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政府委員(
新谷正夫君) 私、
新谷でございます。本年初めに
民事局長を拝命いたしましてまだ日が浅いものでございますので、何かと
先生方の御指導を仰ぐ必要があろうかと思うのでございます。何ぶんよろしくお願いいたします。
ただいま御
質問のございました
昭和三十九年十二月五日の
民事局長の
通達でございますが、これは一口に申し上げれば、最近
登記所の
仕事が非常に増加いたしておりまして、いろいろと
申請人の方その他にも御迷惑のかかっているよう点もあろうかと思うのでございます。これはただ
事件が増加しているということだけにとどまりませず、
事務処理の面あるいは
申請をさせる
方々の
取り扱いの面、そういったところにもいろいろと問題が伏在しているようでございまして、そのために
登記事務がある程度の
渋滞を来たすというふうな遺憾な結果も生じておったわけでございます。特にこの
通達のねらっておりますのは、
登記事務の適正迅速な
処理をはかりますため、
司法書士とかあるいは
土地家屋調査士を代理人としまして
登記の
申請が行なわれる場合の
申請手続上の
不備が非常に多くなっております。そういった点を是正するための
措置をこの
通達によってやろうということになっておるのでございます。
なぜこういうふうなことになったかということでございますが、ある程度
数字をあげて
状況を御説明申し上げるほうがよろしいかと思うのでございますので、ちょっとその点を申し上げますが、現在、
登記の
申請が出ましてすぐそのまま右から左に受け付けられて
処理されるというふうな
案件がきわめて少ないというふうな
現状にございます。
申請書が出ましても、いろいろと
不備な点がございますために、その
補正をしてもらいまして、正しく
申請書が直されたところで正規の
登記の
手続に入るということになるわけでございますが、その間
かなりの
日数を要するというふうな
実情が出てまいっております。特に
事件が非常にふくそうしております大きな
登記所におきましては、これはまことに残念なことでございますけれども、
申請書が出ましてから
登記が
処理されますまでの間に五日あるいは七日というふうに、
かなり日数を要しておるのが
実情でございます。なぜこういうことになるかと申しますと、まあ大部分の
登記の
申請事件は
司法書士さんを通じて出るわけでございますが、現在
司法書士さんもいろいろ
仕事がふえてくるというふうな
関係上、
補助者を
かなりたくさん使っておられるのが現在の実態でございまして、その
補助者の
人々が十分に
調査をしまして
申請書をつくるのであれば、そうした間違いもあるいは起きないのではないかと考えられるのでございますけれども、
実情をいろいろ調べてみますと、
登記簿の閲覧もしないで、いきなり
依頼者の言うままに
申請書を作成してしまう。これも
司法書士の
人々がみずから
申請書をつくるというのではなくて、場合によればその
補助者に一任されておるというふうな場合もあるようでございます。そういった
事務の
扱い上の問題から、いま申し上げるように、
申請書に非常に
不備な面が多くなってくるというふうになってまいりました。はなはだしいものにつきましては、
申請書の
不備を
補正するとこれがやりきれなくなりまして、一
たん申請を取り下げて、もう一ぺん書き直して出すというふうなことを何回も繰り返しまして、はなはだしきは一件の
登記申請について三回とかあるいは六回も取り下げをやらざるを得ないというふうな
実情まであるわけでございます。また、
補正を要します
件数でございますが、これはある地区について特別に
法務省のほうで
調査いたしました結果によりますと、各
司法書士の
取扱事件を
各人別に
調査いたしました結果によりますと、
件数といたしまして、多いのは八〇%、少ないのでも四、五〇%、平均いたしますと約六〇%ぐらいのものがこの
補正を要するということになっておるわけでございます。これは一件ごとについてのパーセンテージでございますので、その一件の中にもさらにこまかい点についていろいろと
補正しなければならない
個所があるわけでございますから、その
個所を一々あげましてどのくらいかということになりますと、これはちょっと答え切れないと申し上げざるを得ないのが
実情でございます。そのような
状況になっております
関係上、
事件の多い
登記所におきましては、
補正を要する
申請が一度にたくさん重なってまいりますと、その
関係の
登記簿がそのまま山積みされまして
補正待ちという
状況になるわけでございます。そういたしますと、その
登記簿に登載されておる
不動産についてその他の
登記事件の
申請あるいは
処理にもこれが支障を来たすというふうな結果になりまして、だんだんと
事務の
渋滞の
原因を積み上げていくというふうな結果になっております。さらにまた、
補正事件が非常に多いものでございますので、
司法書士の
方々から、あの
事件はどういうところを
補正されるのか、
補正個所はあるかないかというふうなことを
電話で聞いてこられるわけであります。さなきだに忙しくて人手の不足いたしております
登記所におきまして、
執務時間中に
電話でそういう照会が非常に多く殺到してまいりますと、これは
登記所の
事務そのものにも非常に影響いたすわけであります。いま申し上げますように、
補正を要する
事件が相当多うございますために、
関係の
登記簿冊が別に保存されております。その中に
申請書を差しはさんで
補正、されるのを待っておるわけでありますが、そういった
書類があちこちに山積みされております中からそれを引き出してさらにまた
電話で答えるということは、実際問題としてこれは非常な手数がかかりますのみならず、
事務処理そのものにも非常に影響を及ぼすということになるわけであります。先ほど申し上げました五日あるいは七日の
事務の
渋滞が起きるというのも、そういうところにも大きな
原因があるわけであります。
そういうふうな
状況が起きてまいります一番大きな
原因をいろいろ探求いたしました結果、
事務処理の
適正化をはかりますために、
登記申請の
不備の
補正をどのようにしてやるか、あるいは
不備な
申請が出ました場合に
登記所としてはこれをどう扱うべきかということを検討いたしまして、この
通達になったというふうに私承知いたしておるわけでございます。
ただ、この
通達の突如として出たような御印象をあるいはお受けになるかもしれませんが、いろいろこの
通達が出されるまでの
経緯を私聞いたところによりますれば、すでにこの問題はもう長年の問題でございまして、
昭和三十三年ごろからこういった問題が
議題になりまして、
法務局部内でもこれをどうしたらいいかということが問題になっておったようでございます。三十四年、三十七年にも
司法書士の
事務の
処理の
適正化をはかるために
民事局長の
通達が出されているようでございますが、なお改まらないという
現状でございました。
法務局長の
会同とかあるいは
登記課長の
会同の際にも常々この点を指摘いたしまして
事務処理の
適正化をはかってまいったのでございますが、これもなかなか思うようにいかないということで、数年来
法務局ことに
ブロックの
法務局単位に
不動産登記事務能率化方策研究会というのを設けまして、これは単にこの問題のみに限りません、
登記事務の万般の問題につきまして
能率化方策の
研究をさせております。その
研究会にも
本省からも出席いたしますこともございましょうし、また、相互の
意見の交換もいたしまして、約二年間この
研究会を通じて
研究されました結果が、
本省にも
意見が出されまして、それに基づいてこの
通達ができ上がった、こういうふうな
経緯になっておるのでございます。