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1965-02-16 第48回国会 参議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月十六日(火曜日)    午後二時十八分開会     —————————————    委員の異動  二月十六日     辞任         補欠選任      八木 一郎君     堀本 宜実君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         仲原 善一君     理 事                 田中 啓一君                 森 八三一君                 山崎  斉君                 矢山 有作君     委 員                 北口 龍徳君                 小林 篤一君                 温水 三郎君                 野知 浩之君                 藤野 繁雄君                 堀本 宜実君                 森部 隆輔君                 大森 創造君                 北村  暢君                 戸叶  武君                 高山 恒雄君    国務大臣        農 林 大 臣  赤城 宗徳君    政府委員        農林政務次官   谷口 慶吉君        農林大臣官房長  中西 一郎君        農林大臣官房予        算課長      太田 康二君        農林省農林経済        局長       久宗  高君        農林省農政局長  昌谷  孝君        農林省農地局長  丹羽雅次郎君        農林省畜産局長  桧垣徳太郎君        農林省蚕糸局長  大口 駿一君        農林省園芸局長  林田悠紀夫君        食糧庁長官    齋藤  誠君        水産庁次長    和田 正明君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (農林水産基本政策に関する件)     —————————————
  2. 仲原善一

    委員長仲原善一君) ただいまから委員会を開きます。  農林水産基本政策に関する件を議題にいたします。  本件について、農林大臣に対し質疑のおありの方は、御発言を願います。
  3. 戸叶武

    ○戸叶武君 私は、日本社会党を代表して、先般赤城農林大臣説明された農林水産業基本政策に対して質問いたします。  まず、農林予算から質問を申し上げますが、一般会計における農林関係予算の総体、総理府大蔵省、文部省、労働省及び建設省所管を加えた農林関係予算の合計は、三千六百九十九億九千五百五十四万円、すなわち、約三千七百億円になっております。この四十年度の農林関係予算と、三十九年度補正後の予算三千四百八十五億円とを比較すると、表面的には二百十五億円の増加、また同年度当初予算三千三百六十億円に比較すると三百三十九億円増加しているという説明がありました。このことはそのとおりでありますが、しかし、昭和四十年度の農林関係予算は総予算数の三兆六千五百八十六億八千万円の一〇・一%であります。前年度の一〇・三%よりも低率になっているわけであります。補正後よりはさらに低率であります。また、前年度の当初予算に対する伸び率は、総予算は一一二・四%になっているのに、農林予算は一一〇%という低率です。この数字をもってすれば、農林予算は実質的には増加したとは言えないと思いますが、農林大臣はいかなる御見解ですか。
  4. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 昭和四十年度の農林関係予算としては、いまお話のように三千七百億円が計上されております。これは総予算額の一〇・一%、いま御指摘のとおりでございます。しかし、これも前に申し上げましたが、予算編成変動要因の多い食糧管理特別会計繰り入れ農業近代化助成資金繰り入れ災害復旧等経費を控除した予算規模で比較いたしますと、農林関係予算の国の総予算に占める割合は、前年度の六七%から昭和四十年度は七%と伸びを示しております。また、変動要因の多い経費を控除した予算規模予算伸び率を見ますと、国の予算が一三・一%、これに対しまして農林関予算は一八・一%となって相当の拡充となっております。また、予算の全体でなく、見て御承知願いたいと思いますが、この予算編成にあたっては、農林漁業近代化をはかるための重要施策の推進につきまして格段の配意を加えまして、特に必要な経費の確保をはかっております。すなわち農業近代化に関する重要経費について見ますと、前年度当初予算に比し、農業生産基盤経費については一九・四%増しの九百二十三隠田、それから農業構造改善対策につきましては一七・七%増しの百六十億円、畜産生産振興関係につきましては二〇・一%増しの五十六億円、それぞれ大幅に増額しております。また、自立経営を志向する農家経営規模拡大を推進するため、農地管理事業団関係経費新規に計上しております。このほか、農林漁業金融につきましては、融資ワクを前年度の千七十億円から千二百四十億円に、農業近代化資金融資ワクは前年度の六百億円から七百億円に、農業改良資金貸し付けワクを四十五億から五十七億円に増額する等、この内容を御承知と思いますが、ごらん願いまするならば、財政金融両面を通じまして、農業基本法に基づく施策の実施を強力に推進することとした予算だと、こういうふうに私は考えております。
  5. 戸叶武

    ○戸叶武君 農林大臣答弁聞いておりますと、財政金融両面において強力に推進していくということでありますが、どうも農林大臣の数子のあげ方は、政府に都合のいいような解釈の点だけをあげておりますが、農林関係予算の三千七自億円から生産者及び消費者に対する社会保障的予算と見られる食管特別会計を引いてみると、農林関係予算は、国の予算のわずか七・四%であります。農林予算としては実質的には最低線ではないかと思います。食糧増産計画が含まれていた昭和二十八年度の一六%というのが国の予算に対する最高な状態でありますが、あの当時から見れば、実質的に農林予算というものは半分以下に減っていると見なければならないと思います。  そこで、この金融問題で、特に財政投融資計画についてお尋ねしますが、昭和四十年度における農林関係財政投融資計画は、農林漁業金融公庫への出資一般会計から八億円、産業投資特別会計から百五十六億円計百六十四億円であります。産業投資計画総量が五百五十七億円のうち、輸出入銀行にはその五二%の二百九十億円を出資していながら、農林漁業金融公庫にはその二八%の百五十六億円しか出資しなかった、そういうようなのは、これは大蔵省のほうの考え方かもしれませんが、農林大臣はこの問題でもだいぶ大蔵省と折衝しているようですが、どうも貿易ということは日本において重要なことでありますが、そのほうに重点が置かれて、いまこの危機に立っている農業に対しては、この百五十六億円というのは、前年度の二百九十億円に比して百三十四億円という大幅な削減になっているのです。三十九年度は一般会計十五億円、産業投融資特別会計二百九十億円、計三百五億円であったのに、四十年度は一般会計八億円、産業投融資特別会計百五十六億円計百六十四億円、差し引き百四十一億円削減されておるのであります。これは、農林大臣は、いままでの農林大臣から見て一番まあ大蔵省に対してはがんばったと言われていますが、これは赤城さんだけの責任に転嫁するわけにいかないでしょうが、どうも農林関係予算を獲得して、農業基本法にあるような生産性及び所得の不均衡是正するというのには、どうしても予算なり財政投融資裏づけというものがなければ、絵にかいたぼたもちみたいなもので、実際成果が上がらないのですが、この間のいきさつはどうなっているのでしょう。
  6. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 努力いたしましてもおしかりを受けるようなことでありますが、実は、この金融の面の、農林漁業金融公庫に対する出資は百六十四億円、御指摘のとおりであります。しかし、貸し付けワクは、先ほども申し上げましたように、三十九年度の千七十億に対しまして千二百四十億と拡充をはかったわけであります。その原資として、いまのお話出資金は百六十四億に減っておりますが、自己資金が二百三十五億円、借入金のほうは七百七十三億円と、こういうふうに予定しております。出資金は減少しておりますが、かわりに、資金運用部等からの借入金がいま申し上げましたようにふえておりますので、公庫に対する資金手当に支障はないと思っています。公庫資金に対する資金需要に十分にこたえられる資金量が確保できた、こういうふうに考えています。なお御指摘のように、出資金は百六十四億円と、前の年からは減少しております。別途に、一般資金から公庫に対しまして利子補給四億六千七百万円の補給金を交付されることになっておりますので、まあ計画の線には沿っていけると考えております。
  7. 戸叶武

    ○戸叶武君 農林大臣説明がありましたが、私たち質問のねらいとだいぶ解釈が違っていると思います。利子補給金というものはあっても、実際上、重工業なり、あるいは輸出関係なりに対するところの重要産業育成のための投融資というものが、利子その他において非常な便宜がはかられていたり、または免税処置等も講ぜられたりしておりますが、農業関係生産性伸びの低く、しかも所得の少ない農業、落ち込んでいる農業をどうやって保護して育成していくかという、その借りる金というものは利子が高かったり、また、実際中小農いわゆる零細農はそれを借りられない、富農の一部が利用しているにすぎないというようなところに、私は、まだ日本農業関係金融には抜本的に是正しなけりゃならないところがあるんじゃないかと思います。いままで予算なり財政投融資の問題で御質問申し上げたのも、同じ農業基本法をつくり上げたのでも、西ドイツは御承知のように一九五五年に農業基本法を制定しましたが、その翌年には予算裏づけとして予算は一・八倍、その翌々年には二・五倍というふうに増加しておるのであります。ところが日本では、一九六一年に農業基本法が制定されても、その後農林予算というのは、西ドイツ連邦のように倍増されるということはないのです。また、財政投融資関係においても、農業に対して特別な処置というものがそれほど講ぜられていないのであります。こういう状態でありますから、農業基本法において生産性並びに所得の不均衡是正するということをうたっていながらも、他産業との格差というものが少しも狭まっていないのじゃないかと思います。この問題はあらためて農業白書の問題で御質問はいたしますけれども、この農業基本法が制定されてからすでに四年です。四年たっても依然として効果があがっていない。どうも農業白書を見ても、大臣説明を見ても、なんだかよくなったような気分だけは一生懸命盛り上げていますけれども、少しも内容的には私は目立った成果がないと思うのですが、こういう、四年くらいになったらこれでいいのか、これでは問題が解決つかないんじゃないかというふうに、私は農林大臣としてもやはり考えなきゃならない段階にきているのだと思いますが、これは、農業白書の領域は農業白書質問のときに譲りますが、農林大臣はこれに対してどういう考えをお持ちですか。
  8. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまのドイツの例を引かれましたように、農業基本法ができてから画期的に施策予算が増額したというわけにはまいっておりませんことは、私も遺憾に存じております。しかし、内容の点につきましては相当施策を施しておりますので………。格差是正はされておりません、是正されていないで、白書に申し上げておりまするように、生産性におきましても横ばい状態の二七%ぐらいと見ております。あるいは所得につきましても七〇%程度のものであります。これは全体の平均でございますので、そういうようなことでございますけれども、一面、格差是正されない全体の面もありますが、六十万円以上の収入を伴う農家の率は逐次ふえておるというようなこと、あるいは所得の面におきましても、一町五反以上の農家等につきましては九割以上の所得を他産業に対して確保している、あるいは生産性につきましても四〇%から五〇%であるということでございますので、私は、日本農業状態から急速に状況がよくなっている、格差是正されているということは申し上げられません。横ばい状態でございますが、着々と進んでおる面も相当あるということは申し上げて差しつかえないと、こういうふうに考えております。
  9. 戸叶武

    ○戸叶武君 赤城農林大臣の御答弁は非常に率直でありますが、率直だけに、ちょっと横ばい状態で若干というあとがはっきりしていないのですが、非常に停滞している現状というものは、やはり私たちは直視して反省しなければならないと思います。三十八年度の農業は非農業に対して二九%で、前年度の水準から一歩も伸びておりません。農業所得も一人当たり非農業四十万三千円に対して十一万七千円でありますから、これまた伸びておりません。このように生産性において、あるいは所得において、いずれも三分の一以下に他産業に比較すると低いところにあります。したがって、国民所得に占める農業の比重というものは九・二%に後退しておるのであります。私はこの数字はやはり問題にしなければいけないと思います。農業所得国民所得の一〇%に足りなくなったということは、農業にとって私はゆゆしき重大な問題だと思います。昭和三十年には農業所得が二〇%に達しなくなったというので、当時大問題になったのでありますが、その後、わずか八年間にその半分の一〇%以下に低落したというこのことは、やはりこの八年間におけるところの変動のきびしさというものを私たちはしっかり見つめる必要があると思います。こういうふうに農業と他産業との比較というものが、生産性並びに所得の面におきまして三分の一という格差がありながら、これはちっとも詰めることができない。横ばいばかりやっている。カニならばそれでいいですけれども、農業カニのように横ばいばかりをしていたのではたまったものではありません。政府農業基本法でうたってきた趣旨というものは、ここでは全く空文化されているんです。ここに私は問題があるのじゃないかと思っておりますが、まあ現状を率直に語っているというその正直さは買っていけますけれども、それ以外の何ものをも政府農政から期待できないと思うのですが、大体この横ばいから、次には何ばいに持っていこうと考えているんですか。
  10. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ことばにとらわれるわけではございませんが、横ばいから上のほうに上昇するように、だんだん格差是正されるようにつとめておるわけであります。
  11. 戸叶武

    ○戸叶武君 どうも赤城さんが筑波山の近くの生まれで、「うそばっかり筑波山」ということばがありますが、(笑声)うそばかりとは言えないが、どうも苦しい答弁だと思います。上向きの姿勢が少しもされていないので、上を望んでいるというので、カエルが雨を待っているような次第ですが、問題は、いま農業実態を私たちはしっかり見つめていかなければなりませんけれども、農業就業者の数ですね、この総理府労働力調査によると、昭和三十二年度には千四百七十一万人であったのが、六年後の三十八年度には一千二百万人と二百七十万人減少しているんです。年平均四十五万の減少ですが、この二、三年間の激減ぶりというものはもっとすざましくて、この調査でいくと、やはり池田さんが予測したように、十年間にやはり五百万人以上減少するかもしれません。こういうふうに農業就業者の数というものが、すでに総就業者数の二五・九%、すなわち四分の一に落ち込んできた、こういう事実がここには生まれてきているんですが、それとともに、この農業世帯員の他産業への就職者数というものが一年に九十三が四千人にも上る、それから新規学卒者の大部分が都市に流れていく、こういう中で農村を守っていくものは、明日の農村のにない手はだれかということが非常に重要な問題になってくると思いますが、政府は人つくり、あるいは農家あと継ぎ人たちのためにいろいろな、たとえば、結婚した場合において、若い夫婦が入れるような部屋をつくる場合には金を貸してくれるとかなんとか、何か二階から目薬を落すような政策は少しやっておりますが、こういう状態で、危機に立った農村の明日というものに対して希望を与えるような具体策が打ち出されないで、農村若者たちを食いとめることができるかどうか。この辺は非常に苦労人な赤城さんもいろいろ模索しておるようでありますが、政府には何か目新しい具体案の持ち合わせがありますか。
  12. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いつも申し上げますように、この手一つで、農業後継者を村におらせるような方途を講ずるという手は残念ながら持ち合わせておりません。農業政策の全体から生産性が上がるような、また先ほど言いました所得が上がるようなことにしていきたい。また、農村社会環境もよくしていくというふうに考えて、総合的な対策の中から、後継者が安んじて希望を持って農村にとどまるようにいたす方途を講じておるわけでございます。いまお話しのような生活資金とか、後継者資金とか、あるいは伝習農場的な教育とか、そういう個々的なこともやっておりますけれども、全体としてよくしていくということに力を注いでおるわけでございます。
  13. 戸叶武

    ○戸叶武君 赤城さんが言われるような政策は、やらないよりやったほうがいいと思いますが、非常に微々たる対策でありまして、どうも農業基本政策としては、私たちはそれほどいただけないと思います。農政に対する取り組みの形でありますが、欧米諸国では、農業と他産業との生産性及び所得格差が三〇%になると、重大な政治問題となるのであります。西ドイツにおいて農業基本法ができたときも、農業と他産業との労賃というものが三〇%の開きが出たというので、やはりエアハルト経済繁栄政策の裏に、落ち込んだ働く労働者の賃金なり、あるいは農民所得はどうするか。それには思い切った処置を講じなければならぬというので、あのグリーン・レポートに即したグリーン・プランというものが打ち出されたのでありますが、このように、欧米諸国では三〇%の格差ということが問題になっているのに、日本では三対一というような大きな格差が生じてきているのにかかわらず、それに対する抜本的と思われるような思い切った、池田さんは革命的な施策と言われましたが、どこにも革命の姿なんかありませんが、ことばの問題でなくて、具体的に思い切った農業に対する施策というものが躍動しなければ、いまの落ち込んだ農業というものを救うことができないと思うのであります。しかも農業が今日のように停滞しておるのは、政府高度経済成長政策の暴走からの被害を受けた最大被害者であります。そのひずみを是正するというのがいわゆる佐藤内閣最大の使命じゃないかと思うのであります。そういう意味において、佐藤赤城農政とでも言いましょうか。そういう路線は、この農政に対してこれが柱だというような基本的な政策があったならばその点をもっと明らかにしてもらいたいと思うのです。
  14. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 生産性を上げていくこと、それに価格政策も付け加えていかなくちゃなりませんが、その根本の問題の解決に進んでいきます一つの方策といたしまして、私は、経営規模拡大すること、あるいは経営の質がよくなること、これが問題だろうと思います。そういう意味におきまして、農村後継者等につきましても、離村をする率が経営規模の大きい人たちは少ないわけでございます。どうしても経営の大きい人が残っておる、農業に精進する。また、所得の面につきましても、先ほど申し上げましたように、ほかが七七%ぐらいであるのに、一町五反以上の者は九〇%ぐらいの所得を確保しております。そういう面がありますので、私は構造改善が実際必要であると思いますが、構造改善の中でも土地基盤整備、あるいは主作物を中心とした共同的な施設等も必要でございますが、やはり基盤を大きくしていくということが必要だと思います。それから開墾開拓あるいは草地造成等も必要でございますが、いまの経営規模拡大の上に流動している土地方向づけていくということが、やはり農業収入を多くして他産業との格差を縮めていく一つ方向だろうと思います。もう一つは、やはり先ほどからもお話がありました農業資本装備が強化されることでございますので、財政投融資金融面でこれを支えていくといいますか、強化することが必要だろうと思います。そういう点におきまして、いろいろ御批判もございますが、金融ワク等も広げてきたわけでございます。同時に、その生産手段である土地の質をよくするという意味におきまして、土地改良用排水、かん水を中心とし、あるいは圃場の整備をし、あるいは農道等を取りつけて、質的に基盤を強化していくということが必要だというふうに考えて、そういう格差是正政策として特に取り上げている問題が四十年度予算にはございます。同時に、価格支持等につきましても、酪農等につきましての価格、これは予算上は載っておりませんが、そういう方向に持っていくというふうに考えておる次第でございます。御期待に沿うような思うようなあれはございませんが、そういう方向について相当踏み出してきておるつもりでございます。だんだんにその方向に実を結ぶように進めたい、こう考えております。
  15. 戸叶武

    ○戸叶武君 農林大臣が、経営規模拡大のほうへ方向づける施策、あるいは農業資本装備の強化というものに力を入れるということでありますが、その対象となるのは、政府農業基本法をつくったときから考えたいわゆる自立経営農家育成専業農家対象としたものが主だと思いますが、しかし、そこにだけ農政が集中されていくというところに一つ問題があるのじゃないかと思います。農業経営の動向としての専業農家兼業農家の問題を、あらためてここで農林大臣にも検討してもらいたいのでありますが、三十八年十二月の農業調査によると、総農家五百八十三万戸のうち、専業農家百三十九万戸、第一兼業農家百九十八万戸、第二兼業農家二百四十六万戸というふうになっております。専業農家二四%に減少したのに対して、兼業農家が七六%に増大した、これが日本農業構造実態であります。この事実というものは、いままで政府はいわゆる専業農家相手に、俗に三割農政と呼ばれておりますが、そういう農政を押し進めてまいったのでありますが、その専業農家というものがすでに二四%に減少したということは、今度は、三割農政から政府農政は四分の一農政に転落したことを私は意味すると思うのです。この専業農家兼業農家との比率の変化でありますが、昭和八年から十年において専業農家は七四%、兼業農家は二六%であったのが、ここ三十年間に、今度は専業農家が逆に二四%、兼業農家が七六%というふうに逆転してしまったのです。私は、この三十年間の日本農業構造変化ということは非常にすさまじいものがあると思うのです。それにもかかわらず、農政というものが三十年前も今日も一にぎりの専業農家富農だけを対象として、三割農政から四分の一農政の細い道を歩んでいるのでは、日本農民全体を相手にする農政とは言えないと思うのです。しかも農家所得の問題も、前にも指摘しましたように、三十八年度には農業所得が四九%に落ち、農外所得が五一%に上がっているのです。日本農業の体質の弱点というものは遺憾なくここに暴露されていると思います。農業経営というものが農業所得だけでは成り立ってない、農外所得を加えなければ、農外所得のほうをより多く求めなければやっていけないというこの実態に沿うて、好むと好まざるとを問わず、これに対応するところの農政というものがいま確立されなければならないと思うのです。ところが、この農村の急激な変革に当面して、政府は明らかにろうばいして、農政方向づけというものに私は自信を失っているんじゃないかと思います。その証拠に、農業白書農業施策の中に書いてあるいろいろな文書を検討してみると、随所にその矛盾撞着した点が出ておるのであります。一方においては、兼業収入の安定化が重要である、兼農の機会を増大していかなければならないというふうに言っているかと思うと、兼業化が進展すると農業生産は停滞して生産性が低くなるから、農産物の安定的供給の確保という観点からは、専業農家経営の発展と所得の増大をはかることが重要だというふうに言っているのです。どっちもうそだとは言いません。どっちもほんとうのことを言っているのですが、問題は、どっちを向いて走るか、二頭の馬に乗ってうまく走ると言っても、前のほうに向かって走るやつと、うしろのほうに向かって走るやつとをつないで、これで馬に乗ったと言ったって、馬車に乗って走るということにはならないので、いまの日本農政というものは、全くだれがやってもむずかしい段階だと思います。全くハムレットとドンキホーテと一緒に芝居やっているような調子で、調子がばかに合わぬと思いますが、こういうときに混乱しないで、この中からどうやって日本農村実態日本農業現状、それに沿うて適確な農政基本政策を立てるかということが一番の課題だと思いますが、赤城さん、大ざっぱでもそういう構想を私たちに示してもらいたいと思います。
  16. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 確かに兼業農家がふえて七六%も占めている。なお第二種兼業が四二%、これは本来の姿ではないと思います。しかし、兼業農家それぞれにとってみれば所得を必要とするのでありまするから、そのことは排撃すべきでも何でもございません。しかし、本格的に考えますならば、やはり農業だけでやっていけるという形に農業を持っていくことが筋だと思います。そういう意味におきましては、専業の自立農家が増すことが好ましいことでありますし、そういう方向に進めていくのが筋だと思います。しかし、現に第二種兼業の四二%を占めるような人々がおりますので、これも農業は副業的でございますけれども、農業者でございます。でございますので、そういう面におきましては私は二つの方向づけがあるのじゃないか。一つは、そういう人々でやはり生産性は低いけれども、農業をやっていくという意欲の強いもの、こういうものはほかのものとも一緒にしまして、やはり協業と言いますか、機械等を中心にして協業的なものにしていく。これは一つの単位としてはいわゆる経営規模が大きくなったと同じものだと思います。その中には兼業農家がたくさん入っておるといたしましても、単位としては経営規模拡大されたというような形だろうと思います。あるいはまた、こういう経済が成長しておるときでございますので、他の虚業に入る、あるいは他産業をする。農村等においては商売、商業などに従事するような形になっていくものもありまするし、あるいは他の工場等に労務者として働こうという人もございます。職業の自由でございますので、これをしいてとめるというようなことはちょっとできませんが、そういう場合に、他産業に安定して入り得るような環境をつくると言いますか、そういうことによって土地を譲り渡すというようなものがありまするならば、つとめてそれを経営規模拡大方向方向づける、こういうような考えを持って進めておるわけでございます。でございますので、兼業農家に対しましては二つの方向にわかれる傾向はあると思います。そのままで兼業農家としてとどまるものにはつとめて協業と申しますか、共同化によって農業生産が続けられるようなふうに進めていきたい。こう考えております。
  17. 戸叶武

    ○戸叶武君 農林大臣は、自立経営のできる専業農家育成するというところに重点を置くのが筋だという考えの上に立って、特に第二兼業農家の場合においては二つに分かれる、すなわち他産業へ出ていこうとするもの、それから兼業という形だが、協業化の方向にこれを指導していくものと二つあるのじゃないかというふうにみておりますが、実際問題として、今後ここらにまだまだいろいろなむずかしい問題が私はあると思います。土地農民との関係というものは、なかなかテーブルプランで動かすことのできないようなむずかしい問題が私はまだ残っていると思いますが、第二兼業農家の問題、特に零細農の問題を中心として今日見るときに、近年深刻化されて社会問題にされているのは、農村の出かせぎ者の保護の問題だと思います。政府の調べによると、三十八年には一カ月以上六カ月未満の離村者としての出かせぎ者は二十九万八千人、約三十万人もおるということですが、最近社会党のほうでいろいろ調べてみますと、やはり百万人を突破しているのではないかというふうなあれも出ております。この出かせぎ者の問題ですが、出かせぎ者の四七%が世帯主であり、四二%があと継ぎであるというこの統計上の数字は何を物語るかというと、やはり零細農家は農業収入だけでは生活ができない、出かせぎしてやっぱり農業収入を得なければならぬというところに、こういう出かせぎというのが一つの大きな風潮になっていると思います。最初は東北地方が主でありましたが、今日においてはこれが全国的に拡大されてきております。山間部の農村においては働きざかりの男たちがほとんどいなくなって、離農者が多いがために、火事なんか起きても消防自動車を運転してこれを動かす人もいなくなったというようなところもあるそうです。また夫婦が離れ離れに生活をしているので、いろいろないざこざが起きて、家庭悲劇も続出しております。私はおとといときのう、鬼怒川の山奥の、昔、平家の落人が住んでいたような三依、栗山という地帯の座談会にも行ってまいりましたが、この山奥の寒村における子供たちの生活なんというのはほんとうに殺風景で、いま大都市におきましてはアパート住まいの、夫婦共かせぎで残されていった子供の鍵っ子というのがいわれておりますけれども、父親が、男たちが出かせぎにいって、そして留守宅を子供が守っているという姿は——母親は母親で仕事をやっている、何かててなし子のような境遇に似たような気の毒な状態に置かれております。託児所の問題なり、いろいろな子供の家でもつくってくれないかといろいろありますが、やはり都市の今日においては殺風景な生活だけを問題にされておりますけれども、こういう僻地における問題も取り上げていかなくちゃならないと思います。この出かせぎ者の保護の問題、労働条件の問題、そういうふうなのは、まあ労働大臣にでも機会があったら聞きたいと思いますが、やはりこれに対しての対策が講ぜられないと、とにかく働きにいく、しかし、臨時雇い的な冷遇を受けている。土木事業——道路やあるいは建設の臨時工的な雇われ方でもって、いつでも生活が不安定だと思うのです。こういうことに対しても、まあ政府のほうでは職業訓練やあるいは失業保険のことやいろいろなことを考えておるといっておりますが、もうこういうふうになってくると、だんだん農政というものがゆがんできちゃって、四九%が農業所得、五一%が農外所得ということになると、農政というものは農林省だけの管轄じゃなくて、労働省と共管でもやらなくちゃならないのじゃないかというふうな時代まで私はくるのじゃないか。これは笑い話じゃなくて、何か日本農政というものが、ほかの国では類型のないような一つの奇形的な形を生んできたと思うのですが、これは農林大臣と労働大臣がほんとうにひざ突き合わせて、好むと好まざるとにかかわらず、出かせぎに出ていかなければ農家の生活が成り立たぬという層の出かせぎ者に対して、農林大臣としてはどういう対策を持っておりますか。     —————————————
  18. 仲原善一

    委員長仲原善一君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日付をもって、委員八木君が辞任されて、その補欠として堀本君が委員に選任されました。     —————————————
  19. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 出かせぎ問題等につきましては、農林だけの関係で解決できない多くの問題を含んでおりますので、労働行政あるいはさらに厚生行政、こういう方面と連絡を緊密にして対策を講じていきたいと思います。いま御質問お話の中にもありましたように、農業は季節的でもありますので、東北等におきましては、作地帯等において昔から相当外へ出て働くという慣習はあったのでございますが、最近、特にオリンピック・ブームやあるいはまた建設ブーム等、あるいはまた、全体的に見まするならば、経済の高度成長下におきまして、中央にいろいろな事業等が起きてきておりますので、そういう機会をとらえて出かせぎに出る。しかもその出かせぎが社会問題化するような形態においての出かせぎが多くなってきておるということに対しましては、私も心を痛めておるわけでございます。やはりそういうことから、まあ経済全体として見まするならば、安定成長というような方向に持っていくということ、あるいは地方の開発、中央の開発ばかりでなく地方の開発へ相当重点を置いてやっていこうというようなことに進めておりますので、そういう点から就業の機会が遠く離れるということではなくて、近くに就業の機会を得られるような方途を講じていくのも一つの方法だと思います。  それから、いまお話のように、職業の訓練とか、あるいは職業安定所を通じての就業とか、そういうものも当然考えなくてはなりません。農業だけで考えまするというと、一番農業のうちでも立場のひどいのは、いまお話しの鬼怒川の奥のような山村における農業者であろうと思います。そういう意味におきまして昨年林業基本法も通してもらいましたので、ことしから林業の構造改善事業等の仕事も始めるわけでございます。そういう構造改善の中に入って山村をよくしていくということも考えていかなければなりませんし、あるいはまた去年から続いておりますが、ことしも山村振興に対する調査予算等も組んで、一そう山村の実態を把握して、これに対する対策を講じていきたい。できまするならばやっぱり山村振興の立法もいたしまして、総合的に山村をよくしていく方途を講じていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  20. 戸叶武

    ○戸叶武君 いま林業基本法の話が出ましたが、山に住んでおる人はこの林業基本法をむしろ恨めしがっておるような状態で、山間における木材関係の仕事をやっておる人たちは、土地の者には伐木払い下げなんかごく少量しかないので、すぐ仕事が尽きてしまう。ところが、大きな木材会社とか、あるいはパルプ会社には大口の払い下げがなされるというので、どうも山間部における人たちはこれによって恵まれるようなことがなくて、山間部以外の者のもうけ仕事に適するような運営しかされていないが、これはどうしたんかというふうに質問されて、私も当惑しましたから、今度一度赤城さんに会ったらそのことをただしておこうと思っていました。実際連帯の面でそういう苦情は出て来ないのですか。
  21. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お話のようなことも出ております。そういう点も地元に、恩恵ということばは少し悪いのですが、地元のためになるような方向でいろいろやっていくように指導しておるわけでございます。お話のような点は、なお注意してみたいと思います。
  22. 戸叶武

    ○戸叶武君 次に、貿易の自由化に対処する農業保護の施策について承ります。  この貿易自由化のあらしの中で、世界各国とも貿易の自由化と、自国の農業保護の施策とをどのように調整するかについて、真剣に取り組んでいるのであります。まあ歴代の農林大臣から見れば、赤城農林大臣はこの面ではなかなかの抵抗を示しているということですが、どうもやっぱり佐藤内閣の中でもそういう考え方というものが非常に孤立しているのじゃないかと思うのですが、私はこの際、貿易自由化という世界的な風潮というものと私たちは取り組む場合においても、インターナショナルの風潮を、やはり国家利益的な問題、それとどう調整するかというところがやっぱり政治の問題でありまして、これはEECの中におけるフランスとドイツの関係におきましても、EECの域外にあるところのイギリスやデンマークのやり方を見ても、この問題に対しては非常に真剣に私は取り組んでいると思うのです。それに反して、日本ではどうでしょうか。三十八年度におけるわが国の農作物の輸入額というものは十五億ドルになっております。これがために食糧自給度というものは八一%に低下しております。政府は二十八年にMSA協定——アメリカの余剰農作物受け入れをやって以来、この食糧増産計画というものを放棄してしまったので、こういう状態にずるずるに見舞われて来たのでありますが、今日の急務は、国際収支安定の見地からしても、また、食糧自給体制の確立のためにも、政府はこの問題に対してはもっとき然とした態度が必要だと思うのでありますが、赤城農林大臣はどの程度佐藤首相や田中大蔵大臣のしりをひっぱたいているか、そのしりのひっぱたきぐあいをお聞きしたいと思います。
  23. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 戦争がないからといって、自国の食糧を他の国に依存していくということは、これはよくないことでありますが、やはり自国の食糧は自国で極力まかなうようにすべきのが農政の本旨だと思います。しかし、物によっては自給度を完全に持っていくということが困難なものもありまするし、そういう血からして、どれもこれも完全自給というわけには私はまいらぬと思います。大きく言いまするならば、国内的にも適地通産ということがありますが、国際的に見ましても、ある程度は適地通産という考え方はあると思います。しかし、日本のように米に依存しているような国、こういうところにおきましては、いまの自由化につきましても、七十四品目の中に含まれております米だとか、麦だとか、でんぷんだとか、あるいは酪農品だとか、こういうものにつきましての自由化は非常に困難でございますし、簡単に自由化に進んでいくべきものではないと思います。しかし、一方、国際的な面の波も、これは抵抗をいたしましても、押し寄せてくるのでございますので、先ほどから話が出ておりまする農業生産性を向上しつつ、国際的にも抵抗力が持てるような農業生産をしつつ、自給度を確保していくということが必要であると思います。生産を含めて、現在の自給度は八六%でございますが、一昨年、三十八年度等におきましては、自給度が八一%であり、その前は八五%できておったのでございますが、また、中期経済計画等の見通しでも、四十三年度に自給度を約八〇%ぐらいに見ております。その程度のものはぜひ確保していきたいと考えております。そういう意味におきまして、海外に依存するということは好ましくないことは、経済面から見ましても、日本で考えまするならば、他の工業の資材等を輸入したほうがいいのでございます。食糧の輸入は世界でも有数な輸入国にいまなっております。それを輸入に依存して、自給度を犠牲にするということは、日本農政にとって好ましくない、こう考えておりますので、極力自給率を堅持していくという方向に持っていきたい、こう思っております。
  24. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本農業基本法をつくった一九五六年に、国連のエカフェでもってこのような報告書を出しております。それは日本における長期的な問題として、第一点においては、やはり食糧と原料の輸入への依存、これをどういうふうに片づけていくか。第二には、間断なく増加する労働人口に職を与える、この二つの問題でありますが、第二の、労働人口に職を与える問題は、高度経済成長で片づいておると思いますが、やはり原料の輸入ということは、なかなかこれは日本のような加工貿易をやっている国においては避けられないことだと思いますが、この国際収支の立場からいって、十五億ドルもの食糧を輸入する、砂糖や何かはやはり輸入しなくちゃならないでしょうが、せめてこの三分の一でも五分の一でも、それを食糧自給の方向へ重点的に投下していくならば、私はこのような輸入額にはのぼらなかったと思うのです。どうもアメリカの余剰農作物受け入れ体制のほうに何か裏口を開いておって、まともに日本の食糧自給ということに取っ組んでいない姿勢というものがこういう欠陥を生んでいるのではないかと思いまして、その点は農林大臣にも今後やはりもう少しがんばってもらいたいと思います。  そこで、私は、このひとつの政府農業施策の中で、いますぐにやれるような問題に対して、具体的事例をあげて、そうしてこの問題を進めたいと思いますが、その第一点は、政府が言っているところの、農業生産の選択的拡大ということを強く政府は打ち出しておりますが、選択的拡大はいいが、拡大したが、農作物の価格が不安定でひどい目にあっているというのが、日本のいまの農民たちの受け取り方で、政府の言うことを聞いて桑を抜いてしまうと繭が上がるし、豚をうんと飼うと値が下がるということで、いろいろ農民が混迷させられておるのですが、まあ特に酪農振興に対しては、政府は非常に力を入れております。その酪農振興の中で、やはり牛乳の問題を一つの例にあげますれば、五年間に、大体一合につき十四円から二十円に牛乳は上がってまいりました。まあ六円程度の値上がりであります。もっと高いのを売りつけられている場合が多いのですが、しかし、いずれにしても先進国におきましては、どこの国でも末端の消費者価格の半分以上が農家の手取りになっているのです。一合二十円で消費者が牛乳を買うという場合には、一合十円以上の金が農民の手に入るような仕組みになっているのです。ところが、日本ではいま一合七円から七円二十銭ぐらいがいいところであって、とても半分などというのにはなっていないと思うのです。十年前に私たち質問したときには、集約酪農が形成されれば、これは大丈夫なんだ、いろんなことを言っておりましたが、十年たっても依然としてこの流通機構の矛盾ということは是正されていないのです。私たちは口がすっぱくなるほど、農林委員会予算委員会で、農林大臣を通じて農林官僚の耳によく入るように質問しているのですけれども、そういう流通機構の、たとえば生産者、豚を飼って、えさをやって育て、牛の乳をしぼる農家、それからメーカー、それから小売店、そういうもののこの取り高、おのおのの配分はどうなっているのか、そういう正確なデータを調べあげてくれと幾ら言ったって、権威ある調査資料は出してくれないし、また、こういう問題に対して真剣に取っ組もうという意欲も示されないのですが、何かこれは酪農行政の中においては、私は農政面において、この業界に遠慮しなければならないような特別な事情でもあるんかと思われる疑念を生じているのですが、このことなんか一番簡単に、私は牛乳の問題なんか片づけていかなければならないと思いますが、あれほどうるさくなっていながら、今日においては、われわれの主張が通って、学校給食のほうへ需要が拡大されてきたというような面においては、プラスな面も出てきておりますが、どうでしょうか、そういう問題に対して全くこの農林省は私は無力なような感じがしますが、問題はどういうところにあるのでしょうか。
  25. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 牛乳の生産者価格消費者価格との間に相当の格差が出ている、こういうことでございます。あるいはまた、いろいろ統計的な調査を農林省当局に要求しても、調査が出てこないというような点でございますが、何しろ日本の、言いわけをするわけじゃございませんが、酪農は歴史が浅いのでございますので、統計の資料等が十分でないということもございます。それから生産者消費者との価格の差が相当あるということにつきましても、流通経路が十分でないということ、あるいは生産者がばらばらで、小さい生産飼育農家が多い、こういう点にもいろいろあると思います。こういうふうなことを私どもも感じておりますので、この価格政策につきましては、加工乳等につきまして、不足払い的な制度をひとつ確立していこうじゃないかというようなことで、せっかく各方面と検討を続けている次第でございます。それにつきましても、集乳等が重なっておりまして、あるいは集乳経路等も非常に複雑でございますので、今年度は集乳経路等を一本化していく、こういう方向をとって、流通経費等も少なくしていこう、こういうこと、それからまた、さっきお話のありましたように、学校給食等も倍加して消費の拡大をはかるというようなこと、長距離輸送を促進するというようなこと、いろいろな方向で、中間の流通経路を少なくしていくということ、あるいは価格を保証していくというような対策を講ずるというふうに、目下進めている次第でございます。
  26. 戸叶武

    ○戸叶武君 次に、過剰生産の名でいま買いたたかれている鶏卵の問題であります。  養鶏の多頭羽飼育というようなことを政府は奨励して、とにかく宅地を利用してもこれはやれるというので、田畑なんかを売って、相当資本をかけて、何千羽、何万羽というふうに養鶏を始めた農家が随所にあるのですが、この卸相場キロ百六十円前後になっておりますが、庭先相場は百五十円前後で農家は買いたたかれているのです。この相場の流れでありますが、例年は、春先は安いが秋は幾らか高いというのがあって、一年間を通じて何とかなっていったのですが、昨年からことしにかけてはずっと底値が続いているのです。これはオーバー・プロダクションといえばそれまでのことでしょうが、やはり私はこういうむずかしい問題だが、このままほうっておくとこれはたいへんなことになると思うのです。実際五百万だ、一千万だという資金を投げ出した人も、ほとんど安値で施設をたたき売って他に転業しようとするものもあるし、それから養鶏農家の倒産というものがもう去年からことしにかけて続出しております。赤城農林大臣もこのことは御承知だと思いますが、これを手をこまねいて傍観しているという手はないと思うのです。牛乳の問題は、消費を拡大するという形において学校給食のほうへ回しましたが、何といっても、卵だとか牛乳だとか、総合栄養の、栄養価の高いものでありまして、このごろは薬の宣伝だっていろいろ高い薬が売られておりますが、あれほどの宣伝をしなくとも、政府なり、こういう養鶏家なり、農協なり、何か組織化されたPRを行なっていけば、私はもっと消費は拡大していくのじゃないか。牛乳だけでなくて、卵を虚弱児童に分けてやるとか、あるいは病院の患者に配給するとか、あるいは妊婦にある期間やるとか、そういうような形をとっても、私はたいした費用はかからないと思うのです。何か手を打たないと、せっかく伸びてきたこの養鶏農家というものがばたばた私はつぶれていくのじゃないかと思いますが、農林省関係では現在どのような調べをやって、また、どういう対策を講じようとしているか、それを承りたいと思います。
  27. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) こまかくは事務当局から御説明申し上げます。いまお話のとおり、消費の拡大ということ、消費の増進をさせるということが必要だと思いまして、消費拡大の宣伝その他をやっております。しかし、卵は相当消費の方面が何というか、行き渡っているのが現状でございます。伸びが足らぬ、行き渡っておらぬとしても消費の伸びが足らぬというようなものでございます。そういうことでございますので、生産のほうが少し過剰といいますか、そういう傾向のために、卵の価格等も弱含みといいますか、安くなっているのは、いま御指摘のとおりでございます。でございますので、せっかく設備等はしておるのでございますが、生産のほうも需給に見合って調整するように指導をいたしております。しかし、さらに価格が下落するという場合も考えられますので、去年もそういう方途をとりましたが、畜産物安定法に基づいて調整保管を実施さして、価格の安定の方面はそういう方法によってやっていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  28. 戸叶武

    ○戸叶武君 調整の価格を、いまの百六十円じゃ、えさのほうも高くなったし、実際やっていけないんじゃないですか。最低百八十円なり二百円近くまでもっていかないと、養鶏農家経営は成り立たないのじゃないでしょうか。
  29. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 昨年八月と十一月に、自主調整保管の実施の前提として、農林大臣の定める鶏卵の価格というものを百六十円として告示をいたしたのでございます。百六十円で養鶏が成り立つかということになりますと、非常にむずかしい問題でありまして、農林省の統計調査部で出しております卵のキロ当たり平均生産費というものを見ますと、これは生産費を償う価格でないことは御指摘のとおりのようであります。ただ、養鶏の生産費も、ごく少数の羽数の生産農家と大羽数の生産農家では、生産費に相当大きな違いがあるわけでございますが、私どもが百六十円という水準を考えましたのは、養鶏審議会の方々との懇談会等で御意見も伺いましたし、自主調整保管ということが、将来の市場価格というものをめどにいたしまして、最低の価格支持水準というものを農業団体としてどういうところにめどを置いてやらせることが適当かというような判断から、最低の市況支持を百六十円に置くということが、昨年の八月あるいは十一月の時期においてはほぼ穏当なところであろうという判断をいたしまして告示をいたしたのでございます。私どもの基本的な考えとしては、自主調整保管の際におけるいわゆる省令でいっております基準価格のきめ方は、必ずしも固定的なものではなく、市況の変動といいますか、市況の回復の見通し等を考慮に入れまして、自主調整保管が効果的に行なわれる基準を考えるというふうな考え方で運営をしてまいりたいというふうに思っておる次第でございまして、百六十円が十分採算に乗る価格水準であるというふうには考えてはいないのであります。この問題は、卵価が、御指摘もありましたように、時期的な変動が正常な時期においてもあるわけでございまして、いろいろ検討を要すべき点が残っておりますが、現段階におきます需給事情等から申しますと、自主調整保管によって支持され得る水準というものはほぼ百六十円前後ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  30. 戸叶武

    ○戸叶武君 それがやっていけないから倒産が続出しているわけですから、鶏が先か卵が先かのような議論をしないで、いま養鶏農家がどんどん倒産しているこの状態をどうやって救うかという対策を早急に出してもらいたい。そうでないと、火事が済んでから拍子木を鳴らしても何にもならないから。お役所仕事というものはどうもそういう傾向があるんです。  そこで、増産問題で問題になるのはやはり豚の問題です。豚もこの前暴落のときに大騒ぎしましたが、去年の末ぐらいから、二月には非常に増産になってきて暴落するのじゃないかという警戒信号が出てきておりますが、養豚農家は注意しているでしょうけれども、やはり勢いというものがありますから、またこの前のような暴落が起きるとたいへんなことになり、結局は政府責任を追及ということになるし、養豚農家などは、この前のようなことになったら今度は豚っ子を連れて国会を包囲するというふうにいきまいておりますが、私はこの点で政府は手ぬかりないと思いますけれども、この見通しはどうですか。
  31. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 豚肉の価格につきましては、御承知のように三十七年の当初に、前年度の子豚の生産量の急激な増大ということから暴落いたしたのでございますが、その後価格は回復をいたしまして、昨年の夏あたりまでの間は、どちらかというと高値の傾向をたどっておったのでございます。昨年の夏、統計調査で調べました子豚ないし種付け予定の頭数等を見ますと、昨年の孫ないし本年の一、二月ごろには、豚の出荷量が対前年で三、四割の増大になりそうであるというような傾向がございましたので、私どももなかなかこういうものの市況の見通しというものはむずかしいのでございますが、あまり昨年の夏の価格の好況に刺激されて生産の拡大を招くということは危険であるという姿勢で、行政的な指導なり、あるいは一種の指導的PRをいたしたいのでございますが、その後生産は、秋以来ことしの一月までに前年比大体二五%程度、あるいは三〇%程度の月もございますが、そういう増加を示しておるのでございます。ところが、価格のほうは比較的に安定的でございまして、大体の水準は、現在政府が示しております安定帯の前後に推移いたしておるのでございます。二月に入りまして最も悪い時期に入ると思われたのでございますが、若干低落いたしましたが、三百七十円程度の水準で推移をいたしておるのでございまして、昨年夏ごろ、本年の春に入りますと場合によって東京水準の安定基準価格二百九十円を割る場合も想定され得るということで、畜産事業団による機能的な買出動ということを準備をいたしておったのでございますが、現在の市況の状況から申しますと、ほぼこの春には安定帯基準価格を割るようなことはあるまい、したがって、事業団の買出動ということも考えるようなことはなかろうというふうに予想をするに至っております。ただ、こういうものの価格変動というものは必ずしも予想どおりにはまいりませんので、さような状態が見通されるということになりますれば、直ちに畜産振興事業団による枝肉の買い上げによりまして価格の安定につとめてまいりたい、こういうふうに思っております。
  32. 戸叶武

    ○戸叶武君 結局、農業問題で一番問題になるのは、やはり農家所得をどうやって増大するかの問題だと思いますが、その基本となるのは、主要農産物の価格を安定させるという措置が十分に講ぜられなければならないと思います。日本農家では、農業収入の中で首位を占める米の価格が、生産費所得補償方式で保障されているから、それで大いに助かっておりますが、これは何といっても米作地帯の人たちが主となってこの恩恵を受けているので、やはり陸作地帯における農民というものは米作地帯ほど恩恵を受けてない面もあると思います。陸作地帯の作物としてたばこと、私はビール麦のことをいつも考えるのでありますが、やはりこれは片方は専売公社、片方はビール会社との契約栽培です。こういうふうな、しかも相当の労力と肥料を使っての換金作物でありますが、このようなものはやはり米に準じて生産者所得補償方式で価格が決定できるようにしていかなきゃいけないんじゃないかと思います。専売公社はどうも大蔵省のほうの領野になっておって、しかも、たばこ耕作組合なんというのは、いつも新聞で問題になるのは選挙違反のときに問題になりますが、ああいう形で、とにかく何というか、ボス組織で、専売公社の下請機関みたいな形で、生産農民の利益を必ずしも私は代表していないんじゃないかという傾きもあるし、まだ、ビール麦関係も麦耕運というようなのがビール会社の上下請機関のような形で、必ずしも農業協同組合の本来の道を行っているとは思えないんであります。こういう点から始めていかなきゃいけないんじゃないか。やはり米をつくったら一反十四、五万になるというのに、やはりたばこをつくったんでは八万か九万、十万出ればいいほうだという状態だと、米をつくる以上に骨を折るたばこをつくる人がだんだんなくなってしまって、そして酪農なり果樹へ転換しつつあるというのが今日の状況です。で、まあ、たばこを国内でつくらなければ、アメリカのほうに余っているからそれを買ってくればいいという例の手がありますけれども、そういう手を使うためにやっているいやがらせなら別ですけれども、ほんとうに日本でもってこれをもっとよく生産意欲を出させて農家にも満足させていくというのには、そういうような措置が私は講ぜられなければならない。政府の行政指導さえしっかりしていれば、これは生産農民との団体交渉の形でも、イギリスでもやっている事例がありますが、私はできないことはないと思うんです。特に即売公社にしてもビール会社でも、もうけがしらです。まあ税金として納めているんだから、国家の収入になっているんだからというような口実はありますけれども、それだからといって、収入の少ない農民収入をふやすために何ら配慮しないというやり方は、私は問題があるんじゃないかと思いまして、たばこなんかの問題の早く大蔵省の手から農林省のほうへ移してやらないと、農業の、ほんとうの農民のための行政指導というのは本格的にできないんじゃないかと思いますが、この問題に関して農林大臣の御答弁を願います。
  33. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) たばこの点、栽培は、やはりほんとうはこれは農林省の管轄でしかるべきだと思いまして、前に農林大臣をしているときなどもずいぶん折衝いたしましたが、実現はできませんでした。現在そういう耕作面についてはこちらのほうでやらなければなりませんので、構造改善等につきましては、たばこを作物の中に入れて、たばこ耕作を改善する方法等に力を入れておることは御承知のとおりでありますが、こちらで価格その他までは扱うことはちょっと困難でございますが、栽培のほうはやりたいという気持ちはいまでも持っております。そこで、たばこの価格は別としまして、ビール麦の価格の決定でございますが、生産者所得補償方式というものは、生産者側から見ればこれは当然そうあるべきだと思います。ただ、ほかの価格本系から考えまするというと、生産性を向上するということなしに、まあ幾ら費用がかかっても生産者所得補償方式でやっていくというような傾向になりまするというと、算定の方法にもよりますが、そういうことになりますると、生産性がちっとも上がらないといううらみがあります。しかし、生産者所得補償方式というのは生産者にとっては非常に望ましい形の価格算定方式だと思います。そこで、ビール麦等によりましてそういう方式をとらせたらどうかということでございますが、これはお話しのとおり契約栽培でございます。私は、契約栽培というのは生産者にとっても安定的な生産ができまするし、価格の点におきましても相当安定していますので非常に望ましいことだと思います。野菜等におきましてもできるだけこの契約栽培的な方向に持っていくのがいいと思って考えているわけでございますが、そこで、価格の決定につきましては、いまお話がありましたように、団交的な形で価格が決定されるんでございますが、その際に、生産者所得補償方式でやれということを私のほうですすめるわけにはいきかねまするけれども、これは農協等が中に入っていろいろあっせんをいたしておるのでございますので、両者の話し合いで、それに近いというか、そういうような方向で話がまとまることを私ども期待しておりますが、直接政府がその話し合いの中に入るということは避けたほうがよろしいというふうに考えておりますか、考え方につきましては、お話の点に非常に同感をしている点がございます。
  34. 戸叶武

    ○戸叶武君 赤城農林大臣は、農業生産基盤整備農業経営規模拡大の問題を重点施策として取り上げております。その問題の中心問題は、農地管理事業団の設立による農地取得の促進ではないかと思いますが、この農地管理事業団の発足あたって私たちが心配なのは、準備段階でのこの研究調査というものが十分になされていないのではないか。土地問題というのは、土地をやたらにいじるとたたりがあると言われているほど昔からなかなかむずかしい問題なんで、この間のテレビの座談会なんかを聞いておりましても、やはりなかなか赤城さんの構想もいいし、池田さんの前の考え方も一つの荒っぽいが思いつきだと思いますけれども、実際においてやはり兼業農家といっても、だれも好んで兼業農家になっているのでなくて、やっぱりなかなか土地を私は簡単に離さないんじゃないか、離せるような条件をつくっていかなければ。ただ、これは買ってやるから、金は貸してやるからその土地を手に入れろというような土地ブローカーのできそこないのような考えでやったんでは、とてもこれは私は解決つかないんじゃないか。この問題は政府でもよほど慎重にやろうとしているようですが、あまり強引に推し進めると、意外な失敗をするんじゃないかという危惧を私は持っていますが、この農地取得の問題というのにはよほど慎重な私はやっぱり研究対策を講じないと、狭い範囲内でその問題だけに取っ組むとその中に埋没しちゃって動きがとれなくなってしまうんじゃないかと思いますが、赤城さん、そういう心配はありませんか。
  35. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 土地問題は、御説のとおり慎重に扱いませんといろいろな問題が発生いたすことは私も考えております。でありますので、この農地管理事業団につきましても、十分慎重に調査をしながら進めていきたいと思っております。方向としては、私は当然こういうふうにすべきであり、またなっていくんだと、世界的にもそういうふうになっておるような傾向が多いのでございます。申し上げるまでもなく、フランス等におきましても、あるいはオランダ、スエーデンですか等におきましても、そういう方向をもって——あるいは法律にきまっておるような、フランスのような例もあります。しかし、フランス等におきましても、その運び方においては、相当慎重にやっています。また、日本におきましては、なおさら零細でございます。世界的に見まするならば、非常に零細農家が多いのでございます。その土地を手放すということにつきましては、相当ちゅうちょしておる面がもちろんございます。ただ、七万町歩からの移動がございますので、そういう移動も踏まえてといいますか、そういうことも考えまするならば、慎重に取り運ぶならば、非常に効果的にやっていけるのじゃないかと、こう考えています。それで慎重にやるというようなことで、ことしはパイロット的にやるということで、土地の買い上げということまでは、ことしは手をつけないのでございます。あっせんのほうだけでございます。それからもう一つは、脱農といいますか、離農といいますか、離農に対しての対策が、いま行なっている以上には出ておりません。そういう面も考えていきたい。そういう点で、お話のように、これを進めるには慎重に進めていきたいと、こう考えております。
  36. 戸叶武

    ○戸叶武君 農林大臣の言う七万町歩の耕地の移動というのは、それは宅地造成だとか、工場敷地なんかを含めてのことですか。
  37. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは、つぶれ地ではございません。宅地の移動等ではございませんで、耕地として移動しておる統計でございます。
  38. 戸叶武

    ○戸叶武君 最後に、私は、飼料の問題について政府にお尋ねします。  政府は、畜産農家に大打撃を与えた飼料のこの間の一斉値上げというものを、何ゆえに事前に抑えることができなかったのか。そういうような行政指導なり、あるいは法的措置が講ぜられないようにできているのかどうか。一般にきわめて不可解に見ておるのですが、物価値上げというものに対しては、非常に神経を痛めている佐藤内閣として、あの暴走を許したのは、どういう理由があるのですか。
  39. 桧垣徳太郎

    政府委員桧垣徳太郎君) 戸叶先生の御指摘のように、本年の初頭に、飼料メーカーは、配合飼料の建て値の改訂を行ないまして、トン当たり養鶏用では五百円から千円、比率にしますと一・五%ないし三%、養豚、乳牛用では五百円から千五百円、これは一・五%から五%程度の値上げをいたしておるのでございます。私ども飼料価格につきましては、できるだけ安定的で、かつ、飼料業者というものがなるべく廉価な供給をするようにという指導はしてまいっておるのでございますが、基本的には自由に流通している商品の価格でございますから、法的に規制をするということは不可能でございまして、理由のない値上げでございますれば、行政上の勧告等で自粛を求めるということにいたしておるわけでございます。で、値上げの動向が察知されましたので、配合飼料の生産者団体あるいはごくおも立った業者等を招致をいたしまして、その理由を聴取をいたし、また事情等についても、私どももある程度の判断をいたしてまいったのでございますが、値上げ理由は、御承知のように昨年来配合飼料の主原料でございますトウモロコシあるいは魚粉、大豆かす等の国際市況が堅調でございまして、これが原料価格として製品価格にはね返っておる、また、加エコストも、労賃の上昇等で若干のコスト・アップをしておるというようなことで、今回の値上げに関します限り、好ましいこととは思いませんが、私どもの一構聴取をいたしました限りにおいては事情やむを得ないものがあるというふうに考えておるのであります。なお、配合飼料の供給について、四割に近いシェアを持っております全国賦質農業協同組合連合会、いわゆる全購連の製造コスト及び販売価格の関係から見ましても、現在の価格水準が不当に高いものであるというふうには判断いたす材料がございませんので、さような点も現状においてはやむを得ないものというふうに判断をいたした一つの資料といたしておる次第でございます。
  40. 戸叶武

    ○戸叶武君 今度は、赤城農林大臣にお尋ねします。  農林省の三十九年の調べによりますと、家畜飼育数は、乳牛百二十四万頭、豚三百四十六万頭、鶏一億二千七十が羽となっておりますが、過去十年間におのおの三倍以上ふえてきていると思います。家畜がふえれば濃厚飼料の需要が増加するのはあたりまえのことでありますが、輸入飼料について見れば、この十年ないし十一年間に、二十五万トンから五百三十万トンに飛躍的に増加したと言われております。三十九年には、飼料の輸入額は三億七千万ドルに達するのではないかという説もありますが、農林省はいままで、米麦本位より畜産、果樹へと選択的拡大のスローガンを数年間立てて、そのほうへ押し流してきていながら、このように不均衡状態になるような、飼料対策を怠ったその理由は、どこにあるのですか。その原因、問題点をひとつ大臣から承りたいと思います。
  41. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 飼料対策を怠ったというわけではございませんが、選択的拡大の線に沿うて、鶏とか豚が急速に増加したということが一つの原因でございます。さらに、草を食べるべき牛のほうも、濃厚飼料に相当高く依存をしておったということのために、輸入飼料が相当、お話のようにふえたということでございます。一方、国内において、自給飼料の面、特に大麦等が相当減ってきておりましたので、これの回復をはかるべく、いま努力中でございますが、そういう面が減ってきている。あるいは日本の耕地面積等が少ないのと、草地の造成等が非常におくれておりましたので、自給飼料を生産するという方面に手抜かりといいますか、そのほうの進め方が、この需要に追いつかなかったということにあると私は考えております。
  42. 戸叶武

    ○戸叶武君 乳牛や豚や鶏がふえれば、濃厚飼料がふえるというのは、これは当然の理で、この当然の理に沿うて飼料対策を立てるのが農林省の仕事ではないかと思うんですが、乳牛や豚や鶏はふやしても、それに追いつかないような飼料対策しか持っていないというところに問題点があるんじゃないかと思います。飼料自給対策ということはいつでも掲げてありますが、それほどはかばかしく飼料対策というものが私は確立していないと思うし、もう一つは、濃厚飼料の輸入の問題ですが、この飼料輸入の方式に何か問題点があるんじゃないですか。そういう反省なり検討をしてみたことがありますか。それは農林省の領分じゃないからというので、農林省としてはわれ関せずえんでいいのですか。その点も承りたいと思います。
  43. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 飼料の輸入方式に私は欠陥があるというふうには考えておりませんが、もしそういうことでお気づきの点がありましたならばお話し願って、改めていきたいと思います。それから供給先のほうでございますが、アメリカのみに頼っているということでは私はいけないと思います。でございますので、方面をタイとか、あるいは南アフリカとか、あるいはアルゼンチン等世界の各国に供給先を求めるということの方向はいま打ってそれぞれ進めておるわけでございます。
  44. 戸叶武

    ○戸叶武君 これは、今後日本は後進地域の開発のために協力しなければならない国際的にも義務があると思うのですが、前に日本政府がやったように、タイに製油工場を高い金を使ってつくるなんということをすることよりも、やはり農作物をどうやって外国に売ろうかというふうに努力している国、タイなり、ビルマなり、そういうようなところにおいては、やはりトウモロコシなり何なり、こういう飼料作物の生産指導をやり、そしてそれを日本の国内にやはり安く入れるようなそういう対策も私たちは講じていかなくちゃならないと思うんですが、まあ農林大臣も、アメリカだけでなく、タイとか、アルゼンチンとか方々へ手を伸ばしているのだと言っていますが、どうぞそういう点を十分配慮してくれないと、何かアメリカの余剰農作物を受け入れるために、少し間の抜けたことをしておいたほうが都合がいいのだというような感じきりしか一般には持たれておりませんから、そこいらはやはり注意してもらいたいと思います。  それから配合飼料の検査の不備なんですが、これは全く検査機構というものはめちゃめちゃで、  一つの県に一人いるか二人いるか、これは全く事実上の検査なんかしないのです。それで飼料規格の取り締まりのルーズさというのは、でたらめさというのは全く目に余るものがあるのです。昔やはり肥料屋がでたらめやって金をもうけたように、いま相当大きなメーカーでも、栄養価のないような飼料をどしどし出して、そして農民を泣かせているような面もありますので、これは予算委員会なり、あるいは農林委員会において具体的な材料を出して、そういう問題をお尋ねしますが、もう少し、肥料以上に飼料を農民に買って生活しているのですから、生活にあえいでいる農民が、そういう大メーカーたちにごまかされて苦しんでいるという状態を農林省はわからないはずがないので、もっと私は検査機構——今度の予算にはちょっととっているようですが、機構を整備したり、そういう取り締まりのルーズさをもう少し改めていくということをしないと、どうも飼料行政は不明朗だ、わけがわからぬというふうに一般の人が思っておりますから、その点はやはり農林省も気をつけてもらいたいと思うので、特に農林大臣、その辺をよほど注意するように配慮しておいてもらいたいと思いますが、いかがなものですか。
  45. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 前段の、東南アジア等から輸入したらよかろうということは同感でございまして、御承知のように、南北問題等がやかましくなっておりまして、一次産品の輸入を迫られているわけでありますが、方針といたしましては、私は開発輸入と申しますか、技術的に開発等をして、その中においてだんだん日本の態勢を整えながら、輸入するということが必要であろう、そういうことでタイなどにトウモロコシ技術者なんかを派遣しまして、増産を進めているような状況でございます。  後段の、飼料の規格あるいは検査等が非常にルーズだということでございます。畜産局長からも必要があれば答弁をいたさせますが、そういう点十分注意していきたいと、こう考えております。
  46. 戸叶武

    ○戸叶武君 私は、最後の結びとして赤城農林大臣にお願いしたいのは、やはり政府がこの農業基本法を四年前につくったが、それに対して取り組む姿勢というものが十分にできていないのじゃないか、どうも日本人はすぐ、いいものをつくっても神だなへ祭って、おみきを上げて拍手してごまかしてしまう習慣がありますが、やはり農業基本法が神だなへ上げられちゃって、農民の生活の中へは入ってきていないと思うのです。これじゃ私は、何か農民として何だいという感じしか受けないと思いますので、もう少し農民の生活に身近に結びつくような、農業基本法の生かし方を考えてもらいたいと思います。これは私は、農政をやっている人たちが非常に苦労していると思うのですが、農林省の機構というものは膨大であるし、ある意味においては予算は一番多く取る省だと思います。しかし、いまの時代は、ほんとうに大きな変革の時代で、全く私は農業革命の時代だと思います。この土地の暴騰ぶりなんかを見ましても、十九世紀の末にイギリスで、大陸から来たハイドマン一派のやはりマルキシズムが入り込めなかったのは、剰余価値説よりも不労所得の社会的な環境の変化によって土地が値上がりしてくるという問題を中心として、やはり一つの資本主義の矛盾というものを相当ついていかなくちゃならないという現実の問題に当面していたからでありますが、日本においても、いま土地問題においていろいろな矛盾が出てきているように、たいへんな時代だと思います。そういう意味において赤城さんなんかは、蛮勇をふるえばふるえる平将門ぐらいの気概を持っているのだから、私はもう少し蛮勇をふるってもいいから、農政の中に画期的なものをひとつ残していかないと、赤城さんは、だれに聞いても評判いいのだけれども、あまり評判いいというのはよしあしなんで、やはりあと赤城農政として残るのには、これは赤城大臣が蛮勇をふるってやったために農民が助かったという思い切ったことをひとつ、残していってもらいたいと思いますが、そういう場合においては、なかなか大臣だから慎重で答えられないでしょうけれども、どういう町に蛮勇をふるいたいか、その心境を述べてもらいたい。
  47. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 蛮勇でございますので、どこということは初めから育ったのじゃ蛮勇にならぬと思いますが、蛮勇と言いますか、良男と言いますか、とにかく農政は非常な転換期にぶつかり、壁にぶつかっているような状況でありまして、この打開につきましては真剣に取り組んでいきたいと、こう思っております。
  48. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 戸叶さんのほうでだいぶ御質問が出たので、タブるものは私としては差し控えたいと考えますが、大臣にお聞きしたいのですけれども、この農業改善事業ということで、すでに五年にならんとしておるんですが、総体的に幾らかはこの所得も向上してきたと、こういう御報告がなされておるのですが、しかし、実際面には格差はますます開いておるのではないかと、こういうふうにわれわれは考えるわけです。  さらにまた、この農村青年の流出から見て、収入がよければ農村に私はやはりとどまると思うんですね。結果的には収入が悪いから後継者もないと、こういうことになるのだと思うんです。  政府はこの五年にならんとする基本法に基づいて、いわゆる自立農家育成にあらゆる手を打っておられるわけですが、すでに五年にならんとするこの事態から見て、一体政府が描いておられる理想的な二・五ヘクタールを中心とする百万戸の農家育成ですか、こういう考え方は、あとの五、六年で、数年の間には大体実現するという見通しを持っておられるのかどうか。大臣にこの点ひとつお聞きしたい。
  49. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 確かにお話しのように、農業後継者等がとどまっていくというためには、農業収入が相当あって、まあ人間的な生活ができると、こういうことが大事だろうと思います。そういう点におきまして、先ほどから戸叶さんにも御答弁申し上げておったのでございますが、本来からいいますならば、収入兼業農家のほうが多い面もございますけれども、専業の自立農家育成といいますか、自立農家が多数存在するということが健全な農村であり、健全な農業である、こう考えます。そういう点から二・五ヘクタール、百万戸の自立農家を十カ年所得倍増計画育成していくという方針を立ててきておるわけであります。  これがいつまでにできるかということでございますが、実際掲げた進度で、進み方でいっておりません。でありますので、中期経済計画等おきましても、この方針は捨てません。捨てませんけれども、いつまでにこれをという期限を切ってということはなかなか困難であります。期限を切っておりません。しかし、一町五反層の農家等は、相当前に考えたよりはふえております。二町五反以上になりますというと進み方が非常ににぶいのでございます。農地管理事業団の考え方もそういう考え方が基礎でございますけれども、いつまでにやるかということですと、ちょっと私のほうでもその時期を御答弁申し上げかねるのでございますが、なるたけ速度を早めたいという考えを持っております。時期を申し上げるには、まだ十分な資料を持っておりません。
  50. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 まあそれが十年の計画でやってみて、実際問題として大臣計画に対する自信のほどはないわけですね。ところが、大臣自身も言っておられますね、先ほど。いわゆる農業の開発も大事だけれども、地域開発もやらにゃいかぬと、こう言っておられるんですよ。地域開発は一体何を求めるかということが私は問題の焦点にならなくちゃいかぬと、この際。農業だけで農業所得を増そうということは困難な情勢がいま日本にはきておるんじゃないかと私は思うんです。たとえば諸外国の農業にしても、いわゆる男子の農業でしかも機械化しているというのに、日本はおかあちゃんの農業になってしまっているわけですね。ここらに一番大きな問題があろうと思うのです。そうして先ほど答弁でも、大臣はこういうことを言っている。国内でできるだけ自給自足の立場をとってやらなければいかぬ、こういっておられるのですね。ところが、幾ら機械化しても、幾ら農薬が高度に発展しても、かあちゃん農業では、私はこれではその態勢はとれないと思うのです。したがって、かあちゃん農業をもう一ぺんおとうさん農業に返すその方法をいま考えるべきではないか、それには、なるほど第一種農業兼業者は御承知のように戦後始まったことでもなしに戦前からの長い歴史を持っておりますよ、これは。そうしてしかもこれらの収入というのは専業農家よりも上がっているわけですね。これは従来のままにしてもこの第二種の兼業農家というのがやはり問題の中心になる。しかもそれがかあちゃん農業にかわりつつあるというこの現状を、政府はいまも考えておられる土地の改良なり、あるいはまた機械化をしたりして、選択的拡大というふうなことでいろんな予算を組んでやってみて、一体これをとうさん農業にかえすことができるかというと、私はできないと、こう考えているのです。ここに日本農業の不安があるのではないかと思うのですが、大臣は、この点についてはどういう施薬をもって、これを食いとめてやっていこうとお考えになっているのか。ひとつ御説明を。……
  51. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは一つの見方で、必ずしもそうはいきませんけれども、私は、婦人の農業になってきたのを男の農業にするということは、御指摘のとおりなかなか困難であると思います。しかし、婦人でもやっていけるような、重労働から解放していくような農業体制に持っていくということは必要だ、こういうふうに考えます。それからすべて婦人から男に戻すということはできないにいたしましても、第二秘兼業の人々の中には、男子もまじっておりまするし、あるいは青年等も入っていると思いますから、こういうものを含めて、やはり協業といいますか、協同経営、機械等を中心として共同的な経営ができ、あるいは作業ができるような方向へ持っていくことによって、婦人労働を男子労働へ戻すということはできないにしても、男子労働と同じような効果をあげるということはできると思います。それからまた、そういう単位がひとつの経営規模拡大ということになりまするならば生産性も上がってくるというようなことになろうかと思いますので、第二種兼業農家等につきましては、一つの方法としては協同化の線を進めていきたい、現に、ことに予算等につきましても、農協を中心として、農協に機械を入れて、大型機械を中心として協同化を進めていこうというような予算も計上しているわけでございますが、そういう方法をとりたい、こう考えております。
  52. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そこで、いまの女性でもできるという方法も私はないことはないと思うのです。しかし、この農業の主体性というものの考え方が、構造改善事業で改善したから即増産になるとは私は考えられないと思うのです。現在でもかなりの成績をあげておる人もあるわけですね、反収当たり。だから構造改善事業をやったからといって反収が直ちに上がるということにはならないと思うのです。改善事業もほうっておくというわけではありませんけれども、反収を上げるということのほうが、いまは手ぬかりになっておるのじゃないか、それが婦人農業ということにかわっておるところに問題があるのじゃないか、むろん機械化した、機械化して一日に五反歩の耕作をやる、その機械は非常に脆弱な機械だ、こういう事態でそれでますます反収は減っていくという傾向です。昨年はむろん水害その他の問題も関連したでしょうけれども、これは全体的に見て減収になっておる、一方においては荒れ地がたくさん現実にできてきておる、むろん山間部におきましては植林をやっておる、こういう実態すら出ておるという状態ですね。これで構造改善事業というものが完備するのは、この数年間でできないという見通しの上にも立ち、しかもまた、第二種兼業者の収入が少ないものですから、ほとんど出かせぎに出る、第一種兼業者はもう昔から農閑期においては出かせぎ労働者として出ておったんですから、これはあまり問題にならないと思うのです。こういうふうに考えてきますと、やっぱり第二種兼業農家というものを対象にどういう手を打つかということがなければ、私は、いま政府がお考えになっておるこの農業改善事業を選択的拡大でやってみたところが、価格の安定がないために、やってはまたやり直しをする、この繰り返しだと思うのです。先ほど卵の問題が出ましたが、これも一つの例だろうと思うのです。いま至るところで、どんな地域にいても、海岸に属する地域においてはみかんの栽培をたくさんやっております。これも過剰生産で、また値下がりというような事態も起こってくるかと思うのです。そういう面から考えてみると、やっぱり第二種兼業農家に対する根本的な手が打たれるべきじゃないか、それに対しては思い切った予算ですね、思い切った予算政府はやるべきだ、いま構造改善事業をやっておる地域においても、やる資格のある人、やる資格のある地域ですね、これはやっておりますが、やれない地域があると思うのです。したがって、ここに農業自体に、農村自体に格差が大きくできておるのじゃないかと私は思うのです。こういう問題の解決については、私はいまの政府施策では非常に困難だと考えるのですが、新しいキャッチフレーズでもいいですから、戸叶さんが御質問なさったような、何かここに手を打つ必要があるのじゃないかと思うのですが、現在のままもっていこうとされておるのか、何かこれには手を打とうとお考えになっておるのか、しかも今度の国会でも八つの法案を出しておられますが、この予算を組んで、そういうことが着実に一体解決つくような方向にいくのか、どうか、所信のほどをひとつお聞きしたい。
  53. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 第二種兼業は私から申し上げるまでもなく、農業を副業的な形でやっておる農家でございます。でございますので、これは農業政策だけでなかなか兼業農家の問題を解決するといいますか、対策を樹立してもそれが全きを得るというわけにはまいらぬと思います。そういう意味において、先ほどから申し上げておりまするように、第二種兼業の仕事をする場でございますが、就業の場所が遠距離でなく近くで、しかも収入の額がふえるというようなことは、これは第二種兼業としては望ましいことだと思います。そういう意味におきましては、やはり地方開発といいますか、そういう問題との関連におきまして、近くにおいて就労の機会を多く、また収入のより多く得られるような方途を講ずるということは一つの手だと思います。しかしながら、農業につきましてやはり捨て切れない、農業というものをやっていきたいんだという第二種兼業の人たちもあろうと思います。こういう人々だけが集まってということは無理でございますけれども、こういうものを含めて、他の農業者とともに協同作業とか経営の協業化のほうに進めていくということでありますならば、これは農業が副業的であっても、農業そのものによって相当の生産を上げ収入を得られるという方向にいくと思います。あるいはまた、就業の機会があってその方面、他の職業に専念したい、商業に移る人もあろうし、その他に移ろうという人もあろうと思います。そういう面につきましては、先ほど来申し上げておりますように、専業の自立経営農家育成方向にその耕作地が役立つようなことに仕向けていきたい、こういうふうに大体第二種兼業農家に対しましては、大ざっぱでございますが方策を考えておるわけでございます。
  54. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 まだその問題、私納得いかないからお聞きするんですが、第二種兼業農家を第一種兼業農家のような見方にしてしまってはいかぬと思うんですね、日本農業を。そうなったらいかに構造改善事業をやってもだめだと私は思っていますね。そこで、大臣のおっしゃるように、これは農林省だけではできない問題があろうかと思うんです。しかし、農林省だけではできないけれども、いまのうちに何か手を打たなければ、第一種兼業農家みたようになっちゃうんじゃないか、と申しますのは、日本にはまだ定年制があります、五十五歳とか、六歳という定年制があります。したがって、定年制で生活が不安ということになりますと、結果的には、かえって農業でも年をとってやろうかという、いわゆるうば捨て山みたような農業になっちまうのです。こういうことがこないかということはだれも予言できないですよ。日本のような定年制がある以上は、公共企業体では、六十になっても六十五になっても使っていますが、ほかはそうはいかないでしょう。だから、第一種兼業みたいにしてはこれはたいへんではないか。私大臣にお聞きしたいのは、だから、これを数年の間に、構造改善事業と選択的拡大で理想的な日本農業の、自立的な農業育成ができる、こういう基点がなければ、全く不安な農業政策だと私思っていますが、これはどういうふうに大臣はお考えになっていますか。
  55. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 確かに一般的に雇用関係の定年制のようなものがありますので、いつやめるかわからぬということで、臨時でなくても、そういう考えを持てば農業に執着せざるを得ないという点があろうと思います。そういう点から考えまして、これはことしは実現できませんでしたが、この第二種兼業の中でも他産業に安定していこうというようなものに対しまして、家族の老人等につきましては、ひとつの年金制度的なものを設けたらどうか。現にフランスなどではそういうことをやっております。自立経営農家育成の裏の面でございますが、離農する場合の養老年金的なものを出しています。国民年金の上にそういうものを上乗せするというような形でやっていくということも一つの方法ではないかという検討を続けておるのでございますが、ことしはそれの話し合いはできませんでしたが、それも一つの方法だと思います。そういうような形で、お話のように、構造改善を強力に進めていく、あるいはその構造改善の中から自立経営育成していく、こういうことについての見通しといいますか、いつごろまでにそれをやるか、確かに所得倍増計画等におきましては、十年後に、二百万戸、二町五反経営農家というものを目的としていますが、私は期限は切らないとは言いましたが、進み方が鈍いものですから、期限を切って、その約束どおりに行なうということは困難だと思いますけれども、やはり目標は目標で、そういう目標に進めていくということは考えてしかるべきだと、こういうふうに思っています。特にことしから御賛成を得まして、農地管理事業団というようなものを進め、これが、ことしは試験的といいますか、パイロット的であるといいましても、これを強力に進めることにだんだん軌道に乗ってくることになりまするならば、いまの十年計画自立経営農家育成一つのスケジュールというものの速度が進んで、私は必ずしもこれができ得ないとは考えておりません。
  56. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 これは大臣じゃなくても、局長でもいいのですが日本の衣食——住は別にしまして、食のほうの加工工場と申しますか、そういう分布状態調査されたことがあるかどうか。全国の食品加工。
  57. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) これは農林省のほうもモデル的な調査をしております。一般的な調査としては通産省の工場統計がございます。
  58. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 通産省の統計ですか、農林省でやったことがないのですね。
  59. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) その工場統計と同じ手法でやることは、農林省としてはいたしておりません。それぞれの所管の局課におきまして必要な把握は、別途の調査をいたしております。
  60. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 そういう状態でしたら基本的な考え方がまだ出ていないのだろうと私も想像するのですが、これは大臣に、私の意見をはさんで所信を聞きたいのですけれども、農業生産品というのは、これは何といっても国民の必需物資ですね。それからもう一つ必要なものは衣がございます。ところが、農村には住は余りつつあるわけですね。そうしますと、地域開発という問題に対して、これは農林省だけでおきめになるわけにいかぬでしょうけれども、もっと衣とか食とかというものを——これはあまり大きな規模じゃなくてもいいと思うのですね。地域的な開発のために特別の融資をして移動する。今日労働力も不足して中小企業は困っておるという時代でもありますし、これは政府が力を入れればできるのじゃないかと思うのですね。そういうことを政府は、もっと総合計画の中で、農業問題だけの改善事業というものに取り組んで、そうして農村収入をよくしようというようなことでなくて、先ほど私が申しましたかあちゃん農業をむしろそういう面に振り向けて、そうしておとうさんに返していく、こういうことが現段階では考えられぬのかどうか、また政府がやるべきではないか、私はこう思うのですが、大臣は、こういう考え方に対してどうお考えになっておりますか。
  61. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 十分御提案がのみ込めない点がありますけれども、私の理解するところでは、衣食住等を総合的に充足していかなくちゃいかぬ、そういう意味におきまして、農村にも、地域開発の中に加工工業等あるいは軽工業等によって婦人の就業の機会といいますか、農業外の就業の機会を設けたらどうか、こういうことと理解いたします。総合的に考えていくという地域開発の方向は、当然進めるべきだと思います。そうして農業等におきましても、ことに第一種兼業等におきましては、いまのお話のように、婦人が他の軽い仕事などに従事できて、男のほうが農業のほうに向かってくるということは非常に私も望ましいことだと、こういうふうに考えております。
  62. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 その一つの例を私は申し上げたわけですが、したがって、今日の農業は、もう総合的な基盤の上に立ってやらなければ、とうてい−池田さんはもとよりですが、佐藤内閣の言っておられるように、農村のひずみを是正するということにならないと思うのですね。私はそういう面に対しては、やっぱり思い切って重点的な農業政策というものをとらなければ、このひずみの是正にならないのじゃないかと思うのです。このままいけば、ますます農業者自体に地域格差が出てくると同時に、一般産業との、都市と農村との格差がまた付加されていくということですね。どうしても、農業が好きだといっても、生活の格差があまりにも違えば、好きな農業家もいやになっちゃうわけですね。それは農業の好きな人も多少はあるでしょう、大臣のおっしゃるように。けれども今日のように青年の考え方がいわゆる収入を求めておるというような事態から考えてみると、幾ら農業が好きであっても、収入がないというところには、いかに青年をとめようとしても私はとまらないのじゃないかと思うのです。したがって、思い切った政策を立ててもらう、そのことが一番大事な時期ではないかと思うのです。そこで、政府先ほどおっしゃったように、農地管理事業団というのを今度新しく予算を組んで、買い上げをするというところまではいかないけれども、今回あっせんでひとつやっていこう、こういうことですが、先ほど戸叶さんもおっしゃったように、なかなか土地に執着しておる農村の第一種兼業は放さないと思うのです。これは非常に将来の日本のつまり食糧というものが、国民消費が満たされるというほどの体制ができておるならば、もう農地なんかは要らない、こういうことも言えると思うのですね。ところが、ますます輸入せねば足らないような傾向にある。たとえば米食を粉食にかえていくとかいうような考え方になってみても、やはり自分たちは米のめしを食べたい、こういう日本人の長い伝統の慣習というものは捨てされないと思うのですね。そこで、こうした農地管理事業団というようなものに多くの金を、ことしの予算はそう思ったほどではないでしょうけれども、来年またこれに対して十五億とかそこらの買い上げ資金を出さなきゃいかぬでしょうが、売るか売らぬかということはやってみなきゃわからぬじゃないかということも言えると思いますけれども、一体政府が買い上げして二・五ヘクタールの自営農家育成しようといっておる対象はどこに求めておるのか。零細農業に求めておるのか、第二種兼業者を中心に考えておるのか。専業農家はこれは現在でもあまり売らないと思うのです。むしろ買いたいほうでしょう。買うには金がないということでしょう。第二種を考えておるのか、やはり第一種を考えておるのか、その対象はどこにお考えになっておるか。私はそういうことがやはり行動的に出てこなければこういう事業団のあっせんをやってみたところでものにならないと思うのです。お考えをひとつお聞きしたい。
  63. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 経営規模拡大しようという農家対象をどこに置くかということでございます。これは自立経営農家としてやっていけるようなところに持っていきたいのでございまするから、相当大きいほうを考えておるのじゃないかということでございますが、もちろんそういう人も十分考えなくちゃならないと思いますが、これはもちろん第一種兼業とか第二種兼業とかを除くとかいうことをいたしたくないと思います。基幹労働力を持って農業というものをやっていこう、こういう意欲の強い者に土地を買うようなあっせんをしていく、買わせる。したがって、金の融資の点なども三分ということにいたしておりますが、これは区別をしないつもりでございます。基幹労働力を持っておる人、それから農業に熱意を持ってやっていこう、こういう者に経営規模拡大していくように所要の資金をつけていく、こういう考えであります。
  64. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 大臣のおっしゃるのは、大きく言えばおっしゃるとおりでしょうが、しかし、所信の中には、大体三十ぐらいの市を中心にまずやってみるというお考えじゃないですか。
  65. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) これは構造改善のときに考えて、日本全国だれでもということでなく、百町村ぐらいを選びまして、そこで町村あるいは農協の人々などの集まった一つ計画といいますか、を立ててもらい、それに対しましてこういう仕事を進めていこう、こういうふうにいまのところ考えておる次第でございます。
  66. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それじゃ、次に進みますが、この農業改善事業の、諸物価と人件費の値上がりですね、さらにこの公共料金の値上がりその他を見て、現在の補助融資額では、二年前から考えてみるとますます困った状況にきておるのじゃないかと思うのです。そうすると、これをやろうという今年も申し込みが十二、三あるとかいう話を私は聞いておりますけれども、ますますこういう値上がりによって困難性が伴うのじゃないかと思いますが、こういう面に対して政府は、やるならば十カ年計画のなにをもっとこれもひとつ急テンポにかえていくというような考え方は大臣はないかどうか、物価は値上がりしておる、二年前からだいぶ変わっている、多少の増額はされておりますけれども。しかし、いまの物価値上がりから見れば、さらにまた公共料金の値上げもしようという事態から言えば、ますます上がる一方ですね。そういう事態の中で依然として構造改善事業をやるのだということでは、これもあまり進展しないのじゃないかと、こう考えるのですが、むろんやりたいという地域のあることは、私も十分知っております。がしかし、こういうものこそ現在の値上がりに対して先手を打った一つの方法で改革をしていくという方法はやれないのかどうか、大臣はこの点どうお考えですか。
  67. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 事業費等につきましての調整ということは考えております。総額をどういうふうに持っていくかということにつきましては、いまのところ総額を増すということでなしにやっておりますけれども、この影響等も考えて対処していくことが必要だろうと思いますが、はいまのままの事業費でございます。もっともこれは平均でございますから、いろいろ差はあると思います。
  68. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 それからもうちょっと聞きたいのですが、養蚕のほうですが、蚕糸、製糸も非常に好況に恵まれてあまりに暴騰過ぎるのじゃないか、二、三年前のような事態が起こるのじゃないかという心配もありますと同時に、政府もこの安定に対してはかなり神経をとがらかしておられる事実は私も知っております。この問題で、輸出検査ですね、この検査は現在は蚕糸協同組合がやっているのか、あるいはまた、政府がその費用を出してやっているのか、この点ちょっとお聞きしたい。
  69. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 現在海外に輸出をいたします生糸の検査は国営検査でございまして、横浜及び神戸で、農林省の生糸検査所が実施をいたしております。
  70. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 国営検査で全部国が負担を出しておるということですか、検査員とか。
  71. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) そういうことです。
  72. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 この蚕糸業ですが、まあ現在は非常にいいようですけれども、これも農林省と通産省との問題で、私は予算委員会でも一ぺん質問したことがあるのですが、この価格の問題については、農林省の管轄だけの問題じゃなくて、通産省とのかなりの私は打ち合わせ、緊密な連絡もなされておると思うのですが、いまの値上がりの一番大きな原因はどこにあるのかお聞かせ願いたいと思う。
  73. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 蚕糸局長から詳細御説明申し上げたいと思いますが、いま取引所における異常の投機といいますか、アズキ等の投機ができないような形で、北海道のアズキが非常に減産しました、それでこの生糸のほうの投機面にそういう人が向いてきたということで、正常価でないような暴騰をしておるような状況でございますので、それにつきましてしかるべく措置をとっておるわけでございますが、そのことにつきましては蚕糸局長から御説明申し上げます。
  74. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 昨年の暮から生糸取引所における生糸の価格が比較的短期間に急に暴騰いたしまして、ごく最近ではキロ当たり五千三百円の台にまで上がっております。これは必ずしも生糸そのものの需給がかような値段を出現をするような逼迫をしておるとは思えないのでございまして、私どものほうで手元に持っておりまするいろいろな需給の統計からいたしますると、そのような急激な値上がりをするような要素はいまのところ見られないのでございまするけれども、ただ、相場が非常に上がっておりまするときには、やはり買い手のほうが非常に買い急ぐ、売り手のほうが売り惜しむというような傾向がございますので、実際の需給以上に相場が急に上がるという傾向もあろうかと思います。そこで、生糸の取引所におきましては、最近仲買い店の取引数量がどうも異常にふくらんでおるということから、やはりこの投機筋の抑制ということが目下の急務ではなかろうかと思いまして、一月の末以来数次にわたりまして、取引所に対しまして証拠金の引き上げでありまするとか、過当な取引数量の膨張を抑制するような手段を講じております。なお今後糸価の推移によっては、引き続きさらに強力な手段を講ずる必要があろうかと思いますが、目下のところでは、菌糸価格安定法に定めます安定帯価格の中にまだおさまっておりますので、いままでの規制措置をさらに少しずつ強めていくというような措置を講じたいと思います。さらに最高価格を突破するような事態になりますれば、思い切った措置を講ずる必要があろうかと思っております。
  75. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 わかりました。次に進みます。  それから流通機構の問題ですが、牛乳の問題が出、私も聞こうと思ったのですけれども、ダブってはもう申し上げませんが、政府は、基本的にはこの流通機構の改善というようなやり方を物価抑制の方法の一つとして何をお考えになっておるのか、継続審議になっておるマーケットもその一つだと御答弁なさるかもしれませんけれども、その問題はあとで審議することになっておりますからこれは別にしますけれども、あの案を見ても物価抑制にはならぬというような私は気がしているのです。したがって、何かその流通機構の改善というような根本的な考え方は、大臣一体どうお考えになっておるのか、所信をひとつお聞きしたいと思います。
  76. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私は、一がいに安くするという方途をとろうとしても、これは無理だと思います。問題は、安定的な価格生産者から消費者の手に渡るということが必要じゃないかと、こういうことから考えまして、流通機構は流通機構だけで解決せらるべき問題ではない、やはり生産面におきましても生産を計画的な方向でやっていくというようなこと、あるいは出荷面におきましても出荷の調整とか計画性を持つ、こういうような面、それから出されたものにつきましては正規のルートを通じ、中間マージンの少ないような形で中央卸売り市場その他市場の改善等も加えていく、それから消費者方向へいくのでございますが、消費者方向にいくにつきましても、中間のマージンが少ないような、一言でいえば合理化したような形で、消費者のふところといいますか、消費者の台所へ物が流れていくと、こういうことが必要であろうと思います。そういう面におきまして生産から消費に至る全面的な関係を有機的に運んでいきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  77. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 まあ大臣のおことばを借りると、なるほど流通機構の改善というのは政府がやるべくしてむずかしい問題だと私は思うのです。これは現在それだけの中間で売買しておられる方がおられるのですからね。牛乳の問題でもその一つであろうと思うのですが、しかし、それだけではできないということになれば、安定ということをおっしゃいますけれども、安定ということは生産と需要の関係がどうなるかということがやはり根本問題にならなければならないと思うのです。ところが、さっき卵の話が出ましたが、来年はまた卵は減るでしょう。いろいろニュースなんか聞いているとまた高うなりますね。ところが、総合的なこういう流通面の問題をもっと考えるならば、そういうところで検討するならば、卵が本年は非常に過剰生産ぎみになっておるというならば、この漁業の報告書を見ても、近海漁業はふえたけれども遠海漁業は減っておるのですよ、日本は。しかも漁業については相当のいま規制を受けておるのです。ところが、これも食のほうに入るのですが、この辺です。この辺の一体、多く出てくる卵と、漁業はますます減っていくだろうというような問題のかね合わせですね。政府はただの一ぺんも、卵がことしは安いんだから大いに皆さん食べてくれという宣伝をしたこともないし、やはり何かの手の打ち方ですね、政府としてないものか、価格安定方策として、たとえばカンショの場合は十月の月末に表示価格をきめればいいものを、今年十月上旬きめたのですが、ところが、現実には価格支示をやってみても、昨年、一昨年の三十円を、ことしは二十三円で売っておるというような状態です。結果的には頭で踊っているようだけれども実質は何も実っていない。この卵の問題でも、こういう状態であるならば、魚は高くなる、卵は安くなる、こういう状態でしょう。私は流通機構の改善というものをやらなくても、やらなければやらないでどういう手が打てるかという一つのやはり私は総合的な消費に対する安定方策ですね、生産と消費のつまり安定政策ですね、そういうものがとれなければ安定政策にならないと思うのですね。大臣のおっしゃる安定ということが大事だが、安定するのにはどうお考えになっておるのか。それをひとつお聞かせ願いたいですね。
  78. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまの例に引かれましたが、卵と魚その他食料全部を総合的に需給の調整をはかるということは、非常にこれはむずかしい問題だと思います。やはり品物別に需給の調整をはかりつつ安定をしていくということが必要だろうと思います。もちろん全体的の見通しもなくちゃなりませんが、それを計画の線に乗せてやるということは、これはちょっと事実上むずかしいのじゃないかと思います。品物別にいろいろ調整をしていくということが政府のとるべき道じゃないかとこう思っております。
  79. 高山恒雄

    ○高山恒雄君 まあ時間もありませんから、戸叶先生の御質問とダブっても、もうしようがないと思いますから、私もこれ最後でやめたいと思いますが、結論的に申しますと、現在の農業問題は、どの省よりも一番むずかしい問題であるということは、これはもうみんな承知しておられると思うのです。それで、むずかしいが、やらなければならない、大きな、約五百八十万戸というこの農家があるのですから、打たなきゃならない手があると思うのですね。私、大臣に願うのは、少なくとも先ほど意見交えた御質問申し上げたように、第二種農業生産者を、兼業生産者を、もとの、やはりお父さん農業にかえして、そうしてここらを中心とする農業、これらをどう奨励するのかと、こういうところに私は政府としては重点施策を持っていただかなければ、地域格差も、産業格差も、国民一人当たりの格差も、これはとうていその改善はできない、こう思うのです。ひとつ大臣、思い切った政策をとっていただくことを私も要望いたしておきます。  これで質問を終わります。
  80. 仲原善一

    委員長仲原善一君) 本日はこれをもって散会いたします。    午後五時四分散会      —————・—————