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1965-05-11 第48回国会 参議院 内閣委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十一日(火曜日)    午前十一時三十六分開会     —————————————    委員異動  四月二十八日     辞任         補欠選任      久保 勘一君     森部 隆輔君      平島 敏夫君     八木 一郎君  五月十一日     辞任         補欠選任      中村 順造君     久保  等君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         柴田  栄君     理 事                 栗原 祐幸君                 下村  定君                 伊藤 顕道君     委 員                 源田  実君                 塩見 俊二君                 三木與吉郎君                 村山 道雄君                 森部 隆輔君                 鬼木 勝利君    政府委員        総理府総務長官  臼井 莊一君        総理府総務副長        官        古屋  亨君        総理府恩給局長  増子 正宏君        宮内庁次長    瓜生 順良君        皇室経済主管   並木 四郎君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○皇室経済法及び皇室経済法施行法の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 柴田栄

    委員長柴田栄君) これより内閣委員会を開会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。  去る四月二十八日、久保勘一君及び平島敏夫君が委員辞任され、その補欠として森部隆輔君及び八木一郎君が選任せられました。     —————————————
  3. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 恩給法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、すでに提案理由説明を聴取しておりまするので、これより質疑に入ります。  政府側からは、古屋総務長官増子恩給局長が出席いたしております。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  4. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 本法案について二、三お伺いしたいと思いますが、まず最初にお伺いしたいのは、この改正点についてですね。改正点そのものについてまずお伺いしたいと思います。  そこで、最初にお伺いしたい問題は、この当委員会恩給審議に当たった際必ず問題となる問題は、恩給年金と、それと現職公務員給与とのベースの差の問題、これは常に根本問題として論議されておるわけです。そこでお伺いしたいことは、このベースの差について、総務長官お見えにならぬので、副長官、どのように一体お考えになっておるか。このことをまず御説明いただきたいと思います。
  5. 古屋亨

    政府委員古屋亨君) ただいま伊藤先生のお話にありまする公務員関係給与恩給との関係でございます。恩給におきましては、御承知のように、公務員退職当時におきまする俸給基礎として支給されるものでありまして、物価事情あるいは生活水準上昇等社会情勢の変動に応じまして、在職公務員給与改定が行なわれるような場合におきましては、恩給の額も見直していくということが望ましいと考えておるのでございますが、在職公務員給与は、現に職務に従事しているということを前提としておるのでございまして、人出管理上の要請をも加味して考慮されております。したがいまして、現在職務に従事していない者に給付される恩給扶助料等を、単純に現職公務員給与改定にリンクしてスライドさせるということは、必ずしも適切な措置とは言えないものがあると考えておるのでございます。御承知のように、昭和三十四年の公務員給与改正以後におきましては、俸給表の構成も非常に複雑になっておりまして、公務員給与のみをもとといたしまして、恩給増額改定を行なうことは非常に困難となっておる。でございますので、目下のところは、国民生活水準公務員給与物価、その他の事情を考慮いたしまして、恩給年額改定を行なうことが適当ではないかと考えておるのでございます。現在、こういうような過程で私どもは考えておるのでございますが、将来の問題といたしましては、たとえばドイツ、その他の外国立法等におきましては、給与法改正、と一緒に行なっておるのもございますので、実は今回御提案申し上げておりまするような恩給ベースアップにつきましては、昨年からできました恩給問題審議室におきまして検討を加えまして、最近の国民生活水準あるいは物価その他の事情を考慮いたしまして御提案しているような恩給年額改定を行なうことといたし、提案を申し上げている次第でございまして、ただ将来の問題といたしましては、この恩給問題審議室におきまして十分そういう点、外国立法例その他は検討してまいりたいと存じておる次第でございます。
  6. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この根本問題としていま御説明ございましたけれども、まず考えなければならぬのは国民生活水準の問題ですね。それと公務員給与、それから昨今のような物価上昇、こういうことを考慮に入れた場合には、当然このベース較差を是正することがあまりにも当然ではないか、こういうふうに考えられるわけであります。したがって、まあ若干考慮されてはおるようですが、まだまだ開きは大きいわけです。こういう根本問題についてさらにひとつ御解明いただきたいと思いますけれども
  7. 古屋亨

    政府委員古屋亨君) ただいまの伊藤先生の御意見でございます。私どもは、今回提案を申し上げておりますベースアップは、先ほど申し上げましたように、恩給問題審議室において検討をいたしておるのでございまして、その検討の結果を御提案をしておるのでございます。しかしながら、お話しのように、物価水準あるいは生活水準の向上あるいは公務員の毎年の勧告によるベースアップということもございます。恩給に関するいろいろな問題は、いま御提案申し上げておるようなベースアップの問題以外にも専門的に調査検討を行なうような問題が多々ございます。したがいまして、ただいま御提案申し上げておりまするベースアップの問題と合わせまして、その他専門的に調査検討を行なうための問題として私どもは数多くの問題を持っておりますので、この恩給問題審議室を活用いたしまして、十分そういう点の調査検討を進めてまいりたいと考えておる次第であります。
  8. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案がかりに通ったといたしましても、普通恩給は二万四千円ベースということになるわけですね。これを公務員給与庁を昨年九月現在で見ると約三万五千ばかりになると思うのです。ということになると、この両者を比較すると、その較差は一万一千円も開いておるわけですね。この一万一千円の開きは一体どこから出てきたのかということの原因はいろいろあるでしょうが、これは結局要約すれば、政府経済政策からのしわ寄せではないか、こういうふうに断定せざるを得ないわけですが、この点に関する剛長官のひとつ御所見を承りたいと思います。
  9. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 多少技術的な面に関係いたしますので、私からまずお答え申し上げたいと存じますが、ただいま御質問で御指摘になりましたのは、今回の改正が、成立しました場合における普通恩給はまあ二万四千円ベースというふうに仰せられたのでございますけれども、まあ、べースという意味にいろいろございますので、正確に言いました場合には、今度の改正後におきます恩給基礎俸給が必ずしも二万四千円とは言えないというふうに私ども考えておるわけでございます。要するに、二万円ベースと言われておった俸給表基礎にして恩給計算しているのが現行でございますが、その計算基礎になっておるその仮定俸給を二割アップするというのでございます。二万円の二割アップならば二万四千円ではないかということであろうと存じますけれども、二万円と申しますのは、先生もよく御承知のように、一般職俸給表をその当時の公務員適用しました場合の、いわば俸給等の月額の平均額でございますから、扶養手当とかあるいは暫定手当等を含んだ金額がいわゆる二万円であったという意味でございます。したがいまして、恩給法基礎に関する限りは、それらの給与のうちいわゆる俸給だけでございますから、その俸給金額にして平均二万円というわけでもございませんでしたので、今回の改正案によりまして基礎俸給が二万四千円になるという関係にはございませんことをまず申し上げておきたいと存じます。いずれにしましても、しかしながら、恩給基礎になっている俸給表というものは確かにあるわけでございます。それは先生もよく御承知のように、昭和三十四年の十月から施行になった俸給表現行基礎でございます。そうして、在職公務員につきましては、御承知のように、昨年の九月から給与改定が行なわれておりまして、その給与がいわゆるペレスとして幾らになるかという計算は実は人一院等でもいたしておりませんので、はっきりした数字はわからないわけでございます。三万五千円程度というのは、先生が御計算になったものであろうと存じますが、そういった在職者適用される俸給表と、それから恩給基礎俸給額とは時期的に非常にずれているということは、先生が御指摘になった限りにおきましてはまさにそのとおりでございます。こういった基礎になる俸給適用時点といいますか、そういったものの時間的ズレ、これは実は私どもとしましても、大幅に開いているということば決して好ましいことではないというふうに考えているわけでございます。したがいまして、逆に言いますと、できるだけ公務員俸給水準といいますか、そういったものに近いことは望ましいというふうに思うわけでございます。しかしながら、その近さといいますか、その間隔というようなものがどの程度が適当であるのかということにつきましては、必ずしも簡単に結論を得られないわけでございます。従来の方法からいいますと、一番近い公務員俸給表に合わせるということが一つの目標ではあったと思うわけでございます。しかし、それを実現するといたしましても、金額的に相当の巨額に達する、所要財額巨額に達するという意味におきまして、実は非常な困難にいつも逢着いたしておったわけでございます。したがいまして、その財政事情の許す限度といいますか、そういったものとにらみ合わせて現実には恩給改定してきたというのが従来の行き方でございます。したがいまして、根本的な考え方といたしましては、先ほど総務長官から申し上げましたように、在職者給与ースがどういうふうになっているかということは、一つの大きなめどでございますが、それのみではなく、一般的な物価水準でありますとかあるいは国民生活消費水準、そういったものをやはり勘案しながらそのときどきの財政状況等も考慮しつつ、できるだけ恩給年額等改善を行なっていくということが今日までの姿でございましたし、今後におきましても、やはりそういう点で努力してまいるということではないかと考えているわけでございます。
  10. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いろいろ御説明をいただいたわけですけれども、その一端に、現職公務員給与ベースに近いことが望ましい、そういう御指摘があったわけですけれども現職公務員給与ベースそのものでは好ましくないのですか、ただ近ければいいということで、現職公務員給与ベースそのまま適用すれば、そればしごく事務操作も非常に簡便にいくし、先ほど来お伺いしておる国民生活水準とか、公務員給与、いわゆる物価上昇、こういうことをあわせ考えたら、やはり現職公務員給与ベースそのものを使えば万事に都合がいいわけだ。ただ都合の悪いのは、予算がないということであろうと思うのですが、したがって、近いことが好ましいといま言われましたけれども、ほんとうに好ましいのは、いま繰り返しお伺いしておる公務員給与ベースそのものが一番好ましいわけですけれども、その点はどうもあいまいだ。
  11. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 私が、恩給基礎になります俸給年額というものが在職者公務員給与水準とあまり隔たっていない、それに近いのが好ましいというふうに申し上げました意味は、実はこういうことでございます。公務員のいわゆる給与というものは、御承知のように、俸給ばかりではございませんが、少なくとも俸給につきまして申し上げましても、今日では、各職種ごとに相当こまかにきめられておるわけでございます。行政職(一)、(二)とか、あるいは医療職とか、公安職とか、教育職とか、そういったふうに俸給表が分かれておるわけでございますが、実は十数年以前にやめられた方等につきましては、そういった俸給の別がなかった時代も一あるわけでございます。ことにまあずっと古い数十年前に退職された方等の退職当時の俸給というものを見ますと、今日におきましては格段の相違があるわけでございます。そういったずっと過去から今日まで引き続き恩給受給者というものの持っておりました給与というものを見ますと、非常に千差万別でございますので、今日の時点における在職者給与体系に合わせると申しましても、これは実はほとんど不可能なんでございます。したがいまして、ある種の擬制といいますか、フィクションを用いまして、新しい俸給に切りかえてきているのが今日の姿でございます。しかもその過去の俸給体系を今日の体系に変えますのも、実は昭和三十七年の改正の際が、まあ従来のやり方における最後方法といいますか、非常に苦労をしまして、在職者給与体系に合わせておるというのが実情でございます。一つ一つ調べてみますと、在職者適用されておる俸給表とは違った恩給独自の給与体系というようなものも現にできておるわけでございますが、そういった意味におきまして、在職者適用されておる給与表をそのまま技術的に恩給受給者基礎俸給のところにもってくるわけにいかないという、いわば技術的な困難さといいますか、そういったものが現に出ておるのでございまして、しかもその困難さは、最近における人事院の勧告及びそれに基づく給与法改正等のつど一そう増してきておるということでございます。御承知のように、一般職俸給表につきましては、相当構造の変化が行なわれてきておるわけでございます。そういうことから、実は技術的な面で在職者給与表というものをとりにくいということがございます。したがいまして、せいぜい考えられることは、全体平均して従来からどの程度上がるかといったような一般的な上昇率といいますか、そういったものが一応は考え得るというような意味でございます。したがいまして、そういったかりに一般的な上昇率というようなものを恩給基礎俸給適用いたします場合には実はいろいろな段階があるわけであります。すなわち現在三十九年の九月から施行になっている給与法にいたしますか、あるいは三十九年の八月末まで適用されておった俸給表にするかというようなこと、いろいろなそういう時点選択の問題があるわけであります。したがいまして、私が先ほど一般的に給与水準としては、在職者に近いのが好ましいというふうに申し上げましたのは、そういう事情を考慮しながら公務員給与水準とあまりにかけ隔っていることのないような給与がやはり恩給基礎としては望ましいのじゃないかという意味で申し上げたわけであります。でありますから、先生の御指摘のように、在職者俸給表に合わせれば一番技術的に簡単ではないかとおっしゃいますのが、実は技術的には非常にむずかしい、不可能に近いものであるということを申し上げるわけであります。
  12. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この提案説明を見ますると、一般退職者及びその遺族ですね、遺族恩給年額については原則として二〇%増、こういう提案理由説明があるわけであります。  そこでお伺いいたしますが、原則として二〇%云々というからには何か例外があるのか、原則としてというのは一体どういう意味なのか、他に例外ありといたしますれば、その例外とはどのようなことなのかということを聞かしていただきたい。
  13. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 提案理由の御説明で、一般退職者及びその遺族恩給というものが、厳密に申しますれば恩給法上の普通恩給及び普通扶助料というふうに申し上げられるわけでございます。それから公務傷病者及び公務死没者遺族恩給というふうに申し上げておりますのは、言うまでもなく、傷病恩給及び公務扶助料の点でございます。で原則として二〇%増額というふうに申し上げておりますのは、この普通恩給につきましては、御承知のように、現行法におきましては、いわゆる俗に言われる二万円ベース仮定俸給ということになっているわけでございます。それから公務扶助料等につきましてはいわゆる二万四千円ベースというふうに通俗的に言っているわけでございます。要するに、普通恩給とそれから公務関係恩給とにおきましては、その基礎になる俸給年額が二通り、いわゆる二本立てということになっているわけでございます。で今回におきましては、この二本立ての俸給年額をそれぞれについて二〇%上げということをやったのではなくて、普通恩給基礎になっております俸給年額、すなわち俗に言う二万円ベース仮定俸給といわれるものだけを一応取り上げまして、それを二一〇%増額したものが今後における各恩給計算基礎になる俸給額というふうにいたしました。したがいまして、普通恩給の場合には大体単純に二〇%アップになるわけでございますが、公務関係恩給につきましては、いまの基礎俸給年額関係では二〇%アップにはならないわけでございます。というのは、すでに二万円ベースよりは高い基礎俸給であったわけでありますから、二万円ぺースの二割増しにしたところでほとんど上がらないという場合も出てくるわけであります。原則として二〇%増額というものはそういう意味におきまして申し上げたわけでございます。それでは公務扶助料あるいは傷病恩給のほうはどうなるかということになりますと、仮定俸給基礎にいたしました計算の場合に、御承知のように、公務扶助料の場合におきましては、普遍恩給基礎となる俸給年額基礎にいたしましたいわゆる普通扶助料というものを出しまして、この扶助料というのは、普通恩給の二分の一でございますが、その二分の一になった普通扶助料をさらに今度は何倍かいたすわけでございます。で、現在は丙の場合には、三・五五倍いたすのでございますけれども、今度の改正案におきましては、この倍率を四・三二倍に引き上げたのでございます。したがいまして、基礎俸給としては公務関係では二〇%は上がりませんけれども、この倍率の改訂によりまして、結果的に最後に算出されます公務扶助料は三〇%程度引き上げられる、改善されるという結果になるのでございます。そういう点を一応簡単に申し上げたわけでございます。
  14. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、増額措置について承りたいのですが、三ヵ年間にわたる年次計画で実施すると、こういう提案理由説明があるわけですが、これを具体的に説明していただきたいと思うのです。公務傷病者、遺家族、老齢者、こういう者を先にするような配慮が払われておるということでありますけれども、こういうこともひとつあわせて御説明いただきたい。
  15. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) この恩給増額措置年次計画にいたしまして、受給者全員について一時には上げなくて、次々に引き上げていくというやり方、これは前回の昭和三十七年の改正のときもこういう大体スタイルをとったわけでございます。このやり方につきましては、いろいろと批判もあり、まあ私どもとしましてもできるだけこういった形はとらないほうが望ましい、せっかく引き上げるならば一時に全員がその引き上げに浴するという形がベターであるというふうには考えておるのでございます。したがいまして、今回もそういった形でまず考えたのでございますが、この増額によります所要財源の額と、それから今日の財政状況全体から見通される状況との調整の段階におきましてやむを得ずということでこうした段階実施をとらざるを得なくなったのでございます。その際にそれではどういうふうに考えるかということにつきましては、まず老齢者については、できるだけこの段階的な適用は除外いたしたいというふうに考えました。それからいわゆる傷痍軍人と申しますか、傷病恩給を受けておる方方、こういった方々については、年次的な適用はいたしたくないということで、その他の点につきましては、できるだけ老齢者方々から均てんしていくということで、いわば比較的に年齢の若い方にはしばらくお待ちを願うというような考え方でございます。そういうことでできました内容が今回御審議をいただいておるものでございますが、その概要を申し上げますが、まず種類からいいますと、公務扶助料普通恩給普通扶助料、これはすべて同じ取り扱いをいたすわけでございます。ただし、傷病恩給、いわゆる増加恩給傷病年金受給者につきましては、本年の十月から全額実施をいたすということでございます。で、その他のいま申し上げました恩給の種別につきましては、これらを通じまして年齢で区切ったわけでございます。本年の十月までに七十歳以上になる方につきましては、全額を十月から実施いたします。したがって、傷病恩給受給者と同様に、最初から増額が行なわれるわけでございます。その次は、七十歳未満であるけれども、六十五歳以上の方々、この方につきましては、四十年の十月から引き上げられるのは今回の改善分の二分の一だけでございます。そうして残りの二分の一は、四十一年——明年の一月から実施されるということでございます。その次は、六十五歳未満の者のうち、いわゆる遺族に該当する方、つまり六十五歳未満の妻、子につきましては、本知の十月から引き上げられますのは増額分の三分の一だけでございまして、そして明年の四十一年の一月からは、増額分の二分の一引き上げということで、その状態が一年間続きまして、四十二年の一月には全額になるということでございます。その次は、六十五歳未満であるが、六十歳以上の者、いまの妻、子は除かれるわけでございますが、六十歳以上の人につきましては、本年の十月から三分の一を引き上げる、それから四十一年の七月には二分の一を引き上げ、それから四十二年の一月になりまして三分の二だけ引き上げられる、四十二年の七月になりまして全額引き上げということになります。それから最後に六十歳未満の方でございますか、この六十歳未満の方につきましては、当分引き上げは停止されるわけでございまして、四十二年の七月になりまして、初めて今回の引き上げ分適用されると、まあこういう形になるわけでございます。  以上、わかりにくかったと思いますが、概要でございます。
  16. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、お伺いしたいのは、旧軍人軍属抑留期間加算を認める、こういう説明があるわけです。これをひとつ最後に御解説いただきたいと思う。
  17. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 軍人軍属抑留期間につきましては、御承知のように、現在はその抑留されておる期間がそのまま在職期間としては計算されておると、しかしながら、その加算はないわけでございますが、今回の改正におきましては、その期間につきまして、いわゆる一ヵ月につき一ヵ月を加算するという考え方法律改正を行ない、その内容につきましては政令で定めるという形にいたしておるわけでございます。
  18. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 かつての増加恩給の第七項症、これは年金と一時金との選択制がとられていたと思うんですが、そこで現在新しく選択制適用を受ける者があるのかないのか、こういう点を明らかにしていただきたい。
  19. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) ただいまの御質問にお答えいたします前に、先ほど抑留内容政令でと申し上げましたのは間違いでございまして、今度の改正法律案法律でうたっておるわけでございます。  それからただいまの御質問の点でございますが、現在はほとんどなくなっておるわけでございます。
  20. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、傷病年金受給者の妻には加給がつけられたわけですが、さらに、そうだとすると、家族にも加給をつけるべきではないかと思うんですが、この点はどうですか。
  21. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 傷病年金につきましては、従来いわゆる家族加給というものがございませんでしたが、前回の改正によりましてこの妻の加給ということが行なわれることになったわけでございます。で、従来これにつきまして家族加給がなかった点は、実は他の災害補償といいますか、あるいは社会保険等によります給付との比較におきまして、この傷病手当、恩給法による傷病年金に相当する程度の障害、これにつきましては実は一般的には一時金制度がないのでございます。しかしながら、恩給につきましては、従来の特殊な関係もございまして、一時は一時金とされておった時代もございますけれども、その後年金に改められて、いわば保護といいますか、そういった給付の内容からいいますと、他の制度よりは幾ぶん有利なといいますか、手厚い内容になっておるわけでございます。そういう意味におきまして、さらにこれに家族加給を加えることは必ずしも適当でないというような観点から、ずっと家族加給は傷病年金にはつけていなかったのでございます。しかし、その後傷痍軍人等につきまして傷病年金受給者、いわゆる款症程度の傷病の場合におきましても、家族特に奥さんなどは相当の御苦労があるということで相当そういった御意見が強くありましたために、従来家族加給をつけていないということと、一方でそういった何らかの措置の必要性ということを総合勘案いたしまして、妻だけにはそれでは加給をしようという形で、実はこの改正案について前回御可決をいただいたということでございます。したがいまして、増加恩給には妻ばかりでなくほかの家族の分もついておるという点からいたしますれば、家族全員に及んだほうが多々ますます弁ずということでよろしいということは言えると思いますけれども、いま申し上げたような状況におきまして、妻だけにでもやっておるという点、これはこれでまあ妥当な内容なのではなかろうかというふうにも考えられるわけでございまして、現在御指摘のように、妻以外の家族にもこの加納をつけるということは考えていないのでございます。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは時間の関係もございますから、あと午前の部は一問だけお伺いして、さらに通算問題とか抑留期間の通算問題等々の問題については午後に譲りたいと思います。  そこで午前中の最後質問としてお伺いしたいのは、どうもわかりにくい、むずかしい法律だということになると、この恩給法とかあるいはまた、共済組合法が必ず引き出されるわけですね。これを十分検討してみると、結局は附則が次から次へと改正される、このことに原因しているのではなかろうかと思うのですね。もうひんぱんに附則が変わっていく、どうも国民一般には理解しがたいわけです。共済もそうですが。恩給、共済ということになると、どうも理解しがたい。そこでやはり国民のどなたにもわかるように、簡易な、簡明な法律にひとつ改める必要があるのじゃないか、この際、どうもわかりにくい、そういうことで、特に繰り返し申し上げるように、附則の意味がどうもわかりにくいという声を強く聞くわけです。そこで一つお伺いしたいのは、こういうものを当面整理してしまって、附則を一切整理して、恩給法一本に改めることが、この際適当ではなかろうかと思うのです。こういうことに対する基本的な考え方と、また、今後の取り組み方、こういうことについてひとつ御説明いただきたいと思うのです。
  23. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 御質問をあるいは私間違って御趣旨を理解しているかもしれませんけれども、お答え申し上げますと、まず第一点でございますが、恩給法改正が非常にわかりにくいという点でございます。これは全く仰せのとおりでございまして、私どもも実はこれを取り扱っておりながら、非常に頭を痛め、苦心をいたしておるわけでございます。で、それらの苦情の理由として先生が御指摘になったのは、附則の改正が何回も行なわれているというふうに言われたのでございますが、確かにそういう点が一つあろうと存じます。ところで、なぜそういうふうになっているかということでございますが、私ども実態的な理由としましては、恩給というものは実は非常に継続的に給付されるものでございますから、給付自体に継続性がございます。しかしながら、一方で、ときどきの必要に応じて改正いたします。そこでいつも問題が起こりますのは、従来の既得権の問題でございます。この既得権といいますか、改正によって、従来の権利がそこなわれないようにしようという配慮がいつも働いているわけでございます。したがいまして、改正は、本法の改正のみではまかない切れないのでございまして、いわゆる経過措置というものがどうしても出てくるわけでございます。この経過措置が何回もたび重なってまいりますので、前回の改正の経過措置、前々回の改正されたもののその後の経過措置といったようなぐあいに、これがもう幾重にもあとを引いてくるということでございます。これを何とかもう少し簡単にできないかということを、実は恩給局の職員もいつも考えているのでございますが、いままでのところは、ちょっとこれを抜本的に改めるという名案もないままに、今日に至っているわけでございます。その点につきましては、いろいろと私ども先生方からお教えをいただきまして、なるべくわかりやすいすっきりしたものにいたしたいということは、念願をいたしておるわけでございます。  それから第二点としまして先生の仰せられましたのは、いろいろなものを整理して、恩給法一本に改めたらどうかという御提案でございますが、これは恩給という制度以外に、共済という制度のことも含めて御指摘になったものかどうか、その辺がちょっとわかりかねるわけでございますか、恩給制度に関する限りは、いろいろなごちゃごちゃした改正法律を、法律番号が幾つもございますが、それを全部統一してしまって、恩給法の本法、本則でもって全部規定してしまうようにということでございますれば、先ほど申し上げました問題と同じことになるわけでございます。しかし、そうではなくして、共済組合制度も恩給制度と一本にするという御趣旨でございますと、これはまた、実に大きな問題でございます。なかなか簡単にはまいらないのではないかというふうに考えるわけです。
  24. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私のお伺いした意味は、難解の例として恩給法とか共済法が出されておると。いまここでは恩給法についての質問ですから、恩給はとにかく複雑だと。で、その原因としては、附則が次から次へと改正されると。こういうことなので、恩給法について、まあもちろん附則も恩給法の一部だといえばそれまでですけれども恩給法、附則というものを一切整理して、当面とりあえず恩給法一本でということが望ましいのではなかろうかと、こういう意味なんです。  まあそこで御意図はよくわかりましたから、恩給局としても無関心でおるわけではないということだけはわかったわけですけれども、やはり何といっても国民によくわからないような法律では意味がないと思うのですね。よくわかるような法律ということを目ざして、今後真剣にひとつさらに骨が折れてもそれを乗り切って、ひとつ真剣に取り組んでいただきたい。そうして国民によくわかる法律にしてもらいたい、そういうことを強く要望しておきたいと思います。これに対する副長官のお考えはどうですか。
  25. 古屋亨

    政府委員古屋亨君) ただいまの先生恩給に対する恩給法関係の附則が非常に複雑である。実は私もその点は事務的にできるだけ早く整理して、わかりやすいものにいたしたいと考えておるのでございますが、いまの御意見の点は、全く私どもも簡素に、国民にわかるものにできるだけいたしたいという気持ちで、慎重にしかも前向きの姿勢で、できるだけ早く検討を進めてまいりたいという決意でおりますことを申し上げておきたいと思います。
  26. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時二十三分休憩    午後一時五十分開会
  27. 柴田栄

    委員長柴田栄君) これより内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、これより質疑を行ないます。  政府側からは、古屋総務長官増子恩給局長が出席いたしております。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  28. 下村定

    ○下村定君 最初古屋長官に若干お伺いいたします。  当委員会はかねがね恩給法改正は、政府が自発的にかつ大局的の見地から計画実施されるべきことを主張しまして、その手段として政府に常設の調査機関をつくることを要望してまいりました。昨年恩給局に審議室が設けられまして活動を開始されておるのでありますが、その範囲はまだきわめて小規模で、期待に満たないと思いますがこれにつきまして、政府といたしましては、この機関を将来拡大するか、あるいはいまの目的に沿うような他の具体的の御考案がございましょうか、それをまずお伺いいたします。
  29. 古屋亨

    政府委員古屋亨君) ただいま下村先生のお話しで、恩給問題につきましては、昨年から恩給局の中に恩給問題審議室を新たに設置いたしまして、恩給年額恩給加算その他恩給に関する諸問題に対する調査及び研究を中心にいたしまして作業を進めておる次第でございまして、昨年四月にこの審議室ができましてからは、特に当初重点といたしましていわゆる恩給ベースアップの問題を中心に検討を進めてまいってきた次第でございまして、半年間検討を続けまして、ただいま御提案を申し上げておりますような恩給ベースアップということを提案をいたしておる次第でございます。もちろん恩給問題審議室恩給局内の室でございますので、ここの恩給問題審議室をつくるにあたりましては、いろいろの経過等もございましたが、まあいろいろの観点から恩給問題審議室という形でこのベースアップの問題を発足せしめたことは、御承知のとおりでございます。なお、御承知のように、総理府の中で公務員年金制度連絡協議会という関係各機関の局長をもちまして、私副長官が司会者になりまして、公務員年金制度連絡協議会というものを設置いたしまして、諸外国等の立法例の問題その他各種年金の問題についてもこの協議会で検討を続けておる次第でございます。したがいまして、御承知のように、恩給の問題あるいは年金の問題、非常に関連するところも実際問題としては現実に多いのでございまして、ただいまの二つの機構をもちましてただいまは作業をいたしておるのが現状でございますが、将来におきましては、この二つの政令によりまする恩給問題審議室、それから閣議決定をもちましてできました公務員年金制度連絡協議会の運用におきまして、不十分というようなことがありますれば、別途新たに制度的にも検討を加えたい。国会のほうの附帯決議等におきましても、また当委員会で御審議をいただいておる過程におきまして、そういうような必要性の問題につきましていろいろ御意見をいただいております。私どもは、現在この二つの機構をフルに動かしまして努力いたしておる次第でございますが、将来これらの問題、非常に大きいいろいろの問題が多々ございますので、そういう場合にはこの二つの機構だけでは足らないというような問題になりますれば、機構的にもひとつもう少し大きいと申しますか、制度的な、機構的にも権威のあるものをば検討をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  30. 下村定

    ○下村定君 次は、午前にも質問が出ましたが、今回の恩給額の引き上げは三年間で階段的に実施することになっております。次の改正をやるためにも、またすみやかに今回増額の恩典に浴する人に引き上げられた金額を支給するためにもこの三年の段階を短縮をしていただきたいという希望が午前も出たとおりでございます。この点について、いま一度政府にお考えがございましたらお聞かせ願いたい。
  31. 古屋亨

    政府委員古屋亨君) ただいまの増額措置を三年間で行なうという問題でございますが、私どもも、先ほど恩給局長から申し上げましたように、こういう問題は三年を区切らないで、しかも年齢等による制限というものによって三年の間に除々に実施するということは、決して私どもはそれが望ましいというふうに考えているわけではございません。ただ、こういうふうな措置をとりましたにあたりましては、初年度から完全実施ということをいたしますと、ばく大な経費を要することとなりまして、財政の点その他諸般の事情から非常に困難な事情にあるということを考慮いたしまして三年間というふうに措置した次第でございます。もちろん国家の財政が許しますればその間におきましても、ただいま御意見にありましたように、できるだけこれを短縮するように、私どもも財政その他の面を考慮いたしまして努力をしてまいりたいと思っております。
  32. 下村定

    ○下村定君 総務長官がお見えになりましたから長官にお伺いいたします。恩給は、物価の上昇、生活水準の向上、そのほか現職公務員給与改善などと調整をはかる必要のあることは当然でございます。現在審議されておりますこの改正法案を昨年作成する過程におきましては、このことを一つの項目として法案中にまとめるという意見が相当にあったように思います。提出されております改正案にはそれが入っておらぬのでございます。これは何か特別の事情によるものでございましょうか、お伺いいたします。
  33. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) 恩給に関しましては、お説のように、生活水準の向上とか、物価の上昇、また民間の給与ベース等を勘案いたしまして改定をいたすべきであると、こう考えておりますが、この点につきましては、でき得べくんばやはりそういうような点について検討し、調整をすることも必要ではないかということも考えたのでありまするが、いずれにいたしましても、各省と政府部内で話し合った結果、今回はその条項をはずさざるを得ないことになりまして、また、いま御質問にございましたように、今度の改定につきましても三年がかりということで、この点については、政府といたしましても、必ずしも満足いたしておらないのでありますが、ただ、財政上のいろいろな事情でそうせざるを得なくなった。前回もそうでございましたが、今回もまたそういうことを取らざるを得なくなったわけでございます。財政事情がよくなれば、これらの点についても改善をいたしたいと考えております。ただ、現在はなかなか経済の成長がいわゆる正常化するという段階にありますために、当面困難な事情にあることを御了承いただきたいと思います。
  34. 下村定

    ○下村定君 今回提出されました法案にあの条項が入らなかったということは、あの趣旨が認められないというようなことでなくて、何かほかの事情で削除されたということでございますか。
  35. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 御質問になっておる、いわゆる条項の点でございますが、これは私どもがいろいろな案をつくります段階におきまして、一つ考え方として、恩給年額の調整に関する原則的な考え方一つ条項として置いたらということで考えた一つの案でございまして、この案につきましては、先生のように御賛同の向きもあったわけでございます。関係の中では、やはりそういった条項につきましても若干の疑問の意見を持たれる向きもございました。そういった意味におきまして、いろいろな意見がありました関係上、最終的な政府案といたしましては、そういった成文化は一応見送りということになったことでございます。  それでは実質的にそれが非常に支障があるかということでございますが、私ども今回の改正等考え方が、実質的にはそういう条項として考えられたようなものの考え方基礎に立っておりまするので、実質的な意味におきましてそれが不都合だということには考えていないわけでございます。
  36. 下村定

    ○下村定君 次はまだ恩給法中に残っておりますいろいろの不合理、不均衡等の問題について恩給局長に若干お伺いいたします。  まず傷病恩給についてでございますが、現在戦傷病は普通公務となっておりますが、これは戦闘公務とすべきではないかと考えます。また、傷病恩給受給者がなくなりましたときの扶助料ですが、この場合、公務の扶助料になるのと第三号と申して公務に入らないものとの二種があるようでございますが、これは公務一本にするのが現在の段階においては妥当ではないかと思うのでございます。この点に関する御意見を承りたい。
  37. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 傷病恩給の算出の基礎といたしまして、普通公務という考え方になっておるけれども、これは戦闘公務として考え直すべきじゃないかという御意見だったと思いますが、傷病恩給の算定につきましては、特に戦闘公務、普通公務というような考え方はしていないわけでございます。御承知のように、公務というものにつきましては、戦後は、この普通公務、戦闘公務という考え方、終戦までございましたこの考え方はとっていないわけでございますので、特にこの点を何らか改めるということは現在考えていないところでございます。  それから、増加恩給の場合、いわゆる平病でなくなった場合の扶助料でございますが、これにつきまして公務扶助料一本にすべきであるという御意見に承ったわけでございますが、この点はやはり従来の取り扱いのあれからいたしましても、全く公務による傷病によって死亡された場合と、そうでない原因によって死亡された場合とを全く同一に扱うということは、かえって問題ではないかというふうにも考えられるわけでございます。したがいまして、この差別を撤廃することにつきましてはなお、さらに慎重な検討を要するものと考えられるわけでございます。
  38. 下村定

    ○下村定君 裁定基準ということが前から問題になっています。ことに内部的の疾患のためにはぜひこれを是正すべきだという意見が強いのでございますが、承りますと、これについて調査会を設けるというお話もあったように記憶しておりますが、その点はどうなっておりますか。
  39. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) いわゆる傷病恩給の裁定基準に関します御意見でございますが、この恩給法によります傷病恩給を給します場合の基準は、一応症状等差というものが示されておりまして、それによって段階があり、その内容によりまして現実の傷病なりあるいは障害の程度を判定いたすわけでございますが、これらの運用につきまして従来とっております基準につきましては、諸外国の実例とかあるいは多年にわたる医学的所見等を十分調査検討をした結論として実は決定されておるものでございますので、いろいろな立場からおそらく若干の御意見はあろうと思うのでございますけれども、しかしながら、全体として見ますと長年月の間、是認されてきたものでございますので、それを今日、にわかに不適当であるということで変更するということも実は非常に困難なものと考えるわけでございます。  それからなお、一部の内科系疾患につきましては調査会を設けましてその基準等を実はきめておるわけでございます。  その他、一般の傷病につきましてこの基準等を再検討するということは現実の問題としては非常に困難なことではないかというふうに考えておるわけでございます。
  40. 下村定

    ○下村定君 次は、款症者で普通恩給を併給されておる者に対する減額率が一割五分から二割五分に引き上げられたのはちょっとその理由がわからないのであります。その御説明をお願いしたい。  それからもう一つ特別項症ないし第二項症の介護手当が二万四千円ととめおかれておりますが、目下の時期におきましてはこれを増額すべきではないか。この点もあわせて伺いたい。
  41. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) いわゆる款症程度の傷病につきましての傷病年金を支給されておる場合に、普通恩給の資格もあり、そうして普通恩給が支給される場合に、この恩給額を減額する制度が現在ございまして、それが一割五分の減額であります現行を二割五分引きに改めるということにつきましての御質問でございます。  この傷病恩給受給者普通恩給が併給される場合でございますが、この併給は実は当然に併給をされるわけでない点が増加恩給の場合と違うわけでございます。いわゆる項症の傷病の場合の増加恩給の支給につきましては、当然に在職年のいかんにかかわらず普通恩給が併給されるわけでございますが、款症の傷病恩給傷病年金の場合にはその本人が普通恩給を受ける年限在職しておった場合にのみ出てくるものでございます。したがいまして、傷病年金額を算定いたします場合には、普通恩給が併給されいな場合を一応考慮いたしまして、その金額を定めておるのでございます。その関係から第七項症と款症のうちの一番上の第一款症とを比べてみますとよくわかるわけでございますが、第七項症の増加恩給よりは傷病の程度としては低い第一款症のほうが、傷病年金の額が実は高くなっておるのでございます。したがいまして、それに普通恩給が併給された場合のことをたまたまそういう場合があることを考えますと、傷病の程度が軽いもののほうが普通恩給傷病年金を合わせてよけいにもらうということになりまして、その関係が逆転いたすわけでございます。でそういうことを避けるために、傷病年金受給者に対して普通恩給が給せられる場合には、普通恩給を減額するという仕組みに従来なっております。で、その比率を今回二割五分に上げましたのは、一割五分の現行の比率ではその間の調整ができないものでありますから、その調整が適当なところにいくまで改めたいということでございまして、実は終戦までの傷病恩給関係の場合にはやはりそういうことになっておったわけでございまして、特別に不利にするという意味でこの控除率を引き上げたわけでないことを御承知願いたいと思います。  それからもう一つ、いわける介護手当の増額についての御意見でございます。特項症等にいわゆる加給せられます手当の額でございますが、これは現在二万四千円、御指摘のとおりでございます。この増額ということは、なるほど傷病恩給全体の増額という点から見ますると問題になるところでございますけれども、要するに恩給額の総手取りの問題として考えますと、この加給せられる金額をふやすかあるいは増加恩給そのものを増額するか、まあいずれにするかという問題もあるわけでございます。で、従来のいきさつから言いまして、特に二万四千円というこの俗称介護手当でございますが、この引き上げにつきましては他とのいろいろな関係もございますので、今回は一応据え置きという形をとったわけでございます。
  42. 下村定

    ○下村定君 いま一つ伺います。それは目症の問題でございますが、目症者で傷病手帳を下付されておる者があるんです。それについてはやはり国鉄の半額乗車というような恩典を与えるべきではないかと思うのですが。
  43. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 傷病の程度がいわゆる目病というのに該当しておる場合でございますが、現在のところでは、この目症者につきましては年金制度はないわけでございます。でその他いわゆる戦傷病者の援護対策あるいは身体障害者の援護措置というような意味で、その他の分野からの種種の行政措置等は考えられるわけでございます。いま御指摘の点は、この目症者に対して国鉄の半額乗車券支給の御意見でございますが、恩給法あるいは恩給制度の中ではちょっとこの問題は論ずるのに適当でない問題ではなかろうかという、ふうにも思うわけであります。
  44. 下村定

    ○下村定君 次は文武官の間の不均衡について若干お尋ねいたします。軍人恩給仮定俸給の号俸が引き下げられておりますが、これはもはや現在の段階においては是正する必要があるのではありますまいか。また、一時恩給年限の短縮、また、加算年を恩給金額計算の中に通算をするというようなこともすでに目下の時期においては解決してしかるべき事項ではないかと思いますが、それに対する御意見を伺います。
  45. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) いわゆる旧軍人の仮定俸給額と文官のそれとの関係でございますが、第一に御指摘になりましたのは、この点につきましては旧軍人が不利益な扱いをされておる、その差別を撤廃すべきではないかということでございますが、なるほど従来旧軍人の仮定俸給につきましては、大官の仮定俸給のそれに比べまして一部不利益な扱いがあったわけでございまして、漸次それを解消いたしまして、今日ではまず残っておるというふうに考えられますのは将官クラスと佐官クラスにつきまして若干でございます。この文武官の不均衡という問題は、実は俸給制度全体としてもいろいろと考えなければならない問題がございます。なお、この仮定俸給が上薄下厚であるとかあるいは上厚下薄であるというようないろいろなものの考え方がございますが、そういったものとにらみ合わせまして、ただいま御指摘のような問題は今後検討してまいりたいと考えておるところでございます。  それから次に、軍人の一時恩給の資格を七年にいたしておるのを三年以上というふうに改むべきでないかという御意見、それから在職年がいわゆる加算制度によって加算されます場合に、現在におきましてはいわゆる受給資格の面で考慮されるけれども金額算定の上においてはそれが加算年は意味を持たない形になっておりますのでこれを改めることという御意見でございます。これらの点は、なるほど過去の例に比べますとこの点はまだ不十分だというふうに考えられるわけでございますが、今日の段階におきまして、これらの改正措置をいたしますことは、旧軍人関係等相当適用人員が多いわけでございまして、財政的には相当の負担になることは明らかでございます。そういう意味におきまして、恩給制度全体の中におきまして、こういった一部いわゆる不均衡といいますか、そういった点を取り上げた場合に、財政その他の面におきましてどのような関係になるかということは、私どもとしましても相当慎重に考えなければならぬというふうに思うわけでございます。たとえば七年以上につきまして、一時恩給を支給いたしておりますのを三年以上というふうにいたしますことによりまして、金額としましてはおそらく何百億という金額も考えられるわけでございまして、相当の多額の金を要するということになれば、恩給制度としてはもっと緊急に考えなければならぬところがあるのではなかろうかというような問題もございます。そういう意味におきましていろいろいまおあげになりました問題は、それ自体としてかなり重要な問題でございますけれども、早急の実現ということは率直に申し上げて困難ではなかろうかと思うわけでございます。
  46. 下村定

    ○下村定君 最後に、外国政府職員等の職員についてお伺いいたします。  海外に抑留された年限を恩給年に通算すること、これがまだ実行されておらないようであります。この点においてほかの場合と不均衡があると思いますが、これについてのお考えはいかがでしょうか。
  47. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 外国政府職員、その他これに準ずる機関の職員につきましては、一定の条件のもとに公務員以外の在職期間の通算措置をいたしておるわけでございますが、その通算の対象になります期間は、それぞれいわゆる終戦までといいますか、昭和二十年の八月までということになっているわけでございます。それ以後は要するに満州国政府等もいわゆる解消という形、それからその他満州国政府に準ずるいろいろな公的な機関等についてもその存続の基礎を失ってしまったということでございますので、かりに御指摘のように敵国との関係抑留されておった期間も通算ということで考えますと、その抑留期間というのは実は満州国政府職員なり、あるいは満鉄の職員として抑留されておったという関係は考えにくいわけでございます。すなわち、いわゆるシビリアンといいますか、民間の人が海外に抑留されておった場合とほとんど差がないような状況でございます。したがいまして、外国政府職員等が終戦後抑留されておりました期間公務員に準ずべき期間として通算いたすことになりますと、全く民間の人で海外で抑留されておった、留用されておった期間を一体どう考えるか、それとの均衡の問題があるわけでございます。いずれにいたしましても、現在といたしましては、外国政府あるいは満州国政府、満鉄等が一応存続しておった、公的にも考えられる期間、時期で区切っておるわけでございます。これをさらに延長するということにつきましては従来からいろいろと要望がございまして、私どももそれぞれ検討いたしておるのでございますけれども、今日におきましてまだこれを通算すべきであるというふうな結論に到達していないことをまことに遺憾に思う次第でございます。
  48. 下村定

    ○下村定君 ただいままでの御説明である程度了解をいたしたこともございますが、総括的に不合理、不均衡は相当広い範囲に残っておるのでございます。これはぜひとも将来にわたってなるべく早く解決していただきたいと思います。また、財政上のこともむろん考えられるのでありますから、一方これが残っておりますために不公平な目にあっておるという人が相当あるのです。その点はぜひとも御考慮願いたい。これをもって私の質問を終わります。
  49. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に続いて通算問題について二、三お伺いいたしますが、まず恩給局長にお伺いいたしますが、この前の御答弁で、外国政府とかあるいは外国特殊法人職員の恩給通算については、恩給公務員でない者を恩給公務員として取り扱うものゆえ一つの擬制である、この擬制であるがためにその処遇はなるべく厳格に取り扱う方針である、こういう意味の御答弁があったと思うのです。そこでお伺いするわけですが、たとえば日本電信電話工事株式会社あるいは私鉄の鉄道等の民間期間は明らかに恩給公務員期間ではないわけですね。これはもう明確です。この点はどう解釈したらいいか。
  50. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) ただいま御質疑の点でございますが、私が申し上げましたのは、恩給公務員である者を対象として恩給法ができておる以上、恩給公務員でない者としての在職期間恩給公務員期間と同様に扱うということにつきましては、例外措置でございますので、恩給法改正という点につきましては、そういった例外措置はできるだけ避けるということであるべきでありましょうし、また、かりに設けられた例外というものの運用にあたりましてもやはりそれを厳格に運用するというのがたてまえではないかということを申し上げたわけでございます。したがいまして、御指摘の電信電話工事株式会社あるいは私鉄の職員の場合でございますが、最初の電信電話工事株式会社の問題につきましては、すでに以前のこの委員会審議の際にも明らかになっておりますように、これはいわゆる占領下の措置でございまして、連合国最高司令官のメモランダムが出ております。それによってこの会社の業務が政府機関に引き継がれる、全面的に継承されるという措置がきまり、その一環として法律改正が行なわれたことでございます。したがいまして、あるいは通常の事態におきましてたとえば今日の事態におきまして、純粋に恩給法的に考えました場合にはおそらくいろいろな問題がございまして、この当時とられた措置と同じようになるかどうかは保しがたい問題ではなかったかと思うわけでございます。いずれにしましても特殊な事情のもとにとられた措置であるというふうに考えるわけでございます。  それから私鉄の場合の職員等につきまして、これは主として公共企業、国鉄等の職員の年金の場合に問題になるわけでございますが、これも実はいわゆる民間の企業を国鉄等が吸収する場合の措置でございまして、その吸収する一つの手段といいますか、条件という意味において退職年金計算する場合に、前に在職しておった会社の期間も通算するというようなことが、いわばこの業務継承といいますか、そういうふうに業務を引き継ぐ場合の一つの条件として考えられたものというふうに理解するわけでございます。したがいまして、これらの例は、それぞれ特殊の場合といいますか、しかるべき理由のある場合でございまして、私の考えております例外的な扱いは厳格にやるべきであるということにつきまして、その考え方と特に矛盾するものとは考えていないわけでございます。
  51. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そういう御答弁ではとうてい納得できませんので、さらに重ねてお伺いいたしますが、それでは満州国とかあるいは満鉄等の職員のうち、日・満・日、それから日・満の者の在満期間、これはもう明らかに恩給公務員期間ではないわけですね。したがって、これは擬制であるわけです。にもかかわらず、何らの制限もなく、在満期間がまるまると通算されておるわけです。したがって、擬制だから制限するんだというそのお考えを恩給局自身がくずしておるということになるわけです。これはもうはっきりすると思うんです。先ほども申し上げたように、恩給公務員でない者を恩給公務員として取り扱うんだから、すなわち擬制であるから、なるべく厳格な規制を設けるんだ、そういうことであるのにもかかわらず、日・満・日あるいは日・満の場合の在満期間は、どなたがどう考えようとも、これはもうはっきりと擬制ということになるわけですね、あなたの論法をもってすれば。そうだとすると、擬制だからきびしく制約するんだという、そういう制約を恩給局自体がくずすと、そういうことになるわけです。それは例外もあるんだ——例外ということでごまかしては相ならぬと思う。
  52. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 私が申し上げておりますのは、擬制だからというよりも、いわば制度としては例外的な制度だというふうに申し上げたわけでございます。まあ原則があり例外があります場合、例外というものは、やはり最小限度に行なわれて初めて例外でございまして、これが自由無条件にどんどん拡張される場合には、これは例外ではなくなるものだというふうに思うわけでございます。  で、いま御指摘の日・満・日や日・満の場合のことでございますが、実は確かに恩給制度のたてまえからいえば、これも軽々と認むべきものでなかったと思うわけでございます。しかし、これを認めるにつきましては、相当論議もあり、国会の法律でもって認められたというのが結論であろうと思います。たとえば日・満・日、満州国政府について、日・満・日の通算の問題でございますが、これは戦後初めてできたものではないということは先生も御承知のとおりでございます。昭和十八年てこざいましたか、すでにいわば戦前——戦前にというか、終戦前にこの外国政府職員の通算問題というものは恩給法に取り入れたわけでございます。これは全く日・満・日の場合を考えたわけでございますが、終戦になりましてこの法律に書かれてある日・満・日という事態が全く本人なりあるいは関係者の意思にかかわらず実現不可能になってしまったという事態が現実の問題として起きたわけでございまして、この現実の問題をどう処理するかという意味におきまして、いま問題にされておる日・満の問題とか、あるいは満・日の問題がそこに出てきたものと考えるわけでございます。したがいまして、これらはやはり恩給法の先ほど申し上げましたような原則的な考え方はありますけれども、それを基礎に置きながらそれぞれ出てきた事態に対処して解決されたものというふうに考えるわけでございまして、私の申し上げた例外は、できるだけ厳格にということを恩給局みずからこれをくずしていったというようなものではなくして、やはり恩給制度というものの基本的な考え方はありますけれども、いろいろな事態に処するために、いわば国全体の政策としてこういった措置がとられたものというふうに考えておるわけでございます。
  53. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私は先般来申し上げていることは、日本電信電話工事株式会社とか、あるいは私鉄等のいわゆる民間機関を恩給期間に通算しちゃいかぬと反対しているのではない。それは当然認めていいと思う。だから日・満・日、日・満のケースも認めておるのだから、満・日をなぜ認めないのか、そういうことの前提に立って、この前の続きですから、そういう前提に立ってお伺いしているわけです。したがって、そういう善意に解釈した解釈を……、そのことに反対しておるわけじゃない。日本電信電話工事株式会社、私鉄機関、これはもう理論からいえば、法理論からいえば純然たる民間機関、それを恩給期間に現実には通算している。これに反対だ、そういうことを問題にしているのじゃない。いささかも問題にしていない。だから日・満・日、日・満も同様在満期間は、どなたがどう考えてもこれは法理論からいえば、結局擬制ということにならざるを得ない、恩給局長の見解をもってすれば。だからおかしいじゃないかということの一つの論拠として申し上げておるわけです。  さらにお伺いいたしますが、総務長官は衆議院の内閣委員会に行かねばならぬということがいま連絡がございましたから、そこでせっかく来られたから一点だけお伺いしておきますが、前回総務長官は、当初日本政府は、日本政府の採用された者と、それと当初満州国、満鉄等に入った者とは、この二者を比較すると、日本政府との関係において契約が違う、こういうことを明確に言われたわけです。したがって、後に日本政府公務員になっても処遇の差があるのは当然ではないか、そういう意味の御答弁があったと思うのです。そこでお伺いするわけですが、こういうことになると、当初役人であった者と役人でなかった者、これは人間が全然違うがごとき印象をわれわれは持たざるを得ないわけです。これは結局こういう考え方が出るのは、戦前にあったいわゆる官尊民卑の考え方がまだちょっと長官の頭の中にこびりついているのではなかろうか、こういうふうに判定せざるを得ないわけです。初め役人であろうと役人でなかろうと、人間には変わりがないわけですね。しかも先ほど来申し上げているように、恩給公務員で、今度は民間、それでまた恩給公務員に戻った、その中間の民間期間を日・満・日、日・満の場合はまるまると通算しておるのですね。それに反対しているのじゃないですよ、誤解のないように。そうなれば当然満・日の場合も当然にこれは通算してしかるべきではないか、こういうことを申し上げておるわけです。この点を重ねてお伺いしたいと思います。
  54. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) 私の前回申しましたのは、日・満・日ということでありますると、日本の当然官吏として就職しておりまして、そのままでいけば当然日本の公務員としての恩給がもらえる。ところが、満州のほうの満鉄等に転出をした、その際には一応やはりいずれは内地の官吏として戻る、こういう正式の文書があったかどうか知りませんが、とにかくそういう話し合いで出てまいりました。したがって、まあそのままあちらでやめられた方に対しても日・満というケースになって恩給がもらえる。それからまたさらに、内地に戻ればこれも通算するというのは、一つの契約といいますか、約束でそういうことになってまいりましたんで、これはもう当然だと思うんですが、ただまあ満・日の場合ですというと、満州国に勤務せられていて日本の恩給というものが適用されない会社に勤めていた、しかし、戦後こちらのほうの公務員になった以上はこちらのほうのあれは適用されるが、向こうにいた分までを適用するということについてはいかがなものかということは、まあ日本の公務員についたからそういう一つの疑義というか意見も出てくるのでございましょうが、そのままあちらでやめて、満鉄なら満鉄だけに勤めてやめられた方については、これは内地の恩給法適用はないことになるので、したがって、もし満・日についてあちらの分まで全部これを通算するということになると、やはりあちらにおられて内地の公務員にならない方まで、これまた考えなくちゃならぬという理屈も出てくるかと思うのであります。で、そこで、まあそういうところを勘案して内地に満州のほうの会社から公務員として戦後こちらへ来られた方に対しては、恩給の年限に達するまではあちらのほうの年限を認めよう、その限度においては通算をしよう、それ以上となると、いま申し上げたようなことで、そこまではたして、拡大することについては議論の余地がまだあるわけでございまして、それがためにいろいろ御意見等もございましたので、私ども部内におきましてもいろいろ相談、話し合いをしてみたんでありますけれども、まだそういうような点から御要望のように、満・日における通算を全部これを満州国の会社に勤められた分まで通算するということに決定するまでに至っておりませんことは御希望に沿いがたくて申しわけないのでありますが、いま申し上げたような理由からも、そういう点でいまだにむずかしい、こういう次第でございまして、したがって、別に官吏であるからどうとか、民間であるからどうとかということではございませんで、まあいま申し上げましたように、勤務の当初の条件といいますか、契約といいますか、そういうことのいきさつから、いま申し上げたようにいたしているわけでございます。でございますから、重ねて申し上げますように、民間側のものを全部それまで、こちらにたまたま復帰せられた方は、それじゃ全部通算するが、満州のまま終えられた方にはそのままということになると、そこにまた問題が、拡張の意見も出てくるわけでありまして、したがって、相見合ってやったといいますか、そういう点で現在満・日については取り扱っているということを、御了承いただきたいと思います。
  55. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 もう時間がないからそのことについていま一回お伺いいたしますが、前回からの総務長官の御答弁を伺っていると、どうも矛盾しておるわけですね。前回は、最初恩給公務員であったから云々と言われているわけです。まさしく最初民間であったか、恩給公務員であったか、もっと簡単に言えば、恩給公務員であったかないかによって差があるのはしかたがない、そういう意味の答弁を繰り返して聞いたわけです。ところが、いまの御答弁では、官吏であるとか、民間であるとか、そういうことはあまり問題にしていないのだという意味の答弁もあったわけです。そこで重ねてお伺いいたしますが、長官のお考えはあまりにも理論的根拠に欠けていると思うのです。いまも申し上げたように、一つの感覚ですね、前時代的な感覚にすぎないのだ、そういうふうに考えざるを得ないわけです、私の判断をもってしては。たとえば当初公務員であった者が、純然たる民間会社に入った場合、その後また公務員になった場合ですね、その中間の民間期間恩給公務員期間と、擬制ですね、恩給局長のことばで、擬制ということばを用いると、この民間期間恩給公務員期間として擬制して通算するということは、理論上はあり得ないことですね。これはどなたでも判断できる、民間だから。ところが、長官のお考えをもってすれば、この場合も当初公務員——ここに非常に重点があるわけであります。長官のお考えは、当初公務員であったがゆえに、そうして当初民間であったがために——これはもう人間がもう全然違うのだ、当初公務員であった者は国として処遇するのだから、その中間に置かれた民間期間も通算を行なわねばならないのだ、そういうふうにとれるわけです。そうだとすると、これはもう不合理きわまると思うのですね。だから、私はここで、もう時間がないから要点だけお伺いしますが、この場で、総務長官の立場で日・満・日あるいは日・満のケースを認めている現時点において、当然に満・日を認むべきだ、こういう質問に対してこの場で総務長官が、そんならそうしましょうと言うことは、それはなかなかむずかしいと思う。それが一番いい。そうすれば、この法案審議は簡単に済むわけです。もう問題ないわけですよね。それが最高の理想だと思うのです。しかしながら、なかなか——長官も、おそらく察するに、頭の中では、これは当然伊藤の言うとおりだと、そのとおりなんだ、だがしかし、うっかりここで返事してしまうと、予算化はなかなか容易じゃない、そういうことで心にもなくそういう御答弁をしておるんだと思うんです、おそらく。当たらずとも遠からずだと思うんです。  そこで、ぜひこの問題についてはひとつ、ここでそういたしますという御答弁はなかなかむずかしいから次善の策として、この問題は非常に考うべき真理があるので緊急にこの問題と真剣に取り組んで最高度の努力をして解決につとめる、そういう意味の御答弁があってしかるべきだと思うんです。そうしないと、前の前任者の総務長官、前任の恩給局長も、そのいわゆる政府の統一見解と相当後退しておるわけですね。で、そういう意味のいま御答弁を総務長官からいただければ、ようやく前総務長官、前恩給局長の言われた統一見解に戻るわけです。現在のままでは数歩後退してしまうわけです。これでは国会の審議意味がないと思うのです。審議を重ねて、よしその歩みはおそくとも、少しでも前進ならば意味があるわけです。ところが、それが逆に後退しているわけです。だからなかなかもって簡単にはこちらもやめようと思ってもやめられないわけです。そういう意味もあるので、こういう点をひとつよくかみしめていただいて、そういう前向きの御答弁があってしかるべきだと思いますので、重ねてこの問題をひとつお伺いしたいと思います。
  56. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) 伊藤先生の満・日の公務員に対して非常に思いやりのある御発言で、その点は私も非常に御熱心なあれで心を打たれるのでございますが、ただ、私は、まあ官尊民卑という考え方から、先ほど御質問のあったように、そう区別しているのではないということで申し上げたわけでございます。まあ私が申し上げるのは、一つの日本の当時官吏として就職を日本の官庁にしていた者が、本人も進んで国策に協力するという意味において行かれた方もありましょうし、あるいはまあいやいやながら行かれた方もあるいはあるかもしれませんが、とにかくいずれは内地に戻っても来るし、また、恩給等についても同じように取りはからうのだからという一つの約束で行かれたと思うのであります。この点については、内地におきましてはそういう必要もなし、内地におれば、内地の役所において勤められるわけでありますが、ですから、そういう約束事で行った以上は、それをそのまま実行するのが当然でありまして、まあ専従なども組合でいまよく問題になっておりますが、これなども教職員組合の専従などもやはり一つの約束、まあこれは法律があるのでございますけれども、組合に勤務するのにまた戻るというと、これが恩給年限等に加わるということも理屈に合わぬことだという意見もあるのでございますが、一つ法律をつくり、約束をつくり、法律をつくらんでも約束がある以上はそのまま実行しなければならないというのでいま言ったようなことになったわけでございます。満・日については最初の約束がそうでなかったと私は解釈いたしておりますので、そこでまあいま取り扱っているようなふうに現在においてはいたしておるわけでございますが、しかし、御熱心な御意見でございますから、今後ともひとつよく検討をいたしまして、十分今日までも検討いたしたのでございますが、一そうよくひとつ研究いたしてみまして、これは長い間の一つの懸案でございますから、現在のところではいま申し上げたようなわけでございますから、ひとつより一そう研究してみたいと思います。
  57. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは総務長官が衆議院の内閣委員会の要請で強引に退席になりますので、これで私は了承したわけではございませんが、この続きはまた次回に引き続いで行ないたいと思います。  そこで、問題をさらに掘り下げて恩給局長と副長官にお伺いいたしますが、いまも総務長官にお伺いしたように、問題の中心、それと考慮の根本は最初恩給公務員であったかなかったか、こういうことではなくして、恩給公務員として擬制しようとするその勤務個所が国家機関に準ずるものであるかいなか、こういうことにあることは明白だと思う。これは大事な点なので繰り返しますが、恩給公務員として擬制しようとする勤務個所ですね。それが国家機関に準ずるものであるかないか、こういうことが中心的に考えられなければならない問題だと思うのであります。こういう意味から満州国とか、満鉄等の日・満・日のケース、あるいは日・満のケース、これはもう恩給公務員期間としてこれを通算することは正しいと思う。だから満州国なり、満鉄等、満鉄に限らず、満鉄等についてはもうるる説明申し上げているので繰り返しませんけれども、そういう国家機関に準ずるもの、国家機関そのもの、そういうものであるかどうかということに判断の重点を置かなければならないと思います。そういう観点からすれば当然日・満・日、日・満のケースを全期間を通算する、すでに現行法はそうなっているわけであります。これはわれわれも賛成のわけです。そういう前提に立つならばどういうわけで満・日をこれから除外してしまわなければならないのか。きわめて不合理だと思うんですね。こういう点をひとつ恩給局長から御説明いただきたいと思います。
  58. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) ただいま伊藤先生のお考え方を承ったわけでございますが、その点につきましては、従来におきましてもこの席で幾度も申し上げた点でございますので、またその繰り返しになると存じます。私ども考え方は、少なくとも従来までの恩給法なりあるいは改正法にあらわれた姿、形というものを見てまいりますと、先生の御主張のようにはなっていないというふうに考えるわけでございます。すなわち、この恩給公務員でない期間恩給公務員として通算するという場合に、その対象になる勤務個所といいますか、勤務の機関が国家機関に準ずるものあるいは国家機関そのものといっていいようなものであるかいなかということによってのみきまるというふうには考えられないのでございます。もちろん通算の問題が起きます場合には、先生のおっしゃるように、そういった関係があるということ、すなわち満州国、外国政府でございますとか、あるいはそれに準ずるものであり、内容的に日本の政府機関に準ずべきものであったということは、一つの要件ではあろうと思います。そういう要件を満足していない場合に通算という問題などは起きてこないというふうに私どももちろん考えるわけでございます。しかし、その要件を満たしているならば、すぐ直ちに通算という結論と結びつくかどうかでございます。私どもの考えでは、それは直ちに通算ということには結びつかない。すなわちいまの国家機関であるというようなことは一つの要件であり、それを満たさなければ問題になりませんが、それを満たした場合にはさらにまた別の観点の要件がありまして、その要件をも満たしたという場合に通算の問題が出てくるというふうに考えるわけでございます。私どもが第二の要件と考えますのは、その国家機関もしくは国家機関に準ずべきものだと考えられるものと、それから日本政府との間に一種の人事交流といいますか、人事政策上の関係が存したということが、これは一つの要件だと考えるわけでございます。単に、対象になる機関が国家機関あるいは国家機関に準ずべきものであるということだけでは、まだ通算の要件は満たされない。たとえば、これは恩給法上長い間の問題といいますか、長い間そうなっているのでありますけれども、府県の、あるいは市町村の吏員というものは、これは恩給公務員にはなっておりません。しかし、その業務内容あるいは府県の実態から言いますと、まさに国の機関あるいは国の機関に準ずべきものと考えられるわけでございます。しかし、それにもかかわらず、そこに勤務しております事務吏員というものは、恩給法開聞以来恩給公務員としては扱われていないし、無条件で通算もされていないのでございます。それが通算されるというのは、一定の条件があるわけでございます。たとえば、国家公務員から引き続き地方公務員になった、事務吏員になったというような者、それがまた国家公務員になったというような場合には、この事務吏員であった期間が通算されるというようなことはございます。しかし、そういった関係なくして、もともと県のあるいは市町村の事務吏員で十年、二十年やった、そしてその後恩給公務員になった場合に、その市町村の事務吏員であった期間は無条件で恩給公務員に通算されるという形はいままでとられておりません。そういう意味におきまして、対象の機関が、先生のおっしゃるように、国の機関に準ずべきものであったとしましても、それだから直ちに当然通算すべしという結論にはなっていないのでございます。そういう意味におきまして、一定のさらにそのほかに条件を加えまして、ある種の条件が満たされた場合のみ通算をするということでございます。したがいまして、昭和十八年の改正法を見ましても、それから昭和三十六年に改正されました現行法にいたしましても、外国政府等に行く前にすでに日本で恩給期間に達しておる者、すなわち文官でありますれば十七年以上日本におって、それから外国に行ったという場合には、日・満・日の場合におきましても、満州在満期間は通算されていない、通算されないことになっておるわけでございます。先生のお説でいけば、これが通算されないというのはやはりおかしいことになるわけでございますけれども、この恩給法ではその場合には通算しないということにいたしておるわけでございます。そういうことで、私どもとしましては、先生のおっしゃる満鉄等がその内容におきまして国の機関に準ずべきものであったということについては全く異論はないのでございまして、しかしながら、それに異論がないからといって、直ちに在満期間を全部無条件で満・日の場合にも通算すべしという結論にはならないというのが私ども考え方でございます。それを通算するようにするかしないかということは、やはり一つの政策的判断でございます。これは理論的にまさに当然だということではなくして、そのほうがよいのではないかという意味の政策的配慮ではないかと私ども考えるわけでございます。したがって、政策的配慮でございますから、もしかりにそれをやりました場合には、その他これと関係する類似したものとの均衡という問題が当然出てこようかと思うわけでございます。そういう点から言いますと、現在の満・日の扱いにつきましては、なるほど関係者の方から見れば、非常に不満があり、また先生のおっしゃるように、これを直すのが正しいという御意見があるいは私どもも考えなければならない点であろうかと思いますけれども、いずれにしましても、これは政策的な立場におきまして、そのほうが妥当である、そのほうがよろしいという結論が出ますれば、やがて改正案として御審議願うという筋合いのものであろうと思うわけでございます。
  59. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで重ねてお伺いいたしますが、法理論からすれば、日本電信電話工事株式会社とか、私鉄の例ですね、これはもう純然たる民間機関です。だから、恩給法という純法理論からすれば、これはもうこの期間公務員期間として通算することはできないわけです。恩給法からだけ判断すればそれに違いないでしょう。にもかかわらず、先ほどの総務長官のことばを借りると、これはあるいは国鉄があるいは日本の政府がこれを買収する条件にした、そういうことでこれは解決したということだから、法理論から言えば、全然できないことが、可能が不可能になったものだろうと思う。それをいま是非しておるわけじゃない。反対しておるわけじゃない。そういう政治も必要でしょう。だから、われわれは賛成しておるわけです。それと、日・満・日とか、日・満のケースも当然にわれわれは反対しているのじゃない。たいへんけっこうだ、一歩前進であるというふうにわれわれは賛意を表しておるわけです。もしそういうことを前提と認めるならば、なぜ満・日だけをそういう不公平な取り扱いをするか、そういうことなんです。で、今度は満・日のことだけについて考えてみても、たとえば満州国に十年おって、それで満・日ですから、日本で十年。それで、日本で十年でやめた。そういう場合は、旧恩給法は十七年ですから、十年ではあと七年足りない。それで最低年限に達する必要な期間として、十年のうち七年だけは、満・日であっても認めておるわけですね、現行法は。あとの三年はだめだということになるわけだ。そういうことになると、こういうところはおかしな理論にならざるを得ないわけですね。満州国の十年間、そのうちの七年間だけはとにかく恩給公務員として認めよう、あとの三年はだめなんだということは、七年だけた公務員期間として認め得るが、あとの三年は同一勤務場所に同一条件でつとめておって、そのうちの十分の七だけは認めよう、十分の三はこれは認めるわけにいかぬ。同一労働条件で勤務しておるわけですね、にもかかわらず、七年だけしか認められぬ。もしかりに内地で十五年つとめた場合は、十年満州でつとめても、十五年の場合、二年足りないから、あと二年だけは認めよう、あとの八年はだめなんだ。これも理論から言うと、全然意味がないわけですね。ただ、機械的に足りない分だけを認めよう、そういう考え方にほかならないわけです。これもずいぶん筋の通らない話だと思うのです。そこで、さっき総務長官にもお伺いしたように、恩給局長の立場で、まだ総務長官が、それなら満・日を認めましょうと言わないうちに、恩給局長の立場で先走って、それならそういたしますとは言えないでしょう。だから、ここで私は最後にお伺いする点は、満・日のこのケースの場合もまことに傾聴すべき根拠がある。したがって、前向きの姿勢でひとつ研究に取り組んで、解決のために最高度の努力をいたしますという意味の御答弁はあってしかるべきだと思うのです、総務長官ともよく相談の上でですね。恩給局長の立場で、独自でそういう結論を出せぬことは当然でしょうから、当面の責任者である総務長官にも相談なさって、ひとつそういう方向で前向きの姿勢でひとつ最高度の努力をやるということを言われて、初めて前恩給局長の言われた、また、前総務長官の言われた、政府の統一見解にようやく近づいてくるわけです。それでもまだ数歩後退しておるわけです。現実は大きな後退がいま見られるわけです。せめて前任者のその見解までは戻さざるを得ないでしょう。そういう意味合いで、ひとつ十分こういう点をお考えの上で、御答弁いただきたいと思います。そういう意味の御答弁がないと、時間は何十時間あっても足りないわけです。
  60. 増子正宏

    政府委員増子正宏君) 私もできるだけ先生の御趣旨に沿いたい気持ちが一ぱいなんでございますが、いろいろ承っておりますと、私の申し上げたのが、前任の恩給局長とはひどく違っておるようにおとりになっております点が、実は私まことに納得できない点でございます。前任の恩給局長、ないしは前々総務長官等が申されましたこと、先生は統一見解というふうにおっしゃっておられるのでございますけれども、私も実はこの問題起きましてから、過去の速記録を全部調べたので、ございますが、どうも先生のおっしゃっておるような意味の統一見解というものは、速記録の中からは出てこないように思うわけでございます。かりに統一見解ということにいたしますと、私が考えられますのは、満鉄等が国の機関に準ずべきもの、あるいは国の機関と考えてもいいような性格のものではなかったかということについては、そのように考えられますということを申し上げておる。その点はまさにある意味では先生と当局側との統一見解と言えると思うのでありますけれども、それなるがゆえに、満鉄の在職期間は全部公務員期間と考えて、その後の期間に算入すべきであるという結論、その点については当局側は何ら統一見解ということではないというふうに考えられるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、先生の仰せられる御意見は、一つの御意見であるとは思っております。  それから私が申し上げておりますのは、実は法理論ということでは私もないと思うのでございます。一種の政策といいますか、ものの考え方として従来こういうふうになっておりますということを申し上げたのでございまして、理論的にそうということでは私もないかと思うわけでございます。たとえば先ほども申し上げましたように、満州に行く前にすでに恩給期間に達しておる者、その者については、在満期間は、日・満・日の場合でも通算いたしませんので、その点などは一体どういうことなのだろう、こういうことでございます。これは理屈の上では別にその根拠があろうとも思いませんけれども、しかし、その人はすでに恩給をもらっておるのだから、満州に行っておる間は、ずっと恩給をもらって満州国に勤務しておったのだから、その分は恩給期間に入れるのはおかしいという考え方がもちろんあったと思いますが、しかし、先生のお考えに従いますと、その期間だって当然通算すべきだ。同じ期間、同じ年月、机を並べて勤務したのに、片一方は通算され、片一方は通算されないのはおかしいという御議論であれば、この場合だって、かりに恩給もらっていようといまいと、差別するのはおかしいということでございますから、現在の制度が一つの法理論に基づいておるというよりも、一種の政策的な配慮に基づいてできておるものというふうに考えるわけでございます。そして政策的な配慮でございますから、いろいろな特殊事情というものをそのときそのときいろいろと考慮してつくられたわけでございます。したがって、現在のこの通算に関する改正法案も、従来考えられたいろいろな状況というものを基礎にして今日に至っておるわけでございます。それを変えるにつきましては、やはりまた新たな事情というものを考えに加えなければならぬということになろうかと思うわけでございます。したがいまして、そういうふうなことを考えまして、結局あるいは先生のおっしゃるようにすべきであるという結論が得られる日があろうかとも思うわけでございますけれども、これは将来のことでございますので、私いまからお約束申し上げるわけにはまいらない点でございます。しかし、いろいろと先ほどからも御意見がございまして、私どもとしましては、総務長官も先ほど申し上げたところでございますけれども、上司の指示を受けまして、今後とも十分研究を進めてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  61. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もございますから、本法案に対する私の質問は、最後に一点要望を申し上げておきたいと思いますが、あとは次回に引き続いて御質問いたしたいと思いますが、最後恩給局長に強く要望申し上げておきたいと思うのであります。  私が日本電信電話工事会社あるいは私鉄の期間恩給期間に準じて通算したということ、あるいは日・満・日、あるいは、日・満のケースを全期間通算したいということ、これは心から賛成しているわけであります。ということは、ただこの問題は法理論一本で解決できる問題ではないことは明々白々の事実である。そこでこういう問題が解決したということは一つの政治の前進であって、高度の政治的の配慮があったと思うのです。その点についてわれわれは賛意を表しているわけであります。だから竿頭一歩を進めて、そこまでいったのならばさらに満・日のケース恩給の最低年限の不足分だけというような、そういうような筋の通らない考え方でなくて、一歩政治的配慮を進めて、当然これも近い将来に認めるように最高度の努力をしてもらいたい、また真剣に取り組んでもらいたいということを強く要望申し上げておきたいと思うのであります。
  62. 柴田栄

    委員長柴田栄君) ほかに御質疑はございませんか。——ほかに御発言もなければ、本案の質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  63. 柴田栄

    委員長柴田栄君) この際、委員異動について御報告いたします。ただいま中村順造君が委員辞任され、その補欠として久保等君が選任されました。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  64. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 速記を起こしてください。     —————————————
  65. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 次に、皇室経済法及び皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしておりまするので、これにより質疑に入ります。なお本案は、お手元に配付いたしましたように、衆議院において若干修正をされておりますので御了承を願います。政府側からは、古屋総務長官、瓜生宮内庁次長、並木皇室経済主管が出席されております。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  66. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 本法案に対して二、三お伺いいたしたいと思いますが、まず内容質問に先立ってお伺いしておきたい点は、昨年の九月臨時行政調査会が行政改革に関する意見を答申しているわけです。それに関しまして、宮内庁として、関係の面については宮内庁の意見を出されているわけです。この臨調の行政改革に関する意見に対する宮内庁の基本的な考え方、御意見をまずお伺いしておきたいと思います。
  67. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 行政改革に関する調査会の御意見は、宮内庁については何か内閣の直属の機関とするような御意見があったように思いますが、その点につきましては、別に特別の異議のない点を申し上げてよろしいと存じます。
  68. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私がお伺いしたいのは、臨時行政調査会が行政改革に関する御意見を内閣に答申したわけです。それは各省庁等にわたって広範な内容のものであったわけです。その中に宮内庁関係の意見も臨調から出されておるわけです。この意見に対して、具体的に私がお伺いしておるのは、その臨調の改革意見に対する宮内庁の態度ですね。その臨調の意見をなおわかりやすく言うと、臨調の意見はこれはもう無視してもいいのだ、あるいは尊重するんだとか、あるいはそういう基本的なお考えはいかがかと伺っておるわけなんです。ですから、それに対する可もなし不可もなしということの意味にも、いまの御答弁はとれるわけですけれども、そういうことでなく、具体的なことはあまりたくさんないのですけれども、宮内庁には、該当の事項は。若干、一、二あるわけです。それは、基本的のお考えを聞いたあとでお伺いすることとして、まず基本的なお考えを聞いておるわけです。なお手っとり早く言うと、臨調の改革意見に対する宮内庁のお考えは、賛成なのか、反対なのかと、こう言えばもうほんとうの率直な質問になるわけです。
  69. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) この臨時行政調査会の意見は、内閣総理大臣の諮問に応じて出されたもので、まあ内閣のほうでこれに基いていろいろ考えていかれるわけでありまするので、特にわれわれのほうは宮内庁に関係した部分についてでありますが、実際に仕事をしていく上に非常に支障のあるような点があれば、これに対してその点に支障がありますというようなことをまた臨調のほうに意見を出すのもこれも義務かと思っておりますが、特に支障のあるような意見を臨調から出されたとは思っておりません。
  70. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは具体的な問題について、これはあまりないわけですけれども一つ、二つだけお伺いしておきたいと思うんですが、臨時行政調査会が「内閣の機能に関する改革意見」を出しておるわけです。そのうちで宮内庁に関係のあるのは、内閣府の設置について、これは宮内庁も関係してくるわけです。この改革意見に対する宮内庁としてのお考えはどうなのかということですね。まあ三通りあるわけです。賛成か、反対か、検討を要するか。各省庁等の答弁を、意見を要約すると、三通りになっているわけです。項目によってみんな違うわけですね。賛成、反対、検討を要する、このうちのどれであるのか。そうしてその理由はどういうわけで、ということをお伺いしたいと思うんです。
  71. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) この内閣府を設けるかどうかという広い問題になりますると、これは宮内庁も関連がありますが、それよりもっと広い問題になってまいりまして、そのこと自体は内閣のほうでいろいろお考えになるべきことで、そのこと自体については宮内庁ではとやかくちょっと申し上げるような立場にないわけでありますが、そういうものが設けられた場合に、その中に宮内庁の機関も入る、実際仕事をしていく上に別に支障はないというふうに考えております。
  72. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これは具体的に言うと、こういうことを臨調は出しておるわけですね。「内閣府の機関に所属する職員の人事権は、すべて内閣府の長としての内閣総理大臣にあるものとし、必要の限度に応じて内閣府の国務大臣を長とする行政機関の長に委任するものとする。」この改革意見に対する宮内庁の御意見は、という意味になるわけです。これには御賛成ですか、反対ですか。
  73. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) この人事権の問題については、そこにありますように、その所属の官庁の長に委任するようなこともございます。現在宮内庁長官が相当人事権を持っておられるわけですけれども、その場合にその委任を宮内庁長官に相当大幅にしていただきたいという気持ちは持っております。
  74. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、三つのうちどれに該当するわけですか。賛成、反対、検討を要する、三通りしかないわけです。そのうちのどれかに入らなければならぬ。
  75. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) その具体的な点、こまかい実施の問題については検討をしていきたいということで、大筋については差しつかえない、こういうことであります。
  76. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いいたしますが、この内閣府に付置する機関の一つとして宮内庁をあげているわけです、臨時行政調査会の改革意見では。この改革意見に対する宮内庁のお考えはどうかということをお伺いしたい。
  77. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) その外局としてその中に含むというような意見、これについては別に異議がないのでございまして、現在も総理府の外局として入っているわけでございますから、特に異議がないのであります。
  78. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 これはそういたしますと、この三つのうちには入らぬわけですか。賛成でもなし、むろん反対ではないわけですね。三つのうちの……。
  79. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) この大筋については、別に異議はないのでありますが、しかし、こまかい具体的なやり方については、まだはっきりしていない点がございますから、具体的にどうやるかということについては、場合によると、その点はこうすべきだというふうに検討を要する点があるかもわかりませんが、そういう点を留保しておいての賛成というふうに考えられてもいいじゃないかと思います。
  80. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 臨調の行政改革に関する意見のうち宮内庁関係のはきわめて少ないので、この程度にとどめておきたいと思う。  そこで法案説明に基づいて二、三お伺いいたしますが、まずお伺いしたいのは、皇室経済法の一部改正についてですが、皇室経済法の第六条第三項第四号によりますと、独立の生計を営まない親王、その妃及び内親王に対する皇族費の年額は、年齢には関係なく、一律に定額の十分の一に相当する額となっておるという提案理由説明があるわけです。そこでこのことに関連して二つほどお伺いしますが、まず年齢関係なく一律にした根拠は那辺にあるかということ、これが一点、それから「定額の十分の一」と現行はなっておるわけですね。これも十分の一としたのはどういうわけであるか。何か根拠があって十分の一にしたのか、この二つの点についてひとつ納得のいくように御説明いただきたいと思います。
  81. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 今度の改正をお願いするその前の皇室経済法では、全部平均に、年齢を問わず「定額の十分の一」というふうに平均して同じになっているのはどういうわけかというお尋ねですが、この法律ができましたころは、独立の生計を営んでおられないで宮家に属しておられる方というと、みんな小さなお子さんが多かった、成年に達せられた方は一人もなかったわけです。お子さまの経費というので、同じように見ようということで平均というふうに十分の一、同じというふうに規定をしたものと考えられます。じゃ十分の一というのは、どういう基礎から出てきたかということでございますが、これは御頭首の官さまに対して妃殿下の場合は二分の一というふうになっておりますが、さらにその五分の一、御頭首に対する十分の一程度の経費を一応見れば必要の限度の経費が一応まかなえるのじゃないかということで、まあどちらかといえば、下目なもので組まれたと思います。最近成年に達せられる皇族さんもありましたために、実情から見てやはり成年に達せられると、いろいろ御活動もありますので、これを十分の三というふうに直していただきたいというのが改正をお願いしている点でございます。
  82. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なおお伺いいたしますが、成年に達した場合ですね。宮中の行事とかあるいは内外の交際あるいは各種行事への出席、こういうことをあわせ考えて公的な諸行事に参加することが例になっておるということの説明があるわけですね。そこでお伺いいたすわけですが、宮中行事とかあるいは内外の交際、各種行事、それぞれについてひとつわかりやすく具体的に御説明いただきたいと思います。
  83. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) この対外的な行事ですと、たとえば国賓の方が見えますと、元首とか、それに相当する方が見えるとか、あるいは他の国の皇族方が見える、そういう場合に宮中で晩さん会があったりあるいは茶会があったり、ときには午さん会があったりしますが、そういう場合には成年に達せられた方は差しつかえない限りはそこにお出になるのが例になっております。なお、たとえば天皇誕生日のような機会に、外交団の人が見えまして祝意を表せられる、そのもてなし茶会がございますが、そういうところへも成年に達せられた方はやはりお出になっております。具体的に言いますと、昨年成年に達せられた三笠宮(やす)子内親王は、成年に達せられたあとはそういう会に出ております。その前は出ておられません。それから国内の園遊会なんかの場合でも、成年に達せられる前はお出になっておりませんが、成年に達せられると園遊会にお出になっておられるわけです。その他皇室のそれぞれの催しの場合に皇族としてお出になるという場合には、未成年の方はお出にならなくても、成年に達せられると都合のつく限りはお出になるということでございます。
  84. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 現行では年齢関係なく一律に定額の十分の一であったけれども年齢関係なかったわけですね。今回の改正では成年に達した場合は定額の十分の一から十分の三に引き上げようとする、そういう内容であると思います。先ほど十分の一は何か根拠があるかという質問に対して、これは大体いうならば腰だめだという御説明があったわけですが、今度の場合も、十分の一から十分の三というのは何か根拠があるのか。あるならばその根拠を教えていただきたい。根拠というものが全然なくて、これも単なる腰だめだとおっしゃるのか、この点を明らかにしていただきたい。
  85. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) この十分の一を十分の三に上げますことは、これは先ほど申しましたように、三笠宮(やす)子内親王が昨年の四月に成年に達せられました。いろいろの行事にお出ましになりますから、そういう実績を勘案いたしますと、やはり十分の三程度のことに直すのが妥当であるというふうに考えられたわけであります。で、なお、この十分の三は、妃殿下ですと十分の五、それから成年に達せられないお子さまは十分の一、ちょうどそのまん中あたりの金額になりますから、実績と外観的な見方というものと加えて、十分の三という金額に、そういう率がよかろうというふうに考えた次第でございます。
  86. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、皇族費に関連してお伺いいたしますが、皇族費の定額については、これは皇室経済法施行法第八条ですか、これに定額が規定されておるわけですが、そこで現在は五百十万、これは昨年の四月改定された分であろうと思うのです。そこでこの説明によりますと、最近における内外の交際の増加に伴う経費の増大、あるいは経済生活の上昇、宮家職員の給与引き上げ、こういうことを考慮して、現行の五百十万円を六百二十万に増額しようとするのだと、こういう御説明があったわけです。そこでお伺いするわけですが、内外の交際の増加について、どのように上げなければならないのか、その点について、ひとつ具体的に御説明いただきたいと思います。
  87. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) この内外の御交際、外の関係をまず申しますと、外国から日本に見えますいろいろの貴賓というものは、最近年々ふえておられます。そういう貴賓をもてなす会の際にお出になる場合が多いわけであります。   〔委員長退席、理事栗原祐幸君着席〕  それから外国の大使館の数も、新しい独立国もできましてふえてまいりました。そういう人との御交際もふえてまいりました。よく新しい大使が見えますと、皇族方など呼ばれて、晩さん会などなさる場合も多いのでありますが、そういう回数もだんだん多くなっておりますし、そういうようなこと、それから国内的ですと、いろいろの行事に皇族方にお出まし願いたいと言ってこられるのが相当ふえてきております。体育ですとか、文化の面ですとか、あるいは社会事業の面ですとか、あるいは産業の面ですとか、そういう場合がいろいろありますので、そういう意味において、内外のそういう方といろいろ接触されることによって、交際費としての経費もよけいかかる、交際費として非常に御服装をととのえられたり、そこにお出かけになる経費ですとか、あるいはごちそうになれば、たまにはこちらももてなされるとか、そういう広い意味の御交際の経費がふえておるということでございます。
  88. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いいたします前にもこれは当委員会質疑が重ねられた問題ですが、高松宮の御所有の光輪閣ですね、これはその後も引き続いて無償で提供されておるのかどうか、その後どうなったのか、こういうことを伺いたいと思います。
  89. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 光輪閣は、建物は高松宮様の所有でありますが、光輪倶楽部は貸しておられます。引き続いて貸しておられるわけで、光輪倶楽部があの建物を利用して、いろいろの催しの場所にしているということも、前と同じようでございます。
  90. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 第四十六国会だと記憶しておりますが、光輪閣は大体百人程度の会員で、一ヵ月の会費は一万円、地方の者は五千円ということで、このような会費で運営をしているということ、それと、その利用のしかたは宮さまの自由である、こういう意味の宇佐美長官からの御答弁があったと思うのです。この点については、いまもこのような状況で進められておるのか、この点はいかがですか。
  91. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) いまも同様でございまして、特に会員がふえるとかということもございません。
  92. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、沼津御用邸の件に関してお伺いいたしますが、この沼津御用邸については、当委員会でも視察をしたことがあるわけです。現在も引き続いて、やはりあのときの状況と同じように、ほとんど使用されないままになっておるのかどうか。その後一般に開放しようとするほうへ進んでおるのかどうか。もし開放するとしたらいつごろになるのか。こういう問題をあわせてひとつ御答弁いただきたい。
  93. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 沼津の御用邸につきましては、最近では浩宮様があすこへおいでになって、御両親殿下ともしばらく御滞在になる。これは一昨年でしたか。その後特別に去年あたりから御使用になっていることがないのでありまして、他の御用邸に比較すると使用の度数というものはあまり多くないという点がございまして、この点はこの前の場合とちょっと似たような状態にございます。で、特にまあ沼津の海岸の状況がだいぶ変わってきております。以前はあすこで皇太子殿下とかその当時の義宮様が海水浴をなさったこともあるようでございますけれども、学習院の海水浴場もあったりしておったのですが、その学習院の海水浴場も適当でなくなるとか、だんだん海水が汚染してきておりますので、そういう条件が変わってきております。それからなお、最近あの地方を工業推進地域ですか、何かで指定をされて、あすこへ何か石油のコンビナートをつくろうかというような問題があって、すると御用邸の大きなところはそのための港にするというような計画もあったりして、先年この委員会の方が御視察の際にもその場所もごらんになり、いろいろ検討されていただいたわけでありますが、そういうような工業地域として開発できることになりますると、御用邸をあすこに引き続き設けておくことは適当でないんじゃないかという問題が出ておるわけであります。で、宮内庁としてはあくまでも御用邸として維持したいというつもりを持っておるわけではございませんが、しかし、もしあすこを開放するにしても、やはりほんとうに御用邸に適当なふうにしなければいけないわけでありまして、そこらあたりのところがいまのところは全然まだ未解決のままになっておりまして、まあ非常にいい構想があればそれは考えられるということでございます。
  94. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この沼津御用邸の問題については、   〔理事栗原祐幸君退席、委員長着席〕 以前からいろいろと論議になっておりまするので、ひとつ十分この問題とも真剣に取り組まれて、善処方を要望申し上げておきたいと思います。  なお、引き続いてお伺いいたしますが、次に新宮殿の建設に関連してお伺いしたいと思います。  新宮殿の建設については、お見受けするところ、大体昨年から工事が本格的に始められたように見受けられるわけです。そこでお伺いしたいのは、現在どの程度に進捗しておるのか。もちろん基礎工事が済んで間もなくではあろうと思いますが、こういう進捗状況ですね、計画どおりいっておるのかどうか、そういうことをまずお伺いしたいと思います。
  95. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 新宮殿の工事は、昨年の六月に起工式がありまして、それから実際の工事にかかっているわけでありますが、昨年度の工事の進捗はまあ予定どおり進んできております。四十年度に入って続けてあとやっておりますが、現在は柱が立っております。先般も立柱式といって、柱を立てるのをやりましたけれども、柱が立っております。今年のうちには屋根もついてくることと思います。で、来年ぐらいが内装のほうに入るということになると思います。おおむねは予定どおり進んでおりまするけれども、しかし、いろいろ専門家にただしてみますると、最初の計画どおり四十一年度中、つまり四十二年の三月末までに完成することは少し無理じゃなかろうか。少しくやはり延びるだろう。四十二年の秋くらいになるのじゃないかというふうに申しております。工事上特に何か手違いがあって、というよりも、実際まあいろいろやっていきますと、そういうふうにややおくれなければ完成しないのじゃないかという見通しになっております。
  96. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この新宮殿の建設にあたって、総工費については、最初八十億から九十億という幅を持たせた予算が組まれておったと思うのですが、この工費については現在どういう状況なのか、そして今後の展望はどうなのか、こういうことを御説明いただきたい。
  97. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 最初に工事にかかります際、まあ見通しとして九十億余りの経費ということで見ておったわけでありまするが、だんだん工事を進めておりまする現在の状況で申しますると、その後に資材、労賃その他の値上がり等がありまして、そういう物価の変動からくる幾らかのやはり増額というものは必要になるように考えられまするし、それからなお、最初の設計の際に考えていたよりは資材の関係、まあ世間ではその当時はまだなかったような資材で、いろいろ使われてきているものもだんだんふえてきている、そういうようなものをやはりまあ宮殿である以上は、いい材料を使いたいという設計者のほうの意見もあります。なお、いろいろ実際にやってみますと、ここはこうしたらいいのじゃないかというような意見がたびたび出されておりまして、当初の予定よりは幾らか金額としてはふえてくるのじゃないかという面がございます。幾らくらいふえますかということについては、いろいろ検討いたしておりまして、大蔵省のほうともいろいろ折衝してめどをさらにつけたいと思っております。
  98. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この皇居造営については、三十四年に皇居造営審議会が設けられて、新宮殿の建設について答申されたと思うのです。それに基づいて東大の教授等三名の顧問の方と芸大の吉村教授が設計なさって、この造営計画に対する基本方針が打ち立てられた。それが現在進められていると思うのです。この基本方針というのは一体どういうものか、ごく概略でけっこうですが、こういうものを説明していただきたい。
  99. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 基本方針の概略を申し上げますると、この宮殿はまあ日本の宮殿である、この日本の宮殿のやはり伝統というものを基礎に置いて考えてみたい。外国の単にまねじゃなくて、ほんとうに日本の宮殿にふさわしいものを考えていく必要がある。しかし、その建築の技術の関係においては、最近非常に進歩しているから、その近代の進歩した技術を十分に取り入れた近代的な建築でやることが必要である。それからこの宮殿は現在の憲法のたてまえの天皇の地位から考えて、国民から親しまれる明るいものである必要があるということ、そういうこと等を考える。なお、いろいろの行事をする際に、そういう行事の運行がなめらかにいくように、特に最近いろいろな行事の際に、多数の方の参列ができますように考えるのが適当であるというので、相当多数の方も参列できますように部屋どりその他を十分考えるというようなことで、総括して言いますれば、昭和の時代につくられる宮殿としてふさわしいものに考えていきたいということでございます。
  100. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、工事担当の業者についてはどうなっておられるか、中でお見受けすると、幾つかの土建会社が工事を担当しておるようですが、こういうことは一体どういうふうにきめられて、どういう土建会社がいま担当しておるのか、そういうことについて御説明いただきたい。
  101. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 工事の担当をいたしておりまするのは、日本の建設をする会社のビッグファイブと言われておる会社の協同企業体をつくりましてその協同企業体がやっておるわけです。ビッグファイブという五軒の会社といいますと、大林、鹿島それから竹中、それに清水、大成建設と、こういう五軒でございます。普通の工事のように競争入札にして、どこかの一社がこれを落とすというようなことは、必ずしも技術を最高度に発揮することもできませんし、それぞれの会社にやはり特徴がございますので、この五軒の会社がそれぞれの特徴を生かして力をあわしてやっていただくということによって現在の建築の技術の最もすぐれた工事をしてもらうことができるだろうということで、この五軒が選ばれた。特に五軒を選んだのも、建設省あたりにもいろいろ相談いたしましたのですが、五軒が六番目とだいぶ開きがあるそうです。やはりその五軒がすぐれておるということで、その五軒の協同ということで進んでおるわけです。
  102. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 一般国民から寄金が集まっておるのですが、現時点で一体どのくらいになっておるのか、これはいろいろ調べてみると、三十九年の一月現在では、これは宮内庁の見解のようですが、大体全国から三千三百万ほどの寄付があったけれども、これは新造常費には使わないで特別の装飾品等にして残したいと、こういう意味のお考えのようですが、その考えは今後も続くのか、それと、現時点ではどのくらいになっておるかということ、そしてさらにお伺いしたい点は、金銭でなく物の場合はどう扱われるのか、たとえば庭石とかあるいは花びんとか、たとえばですよ、そういう金銭でなく物の場合はどう扱われようとしておるのか、こういう点を明らかにしていただきたい。
  103. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) この一般の寄付は、四月末のところで申しますと、五千四百八十二万円でございます。でこの寄付金につきましては、これをどういうふうに使いますかということについては、いまのところまだ決定いたしておりません。まあこれはこの最後の仕上げのほうの面に入った場合に、たとえばここの部分の装飾はこの寄付金でとかいうふうに、この御付によってこの部分ができたということがわかるようにはしたいと思っておりますが、まだいままでのところは、何にそれを使うかということは決定いたしておりません。内々いろいろ相談はいたしております。  それから物の寄付がありました場合、これはこの宮殿の造営に必要なものでふさわしいものでありますれば、それは受けるというたてまえになっておりますが、いまのところは別に特に申し出の分は聞いておりません。
  104. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最近、皇居内を機会を得て拝見したわけですが、宮殿の新造営工事と並行して随所でいろいろな工事が進められておるわけです。これは新宮殿工事の一環として進められておるのか、あるいは別個の工事として進められておるのか、非常にあちこちで盛んに工事が進められておるようですが、こういうことの概要を御説明いただきたいと思うのです。
  105. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) これは皇居造営、広い見地からその中に陛下のお住まいもある、それから宮殿の部分、それから東側地区を整備して皇居付属の庭園として、宮中でお使いにならない場合には一般に開放しよう、大筋がこの三点ございまして、お住まいのほうはできておりますが、宮殿の工事はいまやっております。最後に申しました東側地区のほうを付属の庭園として整備するということをいまあわせてやっております。したがって、いま東側地区のほうへおいでになりますと、前馬場であったところが掘り返されて、もとあった旧、江戸城時代に庭がありましたけれども、それの復元をやったりいたしておりますし、それからあすこにありました馬小屋ですとか馬車庫、そういうものをこわして別の地域にそれをつくったり、あるいは庭の中にありました他の建物をこわしたりしております。なおそのほかに、先ほど申しました三つの項目と直接関係はない、間接には関係はありますが、やはり東側地区の書陵部の横、楽部の横のところに皇后陛下の御還暦記念のホールというのを工事いたしております。これは音楽、集会等に使われる記念のホールでございますけれども、これもいま工事中で、今年の秋には完成するというようなことにいたしております。皇居全体として、いまおいでになりますと、あちらこちらで工事をしていて非常に雑然としておりますが、これは皇居全体を整備するということをいま盛んにやっておるということでございます。
  106. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係ございますから、最後に一点だけお伺いして、本法案に対する本日の質問を打ち切っておきたいと思うのですが、そこでお伺いしたいのは、京都御所の復元計画ですが、この計画がおそらく三十八年の十二月ですかまとまったように聞いておるわけです。三十八年の十二月にまとまったこの案は現在どうなっておるのか、案のまま放置されておるのか、具体的にどうなっておるか、その概要をひとつ御説明いただきたいと思います。
  107. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 京都御所の復元、これもやらなければいけないことと思います。戦時中に空襲に備えて、京都御所のつながりの廊下のところからこわして疎開してしまったので、もとの京都御所の姿が変わって、おもな建物がぼつぼつ立っておってつなぎがないというようなことになっております。この復元の問題はかねて研究しておりまして、いま伊藤先生おっしゃったように、三十八年の計画というものもできておるわけであります。この計画に基づきまして、実は毎年大蔵省のほうへ予算要求をしておりますけれども、一方宮殿工事等で相当いま経費が多いものですから、もうちょっと待ってくれ、待ってくれで待っておるわけで、適当な機会に財政上の都合のつく機会に復元を進めていきたいと思います。
  108. 柴田栄

    委員長柴田栄君) ほかに御質疑はございませんか。——ほかに御発言もなければ、本案の質疑は、本日はこの程度にとどめます。  ちょっと速記をとめて。   〔午後四時一分速記中止〕   〔午後四時十二分速記開始〕
  109. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 速記起こしてください。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時十三分散会