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1965-03-31 第48回国会 参議院 内閣委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月三十一日(水曜日)    午後零時三十分開会     —————————————    委員の異動  三月三十日     辞任         補欠選任      鬼木 勝利君     柏原 ヤス君  三月三十一日     辞任         補欠選任      柏原 ヤス君     鬼木 勝利君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         柴田  栄君     理 事                 栗原 祐幸君                 下村  定君                 伊藤 顕道君                 鶴園 哲夫君     委 員                 石原幹市郎君                 源田  実君                 塩見 俊二君                 林田 正治君                 三木與吉郎君                 村山 道雄君                 森部 隆輔君                 八木 一郎君                 松本治一郎君                 鬼木 勝利君    国務大臣        法 務 大 臣  高橋  等君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        労 働 大 臣  石田 博英君    政府委員        法務政務次官   大坪 保雄君        法務大臣官房経        理部長      勝尾 鐐三君        法務大臣官房司        法法制調査部長  鹽野 宜慶君        法務省矯正局長  大澤 一郎君        法務省保護局長  武内 孝之君        法務省人権擁護        局長       鈴木信次郎君        法務省入国管理        局次長      中村 正夫君        文部政務次官   押谷 富三君        文部大臣官房長  西田  剛君        文部省社会教育        局長       蒲生 芳郎君        文部省管理局長  齋藤  正君        文化財保護委員        会事務局長    宮地  茂君        労働政務次官   始関 伊平君        労働大臣官房長  和田 勝美君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省婦人少年        局長       谷野 せつ君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        労働省職業訓練        局長       松永 正男君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君    説明員        法務省刑事局青        少年課長     安田 道夫君        文部省大学学術        局審議官     村山 松雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○文部省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○労働省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 柴田栄

    委員長柴田栄君) これより内閣委員会開会いたします。  文部省設置法の一部を改正する法律案議題とし、昨日に引き続きこれより質疑を行ないます。  政府側からは愛知文部大臣西田官房長蒲生社会教育局長齋藤管理局長宮地文化財保護委員会事務局長、ほかに説明員として村山大学学術局審議官が出席いたしております。  御質疑のおありの方は、順次御発言願います。
  3. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に引き続いて本法案について二、三お伺いいたしますが、この提案理由説明を見ますると、文部省職員定員を改めて三千八百四人増員する、そういう説明があるわけです。三千八百四人増員して九万四千百四十八人となる、こういうことでございますので、そこで、このこと自体に関連してお伺いしますが、国立学校増員として三千二百十三人増、このうち特にお伺いしたいのは、地方大学医学部付属病院関係増員について、まず御説明をいただきたいと思います。
  4. 村山松雄

    説明員村山松雄君) 国立学校関係増員のうちで病院関係は四百二十四名でございます。
  5. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 四百二十四名ですね。そこで、この地方大学医学部付属病院定員についてのひとつ文部大臣としてのお考え、所見をまず基本的にお伺いしておきたいと思います。
  6. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 医学教育研究充実ということについては、重点を置きまして、特に国立大学医学部の講座、研究施設付置研究所、それから付属病院における研究充実ということが、項目としてあげ得るかと思いますが、もう少し具体的に申しますと、たとえば東大の伝染病研究所を初め、医学系研究所が十六、それから医学部及び付属病院が二十一、研究施設三十三というような研究組織を設置しているわけでございますが、こういったような各大学、あるいは病院付置研究所、それぞれにいま申しましたような目標のもとに必要な体制の整備をいたしたい、こういう考え方で、この定員増を編成いたしておるわけでございます。
  7. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この医学部付属病院が、いまどのような要領で運営されているか、大臣は御存じであろうと思うのですが、これは大きく付属病院医局員を分数すると、いわゆる国家公務員である医局員が、科によってもだいぶ違うのですが、大体三分の一ですね。それから国家公務員身分もなければ、給与も全然支給されていない通称無給医局員と称するお医者さんが約三分の二ですよ。たとえば科によっては五分の四が無給医局員ですね。五分の一が国家公務員で、正式のお医者さんです。五分の四はお医者さんでありながら全然身分も何もない。国家公務員でも何でもないわけです。給与も全然支給されていない。こういう構成で付属病院は運営されている。経営されている。こういう実態があるわけですね。そこで大臣に特にお考えいただきたいのは、もしこのお医者さんたちが、無給医局員がここで引き揚げてしまったら、どういうことになるかというと、約三分の一のお医者さんがあとに残るということだけで、三分の二の大量のお医者さんが引き揚げてしまったら、その病院は何ら運営されない。これは明々白々の事実です。これは今回初めて文部大臣にお伺いする問題ではなく、当内閣委員会で、前大臣に対して、何回もこの問題を繰り返してきたわけです。にもかかわらず、なかなかこの問題はまだはかばかしく解決されてない、こういう問題なので、ひとつ何とかこれは早急に解決してもらいたい。そういう前向きの姿勢でいまお伺いしておるわけなんです。この点をひとつお答え願います。
  8. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) まことにごもっともな御意見でございますが、端的に申しますと、昭和四十年度ではこういったいま御指摘のような関係で四十一名の定員の増加をいたしまして、いわゆる無給副手と呼ばれている人たちの中の一部を定員上の診療要員とすることにいたしたわけでございます。で、いわゆる無給副手と一口にいわれておりますのは、御承知のように、免許状を取得いたしましてから、さらに高度の医学、医術を修得したいという、まあこの希望者のほうからいえば、そういうわけでございますけれども、一面大学病院としては国民皆保険の関係等もございまして、患者が非常に激増しておりますので、自然この人たち要員として使っているというのが現実の状態であります。しかし、ただいま御指摘のような問題でございますので、これを逐次診療の側からみて診療要員として必要と思う者は、できるだけこれを定員化して俸給も支払うようにすると、こういうようにやっていきたいというので、まあ四十年度におきましては四十一人の定員増をいたしたわけでございます。  なお、御承知のとおりと思いますが、いわゆる無給副手実態というものもいろいろございまして、たとえば、総計で申しますと、大ぜいの人数がございますけれども、一週間のうち二日以下、一週間の中で二日かあるいは一日だけ実際の診療に従事しているというような人がほぼ半数くらいいると、こういうような実態でもございますので、一がいに無給副手であるから、その全体を診療要員として制度化するという必要もなかろうと、かように考えておるわけでございます。
  9. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは時間の関係がございますから、いま申し上げるのはひとつ資料として提出いただきたいと思います。きょうここで問題一切解決するわけでございませんから、なお、この問題とは真剣に取り組みたいと思うので、こういう資料をさっそくお出しいただきたいのですが、最近の五カ年間における文部省管下の各大学付属病院で働く医局員の方ですね。これは各大学別に、そうして有給無給か別に、そうしてこれの人員数ですね。さらに教授助教授それから講師助手それから副手、こういう副手のほかに何かまた別に名称があれば、そういう方の名称を付して、それを人員別資料としてさっそく御提出いただきたいと思うのです。  次にお伺いいたしますが、こういう大体三分の一は有給医局員国家公務員。三分の二以上が無給身分は何もない、通称無給医局員と称されておる。こういう制度は全世界じゅうに、まあいろいろ文献などをとって調べてみましたが、どこにもないのですね。日本だけの制度です。これはまことにゆゆしい問題だと思うのです。これは大体の大学付属病院には重症患者が多いのですね。個人病院転々と回って、なかなか病名がわからぬとか、あるいはどうも経過がはかばかしくないと、こういう患者最後期待をかけて付属病院に行くと、まあ施設もいいし、お医者さんもそろっているから、最後付属病院に行くわけですけれども、したがって、例外もありますけれども、総じて付属病院患者さんは重症が多いわけです、数からいって。そこで、そこに働くお医者さんは結局その患者さんに対して専念できるお医者さんでなければいかぬと思うのですね。ところが先ほど大臣も御指摘になったように、中には週で一日か二日ぐらいの人もある。それは中にはそういう方もございましょうけれども、それは無給だからほかにバイトに行くのですよ。それはお医者になれば相当年配になりますし、無資格だから無給だというのなら、これは話はまた別に展開されていくわけです。そうじゃない大学出で、また一年インターンをやって医師免許証をもらって、ないしは、多いのは、さらに大学院に入って四年のコースを終えて、博士号をとっているのも相当おるわけです。にもかかわらず、患者相当責任を持ってやっていかなければならぬ。患者に対する責任相当重大だと思うのですね。これは医師として患者に対しては責任もあるし、義務もあるわけですね。病院に対して云々というよりも、医師として当然患者に対して義務責任を持たなければならない。これは医師として当然なわけです。したがって、たとえ無給であろうとも、身分はなくても当然に医師としては患者に対して責任を持たなければならぬ。これまた当然のことなんです。したがって、そういう年配のお医者さんが多いわけですから、したがって、家族を持っている方が多いわけです。扶養家族をかかえておる方が多い。にもかかわらず、付属病院のほうからの給与が全然ないから、しかたがないからほかでバイトをやらなければ生計費が得られないわけですね。そこで、生活のために、真にやむを得ず市内の私立の病院などに行ってバイトをやる。したがって、病院あとに抜けてしまう、それだけ病院の働くお医者さんの数は減ってしまう、こういう事態が出てくると思うんですね。そこで問題は、こういう三分の二以上の無給医局員があるということを、ほうっておくというお考えはないと思いますけれども、これを私はここで要求しているのは、一挙に解決してもらいたいということを言ってはおらない。たとえば、五カ年ぐらいの年次計画を立てて、漸次だんだん漸減して、たとえば、五年後には無給医局員などは全然一人もいない。そこで、初めてこれが常態に戻るわけですね。日本だけなんですから、こういう制度は。したがって、何とかここでお願いしたいのは、年次計画を立てて具体的に話を進めていただきたい。先ほどの御説明では、三分の二のお医者さんというのは、相当の数になるわけですね。それを四十一人という御説明がございましたけれども、これはもう全くすずめの涙ですね。焼石に水で、何の役にも立たないわけです。ふえないよりはよいでしょうけれども、全国の付属病院では三分の二のお医者さんの数は相当の数にのぼるわけです。それを四十一人ぐらいふやしても対策を講じているとは言えないわけです。  で、ここで特に大臣のひとつ御答弁をお伺いしたいのは、こういう状況であるので、お医者さんが安心して患者に専念できるように、そして有資格者で、しかもさらには有資格者の上に四年のコースを経て、博士号まで取った方も相当多いわけです。りっぱに資格があると見なければならぬわけです。それが身分も全然ない、給与も全然ないということでは、これはどなたがお聞きになってもひどい。こういう制度を知らぬ人がむしろ多いくらいです。そういうことであるので、ここでお伺いしたい点は、早急に年次計画をひとつ具体的に推し進めていただいて、何年か後には無給医局員がないように、こういう焼け石に水のような具体策でなく、何とか前向きの姿勢で近い将来に、これは絶無にできるように、そういう方向でひとつ懸命な具体的な努力をしていただきたい。こういう要求は決して無理な要求ではないと思う。これは当然のことをお願いしておる。なかなかこれは解決しないから、ひとつこの際、名大臣の誉れの高い愛知大臣の時代にこれを解決していく以外にないので、こういうことをお願いしておるわけです。ひとつ責任ある御答弁をいただきたいと思います。
  10. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほども申し上げましたように、まことにごもっともな御意見と存じます。したがいまして、先ほども申しましたように、また御要求のございました資料等も提出もいたします。それからできるだけ年次計画を立てまして、できるだけ御趣旨に沿うようにしなければならない、これは当然の義務であろうと、かように考えております。
  11. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に伺いますが、現状では教授助教授それから講師助手、これは大学によっては多少は違う面もあろうかと思うのですが、私の調べたところでは、ここまでは定員内で国家公務員でいる。それでなおそのそれぞれの定員は、多いところはありますけれども、大体一名くらいだと思うのですね。それから副手などが定員外で法的には何ら身分がない。こういう関係であろうと思うのですが、そこで何とか、教授を何名もするということはむずかしいでしょうが、助教授を一名のところを二名にするとか、講師を一名のところを二名ないし三名にするとか、助手を一名を複数にするとか、こういうことでだんだん無給医局員を解消していく。これはまあ結局定員増以外にないわけですね。定員増ということになると、予算を伴うということで、せんじ詰めると、予算を大幅に文部省は取ればいいわけですね。しかし、これは筋の通った予算要求になろうと思うのですね。お医者さんを無給で雇うということは、これは人道上からもあり得べからざることで、そういうふしぎなことが現実にいま付属病院で行なわれておる、こういうことであるので、ひとつそういう方向で具体的な問題ですけれども、こういうことについてひとつさっそくこれを具体化していただきたいと思いますが、この点はいかがですか。
  12. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) ここ二、三年来、文部省としてもたいへんこの問題については心痛しておったようでございますけれども、先ほども御指摘がございましたように、四十年度にももっと多くふやしたかったところでございますが、この程度になりましたことは非常に私としても残念に思っておるわけでございまして、先ほど指摘がございましたように、学位を取っておる人もすでに相当ございますし、それからこの内容実態に入って調べてみますと、世間では無給副手といわれておりますけれども、実際の中身は、自分でもっと研究したいという人もおるし、それから中には、いろいろの名称で事実上診療の完全な要員になっておる人は相当数ある。その数に対して、裏打ちを制度的にしていかなければならないということは、先ほども申しましたように、当然のことと思いますので、今後努力を新たにいたしまして、御趣旨の線に沿ってまいりたいと思います。
  13. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは時間の関係もございますから、最後に一点だけお伺いしておきますが、現状を調べてみると、優秀なこういう無給医局員の方がみな民間の病院に走ってしまうという傾向相当顕著にあらわれておるのですね。先ほども申し上げましたように、個人病院その他で治療を受けたが、どうもはかばかしくいかない、あるいはまた病名もなかなかわからない、そこであちこち転々としておるうちに病気も悪化する。それで最終的には施設のいいりっぱなお医者さんのおる大学付属病院へみなわれもわれもと集まってくるわけですね。しかしそういう点では、付属病院は高く評価されていいと思うのですが、そういうことになれば、その患者さんの御期待に沿うよう、やはり付属病院には権威あるお医者さんを存置しておかにゃいかぬ、そういうことは当然言えると思うのです。そこで、実力のある名医がみんなただじゃ生活できませんから、したがって、病院を離れる、そういう傾向がぽちぽちあるというならまた話は別ですけれども、相当顕著に最近あらわれておる。これはゆゆしい問題だと思うのですね。そういう事情にありますので、ひとつ有名な実力のあるいいお医者さんが付属病院にとどまって診療に専念できるように、そして患者さんの御期待に沿えるように、そうあってしかるべきだと思うんです。人命を預かる病院として当然のことと言わなければなりません。お医者さんもあっちこっちかけ持ちで寸暇なく飛び回るというのは、お医者さん自体にとっても、これは労働過重になるし、これはかんばしい方法でないし、つい患者に対する目が行き届きかねるわけですね。こういう点からいって、ひとつお医者さんが付属病院を逃げないように、そういう立場からも、先ほど来御決意のほどは伺っておりますけれども、ひとつ可及的すみやかにこういう伊次計画をお立てになって、抜本的にこの問題を解決して世界の水準に恥ずかしくない医療制度を確立していただきたいということを強く要望申し上げまして、私の質問を終わることにしたいと思います。それに対する大臣の重ねての御所見と御決意のほどをお伺いさせていただきたいと思います。
  14. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 重ねて申し上げますが、これは一大問題でございまして、確かに御指摘のような趣旨の線に沿うて考えなければならない問題であると、かように存じますので、あらためてできる限りの努力をして定員をふやし、予算をふやすことに全力を尽くしたいと考えております。
  15. 柴田栄

    委員長柴田栄君) ほかに御質疑はございませんか。——ほかに御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 御異議ないと認めます。  午前の会議は、この程度にとどめます。午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十三分休憩      ——————————    午後二時十五分開会
  17. 柴田栄

    委員長柴田栄君) これよる内閣委員会を再開いたします。  法務省設置法の一部を改正する法律案議題とし、昨日に引き続きこれより質疑を行ないます。  政府側からは、高橋法務大臣鹽野司法法制調査部長鈴本人権擁護局長大澤矯正局長勝尾経理部長中村入国管理局次長が出席いたしております。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  18. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 前回に引き続いて二、三大臣にお伺いしたいと思いますが、この法案に関連して少年法を見てみますると、大体少年法の対象になる少年というのは、犯罪少年とかあるいは虞犯少年とかあるいはまた触法少年と、こういうふうに分かれておるわけですが、ここでお伺いしたいのは、たとえば犯罪少年については、「犯罪の場合、家庭裁判所審判してその措置をきめる。」、この「措置」ですね。それから虞犯少年についても、「罪を犯したのではなく」云々とあり、「将来犯罪のおそれある少年も、家庭裁判所審判をしてその措置を定めることができる。」と、その「措置」ですね。それから触法少年についても、罪を犯しても十四歳未満の者は法律上刑罰を科すことはできないが、「これらの者に対しても家庭裁判所審判でその措置をきめる。」と、こういうふうに「措置」「措置」ということばをつかっておりますが、この措置というのは、具体的に一体どういうことなのか、この点について御説明いただきたいと思います。
  19. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 犯罪少年といいますか、これは家庭裁判所においてその犯行を調べました上、これは起訴するを適当であると考えます場合は、まず検察庁のほうへ事件を送付いたします。そうして検察庁においては——ついでに申し上げますと、これが起訴に値するかどうかということを、これを検討いたしまして、起訴に当たるとなれば、その決定をして、また家庭裁判所へ返す、こういうふうなことをやるわけであります。それから、それに値しないものにつきましては、これを鑑別所へ送る措置をやるとか、あるいはまた事件開始というような措置をとる、これが第一の措置でございます。  それから第二の虞犯少年でしたかね、これは、これに関する措置というのは——もし間違っておりましたら担当から説明をさせますが、裁判所におきましてこれを指導すべきものと考えますときは、やはり保護観察所等へ連絡いたしまして、それで鑑別に移す、あるいはまたこれを家庭へ帰すというような措置をやる。  第三の問題は、やはりこれらについては、これも家庭に帰すという措置もやる、こういうような意味のことが措置として書いてある、こう私は解釈いたします。
  20. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 たいへん御丁寧な詳しい御答弁でありましたけれども、私がここでお伺いしているのは、この措置というのは一言にして言うと、保護処分のことを言うのじゃないですか。保護処分というのはどうして保護処分というか。いわゆる性格の矯正とか、環境の調整によって保護処分をする、こういう意味には解せませんか。この点を説明して下さい。
  21. 安田道夫

    説明員安田道夫君) そのとおりでございます。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そういうことであれば先に進みますが、次に、この保護処分にはいろいろあるわけですね。保護観察とか、養護施設または教護院送致少年院送致、こういういろいろな具体的な方策があるわけです。そこで私がお伺いしたいのは、このほかに実質上の保護的措置が行なわれる。ここで言う実質上の保護措置というのは、一体どういうことか、これを御説明いただきたいのです。
  23. 安田道夫

    説明員安田道夫君) 少年法で規定をしております保護措置は、御承知のとおり少年院へ送致するとか、あるいは保護観察に付するとか、あるいはそのまた保護措置のほかに検察官に事件を逆送いたしまして、刑事処分に付するというような措置がそれぞれございますけれども、そのほかに家庭裁判所では、それらの刑事処分または保護措置の必要を認めません場合には、審判を不開始したり、あるいはまた審判開始した後において不処分措置を講ずるわけでございます。この審判の不開始または不処分内容でございますけれども、実質的な、事実上の保護措置とただいまおっしゃいますのは、おそらくこの審判開始または不処分という形式的な、対外的にはそういう措置をとっておるけれども、事実上のその内容は、その際に訓戒を与えるとか、あるいはまた保護者に引き渡す際に保護者に十分注意をして、将来非行を犯さないように手当をするとか、あるいはまた学校の教師などに連絡するというようなことが事実上なされますので、それを事実上の措置ということで言われておるのじゃないかと考えております。
  24. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、戦後における少年犯罪傾向について二、三お伺いしたいと思います。  警察庁の出しております犯罪統計書によりますと、十四歳以上の少年で、これはちょっと統計古いのですけれども、あとで新しいのをいただきたいのですが、昭和三十三年に刑法犯によって警察に検挙されたものの数は十二万四千三百七十九人、これは十四歳から二十歳未満の少年人口をかりに千とすると一一・一人の割合だ、こういう数字が出ておるわけです。そこでいま申し上げたように、これは三十三年で、ずいぶん古いので、ひとつ最近の傾向を知りたいと思うのです。それでつい最近のでけっこうです、一つだけお示しいただきたいと思います。
  25. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 昭和三十八年の数字がわかっておりますが、刑法犯に当たりまするものは二十二万九千七百十七名、すなわち約二十三万人、戦後最高の数を記録いたしております。
  26. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、昨年のがこういう数字だとすれば、三十三年から六カ年の間に、こういうふうに飛躍的に数字がふえているということになるわけですね。この数字だけあげてみても、少年犯罪は数において相当増加しつつあるということがはっきりしたわけですが、そこでなおお伺いいたしますが、昭和三十三年に刑法犯で警察に検挙された成人を含む十四歳以上の総数、これがこの統計書によりますと五十四万五千二百七十二人で、人口千について八・三人に当たるというので、この一般の成人を含む率に比べると、少年の場合は一一・一というふうになっているわけです。ここで問題なのは、少年の場合は一一・一にもなっており、少年をも含めた全体の比率は八・三、八・三に対して少年だけあげると一一・一ということで、少年犯罪がいかに激増しているかという傾向が、この数字からも見られると思うのです。これは三十三年で、いま申し上げたように古いので、最近の状態を知りたいと思うのですが、これも昨年のがわかっておれば数字をお示しいただきたい。
  27. 安田道夫

    説明員安田道夫君) 八・三人あるいは一一人とおっしゃいますのは、人口千人についての犯罪者率のことでございますか。
  28. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 刑法犯として検挙された成人を含む十四歳以上の総数はこれこれだ。これはいま申し上げたように警察庁の犯罪統計書によるわけです。
  29. 安田道夫

    説明員安田道夫君) 昭和三十三年の刑法犯の検挙人員につきまして、これは人口がふえてまいりますと、犯罪の数もふえてまいりますから、実際の犯罪の動向を客観的に把握しますためには、その人口の千人当たりでもって何人の犯罪者がいたかということを、その割合を見るのが比較的正確な把握ができるということで、人口千人当たりについての比率だと考えます。  昭和三十三年は、確かにおっしゃいましたように、成人を含めた全部で八・三人、少年につきましては一一・一人でございます。昭和三十八年におきましては、少年は千人につきまして一四・一人にふえております。それから成人は昭和三十三年当時と同じで、八・三人の犯罪者率になっております。これは成人を含めて全部で八・三人でございまして、成人だけで見ますと、昭和三十八年の犯罪者率は七・二人でございます。したがいまして、成人につきましては犯罪者率は大体横ばいの傾向、あるいはまたたとえば昭和三十七年のごときは、犯罪者率が全体で八人、成人だけで見ますと六・九人という数字でございますので、成人につきましては、どちらかといいますと、横ばいないし減少の傾向にありますけれども、少年はそれに反しまして犯罪者率も漸増しているというのが実情でございます。
  30. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま三十八年の場合を御説明あったわけですけれども、千人について少年が一四・なにがし、成人だけが七・二。そうするとまさに二対一の割合で少年の比率はぐんと高いわけです。これは横ばいといまおっしゃいましたけれども、三十三年の場合は、少年の場合は千人について一一・一人ですから、一一・一から一四・というふうにだんだん上がっておれば、横ばいではなくて上昇の傾向にあるということははっきりしているわけです、この数字からだけいえば横ばいじゃなかろうと思うのです。三十八年以後は横ばいというならまだ数字を上げておりませんから話は別ですが、その点はどうですか。
  31. 安田道夫

    説明員安田道夫君) 私の申し方が不十分で、あるいは誤解されたかと思いますが、私も、成人につきましては横ばいないし減少の傾向にあるのに反して、少年につきましては、ただいまの数字のように、漸増、ふえておるという現象にあるというふうに申し上げたわけでございます。
  32. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 はい、わかりました。そこで、あと、また調べた詳しい数字がここにたくさん用意してあるのですけれども、時間の関係で一々数字を読み上げることは差し控えますが、この数字から推していくと、いまおっしゃった点からもそうですが、さらにこれからあげようとする統計から要約すると、少年犯罪の増加率が成人のそれを上回っているということは、もうここではっきりとしてきたわけですね。そこで、この傾向はまことにゆゆしい問題だと思うのですね。将来を背負って立つ少年犯罪が成人のそれの犯罪をどんどん、どんどん比率の上でも上回っておるということは、これはゆゆしい問題だと思うのですが、そこでこの問題に対する、法務省としては一体どのような対策を講じつつあるのか。やはりもうこれはやむ得ないとあきらめるわけにはいかぬと思うのですね。法務省は責任上、当然抜本的な対策を講じて、これをひとつ何とかして犯罪の減少の方向に持っていかなければならぬ、こういう結論になろうかと思います。そこで、そのことに対する大臣のひとつお考えをお聞かせいただきたい。
  33. 高橋等

    国務大臣高橋等君) この少年非行を防止します対策というものは、その原因を的確に把握して、適切な施策を講じる必要があるということは、御説のとおりでございます。ただ、法務省のみでなしに、これは政府をあげて現在の重要な問題として処置をいたしていかねばならないし、いたしておるわけでございますが、ことに教育、文化、社会福祉、あるいは家庭のしつけなど、あらゆる分野における国民全体のふだんの努力というものも協力をいただかないと、これはなかなか思うようにならない問題であると考えるのであります。  刑事政策を直接担当いたします法務省といたしましては、第一に、いわゆる少年非行の発生の温床となっておる社会悪というものを除去することを考えなければいけないというので、暴力犯罪とか、あるいは不良文化物ですとか、こうしたものの厳重な取り締まりを一そう推進をいたしております。  また、第二には、非行化しました少年につきまして、これを改善更生をさして、その再犯を防止するということは、これは非常に大切なことだと考えるのでございます。検察庁をはじめとしまして、矯正保護関係の各機関の処理、処遇をより適切にならしめねばなりません。ただ、少年院等の施設につきましても、私はもう少し形の、いまのものに加えて、少年に合ったようなものをつくっていくくふうをより一そうやらにゃならぬのじゃないかというように考えております。  それともう一つ、この種犯罪の原因を科学的に調査解明すること、これは非常に必要なことでありますが、私は少年法に関しまする法制につきまして検討を加えまして、要するにこの非行少年たち責任を持ってもらう、すなわち、これは私の私見的なことを申し上げるのでありますが、いま、こういう線で法務省で検討を続けておるという線は、少年が、いわゆる二十歳以上にならぬと青年にならない。ところが、終戦後の体力あるいは知力の発達というものは、これはやはり二十歳でなしに、十八歳以上を青年ということに考えていくことのほうが、これはもう世界の趨勢でもあり、日本としましてもそのほうが実際に合うのじゃないかという考えを持っておるのでございまして、そういうことを、一面、とにかく十八歳以上の者を青年と扱うことによりまして、少年たちに自己の社会的責任というものの自覚を促すことができるのじゃないだろうかということを考えて、いろいろ検討をさせておるのでございます。でき得ればこの国会に提案して、十分なる御審議をお願いいたしたいと考えたのでございまするが、何ぶんにも、まず裁判所でありますとか、あるいは社会の一部、心理学者その他、各方面からの相当な反対もございます、これには。また、非常な積極的賛成ももちろん多いのでございます。もう少しそうした方面の人々に、私たちが考えておりまする真意を了解をしていただく必要がある。これは一度きめましたら、非常に根本的な制度なものですから、了解をしてもらう必要があるということと、こうしたことをやりまする人々の矯正保護施設というものについて、もう一度検討をせにゃならないという考え方もありまして、あわせて、いまそうした線での検討なりあるいは世論に訴えるというような方向でやっておるのでございます。ことしの国会には間に合わなかった。これは私としましては、実は就任以来、私これはぜひそうありたいと考えておったのでありますが、これは非常に遺憾であると考えておりますけれども、これは念には念を入れる必要がありますので、この際は見送ったのであります。そうしたことも考えながらやっていきたい、こういうつもりでおります。
  34. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それじゃ、それとも関連して、犯罪増加率が大きいのは、少年各年齢層の一体どの辺が高いのか、こういうことを犯罪統計書によって調べてみたわけです。そうしますと、これも詳しい数字はございますけれども、数字は抜きにして、それから要約すると、結局、中間年齢層が非常に高いということの数字が出ておるわけです。で、これは申し落としましたが、二十九年から三十三年の五カ年の統計の総括がこういうことであったわけです。したがって、これは古い統計ですから、ひとつ最近のがあればお知らせいただきたい、こういうことで、お手元になければ、あと資料として御提出いただきたい。それから次に高いのは年長ですね。十八から十九の年長少年で、十四歳から十五歳の年少少年がここでは低いことになっておる。しかし、ここで注目すべきことは、三十一年から年少少年層の増加が目立っておるわけですね。したがって、この点についても、各年齢層のこういう傾向で新しい資料を出していただいて、それもそうだということになると、大体の傾向がわかるわけですが、そこでまだ判断は、そういう新しい最近のものはどうかということをお聞きした上でないと、判断しにくいわけで、そこで新しい傾向をひとつまずお示しいただきたいと思います。
  35. 安田道夫

    説明員安田道夫君) 刑法犯につきまして、警察の検挙人員で御説明申し上げたほうがわかりやすいと思います。その検挙人員でございますが、この少年を三段階に分けまして、年少少年、中間少年、年長少年と区分いたしますと、十四歳、十五歳の年少少年の検挙件数が一番多いわけでございます。六万六千人という数字になっております。その次に多いのは年長少年、すなわち十八歳代と十九歳代でございまして、五万八千人となっております。それから次が、一番少ないのが中間少年の十六、十七歳代でございまして五万人となっております。しかしこれも先ほど申し上げましたように、少年の年齢層別のいわゆる人口数との対比で見てみませんと、例のベビー・ブームの関係少年の人口の動態が非常に変わってまいります。そこで、犯罪人口千人当たりの犯罪者率でこれをさらに詳しく見てみますと、犯罪者率が一番高いのは年長少年でございます。すなわち千人中十六・三人という高率を示しておりまして、その次が年少少年の十三・四人、それから中間少年の十三人という現象になっております。しかし、これが最近の傾向としてどのように動いてきたかということを昭和三十一年と対比してながめてみますと、犯罪者率での増加は年少少年が二・四倍になっておりまして、一番犯罪者率の増加率が高いわけでございます。次いで中間少年の一・五倍、それから年長少年の一・二倍ということで、結論的に申しますと、犯罪者の率が一番高いのは年長少年でありますけれども、増加の傾向で見ますと、年少少年の増加率が最も高いという現象になっております。
  36. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、この問題でお伺いいたしますが、少年犯罪の行為の質ですね、いわゆる罪種といいますか、この問題について、これも古い三十三年における状態を見ますと、少年刑法犯の全刑法犯に対する構成比率、こういうものを見ますると、いわゆる少年犯罪者の頻度ですね、これは暴力的行為を主とする、そういう幾つかの罪種は一々申し上げませんが、それとか窃盗罪、それから軽犯罪、こういうものについて見ると、いずれも少年の刑法犯が平均値を上回っておる。こういう傾向があるわけです。特に注目しなければならないのは、最後の性犯罪の半数以上、いわゆる五四%が少年である。こういう傾向が実にここにはっきりと数字の上で出ておるわけですね。これはゆゆしい問題でまことに憂慮にたえないと思うのです。しかし、憂慮にたえないというだけではどうにもならぬわけで、憂慮にたえないのをひとつ何とかここで法務省で抜本的にひとつこれを減少の方向へ持っていかなければならぬ。したがってこういう傾向に対してあわせてまた新しい傾向はどうなのかということをお示しいただいて、そうしてこれがいわゆる最近でもそうだということになると、いよいよ引き続いて少年犯罪は上回っているということになりますから、そこで、これに対してはいろいろと抜本的な対策を講じなければならないということになるわけです。  そこでまずお伺いしたいのは、最近の傾向はやはり同じような方向へ行っておるか、一々こまかい数字は要りませんが、傾向をひとつ御説明いただきたい。
  37. 安田道夫

    説明員安田道夫君) 量的な問題は先ほど説明したとおりでございまして、犯罪内容のいわゆる質的な特徴はどうなっておるかという点につきましては、ただいま御指摘のとおりいわゆる凶悪ないし粗暴犯、すなわち暴力的な犯罪あるいはその性犯罪の増加の傾向が顕著でございます。ただ幸いにして、暴力的な面につきましては、数年前と比べますと、かなりの増加率になっておりますけれども、ここ一、二年の傾向といたしましては、その増加状況はそれほど顕著なものはございませんで、年齢層によってみますと、前年に比べて若干減少しているような向きもございますので、その点は、そのような状況になっております。
  38. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 以上幾つかの問題についてお伺いしてきたわけですけれども、こういういままでのことを要約すると、戦後における少年犯罪についての要約ということになると、これは一言にして、量的にまた質的にも憂うべき状態で上昇しているということ、特に注目しなければならないのは、たとえば十四歳、十五歳の年少少年の層において、こういう犯罪が急増しつつあるということ、特にまた青少年犯罪の増加が先ほど申し上げた暴力的行為を主とした犯罪とか、あるいは性的犯罪、こういう点において特に顕著であるということ、こういうような点が要約として申し上げ得ると思う。いずれの例をとってみても、これはゆゆしい問題であるので、これはもちろん法務省が中心になっていろいろ対策を講じられていると思うが、こういうことを、要約していま申し上げたようなことが脅えると思うので、この点に対して法務大臣としてはどのように把握され、お考えになっておりますか。このことをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  39. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 先ほど答弁申し上げましたように、これは政府機関全体としてやっていかねばならない問題でございますが、いま御指摘の点は特に重要でございます。そうしてこれに関しましては、家庭教育というものについて大きな期待をわれわれは持っているのでありますが、それとともに、教育、この点でいろいろな問題があるように思います。教育の問題あるいは暴力団とのひもつきの問題、あるいは不良出版物についての取り締まりの強化、こういうような方面でやっていく以外に方法はない。いろいろな施策は、社会を明るくする運動でありますとか、あるいは三十歳くらいの人々にこの少年を指導させるような方法を講じるとか、いろいろやっておりますが、根本は私は教育の問題である、そう考えております。
  40. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いま御答弁のあったように、これはもちろん立場上法務省が中心になって、こういう問題の対策を推進していかなければならない、これははっきりしておるわけですけれども、文部省とかあるいはまた厚生省、そういうふうに各関係の省庁と緊密な横の連係をとっていく、そのことについては具体的にいまことばを裏づけるように関係各省庁でこういう少年対策について定例的にそういう会が持たれておるのかどうか、連絡のために。連絡協調一体となってやるために。そのことをお伺いしたいと思うのですが、さらには、いまちょっと御指摘があったように、教育と言っても、家庭教育もあるし、学校教育、社会教育とこういう面はむろん一体となってやらにゃいかぬし、そういうことが統一的に総括的に並行して強力に進められて、初めてこういう非行少年の教育、保護育成の道が講ぜられる。これは言うべくしてなかなか容易な問題でないことは、何人もこれを認めておるわけですけれども、むずかしいから一そうそういう抜本的な対策を強力に押し進めなければならぬということが言えると思うのですね。こういう点についてひとつ御説明いただきたい。
  41. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 政府全体の問題としまして、総理府に御存じのように中央青少年問題協議会というものを置きまして、常時青少年の指導育成につきまして——これは非行少年だけではもちろんありません——協議をいたしますとともに、各都道府県、各市町村にも設けられておりまする地方青少年問題協議会を中心として関係団体でやっております。これには法務省はもちろん各省の関係官が寄りまして、いろいろと施策をそこで連絡をいたしましてやっておるようなわけでございます。それとともに、法務省といたしましては、検察庁とか少年院あるいは少年鑑別所、保護監察所などはあらゆる機会を利用しまして、適宜関係の官庁をはじめ、地域社会との連絡協調を常に非行少年問題についてとって努力をいたしております。
  42. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは時間の関係もございますから、次に、法務局関係について、この提案理由説明に基づいて二、三お伺いしようと思いますが、この登記事務の増加に対処するために、登記専門職員を増員しようとしておるわけです。このことは今回だけでなく、ここ数年来、大体二百名程度増員が毎年行なわれてきたと思うのです。にもかかわらず、一人当たりの事務量については依然として増加しつつある傾向だと、こういうことが言えると思うのですね。今回の改正ではわずか八十名増員しておるわけですけれども、さきの国会での法務省の答弁としては、たしか四十年度に七百十一名要求するのだという意味の御答弁があったと思うのです。しかし、実際にこの法案に提案されているのはわずか八十名であるわけです。これは四十年度の問題として法務省としては七百十一名要求されたのかどうか、要求されたものが削られて八十名になったというなら話はわかりますけれども、前の国会で七百十一名要求するということをたしか答弁なさっていますね。したがって、国会での答弁どおり七百十一名を要求されたかどうかということ、そしてどういう事情でこれが八十名になったのか。七百十一名が八十名というと、相当飛躍的に少なくなっておるわけですね。これをひとつわかるように御説明いただきたいということ。  それと登記事務の能率化のためには、やはりいまのように毎年二百名くらい増加してきた。今回は少なくて八十名ですが、やはり人員の増加だけではなかなか解決しないと思うのですね。人員増とともにそれと並行して、たとえばすぐれた近代的な事務機械を算入するとか、いろいろ具体的な方策があろうかと思うのです。したがって、定員の増ももちろん一つの大事な要素であるし、いわゆる近代的な事務機械を導入するとか、そういう具体的な方策を立てて、それを並行してやって初めて成果が上がろうかと思うのですね。したがって、そういうことについての御説明を合わせていただきたいと思うのです。
  43. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 私が法務省の仕事をやります一つの大きな目安としまして、この法務局関係、ことに登記所の関係は、直接国民の権利義務につながる法務省としても唯一の窓口であるというようなことで、この点はどうしても改善をせにゃならぬという非常な信念で当たっております。それでことしの予算要求額は七百何名でなしに五百六十名いたしました。そして八十名というものが認められたのでございますが、御承知のように、政府におきまして新規増員については、来年度はこれを見合わすという決議が閣議でなされておるわけでございます。これは公務員の給与ベース等の引き上げ等に伴いまして非常に人件費がふえてまいったというようなことで、何とか差し繰ってやれるものはやろうじゃないかということからここに起こった問題でございます。が、私はそのときに法務省の仕事の中でいろいろと現業的なものがある、ことに地方の登記所の問題は、これはもう現業と同じように扱っていかなければいけないのだということを保留をいたしておるのでございますが、そういう関係もありまして五百六十名の要求をしました。しかし、実際に増員は八十名にとどまりましたが、その八十名にします対策といたしまして合わせて能率機具、すなわち謄写機とかあるいはスクーターその他、そういうものを従来の三倍、毎年認めておりまする三倍に近い量を合わせて認めまして、そしてこの能率化に合わせまして、人員のこのたびの八十名認められた不足をカバーしていくということをいたしました。それとともに能率をあげますために従来ともに登記所にありまするいろいろな原簿の近代化をやりまして、いろいろといまやり直しをやっている最中で、これは年々進めております。要するに能率を上げるためのことをやっております。  それといま一つ、法務局の建物というものにつきまして非常に老朽のものが多い。これは事務能率の上に影響がはなはだしいし、また原簿類のほかにも心配がありますので、十カ年計画をもちまして、これらの老朽庁舎を全部新営するという計画を立てまして、これも来年度は第一年度として着手をいたすことにいたしたのであります。かたがたこういう点を総合いたしまして、まあ少々人をふやしていきましても、実は御指摘のように、非常に事務量がふえてまいっておりますというような関係で、人をふやしただけではどうにもならぬ。それで機械化とか、あるいは事務所の改造とか、いろいろ能率を上げる方向に考えながら、増員を合わしていくという考えでございます。ことしの八十名は、これは少なきに失すると思って非常に私もがっかりいたしておるのでございます。事情を御了承をお願いいたしたいと思います。
  44. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまお伺いしたように、定員増加とか、その他近代的事務機械を導入するとか、あるいは内閣全体が方向をきめておる行政事務の簡素化、効率化、民主化、こういう基本方針がきまって、特に効率化、能率化ということをいま御答弁あったわけですけれども、それにしても、前の国会での七百十名要求するのだといって、それが実際に五百六十名の要求、その五百六十名、それが正当な要求としても、これは今度は八十名になって減っておる。そういうのは、能率化で何とか埋め合わせていきたい。ちょっとそれでは理解しがたいのですが、いま庁舎が老朽化しておるので、これについては、五カ年計画、十カ年計画で全庁舎の整備拡充を来年度からはかりたい、こういうことをいわれておるのですけれども、さきの国会でも同じことを、その当時の大臣がやはり同じことをいっているのです。大臣から五カ年計画、または十カ年計画で庁舎の整備拡充をはかりたい、こういうことを前の国会でも大臣答弁されておるわけです。全く同じことがまたこの国会で答弁されてやはりさっぱり具体化していかない。こういうところにも問題があろうと思うのです。いま大臣、昨年の通常国会の議事録をごらんいただくと、大臣がいま発言されたと同じような発言をされておる。それと、ここで特にそのことに関連してお伺いしたいのは、この計画は少しでも実行に移されておるというなら話は別ですが、具体的に少しは進んでおるのか、どうかということ、この十カ年計画なり五カ年計画が。これは庁舎が云々の問題ですけれども、さきの定員の問題で登記関係の職員の増は、もちろん登記事務が激増しておりまするから、これは定員増は確かに必要なわけです。そういうことに隠れてしまって、もうたいへん必要と思われる部課の、たとえば人権擁護関係の職員の増員がさっぱり行なわれていない。やはり登記事務関係職員の増ということにわれわれ決して反対している者ではない。当然にこれは必要だと思う。それだけに増員が向けられて、やはりそういう点に隠れてしまった部課があろうと思うのです。その例として、ここにあげられる人権擁護関係の職員については増員が考えられていないのかどうか、これは考えられておるけれども、まだそれに至っていないのか、どういうわけか、結論的には人権擁護関係の職員はさっぱりふえていないということ、これもやはり大事な部門を担当しておるわけで、必要な労働力に見合う定員は当然に要求されなければならぬと思いますね。そういう問題と、いま重ねてお伺いして老朽庁舎のいわゆる増改築十カ年計画、こういうものの実現のいわゆる緒が開かれておるのかどうか、具体化はどうか、こういう点について明らかに御説明いただきたい。
  45. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 先ほども申し上げたつもりですが、来年度、すなわち四十年度から実施をいたす。ですから、今度の予算に十カ年計画予算が出ております。それを初年度といたしましてこれからやっていく、できれば、将来はこれを五カ年計画に縮めていきたいというつもりで、とりあえず十カ年計画、これはもう実行に移されたわけであります。  人権擁護関係の職員の増は七十名の要求をいたしましたが、今度の政府の申し合わせでこれが成立をしなかったことを非常に私も遺憾に存じておりますが、他の予算関係におきましては、人権擁護関係につきましてもいろいろと配慮いたしてやりいいようにはしておるつもりでございます。
  46. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、人権擁護関係の職員にも十分意を用いておるところであって、現に七十名要求したけれども、ゼロであったということであれば、ひとつこういうふうに各面にもちろん配慮されておるとは思いますけれども、われわれの目で見ると、たとえば人権擁護関係の職員の増員は緊急に必要ではなかろうかと、そういうふうに見られますので、その点ひとつさらに強力にこの方向で進めていただきたいということ。  それといま十カ年計画、新年度にも予算化しておるので、もう四十年度から実施するんだということ、それについての予算はどのくらいですか。
  47. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) ただいま大臣が御説明申し上げました昭和四十年度から開始されます登記所の十カ年計画、庁数にいたしまして三百三十六庁、総額にいたしまして約三十億で、初年度といたしまして二億九千万が入っております。
  48. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 人権擁護関係増員につきましては、御趣旨もっとも、私も同感なんでございまして、法務省としましてなお努力を将来続けていきたいと思います。
  49. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 関連。いま伊藤委員が法務局の定員増の問題について伺ったわけですが、私は法務省の設置法が国会に出ますたびに、この問題を取り上げて、そのときそのときの法務大臣に対して伺っておるわけなんですが、これは私のところにきております登記事務量と法務局定員の経過というので数字が出ておりますけれども、これを見ますと、登記件数というのは六倍くらいにふえているのですね。それで定員というのは一割くらいしかふえていないのですよね。非常なアンバランスがあるわけですね。こういう数字的にはっきり出てくるのは、法務局の登記事務と通産省の特許庁の関係、この二つです。この数字はあまりにもはなはだし過ぎる、しかも今後まだまだこの登記件数というのはふえていくことははっきりしておるわけですね。そういう場合に、あまりにもはなはだし過ぎると、この差が。昨年も二百人程度ふえ、その前の年も百人程度ふえたんですが、それにしても、毎年一人当たりの事務量というのは、件数というのはずっと上がってきておるわけですね。私は、いま七百何名という要求をなさったという話なんですが、これは二万か三万程度ぶっつけるべきじゃないかと私は思うんです。七百とかなんとか、こまかい数字を出されるから、遠慮したような数字を出されるから、こういうことになるんじゃないかと私は思うんです。ですから、これで行ったら当然二万や三万程度の人員増を要求しても何らおかしくない。その程度のかまえでやらないというと、いつも解決しない。私はこの定員関係を五年やっておるのです。法務省の定員についても五年やっております。何といってもこれでは法務大臣、これは説明が私はつきにくいし、実際現地へ行って見るというと、全国の各地の登記所を回って見ますと、これは容易じゃないですよ。そこで大臣にお尋ねしたいんですが、登記所へいきますと、いろいろな人が仕事をしていますね。一緒になって、町役場の吏員も入って仕事をしていますね。私は登記所の職員かと思って、ちょっと見てみると、登記所の職員と同じような仕事をしているから聞いてみると、そうじゃない。役場の吏員ですね。それから、司法書士、事務職員ですね。どこでも相当入って仕事をしていますよ。一体登記事務というのは、これはどういう方針でおられるのか。私どもの承知しておる限りでは、登記関係に従事しておる職員というのは七千名ちょっとだという。それに数倍する人たちが応援をしている。それは役場の吏員であったり、あるいは司法書士であったり、その司法書士のところで使われている事務員であったりしている。一体そういうものがあるから定員増というのは七百名前後要求すればいいんだというお考えなのか。私はいま国の公務員の仕事ぶりから見て、ここだけがどことも非常に違っておるのですね。登記所だけが旧態依然たるものですよ。戦争前から、昔は役場にも、あるいは市役所の入りい口にも代書士というのがおりまして、いろいろ手伝ったものです。しかし、いまはそういうものがいないんですよ。様式がはっきりしていないです。ですから、登記所の関係については、登記所の職員の周辺に数万の人たちが手伝っている。それでいいんだというお考えなのか、その点をお尋ねしたいですね。
  50. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 基本的な問題につきましては、大臣から御説明していただきますが、予算要求の数字的な問題につきまして、私から概略御説明さしていただきます。  御指摘になりましたように、事務量が約五・三倍、最近十カ年間に増加いたしております。人員の増加はたしか一九%程度の増加だと承知いたしております。そこで、いま御指摘のありました部外者応援の数字、これも延べにすれば四十万をこえるのではないかと私記憶いたしております。もちろん登記事務、国民の権利義務に関する問題でございますので、部外者の応援はこれをなくするという方向で当然ものは考えなくちゃならぬと思っております。そこで、予算要求に当たりまして、どのような基本的な積算をやるかということにつきまして、いろいろ部内でも研究をいたしておりますが、一応全事件数というものを基礎に置きまして、これを登記所の職員が一人当たりの担当能力というものをどの程度に押えるかということにつきましては、全国的に一応中級程度の登記所の中級程度の職員の能力というものを調査いたしまして、そして一人当たり年間何千件、あるいは何件処理できるかという数字を一応はじくわけでございます。それを一応全事件数で割りますと、所要人数というものが出るわけでございます。その中から、すでに定員として認められております七千余名、これを差し引いたものが一応考え方からいえば必要な増員要求数という数字が出るわけでございます。さらに、それにつきまして、御承知のように、甲号事件と乙号事件というのがございますが、いわゆる謄抄本の事務——乙号事件でございますが、これにつきましては、機械化に乗り得る事務でございますので、これについては、謄写ファックス等、いわゆる機械をもってできるだけ処理していくということで、機械によってどの程度人員がさらに節約されるかという数字をはじくわけでございます。さらに、ある程度の超過勤務を職員にお願いをして、その超過勤務を月に何時間やる、それによって差し引き人員、さらに本省といたしまして、中央あるいは地方の研修によって職員の事務能率の増進をはかっておりますので、それらもある程度加味いたしまして、結局、差し引いた数字が五百六十名近くになったという、そういう一応数字的な考え方をしているわけでございますが、御指摘になりましたように、非常に忙しい庁もあれば、比較的忙しくない庁もあるようでございますので、これはさらに人員の適正な配置をはかって、あるいは機動力を持たして、さらに粗悪用紙でコピーに乗りにくいものは、これを年次計画によってりっぱな用紙にかえていく。あるいは不動産登記法の改正によって事務能率の簡素化をはかっていくというようなことで、事務能率の方法をできるだけ考えていきたい。それからなお、いま御指摘がありましたように、出張所等非常に狭いところがあるわけでございますが、これらにつきましては、十カ年計画を営繕によって環境の整備を行なっていくというような、各方面からできるだけ全般として能率があがるようにという考え方で、一応予算要求をしているような次第でございます。
  51. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 御指摘の点は一々ごもっともなところでございます。法務省としまして、部外者の応援というものはきわめて好ましくないことであるという結論を持っております。したがって、これを一時に実行することは困難でございますが、予算措置を講じながら、これを徐々にそうした方向に乗りかえていくということを考えております。その他、先ほど来私から御説明を申し上げましたように、機械化の問題、あるいは庁舎の問題等を整備いたしまして、できるだけ能率のあがるようにいたしてまいりますが、人員の点が非常に重要であることはよく認識をいたしております。ことしは、政府は、先ほど申し上げましたように、人員をふやさないという方針を立てております中で、八十名というものを予算化したということで、登記所の仕事につきまして、十分積極的な配慮を持っているのだ、しかし、増員も思うようにいかなかったのはそうした事情であるということを御了承願いたいと思うのであります。この問題につきましては、御指摘の点に従って、将来ともに努力を続けるという強い決心と方針を持っていることを申し上げておきます。
  52. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 登記所の場合は、二重の意味で問題があるわけですが、仕事の量に対して人員が足りない、どうして足りないかという点が一つ。それを外部から人の応援をお願いしているということ、この二つあるのです。そこら辺をはっきりして解決に当たっていきませんと、毎回設置法が出るたびに、同じようなことを論議しなければならない。いま、延べ四十万の外部からの応援というのですが、五十万と言われ、四十万と言われるのですが、これは司法書士の者も入っておるのですか。
  53. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) いわゆる司法書士の応援も入っております。
  54. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 おかしいとお思いになりませんか。
  55. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 御指摘のとおり、いろいろ疑惑の目をもって見られるおそれもございますので、その点につきましては、極力解消をしたいという決意を持っております。
  56. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 とにかく、国民が窓口へ行って見ると、中には公務員でない人が一ぱいいて、仕事をしている、台帳を握っている、台帳を繰っている、仕事をしているのですよ、手伝いをね。こういう役所が、一体あるのか。公務員が仕事をしている日本の役所の中で、それと同じくらいの人員が来て手伝いをしている。そういった役所がほかにありますか。これは私は旧態依然としていると言うのですよ。昔は、それはありましたですよ。しかし、いま、どこへ行ったって、役所の中で、公務員が足りないからといって、年間通じて四十万から五十万という人が、公務員が仕事をしているその中で手伝っている。国民は外ですよ、受付の外におる。その人たちは中で働いておる。そういう役所はないですよ。だから、先ほど言ったように、そういう問題について一体どういう考え方で今後行かれるのか。大臣は、そういうことは逐次なくしていきたいようなお話ですけれども、なくならないですよ、これを見てみたって。ですから、私はいま申し上げたように、登記所の人間が足りない、たいへん足りない。で、そのたびに、外部からたくさんの人が手伝ってあげなければならない。一日当たりにしますと、二千人から二千五百人程度の人が、手伝わなければならない。通産省の特許庁の場合には、事件が延びていくだけですよ。手伝っていないです。それだけたまっていくというだけの話なんです。こっちのほうはたまっていくでしょうけれども、たまっていくだけでは解決しない。たくさんの人が手伝って、中で仕事をしている。だから私は、そういう役所はほかにないと言うんですよ。そこら辺をはっきりしてもらわなければこの問題は解決しないですよ。機械化がどうだとか、スクーターがどうだとか、庁舎がどうだとかという話がありましたですけれども、どうもいままで私はこの定員の問題についてずいぶんやっておりますけれども、特に法務局の定員の問題についての考え方がはっきりしない。もう一ぺん、その点をはっきりしてもらいたい。
  57. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 若干補足的に説明さしていただきたいと思います。外部の応援を頼むということ、これをなくするということにつきましては、鶴園委員の御指摘のとおりでございます。現在、登記所のほうでいわゆる応援を頼んでいるという実態を申し上げますと、いわゆる乙号事件の謄抄本につきまして、登記簿から写し取って、それに対してでき上がったものを登記官吏が認証をする。その認証前の登記簿からの写しの仕事につきまして、司法書士の事務所等から来てやっているという実情でございます。これももちろん、本来的には、登記官吏が全部写し取って作成しなければならぬわけです。その点については、われわれとしてもなくさなければならぬと思っておりますが、仕事の実体としては主として乙号でございまするが、それを解消する一つの方法として、複写器を全国に十分に配置いたしたい。現在登記所が約手正百六十ばかりございますが、ようやく数年来、極力、乙号事件について活用される複写器の要求を続けておりまして、おおむね三分の二の出張所には、全部複写器が配置されるという状況にまでこぎつけておりますが、そのほかにも、私のほうとしても、予算の執行上、できるだけ、出張所に一台と限らず、必要であれば二台、三台という複写器を配置して、謄抄本の仕事についても、そういった部外の応援を一日も早く解消する方法の一助としたい、このように考えております。
  58. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 念のために申し上げておきますと、いま、外部の応援を逐次なくしていきたい、複写器も備えていくということなんですが、これはやはり人員増と見合ってそうなっていかないというと、応援は逐次断わるわ、人員はふえないわで、さらに一そう過重な仕事をしなければならないということになっては、これは何にもならぬわけですから、その点は十分ひとつ、定員の増と、外部の応援を少なくしていくという問題とからみ合わせて処理していっていただきたいというふうに要望しておきます。もうちょっと大きな定員要求したらどうですか、一万か二万くらいの定員を。遠慮する必要ないじゃないですか。七百名なんというちっぽけな問題じゃなくて、びっくりするくらいな大きなものを。やはりそれくらいな考えがないというと、これはなかなか、六百名くらいふやしてやろうかという調子の、いま定員関係の取り扱いの状況になっておりますね。ですから、私は、やはりもっと大きな数字を正直に要求されたほうがいいのじゃないかというふうに思いますけれども、あまりにひど過ぎるですね。  それから、登記所へ行って見ますと、臨時職員というのがあるんです。公務員らしくない顔をしておられるから、聞いてみますと、臨時職員だと言うのですね。で、聞いてみると、一元化の作業です。とにかく一生懸命やっていますよ。どこへ行ったって大体おりますね。聞いてみると、二年、三年という人がいるんです。一体、二年、三年と、こういう、ある意味で恒久的な勤務というものがそういう臨時職員みたいな形でいいのでしょうか。
  59. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 御指摘のとおり、いわゆる臨時職員が、一元化の作業その他の仕事で採用されております。十分御承知のことだと存じますが、いわゆる一元化作業員につきましては、法務局を指定いたしましてやっているわけでございます。で、一つの法務局の管内でも、どこの出張所、どこの出張所というものを指定いたしまして、それを半年あるいは一年というところで採用いたしまして、さらに、それを終わりますと、次のところへその仕事を移していくという仕組みになっているわけでございますが、その場合、臨時職員として採用されている職員の中に、きわめて優秀な職員もいるように思われるのでございますが、そういう職員につきましては、ある法務局の仕事が終わったからといって、そこでやめてもらうと、かえって私らのほうとしても不便でございますので、そこを何とかこちらからもお願いしまして、遠距離になる場合もございますが、次の作業のところへも移っていただく。そういう形で二年、三年という職員が少なからずおるかと存じます。もともと一元化というのは、御承知のように、十カ年計画、しかもその遂行の過程において対象庁が移っていくというようなところで、一応臨時的な性格ということになっているわけでございますが、それらの職員につきましては、増員があった場合あるいは欠員等があった場合、あらゆる機会をつかまえまして定員の中に組み入れていくと、こういう措置を極力とっているような次第でございます。その方針は今後とも持続されると、このように考えております。人事院等の関係もありますが、その辺も十分人事院も理解をして協力してくれるものと考えております。
  60. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 確かに二年、三年とやっているうちに熟達してまいりますし、なかなか登記の事務というのはじみな仕事ですね。ですから、やっぱり高等学校出て上級職の試験を通って登記所に入ってくるというのは、ほかの仕事に比べて一そう困難になっていると思うのです。そういう場合に、二年、三年あるいは四年というふうに臨時職員でおるそういう人たち定員の中に入れていく。定員が増加になった、あるいは余り定員がある場合に入れていくという方向を、今後やはりどしどしやっていくべきじゃないか、こういうふうに私は思います。四百円くらいの賃金で二年も三年も四年も臨時職員では、これはどうも政府の雇用としてはおかしいと私は思いますですね。
  61. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) ただいま御指摘ございました国家公務員の上級、中級あるいは一般の試験に合格している者につきましては、たしか最優先的に定員に組みかえている、このように承知いたしております。
  62. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 もう一つ伺いたいのは税通ですね。これは法務大臣、いつもぼくは言っているのですが、どうなさるおつもりですか。この税通は、歴代というか、平賀民事局長、それから歴代の法務大臣が何かやめるような話をなさるのですよ。ところが、どうもそうではないのですね。人員が非常に足りない足りないと言って定員増を一生懸命要求される。だが、一方においては税通というような問題を引き受けて、そして千五百万だ千七百万だという程度の金を国税庁からもらっている。そして臨時職員を雇って税通をやっているというような話なんです。これはいろいろな立場から論議してみても、私は筋の立たない話だと思っているのですけれどもね。どうなさるおつもりなのか、それをお尋ねします。
  63. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 地方税法の関係で、地方税については必要なものを各市町村に送るということになっておることは御承知のとおりでございます。それと同じ形式のものを送るわけでございまして、結局、複写紙に書くのは一ぺんで書いておるのでございます。昔はそれが変わっておったのであります。それで非常にやっかいでしたが、最近は——最近といっても、昨年度から、同じ複写紙で、そして一つ書けば国税庁へ送るものとそして市町村に送るものが一緒にできると、こういうことになっておるわけでございます。しかし、これは本来法律の規定によってやっているものではなしに、行政機関相互の助け合いとしてやっているのであって、筋からいけば、これは登記所の忙しいところでやらす仕事ではございません。しかし、来年度はいろいろまた大蔵省と折衝して、これは筋が違っているかもしれませんが、しかられるかもしれませんが、この経費の点は十分に見さしていって、来年度はひとつやっていこうということ、問題はその先の問題ですが、いま申し上げましたように、手数が非常に省けてきておるということは御了承願っておきたいと思うのであります。
  64. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、これはまた根本からいろいろ論議をしなければならぬわけですが、協力関係というものを逸脱しておるという論証を一つ立てておるわけなんです。だから、随時とか、あるいは必要に応じてとかいうことなら、これは協力関係と言えますが、こういう恒常的に——一年を通じて恒常的にやる。しかも金はお宅の金じゃないですよ。大蔵省が金を出して国税庁から金をもらって、それで人夫賃で人を雇ってやろうという考え方ですね。一体法務省はどう考えておられるのですか。協力関係もいいですよ。いいですが、私は協力関係を越えておる、これは。金をもらってそれで人夫賃で雇ってその金を毎年少しずつふやしてもらっておるというような調子の協力関係、しかも、やってみたが、その中の六割か七割は使われぬのだ、三割くらいしか使われぬのだというのは常識でしょう。せっかくやってみたけれども、その中の六割、七割は使わないのだ、三割くらいしか使われぬのだ、そういうのは協力関係じゃないですよ。従属関係じゃないですかという私は気がする。ですから、市町村長に対するやつは、御承知のように、法律によってきまっておるのですね。これは法務局の登記所の仕事として法律できまっておるわけですが、しかし、従来大蔵省がやっておったもの、税務署がやっておったもの、国税庁がやっていたものを金をもらってやるというのは、どういうわけですか。一体どういうわけなんですか。
  65. 高橋等

    国務大臣高橋等君) いま申し上げますように、地方税法で定められておりまする報告義務の様式と同じ様式のものを送るわけなんでございます。したがって、複写紙は一ぺん書けば市町村へ送るものと税務署へ送るものが一ぺんでできる。そういうようなことを考えて、できるだけこれは便宜をはかってやったほうがいいんじゃないか。一々税務署からこっちに写しに来ないで、便宜をはかったほうが官庁相互間の協力にもなるんじゃないかということが考え方の根本になっておるわけなんです。しかし、いま御指摘のように、法律にこれを定めなければ法務省自体の仕事ではもちろんない。ただ法務省がそれをやるということは、いま言ったような点でやっておるわけですから、それに要する経費の一端は、これを大蔵省のほうから出さすということは、私はこれはあたりまえとは言いませんが、それも出さないでやるというのではあまりに法務省、法務局の負担が大き過ぎるというので、とりあえずどこもかしこも便宜ずくめでやっておる。筋は通っておらないことは了承いたしております。ただ、やることが、いま言うように、複写紙を一枚だけ書けば全部やれるのだということになっておるということが一つの大きな——私は官庁間においてそれほど手間がとれるものではないんだという考え方を持っておるわけです。
  66. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、非常に便宜主義ですね。便宜主義と言うのかな、便宜主義ですね。税務署の職員が来て従来やっておったんですね。やっておりますと、税務署の職員が来れば、これは書く必要がない、これは書く必要がないとオミットしていくわけですよ。書くやつだけ、必要なものだけ書けばいいんです。登記所でやる場合は全部書かなければいかぬでしょう。税務署で来れば最初から除いていくのですから、ぼくはちょっとばかりこの問題は法務省としては一考あるべきだと思うのですね。あまりにも便宜主義ですね。大臣、便宜主義過ぎますよ。一考を要しますね、法務省のためにですね。
  67. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 御承知のように、協力関係に入るか入らないかという基本問題は、そういう点についてのいろいろ御議論はあろうかと思っております。御承知のように、国家行政組織法で、政府間の各機関は相互に緊密な協力をして行政事務を遂行しなければならぬという規定がございます。はたして、そこに言う協力という中に入るかどうかこれは御議論のあるところだと思いますが、その精神はある、このように私、事務のほうでは理解しております。  それから、予算の問題につきましては、一応大蔵の国税のほうの予算にも計上されまして、私のほうでその全額を、支出委任を受けて、具体的な仕事についてはわれわれのほうにまかされておるわけでございます。三割くらいしか使ってないのじゃないかという御質問でございましたが、その点について私いま数字をつかんでおりませんが、具体的な執行を一任されておる関係で、若干の妙味があるかもしれないと思っておりますが、一応その趣旨で有効に使っておるわけであります。これは税務署の職員が来て、写す場合については、いま言ったような問題が、御指摘もございましたが、その点につきましては十分税務署のほうと打ち合わせをいたしまして、必要な通知項目というものを極力しぼって、その範囲で通知書の様式をきめていくというようなことで努力をいたしておるわけでございます。事務量は昭和三十八年度の統計では八百万くらいではなかったかと思っております。もちろん、われわれ事務のほうといたしましては、地方税法に言う自治体に対する通知と同一タイプのものを複写するだけでございますが、やはりそれが何らかの形で職員の負担というものがどの程度ふえるものだろうかどうだろうかというような問題につきましても、私、事務の担当者といたしましては十分その点は検討しなくちゃならぬと思って、いろいろ実情につきまして地方出張等の機会には極力聞いておるような次第でございます。  それからなお、これも御議論のあるところだと思いますが、これは庁舎の問題がからむわけでございます。税務署の職員がひんぱんに庁舎に来られた場合、簿冊が一冊しかございませんのでそれが取り合いになるとか、あるいは庁舎が狭隘なために不便を生ずるというようなこともないだろうかと、あらゆる角度から自分らといたしましては検討をしてこの問題を善処していきたいと思っておりますが、現実的には協力をするという態勢で、事務をできるだけ簡素化して協力をしていくというのが実情でございます。
  68. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、協力というのが協力のワクをはずれているというような私は考え方なんです。実はそれは、随時とか必要に応じてとかいう協力関係ならともかくとして、これはもう恒常的なんですよ。法律で定めたと同じです。地方税法による法律できめたと同じで、どうも法務省あまり便宜主義的な考え方じゃこれは納得できないのですね。しかも、まあ私の憶測ですけれども、定員はふやしたいのだが、なかなか思うように定員はふえていかない。そうすれば、この仕事を請け負えば——請け負うというか、協力していけば人夫賃ももらえる。千八百万円もらえる、そうすれば相当数の臨時職員が置ける、幾らか施設も何とかできるのじゃないかという程度の便宜主義的な考え方でこの問題が処理されているんじゃないかというように思うのですよ。地方税法によるやつは九割くらい使われるのだそうですが、税務署に出すやつは三割くらいしか使えないというような、これは平賀民事局長が国会で答弁したこともありますですが、七割か六割程度は使わないというようなことは発言したことがありますが、ですから、私はもっと——現場でもいろいろあるのですよ、これは意見が。だから、そこら辺を法務省として考えてみたら、一考をされたらどうですか。問題があって、不満があっていやだという話ね。協力だというようなことでやるというのはどうなんですか。金までもらって協力というの、ほかにもありますか。恒常的にこういうふうに金をもらって人まで雇ってやっているというのがありますか。
  69. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) この税通の問題についての根本的な解決の考え方でございますが、これはもちろん現段階で私の個人的な考えでございますが、やはり理屈がつくならば、定員増でもっていきたい、このように考えておりますが、それには、やはりその事務が法務省の所管事務であるかどうかという点をすっきりした形で解決をしないと、なかなか定員化するのが困難であろうかと思っておりますが、問題点の一つとしてぜひ検討をいたしたいと、このように思っております。  それから、これ以外にそういうケースがあるかというお尋ねでございますが、これは若干性格が違いましてぴったりいくかどうかわかりませんが、いわゆる営繕関係におきまして官庁営繕費というのが建設省に計上されるわけでございますが、その中から、私のほうの関係の庁舎等を建てる場合、あるいは単に私のほうの関係のみならず、たとえば公務員宿舎というようなことで、私のほうの職員も含めての公務員宿舎を建てるといったような、そういう予算が建設省に計上されるわけでございますが、私のほうの営繕のほうに支出委任を受けて処理をしているという——これはいまの問題とぴったりいかない例かもしれませんが、一つの一種の協力と申しますか、そういうような点で処理しているものは、ただいまお尋ねがございまして気がついたものとしてございますが、ぴったり当たるかどうかはちょっと私も自信がございません。ほかにはございません。
  70. 高橋等

    国務大臣高橋等君) ただいま御指摘の税通の問題ですが、先ほどお答えしましたように、とりあえず四十年度は現在のでやる。その先の問題につきましては、いろいろ大蔵省とも相談をいたしまして、これを合法化するか、あるいはどうするかというような点について検討するという私の考え方であるわけでございまして、先ほど答弁には、とにかく来年度はこれで行くのだから御了承を願う、こういうお答えをいたしたと思いますが、そういう含みがあることで御承知を願っておきたいのであります。
  71. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 法務省の仕事でないことははっきりしておるのじゃないですか、法務省の仕事でないことは。これは国税庁がやる仕事なんですよ。だから協力ということばをつかっておられるわけでしょう。で、大臣ね、いつも大臣は大体いまおっしゃったような、似たような答弁をされるわけなんですよ。前の法務大臣も、その前の法務大臣も、似たような、いまおっしゃったような大体類似したような御意見なんですよ。これはそういうふうに問題をあとに残すのじゃなくて、やはりいつかはっきりさしていただきたいと思うのですね。毎回問題があるのです、これ。事実、職場で問題になっておるわけなんです。これはいつまでも問題になっている。で、先ほど局長のほうは、何か法律でというようなお話ですが、これは大蔵省の仕事を、国税庁の仕事を法務省の仕事にするわけにいきますまい。これはあくまでも国税庁の仕事ですよ。そこで、すみやかにこれは一考してもらうというふうに理解したいのですがね。再検討する。ですから、昭和四十年度はこの方針で行かれるわけでしょう。行かれることにまとまっているのですか。大蔵省のほうから幾ら人件費来るのですか、人夫賃あるいは印刷費として。
  72. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 内々の話は進めておりますが、予算が成立しましたら、直ちに最終の詰めをやりたい、こういうふうに考えております。
  73. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それはまだきまってないのですよ。四十年度のやつはこれからお話になるわけで、大体六月ごろですよ。六月ごろ大体きまる、あるいは今度は延びて七月になるかもしれませんが、大体そのころ話がつくわけですよ。ですから、これはやっぱり検討されたらどうですか。私はそう思うのですがね。もう口をすっぱくして言っているのですよ。もっと本格的に論議してもいいのですけれども、私はいまの伊藤さんの関連質問でやっておるのですから、再検討すべきだと、私の意見はそうなんですがね。どうですか、再検討なさったらどうですか。
  74. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 私のお答えは、先ほど申し上げましたことで、あなたのお考えと同じだというようにお受け取りくだすってけっこうなんでございます。来年度はとりあえずこれで行くが、次は大蔵省と話をしまして、必要があれば合法的手段に訴えるかどうかというような点まで詰めてみたい、こういうお答えをいたしております。そういうようなこともあわせて検討を続けていく、こういうわけでございます。もちろん、現場の職員組合等の意見も私はよく承って了承いたしております。
  75. 柴田栄

    委員長柴田栄君) ほかに御質疑はございませんか。  ほかに御発言がなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 御異議ないと認めます。  本案の自後の審査は、議事の都合により、後刻行なうことにいたします。     —————————————
  77. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 次に、労働省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。本案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしておりまするので、これより質疑を行ないます。政府側からは石田労働大臣始関労働政務次官、和田官房長、村上労働基準局長、有馬職業安定局長、谷野婦人少年局長、松永職業訓練局長が出席いたしております。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  78. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私は、本法案提案理由説明で、大体項目はっきりしておりますが、労災防止とかあるいは職業安定、こういうことについて二、三お伺いしたいと思うのです。その前に、当内閣委員会労働省設置法が提案され、そのつど長い間課題となっております労働問題懇話会について、ひとつその前にこれをお伺いしておきたいと思うのです。で、大臣の御答弁によっては簡単に済む問題でもあるし、御答弁によってはきょう一日やってもなかなか解決のめどが得られない事態になるやもはかり知れないわけでありますので、ひとつ明快な抜本的な態度で御答弁いただきたいということをあらかじめお願いしておきたいと思います。  さて、この労働問題懇話会、前は労働問題懇談会であったわけですけれども、当内閣委員会で問題になりまして、そこで労働省でも一字だけひねって、労働問題懇談会を懇話会に変えたわけですね。こういう経緯もあって、当内閣委員会ではこの問題は、この懇談会はいま懇話会、これは国家行政組織法違反の疑いが濃厚であるという観点から、そのつどその当時の大臣に対して何回か追及してまいったわけですけれども、毎回大臣の御答弁は、近い将来に廃止または法制化の方向で、行管と相談の上で善処いたしたい、こういう意味の御答弁があったと思うのです。しかし、実際にはそのまま存置されておって、放任の形になっておるわけですけれども、これは労働省としては無責任ではないかということになろうと思います。この点いかがですか。
  79. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 国家行政組織法八条によらないもので、私のほうの役所として設けてございますものが労働問題懇話会、それから労政懇談会、国際労働条約懇談会、こういうようなものでございます。これら三つのものは、私どものほうといたしましては答申をいただいたり、決議や建議をいただいたりというような趣旨でお集まりをいただいているのではなくて、したがって、委員とかなんとかという辞令を出しているものでもございませんし、特に御指摘の労働問題懇話会は、できるだけ労使の話し合いの場というものを設けたいという趣旨で、それに学識経験者を交えて従来開催をいたしておったものでございますが、しかし、いろいろ御議論がございまして、そうして、残すべきものならば組織法に基づいて法令上の処置をとって残し、そうでないものならば廃止するというふうに区別すべきものと、私の前任者が従来答弁していたことも承知いたしておるのでございます。そういう趣旨をもって検討いたしておりましたときに、ちょうど佐藤喜一郎氏を委員長といたしまする行政機構改革の臨時行政調査会の答申の中に、こういう種類のものは政令で設けろというような趣旨の答申がございました。したがって、こういう趣旨のものの全体の取り扱いをいま増原行管長官の手元で立案中でございますので、それと関連を持たせて処理をいたしてみたい、こう思っておるところでございますが、しかしながら、それと一緒に関連を持たしてやるべきことではございますけれども、私どもの役所のたてまえといたしまして、これは役所で世話をするか、しないかは別として、でき得る限り労使の間の話し合いの場所というものをいろいろな形で持ちたい、そして、それによって労政に寄与するということももちろんでありますが、それ以上に、意思の疎通、相互信頼の回復というものをやりたい、こう考えておりますので、こういう種類のもの、役所の機構の中にあって行政組織法との関係で疑いの持たれるものについては明確にいたしますけれども、そういう趣旨のものについては何か考えてみたい、こう思っている次第でございます。
  80. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御答弁をお聞きしておりますと、臨時行政調査会の行政改革に関する意見もあるので、行管と相談する、こういうことでありますけれども、国家行政組織法は厳然としていま存置しているわけですね。で、法改正が行なわれない限りにおいては、この国家行政組織法第八条は無視できないと思うんです。一方、これと臨時行政調査会の行政改革に関する意見、これは、政府としてはもちろん尊重するというたてまえをとっております。それを尊重する意味はわかりますけれども、一方は勧告であって意見であり、一方は厳然たる法であるわけですね。したがって、その軽重を比較すべくもないわけです。そういうことで、私が繰り返し申し上げておるように、この国会の場で大臣が公約しておるわけですね。ところが、それはさっぱり実現されない。公約したけれども、実現されないということになると、国会審議の意味がないと思うんですね。国会でずいぶん時間をかけて審議して、最終的に大臣はかくかくいたしますと答弁する、それが行なわれて初めて国会の審議の意味が成り立つわけですけれども、国会で約束したことが全然無視されて、全く公約は実現されないで放任されたままになっておるということになると、国会審議しても意味がないということになる。そうだとすると、国会が審議したことが意味がないということになると、これは大きな憲法論議にもなろうかと思うんですね。と申しますのは、憲法第四十一條には、「國會は、国権の最高機關であつて、國の唯一の立法機關である。」、一方、憲法第六十六條第三項には、「内閣は、行政權の行使について、國會に対し連帯して責任を負ふ。」、こういう一つ一つを取り出してみても、やはり国会で公約されたことが実現されなければならないということは、基本的に言っても、憲法論議をまつまでもなく、明白な事実であろうと思うんですね。すなわち、現実に前大臣は約束されておるわけです。それからもう一年になろうとしておりますけれども、なかなか解決されないでいるのです。その当時労働省の労働問題懇談会であったわけですけれども、その論議は労働省だけの問題でなかったわけです。実は各省庁に、法によらないで、閣議あるいは省議によってつくられていたものが相当幅広くあったわけですけれども、当内閣委員会での審議の過程において、やはり法は守らなければならないということで、各省庁が心してみんな整理してきたわけです。いまはもうほんの数えるほどしかない。詳しく言うと、労働省の三つ、科学技術庁の二つ、農林省の二つ、計七つしかいま残っていない。こういう、法によらない審議会等の七つのうち三つが、そういう法違反の疑い濃厚なものが労働省にそのまま存置されておるということは、これは何といっても問題だと思うのですね。このままではいけないと思うのです。で、労働問題懇話会その他二つの懇談会、この三つについて私どもが当初から言っているのは、必要なものならば存置しなさい、存置する以上は、合法的に法によって存置しなさい、要らないものならば廃止したらいいのではないか、こういう言い方なんです。何でもかんでも必要なものでもやめてしまえ、廃止してしまえというふうには決して申し上げていない。存置する価値のあるものならば、合法的に法によって存置する必要がある。こういうことから見ても、これは当然改められなければならない。いま申し上げたように、七つの、法によらない調査会、懇談会等の中で、労働省には現在三つもそのまま残っておるということ、これは何といっても労働省の責任ではなかろうか、こう言わざるを得ないわけです。この点はいかがですか。
  81. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 全くその処置が延びておりまして申しわけないのでございますが、実際この三つのうちの一番最後の国際労働条約懇談会のごときは、ほとんど最近開催いたしておりませんし、すみやかに処理をしなければならぬものと思っております。ただ、先ほど申しましたような勧告がございましたものですから、その勧告についての政府の態度の決定をもあ待っておったというところでありますが、しかし、これをいつまでも待つものでなくて、その決定がおくれるならば、もうおくれることを前提といたしましてすみやかに処理をいたしたいと考えております。
  82. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで、国際労働条約懇談会についての御指摘がございましたけれども、これはなるほど予算を三十八年度に八万六千円ほどとって存置されておられるわけですが、これは過去において開催されたことは一回もないのですね。それで、委員も決定していない、設立根拠はもちろん何もない。これこそ、予算をただ組まれたということだけがこの懇談会を発足して得た一つの具体化のあらわれである。委員も任命されていない。構成メンバーとしての委員がいないのだから、もちろん懇談会は一回も開かれていない。それをいつまでもこういう情勢の中で残しておくということ自体が、摩訶不思議と言わざるを得ないのですね。  それから、ついでだから申し上げますけれども、労政懇談会、これの第一回の会合は二十八年十一月十三日で、過去一年間に、昨年現在で、大体九回持たれておる。これは相当の回数を持たれたようですね。ほかの懇談会はさておいて、従来から問題になっているのは労働問題懇話会であって、それが解決すればほかの二つも当然一蓮托生の運命にあるわけです。そういうことから、大体これは存置する必要があるか、あるとすれば、合法化しなければならぬ、廃止しようかというような省議がまずあったのかどうか、省議できまれば、これは行管とも当然相談すると思うのです。そうして、閣議に出して、あるいは法的な根拠のあるものにするとか、あるいは廃止するとか、こういう方向で進められなければならないと思うのですけれども、放任のままでさっぱり何もやっていないのです。そこでお伺いするわけですけれども、何回か省議でこれが問題になったことがございますか。
  83. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 官房長からお答えいたします。
  84. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 当内閣委員会でしばしば御議論がございまして、前の大橋大臣も明快にお答えをしておるようなわけでございますので、省議におきましても議論をいたしまして、先ほど大臣がお話になりましたように、労使の共通の場をつくるという意味合いのものは必要であるけれども、労働問題懇話会がそういうものであるかどうかということについて議論をしておりますときに、去年の夏あたりに臨時行政調査会のほうで審議会等に対する御議論があるということを伺いましたので、一応廃止というようなことは決定をせずに、臨時行政調査会の御意見を待っておったわけであります。先生御承知のとおりの向こうの勧告が出ましたので、政府全体としての審議会の扱いについて行なうということでございましたので、その行くえを見たいということで労働省としての省議を終わっているような次第でございます。
  85. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほど大臣答弁で、この懇話会は労使の話し合いの場にいたしたいと、それはわかるのですが、さて、労使の労のほうの意向を聞いてみますると、これはおそらく労働省の労働政策に対する隠れみののようなもので何らこれは価値がない、即刻廃止してしかるべきだと、そういう意向のようであるわけです。そこで、そういうこととはまた別に、私のほうでは、労働省の立場で労働政策を進める上におきましての労使の話し合いが必要である、話し合いの場とすることが必要であるという認識に立たれるならば、これは存置したほうがいいということであれば、当然に、繰り返し申し上げておるように、そうむずかしいことじゃないのですから、立法化すればいい、法制化すべきです。これは労使の労のほうが言っているように、これはもう廃止すべきだ、価値ないということであるならば、それはむろん労働省が主体的に考えることですけれども、廃止すればこの問題は一切解決するわけです。この問題にからんで、先ほど指摘いたしました国際労働条約懇談会のごときは、ただ名前が出ただけで予算を一回組んだだけで、金は一銭もつかってない、会合も一回も開いたことがない、委員の任命もいまだにない、こういうものは当然廃止してしかるべきだと思うのですね。こういうような観点でこの際大臣どうですか、そういう過去の経緯もございますし、労の意向もそうであるので、あっさりここで廃止してしまったらどうですか。
  86. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 国際労働条約懇談会というのは有名無実になりましたから、これは廃止すべきものだと思います。それから、労政懇談会は、これは新聞社の論説委員意見交換の場でありますから、わざわざ名前をつけて予算に組んでやらなくても、これは必要とあらば随時お集まりをいただいてお話しすればいいと思っております。それから、労働問題懇話会はどういう意味で隠れみのということをおっしゃるかよくわかりませんけれども、しかし、われわれとしては、クラブ的なものとしてでもときどき集まったほうがいいと思うのでありますが、しかしながら、それを国家行政組織法としてきちんとしてやるのが妥当なのか、あるいは随時、それこそ、いま総評と話をしているような定期的会合というような意味でやったほうがいいのか、いずれにしろ、私は何かそういうものがあったほうがいいと思いますけれども、問題になるような形のものとしては残したくないと思います。御説のとおり措置をいたします。
  87. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで、これはもう大臣もよくごらんになっておると思うので申し上げるまでもないのですが、昨年の六月九日ですね、昨年の通常国会の場で、当参議院の内閣委員会で、われわれの質問に対してときの大橋労働大臣は、これは議事録を見ていただくとよくわかりますが、前略いたしますが、「この問題は重ねて御指摘がございましたので、きわめて近い機会に廃止するか、法制化するか、どちらかをはっきりいたしまして、この取り扱いの最終的な措置につきましては、行政管理庁とも相談の上必ず善処いたしたいと考えまするので、どうぞ御了承を賜わりたいと存じます。」と、こういうふうに結んでおられるわけです。そこで、いま労働大臣の御意向を承ると、国際労働条約懇談会は全く有名無実だからこれは廃止したいと、それから労働問題懇話会についても廃止の方向でひとつ努力するということで、これは大臣がはっきり言っていただけばもうこの問題はこれで解決の方向に向かうわけですから、ただ、前の大臣もここでも読み上げましたように、きわめて近い機会にとおっしゃっていながら、一年になんなんとするのに、いまだに解決してない。これはやはり人間の約束というものは期日を一応置かないとなかなかこれはうやむやになってしまう。石田労働大臣はたいへん優秀であらせられるからずいぶん長く御在任になるやと期待するわけですけれども、事、期待と違って、あるいは適当なときにかわられるかもしれない。そうなると、またそれはほごになってしまって、また白紙からやり直すということになりますから、どうですか、この国会開会中に廃止の方向努力すると、このぐらいのことをおっしゃっていただけば理解できるのですが。
  88. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 実質的に、たとえば論説委員にいままでのように集まっていただいて話をするとか、あるいは労使の会合をするとか、そういうことは必要に応じて時々これはやるべきことはやりたいと思っておりますが、こういうものを問題になる形においてはお説のようにいたします。
  89. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、この会期中を目途として廃止の方向で極力努力すると、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  90. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) けっこうでございます。必要がある——いろいろ検討して、もしどうしても必要があるならば、法制化してやります。
  91. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは、石田労働大臣からきわめて時快な御答弁がございましたし、まことに理解のある御答弁と受けとめまして、この問題はこれで一応おいて、さて本論に入って、まず労災防止について二、三お伺いしたいと思いますが、時間もあまりございませんから、重点的に二、三しぼってお伺いいたしたいと思いますので、簡明な御答弁をいただきたいと思います。この労災防止の必要から見て、臨時行政調査会の答申から見ても、それから労災防止対策部の新設は私どもも適切であろうと思うのです。ただ、今回の措置はむしろおそきに失した感があるのじゃないかと、われわれはそう思うわけです。これはもっと早くこういうものが新設されてしかるべきであったと思うのですね、いま少し早く。そうだとすると、もっと早くつくったほうが一そう効果的であったということになると、これは労働省としてはちょっと手抜かりがあったのじゃないか。こういうふうにも思うのです。したがって、新設することにはわれわれ適切だと言って賛意を表しておるわけなんですけれども、もっと早くこういうことは考えられなかったかということは、これはまあ現労働大臣の立場ではちょっと問題が薄れますけれども、もっと早い任期にあった労働大臣が考えてしかるべきだった。しかし、労働省全体から見るとちょっとおそきに失したのではないかと考えられる。その点いかがですか。
  92. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 御説のとおりだと思います。私は、たとえば坑内労働だけを扱っております通産省の鉱山保安局という局が設けられてやっております坑内労働と、それから海運関係とを除外した残り全部を引き受けておりますところは、いままでのような機構では不十分であったと考えておりますから、まあおそ過ぎるじゃないかという御非難は甘んじて受けますが、そういう立場から今度は提案をいたした次第であります。
  93. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この提案理由説明によりますと、労働基準局内の安全、労働衛生この二課を合わせて新たに労災防止対策部ができるわけですけれども、職員数について見ますると、本省については現行どおりの三十七名程度であって、地方は労働基準監督官——これは災害防止の担当のという意味です。これが百二十九人の増員ということになりますけれども、労働災害防止行政を推進するにあたって、この程度定員ではたして所期の目的が達せられるであろうかどうかという問題があるわけですけれども、この点を御説明いただきたい。
  94. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) むろん不足だと思っております。ただ、対象事業所の数から比べますと、これをたとえば百二十何名をよしんば十名ふやしましても、不足といえば不足なんであります。現在われわれのほうから、役所から積極的に監督しているというのは、結局一年間に対象事業所の十分の一ぐらいやっと回れる、これだけで期待するということは無理でございますので、やはり民間の協力がなければならないし、同時に、一般的に人命尊重という気風を醸成していくことがどうしても必要でございます。その二つを目標といたしまして、前国会において御審議、御可決を得ました労働災害防止団体等に関する法律に基づいた構造を傍系の団体としていま整備をいたしておるところでございまして、不足ではございますけれども、その活躍と相まって行政効果をあげてまいりたいと思っております。
  95. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最近、産業技術の革新が目ざましいものがあるわけですけれども、これに対応し得る、あるいは安全あるいは衛生、こういう面が確保されていまおるのかどうかという点と、特に労働災害の多発業種については特段の配慮が必要だと思うんですが、これについて労働省としてはもちろんいろいろと対策を講じられておるとは思いますが、その概要をひとつお聞かせいただきたい。
  96. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 多発業種につきましては、先ほど申しました、労働災害防止団体等に関する法律に基づきまして、それぞれの災害防止団体をつくっていただいておりまして、それと呼応して集中的にいろいろ施策を講じております。一般的には昭和三十三年と三十八年と二度にわたりまして災害防止五カ年計画をつくりまして、それを推進中でございます。特に新しい科学技術の進歩に伴いまして、特に化学工業その他について新しい災害原因が発生しつつございます。これにつきましては、先般基準局長名をもちましてそれぞれ具体的な防止策を講じておりますが、詳細は基準局長から説明をいたさせます。
  97. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 詳細はけっこうです。  労働時間と労働災害ですね。これはどなたが孝ましても不可分の関係にあることは明白な事実です。そこでお伺いするわけですけれども、最近における平均総実労働時間はどのぐらいかということですね。それと業種別のあれは一体どうなっているか。これはこまかい数字はあげられぬでけっこうですが、方向を御説明いただきたい。
  98. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 実は最後の部分は、適用事業場というふうに理解してよろしいでしょうか。  労働基準法の適用を受けます適用事業場数は産業活動の進展に伴いましてかなり顕著に増加いたしております。三十九年度におきましては、労働基準法の適用事業場が百九十九万四千、つまり約二百万、こういう数字でございます。適用労働者の数は二千四百六十五万と相なっております。これらの適用卒業場に働きます労働者の労働時間でございますが、労働時間が、一日の労働時間のみならず、いわゆる週休制の実施とか、閉店制——できるだけ早く店じまいをするといったような問題をも加味いたしまして、労働基準行政といたしましては幅広い労働時間短縮の方向で指導いたしておるような次第でございます。  行政の指導の重点としては、まず労働基準法の定める八時間の労働時間に極力接近せしめる。特に問題業種としていろいろあげられるものがございますが、そういったものにつきまして、法定基準を守ると同時に、いろいろ法定によりまして時間延長などもいたしております。これがあまり乱にわたらないように、その実施につきましては適切な指導を加えてまいりたいと思っておりますが、対象労働者といたしましては、特に女子、年少者の労働時間について労働時間監督の最重点として指導いたしておるような次第でございます。  一般的な労働時間の推移を申し上げますと、月間の労働時間では、調査産業総数について見ますると、総時間が昭和三十六年は二百一時間、これは月間でございます。三十七年度は百九十七・八時間、三十八年度は百九十六・六時間、かようになっております。その中で所定内労働時間を申し上げますと、三十六年度は百七十九・三、三十七年度は百七十九・〇、三十八年度は百七十八・二、その差し引きの残りが所定外労働時間、こういうふうになりますが、傾向といたしましては漸次減少しておるという傾向を示しております。
  99. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いいたしたいのは、労働時間の短縮という問題が最近非常に大きな問題となっておりますが、この労働時間の短縮という問題について労働大臣としてはどのようにお考えかということと、それから、欧米先進国の労働時間と日本のそれを比較した場合は、明らかに日本の労働時間は多いわけです。ここで数字をあげるまでもありませんが、そういうことについて、やはり労働時間と労働災害という問題は、先ほど申し上げたように、なかなか切り離せない問題でもありますので、そういうこともからみがございますから、そういう問題についてひとつ、労働時間の短縮についての御見解並びに欧米先進国との比較の結果は一体——数字は要りませんから、一体方向はどうなのか、こういうような日本の労政に対する展望の一端をお聞かせいただきたい。
  100. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 先年ILOで四十時間労働についての決議がございました。わが国は急速にそういう数字をあげられることについては政府としてはいろいろ意見を述べたのございます。しかしながら、決議がすでに行なわれておりまするし、しかもなお、一般的に日本が近代工業国家として認められております事実の上から考えましても、近代工業国家にふさわしいような労働時間に漸次近づけていくべきものだと思っております。できるだけ早く、その水準、すなわち、四十時間労働に近づけていくべきものだと考えておるのであります。ただ、ヨーロッパなどにおきましても全部がそうなっておるのではなくして、やっぱりイタリアなんかはおくれておる部面もございますが、そのイタリアでも、年次計画を立ててそれぞれの企業が生産性の上昇の中でそれを消化しつつ、国際的な水準に近づけていこうという努力をいたしておるのであります。わが国においても、生産性の上昇とにらみ合わせながら、あるいは逆に申しますと、労働時間短縮を可能ならしめるような生産性の上昇の努力をしつつ先進国並みに近づけていくべきものだと考えておるのであります。同時に、日本の場合は、労務管理の上において非常にルーズな面がたくさんございます。欧米で四十時間をやっておるような管理のしかたではない。拘束だけやたらに長く拘束しておいて、そうしてそれをもって満足をする。働く時間が十分に生産力になるというようなくふうにおいて欠けるところがございますから、経営の面においてもそういう新しい努力を、検討を行ないつつ、できるだけすみやかに近代工業国家にふさわしい水準に近づけていくべきものだと思っております。一般的な傾向といたしましては、そういう傾向に向かっての努力が各企業の中で最近きわめて顕著に見えてきつつある、喜ばしいことだと思っております。
  101. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、労働基準法の第三十六条のただし書きに、この規定に該当する、いわゆる有害業務に従事する労働者の労働時間については、これは延長については大体一日二時間限度ということになっておるのですが、現状はどうですか。現状の概要を御説明いただきたい。
  102. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 御指摘のとおり、三十六条のただし書きの規定では、有害業務につきましては、ただし書きでまず坑内の労働が制限を受けます。その他命令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長というのは、一日について二時間というふうに制限を受けておるわけでございます。この第一の坑内の労働、特に石炭産業等につきましては、この制限の二時間をこえて労働さしておるのではないかという御指摘が従来からあったわけでございます。監督をいたしました結果、そういった事実も認められましたので、特に昨年秋以来関係業界に厳重に勧告いたしますと同時に、計画的にその是正につとめさしてまいっておりまして、最近の報告によりますれば、かなり違反状態が改善されてきておるようでございます。中には、いわゆる労働力需給の問題とからみましていろいろ問題もあるような事情もございます。しかしながら、これらにつきましても、この法定基準を厳守いたしますように指導いたしておりますような次第でございます。
  103. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もございますから、最後に一点だけお伺いして私の質問は終わりますが、この提案理由説明によりますと、九州の職業安定事務所を廃止するということでございますが、これについてもいろいろお伺いしたいのですが、ただ一つ、例の九州地区の炭鉱離職者のその後の就職の状況、こういうものは一体どうなっておるか。われわれ非常に憂慮しておるわけですが、その一点だけをお尋ねいたします。
  104. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 炭鉱の合理化が三十五年から始まりまして、今日まで約十万近いネット減がございまして、昨年の実績から申しますと、昨年は一昨年からのズレ込みが約二万名ございます。昨年一年間で新規に約二万一千名発生いたしまして、合計四万一千名の離職者対策をいたしたわけでございますが、これに対しまして、安定機関の紹介によりまして一万八千四、五百名の就職実績をあげております。大体こういう実績で、約半数は職安機関のあっせんによって再就職が確保されている。しかも、北九州は全体の合理化の離職者対策のウエートからいいますと、七割前後を占めておりますので、大体この全国的な傾向から北九州の傾向を御推察いただきたい、かように思うわけであります。
  105. 栗原祐幸

    ○栗原祐幸君 時間がございませんので、二、三簡単にお尋ねをいたします。  第一点は、今度の設置法の一部改正で労災防止対策部を新設しておりますが、この労災防止対策部では、農業労働災害、これの防止については考えておるのか、考えていないのか。もし考えているならば、どういう点を考えておるのか。もし考えていないとするならば、どういうわけで考えないか。この点を。
  106. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 元来私どもの行政の対象は雇用労働者であります。農業の場合は農林省でこの対策をお考えいただきたいのでありまして、私どもの行政の対象は雇用労働者だということであります。ただし、この労働災害防止対策部では直接の行政対象とはいたしておりませんけれども、労災保険は農業のためだけ別に災害保険をこしらえるわけにもまいりませんので、このたび任意加入の道を講じております。
  107. 栗原祐幸

    ○栗原祐幸君 時間がございませんから、この問題については論議しませんが、そこでいわゆる任意加入といいますか、農業者が農業労働災害で補償を受けるために特別加入という中に入るわけですね。この特別加入の中で、具体的には第三十四条の十一、一項の何号に農業者は入るのか。それから聞きますが、それから、それに関連いたしまして、第三十四条の十四ですね、「第三十四条の十一各号に掲げる者の業務災害」と書いてありますが、この「業務災害」とは具体的に何か、範囲ですね、それから、農業者がこの災害補償を受ける場合に掛け金というものと給付というもの、これは一体どうなるか、でき得ればおおまかでけっこうでございますが、ほかの労働者の災害補償と比べてみますと、それはどの程度低いものか、掛け金は重くて、給付率が低いと、こういう結果になると思いますが、そこら辺がどうか。まず農業者はどこに入るか。
  108. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) いまその範囲は申しますが、実はそれは非常に技術的にむずかしい問題であります。というのは、一般の雇用労働者の場合は使用者が払うのでありますから、賃金が、基準がきまっておりますから、したがって、算定ができやすい。したがって、農業者の場合はそれをどういう賃金に算定するか。自分で払わなければいけません。雇い主がいないのでありますから、自分で払うのはどうするか。これは、これからの問題になろと思うのでありますが、具体的にいま基準局長からお答えいたします。
  109. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 特別加入方式の第三十四条の十一規定の第三号か第五号かということでございます。このどちらを適用するかという問題、実は農業者であると、最近人手不足で労働者を使用する場合もある。そこで三号でいくとすればそれはどうなるのか。そうでなくて第五号の「労働省令で定める種類の作業に従事する者、」これでいこうか。この点につきましては、いずれにいたしましても、労働省令で定める段階に確定いたしたいと、こう考えておりまして、三号か五号かという問題につきましては、最終的な結論はまだ出しておりません。その同じ農業経営と申しましても、ただいま申しましたようないろいろな場合が考えられますので、その点はさらに詰めて定決をいたしたい。それから、この農業労働の場合には、給付の面では業務場内の概念をどういうふうに考えるかという問題がございます。原則的には、機械を使用する農業労働というふうに考えております。それにつきまして明確にどの程度のものにするかという点につきましては、目下検討中でございます。また、給付の問題でございますが、給付のたてまえは一般の労働者と同様でございます。ただ問題は、算定の基礎になります賃金の基礎実額という概念に相当するものを、農業労働者の場合には何に求めるかという問題がございます。この点についてもさらに関係各省、関係団体とも相談いたしまして確定いたしたい。それから、その日額の問題が、実は保険料の問題とも相関連いたしまして、一体、賃金額に相当するものをどのようにして抑えるか。それが保険料の算定の基礎になる、相関連した問題でございますが、いずれにいたしましても、これらの条文の実施時期は多少おくれますので、それまでに省令を確定いたしまして、その限界概念を明確にいたしたいと考えております。
  110. 栗原祐幸

    ○栗原祐幸君 機械を使う者というのが、一つの大きな前提になるようでございます。その場合、農村にはいろいろ大きい機械から小さい機械までございますから、その農村の実情というものを十分に参酌をしておきめを願いたい。この点は、希望として申し上げておきます。  それから、いま一点、これは労働大臣にお伺いしたいのでありますが、ただいま、労働大臣は、新設の労災防止対策部では、とりあえず農業者のことは考えていないと、これは、いわゆる雇用者——使われている人というものに対しての労働災害を主体とするものであって、農業労働者というものは、これは使用者じゃないんだ、自分自身で経営しているのだと、これは確かに、概念的にはそのとおりだと思うのです。ただ、実際問題として、農業者は、自分が経営者であると同時に使用者なんですね。その実体というものは、経営者という概念の中に当て込むことのほうがいいのか。労働災害という部面からしますと、これは使用人とちっとも変わっていないじゃないかという面もあると思うのです。そういう点があるから、一応労働大臣は、今度の改正で、三十四条の十一第三号の特別加入というかっこうで認めたのだと思うのです。現実にはいろんな問題がありますから、これを一ペんに満足なものにしていくということはできないと思いますけれども、農業者というものが、単なる企業者とか経営者とかいう概念でなしに、いわゆる農業労働者であるのだ、そういう実質的な面に観点を置いて、この制度の拡充強化をはかるべきだ。そういうことが、特に、これから農業が大きくなっていく、機械も入れていく、技術経営農民をつくっていくのだということにも関連いたしまして、そういう施策は労働省でやることが適当か、農林省でやることが適当か、そういう問題でなしに、一応ここへ取り上げられた限りにおきましては、その点について十分検討されて、将来これを拡充強化していただきたい、こう考えておるのですが、この点に対する大臣の所信を伺いたいと思います。
  111. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) いま栗原さんのおっしゃたような仕事が国家の行政として必要だということは、私も認めます。ただ、それは、農林省の所管ではなかろうかと思うのでありまして、私どもの行政対象というものは雇用者なので、農民は雇用者でなく、経営者だという意味だけで除外するのではなくして、農業保護育成、それから、農民の利益擁護というような行政は、行政部門としては農林省でお考えいただくのが至当ではなかろうか、こう私どもは思うのでありまして、おっしゃたようなことを国の行政としてやらなければならぬことは、私も認めます。
  112. 栗原祐幸

    ○栗原祐幸君 おことばじりをとるようでございますが、それなら、なぜ、ここに特別加入というもので一応入ったのか。これは、農林省のほうでやるまでの間、暫時救済していくのだという意味のものなら、これは別でございますがね。
  113. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 本来は、農林省でやってもらいたいものなのです。農業者の災害補償というものは。それは、私どものほうは、働いている本人から保険料をもらっているわけじゃないのです。使っておる人から保険料をもらっているわけなのです。ところが、農業のほうは、そういう形にならないわけです。だから、扱いとしては非常にむずかしい問題なのです。賃金の算定もむずかしい。だから、本来ならば、行政対象としては農林省でやってもらうべきことだと私は思うのでありますが、しかし、農業団体等から非常に強い要望がありますし、それから、農林省も、それだけ単独でやるというには、時間も非常にかかるでしょうし、第一、可能かどうか非常にむずかしい問題もございましょう。そこで、私どものほうでお取り扱いをしよう、こういうのでありまして、本来、行政の筋としては、私は、農林省に考えてもらうべき筋だと思っております。
  114. 栗原祐幸

    ○栗原祐幸君 これは、論議をしますと、いろいろ長くなりますから、これで終わります。
  115. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 他に御質疑はございませんか。  他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 御異議ないと認めます。  ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  117. 柴田栄

    委員長柴田栄君) それでは、速記を起こしてください。     —————————————
  118. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 文部省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましてはすでに質疑を終局いたしておりまするので、これより直ちに本案の討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もなければ、討論は終局したものと認め、これより採決に入ります。  文部省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  119. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、先例により、委員長に御一任を願います。     —————————————
  120. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 次に、法務省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましてはすでに質疑を終局いたしておりますので、これより直ちに本案の討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もなければ、討論は終局したものと認め、これより採決に入ります。  法務省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  121. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、先例により、委員長に御一任を願います。     —————————————
  122. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 次に、労働省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましてはすでに質疑を終局いたしておりまするので、これより直ちに本案の討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もなければ、討論は終局したものと認め、これより採決に入ります。  労働省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  123. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、先例により、委員長に御一任を願いたいと存じます。  本日は、これにて散会いたします。    午後五時二分散会      ——————————