○戸
叶武君
日本で
農業基本法をつくった一九五六年に、国連のエカフェでもってこのような報告書を出しております。それは
日本における長期的な問題として、第一点においては、やはり食糧と原料の輸入への依存、これをどういうふうに片づけていくか。第二には、間断なく増加する労働人口に職を与える、この二つの問題でありますが、第二の、労働人口に職を与える問題は、高度経済成長で片づいておると思いますが、やはり原料の輸入ということは、なかなかこれは
日本のような加工貿易をやっている国においては避けられないことだと思いますが、この国際収支の立場からいって、十五億ドルもの食糧を輸入する、砂糖や何かはやはり輸入しなくちゃならないでしょうが、せめてこの三分の一でも五分の一でも、それを食糧自給の
方向へ重点的に投下していくならば、私はこのような輸入額にはのぼらなかったと思うのです。どうもアメリカの余剰農作物受け入れ体制のほうに何か裏口を開いておって、まともに
日本の食糧自給ということに取っ組んでいない姿勢というものがこういう欠陥を生んでいるのではないかと思いまして、その点は
農林大臣にも今後やはりもう少しがんばってもらいたいと思います。
そこで、私は、このひとつの
政府の
農業施策の中で、いますぐにやれるような問題に対して、具体的事例をあげて、そうしてこの問題を進めたいと思いますが、その第一点は、
政府が言っているところの、
農業生産の選択的
拡大ということを強く
政府は打ち出しておりますが、選択的
拡大はいいが、
拡大したが、農作物の
価格が不安定でひどい目にあっているというのが、
日本のいまの
農民たちの受け取り方で、
政府の言うことを聞いて桑を抜いてしまうと繭が上がるし、豚をうんと飼うと値が下がるということで、いろいろ
農民が混迷させられておるのですが、まあ特に酪農振興に対しては、
政府は非常に力を入れております。その酪農振興の中で、やはり牛乳の問題を
一つの例にあげますれば、五年間に、大体一合につき十四円から二十円に牛乳は上がってまいりました。まあ六円程度の値上がりであります。もっと高いのを売りつけられている場合が多いのですが、しかし、いずれにしても先進国におきましては、どこの国でも末端の
消費者価格の半分以上が
農家の手取りになっているのです。一合二十円で
消費者が牛乳を買うという場合には、一合十円以上の金が
農民の手に入るような仕組みになっているのです。ところが、
日本ではいま一合七円から七円二十銭ぐらいがいいところであって、とても半分などというのにはなっていないと思うのです。十年前に私
たちが
質問したときには、集約酪農が形成されれば、これは大丈夫なんだ、いろんなことを言っておりましたが、十年たっても依然としてこの流通機構の矛盾ということは
是正されていないのです。私
たちは口がすっぱくなるほど、農林
委員会や
予算委員会で、
農林大臣を通じて農林官僚の耳によく入るように
質問しているのですけれども、そういう流通機構の、たとえば
生産者、豚を飼って、えさをやって育て、牛の乳をしぼる
農家、それからメーカー、それから小売店、そういうもののこの取り高、おのおのの配分はどうなっているのか、そういう正確なデータを調べあげてくれと幾ら言ったって、権威ある
調査資料は出してくれないし、また、こういう問題に対して真剣に取っ組もうという意欲も示されないのですが、何かこれは酪農行政の中においては、私は
農政面において、この業界に遠慮しなければならないような特別な事情でもあるんかと思われる疑念を生じているのですが、このことなんか一番簡単に、私は牛乳の問題なんか片づけていかなければならないと思いますが、あれほどうるさくなっていながら、今日においては、われわれの主張が通って、学校給食のほうへ需要が
拡大されてきたというような面においては、プラスな面も出てきておりますが、どうでしょうか、そういう問題に対して全くこの農林省は私は無力なような感じがしますが、問題はどういうところにあるのでしょうか。