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参考人(
篠島秀雄君)
篠島でございます。
引き続きまして、私から簡単に述べさしていただきます。
ただいま
木下先生から御
意見がございました中で、
所得税に関しましては特に申し上げることはございませんが、
低額所得者に対する今度の
所得税の
改正は、大体
控除額の操作によって
減税を意図されておりますけれども、
税率に関しての処置がない。私も、低
所得者に対する
所得税に関しましては、
税率を
引き下げるというようなことを
考えていくこと
がいいのではないかということを、
所得税に関しては申し上げたいと思います。
次に、いわゆる
企業減税、
法人税関係、これに関しましては、
木下先生と多少違うわけでありまするが、大体私の
考えは、これは間違っているかどうか知りませんが、根本は、やはりいまの
日本の
経済をささえているもの、これは
近代国家としていわゆる
法人企業というものが、その主である。大体
勤労者、いわゆる
給与所得者全体の六〇%
程度になっておるのではないかと思います。した
がいまして、
法人企業というものがしっかりして
日本の
経済というものをささえていきませんと、
勤労者に対する
給与も上がっていきませんし、もちろん税金の
源泉にも支障を来たすというようなことがございまして、申すまでもありませんけれども、結局、何といいますか、
企業が衰退していっては……。国全体の
経済政策の一環としての
法人税、
税体制というものが
考えられるべきである。近ごろ
企業では非常に、何と申しますか、
利益率が減ってきているという現象が顕著にあらわれております。われわれ
企業家の立場といたしましては、欧米の
国民の物的な
生活レベルよりは確かに低い、それには近い将来追いつき、追い越すという
国民的な資質、
勤勉度その他を
考えましても、そういうことが可能であるし、そうせにゃいかぬ。そういたしますと、この
企業というものに対する
税制というものをやはりいろいろ
考えていただかないといかぬ。
結局、
国際競争力を強化するためには、やはり
企業といたしましては常に
合理化投資をやっていかなければならぬ。そして
供給力をふやしていかなければならぬ。それには
資本蓄積が足りませんので、どうしても
借り入れ金にたよっていかなければいかぬ。
借り入れ金にたよりますと、こういうことがあるわけであります。ほんの
モデル計算でありますが、たとえば十億の
投資をいたしまして、
荒利益が三億得られると仮定します。そうしますと、これを
借り入れ金、まあ一割
程度の
利子で、
借り入れ金で十億の
投資をまかなったといたしますと、いろんな
諸税を引き去りますと、一億二百万の
内部留保になる。とこころが、
配当をしていくという形でやってまいりますと、
借り入れ金をせずに、言いかえると
増資と申しますか、
株式資本でやっていくということになりますと、
配当一割二分といたしますと、
諸税を引き去りまして、結局
内部留保は五千万。これは単純な
モデル計算でありますから、もっと複雑なものがあると思いますけれども、端的に、
借り入れ金による
企業投資、
企業活動は、
増資、
株式資本によりまする
企業活動に比べまして倍の
内部留保を得られるということになりますので、ますます
借り入れ金による
企業活動というものを
考える。そりいたしまして結局オーバーローン、オーバーボローイングというかっこうになるわけであります。
税については、私よくわからないのでありますが、いろいろ関連いたしますから、どこからどういうふうに手をつけていくかということは、たいへんむずかしい問題とは思いますが、結局、
木下先生のおっしゃったように、
内部留保をしっかりやるということは、確かに
減価償却というものがその大宗を占めるわけでありますが、
昭和二十六年から、三十六年まで、ちょうど
神武景気、
岩戸景気、あの
時代には
減価償却に関する
税制はほとんど変わっていなかったわけであります。した
がいまして、これがドイツなんかと違うところでありましょうが、
企業が大いに働いてできまする
所得が
減価償却という形で
内部留保になっていくということは非常に少なかった。やむを得ずということじゃありませんが、したがって、それは
外部流出、すなわち三割とか二割五分とかいう
配当率が相当あった。これは戦後の株主に対して
配当が非常に少なかったという
時代に報いるというような
企業家の気持ちもあったと思いますけれども、
一つには、やはりその
減価償却が足りなかった、
税制上。それでさようなことになった。現在では、
減価償却の
税制に関しましては、先年の
改正等を入れまして、まずまずのところと思っております。ところが、
改正されました
減価償却の
税制についていくのがもう
精一ぱいで、いわゆる
超過償却、
法定の範囲よりもこえて
償却するということがなかなかできない、こういうふうに現在の
企業というものの収益が落ちております。
大体
自己資本比率を申し上げまするというと、
製造業平均で
昭和三十一
年度末に三一・九%、ほぼ三二%でございましたのが、三十七年には二七・三%に下がっておる。四十三年、
中期経済計画の
最終年次でありますが、
昭和四十三年には二六・三%に
自己資本比率が下がるであろう、こういうふうに見込まれております。しかも、その
自己資本比率二六・三%に下がるであろうという四十三年には、
増資によるいわゆる
自己資金の調達、これが一兆三千四、五百億を見込んでおる。
昭和三十七年に七千何百億の
増資があり、三十八年に六千何百億の
増資に落ち、三十九年、昨年には三千億台に
増資が落ちておる。つまり、非常に片方で
増資がしにくいということだと思います。収益を伴わなければ
増資もできません。片方で
資本市場がどんどん悪くなっているという環境もございますし。それで、こういうような調子ではたして
昭和四十三年に一兆三千五、六百億の
株式市場からの資金調達、いわゆる
増資ができるかというと、はなはだ疑問なきを得ない。
これは結局、何と申しますか、
資本市場そのものも非常に衰退しておりますけれども、そういうふうになるような、先ほど
木下先生もおっしゃっておりました
企業自体の衰退ぶりといいますか、減益ぶり、それが非常に問題であろうと思います。片方で
企業が
借り入れ金に依存する度合いが非常に多いという点、つまり自己
資本の充実ということが結局
国際競争力を強からしめる
一つの
問題点だと思っての見解でありまするが、売り上げ高の
利子負担率と申しまするものは、三十二
年度の上期は二・八四%、だんだん上がりまして、三十八年の上期におきましては
製造業平均で四・五九%、たしかこれはアメリカにおきましては〇・五%くらいだと思います。約八倍。非常に
借り入れ金利子が高い。しかし、それでもなおかつ
増資よりは、先ほど申しましたように
借り入れ金に依存するほうが
内部留保はよけいできる、倍くらいできるということになるわけであります。
それで、結局、言わんとするところは、
法人税というものを、今回の
措置におきましては
留保分に対して一%の
引き下げでございますけれども、これをもう少し、たとえば最低二%ずつ、結局
法人税三〇%くらいまでに逐次下げていくというような税務上の
措置をしていくべきじゃないか。
法人税が国の税収の中に占めまする比率は、三十一年に二三・九%。これは直接税五三%、間接税四六・九%ということで、その直接税の中で
法人税が三二・九%、
所得税が二八・一%、これは三十一年であります。ずっと経過いたしてまいりまして、三十九年におきましては、直接税五八%の全体の税収の中で、
所得税は二四・八%、三十一年の二八・一%に対して四%近く下がっておりまするが、
法人税のほうは、二三・九%の三十一年から三二・九%、約三三%に上がっているわけであります。これは諸
外国のことはわからぬのでありまするが、資料によりますると、アメリカは御承知のように非常に直接税主義で、八六%が直接税だそうでありまするが、その中で
所得税は四六・六%、
法人税は二二・五%、ドイツが四七・五%の直接税の中で三四・一%が
所得税、一一・一%が
法人税、こういうウエートになっております。フランスのごときも、一七・三%の
所得税に対しまして
法人税は九・二%であります。
なるほど、表面
税率にしましても、あるいは実効
税率にいたしましても、諸
外国、先進国に比べまして
日本の
法人税の
税率が必ずしも高いとはいえないようであります。しかしながら、やはり
資本蓄積が非常に違う。
資本蓄積が非常に少ないところへもってきて、復興
経済と申しますか、戦争から立ち直って、
企業が
中心になって
経済の開発をやっていく場合に、どうしても資金需要というものは
借り入れ金か
株式資本かで、なかなか
内部留保というものができにくい。先ほど申しましたように、
内部留保を大いにやるべき二十六年から三十六年の十年間に、
減価償却の
税制なども一動いておりませんでしたために、いささか昔のことを言うてもしようがありませんが、チャンスを逸したかの感があるわけであります。かようなふうに国の税収の中で
法人税が相当なウエートを占めている。こういうときに、やはり
法人企業というものの
税制といもものは、よほど
考えていただかなければいかぬじゃないか。
配当軽課
措置二六%は、今回は据え置きでございます。これはいろいろ税理論でむずかしい
議論があるようでありますが、たとえば西ドイツにいたしましても、皆さん御承知のとおり、
配当軽課
措置一五%というような例もございまするので、二重
課税とかいろんな問題がございますが、この
配当軽課
措置の二六%を下げるということも、
経済政策の一環としての
法人税率というものに関してはあるいは
考えてもいいのじゃないか。
それで、私はきょうはそれを申しませんで、ずばり
法人税そのものの三八を三七になさいましたそれを、さらにもっと下げていくべきである。かりに、
借り入れ金利子が一割で
配当率が一割三分ということにいたしますと、
借り入れ金に対しては日歩二銭七厘四毛かかる。ところが、
配当率一二%にしますと、
資本金に対しては日歩三銭三厘の
利子がかかるということになります。
配当のための
法定準備を加えますと、日歩三銭六厘三毛かかる勘定になる。そして
配当を支払っていくということに対しまして実効
税率四五・六%を
考え合わせますと、
資本金に対してはさらに一銭六厘五毛かかる勘定になりまするので、結局
配当いたしてまいります場合には、
資本金に対して日歩五銭二厘八毛の
利子がかかる。
借り入れ金のほうは二銭七厘四毛、
配当していくということになりますと、五銭二厘八毛、年歩にしますと約一割九分になります。そういうことでなかなか
配当も、
利益を十分生んで
配当していくということがむずかしいわけでありまするが、結局先ほど
木下先生の申された
グロスアップ方式というのもいいのかと思いますけれども、当面
法人税の
税率をもう少し下げていく、少なくとも二%は今回下げていくという
考えが出るわけであります。
それから、もう
一つ、直接税と間接税の関係でありますが、これは今回のこの
法律案には出ておりません問題でありまするが、やはりレジャー関係の税金とか、あるいは奢侈品といいますか、きわめて高級な物品等については間接税をかけていくというようなことで、もう少し間接税というものを
考えていくという方向がこの際税体系としては望ましいのじゃないかということを、あわせて
考えるわけであります。
それから、関連しまして、
特別措置のほうにおきます
利子所得並びに
配当所得に対する
特別措置でございますが、なるほど
配当所得に対するいわゆる
分離課税というものが今回初めて案として出てまいっておるわけでありますが、何と申しますか、俗なことばで、
経済は生きものでございますので、今回かような
措置をして
資本市場に対する
一般の気持ちが向くようにしていくということは、
一つの
資本市場健全化の——健全化と申しますとあれですが、立ち直りの
一つの呼び水ということで、臨時的な
経済措置として私はよろしいのじゃないか、かように思うわけであります。実際、こういう
法律案が出ましても、株価は動いておりません。むしろダウ平均千二百円を割ったようなこともございますのですが、結局、これはやはり本格的に申せば、各
企業の実体がもっとよくなり、
国際競争力に耐え得るような自己
資本の充実もでき、社内留保もしっかりしていく、
配当もしっかりしてというようなことになってこそ、初めて
株式市場というものは立ち直るものであろうとは思います。しかしながら、先ほど申しましたような、俗に
経済は生きものということから
考えますと、主として人間の心理をつくようなことと申しましょうか、かような臨時的な
特別措置もけっこうじゃないか。これを税の公平理論とかいろいろなことから論じていきますと、先ほどの
木下先生のような
議論になるわけで、これもまことにそのとおりだとは思いますが、臨時的な
措置といたしましては、これくらいのことは少なくともやってよろしい、むしろもっと徹底してやるほうがあるいはいいのじゃないかというような気もいたすわけであります。しかし、これはなかなか見解の相違がございますから、そう強く言うわけにもまいりません。
化学工業におきましても、例の爆発災害防止の施設とかその他いわゆる公害防止の施設に対して、固定資産税を非
課税にしてくれないかというような要望も
考えられます。それから、何と申しましても、国産の技術というもので世界に立ち向かっていかなければならない。した
がいまして、試験研究準備金制度を創設していただく、同じく地方税におきます試験研究設備についての固定資産税を
軽減していただくというようなことが、また要望の
一つにもあるわけであります。
それから、これはたとえば石油化学
がいま非常に
日本で盛んに行なわれておりますが、化学工業の原料といたしましては、石油に出発した原料を求めるという形が世界的でございまして、アメリカでは七〇%以上が石油化学であり、ヨーロッパにおきましても六〇%が石油化学ということでございまして、
日本も
所得倍増の最終
年度においては化学の中で五二%が石油化学になるというふうに予定を組んでおるようなこともございますが、これには海岸線を利用せねばなりません。したがって、土地造成というものが盛んに行なわれるわけであります。これがなかなか土地が値段が高い、近ごろ。それで、大体土地造成費の、あるいは土地の補修費と申しますか、それの五〇%くらいを、十五年くらいの
償却を認めるようなことにしたらどうか、半分を。そういうような
議論もわれわれの間では出ておるようなことでございます。
重点を
法人税の問題にしぼりましたが、
租税特別措置のほうに関しまする
意見につきましては、その観点では大体
木下先生と同じく
考えております。
以上で終わります。