○渡辺
勘吉君 私は、日本社会党を代表して
食料品総合小売市場管理会法案に対し、反対の討論をいたすものであります。
このところ野菜の急騰が目立っておりまして、大根が一本五十円、ネギが一本二十円ないし三十円ということで、諸物価の高騰の中に特にきわ立って、こういう蔬菜の値上がりに、台所を預かる主婦の怒りは想像以上であります。こういうことは、さすがに政権の座についている佐藤総理も多少感じたようであります。きょうの日本経済に出ておりますが、きのう佐藤首相は官邸に経済企画庁の松村次官以下を呼んで、二時間にわたっていろいろ
指示を与えたということが報道されておりますが、その中で、次のような
指示をいたしております。「最近の野菜の値上がりについて、首相は価格を安定させるためには遠隔地に指定産地を育成して増産したり、卸売り市場を含め流通
機構の改善を行なうなど、まだまだ打つべき手はあるとして、企画庁当局に野菜を
中心に物価安定策を検討するよう
指示した。」、これがきのうのことであります。
私はけさこの記事を見て、またかの感を深くせざるを得なかったのであります。というのは、一月十九日に、佐藤総理が訪米後初の記者会見で、生鮮食料品の価格を安定させるための対策本部を設けるという声明をいたしたのでありますが、その直後に赤城
農林大臣は、あれはやめたよ、対策本部をつくればすぐに野菜が値下がりすると勘違いされては困るからね、羊頭狗肉になってはいかぬよということが、各新聞の記事に載っているのであります。まさにこの対策本部を否定した赤城
農林大臣の言うように、羊頭狗肉はおろしましたが、狗頭狗肉の実態をさらけ出している。しかも総理が訪米後、帰ってきて初めてのこの声明に対して、朝令暮改、文字どおりの措置をとっている。このことは、ひとしく国民の政治に対する不信を深めたことは疑うべくもない事実であります。今回出されております、ただいままで
審議を慎重に続けてまいりました、
食料品総合小売市場管理会法案というもののねらいは、
政府で出された、要約した
資料を見ましても、「近年における生鮮食料品の消費等価格の動向にかんがみ、その安定をはかるためには、生産の安定的
拡大、中央卸売市場における
施設の
整備、売買取引の収差等とあわせて、小売
段階における流通の改善を図ることが重要である。」という前書きで、このいわゆる官製スーパーマーケットなるものを提案をいたしているのであります。何と申しましても、シャッポに
管理会という、先ほど
北村委員も指摘いたしましたように、
政府の高級官僚の払い下げがその
経営の実権を握る、官製
——国家管理による生鮮食料品の市場を設けようというのであります。三回の国会を通じて慎重
審議をして明らかになったことは、この
法案を提案したその目的のように、
消費者価格の安定をはかるということについては霞ヶ関の
農林省のデスクの上で、官僚がはじいた勘定では、一割は下がるけれども、しかし、これは一割確実に価格を引き下げるという何らのきめ手もないことが、
審議を通じて明らかになり、なお参考
意見を聴取した際にも、与党側が招集した参考人すら、一割の値下げということについては、何ら確信のない参考
意見を述べていることを見ましても、いかにこれは単なる役人のデスクプランであるかということが、明々白々となっているわけであります。なお、この
管理会というのは、今度の四十八回通常国会には、
公団、
事業団、特殊
法人をあわせて九つの組織が誕生しようとしている、このことは、昨年答申が出ました臨時
行政調査会の、特に
農林省所管の
公団、
事業団等に対して手きびしい指摘を受けているその担当の
農林省の所管の中に、三つものまた
公団、
事業団、
管理会というものが誕生せんとしている。これはまさに時代逆行の最たるものである、こういうものが、なまものを取り扱うその
事業を指導するなどということは、おこがましいにもほどがある。スーパーマーケットというのでありますから、そのスーパーマーケットの実態はどうかということを調べてみましても、負債額が一千万円以上のスーパーの倒産件数は、東京商工興信所の調べによりますと、三十七年度で四十四件。その負債
総額は二十二億六千九百万円であります。翌三十八年にはスーパーの倒産件数が五十九件。その負債
総額は四十一億四千二百万円。三十九年はその倒産したスーパーマーケットは百七十五件。その負債
総額は百二十七億六千万円。ことしに入ってわずか四ヵ月の間に六十一件、スーパーマーケットが倒産し、その負債
総額が三十六億六千三百万円と急カーブの上昇を描いて、まさにスーパーマーケットの
経営が根底からその存在の基礎を危うくする方向に傾いておる中に、大多数の、と私は申し上げます。全部とは申し上げませんが、大多数の国民、業種別に見ますならば生産者あるいは
消費者、そういうものの大多数の反対を押し切って、何でこういう官製スーパーマーケットを
政府の権力によってこれを進めなければならぬかということは、慎重
審議をすればするほど納得のできない問題ばかり続出をいたしたのであります。まず順序として、生産の立場から申し上げますならば、野菜についての「指定産地生産出荷指導
事業実施要領」というものを、三十八年にも三十九年にも次官通達を
農林省では出しておる。そのうたい文句はまことにけっこうであります。私はこの要領の目的には何ら異論を唱えるものではありません。次のように目的をうたっておる。「野菜の価格安定をはかるためには、
計画的かつ組織的な生産および出荷を
推進する必要がある。このため、今後需要の増加が予測される野菜について、大消費
地域への安定的な供給を
確保するため近時大消費
地域向け野菜供給地としてその比重が高まりつつある地帯を
中心に産地を指定し、当該産地の生産および出荷について濃密な指導を行なうとともに生産者の自主的な組織を育成し、もって
計画的な生産および出荷を
推進することとする。」というております。まさにそのうたい文句やけっこうであるけれども、私は、指導するとおこがましくうたっておるその実態を、現地に親しく学びましたが、きわめてこれはから文句にすぎない。そういう実態であります。この生鮮食料品は、特に蔬菜等については暴騰暴落を繰り返しておる。いま農家は、野菜つくりでは次には何にかけるかと言っておる。何に張ろうかと言っておる。まさにこれはギャンブリングである。そういう不安定な状態にして済まされない現実の
事態に置かれておると思うのであります。この産地制度は絵にかいたもちにすぎない。危険制度というものを見ましても、その金は不足で、役所仕事で、その支払いはタイムリーじゃない。時期を失する。いまの運用では、二階から目薬とでも言いたいような程度である。
いまの制度は物価安定に対して積極的な施策というものが欠いておる。そういう施策を欠きながら、二年前と同じようなこういう法律を出して恥ずかしいとも思わないようなところに、私は政治不在の実態を指摘せざるを得ないのであります。
いろいろ
北村委員からも指摘をしましたが、私は、そういう産地における具体的な施策というものがもっと、大臣の先刻答弁したとおりに、そのことばが抽象に終わらずに具体化するのでなければ、均衡のとれた生鮮食料品の生産から消費に至る総合的な施策は確立できないと思うのであります。中間
段階における中央卸売市場法は、大正十二年の産物であります。この法律の
内容は市場の開設法であって、取引は、これは
都道府県の条例にゆだねられておる。大正十二年にこの市場法が設定された当時は、いわゆる生産者の共販ということが非常に少なかった時代であって、また、消費についてもいまのような状態ではなかったのであって、当時の市場の開設についてのかまえ方というものは、東京都の人口を六百万と想定して市場を設定して、今日に至っているものであります。最近は人口も一千万をこして、集散市場としてその果たしておる機能は、一千五百万人口に達しておるのでありますが、また、顧みて、地方市場は完全に野放しの実態であります。今後新しく市場を設定する場合には、大産地における営農集団の農協による市場
経営というものが可能な状態であるのに、こういう方向の、前向きに市場法の抜本的な
改正をし、その運営をはかろうという
行政指導も何ら見出たる節がない。しかも合理化をしたという答弁の中にうかがえることば、従来一〇%の手数料を八%にした、あるいは七・五%にしたということでありますけれども、これは個人出荷も団体出荷も画一的に同じ料率で実施しておる。大口で共同選果をして、共販に乗せたものも小口のものも同じ料率で扱う。これが逆に生産者団体による共販を阻害しておる実態を、
政府は目をおおうておる。もしもこれに注意するならば、そういうものに対してはさらに料率を下げて、五%あるいは四%に料率を下げるべきであるのに、何らそういう
行政指導もないし、する気もない。市場の不正取引の実態は目をおおうものがあります。私は次の通常国会等で、中央卸売り市場自体について深く
審議をする際に取り上げることにして、きょうは反対討論でありますから、一切を触れません。先ほど
北村委員も取り上げたことでありますので、省略をいたしますが、私は、実は岩手県の各地を回って、組合長からいろいろ注文をつけられたことがある。それは雑誌「地上」の二月号に、「中央市場の黒い霧」という記事が載っておる。産地の農協の人たちは、こういう実際にせりで落とされた値段と違った仕切りを中央卸売市場でやっておる、こういう不公正な点こそを国会で明らかにして戦ってもらわなければならないという声が産地のこれは偽らざる声であるのに、先ほどの
北村委員に対する大臣の答弁は柳に風折れなしであります。その前近代的な市場の実態に対する合理化をする意欲の片りんもうかがわれない。仕切り改算ということは、中央卸売り市場共通の、これは毎年毎年繰り返されてある具体的な実態であります。手数料の三分、三分は問題じゃない。なぜこれらの会社は外部に対してあれだけの巨額な投資をやるのですか。
施設の総合食品市場を増設したり別会社を設立したり、枚挙にいとまがない。会社の運営というものはどこから一体出てくるのか。
農林大臣の
監督に属するこの中央卸売り市場に対しては、前近代的とあえていいます。販売原票を鉛筆で書いておる。これはあなたの部下が監査した報告に出ておる。まさにこれは前近代的なものである。しかもこれに対しては単に改善命令を出す、だけでその場をごまかしておる。改善命令がくれば、一年くらいは多少反省の色もあるかもしれないが、多少の時日が経過すれば、至ってその合理化の見るべきものがないという繰り返しを毎年同じことをやっておる。これを合理化せずして一体流通の合理化がどこにありますか。
時間がないので私は
質問もいたしませんけれども、科学技術庁の資源調査会で
政府に勧告した「食生活の体系的改善に資する食料流通体系の近代化に関する勧告」というのがあります。いま例にあげました蔬菜のごときは、流通
段階で二〇%のロスがある。魚においては、頭から骨からしっぽを産地でこれを取り払うようなことで五〇%を輸送の合理化にもつなぐ云々のことに関連して、コールド・チェーンの設備等を勧告の中に入れておる。そういう具体的な勧告は別といたしまして、私は、勧告事項で学ぶべきことは、「食料流通の改善に当っては、加工、品質保持、貯蔵、輸送、等級規格および検査、情報など流通を構成する主要機能のすべてにわたって、調和と均衡のとれた体系改善方策が必要である。」と動作をしておることであります。すべて政策は片寄ってはいかない。バランスのとれた総合的な施策でなければならない。その中で、私は、生鮮食料品が閣議で決定されたその後の経過を見ましても、産地対策というものはまことに貧弱きわまるものであるということを繰り返し指摘せざるを得ない。そういうことはたなに上げておいて、そうして末端の小売り業者に大きな衝撃を与えるようなことに、三回の国会で執念を燃やして、どうしてもこれを成立させようという、そういう考え方が、私は、生鮮食料品に対する
政府のまじめなかまえ方ということに対して、大きな
意見を出さざるを得ない実態であると思うのであります。言うまでもなく、生鮮食料品は、その生産は零細であり、消費また零細であります。生産の零細性に対しては、特にそれらの産地における営農団地という構想でこれには立ち向かっていかなければならない。これは当面必須の課題であります。それに対して一体
政府はどれだけこの営農指導というものの産地対策を考えておるのか。やっと最近になって、団体側に行って
資料をもらい勉強しておる程度にすぎない。しかも、それらの営農団地における生産の
計画性、出荷の調整というものも、これは総合農協を
中心として自主的にやるべきものではありますけれども、さらに
政府の責任を感ずるならば、たとえば
農業改良普及員の中に、こういう蔬菜等の専門員を新たに
設置して、これを
中心営農団地に配置をして、自主的な農協連動と相提携して
行政指導の実をあげるとか、そういうことも何らやる意思がない。消費の零細性についても、
地域における生活協同組合というものの組織の育成強化というものを
政府は忘れておる。非常にこの消費君団体の育成については、
政府としては消極的であり、むしろブレーキをかけておる。産地における
農業協同組合あるいは漁業組合等に対する育成以上にむしろ消費地の組織
拡大強化には、
政府はその手を差し伸べなければならぬのに、何らそれに対する施策もない。しかし、自主的に、背に腹はかえられないというやはり意識の上から、消費地では逐次、団地を
中心として生活協同組合の組織づくりがやっと大衆化しようとしておる今日、これらをやはり組織化をすることが、私は生鮮食料品の合理化の両端の大きな課題であると考えるのに、
政府はどうもこれに取っ組もうとする意欲がない。そういう点がいろいろ
審議を通じて明らかになったにつけまして、基本的には、一体この物価の高騰というものはどこに責任があるのかということであります。このはね上がる物価の高騰の責任は、これは池田内閣の高度経済成長政策の必然的結果としてこれは招来されたものにほかならないのであります。食料品の値上がりもこれに付随して起こった不可避的な現象であって、その不可避的な経済現象の中に、
政府は積極的な施策を講ずることを怠って、今回の
法案のもとに、食料品の値上がりをあたかも小売り商業者とか、あるいは関連業者の責任であるかのごとき、そういう印象を一般に与える。また、農村に行ってみれば、あたかもそういう値段をつり上げるのは産地の生産者のこれは強欲さであるかのごとき印象すら与えておる。生産者にとっても小売り業者にとっても、これは断じて容認し得ざることであって、繰り返しますが、あげてその責任は
政府にあると言わなければならない。もちろん生鮮食料品の価格安定については、一日もゆるがせにできない重大な政治課題であり、経済問題であることは、そのとおり認識をいたすのでありますが、いたずらに流通
段階の末端にだけ弥縫策を講ずることがなく、生産と流通、消費にわたり一貫した総合的な、かつ大局的な施策を講ずることなくして、国民消費大衆を満足させ得る解決策は断じてないと言わざるを得ないのであります。その目的とするところ、法律の
審議を通じて明らかになった点からいたしまして、私たちはこの
法案に断じて賛成ができない。
以上をもって私の反対討論といたします。(拍手)