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1965-03-25 第48回国会 参議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十五日(木曜日)    午前十時三十四分開会     —————————————    委員の異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      塩見 俊二君     鈴木 一司君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         石井  桂君     理 事                 木島 義夫君                 後藤 義隆君                 稲葉 誠一君                 和泉  覚君     委 員                 植木 光教君                 源田  実君                 迫水 久常君                 鈴木 万平君                 宮澤 喜一君                 柳岡 秋夫君                 山高しげり君    政府委員        法務大臣官房司        法法制調査部長  鹽野 宜慶君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局第一        課長       長井  澄君        最高裁判所事務        総局民事局長   菅野 啓蔵君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君    説明員        法務大臣官房参        事官       貞家 克巳君        法務省民事局参        事官       宮脇 幸彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 石井桂

    委員長石井桂君) これより法務委員会を開会いたします。  裁制所職員定員法の一部を改正する法律案及び訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  御質疑、のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最初にちょっと変なことを聞くので恐縮なんですけれども、「執行吏手数料及び書記料の額を増加しよう」というように書いてあって、そしてまた、一方では「執達吏手数料規則」というふうになっているわけですが、これは執行吏と言うのが正しいのか、執達吏と言うのが正しいのか、ここはどういうふうになっているのでしょうか。
  4. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) ただいまでは、執行吏と呼ぶのが正しいわけでございます。ただ、御指摘がありましたように、執達吏規則というものがその名称のままで戦前から今日まで現行法として残っておるわけでございます。それではこの執達吏規則現行執行吏というものとの関係はどうなるのかということが必ずしも明瞭ではございませんけれども、しかし、これは法律上の手当てがしてございまして、昭和二十二年の政令二十八号、裁判所法施行法に其く執達吏規則及び執達吏手数料規則変更適用に関する政令というもので、執達吏執行吏と読みかえる手当てをしているわけでございます。
  5. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 執達吏手数料規則というものは規則なんでしょう。ですから、これは、ここで読みかえなくても、執行吏手数料規則というふうに規則の改廃でできるのではないのですか。
  6. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) これは実は名前規則になっておりますけれども執達吏規則それから執達吏手数料規則、こうなっておりますけれども、実質は法律なんでございまして、いわゆる裁判所規則とかそういうものとは違うわけなんでございます。それでありますから、これを改正するについては、法律改正の手続をとらなければならないわけでございます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、法律第五十一号の執達吏規則と第五十二号の執達吏手数料規則と、こう二本あるわけですが、これは合わせて一本にはできないのですか。これはいままでそういうふうなことはやっておらないのですか。あるいは、二本にしておかなければいけないのですか。
  8. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) それは執達吏規則手数料親則を一緒にしてできないわけではございませんけれども執達吏規則と申しますのは、現行執行吏に関する基本的な規定でございまして、それとは別に手数料関係規定法律の形で定めるということは、これは執行吏に関する法律にいたしましても、その職務関係はおもな点は民事訴訟法であるとかあるいは刑事訴訟法であるとかそういうものに規定されているわけでありまするから、この執行吏に関するいろいの法律関係というものを、たとえばその任命の資格の関係であるとか、あるいは事務の処理の関係であるとか、あるいは職務上の権限であるとか、さらには手数料関係というものが、おのおの規定する側面によりまして別々の法律ないし規則で定められるという、規定する側面が違うことによりまして、各種法律ないし規則が存在するという関係になっておるわけであります。
  9. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 訴訟費用等臨時措置法第一条で、「民事訴訟費用刑事訴訟費用執行吏手数料等ニ関スル特例ハ当分ノ内本法ノ定ムル所ニ依ル」と、これはどういう意味なんですか。私のお聞きしたいことは、執行吏手数料及び立替金については、執達吏手数料規則規定があるんだけれども、額は訴訟費用等臨時措置法の定めるところによると、こういうのは何か二本になっていて非常に複雑になっているので、それならば、執達吏手数料規則あるいは執達吏規則、これも全部廃止して、まあ執達吏規則基本法だから別とすれば、手数料関係規定したものは当然訴訟費用等臨時措置法の中に入れて改廃するという形をとってもいいんじゃないかと、こう思うんですが、そこのところはどうなんでしょうか。それはまた執行吏手数料立替金、あるいは訴訟費用に入らない面があって、関係のない面があるわけですか。そこのところがちょっとはっきりしないんですが。
  10. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 御承知のとおり、訴訟費用等臨時措置法でございますが、いま仰せのとおり第一条に、「民事訴訟費用刑事訴訟費用執行吏手数料等ニ関スル特例ハ当分ノ内本法ノ定ムル所ニ依ル」という規定がございまして、これは、戦時中経済情勢変動に伴いまして物価が変わってまいりますので、応急の手当てとしてこの臨時措置法によってその額を定めていくという措置をとったわけでございます。それは、民事訴訟費用刑事訴訟費用についても同じことでございます。それが戦後におきましてもなお経済事情が安定しておりませんで、物価変動が続いておりましたので、その臨時措置法手当てをいたしたまま現在まで臨時措置法内容改正していくという形でいままでまかなってきたわけでございます。したがいまして、将来経済事情が安定いたしまして、恒久的に訴訟費用手数料というものを決定することができる段階になりますれば、全体を整理して一つの法律にまとめ上げると、こういうことになるわけでございます。  そういう次第で、現在まで臨時措置法改正ということで訴訟費用ないしは執行吏手数料の値上げというものをやってまいっているわけでございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、今度の場合に、執達吏行手数料規則明治二十三年法律第五十二号は、これはどういうふうになるんですか。
  12. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 執達吏手整料規則臨時措置法との関係は、民事訴訟費用法訴訟費用等臨時措置法関係と同じでございまして、本法としましては執達吏手数料規則が動いているわけでございますが、その内容の金額につきまして臨時の所当てとして臨時措置法によって規定するという形になっているわけでございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 執達吏手数料規則というものは改正をしないでいて、臨時措置法だけの改正でしばらく行くということにするんですか。
  14. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) ただいま御説明申し上げましたように、いままで経済情勢変動がかなり激しかったので、臨時措置法でつないでまいったのでございますが、ほぼ経済情勢も安定してきたように見受けられますので、今後は基本的な手数料についての法律ということでまとめていくのか相当の段階にきているのではなかろうかというふうに考えております。
  15. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、「現行の額は、昭和三十八年四月二十日から施行された」と、こういうんですが、いままで執行吏手数料立替金についての改正のあれは、どういうふうになっているんですか。資料にありますか、いままでの変化は。
  16. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 御提出いたしました参考資料の中には改正経過は入っておりませんが、必要であれば——ちょっと簡単に申し上げますと、執行吏手数料等改正につきましては、昭和二十一年、二十二年、二十三年、それから二十七年、三十年、それから日当・旅費等につきましては、三十一年、三十三年というふうに改正を続けております。
  17. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一応基本的な問題に戻る形になるのですが、執行吏制度改革ということは、ことに執行機関の再編の問題を中心として、昭和二十九年の七月、法制審議会の第十回総会に「執行吏制度改善する必要があるとすれば、その要綱を示されたい」というような諮問が発せられて、強制執行制度部会に付託したということになっておるわけですが、そのときの要綱というのはどういうふうなものなんですか。
  18. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) そのときは、諮問につきまして具体的な要綱がございませんで、諮問が「執行吏制度改善する必要があるとすれば、その要綱を示されたい」というだけの抽象的な諮問でございます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、その後どういうふうになったんですか。
  20. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) ただいま仰せのとおり、執行吏制度の根本的な改正が必要であるという声は従来からございましたわけでございまして、その結果、昭和二十九年の七月に法務大臣から法制審議会に対してただいま申しましたような執行吏制度改善についての諮問が発せられました。その後、法制審議会強制執行制度部会におきまして調査審議を行なうことになったわけでございますが、強制執行制度部会ではさらに小委員会を設けまして検討を続けました結果、大体の方向といたしましては、現在の執行吏制度、すなわち、公務員であるけれども手数料によって収入を得ているという形の執行吏制度を廃止いたしまして、有給の純粋の形の国家公務員である執行官制度に改めるという基本方針を出しまして、この基本方針については大方の意見が一致いたしましたので、それからさらに細部にわたる検討に入ったわけでございます。  そこで、そのために、さらに法制審議会委員並びに幹事の一部で組織する強制執行制度改正準備会というものを設けまして、さらに原案となるべき具体的な案その他これに伴ういろいろな問題点について検討を続けていろわけでございます。しかしながら、明治以来続けられてまいりましたこの執行吏制度につきましては、法制上にもまた制度の運用上にもいろいろな問題が含まれているわけでございます。現在鋭意検討中でございますが、まだ最終的な結論には達していないというような状況でございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま、強制執行法全面的改正は見送るというふうなことですか。そういうことですけれども、緊急の改正を要するということについて逐条審議が行なわれておる段階だというふうにもいわれておるのですが、そこはどういうふうになっているんですか。
  22. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 執行制度全体の問題といたしましては、現在詳細な研究を続けている段階でございます。それと、ただいま申しました執行吏制度、これとはまた別に研究を続けているという状況でございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 何か最高裁事務当局中心となって民事裁判官会同をやったことがある、それは執行官制度の採用に伴う強制執行法規改正に関して民事裁判官会同をやったということですが、これはいつごろやって、どういうふうなことがその中で問題となっておるのですか。何かそれには改正準備会中間案というものが付されておる、こういうふうに伝えられておるのですがね。
  24. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) ただいまの点につきましては、法務省民事局でこの関係の担当をしております宮脇参事官が出ておりますので、説明員として御説明することをお許しいただきたいと思います。
  25. 石井桂

  26. 宮脇幸彦

    説明員宮脇幸彦君) ただいま御指摘のとおり、昭和三十六年十二月及び昭和三十七年十二月の二回にわたりまして民事裁判官会同において強制執行法改正問題が検討されております。その際、最高裁判側の御要望によりまして、私ども準備会検討いたした結果得ました中間案をいわば素材として提供したわけでございます。それで、そのときどきのいわば中間案素材として差し上げたわけでございますが、これが確定案というわけのものではなく、最も関心の深い裁判官の方に中間案検討していただくのが時宜に適した措置であろうと考えてそういたしたわけでございます。内容につきましては、この会同歳出録もありますので、御必要ならばごらんに入れてもけっこうでございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その議事録といいますか会同要録には、付録として改正準備会中間案、これは民訴法六百三十九条までだと言っていますが、それが付されておるということですが、これをあと参考に一部いただければと、こう考えます。  それから執行吏制度弊害、これに対する改善方策改革案、こういうふうなものについていろいろいわれておるわけです。その弊害がいろいろあるということですが、一体どういう点に弊害があるのか、これはどうなんでしょうか、宮脇さんの論文もありますけれども
  28. 宮脇幸彦

    説明員宮脇幸彦君) 簡単に申しますと、執行吏手数料制かつ債権者自由選択制のいわば半自由職業的な公務員であるということから来る弊害だと思われます。それで、この点につきましては、先ほど調査部長からもお話がありましたように、完全な俸給制公務員にすれば、ある程度その弊害は除けることは確かでございます。ただ、そういたしますと、おのずから能率も低下するおそれがある。その場合に、肝要の新しい執行官が何人ぐらいで足りるかというふうな問題が、次に出てまいります。  それで、執行吏制度弊害はもうおわかりのことと思いますけれども、そういった基本的な制度を変えなければどうにもならないわけでございまして、巷間いろいろその弊害の末梢的な現象はいわれておりますけれども、はたしてそれがすべて正しいかどうかという点につきましては、私どもいま検討中でございまして、どの批判がいわれておるとおり正しいかという点につきましては、全くまだ自信がございません。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 自信がございませんと言ったって、あなたの論文があるんですね。「その弊害を一言にして尽せば」といろいろ説明されておるわけですが、まあそれに対する反論もあるわけですけれどもね。そうすると、手数料制及び債権者自由選択制に基づく自由職業的性格、これが、具体的にはどういうふうなところで執行吏問題弊害になってあらわれておるのでしょうか。
  30. 宮脇幸彦

    説明員宮脇幸彦君) 手数料制でございますので、現在の執行吏はどういたしましても監督が十分に行き届かない面があろうと存じます。これは、たびたび最高裁民事局長に御質問が行っておりまして、答弁にも非常に苦しんでおられる経緯からおわかりいただけますとおり、現在の制度のもとでは、監督を完全に行なおうとしても非常に困難である。そこにどうしても壁があるというふうに申せると思います。それで、刑事事件といたしましても横領とかあるいは収賄等事件も出ておりまして、特に執行吏代理についてこの点は著しいわけでございますが、そういった面が第一に指摘されると思います。それから、外観的に見まして、債権者委任を受けて執行いたします関係上、執行の公正とかあるいは権威とかというものがそこなわれておるというふうに一般に指摘されております。まあ強制執行でありまする関係上、債務者の側からはいずれにしても非難が向けられやすいということは否定できないわけでございまして、この点はおそらく執行官制度をとりましてもある程度は起きる問題でございましょうが、少なくとも執行の公正あるいは権威を保つためには現在の執行吏制度は不適当であるというふうに申せると思います。  第三番目には、執行事務全国的統一化が容易でないことが指摘されると思います。個々の役場に分かれまして債権者委任を受けて執行をいたします以上は、その間に統一を保つということが非常に困難でございます。この点につきましては、最高裁判所側におかれましても研修を実施したい意向をお持ちのようでございますが、何ぶんにも手数料制執行吏を一堂に集めて研修を行なうにつきましては十分の予算的措置も必要であり、難航をしておるというふうに伺っております。さらには、事件の少ない地方におきましては、手数料収入が少ないという結果、やむなく老齢の執行吏をそのまま使っておるというふうな現象も見られるわけでございます。  そういったいろいろな面での弊害指摘されておりますが、全部が正しい批判であるか、あるいは少し行き過ぎの批判であるかという点につきましては、先ほど申し上げましたとおり、私ども全部が執行吏制度弊害であるというふうには言い切れないであろうというふうに考えております。
  31. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 執行吏刑事事件ですね、横領とか、増収賄もあったように思いますが、それはここ数年の間にどういうふうな事件があったのですか。
  32. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 昭和二十五年以来昨年までの統計で申し上げますと、起訴された人員が四十一名、うち十名は執行吏代理でございますが、執行吏代理を含めまして、二十五年から三十九年までの間に起訴された人員数というものが四十二名であります。それで、そのうち有罪の判決を受けました者が三十四名、うち八名が執行吏代理、目下事件係属中のものが八でございます。  その罪名といたしましては、業務上横領、これは保管金等を持ち逃げしたというような事件でございますが、そのほか、収賄虚偽文書の作成、そういった種類の犯罪でございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまのは、もう少し内容をちょっと詳しく、個人の名前は要りませんけれどもあとで何か表かなんかにしてわかりやすくして出していただけませんか。  それと、裁判所監督というのは、現実には執行吏に対してどういうふうにやっているのでしょうか。
  34. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 執行吏に対する監督ということは、執行職務といいますか、職務非違、つまり間違った執行をやったということに対する面につきましては、民事訴訟法規定の上で、執行方法の異議とかそういう方法で結局裁判でその非違が是正されるというようなことでその職務のやり方についての監督を受けるということになりましょうが、その身分上の監督につきましては、これは、裁判所法規定執達吏規則規定地方裁判所監督を受けるということになっております。  その監督方法といたしましては、長岡裁判所執行吏監督規程がございまして、これが、具体的にと申しますか、地方裁判所監督を行なう方法というものをきめているわけでございますが、その重要な点を申しますと、地方裁判所——ということは、地方裁判所裁判官会議査察官というものを指定いたしまして、査察官によりまして年に少なくとも二回の査察を行なえということになっておるわけであります。査察官は、また、その査察に際しましては補助を使える。裁判所職員補助を使って査察をするということになっております。そうして、その査察の結果は、私どものほうに年一回報告を受けるということになっておるわけなんでございます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの査察というのは、現実的にはどういうふうにやるのでしょうか。これは、率直にいえば、なかなかむずかしいし、やりづらいというか、実効もあげにくいものだというふうに私も思いますがね。実際のことは私も大体のことを知っていますが、具体的にどういうふうにやって、それじゃその結果として最高裁のほうにその結果を現実に報告しているでしょうか。どうなんでしょうか、それは。
  36. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 御指摘のとおり、監督、ことに金銭出納の面における監督というものが、国の会計と違いまして、執行吏として独立採算制的に収支をまかなっているものでございまするから、事件受理件数というようなものまで裁判所がそこに干渉して実際に見ているわけではございませんので、したがいまして、執行吏が自主的に記帳しております各種帳簿というものを少なくとも年二回裁判所から査察官補助官を連れて出向きましてそうしてその監査をしているわけなんでございまするけれども、常時役場におってそうしてその金の出入りというものを見ているわけでないものでございまするから、その監査が非常にやりにくい。それから査察査察の間におきまして、たとえば執行吏事務員が持ち逃げをするというようなことが起きるといたしますると、その間査察官が目を光らせているということが非常に困難な状況にあるわけでございます。その査察いたしましたときには、査察結果というものを査察官裁判官会議に提出いたすわけでございまして、それはまた一回まとめて私どものほらに報告されており、そうしてそれは私どものほうの係官がこれを検査いたしまして、そうして注意すべき点は厳重に注意するようにという処置をとっておるわけでございます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 査察というのは、まあ口で言うのは簡単ですけれども、実際に執行吏をどういうふうに査察するかということになってきて、かりに査察した場合でも実態がはっきりしないし、そこにいろいろな問題があっても発見されないということは私もよくわかるんです。非常にむずかしいということはよくわかるけれども、それは別として、現実に各地裁で査察官というものをきめて査察というのを年に二回やっているんですか。その点はどうですか。きめてはあるけれどもやっていないなら、やっていないでいいんです。いいかどうかは別として聞いているんですが、実際はやっていないんだというのならばしょうがないんで、やっていないならやっていないでいい。やっているけれども、その結果として正式に裁判官会議に報告しているということをやっているところもあるし、やっていないところもある、その結果について最高裁のほうに報告しているところもあるし、報告していないところもあると、こういうことであるならば、それをありのままに御報告願いたいと思うんですがね。
  38. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) これは、査察が不十分で手抜かりがあったというような例はないわけではございませんけれども、全然やっていないということはございません。現に、査察によりまして不正事件を発見して、さらに査察を厳重にやったというような例もございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、執行吏査察というのは、どういうことを対象にしてやるわけですか。何か規則か何かあるわけですか。最高裁内部規則というか、訓令というか、何かそういうふうなものによってその査察をやることになっているんですか。
  40. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 先ほど申し上げました執行吏監督規程によりまして査察官が行なう査察と申しますのは、毎年少なくとも二回、執行吏役場及びその出張所に現実に臨場いたしまして、執行記録、それから帳簿——これは裁判所のほうで定めて通達いたしました通達によりましてどういう種類帳簿を備えなければならぬかということになっておるわけでございますが、その各種帳簿及び金品が現実に保管されておるかどうかという点を見てまいるわけでございます。
  41. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 執行吏査察はそれとして、それでは、いろいろな問題点があるのですが、それに対する執行吏実態調査昭和三十一年と三十二年にやったことがある——これはちょっと古いんですが、中野という大阪大学の教授ですか、この人の書いた本の中で、こういうことを言っているんです。執行吏実態調査というのをどこがやったのかどうもはっきりしませんが、最高裁中心となって執行吏実態——実態といってもいろいろな面があると思いますが、その調査をやったことはあるんですか、あるいは、最高裁がやったことではなくても、どっかほかのところがやったことでもけっこうですが。
  42. 宮脇幸彦

    説明員宮脇幸彦君) 先生のお尋ねについて記憶が十分はっきりいたしませんが、法務省中心になりまして二回実施いたしております。一つは関東方面でございまして、これは文部省の学術研究費に基づきまして執行吏執行行為の実態を調査いたしました。関西のほうの調査は、法務省の調査部及び民事局中心になりまして、関西側の学者の協力を得て実施いたしております。こちらのほうは、法務省法制審議会の費用の中から支出されたわけであります。大阪大学の中野教授の参加されたのは後のほうの実態調査でございまして、実はまだ完全な報告が法務省のほうに届いておりませんので、私どものほうではその調査の結果が把握できないでおります。それでも、資料的なものだけは参っておりまして、非常に私どもにも参考になっております。
  43. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 前の文部省の学術奨励金というのですか学術研究としてやったもの、あるいは、あと法務省のやったもの、これはいつごろなんですか。
  44. 宮脇幸彦

    説明員宮脇幸彦君) 実態調査は、関東側が先でございまして、それが昭和二十九年、三十年、それから三十一年に少しかかっておるようであります。それから関西側が昭和三十一年に実施されております。
  45. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはどういうふうなものを調査しようということでやられたのか、その結果はどういうふうになっておるのか、それを知りたいわけなんですけれどもね。
  46. 宮脇幸彦

    説明員宮脇幸彦君) かなり大きなカードをつくりまして、それに基づく面接調査をやったわけであります。それで、面接の相手方は、執行吏関係の銀行、商社など、要するに利用者の側、さらには、弁護士、それからいわゆる立会屋などにも面接調査を行なっております。関東側のほうは、全然私のほうへその調査結果が参っておりませんけれども、関西の分は、面接調査の結果だけは全部いただいております。さらに総論的な説明を京都大学の中田教授におつくりいただくことになっておりますが、それが完全にできておらないという段階でございます。
  47. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 前のほうは法務省はノータッチだったわけですか。前のほうは文部省でやったというのだけれども法務省はノータッチだったわけですか。
  48. 貞家克巳

    説明員貞家克巳君) それでは、私が若干関係いたしておりました関係上、便宜お答え申し上げます。  先ほど宮脇参事官から申し上げましたように、関東と申しますか、東京を中心として、東京高裁管内、仙台高裁管内、それから札幌高裁管内についてまず調査をいたしまして、翌年名古屋管内全般にわたって調査をいたしましたわけでございます。この二つの調査は、先ほど申し上げました文部省の学術研究という名目でおやりになったわけでございまして、主体は、したがいまして、法務省も若干関係はいたしましたけれども、学者グループの研究ということになったわけでございます。それで随時法務省関係者も参加いたしましたし、若干の裁判所関係の方も参加されたわけでございます。ただ、その調査方法といたしましては、先ほど申し上げましたように非常に詳しい面接のための調査表をつくりまして、それに基づいて質問をいたしまして、答えを記入して、それを清書するという段階がまずあるわけでございますが、その段階のカードは若干いただいておりますが、全部そろっておりませんのと、それ自体は非常に具体的な答えをそのまま書いたわけでございますから、それを全体としてながめまして通観して調査結果をまとめる必要があるわけでございますが、そういったものをいただいておりませんので、断片的には利用できるわけでございますが、完全に利用させていただくというわけにはまいっていないわけでございます。  それから関西のほうでございますが、これは先ほどもお答え申し上げましたように法務省法制審議会のほうの委嘱という形を予算上とっておりますけれども、やはり主体といたしましては学者の方々が主体になっているわけでございまして、それに随時法務省関係者が参加しお手伝いをしたという形を踏んでいるわけでございます。それで、そちらのほうは、具体的な各面接者——各面接者と申しますか、各地方の執行吏なら執行吏、あるいはその土地の弁護士に対する調査結果というものはそろっておりますけれども、これはやはり全体を通観いたしましてその結果を分析すると申しますか総合する必要があるわけでございます。そういったものがいまおまとめ中だと思いますが、そのうち若干の分をまだいただいておりませんけれども、しかし、そちらのほうはかなり資料としてそろっているわけでございます。したがいまして、利用価値がかなりあるとは思いますが、何ぶんにも非常に対象が広範でございまして、それによって直ちにこういう事項についてはこうだという断定を下すというような資料には残念ながらなっておらないという次第でございます。
  49. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 文部省の学術研究としてやる場合には、あれはまとめて文部省に報告するとか、出版するんじゃないですか。どうなんですか。秘密というか、外部に出さないものがあるかとも思いますけれども
  50. 貞家克巳

    説明員貞家克巳君) 私が非公式に伺っておりますところによりますと、文部省に対する報告はおやりになったように聞いております。ただ、その報告の内容というものは、それほど詳細な実質的な内容を盛らなくても一応事務的に済むというふうに伺っております。それで、なお詳細は、その材料を使いまして研究をおやりになるというこうに伺っております。
  51. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうふうな調査で執行吏実態がどれだけ確実に把握できるかというのは、これは議論があるところだと思いますがね。面接したって、はたしてほんとうのことを言うか言わないかわからないですし、いろいろあると思うんですが、東京地裁における不動産競売の実態ということで、最高裁がやったのか、あるいは東京地裁の判事が個人的にやったのかは知りませんが、そういうような研究なんかもあるのじゃないですか。これはどうです。最高裁のほうは鉅鹿判事という人のやった研究があるのじゃないですか。
  52. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) あれは数年前にやったものでございますが、鉅鹿判事が当時執行部の裁判長をしておられたと思いますが、「ジュリスト」に書かれたものを私ども拝見はしております。
  53. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、鉅鹿判事は個人的にやられたものでしょうけれども執行部の部長として勤務しておられたことからでしょうけれども、具体的に日本の強制執行はどういう点に問題点があって、どういう欠点があるんだというふうになっているんですか。これはなにか資料として出ているんじゃないですか。最高裁で民事裁判資料として出していますか、いまの執行吏実態調査、特に鉅鹿判事のおやりになったものを中心にして。
  54. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 鉅鹿判事の執行部の裁判官として調査されたものを中心として最高裁判所のほうで資料をつくったというようなことはございません。
  55. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、その中で一体どういうふうなことを結論づけておられるんでしょうか。たとえば「ジュリスト」の百九十八号によると、「世界のいずこに、日本位、強制執行の実を挙げ得ない国があるであろうか。多少の誇張が許されるとすれば、強制執行は債権に対する執行を除き、アナーキーが支配していると言っても、過言ではない。まあいろいろ言っておられるんですがね。」そうすると、ちょっとこの言い方自身誇張があるかもわからぬけれども、「世界のいずこに、日本位、強制執行の実を挙げ得ない国があるであろうか。」、現実裁判官をやって強制執行の部長をやっておられる方がこういうふうに言われておるんですがね。どこからこういうことが出てくるんでしょうか。これは、競売ブローカーの関与が非常に多いということと、それが任意でも強制競売でも九五%に及んでおるということ、競売の場合に最終競売までいかないで取り下げが非常に多い、そこでいろいろきまってしまうというようなことなんかも言っておるようですけれどもね。「日本位、強制執行の実を挙げ得ない国があるであろうか。」というのは、これはどういう意味なんでしょうかね。
  56. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 鉅鹿判事がどういう点をついてそういうことを言っておられるのか、必ずしもはっきりいたしませんが、私ども推測いたしますところによりますと、問題は動産と不動産に分けて考えたほうがいいのじゃないかと思いますが、動産の執行が実をあげていない、確かに債権の満足というものが動産の競売によって得られたという例はそう多くないということを認めざるを得ないと思うのです。じゃ、なぜそういう現状であるのかということを申し上げますと、まず第一に、裁判所のほうで見ておりますと、動産の差押の執行事件で差し押えられたものというものが、いわゆる家財道具のがらくたに類するものが非常に多いのであります。これは、ここまで言うのはどうかと思いまするけれども、日本の経済状態というもの、差押を受けるような人の経済状態というものが非常に低いということも一つの原因、それからあるいは債務者のほうとしてもいろいろ第三者に売ってしまうとかいうような工作をしてしまうということから、押えるものが少なくて動産の差押によって債権の満足を得るということに至らないのではないかと思うのでございます。  不動産にいたしましても、いよいよ差押を受けるというような状況になっております債務者所有の不動産というものは、いろいろの瑕疵と申しますか、もうすでに優先的な担保もつけられておるとか、そうでないにいたしましても、登記面は債務者の所有として残っておっても、実際上はすでに実体が第三者に移っておるということになりますと、登記の公信力が認められておりませんわが国の法制のもとにおきましては、競落人が競落しても完全な所有権を取得することができない危険性があるのみならず、この土地建物の競売によりましていよいよ所有権を取得しても、そこに占有者がおって、これを追い出して競落人が自分でそれを使える、あるいはからにしてこれを売るということが、引渡命令を得るという制度はございますけれども、そこでまた最後的な引渡命令を得なければならぬというようなめんどうがございまして、競落によって得られる品物というものが動産につきましても不動産につきましてもあまりまあいい品物じゃないという点が強制執行による競売というものの利用価値というものをそれほど高いものにしていないというのが実情ではないかと思います。
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「強制執行の実を挙げ得ない」といっても、現実に最終的な競売によって買得するというような形にいかなくても、その前に任意で弁済があるという形ではやはり強制執行の実をあげ得たというふうに解釈してもいいんだと、こういうふうに思うわけですね。ですから、こういうふうに一がいに言えないんだとは思いますけれども、いずれにしても、東京地裁の執行部にいた裁判長ですか、これは何か四年間にわたる地裁事件の記録に基づいて具体的な数字で実態調査をやっておるんですが、それが問題がどこにあるのか、この次にもう少し解明していただきたいと思います。実は、私もこの論文をまだ読んでないものですから、していただきたいと、こう思います。  そこで、もう一つの問題は、債権者、立会屋、競売ブローカーとの不明朗な結びつきが非常に多いということ、これは宮脇参事官もここに書いておられるんですが、これは具体的にはどういうことなんでしょうか。
  58. 宮脇幸彦

    説明員宮脇幸彦君) 先ほどの鉅鹿判事の論文にも出ておりますけれども、不動産の競売は、現在、入札制度ではなく、普通のせり売りの方法で売っているわけであります。で、そこへ集まりますいわゆる競買人は、おおむね不動産の競売ブローカーでございます。それで、なぜ不動産の競売ブローカーしか集まらないかと申しますと、これは半分は手続法の不備が原因であると思いますし、また、先ほど菅野民事局長のお話にも出ておりましたように、民法の規定との調和が十分とれておらない点にもあるわけでござまして、全部が執行吏の責任というふうには言えないと思いますが、まあ外観点に見ますと、執行吏が実施する競売期日に集まる者が不動産の競売ブローカーであるところから、どうしてもそこに何か結びつきがあるだろうという推定が下されるわけでございます。これはあくまで推定でございまして、私ども実態調査の結果そういうことはつかんでおりません。もし現実にそれがあらわれるとすれば収賄その他の刑事事件においてでございましようけれども、そういった例はほとんどなかろうと思うわけでございます。しかしながら、そういった不動産の競売ブローカーしか不動産を競売できないという現実は、先ほど申し上げましたとおり、民訴の強制執行編における不動産の換価制度の不備と民法との不調和にあるわけでございまして、この点は私どもも目下研究中でございますけれども強制執行編の全面政正におきましては、かような弊害が起きないように最善の努力をいたすつもりでございます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本の強制執行法というのは、強制執行法そのものの改正はいままでないんですか。これは元来はあれですか、ドイツの強制執行法を母法としたものなんですか。
  60. 宮脇幸彦

    説明員宮脇幸彦君) 申すまでもないことでございますが、日本の民事訴訟法は、ドイツの、具体的に申しますとドイツの一八七七年民事訴訟法の翻訳継受でございます。強制執行編のほうはかなりドイツ法を継受するにあたりまして手を加えておりますが、最も相違いたします点は、ドイツ法の優先主義を平等主義に変えた点でございます。明治二十三年と申しますと、元老院でつくった法律でございますが、その後の改正はそうたいした部分に及んでおりませんわけで、総則編の改正はかなり行なわれておりますけれども強制執行編のうち各則の部分の改正はまあその場その場合の必要に応じた応急的改正、たとえば戦争中における経済統制に即応する改正のようなものしか行なわれておりません。戦後におきましては、若干債務者保護の観点から改正が加えられておりますが、これとても強制執行編者則のいわば柱をゆるがすほどの改正ではないわけでございます。  そういうような経緯で今日まで進んでおります。
  61. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それでは、宮脇さんは強制執行権威でしょうからお聞きするんですが、破産法は、大正十一年にできたときに前の破産法と変わったんですか、どうですか。前には商人破産主義をとっていたのだけれども、大正十一年の現行破産法で一般破産主義をとるようになったんだというようなことになっているんですか。その点はどうなんですか。
  62. 宮脇幸彦

    説明員宮脇幸彦君) 破産法は、当初商法の中にありました破産編を施行したわけでございます。これは御承知のとおりでございますが、旧民法及び旧商法は、いわゆる民法典論争の結果施行できずに終わったわけですけれども、商法の中の会社編と破産編だけは必要やむを得ず施行したわけでございます。その商法の中にありました破産編と申しますのは、もちろん商人についてだけしか適用がない制度でございまして、いずれは恒久的な破産制度をつくる必要があるわけで、鋭意努力を重ねられた結果でき上がったのが大正十一年の破産法でございまして、それによりましてはじめて商人以外の一般の人々にも破産法の適用があるという結果になったわけで、これを商人破産主義から一般破産主義への変更というふうに呼んでいるわけでございます。
  63. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それといまの強制執行の平等主義というのはどういうふうな関係になるんですかね。私ちょっとわからないんですが、たとえば、中野さんの論文を読むと、「わが国の強制執行法は、平等主義を愚直なまでに貫いた他に例をみない立法であるといわれるが、この「日本的平等主義」は、商人破産主義をとっていた旧破産法と組んでいた間はともかく、一般破産主義をとる現行破産法(大正一一年)の成立後もそのままのかたちで維持されてきていることは、全く不合理というほかはない。しかも、この平等主義が、強制執行法の機能不全に大きく一役買っているのである。なんらかのかたちでの修正は必須であろうが、」云々と、こう言っているんですがね。破産のほうが商人破産から一般破産になったということと、強制執行の平等主義をそのままとっているということとの関連は、どういうことなんですか。ちょっとここはよくわからないんですがね。
  64. 宮脇幸彦

    説明員宮脇幸彦君) 私ども明治当初における立法の過程を調査いたしましたところ、最初の案は優先主義でございます。当時の立法は、民法の担当者と民訴の担当者が分かれておったわけでございまして、最終的に民法——具体的には旧民法のほうでフランス法流の平等主義的な規定を置きました結果、それにあわせて強制執行編も最終段階で急遽平等主義に切りかえたわけでございます。その段階における作業がおそらく推定では一年くらいしかなかったようでございまして、十分なる平等主義への切りかえが行なわれなかった。そこに至るところ穴を生んだ原因があるというふうに評することができると思います。愚直なまでの平等主義と申しまするのは、要するに、配当要求を時期的な制限はございますけれども無条件に許す、いわゆる債務名義を持たない一般債権者も自由に入ってこれるという点にあるわけでございまして、この点は同じ平等主義をとっておるといわれておりますフランス民訴の強制執行においてすらかなり制限があるのに、そういった平等主義の原則を至るところで貫いたという点が一つの欠陥として現在では指摘されるということになっておるわけでございます。
  65. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あまり話が横へ行っちゃってもいけませんから、もとに戻しますが、いまの平等主義でも、たとえば債務名義がなくてもどんどん配当加入ができるわけですね。でありますから、にせの債権でどんどん配当加入してきて強制執行をやったら、やった者がばかをみてしまったという、そういう結果が現実には出てきていると思うんですが、これは別の問題ですが……。  そこで、前に出た競売ブローカーと執行吏との結びつきで、明らかに競売ブローカーが競落をするんだということがわかる場合には競落の許可決定をしないんだということを東京地裁では現実にやるようになったのじゃないですか。そこはどうですか。
  66. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) そういうブローカーであるがゆえに競落を許可しないという決定をされた例があるように聞いておりますが、しかし、これはブローカーであるがゆえに許さないということは法律規定から言うとどうかと思われますので、そういうものが判例として残るだけのものかどうかという点について疑問を持っております。
  67. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 現実には、競売ブローカーが競落して、そうして中に住んでおる人にうんともうけて逆に売りつけるという例が非常に不動産の場合には多いんですね。非常にと言えるかどうか、私らが見る範囲で現実に経験する範囲では相当多いわけですが、それは別として、そうすると、今度は執行吏の給与といいますか待遇の問題に入ってくるのですが、今度の予算を見ると、執行吏補助金というのは、最高裁で、去年が七十九万七千円、本年度が九十八万円と非常にわずかで、名前だけ出ている程度なんですけれども、これはどうしてこんなふうに少ないわけなんですか。
  68. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) これは、第一には、全国的に見ましても、補助金を受けるという人の数というものは、三十八年でたしか十三名程度であったと思います。それから補助金の受ける程度といいますか金額というものは、今度政令で二十一万八千円に改正されるまでは十九万一千円でございましたが、現実手数料収入と、ただいま申しました基準額、改正前ならば十九万一千円、改正後でも二十一万八千円でございますが、その差額だけ受けるわけでございますから、十三人おりましてもその十三人がただいま申しました基準額全額を受けるわけではないので、現実収入があったものとその基準額との差額だけを受けるということでございまするから、一年の予算としては非常に先ほどおっしゃったような少ない額で済むわけでございます。
  69. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、現実には、執行吏補助金をもらわなくてもやれるだけの収入を得ておるということになるわけですか。それと、執行吏補助する場合の基準はどういうふうなんでしょうか。ちょっといま私聞いていなかったのですが、何か規定があるのですか。
  70. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) これは、補助基準額というものは政令で定めることになっておりまして、今回の改正で、今回の改正と申しますのは、ことしの二十一万八千円になったわけでございますが、その改正以前は十九万一千円であった。それで、その補助金を受けた人というのは、三十八年で十三人でございます。したがいまして、執行吏は全体の数が三百三十五名おりますので、ごく一部ということになるかと思います。
  71. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その十三人ですか、それは、老齢の人とか、地域的に事件のない人とか、そういうのでしようか。
  72. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) やはりこれは地域的に支部におります執行吏とかいうものでござざいます。
  73. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その執行吏のいろいろな人の前歴というのはどういうふうになっているんですか。  それから執行吏になる場合に、ことに裁判所の書記官の人から執行吏になる場合には、どういうふうに現実にはしているわけですか。
  74. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) まず、執行吏の前歴と申しますか、前の職業は、何と申しましても裁判所職員、書記官の前歴を持っているような人が一番多うございまして、百八十五人で、全体の数の五五%、それから前が執行吏代理であった人が四十九人で一五%、法務省関係職員が三十人で九%、会社員二十六人で八%、司法書士十人で三%、その他というのがございまして、警察官であったような人、教員であったような人というのが三十五人、一〇%になっております。裁判所職員執行吏になる場合が多いのでございますが、これは、大体書記官として相当の年数を経た人が特に執行部などに勤めておった経験のある人が執行吏になる例が多いわけでございます。
  75. 木島義夫

    ○木島義夫君 関連質問で簡単に伺いますが、裁判所の大小、上級とか下級とか、いろいろありますが、執行吏の数の問題ですね、これはどうなんですか。
  76. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 四十年一月一日現在で執行吏の数は、全国で三百三十五名でございます。
  77. 木島義夫

    ○木島義夫君 これが各裁判所でたとえば一地方裁判所に一人しか置かないとか、二人しか置かないとか、そういうふうな内規なり、一人でいいとか、もしくはもっと多く置かなきゃいかぬとか、そういうふうなことはないわけですか。
  78. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 執行吏は各地方裁判所に置かれるわけでございまするけれども、どの裁判所に何人の執行吏を置くという規定、定員というようなものもございませんし、内規というようなものもないのでございます。
  79. 木島義夫

    ○木島義夫君 じゃ、全然いなくとも差しつかえないですか。どうですか。
  80. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 執行吏地方裁判所に置かれ、そして任命権者は地方裁判所でございます。結局、地方裁判所で何人置くのか適当であるかということをきめて任命しておるわけでございます。
  81. 木島義夫

    ○木島義夫君 ここに稲葉先生のように弁護士の資格を有する人もおるんですが、私の実際に知ったところ、また聞いたところでは、一人の場合は特に弊害とか運用上において困る場合が多いというんですね。弁護士の話を聞いてみると、全く弁護士のほうで執行吏に頼んでいるというようなかっこうでやっているところも相当あるらしいです。これが、つまり、何といいますか、現在のような制度のもとにおいてはやむを得ない実情かもしれません。  先ほど犯罪の問題なんかも出ていますが、単独の場合はどうしてもそういうことが起こりやすいというようなことが考えられるわけですね。たとえば、運輸省で丸通などの関係においても、これは一時統合により一駅一店主義になったけれども、それではいかぬということで、やはり複数制にしなきゃいかぬというようなことが輸送の関係において起こってくるんですね。裁判というのは、最も情実を排し、公正でなけりゃならぬ。そういうところからいいますと、つまり法の一種の執行機関ですから、法律が幾らよくできておっても、執行機関が悪ければしょうがないですね。また、弁護士の方も法の執行については絶対の権限を持っているわけじゃない。裁判官を通じて、あるいは執行吏を通じてというようないろんなことになっておるんですから、この執行吏の問題は、国の法律の運用上、公正を期する、また、執行執行の効果を十分にするというような上からいうと、もっとこの制度を掘り下げて、国としてはそういうことのないように改める必要があるではないか、こういうことなんですが、そういう点に対する御意見を……。
  82. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 御指摘のとおり、執行ということは権利実現の最後の段階でありまして、せっかく判決がありましても、その実効性があるかどうか、国民の権利がほんとうに実現されるかどうかということは、この執行の最後の段階においてそれが確実であるかどうかということににかかっているわけでございまして、裁判所といたしましては、この権利の実現ということの重要性にかんがみまして、執行制度ということが非常に大切なものであるということを考えておるわけでございます。そこにブローカー制度——制度と申しますか、ブローカーというようなものが出てきて、あるいは立会屋というようなのもが現実にあって、そうして、この権利実現の最後の段階においてそういう人が、必ずしも不正をしているというふうには私ども考えておりませんけれども、しかし、世の中から往々にして疑惑を受けておる、疑惑の目をもって見られておるという事実は、これは認めざるを得ませんので、いやしくもそういうようなことがあってはならないし、そうして、権利の実現というものは正確に公正にかつ迅速になされなければならないというふうに考えておりまするので、法務省が考えておられる基本的な改正というものが実現されるならば、これについて裁判所も十分協力していくつもりではございますが、しかしながら、法務省が先ほどからお答えになっておるように、その根本的な改正の実現というものがいろいろの問題点を含んでおってそうして早急に実現できるかどうかということについての見通しということがなかなかつかみにくいということを言われておるのでありまするけれども、私ども現行法のもとにおいてもこの法の運用を適正にいたしまして、そうしてまた、根本的な改正に至る間に暫定的にでも前向きに改正すべき点があれば、それを根本的な改正に至るまでの暫定的な段階といたしまして前向きの姿勢をとって制度の公正な実現のために努力したい、かように考えておる次第でございます。
  83. 木島義夫

    ○木島義夫君 私は、この問題は、日本の国の政治をよくする上においても非常に重要なことだと考えております。執行吏にしても、なぜそういうふうに人がいないとか、不正が行なわれるかというと、その一つは、その待遇問題について現実に合うようになっていないからではないか、こういうふうに思うわけです。で、今度も最高裁から出そうとしていますね、司法試験の問題を。司法試験の問題についていま研究中ですが、試験制度の問題についてもいろいろ論じられておって、試験の科目とか範囲とか、そういうような問題がいま焦点になっておるんですね。こういう問題も、司法官——つまり裁判官を含めてですか、司法官に対する待遇を他の官吏よりもよくするならば、行政試験のほうに秀才とかなんとかという者が集まるということにはならぬと思うのです。たとえば、こういうことを言っちゃどうかわからないが、東大なんかを出る人の大部分は行政試験のほうに向いてしまって、司法試験のほうには向かない。だから、今度は試験をもっとやさしくしてやるとか、もしくは試験内容を変えるとか、こういうようなことをやっているが、これはまるきり主客転倒のことを考えているのではないかと私は思うんです。それで、日本のこういう方面の司法試験の歴史を見ますと、これは五十年も六十年もこういう状態が続いているんです。こういうことは、やはり国の制度を改めることによって、また、アメリカなどの裁判官の地位が非常に高いとか、また、弁護士にしても同様であるとかというような実情を見たときには、裁判官やそういう局に当たる人は、場合によればわれわれの生命財産を決定する資格を持っているわけで、これは一番重要なポストだと、私はそう考えます。そういう意味から言いますと、司法試験等も、待遇やその他の点をよすくるならば、天下の秀才もことごとく集まってくるわけなんですね。で、いまは頭としっぽをとんちんかんだ。もとを忘れてすべてをやっている結果からきているんじゃないかと思っているんです。  この執行吏の問題でも、やはり法の最後の実行者である。ことに民事等においては。それをこういう状態にしておくことがおかしい。国の当局がもっともっと頭を進めるべきであって、たとえば三百五十人や五百人の人間に、生活の安定、正しい法の最後の執行ができるようにするのにはどれだけの金がかかるか、こういうことを考えてみたら、たいした問題ではないと私は思います。ですから、いままでのこの行き方を打破して、根本的に制度を進めていかなければならぬ。これは国民の生活上から考えても必須の問題ではないか、こういうふうに私は考えますが、どうでしょう。
  84. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) まことに仰せごもっともでございまして、裁判官に優秀な人材を得るために裁判官についての待遇をよくしていくということが非常な重要な問題であると存じます。この点につきましては、昨年臨時司法制度調査会の内閣に提出されました意見の中にも、裁判官、検察官の給与の改善という一条項がございました。政府といたしましても、その趣旨にのっとりまして、できるだけの努力をいたしたいと思っております。その一部につきましては、昨年実施いたしました。その他の部分につきまして、さらに一そうの待遇の改善ということに努力したいと考えております。  それからさらに執行吏の待遇の問題でございますが、これは先ほど来いろいろ御説明申し上げましたとおり、現在の執行吏は国からは俸給を払っておりません。手数料によって生活を立てているという形になっているわけでございます。そこで、先ほどもお話のございましたように、この手数料昭和三十八年に一度ベース・アップをいたしたわけでございます。そのときの基本的な考え方は、昭和三十年から三十七年までの物価変動を見込みまして引き上げをした、こういうことでございます。ところが、そのときの引き上げは、昭和三十七年現在を基準にして引き上げをいたしておりますので、それから今日までさらに経済事情変動しているわけでございます。そこで、今回手数料の引き上げを考えましたのは、従来と多少考え方を変えまして、執行吏手数料は、御承知のとおり、国家の執行行為に対する対価であるという面が一つございますと同時に、他面、執行吏の給与に該当すると、こういう面がございますので、今回は執行吏の給与に相当するものという面に主として着目いたしまして、昭和三十七年から本年昭和四十年までの勤労者の実収入のアップということを勘案いたしまして、今回は総計としては三割五分の手数料のアップをする。こういうことにいたしたわけでございます。で、最近における執行吏手数料収入を全国平均いたしてみますと、手数料収入は一人年間約六十六万円という数字が最高裁のほうの統計に出ているわけでございます。そこで、今回、これを総体として三割五分のアップということを見込んでおりますので、今回の改正案が法律として制定されますならば、執行吏の平均年間収入というものは、手数料につきまして約百万円、こういうことになるわけでございます。さらに、収入といたしましてはそのほかに立替金収入がございますが、これは相当部分が実費ということになると存じますので、手数料だけで申しますと、いまのような計算で、これで十分かどうかということについては、私どももなお十分に検討しなきゃならないものがあると存じております。その点につきましては、最初に御説明申し上げましたように、執行吏制度を全体について検討いたしておりまして、大体の方向はやはりこういうような手数料制執行吏ということよりは、有給の国家公務員制度に切りかえるということのほうが制度としてはいいんじゃないかということで、理想的な方向としてはそういう方向に向けていま検討いたしている次第でございます。  ただ、その制度を実際に組み上げますには、なおどの程度の権限をその新しい公務員となるいわゆる執行官に持たせるか、あるいは、その新しい執行官の地位というものをどういうふうに格付けしていくか、それによってはたして執行手続、執行行為を全部まかなうだけの人員をうまく吸収できるかどうかというようないろいろむずかしい問題がございますので、それらの諸点についてただいまの鋭意研究中の段階でございます。できるだけの努力を続けたいというふうに考えております。
  85. 木島義夫

    ○木島義夫君 最後に。私はいま執行吏の話をしましたが、法務局、いわゆる登記所なども、私ある必要によってときどき行くんですが、その局長が言うのに、われわれのところが一番待遇が悪いんだと、こういうことを言っておる。これはどうしても上げなくちゃなるまいという話をしておるうちに、昨年か一昨年、ある程度上がった。そうすると、私はまた最近行きましたら、その登記所長がかわっちゃってた。どうしてかわったか、だんだん調べてみたところが、農地法の関係で、何かそれにひっかかってやめちゃった。たいへん人柄としてもいい人であるからということで私たいへん惜しく思ったのですが、これらも、いずれかというと、やはりそういう誘惑がつけ入る余地があるということは、待遇が低いということではないか、こういうことを思います。  それですから、この事実は、いつかも横田最高裁判所長官に私が法務委員長としてあいさつに行ったとき申し上げたことがある。どうも裁判所やなんかは人格がりっぱなせいかしらぬが、遠慮して、国会や政府にも予算や何かを要求したりあるいは交渉したりするのをおっくうがるのじゃないか、もっと勇敢におやりになったらいかがですかということを実は申し上げたことがあるんです。ですから、裁判所とかもしくは法務省の当局におかれましても、ただ宋襄の仁をやっていることが日本の政治をよくするゆえんじゃないからして、外国のように、裁判官とか弁護士とかその他のものは社会組織のファースト、クラスの人がみな行くのであるというようなぐあいにできるようにすべきである。いま盛んに騒いでいる試験制度のごときは、本末転倒のやり方で、ろくなもの食わせないでいい人を集めようとしたって集まるはずはないんですから、そこらはどうですか。あなた方は、私の見るところでは、日本の法務関係のスタッフである。もう少しそういう点を遠慮なくおやりになれば、われわれ援助する力もありませんけれども、大いにそういう方面のために努力をするつもりであって、これはわれわれ法務委員たる責任を十分果たし得ることになりますから……。  こういう意見を述べる人はあまりないと思います。私それを申し上げて、私の質問を終わります。
  86. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 私もしろうとでちょっとわからないのですけれども、身分的な問題ですね。執行吏の先ほどから国家公務員国家公務員ということばが出ているんですが、国家公務員なんですか。
  87. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) これは、俸給を受けないという点で、つまり手数料収入で生活をしているという点で、一般の公務員とはだいぶ性格が違いますのでございますけれども、国の法律のたてまえから言いますと、つまり、国家公務員法のたてまえから言いますると、特別職の公務員ということになって、まあいわゆる公務員なんでございます。
  88. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 国家公務員法のどこにその根拠があるんですか。
  89. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 執行吏公務員であるということは、まず、裁判所法の六十二条に「各地方裁判所執行吏を置く。」ということで、執行吏裁判所職員であるということになっているわけでございます。それがもとになりまして、給与は国からは支給されないけれども、資格は国の公務員である、こういうことになっているわけでございます。
  90. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そうすると、特別職ということですね。国家公務員の特別職。
  91. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) さようでございます。
  92. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 執達吏規則の中で「官吏法の適用」という項があるんですが、官吏法というのは、そういう法律があるんですか。
  93. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 執達吏規則が非常に古い法律でございますので、いまの法律の形とかなり変わったものがあると存じますが、いまの御指摘の点は、おそらく執達吏規則の一番最後の第二十二条の規定をおっしゃっているんじゃなかろうかと存じますが、二十二条の規定のその六法全書の頭に「官吏法の適用」というふうに書いてございますが、これは法律の条文の中にはございませんので、ただ六法全書編集の便宜のためにおそらく見出しとしてつけられているものだろうと思います。内容といたしましては、二十二条に記載されておりますように、「執達吏ハ此規則ニ依ルノ外総テ一般官吏ノ例ニ依ル」というのがこの規定内容でございまして、したがいまして、先ほど申しましたように、国からの給与がない、手数料で生活をするという執行吏としての特殊性がございますが、そういう特殊性から基づく一般官吏と違った点は当然出てくるわけでございますが、そういう点以外は一般官吏についての法令が適用になってくると、こういうふうな解釈に相なると存じます。
  94. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そうしますと、この執達吏規則に定めた以外のものについては国家公務員法も当然適用されると、こういうことに理解していいですか。
  95. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 先ほど申し上げましたように、裁判所職員でございまして、特別職ということになっておりますので、一般の国家公務員法の各条の適用からはその関係でははずれてくるわけでございます。しかしながら、裁判所職員につきましては、裁判所職員臨時措置法という法律がございまして、国家公務員法その他の公務員制度に関する規定を特別の例外の場合以外は準用すると、こういうことになっているわけでございます。
  96. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 もう一つ、執達吏規則の中に、その二十一条に「官吏恩給法ニ照シ恩給ヲ受ク」と、こうなっていますが、この「照シ」というのはどういうことですか。
  97. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) ここらあたりが、この法律が非常に古いものですから、おそらく現在の法律の条文にはかような書き方はいたさないと思うのでございますが、結局、この規定の趣旨は、恩給法の定めるところによりというような趣旨になるものと考えております。
  98. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 こうした古い規則を、もう新憲法ができましてから相当長い期間になるんですけれども、しかも法律を厳格に国民に対してやっていかなくちゃならない法務省が依然としてこういう規則をほうっておくということについて、これは大臣がいないですから、部長に言ってもしようがないと思うんですが、大臣がいるときにいずれまたやりたいと思いますけれども、私は非常におかしなことじゃないかと思うんですね。当然、新しい憲法に従い、また、新しいその他の法律に従って、それぞれの規則改正すべきではないかというふうに私は思うんです。で、いま言われたことでも、非常に古い法律であるから、新しい国家公務員法なりあるいはその他の法律との関係が非常にあいまいになっているんじゃないかと思うんですね。そのために、特別職ということであるけれども、しかし国家公務員のある条項については適用されるということになれば、先ほどから話になっている監督の問題についてもやはり相当改正すべき点があるんじゃないかと思うんですがね。ですから、こういう点についてはひとつ大臣の見解をあとでお聞きしますけれども法務省当局としても十分先ほどの木島先生の御意見とあわせてひとつ検討していただかなければならぬというふうに私は思います。  それで、この恩給法の中では、そうすると、別に執行吏に対する規定というものはないんですか。恩給を受ける権利のある者は、公務員及びその遺族ということになっていますね。そうして、その公務員の範囲については、十九条、二十条に書かれているわけですね。この中のどこにこの執行吏は入るんですか。
  99. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 執行吏の恩給は、先ほど御指摘のありました執達吏規則の二十一条に基づいているわけでございまして、その恩給の支給方法等につきまして官吏恩給法に照らして支給すると、こういうことになっておりますので、官吏恩給法——その後改正されました恩給法でございますが、この恩給法による恩給と執行吏の恩給とは性格的には別のものだというふうに観念されているわけでございます。
  100. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そうすると、ちょっとわからないんですが、別なものということになると、恩給法には全然関係なく、執達吏規則の中でそうきめておるから恩給を出すんだと、こういうことになるんですか。
  101. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 基本的な考え方はさようでございます。したがいまして、執行吏の恩給と申しますのは非常に特殊な恩給でございまして、たとえば先ほど裁判所民事局長からお話のございましたように、長年裁判所の書記官を勤めておりまして退職した、そうして執行吏になったという場合には、裁判所書記官としての恩給を受けて執行吏を勤めているという者があるわけでございます。それからさらに執行吏をそれで長年勤めまして執行吏も退職したという場合には、裁判所書記官を勤めたことによる恩給と、それから執行吏を長年勤めたことによるこの二十一条による恩給と、二つの恩給を両方もらえると、こういうふうな形でございまして、普通の官吏の恩給とは別の性格の恩給だというふうに従来考えられて取り扱われているわけでございます。
  102. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 こういう例がほかにございますか。
  103. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 詳細にすべての問題を検討いたしたわけではございませんが、私どもの承知している範囲では、ほかにはないと存じます。
  104. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 裁判所職員なり書記官なりやっておって、それでやめて恩給が出る。やめて、今度は、まあ特別職とかいうような名前かもしれませんけれども、一応国家公務員として勤めて、さらに別な恩給をもらう。これはちょっとこう不合理なような気がするんですよね。もし恩給の面だけとれば、当然通算して、同じ国家公務員なんですから、通算をして、そうして恩給法を適用するならするということが私は合理的なやり方ではないかというふうに思うのですが、この点、もう少し私も調査しますけれども、ほかにそういう例があるかどうか。またそういう点も一つの改善する方向ではないか。先ほどいろいろいまの執行吏の前任の経歴と申しますか前の職業なんかのこともありましたから、全部が全部そうでないんですけれども、少なくとも公務員としておった人が、名前は特別職としても、国家公務員には変わりないですから、そういう中で恩給を受けるということになれば、これは通算をしてやるということが私はあたりまえじゃないかというふうに思うんですが、この点もひとつ検討していただきたいというふうに思います。  それからもう一つ、先ほど国家公務員で特別職だというので、ちょっとこれまた考え方が違うかもしれませんが、定数がないというんですね、定員がですね。特別職の場合は、予算的な定数といいますか、定員法には関係ないのですか。
  105. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 執行吏の数につきましては、裁判所職員定員法の中から執行吏の数ははずしてございます。したがって、定員の定めがないと、こういうことでございます。
  106. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そうじゃなくて、一般職の場合は当然定員法を適用されているわけですね。特別職の場合は定員法の適用を受けないんですか。
  107. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者菅野啓蔵君) 定員法に載っていないということは、手数料でまかなっている人たちでありますから、その人に対する予算としての俸給関係の予算というものが考えられないからだと思います。
  108. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 特別職で、たとえばここにこういろいろ国家公務員法にも特別職の範囲が書いてありますが、大体これらはいずれも規則なりあるいは何かの形で定数と申しますか人数については想定されているんではないかというふうに思うんですよね。しかし、この執達吏、いわゆる執行吏については、規則の中にもそういうのがないわけですね。その辺はどうなんですか。
  109. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 特別職でございますけれども、普通の場合には法律によって定員の定めがあるわけでございまして、裁判所職員につきましても、ただいま御審議いただいております裁判所職員定員法によりまして法律によってその定員が定めてあるわけでございます。執行吏の場合には、国から給与が出ておりませんで、手数料によって生活をしているという関係で、この定員法の中から執行吏ははずされている形になっております。法律によって定員の定めはされていないわけでございます。
  110. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 しかし、先ほどから執行吏の非常に重要な職務についていろいろお話が出ているんですが、そういう仕事を遂行する場合に、国民にさらによきサービスをするとか、あるいは法の執行を十分やっていくというためには、大体どれくらいの執行吏が全国的に必要であるかということぐらいは、これは法務省として一応考えておかなきゃならぬと思うのですが、その点はどうなんですか。
  111. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 現在の執行吏の数は、先ほど最高裁判所から御説明のございましたように、三百三十五名でございますが、このほかに執行吏職務を実際に執行事務を取り扱っておりますのは、執行吏代理というものがございまして、これが執行吏委任を受けまして実際の執行事務をやるということになっておりますので、必ずしも執行吏の数だけが執行行為を担当するものというふうにはならないわけでございます。  それからもう一つ、特別の場合には裁判所職員執行吏のかわりに執行事務を取り扱うという規定執達吏規則にございますので、こういうふうな取扱処置によりましてもかりに執行吏の不足の地域などでございますれば手当てができるといりことになっておりますので、現在のような取り扱いでも、実際問題としては、そう各地に御不便をかけているというようなことはないのではなかろうかというふうに考えております。
  112. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 これは国の金を使うんですよね、一部はね。先ほど言っているように、たとえ九十万にしろ、年間。ですから、考えようによれば、執行吏をうんとふやせば、それぞれの収入が減る。だから、国の補助をうんとしなきゃならぬ。執行吏を少なくしておけば、一人当たりの収入がうんとふえるから、国からうんと補助をする必要はない。そういうことから、法務省では、なるべく執行吏は少なくしておきたい、こういう考えがあるのじゃないかと思いますが、その辺はどうですか。
  113. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 執行吏の定員が法律によって定めてございませんで、執行吏の任命は各地の裁判所が任命する、こういうことになっておりますので、むしろかような形になっておりますと、裁判所のほうで必要に応じてどれだけでも執行吏の数をふやしていけるという形になっておりますので、私どものほうといたしましては予算の関係でこれをしぼっていくというふうな考え方は毛頭いたしていないわけでございます。
  114. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そうすれば、少なくとも法律は相当前にできていますし、それから現在どのくらいの案件といいますか取扱数があるかということもはっきりしているわけですね。したがって、全国的に見て執行吏の数はどのぐらいが適当であるかということぐらいは当然所管庁としては一応の考えを持っておかなくちゃならぬというふうに私は思います。  それから、先ほど、いないところは書記官がやると、こう言っておりますけれども、また、裁判所の定員の改正法律も出ていますけれども裁判所職員そのものの数も非常に少ないわけですよね。したがって、まあ法律で一応きめてあるにしても、執行吏の仕事までやる余裕があるのかどうか、その辺も問題があると思うんです。したがって、執行吏制度というものがある限りは、十分執行吏だけでもって十分国民が使えるそういう数と申しますか、適正な数をやはり配置任命をすべきではないか、こういうふうに思うんですね。そうすれば、先ほどからの一割にも近い何といいますか不正なことをやっておる執行吏もだんだん減ってくると思うんですよ。先ほど木島先生の話じゃないけれども、一人だからいろいろ問題が起きるということも考えられますし、もっとこういう定数の問題についても私は考えていただきたいというふうに思うのです。きょうはあまり時間がありませんので、いずれまた次にさらにお伺いしていきたいと思います。
  115. 木島義夫

    ○木島義夫君 特に最近裁判に関する非常に重要なことがネグレクトされていると思っておるんです。ということは、いまから数ヵ月前に実際に起こったことであったのですが、新聞の伝うるところによれば、場所はちょっと記憶しませんでしたが、どこか群馬か栃木のほうであったかと思いますが、裁判官を被告の一人が傷つけたという事実があるんですね。こういうことは、これはえらい重大なことだと思うのです。また、現実に傷つけなくても、ある種の団体は裁判を自分のほうに有利に展開させるためにあらゆる神経戦術を使っておる。電話、手紙はもちろん、ことに電話などで裁判官の家族、奥さんやなんかを脅迫している等の事実がある。こういうことでは、公正な裁判は絶対できないおそれがある。こういうことに対して、国として、いわゆる一口に言えば政治暴力に対する裁判官を、これは検事の場合も同じです、保護するとかなんとかいうようなことは焦眉の急の問題だと思うのです。ただ個々のケースの問題じゃない。これに対してあなた方幾ら法律を千も万も億もつくったって、こんな状態では公正な裁判はできない。全く空文に等しい結果になるおそれがある。国会で幾らいい法律をつくったって、なんにもならなくなる。こういうことになるのですが、これらに対する法務当局の意見を聞きたい。
  116. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 裁判官に対しまして危害を加えるとかあるいは脅迫を加えるというようなことは、まことに重要な問題でございまして、こういうようなことが行なわれますことは、裁判官が独立して公正な裁判を下すに支障を生ずるおそれがある重要問題であると考えております。したがいまして、そういうことのないように取り締まりにできるだけの努力を尽くしたい、かように考えております。
  117. 木島義夫

    ○木島義夫君 私、外国のことをよく調べたわけじゃないんですが、英国とかアメリカとか聞いていますが、たとえば裁判官が公判廷に向かう途中のエレベーターとか通路とか、そういうようなものも一般とは全然別にしておるというようなことも聞いておるのであります。ところが、日本ではそれをごっちゃにしておったために、法廷に向かう途中、新聞で私の見たところでは、その途中において裁判官が傷つけられておるんです。こういうことを今後なおざりにしておってあなた方が幾らPRしても、毎日訓示を出しても、なんにもならぬと私は思うが、この点はどうですか。
  118. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) いまの御指摘の問題は、裁判所の庁舎の構造をもっと合理的なものにしなければいかぬという御趣旨であると存じます、裁判所の庁舎の問題につきましては、最高裁判所のほうでいろいろ苦心をし、努力しておられるように承っております。現に、新しくできました東京地方裁判所の刑事部の庁舎におきましては、裁判官が本来の部屋から法廷に行く間の通路は一般の人に会わないような通路で行けるというような配慮のされておる部分もあるように聞いております。ただ、庁舎の全体の関係ですべてそういうふうにできているかどうかということまで私承知いたしておりませんが、今後はおそらくそういうふうな形の庁舎をつくるべく努力がされることであろうというふうに考えております。
  119. 木島義夫

    ○木島義夫君 いまう調査部長の御答弁は、はなはだ不満足に考えています。いわゆる政治暴力、こういうもうに対しては、こういう弊害をなくし、かつ裁判の公正を保つために、たとえば、かって計画したことがあります政治暴力に対する法律とか、そういうようなものを出さなければ、ただ通達を幾ら出しても効果のあるものじゃないと思うが、それらに対する所信をひとつ伺いたい。
  120. 鹽野宜慶

    政府委員鹽野宜慶君) 申しわけございませんが、私全くその関係を所管しておりませんので、ちょっとお答えいたしかねます。
  121. 木島義夫

    ○木島義夫君 じゃ、所管している人にこの次に私質問しますから、出てきてもらいたいと思います。その人に伺ってみたいと思います。
  122. 石井桂

    委員長石井桂君) それでは、両案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  次回の委員会は三月三十日午前十時から開会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午前零時三十八分散会