○亀井光君 きょうは質問時間の制限もございますので、各論は別の機会に譲りまして、ごく
基本的な問題につきまして御質問をいたしたいと思います。
ILO八十七
号条約は、言うまでもなく、
結社の自由と
団結権の擁護をいたしておりまする
条約でありまして、
結社の自由が
労働者の最も大切な
基本的権利でありますることから、
ILOにおきましても、その憲章またフィラデルフィア宣言におきましても、この
結社の自由が
労働者にとって
基本的な問題であるばかりでなく、
ILOにおいても
基本的な精神であるということを強調しておるわけでございまして、だからこそ百二十をこえます
ILO条約の中でも最も重要な
条約だと言われておるのでございます。しかも、それだからこそ
ILOにおきまして、
結社の自由
委員会という特別の常置の
機関をつくりまして、加盟各国から
結社の自由に違反する事案につきまして提訴を受けました場合には、これを審査をして、未
批准国に対してでも勧告をして、この自由を守っておるような状況でございます。
わが国におきましても、
結社の自由の重要性にかんがみまして、憲法では二十一条で
結社の自由を保障し、あるいは第二十八条におきまして勤労者の
団結権、
団体交渉権あるいは
団体行動権というものを保障をしておるのでございますけれ
ども、また、
労働組合法その他の労働法におきましても、憲法の精神を受けまして、具体的ないろいろな
保護をいたしておるわけでございます。したがいまして、
わが国の現在の法の中におきましても、一応
ILO八十七
号条約の精神というものは
規定をされているわけでございます。ただ、
公労法、
地公労法の中で、あるいはそのほかの
法律の中で、一部これに抵触する部分がありまするために、いろいろ今日までこの
批准をめぐりまして問題が生じてきているわけでございます。
で、今日までこの八十七
号条約の
批准がおくれたその
理由その他につきましては、先ほど
労働大臣から御説明がございましてよくわかりましたが、まあ各党の間のいろいろな事情もさることながら、結局は
政府と
使用者、
労働組合、こういうものの中の
相互信頼が欠けていたということが、またこの八十七
号条約の
批准のおくれた根本的な
理由ではないだろうか。その点は先般来日しました
ドライヤー委員長が離日の際に出されました声明の中でも、そういう点を
指摘されて、そうしてただいま
質疑の中にございましたように、定期的な
話し合い、これによってお互いの
相互理解を高め、
日本の
労使関係の安定に寄与すべきだという点についても、私も全く
ドライヤー委員長と同感の意思を持つわけでございまして、今後の定期的な
話し合いにつきましては、
総理大臣も非常に強い熱意をもっておられるようでございますので、その点に私も強く期待をいたしまして、この問題についてさらにお答えを求めないのでございまするが、問題は、
公労法の四条三項、
地公労法の、条三項、これが今回八十七
号条約が
批准をされて、この
公労法四条三項、
地公労法五条三項が削除されるといたしますると、いろいろな問題がその中から生じてくるんじゃないだろうか。言うまでもなく、四条三項、五条三項を削除をいたしますると、
組合において自由に役員を選任することができまするために、違法な争議行為を行なって当局から解雇された職員が
組合の役員になったり、あるいは職業的な過激な
組合指導者が
組合の役員について、従来よりも一そう公企体の
労使関係というものが激しくなるんじゃないかという心配を国民の一部がいたしておると私は思うのでございます。で、民間の
労働組合は、戦後二十年間、確かに私は一歩前進をいたしておると思いまするが、これは明らかに、
労使の間における企業一体感と申しますか、これは
日本の
労働組合がいわゆる企業別
組合でありまするために、こういう感じを根底に持っておるわけでありまして、企業あっての
労働組合、企業がつぶれりゃ
労働組合の存在はないんだ、こういう意識がありまするから、
労働組合の争議にもおのずから自律的な制約が加えられる。こういうことで、おそらく民間の
労使関係が戦後二十年間だんだん安定の方向に向かっているんだと
考えられるのでございますが、公企体の
労働組合は、よく世間で言われまするように、いわゆる親方日の丸の
組合でございまして、幾ら過激な闘争をしても企業がつぶれることはないんだという意識のもとに、いろいろな
労使関係が運営されておりまするために、先ほど申しましたような違法な争議行為が行なわれておる。現に去る二十三日には公労協の八
組合が違法な争議行為を行なって、国民に非常な迷惑をかけた。そういうこともありまして、国民の間には、もし
公労法四条三項、
地公労法五条三項が削除されて、先ほどのような
事態になると、もっと激しいストライキが行なわれて、国民はさらに大きな迷惑を受けるんじゃないかという心配がされるわけであります。
そこで、私は
総理にお尋ねをいたしたいのでございますが、この
公労法四条三項、
地公労法五条三項が削除されるにあたりまして、そういう国民の心配というものを
総理はお
考えになられたか。お
考えになられたとすれば、そういうことに対しまするどういう措置を今回の
国内法の改正にあたっておとりになったかどうかという点についてお尋ねしたいと思います。