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1965-04-13 第48回国会 参議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月十三日(火曜日)    午前十時五十七分開会     —————————————    委員異動 四月十三日     辞任         補欠選任      鈴木 一司君     草葉 隆圓君      鈴木 万平君     佐藤 芳男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         石井  桂君     理 事                 木島 義夫君                 後藤 義隆君                 稲葉 誠一君     委 員                 草葉 隆圓君                 佐藤 芳男君                 迫水 久常君                 柳岡 秋夫君                 岩間 正男君                 山高しげり君    国務大臣        法 務 大 臣  高橋  等君    政府委員        総理府恩給局長  増子 正宏君        警察庁刑事局長  日原 正雄君        法務政務次官   大坪 保雄君        法務大臣官房司        法法制調査部長  鹽野 宜慶君        法務省刑事局長  津田  實君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局民事局長   菅野 啓蔵君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        法務省刑事局刑        事課長      伊藤 栄樹君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律  案(内閣提出参議院送付) ○検察及び裁判の運営等に関する調査東京都議  会の汚職事件等に関する件)     —————————————
  2. 石井桂

    委員長石井桂君) これより法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、鈴木一司君、鈴木万平君が委員を辞任され、その補欠として草葉隆圓君、佐藤芳男君が選任されました。     —————————————
  3. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続いて本案の質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  4. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この前の続きでお尋ねをいたしますが、明治二十三年七月二十五日、法律第五十一号、執達吏規則というのが執行吏身分関係というかいろいろな職務関係規定した法律ですが、これは法律であるのになぜ規則というような名前をつけているのですか。
  5. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 最近でございますと、法律として制定されましたものは何々法というふうに名称が統一してございますが、これは古いことでございまして、その当時は必ずしも統一されていなかったというふうに考えられるわけでございます。
  6. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは明治憲法の前にできたのですか。
  7. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 仰せのとおりでございます。
  8. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、太政官布告だったのですか、そうではないのですか。——あとでいいですよ。そういう疑点はあとでいいんですが、ただ、施行明治二十三年十一月一日ですから、明治憲法施行になったときにこの執達吏規則というのは施行になったんですか。——ちょっと待ってください。憲法よりも早いですな。
  9. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) いま稲葉委員仰せのとおり、旧憲法施行よりも執達吏規則施行のほうが早いわけでございます。したがいまして、執達吏規則は、元老院で制定されたものでございまして、太政官布告とは違うわけでございます。
  10. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、旧憲法以前にできたものが明治憲法によって法律として、の効力を持っているというその根拠はどこにあるんですか。——憲法明治憲法の七十六条でいいんでしょう。
  11. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 旧憲法の七十六条に、「法律規則命令ハ何等ノ名稱ヲ用ヰタルニ拘ラス此憲法ニ矛盾セサル現行法令ハ總テ遵由効カヲ有ス」という規定がございます。この規定によりまして引き続いて法律としての効力を有する、かようなことになっているわけでございます。
  12. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 恩給局長にお尋ねするのですが、執達吏規則の第二十一条で「執達吏ハ官吏恩給法照シ恩給受ク其恩給年額ハ第十九条二足メタル金額俸給額ト看做シテ算定ス」と、こうあるわけですが、この官吏恩給法というのは今はどうなっているんですか。
  13. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 現在の恩給に関する根拠法国家公務員につきましては恩給法でございますが、この恩給法が制定されましたときに官吏恩給法廃止されておるわけでございます。
  14. 稲葉誠一

    稲葉誠君 そうすると、当然恩給法ができたときにこの第二十一条は「執達吏ハ恩給法ニ照シ」というふうに読みかえをすべき性質のものなんですか。
  15. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 御指摘の点は、今日の法制的な措置ということになりますと、当然そういうことが考えられたわけでございますけれども、現在の恩給法が制定されましたのは大正十二年でございますが、その当時におきましては特にこれを改正とといいますか字句等を修正することなしに今日に至っておるわけでございます。
  16. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこがまたはっきりわからないですが、大正十二年に恩給法ができたときに、官吏恩給法というのは、全面的に廃止になったのですか、あるいは、一部生きていたのですか。
  17. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 全面的に廃止になっておるわけでございます。
  18. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、執達吏規則の二十一条で「官吏恩給法ニ照シ」というのは、これは恩給法改正のときに附則なり何なりで「恩給法照シ」というふうになるんだという規定を置くべきだったんですか、あるいは、置くべきでなかったのですか。置くべきであったけれどもそこまで気がつかないで置かなかったというのか、あるいは、置くべきでないんだから特にこのままにしておいたというのか、そこはどういうのでしょうか。この前、恩給問題審議室長の近藤さんのお話を聞いたのですが、どうもそこがよく私のみ込めないものですから。
  19. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) いわゆる執行吏恩給制度につきましては、御承知のように、法的にも非常に複雑といいますか、ちょっとほかの例とは変わっております点があるわけでございますが、実は、執行吏制度は、私どもとしましては、いわば行政機関職員でもございませんし、特殊な地位にあるわけでございますので、これらの点につきまして御質問のような観点から詳細に調べたことはないわけでございます。ただ、今日におきましていろいろ憶測といいますか解釈いたしてみますると、執達吏規則に書いてあります「官吏恩給法ニ照シ」というような表現につきましても、実は今日でありますと「を準用し」というようなことになる法律用語であろうと思いますけれども、「照シ」というようなことになっておるわけでございます。  それからなお、内容的に言いますと、今日の現行恩給法とはかなり違ったものでございまして、「官吏恩給法ニ照シ恩給受ク」というその恩給は、あらゆる種類恩給を含んでいるわけではなくして、単に普通恩給に該当するものだけになっているようでございます。そういう意味合いにおきまして、官吏恩給法に照らして執達吏恩給支給するというその内容を新しい現行法恩給法で書くということよりも、むしろそのままにしておいたほうが適当であるという判断でされたのではないかというようなことも考えられるわけでございます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 官吏恩給法という法律がなくなって恩給法ができたというんですが、官吏恩給法恩給法との根本的な差異はどこにあるわけなんですか。
  21. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 官吏恩給法の場合には、大体官吏本人についてのみ規定いたしております。したがいまして、現行恩給法扶助料等については規定がないわけでございまして、実はそれは別の単独立法になっておったわけでございます。執達吏につきましては、官吏恩給法恩給といいますと、実は官吏恩給法には増加恩給という種類もあるわけでございますけれども、それは正確には増加恩給と称した場合にだけそれが含まれるわけでございます。官吏恩給法による恩給というと、増加恩給は含まないで、今日で言う普通恩給ということになるようでございます。
  22. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、現在は、あれですか、官吏恩給法に照らしているんですか、あるいは、恩給法に照らしているんですか。どういうふうに判断したらいいわけですか。
  23. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 従来の扱いといたしましては、官吏恩給法恩給というのは、現行恩給法における普通恩給というふうに読みまして、その他算出に関する規定などは恩給法にのっとって計算をするということで、まあその辺がいわゆる今日で言いますれば必要な条項だけ準用しておるという形であろうと思います。
  24. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、本来、法制局がおれば法制局にお聞きするのが一番いいんじゃないかと、こう思うんですが、執達吏規則というのは、そういう形になってくると、第二十一条の「官吏恩給法ニ照シ」というところは当然法律改正をすべきではないかと、こういうふうに考えるんですが、その点はどうなんですかね。  それから二十二条でも、「〔官吏法適用執達吏ハ比規則二依ルノ外テ一般官吏ノ例ニ依ル」とありますが、一般官吏というのは今あるんだかないんだかよくわかりませんが、これも改正すべきじゃないんですか、条文的には。そこはどうなっておるんですか。
  25. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) お説のとおりでございまして、執達吏規則仰せのとおり非常に古い規定でございまして、執達吏——現在の執行吏制度自体の改革ということが懸案になっておりますために、この規定自体内容につきましてはおそらく幾つかの個所について整理を要する問題が多々あると存じますが、それらの問題は制度を根本的に検討する際に整理をしようという考え方で現在まで従来の規定をそのまま踏襲してきているわけでございます。したがいまして、現在の法制のたてまえでこの条文を厳格に読みますと、必ずしもすべてがすっきり割り切れない点が残っているわけでございます。
  26. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 恩給法の五十八条ですね、公務員として就職した場合の恩給停止適用執行吏の場合にはないんですか。
  27. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 執行吏の場合にはございません。  なお、この機会に、先ほど申し上げました点で間違って申し上げた点がございますので、訂正をさせていただきたいと存じますが、官吏恩給法恩給というのは、先ほど普通恩給のみというふうに申し上げましたが、普通恩給及び増加恩給も含む趣旨でございます。ただし、現実には増加恩給というものを支給した例は非常に少ないということでございます。
  28. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 恩給法の五十八条の適用がないというのは、どういう意味なんですか。
  29. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 執達吏いわゆる執行吏は、恩給法上は公務員として適用していないからでございます。
  30. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判所法では給与を受けない公務員だという形になっているわけですね。恩給法では公務員とはしないわけですか。これはどういうわけですか。
  31. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 恩給法公務員というのは、一応資格を限定しております。したがいまして、実質的に公務員、あるいは他の法令公務員といいましても、恩給法上は公務員としていないものがほかにもございます。
  32. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、法律々々にはその目的といいますかあれがあるから、必ずしも範囲が一致しなければならぬという理由はないとは思いますかね。  そうすると、一般公務員として十七年間つとめて恩給法による恩給を受けている。それからやめて執行吏になって、ずっと恩給を受けられるわけですか。何かある程度収入があるというと恩給を受けられなくなるわけですか。
  33. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 執行吏になった方が、その前に恩給法上の公務員としての期間を有し、それが最低年限に達しておれば、当然恩給法による恩給支給されるわけでございますが、執行吏として在職中につきましては、先ほどご指摘のように特に支給停止もされないわけでございますが、いわゆる恩給法に基づく多額所得の場合の停止という規定はもちろん働くわけでございますので、一定の条件がございますけれども恩給外所得金額によりましては制限を受けるという場合もあり得るわけでございます。
  34. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、恩給を受けていて、やめて執行吏になって、今度さらに十七年間やると、また執行吏としての恩給も受けられるわけですか。これはどういうふうになっているんですか。
  35. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) それは当然そういうことになるわけでございます。
  36. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、官吏恩給法によると、十五年間で恩給がつくことになっているのじゃないですか。
  37. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 官吏恩給法時代はもちろんそういうことでございましたし、現行恩給法昭和八年までは十五年ということでございましたので、同じようにやっておったわけでございますが、昭和八年の改正で十七年になりましたときに、従来の分もそのように取り扱うことに定められておるわけでございます。
  38. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 執行吏のいろいろな身分職務上のものが官吏恩給法に照して恩給を受けることになっていて、さあそういう部面があろうと思うと、今度執行吏自身恩給ということになってくると、それは恩給法規定適用するんだと、官吏恩給法ではないんだと、こういうわけでしょう。非常に複雑ですね。  いまの十五年というのが十七年になったというのは、どういう経過からなったのですか、いつごろの話ですか。
  39. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 改正になりましたのは、昭和八年の恩給法改正でございます。  なお、官吏恩給法とそれから現在の恩給法との関係でございますが、官吏恩給法に照らして執行吏には恩給支給するということでございますので、官吏恩給法規定されておりました限度におきまして官吏恩給法廃止されましたあと恩給法規定がいわゆる準用という形で執行吏については働くというように従来考えておるわけでございます。したがいまして、この恩給法ができましたときの恩給法施行令等におきましても特に規定を設けまして、執達吏恩給云々という条項がその施行令勅令の中にも入っておるという状況でございます。
  40. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 十五年で恩給がついたものを法律改正——ではないんでしょう、政令ですか何かで十七年にしてその当事者に不利益をこうむらせるということは、一体できるのですか。法律ですか。
  41. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 御指摘改正は、実は恩給法適用を受けておった者自身にも同じ問題があったわけでございます。十五年であったのが昭和八年の改正で十七年になった一わけでございますから、その間の取り扱いにつきましては、恩給法関係法令で当然規定をいたしたわけでございます。大体、恩給法の従来の改正を見ますと、すなわち恩給法施行によりまして官吏恩給法廃止されたわけでございますけれども、新しい法律施行されたときに、従前の例によりましてあるいは他の法令によってそれに似たものを受け取る場合にはこうこうするというような形をそのつど規定をいたしておるわけでございます。ただいま御指摘の点もそういうふうにして処理されたものと承知しておるわけでございます。
  42. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、この前問題になりました執行吏公務員だということは、これはわかりましたが、給与を受けない公務員だと。それは、公務員制度というか公務員法上における全体の中でどういうふうな地位を占めているということになるんでしょうか。給与を受けない公務員というのは、そのほかにもたくさんあるわけですか。どういうふうに分けたらいいんですかね。公務員のいろんな種類の分け方は、法制的にいうと、どういう分け方が正しいのですか。
  43. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 前回お話がございましたので、現在の公務員制度におきます公務員分類をいろいろ検討してみたわけでございますが、非常に複雑な形になっておりますので、いろいろ考えてみましたが、ちょっと簡単に一覧表のようには整理いたしかねるのでございます。大体の分類状況を御説明申し上げますと、まず実質的な意義における国家公務員に二種類ございまして、一つは、御承知国家公務員法に言う国家公務員と、それからそれ以外の国家公務員というものがございます。たとえば法務省関係人権擁護委員というものがございますが、これは公務員であるというふうに観念されております。しかしながら、人権擁護委員法の中に公務員法適用はないということを規定しているわけでございまして、そういう種類の別格の国家公務員というものが一つあるわけでございます。それからさらに国家公務員法関係で申しますと、その中に、御承知のとおり、一般職特別職という二つの区分がございます。さらに職務勤務形態によって区別してみますと、常勤職員非常勤職員というふうな二種類のものがあるわけでございます。さらに給与の面で申しますと、国から給与を受けるものとそれから受けないものというふうな二種類のものがあるわけでございます。これがふくそうして現在の国家公務員制度の体系をなしているわけでございます。  そこで、それでは、ただいま問題になっております執行吏がどのランクに入るか、どういう位置づけになるかと申しますと、これは、先ほどの分類で申しますと、一応その他のほうではなくして、形式的な意義における国家公務員であるというふうに考えられるわけでございます。それから次に、それでは一般職特別職かという点になりますと、これは前回も御説明申し上げましたように、裁判所職員として特別職のほうに入るわけでございます。それから常勤非常勤の点につきましては、執行吏常勤であるという明文はないように存じますが、勤務形態から見まして常勤であるというふうに考えられております。それから最後に給与の点でございますが、これは前回来御説明申し上げておりますように、国から給与支給しない手数料制公務員である、こういうことになっております。  国から給与支給しない職員といたしましては、給与法の二十二条に規定がございまして、たとえば各種の委員式なものにつきましては、「手当支給することができる。」ということになっておりますので、そういうふうな手当支給をいたさないというようなものもあり得ることになっております。  それからさらにそれに類似するものといたしまして、これも法務省関係で保護司というものがございます。これは非常勤職員でございますが、これに対しては手当支給しない、かようなことになっているわけでございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あんまり問題がこまかくなって恐縮ですけれども、そうすると、執行吏常勤だということになれば、国家公務員等退職手当法昭和二十八年法律第百八十二号)、これも当然適用を受けることになるんじゃないですか。
  45. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) いま法務省のほうから御説明がありましたように、執行吏は、国家公務員法上の公務員である、しかし特別職である、勤務形態とすれば一応常勤公務員である、しかしながら給与は受けない、こういう形の公務員でありますが、ただいま稲葉委員から御指摘がありましたように、国家公務員等退職手当法によりますと、その二条には、常勤勤務に服することを要する国家公務員等について退職手当法適用されることになっております。でありますから、形の上から見ますと、執行吏常勤国家公務員でありますから、退職手当法適用されてしかるべきかのように思われるのでございますが、これは退職手当法というものは国家公務員共済組合法経過的に並行して立案立法されたというような経過がございまして、それで、前回法務省のほうから説明があったかと思いますが、国家公務員共済組合法におきましては、共済組合法適用を受けためには国から給与を受けている者でなければならない、これが原則でございます。例外は政令でできるようになっておりますけれども原則給与を受ける者について適用がある。しかるに、執行吏は国から給与を受けておりませんので、共済組合法のほうは適用がない。そこで、退職手当法のほうも、共済組合法と同じような経過で立法されましたものでございますから、適用がない。終戦後の退職手当に関する政令がございまして、それに端を発して公務員退職手当法というものがだんだんできてまいったものでございますが、最初は政令であったものが、次に国家公務員に対する退職手当臨時措置に関する法律、あるいは国家公務員等退職手当暫定措置法を経まして、昭和三十四年の十月一日から現在の国家公務員等退職手当法となったものでございますが、そのただいま申しました臨時措置法暫定措置法当時適用の対象となった者は、国から給与の支払いを受ける国家公務員等に限られていたというような経過がございます。それからまた、この法律というものが、先刻申しました国家公務員共済組合法と歩調を合わせて統一的になされてきたものでございますので、ただいまの退職手当法は、先ほど申しました第二条の第一項の形から申しますと、常時勤務に服する国家公務員については、給与を受けると受けないとにかかわらずあたかも適用があるような形になっておりまするけれども、そういった経過、それから共済組合法との対照から申しまして、やはり給与を受けません執行吏には適用がないものというふうに解釈を従来されてきておったのでございます。そうして私どももその解釈でいいのではないかというふうに考えておる次第でございます。でありますから、形の上では、おっしゃいますように、退職手当法適用されてもいいのじゃないかという確かに疑問はございますけれども退職手当法というものが従来は俸給を受けていない者には適用がなかった、そういう法律というものとして、だんだん途中で改正はございましたけれども、そういうものとして扱われておった。そうして、他方においては、共済組合法適用を受けない者であると。その両者との対比の関係におきまして、俸給を受けない執行吏には退職手当法適用はないものと解釈して差しつかえないものじゃないかというふうに思っておる次第でございます。
  46. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの点については、御説明はよくわかりますが、そうすると、いままで最高裁ではそういう点について統一した考え方がなかったのかもしれませんけれども、むしろ執行吏常勤者と同様なものではないのだと、こういう考え方から国家公務員等退職手当法というものの適用がないというふうに考えておったのではないのですか。
  47. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 私どもの考えといたしましては、執行吏勤務の体制においては非常勤ではないというふうに考えております。ただ、退職手当法というものは共済組合法とやはりうらはらをなすという関係にあるものでございますから、共済組合法適用がないということになれば、退職手当法適用がむずかしいのではないかというふうに考えているわけでございます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたのところの最高裁判所民事局第二課長西村宏一という人、これは今はやっておられるかどうかわかりませんが、三十八年五月の「法律年報」で「強制執行法改正問題点」というので座談会をやっているんですね。これは宮脇参事官も出ていますが、この中で言っているのは、ちょっと違うようにとれるんですがね。「一面、執行吏は国から給与を受ける公務員とはいえないために、国家公務員共済組合には属しないとされており、福祉の点で、一般公務員に比べて著しい不利益を受けております。さらに、国家公務員退職手当法も、執行吏勤務日について常勤者と同様の拘束を受ける者とはいえないとして、適用を受けておりません。」と、こういうふうに言っておられるわけですよねた。だ、「常勤者と同様の拘束を受ける者とはいえない」という意味は、常勤ではあるけれども常勤の中でもまた特殊な立場をとっているものなんだと、こういう意味ならば、これでまあ理解できないこともないわけですが、常勤者ではないという形だから国家公務員退職手当法適用がないんだというふうにもちょっととれるのですがね。これはあるいは私の理解のしかたがちょっと足りないのかもしれません。ことばがちょっと短いものですから、「常勤者と同様の拘束を受ける者とはいえない」という意味が、常勤者であるけれども、いわゆる普通の常勤者と違うのだというふうに言っておられるのかもわかりませんけれどもね。そういうふうにとっておられますか。
  49. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) その点は、稲葉委員がおっしゃるような趣旨でございまして、常勤者であるが、特殊な意味の常勤者であるから まあ退職手当法までは適用は受けられないのじゃないかということでございます。
  50. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私がわからないのは、給与を受けない公務員であるから国家公務員退職手当法適用がないのだ、これは一つの筋だと思うんですね。そうすると、給与を受けない公務員であるから恩給法適用があるんだという、これはどういうわけなんですかね。何かそこら辺のところが比較均衡というのが理論的に筋が通らないのじゃないかという気がするんですがね。恩給という形じゃなくて、別個の形で優遇するとかというなら理論的に筋が通ると思うのですが、どうもそのところが一貫していないという感じを受けるんですが。
  51. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 確かに御指摘のとおりでございまして、執行吏は、国家公務員でありますけれども、非常に特殊の身分と申しますか地位と申しますか、そういうものを持っておるものでございます。したがいまして、これに対してどういう法律適用し、適用してはいけないのかということになりますと、非常に複雑な関係になって、割り切れない面があるわけでございます。そういう特殊なものなら、特殊なものには特別の立法をすることが一番筋としては通りやすいわけでございますけれども。それはそれといたしまして、そういう特殊なものに各種の法律を、ある面では適用し、ある面では適用しないという形でやってまいりまして、不合理な面もございましょうけれども恩給は、今の恩給法といいますか、官吏恩給法に照らして恩給を出す、しかも前職が公務員であればそのほうの恩給も二重にもらえるというふうな変な形にもなっておるわけでございますけれども、そらならそれを一本にすればいいじゃないかというようなことになりますと、執行吏恩給現行恩給法恩給を出せばということになりますと、その基準額はどういうことになるかといいますと、やはりそれは補助金額というような形になりましょう。そうすれば、長年ほかの種類公務員としてつとめてきた人が年限は通算されて長くなっても、俸給の基準額は執行吏の補助金額を基準にするということになりますれば、非常に低いという意味で不公平になりましょうし、それからまた、もしこれを従来の公務員として執行吏になります前の公務員としての俸給願を基準としてなおかつ年限を通算するということになりますれば、それはまたそれで執行吏俸給でやっているのではなくて手数料をもらっておるのにもかかわらず、一般の官吏と同じような恩給をもらうことになりはせぬかという面で、今度は少し高過ぎはしないかというような意味で不公平になりはしないか。その辺のところを、従来の関係恩給は従来の関係恩給として、別にもらう、しかし、また、別に執行吏執行吏としての恩給をもらうにはもらうが、それは基準とすれば補助金というような非常に低い基準額によって恩給をもらうというようなことで、二本建てになりましても、形の上では不合理であるけれども、実質的には相当程度の恩給をもらっておるという形になっているのではないかというふうに思うわけでございます。
  52. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 きょうはこの程度にして、検察及び裁判の運営のほうの調査案件に入らせてもらいたいのですが、まだ人がそろわないようですから、ちょっとそれまで聞いておりますが、公証人ですね、これは公務員なわけですか。
  53. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 公務員と解されております。
  54. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはどういうわけですか。
  55. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 公証人は、御承知のとおり 公証人法によって置かれているものでございますが、公証人は法務局または地方法務局の所属とするというふうに定められておりまして、しかも法務大臣がそれを任命する、こういうようなことになっておりますので、公務員というふうに解釈しているわけでございます。
  56. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、公証人は、恩給関係は普通の恩給法でちゃんとつくわけですか。
  57. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 公証人につきましては、恩給適用はございません。
  58. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 恩給局長、公証人は恩給適用はないんですか。それで執行吏恩給適用があるのはどういうわけですか。またそこら辺がはっきりわからぬのですがね。
  59. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 先ほど申し上げましたように、恩給法適用を受ける公務員につきましては、恩給法上範囲を限定いたしておるわけでございますが、その中にただいま御指摘の公証人は含まれていないわけでございます。なお、執行吏につきましては、先ほど来お話のありますように、執達吏規則というものがありまして、その規定によっていわゆる官吏恩給法に照らして恩給支給しているということでございます。
  60. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の言うのは、公証人が公務員だというんですね、公務員であって、これはどうして恩給がつかないんですか。そこはどういうわけなんですか。
  61. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) お尋ねの公証人に恩給支給しなかった理由につきましては、私その従来の考え方につきまして承知いたしておりませんので、的確にお答え申し上げるわけにいかないのでございますが、実は、御承知のように、恩給法の上からいきましても、つまり国の機関に勤務しております従来の雇傭人と言われておるような階層の人々につきましては、その勤務状態はほとんど官吏と同様な場合にありましても恩給法適用されていなかったという事例がございますので、公務員であればすべて恩給法適用によって恩給支給されておるということではなかったわけでございます。
  62. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、俗なことばで言えば、執行吏のほうがもとのいわゆる判任官というか、そういう人から出た人が多い、生活程度もわりあいに困っている人が多いので、恩給をあれするんだと。公証人のほうは、大体、所長クラス、検事正クラスがおもになるわけで、生活がいいから恩給はやらなくてもいいということなんですか。きわめて俗な意見ですけれども、そこはどうなんですか。法務省のほうはどうですか。
  63. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 公証人法は明治四十一年に制定されたものでございまして、これも先ほどからお話の出ております官吏恩給法当時の法律ということになるわけでございます。そこで、執行吏、当時の執達吏と公証人を比べまして、執達吏につきましては官吏恩給法に照らして特別の恩給支給する、公証人につきましてはそういう手当てをいたしていないという法制になっております。なぜそういう区別ができたのかということは、いずれも古い法律でございますので、必ずしも明確にわからないのでございますが、ただいま考えてみますと、先ほど稲葉委員からも仰せのありましたように、執行吏職務内容から見まして、これにはそういう恩給程度のものを支給してやるのが相当だということに考えられたのではなかろうか。それに対して、公証人のほうは、その仕事の性質から見ましてそこまでの配慮をしなかったという沿革的なものに基づいているんじゃなかろうかというふうに考えられるわけでございます。
  64. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一応きょうはこの程度にして、別のほうに移らせていただきたいと思います。
  65. 石井桂

    委員長石井桂君) ほかに御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  66. 石井桂

    委員長石井桂君) ほかに御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
  67. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、東京都議会の汚職事件等に関する件について調査を行ないます。稲葉君。
  68. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 東京都議会の汚職事件ということが非常に世間をにぎわしているわけですが、これが現在どういう状況にあるのか、これを法務省のほうから説明を願いたいと思います。
  69. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) お尋ねの東京都議会汚職といわれております事件につきましては、目下東京地方検察庁で鋭意捜査中でございます。すでに起訴いたしました者としましては、本月五日、東京都議会議員藤森賢三を贈賄、及び、出口林次郎、中島与吉、この二人を収賄罪によってそれぞれ東京地方裁判所に起訴しております。  藤森賢三に対する贈賄関係の公訴事実の要旨でございますが、これは、本年三月九日に行なわれました東京都議会議長選挙に際して、都議会議員として議長を選挙する職務を有しておりました出口林次郎及び中島与吉の両名に対し、三十九年十月末ごろから本年三月上旬ごろまでの問に三回にわたりまして、議長選挙の際には自己に投票してもらいたい旨を請託しました上、その報酬として、出口に対し二回に合計二十五万円、中島に対し二十万円を供与した、こういう贈賄の事実でございます。さらに、藤森は、都議会議員で同じ職務を有しておりました高尾健一に対して、三十九年十一月上旬ごろ同様の請託をいたしました上、その報酬として現金二十万円を提供いたしましたが、返戻されました件がございます。これは賄賂の申込罪に当たるわけでございます。  次に、収賄罪で起訴いたしました出口及び中島に対する公訴事実は、それぞれただいま申し述べました藤森の贈賄に照応する収賄、すなわち受託収賄の事実でございます。  都議会の関係の事件につきましては、現在、いま申し上げましたすでに起訴しました三名のほかに、都議会議員四名を逮捕しましてさらに鋭意捜査を進めておるのでございます。現在逮捕、勾留中の都議会議員の氏名は、浦部武夫、石島参郎、建部順、上野藤五郎、この四名でございます。いずれも都議会議長選挙をめぐる贈収賄でございます。  なお、本件の捜査に関連いたしまして、同じ東京都議会議員及び東京都職員によります恐喝未遂事件が発覚いたしまして、これも東京地方検察庁におきまして関係者の身柄を拘束して鋭意捜査をいたしておるのでございます。その被疑者は、いずれも罪名は恐喝未遂でございますが、東京都議会議員須貝一正及び東京都衛生局公衆衛生部食品衛生課長岡林正幸、この両名でございます。
  70. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 東京都議会の議長選挙に伴う贈収賄というのは、前にもあったのですか。その点はおわかりではありませんか。
  71. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 御指摘のように、数年前にも一度ございました。その関係東京都議会議員が一名受託収賄罪で起訴されまして、現在公判中でございます。
  72. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは東京地検の特別捜査部で事件をやったわけですか。
  73. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) さようでございます。
  74. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 どうして東京地検の特捜部が直接そういうような捜査をやったんですか。
  75. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) ただいまお尋ねの事件は、数年前の案件だと存じますが……
  76. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いやいや、今度の……。
  77. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 今度のですか。今回の事件につきましては、東京地方検察庁特別捜査部は、御承知のとおり、その所管事務といたしまして、警視庁の捜査二課から送致されます事件、あるいは財政経済関係、たとえば租税関係事犯、こういったものを扱います。それから検察庁に直接告訴、告発のありました事件を担当いたしますが、そのほかに、検察庁独自の捜査を担当する部門として東京地検と大阪地検に置かれているのでございます。そういう観点から、常々東京地方検察庁特別捜査部におきましては、主として知能犯に属するような事犯につきまして、警察と別個の情報を得て独自の捜査を行なうということをやつているわけでございますが、本件はそういう捜査活動の一環として東京地方検察庁において端緒を得て始めた、こういうことでございます。
  78. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは知能犯に属するのですか。知能犯というか、各前は変ですが……。
  79. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 私ども捜査の実務を扱いまず者といたしましては、一応贈収賄事犯あるいは会社犯罪、こういうものを包括して知能犯と呼んでいるわけでございます。
  80. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 知能犯はよくわかりましたが、それをなぜ警視庁と別個に東京地検がやるんですかね。
  81. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 東京地方検察庁が独自の立場で捜査の端緒を把握した、したがいまして、東京地方検察庁で捜査を開始した、単にそれだけのことのように思います。
  82. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 単にそれだけのことなら別にどうということはありませんけれども、捜査は新しい刑事訴訟法によっては警察がやることになっているのじゃないですか、たてまえは。検察庁関係は大体公判中心にやるというのが英米法の考え方で、それを中心にやっているのじゃないですか。それをなぜ独自の捜査ということを東京地検がやるんでしょうかね。
  83. 津田實

    政府委員(津田實君) 現行刑事訴訟法におきまして警察が第一次の捜査権を持つのはもちろんでありますが、さればといって検察官が第一次の捜査を常にしないものであるというたてまえでももちろんないわけであります。先ほど刑事課長が申し上げましたとおり、検察庁におきまして端緒を得た本件につきましてその限りにおいて検察官が捜査を開始することは、これはむしろ当然であるというふうに考えております。
  84. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたの言われたとおりです。答えとしてはそれ以外にないんですが、この捜査の端緒というのは 具体的には、差しつかえない範囲で言えば、どういう点から得られたのですか。これは捜査の問題ですから、深く立ち入ったことをお聞きするわけにはいきませんが、差しつかえない範囲で、しかも国民が非常に疑惑を持っている問題ですから、ある程度のことはこれはお答え願ってもいいのじゃないかと思いますがね。
  85. 津田實

    政府委員(津田實君) いつも申し上げることでございますけれども、現在の段階においては端緒を明らかにすることは差し控えたいと存じます。
  86. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはすでにあれじゃないですか、逮捕、勾留して起訴しているわけですからね。起訴しない段階で捜査の端緒というものを明らかにしろということは、これはぼくは無理だと思いますが、起訴している以上は、当然公判廷の中でもその端緒というものは明らかにされてくるんだと思いますがね。いまそれをここで言えといっても、これはなかなか実際の話はまだ継続することでしょうから無理かもわかりませんから、じゃその点はあれしますが、たとえば、投書があった、うわさがあった、あるいはいろんなことがあったということに基づくんだと、こういうふうに思いますが、問題は、それじゃ、東京都議会のこういう事件は警視庁では全然わからなかったんですか。
  87. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) この事件につきましては、警察は全く探知しておりませんでした。検察庁が検挙に着手してから初めて知ったようなわけでございます。
  88. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ぼくの聞き方が悪かったかもしれませんけれども、全然知らなかったんですか。
  89. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) そのとおりでございます。
  90. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 すると、全然知らなかったということについて、今から振り返ってみると、警察としてはどういうものでしょうかね、やっぱり知らなかったのは正しかったと、こういうふうに思われるんですかね。
  91. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 警察で探知しておれば、警察が検挙に着手しておったと思います。当然でございますが、探知していたのに警察が検挙できないというような事情は全然ないわけでござ  います。
  92. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 警視庁というのは世界の中でも一番優秀だというふうに言われているんじゃないですか。それがどうしてこの程度のことが探知できなかったんでしょうかね。あまりこういうことについては警視庁としては興味を持たないんですか。
  93. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 検察庁がどういう事情からこの事件を探知したか承知しておりませんのですが、警察より先に検察庁が探知する場合も往往にしてあるわけでございます。警視庁として関心を持っていないということはないのであります。むしろ積極的にこういう事件があれば検挙に着手するわけでございますが、探知していなかったためでございます。
  94. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 探知していなかったというのはなぜ  国民が疑惑を持つのは、どうして警視庁がこういうようなことをわからなかったんだろうかということになるんですが、東京都議会というかああいうところの管轄はどこですか、警察は。警視庁の中の特別のところがやるんですか。
  95. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 一応、こういう汚職事件でございますと、捜査二課の担当でございます。
  96. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、捜査二課なり、あそこは丸の内署ですか。まさか東京都議会係というのが警視庁の中にあるわけじゃないでしょうけれども、こういうふうな贈収賄事件があるということは、警視庁としては地検が逮捕するまで全然わからなかったんですかね。
  97. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) そのように聞いております。
  98. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 わからなかったことについて、警察としては、捜査能力が不足だったというふうなことは考えないですか。
  99. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 先ほど申しましたとおり、警察が先に端緒をつかむ場合もございますし、検察庁が端緒をつかむ場合もございますし、まあ私どもの立場から言うと、先に端緒がつかめなくて残念だったという点はありますけれども、しかし、この一件だけでもって能力不足というふうには私ども考えておらないわけでございます。
  100. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いや、だれも能力不足だなんて言わないですよ。そんなことを言っているんじゃないんですがね。ぼくが疑問に思うのは、なぜこういうふうな事件が警視庁で探知できなかったのかということですよ。これは国民みんな疑惑を持つと思う。警視庁はあれだけの警察官がいて、非常に優秀な人がいっぱいいるんじゃないですか。だから、東京都議会の関係はすぐ目と鼻なんですから、いろんなこういうことが当然わかっているし、話に入ってきているんじゃないかと思うんですが、それが端緒が探知できなかった、こういうふうなことで残念だったと言われれば、それはそのこととして、しかし、三十五年の六月にも議長選挙があって、そのときにも議員同士の贈収賄があって、一人が起訴され、十六人が起訴猶予になって、十七人の人が調べられたのじゃないですか。そういう事実があるのじゃないですか。それは一体どこがやったんですか、前のは。
  101. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 警察と地検と協力してやったように聞いております。
  102. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 地検と警察が協力したかどうか、三十五年六月のときのことははっきりしないのですが、それも東京地検の特捜部のほうで中心になってやったように私は聞いているんですが、これは前のことで私もよく調べていませんから、これ以上言えないんですが、いずれにしても、都議会のこういう議長関係、議員関係の贈収賄とかなんとかいうことについては警視庁としては手が入れにくいのだというふうに考える人も相当いるんですがね。それが現実にこういう形であらわれてきているのじゃないかと思うんですが、いままで警視庁が東京都議会のものに直接積極的に手を入れたというふうなことはあんまりないんですか、過去において。どうですか。
  103. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 私、これはごく一部の検挙事例かもしれませんが、報告を受けておりますのは、都議会議員等の暴力事件で昭和三十年、これはだいぶ古いですが。それから熱海−大島航路の免許をめぐる都会議員の汚職事件で三十四年ですか。それから消防署出張所移転にからむ消防署長の背任の共犯ということで議員を検挙したことがございます。それから区長選挙にからむ汚職事件等がありますが、もちろん選挙にからんでの検挙はたくさんございますが、とりあえず目ぼしいところを拾ってみたところでは、以上のような状況があるのでございまして、決して議会の議員であるからということで検挙を手控えるというようなことは、いままで警視庁はじめ各都道府県警察ともないはずでございます。
  104. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ないはずだというのは、これは答えとしてはそのとおりと思いますが、現実にはどうもそうでないように考えられるし、いまの食肉の移動販売の営業許可をめぐる恐喝未遂の事件がありますね。こういうのは、議長選挙の内部の問題になるとなかなか端緒がつかみにくい点が確かにあると思いますが、こういう外部の人との関係のあれですから、これは警視庁としても当然探知しておったのではないですか。これも探知していなかったのですか。
  105. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 探知していなかったように聞いております。
  106. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ぼくは、東京地検の特捜部と警視庁との仲がどういうふうな仲であるかというようなことについては、個人的にはいろいろ知っていますよね。だけど、これはここで言うのは遠慮します。それは私は個人的にいろいろ話の中であれしたことですから、公の席で言うべきことでありませんから、言いませんが、ただ、やっぱり、どうも特に地検の特捜部の中では警視庁に対するある意味の不信が相当あるのじゃないですか。東京都の関係、それから政治的な事件、こういうようなものはどうも警視庁は手が出しにくいのじゃないかというような考え方が相当あるようにもとれるんですがね。これ以上私は言いませんけれども、そういうようなことの疑いというか不信を持たれないように、ぼくは警視庁としても当然全面的にこういうふうな事件は取っ組んでやるべきだったと、こういうふうに思うんですが、これは私の意見になります。  そこで、この事件について、今後どういうふうな決意というか覚悟というかそういうふうなもので法務省当局は徹底的にやっていくつもりなのか、そこのところをお聞かせ願いたいと思うのですが。
  107. 津田實

    政府委員(津田實君) ただいますでにお答え申し上げたと思うのでありますが、事件につきましては捜査が進展いたしておりまして、起訴したものもあり、現在まだ捜査中のものもございます。  どういう決意ということでありますけれども、これは政府なり法務省の方針といたしまして、非違に対しては少なくとも厳正に検察権を行使するということでございますし、ことにかような涜職的事件についてはなおさらでありますので、その決意については別に他の同種の事件と全然変わりはございません。あとは、今後のこの捜査の進展によりまして御理解を願うよりしかたがないと、こう考えます。
  108. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しっかりやっていただきたいということ、これは私はもう当然要望をするわけです。  そこで、東都知事が検察庁へ行って、あまり逮捕やなんか出さないでくれと、こういうふうなことを言って頼みに行ったということが伝わっているんです。これは法務省に行ったのか、検察庁に行ったのか、わかりませんが、そういう事実はあるんですか。
  109. 津田實

    政府委員(津田實君) さような事実は承知いたしておりません。
  110. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 承知いたしておりませんって、あなた、調べなければ承知いたしていないんですよ。調べてくれませんか。東京地検へ行って、あまり逮捕やなんか出さないでくれというふうなことを言って陳情に行ったということが伝えられているんですよ。地検の検事正に言ったのか、次席に言ったのか、あるいは法務省に言ったのか、わかりませんが、伝えられている。これは、見方によっては、三月の予算の都議会で、あまりつかまえてしまうと予算の審議ができないから、そこのところをどうせつかまえるのならあとにしてくれというふうなことを言いに行ったのかもわかりませんが、いずれにしても東さんが行って陳情かなんかしたということが伝えられているんです。ですから、承知いたしておりませんだけではなく、これは国民は疑惑を持つのですから、その点は法務省当局なり東京地検なりにしっかり確かめて、そうして次なら次に返事をしてもらいたい、こう思うのですが、その点はどうですか。
  111. 津田實

    政府委員(津田實君) その点は調査をしてみます。
  112. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それからこれはいずれオリンピック汚職につながるんだということを盛んに言われているんですが、巷間伝えられるところでありますから、それ以上のことは私はここで言うべきことじゃありませんし、それからまあ選挙資金の出どころに関連をして非常に不明朗なことが言われておるんですが、こういう点については、これも捜査の問題として重点を今後置いてやっていただきたいということだけ要求をしておきますが、それはいま巷間言われていることですから、それだけをもって私がかれこれ言ったということを言われるのも私も困りますが、こういう点については、いろいろ十分考慮をして、厳正にというか、しかも早急にしっかりとした態度で本件に取り組んでいただきたい、こういうふうなことを考えます。  そこで、もう一つ、これには直接関連はしないのですが、どうも私は検察庁と警察との関係の中でいろいろ問題がある場合があると思うんです。それは、告訴事件に対する取り扱いをめぐってときどき問題が出てくるわけです。検察庁の中には、もちろんいわゆる特捜部というのは東京、大阪だけで、特捜部がないところでもいわゆる直告係という形で告訴を直接受けるような係がある場合がありますが、そういうふうな場合にも関連するんですが、たとえば佐賀で起きました事件で、これは詐欺かなんかで警察へ告訴をしたら、警察のほうで事件にならないからというので取り下げろというふうなことを言って、そして取り下げをさせた。強制的に取り下げさせたのか、あるいは取り下げしたらいいということでさせたのか、あるいは任意で告訴人が取り下げをしたのか、いろいろあると思いますが、いずれにしても、警察へは告訴したけれども、やってくれない。取り下げろというふうに言われた。結局、その被害者の告訴人が佐賀の地検へ告訴をして、それによって被告訴人が逮捕されたということが伝えられておるんですが、これはやはり真相を明らかにすることが警察のためにも検察庁のためにも私はいいと思いますので、佐賀の白井ハツノという女の人から出た詐欺、私文書偽造、同行使の疑いの告訴事件、これは三十八年の六月に佐賀の警察に詐欺にかかったと訴えたのだが、これを佐賀の警察は取り扱わなかったですか。告訴を取り下げさせた経過というものをひとつまず御説明願いたいと思います。
  113. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 新聞にいろいろ書いてございますが、私どものほうで調査いたしました結果では、告訴の取り下げを強要した事実は認められません。新聞と真実とかなり相違しておるという報告を受けております。  それで、一つは、告訴事件の内容から申し上げなければならないわけでございますが、この告訴は、三十八年の六月七日に佐賀警察署に佐賀市在住の白井ハツノという女の人から出されたものでございまして、内容は、告訴人の白井は昭和三十八年五月一日に被告訴人である不動産仲介業者のあっせんで佐賀市内にある二階建て家屋一むねを賃借りすることとして敷金などとして現金二十二万二千五百円を支払って改装に着手したところが、その家屋は、その一部が国民金融公庫から抵当物件として競売申し立てがなされており、しかも第三者に賃貸しする契約がなされているということを知ったと、こういう内容のものでございます。  被告訴人は、不動産仲介業者一名と、それからこの家屋の所有者二名、計三名となっております。  それで、佐賀署では、六月七日に告訴を受理しましてから担当捜査官を指定して、八月中旬ごろまでに関係人八名を取り調べるとともに、関係公務所等に必要な照会を行ないまして、被告訴人の取り調べを除きましてその他の捜査はほとんど完了したのでございますが、そのころ本件の中心人物と見られる家屋所有者である被告訴人二名の所在が判明しなかったのであります。そのために、佐賀署では、事件を検察官に送付することもできず、被告訴人二名の所在の捜査を行なっていたところ、今年初めごろ佐賀地検から一応一件書類を送付されたいという連絡がありましたので、一月十八日に被告訴人を取り調べ未了のまま検察官へ送付をいたしたわけでございます。  それで、告訴取り下げの強要の事実の有無でございますが、佐賀署に告訴が出されたときに担当捜査官として指定を受けてこの捜査を行なっておりました捜査係が交通事故のために死亡をしたために、あらためて担当捜査官に指定されました刑事係長が前任者のつくった捜査状況を取りまとめていたところ、告訴人の第二回目の補充調書の中に告訴を取り下げてもよいと解される部分がありましたので、告訴人に告訴取り下げの意思の有無を確かめたところ、告訴を取り下げる意思のあることを表明し、そうして、昭和三十八年八月十三日に告訴取り下げ書を提出してきたので、これを受理したわけでございます。そういうような事情で、告訴人に対して告訴の取り下げを強要した事実はございません。
  114. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この事件は、いまの二十二万円払ったというのは、権利金ですか、敷金ですか、それが一つと、それから払うときに、国民金融公庫の競売というのですから、これはおそらく登記簿を見れば抵当権が設定してあることがわかったと思うのですが、そういう点ははっきり被告訴人のほうで告訴人の白井という女の人に話をしたんですか、話をしなかったんですかね。それは詐欺になるかならないかという一つのポイントですね。その点はどうなっているんですか。
  115. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 敷金等で二十二万二千五百円でございますが、そのうち、敷金が二十万円、それから家賃が一カ月一万五千円でございますが、改造をしなければならない家屋でございますので、そのうち七万五千円は家主が負担する、それは十カ月に分けて家賃の中から差し引いてもよろしいということで、五月分の家賃から差し引きまして七千五百円、それから仲介手数料が一万五千円、これは仲介業者に行った分が一万五千円、これだけ合わせて二十二万二千五百円を払ったということでございます。  それから抵当権並びに賃借権は、いずれも登記がしてあります。  それから契約のときに話したかどうかという点は、当初の調べでは、もちろん借り主のほうは聞いていないと申しますし、仲介業者ははっきり話したというふうに言って、食い違いがございます。
  116. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 話したとなれば、その女の人が二十何万円という金を払うのはこれほおかしいと思うんですがね。これは一つの争点になってくることですが、結局、被告訴人の二人が所在不明だというので、結論的には告訴取り下げ書が出たということになっておるようですが、告訴人の白井という人のところへ警部補ですか六回ほど訪れたということはあるのですか。
  117. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) この告訴人方を訪れたのは、六回というふうに新聞に書かれてございますが、訪れたのは全部で三回でございます。その三回いずれも用事があるならば家へ来てくれというふうな電話で、呼び出しに応じないで来てくれということで、三回訪れております。  三回の内容でございますが、第一回は、昭和三十八年の七月十八日ごろのことでございますが、告訴人が死亡した前任者に提出したと思われる現金在中の封筒が、引き継ぎを受けた書類の中にあったわけでございます。そこで、この現金在中の封筒を返すために告訴人に出頭方を連絡したところが、仕事が忙しいから応じられないということでありましたので、現金在中の封筒を提出した事情を、なぜ提出したか、その事情を聞くことと、あわせてそれを返すことから告訴人方を訪れまして、提出の事情を聞いた上でこの現金在中の封筒を返してきたものでございます。このときには、告訴取り下げの話は一切しておりません。  それから告訴取り下げのことで訪れたのはその中で一回あるわけでございますが、それは告訴人が告訴を取り下げる意思を表明したあとでございますが、刑事係長が、電話で、告訴取り下げ書を出すと言っていたけれどもまだか、こう尋ねましたところ、告訴人は、用事があれば家に来てほしいという先ほど申したとおりの返事で告訴人方を訪れたのでございます。そのときは、告訴人がいま人形づくりで忙しいから、二、三日したら出すということを言ったから、すぐに帰っております。このときも告訴取り下げを強要した事実はございません。  それから第三回目の分は、告訴人が告訴取り下げをしたあと昭和三十八年八月中旬ごろでございますが、このときは、告訴人に返す書類があったために電話連絡いたしますと、やはり用事があれば家に来てもらいたいということでございましたので、告訴人方を訪れまして書類を仮還付しております。これも告訴を取り下げた後のことでございまして、告訴の取り下げの話は一切しておりません。  以上のような状況でございます。
  118. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 告訴人のところへ白紙を持って訪れて、「これに住所、氏名を書いて判こだけ押せば、よいように取り計らってやる」というようにして白紙に住所、氏名だけを書かせ印鑑を押させたというように伝えられておるわけですが、この点はどうなんですか。
  119. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 昭和三十八年の八月の十三日に、刑事係長が他の事件の捜査中、たまたま佐賀市内の道路で告訴人に出会った際に、二、三日したら告訴の取り下げ書を持って来ると言っていたがどうしたのかと、こう聞いたところ、告訴人が、いまここで書きます、こう言って、近くの文具店で用紙を買いまして、その店で自分の万年筆を使って書いて刑事係長に出したわけでございます。そのとき、刑事係長は、告訴人から書き方を聞かれて教えておるのでございますが、それ以外にはお尋ねのような事実はございません。
  120. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、告訴取り下げ書というふうなものは、全文を女の人が書いたんですか、そこははっきりしないんですか。
  121. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 全文を告訴人が書いたわけでございます。なお、これはさらに県警本部の鑑識課で鑑定した結果も同一筆跡ということになっております。
  122. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いま紙上で伝えられていることとだいぶ違うわけですが、これはいずれ真相は別な形で明らかにされると思いますが、そうすると、なぜ警察のほうで告訴事件を取り下げたらいいというふうなことを言ったんですか、あるいは、取り下げたらいいというようなことは言わなかったというんですか。
  123. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) この事件につきましては、当初から検察庁の意見も聞き、また、関係者、それから公務所等にも照会いたしまして検討いたしまして、この事件だけでは非常に詐欺事件の立証がむずかしいという判断はなされておったようでございますが、取り下げをするかどうか慫慂したような事実は一切ございません。ただ、考えられますのは、この告訴人は、二十二万二千五百円という金は、その後不動産仲介業者から立てかえて返してもらっております。その後、その年じゅうに、建物所有者のほうからも、そのほかに十万円ずつ二回、二十万円を返してもらっておりますが、この二十二万二千五百円の金を立てかえる際に、不動産仲介業者が、取り下げをしてほしい、この金を立てかえて一時返すから取り下げをしてほしいというようなことを告訴人に言っているような事情があるようなわけでございます。
  124. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 詐欺としての判断がむずかしいという認定ですね、これは被告訴人が二人いるでしょう、三人のうちの二人が事実上の中心人物だと思うのですが、これを調べない段階で、所在が判明しないからということですが、調べない段階で詐欺としての判断がむずかしいからということですか。
  125. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) もちろん、ですから、捜査としては係属中の事柄でございます。最後にこの被告訴人二名を調べなければならない、それでなければ完結しないということで、そのまま署に保留されておったわけでございます。
  126. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 告訴人が告訴を取り下げてもいいというような意思があることを表明されたというふうに言われたのですが、これは黙っていて告訴人が告訴を取り下げるというふうなことを言うわけがないでしょう。取調官のほうでこれはあれだから取り下げたらどうかとか何とか言うから、それじゃというので、女の人ですから、そんなふうになったのだということは当然考えられるので、そこの辺のところがこの事件でよくわかりません。  結局、なぜ詐欺の事件としてむずかしいという判断をしたのか、その二人の人がいない段階でむずかしいというふうに判断をしたのか、どうもよくわかりませんが、どういうわけで詐欺の事件としてこれはむずかしいということになったのですか。金を返してもらったというのはあとの話でしょう。かりに前だったとしても、刑事事件の成否とは関係がないですから。
  127. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) この白井ハツノが敷金として支払った三十二万二千五百円を不動産仲介業者から返還を受けておりますのは六月二十日でございます。
  128. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 三十九年ですか、いつのことですか。
  129. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 三十八年六月二十日でございます。  なお、この二十二万二千五百円につきましては、現在二十二万二千五百円のうち、二十万円という問題が民事訴訟に係属をしております。これは立てかえて払った分で、その後二十万円返還を受けておるんだから、不動産仲介業者のほうとしては自分のほうに返せという民事訴訟が、現在十数回公判をやっておりますが、係属中でございます。  犯罪成立困難という問題でございますが、これはもちろん捜査を完結しなければ最後の結論は出ないわけでございますが、一つは、この取り調べた範囲内の関係者につきましては、供述が食い違っておる。話した、話さないという問題、それから返還を受けておるという問題というような問題から、犯罪成立が非常にむずかしいというふうな判断を下したようでございます。
  130. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ただ、ぼくは、判断を下すのは一つの証拠に基づいて下すのですから、その証拠判断をかれこれ言っても始まらないと思いますが、二人の人が所在不明で調べないというその中心人物を調べない段階で犯罪成立がどうもむずかしいから取り下げろ、取り下げたほうがいいだろうというようなことを言ったと考えられるように思われるんですが、これはよくあるんですよ。非常に忙しいし、告訴事件というのは何か率直に言えば民事くずれみたいなものが多くて、金を取るのに刑事事件を利用するんだというふうに頭から考えられがちな場合があって、取り下げろ取り下げろということをやるわけです。それならば、なぜ白井という女の人が三十九年の四月に佐賀の地検に同じ事件を告訴したのですか。これは同じ事件を告訴したのですか、別の事件を告訴したのですか。
  131. 日原正雄

    政府委員(日原正雄君) 同じ事件を告訴したわけでございます。なお、再び告訴した事情については、私どものほうも十分報告を受けておりませんので、わかりません。  それから仲介業者を調べた状況で申しますと、担保に入っていることも、仮装による登記をしていることも十分白井氏に述べている。それから白井氏自身もそれを了解しておって、競買になるかもわからないから、そのときは自分が買収してもいいですねというようなことを言っているというような供述をしております。
  132. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、これは法務省関係になるのですか、三十九年四月に、同じ事件を佐賀の地検に告訴したというんですね、その白井という女の人が。それはどういうふうな事情からなんでしょうか。
  133. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 端的にお答えしますと、事情はわかりません。  検察庁でこの事件の捜査をいたしました経緯は、三十九年四月九日に、白井ハツノから、先ほど来出ております不動産仲介業者であります馬場文雄というのと、それから本件不動産の所有者であります田中静子外一名に対して告訴が出たわけでございますが、その告訴事件を鋭意捜査してまいりますうちに、実は従前警察に対して同一事実を告訴したことがあるということを検察官が聞き知りまして、警察に対して、そのような事件が従前にあったとするならば、その事件をすみやかに検察官に送付してもらいたい、こういうふうにお願いをして、先ほど御答弁のありましたように、今年一月警察へ告訴した事件の送付を得たといういきさつでございます。
  134. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その経過から見ると、その女の人は、かりに告訴取り下げ書を出したとしても、十分納得をしないで出しているんだということは考えられるわけですね。納得をしておれば、あらためて検察庁へ告訴するわけはないですから、どうもそこのところの経過がはっきりしないですね。女の人の談話として載っているのは、「警察の人にいくら検察庁へ送ってくれとたのんでも相手にしてくれなかったのに、検察庁の方でつかまえてくれたと知って、やっと正しいことが通ったと肩の荷がおりた思いです。私のように法律を知らない女の訴えも、警察はもっと真面目にとり上げてくれたらよかったのにと思います。」と、こう言っているわけです。これはあるいは誤解なり何なりがあったのかも。しれませんけれども、少なくともその女の人が警察のやったことに納得をしておらなかったことは、あとから告訴したことでもわかっているし、事実だ、こういうふうに思うのですが、そこで、検察庁では、本件の告訴があった事実も含めて逮捕したわけですか、そこまではっきりしないのですか。別の事件で逮捕したのですか。
  135. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) 逮捕事実は、馬場、すなわち不動産仲介業者でありますが、馬場につきまして三件の事実、田中について二件の事実で逮捕しておりますが、いずれも本件告訴事実が第一の事実ということになっております。
  136. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その両方つかまったんですか。
  137. 伊藤栄樹

    説明員(伊藤栄樹君) まず、本月七日に田中静子を逮捕いたしました。次いで、十一日に馬場文雄を逮捕しております。
  138. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、警察が事件にならないといってはねた事件、それが、検察庁のほうで取り上げて逮捕した。少なくとも逮捕するのだから、それだけの理由があったのでしょう。だから、もう勾留になっていると思いますが、そういうふうな形で進んでいるわけですね。これでは警察に対して、ことにこういうふうな法律に暗い女の人なんかが非常に不信の念を抱くのは、これは無理のないことではないかと、こう思うんですが、どうも率直な話、この受ける感じというか印象としては、まあ何といいますか、取り下げろ取り下げろ、どうせあれだから取り下げたらいいじゃないかというようなことを言って、そして取り下げさせたんだと。形は整っているかもわからぬけれども、そういうふうなことで事実強要というかそういうふうなものがあって本件の告訴取り下げが行なわれた。それに対して非常に不満であったから、再度検察庁のほうへ告訴をした。それが一応逮捕のほうに回っておると、こういうふうに考えられるんですが、いずれにいたしましても、いまの段階で逮捕し、勾留されておるその事件がどういうふうになっていくのか、それを見てみないというと、はたして警察のやった処置が正しかったか正しくなかったか、こういう点はまだまだ一〇〇%はっきりしない点がありますから、これはきょうはこの程度にいたしますけれども、二人の人を調べないでおいて、取り下げろ取り下げろと言うこと、あるいは、取り下げろと言ったんじゃないにしても、取り下げ書を書いてもらったということ自身が、何かそこにぼくは割り切れない感じがしてならないんですが、これはしばらくこの事件の経過を見てやっていきたい、こういうふうに思います。  いずれにいたしましても、いまの東京都議会の事件でもそうですし、この事件でもそうだと思うのですが、何かやはり警察が変に入りにくいようなものがあって、そしてそこで検察庁は取り上げてやっていくという行き方がとられておるというふうに感じられるんですがね。これは今後のいろんな課題として私も研究の問題にしたい、こういうふうに思っていますが、警察官が、告訴事件なんかあった場合に、告訴人に対して親切なやり方で、よく納得のいくような形で十分説明するなり、了解を得るという形、あるいは法律的な判断を自分だけの判断でしないようにして、告訴事件はすみやかに検察庁へ送らなきゃならぬわけですから、自分だけでだめだとかなんとか判断しないで、できるだけ早くそのままの姿で検察庁へ送って検察庁の判断を受けるという形をとってもらいたい、こういうふうに私は思います。  きょうは私の質問はこの程度にしておきます。
  139. 石井桂

    委員長石井桂君) ほかに御発言ございませんか。——御発言もなければ、本日はこの程度にいたしまして、次回の委員会は四月二十日に開会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後零時四十二分散会      —————・—————