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森元治郎君 私は、
日本社会党を代表して、
椎名外務大臣の韓国訪問について御
質問をいたします。
外務
大臣は、初め、親善ムードづくりや情報交換が主たる目的であると、ちょうど、ゆかたがけでいくようなかっこうをして韓国を訪問しながら、あっという間に国家間の基本
関係を律する重大な
条約に仮調印をやってのけたことは、眼中に国会なく、また、国民を愚弄するものであります。外相は初めからこの企図を持って出かけられたのか、あるいは思わずつり込まれてしまったのか。われわれは、外相からこの間のいきさつを明らかにするように要求いたします。足かけ十四年も、もみ抜いた末の基本
条約をつくったのに、出てきましたものは
条約文と一枚の共同コミュニケだけの発表であります。さんざんごたごたしたあとでありますから、仮調印に至るまでの数々の往復の書簡もあるはずでありますし、議事録の類もたくさんあると思います。これらを発表すべきであるのに、出さないのはどういう
意味でありますか。非常に暗い感じを与えます。また、公表をはばかる秘密取りきめがあるのではないか。こういう点も外相にただしたいと思います。
さる十九日、両国の対立から会談が行き詰まったとき、
総理は、外相の問い合わせに対して、譲歩して仮調印に酪み切らしたといわれまするが、その内容を明らかにしてもらいたいと思います。同時に、出先にあった外務
大臣の心境も伺いたいものであります。
歴代の自民党
政府、そして佐藤
内閣も、もちろん、懸案を一括解決してから国交正常化へ進むと公言しましたが、一夜にしてこの基本方針を捨て去ったことは、まことに許しがたいことであります。
政府は、国交樹立の最終目標であるこの
条約を仮調印したのであるから、うっちゃってはおけない。幸い、国会は開会中であるからという論理で、この国会にかけて、これ一本でも批准を
強行しようという腹と思われまするが、われわれは、これにはもちろん反対であります。
総理の所信を伺いたいと思います。それとも、ほかの懸案解決が一せいにそろうまで気長に待ってもやるつもりかどうか。
政府の言う「解決」ということは何を
意味するのか。最終的に片づけるのか。または
方向づけだけをして、後日に持ち越すたな上げのやり方もあるのか。外務
大臣からはっきりしてもらいたいと思います。
また、このつくられた
条約をごらんなさい。まことに一夜づけであります。第一に、韓国
政府の現実の支配が北に及ばないのを知りながら、
昭和二十三年の国連総会の決議、これは、決議といっても、実は何の
法律的拘束力はない勧告にすぎないものでありまするが、その百九十五号のうち、
自分の都合のいい部分だけを抜き出して、韓国が朝鮮にある唯一の合法
政府であるとして、全鮮にその支配が及んでいる合法
政府であるかのごとく、ないかのごときの小手先を弄しております。決議というものはその全文をもってその趣旨が尽くされるのであります。なぜ全文を引用しないのか。全文を載せれば、韓国は南を支配するだけの
政府であることがはっきりしております。これでは決議の引用は効果がありません。
領域についての含みのある折り合いなどということは前代未聞であります。韓国の管理権の及ぶ範囲はどこと思って折衝しておられるのか。全鮮なのか休戦ラインなのか、休戦ラインの北にある北鮮の政権の存在はいかに認識しているかを伺いたいのであります。なお、参考のために、韓国の面積、人口なども、この管轄権の問題と関連がありまするので、ちょっと参考までに聞きたいと思います。
政府は、かねがね、領土問題がはっきりしない場合は、日ソ国交
回復にあたっての共同宣言のように、韓国の場合もその方式しかないとの
立場をとっていました。しかるに、今度は、これまた懸案一括解決方式を転換したと同じように、
条約の形式をとったのは、全くの場当たり外交というほかありません。
竹島、これは小さい島でありまするが、大きな問題であります。この帰属が問題になっているのはふしぎであります。というのは、この島は去る
昭和二十七年の六月に、日米合同委員会で、日本はこれをアメリカの爆撃演習場として貸しまして、そして翌年の二十八年の三月にはアメリカからこれを返されて、解除に
同意したのであります。こういういきさつなんです。日本のものであることは、これでも明々白々でありまするが、このような竹島をうやむやにしておいて、基本
条約などというものはあり得ません。
外務
大臣から伺いたい第二には、一九一〇年八月二十二日以前に大日本帝国と大韓帝国との間で
締結された
条約は、もはや無効であることが確認されたと、条文にあります。日本はサンフランシスコ平和
条約第二条によって、朝鮮の独立を
承認しております。したがって、それまでの
条約、協定などというものは御破算になっている。しかるに突然ここに挿入されている
意味がわかりません。どんな
条約、協定があったのでありましょう。これを明らかにしてもらいたい。もはや無効になったではわかりません。いつから何が無効になったのか。ひとりのみ込みでは困るのであります。
第三には、この
条約は、実におもしろい、お急ぎ
条約といったらいいかもしれません。急ぐ、急ぐが、何カ所ありますか、ここに拾ってみましょう。「遅滞なく」、「実行可能な限りすみやかに」が二カ所、「できる限りすみやかに」と、四つも出てまいります。条項はわずか六つか七つの中に、ずいぶん短い中にこれだけあります。これは相互信頼のない証拠とも受け取れます。何か、これを見ますと、どこかの国に言いわけをしているようで、はなはだこっけいであります。
条約案文を見ますと、気持ちだけが先で、実態は食っついていけない不合理のごまかしであると思います。
次に、日本
政府は、基本
条約に仮の署名を終えた勢いで、ほかのものに手をつけようとしています。そこで李ラインの問題について外相に伺います。きのう
大臣は、李ラインの撤廃については、韓国側も了解している旨の
発言がありました。われわれは、韓国側からは、公式にも非公式にも、さような意向を耳にしてはいません。はたして外相の
発言は韓国に非常な反響を与えて、問題が一そうこじれそうであります。あわてた外務
大臣は、談話を昨夜発表したようでありますが、いつものことでありまするけれども、
大臣のおっしゃることはよくわかりません。韓国は李ラインの撤廃を
承認したのか、あるいは、日本側が李ライン撤廃を交渉の方針としていることを韓国が了解している、だから、向うが交渉に応じているところを見ると、日本の方針を了承しているのだと解しているのかどうか。重大問題でありますから、もう一度この本
会議を通じておっしゃって説明をしていただきたいと思います。こんなあやふやなことでは、これは外交の権威の失墜であり、あなたの重大な
責任となることを知らなければなりません。なお
政府は、韓国が李ライン存置をあくまでがんばるならば、漁業交渉は即時中止するばかりか、一括解決方針というのですから、基本
条約の批准を思いとどまる決意があるかどうかも伺いたいと思います。
漁業に関する会談について、赤城
大臣に伺いまするが、あくまでもわがほうの出漁漁業の既得権は守っていくつもりかどうか。そしてまた、漁業規制の問題とか、海外漁業
協力資金の問題とか、これについての内容を伺いたいと同時に、李ラインの問題について、もう韓国側とは話し合いをしなくても、向こうは廃棄を了解しているのだという外務
大臣のお説、あのとおりの腹で交渉をやっておられるかどうか。
大臣から伺います。
また、法務
大臣から、在日朝鮮人の法的地位についての交渉、これは、じみではありまするが、長く問題となり、台湾人あるいは中国人、北鮮の人等にも
関係がありますので、この機会に伺いたいと思います。
なお、国交正常化に伴う若干の問題について伺います。
コミュニケによりますると、自由と繁栄に基づく平和をうたっておりまするが、しかしこの
条約のねらいは、安全保障という、軍事が優先しているように見えます。韓国の外務
大臣も、自由陣営の
拡大強化を強調して、そして椎名さんに対しては、一体、南ベトナムはどうやって収拾するのか、あんたの意見はどうだと尋ねているほど、熱心であります。
大臣はこれに対して何と答えられたのか。重大であると言っただけなのかどうか。この点は発表されておりません。これを伺いたいと思う。と同時に、東南アジア外相
会議に出てくれ。
——これは私は出るべきではないと思う。ところが
大臣は、研究してみる。
——何を研究するのか。この研究は、もうこれから一週間も過ぎておりまするから、研究の結果を発表願いたいと思います。アメリカは、日韓
条約仮署名に至る間、側面的に大いに援助をしたことは、隠れもない事実であります。反共の戦略体制が固まった点に、非常に喜んで、
拍手を送っております。事実、アメリカは、日本、フィリピン、台湾、韓国、この四つの有機的つながりの
中心になっておりまするが、こちらで力を集めますると、向こうにも反響がいきまして、北鮮、中共、ソビエトなどは、さらに警戒心を高めて、結局は五分五分であります。私は、外交というものは、やはり、あちらこちら全体を見てやらなければならないと思います。全朝鮮の統一も、いかなる外国も
関係せずに、その民族だけにまかせておけば、遠くない将来には必ず達成できると思います。ベトナムにしても同じであります。韓国がアメリカの要請にこたえて、南ベトナム南方までも派兵したことは、間違いであります。これは反対すべきであります。内政干渉ではない。ほんとうにアジアの平和を願うものは、反対をすべきであります。われわれは、忍耐強く、統一の機運が醸成されるように援助することが大事だろうと思います。少なくも、分離国家をわれわれの近所につくることに加担すべきではないと思いまするが、調和の精神を説かれます佐藤
総理大臣のお
考えを承ります。
いま
政府は、韓国との交渉に熱中しておりまするが、北鮮というものも厳然と存在しております。日本の外交の究極の目的は、全鮮との友好であります。朝鮮独立に伴う日本との
関係は、財産請求権問題をはじめ、文化財返還にしても、国籍の問題にしても、たくさんあります。これらの話をいかに処理されるつもりか。向こうから話し合いがあったらどうされるのか。無視をするのか。この際、外務
大臣に
お尋ねをしておきたいと思います。
終わりに、交渉の前途でありまするが、外務
大臣は
現地に参られて、たいへん向こうは静かでよかったというような、のんびりしたことを言っておられまするが、これは当時ごらんのように、軍、警察の力をもって、治安当局の押えによって静かではありますが、それでも十九日の晩は、三万人以上も集まって、何となく不気味なデモをやっております。ほうとうに、民衆の理解、日鮮両方の理解なしに、韓国、日本両
政府間だけの独走では、絶対にこういう
条約はできるものではありません。やっても、あとで大きな問題になることを御注意申し上げて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕