がまえでなければならないと思うが、佐藤総理の御所見をこの際、伺っておきたいと思います。  次に、質問の第二点として、これまた総理にお伺いをいたすのでありますが、社会開発、人間尊重、歩行者優先の政治についてでありますが、すなわち、総理は、社会開発懇談会あるいは産業経済会議等に、相当な意欲と情熱をたぎらせておられるようでありますが、それなら、ただいま議題となっております労働者災害補償保険法の改正に関連して、あるいは法改正以前の問題として、海に、山に、農村に、工場に、いわば、すべての生産点につながる広範な勤労者の身の上に振りかかっている公害や産業災害の多発性に対し、あるいは、すでに発生した、しかも、産業災害犠牲になった、たとえば国鉄の三河島、鶴見事故、三井三池、近くは北炭夕張、また、去る九日、長崎港外の日鉄伊王島に起こったあのガス爆発による悲惨な大惨事に際して、とうとい生命を失った人々と、その遺家族に対する補償等、幾多の社会問題に関連し、政府は今日においてこそ、社会開発、人間尊重の理念に徹し、産業災害防止のための、いわゆる抜本的な対策の樹立設定はもちろんのこと、当面は、何はさておいても、人命保護、遺族補償の問題に対し、有効適切な行政措置を講ずることは当然であり、これに必要な予算措置について、十分な考慮を払うべきであると思うが、総理並びに大蔵大臣の所信と、右に関する決意のほどを承りたい、かように存ずるのであります。  次に、質問の第三点でありますが、これは提案説明の担当者である労働大臣にお尋ねするわけであります。申すまでもなく、昭和二十二年に制定されたこの労働者災害補償保険法は、過去二十一回の法改正を経過し、いままた、二十二回目の法改正が行なわれんとしているのであります。そもそも、この法律は、労働者の業務上の傷病、疾病、死亡に対して、直接、迅速公正な保護を行なうことを目的としたもので、いうならば労働基準法に基づく使用者の補償責任を越える保障を行なうことを理念としながら、実質においては使用者責任を肩がわりする形で運用されてきているのであります。去る昭和三十五年の改正によって、三年で療養を打ち切る制度をやめて、なおるまで療養を継続できるように、長期傷病者補償制度を取り入れ、さらに重度障害に対する補償費の一部を年金化するなど、いわば労働基準法を上回る補償内容を実現したのであります。しかし、この改正は暫定的な性格のものであって、長期給付と他の給付との不均衡、年金化の不十分、他の社会保険との調整の必要など、幾つかの未解決の点を残していたのであります。  また、昭和三十七年には、社会保障制度審議会が社会保障の零細企業への適用拡大を示唆し、さらに三十八年の雇用審議会からの失業保険法適用拡大の建議に対し、当時の大橋労相は、「労災保険の全業種、全労働者への適用拡大をも目下検討中である」と、その時点において答えておったのであります。一方、機運の高まってまいりましたILO百二号条約批准のための国内社会保障制度整備の要請等もあり、かてて加えて、昭和三十九年にはジュネーブにおける国際労働会議総会において、業務傷害の場合の給付に関するILO百二十一号条約の採択が予定されておった。こういうような雰囲気の中で、このような内外の情勢を背景に、三十八年十三月、大橋労相は、「現行の労災保険制度は激変した労働行政に適応しがたい面がある」として、労災保険制度の根本的な改善策を労災保険審議会に諮問したのであります。同審議会は検討を重ねた結果、昭和三十九年七月二十五日付で石田労働大臣に答申したのであります。したがって、労働省は、右の答申に基づいて、労災法の一部改正に関する法律案要綱を作成したのであります。かくして昭和三十九年十月、労働災害補償保険審議会の議を経て起案された労災保険法の一部を改正する法律案要綱でさえ、答申の内容からすれば、相当な隔たりがあったのであります。しかるに、その後、労働省と大蔵省との折衝過程において調整されたいわゆる第二次的な労災保険法の一部を改正する法律案要綱なるものは、その第一次的な要綱案と比較対照して、たとえばその適用範囲において、療養の補償において、あるいは障害補償の給付において、その他、遺族補償、長期傷病給付、スライド制等の、もろもろの重要事項に関し、第一次案よりはるかにあと戻りした、後退した要綱となっておるのであります。しかも、その変更の理由労働者災害保険審議会及び中央労働基準審議会にも報告せず、また、案そのものが変更であるためには、当然に再諮問の手続を踏むべきが筋であり、道理であると、私ども考えるのでありますが、これら一切を省略してしまい、今国会に提出されたこの労災保険法の一部を改正する法律案は、法改正の背景とその歴史的経緯からして、労災保険法立法の精神に反するばかりか、社会保障の最低基準に関する国際公準としてのILO百二号条約及び業務傷害の場合の給付に関するILO百二十一号条約の無視であると断ぜざるを得ないのでありまするが、政府の御所見を伺っておきたいと、かように考えるのであります。  最後に、今回の法改正に際しまして、七つの項目にわたり、具体的な質問をいたします。関係の大臣が、木で鼻をくくったような御回答ではなく、花も実もあるお答えをいただきたい、かように考えます。  質問の第一点は、労災保険法の性格が、労働者保護のための保障保険である限り、本人の故意による以外の支給制限は、すべてこれを廃止すべきである、かように思うものでありますが、御所見はいかがでありましょうか。  第二の質問でございます。近年、産業事情や交通事情の激変に伴い、交通事故発生率が非常に高くなってまいりました。したがって、通勤途上の災害は、やはり往復ともに、これらすべてを業務上として扱うべきであると思うが、政府の見解はいかがでありましょうか、ひとつお伺いいたします。  質問の第三点。労災保険において補償する給付は、そのすべてについて、毎年勤労統計によるスライド制を採用すべきであると思うのであります。政府考え方を承りたいと思います。スライド制でなければ、今日の諸物価の高騰に対して、年金化の意義も喪失するということでありますので、この点については、コクのある御解明をいただきたいと、かように考えます。  質問の第四点であります。年金の補償条件に加味されるところの社会性及び給付日額の特殊的な扱い、スライドの具体的な実施方法、最低補償のための最低賃金のとり方等の重要事項については、すべて審議会の議を経て決定する旨を特に明確にすべきであると思うが、政府の見解はいかがでありましょうか。  質問の第五点であります。労働者災害保険特別会計の資金の管理運用は、労働者代表を加えて、労働者の福祉面に最大限に活用すべきであると思うが、政府の見解はいかがでありましょうか。この点は、ぜひひとつ御研究、コクのある御解明と御回答をいただきたいと、かように思います。  質問の第六点でございます。農業では、従来雇い人だけが労災保険の対象となっていたのでありまするが、今回の法改正にあたり、雇い主や自家農業者及びその家族従業者等にも労災保険が適用の対象になるよう、適用範囲の拡大をはかることはもちろん、補償責任の対象に値する農業労働災害の種類は、まことに多岐でありまして、広範にわたっております。また、災害の起きる時間、場所等についても、農作業実態から、非常に広範囲であります。したがって、業務上災害の範囲については、農業労働災害実態を十分把握し、考慮して、これを慎重に措置すべきことは当然でありまするが、この時点において、労働、農林両大臣からの、右に関する見解と、基本的な構想を、歴史の発展のためにお伺いをしたいと、かように考えます。  質問の第七点であります。業務上の災害の認定基準を、突発的な事故のみに限定しようとする現行法を改め、業務との起因性、因果関係にあるすべての負傷、疾病に適用されるべきであります。すなわち、近年の技術革新、産業合理化は、多くの職業性疾病を新たに生み出しているのであります。しかも、これらの災害は、明らかに業務上の災害であり、すでに諸外国においても、労働災害と認定されているのであります。したがって、わが国においても、これらの基準を明らかにするとともに、その基準設定にあたっては、本法があくまでも労働者保護の精神に基づき立法化されていることを実証すべきであろうと思うが、政府の御所信を承りたい、かように考えます。  以上で、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  42. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政治のあり方についてお尋ねがございました。法律の立法、あるいは一部改正にしろ、国民に重大なる影響を与えるものについては、十分審議会の意見を謙虚に聞くがよろしいというお話でございます。もちろん、政府は審議会の答申を尊重するという、その態度は変わらないのでありまして、今日、私どもは審議会を大事にいたしますのは、申すまでもなく、専門家の言であるとか、あるいはその道のいわゆる権威者、そういう方の御意見を十分政治の面に取り入れたい、こういう立場でございます。もちろん謙虚に聞くつもりでございます。ただ私が申し上げたいのは、審議会が政治の責任をとるのではございませんで、政府自身が責任をとるのでありますから、そういう意味で、必ずしも審議会どおりにはなかなか決しかねるものもあるだろう、かように思います。ことに、今回の改正のごときになりますと、たいへん広範にわたるものでありますので、各種審議会に関連を持つ、そういう意味で、その答申についても、各審議会の問の調整を要する、こういうような場合が出てくるだろう、かように思います。しかし、このことは、審議会を尊重するということを別に阻害しておるものだとは思いません。また、審議会のあり方等につきましては、一般的には行政調査会が答申を出しておりますので、これで、今後の審議会のあり方等については、真剣に取り組んでまいるつもりであります。  第二の問題といたしまして、労働災害、この一般的な問題でございますが、私は、いわゆる経済活動も、また政治活動も、最終的には、国民の利益、また社会の福祉に結びつかなきゃならない、かように考えまして、いわゆる社会開発の理念、人間尊重というようなことを申しておるのでありますが、幾ら注意をいたしましても労働災害があとを断たない。先ほど来お尋ねのありました、あるいは炭鉱災害、あるいは交通災害、最近また工場災害等も次々に起こっておりまして、まことに悲惨な事柄が次々に生じております。したがいまして、この労働災害と真剣に取り組むということ、これはもちろん、今日の行政の主要な重点を置く柱の一つだと、かように考えております。したがいまして、関係省におきましても、格段の注意を払うことはもちろんでありますし、また、今回の予算編成に当たりましても、さような意味合いから、特に法制の整備をすると同時に、予算等も編成に格段の留意をいたしたつもりでございます。  これらの点は、関係省の大臣等からお話をお聞き取りいただきたいと思います。(拍手)    〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  43. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 産業災害防止対策につきましては、ただいま総理大臣が申し述べましたとおり、人間尊重の理念に基づく施策の推進を考えまして、予算編成方針の冒頭にも掲げておるとおりでございます。産業災害の未然防止、災害補償等につきましても、予算編成上十分な留意を行なったわけでございます。  まず、具体的に二、三申し上げますと、労働省所管につきましては、基準審議会、部会の費用等、行政体制の整備をはかりまして、なお、監督官の二百人の増員もはかっております。また、監督指導等の徹底を期すために予算の増額を行なっております。調査研究機関の整備も三十九年度に比して増額をはかっておるわけでございます。事業主団体の助成につきましても、三十九年度三億四千万円に対して、四億一千万円と増額をはかっております。  それから、通商産業省分につきましては、三十九年度補正後八億二千八百万円でございましたものを十億九千七百万円。その内訳といたしましては、鉱山保安技術対策費、試験研究費、保安整備資金の貸し付け、鉱山保安監督検査費等、鉱山保安対策費を大幅に増額をいたしております。また、火薬類及び高圧ガス等の試験研究費、及び火薬類、高圧ガス取締法の施行費等の増額をはかっておるわけでございます。なお、電気ガス工作物等の保安対策費につきましても同断でございます。  なお、総理所管につきましても、産業災害防止対策審議会の経費等を計上し、産業災害の防止に対して遺憾なきを期しておるわけであります。(拍手)    〔国務大臣石田博英登壇拍手
  44. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 労働者災害補償保険審議会の答申と、今回提出いたしました改正案との食い違いについて、審議会を尊重しないのではないかという御質問でございますが、食い違いとして考えられますことは、まず第一に、五人未満の事業所への強制適用でございます。これは他の制度との関連もございますので、二年以内に調整を終わりまして実現を見たいと考えております。  それからスライド制で、答申は一〇%と相なっておりますのを、改正案が二〇%となっておる点が違っておりますが、この点は、障害補償その他の制度との調整を考えまして二〇%といたした次第であります。  給付基礎日額の最低保障の問題でありますが、労働省令をもちまして、著しく不当に低いものに対しては適宜の処置がとれるように相なっております。  第四番目は、遺族補償が最高六〇%という答申に対して五〇%という改正案でございますが、これは一〇二号条約の基準が、妻に子供二人で四〇%という基準に相なっておりますのと、他の法令上との関連を考えまして、以上のとおりとしたのでございます。趣旨は十分尊重したつもりでありまして、調整を終わりましたこの改正案は、社会保障制度審議会において御了承を得ておるものでございます。  次に、本人の故意による以外の支給制限は廃止すべきではないかという御議論でございますが、これはやはり、ある程度本人の故意によるものあるいは重大な過失によるものは、一定の範囲内で支給を制限することはやむを得ないと考えるのでありますけれども、この運用にあたりまして情状を考慮して、公正妥当を期してまいりたいと存じております。  次に、通勤途上の災害は、往復ともこの補償の対象とすべきではないかという御議論でありますが、会社の通勤バス等によりまする災害は、むろんその対象となると思いますけれども、それ以外の場合におきましては、やはり加害者が補償責任を負うたてまえに立つべきであると考えるのでございます。  それから補償給付について、スライド制を活用しろということでありますが、先ほどお答えをいたしましたとおり、スライド制を活用いたしておる次第でございます。  それから労災保険特別会計の資金の管理運用については、労働代表を加えて労働者の福祉面への活用をはかるべきではないかという御質問でございますが、この特別会計の予算等につきましては、労働代表者を含む労働大臣の諮問機関でございます労災保険審議会におはかりをいたしておる次第でございます。  それから農作業実態の上から、業務上災害の範囲の認定について十分考慮しろということでございます。今回の自営農民あるいは一人親方あるいはその家族というところへの適用範囲の拡大は、本来、労災保険のたてまえから申しますと、いろいろ問題がございますけれども、その労働実態及び各方面の要望にこたえて行なったのでありまして、その業務上の障害の範囲ということにつきましては、法令あるいはその解釈あるいは判例、裁決例、いろいろなもので大体の基準がきまっておるのでございます。しかし、農作業については非常にむずかしい点がたくさん残っておりまするので、農林省及び各種農業団体の方々と十分協議をいたしてまいりたいと存じておりまするが、これらは、労災保険の原則といたしまする一般労働者への業務災害の補償という範囲を越えるわけにはまいらないことは、ひとつ御了承をいただきたいと存ずるのであります。  それから、技術革新、産業の合理化等によるいわゆる職業病に対してその基準を明らかにすべきではないかということでありますが、現行労働基準法施行規則第三十五条の規定におきましては、非常に広範にわたっていろいろのことを網羅し、しかも、新しく生ずるものについてもそれを適用できるような余裕を持った規定でございます。しかしながら、最近の技術の進歩によりまして、新しい傷病、あるいは従来まだ発見されていなかったような事柄等が多く出てくる傾向にありますので、不断の研究検討を行ないまして、そうして、疾病として必要がある場合には、三十五条の疾病の中に追加していく処置をとってまいりたいと考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣赤城宗徳君登壇拍手
  45. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農業も、従来から労災保険の任意適用事業としての取り扱いを受けておりまして、制度的には今回の改正によって新たに生じた問題ではないというお話は、そのとおりでございます。しかし、このたびの改正によりまして特別加入の方法が開けましたので、今後農業従事者が大量に加入することも予想されます。そこで、農業におきまする業務上の災害の範囲につきましては、今後、労災制度の運用の状況、農業関係の業務災害実態を十分調査検討の上、ただいま労働大臣からも御答弁申し上げましたように、労働省協議して遺憾なきような措置をとってまいりたいと存じます。(拍手
  46. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  47. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 日程第五、電力用炭代全精算株式会社法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず委員長の報告を求めます。石炭対策特別委員長小柳勇君。    〔小柳勇君登壇拍手
  48. 小柳勇

    ○小柳勇君 ただいま議題となりました電力用炭代金精算株式会社法の一部を改正する法律案について、石炭対策特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  御承知のように、現在の石炭鉱業の窮状を打開するために、電力用炭の価格をトン当たり三百円引き上げることになりましたが、この引き上げに伴う措置として、この法律案により、現行の電力用炭代金精算株式会社法を電力用炭販売株式会社法に改め、この会社に電力用炭の一手購入及び一手販売に関する事務等を行なわせようとするものであります。  法案のおもな内容は、まず、この会社は、石炭の販売業者及び電気事業者から電力用炭の販売及び購入の申し込みを受け、その申込みの内容が合致しているときは、これに従って、通産大臣の定めた購入価格及び販売価格で電力用炭の売買を行なうこととし、電力用炭はこの売買の形に限るものとしております。  次に、通産大臣は、電力用炭の価格を決定し、電力用炭の供給が著しく不足した場合には、必要な措置を講ずるよう指示するものとしております。  このほか、販売会社に対する政府の出資金の限度額を一億円から一億五千万円に引き上げるとともに、取締役の人数を一名増員するなどの改正を内容としております。  委員会におきましては、電力用炭についての官僚統制のおそれ、炭価引き上げによる電気事業の負担増対策、電力用炭価格の決定方法をはじめ、石炭政策の全般にわたって熱心に質疑が行なわれました。また、電力業界及び石炭業界から参考人を招いて意見を聴取するなど、慎重に審査をいたしましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。  かくて質疑を終わり、討論に入りましたが、発言もなく、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上、報告を終わります。(拍手
  49. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします、。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  50. 重政庸徳

    ○副議長(重政庸徳君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時一分散会