運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-04-22 第48回国会 参議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十二日(木曜日)    午前十時五十二分開会     —————————————    委員異動  四月十四日     辞任         補欠選任      佐藤 芳雄君     鈴木 万平君      草葉 隆圓君     鈴木 一司君  四月十五日     辞任         補欠選任      後藤 義隆君     野上  進君  四月十六日     辞任         補欠選任      野上  進君     後藤 義隆君  四月二十日     辞任         補欠選任      後藤 義隆君     川上 為治君  四月二十一日     辞任         補欠選任      川上 為治君     後藤 義隆君  四月二十二日     辞任         補欠選任      鈴木 一司君     安井  謙君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         石井  桂君     理 事                 後藤 義隆君                 稲葉 誠一君                 和泉  覚君     委 員                 鈴木 万平君                 中山 福藏君                 安井  謙君                 亀田 得治君                 柳岡 秋夫君                 岩間 正男君                 山高しげり君    国務大臣        通商産業大臣   櫻内 義雄君    政府委員        総理府恩給局長  増子 正宏君        法務大臣官房司        法法制調査部長  鹽野 宜慶君        法務省民事局長  新谷 正夫君        通商産業省企業        局長       島田 喜仁君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局民事局長   菅野 啓蔵君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        法務省刑事局刑        事課長      伊藤 栄樹君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠互選の件 ○訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○検察及び裁判の運営等に関する調査  (会社更生法の運用に関する件)     —————————————
  2. 石井桂

    委員長石井桂君) これより法務委員八五を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  四月十五日、後藤義隆君が委員辞任せられ、その補欠として野上進君が選任され、四月十六日、野上進君が委員辞任せられ、その補欠として後藤義隆君が選任されました。  また、四月二十日、後藤義隆君が委員辞任せられ、その補欠として川上為治君が選任され、四月二十一日、川上為治君が委員辞任せられ、その補欠として後藤義隆君が選任されました。  なお、本日、鈴木一司君が委員辞任せられ、その補欠として安井謙君が選任されました。     —————————————
  3. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、理事補欠互選についておはかりいたします。  ただいま委員異動について御報告いたしましたとおり、後藤義隆君が一時委員辞任せられましたため理事に欠員が生じておりますので、その補欠互選を行ないたいと存じます。互選は、投票の方法によらないで、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 石井桂

    委員長石井桂君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事後藤義隆君を指名いたします。     —————————————
  5. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き本案の質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。   〔委員長退席理事後藤義隆君着席〕
  6. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 執行吏の数が全国で三百三十何人かの数字になっているわけでございますが、それで十分現在の業務量といいますか、案件についての処理をするに適当な数というふうに認めておられるかどうか、まずその点をお聞きしたいと思います。
  7. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 御承知のとおり、執行吏定員法律によっては定められていないわけでございまして、裁判所が必要に応じてこれを任命することができることになっております。現在では、先ほどお話しのとおり、全国で三百三十五人おります。さらに、この執行事務につきましては、執行吏執行吏代理に委任いたしまして、現実の執行手続執行吏代理が行なうこともできるということになっておりますので、現在の三百三十五人の数で十分に全国執行手続を円滑に行なうことができるというふうに考えております。
  8. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 最高裁のほうから出されました資料等を見ますると、執行吏犯罪と申しますか刑事事件が非常に多いわけで、これはどういう要因といいますか理由でこうした刑事事件が発生するのか、どのようにお考えですか。
  9. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) ただいまの御質問のように、執行吏等に関しまして刑事事件が毎年そのあとを断たないということは、非常に私ども遺憾に思っておるところでございます。しかしながら、その数はそう多いというふうには私どもは実は考えてはおらないのでございます。その年々の犯罪の数におきましても、逐年その数が増加しておるというような現象はお手元に差し上げてあります表の上からもあらわれてはいないというふうに見ております。執行吏等に関しまして犯罪が絶えないということはこれははなはだ遺憾でございまして、その原因等についても私ども決して無関心であるわけではないのでございますが、なぜそういうふうにあとを断たないかという点につきましては、何ぶんにも執行吏の行ないます職務というものはそこにいろいろの誘惑等チャンスも多い仕事でございまして、そういうチャンスが多いからといって犯罪等を犯すということはこれは決して黙過してはならないところではございまするけれども、いろいろの業者であるとか利害関係の非常に多いそういう場面で職務をしております執行吏については、非常に誘惑といいますか涜職等事件を起こしやすい職務に携わっておるために、どうもやはり犯罪あとを断たないというような現象が出ておるのではないかというふうに見ておるわけであります。
  10. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 この執行吏が、国家公務員法の適用を全面的に受けない公務員、こういうふうな形になっていると思うのですが、そういう犯罪が起きるということは、半ば自由業的な立場もあるということから定数がきめられておらない、したがって、特定な人が長い間やっているという中でそういう犯罪が起こるのではないかというように思うのですが、国の仕事をやっておるのでありますけれども、ある程度全面的に自由業にして、そうして国民がもっと自由にそういう執行吏を選んで代行してもらう、あるいはやってもらうようなそういうことをすれば、こういう犯罪も少なくなるのではないか、こういうふうに思うのですが、定数がきめられておらないということからいってもそういうことは可能ではないかと思うのですけれども、これは府県に、あるいは府県というよりも一裁判所なら裁判所に何名というふうにきめられておらないと先ほど申されましたね、定数がないと。だから、これをもっとふやして、自由に国民が選択できるようなそういうことは考えられないですか。
  11. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 定員といいますか、人数の制限ということをはずしまして、無制限執行吏を置いて、自由競争的にその職務をやらしたらどうかという御質問でございますが、そういうふうに自由業的にいたしまして自由競争をさせるということは、それ自体やはり非常にそういうことによりますプラスの面ということは考えられるわけでございます。と申しますのは、自由に自由業的にやるということになりますれば、お互いに競争をいたすでありましょうし、非常にそれによって能率があがるという面は確かにあるかと思います。しかしながら、反面、それによる弊害、つまり、競争が激しくなりますれば、それによって執行等もかなり無理をしてやるというような弊害の面もありますので、やはり執行吏の数というものはその執行事務量に必要な程度の執行吏の数を確保しておくということは必要でありましょうけれども、そうかといって無制限執行吏の数をふやしまして自由競争的にその事務を行なわせるということによります弊害というものもまた考えなければならない点ではないかというふうに私ども考えておる次第であります。
  12. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 これは、一応規則の上で、公務員という立場から、当然上司の監督指導というものがあると思うのですけれども、どういう形で監督し、またそういう指導をやっておられるのか、お伺いしたいと思います。
  13. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 執行吏監督は、その職務の面と身分上の面と二つの面に分けて監督のしかたがあるわけでございまして、職務の面と申しますると、つまり、違法な執行をなしたというような場合には、訴訟法によりまして執行方法異議とかいう手段がございますので、その執行方法異議が出ました場合には、裁判所がその違法を救済するという方法があるわけでございます。それから身分的な監督ということになりますると、執行史監督規程というのがございまして——一応、執達吏規則あるいは裁判所規程によって、その執行吏が所属する裁判所がすなわち地方裁判所がその身分それから事務全般についての監督権を持っているわけでございます。そうして、執行吏監督規程によりますると、その監督方法といたしまして、ただいまは監督権を持っております地方裁判所査察官というものを指名いたしまして、そうして定期的に執行吏の役場に臨みまして会計上の帳簿であるとかその他事件処理につきまして査察をいたしまして、そうしてそこに非違の点があれば必要な指示をするという方法監督をいたしておるわけであります。
  14. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 前の委員会で、この執行吏制度調査をやった、しかし、その結果がどうなっているのかわからない、こういうお話だったのですが、昭和二十九年、三十年に文部省関係かと思いますが、科学試験研究費補助金、そういう費目の中で執行吏制度調査をしたわけですね。で、その金額は、昭和二十九年が二十五万円、三十年が三十万円、わずかな金額でございますけれども、一応国の費用を使って調査をしたことについて、これがどうなっているかわからないというようなことは、あまりにも無責任と申しますか、行政官庁としてあるべき姿ではないというように私は思うのですけれども、それはどうなっておるのですか。
  15. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 執行吏制度に関する実態調査についてのお尋ねでございますが、ただいま仰せのとおり、昭和二十九年と三十年に文部省研究費を受けて実態調査をいたしているわけでございます。  さらに詳細に申し上げますと、この計画は、二十九年、三十年、三十一年と三年間にわたって行なわれたわけでございます。で、当初、二十九年が最初でございまして、このときは東大の先生中心として、関東並びにその以北というものを中心にして執行吏実態調査をやったわけでございます。これについて、いま仰せのような文部省から研究費が支給されているわけでございます。ところが、このときの実態調査は、最初計画でございましたので、必ずしもその面接調査等が完全にうまく行なわれなかったというような事情もあったかと存じますが、実態調査自体は実施されたのでございますけれども、その調査資料に基づく整理、結論の抽出というようなところまでいかなかったように聞いております。それからさらに翌年三十年に、これは名古屋——中部地方中心に行なったわけでございます。これは名古屋大学等先生などが中心になっておやりになった研究でございまして、名古屋高裁管内の各裁判所あるいは支部につきましても一部実態調査を行なったわけでございます。これは、前年の状況参考にいたしまして、実態調査をいたしましたその結果、各管内と申しますか、各地裁ごと、あるいは大きな支部のような場合には支部につきましても、その実態調査の結果を集計して、一応の実態調査の結果は出ております。それから三回目三十一年でございますが、これは文部省研究を離れまして、実は法務省のほうで委託調査をお願いしたわけでございます。で、これは関西の学者を中心にして研究されたものでございまして、これも前と同じように、各地裁ごと調査をいたしまして、その結果を集計と申しますかまとめまして、一応の実態調査報告というものはまとまっているわけでございます。いまお話しのように調査の結果が出ていないという状況ではないのでございます。ただ、かような実態調査をやってみました結果は、非常に目新しいものが発見されたという状況はあまりないのでございまして、従来それぞれの方々の見聞によりまして執行吏制度にはこんなような問題があるのじゃないかというふうなことが言われておりました諸点がこの実態調査の結果によっても裏づけられたというふうな実態調査の結果であったというふうに承知いたしております。
  16. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 その実態調査報告書と申しますか、あるいは、いま一応の結果が出ていると言われたもの、これは民事局が保管しているのですか。
  17. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 法務省のほうで保管しております。
  18. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 いま目新しいものはなかっんたと、こういうことなん、ですがこの、執達吏規則ができてから非常に年月がたっておりますし、現状に合わせて当然改正をしなければならない条項が多分にあるのではないかというふうに思うんですね。したがって、二十九年、三十年、三十一年と三年間調査をし、その結果、当然何らかの改正をすべきものがあったんではないかと思うのですが、そういう点もないと言われるわけですか。
  19. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 執行吏制度改正につきましては、御承知のとおり、従前から法務省のほうで種々検討を重ねてきている問題でございまして、この三年にわたる実態調査の結果改正の要否が考えられるというふうな問題ではないのでございまして、私どもといたしましては、従来から改正の問題について検討しておりますその一つ参考資料がここでまたできたというふうに考えているわけでございます。
  20. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 昭和三十一年からもうすでに七、八年たっておりますし、相当社会情勢も変わってきておる。そういう中で、当然この規則等改正をしなければならぬものがあると思います。特に恩給関係で「官吏恩給法」というような文言を使っておるわけですけれども、これなどは当然恩給法が施行されたときにそのものとあわせて何らかの改正を行なべうきではなかったかと、こういうふうに思うのですが、その点はいかがですか。
  21. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 御承知のとおり、執行吏に関する制度明治時代から現在のような形で続いてきている制度でございまして、現在の法制に照らし合わせますと、御指摘のとおり、いろいろ問題になる点があるわけでございます、そこで、この執行吏制度の問題につきましては、前にもあるいは御説明申し上げたかと存じますが、戦前、昭和の初期にすでに問題として取り上げられまして、昭和二年ごろから十数年にわたりまして、強制執行手続と並行いたしましてこの制度の改革ということを当時の司法省において検討してまいったのでございます。しかしながら、その検討の途中で、おそらく当時戦争の問題で中絶したと思いますが、昭和十八年ごろに一時中絶いたしたわけでございます。そこで、戦後になったわけでございますが、御承知のとおり、戦後に各種の法制がいろいろ改革されたわけでございます。そこで、執行吏制度のみがまあいわば旧態依然たる形で残っているというようなこともございまして、実は古いことでございますが、昭和二十九年に法務大臣から法制議審会に対してこの問題について諮問が発せられているわけでございます。そこで、法判審議会のほうにおきましては、これを強制執行制度部会におろしましてさらにこまかく具体的に検討してきた、こういうような状況になりました。さらにそれを小委員会に下げるということでいろいろ検討を進めてまいったのでございますが、何ぶんにも非常に変わった仕事でございますし、その仕事を担当する職員をどういうふうな形で改正していくのがいいのかということにつきましては、法制上の面も、実際の面、さらに制度の切りかえの経過措置というような問題について、いろいろむずかしい問題がございました。現在なお検討中という段階なのでございます。  ただ、方向といたしまして、いままでの研究の結果出てまいりました現段階における方向を申し上げますと、執行吏は御承知のとおり現在は国家公務員であるということになっておりますが、国から俸給を受けず、手数料によって生活をしているという形になっておりまして、公務員としては非常に異例な形になっているわけでございます。で、そういう形から生ずるいろいろな問題というものがあるのじゃないかということから、これは将来の形としては、やはり一般の有給国家公務員に切りかえていくということがこの制度をすっきりさせる一つ方法であろうというふうに考えまして、現在研究段階でございますが、大方の方向は、これを有給国家公務員制度に切りかえていくという方向に向かっているわけでございます。  ただ、そこにさらに問題となってまいりますのは、そういう制度にいたしましたときに、その強制執行を担当する有給国家公務員というものは、どういうような地位、格づけがされるべきものであろうか、また、その給与というものはどういうふうにあるべきであろうかというようなことが問題になってまいります。さらに、それがある程度見通しがつきますと、その次に起こる問題は、そういうような形の公務員制度にいたした場合に、実際にこれを適当な人で充員することができるかどうかという問題がさらに出てくるわけでございます。先ほどお話のございましたように、現在の執行吏全国で三百三十五名でございますが、これが執行吏代理補助を受け、さらにある場所によっては事務職員補助を受けている、そうして仕事をしているというのが実情でございますので、これを有給国家公務員制度に切りかえるという場合に、はたしてどれだけの人員全国的に必要であるのか、それだけの人員をこのむずかしい仕事を円滑にしかも適正に実行するような優秀な人材をもって充員することができるかどうかというようなこともさらに問題になってくるわけでございます。  そのような法制上、事実上のいろいろの問題がございますので、現在鋭意これらの問題の解決に努力をし、研究を続けているという状況にあるわけでございます。
  22. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 恩給局長に出ていただいておりますので、若干お伺いしたいんですが、こういう今ない官吏恩給法に照らして恩給を受けるというようなことは、恩給局立場から見てどういうふうにお考えになっておりますか。
  23. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 執行吏恩給制度につきましては、すでにこの委員会でもいろいろな立場から御検討になっておられるところでありまして、申すまでもなく他の公務員恩給とはかなり違った面がいろいろなところであるわけでございます。で、この執行吏恩給制度が、いま御指摘のように、官吏恩給法に照らすというような形をとっておりますところは、すなわち、実質的に申し上げますと、他の公務員恩給内容が同様になっていないということの結果、あるいは逆に原因であるのかもしれませんが、いずれにしましても、他の公務員恩給制度とは違っておるわけでございますが、この点は、私ども考えでは、やはり執行吏というものの制度特殊性といいますか、具体的に言いますと、執行吏というものの職務を担任している者が、他の公務員とは、いろいろとこの委員会で御説明がありましたように、その地位なり、あるいは職務執行状態給与あり方等につきましても違っております。他の公務員とは恩給制度の面においても必ずしも同様に取り扱うことができない、あるいはそうすることが適当でないというふうに従来まで考えられておったことによるものというふうに解釈いたしておるわけでございます。
  24. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 恩給法によらないこういう形の恩給を受けている例は、ほかにあるのですか。
  25. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 国家公務員という点から申しますと、この執行吏と同じような形で恩給が出ているというものはほかにございません。
  26. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そういうことであれば、この恩給法の中に何らかの条項なり何かを設けて恩給法一本にするほうがいいんではないかと私は思うんですし、また、恩給法による恩給を受け、さらに執達吏としての恩給を受けるということも何か恩給二重取りのような感じを受けるわけです。旧官吏恩給法によりますと、扶助料なんかは出ないということになっておりまして、若干内容は違うかもしれませんけれども、しかし、恩給という面から考えると二重取りではないかというような疑問が持たれるわけです。したがって、通算をして恩給法の中で一本で処理をするということのほうが現実的ではないかというふうに私は思うんですが、その点はいかがです。
  27. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 執行吏恩給制度と他の公務員恩給制度のいわゆる一本化の御意見でございますが、執行吏というものは先ほど来御説明がありましたように他の公務員とはいろいろな面で特殊な点を持っております点から見ますと、恩給法に一本化しまして他の公務員と全く同様に扱うということにつきましては、なおいろいろな問題があるように私ども考えるわけでございます。したがいまして、今日の状態におきましてこれを一本化するということには、にわかに御同意を申し上げることは困難であると思います。  それからいわゆる公務員として恩給法に基づく恩給をもらっておる者が同時に執行吏としての恩給をもらう場合があることにつきまして、二重取りというような観点からお話があったのでございますが、私どもは、それぞれの恩給基礎同一でなければ、必ずしも二重取りというには当たらないのではないかというふうに思うわけでございます。すなわち、私ども取り扱っている面から見ますと、実は地方公務員等につきましては、それぞれ都道府県等条例による恩給というのがございます。したがいまして、その条例に定められた要件を備えておれば地方条例に基づく恩給を受けるわけですが、地方公務員をやめてから国家公務員になり、そして国家公務員としての勤務がまた恩給法の条件に該当いたしますと、それをやめた場合にはさらに国家公務員としての恩給も出るという場合があるわけでございます。これはしばしば見る例でございます。なお、軍人の恩給等につきましても、たとえば戦死した兵隊のおかあさんが、自分の主人の恩給扶助料を受けると同時に、戦死した子供の公務扶助料も受けるというような場合がございます。そういうふうに、二重、三重というようなこともあり得るわけですけれども、それは同一基礎がない限り、同じ人の同じ勤務が、一方においても恩給基礎になり、同町に他の制度のそういった類似のものの基礎になるということは二重ということで避くべきであろうと思いますけれども、そうでない限りにおきましては、必ずしもこれは排除すべきことではないのではなかろうかというふうに思うわけでございます。  しかし、それはそれとして、通算という問題はあり得ると思うわけでございますけれども、この通算につきましては、先ほど申し上げましたような意味で両方ともいろいろな意味で煙ったものを持っておりますので、執行吏としての期間をその後に続く公務員としての期間に単純に算入するということ、あるいは逆に公務員としての在職期間をその後に続く執行吏の在職期間に単純に算入するというわけにもいかないのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  28. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そういう基礎が違うということであればこの二十一条ですか、官吏恩給法というものも今はないということであれば、当然執達吏恩給法というような別の法律をつくるのが当然ではないかと私は思うのですが、その点はいかがですか。
  29. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) もちろん立法論としてはそういうことが考えられますし、内容的には私どもそのほうが望ましいのではないかというふうにも存じます。
  30. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 思うということでなしに、そういう官吏恩給法恩給法の中でどういうふうに取り扱われており、その旧官吏恩給法恩給法の中でどういうふうに引き継がれており、しかもその部分だけが執達吏が適用されておるということなんですから、その辺から解明してもらえばまた議論が分かれてくると思いますけれども、その点はどうなっておりますか。
  31. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) この委員会でもすでに何べんか御議論があったように伺っておるわけでありますが、執行吏恩給につきましては、執達吏規則の二十一条が一応根拠規定ということに解釈されておりまして、それによりますと、「官吏恩給法ニ照シ恩給ヲ受ク」ということでございますが、この官吏恩給法は、その後恩給法というものによって廃止されておるのでございます。その廃止の際に、従来の官吏恩給法に照らし取り扱われておったものにつきましても、官吏恩給法の規定しておった限りにおきましては恩給法の規定がそれにかわって働くというようにされまして今日に至っておるということでございます。すなわち、官吏恩給法内容はすべて恩給法同一ではございませんでして、今日の恩給法内容と比べますと、むしろその一部分にとどまっておるわけでございます。したがいまして、今日におきましても、執行吏につきましては、恩給法の全面適用ではなく、官吏恩給法として該当しておった部分だけに限って恩給法の規定が働いているということでございます。なお、本来的に執行吏の方に官吏恩給法がずばりそのもので適用されておったのではないということは御承知であろうと思います。要するに、官吏恩給法に照らすということでございまして、官吏恩給法の規定する官吏としては取り扱われていなかったのがその発生のときからの事情であると思います。したがいまして、今日におきましても、恩給法の適用と申しましても、そのものずばりということではないというふうに考えるわけでございます。
  32. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 官吏恩給法そのものずばりを適用しておるのではないと言われるのですが、そうしますと、官吏恩給法の中で規定をされたもので執達吏に適用されない部分があるのですか。
  33. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) まあ官吏恩給法の適用によって当然執達吏恩給を受けるものでありますならば、特別に執達吏規則等も必要がなかったわけでございます。特に執達吏規則に「官吏恩給法ニ照シ恩給ヲ受ク」という規定が入りましたことは、この規定がなければおそらく執達吏恩給というものは及ばないという考え方に立っておって、特別に根拠規定としてこれを設けたというふうに考えるわけでございますし、しかもその表現も、「官吏恩給法ニ照シ」という照らすという用語は、今日では法制上ほとんど使っておりません。この時代の特有の表現であったと思うわけでございます。そういう意味において、官吏恩給法によりとかあるいは官吏恩給法の規定に基づきということでないというところが今日の私どもの解釈で、あるいは法務省におきましてもそういう御解釈を従来とっておられると思いますけれども官吏恩給法の規定を準用するというのと全く同じであるかどうかはちょっと疑問でありますけれども、要するに官吏恩給法の規定をしかるべく執行吏にふさわしいような観点でながめてこれを適用する、こういう趣旨であろうと考えるわけでございます。したがって、恩給法におきましても同じようにそういった態度でこれを取り扱ってきたということでございます。
  34. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 私の質問しておるのは、そういうことでなくて、内容ですね、執達吏が受けておる恩給のいろいろな内容が、官吏恩給法できめておった内容の中で適用されない部分があるのかどうかということです。
  35. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 官吏恩給法はもう古い法律でございますけれども、文官あるいは武官等につきまして、あるいは在職年の計算その他につきましていろいろと詳細な規定がございますけれども執行吏の場合には当然武官等に関する規定等は適用がないわけでございますし、そういう意味執達吏職務なり身分からいって直ちに適用できない規定が官吏恩給法にはいろいろと見られるわけでございます。
  36. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 官吏恩給法が適用されておる恩給受給者はまだおるわけですか。
  37. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 今日におきまして形式的に官吏恩給法による恩給というものはないわけでございます。というのは、恩給法の中に規定がありまして、そういうものは一応恩給法の中で引き受けているということになっているわけであります。
  38. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 法律の面からいけばそうでしょうが、内容として、いわゆる給付なり、前の官吏図絵法の内容の適用を受けている人があるわけですか。
  39. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 私ども承知している範囲では、御質問官吏恩給法で定められた内応そのままのものが今日まで続いているというものはございません。
  40. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そういうことであれば、当然官吏恩給法の適用というか照らすということばですが、その内容でやっておるのは執達吏だけだということになるのですが、そうすれば、私は、官吏恩給法と照らすということではなくして、執達吏独自の恩給法というか、そういう法律をつくったほうがもっとすっきりした制度になるのじゃないか、こういうふうに私は思うんです。この点は、先ほどまあ思うというだけでありまして、これらの欠陥について積極的に是正をし、正していくという姿勢が、法務省にも見られないし、恩給局にも見られないんです。二十九年に調査して、何とか執行吏制度を変えなければいかぬということを考え法制審議会に諮問したが、まだ結論が出ないで研究中であるということで、もう十年近くもなるのに、依然としてこういう旧態依然たる規則をもって運用しているということは非常に怠慢じゃないかと思う。したがって、あらゆる矛盾があるわけですから、そういう点についてはひとつ十分今後早急に検討をして、現在の社会情勢に合った法制化をしていただきたい、こういうことを希望し、また御意見をお聞かせ願って、時間の関係もございますので、本日の私の質問は終わりたいと思います。
  41. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 執行吏恩給制度につきましては、いろいろ御意見を承りましたし、また、私ども考えも申し上げたのでございますが、実は、今後の姿につきましては、先ほど来申し上げましたように、執行吏制度そのものとの関係におきまして、それにふさわしい年金制度というものが考えられるべきである、こういうふうに私たち考えますので、執行吏制度が今日いろいろ検討の対象になっている際に、年金の面のみにおいて切り離してこれについて何らか特別の案を考えるというのは必ずしも適当でない、こういうふうに私ども従来考えているわけでございます。  それからなお、恩給局として申し上げますと、御承知であろうと思いますけれども、今日在職する公務員につきましは、実は恩給法はもはやすでに適用になっていないわけでございます。言いかえますと、共済組合制度が今日現に在職する公務員の年金制度になっているわけであります。恩給法は、その意味におきましては、すでに過去のある一定年次までに退職した者についてのみでございますから、いわばまあ前向きの制度ではなくなっております。そういう意味で、執行吏の新しい年金制度考えます場合、恩給法との関係はございますけれども、必ずしも恩給という立場にとらわれて考えると適当でないというふうに思う点もあるわけでございます。その点を御承知願いたいと思うわけでございます。
  42. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 先ほども申し上げましたとおり、法務省では、従来から執行吏制度改正について検討を続けておるわけでございますが、ただいまの仰せにもございましたように、いろいろ現在の時点に合わない問題を含んでいる制度でございますので、一そう努力いたしましてなるべく早く結論を得て実施に移したい、かように考えております。
  43. 中山福藏

    ○中山福藏君 ちょっと一点だけお尋ねしておきます。  執行吏職務執行する場合、人夫を雇い入れて、相当数の人を連れて来る場合が多々あるわけですね。そのとき、ややもすると、暴力団と結びついて、親分というのが子分を十人あるいは二十人引き連れて来て家を取りこわすというようなことがあるわけです。これは私が実際に体験した問題なんですがね。いま暴力団狩りが盛んなときに、執行吏が、家の収去、あるいは競売を執行するときに、そういうものを雇い入れないというような措置を法的に講ずるという御意見なんかございませんか、相当数の暴力団を使っておりますがね。
  44. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 執行吏執行に際しまして、執行吏だけでは執行ができがたい。たとえば。家の収去などにつきましては、人夫などを雇わなければ執行ができない。ただいまの制度といたしまして、そういう場合には、執行吏が人夫を雇うことができる規定がございます。それでありますから、そういう人夫等をいわば執行補助に使うということは、これは法律上適法なことでございますが、しかしながら、そういう人夫というものが、もしも暴力的な行為に出るというようなことがございましたら、これはゆゆしき問題でございまして、私どもといたしましても、執行吏監督する立場におきまして、そういうものは厳にこれを戒告するつもりでおりますし、現にそういうことをやっております。
  45. 中山福藏

    ○中山福藏君 大体、強制執行引受所というようなものを親分のような男がこさえまして、ちゃんとふだんから子分を養成しておるわけです。養成しておるというか、訓練しておるわけですね。そうして執行吏がそこに電話をかけるんですわ。何月何日にこういうことをやりたいと思うが、おまえさんのほうで人夫を相当数連れて来いというようにね。これは私が知っておる範囲では、暴力団の団員が相当あるわけですね。そうすると、そのうちには相当数の朝鮮人も入っておるんです、人夫のうちには。やることがもう見ておれぬぐらい、何というのですかね、強烈なことをやるわけですね。暴力団の団体にそういうものを請け負わせちゃいかぬというような法的措置を講ずるというようなのが時代向きじゃないかと考えて私質問しているのですが、そういう点は相当考慮を払われて、暴力団にそういうものを依頼しちゃいけないというような何か規制をこさえるというようなおぼしめしはないのですか。法務省なんかではそういうことをお気づきじゃないですかね。
  46. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) ただいまも申し上げましたとおり、別に法律的な規制がなくても、そういう者が執行の場合に出て来るというようなことはこれは厳に排除しなければならないことであろうと思いますので、それは現行法のもとにおきましても当然そういうものが執行の場合には出て来てはならないというふうに考えております。
  47. 中山福藏

    ○中山福藏君 現行法ではいけないから私はお尋ねしておるんですよ。実際、これは私が弁護士ですから、そういうことにぶつかっておるんですね。現行法ではだめなんですね。現在の暴力取締法なんかではそこまで手が伸びていないように思うのですが、執行吏のその職務執行する場合において、どういうふうな人間は雇ってはいけないとかなんとか、何か法務省の通達でもいいですから、臨時的な措置を講ぜられる考えはないかということをお尋ねしておるわけです。あなたのおっしゃるのは私よくわかるんです。そのとおりなんですよ、暴力団取り締まりの規則もあるのですから。しかしながら、現在それをやっておるんですね。執行吏が必ず電話をかけて、何月何日こういうことをやれと言いますと、その団体がやって来るんです。そうして、それを延期するときは、延期料を取るんですよ、実際は。十万円とか五万円とかというてね。団体に酒を飲ませなきゃならぬからということで、もう泣く泣くその金をやっておるのをまま見受ける。そういうことを何とかとめる方法はございませんかということをお尋ねしておるわけです。法律があるということはよく知っておる。また、そういうことをやっちゃいけないということもよくわかっておるわけですよ。しかし、それじゃ間に合わぬから、何とかこれを手をお打ちになる必要はないかとお尋ねしておるわけです。
  48. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 要するに、行政指導の面でそういう場面が出てこないように努力しなければならないところでございますから、監督であるとか査察であるとかそういう機会におきましてもそういうことが出てこないように執行吏監督する、あるいは年々執行吏、裁判官、弁護士が集まりましての執行事務協議会等におきましてもそういう点を議題にいたしましてそういう事態が起こらないように行政指導の面を徹底さしていきたい、さように思っております。
  49. 後藤義隆

    理事後藤義隆君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  50. 後藤義隆

    理事後藤義隆君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、会社更生法の運用に関する件について調査を行ないます。
  51. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 時間の関係で、要点をしぼってお尋ねをしたいと思います。  会社更生法の運用あるいはこれに関連をしての改正問題が起きているわけですが、会社更生法の運用について通産省が最高裁判所当局に対して要望書を出したということが伝えられておるわけですが、これはどのようなことを通産省としてはされたのか、そこからひとつお尋ねをしていきます。
  52. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) 四月の二日に、最高裁に対しまして、会社更生法の運用につきまして要望いたしました。その要点を申し上げますと、まず、裁判所と産業官庁との連携の強化の問題でございます。第二は、下請等の中小企業債権者の保護という問題でございます。  第一の点について申しますと、会社更生法の中に「監督行政庁」ということがございますが、この監督行政庁に対しまする裁判所からの通知あるいは意見の聴取というような規定がございますけれども、通産省が厳格な意味監督行政庁に当たらないと解釈されるような場合があると考えられますので、通産省がいわゆる許認可権を持った監督行政庁という場合に当たらない場合でありましても、通産省が当該の企業の主務官庁である場合には、積極的にやはり通産省の意見を聴取してもらいたいということであります。  それから第二は、更生事件処理、特に保全処分または更生計画案の作成等にあたりましては、下請・中小企業者の債権の確保もしくは優先的な弁済の確保等につきましてその保護の観点から十分に配慮されたい、こういう要望をいたしております。
  53. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いまの一と二のことはよくわかりましたが、そういうふうなものを出すように至った経過といいますか、必要性といいますか、それはどこから出てきたんですか。何か具体的な案件に即して考えられてきたわけですか。
  54. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) 会社更生法のねらいは、更生をしようとする会社が非常に窮境におちいった場合に、これを生かしていこうというねらいがありますと同時に、この更生会社に対する債権者もその債権が長い目で見て保全が行なわれたり、あるいは回収が行なわれることをねらいとしておると思いますが、最近に起こりました会社更生法の申請状況を見ますというと、更生しようとする会社の保護のために、債権者である特に中小企業者等につきましては、その中小企業が生産を維持し得ないような状況におちいりましたり、あるいは従業者に対しまして給料を払うことが困難になったり、場合によりますと解雇をせざるを得ない状況になっている事例がございますので、そういう面で中小企業者の債権をやはり確保する必要があるのではなかろうかというのが第一点でございます。  それから第二は、御承知のように、最近におきましては、ある一つの会社が、特に中堅企業以上になりますと特にそうでございますが、原材料を供給をしたり、あるいは製品を販売したり、あるいは下請企業を持ったり、その企業の倒産あるいは企業の窮境というものが、関連企業に対する影響というものが非常に大きくなっておるわけでございます。かたがた、通産省といたしましては、単に個々の企業だけでなしに、そういう産業全体あるいは関連産業も含めた意味でこういう産業が国際競争力を持ちそうして健全に発展してまいりますためのいろいろな産業政策を講じておりますので、そういう見地から、単に裁判所としての法律的判断だけでなしに、そういう産業面の配慮をしていただく必要があるわけでございますので、そういう意味で、主務官庁に、いわゆる狭義の監督官庁でなしに、その企業を所管している主務官庁にいろいろ連絡をしていただいたり、意見を述べさしていただいたりいたしまして、私どもも積極的にただいま申し上げました更生会社だけではなしにそれに関連する関連企業も含めて再建をはかってまいりたい、こういう考え方からただいまのような申し入れをいたしたわけでございます。
  55. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いままで会社更生法のいろいろ運用の中で、通産省が通知を受けたりあるいは積極的に意見の陳述ですね、条文に言う、こういうようなものをやっていったことは相当あることはあるのですか。あまりいままではないんですか。
  56. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) 現地におきまして事実上いろいろそういう意見を述べたりあるいは通知を受けたことはないわけではなかったと思いますが、比較的少なかったわけでございます。特に正式に文書をもってそういう意見を述べろという連絡のありましたのは、おそらく山陽の事例が最初ではなかったかと記憶をいたしております。
  57. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、まあ会社更生法によって、そういう法律で一体下請業者というか中小企業者の保護ができるかどうかとかいうふうなことは、いろいろ大きな問題があって、法律万能的な考え方ではいけないと、こう思うんですが、それは別の議論にして、そうすると、会社更生法の第三十五条に言う監督行政庁ですか、これは法の運用ではいままではどういうふうに考えていたわけですか。通産省とか、あるいは各地にある通産局というんですか、こういうようなものは監督行政庁には入らないというふうに考えて実際上はやってきたわけですか。そこはどうなんですか。最初のところは、通知のほうは「通知しなければならない。」で義務になっているわけですね。意見の陳述は、これは「求めることができる。」ですけれども、通知のほうは義務になっているわけですから、はっきりしておかないといけないですね。いままでの運用はどういうふうにやっておられたわけですか。
  58. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 会社更生法三十五条の監督行政庁というものの解釈、実際の運用からいたしますると、従来裁判所としては各省の設置法等に監督権ということがはっきり出ているそういう行政庁に限って、ここに——ここにと申しますのは、会社更生法三十五条のいわゆる監督行政庁というふうに解しておった裁判所が従来は多かったように思うのでございます。そうして、私ども法律の解釈としてはそれでよいのではないかというふうに思っております。  では、先ほど通産省の企業局長からお話がありましたような希望と申しましょうか、要望と申しましょうか、そういう要望を受けまして、最高裁の民事局といたしまして各地の高等裁判所地方裁判所にその要望を伝達した伝達というのはどういう形でやりましたかと申しますと、先ほど企業局長からお話がありました趣旨の要望がありましたと、この旨を通知しますという形で伝達いたしたわけでございますが、もちろんこの通産省からの要望の趣旨に沿うて各裁判所が更生法の処置をしてもらいたいというような趣旨でこれを伝達したのではございません。ただ、しかしながら、全然的はずれな御要望であれば、さような御要望もこれを伝達するはずはないのでございまするけれども、更生法というものは、企業局長からもちょっとお話がありましたように、普通の裁判所における訴訟事件とは性質が違いまして、関係者と申しますか、利害関係人というものが、普通の訴訟における原告・被告というような対立当事者間に限られた事件ではございませんで、そこには株主もあれば、債権者もあれば、企業に雇われている人もある、それからまた下請というような関係もあるというような次第でございまして、非常に広い利害関係を生ずる事件でございます。したがいまして、会社更生法における事件処理手続というものは一応民訴の手続によってなされるということになっておりまするけれども、しかしながら、民訴における当事者主義のような手続と違いまして、裁判所が職権をもって取り調べることができるというような規定になっておりまして、崎ほど申し上げましたように、監督官庁という意味は、裁判所としては狭く解釈し、したがって、三十五条によってぜひ通知をしなければならない法律上の義務がある官庁といたしましては、狭い意味での監督権を持っている行政官庁に限るという解釈で進んでいってよいものであるとは思いますけれども、しかしながら、更生手続というものが職権調査のできる手続であるとするならば、それは広くいろいろの事実を取り調べまして、そうして客観的な正当な判断ができるようにすることも裁判所として必要な態度であろうと思われますので、法律的に通知を必ずしなければならない官庁ではないとしても、広く意見を求めるということはこれは決して悪いことじゃないので、どこにそれじゃ意見を求めるかどうかということは、これは事件をやっておられるその現地の裁判所が適当に判断をしてそうしてその態度をきめるべきことであろうとは思いまするけれども、そうして従来もそういうふうに裁判所はしていたと思うのでございますが、この際、通産省からもそういう要望があったのであるということをひとつやはり裁判所としても心得ておくということも悪いことではないわけでありまするから、そういう意味におきまして、こういう要望があったということを通知したわけであります。
  59. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 通産省のほうにお伺いするのですが、会社更生法の運用の面でいきますと、下請企業でありますとか、中小企業といいますか、そういうようなものの債権が、弁済の面においてというか、いろいろ不利なことになっておるわけですか。その点はどういうふうなんですか、どういう点で不利なんですか。
  60. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) 法律的には、不利になっておるということはないと思います。ただ、御承知のように、債権者につきましても、要するに資力の強い債権者と資力の弱い債権者にとりましては、同じ債権がたな上げされ凍結されましても、その受くる影響というものが非常に違うわけでございます。そういう面において、やはり中小企業あるいは下請企業に特に問題が起こってまいるわけでございまして、そういう意味では、先ほど申し上げました保全処分の問題なり、あるいはこの法律の二百二十九条でございましたか、あるいはその運用面において特別の規定がございますので、そういう面を弾力的に運用いたしまして、会社更生法のねらいである更生会社と同時にその債権者等の調整をする、全体として生かしていこうというねらいが達せられる以前において、ただいま申し上げました弱い債権者が倒産をしたり、あるいは解雇せざるを得ない、あるいは企業の維持ができないという問題をどう解決していくかというところに問題があろうと存じます。
  61. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 質問の趣旨がちょっとはっきりしなかったかと思いますが、たとえば更生計画に基づいて弁済を受ける優先順位では、共益債権、それから更生担保権、それから一般の更生債権となってきて、下請代金は第三の順位になるんですね、大体担保権が普通ついていませんから。そういう関係で、優先順位からいっても、非常にあと回しになってきて実際もらえないことが多いとか、それから、債権者の集まりの中でも、関係人集会でも、議決権というものが債権額に比例して議決権が与えられておる——んですか、ちょっと私もあれですが。そうなってくると、債権額の少ない中小企業というものは、額そのものからいうと議決権が少なくて非常に不利だ、こういう形に実際面としてはなってきているのではないですか。資本主義社会だからそういうものだといえばそういうことかもしれませんけれどもね。そういうふうな面で、実際の会社更生法の現在のたてまえそのものが、下請なり中小企業に非常に不利なことになっているんじゃないですか。その点があるから、それでは困るから、何とかそういうふうな面全体についてもいろいろ問題として考えなければならないというのが通産省の一つ考え方ではないですか。
  62. 島田喜仁

    政府委員(島田喜仁君) いろいろ更生会社法の法律問題につきましては問題点は実はあるかと思いますが、御承知のように、担保権者とあるいは担保のない債権者との関係は、会社更生法の問題というよりも、むしろ民法上の問題に実は関連をしてまいります関係から、それはそれぞれ問題点ではございますけれども法律的にはやはり慎重に考えなければならない点があろうかと思います。  それから、ただいまの議決権等の問題については、これは今後の問題としていろいろ検討に値する面があろう、こういうふうに思っております。
  63. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いまの議決権はどういうふうになっているんですか。
  64. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 議決権の行使は、やはり債権額に比例するということになります、百七十条で。
  65. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 通産大臣が来たらちょっと聞きたいところがあるんですが、それまでに最高裁にお聞きしたいのは、通産省からそういう要望があったからというのでそれを伝達したというわけですが、それは司法権の独立との関係があるわけですから、なかなかむずかしい問題だと、こう思うのですが、いままで具体的にはどういう取り扱いをしているんですか。最高裁判所なりあるいは各裁判所に対していろいろ要望があった場合に、最高裁としてはそれを各裁判所に伝達するというか、どういうふうな基準に従ってこれは伝達をするんでしょうか。そこはどういうふうになっているんですか。
  66. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 行政省というか、利害関係人といいますか、そういうところから最高裁に対して事件処理等について要望がありました場合に、これは本来の筋からいって伝達すべき筋合いのものでないというものは、これは伝達ないしそういうものの通知というものをお断わりすることは当然だと思います。それでありますから、従来も、要望に対して通達をしたという例はそう多くはないわけであります。しかしながら、たとえば、弁護士会等から、交通事件処理についてその調停などの場合においてはなるべくその調停委員の選任については交通事件等に詳しい方を特別に調停委員として選んで交通事件処理の調停をやってもらいたいというふうな御要望のありました際は、これはそういう要望がありましたということを参考までにお知らせしますという形で全国裁判所に流している例もございます。
  67. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 普通は、日本弁護士連合会からの要望などの場合ですか。たとえば、商工会議所から手形訴訟の場合、あれは法案が通る前ですからね、前にもちろん最高裁として流すわけではないでしょうが、法案が通ったあとに、商工会議所あたりからそういうふうに手形訴訟を運営してくれというような要望があった場合には流していたのですか。そういうことはないですか。
  68. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 手形訴訟に関しましては、その法案ができます前にはいろいろ、要望等もあったふうに聞いておりますが、でき上がってその運用等につきましてまだ要望等は参っておりません。
  69. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 会社更生法昭和三十七年からできて、その後ずいぶん改正になっておるんですが、どこがどういうふうに改正になったのか、これはいまでなくてもいいと思うんですが、何か一覧表か何かにして改正のおもな点についてあとで出していただきたいと、こう思うんです。特に何か重要な改正があったわけですか、こまかい改正が一ぱいあるようですが。
  70. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 会社更生法が数回にわたって改正はされておるようでございますが、これは会社更生法そのものの改正を目的としたものではなくて、おそらくほかの関係法律改正いたします際の関連法律として改正されたものが大部分であるというふうに私ども記憶いたしております。
  71. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、会社更生法ができてから実際に運用してきたその実情というのを、統計的なものですね、それが実際には何件ぐらいあって、そうして開始決定があったものとか、あるいは開始決定がなかったものとか、開始決定があって実際にそれが非常に成果をあげたものとか、それから開始決定があって実際やっておる間に取り下げになってしまって事実上成果をあげたという形になったものも相当あるのではないかと、こう思うんですが、これはどういうふうに分けていったら一番正確かということはちょっとぼくもなかなか分け方や何かむずかしいかと思うんですが、何かまとまったふうな資料等があれば、説明を願うなり、あるいはあとで出していただくなりしていただきたいと思うのですが。
  72. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 更生法の運用によってどの程度の成果があがったかどうかということは非常にむずかしい問題でございまして、どういうふうに考えていけば成果があがったのであるか、あるいは、更生法というものの運用というものは従来うまくいっていないのじゃないかというような結論が出るか、そういうデータをどこからどういうふうに求めていくかということはたいへんむずかしい問題であろうかと思います。ただ、私どもは、そういうことを考えます場合に、更生法というものがなかった場合と、更生法というものがあった場合とを比較して事を考えていくならば、ある程度更生法というものの功罪といいますか、そういうものが考えられるのじゃないかというふうに思うわけでございますが……
  73. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 ちょっと途中で恐縮ですが、会社更生法のいわゆる功罪というような問題は、これはなかなかそう端的に言えるべき筋合いのものではないわけです。これはなかなか見方もむずかしい問題ですし、そういうことはあとの問題として、会社更生事件というものがたとえば年度別にどのくらい受理件数があったとか、その受理件数の中の資本金別の内訳はどの程度のものであるとか、あるいは負債額の内訳がどの程度のもであるとか、あるいは業種別の内訳がどういうふうなものであるとか、こういうようなものの統計的なものがあればというわけです。今なければ、ないでいいんですよ。これはあとで出していただいてもいいと思うんです。それから東京のものは、これは民事八部でやっているのですか。そこでも統計的なものがある程度できているようにも聞いておるわけです。
  74. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 全国的なものといたしましても、ただいま御指摘になりましたような程度のものであるならば、これはただいま手元にございませんけれどもあとで差し上げることのできる程度のものはできておると思います。ただ、東京は、事件も多うございますし、そういう意味で、特殊な、もう少し詳しい統計的なものをつくっております。しかし、そういう東京程度の詳しいものは全国的にはないわけでございます。
  75. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 だから、全国的なものはものとして、それからさらに東京の場合は相当詳しいものができておるように聞いておりますので、東京の場合はもう少し詳しいものがあればいただきたい、こういうふうに考えております。  それからもう一つの問題は、これはいずれにしても法案も議員立法で社会党からも出ておるのですし、あれでございますから、あとでまたいろいろ聞いていかなければならない問題だと思うのですが、一つは、法案が出るときに参議院で修正になった、こういうんですね。どの程度が修正になったのでしょうか。管財人を置くか置かないか義務制の問題だとか、その他の問題ですか、どういう点が修正になったのですか。
  76. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 私もその点について詳しいことは調べてまいりませんと十分お答えできませんけれども、私がいま記憶しておりますところでは、たしか更生担保権者の権利の変更が初めは案とすればできるような案であった点と、それから大きな会社と小さな会社に区別して、小さい会社については必ずしも管財人なんか置かなくてももう少し簡単な手続でやっていけるというような、破産法でいえば小破産というものに準じての制度考えていたように記憶しております。
  77. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それは、あとで、私のほうも調べてみまするけれども、調べていただきたいと、こう思うんです。何か国会でそういう修正をしたことがかえって逆に今になってマイナスだという説が相当出ておるわけですよ。たとえば、管財人を見つけようといったって、なかなか管財人がいない。それを小さい会社に会社更生法の管財人を一々つけなければならぬということになってきて、実際そのために運用がまずくなっておるんだということが言われておるわけですね。それは実際はどうか、なかなかよく調べてみないとわかりませんけれども、そういう点もあるものですから、国会で修正したときにはそこまで詳しい考え方なしにやったのかもわかりませんけれども、そういう問題点があるものですから特にお聞きしておるわけです。  そこで、それでは、法務省のほうの刑事局関係にお聞きをしたいのですが、会社更生法の運用に関連して特に問題になりましたのが山陽特殊鋼の問題があるわけですが、あの問題の中で、紙上いろいろ伝えられておる。たとえば背任関係の問題だとか、いろいろ会社犯罪になるようなことが伝えられておるわけですが、こういうふうなことの現在の捜査の状況というのを差しつかえない範囲でひとつお聞かせ願いたい、こう思うわけです。
  78. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) お尋ねの山陽特殊鋼の関係につきましては、現在更生手続が進行中でございますので、検察庁といたしましても、更生手続の推移というものを見守りながら、かたわら調査検討を進めておる段階でございまして、まだ刑事事件として取り上げて捜査するには至っておりません。
  79. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それはどういう点が問題になっているのですか。
  80. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 刑事事件的な感覚から見ましてどういう点に問題があるかということを目下調査検討しているわけでございます。
  81. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 どういう点に問題があるかということじゃなくて、問題があると答えれば捜査の秘密の問題になってきて、これからの捜査の問題に関連してくるから、きょうはこの程度にしておきますけれども、こういう場合に、会社更生手続が進められておるとなってくると、犯罪捜査の面というものはチェックされるということになるのですか。
  82. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 犯罪があるというふうに考えられまする場合に捜査をすることになるわけでございますが、かたがた会社更生手続が進行中でございまして、当該会社の更生手続が円滑にいくかどうかということはやはり相当広範囲な社会に影響をもたらすのでございますので、それと捜査の必要性というものとを勘案しながら捜査の時期あるいは方法、こういうものを決定していかなければならないというふうに考えます。
  83. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それは、犯罪行為があるというふうに考えられた場合に、各般に及ぼす影響が大きいから、捜査の必要性をどういうふうに考えるかということは問題だと、こういうふうなことになると、あらゆる場合に——あらゆる場合というのは語弊があるかもわかりませんが、多くの場合にそういうふうな考え方でいくのならば、たとえば非常に大きな政治犯罪ということになってくれば、それをやるとなると非常に大きい影響になるからというので、捜査の必要性を考えなければならないということになってこないとも限らないので、それはまた話がちょっと別になってくるのじゃないでしょうか。私の質問がちょっとその点については正確さを欠いておることはぼくも認めるのですが、いずれにしても、会社更生手続が進行している間は犯罪があっても特段の非常に大きなものでなければやらないというふうな一つの基本的か考え方になるのですか。そこのところはどうなんですか。そういうことをやることによって会社更生ができなくなるという場合だと、これはなるほどいろいろな影響があることは認めますが、犯罪の捜査というものも差し控えなければならないというのは基本的な考え方になってくるのですか。
  84. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 私の申し上げました趣旨は、いまおっしゃいますようなことではないのでございます。たとえば、極端な例をあげますと、非常にさまつな秩序犯的な犯罪行為があるという疑いがあります場合に、これを立証するためには会社の全帳簿を差し押えて検討しなければならぬというような、そういったごく形式犯的なものがあらわれましたような場合に、帳簿を全部差し押えましてそれによって捜査をやっていくということがどの段階で行なえば適当であるかというようなことは、やはり捜査の手段方法として考えなければならないと思うわけでございます。ただ、犯罪がある場合に、更生手続中は一切手をつけないというようなことでは毛頭ないわけでございます。
  85. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 現実にはささいな形式犯ですね、そういうふうなことで、会社の帳簿じゃないけれども、それが労働組合の事件であるとかなんとかなってくれば、徹底的に家宅捜索かなんかやって、どんどんやっておるのじゃないですか。どうもそういう論理からいくと均衡を失するのじゃないですか。どうもそこのところは納得いかない。これはここで論議しても、きょうの話じゃありませんからあれしますけれども、そうすると、山陽特殊鋼の場合には、神戸の地検で手を入れようとしたんだけれども差し控えたんだ、いま姫路の支部でやろうとしているんだという形で、これは犯罪があるから必ずしもそこで徹底的にやらなければならないということではない、それによっていろいろな面への影響があるということも考えなければならないから、単に一本調子にいけないのはわかりますが、事実は事実として捜査はするということは、これは間違いないわけですね。
  86. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 犯罪の嫌疑があるということになりますと、捜査をすることになると思います。
  87. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、山陽特殊鋼の場合だけではないのですが、いわゆる粉飾決算というのが非常にあるわけですね。これは会社犯罪の中の一つのあれですが、粉飾決算というふうなものについて従来ほとんど検察庁関係は手を入れていないのが実情ではないですか。いままでやったことはありますか。
  88. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 全く手を入れておらないわけではございません。たとえば商法四百八十九条三号のタコ配当でございますとかというような事件につきましては、私個人としても取り扱ったことがございますし、実例はある程度あがっております。
  89. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、粉飾決算、いまのタコ配、その他いろいろたくさんあると思います。具体的な例が幾つも出ているのですが、そういうふうなものも、捜査をやることによってその会社に大きな影響を与える、あるいは会社の存立というものが問題になってくる、こういうことになってくると、それは犯罪事件としては当然考えられるんだけれども、その会社の存立というふうなことに影響があるということになってくると、それも十分考えて捜査をやらなければいかぬ、こういうことになるわけですか。そこのところはどうなんですか。均衡関係はどうなんですか。
  90. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 粉飾決算に伴う犯罪があるということが明白になれば、当然捜査をしなければならないわけでありますが、ただ、問題は、その捜査の方法あるいは時期というものは、捜査の結果、訴追します事項との関連におきまして若干の配慮は払う必要がある場合があると思います。
  91. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 粉飾決算というのは、具体的にどういうふうなものを言うのですか。おそらくそういうようなものは日本の会社などではもう非常に多く行なわれているのではないですか。その点はどういうふうに把握されておるのですか。
  92. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) よく存じません。
  93. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いや、紛飾決算とはどういうふうなものかということなんですよ。
  94. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 現実に損益を歪曲して決算書にあげるということであろうと思いますが、犯罪という観点からながめますと、粉飾決算の結果、タコ配当をしたというような点において商法違反になりましょうし、あるいは、一定の規模以上の会社でございますれば、証券取引法違反というようなことになってくるのではないかと思います。
  95. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それは今度倒産した山陽特殊鋼の問題だけではなくて、ほかの会社などでも、ほとんどと言っていいくらい粉飾決算をやっておるのじゃないですか。現実には利益があったようになっていて、そしてそれで配当していて、それで実際は赤字だったというのでつぶれておるというのがあっちにもこっちにもあるのじゃないですか。これは現実の問題としては日本の会社はそういうふうな形のものを非常に多くやっているのじゃないですか。ただそれが現実として手が入らないということは言えるかもわかりませんが、私もこれは十分研究しておるわけじゃないんですが、そういうふうにいろいろな面で伝えられておるわけですが、そうすると、会社犯罪であっても、そういうふうな商法違反とかそういうことになれば、これは一般の犯罪と同じように当然検察庁としては手を入れてやっていくんだ、こういうことは言えるわけですね。その点はどうですか。
  96. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 仰せのとおりでございます。
  97. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 どうも話が抽象的なんで、ほんとうは具体的な例をもってやると一番いいと、こう思うんですが、通産大臣が来られないので、これは最終的なことで確かめたいことがあるので、ちょっと待っていただけますか。
  98. 後藤義隆

    理事後藤義隆君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  99. 後藤義隆

    理事後藤義隆君) 速記をつけてください。
  100. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 通産大臣お出になったので、最終的にお尋ねしたいのですが、いま山陽特殊鋼の問題その他たくさんの倒産を中心として会社更生法の問題が大きく出ているわけですが、これについての改正の問題ですね、通産省当局が非常にこの改正の問題に熱心だというようなことを聞いておるのですが、この会社更生法改正ということについてどういうふうにお考えなのか、こういう点をちょっと明らかにしていただきたいと、こう思うわけですが。
  101. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 従来の会社更生法の適用の実情を考えますときに、いささかこれが安易に流れておるんではないかということから、私ども改正の必要があるんじゃないかというような考えを起こしたのであります。しかし、その前提といたしまして、従来この更生手続裁判所がやられますときに、通産省に対しての意見聴取等がどうも欠けておるんではないかというようなことから、おそらく局長から申し上げたと思いますが、できるだけ通産省に対して連絡をとってもらいたいということをお願いいたしまして、そのように最高裁の通知もあったと聞いておるのでございますが、特に私の考えておりますことは、何といっても下請・中小企業者の債権の保護ということが、これが最も重要だと思うのでございまして、この点はぜひ更生法の改正の際には最も重点的に考えてもらいたいと。なお、抽象的に申し上げてたいへん恐縮でございますが、産業政策上の種々配慮すべき問題があると思います。したがって、私としては、事務当局に更生法の検討を命じ、また改正の意見の取りまとめをすみやかにするように指示をしておるような次第でございます。本日の段階では、その内容等についてはまだ十分煮詰まっておりませんので、述べることを差し控えさしていただきたいと思います。
  102. 後藤義隆

    理事後藤義隆君) 他に御発言もなければ、本日はこの程度にいたしまして、次回の委員会は四月二十七日に開会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後零時四十三分散会      —————・—————