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最高裁判所長官代理者(
寺田治郎君) ただいまの
稲葉先生の御
質問はまことにごもっともな点でございまして、私
どもといたしましても、同様な見地で、
調査官補
制度、特に
代行調査官補
制度の扱いということについては、慎重に検討いたしておるわけでございます。で、
調査官補
制度全体の廃止ということはともかくといたしましても、
代行調査官補という
制度は
裁判所法でも一応当分の間ということになっておるわけでございまして、こういう
制度を恒久的な
制度として残していくということが好ましいかどうかということは非常に問題があると考えておるのであります。ただ、実際問題として、これはいわば理論的な問題と実際問題と両方あるように考えておるのでございますが、実際問題としては、
代行制をとらなくても
調査官だけで十分に現在の事件を処理する
程度に
調査官の
定員その他を確保してまいらなければならぬ、また、それを充員するところの人材の養成をしていかなければならぬ問題があるわけでございますが、さらにもう少しいわば根本的な
制度論と申しますか、理論的な問題として、
書記官の場合は、これは確かにどうも
書記官補という
制度は必要はないのではないか、
事務官で
補助していただけば十分ではないかと考えたわけでございますが、それに対比いたしますと、家裁
調査官の
職務内容というものは、これはかなりに特殊なものを持っているわけでございます。
書記官のほうは、どちらかというと、
法律的な教養というものが中心でございますので、むろん先ほど来
宮崎給与
課長から御
説明申し上げましたように、
書記官というものは相当
職務困難であり、教養の高いものではございますが、しかし、要するに
法律的な教養というものが中心でございます。それに対しまして、家裁
調査官というものは、これは心理学とか社会学とか、そういういわば
裁判所といたしましてはかなり一般
職員とは異質の内容を持った教養を前提とするのでございます。そういたしますと、自然にその給源というものが一般
職員と申しますよりは、そのためにいわば入ってまいり、また、そのために養成しております
職員というものから育っていく、そういう
関係で、どうしても
調査官補というものを確保して、その中から
調査官に昇進させていくというルートがどうもいまの段階では必要なのではないかというのが現在のところの結論であるわけでございます。
なお、それに伴いまして、
代行制と申しますのは、現在の時点では、
調査官の
職務内容の中でいわば比較的簡単な事件を
独立してやってもらう、
代行のない
調査官補になりますと、むしろ特定の事件と申しますよりは、
調査官がある特定の事項を
調査させる、こういういわば具体的な指示に基づく
調査になりますが、
代行になりました場合には、これは一応
独立して、そして、しかし比較的簡単な事件——
規則の上でもその点について差を設けておるわけでございますが、比較的簡単な事件について
独立してやってもらう。そういうことによって、ややいわば見習い的な養成をしていく、そして、いよいよ
研修所を出てまいりますれば一本立ちの
調査官にするという、こういう経路が現在の時点ではどうも必要なんではないかというのがまだ廃止に踏み切れない
理由でございます。しかしながら、
稲葉先生のお話にございましたように、将来はこの点は十分検討してまいりたいと考えておるのでございます。