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1965-05-25 第48回国会 参議院 内閣委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月二十五日(火曜日)    午後一時四十四分開会     —————————————  出席者は左のとおり。     委員長         柴田  栄君     理 事                 栗原 祐幸君                 下村  定君                 伊藤 顕道君     委 員                 源田  実君                 塩見 俊二君                 村山 道雄君                 森部 隆輔君                 占部 秀男君                 鬼木 勝利君    政府委員        内閣官房長官  竹下  登君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        憲法調査会事務        局長事務代理   大友 一郎君        法務大臣官房司        法法制調査部長  鹽野 宜慶君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君    説明員        内閣総理大臣官        房広報室長    三井 芳文君        内閣総理大臣官        房参事官     八段麒一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○憲法調査会法廃止及び臨時司法制度調査会設  置法等の失効に伴う関係法律整理に関する法  律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 柴田栄

    委員長柴田栄君) これより内閣委員会を開会いたします。  憲法調査会法廃止及び臨時司法制度調査会設置法等失効に伴う関係法律整理に関する法律案議題といたし、質疑を行ないます。  政府側からは、竹下内閣官房長官高辻内閣法制局長官大友憲法調査会事務局長事務代理鹽野司法法制調査部長出席いたしております。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に引き続いて二、三お伺いしたいと思いますが、まずお伺いしたいのは、佐藤内閣憲法改正問題に対する基本的な考え方、こういうことに関連してまずお伺いしたいと思います。  佐藤内閣は、成立したその直後の第四十七国会で、昨年の十一月であったと思いますが、衆議院予算委員会総括質問がありましたその冒頭で、池田総理憲法改正に対する考え方佐藤総理のそれとは明らかに違いがあったということ、こういうことが問題となったわけですが、そこでまず佐藤総理は、昨年の七月に総裁立候補の際には、憲法問題は国民世論の熟するのを待って取り上げたい、取り組むと、こう言っておられたわけですが、この降りでは、佐藤総理考え方池田総理考え方も食い違ってはいないと思うのです、この限りでは、ところが、あくまで自主的にこれを改正する、これはまあ自民党立党精神でもあろうと思いますが、この点については、池田総理立党のこの精神を無視してきた、こういう点で自民党見解が違う、考え方が違う、こういうことであったと思うのですが、そこでお伺いしたいのは、やはり本木的な問題ですから、この際国民の前に明らかにする必要があろろうと思うわけです。そういう点で、佐藤内閣としての憲法改正に対する基本的な態度をここで明らかにしていただきたい。この点からお伺いしたいと思います。
  4. 竹下登

    政府委員竹下登君) ただいまの伊藤先生の御質問でございますが、四十七前臨時国会予算委員会であったと記憶しております。私もその場におったのであります、か、基本的にはただいま伊藤先生おっしゃいましたように、池田内閣と、世論動向を見て対処したいと思うという限りにおいては変わらないと思うのであります。ただあのときに申しましたのは、目山民主党の結党当時につくられましたところの党則、その中の要綱、そういうものからして池田総理がその要綱そのものをよく読んでいられなかったのではないかというふうなたしか表現をしたと私も記憶をいたしております。が、今日、佐藤内閣といたしましては、その際にも申し上げたのでありますが、いわゆる国民のすでに血となり肉となっております民主主義平和擁護というような点について、これをどうこうするという考えは全くない。憲法調査会報告書も出た今日、いま一度国民の排さまとともによく憲法を私も一結に読んでみょうではないか、その上で機運の熟する国民的時限においてこれに対処していくべきだ、このように答えたと私は記憶をいたしておりますが、その限りにおいても池田総理考え方とそう違ってはいないというふうに私自身理解をいたしております。
  5. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま御答弁ではございましたけれども、結局、池田総理はこの立党精神を無視しておるので、私とははっきり違うのだということを言明されておるわけですね、佐藤総理は。佐藤総理自身言明されておるのですから、このぐらい確実なことはない。ということになると、いまの御答弁では、あまり違わないのだということとは相いれないと思うのですが、この点はいかがですか。これは大事な問題ですから、はっきりさしてもらいたいと思う。
  6. 竹下登

    政府委員竹下登君) その予算委員会、私も出席をいたしておりましたけれども、いま資料がございませんから、いささか記憶を呼び戻しながらのお答えになりますので、正確ならざる点もあろうかと思いますが、それは池田総理自分任期中に憲法改正をしないということを言明をなすっていらした。このことがわが党の、あれはたしか政策要綱でありましたかに、自主的に憲法改正をはかるというその考え方と違っておる。自分は、だから、今日いわゆる自分任期中に改正をいたしませんという言明はするものではないという限りにおいて違っておる、このように当時の私なりの記憶を呼び戻しています。
  7. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私はここでまずお伺いしておるのは、池田総理佐藤総理との憲法改正、問題に対する考え方の違いが予算委員会指摘されたが、その点はどうかという角度からお伺いしておるのであって、これは繰り返しお尋ねするようですけれども、佐藤総州自体が池田総理とはこういうふうに違うんだということをはっきりさせておるわけですね。だから、そのとおり御答弁あれば問題ないわけです。大体お考えわかりましたから、次にお伺いしたいのは、憲法調査会報告書を出されたわけです。したがって、これを受けとめた佐藤内閣としては、今後この憲法改正問題とどのように取り組んでいかれようとなさるのか、こういうことを明らかにしていただきたいと思います。
  8. 竹下登

    政府委員竹下登君) 報告書を受け取りました今日におきまして、前池田総理の、たしか予算委員会での御答弁の中に、国会に専用の調査機関をつくって云々という御答弁が、たしかございました。が、佐藤内閣といたしましては、この問題について話し合いをいたしまして、もとより専門調査機関等は、これは国会独自でおきめになるべきことであるので、ただ、そうしたところでさらに調査検討していただくことが望ましいという態度で臨むべきであろう、このような意思統一をいたしております。
  9. 占部秀男

    占部秀男君 関連あとでまた憲法調査会の問題についてはお伺いしますが、いま伊藤委員がちょっと中座しておりますので、その間、臨時司法制度調査会臨時行政調査会設置法失効の問題についてお伺いしたいと思うのです。私は内閣委員は初めてなんで、的の当たらない質問があるかもしれませんが、その点はお願いをしたいと思います。  この法律案中身によると、臨時行政調査会設置法失効になったので、結局関係各法規を整理すると、こういうことになるわけでありますか。その点お伺いしたい。
  10. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) この憲法調査会設置法のほうは実は期限がございませんで、これは特に廃止をするという措置をいたしませんと、実質、実体それ自身がなくならないわけでございますが、臨時司法制度調査会につきましては、この設置法の附則の第六項というのに、この法律昭和三一九年八月三十一日限りその効力を失うというのがございます。そこで来はただいま読みました条項の申しておりますとおりに、実は効力を失っておるわけでありますが、法律整理を要するという意味でこの際一緒に整理をいたすということになったわけであります。
  11. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、この臨調のほうは、今度のこの法律によると庭山をするということになるのですか。
  12. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 臨時行政調査会設置法はもうやはり時限でございまして、やはり特定の時期を限りまして、その効力を失うことになっております。
  13. 占部秀男

    占部秀男君 これもやはり時限立法期間が定められておるというわけでございますね。
  14. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) さようでございます。
  15. 占部秀男

    占部秀男君 そこで臨時行政調査会答申といいますか、報告といいますかね、行政改革に関する意見書ですか、よく字句は私知らないのですが、それがこの前、たしか昨年の秋でしたかね、内閣総理大臣に出されたと思うのですが、あの内容についてはどういうような取り扱いを内閣でしておりますか。
  16. 竹下登

    政府委員竹下登君) あれを受け取りまして、行政管理小長官が長となりまして関係次官を網羅いたしまして、行政改革本部というのをつくりまして、あの臨調答申を尊重するというたてまえの上に立ってできるものから、いわゆる法律改正等々を含まないでできる許認司事務を簡素にするとかいうような問題もございますので、できるものから手をつけていこうというので、そのつど本部の会合が開かれ、事務次官会議に上がりまして、主たるものは閣議の了解事項として実施していこう、こういう今日姿勢をとらております。
  17. 占部秀男

    占部秀男君 もちろん意見書というか報告書というか、それが秋に出されたのですから、まだ期間がそうたくさんあるわけじゃありませんが、われわれも政府側の処理の経過について無理に、期間の問題があるから、そう追及するわけじゃありませんが、あの臨調のたしか意見書には三つ大きな問題があったと思うのですね。一つは、事務簡素化の問題、一つ中火地方を通じての補助金整理といいますかね、そういう問題、もう一つ公務員労働関係についての問題があったと思うのです。そこで第一に事務簡素化の問題ですね、これは何か具体的に各省間の事務あるいは中火地方との事務関係、これは当面緊急を要する問題ですが、これはある時期を置いてできるだけ実施しようというのですから、ある程度の時期を設定して、いまこの問題にかかっておるのですか。その内容はどういう経過になっておりますか。
  18. 竹下登

    政府委員竹下登君) 正確を期する意味におきまして、法制局長官からいまの点をお答えしていただきたいと思います。
  19. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 実は、内閣法制局の固有の仕事ではなくして、むしろ、ただいまお話がございましたように、行政管理庁長官中心になっております行政改革本部あるいは行政管理庁自身等でやっております関係で、御満足のいただける答えができるかと思いますけれども、便宜申し上げますと、ただいま御指摘の三点というのはかなり重要な改革意見のものでございますが、そのうちの行政事務能率化といいますか、改善といいますか、そういうもののやり方としまして、私の承知する限り、行政改革本部にも議題が出ましたし、それで一応内容検討いたしまして、実施機関としての行政管理庁のほうで、いろいろな項目がございますが、その項目につきまして、それぞれ一定の時期をめどとして推し進めていくというようなことで現にやっておると私は承知しております。  それからただいまのお尋ねのほかに、先ほどのお尋ねにも関連がございますが、確かに、行政機構改革等につきましては、これはたいへん多くのわれわれ経験を持っておるわけですが、なかなか、ほんとうにうまくいかないのが実情でございます。そこで今度は、御心配のように、どうしてもっていくかということがあるわけでございますが、御承知のように、これは参議院でもごやっかいになったはずでございますが、たとえば行政監理委員会というようなものを設置して行政機構改革の推進をはかるというようなこと、つまり大もとから徐々にやっていこうと、細目の点につきましても、いま竹下長官が言われましたように、できるものにつきましてはさっそくに手をつけていく、それにしましても、行政各省いろいろなものがあるわけでございますから、一応のめどをつけてやっていこうというようなかっこうで進行しておるわけでございます。
  20. 占部秀男

    占部秀男君 補助金整理の問題、これは法制局長官には無理ですから、私はまたあと機会があればお伺いするとして、この際、最後の公務員労働協定の問題についてお伺いしておきたいのですが、というのは、われわれも、この間ILO特別委員会に出ても、その前の予算委員会公務員労働関係の問題を質問しても、結局は法制局長官意見がいろいろな点について大きく影響するわけです。そこで、今度の臨調意見書というか、答申書には、これは国家公務員地方公務員によって幾らかの違いはありますけれども、労働基本権というものはやはり与えなくちゃならない、そこで労働組合をつくる、団結権を事えようじゃないか、ただし、それに伴う争議権には、これはもちろん制限をするし、団体交渉権についてもある程度制限すると、こういう形でやったらどうかという意見書が、私たしか出ていたと思うのです。今度ILO特別委員会がああいう形になりまして、公務員制度審議会ですか、ここでとりあえず国家公務員地方公務員労働関係の問題、これが発展していけば、公企労法地公企労法の問題に及ぶと思うのですが、そこで審議されるということになる。法制局長官としては、やはり公務員に、たとえ制約された形であっても、やはり労働組合をつくる、法的に申しますと、いまの公務員法身分法といいますか、あるいは任用法といいますか、そういう法律にして、労働関係は、やはり労働組合法に一応制限されても適用すべきじゃないかと、かように私は考えるのですが、この点の意見はいかがですか。
  21. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) ただいまお話がございましたように、この問題はILO関係でも問題がございしましたし、臨調答申にも実はそういうことに触れたものがございます。さらにさかのぼって言いますと、だいぶ前でございますが、公務員制度調査会というのが、前にございました、前の調査会でございますが、やはりそういうものが議題にのぼったことがございます。結局結論としては、御承知のように、今度できます公務員制度調査会で大いに検討してやっていこうというわけでございますが、おまえの考えはどうかということでございますので、まあそこで大いにやってもらいたいと思いますが、先生のおっしゃった中では、公務員についても、団結その他労働関係のことは、労働組合法の適用を受けるようにしたらいいじゃないかというお話でございますが、まあ私は法の形式はたいした問題ではなくて、やはり中身だろうと思うのですが、公務員につきましては、とにもかくにも民間の労使関係におけるようなものとこれは違うものがあることだけは、何としても否定はできない。公務一員は全体の奉仕者だというそもそもの性格を持っておりますから、その性格はどうしてもぬぐうわけにいかないとすれば、国家公務員法にせよ、あるいは労働組合法を適用する場合にせよ、その原則に対するやはり例外的な措置というものはどうしても要るのだということは、これはどうも認めざるを得ないと思うのです。要はいまある制度をどの程度まで変えていくかという問題になると思いますが、これはにわかに私結論を出すのはいかがかと思いますし、また、その準備もございません。大体の考え方としては、ごく大ざっぱでございますが、それでお許しを願いたいと思います。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほど官房長官に対して、憲法調査会報告を受けた佐藤内閣としては、今後憲法改正についてどのように処置せられるのか、どういう取り組みをするのか、こういう点をお伺いしたわけですが、このことにさらに関達して、これは新聞報道によって承知したわけですが、昨年末この法案、が国会に提案されたその際、自民党憲法調査会中心になって、党としての態度を決定したと、そういう意味報道があったわけです。その際の自民党憲法調査会態度というのはどのような態度であったか、この点を明らかにしていただきたい。
  23. 竹下登

    政府委員竹下登君) 直接的には、先生のただいまおっしゃいましたように、この憲法調査会廃止する法律を提出するにあたって、それが機会となって、自民党憲法調査会長であります清瀬一郎先生と私どもと意見の調整を行なったことがございます。その席上、自民党憲法調査会としての統一見解という形であったと記憶いたしておりますが、清瀬先生の御説明になりましたのは、今日の憲法は、民主主義平和主義人間尊重、そうした大、原則は、すでに国民の血となり肉となっておるものである。かなるがゆえに、これらを基本的なものとして将来とも持ち続けていくということには変わりがない。しかしながら、現行憲法が、その制定当時の、占領下における混乱状態のもとに制定せられたその経過からして、いつの日か国民的次元において、その時点における国内的あるいは国際的諸問題とともに勘案してこれが改正をはかるベきものである。  なお、さらにこれは、たしか統一見解の中には書いてなかったと思うのでありますが、清瀬会長のおっしゃったことで私の印象に残っておりますことは、いわば非常にラフな言い方であるけれども、成立当時の経過をつまびらかに承知しておるものとしては、たとえそのまま同じものであっても、自主的に一度は国民的次元で改定されてしかるべきである、このような注釈がついておったと記憶いたしております。
  24. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま私がお伺いする目的は、憲法内容にわたってまでやる時間的な余裕もありませんから、それはしばらくおいて、次の問題をお伺いいたしますが、ちょうど法制局長官も見えておりますので、憲法資料調査室についてこの際お伺いしておきたいと思います。調査会報告書を受けた政府としては、昨年十月法制局憲法資料調査室を設けられて、さらに検討を続けるということになったと思うのでありますが、そこでお伺いするわけですが、どのような検討を今後続けられるのか、また、将来の見通しは一体どうなのか。その受け入れ態勢について具体的に御説明いただきたい。
  25. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) ただいま御指摘のように、憲法調査会報告書が出てまいりまして、政府のほうといたしましては、内閣法制局、われわれのところに憲法資料調査室というのを設けまして、そこであとを引き受けたかっこうでおるわけでございます。  ついでに構成を申し上げますれば、室長たる参事官一名と、事務官二名の三名でございますが、そういう室ができております。その室の所堂事務としましては、憲法調査会の行なった報告並びにその議事録、あるいは関係資料内容整理に関する事項一つ。もう一つは、憲法調査会報告に関する補充調査に必要な資料収集に関する事項、こういうようなことが中心事務のようになっております。その中身についてさらに必要があれば、室長のほうから御説明申し上げます。
  26. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 その施行令を見ますと、憲法調査会報告とか、あるいは議事録それからその他の関係資料、こういう内容整理に関する事項、また、報告に関する補充調査に必要な資料収集に関する事項、こういうことを所掌をすることになっておるようですが、補充調査に必要な資料、文字の意味はわかりますけれども、一体どういうことなのか。こういうことを含めてひとつ具体的にわかりやすく仕事内容を御説明いただきたいと思います。
  27. 大友一郎

    政府委員大友一郎君) お答えいたします。  私、いま憲法調査会事務局長事務代理になっておりますが、本務は、いまお尋ね内閣法制局憲法資料調査室長を命ぜられたものであります。それで長官がおっしゃいました内容をもう少し具体的にというただいまお尋ねでございますので申し上げます。  憲法調査会報告書及び議事録資料整理等でございますが、これは先生も御承知のように、きわめて膨大にのぼるものでございます。そうして憲法論議憲法意見につきましては、これまた御承知のように、改正を要するとし、あるいは要しないとし、あるいは要しないまでも運用改善をはかるべきであるというようにいろいろさまざまなものがあるわけであります。一本になっておるわけではございません。さらに結論的にそういうように多様でございますのみならず、その論拠とするものも種々さまざまのものがあるわけであります。さらにこの調査会報告書といいますものは、憲法改正是非についての意見だけではありません。御承知のように、いろいろな事実調査というのがございます。参考人としておいで願いました憲法運用関係される皆さんの御所見、これがございます。それから制定の事情の諸事実がございます。のみならず、今度は国民憲法に対する考えということで開きました公聴会、それにおきます意見というものもございますわけで、あります。さらに問題を客観的に見るという趣旨におきまして、海外調査を行なったりいたしているわけでありまして、そういうふうに害的にも、要するに、改正議論だけではなくて、憲法をめぐる各般の事実調査をやっている、そういうものが織り込まれて、これが報告書内容をなすわけであります。  そこで調査会といたしましても、順次段階的にしぼってまいりまして、要点々々とやってきたわけでありますが、もう少し要点と申しますか、それを的確につかむ、理解するということが必要じゃなかろうかと思うのでございます。そこでそういう論拠との関連を見まして、ずっと一本になったものをそれぞれの事項問題点ごと整理する必要があるのじゃなかろうか。それから改正の要否の議論と、現実に憲法運用に当たっている人の御意見国民の声、海外学識者意見というものを通して、はっきりとそういうものの比較対照、そういうものも整然とした姿で見られるようにつくるべきじゃなかろうか、こういうことが政令趣旨じゃないかと思います。政令の文言がわれわれの使命でございますが、その進め方といたしましては、いままずその報告書を読む、読んで十分にすっきり必ずしもわかりかねる点がありますれば、議事録にまで戻りまして理解につとめ、そうして形といたしましては、要約、要点がクリアにわかりまして、各委員の御意見というものと、参考人の御所見公聴会における国民の声というものが連関してわかるようなものをわれわれとしては考えたい、こういうことでございます。  それからもう一つ仕事は、補充調査というととでございます。これはまず第一にすぐ考えられますことは、憲法調査会報告書が出まして、これに対する批判、もしくは御意見というものは一体どういうものであろうかというものをまずキャッチして、キャッチしたものを私ども勉強いたしまして、骨子とするものはどういうものであるかということをまず第一になすべきじゃないかと思うのであります。  それから報告書の出ましたのは昨年の七月でございまして、かなりの日は流れているわけでありますが、憲法記念日でありますとか、そういうことをめぐりまして、この調査会報告書が出ましたあとにおいても、憲法につきましての論議というものがあるわけであります。国会の内部においてもあるわけでありますが、それ以外にもあるわけであります。そういう調査会の活動が終わりました以後における憲法論議、こういうものをやはりあとづけしなければならぬ、そうして要点をキャッチしておく、これがやっぱり一番重点的になされるべきことであると思っているわけでございますが、さらに憲法調査会が、論議をやるだけではございませんで、その基礎になります、前提になります制定経過運用の実際等につきまして、世論動向につきまして、いろいろと調査をやったわけでございますが、私のところの室ではいま長官からもお話がありましたように、私を入れましてわずか三名というような程度のものでございますけれども、「ジュリスト」とか「法律時報」だとか、そういう目ぼしいものに出ました運用関係資料でありますとか、それからかりに制定関係でもすべからく事実が出るということでありますれば、そういうものを把握をして整理をする、そういうことが補修的に行なわれる調査であるというふうに考えておるわけでございます。それから、憲法調査会にいろいろな資料等がたくさんあるわけでございますが、これも非常に整然とした姿においてやはり整えたいということでございます。実際の問題としますと、憲法調査会の図書とか、資料とかというようなものは、全部ここに移されているわけでございます。そういうものは憲法調査会なんといいましても、走るに急でございまして、整理というまでには、とても十分だったということには必ずしもいっていない面があるわけでございます。そこで、私の現実の姿と申しますか、それがすなわち室の姿でございますけれども、憲法調査会のそういった資料をきちんとするということにも十分の時間をさかさしていただいておる、こういうような状況でございます。
  28. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御説明によると、室長以外二名ということで計三名のようですが、これも一つの組織でしょうけれども、まあ名前ばかりの組織というような感じを受けるわけなんですね。  そこで、このことについてさらにお伺いしたいのですが、四十年度の予算は一体どのくらい組まれておるのか。これも、さらに恒久的に、今後もこういうことが続けられていくのか。また、将来の計画のようなものが立てられてあるのか。あるとすればどのようなものか、こういうことについてあわせて御説明いただきたいと思います。
  29. 大友一郎

    政府委員大友一郎君) お答えいたします。  まず予算の面の具体的な問題でございますが、申し上げますと、先般可決せられました四十年度予算におきましては、印刷製本費百八十二万、翻訳料二十万五千を計上願っておるのでございます。ただ、これは憲法資料調査室、それだけでそこの仕事にというようなたてまえではございませんで、憲法関係の経費、これはもちろん拾ってみますれば全部憲法関係のことに法制局の予算はなるわけでございますけれども、直接憲法関係するという趣旨でございますから、この印刷製本費百八一二万、翻訳料二十二万が私の室でいわばフリーに、私の考えなりの、そのとおりにいくというものでございません。法制局といたしまして、全般的に憲法仕事をする上において使われるわけでございますので、まあそういうことになっております。  それから今後のことということでございますが、それも最も端的には予算の面にあらわれるかと思うのでありますけれども、これは来年度のことにつきましては、元来、まだ内部的にも相談するというような時点になっておりません。これは大体、先生承知のように、八月のころには一応それぞれの部局ですることになっておりますが、まだそれまでには間もあることでございまするので、何らそういう相談というものを受けるとか、こちらからもするとか、そういう事態にはなっておりません。ただばく然と感じますことは、特別のことはなくて、やはりいま静かに、勉強的に、先ほど申し上げましたような整理というようなことが一応は考えられるのではなかろうかと、そういう気持ちでございます。
  30. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いいたしますが、法制局憲法調査資料室を設置した、そのことについてお伺いしたいと思うのですが、法制局設置法の第三条を見ましても、法制局の所掌としてはたしてこのような問題を取り扱うことができるのかというような疑問の点があると思うのですが、法制局設置法のどの条文によってこの資料室を設置されたのか、こういうことについてひとつ御説明いただきたい。
  31. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 法制局設置法によります所掌事務は、ただいま御指摘のような第三条でございますが、第三条を通覧していただきますとおわかりいただけると思いますが、とにかく広く言いますと、法制一般に関することは内閣法制局が所管しております。そのほか個別の問題としては、法律問題に関して意見を述べるとか、あるいは法律案の審議立案をするとか、いろいろなことが事こまかに書いてある部分がございますが、ともかくも内閣法制局という名が示すように、政府部内における法制局問題となりますと、よその部局ではなくして内閣法制局所堂事務になるというのが、いままでの取り扱いでもございますし、内閣法制局設置法の第三条の趣旨とするところであるというふうに考えております。
  32. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 政府としては、従来からいろいろな杉で憲法改正に対する国民の意思、いわゆる世論をどういうことから把握されてきたのか、こういうことをまずお伺いしたいと思います。
  33. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) これはいろいろ日常の行動等によってもつかむことができますが、また世論調査によって把握されていることだと思います。そういう面の調査というのは、心ずしも内閣法制局がやっておるわけでございませんが、われわれのほうでやっておりますことば、ただいま詳細にわたって御報告をいたしましたように、目下大ざっぱに言えば、憲法調査会の出されました報告書の勉強である、要するに整理と、それから補修調査であるというようなことでございます。
  34. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この憲法改正問題に対する世論調査については、従来総理府が行なってきたと思うのです、いわゆる世論調査ということで。そこでこのことでお伺いしたいのですが、今日まで一体何回くらい実施されてきたのか、その実施の時期は大体いつやったのか、また、どういう方法で調査されたのか、こういうことで、そうして調査の結果それぞれの場合がみな違うと思いますが、それぞれの結果は一体どういうことであったか、こういうようなことをあわせてひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  35. 竹下登

    政府委員竹下登君) これは総理府の広報室がこの問題のみならずすべての世論世論調査等をやっておりますが、いま私ども知っておる限りにいたしますならば、年一回八月ということで動向調査というものをやった、このように聞いております。なお、詳しい点については、総理府の担当者をお呼びいたしてお答えさしたほうがよかろうかと思うのですが。
  36. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  37. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 速記をつけてください。
  38. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それではその回答は、担当者がお見えになってからでけっこうです。  そこでお伺いしたいわけですが、憲法改正に対する世論調査の具体的なことについては後ほどお伺いいたしますが、この世論調査をもって国民憲法意識を把握しようとなさっておるのか。世論調査をされるからには何か目的がなけりゃならぬわけですが、憲法改正に対する世論調査をして、これが国民の声である、国民の意識であると、そういうふうに把握しようとしておられたのか、そうではないのか、こういうことを明らかにしていただきたい。
  39. 竹下登

    政府委員竹下登君) 憲法調査会報告書がすでに出た今日におきまして、内閣としては、そういう池田内閣当時とワンステップ、そういう報告書の出たという事実そのものがある限りにおいて、動向調査等は一そう注意深くこれを行なわなければならない、そういう考え方で、動向調査等を行なっておりますが、もとよりこの動向調査だけが、国民的次元でこれをとらえようとする憲法問題のすべての要素になるんではなくて、ほんのその要素の一部分であると、このような理解のしかたでおります。ただし、いまの問題につきまして、総理府の広報室でいままで実際にやってきたことなどを御答弁申し上げますならば、一そうそのものが、すべてそれにたよる大きな要件たらしめるというものではないということを御理解いただけるのではないかと、かように考えております。
  40. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 世論調査については今後も引き続いて行なおうとする計画であるのかどうかということ、この点はいかがですか。
  41. 竹下登

    政府委員竹下登君) 本年度の予算の中には、行なうという予算が計上されて、先般両院を通過させていただいたのでございますが、来年どうするかということについては、いまはっきりした方針は決定いたしておりません。
  42. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 従来は総理府の広報室で扱ってきたということですが、今度設けられた憲法資料調査室ですね、この調査室と何らかの形でこれに関係してくるわけですか。全然関係ないのか、世論調査については。この点を明らかにしていただきたい。
  43. 大友一郎

    政府委員大友一郎君) お答えいたします。  これは憲法調査会の問題としても申し上げていきたいと思いますが、憲法調査会世論調査総理府の広報室がやるわけでございます、主体は。ただ、あすこがやります場合の内容によりまして、その属するところに相談をするわけでございます。そういう意味合いにおきまして、憲法調査会の当時、私、事務局におりましたわけでございますが、ずっと相談を受けて、たとえばどういうポイントでやろうかといいます場合に、憲法調査会ではこういう点が参考人によって指摘されております、もしくは委員意見の間に焦点となっておりますと、こういうことを申し上げてまいりました。それから現在の憲法資料調査室になりましてからは、特に正規のということでもないわけでございます。けれども、いままでのこともございまして、来年はこういうことをしたいと思っているというようなお話は伺ったり、そういうことはしています。それで、あちらとしましては——ここまでは申し上げなくてあるいはいいんじゃないかと思いますけれども——いままでのことで内容的なことは、ちょっと気がつくことを言ってくれというような意味において、あるいは来るのじゃなかろうかということだろうと思います。
  44. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に問題を変えまして、五月三日は、御承知のように憲法の記念日ですが、その憲法記念日政府は、智頭をとって国民の祝日として記念行事を行なわなくなってからすでに久しいと思うのですが、この記念行事を行なわなくなったには何か理由がなければならぬと思うのですが、行なわなくなった理由は一体那辺にあるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  45. 竹下登

    政府委員竹下登君) これも、国民祝日に関する点は総理府の所管でございますけれども、私この点について調査、認識をいたしておりますことは、国民の祝日のことごとくを国家的行事として祝うということは今日ないわけであります。そこで、憲法につきましては五ヵ年ということでやってまいりまして、やはりこの辺で他の国民祝日と同じような扱いにしてはよくはないかということで、これが国家的行事が行なわれないようになったというふうに私は理解をしております。
  46. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そのことは引き続いてお伺いする中でただしたいと思うのですが、そこで諸外国の例をひとつ教えていただきたいと思うのですが、かような国民的な祝日を持っておりながら、記念行事として政府が実施しない、こういうような国があるのかないのか、もしあるとすればどういう国か、こういうことを明らかにしていただきたいと思います。
  47. 竹下登

    政府委員竹下登君) その点につきましては、いまお答えする準備をいたしておりません。所管は内閣審議室であろうと思いますので、後刻、審議室のほうへ調査をさせましてお答えさしていただきたいと思います。
  48. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまお伺いしたことについては、私たちの立場からして、政府に対しては反省を求めてきておるわけです、国民の祝祭日として五月三日、憲法記念日の記念行事をやるべきだという立場から。ところが、いま御指摘のとおりに、最初五年間やったのだけれども、もうそろそろこの辺でやめて、他の祝日について考えるのだと、こういう意味の御答弁があったのですけれども、こういうところに問題があるのではなかろうかと思うのですが、いわゆる、政府としての現行憲法に対する感覚といいますか、考え方、そういうところに問題があるわけです。われわれとしては、もう五月三日、憲法記念日には記念行事をやるベきだという立場からお伺いしておるわけですが、そこで、いま官房長官がお見えにならぬので、われわれとしては、憲法記念日の記念行事をやらぬことに遺憾の意を表しているわけです。そういう立場からお伺いしておるわけなんですが、先ほどの御答弁ではどうも納得できないわけです。それとした深い根拠もないようで、ただずるずるにやらなくなったという意味合いであったわけですね。
  49. 竹下登

    政府委員竹下登君) 私のお答えする範囲の外にあるような感じがいたしまして、非常に慎重にかつあまり責任を持たないお答えをいたしたかの感じが私自身もいたすのでありますが、先生方から国家的行事を行なうべきであるという御要請のあるということは私も承知をいたしております。ただ、先ほど申し上げましたごとく、国民の祝日ことごとくが国家的行事をもって祝われていないということからして、ずるずるとでも申しましょうか、五、六年目からそのほうへ右へならえした、こういう、ふうな私は理解のしかたで御答弁を申し上げたのでありますが、元来からいえば総理府の所管と思いますので、以上のような御答弁で御満足がいただけない感じを抱きながら私も答弁を申し上げた次第であります。
  50. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 国の祝日が多いというので、その祝日に対して国がことごとく記念行事をやることはできないということのようですけれども、憲法はこれは違うと思うのです。国の最高法規であって、これはまあ明らかにわれわれはどこまで尊重の態度をとってこなければならぬわけですね。試みに九十九条を見ても「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と明確になっているわけです。で、先ほども申し上げたように、国の最高法規である憲法、この憲法記念日国民の祝日として記念行事を政府は無視しておる。無税しておるから実施しないのではないか。このことは「憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」という、こういう九十九条の精神にもどうも参照して問題があるのではなかろうか、こういうふうに考えられるわけですね。この点はいかがですか。
  51. 竹下登

    政府委員竹下登君) 九十九条につきましては、私も先生と同意見でありますが、それがゆえに国家的行事を行なわなければならないと、これは非常にへ理屈になりますけれども、そういうものを制約するものではなかろうと思います。ただ、精神的な意味において、先生のおっしゃいますことは私自身理解できるところであります。ただ、再三申し上げるようですが、この点については所管外でございますので、明確なお答えを私の責任においてなすことは困難だと思います。
  52. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 繰り返しお伺いしておるように、「憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」ということはもう明確になっておる。そういう前提に立つならば、この憲法発布の記念日に記念行事を中心憲法趣旨徹底をはかる絶好の機会だと思うのです、この記念行事を行なってですよ。もちろん年に一回の記念行事だけ、で憲法趣旨徹底はできないわけですけれども、国の最高法規であって、何ものにも優先して考えられる国の大本であるこの趣旨の徹底をはかることは大事なことだと思うのですね。もうこの憲法を否定すれば別ですけれども、この憲法を尊重し擁護する義務を負っておるわけです。現実にもうわれわれはそういう義務を負わされておるわけです。そういう前提に立つならば、この憲法趣旨徹底をはかることは必要だと思うのですね。必要だとすると、年間これの趣旨徹底をはかることが必要であろうけれども、特にその記念日に記念行事としてやることはふさわしいと思うのです。こういうたてまえから、われわれが従来から憲法記念日に記念行事をやるべきだということを強く要請して今日に及んでおるわけです。しかし、政府はいつの間にかこれを行なわなくなってしまったわけですね。一顧も顧みない。これが現状であろうと思うのです。この点について、政府としてはどのようにお考えなのか。
  53. 竹下登

    政府委員竹下登君) 少しく伊藤先生の御質問に対して、いまの私の立場から明確な責任あるお答えをするにはふさわしくないような感じがいたしますので、この問題につきましては、私がいわゆる国民の祝日、これに伴う国家的行事は総理府総務長官の所管であるという御答弁を申し上げましたが、再三の御質問によって、いわば憲法擁護の姿勢、政治姿勢の問題についてお答えをするほうが適当であるというような、私もお聞きしながら感じがいたしました。先生のおっしゃる御趣旨は大いに私自身尊重しなければならないと、このように考えます。が、今日私が先生の御質問に対して、それならばかくかくしかじかでやりますということをお答えすることは無理ではなかろうか。このように感じております。
  54. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これは立場がありますから、腹の中でそう思っておってもなかなか答弁としては言えないこともあろうと思うのです。その一つの例であろうと思うのですがね。結局現行憲法は何とか近い将来、改正しようと政府考えておるわけで、そういう理念が頭にありますから、そこでこれを改正しようというやさきに現行憲法趣旨徹底を、記念日を中心に記念行事によって徹底させるということについては、これは、政府としての立場からですよ、政府としての立場から考えるとちょっとまずいわけですね。改正、ということを全然考えていなければ、憲法記念日に記念行事を盛大にやって、現行憲法趣旨徹底をはかるでありましょうけれども、現行憲法を何とか改正しようという、そういうねらいがあるから、どうも記念行事も、これを盛大に盛り上げるという意欲は出てこないと、こういうことであろうと思うのです、心中は。そうではないかと言えば、政府の立場としては、いや、そういうことはございませんとお答えになるだろうと思いますけれども、ほんとうの真意はそうであろうと思うのです。  そこで、このことを引き続いてお尋ねしても、そういう御答弁得られぬと思いますので、それはその問題としてしばらくおいて、次の問題をお伺いしたいと思うのですが、そこで次にお伺いしたいのは、参議院の選挙がいま近づいておるわけですが、これと憲法改正の問題について一点だけお伺いしておきたいと思うのですが、新聞報道によりますと、五月三日自民党の参議院候補予定者のいわゆる激励会が新宿の文化公館で開かれたと報道されておるわけですが、その席上、佐藤総理が、改憲問題についてこういうことを言われておる。イデオロギーにとらわれないで自由意思によってわれわれの憲法をつくるべき時期にきてもよいと考える。こういう意味所見が述べられたというふうに聞いておるわけです。このことについての官房長官としての御見解はいかがですか。
  55. 竹下登

    政府委員竹下登君) 私も、新宿文化会館でわが党の某公認候補者の、立候補予定者とでも申しましょうか、の方の激励会に総理が参りまして、その席上においてただい京先生から御朗読がありましたような趣旨の演説がなされたと新聞紙上で拝見をいたしたのであります。このことが私はかねてから総理が申しておりますように、いわゆる憲法調査会というものが七年間にわたって種々検討を加え、そのまとまった結論ではもとよりございませんが、各氏の意見が、報告書の形において政府並びに国会に提出されたということは、憲法調査会において討議がなされておる時点よりもそれだけ憲法問題そのものがワン・ステップ踏み出した、こういうふうな認識、そういうもののとらえ方によりまして、今日国民の皆さん方の動向をつかむということに一そうの努力をしなければならないということをかねて申しておるのでありますが、そういうものの進んできたぐあいからして、国民動向をつかむ努力をしておる今日の時点において、その以前の状態よりも近づいてきたと、こういう理解で言ったというふうに、きょう実はこちらに参りますときに、新聞紙上に出ておりましたので、そういう質問があるであろうということで、一応の見解を統一してまいりましたので、そういうふうに御了解願いたいと思います。
  56. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いいたしますが、日本の憲法は、太平洋戦争による二百数十万の尊い生命の犠牲と、また、諸種の事情から生まれてきたわけですけれども、民主主義とか絶対平和主義、人権主義、この三つの大きな特色を持っておることは、ここで繰り返すまでもないわけですが、そこでわれわれとしてはこの三つの特色を守り通す、そのことこそが私どもが全世界に約束した平和国家、文化国家としての日本を建設する絶対的な条件ではなかろうかと思うんですが、この点に関する基本的なお考えはいかがですか。
  57. 竹下登

    政府委員竹下登君) その平和主義民主主義、人権尊重、この三本の柱は、その制定経過からいたしましてももとよりのことでございますが、それ以上にすでに今日国民の血となり肉となっておる、それがゆえにこれはどうしても堅持すべきものであるという考え方には変わりございまません。
  58. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまお答えになったそのとおりならあまり問題ないと思うんですが、昨年七月、憲法調査会報告書を出したというこの内容を見ますと、どうも違憲の現実に憲法を合わせようとしておるように思うんですが、あくまでやはり基本たる憲法に政治を合わせるということが基本的には考えられなければならない、こういうことになろうと思いますが、この点はまあ非常に政治のあり方についての基本的な問題ですが、政府としてはどのようにお考えですか。
  59. 竹下登

    政府委員竹下登君) ちょっと先生の御質問趣旨がとっさの場合理解できなかったのでありますが、違憲の現実に対して、憲法の上で、憲法改正してこれに合わせていくとか、解釈上で合わしていくとかいうのが今日の政治の姿になっておるのではないかという御質問のように私は理解をいたすのでありますが、さあ今日まで——今日までと申しますか、私どもといたしましても、実はこの憲法につきましては、総理はじめ関係者数度となく議論を積み重ねております。そして、ひとつこの機会に訂正させていただきますが、自民党憲法調査会としての統一意見というふうに先ほど申しましたが、これは調査会の会長、副会長という方々との意見交換である、こういうふうにこの際訂正をさせていただくのでありますが、いずれにいたしましても、三原則国民の血となり肉となっておる今日、これらのものを擁護するということは絶対的なものであり、そうして今日いろいろな点における違憲性に合わせていくというよりも、憲法自体が、調査会報告書が出て、これから国民の皆さま方に、法制局の中の調査室において問題点を整理して、あるいはこいねがわくは国会調査会、そういうものを設けていただいて、逐次国民の皆さま方の御理解をいただいた上で、国内的にも国際的にも不都合なものがあれば、これを問題点として国民的次元で解決しようということでありまして、便宜的に違憲性のものを合憲たらしめるための改正を企図しておる、このような基本的態度ではないということが明らかに、言えると思います。
  60. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この憲法調査会の審議の経過をよく調べてみると、私どもとしては大体三つに分けて考えられると思うのです。その第一は、まあ表面は改憲、不要論であって、この方々は非常に少ない数であったわけです。多少人によってニュアンスが違うのですけれども。基本的には現行憲法の拡大解釈、こういうことでは共通になっているようです。いわゆる現行憲法の拡大解釈論ですね。これで表面は改正不要論ということになるわけですけれども、しかし、その形を最も極端に推し進めたのが高柳会長さんの意見であったと思うのですが、たとえば核兵器の保持とか海外派兵も、これは拡大解釈すればできる、そういうものであったわけです。だからこれは、実質的には私どもから見れば、もうりっぱな改憲論である、そう指摘せざるを得ないわけです。このことは歴代の保守党内閣が一貫してとってきたいわゆる憲法空洞化の方針を将来に向かって延長さしたものである、そういうふうに私どもの立場として考えているわけです。このことに対するひとつ副長官としてのお考えはいかがか。
  61. 竹下登

    政府委員竹下登君) 高柳先生の改憲不要論とでも申しましょうか、これが私自身もその点につきまして、いわゆる現行憲法の拡大解釈——率直に申しまして拡大解釈とでも申しましょうか、広い時点からとらえた解釈をすれば、すべての問題は現行憲法で間に合うというような考え方であるやに私自身も感じているのでありますが、今日まで政府といたしましてとってきた態度というものは、その中に私は、私の体験を通じてもたとえば——たとえばの話でございますが、憲法八十九条であろうかと思いますけれども、公の支配に属しない宗教、教育等に公金を支出してはならないという規定がございます。しかしながら、その教育そのものには出してはいけないが、教育の事業ならば、それと範囲がはずれてくるという非常に専門的な理解の上に立った解釈によって、社会教育法第十三条ですか、等が改正されたことを私も経験をいたしておりますが、憲法の解釈——これはまあ私よりも法制樹長官がお答えになるのが当然であろうかと思いますけれども、今日まで一貫して拡大解釈の方向でこれに対処してきたというのが、政府の姿勢であるというおことばはいただけないではないか。それぞれの点についてそのつど法制局等と検対して、広い時点からこれが明瞭なる解釈をして当てはめておる、このように理解をしていただきたいものだというふうに考えます。
  62. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) ただいま竹下長官がおっしゃいましたのと同じ結論であることは申すまでもないわけでございますが、ただいまお話しのように、何か拡大解釈を政府がしておると、はっきりおっしゃったわけではございませんが、われわれの内閣法制局——これはかなり伝統のある役所でございますが、これが審議立案の経過につきましても、いろんな法律をいじるにつきましても、かなり厳格な態度でやっております。むろん人によっては、それは拡大解釈じゃないかとおっしゃる方もあるかもしれませんが、またある人によっては、もう少し勇ましくてもいいんじゃないかという議論もあるぐらいでございますけれども、私どもとしては、私どもだけが憲法の番人だとは思いませんが、やはりそういう点については十分の意を尽くしてやっておるつもりでございます。  それから憲法調査会意見につきまして、その中の細別のいろいろな方々の御意見、これはいろんな批評がございましょうが、とにもかくにも、やはり国民の方々の一つ考えのあらわれだと見て、われわれは同じようにそれは価値ある考え方として見ていかなければならぬと思っております。憲法調査会報告書は、御承知のとおりに、憲法調査会として一つ結論を出すというようなことではなくて、やはりいまの憲法でよろしいという人の意見、あるいは憲法はある程度改正しなければいかぬという意見、そういうのがいろいろ出ておる、公平に出ておると言ってもいいんじゃないかと思いますが、そういうわけで、特に、とにかくも憲法調査会意見がこうであるというようになっておるわけではございませんので、われわれは憲法調査会報告書につきまして、なお多くの勉強をいたしたいと思っておりますが、さしあたり、政府憲法解釈というものが、いかにも拡大解釈に堕しておる、堕し過ぎておるというようなことにつきましては、一言弁明さしていただきたいと思います。
  63. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 四十七名の方がいわゆる共同意見書を出しておられますが、その改憲論を一言にして要約してみると、これは福祉国家によってどうもカムフラージュしているというふうに解せられる向きがあるわけです。そこで、この四十七人の共同意見書というものが、今後政府の改憲論の中心になっていくのではなかろうか、私どもとしてはそう考えておるわけなんですが、あと一つ意見を後ほど申し上げるとして、どこまでもこの四十七人の共同意見書が、どうもわれわれの見るところ、政府の改憲論の中心意見になろう、こういうふうに私どもの立場から考えておるわけですけれども、政府としては一体どのようにお考えか、御見解を承っておきたいと思うわけです。
  64. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 憲法調査会でいま御指摘の共同意見書がどういう経過をたどって出ることになったかということの詳細は、私自身よく存じませんが、いずれにしましても、共同意見書改正論を述べる意味において提出されたというかっこうになっておりますが、むろん反対の立場の委員からも同様なものが提出されれば、当時の憲法調査会としては、おそらく同じような取り扱いをしたものだと思いますが、調査会報告書としては、改憲論者の共同意見なるものを特に重点を置いて報告しているものではないように私承知しております。ところで、政府のほうはどうかということでございますが、政府のほうは毎々申し上げておりましたように、とにもかくにも憲法改正という問題はまさに国民がする仕事でございまして、国民の意思に従って改正をするかしないかというのが決定されるわけでございますので、直ちに政府が、たまたまあります改憲論、それがあたかも政府見解であるというような受け取り方をするということには、これは相ならぬわけでありまして、やはり政府といたしましては、報告書を参考にするということはもちろんありましょうが、それ以上に出て、それがすなわち政府意見であるというふうに直ちにここで申し上げるようなものでないことば、これは申すまでもないことでございます。
  65. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最近政府自民党の間で盛んに福祉国家ということばが出てくるわけですけれども、福祉国家ということを盛んに強調されておるわけです。そこで、考え方を、この際関連がございますから——特に四十七人の共同意見書の方々は、この福祉国家ということを盛んに表面に——私どもから見ると、表面は福祉国家に重点を置くかのごとく見えるわけです。  そこで、福祉国家についてお伺いするわけですが、これは資本主義制度、を前提として、そのワクの中で働く人々の生活水準を高めていく、社公保障を行きわたらせる、そういう考え方ではなかろうかと思うのですが、この点はいかがですか。官房長官としてはどういう意味に……。
  66. 竹下登

    政府委員竹下登君) いま憲法調査会報告書の中にあらわれましたいわゆる福祉国家の概念、それの意見の中にあらわれた福祉国家の概念についてのとらえ力については、法制局長官から御答弁いただくのが適切かと思うのでありますが、ただいま、政府として、福祉国家とは何ぞやというお尋ねだと理解するわけでありますが、これは先生のおっしゃったいわゆる資本主義、自由主義経済理念の基盤の上に立って勤労をするものに、それぞれ社会保障等万般に行きわたらしていくべきものが福祉国家の概念である、その概念に私は全く間違いはないと思います。ただ福祉国家というもののとらえ方につきまして、実はこれを議論をしたところでございますから、私ども記憶しておるのでありますけれども、勤労意欲ある国民が能力、適性に応じて働くところがあり、そして勤労意欲がありながらも働き得ない数々の障害に対しては、国家保障も行なっていくという、いうならば完全雇用の精神と社会保障の精神とを組み合わせたところに福祉国家の理論というものを抽出していくのが最も理解がしやすいではなかろうか、このような議論をいたしておることを、お答えといたしておきます。
  67. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最近、経済の高度成長という政策を推し進められてきて、確かに日本の経済は大きく発展してきたわけですけれども、ここで注意しなければならぬことは、その逆に貧富の格差がますます広がってきた、そういうことも見のがすことができないと思うのです。この格差があまりにもひどく開いてきたので、国民の間に非常にふんまんが高まってきた。政府としてもこれをほっておくわけにもいかないので、そこで格差を縮めるための政策を表面打ち出してきたわけです。それが福祉国家ということではなかろうかと——これはちょっとまだ後ほどの御質問であわせてお考えいただくと御理解いただけると思うわけですが、質問意味はわかっていただけるわけですが、ところが、現行憲法というのは、大体この精神からいって、いわゆる貧富の差のない明るい社会を建設するというのが現行憲法の目標であるわけですね。ところが、この現行憲法改正してしまおうとする政府なり政党が、この憲法改正する。明るい方向に向きつつある、貧富の差をなくすことを目標にしている現行憲法を変えてしまったら、貧富の格差はなくならないのではないか、こういう議論が成り立つと思うのです。その点に関する政府としての見解はいかがですか。
  68. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) ただいま伊藤先生のおっしゃいますように、憲法の歴史をながめてみますと、確かに十九世紀的憲法と二十世紀的憲法とは非常に違っておる。それは何が一番違っておるかというと、やはり憲法の中に社会権といいますか、そういうもの、か非常に大きく取り上げられてきておる。これはその最初の典型は例のワイマール憲法だと思いますが、そういう意味で、この現行憲法もまたそういう面にかなりな大きな比重を持っておる。先ほど福祉という話がございまして、副長官等からの御説明もございましたが、端的には二十五条あるいは勤労の権利義務というようなところにあらわれておりますが、そういう問題はちょうど先ほど副長官の仰せになりましたいわゆる基本的人権、社会権、自由権、発言権といいますか、そういうものに並ぶ一つのものとして社会権というものがありますが、そういうものについてはやはり平和主義なり民主主義なりというものと相並んでこれを尊重していくということは申すまでもないのだというお話がございましたが、そういう事柄が憲法改正の対象としてむしろ逆行していくというようなことはあり得ないことだと私は考えるわけでございます。したがって、いま御懸念になりますような事態というものは、御懸念には及ばないというふうに私自身考えるわけでございます。
  69. 柴田栄

    委員長柴田栄君) ただいま三井広報室長出席いたしましたので、先ほどの憲法問題に関する世論調査についての質疑に対する説明を聴取いたします。
  70. 竹下登

    政府委員竹下登君) 先ほど伊藤先生からの御質問で、国民的な祝日に政府が何もしないという外国の例についての調査、これは今日ただいまの調査を命じたのでありますが、内閣審議室には現在その調べたものはないようでございますが、外務省儀典長室で在外公館からぼつぼつ資料を集めているところで、現在まとまったものはないということを言ってまいりましたので、あしからず御了承いただきたいと思います。
  71. 三井芳文

    説明員(三井芳文君) 憲法に関する世論調査について御説明申し上げます。  憲法世論調査は、動向調査として三十一年からすでに九回実施しておりまして、三十一年については二回行ないました。  その内容といたしましては、憲法に対する一般国民の認識、それから憲法内容における問題として天皇の問題、防衛の問題、基本的人権と公共の福祉の問題、家族制度の問題、その他制度上の問題、最後に憲法改正の賛否について調査をしたということでございまして、四十年はいま集計中でございまして、まだまとまっておりませんから、結局三十一年から現在でき上がっているものは全部で九回でございますが、その内容はただいま申し上げたような範囲になっておりますから、内容のこまかい点について拠出の専門参事官が来ておりますから御説明申し上げさせたいと思います。
  72. 八段麒一郎

    説明員(八段麒一郎君) 九回にわたって調査をいたしたわけでございますが、それぞれの時点におきまして憲法問題の取り上げられる取り上げ方が非常に違っている、そういうこともございまして、ほぼ同じ問題について調査をいたしてまいりましたのでございますけれども、質問のしかたが大体三回変わっておりますので、特に全体を通じて三十一年の調査と同じ質問をして三十八年はどういうふうに変わったかと、そういうようなふうに御説明ができないようになっております。  比較的その間に変わりましたものとしては、防衛問題につきまして、自衛隊というものを肯定できないというような方が多かった。比較的相当数あったのでありますが、それはかなり減少してきた。それから象徴としての天皇を認めるのが大多数になってきた。しいていえばそのような点が一応変化をしてきたものとして調査にあらわれておるという点であろうかと思います。  それから憲法改正の賛否ということでございますが、これは非常に幅広く多くの人回答できるように聞きますと、大体四割くらいが意見を述べます。それから少ししぼって聞きままと二割台が意見を述べます。それで憲法改正の賛否についてはほぼ同じくらいの割合で、二割と二割、一割と一割が賛成、反対という意向を漏らしておると、そういう事態でございます。
  73. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで、先ほどお伺いした福祉国家についてあと一、二点お伺いいたしますが、この福祉国家を持ち出すにはいろいろ根拠があろうかと私どもとしては考えておるわけです。  その一つとしては、たとえば第九条をまっこうから取り上げて、あるいは海外派兵とかあるいは核武装、こういうようなことをあまりはっきりした意図を表面からふりかざすと、どうも国民の抵抗が強くなるであろう、こういうことを顧慮して、そこでなるべく福祉国家というような当たりのやわらかいものを表面に出して、そうして憲法改正をやりやすくする方向に持っていこう、こういう意図があるのではなかろうかとわれわれとしては考えておるわけなんです。その証拠に、共同意見書、先ほどお伺いした四十七人の共同意見書はこの福祉国家ということを表面に出しておられるわけですね。しかしながら、実際にはそういうやわらかい福祉国家というようなものを表面には出しておりますけれども、内容については憲法第九条の点についての改正の意図が十分具体的に出てきておるわけですね。こういうふうにわれわれの立場としては見ておるわけなんです。このことに対する官房長官のお考えはいかがですか。
  74. 竹下登

    政府委員竹下登君) 私も政治家の端くれの一人でありますが、私自身自由民主党に籍を置いて、そして政治家として政策なり、また、国民自体に対処していったとき、わが国のあるべき理想像というものは福祉国家をおいてほかにないというふうな強い信念を持っております。私のみならず、わが党も、また佐藤内閣も基本的に高度福祉国家の建設ということを掲げておりまして、この福祉国家という、はだざわりの、あるいは耳ざわりのいいことばをもってそでの下のよろいを隠しておるというような御批判は、いただけない御批判であろうと思います。ただ、四十七人の共同意見書の中にあらわれておる福祉国家という問題につきましては、法制局長官のほうからお答えするのが適当であろうと思いますので、そのほうへ答弁を譲らしていただきます。
  75. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 福祉国家ということを強調することによって、憲法改正を何となしにその裏では考えているのではないかというふうなことでございますが、これはちょっとどういう関係があるか、ちょっと私どもここで考えてもすぐ出てまいりませんが、いずれにしましても、先ほども触れましたように、現行憲法そのもの、もっと深く言えば民主主義というものを政治の指針としておるところでは、福祉国家というものはその一つのあらわれといたしまして、これはむしろ当然のことだろうと思うわけです。むろん、そうは言いましても、現内閣が特にその憲法のその面を取り上げて、そこを拡充整備していこうというのを政策の第一に取り上げていっておるということは、むろん大いに意味があると思うわけでございますが、私はやはり憲法がそういう精神を持っているので、現内閣が特にその精神を取り上げて、実際の面においてもその福祉の充実といいますか、そういう方面に政治の主眼点を置いていこうというのは、これはもともと憲法趣旨に即した、また、現内閣としては最も力を注ぐ政策として掲げていること、そのことはそのままにお受け取いただいていいのじゃないか。それが憲法改正問題とどうして出てくるのか、いろいろ想像すれば出てまいるかもしれませんが、これはもう率直にお受け取りいただいていいのじゃないか。私ははなはだかってなことを申し上げて恐縮ですが、そういうふうに率直に、すなおにといいますか、考えますと、そうじゃないかというような気がいたします。
  76. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この四十七人の共同意見書に出された方々の意見をいろいろしぼってみると、やはり言論とか結社、あるいは集会、こういう自由ですね、いわゆるいうところの基本的人権、これをただそのまままつ正面から制限するのではなくして、公共の福祉ということを強調しながら、こういう基本的人権を制約していこう、こういう意見が四十七人の共同意見書内容を一覧してみるとそういう感じが抱かれるわけです。このことについては官房長官としてはどのようにお考えですか。
  77. 竹下登

    政府委員竹下登君) これはいわゆる現行憲法の確立した基本的人間尊重原則はかたくこれを維持すべきものであると考えますが、しかしながら、この現状において、基本的人権のあり方が個人の権利自由を尊重するに急なあまり、その義務と責任を軽視しているきらいがある。そういうことで、福祉国家というものが社会連帯の理念に立つべきものである限りにおいて、いわゆる公共の福祉という点からこれらを見直すべきではなかろうか、その基本的人権の限界というものを明示すべきものではなかろうかというふうな意見があると私も記憶いたしております。が、それそのものは基本的に人権尊重の基本的な考え方を貫くという限りにおいて、そういう前提の上に立った場合、そうした意見そのものは、私は今後大いに参考とすべきものではあるというふうな認識をいたしております。
  78. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 たとえば日本で国家公務員——地方公務員もそうですが、それから公共企業体の職員ですね、これはいわゆる公務員法などによって、いわゆる公共の福祉の名のもとにストライキ権が奪われておるわけですね。これがまあ現実の姿だ。これはさっそく先般のILOでも非常に問題となっておるところだと思うのです。そこで、福祉国家論者も、実はこの状態をいわゆる重要な産業全部に対して推し広げていこうとするのではなかろうか。このいわゆる公共の福祉ということを表面に立てて、たとえば公務員とか、公企体の職員、そういうものはストライキなどの権利を奪われておる、こういう姿を、公共の福祉ということを押し立てながら、特に重要な産業全般にわたったこういう方向を推し広げようとしておる意図が、この四十七人の共同意見書内容を見てみると、そういう感を抱くわけです。こういうことは、これは官房長官がそういうことを考えておるということでなくして、四十七人の共同意見書論議の中には、そういうことが察知できるわけなんです。この点に対してはどのように政府としてはお考えなのか。
  79. 竹下登

    政府委員竹下登君) いわゆる労働基本権——私の理解いたしておりますのは、団結権、団交権、争議権というふうに理解いたしておりますが、これが公企体ないし公務員等に、これらの権利が、今日それぞれ公共の福祉というたてまえから制限されておることは先生承知のとおりであります。で、これらの問題につきまして、先般のILO案件通過の際のいわば修正の内容におきまして、それらの問題が、将来公務員制度審議会等の場において、労働基本権の問題が議題として論議されるということは、国会の場においても、また、私どもの先般ドライヤー提案に基づく定期的会合の準備金の際にも、相互の意思の統一をはかっておるところであります。が、それはあくまでも今日の時点における私どもの考えでありまして、四十七人の方の共同意見書の中で、私は公共福祉の名のもとに基本的人権が不当に制限されるおそれがある、また、正当な理由による基本的人権の制限が、その基本的人権の限界を示す、何と申しましょうか、基本的人権が公共の福祉というものに制限される。逆にまた基本的人権を尊重のあまり、公共の福祉というものの、権利の乱用からして義務等が顧みられないというような点がその意見書の中にあらわれて、基本的人権の限界を明確、適正に規定する必要がある。その趣旨意見があったように記憶いたしておりますが、これそのものが、すべて先生のいまおっしゃったいわゆる労働基本権、なかんずく団交権、争議権等々、公企体、公務員、そういうものをいわば押えつけていくための隠れみのであるというふうな理解のしかたは私どももいたしておりませんし、また、今日ILO案件通過の際を通じての私どもの基本的な考え方からいたしましても、そういうものの考え方はないということは御理解をいただけるものである、このように考えております。
  80. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 戦前の日本とか、ヒトラーのドイツ、あるいはムッソリーニのイタリア、こういうところで労働者のいわゆるストライキ権とか、基本的人権が極端に抑圧されておったのです。これは表面は公共福祉の名のもとにこういう権利が抑えられてきたことは、これは現実だと思う。これとを思い合わせて考える場合に、福祉国家論者が何を一体ねらっておるのか。先ほどの四十七人の共同意見書、この中に流れておるものは、公共福祉ということを表面に押し立てて、そうして結局こういう基本的人権を制約していく、そういう論議が主要な部分を相来占めておると思う、この意見書を見ると。こういう点についてはどのようにお考えですか。
  81. 竹下登

    政府委員竹下登君) 私は先ほども申し上げましたが、基本的人権が公共の福祉の名において不当に制限されることをむしろおそれるという立場、いま一つは、ただいま元生のおっしゃった考え方を、少しく先生考え方のようなことを援用さしていただきますならば、公共の福祉による制約に該当しないとしてみだりに権利を主張する。そういう両面からとらえた意見書の、基本的人権の限界を明確適正に規定する必要があるというふうな意見書内容である。かように私どもは理解しておりますので、先生のおっしゃいます公共の福祉の名において不当なる弾圧を加えるという意味よりも、むしろ公共の福祉の名において不当に制限されることがないようにという立場からも、明確適切な規定をすべきではないか、こういう意見であると私は理解をいたしております。
  82. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほどの憲法調査会の審議の経過を見て、大体私どもの立場からは三つに分けて考えられる。一つはいわゆる拡大解釈論であり、高柳会長を中心にしたもので、しかし、これは実質的には拡大解釈論でなくして、いわゆる改憲論の一種であるという点。それからいまお伺いしておる福祉国家を表面に押し立てた四一七人の方々の共同意見書、そこで第三の意見として考えられるのは、これは最も極端な改憲論といわれている意見の方々が多いわけです。たとえば現行憲法は無効であるとか、あるいは天皇主権説を強調している、こういうとほうもない議論が百出しているわけですがこの方々の論議に対しては、伝え聞くところによると、高柳会長も非常にこれはあきれたと言われるような表現をしているわけです。そこでたとえばいま意見が出たように現行憲法は無効であるというようなきめつけ方をすることは、現行憲法が現存している時点においてこれは問題ではないか、そういうふうに考えられるわけです。この点に対しては、官房長官としてはどのようにお考えになるか。
  83. 竹下登

    政府委員竹下登君) いわゆる現行憲法無効論というものを真正面から主張された御意見はないと私承っております。ただそういう意見もあるのでという前提においての意見が出ているということで、いわゆる無効論そのものは一人もないというふうに承っております。またそういうものはあるべきでないと私どもも考えております。
  84. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そういうことならいいわけですけれども、われわれの聞くところによると、また、どうもそういう点に疑問を持たざるを得ないわけです。もしそういうことになると、先ほども対照して申し上げたので、あえてここでこまかくは申し上げませんが、憲法九十八条で、結局問題がこの九十八条と照らした場合、現行憲法は無効であるというようなことになると非常に問題をかもすのじゃないか、そういうことが絶対にないのだということになれば話は別ですが、この点を明らかにしていただきたいのです。
  85. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 現行憲法無効論というものは世上にはないわけではないのでございますが、憲法調査会ではやはりそういう論点がある以上は、現行憲法における諸問題を調査審議するという使命を託されておりまする関係上、それについて調査審議をしたということは、これは事実でもございますし、また、当然やるべきことであったと思いますが、憲法調査会の各委員の取り上げ方といたしましては、現行憲法は無効であるという主張をなさる方は、私の知る限りでは一人もいなかったと思います。むろん政府におきましては、これは申すもやぼなことでございますが、先ほど御指摘の九十九条等々を待つまでもなく、政府現行憲法を尊重する、擁護するということは、先ほど来お話も出ておりますように、全くその立場を堅持しているつもりであります。むろん憲法には御承知のように、九十六条に改正ということがございますので、改正についての論議、これは政府と言わず、国民一般が、民主主義国家の国民としては、当然これは考えるべきときには考えてもむろんいいことでございますが、少なくとも現行憲法は無効なんということはむろんない、憲法調査会でもいま申したように一人もいなかった、政府はむろんのこと、この現行憲法の条章に従って政治、行政の衝に当たっていくということであります。
  86. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 速記をとめて。   〔午後三時三十九分速記中止〕   〔午後三時五十九分速記開始〕
  87. 柴田栄

    委員長柴田栄君) それでは速記を起こしてください。  ほかに御質疑はございませんか。——ほかに御発言もなければ、本案の質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。   午後四時散会