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1965-05-25 第48回国会 参議院 社会労働委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月二十五日(火曜日)    午前十一時三十二分開会     ―――――――――――――    委員異動  五月二十五日     辞任         補欠選任      山本  杉君     鹿島 俊雄君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         小柳  勇君     理 事                 草葉 隆圓君                 丸茂 重貞君                 杉山善太郎君                 藤田藤太郎君     委 員                 井川 伊平君                 鹿島 俊雄君                 亀井  光君                 川野 三暁君                 紅露 みつ君                 佐藤 芳男君                 竹中 恒夫君                 横山 フク君                 鈴木  強君                 藤原 道子君                 小平 芳平君                 林   塩君    国務大臣        厚 生 大 臣  神田  博君        労 働 大 臣  石田 博英君    政府委員        厚生政務次官   徳永 正利君        厚生大臣官房長  梅本 純正君        厚生省公衆衛生        局長       若松 栄一君        厚生省保険局長  小山進次郎君        労働大臣官房長  和田 勝美君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省労働基準        局労災補償部長  石黒 拓爾君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査  (医療法の一部を改正する法律案に関する件)  (医療費問題に関する件) ○寄生虫病予防法の一部を改正する法律案(衆議  院提出) ○労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○精神衛生法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 小柳勇

    委員長小柳勇君) ただいまより社会労働委員会開会いたします。  社会保障制度に関する調査中、医療法の改正に関する件を議題といたします。  本件につきましては、丸茂君から、委員長の手元に、医療法の一部を改正する法律案草案提出されておりますので、この際、まず、提案者から、草案趣旨について説明を聴取いたします。丸茂君。
  3. 丸茂重貞

    丸茂重貞君 ただいま委員長から御報告のありました医療法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  本草案は、すでに本委員会で御審議を願い、先般撤回されました同名の法律案と全く同一の内容でございまして、念のため、その趣旨を申し上げますと、医療法第七十条の診療科名に、新たに「脳神経外科」を加えるとともに、「放射線科」を独立の診療科名としようとするものであります。  以上でございます。よろしくお願いをいたします。
  4. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 本草案に対し、御質疑、御意見等がございましたら、御発言を願います。――特に御発言もなければ、本草案医療法の一部を改正する法律案として本委員会から提出することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、本会議における趣旨説明内容につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  7. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 寄生虫病予防法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案に対し、これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。――別に御発言もなければ、本案に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見凄いようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  寄生虫病予防法の一部を改正する法律案(衆第四〇号)(衆議院提出)を問題に供します。  本案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  10. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって衆議院提出案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により、議長提出すベき報告書作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  12. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案に対し、前回に引き続き、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  13. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、一言、労働大臣に質問と要望を申し上げておきたいと思うわけであります。  何といっても、この前の質疑において、労働災害をなくしていこうと労働省がいろいろ努力されていることについては、これは大いに進めていただくことだと私は思うのであります。しかし、なお一段とここで労災予防施策を進めていただく中で、いろいろまた意見が出てきているわけでありますけれども、私は、やはり労働災害というのは、国の法規にきめられている安全衛生の設備、行政指導社会から負託された、災害者を出さないという社会連帯の上に立ってこの施策を進めて、災害者を少なくしようとするのには、何よりも労使の理解を深めることが必要でございます。しかし、何といっても、使用者は、経営者賠償責任という問題がぼけてくるとこれは解決しない問題であろうと、私はそう思います。その点は肝に銘じて、労働行政は、その方向の中で労働災害防止のあらゆる施策を進めていただきたい、これが第一点でございます。  それから、もう一つの問題は、将来、社会保障制度年金制度に発達してくるわけでありますが、五七・五%が五〇%になったわけでありますけれども、何としても、業務上の災害を受けた人または家族というのは、社会進歩の中の私は柱だと思うわけであります。ですから、いろいろと今後社会保障制度やその他の制度が変わってくることでありましょうけれども、あらゆるものを乗り越えて、労働災害者には最優遇の措置を講ずるという、この前提がなければ、私は、社会連帯的な全体の幸福というものはあり得ない、それが社会規律近代化規律じゃないか、こう思うわけでありますから、その点についても、労働省としては、肝に銘じてと申しましょうか、その考え方基本にして、今後ひとつ特段の施策を進めていただきたい。私はこまかいことには触れませんけれども、その二つの基本を確認をしていただきたい。
  14. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 第一段の、災害予防防止につきましては、かねて本委員会においてもたびたび決意を表明いたしてまいりましたが、さらに決意を新たにいたしまして行政的な能力を結集し、同時に、各種災害防止団体等の御協力を得てその効果をあげてまいりたいと考えているのでありますが、しかし、それは一般的な一種のモラルサポートを要求するということ以上に、やはり責任の所在を明確にしていくことが前提になる必要があるという御意見は全く同感でございます。行政上の監督指導も、その見地から強化をいたしてまいりたいと思っております。  第二番目の、将来の社会保障というものは、私も、すべて年金でまかなわれる、老齢年金も、あるいは疾病その他による場合も、いかなる場合においても最低生活は保障されるという方法でいくべきものだと考えておりまして、それはいまのすぐれた企業企業年金でまかなうとか何とかいうようなことでなくして、全産業、全地域、全職域を一貫した年金制度というものが確立されることが私は社会保障制度の理想だと考えておる。特にその場合において、労働能力を失った人、あるいは一家の支柱であった人を失った遺族等についての災害補償年金というものは、外国等におきましても他の年金より手厚く行なわれているのでありますから、わが国におきましても、外国に劣らないような考え方をもってその制度の整備にさらに一段と努力をしてまいりたいと思っております。
  15. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案(閣法第一二四号)を問題に供します。  本案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  18. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって衆議院送付案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
  19. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、この際、ただいま可決されました労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案に対する各派共同附帯決議案提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。  以上でございます。何とぞ御賛成くださるようお願いいたします。
  20. 小柳勇

    委員長小柳勇君) ただいま述べられました藤田提出附帯決議案議題といたします。  藤田提出附帯決議案賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手
  21. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 全会一致と認めます。よって藤田提出附帯決議案は、全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対して、石田労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許可いたします。石田労働大臣
  22. 石田博英

    国務大臣石田博英君) ただいま決議されました附帯決議は、すべてきわめてごもっともなことでございますので、この決議の御趣旨を尊重いたしまして努力をいたしたいと存じます。
  23. 小柳勇

    委員長小柳勇君) なお、本院規則第七十二条により、議長提出すべき報告書作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十六分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十八分開会
  25. 小柳勇

    委員長小柳勇君) ただいまより社会労働委員会を再開いたします。  委員異動についてお知らせいたします。本日、山本杉君が委員を辞任され、その補欠として鹿島俊雄君が選任されました。     ―――――――――――――
  26. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 社会保障制度に関する調査中、医療費問題に関する件を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  27. 藤原道子

    藤原道子君 私は、この際、医療行政あり方につきまして若干御質問してみたいと思います。  このごろ毎日新聞が報じておりまするように、ついに医療費混乱は、診療拒否にあった患者生命を奪う、こういう深刻な事態を招いております。私は、国の責任であるべきことを保険者及び被保険者負担解決しようとしておるところにいろいろな問題がこんがらかってきておる、こう思うのであります。  まず、新告示の効力を、五月一日に本訴の判決があるまで停止するという地裁決定にもかかわらず、医療機関窓口で支払う家族負担分を新点数によって算定し、また、その金額を支払うことにしております。そして、新旧の差を、仮払いの形にする意味で、窓口徴収分領収書を交付することによって、将来精算する可能性が生ずるから、地裁決定趣旨を没却するものではないとしております。しかし、窓口領収書を受領した患者あとから新旧差額をはたして請求ができるものでしょうか。自分が、場合によっては命さえも託することが起こるかもしれない医師に対して、いやな思いをしてまで返還の請求ができる患者は、よくよくせっぱ詰まった人に限られることになるだろうと思います。多くの患者は、内心返してもらいたくても、請求できないで払いっぱなしになってしまう事態が起こると私は思います。それが一般の患者心理であるし、したがって、新料金窓口払い地裁決定無視となってくるのではないでしょうか。といって、地裁決定に従って旧料金窓口払いをする道を選べば、自分責任でもない人たちが、行政の不手ぎわによって追加払いを要求されることになる患者がわざわざ支払いにはこないだろうし、また、医師側としても、診療のときには、それが適正だとされていた料金について、行政の不手ぎわであれは不足だったのだといってあとから請求できかねるだろうから、結局取りそこねてしまう結果にもなるのではないか。したがいまして、被保険者側負担医療機関側負担責任を転嫁しようとする限りは、いずれの道を選んでも、どちらかの犠牲をしいることになってしまう。これを打開するのには、責任患者側にも医療機関側にも帰さないで、国の責任解決をはかるという基本的姿勢がまず第一であると私は考えますが、この点についての大臣の御所見を伺いたいと思います。
  28. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま藤原委員から、医療費改定に関連いたしまして、いろいろまた裁判上の問題等もございまして、この五月一日から新旧料金になった、いわゆる四組合が旧料金であり、その他が新料金でありますことはいまお述べになったとおりでございます。そこで、患者医療機関窓口等におきましていろいろの争いというか、トラブルがあったことはいまお述べになったとおりでございまして、私どもで調べましたのによりましても、五月二十四日までに三百二十六件というようなトラブルがあったことが報告になっております。内訳を申しますと、五月七日までには二百四件、それから、五月十四日までに六十八件、それから、五月十八日までに八件、それから、五月十九日から二十四日まで二件、こうなっております。それから、不明が四十四件で、これが総体で三百二十六件ということでございますが、これだけのトラブルが起きてございまして、さらにいまお述べになりましたように、八戸の全国食糧健保組合員だった方が盛岡市の岩手医大に紹介されましてそちらに受診に参りまして、保険証が使えないで、いわゆる自由診療というような扱いを受けようとして帰ってこられた、そして他に入院してなくなったというような、いわゆる不詳事件も起きておりますこともお述べになったとおりでございます。厚生省といたしましては、そういうトラブルが起きないように、四月二十二日に裁判所決定がございまして、その決定が下されるや、新旧両立ての混乱の生じないように、それぞれ都道府県知事、あるいは医師会等を通じまして、この方針を厳重に守るようにという指令を流したわけでございます。それにもかかわらず、いま申し上げたような数字が出たことは、まことに不祥事件については遺憾のことでございまして、大いに責任を感じておる次第でございます。ことに岩手医大の問題につきましては人命に関したことでございまして、まことに遺憾千万と存じております。  そこで、いまお話のございました四組合と国との関係の問題は、国の責任でひとつ解決したらどうかということでございました。これは私から申し上げますと、そういう声はいままでいろいろの方面から出ておったことも御承知のとおりと思います。しかし、国といたしましては、直ちに上告いたしまして、いま上告審でこの問題を再審しておるという段階でございまして、国の責任でこの四組合、いわゆる旧料金と新料金差額を何らかの形でみていこうということはむずかしい、そういうように考えております。
  29. 藤原道子

    藤原道子君 私はそこに問題があると思うのです。私は、裁判所が、ああした決定あり方は間違いである、こういう判決を下したということは、四組合だけの医療費を問題にしたのじゃないと思うのです。四組合だけをあなたが職権でやったわけじゃない、全部の医療費にそういう方法をとられた。ところが、たまたま提訴したのが四組合だけだ、だから四組合だけに対するああしたやり方が違憲である、ほかは正しいのだという理屈は、私は、どこを押しても出てこない。その裁判所判決に対して、ただ法律的な解釈だけにこだわって、政治性を忘れておるのじゃないか。人の命を預かろうとする厚生大臣が、この裁判所判決を不服として抗告をしておる、私はここがわからない。国民の命をあなたは守るのですよ、そのやり方が間違っていればこそ裁判所判決を下した。それは四組合だけが抗告したのだから、四組合だけに裁判所判決が及ぶのだ、こういう解釈は私はどうしても納得ができない。そのことを出発点として、非常に混乱が起きてくることはごらんのとおりなんです。そこで、いま大臣は、厳重に処分する、こう言われましたし、また、そういう新聞発表を一ここにきたのだけでもこんなにあるのです。新聞でも発表していらっしゃる。ところが、すでに三百二十六件からの問題が起きておる。厳重に処置するというと、法律のたてまえからは、保険診療を取り消す、診療機関を取り消すということになる。もし今後続々起こるであろうこういう争いに対して、もしこれを取り消す等の処分に出た場合に、日本医療はやっていけるのでしょうか。結局私は、あなたのやっていらっしゃることは、ただ体面のみにこだわって、血の通った厚生行政ではないと思う。いまからでもおそくはないから、私はこの混乱の収拾をはかるべきであると思うが、あなたのお考えはどうですか。
  30. 神田博

    国務大臣神田博君) いま藤原委員のお述べになりました、裁判所決定があるのだから、訴えたもの以外に全体に及ぶのが当然じゃないかというお話は、他からもそういう御注意があったこともございました。それも私は一つ考え方であり、そういう考えもよく頭に浮かべまして、しかし、私、決してこだわるわけではございませんが、医療費改定というものは適法に行なわれたのだ、そこで、四組合がこれに不服を言うて、そうして決定をみられたわけでございます。ですから、この段階においては、裁判所の言っておることは四組合だけでございます。それから、私ども考えておりますことは、日本の全体の医療のことを考えておりますので抗告した、こういうことでございます。ここは意見相違ではなかろうかと思うのでございます。何といっても、医療は、診療側、また、支払い側、特に患者側の問題なんでございまして、患者診療側が親切丁寧と申しましょうか、やはりその人の身になって病気を扱う、こういうことでなければほんとうの私は医療というものはできない、こういう私は強い見方をしておるのでございます。でございますから、岩手医大問題等につきましては、これはもう保険とか医療とかという以前の問題であって、これはもう倫理観相違の問題じゃなかろうかというようなふうに考えまして、非常に強い怒りと憤りを感じておるということを申し上げたいのでございます。まああと始末だから国でということでございましても、終局判決ができてきたわけでもございませんし、これを裁判でやはり争っていくということが、これはやはり民主主義のルールであると考えまして、そして抗告しておる、この抗告決定に従ってまた処置をしていく、こういうことになろうかと思うのであります。
  31. 藤原道子

    藤原道子君 私は、そういうやり方は、医療行政責任を放棄して、司法機関決定に身を隠すあり方だと思うのです。と同時に、医療機関側に対しても、通達無視という形式的な立場をとられるならば、行政側地裁決定無視して、新料金による窓口払いを要求することも同様ではないでしょうか。これはどうなんでしょうか。
  32. 神田博

    国務大臣神田博君) これは窓口払い新旧料金のうち、新料金で扱うというようなことは、むろん患者同意を得てやる、同時に、また、私どもといたしましては、支払い側の四団体同意を得てやろうというような手を踏んでおるわけでございます。だが、たまたまその終局のお約束がまだできてないというのが実情でございまして、決して裁判所決定無視して当然やるのだということではないのでございまして、裁判所決定は当然そのとおり施行されていく、しかし、御当人の同意を得てそういうような簡易な方法をとっている、こういう考え方でございます。
  33. 藤原道子

    藤原道子君 同意を得てやると言われますけれども、結局医者に行くときには、からだが悪いから行くのですよ。生命の問題なんですよ。そういう場合に、同意を得てやるやると言うけれども同意をしましたか、すべての人が。支払い側同意してないじゃありませんか、裁判無視じゃありませんか。と同時に、あなたは五月十八日、支払い側に何らの了解を求めることもなく、医療機関側申し合わせ事項なるものを調印した。結局その申し合わせ事項はここにございますが、長くなるから省略いたしますけれども、たださえ紛糾しておる支払い者側、この支払い者側に何らの了解を求めることもなく医療機関側申し合わせ事項をした、こういうことがますます問題を紛糾する結果を来たしておる。日本医療行政は、あなたのやり方でめちゃめちゃになっておる。しかも、その二日後には、支払い側了解なしに話を進めたということは遺憾である、支払い者側の意向を無視しては行政を進めない、したがって、右の申し合わせに基づく通達を出すことは考えていない、こういうことを言う。常にまた医療機関側不信をかっていらっしゃる。常に一方の圧力に負けて、他方の反発をあおることの繰り返しを続けている。第三者としての中立性について相互の信頼をますます喪失していらっしゃる。とりわけ、支払い者側は、今後の交渉に厚生大臣の交代を条件とするに至っておるのが今日じゃございませんか。これで一体日本医療行政はやっていけるのでしょうか。この際、私は、いまからでもおそくないと思うのです。裁判所決定のそのほんとうの真意を理解されて、メンツにこだわらないで、どうぞ日本国民の命を守るというこの大事な問題でございますから、抜本的に国の責任においての解決、これをおやりになる御意思はございませんか。政府は、せっかく労働行政ガンであった相互不信を打開する、こういったことでILO問題もあすこまできた。ところが、今度は医療行政に大きなガンをいま育てつつあるというようなことが、私は国民の一人としてたえられない気持ちなんです。いまからでもおそくないと思うのです。要は、国民の命に関する問題で、いまのあり方国民不在の論争に明け暮れておるという感じでございます。これに対しましてあなたの御所見を伺います。
  34. 神田博

    国務大臣神田博君) いま医師会厚生大臣との間に取りかわしたものについて御議論がございまして、こういうものは早くやめて、ひとつ出直してやれという御注意でございます。そのお気持ちは私もよくわかるのでございます。と申しますのは、これは私のほうの関係当局から両方に同時にお話をつけまして、そして両方同意の上だということで私は介入したわけでございます。ところが、その最後の段階において支払い側の御了解を完全に得ることができなかったということも、いま藤原委員のおっしゃったとおりでございます。この点は私遺憾だと、こう申し上げておるのございます。ただ、今回は、御承知のように、私どもといたしましては、今度のトラブルによって国民の方にいわゆる自由診療というようなことが行なわれては因る、どうしてもこれは国民保険でございますから、保険診療でなくちゃならぬ、こういうふうなたてまえをとったわけです。岩手の例もございましたように、保険診療をやらないというようなことで、とうとい人命がああいう結果をみたという例もございます。皆保険をくずしたくない、そのためには保険をひとつとっていきたい。いわゆる人命を軽視どころじゃない、人命を重視したからそういうことに踏み切ったわけでございまして、そのために、先ほども申し上げたように、トラブルも減ってきた、こう申し上げておるわけでございます。したがいまして、私どもは、支払い側にも、もっと他のいい方法があるなら御相談に応じます、小委員会を設けてひとつ御相談してくれぬか、こういうことを申し上げているわけでございまして、保険を守りたいということがああいうお話し合いになったというふうに御理解願いたいのでございます。御承知のように、そうでないと、四組合に対する保険辞退などというような暴論が出ておりますから、こういうのを一日も早くひとつ取り除きたい、そのために、保険診療を守るためにやむを得ずとった処置だと、こういうように考えておるわけでございます。  それから、なお、国でやるということにつきましては、先ほど来お答え申し上げましたように、国でやるというふうにいたしますると、なかなかこれはそう簡単にまいらないことは藤原委員も御承知だと思います。裁判の結果そういうようなことになりますれば、これは格別でございまするが、この段階で国がそういうところまで介入して経費を持つというようなことは、これは私どもいまの段階ではできない相談ではないか、こういうふうに考えております。
  35. 藤原道子

    藤原道子君 私はどうも納得いかないのです、あなたの言うことが。患者の命を大事だと思うならば、まず、その抜本的な解決から手を染めていかなくちゃだめだと言うのです。しかも、私は、どうしても今度政府がとられました抗告の手段についてさらに納得がいかない。かつて結核で入院しておる生活保護患者の朝日茂さんも、この人がいまの生活保護ではやっていけない、せめて牛乳の一本も飲みたいけれども、たまたま行方不明の兄から金を――千五百円の一部負担政府から命ぜられた。千五百円きたら、やはり六百円の日用品費を残しただけで、あと差額徴収、一部負担といって全部取り上げられた。そのとき朝日さんが、どうぞ私に牛乳一合、ちり紙を買う金を与えてほしい、わずかなその金を与えてほしいと願われたときに、結局裁判になった。これは政府が不服の申し立てを却下して裁判になったそのとき、厚生大臣が、厚生大臣の代理でございますけれども、法廷で何と言っているか。ちり紙が足りないと言うけれども、結局わらで用を足しても健康で暮らしている人もある。はだ着が足りないといっても、はだしで飛んで歩いても健康で育っておる子供がたくさんいる、だから、いまの決定は憲法違反ではない、こういうことを厚生大臣の代理として法廷で主張されておる。それでも裁判所は、そのとき一審においては朝日側の申し立てを、これを勝訴に認めて朝日さんが勝ったわけです。ところが、このときにも厚生大臣抗告をした。ところが、抗告をしながら、一面においては、急速に日用品費が上がりまして、わずかの間に当時の倍以上に値上げされておるのです。あなただっていまこのやり方が正しかったとは思っていないと思う。私どもだって、何も九・五に上げることに反対したわけではない、正当な手続を踏みなさい、これが支払い者側の言ったことじゃありませんか。それを、職権告示というような、答申を無視したやり方が今日この混乱を招く原因になっている。あなたは、全部国がやろうとしたって容易でないことは藤原さんも御案内でしょうとおっしゃるけれども、容易でなくないですよ。日本のような低医療費政策をとっている国はあまりございません。したがって、この際、国庫負担を増額していけばこんなトラブルは起きないで済んだはずだと私は思う。このことをひとつ厳重にお考えを願いたい。しかも、命を守りたいからやっているのだとおっしゃるけれども、結局岩手の清水さんは、あなたのやった不手ぎわからとうとい命を失ったわけです。もし医療混乱がなかったら、あるいは清水さんは助かったかもわからない。私は、厚生省が行なってきたそのやり方によって生じたこの現実に対して、一片の通達や小手先だけの申し合わせがいかにむなしいものであるかということを憤りをもって痛感している。死んだ人は帰らないですよ。これを思うと、メンツにこだわられることなく、私は抜本的な解決をしてもらいたい。金がないと言ったり――国民の税金は、使途さえ明白であるならば、だれもこれに対して反対の者はございません。ここで政府は、この政府の不手ぎわから生じて人命を落とした清水さん、この霊に対してはいかなる責任をとられますか、これを伺いたい。また、愛する夫や、一家の大黒柱になる夫を失った遺族の生活の保障はどうなるのでしょう。死ねば死に損、これでよろしいのでございましょうか。当然国家の責任で国家による補償がなされるべきであると考えますが、厚生大臣責任ある答弁を求めたいと思います。第二、第三の清水さんを出さないと確約をしてほしい。それには一体どうするか、その裏づけを示してほしいと思います。
  36. 神田博

    国務大臣神田博君) いまの、なくなられました清水さんの問題でございますが、これはいま厚生省から調査班が行っておりまして、目下調査をしておる段階でございまして、この死んだことといまの岩手大学の処置とがどういう関係にあるか、これは十分調査をして、その結果に待たなければわからないことでございまして、国にそういう責任があるとこの場でお答えを申し上げることはいかがかと思いますが、まあ私どもの部内の考えを率直に申し上げますと、国はそういう考えをただいまのところ持っていない、そういうことを考えておりませんということを申し上げたいと思います。
  37. 藤原道子

    藤原道子君 それじゃ、死ねば死に損で済む、どこに責任があるのですか、こういう事態を招いた責任は一体どこにあるのですか。ただ、新聞の報ずるところによれば、十分調査して責任ある処分をする、厳重な処分をするということを言っていらっしゃいますが、その処分とはどういうことを考えておるのですか、調査の結果はどのようなことであるか、それをひとつ御報告願いたいと思います。
  38. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 先ほど申し上げましたように、目下調査に行っておりまして、あと二日ぐらいかかる予定でございます。帰っていろいろの事実が確認された上で、すべての問題がこれから確定的な判断の対象になる、こういうわけでございます。  それで、いま先生の仰せの問題について考えますと、問題は二つに分けて考えられると思います。非常に大きな関連において、今回の問題がいわゆる医療費紛争といわれる問題から発展して、その過程の中に起きた、そういう意味において、政治の衝に当たり、責任を持っている者として、この事態に対して何らかの意味において責任を論ずる必要があるじゃないか、こういう問題が一つございます。この問題でありますれば、先生おっしゃるような意味においての責任問題というものは当然十分考えてまいらなければならぬと思います。  それから、もう一つの問題としては、今回清水さんの死亡ということに直接関連して、どこに責任があるか、その責任との関係においてどういうようなことが論議されるか、こういうような角度から問題を論議する余地はあると思っております。この点については、先ほど申し上げましたように、調査の結果を待って判断をきめるべきだと思っておりますが、そういう意味における責任であるならば、ただいままでつかみ得た事実では、おそらく国には責任はない、かように判断をしております。
  39. 藤原道子

    藤原道子君 調査をされたその報告をしてほしいのです。私は、窓口払いというか、自由診療にするというような張り紙がなされているということをあなた方は前から知っていると思うのです。それだのに、それに対しての適切な指導等がなされていなかった、怠慢だと思うのです。それに対してどういうふうな指導をしておられたのか、現地調査の結果はどういうことであったのか、もう一回伺います。
  40. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) ただいまの点、たいへん大切なことでございますが、この病院に対しては、四月二十八日付の厚生省からの通達に基づきまして、三十日に、五月一日から四組合関係については旧料金の適用になる、したがって、その者については旧料金の扱いをするようにという指示が届いておったことは、大体いままでの報告で動かないようでございます。ただ、その後――いずれこれからの事実で具体的に固めたいと思いますが、五月に入りましてから、五月六日というふうに一応中間報告ではございますが、これは、しかし、日にちの点はさらに最終報告を待って確認したいと思いますが、それ以降自由診療の扱いをする、こういうことで、さようにずっとやってきておる、こういうような事実になっております。
  41. 藤原道子

    藤原道子君 委員長、もう少し大きい声で答弁するように言ってください。
  42. 小柳勇

    委員長小柳勇君) はい。
  43. 藤原道子

    藤原道子君 結局、いずれの面から押しましても、健康保険法の違反であることは明白ですね、これはどうなんです。
  44. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 小山保険局長、大きな声で答弁してください。
  45. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) いままで私どもが確認し得た事実、つまり四組合関係については自由診療の扱いをいたしますと、こういうことを病院の正規の機関の決定を経てきめており、そういうふうな扱いを病院を訪れる者すべてに対してやっておったという事実は、どうも否定できないようでございます。そうだとすれば、それは明らかに健康保険法の違反でございます。
  46. 藤原道子

    藤原道子君 違反ということが明らかであるならば、これに対しての処分ですか、これは具体的にひとつどうされるかということをお伺いしたいと思います。
  47. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) それをどうするかということがこれからの問題でございます。そういう問題を判断します場合に、幾つかのことが考慮に入ってくるわけであります。第一は、何といっても、その行為の持つ実質的な意味、あるいは性質ということがいろいろの考慮をきめる判断の素材になると思います。それから、第二には、特に今回のような問題の場合には、それがどういう医療機関で、どういう条件のもとで行なわれたかということも考慮の対象になり得るだろうと思います。それから、第三には、それがいつ行なわれたかということも、いろいろ問題を吟味する上において考慮の中に入ってまいると思います。それから、第四には、行なわれるべき行政上の処置と、それから、その結果出てまいりまするいろいろの問題、特に広い意味における国民健康保険、被用者保険全部を通じての被保険者の立場、利便というようなものがどういうふうにその処分と関連をするかということも考慮の中に入ってまいると思います。まあ、いま申し上げましたような四つの点について、具体的に確認された事実に基づきまして総合的に判断をして結論を出すわけでありますが、元来、この種の事件は、先生御承知のとおり、都道府県知事がみずから判断をきめまして、地方医療協議会の議を経てきめるわけであります。ただ、今回の場合は、問題の規模、性質等から見まして本省側が直接調べているわけでありますが、いまのような点に照らしまして判断の方向をきめましたならば、これを岩手県知事におろしまして、おおむねそういう判断をもとにして事を運ばせる、こういうふうにいたす考えであります。
  48. 藤原道子

    藤原道子君 私は、もし今度の岩手医大の処置がうやむやになるようなことがございましたならば、今後の医療行政における法の無視はますます強くなる。絶えず弱い患者がその犠牲を受けなければならない、患者保護の立場から厳重に臨むべきである、こう考えておるのです。と同時に、私は、そのあらゆる責任を医大側に押しつけるということにも問題があると思うのですよ。こうならざるを得ないような混乱のままに医療行政を放置してきた、こういう点で、私は政府責任である、この二本立てで私はその責任の追及をしているわけです。  そこで、この医療費二本立てによる混乱の根本的な解決は、やはり中央医療協議会を一日も早く再開をして、そうして支払い診療両者の同意を得る新料金を告示することだと思います。厚生大臣は、薬価引き下げを含めて、中央医療協再開のために具体的にいかなる施策を実施しようとしておるか、今後の見通しについて明らかにしてもらいたい。
  49. 神田博

    国務大臣神田博君) 問題の解決をいたす機関として中央医療協議会が活動することが望ましいということにつきましては、私もその論者でございまして、この問題を解決するには、どうしても中央医療協が軌道に乗って、そうしてものごとを進めていくことが解決の焦点じゃなかろうか、こういうふうに考えております。まことに同感でございます。  そこで、中央医療協じゃどうやって一体進めていくかという問題でございますが、先般も支払い側とお会いいたしまして、いきなり中央医療協といってもなかなか困難な事情もあろうから、小委員をあげてひとつ御相談しようじゃないかというようなことをお話し合い申し上げているわけでございます。その考え方については、自分たちも協議することはやぶさかじゃないという回答を得ておりますが、ただ、問題は、先ほどもお答え申し上げたように、医師会との申し合わせをひとつ破棄してこい、そうでなければ応ずるわけにはいかないのだというようなことで、多少その点が軌道にまだ乗りかねているところでございます。私といたしましては、なお十分ひとつ支払い側、また、診療側とも懇談いたしまして、そうしてできるだけ早くひとつそれぞれ中央医療協議会が活動できるようなところに持っていきたい、かように考えております。
  50. 藤原道子

    藤原道子君 あなたが努力している努力しているとおっしゃるけれども、こう言っているときにも第二、第三の清水さんが起こっていないとは断定できないですよね。そこで、あなたで、硬化しておる支払い者側、あるいは医療側とほんとうに話し合いができて、円満妥結ができる見通しがおありになるのですか。私は、その道を一日も早く開きたいけれども、それら両団体にしても一般国民にしても、このことの解決大臣の辞職以外にはない、大臣が一身に責任を負って、そうして一日も早き解決をはかるべきである、こういうことがいわれておりますが、大臣はどうこの点に対してお考えでしょうか、あわせて伺いたい。
  51. 神田博

    国務大臣神田博君) そういう声のあることも私も承知いたしております。しかし、私といたしましては、誠心誠意ものごとを進めようといたしておるわけでございますから、とどまって十分ひとつ懇談を続けてまいりたいと、かように考えております。
  52. 藤原道子

    藤原道子君 どうも大臣と押し問答してもしかたがないのですけれども、それが国民の声だということを銘記していただきたい。  それから、今回の事件に対して、新聞の報道するところによれば、「現地調査団は単に窓口事務官の道義的責任でこの問題を片づけようとしている。清水さんが保険診療を拒否されたことは明白な事実であり、当該医師が八戸病院に紹介したという理由でその責任が回避されるものではない。」こういうことが言われている。厚生省の現地調査団が真実をおおって責任のがれの口実を教えに行ったのかというような記事さえ見えるわけです。私は、この際、委員長にお願いいたします。押し問答していてもらちがあきません。右にゆられ左にゆられ、そして国民生命が絶えず不安にさらされている。そこで、この清水さんの問題、これらの真偽を明らかにいたしますために、ぜひ参考人等を呼んで、この医療問題の徹底的な究明、その責任の所在を明らかにしていきたい、こう考えますので、委員長の善処をお願いしたい。  私、時間の関係もございますので、この程度で終わりたいと思います。
  53. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) たいへん大切なことでございますので、一言申させていただきたいと思います。  ただいま藤原先生御引用の中に、私どもの派遣をいたしました調査官の話としてお述べになった点があるのでありますが、私どもが承知しているところでは、さような不謹慎な発言はしていないはずであります。私どもも、この問題を単に事務の問題とは考えておりません。むしろ感じ方としては、これは出先の問題よりも、むしろ病院について言えば、病院のあり方、管理体制に問題があるというふうに逐次判断をしなければいくまいじゃないかという感じを強めているわけであります。同じように、この問題は、出先の者、あるいは病院、診療所だけが悪いという問題としてだけ考えたのではなかなか問題の正しい把握はできない。やはり問題は、いろいろな意味において中央にあるんだということを十分反省すべききざしがあらわれているという感じで、深刻に考えているわけであります。現地の者がかりそめにも軽々しいことを言っておらぬということだけは特に御了承いただきたいと思います。
  54. 藤原道子

    藤原道子君 私はぜひそうあるべきだと思うのですけれども、そう納得できないような節々があるということを報ぜられているわけです。私は、厳重処分とはどういう処分かということについても明確な御答弁を聞いてない。あるいは、不幸にしてこの医療問題の争いのために命を落とした清水さん、その遺族に対しても、何らかの私は考慮があってしかるべきだと思いますけれども、それについても明確な御答弁がないわけです。不満でございます。  以上で私の質問を終わります。
  55. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 参考人の召喚など、理事諸君と相談いたしまして、藤原委員のお気持ちに沿うように善処いたします。  本件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  56. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 精神衛生法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案に対し、これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  57. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 精神衛生法の今回の改正は、隔離入院をさせるという今日までのことを改めて、家庭や学校や職域を含んだ広い視野から精神衛生全般について対策を立て、また、患者には、早期発見、早期治療、社会復帰、アフターケア、系統づけて一貫性のある治療対策を講じて積極対策を切り開いていくように私はいままで説明されてきたと思うのですけれども、そういうことでよいのかどうか、そのことをまず先にお伺いしたいと思います。
  58. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 御趣旨のとおりでございまして、従来の精神障害者を医療保護するという立場だけじゃなしに、さらに広く精神衛生の向上という観点から、精神障害者の隔離収容のみならず、その早期治療、早期発見、あるいは在宅医療の普及、あるいは精神障害者に対する相談業務の強化、あるいはそのために技術的な確立を行なうための精神衛生センターの設置等、決して十分とは申しませんけれども、そういう方向に向かって第一歩を踏み出したという所存でございます。
  59. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そういうことで、これが万全を期したいという念願で精神衛生法を今度改正するというなら、たとえば学校とか家庭、職域を含んで、その広い視野から精神衛生全般についてどういうぐあいに、それじゃ具体的に、たとえば家庭、学校、職域、こういうところでどういう施策を講じようとしているか。また、その目的の中に「その発生の予防に努める」とあるが、そういう大胆な施策を講じられるのでありますけれども、そうなれば、この発生の予防というのはどういうぐあいに具体的におやりになろうとしているのか、ここらのことを具体的にひとつ御説明願いたい。
  60. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 精神衛生の仕事を広く展開いたします場合に、いわゆる社会的に危害を及ぼすような自傷他害の患者医療保護を加えるというだけでなしに、一般の家庭についても、あるいは一般の職場における精神衛生、あるいは学校における精神衛生、あるいは社会における精神衛生というような面にまで広めてまいりたいと存じております。しかし、何ぶんにも、まだ私どもの力が弱体でございますので、一挙にはなかなか進展いたしかねると思いますが、それを逐次やっていく。そのために、まず第一に、技術的なセンターとして精神衛生センターというものを、少なくとも一県に一カ所まずつくりたい。そういう精神衛生センターが、その地域における精神衛生の実情を調査研究いたしまして、最も地域に適応した対策を考える。また、技術者をそこにできるだけ集めまして、そういうものたちが、たとえば学校における精神衛生上の問題、たとえば学校ぎらいであるとか、あるいは受験に対する恐怖を持つ子供であるとかいうような、学校の精神衛生、あるいは職場における職業性の精神ノイローゼという問題、あるいは社会的な問題といたしましては、犯罪、非行というような面についても、将来、精神衛生的な技術的な指導をしていきたい、そういう第一段階として、まず精神衛生センターというものをつくっていきたいという趣旨でございまして、これが将来充実いたしますと、精神衛生センターと、各保健所に置かれました精神衛生の相談のための専門の職員というものが一緒になりまして、そういう地域社会のいろんな方面にまで協力をしていきたいと存じております。  なお、発生予防という点でどのようなことを考えるかということでございますが、精神障害者の発生予防という問題は、一義的な問題といたしましては、民族的な資質の問題であるとか、あるいは出産に関係する時期の衛生の問題だとか、いろいろございますが、第二義的には、やはり精神障害者がその社会生活の中からできるだけ発生しないように予防するということでございますが、そういう予防というものも、すべての人間を見ていて、そうして一々お世話をするというような具体的な問題はなかなかできません。したがって、現実には精神障害者が軽いうちに発見されて、軽いうちに治療する、また、一たん精神障害になった者が適切な治療を受けてなおり、なおった者が再発をしないような方向にしていく、そういうようなことがわれわれのなし得る予防のおもなる方策ではないかと存じております。そういう意味で、私どもは、患者家族というような者を教育し、あるいは一般の世の中を教育して、少なくとも、障害の起こった者ができるだけ早く医療機関、あるいは相談機関に行けるような体制を整えると同時に、相談員その他の専門的な指導員の活躍によりまして、患者家族等の二義的な発生予防に協力してまいりたいと存じております。
  61. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこが非常に大事なところだと思うのです。あといろいろ聞きたいと思いますけれども、精神病患者というのは百二十何万おるということが言われている。あとほど聞きたいと思うのですが、それだけたくさんの精神病患者がおられる。この予防というものは、いま局長が言われたように、胎内における当時からの問題もあるでしょう。しかし、私は、やはり一番大きいのは、先天的な体質からくる問題もあるでしょうけれども、大きい問題なのは、私はしろうと考えでありますけれども社会環境や生活環境、私はその面が非常に多いのではないか。たとえばノイローゼの問題が出てまいります。厳密に言えば、ノイローゼは精神病じゃないという話も出てくるわけなんですが、そういうことを考えてみると、私は広くこの議論をやっていったら、根源は何かということになると、非常に大きなたくさんな問題を含んでいると、私はそう思います。しかし、そのいま局長の言われたように、個々のケースをそれじゃ全般的に一切手をつけてそれでやろうというのはなかなかむずかしい問題である、私もそう理解をいたします。しかし、少なくとも、一般行政、一般社会が共存の中でなし得ることというのは、おのずから数えられる問題が一、二、三というぐあいに順序立って出てくるのではないかと、私はそう思うわけであります。たとえば貧困の問題をどうするか。この問題について、この厚生行政は、一貫して社会保障をどうやっていくか、人権尊重の中でどうその問題を――それがすぐ家庭生活の問題に入ってくるわけです。豊かな生計をしておられる中でも、こういう病気の人が出てくるときには、これは社会道徳やそういう問題との関係がどうなっていくか、これは全般の政治の動向との関係も出てくるわけであります。だから、少なくとも、この発生の予防につとめるということの一般的な施策というものは、私はそういうものがあげられるのではないかと、こう思っておったのです。ところが、どうもそいつが従になってしまって、個々のケースのお話がありましたけれども、そこらの一般行政でやり得る問題、社会共同生存上でやり得る問題、そういう問題について厚生省はどうお考えになっているのか。出てしまった者の対策ということも重要な問題でありますけれども、発生を予防するというところのほうが私は大事ではないか、こう思う。だから、そこらの点、学校や職場や家庭や社会でやるのだ。ただ、その並べるだけではどうもわかりにくいのでありますが、だから、そういう根になる問題について厚生省はどうお考えになっているか、お聞きしたい。
  62. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) まことにごもっともな御意見だと思います。私どもも、基本的にはそういう思想で進んでおります。私いま保健所にケースワーカー等を置くということから、非常に個々のケースだけにこだわるがごとき印象の答弁を申し上げましたけれども、実はそうではございませんで、学校衛生、産業衛生というような面を重視いたしております。ということは、御承知のように、組合管掌の健康保険というようなものも、本人、家族を入れますと、近い将来には人口の四分の一にもなります。また、学校の生徒、その結びつきのある父兄というものを考えますと、やはり同じ程度のものになります。したがって、私どもが公衆衛生という立場で全国民を一様に対象としていくことはきわめて困難でございますので、それぞれの分野におきまして、産業関係は産業衛生の担当者がそれぞれございます。各事業場、会社等には衛生管理者等がございまして、あるいは衛生管理室というようなものもございます。学校には、やはり学校の保健の担当者がございますので、そういう方々に精神衛生知識の普及、技術の伝達をはかりまして、そういう方々の協力を得て、それぞれできるだけ社会的な資源を活用してまいりたいという趣旨でございまして、保健所の受け持つべき分野として、そうなってまいりますと、やはり個々のケースの仕事がかなり重みを帯びてくるという趣旨で申しましたのでございまして、産業、学校衛生、あるいは、ただいま申し落としましたが、警察関係のほうにもやはり精神衛生の専門的な援助がぜひ必要であろうと思いまして、社会的な方面ではそういう方面との協力も確保してまいらなければならないと存じておるわけであります。
  63. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まああとほどからも出てくるわけでありますけれども、精神病患者を早期発見をして治療をするという、このつながった問題があります。その予防の問題について精神衛生相談員というものを今度お置きになるようですが、どうも保健所八百幾つある中で、百何人の予算しか取っていないということになってくると、非常に大きく打ち出しはせられたけれども、中身になってくると、なかなかまあ答弁がしにくいようであります。だから、私は、一度にことしやるということは困難であれば、年次計画的にどうやっていくのだと、そういうことがやはりつまびらかにされないと、窓口は広げたけれども、今度は受ける側の、たとえば精神病患者から社会がどんな被害を受けるかということを考えてみますと、なかなか私たちも、即、それじゃそういう危険のある人は社会と遮断をしたらいいんだというような簡単なわけにはいかない。人権の問題もかかってくるわけです。問題は、根本の根治をしていくというところにやっぱり問題の重点が置かれなきゃならぬのじゃないか。そうなってくると、その問題が明らかに計画的になって、そうして施策、治療の問題が計画的になってこないと、なかなか大胆に踏み切られたその入院拘束から、社会の中でなおしていこうという非常にりっぱなことで、たとえばよい薬ができたから、それによっても相当なその治療のために力になるのだと、アフターケアによって再生をさしていくのであると、口で言うことは言えるのであります、これはね。口で言うことは言えるのでありますけれども、ただ、おふれを出しただけではなおらないわけです。現実に百二十何万という人がおるわけです。だから、それを順次どういうぐあいにして具体的にやっていくか、たとえば精神衛生センターでは、各保健所等を通してかくかくのことをやっていくと、精神指導員はかくかくのことをやっていくと、アフターケアはかくかくのことをやっていくのだと、それを年次的に大体全体がよくなるようにやっていくには、総体的にこういう計画でやっていくのだということがやはりお示しになってしかるべきじゃないか。そうでなければ、こんな大胆な法改正というものは、どうも私たちは議論をして厚生省のおっしゃることを理解したといたしましても、社会的にその問題だけがぽっと出た場合にどうなるかということは、非常に私は不安を感ずるわけであります。私は、精神病院や精神病患者の過去の歴史についても相当見てまいりました。今と昔とはだいぶ違いますけれども、精神病患者の扱いというものは、全く権力じゃなしに、最も身の近い人から排除していくという社会のならわしと申しましょうか、そういうものがやはり相当な事実として社会問題を起こした歴史を持っているわけであります。それを社会全般の中で、近代社会の中でなおしていくというんですから、それだけ医学や技術や薬も発達したのでありますから、これはなかなかいいことだと思うけれども、しかし、その不安というものが残っていると思うのです、社会には。だから、そこらあたりはやはり計画を持ってやっていく、その一環としてこれを踏み切って、今度の衛生法の改正というものはこうやっていくんだということを、もう少し全体をとらえた計画性というものを示していただきたい、こう思うのです。
  64. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 私どもが今回法律改正の内容に盛りましたことは、まだきわめて不徹底でございますけれども、まだこれから盛り入れたいという内容は多々ございます。それは、大体先進国といいますか、イギリスあたりが比較的早く、一九五十年代からやっておりました計画がございます。また、フランス等においてもそのような例に乗ってやっております。アメリカが非常におくれて、同じような形にこれからやろうと非常に努力をしております。そういうような方向へ、私どもも将来それらの国々の例を見ましても、進むべき方向、あるいは目標というものは大体想定いたしております。それにできるだけ近いやり方を目標にして、年次的な計画でやってまいりたいと存じておりますが、何ぶんにも相当な仕事でございますので、いまここで予算の裏づけもないような、あまりにとっぴな計画を申し上げることもいかがかと思いますので、あまり具体的な構想は出しておりませんが、少なくとも、現在盛られました内容は、大体五ヵ年程度の計画で、精神衛生センター、あるいは病床の整備、保健所職員の充実というようなものは五カ年計画でやっていきたい、さらに、そのほかのいわゆる社会医療と称せられます分野につきましては、おそらくもう少し長くかかるのではないかという考えを持っております。なお、それらのことが進む過程におきましても、昔の精神障害者に対する取り扱いというものと新しい形の取り扱いというものの間に、世の中の人の適応といいますか、世の中の人が理解し、ついてこれるには必ずしもスムーズにいくとは考えておりませんが、そういう点につきましては、やはり精神障害というものに対する教育普及、そういうものと学問の進歩というようなものを理解させることによって、できるだけそういう理解、考え方のギャップによる社会的なトラブルの起こらないようにやっていきたいというように存じております。
  65. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうもちょっとわからないんだけれども、たとえば目標百二十万も出るやつを防ぐ、いまおられる人を治癒していく、それから、今後出てくるやつを防いでいく、これには先天的な要素とか、それから、他の障害によってできてくるというのは、これはなかなかとらえられないにしても、一般的に起きてくる精神障害のおもなるものは何と何だという、これはすぐ予算をとらなくても、宣伝というか、教育、理解のもとに国民全体がそれに協力していくという体制があるはずだと私は思う。そういうものを掲げて、そしていま施策として、戦術として何をやっていくかという問題の方向というものは、皆さん方の厚生行政の中に付随して研究機関もあるでしょうし、専門家もおいでになるわけですから、そういうものを戦略目標を明らかにお出しになって、そしてそれを戦術的に施策として、予算上の関係や財政上の関係があるから、かくかくやっていくけれども、将来の全体の今度の目標というものを何でお掲げにならないのかということを私は申し上げている。ただその場当たりのような、みんながなくなることを期待するということは、国民全般として私たちもそう思っているわけですから、それには専門的な立場から、社会一般にかからないように、問題になるのはどれとどれだ、これは社会国民の皆さん協力してくださいという呼びかけも私は重要な要素を持っていると思う。そういうものを明らかにして、それを全体の計画を三年でいいとか、五年でいいとかいう問題じゃないと思う。いまあなたのお話じゃヨーロッパのほうに順次近づけていくのだとおっしゃるけれども、なかなかとてもいまのヨーロッパ各国がやっているところから見れば、近づくというのは、百年かかっても、いまのようなテンポでは近づけない。しかし、そうではいけないと思う。やはり一日も早く順次三年で近づけるか、五年で近づけるか、十年で近づけるか、われわれの全体の能力に応じて近づいていくわけですから、そういう計画をもっと私は真剣に考えて出していただかなければいかぬのじゃないかということを申し上げた。だから、そのことを、これはひとつこの法律はこの法律として通りましても、そういうことはもっと早く検討されて社会に放り出して、社会の皆さんに理解をして、社会人によって理解をして防いで予防するという重要な役目を、私は、単に金だけの問題じゃなくて持っておると思う。だから、そういうものもひとつ計画の中に入れて、根本の原因は何か、社会、家庭、それからいろいろの社会の中から出てくる家庭内に持ち込まれたいざこざとか、そういう問題が多いのじゃないかと思いますから、そういう問題をヒューマニズムの立場から、どういう問題をどう進めていくかという問題も触れなければいけないでしょうし、そういう問題をひとつぜひ計画を立てて、そして構想を国民に協力願うというような方法を片一方でやりながら計画をやっていただきたいと私は思うわけです。そうでなければ、予算の範囲内で、ことし予算を取ってセンターをこしらえました、指導員は八百の保健所の中で百ぐらいしかことしはできませんのだということを、そろばんを合わせるだけではこういうものはなおらないのだと私は思う。そういう点をもっと力を入れてひとつやっていただきたいと思うのであります。それをだんだん法律を読んでみますと、早期発見とか早期治療とか社会復帰、アフターケアとか、一貫して計画を立てていくのだという、改正案の中に出てきますが、それじゃそれをどういうぐあいにして具体的に早期発見から早期治療、アフターケアの間の関係をおやりになっていくのかということを聞きたくなってくるわけです。だから、それも少し話してください。
  66. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 先ほどもちょっと出ましたけれども国民の中に年々非常に多数の患者が、もちろん精神障害者が発生をしております。それを一人一人をつかまえて早期発見するというようなことは事実上不可能なことでございます。やはりこういうような問題は、できるだけ窓口になるようなところを多くして、そしてそこにきやすいようにしていくということが事実上早期発見であろうと思います。したがって、医療機関という窓口に対して、早期の治療が行なわれるように、医療機関患者が受け入れやすいように施策をする。そして患者が、より多く集まってくるということもひとつでございますが、相談所という窓口、あるいは保健所の相談という窓口を通じて早期発見される患者が多くなればなるほど、これは実があがるわけでございますし、そういう方面の窓口を多くし、キャッチする機会を多くするということも一つでございますし、先ほど申しましたような関連分野といたしましては、たとえば産業方面では衛生管理者、あるいは衛生健康管理室というようなものを持っている職域に協力していただく、あるいは学校保健、あるいは少年関係の補導機関というような方々、そういうできるだけ窓口を広く、その窓口にそういうケースが集まりやすいように指導していって、それを終局的にできるだけたくさん集めるということが早期発見ということの具体的な実施方法ではないかと存じております。
  67. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ公衆衛生局長は専門家ですから、私がこんなこと言うのはどうかと思いますけれども、   〔委員長退席、理事丸茂重貞君着席〕 私も、最近じゃないけれども、精神病院というのをあっちこっち見てまいりました。あれで私は精神病患者がなおるのかなという、私はどの病院へ行きましてもそういう感じを持ったわけです。一人の精神病患者の施設には、一人四坪という規定で増築許可、認可、それから補助、融資というものが行なわれている規律だと思う。ところが、たとえば三百人の精神病患者の病院だといたしまして、個々の隔離というのは、せいぜい十人か、もうちょっと多いところがあるかわかりませんけれども、まあほとんど、男女は区別していますけれども、全く大部屋で何十人という人が雑居しているわけですね。だから、患者自身がみずからの構想にふけるとか精神を落ちつけるという条件は、精神病院の中では、私はあると思わないんです。医学上、精神病患者の治療というものはああいうものなんでしょうか。私はあれを見ていると、ちょうどその昔、一番血の近い者が、家族や親族に患者が出れば、何とかしておってくれないほうがいいという環境になったような人が病院に入って、そしてあの中で雑居してわっさわっさやっているような、ああいう現状というものでどうもそうなってるような私は気がするわけだが、その医学上の問題として厚生省は一人四坪という規律をつけておいでになるけれども、実際の病院の患者の扱いというものはあれでいいのだろうか、実はこの際、ひとつ聞いておきたいと思う。
  68. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 端的に申しますと、先生たいへん誤解をなさっていらっしゃるように思います。昔の精神病院は一部屋一部屋が一人で、かぎをかけておくというのが昔の精神病院の行き方でございました。現在の精神病院は開放療法主義でございまして、一人一部屋に隔離する期間は、もう特に危険のあるやむを得ない最短期間、そのほかはすべて開放的にし、お互いに患者の接触によって社会性を取り戻すということが精神医療の主軸でございまして、むしろ昔のように一人一部屋に閉じ込めておけば、病院管理としては非常に楽なのでございますが、そうでなしに、できるだけ一部屋に引っ込んでおりたいのを、わざわざ看護者が引っ張り出しまして、そうしてお互いの仲間とつき合わせ、そうして一緒に簡単な作業をさせ、あるいは人と話をしたり、とにかく社会的につき合いができるようなやり方に指導していくのが現在の精神病者治療の方法でございまして、決して先生がごらんになって、わいわいとデイルームで騒いでいるのが、部屋が少なくて、あるいはスペースが少なくてああしてるんじゃなしに、ああすることが現実に一番いい治療方法であるというふうに変わってきているわけであります。
  69. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっとそれはどうも、私はその一人を隔離して、そしてやれなんということは、ここから先も言ってない。その病棟があって、そして個々の部屋があって、そして集団的にいまおっしゃるように訓練したり、人とつき合いしたりするならいいですよ、私は何も隔離をしたほうがいいと言うわけではない。そんな部屋が一つもないのですよ、そこを聞いているのです。患者でしょう、精神病患者として入院して個々の部屋を持ったり、個々の部屋で自分がものごとを考えたり精神を落ちつけたりするいこいの場所があって、そして集会する場所があって、それが開放的だとおっしゃるなら、全くそのとおりだと私は言いたい。そうじゃなしに、個々の部屋というものは全然なくて、入ったら全部追い込みのところで二十人、三十人、四十人というものがおって、そのほかは何もないというのが現状ではありませんか。そういう状態の中で、そういうことで私はいいのかということを言っている。同じような人がかたまって、好きなことをする人がかたまったら、ほかの人はすみっこで棒立ちに立って、一日見ているといいませんけれども、畳の上ですからそういいませんけれども、そういう状態です。どこに行ったって、それが近代開放の治療方法ですかと私は聞いているのです。私は、それも必要であれば、いこいの、自分が他の人にじゃまされないで休めるような条件といいますか、精神を落ちつける状況といいましょうか、そういうものがあって初めて精神を落ちつけるとか、鎮静行為とか、または精神を直していくという方法が成り立つと思う。大部屋以外に部屋がないところで、ただ隔離をしていたらいいというような、全く隔離といっても、広い部屋に隔離している、それが精神病の治療になりますかと言っているのです。それはどうですか。
  70. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 個々の個室がなくて大部屋だけで、そこに詰め込んでおるというお話がございましたが、私どもはそういうものはないと存じております。少なくとも、それぞれの病室というものが必ずありまして、その病室のほかにデイルームとか、あるいは娯楽室とか作業室というものは設けておるのでございまして、通常、私どもは、最高六人部屋をもって、病室は六人部屋ということを指導しておりまして、四人ないし六人部屋の病室がございまして、そのほかに、比較的急性期の症状の患者はもちろん個室がございますが、それぞれの四人ないし六人部屋の個室がありまして、そのほかにデイルームというものがあるわけでございまして、先生がごらんになったところに、もしデイルームだけをごらんになって、見落としになったかどうか、そこら辺のところは私も非常に疑問に思っております。
  71. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 よく調べていただきたいと思います。東京の精神病院に行きましたら、それは別個のいい部屋がついているところもあります。その部屋一つ十万とか十五万とか言っておりました。それは、だからそういうものも、いま局長のおっしゃるような部屋があるところもあります。しかし、いま言うように、十万とか十五万とか、そういうものを出さなければ特別に入れてもらえないということで、他はほとんど私は追い込みのような状態をずっと見てきたんです。だから、いまおっしゃったような、ちゃんと寝室があってどうこういうような、そんなふうにあなたのほうでは管理しておられますか。男の人でも女の人でも、その大部屋で、片方はマージャンしたり何やかんややって、横でふとん着て寝ているわけです、その部屋のすみで。それはどういうことになるのですか、別に部屋があったら、そこでふとんをかぶって寝る必要は少しもないです。だから、私は、どういう行政指導をおやりになっているのか、それを聞きたかった。
  72. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) この精神病院の設備には基準がございまして、当然医療法の基準もございまして、必ず病室があるはずでございます。病室のほかにそういうデイルームがある、それはデイルームでふとんをかぶって寝ているという患者はおそらくあったと思います。そういう患者自分の病室からふとんを持ち出してきたりして寝ている患者もあるのでございまして、そこが本来の病室としてベッドがあるわけでは決してないはずでございます。そういう点は、基準あるいはその施設の運営についての指導はしておるわけでございます。
  73. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この問題は、事実を前にしてものを言わないと問題になりませんので、私は、これはあなたのほうは基準があるのだと、こうおっしゃるから、それじゃもう一度ひとつあなたの指定した病院へ行ってもよろしゅうございますが、その議論をするほか、とにかく私はああいう状態では、精神病の治療には、何ぼ開放治療といったって、なかなかなおりにくいのじゃないかという印象を受けて帰ってまいったわけでありますから、そこらあたりは、厚生省の基準を見てみると、一人に対して四坪という基準をきちんとおきめになっておりながら、中へ入ってみるとそういう状態なんです。私は非常に疑問に思っておった。厚生省もそこまで目が届かないのかどうか知りませんけれども、これは水かけ論ですからやめましょう。しかし、そのこともひとつ今後の行政の中で十分に目を光らせて、ほんとうに精神病患者がなおるような施策を積極的にやってもらいたい、こう思いますので、それはお願いをしておきます。   〔理事丸茂重貞君退席、委員長着席〕  そこで、精神病患者の総数が百二十四万、私が見た資料ですが、そのうち、入院治療を要する者が二十八万人、別に重度精神薄弱者が七万人。二十八万人のうち、入院している者が十六万人、入院できない者が十二万人おる。十六万人というのも、どうもだいぶ病床等からいくと超過しているようですが、いずれにしたって十六万人、それ以外に治療を要する者の四十八万人を加えると、在宅のままに現在治療を必要とする者の数が六十万人に達すると見てよろしゅうございますか。
  74. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) いま先生がおあげになったような計算をいたしますと確かにそういうことになるわけであります。しかし、この内容は非常にいろいろございますので、また見方もいろいろございます。実態調査の数字でございますが、たとえば精神病というものについて見ますと、五十七万人おりますけれども、その中で医療も指導も受けていないという者が五二%ございます。したがって、それが約三十万人になります。それから、精神薄弱が四十万人ありますが、このうち、何にも指導を受けていないという者が約八〇%ございまして、約三十二万人になります。そのほかの精神障害者が二十七万人おりまして、その六六%が医療も指導も受けていないといわれますので、それを十八万人と計算いたしますと、八十万人が指導も治療も受けていないということになるわけでございます。計算のしかたですが、これも実態調査一つの資料としてそういう計算ができるわけでございまして、決して現在十分な管理が行き届いているとは存じておりません。しかし、同時に、こういう者が実際に全部治療を受け得るような状態になり得るかというと、これまたきわめて疑問でございまして、たとえば、やはり同じ実態調査で、結核患者が二百万人おりましても、現実に治療を受けておる者は約五〇%でございます。そして、その治療を受けるべきことを知っていながら、なお治療を受けない者がやはり約四〇%程度ございます。精神病の場合も、おそらく本人が精神病であることを家族が知っていても、故意に隠したがるとか、あるいは精神病でないと信じているとか、いろんな事態がございましょうし、あるいは、また、経済的な問題もあろうかと思いますので、そういう行政で、この数字の見方としては、やはりいろんな角度から検討していくべきものと存じております。
  75. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、いま私があげました数字の中で、大体似たような数字がある。そこで、治療対策ですね、結局治療を受けていない人の治療対策をどうするかということが次の議論になってくるわけです。だから、私は一番最初に少し議論をしたのだけれども、どうですか、計画がないわけですけれども、その六十万人といわれるか八十万人、指導も治療も受けていないのが八十万人ということになるわけですけれども、そういう方々の治療対策をいずれ一年に一ぺんやるということは返事できないと思いますけれども、将来どういうぐあいにして対策を立てていくかということをどうお考えになっていますか、ちょっと聞きたいと思います。
  76. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 治療、指導というふうに申しましても、たとえば精神薄弱等でございますと、これは治療というよりは、むしろ指導の範囲に入るわけでございまして、それぞれ精神薄弱対策の中である程度の施策を進めていかなければならぬと存じますが、一番問題になります分野は、いわゆる精神病の治療でございまして、精神病の患者が、これまでも申しますように、新しい精神医学の進歩によりまして、治療によって相当よくなる者も多数いるにかかわらず、治療を受けないということが一番大きな問題であろうと思います。そういう意味で、精神患者の治療ということになりますと、ただいま三十万人ほど治療を受けていない者がいるということを申しましたが、その中の十二万人程度の要入院といわれる程度の者は、これはやはり早く何とかして治療しなければならぬ問題だろうと思います。ところが、精神病といっております者の中に、実は器質性精神病と称しまして、脳卒中のあとの精神障害、あるいは老人ぼけ、あるいは交通傷害等による頭部傷害のあとによって起こる疾患、そういうもののいわゆる精神障害、これは比較的治療の方法の少ないものでございまして、そういうものが、五十七万といわれる精神障害者の中が、約二十二万程度含まれております。そういう意味からいいますと、現実に医学的治療を受けなければならない分野の者の数はかなり減少してまいります。これを正確にはじき出すことはいまやっておりませんが、大ざっぱな計算はできますけれども、そういう意味で、これから入院ベッドをある程度増加し、外来治療の組織を拡大していけば、相当程度までカバーできるであろうということは私ども確信を持っておるわけでございます。
  77. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、私は、また前のことを繰り返すことはやめますけれども、いろいろあげておいでになりましたが、そうすれば、大体いま治療をしなければならぬ人たちはつかめるわけでしょう、大体つかめるわけですね。つかめたら、その対策を年次計画的に国民の協力を得て指導するやっと、国が施策としてやるやつが明らかに大体なってくるわけです。だから、そういうものをやっぱり国民に知らせて協力を得て、そうして政府施策はこうやるのだということをなぜおやりにならないか。たとえば四十五年計画に病床は二十一万五千と、こうおっしゃる、三十九年十月現在における十五万八百六十床に十六万人入っている。これが二十一万人の病床になっても、いまあなたが大ざっぱにおっしゃったことのそれじゃ何割ですかということを聞いても、最小限残った何割はどうするのですかという問題の答えが出てこないわけでしょう。だから、五年でいかなければ、十年でいくならいくというような構想をやっぱり明らかにしたほうがいいのではないですか。それのほうが厚生行政――公衆衛生局がいかにがんばろうと、厚生大臣がいかにがんばろうと、精神病というものは社会全体でなおしていかなければいかぬのじゃないですか。うんと国民の協力を得なければいかぬのじゃないですか。そのことがどうも明らかになっていないような気がするので、どうも同じようなことを質問せざるを得ないことに一つ一つ行き当たっているわけです。  そこで、先ほども少し触れましたが、精神障害者の発生率というのは階層別にどういう比率になっていますか、ちょっと聞きたい。
  78. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 精神障害者の発生する階層、主として生活程度のことであろうと思いますが、実態調査の行なわれました断面で有病率というものを見ますと、人口千人に対しまして、世帯員一人当たり一カ月の支出金額が二千円以下のところでは二五・八、四千円以下のところで一九・三、七千円以下のところで一三・八、一万円以下のところで一〇・〇、もっとも、それ以上はもう二万円以下のところは五・五というような形になりまして、個人の支出額に反比例して患者が多いという実態がございます。
  79. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうしますと、四人家族で四万円以下の収入、そこらあたり一万円ですから、しかし、一人当たり二千円から四千円のところで四五%、大体半分、低所得階層のところから精神病が半分近くの人が出ているということですね、断面的に統計を見ると。そうなってくると、何といっても第一にあげられるのは生活環境の問題が出てくるわけで、このことをどうしていくかということの対策を立てていかなければ、そのことは一般的に先天的な問題とか、障害によって起きたとかいうようなことが精神病の原因になるかのごとくいうのではどうにもならぬ問題だと私は思うのです。やはり社会環境、家庭環境というところに起因するところが非常に多い。  それから、もう一つこれにつけ加えて、発生率が、所得の低い人は低い環境の中にいる。低い環境の生活というような、低い環境の人ばかりが集団で住む地域におるという現状との関係患者発生に、より拍車をかけているのではないか、私の独断ではありましょうが、そういう気がするのです。ですから、国民の協力とか、そこらの基礎になる問題の施策を立てるとか、重要な問題だと私は思うわけでございます。ですから、厚生大臣どうですか、先ほど公衆衛生局長が、結核の問題もたくさんの中から六割くらいなんだとか、そういうぐあいになってまいりますと、よそと比べて、よそといってはいかぬけれども、ほかの結核の問題を引き合いにお出しになりましたけれども、しかし、結核は結核として徹底的に治療して措置入院までやっている、あるいは遺伝ではなしに伝染病だ、だから、もっと大きな施策をして結核病の根治をやろうじゃないかという国民運動になっている。たとえばどこの村へ行きましても、結核が一人出たら、あれは結核の筋だから婚姻関係はだめだといって、昔の婚姻というのはその一族はだめだったわけです。ところが、いまはそうでなしに、あれは伝染病だというくらいに社会認識が変わって、結核は遺伝とか、そういうことの慣習というか、国民の理解とかいうのは変わったとぼくは思うのです。だから、精神病にしても、伝染病じゃないにしても、やはりいま低所得階層から五割近くも出ておるということの一つの資料をとってみても、この精神病患者というものがどういう環境からおもに生まれるか、この根をひとつ絶やそうじゃないか、そういうぐあいになってまいりますと、いまの結核病の社会認識と違った新しい民主社会の認識というものが、むしろ全体が包んで、精神病でも結核でも伝染病で、また環境が悪くてなったのだから、みんなで寄ってなおしてあげようじゃないか、こういうようなことが起きないような社会をみんなでつくってあげようじゃないかというくらいに社会気持ちが変わっていかなければ、この精神病というものはなおらないのです。私は、局長のことばじりをとって、何も局長をいじめるわけじゃありませんけれども、そういうやはりかまえというものが厚生行政になければこの問題の解決はできないと思うのですが、この点について大臣の御意見を聞いておきたい。
  80. 神田博

    国務大臣神田博君) いま藤田委員からお述べになりました、生活程度の断面を見て、いわゆる低所得階層に精神病者が多いという問題でございます。いまお話もございましたように、やはり生活程度が低いということは、いろいろなやはり環境が隘路になっておる点があると思います。ことにそういう一つの集団でもあれば、なおそれが自乗的に悪い環境になるわけでございます。そこで、いま統計にもあらわれましたように、四千円以下の場合でもすでに四五%ですか、七千円まででも五五%近い発生率になっておりますから、そういうことはやはり意味があるのじゃないか、私も表を見ておりましてそういう感を深くしております。これはやはり政府がやるといいましても、大きな国民の協力を得なければできないと思うのです。たとえば結核対策がわりあいにうまくいったということは、結核の本質を政府が究明して、そうして国民が非常な結核予防に協力していただいたたまものだと思っております。でございますから、精神病の撲滅にいたしましても、私は、やはりそれらの点を勘案しまして、そうして強力に施策を講じていくことが大事なことだ、かように考えております。したがいまして、今後はそういう面を十分ひとつ検討いたしまして、いまお話もございましたような御趣旨に沿ってひとつやってまいりたい、かように考えております。
  81. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) ただいま申し上げました数字に理解の違いがちょっとございますので、訂正をお願いいたしたいのですが、いま申し上げました二五・八とか一九・三というのは、精神障害者のパーセントを申し上げたのではございませんで、千人対ということを申しました。それらの階層の人たち千人についてそれだけの患者がおるということでございますので、総体的な問題は同じでございます。
  82. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、精神障害治療に対する公費が、入院を含めて百五十九億という支出をされておるわけですが、この支出がほんとうに適切に使われておるのか。病院施設基準の整備とか、そういうことについてひとつ御意見を承りたい。  続いて、もう一つ申し上げますが、精神科を標擁する医師が現在二千八百名日本ではあるといわれておるわけです。そこで、これは百二十四万に対して見ますと、四百四十三人を一人の医者が受け持つことになるわけだと思うのです。そうしますと、欧米諸国と比べてみて、日本ではどれくらいの医師が精神病に必要なのか、そこらあたりの見当をつけられたことがあるかどうか、これもひとつ聞いておきたいと思うのです。二つ。
  83. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 第一点の、精神衛生の費用、百数十億が適正に使われている保証があるかという問題でございますが、その点につきましては、一番大きな費用は措置入院費でございますので、措置入院の患者を扱っていただく病院は県が指定をいたすことになっております。その指定の際に、その病院の設備、構造、設備基準が適合しているかどうか、それから、医師が適切に配置され、その他の職員が適切な数だけあるかどうかというようなことも全部検討いたしまして施設を指定しておりますので、指定施設以外の精神病院に比べて、相当設備、構造、あるいは運営の水準が高い。したがって、公費をもって治療をしておりますそれらの指定病院では、一般の平均よりもさらにいい治療が行なわれているであろうということを考えております。なお、そのほかに、そういうような指定病院につきましては県が直接指導をいたしておりますし、あるいは精神病院協会というようなものを通じましても、お互いに切磋琢磨し、あるいは外国の状況等を見させるというようなことも指導いたしておりまして、そういう運営に支障のないように配慮いたしております。  なお、精神科の医師の問題でございますが、現在二千八百で、これを百二十四万に割り当てると四百四十三人になるというお話でございましたが、先ほども申しましたように、百二十四万が精神科医の治療の対象となるものではございませんで、大体三十万程度が精神科医療の対象になるわけでございますので、およそ四分の一程度であろうと存じております。なお、将来におきましては、昭和四十五年までに二十一万五千床というものを目標にいたしまして整備いたします。そのほかに、当然中間施設的なものも増設してまいりたいと思いますが、そういたしますと、理想的には、五千百名程度が必要であろうという推計をいたしております。それに対して、従来の実績から見ますと、そのころまでにおそらく三千二、三百程度になるのが精一ぱいではないだろうかというふうに推計をいたしております。したがって、絶対数がかなり不足するであろうということは考えておりますが、さて、これを養成するというようなことを申し上げましても事実上できませんで、やはり精神科の医療施設がうまく運営され、よく伸びていく、また、仕事が魅力的であるということから、それぞれ医科の卒業生がそういう方向に志望していくということが一番望ましい姿であろうと存じております。もちろん国立の結核療養所等で多少余ってくるというような人員がございますれば、そういう方々が適宜新しい方向に転向するというような場合には、できるだけ国としても援助するという体制は考えております。
  84. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、一つの参考に申し上げたいのだが、たとえばアメリカが一九六三年に大統領の教書を出しておりますね。そこで、一九六〇年の精神医学の専門家、精神科医、医療社会事業職等を含んで四万五千人おる。十年後の一九七〇年には八万五千人にすると、こういうことを言っているわけです。それで、アメリカの人口の日本が半分として、日本がこれから五年後の一九七〇年にアメリカ並みにいこうとしたら、四万人の精神医療の医者がおってアメリカ並みということになるのです。これは日本では結局医者は二千八百名なんでありますけれども医師以外のその医療指導体制ですか、要するに、精神医療の専門家というのは何と何があるかということですが、ここでも出てくるわけですが、精神衛生で資格を有する者というのはどういうものを含んで、それで、この精神医療の専門家の範疇に入るような人が現在何人おって、将来、たとえば五年後には何人、医師を含めて何人くらい日本はいる見当になりそうかということもひとつ聞いて、おきたいと、こう思うのです。  それから、もう一つ、先の質問の中で忘れておったのですが、指導体制の指導員の問題でございますけれども、これが八百十二保健所があって、保健所にそれぞれ一人精神指導員を置くというのは、四十年度には百二十二人しか予算上の措置が講ぜられていないわけです。これはどうなるのか。それからPT、OTの法律案がこの間通ったのですが、これとの関係をどうするのか、そこらをあわせてお答えをいただきたいのであります。
  85. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 精神衛生のための専門的な従業員といたしまして、医師のほかにいろいろな職種があるわけでございますが、最初の、保健所における精神衛生の指導員と申しますのは百二十二名しか予算を組んでいないじゃないかというお話でございますけれども、百二十二名の指導員と、それから、九十六名のメディカル・ソシアルワーカーというものをこれに充てると二百十八名になる。それから、現在三百九十名ほどのソシアルワーカーの定員がすでに配置されております。それらの者がさしあたってやるわけでございますが、さらに将来は、五年後くらいまでには全保健所に二名ずつということで、千六百名程度にしたいというふうに考えております。そのほかに、今年度は三百五十カ所の保健所に精神科の嘱託医をその指導のために配置する。もちろん非常勤でございますが、そういうことを考えておりまして、嘱託医も将来は得られる保健所は全保健所、小さい保健所でそういう専門家がどうしても得られないところがございますが、少なくとも、得られるところはそういうふうに配置したいと存じております。  なお、PT、OTというような職種も当然この精神医療の従事者として必要になってくるわけでございまして、現在でも大きな病院では、それぞれ男の看護人のほかに、作業員と称しまして、事実しいろいろな作業の訓練等を行なっております。将来いわゆるOTというような職種が完成されまして、そういう専門家が出てまいりますと、精神病院における作業療法、あるいはレクリエーション療法というようなものに参加してまいるわけでございまして、そうなってまいりますと、当然精神科領域に相当数入ってくるわけでございますが、これらの問題につきましては、現在皆保険の体制下にありまして、作業療法というようなものにどうペイするかというような問題もございまして、いまのところ、はっきりした見通しが立てかねるような状況でございます。
  86. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、いまアメリカの話をちょっとしたわけですけれども、いまのお話でいくと、医師が二千八百人がどれだけふえるかという構想もお話になりませんし、ただ、保健所に三百五十人の嘱託医を置いて、いまの精神医療担当者全部で千六百人ぐらいにソシアルワーカー、指導員合わせてしたいということになると、五千人ぐらいということなんですね。それらのことも、私は、全体の構想や社会施設の基準に対する取り組みが、どうも場当たり的なような気がしてくるわけでありますが、たとえばリハビリテーション、また、アフターケア施設、こういう問題についてはどういう構想をお持ちでございますか、これは非常に大事なことだと思いますけれども、これもひとつ聞かせておいていただきたい。
  87. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 最初に、前の関連事項をちょっと追加さしていただきますが、医師が現在二千八百名が五千人程度ほしいと、あるいはそのほかにいろんな職種を申し上げまして、それがせいぜい五、六千人程度じゃないかと、アメリカの数に比べて非常に少ないということを申されましたが、アメリカの数というのは、たとえば精神病院全体の職員というものが全部入っておりますので、そういう意味からいいますと、日本の二十一万五千のベッドをかかえる病院の従業員全部が実はそういう計算に入るわけでございまして、そういう点、直接の比較はただいまできないと存じます。その点だけを申し上げておきます。  なお、そのほかに、職員といたしましては、ただいまお話のありましたような中間的な施設、あるいはリハビリテーション施設というものが、将来通常のベッドのほかに計画されておるわけでございまして、アメリカ、あるいはイギリス、フランス等におきましても、ベッドのほかにデーホスピタルであるとか、あるいはナイトホスピタル、そういうようなものを総称いたしましてハーフウェイハウス、あるいは中間施設というようなことばで呼んでおりまして、そういうものがリハビリテーションという範疇にも入ってくるわけでございますが、そういう施設につきましては、私どもも今後の計画として考えておりますが、いま直ちに数字でもって申し上げることができないのが残念でございまして、これも特に日本では国民保険というような問題がございまして、どういうことをやっても、やはり医療に関しては保険からの支払いが得られないと経営ができないというような問題もございますので、医療法関係保険関係等も解決すべき問題でございますので、われわれも現在そういう方向で研究しながら努力しているわけでございます。
  88. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 だから、一つ一つあげてくると、やっぱりこのリハビリテーション、アフターケアの施設ですね、いまの、たとえばアメリカと日本とはうまくかみ合わないんだということだけではなかなか納得がいかない問題です。何もアメリカにならってどうせいということは私は言いませんけれども、アメリカの水準、日本の水準ほどこなんだという話ができないわけでしょう、ざっくばらんに言って。病院も数に入ってます、だから食い違いですということだけじゃいかぬ。それじゃどういうぐあいになっていますかと言われたって、一ぺん検討して資料を集めてみなければならぬということになると私は思うんです。だから、そこらのかまえの問題がぼくは非常に大事じゃないか。だから、全般的にひとつ厚生大臣に私はお尋ねをしておきたいのであります。  一つの問題は、やっぱり先ほど厚生大臣がおっしゃったように、国民全体の協力なしにはなし得ない問題ということでございますから、国民に協力を得るような形を含めて、この精神病の発生の予防施策を、大体日本はあらゆる面から含んで今日の戦略目標を立てたら、戦術的にはどれほどの個々の処置の中でやっていくのだ、だから、国民の皆さんから協力していただくいろいろの問題を掲げてやるということのひとつ計画を厚生省としてはやっていただきたいということで、その見解を承っておきたい。  もう一つは、措置入院の八割公費ですね、二割は府県知事、それがまあ費用を患者負担させてもいいというかっこうになっているのでありますけれども、私は、先ほどの例を見ても、所得の低いところから千人率ありますけれども、直ちにこれが計算になるとは言いませんけれども、おおむねこういう比率ですね。おおむねこういう比率であるということであれば、そういう患者が措置入院して、二割の負担患者家族や何かが受け持つということになると、私はたいへんだと思うわけでありますから、何としても、地方自治体の財政事情というのはなかなか楽ではございません。楽ではございませんけれども、特別交付税や何かの処置を講じて、こういう負担差額はやっぱり地方自治体が持つように指導をしてもらいたい。そうして患者から直接取らないように、名実ともに、社会がこの精神病をなおすような考え方を立ててもらいたい、私はそう思うのですが、大臣決意のほどを聞きたい。  もう一つございますが、もう一つは指導員の問題で、ソシアルワーカーの問題は大事な問題だと思うのです。ソシアルワーカーという役割りは非常に大事な役割りだと思う、保健所において。だから、私は、この人が全部の保健所にまだおいでにならないので、ことし見てみても五百人ぐらいになるのですが、まだ全部の保健所から見ると足らないわけでありますから、少なくとも、いま五年後に二人当て置きたいというお話がありましたけれども、これはやっぱり家庭を一軒一軒訪問をして、そうして家庭のいざこざの問題も相談にのってやりながらやる役目というのは、ソシアルワーカーというのは非常に大事な私は役目だと思う。これをやっぱり何らか無理をしてでも早急にふやして、各家庭を訪問して、保健所の区域の中で二人か三人至急に置いて、その人が家庭のもめごとまで指導してやる、それから、所得の問題も相談にのってやる、就職の問題も相談にのってやる、こういうことになれば、私は、それが何といっても、りっぱな法律をきめるのも必要ですけれども、このことが一番いまのところ大事じゃないかという気がするわけでありますから、ここのところに力を入れて、ことしは五年後に二人ずつというようなことでありますけれども、その五年後のやつを一、二年の間に実現してもらいたいと私は思う。これが私は、いろいろここで御意見を伺いましたけれども、全体の目標を立てた今日治療計画をお立てになる非常にキーポイントのような気がするのです。それは薬とか医学とか、いろいろなものがなければどうにもならぬ問題ですけれども、やはりそこらあたりに非常に大きくこのたくさんの数を減らす重要なポイントがあるような気がするわけです。これを一、二年の間に二人のやつを実現する決意厚生大臣におありかどうか、ひとつこの三つの問題について見解を承っておきたい。
  89. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま藤田委員からのお尋ねでございますが、国民全体の協力を得なければほんとうの精神病の全治対策というものはまどろっこしくないか、そういう計画があって初めて精神病を追放する、全治させるということができるのじゃないかということは、私が先ほどお答えいたしましたとおり、全く同感でございます。これは何といいましても相当数にのぼっております。また、この病気自体のことを考えましても、国民のあたたかい御協力なくしてはこれは至難だと思います。私どもといたしましても、そういうようなことに十分考えをいたしまして、計画を再検討いたしたいと考えます。  第二でございますが、第二の措置入院の国費負担が八割、地方費二割。地方財政が困窮しておる際でありますから、地方財政にできるだけ負担をかけないことがよろしいのじゃないかということにつきましても、これは同感でございます。もし地方財政に持っていくというなら、持っていくこと自体を明瞭にして、そうして財源調整か何かの方法をとってやっていくということで進むことが望ましいことでございます。患者が〇・二%ほど負担しておるようですが、負担能力のあるものは別にいたしまして、できるだけこの種の療養は公費負担をして、そうして早く全治するような措置をとりたい、そういうようなひとつ計画を再検討をいたしたいと思います。  なお、また、保健所の相談員がわずかであって、また、この配置計画もあまり長い計画のようで、非常にまどろっこしいじゃないかという御意見のようでありますが、この点もまことにごもっともでございます。私どもといたしましても、できるだけ早い機会にひとつ相談員の充実をはかりまして、そうして精神病の全治をいたしたい、かように考えております。  以上お答えいたします。
  90. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、まあ私は全般的な問題でお尋ねしておきたいわけでありますけれども、その精神病の危険がある場合、四十八時間拘束するわけです。で、国民の立場から見れば、危険、障害を起こすような人が、無制限な社会によって他に障害を及ぼすようなものがあっては困る。これは国民共通の願いだと思うのです。たとえば精神病者が人に危害を加えまして、いろいろ社会に障害が起きるような条件をのほほんと放任されては因る、これは事実だと思うのです、その願いがあるということは。しかし、一面から見れば、その拘束措置をすることをどこで判断し、どこで判定をするかということが非常にむずかしい問題だと私は思う。ですから、できれば複数によって判定してもらいたいという願いは当然出てくる問題だと思うのです。個人の主観ではなしに、複数によってそれを認定、判断をして措置をするということが、私は、やはり将来問題が起きる危険のある問題点ではなかろうか。ですから、そうなってくると、人間の自由を拘束するわけでありますから、人権問題に入っていくわけであります。だから、そこらの問題の運営というのは、なかなかいま、ますではかったように、一つのモデルを持ってきてどうこうということは、私はできないと思います。できないと思いますけれども、そこらは運営の味のあるところだといいましょうか、運営を全うせしむるところだと私は思うわけで、ですから、その点は、この精神衛生法が歩き出して、これが適用されて、むろんそういう危害その他の問題になったら、警察その他との関係もむろん関係が出てくるわけでありますけれども、できるだけ社会の指弾を受けないように、そうして人権関係の問題が起きないように、慎重な態度でこの問題は措置していただかないと、国民の素朴な願いと個々の人間に対する人権問題とは、なかなか利害相反する場合があるようなこともあるし、その障害を起こさないようなものなら人権侵害になるわけでありますから、そこらの運営については、全くもって十分な慎重な配慮をしていただくということをここでお約束をしていただきたい、こう思います。
  91. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 御趣旨の点、全く私どもも同感でございまして、社会の保安の問題と個人の人権擁護という問題を最も合理的に調和させるということがこの法運用の根本的な精神であろうと思います。そういう意味で、強権発動の措置という場合には、現在の法律でも、いわゆる申請、通報、全治主義というたてまえでございまして、何らかの形で国民のどこかから申請、通報があった場合に初めて知事が鑑定医を派遣して診察する。その鑑定医も、必ず二人の鑑定医が意見が合ったときに初めて措置をするというたてまえをとっております。それに対して、今回例外的に緊急措置の制度を設けたわけでありますので、この緊急措置の制度の運用にあたりましては、特にその点を重視すべきものでございまして、そういう意味で、緊急措置を行なう場合にも、必ず鑑定医の、これは複数とはいいませんが、鑑定医の診察を受けて、しかも四十八時間を限ると、その間に適切な本来の措置にかけるかどうかを早急に決定する。もしそれが決定されない場合には、本人の保護の意味からも、この緊急の措置を解除しなければならないというたてまえになっておりますので、私どもそれらの点を十分配意いたしまして運営をいたしてまいりたいと覚悟いたしております。
  92. 林塩

    ○林塩君 精神衛生法の一部改正につきまして、私もいろいろ根本的のことを伺ってみたいと思っておりましたが、藤田委員がその大半の質問をされまして、お答えもありましたので、時間もないことですから、それを繰り返すことをやめたいと思います。  で、予防ということを考えていっている立場におきまして、この予防対策に非常にお金が要るものですから、このことでおくれがちになっているということは、もう厚生省でもよく御存じだと思います。で、予防をやって、そうしてできるだけ一人でも患者の発生を防ぐということが、将来のこの精神衛生に関する経費を省いていくことになるのじゃないかと思います。で、百五十九億の中で、予算をそれだけとってございますが、先ほどその方面についての研究その他をしてPRもやっていかなきゃならないというふうなお答えでございましたが、国立精神衛生研究所に対しては百四十七万しかお金がないようでございますが、これあたりを考えてみましても、将来予防方面に、そうしてもっと研究その他に予算がとられていかなきゃならないのじゃないかと、もちろん予算の問題はむずかしい問題でございますのですが、国民がみなそれに協力するという立場が大事だと、それは藤田委員も言われたとおりでございますが、かって結核の撲滅運動を国民運動として展開しようとしたときにずいぶん大きないろいろなことがなされまして、そうして二十年前ぐらいでしたかしら、大きな国民運動になりまして、いま結核が撲滅されたわけではございませんけれども、一応国民の中に、結核は決して伝染病ではないという観念は植えつけられたと思います。それから、その予防法その他についてもずいぶん進歩したと思いますが、それだけの熱意をやはり展開していかなきゃならないのじゃないか。十何年前でしたが、私アメリカにおりまして、アメリカの精神衛生運動というのを見ておりました。それで、そのときに大きなポスターをたくさんにつくりました。そうして精神衛生、精神病患者を一人なくすることによってこれだけの国が得をするのだ、これだけの得をするのだというようなポスターをずっと張りました。で、国民運動をどうして展開するかというときにそういうことも考えられてよろしいのじゃないかと思うわけでございます。で、いまは患者さんの、先ほど病院の問題なんかたくさん出まして、それに対する御答弁もございましたので、まあその内容その他については、私は質問することを、時間もございませんので、差し控えますが、当面の問題としては、やはりいまある患者をできるだけなおすということ、それから、リハビリテーションをして、どうしても症状固定した人が病院にいなくても、社会で何とか自分で自活をしていくような状態をつくるというようなこと、そのために作業療法などがございます。職業指導もございます。で、そういうようなことを考えますと、やっぱり一連の施策というものをお立てになる必要があるのじゃないかというように考えるわけでございます。これは精神病患者、そういう者だけでなくて、先ほど藤田委員もしきりに言っておられましたけれども、やはり経済の問題とか生活水準の問題とかいうようなものとかみ合わせなければなかなかできないことはよくわかりますが、一応やはりせっかくできました精神衛生法の一部改正というときに関連いたしまして、もっと何か焦点をびしゃっと合わせたような施策が出ればと、こう思っておりましたが、なかなかただおざなりに精神衛生法だけが出たというだけで、施策がないように思います。で、いま病院の中に入っている患者さんの取り扱いでございますが、精神病患者の治療法につきましては、精神医学の向上その他でずいぶん進んでいるのだといわれております。これにも書いてございますが、一体その進んだ医学をほんとうに現在いる患者が受けられるような状態かどうかということについて、まあ先ほど御答弁ございましたから、私も御答弁を望みませんが、付け加えて、そういうことについてうんと考えていかなければならないのじゃないかということでございます。で、御答弁を聞いておりまして、一応規則はできているのですけれども、そういう運営の問題とか監査の問題になると、まことにできていないということは確かでございます。それで、一例を申し上げますと、精神病院の中の患者さんの生活状態というものは、先ほど藤田委員が御指摘になったようなことが非常に多い。それで、生活指導を通じて患者さんはなおるというのが先ほど局長も御答弁になりましたが、そのとおりです。だれが指導しているかということの問題でございます。だれが指導しているかというときに看護面の問題が出てまいります。で、そういうところで適当な指導者の人員が足りないということでございます。それについては、ここが私がぜひこのことだけを伺っておきたい点ですが、どんなふうにお考えになっており、どんな対策をお持ちですか、伺いたい。
  93. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 特に精神病院の院内における看護態勢の問題であろうと思います。精神病院の特殊な一般病院との違いがございますので、やはり精神病院の看護につきましては男性の看護人ももっと入れていきたいということもございますが、同時に、現在でも男性の看護人もいろいろな方面、作業療法等に使われておりまして、実際の看護にはなかなか手が回らぬという面がございます。そういう意味で、将来、精神病院の中には、先ほどもお話が出ましたように、特にPTといわれるような職種の仕事が非常にふえてまいることが予想されます。そういう意味で、看護人の充実ということと同時に、現在看護人が食われているそのようなレクリエーション療法、作業療法のためには、そういう専任の職員を振り当てるという方向で努力しなければならないと存じております。そういう意味でPTというような職種ができるだけ早く十分に供給されることを望んでおりますし、また、それに対応するような医療費体系、あるいは医療機関の育成という面も改善をはかってまいりたいと思います。
  94. 林塩

    ○林塩君 病院のあり方もあると思います。大体公立病院の精神病院におきましては、わりあいに基準が守られている。精神病院におきましては、患者六人に対して看護者一人ということになっております。その中に看護人を交え、それから看護婦を交え、それから准看護婦を交えております。それだけの基準を満たしているところは国立病院しかありません。他の公立病院でも、よほど看護管理のいい病院でなければございません。御承知でございましょうが、医療法人というのがございます。これは医療法人の病院の内容は、局長御承知かどうかわかりませんが、どこでもたいへんなことでございます。そうして資格者はおりません。それでほとんどが無資格者でもって、看護人にいたしましても、ちょっと手があいているから来て、それで病院の患者の監視をしろというくらいが関の山でございます。そういう人たちを使っています。そうして県当局に行きまして、この医療法人をどんなふうに監督をしておりますかと言いましても、そこまで手が伸びておりません。医療監査そのものは病院だけでも伸びておらない。まして精神病院というような、患者がものを言わないという、それで、家族におきましても、精神病院に入っていれば、それでもう何といいますか、預かってもらっていればそれでいいというような気持ちが相当あるところでは、無資格者をもってとにかく監視をしている状態が多いわけです。その状態は私よく存じております。ところが、その医療法人の病院の経済状態は非常にいいわけです。この間もある医療法人の病院に行ってみますと、そこには医師は院長さんが一人、それから、当直の先生は非常勤です。看護婦長が一人、それで患者二百人、その中にたった四、五人の看護婦しかおりません。あとは無資格の人が、何か患者があばれたときの用意に置いてあるのです。どうかしたときにどうするのですかと言いましたところが、これは非常勤の先生がおられるからということでございますが、わりあい経済状態はいいのです。ですから、見たところはたいへんにいい病院になっているのです。先ほど藤田委員が言われましたように、一たび中に入ってみますと、だれも指導してはありません。ただ、けんけんごうごうとして、そこで起居しているにすぎないというような状態がほとんどであるというのが五〇%くらいじゃないかと思います。それから、この間もある病院に参りました。精神衛生法も出ていることでございます。私ども看護関係については、いろいろ見ていかなければならない責任もあります。そういうようなことで行きましたが、入ることを拒否されました。というのは、なぜ拒否されたかということにつきましては、その状態が、私は悪く解釈して、もしかりにそういうところに入った場合にはいろいろ言われるのじゃないかというようなことで拒否されたのではないかと思います。原因を突きとめないで帰って来ましたが、やはりそこに入りましたときには、中を見せないような状態がある。そこまでやはり厚生省は手を伸ばされる必要があるのではないか、患者家族からは見放され、そうして病院からは、そういうようにただ入れられる措置入院でございますが、入院料だけは入る。ですから、人件費を使わないで入院費を取れば、ものを言うことのできない患者です、精神病患者を私は取り扱ってよく知っております。ものを言うことができない、どこが悪いか、どうするかというようなことを言えない患者です。なおすような段階ではないのです。なおすように努力をしておるところはほんの少しでしょう。そうして、ほんとうの治療をしようと思って努力すれば、全部病院は赤字になる。先ほど申し上げましたOTというようなものを雇ってしていると言われますけれども、そういうものを雇うにも雇えない、数が少ないのですけれども雇えない。一番いいのは無資格者を入れて給料を安くして、そこで経営をするということが五〇%でしょう。それで、治療をするというところまでいっていないということでございます。精神病の治療をするところの、例のショック療法でございますが、こういうショック療法も看護婦の手が足りないからできないというような状態、それから、お薬だけ飲ましておけばいいという状態なら、これはそう手が要らないでしょうが、生活指導の面ではやはり患者を取り扱い、治療でなおるように向けていくためのやはり技術者が要るわけです。そういう点につきましては、治療の面そのものにおいて、私は、はなはだ欠けるところがあると思います。ですから、そこがただもう家族から離れて収容されているというにすぎない状態になっているということは、やはり私は精神衛生上、ことに医学が進歩して、結核と同じでございます、なおるのだということが立証されているときに、なおらないでそのまま埋もれていく人がたくさんあるということは、非常に私は憂慮すべき問題じゃないかと思いますので、その点について当局はどのようにお考えになっているか、その状態を御存じかどうか、伺いたいと思います。
  95. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) たいへん実情についての精細なお話をいただきまして、まことに恐縮に存じております。十五万ベッドくらいの精神病のベッドがございます中で、私どもが実質的に指導監督をいたしておりますのは指定病院の六万ベッドでございます。したがって、九万ベッドというものについては私ども直接関与をいたしておりません。そういう意味で、そういう中に非常に程度の悪いただいまのお話のようなものがあるのではないかと思いまして、私自身も、お話を聞いて、非常にりつ然といたすようなこともございます。先ほどの藤田先生のお話も、あるいはそういうような点を御指摘されたのではないかと存じます。しかし、私どもは、本来、病院であれば当然医療法の規定が適用され、医療監視が適用されて、医療法の規定どおりのものが当然であるものというふうに考えておったわけでございますが、私ども自身、そういう十分手が回らないところがございましたので、今後、医療法の施行担当者とも協力いたしまして、できるだけ実情を把握して是正していくようにつとめたいと思います。
  96. 林塩

    ○林塩君 精神病者でございますので、普通の患者さんでごさいましたら、この病院は待遇が悪いとか、あるいは看護婦の数が足りないというようなことは言うわけですし、それから、いろいろ訴えられますが、精神病患者さんはその訴えさえできないというのが病気でございますので、そういう点では普通の病院以上に、やはり監査、それから、指導などがなされるべきだと思うのです。それでないと、やはりせっかく法律ができましても、決して実があがらないのではないか、こういうふうに思いますので、実情を申し上げました。  それから、看護体制は、やはり数が足りない問題、精神病院も含めまして、看護婦の数が足りない、看護人の数が足りない、これはしょっちゅう言っていることではございますが、特に精神病院におきましては看護婦の数が足りないために、非常に治療上困っている状態でございます。  それから、もう一つ、この際に当局の御見解を聞いておきたいと思いますが、国立関係におきましても国立療養所がございます。精神病の療養所が二、三カ所ございますが、そこで看護関係が足りないからというので准看護婦の養成をしております。それにつきまして、私はこういうふうに思っていつも言ってきたのでございますが、精神病の看護というのは、普通の看護よりたいへんむずかしいものでございます。精神に病気があれば、身体のほうにも病気がある。そうして目に見えないものを見るわけでございますから非常に観察がむずかしいわけでございます。それで、先ほどから言っておりますように、なぜ精神病が起こったかというような問題につきましては、その人の社会背景なり生活の状態なり、いろいろなことを考えて指導していかなければならないので、准看護婦程度では、臨床経験を何年かしますれば別でございますけれども、とても私は治療の効果をあげ得ないと思うのでございますが、手が足りないからというので、精神病ならば准看護婦でよかろうというような、国立でさえそういう考え方をお持ちでございますが、それは精神病というものに対して、非常に私は何か精神病自体を重視されないような、治療に対して重視されないような態度を、国立自体が、厚生省自体が持っておられるように考えるのですが、そういうことについてはどういう御見解をお持ちでございますか、伺いたいと思います。
  97. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 私ども、決して精神病院の看護婦は程度の低い看護婦でいいということは全然考えておりません。お話しのように、むしろ非常に特殊な技術、技能を必要とする点が多々あると思いますので、国立精神療養所に付設されたものが准看護婦養成所であったということが、私直接の担当でございませんので、そのときのいきさつを知りませんが、おそらくやはり要員が得にくかったという点があったかと思います。しかし、精神療養所は、そこで卒業した准看護婦だけしか使えないということではございませんので、その点も考慮して、能力ある看護婦を配置していただくように私どものほうからも連絡をいたしたいと思います。
  98. 林塩

    ○林塩君 私が言おうとしておりますところは、精神病患者の治療に対して看護婦が非常に大事だということと、生活指導が非常に大事だということでございますので、これ以上の質問をする時間もございませんのでやめますが、国がやはりそういう姿勢でぜひ臨んでいただきますことによって、民間のほうもそういうふうな姿勢で臨むと思いますし、それから、経営者もそういうことでなくてはならないと考えるだろうと思うので申し上げたわけでございます。  それから、その次に、第四十二条に書いてございますが、先ほどから出ておりました戸別訪問をしていかなければ、一人一人にそういう精神衛生上の指導をしていくのでなければ、とてもこういう問題の解決ができないというような御意見がいろいろ出ていますけれども、私もそういうふうに思います。それにつきまして保健所の問題でございますが、「保健所に、精神衛生に関する相談に応じ、及び精神障害者を訪問して必要な指導を行なうための職員を置くことができる。」、こう書いてございます。それにつきまして、保健所が一応精神衛生行政を取り扱うということになっていきますと、公衆衛生局長さんは保健所のことをよく御存じでございますし、私も保健所のことをよく知っております。いまの人員で、それでなくても保健所のお仕事が日に日に増しておりますが、そういうことができるとお思いになるかどうかについて伺いたい。
  99. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 保健所の業務が年々増加してまいるにもかかわらず、保健所の職員が増加しないために全般の能率が落ち、あるいは仕事の質が落ちるということが指摘されているわけでございますが、また、いろいろ最近仕事がふえてまいります段階で、適切にそれに必要な職員の裏づけをしてまいったことがきわめて少いのでございます。しかし、今度の精神衛生の仕事を保健所に新たに付加するにつきましては、従来の職員でなしに、全く新規の職員を充足するたてまえをとっておりますので、そういう意味で千六百名以上の職員を新規に増加するというたてまえをとっておりますので、従来の職員に新たな負担をかけないようにという配慮をいたしております。
  100. 林塩

    ○林塩君 職員が、ここに書いてございますように、一応できるわけでございますけれども、実際の問題は、結核の訪問指導もほとんどが保健婦がやっていた、過去の二十年の実績はそうでございます。訪問指導のほとんどが保健婦によってなされておる。実のところ、保健婦が非常に音をあげているのです。何か事業ができると、すぐ保健婦のほうにかかってくる。そのために徹底してものが行なわれていないというようなことでございます。保健婦が訪問をして、そしていろいろ医師の持導のもとにそういう医学的な問題の解決に当たるのが一番わかりやすいと思います。それから、また、先ほど言われましたソシアル・メディカルワーカーなどは、どうしてもこれと一緒に働いていくことによって効果があがると思います。この際、保健所にそういう仕事ができますれば、訪問をしております保健婦に精神衛生の問題も必ず取り扱えということに実際問題としてなるわけです。なるわけでございますが、それについては保健婦にそういうことは期待をされておるのかどうか、それについて伺いたいと思います。
  101. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) いまも申し上げましたように、できるだけとにかく新しい職員を新規に増加いたしまして、それをもってこの仕事に充てるというつもりでおりますが、過渡的には、一ぺんに千六百名の充員ができませんので、どうしても、おそらく実際にある程度は保健婦さんの肩にかかってくることがあるのだろうという心配はいたしております。しかし、私どもの指導方針としては、できるだけそういう従来の職員に負担をかけないように、職員を充実してからやれというつもりでおります。ただし、保健婦さんでも、従来ソシアル・メディカルワーカー的な仕事をしていらっしゃる方がございます。そこで、おそらく今後も精神衛生のケースワーカーをやりたいととう方たちが出てまいると思います。そういう方たちに対しては、従来の保健婦の資格に、ケースワーカーの技術、あるいは精神衛生上の精神医学的な素養を与えまして、そうして精神の指導員になることは、これは妨げるつもりはございません。しかし、その場合に、指導員になりますれば、その方は保健婦としての定員はあくと、したがって、そのあとの保健婦さんは保健婦さんとして埋める、そういうような方法でやっていきたいと存じております。
  102. 林塩

    ○林塩君 ぜひそれは考えて御指導いただきたいと思いますのは、人員を増さないで仕事が新たになりますと、もう保健婦が訪問してるんだから、何でもかんでも保健婦にやれ、保健婦は一応医学的知識もあれば、訪問技術も知っております。経験もありますし、地域社会との関連は非常にあるものですから、母子衛生の母親の指導にしましても、乳児の指導にしましても、三歳検診にしましても、ほとんどがかかってきておるような状態でせざるを得ないであろう。することに何ら自分たちとしても抗議を言うわけではないけれども、徹底してものができないということにおいては、非常に意欲も減じ、効果もあがらない。その辺のところを、精神衛生法ができますについて、保健婦をどういうふうに取り扱われることになるのかということがよく討議をされます。実際保健所の仕事は地域の保健指導という意味で、精神衛生も一つの保健指導でございますので、やはり本来ならば保健婦の仕事でいいと思いますが、それに精神衛生というような新たな分野でございますので、多少ともそれに知識を与えていくならば、もっと効果があがるんじゃないか。ただ人員の面で、そして事務的な問題その他は男子の方はよくされるわけです。ところが、実際にそういう患者さんとのいろいろな精神衛生上の医学上の問題になってきますれば、ほとんどが保健婦にみんな肩がわりをさせられるという状態でございますので、こういうのができた機会に、はっきりぜひ行政指導としてやっていただきたいというので、まあ精神衛生を向上させていく意味から、ぜひともその辺の確立が必要だと思います七それはさっきお答えいただきましたので、もうよろしゅうございます。  次に、医師が非常に足りないという問題が出ております。これは保健所の医師自体が非常に足りません。それから、地域の精神科の医師も足りません。精神科の先生方にお目にかかりますと、鑑定をするときに非常に困るんだ、時によりますと、そういう方がないために、保健所の医師がせねばならないというようなことがあったりして、地域では非常に困っておられる。で、医師の数が非常に足りません。それで、そういうことにおいて、先ほど御答弁いただきましたから申し上げませんが、ぜひともこの精神の専門医というものを拡充されるように、それについては具体的な何かいい方法があるのでございますかどうか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  103. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 精神科の医師を急速に増加させるために非常に具体的ないい方策があるかということでございますが、これは正直に申し上げまして、どれくらいの期間にどれくらいの医師を増加させるというような計画はなかなか困難でございます。戦後一時婦人科医師が非常に増加したことがございます。その次の段階に整形外科医が非常に増加した時代があって、そして最近は精神科の医師が非常に増加いたしております。しかし、この増加も、それぞれ医療需給の事情によってむしろ起こってきたことでございまして、意識的にそのような指導をしたわけではございません。そういう意味で、私どもも、精神科医師の増加につきまして、意識的に何か制度を設けてこの増加をはかろうというつもりはございません。しかし、精神神経学界の先生方とも協力をいたしまして、精神科のほうにどういうふうにすれば最も魅力があり、精神科の医師になりたがるか、また、精神科の医者を増加させるためにはどのような手を打てばいいのかというような点をお話し合いをしておりまして、できるだけそういう方向で努力してまいりたいと思います。
  104. 林塩

    ○林塩君 それで、私は、やはり目に見えるものでなければ点数になっていないということがずいぶん妨げていることがあります。アメリカの精神科の医師はとてもお金持ちです。というのは、一時間そういう精神衛生指導をした場合には、その指導料というものはとても高いわけです。ところが、日本にはそういうものはほとんどないわけです。それでございますので、その辺につきまして何らかのお考えがあるのかどうか、先日もある精神科の院長さんとお話をしておりましたところが、どうせ精神科の医師なんかみんな貧乏だから、とてもとても、よほどもの好きでなければならないのだ、こういうふうなお話で、これはこの間OT、PTが通りましたときにも、そういう仕事に対する点数代を、ぜひ医療報酬のいろいろなことをきめていかれる際にお考えにならないと、せっかくそういう職種を設定しましても数はふえないであろう、こう申しましたと同じように、やはりそういうような関連対策というものがなければならないのではないかと思うわけでございます。それで、それについては何かお考えになっていることがございますれば伺いたいと思います。
  105. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) おっしゃるとおりでございまして、現在の日本は皆保険でございますために、すべてが保険点数でないと事実上医療行為を行なうことができない形になっております。したがって、たとえば精神科の治療を、精神療法、あるいは精神分析法というようなことを行なおうといたしましても一時間、二時間というような時間がかかって、しかも、非常に報酬が少ないという点に非常に欠点がございます。したがって、現在の医療費の体系の中では、精神神経科の外来診療所というものが事実上不可能な形になっております。そういう意味で、これらの精神関係医療、特に精神療法的なものをやりますためには、どうしてもそういう保険医療体系の中から改善していかなければならない状態があります。また、一方、病院においても、先ほどのような作業療法、レクリエーション療法というものをやりましても、これが現在点数化されておりませんために、持ち出しでなければそれができない、したがって、公的医療機関等でなければ事実上行なえないという形になっております。こういうような実情につきましては、できるだけ早い機会に是正をしてまいりたいということで、保険当局とも、こういう問題についてできるだけ早い機会に協議をして進めようということは話し合いをいたしております。
  106. 林塩

    ○林塩君 もう一つ質問いたします。ここにも二件ございますが、非常に少ない医師、第四十二条にございますが、うしろのほうに、そういう精神障害者が出た場合には、医師をして精神に関する相談に常時応じさせるということがございます。医師の命令のもとに、そういう医師はたやすく得られるであろうかということでございますが、書いてはございますが、実際の場合はどんなふうになるとお考えになりますか。
  107. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 専門の医師を保健所の職員にすることは、これは事実上不可能でございます。したがって、保健所に精神神経科の専門の嘱託の医師を置くということでいろんなケースができましたときに、一週間に一回とか二回とか来ていただきまして必要な指示を受ける、そして常勤のケースワーカーがそれをこなしていくという形にしたいと思います。そういう意味で、本年度から、さしあたり三百五十人の非常勤の医師を置く予算も計上いたしてございます。
  108. 林塩

    ○林塩君 その次に、この相談員の資格でございますが、「前項の職員は、学校教育法に基づく大学において社会福祉に関する科目を修めて卒業した者であって、精神衛生に関する知識及び経験を有するものその他政令で定める資格を有する者のうちから、」と、こうございますが、その中に、相談員になるための資格は大学卒でなくてはならないときめてありますが、保健婦はこれに該当するのかどうか、それを伺います。
  109. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) こういう法律の定め方をするときには、最初の一例だけをあげて、あとは「その他」ということで政令に譲ってあるわけでございまして、「その他」の中に、私どもは、心理学系統の学部を卒業した者とか、あるいは保健婦も含める考えでおります。
  110. 林塩

    ○林塩君 時間もないようでございますから、精神衛生問題は大きな問題でございますので、その他いろいろ承りたいこともございますが、具体的な問題として法改正に際しまして伺いまして、将来また続けていろいろな問題を伺っていきたいと思います。この際、ぜひ非常に強い姿勢で精神衛生問題を解決していかれるように、厚生省当局におかれましては、予算その他の問題につきまして、隠することなくそれを実行していただきたい。そうであらねば、患者並びに家族はたいへん不幸になると思いますし、健康な社会建設といって打ち出しております当局としても、精神衛生だけは別だというふうなお考えになっては非常に跛行いたしますので、今日におきましては、身体の健康より、むしろ精神の健康のほうがより大切だという時代になって、国民もそのように望んでおると思いますので、その辺も強い姿勢で臨んでいただきたい。来年度の施策におきましては、特にその辺に留意をされるようにお願いしたいわけでございますが、厚生大臣の御意見、それから、御決意を伺いたいと思います。
  111. 神田博

    国務大臣神田博君) ただいま林委員から、この精神衛生の取り扱いに関しましては、前向きの姿勢で、特に強い姿勢でひとつ処置をするようにという御要望がございました。これは私たちも同感でございまして、そのような考えのもとに、今後なお計画を十分練って推し進めてまいりたいと思います。
  112. 小柳勇

    委員長小柳勇君) 林君の意見は非常にりっぱな意見でありますし、閉会中の調査に精神病院なども加えましてやるように対策を立てていきたいと思います。  本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめておきます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十四分散会      ―――――・―――――