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政府委員(谷口慶吉君) 昭和四十年度
農林関係予算についてその概要を御説明申し上げます。
まず、一般会計における
農林関係予算の総体について申し上げます。
農林省所管合計といたしましては、三千三百六億円となっておりますが、これに総理府、大蔵省、文部省、労働省及び
建設省所管を加えた
農林関係予算合計は、三千七百億円となり、これを昭和三十九年度補正後の予算三千四百八十五億円に比較すると二百十五億円の増加、また昭和三十九年度当初予算三千三百六十億円に比較すると三百三十九億円の増加となっております。
さらに、これを予算編成上変動要因の多い食糧管理特別会計繰り入れ、
農業近代化助成資金繰り入れ及び災害復旧等を控除した金額で比較すると、昭和四十年度は二千四百三十七億円、昭和三十九年度補正後は二千八十一億円で、三百五十六億円の増加となっております。
この予算の編成にあたりましては、
農林漁業の生産性と農林漁家の
生活水準について他産業との格差の是正をはかり、豊かな福祉国家の形成に寄与することが農政に与えられている基本的命題であり、また経済のひずみ是正、社会開発等の見地から
農林漁業の近代化を強力に推進することがきわめて重要である点に留意いたしまして、各般の施策の拡充をはかることとしたのであります。
以下本予算編成の重点事項について申し上げます。
まず最初に、農業関係の予算について御説明いたします。
第一に、農業の生産性の向上と総生産の維持増大をはかるための予算について申し上げます。
農業生産基盤の整備につきましては、農業の生産性を向上し、生産の
選択的拡大の方向に沿って総生産の維持増大をはかるとともに、
農業構造の改善に資するため、これを強力に推進することといたしまして、総額九百二十三億二千七百万円を計上いたしております。
まず、土地改良事業につきましては、総額五百七十七億八百万円を計上しております。そのおもな点について申し上げますと、特定土地改良工事特別会計で行なう事業については、その計画的推進をはかることとして一般会計七十二億八千九百万円の繰り入れを行ない、これに借り入れ金等を加え百十六億九千二百万円の事業を実施することとし、また、一般会計国営事業については、事業効果の早期発現を旨として事業の推進をはかることとし、百十八億九千七百万円を計上しております。
一般都道府県営事業については、進度促進と早期完成につとめるとともに、国営付帯の都道府県営事業については、国営事業の進度を考慮して事業の推進をはかることとし、九十三億六千六百万円を計上しております。
団体営事業については、八十六億二千四百万円を計上しております、機械化農業の推進等に資するため、特に農道事業について、補助率の引き上げを行なうとともに、
農林漁業用揮発油税財源の
身がわり事業として行なうものをあわせ、農道の整備を大幅に拡充推進することといたしております。なお、非補助小団地等土地改良事業については、
農林漁業金融公庫の三分五厘資金の
融資ワクを百五十四億五千万円と計画しております。
さらに、圃場整備事業については、末端圃場条件の整備を通じ機械化農業を強力に推進するため、その事業量を増大するほか、補助率の引き上げを行なうこととし、四十六億四千六百万円を計上しております。
また、愛知用水公団事業については愛知用水の管理と豊川用水事業の推進をはかることとし、篠津泥炭地開発事業についてもその事業を促進することとしており、水資源開発公団事業については、群馬用水事業及び印旛沼干拓関連土地改良事業を継続実施するほか、新たに利根導水路及び埼玉合口連絡水路の事業を推進することといたしております。
次に、干拓事業につきましては、事業の計画的推進をはかることとし、特定土地改良工事特別会計においては一般会計からの繰り入れ百六十二億二千百万円に、借り入れ金等を加え百六十億六千三百万円の事業を行なうこととしており、また、一般会計事業については十二億五千九百万円を計上しております。
農用地開発事業につきましては、
草地改良事業を含め、総額二百三億五千七百万円を計上しておりますが、既入植地について新振興対策関連の建設工事と開墾作業の促進に重点を置いて事業を実施するとともに、一般農家の
経営規模の拡大、成長農産物を主体とする営農の伸長をはかる等の見地に立って、開拓パイロット事業及び
草地改良事業を推進することといたしております。
特に、
草地改良事業につきましては、飼料
生産基盤を整備し、飼料自給度の向上をはかるため、事業量を拡大するほか、補助対象の拡大等補助内容の充実をはかるとともに、新たに国営
草地改良事業を実施することとしており、また、
農地開発機械公団に建て売り方式による共同利用模範牧場の設置事業を行なわせることとしまして、これらに要する経費二十一億八千万円を計上しております。
さらに、
農地開発機械公団に対しましては、建設機械の更新等のため一億円の出資を予定いたしております。
また、八郎潟中央干拓地にモデル的な新農村を建設するため、新たに八郎潟新
農村建設事業団を設立し、農地整備、入植施設、公共施設の造成、入植者に対する営農訓練等を実施させることとしまして、出資、補助金等六億八千百万円を計上しております。
次に、農業の生産性を向上し、その近代化を達成するために必要な技術的基盤を確立するための
試験研究事業及び技術の普及指導事業等に関する予算について申し上げます。
試験研究事業につきましては、七十七億七千三百万円を計上し、各
試験研究機関の研究員の人当研究費の増額、機械器具の充実等を行なうこととするほか、北海道における冷害対策に資するため、北海道農業試験場に冷害実験施設を新設するとともに、年次計画に基づき農業試験場等の移転整備を実施し、また、新たに一般作物及び園芸作物の種苗の保存導入に必要な施設を設置することとしております。
さらに、
試験研究の助成につきましては、指定試験下葉及び総合助成試験下葉について改善を加えることといたしております。
技術の改良普及に関する経費のうち、農業改良普及非業につきましては、生活改善
普及事業も含め四十一億七千二百万円を計上し、農業改良普及所の管轄区域の広域化、農業改良普及員の市町村担当制の確立、機動力の増強、普及員研修施設の整備等をはかるほか、省力技術特別事業を実施することといたしております。生活改善
普及事業につきましては、普及員の増員と広域普及所における広域担当普及員の配置を行なうとともに、生活近代化センターの増設と生活改善技術館の運営強化をはかるほか、農業者健康管理特別事業を実施することといたしております。
畜産経営技術の指灘事業につきましては、引き続き、畜産技術研修事業の強化、畜産コンサルタントによる効率的集団指導事業の推進、畜産新技術開発実験施設と畜産経営モデル施設に対する助成を行なうこととし、これらに対し一億円を計上しております。
一方、蚕業技術改良事業につきましても、引き続き、蚕業改良指導員及び嘱託蚕業普及員の設置を助成するとともに、その資質の向上と普及活動の効率化をはかるため、研修の拡充強化をはかることとし、これらに要する経費として六億円を計上しております。
農業改良資金制度につきましては、技術導入資金のワクを拡大するほか、
農家生活改善資金及び
農業後継者育成資金については、
農林漁業用揮発油税財源の
身がわり事業として、これに必要な資金を補助することとし、特に
貸し付けワクの大幅な拡大をはかることとしまして、これら資金の
貸し付けワクを五十七億円と予定いたしております。
以上に関連して、開拓地の営農振興対策について申し上げますと、既入植者の営農の安定向上と生活環境の整備に重点を置き、営農振興対策資金を五十億円に拡大し、また離農援助措置を充実するとともに、営農指導事業及びトラクター導入事業の助成を引き続き行なうほか、新たに集乳冷却施設の助成、中央開拓融資保証協会に対する出資を行なうこととし、これらに要する経費として二
一億五千三百万円を計上しております。
第二に、
農業生産の
選択的拡大を推進し、食糧需要の動向に対応して成長農産物の生産の伸長とその合理化をはかるための予算について申し上げます。
まず畜産の生産振興につきましては、帯産経営の基盤となる飼料自給度の向上をはかるため、すでに述べましたように
草地改良事業を大幅に拡充実施するほか、乳用牛の飼料自給度を向上させるため、引き続き既耕地における飼料作物の作付の強化のためのトラクター等の共同施設の設置の助成を行ない、地方公共団体が造成管理する草地を対象とする草地管理用機械の設置等について助成し、新たに乾燥の流通による飼料の地域内自給体制の確立をはかるため、乾草生産事業促進モデル施設の設置を助成することとし、これらに要する経費六億四千三百万円を計上しております。
このほか、酪農の
安定的発展をはかるため、新たに国の定める指針に即し都道府県および市町村に酪農近代化計画を樹立させるための調査等を行なうこととし、乳用雌子牛の集団
育成事業に対する助成を拡充強化するほか、新たに国の種畜牧場の一部を活用し優良雌子牛の育成を大規模に実施することとし、これらの経費として一億七千三百万円を計上しております。
さらに、家畜導入、家畜改良増殖等の事業につきましては、引き続き寒冷地等特殊地帯に対する県有家畜貸付事業、肉用素畜導入事業、肉用牛改良増殖基地、凍結精液利用施設及び鶏後代検定施設に対して助成するほか、新たに雑種利用による養豚の生産性の向上をはかるため、種豚改良センターの設置を助成することとしており、また、各県の家畜保健衛生所の整備統合、家畜集団衛生事業の助成等家畜の衛生対策を推進し、国の種畜牧場の施設整備等所要の措置を講ずることとして、二十五億八千四百万円を計上しております。なお、
農林漁業金融公庫の畜産経営拡大資金及び豚鶏資金については、その
融資ワクを五十億円に拡充することといたしております。
次に、園芸の振興について申し上げます。
まず、果樹農業の土産振興につきましては、
果樹園経営の集団化を促進し、果樹農業の生産性の向上をはかるため、
農林漁業金融公庫の果樹植栽育成資金の
融資ワクを五十億円に拡大するほか、
果樹園経営計画の実施促進、果樹栽培適地調査、果樹園造成用ブルドーザーの導入、果樹病害虫発生予察事業等を継続実施するとともに、新たに、国内ブドウ作農家の経営合理化をはかるための醸造用ブドウ生産合理化パイロット事業及びリンゴ品種更新のための苗木共同養成小業を助成し、果樹農業の総合機械化研修施設を設置するための調査、苗木の養成等を行なうこととし、これらに必要な経費として一億三千九百万円を計上いたしております。
次に、野菜花卉の年産振興につきましては、野菜
指定産地制度について、その対象品目に白菜を、対象地域に北九州地域を加えることとし、追加指定産地に自動灌水施設及び広申散布機の導入を助成するほか、加工用トマト対策として共同育苗圃の設置等を助成する等、今後需要が増大すると見込まれる野菜の生産の安定的増大とその生産性の向上をはかることとし、二千五百万円を計上いたしております。
甘味資源作物の生産振興につきましては、甘味資源特別措置法に基づきてん菜及びサトウキビの生産振興をはかるとともに、でん粉原料刑カンショ及び馬鈴ショの生産合理化を推進することとし、十二億三千万円を計上しております。
まず、てん菜につきましては、引き続き土壌改良促進のためのトラクターの算入、集団省力栽培推進のための栽培用機械の導入、ペーパーポットによる共同育苗圃の設置等を助成するほか、新たに奨励品種決定調査を助成するとともに、日本てん菜振興会の運営費を補助することとし、これらに要する経費として七億三千六百万円を計上しております。
なお、北海道につきましては、てん菜生産振興のための土地改良事業を拡充することとし、十四億六百万円を予定しております。
次に、サトウキビにつきましては、引き続き土壌改良のためのトラクターの導入等を助成するほか、新たにわい化病対策として国立サトウキビ、原原種農場を設立して健苗の供給確保をはかることとし、これらにつき九千八百万円を計上しております。なお、別に土地改良事業として三千二百万円を予定しております。
以上のほか、でん粉原料用カンショ、バレイショにつきましても、その生産合理化をはかるため、引き続きカンショ、バレイショ種苗対策事業及びカンショ栽培合理化推進実験集落の設置を助成するほか、新たに省力機械化栽培の普及等をはかるための原料用バレイショ栽培合理化実験集落の設置等を助成することとし、これらに要する経費として三億九千七百万円を計上しております。
米麦等の生産合理化につきましては、引き続き優良種子確保、地力保全、植物防疫事業等の諸事業を実施するほか、新たに耕種農業を中心とする
農業生産の近代化を促進するため、圃場条件の整備された地区における大型機械を中心とした高度の集団栽培の促進事業を助成するとともに、畑地麦作の合理化モデル事業を助成することとし、これらに要する経費として十億二千七百万円を計上しております。
以上のほか、特用作物の振興については、亜麻及びはつか生産改善
パイロット地区、畑作なたね生産改善推進地区の設置の助成等に要する経費として七千万円を計上し、養蚕生産の合理化については、桑園作業の機械化と蚕作向上のための機械化実験組合の設置のための助成等に対して二千三百万円を計上しております。
第三に
農業構造を改善し農業の近代化をはかるための予算措置について申し上げます。
まず、
自立経営農家の育成対策につきましては、自立経営を志向する農家の
経営規模の拡大を促進するため、
農地取得のあっせん、
農地取得に要する資金の融通、農地買い入れ、売渡し等を業務とする農地管理事業冠を新たに設立することとしております。
同事業団は、当面パイロット的に事業を実施するものとし、昭和四十年度においては百市町村において
農地取得のあっせん、資金の融通等を実施することとし、同事業団に対する出資等を行なうほか、地方公共団体に対し農家の土地取得に関する指導等を助成することとし、これらに必要な経費として四億六千七百万円を計上するとともに、財政投融資二十億円を予定いたしております。
次に、
農業構造改造事業につきましては、総額百六十億百万円の予算を計上しますとともに、
農林漁業金融公庫の融資を百二十五億五千万円と予定いたしております。
昭和四十年度におきましては、昭和三十七年度に事業を開始した地域の残事業等の助成と、昭和三十八年度及び昭和三十九年度に事業を開始した地域の
事業実施の助成を行なうとともに、新たに四百五十地域につき初年度の
事業実施の助成を行なうほか、五百市町村において
農業構造改善事業計画の樹立を促進することといたしております。
また、本年度は、事業完了地域の出現に伴い、経営管理上の指導を強化するほか、新たに高度の技術を要する調査設計の事業を助成することとしており、また今後の対策に備えて、農業経済圏
育成事業計画の樹立に着手することといたしております。
農業機械化関係の経費につきましては、
農業近代化の根幹となる農業の機械化を強力に推進するため、引き続き土層改良用、重粘土土層改良用の大型トラクターならびにコンバイン、ドライヤー等の導入につき助成するほか、新たに
農業機械による作業の安全対策として講習事業等を助成することとし、また農林水産航空事業については、利用調整事業、乗員養成事業等に対し引き続き助成するとともに、新たに農林水産航空協会のヘリコプター設置を助成することとし、これらに必要な経費として五億二千七百万円を計上するほか、
農業機械化研究所に対する出資等二億六千三百万円を計上しております。
次に、
農業近代化資金融通制度につきましては、資金ワクを七百億円に拡大するとともに、すでに造成した
農業近代化助成資金の運用益を財源として利子補給の助成を行なうこととし、
農業近代化助成資金への追加繰り入れは行なわないこととしております。このほか、都道府県農業信用基金協会に対する出資の助成を含め、これらに要する経費として三十二億百万円を計上しております。
第四に、農産物の流通合理化、加工及び需要の増進ならびに輸出振興に必要な予算について申し上げます。
農産物の流通改善につきましては、まず家畜及び畜産物のうち、食肉について、産地の食肉センター、消費地の食肉共同処理施設、食鶏共同処理保管施設、食鶏出荷合理化施設の設置並びに家畜市場の再編整備を引き続き助成するとともに、新たに鶏卵取引の合理化に資するため鶏卵規格取引促進施設の設置を助成することとしております。また、生乳については、その流通の
改善合理化をはかるため、集送乳路線の整備を計画的に行なうこととし、引き続きクーラーステーション及び集乳所の整備を助成するほか、国内産牛乳の消費の
安定的拡大をはかる等のため、国内産牛乳の学校給食の計画的増大を推進することとし、その供給量を七十万石に拡大することとして、これらに要する経費として合計三十七億八千九百万円を計上しております。
また、青果物の流通改善については、引き続き山出荷調整対策協議会等に助成するほか、大都市への野菜の
安定的供給の確保をはかるための
指定産地制度については、対象品目にハクサイを、対象地域に北九川地域を加えるとともに、新たに野菜の需給見通し及び指定産地
経営改善計画の樹立を行なうこととし、また、カンラン及びタマネギ生産安定資金制度を維持するため必要な追加資金の造成を助成する等流通改善を推進することとし、一億五千八百万円を計上しております。
なお、
生鮮食料品の適正円滑な流通を確保するため、
中央卸売り市場の施設整備についての助成を引き続き行なうこととし、四億三千万円を計上するほか、新たに地方卸売り市場の配置等に関する基本的方向づけのための調査を行なうこととし、二百万円を計上しており、また、
生鮮食料品の価格形成の合理化を促進するため、生鮮
食料品総合小売り市場を設置することとし、
食料品総合小売り市場管理会に対する出資等として二億七千四百万円を計上しております。
農産物の加工及び需要を増進するための予算としては、農林関係企業の経営の合理化、日本農林規格の普及推進等の助成並びにパンの学校給食の実施について総額で十七億四千万円を計上しております。
農産物の輸出振興のための予算としては、輸出品検査所及び生糸検査所の運営費並びに生糸の海外需要増進をはかるための日本絹業協会に対する助成として総額十億千二百万円を計上しております。
第五に、農産物の価格安定と
農業所得の確保に必要な予算について申し上げます。
食糧管理特別会計における食糧管理事業につきましては、国内産米麦および輸入食糧の管理を現行方式により実施することとし、食糧管理特別会計の調整勘定に対して一般会計から千五十五億円の繰り入れを行なうことといたしております。
また、カンショでん粉及びバレイショでん粉、てん菜糖などの砂糖類については、それぞれ必要に応じ政府買い入れ措置を購ずることによりその原料作物の価格の安定をはかることとしております。
次に、畜産物については、畜産振興事業団の行なう価格安定業務の円滑な実施をはかるため、三億円の追加出資を行なうとともに、
酪農経営の安定と牛乳の生産、消費の円滑な拡大をはかるため、生乳の価格安定制度の改正をはかることとし、所要の検討を行なうこととしております。
国内産大豆及びなたねの保護措置としては、引き続き生産者団体に対する交付金八億円を計上しており、また、糸価安定特別会計においても、引き続き繭糸価格の安定をはかるための措置を講ずることといたしております。
第六に農業資材の生産流通の合理化および価格の安定に必要な措置といたしましては、肥料及び指定飼料の検査、農薬検査、動物医薬品検査等の事業を継続実施することとしており、また、流通飼料につきましては、その需給及び価格の安定をはかるため、従来の品目のほか、新たにトウモロコシを加え、これら輸入飼料の買い入れ、保管および売り渡しを行なうこととし、これに伴う損失を補てんするため食糧管理特別会計輸入飼料勘定へ四十一億円の繰り入れを行なうこととし、これを含め以上の諸事業に必要な経費として四十三億九千三百万円を計上しております。
第七に、
農業経営担当者の養成確保と
農業従事者の就業促進及び福祉の向上に関する予算について申し上げます。
農業近代化推進のにない手となる
農業経営者の養成につきましては、経営伝習農場等の研修施設の整備拡充をはかるほか、新たに在村青少年のための農業専修学園及び他県研修生も受け入れる営農研修施設の設置につき助成することとし、また、民間の農業教育機関の研修教育、農業実習生の海外派遣等の活動を引き続き助成することとし、これらについて四億三千六百万円を計上しております。
農業従事者の就業機会の増大については、農業委員会組織による相談、調査、啓蒙等の事業及び協議会の開催に対して一億四百万円の助成を行なうほか、農業移住促進事業に対する助成として七千二百万円を計上しております。
次に、
農業従事者の福祉向上に関する予算といたしまして、すでに述べました開拓地の振興対案及び生活改善
普及事業のほか、離島振興対策、僻地震山漁村電気導入、農山漁村同和対策等の経費について申し上げます。
離島振興法に基づく離島の振興対策事業につきましては、さきに述べました農業基盤整備事業のほか、治山、造林、林道、漁港、海岸事業等の公共事業を合わせ
農林関係予算として四十八億二百万円を計上し、計画的に事業の推進をはかることといたしております。
また、僻地農山漁村における未点灯農山漁家の解消のための電気導入事業及び北海道における老朽化した共同自家用電気施設の改修事業につきましては、補助対象事業費の引き上げを行なう等その事業を推進することとして三億三千万円を計上しております。また、農山漁村同和対策といたしましては、隊付の同和対策の一環として同和地区内の農山漁家の振興に必要な土地整備事業及び共同利用施設の設置に対し一億二千五百万円の助成を行なうこととしております。なお、山村振興につきましては、新たに三千万円を計上し、基本調査を行なうこととしております。
第八に、農業団体の整備強化に関する予算について申し上げます。
まず、農業委員会による農家台帳の再整備を引き続き実施するほか、農業協同組合の合併を積極的に推進し、また
農林漁業団体職員共済の給付内容を充実し、開拓農協の事務処理の適正を期するための指導を強化するほか、土地改良区の合併等の推進を行なうこととし、これら団体関係の予算として二十三億三百万円を計上しております。
次に、林業関係の予算について御説明いたします。
第一に林業関係公共事業について申し上げます。
まず林道事業につきましては、
林業生産基盤の整備と森林資源の開発利用を推進するため、一般林道の開設事業を拡充実施するとともに、山村振興林道の補助率の引き上げを行ない山村の振興に資することとするほか、新たに森林資源の
開発等地域開発としての意義の大きい林道の開設を
森林開発公団に実施させることとし、
農林漁業用揮発油税財源の
身がわり事業としてこれに必要な事業費を補助することとしております。これらに要する経費として、六十二億二千六百万円を計上しております。
治山事業につきましては、新治山事業五カ年計画に基づき事業の推進をはかることとし、
国有林野事業特別会計治山勘定において民有林治山事業を計画的に実施するため一般会計から同勘定に百四十一億六千五百万円を繰り入れることとしており、また、水源林造成事業については、
森林開発公団によりその事業を拡充実施するため必要経費三十二億円を同公団に出資することとしております。これらをあわせて治山関係で総額百七十三億六千五百万円を計上しております。
造林事業につきましては、五十七億八千七百万円を計上しておりますが、引き続き拡大造林に重点を置いて人工造林計画を推進することとし、補助単価の改訂を行なうほか、融資造林の拡充をはかるため、
農林漁業金融公庫の
融資ワクを五十七億円に拡充することとしております。
第二に、公共事業以外の林業振興及び林業
構造改善対策等に関する予算について申し上げます。
まず、林業の基本対策の推進の一環として、林業の生産性の向上と
林業従事者の所得の増大をはかるため、林業
構造改善対策事業を推進することとし、これに必要な林道整備及び近代的林業施設の導入等の事業を総合的計画的に推進するため、昭和四十年度においては、新たに百市町村の計画樹立等に対し助成を行なうとともに、前年度に指定された九十二地域における第一年度目の
事業実施について助成等を行うこととして十億二千万円を計上しております。また、
林業労働力対策について、一千三百万円、入会林野整備促進対策事業について二千万円を計上しております。
なお、林産物の流通を円滑化し、需給及び価格の安定をはかるため、主要林産物の生産、流通、価格等の動向を握把するための調査を行なうほか、木炭、干しシイタケ等の自主的出荷調整事業を助長することとし、これらに必要な経費六千万円を計上しております。このほか、森林組合の合併促進のための経費を含め、森林組合の育成対策費として三千八百万円を計上しております。
次に、森林資源の維持増強に関する予算につきましては、森林計画制度の適切な運用をはかるとともに、保安林整備計画の適確な実行を期することとし、このほか、優良種前の確保、森林病害虫等防除、鳥獣行政の運営等に必要な経費を合わせ、九億三千百万円を計上しております。
第三に、林業
試験研究及び
普及事業の強化に関する予算について申し上げます。
林業経営の合理化を推進するため林業普及指導職員の活動を強化するとともに、国及び都道府県の試験指導機関による
試験研究の拡充をはかるほか、新たに林業技術普及センターの整備につき助成を行なうこととし、これらに要する経費一六億一千三百万円を計上しております。
次に、水産業関係の予算について御説明いたします。
第一に、
沿岸漁業及び
中小漁業の近代化をはかるため、総額四十二億四千八百万円を計上しております。
まず、
沿岸漁業の
構造改善対策につきましては、これを計画的、総合的に実施することとし、前年度からの継続地域のほか新規に五地域について調査指導を、また七地域について経営近代化促進事業を始めるとともに、全国四十二地域において行なう漁場造成改良事業に対しても引き続き助成することとし、十六億二千三百万円を計上しております。なお、本事業を推進するため、融資単独事業の一地域当たりの事業規模を拡大することとしております。
また、
中小漁業の振興対策を推進するため、カツオ・マグロ漁業等について経営の実態調査及び改善指針の策定を行なうとともに、
中小漁業融資保証制度については、保険料率の引き下げを行ない、
中小漁業者に対する金融の円滑化をはかることとしております。
さらに、資源の高度利用、漁業の能率化をはかるための漁況海況予報事業につきましては、予報の迅速かつ適確な広報を行なわせることとし、新たに二千万円を計上しております。
次に、漁業災害補償制度につきましては、共済掛け金の助成を引き続き行なうとともに、この制度の改善充実に関する調査研究、損害評価の適正迅速化をはかることとし、以上に要する経費四億七千四百万円を計上しております。
また、漁船損害補償制度につきましては、役務加入する漁船等の保険料負担を軽減するため、二十トン未満の漁船の国庫負担対象付保率を引き上げることとし、これらに必要な経費として八億一千四百万円を計上しております。
水産技術の両度化につきましては、まず、国立水産研究所における増養殖、加工利用研究の強化等を行なう、ほか、都道府県水産試験場が行う指定試験等に対し、引き続き助成を行なうこととして八億七百万円を計上しております。このほか、
沿岸漁業改良
普及事業の強化のため、
沿岸漁業改良普及員の増員及び機動力の充実を行なうこととし、これらに必要な経費一億一千五百万円、漁村青壮年育成対策として二千八百万円及び水産大学校の運営のため、三億一千六百万円を計上しております。
なお、内水面漁業の振興に資するため、前年度からの継続地域のほか、新たに四地域の地域振興対策事業の実施及び四地域の調査について助成を行なうこととし、これらに要する経費四千二百万円を計上しております。
第二に、水産物の流通加工対策といたしましては、多獲性魚種の価格安定をはかるため、引き続き生産者団体等に対し主要生産地における冷蔵庫、冷蔵自動車及び水産加工施設の設置に対し助成し、また、水産加工業の実態調査を行ない、さらに、水産物の消費の拡大と消費者価格の安定に資するため、引き続き関係業者の組織する団体が行なう冷凍魚の普及宣伝事業に対し助成するとともに、新たに農山村地帯において農協が冷凍ショーケースを設置するのに要する経費に対し助成することとし、これらに要する経費二億五千二百万円を計上しております。
第三に、漁業
生産基盤の整備をはかるため、総額百三億四千万円を計上しております。
まず、漁港の整備につきましては、第三次漁港整備計画に基づいて漁港修築事業の重点的実施をはかることとし、特に内地の第一種及び第二種漁港の補助率を引き上げる等地元沿岸漁民の負担を軽減するとともに、事業量を増大することとして九六億八千五百万を計上しております。
また、
農林漁業用揮発油税財源の
身がわり事業として新たに漁港関連道の整備をはかるため、二億円を計上するとともに、
沿岸漁業の造成開発を積極的に促進するため、引き続き大型魚礁設置事業を計画的に推進するほか、新たに浅海漁場の大規模な開発のための調査を実施することとし、これらに要する経費四億五千五百万円を計上しております。
第四に、水産資源の対策といたしましては、総額六億二千万円を計上しております。
まず、水産資源の保証培養をはかるため、新たに水質汚濁防止のための調査を行ない、アユについて保護水面を指定するほか、引き続き、アユ、サケ、マスの放流事業等を推進し、また、瀬戸内海栽培漁業センターの事業運営の効率化、北海道サケ、マスふ化場における人工ふ化放流事業の充実をはかることとして、これらに要する経費四億七千万円を計上しております。このほか、国際漁業交渉等に対処するため、サケ、マス、マグロ等の化物調査を実施することとして一億四千九百万円を計上しております。
第五に、海外漁場の開発を促進するため、新漁場開発調査のための大型調査船の建造に着手するとともに、オーストラリア周辺海域の調査を行なうほか、海外漁業基地における漁船乗組員と現地住民との接触を円滑化するため、民間団体の行なう海外駐在員の設置に対して助成することとし、これらに必要な経費二億二千四百万円を計上しております。
次に、
農林漁業金融公庫資金の拡充について申し上げます。
農林漁業に対する融資事業については、さきに申し述べました
農業近代化資金及び
農業改良資金の拡充のほか、
農林漁業金融公庫資金につきましてもその拡充強化をはかることとし、新規貸付計画額を千二百四十億円に拡大しております。
新規貸付計画額を千二百四十億円としましたことにより、同公庫に対する資金交付予定額は、新規貸付計画による交付予定額七百四十四億円と前年度貸付計画額のうち、四十年度に資金交付予定となっている四百二十八億円との合計千百七十二億円となっております。
この原資としては、産業投資特別会計及び一般会計からの出資金百六十四億円、資金運用部特別会計等からの借り入れ金七百七十三億円、計九百三十七億円と自己資金二百三十五億円を予定しております。
なお、以上の資金計画に関連し、別に
農林漁業金融公庫に対する補給金四億六千七百万円を計上しております。
新規貸付計画のおもなものについて申し上げますと、農業及び
沿岸漁業の
構造改善推進資金百二十二億八千万円、農地、未墾地等土地
取得資金百九十七億円、土地改良、造林、林道、漁港等の基盤整備資金四百三十一億七千万円、共同利用施設資金、主務大臣指定施設資金等の一般施設資金百六十四億一千万円及び自作農維持、林業経営維持等の経営維持安定資金百十三億円等で、合計千二百四十億円であり、前年度に比し、百七十億円の増となっております。
次に、その他の重要施策について申し上げます。
農業災害補償制度につきましては、農作物及び蚕繭共済につき、補償の充実を期するため、単位当たり共済金額の最高限度の引き上げ及び最近における選択共済金額の上昇傾向等を考慮して、掛金国庫負担の増額をはかることとしておりますほか、家畜共済については、診療点数の改訂に伴う農家負担の増加の軽減をはかるため奨励金を交付するとともに、果樹共済についての試験調査等を実施することとしております。また、農業共済団体の事務費につきましては団体職員の期末勤勉手当を増額し、農家負担の軽減をはかることとしております。以上により総額二百二億八千万円の農業保険費を計上しております。
災害対策公共事業につきましては二百十三億八千百万円を計上し、海岸事業、農地、農業用施設、林野、漁港等の災害復旧及び災害関連事業並びに鉱害復旧事業の推進をはかることとしております。
次に、昭和四十年度の農林関係特別会計予算について御説明いたします。
第一に、食糧管理特別会計について申し上げます。
まず、国内産米の管理につきましては、現行方式を継続することとし、昭和四十年産米の集荷目標は七百十万トン、政府買い入れ価格は前年産米買い入れ価格と同額、消費者価格は現行どおりをそれぞれ前提として予算を編成しており、また、国内産麦及び輸入食糧の管理についても、現行方式を前提として必要な予算を計上しております。
なお、卸、小売り業者の販売手数料、集荷手数料及び保管料については、所要の改訂を行なうこととしております。
以上の方針に基づいて食糧管理を実施するため、さきに述べたように、この会計の調整勘定に調整資金として一般会計から一千五五億円の繰り入れを行なうこととしております。
また、カンショでん粉、バレイショでん粉、砂糖類及び輸入飼料につきましても、その買い入れ等に必要な予算を計上しており、このうち、輸入飼料についてはその買い入れ等に伴う損失の補てんのため、一般会計から輸入飼料勘定へ四十一億円を繰り入れることといたしております。
第二に、農業共済再保険特別会計については、さきに述べた農業災害補償制度の運営のため、一般会計から合計百三十三億三千二百万円を繰り入れることとしております。
第三に、
国有林野事業特別会計について申し上げます。
国有林野事業勘定につきましては、全国森林計画に依拠した国有林の木材増産計画に基づき、歳入状況の見通し等を考慮して予算を編成しており、総収獲量は、二千四百七十八万立方メートルを予定いたしております。
なお、この会計の資金を活用いたしまして引き続き民有林行政への協力をいたすこととし、特別積み立て金の取りくずしによる林業振興費財源の一般会計繰り入れ額は、融資造林の拡大のための
農林漁業金融公庫への出資八億円、水源林造成事業を
森林開発公団に実施させるための同公団への出資三十二億円、その他を含めて四十五億円といたしております。
次に、治山勘定につきましては、一般会計からの繰り入れのほか地方公共団体の負担金収入等を含め百五十一億六千三百万円の歳入をもって、民有林治山事業の着実な実施をはかることとしております。
以上のほか、森林保険、自作農創設特別措置、糸価安定の各特別会計につきまして、それぞれ前年度に引き続きほぼ同様の方針で予算を汁上しましたほか、特定土地改良工事、開拓者資金融通、漁船再保険、
中小漁業融資保証保険の名特別会計につきましては、さきに申し上げましたような施策方針のもとに予算を計上しております。
最後に、財政投融資計画について御説明申し上げます。
昭和四十年度における農林関係財政投融資一面は、
農林漁業金融公庫への出資を一般会計から八億円、産業投資特別会計から百五十六億円、計百六十四億円としますほか、資金運用部特別会一等からの借り入れ金は、
農林漁業金融公庫七百七十三億円、愛知用水公団四十二億円、
農地開発機械公団三億円、
森林開発公団二億円、農地管理事業二十億円、八郎潟新
農村建設事業団五億円、開拓者資金融通特別会計五十三億円、特定土地改良工下特別会計九十七億円で、財政投融資総額は千百五十九億円となり、前年度に比し二百三十二億円の増となっております。
以上をもちまして、農林関係の一般会計予算及び特別会計予算並びに財政投融資計画の概要の御説明を終わります。