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参考人(三巻秋子君) 私は
消費科学連合会の会長の三巻でございます。
時代の進展に伴いまして、ものの
考え方、見方にも科学性を持たせなければならないというところから、昨年以来
消費者教育を
中心といたしまして、主婦のレベルアップに努めてまいった者でございます。物の値段も単に安ければよいという
考えは持っておりません。そして物の値打ちを知って買い物をしよう。また、主婦も自覚しなければならない面が多分にあるということを反省している者でございます。私は、いまの御
発言と違いまして、純粋の
消費者の
立場から、きょうは
意見を申し上げようと思っております。それと同時に、婦人団体こぞってこれに対する賛成をしているということを前提といたしまして、きょうは、この
法案に対しまして一刻も早く
国会を通過するように、賛成の
立場でまいりました。その理由は、物価安定の
一つの具体策であるということでございます。三十五年に、所得倍層
計画を打ち出されまして以来、約五年間に三割近い
消費者物価の値上がりでございます。そして家庭生活をおびやかしていることは皆さんも御
承知のとおりでございます。
東京都におきましては、総理府による
消費者物価の指数を見ますときに、三十五年を一〇〇にいたしまして、総合でもって一二六になり、中でも食料品の値上がり率は大きく、一四四・二%になっております。野菜とくだものは昨年よりは少しは下がっておりますが、野菜では一五〇・五%、くだものでは二五二・八%となっております。鮮魚におきましては一四七・五%、肉においては一二八・四%と値上がりしているのでございます。これに反しまして非
生鮮食料品の値上がり率は一二四・九%、こういうところに大幅にすぎるということが問題でございます。これは単に統計の示すところでありますが、実感はそんななまやさしいものではございません。ハクサイやダイコンを一本買えない、おつけものとも言えないようなものを、店先きで二分の一なり四分の一なり分け合って買う主婦のいることも事実は物語っております。各省も、企画庁を
中心にいたしまして
物価対策連絡協議会を開き、この物の値上がりに対していろいろと手を打たれましたが、単に連絡をするという意味にすぎませんでした。これに対しまして
農林省はおそまきながら三十八年の七月、閣議決定による
生鮮食料品流通改善対策要綱をもとにいたしまして、
生産者並びに
消費者の
改善に留意することをうたいました。
生産面におきましては産地
育成事業、
価格安定
対策事業団の創設、
価格安定のために産地冷蔵庫の建設並びに食肉センター等、こういうことをあげられますが、また、
価格の面におきましては
生産から
消費に至りますまでの追跡
調査並びに査察をいたしております。これらは大きい目で見ればやはり
消費者の安定に直結するものであるということを
考えまして、私
たちはその効果を期待したのでございますが、何年たっても
需給の不安定さは解消されません。ましてや天候を理由に、周期的に来る不安定の農政の貧困さも、
消費者は何としても納得できないのでございます。だれもよく言いますように、リンゴとか、牛乳の出産されたものが三倍にもなって小売り店の店先にあるということは、だれでも申すことでございます。そうして物価
上昇の原因がすべて
流通段階の小売り店の
合理化がおくれていると一いうようなことを
指摘されてまいりました。小売りの方は、これを聞けばたいへんおこられると思いますが、その間、都の
市場改善方策も固まってまいりまして、
市場の施設設備の拡大、上場単位の引き上げ、せりの公正化等、
取引改善合理化等の答申が出てまいりました。たとえば、
中央卸売り市場の手数料を、魚は六%の手数料を五・五%に、野菜は一〇%が八・一五%に、くだものは八%が七%に引き下げられました。また、集荷
業者の荷を引くあまりの競争を食いとめますために、リベートをわずかながら
合理化したことも知っております。しかるに、私
たちの台所への影響はさらさらございません。むしろ上がる一方でございます。このように
生産に対する
価格対策や、
流通面では標準店をつくってみても、また、
消費者に対しては主婦によるモニター制度の採用くらいしか
消費者保護政策はないのでございます。もう
消費者は食料品の値上がりにはあきらめにひとしいものを持ち始めておりました。
小売り段階において
価格形成を促進するために、
食料品総合小売り市場の
設置が三十九年二月十四日に閣議法定されました。その後刮目してその成り行きを見ておりましたところ、三十九年の五月十二日、附帯決議をもちまして
衆議院を通過し、予算も計上されたのでございます。その後四十六通常
国会並びに四十七臨時
国会と、参議院におきまして二度も
継続審査になっております。そうして本日まで放棄されているこの状態を見ますときに、これでほんとうに
消費者保護行政というものがどこにあるかしらんというふうに、たいへん残念に思う者でございます。一部
業者の
反対を聞いて、都民の生活にプラスするような方策がとってもらえないということがたいへん疑問なんでございます。すみやかに
消費者団体の声を十分お聞きをいただきまして、この促進をお願いしたいものでございます。
私は、連合会の
組織を通じまして、物価抑制の一助にと思いまして、
実態調査をいたしました事実を少し申し上げてみましょう。三十七年には玉川地区を
中心に会員にカードを配付し、家計簿式に毎日食肉、野菜、魚の
価格をつけてもらいまして、地域的に
価格差を調べてみたことがございます。三十八年の下期には、タマネギ、キャベツ、バレイショ、卵、豚一キロ当たりの標準
価格の平均と、
市場販売価格の平均を調べましたところ、前年は標準
価格との差が四円、翌年は十円また値上がりしているということがわかります。標準
価格よりも十円高いということを記憶しております。それがために標準唐の有名無実が立証されて、だれもがこれを利用しなくなりました。しかし、標準店といえ
ども、ほんとうの意味での標準
価格によって、これだけを売りものに
販売している
業者は成り立っていかないということを聞いております。かなり物には品質というものがございまして、買い物の時期などによって、物の
価格というものは比較対照はむずかしいとは思いますが、その標準
価格を何でもその日の大相場の三割ないし君側一分をかけて、大ざっぱに目安
価格、
指導価格をつける標準
価格が変なのでございます。カボチャでも何でも三割かける。
業者はその日のどんぶり勘定で計算する
関係上、こういうものが成り立たないのは明白でございます。証拠に、当時九百三十一、いやいやながら標準店ができました。三十九年三月現在、千八百七十三に数はふえましたものの、何ら意味はございません。三割のマージンを要求しなければならない
経常自体が、これからどうなっていくのか。三割以上プラス・アルファと利潤追求ばかりして成り立っていく
経済的
要因がもはや出てきているのではないかということを心配するものでございます。
お送りいただきました
法案の
関係資料をちょっと目を通しました。品目別に見まして、三十五年から三十九年までの入荷数量、
卸売り価格、
小売り価格の表を見ましたが、月別数字で、
卸売り価格と
小売り価格の、なんと倍に近い値段がついております。白菜
一つ取り上げてみましても、三十八年の月別で、卸十三円に対して、小売り四十一円七十銭という値段がございますが、三十八年の十一月には、卸六円七十銭が小売り十六円という値段が書いてあります。これを見まして、三割かけた標準
価格の新聞発表がこっけいになりました。また、このほか、私は正月食品の
中央市場発表の
小売り価格の見通し、推定
小売り価格をちょうだいいたしましたので、さっそく会員を通じまして、この
実態調査と、どれだけずれがあるかという比較
調査いたしましたところ、なんと塩力ズノコと生シイタケが割り安だったというだけで、
あとはもうほとんど割り高のものばかりでございます。私
どもはたまりかねまして、
流通機構の
研究の
目的を持ちまして、十二月、茨城県から三トン車五台の白菜を引いてみました。しかし、私
どもはあくまでも
中央市場を否定するものではございません。
市場の
必要性を認めての実験
段階であることを御了承いただきたいと思います。ある地域での実情を申し上げますと、当日、市の着きます前に、まず、周辺地区の五カ所の八百屋さんから市販されています白菜を買ってまいりまして、その平均を出しましたところ、三十円四十銭となりました、次に、出口の
市場価格を調べてみましたところ、キロ十八円でございます。そこで、農家の運賃を含めまして、二十二円で買い取りました。
市場価格十八円に手数料の八・五%を加えますと十九円五十三銭。これに三割マージンといたしまして、二十五円三十九銭でならないはずのものが、いま申し上げましたように三十円四十銭であり、二〇%近いプラス・アルファがあるということでございます。このように市価の四割安で、
生産と
消費者と直結するならば、新しく、しかも看貫も正確であり、品質もよく、たいへん皆さんが喜びましたが、こんなことを常にやろうとは思いませんが、この手を使って大
企業の
スーパーが進出していることは否定できません。
消費者は各地の
スーパーを利用して喜んでおります。近くの小売りの倒れた話も聞きますが、それならば国で小売りをかかえてやるのがいいのか、大
企業の
スーパーにゆだねて倒していくのがいいのか、この辺が、これから先の中小
企業の行くべき道をほんとうに宿命的な中小
企業対策として
考えなければならない問題じゃないかと思います。セルフ
サービスで人手不足を補い、人件費を浮かし、
経常の
近代化は、通産省の
近代化にもこれを方向づけ、資源の有効利用と
食生活の科学的
改善に資するため、科学技術庁の資源局も
流通の
近代化を勧告をしております。
企業は工業だけではございません。置き忘れられた商業の
近代化をモットーにすべきいま、零細小売りが取り残されているような、こういうときに、大同団結しなくて、どうしてこれが成り立つものでございましょう。いままでの商権に安んじて利潤追求していっていいでしょうか、そういう利潤追求ばかりしていたのでは、
消費者も他へ逃げるでしょう。もはや政策として、人手不足、人件費の値上がりでやむを得ませんという、ただ放置する、
対策がないということは、私
たちこれまで言い尽くされてまいりましたことでございます。また、こういうように、
指摘いたしましたような統計と
実態のずれを、正しい、適切な
価格をこの法によって一日も早く
実施していただきたいというゆえんでございます。姑息な標準店を
幾らふやしましても、適正な
価格はつくられないことを付言いたします。
世はまさに、百貨居でさえ――小売り中小
企業が寄り合い百貨店をこしらえてという時代になっておりますし、中小
企業庁もこれを
指導しております、先だっても、ある話でございますが、
小売り商の集まった百貨店は、共同の宣伝というようなときに、どうしても共同化ができなくて、仲間割れをするというようなことで、なかなか思うようにいかない。そこで、とうとうその上に大きな百貨店が外ワクとして乗っかった実例を私は知っておりますが、こういうことをほんとうに中小
企業の人
たちは
考えなきゃならぬ時節じゃないでございましょうか。
要するに、構造の
近代化をもって、セルフ
サービスで基準
価格を設定いたしまして、これを運用していただいてこそ、物価の引き下げができると思います。この法の二十条の中に、
管理会による
運営審議会がございますが、これにつきまして少々最後にお願いがございますが、
運営審議回が公正な
立場で今後管理していただくことはけっこうでございますが、その中に
消費者代表が抜けております。こういう際に、婦人の、公正なる
立場の
消費者代表を十分入れていただくということを、ぜひお願いいたします。
消費者保護の
一つの具体策であるこのような
法案に対しまして、これを流されるようでは、
政府の物価政策ゼロだということを、婦人団体あげてこれを見守っております。運用面では、いろいろ隘路は出るかもわかりません。それは皆さんが御心配の種でございますが、心配だからといって何
一つ前進しないのでは、前向きの政治はあり得ない。私
ども現に、これは形態は違いますが、大阪の公設
市場で、こういうことによってある
程度のものの引き下げというものも十分行なわれております。これを放置しておきますときには、自動車による
スーパーマーケットがもうそこまで出てきていることを十分お
考えくださいませ。私
たちは、ただ単に法律とか、そういうものだけに依存して物の引き下げを願っているものではございません。ホーム・スクールを形成いたしまして、常に物の買い方ということについて勉強しておりますが、わけても、最近のように、サトイモがまっ白に洗われて、ゴボウも黒いものでないという観念のお野菜が町をにぎわしておるのでございますが、この洗い方ひとつにいたしましても、何か添加物、危険な薬品を使いまして、見せかけの、良品とする現状でございます。こうやって、どこでなされるのか知りませんが、白くすることによって
価格が高く仕切られるという、こういう
現実もございますことを、私は先だって、連合会の定例会でもって全部
指摘いたしました。こういう身近な問題ひとつ見ましても、ほんとうに問題が山積しております。どうか、そういう
対策を、すべて強力なもとに並行して行なって、初めてこの物価引き下げというものが確信できるのじゃございませんでしょうか。私
たちもそういう努力をいたします。この
法案を通すことだけを望んでいるのではございません。総合的な作文はもはや
物価対策として出尽くしていると私は思います。ただ、実行しないだけのことであって、そういう突破口をぜひ開いていただきたいと思います。私の
発言を終わらせていただきたいと思います。