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1965-03-30 第48回国会 参議院 内閣委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月三十日(火曜日)    午前十一時三十八分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         柴田  栄君     理 事                 栗原 祐幸君                 下村  定君                 伊藤 顕道君                 鶴園 哲夫君     委 員                 石原幹市郎君                 源田  実君                 塩見 俊二君                 林田 正治君                 三木與吉郎君                 村山 道雄君                 森部 隆輔君                 山本伊三郎君                 鬼木 勝利君    衆議院議員        発  議  者  田中 武夫君    国務大臣        文部大臣     愛知 揆一君        通商産業大臣   櫻内 義雄君    政府委員        法務政務次官   大坪 保雄君        法務大臣官房経        理部長      勝尾 鐐三君        法務省矯正局長  大澤 一郎君        法務省保護局長  武内 孝之君        法務省入国管理        局次長      中村 正夫君        文部大臣官房長  西田  剛君        文部省社会教育        局長       蒲生 芳郎君        文部省管理局長  齋藤  正君        文化財保護委員        会事務局長    宮地  茂君        通商産業政務次        官        村上 春藏君        通商産業大臣官        房長       熊谷 典文君        通商産業省通商        局長       山本 重信君        通商産業省企業        局産業立地部長  馬郡  巌君        通商産業省軽工        業局長      伊藤 三郎君        通商産業省公益        事業局長     宮本  惇君        特許庁長官    倉八  正君        中小企業庁長官  中野 正一君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○中小企業省設置法案衆議院送付予備審  査) ○法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○文部省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 柴田栄

    委員長柴田栄君) これより内閣委員会を開会いたします。  中小企業省設置法案議題とし、発議者から提案理由説明を聴取いたします。衆議院議員田中武夫君。
  3. 田中武夫

    衆議院議員田中武夫君) ただいま議題となりました中小企業省設置法案提案理由を御説明いたします。  中小企業省を設置し、中小企業大臣のもとに、抜本的、強力な政策実施されることは、全国中小企業者が、長年にわたり切実に待望してまいったところであります。  現在の中小企業庁は、その機構がきわめて貧弱であるだけでなく、大企業代弁機関と化した通商産業省に完全に隷属しておるのであります。このため、従来、中小企業庁が、中小企業者の与望をになって、せっかくよい施策を立案し、あるいは適切妥当な予算を要求いたしましても、大企業立場から、あるいは通産省全体のワク内において、事前に葬られてきたのであります。  これでは、中小企業者の意見、要望を真に反映し、その利益を擁護する機関は、現在の政府にはないといっても過言ではないのであります。今日農民に農林省あり、労働者に労働省あり、大企業者のためには通産省あり、ひとり中小企業者のみが、日の当たらないところにおかれておって、これに相応する政府機関が欠けているのであります。中小企業者中小企業省を、そして通産省と対等の立場で、中小企業政策なり、中小企業予算について、国政の最高の執行機関である閣議の場において、討議されるべきは当然のことであります。  ここに中小企業省を早急に設置し、機構を整備して、中小企業基本法にうたうところの諸政策を最も効果的に実施し、もって中小企業経営の安定と発展に寄与してまいりたいと存ずる次第であります。  これが本法律案を提出する理由であります。  次に、その内容概要を御説明いたします。  まず第一に、本法律案は、中小企業省所掌事務の範囲、権限を明確にし、あわせてその組織を定めるものであります。  次に、中小企業省の任務といたしましては、中小企業者組織経営近代化振興及び助成に関する行政事務や、基本政策の樹立に関する事務等を一体的に遂行する責任を負うものであります。  第三に、中小企業省の具体的な権限といたしましては、収入、支出に関する事務職員人事管理等、通常の所掌事務の遂行に必要な権限のほか、事業分野の確保、設備近代化助成組織化指導助成等があります。さらにまた中小企業関係機関に関し必要な権限を有することといたしておるのであります。このため、たとえば、従来中小企業庁の所管の外にありました中小企業退職金共済事業や国民金融公庫に関することも、中小企業省権限事項と相なるわけであります。  第四は、中小企業省機構についてであります。  まず本省には、中小企業大臣のもとに、大臣官再及び振興、組合、経営指導、商業の四局を設置し、大臣官房には調査統計部を設けることといたしておるのであります。  次に地方にも、支分部局として、札幌仙台東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の八ヵ所に中小企業局を設置し、それぞれのブロックを担当して、本省所掌事務の一部を分掌せしめることにいたしております。  さらに、外局としては、中小企業者と大規模事業者等との間における紛争を調整せしめる機関として、中小企業調整委員会を設置しているのであります。  以上が本法律案提案理由並びに内容概要であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことを切望いたします。
  4. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 本案の事後の審査は、都合により後日に譲ります。     —————————————
  5. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 次に、法務省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきまして、すでに提案理由説明を聴取いたしておりますので、これより質疑を行ないます。政府側からは大坪法務政務次官大澤矯正局長勝尾経理部長武内保護局長が出席しております。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  6. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案に関連して二、三お伺いしたいと思います。  まず最初に、順序として少年院についてお伺いしたいと思いますが、今度移転します鈴蘭台学園移転理由として、この提案理由にもございますように、施設がだいぶ老朽化してきたこと、学園周辺の地帯がだいぶ宅地が開発されてきたこと、こういう事情があげられておるわけであります。  そこでお伺いしたいのは、現在、全国に大体五十八ばかり、分院がそのほかに三つほどあるそうですが、こういう少年院の中で、この鈴蘭台のように、老朽化あるいは周辺宅地ができてきた、いわゆる宅地化、こういうような理由改築ないしは移転を要するような少年院はほかにもあるのじゃないかと思うのですが、この改築移転等の問題について、法務省としては当然年次計画というものを立てておられると思うのです。そういうことについて、ひとつその概要をまず御説明いただきたいと思います。
  7. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 少年院移転改築につきましては、本省といたしまして全国的な問題として検討をいたしているところでございます。概要を申し上げますと、少年院移転改築実施中のもの、これは現在一ヵ所ございます。それから少年院移転に関しまして、ただいま先生のほうから御指摘のありましたように、周囲の環境少年矯正教育上よろしくないということで、目下検討中のものが五ヵ所ございます。その総工費につきましては一応私のほうで概算を見積もりましたところ、約十四億を要すると見込まれております。計画といたしましてはおおむねこの五ヵ所につきまして、五ヵ年計画ぐらいで実施をいたしたいと、このように考えております。
  8. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、この鈴蘭台学園の新しい施設である播磨少年院、この播磨少年院についての建坪は旧施設よりは広くなっておるようですが、しかし、収容人員はわずかではございますけれども減っておるようですね。そこで少年院における収容人員について一人当たり基準坪数というようなものがきまっておるのかどうか。そういうものがあるとすれば、そういうものについて御説明いただきたいのです。これはこういう意味でお伺いするわけです。学校教育で、学校児童生徒一人当たり運動場とか、教室の広さ、こういうものはみんな基準がきまっておるわけですね。当然な根拠としてこういう少年院にも収容者一人当たり基準坪数というものはあってしかるべきだと思うのです。そういう意味で伺っておる。
  9. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 御指摘のように、少年院の建築につきましては、収容者に対する一人当たり坪数並びに職員に対する一人当たり坪数並びに、それから割り出した運動場設備、さらに少年院効果的に、効果をあげるためのおおむねの規模というものにつきまして、それぞれ基準を持っております。ただいま詳細な資料を、申しわけございませんが手元にございませんが、少年院の運営といたしましては、大体五十人に対して教官を四名ばかり配置しているというのが最も理想的な形態というように考えております。したがいまして、そういう五十人程度の規模のものをおおむね三つぐらい、寮舎でございますが、ぐらいを設けて、それに対して五十人に四人ぐらいの専任の教官をつける。さらにそれに対して一般の事務的な職員を考えていく、こういうおおむねの構想でやっておりますが、一人当たり何坪という詳しい資料はただいま持ち合わせておりませんので……。
  10. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今回の改正案を見ますると、少年院関係定員増は十八人あげられておるわけですね。ところが、前の国会でやはり少年院関係定員増を調べてみますると、前には少年院新設問題はなかったわけですね、なかったが教化活動を充実させよう、こういうねらいからたしか五十人くらい定員増が行なわれておる。ところが、今回は少年院二つもつくるというのにわずか十八人の定員の増にとどまっておるわけですね。そういうことになると一体、青森とか帯広、こういう少年院定員配置は一体どういう状態になるのかということ、それと、いまお伺いした前回教化活動強化という観点から五十人を増員した、しかも少年院新設はなかったわけですね、そういう状態の中で五十人、今回は二つ少年院新設があるわけだ、しかも逆に今度定員増は十八人にとどまっておる、ちょっと矛盾しておると思うし、したがって、少年院職員配置状況とあわせてこの問題をひとつ御説明いただきたい。
  11. 大澤一郎

    政府委員大澤一郎君) 前回少年院等の五十名の増員は、ただいま御指摘のありましたように、教化活動強化という意味合いで要求したのであります。これは先ほど経理部長から申し上げましたように、少年院日常寮生活生活指導を充実させるために、五十人ないし四十人の組み分けをいたしまして、それに四人の教官をつけまして、一日二十四時間交代勤務少年指導に当たるということで人員不足を要求しましてこれをやったわけであります。    〔委員長退席理事栗原祐幸着席〕 今回の少年院の増設に伴います増員の数でありますが、今回の少年院を増設しました理由は、東北北海道少年院一つずつ新しくつくるという案でございますが、現在北海道になぜ少年院をつくらなければならないかという理由としましては、現在北海少年院が一日の平均収容人員が四百三十六名おるわけであります。この定員を予定しておりますのは二百二十人で予定しておったわけであります。急激に北海道地方非行少年増加いたしまして倍くらい収容を余儀なくされて、したがって、現在予備室まで少年収容しておる状況でございます。三年くらいで二百十六人定員より多いということになっております。それで東北少年院におきましては東北少年院は現在仙台にございますが、それが一日平均二百二十人入っております。定員二百二十名、十名多いわけであります。合計二百二十数名のそれぞれの施設から、定員よりはみ出している少年を新しい少年院収容したいという考えで、東北北海道一つずつつくるというので二つ要求したわけでございます。北海道関係北海道少年院札幌等にございまして、函館地区周辺出身者が非常に多い、さような意味から青森少年院をこしらえまして、東北管内の余っている少年北海道函館地区少年青森収容し、北海道北部子供帯広少年院にという構想でやりまして、そこでそれぞれの少年院でいま人員を先ほど申しました一寮四十人ないし五十名の寮単位としまして、それから所要人員をはじき出しまして、寮単位に、それぞれ一単位に四人ずつ、それにその調整をはかる職員が一名、それと職業指弾あるいは学校教育学科教育に当たる者十名、それから事務職員合わせましてそれぞれの職員数を配分したわけでございますが、現在東北少年院に十名よけいの子供がおります。また、北海少年院には倍の少年がおりますために、相当前回人員査定の際にもそれに見合う職員配置した、それらの職員を差し引きまして四十人の増員が要ることになったわけでございます。そのうち二十二人は、御承知閣議決定によりまして、欠員補充強化についての方針によりまして、定員凍結になっております者が二十二名でございますので、純増員十八名といたしまして、四十名を増員いたしまして、合計七十六名の人員を得まして、それを帯広東北のそれぞれの少年院に三十八名ずつ配置いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  12. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、いま一部御説明もございましたが、全国少年院定員とその充足状況ですね。さらに昨年の九月四日現在で定員凍結があったわけですね。そこでその後の補充査定基準は一体どうなっているのか、こういう問題について御説明いただきたい。なるたけ御答弁は簡明に……。
  13. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 昨年の九月四日現在の欠員数について御説明いたします。少年院につきましては、昭和三十九年度の定員が二千七百四十五名でございます。そのうち九月四日現在の欠員が三十三名、そういう状態になっております。
  14. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、少年院における給食費の問題です。この問題については、当内閣委員会でも従来しばしば論議されているところです。試み犯罪白書によってこの内容を調べてみたんですが、収容少年一人一日当り三千カロリー、主食は二千四百、副食は六百計三千カロリー、こういうことでありますから、カロリーの上ではあまり問題はなかろうと思うんです。ただ副食費ですね、副食費は一日当たり二十九円六十銭、これは三十八年十二月の現在でそういう数字が出ておるわけです。ということになると、動物性たん白、脂肪、こういう点にだいぶ不足するということが指摘できるわけですね。参考までに陸上自衛隊のそれと比較してみると、陸上自衛隊は八十円二十銭だ、それから生活保護少年は六十二円、そのいずれと比較してみても二分の一以下ということがいえるわけです。これはあまりにも低過ぎるのではなかろうかと憂慮されているわけです。しばしば当内閣委員会でも問題になった、それがその後どのように解決されたか。この統計は三十八年の十二月現在でだいぶ月日もたっていますから、その間におそらく改善されたであろうことが期待されるわけですが、この点はいかがですか。
  15. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 御指摘のように、法務省といたしまして刑務所、少年院等矯正施設収容者栄養状況につきまして、過去三回実態調査をいたしたことがございます。その実態調査の結果を簡単に申し上げますと、ただいま御指摘のように、たん白質の量につきましては不足とは言えないが、質の面では著しく劣っている。特に保護少年につきましては、質、量ともに検査の結果は劣っているという結論を出しております。で、問題は、動物性たん白質、これをいま少しくふやす必要があるのではないか。昭和三十八年度の副食給与につきまして調べてみますと、少年院につきましては、動物性たん白が十九・六グラムでございます。これを理想的にはじくならば、二十八・五グラムの動物たん白がほしいという結論になっているわけでございまして、この十九・六グラムと二十八・五グラムの差につきまして予算のほうの折衝を続けているような次第でございます。その結果、一応昭和四十年度につきましては、副食代の引き上げが三十一円九十銭から三十三円七十二銭、合計いたしますと約六百十一万二千円の増加になっている次第でございます。
  16. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、司法統計年報によって見ますると、全国家庭裁判所少年保護事件歴年別処理状況が出ているわけです。これによりますと、保護観察は三十六年度から、それから少年院送致は三十五年度から、わずかではございますけれども、漸減しているわけですね。減少の傾向をたどっていて、たいへんけっこうなんですが、さて一方、審判開始、不処分、こういうものはどうかと見ると、年々ふえておる。試み昭和三十八年度のそれを見ますると、これが全体に占める割合が六四・六%となっているわけですね。これは相当な数になっておる。この数字検討してみると、保護処分関係の人的あるいは物的施設が不十分なために、こういう非行少年野放し状況がそのまま続いているのではなかろうかと、こういう点で憂慮されるわけですね。こういう点はどのように措置されているのか。このままではこれは問題だと思うのですね。審判開始あるいは不処分、これはいずれにしても内容非行少年ですから、それが六四・六%もあって、これが野放し状態に置かれておる。しかも、これは人的あるいは物的施設の不十分から来ているわけですね。これはまことにもってゆゆしい問題だと思うのですが、現状はどうなっているかということを御説明いただきたい。
  17. 大澤一郎

    政府委員大澤一郎君) 矯正関係少年院の面からのみこの送致者数を見てみますると、平均収容人員が二十八年、二十九年、三十年が一万人を突破しておったわけでございます。それ以来漸次減ってまいりまして、昭和三十九年においては九千四百十八人に減ってきているのでございます。非行少年少年院に送致するか、あるいはまた、これを保護観察にするかいなか、家庭裁判所の裁判官がいわゆる裁判事件として審理せられるわけでございます。これに対しまして、検察官の異議も申し立てられる。また保護処分にするか、刑事処分にするかということも裁判所権限に属するところでございまして、われわれとしましては、現に送られてきた子供を十分な処遇のできるような措置を講じていくということにならざるを得ないというわけでございまして、さような意味合いからこの事件数字を見ますると、昭和三十年以来ずっと減少してくる。そして、ただわれわれとしまして地域的な個所に偏在を生ずる——先ほど申し上げました北海道周辺がふえた、また、東京にいまふえつつございますので、目下宇都宮少年院を建設中でございます。そして九州方面に減ってきておるというふうな地域的偏在をなくするために、その動向においていま少年院移転改築ということをしておるわけでございます。全体においてずっと減ってきておりますので、いまのところ急激な変化というものは総数においては起こるとは考えられない。ただ、これは青少年の、非行青少年対策としましてはこれでいいか悪いかということは別個の観点に立ちますが、われわれとしまして、少年院状況というものは、過去十年間少しずつ減ってきておるという状況でございます。目下のところ、地域的偏在をまず避けるということで、少年院移転改築ということで、十分な処遇をしていきたいと考えておるわけでございます。
  18. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、同じこれも少年院に関連すると思いますが、   〔理事栗原祐幸退席委員長着席犯罪についてその傾向を見ると、数においては著しい増加を示しておるし、質においても非常に凶悪化しておる。特に問題になるのは、青少年に特にこの傾向が目立っておる、こういう状態がいま現実に見られるわけですね。こういうことでは、これはもちろん法務省だけの問題でなく、あるいは文部省あるいは厚生省、そういう各省庁にわたる問題ではございまするけれども、法務省立場から見てこういうゆゆしい傾向に対して一体どういうふうに対策を考えておられるのか。これはほうっておけないゆゆしい問題だと思います。これはまあ青少年に対する政綱の大綱でございますから、大臣にお伺いしたいところですが、大臣お見えにならぬからひとつ政務次官からその基本方針についてお聞かせいただきたい。
  19. 大坪保雄

    政府委員大坪保雄君) ただいま伊藤先生のお話の筋はまことにそのとおりでございまして、非行青少年の問題を取り扱っております法務省といたしましても終始憂慮もいたし、頭を悩ましておる問題でございます。法務省措置といたしましては、これはもちろんその原因を探求いたさなければならぬわけのものでございまして、原因の探求となりますと、ただいま先生もお話しになりましたように、学校教育家庭事情社会教育、特に最近非常に青少年の思想的、精神的方面に対する影響力を持つ各種のマスコミ、そういうようなもの等について総合的に考えていかなければならぬことでございますが、最終的に非行青少年の予防をどうするか、非行を犯した者の処遇をどうするかということについて、これは法務省責任をもって考えなければならぬわけでございまして、この点については、ただいま申し上げましたように、終始頭を悩ましておるところでございます。  これは、一つには環境をよくするということに力を注ぐべきであろうと存じます。その環境一つにたとえば暴力団というようなものがございます。こういう非行青少年発生の温床ともいうべきものに抜本的な対策を講ずべきだと思います。これは、御承知のように、最近特に暴力団に対しましての取り締まりを強化いたしまして、その点についてはある程度の効果をあげ得つつあるのではないかと存じますが、この措置を徹底してまいるということをいたさなければならぬ。また、そういう事情がございますから、各種社会教育学校教育その他の方面を担当される向きにも終始連絡をとりまして、そういう源泉を除去するということの措置を講じてもらうことも、また同時に進めてまいらなきゃならぬと思いまするし、いたしてまいっているようなことでございます。そうしてついに非行をあえてしたというような者に対しましては、今日法務省が持っております各種機関を動員いたしまして、それぞれの機関連絡をとりつつ総合的に矯正措置を講ずる、これを今後もやはり続けてまいらなければならないかと、こういうように考えておるようなところでございます。
  20. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この犯罪増加傾向は、ひとり日本だけの問題でなく、欧米各国にもそういう傾向は見られる。いうなれば世界的な傾向である、こういうことは言えると思うんです。だがしかし、日本のように犯罪の数の増加率の高い、しかも凶悪化の数の多いところは、だんだん凶悪化もひどくなってきている、こういう国はあまり世界に類例がないんじゃないか。特に日本においてそういう数において質において問題がある、こういうふうに考えられるわけですが、そうだとすると、これは容易ならぬ問題だと思うのですね。世界的の傾向だとして見のがすことはできない。特に日本にそういう数が激しいということになると問題だと思うんですがね。この点について法務省としての所見をひとつ承りたい。
  21. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 一応数字的なことについて私からお答え申し上げます。御指摘のように、少年犯罪増加し、また悪質化してきたということは御指摘のとおりでございます。私のほうでの統計数字を御参考までに申し上げますと、少年の刑法犯の検挙数でございますが、昭和三十四年を一〇〇といたしますと、昭和三十八年は一三〇という増加率でございます。さらにこれは警察の検挙数でございますが、そのうち検察庁に送られた、いわば悪質のものということになるかと思いますが、それが昭和三十四年を一〇〇といたしますと、検察庁に送られてくる少年犯の数が一五四という統計的な数字になっております。諸外国の数字につきましては、ただいま資料を持ち合わせいたしておりませんが、日本のほうがやはりこのパーセンテージにおいては多いのではなかろうかと記憶いたしております。そこで、こういう傾向に対して、御指摘のように、関係各省と申しますか、政府全体並びに国民全体に御協力願って対策を講じなければならないと思いますが、法務省の関係といたしましては、最初に非行青少年の予防対策の研究をまず根本的にやりたい。これは御承知のように、法務総合研究所が中心になりまして、青少年非行原因と科学的にひとつ把握したいということで数年来実施いたしておるところでございます。さらに少年犯罪、違法行為を犯した場合に、検察庁に把握できるわけでございますが、その面につきましては、特に粗暴化と低年齢層化というのが非常に憂うべきものというように感じておりますので、全国の各地方検察庁におきまして受理される少年事件につきまして、少年調査票というカードをつくりまして、その中に単に外形的な犯罪事実あるいは不法事実のみならず、家庭環境あるいは学校等の面につきましても整理をいたしまして、その調査票を自後の事件の処理、さらにその調査票を本省に送らせまして、非行青少年原因の研究等に活用しているわけでございます。さらにその中から少年院に送られてくる者につきましては、先ほど矯正局長の御説明もございましたが、職業訓練を重点的に実施いたしまして、手に職を持たして社会に帰すというところに重点を置いております。さらに事件処理の過程において少年鑑別所という組織法務省のほうで持っておりますが、そこで鑑別技官が非行を犯した少年につきまして資質鑑別等をいたしまして、その少年の適切な処遇を発見する一助としているわけでございます。さらに仮釈放あるいは仮退院、いわゆる更生緊急保護法、犯罪者予防更生法等によって保護観察の対象になってくる者、これは法務省におきましては保護観察所を全国に持っておりますが、そこで青少年保護観察を、いままでのように成人と一緒ではなしに、青少年につきまして特別に重点的に適切な保護観察をやっていくということで、観察官の増員なりあるいは保護司さんの御協力を仰ぐための実費弁償金の増額とかあるいは身寄りのない非行少年を扱う更生保護会の諸経費の増額等を実現して、これを強化していきたいということで、これらの関連部局において相互に緊密な連絡をとって、法務省法務省なりに総合的な施策を遂行していきたい、このように考えている次第であります。
  22. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほどお伺いしたように、世界的なこういう傾向ではあるけれども、日本が特に数において、質においてはなはだしい、それにはそれだけの原因がなければならぬと思うのですね。この原因を根本的に探求することは、これはなかなかもって容易ではないことだ。しかし、あえてこの問題を解決するためには、その難問題と取り組まなればならぬわけです。そういうことになると相当長期間を要するし、また、もちろん法務省だけの問題ではなくして、犯罪の防止とか処理に関係する諸官庁の、当然に一体的に責任を負わなければならない問題ではありますけれども、法務省としては特に責任は重大であろうと思うのですね。で、幸い三十四年の七月ですか、法務総合研究所が新設されたわけですね。そこで実証諸科学を活用して犯罪とその対策に関する刑事政策的研究が進められてきたと思うのです。それからもうすでに六ヵ年経過しておるので、この六ヵ年の研究の成果を一言にして言い尽くすことはもちろん不可能であろうと思うのです。したがって、ただいまはひとつこの問題を要約して、一言にして言うとこのような成果であったということだけの御説明をいただき、これは非常に膨大なものでございましょうから、そこであとの詳細についてはひとつ資料としてさっそく明日あたり御提出いただきたいと思いますが、そういう研究は進められておったと思うのですが、この問題いかがですか。
  23. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) いま手元に資料がございませんので、詳細正確なことは、まことに申しわけございませんが、申し上げかねるのでございますが、御承知のように、いま御指摘のように、犯罪原因、特に青少年犯罪原因につきましては、現在の刑事学の進歩の程度ではこれを的確に解明するまでには至っていないというのがおおむね世界の定説のように、私、承知いたしております。ただ、学問的に見て的確に原因を示すというところまでには至ってはおりませんが、御承知のように、人口の都市集中化だとか、あるいは教育の問題、あるいは不良文化財等の環境の問題、さらに少年の雷同性と申しますか、あるいは集団化しやすい性質といったようなものがいろいろ原因に取り上げられておりますが、法務総合研究所が発足しました当時、たまたまアメリカのハーバード大学の教授が青少年非行原因につきまして、約三十年間フォローをしました実験結果がございまして、それには青少年犯罪原因としておおむね五つの素因があげられているというように承知いたしておりますが、その素因がはたして日本においても当てはまるかどうかというようなスタンドポイントから研究を始めたというように承知いたしております。その結果につきまては、たとえば東京周辺、あるいはそういう問題につきまして、専門の教官のいる少年院の二、三の地方等ではある程度の解明ができたというように聞いておりますが、これを全国的に日本としてハーバード大学の研究が当てはまるかどうかという結果を出すまでにはまだ二年ぐらい要るように、私、聞いているような次第でございます。それを見ますると、やはり両親の問題だとか、いろいろなことが君かれているようでございますが、ただいま資料を持ち合わせておりませんので、大体の経過だけを御説明申し上げた次第でございます。
  24. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは時間の都合もありますから、本日のところはあと一点だけお伺いしておくことにいたしますが、こういう課題と真剣に取り組んで、これを解明するためには、いろいろお伺いしてきたわけですけれども、まず現在の犯罪の実情はどうかということ、それからこの対策として実施されてきたいろいろな制度とか、あるいはまた、いろいろな施策があろうと思うのです。言いかえると、犯罪とその対策の現状をまず明らかにしなければならぬ、こういうふうに一応考えられるわけですけれども、こういう考え方に対して法務省としてはどう考えられ、そうして、どういうふうに取り組もうとしておられるのか、このことだけをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  25. 勝尾鐐三

    政府委員勝尾鐐三君) 御指摘のように、まず実態を正確に把握をするということが出発点ではなかろうかというふうに考えておりますので、少年犯罪の実態につきまして、厚生省、文部省、あるいは警察等と緊密な連絡をとり、なお外務省等を通じまして諸外国の数字等も資料として取り寄せる。そうして、日本の実態のみならず、諸外国の実態とも比較しまして、それを把握した上で問題点を的確につかんで、それに基づいて法務省としての果たすべき役割りを立てていく。こういう方針で数年来進んできているような次第でございますが、幸いに法務省には検察庁、少年院少年鑑別所、保護観察所、法務総合研究所というものがあって、犯罪を犯した少年につきましては、一応最初から終わりまでフォローしようと思えばできるような組織に、いまなっておりますので、これを活用してりっぱな対策を立てたいという方針で進んでいるような次第でございます。
  26. 柴田栄

    委員長柴田栄君) ほかに御質疑はございませんか。——ほかに御発言がなければ、本案質疑は、本日はこの程度にとどめます。  午前の審議はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      —————・—————    午後一時三十三分開会委員長柴田栄君) これより内閣委員会を再開いたします。  通商産業省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしておりまするので、これより質疑を行ないます。政府側からは、村上通商産業政務次官、熊谷官房長山本通商局長伊藤軽工業局長、馬郡産業立地部長、倉八特許庁長官が出席いたしております。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  27. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案に関連して二、三お伺いいたしますが、まずお伺いしたいのは、提案理由にもございますように、貿易振興局の設置ということがあげられておるわけです。そこでまず順序として、貿易振興局の新設について一、二お伺いしたいと思いますが、この問題に関連して私が申し上げるまでもなく、自民党内閣では従来から行政の簡素化あるいは効率化、民主化、こういうことを看板として今日に至っておるわけです。こういう点からいうと、局を新設するわけでございますけれども、現内閣の基本方針に照らしてこれはどういうことになるのか、この点まずお伺いしたい。
  28. 山本重信

    政府委員山本重信君) 現在の通商局が人員が五百三十一名という非常に膨大な機構になっております。その上に所管をしております事項が最近の国際情勢の変化に伴いまして急速にふえ、また質的にも重要さを増してまいっております。そうした観点から、どうしてもこの際、局を二つに分けて、特に外に対する態勢を強化する必要が出てまいった次第でございます。ただいま先生指摘のように、行政機構一般としましては簡素化するという方針でございますけれども、本件は特に対外的な関係でその必要性が強く出てまいりましたという特殊な事情がございますのと、さらに現在の機構二つに分けるということでございまして、特に予算あるいは定員増加を必要としない、こういう観点から、例外中の例外ということで政府としてこの案を国会に提出するようにした次第でございます。
  29. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 またこの臨時行政調査会が長い間かかって、しかもかつてない大じかけの機構をもってこの行政改革に関する検討を進めてきて、昨年九月意見を答申しておるわけですね。この意見に対して各省庁はまたこの意見に対する意見を具申しておるわけです。で、この臨時行政調査会の内容を見ても、一言にして言うと、行政機構の簡素化、統廃合、こういうことを強調してきたわけです。これに対して当時の池田内閣も、またこれを踏襲しておる佐藤内閣も、臨時行政調査会の意見は尊重するという基本的な態度は変えてないわけですね。あくまでも臨時行政調査会の意見を尊重するという基本的な態度を今日まで持ってきたわけですね。こういう点から見て、やはり部局の新設については一応問題があると思う、この点はどうですか。
  30. 山本重信

    政府委員山本重信君) 一般的な御質問でございますけれども、特に通商局との関連においての御質問でございますので、便宜私からお答えさせていただきます。臨調の答申の中には、通産省関係の機構の問題にも触れておる点が、二、三ございます。特にいわゆる原局の再編成というようなことも答申の中に入っておるのでございまして、通産省全体といたしましては、その答申の趣旨を十分に尊重しながらどういうふうに機構を改正していくのが最も適当であるかということにつきまして鋭意検討を始めておる次第でございまして、できるだけ早い機会にその結論を得て、次の機会にその実現を期する、こういう段取りになっておる次第でございます。
  31. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 で、私が申し上げるまでもなく、内閣委員会というのは国の行政組織、公務員制度、こういうことを主体として審議する委員会ということになっておる。そういう観点から、従来やはり行政機構の問題についてはいろいろ審議を重ねてきたわけですけれども、この部局の新設については、私の関知する限り、昭和三十一年以後の問題ですが、それ以前は存じませんが、それ以後衆参の当内閣委員会においてこの問題については、部局の新設については反対の態度を堅持して今日に至っておるわけです。基本的には反対だ、いろいろ真にやむを得ない事情の場合は認めておりましたけれども、基本的な態度としては反対であったということ、こういうことは当内閣委員会における審議の過程をごらんいただけばよく御了解いただけると思うのです。こういう点からも、ここで局の新設ということになると、やはり問題が出てくるわけですね、こういう委員会の決定からも、この点いかがですか。
  32. 山本重信

    政府委員山本重信君) 局の新設につきましては、極力簡素化をはかるという線から、できるだけ抑制するというお考えにつきましては、政府自体もそういう基本的な考えを持ってまいっているわけでございますが、ただいま申しましたように、通商局の仕事は特に対外関係で、この一、二年の間、特に非常に大きな変化がございましたので、一般の内部の行政機構の問題とはまた違った、国際的なそういう特殊事情ということで例外としてお願いをするということに相なった次第でございます。
  33. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この提案理由説明を見ますと、「貿易振興局の設置に際しましては、機構の膨張抑制の見地から、現在の通商局の輸出振興部はこれを廃止することといたしております。」と、こういうふうに提案理由説明があるわけですね。もちろん貿易を振興することにわれわれは異存なくして、これはもう心から賛成するわけですけれども、貿易の振興ということになれば、まず輸出の振興をはかるのが先決ではなかろうかと思うのですね。そうだとすると、現在せっかく存置している輸出振興部を廃止してしまうわけですね。こういう点は貿易振興局をつくったからいいじゃないかと、貿易振興局の新設によって解決といえばそれまでですけれども、貿易の振興ということは、結局輸出だけ意味しているわけでなくて、輸出入一括しての問題だと思うのですね。で、現行では輸出振興部はあるわけですね。これをせっかくある部を廃止してしまうわけですが、やはり貿易の振興については輸出に重点を置くべきだと思うのですね。そういう観点からどうもちょっとおかしいと思うのです。その点どうですか。
  34. 山本重信

    政府委員山本重信君) 仰せのように、貿易振興と申しますと、その内容の重点は輸出の振興でございます。現在輸出振興部が担当しております仕事はかなり広範でございますが、ごく特徴的な点を申し上げますと、輸出を伸ばしていくために必要な国内の体制の整備ということになるかと思います。たとえば輸出のための金融、輸出を伸ばすための税制、あるいは輸出保険制度の拡充、こういうようなことがその内容になっている次第でございます。これをさらにさらに拡充し、発展させてまいりますためには、現在も部長が担当してやっているのでございますけれども、国内でも、たとえば関係各省との折衝をします場合に、局長が先頭に立ってやるほうがより強力にできるわけでございまして、そういった点で、今度できます予定になっております貿易振興局で局長が先頭に立ってこれをやっていく、こういうことでございます。その際、実は部はそのまま残しておくほうがいいのではないかという考えもなかったわけではないのでございますけれども、先ほど来お話もございますような機構の膨張を防ぐという観点から、局を一つつくるならば、そのかわりにやはり部をどこか一つつぶすということが非常にやむを得ない条件のようにも考えられまして、この際は一つ部をなくすかわりに局をつくる、そうしてその局は部以上に強力に輸出の振興をしていく、こういうことにいたしたわけでございます。  それから名称でございますが、実は輸出振興部のほかに経済協力部がございまして、それが両者非常に密接な関係がございますので、今度の貿易振興局の中に一緒に入れます関係で、輸出振興といいますと、いかにも日本の経済協力が全部輸出のためだという印象を対外的にも強く与えるおそれもございますので、そこは少しふんわりと貿易振興局という名前にいたしたような次第でございます。
  35. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 どうも最後の御答弁はちょっとおかしいと思うんですがね。輸出振興部というと、いかにも日本は輸出振興だけを考えているようだと、どうも対外的にまずい、そんな遠慮は要らない遠慮だと思いますね。どうぞ遠慮なく輸出振興を重点的に進めていくべきだと思いますね。  そこでお伺いいたしますが、この通商局の輸出振興部を廃止して貿易振興局を設置するということなんですが、これは考えようによると、輸出振興部という部を廃止する、そうして新たに貿易振興局を設置するということになりますね、これはあくまでもそういうふうに解釈していいのですか。部を廃止して、それで貿易振興局を新設する、そういう解釈でいいのですか、念のために伺っておきます。
  36. 山本重信

    政府委員山本重信君) 現在の輸出振興部は廃止をいたしまして、その振興部の所管している事務とそれから経済協力部をそれにつけまして貿易振興局という新しい局を一つつくることにいたした次第でございます。
  37. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そういうことはわかるのですがね。先ほども申し上げたように、衆参内閣委員会では、部局の新設には反対してきたということを申し上げた。しかし、そういう際でも、そういう際でもですよ。部から局に昇格するという場合は、部局の新設に反対しながらも、部から局への昇格は認めようじゃないか、こういう場合もしばしばあった。ところが、提案理由の御説明によると、あくまでも部を廃止して新たに局を新設するとおっしゃるから、部局の新設は従来反対の態度をとってきたということを明確に申し上げた。ただ、部をやめて局にするということになれば、考えようによると部から局への昇格ともなるわけです。そう解釈すれば、私はいままでこんな長い間質問せぬでよかったのです。部局の新設には反対なんだから、そういう基本的な態度を踏まえてお尋ね申し上げたわけです。ところが、ことばじりを決して取るわけじゃありませんけれども、部から局への昇格ということになると、部局の新設に反対する過程においても、局は認めようじゃないか、昇格は認めようじゃないかという、そういうことはしばしばあったわけです。だから、だいぶ部局の新設と部から局への昇格とは意味が違ってくるわけですね。ところが、何回お尋ねしても、これは局の新設だとおっしゃるからこういう質問を続けてきたわけですね。この点をひとつ明らかにしていただきたい。
  38. 山本重信

    政府委員山本重信君) ただいま御指摘のございました点は、私のことば使いが若干適切でなかった点があろうかと思いますが、実態は先生がいまお示しございましたとおりでございまして、輸出振興部を局に昇格をさせて、そしてそれに経済協力部を付置するというのがまさにその実態でございます。
  39. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうすると、最初の御説明は改めて、新設でなく、部から局への昇格だとおっしゃるわけですか。
  40. 山本重信

    政府委員山本重信君) 実態的にはまさにそういうことでございます。
  41. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあこれは考えようによってどちらとも解釈できるわけですけれどもね。ただ、通産省としても、当然に当内閣委員会では国の行政組織をやっておるんで、従来内閣委員会では部局の新設についてはどういう態度をとってきたかということを一応お考えになって、やはり了解しやすいような提案理由説明があってしかるべきだと思うのですね。もしそうだとすると、そういうことになれば、部から局への昇格なら従来でもそういう例はあるわけなんです。局の新設にはいつも問題が多いわけですね。したがって、これは御参考までに伺ったわけです。  次にお伺いいたしますが、この貿易振興局では今後輸出入を一体として扱うことになろうと思うのですが、この輸出入の比率は一体現在どうなっているか。輸出入の比率ですね。こまかい数字をあげぬでもけっこうですが、ここで、やはり先ほど申し上げたように、輸出に当然重点を置いてしかるべきだと思うのですけれども、現状は一体どうですか。輸出入のバランスですね。
  42. 山本重信

    政府委員山本重信君) 終戦直後から最近までは通商局の行政事務の中で輸入が相当大きなウエートを占めておりまして、課の数もおそらくいろいろ集めますと五つぐらいあったかと思います。その後だんだんに自由化が進んでまいりましたので、その事務の減少に伴いまして相当思い切って人員をほかのほうに転用をし、課も廃止をするということでやってまいりました。ただいま直接輸入の仕事をいたしております課は、二課——輸入企画課と輸入業務課の二課だけになっております。それに対しまして、輸出振興のほうは、相当に最近に重要性を増してまいりました関係で、人員もふえております。輸出振興部はまさにその全部でございますが、そのほかにも輸出に関連しておる一般的な仕事を経済協力部でも一部いたしておりますし、また、通商政策課等もそれに関与している次第でございます。
  43. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 通商行政というのは本来一体的に運営されてしかるべきだと思うのですがね。こういう見地からすると、いままでお伺いしてきた機構の改正について検討してみると、どうも不適当ではないかという感じがするわけです。と申しますのは、輸出と輸入が両局に分離されるわけですね。やはり輸出と輸入とは一体として考えられるべきであるのに、この機構では明らかに輸出と輸入は両方の局に分離されてしまうのですけれども、これはどうしてそういうふうに分離してしまうのですか。一体であるべきだと思うのですがね。
  44. 山本重信

    政府委員山本重信君) 仰せのように、通商局の仕事は、現在の各課相互間にきわめて密接な関係がございまして、輸出と輸入の関係もそうでありますし、輸出と経済協力の関係もそうでございます。で、これを分けること自体がかなりそこにむずかしい点もあるのでございますけれども、何といたしましても、機構が大きくなり過ぎましたことと、対外的にも相当に強力な体制をしく必要があるということで、分けることの問題も一応わきまえました上で、あえて分離をしようということに考えた次第でございます。その際、分け方にはいろいろな考え方があるのでございますが、ごく大筋を申し上げますと、今度分けます通商局のほうは、主として対外交渉——二国間交渉及び多国間交渉を含めまして対外交渉を主体といたします。それから貿易振興局のほうは、国内の輸出体制の整備ということに重点を置くことに相なるわけでございます。その際、輸入をどちらにつけるかということ、いろいろ検討してみたのでございますが、対外折衝をいたしますと、どうしてもその場合にはお互いに輸入政策を攻撃し合う。日本とフランスで交渉いたしますと、フランスからは日本に対して、もっと香水を買えあるいはブランデーをもっと買えという要求が参りますし、私どものほうからはフランスに対しまして、日本の繊維品に対する制限を撤廃しろ、こういうお互いに輸入を攻め合うということがその交渉の最も重要な点になりますので、やはり交渉をする人が輸入についての権限を持っているということがきわめて必要でございますので、輸出との関係ももちろんございますが、対外交渉との関係のほうがより緊密でなければならないということから、通商局のほうに輸入をつけた次第でございます。もちろん、この両局分かれましても、一体的運用はぜひともはかる必要がございますので、いろいろ特別のくふうをこらして、両者の緊密な連携には万遺憾のないようにいたしたいと存じております。
  45. 柴田栄

    委員長柴田栄君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  46. 柴田栄

    委員長柴田栄君) それじゃ速記を起こして。
  47. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 引き続いてお伺いいたしますが、この貿易振興局設置の理由提案理由によって見ますると、通商局長の対外経済交渉事務増加ということをあげられているわけですね。しかし、局の分割でなくして、対外交渉を担当し得るようなスタッフを設置することによって対処すればいいではないかというような考え方も出てくるわけですね。こういう点はどのようにお考えですか。
  48. 山本重信

    政府委員山本重信君) 対外交渉の体制を整備します方法としましては、局を設置するかわりに、適当な審議官とかスタッフを置くという方法も考えられないわけでございませんが、実情を申し上げてみますと、最近、西欧諸国あるいは中近東、アフリカ等から、ちょうど通商局長あるいはそれに相当する貿易庁長官というような人が非常にひんぱんに来られますし、また、国際会議に出てみますと、そういう人たちがみんな本人で出てまいっておる次第でございます。そのときに、私のほうでいろいろほかの用があって忙しいから、かわりに次長とかと言いますと、かなり多くの場合に、先方が、それならもう会わないと言うのです。やはりこちらの大使館がアレンジをする際に、一つのプライドと申しますか、格というものを見る考え方が国際的な場合には多いのでございまして、せっかくのチャンスを逸するというようなことが経験上再三ございました。やはり局長という一つの肩書きを持った人間が十分にその責めを果たしていくということが必要でございまして、そういうこともございますので、この際スタッフでなく、やはり局を分けて責任のある局長をそれに据えるということにお願いをすることにいたした次第でございます。
  49. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、問題を変えまして、特許庁の定員に関連して二、三お伺いいたします。  大幅な増員がはかられておるわけですが、にもかかわらず、この特許庁の事務は山積しておって、なかなか処理が進展してないように思うんですが、もちろん、一つの方法として人員増は当然に必要な要素ではございますけれども、ただ人員増ということだけではなく、これとまた並行して何か根本的な対策が講ぜられておるのかどうか。当然講ぜられておると思いますが、もしそうだとすると、そういう根本的な対策というのは一体どういうことか。こういうことについてまず御説明いただきたい。
  50. 倉八正

    政府委員(倉八正君) いま御指摘のように、人の増員だけでは根本的に解決しないじゃないか、それから、抜本的な対策があるかという御質問でございますが、われわれのほうとしまして、そのほかにいま考えておりますのは制度自体の検討でございます。たとえば、いまの特許の関係の法律が近代的な時代の流れに合うようにどういう改正ができるか、たとえば公表制度をつくってみる、早期公開、あるいは防衛出願、そういう技術的な改正を加えまして、そうして早く審査をやる、しかも、能率を上げてやる方法でございますが、そういう面が一つ。それからもう一つは、実用新案自体が、明治三十八年施行以来、時代に適しない面が非常に多うございますから、この制度自体を廃止するなり、あるいは根本的に改正するなり、そういう面からいま検討を急いでおりまして、改正審議会の各委員の方にも督励申し上げまして、ことしの夏ごろまでにその結論を出しまして、できれば来国会に改正法案を提出したい、こういう基本的な問題。それからまた、機械化の問題があります。特に登録出願という事務的に非常にむずかしい問題がございますが、これも機械化しまして、できるだけ能率よく、しかも早くやっていきたい、こういういろいろの面を考えております。
  51. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 日本貿易振興会という貿易関係の団体があると思いますが、この団体には国庫から事業運営費の一部を補助しているわけですね。この振興会の事業内容はどんなものなのか、この点まず御説明をいただきたいと思います。
  52. 山本重信

    政府委員山本重信君) 日本貿易振興会に対しましては、三十九年度事業費補助二十六億円あまりを交付いたしまして、四十年度はそれを三十二億円に増額をしたいということで予算をお願いいたしておる次第でございます。事業はかなり広範にわたっておりますが、特に重点を置いておりますものを申し上げますと、海外でいわゆる貿易センターを設置をいたしておりまして、そこで、一般的な宣伝紹介、場合によりますと、そこに見本を並べまして展示をする等の事業をいたしております。それから次に、調査員を広く海外に派遣をいたしまして、市場ごと、あるいは特殊な商品についての調査をいたしております。さらに、輸出のための秩序維持と申しますか、端的に申し上げますと、よく日本品に対する輸入制限がございますが、そうした輸入制限を事前に防ぐためのいろいろな調査、あるいは現地での交渉、働きかけ等も、民間ベースで一部のものについてはいたしております。それから見本市でございますが、海外で開かれます国際見本市に参加をする場合、また、日本だけで単独に見本市を開催する場合と両方ございますが、それぞれおもなものには参加するためにジェトロが中心になって取りまとめをいたしております。そのほか、業種別に農水産物とか、軽機械とか、雑貨とか、それぞれにつきまして、また、特殊な共同施設をつくりまして、現地でそうした業種ごとの貿易振興の仕事も、いま、いたしております。それからさらに、最近新しく始めた仕事といたしましては、貿易関係の資料のセンターをつくりまして、貿易関係業者が必要な情報資料は、そこに行けば大体のものはある、また、よく分類をいたしておきまして、それがすぐ見出せるようにしようということで、いま五ヵ年計画でその整備をいたしております。  以上が、ジェトロがいたしております仕事のうちの特に重点を置いておる仕事でございます。
  53. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 このような貿易振興会等の貿易関係団体に対する指導とか監督、こういうようなことはどのように行なわれておるか、その概要を御説明いただきたい。
  54. 山本重信

    政府委員山本重信君) ただいま、ジェトロに対しまする補助金の交付、また、それを通じますいろいろな指導監督につきましては、輸出振興部が担当いたしております。今度貿易振興局ができますと、そちらのほうですることになるわけでございます。できるだけジェトロと通産省とは表裏一体で動く必要がございますので、随時意見の交換をいたしますが、同時にまた、できるだけ自主性を持って民間ベースでなし得ることはジェトロが自主的に行なっていくというふうに、いま配慮をいたしております。法律上の権限の問題とは別に、事実上平素ごく緊密な連絡をとって、その運営に遺憾のないようにいたしておる次第でございます。
  55. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、輸出関係の検査ですね。輸出検査を厳重にやることがいかに輸出振興上大事であるか、また、ひいては日本の対外信用にも非常に響いてくる問題であろうと思うのですね。まあ、先般福井県で繊維製品の検査をこの目で拝見さしていただいてきたわけですけれども、繊維製品等については、相当厳重な検査が行なわれて遺憾がないようですけれども、たとえば一つの例をあげると、先般石炭がら事件というのがありましたね。これなどはまあ問題外の問題で、輸出振興という観点からきわめてマイナスの問題であり、かつは対外信用上に波及することきわめて重大であり、きわめて遺憾な問題だと思うのですが、こういう問題もこれはときたまの問題でありましょうけれども、こういうような問題はその後は起きておるのかいないのか、もし起きておるとすれば、どういう問題が起きているのか、こういうことに関連して、輸出検査はあくまでも輸出振興立場から、対外信用の立場から、当然に通産省としては重点的にお考えだと思うんです。こういうことについてひとつ御説明いただきたい。
  56. 山本重信

    政府委員山本重信君) 輸出品につきましては、かつては日本品は悪かろう安かろうというたいへんな悪評も出たのでございますが、最近はかなりの改善が自主的にも行なわれてまいっております。ただ、先般のような石炭がら事件は、先生指摘のように、まことに遺憾な事件でございまして、私たちは、もう今後絶対にそういうことが再び起こらないようにと思ってできるだけの注意を払っておる次第でございます。検査関係の機関に対しましても、いろいろ私たちが気がついたようなことにつきましては、しさいに連絡を取りまして、その万全を期しておる次第でございます。幸いにしてあのような悪質な事件はその後は起きていないように承知しておる次第でございます。
  57. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、デザインの盗用という問題ですね。このデザインの盗用についての実情とその対策はどういうふうになっておるか、また、これに関する指導はどういうふうに行なっておるか、こういう問題についてお伺いしたい。
  58. 山本重信

    政府委員山本重信君) デザインの盗用という問題もまことに遺憾な問題もございまして、一ころはイギリスあたりからもかなりひんぱんにそういう苦情が出たことがございました。それに対処いたしますためにデザイン法をつくりまして、そういう問題が起こり得る危険のあるものにつきましては、その商品を指定しまして、それについてはデザインの検査をしないものは輸出ができないというふうにいたしてまいっておる次第でございます。幸いにしまして、最近はそうした問題がほとんど影をなくしまして、イギリスあたりの人も、昔はそういうことがあったけれども、最近は日本については文句を言うことがなくなったということを先般も私話を聞きまして、たいへんにうれしく思っておる次第でございます。今後ともそういう方向で十分に制度の運用の万全を期してまいりたいと思っております。
  59. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 日本立場から今後経済的に発展を期するためにはどうしても国際収支の安定をはかる必要が当然に考えられてくるわけですね。そこで、具体的には貿易の取引とかあるいは貿易外の取引ですね。あるいは資本取引、こういうものの安定をはかる必要があろうと思うのですね。こういうことから輸出にかけられる期待はきわめて大きいわけですが、そこでお伺いしたいのですが、現在の国際収支の現状は一体どうなのか。それから、最近における傾向は一体どうなっているか。これはきわめて基本的な問題であるので、通産大臣にひとつ御説明いただきたい。
  60. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 三十九年度の年度末を迎えるのでございますが、当初輸出輸入の関係では六十二億ドルとんとんの計画を、その後変更いたしまして、輸出が六十八億ドル、それに見合う輸入が六十六億五千万ドル、こういうことでございましたが、これはさらに伸びまして七十億ドル、為替ベースで確実ではないかと思うのであります。輸入のほうは六十五億ドルから六十六億ドルぐらい、五億ドル見当の貿易収支は黒字であろうと思います。これに対して貿易外の収支で相当な赤字が出ます。それから、資本収支の関係は従来黒字でございましたけれども、この貿易のほうの関係が多少影響いたしまして、総合しては三十九年度とんとんもしくは若干の黒字になるのではないかと、こういう状況でございます。
  61. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、輸出の産業別の構成と最近の傾向は一体どうなっているか。たとえば農水産物とか鉄鋼とか重機械、軽機械あるいは窯業、建材品、あるいは軽工業品とか繊維品、紙、パルプ、非鉄金属、こういうもののおもだったものについての構成と最近の傾向、概略でけっこうですが、傾向だけを。
  62. 山本重信

    政府委員山本重信君) 便宜やや大きな分類で申し上げます。重化学工業品が何と申しましても最近では一番伸びてきておりまして、一九六四年、昨年の暦年で申し上げますと、全体の輸出のうちの五七%が重化学工業品でございます。その中でも特に機械、器具が三三%を占めております。そのほか鉄鋼を中心とします金属が一八%、化学品が五%でございます。それから、軽工業品は全体で三六%を占めておりまして、そのうちの繊維関係が二一%、これが中で一番大きなものでございます。それから、食料品が全体のうちの四・八%、それから、その他というようなことでございます。傾向を申し上げますと、重化学工業品、特に機械、その中でもさらに具体的に申し上げますと、自動車、船舶、繊維機械等の輸出が最近非常によく伸びてまいりました。それから、鉄鋼も予想以上に大きな伸びを示したのでございます。それから、繊維品でございますが、繊維関係は国際的にかなりいろいろむずかしい条件がございまして、かつてのように顕著な伸びはなかなか期待できないのでございますが、業界でも必死になって努力をしておりますので、わずかではありますが、伸びを示してまいっております。大きな傾向を申し上げますと、大体以上のような状態でございます。
  63. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、輸出するからには、輸出目標というものが通産省によって立てられる。その輸出目標に対する達成率ですね。これはごく最近のものは一体どうなっておるか。これを御説明いただきたいのです。
  64. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 先ほどの国際収支のときに御説明を申し上げましたように、当初六十二億ドルの目標を途中で六十八億ドルに変えました。この六十八億ドルを目標といたしますれば、七十億になっておるのでございますから、一〇〇%以上、こういうことになると思います。
  65. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 三十九年度上期の輸出額は、当年度目標額の通関ベースですが六十五億三千二百万ドル、それは達成率からいうと五一・五%、上期でこういうふうな状況で、あと七〇に達成率がなったというと、大部分は上期で達せられたということになるわけですね。上期と下期との関係はどうなるかな。上期で大部分が達せられたということにはなりませんか。いま大臣説明では、達成率は七〇%ということですね。上期の達成率を見ると五一・五%、そうではないですか。これ違えば訂正していただいて……。その関係をひとつ。
  66. 山本重信

    政府委員山本重信君) 上半期の四月から九月までの達成率は五一%ちょっとくらいでございまして、下期になりまして予想以上に伸びたのでございます。特に、例年ですと一−三月は比較的輸出は伸び悩みまして、むしろ輸入がふえるのが従来の例でございましたが、本年はきわめて特徴的な動きを示しまして、依然として輸出が非常に好調を続けておりまして、輸入がむしろ鎮静をしておるということでございまして、相当大きな部分が下期に輸出が伸びているということでございます。
  67. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 伊藤委員がちょっとお聞き違いではなかったかと思うのであります。六十八億ドルが改訂後七十億ドルになっておりますから一〇〇%以上と、こう申し上げたつもりでございます。
  68. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、特に中共貿易について二、三お尋ねしたいと思いますが、これはいろんな観点から、何といっても日本立場では中共貿易は積極的に振興する必要がある、そういうことはもう異論はないと思うのですが、その現状は一体どうなのか。そして、それに対するいわゆる通産省としての所見は一体どうなのか、そのことをあわせて承りたい。
  69. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 御承知であろうかと思いますが、一応参考までにここ三年ほどの中共貿易の実績を申し上げますと、一九六二年が輸出が三千八百万ドル、それから輸入のほうが四千六百万ドル、こういうことであります。六三年が輸出が六千二百万ドル、輸入が七千四百万ドル、六四年では一億五千二百万ドル、これが輸出でございます。輸入が一億五千七百万ドル、往復で三億ドルを上回ったと、こういうことでございますから、相当な中共貿易は進捗率であろうと思います。また、今後の傾向といたしましても、昨年十二月に、鉄鋼とかあるいは大豆とかあるいは肥料とか輸出入それぞれ大きな取引の協定ができておる実情でございますので、先々明るいと思うのでございます。ただ最近、中共方面におきまして、佐藤内閣の姿勢に対する批判などが出まして、何か先行き不安感のおそれなきにしもあらずでございますが、しかし、問題となったプラント輸出類以外におきましては、依然として順調に伸びておると思います。
  70. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 大臣の御説明によると、明るい展望が待ちかまえておるということでございますけれども、そこで問題なのは、吉田書簡を契機として、いわゆる輸銀ベースにするかしないかという問題で、最近もこういう問題が起きるまでは、非常に明るい展望であったわけですけれども、この輸銀ベースかいなかという問題が出てから、ちょっといまもたつき始めたのじゃないかというように私どもは見ておる。ごく最近のこういう現状は一体どうなのかということをひとつ御説明いただきたい。
  71. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 伊藤委員のおっしゃるような情勢は否定することはできないと思います。しかし、先月の二十四日の日に佐藤総理が国民政府の大使と会われまして、中共からも、また国民政府からも、とやかく言われたくないのだ、日本政府は自主的に判断をしていくのだと、こういうことを言っておられます。その後、中共側の動きも穏やかになっておるのではないかと判断をしておるわけでござます。また、輸銀の関係の問題につきましては、総理がはっきり言われておることでございまして、今後の問題については、自主的な判断で、とやかく言われて、どうするのだ、こういうことでなしにやっていきたい、かように考えております。
  72. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで、戦前の中共を中心にした大陸との貿易ですね、それをつぶさに振り返って見ると、相当隔世の感があると思います。私が昭和二年から昭和二十二年まで二十年間、私当時満鉄におりまして、中国はもとより蒙古とかチベット、ツングース、オロチョン、ギリヤーク、こういう小さなまとまりである民族とも接してまいりましたけれども、そういう民族の日用品などを見ると、九七、八%もう一〇〇%に近い日用品がメイド・イン・ジャパンであったわけです。ことほどさように、中国を中心にした大陸との貿易、特に輸出についてはまことに活発なものがあったわけです。関西以西のそういう関係者は、大陸との貿易によって事業を維持しておったと言っても過言でない。ことほどさように貿易が盛んであったわけですね。歴史的、地理的、文化的、あらゆる観点から見て、中共との貿易は当然にこれは振興させなければならぬ。幸い通産省としては、中共貿易に相当積極的に取り組んでおるというように私ども見ておりますので、その点については敬意を表するとともに、ますます中共貿易と真剣に取り組んで、これをひとつますます発展の方向で前向きの姿勢で努力願いたいとあわせて要望申し上げるわけでありますが、どうもこの吉田書簡に関連をして政府の態度ははっきりしないようなんですがね。中共に対しては政経分離のたてまえで云々というようなことをよく言われておるんですが、書簡以前に、こういう問題が問題になる前には、ソ連とかルーマニア、こういうのは輸出銀行ベースでみんな取りきめられておったと思うんですけれども、こういうこの書簡以前の状態をもあわせ考えて、ひとつ輸銀の問題についてはそういう方向でひとつ取り組むべきではなかろうか、これが一つの支障になっているわけですから、こういう点についての見解をお聞かせいただきたい。
  73. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 日本の国策といたしまして、貿易を大いに振興するということは言うまでもないと思うのであります。したがって、通産省といたしましては、その基本にのっとってものごとを処理しておる次第でございまして、ただいま問題になっておる日立造船とかあるいはニチボーのビニロン・プラント類につきましても、本年になりまして標準外決裁を求めてまいりましたので、逐次その承認をいたしたのでございますが、しこうして、その後におきましては、これは民間ベースで処理されるべきものである、また、契約がなだらかに実行されるべきである、こういう立場をとっておりますが、遺憾ながら、御指摘のような問題がございました。ございましたが、今後におきまして、私どもとしてはでき得る限り障害を除却して前向きにものごとを解決をしていきたい、かように決意をしておるようなわけであります。
  74. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 いまも申し上げたように、最近書簡が云々されるに及んでから、その後ニチボーのたとえばビニロン・プラント、それから、日立造船の貨物船あるいは東洋エンジニアリングの尿素プラント、こういうものの問題についていろいろ論議がされているわけですね。これに対する佐藤総理の発言がどうも一貫性を欠いておると思うんです。と言っただけではわかりかねると思いますので端的に申し上げると、二月二日の衆議院予算委員会において、中共貿易は政経分離で臨んでいる、こういうふうに、いわゆる輸銀による長期延べ払い融資にたよらずとも業者自体が企業努力すべきである、こういうふうに政権分離の態度で臨んでおるというような発言をしておるわけですね。これに対して、今度は二月十五日の最高輸出会議、これの席上では、中共向け輸出の延べ払い資金については、場合によっては政府が関係者と話し合って善処したい、今後ある程度の冷却期間を聞いて輸銀資金の活用等について検討するであろうということを趣旨にして、そういうような発言をしておられる。この二つだけを比較してみても、どうも一国の総理ともあろうものが、こういう問題について一貫性がない。どっちがほんとうなのかわからない。大体二月二日、それから約二週間たった十五日にはこういう発言をしておられる。これではどちらによってどういう方向で行くのかちょっとわれわれも了解に苦しむわけですね。この点をひとつはっきり——総理がおると一番いいんですけれども、総理自身に聞きたいところですけれども、まあ、出席されておりませんから、ひとつ総理にかわって大臣から、一体どうなのかということを御説明いただきたい。
  75. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 私は佐藤内閣の閣僚の一人といたしまして、総理の言われる方針が、これが政府方針であるというたてまえでものごとを処理していくべきであると思うのであります。いま御指摘の、国会での答弁あるいは輸出会議でのお話、こういうものを例におあげになりましたが、この場合、国会の答弁のほうに当然責任をお持ちになるべきだと思います。輸出会議のほうの分につきましては、もし速記等でもございますれば、しさいに検討いたさなければならぬと思いますが、私はその場におりまして、国会で言われていることと、輸出会議で言われていることと、そうお気持ちの差がなかったのじゃないか。ただし、新聞報道等につきましては、多少差があったように報道せられましたが、私としては国会での発言を重視していきたいと思いますが、また同時に、先ほど申しましたように、一国の総理が外交代表の方と会われてそして言われているということも、これまた尊重すべきではないかと思うのであります。したがって、二月の二十四日に国民政府の大使に、どちらからもとやかく言われたくない、自主的にすべては処理していきたい、こう言われた一番最近の総理のお気持ちというものを私は一番尊重してしかるべきではないかということで、この総理の方針のもとに、また同時に、先ほど申したように、貿易の拡大ということは国是でもあり、通産省としての大きな責務でもございますので、でき得る限り前向きに努力を続けておる、こういうわけでございます。
  76. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあ、これは通産大臣に抗議を申し上げているわけではなく、佐藤総理がおりませんので、ひとつ機会を見て私は強くこのことを反省を求めるつもりではございますけれども、こんな大事なことを、国会で言ったことが信頼性があって、最高輸出会議で言ったことは国会で言ったことととってもらっては困るような意味ですけれども、国民はそれでは承知しないですよ。また、特に最高輸出会議だって、これはきわめて大事な会議だろうと思うのですね。そういうところで終始一貫しない発言をされたのでは、全くもって国の信頼にかかわる。しかも、事もあろうに、一国の総理大臣が国会で言う答弁とそういう大事な会議で言う意見が一貫性がないということ自体が、これはきわめて重大な問題だと思うのですね。繰り返し申し上げるように、ここに佐藤総理がおりませんので、ひとつ適当な機会に私は強く抗議を申し入れるつもりではございますけれども、ひとつ通産大臣からも、この点は強く反省を求めていただきたい。国会の内閣委員会でこういう意見のあったということをひとつ強く御指摘いただきたいと思うのです、機会を見て、私は抗議いたしますが。
  77. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ただいま申し上げましたように、輸出会議には私も出席をしておりまして、総理の最初から最後まで、御出席になってから退席されるまでの全部のお話を聞いているわけでございます。そこで、新聞の報道などを取り上げた場合に、そこに何か相違点があるように見受けられましたが、私としては、委員会のほうも、またこの最高輸出会議のほうも同席をしておりまして、その間に御批判を受けるような差異があったというようには思わないのでありますが、しかし、せっかくの御指摘でございますので、いずれ速記録等で対照をしてみたいと思いますが、もし多少でもそこに差がある、御指摘のようなことであってどうするのだと、こう言われれば、私は国会のほうでおっしゃっておることを直視していくのがほんとうではないか、こういうふうにお答えを申し上げたわけで、御了承願いたいと思います。なお、御注意の点は、機会がありますれば総理にお話しをしておきます。
  78. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、この問題は、いまも申し上げましたように、本人がいないわけですから、私は別途機会を見て直接抗議を申し入れるということにして、大臣の御説明によると、新聞の報道が間違いだというふうにとれるわけですけれども、どうもそうとも受け取れない向きもあるわけでございますがね。こういう点はひとつ、これは総理大臣だから総理大臣でないからという問題でなくて、やはり国会の場と、またいかなる場でも、だれであろうと、ひとつ一貫性を持って臨むということは、これはもうすべてのことに当てはまるということをここで強く主張するわけでありますので、こういう点は、本人おりませんから、要望として申し上げておきたい。
  79. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  80. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 速記を起こして。
  81. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 引き続いて、輸銀資金の問題についていま少しお伺いいたしますが、まあ、外務省としては立場上吉田書簡に縛られているかっこうだと思うんですね、率直に言って。通産省は、先ほども言ったように、積極論を提唱されておる、このことは両者の関係を見ると、明らかに対立した状態にあるということは当然割り出されてくると思うのですね。この点についてはどのように通産大臣としてはお考えですか。
  82. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 伊藤委員のいま言われたように、何かこう行き方が違うようなそういう傾向を全然私も否定するものではございません。しかし、これはすでに発表されましたので、この機会に申し上げますが、きょうの閣議におきまして、関係の田中大蔵大臣、椎名外務大臣、松浦運輸大臣、それから私と、四人の意見は一致いたしまして、契約はすみやかに実行に移さるべきではないか、そして民間の金融については目下考慮中だ、こういうふうに相互の意思統一が閣議で行なわれておるわけであります。今後金融についてどういうふうにしていくかということについては、相手になる金融機関がそれぞれございますから、その間に、日立にしてもあるいはニチボーにしても相談をされて、採算が合うか合わないか、これはもう民間ベースのことでございますから、会社が判断をいたすと思うのであります。そういうわけで、従来、何かこう客観的にごらんになって、意思統一ができてないじゃないかという御批判があったかと思いますが、本日の閣議でさように意思統一ができておるということを申し上げておきます。
  83. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この機会にお伺いしておきたいのは、日本の貿易振興についての基本方針ですね。これはただ中共貿易ということだけではなく、その他の特殊な国に対しても政策金融を強化していこうとなさるのか、この点をひとつ明確にしておきたいと思います。
  84. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 現在貿易を拡大していく上にどういう点に支障があるか、こういう点を考えてみまするに、一つには先進諸国間の対日輸入制限だと思うのであります。その輸入制限の形は、自主規制で現われておったり、あるいはセーフガードをやっておったり、あるいは日本に対する品目ではっきりと輸入制限をしておるとか、いろいろあろうかと思います。これが一つだと思います。それからもう一つは、東南アジアやアフリカ諸国に対して片貿易になっておる、その是正をどうするかというような点が大きな問題ではないかと思います。前段のほうにつきましては、昨年四月以降、開放経済体制下に入ったのでありますので、二国間協議あるいは多国間協議を通じまして、これの改善につとめていきたい。それから後段のほうにつきましては、アンタイド・ローンを与えるとか、あるいは開発輸入をするとか、あるいは特殊の国に対してはコンペ制度をとるとかいうようなことによりまして、できるだけ片貿易の改善をしていきたい、特に問題になりますのは、一次産品の輸入を強くこれら諸国は要望しております。この場合、日本の国内に対する農業、中小企業に対する影響をいかに少なくして、しかも、一次産品をよけい買うかという点についての慎重な努力が必要かと思いますが、ただいま申し上げましたような諸施策を総合して貿易の拡大につとめたい、かように考えておる次第でございます。
  85. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、低開発国の振興についてはいわゆる先進国の援助が当然必要なわけであるわけです。この問題については、もう昨年になるわけですが、昨年の夏、デンマークのコペンハーゲンで列国議会同盟会議があって、その際に、低開発国の振興をはかるにはどうしたらいいかというそういう案件が出されて、私たまたま経済問題を担当しておったので、この問題について本会議で発言を求めて論議したことがございますが、これは世界の情勢として、この低開発国——低開発国という表現はつかいませんでしたけれども、開発のおくれておる国に対して、未開発とか、刺激するようなことばは一切つかっておりませんでしたが、結局、要は低開発のわけです。そういう政策に対して、日本としては一体経済協力をどのように進めようとしておるのか、こういう点について御説明いただきたいと思います。
  86. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 伊藤委員の言われましたように、国際場裏におきまして南北問題が非常にやかましいのでございます。現在先進諸国間におきましては、国民所得の一%の後進国援助をやろうと、こういう方針が立てられております。この方針からいたしますと、六三年のわが国の後進国援助は二億六千五百万ドルということで、一%の半分程度ではないかということでございますから、日本の援助施策というものが十分でないと、こういうふうに言えるかと思います。したがって、今後におきましては、この援助政策をどんどん拡充する必要がございます。一気にできるかは別といたしまして、先進国がお互いに一%やろうという目標に向かいましてすみやかに改善をすべきではないかと思うのであります。昭和四十年度の予算におきましても、この国際的な義務を反映して、経済協力関係についての予算を相当計上いたしておる次第でございまして、もし必要がありますれば、詳細は政府委員のほうから申し上げます。
  87. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 最後に、中小企業対策の問題について一、二お伺いしておきたいと思います。最近、金融はだいぶ緩和に向かっておるわけですけれども、中小企業の資金繰りは依然として逼迫しておるわけですね。今後も倒産の続出が懸念されておるのが現状であろうと思うのです。これについて一体対策はどのように立てられておるかという点が第一点と、会社更生法の適用申請の件数は一体どのくらいあるのか、その処理状況はどうなのか、そういう問題についてあわせて御説明いただきたいと思います。
  88. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 後段の会社更生法の申請状況、またそれに対する認可状況につきましては、ただいま手元に資料がございませんが、事務当局が持っておりますれば御説明申し上げます。もしありませんでしたら、後日資料として差し出したいと思います。  それから、前段の中小企業の倒産につきましては、三月は二月に比較して件数は減りましたが、負債額は二月に比較して相当高いものと思います。大体倒産件数は五百七件と記憶いたしますが、これも詳しくは事務当局から説明させます。  そこで、こういう傾向のもとに通産省どう考えるのかということでございますが、昨年の十一−十二月のいわゆる年末の金融に対処いたしてまいりました。政府としては、三機関に対する財投のワクを広げ、また買いオペを実施いたしまして、市中金融機関の金融をしやすいようにしてまいったのでありますが、この二−三月に依然として倒産が多かったというのは、この十一−十二月当時に一応の手当てはしたが、短期のものについてはその決済期が来たということ、あるいはすでに御承知のように、山陽特殊製鋼あるいは日本特殊鋼、あるいはサンウエーブとかというような中堅以上の企業の倒産が中小企業にしわ寄せをして来たものと思うのであります。ところで、この年度末の金融の状況でございますが、一月−二月と、三機関を通じて見ますと、貸し出し状況というものは目標を相当下回っておるのであります。そこで、三月は余裕あるワクでございました。ただ、この余裕があったということは、あるいは貸し出しを渋ったんではないかというような面もございます。また、最近のような経済状況でございますので、非常な警戒をした、こういうような面があろうかと思いますが、政府の三機関はもとより、民間の金融機関に対しましても、中小企業庁が中心になりまして、この連鎖倒産とか、黒字倒産の起きないように十分手配をさせております。また、地方通産局を中心として、政府機関あるいは民間金融機関、自治体、保証協会等を糾合しての金融懇談会などをいたしまして、まず私としてはこの辺が底入れであって、今後の倒産件数も倒産額も次第に鎮静化するものではないかと、かように観測をしておるわけでございます。
  89. 中野正一

    政府委員(中野正一君) 倒産の件数は、いま大臣も申されましたが、件数にして三月が五百七件、金額にして九百九十億ということで、最高記録でございます。これは御承知のように、山陽特殊製鋼の倒産の額が入っておるわけでございます。  それから、会社更生法の適用につきましては、これは御承知のように、裁判所へ手続をしまして、裁判所で認可をして、管財人を選んで更生計画を立てることになっておりまして、これは法務省のほうが所管をしておりますが、通産省のほうでも企業局が中心になりまして、法務省なり裁判所連絡をとりまして、いま調査をいたしておりますので、判明し次第すぐ資料として提出したいと思います。
  90. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いいたしますが、いまの資料の提出については、倒産の数、そういうことも含めてひとつ一括してなるべく早目に御提出いただくことを要望申し上げておきます。
  91. 中野正一

    政府委員(中野正一君) さっそく調べて提出いたします。
  92. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、この際お伺いしておきたいのは、最近の企業者の売り上げ額に対する売り掛け金額が増加しつつあるということを聞いておるわけですが、そうだとすると、これは一体どのくらいになっておるのか、その程度をひとつ御説明いただきたいのですが。
  93. 中野正一

    政府委員(中野正一君) これもいま手元に詳細な資料がございませんが、ただ、企業間信用、売り掛け、買い掛け両方でございますが、二十兆をこしております。詳細については後ほど資料として御提出いたします。
  94. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 せっかく金融が緩和されても、この割合が減少しない限り、金融緩和の措置もその効果は期待できないと思うのですね、そういうことでは。この点についてはどういうふうにお考えですか。
  95. 中野正一

    政府委員(中野正一君) いま先生が御指摘になったとおりだと思います。したがって、このたびの金融緩和あるいは金融正常化の過程におきまして、この問題に政府としても真剣に取り組んで、企業間信用は、金融緩和の時期にもちろんこれは経済の諸活動が拡大するわけですから、その意味である程度そういうものはやむを得ぬことと思います。このような企業間信用の膨張ということを何とかこれを是正したいと思っております。
  96. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、問題なのは、小規模企業者ですね。中小企業といっても、その小のうちにも入らない、いわゆる言うならば零細企業といいますか、そういう部類の事業者に対しては、特段の配慮はあってしかるべきだと思うのですが、こういう点はどのように施策を同意されているか、これを最後にお伺いいたします。
  97. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 今国会に御審議をわずらわしておるように、共済事業団であるとか、あるいは無担保、無保証制度であるとかというようなことをやっておるのでございますが、また同時に、全国の商工会あるいは商工会議所を通じての企業診断指導等も行なっておる。伊藤委員のおっしゃるのは、おそらく零細企業に対する対策が十分ではないじゃないか、こういう点に尽きるかと思います。その点は私どもも十分認識をしておるところでございまして、今後におきましてもできるだけ零細企業対策の拡充につとめたい、かように存じます。
  98. 柴田栄

    委員長柴田栄君) ほかに御質疑はございませんか。  ほかに御発言もなければ、本案質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もなければ、討論は終局したものと認め、これより採決に入ります。  通商産業省設置法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  99. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、先例により、委員長に御一任を願います。  暫時休憩いたします。    午後三時八分休憩      —————・—————    午後三時十四分開会
  100. 柴田栄

    委員長柴田栄君) これより内閣委員会を再開いたします。  文部省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。本案につきましては、すでに提案理由説明を聴取しておりまするので、これより質疑を行ないます。政府側からは、愛知文部大臣、西田官房長、蒲生社会教育局長、斎藤管理局長、宮地文化財保護委員会事務局長が出席いたしております。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  101. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案に関連して、大臣を中心に二、三お伺いしたいと思いますが、まずお伺いしたいのは、この提案理由説明を見ますると、教育基本法の第七条、社会教育法第三条で、国が義務づけられている社会教育の必要性、これはもう言うまでもないわけですが、その社会教育関係職員等に対して専門的、技術的な長期の研修を行なうために、文部省の付属機関として国立社会教育研修所を新設しようとするのが一つ理由になっておるわけでございます。そこでお伺いしたいのは、この研修所の人員については、当初七名で七月一日から発足するという説明でございますけれども、この人員で、最初とはいえ、七名ぐらいで十分なのかどうか。そして将来の展望に立って定員とかあるいは機構、こういうものについての計画があろうかと思うんです。こういう点についてまず御説明いただきたい。
  102. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) ごもっともなお尋ねでございますが、実はもう少し多いほうがよろしいのかもしれませんけれども、この研修所の性格は、提案理由でも申し上げましたように、現在社会教育の必要性ということが痛切に叫ばれておりますが、一方各地方をごらんいただきますと、公民館にいたしましても、図書館にしても、あるいは「青年の家」とか児童館とか、あるいは青年学級、婦人学級というふうなものが相当盛んになっております。そういうところからいろいろの希望が出ておりまして、それらに対する、何と申しましょうか、指導者の養成といいますか、社会教育と申しますか、そういう点が年来非常に強く要望されておる。その研修ということをやりたいと思うわけでございますから、やり方といたしましては、一ヵ月とか三ヵ月とか半年とか、それぞれ地方指導者層に当たる方々に研修をしていただくわけですが、したがって、そこの先生になってくださるような方は、大学その他の、その道の権威者をお呼びをして、そしてお手伝いを願うといいますか、いろいろの講義をしたり研修に当たっていただく。したがって、この七名がこれだけで働くわけではございませんで、できるだけ各界の方々の御協力を願って、実態的に言えば、大学の教授、あるいはこれに準ずるような方々が実際上多かろうと思いますけれども、そういう方々をお願いをして研修をいたしたいという考え方でございますから、自然専任の職員というものは比較的少数でやっていきたい、こういうふうな考え方でございます。
  103. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この提案理由説明をさらに見ますと、研修所の建物については、上野の図書館敷地内にある旧図書館の職員の養成所、このあとを使用するとのことでありますけれども、これは、増改築することなく、そのままで施設としては十分事足りるのかどうか。また、そのあとは大体二百坪ぐらいと聞いておりますが、その使用されるという施設でいいのかどうか、こういうことをお伺いしたいと思います。
  104. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これもごもっともな御質問と思いますけれども、大体あの建物が、建坪二百四十二坪で四教室でございます。それから、松戸に寮がございまして、二十八人収容できる。さしあたりこれに若干改修を加えまして、施設の改修が百九十二万八千円という予算になっておりますし、それから設備費が七百六十七万六千円、大体二千万円程度の経費でこれを、何と申しますか、改造運営してまいりたい、さしあたりはこれで足りると考えております。
  105. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 文部省では、従来から、たとえば社会教育主事とか、あるいは公民館主事、そういう人たちに対して研修事業を行なってきているようですが、いままでの研修実績についての概要を御説明いただきたい。
  106. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) これまで社会教育関係者の研修につきまして、国が直接に全国的な規模あるいはブロック別の規模実施している研修は非常に多きにのぼっております。たとえば、社会教育主事の長期研修につきましては、これは昭和三十七年度から毎年、期間にいたしますと二週間、人数にいたしまして大体平均百五十人くらいの社会教育主事を対象としてこの研修会を行なっております。それからそのほか、たとえば全国の成人教育研究集会でございますとか、あるいはブロックの公民館主事の研修でございますとか、あるいは博物館の学芸員、あるいは図書館の職員の司書の研修会でございますとか、あるいは青年学級の指導者の研修会その他あげますと、約二十近い数の研修会を文部省直接で行なっておりますが、しかし、いま申しましたように、一番長期でも社会教育主事の研修が二週間でございまして、そのほかのものは一週間か五日という短期間のものでございます。
  107. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、新たに研修所ができるわけですけれども、しかし、従来から社会教育主事とかあるいは公民館の主事等に対して研修はやってきておるわけですね。そこで、新設に伴って研修の内容は違ってくるのかどうかという問題が一つと、それから四十年度においては当然に研修計画というものが立てられておると思うのです。そういうことを概要でけっこうです、具体的に御説明いただきたい。
  108. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) 三十九年度まではただいまも申しましたような規模において行なっておりますが、明四十年度におきましては、研修所が認められますならば、先ほど大臣からも申しましたように、長きは半年あるいは三ヵ月あるいは一ヵ月というコースで、それぞれそうした社会教育主事とかあるいは公民館の主事あるいは博物館の学芸員、図書館の司書あるいは青少年団体の指導者でありますとか、婦人団体の指導者でありますとか、そういう対象別にいたしまして、それぞれに必要な内容のものを、カリキュラムを組みまして、そしてこの研修を実施いたしたい、かように考えております。
  109. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 その研修所の四十年度の予算はどのようになっておりますか。
  110. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) 四十年度はこれが七月から開設するという予算のたてまえになっておりまするが、その九ヵ月予算でありますが、これが総額で二千三百万円でざごいまして、そのうち二千三十三万円が、先ほど大臣から申しました施設の改修費でありますとか、あるいはその研修所に備えます必要な設備費であります。そのほかに人件費として二百六十九万円が含まれております。
  111. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、提案理由説明の中にある臨時私立学校振興方策調査会という問題について一、二お尋ねしておきたいと思いますが、最近大学生の急増問題はいよいよ重要性を増してきておる。私立学校においては、その経営の実態とか、あるいは各種の私学振興方策、こういう問題について検討して成案を得るために、臨時私立学校振興方策調査会を設置しよう、こういう御説明があったわけですが、そこで、このことに関連してまずお伺いしたいのは、この調査会が文部省の諮問にこたえて検討の結果を答申した際、この調査会の意見を全面的に尊重なさろうとするのか、それとも、文部省にとって都合のいい分だけ尊重して都合の悪い部分は例外だ、そういう態度をおとりになるのか、これは前もってその態度をお伺いしておいたほうがよろしかろうと思うのであります。この問題についてお伺いしたい。
  112. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 実は大学問題、特に内容的には私立大学をどういうふうにこれから国家的に助成していくかということは、ただいまお話がございましたように、私から言えば、今日の日本の持つ最大の問題の一つではなかろうかというくらいの比重の高い問題であると考えておることでございます。と申しますのは、大ざっぱに申しまして、大体現在百万人の大学生、その七割は私立大学、それから、一面において、現在東京都内で例をとりますと、義務教育を終わった人たちのうちの大体、九割が高校へ進学いたします。そうして、高校三年の課程をやって、東京でいえば、半分あるいはそれ以上が大学に進んでおるというような社会的趨勢でございます。ことに四十一年度は戦後のベビー・ブームの連中がちょうど大学に進学を希望するときになったピークでございます。そこで、四十年度も実にこれは頭を悩ました問題でございます。ちょっとわき道にはずれて恐縮でございますが、私学振興会は三十九年度の倍の事業ができるようにして、長期低利の融資をするようにいたしまして、私立大学で約一万五千人の定員増をしてもらう、そのための必要やむを得ざる融資を国家的に助成することにいたしたわけでございます。しかし、四十一年度におきましては、とてもこれだけのことでは足りない、そこで、いろいろの意味で知恵をしぼって、ひとり文部省のみのよくするところではございませんので、各方面の御意見を結集して、むしろ率直に言えば、文部省に都合のいいようなわれわれの考え方をバックアップしてくださるような意見が出るに違いないと私は確信しているくらいでございます。これを財政当局その他に対しましても大きな力にしてぶつかっていきたい、おそらくは文部省が困ったりあるいは文部省として始末に負えないような意見は出てくるはずはない、もうこの私学の助成については程度の差はございますし、いろいろ意見はございますが、ほんとうにこれは国家的なたいへんな問題であるということで、国民の関心もまことに高い状況でございますから、私といたしましても、この調査会には大きな期待を持って、どうかひとつ世論も喚起していただきたいし、特に財政当局等に対して権威があり、かつ、強力な答申が出ることを期待しておる。非常にざっくばらんでございますが、こういう気持ちでございます。
  113. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 特に文部省としての態度をあらかじめお伺いしておいた意味は、昨年の九月臨時行政調査会が、かつてない規模とそれに長期間を要して慎重検討した結果、行政改革に関する意見を出しておるわけです。みな各省庁等に出しておるわけですが、それに対して、また各省庁は意見に対する意見を出しておるわけです。そういう意見を怠慢のゆえをもってまだ出していない官庁もあるわけですが、ここにそういう資料がございますので、文部省の関係を見ますると、文部省の関係は、こういう面については非常に忠実に——内容は別ですけれども、内容はこれから申し上げますが——とにかく意見に対する意見はほとんど出しておる。こういうことについては非常に誠実にやっておるようなんですが、さて、この臨時行政調査会の行政改革に対する意見は、これはもう私が言うまでもなく、前池田内閣のときから、これはもう内閣をあげて尊重するという態度を持ち続けてきたわけです。この内閣を受け継いだ佐藤内閣も、当然尊重するという基本態度を堅持して今日に来たわけです。さて、この意見に対する文部省関係の分だけを見ますると、ここに詳細な資料がございまするが、そのうちから、時間の関係もありまするので、二、三拾ってみると、たとえば教育長の任命についてこの点臨時行政調査会としては都道府県教育委員会及び文部大臣の承認制度を廃止せよという意味の意見を出しておる。これに対して、まあ詳しく申しませんが、文部省結論的にこれは反対。それから次に、補助金関係部局を整理縮小すべきであるという意見にも反対、それから、国土に関する基礎的、一般的研究部門を科学技術庁に統合すべきであるという、こういう意見にも反対、予算執行を変更、停止する権限を持つ監査機関の設置という臨時行政調査会の意見にも反対、こういうふうに反対反対で、もちろん、私は反対だけ拾い出したので、賛成の部類もあるし、検討を要する意見もあるわけですけれども、たとえばこういうふうに引き出してみると相当の部分に反対しておる。せっかく臨時行政調査会がかつてない規模と長期間を要して意見をまとめてそれを出したのに、結論的には文部省はこういうふうに反対しておる。こういう事実があるので、今度はせっかく臨時私立学校振興方策調査会をつくっても、文部省に都合のいいところは尊重するけれども、どうも都合の悪いと思われるところは反対だということでは、あまりこの調査会をつくっても意味がないわけですね。少なくとも意義は薄らいでしまうということを顧慮してお伺いしておるわけです。したがって、愛知文部大臣は、この臨時行政調査会の意見に対して、尊重するのかしないのかということをお伺いすれば、御答弁はおそらく、臨時行政調査会の意見に対しては尊重いたしますと、そういう御答弁になろうかと思います。さて、具体的な問題になると、こういうふうに反対の部門が出てくる。こういうような関係でお伺いしたので、ひとつここでこの質問に対する大臣のお考えをはっきりお伺いしておきたいと思います。
  114. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 実はその点も私考えましたわけでございまして、この今度お願いしております調査会は、私立学校振興方策調査会——私立学校をどうやったらば育成強化、国家的助成ができるであろうかという、その方策をひとつお教えいただきたいというわけで、この焦点をしぼっておるつもりでございますから、先ほど申し上げましたように、私立学校の刻下の一大問題としてこの助成措置をほんとうに結集していきたいと考えておりますから、ここから出てまいります御答申や御意見というものは、われわれは尊重するどころではなく、これをむしろ文部省としては背中に大旆を掲げて各方面に、何といいますか、渡り合う、そういうような姿勢でまいりたいと考えておるわけでございます。  それから、この臨時行政調査会の答申についてお話をいただきましたが、おことばを返すようで恐縮なんでありますが、私は文部省につきましても、また科学技術庁につきましても、臨時行政調査会の答申は全面的に賛成の気持ちでございまして、ただ、いま反対を申しております点を二、三率直に私どもとしては、臨時行政調査会といいますか、行政改革本部に対して出しておりますわけでございまして、思想、考え方その他の点については、全面的に賛成でございます。いま出しておりまする意見につきましても、さらにいろいろの意見もあろうかと思いますけれども、基本的には賛成であるということは、私あえて明確にいたしておきたいと思います。ただ、臨調の答申の中で、考え方の問題として一つだけ非常に大事だと思います点は、大学の研究自由ということが、科学技術の研究開発に関する限りは、大学の研究をも含めて、科学技術庁が総合調整をするというふうな御答申になっておりますが、この点は相当真剣に考えていただかないといけない。この一点を除きまして、全体の考え方は私は賛成をいたしておるような次第でございます。
  115. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この私立学校振興方策調査会について見ますると、委員が十五名、専門員が十五名、こういう予定になっておるようですが、その構成メンバーはどのような方面から予定されておるのか。調査会の成果に期待するためには、やはりもちろん民主的な方法で各視野から適任者を選ばれると思いますが、その方法をひとつお聞かせいただきたい。
  116. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この点につきましては、目的が目的でございますから、学界とか言論界とか財界その他の各界の方々の御意見を承るのに適当と思われるような方々をお願いいたしたいと考えておるわけでございます。ことに問題の中心は、財政的な問題あるいはまた税制上の問題というようなことも相当の研究の対象になろうかと思いますので、そういう面も考慮して人選をいたしたいと考えております。
  117. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この調査会の設置期間ですが、本年の四月一日から四十二年の六月三十日となっておるようです。ところが、大学生の急増は四十一年にピークとなっておると思うのですね。四十一年にピークであるとすれば、これは当然間に合わないことになろうかと思うのですが、この点の御配慮があれば、この調査会そのものに私ども反対するわけじゃなくて、非常に適切な調査会であろうと思うのですが、そうだとすれば、この四十一年のピークということの情勢は前からわかっておるわけですが、現愛知文部大臣を追及しても意味のないことで、前大臣のころから当然にこの調査会がつくられてしかるべきであったと思うのですね。ちょっとおそきに失したという感がするんですね。こういう点はいかがお考えですか。
  118. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) まあ、これも率直に申しますと、おそきに失したと私は考えます。しかし、問題が、この四〇年度でいよいよはしりが現われてきている。それだけに社会的な関心も非常に高くなってまいりましたから、この時期で、考えようによれば、いまからでもおそくないと、こういうふうにも考えられるかと思います。  それから、これはただいまもお話がありましたように、民主的、自生的な運営をもちろんお願いすべきものでありますけれども、文部省としては、なお願いなんでありますけれども、来年度の予算概算の要求の時期、すなわち八月の末あるいはおそくも九月ごろまでに、緊急の対策を、こういう点を取り上げるべきであるというような中間的、緊急的な御答申をお願いしたい。そして、さらにそれを組み立て補強する根本的なものの考え方というものを、さらに時日をかけて御答申をいただくならばいいのではなかろうかと、かように私としては考えておるわけでございますが、しかし、これは委員の方々を御委嘱申し上げて、それから運営が始まって、なかなかそう簡単にはいかぬかもしれませんけれども、われわれとして用意し得るあらゆるデータ、考え方等は全部用意いたしまして、何どきでもこの会議が始まって、活発な御意見が伺えるように準備はいたしておるつもりでございます。
  119. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 文部省が昨年発表した、大学生急増対策は、国公、私立を合わせて四十年度が二万七千人、四十一年度は四万五百人、計六万七千五百人増と、そういうことになっておるわけですな。これは当初の計画では、四十一年度までに十万増と、こういう予定になっていたと思うのですが、このように計画がだいぶ下回ってしまったわけですね。それはいかなる理由でこういうふうに下回ったのか。せっかく立てた最初の十万の目標実現のために何とか努力すべきであったと思うのですが、この辺の経緯をひとつお知らせいただきたい。
  120. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 十万人の増補計画というのは、いわば一つの腰だめの推計でございまして、これが非常に世の中に大きく取りざたされたそのこと自体、まことに喜ぶべき問題であったかとは思いますけれども、しかし、いろいろの観点からこれを検討してまいりますと、年によっても非常に大学の志願率というのが変化が多いわけでございます。それから、御承知のように、今年高校卒業の者が今年大学を志願するというだけではなくって、年によってはいわゆる浪人が累積し、かつ、その浪人の受験率も相当に高い年もあり、また、それほどではないときもある。たとえば、昭和三十六年と記憶いたしておりますが、昭和三十六年には、同一年齢の若い人たちの中で一九・九人が大学に入りました。百人に二十人になっておりますけれども、これは諸外国の例などに比べても非常に高いほう。それから、その一年前あるいは一年後になりますと、その比率が一五になったりあるいは一三を示したりした。こういうように、趨勢だけからもなかなか、これはとらえにくい問題でございます。それから、そのときどきの社会情勢によってもこれは相当変わると思います。それから、一面には、事は大学でございますから、建物さえ急増すればいいという問題じゃなくて、大学の素質を低下させてはいけない。むしろ向上させることを心がけねばならない。それから、実は一番の隘路は、教授の陣容、ことに後続部隊をずっと長きにわたって確保し得るような体制がなければ、まともな大学対策は立ち得ない。これは、現にただいま御指摘がございましたが、その後につくりました七万六千人の計画の中に、たとえば私大に期待するものが約二万人でございましたが、私立大学の側から大学審議会に申請の希望が出て来ましたものがそれをはるかに割っている。そのことは、私立大学においても財政的な難点ももちろんございましょうけれども、教授陣が十分に補強できないというところにむしろ最大の隘路がある、こういうふうな状態でございますので、大学院の拡充というようなことが、同時に国立大学の場合でも非常に必要である。それからさて、素質を落とさないで教授陣を十分確保する、そうして、なし得る限度といいますと、おのずからこれには限界がございます。彼此勘考いたしまして、四十年度はほぼ二万人の、国公私立合わせて定員増ということにいたしました。七万六千人という計画から申しますと、来年度は今年度より相当多く計画をしなければならぬわけでございますから、いま申し上げましたようないろいろの条件がございますので、それを十分叩いて、四十一年度にどのくらいの規模をつくり上げるかということ自体が、またただいまからの問題になる、かような状況でございます。要するに、十万人というのは、私は相当多過ぎる、多過ぎると言うと語弊がございますけれども、いろいろの条件を考え合わせますと、これはちょっとむずかしい数字でございます。現在考えておりますものは、四十一年度までに、本年度合わせて七万人程度のところへ持っていくのが一番妥当なやり方じゃなかろうか、かように考えております。
  121. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にこの問題さらにお伺いいたしますが、四十年度におけるいま申し上げた増補分の二万七千人の計画、これをさらに検討してみますると、国立で、計画では四千四百人であったものが、実際には三千三百九十四人に、公立では千六百人の予定であったものが四百七十人、私立については二万一千人であったものに対して一万五千百二十人というように、予定よりおよそ八千人も低くなっているわけですね。で、合計して一万八千九百八十四人の増にとどまっておるわけです。いまこういった点について一部御指摘もございましたが、これもどういうことですかね、この腰だめがどうも私にはなにですが、その後情勢は変わったわけですか、この点を御説明いただきたい。
  122. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) その点は、実は国立、公立等については、特にわれわれ責任が大きいわけでございますが、できれば四千人程度の増補というところへ持っていきたかったわけでございますが、いま申しましたようないろいろの条件から、三千四百人でがまんしなければならない状態になったわけであります。それにしても、ただいま別に御審議願っております国立学校設置法の一部改正でごらんいただきますように、新設の大学から、あるいは国立大学の学部の新設とか、あるいは県立の国大移管でありますとか、おそよここ数年来要望されておりましたことはほとんど全部取り入れて、そうしてそれ以外の大学のいろいろの施設拡充、人員増加を入れて三千四行というような数字になっているということは、国立大学におきましても増補計画というもの、収容定員増加というものがいかにむずかしい問題であるかということは、私としても痛切に感ずるのでございます。
  123. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 こういうように計画はどうもそのとおり実行に移されないということであると、大学生急増問題がますます社会問題化してくるというおそれがあろうかと思うんですね。そこで、文部省としては、当然この計画を立てた以上はこれを実現させる、計画達成のために、いろいろ対策は講じられておろうかと思うんです。にもかかわらず、こういう結果になったということは、きわめて遺憾なんですが、文部省としても今後にも影響するわけなんですが、何とか計画達成のためにこれとこういう手をいま考えておるんだがということがもしあれば、その対策について、この際承っておきたいと思うんです。
  124. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この点は、大学だけの観点からだけではとらえられない部面も相当ございまして、たとえば来年になりますと、国立高専の第一回の卒業生が出てくるわけでございますけれども、この国立高専というような中学校から高等学校の課程とあと二年の教育、つまり九年の義務教育後五年の専門の教育を受けた人たちというものが、まあ私の予想では相当社会的に高く評価されるのではないかと思っておりますが、そういう点も考えあわせますと、やはり学校制度全体、いわゆる複線形の学校制度自体にも抜本的な考え方を展開していかなければならないのではなかろうかと、まあこういうふうな部面もございますので、大学につきましておおよそどのくらいのところを目標にしてやれば適当であるかということについては、まだ十分御批判をいただくだけの成案を得ておらないわけでございます。なおまた、御案内のように、四十一年度が一番のピークに入る年でございますけれども、それから数年いたしますと、四十八年でありますか、そこからはこのベビー・ブームがまたぐっと下がるわけでございまして、ことに私立大学の場合を考えますと、そういう長い目で見た経営の問題などについても、これは十二分に考えていかなければならないのではなかろうかというようなことで、いま申しましたように、いま年次計画として適切な数字をあげて御説明するまで、まだ遺憾ながら成案を得ていないような状況でございます。
  125. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで、こういう急増対策のワク内だけで考えるといわゆる私学の占める比重は非常に大きいわけですね。これは、先ほど来の数字でも非常に明確になっておるわけです。そこで、今回の調査の結果などでも、私学に対する財政的な助成、こういうことが一つの大きな問題となると思うわけです。  そこで、それに関連してお伺いしたいのですが、私学助成の現在の制度は、一体どうなのかということと、この利用状況はどうなっておるか、こういうことについて御説明をいただきたい。
  126. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) まず一番大きな柱は私学振興会、これは先ど申し上げましたが、四十年度は百五十億円の貸し付けのワクで長期低利の資金を私学に供給をしようというわけでございます。それから各種の補助金がございます。たとえば理科研究のための補助金というようなものは直接経常費として補助をいたすわけであります。それから税制上は、御案内のように、いろいろの便宜が与えられておりまして、寄付金の減免税、あるいは特定目的のための減免税というような措置もございますが、この点については先ほど申し上げましたように、さらに一段と拡充をしてほしいというふうに考えております。これはちょっと、三十九年度あたりで税制上一体どれだけの数字の上で恩典が与えられているかということは、ちょっと的確に、算定がむずかしいことかと思います。それから地方交付税交付金におきましても、たとえば一人当たりの教育費に対する基準の単価については、四十年度あたりでもある程度増額をしておる、こういうものも助成の対象と数えられるかと思います。それからたとえば私学の教職員の共済組合に対してやはり国が直接助成をいたしておりますが、これなども経常的な助成の一環であるということが言えようかと思います。
  127. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 このように私学に対する財政的助成が現在より将来に向かっては、どんどん強化されることがどうしても期待されるわけですが、その場合、憲法第八十九条の規定に照らして憲法上の論議もあろうかと思う。この点文部省当局はどのようにお考えになるか。「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」これは憲法第八十九条の内容でございますが、この問題を憲法上から見てどういうことになるかということを解明していただきたいと思います。
  128. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) この八十九条につきましては、憲法上の論議がいろいろございますことは御承知のとおりでございますが、私は常識的に申しまして、私学の助成というようなことは、そういう場合の私学というものは、公の支配に属するものである、こう理解していくべきであると、私はこう信じておるわけでございます。と申しますのは、極端に八十九条を拡大して解釈いたしますれば、お尋ねがございました諸点について私学振興会の融資などは、その範囲外と言えるかもわかりませんが、まずたとえば理科研究であるとか、私学共済に対する補助金であるとか、直接に一般会計から補助しているものは、違憲ではないかといえば、極端にいえばそういう議論だって起こります。しかし、それぞれの補助金、助成金等もそれぞれ法律に根拠を置いてやっておるわけでございますし、そういう実体法ができます場合に、憲法論議についても、一応の区切りをつけて、こういうふうな法制ができているものと私は理解いたしますから、先ほど来申しておりますように、私学の助成というようなことが天下の一大問題であります今日の状況においては、八十九条のかたくなな解釈は私はいかがであろうか。これを要するに公の支配に属すると理解していかなければ、私学の助成というものは前進はしない、こういうふうに考えておりますが、しかし、私のこういう意見に対して、それは違憲的な考えだという議論も法学界にはありますことは、私も承知いたしております。
  129. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、外国では私学に対して思い切った助成措置が講ぜられている国が多いわけですね。いろいろ文献を見たり、昨年あたり外国の私学の状況をこの目で見、聞いてまいりましたけれども、相当大きな助成措置が講ぜられておるように思う。そこでお伺いしたいのは、先進国の私学助成に対するおもだったいわゆる対策にどんなものがあるか、どういう方法があるかというようなことについて概略御説明をいただきたい。
  130. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) これは国によりいろいろ様子が違いますが、一番常識的にいつもこういう場合に話題になりますのは、イギリスでございます。オックスフォード、ケンブリッジをはじめ、イギリスには国立大学がございません関係で、私学がずっと栄えておったわけであります。その私立大学はすべて民間の寄付金をもとにして運営されておる。そして政府といいますか、国はノーサポート、したがってノーコントロールであります。ところが、戦後この状態が急激に変わってまいりまして、最近におきましてはイギリスのあの有名なるオクスフォード、ケンブリッジをはじめ私立大学は、少し誇張して申せば九割まで国の補助に依存いたしておりまして、そういう状況でございますから、そうした大学の教授の給与など直接に国の援助によっている、こういう状況になってまいりました。しかし、その場合、イギリスでも非常に問題に常になりますのは、そうした国からの財政援助で運営しなければならなくなったこの私立大学に対してコントロールをどの程度で、これを何といいますか、調整するか、おそらく納税者の側からいえば、それだけの負担をしているならば当然今度はサポートがある限りにおいてはコントロールと、いわば金が出るから口も出すということになるかならぬか、その点で非常なくふうがこらされているように承知いたしております。そのほか、アメリカあるいはドイツ、フランス——今度は逆にフランスなどは国立大学だけでございますから、国の援助ということはあまり問題になりますまいけれども、それぞれの国でやはり大学入学志願者急増対策ということについては非常に大きな悩みをそれぞれに持っているようであります。ただ、先ほど申し上げましたように、日本の現状、大学進学の率というものは、アメリカのカレッジを日本でかりに大学であるものと仮定いたしました場合、アメリカのほうが若干日本より比率が高いくらいでございまして、日本はその意味で世界第二位、あるいは実質的に第一位を占めている、それだけにまた日本の問題は大きい、こういうことが指摘できるのじゃなかろうかと思っております。
  131. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係もございますから、最後に一点だけお伺いして本日のところ私の質問を終わっておきたいと思いますが、最後にお伺いしたいのは、私立学校振興会に対する出資、これを見ますると、四十年度は百十億ということのようですが、三十七年度の私学借り入れ金総額のうち私学振興会の分はわずか一二%とのことですが、四十年度が百十億ということですが、これでどの程度改善されるであろうかということが一応考えられるわけですが、こういうことについての御説明をいただきたいと思います。
  132. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 四十年度は財投からたいへん多額に投資してもらうわけでございまするが、百十億でございまするが、これは貸し付けの計画といたしますと、回収金等がございますので、百五十億になります。その百五十億のワクがどのくらいの位置づけになるかといいますと、大学急増関係では六十四億円余り、その六十四億余りを中心に考えると、私学の融資を、借り入れを希望しておるものの大体四割九分に当たる、これは一応の雑な計算でございますけれども、ですから借り入れ金うちのほぼ半分近くは十年ないし十五年の、五分五厘ないし六分五厘の条件で借り入れることができる。これはたいへん私学としては喜んでくれている点じゃないかと思います。
  133. 柴田栄

    委員長柴田栄君) ほかに御質疑はございませんか。——ほかに御発言もなければ、本案質疑は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四分散会