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1965-03-23 第48回国会 参議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十三日(火曜日)    午前十一時四分開会     —————————————    委員の異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      久保  等君     柳岡 秋夫君  三月二十三日     辞任         補欠選任      鈴木 一司君     塩見 俊二君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         石井  桂君     理 事                 後藤 義隆君                 稲葉 誠一君     委 員                 植木 光教君                 大谷 贇雄君                 源田  実君                 迫水 久常君                 塩見 俊二君                 鈴木 万平君                 中山 福藏君                 宮澤 喜一君                 柳岡 秋夫君                 岩間 正男君    衆議院議員        発  議  者  竹本 孫一君    国務大臣        法 務 大 臣  高橋  等君    政府委員        法務大臣官房司        法法制局調査部        長        鹽野 宜慶君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   寺田 治郎君        最高裁判所事務        総局総務局第一        課長       長井  澄君        最高裁判所事務        総局人事局給与        課長       宮崎 啓一君        最高裁判所事務        総局経理局長   岩野  徹君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○会社更生法の一部を改正する法律案(衆議院送  付、予備審査) ○裁判所法の一部を改正する法律案内閣提出)     —————————————
  2. 石井桂

    委員長石井桂君) これより法務委員会を開会いたします。  本日は、まず、予備審査のため去る十五日当委員会に付託されました会社更生法の一部を改正する法律案議題とし、提案理由説明を聴取いたします。衆議院議員竹本孫一君。
  3. 竹本孫一

    衆議院議員竹本孫一君) 会社更生法の一部を改正する法律案提案するにつきまして、その理由を簡単に御説明申し上げます。  最近、証券取引の第一部上場の銘柄である有名会社であって、会社更生法適用を受けるものが続出しまして、これが経済上はもとより、広く社会上の問題として大きな波紋を投げかけております。  その理由は、申すまでもなく、その会社が多数の下請中小企業発注契約等を結んでおり、その会社倒産によって、多数の下請企業連鎖倒産、もしくは大きな損害をもたらしているからであります。  すでに政府も、本国会における答弁におきまして、また閣議の審議において、現行会社更生法に不備な点があるから、これをすみやかに改正すべきであるとの正式な見解を表明されております。したがって、近い将来に、政府提出現行法改正案国会に出されるものとは期待しておりますけれども、いまや法の改正に急を要しております。三月六日に同法の適用を申請いたしました某大特殊製鋼の例のごとく、下請関係納入品関係中小企業連鎖倒産はすでに発生しておりますし、今後続出のおそれもあります。これらの被害に対して融資上の救済措置はもちろん必要でありますが、会社更生法の運用上の問題といたしまして、これらの下請関係債権について適正なる保護措置をすみやかにとる必要があります。この点こそ現行法の最大の欠陥なのであります。  改正の要旨を簡単に申し上げますと、現行法の第百二条は、会社に対して更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権更生債権規定しておりますが、そのうちには、更生手続開始前六カ月間の会社使用人給料並びに更生手続原因に基づいて生じた会社使用人の預かり金及び身元保証金返済請求権も含むことが同法第百十九条に規定されております。  今回、私ども改正提案するポイントは、第一に、この共益債権の中に、下請事業者従業員生活擁護に資するため、一定範囲下請代金を含めること、第二に、会社使用人退職手当として、従来から共益債権に入るものと認められている範囲を、生活擁護の見地に立って拡大することの二点であります。  第一の改正点は、下請代金支払遅延等防止法規定する下請事業者が親事業から支払いを受けるべき同法の規定下請代金であって、その支払い時期が更生手続開始前三カ月以内であるものを共益債権として認める点であります。現在、下請代金支払遅延等防止法によりまして親事業者下請事業者に対する取引公正化下請事業者保護がはかられているのでありますけれども、国の法律として、会社更生法におきましても、下請代金保護に当たるのはきわめて当然なことであります。この改正によりまして、下請事業者である中小企業者並びにそこで働いている従業員の賃金が正当に保護されるのでありまして、この改正はぜひとも必要なものと信じます。  第二の改正点は、更生手続開始前の原因に基づいて生じました会社使用人退職手当について、その一部を共益債権として請求することができるようにしようとしたことであります。すなわち、会社使用人更生手続開始前に退職したときは、その退職手当の額を共益債権として請求することができるようにいたしました。ただこの場合におきましても、その額が退職当時の給料月額の六倍に相当する額をこえるときは、そのこえる額を除くことにいたしました。会社使用人更生手続開始後引き続き会社使用人であった者が退職した場合において、その者の受ける更生手続開始後の会社における在職期間にかかる退職手当の額が、退職当時の給料月額の六倍に相当する額に満たないときは、その不足額に相当する額を、更生手続開始前の会社における在職期間にかかる退職手当の額のうちから共益債権として請求することができることにいたしました。  右の改正のいずれも退職当時より六カ月の生活を保障するに足る退職手当共益債権として確保せんとするものでありまして、これも本法第百十九条後段に規定しております使用人の権利の確保の精神と一貫する当然の措置だと考えるのであります。  なお、この二つの改正案は、いずれも公布の日より周知期間として一カ月間を置いて施行するものとして、また、経過規定といたしまして、この改正案の施行前にすでに更生手続を開始している会社にはこれを適用しないことにいたしたいと思います。  このように現行法改正提案をいたします点は、いずれも現下の中小企業対策、並びに労働者生活擁護対策としてきわめて緊急必要なる措置でございますので、何とぞ本案を慎重御審議の上、御賛成をいただくことを希望いたしまして、私の提案理由説明といたしたいと存じます。
  4. 石井桂

    委員長石井桂君) 以上をもちまして本案提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることにいたします。     —————————————
  5. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、裁判所法の一部を改正する法律案議題といたします。  前回に引き続いて本案質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  6. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判所法の第六十条の二、この「法律案参考資料」のところで、「各裁判所裁判所書記官補を置く。裁判所書記官補は、上司の命を受けて、裁判所書記官事務補助する。」と、こうあるのですが、ここにいう「上司」というのは何を意味しているわけですか。
  7. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは結局職務上の上司ということになるかと存ずるわけでございますが、裁判所書記官もその上司に当たると思いますし、さらにその上には裁判官もその上司に当たると、かように考えておるわけでございます。
  8. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判所書記官の上に判事が上司としているというふうに見ているわけですか。
  9. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これはもとより事柄によることでございますから、先般も稲葉委員の御質問がございました裁判所書記官が完全に独立権限を持って行ないます場合、たとえば執行文付与というようなことになりますれば、これは裁判官といえども上司ということにはならないと考えます。ただ、裁判所法の六十条の第四項の「裁判所書記官は、その職務を行うについては、裁判官命令に従う。」という規定がございますので、したがいまして、一般的には裁判所書記官は、その職務上の上司として裁判官を上に持っておる、こういうことになろうと思うわけでございます。すべての事項について裁判官が常に上司になる、こういう趣旨ではございません。
  10. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「裁判所書記官職務権限」という一覧表をもらったのですが、この中で、裁判所書記官独立した権限を持っている、裁判官上司として該当しないというふうなものは、どれとどれでしょうか。
  11. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) この「裁判所書記官職務権限」という私どものほうからお配りいたしました資料は、一応法律にあらわれました書記官職務権限を大体網羅的に記述したわけでございますが、この中で、いずれが書記官独立であり、いずれが命に従うかということも、なかなかデリケートなむずかしい問題であろうと考えております。一般的には、裁判所法の六十条の四項、先ほど申し上げました「書記官は、その職務を行うについては、裁判官命令に従う。」という規定がかぶってまいると考えておるわけでございますが、しかしながら、事柄の性質上、あるいは規定の上から申しまして、当然これは書記官独立権限であるというふうに考えられるものがあるように思うわけでございます。  この中のいずれかということでございますが、これはまた一つには独立ということをどの程度に考えるかということにもなろうかと思います。その典型的な例が、一番初めにございます「事件に関する記録その他の書類の作成」という関係でございますが、これに関しましてもある程度独立であろうと考えますが、ただ、しかしながら、変更命令があった場合には、一応その変更命令に従って、さらに自己意見を書き加える。これがもし一〇〇%独立でないということになれば、自己意見を書き加えるというようなことは認められないわけだと考えられますが、自己意見をそこで書き添えることができるということは、やはりその限度において独立ということになろうかと思います。  その次にありまする2と3、「調査補助」等は、これは補助でございまして、まあいわば完全に命令によってやる仕事であろうと思います。  それから4の「訴訟費用の計算」でございますが、これも裁判官書記官をして費用を計算させるということでありますから、やはり裁判官命令によってやることであろうと思います。  5の「口頭による申述受理」でございますが、これは一応申述受理限度においては独立であろうと思いますが、申述した調書の作成という関係になりますと、その限度ではやはり先ほどの裁判所法規定をかぶる面があろうと考えるわけでございます。  その次の「閲覧・謄写の許否」あるいは「正・謄・抄本の交付」あるいは「証明書交付」、これはむしろ独立性の強いものであろうと考えております。ただ、これに対しまして異議申し立てということが訴訟法上許されておりますので、その異議申し立て異議裁判によって裁判官の指示に従うが、しかしながら、異議申し立てがあってその裁判がありますまではこれは独立であろうと考えておるわけでございます。  その次の「送達」でございますが、これは訴訟法規定送達事務を取り扱うということで、いわば事務の取り扱いでございますので、独立かどうかということの議論の面は比較的少ないかと存じますが、特に休日・夜間送達とかあるいは外国の送達については裁判長の許可を要するとなっておりますので、それ以外のものは自己判断で行なうということであろうかと思います。  10の「執行文付与」は、前々から典型的な例として申し上げておりますとおり、承継執行文関係あるいは数通付与関係の場合には裁判長命令が必要でございますが、それ以外はいわば最も独立性の強いものでございまして、それでございますので、やはりその処分に対しては異議申し立てというものが認められており、異議裁判によって裁判所命令に従う、こういうような関係になるように考えております。  11、12等は、大体これは民訴のほうと同様のことでございます。  そのあとのほうに大体同様のことが多いわけでございますが、執行関係が若干ございますが、執行関係は、これは独立して行動する限りにおいては自己独立判断で行動するということになろうと思います。  それ以後いろいろございますが、大部分は民訴で例示的に申し上げましたものの趣旨によって御理解いただけるような大体同趣旨のものが多いように考えるわけでございます。
  12. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 特に詳細に職務権限根拠法条を示して資料をいただいので、よく研究したいと、こう思うのですが、家事審判規則なり少年法、この場合でもこれはやはり裁判所書記官仕事になるわけなんですか。家庭裁判所の場合はどういうふうになっているのですか、調査官とそれから書記官とはっきり分かれているのですか。
  13. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、御承知のとおり、家庭裁判所調査官裁判所書記官と両方を配置いたしておりまして、それぞれはっきり職務権限区別されておるわけでございます。
  14. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 問題は別のところにいくわけですが、昭和三十九年度の予算で、書記官補から書記官への組みかえが六百九十四名、この補充計画があったわけですが、この六百九十四名というのはどこから出てきたんですか。
  15. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは書記官補の中で代行職務を現にとっております者が大体その程度ということで、つまり、法務省から出していただいております「裁判所法の一部を改正する法律案参考資料」の六番のところ、九ページでございますが、この表で六百九十四と出ております。大体この数を目標にして組みかえしていただいた、こういうことになるわけでございます。
  16. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっとはっきりしなかったのですが……。
  17. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) ただいま申し上げました表の裁判所書記官補という欄にカッコがございます。このカッコ数字が注の1にございますいわゆる代行書記官補数字であって、内数であるということでございまして、大体その数字が目途にされたわけでございます。
  18. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると九百三十三というのは何ですか。
  19. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 九百三十三と申しますのは、その当時における書記官補全員定員数でございまして、そのうち六百九十四が一応代行書記官補という数字でございます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、六百九十四名という数字が出てきた根拠はどこにあるのですか。
  21. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これはまあずっとさかのぼることでございますが、先般も御説明申し上げました、当初に裁判所書記という制度から書記官という制度にかわります際に、いろいろな関係で十分な資格者もなかったということから、書記官書記官補に数を振り分けたわけでございますが、振り分けまして、しかし、そのままでは裁判所仕事が十分行なわれないということで、一応その中から裁判所事務に支障を生じない数を代行書記官補として働いていただけるように、大体八割あるいは九割の数を代行ということにしていただいたわけでございます。そういう数字が逐次変遷してまいりましたが、大体八割ないし九割の数字代行を慰めていただく、こういうことできておるわけでございます。
  22. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 代行を認めるというのは、具体的にこれはどこがどういうふうにしてきめたわけですか。
  23. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、法律的には、先般御説明申し上げました裁判所法の附則が根本でございますが、それに伴いまして最高裁判所規則でもってその要件その他を具体的に規定いたしておりますことも先般御説明申し上げたとおりでございます。すなわち、裁判所書記官補の職権の特例に関する規則というものがあるわけでございます。これに基づきまして最高裁判所でこれをきめるわけでございます。
  24. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 昭和三十九年四月十五日付の裁判所時報号外があるわけですが、これによると、「特別研修書記官定員が大幅に増員されたための応急補充方法として行なわれてきたものであって、」と、こうあるのですが、この点はどうなんですか、よくわからないのですが。
  25. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) お答えいたします。  ただいま御質問の大幅に増員になったという数字が、いま総務局長から申し上げました六百九十四名の書記官補から書記官に移りかわったということによります組みかえによって書記官の絶対数がふえたというのを増員ということで表現したわけでございます。
  26. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「この種の大量増員に伴う特別補充の実施は、これが最後のものとなる見通しが強い」というのは、これはどういうわけですか。
  27. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 先般の当委員会でも御説明申し上げたわけでございますが、昭和二十三年でございますか、新しい裁判所書記官制度が発足いたしまして、それから毎年増員あるいは組みかえという形で書記官増員を行なってきたわけでございます。ところが、昭和三十七年度の予算要求に際しまして、当時における裁判所書記官仕事とそれから定員との関係を見ますと、書記官制度的な、いってみれば定員的な数が実際の必要数をかなり下回っておった。合計しますと二千六百九十四名という書記官必要数で要るのだ。ところが、その二千六百九十四名分が書記官定員として計上されていなかった。そういう関係から、先ほど総務局長からも御説明申し上げましたように、その不足代行書記官という形で補っておったわけでございます。そうしますと、そういうふうな代行書記官というふうな形で処理するのは、せんじ詰めて申し上げますと、書記官の絶対数が足りないということに帰するわけでございますから、その二千六百九十四名という人員を書記官のほうに振りかえていけばそれで充足できるというふうな結論に達しまして、昭和三十七年の予算から三カ年にわたりまして二千六百九十四名を三年計画予算で組みかえの要求をやり、それを認められてきたわけでございます。したがいまして、三十九年度の予算で認められました六百九十四名と申しますのは、その三年計画最後の残りの数字でございますから、この六百九十四名の数字が計上されますと、先ほど申し上げました三年計画はそれで完了する。そうしますと、一応そういうふうな大幅な組みかえによる増員という問題はここで一応区切りがつきますから、そういう意味で最終の特別研修になるという趣旨をはっきり打ち出したわけでございます。
  28. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 「書記官補代行書記官制度は、十月一日以降は事実上廃止される見込みでありますと」、こう言っておりますね、最後のところで。
  29. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) さようでございます。
  30. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、その十月一日の前の九月三十日現在で、書記官補本官であった者、それから書記官補資格を持つ事務官であった者、書記官資格を持つ事務官、いろいろ種類があると思いますが、この三つはそれぞれ何名ぐらいいたわけですか。
  31. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 大体のことで申し上げますと、代行書記官として約七百名という数字がおりまして、それ以外に、過去に代行経験を持っておる方というのが大体五百八十名ぐらいおったわけであります。それから書記官補資格はあるけれどもまだ代行資格を持たない方が約七百名くらい、総計にしますと大体二千名くらいおったわけであります。
  32. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 代行の人をやめて書記官にするのに、事務官とか書記官補区別がなく、すべての資格者試験をやったわけですね。これはどういうところからきているわけですか。書記官補の中から選ぶという形をとれなかったのですか。
  33. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 書記官を補充する場合に、それを特別研修という形でやる場合に、特別研修と申しましても、その参加する人に試験を課して、なおかつその上に研修を施すというふうな過程を経まして書記官に昇任させるという方法をとった場合に、それじゃその特別研修に参加させる人を選ぶ場合に、書記官補でなければいけない、あるいは事務官では困るというふうな区別はする必要はないのじゃなかろうかというふうに考えたわけであります。同じようなことが、たとえて申しますと、書記官研修所養成部、ここに入所する場合、あるいは書記官昇任試験を受けさせるという場合の受験資格を、書記官補であろうと、事務官であろうと、それは平等に与えておるわけでございます。したがいまして、それとの関連におきましても、特別研修の場合にもその両者につきまして特に区別する理由がないという点が一点ございます。  それから次の理由といたしまして、いま私が申し上げましたように、当時におきまして、大体過去に代行経験を持っている方が五百八十名くらいあるというふうに申しましたのは、その一事からもおわかり願えるかと思いますが、従来裁判所の場合にその職員代行書記官として裁判所仕事をしてもらうか、あるいは裁判所事務官として仕事をしてもらうか、そこらのことにつきましては、その庁々のそのときどきの必要によって職員人事交流が絶えず行なわれておるわけでございます。したがいまして、一例を申し上げますと、書記官補として採用になった方が途中で事務官のほうの仕事をする、あるいは事務官として採用した方が途中で書記官補のほうの仕事をするというふうな関係人事交流が絶えず行なわれておりますから、たまたま特別研修参加者を決定する段階におきまして、その時点において書記官補本官であった方を優先させるというのは、従来の人事交流をやってきた実績から見ましてもやはり問題があるのじゃなかろうかという点があるわけでございます。さらに、先ほど申し上げました三カ年計画によりまして二千七百名くらいの組みかえをやったわけでございますが、この組みかえは、書記官補のほうから全員書記官のほうへ組みかえたというものではなくて、そのうちの約千名くらいは事務官から書記官のほうに組みかえたわけでございます。そうしますと、そういう組みかえのどこから組みかわったかというふうな点から見ましても、事務官からもやはり研修には平等の資格で参加させなければ片手落ちじゃないかというふうな点があるわけでございます。  以上申し上げましたような点を勘案いたしまして、書記官補本官であろうと事務官本官であろうと、そこは区別しなくて平等に資格を与えるということが人事管理上も適当であるという判断で行なったわけでございます。
  34. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 事務官書記官というのは二本立てになっているわけですが、それは俸給の上で具体的に違うのですか。
  35. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) まあ等級別定数関係がどうなっているかはしばらくおきまして、一番典型的にあらわれているのはいわゆる号俸調整でございます。号俸調整で申し上げますと、書記官の場合は本俸の一六%の号俸調整がつくわけでございます。それに対しまして代行書記官でございますと四%の号俸調整、そこが一番はっきりあらわれてくる差でございます。
  36. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 書記官だけにどうして号俸調整がついて、事務官にはつかないのか、どうもそこら辺のところがはっきりしないのですがね。
  37. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 御質問の点に関しましては、法律的に申しますと、一般職給与法の説明から入るわけでございますけれども、一般職給与法の第十条という規定がございまして、これは、「俸給月額が、職務の複雑、困難若しくは責任の度又は勤労の強度、勤務時間、勤労環境その他の勤労条件が同じ職務の等級に属する他の官職に比して著しく特殊な官職に対し適当でないと認めるときは、その特殊性に基き、俸給月額につき適正な調整額表を定めることができる。」、これが法律根拠規定でございます。これでわかりますように、結局、現在の一般公務員の給与体系を非常に大まかに考えますと、行政一表と行政二表、あるいは公安職あるいは教育職というふうに、いろいろそれぞれの職種にふさわしいような俸給表ができておるわけでございます。しかしながら、その俸給表でかぶせる職種というのは、ある程度のグループをかなりの集団をなしていなければそういう適用はできないというふうな関係になっておるわけでございます。そうしますと、裁判所の場合、行政一表が書記官に準用されておるわけでございますが、いってみれば行政一表と申しますのは、ほかの俸給表の適用がない公務員が全部行政一表であるという形で、かなり対象範囲が広い職種を予想して行政一表ができておるわけでございます。そうしますと、そういう行政一表の範疇には属しますが、先ほど私が十条の規定を読みましたような「勤労の強度、」とか「職務の複雑、困難」とか、そういうふうな点からしまして、行政一表そのものを使いますと、やはり一般の行政一表の方とはバランスを失するというふうな特定職種がございまして、そういう職種について別個の俸給表をつくるまでの必要がないという場合に、いわゆる俸給の調整額という制度を利用して俸給上の修正を施しておるわけでございます。  そうしますと、裁判所書記官の場合、まさに裁判所書記官の広い意味での勤労条件というのが行政一表そのものを準用してはいろいろ差しさわりがあるという点から、一六の調整を実施しておるということになるわけでございます。
  38. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 事務官だと裁判所だとどこまで行けるんですか。どこまで行けるのかというのは変な質問だけれども
  39. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) まあ事務局長クラスまで行けるということでございます。
  40. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、各地裁の事務局長は、書記官資格を持っている人が多いんですか、事務官資格を持っている人が多いんですか。
  41. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 現時点で申しますと、ほとんど全部と言ってよろしゅうございますが、書記官資格を持った裁判所事務官ということになっております。
  42. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはいまの号俸調整関係から言っているんだと、こう思うんですが、そうすると、事務官から書記官に変わるときは定数にもちろん関係はあるんでしょうが、内部で特別な試験をするんですか。何かよくわからないのは、事務官のほうが下で書記官のほうが上のようにもとれるんですがね。まあ給料からいくとそういうことになるかもしれません、調整額からいうと。そういう関係になっておるということなんですか。全然別個のものなんでしょう。
  43. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 官職でどちらが上、下という問題は、職務の等級が何等級に置かれておるかということでむしろ判断すべきものでございまして、号俸調整が多いから官職が高いという筋合いのものではないわけでございます。と申しますのは、事務局長の場合でございますと、八%の調整になっておるわけでございます。そうしますと、裁判所事務局長は、一般的に申しますと、二等級になるわけでございます。ところが、裁判所書記官でスタートでございますと、六等級でございます。片や二等級で、片や六等級。ところが、調整で申し上げますと、六等級の書記官が一六%、しかるに二等級の事務局長は八%の調整額というような形で、官職の上下の関係で申しますと、調整額でとらえるよりも、やはり職務の等級が何等級という点で判断せざるを得ないと思います。
  44. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 よく私のみ込んでいないかもわかりませんが、書記官の人で事務局長をやっている場合には、一六%の調整プラス八%ですか六%ですか、ぐらいつくんですか。
  45. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 給料と申しますのは、ここで申し上げるのはあれでございますけれども、公務員法のたしか百一条にございまして、給与は本官本務に基づいて支給され、併任の官職には給与を支給しないというたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、給与の決定は本官本務の形でやるわけでございますが、事務局長の場合でございますと、裁判所事務官一本でございます。ただ、本人が書記官資格を持っているという点に着目して八%の調整をしているということになっておるわけでございます。
  46. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう場合には、裁判所書記官資格は持っているけれども裁判所事務官ということで待遇はきまる、給料はきまる、こういう形になるわけですか。
  47. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) さようでございます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 事務官から書記官になるというのは、これは内部で何か試験でもやってきめるわけですか。
  49. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 結局、書記官にする場合は、書記官資格を持たなければ書記官に任用できない。それじゃ書記官資格はどういう形で付与するかと申しますと、一番オーソドックスな行き方は、書記官研修所の一部あるいは二部を卒業するというのが一番原則的な形でございます。それから書記官昇任試験に合格して書記官資格を取得する、それがあるわけでございます。それで、例外的に、ここ三年、先ほどから御説明ありますように、約三千名近い数が書記官としてふえたという場合には、そういういわば原則的な形じゃとうてい補充ができないために、特別研修というふうな関係研修を施しまして、その研修を終了して合格した者に対して書記官資格付与する、そういう形で書記官資格付与しまして、そういう資格を持っておる事務官書記官のほうに任命する、そういう段取りになるわけでございます。
  50. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務省のほうは、いまいう号俸調整というのはどういうところがあるのですか。
  51. 鹽野宜慶

    政府委員(鹽野宜慶君) 裁判所と対比いたします関係では検察事務官がございますが、検察事務官は一般に公安職でございまして、一般的には号俸調整関係はございません。一つだけ現在残っておりますのは、御承知のとおり、区検察庁において検察事務取扱の検察事務官というのがございます。これは副検事の数の足りないところを補っておるという職種でございます。これにつきましては四%の号俸調整を行なっております。これ以外には号俸調整はございませんで、あとは御承知の管理職手当が管理職員につくというだけでございます。
  52. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 法務省関係は検察事務官一本なわけですか。裁判所書記官に対応するようなものはないわけですか。
  53. 鹽野宜慶

    政府委員(鹽野宜慶君) そのとおりでございます。
  54. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、特別の理由があるわけですか、別に理由というほどのものはないわけですか。
  55. 鹽野宜慶

    政府委員(鹽野宜慶君) 裁判所におきます裁判所事務官裁判所書記官というふうな関係は、検察事務官にはないというふうに考えております。裁判所書記官に相当する事務は、検察庁ではいわば検察官の立会事務官ということでございまして、法廷において種々の事務を取り扱う裁判所書記官というものと立会事務官とはかなり性格が違ったものだと思います。法務省におきましては検察事務官は一本の形になっております。
  56. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、十月一日に研修が終了して書記官に任用されたわけですが、そのときにはどういうふうな——というのは、書記官補から何人行ったとか、代行書記官から何人行ったとか、そういう点はどういうふうになっているんですか。
  57. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 全員で申し上げますと、六百六十名を書記官にしたわけでございますが、その内訳で申し上げますと、代行書記官の系統から大体三百八十人くらい行ったわけでございます。したがいまして、それ以外が裁判所事務官の方から行ったという関係になってくるわけでございます。
  58. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、書記官補で、事実上代行していて、研修の結果事務官へ転官させられた者というのはどのくらいいるのですか。
  59. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 大体三百五、六十人はいるわけでございます。
  60. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そのときには、ここでは「従前代行書記官として支給されていた俸給の調整額は下級裁においては事務官に転官した後も保障されます。」と、こう書いてあるわけですが、この点はどういうふうになっているのですか。
  61. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) この裁判所時報を出しましたのは四月十五日の時点でございまして、その調整の必要があるのは十月一日の時点でございますから、当時は予定という形で出しておりましたが、三十九年の九月八日付の人給A第三十一号、この通達でその保障をしたわけでございます。
  62. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その保障というのは、通達でできるのですか。法律根拠というものがはっきりなければその調整はできないのじゃないですか。
  63. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 号俸の調整関係は、一般職給与法の十条によりましてそれを裁判所適用する場合につくっておりますのが、たしか先般の委員会でも御説明申し上げました裁判所書記官等の俸給の調整に関する規則というのがあるわけでございます。その規則の第一条の第四号を見ますと、「裁判所事務官最高裁判所が指定するものに限る。)」というふうな関係になっておりまして、この「(最高裁判所が指定するものに限る。)」というふうな条文を受けまして、通達によりましてそれを指定したという関係になるわけでございます。
  64. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 予算関係はどういうふうになっているのですか。たとえば代行書記官として調整を受けていた者が受けなかった者もあるわけですが、何人くらい受けられなくなるか、はっきりわからなかったんでしょうが、予算関係では別に問題はなかったわけですか。
  65. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 予算上には、その分は十分予定して計上してあるわけでございます。
  66. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、去年の十月一日付で事務官に転官させられたという者の場合で、特にそれになったから不利益になったというふうなことはないんですか。
  67. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) ございません。
  68. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはいまのところはないという話であって、将来もずっとないんですか。調整がずっとそれはいくんですか。二八%の調整ではないんでしょう。
  69. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 従来四%の調整をもらったわけでございますから、四%の調整額に相当するものを保障したわけでございます。その場合には、絶対額の保障でございますと、一回昇給すれば、おそらくその差額分は解消するというふうな関係になると思いますが、四%調整という%そのものを保障しておりますから、将来もやはり保障はつくというふうに御理解願ってけっこうと思います。
  70. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、事務官に転官させられて、その後にその中から書記官に昇任したというふうな者もあるのですか。
  71. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) その後は、今後の問題でございまして、今後は、裁判所書記官の補充としましては、裁判所事務官になってまいりますから、今後はそういう方を含めた裁判所事務官の中から裁判所書記官のほうに上がっていくというふうなかっこうになると思います。
  72. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 家庭裁判所調査官とそれから調査官補というのがおりますね。これは、調査官というのは何人くらいいて、官補というのは何人くらいいるわけですか。
  73. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは裁判所職員定員法の改正法案のほうで提出させていただきました資料の中に載っておるわけでございますが、昨年の十二月一日現在の定員は、調査官が千百三十二名、それから調査官補が二百十二名でございます。
  74. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そのうちで代行資格を持っているというのは何人くらいいるのですか。
  75. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 調査官補二百十二名のうちで、代行資格を持っておりますのは約言名でございます。正確に申し上げますと、百二名ということになっております。
  76. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは代行資格を持っている人は、俸給の上ではどういうふうになっているわけですか。有利なあれがついているわけですか。
  77. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) この関係は、書記官の場合と大筋において同様でございまして、調査官が一六%の調整、代行の調在官補が四%の調整ということになっておるわけでございます。
  78. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 書記官補を廃止して書記官一本にするということになれば、家庭裁判所調査官補も、これは将来廃止して調査官一本にする、こういうふうなことを考えるわけなんですか。
  79. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) ただいまの稲葉先生の御質問はまことにごもっともな点でございまして、私どもといたしましても、同様な見地で、調査官制度、特に代行調査官制度の扱いということについては、慎重に検討いたしておるわけでございます。で、調査官制度全体の廃止ということはともかくといたしましても、代行調査官補という制度裁判所法でも一応当分の間ということになっておるわけでございまして、こういう制度を恒久的な制度として残していくということが好ましいかどうかということは非常に問題があると考えておるのであります。ただ、実際問題として、これはいわば理論的な問題と実際問題と両方あるように考えておるのでございますが、実際問題としては、代行制をとらなくても調査官だけで十分に現在の事件を処理する程度調査官定員その他を確保してまいらなければならぬ、また、それを充員するところの人材の養成をしていかなければならぬ問題があるわけでございますが、さらにもう少しいわば根本的な制度論と申しますか、理論的な問題として、書記官の場合は、これは確かにどうも書記官補という制度は必要はないのではないか、事務官補助していただけば十分ではないかと考えたわけでございますが、それに対比いたしますと、家裁調査官職務内容というものは、これはかなりに特殊なものを持っているわけでございます。書記官のほうは、どちらかというと、法律的な教養というものが中心でございますので、むろん先ほど来宮崎給与課長から御説明申し上げましたように、書記官というものは相当職務困難であり、教養の高いものではございますが、しかし、要するに法律的な教養というものが中心でございます。それに対しまして、家裁調査官というものは、これは心理学とか社会学とか、そういういわば裁判所といたしましてはかなり一般職員とは異質の内容を持った教養を前提とするのでございます。そういたしますと、自然にその給源というものが一般職員と申しますよりは、そのためにいわば入ってまいり、また、そのために養成しております職員というものから育っていく、そういう関係で、どうしても調査官補というものを確保して、その中から調査官に昇進させていくというルートがどうもいまの段階では必要なのではないかというのが現在のところの結論であるわけでございます。  なお、それに伴いまして、代行制と申しますのは、現在の時点では、調査官職務内容の中でいわば比較的簡単な事件を独立してやってもらう、代行のない調査官補になりますと、むしろ特定の事件と申しますよりは、調査官がある特定の事項を調査させる、こういういわば具体的な指示に基づく調査になりますが、代行になりました場合には、これは一応独立して、そして、しかし比較的簡単な事件——規則の上でもその点について差を設けておるわけでございますが、比較的簡単な事件について独立してやってもらう。そういうことによって、ややいわば見習い的な養成をしていく、そして、いよいよ研修所を出てまいりますれば一本立ちの調査官にするという、こういう経路が現在の時点ではどうも必要なんではないかというのがまだ廃止に踏み切れない理由でございます。しかしながら、稲葉先生のお話にございましたように、将来はこの点は十分検討してまいりたいと考えておるのでございます。
  80. 石井桂

    委員長石井桂君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  81. 石井桂

    委員長石井桂君) それでは速記つけて。
  82. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、現在の調査官補ですね、これは年齢とか経験年数はどうなんですか。相当年の人がいるのではないですか。
  83. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 大体、調査官補と申しますのは、ただいま総務局長から申し上げましたように、大学で心理、社会、あるいは教育学の専攻科目を履修した方が新しく卒業される、その卒業する前年に、いわゆる各官庁で採用すると同じような形で新卒の人を採用するわけでございます。したがいまして、二十二歳から二十五、六歳という若い方が採用されるのでございます。
  84. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 調査官調査官補とは、家裁の場合は仕事の上でもいま違うような話がありましたけれども、はっきりそういうふうに分けているのですか。
  85. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは最高裁判所規則家庭裁判所調査官補の職権の特例に関する規則というものがございまして、その第一項に、「各家庭裁判所は、当分の間、事務上特に必要があるときは、所属の家庭裁判所調査官補のうち、家庭裁判所調査官職務(家事審判法第二十三条に掲げる家庭に関する事件の審判に必要な調査及び死刑又は無期の懲役若しくは禁錮にあたる罪に係る少年の保護事件の審判に必要な調査を除く。)を行なわせる者を指名する」と、こうなっておるわけでございます。要するに、この規則カッコの中で除かれておりますものが法制上調査官職務の中から調査官補が除かれておるというものでございます。これは、結局、家事審判のほうでは合意にかわる審判でございますし、少年関係では非常に重い罪に当たる事件ということになるわけでございます。しかし、これはいわば法制上のものでございますが、そういう前提に立ちまして、実際の各裁判所の運用では、比較的複雑困難な事件を調査官がやる、そうでないものを代行がやるというのが基本のたてまえになっておるわけでございます。
  86. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 調査官補というのは、普通何年ぐらいやることに大体きまっているんですか。
  87. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは規定にございますように必要によってやるわけでございますから、はっきり何年ときまっておるわけではございませんが、実際上は大体一年半程度やった人の中から代行を命じておるという実情でございます。
  88. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、例として、同じ学校を出て、そして家裁の調査官補になった場合と、それから裁判所書記官補になった場合と、こういうふうに比較すると、待遇は違うのですか。
  89. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 原則としましては、大体同じ、少し調査官のほうがいいという関係になっております。
  90. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 家裁の調査官がいいというのは、全然試験のあれが違うんですか。
  91. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) やはり、ずっと昇進してきまして上のほうになりますと、等級別定数の設定あたりが高いランクに設定されているという関係になっております。
  92. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 実際、私はかって家裁にタッチしてみますというと、家裁の調査官が事実上裁判をやっているようなものですね。こういうことを言うと語弊があるけれども、家裁調査官で相当いわゆる主任調査官のですか、こういうふうな上のほうになってきた場合は、簡裁の判事クラスの給与のところまで行くのですか。ちょっとよくわからないのですけれども……。
  93. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 家庭裁判所調査官で一番上のポストと申しますと、首席家庭裁判所調査官というのがあるわけでございます。そこにまいりますと、現在行政職(一)表の一等級が若干おりまして、それ以外にみな二等級、それに対しまして、書記官のほうの一番上のポストの首席書記官で申し上げますと、二等級と三等級という関係になっております。そういう意味で家庭裁判所調査官のほうが上だという関係になっております。そして、いま申し上げました家裁の調査官は一体給料的に見ればどういうふうになっているかといいますと、主任調査官クラスという限定で調べれば、現在手元にございませんが、現在、家裁調査官一般の給与ベースはどのくらいかと申しますと、平均的には四万六千円ぐらいという形になっております。
  94. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の申し上げるのは、ちょっとこれは比べ方が本来おかしいと思うのですけれども、率直に言いますと、家裁のいま言う首席調査官ですか、そのクラスの人と簡裁の判事と比べてみると、こんなことを言うのはおかしいけれども、家裁の首席調査官のほうがなかなかこう実質的には上のほうにランクされる人もいると思うんです。そういう簡裁の判事の給与と比べてどうなっているんですか。これは、比べるほうがおかしい、比較するほうがおかしいといえば理論的にはおかしいということはわかっているけれども、一応の例として聞いているんですか。
  95. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 簡裁の判事と申しましてもかなり号俸の開きが多いのですが、トップの十三万五千円というのもございますが、そこまでは例外といたしましても、大体十万か十一万というのが簡裁の大多数の者の受けられておる金額ではないか。それに対しまして、首席家庭裁判所調査官の一番トップクラスで申しますと、体俸だけが大本九万円から九万五千円くらいの間になっております。その上に調整がつき、あるいは管理職手当がつくという関係がございますから、いわゆる月々の金額で見ますと、簡易裁判所の判事十万円のクラスに比べますと、首席家庭裁判所調査官のトップの方が上だというふうに言って差しつかえないと思います。
  96. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いまの家裁の調査官補は、一年なり一年半やれば必ず調査官になるんですか、また、なるのには試験をやるんですか。
  97. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、法制上は特に必要があるときというような制約があるわけでございますが、実際上は、一定の年数を経ますと、裁判所の実情をしてやはり必要になる場合が多いわけでございますので、これは代行になっていただいているわけでございまして、特別の試験はいたしておりません。そのあとで調査官研修所へ入りまして調査官になるわけですけれども研修所の課程なり試験がある、こういうことになるわけでございます。
  98. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 裁判所書記官補から家裁の調査官補へかわる場合もあるわけですか。
  99. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 現在はございません。
  100. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 前はあったんですか、
  101. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 家庭裁判所調査官制度が発足したときからたしか四、五年ぐらいの間は例外的にそういうケースがあったと思いますが、大体調査官の養成が軌道に乗って以後はございません。
  102. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから速記官補というのはいま何人くらいいるのですか。
  103. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 速記官補の問題でございますが、これは、先ほどの調査官と同じように、たとえば一定の期間速記官補をやり、代行をやり、そうして速記官になる、こういうことではございますが、そのそれぞれの期間が調査官と比べると非常に短いわけでございます。調査官の場合、調査官補を一年半もやりまして、さらに代行を一年もやってまいりますから、ある時点をとってみますと、代行もおれば、調査官補もいるということになりますが、速記官のほうは、その期間が非常に短いわけでございまして、大体速記官補を二カ月ぐらい、それからまたそのあと代行を三、四カ月やりまして、そうして速記官になっている状況でございますので、特定の時点をとりますと、全然そういう人がいないという時点があるわけでございます。たとえば昨年の十二月一日現在でとってまいりますと、この時点では代行速記官も速記官補も一人もいない、こういう関係になっているわけでございます。
  104. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまは速記官補は全然いないわけですね。
  105. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 現在の時点ではそうでございます。
  106. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、速記官と速記官補が立ち会って速記録をつくるわけですが、これはあれですか、訴訟法上の効力は違うんですか。
  107. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) この問題はもう少し詳しく御説明申し上げたほうがいいかと思いますが、速記官の場合、書記官研修所の速記部ということになりますが、そこを卒業しまして速記官補になるわけでございます。調査官の場合は、調査官研修所へまいります時代に調査官補という時代を経過するわけでございますが、速記官の場合は、もう速記官の研修を卒業しまして、これは考えようによるとすぐ速記官にしてもいいわけでございます。しかしながら、やはり速記というのは非常に重要でございますし、そうして書記官と違いまして、これは裁判官といえどもみだりには内応を訂正できないというような点もございますので、一応職務経験をさせた上で速記官に一本立ちさせる、こういう方法をとるわけでございます。そこで、まず約二カ月ぐらい単なる速記官補として一緒に立ち合って、そうして一緒に調書をつくる、速記官の責任において調書をつくるわけでございます。その時代を二カ月くらい経過いたしますと、今度は代行速記官補としていわば一人前になるわけでございますが、半人前と申しますか、しかし、これも比較的簡単な事件等を自己の責任において速記をとる。こういうことになりまして、これで約三、四カ月経過しますと、文字どおり一本立ちの速記官になる、こういう順序になるわけでございますので、代行の場合には自己の名前で速記録をつくるわけでございますし、単なる速記官補の場合は速記官と一緒になってつくる、こういうことでございます。
  108. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 速記をつけるかつけないかというのは、これは一つの訴訟指揮権の問題というのか、何というのか、裁判官判断によるわけですか。
  109. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 最終的にはそのように考えております。しかしながら、当事者の御意見も十分尊重しておるはずでございます。
  110. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、速記官補の問題は、これはできるだけ早い機会に官補というのをなくして速記官一本にしてもいいというところまでいっているわけですか、あるいは、そこまでいかないけれども、それに近づけたいというようなことになっているわけですか。
  111. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、率直に申し上げますと、あるいはそういう肩書きの問題かもしれないと思うわけでございまして、速記官研修所を出てまいりました者がすぐ一人で法廷に入って速記をとれということは私どもとしてはできない。どうしても一緒に入ってもらわなければならない。そうなりますと、一緒に入っているんだから速記官でなくて速記官補ということでやるならば、これは速記官補ということになりますし、しかし、それにしても研修所を出ているんだから速記官という名前をつけてあげたらいいじゃないかという考え方もむろん立つわけでございますので、その辺はこれはきわめて短い期間の経過の問題でございますので、今後とも十分検討いたしたいと思いますが、いまのところではまだ廃止に踏み切る結論にはなっておらないわけでございます。
  112. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 前に戻るのですが、例の六三九の問題になるのですが、そうすると、このときに事務官に転官させられた者を今後また特別研修のような制度をやって、そうして、いろいろ待遇をよくするとか、あるいは書記官にするように便宜をはかろうとか、こういうふうな考え方はないのですか。
  113. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 先ほど御説明申し上げましたように、裁判所書記官というのは、本日当初総務局長が申し上げましたように、非常に高度の法律専門職の仕事をやっている。事柄は、当事者、一般国民の利害に直接結びつく職種でございますから、できるだけ厳格な方法によって書記官資格付与していくというのが基本的な考え方でございます。そういうような基本的な考えを経まして、書記官研修所の養成で、大学の法学部を出た方でも入所試験を受け、さらに一年間研修する、その他の学歴の方は二年間の研修というようなかなり密度の高い研修を施して書記官資格付与しているわけでございます。そういたしますと、原則的に申し上げますとそういう形でございますが、ただ、事件が非常に多くなったというようなことから書記官必要数がどうしてもそういう原則的な補充だけではどうにもまかない切れないというような事態が生じた場合には、あるいは例外的に昨年実施しました特別研修ということも考える余地はあろうかと思いますが、事柄はそういういま申しましたようなやはり事件そのものに影響がある職種でございますから、大幅に書記官増員ができて、その欠員を先ほど申しました原則的な形で補充できないというような例外的な場合にはじめて考慮し実施する問題ではなかろうかと考えておるわけでございます。
  114. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはむしろ定員法の問題になると思うのですが、ことしは、予算要求したけれども書記官とか調査官とかは全然増員は認められなかったわけですか。
  115. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) そのとおりでございます。
  116. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはどういうふうな見解から書記官調査官等の増員が認められなかったのでしょうか。
  117. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これもたいへん私どもとしては重要な問題と考えておったわけでございますが、御承知のとおり、昨年の九月の四日でございましたか、閣議決定がございまして、そうしてこれでもっていろいろ給与問題に関連して一般の職員増員というものは認めない、なお、欠員の補充も認めないというような、原則的にはそういうものを認めないというような決定がされまして、それが最高裁判所のほうにも通知されてまいって協力を要請されたわけでございます。しかしながら、私ども裁判所といたしまして、ことに裁判部門に関します限りは、これはことばは妥当ではないかもしれませんが、いわば現業官庁に比すべきものであり、また、従来から訴訟促進号その他のいろいろな声がありますところからいたしましても、その欠員の補充を認めないというようなことはとうてい承服できないところでございます。したがいまして、そういう趣旨によって内閣にもいろいろ御建議申し上げたり、御連絡申し上げたりしておるわけでございますが、ただ、何と申しましても、その上にさらに増員するという場合に、この資料でごらんいただきますとおわかりいただきますように、まだ現在のところかなりの欠員がございますので、まずこれを充足いたしまして、そうしてその次の段階に増員ということを要求するのが順序ではないかというように考えましたのが一点でございます。  それから、なおまた、裁判官増員その他の問題も、これは私どもとしてはもう少し大幅な増員を当初は希望しておったわけでございますが、これもいろいろな関係で、これはそれぞれに理由は違いますが、しぼられてまいりまして、そういうことのいろいろな関連の結果、今年は一応一般職の増員を見送るのもやむを得ないのじゃないかという結論に到達したわけでございます。
  118. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 臨時司法制度調査会では、書記官を二百七十名本年のうちに増員しなければならない、四十一年には百五十六名、四十二年には百五十六名、全部で五百八十二名の増員をするというような意見を立てておるようですが、この根拠はどこにあるんですか。
  119. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、臨時司法制度調査会そのものが具体的な数字を出したわけではございません。臨時司法制度調査会におきましていろいろな施策を実現してまいります上に私どもとしてはこういう人員が必要であるというので当初要求した数字がお手元の数字でございます。その中には、たとえば(一)の調査官の項目にございますようなものは、それはまた別の理由——臨時司法制度調査会の意見ではございますが、別でございますが、簡易裁判所判事九十人、書記官二百七十人、いま御指摘になりました三年間で書記官五百八十二人を要求いたしましたこの数字的な根拠は、これは簡易裁判所の事物管轄の範囲を拡張する、その拡張の度合いは、いろいろ法務省とも打ち合わせました結果、さしあたり民事については訴訟物の価額三十万円のところまで拡張し、刑事については業務上横領その他で自白をしておるような事件を中心に比較的簡単な事件を地方から簡易に落とす、そういう方法によって地方裁判所はいわば負担の減少で訴訟の促進をはかる、簡易裁判所は事件が増加いたしますそれに必要な増員をして事件を処理すると、こういうことが当初私どもの立てました方針であったわけでございます。  ついでに申し上げますれば、ただ、しかしながら、その予算折衝の過程におきまして、これは御承知のとおり日本弁護士連合会等との関係もございまして、まだ十分にその事物管轄の拡張の幅を煮詰めるというところまでまいりませんでした。これはいわば将来の問題として残さざるを得ない。私どもとしては、臨時司法制度調査会の意見も少なくともこの部分については早急に実現を希望しておるわけでございますが、そうかと申しまして、いたずらにまた督促することも本意ではございませんので、十分に弁護士会と御連絡申し上げた上で次の機会にその点を考えていただくということで、いわば事物管轄の拡張問題はこの際には見送らざるを得なかった、こういう関係になるわけでございます。
  120. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、欠員の問題等は、これは定員法の問題ですから、そちらのほうで質問することとして、裁判所法の一部改正の中に、「最高裁判所庁舎新営審議会を置く。」というふうな改正になっているわけですが、最高裁判所の新営ということについては、いまはどういうふうなことを考えているわけですか。ある程度プランがあるわけですか。
  121. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 便宜、まず私から申し上げさしていただきたいと思いますが、これは、御承知のとおり、最高裁判所の現在の建物は、戦前の明治時代にできました大審院の建物を戦後いわば応急的に復旧した建物でございます。相当な経費はかけていただいておるわけでございますが、何ぶんにも基本的な構造が古いものでございまして、相当にいたみが激しいわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、新憲法下における最高裁判所の地位という点にかんがみまして、いわばこれは立法、司法、行政の三部門の中の一つを代表するものであるという意味におきまして、後世に残るりっぱな建物を建てて、そうして、この現在御審議いただいております国会の建物と並んで、最高裁判所の建物であると、国法の象徴であるというふうに国民から見ていただくようなものを建てていただきたい、こういうことでございまして、まだ具体的な構想を立てておるという段階ではございません。ただ、敷地につきましては、御承知のとおり一応三宅坂の付近のところを予想し、また、その手配をいただいておるわけでございます。
  122. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 全体として幾らぐらいでどういうふうにつくるというふうな一応の案はあるのですか、まだそこまではないのですか。
  123. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) いろいろ個人的といいますか、そういった庁舎関係を担当しております職員としましては、ある程度の個人的な意見というものはそれぞれ持っているかと思いますが、まだ具体的に裁判所意見としてまとめあげる程度の具体的な中身はきまっておりません。
  124. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最高裁の庁舎の新営はまあこれはこれとして、一番困っているのは東京高等裁判所の庁舎、ことにあの中で、一体法廷がどこにあり、それから部がどこにあるのか、普通の人が行ったのではさっぱりわからない。民事部と刑事部が離れておったり、その中に東京地裁が入っておったり、判事室がどこにあるのかさっぱりわからないし、書記官室はまた判事室からうんと離れたところにあったりして、一般国民が呼び出しを受けて行っても、どこに行ったらいいのかわからないし、弁護士関係でも非常に困っておるんです。最近は、裁判所職員でさえ、どこへ行ったらいいのか、どこにどういう部屋があるのかはっきりわからないというようなことであって、非常に困っておるんです。ことに同等裁判所の部屋の中に地裁の部屋があったり、いろいろごたごたしていて、これは一ぺん行ってごらんになるとわかるのですが、私はこの委員会で一ぺん行ってみるとわかると思うのですが、実に混雑そのもので、困りきっているんですが、あれがもっと、たとえば刑事一部なら一部、二部、三部がちゃんと並んでいるとか、あるいは民事部はどこに置くとか、一階、二階ときちんと分けて、地裁は地裁で別のところに入れるとか、こういう形で一般の人がもっとわかりやすくできないんですかね。どうにもわからないですね。
  125. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) まことに御指摘のとおりでございます。実は、現在の高等裁判所及び地方裁判所の民事部の入っております建物は、昔の旧制のときに置きました東京民事地方裁判所のみで使用しておりました建物でございます。東京高等裁判所、昔の東京控訴院は、現在の最高裁の建物に民刑ともに入っておりました。そういう状況でございましたが、戦災で現在の最高裁庁舎が焼けました際に、東京高等裁判所も現在の民事の庁舎に入っていった経過があるわけであります。それから最高裁判所を補修いたしまして現在の庁舎の姿につくりあげましたけれども、これは最高裁判所だけで使用してそれでもまだ不足な状況に立ち至りまして、昔の民事地方裁判所の庁舎に東京町等裁判所の民刑ともに入ったというような状況がございます。その後、戦後、現在の高裁の庁舎の五階に一部増築をいたしまして、東京高裁と東京地裁、特に民事関係との間でその相互間の使用関係をおきめになって、それぞれのスペースの中でそれぞれ配置をおきめになったわけでございます。そういう意味では、いわば地裁と高裁の内部的な処理方法でございますが、御指摘の点等も考えて、高裁は高裁、地裁は地裁で、なるべくわかりやすい方法を考えるということも御努力になっているようでございます。ただ、何しろ建物が現在のような狭隘な状況のもとにあることから、ある程度の合理化をいたしましても、しょせんはスペースの不足だということになります。  そこで、つけ加えさせていただきますのは、東京高等裁判所並びに東京地方裁判所の民事関係は、いまやもう庁舎はち切れそうな状況でございますので、即刻これを新併しなければならない現況でございます。また、現在でも、霞ケ関一丁目一番地を離れまして東京高等裁判所をつくるとか、あるいは東京地方裁判所の民事関係だけをどこか離れた場所に持っていくというようなことをいたしません限りは、あのかいわいにお立ち入りくだされば一ぺんにおわかりになりますように、もうほとんど増築の余地のないような現況でございます。そこで、ただいま考えておりますのは、最高裁判所の庁舎がパレス・ハイツのあとに建てられました直後に、現在の最高裁判所の庁舎を除却いたしまして、そこにまず東京高等裁判所、それから東京地方裁判所の民事の不足分、こういったものを直ちに新営するという予定のもとに最高裁の建設を急いでいる状況でございます。
  126. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 もとはあの東京民事地方裁判所と東京刑事地方裁判所と二つあったのですが、日比谷公園のかどに新しい建物ができたときに、あすこに東京地裁は全部入るとかというような計画はどうしてつくらなかったのですか。
  127. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) あのときは、東京地方裁判所の刑事部だけであすこの庁舎はそれ以上高さの制限もございますし、面積の制限もございますので、あの程度の建物を建てるのがまず限度であったわけでございます。多少の増築の余地を残しておりますが、民事関係とともに吸収するというような高さ、面積にはつくり上げることができなかったためでございます。
  128. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いま、東京地裁の民事部というのは幾つぐらいに分かれておりますか。実は、この前も、私の友人が、東京地方裁判所民事部の中の第三庁舎というので呼び出しをもらって行ったわけですよ。おりるところは霞ケ関でおりろと書いてあるのだけれども、さあ霞ケ関でおりたって、第三庁舎なぞというのはどこにあるかさっぱりわからなかったので、一時間ぐらいさがし回っているうちに、時間が過ぎちゃって、何か裁判が終わっちゃったといって帰ってきたという話もあるんですが、どうにもしようがないですね、わからなくて。
  129. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 民事部だけでただいま三十数カ部ございます。そのうちに執行部、保全部というようなものは、当事者、代理人等の御便宜を考えまして、特に保全部は、人数も多うございますが、一階に持っていく。九部でありながら一階にいくというようなことで、いろいろな配置に違いがあるという点はございます。  それから、ただいまおっしゃいましたのは、第三新館と俗に私どもの間で呼んでおります建物で、そこには執行部と、それから調停関係、それから増設になりました三十何部程度の終わりごろの部ですね、最近になって増設になった部の法廷ないしは判事室がその第三新館に入っているわけであります。そういう意味で、もうとにかくやりくり算段中でございますと申し上げるより以外には、いまや何もこれ以上は適切な解決方法はないということを繰り返す以外にはないわけでございます。
  130. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その第三庁舎というのはどこにあるんですか。
  131. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 最高裁判所のちょうど裏に当たります。非常に高い感じのする、外部にタイルを張っておりません建物でございます。執行吏役場の隣になっております。検察庁に非常に接近したところでございます。
  132. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはここで言うのもおかしいのですが、第三庁舎なら第三庁舎に呼び出しがあるのならば、何か呼び出しの図面か何か書いておいてもらうとかなんとかしなければ、どうにもしょうがないです。最高裁に行く間の食堂のそばにあるのは、あれは何ですか。
  133. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) ただいま御指摘の点は、地方裁判所にも直ちに連絡いたしまして、そういった点に関して遺漏のないように努力いたすつもりでございます。  食堂のあります建物は、いわゆる新館と通常われわれの間に称しておりまして、内部的にはわかりましても、外部の方にはおわかりになりにくいところはあるかと思います。いまの呼称方法も、必ずしも裁判所全部の中で共通しておるのじゃなくて、一部の人たちがそういうようなことを言っておるというような状況でもございます。裁判所に来た人にそういった変わった建物に案内しなければならない場合に、特殊の方法を考えるというのは、相当なことかと考えております。
  134. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、ついでだからですけれども、高裁でも地裁でもそうでしょうが、法廷が日によってずいぶん変わりますね。法廷に呼び出されて行ってみても、きょうは別のところだと書いてあるんです。その別な法廷はどこだかわからないのでぐるぐる回っていく。予備法廷というのがあって、予備法廷もわからないでぐるぐる回って、どうにも混乱してわからないのですけれども、もっと一般の人にわかりやすいようにやってほしいと思うですね。  それから高裁の民事・刑事部の法廷の表示が入ったところにあるんですが、あすこは二つか三つの部が消えているのですが、どこに法廷があるのかわからないので、廊下に行ったら、司法書士は廊下に移転しましたと書いてあるんですけれども、廊下に移転しましたというのは実におかしな話で、廊下は仕事をするところじゃないと思うのだけれども、廊下に移転しましたとちゃんと書いてあるんですね。一体どういうふうになっておるのか、もっと整理しておいてもらいたいと思うのです。これは、ひとつお願いしておきます。  もう一つ、高裁の会計の部屋が四階だか五階の一番すみっこにあったんですが、あれを下におろすとかいう話があるんですが、あの話はどうなったですか。
  135. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 東京高裁と地裁とのお話し合いで進められていることでございます。庁舎管理の点から申しますと、例のいまの問題の御指摘の建物は、東京高等裁判所の管理下に置かれておるところでございます。したがいまして、私どもは、スペースの増加あるいは補修等に関する相談を受けました場合には、それに御協力申し上げるわけでございますが、その管理下にある建物をいかようにお使いになるかは、それぞれ高等裁判所、地方裁判所等におまかせしているわけでございまして、諸般の状況は地裁、高裁の間で御検討の上でお立てになった方針かと思いますので、その方針に従って処理されるものと考えております。
  136. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 会計課の問題は、部屋は現状はどういうふうになっているんですか。話がごたごたしていたでしょう。ごたごたということばは悪いけれども……。
  137. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 何か問題がある点があったかに伺っておりますが、現在では話が片づいたかに伺っております。
  138. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 あるいはもういままで話があったかもわかりませんが、最高裁判所の庁舎の新営議会ですが、委員は何人ぐらいでやるつもりで、どういうメンバーでやるつもりですか。
  139. 岩野徹

    最高裁判所長官代理者(岩野徹君) 委員は二十五名の予定でございます。で、そのメンバーは、国の建物として最も価値、意義のある建物を建てる場合、国家事業としての建築と考えておりますので、国の最高の方々、もちろん立法の国会の方々とか、あるいは財界、あるいは言論界、学界だとか、すべて国の象徴的な、司法の世界の象徴的な建物をつくるという考え方でございます。具体的には、いかような方々にいかに何名どの部門からお入り願うかということは、まだきまっておりません。むしろ、今後私どもとしましては、国会、行政庁、学界その他と十分お打ち合わせした上でしかるべき方々にしかるべき数だけお入り願うというふうに考えておるわけでございます。
  140. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 ただいまの審議会のメンバーだとか、あるいは人数だとか、そういうようなことをおきめになるのは何できめますか。
  141. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、最高裁判所規則できめさしていただく予定になっております。
  142. 石井桂

    委員長石井桂君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  143. 石井桂

    委員長石井桂君) 速記をつけて。  それでは、一時半まで休憩をいたします。    午後零時三十七分休憩      —————・—————    午後一時四十六分開会
  144. 石井桂

    委員長石井桂君) それでは委員会を再開いたます。  休憩前に引き続き、裁判所法の一部を改正する法律案質疑を行ないます。御質疑のおありの方はどうぞ御発言願います。
  145. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はまあもっと時間がありますといろいろな点から御質問申し上げればよいと思うのですが、すでに予定も決定されて時間もあまりないようでございますから、ごく二、三の点にしぼって御質問したい思うのです。  第一の問題ですが、これは書記官補から事務官に転官された方がずいぶんあるわけですが、これで不利益を生じないのかどうなのか、この点は具体的にどうなんですか。
  146. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) お尋ねの趣旨は、昨年度実施しましたいわゆる特別研修をいたしまして、その際不合格になりまして、従来のいわゆる代行書記官から事務官のほうに転官になった者は何名おるかという趣旨と拝察するわけでございますが、約三百五十名でございます。そうしますと、そういう人たちは給与的に申し上げますと当時代行書記官として本俸の四%の調整がついておったのでありますが、それが事務官にかわりますとその四%の調整分をどうするかという問題がございまして、その点につきましては、午前中も申し上げましたが、昨年の九月に私のほうの通達を出しまして、この四%の従来あった調整は、事務官に転官後も保障するというような形で処理したわけでございます。したがいまして、事務官に転官になったからといって、給与上不利益をこうむるという事態は生じていないわけでございます。
  147. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは暫定措置という意味ですか。
  148. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 暫定措置と申しますと、四%調整が入った金額とはずれた金額の差額を保障するという形になりますと、これは暫定的な問題で、昇給してその差額分が埋め合わせがつけばそこで打ち切るということになろうかと思いますが、裁判所で保障すると申しますのは、そういう方が今後事務官等の場合はやはり四%引き続き保障していくということで、暫定的な措置ではございまん。
  149. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは、既得権を守るという、そういう意味に解していいですか。
  150. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) さようでございます。
  151. 岩間正男

    ○岩間正男君 次にお伺いしますが、調査官補と調査官仕事、これはどういうふうに違いますか。
  152. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) この点、午前中も若干御説明申し上げましたが、調査官につきましては、裁判所法の六十一条の二という規定がございまして、これで一定の審判、調停等に必要な調査その他をつかさどる、これが調査官でございます。調査官補とは、裁判所法六十一条の三で、調査官事務補助ということになっておるわけでございます。ただ、この調査官補の中で若干の者は、裁判所法の附則に基づきまして、いわゆる代行調査官として調査官職務代行できるということになっておりますが、ただ、その代行調査官は、調調官の職務の全部ではございませんで、一定の重要な事件の調査代行ではやることができない、比較的軽易な事件の調査のみを代行することができる、こういう法制になっておるわけでございます。
  153. 岩間正男

    ○岩間正男君 法制上のたてまえはそういうことだと思いますけれども、これは地方なんかに行ってよく聞く話ですけれども、実際は同じような仕事をやっているというのが実態じゃないですか。いまの法制上のたてまえは一応説明されましたけれども、問題は実態なんですね。実態は非常に人が不足だ。資格はないんだけれども、実際の仕事はやっていると、そういうことを私たちしばしば耳にするんですけれども、その点についての御調査はできておりますか。どうですか。
  154. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) この点は、別の裁判所定員法の資料として前にお届けいたしました数字でもごらんいただけると思いますが、家庭裁判所調査官は、定員が千百三十二名で、これは若干の欠員はございますが、ほぼ充員しておるわけでございます。それに対しまして調査官補のほうは、定員が二百十二名でございますが、これもほとんど全員充足しておりまして、その中で代行になっております者が約百名ということになっておるわけでございます。結局、調査官代行調査官補を比較いたしますと、代行調査官補は一割程度にしかすぎないわけでございます。それで、私どもといたしましては、先般来御説明申し上げましたように、これは法制上は、たとえば少年の関係でございますと、代行調査官補は死刑または無期の事件を取り扱うことができないということになっておりますけれども、むしろそれよりももっと広くと申しますか、そんな死刑、無期でなくても、比較的重要な事件はこれは調査官みずからが担当して、そして非常に簡単な事件のみをやっていただく。これは、計数的にも、調査官が千名もおりまして、代行調査官補がわずかに百名程度でございますので、実際にもそういうことになっておるというふうに御信じいただけると存じますが、そういうふうに指導しておりますし、また、そのようになっておると考えておるわけでございます。
  155. 岩間正男

    ○岩間正男君 代行調査官は一〇%、それから全体の調査官補を含めても全体の数から二〇%ぐらいですね。
  156. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) そのとおりでございます。
  157. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、これだけ少ないのを、今度は書記官補書記官に引き上げるというこれはちょっと極端ですね。それは書記官の場合だけなぜこういうことをやったのか、一緒にやってしまったらよかったんじゃないですか。これは同じことは次の速記官補の場合にも言えると思うんですがね。二〇%ぐらいの中でそういうところだけ残して、そして何かこの法改正の中で非常に全部が完了しないという感じがするんですよ。一緒にやるべきじゃなかったかと思うんです。この点はいかがですか。
  158. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) この点、午前中にもちょっと申し上げたところでございますが、確かに非常にごもっともなことで、私どもとしてもこの点については重々検討いたしておるわけでございます。ただ、何と申しましても、書記官のほうは、専門的な職業といっても、これは法律的に専門、法律を専門とする職業でございます。そうして、裁判所職員としては、全体として法律的な教養を持った人が多いわけでございます。したがいまして、これの給源というものは、単に書記官補に限らず、事務官を広くみんな書記官の給源として考えることができるわけでございます。  これに対しまして、家庭裁判所調査官のほうは、これは心理学とか社会学とか、そういう方面の専門家でございますので、これの給源というものは一般の事務官の中には絶無ということはできないにいたしましても、あまり多くないわけでございます。むしろこれは調査官補という名称をつけるかどうかは別といたしまして、つまり、そういう心理学とか社会学とかそういうようなものの専門的な人を若いときから養成していく、こういうことになりますので、その一つのルートがどうしても必要になる。これが調査官補を容易に廃止できない一つの理由でございます。  しかしながら、確かにたとえば代行制というようなものがいわば過渡的なものだというふうにおっしゃられてもやむを得ないところでございますので、そういう点を総合いたしまして、今後とも十分検討いたしたいと思いますが、ただ、書記官と一律に考えることができないのは、片方は法律的な教養を中心にする専門職であるのに対して、片方は社会学、心理学というような、裁判所ではやや特殊の、非常にまあ何と申しますか、ほかの職員とははだ合いの違った専門を主にされる方であると、こういうようなところがさしあたり違うということになるわけでございます。
  159. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことですと、特別研修をやってそうしてこの調査官補をなくすと、そういうこともこれは行なわれていいわけなんじゃないですか、そういう点からいうと。
  160. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 御承知のとおり、特別の研修として調査官研修所でやっておるわけでございますが、何と申しましても、その研修所の机の上の研究だけではやはり不十分で、これを実地にいろいろ見習いをしたり何かする過程が要るのじゃないか。そういうことで、たとえば調査官から命令を受けて、この事項を調査しろというふうに具体的に指示を受けて調査いたしましたり、あるいはもう少しまかせまして、この事件は簡単だからおまえがやってみろ、こういうことで調査の実習と申しますか実際にその仕事をいたしましたり、そういう形でだんだん育ってまいって、そうして調査官になっていくと、こういう経過をたどっておるわけでございます。そこが少し調査官の特殊性ということになると考えておるわけでございます。
  161. 岩間正男

    ○岩間正男君 調査官補を調査官に引き上げれば、待遇の面ではどういうふうに変わりますか。
  162. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 一応私から申し上げますが、調査官補と調査官では、これはいろいろな点で調査官のほうが待遇がいいことは当然でございます。たとえば調査官には一六%の調整がついておりますが、普通の調査官補には調整はございませんし、代行になりましても四%の調整でございます。したがいまして、そういう官職として両者を比較いたしますれば、むろん調査官のほうが待遇はいいわけでございます。ただ、特定の人間をとって考えますれば、これはみんな若いときには調査官補で比較的低い給与でございますが、これはまたそれほどの能力がない時代を経過いたしまして、これがだんだん経験を積み、あるいは知識を増してまいりますれば、自然に昇給もしてまいり、まただんだんに調査官に昇級していくと、こういうことでございますから、定員的に調査官補を調査官に組みかえますれば、これは定員上は待遇改善になりまするけれども、そうかといって、いまの調査官補が直ちに調査官になれるというわけのものでもございませんので、現在のところは調査官補の人が一定の年数をたてば調査官に昇級していっておるわけでございますので、特定の人間をとっては別に待遇上はそう支障は生じておらない、こういう関係になるわけでございます。
  163. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも私たちしろうとでよくわからないんですが、裁判所内のこういう何といいますか、区別、官制、そこに階級の区別というのがあんまりあり過ぎる。煩瑣過ぎる。これは人民の立場から見るとよくわからないんですよ。内部だけの事情で、そこにまたいろいろな問題も出てくる。こういうの、やはり身分としてはできるだけもう引き上げて単純化する必要がある。人民の前でもはっきりこれがわかるような体制にしておかぬとまずいんじゃないか。したがって、私は、これは希望ですけれども、こういうような制度をできるだけここで整理をして、同時に、もうこの官補などというかっこうで何か差別待遇をされるような、そうしてそのことがまた職務の上にも影響しますから、これじゃまずいと思うので、もうそういうことをやるべきときじゃないか。これはもう一ついろいろ分かれているわけでしょう。書記官、それから調査官、それから速記官というふうに分かれてまいりますが、それがまたこま切れに分かれているんだね。これじゃあんまり煩瑣に過ぎるんじゃないか。そのことが非常に裁判所内の空気というものを明朗にしていない一つの原因になっていると、私はそういうことを感じるんですが、これは法務大臣、どうですか、勇断されてもいいんじゃないですかね、この問題は。
  164. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) まことに恐縮でございますが、裁判所としてのあれを先に説明させていただいて、その上で法務大臣からお話しいただければありがたいかと思うわけでございますが、いま岩間先生のおっしゃいました点、これは非常にもっともな点を多々含んでおるわけでございまして、実は戦前は確かに裁判所書記というものが何もかもやっておったわけでございます。私ども職員管理という面からいきますと、ある意味ではそのほうがむしろ私どもの立場としても非常にやりいい面を持っておることは事実でございます。ただ、なぜこういうふうに分かれてまいりましたかというのは、むしろ私どもの感じでは、やはりどちらかというと、これは国民のためと言ってはちょっとおこがましいかもしれませんけれども、つまり、裁判所職員というものは、決してそれぞれの人が有無相通ずるようなことではないのだ。つまり、書記官というものはやっぱり書記官として特定の権限があるのだ。調査官というのは調査官として特定の権限がある。それには、資格を与え、あるいは待遇をして、そういう人にやってもらうことによって国民の権利が保護されていくのだ。それをいいかげんの資格の者にたとえ調査官といえども書記官といえどもやらしては不十分なんだ。裁判官はもとよりでございますが、裁判所のその他の職員もこれは国民の人権に非常に関係があるから、非常に資格をやかましく言い、特定のポストに特定の人をつける、こういう構想が非常に官職を分裂さした考え方の基本で、これは決して裁判所の都合というよりは、むしろそういう法律的な国民の権利の保護ということであったと思うわけでございます。  ただ、しかしながら、そうしてやってまいりました結果が、やはりいろいろそこにめんどうな問題も起こってまいりまして、いまでは、ある程度そういうものの官職を単純化するということが好ましいのじゃないかということが、たとえば書記官補も一つのあらわれでございますが、さらに進んでそれじゃ調査官書記官も全部一本の事務官という形でいいのかということになりますと、やはりこれ相応の教養の違いとかあるいは職務内容の違いがございまして、そこまで一本化できるかどうか、これは裁判所としてはまだ直ちに踏み切れないということで十分検討しておる段階でございまして、私ども事務的な立場からの説明を申し上げるならば、そういうことになるわけでございます。
  165. 高橋等

    ○国務大臣(高橋等君) ただいま裁判所側からの答弁がありましたが、私は、岩間さんの御指摘の点は、原則としてごもっともな点があると考えます。できるだけそういうものは簡明でわかりよくしたほうがいいんだと思います。ただ、補助者の関係とかいろんないままでの経過というようなこともありまするから、裁判所としては一度にそれをやり切ってしまうということもどうかと思いますので、十分その趣旨の方向で進んでいくべきだと考えますので、裁判所のほうにも御検討願いますが、われわれのところでもそうした方向で検討いたしたい。ただ、補助者その他の点が必要な点もありますので、そういうこともあわせて考えながらやっていく、こういうことでいきたいと思います。
  166. 岩間正男

    ○岩間正男君 現状をあくまで先に立てて考えていけば、これは改革というものはないわけですね。この問題は待遇の問題と関係してくるのじゃないか。裁判所予算の問題、予算が豊かで、そうして十分に生活保障ということができる、そうすれば、その必要な人をもっと多く人材を求めることができるわけでしょう。ところが、予算の面で切り詰められている。そうしてやっぱり書記官補とかそういうものをつくって、そうして見習いのような人たちで充足していかなければならないという、そういう問題があるんです。この問題を抜きにして、そうしてそれを合理化するためにさっきのような説明をされたのでは、やっぱり根本的の解決がないわけです。だから、人民の立場からすると、たいしたことないですよ。たとえば書記官補を上げたら、調査官補をほんとうの調査官とすれば、どれだけ違いますか、年間の予算が。これは計算したことありますか。二百何人を全部調査官にしてしまう、するとどのくらい違うんです。これ計算してみたことがありますか。私はそういうことが政治の面では重要だと思っているんです。
  167. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) その点につきましては、計算したことはございませんが、大まかに申しますと……。
  168. 岩間正男

    ○岩間正男君 大体でいいです。
  169. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 四%調整もらっている人が一六%に引き上げられる。そうすると、その差が一二%でございますから、大体二万五千円としますと、約三千円でございますか……。
  170. 岩間正男

    ○岩間正男君 三万六千円、それの二百倍だと、何ぼになりますか。
  171. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 約七百万かと思います。
  172. 岩間正男

    ○岩間正男君 たいしたものじゃないでしょう、これは。法務大臣、どうですか。こういうところが私は一番問題だと思っているんですよ。この問題を抜いて、そうして何か現状の既定事実だけを考えていくというその上に立つから、どうもいまのような説明になってくるんですよ。これは本来転倒だというふうに考えるんです。だから、七百万の予算でそこを充てんしていけば、非常にやはり内部は明朗になっていくわけです。そうして、そういうちゃんと資格のある人も、それからまた、資格のない人も、その場に置けばやるものですよ、人間は。やるものですよ、その立場につければ。そこが政治だというふうに考えるので、われわれはこの裁判所法審議の中にもこういうところにやはり政治の手が及んでいくというそういう形でこの問題を解決するという基本方向をとらなければならない。この点からいいますと、われわれとしては、こういう問題は、これは法務大臣の管掌だと思いますけれども予算面ではこの次あたりはここのところを解決されて、そうしてこういう点は単純化して、とにかくちゃんと書記官調査官と速記官とあるんですから、それだけの区別でもいいわけでしょう。それから年齢とかそういうあれでは俸給のなにがつくのですから、その差別がある上にまたこういうものが屋上屋を架している、こういう点については御検討願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  173. 高橋等

    ○国務大臣(高橋等君) 先ほどお答えしたとおり、そうした方向でいくべきだと考えておりますので、検討を進めたいと思います。
  174. 岩間正男

    ○岩間正男君 速記官補の問題についても私は同じことが言えると思うんですね。現在の速記官補は、それぞれ何年ぐらいの経験を持っておるんですか。
  175. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) 速記官補は、書記官研修所の速記官の養成部を卒業いたしますと速記官補になるわけでございまして、そうして約二カ月速記官補として実務をやるわけでございます。その上でいわゆる代行速記官というものになりまして、これを三、四カ月やりますと速記官になるわけでございます。したがいまして、速記官補全部を通じまして約半年ということになるわけでございます。
  176. 岩間正男

    ○岩間正男君 速記官のつくった速記録と、それから速記官補のつくった速記録は、どう違うのですか。訴訟上何か取り扱いを区別しているのですか、どうですか。
  177. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者寺田治郎君) これは、普通の速記官補は独立しては速記録をつくらないたてまえでございまして、速記官と一緒に法廷に入ってやるわけでございます。代行になりますと一応一本立ちするわけでございますが、これは実際の運用といたしましては、比較的簡単な事件と申しますか、比較的簡単な事件、簡単な証人の速記をやらせる、そうしてある程度腕を上げましてから速記官としてすべての事件に立ち会う、こういう扱いになっております。
  178. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは最高裁から不意に抜き打ち調査をやってみたらどうです。必ずしもそうなっていないのじゃないですか。つくった速記録は、目を通したり責任は速記官のほうにあるかもしれませんけれども、実際はそこのところは速記官補のつくったものでもそのまま通っているというのが実情だと思いますよ。私はそういうことをいろいろ聞いているんですがね。そういう実情から見ますと、いまのような御説明は、一応たてまえは話されているけれども、実際は現状はやっていないんですよ。だから、同一の仕事をしているんだ。ところが、待遇の面で違ってくる。これはやっぱりまずい。それは官補の実際の仕事はむしろ多くする場合だってあるんですよ。その人が待遇上はぐあいが悪い。これではやっぱり職場における明朗さというものは実現できない。この点についてもっとこまかい配慮をする。かりに、これはどうですか、この人数と、それから、これを同じ待遇にやっていったら、これはどういうふうになるのですか。速記官補とそれから速記官の待遇上の区別はどうなっていますか。これを年間の予算に直せば、待遇改善をやって全部引き上げたら、どのくらい違うか、これをお伺いします。
  179. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 現在、速記官補は、いま総務局長から申し上げましたように、研修所を出まして速記官補になりますと七等級の一号になるわけでございます。それからいまの御説明にもありましたように、約六カ月で速記官になるわけでございます。速記官になりますと六等級一号になるという形になりまして、一般の職員に比べて非常に昇進速度が速いという関係になっておるわけでございます。
  180. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、区別はありますか、待遇上の。
  181. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 給与上は、現在の俸給体系で申し上げますと、書記官研修所速記養成部を卒業しますと、七等級一号、というのは一一万八千百円でございます。それが半年たちまして速記官になりますと、六等級一号という形で、二万一千二百円という関係に相なるわけでございます。
  182. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、人数はどうなるのですか。
  183. 宮崎啓一

    最高裁判所長官代理者宮崎啓一君) 差額が三千百円で、そうして瞬間が六カ月でございますから、六カ月で大体三、四十名程度と思いますから、金額、的にはたいした金にはならないと思います。
  184. 岩間正男

    ○岩間正男君 こういう点を考えまして、能力を持って入り、そうしてそこにある程度の見習い期間を置くということですけれども、どうもあまりこま切れですね。こういう点についても同じようにこれは考えていいのではないか。身分保障というものと同時に、これは官庁内だけの問題でなくて、実は人民に対する奉仕の面からいってもよい効果を与える。そこにやはり置くべきで、それから考えれば実に微々たる金です。むろん、そこだけでないという御説明ですけれども、そこのところはちゃんと考え方を変えれば、踏み切ることができるというふうに思うので、私は、特に早急にやはりこの問題を取り上げて、そうして検討して予算化することを要望したいと思います。  これで私の質問を終わります。
  185. 石井桂

    委員長石井桂君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  186. 石井桂

    委員長石井桂君) 速記をつけてください。     —————————————
  187. 石井桂

    委員長石井桂君) 委員の異動について報告いたします。本日、鈴木一司君が委員辞任され、その補欠として塩見俊二君が選任されました。     —————————————
  188. 石井桂

    委員長石井桂君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  189. 石井桂

    委員長石井桂君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  190. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はこの案に賛成です。ただし、いま質問したようなことを条件として私は賛成します。
  191. 石井桂

    委員長石井桂君) ほかに御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  192. 石井桂

    委員長石井桂君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  裁判所法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  193. 石井桂

    委員長石井桂君) 全会一致と認めます。よって、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  194. 石井桂

    委員長石井桂君) 御異議ないと認め、さよ決定いたします。  次回の委員会は、三月二十五日午前十時から開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時十八分散会      —————・—————