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1965-02-16 第48回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月十六日(火曜日)    午前十時二十七分開会     —————————————    委員の異動  二月十二日     辞任         補欠選任      吉武 恵市君     源田  実君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         石井  桂君     理 事                 後藤 義隆君                 迫水 久常君                 稲葉 誠一君     委 員                 植木 光教君                 木島 義夫君                 鈴木 万平君                 宮澤 喜一君                 柳岡 秋夫君                 岩間 正男君                 山高しげり君    国務大臣        法 務 大 臣  高橋  等君    政府委員        警察庁警備局長  後藤田正晴君        法務政務次官   大坪 保雄君        法務省刑事局長  津田  實君        法務省人権擁護        局長       鈴木信次郎君        通商産業省鉱山        局長       大慈嘉久君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   寺田 治郎君    事務局側        常任委員会専門        委員       増本 甲吉君    説明員        警察庁警備局警        備第二課長    後藤 信義君        通商産業省鉱山        局鉱政課長    中西 申一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣送付、予備審査) ○訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律  案(内閣送付予備審査) ○検察及び裁判運営等に関する調査  (宇都宮大谷における採石事業に伴う人権問  題等に関する件)  (栃木県川俣の建設省職員不当逮捕事件に関す  る件)  (受刑者の刑の執行停止に関する件)     —————————————
  2. 石井桂

    委員長石井桂君) これより法務委員会を開会いたします。  本日は、まず、予備審査のため当委員会に付託されました裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案議題とし、順次提案理由説明を聴取いたします。高橋法務大臣
  3. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨説明いたします。  政府におきましては、第一審の充実強化をはかるための方策として、数年来逐次裁判官定員増加する等の措置をとってまいりましたが、裁判官定員増加は先般内閣に対して述べられました臨時司法制度調査会の意見においても提案されているところであります。このたびは、その一環として、簡易裁判所における事件の審理及び裁判適正迅速化をはかるため、簡易裁判所判事員数増加しようとするものでありますが、増加しようとする簡易裁判所判事員数は、人員充足見通し等を考慮した上、さしあたり十六人といたしております。  以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう、お願いいたします。  次に、訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案についてその趣旨を御説明申し上げます。  改正の第一は、訴訟費用等臨時措置法規定による執行吏手数料及び書記料の額を増加しようとする点であります。  御承知のとおり、執行吏手数料及び立替金については、執達吏手数料規則にその規定があるのでありますが、現在、その額については、訴訟費用等臨時措置法の定めるところによることとなっております。現行の額は、昭和三十八年四月二十日から施行された同法の改正規定によって定められているものでありますが、その後の経済事情推移等にかんがみますと、なお低きに失するものと考えられますので、このたび、一般勤労者の所得の増加その他諸般の事情を参酌し、差押、競売等についての手数料及び立替金中の書記料について増額を行なおうとするものであります。今回改定しようとする各個の手数料中若干のものにつきましては、その行為の実情を考慮して、やや高率増額をはかることとしておりますが、今回の改正によりまして、執行吏手数料等の収入は、全体として約三割五分程度増加するものと見込まれるのであります。  改正の第二は、一般公務員に準じて、執行吏の受ける恩給年額増額しようとする点であります。執行吏は、一般公務員の場合と同様に恩給を受けることになっておりますが、政府におきましては、最近の経済情勢にかんがみ、退職公務員恩給年額について所要の是正を行なう等の必要を認め、その恩給年額の計算の基礎となる仮定俸給年額を、現行の額にその二割に相当する額を加えた額に改定する等の措置を講ずることとし、恩給法等の一部を改正する法律案を今国会に別途提出いたしておりますことは御承知のとおりでありまして、執行吏恩給につきましても、これに準じて、その年額を引き上げる等、所要措置を講ずる必要があると考えられます。そこで、昭和三十六年九月三十日以前に給与事由の生じた執行吏恩給について、その年額を、一般公務員恩給についての現行仮定俸給年額に見合って定められている十二万八千円にその二割に相当する額を加えた額である十五万三千六百円を俸給年額とみなして算出した額に改定することとするほか、一般公務員恩給の場合と同趣旨措置を講じようとするものであります。  以上が訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますよう、御願い申し上げます。
  4. 石井桂

    委員長石井桂君) 以上をもちまして両案に対する提案に対する提案理由説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に行なうことといたします。     —————————————
  5. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、検察及び裁判運営等に関する調査議題とし、まず、宇都宮大谷における採石事業に伴う人権問題等に関する件について調査を行ないます。稲葉君。——ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  6. 石井桂

    委員長石井桂君) 速記を始めて。
  7. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 宇都宮大谷という所でいわゆる大谷石というのを採掘しているわけですが、これが非常に乱掘をされたりして大きな陥没があり、何人かの人が亡くなって、まだその死体の発掘もされておらないということ、さらに現在においてもその危険性があるということで、特に人権擁護局関係がこの問題を取り上げて再三議題とし、いろいろな決議をしたり、勧告などをしておるわけです。実は通産省の人から先に聞きたかったんですが、まだおいでになっていませんので、法務省人権擁護局長なりのほうから、この問題について人権擁護関係でいままでどういうふうに取っ組んできたのか、どこに問題点があるのか、こういう点からひとつ説明をしていただきたいと、こう思います。
  8. 鈴木信次郎

    政府委員鈴木信次郎君) 栃木県の大谷石乱掘等に伴う落盤陥没事故等によりまして付近住民生活権を侵害した事件につきまして人権擁護局で直接立件調査したという事例はございませんが、地元人権擁護委員昭和三十年以降今日までに被害者などからのいわゆる人権相談事件として大谷石採掘による人権侵犯事件を九件取り扱っております。そうして、そのうち、七件は解決され、二件がまだ現在未解決と、こういう状況になっております。  大体のその内容を申し上げますと、採掘によりまして通行を妨害されているものが二件、採掘によりかんがい用地下水が出なくなったというものが一件、それから採石場地下水の放流によりまして農作物、山林に被害を受けたというものが二件、それから採掘により、重要文化財が損傷されるおそれがあるというものが一件、それから採掘により住居の安全を侵害されたというものが二件、それから石材荷積みの騒音によりまして安眠を妨害されるというものが一件でございまして、そのうち、住宅の安全を侵害されたというもの、それから通行を妨害されているというもの、おのおの一件が現在未解決でありまするが、その他はそれぞれ解決をみておる状況であります。  なお、最近になりまして、以上のほかに、実情調査に入った事件があるのでございますが、それは、本年の一月五日に、地元人権擁護委員から、大谷地区危険区域に居住している四十七戸が立ちのきを迫られておるが、移転に必要な補償がない、そのままになっておる、不安な日常生活を送っているという情報を認知したのであります。さらに、同月すなわち本年一月二十七日、宇都宮人権擁護委員協議会常務委員会が開催されまして、この事件大谷石乱掘による公害事件として正式に取り上げまして、宇都宮地区法務局共同調査をすることに決定しております。したがいまして、最近のこの事件につきましては、現在公害事件として実情調査中であるというのが現在の実情でございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは法務省のほうではあるいはわからないかと思うのですが、通産省が来ればよくわかるんですが、落盤事故がどの程度いままであって、そしてどの程度陥没したかとか、それによって人命がどの程度失われたとか、こういうふうなことは、あるいは労働省にわかるかとも思いますが、どちらかでわかりませんか。
  10. 鈴木信次郎

    政府委員鈴木信次郎君) ただいま申し上げましたように、人権擁護委員協議会宇都宮地方法務局共同調査中でございまして、確定的なことはまだ申し上げることができないわけでありますけれども、従来までの地域住民の投書、人権擁護委員報告、それからこれまでの調査情報収集等を総合いたしますと、大体次のようになるのであります。すなわち、現在大谷石採掘業者は百名ぐらいありまして、そのうち約二十名は正式の許可を得ていない模様でございます。過去の落盤陥没等事故は数十回を数えており、一晩に約七千坪の大陥没を生じたこともありました。昭和二十七年以降の落盤陥没による犠牲者は十数人出ておりまして、そのうちには、ただいま御指摘のように、生き埋めになったまま死体が発掘されていないという人もいるということでありまして、同数以上の負傷者も出ているのではないかと思われます。特に、最近では、公道、河川及び公共施設等地下まで見さかいなく掘っているという情報も入っている状況でありまして、これらについてはさらに調査を進めてみたい、こういうふうに考えております。
  11. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いまの点は、法務省としては人権擁護のたてまえからいろいろやっておるのでしょうけれども、具体的な数字や何かの把握がこれから調査するのだというのはちょっと話が違うと思うのですが、労働省のほうでわかっておれば、わかっておる範囲でしっかりしたものを答えてください。
  12. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 大谷地区におきます採石業者は、事業場の数として九十七、労働者数は千五百五十二名、これは本年の一月一日の数字でございまして、そのように把握いたしておりますが、ただいま稲葉先生指摘災害でございますが、私どもが取り扱っております労働者死傷件数は、三十五年以降を御参考までに申し上げますと、三十五年で二百二十六人、そのうち死亡者が四人、三十六年は百八十四人、死亡者が二名、三十七年は百六十九名、そのうち死亡者が六名、三十八年は百七十五名、そのうち死亡者八名、三十九年は百四十一名、そのうち死亡者一名、かように相なっておりまして、過去においてはかなり高率災害発生を示しておりましたが、三十八年から昨年にかけまして、特に昨年は、死傷件数死亡者ともに著しく減少した傾向をたどっております。現状は以上のとおりでございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その中で生き埋めになってまだ死体が収容されておらないという者もあると思うのですが、非常に痛ましいことがあるのですが、これはどの程度になっておりますか。そこまではっきりわかりませんか。
  14. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) ただいまの生き埋めというお話でございますが、死亡を確認された者につきましては、先ほど申しました死亡者の中で含めて扱っておりまして、そのうち何名という詳しい数字はいま手元にございません。
  15. 石井桂

    委員長石井桂君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  16. 石井桂

    委員長石井桂君) それでは速記を始めてください。
  17. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま労働省のほうから説明があったけがと死亡、これは原因がどういうところにあると労働省のほうでは把握しておるわけですか。
  18. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先ほど大きな事故と関連した死傷件数を申し上げなかったのですが、御参考までに申し上げますと、先ほど三十五年以降の数字を申し上げましたが、三十五年以降の災害と特に死亡者関係を申しますと、三十五年の五月十日に陥没がございまして、これによって死亡者一名、重傷二名、それから同年の九月二日に落石——石が落ちてきたという事故がございました。これは、けが人はございましたけれども死亡重傷はございません。三十六年の四月二十八日に落盤がございました。これも若干けが人があったようですが、死亡とか重傷というものはございません。同年の八月二十九日に崩壊がございまして、これは民家の付近に亀裂を生じたという別種類事故が生じております。それから三十七年の四月二十日には崩壊がございましたが、これは死亡者とか重傷というような大きな犠牲者はございませんでした。それから同年の七月三十日に陥没がございまして、これはかなり大きな陥没で、死亡二名、重傷一名、それから同年の十一月二日に崩壊がございまして、死亡一名、重傷一名という事故がございました。それから三十八年の七月三十一日に大きな落盤がございまして、死亡一名、重傷一名という大きな犠牲を出しております。三十九年中は、先ほど申しましたように災害がかなり減少しておりまして、特に大災害と考えられるような種類のものはなかったように私ども報告を受けております。
  19. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いままでこういうふうな事故、特に落盤崩壊陥没、こういうふうなものがこの大谷地区に非常にあったというのは、これはどこに原因があるのですか。これは労働省でも通産省でもどちらでもけっこうですが、どこに原因があったというふうに把握されるのですか。
  20. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 労働基準行政の立場から申しますれば、御承知労働基準法施行過程におきまして、特に安全衛生の面につきましては、逐次規則という法形式をもちまして基準を整備してまいったのでございます。しかしながら、採石業等におきましては、土質あるいは石質の差異により、あるいは採掘方法違い等によりまして、画一的な基準を設定するということが困難な面もございます。しかしながら、できるだけ規則の整備をつとめますと同時に、特に大谷地区に対しましては、大谷地区石質作業環境に即しました安全指導基準を作成いたしまして、これはかなりこまかい基準でございますが、陥没崩壊落盤事故防止に関する基準であるとか、あるいは墜落防止基準、あるいは昇降——登りおりのはしごの作製に関する基準であるとか、照明に関する基準、それから石材を運びますところの運搬作業に関する基準といったような項目にわたりましてこまかい基準を設定いたしまして、その励行につとめてきたわけでございます。  しかし、何ぶんにも一方におきまして業者の自覚と協力が必要でございます。そのような観点から、昭和三十七年八月十六日に大谷石採掘公害防止対策協議会というものが設置されました。栃木県、宇都宮市、業者団体であります大谷石材公災害対策協議会労働組合の代表でございます宇都宮地区労働組合会議といった、公共機関団体、それから労働基準局が加わりまして、ただいま申しました大谷石採掘公害防止対策協議会という団体をつくったのでございまして、そのような官民一体の自主的な活動をも背景にしつつ今日まで監督指導を行なってきたわけであります。三十九年におきまして災害の減少をみておりますことは私ども心から喜んでおるのでありますが、しかし、一方におきまして、採掘地域変更等によりまして、先ほど法務省から御指摘のありましたような単に労働災害にとどまらぬ各種の問題を提起しているようでございます。私どもの所管いたします法律範囲を越える問題も少なくないわけでありますが、出先の労働基準局といたしましては、ただいま申しました協議会のワクを通じましてさらに問題の改善につとめていきたい、かように考えておる次第でございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 通産省おいでになったのでお聞きしたいのですが、三十八年の七月に採石法が一部改正になったわけですが、これはどういうふうに改正になったのですか、大谷地区との関連において御説明を願いたいと思います。
  22. 中西申一

    説明員中西申一君) 三十八年に採石法の一部を改正いたしまして、採石法全般につきまして監督強化をはかったわけでございます。その、原因といたしましては、昭和三十七年における大谷地区公害に負うところが大きな経緯になっているわけでございます。  改正内容といたしましては、いわめる採石業を営む場合に、採石業者に対しまして公害防止方法認可を受くべきことの命令をすることができる、それから緊急の場合には事業停止命令をすることができる、その他県との協調を行なう旨の規定が大きなものでございます。  この改正に基づきまして現在までで作業方法認可を受けるべき旨を命令いたしたものが十九件ございますが、特に当面問題となっております立山石地区危険地区につきましては、企業者十一名に対しまして公害防止方法認可を受くべき命令を出しております。これに基づきまして、最近では、二名ほどは採掘を中止し、それから四名ほどは他地区へ転換を準備しているということでございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この採石法の一部改正で、採掘開始前に届け出をすることとか、それから住居の下とか公道公共施設の下を掘ってはいけない、こういうことになったのですか。そういう点はどうなんですか。
  24. 中西申一

    説明員中西申一君) 事業事後届け出制度け従来からあったのでございますが、一部改正によりまして全体として事前届け出制度に切りかえわわけでございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いま言ったような柳掘開始前に届け出をするとか、住居の下、公道公共施設の下を掘ってはいけないというふうなことは、これは十分に守られているのですか、この大谷地区で。
  26. 中西申一

    説明員中西申一君) 個々の実態につきましてはいろいろなむずかしい問題もあろうかと考えられるわけでございますが、現在、東京通産局のほうから認可をした作業方法その他につきましては、年間で十回ほど現地に行きましていろいろ確認調査をいたしまして問題のあるところを回っているわけでございますが、それと並行いたしまして、先ほどの答弁にもございましたように、大谷石公害対策協議会のほうにもいろいろと資料の提供をいただきまして、総合的にいろいろな角度から監督をする、あるいは関係官庁の御協力を得る、こういうかっこうで監督をいたしております。
  27. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 監督なり勧告はいいんですが、現実にそういうふうな採石法改正になり、あるいは前からのものもあって、それがきちんと守られておるというふうに見ているのですが、あるいは、そこのところはそうでもないと、こういうことなんですか。
  28. 中西申一

    説明員中西申一君) 採石法改正以来におきまして監督を実施したその後の経緯につきまして、特に採石業監督という面からして大きな問題は発生していないように考えております。
  29. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この大谷地区一帯にいわゆる俗にいう危険地域というのですか、そういうふうな形で、ここは将来陥没があるかもわからないというふうなことで指定されている地域があるのですか。それはどういうふうになっておるのですか。
  30. 中西申一

    説明員中西申一君) 特に法的に指定地域というわけではございませんが、防止対策協議会等におきまして特に危険地域と見られている地域は、先ほどお答え申し上げましたように、立岩地区等がそういった地区に該当するというふうに見られておるわけでございます。そういった面につきましては特別に注意をいたしまして監督をいたしておるわけでございます。
  31. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは面積で言うとどの程度になるのですか。——大ざっぱでいいですよ。図面があるのじゃないですか。あの図面のやつは違うの。
  32. 中西申一

    説明員中西申一君) ちょっと数字のほうは調べておりませんが、おおむね十ヘクタール前後——ちょっと答弁が不正確で申しわけありませんが、十ないし二十ヘクタールぐらいでなかろうかという感じでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっとはっきりしなかったのですが、その図面にしるしのついているところは危険区域という法律的な指定はないわけですか。どういうわけですか。
  34. 中西申一

    説明員中西申一君) 法律的な指定地区ではございませんが、行政面から見まして非常に危険な地域というふうに見ておるわけでございます。
  35. 石井桂

    委員長石井桂君) 稲葉君にちょっと申し上げますが、政府委員として大慈嘉久君が出席いたしましたから、どうぞ。
  36. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 行政面から見て危険区域だというのは、立岩を中心として、ちょっとはっきりしなかったのですが、大ざっぱに言うとどの程度ですか。ヘクタールでも坪でもいいですが、立岩だけですか。
  37. 中西申一

    説明員中西申一君) 特に危険とみなされる地区は、十ヘクタール前後と思います。
  38. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 特に危険とみなされるという意味は、どういう意味なんですか。
  39. 中西申一

    説明員中西申一君) この地区につきましては古くから採掘が行なわれておりまして、いわゆる実態のはっきりしない空洞と申しますか、採取跡と申しますか、そういうものがたくさんあるのではなかろうかというふうに推定される地区でございます。
  40. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それについて、通産局なりあるいは基準局ですか、特に東京通産局からたくさんの人が行って何年がかりかの計画をつくって実態調査されているのじゃないですか。その実態調査内容なり、あるいは具体的なその結果といいますかね、それはどうですか。私の聞いている範囲では、通産局の人も行ってずっと下へおりて行くのでしょう。非常にあぶないし、なかなか危険が伴うので、十分な調査もできにくい点もあるのじゃないかと、こう思うのですが、たいへん御苦労なすっているということを聞いているのですが、どういうふうな計画のもとに現在どの程度まで進んで、その結果として現在実態調査の結論がどういうふうにある程度出ているのか、そういう点なんですがね。
  41. 中西申一

    説明員中西申一君) 大谷石採石関係監督上必要な地区につきまして、昭和三十八年度から三カ年計画でもって、空洞の状態、その他公害防止のために必要な調査を実施いたしております。現段階におきましては、三十八年度の調査が終わった段階でございまして、三十九年度は調査実施中であり、四十年度も引き続き調査を実施する予定でございます。三十八年度につきましては、百枝といたしまして六十ヘクタール、三十九年度は百五十ヘクタール、それから四十年度におきましては二百四十ヘクタールぐらいの地区にわたりましてそういった調査を実施することにいたしております。
  42. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 具体的にその調査というのはどういうことをどうやって調査するのですか。これはぼくもよくわからないのだけれども、何を調査するのですか。
  43. 中西申一

    説明員中西申一君) 非常に技術的な点もあるわけでございますが、わかりやすく申しますというと、空洞の所在だとか、その大きさだとか、それから公害に関連いたしまして土質、地盤の状況だとか、そういったものを調査するのが目的でございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、大谷石採掘公害防止対策協議会というのができているわけですが、現実にあれですか、この協議会の活動にも関連するのですが、いまこの危険地域の上にある四十七戸ですか、こういうふうな建物については、これは宇都宮市としてどういうふうな処置をとるというふうなことの報告通産省のほうに来ているのですか、どうなっているのですか。あるいは労働省のほうに来ているのか、どこへ来ているのですか。
  45. 中西申一

    説明員中西申一君) いわゆる正式の報告という形ではございませんが、そういった危険な戸数が四十五戸程度あるということを聞きましたので、地元のほうにそういったものにつきましては将来どういう方向で考えるかという照会をいたしましたところ、住居の移転という方法で考えておるけれども、実際には居住者のいろいろな事情がございましてなかなか簡単に移転をすることがむずかしいというような連絡を受けております。
  46. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ただほかに移転するということだけが問題でそれで解決するわけではないのですが、何か宇都宮市として市営住宅なりをつくってそちらのほうに全部入ってもらうとか、こういうふうな方法をとりたいというふうなことが宇都宮市のほうから東京通産局あてに三十七年ごろに来ているのじゃないですか。
  47. 中西申一

    説明員中西申一君) そういった方向で考えたいという連絡を受けております。ただし、現在四十五戸程度入っておる家は、非常に家賃も安く、したがって、市営住宅に入った場合の家賃の比較等につきましてなかなか簡単に移ってもらうことが困難な状況もあるというふうに連絡を受けております。
  48. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 宇都宮市のほうから東京通産局に来ておるのは文書で出て来ているのじゃないかと思うのですが、その点はどういうふうになっているのですか。もし文書があれば、それを読んで説明してくださいませんか。はっきりさしておいたほうがいいと思うのです。
  49. 中西申一

    説明員中西申一君) 文書では来ていないように聞いているわけでございますが、ちょっとその辺は正確ではございません。
  50. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いつごろだれが来てどういうふうなことを言ったのか、これは文書がないとしてももう少しはっきりしませんか。
  51. 中西申一

    説明員中西申一君) 一番新しいところでは、先週の土曜日にも電話でいろいろと打ち合わせいたしまして、やはり従来の線で考えているけれどもいろいろむずかしい事情があるというようなことで、あまりはかばかしい進展はいたしておりません。
  52. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私は立ちのきさせるのがいいとかいうことを言ってるのじゃないので、これは誤解を招くといけないのですが、しかし、問題は、もしまたそこで陥没でもあったときにはたいへんなことになるのですが、それに対して、将来こういうふうな陥没だとか落盤だとか人身事故なりあるいは物件事故なりそういうふうなものが起きないためには、一体これをどういうふうにしたらいいのですか。どこが責任をもってやるべきことなんですか。事故が起きますと、私もよく現地に行くのですが、けがをした、亡くなった、あるいは家屋が埋没した、いろいろあって、非常に危険だ危険だと言うのですが、そのときには非常にあれになるのですが、しばらくたつとまたおさまっちゃうという空気になって、しかも、一体責任がどこにあるのか、やれ通産省だ、労働省だ、県だ、市だといって、あっちこっちつっかけもちをしているのですが、そういう印象が非常に強くて、この乱掘による事故をどうやって将来起きないようにしたらいいかということのしっかりした目安がないように感じられるのですが、どこがやるべきことなんですか。どうなんですか、通産省でも労働省でもどこでもいいですけれども
  53. 石井桂

    委員長石井桂君) 村上労働基準局長、こちらを向いておりますから、どうぞ。
  54. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 採石につきましては、採石事業の監視の場合には、もちろん通産局のほうでいろいろ規制を講ずるわけでありますが、労働基準局といたしましては、基準法に基づきまして、大谷石採掘のような危険な事業場の設置移転、変更の際には、工事着手前の届け出の義務を課しております。そうして安全衛生に関する基準から一定の規制を設け、それに従わない場合には作業の停止を命ずるという法的な措置が講ぜられておるのでございます。しかしながら、これはあくまでも労働保護という見地から、安全衛生という観点からの事業場内施設の規制、こういうことに相なってくるわけでございまして、一般公共との関連におきます法的な規制ということになりますれば、それは採石法を所管する通産省の立場からの規制を受ける、かように相なるわけであります。たまたま法律の目的が違いますために、同一事業場につきまして異なった取り扱いがなされておるわけでありますが、しかし、現実にその地区におきましていろいろ問題が発生いたします際に、われわれといたしましてもこれを放置するわけにはいきませんので、先ほどお話にございました点に関連して申し上げますと、すでに大谷石採掘公害防止対策協議会におきましては協議会長の名前で採石事業主とそれから関係居住者に対しまして一種の勧告を行なっておるのでございまして、これは御承知かと思いますが、隣接地区との連絡、あるいは安全衛生基準の順守、あるいは公共施設の下を採掘することは法で規制されることの注意等も行なっておりまして、さらには、第二段階勧告におきましては、危険区域等を指定された地域内居住者ができれば他に安全な地帯を求めて家屋を移転されるように努めてくださいという勧告協議会名で行なっておるというのが現状でございます。法律の所管につきましては、ただいま申しましたような関係がございますけれども、現地におきましては、ただいま申しましたように、協議会組織を中心にいたしまして、関係業者住民に対して積極的に呼びかけを行なっておるというのが現状でございます。
  55. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、通産省の鉱山局の大慈局長から御意見を伺ったほうがいいのじゃないですか。——中西課長。
  56. 中西申一

    説明員中西申一君) 通産省採石法監督というものは、正確に申し上げますと、採石業者に対する作業方法その他の面における監督でございまして、それを監督することによって公害の防止をはかろうということでございます。これから新しく掘る作業につきましては、その結果公害の発生のおそれがある場合には十分監督いたすことになっております。ただし、この地区の採石は古くから行なわれておりまして、昔からある空洞等につきましてそれが非常に危険な状態にある。したがって、その結果公害のおそれがあるという場合には、現在の採石法の処置によっては権限がないと申しますか、処置できないようなかっこうになっております。しかしながら、先ほどの答弁にもございましたように、幸い現地に大谷石公害防止対策協議会が設けられており、それから通産省におきましてもいろいろ調査を実施しておりますので、連絡を密にして調査結果等は提供いたしまして、ケース・バイ・ケースで必要な処置がとれるように協力いたしておるというのが現状でございます。   〔委員長退席、理事後藤義隆君着席〕
  57. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 通産省にお伺いするのですが、そうすると、立ちのき勧告はしておるのですが、住民たちは、そんなことよりも、業者乱掘を取り締まることを要求しておる。建物の下をうんと掘っていったり、道路や河川の下を掘るということが行なわれておる。これは採石法に照らして監督というのがどういうようなことができるのですか。やめさせることができないのですか。
  58. 中西申一

    説明員中西申一君) 先ほど申しました採石法改正によりまして、そういった場合には公害防止方法書の認可を受けるべき旨の命令を出すことができます。さらに、必要がある場合には停止命令ということができることになっております。ただし、現在私どもの考えているところでは、採石業採掘行為によってそういう新しい事態が発生するという場合につきましては、大体そのおそれがないというふうに考えております。一定の監督のもとに採掘を行なっておるというのが現状でございます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 一定の監督のもとに採掘を行なっておるというのは、具体的にはどうやっているのですか。
  60. 中西申一

    説明員中西申一君) 公害予防方法書を提出いたさせましてそれを検討いたしまして、公害のおそれがないと認められる場合にのみこれを認可するという方法でございます。
  61. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 認可をしたのはそれはそれでいいでしょうけれども認可されないで現実にそういうふうなところを掘る人が相当にいるというのじゃないですか。現地ではそういうふうに言っておりますよ。そこに問題があるんじゃないですか。
  62. 中西申一

    説明員中西申一君) 公害予防方法書を提出せしめて認可を受けさせることを命令するのは、危険な地区に限ることになっておりまして、現在認可を受けないで掘っておるというものは、その地区ではあまり大きな危険はないというふうに考えておるわけでございます。
  63. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 もうさっき言われた行政面から見て危険な地域立岩を中心として十ヘクタールある。そこでいわゆる認可を経ないところの人も現実にはもぐりでやっているんじゃないですか。
  64. 中西申一

    説明員中西申一君) 最も危険とみなされる立岩地区につきましては、現在十一軒の業者が作業をしておりますが、これにつきましては全員公害予防方法書の認可を受けるべき命令を出しております。作業につきましての十分監督はいたしております。
  65. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 認可を受けるべき命令を出してどうしたのですか、認可を受けたのですか。
  66. 中西申一

    説明員中西申一君) 全部認可をいたしております。
  67. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 問題は認可を受けた者が認可どおりにやっているかどうかということ、これをどうやって判定するのかということが一つあるのと、それから認可を受けないでやっている人もあるのじゃないか、そういうふうに現地では言っているんですよ。労働省あたりではその辺はある程度つかんでいるんじゃないですか。それであぶなくてしようがないということを言っているんじゃないですか。そのほうを強く取り締まってほしいということを現地の住民は言っているんじゃないですか。その点はどうですか。通産省労働省と両方からお答えを願いたいと思います。
  68. 中西申一

    説明員中西申一君) 現在、東京の通産局におきましては、年間十回程度は職員が現地に参りまして県あるいは市当局から状況を聴取し、また、必要に応じて現場に行きまして調査をしているわけでございますが、現在のところ、新しい採掘行為自体にそう問題があるというふうには現地でも聞いていないわけでございますけれども、なおよく調査する必要はあろうと思います。
  69. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 労働省としましては、監督の実績を申しますと、大谷石地区に対しましては、三十九年中に、これは三十九年の四月からことしの一月までですから、十カ月ですが、百十九回監督をいたしております。それから三十八年中には百二十九回監督をいたしております。つまり、労働省といたしましては、直轄機関といたしまして宇都宮労働基準局なり、末端の監督署が各地に分かれておりますので、きめのこまかい監督を特に危険地区についてはやっているわけであります。しかしながら、遺憾ながら許認可については基準監督機関としては権限がないわけでありまして、ただ、労働者を使用する以上、届け出の義務がありますから、そういう観点から、先ほど申しましたように、事業場の数及び労働者数を把握し、そうして基準法に基づく法定基準違反についてはただちに是正させる、こういうような措置を講じているわけでありますけれども、問題は、一般住民に対する公害防止の目的から法的措置あるいは行政指導をするということができませんので、その点の制約を受けざるを得ない、こういうことになっております。しかし、もちろん問題の重要性にかんがみまして、通産局と申しましても東京のほうに宇都宮基準局から連絡するわけにはいきませんので、結局栃木県の商工部のほうに連絡をとっているという形で行政上の必要な連絡は行なっているということでございます。
  70. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 通産省としては、東京通産局ですか、あるいは本庁の鉱政課ですか、採石係というのがあるでしょう。あっても、なにか人が一人しかいないというじゃないですか。
  71. 中西申一

    説明員中西申一君) 現在、東京通産局の採石係は一名でございますが、採石法は鉱業法と姉妹法という関係になっておりまして、緩急に応じまして鉱業法の施行定員のほうも動員いたしまして必要な監督はやることになっております。
  72. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは、私は心配するのは、事故が起きて陥没がある、そこで人命やなにかの損傷が行なわれる、そういうふうなことが再び起きては非常に困るわけなんです。その危険性が、いま言ったようにあなた方のほうで言われる危険地域というのが直接それを意味しているかどうか別としても、そういう可能性があることは間違いないのですから、通産局なり労働省なり、県なり市なり、そういうふうなものがもっと徹底的な形で一致して再びこういうふうな問題が起きないように、三十九年は減っていますけれども、そういうようなことが起きないように、これは対策協議会等を中心としてしっかりした積極的な対策を立ててもらいたい、こういうようなことを私要望するわけです。  またあらためて機会があったら実態調査どもしてその結果として質問したい、こういうふうに考えて、きょうのところはこの問題はこの程度にしておきます。
  73. 後藤義隆

    ○理事(後藤義隆君) 速記をとめて。   〔速記中止
  74. 後藤義隆

    ○理事(後藤義隆君) 速記をつけて。  それでは、本件については、本日はこの程度にいたします。     —————————————
  75. 後藤義隆

    ○理事(後藤義隆君) 次に、栃木県川俣における建設省職員の不当逮捕事件に関する件について調査を行ないます。稲葉君。
  76. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは一応警察庁のほうにお聞きするのですが、二月十三日に、建設省の川俣工事事務所というのがありますが、そこの庶務課の経理係の高橋芳一君を栃木県警が逮捕したということで、その家宅捜索などしておるという事件なんですが、これを先にお聞きしたいと思いますが、これについて警察庁のほうで把握をしておる事件の経過はどういうふうなことになっておるのでしょうか。
  77. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 御質問は、二月十日に栃木県の藤原町所在の建設省川俣ダム工事事務所の連絡所の構内車庫で公務執行妨害の事案がありまして、高橋芳一君を検挙いたしたことであります。  この経緯でございますが、二月十日に、昼休みの時間を利用して職場集会を開く、こういうことがあったのでございますが、その際に職場集会の場所を工事事務所の中の構内車庫を使う、こういうことで、その際に工事事務所の側としましては、かねて建設省としては「建設省庁舎における庁内取締りに関する訓令」、いわゆる訓令十六号と称しているのですが、これが出ておりますので、工事事務所長としては、構内の建物をそういう目的に使うという際には使用許可願いを出してもらいたい、出さなければいけない、こういう警告をしばしばやったようでございますが、警告に従わないで、二月の十日昼過ぎから職場集会が開かれた。そこで、工事事務所といたしましては、違法な庁舎使用を中止するという管理権に基づく解散の命令といいますか、それを伝えたい、また、違法に使っておる状況を写真撮影をしておきたい、こういう処置をとろうとしたようでございますが、そういった際に、被疑者らによって妨害を受けて、課長が頭にこぶをつくるというようないわゆる暴行事案があった、こういうことでございます。   〔理事後藤義隆君退席、委員長着席〕  しこうして、その事実を翌十一日の午前十一時ごろに私のほうの栃木県警の今市警察署に事件発生の届け出があって処置してもらいたい、こういうことであったわけでございます。  そこで、栃木県警としては、即日捜査に着手をいたしまして、被害者並びにその他参考人の取り調べをいたしました結果、そういう犯罪事実がある、こういうことがわかりましたので、翌十二日に公務執行妨害罪によって、まず被疑者高橋の逮捕状及び捜索許可状——四カ所の捜索許可状でございますが、その請求を行なって、発付を受けました翌二月十三日に令状によりまして被疑者を逮捕し、令状所定の場所を捜索をして取り調べを行なったのでございます。そうして、二月の十五日に逮捕罪名により宇都宮地検に身柄を送致をいたしまして、同日十日間の勾留状が発付せられて、現在被疑者は宇都宮市内の小幡拘置所に収容されておる、こういう事件でございます。
  78. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 公務執行妨害というんですけれども、それはどういうふうな公務なんですか。
  79. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) ただいま概況の説明のとき申しましたように、当該公務と申しますのは、事務所側としましては、要するに管理権に基ついて庁舎管理を行なっておるわけでございますが、その管理権によって、庁舎の使用はこれは許可なくして他の目的に使うわけにはいかぬ、こういうことで、その許可を求める警告をしばしば発した。ところが、警告に従わない。したがって、その違反の状況を写真にとると同時に、違反の集会をやめさせたいということで、課長二名が所長の命を受けてさような処置をとろうとした。これがいわゆる公務執行妨害の際の公務性の問題であろうと考えております。
  80. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 訓令第十六号ということを言われましたけれども、これはどういうふうなもので、その根拠となる具体的な法律上の条文はどこにあるんですか。
  81. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 詳細は警備二課長から御説明申し上げますが、国有財産法の規定に某つきまして行政財産の管理権が建設大臣にある、その管理権に基づいて建設大臣が訓令を発布しておる、その訓令を所長は守って当該自分の管轄下にある事務所を管理をする、こういうことでございます。
  82. 後藤信義

    説明員後藤信義君) ただいま局長から申し上げましたように、国有財産法の規定によりますと、国有財産法第五条に、「各省各庁の長は、その所管に属する行政財産を管理しなければならない。」という規定がございます。この行政財産の内容は第三条にございますが、当該の事件の場合の行政財産は、そのうちの公用財産、つまり「国において国の事務、事業又はその職員の住居の用に供し、又は供するものと決定したもの」と、こうありますが、この公用財産であると存じます。そのうちで、「国有財産の取得、維持、保存及び運用」を「管理」ということばで言うということは、この法律の第一条にございます。そういたしまして、さらに第九条には、「国有財産の事務の委任」という規定がございまして、「各省各庁の長は、その所管に属する国有財産に関する事務の一部を、部局等の長に分掌させることができる。」という規定がございます。この法律趣旨にのっとりまして、建設大臣の訓令が昭和三十七年に建設省訓令第十六号として出ておるわけでございます。  その訓令の内容は、これはかなりいろいろなものが書いてございますけれども、その中に、地方建設局におきましては、庁舎等の取り締まりの責任の区分がいろいろ書いてございますが、この具体的なただいま問題になりました工事事務所の関係では、事務所長がこの庁舎管理の責任を有する、こういうことになっておるのでございます。そういたしまして、さらにこの訓令の第三条では、「庁内取締責任者は、必要に応じ職員のうちから補助者を指定することができる。」と、こういう規定がございますので、ただいま局長から御説明申し上げましたように、この当日におきましては、管理の職にあります六名の職員を使って庁舎の管理の規定の励行をはかったのでございますが、具体的に暴行を受けましたのは工務課長でございますが、庶務課長と工務課長とが並んでおって、特に工務課長のほうが頭にこぶをつくるほど突き飛ばされたようでございますが、この庶務課長あるいは工務課長も訓令の第三条の規定によりまして庁内取締責任者からその補助者として指定されたものであると、こういうふうに私どもは承っておるのでございます。
  83. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その訓令第十六号というのは国有財産法に基準するということのようですが、建設省がいろいろ人事課やそういう人たちを集めて、何といいますか、組合対策でやっておる秘密書類があるわけです。それには、「訓令第十六号の法的根拠は何か。」と、これは問10のですが、いろいろな問が出ているのですが、問10の答を見ると、「訓令第十六号は、国が当然有している権限、即ち人的および物的の面において規律する権限を、訓令という形式で定めたものであって、根拠とする具体的な法律上の条文はない。」と、こう書いてあるのですが、これはどうなんですか。そうすると違うのですか。
  84. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 私は建設省が組合対策としてこういう訓令を出しているかどうかということはちょっとわかりませんが、私どもがこの事件を扱いましたのは、やはり先ほどお答えしたような、建設大臣として国有財産法に基づいて行政財産の管理の権限責任を有する、これに基づいて訓令を制定しておるものと、こういう解釈でございます。
  85. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 この訓令第十六号が組合対策として出たと、こういうことを直ちに言うわけでないわけです。そういうのではなくて、組合対策としていろいろなことをきめた秘密書類があるんですよ。マル秘で「資料」というのが建設省から出ておるのですが、それにはいろいろな問があるのです。一は「政治的行為関係」、二が「職員団体との交渉および休暇関係」、その3が「「対応の原則」の理論ずけは何か」、まあいろいろあるのですが、たとえば「リボン斗争の限界はどうか。」、「組合壁新聞等の上司誹謗の記載文と名誉毀損罪、侮辱罪の関係はどうか。」と、いろいろな問と答が出ておるわけですよ。建設省の中でやっておるわけです。その中で、いまの組合壁新聞の場合に関連して、9に「特に8と関連して、組合執行部の機関責任の有無はどうか。」、それから10のところに「訓令第十六号の法的根拠は何か。」とあって、いま言ったような「具体的な法律上の条文はない。」と、こう書いてあって、「ただし、手続的には、国家行政組織法第十四条第二項の規定に基づいて行なったものである。」と、こういうふうに書いてあるのですね。だから、国有財産法よりもこのほうがいいんじゃないかと思うのですがね。それから「訓令第十六号違反者を処分する場合の根拠法規は何か。」と、ここまで書いてあるのですが、これはよけいなことですが、それは別として、そうすると、人がいろいろな行動をとっているときに写真をとるのはどういう場合に許されるのですか。勝手にどんどんとっていいのですか、その写真を。
  86. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) これは先生すでに御存じのとおりに、写真をとれば悪いか、違法になるかと、こういう問題がございますが、これは特別な禁止規定というものは現行法には私はないと思います。したがって、この場合は、管理権に基づいて、違法なる行使状態があるから、その状況を写真にとろう、こうしたのだろうと思いますが、私どもの仕事の面で考えている場合には、犯罪捜査のために必要である、あるいは警察がそれぞれ必要な処置をとらねばならぬという具体的な必要性のある場合には写真をとることは当然職務行為として認められるという見解をとっておりますが、問題は、これまた先生御承知のとおりに、人はいかなる場合にもゆえなくしていたずらに自由を侵されない、こういう私は権利を持っておると思います。つまり、そこで問題になるのは顔写真の問題であろうと思います。顔写真については、これはやはりそれぞれの具体的必要性というものが特にあって、公共福祉とのかね合いの問題になってこようかと、こういうふうに考えておりますが、本件の場合には、当初申しましたように、庁舎を違法に使っておる、それを管理権に基づいてその状況をはっきりさせておきたい、こういうことでとろうとしたものであって、具体的にその状況をとろう、こういうことで手がけたわけでございまして、顔写真と直接の結びつきもなかろう、こう思いますが、いずれにしましても、そういう意味合いから、本件の写真撮影は当然管理権の中の一つとして容認をせられる行為である、こういうふうに私自身は解釈をいたしております。
  87. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、これはガレージの中でやったのですけれども、ガレージの外で、庭でやった場合にはどうなんですか。これもいけないのですか、昼休みにやっても。
  88. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) やはりその庭が管理権者の管理のもとにあるという場合であれば、これは私はやはり管理権者の承認を受けて使用しなければならないもの、こういうふうに考えます。
  89. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 勤務時間中にやったというなら話はまた別ですが、昼休みに庭でやって、一体具体的に管理権がどういうふうに侵害されるのですか。
  90. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 私は、昼休みの時間を使うという問題と管理権のもとにある施設を使うという問題とは、これはやはり別の観点で問擬せられてしかるべきだろう、こういうふうに考えております。
  91. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、管理権があるとして、庭もその管理権の中に入るのですか。
  92. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは先ほど読み上げました「建設省庁舎における庁内取締りに関する訓令」、いわゆる訓令十六号でございますが、それの第一条に、「この訓令は、建設省の組織に属する行政機関において日常の事務又は事業の用に供する建物及びその敷地並びにこれらの附属設備(以下「庁舎等」という。)における庁内取締りに関し必要な事項を定めることにより、庁舎等における秩序の維持を図り、かつ、災害の防止に資することを目的とする。」という規定がございまして、そういたしまして、第五条で、「庁内取締責任者は、法令又はこの訓令に別段の定めがある場合のほか庁舎等を公務以外の目的で使用させてはならない。ただし、当該行政機関の日常の業務の遂行を妨げず、かつ、庁舎等における秩序の維持及び災害の防止に支障がないと認められる場合に限り、庁舎等の公務外使用を許可することができる。」ということで、あと以下手続の規定がございます。この規定がございますので、当然敷地内はこの中に入るというたてまえをとっておるのでございます。
  93. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 私の言うのは、それはそれとして、この場合の車庫は現実に何も使われていない車庫ですから、そのときは何にも車はなかったわけですから、寒かったからそこへ入って昼休みというのと建物の使用ということは別個の問題としても、そこでやるということによって一体具体的に庁舎の管理権というものはどういうふうに侵害をされたのですかね。別にそこをほかに使う目的があるとか、そういう予定があるものをやったということで妨害されたということなら話は別ですけれども、何らそういうふうな危険性というものはないわけですから、それを使うというふうなことは当然集会の自由ということの中に入ってくるのじゃないですかね、憲法で認められた。ですから、それとの比較でこの十六号というものを考量しなければいけないのじゃないですか。具体的にそこは何かほかに使う目安があったのだ、これをこういうふうに使うのだから困るというふうなことを言ったのにそこを使ったというなら話は別ですけれども、何もそこは使われていないという段階だというならば、そこを使ったところで別に具体的に管理権というものを侵害したごとにはならないのじゃないですか。そこはどういうふうに考えられるわけですか。
  94. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) おっしゃるような考え方もあろうかと思いますけれども、しかしながら、この財産はいわゆる公用財産でございます。したがって、公の公務のために使用すべき財産でございます。それを組合目的で使っておるということでございますので、その面においてはやはり管理権が侵害をせられておると、こういうふうに私は解釈をいたします。したがって、この問題は、おっしゃるように、当日まあ車庫の中は使っていない、また油等があってそこでたばこをのめばあぶないといったような状況さえなければ、これは私は許可をしてしかるべきだ、こういうふうに思いますが、同時にまた、組合側も、あまり四角ばらずに許可申請をすればいいじゃないか、こういうふうに私自身は考えております。
  95. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これは本件からはずれるかもわかりませんが、人の写真を承諾なしにとっていい、ことに顔写真というものをとっていいということの説明があったのですが、そうすると、ちゃんと許可を得てデモならデモをやっている、これは違法なものではない、こういう場合によく警察の人がパチパチ写真をとっているようですね。あれはどうなんですか。
  96. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) いわゆる御質問は状況写真であろうと思います。さように解しますというと、最近のデモその他の実態が、これがとかくまあ何といいますか公共的な表現自由の範囲を逸脱をしていろいろな事案に発生する場合が多いわけであります。したがって、そういう具体的なデモ等がある場合には、警察としてはそれを状況写真としてとってそうして犯罪の予防につとめる、また警備配置の資料にする、こういう必要性があるわけでございまして、写真をその場合にとることは、これは警察として認められた行為である、こういうふうに私は解釈をしておるのであります。また、いままでもこの問題についてはしばしば判例等もございまして、警察の当然の職権行為であると、こういうふうに認められておるように私自身は考えております。
  97. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、正規の許可を得たデモが行なわれているときに状況写真をとる、それが犯罪の予防と関係があるような話ですけれども、犯罪の予防とどういうふうな関係があるのですか。
  98. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) そういったデモの際には警察としては従来のデモの実態に徴していろいろな警備の計画を立てるわけでございますが、そういった警備計画の資料とせねばならぬ、こういう意味合いから状況写真をとる場合がしばしばあるのでございます。
  99. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その点はまあ争いがあることだと思いますし、それから大阪の裁判所の判決があったのは、具体的な顔写真を正規なもののときにとったのだ、だからこれに対しては公務執行妨害は成立しないという形のものだというふうにも考えられるのですがね。あれはその後どういうふうになったのですか。ちょっと本件とははずれますけれども
  100. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) お説のように、今日までそういった写真撮影がいけない、したがって公務執行妨害が成立しないという判例があったのは、大阪地裁のあの一件だけであります。それ以外はまあみんないいということになっていますが、あの場合は御質問のようにやはり顔写真の問題であろうと、こういうふうに私記憶しております。
  101. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、この場合は、あれですか、顔写真をとってもいい範囲に入るのですか、このガレージのところのことは。あるいは、状況写真しか許されないことなんですか。
  102. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) この場合は、この集会が不許可の違法な庁舎使用でございまするので、状況写真はもちろんのこと、顔写真も私自身は認めてしかるべきである、こういう解釈でございますが、この場合に具体的に顔写真をとったとかとらぬとかという問題とはもちろん別問題でございます。
  103. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで、話は、いまの点は非常に議論のあるところですが一応おいて、別のところに入るのですが、そうすると、これを逮捕するのか家宅捜索かで約二十人か三十人の警察官が朝早く出かけていったのですが、何人ぐらい行ったのですか。
  104. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私どものほうで報告に接しましたものは二十八名でございます。その内訳は、制服が四名で二十四名が私服でございます。これは先生おっしゃいましたように逮捕者は一名でございますけれども、捜索をいたしました個所が、場所といたしまして、令状は四通でございますが、手分けをいたしましたので六カ所いたしております。なお、検証許可状をもらいまして犯行の現場及びこれに関連する事務所等も検証しておりますが、その場合にも人手をさいております。そういたしますと、合計しますと二十八名でございますが、逮捕に当たった者が四名、それから検証に当たった者が六名、捜索に当たった者十四名、それからほかに指揮官といいますか指揮者が四名ということで二十八名と、こういうふうな報告に接しております。
  105. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはこの職場大会があって、そこに、警察の言うようなことだとしても、見ておる人が一ぱいいる。しかも、見ておる人はいわゆる非組合員の人が相当いるわけで、その人が警察へ十一日に行って届け出があったと。これは相当長い間警察にいて状況を話ししておるわけですから、そこで十分証拠は固まっておるわけですね。何も逮捕状をとって逮捕しなきゃならぬ必要はないのじゃないですか。
  106. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私ども捜査の基本的な態度はできるだけ任意でやるという方針ではございますけれども、本件の場合は、冒頭に御説明申し上げましたように、集会の場所におったのは五十名ばかりでございます。そして現実に暴行を加えたそのこぶをつくった相手方はこの被疑者一名でございますけれども、ほかにこれと共同しているようなかっこうも見られましたし、これは前々からこの管理規定に基づいて使用の許可申請をしなさいということを何べんも言っておるにかかわらずそれをやらない、そうして庁舎を勝手に使用して、そしてそれが違法であるから後日のためにということで写真を撮影するというこういう行為に出ました工務課長にけがをさせるというようなことでありましたので、その情状私ども悪質であると考えざるを得ないと思います。また、現場の状況から見まして、ただいま申し上げましたように、ほかに共犯者もあるというふうにも考えられましたので、任意捜査によりましてはとうてい的確な捜査ができないということで、事案の真相を究明し、的確な捜査をするためにやむを得ず逮捕することにして、令状を請求し逮捕をしたと、こういうことでございます。
  107. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 事件が悪質であるとか悪質でないとかということと、それと一体逮捕と関係があるんですか。そういうのはちょっと法律的におかしいのじゃないですか。
  108. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 御指摘のように、犯罪の情状云々ということと逮捕の必要性とは必ずしも直接関係はございませんが、先生御承知のように、明らかに逮捕をする必要がないと認められる場合には逮捕状を出さないということがございますけれども、その明らかに必要でないと認められる例の中にやはり犯人の境遇であるとかあるいは犯情であるとかというようなことが書いてございまして、そういうことからいろいろ判断をして犯罪の証拠の隠滅であるとかあるいは逃亡のおそれがある等、明らかにそういう状況が認められないときには逮捕状を出さないということが刑事訴訟規則にございますから、反面からいたしますと、犯情は直接逮捕の必要性にはかからないと思いますけれども、そういうことをいろいろ勘案いたしまして、端的に申しますならば証拠隠滅というようなことで逮捕の必要性があると、こういうことで逮捕状を請求したわけでございます。
  109. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 証拠隠滅ということを疑う相当な理由があるとかこういうようなことなら、法律の条文に入ることですから、それはそれとして判断の問題になると思うのですが、この場合には、いわゆる被害者側と称せられる人の三名か四名が前の日に警察に来て詳細な調書がとられているのじゃないですか。そこはどうなっておりますか。十一日に警察に行っておるんでしょう。
  110. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 十一日の日に、所長と庶務課長が今市署に出頭いたしまして状況を申し述べております。
  111. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、証拠は固まっておるんじゃないですか。どうなんですか。
  112. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私ども被害者からの調書あるいは所長からの状況調書のみでは、その犯罪事実を十分に——これ以上の証拠が必要でないというふうに考えるのは不当であると考えます。
  113. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そんなら、そこに五十名ぐらいの人が出ておったということですから、そのうちのある程度の者を呼んで事実を聞いてみて、それが認められるか認められないかを判断したらいいんじゃないですか。そういうことはやらなかったんですか。
  114. 後藤信義

    説明員後藤信義君) いま申し上げましたように、十一日に所長と庶務課長が出て参りまして、その際にこの係から事情を聴取して調書を作成しておりますが、午後になりまして工務課長——これは被害者でございます。工務課長に出て来てもらいまして、そのほうの調書も作成しておるわけでございまして、そういう意味被害者及び参考人の取り調べは十一日の日にやっておるわけでございます。
  115. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはわかったのですが、その組合員の中でも四、五十人いるわけですから、その中から何人かを呼んでその間の事実を聞いたのではいけないんですか。聞いて、それが認められたということになると、証拠は固まるのじゃないですか。あなた方の言われている被害者側だけで足りないというなら、補充の意味でそういうふうな形のものをとってやってどうしていけないんですか。
  116. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) おっしゃるように、その五十 のうちの数名から任意に状況を聞いてそれで証拠を固める、それでいいんじゃないかと、こういうお説ごもっともだと思います。しかし、それはそういった方が必ずや明白にそういった事実を述べてくれるという前提でありませんと、調査前にそれを期待をしてそういう処置をとることはわれわれとしてはちょっといたしかねるのであります。この事案の場合には、共犯といいますか、共同謀議というか、そういう疑いもございますし、また、具体的に事案の起きたときに、高橋なり被疑者のみならず、その事前に妨害をしようとしたという事実もございまするので、相互の間の何といいますか、共謀関係、共犯関係、これを明確にせねばならぬと、こういうことでございますので、やはりこれは強制捜査に踏み切ってやることが事案の真相を明らかにするゆえんである、こういうふうに私どもは判断をいたしたわけでございます。
  117. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ほかにも共犯者がおるかもわからないから、その間の相互の関係を明確にしたいということは、一体逮捕の理由になるんですか。
  118. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) 共犯の事実を明らかにして、そうして共犯者がおればそれをやはり摘発する、そこで強制捜査に踏み切らなければやはり相互の間で証拠の隠滅をせられるおそれがある、こういうふうに私ども判断をしたわけでございます。
  119. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 証拠の隠滅、証拠の隠滅と言うけれども、公務の執行を妨害した、公務か公務でないかということは、これは法律的な判断の問題なんだと。こぶができたかできないかということも被害者側でわかっているのだということになれば、そこで問題はおのずから解決をしているのじゃないんですかね。ですから、すっかり証拠は整っている。あるいは法律判断は残っているとしても、これは別個の問題だと、こういうことになれば、なぜ逮捕をしなければならないのか。証拠の隠滅、証拠の隠滅と言うけれども、具体的に本件の場合には一体何が証拠の隠滅になるんでしょう、考えられる証拠の隠滅というのは。
  120. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これはただいま捜査中の事件でございますから、あまり立ち入ってはと思いますけれども、いまお話がございますので申し上げますが、これはやはり共同で犯行がなされたというそういうふうに認定される事件でございます。十三日に逮捕された者は一名でございますけれども、共同で他に被疑者が——被疑者といいますか、犯行に加功した者がいるということをほぼ推定しておるわけでございますが、そういたしますと、これを任意でいたしました場合には、これは何と申しましてもやはりお互いにしめし合わしてこちらのほうの調べの内容からいろいろ口うらを合わせるというようなことで証拠の隠滅がはかられるという心配は十分にあるわけでございます。したがいまして、先生おっしゃいますように、被害者と、あるいは若干の参考人と、こういうことだけでは私どもとても従来からの事件状況——ほかの事件でございますが、そういう状況を見ておりまして、とてもこれだけでは十分でない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  121. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 現実にその被害者と称せられる人がけがでもしているわけなんですか、大きな。大きなというのか何というのか……。
  122. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは胸のところを三べんばかりこづかれてよろめいて、そのときに後のほうに置いてありましたトラックのバックミラーに頭の後を打ちつけてこぶをつくった。それでその打ちつけたのが二回にわたった、こういうふうに私どもは聞いております。
  123. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それだけの事実がはっきりしているなら、それでいいんじゃないですか。なお共謀関係があるかもわからない、それらのほかの人の証拠を固めるという意味で本人を逮捕するというふうにとられると、ほかのほうの自供をとるために逮捕しているというふうにもとれるんですね。そうではないわけですか。
  124. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 繰り返して申し上げますように、これは一人の単独犯ではなくて、共犯が他にあるという事件と私ども考えております。そういたしまして、私がいま申し上げておりますのは、警察側の報告によりまして申し上げておるわけでございまするので、そのようにはっきりしているならばと、こうおっしゃいますけれども、私どものほうでこうだと言うことがなかなか裁判になったような場合に取り上げられないような状況、これは先生十分御承知のことでございますので、やはり念には念を入れて証拠の保全と収集をするということは、これは私ども当然にやらなくちゃならないことだと考えておるわけでございます。
  125. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、この事件で一体何一何を明らかにすればいいわけですか。公務か公務でないかということ、これは法律判断の問題でしょう。事実認定としてはそういう暴行——かりに暴行として、暴行があったかなかったかを認定すればいいんじゃないですか。
  126. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは、繰り返して申し上げますように、単独犯ではございませんで、共犯のある事件でございますので、この逮捕されました一名だけの犯罪事実の立証というだけで十分ではありませんで、やはり共同犯が他にいる事件、つまり共同でなされた事件であって、そのうちのたまたま一人が逮捕されておる、こういう事件であると、こういう観点からいたしますと、私どもまだまだこれで捜査は十分だとは考えてないわけでございます。
  127. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 共同でやっているように推定するという根拠はどこにあるのですか。
  128. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは工務課長が突き飛ばされてこぶをでかしたわけでありますけれどもも、その前にやはり他の者が他の課長の前に立ちはだかって気勢を示したような状況も出ておるわけでございまして、これが当日たまたま一人の者が突発的にやったというふうには考えられないであろうと思うわけでございます。
  129. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、写真をとろうとしたから、写真をとらしちゃいけないというので手をカメラの前でとられないようにしているのを言っているのだと、こう思いますが、いずれにしても、そういうふうな推定が出てくる根拠——ぼくは、警察庁当局としては、栃木県の警察ではなくて、あなた方としては、おそらく、ここまでやらなくてもよかったのじゃないか、逮捕やなんかは、と思っているけれども、もうやってしまったものだから、その合理的な理由というものを発見しないと下部に対して非常に困るわけだ。同時に、下部に対してそれは悪いということも言えないから、その合理的な理由というものをいろいろ考えてそういうふうなことを言っているのじゃないかと思うのですけれども、そういうふうにとれるんです、善意に解釈すればするほど。善意か悪意かわからないけれども、とにかくそういうふうにとれる。  そうすると、家宅捜索を四カ所ですか、六カ所ですか、家宅捜索を四カ所もやらなければならない、この事件でどうしてそういうふうな必要性があるわけですか。皆が共謀してぶんなぐらせた、公務執行妨害をやる共謀をほかの連中もやっているんだという前提のもとにこういう家宅捜索をやっているのですか。なぜこういう家宅捜索が必要なんでしょうか。
  130. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 事件内容に立ち入って話しをするということは非常にぐあいが悪いと思いますけれども、何べんも繰り返して申し上げますように、これは単独犯ではございませんで、共犯事件と認定されますので、私どもとしてはこの程度の家宅捜索は必要であるというふうに考えておるわけでございます。
  131. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、家宅捜索は、それは何を目的にしているのですか。何を押収したいためにやったのですか。
  132. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 当日車庫の中で集会をやるというようなこと、それからさらに進んで、管理者側のかりに制止行為というようなものがあっても強行をしてやるといったようなそういう趣旨のものがあれば、当然これは証拠資料として価値があるわけでございまするので、そういうような資料を収集したい、こういうことでやったわけでございます。
  133. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、かりに管理者側の制止を振り切って、それを阻止して職場集会をやるという資料はあったとしても、それは本件の犯罪事実そのものとは関係がないんじゃないですか。罪体とは関係ないことじゃないですか。
  134. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私どもはやはり関係があると考えております。
  135. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 非常な拡大解釈だと、こう私は思いますね。しかも、この程度——相手がこぶをつくったかどうか、これはこの人がつくったかどうかは別として、その程度のことで二十八名の警察官が行っている。これは川治に行ったんでしょう。ずいぶん遠いわけです、鬼怒川からまだ二、三十分かかるところですからね。非常に遠いところまで二十八名の警察官が出かけて行って、やれ家宅捜索だ、やれ検証だと、それほどまでにやらなければならない事件なんですか。これはその人が死んじゃったとか、被害者が一カ月も二カ月も重傷を負った、こういうようなことならこれはまた話は別だと、こう思いますが、まあどうということもないようなことでこんなに大げさなことをやって、いなかですから、いかにも労働組合というものは非常に悪いことをするものだという印象を周囲に巻き散らすために、結果としてそういうふうな形を意識してやったというふうにも考えられるわけですよね。なんでこの程度事件で約三十名近い警察官が行かなければならないのですかね。そこら辺でちょっと暴力団がこの程度のことをやったときに、一体どうするんですか。逮捕をしないじゃないですか。
  136. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 先生おっしゃいますように、山の中の交通不便なところで発生いたしました事件でありますので、逆にある程度の態勢を整えて行ったということは、これは事実でございます。と申しますのは、通常一般の刑事事件などでございますと、犯罪捜査に向かった警察官が抵抗を受けるというようなことは、まあ逃走のために抵抗といいますか、ある程度の力を使うというようなことは、これは例でございますけれども、正面切って警察官の警察権の行使が違法であるというふうなことで大ぜいで抵抗をするというようなことは、ほかの一般の刑事事件では例がほとんどないと思いますけれども、事こういうような事件でございますというと、いわゆる公安事件では、それはもう警察官がかなり激しい抵抗を受けるのが常でございます。今度の場合も、集会に参加いたしました者が五十名ばかりございますので、状況によりましてかなり激しい抵抗を受けた場合に、本署からかなり離れているというようなことで職務執行が十分にいかぬというようなことでは相なりませんので、これはある程度の態勢を整えて行くのは当然のことであります。そういたしまして、捜索の場所も幾つかございますので二十八名になったと、こういうことでございます。
  137. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 現実に家宅捜索に行って激しい抵抗を受けて、警察官がけがをしたり、ぶんなぐられでもしたのですか。
  138. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 本件の場合にはございません。私の申し上げましたのは、本件の場合にあるかないかということは、やってみないとわからないというのはなんですけれども、わからないわけでありまして、一般の例などを参考にいたしまして、この程度事件でありましたならば二、三十名行くのが普通のやり方だと考えております。
  139. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 家宅捜索に行ったときに、捜索令状は、あれですか、写さしてくれと言うと、写させなければならないことになっているのですか。そごはどういうふうになっているのですか。
  140. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは私承知いたしておりますのは、捜索令状は示せばいいのであって、写させたりする必要はない、こういうふうになっていると存じております。
  141. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、写させてくれという要求があったときには、現実には写させているのじゃないですか。
  142. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 私どもの指導と申しますか助言では、各県でそういうような場合においては必ずしも写させる必要はないと、こういうことを言っているわけでございます。
  143. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、あなた方の言い分によっても、家宅捜索の結果として、これは関東地本ですかあるいは全建労の本部の指示、こういうふうなもの、あるいは春闘の手引、いろいろな人のメモ、委員長のメモ、こういうようなものを押収しているようですが、そうすると、それらは、あれですか、そこで見てそれが現実にこの事件に必要であるかどうかということの判断はできかかったわけですか。
  144. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 一応の判断をいたしまして、本件に関係のあると思われるものを押収したわけでございます。
  145. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、労働組合の上部団体からの指示とか春闘の手引とか、そういうふうなものが本件にどういう関係があるのですかね。その中に何か違法な集会でも何でもいいからどんどんやると書いてあったのですか。かりに書いてあっても、本件そのものとは関係ないのじゃないですか。
  146. 後藤信義

    説明員後藤信義君) おっしゃるのがどういうものであったかわかりませんけれども、私どもとしては、本件の立証に必要なものを押収したと、こういうふうに承知をしておるわけでございますが、これ以上立ち入ってお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  147. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 現実の捜査の問題ですから、あまりこまかいことを聞くのもどうかと思いますけれども、あなた方のほうでもまだ十分調べてないところのものだと、こう思いますが、そうすると、この被疑者については任意出頭は全然求めなかったのですか、求めたんですか。
  148. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 任意出頭を求めたという報告は受けておりません。
  149. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 すると、いわゆる被害者側と称せられる官側の三名の方の詳細な調書をとって調べてあると、そういう事実があったかどうかというふうなことについて本人の逮捕状をとる前に任意で陳弁を聞くというふうなことをやっても決して捜査の常道からはずれないと、こう思うのですが、なぜいきなり逮捕したのですか。
  150. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは、先ほどからお答え申し上げておりますように、やはり証拠保全のために強制捜査で初めからいかなければならないと、こういう判断のもとで任意による取り調べということは行なわなかったわけでございます。
  151. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 証拠保全ですか。すると、他に何か共犯者がいるかもわからない、それとの間のあなた方に言わせれば証拠隠滅の関係が疑われるということからして逮捕したと、こういうふうに聞くわけですね。そうすると、あなたのほうとしては、被害者側の供述だけではこの証拠は不足しておると、足りないと、こういうふうに考えるわけですね。なぜそういうふうに考えたのか、その点がはっきりしないのですがね。
  152. 後藤信義

    説明員後藤信義君) 先ほど、これははなはだ失礼ですけれども、先生おっしゃいましたように、本人がやったかどうかわからないということをちょっとおっしゃいました。そのように、私どもとしては捜査に間違いはないと思いますけれども、白昼行なわれたこういう事件でありましても本人がやったかどうかわからないということがあとになって出てくるような性質の事件だと思いますので、やはり十分に念を入れて捜査をすべきものだと考えます。
  153. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 捜査に念を入れるということ自身は決して反対では——抽象的に反対すべき筋合いのものではないわけですが、被害者自身がたいしてけがもしておらないということで、そしてそこに集まった人が共犯関係があるというふうなことを推定をして、しかも約三十人近い警察官が出かけていって、そして押収、捜索をやるというほどこの事件は公安事件としては大事件に入っているのですか、どうなんですか。
  154. 後藤信義

    説明員後藤信義君) これは、先ほど先生から御指摘がありましたように、私、強制捜査をやる必要と申しますか、そのときの説明の中でこの事件が悪質であるということを申し上げたわけでございますけれども、何べんも許可申請をしなさいとしこれまた局長から御説明申し上げましたように、許可申請があれば、あるいは若干の条件がついたかどうかはわかりませんが、許可されたであろうと思われるようなものを許可申請をしない。そうして、それを何べんか申請をしなさいと言われたのにそれをあえてしない。それであるから、これは規則に違反するというので、後日のためというのでその状況を撮影をしておるその課長に対して暴行を働き傷害を働いたと、こういうことでありますので、私どもやはりこれはかなり犯罪の情状としては悪いものであると考えたわけでございます。
  155. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 許可申請をすれば許可されたであろうというふうなことは、それだけいわゆる通常の程度事件だということに考えていいんじゃないですかね。あるいはこれを見解の違いかもわかりませんけれども、そういうふうな申請をしないとかするとかいうことはこれは前々からいろいろな事情があって、いわゆる訓令十六号というものが法律的にも集会の自由とか表現の自由とかそういうふうなものに違反をしておるということがいわれておるからそういうふうなことをやったのかと、こう思うわけですが、この程度事件で、しかも昼休みにやった、ガレージを使ったということで、現実的に具体的に管理権そのものが侵害されたということではない。もちろん抽象的な形で言えばあるいは議論があるかもわかりませんけれども、管理権を侵害されて官側がどういうふうな具体的な妨害を受けたか、傷害を受けたかといえばそれはないという形の中で起きて、それが事件そのものとしてかりに被害者側の言うたとおりとしてもたいしたことではない。傷害などとどうも言えるかどうかわからない程度のものでもある。こういうふうな考え方を普通とれる事件で、これほどの人数を動員して行ってあっちこっちみな家宅捜索をして、しかも逮捕した。しかもそれが共犯関係があるというような推定を大がかりに立ててやって、警察官がいわば何といいますか、一つのことばでいえば先制攻撃をかけているというようなきらいが十分考えられるわけです。私はこういうふうに思うので、これは警備警察全体の行き方として、この程度事件でこんなふうなことをやった日には、日本に警察官が何人いたってこれはけりがつかないんじゃないかと思います。栃木県の警察あたりでは、ことに警備はほとんどこのところ事件はありませんから、ここ二、三年何もないんじゃないか。だから、それはひまかもわからないのですが、こんなことまでやったということについてはどうしてもぼくは納得できない。こんなことを利用して——いま全県労がことに官公労の中で非常に活発な一つの動きをしておるわけです。特にここでは配転の問題をめぐっていろいろ問題があるわけですが、そういうふうな関係で、ここでひとつ全県労の中の活動家というものをマークしてこの際に組合を弾圧しようというか、あるいは弱めようというか、そういうふうな意図でやったとしか私には考えられない。あまりにもやり方が大げさ過ぎる、ぎょうぎょうしさ過ぎるというふうに考えられてならない、私はこういうふうに思うわけです。この点については、いま身柄も勾留されておることですし、私も本人とまだ会っておりませんから、わかりませんが、会うなりして事実関係をしっかり確かめてまた別な機会に質問をするなり何なりの形でやっていきたいと思いますが、私は、本件については、これは行き過ぎだ、非常にやり方が大ぎょうし過ぎる、これを機会にして組合を弾圧しようというか、そういうふうな意図のもとに、あるいは意図がないとしても結果的にはそういう意図が認識されるような形で行なわれたと、こういうふうに考えざるを得ない、こういうふうなことを強く申したいわけです。  なお、このところでは、たとえば組合の活動家が便所などに行きますと、一に官側があとをつけてくるんです。それから廊下などで組合の役員とか何とかが三人以上話をしておるというと、ことに労働条件の問題とかそういう話をしておりますと、三人以上集まって話をしているのは集会だというようなことで、そこで庁舎の長の許可を得ていないじゃないかということを言って非常にやかましくやってくる。昼休みにレコードをかけて集まって歌を歌っておった。そうしたら、これは集会なんだからと——昼休みですよ。めしを食って、あと時間があるからレコードをかけて歌を歌うわけですね。その歌がはやり歌を歌っておるなら問題はないけれども、ちょっと何というか、労働歌でもないけれども、それに近いような歌を歌っているとか、このごろロシアの民謡があるでしょう、ああいうのを歌っていると、これはいかん、庁舎使用許可願いを出さなければいけないと、こういうような形で非常にやってくる。昼休みなどに集まって、そうして建物の中の庭を使ってやっておると、これは庁舎だからいけない。外に出ていって堤防のところに行くわけですね。堤防のところに行くと、これは官地だから、これを使ってはいかぬというわけです。しょうがないから、どっかの神社に行ってみなが集まって、それで集会をやった。昼休みですよ。そういうようなこともこの中で行なわれている。実に考え方によってはばかばかしいと思われるくらいのことがいま行なわれておるわけです。だから、実例を、便所までくっついてきて課長やなんかが何かやっておるというそういうようなことなどの実例をはっきり出してほしいというようなことを私も言っておいたのですがね。こういうようなことなども実態を明らかにして、警察だけの問題でなくて、建設省の関係の問題でもありますから、そういう点はぼくは実態をもっと究明をして追及をしていきたい、こういうふうに考えます。ただ、どうしても今度の事件は行き過ぎだ、一定の意図をもって行なわれたというふうにしか私には考えられない。ぼくはおとなしいですから、そう悪意にものはとらんぼうですけれども、どうもこの事件は納得できないということを最後にここで言って、きょうのこの質問はこれで終わります。
  156. 後藤田正晴

    政府委員後藤田正晴君) ただいま、稲葉先生から、警備警察といいますか、公安警察の運営の問題について、どうも警察は警察権を使って組合弾圧をしておるのじゃないか、こういう御疑念を表明せられたわけでありますが、私どもとしましては、正当な組合活動というようなものについては、いささかもこれに関与するというようなことは考えておりません。したがって、ただいまおっしゃったような御疑念を世間一般の人が持つということであれば、これはやはり私どもとしては慎重に反省しなければならぬ、こう思っておりますので、いやしくもそういう御疑念を持たれることのないように警備警察の運営については十分改善をしてまいりたい、このことを申し上げておきたいと思います。  ただ、お説の中に、警察は先制攻撃をかけておるんじゃないか、こういうお話がございましたが、これは実は私かねてから部内で申しておる問題でありますが、これは全く違うのでございます。警備警察に限らず、警察全体の運営について、警察は軍隊とは違う。つまり、先制攻撃ということはできないのでございます。警察というものは、ある程度いろいろな事案があって世間が非常にやかましくなってくる、これはひどいではないか、こういうときにはじめて警察としてはこれに対して適切な取り締まりを加えていく、これでなければ警察取り締まりの効果というものはあがらぬのだ、こういうつもりで第一線を指導いたしておりまするので、その点もまたぜひひとつ御理解を賜わっておきたい、こう思います。
  157. 石井桂

    委員長石井桂君) それでは、本件については、本日はこの程度にいたします。     —————————————
  158. 石井桂

    委員長石井桂君) 次に、受刑者の刑の執行停止に関する件について調査を行ないます。岩間君。
  159. 岩間正男

    ○岩間正男君 この前、二日の本委員会で、村上国治君の刑を一時執行停止して、危篤の母親に会わせる問題について津田刑事局長の意見を伺ったのですが、これに対して結果はどうなったか、このことについて最初にお伺いしたいと思います。
  160. 津田實

    政府委員(津田實君) 先般当委員会において御質疑がございました白鳥事件受刑者である村上国治に対する刑の執行停止申請の問題でございますが、これにつきまして申請が三回ございまして、検察庁といたしましては執行停止を認めない趣旨を本人にそれぞれ通知をいたしたということは、前回御説明申し上げたとおりであります。その後、当委員会の御質問もございますので、法務省におきまして検察庁の処置について慎重に調査をいたしました。その結果、去る二月六日に結論に到達いたしましたわけでございます。その結論につきましては、当委員会におきます御質問の趣旨もございましたので、委員長並びに岩間委員にはその当時御連絡を院外でいたしたわけでございますが、その内容をあらためて御報告を申し上げますと、検察官のとりました措置は相当であるという結論でございまして、したがいまして、検察庁が執行停止を認めないことは相当であるということになるわけであります。その理由といたしましては、本件の受刑者につきましては、過去の本人の行状にかんがみまして逃亡のおそれがないという判断はできないという結論に達したのでございます。したがいまして、単に一般的に逃亡のおそれがあるというような抽象的なことではなくして、具体的事例に基づきまして逃亡のおそれがあるという判断で検察庁が執行停止を認めないのは相当であると、こういう結論に達したわけでございます。この点を御報告申し上げておきます。
  161. 岩間正男

    ○岩間正男君 非公式にただいまのような理由を述べて刑事局長から私に回答がございました。きょうは法務委員会ですから、公式にお伺いしたわけですけれども、そうすると、理由の大部分、まあその主たる理由は、逃亡のおそれがないと判定することができない、こういうことなんですか。
  162. 津田實

    政府委員(津田實君) さようでございます。
  163. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは法務省の統一された見解ですか。
  164. 津田實

    政府委員(津田實君) さようでございます。大臣と協議いたして、大臣として出した結論でございます。
  165. 岩間正男

    ○岩間正男君 その前に、私たち何回かこの問題の要請に参りました。これは人道上の問題だから、当然このような問題は当人の要望に応じたほうが法の権威をむしろ高める、そういう意味からいいまして、また人道上の処置としても望ましいことだ、それから多くの人がそういうことを要望している関係から、何回かその問題について要請に行ったわけです。ところが、そのときの理由は、これはいろいろ述べられた理由が変わっておるのですね。二転、三転しておるのじゃないかというふうに考えられるわけです。この前最高検に参りましたとき、たとえば、村上君はあくまで無罪を主張している、そういうことではいわばまあ前非を悔いていないようなところがあるのじゃないか、そういう形ではなかなかこの要求に応じられない、そういうような理由をあげて言われてきたのです。そうすると、そういう理由についてはここには述べられていないわけですけれども、全然あれは一時の話ということになるわけですか。ここら辺をさらにお伺いしたいと思います。
  166. 津田實

    政府委員(津田實君) 本人の心情につきましては、本人がいかなる考え方を持っておるということを資料にいたすということはいたしていないわけでございます。
  167. 岩間正男

    ○岩間正男君 あの席上で公安部長が述べられたような理由というものは成り立たない、こう考えてよろしゅうございますね。
  168. 津田實

    政府委員(津田實君) 最高検の公安部長がどのように御説明をいたしたか、私どもも存じないのですけれども法務省といたしまして統一的な見解といたしましては、本件については逃亡のおそれがあるという結論でございます。その理由につきましては、もちろん諸般の理由がありますけれども、ただいま刑の執行停止をしないという理由についてはその理由であり、検察庁としてもその理由に基づいてやっておるものと判断いたしまして、結論においても一致いたしておりますから、あの処分は相当である、こういうことであります。
  169. 岩間正男

    ○岩間正男君 法務省のこの主たる理由ですね、この理由だけで拒否された、こう解釈していいと思いますね。したがって、この問題はいろいろ本人の心情に立ち入ってそれが執行停止を妨げている一つの理由にするというような態度は正しくない、こういうふうに私たち当然考えておるのですが、そうとってよろしゅうございますね。このたびの決定を見るというと、逃亡ということをただ一つ理由にあげていられるので、いろいろなそれまでに述べられたそういうことについては、これは当時のいきさつは私たちよく知っているわけですが、一時間にわたって話し合いをやったときに、この問題がむしろ無罪を主張したというそういう点が非常に大きく述べられた。検察当局としては、この点はやはりそういう問題で今度の裁量に影響させるということはあり得ない、こういうふうにあらためて考えなおしてよろしゅうございますか。この点を明確にしてもらいたい。
  170. 津田實

    政府委員(津田實君) 逃亡のおそれのあるという判断の根拠といたしまして、あるいはその状況といたしまして、諸般のことを考えるわけでありますが、その場合の考え方にいろいろ考え方があろうと思います。したがいまして、状況の一つというふうに見れば、あるいは従来本人が自分は無罪であるから逃げてやるんだというようなことも言うておった——これは例でございますよ。本件もそうだと申すのではございません。そういうようなことだとか、あるいは、刑が非常に長期であって残刑が長いとかというようなことは諸般の状況を考える場合の一つの資料と申しますか、になるかもしれないと思いますが、今日、私どもが結論として申し上げるのは、主たる理由は、先ほど申し上げました過去においてのいろいろな情状によって逃亡のおそれなしとしないという結論でございます。
  171. 岩間正男

    ○岩間正男君 いま資料としてそういうような情状で考えたんだというような話ですけれども、これは今後の問題もあることですから、このような裁量をする場合に無罪をあくまで主張する、そういうことによってこれは左右されないんだ、こういう原則を明らかにしておくことが非常に必要だ。そうでないと、この前の公安部長の話というものはそこにウエートが置かれた。これは非常に重要な問題だ。こういうような考えでは、無罪を主張するそのことが何かやはり好ましくない状態だということで逆に圧力が加えられているわけです。こういう形では、実際はこの四百八十二条の精神というものがじゅうりんされているんじゃないかという点で非常に私は法務委員としては疑惑を持ったわけですから、この点は法務委員会審議を通じて明らかにしておくことは非常に重要だ。したがって、今後、法務省が理由として明確にあげたこういう点であなたたちは拒否されているのですから、検察そのものの態度についても、私自身とそのほかに八人ぐらい行ったわけですから、これは塩田庄兵衛という歴史学者、山田清三郎という作家、あるいは新婦人代表の石井アヤさんとか、そういう人が行っているわけですから、その場合にはそういう印象を強くしてきたわけですから、そういうことのないように、これはあらためてもう一ぺん検察当局がこういう事態を混同させないという点を明確に法務行政の立場から明らかにしておくことが必要だと思うのですが、いかがですか。
  172. 津田實

    政府委員(津田實君) ただいま申し上げましたように、その逃亡のおそれあるという資料の中に何を状況として考えるかということにつきましては、これは判断する人々によっていろいろな状況が頭に浮かぶと思いますが、そういう意味におきまして、資料になるかならぬかということになりますと、これは直接の理由ということではないという意味で判断をする者の頭に幾らか残るということは私はあり得ると思いますけれども、本人の主張なり心情というものを直接否定の理由にするということはやるべきではないというふうに考えております。
  173. 岩間正男

    ○岩間正男君 その点、ただいまの御発言を確認しておきたいと思います。むろん資料などという程度のものではなかった。非常に一つの理由としてあげられたのは明確ですから、この点については御検討を願いたい、今後の行政の問題ですから。  次にお聞きしたいのですが、資料をお願いしましたが、つまり、四百八十二条の一号から八号まであるわけですが、その中で、いままでこれによって執行停止をした例、その前例についての資料をお願いしたところが、まだいまだに御提出がないようなんですが、来ておりますか。まだ来ていないですか。あれは二日でしたから、きょうは半月になるのですが、これはいかがですか。
  174. 津田實

    政府委員(津田實君) 資料についての御要望があることは十分承知いたしております。直ちに資料のとりまとめにかかったわけでございますが、措置は全国の検察庁、区検察庁にまで及んでいるわけでございます。したがいまして、なかなか資料が集まりにくいので、ある程度は集まっておりますが、まだ整理をしてお出しし得る程度に全部そろっていないという意味におきまして、本日は間に合わない、こういうことになったわけであります。
  175. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは矯正局かどこかにそういう報告がちゃんと来てないとしたら、これはおかしいのじゃないですか。元締めの法務省がそういう資料を一々過去にさかのぼっていま聞いてみなくちゃならないというようなことでは、ただいまの御答弁では了解しかねるのですがね。いままで、少なくとも、何というのですか、行刑行政とのいうですか、刑執行の面において起こってきた問題でしょう。しかも、これはそんなに例があるわけでもない。当然これは報告を受けて、それについてのあなたのほうでは資料というものを全体として握っておられる立場に立たなければまずいのじゃないですか。つまり、この四百八十二条の精神をどう運営するかという点から考えても、やはりこのような資料というものを相当検討する上に立って進めるということが重要ですが、いまのようなお話であると、法務行政そのものにやはり私は一つ問題があると思いますが、これはどうでしょうか。
  176. 津田實

    政府委員(津田實君) ただいまの御意見ではございますが、もちろん、法務行政につきましては、あらゆることを資料として収集し、報告を求めればいいわけでございますけれども、全国の検察庁におけるいろいろな問題を全部法務省報告をせしめるということは、検察庁は煩にたえないわけであります。現在ある程度の統計資料その他具体的の資料について報告をさせる訓令を出しておりますけれども、それすら全国の検察庁においては非常に過重な負担であります。本来の検察事務に専念すべきであるところを、そういう意味の資料作成に相当の人数をさいているのが現状でございまして、ただいまのお話の本件の問題点のごときものにつきましても、いつ幾日何それをどういう理由で刑の執行停止何日をやったという報告は、一々これを徴しておると、とてもたいへんなことになります。これはまあ刑の執行停止の問題だけ、この四百八十二条の問題だけを考えますと、非常に簡単なことのようでございますけれども、これに類似する事項はたくさんあるわけでございますから、それを一々とるということはとても現在の陣容では負担にたえないわけであります。したがいまして、何か御要求があれば、それに従っていたすわけでありますが、それにいたしましても、ある期間のを全部当たってみなければ出先の検察庁としては結論が出ないわけでありますから、そういう意味において調査に時間がかかるわけでございます。
  177. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは検察庁にもそういうのはちゃんと統計されたのはないわけですね、矯正局にもないわけですから。そうすると、いまお話しでしたが、検察庁の件数は非常に多いと思いますが、しかし、刑の執行停止というのはそんなに多いですか。そんなに四百八十二条というのは行なわれていますか。第一号についてはこれは相当あるようにいわれる。しかし、第五というのはほとんどないように思うんです。まああとでお聞きしますけれども、そんな問題ですか。いまのような一般論じゃない。具体的に、四百八十二条の該当事項というのは、戦後においても、いまでもいいわけです、それから最近十年なら十年でも私はいいように思うんです。ところが、いまのようなお話だというと、なかなかとてもすぐに資料を出せないということになるんですが、これはないんですか。矯正局にもないし、検察庁にもそういうものが資料として報告があってそれによってそういう書類というものが持たれていないんですか。これはおかしいと思うんですがね。そうなると、だれが四百八十二条のこういう法の精神を執行するために検討しているか。そういう係はいないんですか。
  178. 津田實

    政府委員(津田實君) ただいま申し上げましたように、全国のケースは非常にたくさんあるのであります。戦後とかあるいは十年間ということは、もうとうていいまできるわけでございません。昨年度一年間を調査するのになお相当の日時を要しているわけでありますから、そういう意味におきまして、検察庁の各種の判決関係、決定関係というのは、これはもう何千万にのぼるわけでございますから、その中から引き出すということに結局なるわけであります。それは刑の執行停止関係を分類してということでございますけれども、これは執行関係の書類をずっと初めから一年分を当たってみなければ、そういうものがあったかなかったかということは、宙で覚えているわけでありませんので見つからぬわけであります。それを全国の検察庁にやらして、それを全国的に四十九カ庁に分けて集計するということになるわけでありますから、これはとてももうたいへんな仕事なんであります。したがいまして、そう右から左には出ませんし、あらかじめそういう資料を準備するということになると、もうあらゆる同種類の事項についてあらかじめ報告をとっておかなければなりませんから、それは、先ほど申し上げましたように、とても全国の検察庁の職員の負担にたえることではないというふうに考えます。
  179. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはまあ予算とか定員の問題と関係するようなことになるんでしょう、ただいまの御答弁だとですね。しかし、四百八十二条というのは、これはまあいわば保護規定といいますかな、そういう規定なんですね。そういう方面については別にもうこれについて研究というものはほとんど行なわれていないんだというようなことを裏書きするように思うんですけれどもね。もしもこの観点でほんとうにこの規定を法の精神に従って遂行するということになれば、少なくともその観点からこれはやるべきじゃないか。それからそれほど多いんですか。これは資料をいただかないとわからないんですけれどもね。それじゃいつごろこういう資料をいただけるんですか。——次官、もうお帰りになるんですか。
  180. 大坪保雄

    政府委員(大坪保雄君) 何かございますか。
  181. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちょっと……もうすぐ終わりますよ。もう十分くらいで。  とにかく、私たちは、この審議法務委員会において大もとをただすということが一つ。今後のこともありますから、これは明らかにしておきたいと思う。しかし、問題は、いま危篤を伝えられておる村上国治君の母親に会わせるということ、こういうことですから、いまのような御答弁だというと間に合わなくなってくるんですね。これはちょっとまずいんじゃないでしょうか。そういうことでは結果においては怠慢ということになっても、そう言われてもしかたがないと思うんですが、これはどういうことですか。いつごろ責任をもってこの資料はいただけますか。
  182. 津田實

    政府委員(津田實君) できるだけ早くと申し上げるよりいまのを集計してしまうということになると、できるだけ早く差し上げるということにいたしたいと思います。ただ、本件は、その資料いかんによりまして大臣の立てました結論が変わるということは申せないと思います。これは法規の解釈でございますし、とにかく全国の検察庁にそれぞれ有資格者を置き、したがって、最高責任者として検事正を置いておりますので、地方地方において相当の判断をなさしめなければ、一々中央に指揮を受けるということは実際問題としてできないわけでございます。そういう意味におきまして、いまの執行停止の問題も、第一次的にはその地方の責任者にまかせていこうということであります。  なお、本件につきましては、御承知ではございましょうが、二月三日に村上本人から札幌高裁に異議の申し立てをしております。したがいまして、この事件は、異議申立事件として札幌高等裁判所において審理されることになるわけでございますので、その裁判所の審理いかんということによりましていまのこの問題もある程度はっきりするんではないかというふうに思いますが、行政当局としての判断と申しますのは、先ほどの大臣のきめました結論に従っていくと、こういうことでございます。
  183. 岩間正男

    ○岩間正男君 なんじゃないですか、判例なんというものは非常に裁判をやるときは重んじられるんですね。これと同じケースではありませんけれども、しかし、これと類似したような問題があると思うんですね。すると、いままでのそういう例というものは相当検討して、その上に立って大臣の結論を出されてもおそくなかったんじゃないか。したがって、今後そういうような有力な資料とかそういうなにがあれば、大臣はそうかたくなになって、これは一ぺん決定したんで、綸言汗のごとしで、もう動かすことができないんだと、こういう立場に立たれる必要はないと思うんです。今度の決定を見ると、少なくとも資料の上に立って前後のあらゆるものを検討してその上に立っての結論でないということがただいまの御答弁で明らかになったことは、これ以上に私は非常に重要だと思う。資料も出していない、集めてもいない、全国の実例というものについてもわからない、こういう実態の上に立って出された結論だということがいまはしなくも明らかになった。これは重大な問題だと考えますから、いまのように大臣決定は資料が今後出ようがそれによって変わりがないんだ、こういうふうにここで結論づけられることは、これは刑事局長さんの御答弁にもかかわらず、私は、慎重に人権を守るという立場に立って法務省の法務行政が行なわれるとするならば、これはやはりまずいんじゃないかと考えます。  さて、そういうことで、実は私たちもそんなに資料があるわけではありませんが、二、三の問題についてお聞きしたいんです。いままでの類似したものを私たちの非常に狭い経験の中で採集したものですから、これは十分ではありません。そういう中で二、三お聞きしたいんですが、これはどうでしょうか。この前の杉山君ですね、横川事件の杉山被告の場合、これは未決の時代はちょっとこれと該当しませんが、三十一年四月に父のガン手術があって、このとき小菅刑務所に拘置中保釈になった。それから三十一年の九月に父が死んでやはり保釈になった。これは未決時代のことですから問題はない。ところが、服務中——杉山君が服務したのはいつか、これは私よくわかりませんから、もし御存じでしたら明らかにしていただきたいんですが、昭和三十四年十二月十三日、これは服役中です。母親が交通事故死亡した。このとき、その葬式に間に合わせるというので、朝の五時から夕方の四時まで十一時間刑務所を出ることを許された、そういう事件があるのですけれども、これはどうでございましょうか。これはどういう事項に該当するのですか。四百八十二条の規定の適用があるのでしょうか、ないのでしょうか。
  184. 津田實

    政府委員(津田實君) ただいまの杉山のお話ですが、これはすでに参考資料として調査をいたしております。杉山の実父が病気のため手術を受け、経過が不良であったから看病するために、昭和三十一年七月二十一日午前十時から八月二十日午後四時まで被告人の勾留の執行停止をし、右の停止期間を一カ月間延長して九月二十日まで延期をし、父親は九月十一日に死亡した。で、執行停止完了と同時に再度収監をした、こういうことになっております。  それからただいまお話しの三十四年十二月服役中のことについては、私のほうはまだ事実を承知いたしておりません。したがいまして、いま三十四年十二月十三日とおっしゃいましたが、それは調査をいたします。
  185. 岩間正男

    ○岩間正男君 それからもう一つお聞きします。これは昭和三十年宮城県気仙沼で起こった絹エーちゃん殺しという事件です。被告人千葉忠は懲役十五年の判決を受けた。そうして、昭和三十五年七月二十六日に最高裁で確定をみている。本人はあくまでも無罪を主張して再審を請求をした。昭和三十九年の十月の問題でありますが、母危篤ということで執行停止をされて、朝六時ごろから検察庁の車で護送しておかあさんと面会、同九時ごろ宮城刑務所に帰ったわけです。なお、参考のために申し上げますと、同氏にはおとうさん、妹さんが健在です。ですから、これは四百八十二条の何号でしたかね、六号でしたか、六号ですね、これにも該当しないわけですね。おかあさんは面会後一カ月たって亡くなった。こういう白鳥事件村上君と非常に類似するような問題があるわけです。第一に無罪を当人が主張している。それから当人がおかあさんの必ずしも扶養をしなくてもいい立場である。おとうさん、妹さんが健在である。そういう条件で、非常に類似しているわけですね。こういう適用例があるわけですね。これについてはお調べになったでしょうか。これはどういうことでしょうか。
  186. 津田實

    政府委員(津田實君) そのケースについても承知いたしておりません。
  187. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうしますと、こういう事実があるわけですね。しかも、この前の刑事局長さんのお話では、逃亡のおそれがある、執行停止をするというと完全自由になる、だれも付き添うことができないのだ、こういうお話だったですが、いまの絹子ちゃん殺しのケース覚ましても——そういう言い方は正しくない。千葉忠氏のこのケースを見ましても、これは宮城刑務所から検察庁の車で護送して付き添っているのですね。だから、逃亡といっても、これはないだろうと思うんですがね。それから横川事件の場合ですけれども、杉山君の場合は朝五時から夕方四時まで十一時間浦和地検の検事二名が付き添い葬儀場までついて行った。この前の御答弁では、逃亡のおそれがある、完全自由になるからということですが、実際の運用面では必ず検察の係がこれに付き添って行っている。そうすると、逃亡のおそれがあるというのは、どうもこれはちょっとこの前の御答弁だけでは不十分に思うのですが、逃亡のおそれをちゃんとこういうふうに押えることができる、そういうことをやっている。そうすると、逃亡のおそれがあるというそういう理由というのは非常に希薄になってくるのじゃないか、そういう方法を用いてやればできるのじゃないかというふうな感じを持つのですが、この前の答弁と事実上の食い違いというものがありますので、この点はどうお考えになりますか。
  188. 津田實

    政府委員(津田實君) ただいまのお話しの点ですが、法律上のたてまえからいたしますと、執行停止については何ら制限がない、つまり身柄についての制限はないということであります。したがいまして、あるいは事実上ただいまおっしゃったようなことがあったかもしれません。それはあくまでも事実上の問題であるわけであります。したがいまして、逃亡のおそれがあるということについてはいろいろ考え方がありましょうが、おそれがあると判断した以上は、法律的にはとうてい執行停止は認められない。あと事実上の問題として何があれば逃亡のおそれがなくなるかという問題については、これは考えるとすれば、非常に諸般の事情を考えなければならぬわけでありまするので、したがいまして、事実上やればいいじゃないかという理由で法律的に執行停止ができるということには私はならないと思うのであります。
  189. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは裁量規定なんですから、運用の面でこれを補って行けばいい。たとえば、逃亡のおそれがあるからこそ検事が二名も付き添うことになったわけでしょう。そうしてそのおそれをなくした、そういう手段を講じたわけですよ。やはりあったのだ。この事件も、だから、拒否の理由にはならないという反論だってできるわけです。その点を、元に戻るわけですが、ほんとうに人道上の問題として、このようなわざわざ法が保護規定をこうちゃんと立法しているこの立法の精神から言って、この運用を正常にして、そうして血も涙もあるやり方をやることが法の権威を高めるものだというふうに私は終止一貫いままで考え方を主張してきたわけです。そうして、この面については、法務大臣にも私たちはお会いをして、そうしてこの点について十分に前向きの姿勢で執行停止の要求を認めてほしいという、そういうことをお話しをしたのです。法務大臣も、その場では、これは私も前向きでできるだけ希望にかなうようにというようなことで会見している。  で、大坪次官にお伺いしますけれども、ここにこういうのが出ております。「白鳥事件犠牲者村上国治君を重病の母に一目逢わせる事を要請する運動に御協力下さい」というので、白鳥事件の対策委員会ではアピールをしているのです、最近になりまして。村上国治君を重病の母に会わせる発起人といたしまして、たとえばこういう人があがっております。南原繁さん、海野晋吉さん、末川博さん、それから社会党の議員では黒田壽男さん、坂本泰良さん、細迫兼光さん、むろん共産党から野坂参三議長、それから私も入っております。作家の阿部知二さん、志賀直哉さん、中島健蔵さん、それから文化人では映画監督の新藤兼人さんとか、東京芸術座の村山知義さんとか、それから総評議長の太田薫さん、それから宇野重吉さとんか、北林谷栄さんとか、そういう映画人ですね、こういう人たちがとりあえず発起人として名をあげております。それで、この署名は非常に全国的に広がっております。社会党の方々だけを見ても、衆議院だけでも三十何人が署名されております。いわばこの人たちは連帯保証にもなれると思うのですが、私なんかもし許すなら十日だって身がわりに入ればいいんじゃないか、そういうことを申しております。そういう熾烈な願いを持っているんです。この問題を取り上げてこの法がこれで犯されたというかっこうではなく、かたくなにこれをどこまでも拒否して母親の死に目に会わせなかったら、これは「回復することのできない不利益」ですよ。これは全く四百八十二条の条項に該当することになる。前例を切り開いたからといって、法の権威を高めることにこそなれ、これによって決して法がじゅうりんされたとかいうことにはならないケースだと思うのです。この点について、大臣がきょうはお見えになりませんから、特に政務次官の御出席のところでお願いして、これはどうぞもう一ぺんこの問題については御検討いただきたい。大臣にも十分お話しになって御協議をいただきたい、こういうふうに考えるので、特にこのことを要望いたしたいと思うのです。  それから津田さんには、宮城県の気仙沼のケースについては御存じない。これについては十分やっぱり御検討いただきたい。それからできるだけ早くこれについて資料を出していただきまして、もう一回資料に基づいて詳細を伺いたい、こういうふうに考えます。  きょうは大臣もお見えになりませんから、結論というようなことはむずかしいだろうと思います。法務省も一ぺん出された結論ですから、何せ法務省ですから、これはなかなかむずかしいだろうと思うのですけれども、そこのところをかたくなにならないで、稟議に合わせるというやり方でなしに御検討いただきたいことを強く要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  190. 石井桂

    委員長石井桂君) 大坪政務次官、何か……。
  191. 大坪保雄

    政府委員(大坪保雄君) ただいまお話しになっております村上の問題は、私もよく了承いたしておりまして、協議にもあずかっております。本人個人に関するいろいろの条件を勘案の結果逃亡のおそれなしと言えない、こういうことで結論を出しておるわけでございますので、その点は先ほどから刑事局長がるる申し上げるようなことでひとつ御了承いただきたいと思います。ただいまいろいろの名士の方々の署名による嘆願書のことについて岩間委員からこういうお話がございましたということは、大臣にお伝えをいたしておきたいと思います。
  192. 石井桂

    委員長石井桂君) それでは、本件については、本日はこの程度にいたします。  次回の委員会は二月十八日に開会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後一時十二分散会      —————・—————