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1965-03-18 第48回国会 参議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十八日(木曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員の異動  三月十六日     辞任         補欠選任      横山 フク君     林田 正治君  三月十七日     辞任         補欠選任      林田 正治君     横山 フク君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤田藤太郎君     理 事                 鹿島 俊雄君                 丸茂 重貞君                 杉山善太郎君     委 員                 亀井  光君                 川野 三暁君                 小柳  勇君                 柳岡 秋夫君                 小平 芳平君                 林   塩君    衆議院議員        発  議  者  河野  正君    国務大臣        労 働 大 臣  石田 博英君    政府委員        林野庁長官    田中 重五君        労働大臣官房長  和田 勝美君        労働大臣官房会        計課長      岡部 實夫君        労働大臣官房労        働統計調査部長  大宮 五郎君        労働省労政局長  三治 重信君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省婦人少年        局長       谷野 せつ君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        労働省職業安定        局失業対策部長  住  榮作君        労働省職業訓練        局長       松永 正男君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○駐留軍労働者雇用安定に関する法律案(衆議  院送付予備審査) ○港湾労働法案内閣送付予備審査) ○労働問題に関する調査  (労働行政基本方針に関する件)  (昭和四十年度労働省関係予算に関する件)     —————————————
  2. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) ただいまより開会いたします。  駐留軍労働者雇用安定に関する法律案議題といたします。提出者衆議院議員河野正君より本案に対する提案理由説明聴取いたします。
  3. 河野正

    衆議院議員河野正君) 私は、駐留軍労働者雇用安定に関する法律案提案理由説明を行ないたいと思います。  御承知のように、この法律案は、前に衆議院に提案いたしたものでありますが、残念にして成立しなかったものであります。私たちがこの法律案を再び提案いたしました理由は、この法律案駐留軍労働者にとって必要欠くべからざるものとの判断に立っているからであります。  何度も強調しておりますけれども駐留軍労働者地位はきわめて不安定であります。一昨年においては、アメリカドル防衛政策、その戦略変更によって六千人をこえる労働者解雇されました。六千人の解雇というものはたいへんな数でございまして、政府もまたその再雇用必要性を当時認めていたのでございます。しかし、その後の状況を見ますと、このうち再就職したものはわずかに二千人でございました。その他の者はなお安定した職場を得ていないというのが実情でございます。  いかに駐留軍労働者雇用が不安定であるかは、この一事をもってしても明らかだと思いますが、私どもとしては、ぜひともこれらの労働者雇用の安定をはからねばならないと考えている次第であります。  特にこれらの労働者は、政府雇用主であり、国のために米軍のもとで働いているものでありまして、これらの労働者がもし米軍の都合により解雇されました場合には、日本政府がその再雇用責任を持つのが当然だと考えます。国のために働いている労働者に対しては、日本政府がその生活の将来にまで責任を持つべきだというのがわれわれの根本的考えであります。しかも駐留軍労働者というものは、いつなくなるかわからない職場に置かれているという特殊性を持っております。基地がなくなれば当然にその職場もなくなってくるのでありまして、この点は一般産業労働者に比して特殊、不安定な立場に置かれているのであります。  こういう理由からわれわれが、特にこれらの労働者雇用について法的な保障を必要と考え駐留軍労働者雇用安定法案を提案した理由があるのでございます。  次に、法案内容について御説明いたしますと、第一条、目的は、この法案基本的な立法目的を示したものであります。それは、米軍撤退等に伴って解雇される場合に、安定した職場への再就職を容易にするための必要な措置を講じ、これらの労働者雇用の安定をはかろうというものであります。具体的に申しますと、米軍撤退とか部隊の縮小とかいう理由で、形は政府雇用者でありながら、その雇用は常に不安定であり、再就職保障もなく、いつ解雇されるかわからない状態に置かれている駐留軍労働者雇用の安定をはかることがその目的であります。  第二条は、本法案によって保護される駐留軍労働者範囲を定めたものでありまして、もっぱら政府雇用労務者だけを対象としております。  第三条について見ますと、第一項では、防衛施設庁長官は、アメリカ軍撤退等の場合には余剰となった労働者解雇しようとするときは、労働大臣同意を得なければならないこと。第二項では、右の労働大臣同意は、解雇されようとする労働者が安定した職業に再就職することが確実であると認めた場合にだけ許され、第三項では、かつ、その同意はあらかじめ駐留軍労働者雇用安定審議会意見を聞かなければならないこととし、第四項では、右同意を得ないでなされた解雇は無効であることを確認的に規定したものであります。  第四条は、雇用計画について規定したものでありまして、アメリカ軍撤退等による余剰労働者を転職させる計画作成義務労働大臣に負わせたものでありまして、第三条による解雇制限を受けた労働者についてだけでなく、将来予想される余剰労働者の分も含めた計画雇用計画であります。  第五条と第六条は、転職促進措置実施を規定したものであります。  第五条は、職業指導職業紹介公共職業訓練その他の措置が効果的に関連して実施されるような義務労働大臣に課したものであります。  第七条と第九条は、第三条の労働大臣の不同意にかかる労働者に対する措置を規定したものであります。これは、第四条ないし第六条と異なって、第三条によって解雇制限を受けた労働者についての特別措置を明らかにしております。その特別の措置とは、第三条によって解雇をストップされた全労働者に対し、第五条の転職促進措置を必ず受けさせる義務を課したことであります。  第十一条は、駐留軍労働者雇用安定審議会を規定したものであります。審議会役割りは、駐留車労働者雇用安定に関する事項関係行政機関に建議することのほか、第三条による労働大臣同意、不同意をするとき、及び第九条による不同意の取り消しのとき、意見を述べることであります。以上が、本法案提案理由内容であります。何とぞ慎重審議の上、本法案の御採決をお願いするものであります。
  4. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 本日は、本案に対する提案理由聴取のみにとどめておきます。     —————————————
  5. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 次に、港湾労働法案議題といたします。政府より本案に対する提案理由説明聴取いたします。石田労働大臣
  6. 石田博英

    国務大臣石田博英君) ただいま議題となりました港湾労働法案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。御承知のごとく、港湾海陸輸送連結点として、国際貿易その他国民経済にとって重要な地位を占めております。しかるに、わが国港湾実情を見ますと、その機能を果たすための必須の条件である港湾労働近代化は、欧米諸国に比し、また、他産業に比較いたしましても著しく立ちおくれており、雇用の不安定、労働災害の多発、福祉施設の未整備等事情にあるため必要な労働力確保できず、港湾における荷役にしばしば渋滞を来たしているのが現状であり、このまま放置いたしますと、近い将来において国民経済の発展に重大な障害を及ぼすことも予想されるのであります。もちろん政府といたしましても、従来から港湾における労働力確保港湾労働者福祉増進のために鋭意努力し、日雇い港湾労働者職業紹介専門とする公共職業安定所設置するなど、港湾労働者職業紹介体制整備労働条件の維持、向上のための指導及び監督重点的実施関係業界における自主的災害防止活動促進雇用促進事業団による住宅等福祉施設設置、その他各般の施策実施してまいりましたが、わが国港湾複雑性特殊性のため、現行法の運用による行政措置のみによりましては、遺憾ながら十分な効果をあげることができない現情にあるのであります。  このときにあたり、昨年三月、かねて港湾労働及び港湾運営利用改善策について審議中であった港湾労働等対策審議会から内閣総理大臣に対して、港湾労働者登録制度の創設や日雇い港湾労働者の不就労時における対策等を骨子とする港湾労働対策についての答申提出されたのであります。政府といたしましては、国民経済の中で占める港湾問題の重要性貿易の伸張に伴う必要労働力確保緊要性とあわせて人間尊重社会開発見地から、この答申の趣旨を十分尊重しつつ港湾労働対策についての検討を重ねた結果、港湾運送に必要な労働力確保港湾労働者福祉増進をはかる方策についてその成案を得ましたので、ここにこの法律案提出することといたした次第であります。  次に、その内容につきまして概略御説明申し上げます。  第一に、この法律は、港湾運送事業法第二条第一項の港湾運送のうち、いわゆる船内、はしけ、沿岸及びいかだのいずれかの作業またはこれらに準ずる作業を行なう事業適用することとし、また、適用港湾は政令で指定することとしておりますが、当面は東京、横浜、名古屋、大阪、神戸及び関門のいわゆる六大港を中心適用することとし、必要に応じ、漸次これを拡大していく考えであります。  第二に、労働大臣は、毎年、港湾ごと港湾雇用調整計画を定めることとし、その計画においては、港湾ごとに必要とされる港湾労働者の数及びそのうちの日雇い港湾労働者の数を定めるとともに、港湾労働者職業紹介職業訓練その他港湾労働者雇用調整に関する重要事項を定めることとしております。その際、日雇い港湾労働者の数を定めるにあたりましては、常用港湾労働者雇用促進に資するように配慮を加えることとしております。なお、計画作成にあたりましては、港湾に関する施策総合調整に関する事項審議するため内閣総理大臣諮問機関として設置される港湾調整審議会にはかることとしております。  第三に、港湾における日雇い労働者確保とその雇用及び生活の安定をはかるため、日雇い港湾労働者中心とする雇用調整を行なうこととし、次のような諸措置をとることとしております。  その一は、日雇い港湾労働者登録制度であります。公共職業安定所は、港湾労働者としての適格性を備えた日雇い労働者について、その者の申請に基づき港湾雇用調整計画において定められた日雇い港湾労働者必要数範囲内で、これを登録することとし、登録日雇い港湾労働者には、荷役に従事する間、登録票を携帯せしめることにより、その身分を明確にすることとしております。また、常用港湾労働者については、事業主から公共職業安定所に届け出させることとし、港湾荷役に従事する間、常用港湾労働者証を携帯せしめることにより、その身分を明確にすることとしております。  その二は、日雇い港湾労働者雇用調整であります。港湾運送事業者日雇い港湾労働者を雇い入れる場合には、原則として公共職業安定所紹介によらなければならないこととし、この場合公共職業安定所は、まず登録日雇い港湾労働者紹介し、なお不足するときは登録された者以外の日雇い港湾労働者紹介することとしておりますが、それでもなお不足する際は、例外的に事業主の直接雇い入れを認めることとしております。また、登録日雇い港湾労働者は、公共職業安定所長の指示するところにより、公共職業安定所に出頭し、その紹介を受けて港湾荷役に就労することを要することとしております。  なお、このほか、公共職業安定所は、労働条件に関する法令違反等があってその紹介する港湾労働者福祉を害するおそれがあると認めるときは、その事業主に対し、港湾労働者紹介を停止することができることとしております。  その三は、登録日雇い港湾労働者に対する雇用調整手当支給であります。雇用調整手当は、登録日雇い港湾労働者公共職業安定所の指示するところにより出頭したにもかかわらず、港湾荷役に就労できなかった場合において、公共職業安定所長の証明に基づき、雇用促進事業団支給することとしております。雇用調整手当の日額は、その者の賃金等級に応じ、賃金額のおおむね六割を目安として定めることとしております。  その四は、港湾荷役に就労できなかった登録日雇い港湾労働者に対して行なう訓練であります。この訓練は、公共職業安定所長訓練を受けることを指示した登録日雇い港湾労働者に対して、港湾荷役に従事するために必要な知識及び技能を習得させるために、雇用促進事業団実施するものであります。  その五は、登録日雇い港湾労働者のための福祉事業であります。これは登録日雇い港湾労働者のための福祉施設設置及び運営、その他これらの労働者福祉増進するための事業として、雇用促進事業団が行なうこととしております。  その六は、登録日雇い港湾労働者に対する退職金共済制度適用であります。港湾運送事業者団体を設立して労働大臣の認定を受けた場合におきましては、その団体構成員である港湾運送事業者雇用する登録日雇い港湾労働者に対し、その登録の期間に応じて、中小企業退職金共済法に基づき退職金支給することとしたのであります。  以上のほか、この法律案においては、常用港湾労働者雇用促進港湾労働者労働条件向上職業訓練実施福祉施設整備はしけ内居住解消等に関する事業主努力義務及び国、地方公共団体援助義務について規定するとともに、雇用調整手当支給に要する費用に充てるための納付金の徴収及び国庫補助不服審査都道府県知事の権限、違反行為に対する罰則等について所要の規定を設けましたほか、その附則におきまして、関係法律の条文につき所要整備をいたしております。  なお、この法律によるこれら諸措置実施にあたりましては、港湾調整審議会中央職業安定審議会のほか、適用港湾ごと設置される地区職業安定審議会にはかり、その円滑な運営をはかる所存であります。また、港湾運送事業近代化及び港湾運営利用改善に関する対策実施を担当する関係機関とも緊密な連携を保ち、もって港湾労働対策の実効をあげてまいる所存であります。  以上、簡単でございましたが、この法律案提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げた次第であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  7. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 本日は、本案に対する提案理由聴取のみにとどめておきます。     —————————————
  8. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 次に、労働問題に関する調査を行ないます。  労働行政基本方針に関する件及び昭和四十年度労働省関係予算に関する件を議題といたします。  質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  9. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 労働行政基本方針及び昭和四十年度の労働関係予算にちなんで若干の質問をいたします。  まず、最初にお尋ねいたしたい点でございますが、労働省は、四十年度予算編成に先がけて新労働政策を発表されましたが、その中で、四十年度の労働行政重点施策として、労働力不足及びその有効活用、あるいは労働福祉に関するもろもろの施策、あるいは労働災害等に関する防止政策等に関して、言うならば大局的な見地に立って労働条件改善を長期的な視点でとらえて、これを追求するということを明らかにされておりますので、その限りにおいてその意欲を評価することができると思います。しかしながら、四十年度の労働関係予算そのものは、一口に言って労働力不足への即応体制と、低賃金労働力廃止体制を確立することにあると言うても、あえて過言ではない、そういうふうに私ども考えているわけであります。たとえば、四十年度労働関係予算規模は、一般会計で九百八億六千百万円何がし、昨年度比増減率は一〇・六%であります。次に、労働災害補償保険特別会計では一千十七億五百万円何がしということでありますが、昨年度増減比は八・九%、さらに失業保険特別会計では一千四百八十四億四千四百万円ということに相なっておるのでありまして、昨年比増減率は二三%増であります。以上のごとき伸び率ではありまするけれども、ここで明らかなように、労働関係予算の一貫した特徴は、一般会計における圧縮予算が、常に、本来、給付内容や、あるいは保険料率改善すべき特別会計にしわ寄せされておるということが最も問題であるというふうに私はとらえておるわけであります。特に失業保険特別会計の前年度比二三%という異常な伸び率はその顕著なあらわれである、こういうふうに私はとらえるわけであります。したがいまして、この点に関しまして労働大臣労働政策と、本年度の予算関係に対する基本的な見解というものをこの際承っておきたい、こういうふうに考えるわけであります。
  10. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 御質問の要点は、施策の方向には異存はないが、それを元来一般会計で充当すべきものを特別会計にあまりに多く依存し過ぎているのではないか、こういう御質問であろうと思うのでありますが、予算の大小は別といたしまして、諸般の事情の許す範囲において、あとう限りの予算獲得努力をいたしたつもりでございます。失業保険特別会計伸び内容、使用の内容等については、一とおり所管の事務当局から御説明をいたさせて、その後私の所見を述べたいと存じます。
  11. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 失業保険特別会計から福祉施設に充当しておる経費としまして、先般、委員長から提出を求められましたので、今年度と来年度の比較資料がお手元に届いておると思います。その資料からもおわかりのとおり、福祉施設に充当しておりまする金額は全体の規模からいたしますると、今年度よりも来年度の予算におきましては比率が若干低下いたしております。そういうことで、失業保険特別会計における福祉施設経費が不当によけいに支出されておるということには相ならないと私ども考えておる次第でございます。
  12. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 労災保険におきましては、一般補償費支出関係予算以外に、保険施設費、それから業務取り扱い費といった関係がございます。で、保険施設業務取り扱い費は、労災保険発足以来、大体全体の一五%以下という目標で予算を計上いたしております。内容的には、労災保険法第二十三条によりますところの保険施設、それから二十三条の二によります「業務災害予防に関し必要な保険施設を行なう。」という予防関係経費労災保険から支出いたしておりますが、総額といたしましては、ただいま申し上げました労災保険発足当初から定めました一五%以下の線で予算を計上しておる次第でございます。
  13. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 いみじくも、昭和四十年度の労働省関係予算を先回の委員会会計課長説明されたと思いまするが、その時点藤田委員長が、失業保険などから一般に流用しておるデータをほしいというようなことで、これはいいことを言ってくれる、そういうふうに思っておりましたが、いまここにデータがかりそめに出ておりますが、きょうは他にいろいろな労働政策基本に関して重要な質問を控えておりまするので、きょうはこの点については重箱のすみをつつくような質問は一応しないことにいたしまして、次に移りますが、先般、労働大臣は、本委員会における来年度の労働政策ともいうべき所信表明の中で、このようなことを言っておられます。雇用対策の一環として中高年齢失業者の再就職の問題及び地域間、産業間における労働需給の不均衡等の問題に関連し、「今後は、限られた労働力を有効に活用するための施策を講ずることが肝要である。このため、四十年度においては地域別産業別雇用計画を策定し、これを指針として労働力の適正な流動化促進と、労働力需給計画的な調整を進めるとともに、中高年齢労働者雇用確保中小企業における労働力確保対策強化等、積極的な雇用対策を展開してまいりたい」と、かように述べておられるわけであります。  そこで、私は、なお一段と労働大臣に、その創意性とくふうと自発性を発揮していただきたい点は、言うなれば、労働力活用の谷間から突き落されたような形に受けとめられる出かせぎ者の問題であります。申し上げるまでもないのでありますが、今日、たとえば北陸地方にいたしましても、東北地方におきましても、その地域における農民は、好むと好まざるとによらず、もう農業だけでは生活ができなくなってきている。そのことが、現象面の中では、ここ数年来、やはり職を求めまして出かせぎという形で、その数は全国で数十万、言う人によると百万をこえているのだというような、その実数の把握はなかなか正確にはできないといたしましても、現象面では百万に近い相当なものじゃないかと、そういうふうに受けとめておるわけであります。大臣すでに御承知のはずだと思いますけれども、二月の二十三日の時点において、私まあ長い間社会運動なり労働運動を手がけて、その中に存在しておるわけでありまするが、これを農民運動ととらえても、あるいは労働運動ととらえても社会運動の面からとらえましても、おそらく歴史的には全国の出かせぎ者の問題をとらまえて、実行委員会というものをつくりながら、やはり出かせぎ者の全国の総決起大会というものを開きまして、そしてこれは日比谷公園でいま申し上げました時点で行なわれたわけでありまするが、その際、十四項目要求決議がなされておるわけであります。その要求決議そのものは、内閣はもちろんのこと、関係各省にそれぞれの代表者がそれなりに決議文を手交しておるということでありまして、その時点に、私はその十四項目要求の柱の中で、労働大臣に十分これを消化してもらいたい、時間をかけて。前段申し上げましたことばのあやではなくて、十分創意性とくふうと自発性をもって、この問題を捨て子にせず、真剣にひとつ取り組んでもらいたいのだ。閣議の中でもこれを広げて、やはりこれは農林省だ、これは労働省だ大蔵省だと、そういう形ではなくて、真剣に取り上げてほしいということで、私史はその大会に参加しておった関係上、労働大臣にひとつ会わしてほしいということであったわけでありまするけれども、当時予算委員会などの関係で、労働大臣は院内におられまして、労働省で会うことができなかったわけであります。で、念のため、その要求は、労働省関係にあるものだけをひとつ簡単に読んでみまするが、「監督官大幅増員など、労働基準監督行政を拡充して労働基準法完全実施をはかること。」それから、「職安職員を大幅に増員し、窓口業務改善し、職安行政を拡充すること。」第六項でありますが、「激増している賃金不払いをなくすため、下請け業者との賃金契約は、元請け業者が保証する措置を講ずること。」第七項、「人間存在基本的な姿が破壊されているこの出稼ぎの現状を改善するため、四ヵ月以上の出稼ぎ者に対して、一ヵ月一日以上の有給休暇をあたえること。」九、「飯場の殆んどにおいて労働基準法が守られていないので、安全で衛生的な宿舎とするために飯場を全廃すること。」十、「失業保険法の改悪をやめ、もっと制度をよくすること。」十一、「すべての労働者労働災害保険の強制適用をはかること。」十四、「社会保障制度を拡充し、本当の最低賃金制を確立すること。」、前段申し上げましたように、決議の柱は十四本立っておりまするけれども労働省に対しては九本の要求の柱が立っておる、こういう実態でありまして、大臣非常に忙しい中でありまして、こういう要求そのものは、当時職業安定課長を通して手交されたのでありまするので、労働省資料としてはあると思いまするけれども、いずれにいたしましても、前段申し上げましたとおり、この雇用労働力の不足と労働力有効活用という面で、これは従来も問題になっておったけれども、既往があり、現状があるが、将来に向かっては、もう少し真剣にこの問題をやはり取り上げて消化してもらいたいということで、要望を兼ねて、この雇用労働、出かせぎの問題について具体的に、たとえば労働大臣は出かせぎ者問題についてどのようにこれを受けとめ、あるいは雇用対策の一環として出かせぎ者問題に対して政府は一体これにいかに対処し、また、どのようにこれを受けとめて今後に処していこうという基本的な考え方を、この際、出かせぎ者問題にちなんで承っておきたいと、こう思うのであります。
  14. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 現在出かせぎ者の数は、農林省が六ヵ月未満の出かせぎ労働を対象といたしまして調査したところによりますると、約三十万ということであります。しかしながら、これをこえた人々を加え、また、いわゆる農業者でなく、出かせぎをおもな生計としておる人々を加えますと五十三万以上になるのじゃなかろうか、六十万近いのじゃなかろうかとわれわれは推定いたしております。その中で職業安定所を通って就業いたしております数は十八万ぐらいであります。そういう状態でございますから、的確な数をつかむということはなかなかむずかしい状態でございますが、まず、私ども必要といたしますことは、でき得る限り正規の機関を通して就業していただいて、そうして、それを私どもが的確につかむということが肝要であろうと思っておる次第であります。そのために、出かせぎ者の多く出ておりまする市町村には職業安定協力員を配置をいたしますとか、あるいは、また、職業安定所の機能の充実をはかりますと同時に、その安定所の機関と基準監督署との連絡を密にいたしまして、就業しておりまする労働条件向上、基準法の順守等の指導に当たらせておるところでございます。それで、そういう方面における人員の増加、若干むろん十分とは申しませんけれども、かなりの増員をみておることは御承知のとおりでございます。  それから、賃金不払い問題、あるいは当初約束した労働条件と違う労働条件、それより非常に著しく違った労働条件に出っくわすというようなことを防ぎますために、労働条件をその事業場においてあらかじめこれを明示せしめる等の指導をいたしておるのであります。  また、雇用関係、特に下請、元請との関係、そういうものの整備をいたしますために、少なくとも公共事業政府関係及び地方自治体等の発注します事業についての請負関係、こういうものの姿勢を正すよう、労働省から建設省に対して呼びかけを行なっておるところでございます。  この出かせぎ労働は、大ざっぱに見まして二つに分けられると思うのでありますが、一つは、農業をやっておって、そうして農閑期に、その農業の収入不足を補うために出かせぎに行くという形態、それから、もう一つは、その出かせぎそのものが生活のおもな手段となっておるのと、二つの形態があると思うのでありますが、前者に対しましては、やはり農業政策の前進を待って、農業で十分暮らしができるようにしていかなければならぬ問題だと思っておりますが、後者につきましては、雇用形態を改善して、でき得る限り通年雇用に持っていくという方向で指導をいたしてまいる所存でございます。  それから、最低賃金制の問題でございますが、これは一昨年最低賃金法の進め方についての答申が中央最低賃金審議会からございました。昨年十月、それを具体的に進行するための答申がございました。政府は、いまそれに基づいて行政効果をあげるべく努力中でございますが、しかし、できるだけ早い機会に根本的な再検討を行ないまして、実効ある方法の樹立へ進んでまいりたいと、こう考えておる次第でございます。
  15. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 大臣御指摘になりましたとおり、農家から出てくるところの出かせぎ者というもののほんとうの心情を政治の面でとらえるならば、先ほど読み上げませんでしたけれども、出かせぎ者自身もそのこと自体を心から欲しているわけじゃありません。政府に対して、政治のよろしきを得ればと、こう言っておるわけであります。「出稼ぎなしで年間を通じて農業で働き、農業で生活できる場をつくること。このため、農業に対する国の保護助成を増やし、農畜産物の値段は農民の手間代を正当に見積った価格とすること。」こういっておるのが心情でありますけれども、好むと好まざるによらず、現状は、やはりことに地域格差もありまするけれども、東北や北陸地方ではやっていけないのだというわけでこの現象が出てきておるわけであります。したがいまして、やはり米価の問題について農民がそれなりの目の色を変えて、やはり要求という形でいろいろと運動をすると同様に、この出かせぎ者の問題も、本年の二月二十三日に第一回の総決起大会が開かれて、これなりの要求をしておりまするけれども、これは線香花火的な形で終わるのではなくて、その時限には毎年積み重ねられていくと、そういうことでありまして、この全国の出かせぎ者の実行委員会におきましても、これはすべて出かせぎ者は職安の門を通して、どの側から見てもその実態がはっきり把握されるように、縁故や因縁、情実で安易に口が求められるからというようなかっこうで、建設業者であるとか中小零細企業の食品加工業者に会って、初めてその生産源である地域農家の名簿を調製をして、さらに出先で十分時間をかけて確認しなければその実態が把握できないというような形ではよくないので、もちろん政府機関においても十分実態を掌握するということ、それから、出かせぎ者問題を手がけ足がけて、これを十分ひとつ一つの問題として処置していこうという側に立っても、十分実態把握と、一つのルールに乗せていこうと、こういう動きに問題をとらえておるというのが現状でありまするので、先ほど、ことばのあやだけではなくて、大臣は、これはどこかでやってもらわなきゃいかぬということであれば、やはり雇用の不足と労働力活用という、そういう大局的な面からとらまえて、この出かせぎ者問題というものは非常に変則的な現象のあらわれでありまするけれども、こういう事実に目をおおうてほっておくということは、これはよろしくないのだというふうに考えますので、その点を強く要望しながら、この出かせぎ者問題に対する質問は終えまして、次に移ることにいたします。  次は、港湾労働問題についてでありまするが、きょうは、いま港湾労働法案の提案の説明大臣からあられましたのですが、いわゆる法案そのものの内容に入るという、そういうことではなくて、むしろ門の外でどうしてもこの時限でお伺いをしていく必要があるのだ。と申しますのは、この本年度の予算の中に、五億五千万という中身はどうあっても、大体この数字で日の目を見ているわけでありまするが、この予算の施行期日の問題であります。私、これはどうしてもわからないのです。たとえばこの法案が日の目を見てきた歴史的な背景は、大臣も御承知と思いまするけれども昭和二十四年の時限、つまり一九四九年だと思いまするが、ILOの内陸運輸委員会において、やはり港湾労働者雇用の安定と恒常化に関する十三項目内容にわたる決議が採択されております。それを加盟各国に対して、勧告という形で各国政府に勧告をしておるわけであります。それで、わが国においては、御承知のように、昭和二十七年に全日本港湾労働組合の委員長の兼田富太郎君が、請願行動を通して、当時議会の衆議院議長はなくなられた大野伴睦さんであったわけでありまするが、その議会への港湾労働法制定要求に関する請願行動から始まっておるわけであります。さらに時の流れの中で、昭和三十二年でありますが、労働大臣諮問機関として港湾労働対策協議会というものができて、その港湾労働対策協議会の答申が、当時、昭和三十二年の時点においてなされておる。それから、近くは昨年の三月三日付で、港湾労働等対策審議会からの、いわゆるわれわれはこれを三・三の答申だと言っておりまして、きょうの港湾労働法の提案理由の中にうかがわれておるわけであります。で、私はどうしてもわからないという点は、この港湾労働法の施行期日が、「公布の日から起算して二年をこえない範囲内において、各規定につき、政令で定める。」と、こういうふうにうたわれておるわけでありまして、たとえば労働省自体が三・三答申の線に沿うて、その時点——私はこの場で質問をした点がありまするが、ちょうど労働大臣はジュネーブに、例の労働問題に対する実情調査調停の問題について代表として行かれておるその留守中のできごとでありましたけれども、当時、港湾労働法の大綱が労働省中心として、いわゆる起案の過程にあったと思いまするが、私がその当時側面からうかがい知った範囲では、この施行期日は、公布の日から六カ月をこえざる範囲内だと、それがさらに、私は、その要綱という時点作業が進められる中で、「一年をこえざる範囲内において」という時点もあったと思います。それが、いよいよ日の目を浴びて、いま法律提案理由の中に、あるいは法案の中に、「二年をこえない範囲内」だと。でありまするから、私がどうしてもわからないというのは、いま四十年度の予算の中にそれが五億五千万円という形で、中身がどうであろうとも、ともかくもその予算関係法案でありまするから、そういう予算がついてきておるのだ。しかし、これが公布されて、施行期日になると、二年をこえない範囲内だということになりまするというと、私の持つ常識では、実は政治あるいは立法作業についてはなれておりませんけれども、どうも私が外の側で想像しておった希望と主観を伴いますけれども、どうもわからないのだということでありまするから、この点はひとつしっかり解明をしていただきたい、そういうふうに考えるわけであります。
  16. 石田博英

    国務大臣石田博英君) まあこれはざっくばらんに申しまして、昨年三月三日に一次答申が出ました。それに基づいて、労働省といたしましては、でき得る限りすみやかにこれを立法化し、そして実施いたしたいという方針のもとに作業を進めてまいりました。しかしながら、この答申を生かしてまいりますためには、特にこの運輸省所管の港湾運営上の近代化ということが必要になってくるのでありまして、そちらの作業もあわせて実施いたさなければならない面がたくさんあるのであります。で、この間、鋭意調整を行ないつつあったのでございまするが、それがうまく一本の線に並ぶことができず、でこぼこが生じてまいりました。そのでこぼこを調整する期間を六カ月と考え、一年と考え、二年と考えた。で、これは私どもとして不満でございますけれども、やはり頭を並べていかなければならぬ面が多いので、こういうところで合意をみた次第であります。ただし、全部が全部二年を待たなければできないというのではないのでありまして、この法律案の中で実施し得られるものはすみやかに実施すると、こういう方針でございます。そこで、その五億数千万円の予算も、その実施し得られるものに充当する方針でございます。  具体的な内容については、職安局長から御説明をいたします。
  17. 有馬元治

    政府委員有馬元治君) 大臣から御説明がありましたように、法律の施行期日につきまして、「一年をこえない範囲内において、各規定につき、政令で定める。」こういうことに相なっておりまするが、法律の成立と同時に施行できるものと、若干の準備期間が要るものとに分かれるわけでございます。内容といたしましては、登録制の問題、それから調整手当の支給関係、それを裏づける納付金の徴収の条項、こういったところは相当の準備期間を置いて実施に移していくということに相なるかと思います。でき得べくんば二年といわずに、もっとできるだけ早い時期に、これらの問題のある規定につきましても、円滑な実施をはかってまいりたいと思いまするが、あるいは準備の関係で、一年をこえ、二年をこえない範囲というふうな時期にわたるかと思います。したがいまして、来年度の予算要求との関係におきまして問題が生じてくるわけでございますが、来年度の予算におきましては、約五億の経費を計上いたしております。そのほかに財投融資で約五億円住宅関係福祉施設に充当するために予定されております。合計で約十億の予算でもって港湾対策実施していく予定にしておりますが、そのうちで、調整手当の支給に要する経費は一億七千八百万円でございます。これがこの調整手当の支給の開始がおくれますと、来年度予算としては不用になるのではないか、こういう懸念が持たれるわけでございますが、私どもとしましては、できるだけ早い時期に実施をいたしまして、この調整手当の支給費についても、来年度内に使用ができるような状態に持っていきたいと、かように考えておる次第でございます。この支給費は事業団に対する交付金でございますので、一応成立を見た予算の執行といたしましては、事業団に対する交付金として、事業団に補助をするたてまえになっておるのでございます。できるだけ早い機会に実施をしてまいりたいと、かように考えております。
  18. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 まあこれは大臣からも答えがいただきたいと思いますが、そもそもこの法案は、その発想の歴史的経緯からしても、その歴史的経緯というのは先ほど申し上げた経緯でありまするが、少なくとも、開放経済体制下における港湾作業の位置づけからいっても、また、別な側面から言うなら、今日、港湾は組織暴力の温床地帯ともいわれておるわけであります。もちろんわれわれは、確かにかくかくこうじゃないかということを指摘する多くの材料を掌握しておるわけでありまするが、さらに、その限りにおいて、港湾では労働基準法職業安定法も、治外法権的な立場に追い込められておる今日でありまして、まあすでに衆議院においても参議院においても港湾労働法案は提案になっておられるわけでありまするから、時間をかけてこれは審議をするということが常識でありましょう。また、法案そのものの面からいくならば、おそまきでありまするけれども、日本のこの労働立法史上、その限りにおいては歴史的であり、画期的な法案だというふうに  私自体は港湾労働者出身であり、また、港湾労働者の組合に組織の根っこを持っております関係上、こういう表現を申し上げるのも、むしろ歯にきぬ着せず、ざっくばらんだと思うのでありまするけれども、そういう点からいきまして、この公布の期日は、いま法案の中にうたってあるものは目を通しておりまするけれども、やはり「二年をこえない範囲内」ということでありまするから、そのことは、何も二年ということに期間が借金があるわけでありませんので、十分これはいっときも早く施行、実施するべきである。なぜならば、確かに神戸でも横浜でも関門でも、あなたのほうがやはり職安行政なり労働基準法の元締めでありまするけれども、いろいろおれたちは認可を受けているじゃないか、運輸大臣から鑑札をもらっているのじゃないか、何が暴力だといったような形で、いろいろとやはり港湾運送事業法によって認可を得て、大っぴらで仕事をやっておりますけれども、その中身に入ってみまするというと、私が申し上げまするとおり、今日港湾においては、確かに労働基準法あるいは職業安定法も、治外法権的な方向にとにかく追い込められておるんだ、港湾労働の組織面からいきましても、そういう暴力と対決をして、それを説得するだけの姿勢と力がなければ、どんな民主的な労働組合もなかなか発展をしないという、そういう素地があるということが今日の実態であるわけであります。そこで、私は、大臣はこういう事実を知っておられるかどうかということであります。これは昭和四十年の二月二十六日、社団法人経済団体連合会から出ておる。これはおそらく衆議院、参議院の社会労働委員会、運輸委員会、そういうほうの委員の方に例外なく港湾合理化対策に関する要望意見という形で出ておる文書だと思いまするけれども、中にこういうことがうたわれておるわけであります。見出しは「港湾合理化対策にかんする要望意見」でありますが、中身は、重要なところだけを摘出して御披露申し上げますが、「今国会に提出された港湾労働法案についても、われわれは基本的に賛意を表するものである。しかしながら港湾問題はその内容が広汎にわたる上に、内外におよぼす影響も大きいので、政府港湾対策を具体化するにあたっては、当面とくに次の諸点に十分な配慮を加えられんことを要望する。」「(1)、港湾総合対策の推進、(2)、港湾労働法案について、(3)、港湾調整審議会について」という三本の柱が立っておりまして、で、これはいまここで内容をくどくどしく申し上げることは、まありっぱな署名があって、いわゆる経団連から出ている文書でありまするから、内容は披露することは差し控えまするけれども、要するに、私が先ほど申し上げましたとおり、この公布の日と施行期日の問題が、私どもはこの法案の中身については十分慎重審議をして、歴史的であり、画期的であるからということでこの法案に取り組んでいくのでありまするけれども、それが日の目を見ても、これが施行にあたってはブレーキをかけるというような、三・三答申の趣旨については賛成であるけれども、これを施行をするにあたっては、いろいろな点がありまするけれども、要約して、港湾産業というものが、海陸の接点において、文化の面においても貿易の交流の面においてもそうであるとするならば、当然その三・三答申の趣旨から言っても、これはできる面から拙速的にやっていく、港湾労働の主体的な条件は諸外国のそれに比して非常に立ちおくれておるから、なるべくできるものからやりなさい、こう言っておるわけでありまして、今日、まあ佐藤内閣のもとにおける各種審議会答申に対する受けとめ方の問題がどういうふうにあるということについては、内閣自体の責任の問題でありましょうけれども、かりそめにもかくのごとき、つまり十数年に及んでおる歴史的な背景の中から出てきておるこの港湾労働法案ができたならば、一日も早くできなければいかぬ。だから、この時点で権威ある経団連がこういう文書を出されること自体は、その団体に属する私見の問題でありましょうけれども、非常に問題があるのではないか。要約して、どの企業でも、人的な要素と物的な要素と財力がからみ合って生産というものが生まれてくるというならば、今日の時点において、これこれは賛成だけれども、これこれということについては、たとえば港湾労働の問題、港湾運送事業の問題、港湾の管理運営の問題がみんなそろわなければ、この問題は港湾労働の問題だけをやっても片ちんばになるのじゃないかということを理由にしてブレーキをかけることがほんとうの日本の、つまりこの港湾産業のおくれておるという問題や、前段申し上げましたような暴力の温床地帯である。具体的には労働基準法職業安定法が治外法権的な立場にあるのだといったような今日的な市もあれば、法律で制限されておる少年、つまり高校の生徒、中学の生徒がこの港湾荷役に動員されて、そして労働下宿に入れられて、そうして死んでおるというような、そういう事例もあるわけでありまして、こういう問題について非常に問題だと思うのでありまするが、この点についての大臣の見解を承っておきたい、こう思います。
  19. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 現在、港湾荷役実情は著しく非近代的であることは私も承知いたしております。したがって、それだからこそ、われわれは第一次答申を受けとめて、その推進に努力をいたしてまいりました。また、港湾労働に存在する暴力の問題について、その企業体が運輸大臣の認可を受けておるとか受けてないとかということは、その企業体が暴力行為をし、基準法違反をし、職業安定法違反をするということとは別問題でありまして、受けていようがいまいが、もう違反に対して厳重な態度でこれから臨みたいと思っておる次第であります。また、法律実施について、でき得る限りこれをすみやかに行なうという心がまえは、これはおっしゃるとおりでございます。その心がまえでいくつもりでございます。  それから、当初、港湾の他の面における近代化と並行しなければ効果があがらない、港湾労働法だけ先行することは実効があがらないのだという空気がございました。したがって、それがある種のブレーキと映ったことも、これはどうも否定できないことであります。しかしながら、私どもはもしそれが並行しなければならないなら、そういう他の作業を急がせることによってこの法案が目ざすところを早く実現いたしたい、こう考えておる次第であります。  経団連の意見書は、詳細、私見てはおりませんけれども、私の役所の関係者の接触いたしました範囲においては、もうすでにブレーキをかけるという考えはなくなっておる、むしろ他の港湾行政というものを促進してくれという意味にわれわれは受け取っておるのであります。
  20. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 まあ大臣考え方となかなか——大臣に限らず、補佐官としても、なかなかいろいろ苦労されたということは、そのなりに私もよく了承しております。したがって、また、この法案の中身についても、罰則規定なども設けられておりまするけれども、先ほど私はこの暴力団の温床地帯であるということを申し上げましたけれども、昔からこれは温床地帯なんです。さらに、最近一つのよりどころになってきておるということでありまして、たとえば神戸市会でも問題になっております。おそらく港湾都市では今後問題になってくるわけでありまするが、そこで、問題は、たとえばこれは朝日新聞でありますけれども、「社会戯評」の中で横山泰三さんが、これは神戸の埠頭でありますけれども港湾の埠頭がある、そこへ黒めがねをかけた、さも暴力団を象徴するかのような、つまり親分といいますか、あにいが、運輸大臣から認可をもらっているのだという大きな箱をかかえておるわけであります。で、神戸港と書いてありまするが、正業だ、何が悪いのだと、いみじくもやはり諷刺として字幕で書いてあるわけであります。そのとおりでありまして、実際においてこの港湾業者の中では、暴力団と名のつく、また、リストに載っている人たちは、多くこの事業認可あるいは免許を持っているわけであります。で、問題は、罰則規定ということもさりながら、たとえば六カ月間の懲役であるとか、あるいは何万円かの罰金であるとかというようなことでは、相手はなかなか非常に功利主義、前時代的な正義感も持っておるけれども、あるいは、また、法を法と思わないような、要するにそういうばく徒はだもあるのだ。しかし、彼らの一番おそろしいことは、この事業規制とか認可規制というものは、今日行政面では運輸省にあるわけでありまするが、この問題に進展をしないと、これは非常にその程度の懲役、それぐらいの罰金は、商売さえ息の根をとめなければ生きられるのだというところに抜け道があるので、これは実は港湾労働法案審議内容時点で十分論議を尽くしたいというふうに考えておりまするので、先にいろいろとまだ重要な質問もありまするけれども、きょうはこの問題は多くは申しませんけれども、その点について何か大臣から考え方なり見解なりがあれば——なくともいいと思いますけれども……。
  21. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 先ほど申しましたように、認可を受けておるということは、それ自体すべて合法的にやっているということの証明にはならない。たとえばつくり酒屋が大蔵大臣の認可を受けてつくっておっても、そのつくり酒屋の事業経営が、労務管理の面において基準法違反があれば当然処罰の対象になるわけでありますし、職業安定法違反があればむろん厳重にやるつもりであります。ましてや暴力行為等が行なわれれば、その実態に伴って当然の措置がとられるものだと考えております。労働省といたしましても、そういう特に港湾労働はものをつくるものではなくして、人を扱うことだけが中心でありますから、その面においては厳格な態度をもって臨みまして、法律の中でも、認可の取り消しについて運輸大臣に要請できるように措置しているはずでございます。また、港湾荷役は始終問題がありますので、いま基準監督署の監督行政は、ほとんど全事業所に対して綿密に行なっております。事実、実際問題として、他の事業場については、監督官の不足その他がありまして、なかなか手が回らない面もありますが、港湾荷役に対しては集約的に監督行政を行なっておる次第でございます。法律が成立いたしますまでも、いま申しましたような態度で臨んでいくことを申し上げておきたいと思います。
  22. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 今度は労働者の財産形成制度の確立の問題に関連して、いわゆる社内預金の問題について若干の質問をいたします。  最近、資金繰りの苦しい企業が、資金収集のため、いわゆるあの手この手で従業員に社内預金を盛んに呼びかけている傾向があります。従来もありましたけれども、最近特に激しくなっております。したがって、私の見るところでは、現在行なわれておる社内預金制度は、労働者の財産形成制度の確立という見地からいっても、あるいは金融正常化という見地からいっても、あるいは山陽特殊製鋼の事例に徴しましても明らかなように、企業の資本家の立場からいうならば、そのことはここで論議はいたしませんが、従業員の労働者側の立場からすれば、弊害はあっても一利もない社内預金の制度であろうと私は受けとめているわけです。したがいまして、きょうは社内預金制度は基本的には廃止すべきであるという観点に立って、七つの項目についてお尋ねいたすわけでありますが、これは大臣でなくとも、補佐官でもけっこうでありますけれども、けじめとしては大臣にお伺いしたい、こう思います。  まず、第一点でありますけれども、社内預金のねらいは、企業内福祉の労務管理的な機能、言いかえれば愛社精神など、企業帰属意識の助成を期待するところにありまして、近代的な労使関係の確立とは逆行するものであるのだと、そういうふうに私は受けとめているわけでありますが、この点に対してひとつ御見解を伺いたいと思います。基準局長でけっこうだと思います。
  23. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) いわゆる社内預金を実施いたしますにつきまして、会社それぞれの特殊事情に応じまして、たとえば労働者福祉であるとか、あるいは労務管理上の社内の融和であるとか、いろいろな目的を規約の中にうたっておるようでございます。しかしながら、労働基準法のたてまえといたしましては、使用者が労働者に貯蓄金を強制するということは、身分拘束的な弊害が伴いまして、種々問題が過去にございました。そういう歴史的な観点から、強制貯蓄は原則として禁止するというたてまえをとっておるわけでございます。すなわち、労働基準法の十八条の第一項の規定がそれでございます。この労使関係の場におきまして、労働者の集団力を背景にいたしまして、間違いがないような仕組みで行なわれますならば、ある程度例外的に認めてもよいのではないか、こういう観点から、法制定当時は許可制にいたしておったのでありますが、二十七年ごろから届け出制に改めまして、労働者の過半数を代表する者、あるいは労働者の過半数を代表する労働組合があります場合には、その代表者との書面協定で例外的に貯蓄金管理契約を認める、こういう措置をとったわけであります。しこうして、一方におきましては、使用者が貯蓄金を支払わないというような場合には中止命令を発しまして、即時に支払わせるというふうな、中止命令措置及び罰則を付しましてこの制度を例外的に認めたような次第でございまして、しかるところ、一般金融情勢の動きと相まちまして、かなりこの制度が一般化いたしましたことにつきましては、私どもも重大な関心を持って見ておるところでございます。
  24. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 先ほど私は、最近あの手この手で企業が資金収集のために社内預金というものをかなり手広くやっておるということを申し上げましたが、次に、第二点の質問でありますが、企業は社内預金を運転資金の調達源として受けとめておる、そういうのが実情じゃないかというふうに受けとめます。預金者の保護というよりも、企業内借り入れ金というようなのが実際の実態ではないか。たとえば労働金庫協会などで収集しておるデータについて、どう見ても、これは社内預金という制度に便乗しながら、これを一般の商業銀行や、あるいは信用金庫から借り入れるよりも、コストにおいてもその他においてもとにかくという点で、むしろ預金者を保護するとか、労働者の財産形成の一翼として、その積んだ金が持ち家住宅の一つの足がかりになるというのでなくして、みずからの企業資金の不足というものを、社内預金という、そういう隠れみのに隠れてというような傾向がある。そういうふうに思うし、また、企業内借り入れ金というような実態があるのでありますから、この点についてはどういうふうに受けとめておられますか。
  25. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 社内預金の制度と、私どもがいま検討しておりまするいわゆる勤労者の財産つくり制度との関連について、私の考え方をちょっと申し上げ、あとは基準局長説明をさせたいと思います。  勤労者が家を持ち、あるいは財産を持つことによって、みずからが不測の事態に備えると同時に、経済の発展の分け前を財産によっても得られるようにいたしたいというような観点からいろいろ考慮いたしております。そのためには、たとえば定期的な預金等に対しての優遇措置等も検討いたしておりますが、そういう場合の定期的な預金の対象として社内預金はどうするかという問題は検討しておりますけれども、社内預金という制度それ自体を勤労者の財産造成の方法と考えてはおりません。そのことを明確に申し上げておきたいと思います。
  26. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先生が御指摘のような、一種の運転資金の原資としてこの制度を運用するというようなことは、実は貯蓄金管理契約におきましては全く期待しないことでありまして、労働者保護の見地から、その利子につきましても、最低年六分あるいはそれ以上でなければいけない、こういう規制を基準法に基づきます省令によっていたしておるわけであります。したがいまして、金融市場が、ある程度正常な状態において運行されておりますならば、六分以上の一割とか一側五分といったような高利を捻出できるといった可能性は、一応理論上はないのじゃないかというような予測を持っておったのでございます。しかるところ、歩積み両建てとか、いろいろ巷間いわれておりますような問題と相関連いたしまして、六分以下の利子をつけてはいけないという規制をいたしておるにかかわりませず、それ以上の金利を払って、なおかつ使用者が利益を受けるというようなゆがみを生じてきたということにつきましては、私ども、はなはだ遺憾に存じておる次第でございます。しかし、金利の実態は、私ども調査いたしましたところによりますれば、六分から七分九厘程度のものが全体の約四〇%でございます。八分から一割一分程度が五五%でございまして、大部分のものは巷間伝えられておりますところの一割五分とか二割とか、そういうような利子はつけておらない、そういうような利子を払い得る余地が、コマーシャルベースで考えましても、なかなかないわけでございまして、実態を調査いたしましても、一割一分どまりかそれ以下がほとんどである、こういうことが言えると思います。しかし、御指摘のようないろいろな弊害が見られましたので、昨年一月二十四日、労働基準局長と大蔵省銀行局長の連名をもちまして通牒を発したような次第でございます。その後、私ども監督行政の面から、特にこの点に留意いたしまして指導してきた次第でございます。
  27. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 いま基準局長が言われましたのですが、労働省と大蔵省ですか、局長通達が地方基準局を通じて監督署から流れ始めたのが昨年の一月からかと思いますが、その後、経済のひずみが中小企業などに出てきて、資金源に困っておるということで、前段申し上げましたあの手この手で、要するに社内預金にもいろいろな、いいかげんな、役員も含めて、貯蓄組合をつくって、一方的にあやしげな貯蓄組合ができて事業資金に活用されているという事例がふえている。前段申し上げましたとおり、私はいま二つ質問申し上げましたが、他の質問は若干意見も含みますけれども、社内預金は、少なくとも幾多の弊害があって、とにかく一利がない、だからこの制度は禁止すべきだと思う、そういう一つの観点に立って質問していることも含めてお答えをいただきたいと思います。  次は、三点の質問に入ります。
  28. 小柳勇

    ○小柳勇君 関連して。  いまの社内預金で参議院の予算委員会で田畑さんが質問したのに対して、大蔵大臣は、基本的に反対なので、できるだけ早く全廃したい、労働大臣は残したい考えなので、現在互いに意見交換をしているが、首相裁断に持ち込んでも、五年間くらいで全廃するようこの際ケリをつけたい、このように大蔵大臣は言明いたしておりますが、労働大臣の見解を承りたい。
  29. 石田博英

    国務大臣石田博英君) どうも人のことまでかわって答えられて、私としては迷惑でありますが、私としましては、直接の労使関係者からの意見がまだ出ておりませんので、そういうところの直接の労使関係者の意見も聞きたい、こういう気持ちではおります。  それから、なお明日、労働基準審議会へこの問題について、社内預金制度の現状、あるいは存廃についての検討を依頼するつもりでおります。
  30. 小柳勇

    ○小柳勇君 さっき財産形成の問題を大臣が言われたんですけれども、まだ大臣考えの中に財産形成の思想も若干あるのですか。ないとするならば、いま杉山さんはるるとして、百害あって一利ないですから、この際、廃止してはというような立場に立っての質問だったようでありますが、労働大臣は実力大臣ですから、がんばりますとなかなかこれはうまくいかぬと思うのですが、どうでしょう。
  31. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 私はがんばるつもりは全然ありません。先ほど申しましたように、社内預金という制度は現在存在しております。その場合に、低額所得者の預金優遇策の対象として、いろいろ金融機関を考えるときに、たとえば銀行に対する定期預金、信託預金、いろいろなものを考えます場合に、社内預金もその中に入れるべきか入れるべきでないかという検討はしておりますが、財産形式の有力な手段として社内預金を利用しようという考えはありません。これは明言しておきます。それから、私どもがまだ意見を保留いたしておりまするのは、直接の労使関係者の意見を聞いてみたいということであります。
  32. 小柳勇

    ○小柳勇君 いまの直接の労使関係者の意見というのは、具体的にはどういうのを考えておられますか。
  33. 石田博英

    国務大臣石田博英君) たとえば、これは基準法によりまして、労働組合の代表と、それから経営者との間の書面協定で行なわれておるわけであります。そういう場合、実際それを実施しておる企業の労働組合の代表者及び経営者こういう意味でございます。
  34. 小柳勇

    ○小柳勇君 関連質問ですから、また別の機会でやりますが、これだけ参議院の予算委員会ではっきり大蔵大臣が言明されますと、こういうものが先行いたしますと、これで労働者として安心しているものもありましょう。さらに局長が言われた、六分以下では預けぬようにしておりますということですが、これは全国的に実態はどうでしょう、企業のありさまは。
  35. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先ほどもちょっと触れましたが、六分以下は禁止いたしております。六分以上でなければならないというふうに、法律による省令で定めておるわけでございます。そこで、実態を調査いたしました結果、六分から七分九厘程度のものが四割、それから八分から一割一分程度のものが五五%、両方合わせますと九五%のものが一割一分以下である、一番集中的に多うございますのは、これは七分から八分といったところでございます。巷間伝えられますような非常な高金利であるという例はあまりないというのが実態調査の結果であります。私ども、またそういう一割五分とか二割とかいったような金利がどういうふうにして捻出できるかという点については、コマーシャルベースで考えましてもなかなか無理であろう、私ども調査の結果得られたものが、ほぼ私どもが想像いたしましたような形になってあらわれているというふうに理解いたしておるわけでございます。
  36. 小柳勇

    ○小柳勇君 誤解を生むといけませんから、私の見解を述べてこの質問を終わりますが、いま低賃金で労働者が移動するものがたくさんある、そういう場合に足どめのために社内預金を強制的にやっておる事例があります。そういうものもありますし、百害あって一利なしと私は断言できないと思いますので、現在の青年の生活設計などを考えてと思いますが、そういう悪い面が非常にありますから、山陽特殊製鋼の例もありますから、廃止する方向で、もっと貯蓄なり生活設計は別の面で考える、青年に夢を持たせるという考え考えるべきで、社内預金については大蔵大臣の説を支持したいと思いますので、見解だけ述べて私の質問を終わります。
  37. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 労働基準法第十八条第一項では強制貯蓄の禁止をうたっております、法の基本精神は。わが国の社内預金の特殊なおい立ちは、いま小柳委員も言われましたが、確かに足どめ貯蓄という封建的な投資慣行の禁止ということにこの法の精神があると思います。にもかかわらず、第二項では社内預金は合法化されて、しかも、臨時金利調整法の趣旨と矛盾する高利な利子を奨励していることになっている。いま基準局長も言っておられるとおり、郵便貯金や信用金庫や商業銀行は大体五分から六分というようなことでありますが、これが六分、七分、一割というようなことでありまして、たとえば労働金庫法という特殊立法によって保護されている労働者自身の金庫においても一厘いいということでありますけれども、それから見るというと、一方では禁止しながら、一方ではやっているという点について、また、外国には、私の聞き及ぶ範囲では、産業構造、あるいは産業の発展過程において歴史は違うのでありましょうけれども、社内預金的な制度は、たとえば一昨晩でありましたか、「時の動き」の中で問題になる社内預金というような問題、昨晩は社会更生法ですか、一つの時事的な問題として取り上げられておるわけでありますが、そういう点についてひとつ見解を承りたいと思います。
  38. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 会社更生法の観点から見ますれば、賃金と同じように、共益債権といたしまして最優先に扱われておるのでありまして、他の債権よりも優先されまして、更生決定がなされたあとにおきましても随時支払うものとされております。国税その他税金と同等な扱いを受けておるわけでございまして、扱い方としては非常に手厚いものであるというふうに理解をいたしております。ただ、前段の事業主の足どめ策としてこういう制度を考えているのではないかといったような問題につきましては、まさにそういう弊害は過去において多々あったわけでございます。でありますから、これを禁止するというのがまさに原則であるわけであります。労働省といたしましても、このような制度を普及するとか奨励するとかいったような態度を示したことは一度もないのでございますが、たまたま金融事情の影響により、このような制度に利益を感ずるようになった、ここに一つの大きい原因があるのではなかろうかと思うのであります。率直に申しまして、この貯蓄金管理契約について一番利害関係を持つのは使用者と労働者であります。その労使双方から、今日に至るまで、あまり御意見がなかったのでありますし、国会内における取り上げられ方も、実はそういった形ではなく、別の形で問題が提起されたように私どもは理解しております。しかし、そのようないきさつなどは別にいたしまして、ただいま大臣から申されましたように、世論が相当盛り上がっておりますので、私どもも、積極的にわがほうから労使関係者の意見を聞きまして、しかも、労働基準審議会という公の場においてはっきり方向を定めたいというふうに考えておる次第でございます。
  39. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 私が思いまするのに、社内預金の実態は、労働基準法十八条に基づいて、言うなれば制限法、規制法としての労働基準法の精神から逸脱して、法令に定められている基準すら守られていないのではないか、そういうふうに私は極論的に批判したいと思います。具体的には、いま労働大臣もおっしゃいましたごとく、来たるべき労働基準審議会にこの社内預金の問題をひとつ諮問されるということでありますから、その限りにおいて、具体的な問題として、たとえば正当な労働者の代表との協定ないしその制度の実施について、いろいろといままで過去の事例に問題がありました。たとえば年末あるいは上期の一時金の問題について、数字の点については妥結するけれども、しかし、一応形態として、取り扱いの点については社内預金にした形において分割する、こういう事例を私どもはたくさん掌握しておるのであります。同時に、これの払い戻しをするというような点についても、現に極端な例は、いま計画倒産とか何とかいわれておりますけれども、真実はただ一つでありましょうけれども、いわゆる山陽特殊製鋼の問題にちなんで考えてみても、自分で預けておいて、そうして更生法の適用を受けた時点において、これだけあったはずであるけれども、金庫をあけてみたらこれだけしがなかった。自分の金であって、しかも、その金は子供の学資金に充てる金であったけれども、出そうとすると出せない、こういうような拘束を受ける事実は、氷山の一角としてこの山陽特殊製鋼にはあらわれているわけです。いろいろな事例があるわけであります。したがって、自分が預けて保護さるべきものを払い出そうとしても、なかなか意のごとく払い出せないというようなことがあります。さらに、私は、実は労働金庫の理事長というものを新潟で十年もやっておりまして、種まき権兵衛から育てたわけでありますけれども、実は社内預金については勤労の面と結びついて、要するに社内預金については、働く能力があって成績がいいんだという勤務評価も確かにやっておる事実も掌握しております。そういったような点からいって非常に問題がある。で、私は、ここで、この法令の中でも、たとえば第六項の中の中止命令が出される事項がない、あるいは監督指導の実効が伴わない実情があるんだ、そういうふうに考えます。そういう点について、ひとつ見解なり、そういう状態ではないのだというふうに、あるならあるように、ありのままをお答えいただきたいと思います。
  40. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 私どもは、社内預金の不払いが一般にびまんしておってたいへんな状態にあるという認識を現在持っておらないのであります。数字を申しますと、昨年中における倒産は、ほぼ四千二百件ございますが、その中における社内預金不払いは十六件、一億六千万円でございます。その金額につきましても、本年に入ってから逐次支払いが行なわれております。で、労働基準監督署といたしましては本省から指示いたしておるのでありますが、賃金不払い問題と社内預金不払い問題はほとんど同時に起こるケースでございますので、賃金不払い監督すると同時に、社内預金不払いの問題をあわせて監督指導いたしております。先生御指摘の中止命令につきましても、昨年幾つかそのケースがございます。ある県におきまして、五事業場ばかりが倒産寸前に立ち至りましたので、直ちに監督署で貯蓄金管理契約の中止命令を出しましたところが、五つばかりの会社で即時に払った、法どおり措置をしたというケースがございまして、私どもは当該地域におきますところのいろいろな経済関係団体とも連絡をいたしまして、倒産の可能性のあるような企業はマークいたしまして、事前にそういった中止命令を出したり、その他いろいろやっておるわけでございますが、監督行政でございますので、そういったケースについては一般に公開いたしておりません。しかし、ただいま一つの例としてあげておいたのでございますが、そういうことで危険性はあるという認識のもとに監督指導をやっておりますので、四千二百件の倒産のうち、社内預金の不払いは十六件、一億六千万円である、それは三十九年度でございます。  それから、山陽のケースでございますが、これから会社更生法に基づく更生決定が行なわれますかどうか、行なわれるという可能性が多いのではないかというふうに私ども考えておりますが、今後における措置といたしましては、日本特殊製綱において、昨年十一月三十日現在で、更生の決定が行なわれましたそのときの不払いが一億二千万円ございましたけれども、十二月中に五千万円支払わせ、それから本年二月に二千万円支払わせ、残り五千万円をここ二、三カ月中に支払わせるように具体的な支払い計画作成させまして、管財人とも緊密な連絡をとって措置しておるような次第でございます。  なお、杉山先生の御質問の中に、期末手当の時期等において、一部を社内預金に預託させるんじゃないか、こういうケースがあるんじゃないかというようなお話でございました。そういう点につきましては、まま事例があることを私ども承知いたしておりまして、それが強制にわたりまして基準法の違反を生ずるということのないように通達を出し、厳重にその点を警戒いたしておるような次第でございますが、しかし、いずれにいたしましても、この制度につきましていろいろ問題があるということは私どもも重々承知いたしておりますので、しかも、それが金融的な観点から見るか、労使関係におけるいろいろな問題とからんでの現象と見るか、波及する影響がかなり大きいと思いますので、率直な意見を労使から求めまして措置いたしたい、この点について私どもは何らこだわりを感じておらないということをつけ加えさせていただきたいと思います。
  41. 小柳勇

    ○小柳勇君 私は、さっき大臣が検討するということばの中に、白紙で検討すると、廃止の方向を含んでおったと思うんですが、いまの局長のような考えであれば、私は反対です。たとい四千件のうちの一件であろうが二件であろうが、社内預金が、社がつぶれたためにその預金までつぶれるということは許せないことです。たとえば山陽特殊製鋼のことを言われたけれども、炭鉱の閉山に伴ってそういうものがあるかもしれない。組合費まで使い込んだ会社がある。だから預金は、それは会社に頼んで利回りをよくしてくれ、銀行預金じゃ少ないから、あるいは郵便貯金じゃ少ないから利回りをよくしてくれという特殊なものなら個人でやるべきであって、あるいは社の内規はあるかもしらぬ、社が給料袋から天引きして社内預金として、社がまたそれをいろいろ使っておるかもわからぬ、内容はいろいろあろうが、それは四千件の中に倒産したのはわずかでございます、一億しか損害はありませんと、そういう思想で監督されることには反対です。それは基準監督局長であるがゆえに、そういう考えで検討するというなら、私はさっき納得したけれども、納得できません。そういうような二つだけで、これは法律にはないかもしれぬ、基準法には触れてないかもしれぬ、役人だから基準法さえ守ればいいというお考えかもしらぬけれども、そんなものじゃないと思う。零細な金で学校の用品を買おうとか、あるいはいろいろ零細な金を貯蓄して老後のためにという、その労働者の気持ちを、そういうように損がわずかだからということで処理することは納得できません。もう一度大臣の答弁を求めておきます。
  42. 石田博英

    国務大臣石田博英君) いま基準局長がお答えをいたしましたのは、基準局としての社内預金制度というものに対する監督行政を——現在存在しておるのでありますが、存在しておる監督行政を綿密にやっております。したがいまして、その監督行政を厳重にやっております結果、四千二百件のうちで問題を生じたのは十六件、その十六件もほぼ解決している、これは三十九年度のお話でありますということを申し上げたのでありまして、社内預金制度そのものを奨励したり、あるいはこれを温存しようと思ったり、そういう考え方ではないのであります。つまり社内預金という制度は現在存在し、それに対する監督責任がわれわれにございます。その監督責任を右のごとく実行してまいりましたという報告であります。それから、四十年度に入りまして山陽特殊製鋼の問題が出てまいった、この事実であります。これについても同様の方法をもって監督行政を強化して、そして勤労者の諸君に実害を与えないように、そういうことを努力をしてまいりますということを申し上げたのであります。これは社内預金制度を存続さすとか、これをさせたいとか、あるいはいいとか悪いとかいうことの問題とは別であります。そういうふうに理解をひとついただきたいと存じます。
  43. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 まあ小柳委員の関連質問に対して、いま大臣の答弁ありましたが、私はさらにお尋ねいたしますが、また、意見も含めてお尋ねいたしますが、社内預金には預金としての保護規定はないわけであります。したがいまして、企業が支払い準備金を持つ義務もないというような、慣行からいっても姿勢からいっても、そうなっておると私は理解いたします。したがいまして、返還請求しても直ちに払い戻しができるということには、社内預金の実情ははるかに隔たっております。その事例は極端な例であっても、たとえば山陽特殊製鋼の事例から見ても明らかでありまして、企業の外部借り入れ金と比べてみて大きなウエートをやはり占めて、金額返済のときには企業の存続すら不可能な実情にあるというふうに私は受けとめておるわけであります。このことは、裏を返せば第五項の規定が完全に守られることがないということを示しておる、そういうふうになろうかと思います。また、労働基準監督署の監督指導は制度の運営についてだけでありまして、実際の払い戻しの保証をするような企業の資金状況の検査まで行なえない、行なえないから、全く実効が伴わないのではないか。論より証拠、社内預金は基準監督署に対して報告する義務がないのではないか、そういう限りにおいて、実態の実情というものは野放しになっているんじゃないか、それがいわゆる十八条による社内預金の制限、規制に対する一つの限界じゃないかというふうに思うのでありますが、この点、基準局長はどういうふうに考えておられますか。
  44. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 御指摘のように、強制貯蓄は禁止している、好ましくないと。それについては労働者の代表との書面協定によって例外的に認めるということになっております。利率は六分だといったような条件がついているだけでございまして、これを積極的に預金者保護の見地からオーソライズして、うしろからささえをして、この制度を奨励するというような性格のものでございませんので、したがって、一般の預金者保護のような制度がないということは御指摘のとおりでございます。ただ、不払いが生じたときに、会社更生法による更生決定がありましたときには、共益債権として賃金と同様に扱われ、更生決定のあった後でも、他の債権は随時支払いは行なえないのでありますけれども、社内預金につきましては随時支払えるという特典が与えられておりますということであります。制度的には預金者保護の特別な制度はない、これは先生御指摘のとおりでございます。
  45. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 これで質問を終わりますけれども、今度は大臣からお答えをいただきたいと思いますが、もちろんその社内預金を保護するような制度だったらたいへんなわけで、保護しなくてもいまのような問題が累積してくるので、そんなものをつくってもらったらたいへんなことでございますから、これは基準局長つくらないように、私は、あくまでも前段の、社内預金は百害あって一利ないというようなオーバーなことは申しませんけれども、幾多の弊害があっても、少なくとも従業員、労働者の立場に立てば、長い目で見て、しあわせをかちとる一つの背景と一つの方向的な価値は今日的には存しているのだ、こういう受けとめ方で、これはやはり段階的に、弾力的に考えるべきものである、そういう観点に立って質問をしているということを申し上げておきますが、それと社内預金は、現行の金融制度の秩序を維持するという面から言っても、これはまたこの機会に財産形成の問題などについて、あるいは労働、企業、福祉の労働金庫のあり方であるとか、あるいは住宅問題に対するあり方について、労働大臣の西ドイツからとにかく持ってきておられる財産形成の問題と、それがわが国の現状に合致せしめ、それをどのように創造していくかという問題についてはこれからの論議に移すといたしましても、要するに、当面の社内預金の問題は、いま申し上げたとおり、この金融の秩序を維持するという面から言っても幾多問題があるのじゃないかというふうに考えておりますので、私は何回も繰り返しますけれども、これはいみじくも先ほど小柳委員が、参議院の予算委員会において田畑さんの質問に対して大蔵大臣が言っているような考え方は、これは別な機会に別な方、大蔵大臣が言っておられるわけでありますから、労働大臣としては、この問題について、まあ私は慣れておりませんから、あまり質問はじょうずでないのでありますけれども、愚問であっても、ひとつ賢いいい答えで、納得できるようなうんちくを傾けたお答をいただきたい、こういうふうに思います。
  46. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 社内預金制度というものは、私どもきわめて中途はんぱなものだと思っております。これを法律の中で認める以上は、やはりもっと徹底した保護を加えるべきものである、保護が徹底し、奨励まですべきものでないなら、私はやはり廃止の方向で検討すべきものだと思います。ただし、先ほどから申しましたように、この問題が起こってまいりましてから直接の契約者の意見というものはまだ出ておりませんので、直接の契約者からの意見を聞いた上でわれわれの態度をきめたい、こう考えておるのであります。それから、先ほどちょっと小柳さんから御質問ございましたが、これは給料から天引きするということは基準法で禁じておりまして、それはやらせておりません。
  47. 小柳勇

    ○小柳勇君 協定を結べばできる。
  48. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 協定はそうでしょうけれども、強制天引きはできない。
  49. 小柳勇

    ○小柳勇君 強制はできないけれども、協定でできるのですよ。
  50. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは労使関係の協定でありますから、その場合でも個人のいろいろ事情がばらばらであるべきはずでありまして、それをばらばらのものを一律にやらせるという方法は、これはどうも私も疑問に思います。そういうことを含めまして、先ほどお答え申しましたように、労働基準審議会でひとつ十分検討していただきたい。たいへん繰り返すようでありますが、直接当事者からの意見が出てないというところに私ども最終的な結論を出すのをいまの段階で申し上げるのをはばかる一番大きな理由がございます。直接当事者の意見をよく聞いてみたいと思います。契約当事者の意見もやはり聞いておく必要があると思いますので、それを含めて基準審議会で検討いたしたい。ただ、私が何度も申し上げたようにどうしても保護しなければならないとか、温存しておかなければならぬとか、そういう考えは全然ございません。むしろ経営側から申しましても、普通の常識的な金利よりも高い金利のものを使わないような制度が必要なんじゃないか、そういうこともやはり金融正常化の方面から見てもあわせて考えたらどうかと思います。
  51. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 もう一つ、これで終わりますが、これは労働基準審議会へ諮問されたのですか、これから諮問されようとしているんですか。
  52. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 先ほどお答えしましたとおり、明日やります。
  53. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 私は、実は労使関係の問題をもう一点持っておったわけでありますけれども柳岡委員質問の時間に食い込んでおると思いますので、きょう労政局長に来ていただき、また、労働政策基本方針の中にも労使関係の問題という項がございましたので、これは非常に重要な問題でございますので、ことにこの前のこの委員会で申し上げたとおり、激甚法の災害適用地域における労使問題についてあの時点質問したことがありますけれども、その後のアフターケアの問題について、なおかつ労使関係の問題が非常に重要なことにちなんで、きょう質問しようと思いましたけれども、これは次の機会に移行することにいたしまして、私の質問を終わります。
  54. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 社内預金の問題について、関連して若干質問しておきたいんですが、いま労働大臣は労使の問題だと、これはもちろん私もそう思います。しかし、現在の日本の労使関係の中で、労働組合が経営権を持たないそういう中で労働組合、労使の考えを聞いても、私はそれが根本的な解決にならぬと思います。やはりこれを将来廃止をするかどうかは別として、現実的に社内預金の数が相当ある。しかも、それが先ほど来言われているように、一年に四千二百件、ことしはもっと多くの倒産件数が出るのではないか、こういわれている中で、労働者が非常に犠牲をしょわされている、こういう段階で、私は、やはりもっと政府の、特に労働者を保護する労働省責任と申しますか、監督あるいは行政指導の面でもっと積極性があってしかるべきじゃないか、こういうふうに思うんです。先ほど基準局長は、四千二百件のうち、わずかに十六件だ、こう言われておりますが、これはおそらく会社更生法の適用を受けた会社の件数がほとんどではないか、全部ではないかもしれませんが、ほとんどではないかと思うんです。しかも、労働基準法上から見ますと、一体労働省としては完全に社内預金のこの実態を把握しておるかどうかということを私は疑問に思うんです。新聞によりますると、確かに先ほど基準局長が言われましたように、現在の社内預金の件数、これは三十八年の三月末で大蔵省は三万三千と言うし、労働省では三万二千、預金総額も、大蔵省では四千七百億といっておりますが、労働省は五千億だ、こういっておるわけです。しかし、実際には一兆五千億をこえるのではないか、こういわれておる。しかし、労働省が一体どういうふうに社内預金の実態を把握し、また、監督しているかということについて私は一つの疑問を持たざるを得ない。先ほど基準法上、大臣は、厳重な監督をしているといっておりますけれども、私の知るところでは、一片の通達が出されたきりであるという状態じゃないかと思います。一片の通達で労働者の権利が守られるかどうか。この辺が、私は、現在中小企業における倒産に伴って、労働者のあるいは保護、あるいは救済措置というものに対する労働省の積極的な考え方というものをこれから若干尋ねていきたいと思います。  まず、第一に、この社内預金制度の私は現在の構造的な基準法上の欠陥というものを明らかにしていきたいと思うのですが、まず、第一には、十八条の第一項で禁止をし、協定があればいい、そしてその協定を届け出ろ、こういうことになっておりますけれども、その届け出の把握が労働省としてなされておるかどうか、それが全国的に完全になされておるかどうか。
  55. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 貯蓄金利契約の届け出は、労働省では監督署長に届け出がございますので、それは毎年毎年把握いたしておるわけでございます。ただ、過去十年ぐらい前に協定を行ないまして、その後いろいろ変動がある、たとえば貯蓄組合という組合が税金との関係で設けられまして、その貯蓄組合に転換したとか、いろいろな変動がございます。そういったものにつきましてもできるだけ把握につとめておりますけれども、そういった過去において届けられたものが途中で若干変更があったものにつきまして全部押えているかということになりますれば、あるいは漏れがあるかもしれないというふうに存ずるわけであります。数字といたしましては、労働省が把握しているのが唯一の資料でございます。先ほど大蔵省が四千七百億円といい、労働省は五千億といいと、こう仰せられましたが、実は四千七百億円というのは労働省調査した数字でございます。それをまるめて約五千億、こういっているわけでございまして、資料としては労働省資料しかないわけであります。ただ、問題は、契約数はわかっておりますけれども、貯蓄額がどういうふうに動いているかという、年々の貯蓄金額なりそういった加入人員などの動きにつきましては、これは率直に申しまして全部把握ができない。ただ、たとえば昭和三十八年三月三十一日に相当大幅な調査をいたしました。そのようなときに概数が入るといったような情勢であるわけでございます。なお、劈頭に、十六件というが、それは会社更生法の適用を受けたものだけじゃないかという御指摘がございましたが、そうではございません。なお本年に入りましても幾つか問題の会社がございました。そういったものにつきましても私ども調査いたしておりまして、会社更生法の適用決定を受けたもの以外でも、いわゆる倒産というものにつきましても調査いたしておるような次第でございます。
  56. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 その契約については把握している、こう言われますが、基準法上からいいますと、それは届け出は義務制ではないのですね。これに対して一応義務的な条項になっているかもしらぬけれども、強制力はないわけです。これに対して罰則があるわけでもないし、届け出なくてこっそりやっているという事業場は、これは基準法上からいけばあり得るのではないか、こういうふうに思うのです。しかも、届け出の問題については、いま言ったように、罰則がないということについては、これはまあそのことが一つですね。それから、もう一つは、倒産をしたとかなんとかで、あるいは倒産しなくても、労働者が返還を要求した場合、これに対する罰則というものもないわけです。また、若干あったとしても五千円以下の罰金、こういうことで、非常に軽い罰則になっているわけですね。こういうことから見ますと、労働省が全部を把握する上に、いま労働省が集計をしている数字というものは、私は実態とは相当かけ離れたものではないか、こういうふうに思うのですが、その点はいかがですか。
  57. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 法律の構造上の問題も御指摘ございましたが、御指摘の中で、行政官庁に届け出るということは、これは義務制になっておるわけでございます。十八条の二項で義務づけられておりますから、必ず届け出なければいけない。届けない場合の処理といたしましては、強制にわたるという推定をいたしまして、十八条第一項の規定がもろに働いてくる、こういうような扱いをいたしておるわけであります。   〔委員長退席、理事杉山善太郎君着席〕 それから、支払わない場合におきましても、使用者と労働者の側において、支払うか支払わないかというような問題は管理契約上の問題になってくるわけでありますが、それが労働基準監督署長が中止命令を出しますと、即時返還の義務が使用者に生じてまいります。そして、その使用者が預かり金を返還しいとないう場合には労働基準法上の罰則を受ける、こういう関係になってくるわけでございます。この管理契約そのものについての罰則はございませんが、法の仕組みとしてはそういうふうに相なっておるわけでございます。  なお、実態がつかめ得ないではないかということでございますが、先ほどもお答えしましたとおり、届け出のものにつきましては年々その数を把握しておるわけでありますが、確かに貯蓄額の金額の総額であるとか、あるいは加入人員等につきまして、これは絶えず移動するものでございますから、そういった点につきましては完全な把握はしていないと申し上げざるを得ないのでございますが、ただ、数字としては、現在求め得られる数字は労働基準局において調査したものしかないということでございます。したがいまして、いろいろ巷間いわれておりますけれども、私どもは三十八年度で調査した時点において約五千億というふうにお答えいたしておるような次第でございます。
  58. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 いま中止を命ずることができるということですが、労働省が出した「労働基準監督年報」の中では、届け出の協定違反の件数も、また、中止命令の件数も一つもないのですね、その報告の中には。ただ、あるのは二十三条の関係だけです。全然ないんですか、こういういままで中止命令出したとか、届け出の協定違反をしているというような事例は。
  59. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 先ほども申し上げたのですが、監督上の問題ですので、具体的な例は差し控えたいと思いますが、長野県であった例でございます。長野県で昨年中二十九件の倒産がございましたが、これらの企業の中で、社内預金を有しているものがかなりございましたが、倒産以前に社内預金を整理して、問題が起こらぬように事前指導しましたが、その中の三事業につきましては社内預金の返還不能が生じましたので、監督署長から貯蓄金管理中止命令を出しました。その結果、この三つの事業場は、ともに返済をしたという結果になっておりまして、事実上やっているわけでございます。
  60. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 それはいつのことですか。
  61. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) 月日はわかっておりませんが、昨年のことでございます。   〔理事杉山善太郎君退席、委員長着席〕
  62. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 この届け出は、いま基準局長も言われたように、監督署なんですね。それで、それが中央に集約をされていないんじゃないですか。
  63. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) ちょっと先生の質問の趣旨がわからぬのですが、届け出義務がありますので、届け出がなされたものにつきましては、これは件数把握いたしているわけであります。ただ、それは届け出の時点において把握しておるのでありまして、それがその後どのような金額の増減があったか、加入者にどの程度の変動があったかという点については実態をつまびらかにしていない、こういうことでございます。
  64. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 そういうふうに、届け出は、単に監督署に届け出ればそれで協定ができ、社内貯蓄金の管理はできる、こういうことになっていると思うのですよね。したがって、ただ届け出の件数なりそのときの貯金の総額なりを報告されてくるかもしれませんけれども、それだけの範囲しか本省ではおそらく把握しておらぬと思うのですよね。そういうところに私は一つの大きな欠陥があるのじゃないかというふうに思うのです。  もう一つは、先ほど言ったように、この労働基準監督年報ですね、これなんかにも、この社内預金の問題について、いま言ったような不返還の場合の中止命令なり、あるいはこの届け出を怠ったものの件数とか、そういう問題については全然載っていないのですよ。先ほど基準局長はあったといいますけれども、これはそもそも監督年報が二年も三年もおくれてから出るというところに私も問題があると思うのです。  そこで、労働大臣にお伺いしたいのですけれども、国際条約のILOの八十一号条約というものを大臣は御承知ですか。——時間がありませんから、私のほうからじゃあ説明しますが、これはILO第八十一号条約「工業及び商業における労働監督に関する条約」ですね、これはわが国では昭和二十八年、十六国会で批准をしているわけです。その中の第十八条にはこういうふうに書いてあるのです。「労働監督官によって実施確保されるべき法規の違反及び労働監督官の任務の遂行の妨害については、相当な刑罰を国内の法令によって規定し、且つ、実効的に実施しなければならない。」、ところが、先ほどの社内預金の届け出に対する罰則、あるいはその罰則があってもわずかに五千円以下という罰金というものが、はたしてこのILO条約の十八条に照らしてみて妥当なものであるかどうかということですね、一つは。この点はいかがですか。
  65. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) ちょっと御質問の趣旨に違った答弁になるかもしれませんが、先ほど来申し上げておりますように、いわゆる貯蓄金管理契約というのはむしろイレギュラーな、原則は禁止する、それを特定の要件を満たす場合には例外的に認める、こういうような制度でございます。その制度を一般金融事業のような観点から規制するか、あるいは大臣が先ほど仰せになりましたように、まあいわば金融的な観点から見ると中途はんぱである、そういうような制度であって、労働基準法上の特別な制度であるというふうに見るかどうかという考え方があろうかと思うのであります。したがって、報告件数等におきましても、労働基準法では各何条に法違反があったかというふうに見るのでありまして、中止命令を出した結果、法違反がなければこれは監督年報に登載しないという結果になりまして、中止命令自体が意味があるのじゃなくて、法違反が生じないことに意味があるという観点から、そういった処置につきましては表面に出していない。結局そこには法違反がなかったという好ましい結果が生ずるだけのことでありますから、件数としてあげておらないのであります。そのような性質のものにつきまして、そのような特殊の場合に監督官の行ないます行動を刑罰をもって担保しなければいけないかどうかということになりますと、いろいろ考え方があろうと思います。少なくとも、労働基準法におきます罰則の軽重の割り振りから申しまして、先ほどから申し上げておりますような性格の特殊な制度でございますから、基準法上は、これは比喩的なことばですが、そう力を入れて扱っていない、こういうような感じを私どもは持つわけであります。したがいまして、いまの御質問の点につきましても、さらによく検討させていただきたいと思います。
  66. 石田博英

    国務大臣石田博英君) この問題についての私ども考え方をもう一ぺん明確に申し上げておきたいと思います。  それは、この社内預金というのは労使の協定に基づいてできるものだからと、こういうような意味合いから、かなり扱いその他において、何と申しますか、問題点が非常に残っておるように思います。たとい労使の協定であろうとも、もしこれを残すべきものだとするならば、もっと明確に、もっと厳格に保護の立場をしなければならぬ、その責任訴追もはっきりさせなければならぬ問題だと存じますし、それから、その実情の動態の把握に努めてまいらなければならぬことは言うまでもないと思うのであります。しかし、いま現在この存廃を中心として議論が起こっております。これは真剣に検討すべき課題だと思っておりますので、この存廃を中心とした問題は、先ほどから申し上げておりますように、明日、労働基準審議会に御検討をお願いいたします。廃止という結論が出れば、それでけっこうでありますが、もし存続という結論が出た場合におきましては、もっと明確な態度で、この問題を通じての勤労者保護に当たっていかなければならない、こう考えております。
  67. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 それは当然将来の問題として早急に結論を出してもらわなければならぬと思いますが、しかし、現実にきょうも何件かの倒産があるかもしれぬのですよ。そうして、その中の労働者は、すでにいまのような痛ましい状況に置かれるかもしれないのですよ。そういう中で、私は、現実に労働基準法があり、あるいは監督行政というものが行なわれているわけですから、そういう中で、もっと労働省がこれに対して力を入れていかなければいけない。しかし、力を入れるには、やはり現在の労働法上の欠陥というものを私は明らかにして、そして、その上に立って、単なる一片の通達ではなしに、もっと労働省は何か失業保険の問題なんかになると、基準法に明示されている以上のことをやるような気がしますけれども、こういう問題になると、労働基準法にこううたわれておるからこれ以上やりません、こういう態度では私はいかぬと思うのです。そういう立場から、時間がありませんから、二、三の問題点を先ほどから言っておるわけですが、もう一つの問題は、このILO条約のやはり八十一号の第十六条、ここには「事業場に対しては、関係法規の実効的な適用確保に必要である限りひんぱん且つ完全に監督実施しなければならない。」と、こうなっておるわけですよ。だから、当然基準法上、これが批准されておるとすれば、それにのっとった法の改正なり行なって、そうしていま言った社内預金の問題についても、ひんぱん、かつ、厳重な監督行政をやらなければならぬ、こういうふうに思うのですね。それから、もう一つは、先ほど言った労働基準監督年報です。これなんかも、いま現実に労働省で出しておるものを見ますと、大体二、三年おくれております。ところが、このILO条約ではどう書いてありますか、ここには「労働監督官又は地方の監督事務所は、その監督活動の結果に関する定期報告を中央監督機関に提出するものとする。」、「これらの報告は、中央機関が定める様式によって作成し、且つ、この機関が随時定める事項を取り扱う。これらの報告は、少くとも中央機関が定める回数だけ(いかなる場合にも年に一回以上)提出しなければならない。」と、こう書いてある。さらにその第二十条には、年次報告を一般に公開しなければならぬ。「その年次報告は、当該年度の終了後適当な期間内に、いかなる場合にも十二箇月以内に公表しなければならない。」こうなっておりますね。これはILOの条約を、すでに先ほど言った十六国会において批准をしておきながら、いまだにこういう条約違反と申しますか、基準法違反があるということについて、一体労働大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  68. 村上茂利

    政府委員村上茂利君) ILO八十一号条約の十六条と二十条についての御質問でございますが、実は十六条につきましては、「関係法規の実効的な適用確保に必要である限りひんぱん」にという表現になっております。監督官の現在の陣容、事業場の急速な伸びという点から見ますと、全事業場についてひんぱんにということは、これは事実上不可能でございます。しかし、先ほど大臣からお話がございましたように、港湾荷役のような法違反がかなりあって、法の実効的な適用確保に必要であるというようなものにつきましては、まあひんぱんという解釈の問題もございますけれども、少なくとも当該業種の事業場については全部回るというような方針をとり、また、必要に応じて随時やっておると、こういうような体制をとっておるわけでございます。しかし、十分でないということは私どもも十分自覚いたしまして、さらに適切な監督を行ないたいと考えております。  それから、二十条の関係につきましても、確かに従来報告がおくれておりまして、しばしば御指摘を受けたところであります。たいへんおそくなりましたけれども、昨年につきましてはこの規定どおり、本件につきましても、もう原稿がまとまりまして、印刷に付すことができるような態勢にございますので、この二十条に定めておりますような手続によりまして報告が可能であると考えております。
  69. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 いずれにしても、こういう国際的な条約がわが国の国会で批准されておるにもかかわらず、それにのっとった労働省監督行政が十分でないということについては、私は、やはり労働省のいままでの怠慢ではないかと思うのです。したがって、いま問題になっているILO八十七号条約等が批准されても、はたして条約の精神にのっとった国内法の改正がなされるかどうかということについても、私は関連して疑問を持たざるを得ないわけです。ですから、労働省はこういう点について、特に現実的にそういう被害をこうむっておる労働者がたくさんおるんですから、これはやはりあした中央労働基準審議会にかけて、それからのことだと、その後何年かかるかわからぬ場合もあると思いますけれども、そういう長いことではなくて、やはりきょうからでも、この労働基準法上許される範囲内の監督行政というものをもっとしっかりやって、そして、その労働者保護の趣旨にのっとった労働行政というものを進めていただきたいということを強く要求しておきたいと思います。時間がありませんので、またいずれこの問題はあとでやる機会があると思いますので、以上でとどめておきたいと思います。  次の問題に入りたいと思いますが、労働大臣も、施政方針と申しますか、所信表明の中で、あるいは労働省が去年出しました産業別、地域雇用計画、こういうものを見ましても、労働力有効活用、あるいは労働雇用条件向上、平準化と申しますか、こういうもので完全雇用目的を達成するために今後やっていくという、こういう方針を打ち立てておるわけでありますが、きょうまず労働大臣にお伺いしておきたいことは、そういう労働省の労働の需給計画の精神にのっとってみた場合に、いまの国有林労働者雇用の形態、これは林野庁がこれを所管していると思うのでございますけれども政府機関である林野庁が雇っている労働者雇用形態が、労働省がこれから施行しよう、あるいはいままでの施行していこうという立場からすると、ますます逆行する方向にあるのではないかというふうに考えざるを得ないのです。こういう問題について労働大臣はどういうふうにお考えになっておりますか、お聞きしたいわけです。
  70. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 林野庁の現在具体的にとっておりまする主要労働力確保の方針、あるいは雇用の方針ということについては、これはその具体的内容林野庁長官からお聞きいただきたいと思うのでありますが、一般的に申しまして、先ほど出かせぎ労働の問題の際にも申し上げましたように、雇用関係というものは通年雇用に持っていくことが一番望ましいことだと思っております。たとえば現在農村から出ております出かせぎ者でも、農業の有閑——ひまなときに出て来る労働者と、それから、主として出かせぎ労働によって、あるいは日雇い労働によって生計を立てている者というふうに二つあるように思うのでありますが、その後者の場合には、特にやはり通年雇用に持っていくようにしていくべきものだと、こう考えております。
  71. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 林野庁長官がおりますのでお伺いしますけれども、現在三十九年度のでいいですけれども、林野庁で使っておる労働者の中で、常用雇用者と、それから、いわゆる平均作業以下の労働者とどういう割合になっておりますか。
  72. 田中重五

    政府委員(田中重五君) 頭数で申しますと、常用作業員が三十九年度で一万一千八百人、それから定期作業員が約三万六千人でございます。
  73. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 私のほうで調べた結果と申しますか、それによりますと、八カ月以上雇用されている者が一万八千九百七十一名、六カ月以上が一万六千九百六名、合計して三万五千八百七十七名、こういうことで、その他日雇いとか臨時がおりますが、いずれにいたしましても、林野庁の国有林事業の基幹作業に働いておる労働者というものは大体四万四千人からおるのではないか、こういうように私ども調査の結果出てきておるわけですね。これに間違いございませんか。こういう四万四千人の方は、常に雇用の更改と申しますか、一カ月ごとに切りかえられるとか、一年に切りかえられるとかということで、いつ失業になるのか、あるいは社会保険の適用もないままにやられておる労働者というものが相当あるわけですが、この点はどうですか。
  74. 田中重五

    政府委員(田中重五君) この人頭数は、その調査の時期によって違いますから、ある程度異動いたします。いま先生のお話の四万四千人というおっしゃった意味が、常用作業員、それから定期作業員を加えたものという意味でおっしゃっておいでになるのでしたら、まあほぼそれに近いと、こう申し上げていいかと思います。  それで、なお、いまの御質問の中にございましたので、あわせてお答えをいたしておきたいと思いますのは、この林業経営というものの特殊性からいいまして、どうしても季節に支配されておる。そこで、季節に支配されるために雇用が季節的雇用になっているという実態がございます。しかしながら、それをできるだけくふうをいたしまして通年雇用に持っていこうという努力をいたしております。
  75. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 林野庁で雇用三カ年計画というものを出しておりますね。これで見ますると、非常に計画と実績と申しますものが差があるわけですね。この常用のほうはまだいいとしても、定期月雇い、こういうものが非常に差があるわけです。こういう雇用計画の中で、しかも、労働省は三十九年に地域別、産業雇用計画というものを出して、そうして労働力有効活用をはかり、通年雇用化をはかっていくという方針を出して、あるいは一方ではそういう方針を出す。他方では、林野庁はいまもって昔のような雇用形態、いわゆる定期雇い、六、七月採用というものを当初計画の中に入れているということは、政府部内の労働力の適正配置、あるいは完全雇用の方針からいって問題があると思うのですが、この点大臣のほうからひとつ……。
  76. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 私は、林野庁が、逐年雇用の安定という方向で、一ぺんにはむずかしいでしょうが、逐年努力をされておるものと思いますし、われわれのほうとしては、そういうふうに要望いたしておるわけであります。
  77. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 季節的作業が多いのでこういう身分の不安定の労働者が必要なんだと、こう先ほど言われました。しかし、現在のこの技術の革新された中で、以前は冬の山もやっておったわけです。ですから、ましてや技術がどんどん発達した現在では、冬でもそういう仕事がやられる現状ではないですか。民間ではすでにそういうこともやっているじゃないですか。
  78. 田中重五

    政府委員(田中重五君) 冬の作業につきましては、むしろ民間が多いのでございます。冬の作業をなぜやるかといいますと、やはり雪あるいは氷、そういうものを利用して木材という重量物をできるだけ楽に出そうということで、伐採、搬出の方法としては一番原始的な労働でもございましたし、ことに冬の作業では、雪が早く降ったりおそく降ったり、また、早く解けたり、おそく解けたり、あるいは作業中に豪雪があって木材が埋まってしまうというようなことがございまして、計画的に仕事が進まない、それから寒いから能率も上がらない、ことに木材の最も集約的な利用が妨げられるというようなことで、林業経営の近代化の方向を考えまするならば、できるだけそういう天然現象である雪や氷を利用することを避けて、そうしてできるだけ機械化をいたしまして、そういう雪や氷によらないで仕事ができるようにしたい。それで、最近国有林はもちろんでございますが、民間におきましても、進んだ林業経営者におきましては、できるだけその季節に支配されないように機械化をいたしまして持っていく。機械化をするということは、やはりそれだけ雇用が季節に支配されないわけですから、それだけ延長され、安定もされていくということでやってまいったわけでございますが、そこで、先生のお話の冬山でも、そういう雪や氷でなく、技術が進んできたのだから、そこで機械化で冬の仕事をやったらどうかという御説はごもっともでございます。それで、私どもといたしましても、冬といえども、いろいろな機械を駆使することによりまして夏場同様に仕事ができるようにくふうをして持ってまいりたい、そういうことで雇用される人たちの雇用の延長、安定をはかってまいりたい、こういう考え方で進めているわけでございますけれども、何といいましても、やはり林業は植物でございますし、今度は植えつけ等を考えてみました場合には、植えつけ、これはおもに春であるとか、あるいは秋であるとかというふうに、植物生育上の期間があります。それを無視してはならない。そこで、どうしても一時的に、ことに仕事の面積がふえてまいりますと、それに必要とする作業員が多くなってまいります。それから、また、下刈りの時期であるとか、あるいは造林上の保育といっておりますけれども、そういうことはどうしても季節に支配されやすい。しかしながら、季節に支配されやすいからといって、そのときだけ作業員を使うということは、使う側としてもまことに困る話でございまして、やはり技術に熟練するということを考えますと、それはやはり長くいてもらいたいわけでございます。そういう意味からいいまして、できるだけそういう造林、それから伐木その他の下刈りなり調査なり、土木その他の仕事をつなぎ合わせていきながら、できるだけ個々の作業員にとっては年間仕事が獲得できるように、そうして国有林のほうもそのほうが都合がいいわけでございますから、そういうふうに持ってまいりたいということで現在努力をしておるということでございます。
  79. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 この定期作業員、あるいは月雇い作業員を通年雇用して常用化すべきであるということは、過去何回かこの委員会におきましても、私たちのほうから林野庁なり労働省要求しているわけです。そういう中で、林野庁は、この過去三十七年、三十八年からでもけっこうですが、定期作業員、月雇いから常用化された数というのは、大体どういう人数で常用化されておりますか。
  80. 田中重五

    政府委員(田中重五君) 常用化といいますか、その傾向を申し上げますと、たとえば雇用区分と、こう申しておりますけれども、常用作業員、それから定期作業員、常用というのは一年間、それから定期というのは六カ月以上雇用されているものと、それぞれ区分がございますが、そのほかに臨時作業員といたしまして月雇い作業員、日雇い作業員というのがございます。それで、月雇い作業員というのは名前のとおりでございますが、これが漸次常用作業員、あるいは定期作業員というふうに繰り入れられておりまして、昭和三十年に比べますと、昭和三十年を一〇〇とした場合の月雇い作業員は、昭和三十九年では四三になっております。これは人頭数でいった場合でございます。それから定期作業員ということは、そこから定期作業員、あるいは常用作業員に繰り入れられていっているということでございまして、定期作業員が昭和三十年を一〇〇といたしました場合に、三十九年が四四七、それから常用作業員は、昭和三十年が一〇〇の場合に三十九年が一三七という傾向を示しております。
  81. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 これではさっぱりいわゆる常用化されておらないのじゃないですか。常用化が三十年から三十九年までの九年間にたった三七だけですよ。一方、定期作業員は四四七、四倍以上にもふえているわけでしょう。どうして私たちが要求する常用化ができないのですか。
  82. 田中重五

    政府委員(田中重五君) それで、これはいま定員外作業員について申し上げたわけでございますけれども、常用作業員の中から、今度はいわゆる国家行政組織法にいうところの定員化されたものが入っていくために常用化の伸びがこのようになっているということでございます。
  83. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 いずれにいたしましても、定期作業員以下は、しばしば言うように、非常に不安定な身分です。しかも、労働力有効活用からいけば、非常にこれは国家にとってもマイナスな雇用形態です。こういうのがいまだに三十年を一〇〇とした場合に四倍以上ふえているということについて、私は、やはり政府機関である林野庁の雇用責任というものを強く追及しなくちゃならぬというふうに思うのですけれども、そこで、請負、これが最近非常に林業では多くなってきているのです。先ほど林野庁長官は、林業経営の近代化、機械化とかいっておりましたけれども、私に言わせれば、林業経営の近代化は請負に回すというふうに思うのです。請負化されているのはどのくらいになっておりますか。直営はわずか二〇%か三〇%じゃないですか。
  84. 田中重五

    政府委員(田中重五君) 請負事業につきましては、これは労働組合との間の話し合いも一応できているのでございますけれども、仕事が著しくふえる場合とか、それから臨時的であるとかいうような場合に、あるいは、また、仕事の能率の面からみて請負にするということをきめておりますけれども、ただ、この傾向といたしましては、直営事業を減らして、そして積極的に請負に回すというふうな考え方ではいないわけでございます。
  85. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 それは考え方だけであって、実際はどんどん請負の率がふえているのですよ。これは私どもが林野庁からとった資料でもそうなっているわけです。林業基本法ですか、これができたときに、林野庁長官は、できるだけ直営事業でこういう公共的な事業をやっていくのだということを約束をしているわけです。それが年々請負化がふえていくというのは、これは国会で約束したことを無視するのではないかというふうに私は思うのです。なぜこういう問題について請負化しなくちゃならぬのですか。
  86. 田中重五

    政府委員(田中重五君) 請負の仕事については、先ほど申し上げたようなわけでございますけれども、直営事業といたしまして、仕事の量は、これは三十八年、三十九年、それから四十年も、予定でございますが、直営事業の量としては年々ふえているわけでございます。
  87. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 その数字をひとつあとで資料として出してください。
  88. 田中重五

    政府委員(田中重五君) 後ほど提出いたします。
  89. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 それで、私は、直営がふえていくのだということですから、その数字を見た上でまた質問していきたいと思いますけれども、しかし、実際にいままでの傾向からいくと、請負がふえていくということは、結局一つには労働者がなかなか集まらないということが一つの原因でもあると思います。それより大きい原因は、やはり独立採算制と申しますか、なるべく少ない金で事業をやっていこう、そういうところにあると思いますけれども、一つは、やはり労働力が集まってこないというところから、どうしても請負に出して、そして安い賃金でどんどんやれるようなところへみんなまかしてしまう、こういうところにも一つの原因が私はあるのじゃないかと思うのです。しかし、いま労働省が指摘しておりますように、とにかく今後も労働力の需給関係というものは非常にきびしい、いわゆる労働力不足というものは今後も続くのではないかということをいっているわけです。したがって、先ほど林野庁長官が言いましたように、優秀な技術者、能力のある技術者はみすみすどんどんほかへ流出してしまうということは、私は、林業事業にとって非常に問題があるんじゃないかと思うんですね。ですから、やはりそういう優秀な技術者はいつまでもこの事業に働いてもらうとか、あるいは新しい新規の労働者ももっと熱意を持ってこの事業に当たる、こういういわゆる労働政策と申しますか、林野庁としての労働者に対する対策を立てていくべきじゃないか、こういうように思うんです。それには、まず、定期作業員の身分の不安定な労働者をいわゆる常用化していく、各種社会保険の適用も完全に受けさして、心配のない職場で働くことができる、そういうやっぱり雇用体系というものを考えるべきじゃないかというように思うんです。この点についてひとつ林野庁長官の決意のほどをお聞きしておきたいと思います。
  90. 田中重五

    政府委員(田中重五君) その点はいまのお説のとおりでございます。それから、また、その点についての政府の態度といたしましては、先ほど労働大臣が申し上げましたとおりであると思います。で、国有林野事業の発展という面から見ましても、ことに優秀な技術者、これを確保しなければならないことは言うまでもないことでございますが、確保するためには、その雇用を通年化し、そして本人にとってこの職場生活上安定した場であるという確信の上に立って仕事をしてもらうということが、言うまでもなく、必要でありますと同時に、また、その処遇についても十分に考えなければならない、こういう考え方を持っております。それから、一方、さらに優秀な作業一般についての確保、そうして雇用の安定につきましては、先ほど来たびたび申し上げておりますように、この作業の仕組みというものをできるだけくふうをいたしまして、林業経営自体が季節に支配される産業であるとはいいながら、それを技術、くふうでできるだけ補いまして、そうして季節ごとに仕事が切れるということがないようにいろいろくふうをして、そうして雇用の通年化をはかっていくというふうにやってまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  91. 柳岡秋夫

    柳岡秋夫君 ひとつ口だけじゃなくて、ほんとうにそういう方向にぜひ持っていっていただきたいと思うんです。また来年になっていまの定期作業員の数が逆にふえてきたとか、そういうことでもしあったとすれば、これは私はまたこの委員会で取り上げざるを得ないわけです。  そこで、最後に労働大臣に、こういう労働者がいまだにたくさんおるということは、先ほどから申しておりますように、労働力有効活用の面からも問題があるし、さらに、また、地域に、あるいは産業別にこの労働力を適正に配置をしていくということ、あるいは完全雇用を達成していくという面からも、こういう雇用形態の労働者は一日も早くなくしていかなくちゃならぬのじゃないか。しかも、優秀な技術者でございますから、したがいまして、労働省としては、これは民間企業なり一般指導するという立場からいけば、当然まずもって政府関係機関雇用形態こそ、これは政府責任を持って民間に範をたれるというのが当然のことではないかと私は思うんです。ですから、労働大臣としては、林野庁長官を十分指導していただいて、そしてこの身分の不安定な労働者が一日も早くなくなるように、ひとつ強力な指導をお願いをしたい、こういうように思うんです。
  92. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 完全雇用を達成し、そして、また、同時に、産業が必要な労働力確保していく道は、冒頭に申しましたように、通年雇用のうちにあると思います。しかも、それを実現いたします場合に、政府及び政府関係機関が率先して、あとう限りの努力をすべきものだと思っておるのでありまして、特に林野庁ばかりではなく、建設省に対しましても一わが国では建設事業は冬はできない、雪があればできないものだと初めからきめてかかっておる傾向がございます。これが建設業における季節労働の発注の体系をなしており、この季節労働量を、失業保険その他のいろいろな問題を処理するにしましても、まず通年雇用が実現できるようにしなければならない。雨のときに工事が全然できないものかどうかというと、日本よりもっと気候条件の悪いところ、たとえばカナダとかスカンジナビア諸国、ソビエトとかいうようなところなんかは冬にやはり工事をやっているわけであります。特定の国においては、政府が発注を非常に計画的に行ないまして、冬でも工事が出るようにしております。わが国でも北海道で冬の工事をやった実例があるのであります。また、ILO等でも、冬の工事をやった場合におけるコストの計算をいたしておる事例もございます。建設省に対しまして、工事の発注、請負関係、こういう面において雇用対策に見合うような処置をとってもらうように、いま強力に呼びかけを行なっているところでございます。
  93. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 私も一言質問をしておきたいと思うのです。これは非常に重要な問題なんです。いま労働大臣がお述べになったことが今日の世界の流れだと、私はそう思うわけです。で、たとえばいま聞いておりますと、常用雇用が一万一千で、その他の雇用が四万四千、六カ月、八カ月、それから月別、日別、日雇いというかっこうで四万四千という人を雇っている。いいところだけ食って、あとは失業保険でほったらかしているという、この思想が政府機関の事業としては間違っているのじゃないか。農林省がほんとうに直営でおやりになるなら、その一年間の生活保障をされたらいいと思う。そこまでお考えになったらこの問題の解決ができると思う。あとは失業保険にまかしておけばいい、いいところだけとったらいいのだということでは、それでは働いている人の立場になったら、近代国家、主権在民の国家体制の中で、政府機関がそういうことを許されるのかというのがいまの論議の焦点だと私は思う。そのことがお考えに浮かんでこないと、いいところだけ食って、あとは失業保険にまかしておいたらいいということになるので、いま出かせぎが非常に問題になっているのも、私は、労働行政としても、大臣がいまおっしゃったような点を強力に推進してもらいたい。政府の統一行政としてこの問題をとらえていただかなければ、一万対四万というような、かっこうのいいところ食いというような行政機関の雇用関係というものは、いつまでたっても減らない。で、あとはみんな失業保険にまかしてほったらかしていくという、このようなものの考え方の根本が少し間違っていやせぬかという気がするのです。これはまことに失礼な言い方ですけれども林野庁長官のこういう問題に対するとらえ方を私は聞きたいと思うのです。冬では仕事はできぬから、いいところだけを機械化したらよくなりますとおっしゃいますけれども、十年の間に四倍半になっている、定期のところだけがふえている。そういうことで許されるのだろうか。そこは失業保険にあとはまかしたというところだけがふえているというだけで、国家の経営事業としての林業がそういうことで進んでいるというようなことが今日許されていいと私はどうしても思わない。だから、もっと八カ月とか六カ月とかというこということであれば、その他の分は国家事業みずからの怠慢とまでは言わないにしても、自分らの備えがないために失業保険にいきなさいというだけじゃなしに、その間の生活を農林省が保障する、政府保障するという考え方にお立ちになったらこのような問題は解消すると思う。失業保険にほうり込んでおけばそれで事足りるというものの考え方があったら、いつまでたってもこれはふえないし、民間請負が七割で、直営がだんだん減って三割の比率になっていく、それでいてまだこういう状態が起こっている、私は質疑を聞いていてそういう感じを受ける。私は、そこらのものの考え方の根本をここで聞かしていただきたい。きょうは時間がないから何ですけれども、あらためてこの問題を審議することにいたしますけれども、そこらのものの考え方の基礎の問題が私は分かれ道だという気がするのですが、労働省とは全く違った方向でこの問題だけは進んでいる。田中長官の御意見を聞かしていただきたいと思います。
  94. 田中重五

    政府委員(田中重五君) 雇用安定という面では、いま委員長が話されたことはごもっともだと存じます。ただ、この雇用の安定をする場合に、できるだけこの通年的に仕事を仕組んで、そうして安定するという考え方、これに私どもは立っておるわけでございますが、なお、そのほかに、いまお話の休業補償とか、あるいは失業保険というお話がございましたが、ところで、いまの定期作業員等におきましては、これはその一定の雇用期間が経過をいたしますと、これは国有林野事業作業員でなくなるわけでございまして、そこで、その林業補償という考え方に立った場合には、これはやはり雇用しておる者を雇い主の何らかの理由で仕事を休むというような場合に考えられるのがまあ休業補償とでもいうべきものではなかろうか、こういう考え方でいるわけでございます。林業の作業特殊性を先ほど来申し上げたわけでございますけれども、この点は民間林業においても同様でございます。それで、国有林は国の林業経営のやはり指導的立場でもございますので、そこで、その雇用の安定にはできるだけ努力をし、くふうもして、そして民有林も指導する、そういうことでやっておるわけでございますけれども、国有林の労務者、作業員がこのようなかりに適用を受けた場合に、民有林の林業労働者、それとの関係はどういうことになるかという問題もあるかと存じます。それから、さらに、やはり雇用の期間が満了した後において、その国が雇用しない者についてこの休業補償を支給するという点については、なお検討する必要があると考えまして、にわかには賛成できないのではないか、こういう考え方でございます。
  95. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは私が実は田中林野庁長官とは個人的に懇意な中で、こういうところであれですが、ちょっといまのことについて私の考え方を明確にしておきたいと思います。法律的には、確かに雇用関係がなくなるのですから、休業補償ということばは当たらないことは言うまでもありません。ただ、林野庁の場合は、毎年四万何千人という労働者が働ける季節には必要なんであります。そうして、その必要労働力がなぜ季節外のときに分散しないでおるかというと、失業保険支給されているからなのであります。失業保険支給されていなければ分散する、分散すれば翌年の必要労働力確保されないのであります。それを私どものほうの失業保険のほうへころがしてこられて、そうしてその分だけ林野庁の特別会計の中で余裕ができたという考え方を持たれることは、これは失業保険を扱っておるものとしてはたいへん迷惑なのであります。したがって、この問題が処理されない間は、むろん失業保険というものはこれは当然支払っていく立場をとらざるを得ませんけれども失業保険特別会計も国家の会計であります。この失業保険特別会計の非常に苦しんでおる時期でございますから、この林野庁が必要労働力確保するという観点から、あえて労働者保護ということは言いません。必要労働者保護確保という立場からひとつお考えになり、法理論じゃなく、実際論からこの点をお考えいただきたいとわれわれは主張しております。  それから、もう一つは、この雇用形態を国家がとった場合、他の民間の林業経営に与える影響、これはお考えになるのは当然であろうと思いますが、それは林業経営者の立場をお考えになると同時に、そこで働いておる人の立場も同様に考えていただきたい。これはこの際たいへん政府部内で妙なことでございますが、ちょっと伺っていますと、私どもの所見を申し上げておかなければならぬと思いましたから、これだけは申し上げたいと思います。
  96. 田中重五

    政府委員(田中重五君) なおつけ加えさせていただきますが、先ほどから申し上げておりましたように、雇用の安定、これをできるだけ仕事を続けることによって解決をはかってまいりたいという基本的な考え方であることを御承知を願いたいと思うのであります。それで、来年雇用することにして失業保険へころがしていくという考え方ではないのでございまして、現在の就業期間満了後そういう制度の恩典にあずかっておるということではございますけれども、ただ、そのことが、たとえば山村労働力流動化なりその他の面でも問題があることでもございましょうし、決して失業保険をそのように当てにするために機械的の雇用を続けていくということではないわけでございます。ただ、休業補償という考え方につきましては、やはり現在の段階では先ほどのような考え方に立たざるを得ないと思います。しかし、なお十分に検討をいたしてまいりたい、こういう考え方でございます。
  97. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) 私はもうあまり議論をしませんけれども、主権在民という国家体系で、いいところだけ食って、あとはどうなってもいいというものの考え方で政府事業をやったらいかぬというものの考え方に立てるかどうかということが私は根本だと思うのです。だから、失業保険で云々ということで肩がわりしているというようなかっこうでなしに、もっと仕事のない期間中は、直接官庁の農林省が労働者生活保障する、民間もそういう方向で事業をつくっていくということになれば、どうしても仕事をおつくりになるでしょう。私はその立場に立つか立たないかで事がきまると思う。いいところだけ食って、あとは大臣のおっしゃるとおり、失業保険にまかしておけばいい、その間の生活はそこへまかしておけばいいというようなものの考え方は、いまの国家体系の中における国家事業として考え直してもらわなければこの問題は解決せぬ、私はさっきから聞いていてそう思うものですからあなたの特に見解を求めたわけですけれども、きょうは十分そこらの点をひとつお考えいただいて、この次にどうせ林野業労働者雇用安定の法案がありますから、これについてひとつ安定しなければならないということを審議する時間を社労の委員会は持っておりますから、ぜひいい方向をみんなで見つけていただきたいと、私は委員長として思っておるわけでありますから、きょうの質疑を見て感じたことを申し上げたわけであります。  ほかに御発言がなければ、本件に関する質疑は、本日はこの程度にとどめたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 藤田藤太郎

    委員長藤田藤太郎君) さよう決定いたします。では本日はこれにて散会いたします。   午後一時十分散会