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1965-02-04 第48回国会 参議院 地方行政委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月四日(木曜日)    午前十時十八分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         天坊 裕彦君     理 事                 西郷吉之助君                 林  虎雄君     委 員                 沢田 一精君                 高野 一夫君                 鍋島 直紹君                 山本 利壽君                 鈴木  壽君                 松本 賢一君                 市川 房枝君    政府委員        警察庁長官    江口 俊男君        警察庁保安局長  大津 英男君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律  案(内閣提出)     —————————————
  2. 天坊裕彦

    委員長天坊裕彦君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回説明を徳取いたしておりますが、本日は、まず補足して説明を願います。江口警察庁長官
  3. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) 銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案内容につきまして、逐条御説明を申し上げます。  第一は、法律題名改正でございます。  これは、今回拳銃等輸入禁止規定を新たに設けることに伴うものでございまして、銃砲刀剣類等所持取締法銃砲刀剣類所持等取締法といたしたのであります。なお、この題名の変更に伴い、地方自治法出入国管理令関税法及び自衛隊法関係規定附則におきまして改正することといたしております。  第二は、銃砲定義に関する第二条第一項の改正であります。  これは装薬銃砲の例示として拳銃小銃機関銃、砲及び猟銃を列記したのでありまして、実質的には定義内容を変更するものではなく、拳銃等及び猟銃不法所持に対する罰則を強化する条文の新設に伴う技術的な改正であります。  第三は、建設業の用途に供するため必要な銃砲、すなわち、建設用びょう打ち銃及び建設用綱索発射銃についての所持規制を合理化するための第三条第二項の改正であります。  建設用びょう打ち銃等は、工具として使用されるものでありまして、比較的危険性も少なく、悪用されることもほとんどないため、許可を受けた者のみならず、一定の範囲の者には、業務上使用するため所持することを認めて支障がないと考えられますので、所持許可を受けた者の監督のもとに、建設作業に従事する者で届け出があったものにつきましては、許可を受けた者の指示に基づいて業務上使用するため所持することができることといたしたのであります。  なお、このことに関連して、建設作業に従事する者が、許可を受けた者の指示に基づかないで建設用びょう打ち銃等所持した場合におきましては、その銃砲にかかる許可を取り消すことができるようにすること、また、法人業務のために銃砲刀剣類従業者等所持させる場合の許可は、法人事業場の所在地を管轄する都道府県公安委員会から受けるようにすること等、許可に関する規定を改めることといたしたのであります。  第四は、拳銃等輸入禁止規定を第三条の二として新設したことであります。  現行法においては、銃砲刀剣類輸入を、所持禁止規定により間接的に規制しているのでありますが、最近、拳銃等密輸入事犯が増加しており、その防止をはかる必要があること、及び拳銃等は、限られた場合を除き、一般には所持禁止されている等のことから、今回拳銃等については直接その輸入行為禁止することといたしたのであります。  輸入禁止対象は、拳銃小銃機関銃及び砲に限定し、かつ、次の場合の輸入は、禁止から除外することといたしております。  その一は、国または地方公共団体が、その職員の法令に基づく職務上の所持に供する拳銃等及び博物館等で公衆の観覧に供する拳銃等輸入する場合並びに国または地方公共団体から輸入委託を受けた者が、委託にかかる拳銃等輸入する場合であります。  その二は、試験もしくは研究のために拳銃等所持許可を受けた者またはオリンピック大会等国際射撃競技に用いる拳銃所持許可を受けた者が、許可にかかる拳銃等輸入する場合及びこれらの許可を受けた者から輸入委託を受けた者が委託にかかる拳銃等輸入する場合であります。  その三は、わが国で開催されるオリンピック大会等国際競技に参加するため入国する外国人が、所持許可を受けた拳銃等輸入する場合であります。  第五は、火なわ式銃砲以外の古式銃砲登録対象とするための第十四条第一項の改正であります。  現行法におきましては、古式銃砲のうち火なわ式銃砲のみを登録対象といたしておりますが、火なわ式以外の火打石式管打式等古式銃砲につきましても、美術品もしくは骨とう品として価値のあるものがあり、かつ、これらの銃砲は実用に供されることがございませんので、今回登録対象に加え、一般所持を認めることとし、史料として保存活用をはかることといたしたのであります。  第六は、文化財保護委員会から都道府県公安委員会に対する通報事項に関する第十六条第二項の改正であります。  文化財保護委員会は、銃砲刀剣類登録した場合または登録を受けた銃砲刀剣類の譲り受け、相続等届け出があった場合においては、危害防止、予防上の配慮から、都道府県公安委員会に通報することになっているのでありますが、現行法では、登録を受けた銃砲刀剣類を亡失し、盗み取られた場合等についての通報規定がないため実態把握支障を生ずる場合がありますので、今回、登録を受けた銃砲刀剣類亡失等により、文化財保護委員会登録証の返納を受けた場合には、その旨を都道府県公安委員会に通報することといたしたのであります。  第七は、登録を受けた銃砲刀剣類を譲り受け、相続等をした場合の届け出期間に関する第十七条第一項の改正であります。  登録を受けた銃砲刀剣類の譲り受け、相続等による移動届け出は、登録制度における基本的な事項でありますが、現行法におきましては、この届け出期間を「すみやかに」とだけ規定していることもありまして、その履行に欠ける点も見受けられるので、その届け出期間を、文化財保護法における文化財移動届け出等関係をも考慮いたしまして、「二十日以内に」と明示することといたしたのであります。  第八は、登録証取り扱い整備、強化するための第十八条第二項及び第三項の改正であります。  登録を受けた銃砲刀剣類は、登録証とともに所持するたてまえでありますが、現行法におきましては、登録を受けた銃砲刀剣類所持他人移転する者について登録証とともにすることを義務づけているのみで、その所持移転を受ける者につきましては、登録証に関する義務づけをしていないため、登録を受けた銃砲刀剣類等であっても一登録証とともに所持されていないことが多いので、今回登録を受けた銃砲刀剣類を譲り受け、借り受ける等、その所持移転を受ける者に対しましても、必ず登録証とともにしなければならないこととし、さらに、登録証登録を受けた銃砲刀剣類関係なく譲渡し、または譲り受けることも禁止することとし、登録証が常に登録を受けた銃砲刀剣類とともに所持されているように規定整備、強化いたしたのであります。  第九は、銃砲刀剣類所持許可を受けた者に対し、譲渡等の制限に関する義務新設するための第二十一条の二第二項の改正であります。  現行法におきましては、銃砲刀剣類製造または販売を業とする者に対してのみ、譲渡する相手方確認義務を課しているのでありますが、不法所持され、または犯罪に使用された猟銃空気銃等入手先について見ますると、相当数のものが所持許可を受けた者から出ておりまするので、今回、許可を受けて猟銃等所持する者に対しましても、製造販売事業者と同様に、許可にかかる猟銃等他人に譲渡し、または貸与する場合には、その相手方適法所持できる者であることを確認するか、または許可証の提示を受けなければ、これを行なってはならないことといたしたのであります。  第十は、許可証または登銀証交付に関する手数料を引き上げる第二十九条の改正であります。  現行法におきましては、許可証または登録証交付に関する手数料最高限は二百円といたしておりまするが、これは、昭和二十五年に定められ、その後現在まで改定していないため、許可に要する事務経費登録の審査に要する経費等から見て実情に沿わないので、これを五百円に引き上げることといたしたのであります。  第十一は、罰則整備、強化に関する第三十一条以下の改正であります。  その一は、第三十一条であります。これは、拳銃等輸入禁止に伴う罰則新設でありますが、拳銃等輸入禁止違反は、その危険性ないし悪性が最も高いので、本法違反行為中特に重く処罰することといたしたのであります。すなわち、通常の輸入禁止違反の場合、五年以下の懲役または三十万以下の罰金とし、営利の目的の場合には、七年以下の懲役または五十万円以下の罰金とし、未遂罪をも処罰することといたしたのであります。  その二は、第三十一条の二であります。これは、銃砲刀剣不法所持の中で、拳銃等及び猟銃は、特にその危険性が高いので、他と区別して重く処罰することといたしたのであります。すなわち、拳銃等及び猟銃不法所持に対しては、五年以下の懲役または二十万円以下の罰金に処することとし、これに関連して、武器等製造法罰則附則規定改正して、拳銃等及び猟銃製造違反に対しては、五年以下の懲役または三十万円以下の罰金に処することとし、所持違反製造違反との罰則の均衡をはかることといたしたのであります。  その三は、第三十一条の三であります。これは、拳銃等猟銃を除く銃砲刀剣類不法所持に対する罰則で、現行法第三十一条に相当する規定であります。ただ、罰金の額のみを五万円から十万円に引き上げているのであります。  その四は、第三十一条の四であります。これは、許可または登録により適法所持することを認められている者が、その銃砲刀剣類不法目的携帯等をした場合の罰則を、その悪性に着目して二年以下の銃役または五万円以下の罰金に処することといたしたのであります。その五は、第三十二条および第三十三条であります。登録を受けた銃砲刀剣類の譲り受け、相続等をした場合の届け出に関する規制及び登録証取り扱いについての規制を強化するために、これらの違反に対する法定刑を引き上げ、届け出義務違反に対しては一年以下の懲役または三万以下の罰金とし、登録証授受違反に対しては六カ月以下の懲役または一万円以下の罰金に処することといたしたのであります。  最後に、この法律は、公布の日から三カ月を経過した日から施行することとするとともに、必要な経過規定附則において規定いたしております。  以上が、銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案のおもな内容であります。何とぞ、よろしく御審議をお願いいたします。
  4. 天坊裕彦

    委員長天坊裕彦君) 本日は警察庁長官及び保安局長が出席されております。  それではこれより質疑を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  5. 天坊裕彦

    委員長天坊裕彦君) 速記を始めて。
  6. 鈴木壽

    鈴木壽君 提案理由説明を見ましても、今回の銃砲刀剣類等所持取締法の一部改正案は、最近における暴力団等取り締まりの問題からして、直接暴力団対策、それを進めるとともに一方において彼らが不法所持する銃砲刀剣類、こういうものを扱っているこの法律の中でも、一部改正を行なっていかなければならないと、こういうふうな考え方のようでありますが、なお、今まで、特に昨年、暴力団対策というものを本格的に取り上げるというようなことになりましてから、私ども新聞なんかで見ますと、当局のいろいろな方々が銃砲刀剣類等所持取締法の一部改正をしなければならないということを言われておったこともございますし、そういう点からいって、今回のこの改正案というものは、主として暴力団なり、そういうものの対策上とられた法改正であると、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  7. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) 大体の趣旨につきましてはそういうふうにお考えになってけっこうだと思います。ただ、その以外に、暴力団と必ずしも関係なくても、現在の銃刀法構成が、たとえば拳銃空気銃も同じように扱っているというような、その種類に着目していないというようなことや、最近多くなってきた拳銃密輸そのものを特に取り上げてきびしくやっていこうというようなねらいをも兼ねております。
  8. 鈴木壽

    鈴木壽君 大体そういうふうに考えてもいい、ただ、しかしいまあなたがあとでつけ加えられました例えば拳銃等密輸の問題ですね。これをできないようにしていこうと、したがって、輸入禁止をする条項を設けていく、これなんかもやはりせんじ詰めたところ問題になるのは、やはり暴力対策といいますかね、特に暴力団等不法に入手してそれを使い、いろいろな問題を起こしているんですから、そういうことに対してのことだと思うんですがもちろんあなたがおっしゃったように、それ以外の事柄も改正案の中にはあることもわかります。主たるねらいはそうだというふうに考えてよろしゅうございますか。
  9. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) そのとおりでございます。
  10. 鈴木壽

    鈴木壽君 そこで、さっき私が例にあげて申し上げましたように、これは新聞のじゃございませんが、たとえば昨年の国会、四十六国会ですかにおいて、長官がこの法の改正についてやや具体的に問題点を指摘しておられましたね。法務委員会で、暴力行然の取締法というんですか、あれの審議の際に、質問に答えて、やや具体的に指摘をしておられたようでありますが、まあそれはそれとして、今回のこの改正によって、主として一番いま問題になっている暴力行為をできるだけなくしていく、こういうたてまえに立ってのその法の改正だとしますと、これによってねらいは達成できると、こういうふうにお考えになっておられるんですか。そういうたてまえに立ってこれはおやりになったんだろうと思うんですが、その点はいかがですか。
  11. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) もちろんそういう目的、そういう考えで立案をいたしております。従来の実績からいっても、暴力団対策としては暴力団暴力行為に着目した取り締まりと同時に、それをきっかけとして銃砲刀剣類等不法所持ということを捜索するということによって、大きな網といってはおかしいですが、捜査が伸びてきているというようなことにかんがみますというと、そういうことが非常に役に立つのだろうということを期待したわけであります。
  12. 鈴木壽

    鈴木壽君 ただ私どもいままで、たとえば銃砲刀剣類所持取締法の大改正があったのは三十三年でしたね、その後一、二度若干の手直しをしてきた、そのたびごとに聞かされることは、これによって従来の不備が改まって、何といいますか、特に暴力団対策とか、そういうことに対しても、あるいは銃砲刀剣等不法所持に対しても非常に大きな効果をあげることができるのだ、こういうことであったわけなんです。また今度こういうふうな改正が行なわれる、しかし、やってみたがだめであったというようなことがまた繰り返されるような何かそんなことがあってもいけないのじゃないかと思うのです。それはもちろん情勢が変わっていきますし、そのときどきによっていろいろな問題が出てもきましょうが、もっとはっきりこれによって一つ暴力対策をやるというのであれば、先を見通した改正がなければならぬのじゃないだろうか、極端にいうと、輸入禁止をやる、挙銃等輸入禁止をやる。従来だって禁止されておったはずですね、それはこの法律法文には書かれていませんけれども。ですから輸入禁止挙銃の問題一つ取り上げてみましても、問題は正規に輸入するとかしないとかいうことじゃないのです、ほんとうは。いかにもこの法律改正によって今度輸入禁止されれば、現在出回っておる拳銃等がなくなるというようなことを印象づけられますわな。しかし、私はそうじゃないと思うのです。それは法の一つの形を整える上から必要なのかもしれませんが、いままで、私さっき一番初めに申し上げましたように、たとえばこれは大津さんも新聞記者等に昨年の六月ごろですね、法の改正をしなければならぬ、こう言っておったはずです。私はこれは新聞で見ただけですから、その内容がどういうふうなことであったか、はたして新聞の伝えるとおりであるのか、それはわかりませんが、さっきまた申し上げましたように、長宮も昨年の国会においてそういうことをはっきりおっしゃっておる。そうすると、何かそんなことでいいのかなという感じがしますね。今回の改正は、こういうものをやって、一体暴力対策なり、そういうことの目的が達成せられるのか。一方には、あるいはおっしゃるあなた方の気持ちは、そういうことでなかったかもしれませんけれども暴力対策をやるためにはこの銃砲刀剣類所持取締法改正することによって大きな効果があがるのだという印象を、新聞なんかを読む人は受けているわけですね。私自身もその当時は受けているわけです。しかし、なかなかこれはたいへんな問題だとは思ったけれども、それが、これは罰則のことももちろんありますけれども挙銃等不法所持なんかの問題に限って申し上げますと、いま言ったようなことだと、これは一体この法律改正がどういう効果が具体的に出てくるのかということに対して、私は若干の心配があるわけなんで、そういうことをいまくどいことを申し上げましたが、むしろ私は長官が昨年の国会で答弁なされた中にある所持に対する許可あるいは不許可、こういうものの基準、もっとはっきり申しますと、五条の「許可基準」等について、もっと何かぴしっとしたものでもなければいけないのじゃないかという気がするのですが、長官はそういうことも答えられておりますね。五条の一項の中に一、二、三。四、五、六、こうありますね。従来も問題になったのは、六号の「他人生命若しくは財産又は」、云々という、こういう項目がありますね。これの解釈なり適用なりということについていろいろ問題があったわけですね。これは非常にデリケートなところがありますが、こういうような問題について、あなたは昨年の国会において、五条六号の解釈について、相当具体的なことをおっしゃっていますね。しかもまた、こういうことを法文上もっとはっきり書いて改めるようにしたいという趣旨のことをおっしゃっているのです。こういうところにでももっと重点が置かれた法の改正案が出るのじゃないかと、私実は思っておったのです。ところが、今回はそれに触れておらないようです、見まわしたが。もし触れているようでしたらあとで御指摘いただきたいのですが、私の見たところでは、ない。としますと、いま非常に暴力団なんかが持って——ただ持っているだけじゃない、それによって危害を与えているピストルの問題なんか、輸入禁止だけで、はたしてどうなのか、こういう私実は率直な疑問を持ったわけなんです。そこら辺どういうふうにお考えになったのか。
  13. 大津英男

    政府委員大津英男君) 少しこまかい点にわたりますので、私から申し上げたいと思いますが、拳銃所持につきましては、現在の法のたてまえにおきましても、特定の者、特定の場合以外は持てないというふうな厳格な禁止規定があるわけでございまして、許可原則としてないという形になっているのでございますが、こういうことだけでは、現在の密輸入というものを抜本的に取り締まりをし、防止をしていくということが困難であるということから、密輸入ということについても罰則を強化するための措置を考えて、今回これを主にしました密輸入罪制定等が出てまいったわけでございます。と同時に、昨年の国会で、長官から現在の法律の第五条一項六号に関しまして、この法律運用によって、必要があれば場合によっては改正考えなければならないかもしらぬがという意味でお話が出たかと思うのでありますが、その後も私どもはこの問題につきましては検討を加えまして、法律運用によりまして成果をあげることが可能である、したがって、この際はこの条項改正をしないで、むしろ密輸入罪制定ということによって目的を達していきたい、かように考えているわけでございます。  そういう意味から、この五条一項六号につきまして少し御説明を申し上げなければならないと思うのでございますが、先ほど申し上げましたように、許可をしていくということになりますのは、拳銃以外の、大体猟銃等のものが主になるわけでございますが、そういうものにつきましての許可をする場合の基準というのが、この第五条一項六号までの各号に照らしまして許可をするかしないかということをきめていくということで、大体猟銃を中心にした場合の適用が第五条一項の各号に当たるわけでございますが、その中の第六号につきまして申し上げますと、「他人生命若しくは財産又は公共の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」、こういう者に対しましては許可をしてはならない、こういう条項になるわけでございます。この条項につきまして、昨年の国会長官が申し上げましたことは、現に殺人強盗傷害等犯罪を犯した者または再犯のおそれがある者、こういうような者、それから銃砲刀剣類不法所持の罪を犯して確定判決をまだ受けていないというような者、それから現に生命財産公共の安全を害するおそれがある者、こういう者がこの第六号に当たる者であるということであって、これの解釈運用によって相当程度のことをやるようにしたい、場合によれば改正も必要であるかもしらぬ、こうお話しになったわけでございますが、その後の検討の結果、私どもは、この条項運用を相当はっきりさせまして、こまかい点までこれを示しましてやっていくことが適当ではないか、そういう意味で、いま申し上げましたことについて、各府県に対しましてもある程度こまかい判断の基準を示しまして、運用につきまして、取り締まりはもっと厳格に許可基準考えるようにということを言うているわけでございます。  その内容を申しますと、いま申し上げました殺人強盗傷害等犯罪を犯した、また再犯のおそれがあるというようなこと、あるいは現に生命財産公共の安全を害するおそれがある、こういうような者につきましては、もう少し詳しく言いたいということで、それを申し上げますと、一つは、殺人強盗傷害等暴力的な不法行為罰金以上の刑を受けまして、その刑の執行を終わり、もしくは執行を受けることがなくなった日から起算して三年を経過していない者、それから銃砲刀剣を用いてこういう不法行為を行なって罰金以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、あるいは執行を受けることがなくなった白から起算して五年を経過していないという者につきましては、原則として先ほど申し上げました再犯のおそれもあるのではないか、そういうことで再犯疑いのある者に該当する者としてよく検討してやれということが一つ。それから、そういう不法行為を行ないまして罰金以上の刑に処せられた者で、刑の執行を終わり、あるいは執行を受けることがなくなった白から起算して五年以上を経過し、十年に満たない者のうちで改悛の情が認められない、それからそういう不法行為をやった者のうち、その行為に関して現に刑事被告人あるいは被疑者となっているというような者についても、再犯疑いがあるということで検討しなければならないということ。それからさらに、暴力団関係のそういう構成員であることが明らかであって、そういう不法行為の前歴があり、かつその前歴のある他の構成員を直接支配する、あるいは支配を受けているというような者につきましても、再犯のおそれがあるというようなことで検討を要する。まあこういうようなことで、こういう厳格な運用をしてまいりたい。それから、先ほど申し上げました生命財産あるいは公共の安全を害するおそれがあるという者といたしましては、著しく短気、粗暴な行状あるいは粗暴な酒癖等があるというようなことで、そういうおそれがあるというような者として該当する者として考える、まあこういうようなことで運用してまいりたいということで、各府県もこのような運用を第六号についてはやっていくということで、相当許可基準を厳格に解釈をしてやっていく、こういうたてまえをとってきておるわけでございます。したがいして、私ども五条運用をきびしくすることと、さらに先ほど申し上げましたような、ほかの密輸入罪新設あるいは罰則の引き上げ、こういうものと両々相まちまして暴力団に対するところの取り締まりあるいはこういう銃砲等の不法所持というものが絶滅できるようにしてまいりたい、かような考え方でお願いをしておる次第でございます。
  14. 鈴木壽

    鈴木壽君 私のお尋ねしたことの中に、まあいろいろ申し上げてお尋ねしたわけなのですが、それで、聞き方も不十分であったせいか、誤解があるといけませんから……。私がお聞きしたのは、単に拳銃の問題だけで五条一項六号を問題にしているのじゃなくて、拳銃はまあ一つの例として申し上げましたが、銃砲刀剣類の問題として、この法全体の改正の上から、長官なりあるいは——そこまで具体的には新聞に載っていませんでしたが——局長さんがこの法律改正考えているのだとかいうようなお話をしたので、こういう点をどう考えるのかと、こういうふうに聞いておったつもりなのです。そこで、もっと申し上げますと、あなた方からいただいた「警察の窓」の六四年の二巻十号ですか、「銃砲刀剣」、これを見ましても、六ページあたりを見ますと、不法所持をし、いろいろな使用をしたその中には、拳銃だけでなしに猟銃、ライフル、いろいろあるのですが、暴力団によって使われ、犯罪に使用されたというのが、まあことばが少し過ぎるかもしれませんが、大部分ですわな。そこで、私は、単に拳銃だけでなしに、ライフルあるいは猟銃なんかも使っておりますから、こういうものを含めて、この第五条の一項の六号というものを、あなた方考えておられるようでしたからね、その点はどうかと、法文上の運用のこともさることながら、もっと法文上はっきりと書いて除外するようにしたいというようなこともおっしゃっていますから、そこら辺は一体どうなのかと。それは必要でなくて、単にいま局長さんお答えになったように、ある基準を示しながら運用上それをやっていくと。まあこれで考え方はわかりましたが、そこら辺の、当時おっしゃっておったことと今回の法改正と、それをどういうふうに関係づけられるのかということを聞いたつもりなんでした。
  15. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) 私から根本的な考え方を申し上げます。  ただいま鈴木委員のおっしゃったとおりのことを考えまして、実は昨年の国会に御審議を願おうということで用意をし、ただ多少技術的に熟さない点がございましたので一年延びたわけでございますが、当時考えました中に、この六号を具体的に書くということももちろん検討したわけでございます。その後の検討によりまして、ただいま大津局長から答えたような結果になったわけでありまするが、どうもいままで同じ文句があっても各県まちまちで、こういうことについての統一がとれてない。厳格にやっておるところもあるし、多少ルーズなところもあるという現実を、いま申し上げたような運用の基本方針を示すことによって、この抽象的な書き方で目的を達し得るのじゃないかということが一つと、それからもう一つは、どうしても具体的なことを書きますというと、それに漏れるというやつがむしろ出てくるというような点をおそれた点もございます。それから拳銃に特に着目をしましたのは、特に御指摘になりましたこの書類の六ページの数字によってもわかりまするように、全体の拳銃が百五十二丁使われたもののうち、暴力団で百二十三丁、ほとんど暴力団の使用する凶器が拳銃であるということに特色があるように思うのです。その以外に日本刀等もありますが、これは許可をする対象じゃございませんで、刀剣として用うるものであれば、これは文化財保護委員会のほうから刀剣に着目して届け出を受けておる、これを不法に使用したという例でございまして、これはどうも第六号で持たせるとか持たせないとかという問題になりにくいものでございます。どうしてもここで一番問題になるのは、二番目に書いてある猟銃だろうと思いまするが、猟銃については、いま大津君が申し上げたような基準を的確に示すことによって、厳格にその許可規制していくというような方針をとっておりまして、現にいままでは同じような条件の場合に許されたのに今度はどうして許さないのだというような苦情が、実はその方針をとって以来、出てきているというような実情であることを御了承願います。
  16. 鈴木壽

    鈴木壽君 くどいようでありまするが、どうです、暴力団対策なりあるいは暴力防止という面からいって、この銃砲刀剣類等所持取締法まあ名前が、何か「等」が前後しますね。まあいずれそういうふうにして、これで当面はあと手がないということなんですか。あるいはまた、将来実際問題としてこういうものが残っておるというような点がございますか。
  17. 大津英男

    政府委員大津英男君) 手としては、それはきびしく法律をしていくことは全然ないわけじゃないと思うのでございます。たとえば許可につきまして、期限を切った更新制で三年間だけ許可する、三年間たったらそのあとはもう一回許可を受けなければいけないというようなことにするとか、あるいは所持の年齢をもっと引き上げるかどうかというような問題とか、その他いろいろなことがあるわけでございますけれども、それからまた、登録刀剣につきましても、これは美術品である、あるいは骨とう品として価値があるというようなことで、そういうものでさえあればもうこれは登録まで許されるということであるが、それを持つ人がだれでもかまわないというのが現在の法律のたてまえでございますが、これがいいかどうかというようなこともあるわけでございます。しかしながら、こういう点を改正していくということになりますれば、いろいろまた他に及ぼす影響も考えなければならない。一般的に家宝として持っておるような、許可を受けた刀剣もそのほかにもございますが、こういうものまで期限を切らなければいかぬのかというようなことも出てまいりまするし、年齢の問題にいたしましても昭和三十三年のときには十八歳まで一応引き上げたということでございまするし、いろいろスポーツとして国民体育大会とかいうようなときに出て行く空気銃の選手の問題とか、いろいろなこともございまするし、いろいろなことも考えなければならない。狩猟法との関係とか、いろいろなことを考えて結論を出さなければならぬことがあると思うのでございますが、いま直ちにそういうものについて抜本的にすっかり仕組みを変えてしまうというところまでは、私どもまだ検討が済んでおらないということでございます。しかしながら、暴力団対策というようなものから申しまして、できる限度のところからやっていかなければならないじゃないかということで、今回の改正に踏み切ってお願いをしておるといいうことでございまして、問題がもうこれ以上全然ないのだということではございませんで、まだまだ検討しなければならないことが多いと、こういう実情でございますので、今回はこのような改正でお願いしておるということです。
  18. 鈴木壽

    鈴木壽君 考えてみますと、この法の上で、たとえば今回の拳銃輸入禁止あるいは罰則の強化、こういういろいろなことをやりましても、問題は、彼らが持っておる拳銃等、それをどうするか、もう一つは彼らが不法に持っておるそういうものを持たせないようにするにはどうすればいいのか、こういうことに尽きると思いますね。まあ、少し結論を急ぎ過ぎるようでありますが、問題は、いわゆる暴力団の日本における彼らのあり方、それに対してどう手を打っていくかということになると思うのですがね。いままであれですか、暴力団なんかが持っております拳銃、これは正規に輸入されたものではないはずなんですね。現行法には別に輸入禁止ということが書かれておりませんけれども、何といいますか、彼らが持つようないわば不法所持というものが許されない以上、これは正規のルートで輸入されたものでないというのでないということだと思うのですね。これはあれですか、この問題について、現在までどういうふうにおやりになっておるのか、対策として。——まあ、その前に、一体彼らはどのくらい拳銃を持っているんですか。こういう実態の把握をやっておると思いますがね。暴力関係のほうの方でも……。
  19. 大津英男

    政府委員大津英男君) いま、鈴木先生からお話しのように、拳銃を正規に暴力団が持てるはずはないわけでございまいまして、すべて違法のものでございます。この取り締まりにつきましては、私どもも非常に力を入れておるのでございますが、特に昭和三十八年の数字を申し上げますると拳銃不法所持は五百八十三件、五百八十二名、押収の拳銃が四百三丁、こういうことになっております。また昨年三十九年の上半期では四百二十九件の四百二十四人、四百十九丁の押収、こういうような数字もあるわけでございます。しかも四百三丁の押収拳銃の約八割三百三十丁が暴力団から押収されておるというようなこともございまして、暴力団取り締まりを強化いたしましてからは、特にこういうものがたくさん押収されるようになってきておるわけでございます。三十九年の全部の数字がまだ正確にまとまっておりませんけれでも、一昨年の三百三十丁をさらにこえる押収の数字がもちろん出てくるということになるわけでございます。  なお、拳銃が一体彼らの手にどれぐらいあるんだろうかということにつきましては、これはもう推定以外にないわけでございまして、まあ暗数で計算をしてみる以外にはないわけでございますが、まあ過去五年間に警察が押収したものの平均が年間大体八百ぐらいということになりますので、警察官の取り締まりがその一割しかやってないとするならば、日本の国内に八千丁ぐらいはまだあるんじゃないかという計算もできるわけでございますが、こういうのはみな推定以外にないということでございます。  私ども拳銃がどこから入ってくるかということで、拳銃取り締まりをしまして、押収する、事件を検挙するといった場合には、その出所は一体どういうところから出てきたかという出所の究明に力を入れているわけでございますが、いままでのそういう押収した拳銃の出所を調べてまいりますと、昭和三十八年、九年の上半期で申し上げますと、駐留軍の関係から出ておるものが、三十八年で申しますと十一、三十九年の上半期では五、それから輸入ということで出てまいりましたのは、三十八年では八でございますが、これが三十九年の上半期では百七十六というふうに非常にふえている。それから旧軍人の関係が、三十八年が十三、三十九年の上半期が八、それから自己所持が、三十八年が七十三、三十九年上半期が三十九、それから拾得、発見がいずれも五、手製のものが、三十八年が三十五、三十九年上半期が四十五等のことでございまして、いずれにしても、昨年の上半期がすでに三十八年を上回るという数字が出ておるわけでございます。こういうことで、しかもそれが相当全国的に広まってきておるような状況も見えるのでございますが、輸入のふえておりますものを見てまいりますと、やはり外国から外国のものが船員あるいは航空機をもちまして入れられておる。しかも、新聞等で御承知のとおり、フィリピンからの、CRSという私ども名前をつけておるわけでございますが、そういうCRSというフィリピンで密造いたしておりましたものを、船員が向こうへトランジスター・ラジオ等を持ってまいりまして、それと引き換えに持って帰る、そしてこれを国内に持ってまいりましてこれを横流しする、そうして数万円の価格でこれの取り引きをするということで、相当ぼろいもうけがあるということで、フィリピンでも非常に多くの拳銃がつくられ、これが日本に流れ込んでおった、これを木材運搬等の船で働いております船員がこの間にあって密輸入をしておったという事案が非常に多い、しかもその拳銃の渡っていく先が暴力団に非常に多くあるというようなことが出ておりまして、各府県ともにそういう数字がだんだんに多くなりつつあるということ。それからさらに、先般もございましたが、エール・フランスの機長がやはりアラスカのアンカレッジ等で手に入れた拳銃を日本の国内に持ってきて、こういうものをやはり日本の国内で売りさばいておったというようなことも出ておりまするが、拳銃不法所持取り締まりをやってまいりますと、暴力団関係に結びついていること、あるいは一度に相当大量の拳銃取り締まりをやっていくと出てくるようになっているというようなこと、そういう密売の組織と思われるものも出てきているということで、やはりこういうものをただ取り締まるということだけでは、国内に入ったものを不法所持だけで取り締まるということでは、なかなか取り締まりが徹底を期しがたいということでございまして、やはり昨年もフィリピンに私のほうから係官が参りまして、向こうでその情勢を視察をしまして、フィリピンの協力を得まして向こうでも取り締まりを強力にやっていただく措置も講じているということで、拳銃取り締まりにつきましては、数字もあがってきておりますが、あらゆる面から取り締まりに努力をいたしている。今後も一そう努力をしてまいりたい。それにしましても、法的措置をもっとしっかりやっていかなければならない。かように考えているわけでございます。
  20. 鈴木壽

    鈴木壽君 あれですか、いまのお話の中に、押収された拳銃の出所についていろいろ御説明がありましたが、輸入されて入ったものは、三十八年で八、それから三十九年の上半期で百七十六、こういうふうなお話しがありましたが、輸入というのは、いわゆる正規の輸入じゃなくて、密輸入といいますか、そういうことでございますか。
  21. 大津英男

    政府委員大津英男君) お説のとおりでございまして、いま申し上げましたのは、そういう密輸入のものでございます。正規な輸入許可しているというようなものは、これはたとえば警察官の使用する拳銃とかあるいはオリンピックで使う選手の拳銃とか、こういうものは正規に許可をするわけでありまして、ある程度の数字が輸入されているのでございますが、これは別でございます。
  22. 鈴木壽

    鈴木壽君 いわゆる正規の輸入に伴ってそれが横に流れているというようなことは、いままでございましたか。
  23. 大津英男

    政府委員大津英男君) いままでのところは、そういうものは出ておりません。
  24. 鈴木壽

    鈴木壽君 これは結局あれですね、今回の輸入禁止というこの法の改正は、実質的に別にこれはたいしたことじゃない——たいしたことじゃないと言うとうまくないかもしれませんけれども——問題があるわけではありませんね。それによって何か実質的な効果があるのですか。
  25. 大津英男

    政府委員大津英男君) もちろんいままでのように輸入をしても、それは許可されないから不法所持になるということで、輸入一般にしないということで、不法所持で取り締まっていくということが現在の体制でございます。これでいままやってきている。ところがいま申し上げましたように一向に減らないできているという状況でございますし、これをやはり、抜本的に輸入そのものがいけないのだということで取り締まっていく、たとえば麻薬とか覚せい剤等につきましても、所持だけを罰するだけでなくして、そういうものの輸入を重く罰していくというのと同じような体系をもちましてやっていくということによって相当な成果をあげることができる、かように確信をしておるわけでございます。
  26. 鈴木壽

    鈴木壽君 それから、私もこういう改正をしてもいいと思うが、実質的にどうということはないと思うのですが……。
  27. 大津英男

    政府委員大津英男君) それからさらに申し上げますと、そういう拳銃未遂罪も罰するということも今度の機会に設けましたので、輸入に着手してそれを果たさなかった、まだ所持しておらないということでございましても、これを取り締まることができるということが一つ。さらには、それを輸入したものを持って回って売りつけようということで所持しておるということになりますると、不法所持とさらにこの密輸入というものが併合罪として重く罰せられる、こういうような点も今回の改正によって目的を達することができるということでございます。
  28. 鈴木壽

    鈴木壽君 何べんも申し上げるように、これはやっぱり日本の暴力団ですね、こういうものに対しての徹底的な対策を講じ、暴力団を撲滅するというところまでいかないと、こういう問題は私は解決しないと思うのですがね。  そこで、長官にお聞きしますが、昨年の一月に暴力団対策要綱というものを示して、警視庁初め、各都道府県の警察にも何か取り締まり対策本部みたいなものをつくりましたね。そうして一年たったわけなんでありますが、暴力団対策の、昨年の要綱を出されてから一年間、現在まで、とられてきた具体的な対策と、それから現在暴力団というものがそういう対策のもとに、組織の状況なりあるいは人間の数の問題なり、こういうものはどういうふうになっているのか、ひとつ説明をしていただけませんか。
  29. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) 御説明を申し上げます。おっしゃるとおり昨年の一月に暴力取り締まり対策要綱というものをつくりまして全国に流したわけでございますが、初めのうちは、暴力団の実態をよく把握するという期間を要しましたので、昨年の夏ごろ、いわゆる昨年の後半に、その結果が実って、一年の成果があがっておるということになるわけでございますが、昨年の一月に示しました対策要網の骨子を御参考までに繰り返して申しますというと、首領あるいは幹部というふうな、暴力団組織の中枢部に対する取り締まりに重点を置けということが一つ。それから不法な資金源を絶つことによって暴力団の存立の基礎をこわしていけというのが一つ。それからこれは物の面、武器の面で規制をしていくというのが、ただいまお願いしているようなことと関連して、拳銃等凶器の押収ということに重点を置けということが一つ。それから暴力団同士の対立抗争事件の早期鎮圧ということも一つの主眼にするというようなことが特色のあることでございまするが、それに基づきまして、各府県ともでき得る限りの力をいたして暴力団対策を行なったわけでございまするが、その結果あげました検挙の件数は七万三千五百五十二件、人員にしまして五万八千六百八十七人というもものを検挙いたしております。これはわれわれの把握しておりまする全体の構成員の約三分の一に当たる人間が、とにかく何らかの事件で昨年一年中に警察の検挙にあっておるということになると思います。この数字は三十八年に比べまして、件数でも一二%の伸びを示しておりまするし、人員にいたしまして一五%の伸びを示しておるということになります。  しからば最近の取り締まり強化によりまして、暴力団がどういう影響を受けたか。いまのは事件の件数を申し上げたわけでございますが、暴力団、団としてどういう影響を受けたかということの一例として、昭和三十九年中におきまして、解散または壊滅した暴力団がどれくらいあるかということでございますが、その数は三百九十九、約四百ございます。このうち正式に組織の解散の声明をして、もうはっきりと名実ともになくなった、これは人間はなくならぬにしても、その団がなくなったというのが五十七ございます。また構成員の中で組織を離脱する者も漸次目立ってきておるというようなこと。あるいは長い間の暴力団の内情の視察の結果、首領、幹部というものに手を及ぼしました結果、そういう者の被検挙者の中に占める割合が非常に大きくなってきておるというような状況が見られるわけであります。
  30. 鈴木壽

    鈴木壽君 暴力取り締まりのことは、昨年の警察における最大重点事項一つだと思うんですが、非常に御苦労だったと思うし、それによって相当の効果もあげておるということは、いまのお話からうかがうことができるのでありますが、ことしはどうです、昭和四十年、これはどういうふうに……。続けるのか、さらに力を入れてもっとやっていくのか、その辺どうです。
  31. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) ことしも年の初めにあたりまして、どういうことを重点にするかということを検討いたしましたが、やはり警察の仕事というものは、対象というか、現実が変わらない限り、やはり去年最も重点を置いた暴力及び交通というものについて、ことしは、非常によくなったからほかのことに重点を移行しようという状態に残念ながらなっていない現状でございますので、ことしの重点目標もこの二つを継続する、単におざなりに継続するということでなしに、さらに強化できる面については継続するのみならず一そう強化もしていきたい、こういう方針でございます。
  32. 鈴木壽

    鈴木壽君 あなた方の見通しなりねらいというものは、いまのようなことをやっていってどうです、たとえば四十年、四十一年、ここ一両年中に所期の目的を達制できるというふうにお考えになっているか、そしてまた、そのために努力をするということですが、どうです、その点は。
  33. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) 暴力対策に限って申しますと、私は一両年のうちに撲滅できるかということであれば、そうしたいものだと思うけれども、一両年で必ずしも撲滅できるというふうに思いませんが、だから一両年でできないことは三、五年、三、五年でできないものは十年でも二十年でもというような形で、どうしても国民の期待にこたえていかにゃならぬ、こういうふうに思います。何べんも申し上げまするように、その攻め方はいろいろあるわけでございますが、とにかくあげた数は御承知のように非常に多いわけであります。だからこれをやった行為及び凶器の所持というようなところから攻め立てていって、刑が重くなればそれだけ効果というものはあがっていくということが一つでございます。それから年々やっていても暴力団というものは減らないじゃないかということは、団体としては解散したものがあるということを申し上げましたけれども、全体の人数というものはなかなか減らない、というのは、これは新たに暴力団ないし構成員がふえているということではなしに、私たちが力を入れれば入れるほど、いままで暴力団として警察の視野になかったものが入ってくるというようなことから、人数というものは当分の間そう急に——力を入れれば入れるほどふえるというような状態が、変な現象が出てくるかもしらぬと思いますけれども、実質においでは私は減っていく、こういうふうに考えます。それで、暴力団対策が結果においてはっきりした目標を達成し得るかどうかということにつきましては、私たち必ずそうしたいという信念でやっていきますが、これは過去におけるヒロポン対策につきまして、私たち——当時第一線に私おりましたが、とてもなかなかのことじゃこれはできないぞというのが一般的な空気でございましたが、ごらんのように数年継続していろんな面からそれを攻めていく、検討していくというようなことで、ほぼ撲滅の域に達したことはございます。まあそういうことを考え合わせまするというと、力の入れぐあいでは、きっとできる、これは警察の取り締まりももちろん大部分の責めを負うわけでございます。その以外の対策等も考え合わせて、同時に行なわれまするならば、そういう日も必ず将来には来るものだと私は考えております。
  34. 鈴木壽

    鈴木壽君 力強い長官のいまのお話を聞いて、非常に安心したいのですがね。たとえば昨年じゅうに行なわれた幹部級なり上層部といいますか、あるいは新聞なんかには頂上作戦なんていうことも書いておりますが、こういうもの並びに検挙された人間が五万八千数百人もおる、相当な効果をあげながら、しかしそれがまたさっぱり、何といいますか、立ち直らない、こういう問題が一つあるんですね。これはあなた方の責任というよりも、もっと別の面でこれは考えなきゃいけない問題だと思うのですが、かえってあの連中、あの仲間の人たちからすれば、検挙されたり、警察へ連れていかれたりすることが何か一つの箔をつけて、重味をつける、そういうことになっているんだというような話も聞くのですが、そういうことであるのかどうか知りませんけれども、検挙されたけれども、しかしまだ依然として暴力行為をやめないし、団にも入っている、こういうのが大部分じゃないかと思うのですがね。  それから、私ども見ておって不審にたえないのは、つかまったと思ったらすぐ間もなく出てきますね、その方面のえらい人たちが。保釈でしょうか何でしょうか、私ちょっとそこら辺正確な表現のしかたはわかりませんが、こういう問題ですね、取り締まりの面でいろいろあなた方が難儀をし、効果をあげていると言っても、何かどこかにそのしりが抜けているようないまの状況じゃないかと思うのですね。  それから、さっきの暴力取り締まり対策の要綱の一つとして、資金の根っこを押えたいと、こういうお話しがあったと思いますが、これなんかもどうもあなた方の期待しているような効果というものはあがらぬじゃないか。最近特に暴力団が企業を始めておりますね。企業家——企業家といっちゃことばは少し悪いですがね、企業を始めている。表面はまことにりっぱな、これは文句をつけようのないようなことですが、こういうものを一体どうするのかですね。実は団の資金かせぎだ、その金がみんな行っているのだ。あるいは資金の面で言うと、依然としてあれですね、財界、会社あるいは政治家、こういうのから資金が流れていますね。こういうのを一体どういうふうにごらんになっているか。あなた方相当実態をつかんでいるんじゃないかと思うのですが、これに対してどういうふうに今後やっていくおつもりなんでしょうか。
  35. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) ただいま御指摘になったような面から、暴力団にどのくらいの金が行っているかということについては、私たちも想像する以外はないわけでありますが、その中で、これはおどしによって財界から金が流れたというような、あるいは詐欺によって金が暴力団に入ったというような犯罪とくっついた場合だけ、まあ私たちはわかって、その検挙をやるわけでございますけれども、ああいうことから類推しますというと、相当なものが流れているんじゃないかということは、私たち自身も常に想像しているわけでございます。したがいまして、財界——まあ財界と言っちゃ何ですが——一般の方々に、暴力団に対して暴力を背景とした威圧のために金を出すというようなときは、出さないように、いやな場合は御通報願えればもちろん警察としては保護をいたしますということを申し上げておるわけでございます。  それから、それと無関係でございますけれども、最近暴力団の資金源としての対策として新しくやり始めましたのは賭博、案外賭博というものの収入は多いわけでございます。賭博は従来は現行犯しか——これは証拠保持というような点からそうなるわけでございまして、まあ現行犯に限って検挙をしておったというのが実情でございますが、暴力団対策を始めましてから、これは現行犯でなくても他の方面からの立証をなるたけ勉強してやるようにして、現行犯以外の賭博というものを相当数検挙することによって、その面からの資金の獲得ということを防止しているという面がございます。それからまた興行等につきましても、暴力団暴力的背景をもってそれを行なっておるというようなことが想像せられまするような場合におきましては、公共の施設等を貸さないようにというような、これは法律的な権限じゃございませんけれども、いろんな面と密接に連絡をとって、暴力を背景にした興行というようなことも行なわれにくくなっておるというのが実情でございまするから、一気に資金というものが枯渇するというようなことはないにしても、いままでみたいに暴力で肩で風を切るということによって金も同時に入ってくるというようなことのないようなふうには努力をいたしておるつもりでございます。しかしながら、一面、企業とおっしゃいました、正業に帰らせるという以外にはないわけでございますから、暴力という要素を含まない企業というものが、いままで暴力団と称された連中によって正規に営まれていくということは、これはやはり促進していかなければならぬことだと思いまするから、正規な企業が正規に行なわれるかどうかということは十分監視しつつも、その方向には私たちとしてもいくことを希望しておるわけでございます。
  36. 鈴木壽

    鈴木壽君 暴力取り締まり対策要綱の中に、あなたがたは、さっき二、三の点についてはお話がございましたが、組織暴力の存立基盤に対する取り締まりを徹底するということがありましたね、そういう文句があったと思いますね。これはいろいろな問題がこの中にはあると思いますが、資金の問題なり、あるいはまた最近企業といいますか、正業らしく見えるものが一つの隠れみのになって、あるいはまた最近政党の結社に、結社というか、政党としての届け出をしてやっている。こういうものに対する私はやっぱり根本的なものがないといけないと思うのですね。中には、あなた方の力だけではといいますか、あるいは権限だけではどうにもならない問題もあります。しかし、そういうものをもっと的確につかんで、それに対する対策を講じないと、形はいろいろ昔の暴力団とは変わってきたと、こうは言っても、中身においては依然として変わらないし、それがまたいつかは、やがて暴力行為を起こす、そういうものになっている、温床になっている。たとえば土建会社をつくってやっている。これは実際にある話ですよ。何々組という組をつくって、そうしてこれはいまできたばかりの組ですから、そうそう大手の土建会社と肩を並べてやるなんということはできませんから、当然下請の仕事をする、下請の仕事をするためにいろんなことをやっているということ、これは私いろんなことということだけでやめますが、あなた方わかるでしょうね。それから小さな仕事の、かりに入札の指名に入れてもらって、彼らのいわゆる談合の段階でどういうことをしているのか、とてもじゃないがこわくてあの連中を一緒に指名に入れてもらったって困るというのがそういうものに関係したあれですね。いわゆる談合の際のいろいろなことが問題になっているわけですね。ですから、こういうものを、何べんも言うように、あなた方だけでいまどうというわけにいきませんけれども、これはもう抜本的な対策を講じないと、いつまでたっても日本のこのまことに恥ずかしい暴力団の存在を、形を変えて温存させていくということになっていきますね。こういうことに対しての御見解、これはどうですか。
  37. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) おっしゃるとおりでございまして、いまのようなことになって、はっきりと、談合そのものもいかぬわけですが、その中における暴力というものを背景にして、そういうものに入り込んでうまい汁を吸うということ、このこと自身また犯罪になります。そういうことは私たちの間で十分取り締まっていく対象になりますが、一方、やはりそういうものを指名に入れる入れないというような問題なり、あるいはそれじゃそういうことがいけないならどういう仕事で暴力団構成員を更生させていくかということの、その面の努力と相まって、いろいろな施策の総合の上で、おっしゃるようなことができるのじゃないか、その中に警察の受け持ちまする面については、もうどこまでもいままでのとおりの努力、あるいはさらに、いままで以上の努力をしていこう、こういうのが私たちの考えであります。
  38. 鈴木壽

    鈴木壽君 時間があれですから、これで一応やめたいと思いますが、たとえば彼らが正業についたといって喜んでおっても、いま私が申し上げたような土建のこととか、あるいはパチンコのああいうもの、それから特に最近興行の面で、これはいろいろ問題があるわけですね。興行やめろというわけにもいかぬだろうが、しかし彼らが興行を主催していっているその中には、いろいろな問題がある。こういうことも一つの例として申し上げますが、ほうっておけないと思いますがね。興行の面では最近税金とか何かで、税務署といいますか、そちらのほうでも見のがさないでいろいろ手を打っているようでありますが、もうそれに関係した人の話を聞くと、これはたいへんなことになっていると思うのですが、まあいずれひとつお願いをしたいのですが、さっきお述べになりました昨年の検挙されたものなりあるいは解散したもの、正式に解散の声明を出したというようなもの、いろいろ数字をあげられて言っておりましたが、ひとつできるだけ最近の暴力団の全国的な組織の状況なり人員なり、こういうものについてのまとまったものがあったらがひとつ次回までにお願いをしたいと思いますが、いかがでございましょう。
  39. 江口俊男

    政府委員江口俊男君) できるだけの範囲で、ということで御了承願えるならば……。
  40. 鈴木壽

    鈴木壽君 もちろん年が明けてからわずかでございますから、三十九年といっても全部のそれは無理かとも思いますから、できるだけ最近にまとめたものをひとつお願いをしておきたいと思います。私が暴力団の問題、妙なところへ入っていったような感じを与えていると思いますが、結局こういうものがいまのような状態にあることにおいて、どうしても、何といいますか、銃砲等の不法所持の問題なり、これに伴う犯罪なり、こういうものを何のかんの言ったって、これは役に立たぬ問題ですよね。そういう意味で、いま少しく暴力団のあり方、あるいはこれからの皆さんの見通しなり、これに対する対策なり、ひとつもう少し次回でお聞きしていきたいと思いますので、いまの資料をひとつ参考にお願いしたいと思います。  きょうは時間もきたので……。
  41. 天坊裕彦

    委員長天坊裕彦君) それでは本日はこの程度にいたしまして、次回は二月九日火曜日午前十時に開会予定でございます。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十分散会