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1965-05-13 第48回国会 参議院 法務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十三日(水曜日)    午前十時四十五分開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月十一日     辞任         補欠選任      山高しげり君     市川 房枝君  五月十二日     辞任         補欠選任      山口 重彦君     藤原 道子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         石井  桂君     理 事                 木島 義夫君                 後藤 義隆君                 稲葉 誠一君                 和泉  覚君     委 員                 植木 光教君                 源田  実君                 鈴木 万平君                 藤原 道子君                 柳岡 秋夫君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    衆議院議員        発  議  者  田中 武夫君    政府委員        法務政務次官   大坪 保雄君        法務省刑事局長  津田  實君        厚生省社会局長  牛丸 義留君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        警察庁保安局防        犯少年課長    海江田鶴造君        法務省刑事局青        少年課長     安田 道夫君        法務省矯正局教        育課長      副島 和穂君    参考人        売春対策審議会        委員       松原 一彦君        全国婦人相談員        連絡協議会会長  西村 好江君        売春防止対策京        都委員会会長   前田信二郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○刑法の一部を改正する法律案内閣提出、衆議  院送付) ○経済関係罰則整備に関する法律廃止する法  律案内閣送付予備審査) ○会社更生法の一部を改正する法律案(衆議院送  付、予備審査) ○売春防止法の一部を改正する法律案(第四十六  回国会赤松常子君外一名発議)     ―――――――――――――
  2. 石井桂

    委員長石井桂君) これより法務委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  売春防止法の一部を改正する法律案審査のため、本日、売春対策審議会委員松原一彦君、全国婦人相談員連絡協議会会長西村好江君及び売春防止対策京都委員会会長前田信二郎君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 石井桂

    委員長石井桂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、刑法の一部を改正する法律案経済関係罰則整備に関する法律廃止する法律案及び会社更生法の一部を改正する法律案を議題とし、順次提案理由説明を聴取いたします。  なお、刑法の一部を改正する法律案については、逐条説明を聴取いたします。大坪政務次官
  5. 大坪保雄

    政府委員大坪保雄君) 刑法の一部を改正する法律案について、その趣旨説明いたします。  今次の刑法の一部を改正する法律案は、最近における交通事犯実情等にかんがみ、刑法第四十五条後段併合罪となる罪の範囲禁錮以上の刑に処する確定裁判があった罪とその裁判確定前に犯された罪とに限ることとするとともに、同法第二百十一条の罪の法定刑に五津以下の懲役刑を加え、かつ、その禁錮刑長期現行法の三年から五年に引き上げようとするものであります。  まず、刑法第四十五条後段改正についてでありますが、近時道路交通法違反事件は急激な増加を示しており、たとえば、昭和三十八年に全国第一審裁判所において有罪告知を受けた人員は約四百万人に及ぶのでありまして、その大部分は、道路交通法違反にかかる罪について即決または略式裁判罰金以下の刑の告知を受けたものであります。しかして、現行刑法のもとにおいては、これら道路交通法違反の罪により罰金以下の刑に処した確定裁判であっても同法第四十五条後段確定裁判に含まれますので、その前後に犯された二個以上の罪が右の確定裁判のあった後に審判される場合には、これら二個以上の罪の併合罪関係は右の確定裁判により遮断され、必ず二個以上の刑に処することとなるのであります。このために、裁判及び検察の手続段階においては、右のような確定裁判の存在の調査を的確に行なっており、これがための事務量はまた少なからぬ状況にあるのであります。  ところで、併合罪処断に関するわが刑法原則から考察いたしますと、刑法第四十五条後段規定により数個の罪の併合罪関係を遮断することは、これらの罪がいずれも禁錮以上の刑に処すべき罪である場合に最も実質的な意義を持つものであり、罰金以下の刑に処する裁判によってはこのような併合罪関係を遮断しなければならないものではなく、むしろ、罰金以下の刑に処する確定裁判によって併合罪関係を遮断することは、刑事審判手続において、また、刑の執行手続において複雑さを加え、犯人不利益となる場合も生ずることとなりますので、この際、同条後段確定裁判禁錮以上の刑に処するものに限るよう改正しようとするものであります。最近における道路交通法違反の罪により罰金刑に処せられる者が激増する傾向を考慮いたしますとき、早急に右のごとき改正を行なうことは、現下における刑事裁判の迅速円滑な運営をはかる上において緊要のことであると存ずる次第であります。  次に、刑法第二百十一条の改正についてでありますが、最近における交通事故とこれに伴う死傷者数増加の趨勢は、まことに著しいものがあり政府におきましては、かねてからこのような事態を重視して交通対策の樹立とその推進につとめてまいったのでありますが、近時の自動車運転に基因する業務過失致死傷事件及び重過失致死傷事件実情を見まするに、数において激増しつつあるのみならず、質的にも高度の社会的非難に値する悪質重大事犯が続出し、法定刑最高限またはこれに近い刑が裁判において言い渡される例も次第に増加しつつあるのでありまして、この際、この種事犯中特に悪質重大なものに対しましてより厳正な処分を行ない得るものとするよう必要な法改正を行ないますことは、今日における国民道義的感情に合致するばかりでなく、国家の刑政から見ましても、きわめて緊要なことと考えられるのであります。  以上が刑法の一部を改正する法律案趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。  次に、経済関係罰則整備に関する法律廃止する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  この法律案は、最近の経済事情等にかんがみ、経済関係罰則整備に関する法律廃止しようとするものでありますが、これに伴い、同法に規定する団体のうち、その役職員にかかる贈収賄罪規定を存置すべきものと認められる日本航空株式会社電源開発株式会社及び商工組合中央金庫の三団体については、この法律案附則において、それぞれの関係法律改正して、所要の規定を設けようとするものであります。  まず、経済関係罰則整備に関する法律廃止についてでありますが、この法律は、昭和十九年二月各種経済団体役職員にかかる贈収賄等に関する統一的刑罰法規として制定されたものであります。しかし、その後、戦後における経済情勢及び社会情勢の激変に伴い、昭和二十二年十二月法律第二百四十二号をもってこれに大幅な改正を加え、自後、この法律の別表につき数次にわたる一部改正を経て今日に至ったものであります。しかして、この法律がその目的としたところは、制定当初においては、主として戦時経済統制の円滑な遂行に寄与することに、また、戦後においては、主としてわが国の再建に必要な経済秩序維持等に資することにあったのであります。この間、わが国経済は、年々回復に歩みを重ね、特に、最近におけるわが国経済情勢及び社会情勢は、戦時及び戦後におけるそれと全くその様相を一変するに至ったと申しても過言ではないのであります。このような事情から、現にこの法律中に規定されていた各種経済団体のうち、相当数のものが、すでに消滅し、あるいは本法から削除されており、今日においては、もはや、各種経済団体役職員にかかる贈収賄等罰則をこの法律によって統一的に規定する意義は、ほとんど失われたものと認められ、この法律は、おおむねその所期の使命を果たし終わったものと考えられますので、このたびこれを廃止しようとするものであります。  次に、この法律案附則規定した日本航空株式会社法電源開発促進法及び商工組合中央金庫法の各一部改正について御説明申し上げます。  前述のように、経済関係罰則整備に関する法律廃止することとするのでありますが、この法律中に規定されている日本航空株式会社電源開発株式会社及び商工組合中央金庫の三団体は、いずれも政府から相当額の出資を受けて重要な国の施策に関する業務を行なうものとして、高度の国家的または公益的性格を有するものであります。しかも、これらの三団体は、主としてこのような特殊的性格に基づいてこの法律中に規定されたものと考えられるのでありますが、他方、この三団体とその組織及び機能において類似すると認められる各種会社等については、現にこの法律とは別に、それぞれの関係法律中において、その役職員にかかる贈収賄罪規定を設けているのが通例であることにかんがみますれば、これら三団体については、経済関係罰則整備に関する法律廃止すると同時に、それぞれの関係法律改正して、これに右と同様の罰則を設けることとするのが相当と考えられるのであります。したがって、日本航空株式会社法電源開発促進法及び商工組合中央金庫法の各一部を改正し、これらの団体役職員に関する贈収賄罪規定を、それぞれ当該法律中に設けることといたしたのであります。  さらに、この法律案附則に、経済関係罰則整備に関する法律廃止前にした行為に対する罰則適用については、同法の廃止後もなお従前の例による旨の経過規定を設けることとしている点について御説明申し上げます。各種行政取締法規に見られるようないわゆる行政罰則は、その制定または改廃が、通常、経済情勢または社会情勢推移等に応じて行なわれるものであり、たとえ罰則廃止されても、その廃止前になされた違反行為の可罰性に関する評価そのものには何らの変更がないと考えられること等の理由により、その罰則廃止するに際しては、廃止前にした違反行為廃止後もなお処罰するものとするため、罰則に関する経過規定を設けることが通例となっているのでありまして、このたびの経済関係罰則整備に関する法律廃止につきましても、事情は全く同様と考えられますので、右のような経過規定を設けることといたしたのであります。  以上が経済関係罰則整備に関する法律廃止する法律案趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  6. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、津田刑事局長
  7. 津田實

    政府委員津田實君) 刑法の一部を改正する法律案逐条説明を申し上げます。  まず、「第四十五条後段中「確定裁判」を「禁錮以上ノ刑二処スル確定裁判」に改める。」この改正は、刑法第四十五条後段併合罪となる罪の範囲を、禁錮以上の刑に処する確定裁判があった罪とその裁判確定前に犯された罪とに限るものとしようとするものであります。  元来、数個の罪について訴追された被告人に対して有罪裁判をする場合に、一罪につき一刑を科する原則をとるならば、犯罪の数だけの有期自由刑を併科することとなって犯人に過酷な結果を来たし、また、死刑死刑無期刑無期刑を併科することとなって刑の執行を不能ならしめる等、不当な結果を生ずることとなるのでありまして、諸国の立法例においては、このような場合には、併科主義を緩和して、後に述べますいわゆる吸収または制限のある加重主義適用し、数個の罪の全体を評価して一刑を科することとしているのであります。  わが刑法においては、確定裁判を経ない数個の罪を同時に審判して有罪告知をする場合は、これを第四十五条前段の併合罪として、これに科すべき主刑につき次のような原則によっているのであります。  第一に、いわゆる吸収主義に関しましては、(1)一罪について死刑に処すべきときは、他の刑を科さない(第四十六条第一項)。(2)、一罪について無期懲役又は禁錮に処すべきときは、罰金及び科料以外の他の刑を科さない(第四十六条第二項)。  第二に、いわゆる制限のある加重主義に関しましては、有期懲役または禁錮に処すべき罪が二個以上あるときは、その最も重い罪の法定刑一定限度で加重した刑期範囲内で一個の懲役または禁錮の刑を科する(第四十七条)。  第三に、いわゆる併科主義に関しましては、(1)罰金については、死刑以外の他の刑とはこれを併科し、罰金に処すべき罪が二個以上あるときは、その合算額範囲内で一個の罰金刑を科する(第四十八条)。(2)、拘留は、死刑及び無期懲役または禁錮以外の他の刑と、また、科料は、死刑以外の他の刑と、いずれも併科し、拘留または科料に処すべき罪が二個以上あるときも二個以上の拘留または科料をいずれも併科する(第五十三条)。  すなわち、わが刑法は、原則として、禁錮以上の重い刑に処すべき罪が二個以上ある場合には、併科主義を緩和する吸収または制限のある加重主義をとっており、数個の罪のうちに罰金以下の刑に処すべき罪がある場合は、原則として、併科主義によることとしているのであります。例外となる場合は、数個の罪のうち、一罪について処すべき刑が罰金以下、ただし、拘留を除きますが、であって他に死刑に処すべき罪が競合しているとき及び一罪について処すべき刑が拘留であって他に死刑または無期懲役もしくは禁錮に処すべき罪が競合しているときでありまして、この場合には、吸収主義をとっているのであります。  ところで、審判対象となっている数罪の間にすでに確定裁判が存在する場合は、その確定裁判があるにもかかわらずさらに犯した罪とその裁判確定前に犯した罪とを併合して全体として評価し、いわゆる吸収または制限のある加重主義のもとに一個の刑を科するものとするときは、不当に犯人に利益となることがありますので、わが刑法は、第四十五条後段におきまして、右の併合罪範囲制限し、確定裁判にかかる罪とその裁判確定前に犯した罪とを併合罪とするものとし、右の確定裁判後に犯した罪につきましては、これを別個に評価して別に刑を科することとしているのであります。  したがって、ある罪について確定裁判があった場合、その前後に犯された二個以上の罪が右の確定裁判のあった後に審判されるときは、これら二個以上の罪の併合罪関係は右の確定裁判によって遮断され、その犯人は常に二個以上の刑に処せられることとなるわけであります。  しかしながら、この場合、右の確定裁判の前後に犯された罪がいずれも禁錮以上の刑に処すべき非でありますときは、確定裁判後に犯された罪を別個に評価し、確定裁判前に犯された罪との間に吸収または制限のある加重主義を認めない点において、併合罪関係を遮断するかどうかに最も実質的な差異が生ずるわけでありますが、確定裁判の前後に犯された罪がいずれも罰金以下の刑に処すべき罪またはそのいずれかが罰金以下の刑に処すべき罪でありますときは、その罪の処断原則として併科主義によります以上、別個に評価するかどうかに実質的な差異はほとんどないわけであります。したがって、かように数個の罪の併合罪関係をそての間に確定裁判が存在することによって遮断することは、前後の罪がいずれも禁錮以上の刑に処すべきものであるときに最も実質的意義があるとすれば、このような併合罪関係禁錮以上の刑に処する確定裁判によって遮断することは別といたしまして、必ずしも罰金以下の刑に処する確定裁判によってまで遮断しなければならないというものではなく、かえって、罰金以下の刑に処する確定裁判によっても併合罪関係を遮断することとすることは、刑事審判手続及び刑の執行手続に複雑さを加えるものであり、また、犯人不利益を生ずる場合もあるので、この際、刑法第四十五条を改正して併合罪関係を遮断する確定裁判禁錮以上の刑に処するものに限ろうとするものであります。  近時、道路交通法違反事件は急激な増加を示しており、これに伴って、同法違反の罪によって即決または略式裁判罰金以下の刑を告知される者も急増しているのでありますが、このような裁判もそれが確定すれば刑法第四十五条後段確定裁判に含まれるので、数個の罪で訴追されたすべての事件裁判においてその調査を必要とするのであります。そのため、検察庁における捜査の段階においても、裁判所における審理の際にも、右のような確定裁判の存否について明確を期するため、その調査を行なっているのでありますが、元来この調査には相当の時間と手数を必要とし、その事務量は少なからぬ実情にあるのであります。そこで、右のような現状にかんがみ、刑法第四十五条後段につき、早急に今回のような改正を加えることは、現下における刑事裁判手続の迅速円滑な運用をはかる上においてもきわめて有意義であると考えるのであります。  なお、すでに公表されている改正刑法準備草案は、第六十三条におきまして、今回の改正法律案と同趣旨規定を設けていることを付言いたします。  次に、「第二百十一条中「三年以下ノ禁錮」を「五年以下ノ懲役クハ禁錮」に改める。」この改正は、最近の自動車運転に基因する業務過失致死傷事件及び重過失致死傷事件実情にかんがみまして、その法定刑に新たに五年以下の懲役を加えるとともに、法定刑禁錮長期を五年に引き上げようとするものであります。  まず、法定刑に新たに懲役刑選択刑として加える点でありますが、近時における自動車運転に伴う業務過失致死傷及び重過失致死傷事犯中には、傷害傷害致死等のいわゆる故意犯とほとんど同程度社会的非難に値するものが相当数見受けられるに至っているのであります。たとえば、相当量の飲酒をした上での酒酔い運転運転技量の未熟な者の無免許運転、はなはだしい高速度運転等のいわゆる無謀な運転に基因する事犯中には、きわめて軽度の注意を払えば人の死傷等の結果を容易に予見し、その発生を防止することができたのにかかわらず、これをさえ怠ったため重大な結果を発生せしめたような事案が見受けられるのであります。これらの事案は、故意犯に属するいわゆる未必の故意の事案と紙一重の事案であり、このように人命を無視するような態度で自動車運転した結果、人を死傷いたした場合も、単に故意犯でないとの理由で、禁錮刑ないし罰金刑によって処罰せざるを得ないことは、国民道義的感覚からいってむしろ不自然に感ぜざるを得ないというべきでありまして、この種事犯中きわめて悪質重大なものに対しては、懲役刑を科し得るものとすることが相当であると考えられるのであります。  次に、法定刑のうち禁錮刑と新たに加えるべき懲役刑長期をそれぞれ五年とする点でありますが、近時における自動車交通の発達に伴い、主として自動車運転に基因する業務過失致死傷及び市過失致死傷事案は、一般的にその過失態様程度のみならず、その行為の結果において重大なものが増加しつつあることにかんがみるとき、犯情の最も重大なものに対しても現行禁錮刑について定められた三年をもつって責任を評価することは、いささか軽きに失すると考えられるのであって、諸外国のこの種の事犯に関する立法例等をも参酌すれば、法定刑の上限をこの程度に引き上げることが望ましいと考えられ、これにより過失態様程度及び行為の結果に応じ具体的事案に即したより適切妥当な刑の量定をなしうることとなると考えるのであります。  なお、すでに公表されている改正刑法準備草案は、第二百八十四条におきまして、業務過失致死傷及び重過失致死傷の罪に対する自由刑として、今回の改正法律案と同様「五年以下の懲役もしくは禁錮」を規定していることを付言いたす次第であります。  次に附則でありますが、第一項「この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。」この項は、改正法施行期日を定める規定であります。  第二項「この法律による改正後の刑法第四十五条の規定は、数罪中のある罪につき罰金以下の刑に処し、または刑を免除する裁判がこの法律施行前に確定した場合における当該数罪についても、適用する。ただし、当該数罪のすべてがこの法律施行前に犯されたものであり、かつ、改正後の同条の規定適用することが改正前の同条の規定適用するよりも犯人不利益となるときは、当該数罪については、改正前の同条の規定適用する。」前の項によりますれば、改正法施行後に罰金以下の刑に処し、または刑を免除する確定裁判(以下この項におきましては、単に「確定裁判」と申します。)があった場合におけるその罪とその確定裁判の前及び後に犯された罪について、改正法による改正後の刑法第四十五条の規定(以下「新法」と申します。)の適用があることは明らかであります。しかしながら、改正法施行前に確定裁判があった場合におけるその罪とその確定裁判の前及び後に犯された罪について、新法適用があるかどうかは必ずしも明らかではないので、この項は、その本文におきまして、これらの罪についても新法適用することを明らかにしたのであります。したがって、改正法施行前に確定裁判があれば、上記の罪のうち、確定裁判の後に犯した罪が改正法施行前にあろうと施行後にあろうとすべて新法適用されることとなるのであります。これは確定裁判の前と後に犯された数罪併合罪としない現行法に比し、新法併合罪とすることによって一般的に犯人に有利な取り扱いとなり、また、新法取り扱いによれば刑事裁判の迅速円滑な運用をはかり得ることとなるので、このような取り扱いを認めることとしたものであります。ただ、特定の場合には、新法適用することが、改正法による改正前の刑法第四十五条の規定(以下この項におきまして単に「旧法」と申します。)を適用するよりも、犯人にとって不利益となることがありますので、刑法第六条の趣旨をくみまして、この項ただし書きで、対象となっている数罪がすべて改正法施行前に犯されたものである場合において、犯人に右のような不利益が生ずるときは、例外的に旧法によることとしたのであります。第三項「前項規定は、この法律施行前に確定した裁判執行につき従前の例によることを妨げるものではない。」この項は、前項規定が、数罪中のある罪につき罰金以下の刑に処し、または刑を免除する裁判改正法施行前に確定し、その他の罪の全部または一部につき改正法施行のときまでにまだ確定裁判がない場合に関する規定でありますので、その他の罪の全部または一部につき改正法施行前に禁錮以上の刑に処する確定裁判があった場合におけるその刑の執行につきましては、すべて従前の例によるべきものであることを念のために明らかにしたものであります。以上をもって逐条説明を終わります。
  8. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、田中武夫君。
  9. 田中武夫

    衆議院議員田中武夫君) 社会党提出会社更生法の一部を改正する法律案について、提案者を代表して提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。御承知のごとく、会社更生法は、株式会社の持つ社会的・経済的価値の重要性にかんがみ、窮境にあるが、再建の見込みのあるものについて、直ちにこれを破産・解体せしめることなく、その事業の維持更生をはかろうとするもので、昭和二十七年に制定せられた法律であります。会社更生法による更生手続開始申請件数並びに更生手続開始決定件数は、統計の整備せられている昭和三十二年以降今日まで、それぞれ五百九十二件、百八十件でありますが、ここ二、三年来、著しい増加傾向を示し、特に昨年は申立件数、開始決定件数ともに飛躍的に増加し、それぞれ百七十二件、四十七件にのぼっております。  言うまでもなく、会社更生法は、会社事業の維持更生をはかるため、株主、債権者等利害関係者の利害を公平・迅速に調整するものでありますが、更生手続の結果として、経済力の弱い中小企業、下請企業である債権者に深刻かつ多大の犠牲を押しつけておりますことは、現行会社更生法の制度上回避し得ないところであります。しかも、会社更生法は、その性格上経済不況期に最も多く活用せられるものであり、これら債権者のこうむる影響は、二重の意味においてきわめて重大であります。特に最近の経済情勢は、誤った高度経済成長政策の結果、ほとんど毎月企業倒産の記録が更新され、さきには東京発動機、日本特殊鋼、サンウェーブ等、近くは山陽特殊製鋼のごとく、相当規模の企業まで相次いで倒産する深刻な事態が生じており、そうでなくても苦境に立たされている中小企業・下請企業は、まさに危機に直面しております。こうした情勢の中で、会社更生法の不合理性はますます拡大せられているのであります。  すなわち、これら中小企業・下請企業に対しては、たとえ株式会社であっても、現実問題として、更生手続費用の予納、管財人の選任、更生計画樹立の困難性等の理由から、会社更生法適用されることはきわめてまれであり、会社更生法によって保護されるのは、相当規模の企業や大企業に限定されるのが実情であります。この結果、大企業は、会社更生法によって再建の方途が講じられ、時には会社更生法を悪用し、これに便乗することによって計画倒産さえ可能であり、そういう事例も多いのであります。このような場合、大口債権者である銀行、系列親企業等は、事前に相談を受け、被害を最少限に食いとめているにもかかわらず、無担保債権者である中小企業、特に下請企業は、その従属的関係から平素不利益をしいられ、その上、全く知らないうちに一片の通知もなく、更生手続開始申立が行なわれ、はなはだしい場合は申立の当日まで納品を余儀なくされ、しかも下請代金は更生債権として凍結されてしまうのであります。言うまでもなく、下請企業には、更生手続の終結まで下請代金の回収を待つ余裕があるはずはなく、金融機関からの約手買戻請求に応ずる力もないのでありまして、結局、何ら自己の責任によらずして自滅の道をたどる以外に方法がないのであります。  しかるに、会社更生法は、こうした点について、単に形式的公平を考えるにとどまり、経済の実態に即応した実質的公平については何らの配慮もいたしていないのであります。つまり、会社更生法は、下請企業の犠牲において大企業を更生せしめる機能を果たしており、子の犠牲によって親を助ける法律となっているのであります。このような会社更生法の欠陥に対しては、すでに法律制定直後である昭和二十八・九年の不況期にも強い改正意見がありましたが、最近ますます顕著に露呈されている。その不合理性は、もはや見のがすことのできないものがあります。  もとよりわれわれは、会社更生法を経済の実態に立脚した、合理的な姿で機能せしめるためには、会社更生法のあり方全般にわたり根本的検討が必要であると考えるものであります。しかし、当面最も緊急の課題である下請企業について保護措置を講じ、あわせて労働者の利益保護等をはかることが、まずもって必要であると考え、ここに本改正案を提出した次第であります。  次に、改正案の内容を御説明申し上げます。  その第一点は、更生手続開始申立書に下請事業者の意見を添付させるとともに、裁判所に対し、下請事業者の意見の陳述を求めることを義務づけることであります。すなわち、会社更生法適用は、下請事業者の存立にかかわる重大な問題でありますので、親企業の一存で決定されることなく、下請事業者の意見を十分反映させようとするものであります。  第二点は、裁判所は、更生手続開始申立が会社使用人の不当な人員整理を目的とするものであるときは、これを棄却しなければならないことであります。会社更生法適用は、ともすれば従業員の人員整理のための一方法として利用される危険があるので、現行法をさらに明確にし、これを防止しようとするものであります。  第三点は、裁判所は、保全処分にあたり、会社使用人の給料、その預金及び下請事業者に対する下請代金の支払いを禁止してはならないことであり、第四点は、更生手続開始中立の日前六ヵ月間及び当該申立の日から更生手続開始までの間に、会社が下請事業者から受領した給付にかかる下請代金及び会社使用人の給料は、いずれも共益債権とするとともに、会社使用人の退職金は、更生手続開始前に退職したときは退職当時の給料の六倍に相当する額まで、また、更生手続開始後に退職したときも、共益債権となる退職手当の額が退職当時の給料の六倍に満たない場合は、更生手続開始前の在職期間にかかる退職手当の額をそれぞれ共益債権とすることであります。これらの点は、本改正案の中心をなすものであり、保全処分に制約を課することによって、下請事業者の連鎖倒産を防止するとともに、下請代金、労働者の賃金、退職金について、共益債権とされる範囲現行法より一段と拡大し、下請事業者、労働者の利益を保護しようとするものであります。  第五点は、過怠更生罪の新設であります。御承知のとおり、破産法には過怠破産罪の規定がありますが、会社更生法にはこのような規定は設けられておりません。しかし、明らかに経営者の過怠により企業を危機におとしいれ、関連下請事業者や労働者に多大の犠牲と損失を与えた場合、これを放任することは社会正義に反すると思うのであります。かような見地から当該経営者の社会的責任を追求するとともに、会社更生法悪用による経営責任の回避を防止し、あわせて一般経営者の倫理感と責任感を自覚せしめる意味において、過怠更生罪を設けたのであります。  以上、簡単に提案理由及び改正の要旨を御説明申し上げましたが、親会社の会社更生法適用の陰に泣く多くの中小下請事業者を救うために、何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛同くださるようお願い申し上げ、提案説明を終わります。どうもありがとうございました。
  10. 石井桂

    委員長石井桂君) 以上をもちまして、提案理由及び逐条の説明は終わりました。  三案に対する質疑は、後日に譲ることにいたします。     ―――――――――――――
  11. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、売春防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案については、さきに決定いたしましたとおり、本日、松原西村、前田、三参考人に御出席をいただいております。  一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ、わざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。何とぞ本案に対し忌憚のない御意見を承りたいと存じます。  なお、時間の関係で、御意見は十五分ないし二十分程度でお願いしたいと存じます。  それでは、松原参考人よりお願いいたしたいと思います。
  12. 松原一彦

    参考人松原一彦君) お招きをいただきました松原でございます。私は、この法案が国会にかかった当時の政務次官でございまして、すこぶる深いくされ縁があるわけでございまして、今日まで関係いたしております。そういう昔のことを思い出しながらお話しを申し上げたいと思います。  どうも、この法案は社会一般の誤解を受けておりまして、ざる法などといわれて、非常に評判が悪いのでございますが、もともと、この立法の趣旨は、婦人の人権擁護の立法でございまして、婦人処罰法ではないのであります。男尊女卑の国における長い古い伝統の悪習から婦人を守って、婦人を解放し、婦人に新憲法下の自由をば与え、かつその権利を保護しようというためにできた法律でございまして、売春婦を処分するという法律ではないのであります。ややもするというとそれが誤解せられて、売春婦を処分することのみに急なような意見が方々に出ることはすこぶるおかしいと思うのであります。しかし、いま、その当時と今日は、すでに十年近くを隔てて事情が変わっておりますから、考え方が変わってもいいと思います。また、同時に、反省時期にはまいっております。改正があってけっこうでございます。  この改正案の第一は、第五条を改正して、勧誘行為に対する、これを受けた者をば同様に処分しようというものでありますが、これは基本的にはけっこうであります。というのは、売春行為といったようなものは、一方的にできるものではない、男女両方あってできるものであり、むしろこれを強要するのは男の側であります。女の側は、むしろいままでは強制されておった。おとりになって、ヒモがついて、おどかされておるという状態であったのでありますが、それが、最近では、解放せられたる婦人の無自覚から、これをいいことにして、自分の安易な職業にしようとする傾向が非常にふえております。これが新しい現象であります。昔は、かごの鳥であって、赤線の中にとらえられて非常に気の毒な状態であったのでありますが、解放がきき過ぎた、自由にした結果は、大いにのさばり回って、ただいまでは、一般的に非常に女性の側の性的な反省が乱れておりまして、これほど楽な商売はないといったようなことに変わりつつある。その結果として、いろいろな現象がただいま世上に起こっております。そういう意味から申しましても、女性に対してもっと反省を求めるのはけっこうでありまするが、同時に、男の側でもこれは大いに反省しなきゃならぬものがある。もともと、新憲法に性的な差別のあるべきはずがないのでありますから、男女両罰という考え方は当然だと思います。さような意味におきまして、この勧誘行為に応じたる男性側をも同時に処分しようとする考えの基本に賛成であります。  また、第六条の改正が、これに進んで応ずるのみならず、注文をつける。たとえば、遊客が旅館等におって、番頭などに「女をさがして来い」といったようなこういう行為をすることに対しても、これは男の側を少し手きびしくとがめてよろしい。それがある間は、この風俗立法はなかなかもって効果をあげられません。さような意味におきまして、私は基本的にはこの改正案に賛成であります。立法のテクニックについては、こまかなことが次の参考人からお話がありますから、申し上げません。  婦人補導院の補導期間をば二回に限って更新するという案も、これも賛成であります。というのは、私ども最初この法案を立てるときに、二年くらいならば補導期間があっていいというふうに考えたのでありまするが、本罰が第五条で六ヵ月となっております。罰則が六ヵ月であるのに、補導期間をばその四倍もつけるということはよくないという当時の議論で、これは六ヵ月となっておるのでありますが、御承知のとおりに、六ヵ月ではどうにもなりません。六ヵ月間に、からだのすみずみまで悪習慣が身についた娘たち、しかも知能は概して低いのであります。低い知能の娘たちの悪習慣が六ヵ月間ぐらいの補導でもってよくなろうはずはないのであります。それも、ただいまの実際面では、五ヵ月目にはもう出られるといったようなふうな考えを持たせまして、六ヵ月問いいかげんにごまかしてさえおれば解放せられるといったようなふうに扱われてまいっておるように思われます。これを二回に限って更新して、一年六ヵ月間は更新することができる。しかし、これに対しては適当なる考慮が払われて、当該地方裁判所においてそれを許した場合においてのみできるといったような用意がありまするので、これもけっこうだと思います。  私は、概してこの改正案の趣旨に賛成いたすものであります。ただし、さきにも申し上げましたが、いまから九年前の社会事情とは今日ひどく違っておりますので、当時は、婦女子の解放が急であって、赤線をつぶしてかごの中から鳥を出すということばかりが非常に急がれましたのでありまするが、その解放せられたのが、冒頭にも申し上げましたとおり、性道徳を無視し、人としての尊厳をみずから捨てて、そうして無恥な行為をば平然として街頭にさらし、そうして安易なる生活方法としてこの行為を選ぶようになっておる現状は、私は大いに憂うべきものであると思うのであります。これをどうするのがよろしいか。この対症療法は、単なる一片の法律でおさまるものではない。刑罰をもって臨んで片づくものでもない。これは、政治全体を通して、特に教育あるいは社会生活における保護の立法等、あるゆる面から考慮して、そうして人間性の自覚をもう一ぺん深く持たせることであり、文化的な社会の単位をぐいと引き上げることである。それには、単なる刑法をもって威嚇してできるものではないのでありまするから、根気よく社会全体の愛情のある措置によって政治全般の上から日本国民の特に弱き女性に性道徳の自覚をすすめ、そしてさようなことをしなくっても生活ができ得るだけの保障を与えなくてはならぬものだと思います。教育面においても、宗教面におきましても、文学面におきましても、芸能、すべての方面から考慮して、この際大きに立ち直りをさせる手段を講じたいものだということをふだんから考えておるものでございます。  以上をもって、簡単でございまするが、お答えを申し上げます。
  13. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、西村参考人にお願いいたします。
  14. 西村好江

    参考人西村好江君) 婦人相談員の西村でございます。売春防止法の一部を改正する法律案の御審議にあたりまして、参考意見を申し上げ、かつ、実情を申し述べる機会をお与えいただきましたことに対しまして、深く感謝申し上げますとともに、厚く御礼を申し上げる次第でございます。  まず、改正点の希望を申し上げます前に、本法施行後八年を経過いたしました最近の実態、特に保護更生面の実情を少しくお話しをさせていただきたいと存じます。  まず、第一に、売春をさせる側も、売春婦それ自体も、その形態が著しく変わってきたということでございます。御承知くださいますとおり、コールガール・システム、結婚相談所、観光案内等を看板といたしました売春の周旋等がそれでございまして、これなどは相当悪質で、かなり多額の手数料などを取って業として生活をいたしておるわけでございます。また、一面、暴力団などの資金かせぎに、家出娘とか食堂につとめている婦女子を甘言や暴力をもってその支配下に入れたりいたしまして、たとえば、かせぎの悪い者や、グループになじまない者、そういうのがあるわけでございますが、そういうものは地方に売り飛ばし下りする等、非常に悪質な人身売買の傾向も見られておるわけでございます。他面、地域的の変化と申しますか、住宅街などにおきましては、最近、先生方もよく御承知のとおりに、アパートが激増してまいりまして、そのアパートに一人住まいをして、そして、街に出たり、アパートに男を辿れ込んで、単独で自営の形態をとっているというものが目立ってふえてまいっております。こういうことは、その地域の環境を非常に悪くいたしますし、ひいては青少年にもまずい影響を与える結果と相なっていると思われるのでございます。また、盛り場などで申しますと、各種の風俗営業関係が売春の取引の場所に利用され、その上、今度、盛り場の周辺にいるボーダー・ライン層の主婦や娘さんなどのしろうとがお小づかいかせぎに売春をやるというような様相も見られ始めておるわけであります。そういうのがその後に起こった一つの特徴のあらわれではないかというふうに考えられるわけでございます。  それから要保護女子、つまり売春婦でありますが、要保護女子の目立った変わり方ということについて申し上げますと、非常に知能が低下したということでございます。たとえば、赤線廃止当時は、平均のIQが八〇から八五という数字が示されておったわけでございますが、現在では五〇から六〇という非常に低い者が目立っております。これはどういうことかと申しますと、結局、りこうなのは公衆の目に触れないような方法で売春をしているわけであります。法律の逆に、公衆の目に触れないような方法で売春をしている。知能の低い者は、結局は、泳ぎ切れないで網に引っかかって検挙され、再犯を繰り返す、こういう結果に相なっております。もちろん、その対象者の大部分は経済的理由によるものが多いのでございますが、このごろ特に気になりますと申しますか、多くなったと申しますのは、精神病質者というか、異常性格者というか、とにかく本人自身に問題を持ったものがふえてきておるということが言えるわけでございます。これはたいへん多い数でございます。したがいまして、この新しい事態に対して何とかしていただく方法をお立て願う時期が来ているのではないか、こんなふうに考えられるわけであります。  それから次に、本日の目的でありますところの改正法律案について、実情に照らしながら私どもの希望する点を述べさせていただきたいと思います。  第一にお願い申し上げたいことは、この法律の手直しということは三十五年ごろからしばしばいろいろな意味でお願いをいたしてまいりましたけれども、そのつどみんな流れてしまいまして、第一線におります婦人相談員の私どもはいつも失望を重ねてまいってきているわけであります。きょう御審議くださいます改正案は非常に実情に即したものでありますので、この成立によってかなり保護更生の目的が達せられると私どもは期待をいたすわけでございます。したがいまして、これを御推進願い、成立さしていただくことを最初にお願いを申し上げたいと思います。  その第一点の、先ほど松原先生も触れていらっしゃいましたが、勧誘に応じた者を一定の場合処罰すること、つまり、五条違反の相手方の処罰ということでございますが、これはもうすでに法の盲点が映画などですっかり周知されてしまいまして、最近では逆に買うほうの相手から勧誘される、男から勧誘されるという例がふえてきております。この場合でさえも、逮捕されるのはやっぱり女で、男の人はそのままで帰されてしまいます。これは、更生に大きなマイナスの面を与え、常に私どもが対象にしております女の子はこれに不服を申し立てております。「なぜでしょう先生。一緒につかまったのに、ちょっと連れて行かれて、私ばかり取調べられる。そうして検察庁に送られる。男の人は何でもなくて帰される。これが誘ったのだと逆に言われる」と、こういう不服をしょっちゅう聞いております。この点からも、五条違反の相手方のほうの特定の場合に何かの手を打っていただくということが私ども第一線の婦人相談員がぜひお願い申し上げることでございます。そこで、ある県でございますが、男から勧誘された場合は起訴の対象にならないという見解をとっているところがあります。起訴しなかったらば、裁判にもなりませんし、したがって、補導処分の言い渡しも受けられません。ついにかなり悪質な常習の売春婦でも矯正する機会さえも与えられないというような結果が出てきております。ぜひこれをお含みくださいまして、五条違反の相手方に対しては何とかお考えいただきたいと重ねてお願い申し上げます。  それから第二点の、売春の周旋を依頼した者と周旋に応じた者を周旋の助長行為というようなことで処罰の対象にされていること、これはまたたいへんけっこうなことであると思います。  それから第三点、ヒモ及びすべて売春の対価によって生活を維持している者やそれによって利益を得ている者を処罰の対象とされていること、これも非常に大きな前進でございます。このヒモの問題につきましては、少し、簡単に申し上げたいと存じます。私どものように地面をはって仕事をしております者でないとなかなかわかりませんで、りっぱな先生方でいらっしゃってもやはりこの実態というものはむずかしかろうと思いますので、少し述べさせていただきますが、最近の一つの例で、ヒモのためにどうしようもなくなっちゃったということがございます。  かいつまんで申し上げますと、山の手のほうの中流の家の娘でございます。両親が健在で、兄弟はみな大学を出ております。本人は、本人自身に何らかの問題があって、中学を出て近くの製薬会社の女工さんになりました。で、その勤務先をけんかでやめちゃって、うちでぶらぶらしていると勢い映画館に行く。映画館で見ているうちに、暴力団の背景のある男とできちゃったわけです。そうしますと、その生活の資金というのは、あげてその女の子がかせぐわけです。旅館に一日泊まったら、幾らと取られるでしょう。ドヤでさえでも四百円、五百円と取られます。普通の旅館だったら、たいへんなもので、二千円とか二千五百円とか取られる。この金を女が売春でかせぐわけですが、雨が降れば売春はかせげません、表で突っ立つことができませんから。そうすると、女の実家に行きまして金をゆするわけです。つい昨日、実はこれで困っている親から話が出たものですから、私聞いたのです。ゆすり始めて一年間のうちに大体百万円をだましたりおどしたりで引っぱり出しているわけです。そして、一方、女は売春を続けておりまして、その間に二、三回の検挙がありまして、ついに三十九年の六月ごろ補導処分の言い渡しを受けまして補導院に収容されました。私も、自分の受け持ちでございますから、しばしば補導院に行ってよく話もし合い、それから親とも話をしたわけでございますが、親のほうは、「あの内縁の亭主、ヒモとの関係を切ってしまわなければうちの娘はとっても更生できないのだ」と言っておりましたので、「そのとおりだ」と私補導院へ行きまして、「どうかあの男が来たら女に合わせないでほしい」と言ったのですが、「内縁の夫と言って来た者に対しては会わせないわけにいかない」ということで会わせておったらしいのです。時の経過を見ておりましたところが、とてもその女は別れる意思なんかないのです。別れろなどと言おうものなら、同室の女の子の髪の毛を手に巻いて引きずり回す。ここにもそれを見ていた婦人相談員がおりますけれども、そういうことで、とても別れることはできそうもない。男のほうは、出てくれば資金源になりますし、いろいろな複雑なやくざの関係があるものですから、とても別れさせられない。そうしているうちに、どこをどうしたのか、事実そうなったのでしょうけれども、すっきりした洋服を着て補導院にやって来て、会わせてくれと。面接には必ず補導院の教官が立ち会いますが、立ち会ったその補導院の教官が感心するほどペラペラ言ったわけです。「自分は彼女にかわいそうなことをしてしまった。だから、出たら彼女を引き取って二人でまじめに暮らします」ということを言っているのです。別に教官も実態調査しておりませんから、それはそうかと思ったんです。それで、私が参りまして、退院も近づくからどういうふうにしたらいいか、私よりも教官は明け暮れ起居をともにしておりますから、私よりも知っているから、教官の御意見を伺いたいと言いましたら、「どうでしょう、先生、毒には毒をもって制するのがこの場合一番いいのではないでしょうか」という意見でございました。「男は更生しているのですか、もう暴力団をやめておりますか」と言ったところが、「もうやめている、非常にはっきりよくなったと見える」というお話でした。それから私はさっそく実態調査を始めましたところが、これが、渋谷のほうの、名前を申し上げたらわかりますが、ある大きな風呂屋さんのボイラーマンに住み込んでおりました。そこの夫婦がわりめいに大事にしまして、ばかに口がうまいし、上手なものですから、すっかり取り入っちゃったわけです。「自分の妻はいま田舎に行っているから、今度帰って来たらここへ迎えたい。仲人はかくかくしかじか」ということで、私が知らない間に仲人になっておったようです。それもいいと思いました。何でもいい。それでいよいよ私見に行きましたところが、その風呂屋の主人夫婦が持っているアパートの一室を借りまして、そこにテレビ、三面鏡台から洋服だんす、すべて新婚家庭のようなものがそろって、日当たりのいい六畳の部屋です。そこでその男は一生懸命にやっておりましたから、私も、それはよかった、よかったらひとつ一緒にしましょうということで、退院のときには私とその母親と一緒に迎えに行きまして、内縁の夫である者もしゃっきりとしたかっこうで迎えに来ました。あとで八王子の町で食事をさせながら懇々と言い聞かせまして、幾ばくかのお金を母親が与えて、そしてそこへ送り込みました。二人の生活が始まって、これは成功したケースだと思って、私は鼻高々とどこかへ行ってしゃべりましょうと実は思っておりました。  そうしましたら、二週間ぐらいでもう男から「女がふて寝をして起きないから、来て起こしてほしい」とかいろいろ言ってくるようになり、とうとう二ヵ月ぐらいで出ちゃったんですね。出ちゃいまして、そうして三ヵ月くらいにつかまって、補導処分で補導院に来ました。どうしたんだろうと泣いても泣き切れないと私は思いました。理由がわからないんです、どうしても。それから、まあしようがないと母親と相談しまして、でも男だけでも更生してくれればいい、何も二人おっこちるのが能じゃないんだから、一人だけでもよくなってくれればいいんだからと思っておりましたうちに、五月の一、二、三日とたて続けに男が女の家へゆすりの電話をかけました。私は、連休が続いておりまして、やっとこさで五日目かに出ましたら、母親がまっさおになって飛んで来ました。「先生、もうあの風呂屋にいないでしょうか」と言うものですから、「さあどうでしょうか」というわけで、すぐに飛んで行きましたら、おりません。一ヵ月ほど前に飛び出して、近所じゅう風呂屋の名前で借金してどこかへ行っちゃっている。今度、ゆすり、たかりがまた始まったわけです。  それで、私それに対して思いますのに、どうしたって飛び出さなきゃならない理由もわからなきゃ、理由もないんです。二人で住み込んでいれば、四万五千円くれているわけです、口も預けて。普通の人だったら普通に生活のできるはずですけれども、それができないほどあの人たちは一ぺん落ちた道から足が洗えないのと、それから仕事に対する粘着力も、それから普通われわれがやる家庭生活、普通の社会生活が営めない。これはほんとに重大な問題があるし、それから男はとにかく女をつかまえておけば食べていかれるんです。どうしたって食べていかれます。もうこのところ、一体どうしたらいいんだろうと手のつけようがない。その母親は、「あのヒモと縁が切れたら、あの娘はまあばかではあるけれども、自分の手元に置いたら、何とか更生させられるんじゃないか。あるいは、先生からコロニーにでも入れていただいたら。そういうふうにできないんならば、とても私は一生戦々恐々として安心して暮らしていることもできない」と言って昨日私のところへ泣いて来ました。私は本日のこのことがきまりましたのが昨日なのにもかかわらず、この母親と一緒に実は歩いておりました、どうしたらいいんだろうかと思って。  これは私がきわめて悲壮にものを申し上げておりますけれども、全国の婦人相談員が全部こういうケースを持って、どうしたらいいだろうというふうに困っておるわけでございます。こういう点からも、何とか本法におきまして内縁の夫であるところのヒモの処罰をお願いができたらまことにありがたいと考えるわけでございます。  それから次に、業務、雇用関係の影響力を利用して売春をせしめるもの、たとえば、バーのドリンク制によって間接的に売春のピンはねをしている者や、貸し付けのこげつきでございますね、それの責任取り立て制というのがあるわけです。この責任による取り立てと申しますのは、取り立てがうまくいかなければ売春をいたします。それで自分が立てかえてしまいます。これは全く売春を助長するようなものでございますので、その悪循環のために売春を繰り返すという例もしばしば見受けられますので、ひとつこのことも取り進めていただきたいと思います。  それから第四点は、変形による管理については、冒頭に申し上げましたとおりでございますので、これも原案のとおり御推進をいただきたいと思います。  それから第五点の補導期間の延長、これは先ほど松原先生からも賛成の御意見がございましたが、六ヵ月では生活指導が精一ぱいでございまして、とうてい職業指導をなすわけにいかない。したがって、出てきた、やった、つかまったと、こういうことの繰り返しが行なわれております。しかも、性病の治療などということはとてもできません、半年では。治療の途中で出てくるということでございます。したがいまして、一つの大きな目的であるところのヒモとの縁を切ることもおぼつきませんので、すべての面でぜひともこの更新による期間の延長を原案どおりお願い申し上げたいと思います。  それから蛇足でございますが、本法以外のことで私はもう一つお願い申し上げたいことがございます。と申しますのは、非常に重要なことでございますが、私どもの身分でございます。婦人相談員は、法律では、「都道府県は、婦人相談員を置かなければならない。」「市は、婦人相談員を置くことができる。」と、こういう義務設置と任意設置の二通りございます。そこで、四百七十二名の婦人相談員中、任意設置になっておりますのが約半数の二百五十八名もございます。身分的に非常に不安定でございまして、全国大会のつど義務設置に法律改正してほしいということを要望し続けてきたわけでございますが、ついにそれの実現を見ないでおりますうちに、一つ心配のことができました。それは、今年の四月に、御承知くださいますとおり、地方自治法の一部改正ということがございまして、東京二十三区三十七名の婦人相談員が、福祉事務所もろとも身分まで区に移管されてしまいました。で、すでに義務設置であったものが任意設置になってしまったわけでございます。これは非常に身分的に不安なものになってしまいます。ただ、四月のことで、いま五月でございますから、いますぐどうということはないわけでございますけれども、いずれ近い将来に区会議員が推薦する婦人相談員にとってかわるというようなこともございましょうし、それからそのほか仕事の面で各種のめんどうがもうすでにあらわれておるわけでございます。それから一面、婦人相談員の仕事というものは、いま国や都で言われておりますところの広域行政といいますか、というものによく似たものでございまして、一つのところにすわってなどおりません。きょう杉並にいたと思うと、あしたは新宿にいる。あした新宿にいたと思うのが、その次は渋谷にいる。こういう流動性の多いもので、特定のところに一つの壁の中におるということは決して仕事の面でプラスでないということでございます。この婦人相談員の三十七名が任意設置になったということは、売春防止法における一つの後退ではないかというぐあいに実は考えております。  このことと関連いたしまして、先だって、勤務態様全国調査というものをいたしました。非常勤でございますけれども、実際は常勤と変わりのない週六日勤務をしているものが約三分の一もあるわけでございます。そこで、この人たちは、これならいっそ常勤になったほうがいいんじゃないかという意見も出ております。そこで、ほんとうに仕事はつらいし、外に出歩かなければならないし、朝がけ夜がけの仕事でございますし、それに対しまして報われるところが薄いという現状でございますから、どうか勤務に見合うだけの予算の裏づけを何とかお願いができないものだろうかというふうに実は考えられるわけでございます。  時間に非常に限りがございまして、十分意を尽くしておりませんけれども、私ども婦人相談員の大多数は、法施行当初から再三しばしば申し上げておりますとおり、非常に困難な仕事に一つの使命を感じ、時の経過とともに仕事への強い愛着を持ち、そして毎日特殊な人たちの更生指導に励んでおりますが、最近のごとく非常に複雑なケースの指導に当たっておりますと、何かとんでもない特効薬はないものかしらとしばしば申しながら吐息をつきまして、深いため息を自宅まで持ち帰るというようなことがしょっちゅうでございます。したがいまして、せめて身分的にだけでも何とか安心して仕事ができるように何らかの方法で身分保障をお願いできたらと、私は全国の婦人相談員を代表いたしましてこの機会にとくと切にお願いを申し上げたいと思う次第でございます。  お礼とお願いを申し上げまして、私の公述を終わらしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  15. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、前田参考人にお願いいたします。
  16. 前田信二郎

    参考人前田信二郎君) 近畿大学の前田でございます。  京都府の売春対策協議会の会長をやらせていただきまして、長い間売春問題に、それだけじゃございませんけれども、つき合ってきたわけでございますが.この間なくなった近大総長の世耕さんが、「春情」という本を出しまして、売春防止法は必ず失敗すると言ったようでございます。それ以来、元総長とあまり仲がよくなくなりまして、売春問題が学校の中にまで持ち込まれてはいけないと思ったのですが……。(笑声)ところが、売春防止法というものが効果があったということは、これは赤線をなくした、公認の売春制度がなくなったという意味で大きな意義がある。むしろこれは人身売買禁止法としての性格を強く出そうというのがわれわれの当初の考え方でございましたのですが、何と申しましても、売春防止法というものが旧赤線を対象にしたので、現在は社会適応性がなくなってきた。業者から暴力団に業態が肩がわりし、しかも組織暴力団による組織売春と管理売春というものが潜在化しておったものが若干形をかえてあらわにあらわれてきた、こういう段階で、ざる法といわれた売春防止法改正がやはり必要になってくると思われます。ただ、売春問題に対してわれわれ男性はあまり関心がないし、おまえなぞ男性の敵だなどと言われて困っておるのですけれども、(笑声)ざる法であるというが、売春防止法ができたら売春が全部なくなってしまうというようなことは、一部の人は考えるかもしれませんけれども、かりに刑法ができたら犯罪が全部なくなってしまうというようなばかなことはフォイエルバッハ以外あるいは瀧川さん以外は考えないのじゃないかと思うのです。事実、選挙法があったって、選挙違反はなくならない。(笑声)ある限り違反が出てくる。法律というのはざる法だということを、いやというほど法律をやっております自分としては感じます。  そこで、お二人の参考人の方からいろいろと御意見が出たのですが、法律の立場から総論と各論に分けてお話し申し上げたいと思うのですが、これは売春防止法であって禁止法または処罰法でないという松原先生の意見、そのとおりでございます。禁止法でないという意味は、売春婦を保護更生せしめるという一つの大きな線と、それから業者、ポン引き、ヒモというようなものを規制するという二つの問題で、ちょうど、この行き方は、御存じのように、少年法に非常によく似ております。少年は、一応原則として保護処分にする。重い場合には刑事処分にする。しかし、おとなたちあるいは不良環境等によって少年が非行を犯した場合には、おとなや不良な環境を少年法または青少年条例等によりまして規制していくという二通りございます。ですから、売春防止法改正は、あくまでも少年法と同じような形で、社会の犠牲者である者をさらに法律特に刑罰の犠牲者にしてはならないというふうに思いますので、その線を守っていきたいと思います。  つまり、売春事犯として考えられますのには、四つのタイプがございまして、私の考えます四つの類型は、まず、売春のじか引き犯という売春婦それ自体の行為、売春の実行行為。それから周旋犯、とれがポン引きであります。それから名前はおかしいですが、情義犯、これがヒモに該当いたします。それから管理犯といたしまして、これは業者でございますが、管理売春、この四つがございます。このうちの一番最初の売春婦のじか引き行為、売春行為というものは五条違反になりますのですが、これは一応原則といたしまして、六ヵ月の刑罰の執行猶予のその代用制度といたしまして補導処分を持つわけでございます。だから、補導処分という一種の保安処分的な性格、これは少年法の場合と同じような保護処分になりますが、これに重点を置いて、この点を曲げますと、せっかくの売春防止法が売春処罰法になってしまって、いわゆるマッカーサーが考えておったような人身売買禁止という線から少しずれてくるのじゃないか、まずそういうふうに思います。  それから組織暴力団の制圧によりまして、暴力団の資金源の断ち切り、遮断ということによって、いまのところ、賭博、パチンコ、それから興行、債権取り立て、その他いろいろございますが、売春が、案外売春業というものが表看板でないだけに、バーとかクラブとかキャバレー、そういうところでの売春というものがある程度公然と行なわれておる。これもやはり暴力団関係の企業といたしまして相当資金源になっておるわけでありますが、最近の警察当局の頂上作戦あるいは底辺作戦によって組織暴力団の制圧が効果を奏してきて、だんだんと売春の問題もむずかしくなってきた、こういうふうなことになるわけです。  そこで、もう一度繰り返しますと、売春をやるというものと、それから売春をやらせるという関係と、この二つがごっちゃにされているのじゃないか。売春をするという実行行為というものが、この売春防止法のどこをさがしましても処罰されておりませんね。ふとんの中まで刑法が立ち入ることはできないと申しますけれども、立ち入り調査、これは捜査の問題の刑事訴訟的な問題であるのか、あるいは、単に警察行政行為としての立ち入りなのかという点で警職法との関係で問題がありますので、犯罪でいえば窃盗なら窃盗した者はつかまりますけれども、売春行為自体という現場はなかなか押えられない。だから、要するに、予備または未遂の段階で第五条で勧誘行為が処罰されております。予備でございますね。「ちょっとにいさん、いらっしゃい」と呼ぶ。だから予備行為というわけにはいきませんけれども、(笑声)いわゆる予備で、そこで押えればいいわけなんですね。だから、これは結局実行という形に結びついてきます。何となれば、最近の東京都の都条例、それからそのほかの青少年条例を見ましても、あるいは迷惑防止条例等を勘案いたしましても、売春のチラシなどを配るという行為、これは、売春を処罰しないのに、チラシだけ配る行為は予備段階だから、これだけ処罰するのはいかぬじゃないかという意見がございますけれども、これ自身は独立した社会的な犯罪です。売春行為というのはやはり個人的な非行なんですね。その点がごっちゃにされやすいというわけです。  時間の関係で、総論はそれくらいにいたしまして、各論に入る前に、何でも処罰すればことがおさまるという応報刑主義というものは私は瀧川さんと意見が違うのですけれども、裁判官が有罪の判決をしてどっかにほうり込んでしまえばおしまいだというのでは、現在の社会問題としての売春はなくならない。だから、処罰するよりも、何とか更生させていこうというような考え方が、これは長い努力でございますけれども、これは国民の義務でもあると思うのです。社会環境、衛生、社会福祉、そういったものの関連がありまして、刑罰よりも、むしろ更生保護、法務省の問題よりも、むしろ文部省だの、労働省だの、厚生省だの、その辺の管轄の問題として大きな意義があると思うのです。  さて、議題に戻りまして、本日出されました売春防止法の一部を改正する法律でございますが、私はいろいろいままで裁判官なり検察官なりと話し合って考えたのですが、申し込みをするという男のほう、それから単純売春、第五条にあらわれてきます単純売春処罰論、これは、先ほど申しましたように、女の子というのは処罰してはいけないので、少年法と同じように、原則として、要するに、有罪をもってしても、六ヵ月の有罪判決、執行猶予期間を含めて補導処分に付する。だから、あとで申し上げますが、執行猶予期間中であるならば補導処分の期間を更新することができるというふうに考えるわけなんで、これは問題にはならないかと思うのですが、ただ、単純売春を処罰するということが特に女性側から多いという意見が不思議なんです。北と南と同じベトナムみたいなものですけれども、どうも婦人団体、地域婦人会なんかから見ますと、単純売春は汚らわしいから、彼女たちの陥った経過というのは御存じなくて、とにかくめかけとか売春婦が憎いというのは女性の本能かもしれませんけれども、そういう御意見は間違っておると思います。やはり、単純売春というものが、第五条違反でやっていける、いま申しましたような理論からやっていける。それに、単純売春を警察のほうでやかましくいうのは、これはヒモやポン引きなどの、さっき申しましたじか引き犯、情義犯、管理犯、それの捜査のきっかけにしようというような形でやられますと、婦人相談所へ行くような女の子がすぐ捕えられちゃって、婦人相談所ががらあきになって、更生保護ができなくて、要するに警察でしぼられてくる。出てくるのはたいていIQの低い者ばかり。賢い者はつかまりません。ばかですから、つかまっても、「あら、ちっとも知らなかったわ」といったようなことになっておる。証言をとったって、IQが低いですから、ちょいちょい証言は変わります。これは業者としては作戦がうまいです。知能の低いのをつかまらしていくら調べたって、供述に矛盾がしょっちゅう出てきます。それで法廷がひっくり返っちゃうというわけで、実際の法廷作戦などを考えましても、単純売春処罰論というのは実益がないと思うのです。  それから申し込みでございますが、申し込みの立証をお考えになったかどうか。私何も男性の味方だから申し込みの側のほうに回るのではない。(笑声)一身上の弁明をしておきますけれども、申し込みの立証をどうするのか。これは物証があがらないのです。申し込みをしたということをテープレコーダーか何かでとって、申し込んだじゃないかと。そうすれば、これはどうしても人証でいって、売春事犯がこうした形であとで申しますようにどんどん検挙されてきますと、参考人だけでいいのです。検察庁で、参考人でも、しまった――悪かったとは思いませんが、しまったと思う。良心の苛責にたえられないというのではありません、そんなことは。悪かったというようなことは決して思いません、男は。しまった、まずかったなと思います。だから、このまずかったというのは、やはり社会人ですから、これで会社に知れる、官庁ですと汚職になりはしないかな、これは首があぶないから売春をやめておこう、こうなりますから、参考人でけっこうなんです。  処罰へ持ってくるとなりますと、私少しおかしいと思うのは、両罰規定になると、やはり売春処罰法になるおそれがある。売買というのは、売るほうがプロなんです。買うほうはノンプロなんです。だから、プロとノンプロを同じます目にかけて両罰するというのは少しおかしい。警察のほうでも、これは婦人警官が多ければあるいはあれですけれども、大体、申し込みの相手方というものはいろいろな事情がありますから、そうだな、君、ほとんどのやつがやっておるのだからいいだろうというふうに、警察でも調書さえとればおそらく泳がしちゃうと思うのです。そういうことにもなりますし、裁判所でも、人証でございますから、物証があがらないから、巧妙な弁護士にひっかかったら無罪になっちゃう。むだ足を踏みます。ですから、プロのほうは残して、ノンプロの申し込みのほうは、一応売春事犯五条違反、六条違反の参考人として呼び出すだけで十分だ。私は刑法を教えていますけれども、刑罰というものは私はあまり好きじゃございませんけれども、やはり、改心させ、女を買うことはよくないのだ、かあちゃん一人でがまんしろ、こういうような足を大地に密着した常識論でもって解決したい。かりに私でも、処罰されるよりも、やはり参考人として呼び出されたらぎくっとすると思うのです。それは男性の諸君は皆さん同じだと思う。両罰規定というものは、これはちょっと無理じゃないか、こういうふうに思います。  それからその次に、「第七条第一項及び第八条第二項中「親族関係」を「親族、業務、雇用その他の特殊な関係」に改める。」というのがございます。「親族、業務、雇用」と、そこまではいいのですが、「その他の特殊な関係」というのは法律用語ではございません。僕と君とは特殊な関係だと言ったらどういうことか。検察官が起訴状を書くときに、特殊な関係ということを書きますと、弁護人というものは、「特殊な関係とは何か、検事立証してくれたまえ」と言うだろう。特殊な関係とはいろいろあります。セックスだけの関係じゃございませんから。だから、これを、「親族、業務、雇用」というふうなものとあわせまして、いまこちらからいろいろデータが出されたわけでございますから、重なるようでございますが、「身分または契約関係」というふうにしたほうがいい。正式な親族関係、あるいは正式な業務、雇用関係、こういったものでない、半契約的な、半就業的な、そういうふうな売春ですね、バーのホステスで、借金を取り立てに行ったら、借金を払ってくれないで、ややこしいからセックスを売ってしまう、そんな場合でもこれに該当できるような形で、「特殊な関係」というものははずしていただいて、「身分または契約関係」というふうなばく然とした形で出しますといいのじゃないかと思います。  それからその次は、第十二条中「人を自己の占有し、若しくは管理する場所又は自己の指定する場所に居住させ、これに売春をさせること」という現行法の条文を、改正案は、「いかなる方法によるを問わず、人に売春をさせること」に改める。これはべらぼうな法律でございます。「いかなる方法によるを問わず、」これを法律文言としたら、世界に名を恥じますね、日本人というのは。警察のほうはいいかもしれませんけれども、これは過失犯も入っちゃう、へたしますと。うっかりしておって、知らない間に売春婦を……これはいけません。結局、裁判所裁判官に聞きますと、「管理する場所又は自己の指定する場所に居住させ、」という「居住」というものの立証が非常にむずかしい。コール・ガール制度などあったり、あるいは街頭ガールですか、昔の銀座のステッキ・ガールとはだいぶ趣が違いますけれども、居住の立証がむずかしかったわけでございます。だから、私は、簡単に、ここの「場所におらせ、」ということばに一字だけ変える。そうしますと、「いかなる方法によるを問わず、」というようなべらぼうなことを言わなくても、おらせるという立証があれば、それは裁判所でも認定しやすいし、警察でも検察庁でも非常に楽になるのじゃないかと思います。これはつまり管理売春の問題でございますが、重ねて申しますと、「いかなる方法によるを問わず、」というふうなべらぼうな幅の広いばく然たるものは、これはやはり法の明確性――管理売春行為という行為のつまり違法性の明確な表示にはずれますから、この法案は憲法違反なんです。ですから、これをこんなふうにしますと、せっかくいま第七条、第八条中「親族関係」の改正をいたしまして、ポン引きやヒモ、特にヒモのこまかな規定を掲げたにかかわらず、十二条で一括されてしまいます。こういうことは、もう少し立法府の議員の方も法律を勉強していただきたいと、こう思います。失礼いたしました。  それから補導期間の問題でございますが、これは、先ほど申しましたように、私の意見といたしましては、補導処分は、刑罰の代用物じゃなくして、刑罰の執行猶予の代用物だと思うのです。ですから、執行猶予期間中であるならば、この補導処分の期間を更新することをやってもかまわないと、こういうことは最初からの持論でございます。たとえば、これにつきまして、西ドイツの保安処分のアルバイト・ハウス、これは労作処分と呼んでいますが、これは、初犯は二年で、再犯は四年でございます。それで、この間の刑法学会で、刑法改正の第一小委員会の意見でございますが、刑法改正草案の保安処分の規定が非常にルーズであるので、これをもう少し検討して考えたいと。その点で、売春防止法の補導期間を、一応原則としまして短期六ヵ月、長期二年、こういうふうに改められるそうでございます。一応、この案が熟して落ちつきそうで、大体西ドイツのアルバイト・ハウスと同じ期間をやる。長期二年というならば、一応、生活指導、職業補導、それから病気、それから男性禁断症状と申しますか、男がいないと寝られないという、男中毒といいますか、それもなおるだろう。こう思います。ただ、この場合には、補導処分が、もちろん仮退院制度などもできると思うのでございますが、こういう場合には、例のパロール・ボードと申しますか、仮退院審査委員会というふうなものをつくりまして、関係の機関及び学者、精神医学者が連絡をとる。現に、保護観察所だけでデータを握っちゃって、家庭裁判所で、もちろん少年の場合に少女の売春非行もございますが、少しも関係機関との横の連絡がないので非常に困っておる。どういう状況で更生されておるのか、ヒモがいるのかいないのか、こういうことが考えられずに、補導期間が終わってオートマチックに退院していくということはよくないというわけで、やはり仮退院も含めましてパロール・ボードというものをつくる必要があるのではないかと思います。  最後に、婦人相談所の更生保護の問題でございますが、これは京都でも三年ほど前に事件がございまして、警察が強引に婦人相談所に送り込んで、そこで取り調べを継続したいという形で、警察の出先機関みたいな形になって、人身保護法による事件が起こりました。私も立ち会いましたのでございますが、警察と婦人相談所との間の関係をメカニスティックに運営するためには、やはり警察官の取り調べのところやあるいは警察署内にも婦人相談所の出張所を設けて、警察官ではなくて婦人相談員が婦人相談所に説得して連れ込んでくるというようなことも必要と思います。そのほかいろいろ問題点はございますのですが、一応いまのような形に若干改めていただきますと、法律としての形が整い、捜査、検挙、起訴、判決、それから更生保護の実績というものがあがるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。  どうも御清聴ありがとうございました。
  17. 石井桂

    委員長石井桂君) 以上をもちまして参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  18. 藤原道子

    藤原道子君 きょうは、参考人の皆さま、御多忙中に御出席いただきまして、いろいろ御意見を聞かしていただきまして、まことにありがとうございました。  私どもも、売春防止法ができましてその後幾多の問題が起こりつつございます。どうかして売春防止法に対して、問題のあるところは改正して、実際に即したほうに改めたい。同時に、現行法すらあまり守られていない今の状態に対して、実は慣りを感じている面も多々あるわけでございます。で、私も売春審議会に属しておりますので、こういうことを申しましても、改正案を出しても現行法だってやれるじゃないかという意見が出る。それなら現行法をやっているかというと、なかなか男に甘いというのでしょうか、ごめんなさい、そういうことでなかなか思うようにいかない。で、私、売春防止法は大きな意義を持っていると思うのです。立法の成果が、とにかく売春は悪であるという大前提を規定したということは大きな成果である、こう思っております。ところが、先ほど来の御意見がございましたように、赤線を対象として立案されたものでございますから、赤線がすでになくなった今日では、大きく様相が変わっているわけです。新しい管理売春、これをどうするかということが頭の痛いところでございます。それとあわせまして、まあヒモの問題が、先ほど来のお説のとおりだと、こう思っております。  そこで、前田先生の御意見でございますが、何というのでしょうか、両罰論ということになると、なかなか思うようにいかないし、反対もございまして、かりに法案改正を出しても通らないと、その点を私たちはひとまずおいているわけでございますが、何としても男が勧誘――申し込みとおっしゃいましたか、申し入れですか、男の申し入れで行なわれる売春が圧倒的なんです、このごろ。
  19. 前田信二郎

    参考人前田信二郎君) 買春――春を買う、売ってくれ。春だか秋だか知りませんよ。(笑声)
  20. 藤原道子

    藤原道子君 春でも秋でもいいんですが、それが非常に多い。それが長い間の慣習といいましょうか、男の人の考えの中に、女はちょいとさむしいときのおもちゃにしていいんだ、こういう考え方が根強く残っているということにあると思う。それでかつて赤線へ通われた人でも、妻子のある方のほうが八〇%ぐらいですね。だから、最近売春防止法ができたから非行少年がふえる、こういう説もございまして、売春防止法廃止したほうがいい、こういう暴論さえいま一部には横行しているわけです。私は、そういうことはばかげたことで、売春防止法ができたから売春がふえるのだというふうには考えておりません。で、男の人が、旅のつれづれに、さむしいからということで、旅館などに泊まりますと、まず第一に、「おい、女はいないか」、これなんですね。こういうことは男の人にはまあ御自分に経験があるから申しませんが、周囲からそういうお話はよくお聞きになるだろうと思う。にもかかわらず、女だけが罰せられて、それで男の人はすぐ帰されてしまう。こういうことで、女がふてくさって、「何だ、男は帰されているじゃないか。なぜ私たちだけが罰せられるんだ」というようなことで、更生の面にもすなおについてきてくれない。これはもう婦人相談員の人もしばしば体験されていることだろうと思う。  そこで、私は、しろうと考えから申しまして、そういう場合に、先生は参考人だけでけっこうだ、こういうお話なんです。私もあえて罰せよとは申しませんが、参考人としても、参考人として呼ばれたようなことが発表されたらどういうことかと思うのです。あるいは、参考人として呼んだときには、家族が迎えに来なければ帰さないというようなことはできないか。奥さんが迎えに来たら、それこそ大きなおきゅうになる。それくらいのことはいまの法律でもできると思うのです。警察が真に売春は悪であるというような立場からお取り締まりに当たっていただけるならば、私は法改正をしなくても、そういうことでも、先生、参考人として呼ばれ、しかも名前が発表されるとか、あるいは家族が迎えに来なければ帰さないというようなことになった場合には、どうですか、大きなおきゅうになるでしょうか。とにかく、男の人が女を買うのはあたりまえだ、こういう考えからなくしてもらわなければ困るんですよ、私たちは。
  21. 前田信二郎

    参考人前田信二郎君) お答えします。  いまのは三点ばかりあったと思うのですけれども、まず、第一点の非行の問題なんですが、これは売春等処罰に関する法律が流産した昭和二十九年ごろから性非行が上昇しております。  世耕さんが売春防止法ができれば性犯罪がふえるぞと言いましたが、これはおかしいので、現在の青少年、大学生なんかに接しておりますと、セックスを金で買うというような考え方は全くございませんです。ギブ・エンド・テイク、同時履行の抗弁というようなことを言いまして、大江健三郎なんか書いているような青白いセックスでございますけれども、やはり金で買うというような考え方はないわけですから、売春防止法は性非行の増大とは全く関係がないと思います。  それから単純売春及び相手方の申し込みの問題等と関連いたしますが、六ヵ月の補導処分をやるよりも、実刑ならば平均二ヵ月から三ヵ月ということでございます。単純売春を処罰していきますと、再犯の場合にどうしても裁判所が――刑の処分には六つの処分がございます。一つは罰金執行猶予、それから罰金、刑の執行猶予、刑の執行猶予と保護観察、刑の執行猶予と補導処分、及び実刑。そうしますと、どうしても五条違反が再犯になると実刑になります。実刑になってまいると補導処分に入らない。裁判所というものは窃盗も牧人も売春も同じ判事が調べますから、大体軽いのです。だから、単純売春というものを強く推し進めますと、実刑のほうになってきまして、事実上保安処分というような効果は全く出てこないというので、そういう見方からしましても単純売春は私は逆効果だと思います。  それから男のほうの処罰の問題でございますが、これは東京都条例などからは洩れておりますけれども、観光業者や興行関係の業者たちの自粛規制ということが考えられていいのじゃないか。また、ゴルフ族等によりまして手の届かない高額で高ねの花をつんでいるという事実が非常に見られます。大体、観光関係や興行関係、それから暴力団のそういうような企業が、現金収入の多い、資金回転の早い事業を考えている。だから、観光業者等に対しましてむしろ業態規制をやったほうがいいのではないか。申し込まれたから出すという、男のほうの恥でございますけれども、よくそういうのが団体さんなどで、あるいはエロ映画を上映したあとで、シロクロを見せ、花電車を見せたあとで、それから実行に移ろうというのがございますが、やはりこれは観光業者等に対するやはり強い規制というものを考えていただいたほうが効果があるのじゃないか。  参考人の問題で藤原先生から御意見がございましたけれども、いまの刑事訴訟法では、参考人を帰すのに嫁さんを連れてこい、また、嫁さんのない場合だったらどうするか。おかあさんということになりますと、やはりこれは親族関係の勢力を利用して参考人を帰さないというのは刑事訴訟法上ゆゆしきことになりますので、やはり人権問題とも関連がございます。ですから、いま申しましたように業態の規制の方法というものを条例または関係法令によって強く言い渡すというような形のほうがいいのではないか。刑罰をふり回すよりも、文化的な説得、または文化的な規制の方法を積み上げていくということが文化国家の行き方じゃないかというふうに思います。
  22. 藤原道子

    藤原道子君 それで、前田先生は、ヒモの問題の処罰に対してはどういうお考えを持っているのですか。
  23. 前田信二郎

    参考人前田信二郎君) ヒモの処罰は、ヒモというものがどういうものであるかということを実は私もいろいろと知恵をしぼって、ヒモとは何か――どろぼうとは何か、殺人犯とは何かというような形で、ヒモというものを法律的に明確に定めようと思っていろいろ苦労してみたのですけれども、なかなかヒモがゆるくてつくれないんです。(笑声)それで、いまのここの改正案の精神には賛成なんです、ヒモの。第七条第一項、第八条第二項の「親族関係による影響力を利用して」という形ですが、これを「親族、業務、雇用その他の特殊な関係」に改めるその「特殊な関係」の部分だけを「身分または契約関係」というふうに改めますと、ヒモの身分、いわゆる情義犯と申しますか、事実婚をしておって、その事実上の妻に売春させる、これが一応ヒモでございますが、これは事実上は検察庁などに行きましてもヒモがガラ受けに来ております。つまり、ヒモのガラ受けが来ているのに、「検事、あれヒモだぜ」と言ったって、「いや、立証がむずかしいからなあ」と、こういうことですね。明らかにヒモである。ポン引きというのは、御存じのとおり、売春婦が三人おりますれば、ポン引ぎが二人ついて、ポン引きは一応六条でいけるわけですが、どうしてもヒモの規制というものが一番むずかしかったわけでございますが、こういうふうに私の意見のように改めていただきますと、ヒモの規制が非常にやりやすくなるというふうに考えます。だから、法律としての表現を使わないことには、警察でも「特殊な関係」の立証を求められた場合に、「特殊な関係」とは何か。いやらしい関係だと。いやらしい関係じゃわからぬ。性的関係だ。性的関係と言ったら、これは立証せいと言われてもいけません。だから、ヒモというものを積極的に規制しないで、いま言ったように改めますと、検察、警察のほうで非常に楽に検挙し、あるいは起訴しやすいというふうに思います。技術的な問題でございます。改正の法意見に対しましては、精神的には賛成なんですけれども、技術的にこれはどうも法律じゃないなと思いますね。「特殊な関係」というのは、これは感心しません。残念ながらこれは五十点あげられませんね。
  24. 市川房枝

    市川房枝君 関連して。いまのヒモの問題ですが、さっき西村さんからお話のあったヒモが内縁の夫というのが相当あるんですね。現在ではそれはどういうことになりますか、前田先生。
  25. 前田信二郎

    参考人前田信二郎君) つまり、いま、「親族、業務、雇用」の中の「親族」というものが、内縁関係でございますと、これははずされますね。ですから、「身分関係」ということにしますと、一応「身分関係」というのはばく然としておりますけれども、そういうふうに改めてもらえば内縁関係も入ります。「親族、業務、雇用その他身分または契約関係」というふうに改めてもらえば、内縁関係というものは出てまいります。最初は――ちょっと参考までに申し上げますが、ばかなことを考えまして、ヒモというのは、自分でも周旋いたします。ポン引きもします。事実上の妻に売春行為をさせたり、その相手方となるよう周旋する者、これがヒモなんですね。あるいは、積極的かつ常習的な事実上の妻の売春行為に寄生する者で、組関係、ぐれん隊その他暴力的な行為を常習する場合はこれをヒモとみなすと、こういう規定をつくったのですが、これは法律上の制定になりますと非常に通りにくくなってきますので、ヒモの行為がどういう形で、どういう行為をするかというふうに、第七条第一項、第八条第二、項の中の「特殊な関係」だけ削ってもらって、「身分または契約関係」を入れますと、無理しないで――ヒモをわれわれのことばで行為者類型と申しますが、フランスでは黒幕と言うのですが、そういうものを人間として出すよりも、行為及び身分関係で規制していくというほうが得策であると思いましたので、これはアンケ-トをとってやってみたんですが、そのほうがいいという裁判官、検察官の意見でした。
  26. 市川房枝

    市川房枝君 「親族関係」というのは、現在の法律でもありますね。親族の中に内縁の夫は入らないんでしょう。そうすれば、今度の改正でも入らないということになってしまいますね。
  27. 前田信二郎

    参考人前田信二郎君) いや、そうじゃありません。「親族、業務、雇用」は残しておくんですよ、そのまま。「親族関係」というものを、「親族、業務、雇用」というふうな形で、つまり売春の実態を踏まえた上で、それにプラス「その他身分または契約」というふうにしますと、内縁関係が入ってくる。あるいは、先ほどのように、焦げつきや何かの取り立てのときにやらした場合も、これも業務上の関係になって、それ自身が業務上の問題と言われなくても、その店との契約があれば、これは管理売春として、あるいはヒモとして規制することができるのではないかと思います。
  28. 市川房枝

    市川房枝君 「身分」の中に入りますか、内縁の夫というのは。
  29. 前田信二郎

    参考人前田信二郎君) はい、入ります。
  30. 市川房枝

    市川房枝君 そうすると、「身分」ということばが入ればいいわけですね、この中に。
  31. 前田信二郎

    参考人前田信二郎君) ええ。
  32. 藤原道子

    藤原道子君 西村参考人にお伺いしたいのですけれども、先ほど来の例としてお話しになったヒモの問題ですね。内縁の夫としてありますが、これは一年間に百万円も脅迫したというんですね、親から。そういう場合には、これは親のほうから申し出れば、暴力団として脅迫で逮捕できますわね。
  33. 西村好江

    参考人西村好江君) そうだそうでございますね。
  34. 藤原道子

    藤原道子君 親は後難をおそれて届け出なかった、泣き寝入りをしていたというのでしょうか。
  35. 西村好江

    参考人西村好江君) いろいろ理由はあるようでございますが、たとえば、最初のころは二人でやってくるわけです。女を使ってやってきて、そして自分は外に待っていて女を使う。そういうようなことがしばしばでございまして、うちが出してくれなければ、女の子が近所じゅう借り倒して歩く。脅迫めいたことというのは今度出てきたので、前には、脅迫というよりも、もう何かうるさくごちゃごちゃやって、そしてそこの娘と一緒に来るものですから、それがやはりうちの者から出さなければならぬというふうな一つの雰囲気といいますか、そういうふうなかっこうになっておったようでございます。それが今度初めて電話によるところのお金の要求が始まりましたので、どうしたらいいか、後難をやはりおそれておりますものですから、ちょっと電話をかけて知り合いの元検事に尋ねましたら、「それは当然脅迫になるし、黙って持っていけば奪取罪ということになるから、早くお届けなさい」と。しかし、おまえは今度会ったら承知しないぞとか、うちに火をつけるぞとか、そういう脅迫はいまない。「そういう脅迫がないのに警察に言ってもいいのですか」と言いましたら、「それはどういうやさしいことばでも、上手でも下手でも何でもかまわぬ、問題は金をよこせと言ったんだから早く届けなさい」ということですから、早く届け出るつもりでございます。  それからテープレコーダーにとっておけばいいということでございますから、私どもテープレコーダーにとるということをいたしております。
  36. 藤原道子

    藤原道子君 そこで、私は松原参考人と前田参考人にお伺いしたいのですが、先ほど来の西村さんの参考意見の中にもございましたが、私たち一番困るのは、補導院でも困っておるのですけれども、出所いたしますときに、内縁の夫としてヒモが迎えに来るんです。入っておる間にも、関係を保っていたいという気持ちから、しばしば面会に行く、差し入れをする、そうして情義をこまやかにすることによって女の意思をつないでいこう、こういうケースが多いわけです。明らかにヒモとわかっていながら、内縁の夫となれば、迎えるときに拒否することができないわけですね。そういうことで、せっかく補導院で骨折っても、また二たび三たび落ちていってしまうケースが一番多いと思う。これが一番困っておる。これらに対しては、何かいい意見がございますでしょうか。
  37. 前田信二郎

    参考人前田信二郎君) 答弁します。  これはもう警察や検察庁での問題だと思うのですけれども、この内縁関係を利用して差し入れしたりする場合、これはやはりねらい撃ちできると思うのですね。いままでは「親族関係」という条項だけでしたから、第一そこに身分関係というものの要するにヒモという形が明確につかめなかったというので、そういう場合はヒモの規制ができるのじゃないかと思うのです。やる気になればできると思います。  それから先ほども申しましたように、補導期間を、刑法改正草案の保安処分の検討で第一小委員会で二年間の補導期間にする。これはもちろん補導期間の更新も含まれるかと思うのですが、その場合に、仮退院等についての審査委員会で特にわれわれが強調したのは、ヒモとの遮断ということがなければ仮退院を許しちゃならぬ、また、満期の場合に出て来たらヒモが迎えに来る行為などは立証事実になるのでございますから、ヒモの規制とにらみ合わせていきますと、これが証拠になってくる、物証になってくるというふうに考えます。やる気になれば、仮退院の場合にいたしましても、あるいはガラ受けにいたしましても、いままでのようにヒモがむさぼって出てくるということはできなくなってくるのじゃないかと思います。やる気になればこれは規制できる。迷惑防止条例で暴力団を処罰しなくても、頂上作戦で暴力団を根本的にたたくこともできるわけですから、警察当局がやる気になれば、ヒモの規制がかえってやりやすくなるのじゃないかというふうに考えます。これは理論であって、実際はどうなるかわかりませんけれども、これは特に警察のほうにお願いしたい、こういうふうに思います。
  38. 藤原道子

    藤原道子君 法務省は見えておるのですね。このヒモの問題は、当委員会でもしばしば問題になってきたわけです。この前、竹内刑事局長が、今の次官が海外を視察されてお帰りになった当時、ヒモの規制については相当な決意をお持ちになっていたと思うんですが、その後私が本問題を問題にいたしましたときに、ヒモの処罰は非常にむずかしい、推し進めていくと、夫の場合には。そうすると、夫が病気でやむを得ない場合もあるじゃないかと、こういう意見を出されて、えらい私おこったことがある。病気で困れば生活保護法がある、医療保護がある。夫が病気だから妻に売春さしてもいいなんてばかなことは、これはないわけでございます。そこで、このヒモの問題についてはまあいろいろ検討したいというような答弁をしていらっしゃるんでございますが、その後ヒモの規制について何かお考えになっておいでになるかどうか。  それからいま一つは、先ほど来申し上げておりますように、補導員にでも明らかにヒモとわかるような者がそういう行為をしております。連れ出してはまた同じ道を歩まして、それが二回、三回と重なっているにもかかわらず、それがそのまま放置されている。これに対しては、やろうと思えばやれる手はあるんじゃないかと思うんでございますけれども、ヒモの規制に対しての法務省としてのきょうまでのやり方、そうして今後これらについてどういうお考えを持っていらっしゃるか。売春婦の更生を一番不可能ならしめているのは、ヒモが最大の私は原因だと思う。これについてのお考えを伺いたい。
  39. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 先ほど来ヒモの問題が出ておりますけれども、ヒモの処罰につきましては、現在、イギリス、あるいはフランス、イタリー、スイス、デンマーク、あるいはニューヨーク州などと外国におきましても、いわゆる売春婦の売春による収益から全部または一部の生活費を得るような男子を罰する旨の規定を設けたほうがよろしいということは論議されておりますし、また、昭和三十五年に開催されました第二十一回の国際廃娼会議でもヒモの取り締まりの強化を勧告することを決議しております。で、法務省といたしましても、いわゆるヒモの処罰につきましてはいろいろその必要性を感じまして苦慮しておるわけでございますけれども、問題は、先ほどからの前田先生のお話にもありましたように、いかなる範囲のものをヒモと見るかといういわゆるその事実関係がまず第一に問題になってくるわけでございます。で、現在の売春防止法では、第七条に「親族関係」という表現がございますけれども、確かにこの表現では一見非常に不十分な面があるようにも考えられます。たとえば、同居の関係とか、あるいは内縁関係とか、その他の従属関係を利用しまして売春の収入に寄食しておるというものが一応そのヒモと考えられるわけでございますけれども、しかし、ヒモといいましても、その具体的な形態におきまして非常にニュアンスがあるわけでございまして、たとえば積極的、能動的に寄食しておるという形態の非常に明らかなものもありますし、また、半面、先ほどのお話にありました竹内現次官の説明などのように非常に消極的、受動的な形で寄食しておるというようなものもございまして、積極的、能動的な形のものについては、これはもう当然処罰すべきことは問題はございませんで、その点につきましては、現在の現行法範囲内におきましても、たとえばこの条文によりますと、七条にあります「困惑させてこれに売春をさせ、」というような規定、あるいはまた、場合によりましては第六条のいわゆるその「周旋」というような条文の活用というようなことによりまして、現行法範囲内においても十分その処罰をすることが可能であると考えられるわけでございます。消極的な寄食、消極的に寄食しているもの、この点につきましては、現行法では確かにその規制が困難であると思われる点がございますけれども、この消極的な寄食というのは、事実関係としてこれまた非常にニュアンスがありますので、現実にこれをどの範囲まで処罰する必要があるかというようなこと、また、その処罰の根拠をいかなるところに求めるかというような非常にむずかしい問題がございますので、にわかにこれを立法化することによって解決するということはなお十分検討を要する必要があるというふうに考えまして、現在なおその点につきましては結論が出ておりませんけれども、しかし、いずれにしましても、私どもの考え方では、まさに法律の条文をいかに変えるかという問題よりも、その前に、まずその事実関係が問題でございまして、その事実関係あるいはその証拠関係というものがはっきりつかめますならば、現行法範囲内で十分所期の目的を達することができるというふうに実は考えておる次第でございます。  先ほど前田参考人のほうからお話のありましたように、「親族関係」のほかに「身分または契約」というような文言を加えるということも、確かにこれは一つの案かとは思いますけれども、そのような条文を加えたといたしましても、また、「身分」とはどの範囲のものであるか、あるいは、「契約」といいましてもいわゆるヒモをその契約のどのような形態として把握していくかというような、やはり最終的にはその事実的な関係に戻ってくるような気がいたしますので、私ども決して悪質なヒモを――まあヒモは一般的に悪質なものでありますけれども、悪質なヒモを処罰することにおいて決してちゅうちょするわけではございませんで、その関係の実際上の処理の問題として強力に取り締まっていきたいというふうに考えております。  これは、条文の文言を変えるということも非常に大切なことではありますけれども、しかし、現在の裁判所の判例その他実務の扱いにおきましては、かなりこの条文の文言に弾力性を持たせて、実質的に不当なものにつきましては、その文言の解釈によって運用をはかっていくということが現に行なわれておるわけでございまして、たとえば話が少しいまのヒモそのものとはずれますけれども、最近の新しい売春の形態、特に管理者の形態、たとえばコール・ガール制度だとか、あるいはドリンク制とか、あるいはセット制とか、あるいは先ほどもお話の出ました責任制と申しますか、そういうような形態につきましても、これは現在の条文の文言では、いわゆる文言の表面的な解釈ではいかにも取り締まれないようでありますけれども、たとえば「自己の指定する場所に居住させ、」という「居住」という文言の解釈を現在の判例は非常に広く解釈いたしまして、たとえば一定の場所に待機させるというような形でもこれはいわゆる「居住」になるのだということで、いまのような新しい形態の分につきましては、この条文を活用してその処罰を現に行なっておるわけでございます。  これは一例でございますが、そのようなことで、ヒモの処罰につきましては、実質的に不当なものについては十分現行法においてその所期の目的を達することができるというふうに原則的には考えておりますけれども、なお、さらに十分慎重な検討は続けていきたいというふうに考えております。
  40. 藤原道子

    藤原道子君 現行法でもできるできるといつもおっしゃるけれども、現にやってないじゃないですか。
  41. 海江田鶴造

    説明員海江田鶴造君) いまの問題につきまして、実際の取り締まりの問題でどういう点に困難性があるかということを申し上げたら、あるいは問題点の解決にもなるかと思いますが、現在私どもが実際第一線でヒモの取り締まりをやっておりましてなかなか有効な取り締まりができない、それはどこに原因があるかと申しますと、実はさっきから法務省からも言われておりますように、法律が不備であるということも若干はあると思いますけれども、むしろ実態はヒモと売春婦が事実上夫婦生活を継続しておる場合には、ヒモの売春婦に対する犯罪、要するに売春助長行為というものを立証するということが事実上は不可能に近いというような捜査上の問題が根本であります。そこで、ヒモが売春婦に売春をさせるためにあるいは暴行を加えたりあるいはけがをさせるほどの迫害を加えているというような事犯を検挙した場合でありましても、売春婦が依然としてヒモと事実上の夫婦生活を続けておりますような場合には、最後にはほとんど例外なしにそれは売春行為関係のない単なる夫婦げんかだったんだというような抗弁をしておりまして、しかも、事柄の性質上、売春婦以外の者によってこのヒモの犯罪行為を立証するということは、これもほとんど不可能に近いわけでございまして、多くの場合には、そういう売春婦なりヒモの抗弁に対抗する手段がないということが実情でございます。したがって、私ども考えておりますのは、取り締まりの活動と同時に保護更生措置との連携を深めまして、売春婦みずからにヒモとの絶縁を決意させるというような補導がなされることがきわめて必要ではなかろうか、こういうふうに考える次第でございます。
  42. 石井桂

    委員長石井桂君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  43. 石井桂

    委員長石井桂君) 速記を始めてください。
  44. 藤原道子

    藤原道子君 それでは、あまり長くなりますから、参考人のほうへの御質問を市川さんにしてもらいましょう。
  45. 市川房枝

    市川房枝君 松原先生にお伺いいたします。  先ほどから参考人の方々の御意見を伺っておりますと、売春防止法制定されてからもう八年になり、ずいぶん社会情勢も変わってきているし、売春の形態も変わってきているので、この法律改正は必要だと。ただ内容についての御批判をある程度伺ったわけでございますが、改正の必要はお認めいただいておるようでございます。松原先生は内閣の売春対策審議会委員でおいでになりますが、私、前に委員をしていたことがありますけれども、最近の審議会の委員は承知しておりませんが、前に私が委員をしておりましたころには、いま申し上げましたような理由で、審議会で法案の改正を考えようということで、松原先生を委員長として何回か委員会をやったことを覚えておりますが、もっとも、そのときの結果としては、いま法務省から御答弁がありましたが、現行法でできるのだ、改正の必要はないということを法務省からも申されましたし、警察からもおっしゃったし、厚生省からもおっしゃったということを私は覚えております。とうとうそのときにはだめになったということを覚えておるのですが、最近の売春対策審議会では、現行法改正の問題については意見が全然出ておりませんかどうか、その情勢をちょっと伺いたいと思います。
  46. 松原一彦

    参考人松原一彦君) 売春対策審議会では、この問題は始終出ております。そうして、もうすでに御承知のとおりに、何回も改正案が出ております。この案のことについてはよく存じておりますが.しかし、私個人としては、この法律案はどこまでも婦人の保護法であり、従来長い歴史に基づく日本の悪習慣を世界的な文化立法として婦人を解放するということが基本であって、性行為に対する処罰ということは、もうすでに姦通罪というものもなくなっておる今日、実体としての売春の性行為そのものはどこまでも私は処罰の対象にはならぬということをもう今日まで確信してまいっておるのでございまして、反対してまいっておりますが、ただし、いまの防止に役立つような改正があれば賛成であります。防止に役立つ改正法のテクニックは、私は法律家ではありませんから、詳しくはわかりませんけれども、新しい形態における、貞操観を無視して、そうして安易な生活法としての婦人それ自身の行為及びこれを利用するあらゆる一般の行為――ヒモも含めてでありますが、これに対しての実効のあるような法律改正は必要だと今も信じております。法律はその現実に即して改正するということをばこの立法の当初から言明してあるのでありますが、だから、なまけておって古い法律のままで押し通していいということは毛頭考えません。新しい時代に即し、また、その事実に即したる適切な立法ができるように売春対策審議会でも祈っておる次第であります。それはもう当然のことだと思います。
  47. 市川房枝

    市川房枝君 私も、売春婦を処罰しようということは目的ではないのであって、更生がむしろ主なんであります。今の法律もそうなっておるわけであります。で、改正の内容については私はいろいろ意見があろうかと思うのですが、とにかく八年前にできた売春防止法が今日の情勢には適していない――いま、警察の方は、必ずしも適していない点もあると少しおっしゃったようですが、一般に私どもの耳に入るところでは、やっぱり売春の形態が非常に変わってきておるということは明らかなんです。そこで、それに適応するように改正する。いま国会においてはいろいろな法律改正がしょっちゅうありますけれども、ほとんど毎年改正しておるような場合が非常に多いのですけれども、こんなに八年もこういう非常な変わってきておる問題に対して法律が全然変わらないということは、私は実は珍しいと思うくらいなんですが、松原先生御自身は私どもと大体同じように改正の必要をお感じくだすっているのでありますが、私は、政府改正の必要はなしというふうな考えであるとしても、やはり売春対策審議会としてはこういう問題についてほんとうに事態を正しく見て、そうしてどうすべきことが現在のこの問題を解決するのに必要か、あるいは将来のため必要かということから皆さんがお考えくだすって、政府に対してこの改正の必要を要求するというか、そういうムードを盛り上げていくというようなことをしていただきたいということを切に希望するのですけれども、そういう見込みはなさそうですか、どうですか。
  48. 松原一彦

    参考人松原一彦君) この問題は一片の法律の改定で片づく問題でないという私は基本的考えを持っております。倫理問題であり、文化問題であり、それから民族の品位の問題である。したがって、日本の政治全体の責任であって、一片の法律の条章を改めることによって効果が上がるという性質のものでない。基本的に、さっきから前田教授も申されたとおり、文部省の問題であり、労働省の問題であり、厚生省の問題であり、あらゆる日本の政治のもっと豊かなものがあらわれることによって、総合的に根気よく年月を重ね、民族の精進によってのみこれは効果が上がる問題である。どこのヒモの規定をどうすればこれが片づくといったような安易なものでないということだけは私は常に信じておるのであります。しかし、そのために精進を怠ってはならぬ、もっと総合的に大きな立場の上から日本の民族的な責任問題として、品位の問題として、文化の問題として、大きな面における教育の問題として立ち直らねばならないことを痛切感じておるものであります。これには根気が要りますから、どうぞあまりせっかちにお考えくださらないで、根気よくひとつ進めたいと思います。
  49. 藤原道子

    藤原道子君 確かに法の改正によって一挙に効果が上がるなどと安易に考えておりませんけれども、一面におきまして、形態も変わり、社会的情勢も変わってきておるのに、それが不備であるということがわかりながらこのまま放置されておるというところに私は問題があると思う。で、先ほど来のあれになっておりますが、ヒモの問題などでも、法律規定はあるけれども、それにはずれた方法でなされておる。いまの法律でも取り締まれるというけれども、現にやはり補導院等へヒモと明らかにわかる者が迎えに行っても、いまのままではそのまま出しておるじゃありませんか、取り締まり当局にしても。そういう点から、より実効のある方向へ私たちは法律改正していきたい。もっと政治の面において全体に協力して推進していこう。ほんとうに女の更生をはかっていこうというような情熱がどうも取り締まり当局その他にあるかということを疑うものですから、やりにくい点があれば、やりいいように改めていきたいと私たちは考えておるわけであります。
  50. 松原一彦

    参考人松原一彦君) これはどうもいつまでたっても結論がつかない議論でありますけれども、藤原さんの御心配、よくわかります。そのとおりでございます。たとえば、アメリカなどの例でもが、男女交渉しておるところは、二人ながら一ぺんに引っ張っていく、そうして一晩とめておいて、そうして翌日男のほうは女房に迎えに来させるなんということが伝わるくらいにいろいろに警察のほうでもテクニックを使っておるように思われます。アメリカ流のテクニックでありますから、非常に幅の広いものでありますが、いずれにしましても、売春行為そのものが悪であるということの認識が先なんであります。いまのように、西村さんから私聞いたのでありますが、日本の新宿なりにおける売春婦は、二百万円も三百万円も手さげの中に入れて持っておる、現金を。もっと大きいのはまだ巨額の金を持っておるそうですが、それでもやめない。そうして、それにはヒモもなければ管理者もない。自分の自由行為である。彼女らに言わせるというと、道を通っておるというと、向こうから来る男の顔がみんな千円札に見えて、もったいなくて黙っちゃ通れない。男の顔が千円札に見えるようなそういう女の観念をどうして一体法律でこれを改めさせるか。貞操観を無視したる、人間の尊厳性を無視したる、全く現代の新憲法下においては考えられないような、こういう婦人の観念、並びにそれを利用して安易に性行為を続けていこうといったような低い民族のその考え方は、将来大きな問題であって、いま急にどういうて片づく問題じゃない。男の顔が千円札に見える婦人がたくさん現におるんです、新宿辺には。そうして、それは独立行為なんです。金はうんと持っておるのです。金に困ってやっておる昔の身売りとは全然違うのであります。形態が違ってきておる。これは民族そのものの大きな課題であって、いま法律でこれを片づけようというても片づきませんが、それならば安易にこのままそうしておいていいかというと、これはそうではない。この点につきましては前田教授が非常に研究しておられます。これは、今日の出版物、映画、文芸物、その他あらゆる面における刺激がこういうことをば麻痺させておる面がたくさんある。助長さしておる面がたくさんあるのであります。したがって、ヒモをどうすればといったようなことだけで片づかないということを繰り返して申し上げまして、全国民の倫理的な精進を切望するものであります。  特に政治家におきましては、政治家自身がもっと貞潔でなければいかぬと思います。政治家自身が不潔です、一口に申せば。もっと貞潔でなければいかん、あらゆる面において。このことなくして、どうして一体庶民の一般の風俗問題をば改めることができましょう。  私は、ざる法じゃないと思う。あの有名なる日本の赤線を取りつぶした大きな効果がある。管理売春はほとんどなくなろうとしておる。それから最近において警察が勇気をふるって、頂上作戦といわれますが、暴力団を取り締まっておるなどは、大いに賞揚していいことだと思います。これはもう感謝していいことである。最近における警察の麻薬の取り締まりや暴力の取り締まり等が大きな効果をあげておることについては、われわれの売春対策審議会は感謝の決議をいたしておるのであります。そうして、総合的に悪風俗が憂延しないように国民の品格が上昇するようなる政策をとっていただきたいことを進言するものであります。
  51. 前田信二郎

    参考人前田信二郎君) ちょっと簡単に発言させていただきますが、刑法改正の問題が出ておりまして、われわれ関西のほうの刑法学者は保安処分の規定以外のことはほとんど改正する必要はないというような意見なんでございますが、それにまた、基本法である刑法改正を西ドイツの改正とにらみ合わせながらおやりになっておるのに、売春防止法の一部改正刑法の全面改正に比べてもっと安易なことである。社会的な日本の貞操法と申しますか、売春貞操法が少しずり落ちているような形である。それでも法は改正の必要がないとおっしゃるなら、刑法改正のほうで国民の意思をあまり問わないでどんどんと改正作業が進んでいるということを私は非常に疑問だと思うのです。ですから、刑法などはあまり改正しないで、現行法でもやっていますから、刑罰は非常に重く、小野清一郎さんあたり、刑罰は重く、罰金がふえています。罰金がふえると、国庫の収入が多くなるかもしれませんけれども。(笑声)刑法は私はいま改正すると、どうもぐあい悪い点がたくさんあると思いますが、売春防止法の中にメスを入れてやって、日本の貞操法である、日本の良識と申しますか、文化人のバロメーターである、そういう法律の問題に文化的なセンスをもう少し入れていただきたい。警察当局のほうで現行法でやれるとおっしゃっていますけれども、残念ながら、私いま毎週金曜日にこの法律の運営状況を方々で見てまいりますけれども、家庭裁判所へ行きましても、あるいは婦人相談所へ行きましても、保護観察所へ行きましても、ヒモの問題などにつきまして、裁判官自身も申しますように、認定ができない。警察のほうでやれると言われましても、裁判所のほうで認定ができないと言われればおしまいでございます。だから、刑法改正のほうよりも、ほんの少し改正すればいいし、保安処分等にらみ合わせれば、刑法改正と同じような姿勢でやっていけるのじゃないか。そういうふうに思って、日ごろ慚愧の念にたえないわけでございます。だから、今後も、売春防止法改正社会的に合った旧赤線立法でない法を社会適用しないと、これこそほんとうに法律をつくった国の責任になります。ですから、そういう点も考え合わせまして、この法律改正が将来も継続審議されるようにおはかり願いたいというふうにお願い申し上げておきます。
  52. 石井桂

    委員長石井桂君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  53. 石井桂

    委員長石井桂君) 速記を始めてください。
  54. 市川房枝

    市川房枝君 厚生省当局にちょっと伺いたいんですが、先ほど西村参考人からの御意見の中に、婦人相談員の身分のことについての希望がございました。つまり、現在の売春防止法では、都道府県では婦人相談員は義務制になっているけれども、市町村においては任意制になっておる。ところで、東京都においては自治法の改正に従って区を市とみなすということになり、いままで東京都の婦人相談員であった人たち三十何名が区に移管になって任意制になった。そうすると、いつ何どき区が廃止をするかもしれぬ、やめるかもしれない。したがって、非常に身分が不安定で心配だ。したがって、これを義務設置にしてほしいという希望がありましたけれども、もし区がやめれば、都は義務設置ですね。それから定員制というものがございますね、都には。そうすると、都が今度区に都の婦人相談員を置かなければならぬということになりますね。いかがですか、その点は。
  55. 牛丸義留

    政府委員(牛丸義留君) いまの先生のお説のように、東京都の区域においては必置義務がございますから、都全体の管轄区域として婦人相談員は必置義務がございますから、いまの御提案のような結果になろうかと思います。
  56. 市川房枝

    市川房枝君 市は、全国このごろ非常に多くなり、売春関係に必ずしもそこに婦人相談員を義務制にする必要もないところもあると思うのですけれども、しかし、東京の二十三区においては、これはどうしてもやはり義務制でなくちゃ困ると思うんですよ。そういう事態が生じたことといいますか、これは厚生省は前もって御承知というか、それに承諾をお与えになったといいますか、あるいは今後いまのような場合にどうするかということに対する対策はちゃんと御用意になっていまのようなことになったのかどうか、その辺のことをひとつ御報告を願いたい。
  57. 牛丸義留

    政府委員(牛丸義留君) 東京都の行政を特別区に移管する件につきましては、これは民生、衛生両方にかかるものでございますが、経過的に申し上げますと、厚生省は反対でございます。これは、むしろ東京都自体のいろいろな事情で、特別区の行政実体というものが非常にないというようなことから、最も住民に密着した出生、衛生関係業務をどうしても移管したいという切なる希望で、東京都の中でそういう議論が出まして、そうして地方自治法の改正が行なわれた。これは結果的には閣議決定したわけでございますが、経過的には内部において厚生省は最後まで反対をしたわけでございます。しかし、今日においては、すでに法律改正されまして、四月一日から新しい法律施行されておるわけでございますので、私どもとしては、ただいま御心配のような結果が法文の上では出てくるわけでございます。したがって、東京都に対しては、この点は十分私どもとしても確認をしておりまして、これは東京都としてはぜひそういう事態が起きないように、東京都としても特別区に対しては責任をもって指導するという言明を得ておりますし、また、それだけの財政措置もやって移管をしておるわけであります。したがって、当面そういう問題は心配はないと思いますけれども、しかし、御指摘のように、もしもそういうことが起こるという不安はこれはあろうかと思います。したがって、私どもとしては、行政指導としては将来ともいままでと同じように特別区は必ず置くように指導いたしますけれども、どうしても指導だけでは御心配だということでございますならば、それはまたそれとして、そういう特に売春環境の悪い市に対する設置の問題ということは、将来の問題としてはこれは研究していきたい。そしてもうちょっと安定をしたそういうふうな制度的に考えていくほうがいいかどうか、その点をあわせまして検討していきたい、かように考えておるわけであります。
  58. 市川房枝

    市川房枝君 いまの御答弁聞きまして幾らか安心でございますけれども、それは法律改正でなくて、政令か何かでできますか。できるだけ早くそれは何とか対策を講じていただかないと、非常にいまやっている人たちが不安な気持ちを持っていますから、ひとつお願いしたい。  それからもう一つ、さっきもお話がありましたけれども、いまは非常勤なんですけれど、実際上は常勤のような勤務のしかたなんですけれども、非常に待遇が悪いといいますか、一般の公務員はベースアップで毎年上がるのですけれども、婦人相談員の人たちは上がらないし、期末手当もないし、退職手当もないし、ずいぶんお気の毒だと思うのです。それで常勤にしてほしいという希望なんかもありますが、その点はいかがですか。
  59. 牛丸義留

    政府委員(牛丸義留君) 待遇の問題でございますが、これは常勤、非常勤との相関関係になろうかと思います。しかし、現実において、これは千二百円の定額補助を出している。東京都等については、これにプラスして給与は一万二千円から一万五千円月額を出しておるわけでございます。それで、これは私どもとしても非常勤にしても一万二千円程度で十分であるとは思っておりませんので、何とかして待遇改善をやっていきたいということから、調査費その他の名目で別途予算措置をしているわけでございます。一つは、どうしてももっと補助金の増額をしていきたいというふうに考えております。それで、ちょうどこれと類似した制度に母子相談員の制度がございまして、これは母子福祉法の改正のときに必置になって常勤になったわけでございますが、これは補助金じゃなくして、結局交付税交付金の中に入れてあるわけであります。それがはたしてそういう方向でいったほうがいいかどうか、その点をそのとき私どもも非常に疑問に思いまして、交付税交付金の中に入れて、はたしてこれは市が十分措置をしてくれるかどうか、この点の確保もできませんので、補助金制度でいくほうがいいんではないかといまのところ考えております。そうしますと、大体売春関係でそういう指導員を置くべきところは、大都市、大府県でございますので、これは財政事情からいうと、どうしてもそういうところに補助金を多くするというようなそういう結果になって、非常にこれは予算的には私ども隘路になっております。だから、両面から考えまして、そして予算の増額の措置をひとつ考えていきたい。これは将来の問題でございますが、私どももできるだけひとつ努力していきたいと思います。それの関連でいまの常勤、非常勤の問題も同時に解決をしていくべきじゃないかと思います。これは私どもも一つの考えでございますが、すべて常勤にする必要もないわけでありますので、常勤、非常勤の両制度というふうにしていったほうがいいかどうか、その返は実際にいま勤務されている勤務状況を見ましても、一週間に三日ぐらいの人もおられますし、あるいは一週間フルに働いておられる方もありますから、その辺の実態をよくにらみまして、必要な改善の方策を至急考えていきたい、かように考えております。
  60. 市川房枝

    市川房枝君 警察の方にちょっと伺いたいのですが、トルコの問題ですけれど、このごろトルコが非常に風紀が悪いといいますか、売春行為が盛んに行なわれといるという情報を得ているのですけれども、これは警察の所管ではない、厚生省の環境衛生局の所管だと言えば言えるのですけれども、しかし、全体としての風紀の問題として、警察のほうは何かそのことについての情報をお持ちになっておりますかどうか、それを伺いたい。
  61. 海江田鶴造

    説明員海江田鶴造君) トルコ風呂の問題につきましては、昨年の風俗営業法の改正の際にいろいろ問題になりまして、厚生省ともいろいろ御協議いたしました結果、厚生省のほうでとりあえず自主的な改善策をさせるというような御方針でございまして、厚生省から各都道府県――東京でございますれば東京都に対しまして相当指導を強化するというようなことで指導強化をされているようでございます。私ども警察で入手している情報では、自主規制がわりあいよく行き届いておって、たとえばトルコ風呂の個室にすべて窓がつけてある。それから売春行為等については、お客から要請があっても、いろいろ取り締まりがきびしいということで、業者も非常に警戒をして自粛をしているというようなふうに私どもは聞き及んでおります。
  62. 藤原道子

    藤原道子君 私は、きょうは参考人の御意見を伺うのが主でございましたので、あまり長くなってもいかがかと思いますので、要望をしておきたい点は、売春形態が非常に変わってきていることは、先ほど来問題にされたところでございますが、ヒモの取り締まりについて、その後どういうふうにやって、どれだけの者がつかまってきたかというようなことのデータ。それからいつも問題になります温泉場等におけるパンマといいますか、あんまにあらざる者があんまを装うて客席にはべっている、こういうのがずいぶんまたこのごろは激しいように伺っております。これらについての取り締まりがどういう状況に置かれているか。それからその後、性病――これは厚生省ですね、性病等の発生状況、これの対策がどういうふうに行なわれているか。それからこのごろ新聞等にもときどき出庫すけれども、未成年者を売り飛ばして、児童福祉法違反であり、人身売買、こういうケースが非常に多いように思うのでございますが、それがその後どういうふうな状況にあるか、そういうこと。  それからいま一つは、厚生省でしょうか、どっちになるのか、補導院ですけれども、先ほど来お話しのように、法務省ですか、非常に知能指数の低い者のみが捕えられている。それで、知能のすぐれた者はなかなかつかまらない。だから、言ってみると、精薄の収容所というような感を与えているわけですね。そこで、分類別収容所というのですか補導院というのでしょうか、そういうことを考えておいでになるかどうかという点、これは質問としていまお伺いしたいのでございます。ほとんど精薄ばかりが捕えられて、あれでは結局半年が二年になってもなかなか更生はむずかしいのじゃないか、こういうふうに思いますので、分類別の補導院、こういうものに対しての考えがあるかないかということをちょっとお伺いしたい。  あとはひとつ資料で御提出を願いまして、いろいろ論議していきたいと思います。
  63. 副島和穂

    説明員(副島和穂君) 御説明申し上げます。  現在のところ、補導院は三ヵ所にございまして、定員二百七十三名という状況でございますけれども、昨年中に入りました者が大体三百名に満ちておりません。そういうことと、それからもう一つ、いま御指摘ございましたように、ほとんど全部が精薄でございます。精薄をどちらかに分類いたしましても、どこもみな同じような精薄で、これをさらに細分化するということは非常に困難でございます。たとえば福岡の婦人補導院あたりは、大体全部で二十二名ないし三十名あたりが送られております。それがほとんど全部精薄であるため、それをさらに細分化するということは現在考えておりませんが、全施設ともそういう状態でございますので、そういった精薄であり、かつ年齢も二十歳をこし三十歳以上の者もかなりおるわけでございます。そういうものにも向く処遇をしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  64. 石井桂

    委員長石井桂君) なお、藤原君の御請求の資料の提出につきましては、法務省関係、厚生省関係、警察庁関係のほうからお答えはございませんか。
  65. 牛丸義留

    政府委員(牛丸義留君) ただいまの御要求の資料は、後ほどそろえまして御提出申し上げます。
  66. 海江田鶴造

    説明員海江田鶴造君) 若干の資料はここにございますが、あとでよろしゅうございますか。
  67. 藤原道子

    藤原道子君 あとで出してください。
  68. 海江田鶴造

    説明員海江田鶴造君) 承知しました。
  69. 安田道夫

    説明員(安田道夫君) 後ほど提出いたします。
  70. 藤原道子

    藤原道子君 もう一つ、あわせまして、このごろ明らかに客と共謀して女を提供している旅館あるいは料理屋等があるんですが、それらに対して、明らかに法違反でございますから、処分されておるとすれば、それらの件数、それから法の内容ですか決定、こういうものもあわせてお聞かせ願いたいと思います。
  71. 石井桂

    委員長石井桂君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたりまして貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、ここに厚くお礼を申し上げます。  次回の委員会は五月十八日開会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後一時四十三分散会      ―――――・―――――