○二宮
文造君 私は公明党を代表して、ただいま議題となりました
昭和三十七
年度決算外三件を承認できないことを表明するものであります。
この際、特に申し述べたいことは、先ほど朗読されました本件審査の結果に関する案文は、今後の予算執行にあたって、政府に対する警告決議にも相当するもので、まことに重要であり、それに異議を抱き、あるいは反対いたそうとするものでないことを明らかにしておきます。したがって不承認の意思は、前記審査
報告案文の「(二)前記決算については右の警告を与えることとしたほか、異議がない。」という字句に対するものであります。以下、先ほどの本
委員会の警告案文と重複することを避けながら、若干の点につき承認できない理由を申し上げます。
第一点は、この決算が
国会に
提出されますまでの過程について疑点が残るのであります。御
承知のように
憲法第九十条におきましては、「国の収入支出の決算は、すべて毎年
会計検査院がこれを
検査し、
内閣は、次の
年度に、その
検査報告とともに、これを
国会に
提出しなければならない。
会計検査院の組織及び権限は、
法律でこれを定める。」と
規定し、
会計検査院は、
会計検査院法、財政法、国有財産法等々の関係法に基づいて組織と権限がきめられているのであります。
この組織と権限が
憲法並びに
法律によって保障されているのは、
検査院の
機能の発揮によって、国民大衆の生活に
利益をもたらさねばならぬからであります。またその責務を
検査院に果たさせるためであります。
ところが
検査報告を見ましても、
委員会の審議の中で表明されました
検査院当局の
意見を聞きましても、
検査院が国民大衆のために背負っている責務を十分果たそうとする
姿勢とは受け取れませんし、多分に
行政の現状あるいは惰性に流されている点がうかがわれるのであります。たとえば、本
決算委員会において
指摘したように、文部省所管の国立高専の用地等につきまして、地方公共団体より国が無償借り上げしている事態が、全国的に国の施策として実行されておるにかかわらず、三十七
年度検査報告には何の
報告も記載もなされていないのであります。
当
委員会では、何人もの同僚
委員が、あるいは地方財政再建促進特別措置法の
立場から、また財政法、地方財政法の
立場から、
法律違反の疑いが濃いとの
質疑が行なわれたのであります。
昭和三十九年三月二十六日、
会計検査院第二
局長は、本院の予算
委員会第二分科会で、三十七
年度、八
年度の設置校についていえば、期成同盟会等から敷地の寄付申し出のあるものはあるが、文部省はまだこれが寄付採納をしていない。同盟会から寄付を受けることが
脱法行為であるかどうかは、同盟会の
実情を十分調査して、また裏面の事情等を十分
検討した上でないと、一がいには申されない。文部省側がまだ未
処理の
段階であるから、
会計検査院としてなお
検討したいと思う。また、
会計検査院はこれに対していろいろ
検討はもちろんいたさねばならないが、文部省において寄付を受けるかどうかきまりましてから意思表示をいたしたい、とも答えているのであります。
これが
会計検査院法の各条を忠実に実行している機関の
態度とは、どうしても思えないのであります。文部省の寄付受納が決定しなければ、
院法第二十五条の常時
検査の
規定と、
院法二十条の是正をはかるとの
規定は死文となるおそれがあります。
また、国立高専の用地を寄付しているのは、同盟会等と述べておりますが、その中に、地方公共団体から国が地方財政法第十二条、再建特別措置法二十四条二項本文の禁止
規定に違背して寄付を受けていることを隠しているわけであります。
また、同じく用地について、地方公共団体より無償借り上げの実態となっているのに対して、
検査院は、このように長期間にわたりペンディングの状態で、当該の土地を借り上げる、あるいは使用している事態は、
会計検査院といたしましても好ましい事態であるとは考えられないと答弁しておりながら、国の債権管理に関する内部規則の制定、あるいは法定、あるいは法令、制度または
行政に関する
処置を要求することなどを通じて、実質的な是正、改善の方向に努力していないのであります。
そのため、当
決算委員会でたび重なる
質疑が行なわれているにもかかわらず、四十
年度予算でも、全く同様の
方法で、国立高専の設置がなされようとしておるのであり、
会計検査院としての
院法第二十九条第三号の「
検査の結果
法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項の有無」に関する
検査報告必要掲記事項、並びに
院法第三十四条、第三十六条の改善の
意見または
処置を要求するという
規定を立法精神どおり解釈して、財政秩序の確立、ひいては
会計検査院の権威を保持すべきであるとの
疑義が残るのであります。
したがって、そうした過程での
検査院の
検査しか受けていなかったこの三十七
年度決算は、
内閣の
国会提出以前において大きな欠陥があるはずでありますし、言いかえるならば、
憲法の
規定に基づく
検査を十分に実施しないで出された本決算の内容を承認できないのであります。
さらにさきの国立高専の用地問題においても
指摘しましたが、政府はその財政運営には法の
規定を遵守すべきであります。今日、地方公共団体は、国の補助金あるいは負担金について明らかに超過負担の重圧にあります。義務教育施設、公営住宅、国民健康保険、国民年金事務費など、国の負担区分が適正でないために、全国
都道府県市町村の財政全般にわたって影響し、それが直ちにいわゆる住民の税外負担にはね返っていることは、周知の事実であります。財政の効率的運用は当然のことながら、このように政府はしばしばその誤りをおかしているのであります。問題の国立高専用地取得は、一方で、支出に計上すべき費用を計上せず、他方では無償で財産を取得したり、無償借り上げを行なうなど、実質的に見て支出と収入の混同を来たし、財政法の精神から見て、区分
処理の原則を、形式的にはともかく実質的に破壊し、しかもそれが偶発的でなく、全国的な年次計画の中で行なわれ、現に四十
年度においてもこの種方式が計画されていることは、全く理解に苦しむところであります。ここに政府の善処を求めるゆえんがあり、その意味でも三十七
年度決算について
承知しがたいのであります。
さらに
内閣の決算
提出に関する趣旨についての
疑義であります。本日、
委員長より御提案なさって賛否の意思をお問いになっているのは、
昭和三十七
年度決算そのものではなく、審査
報告書案なのであります。したがって、
内閣の
国会提出に対して、決算
委員は直接賛否の意思表示をしないという取り運びになっているわけであります。それが決算
取り扱いの慣例とは申せ、はなはだ不本意なものが残るのであります。決算審議の過程を通じて財政運営の
姿勢を正し、その効率的運営の指針とすることが望ましいわけであり、決算
提出の方式から改正すべきであると思うのであります。したがって、ここに従来の慣例どおりおざなりの
報告扱いの
提出方式をとっている三十七
年度決算につきまして承認しがたいのであります。
以上政府の格段の配慮を強く要望して、不承認の討論といたします。