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政府委員(
増子正宏君) ただいま
伊藤先生のお
考え方を承ったわけでございますが、その点につきましては、従来におきましてもこの席で幾度も申し上げた点でございますので、またその繰り返しになると存じます。私
どもの
考え方は、少なくとも従来までの
恩給法なりあるいは
改正法にあらわれた姿、形というものを見てまいりますと、
先生の御主張のようにはなっていないというふうに考えるわけでございます。すなわち、この
恩給公務員でない
期間を
恩給公務員として通算するという場合に、その対象になる勤務個所といいますか、勤務の機関が国家機関に準ずるものあるいは国家機関そのものといっていいようなものであるかいなかということによってのみきまるというふうには考えられないのでございます。もちろん通算の問題が起きます場合には、
先生のおっしゃるように、そういった
関係があるということ、すなわち満州国、
外国政府でございますとか、あるいはそれに準ずるものであり、
内容的に日本の
政府機関に準ずべきものであったということは、
一つの要件ではあろうと思います。そういう要件を満足していない場合に通算という問題などは起きてこないというふうに私
どももちろん考えるわけでございます。しかし、その要件を満たしているならば、すぐ直ちに通算という結論と結びつくかどうかでございます。私
どもの考えでは、それは直ちに通算ということには結びつかない。すなわちいまの国家機関であるというようなことは
一つの要件であり、それを満たさなければ問題になりませんが、それを満たした場合にはさらにまた別の観点の要件がありまして、その要件をも満たしたという場合に通算の問題が出てくるというふうに考えるわけでございます。私
どもが第二の要件と考えますのは、その国家機関もしくは国家機関に準ずべきものだと考えられるものと、それから日本
政府との間に一種の人事交流といいますか、人事政策上の
関係が存したということが、これは
一つの要件だと考えるわけでございます。単に、対象になる機関が国家機関あるいは国家機関に準ずべきものであるということだけでは、まだ通算の要件は満たされない。たとえば、これは
恩給法上長い間の問題といいますか、長い間そうなっているのでありますけれ
ども、府県の、あるいは市町村の吏員というものは、これは
恩給公務員にはなっておりません。しかし、その業務
内容あるいは府県の実態から言いますと、まさに国の機関あるいは国の機関に準ずべきものと考えられるわけでございます。しかし、それにもかかわらず、そこに勤務しております事務吏員というものは、
恩給法開聞以来
恩給公務員としては扱われていないし、無条件で通算もされていないのでございます。それが通算されるというのは、一定の条件があるわけでございます。たとえば、国家
公務員から引き続き地方
公務員になった、事務吏員になったというような者、それがまた国家
公務員になったというような場合には、この事務吏員であった
期間が通算されるというようなことはございます。しかし、そういった
関係なくして、もともと県のあるいは市町村の事務吏員で十年、二十年やった、そしてその後
恩給公務員になった場合に、その市町村の事務吏員であった
期間は無条件で
恩給公務員に通算されるという形はいままでとられておりません。そういう
意味におきまして、対象の機関が、
先生のおっしゃるように、国の機関に準ずべきものであったとしましても、それだから直ちに当然通算すべしという結論にはなっていないのでございます。そういう
意味におきまして、一定のさらにそのほかに条件を加えまして、ある種の条件が満たされた場合のみ通算をするということでございます。したがいまして、
昭和十八年の
改正法を見ましても、それから
昭和三十六年に
改正されました
現行法にいたしましても、
外国政府等に行く前にすでに日本で
恩給期間に達しておる者、すなわち文官でありますれば十七年以上日本におって、それから
外国に行ったという場合には、日・満・日の場合におきましても、満州在満
期間は通算されていない、通算されないことになっておるわけでございます。
先生のお説でいけば、これが通算されないというのはやはりおかしいことになるわけでございますけれ
ども、この
恩給法ではその場合には通算しないということにいたしておるわけでございます。そういうことで、私
どもとしましては、
先生のおっしゃる満鉄等がその
内容におきまして国の機関に準ずべきものであったということについては全く異論はないのでございまして、しかしながら、それに異論がないからといって、直ちに在満
期間を全部無条件で満・日の場合にも通算すべしという結論にはならないというのが私
どもの
考え方でございます。それを通算するようにするかしないかということは、やはり
一つの政策的判断でございます。これは理論的にまさに当然だということではなくして、そのほうがよいのではないかという
意味の政策的配慮ではないかと私
ども考えるわけでございます。したがって、政策的配慮でございますから、もしかりにそれをやりました場合には、その他これと
関係する類似したものとの均衡という問題が当然出てこようかと思うわけでございます。そういう点から言いますと、現在の満・日の扱いにつきましては、なるほど
関係者の方から見れば、非常に不満があり、また
先生のおっしゃるように、これを直すのが正しいという御意見があるいは私
どもも考えなければならない点であろうかと思いますけれ
ども、いずれにしましても、これは政策的な立場におきまして、そのほうが妥当である、そのほうがよろしいという結論が出ますれば、やがて
改正案として御
審議願うという筋合いのものであろうと思うわけでございます。