○国務大臣(
愛知揆一君) この問題については、一応経緯がどうであったかということは問題外というお話でもございますけれども、これはひとつざっくばらんに申し上げさしていただきたいと思います。実は私といたしましては、東京オリンピックというものが非常な感激のうちに大成功裡に終わりまして、オリンピックを実際に見たわれわれといたしましては、このままのすなおな感激といいますか、これを広く、学校
関係におきましても小学校、中学校の生徒
たちにもうんと積極的に見てもらって、この感激をともにしてもらいたい、こう私は
考えたわけでございます。オリンピックの組織
委員会としても、記録
映画ということでそれぞれの専門の方が
委員会を組織し、十二分にその制作について努力を払われていた、これに敬意を表すると同時に、私のいわゆるすなおな、ありのままの感激というものが再現されてともに喜びを新たにしたい、それがまた幼い人
たちの共感を呼び起こすものである、こういうふうに確信をいたしたわけであります。ところで、組織
委員会のほうからも、昨年の末になりまして、記録
映画というものが近く完成するから、これは児童生徒の
教育上にも裨益するところ甚大であると思うので、文部省にもよろしくいろいろの点で配慮を頼むということをいってまいりましたので、本年の一月に体育
局長の名前で、
関係の向きに、生徒児童等の団体観覧についてもできるだけの便宜をはかっていただきたいということの依頼状を出したわけでございます。そして同時に、私としては、できるならばこうした
映画の観覧というものは無料でやってもらいたい。それからもう
一つは、これは私の体験上でございますけれども、僻地の生徒などで実際テレビも見ることができなかった子供
たちもいる。で、ある小学校の先生は、そのために、テレビの見えるところへ
自分が出かけて行って、テレビを見た
自分のありのままの感想や感激を、帰って児童に伝えたということも聞いておりまして、非常に私も感動を受けたわけであります。そこで、なるべくすみやかにそういうような記録
映画というものは十六ミリに再生をして、そうしてこれを山間僻地、あるいは沖繩といったようなところの島々にまで送って見てもらいたいというところまで私自身としては
考え、かつ希望いたしたわけでございます。ところで、できましたものを私は十日の武事会で見たのでありますけれども、率直に申しまして、私としては非常に失望いたしました。これは芸術
映画というような観点からすれば価値の高いものでございましょうけれども、私はいわゆるドキュメンタリーとして、すなおに、客観的な、できるだけあの盛り上がった感激というものをそのまま伝えるような、いわゆるドキュメンタリーであることを私は一人思いに思い込んでいたことが悪かったのでありますけれども、私としては失望いたしました。そこで、ただ単なる、この一月に体育
局長から依頼状を出し、そうして私の気持ちとすれば、その依頼状以上にもっと積極的な気持ちを持っておったわけでございますが、そういう気持ちであった私としては、失望もすると同時に、積極的にこれを文部省推薦というようなことは——法規上のことばではないかもしれませんけれども、私として積極的に無理をしてまで、何でももうなさいということを言う気持ちにはならないということを、そのままありのまま率直に、火曜日の閣議のあとの定例の記者会見のときに、たまたまこの話が出たものでありますから、私は偽らざるそういう気持ちを吐露したわけでございます。そういうわけでございますから、私としては、こういう
映画はくだらぬものであるとか、それから、せっかく見る用意をしているものをやめなさいとか、取りやめにするとかいうような
意図は毛頭ございません。同時に、一方におきましては、同時に、この
映画についてはいろいろの批評も出ておりますし、組織
委員会でもいわゆるドキュメンタリーのものを別につくるというような意見も相当出ているようでございますから、できるならそういったようなものをもう
一つつくられたらどうだろうかと、そういうふうにだんだん運んでいるようでございますが、そういうことを私としては希望しておるわけであります。で、そうなりますと、記録
映画、記録
映画という字がずっと昨年末以来使われておりますが、私の理解する記録
映画というものが、また別につくられるのだということも、念のために、それが決定になるならば、組織
委員会が決定されれば、そういうものがまた別にできるのだということは、
関係の向きにお伝えすることが、すなおなやり方だと思いましたから、そういうふうな記録
映画を期待している、また期待どおりにできそうだということを
関係の向きにお伝えをしようじゃないか、まあこういうことに
考えておるのが現状の真相でございます。