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野本品吉君
大臣もいろいろお考えになっておるようでございますが、重ねて申しますが、私は
育英奨学の金というものはまだ十分だとは思っておりません。それで、不十分な
育英奨学の
政府の金というものは、
返還を高める
努力によって
返還金が多くなってくる、それで減してはいけませんけれども、少なくともこっちでこれだけ入ってくるんだから、もう
増額しなくてもいいというような大蔵省的な感覚でこの問題が扱われますと、一切、
育英の仕事全体の
伸びがここで停止してしまうと思います。これは今後の問題でありますが、ぜひ、
育英会当局の非常な
努力によって
返還額がどんどん高まってきておるのでありますから、そのふえた
返還額というものを積極的に
貸与金のほうへ振り向けることができますように格別なお骨折りをいただきたいと、これが第一です。
それから、その次に
貸与金の
返還の問題であります。私がこの前この
委員会でこまかいことを申しましたときは、実は
返還すべき金が四十四億、
返還の済みました金が二十三億、
合計五三%ばかりが
返還されておって四七%というものは
返還されなかったという過去の事実に基づきまして私はいろいろ考えておるわけです。そこで
育英会法の改正が行なわれたのですが、なお、
文部省からは
貸与金回収業務の
方法に関する省令が出されて厳重にやってきて今日に至っておるわけですが、私はやはりここで考えますのは、
育英奨学金の本来の姿というものは、これは
強制執行その他で取り立てなければならないような性質のものではないと思う。
本人は
上級学校へ上がって勉強したいという、
本人の
希望にこたえ、
親たちの
願いにこたえ、国とすれば国が必要とする人材を養成すということに対して取り組んでいるわけですから、もともとこの
貸し付け金というものは非常に高い
倫理性の上に考えられなければならない問題だと思う。そこで、いまの
回収業務云々につきましては非常にきびしい
方法をとっておりますが、それは
育英奨学の
貸与金の
返還の
ほんとうの姿ではない。
ほんとうの姿は、
本人の
希望、
父兄の
願い、国の
願いという高いところに立った問題でありますから、今後黙っておってもそういうものが返るように
努力していかなければならぬと思うのです。そこでさらにその点を考えますと、たとえば
教育基本法で、勤労と
責任を重んじなければいけない、自主的な日
本人を養成しなければいけない、あるいは正義と真理を求める
人間でなければいかぬ、こういう
教育がされておるわけですが、私は
返還金の渋滞と申しますが、強制的に
強制執行でこれを
回収しなければ
回収できないような
状態にあるということは、
大学教育の本質に対して疑問を持つわけです。
大学の
教育は単なる知識なり技術なりの
教育研究だけでなく、もう少し
人間的な、
大学の
教育の問題を
人間的な角度から考えるべきだと思う。ここで苦情を言うわけではありませんけれども、いまの
方法はやむを得ざる
措置としてとられておる
方法であって、やがてこういう
措置はその姿を消すようにしなければいかぬ。そのことにつきましては私は
父兄にも
責任がある。それから
学校当局ですね。
大学の
学校当局もぜひこの
人間には貸してやってくれという内申といいますか、そういうことをしておるのですから、もう少し
父兄や
学校当局が完全に
返還ができるように道義的な
指導をすべきである。私が一番この点をむずかしく考えますのは、
返還率が非常に低い、返すべきものが返ってこないということは
先輩の怠慢、
先輩の怠慢が
後輩に恵まれる
機会を押えているというところに非常に問題があろうと思う。ですから、これらの点についてもあらゆる
機会に
育英奨学金というものの本来の姿についてお互いに考えて、そして
先輩の怠慢が
後輩の修学の
機会を奪うとか、あるいはそれを押えるというような結果にならぬように、これは
関係者全員が不断の
努力を続けなければいかぬと、こう思うんですが、どうでしょうか。