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1965-05-12 第48回国会 参議院 国際労働条約第87号等特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十二日(水曜日)    午後一時二十一分開会     —————————————    委員異動  五月十一日     辞任         補欠選任      吉田忠三郎君     占部 秀男君  五月十二日     辞任         補欠選任      長谷川 仁君     和田 鶴一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安井  謙君     理 事                 亀井  光君                 草葉 隆圓君                 竹中 恒夫君                 小林  武君                 横川 正市君     委 員                 江藤  智君                 久保 勘一君                 後藤 義隆君                 鈴木 恭一君                 野本 品吉君                 日高 広為君                 丸茂 重貞君                 三木與吉郎君                 山崎  斉君                 和田 鶴一君                 占部 秀男君                 北村  暢君                 鈴木  強君                 中村 順造君                 渋谷 邦彦君                 田畑 金光君                 佐藤 尚武君    国務大臣        運 輸 大 臣  松浦周太郎君        労 働 大 臣  石田 博英君        自 治 大 臣  吉武 恵市君    政府委員        内閣法制局第一        部長       関  道雄君        人事院総裁    佐藤 達夫君        人事院事務総局        職員局長     大塚 基弘君        内閣総理大臣官        房公務員制度調        査室長      岡田 勝二君        警察庁長官    江口 俊男君        法務省刑事局長  津田  實君        運輸省鉄道監督        局長       佐藤 光夫君        労働省労政局長  三治 重信君        自治省行政局長  佐久間 彊君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  清君        常任委員会専門        員        鈴木  武君        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        日本国有鉄道副        総裁       磯崎  叡君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○結社の自由及び団結権保護に関する条約(第  八十七号)の締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○国家公務法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○地方公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 安井謙

    委員長安井謙君) ただいまより、国際労働条約第八十七号等特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨五月十一日、吉田忠三郎君が委員辞任し、その補欠として占部秀男君が委員に選任されました。  また、本日、長谷川仁君が委員辞任し、その補欠として和田鶴一君が委員に選任されました。  以上でございます。     —————————————
  3. 安井謙

    委員長安井謙君) それでは、結社の自由及び団結権保護に関する条約(第八十七号)の締結について承認を求めるの件、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案国家公務員法の一部を改正する法律案地方公務員法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  質疑の通告がございますので、順次発言を許します。中村順造君。
  4. 中村順造

    中村順造君 まず、労働大臣にお尋ねいたしますが、まる七年前に国鉄の部内の中で解雇者をめぐりまして団体交渉拒否、いわゆる国鉄の中で、国鉄労働組合、当時の機関車労働組合が、それぞれ解雇者を三役に改選をしたということで、ILOの問題が初めて提起されたわけです。私は、当時ちょうどこの問題につきまして、東京地裁で争い、あるいは最初にILOにこの問題を提起をした当事者の一人でありますが、その時点から考えますと、当然なさるべきこの八十七号条約批准ということが、まあ足かけ八年、まる七年という長い経過をたどっているわけですが、一体大臣はどうしてこんなに長く、当然なさなければならぬこの条約批准というものがおくれたのか。どういうふうな認識を持っておられるのか、まずそれをお伺いしたいと思います。
  5. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは、ドライヤー委員会の提案の中にも指摘されておりましたが、同時に、私も昨年七月に就任いたしましたとき、同一趣旨発言をしたのでありますが、この問題がかくのごとく流れたのには、時間を経過いたしましたのは、やはり何と申しましても、労使双方の中にある相互不信感、これが問題を非常に紛糾せしめたものだと思っております。
  6. 中村順造

    中村順造君 労使不信感と、こうまあ一口に片づけられるわけでございますが、当初、私どもがこのILOに提訴した当時は、少なくともこの八十七号条約に直接抵触をする公労法の四条第三項、あるいは地公労法五条三項、この問題を国内法として改正をし、そのことによって、この八十七号条約はすなおに批准ができる、こういうふうに理解をし、その後いろいろなほかの組合経過もありましたけれども、ただ、不信と言われますけれども、これは参議院の本会議でも、何回かこの問題は問題になったわけですが、この四条三項、五条三項のいわゆる廃止ということ以外に、当時まあ関係法案といわれておりましたが、大臣のいまの答弁では、それでは政府関係法案を出さなければならぬということは、いわゆる政府のほうが労働組合を信用できないと、これから始まったわけですか。
  7. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 私は、日本労使関係、あるいは労働組合運動の歴史というものも、順次正常化の道をたどってきておると思っております。しかしながら、その経過並びに現状についてのそれぞれの当事者担当者の中に、現状そのままだけでは、八十七号条約批准をいたしましても、実質的に労使の秩序ある慣行が打ち立てられないというような考え、判断に立つのも理由が十分あったと思うのであります。そういうような各方面の意見を調整して出されたのが政府案でございますが、その政府案に対しまして、また反対の意見が出、さらに他のいろいろな問題が関連をいたしてまいりまして、その結果、こういうふうに時間を長く経過した、こういうふうに考えております。
  8. 中村順造

    中村順造君 私はその後の問題についていろいろな経過のあることも十分承知しておりますが、まず、その姿勢の問題からただしておるわけです。大臣言葉では、これは相互不信感、こういわれましたけれども、たとえば関係法案が出された当時の状況を見ますと、あとでこれは取り下げられたわけでありますけれども国鉄営業法ども、これは五法案の中に入ってきた。国鉄営業法国鉄の自主的な判断によって、たとえば、八十七号条約批准する、団体の規則をゆるめなければならない、これは……。いわゆる結社の自由、団結権保護だということになれば、団体というものは非常に規制がゆるむ。半面そのままでは置かれないから、今度は個人規制するという考え方があの営業法改正案中身だった。そのほかのいわゆる四条三項、五条三項を除く国家公務員法地方公務員法、あるいは公労法地公労法、こういうものを政府は提案されているわけですね。いまの状態でなしに、当時の関係法案のことを私は申し上げているのですが、その考え方はどこから出るかということは、あなたはこれは労使不信感から、そういうことが考えられるのだ、こういうふうに言われるわけですよね。一体労働省というのは、これは労働者をどうする考え方なんですか、性格のものですか、これはいわゆる保護という言葉は適切でないかもしれませんが、あるいは個人々々の力の弱い労働者に対して、労働省というものはある程度これを保護しあるいはサービスをしてやる、こういう性格じゃないのですか。その点はどうなんですか。
  9. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 労働省の任務と性格は、勤労者利益擁護して、その生活及び経済的諸条件の向上をはかることにあるわけであります。しかしながら、その目的を達成するために、いかなる行為をも、いかなることをも、それを容認して差しつかえない、野方図にしておいて差しつかえないという性質のものではないのでありまして、その目的を達成するためにも、やはり健全な労使慣行の確立が必要である、こう考えておる次第でございます。  それから鉄道業法——もう済んだことでありますから、いま議論をしてもしかたないことでありますが、鉄道営業法という法律自体は、御承知のように、明治三十何年かにできた法律がそのままあるわけでありまして、そのことがそれ自体として当然検討すべき問題だと思うのでありますが、それを、ILO八十七号条約批准関連してその法律を出されるのには、やはりその当時の使用者側考え方に誤りがあるとか間違いがあるとかいう議論と同時に、その当時の労働組合運動あり方というものに対する一つの反映とも考えられる。したがって、私はやはりこれは、どちらが悪い、どちらがいいという議論をする前に、双方が従来のやり方について十分反省をし、態度の変更を行なって、労使の円満な秩序ある慣行の樹立に努力をすべきものだと、こう考えております。
  10. 中村順造

    中村順造君 私が申し上げておるのは、まあこれは過ぎたことだからということでありますが、初め申しましたように、考え方の違いあるいは姿勢の問題ですがね。すなおにこの四条三項と五条三項と八十七号と、この問題だけを取り扱えば、少なくとも今日までのまる七年という長い日子は必要でなかったと思うんです。ところが、あの関係法案というのは、これは鉄道営業法の問題が出ましたが、鉄道営業法はなるほど太政官時代からの法律です。ところが、その鉄道営業法全部を改正すると、かたかなで書いた法律を、という趣旨じゃないんです。あの改正案は長いこと国会で提案されてたなざらしになっておりましたが、その罰則だけ——個人のいわゆる罰則だけを強化するという、わずか一条か二条の改正だったんです。これはすなわち先ほど私が申し上げましたように、やはり団体規制をゆるめるかわりに個人を締めつけようと。ほかの四法案にしても同じことが言えるわけです。いろんな条件をつけて労働者を締めつけると。そこに私は労働省としての問題があるんではないか。少なくとも資本主義下アメリカ労働省のように、徹底した労働者立場擁護するという考え方は、関係法案が出された当時には政府にはその考え方はなかった。団体規制をゆるめざるを得ないという羽目になって、これは個人規制を強める、あるいは組合自身に非常に不利な条件を持ち出す、そういうことが他の関係法案中身でもあった。——今日は情勢が変わりましたけれどもね。ならば、私どもが当初の、ILOに提訴し、その後の国会にこの八十七号条約批准という問題が出された当時、関係法案がついたことを考えると、これは姿勢の問題として、労働省が徹底したいま大臣がおっしゃったような性格を、そのまま労働省性格として運用されておらなかったということが言えるんではないかということを私は申し上げている。その点はどうなんですか。
  11. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 当初、八十七号条約批准を決定し、それを国会に提出するという際においては、むろん、公労法地公労法関係条項だけを改正すればそれでいいんだという議論は、これは必ずしも野党だけでなくして、政府部内にもありました。個人として私はそういう意見でありました。これは明確にしておきたいと思います。しかしながら、同時に、その当時の公共企業体及び公共部門における労使関係実情、これは、政府を預かっている者は公共利益を守り、そうして特に公務員は憲法十五条に示されているように、すべての人に奉仕する立場、それを行なう立場からいって、その現状にかんがみ、それを保障するだけの措置をとっておかなければならないという議論も非常に有力でありました。それはしかし、一方的に出た議論ではなくして、やはり相対的にそういうことを必要と考える実情がここにあったので、したがって、そういう状態相互信頼回復反省と自制とによって、正しい軌道の上に乗せていくことが必要であろう、こう総合的な判断の上に立って、政府があの当時ああいう関係法案を提出したのだと思うのです。  それからアメリカ労働省立場日本労働省立場、私は根本的に目ざす目標及びその責任、これに変わりがあるとは思っておりません。ただ、それぞれの国々が持っております歴史的な労働運動あるいは労使関係の歴史的な経過相違実情相違、そういうものがいろいろその時点において違ってくる場合もあり得るのであります。私は労働者保護を、あるいは労働者利益擁護するという立場に立つことは、何でもかんでも労働組合なりあるいは労働名前において行なわれることは、全部それを保護し、容認することになるのだとは思っていないのであります。むしろそういう目的のためにも、やはり秩序ある慣行を打ち立てて、多く世間の人々の共感を得、その利益を守るたてまえに立っていてこそ、私は労働者利益が大局的に守られるものだと考えている次第であります。
  12. 中村順造

    中村順造君 まあ大臣、何でもかんでも労働者の言うとおりになれ、私はそう言っているわけじゃないですよ。少なくとも大臣も知っておられると思いますが、この関係法案が出されたその意図というものは、これはもう明らかにその労働組合に都合の悪いこと——あなたは公共福祉を守るためにということでありましたけれども、そういうことじゃないわけですよ。これはいま、日にちがたっているから、そういうことを言われておりますが、これは国会で何回も議論した問題ですからね。私はまあさかのぼってしつこく言うわけではないけれども、少なくとも、じゃ八十七号条約批准することと、あるいはその当時問題になっておったチェックオフの問題あるいは専従制——専従者がおって公共福祉が守られないということはないでしょう、具体的に言うならば。それぞれ個人規制または組合規制すると、反面団結権あるいは団体交渉というものが確保されるということからすれば、他の面からこれを締めつけようとした意図が明白であった。だから私は当然もっと早くなさるべき批准が、今日までえんえんと延び延びになった、こういう私は私なりの考え方を持っている。これはもう何でもかんでも味方をしなかったからとか、そういうことじゃないわけです。あわせて労働省自体がもう少し積極的に、たとえば鉄道営業法などの問題を提起されたときに、いま大臣がおっしゃるような御趣旨であるならば、これは国鉄当局間違いであるぞと、こういう問題は。いまはそれは五法案が四法案になって撤回をされているからいいようなものですけれども経過の中では。そうした当然早期に批准さるべきものが、そういうむだな過程をたどったために、これだけ延び延びになった。こういう結論に私は達しているわけです。その際における労働省の積極的ないわゆる労働者保護なりあるいは労働条件の改善だとか、こういう面では積極的にやれたとおっしゃるならば、当然、国鉄にもそういう注意を喚起されて、撤回したわけじゃないと思うのですよ、国鉄は、国鉄の副総裁も来ておられると思いますが、これは国鉄の副総裁、どうです。この鉄道営業法はどういう途中の経緯で撤回されたか、途中で全面的に改正するなどという口実を設けて撤回されたこともありますが、明らかに出されたその当初におきましては、個人規制をする、いわゆる罰則の強化という二つの条文だけだったと思いますが、副総裁、どうですか。
  13. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 鉄道営業法改正につきましては、私のほうから実は御答弁するのは筋違いと思いますが、一応お名ざしでありますので、私から御答弁いたしますが、これは私鉄の関係もございますので、一応私のほうだけの意見を申し上げておきます。確かにいま労働大臣がおっしゃいましたように、過去におきましては、鉄道営業法については、ある程度の改正をするという案があったことは事実であります。その後、鉄道営業法全体が先ほど先生おっしゃいました、非常に古い法律であるということで、罰則だけいじるということは法律全体としても適当でない、かたがた鉄道営業というものの現時点におけるあり方をもっと明確にすべきじゃないか、これは労働問題に限らず、鉄道営業全般の問題として取り上げるべきだということでもって、国会の御承認を得まして、運輸省の中で調査会をつくりまして、過般結論が出たようでありますが、そういった角度から鉄道営業全般の問題として見直すというたて支えで撤回されたというふうに了承願いたいと思います。
  14. 中村順造

    中村順造君 これは別な、運輸省が一番よく知っていると思いますが、この問題は経緯はよくわかっておることだから大臣も御存じだと思いますがね。いまその罰則だけの面を初めは明らかに出しておった、こういうことです。これはまあこの問題だけにとらわれておるわけにもいきませんが、私は角度を変えて別な面から質問したいのですが、この労働者立場保護する、あるいはその労働運動というものを側面的に支持するとか、いろいろなことが考えられるわけですが、ILO条約にはたくさんの条約があるわけですね、これは大臣のこの間の答弁では全部批准をする意思はない。こういうような答弁がなされた、ILO条約のたくさんある中で。批准をしたものもあるし、いまからしなければならぬものもあると思うのですが、それについてのお考え方はどうなのか。たくさんある条約の中で。
  15. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 私はILO条約というものは全部批准する必要はないというような答弁をした覚えはありません。それについての御質問は、百五号条約批准する意志があるかどうか。障害になっておる、現在批准を困難にしておる事情はどうかという御質問に対して、百五号条約批准をいたしたいと思っておる。障害になっておるのは、国家公務員法及び地方公務員法条項中に懲役刑罰則規定が抵触する、こう考えておる、こういうお答えをいたしました。ILO条約はできる限りすみやかに、できる限り数多く批准しなければならず、また批准できるような条件に持っていくことが労働行政目的だと思っております。
  16. 中村順造

    中村順造君 これは私の実は間違いだということに一応いたしまして、私はそういうふうに理解しておったわけです。この間の答弁では。そういたしますと、これは時間がないから、一つ一つ私は質問するわけにもいきませんが、もちろんILO条約の中では批准する必要のない条約もあるかもしれません、日本のいまの実情から見てですね。たとえばアメリカで八十七号条約批准する必要がない、こういうような形で批准する必要はない条約もあると思うのです。それから批准をしなきゃならぬ条約もあると思うのです。いまお話しのありました百五号条約、これは批准をする方針だ、ただしその刑罰の問題があるから国内法の云々、こういうことですが、そこで私はこの労働者または労働組合、こういうものに対して、百五号との関連で、今日までの実情から見て、非常に刑罰、いわゆる組合ことばで言えば不当弾圧、こういうことがもうひんぱんに繰り返されておるわけですがね。これは大臣も御承知だと思いますが、あとでまた関係それぞれの省庁に聞きたいと思いますがね。総体的に不当弾圧、不当ではない、あるいは弾圧ではないとおっしゃるかもしれませんが、刑事事件あるいは刑事裁判、こういうものが非常な膨大な数字にのぼっておるわけです。対象の人員も非常に多いのですがね。これに対する労働大臣としての考え方はどうなんですか。
  17. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 労働組合運動については、労働組合法において刑事上あるいは民事上の訴追を免責される例がありまして、そうしてそれによって大きな保護を与えられております。したがって、労働大臣といたしましては、この労働組合法の差し示す方向に向かって勤労者利益擁護をはかるのが労働大臣立場だと思っております。しかしながら、労働組合名前のもとに何をしてもいいというものではないのでありまして、労働組合法はあれは労働組合の活動を保護している範囲はおのずからきまっておるのであります。その範囲を越えた行為が他の法律に抵触する場合は、これは当然その法律によって規制を受けなければならぬのでありまして、免責規定からははずれてまいるのであります。私は労働組合運動というもの、あるいはこの労働者利益擁護のいうものは、やはりわが国が法治国でありますから、その法治国法秩序を守るというたてまえの上に立って、言いかえれば、労働組合は今日一千万近い組織人員を持っているのでありますから、近代国家近代社会構成員の一員として、その近代国家のささえとなる法秩序を守るという役割を分担しつつ活動されるところに、私はほんとうの意味の労働者保護目的が達成される、こう考えておる次第であります。
  18. 中村順造

    中村順造君 いや、これはまた、何でもかんでも論議ですがね、労働運動だから何をしてもいいと私は言っておるわけではないですよ。まあ逐次質問を進めていきたいと思いますが、この労組法の一条二項ですね。これこれだと刑事免責条項が書いて、暴力は「いかなる場合」でも許されないと、こうなっておるわけですね。刑事局長、きょう呼んであるはずですが、この場合の暴力というのは、一体専門的に法律ことばで言えば何と何んですか。
  19. 津田實

    政府委員津田實君) 暴力とは法律で申しますと有形的な外力でございます。
  20. 中村順造

    中村順造君 もっと具体的に話してみてください。
  21. 津田實

    政府委員津田實君) 具体的には、その免責されていない事項につきまして、刑法その他の法令に触れた場合には、これはいずれも犯罪になるわけでございます。で、暴力と申しますのは、その犯罪のうちの有形的な外力を使ったものをさすわけでございますから、たとえば、犯罪のうちで外力を使わない行為ももちろんあります。たとえば暴行とかあるいは傷害とかいうなことになれば、これは有形的な外力を使っておるわけですから、これは当然暴力と、こういうものでございますし、あるいは名誉棄損とか侮辱とか、そういうようなものがあれば、これは有形的な外力ではございませんが、やはり犯罪になる場合がある。こういうことでございます。したがって、暴力と申しますのは、有形的な物理的な力を使うと、こういうことをさすわけでございます。
  22. 中村順造

    中村順造君 あなたは法律専門家だから、もう少し詳しい答弁をいただけるかと思いましたがね、あの「いかなる場合においても、暴力」という労組法の問題ですね。これは名誉棄損だとか、そんなこと入るんですか。外力暴力というのは、あの場合の暴力というのは、厳密に言うならば力でしょう。外力を与えた場合を衆力と名ざすわけではないわけでしょう。その点明確にしてください。
  23. 津田實

    政府委員津田實君) ただいま申し上げましたのは例を申し上げたわけでございまして、有形的な外力と申しますのは、先ほど申しましたように、暴行とか傷害とか、そういういわゆる具体的な実力を使うということでございます。言語によるものとか、そういうものはもちろん入らないわけでございますし、あるいは窃盗とか、そういうような財物的なものももちろん入りません。
  24. 中村順造

    中村順造君 言うならば、これは官憲の労働運動に対する不当介入、こういうことになって、具体的な例がたくさんあるわけですよ。あなたのほうで、いままで労働組合のいわゆる運動に対してです、中にはそれは暴力行為もあったでしょう。それから暴力行為にまぎらわしいものもあるでしょう。それから暴力行為でないとして最終審が無罪になった例もあるわけですよ。一体労働組合の運動にどういう罪名を使われておったのか、これをあげてください。どういう罪名で。
  25. 津田實

    政府委員津田實君) ただいま争議行為関連いたしまして起こりました事件として、私どものいま念頭にあるものとして考えられるものは、これは暴行、傷害、公務執行妨害、威力業務妨害、大体そういうようなものが多いと思います。
  26. 中村順造

    中村順造君 暴行、傷害というのは、これは事実があれば、それは刑事免責にはなりませんことは私も理解しておりますが、この中にたくさんな罪名があるわけですよ。公務執行妨害あるいは建造物侵入罪、それから公文書毀棄罪、証言拒否罪、こういうものがみんな入っているわけですがね。いままでたくさんありますが。特に、いまお話の中にありました威力業務妨害というのは具体的にはどういうことなんですか。どういう場合が犯罪になるんですか、労働組合の中で威力業務妨害というのは。
  27. 津田實

    政府委員津田實君) 威力というものがどういうものになるかということは、これは具体的の事件ではなかなか申し上げにくいわけですが、威力業務妨害罪としての通常——まあ通常といいますか、おりおり起こる問題といたしましては、多衆の威力を用いまして、そうしていろいろ業務を妨害する。たとえば、出荷を阻止するとか入荷を阻止するとか、まあそういうような行為がわれわれの目についておる、現在考えておる事件であったというふうに思っております。
  28. 中村順造

    中村順造君 多衆の威力というんですが、労働組合の運動、あるいは特に争議などの場合は、これはもうピケットはつきものなんですね。まあ非常に時代のおくれた論議ですがね。そういうものが威力になるんですか、多衆でピケットなんか組んだ場合に。そういう解釈は成り立たないんじゃないですか。ピケット張ったのがそれが力でなかったら何ですか。
  29. 津田實

    政府委員津田實君) すべてのものがなるという、ピケットのすべてがなるということを考えているわけではありません。ピケッテングの限界というものは平和的説得が限界であります。その限界を越えた場合は、当然威力と認められる場合が生じてもやむを得ないと思うのでございます。
  30. 中村順造

    中村順造君 限界にも問題があるんですがね。威力というのは一体どうです。これは空気のようなものじゃないですか、威力というのは。暴力ならなぐった、けった、傷をした、こういうものは歴然として残りますが、それが威力としてあなたどういう解釈を持っているんですか。労組法には、いかなる場合でも暴力はいけないと書いてあるんですがね。暴力の理解というのは、やはり相手に傷を負わしたとか、そういう場合は、これは明らかに暴力ですよね。あるいは暴力でもって相手をけたぐって仕事のじゃまをしたといえば、それは公務執行妨害になるかもしれませんが、威力業務妨害、威力というのは大体どういうことなんですか。明確に説明できますか。そういうものを暴力はいけないと書いてあるからといって拡大解釈をして、これは昨年の四月での統計を見ますと、国鉄労働組合だけでも威力業務妨害と称するものが四十二件も対象にあがっている。多数の人が逮捕されておるわけです。威力ということはどういうことですか。
  31. 津田實

    政府委員津田實君) ここに判例がございまして、判例の趣旨を申し上げるわけでありますが、「「威力とは、犯人の威勢、人数および四囲の状勢よりみて被害者の自由意思を制圧するにたりる犯人側の勢力を指称し、且右勢力は客観的にみて被害者の自由意思を制圧するに足りるものであればよい。」、こういうことで、この趣旨であると思います。
  32. 中村順造

    中村順造君 必ずしも被害者というのはありますか、威力業務妨害で。被害者というのはだれですか。
  33. 津田實

    政府委員津田實君) 意思を制圧される者であります。
  34. 中村順造

    中村順造君 意思を制圧されるといいましても、無形なものも、意思のないものもあるわけですよ。意思のないものも、いろいろな場合が想定されるわけですよ、これは。意思のないものに対してピケットを張った場合もあるわけです。これはまあ本来の姿じゃありませんけれどもね。ただし、それがたとえば、おおむねピケットは組合員を説得すると、説得の必要があると、そういう場合にもピケットを張るわけですがね。それに、意思に反したとか反しないとかいうことは、それから後の問題です。それが威力になったとか、どうとかいう解釈はあなたのほうでつけるわけですよ。ピケットを張ってその組合員の意思を確かめるということは、これはピケットの趣旨からして悪いことじゃないわけでしょう。一つもそれは犯罪じゃないでしょう。それが威力になったからというのは、あなたのほうのつけた口実でしょう。これはまああなたは刑事局長ですからね、全く法律論争しかできないかもわかりませんが、警察庁長官どうです。これ、たくさんにそういう例はあると思うのです。あなたのいわゆる中央における警察官の行為としてはです。私は現実にいま具体的なものを一つ持っているわけですがね。あなたの解釈はどうですか。
  35. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えいたします。私たちの解釈も法律上の解釈は全く法務省の解釈と同じ立場をとって行動いたしております。
  36. 中村順造

    中村順造君 それはそういうことですがね。一一警察官が現地で、それは法律のないところに警察官行動しないのですよ。いやしくも国家権力を背景に公務を執行しておるものですから、もちろんそれは法律的な根拠はなけらにゃならぬのです。しかし、その場その場において、明確な法律的な根拠がないから、問題になって、裁判になったときには無罪になったという例、たくさんありますよ、この中に。これは一口に言って、具体的にここで法律論争したってしようがありませんが、私の言いたいのは、いわゆるILO八十七号条約ILOのいろいろな条約、なかんずく百五号がいま問題になりましたが、いわゆる争議に参加をしたということで、これに強制労働を課してはいかぬと、しかし、日本では争議権の認められておらない組合があるから、これは当然犯罪だというふうな言い方もされるのでしょうけれども、そのILOの精神というものは、あくまで力弱き労働者保護し、あるいは労働条件を維持改善のために、それだけの活動をすることを国際的に認めるという趣旨ですよ。ところが現実にいま、私がいままで議論しておるのは、政府がやっておられることは、国家権力を背景にして、いわゆる労働運動弾圧をする、官憲の不当介入まで行なうと、こういうことですよ。警察庁長官法律の根拠で警察が動いておると、自治大臣、どうです、これ、あなたは国家公安委員長として。そういう傾向はないですか。
  37. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) お答えをいたしますが、争議に参加したからといって、これを検挙するとかどうとかいうことはいたしていないのであります。先ほどのように、いわゆる正常な認められた行為を越えた、限界を越えた行為についてあり得るだけでございまして、ただ争議を弾圧するとか、争議行為に参加したからということで検挙するとかどうとかということはいたしていないと存じます。
  38. 中村順造

    中村順造君 それでは、特に私は、この場合は国家公務員、地方公務員、あるいはいわれておる争議権のない組合、これの大衆行動には警察官がなぜ出てくるのですか、警察官が。これは要請がないにもかかわらず、あるいはある場合もありますが、おおむね要請がないにもかかわらず多数の警察官が、特に最近はそういうことが新聞などに出ると、もう初めから待機をする。場合によっては労働組合のピケットの人間よりも警察官の数のほうが多い。ごく最近はそういう面が顕著になっているわけです。正常な労働運動すら違反行為があるかないかまではわからない。犯罪がそこにあるというなら別ですけれども、そういうことがわからないうちから、多数の警察官が待機をする、こういう実情がしばしばある。しかも、これを逮捕する。不当に逮捕して裁判してみたら、これは全く無罪であった、こういう例がたくさんあるわけです。自治大臣の国家公安委員長の言われたとおりではない、現在の実情はです。
  39. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 正常な労働運動をしておるのに警察がこれにタッチすることはないと思います。御承知のように公共企業体等は争議行為を禁止されております。したがいまして、争議行為を禁止されているものが、いわゆる争議行為をすれば、つまり正常な運行を妨げるという点において警察官が出ることはあると思います。しかし、正常な労働運動弾圧するとかなんとかいうことはないわけでございます。
  40. 中村順造

    中村順造君 これは正常であるかどうかということは、結果を見なければわからぬことじゃないですか。そうでしょう。たとえば新聞、ラジオ、テレビというのは、それは盛んに言うかもしれませんね。けれども、ある場面においてはいわゆる組合の陽動作戦だということもあるわけです。はたしてそこに犯罪が構成されるかどうかということは、結果を見なければわからぬでしょう。にもかかわらず、初めから出てそれに待機するということは、どうですか、これはやはり不当介入、介入の意図があるから待機する。去年もおととしもずっと、ごく最近はそういうことが多いのですが、これはどういうわけですか。それはなるほど争議権はない。しかし、新聞やテレビではストライキをやるという宣言をした、そのために警察官がそこに行って待機しなければならない、こういうことなんですか。おかしいじゃないですか、それは。
  41. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) いままでの例から見ましても、争議行為が禁示されておるにもかかわらず、争議行為に入るという場合が多いのですね。したがいまして、そういう場合に対処いたしまして、警察官が出動するということはあると思います。ですから、争議行為に入るということが全然予想されないというのに出るということはないわけでありまするけれども、いままでから考えまするというと、往々にしてそういう場面が多いものですから、警察官が待機する、こういうことだと思います。
  42. 中村順造

    中村順造君 公安委員長、あなたのいわれるようなことなら、かりに公務員なりあるいは公共企業体の職員が禁止された争議行為をやるかもわからないから、そこに犯罪というものが出てくるから警察官が待機すると言うなら、結果的に見て、なるほど公労法でそういう行為を禁じられておるわけですから、公労法違反だというのがなけらにゃならぬはずですよ。ところが、私の持っている資料の中では、鉄道営業法違反というのが一件あるわけです。あと公労法違反なんというものはないのです。公労法は行政処分を受けますからね、無理に警察官の厄介にならなくてもいい。やられておるのは全部公務執行妨害、威力業務妨害、空気のようなものを取り上げて、これが威力になったかならないか、不確定のものを取り上げてこれを逮捕し、起訴する、全部こういうケース。公労法違反で禁止された争議行為をやるのならば、責任者はあるいは解雇される、あるいは行政処分を受ける。そのために警察官が待機するというなら、結果的に見て公労法違反でこうだという結論がなけらにゃならぬのに、それが一つもない。やられることは威力業務妨害、公務執行妨害、器物破壊である。なかんずく威力業務妨害が一番多い。それなら、かりにこの労組法一条二項に言う暴力というものが心配されるなら、労働組合の正当な争議行為に対して、これは正当であろうがなかろうが、いわゆる大衆行動の中で暴力という心配がされるなら、なぜ私鉄やその他の争議権のある組合に警察官が待機しないのですか。
  43. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 私から補足してお答えいたします。  前提となっている争議行為のできない組合が争議をやるという場合に、特に警察が待機するとか出動するとかいう前提でございますが、そういう立場で警察が出ておるのじゃなしに、争議権のある組合の争議の場合でございましても、ない組合はもちろんのことでございますが、これに暴力行為というようなものが予想されるというような場合に警察官を出動させるのでございまして、特に公労法違反がありそうだからという意味の出動は、従来からいたしておりません。したがって運輸関係におきましても、それは国鉄の場合も私鉄の場合も予想される事態が同じでございますれば、警察が出ることも同じ立場で出動いたします。
  44. 中村順造

    中村順造君 それはおかしいですよ、警察庁長官。公安委員長は、争議権があるなしの前提から警察官が待機する、こう言われておるわけです。あなたの言われたことと違いますよ。それは公務員だとか公共企業体組合の大衆行動については必ず暴力行為がつくという前提で待機をされるわけですか。それもおかしいじゃないですか。全然何もないところに……。
  45. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 私が先ほど申し上げましたのは、当りませんで、長官が申したとおりでございまして、争議行為があろうとなかろうと、そういうふうな万一の場合を警戒をいたしまして出動するわけでございます。特に争議権のないものが争議に入れば、いわゆる業務妨害とかなんとかということになるかと思いまするけれども、警察官の出動は、ただいま警察庁長官が述べたことが正しいのでございます。
  46. 横川正市

    ○横川正市君 問題は、おそらく中村君のほうから大臣のほうに概略は伝えられておったものと私承知をいたします。それは前段です。ことばじりをとらえるわけじゃないのですけれども、私は、警察行政、司法行政をやっている方々と同じ立場でものごとを判断をするということは、国家公安委員長として適当でない問題というものがあると思うのですよ。なぜ国家公安委員会というものがあるかといえば、やはり刑事上、行政上の問題で、当然行政官が行なうものに対して間違いは間違いとただし、あるいは行なうべき行動について間違いを起こさせないという意味のものが国家公安委員会の任務だと思うのですよ。だから、そういう意味合いからいきますと、前段の国家公安委員長としてのあなたの答弁と、それから警察庁長官の、いわゆる補足じゃないですね、あなたのいわゆる答弁の否定ですよ。そういった問題が起こったとき、もう少し権威あるあなたの態度というものがないと、警察庁長官にあなたが従属しているようなかっこうで答弁をされることは、これはきわめて遺憾だと思います。ですから、もし答弁に立たれるときに、その事態について明確でなければ、打ち合わせてもかまわないですから、国家公安委員長としての権威ある答弁を私のほうでは強く要求したいと思うのですね。
  47. 中村順造

    中村順造君 労働大臣どうですか。いま私が問題を提起しておるわけですが、いずれにしても、持っておる資料は、これは総評が詳しく、いままでの官公労働者に対する刑事、民事の事件がこれだけあるわけですよ、この中に。膨大な数にのぼっておる。特に三公社五現業、今度の八十七号条約の対象になる地方公務員、国家公務員を含めて非常に警察権力の介入ということが目立って最近多いわけです。この際だから私は運輸大臣にも申し上げておきたいのですが、あなたの監督下にある国鉄実情から見て、国鉄は公安職員というものを持っておる。いまどのくらい——いま二千五百名ぐらいおると思いますが、これは労働組合が何かやりそうだというときには、警察官よりまだ行き過ぎて、鉄かぶとをかぶって、乱闘服を着て、そして警棒を振り回してあばれているわけです。しかも、私は最近聞いて驚いたのですが、公安本部長というのは三重県の警察本部長が新しく今度就任をしている、そういう体制を国鉄はとっているわけです。あなたの監督下にある国鉄は。こういうことで労働大臣の言われているように、結果的に見てどうなるかということは別にして、正常な労働運動を常に前進をさしておる組合運動に対して、それだけにまで現在の日本政府はやっておるわけです。労働大臣どうですか、あなたの趣旨のとおりになっておらないです。これで労働者保護するとか労働者へのサービス、福祉向上などということが、この面からは言えないです。労働大臣のお考えはどうですか。運輸大臣もひとつ答えてください。
  48. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 正常な労働組合運動が行なわれているときに、特定の労働組合に対して、警察権が特に変わった態度をとるというようなことがあれば、    〔委員長退席、理事竹中恒夫君着席〕 これは私は不当だと思います。しかしながら、警察官はその責任ある立場から申しまして、いろいろ事件が起こってからそれに対処するという場合だけではなくして、事件が起こりそうな場合に対処して、あらかじめ予防的な処置をとる責任もあろうかと思うのであります。それを警祭官が、その責任と経験に基づく判断によりまして、そういう処置をとっているのだろうと思うわけであります。これから先は、ちょっと私の私的な判断でありますが、普通争議権のある組合が争議を行なう場合、これは争議を行なうこと自体が法で認められておることでありますから、そのこと自体についてのトラブルは起こらない。しかしながら、争議権のない組合が争議類似行為を行なう場合においては、その争議頻似行為山体を阻止しようとする動きが別に生じてまいります。たとえば国鉄が争議を行なう、その場合は、私鉄の場合は争議を行なうということになれば、経営者側もあきらめてしまってそのまま争議自体を阻止しようという動きは、力で阻止しようという動きは出てこないと思うのでありますが、争議権のない組合が争議類似行為を行なう場合においては、国鉄当事者側からやはり業務の正常な運営を確保しようという動きが生じてまいります。したがって、そこに公務執行上のいろいろな事件が起きてくる可能性が多いのでありますから、そういう意味で、警察があらかじめ予防的な措置をとるということはあります。それがいま御指摘のような数字上の相違になってあらわれてくるのではないか、こう思っております。
  49. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) さいぜん三重県の警察部長云々というのは、やはり各省間の人事の交流ということもあるので、そういうことが行なわれたと思うのであります。  もう一つは、ただいま石田労働大臣が仰せになりましたように、争議権のある労働組合と、争議権のない労働組合がある。争議権のない労働組合が争議を行なうという情勢が察知された場合、それに争議を行なわしめないようにすることが、よき労働慣行をつくるゆえんでありますから、話し合いをさせるような方向に導くことが、いわゆる予防警察というか、起こらないうちにとめていくということのほうが——やるかやらないかわからぬじゃないかと言われるけれども——起こってからいろいろな問題を起こすよりも、起こらないようにするほうがいいんではないかというふうな考えを私は持っております。
  50. 中村順造

    中村順造君 争議権のあるなしをあまり固執されると、これはおかしいことになるのですよ、労働大臣も運輸大臣も。たとえば私鉄の場合でもこれはしばしばあることなんです。第一組合と第二組合がありまして、これは争議権はありますよ、ありますが、たとえば第一組合はストライキをやる。第二組合は就労の意思がある。そういうときに、やはり問題が出てくるわけです。暴力ざたはあるわけです。会社側は暴力団を雇って、じゃんじゃんはでに——私も経験したことがありますが、山口県の山陽電軌、あるいは青森県の弘南バス、非常に熾烈な暴力行為の応酬です。会社側は暴力団を百人も雇って、そうして第一組合員に対して暴力行為をふるう、そういう場合に、警察官が出て待機した例がないのですよ。あとで第一組合の人が、暴力をふるったとか何とかいって、一カ月も二カ月もかかって逮捕して、起訴したりする。いままでみんなそうです。予防警察だって、私は必ずしも否定しませんが、おのずからそこに度合いというものがあるじゃないか。これはILOのこの精神からいって、ものごとは平和的に、労働者の社会的な地位を向上させるという趣旨からいって、いやしくも国家権力を背景にして組合弾圧するとかいうようなことは、かりそめにもあってはいけないことじゃないか。この例から見ますと、結果的に、争った結果無罪になった例がたくさんある。だから、予防警察は私も否定しませんが、そこにはおのずから度合いがある。その度合いの意味から言うならば、国鉄の公安職員というものは、これはもちろんそのいきさつも私も知っております。私は現在参議院に公安職員の職務に関する法律を廃止する法律案を出しておりますが、それは拳銃をぶらさげ、あるいは警棒をぶらさげる、凶悪な犯人に向かっていくということなら、私はある程度大目に見てもいいと思う。しかし、それは争議権のないところが何かやりそうだからやるとおっしゃるけれども、乱闘服を着て、組合員がピケに行く前に、先に公安官が行って待っている。しかも、いままで命令系統も必ずしも明確でなかった。いままでもそうだと思います。そういうものに凶器を、拳銃を持たせ、警棒をさげさして、そうして組合が何かするといえばすぐ出ていく。今度新しくそれの指揮者には、県警察本部長を迎える、こういう例がある。これは私は予防警察の意味からいっても明らかに行き過ぎだと思う。運輸大臣どうですか。
  51. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 私が先ほど申しましたことは、争議権のある組合とない組合がある。ある組合の場合においては、争議自体を阻止しようとする行為が本来的には生まれてこない。ただ、組合の中で二つに割れておった場合、あるいは他の、いまおっしゃったような事例がある、そういう事例が予想されるときは、当然そこには予防的な措置がとらるべきだと思うのでありますが、一般的に申しまして、争議権のある組合において争議が行なわれる場合は、争議それ自体を抑圧しようとすることはあまりない。しかし、争議権のない組合で争議行為が行なわれる場合は、経営側は、正常な業務の運営確保という立場をとらざるを得ないのでありますから、その行為と争議類似行為との間に摩擦を生じ得る機会が非常に多い。そこで、警察官が予防的措置に出るのだろう、こういうふうに申し上げたのでありまして、議争権のある組合であろうとも、そういうことが予測されるならば、ましてや暴力団の介入などということが予測されるならば、当然それに対して警察は予防的措置に出られるべきものだと考えております。
  52. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答えいたします。中村さんは国鉄のことは非常な専門ですからよくおわかりでございますが、お説にもありましたように、公安職員は、ただ単に争議とか勤労者の行動を取り締まるだけに置いてあるものではありませずして、強盗、殺人あるいはその他凶悪なる犯人が車中におったり、あるいは駅内におったりいろいろいたしまして、健全なる乗客あるいは交通者に対する妨害を加えられるというようなことを、自主的に鉄道が取り締まっていくということが、かえって主眼になっておりますが、しかしさりとてまた、いま申し上げましたような事態が起こりかけている、起こるかもしれないという場合にのみ行なわれることであって、全然行なわれないとも思うのに、そんな出かけることはないと思うのです。事前に新聞に出るか、あるいは世論において、今度の場合には、どこからどこまでの区間にあるいはストが行なわれるかもしれないというような、新聞に出るか何かの聞き込みによって、そういうおっしゃるような公安員が予防警察の意味において指導者なりあるいはその他の者の反省を求めるような行動をとるであろうと思いますが、そうでない限り、全然そういう様相のないのに、おっしゃるようなことはしないであろう、そういうことをさせるつもりはありません。もし争議をするという心配があるような場合は、それは予防警察として当然やるべきであると、こういうふうに思っておりますが、決して悪意で弾圧——よき労働慣行をつくろうと努力している政府が、健全な勤労行動に対するじゃまをするようなことは絶対させないつもりでございますから、御了解願いたいと思います。
  53. 中村順造

    中村順造君 もう少し具体的にしたい点が一点あるわけですが、要するに、労働組合というのは、やはり労使関係があるわけですからね。この労使関係をどういうふうに、労働大臣ことばでいえば相互信頼の上に立って円満に解決をしていく、共存していくかということが問題なんでしょう。そういうときに、いかに相互の信頼をここにかもし出そうとしても、公安委員長どうですか、その場合、やはり国家権力というものは厳正、中正、公正でなければならぬわけなんですよ。中立的な立場をとらなければいかぬわけですよ。それが——まあ労働大臣は、私は、知ってそういうことを言われると思いますがね——たとえば民間の争議権のある場合でも暴力団を雇い入れる。弘南バスでも同じことをやっておったわけです。あるいは山陽電軌でもやっておったわけです。そういう場合には、警察官は見て見ぬふりしているのですよ。全然出動しない。そうして、あと一カ月も二カ月もたって組合員を逮捕してこれを起訴する、こういうケースです。これは公正でもなければ中正でもないじゃないですか。もしかりにそういうことをするとするなら、これは警察官はどちらか一方に偏しておると言わざるを得ないわけです。事実、私は、平地に何もないのに言っているのじゃないのですよ、そういうことをしばしば私ども経験しているわけです。その中に仲裁に入ったこともしばしばあるわけです。ごく最近は、世に言う大ストライキがないからですけれども、三池の場合にそういうことが言えるわけです。それは組合からいえば、非常に偏した警察官の行動だと言わざるを得ない。私は、具体的に、当時の検察官を適格審査委員会にかけるということで書面を出したこともあるわけです。そういう現実があるわけです。いまはやめられたそうですけれどもね。そういう状態の中で、私の言いたいのは、いわゆる労働者保護をしなければならぬ、社会的な地位も向上させなければならぬ、しかもそのためには労使相互信頼の上に立って、そうして円満な労使慣行をつくるということは平和的な労使慣行だというILOの精神からいえば、少なくともいま日本で、特に国鉄を私は対象にしているのですが、国鉄はそういう態勢じゃないのです。では、公安官になぜあの乱闘服というのを着せますか。すりをつかまえるのに乱闘服が要りますか。なぜ鉄かぶとをかぶって、警棒を下げてどんどん出なければならぬか。これは国鉄答弁を願いたいと思うのですが、特に私はこのたびの三重県の警察本部長を公安本部長として、これは各省の人事の交流だと言われますがそういうことをさして、相互の信頼というものが出てきますか、運輸大臣、これはよそのどこかの、厚生省の役人を連れてきて、たまたまそこはそのポジションがあいておったからそこに据えたというのは別ですよ、職業的な警察本部長をそこへ連れてきて、二千何百名というその輩下に乱闘服を着せて、そして労働組合の争議のときに出動するというこの実態から、これが予防警察だとか、あるいは各省間の人事の交流で、これは自然に出てきたことということが言えますか。詭弁もはなはだしいじゃないですか、国鉄答弁してください。
  54. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 私どもの公安職員は、先ほど大臣が申されましたように、いわゆる国鉄の中における輸送秩序を維持するというためにある職員でございまして、まあ乱闘服を着て云々というお話でございましたけれども、これは私のほうの制服でございます。夜間、たとえば操車場で犯人を追っかけるとか、あるいは貨物列車に乗って強盗犯を追っかけるとか、そういうような場合もいろいろございますので、そういう服装をさせておるわけでございます。  それから三重県の警察本部長のことでございますが、これは大臣がおっしゃいましたように、実は国鉄になりましてから非常に各省との人事の交流ができなくなっております。これは国鉄としても決していいことではありませんし、また、各省のいろいろな専門の人に来てもらっていろいろの角度から見てもらうということも必要でございまして、もちろん運輸省との人事交流はやっておりますが、そのほか、たとえば経済企画庁そのほか関係各省とだいぶ交流をやっております。このたびの問題も、その一環としてやりましたものでございまして、先生のおっしゃったような妙な意図をもってやったものはないということは、私が責任者でございまして、私ははっきり申し上げます。
  55. 横川正市

    ○横川正市君 私は、いまの鉄道公安員の職務内容を知りませんけれども、たとえば、郵政の監察官は労使関係の問題には介入しないという明確な一線というものがあるわけで、当然郵政犯罪その他について、この設置法によって設けられた監察官の業務内容と、それから労使間の問題についての、介入するしないという問題については、おのずと私は一線があるのじゃないかと思うのであります。そういう点からいきますと、いま中村委員の指摘するように、労使間の問題に先頭切ってこの鉄道公安員を使うということは、これは私は不信、信という問題を離れて、何といいますか、職務内容からいっても逸脱行為じゃないのかというふうに判断をするわけですが、これはひとつ大臣から答弁いただきたい問題だと思います。  それからもう一つ。いま副総裁答弁がありましたが、この本部長を交流することが、あなたの言ったようないわゆる国鉄と他の省との人事交流をやって中を見てもらうことだなどという見えすいた答弁が議会で通るというのは、これはふしぎなところだと思うのですよ。そういうことではなしに、あなたは公安員の警察的な任務というものを最も練達の人に指導してもらって業績をあげるためにそのポジションをあけたのじゃないですか。それなら、なぜそのように言わないのですか。そうして、もしあなたが人事交流すると言うなら、実際上他省とあなたのほうの人事交流はどのくらい行なわれておるのですか。私は一つの例で全体を律するような答弁をするというのは不謹慎だと思うのですよ。もっと実情に照らして答弁をしてもらわなければ、あなたも経歴などからいけば、相当国鉄の中で経験とそれから地位はあるわけでしょう。私たちが聞いてみて、そんなばかなことがあるかと思われるようなことをぬけぬけとここで答弁するなんということは、これは不謹慎ですよ。  それからもう一つ。こういう例があるから警察庁長官に聞いてもらいたいのですが、たとえば宅地の中に電話のための柱が立っておるわけです。電話のための柱を立てたところは、これは電電公社の借用地です。ところが、その他のところは、これは土地の所有者によって確保されているところですから、もしその所有者が、その土地に入っては困るという立て札を立てておるところへ警察官が入っていくということになりますと、警察官自身が不法侵入をやったことになるのじゃないか、こういうふうに思われるわけですが、一体警察官というのは、何の断わりなしに他人の土地だとか家屋だとかに入っていい、こういう何か特権を持っているのですかどうですか。その点をひとつ答えていただきたい。
  56. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答えします。  郵政省のほうの監察官と公安員との任務の相違に対しましては、私はよく調べておりませんから、事務的な問題ですから、どの範囲までどう介入するかということについて明確に答弁させます。しかし、私の考え方は、これは監察官のほうと多少違うことは、乗客の中にいろいろな人が乗っているのですね。すりも乗っておれは強盗も乗っておれば殺人犯も乗っておる。あるいは脱獄囚も乗っておるかもしれないということ。これは常識的な考え方ですが、そういうものを取り締まるためには、ある一部の警察力を付与しておかぬというとそれはやれないと思うのですよ。それだから、郵政省のほうの監察官と多少その点は違うのじゃないかと思いますが、そこのところは明確に答弁させます。  それから中村さんのお問いでございますが、二千人も鉄かぶとをかぶって武装して出てくるという事態は穏やかではない、そういう事態があったとすれば。しかし、二千人も鉄かぶとをかぶって出ていかなければならない事態は、それはただの事態じゃないと思うのです。相手のほうも。それだから、何にもないのに二千人も鉄かぶとをかぶって行かないのです。そこのところが相互扶助であり相互信頼であるということが両方に徹底を欠いておると思うのです。それはこっちも悪いでしょう。しかしあなたのほうも(笑声)二千人に鉄かぶとをかぶらせるというようなことをさせる態度というか、そういう考え方を起こさせる原因がどこかにあったとすれば、それは相互扶助及び相互信頼に、どこか両方とも欠けておる点があると思いますから、これはひとつお互いに兄弟同士なんですから、手を握り合って、よくその欠けておる点をお互いに直し合って、よき労働慣行をつくるということにひとつ御協力をいただきたいと思います。あとのことはちょっとわかりませんから、事務当局から……。
  57. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 大臣答弁に補足して御説明申し上げます。鉄道公安職員の職務に関しましては、御承知のように昭和二十五年法律二百四十一号に出ておるわけでございますが、「日本国有鉄道の列車、停車場その他輸送に直接必要な鉄道施設内における犯罪並びに日本国有鉄道の運輸業務に対する犯罪について捜査することができる。」ということで、この権限につきましては、特に先ほど来お話がございましたように、争議関係云々ではございませんで、こういうような範囲について必要な捜査権を行使するということは、法律上与えられたる公安職員の任務であるということでございます。
  58. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えいたします。他人の土地に警察官というものは、どんな場合にもかってに入れるのかというお話でございますが、もちろんそうじゃございませんので、承諾を得て入る場合は、これはもちろんできるわけでございますが、その以外におきましては、刑事訴訟法の二百二十条の場合と、それから主としては警察官職務執行法の第六条の場合だけで、条件が整わなければ、人の拒むところには当然入れません。
  59. 中村順造

    中村順造君 私が先ほど来言っておるのは、何回も同じことですが、要するに労働者保護だとか地位の向上だとか平和的なものごとの解決だとか言われても、その一方でそういうことを国家権力を背景に、またはこれに似たようなことをやられては、やはり——松浦運輸大臣は、あなたのほうにもと、こう言われたけれども、またそれは私に言わせれば、それ以前の問題があるわけですよ。たとえば当事者能力が何にもないのに持ってきて、ただ働け働けと言う、それだけの能力がないという仕組みにも問題がある。しかし、その問題はここでやらなくてもいいと思いますけれども、このILO条約批准については、やはり相互信頼だとか労働者の地位の向上だとか保護だとかいうならば、少なくともそういう相互信頼の前提となる悪い面は、私はのけなければならぬと思うのです。たとえば一つの例をあげても、いまの警察本部長の問題にしても、これは副総裁は、各省との人事交流と、こう言われるけれども、ただ、ほかの営業部長だとか電気部長に、人事の交流で、通産省の電気局長国鉄の電気部長に迎えたということとは違うでしょう。直接問題の起きる人、指揮者を、なぜそこへ据えなければならぬかということですよ。先ほど横川委員も言ったように、やはり鉄道公安職員の能率をあげるためにそれを迎えたわけでしょう。私に言わせるならば。やはりそういう職務は要らないわけですよ。国鉄はものを安全に迅速に正確に輸送すればいいわけですから、何も拳銃をぶら下げたり警棒をぶら下げたりする必要はないわけです。これは警察官にまかせればいいことですよ。けれども国鉄は、それをあえてどうしても手放さない。しかもその運用については、鉄かぶとをかぶる。この前、去年でしたか、岡山では警棒を振りかざして労働組合の休憩しておるところへ飛びかかっていっておるのです。なぜお前たちは警棒を持ったかと、運輸委員会で私が言ったのは、公安職員に警棒というものがなぜ必要か、あれはスキーのお客が骨が折れたときにその突っかいにしなければならぬから警棒が要るんだなんというばかな答弁をしたことがある。(笑声)私はきのうも水戸に行ってきました。水戸ではこの四月二十九日に、いわゆる勝田の事件について、一組合員の、ピケに動員された人を逮捕して、いまもってこれを釈放しない。組合の役員でも何でもない。もう十何日間これを逮捕しておる。検事正に会ってきのう話したんですが、何の意図でそういうのを逮捕しておるのか、そうしてその犯罪の事実というのはどういうことかと言ったら、それは公安官が乗務員の休憩所で、その逮捕した人に三人でかかって足払いをかけた、その人は逃げた、逃げて、助役室の入り口まで逃げたところを公安官が手錠をかけた。これは事実は、水戸の電気部長ですかがその対策委員長だったというが、それの許可もなしに、これをいきなり駅長室へ連れていって、警察官に渡した。でっち上げもはなはだしい。そういう間違いをしばしば——これは公安職員というのは一つのコンプレックスを感じておるわけですよ。本来の輸送業務からはずれて、とんでもない仕事ばっかりをさせておるわけです。そういうのに拳銃を打たせ、警棒を持たして、いま、暗い操車場で走り回らなければいけぬから乱闘服を着ておると副総裁はおっしゃったけれども、とんでもない話ですよ、これは。いつ操車場で公安職員が平生の状態のときに乱闘服を着ておりましたか。公安職員が乱闘服を着るときは、必ず労働組合と対決をするという気がまえのときに、出動したときに着ておるわけです。こういう事実が——まあそれは警察官は昔から言われておることで、警察官の中立性というものは疑わしいと。国次公安委員長もよく聞いておってもらわなければならぬですよ。それから国鉄は、特に三公社の中で国鉄だけがそういう不必要な私兵を養って、そうしてまあ正当であるとかないとかいうことは別にして、いずれにしても労働組合と対決をするという姿勢をとっておるわけですよ、いまもって。そういう情勢の中で労働大臣の言われたILO精神に基づく相互の信頼だとか平和的なものごとの解決だとかいう、こういうことが日本の国情から可能であるかどうかということを、私はきょう申し上げておるわけです。少なくともこのやり方なり考え方は、国家権力の労使に対する中立性というものは、守ってもらわなければならぬ。ましてや公安職員の争議への介入ということは、厳に慎んでもらわなければならぬのである。こういう面でひとつ時間もきましたから、何かあとで重要な話があるようですから、私はきょうやめますが、労働大臣、どうですか、こういう日本現状で、あなたILOの総会にも招かれておるようですが、堂々と行って、私がきょう申し上げたようなことを、いずれILOにも知れると思いますけれども、これは日本の誇りですか。日本のいまの労働組合運動の過程の中の一つとしてこういう事態が、これはいずれ総評からも送ると思いますが、これだけの膨大な者を逮捕し、起訴し、やっておって、日本労使のいわゆる相互信頼が——総評の幹部なり労働大臣なり総理大臣がお会いになる、けっこうです、そのこともけっこうですけれども、むしろ私はその前提となるいわゆる国家権力の労働運動に対する介入ということをやめてもらわなければならぬと思う。これについての考え方を、ひとつ最終的に聞かしていただけるなら私の質問はきょうは終わります。
  60. 石田博英

    国務大臣石田博英君) その責任と、原因がいずれにあるか、あるいは相互にある、そういう議論は別問題といたしまして、労働運動の中からあるいはそれに警察官が介入せざるを得ないあるいは介入しておる、そういう事実は私は決して名誉なことであるとは思っておりません。これはやはり相互反省と自粛と自戒とによりまして、そういうことが行なわれずに労働運動が正常に発展することが望ましいと思っております。それから相互の信頼の回復、これはやはり土台に共通のものがなければならぬと思います。その土台となる共通のものは何かと言えば、まず第一には、法秩序の維持ということでなければならぬ。さらにその法秩序に間違いがある、あるいは改正すべきものがあるならば、議会を通じて平和的にこれを改正し、改正されるまでは現在存在しておる法律を守るというのが、近代法治国家のたてまえでなければならぬと思うのでありますが、そういうことが一つであろうと存じます。  第二には、やはり人間と人間の話し合いは、常に平静な関係において理性をもって行なうという習慣ではないか。  第三番目には、やはり潜在的に相互が敵対関係にあるような認識を改めていくということでなければならぬのじゃないだろうか。そういうような既定の共通の土台を通じまして、そこでできるだけ接触を深めることによって、相互信頼の回復につとめていかなければならぬと存じます。  次に、警察官の労使関係における立場でありますが、これは言うまでもなく、厳正に中立的なものでなければなりませんし、その警察官の行為はあくまで法秩序の維持ということに徹しなければならないのでありまして、かりそめにも一方の側の利益を守るという行為は許されないと思います。先ほどから弘南バスその他の事例を引かれておるのでありますが、私はその詳しい事例について詳細には知りませんけれども、もしも暴力団の介入等が意識的にあらかじめ承知されていながら放置されたとするならば、これはゆゆしきことだと考えております。
  61. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) いろいろわれわれの運輸行政に対しまする示唆に富んだ御注意、感謝いたします。と同時に、われわれも輸送、交通運輸行政の秩序の安全ということが第一でありまして、何も不当な権力を乱用する考えは毛頭ないのでありますが、御指摘になりましたように、行き届かざる点があったかもしれませんけれども、今後そういうことはないように厳に戒めるつもりでありますけれども、いま労働大臣が仰せになりましたように、両方ともが不信感ではこれはさっきのようなお話になるのでありまして、両方がお互いに相信じ合うというところにいかないと相互信頼はできないものでありまして、さっきもおっしゃったよりに、君のほうが、政府のほうが無理なことをやるからこっちのほうもやる、こっちがやるからまた二千人も鉄かぶとをかぶって来るのだというようなことになるのでありますが、その点はお互いにひとつ今後は同じ職場に、経営者と勤労者の差はありますが、同じ輸送の業務をやっているのですから、話し合いでいけるようにすることがやはりこの相互信頼、相互扶助の面に沿って国家のために尽くすということでないといけないと思いますから、私もできるだけこういう点を幹部を通じて勤労者のほうにもお話もいたしますし、幹部にもお話をいたしますから、中村さんもひとつ御協力を特にお願いいたしたいと思うのであります。
  62. 中村順造

    中村順造君 公安委員長、どうですか。
  63. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) いろいろとお尋ねもあったのでありますが、私どもといたしましては、警察官は争議にはできるだけ介入しない、そうして不当の弾圧というようなことはこれはやらないということを堅持していきたいと、かように存じております。
  64. 中村順造

    中村順造君 それではきょうは、ILOの総会も近くなりまして大臣も行かれるから、私は国際的な水準において、これはきょう申し上げたようなことは実際はないしょにしたいのですよ、国際的には。そういう意味なんですが、特にこの内容から見まして国鉄に問題が多い、あるいは郵政省にも、あるいは三公社五現業にもそれぞれ大なり小なり問題があるわけですが、これは決して私は誇るべき事象じゃないと思うのです。いろいろ相互信頼が欠けておるとかいろいろのことが、原因が言われておりますけれども、まずきょう申し上げたようなことを、労働大臣も、冒頭私が申しましたように、労働省の任務、性格からいって、野放しでこのままでということは話をされておらないわけですから、いま答弁がありましたから、私はこのことは先長く信頼したいのですが、希望を申し上げまして、私の質問は一応終わります。
  65. 竹中恒夫

    ○理事(竹中恒夫君) 暫時休憩いたします。    午後二時四十七分休憩      —————・—————    午後四時二十二分開会
  66. 安井謙

    委員長安井謙君) ただいまより国際労働条約第八十七号等特別委員会を再開いたします。休憩前に引き続きまして、結社の自由及び団結権保護に関する条約(第八十七号)の締結について承認を求めるの件の外、関係法案を議題とし、審査を進めます。占部秀男君。
  67. 占部秀男

    占部秀男君 時間の制約もありますから、いままで質問を同僚委員がしたような点は、なるべく重複しないようにして、このILO八十七号条約と、それに関する地方公務員労働関係に問題点をしぼってお伺いをいたしたいと思います。で、最初に、この法律案の内容について、二、三具体的な点をお伺いいたしたいと思うのでありますが、地公法の五十三条の登録の問題について、まずお伺いをしたいと思うのであります。この新法によりますと、単位の職員団体は登録をすることができるわけでありますが、連合体的な形になってくると登録ができない。こういう点は、今回のこのILO条約の七条ですね、七条に「労働者団体及び使用者団体並びにそれぞれの連合及び総連合による法人格の取得については、この条約第二条、第三条及び第四条の規定の適用を制限するような性質の条件を付してはならない。」こういうふうに書いてあるわけでありますが、これと矛盾しておると私は思うのでありますが、その点はいかがでございますか、まずお伺いしたいと思います。
  68. 関道雄

    政府委員(関道雄君) 条約第七条には、いま先生仰せのごとき規定がございますが、この地方公務員法第五十三条の登録の関係というものは、この五十三条の規定によりまして、そこで一定の、きわめて民主的なる条件を備えた職員団体、そういうものを選びまして登録をするわけでございます。そういう職員団体なるがゆえに、法人格についても、普通の登録に伴いまして、法人格を取得したい意思を申し出ました場合には、これについて法人格を与えるということになっておるわけでございまして、格別条約の七条と違反するというふうには考えておりません。
  69. 占部秀男

    占部秀男君 どうもその理由がはっきりしないんですがね。民主的な性格を整えた職員団体だから登録を許すと、こういうわけですか。
  70. 関道雄

    政府委員(関道雄君) 民主的ということばを使いましてあれでございますが、結局この職員団体としての機能を最も果たすにふさわしい、当局としてもこれが適法なる交渉の申し出がありました場合には、この交渉を受けて立つべき地位に立つという規定もございますように、交渉の相手方として適格といいますか、最もふさわしい実を備えておるという団体でありますがゆえに、これを登録をして一種の公称的な、公に称するような資格を認定しておくような、そういう行為だと思いますが、そういうことによりまして、この団体の地位を明らかにしておくという趣旨でございます。
  71. 占部秀男

    占部秀男君 どうもわからぬですが、それじゃ具体的に私聞きますが、北海道なら北海道で二十数市の市の組合がある、これが連合した場合には、登録は受け付けるのですか、受け付けないのですか、簡潔でいいですよ。
  72. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 登録はできません。
  73. 占部秀男

    占部秀男君 また、東京都庁のように、都の職員のほかに、地方公営企業ですな、たとえば、都市交通のあれだとか、水道の組合とか、これが連合するような場合はどうなりますか、受け付けますか、受け付けませんか。
  74. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 御提案いたしております法案におきましては、職員団体は職員団体及びそれの連合体ということになっております。そしてまた、その職員団体は、単位職員団体だけが登録が許されるということになりますので、ただいまおあげになりましたものは、職員団体労働組合との連合体でございまするから、法案で申しております職員団体にもなりませんので、したがいまして、また登録もできないということになります。
  75. 占部秀男

    占部秀男君 そこで理由の問題ですが、この条約七条には、「労働者団体及び使用者団体並びにそれぞれの連合及び総連合」と書いてある。たとえば、北海道の二十三の市の組合が連合体をつくろうという場合には、簡潔に言って、日本語読みでするとこの中へ入るわけだと私は思うのですが、そういう場合でも、これはいかぬというわけですか、法制局の方にちょっと聞いてみたい。
  76. 関道雄

    政府委員(関道雄君) ただいま行政局長からお答え申し上げましたとおりであります。
  77. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、理由がどうもはっきりしないのですが、民主的な団体であるからこれは登録は許すのだけれども、どうもそうじゃないところ、連合会はそうじゃないものだからこれは許さぬというのは、ちょっとおかしいのですが、連合会であろうが、単位団体であろうが、民主的に構成されておるのはこれは同じだろうと思うのです。だから、そういう点は、一体どういうことなんですか。また、どれが民主的であるか、どれが非民主的であるかということを認定してもらいたいと思う。
  78. 関道雄

    政府委員(関道雄君) 私は、初めに民主的ということばを使いましたので、なかなか誤解を与えたようでございますので、その点は撤回いたしまして、要するに、先ほどのあと答弁で私が申し上げましたように、交渉するに最もふさわしい、交渉の相手として最もふさわしいという法律趣旨であろうというふうに考えます。
  79. 占部秀男

    占部秀男君 それもまたおかしいのですが、交渉の相手についてふさわしいというのだけれども、連合体であろうが何であろうが、一応交渉はできるのでしょう、地公法では交渉はできないわけじゃないので、交渉ができるのを、交渉の相手にふさわしくないからといって登録をさせないというのは、ちょっとおかしいと思うのだけれども、その点はどうなんですか。
  80. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 私、先ほど単位職員団体と申しましたのはちょっとことばが足りませんでしたので、訂正させていただきますが、同一地方公共団体内の職員団体でございますれば、単位職員団体でも連合体でも登録はできるわけでございます。そこで、同一地方公共団体の職員のみで組織されておる職員団体にだけ登録を慰めるのはどういう趣旨かということでございまするが、御承知のように、地方公務員の給与その他の勤務条件につきましては、各地方公共団体の条例によって定められておるわけでございます。したがいまして、交渉をいたします場合には、同一地方公共団体の職員のみで構成されております職員団体が当該地方公共団体の当局と交渉する必要がこれは一番大きいわけでございます。したがいまして、改正法案におきましては、交渉にあたりまして、登録を受けました職員団体につきましては、当局として適法な申し入れがありました場合には交渉に応ずべき地位に立つものとするという地位を認めておりますので、そのような地位を認めましたゆえんも、同一地方公共団体の職員については、ただいま申しましたような、当該地方公共団体の条例によって勤務条件が定まるわけでございまするから、交渉の特別な地位を認める実益がほかの場合と違って多いであろう、かような考え方でそのようなたてまえにいたしたわけでございます。
  81. 占部秀男

    占部秀男君 それはどうもおかしいのですが、あなたはいま交渉の内容についてを中心に言われておるのだけれども、この条約は、交渉の内容によって差別をつけろということは書いてないのですよ。職員団体なら職員団体があって、その連合体なら連合体がある、それは法人格を取得するようにできるのだということを第七条でうたってあるので、法人格を取得するためには登録しなければならないわけでしょう、登録しなければ法人格はもらえないのでしょう、そこは非常に矛盾じゃないですか。  それからもう一つは、あなた、いま交渉の内容について言われたが、確かに一つの市なら市、府県で、その単位の組合が知事あるいは市長と交渉する、これはそのとおりであって、また条例その他によって給与、勤務条件がきまる、これもそのとおりだと思う。ところが、それでない以外の問題点もあるわけだ。たとえば地方課の行政指導によって市町村の給与条例の問題、いろいろの問題、いろいろな影響がある。これは私が言わなくたってあなたが知っておるとおり。そういう場合については連合体が、あるいは知事なら知事、副知事なら副知事と交渉するような場合もある。こういうような交渉の場合、どっちが軽いか重いかということは、これは問題によって、問題の内容にもよるので、その交渉の形式そのものでどっちが重いか軽いかということは言えないわけなんです。だから、そういうような意味合いで、連合的な団体に登録は許さぬ、結局法人格は許さぬということは私はおかしいと思うのだけれども、この点はいかがですか。あまりしつつこくは聞きませんから簡潔に……。
  82. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 法人格の取得は、御承知のように、職員団体が財産上の権利義務の主体になるということでございまして、職員団体としての活動につきまして、格別差等を設けておるわけではございません。そこで、法人格を取得する場合におきましては、登録されておる——ことばはどうかと思いますが、事情のはっきりいたしておりまする職員団体について、そのような道を開いてある、かような次第であります。
  83. 占部秀男

    占部秀男君 どうも水かけ論になってしまうので——まあ時間の制約もあるから、私はこの点についてはこれ以上は突っ込みませんが、この八十七号条約そのものの文章そのものは、そういうような書き方はしていないことは明瞭なんだ。ただ政府の方針でそういうようなやり方をとろうというふうにしておるのだと私は思うのだけれども、そういう行き方は非常に問題があると思うのですよ。第一いまあなたが言われた職員団体の機能の問題ですね。確かに、勤務、給与条件について交渉することが、主たる、ということは今度消えましたけれども、これが中心になることは事実だと思う、たとえば組合の場合には交渉だけの問題じゃない。たとえば消費生活の問題について厚生事業もしなくちゃならぬ、福祉事業もしなくちゃならぬ。ところが、単位組合はそれができるけれども、連合体は登録ができない、法人格ができないから別の今度は組織をつくらなければならぬ。それは単位組合と連合体と同じ職員団体でありながら、それに対する差別をつけたことになる。これはILO条約そのものに私は反する取り扱いじゃないか。一つ団体については、ある程度認める。同じ一つ団体については、連合体であるがゆえに、その機能も、でき得る機能もできないようにしてしまう。そういうことは、これはこの条約趣旨、第七条及び第二条でしたか、いかなる差別もしてはならない、こういう条約条項にこれは違反するものじゃないかと私は思うのですけれども、この点ひとつ労働大臣に御見解を伺いたいと思う。
  84. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 私の直接の所管ではございませんけれども、私の理解しておる範囲のことを申し上げたいと存じます。  各国の地方公務員の職員団体の組織、取り扱い、法律上行政上の取り扱い、いろいろまちまちであろうと思うのでありますが、わが国では登録制度というものをとっておるわけであります。そこで登録制度をとっておる職員団体は、当該の当局側から見れば、その同一公共団体の職員でありますから、積極的に交渉に応ずべき地位を明示してございます。しかしながら、登録されない団体といえども交渉する能力はあること、そしてそういう能力を否定するわけではございません。したがって、交渉するという点については同一でございますから、私はILO条約について特別の違反をしているとは考えていない次第であります。
  85. 占部秀男

    占部秀男君 私は、この登録の効果というものが、いま大臣が言われたように、職員団体連合体も、それから単位団体も登録があるないで何も交渉を拒否するわけじゃないと。そういう点については同じであると。——これは幾らか違う。あとでまた伺いますけれども、同じであるということになれば、登録をするということ自体の効果がどういうところにあるかということが私はわからぬのですよ。少なくとも登録をする以上は、法人格を与えて、いわゆる交渉以外のいろいろな組合行動もできるように便宜をはかれるようにしようというところに、登録の一つの理由があると私は思う。ところが、片っ方の単位団体についてはその便宜をはかるけれども、連合体なるがゆえにその便宜がはかれない。これはどうも私は、この条約の第二条の、差別をしちゃ相ならぬということを、差別をつけておるのじゃないかと、こういうふうに思うのですけれども、佐久間さんの御意見伺いたい。
  86. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 法人格につきましては、先ほども申し上げましたように、財産権の主体となり得る地位を与えただけでございまして、本来の労働者団体としての機能につきましては、本質的な差別を設けるわけではございませんので、その点につきましては、条約の二条、三条にも抵触するものではないと思います。それから、単位団体、連合体の問題もございまするが、これは同一地方公共団体の職員で組織されるものでございますれば、単位職員団体におきましても連合体におきましても、登録ができるわけでございまするから、その点で、差別はいたしていないわけでございます。ただ、まあ登録が、それ以外の連合体について登録を認めるかどうかということにつきましては、先ほど申しましたような理由で、登録を認めないことにいたしたわけでございまするが、以上申し上げましたような点から考えまして、先生のおっしゃいますのも一つの御意見かと思いまするが、私どもは、条約趣旨にも抵触するものではない、かように考えておるわけでございます。
  87. 占部秀男

    占部秀男君 この点については結局水かけ論的になるので、問題がある程度発展してからですから、私はこれ以上深くは追求しないのですが、ただ、自治大臣なり労働大臣に望んでおきたいことは、いま局長の言われたところでは納得できないのです。というのは、登録、非登録の問題が法人格の問題と関連をしてくる。それがいわゆる交渉以外の福祉厚生面あるいは財産権の問題の点についても、いろいろな問題が出てくる。そういう点についての労働者の福利厚生を守ろうという意味合いから、やはり法人格の問題が出てきておる。ところが、民間産業の組合はどこでももう連合体ができて、労働組合法上に、届け出ればこれはもう登録ができるわけですな、民間産業の組合は。ところが、公務員組合は、やはりいまそういったことで、単位団体ではいいけれども、連合体ではならぬという。そこにやはりぼくは差別がある。これは交渉のいろいろな問題、勤務条件の決定の問題、こういう問題については、これは議論のあるところですよ。しかし、少なくとも福利厚生面についての問題を主とした問題について、公務員組合だから、民間産業の組合だからといって区別をつけるなんということは、およそ日本労働政策としては、ぼくは下の下たるものだと思う。  もう一つは、労働省労働運動というものを発展させるようにやるんだということを労働大臣もさっきお答えになって、私たちも非常にまあこれは意を強くしているのだけれども労働運動そのものを発展させるには、何もストライキをやるから、あるいはけんかをするから労働運動が発展するのじゃないことは、これはもう大臣も御存じのとおり、労働者の生活を守るということが中心である。労働者の生活を守るということは、理事者側との間に、あるいは雇用者との間に、いろいろな給与、勤務条件の問題もあるけれども労働者自身が労働者の団結で、自分たちの福利厚生を内容を充実さしていこう、これもまた労働組合としては一つの大きな問題。しかも、今日のような経済的な、社会的な情勢が、単なる小さな地域的な問題だけではなくて、全国的な問題に経済情勢がなっておるこういう中では、当然連合体に私は法人格を認めるのが当然じゃないか。たとえば、お互いが、火災共済といいますかな、そういうものを一つやるにしても、東京都の職員、あるいは札幌市の職員、福岡市の職員だけではできないことでも、自治労という全国的な公務員の集まりの中では、それはもうできるわけなんです。いろいろな危険負担ができるわけなんです。そのできることをさせないでいこうということは、日本労働政策としては、非常に私たちは、率直に言ってですね、どうも解せないのですね。労働省の従来の態度とはこれは逆な——労働省じゃないですよ、日本労働政策の、政府側から言われているような方針とは逆行するのじゃないか。こういう点、ぼくは特にひとつ自治大臣並びに労働大臣に今後の検討をしてもらいたいことを私は注文をつけておきたい。それでこの問題はこれでおしまい。  もう一つは、これは登録に関係のある問題なんですが、この登録された団体と、登録できない団体との間には、交渉でちょっと違いがあるわけですね。登録された団体は当局が申し入れに応ずる地位に立つということがあるけれども、登録されてない団体はそういうことはないわけですね。この差別は一体どういうことなんですか。その点を具体的にお伺いしたい。
  88. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 一つは、先ほども申し上げましたが、交渉の内容から見ますというと、地方公務員の場合におきましては、同一の地方公共団体の職員につきまして、当該地方公共団体の条例によってきめられておるわけでございまするから、同一の地方公共団体の職員で構成をされておる職員団体が当局と交渉をする実益が大きいということが一つあると思います。  いま一つは、そのような職員団体でございましても、登録を受けてございますものは、法定の諸条件を備えておる交渉の相手として完全なものであるということが公証されておりまするので、そのようなものにつきまして、ただいまお読み上げになりましたような地位を規定をいたしておるわけでございます。
  89. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、いま、わかりました。——そうすると、先ほど私が申しましたような一つの例で、地方側関係の行政指導が各県下の市町村に及ぶというような場合に、連合体が知事なら知事と話し合いたい、あるいはまあ、そういう問題でですよ、また知事じゃなくとも、そういう形の上部との話し合いをしたいと、こういうことを拒否するんだという意味ではないわけですね。また、それに応じなくてもいいんだということを、ここに書かれているわけでもないわけですね。その点だけ明確にしておいていただきたい。
  90. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) ここに掲げてございます規定は、お話のように、登録を受けない職員団体に対しまして交渉を認めないとか、あるいは交渉を拒否するとか、そういうことではございませんで、登録を受けました職員団体につきましては、いわば積極的に交渉に当局としては応じていくべき地位に立つということを規定をいたした趣旨でございます。
  91. 占部秀男

    占部秀男君 次に五十二条の職員団体の組織の問題でありますが、この最後の第五項に、五項というのか、第五というところに、「警察職員及び消防職員は、」、この中から除外をする、こういうことになっているわけです。これはやはりこの条約の、区別をつけないという問題に、やはり何というか、矛盾するんじゃないかというような感じがするのですが、佐久間さんどういうふうにお考えになっておりますか。
  92. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 警察職長につきましては、八七号条約の第九条におきまして、「この条約に規定する保障を軍隊及び警察に適当する範囲は、国内法令で定める。」という規定がございます。これに基づきまして、国内法におきまして規定をいたしておるわけでございますが、なお、消防職員につきましても、その機能あるいはこれまでの国内における取り扱いの沿革、現行の法制等から見まして、条約の申しておりまする警察職員と同視してしかるべきものであろう、かような考え方をいたしておるわけでございます。この考え方につきましては、先般の当委員会でも御答弁申し上げましたように、ILO側におきましても了承されておるところでございます。
  93. 占部秀男

    占部秀男君 いまの御答弁で、この九条は明確に軍隊または警察の構成員に与えておる、こういうふうに規定されておるのですが、それを政府考え方として、いままでの歴史的なというか、従来の取り扱いのなにもあるので、これは消防をこの中へ、いわば拡大解釈をしてこの扱いをしたのだ、こういうふうに私は受け取れたのですが、それは少し考え方が違うのじゃないかと思うのです。というのは、戦前の消防は知らぬですけれども、これは警察関係のある程度の、何といいますか、系統的なものがあったことは私も認めます。しかし、戦後、今日の消防は、戦前の消防とは、率直に言って性格から、取り扱いから違うのじゃありませんか。たとえば、今日、自治体の消防なんというのは、これはもう治安といっても警察的な治安関係のような問題じゃなくて、純粋に火事に対する消火作業だけの問題になっておるのですよ。しかも、その自治体の消防は、一般職との間に交流が行なわれておるのですね。これは佐久間さん御存じのとおりなんです。同じ地方公務員が一般職にいたときは団体の通用を受ける。ところが、それが今度は消防のほうへかわった場合には、これは受けない、同じ地方公称貝でありながら職場が違ったばかりに。そうすると、そういうような本来あるべき権利さえなくなってしまう、こういうことになってくるわけです。しかも、現在の、これは役所関係と言っちゃおかしいのですが、現在消防は、われわれ地方行政でもあなた方とよくやり合った問題ですけれども、警察庁とは別に消防庁というものができていて、警察的なそういうようなものから純粋の消防作業というものを切って、ちゃんとはっきりと分けて、そうしていま行政が行なわれておるわけでしょう。そういうような扱い方、現実に政府がそういうふうに扱っておるその実態から見ても、この「軍隊及び警察」というこの構成員の中に消防を含めるのは、これはちょっと無理じゃないかと私は思うのだけれども、この点はいかがです。
  94. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 警察と消防の作用におきまして違う点がございますことは御説のとおりでございます。しかし、住民の生活の安全を守り、治安を確保するという意味におきまして、果たしておりまする機能の点から見ますというと、共通しているものと考えるのでございます。その点につきましては、御承知のように、かつて労働問題懇談会におきましても御検討を願ったわけでございまするが、警察に包含させて同様な取り扱いをさせることが相当であるというような御答申をいただいておりましたし、またILOのほうの見解をただしましたところ、この点につきましても了承を受けましたわけでございまして、かような御提案を申し上げた次第でございます。
  95. 占部秀男

    占部秀男君 私は、なぜこの問題を局長にこういうふうに強硬に主張するかというと、実はこの消防の問題を利用して、組合に対する不当弾圧というか、そういう点が相当起こっておるのですよ。たとえば、私自身が処理した問題ですけれども、つい五、六年前に、静岡で市の職員を首にした。首にしたことはけしからんというので、組合と市長といろいろトラブルが起こった。そうしたところが、このトラブルが起こったときに、その幹部の人たち全部——全部とは言わないけれども、少なくとも三分の二以上は消防のほうへ転勤をさせてしまった。これはそういうことが今後も起こるのです。ついきのうも、茨城の勝田という、これはあとで調べてもらいたいと思うのですが、勝田というやはり市役所で、市の組合の役員を、市長との間に問題が起きたというので、これは別に急進的な考え方を持っている人じゃありません。問題の内容を調べてもらえばわかるけれども、非常に温厚な組合です。これが、市長の言っていることに交渉の中で反対をしたというので、これを消防のほうの事務職員に配置した。こういうことがたびたび行なわれるようになると、せっかくILOの八十七号条約批准して職員団体の問題を規定してもらっても、理事者側の考え方のいかんによってどうにでもなる、こういうことになってくるわけです。そういう点については、何かこういう問題についてどういう手を打つか、手の打ち方ありませんか。その点をひとつお伺いしておきます。
  96. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 消防職員につきまして、団結権の上で異った取り扱いをしておりますのは、先ほど申し上げました理由からでございまするが、ただいま御指摘になりましたような事例があるといたしますれば、それはこの規定を乱用していると申していいかと思うのでございまして、そのような事例がございますれば、自治省といたしましても、そのようなことのないように指導をいたしてまいりたいと存じております。
  97. 占部秀男

    占部秀男君 その点、しつこいようですが、大臣にお伺いしたいと思うのですが、たしか六、七年前に、九州の唐津の市役所でやはりそういうことがあって、これはけしからんじゃないかということで、当時の大臣と交渉して、行政局長が、佐久間さんじゃなくて、消防長官になった藤井さんの時代でしたか、それを取り消してもらったのですが、その後、その市役所の中はうまくいっているのです。今後もそういうような不当弾圧——不当弾圧と言うか何と言うか、組合の行動を、活動を制約してするのだというふうに明らかになっている問題については、そういうような断固たる措置をひとつしてもらいたい。というのは、組合の行動にそういうような弾圧を加えるか加えないかは、そのときの事情ではっきりわからない問題が起きて、市長に反対する。そうすると、こうやってし願う。市長と問題が起きなかったときには、そういう配置転換は絶無と言っていいほどないのです。だから、それははっきりするわけですから、そういう点については、ひとつ大臣お約束願いたいのですが、いかがでしょう。
  98. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) ただいま御指摘になりましたようなことは、いわゆる不当労働行為と言うか、そういうふうな性質のものかと思います。具体的になってみませんとわかりませんけれども、明らかに組合というものを押さえるためにということであれば、適切なる指導をしなければならん、かように存じております。
  99. 占部秀男

    占部秀男君 なぜこういうことを言うかというと、地方公務員団体には、理事者側から不当労働行為をした場合にどうにもならんのです。労働組合法と違って、率直に言って。だから、私はこういう問題を特にお願いするわけです。これはこのまま切ります。  次に、第五十五条の交渉の問題について二、三伺いたいと思うのですが、この第五十五条には、この一番しまいに、「その申入に応ずべき地位に立つものとする。」と——これは当局側がですね、こういう文句が入っておるわけです。現行の五十五条には「当該地方公共団体の当局と交渉することができる。」ということだけであって、この「申入れに応ずべき地位に立つものとする。」というこのことば、こんなものを入れても入れなくても、どうも何か入れたために無用の感じを受けるのですけれども、「交渉することができる。」ということと、それから「その申入れに応ずべき地位に立つものとする。」ということと、何か違うところがあるのですか。もしなければいいのですが、違うところがあれば、迷うところを明らかにしてもらいたいと思います。
  100. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 現行法におきましても同様な趣旨に解釈をいたしておりましたが、その趣旨をより明確に規定をいたしたものでございます。
  101. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、現在のようなこの交渉と何ら変わりのない天体をこの内容に書きあらわしたのだと、こういうように解釈してよろしゅうございますか。
  102. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) そのとおりでございます。
  103. 占部秀男

    占部秀男君 次に、この交渉の中の5の項に「職員団体がその役員の中から指名する者と地方公共団体の当局の指名する者との間において行なわれなければならない。」、こういう文句があるわけです。で、「職員団体がその役員の中から指名する者」、これは当然のことでありますが、そのあとの、「地方公共団体の当局の指名する」というこのことばはちょっとひっかかるわけです。というのは、三十五年の原案のときには、これは当局のだれでもいいことになっておった。ところが、三十八年の原案では、こういう部外者をやってはいかぬという形で削ったはずです。それが今度の法律案にはまたこう入ってきておるというふうに私はこれ見ておるのです。そういう点は何か特にこの「当局の指名する者」ということについて特定の何か考え方があるかないか。これひとつお伺いしたい。
  104. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) この点につきましては、前の案から特に今度の案におきまして変更を加えたようには私記憶をいたしておりません。で、この規定は、役員の中から指名する者と地方公共団体の当局の指名する者との間で行なうという、通常行なわれておりまする慣行を明文をもって明確に規定をいたしたということでございます。
  105. 占部秀男

    占部秀男君 いまのことばは非常に重大なんですが、当局の中から指名する、こういう意味ですね。
  106. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) この「当局の指名する者」と申しますのは、通常の場合におきましては、当核地方公共団体の、たとえば人事担当の部長とか課長とかいう者が指名される場合が通常であろうと思います。ただ、これは特に当該地方公共団体の職員ということを限定をいたしておりませんので、場合によりましては、たとえば非常に特殊な法律問題が起こったような場合に顧問弁護士等を指定するということもあり得ると考えております。なお、これは職員団体側におきましても、次の6項におきまして、「役員以外の者を指名することができる」ということで労使双方同様な扱いをいたしておるわけでございます。
  107. 占部秀男

    占部秀男君 そこが非常に問題なんですが、当局の中から出すならこれはもうはっきりしておるのですが、非常に特殊な問題については当局以外の部外者からも、部外行の人も指名してもいいのだといういまの御答弁であったと思うのです。どうも特殊なということばは非常な概念的でうまいのですけれども、実はそれじゃ困ることがある。というのは、具体的に私は言いますが、たとえばつい二、三年前に大阪の茨木の市役所で問題があったときに、率直に言って、暴力団が市長側の中に入って、それでもって工場の中へ入ってきた。私が現実に扱った先ほどの静岡市の場合にも、この市長さんは選挙で落ちましたけれども、それはやはり暴力団といわれる人たちを入れて、何ら関係のない人たちを入れて、これは弁護士とかなんとかいうならまだ幾らかひっかかりがあるけれどもそうじゃない人たちを入れて、私たちの工場の中へ入ったんで、われわれ大騒ぎをしたことがあるのですが、かりに暴力団のような人たちが入ってもこれはいいと、こういうことに読めるわけですがね、その点はいかがですか。
  108. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) お話のようなことは全然予想をいたしておりませんで、きわめて特殊な法律問題が、専門的な問題が起こりました場合に、その団体の顧問弁護士を指定するというようなこともあり得ると思いますので、かように申し上げたわけでございます。
  109. 占部秀男

    占部秀男君 それなら、佐久間さん、こうしたらどうなんですか。この特殊な法律的な専門的な問題、確かにありますね。ある。だから、そういう場合には当局が指名した顧問弁護士なり何なりをそこに立ち会わして、交渉しておる人たちがその人の意見を聞けばいいじゃないですか。交渉の相手方として指名するというところに私は問題があると思う。だから、交渉の相手はあくまでも当局であるということにお互いに限定し合ったほうがはっきりするし、また、暴力団なんかも雇うのを許す条項じゃないかというように、変に勘ぐられる必要もないわけですから。したがって、その点はどうですか。
  110. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) もちろん、先生の御心配になりましたようなそのようなことを毛頭予想をいたしておるわけではございません。  それから、また、職員団体側におきましても、当該職員団体の役員になっておりません者を、たとえば、上部団体の者とかを正式に委任をいたしますれば、これは交渉相手とすることは可能なわけでございまするし、そういうようなことも明文をもって第六項の規定もいたしておりまするし、交渉につきましては、双方もちろん当事者同士がやるのがこれは通常でございまするけれども、必要に応じまして特殊な関係の者を加えるという道も開いておいていいんではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  111. 占部秀男

    占部秀男君 そのあとの職員団体のほうについては、私またあとで伺いたいと思うのですが、これは水かけ論になるのでこれ以上は進みませんが、ぼくは確認だけしておきたいと思うのですが、結局、この文章そのままで読むと、だれを指名するかは、市長なら市長だとか、当局者がきめるわけであって、労使双方がきめるわけじゃないのですね。そこで市長は、自分の何か非常に懇意な暴力団とまでいわなくとも少なくとも、力で威圧できるような人を頼んでも、これは非合法ではない、こういうことになるわけですね、この文章では。基準がないんだから。その点は明確にしておいてもらいたい。行政指導は別ですよ。この法律の解釈としてはそうなるんじゃないか。基準はないんですから。つまり、市長のかってなんだから、そういう点、明確にしてもらいたい。
  112. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 法律論といたしましては、そういう場合も入り得ると思いまするけれども、この規定の趣旨が先ほど申し上げましたような趣旨でございまするので、そのように解釈し、運用をいたしてまいりたいと思います。
  113. 占部秀男

    占部秀男君 さっきから労働大臣、この問題で御答弁したがっているようだけれども、ちょっと。
  114. 石田博英

    国務大臣石田博英君) したがっているわけじゃない。同じような趣旨質問が前にもございましたから、何を考えて質問をしておられるのか私にはわからなかったのです。それは暴力団というようなものを頼む場合が心配だということがいまわかった、初めてわかりました。むろん、そういうことではないということと、それから組合側も、自分の組合側以外の人を頼む場合があるわけですから、たとえば市町村の当局者の中で、法律問題はむろんでありますが、労働関係慣行とかその他について知識のない人がある場合は、そういう人を頼む場合もあり得るだろうということであります。私は何を心配して質問されているのか実はわからなかったので、いま初めてわかったという意味のことを申し上げておきます。
  115. 占部秀男

    占部秀男君 非常に労働大臣から御親切な御答弁をいただいて、今後もひとつそういう調子でお願いしたいと思います。  それから、第六の問題ですが、これは先ほど佐久間さんから御答弁のあった内容に関連する問題ですけれども、この職員団体側で、「特別の事情があるときは、職員団体は、役員以外の者を指名することができるものとする。」、こう書いてあるわけですが、この「特別の事情」というのは一体どういうことを考えておられるのか。われわれが普通この労働組合側に立って読んでみれば、組合の執行部が、これは特別の場合だからと考えたときには、これはもちろん特別の場合だということで許してもらわなければいけないと思うんです。もっとも、これは常識の線がありますから、たとえば執行部では全部が全部知っておるわけではないから、保母なら保母のような、看護婦さんなら、看護婦さんというようなときには、執行部は自分の看護婦なら看護婦の代表の人を連れてきて交渉に当たらせなければならないわけですから、それでなければ問題は実際問題としてわからないわけですから、さような意味で、特別の事情というのは、組合側で考えた特別の事情があって、何か特別の情に、理事者からいけないとか、いけるとかということをやられてしまうと、非常にややっこしくなるのですが、その点いかがですか。
  116. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 条文から申しますと、「特別の事情があると認めるときは、」と書いてなくて、「特別の事情かあるときは、」と規定しておりますので、主観的に認めるというのではなくて、客観的に特別の事情があると広められるときと、こういうことかと思いますが、これの実際の運用は、御質問の中にもございましたように、常識的に判断をいたしまして、組合側のほうで役員以外の者を委嘱したいというときにはできるということでございまして、格別にこれを強く制限しようというような気持ちはございません。
  117. 占部秀男

    占部秀男君 この点はぼくはしつこいようですが、この法律が通りますと、あとでいろいろな問題が出てくる可能性のある字句ですよ。そこでぼくはさらにあなたに言うのですが、労働運動も確かに常識の線だと思うんですよ。いろいろむずかしいことを言っておるが、組合運動は常識の線だと思う。この常識の線にはずれていない限りは、組合が必要と言うときには、これはもう特別の事情であるというふうに確めてもらうのだという、そういう点についてぼくは明確な答弁をひとつしておいていただきたいと思います。
  118. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) そのとおりでございます。
  119. 占部秀男

    占部秀男君 次に、同じ条項の下段ですが、「役員以外の者を指名することができるものとする。」と書いてある。この「役員以外」という者なんですが、役員以外は別にいたしまして、この役員の中にはこれはもう当然、上部団体の役員も役員という形で入っていると思うんですが、その点いかがですか。上部団体ということでわかるでしょうから、いかがですか。
  120. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) そこで「役員」と書いてございまするは、当該職員団体の役員をさしておるわけでございます。「役員以外の者」と申します場合には、その役員以外の者だれでもいいわけでございまするから、もちろん、上部団体の役員も含まれるわけでございます。
  121. 占部秀男

    占部秀男君 そうなると、少しこれはへんぱな扱い方じゃないかと思うんですね。というのは、前項でもって、「当局の指名する者」という、この「指名する者」の中には、法そのもので読んでいけば無限なんですね、そうでしょう。限定されてはいない。無限なんです。首長が自分で頼みたい者は頼めるという条項になっておる。ところが、今度職員団体の場合には、「役員以外の者を指名することができる」となっておるけれども、役員は本来ワクの中の人間なんですね。ワクの中の人間をこの役員の中に入れないでいくということはおかしいじゃありませんか。理事者側のほうは、指名することは無限大にできる。ところが、職員のほうは、同じ役員になっておる一つのワクの中の者さえその役員という当然のものの中に入れないというのは、これはへんぱじゃありませんか。その点どうですか。
  122. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 「役員以外の者」でございまするから、これはだれでもいいわけでございます。その点当局のほうと全く法律のたてまえは同じでございます。
  123. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、連合体の役員、すなわち上部団体の役員は、「役員以外の者を指名することができる」ということで、その組合の自主的判断でその人が入ってもらいたいというときは入ってもらっていいんだと、当局はそういう場合に、おまえ上部団体の者を入れてはいけない、こういうことは言わないんだ、こういうことですね。それなら私は納得できる。
  124. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) そのとおりでございます。
  125. 占部秀男

    占部秀男君 その次は第七なんですが、「若しくは地方公共団体の事務の正常な運営を阻害することとなったときは、これを打ち切ることができる。」、こういうふうに書いてあるんですが、この「打ち切ることができる。」なんということは、私は現在の、特にストライキ権を持っていない職員団体の場合はこういう問題はないんじゃないかと思うんですね。わざわざこういう問題を書くことによってトラブルが起こるんじゃないか。これは組合の側よりはむしろ理事者側が、この条項を使って逃げる場合が私は相当多くなってくると思うんですがね。現在交渉が、何というか、「事務の正常な運営を阻害する」という、そんな交渉なんというのは、もうこれはストライキのような状態に入った場合であって、あるいはいわゆる実力行使に入った場合であって、交渉が決裂したりごたごたした場合に——それとしてもいまの職員団体にはできませんけれども——まあ予想されるわけです。普通の正常な交渉がある場合には、こんな事務の正常な「運営を阻害する」ということは今日どこにもないんですから、こういう点については、いっそ思い切って、こういうような誤解を招く条項はやめてもらったほうがいいんじゃないかと思うが、御意見いかがですか。
  126. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 労使間の正常化慣行の確立に資するために、かような、先ほどからお尋ねのございましたような、いわば交渉のルールとも言べきものを法律の上に明確に規定いたしたわけでございます。現状におきまして、お話のようにそのような例がだんだん少なくなってきているかと存じますけれども、このような規定を置きますことによって一そう正常化の確立に寄与していくようにしたいということを念願をいたして規定をいたしたものでございます。
  127. 占部秀男

    占部秀男君 これは政府当局の現在の職員団体の実態に対する価値判断の問題ですから、つづめて言えば、あるいは水かけ論になるかもしれませんけれども、確かに過去に一、二そういうトラブルがありました。しかし、そういうようなトラブルを取っつかまえて、一般的な問題のような形でここに法律に規定するということ自体が、私間違いじゃないかと思うんですよ、一般化するということは。というのは、当局が職員団体の交渉を拒否した場合に、職員団体のほうとしては、それに対する救済規定がないんですよ。救済規定があれば、これはまたこういう問題を出してもいいけれども、救済規定は何らないのに、こういうような、打ち切ることができるというような、しかも今日の職員団体の運動の中ではほとんどないんですね。ないことを一般化してくということは、これは少し酷じゃないですか。救済措置があれは別ですよ。そういう点、いかがですか。
  128. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) ここに書いてございまする各項目は、現在の交渉のルールといたしまして一般に行なわれておりますこと、認められておりますことを明文化いたしたわけでございまして、特にその条項だけを落とすということもいかがかと思うのでございます。
  129. 占部秀男

    占部秀男君 その答弁では私は納得できない。現在やられておるというようなことを言うけれども、じゃ現行法に打ち切ることができるというような条項は入っていますか。その点、伺いたい。
  130. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 現行法におきましては、そういうものは条例にゆだねられております。条例の中にはこのような規定も入っておろうかと思います。
  131. 占部秀男

    占部秀男君 だから私は言うんですよ。条例にうたっておるところもあるし、うたってないところもある。それはその単位団体、その地域の自治体のそのときの労働運動の情勢によって違うわけですよ。それを何も一般化してここに書く必要はないわけであって、現状でも済んでおることをわざわざここに書くのはどういうわけですか。しかも、この条約が通るということになれば、現在の慣行であるとか、あるいは現在の指定されている法律を下ってはならないということになっている条約でしょう、この条約は。救済措置をつけて、そして打ち切ることができるということを書いたなら、これならいいですよ。ところが救済措置はなしにして、そして打ち切ることができるというような、何か万を抜く、この万を市長さんや知事さんに持たしたような、そういうようなつくり方をすること自体が、今度のILO八十七号条約批准趣旨に全く逆転しているんじゃありませんか。これはもうこのままこれを取っちまって、現在の各地の条例で済んでいるのですから、その条例でもってやらしておけばいいじゃありませんか。その点、どうです。
  132. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) おことばを返すようでございまするが、私どもといたしましては、地方公共団体における実情現状から判断いたしまして、このような交渉の常識ともいうべきものではございましょうけれども、これを法律の上に明確に規定をいたすということの必要があると、かように考えておるわけでございます。
  133. 占部秀男

    占部秀男君 いまの局長のように答弁されてしまうと、これはおことばではございますが、私たちはそう考えておりますから、いたしかたございませんと、こういう答弁であって、これはもう問答無用という形になるので、この法律案を修正する以外に手はないのですが、遺憾ながら少数ですからなかなか修正はできませんからお願いしておるわけなんですが、この点、ひとつ自治大臣に、もう一ぺん、これは将来の問題ですが、私は検討してもらいたいと思うんです。それは、こういう条項を書くなら書くでいいから、市長が不当に拒否したような場合にはどうなるかと、こういう救済規定をこの中へ入れてもらうように、将来ひとつぼくは検討してもらいたいと思うんですが、その点はいかがですか。
  134. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) こういう問題は、実は、過去にいろいろな事例があったりなんかいたしまして、先ほど答弁いたしましたように、だんだんと非常に正常化されておりますけれども、こういうふうにして労使間の正常な交渉というものをさせようというところで規定を置いたわけでございます。これが乱用されるということは、これは好ましいことじゃございませんので、私どもといたしましても、適切な指導をしていきたい、かように存じております。
  135. 占部秀男

    占部秀男君 適切な処置をしていきたいというおことばは非常にありがたいのですが、そういう中には、将来にかけてもしそういうような場合が起こっちゃいかんので、救済規定の問題も検討してみようではないかという、そういう内容が含まれておると私は思うのです。いまの大臣の御答弁には。そういう点はいかがですか、念を入れるようですけれども
  136. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 私は、地方公共団体でございまするから、あまり法律でやらなくても、指導によって適切にいけるのではないか、かように存じておりますが、まあ将来考える、検討はいたしますけれども、さように存じております。
  137. 占部秀男

    占部秀男君 どうも歯切れが悪いですな。検討するなら検討すればいいのであって、救済規定を出さないなら、こういう打ち切るというこういうことも事実は必要ないのだから、これもひとつ両方とも検討しましょうというような話ならわかるのですが、どうも検討しましょう、いやいやどうも検討しましょうというように言ったように感じるので、もっと積極的にこの実態を調べまして、それに合わないようだったら、それはもうどうかする、こういうようにはっきりとひとつ大臣言ってもらいたいと思うのですが、これは大事なところなんですよ。
  138. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 先ほど申しましたように、地方団体というのでございますから、そういうふうなことがあれば、私どもとして適切なる指導が行なわれるだろう、かように存じているわけであります。したがいまして、さように申し上げたのでありますが、まあ御意見の点につきましては、私また検討してみよう、こういうことでございます。
  139. 占部秀男

    占部秀男君 最後に、地公法の労働基準法の適用の問題なんですけれども、これはたびたび問題になっている問題なんであって、いまだにどうも改善されていない点なんですよ。この五十八条の四項で、一般官公署と認められる職場は、人事委員会の委員が監督賞の任務を行なうことになっておるわけです。また、人事委員会でなくて公平委員会を置くところでは、たしか市町村長が監督官になっていると思うのですね。これだけは、これはみっともない話だから、私は直してもらいたいと思うのです。特に、人事委員会の委員というのは、御存じのように非常勤ですね。これは常勤じゃないんですよ。非常勤の人がそういう監督をするということ自体がこれはできないことなんですね。結局は形式上の問題で、特に公平委員会しか設けられないような中小都市では、市長が自分みずから自分のやっておることをいいか悪いかを監督しようなんて、こんなばかな話がどこに一体ありますか。これは局長は御存じだと思うのですね。単純労務であるとかあるいは土木現業事務所であるとか、確かにそういうところはそうじゃない形をとられておりますけれども、しかし、大部分はこういう形をとられておる。これを何とかしてひとつ一ぺんこういう機会に、ここではどうせ、しますとかなんとか言えないでしょうが、公務員制度審議会ですか、これをつくられるでしょうから、そういう中で一ぺんひとつこういう問題だけは検討してもらいたいと思うが、この点はいかがですか。
  140. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) この点につきまして、前々から御意見のございます点は拝聴いたしております。私どもといたしましては、人事委員会につきましてはこのたてまえでもいいのじゃなかろうか。ただ、御指摘のございました公平委員会を置いております市町村につきまして、市町村長を監督官にしておるという点につきましては、御指摘のように検討すべきものがあるように存じておりまするので、今後検討してまいりたいと存じます。
  141. 占部秀男

    占部秀男君 いま地方公務員法の中の具体的な点について質問をほぼ終えたわけですが、今度は、第二の、地方公務員労働基本権の本筋について実はお伺いしたいと思ったのですけれども、時間の制約があるそうですから、私の質問はこれで終わりにしておきます。
  142. 安井謙

    委員長安井謙君) 本日はこれで散会いたします。  午後五時三十一分散会