○豊瀬禎一君 私は、
日本社会党を
代表いたしまして、
佐藤内閣の
施政方針に対し、教育
政策、
中小企業問題、
社会保障制度等について、その所信をただしたいと思っているわけでございます。
佐藤総理は、その
演説の結びに、「あすの
日本を切り開くために、新しい愛国心の喚起を期待する」と述べ、さらに、豊かな創造力と勤勉の意欲に満ちた
国民の手による高度の文明社会を築く決意を述べておられます。さて、
人間尊重の
政治といい、社会開発といい、これらは今後教育に関連するところがきわめて大きいものがありますので、まず、私は、教育に対する
基本姿勢についてその所信をただしたいのであります。
今日わが国の教育の水準がきわめて質量ともに高いところにあることは、私もこれを認めるにやぶさかではありません。しかしながら、その反面、幼児教育から大学に至るまでの試験地獄は、家庭教育や学校教育のあるべき真の姿を破壊し、他人との協調よりも、排他性やエゴイズムにこり固まった非人間性を生み出し、やがてそれが青少年の不良化の増大へと発展してまいっております。特に教育実践家の
意見を無視して強行されました学力調査のごときは、教師は、昼は輪転機となって問題を作成し、夜は採点機となって赤ペンをとるという、テストあって教育なき弊害を露呈し、教育不在に対する
世論の高まりは一日も看過できない
政治の重要な課題となっております。この質的教育の崩壊の真相を追及していくときに、私は二つの問題点を見出すことができるのであります。その
一つは、戦後二十年間今日に至るまで、幼稚園から大学教育に至るまでの一貫した教育
政策の樹立がなかったということであり、他の
一つは、文部省という教育行
政権による教育の不当な支配の体制であります。この二つは、
国民及び教育実践象に
政治と教育行政に対する根強い
不信感を植えつけてまいりました。すなわち、教育委員会制度の改悪を手始めとし、教科書検定制による教育内容の質的統制、さらに、勤評、学力調査の強行、そして今日は大学の管理体制の
強化や教員養成制度の改悪の企図等、民主教育は文部行
政権の手によって大きく逆行させられてまいったのがその姿であります。教育
基本法は、その十条に、教育は、不当の支配に屈することなく、
国民全体に対し、直接に責任を負って行なわるべきを定め、国家権力の介入を固く禁ずるとともに、教育行
政権が教育の内容事項に立ち入るべからざることを宣言し、外的教育条件の整備をその任務と定めているのであります。
人間尊重を標傍される
佐藤総理は、国に教育権が包括的には存在しないとする
憲法の定めを銘記され、
基本法の
精神に立ち返り、今日までの学問、教育の自由を侵害してきた教育姿勢を
基本的に
是正され、教育界に対して信頼と協調の新しい体制を確立すべき段階に到達しておると思うが、その所信を承りたい。(拍手)
第二には、教育
政策の策定についてであります。今次の大学急増
対策一つを例にとってみましても、文部省の
計画は、当初は四十一年までに平均十万人増と発表し、
予算要求時にはこれを六万人と改め、最終的にはわずかに一万九千人と減少し、ネコの目の変わるよりも早い無定見さに、一番混迷を感じているのは
国民であります。このような無
方針や放漫を
是正し、
国民に信頼される教育
政策を樹立するためには、文部省の手ではなくて、学術
会議等に委嘱して、幼児教育から大学教育に至る衣での
長期教育
政策を策定させ、これを
政府が責任を持って実施していく等、政党
政治の弊害からくる教育の混乱を解消していくべきであり、なお、その一方策として、臨時行政調査会の中間
報告にも見られる文部大臣制を廃止して、中央教育委員会等の設置についても真剣に検討すべき段階にきていると思いますが、
総理の所信を承りたいと思うのでありまりす。
次にただしたいのは、教育の機会均等と父兄の
負担の問題についてであります。今日、教育における父兄の
負担は年とともに増大し、特に私立学校にその子弟を就学させている父兄は、教育費という常識をはるかにこえ、ために、健康で文化的
生活に重圧を受けております。いま
世論の注目を浴びております慶応大学の学費大幅引き上げの問題は、ひとり慶応の問題にとどまらず、全
国民、全私立学校の共通の課題であります。さらに、一方、地方自治体の
財政力の格差の増大や、特に、僻地、離島の町村の
財政力の貧困化は、教育の条件整備を前時代的なものに放置するのやむなきに至らしております。これでは、
国民が能力に応じてひとしく教育を受ける権利は実質的に失われ、義務教育無償の定めも空文化されてしまっております。
そこで、この事態を解消するためには、まず第一番に、教科用図書、学校給食、教材教具その他の学用品に至るまで、すべて全額国庫
負担とする、いわゆる義務教育無償の
原則を早急に確立すべきでありましょう。第二には、私学に対する助成の拡大の問題であります。今日、幼児教育から大学に至るまで、私学が果たしている役割りの重大さに比し、国の助成の措置はまことに九牛の一毛にすぎません。ために、子弟を私学に就学させている父兄は、国公立に比して十倍から、多きに至っては五十倍の
負担の余儀なきに至っております。同じく
国民として国から受ける教育の恩恵にこのような不均衡が存在するということは、
佐藤総理の言う文化国家の恥とも言うべきでありましょう。
援助はするが支配せず、これが私学助成の
基本であります。早急に、私学に対し、
施設設備はもとより、経常費に対しても大幅の助成をはかり、もって父兄
負担の軽減をはかるべきでありましよう。
次は、教育条件の格差の
是正であります。
総理や文部大臣は、一度、恵まれない僻地、離島の学校をぜひ視察していただきたいのであります。そこには、都会の一流校に比し、これが、同じ国の同じ法律の適用を受け、同一の教科課程によって行なわれている義務教育諸学校と
考えることは、不可能なような状態に放置されている学校がたくさんあります。哲人コンドルセは、その名著、「公教育の原理」の中で、教育における不平等は社会の最も大きな罪悪の
一つであると指摘しております。この不均衡、格差を
是正するためには、地方公共団体に対し、
施設設備、教材教具等の国庫補助率を大幅に引き上げ、そのワクを拡大する措置を講ずる必要がありましょう。
これらの点にわたる最低のものが確立されて、初めて
憲法二十六条に定める
国民の教育の機会均等のたてまえは生かされ、教育費に対する父兄の
負担の解消の道が開けてまいると言えるでありましょう。この問題に対する
総理、
大蔵大臣、文部大臣の、それぞれの所見を承りたいと思うのであります。
次にただしたいのは、去る十一日中間発表されました、「期待される人間像」についての問題であります。文部大臣が期待されるように、本問題については数多くの論評が行なわれておりますが、一言にしてこれを要約いたしますならば、あまりに
精神主義的、観念的で、未来社会を築くための批判
精神や、創造的エネルギーへの期待がないということでありましょう。
佐藤総理の言う新しい愛国心とは、この期待される人間像の内容のごときものを意図しておられるのかどうか。
さらに第二は、教育
基本法第一条に、平和的国家社会の形成者として、真理と正義を愛し、自主的
精神に満ちた人間の育成と、民主
憲法下における人間像を明確に示しているのでありますが、
佐藤総理の描く、
精神力に満ちた人間とか、新たな愛国心とかは、この
基本法第一条に定める人間像を変革しようと意図しておられるものかどうか。あわせて、教育
基本法を改正したいとお
考えなのかどうか、明確な御
答弁を願いたいのであります。
今次来日いたしましたILO調査団は、数項目からなる提案を行ない、
政府はこれを受諾されたわけでございますが、これにつきまして二、三ただしておきたいと思います。
その第一は、「労使双方の信頼を実現するためには、双方の従来の
態度の重要な変化が必要である」と指摘しておりますが、
政府は今日までの
態度をどのように変化しようとしておるのか、その具体的な内容はいかなるものなのか、お示し願いたいと思います。また同時に、労使の定期的会合が提示され、しかも、その会合を促進し奨励することが
政府の一般的な
政策であり、
総理がその推進役となるべきを指摘しておりますが、これに対する
総理の具体的な構想をお答え願いたいのであります。
次に、いわゆる日教組を中心とする中央交渉の問題についてであります。現在の教育行政制度及び地方自治の実態から、教職員の賃金及び勤務条件等は、実質国の
政治によって左右され、文部大臣との
話し合いなくしてはその改善が望まれないのが実情であることは御存じのとおりであります。その顕著な最近の事例は、昨年
政府が公布いたしました義務教育費半額国庫
負担の最帯を定める限度政令と、教職員定数標準法に基づく政令による教職員の勤務条件の
問題等であります。さらに、結社の自由委員会の第五十四次
報告にも、「教育改善の一般的な基準の決定は、教員団体と協議するのが通常の問題である」との勧告を行なっています。一九五八年のILO教員問題専門家委員会の結論も、「教員は、国家的諸条件によって、教育上あるいは職業上、教員に
影響を及ぼす問題について、その使用者及び他の
関係者と交渉もしくは協議する権利を享有する」と述べているのであります。私は、かかるILOの経緯からしますと、当然に、包括的にではありますが、調査団の提案の中に、この中央交渉の問題が含まれているとの解釈に立つべきと
考えますが、文部大臣は、ILO調査団が直接に国内問題に介入しないとの
態度を利用いたしまして、
政府の過去の言動を正当化しようとしているやに見受けられますが、これを
政府が受諾されました以上、
総理はこの提案受諾にあたって、中央交渉の問題についてどのような把握をしておられるか、また、この多年の懸案をどのように具体的に
解決しようとの決意を持っておられるのか、明確にお答えをいただきたいと思います。ILO結社の自由委員会は、第五十四次
報告以来今日まで、
日本政府に対するたびたびの勧告を行なってまいりましたし、今年六月にも総会が行なわれますが、今後出されてくる勧告について責任を持って実施していく用意があるかどうか。また諸懸案の
解決は、双方の協議を
原則として提案は出されていますが、
総理みずからはこの協議を
原則とするということを堅持して、その責任において事態の改善に当たられる決意があるかどうか。さらに、労使双方で
意見を交換した結果とられた措置は、そのたびに
国会に
報告すべきとしているが、それを実施する決意がおありなのかどうか、
総理のお答えをお願いいたします。
次に、
中小企業対策についてただしたいと思います。
昨年一カ年間の
中小企業の倒産は、負債金額一千万円以上のものだけを見ましても、実に四千二百十二件にのぼり、一昨年の約二・四倍、戦後の最高を記録いたしております。また、負債金額の面からいたしましても、四千六百三十一億円に達し、これまた一昨年の二・七倍であり、このような
情勢がさらに一そう深刻化していくことは必至と言わなければなりません。しかるに、
政府は、この当面する
中小企業倒産に対し、緊急かつ適切な具体的
施策を何ら示さないのみならず、全く手をこまねいている状態と言えるのではないでしょうか。私は、年度末を控え、
中小企業の倒産を阻止するために、金融、税制その他各面にわたっての緊急救済措置を一刻もすみやかに
政府が実施することを、強く要求するものであります。この点についての
通産大臣の具体的な
答弁を承りたいと思います。
第二には、
政府は今日の
中小企業を
一体どういう
方向へ持っていこうと策定しているのか、
中小企業のあるべき姿をどのように想定しておるのか、お伺いしたいのであります。これまでの
政府のとった諸
政策から結論しますと、
自由経済体制では弱肉強食の結果、生き残る上位の中
企業の近代化にのみもっぱらその
政策の重点を置いてきたと、私は受け取るのであります。しかしながら、
日本におきましては、
中小企業が今後永続的に存立する
経済的な条件があるものと判断することができます。したがって、自然淘汰のまま放置するのではなく、積極的にこれらに対し、組織化、近代化を促進して、
中小企業全体のレベルアップをはかるべきであると思うのであります。同町に、本来、
中小企業で十分やっていける
企業分野にいたずらに大
企業が進出して、
経済的に優位な地位を利用して、既存の
中小企業を破滅のふちに追いやる今日の姿は、何としても
是正されねばなりません。わが
日本社会党は、すでに過去幾たびか、
中小企業の事業分野を確保して、大
企業の不当な進出を阻止する法案を
国会に提出してまいったのでありますが、いまこそ
政府みずからが、この提案を率直大胆に取り上げるべき段階に立ち至っていると
考えるのであります。
通産大臣の所信をお尋ねいたします。
第三は、
中小企業省の設置についてであります。
中小企業省を設置してもらいたいという要求は、いまや
中小企業者の一致した叫びであります。現在の貧弱な機構の
中小企業庁では、膨大な数の
中小企業に、きめこまかな
政策を立案実施することは不可能であります。その上、特に指摘したいのは、大
企業の出店と化した通産省のもとに置かれているのでは、大
企業の不当な圧迫を排除する
中小企業政策を期待することはとうていできません。このような
中小企業軽視の姿は、そのまま国の
予算に反映され、今
国会に提出されました一般会計
予算を見ましても、
中小企業対策費は、虫めがねでさがさなければわからないような、わずかなパーセントにすぎません。このような
中小企業軽視の現状を打破するために、この際、思い切って全国の
中小企業者の熱望にこたえ、
中小企業省を設置すべきと思いますが、
総理大臣にその決意のほどを承りたいのであります。
次に、私がただしたいのは、
社会保障の問題であります。
池田内閣の三大公約の
一つでありました
社会保障の問題は、
佐藤内閣になりましてその影をひそめた感を私は深くするのであります。
昭和三十七年八月、「
社会保障制度の総合調整に関する答申及び勧告」は、いまだに具体化されることなく、むしろ逆行しているごとき
施策が行なわれているのではないでしょうか。この際、
社会保障について、具体的な
基本方針、
長期の年次
計画をお示し願いたい。
また、
政府は今
国会に厚生年金法の一部を改正する法律案を提出していますが、その特に重要な問題点の第一は、一万円年金と銘打って大々的に宣伝しておりながら、
生活水準、
物価の変動に対しては、年金を引き上げるスライド制が確立されていないということであります。これは仏をつくって魂を入れないのと同じで、名実ともに老後の所得保障としての年金を価値づけることにはならないのではないでしょうか。第二は、公的年金である厚生年金を二つに分割して、
基本年金額のうち報酬比例部分を、私的年金である
企業年金に結びつけ、いわゆる調整年金制度を創設しようとする点であります。
社会保障のねらいは、格差を縮小して所得の再配分効果をあげることにありますが、調整年金制を新たに創設することは、大
企業のような調整年金に加入できるところと、零細
企業のような
企業年金すらないところでは、逆にますます格差が拡大していく
方向をたどるでありましょう。しかも、改正案を諮問した
社会保障制度審議会の答申においても、「調整年金制については、問題の経緯にかんがみ、慎重に取り扱う」と述べているのであります。しかるに、この審議会の答申の
精神を無視して、さきの第四十六回
国会に廃案となったものと同一内容の法案を再び提出し、何ら改正を加えようとしないのは、全く理解に苦しむところであります。この辺の事情、並びに、この際、調整年金の事項については、これを削除する
考えはないかどうか、伺いたいのであります。
さらに、児童手当制度については、第二次大戦以後、
世界各国で急速に発展してきた新しい制度でありますが、現在
世界六十二カ国がこの制度を実施いたしておるのであります。高度成長
政策を呼号してまいりましたわが国におきまして、いまだ児童手当制度が確立されていないということは、
社会保障制度の大きな欠陥というべきであり、
政府の
社会保障に対する熱意のないことを如実に物語るものというべきでありましょう。
政府は、
昭和四十一年度中から制度の創設を目途として準備しているやに承っておりますが、はたして、かなりの
予算を要するこの制度に対して、
昭和四十一年度から実のある制度を実施するだけの決意と用意があるのかどうか、その構想及び所見をお伺いいたしたい。
また、さらに、かねてから
国会で論議のあったILO第百二号条約、すなわち、
社会保障に関する最低基準の条約についても、批准の促進及びその実現の見通しはいつごろになるのか、お
考えをお伺いいたしたいのであります。
医療保障の問題は、所得保障とともに
社会保障制度の二大支柱となっていますが、今日の
医療保障は、
国民が病気になったときに安んじて
医療を受ける権利が与えられるというだけではなく、
国民が常に健康であることが保障されるという権利が確立されているというところにあります。したがって、
医療保障の範囲は、当然に、予防、治療、アフターケアの問題にまで行き渡るべきでありましょう。今日のごとく、
医療保障制度によってまかなわれ、日進月歩の医学、医術の向上と、
医療技術の目ざましい進歩に相応じて、膨張する
医療費の
解決を、安易な保険料の引き上げと患者
負担に期待するというような
政策は、
根本的に改められなければなりません。一九七〇年度を
長期計画実現のめどと
政府はされているようですが、疾病の構造、年齢の変化等による
国民の総受診率は増大し、今後、
医療需要の増大は必至でありますが、健康保険は膨大な赤字の危機に瀕しています。かかる事態に対応して、依然として、保険料の引き上げ、患者
負担等によるこそくな
対策によって切り抜けようとすることは、もはや許されない段階と思うのでありますが、この際、
政府は、
医療制度に対して
根本的な改革をはかるとともに、大幅な国庫
負担を裏づけとして、
医療保障前進の
政策を展開していただきたいと思いますが、大臣の所信を承ります。
最後に、地方
財政の問題についてお尋ねいたします。
今日、地方公共団体の
財政状態を健全に維持し、その行政運用に支障なからしめることは、最も重要な
政治の責任であります。しかるに、とこ数年、地方
財政の赤字が急速に増大傾向をたどり、危機的様相を深めてきております。
昭和三十八年度の地方
財政決算によりましても、普通会計の決算は、実質収支で二百七十二億円の赤字であり、これに、公営
企業の赤字、
国民健康保険の赤字等を加えると、約八百億円の赤字となり、全国の赤字団体数は四百九十二に達しています。しかも、この傾向は加速度的に進行していっているのであります。これは、地方公共団体の
負担する義務的経費の膨張に対し、地方税収の伸びが追いつけないことにもあるし、さらには、各種公共事業の事業費単価が、
物価上昇に対応して、国の補助率、
負担の単価がこれに伴って引き上げられないところに原因があります。今般、
政府は地方交付税率をわずかに〇・六%引き上げられたのでありますが、これでは問題の
根本的な
解決にはほど遠いものというべきであります。
そこで、私は、その
対策の第一は、各種公共事業の事業費に対しては、
物価の上昇による
負担を地方自治体に負わせないよう事業費の
予算単価を適正に引き上げ、これに対して国の補助率を引き上げるべきだと思いますが、
大蔵大臣の
見解をお尋ねいたします。
第二は、国と地方の税源の再配分の問題であります。さきに述べました地方税収の伸びが経費の膨張に追いつけないということは、