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1965-03-23 第48回国会 参議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十三日(火曜日)    午前十時二十三分開会     —————————————    委員の異動  三月二十三日     辞任         補欠選任      中尾 辰義君     鈴木 一弘君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西田 信一君     理 事                 佐野  廣君                 西川甚五郎君                 成瀬 幡治君                 田畑 金光君     委 員                 大竹平八郎君                 太田 正孝君                 岡崎 真一君                 津島 壽一君                 林屋亀次郎君                 日高 広為君                 堀  末治君                 村松 久義君                 木村禧八郎君                 野溝  勝君                 鈴木 一弘君                 鈴木 市藏君    政府委員        大蔵政務次官   鍋島 直紹君        大蔵大臣官房財        務調査官     吉国 二郎君        大蔵省関税局長  佐々木庸一君        大蔵省理財局長  佐竹  浩君        大蔵省国際金融        局長       渡邊  誠君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        大蔵省理財局国        庫課長      原  秀三君    参考人        大阪大学教授   木下 和夫君        三菱化成工業株        式会社取締役社        長        篠島 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○所得税法案内閣送付予備審査) ○法人税法案内閣送付予備審査) ○租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  送付予備審査) ○地方自治法第百五十六条第六項の規定基づ  き、税務署の設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出、衆議院送付) ○相続税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○物品税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○国立学校特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○国際復興開発銀行等からの外資の受入に関する  特別措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一  部を改正する法律案内閣送付予備審査) ○財政法の一部を改正する法律案内閣送付、予  備審査) ○交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣送付予備審査) ○石油ガス税法案内閣送付予備審査) ○関税定率法等の一部を改正する法律案内閣送  付、予備審査)     —————————————
  2. 西田信一

    委員長西田信一君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  所得税法案法人税法案租税特別措置法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、これら三案の審査のため、大阪大学教授木下和夫君、三菱化成工業株式会社取締役社長篠島秀雄君のお二人に参考人として御出席をいただいております。  この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところ、本委員会のために参考人として御出席をいただきまして、厚くお礼を申し上げます。本委員会昭和四十年度税制改正各般につきまして審査を進めておりますが、ただいま議題といたしました三法案につきまして参考人の御両人から御意見を承りますることは、委員会審査に多大の参考となることと存ずる次第でございます。参考人におかれましては忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願い申し上げます。  なお、議事順序につきまして申し上げます。まず木下参考人から、次いで篠島参考人から、それぞれ三十分程度意見をお述べいただき、しかる後委員から御質疑を申し上げるという順序で、議事を進めてまいります。  それでは、まず木下参考人から御意見をお述べ願います。
  3. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 木下でございます。所得税法案法人税法案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の三案に限定いたしまして、参考人としての意見を申し上げます。  改正案を検討いたしましたところ、いずれも平年度計算によりますと、三法関係減税額は、なるほど税制調査会答申を四百億円上回る金額であります。ただ、その内容を検討してみますと、第一に、所得税につきましては、税調答申減税額より約百億円縮小後退しております。法人税では、税調答申減税額より約三十五億円増の三百十四億円を減税することになっておりますし、第三に、租税特別措置関係では、増収額を四十八億円にとどめ、税調案よりも約四百七十億円少なくなっておるのであります。これは結論的に申し上げますと、確かに減税額増加ではありますが、一部の納税者のための減税ではあっても、決して多数の国民租税負担軽減意味するものではないと考えます。  そこで、現在のわが国経済の実態あるいは今後の経済情勢に関する判断基礎にして申しますと、個々租税において減税を含みますところの調整を行なう必要性は、これを十分に認めます。しかし、国税体系全面にわたって減税の必要があるとは私は考えません。  それでは、個々税目における減税を含むところの調整あるいは改善のおもな内容は何かということになりますと、私の考えでは、まず第一に、所得税における中小所得層、特に給与所得者負担軽減が必要であると思います。第二には、国内国外経済情勢に応ずる弾力的な法人税制度の運用が必要であります。第三に、租税特別措置の実際の効果あるいは有効性を的確にとらえた上で、これをでき得る限り整理縮小すること、この三点であります。したがって、順を追ってこれから私見を述べさせていただきます。  まず、所得税について申し上げます。  所得税は、ほかのいかなる税に比べましても、納税者担税能力租税負担能力に最もよく即応する、しかも課税上の公平の原則に最もよく適合する租税であります。この意味で、所得税租税体系全体の中心に置かるべきことは租税理論の上からもほとんど異論はないところであります。しかも、こういう考え方から、通常多くの国々で所得税における累進課税方式が採用されておるわけでありますが、わが国の場合所得税における現行累進率の全面的な改定の必要はないといたしましても、年所得三百万円以下の所得階層負担割り高となっております。したがって、この点の是正をいたしますために、税率そのもの改定することによって中堅所得層負担軽減が必要であると考えます。ところが、改正案ではその措置は全く講ぜられておりません。  次に、課税対象になる所得というものは、どのような源泉から得られようとも、本来無差別的に取り扱われるべきでありますが、一つには税務行政上の困難さというものと、第二にはわが国における納税道徳というものの低さのために、給与所得課税が相対的に過重になっております。したがって、今後は的確な課税所得把握ということに努力することが本筋ではありますけれども、しかし、現実論としては、給与事業その他の所得把握のしかたのアンバランスを是正するために、給与所得課税軽減すべく給与所得控除拡大を行なうべきであります。なるほど改正案では、定額控除三万円、控除後の五十万円まで二〇%、控除限度額十五万円への引き下げ程度で済ましておりますが、これは不十分だと考えます。  さらに基礎控除配偶者控除扶養控除という三控除及び専従者控除等の増額は、大体税制調査会答申どおりでありますが、改正案による標準世帯課税最低限は、初年度五十四万四千円、平年度に直しまして約五十六万円となります。これはまだ低きに過ぎると考えます。なぜなら、税制調査会に提出されました国立栄養研究所献立というものが課税最低限一つの水準として考えられてきておるわけでありますが、この計算はまだ試算の域を出ておりません。その上に、私どもの生活の実感から見て、この研究所献立内容が貧弱に過ぎるという点については、多数の人々が認めるところであろうと思います。正当に評価されました基準生計費は、おそらくこの計算よりもはるかに高くなるはずでありまして、本来、課税最低限がこの基準生計費に食い込むべきではないと考えます。こういう考え方をもとにして申しますと、課税最低限年所得七十万円程度、月収六万円程度とすべきであります。もし課税最低限のこのような引き上げによって財政事情が許さない、財源が不足するという議論が出ますならば、ほかの税目による、あるいは特別措置整理による増収の道を講ずることができます。  また、所得税関係では、所得税法の書きかえによる平明化を行なっております。確かに、税法の理解が一般納税者にとってきわめてむずかしい表現と繁雑さのために、平明化を必要とすることは申すまでもありませんが、それとともに、またそれに劣らず重要な問題点は、所得税制度の全体にわたって簡素化を行なうことであると思います。その一例をあげますと、たとえば扶養控除に関する年齢の差別を撤廃すべきであろうと思います。また、個人の事業所得計算における非常な繁雑さを、一般納税者にもわかりやすいような形に簡素化すべきであります。さらに、例をあげますれば、現行所得税法によって一五%ないし二〇%程度以下の税率が適用される課税所得層というものに対しては課税を廃止する、言いかえれば、この近傍の税率を適用される所得層に対する課税が行なわれることによって税務行政上の効率がはなはだ害されるという点を考慮いたしますと、これも簡素化して、たとえば税率は二〇%以上の税率とする、こういう措置が講ぜられるべきであると考えます。  第二に、法人税について申し上げます。  改正案における普通法人留保分に対する税率引き下げその他の税率引き下げが行なわれておりますが、これは大体税制調査会答申の線に沿っているように見受けられます。で、私の考えでは、法人税法人利潤あるいは法人所得に対する課税であります限り、原則的には一律の税率、専門的にいえば比例税率であってもよいと考えております。もちろん、課税所得三百万円に満たないような法人につきましては、中小企業育成の必要を認められますならば、例外的に現行税率より低い率に改正しても妨げないと思います。現在の法人税は、一般税率において諸外国より決して高いとはいえませんけれども、この際、税率引き下げを行なうことについては、私の考えでは一がいに反対はいたしません。これは、法人利潤に対する課税がどのような転嫁ないし帰着などの面に作用するかということの分析を基礎にして議論をしておるわけでありますが、必ずしも法人税率引き下げ資本所有者のみに利益を与えるという考え方は私はとらないのであります。したがって、税率引き下げを行なうことに一がいに反対しないと申し上げたわけであります。ただし、企業対質改善が急務であるということを口実にして、世論一般税率引き下げることを主張する向きがありますけれども、このことは必ずしも正しくはないと思います。  企業体質改善ということの中で、さまざまの意味を含ませて考えることができますが、特に企業内部留保増加ということが最も大きな問題であると思います。実際に企業内部留保増大の必要があります場合、改正案に出ておりますように、配当分については税率を変更せず留保分税率軽減を行なうことが一つ方法ではありますが、しかし、その引き下げによる恩恵はどの企業にでも与えるというのではなくて、実際に内部留保をふやした法人にのみ限定して、条件をつけてこの恩恵を与えるべきであると思います。  で、内部留保の大部分を占めておるものは減価償却引き当て金であります。この減価償却引き当て金を増すことが内部留保増加に役立つわけであります。現在の法人税制度におきましては、耐用年数改定をはじめ、法人税における減価償却のワクは最近大幅に拡大されてきております。特殊の資産を除いて、償却措置については現状で大体満足すべき状態に近いと私は考えます。ところが、事実は、それにもかかわらず、内部留保があまり充実する形跡が見えませんのは、企業利益を計上せんがために法定償却をフルに行なっていないことに基因するのでありまして、税制のせいではなく、むしろ企業の態度に問題があると思います。  ただ、しかし、法人税の問題は、まだ基本的な再検討の余地が多分に残されていると思いますし、私の考えでは、将来はいわゆるグロスアップ方式法人段階での源泉課税方式と通常いわれておる方式に移るべきであろうと考えております。  第三に、租税特別措置関係について申し上げます。  租税特別措置は、特定経済政策上の目的税制を通じて実現するためで、一般税法規定特例として設けられたものでありまして、あくまで臨時的措置あるいは時限的措置の域をこえるものではありません、また、これが既得権となることを防止する必要があります。で、もし現行特別措置の中で臨時的ではなく恒久的な措置とすべきであるという判断ができますならば、当然これは税の本法の中に規定すべきであります。  そこで、今回の改正案中心にいたしまして租税特別措置関係の問題に移りますと、わが国経済において輸出振興重要性はいまさら論ずるまでもございません。したがって、この点を強調いたしますれば、現行輸出特別償却輸出に対する割り増し償却及び所得基準による輸出所得控除額特例等措置の存続あるいは拡大は、当分の間必要であると考えます。しかし、新規重要物産免税、あるいは重要外国技術使用料に対する特別税率等は、先ほどの例に比べますとその有効性が、その効力が薄いと考えられますので、違約損失補償準備金証券取引責任準備金等損金算入制度とともに、早急にこれらを廃止すべきであると考えます。とりわけて特別措置の中で米穀所得課税——米の供出の所得でありますが、米穀所得課税特例及び社会保険診療報酬課税特例等の廃止は、直ちに実施すべきであろうと考えます。また、租税特別措置関係で、法人税に関連いたしまして、交際費損金算入率引き上げました。この措置は望ましい、けっこうな措置であると考えます。御承知のように、昭和三十八年度の実績では、わが国における全法人企業交際費支出は実に四千五百二十億円に達しておるにもかかわらず、そのうちわずかに三百九十一億円しか課税対象となっていないという事実、この事実は、すでに問題が税務会計上の当然の費用である、あるいはそうではないという議論をも逸脱してしまって、一つの重要な社会問題とさえなっていると考えます。私の考えでは、改正案より大幅の不算入率引き上げを行なうことが当然であると思います。  次に、特別措置所得税に関する部分についてでありますが、利子及び配当所得への優遇措置は、改正案を見ますと、依然として継続、拡大されております。なるほど源泉徴収率は一〇%へ引き上げられました。しかし、これは昭和三十八年度の線に戻っただけでありまして、特に配当所得源泉選択制度を採用したことには、全く失望せざるを得ません。一銘柄五十万円以上は分離課税を認めないという案でありますけれども、これは容易に適用からのがれる方法がくふうされるでありましょう。配当所得利子所得との課税上の不均衡を是正するということが改正案一つ目的であったろうと憶測をいたしますが、もしそうであるならば、むしろ利子所得優遇をやめるべきであります。また、株式市場の沈滞を救い企業増資促進の道を開くことが配当所得に対する優遇目的であったと考えましても、株式市場は本来先見性を持っておりますが、今日この改正案が発表されてかなりの日数がたつにもかかわらず、なお株式市場は低迷を続けているということは、実際上の効果が不確定であることを示す材料であります。しかも、利子配当所得に対する優遇措置というものが、ここ数年来常に貯蓄増強のためという、いわばにしきの御旗を掲げておりますが、はたしてこの措置貯蓄増強にどれだけ貢献したかという、実証的な資料というものはあいまいであります。したがって、この際、おもな諸外国並み総合課税主義を徹底化すべきであると考えます。これによる増収額は、中小所得層所得課税軽減先ほど提案をいたしました課税最低限引き上げ給与所得階層減税というものに基づ減収額を、税収の減収額をはるかに上回る増収をもたらすことは間違いありません。  で、参考までに申しますが、租税特別措置法関係の現在までの特別措置整理合理化による増収額は、昭和三十一年以降を通算し、かつ昭和三十八年度予算を基準として換算いたしますと、約二千二百億に達します。したがって、現存の特別措置による昭和三十八年の減収額千九百九十八億円を合わせて考えますと、昭和三十一年度以降の特別措置整理合理化が行なわれなかったと仮定した場合の減収額は、四千二百億に達しておりますので、これはみすみすこの税を徴収せずに置いておいたという、一応のめどになる数字であります。要するに、税制の基本は、私の考えでは公平の原則に求めるべきであって、税務行政上の困難はあらゆる方法を講じて克服しなければなりません。いわゆる政策減税ということばであらわされますところの、特定経済政策の遂行のためやむを得ず公平の原則の例外をつくります場合には、すなわち特別措置がそれでありますが、その場合には、その効果が確実に実際に証明され、かつ世論を説得するだけの政策でなければなりません。それ以外の優遇措置特定所得に与えるということは、せっかシャウプ勧告以後近代的な租税体系になりつつあるわが国税制を破壊する以外の何ものでもなく、また、特に心配されるのは納税者納税道徳の低下を招くことであります。  以上で意見の開陳を終わります。
  4. 西田信一

    委員長西田信一君) ありがとうございました。  それでは、次に、篠島参考人にお願いいたします。
  5. 篠島秀雄

    参考人篠島秀雄君) 篠島でございます。  引き続きまして、私から簡単に述べさしていただきます。  ただいま木下先生から御意見がございました中で、所得税に関しましては特に申し上げることはございませんが、低額所得者に対する今度の所得税改正は、大体控除額の操作によって減税を意図されておりますけれども、税率に関しての処置がない。私も、低所得者に対する所得税に関しましては、税率引き下げるというようなことを考えていくことがいいのではないかということを、所得税に関しては申し上げたいと思います。  次に、いわゆる企業減税法人税関係、これに関しましては、木下先生と多少違うわけでありまするが、大体私の考えは、これは間違っているかどうか知りませんが、根本は、やはりいまの日本経済をささえているもの、これは近代国家としていわゆる法人企業というものが、その主である。大体勤労者、いわゆる給与所得者全体の六〇%程度になっておるのではないかと思います。したがいまして、法人企業というものがしっかりして日本経済というものをささえていきませんと、勤労者に対する給与も上がっていきませんし、もちろん税金の源泉にも支障を来たすというようなことがございまして、申すまでもありませんけれども、結局、何といいますか、企業が衰退していっては……。国全体の経済政策の一環としての法人税税体制というものが考えられるべきである。近ごろ企業では非常に、何と申しますか、利益率が減ってきているという現象が顕著にあらわれております。われわれ企業家の立場といたしましては、欧米の国民の物的な生活レベルよりは確かに低い、それには近い将来追いつき、追い越すという国民的な資質、勤勉度その他を考えましても、そういうことが可能であるし、そうせにゃいかぬ。そういたしますと、この企業というものに対する税制というものをやはりいろいろ考えていただかないといかぬ。  結局、国際競争力を強化するためには、やはり企業といたしましては常に合理化投資をやっていかなければならぬ。そして供給力をふやしていかなければならぬ。それには資本蓄積が足りませんので、どうしても借り入れ金にたよっていかなければいかぬ。借り入れ金にたよりますと、こういうことがあるわけであります。ほんのモデル計算でありますが、たとえば十億の投資をいたしまして、荒利益が三億得られると仮定します。そうしますと、これを借り入れ金、まあ一割程度利子で、借り入れ金で十億の投資をまかなったといたしますと、いろんな諸税を引き去りますと、一億二百万の内部留保になる。とこころが、配当をしていくという形でやってまいりますと、借り入れ金をせずに、言いかえると増資と申しますか、株式資本でやっていくということになりますと、配当一割二分といたしますと、諸税を引き去りまして、結局内部留保は五千万。これは単純なモデル計算でありますから、もっと複雑なものがあると思いますけれども、端的に、借り入れ金による企業投資企業活動は、増資株式資本によりまする企業活動に比べまして倍の内部留保を得られるということになりますので、ますます借り入れ金による企業活動というものを考える。そりいたしまして結局オーバーローン、オーバーボローイングというかっこうになるわけであります。  税については、私よくわからないのでありますが、いろいろ関連いたしますから、どこからどういうふうに手をつけていくかということは、たいへんむずかしい問題とは思いますが、結局、木下先生のおっしゃったように、内部留保をしっかりやるということは、確かに減価償却というものがその大宗を占めるわけでありますが、昭和二十六年から、三十六年まで、ちょうど神武景気岩戸景気、あの時代には減価償却に関する税制はほとんど変わっていなかったわけであります。したがいまして、これがドイツなんかと違うところでありましょうが、企業が大いに働いてできまする所得減価償却という形で内部留保になっていくということは非常に少なかった。やむを得ずということじゃありませんが、したがって、それは外部流出、すなわち三割とか二割五分とかいう配当率が相当あった。これは戦後の株主に対して配当が非常に少なかったという時代に報いるというような企業家の気持ちもあったと思いますけれども、一つには、やはりその減価償却が足りなかった、税制上。それでさようなことになった。現在では、減価償却税制に関しましては、先年の改正等を入れまして、まずまずのところと思っております。ところが、改正されました減価償却税制についていくのがもう精一ぱいで、いわゆる超過償却法定の範囲よりもこえて償却するということがなかなかできない、こういうふうに現在の企業というものの収益が落ちております。  大体自己資本比率を申し上げまするというと、製造業平均昭和三十一年度末に三一・九%、ほぼ三二%でございましたのが、三十七年には二七・三%に下がっておる。四十三年、中期経済計画最終年次でありますが、昭和四十三年には二六・三%に自己資本比率が下がるであろう、こういうふうに見込まれております。しかも、その自己資本比率二六・三%に下がるであろうという四十三年には、増資によるいわゆる自己資金の調達、これが一兆三千四、五百億を見込んでおる。昭和三十七年に七千何百億の増資があり、三十八年に六千何百億の増資に落ち、三十九年、昨年には三千億台に増資が落ちておる。つまり、非常に片方で増資がしにくいということだと思います。収益を伴わなければ増資もできません。片方で資本市場がどんどん悪くなっているという環境もございますし。それで、こういうような調子ではたして昭和四十三年に一兆三千五、六百億の株式市場からの資金調達、いわゆる増資ができるかというと、はなはだ疑問なきを得ない。  これは結局、何と申しますか、資本市場そのものも非常に衰退しておりますけれども、そういうふうになるような、先ほど木下先生もおっしゃっておりました企業自体の衰退ぶりといいますか、減益ぶり、それが非常に問題であろうと思います。片方で企業借り入れ金に依存する度合いが非常に多いという点、つまり自己資本の充実ということが結局国際競争力を強からしめる一つ問題点だと思っての見解でありまするが、売り上げ高の利子負担率と申しまするものは、三十二年度の上期は二・八四%、だんだん上がりまして、三十八年の上期におきましては製造業平均で四・五九%、たしかこれはアメリカにおきましては〇・五%くらいだと思います。約八倍。非常に借り入れ金利子が高い。しかし、それでもなおかつ増資よりは、先ほど申しましたように借り入れ金に依存するほうが内部留保はよけいできる、倍くらいできるということになるわけであります。  それで、結局、言わんとするところは、法人税というものを、今回の措置におきましては留保分に対して一%の引き下げでございますけれども、これをもう少し、たとえば最低二%ずつ、結局法人税三〇%くらいまでに逐次下げていくというような税務上の措置をしていくべきじゃないか。  法人税が国の税収の中に占めまする比率は、三十一年に二三・九%。これは直接税五三%、間接税四六・九%ということで、その直接税の中で法人税が三二・九%、所得税が二八・一%、これは三十一年であります。ずっと経過いたしてまいりまして、三十九年におきましては、直接税五八%の全体の税収の中で、所得税は二四・八%、三十一年の二八・一%に対して四%近く下がっておりまするが、法人税のほうは、二三・九%の三十一年から三二・九%、約三三%に上がっているわけであります。これは諸外国のことはわからぬのでありまするが、資料によりますると、アメリカは御承知のように非常に直接税主義で、八六%が直接税だそうでありまするが、その中で所得税は四六・六%、法人税は二二・五%、ドイツが四七・五%の直接税の中で三四・一%が所得税、一一・一%が法人税、こういうウエートになっております。フランスのごときも、一七・三%の所得税に対しまして法人税は九・二%であります。  なるほど、表面税率にしましても、あるいは実効税率にいたしましても、諸外国、先進国に比べまして日本法人税税率が必ずしも高いとはいえないようであります。しかしながら、やはり資本蓄積が非常に違う。資本蓄積が非常に少ないところへもってきて、復興経済と申しますか、戦争から立ち直って、企業中心になって経済の開発をやっていく場合に、どうしても資金需要というものは借り入れ金株式資本かで、なかなか内部留保というものができにくい。先ほど申しましたように、内部留保を大いにやるべき二十六年から三十六年の十年間に、減価償却税制なども一動いておりませんでしたために、いささか昔のことを言うてもしようがありませんが、チャンスを逸したかの感があるわけであります。かようなふうに国の税収の中で法人税が相当なウエートを占めている。こういうときに、やはり法人企業というものの税制といもものは、よほど考えていただかなければいかぬじゃないか。  配当軽課措置二六%は、今回は据え置きでございます。これはいろいろ税理論でむずかしい議論があるようでありますが、たとえば西ドイツにいたしましても、皆さん御承知のとおり、配当軽課措置一五%というような例もございまするので、二重課税とかいろんな問題がございますが、この配当軽課措置の二六%を下げるということも、経済政策の一環としての法人税率というものに関してはあるいは考えてもいいのじゃないか。  それで、私はきょうはそれを申しませんで、ずばり法人税そのものの三八を三七になさいましたそれを、さらにもっと下げていくべきである。かりに、借り入れ金利子が一割で配当率が一割三分ということにいたしますと、借り入れ金に対しては日歩二銭七厘四毛かかる。ところが、配当率一二%にしますと、資本金に対しては日歩三銭三厘の利子がかかるということになります。配当のための法定準備を加えますと、日歩三銭六厘三毛かかる勘定になる。そして配当を支払っていくということに対しまして実効税率四五・六%を考え合わせますと、資本金に対してはさらに一銭六厘五毛かかる勘定になりまするので、結局配当いたしてまいります場合には、資本金に対して日歩五銭二厘八毛の利子がかかる。借り入れ金のほうは二銭七厘四毛、配当していくということになりますと、五銭二厘八毛、年歩にしますと約一割九分になります。そういうことでなかなか配当も、利益を十分生んで配当していくということがむずかしいわけでありまするが、結局先ほど木下先生の申されたグロスアップ方式というのもいいのかと思いますけれども、当面法人税税率をもう少し下げていく、少なくとも二%は今回下げていくという考えが出るわけであります。  それから、もう一つ、直接税と間接税の関係でありますが、これは今回のこの法律案には出ておりません問題でありまするが、やはりレジャー関係の税金とか、あるいは奢侈品といいますか、きわめて高級な物品等については間接税をかけていくというようなことで、もう少し間接税というものを考えていくという方向がこの際税体系としては望ましいのじゃないかということを、あわせて考えるわけであります。  それから、関連しまして、特別措置のほうにおきます利子所得並びに配当所得に対する特別措置でございますが、なるほど配当所得に対するいわゆる分離課税というものが今回初めて案として出てまいっておるわけでありますが、何と申しますか、俗なことばで、経済は生きものでございますので、今回かような措置をして資本市場に対する一般の気持ちが向くようにしていくということは、一つ資本市場健全化の——健全化と申しますとあれですが、立ち直りの一つの呼び水ということで、臨時的な経済措置として私はよろしいのじゃないか、かように思うわけであります。実際、こういう法律案が出ましても、株価は動いておりません。むしろダウ平均千二百円を割ったようなこともございますのですが、結局、これはやはり本格的に申せば、各企業の実体がもっとよくなり、国際競争力に耐え得るような自己資本の充実もでき、社内留保もしっかりしていく、配当もしっかりしてというようなことになってこそ、初めて株式市場というものは立ち直るものであろうとは思います。しかしながら、先ほど申しましたような、俗に経済は生きものということから考えますと、主として人間の心理をつくようなことと申しましょうか、かような臨時的な特別措置もけっこうじゃないか。これを税の公平理論とかいろいろなことから論じていきますと、先ほどの木下先生のような議論になるわけで、これもまことにそのとおりだとは思いますが、臨時的な措置といたしましては、これくらいのことは少なくともやってよろしい、むしろもっと徹底してやるほうがあるいはいいのじゃないかというような気もいたすわけであります。しかし、これはなかなか見解の相違がございますから、そう強く言うわけにもまいりません。  化学工業におきましても、例の爆発災害防止の施設とかその他いわゆる公害防止の施設に対して、固定資産税を非課税にしてくれないかというような要望も考えられます。それから、何と申しましても、国産の技術というもので世界に立ち向かっていかなければならない。したがいまして、試験研究準備金制度を創設していただく、同じく地方税におきます試験研究設備についての固定資産税を軽減していただくというようなことが、また要望の一つにもあるわけであります。  それから、これはたとえば石油化学がいま非常に日本で盛んに行なわれておりますが、化学工業の原料といたしましては、石油に出発した原料を求めるという形が世界的でございまして、アメリカでは七〇%以上が石油化学であり、ヨーロッパにおきましても六〇%が石油化学ということでございまして、日本所得倍増の最終年度においては化学の中で五二%が石油化学になるというふうに予定を組んでおるようなこともございますが、これには海岸線を利用せねばなりません。したがって、土地造成というものが盛んに行なわれるわけであります。これがなかなか土地が値段が高い、近ごろ。それで、大体土地造成費の、あるいは土地の補修費と申しますか、それの五〇%くらいを、十五年くらいの償却を認めるようなことにしたらどうか、半分を。そういうような議論もわれわれの間では出ておるようなことでございます。  重点を法人税の問題にしぼりましたが、租税特別措置のほうに関しまする意見につきましては、その観点では大体木下先生と同じく考えております。  以上で終わります。
  6. 西田信一

    委員長西田信一君) どうもおりがとうございました。  以上で参考人の方の御意見は終わりました。  それでは、ただいまの参考人の御意見に対し御質疑がございましたら、順次御発言を願います。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まず、木下先生に御質問したいのですが、ただいまの御公述によって、政府が税制調査会答申を十分尊重していない、尊重していないどころか、むしろ特に租税特別措置については逆行しているような点があるということを伺ったのですが、政府にわれわれがこういう質問をしますと、政府は尊重していると言うのですよ。第一に、その理由としましては、これまで減税の規模ですね、これは国民所得中心にしておったのが、今度は税制調査会で自然増収の約二〇%、こういう減税規模を答申した。それで四十年度は大体それに近い。一九・何%ですね、自然増収の。大体二〇%近いのだから、尊重していると、こう言うのです。  しかし、それはまあ先生もさっき言われたのですが、その比率とか額よりも、中身が非常に問題点があるのですが、私どうも疑問に思うのは、前に税制調査会では、大体国民所得をもとにして、大体まあ当分の間は二〇%、必ずしもそれに固定的に考える必要ないけれども、とにかく戦前に比べ、諸外国に比べて全体的に税金が重いから、当分の間国民所得の二〇%程度、それ以上になるものは減税に回せという答申だった。それが今度自然増収の二〇%になったわけですね。どうも私は物価の問題を考える場合、物価が上がった場合、価格調整、物価調整だけでも、物価値上がり率が大きいと、二側でも、物価値上がりいかんによりますけれども、増税になってしまう、実質的には。そういうこともありますから、やはり物価の問題と関連して答申してほしかったと、こう思うのです。  それから、国民所得というのを自然増収にああいうふうに変えたということについても、どうも私は疑問があるのですが、ひとつ木下先生に御意見を伺いたいわけです。自然増収の二〇%というああいう減税規模の考え方がよろしいのかどうかですね、その点。まあ物価との関連もございますが、その点一つ。  それから、課税最低限ですが、先生は大体七十万円という、夫婦子供三人、月収六万円程度。まあ社会党では大体八十万円という線を出しているのです。それは戦前の課税最低限、免税点を見ますと、大体いまの貨幣価値に換算して七十八万円くらいなんですね。それで、まるくして八十万、こういう線を出したのですが、もちろん先生の七十万円は政府の課税最低限より高いのですが、社会党はもう少し上回っておるのですが、しかし、その根拠としての国立栄養研究所の今度の献立表ですが、これは成人男子一人百六十七円四十八銭、これは低過ぎるじゃないかと質問しましたら、政府のほうは、国立栄養研究所は二千五百カロリーですね、自衛隊が三千三百六十カロリーで百六十三円でやっているのです、だから別に低過ぎない、こういう答弁なんです。その点、これなどは自衛隊の場合の原価計算内容を要求しているのですけれどもね、その点非常に割り切れない面もあるわけです。  それから、法人税につきましては、これは篠島さんの御公述にも関係あるのですけれども、あの法人税が全体の税収の中で占めるウエートが多くなったということについては、これは法人成りの問題があると思うのですが、本来、個人業種所得であるべきものが、それがいまの税制の関係からいわゆる法人という形をとっているのです。ですから、ものすごく法人の数がふえているのですね、日本では。これは諸外国とは非常に違うと思うのですね。ですから、一がいに、法人税のウエートが大きいから、そこで、先ほどまあ法人税減税の問題を言われましたが、その根拠として言われましたこの全体の税収の中に占める法人税のウエートが非常に大きいという点は、これは諸外国と比べる場合は、やはり日本の場合は法人成りの問題を考えませんといけないのじゃないかというふうにやはり考えるわけです。  それから、実効税率につきましては、諸外国よりそんなに高くないと言われますが、大蔵省で調べたものを見ますと、諸外国よりかなり安いですね。所得の少ないほうはそうでもないのですが、法人所得の多いところになりますと、この実効税率、これは国税と地方税両方合わせまして、大体日本の場合は二百万円超ですかの場合、実効税率で四六・一八%、アメリカは五四・三九%、イギリスは五三・七五、西ドイツが五八・五九、フランスが五〇%というような大蔵省の調査なんですが、国税、地方税合わせて、そして実効税率に換算してみますと、とにかく法人はいろいろな点で、表面の法人税率以外に、特別措置で価格変動準備金だとか、貸し倒れ準備金だとか、設備近代化の特別償却とか、ずいぶんいろいろな恩典があるわけですね。ですから、私はそれを通算してみますと、国税、地方税通じまして、かなり大法人に安い。少しばかりじゃないと思うのです。ですから、私はもちろん資本蓄積等について、また、自由化で外国と競争する場合、税制面で考慮しちゃいけないとは言わないのです。しかし、私はどうもこのいまの日本企業の体質を見まして、ものすごい過当競争をやっているでしょう。で、設備過剰になってきている。ですから、逆にぼくは景気調整税制面から考えるべきで、一時は特別措置において設備拡張をやらしたのですよ、行き過ぎる場合は逆にぼくは特別措置で制限すべきだと思う。で、これをもっと弾力的に運用して、そこで、ある場合に、行き過ぎる場合には、ある特別措置をやめるべきだと思う。で、設備近代化の特別措置をやめるとか、あるいは何かかえって軒別措置で景気調整を逆にすべきで、制限すべきとは——イギリスあたりはそういう弾力的に運用しているとは聞いているのですけれども、もう何か一ぺん特別措置をやるとそのままずっと続けちゃって、昭和二十六年に非常に固定化しちゃっているように思うのです。何か企業努力の点に十分に——あれしますと非常にものすごい、むだな広告をしたり、あるいは交際費、シェアの拡大の競争をする、あるいはまた政党献金なんかずいぶんやっているのですが、そういう余裕があるのならば、何もそんな減税する必要はないと、こう思うのです。それで、諸外国に比べれば安いのです。その点、これは木下先生と、それから篠島先生、両方にこの点お伺いしたいのです。  それから、なるほど利子とかあるいは配当について、資本蓄積というものを非常に篠崎先生言われましたが、これは木下先生も言われますように、実際的効果が実証されていないんですよ。実際的効果があればいいのですが。租税負担公平もこれは大事だ。しかし、資本蓄積のために税制面からの減税も必要だと、こういうふうに言われるんですけれども、われわれもほんとうに効果があるならば必ずしも税制面から優遇措置を講じて資本蓄積を促進するのに反対じゃないんですよ。ところが、利子配当については、いろいろと政府に質問しても、ことに利子なんかについては積極的な証明がないんですよ。逆に大蔵省では、いままで調査したところが、税金と資本蓄積、貯金とは関係がないというのです。むしろ可処分所得がふえたときに蓄積がふえていると、こういうわけでございます。一橋大学の木村元一先生の予算委員会の公述にも、資金の移動に役立つにすぎないんであって、積極的な資本蓄積に役立たないんではないかと。それが実証されればわれわれも納得します。その点ひとつお教え願いたいんです。  それから、ほかの方も御質問あると思いますから、簡単にあともう一点伺いたいんですが、それは木下先生は、利子とか配当については最後に、いまの所得税法三十七条ですね、源泉で二〇%取ってあとは総合所得、それに返れという御意見であるかどうか。それで、自民党でも山中試案というのは、最初は経過措置がちゃんとありまして、昭和四十三年に基本法たる所得税法三十七条に返れと、こういう案があったんです。それから、かりに配当分離課税を認めるといっても、一五%は安過ぎると思うのです。一五%は低過ぎる。それで、山中試案では三〇%になっておるんですよ。それから、政府にいつまでこれを続けるのか、これは臨時立法、時限立法であるからいつまで続けるかと質問いたしましたら、実効があがったらやめる、実際の効果があがったらそれで目的を達したからやめるというのですよ。で、いつということは言っておらないんですよ。ところが、自民党の山中試案では、四十三年度にこれをやめる。それまで経過措置をちゃんと具体的に出してあるわけです。いつまでこれを続けるかということについて何ら政府は態度をはっきりさしていないのですが、実効があがるかあがらないか、この実証のしょうがないんですよ。具体的なその実証がないんです。そういう点で、われわれ非常にその点困っているわけなんですが、そういう点についての御意見を伺いたい。  まだいろいろございますが、ほかの委員からも質問があろうと思いますから、ただいまの三点についてお教えを願いたい。
  8. 木下和夫

    参考人木下和夫君) お答え申し上げます。  問題はたくさんございますが、私に関係のあるところだけ拾い出して申しますと、まず第一は、自然増収基礎を置いた減税のワクという考え方国民所得に対する租税負担率という考え方とどちらをとるか、あるいは新しい自然増収基礎を置いた考え方についてはどういう意見を持つかという点でありますが、私は、もし一つの大ワクとして考えますならば、国民所得に対する租税負担率を基礎にしたほうが正しいと思います。と申しますのは、一つは自然増収という概念自体が、ここ数年来使われておりますけれども、非常に規定しにくいあいまいな概念でございますので、そういう意味国民所得に対する比率のほうがよりよいということであります。しかし、問題は、むしろこういう平均概念というものは危険でございますが、たとえば足を片一方ストーブの上に来せておいて、片一方を氷の上に乗せておく。平均すれば非常に快適であるけれども、両方とも足はたまらぬといったような例がじょうだんにいわれますように、平均という概念ほど税の問題で危険な概念はないと思います。これは国民所得基礎にいたしましても、やはりそういう危険な誤りをおかすことをあらかじめ承知しておかなくてはなりません。  ただ、二〇%という談論につきましては、これはおそらく歳出の要求が非常に大きく出てくる可能性があるので、ある程度押えようという意図から、一応二〇%前後ということになっておるのではないかと私は憶測いたしますが、将来はおそらくこの比率は、わが国の福祉国家政策というものが進められていくにつれて、比率は大きくなるだろうということを私は予想しております。二五%になっても三〇%になっても、私はちっともかまわないと思います。  それから、第二番目の課税最低限については、私は七十万円と申し上げましたが、社会党のほうでは八十万円と考えておられる。これは計算基礎が若干違いますので、いずれとも納得し得る材料さえ与えられますれば、たいした問題じゃございません。ただ、戦前の考え方は免税点制度でございました。ただいまは基礎控除その他控除課税最低限がきまるという違ったシステムでございますので、この点はただし書きをつけておかなくてはならないと思います。  それから、これは私に直接関係はございませんが、法人成りが多いから法人税の収入が大きいという御議論をなさいましたけれども、私は法人成りをしたのは小企業であろうと思います。特に株式会社組織その他の小企業の場合には税収としてはわずかなものでありまして、法人税収が増加した主要な、原因が法人成りと規定されてしまうことにはいささか私はちゅうちょせざるを得ません。  それから、法人税についてでございますが、私自身の考え方は、法人に対してもっと税率を大幅にふやしてもよいというような御議論のように承りましたが、実は法人税減税したり増税した場合に配当がふえたり減ったりするか、あるいは内部留保がふえたり減ったりするか、あるいは価格が上がったり下がったりするかというような、いろいろな経済的作用があると思います。もちろん、米国の場合には、法人税を増税いたしますと、そのうち三分の二が大体価格に転嫁されるというような実証研究がございますが、日本の場合には、管理価格がかなり大幅の地位を占めておりますので、この効果は比較的薄いと思います。ただ問題は、法人税減税したために配当のみがふえるという前提に立ちますならば、これはおっしゃるように分配状態を悪化いたしますでしょう。しかし、内部留保がふえるという面を重視すれば、必ずしも法人税減税資本利益だけをふやすというふうには私は考えません。  それから、利子配当課税についてはどういう措置を具体的に考えているかという点でございますが、これは私は総合課税主義で、全額ほかの所得と合算して個人の段階で課税すべきだと思います。分離課税は一切やめて、総合課税主義をとる。配当につきましては若干問題が違うわけでございますが、法人税配当部分については軽減税率を通用している。そうして二重課税を防ぐという理由で、また個人の所得税の段階で配当控除をしているという現在の状態であります。おっしゃるように、配当所得は逋脱の可能性が大きいものだというお考えに立ちますならば、源泉徴収率を現在よりももっと高めることは当然主張できますでしょう。ただ、われわれの議論といたしましては、源泉徴収率配当受領者の平均税率というくらいに徴収しておこうというので、一五%という線が大体出たと思いますが、これはいずれにせよ個人所得税調整ができますので、一五%が一がいに安過ぎるという議論は必ずしもできないのではないかと、このように思います。
  9. 西田信一

    委員長西田信一君) 篠島さん、何かお答えございませんか。
  10. 篠島秀雄

    参考人篠島秀雄君) いや、木下先生のあれでもう……。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、いま法人税につきまして三八%を、三七%に下げる必要はないかということなんです。もっと法人税率をうんと下げろというのじゃないのです。それと、さっきお話しの転嫁の問題がありますから、法人税を下げた場合、必ずしも法人だけが利益を受けるんじゃなくて、そのほかの消費者も利益を受けるという点がありますから、私もその点は法人税率引き下げ必ずしも法人だけの利益になるとは……。しかし、どうもその転嫁の点がまだよくわからないのですが、この転嫁の点についてちょっと御意見がありましたら、お聞かせ願いたいのですけれども。
  12. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 実は、税制調査会の専門委員をしておりますので、関西に本社がございます約百社の実態調査をいたしました。その結果、明確な結論は出てまいりませんけれども、法人税が下がった場合と上がった場合とで、決してシンメトリカルな影響があるというわけではないということが第一点。で、かりに下がった場合を前提にして申しますと、それじゃ配当がふえるかと申しますと、大体、ある特定企業を例にあげますと、同業の他社の配当の線よりも著しく低い場合には、法人税を下げれば配当をふやすという可能性がございます。しかし、同業他社がかりに一割の配当率を持っておるとすれば、一割以上に上がる可能性はございません。したがって、現在のところ配当率については上限と下限とが、マキシマムとミニマムとがある程度うかがわれるということでございます。利益があがれば配当率をどんどんふやしていくということは、現実にわが国では考えられない。それから、ある一定限度までは配当率を維持しようと努力する。しかし、配当率をゼロにすることは、おそらく戦前よりもかなり容易に、安易に行なわれているようであります。  それから、それじゃ内部留保についてはどうかと申しますと、先ほど申しましたように、減価償却積み立て金がその大部分を占めておりますので、いまの法人税に関する規定をフルに利用すれば、内部留保は非常にふえる可能性を持っておるわけであります。ところが、先ほど申し上げましたように、計上利益を出さんがために、フルに、無税の減価償却を怠って、それを切り詰めてわざと利益を出すというような企業がかなり多いんじゃないかと。そういう点を考えますと、法人税減税一般税率の漸次引き下げということが、内部留保をふやす、可能性はかなりあると判断しております。しかし、これも先ほど申しましたが、その税率引き下げます場合には、必ず条件をつけて、内部留保をふやした企業にのみその恩恵を受けるようなただし書きをつけておくことが必要だ、こう思います。
  13. 野溝勝

    ○野溝勝君 時間の関係があるようですから、木下先生の木村委員に対するお答えを願う前に、ごく簡単に木下先生にお伺いしたいと思います。  先ほど税の公平ということを回答されたのですが、まあ当然だと思っています。税制が公平原則に立つべきは当然ですが、やはり生産性や所得の配分等、国民所得の問題を十分考えなければならないと思います。それはいまお話しになったとおりだと私は思っております。ただ、先ほどのお話の中に、学者の皆さんが大体同じ意見を出しておるんですが、確かに特別措置については、これは大体臨時的なものと私は思っております、税理論からいって。特別ということになっておるのですから、当然、そう解釈すべきものだと思っております。  そこで、君がひとつ問題だと思っているのは、米の予約減税についての反対意見で、私は異議を持っています。税制調査会あたりは一応現象的な問題を中心税率とか税のあれをきめて、そして答申をしておりますね。しかし、それではいかぬと思うのです。私はやはり、国民所得の点ですね、この点を基準にして十分検討して、その分析の上に立ってなされなければならぬと思っております。そこで、米の予約減税の問題ですが、これを木下さんは、こういうものは臨時的なものであって即時廃止すべきものだと、この中の一つに入れられております。私どももこれに対してはさように考えています。しかし、今日基本的に農業の所得や生産性の安定向上をはかるという点について、御承知のとおり十分な政策措置がとられていない、いわば答えが出ておらない状態で、農業と農民生活が危機にあります。御承知のように農工間格差は、政府統計で見ると、三十七年において生産性も所得もそれ、それ農業は鉱工業に対して三分の一、四分の一という低さです。鉱工業のほうは、今日ではますます上昇し、農工間格差はずっと広がっていると思うのです。こういう分析がなされる。とにかく農民と他産業との所得格差がひどいですね。だから、予約減税のようなものは、米価に当然入るべきものだと私は、思う。そこで米審あたりは生産費町得補償方式をうたって答申をしておるわけなんです。ところが、完全な答えが出ておらぬために、政府は申しわけ的といいましょうか、それをカバーするためにそういう臨時措置をとっているわけなんですね。だから、これについては当委員会は全部賛成なんです。しかし、それはやはり税の理論からいって賛成じゃないのです、そういう政策的には。だから、私は、学者の皆さんが共通して言われることは、現象上にあらわれた問題を取り上げておいて、この原則的な点を落としていると思う。税が国民所得の配分などに基準となる点について十分検討されて、その上で結論を出してもらいたいと思うのです。悲しいかな、木下さんを前にすみませんが、学者の多くはそういうところに触れていないのだ。税制調査会はもちろんそうです。そこに非常に困難な問題が起こってくるのですが、こういう点に対して木下さんは、国民研得を基準にして税の方針をきめて税のあれをきめるということは正しいのですが、その矛盾ですね、そういりものはどういうふうにして具体的になされるか、この際お聞きしておきたいと思います。
  14. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 国民所得との関連と申しますのは、先ほど木村委員からの御質問に対するお答えで減税額の大ワクをきめる基準として申し上げたわけでありまして、おっしゃるような問題につきましては、国民所得の構成分である農家の所得、被用者の所得、あるいは企業家所得というふうにこまかく分けて議論しなければならぬということも仰せのとおりだと思います。国民所得という非常に大ざっぱなマクロ的な概念で個々税目のあり方を判断することは、これは間違っていると思います。  したがって、出家の所得について議論をいたしますと、私が米穀所得課税特例をやめたほうがいいということを申しました理由は、第一に、この特例が適用されます農家は、米作農家の中でも比較的豊かなものに限られておるということであります。全農家中わずかに五・五%がこの恩恵を受けておるという事実が第一点。第二点は、昭和三十九年度に生産者米価が大幅に引き上げられましたという点が第二点、第三番目には、最近の米の需給状態から見て、最初の制定目的である予約出荷奨励という意味がかなり薄くなったということが第三点、第四点は、米穀についてだけこのようなことをやりますと、日本の農業政策の全体から見て、これはおそらく野溝さんのほうは御専門でございましょうけれども、米作に固執するという農業政策の基本の問題が出てくる。言いかえれば、米作だけを中心にするという考え方に根本的な再検討が必要でないかという問題とも関連いたします。  以上でお答えといたします。
  15. 野溝勝

    ○野溝勝君 これはお答えはなくてもいいのですが、非常にめんどうになってきますから。そこで、問題になるのは、それでは米作農家がそんなに富裕だと、そうするとどのくらい税金を納めておるのか、農家全体で。こういうことが、一つは問題になってくる。  それから、いま一つは、米作中心にいくという傾向になるといいますが、私は、日本の民族産業から見て、食糧の自給ということは原則的に必要だと思うのですよ。それは先生も御承知のとおり、いま日本の輸入が六十一億ドルですね、三十八年度において。その総輸入の約四一%というものは農林物資で、そのうち約二二・八%が食糧農産物で、これが今後ますます増加の傾向にあって、やがて近い将来、農林物質輸入は総輸入の半ばを越すと思われます。そうすると、日本の国際収支から見て非常な不安が出てくるのです。そして最近のようなこういう農業経営のあり方では、農業の国際比較において、また国内の農工間において、ますます格差が出てまいります。農業経営に従事する人が少なくなってまいります。そういうような問題を非常に深刻に私は考えております。この問題については、非常に時間もかかることでございますから、ここでは議論いたしません。そこで、いまの三つの反対理由がありましたが、私としてはまずもってこういう考えに立っています。ひとつ先生のほうでもこの考えを十分御検討いただきたい。いずれ私はゆっくりまた、あなたと個人的に会ってお話ししたいと思います。
  16. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 木下教授にお伺いいたしたいのですが、税三基本法案に対しまして非常なうんちくを傾けられて、私ども裨益をいたしたのですが、これに関連してお尋ねをいたしたいのは税務の行政全般に関してなんですが、御承知のとおり、納税自体が非常なわずらわしさがありますことは国民のひとしく認めているところでもあり、同時にまた、税務署と交渉次第によっては相当いろいろ、あるいは手心もあり、そこに不公平ができる場合もありますし、かりに一つの例をあげますれば、ある税務署で、その現役の署長の時代にむずかしい問題でほとんど話は八分どおり解決をしていた。ところが、突如署長がかわったためにこれが一転したというような例が非常に多いのですね。そこで、行政管理庁は、御承知のとおりたびたびこの簡素化に対して勧告はいたしておるわけですけれども、実際は行なわれておらない。  それから、さらに進んで、協議団という問題があるのです。この間も、この三法の審議に関しまして、私自身が質問をいたしたのですが、協議団に異議を申し立てた数が、三十八年中に九千幾つかあるわけです、はっきりと数字は覚えていませんが。そのうちに、その異議を至当と認めたものが約二千三百ですか、そうすると、あとのほとんどは棄却。それで、一体これが三春としての裁判に幾つ行っているかというと、おそらくこれは裁判をやっても相当の年月もかかりますし、費用もかかりますから、ほとんどが泣き寝入りの状態になっているという点が多いのじゃないかと思うのです。そこで、こういうような協議団自体が、これはシャウプ勧告によってできたんだそうですが、構成人員を見ましても、大体まあ国税庁の古手が多いというような、いろいろそういう点もあると思うのでありますが、これは基本的には、それ自体が国会の責任でもあるわけなんですがね。  そういう意味において、私は、税務の行政全般という問題が一番大きな問題じゃないかと思うのですが、これらについてひとつ御意見を伺えれば伺いたいと思います。
  17. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 税務行政については、私はそれほど具体的に内容を存じませんけれども、まず第一点、先ほど給与所得者についてとりわけ減税措置が望ましいという意見を申し述べましたが、これは本来はおかしな話でございまして、給与所得であろうと、事業所得であろうと、同じように取り扱われるなら、こういう減税措置を要求することは不合理なんです。これは、税務行政上の問題がそこにあるわけです。給与所得は的確に把握できるという欠陥から出てきた措置であります。それから、配当所得についても、先ほど木村さんからお話が出ておる、源泉徴収率を上げるということも、これは末端の個人の配当所得者における配当所得把握がまずいから、源泉徴収率を上げろというような議論になってくるかと思います。すべて税務行政の問題に関連いたしますが、あらゆる政府、あらゆる行政が完ぺきであるということは、これはもう当然期待しにくいわけでありまして、この点は、税務行政の面でかなりの改善が現在はかられておると聞きますので、時間をかけなければ眠りませんけれども、そちらのほうへ進むことが御意見同様望ましいことだということは、私も明言いたします。  ただ、他面におきましては、わが国納税者のモラルと申しますか、道義と申しますか、この点がやはり、協議団の問題も出てまいりましたけれども、税務行政の円滑なる運営を阻止していることも事実であります。たとえば、ヨーロッパで申しますと、最も納税モラルの高いところはスカンジナビアの三国でありますし、その次が大体アングロサクソン系及び西ドイツのような国でありますし、最低がラテン系のイタリー、スペインというような国であります。おそらくわが国納税者のモラルというのは、その第三番目あたりに位する程度ではないかと私は憶測いたしますが、この点もやはり税務行政の効率性をはばんでおる理由だということを自戒自粛すべきだろうと思います。
  18. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 ただいま木下先生非常にお忙しいところを恐縮でございますけれども、一つだけお考えを聞かしていただきたいと思います。  課税最低限の問題でございますが、これはわが国においては、つまり一つの社会的に確認された通念というものがないのじゃなかろうか。大蔵省で言っているマーケット・バスケット方式による標準生計費の算出のしかたは、低生活水準を基礎にしたものであって、特に家庭の主婦の骨折り、あるいはこれをカッコづきの労働力といってもいいと思いますが、このマーケット・バスケット方式は家庭の主婦の労働力を全然見込んでいない上に立てられているものじゃないか。こういう課税最低限というものは、やはり実情に合っていないのではないか。もっとこの課税最低限一つの科学的な根拠を与える、あるいは多くの納税者を納得せしめるほどの社会的な概念といいますか、そういったものがつくられていないのじゃないか。私見を申し上げてたいへん恐縮でありますが、私は、その場合、日本においては全国一律の最低賃金制が確立していない、つまり労働力の再生席に必要な経費というものが認められていないというところから、この課税最低限がマーケット・バスケット方式による標準生計費といったような低生活水準を固定化した概念の上に成り立っているのじゃないか、ここに問題があるというふうに私どもは考えておりますが、この点についてはどういう佃見解でしょうか、お伺いしたいと思います。
  19. 木下和夫

    参考人木下和夫君) 特に所得税課税最低限に食い込むべきではないという原則については、先ほども申し上げましたとおり、全く御意見と同じでございます。ただ、その基準生計費の算定につきまして、先ほどは国立栄養研究所献立がいかにも貧弱であるという事実のみを申しましたが、御説の主婦の労力の評価といった点について、どのような具体的な、また人を説得し得るような評価ができるかどうか、この点については私はいまのところ自信はございません。しかし、そういうものがかりに評価されるとすれば、おそらく基準生計費の中に組み込むべきであるということについては、異議はございません。
  20. 田畑金光

    ○田畑金光君 木下先生に……………。これは直接、税と関連するというよりも、むしろ間接的に関連いたしますが、率直に、最近所得政策という問題が漸次取り上げられてきているわけです。時にこの間の生産性の十周年の総会等において、産業界、あるいは経済界と言ったらいいかもしれませんが、その代表等から、この問題もそろそろ検討の時期に入っておるというような意見等が述べられておるわけですね。昨日、経済審議会でしたか、佐藤総理がこの審議会の総会に出てあいさつをしておりますがね、その中等にも、生産性と賃金物価の問題等が言われておるわけですね。この問題の政府部内における議論のいきさつというのは、昨年来のことは御承知のとおりでございますが、この問題について木下先生としてはどのようにお考えになっておられるか、率直に承りたいと、こう思うのです。  それから、もう一つ篠島参考人にお尋ねいたしますけれども、特に利子所得配当所得に関連いたしまして、もっとこれを強化すべきだというお話があったわけでありますが、これによって資本市場を育成し、また企業体質改善国際競争力の強化に通ずると、こういうような御見解のようでありますが、一般論としては確かにそのようなこともいえると、こう思うのですね。だけれども、われわれとして疑問に思うのは、やはり資本の蓄積にいたしましても、あるいは預金の増強という面から見ましても、やはり国民全体のふところぐあいをよくすることによって預金もふえ資本の蓄積もなされ、それがまたわが国の産業活動に寄与する面が非常に大きいと、こう思うのですね。ことに、先ほどのお話の中にもありましたように、この資本市場育成のために資産所得について特別措置をやったにしても、はたして今日の株式市場等の推移を見まするなら、むしろダウ平均千二百円を割ったというような事実を見ても、どんなものだろうかというわれわれは疑問を持つわけです。特に昨一年間、いろいろな政府あるいは日銀がてこ入れしてやってみても、またことしの一月になって公定歩合を引き下げてみても、株式市場は低迷を続けておると、こういうことですね。要は、先ほどのお話の中にあった個々企業の社会的責任という問題がもっと自覚されぬ限りは、幾ら政策的な減税措置をやってもこれはむだなことじゃなかろうか、こういう感じを持つわけです。特に最近起きた山陽特殊鋼の問題なんかを見ましても、銀行をだまし、株主をだまし、社会的責任を忘れたああいう企業のあり方などを見た場合、いかに政策減税をやったにしても、どぶに捨てるような感じで、一体こういうような個々企業が社会的な責任を感じない現実の姿を見たときは、こういう政策減税などということはおよそ無意味な感じもするわけですが、しかし、これは全般がそうだという意味じゃありません。しかし、また一面においては、ああいう傾向は今日の株式上場会社の大半がそうじゃないかという見方もあるわけで、こういう点等から見た場合に、篠島参考人の御意見なり感想なりを伺っておきたい、こういうことなんです。
  21. 木下和夫

    参考人木下和夫君) お話に出ました所得政策内容は非常な多岐な問題にわたっておりますので、ここで税に関係いたします問題としては、たとえば所得政策の中における最低賃金制の問題を取り上げますならば、これは当然税引きで考えなければならないし、また当然のことでありますけれども、非課税水準で最低賃金制が考えられることはこれは申すまでもないところであります。ただ、生産性に見合う賃金の引き上げということになりますと、生産性をこえた賃金の引き上げは、御承知のようにインフレーションを激化するだけでありますが、現在のわが国の時点で一体物価の騰貴が、コストの面から出てきた物価の騰貴であるか、あるいは需要の側から出てきた物価の騰貴であるかということについて、断定的な意見は申しませんけれども、どちらかといえば、また需要のほうから出てきたインフレだろうと思います。したがって、現在の段階では、生産性をこえた賃金の上昇はまだ見られておりませんので、賃金上昇の余地はヨーロッパと比べて総体的にはあるという判断を立てております。そういう判断の上で所得税あるいは間接税のあり方というものを考慮すべきことは申すまでもないことでございます。
  22. 篠島秀雄

    参考人篠島秀雄君) 先ほどの木村先生のお答えと関連しますので、あわせて、諸外国に比べて法人に対する税金が日本はあまり高いほうじゃないということで、これは日本租税研究協会の資料なんですが、アメリカは州の法人税を入れまして表面五三・五%に対して実効税率としては五〇・七%、イギリスが表面実効ともに五三・七五%、それから西ドイツが表面五八・二%、実効税率四八・三%、それからフランスは五〇%と書いてあります。それから、イタリアが四二%、日本は表面五一・〇五%で実効税率としては四五・六%というようなふうに出ておるのでありまするが、もちろんこれは地方税、事業税を日本では入れております。そんなふうに承知いたしております。なおお調べ願いたいと思います。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国税、地方税を通じましてですか。
  24. 篠島秀雄

    参考人篠島秀雄君) そうでございます。法人税というものの性格が必ずしもそう明確なものではないように聞かされておるのでありますが、法人税を下げるという方向で企業がどうなっていくか、これは先ほど木下先生からお話がありましたとおりでありますが、私ども実際に企業を担当いたしておりまする者から実感的に申し上げさせていただきますと、やはり税金が現在のところ重い。片っ方で国際水準に到達するためにはどんどんやはりまだ合理化投資というものをやっていかなければならない。そうして日本人の物的生活レベルをもっと欧米に早く近くせねばならねということを考えておるわけでありますが、したがいまして、法人税を下げましても、すぐ配当を上げるなんということは、まず考えられない。やはり第一番に、内部留保が足りないので、資本充実をしなければならないということから、内部留保へ進むということは当然であろうと思います。  それで、先ほど落としましたのですが、交際費の問題であります。交際費に関して控除額と申しますか、損金算入部分が五〇%、この問題、実はこれ私もよく知らないのですけれども、世界には交際費課税というのはないんだそうであります。ですから、日本でもこういうものはないほうがいいと思うのでありますが、しかし、経費をいろいろな意味で、木下先生御指摘のごとく節約していかなければならない、そうしてメーカーとしてはコストを下げていかなければならないということから考えますと、こういう点で、課税をされるということによって企業家も自粛すると申しますか、そういう方向が打ち出せれば、これもまたいいことではないかという意味で、私は特に法人交際費に対する課税率の点については申し上げなかったのであります。実際はないことがいいと思いますけれども、自粛ということからいきましては、これを教訓的に感じとるというような感じを実は持っております。  それで、配当分離課税と俗にいわれております措置につきましては、先ほど申し上げましたとおり、これはなかなか租税理論でむずかしい問題があるようでございまするが、現在やはり資本市場、証券市場と申しますか、こういうものにある程度たよりながら企業というものは増資もし、そうして増資して得られた資金を合理化投資に向けていくわけでありますからして、どうしてもこれがちゃんとしていてくれなければいけない。そういう意味から、先ほど申しましたように、これによって呼び水的に資本市場と申しますか、証券市場が刺激されるというようなことを期待すれば、この際、多少刺激的なことをやっていただくほうがいいんではないか。これは恒久的な立法でありませんで、いわゆる臨時措置でございますから、これは今後二年の間これをよく見守って、そうして効果をさらに吟味したらいいのではないかという意味で、私は賛成するわけなんであります。
  25. 西田信一

    委員長西田信一君) 他に御発言もないようですから、参考人の御意見に対する質疑はこれをもって終わります。  参考人の方にごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらず、貴重な時間をおさきくださいまして、本委員会参考人として御出席をいただき、長時間にわたり御意見を述べていただくとともに、委員の御質疑にもお答えをいただきましたことを、深く感謝申し上げます。お述べいただきました御意見は、今後本委員会審査参考といたしたいと存じます。ありがとうございました。  それでは、午前はこの程度とし、午後一時から再開いたします。暫時休憩いたします。   午後零時十三分休憩      —————・—————    午後一時三十九分開会
  26. 西田信一

    委員長西田信一君) 委員会を再開いたします。  委員の異動について御報告いたします。  中尾辰義君が辞任され、その補欠として鈴木一弘君が選任せられました。     —————————————
  27. 西田信一

    委員長西田信一君) 地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、税務署の設置に関し承認を求めるの件、相続税法の一部を改正する法律案の二件を一括議題とし、一括質疑を行ないます。  御質疑のおありの方は順次御発言願います。別に御質疑もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 西田信一

    委員長西田信一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより二件を一括討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。別に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、各案件につきまして順次採決に入ります。  まず、地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、税務署の設置に関し承認を求めるの件を問題に供します。本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  29. 西田信一

    委員長西田信一君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、相続税法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  30. 西田信一

    委員長西田信一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 西田信一

    委員長西田信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  32. 西田信一

    委員長西田信一君) 次に、物品税法の一部を改正する法律案国立学校特別会計法の一部を改正する法律案国際復興開発銀行等からの外資の受入に関する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案財政法の一部を改正する法律案交付税及び譲与税配付金特別会計法の一部を改正する法律案石油ガス税法案関税定率法等の一部を改正する法律案、以上八法案を一括議題とし、一括して質疑に入ります。  御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  33. 津島壽一

    ○津島壽一君 国際復興開発銀行等からの外資の受入に関する特別措置法の一部改正案、これで二、三点お伺いしたいのですが、まあ法文の順序でちょっと申し上げますが、第二条の保証契約をすることができる金額を総額できめているんですね。各借り入れ機関の別に金額は掲げないでやろう、これは非常に便法だろうと思うので、今日の事態でその必要性があるからこういう特別の法律を制定するんだろうと、これは了承するんですがね。  そこで、私が聞きたいのは、これが乱に流れますと、たとえば電電公社は幾ら外債を発行するんだろうということが予算にも出されないで、国鉄その他の機関の場合も。そして一括して何千何百万ドルは総額だということになりますと、どうも政府が、これは予算の問題になりますが、各機関の外債発行計画というものは表面に出ないんですね。今日の事態においてはそういう必要があるということだから、これは了とするんですよ。しかし、法制としてどうもわれわれは納得できない。どの機関は内債を幾ら発行し、外債を幾ら発行するかわからない。それを政府が保証するということは私は当然のことだと思うのです。しかし、それはあまり弾力性がないからというので、その金額は各機関のを繰り込んでやれば発行に役立つ、そうすればできる。すなわち、電電公社が発行できなければ、国鉄が発行できた場合には、その金額を繰り込んでやってもいいと。要するに、各機関別にそういった金額を予算の上であらわして、しかも総括した金額を決定して、その範囲に落ちつくことと同時に、ほかの機関が発行しない場合は、これをこちらにトランスファーというか、移動してやってもいいというんであって、今年度の予算の形態を見ますと、一体国鉄は外債を幾ら発行するんだ、電電は幾らだ、これが全然出ないんですね。これは外債というのは、それは政府が責任を持つんです。これがもう何かまずくいくと、非常に財政の信用を害するんです。したがいまして、従来の制度においては、その債務者たるべき機関がこれだけの限度においては外債を発行し、政府は保証する金額をはっきり書いていた。今度はそうでない。書いた場合は、理屈じゃなくて、動けないという事情もわかっているんですよ。しかし、一応各機関別に書かれて、その計画のもとにおいてもし万一実行上困難があれば、この金額相互は融通し合えるとでもいうようなことにしておけば、実行には差しつかえないと思うのです。そこらの点が一点です。  それから、これは財政政策の問題ですから、いまこの場合聞くのは予算委員会と違うのですけれども、こういうことから、予算の総則、一般会計の総則を見ますと、名機関の債券発行額は非常に膨大なんです。これはいいですよ、発展のあらわれとして。しかし、全部これは政府が保証するんですね。あらゆる機関、東北地方であるとかその他あらゆるものの機関は、発行債券は全額保証する。内外債を問わずそういったような政府が大きな保証をするということは、私はもう少し考えてもらったほうがいいんじゃないか。それで、必要ある場合もありましょう、機関によっては。しかし、これは国内債で発行する場合が多いのでございまして、まあ戦前においては内債を発行する場合、政府が保証しないで各機関がやったものです。今度はあらゆる機関が全部政府保証で、日本の何というか、社債市場というか、市場にそれで出るということだと、民間の単純な社債の発行に対して政府が非常な重圧をかけるんですね、保証債で。であるから、一般社債の市場育成ということには私はかえって害があると思うのです。これは意見ですが、よく御研究願いたいのです。  たとえば、保証債というものが、外債が若干出るとして、今年度で、四十年度で三千五百億円以上政府が保証しようというんですね。昨年度もあったでしょう。来年度もまた来るでしょう。これはえらい金額になるのです。外国の財政から見て、日本ほど直接の国債でなくて多額の保証義務を負っているところはない。これはコンティンジェント・ライアビリティーというんですが、海外では相当注目を引くんですね。私はここでそういう議論をする気はなかったのですが、一応これは財政当局としてはお考えおき願いたいというだけに私はしておきますが、これは議論が大きくなりますからね。  しかしながら、いまの案は、一応予算も通過する際でございまするから、総額によってこれを適当に発行の場合に応じてその範囲でやるということ、このもの自体には私は反対しないんです。これは予算総則に反することになりますし、予算も近いですから、修正の余地もないでしょうがね。そういうような意味において、私はこの総額をもって保証ができるというと同時に、各機関の発行予定額くらいは書いて、彼此融通することができれば、目的はこれで達成されるのです。そういうことを御考慮を願いたい、これは質問じゃないんです。質問すると、長くなるから、これは質問じゃないけれども、これは私は意見を一応述べておこうと思う。  私は、来年度はどういうふうなぐあいになるかは知らぬけれども、なるべくそういうふうに、各機関別に、鉄道外債は三千万ドルとか、電電公社は二千万ドルとか、これは融通し得るようなことで、融通性を持たすことはあえて私は反対するものじゃないけれども、いまの計画はほとんど外債計画というものがわからないのです。総額だけぱっと書いちゃって、何をやってもいいんだと、こういうような感覚を持たすことはどんなものであるか。これは多少意見が入りましたから、まあ質問というかっこうにしないで、まあこの法案を見たときにそれは大きな問題じゃないかということをちょっと感じたものですから、申し上げておく次第でございます。  そこで、今度はこまかいことに入りますが、第二条の第三項ですね、これが非常にわかりにくいし、これは質問して私の意見も述べたいんだが、「政府は……外貨債を失った者に交付するため発行される外貨債に係る債務について保証契約をすることができる。」と書いてあるのです。これはかわり証券の意味ですね。かわり証券を出すについては、このかわり証券の金額に相当したものの債務を新たに政府が保証契約を結ぶというように読めるんですね。そう読むとすると、私はこれは大きな問題だと思う。一千万ドル発行した。それを政府が保証したと。なくなった証券のかわりにかわり証券を出す、これが五万ドルだと、千五万ドルの政府保証の契約ができるということであれば、おかしなことです。かわり証券を出す場合は大体、証券が毀損した場合でしょう。その時分には、これはキャンセルしちゃうんです。だから、一千万ドルは増さないのです。喪失したと言ってきた者があれば、それは担保をとって、そしてこれにかわる証券を出すが、前の証券は絶対にないという確認をして出す。しかし、万一失ったものがまた出てきたら、これは生かしてやらなくちゃならない。そのかわり、かわり証券のほうを無効にしなければならない。だから、終始一千万ドルの保証契約によって債務は完済できるのです。あと追加するということはあり得ないことなんです。これは、われわれ長くやったからわかる。政府は損失はない。それにまたもう一つ保証契約を結ぶことができるということは、ちょっとこれは、何か観念上の誤解があるのじゃないか。それから、実際上の、取り扱いを十分御検討願っていないのじゃないかと私は疑問に思うのです。  これは英米両方の共通した、ヨーロッパもありますが、これは過去に発行した外債の契約書をごらんになるとわかる。喪失したものにやる場合は、証券があってあとから出てきたら、この証券をキャンセルするのです。だから、いつも一千万ドルなら一千万ドルの保証契約をすれば、現在の証券額は一千万ドルをこさないというのが原則なんです。かわり証券をやるということは非常に問題だけれども、それだけに契約書なりにいろいろと配属されたものである。あとから出すから、これを追加保証しようということは、とんでもないことだと思うのです。これは質問ですが、どうですか。
  34. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) お答え申し上げます。  先ほど、外債発行に関する保証のいろいろワクの定め方等につきまして、いろいろ御高見をいただきましてありがとうございました。先生の御高見まことにごもっともでございまして、十分研究をさしていただきたいと思います。  そこで、ただいまの御質問でございますが、第二条第三項の規定に関してでございます。この点は、外貨債をなくしました者に対して、これはそれぞれの起債地によりまして債券券面の規定または法令もしくは商慣習等によりまして、つまりかわり証券を交付することがあるわけでございますが、そのかわり証券の発行額が実はあらかじめ予測できませんで、予算で定める限度額というものの実はワク外にいたしておるわけでございまして、その点、先生のまさに御指摘のような問題があるわけでございます。  そこで、これはなぜこういうことを規定せざるを得ないかという点でございますが、先生から戦前の外債発行の制度、手続等につきまして詳細な御説示がございました。まことに一々ごもっともなお話と承っておったわけでございますが、これは申し上げるまでもないことでございますけれども、滅失または紛失をいたしました証券の取り扱いにつきましては、いわゆる英米型と大陸型の二種類がございますことは、もう先生先刻御承知のとおりでございます。  ドイツ等の大陸におきましては、わいわゆる公示催告の制度がございまして、滅紛失をいたしましたところの証券の番号を公示をいたしまして、一定期間内に申し出がなかったときには原証券を無効として代証券を発行すると。この場合におきましては、代証券についての、つまり証券は限度額の外に出ることはないわけでございます。  で、一方の英米型のほうでございますが、ここには実は公示催告の制度がございませんために、証券の滅紛失を申し立ててまいった者がありますときには、先ほど御指摘がありましたように、保証状を徴求をいたしました上で代証券を発行することになっておるわけでございます。したがいまして、この場合には原証券が制度上無効になりませんために、理論的にはその代証券の分だけ保証額がふくらむことに理論的にはなるわけでございます。  で、本項はその英米型の場合に、実は備えた規定であるわけでございますが、これに対して、先ほど先生から、そういうものは保証状をとった上で発行するが、後日そのなくしたと思ったものが出てきたというときには、それはやっぱりもう殺してしまうという措置を、手を同時に打てばいいわけで、保証限度を拡張する必要はないではないかという御指摘でございますが、まことにごもっともなことだと思うのでございます。ただ、この点、実は戦後米国での外債発行が相当ございます。その際に、アメリカ側のいわゆるアンダーライターの、いろいろ法律意見を申しますところの顧問弁護士等があって、それらといろいろ折衝いたしてまいりました経緯から申しますと、どうも制度的に、つまり公示催告という形できちっと効力を殺してしまうという制度が確立しておるならばともかく、そうでなくて単に保証状をとって出しておるというような場合には、どうもやっぱり法律上、制度上これが無効とならないものでございますから、そこを話し合いでもって殺してしまうというのは、実際問題としてなかなかむずかしい、法律論としてもむずかしいというような難点がいろいろあげられまして、どうもなかなかその点が納得を得るに実は至らなかったわけでございます。  そういうような事情もございまして、この点は今回御審議いただいておりますこの法律案に初めて出てきたわけでは実はございませんで、戦後におきまして従来出しております外積に対する政府保証の根拠規定を単行法でそれぞれの機関ごとに出してまいったわけでございますが、その単行法の中にも美はこれと同じ規定がすでに存在しておるわけでございます。で、それを今回この法案を出します場合に統一をいたしまして、この中に一本化しておさめたという事情にございますものですから、その点まさに御指摘のようなこともあろうと思います。何とか御指摘のような線でやれれば望ましいとは私どもも考えておるのでございますけれども、ただいま申し述べましたような事情がございますので、何とぞ御了承をいただきたいと思います。
  35. 津島壽一

    ○津島壽一君 ちょっと答弁が私の何にぴんとこなかったのだ。それではお伺いしますが、再質問ですがね、千万ドルを保証契約して新規発行して、あとでなくなったというのができた。五万ドル出すと、千五万ドルという額を大蔵省は現在額の中に入れるのですか。前のやつを除斥しないのですか。
  36. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) 理論的には、まさにそれだけ現在額がふくらむわけでございますから、そういうことになります。
  37. 津島壽一

    ○津島壽一君 これは重夫問題です。千万ドル発行して、なくなった人にかわり証券を出して、しかもいまのような契約規定が——ごらんになればわかるように、前のものがなくなったということの明確な証拠がなくちゃやらないのです。しかも、そういう明確な証拠があっても、債務額がふえて、千五万ドル電電開発公債の債券があるのだという。評価額を落とすかという問題はどうなんですか。実際として私は落とすものだと思う。かわり証券を出した以上は、これに見合ったところの五万ドルは落として、あくまでも現在額は千万ドルでいかないと、これはもうたいへんなことです。かわり証券を出すという便宜を私は反対しているんじゃないですよ。しかし、取り扱いがそういうことだと、どうも千万ドル借りて千五万ドル現在額だというような矛盾が起こるのですね。これはこの程度にしておきましょう、まだ言いたいけれども。  どうも私は国債のいままでの取り扱いが、過去の外債にもあるのですから、この規定は。現にそれがまだ償還期に達していないものがあるのですから、そういうような取り扱いでやるということは、これはいかに相手方の弁護士が言おうが、これは弁護士を説得すればいいのです。これは私は納得いかないけれども、前に日本にそういうものがあったというが、その立法が悪いのです。それを受け継いでこれ移したというなら、その立法を変えなくちゃならぬ。これは私は自説を曲げないけれども、これは議論するところじゃないから……。  しかし、よくお考えになって、これは何万ドルか知らぬけれども、千万ドル発行して五百万ドルなくしたという人があるとする。なくしましたから五百万ドルくださいというその場合に、千五百万ドルの債務を負おうとしておるのです、保証は。私は、なくなったものは保証債額から落とさなくちゃならぬと思う。そこで余裕ができるから、かわり証券を出して、あくまでも現在額は千万ドルで、それ以上の債務は国家が負うちゃいけないのです。しかし、そのかわり証券を持った人には、これはもうだれかがなくなったと思ったがありましたといって持ってくるまでは、これは現在額に入れる。それ以上の債務を負っちゃいかぬですよ。それなら金額を大体、かわり証券を発行する限度はこのくらいにするとかなんとかしないと、限度なしに国家が債務保証をやるということは非常に危険だと思います。予算総則も多少書き方がまずいのですよ。これは直す余裕もないのですが、これは懸案にし、いまのは了承したとは申しませんが、次に移りましょう。これはもっと研究していただきたいと、こういう希望をしておきます。いまの説明では、これはもう国家が二重に債務額を計上するなんていうことは、私はよくないと思うのです。これはどうぞ研究問題に残しておきますから……。
  38. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) ただいま津島先生御指摘になりました点は、具体的に従来出ております法律の中で述べますと、たとえば日本電信電話公社法の中で第六十二条でございますが、六十二条の第二項は、長期借り入れ金、一時借り入れ金、それから電信電話債権、これの限度額に対する国会の議決の関係を規定した条項がございます。これを第二項で「前項の規定による長期借入金、一時借入金及び電信電話債券……の限度額については、予算をもって国会の議決を経なければならない。」、その際にカッコ書きがございまして、その電信電話債券の下のところにカッコで入っておりますが、「(同項但書の政令で定めるところにより、外貨電信電話債券を失った者からの請求によりその者に交付するために発行する外貨電信電話債券を除く。)」、そこでカッコが閉じてございます。すなわち、予算をもって国会の議決を経なければならない限度額というものの中には、ただいまの滅紛失による発行、代交付、後にかわって交付されましたそういう債券の分については除かれておるというのが実は現行法律でございます。まあ先生のおっしゃるように、それが……
  39. 津島壽一

    ○津島壽一君 もうわかりました。それは規定が悪いというのじゃないですよ。前にこういうことが書いてあるからこうやったのだということは、説明にならない。
  40. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) 先生はまさにこの規定が悪いのだと……。まだあとがあるわけです。これは先生は、この規定自身がよくないというお話……
  41. 津島壽一

    ○津島壽一君 それと同じことが前に書いてあるから、研究ができるわけですから研究してください。ですから、これは非常に重大な問題だと私は思う。かわり証券を出すということ自体は、日本政府は昔から認めているのです。しかし、保証限度額はそれによって増加するということを自分で言おうということは、それでは幾ら限度額増すのですか。無限に増してもいいじゃないか、発行額まで。そういうことは予算総則なんかにありますか。いまの法律はありますね、法律は。今度のこれをやるというのでは、これはだんだん大きい問題になってくる。こういうわけで言っているので、研究してください。おかしいですよ。  これはほかの法律から見ても、そんなばかなことはあるかと、こう思うだろうと思う。一方がなくなるわけですよ、払う以上は、代証券を出す以上は。これは除斥しなければならぬ、手続としては。もし見つかってきたら、こっちに出しておったのを消すのですよ。二つ払いませんよ、これは二重払いは。だから、どっちかが消えるという性質のものですから、一千万ドル保証したといって、一千万ドルの債務で、これに加算するなんていうことは、これは私は非常におかしい、両方とも有効だというようなことを言うのは。これは政府としてはできない。二重払いになってしまう。ですから、そういう意味において、まあ研究してください、申し上げておきますから。  ですから、その意味において、いまおっしゃったから言うのですが、減債基金の出すやつも、やはり加算するということは予算総則に書いてある。これも同じ観念で、ごっちゃになっている。減債金というのは発行総額のうちで毎年払う金額だから、これは保証限度額の中にあるわけですよ。別に減債金を払うわけじゃない。したがって、千万ドルなら千万ドルでいいのですが、減債金を出すと五千万ドルになるなんといって加算したりする必要はないのですね。これはこの法案に書いてないことですけれども、その思想がこんがらがって、総則をつくり、こういう表現ができるというところに、どこかに、私は厳粛な——債務というものがはっきりしないということはよくないです、国家の債務を、国民の債務を。これは重大問題だと思う。金額の問題でもわれわれはそういうことは想像もしなかったものが出てきて、しかも前にあるというのは非常にわれわれ怠慢だったと思うのですが、そういう意味において御検討願いたいと思います。  それでは、次の問題に移りましょう、時間がないから。そこで、第三の問題として、まあ第二といってもいいのですが、フィスカル・エージェント、第三条第三項、これも規定する必要があるかどうかという問題がある。国債の発行条件の一つのなにとして支払い委託をきめるということであるだけのことである。これはここに件かなくても実際やるのです。承認はするのですから。ここだけ特記して、特に「外国の銀行、信託会社又は証券業者に委託する」、内国の銀行はどうしたかと、こういうことになるのですね。こういう規定はわざわざ私は置かなくてもいいと思うのですね。政府はこういうことをやろうというのなら、外国の銀行、業者にそういうことを言えばいいのです、口で。法制できめると、内国の銀行はどうなるのかということになるのですね。内国の銀行、業者でもやらせているわけですね。昔は貯金銀行といえば、預金銀行ですから、フィスカル・エージェントだったのですね。その規定をやるのは非常に目ざわりであって、そこに入れるべき規定であるかということに疑問があると何時に、書けば、これは日本の銀行もやれるのだということもあわせて書いておかないといけない。外国の銀行にこれはしなくちゃならぬという規定なら必要ですが、強制規定ではないのですから、この事柄のごときは私は法制化すべき問題ではない、こう言っているのですが、これはひとつ質問するわけですが、どうですか。
  42. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) お答え申し上げます。  この点、例を日本電信電話公社法にとって、申し上げますと、電信電話公社法の第六十二条の第九項でございます。この中でただいま先生御指摘の国内の銀行その他に委託するという場合の規定が実はございます。第九項で「公社は、郵政大臣の認可を受けて、電信電話債券の発行、償還、利子の支払その他電信電話債券に関する事跡の全部又は一部を銀行又は信託会社に委託することができる。」というのが九項にございまして、さらにその先の十一項で外貨債について外国の銀行等に委託することができるという、内外に書き分けた規定があるわけでございます。このうち外貨債の外国の金融機関等に対する委託の分をこの本法の第三条第三項に取り入れてまいったわけでございますが、国内のものに対する規定はこれは従前どおり依然としてそのまま効力を生ずるということでございます。  ただ、この点確かに、先生御指摘のように、こういう事務委託について一々法律規定する必要があるのかという点は、確かに問題があろうかと思います。あるいは法律の根拠なしにやれるのではないかと。したがって、この点は法制局とも審議の段階におきましてもいろいろ議論もいたしました。やはり結局は念のための規定という性質がかなり強いという感じを持っておるわけでございまして、念には念を入れて規定をいたしたという趣旨でございます。
  43. 津島壽一

    ○津島壽一君 まあもっと言いたいことはあるが、その点はこれだけにしておきましょう。  最後に、これは複雑な規定ですが、第四条の一般担保の規定、これはこれでいいのです、原案どおりで。私の疑問なのは、たとえば特別の担保を提供しない外債を発行しているのですね。最近はみなそれでしょう、電電でもどこでもね。その場合に、一般担保ということでありますけれども、もう一つ条項はかかっていると思うのです。それは将来特別の担保を提供した場合に、この債権はパリパッシュというか、比例、フロラタによって担保権を得るという規定があるのですね。これは戦後発行したもの、戦前のものにもあるのです。これはこれだけはっきりここに書くのなら、そのパリパッシュによって特別担保を出した場合にこれに均てんするという条項ですね、これは全然うたわないでいいのかという疑問が起こるのです。担保条項なら、その点に触れないと私はおかしいと思うのです。その分だけについて、当時の政府は勅令を出して、将来特別担保債を出したらこれが及ぶことにしておる。しかるに、本条ではこういうことを規定していないのですね。しかし、より必要なのは、そういった担保をもって発行する外債を発行した場合には、さかのぼって既発の外債に特別担保が移るという規定ですね、これは非常に新規な規定なんであって、その辺は全然触れないのはどういうわけですかと言っているのですが、いかがしょう。
  44. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) この第四条でございますが、一般担保の規定は世界銀行からの借り入れについての規定でございまして、世銀からの借り入れ契約におきましては、償還の担保として借り入れ人の財産の上に担保権が設定されたときには、この担保権は設定の事実によって平等かつ比例的に貸し付け金及び債券の元本、利息その他の手数料の支払いを保証すること、並びにこれらの担保権の設定にあたってはその趣旨の規定を明示することということを契約条項として世銀から要求されておるわけでございます。そこで、たとえば世銀から借款を受け入れております法人が第三者から資金の借り入れをするにあたりまして、その所有する土地の上に抵当権を設定したという場合には、世銀との間においてはあらためて抵当権の設定契約をすることなしに自動的に世銀と当該第三者と同順位の抵当権設定者となるという意味でございます。そういう趣旨でこの規定が設けられてあるわけでございます。
  45. 津島壽一

    ○津島壽一君 いまの、将来の担保を提供した場合に必ずそれに、何というか、フロラタに担保権をとる、その問題もこの規定は含んでいると、こう見ているのですか。そういう場合もこの四条の規定は含んでいるのだという解釈ですか。将来特定担保の公債を出したときに、その時分に、その担保権に対して、たとえば開発銀行の発行したものとか、電電の発行したものとが、みなその規定が入っているのですね。これは世銀だけの問題じゃないのですよ。世銀だけの問題じゃない。その分は法制上の何というか、裏づけをしないでもいいのだという解釈かという問題ですよ。ここに書いていることはよくわかっているのですよ、私は。これはこういういまの条項もあるでしょう。もう一つある。その分がどうなんだというわけなんですがね。
  46. 原秀三

    説明員(原秀三君) ただいま先生御指摘の他の担保権につきましては、それぞれ特別の法律におきましてこの規定がございます。たとえば日本電信電話公社法について申し上げますと、第六十二条の第五項でございますが、ここに規定がございまして、「第一項の規定により公社が発行する電信電話債券の債権者及び公社に対して資金の貸付けをしている国際復興開発銀行は、公社の財産について他の債権者に先だって自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」、その次に第六項の規定がございまして、「前項の先取特権の順位は、民法の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。」という規定が、それぞれ単行法におきまして規定されているわけでございます。
  47. 津島壽一

    ○津島壽一君 ちょっと趣旨がわからなかった。ここに書いてあることはもうすでに契約なんかで書いておられるわけですね。この規定は契約に書いてあることをうつして一般担保という規定をつくったので、新しいものじゃない、そのままここへ法制化したのだ。この趣旨はよくわかるのだから、これはけっこうなんです。ただ、これで担保条項として不完全なものは、特別担保を出した時分に、既発の債券は権利者がそれに均てんしてくるという約束をしているものがあるのですね。そういうものはもう捨てておいていいのかという質問なんです。これは将来の制約を非常にする、担保順位を変えることですからね。一般担保よりもっと上にくるのですから。それは触れないでいいのかというだけの点なんです。これはいいですよ、この規定は。これはあるがままそのままに書いてあるのですから。なくてもいい。そのとおり書いて差しつかえはないでしょうが、新規の問題には触れないのかという質問なんですがね。
  48. 原秀三

    説明員(原秀三君) これはたとえば世銀との保証契約、貸し付け契約について御説明申し上げますと、世銀の貸し付け契約におきまして、先生からご指摘の担保条項につきましては、借り入れ人は、銀行が別に合点をしない限り、借金の担保として借り入れ人の財産の上に担保権が設定されたときは、その担保権は設定の事実によって平等かつ比例的に貸し付け金及び債権の元本、利息その他の手数料の支払いを保証すること、並びにこれらの担保権の設定にあたっては、その趣旨の規定を明示することを約束する、こういった規定があるわけでございまして、世銀ではこれだけのことを要求いたしまして、それ以上のことを要求していないわけでございます。したがいまして、この法律にございます一般担保の規定で十分これはカバーできるものと、こういうように解しまして、この規定を置いたわけでございます。
  49. 津島壽一

    ○津島壽一君 今度の質問には答弁要らないですが、国際復興開発銀行等という意味は、これは一般のシンジケート・バンクで発行するものも含んで、開発銀行だけの問題じゃないんですね。したがって、これは広く外債発行をする場合の特別措置を書いたものだと思うんですね。現に第三条はそういった意味において広い範囲の規定がここに出ている。したがいまして、担保条項についても規定する必要がある事項はなるべく漏さないで明瞭にしたほうがいいじゃないかという意見です。世銀との間に、こういう契約がある。これだけ買いたいんだ。世銀はそれでいいでしょう。しかし、それ以外の担保条項があるものは一体どうなるんだということを質問しているんです。たとえば開発銀行の発行した社債、ボストン、ジェロン等の引き受けたもの、また電電公社の発行した社債には、違った担保条項があるというわけですからね。その担保条項の中でむしろ法制的な裏づけを必要とするものはお書きになったらどうかと。往年これと同じような担保条項があったときには、特に規定を勅令できめて、ほかのことは書かないけれども、そういった事実があるんです。大正十四年の場合はそうやったんですが、これは問題があって、政府のほうでどうしてもこれは規定が要るということから書いた規定があるんですね。今度も全体に通じたもので、何々等と書いてあるけれども、これは非常に広い意味の等なんです。それの規定なんですから、ほかのを発行する場合についてもやはり担保条項として重要な事柄は、こう書く以上は、どうしてそういうものに触れないかということが一種の疑問になると、こういう趣旨なんです、私の言う意味は。それはもうわかっていることだとおっしゃればそれきりであるんですが、もう一ぺんだけ簡単に言ってください。
  50. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) それはちょっと私どもの御説明のことばが足りなかったかと思うんでございますが、ここにございます第三条第一項の規定による発行する債権の債権者、これは本法の三条の二項で、いわゆる世界銀行がその引き渡し債券というものを発行を求めるということがございますので、それに対応して債権が発行された場合の債権者でございます。したがいまして、広く一般の債券という意味はございませんで、世界銀行の借款の範囲内において世銀が必要に応じて債券の引き渡しを要求する場合、その要求があったときに引き渡す債券の債権者というものでございますので、その債権者は結局世界銀行からその債券を買い取る、そういう立場になります。その立場の人は世界銀行と同様の担保上保護を与えるべきじゃないかということでございますので、ここは世銀と同等の地位をその債権者も持つということをもって世界銀行のほうは満足をいたしておるわけでございます。
  51. 津島壽一

    ○津島壽一君 この点はこれでいいです。したがって、検討を要する問題はよく検討してください。いずれ話し合いをいたしましょう。じゃ、委員長、これで終わります。
  52. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 津島さんの質問に続いて少しお尋ねをしておきますが、国債あるいは政府保証債として大体両方で、億三千万ドルのものが入ってくるわけですね。それがどこに引き当てられるかということについては、いままでのお話を承っておりますと、大体電電にそのうち二千万ドルを当てるんだ。他の問題については全然予定をされておらないのか、まあそういう問題についてあなたのほうとしては一応積み上げた数字であるから、こういうようなものは予定しておるということは言えましょうか。
  53. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) ただいまの一億三千万ドルのうち六千五百万ドルは産投特別会計発行の国債でございます。したがいまして、これは明らかに産投会計の収入金になるわけでございます。その産投会計は、その金をどこへ流すかということも、実は特別会計の中できめて予定をいたしておるわけでございますが、これは道路の関係に使う予定になっております。  次に、残りの六千五百万ドルは政府保証のものでございます。その政府保証のもののうち、どの銘柄にそれぞれ幾らずつという点でございますが、この点は実はしばしば申し上げてまいりましたよりに、その点をはっきり今日まだ確定し得ない状況にございます。ただ、昨年度の、あるいは一昨年度以来の実績等から考えますと、従来発行してまいりました政府保証債の銘柄としては日本開発銀行、日本電信電話公社、それから東京都債、大阪府市の、これはマルク債でございますが、マルク債、そういうようなものが従来の過去における実績としてあるわけでございます。したがいまして、昭和四十年度の発行計画を考えます場合にも、当然そういう従来の起債市場になじみのあるもの、同時に、社会資本の充実に寄与するものといったような観点から、銘柄が選ばれてまいろうかと思うのでございますが、今日確定的ではございませんが、一応候補として考えられていますのは、やはり先ほど申し上げましたような過去のあれから申して、大体日本開発銀行でございますとか、あるいは東京都債でございますとか、そういうようなことが実は考えられております。ただ、ここで従来出ておりませんでして、もし市場の状況が許せば発行を検討しようかということになっておりますのが例の日本国有鉄道、国鉄についてもし発行が可能であればそれも検討いたしたい、かように考えておりますが、それぞれの銘柄についての金額は、やはりそのときそのときの市場の状況等でいろいろまあ変動もございますものですから、今日直ちに確定し得ないという事情でございます。
  54. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうすると、産投に行く六千五百万ドルは別として、他の六千五百万ドルはこれを下回る場合もあり得るんだと。必ず六千五百万ドルは、予算総則等では財投の中の計画資金に入っちゃっておる。で、銘柄やいろいろな問題についての問題もあるんだ。そうするとこれはくっつかないことがあるんですね。完全消化させるんですが。
  55. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) これはまことに先生の御指摘のように、何ぶんにも貸本市場、ことに外国資本市場を相手に発行しているわけでございますから、確実にこれがきちっと消化できるかどうかという点は、必ずしも事前に保証はないわけでございます。ないわけでございますけれども、私どもとしては過去の実績あるいは今後の国際金融情勢あるいは資本市場の状況等々を見通しまして、まあまあおおむね昨年実績程度のものは大体確保できるのではなかろうかと、かよりに実は考えておるわけでございます。  ただ、過去におきましても、予算総則のワクはちょうだいいたしましたが、それが発行を終わらなかったというものがございます。その場合にはさらに翌年度の予算総則におきましてその残ワクを繰り越し使用できるということになっておりますので、そのワクを新たな年度に追加をいたしまして、さらに使ってまいるということをいたしておるわけでございます。
  56. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 続いて、世銀借款の一億五千万ドルですね、これは借りられることだけきまったといりのですね、総額だけ。それについてはいま作業として、たとえば開銀が借りる、あるいは電電が借りるというようなことについての話は進んでおるのですか、どうなんですか。
  57. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) これは非常に進んでおりまして、私ども日本側といたしましては、日本道路公団、東京−名古屋間を結ぶ自動車専用道路の計画がございますが、そのうちで静岡−豊川間の部分に関するもの、これが第一でございます。それから、第二といたしましては、阪神道路公団の神戸一号線と申しておりますが、その分。第三といたしましては、東京都の行ないますところの上水道事業、こういう三本のプロジェクトに対して借り入れを期待をいたしておるわけであります。それに対して世銀側としてはいろいろ審査を続けておりますが、今日までのところ、およそこの三つの機関に対して出すという点についてはほぼ期待してよかろう、よほど今後特別な事情が起こらない限り大体この機関についていくということについてはまあよかろうかという程度までまいっております。ただ問題は、あとそれぞれの機関ごとに金額が幾らになるかという点が、まだ最終的にきまっておりません。ただ、これにつきましても、過去のいろいろ実績等もございまして、従来からの例から申しますと、借款総額のうちのほぼ半分程度日本道路公団に向けられておるということから考えまして、明年度におきまして大体ほぼ半分が日本道路公団に当てられるのではなかろうかと思っております。残りの分のうち、それぞれ工事費の額に応じまして配分が行なわれるということになりますと、やはり東京都の上水道事業が工事規模としては阪神より大きいものでありますから、このほうにかなりの部分が行く、残りが阪神に参るのではなかろうか、大体この見当までついてまいっております。
  58. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いろいろな話が出ておりますけれども、法律の第二条に上がっておりますたとえば輸銀がどうするとか、あるいは高速道路公団、こういうようなところは具体的な要望等はまだ出ておらないわけですか。
  59. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) これは具体的な話はございません。それで、なぜこれがこういうところに列挙されましたかという点でございますが、日本道路公団、首都高速道路公団、電源開発株代会社、日本開発銀行、日本国有鉄道、これは従来世銀借款を受け入れた実績のある機関でございます。そのほか輸出入銀行と電信電話公社がございますが、これは世銀借款の受け入れの実績はございませんけれども、世銀借款受け入れに関する規定が従来の法律のうちで整備されておったものでございます。これらをここに列記をいたしたわけでございまして、この中で当面問題になっておりますのは、先ほど申しておる日本道路公団でございます。
  60. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 外貨債の問題についてはいろいろな問題があると思いますけれども、あなたのほうでつかみにくいかもしれませんけれども、通産省等との連絡もあったと思いますが、一体民間は昭和四十年度はどのくらい民間債があるであろうかというようなことについての見当は全然つきませんですか。
  61. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) 民間債につきましては、実は国際金融局のほうの所管でございますので、国際金融局長から……。
  62. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 民間債につきましては、政府関係債と調節をはかりながらできるだけたくさん起債を認めていきたいというふうに従来考えておったのでございます。しかしながら、御承知のとおり、米国におきましては利子平衡税を一昨年の七月施行しておりますし、またヨーロッパ市場は最近の利子平衡税の強化によりまして若干見通しがむずかしくなっておるわけでございます。さらに、ヨーロッパ市場で一昨年の暮れごろから発行いたしました民間債は、国内におきます株式価格の低落等によりまして、額面を割っておるものがほとんど大部分という状況でございます。したがいまして、従来のようにコンバーティブル・ボンドあるいは直接借款というような形で、どの程度に来年度におきまして民間債が発行できるかということにつきましては、非常に見通しがむずかしい状況でございまして、特別に数字的に予測し得る段階にはないわけでございます。
  63. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 利子平衡税の話が出たわけなんですけれども、利子平衡税を一億ドルのワク内においては免税措置をする、こういう話ですが、これは一年限りになるのか、向こうはどんなふうな大統領の行政命令が出るのか、およそ予想されておりませんか。
  64. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 利子平衡税の強化に関します大統領令は、昼下米国の財務省におきまして作成中でございまして、近いうち発表になると思われます。私ども従来話し合いました範囲におきましては、利子平衡税はさらに再来年まで延長されることになっておりますので、各年につきまして一億ドルの政府債及び政府保証債については免税するという申し合わせになっておるのでございます。大統領令におきましてもおそらくは同様趣旨の規定が盛り込まれるものと考えております。
  65. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 熱心に外貨債の発行をやられておるわけですが、国際収支の面からいえば、資本収支でこれだけ入ってくるわけだからいいが、しかし、今度逆にいえば、返済するほうのことも考えられる。返済は昭和四十年当初の全部で、外貨債と称するものはひっくるめてでいいですが、どのくらいありますか。
  66. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 長期資本の全体について大体の見通しを申し上げますと、長期資本はいわゆるバンクローンと称しております銀行からの一年以上の借り入れ、世銀、アメリカの輸出入銀行からの借り入れ、外債、それから外国人の持っております証券等があるわけでございますが、大体支払いといたしましては、昭和三十八年度におきまして三億一千四百万ドル、三十九年度におきまして三億九千六百万ドル、それから四十年度につきましては、いまのところの見通しでは五億九千万ドルということに相なっております。
  67. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 まあ毎年ふえてくるわけですが、逆に今度は返済するときのピークというのはおよそ何年ごろが予定されますか。
  68. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 既存の長期債務につきましては、年々の支払い計画が契約上きまっておりますので、その計数は算出することができるわけでございますが、さらに今後の借り入れが加わりますと、今後の借り入れが幾ばくになるかということは、これはなかなか予想がつかないわけでございまして、したがいまして、既存の分についての計数はまあ計算できますといたしましても、今後の借り入れをこれに加算してピークがいつになるかということを推測することはなかなかむずかしいと考えられますので、そういう特別な作業はしておりません。数字はございません。
  69. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いままでの借り入れで、たとえば外債が五年だとか三年だとか十年あるいは十五年、十七年等々の問題もあるしと思うのです。それから、世銀借款にいたしましても、期限が何年ということがあると思いますが、心配をしておることは、今度法律改正財政法六条の改正が出てきておるわけですが、それと関連して、いままでのいわゆる既存借り入れ額に対しておよそ想定されることは何年くらいがピークになるか、それはどれくらいの数字になるかということをつかんでおいでにならないというのは、ちょっとおかしいので、全然そういうことは考えておいでにならないわけですか。
  70. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) 私どもの所管で国債、政府保証債の関係に限ってただいまの先生の御質問にお答えいたしたいと存じますが、これは昭和四十年度の発行はまだ確定いたしませんが、一応ただいま予算で見込んでおりますのが発行されたものとして、四十年度末現存を押えまして、そこからずっと将来にわたっての見通しを立てますと、ピーク時が昭和五十一年度で、五十一年度がピーク時になる計算でございます。
  71. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 どのくらいになりますか。
  72. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) 国債、政府保証債合計いたしまして、百六十八億八千二百万円の予定でございます。
  73. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 既存の債務の償還予定について申し上げたいと存じます。既存の債務を三十九年の十二月末にとりますと、世銀、輸銀、民間の長期債務を合わせますと、十七億九千ドルになっております。それから、外貨債につきましては、国債、政保債、民間債を合わせまして六億四千二百万ドルになっているわけでございます。それの償還予定は四十一年、四十二年、四十三年、四十四年度まで一応計算をしてございます。数字を申し上げますと、世銀、輸銀及び民間の借り入れにつきましては、川十年度が一億、四十一年度が三億四千七百万、四十二年度が二億四千七百万、四十三年度が一億五千四百万、四十四年度が一億二千万、これは元本についてのみでございます。それから、外貨債につきましては、四十年度が二千万、四十一年度が二千百万、四十二年度が二千三百万、四十三年度が三千四百万、四十四年度が三千二百万という数字になっております。
  74. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 いまおっしゃったのを両方一緒にして、いわゆる外貨債の全体を償還するときのピークはどのくらいになり、それは何年ごろだということは、今度の財政法の六条の改正は時限立法ですけれども、それを一応考えられて、いまお話をちょっと伺っても、一億から三億くらい返さなくちゃならないものがあると。そうしますと、いませっかく世銀、あるいは借款、あるいは国債、政保債等を出されて、二億ないし三億五千万ドルくらい借りられているけれども、今度はそれだけでちょんちょんになっちまう。そういうようなときには、まだたくさんのものをやらなくちゃならないというような、たいへんな時が来るのじゃないかということを想定して、実は心配しながらどのくらいのものであろうかということをお尋ねしているわけですが、一応外貨債発行のトータルとピーク、二、三年のときでよろしいですから、資料として、こんなときがこれくらいずつ返さなくちゃならぬのじゃないかということを、資料として御提出願いたい。これはよろしいですね。
  75. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) はい。
  76. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 それから、今度の法律改正で、いままでは銘柄別にというんですかやれたものが、今度は予算総則で一括してしまうのだということについて、いま津島先生も、どうもあまりいい改正じゃないじゃないかというような御意見であったわけですが、あなたのほうがこう予算総則で一括してやるのだというほんとうのねらいというのはどこにあるんですか。
  77. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) ほんとうのねらいがどこかとおっしゃいますことは、この前、前回も実は御質問にお答え申しているわけでございまして、前回申し上げたとおりの、全くそれ以外の何ものでもないわけでございますが、要するに、主として外国において発行いたします問題にからむ特有性でございますが、そのためにあらかじめ銘柄、金額というものを確定して、いわばスケジュールを組んでそのとおりずっといかないという、実はなかなか悩みがございます。そういう意味で、保証の原則としては六千五百万なら六千五百万を国庫からちょうだいをしておきまして、そのときそのときの市場の状況に応じてどの銘柄を幾ら出したら一番ベストであるということを実行してまいるということ、実はほんとうのねらいと申してもそれ以外に何の理由も実はないわけでございます。実際にこの二、三年来外債発行、世銀借款等をやってまいりますというと、どうしてもそういうことがある。  それから、それと同時に、世界銀行のほうにつきましては、ただいまの外債発行と若干ニュアンスが違うわけでござい幸すけれども、先ほど先生御指摘のように、一億五千万の内訳はどうかというような問題は、お話のように、つまり予算編成時までに一億五千万ないし一億ドルという総ワクの合意はできておりましても、それの機関別の配分が世銀当局の審査の関係で最終的に確定できない事情がございます。ですから、これは編成前に確定できれば一番望ましいと私どもむろん思っているわけでございますが、そのところが一月、二月の差でどうしても確定しない。さればといって、予算は組んでいかなければならないということでございますから、そこで保証の総ワクの限度だけを押えていくという形をとらざるを得ない。しかし、それはやはり法律の根拠に基づいてやらねばならぬ。  で、実は、衆議院におきましても、武藤山治先生の、反対討論の際、これは財政法律主義を離れて財政行政主義に随するおそれがないかというお話もあったわけでございまして、私どもとしては、決して財政行政主義というものに走るつもりは毛頭ございません。あくまでやはり財政法律主義でいかなければならない。そこで、これも財政法のワク内で処理するということになりますと、やはり法律をもって、いまの一括総ワク保証限度というものを定めるということは法律をもって定めてまいらなければなりませんし、同時に、そういう機関というものもやはり無限の、可能性をそこに開いておくことはよくないので、やはり法律の上で具体的に機関を限定できるということが一番望ましいわけでございますから、先ほど先生の御指摘のような世銀につきましても例示いたしましたし、外債発行機関につきましても法律上機関名の出せるものは出して明定するほか、具体的に機関名を出せないものにつきましては、その機関を選ぶ場合の基準法律で定めまして、その基準に従った機関に対してのみ保証し得ることということで、保証対象の機関もやはり法律上限定をいたすといったいろいろの措置をとってまいったわけでございまして、その点はあくまで国会の御審議を尊重し、財政法律主義のたてまえをくずさないで、その範囲内において実務上の不便というものを何とか切り抜けていき、最小限度の制度をここにお開きいただこうということにほかならないわけでございます。
  78. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 これは若干議論にわたりますけれども、ぼくは、開銀にしろ、輸銀にしろ、国鉄にしろ、電電にしろ、道路公団にしろ、みな長期計画というものを持っている。そんな一年や二年というものではなく、長期計画がある。その中で原資を獲得するにはどうやっていくのだということがきまってくる。たとえば、来年度の分はもう去年できておる、ことしの分は去年ではなくておととしできておる、こういうふうに大体なっていると思うんですがね。ですから、何か個々におやりになっても、私はそう運用上、今度のような総ワクにしてしまったほうが非常に能率があがって好都合だというふうには思えないわけです。なるほど手の内を見せてしまうとかなんとかということならば、逆に日本の国の予算がこれだけ、今度一億三千万なら一価三千万ドルの外貨債、政保債を発行するということを外国にわかるようにしてしまえば、手の内を見せたことと同じことになる。だから、個々にやるということがどうしてもできぬという理由がちょっと見当たらない。
  79. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) その点は、先生おっしゃるように、確かに個別機関ごとに保証限度をしばっていくということは一番望ましいというふうに私どもも考えておるわけでございますけれども、実際問題として、先ほど来申し上げておりますように、たとえば開発銀行の外債を幾ら出せるか、これはかりに二千万ドルと予定しておりましても、そのときの市場の状況がよければあるいは二千五百万ドル出せるということもあり得るかと思います。あるいは三千万ドルいけるかもしれません。しかし、また同時に、その開発銀行という銘柄では、これはなかなかそのときの構外で通りにくいが、たとえば電電公社というものが出た場合のほうがこれは売れるということであれば、その電電公社でいくということになります。したがって、やはりその機関、銘柄もしくはそれ自体の金額というものを確定をいたしましても、なかなかそれに出湯の状態が合わないというおそれもあるものでございますから、そこは市場情勢に即して弾力的な発行をしていく、全体としてその長期安定外資の確保が確実に行なわれるという態勢をとろうと思いますと、やはり従来の実績からまいりまして、やはり別々に抑えていくよりは、こういう形にしていただきましたほうが終局の目的を達しやすいということでございます。
  80. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 財投の原資確保の問題について、外債あるいは世銀借款という問題について、実は一企業——企業といってはおかしいですけれども、機関が、いろいろと努力するのは当然ですが、そういうことよりも、国のほうで思い切ってこうした問題についてはうんとめんどを見て、総ワクを、何というか、確保し、そうして、しかもそれが消化されるように、国のほうでうんと努力されることを約束されるわけですか。実際、たとえば電電が外債を発行するときに、これは電電の努力によってのみ消化されるものか、国のほうでもうんと消化について協力されるわけですか。
  81. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) その一は、本来のたてまえから申しますと、やはりそれぞれの発行機関がそれぞれの企業努力によって処刑していく筋合いのものかと思います。で、国内におきましての、国鉄その他各機関に対する財政投融資にいたしましても、先生は沿革を非常によく御存じだと思うのでございますが、昭和二十七、八年ごろまでは、実は各機関ごとの債券を発行するにいたしましても、国鉄なら国鉄の努力でここまで、やれるというんなら一応組んでおこう、実際にそれが発行し行なくても、政府としてはその穴埋めをするとかなんとかいうことはしないというような形を実はとっておったわけでございます。ところが、どうもそれでは社会資本充実という大目的からいってぐあいが悪いということになりまして、昭和二十八年度以降は、財政投融資計画がちょうど今日のような姿に組まれまして、そこへ組み込んでまいったところの原資の手当てとしては政府が責任を持つというような形になってまいったわけでございます。  したがいまして、現在でも国内で政府保証の公募債を出しておりますが、その公募債についても、それは売れたら売れただけでいいじゃないかというわけにはまいらなくなりましたものですから、予算編成の際に、事前にやはり各債券消化先、主として大口の金融界でございまするが、それを中心としていろいろ打診をいたしまして、確実に責任を持って政府がいけるような態勢を整えなければならぬ。そういう意味で、御承知のように、金融機関資金審議会というものもできまして、その審議会におはかりをして、そうして、たとえば来年度でございますと、三千二百何十億という政府保証債の発行、これに対して資金審議会が、それはよろしいと、それは引き受けましょうという形になって、御了承いただいた上で実は確定する。  そういう次第でございますから、外債につきましても、やはり、どうも電電公社だけがやればいいというわけにもまいりません。そこで、やはり政府全体としてこれに応援をいたしまして、財政投融資計画に定められたワク内の原資については、政府が責任を持って調達に努力するという形に実はなっておるわけでございます。
  82. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 この問題について二つばかり聞きたいのですが、残されたつまり六千工百万ドルについては、過去の実績を見て大むね調達できるのではないかという見通しを述べられましたけれども、むしろ過去の実績に照らして、いま外貨債を募る条件は非常にむずかしくなっておる、むしろ過去よりも。その辺についての見通しはどうなんですか。
  83. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) まあ外国資本市場の状況の見通しは、なかなか各種複雑な要素がございますので、にわかに的確な判断を精密に下すということはむずかしいと思います。しかし、先ほど来先生御指摘のように、やはりこの米国の国際収支対策強化の措置というものが打ち出されてまいりまして以来、その影響というものがやはり各方面に及んでくるだろうということは想像にかたくないわけでございまして、たとえばユーロダラー市場等も従来のような伸びをはたして示すかどうか、あるいはこれが次第に窮屈になるのではないかというようなことも一般にいわれておることでございます。で、そういうようなことを考えますと、やはり今後の起債環境というものは決して楽観を許さない、むしろきびしい状況になってくるのじゃないかということは、一般的な情勢としては一応考えられるかと思います。  ただ、前回も申し上げたと思いますけれども、従来金利平衡税が設けられまして以来、わが国といたしましては米国市場における国債、政府保証債の発行を全く見合わせてまいっております。もっぱらヨーロッパ市場の開拓ということにつとめてまいったわけでございますが、これがジョンソン教書以来、年額一億ドルを限って米国市場における免税の発行ができる、これはもちろん国債と政府保証債に限っての話でございますけれども、そういう道がここに新たに開かれたということでございますので、過去一年半以上にわたりまして発行を行なっておりませんでしたところのニューヨーク市場における発行というものが、ここに再開できるという新しい条件があるわけでございます。ですから、それらを彼此勘案をいたしまして、総合的に判断をいたしますならば、これはただいま政府が予算で見込んでおりますところの一億三千万ドルの外債発行の確保は、これはいけるのではないかということを考えておる次第でございます。
  84. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 先ほどちょっと同僚委員からの質問にもありましたが、つまりこの大ワクで、銘柄によってそれぞれのケースで募集するのではなくて、一括ワクをきめて募集するというこの行き方の中には、外貨債を取得したところ以外にも、政府のそのときにおける方針によって、他にもそれを使うことができるといったような、そういう含みを持っておるものかどうか、この点。
  85. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) この六千五百万ドルというものが政府保証の限度額でございますから、その限度の範囲内においては外債に対する保証を行なうことができるわけでございます。その際に、どの銘柄ということが明らかになっておりません。おりませんけれども、これは先生も御承知のように、やはり外国資本出場において債券を出していくという問題でございますので、これはだれも彼も出せるというものではもちろんないわけでございます。そこで、やはりそこには発行の期間、銘柄というものはおのずから限られてこざるを得ません、事実上。従来の実績のあるもの等々を中心として、おのずからそこに限定されてまいりますものですから、自分のところはこれなら外債でいけるかという期待を持って考えておられるところは、過去において発行されたところはむろんそういうお考えもあろうかと思いますけれども、いままで発行実績のないところの方々としては、そういう具体的に来年度発行しようという考えは私もいままで聞いておりません。
  86. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 質問の趣旨がちょっとわかりにくかったかと思いますけれども、つまり、かくかくの銘柄で募集したものを、これは政府保証債というたてまえで、国内においては、募集したものはすべて国の責任で募集したという形で、使い道は必ずしも向こうで募集した銘柄に固定しないで融通ができるものなのかどうかということです。
  87. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) ちょっと、私どうも先生の御質問の御趣旨を理解しがたかったのでございますけれども、あれでございましょうか、たとえば電電公社が二千万ドルなら二千万ドルの外債を出す、その外貨の手取りが入ってまいります。それが円にかわりますが、その円を使うにあたって、財政投融資計画であらかじめ定められておる使途に使うはずのところ、それ以外のところに使うおそれはないかという御趣旨でございますか。
  88. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 はい。
  89. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) そういうことでございますれば、財政投融資計画に定められた投資計画として、その財源に充てられる……
  90. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 電電公社に充てられるのですか。
  91. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) 電電公社が発行いたしました場合には、その電電公社の電話設備等の計画がございますが、その投資資金の原資に充てられるということでございます。
  92. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 民間債の募集の見通しも、先行き非常に暗いと思うのですね、これとの競合ですね、外貨債、保証債との競合は今後どういうふうに調整していくつもりですか。
  93. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 従来、民間金融債の最大の市場はアメリカでございますが、御承知のとおり、平衡税以来民間債の発行は、ニューヨーク市場における民間債の発行はとだえておるわけでございます。これにかわるものといたしまして、二年、三年の中期のアメリカの山中銀行からの借り入れによりまして、長期資本のつじつまを合わせてきたのでございますが、今度は銀行貸し付けにつきましてもゴア条項というものの発動がありまして、税金がかかるということになってきたわけでございます。そこで、銀行借り入れにつきましては、平衡税を負担しても今後借り入れを続けるという方針を明らかにしたわけでございますが、民間債のニューヨーク市場における発行につきましては、これは米国内の金融機関が、新しいジョンソン大統領の国際収支対策がどのように実施されるかという状況がはっきりしない限り、なかなかこの民間債も、かりに担税で発行を認めるといたしましても、なかなか踏み切れないという状況にあるわけでございます。したがいまして、まあ米国市場で民間債をどうするかという問題は、もう少し時間をかけて、国際収支対策強化の余波が静まるまでは、なかなか見きわめにくいということに相なるかと思います。そこで、政府関係債との調整をどうするかという問題につきましても、いまこれをお答えし得る段階にはないのでございます。  ヨーロッパにつきましては、これはやはり米国の国際収支対策の強化のあおりを受けまして、長期金融市場がやや混乱をしておるように見受けられるわけでございます。したがって、ヨーロッパにおきましては、昨年中は政府保証債及び国債の発行に非常に努力をいたしまして、非常な成績をあげたのでございますし、民間債も相当出たわけでございますが、政府関係債の発行についてもちょっといまのところは見通しがはっきりしない。したがいまして、民間債につきましても、さらに時間をかけなければ、出し得る状況になるかどうかということもわからないわけでございます。しかし、ヨーロッパ市場全体が非常に縮小するというふうにも考えられませんので、状況を見て政府保証債を出し、その状況に応じて民間債を間にはさんでいくというふうにやりたいと考えております。まあどちらを優先的に考えるかということは、これは市場の状況、市場の反応によるわけでございます。現在のところ、まあヨーロッパで発行いたしました民間債の市価はかなり低落しておるのでございますが、政府関係債の市価は、まあ発行価額を上回るという、若干上回っておるという状況でございまして、市場はそれぞれ民間債、政府関係債に異る反応を示しておるのでございまして、どの程度競合するかということは、まあ全然競合しないというわけにはまいりませんけれども、若干市場は異なるだろうと思っておるわけでございます。したがいまして、今後の状況を見ながら、できるだけ多くヨーロッパ市場における消化をはかりたいと考えておるわけでございます。
  94. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 いまの話を聞いてもそうなんですけれども、やはり今後の外貨債の問題は、政府保証債、民間を問わず、非常に窮屈になってくる方向に進んでいっているが、そこで、先日の質問に若干戻るわけですけれども、このユーロダラーに対する依存度というものがどうしても強くなっていく傾向にいくのじゃないか。この傾向についてユーロダラーもやっぱり分析をする必要が非常にある。この間もこれについて聞きましたのですけれども、まだよくわかっていない。ユーロダラー自体は七十億ドル程度のものを持っているらしいというようなことですけれども、一体これを、つまりどういう内容になっているのか。このユーロダラーの分析と、これが現在日本の外貨債の中にどのくらいの割合で占めているか。できたら、ひとつこの資料を先ほどの成瀬委員のおっしゃったのとあわせて提出してもらいたい。  もう一つ、それは毎回この外資の問題が出るときに、本委員会でも資料要求をしておりまするが、なかなか思うように出してくれない。国別の外資、あるいはまた日本が国別に出している資本輸出等の状況を、資料として出していただきたいと思うのですが。
  95. 佐竹浩

    政府委員(佐竹浩君) 従来出しました政府保証債に限って申しますと、ユーロダラーで出ておりますのは東京都債、それから開銀債の二本でございます。金額は四千二百五十万。これは日本の政府保証債だけの数字でございますが、世界全体と申しますか、各国がヨーロッパ市場でドル建て債発行をいたしました分、これは昨年の十二月までに二十九銘柄、四億五千万ドル。これは日本だけじゃございません、各国の発行いたしましたすべてを合わせて二十九銘柄、四億五千万ドルの起債が行なわれております。そのうち日本では二本のもので金額四千二丁目五十万、こういうふうな状況でございます。
  96. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) 日本の長期資本の借り入れにつきましては、まあいろいろの形態があるわけでございますが、しかし、国別に幾らその国から借りておるかということはなかなかっかみにくいのでございまして、たとえばマルク債、これはフランクフルトで発行するわけでございますが、しかし、それに応募する者は必ずしもドイツ人だけでなく、いわゆるユーロダラーの市場から相当巨額のものがこれに応募しておるということに相なると思います。それからまた、アメリカで起債いたしましたりいたしましても、そのうちの相当部分はヨーロッパの投資層が買うというわけでございまして、国別に幾らどの国から日本が長期借り入れをしておるかということは、明白にすることがなかなかむずかしいということでございます。しかも、一ぺん買ったイギリス人がフランス人に売るということもあるわけでありまして、結局ヨーロッパで幾ら起債した、アメリカで幾ら起債したということしか申し上げようはないかと存じます。  しかし、御要望の資料は、外資の受け入れにつきましては、できるだけ調べまして、かつまたユーロダラーにつきましても、できるだけ調べまして、お手元に差し上げたいと存じます。  対外投融資の問題は先生からかねがね御要望がございまして、検討はしておりますのでございますが、何しろどの国に幾らと国別に明らかにすることは若干論議を呼び起こすおそれもありまするので、私どもとしましても、地域別にしか目下のところは発表してございませんので、御了承をお願いをいたしたいと思います。
  97. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 資料は出してくれますね。
  98. 渡邊誠

    政府委員(渡邊誠君) はい。
  99. 西田信一

    委員長西田信一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  100. 西田信一

    委員長西田信一君) 速記をつけて。  他に御発言もないようですから、これら八法案につきましては、本日はこの程度にいたします。  次回の委員会は、明二十四日午後一時の予定でございます。  本日はこれをもって散会いたします。    午後三時十九分散会      —————・—————