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1965-04-27 第48回国会 参議院 大蔵委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年四月二十七日(火曜日)    午前十時四十二分開会     —————————————    委員異動  四月二十四日     辞任         補欠選任      井野 碩哉君     村松 久義君      上林 忠次君     鳥畠徳次郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西田 信一君     理 事                 西川甚五郎君                 成瀬 幡治君                 中尾 辰義君                 田畑 金光君     委 員                 岡崎 真一君                 津島 壽一君                 日高 広為君                 堀  末治君                 木村禧八郎君                 佐野 芳雄君                 柴谷  要君                 鈴木 市藏君    政府委員        大蔵政務次官   鍋島 直紹君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    参考人        慶応義塾大学教        授        小竹 豊治君        日本興業銀行副        頭取       正宗猪早夫君        証券団体協議会        常任委員長    阿部 康二君        日本共同証券株        式会社社長    三森良二郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○証券取引法の一部を改正する法律案(内閣送  付、予備審査)     —————————————
  2. 西田信一

    委員長西田信一君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  去る二十四日井野碩哉君及び上林忠次君が辞任され、その補欠として村松久義君及び鳥畠徳次郎君が選任されました。     —————————————
  3. 西田信一

    委員長西田信一君) 証券取引法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のために慶応義塾大学教授小竹豊治君、日本興業銀行頭取正宗猪早夫君証券団体協議会常任委員長阿部康二君、日本共同証券株式会社社長三森良二郎君、以上四君のお方参考人として御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人皆さまに一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多忙の中を本委員会のために参考人として御出席をいただきまして、厚く御礼申し上げます。本委員会は目下証券取引法の一部を改正する法律案審査を進めておりますが、本日、参考人各位より本案につきまして御意見を承りますることは、委員会審査の上に多大の参考となることと存ずる次第でございます。参考人各位におかれましては、忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願い申し上げます。  それでは、議事の順序につきまして申し上げます。初めに参考人から二十分程度御意見を述べていただきまして、しかる後、委員各位から御質疑を申し上げるという順序で進めてまいりたいと存じます。参考人お方の御発言は私より指名さしていただきます。  それでは、まず小竹参考人から御意見をお述べ願います。
  4. 小竹豊治

    参考人小竹豊治君) 経済高度成長期から安定期にかけまして、一番重要な経済政策といたしましては、金融正常化が問題になると思います。金融正常化をもし広い意味に解釈いたしますると、これを行ないますには当然証券市場正常化ということも必要になるわけでございます。  証券市場正常化と申しますると、長期資本証券をもって、証券を媒介として調達し、そして金融市場の不合理性をできるだけ排除するということ、これが一点。第二点は、証券市場の構造的な不合理性をできるだけ排除して合理的な進展をはかるということ、これであります。この二点は別々のものでありませんで、全体としての金融市場、すなわち短期金融市場資本市場からなりまする全体としての金融市場合理的発達を期するためには、この二点にわたる総合的な政策が必要であると考えます。  過去約十年間におけるわが国の高度経済成長は、一面において合理的な発達を遂げておりますのですが、その合理的な発展過程の中で非常に不合理な局面を生じてきておるわけであります。これは今日いわれるいわゆる金融のひずみあるいは経済のひずみと称されるものであります。  昭和三十五、六年以降株価はその間に騰落を繰り返しておりましたが、事業会社の総資本利益率を見ますると、一路低下の傾向をたどっております。昨年の八月以降暴落いたしました株式市場不況と申しますものは、この経済成長過程にあらわれた日本銀行信用バックとする生産の拡大、あるいはあまり急速であったために生じた労働の不均衡、こういうことが消費物価の上昇を来たさしめ、利潤率低下と相まちまして、究極的には企業の採算を悪化させた。株価暴落根本原因はこの点にあると思います。つまり生産過剰、日本銀行信用バックとする信用膨張、それから労働の地域的あるいは産業別均衡に基づく労賃の騰貴、したがって企業収益低下、近い原因といたしましては、もちろんこういう高度経済成長の結果生じた国際収支の危機を金融引き締め政策をもって切り抜けようとしたこの金融引き締め政策にあると思います。  いま上提されておりまするところの証券取引法に関するこの改正案は、この証券市場のこういう事態に当面いたしまして、証券市場の構造の不合理性を排除しようとする一つの政策のあらわれであると私は考えます。立法者考え方はそういう具体的な背景に根ざしておるものと考えるのであります。  しかし、この場合に考えなければなりませんのは、証券市場と申しますのは、先ほど申し上げましたように、長期資本調達市場としての資本市場のことでありまして、短期金融市場の狭義の金融市場密接不可分関係にあります。また、これはその資本調達という面から申しますると、企業資本調達でございまするから、事業会社とも密接な関係があるということになるわけであります。  で、いまこの法案を考えますると、証券会社の役員の思惑取引を厳重に取り締まったり、あるいは「証券業者」を「証券会社」と改めて、その資産内容強化をいろいろはかっておるようでございます。期するところは、投資家保護——株価暴落によって受けたところの投資家のいろいろの諸問題がございまするが、要するに投資家保護をそういう方法によって期しておるものと考えられるのであります。私は、この法案にあらわれました投資家保護は、一面、立法政策としては合理的な措置だと考えまするが、しかし、これはやはり今日の段階では、投資家保護も、単に証券業者資産内容強化ということだけにとどまるものではない状況が現在あらわれてきておるのでございます。  つまり、外務員の行動を証券会社責任として、非常に今度は広範にきびしく取り締まっておるようでございまするが、しかし、外務員は、やはり一定の資料に基づいて、これを顧客の相談に応じ、あるいはその注文委託を受けておる、ある場合にはこれをすすめていくということもあるのでありまするが、公正な会社資料考課状に関する資料が発表されておりませんと、それが粉飾された虚偽資料のもとでは、ほんとう投資家保護は期せられない。外務員証券会社ひとり責任ではございません。近くは山陽特殊鋼のような問題、その他いろいろな若干の中堅企業と見られるものに、驚くべきことに、その決算内容の紛飾がまるで当然のように考えられるくらいに行なわれている。こういうことでは、ほんとう意味投資家保護になり得ないのであります。単に証券業者を取り締まるだけではなくて、上場会社のそういう資料の公表について適正を期する強固な立法政策が必要になるわけであります。  でありまするから、証券取引法に盛られる投資家保護がこのままでは、若干の限界がある。もちろん、現行法におきましても、虚偽報告を行ない、虚偽考課状の発表を行なったものについては、現在も証券取引法において罰則をもってこれを取り締まる規定がございますが、私は、やはりこういう方法がさっそくとられなければならない。ひとり商法に規定ありとして、管財人だけにまかせて告訴するというようなものではなくして、もっと証券取引法のその虚偽報告に関する罰則規定をさっそく発動するような措置が、この改正法案趣旨から見ましても、相伴わなければ、この改正法案に盛られた投資家保護実りあるものとならないと私は思うのです。  第二の問題点といたしましては、この法律は、ブローカーディーラー引き受け人——アンダーライター、それに売りさばき人というふうな職能分化を期しております。そこで、この分化を期するという点においては、非常に合理的な立法的考え方と思うのであります。しかし、考え方は合理的であるといたしましても、はたしてそれが日本の現在の実情といかに適合していくかということが問題点になるわけである。立法的考え方がいかにすぐれているといたしましても、現在の実情、あるいは今後発展するであろう実情との適合性一致性、その間にズレがあってはいけないのでございます。この条文を見ますると、何か、自己計算をもってするディーラー委託売買をするブローカー証券引き受けを行なうところのアンダーライター、これをさらに一般の顧客に小売りする分配、売りさばき人、売りさばくというふうに形式的に四種類に分けておりますけれども、はたしてこれは厳密にそのように分け得るものかどうか。  イギリス及びアメリカ実情に即して見ますると、分けているようでもあり、またこれが密接に相兼業されているのが事実であります。ただ、イギリスの場合におきましては、アメリカの場合におきましても、取引所内部取引上場証券取引所取引につきましては、ブローカーディーラーとが分かれております。イギリスのごときは最も典型的に分かれております。アメリカでもほとんど分離に近い状態でございます。で、この職能分化の問題は、単に並列的に四種類の業務を分けるということを立法究極的目的とするということでは、証券業の高度に発達した事態を予想すればともかく、アメリカにおいても、イギリスにおいても、四種類に分かれていると同時に、それぞれがまた兼業されているというのが実態でございます。それよりもさらに高度に進めば、文字どおり四種類に分かれ得るかもしれません。しかし、今日の段階では、一方分かれていると同時に、また兼業されているというのが実情でございますので、そういうことを考えますると、この職能分化問題点はどこにあるか。  それは、取引所外部取引、つまり引き受け人ディーラーであります。引き受け人ディーラー、売りさばきを兼ね、また非上場証券ディーラーを兼ねる、同時に取引所取引委託注文引き受けブローカーを兼ねるということは、私は差しつかえない。欧米の市場に見ましても、私は差しつかえないこと。何か日本では職能分化といいますと、いまの法律にありますように、四種類職能に全部分化することが職能分化のように考えられておりますが、これは非常な事実認識の誤解に基づくものでございまして、取引所取引についてのみ分化するのがほんとう委託者保護になる最も手近な方法でありますし、また当面そこに目標を置くべきものだと考えるのであります。  そういたしますると、ただこういうふうに分けて、現在はこれを当分は兼業さして、兼業を認めていくという漸進的措置を講じておりますが、聞くところによりますると、証券局は、あるいは大蔵省は、究極的にはブローカーディーラーは分離したいのだというふうに伝えているのでありますが、分化の重点はともかく取引所取引機能分化に置くべきものと考えます。そういたしますると、この法案相当先事態発展を予想している非常に注目すべき改革ではないか。よって取引所取引職能分化こそ、私は証券市場改革のうちの最も真髄であると思います。また、委託者保護の面から見ましても、取引所取引に関する限りについての委託者保護見地から見ますと、この分化的方法をとったということは、私は証券立法としては近代化への第一歩を踏み出したものと評価していいと考えるのであります。しかし、問題はその実情でございます。いかに立法的な考え方実情とを併合させていくかということでございます。  現在取引所には才取り人がおりまして、これは証券業者取り次ぎ媒介をいたしているにすぎません。自分計算では売買できないと思います。これでは、ブローカー業務発達させようといたしましても、各証券会社からの注文を互いに媒介いたそうとしても、なかなか売買が折り合わない場合が生じてくると思います。そこにどうしても自己計算をして、いま買い注文があるが売りの注文はない、しかし自分はしばらく一時的にこれを買いの相手方となろうというような自己計算を行ない得るものがいなければ、取引所内部売買というのは円滑に行ないがたいのでございます。アメリカにおいてはスペシャリストがその役割りを果たしております。ロンドン株式取引所におきましてはジョッバーがその役割りを果たしております。現在の才取り人自己計算ができないのでございまして、これはちょうどアメリカにおけるフロア・ブローカーと申しますか、市場仲買い人といいますか、そういうものに当たるのであります。  そういたしますると、この職能分化を究極的にはかろうといたしまするならば、日本の場合は、まずそういう自己計算をしながら証券業者売買注文取り次ぎ媒介するところのスペシャリストのような機能をどうやって設け、それを発達させるかということにあるわけであります。スペシャリストは当然に自己思惑をやりまするから、それに対しては当然一時的な融資が必要であります。この融資の問題を日証金のほうからまかなうようにするか、あるいは証券界関係の深い都市銀行のほうからまかなうようにするか、そういう資金の裏づけがなくしてはスペシャリスト機能発達しません。また、こういうスペシャリスト発達した場合、いろいろ今日問題の多いところのバイカイ取引というようなものも、その弊害を漸次に減殺していくものと考えるのであります。  これはこの法における重要な問題点の二点を主としてお話ししたのでございますが、しかし、もっと重要なことは、こういう証券市場政策といいますか、資本市場政策を遂行していく場合は、まず立法的措置としてその第一歩を申したのでありますが、その場合に最も大事なことは、先ほども申しましたように、総合的な金融政策金融正常化政策、その一環としての証券市場政策というものを遂行するという総合的考え方、総合的なビジョンでございます。先ほども申し上げましたように、今日の市場株式市場不況というものは、単に取引所内部の要因によるものではなくて、その背景には日本資本主義の構造的な成長過程に生じたところのひずみ、これが全面的に今日あらわれているところに大きな問題点があるのでございまするから、私はやはりこの証券立法に伴いまして、他の金融正常化政策が並行して行なわれなければ、この立法の企図するところは私はいい実りを来たさないのではないか。  特にこの証券局のほうでは、この立法がまず第一歩でございまして、しかる後取引所改革証券業協会改革証券業者自主規制を強固にし、それを中軸にして取引所構造改組織についてまで問題があるように言われておるのでございます。そういたしますると、これは終戦後、いや、日本証券取引所政策の歴史上画期的な段階に入る第一歩であると考えられるのであります。そういたしますると、この法律だけが具体的な事実の発展から独歩する危険性がないでもありません。私は、この立法が独走するということになりますれば、この立法の期するところも実りなきものになるだろうと思います。この立法がさらに実りあるものとなるには、先ほど申しました金融正常化政策が並行して遂行されるという条件がなければなりません。  現在の官僚機構から申しますると、大蔵省証券局がこれを立案し、またこれが法律となりますれば、これを監督し行政の衝に当たることになるわけでありまするが、しかし、そういう先ほど申しました総合的な政策から申しますると、証券局の考えているところ、またその証券行政というものが、銀行局の考えているところ、また銀行局見解、あるいは主税局の見解理財局見解と相一致するところがあって、大蔵省内部におけるそういう総合的な見解の最高の集中的な表現者としての事務次官の統率力、政治的にはこれを代表する大蔵大臣見解、こういうものは事務機構の総合的な見解の統一の基盤の上で発言され、また遂行されるということが私は大事である。特に今日の段階では、この金融正常化政策の遂行が最も私は大事である。  たとえば、今日の金融市場の混乱はどこにあるかと申しますると、短期手形継続更新、切りかえでもって長期投資をしているというところにあります。有力な大会社でもって短期手形で借りて機械や設備に投資していない会社はほとんどありません。手形の切りかえは三十日ごとに来る。しかし、投資された機械は十年、二十年の耐久期間がある。したがいまして、そこに短期債務でもって長期投資を行なうという、会計原則から見ても最も劣悪な方法を、日本企業が過去中数年間遂行してきた。こういうひずみが今日、間接には二十兆をこえるという企業信用膨張と相なり、また企業をしてこういう金融引き締め期にはいたずらにその経理的な困難を来たさしめている。これは帰するところは、長期投資短期手形を使用したという金融市場のあり方に根本的な問題があるわけであります。  つまり、企業長期金融短期金融を分離して、社債株式をもって長期投資するという方法をとらなかったということ、また日本都市銀行がこういう方法を助成したということ、ここに根本の問題があると思う。第一点があると思う。  第二点は、また銀行自己資産内容流動性を無視して、つまり預貸率というものが一〇五%、一一〇%になってもこれを貸し出して、しかもその短期手形更新手形継続によって貸したという形をとったということ、そうしてこれが究極には日本銀行信用膨張になって過去の経済成長を来たさしめているということであります。  だから、これを是正するためには、私は、根本的には預貸率を、大蔵省がすでに通達をもって各銀行に申し渡しているように、預貸率を八〇%にするという、そういう通達の趣旨をなぜに実行しないのであるか。金融正常化第一歩は、金融のルールをきめるということよりも、むしろ銀行の貸し出しの最高限度を預貸率八〇%というふうに制限してきめることのほうが、私はより重要な措置だと考えるのであります。また、これはもっぱら金融面について要求されるところの、この証券立法に並行してとられねばならないと思うところの措置でありまするが、こういうこの二つの方法をとりますならば、預貸率八〇%に限定いたしませんが、企業はその資金需要を当然増資もしくは社債によって調達せざるを得なくなるのであります。短期手形でもって調達するということがいかに不合理かということを痛感いたしまするならば、社債株式をもって調達せざるを得なくなるのであります。といたしますると、当然、ここで公社債市場正常化しなければならないという問題が出てくるわけであります。  今日は、御承知のように、株式発行市場時価発行でなく額面発行でございまして、ほんとう意味株式発行市場は存在いたしません。ただ、失権株証券業者引き受け売買するという措置だけでございます。いかに未発達かは、このとおりおわかりのことと思います。また御存じのように、公社債市場は、これを買いましても、売ろうとする場合は買った証券業者に買ってもらうのでありまして、恩恵的な措置しかありません。こういう公社債市場が存在しないということが、今日またそういう企業資本調達を困難ならしめている。私は、だから、この公社債市場の正常な発達なくしては、またこの立法の意図するところも実現されないと思う。だから、早急に公社債発行条件を自由化するということが当面必要でございます。  その第一歩として、やはり公社債発行条件一流社債につきましては〇・四%くらいの発行条件の引き上げは、私は当然即刻なさるべきではないか。今日のような状況は、そういう政策を遂行する、公社債発行条件を引き上げるのに非常に有利な状況にあると私は考えるのでございます。  第二の点は、いま申し上げました時価発行の問題でございまするが、日本証券市場において株式発行市場が近代的な形で発展していないというのは、額面発行にのみこれを依存しているからでございます。時価発行すると株主権利を棄損するものだという見解がございまするが、しかし、それは私はあまりにも物事を小さく見過ぎておると思うのであります。いかに額面割り当てによる発行をいたしましても、権利落ち価格がさらに低下するようなことがありますれば、株主権利は決して擁護されておったとは申せません。むしろ、増資が進んでから株価が下がりますれば、株主の損害は明らかであります。今日のように株価が低落しておるときは、時価発行したからといって、増資含み価格を持っている株価が暴落するという懸念はむしろありません。この際、私は新しい資本調達見地から、時価発行を勇敢に遂行するということは、企業資本負担を軽減することでございます。額面割り当ての場合ならば、五十円に対して二割なり一割五分の配当でございます。時価発行の場合は、現在時価が二百円、百五十円いたしておりますれば、百八十円もしくは百三十円でもって公募いたしますれば、その公募に対する配当の割合でございまするから、事業会社資本費用負担はうんと低下するわけでございます。  ただ問題は、時価発行の場合は、現在の大株主がその株式の保有について不安を感ずるという点がありましょう。額面発行でありますれば、既存の株主に対して権利が与えられるわけでございますから、失権しない限り自動的に、払い込みいたしますれば自分の持ち株は増加になります。ところが、時価発行の場合は、現存の株主関係なく新しい株主を公募するわけでございますから、株主の上に変動がございます。つまり、銀行もしくは金融機関企業との密接な融合関係が、株式保有ということでもって結合しているところがあります。そういう面から、支配権の動揺が時価発行の場合は起こる可能性もございます。  しかし、私は、日本企業発展金融業発展から申しますると、銀行企業があまりにも株式保有の点において密接に密着しているということが、またいろいろな金融のひずみを生んでいる一面もあると思うのでございます。むしろ時価発行によって公募された公開値段でやることが、株主の変動がありましても、むしろそういうことが企業民主化を育て、金融機関の公正な競争を、投資的保有の競争を育てるゆえんになるとも考えるのでございます。  この証券取引法改正案はけっこうでございますが、これが意図しているところの方向といま申し上げましたような金融正常化措置が相並行して行なわれなければならない。その点において、大蔵省に対してそういう点について問題点があることを皆さま方のほうから御指摘くださいますならば、私の参考人としての役割りも非常に有意義なものだったと考える次第でございます。
  5. 西田信一

    委員長西田信一君) ありがとうございました。  次に、正宗参考人にお願いいたします。
  6. 正宗猪早夫

    参考人正宗猪早夫君) 今回の証券取引法改正根本的な考え方につきましては、私は賛意を表したいと思います。  私ども銀行は、長年免許制のもとに信用機関としての地位を固めてまいったのでございますが、そしてまたこれに伴いまして、国民経済的にもわれわれ銀行は重要な役割りを果たしてまいりました。これに対しまして、証券会社の場合、戦後、登録制という自由な、そしてまたわが国の実情には必ずしもなじみのない制度の上で再発足したと思います。そういう従来に比べてはるかに重要な役割りをになうことになったわけでございますけれども、その登録制による証券業市場が非常に急激に拡大して、証券界内部での体制整備は必ずしも十分追いついていなかったのではないかといううらみを感ずるわけでございます。したがいまして、今回の改正で免許制をおとりになろうということは、そういう証券界の信用の高揚という上にも一つの役割りを果たすのではないかというふうに私は考えます。今後、資本市場の充実というのが一そう要請されておりますおりから、証券会社免許制に移行して、そして社会的信用の向上がはかられるということは、まことに時宜を得たものと思うわけでございます。  わが国の経済が開放体制に移行しつつありまして、各企業のほうでも財務の安定化、適正化、それを通じまして金融機関のほうの資産の健全性の維持というようなことについて格段のくふうを要するところに参ってきたと思うのでございますが、企業自己責任を明確化し、そして資金の供給ルートもすっきりしたものにするという点からは、銀行の貸し出しに偏重しないで増資あるいは社債というようなものを拡充して、直接投資というものをさらに育成するということについては大事なことだと思いますし、それがまた金融機関銀行の側からも健全化に役立つ方向であろうと思います。証券市場は一国の経済、国の経済、あるいは資本蓄積、すべての鏡になっておるのではないかと思うのですが、したがって、その国の経済、資本蓄積というようなものも実情に即した拡大をはかっていくということが必要ではないか。今後市場の健全な発展を進めるためには、証券会社が信用を博するような、そういうような体制の強化ということも当然必要でございますが、同時に、根本的には企業そのものが、内部留保とかあるいは長期貯蓄の奨励とかいうようなことを通じまして、証券そのものの実質が投資家の期待にこたえ得るような実力を持つ、またそれに関連しましては、いろいろの機関投資家というようなものも育成していく、それからそういう機関投資家等の資産の運用という場面も適正に行なわれるように指導していくというような、そういう総合的な施策も今後ますます必要ではないかと、かように思います。  直接投資を大いに推進していくという方向は一つの理想でございましょう。しかし、現実にはなかなか一気にそこまでは行きにくいのではないか。やはり間接投資あるいは機関投資というような、零細なものも集めてそれを集中して適正に運用する、そういう間接投資という方法もあわせて活用して、そして直接投資のほうも漸次進めていくというようなことが、弊害が少ないのではないかというふうに考えます。個人に、大衆の人たちに証券保有を普及させていこうということであれば、ただいまちょっと申し上げましたように、投資家保護投資家の期待を裏切らないだけの信用度の高い証券がまずこの世の中にあらわれて、そういう証券を適正に行き過ぎないように普及させる、まあこれが順序としてよろしいのではないかと、かように思うわけでございます。  今回の免許制の場合に、職能別に免許を与えるということになっておりますが、これは結果的には職能分離の考え方を取り入れたことということになり、私は非常にけっこうなことだと思います。ただ、性急な職能分離というものは実情に即さない、当面は複数の業務の兼営が認められるということでございますので、それの運用については、従来の兼営に伴う弊害が幾つかいわれておりますが、そういう弊害のほうの予防は十分配慮していただきながら、なお兼営は当分認めていく、そういうことを通じて証券業の各会社それぞれが合理化しやすい、そういう適正な規模なりあるいは適正な経理内容なり、そういったふうなものに早く到達できるようなそういう、一挙に分離し切らないで、兼営を認めながらそういう方向に行くということが適当ではないかと私は考えております。  証券取引審議会の答申にも触れられておったと思うのでございますが、今回の改正案はいわば第一段階ではないかと思います。近い将来には証券取引所の制度とか、あるいは取引士法とか、あるいは証券業協会等の問題について当然検討が加えられるものと思いますが、職能の分離の問題も、そういう取引所制度やあるいは証券業協会といったふうなそのほうの制度とも関連しておるものであろうと思いますので、取引所制度等の改正を検討される際に職能分離の問題もあらためて慎重に検討されることを私としては御期待申し上げます。  証券会社の体質の健全化を維持しようということで、諸準備金の積み立てあるいは内部留保の充実等への配慮が見られます。こういう財務面の充実の配慮は、今後証券会社の社会的信用の強化をしていこう、あるいは投資家を保護していこうという趣旨からも、適切なものであると私は思います。  今度の改正によりまして所期の効果をおさめるためには、今後なお、先ほど申し上げましたような検討が加えられねばなるまいと思いますけれども、この経済諸環境、あるいは並行してとられる政策と相まって、今後の資本市場の健全な発展に資するところあるその第一歩というふうに私は考える次第でございます。
  7. 西田信一

    委員長西田信一君) ありがとうございました。  次に、阿部参考人にお願いいたします。
  8. 阿部康二

    参考人阿部康二君) 今度の証券取引法の改正は、証券業免許制に移すということが大きなねらいになっているわけでございまして、この方針はすでに昨年の十二月に証券取引審議会から答申がございまして、今度の改正もそれに基づいたということでございます。それから、その証券取引審議会には証券界の代表も参加いたしていることでございますから、その方針については、われわれも何ら異論はございません。賛成いたします。  ただ、その方針が法律の条文になってあらわれたのを見ますと、率直に申し上げまして、非常にきびしい感じを受ける、それから何か非常にえらい感じを受けることは事実でございまして、また法律の条文の解釈等について疑義がないでもございませんので、また、この今度の改正はこれからの証券取引法のいろいろな改正、あるいはそれは日本証券市場の今後の方向に大きな関係があると思いますので、国会においては十分ひとつ御審議をいただきたいと思うわけでございます。  また、今度の改正法によりますと、政府の裁量の余地が非常に大きくなりますので、運用いかんによりましては、われわれが念願いたしておりますような証券市場の拡大強化とはならない、あるいはマイナスにならぬとも限らないのでございまして、運用についてはさらに十分検討をしていただきたいと思うのでございます。  私自身がいま一番、きょうの参考人の中では証券市場に直接タッチしておりますので、具体的の問題につきまして、五つほど改正法の内容に関連しまして意見を申し上げまして、審議の御参考にしていただきたいと思います。  第一点は、職能分化の問題でございます。で、もともと日本証券業は、戦争前も実は免許制であったわけでございまして、それが昭和二十二年の最初の証券取引法のときにも免許制であった。それが二十三年の改正のときに登録制に改められまして、それから十七年間登録制のもとで証券業は今日まで営業をやってきているわけでございまして、この登録制が今度もう一ぺん免許制に逆転するわけでございますけれども、戦争前の免許制と今度の免許制の間には大きな相違がございます。それは二十二年の証券取引法ではいわば包括的の免許制でございました。今度はそれを職能分化考え方を入れまして、業務別に分けて証券業者を免許する、こういうようなことになるわけでございます。ですから、今度四つに分けるという、たとえばブローカーであるとか、あるいはディーラーであるとか、アンダーライターであるとか、セーリングであるとか、そういうような分かれた仕事を将来やるものが出現することに今度の法律が備えるという意味であるならば問題はございませんけれども、現在ある証券業者をこういう何か四つの業務に分けて行政指導をされる、あるいはなるべくそういうふうに分けて証券業が営まれるようにもっていかれるというならば、これは実は私は危険なことだと思います。  と申しますのは、現在の証券取引法では、四十六条をごらんになってもわかりますように、証券業者がお客さんから注文があった場合には、自分がその相手方になりまして売買を成立させるか、あるいは媒介であるとか取り次ぎであるとか、代理であるとか、つまり委託でその商いを処理するか、それをはっきりしろという規定はございますけれども、もともと両方やってもいいことになっておるわけでございますし、現実にいまの証券業者ブローカーが主な業務であるかディーラーが主な業務であるかわからぬものも実はたくさんおるわけでございまして、ですから、それが今度法律が変わってみな何か分けられるのかというようなこと、あるいはどっちかに重点を置いて考えなくちゃならないのかということになりますと、指導のしかたいかんによっては業界に思わぬ混乱を起こすと思うのでございます。ですから、職能分化の問題はあくまでも分化する方向で御指導いただくことにお願いして、無理に職能を分離するような政策は慎重にやっていただきたい、こういうことでございます。  それから、第二番目の問題は、引き受け会社の資本金の問題でございます。今度の改正では、証券会社の資本金につきましては、一般的には法律で改正に合わして資本金を改訂するということにはなっておりませんけれども、その中で引き受けをする会社についてだけは資本金を上げると、こういうふうになっているわけであります。そこで、問題になりますのは、一体引き受けとはどういうことかということだろうと思うのでございます。  日本法律では、たとえば商法で使っている引き受けと、あるいはわれわれがいま証券取引法でいっている引き受けとは、内容が違うと思うのでございます。ここで問題になっている引き受けはいわばアンダーライテングの意味であって、商法で使っているようなサブスクリプションの引き受けではないのであります。ですから、証券引き受けて大衆に売っていく、売れ残った場合にその証券会社がそれをしょい込むというような意味引き受けでございます。その引き受けは、別に引き受け証券会社がその証券保有することが目的ではなくて、その証券はあくまで消化していくことが目的なのでございます。初めから全部取るような意味引き受けるということはあり得ませんし、あれば間違いだと思うのでございまして、そうなりますと、引き受け会社の資本金だけを何かことさらここで大きく上げるということにどういう意味があるのかということでございます。また、現に引き受けの仕事をやっております証券会社の中には、いままでの行政指導によって昨年の暮れようやく資本金二億円になっている会社がたくさんあるわけでございます。そういう会社が今度はまた一挙に自分たちの手の届かぬほど大きな資本金に引き上げなくちゃならないのか、あるいは引き上げなければ自分がいままでやれた仕事がやれなくなるのかというような不安を持っているわけでございまして、ですから、引き受けという仕事が何だろうかということをお考えいただきたい。  それから、現実の問題になりますと、いま、ある会社社債引き受けるというような場合でも、十の会社とかあるいは十五の証券会社が組んで引き受けをします場合に、その発行される証券全額に対して共同で責任を持っているのではなくて、自分の分に応じてその一部を引き受けるような形で引き受け団に参加している証券会社があるわけでございます。それは自分の力に応じて引き受ける分には差しつかえないのじゃないかと思うのでございます。ただ、引き受け団をつくります場合に、発行会社とその証券発行について直接交渉をするようないわゆる幹事会社ですね、また、幹事会社は同時にシンジケートの内部を固めていかなくちゃならない責任もございますから、そういう幹事会社について十分相手から信用を得られるかどうかという問題もからみますけれども、やはり相当の資本金でなくてはならないということは常識だろうと思います。しかし、それをどこまで上げるかという問題になりますと、あまり大きな数字になりますと、一般の証券業者が、これからは自分たちで努力し引き受け業務でもやっていきたいというような会社が、何か特定の大きいものだけしかそういう幹事会社の仕事はできないのだということは、やはり業界全体からいいますと、一部には若干の抵抗があると思うのでございます。  それから、もう一つ、今度は、引き受け会社の関連の事項の中で、引き受けを専門にする会社が出現することも可能のようになっておりますけれども、これは率直に申し上げまして、いま証券業務と銀行業務を分けてやるというような間隙を縫って、金融機関が何か引き受けだけをやるような専門会社をつくるというようなことがもしあるとしますならば、それは証券界としてはおそらく賛成できない問題ではないかと思います。  それから、第三番目に、今度の法律証券会社の内容をよくするためにいろいろ保全是正の命令が出されることになっております。まあ五十四条関係ではたとえば健全性の基準というようなことがございますけれども、その内容がどうもよくわからないために、いたずらに証券界では不安に思っている向きもあるわけでございます。それから、もともと証券会社の内容が健全になることは証券業者自身も決してこれは異論を申し上げることはないわけでございますけれども、ただ環境をよく見ていただきませんといけませんのは、証券会社ですから、たとえば証券引き受けをやった場合の金融であるとか、あるいは売買の過程でやはり資金は要るわけでございまして、そういう証券金融が円滑であるか円滑でないかということで、証券会社の財務状況は非常に違ってくると思うのでございます。一流の社債引き受けて残って持っておって、それが資金化できないとか、あるいは市場で非常に自由に売り買いできる株券があっても銀行の担保にかりにならないというようなことになりますと、それはその証券会社の経営には非常に大きな圧迫になるわけでございますので、ですから、証券会社企業内容をよくするということは、同時に少なくとも証券金融についてはもっと円滑に、また必要な資金は正常なルートで正常な金利で流れるようにしていただくことが同時に必要だろうと思います。  それから、今度の改正で、それに関連しまして、三つの準備金が規定されてございますが、利益準備金については商法の規定の特例を設けて銀行並みにたくさん積むようにということでございます。これはもう積めれば非常にけっこうでございます。そうなりたいと思ってはおりますが、そのほかの二つの準備金のうちに証券取引責任準備金というのがございますが、これは実は皆さま方の御配慮によって現在税法上では特別措置法によって損金処理を認められておりますから、問題ございません。もう一つ新しくつくられます売買損失準備金につきまして、これはやはり税法の上で損金処理を認めていただきませんと、せっかくの準備金も生きてこないと思うのでございます。むしろ欲を申し上げますならば、この法律は通していただきまして、むしろこの次の国会で売買損失準備金の損金処理を認められるというようなことが通ったときに実施していただきますと、非常にいいわけでございますが、そうまいらなくとも、少なくとも次の国会ではわれわれもお願いしたいと思っておりますけれども、売買損失準備金はぜひ損金処理を認めていただきたいと思うわけでございます。  第四点は、外務員についての問題でございます。この外務員は非常に広く、社員の外交もおりますし、いわゆる外交もおりますけれども、全体を通じて、外務員の質を向上したいということは、証券業者自身も常々考えている点でございまして、しかし、今度の条文はなかなかきびしい条件でございまして、まあしかし、証券事故といったようなものが非常にたくさんございまして、あるいはここにお集まりの皆さん方の中にもそういうような問題を訴えられた方も相当いらっしゃるのじゃないかと恐縮いたしますけれども、故そのものは実際は、外務員だけが悪くて起きるとか、あるいは外務員証券会社関係があいまいだから起きるというだけのものでは実はないのでございまして、一般の投資家にもかなり不注意なりあるいは十分行き届いた注意をされないために、事故が起きたり、あるいは起きたその事故の処理がうまくいかなかったりするケースが実はたくさんあるのでございまして、証券業協会とかあるいは証券取引所が実は連合いたしまして、ずっと前から毎月相当の金を使って事故防止について投資家に注意を喚起しておるわけでございまして、かりに過去一年間の数字を申し上げても、去年の一月から九月くらいまでは毎月新聞では二つないし三つ、あるいは四つ、九月くらいまでに八百万円くらいの金をそれに使っております。その後不況で、十月以降新聞のそういう広告は中止しておりますけれども、やはりそのほかには文書によって、ビラとかポスターとか、あるいは小冊子等によりまして、常々働きかけておるわけでございまして、年間で千四百万くらいそういうものを使っておるわけでございますけれども、実は投資家にも過失がないとはいえない場合もございますので、これは外務員のほうの関係をきびしくすると同時に、やはり証券の知識全体について何か国民の水準が上がるように今後しむけなければならないのではなかろうかと思うのでございます。  ここで思い起こしますのは、戦後、証券民主化運動というものが行なわれましたときに、これは一つの国民運動にまで展開したわけでございます。あの当時は、証券の本質、そういうものを国民によく理解をしていただくという運動でございまして、その場合に、国会の皆さま方からは、党派を超越した民主化議員連盟というのがございまして、非常なバックをいただきましたことを記憶しておるのでございまして、日本経済がここまできまして、大きな転換期といえば転換期に差し当たっているときに、証券の正しい知識をやはり持ってもらうということが必要じゃないか。そういうものと相まって外務員の問題も考えていく、その間における証券会社責任も考えていかなければならないのでございまして、少なくとも相手方に悪意ある場合はもちろんでございますが、やはり重大な過失のあるような場合も、すべて証券会社責任に帰せられるということは、おそらく業界の実情からいいまして、重過ぎる荷を負わされることになりはしないかと心配いたします。  それから、第五番目に、投資家の保護ということについてでございますけれども、証券の投資になりますと、公社債から株式まで、あるいはその間に投資信託がございまして、その投資信託の中にも、公社債の投資信託と株式の投資信託とそれぞれ性質は違います。違いますけれども、かりに株式投資と銀行預貯金と比べて考えた場合に、預金者保護ということと投資家保護との間には、私は根本的に相違があると思うのでございまして、預金の場合には、一万円預けて八千円になることはない。そのかわり一万二千円にも三千円にもなることはない。株式の場合には、一万円で買ったものが八千円にもなれば六千円にも五千円にもなる。そのかわり一万五千円にも二万円にもなる。そういうのが株式でございます。ですから、その値段をどうこう保護するわけにはまいらない。株式に投資される場合に、証券業者としては投資家に対して、投資家が投資をする判断をするに必要な資料を間違いなく提供する、正しい資料を提供する、そうして実際の売り買いをされる場合にその値段が公正に行なわれる、そういうところが投資家の保護の眠目であって、預金者保護との間にはどうしても相違があるわけでございます。それを、かりに投資家の保護と預金者の保護が一緒のような形で考えられて、これから行政が行なわれるとするならば、やはり直接投資と間接投資との、あるいは預貯金と株式投資、それに対するそれぞれの妙味というものがなくなってくる。やはり日本経済のような体制をとる国では、リスクを負っているやはりキャピタルが必要なんでございまして、そのために、株式投資を取り扱っているほうからいっても非常に問題が多いことは確かにございますけれども、どうかその辺で投資家の保護ということについてはひとつ広い立場でお考えになると同時に、株式投資の本質ということも同時に一般にわかるような形で指導していただきたいと思うのでございます。  申し上げたい点は以上の五点でございまして、要は、今回の法律の運用にあたりましては、証券市場の拡大強化の線に結びつくように運用していただきたいということを結びに申し上げまして、私の説明にかえさしていただきます。
  9. 西田信一

    委員長西田信一君) ありがとうございました。  次に、三森参考人にお願いいたします。
  10. 三森良二郎

    参考人三森良二郎君) ただいま御指名の三森でございます。本日は証券取引法の一部改正に関する法律案につき、若干私見を申し上げたいと存ずる次第でございます。  御承知のように、わが国の経済はいわゆる開放経済体制を迎えまして、企業自己資本の充実ということは一そう重要な命題となってまいりました。これがため、かねてから資本市場の育成が非常にやかましく叫ばれていて、広く国民大衆の参加がこれに期待されておった次第でございまするが、不幸にいたしまして、ここ二、三年来の株価下落によりまして、投資家の態度が消極的になりまして、株式の需給のバランスが破れまして、いわゆる過剰株式が存在するということがいわれて、流通市場はすっかり沈滞の状況を呈するような事態となった次第でございます。  この市場不振の原因についてはいろいろあるかと思いますが、私ども日本共同証券といたしましては、昨年一月設立以来、かかる株式の需給のアンバランスに対処いたしまして、いわゆる過剰株式市場から吸収することによって需給の均衡をはかり、市場が安定した形となることを当面の目標といたしまして、昨年の三月以来年末までに、総額千九百億円にのぼる株式買い取り、いささかてまえみそながら、市場の安定にお役に立ったかと存じておる次第でございます。一方、本年に入りましてから、日本証券保有組合設立によりまして、投資倍託、証券業者手持ちの株式千七百億円のたな上げも実施いたしました。また一面、供給の方面におきまして、いわゆる二月から増資の強力なる抑制が実施の段階に相なったような次第でございます。これらの措置は、いずれも需給のアンバランスを解消し、市場の安定をはかるために大きな効果があったかと存ずるのでございますが、しかしながら、これはあくまでも応急の措置にすぎないのでございまして、真に資本市場の育成強化をはかるためには、これらの措置と並行いたしまして、恒久的な証券対策の検討、実施がかねてから要望されておった次第でございます。  恒久対策といたしまして、もちろん企業の採算がよくなって、そうしていわゆる株式の実質価値が上がるということも、これはもちろん最も大切なことでありまするが、また、税制面におきましてもいろいな考慮を払われまして、株式が魅力ある商品となることも必要かと存ぜられます。現に、これは皆さま方の御審議によりましてすでに法律として実施されることとなりまして、将来これがまた大きな効果をあげることと存ずるのでございまするが、それに劣らず重要なことは、この証券業者のあり方を改善いたしまして、証券業者が大衆の信頼を回復、増進することが最も大切なことと存ずる次第でございます。  その意味におきまして、今度のこの改正法律案を見ますると、証券業者が一般の大衆投資家と接触し、投資の相談に応じまたは投資を勧誘する立場にある者の責任の重大さを非常に強調され、その地位の向上をはかっておられるとともに、投資家の保護という面を強調されているのでございまして、そのために証券会社の営業方針や経常態度を正しく持するということ、また同時に、企業経営上も安定していなければならない、すなわち、企業としてその財務内容が健全であって初めて大衆の信頼を得るということがいえるかと存ずるのでございまして、こうした点にかんがみまして、今度の改正案を見ますると、この業者の社会的地位の向上及び投資家の保護に資するという精神が十分にうかがわれるように存ぜられまして、これが実施によりまして私は今後証券界発展のために大きな効果があるのじゃなかろうかと思いまして、全幅的に賛意を表する次第でございます。  若干なおつけ加えて申し上げますならば、一番大きなことは今度免許制をとられたということでございます。もちろん、いままでの登録制のもとにおきましても、ある程度証券業者の体質を改善し投資家保護の実をあげ得るかと存ずるのでございまするが、しかしながら、登録制のもとにおきましては、いわゆる門戸開放主義と申しますか、一度登録を受け付けておいてその後の成績が悪ければ登録を取り消すというふうな行き方になっておりまして、これに対しまして免許制というものは、開業前に十分審査をして、そうして開業後も引き続き監督指導を加えていくという行き方でありまするが、そういうことで、いままでの登録制のもとにおいて見られましたような廃業とか登録取り消しが多くできるということは避けることができるかと考えられるのでありまして、こういうふうに廃業とか登録取り消しがありますと、何としても証券業者に対する世人の信頼感と申しますか、そうした点がとかくやはり十全にいかないということもあろうかと思いまするが、またそうした登録取り消し等の場合におきましては、ややもするとこの顧客に何らかの損害を与えることもあろうかと存じまするが、今度の免許制になりますると、こういうふうな弊害を除去し、証券業者に対するほんとうの信頼というものが強くなってまいろうかと存ずるのでございます。もちろん、今度の免許制によりますると、いわゆる入り口の障壁は高くなった、こういうことは言い得るかと存じまするが、十分半前審査によりまして、いろいろなそうした事故が少なくて済むことになります。また、今度法文にいろいろな指導上の根拠となりまする条文も入っておる次第でございます。こうした点におきまして、指導が一そう適切に行なわれるかと存ずる次第でございまして、もちろんこれが実施にあたりましては大蔵当局におかれまして十分実情に沿った指導が行なわれることと承知いたしまするが、こうした点もけっこうなことではないかと存ずる次第でございます。  それから次に、職能分離の問題でございます。今度は、免許する場合に職能別に免許の方式をとる、こういうことで、これはおそらくいままでの証券行政上において画期的なことではないかと考える次第でございまするが、この職能分離の問題は、先ほどからもいろいろお話もございましたし、古くからいろいろ議論もあったことでありまするが、現実の姿といたしますれば、久しい間併営のもとに進んでまいったような次第でございまして、いまこれを急にまた分離をするということもこれは実情に合わない、かえって取引の停滞を来たすということもあろうかと存ずるのでございます。しかしながら、この問題は今後も引き続き証券界をはじめ各方面において十分検討を進める必要があろうかと存じます。そうして情勢の進展に応じていかようにでもできるような、今日そうした体制を整えておかれることはけっこうだろうと存じます。また、当面といたしまして、いろいろ併営に伴う弊害というものも指摘されておるのでございまするが、今度の免許の方式によってこうした弊害が出ないような条件をつけることが可能ということも考えられる次第でございまして、こうした点もけっこうであろうかと考える次第でございます。  なおまた、外務員につきまして、先ほど来詳細説明がありましたので、私は詳細は省略させていただきますが、これもやはり、いわゆる証券界が信頼を増進する上におきましても、外務員のあり方につきましてやはり十分なる努力を証券界でしていただくことも必要であろうかと存じます。実施につきましてはいろいろ実情に沿った線が必要かと存じますが、こうした点につきましても、この法文のもとにおきまして業界のまた努力が望まれる次第でございます。  以上、ごく大ざっぱに私の所見を申し上げた次第でございます。もちろん、今度の法律の改正によりまして、いわゆる問題がすべて終わったのではございません。今後証券業協会のあり方とか、あるいは証券取引所のあり方につきまして、いろいろ御検討があるやに伺っております。そうしかところと並行いたしまして、ほんとう証券界が好ましい姿に発展していくことをこいねがうものでございます。また、今度の法律改正に関連いたしましても、単に法律改正をもって足れりとするものではございません。やはりこれには、その反面におきまして、証券界自身が真に自分の体質を改善いたしまして、そうして大衆の信頼を一そう増進することが必要かと存ずるのでありまして、現に着々そうした努力がいま行なわれておる次第でございまするが、なお一そう証券界みんながそうした努力を重ねまして、この法律の実施と相まって十全の効果をあげることを私どもとしては期待もし、また努力をしていかなければならぬかと存ずる次第でございます。  はなはだ簡単でございますが、以上をもって私の所見を終わります。
  11. 西田信一

    委員長西田信一君) ありがとうございました。  以上で、参考人の方の御意見は全部述べていただきました。  それでは、ただいまの参考人の御意見に対し御質疑がございましたならば、順次御発言願います。
  12. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 実は、衆議院の大蔵委員会でも、その道の権威の方に来ていただきまして、意見を伺っておるわけです。そこで、私は重複したりいろろなことは避けたいと思いますが、私はあまりよく知りませんですが、湊さんが、公社債引受協会の会長をやってみえる湊さんが、業界の方の中で資本市場対策特別委員会なるものをつくっております。そうしてその中でもいろいろと研究をしておるのだが、実は中間報告がもう間もなく出るのだ、こういうようなことをやっておみえになるのですが、たいへん失礼ですが、私はこの中にたとえば阿部さんなんかが入っておみえになるのじゃなかろうかと、これは私の想像なんです。間違っておりましたらごめんなさい。もし、こういうことをやっておみえになって、大体中間報告がいつごろ出そうだというようなことでありますれば、その点についていつごろ出るのか、その方向はどんなものであるかということをお聞かせ願えれば、非常にしあわせだと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  13. 阿部康二

    参考人阿部康二君) ただいまのお尋ねでございますけれども、衆議院のほうで湊さんが資本対策委員会のお話をなさったそうでございますが、それはたぶん、東京の日本証券経済研究所というのがございまして、そこが主催でいま資本市場の問題を研究している委員会がございますので、そのことをお話しになったのだと思います。それは委員長が高橋亀吉さんの委員会でございまして、そこの委員としてはきょう御出席のうちで小竹さんがメンバーでございます。それから、私自身はその会の幹事ということでやっておりまして、一番初めには、国民経済証券市場がどういう役割りを果たしておるのかということで、実は前に一ぺんプリントを出しまして、二回目も出しまして、いま最終の、今度は証券市場のあり方とかあるいは証券取引所とか証券業協会とかを含んで、またそれに証券市場のビジョンも出せるようなものをまとめたいということで、いまは若干の起草委員をあげましていままで議論されたものを整理しておる段階でございまして、いつまとまるかということになりますと、おそらくもう一月くらいはかかると申し上げたほうがいいと思いますし、それから、そこで出ました結論というものも、これはむしろ証券界の主張というよりも、証券市場がいろいろと御批判を受けており、その場合に、証券業者証券市場のことをあまり申し上げるとかえって誤解を受けるから、評論家であるとかあるいは学者であるとか、そういう方から証券市場の問題をひとつ十分検討していただいて、われわれがそれに基づいて行動できるようにしようじゃないかということがねらいでございまして、ただし、その場合でもあまり実情がおわかりにならなかったりなんかしては困るということで、証券界からも若干のメンバーを参加しておるということでございまして、ねらいは、学者、評論家が主体になりまして、それに一部の証券会社が参加して、いま最後のレポートを仕上げようとしておるという段階でございます。
  14. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 なるほど、三分の一が学者で、評論家が三分の一、そして業界の方が三分の一、そしてレポートを出す。実はこの法律案を大体この国会ということになれば、五月十九日が今国会の末期になっておるわけです。それまでに間に合えば非常に参考になるのではないかという立場から御質問を申し上げたわけですが、どうももう一月かかるということになれば、五月末かあるいは六月の初めかということになれば、間に合わないことになってしまうわけですが、しかし、この際重大な問題であり、先々の問題でいろいろな点で問題が出てまいると思いますから、何かその中でこの法律案のことに関連をして非常に食い違っているような方向で議論されて、そうして結論がそうなりそうなものがあるとするならば、ここでお聞かせ願えれば非常に私たちには有益な参考になると思うから申し上げているわけでございますが、小竹先生、どうでございましょうか。
  15. 小竹豊治

    参考人小竹豊治君) いまお尋ねの資本市場研究会で発表いたしました報告書は、第一回のものと第二回のものの二つは公表されております。もしお手元にそれが届いていないようでございましたら、私から研究所のほうに依頼しまして、また皆さま方のお手元に公表されている一回、二回のものについてはお届けできるかと思います。確かにこの法案の審議上参考になるものと私は信じております。現在はその第三回目の研究報告を、いま阿部さんがおっしゃったように起草中でございます。その内容は、証券業界の問題をいまやっているわけでございまして、これはやがてこの法案が通過いたしました後に、取引所及び証券業界についても政府のほうでは改善のための立法措置を講ずるやに承知いたしておりますが、その場合にいま起草中の第三のほうが密接な関係が出てくるわけでございます。現在のこの法律にはいまだ直接には関係がないといったほうがほんとうのように思います。
  16. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 小竹先生と阿部参考人にお聞きしたいのですが、免許制そのものが、今度免許制ということと職能分離ということとは、これは不可分にあるわけなんですね。しかし、法律では、片方は兼業をある程度認めてもいいということなんです。そこで、話を聞いていると、免許制はいいのだ、しかし、それがただ一つだけよりやっちゃいかぬというのでなく、兼業を認めた免許制になれば——結局免許制にして現状のような形のほうがいいのだというような、そういうようなふうに私はお聞きしたのですが、そうではなくて、ぴしっと四つに分けてしまってやるのがいいのか、その辺のところをもっと明確に御意見をお聞きしたいと思います。
  17. 阿部康二

    参考人阿部康二君) 先ほど私がちょっと申し上げたように、日本では前は免許制であった。今度また免許制に逆転するのだ。しかし、今度の免許制は業種別に分けた免許制をやるのだ、こう言っておりますけれども、いまそれを直ちに分けるということはむしろ危険じゃないかということを申し上げたのでございまして、それから、たとえばアンダーライターの仕事を考えました場合に、これはもうアンダーライターそのものがディーラーの仕事をしているわけでございます。また、アンダーライターディーラーのうちの仕事の末端のほうになりますと、セーリングの仕事もやっているかもしれないのでございます。それから、ブローカーディーラーの仕事、これはあとで小竹先生からたぶん明快な御説明があると思いますが、先ほど申し上げましたように、現在の証券会社はみなが両方やっているのだ。それで、今日非常に苦労しながらも日本経済発展にそれなりに寄与してきたのだ。ここでそれがもうどっちかに分けなくちゃならぬ。あるいは、政府の説明ではどっちかに分けろとは言っていないのでございますね。兼業は認める。しかし、その政府の説明の中で、ブローカーをやるに必要なディーラーの仕事は認める。しかし、ディーラーブローカーを兼ねることは必要だろうかどうだろうかという疑問を投げかけておりますけれども、われわれからいえば、自然発生的にそういう業務が分かれてそれぞれの専門家になるということには何も反対がございませんけれども、現状をこわしてそれを何か無理に分離させるというような形のものには反対だということをはっきり申し上げられると思います。
  18. 小竹豊治

    参考人小竹豊治君) 私からまたお答えいたします。  この法案を読みますると、免許の場合には四つに業種を分けて免許を与えるというふうに明確に規定されております。つまり、免許というのとその業種を分けるということとが結合しておるわけでございます。実際問題として、いま直ちにこういうふうに分けるということについては疑問に思うと、むしろそのほうが弊害が多いというふうに阿部さんはおっしゃっておりますが、私はそれは確かにそうだと思います。しかし、それはこの法案を見ましても、また伝えられる政府方面の考え方を承知している限りでは、直ちに四つに分けるということは考えていないようです。また、考えていないのが私は合理的だと思うのであります。つまり、政府としては行く行くはそういうふうにしたいと思うけれども、それで当分は兼業を認めている。ただ、その兼業を認めていくのは何年なのかという期間のことは、少しも政府方面からは現在までのところ伝え聞いておりません。だから、それは相当期間といたしますると、私は論理的には、また欧米の事例から考えまして、分化の方向に進むのが私は取引所の制度として進歩的な方向だと考えるのであります。委託者保護は、やはりそれに基礎を置かないとほんとう委託者保護は私はできないと思う。  ただ、私がいま申し上げておりまするのは、取引所取引についての委託売買自己計算売買分化もしくは分離でございます。これを行なうにいたしましても、先ほど申し上げましたように、日本の場合はそれを行なうだけの条件をいま欠いております。才取り人というのは、アメリカスペシャリスト、またロンドン株式取引所のジョッバーとも違うのであります。これはジョッバーもスペシャリストもともに自己計算取引を行ないながら、他のブローカー注文を仲介しておるわけでございます。で、私は、いま阿部さんがおっしゃったように、取引所外部取引、つまり引き受け業務であるとか、引き受けたものをまたこまかく売る分売業務であるとか、そういうものについては私は分離は不可能ではないか。アメリカイギリス方面の実情を見ましても、私は、そういうことについての分化を考えるのは、具体的な事実のつまりファクト・ファィンディングの調査が十分ではないのではないか、あるいは誤解してそういうふうに一部の人が考えているのではないか、こう思うのです。  たとえばイギリスの有名な証券引き受け業者であり、手形引き受け業者であり、同時にまた金銀の売買業者であるロス・チャイルド商会にいたしましても、イッシューイング・ハウス、つまり引き受け業者として取引所の会員としてブローカーでもあります。しかし、彼はブローカー業務をあまりやらないで、証券引き受けのみをむしろやっているわけです。たてまえとしてはブローカーを兼ねておりますが、実際上はブローカー業務はあまりやらない。取引所ブローカー業務はあまりやっていない。全然やっていないわけではありませんが、あまりやっていない。もっぱら証券引き受けをやっておる。また、アメリカのファーストーボストン・コーポレーション、ロックフェラーとかモルガン・スタンレー商会にいたしましても、アンダーライターであり、取引所ブローカーでもあり、同町にそれはアンダーライター引き受けの場合には、日本でいう幹事会社役割りを多く果たしております。しかし、それだけやっておりますかというと、必ずしもそうじやありませんで、みずから分売の業務をやることもありますし、また取引所に上場された証券ないしは非上場証券については、自己計算ディーラー業務もやっております。現にこれらのファースト・ボストン等は、ニューヨークの取引所株式注文を受け付けておるわけであります。でありますから、取引所外部業務につきましては兼業が行なわれ、あるいはまた兼業しながらも実際上はそのうちの一つだけしかやっていない、こういうふうな事業があるわけでございます。職能分化の問題は、取引所取引のことに当面限り、その方向で政府方面でも施策を進められるのが穏当ではないか、このように考えておるのであります。  アメリカのほうの事情につきまして、もし御参考になりますれば申し上げてよろしいのでございますが、ここにアメリカ証券学者でもって著名なデューイングという人の著書の中に、アメリカ実情をこういうふうに分けておる。参考に速記にとどめていただくために、それだけを申し上げておきます。つまり、一、選別買い取り人、これをオリジネーターと申しますが、燕巣いたしません。つまり証券発行を一手に買い取るだけでございます。第二は、その選別買い取り人であると同時に証券を分売する分売団、それに参加している分売業者、こういうもの、こういう種類で、これは兼業しているわけです。第三は、選別買い取り人兼引き受け人兼分売業者。四は、選別買い取り人兼引き受け人兼参加分売業者兼ディーラー。五は、参加分売業者、これは兼業しない。六は、引き受け人兼参加分売業者。七は、引き受け人兼参加分売業者兼ディーラー。これは非常に数が多いと書いております。八、参加分売業者兼ディーラー。これも数が多い。九は、ディーラーで、最も多い。これは兼業しない。十は、若干の選別買い取りを行なうディーラー。ただし、これはニューヨーク州のみであって少数である。十一は、若干の引き受けを行なうディーラー。十二は、ブローカー。これは兼業しない。デューイングの指摘するところによると、大体十二種類職能が分類できるわけです。しかし、最近では、こういう職能分化よりも証券別の分化が著しくなっている。たとえば鉄道株なら鉄道株だけ、公益事業社債なら公益事業社債だけ、それから外国証券なら外国証券だけの引き受けとか買い取りに従事する。そういうふうに株式なり社債の業種別の分化が最近とみに見られるのであって、職能分化は現在ではあまり重要な価値はなくなっておるというふうにこのデューイングは言っておるのでありますが、いずれにいたしましても、アメリカの場合は、あるものは一つの職能のみをやり、またあるものは幾つかの職能を兼ねている、こういうことが実情ではないかと思うのです。
  19. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 阿部さんにもう一つお尋ねいたしたいと思いますが、元引き受け会社になると、資本金の問題、それほど大きくせぬでもいいじゃないか、こういうお話なんですが、いろいろなことがいわれておりまして、併営するところは四、五十億なり、専業だと二十億くらいとか、いろいろなことをいわれておりますけれども、あなたとしてはこの辺の数字がいまの時点では妥当ではないかというようなことについて、何かお考えがございましょうか。
  20. 阿部康二

    参考人阿部康二君) それは私たちも、新聞等に伝えられているように、それは五十億とか二十億とかあるいは三億以上というようなことは聞いているわけですが、ただ、私が先ほども申し上げたように、引き受けという仕事をどう判断しているかということがすっきりしませんものですから、金額は私は申し上げなかったわけです。ただ、引き受け会社の場合に幹事会社になるような場合には、これは証券会社のほうで自分はりっぱだと思っても、その発行する会社はそれを信頼してくれなければそういう仕事は生まれないわけでございますから、発行会社がどういう形の証券を信頼するか。その場合にはおそらく、調査機能も十分持っているとか、あるいは引き受けると同時に日本では分配の仕事をやっておりますから、販売力を持っているとかいうことになるのであって、おのずからそこに資本金はきまるのじゃないか、こういうふうに思われるわけです。しかし、先ほどちょっと御紹介しましたように、証券界の中には、大きい証券も中小証券もみな一緒になって一生懸命苦労しているわけでございまして、それからいまのところ引き受けということになりますと社債のことだけ言っておりますが、先ほどちょっと話題にも——話題といいますか、小竹さんからの話もございましたけれども、将来株式発行の形態が変わって、あるいは額面発行でなく時価発行というようなことになりますと、株式についても引き受けという問題も起きてくると思います。それから、いままで市場性のなかった株を市場に消化するというような問題も株式についてあると思います。ですから、そういう場合に、ごくわずかの証券会社が幹事会社として参加したほうがいいのか、あるいはもう少し広い会社が入ったほうがいいのかということは、これは法律の今後の施行の上で十分御研究になる必要がある問題であって、単に資本金が幾らだからいいとか悪いとかいう問題ではなくて、実質面での検討をもう少し進められた上で資本金をきめられるほうがいいんじゃないか。ただ、現在最低で二億で引き受けをやっているような会社が、いままでの既得権を失うような意味の表現だけは最低この際はおやめになっていただきたいということは、繰り返して申し上げたいと思います。
  21. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ここには中小関係の方がどなたも来ておみえにならないわけで、たとえば東証の中で百五十からある中で、今度こうしたことになればそのうちの何割かの人たちがやめていくのではないかと、非常に心配をされているわけですが、いまお話承りますと、たとえばその資本金二億のところでも幹事団の中に入るというか、そういうような例はほとんどのところが全部入っておるといって差しつかえないでしょうか。実情は私たちはわかりませんですが。
  22. 阿部康二

    参考人阿部康二君) 私の申し上げたのがあるいは誤解を生んでいるかもしれませんが、日本では社債の元引き受けをやる会社のうちに二億の会社があるということを申し上げただけであって、引き受け団の幹事になる会社の中で二億の会社があるかということになりますと、発行会社が幹事会社として認めてくれるかどうかは非常に困難じゃないかと思います。
  23. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私一人だけ、時間もございませんですから。小竹先生から、いま阿部さんも触れられたようですけれども、時価発行額面発行の点でございますが、これは非常にたいへんな問題だと思いますけれども、こういうことに関して小竹先生は時価発行にすべきではないかという御意見に承ったわけですけれども、他の三人の方のこれに対する御見解はどうでしょうか。
  24. 阿部康二

    参考人阿部康二君) 特価発行の問題は証券界ではつい最近まではタブーみたいになっておりまして、日本株価というものが、やはり額面割り当て発行でそのプレミアムが株価に織り込まれておるために、非常に抵抗があったわけでございます。しかし、だんだんいろいろな経験を積んでまいりまして、必ずしもそれだけではないということになってきていると思います。ただ、この場合に、投資家段階でも証券会社段階でも、それから特に発行者の段階時価発行額面発行の差を十分吟味していただきませんと困ると思います。先ほど小竹教授が言われたように、時価発行でいった場合に、その発行された値段に対して幾らの配当金をするのか、その配当について投資家がそれならば買おうとかどうとかということを考えられればいいのであって、一部の発行者の中からは、額面五十円に対する配当だけで相当のプレミアムをつけて発行することもむしろ時価発行のねらいだと言われれば、それに対しては私たちは間違いではないかということを申し上げたい。あくまで発行された値段に対してどれだけの配当をしてくださるのか、投資家がそれで満足されるのかされないのかということがきめ手になるんじゃなかろうか。ただ、そういう時価発行をなさる場合は、今度は証券会社引き受け会社としてそこに参加しなければ円滑な発行ができない。そうしますと、引き受け証券会社としては、その値段で投資家ほんとうに買ってもらえるかどうかということについて判断しなくちゃならなくなりますから、あくまでも投資家が払われる対価に対して幾らの配当をしてもらえるか、それが安定性があるのかないのかということで判断されるだろうと思うのです。そういう形で時価発行が論じられるならば、投資家証券会社発行者の段階で、十分話し合いの上でそういう方向に持っていくことが可能だと思います。  ただ、何かどこかが一部だけがかってな自分の気持ちだけで時価発行問題を取り上げていけば、それは摩擦を起こすだけだろうと思います。
  25. 三森良二郎

    参考人三森良二郎君) ただいま阿部参考人からいろいろお話がございました。私は、将来のあるべき姿として考えれば、時価発行というものがよろしいんじゃないかと考えます。しかしながら、やはりこの株式を、何と申しましても、やはりこれを実際利用する人がなくちゃいけません。その点からいきますと、投資家がこれをどう考えるかという問題が一番重要な問題になってくると思います。現在のような状況におきまして、私はすぐにそこまでいくのははたして投資家の満足を得られるゆえんであるかどうかということについては、実は多大の疑問を持っております。十分いろいろなことを検討して、機が熟した場合にそちらにいく、こういうような方向にならざるを得ないのじゃなかろうかと、かように考えます。  また、欧米では、私詳しくは存じませんが、ちょっと聞いたところによりますと、やはり時価発行の場合でも株主にある程度報いるようないろいろな方法があるようにも聞いております。この辺も十分検討を要する問題ではなかろうかと思います。
  26. 正宗猪早夫

    参考人正宗猪早夫君) 私、ただいまの三森さんの御意見と全く同じ感じでございますので、この点に関しては繰り返しになりますので失礼いたします。ただいまの三森さんの御意見と同じでございます。
  27. 田畑金光

    ○田畑金光君 小竹教授にお尋ねしたいのですが、それは先ほど日本共同証券の三森社長のお話に関連いたしましてでありますが、先ほど三森社長のお話がありましたように、株式需給のバランスを確保するために、あるいは流通市場の沈滞をなくするために、昨年一月共同証券を設置されて過剰株式の凍結をはかられたわけです。さらにまた、本年に入りまして日本証券保有組合をつくられて、さらに多くの株式の凍結をはかられておるわけでありますが、まあかれこれ、先ほどのお話を承りましても、この二つの機関を入れますと、三千六百億円、約四千億円近くの株式の凍結をはかっておるわけですね。そこで、実は当時こういう掛買をやるのは、大蔵大臣なんかに質問して聞いておりますと、また一般の新聞等でもわれわれは読んだわけでありますがダウ千二百円をあくまでも堅持すると、また堅持しなければ、大衆の投資信託の解約が殺到して、場合によっては株式市場の中に金融恐慌的な現象も出るかもしれぬ、こういうようなことで以上二つの機関で株の凍結をはかられたわけですね。その後ことしになりまして、御承知のように公定歩合も二回にわたって二厘引き下げになっているわけです。公定歩合が引き下げになったということは、経済原則からいうと金融の緩和がなされたということと、また同時に、経済活動も活発になって、本来からいうと企業利潤も上がってくるというようなこと等が常識的に予測されるわけでございますが、しかし、さらにその後株は千二百円のダウ平均を割ったという、こういうような新しい情勢等も生まれてきているわけですね。こういうふうなことを見ますと、公定歩合の引き下げをしても株の持ち直しがない、かえって千二百円を割った、こういうふうな現象などは、一体これをどう解釈すればよろしいかという問題、これが第一の質問でございます。  第二に、お尋ねしたいのは、当然株式市場というものはいわば資本主義経済の一つの価格形式のバロメーターだと、こう思うのです。あくまで株式市場というのは価格形成の自由市場として初めて意味がある、こう思うのですね。ところが、いま申し上げたように、日銀の融資を通じ共同証券なり日本証券保有組合などをつくって価格の凍結をしておると申しますか、いわば一つの管理価格だと思うのです。支持価格制みたいのことになっているわけですね。こういうことは明らかに株式市場資本市場の本来の自由価格形成という点から見た場合に、全く異質のもののようにわれわれは見るわけでございますが、こういう現象というものは、一体これはどう見ればよろしいのか。これは三森社長からもひとつその辺の御説明をお願いしたいと思います。
  28. 小竹豊治

    参考人小竹豊治君) ただいまのお尋ねでございまするが、共同証券を中心といたしまして、過剰株と称されるもの約四千億円近くを市場から賢い上げたけれども、そして千二百円台の維持をはかったが、最近では台を維持できなくなった、こういう点についてどう思うかというのが第一点でございますが、私は、これはもし共同証券を中心にする買いささえがなかりせば、もっと早く千二百円台を割っただろう。急速に低落する勢いを防止したというところで、経済界の実態が今日ほどの重要ないろんな諸現象を含んでおるということは、当時は一般にはまだ理解されておりませんでしたので、あの共同証券をつくった銀行家が一番感受性が強かったのじゃないか。でありますから、銀行家の方面では先見性があったと私は思うのです。もしああいうことをしなかったならば、相当重大な事態が出たとも考えられるわけであります。でありまするから、そういう事態の発生をある程度相当防ぎ得たという点において、共同証券の功績は認めなければなりません。  しかし、それはあくまでもやはり第二問でお尋ねのように、人為的な価格維持でありまして、実態がもし悪く進行していく場合は、いかにしてもこれを維持できません。その問題は市場内部構造の中ですでに問題が出てきておったわけです。東京市場内部におきましても、こういうふうに千二百円で維持されていると、証券業者売買活動がそこにくぎづけされておりまして、いろいろな情勢に基づく株価形成がゆがめられるという意見も出ておりましたし、また東京のダウ平均に採用されておりません大阪市場のダウ平均は、東京のダウ平均よりももっと低下しております。だから、非常に不自然なものであったわけであります。今日、一部の銀行家の方面にも、証券業者の方面にも、千二百円台維持の役割りは終わったという見解がいつとはなく出てまいりまして、それがちょうど金利の引き下げということもありまして、一般にもう維持する必要はないじゃないか、ある点まで下がってもその下がり方はたいしたものではないではないかというような空気が出てきたことが、維持をすることを取りやめるようになった直接間接の要因ではないかと思います。しかし、これは私が門外漢として申すのでありまして、当事者である三森さんは何と考えておられるか。これはあるいは当然別の考え方をお持ちかもわかりませんが、やはり人為的な株価維持というものは、あれこれの政治的な、あるいはいろんな顧慮を含めましても、私は大勢不可能なもの、維持不可能なものだ、きびしい現実にぶつかって、そしてそのきびしい現実から科学的な政策を講ずることこそが政府のやはり施策でなければならない、企業家や銀行家や証券業者のやはり施策でなければならないと思います。これは私のただ希望的な意見でございまして、業者の方々は私のようにそう割り切ってはお考えになっていないだろうと私は想像いたします。
  29. 三森良二郎

    参考人三森良二郎君) ただいまお尋ねの点につきまして答弁いたします。  先ほど冒頭陳述においてもちょっと申し上げましたが、最近の市場の情勢からして、株式の需給関係が非常にアンバランスになっている、いま非常に過剰株が多くなった、こういう情勢でございます。この過剰株を吸収して需給のバランスがとれるようにならぬと、やっぱりほんとう市場の活動が十分に行なわれぬ、こういうことが共同証券がちょうどできたときの情勢でございました。われわれはこういう需給のバランスを回復していくということを本来の目的といたしまして出発いたした次第でございます。  ところが、その後になりまして、ことにこの秋口になりますと、いろいろな予期もしない内外の悪情勢がひんぱんに出現いたしてまいりました。さらにまた、金融引き締め情勢下において、年末になりますと、いわゆる換金売りというものも相当な額に達したような次第であります。こういうものに対しまして、これをもし放任いたしますると非常に市場に不安が生じまして、あまり好ましからぬ状況に相なるおそれも非常にあったのでございます。それに対処して、私どもとしましては、根本的にはいまの需給の調整ということを頭に置きながら、そのときどきの市場の不安を除去して、なるべく安定した姿にもっていきたいと、こういうふうな考え方からして、秋口にはひんぱんな買い出動をやったような次第でございます。  総額におきましては先ほど申し上げたような次第でございますが、そういうふうな巨額になるようなひんぱんな買い出動をいたしました。その結果といたしまして、いわゆる値幅の変動といいますか、価格の変動幅が非常に少なくなってまいりました。結果としまして千二百円台を割らなかった、こういうことに相なりまするけれども、千二百円台を、いまおっしゃったような維持することこそがそのものの目的であったわけではございません。結果として事実千二百円——また中には千二百円を割ることはたいへんなことになるという説もあったことは事実でございますが、私どもは千二百円自体を直接の目的としてやったわけじゃございません。そういうことで、とにかく市場の不安を除去しつつ買い入れを実施いたしました結果、千九百億円の吸い上げ、さらに本年になりまして保有組合が千七百億円の吸い上げ、合計いたしまして三千六百億円の吸い上げをやりました。そういたしますと、まあ過剰株が幾らあるかということについてはいろいろ議論があろうかと思いますが、大ざっぱに申し上げますと、過剰株というものは非常に減ってきた。需給のバランスが完全に達成できたかどうかは別といたしまして、まあそうしたアンバランスというものは非常に目立たなくなったということは少なくともいえるかと存ずる次第でございます。そこで、そういうふうな状況になりますると、市場の不安ということも非常に減少してくるだろうということでございます。  それから、本年になりましてから金融引き締めの解除がございまして、企業資金繰りも昨年とはだいぶ違った情勢になってまいっております。そういう点からいたしまして、そういう面からする不安とか、市場が不安におちいるということも非常に少なくなってまいりました。私はそういう意味からして、不安防止のために買い出動する必要が本年になってからはまずなくなったのではなかろうか、かように考えます。  したがいまして、その後相場は千二百円を割って千百幾らになっておりますが、これは企業の業績悪ということが出てまいりまして、こういうふうに下がったのでありまして、これをもちろんわれわれはいまどうするという気持ちはございませんが、当面相当の需給のアンバランスの解消はでき、それから市場の不安等が起こるような情勢でもございません。そのためにわれわれとしましては、さしあたりとしましては、市場の情勢を静観しておる、かような次第でございます。今後また情勢はどういうふうになるか知りませんが、当面としては、そういうふうなことになってまいる、かように考えております。
  30. 田畑金光

    ○田畑金光君 時間がございませんので、まとめてお尋ねいたしますが、大体それはわかりましたが、共同証券買い入れた株式ですね、これは日銀の融資バックにして凍結されたわけでありますが、これに対して将来どうされるのか。これはたとえば生命保険とかその他の機関投資家の取得した株ではなくて、あくまでも政策的なという意味に解してよろしいかどうか知りませんが、日銀の資金バックにして日本共同証券買い入れた株式というものは将来どうなるのか、これはどう処理されるのか、これが第一点。  第二点としてお尋ねしたいのは、これは先ほどのお話の中に、小竹教授でございましたか、ありましたが、小竹教授にもう一つお尋ねしたいことは、本年二月以降増資抑制ということで、株式市場での新規の資金調達としての株式発行というものは抑制されておりますね。押えられておりますね。これはまあ結局、資本の構成ということが非常に他人資本の割合が大きい、ますます大きくなってきている、そこで自己資本を調達をして、企業の体質改善を進めていくということが、当然これは増資ということになってくるし、またそういうふうなことによってこそ初めて金融正常化ということも、金融機関のオーバーローンという面も解消されると思うのです。そういう点から見ますと、いまの増資抑制というのは、ますます正常な資本市場証券市場を押えて、金融市場に、間接金融重点方式に移行するという形になってきているわけですね。この法律の目的というものは当然、証券市場育成強化資本市場の育成、こういうのがねらいになっているにもかかわらず、現実に政策としてとられているのは、資本市場の育成じゃなくして、抑制をするという形になっているわけですが、この辺の矛盾というものは一体どのように見るべきであるか。この点ひとつ教授の御見解を承っておきたい、これが一つですね。  それから、もう一つ、小竹教授にお尋ねしたいことは、先ほど教授のお話の中に、公社債市場の整備確立ということを強く取り上げておられましたが、その中に、公社償発行条件の弾力化ないし適正化、こういう問題等にも触れられておるわけであります。しかし、公社債市場の育成強化というのは、その他いろいろな面があるのではなかろうか、こう考えておりますが、この公社債市場育成のためには、どういう条件がいまとられるべきであるか、今後とられるべきであるか、こういう点についてひとつもっと触れていただけばありがたいと、こう考えております。  それから、最後に、私は阿部さんにお尋ねしたいわけでございますが、この外務員制度に関連して、御説明の中に、外務員制度そのものだけの面、あるいは外務員証券会社との結びつきの面だけ取り上げても、この証券事故をなくするということはむずかしかろう、こういうようなお話がありましたが、そうだと思います。ただ、われわれとしては非常にこういう問題についてしろうとで、わかりませんが、特に先ほどお話の顧客の面についての責任と申しますか、過失というか、重過失というか、こういう問題等についても触れておられましたが、そういう事例等をこの際実際家としての立場で御説明願えればありがたいと思います。  以上です。
  31. 三森良二郎

    参考人三森良二郎君) ただいまお尋ねがございました、私どもの買い入れました株式をどういうふうに処分するか、こういうような問題でございますが、これにつきましては、いろいろ世上にも御意見がございまして、適当なときにひとつこの株式を全部処分いたして解散したらよろしいとか、あるいはまた、日本の現状におきましては機関投資家が少ないから、将来やはり機関投資家としてひとつずっと続けていったらどうか、こういう御意見も世上にあるようでございます。ただ、私どもといたしましては、この会社の設立の目的は、市場が安定して、それがひいて資本市場の育成につながっていくというのがねらいでございます。  ところが、現状を見ますると、まだまだ、いまの過剰株の吸い上げによりまして落ちつきは呈しておりますけれども、まだ市場がノーマルな情勢になったということとはだいぶほど遠いように考えている次第でございます。こういう情勢下で、はたして、いつどういうふうに処分するかということをいまここで申し上げることは、ちょっと時期尚早で、私自身としましても、はっきりした自信を持っていないのであります。そうした状況が来ました場合に考えたいと思っておりますけれども、目下のところはそういう状況だということを御了承願いたい。  問題は、やはり市場の安定を維持するということが一番大事でございます。それに逆行することはできないというのがわれわれの考えでございます。その点は、株主各位並びに有志の方々の皆さまの御了解を願っておる、かように思っております。
  32. 小竹豊治

    参考人小竹豊治君) 現在のような増資抑制を続けていくことは、直接投資を助成する方針と矛盾するのではないかというお尋ねと了解いたします。確かにさようでございます。しかし、もしここに公社債市場という自由な市場がありました場合、株価が低落するような状況のときは、株式から社債への移動が起こります。社債を買ったほうが比較的に元本が安全でございます。利回りは低くても、元本の保全のために株式から社債に移行が起こるわけでございます。そういたしますと、市場の原理で、自動的に増資ができなくなるわけでございます、株式の売りが多くなって社債買いが多くなれば。ところが、日本のような場合は、公社債市場が実際上存在いたしませんので、そういう株式から社債への移行が起こり得ないわけです。いたずらに換金を急ぐ法人筋、あるいは個人名義で持っている中小企業の経営者等が、換金売り急ぎのためにこれを投げ出す。一般の投資家は、今度の暴落の場合でもそれほど私は出動しておらないと思うのです。でありまするから、確かに表面上、現象形態といたしましては直接投資を抑制するようなことになっておりますけれども、しかし、自由な公社債市場と自由な株式市場がありましたならば、これは当然起こる結果であって、投資が抑制されざるを得なくなるわけでございます。  ただ、この矛盾の解消のために、最近増資再開の空気が出てきておるようでございます。つまり、証券界でつくりました、株価百五十円以上の場合は増資を自由にする、その他、資本金の利益率とか何かを考慮いたしましてそうするという案に対しましては、産業界ではこれに相当強く反対しておるわけでございます。現在の株価は公正に企業の実態を反映しておらないから、百五十円を基準として云々するということは不適当だという意見のようであります。しかし、私は、今日のような資本主義社会では、市場経済というものが、個人の意向や個別的な意向にかかわらず、市場がやはり市場の評価をいたすのでありまして、ただ、百五十円が適当であるか適当でないかという議論は二次的、三次的な議論でございまして、株価というふうに企業の評価が下されたものに対しては、やはりこれを承認せざるを得ません。個々の企業としては安くなるということはたまらないことかもしれませんが、しかし、もし最近における粉飾決算のようなものが日本企業という企業ことごとく悪い慣行として支配的なものであるとするならば、私は現在のダウ平均というのはまだ高いと思うくらいです。その企業の実態を粉飾しない決算の状態で全部公表をしたならば、もっと下がるのが合理的だ。だから、百五十円が高いとか安いかというのは、一企業者の経営的な恣意的な感覚から来るものでありまして、株価というものに対しては、きょうの上がったのはどういうわけかとか、そういうような短期的な株価についての判断はともかく、半年もしくは一年間にわたって百五十円を維持したというようなことの事実に対しては、私は誠実に頭を下げなければならないと思う。自分企業の実態を反映していないというようなごときは、私はうぬぼれもはなはだしいと思う。そういう日本企業経営者の考えが今日の事態を起こしておるのだ。責めらるべきものは株価でなくて企業経営者だ、こういうふうに私は考えます。少し言が過ぎましたが……。  第二点の、公社債市場の育成でございますけれども、これはやはり現在のところ、いろいろ社債発行条件を引き上げるのにつきましては議論があるようでございます。しかし、公社債市場の育成というのは、金融正常化の私は突破口だと思うのです。これさえもできない政府なり金融業者なりが、なぜに一般の人々に対して金融正常化なんかということを言うのですか。それは私はよくないと思うのです。だから、金融正常化ほんとうにはかろうとするならば、この段階でどうして公社債発行条件の〇・四%の引き上げがされないのか。  それについて、なるほど大銀行家のうちには、引き上げられますと貸し出し歩合よりもいい、不合理であるから、貸し出しの面からいって、貸し出し重点主義からいくと、社債がどんどん出ることは困るでしょう。また、預金がそっちに流れては困るということになりましょう。あるいはまた、債券発行銀行でもって債券を発行している。そうすると、公社債発行条件を引き上げれば、金融債の利子率も上げなければならぬ。むしろいまのままで、一割近い、あるいは一側をオーバーする貸し出しをしておったほうが得だ、社債条件を上げていま社債が売れるようになることはあまり好ましくないという一部の見解もあるかもしれません。これは私が想定するだけで、実際そうであるかどうかは私はわかりませんけれども。  政府方面でも、政府の国債や短期債券の利子率にも影響する。そうすると、現在公社債の年度の発行総額のうちだんだん政府保証債が多くなっておりまして、民間債はだんだん政府保証債に食われてきている。それほど財政投融資膨張している。しかし、財政投融資をそういうふうに膨張させて、政府保証債を財源として政府の施策を遂行しなければならない。しかし、なるべく経費の安い方法でやったほうがいいという考え方からしますと、いま社債発行条件を引き上げることは、政府保証債の利子率を上げなければなりませんから、それは政府方面としては困るかもしれません。  しかし、そういうふうに個々の利害を別々にお互いに主張しているのでは、国民経済見地からする政策というものは打ち出すのがいつになるかということになってしまう。政治家なり政府なりというものは、個々の利害にとらわれないで、国民経済的な見地から、これが金融正常化の突破口だと、こう考えたら、それは勇敢に実行するのが私は政治だと思う。したがいまして、現在いわれているように、〇・四%くらい上げるべきではないか。現に日本銀行総裁もそういう意向のようでありますし、新聞にあらわれている限りでは、大蔵大臣もそのことを現実に考えられているようであります。おそらく大蔵省方面でもやはりそういう考えがおありと思います。ただ、いかにしてその摩擦を少なくするか、そういう技術問題だけが残っているのではないか、こういうふうに思います。
  33. 阿部康二

    参考人阿部康二君) 先ほど田畑先生のお尋ねの問題でございます証券事故の問題につきましては、たいへん残念でございますが、非常にケースはたくさんございまして、またその原因等につきましても多種多様でございますが、ただ私が申し上げたいことは、外務員が初めから悪意があるとか、証券会社が初めから悪意があるのではなくて、投資家にもう少し協力していただくならば、事故にならない点、事故があってもそれは早期に解決して損失は非常に少ない、あるいは損失は免れるのじゃないかというケースがあるということを申し上げたわけでございます。  それを何か実例を示せというお話でございますから、何か私の知っている実例を申し上げますと、いまの証券会社の営業マンというのは実は非常によく働いております。しかし、朝九時なら九時から夕方五時までということでなくて、投資家が家へ帰られたような夜おたずねするとか、あるいは日曜におたずねするというようなそういうような場合、投資家証券会社というのは信頼関係がございますから、たまたま前にすすめられて買った株が上がっているような場合には、投資家は全面的にその営業マンを信頼してしまう。そうしますと、夜分でもなんでも伺ったときに、ここにボーナスの残りが二十万あるからこれを持っていって、何かいいものあったら買ってくださいというようなことを言われるようなケースもあるわけでございます。そういう場合に、証券会社の扱いとしては、正規の預かり証を出さなければお客さんから金を預かってはいかぬということがありましても、せっかく行ってせっかく出されたものを、それはきょうは受け取れませぬということでいかないで、受け取って帰ってくる。途中で金を落としてしまう。それからどこかの会合に行って、酒でも入れば、人間ですから、預かった金を自分で使う、それがもとになって、知らず知らずそういう事故に入ってしまうケースもあるわけでございましょう。  そういう点について、証券界としては業者の内部を押えると同時に、投資家に御協力をいただくために、先ほどちょっと申し上げましたけれども、私は去年の一月から九月までに新聞広告をしなかったと申し上げたのは誤りのようでございまして、たとえばここに朝日新聞の一昨年の十月三十日の紙上にこういう広告をいたしているわけでございまして、これは証券業協会取引所の連名で出しております。その中に、商いがありましたときには売買報告書というものをお送りしているのですから、それがもし届かなかったり内容がおかしかったりするときには、すぐ証券会社のほうに御連絡ください、こういうことを出している。それから、お金を預かったようなケースについては、これも実際のこれは日本経済に出た実例でございますけれども、これにも、証券会社に預けたら必ず会社発行の預かり証を受け取って、銘柄とか数量とか、その記載に誤りがないかどうか確めること、名刺に書いたメモ、そういうものは認められませんから、御注意いただきたいというようなことを、これも何べんも広告を出しているわけです。それから、そのほかに、証券の投資につきましては、これはやはり御自分責任でやっていただくのですというような広告を出しておりますが、実はこういう広告をたくさん出しておっても、わりあいにそれが重要視されない面がありまして、そのためにやむを得ず事故に入ってしまうというケースも多いのでございます。  ですから、やはり高度成長下におきますと、何でも株を買えばもうかるというようなところで、証券会社だけが安易なわけじゃなくて、みんなで、やはり少し気がゆるみますと、何でも買えばもうかるとか、来たから預けてもいいんだ、あるいは商いをしてもあとはどうなってもいいんだというようなケースも少なくないのでございます。ですから、事故になったのは申しわけございませんけれども、未然に防ぐという段階におきましては、やはり証券投資というものはどういうものだと、投資家御自身にも御協力をいただくことが必要じゃないか、こういうことを申し上げたかったのでございますが、そのほか先ほど来問題になりましたように、かりに証券会社としても投資家の場合を考えます場合に、会社発行されるようなレポートを非常に重要視されておる。それがもし間違いだという場合にもトラブルはあると思いますが、それは別な問題ですから……。直接営業マンが投資家に接触して、それが事故になっていくというような場合においては、むしろお互いに注意し合っていけば、その事故はもっともっと防げるんだということを私はここで申し上げたかったのでございます。
  34. 西田信一

    委員長西田信一君) 他に御発言もないようですから、参考人の御意見に対する質疑はこれをもって終ります。  参考人各位にごあいさつ申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらず貴重な時間をおさきいただき、本委員会のために参考人として御出席をくださいまして、長時間にわたり御意見を述べていただくとともに、委員の質疑にもお答えいただきましたことを、深く感謝申し上げます。お述べいただきました御意見は、今後委員会審査参考にいたしたいと存じます。まことにありがとうございました。  それでは、午前はこの経度にし、午後二時より再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後一時三分休憩〔休憩後開会に至らなかった〕      —————・—————