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1965-02-19 第48回国会 参議院 決算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月十九日(金曜日)    午前十時二十五分開会     —————————————    委員異動  二月十八日     辞任         補欠選任      天田 勝正君     田上 松衞君  二月十九日     辞任         補欠選任      小林 篤一君     野本 品吉君      沢田 一精君     稲浦 鹿藏君     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 北口 龍徳君                 佐藤 芳男君                 野知 浩之君                 相澤 重明君                 二宮 文造君     委 員                 稲浦 鹿藏君                 加賀山之雄君                 鈴木 恭一君                 谷口 慶吉君                 西田 信一君                 野本 品吉君                 二木 謙吾君                 谷村 貞治君                 山崎  斉君                 横山 フク君                 和田 鶴一君                 横川 正市君                 吉田忠三郎君                 浅井  亨君                 田上 松衞君    国務大臣        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        建 設 大 臣  小山 長規君        国 務 大 臣  小泉 純也君    政府委員        内閣官房長官  石岡  實君        防衛庁経理局長  大村 筆雄君        防衛施設庁長官  小野  裕君        防衛施設庁総務        部会計課長    大浜 用正君        大蔵政務次官   鍋島 直紹君        大蔵大臣官房会        計課長      新保 實生君        大蔵省主計局次        長        中尾 博之君        文部大臣官房会        計課長      岩間英太郎君        農林政務次官   谷口 慶吉君        通商産業政務次        官        岡崎 英城君        通商産業大臣官        房会計課長    後藤 正記君        運輸政務次官   大久保武雄君        運輸大臣官房会        計課長      須賀貞之助君        運輸省鉄道監査        局長       佐藤 光夫君        郵政政務次官   服部 安司君        郵政省経理局長  北脇 信夫君        建設大臣官房会        計課長      多治見高雄君         —————        会計検査院長   小峰 保栄君    事務局側        常任委員会専門        員        池田 修蔵君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和三十七年度一般会計歳入歳出決算昭和三  十七年度特別会計歳入歳出決算昭和三十七年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和三十七  年度政府関係機関決算書(第四十六回国会内閣  提出)(継続案件) ○昭和三十七年度物品増減及び現在額総計算書  (第四十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和三十七年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第四十六回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和三十七年度国有財産無償貸付状況計算書  (第四十六回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————   〔理事相澤重明委員長席に着く〕
  2. 相澤重明

    理事相澤重明君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二月十八日、天田勝正君が委員辞任され、その補欠として田上松衞君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 相澤重明

    理事相澤重明君) 本日は、最終の総括質疑として会計検査院長に対して質疑を行ない、引き続き討論採決を行ないますので、御了承願います。  それでは、質疑のおありの方は順次御発言願います。
  4. 横川正市

    横川正市君 まず前段で、検査院検査報告書をめぐって、審査にあずかっている私ども立場から疑義として残された点について最初ただしていきたいと思います。  まず第一は、検査院検査というのは、これは憲法の九十条にありますように、毎年会計検査院はこれを検査して、内閣は次年度にその検査報告国会提出しなければならない、この憲法に定められた検査やり方というのはどういうふうに把握をされているか。日常この検査院としての検査姿勢について実は私どもいろいろな点で疑義を持つわけです。ことに、検査院法の三十一条をめぐって質疑が行なわれたわけでありますけれども、三十一条というものが検査院法に載っかっておる意義というのは、これは一体検査院が置かれているたてまえからしてきわめて重要なものだというふうに私どもは考えております。そういうたてまえからこの三十七年度検査を見てまいりますと、もちろんこれは私どもとしては、検査院検査報告はこれが全部だとは思いませんから、これをひとつ照らしながら国の予算の使われたそのあとについてつまびらかにしていく義務を実は決算委員会としては負っておると思うのであります。そういうふうに考えてきますと、検査院の持っております機能とか、それからその能力とか、そういったものからくる不十分さというものは、これは私どもは不可抗力の問題だとして認める。しかし、たまたま検査の結果として報告をされたもので、先日の総括の総締めくくりの、総理と私との間でいろいろやりとりをした結果からいってみましても、その検査を受けた側、それから検査をした側、それから国会でそれを審議したすべてが、この遺憾なことである、違法である、それからこれは今後こういうことを行なわないように注意をしたいというような一つ指摘をされた案件というのが、どこをとってみても正しいという答えが出ない案件ですね。たとえば国有鉄道近江鉄道に対する一億円の、何といいますか、乗客が減るだろうとか、景色が見えないだろうとかいうような意味で支出されたつかみ金、それからもう一つは、この台帳の間違いから、三分の一以上の間違いが起こっていて、その始末が十分につかないという建設省の問題、その他ずいぶんあるわけですが、だれもが実際上の問題として取り扱ってみていいと言う者がいないという案件取り扱いをしたのだけれども、最終的にだれもが責任を負っておらないという案件ですね、これは私は、検査院として検査をするいわゆるこの憲法のたてまえ、また三十一条というものがあるという、そういうたてまえからいってみて、こういう案件取り扱いというのは、どこか間違っているのじゃないかと思う。だから、もしそれが間違いだとすれば、これは改善意見かなんかつかなければいけないわけですね。それが付加されておらない。そういう取り扱いについて、非常に疑義を持つわけで、この点、まずひとつ、検査院のほうの検査の、何といいますかね、検査のけじめをつける、結論をつけるときの考え方といいますか、そういった点について、前回問題を提起してありましたが、いろいろ論議されたと思いますが、お聞きをいたしたい。
  5. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 横川委員の御質問についてお答えいたします。  この会計検査がどうあるべきか、憲法規定のある会計検査でございますが、これは実は、御承知のように、明治以来憲法規定がございます。会計検査院も、ずっとその憲法規定に従いまして、それに基づいて、会計検査院法規定に従って検査をしてきて、現在に至っているわけでございます。いま御指摘の、この処分個人に対する責任追及という問題は、終戦後、二十二年の改正のときに実は入ったわけでございます。その前は、会計検査というものはございましたが、個人に対する責任追及懲戒要求というような権能は、会計検査の中に含まれていなかったわけでございます。それで、会計検査というものは、結局違法なり不当なりの事実を究明して、それで、違法であり、不当であるという認定がつきましたならば、それを検査報告に掲げて、内閣を通して国会に、あるいは帝国議会に御報告するというあり方は、これはずっと前からあるわけでございます。で、会計検査というものが、結局そういう範囲で終始して終戦に至ったわけでございます。その後に新しく院法の三十一条というものが付加されたわけでございます。現在におきましては、仰せのとおりに、会計検査というものの機能一つとして、個人に対する責任追及、その処分を要求するという権能会計検査院に与えられ、また会計検査範囲の中にもそれは加わったわけでございます。この法律昭和二十二年にできまして、私どももこれの運用ということでずっとやっているわけでございますが、御承知のように、会計検査院法の三十一条には、非常な制約がございます。故意または重大な過失、それから多額国損を与えた、こういうような文句がございます。これも、これが入るときにいろいろないきさつがございまして、そういうような制約がついてしまったわけでございます。  もともと公務員個人に対する責任追及ということは、これは本属長官、その公務員の上司の責任、やる仕事なのであります。それで、これはいろいろな国家公務員法なり何なりの規定に基づきまして、それぞれの任命権者がこれを行なう、こういうことに現在なっているわけでございます。会計検査院としては、この処分をする権能はこれは持っておりません。ただ、この処分権者に対して処分を要求する側に立って、それを勧告するあるいは注意して見ている、こういう立場会計検査院というのがあるわけでございます。そこへ持ってきまして、結局、自分処分権は持っていない、ただアドバイスをする、勧告をする地位にある。しかも、いま申し上げましたように、多額国損とか、あるいは重大なる過失とか、こういうような制約がついているわけでございます。  それで、いろいろ調べておるわけでございますが、そのうちに、処分権者のほうで処分をしてしまうわけでございます。これは大体において軽いのでございますが、ともかくも処分をしてしまいますと、いわゆる一事不再理、確定力のある処分が、たとえば戒告とか、減俸とか、こういう処分が決定いたしますと、それをくつがえすという権限は会計検査院にはないわけでございます。会計検査院としては、一応その処分権能を持っている本属長官なりあるいは大臣なりが処分をいたしますと、これをくつがえすには、特別の法律規定がない限りこれをくつがえすことができないわけでございます。人事院に提訴するなり何なり、普通の裁判の場合でございますと、上級審に上訴してこれを変えるということになるわけでありますが、この懲戒処分というものに対して、会計検査院がとやかくそれを言って直すという権能はございませんし、またその地位にないわけでございます。そういうようなことで、結局いろいろなこと、重大なる過失とか、多額国損とかに対して、処分権自分で持っていない、その処分を変える権能もない、こういうようなことで、だんだん会計検査院としては、申しわけないことではございますが、まあ消極的な態度で見守る、処分を待つ、こういうようなことにだんだん実はどうもなっていく、ならざるを得ないというような実情にあったわけでございます。この間も、横川先生からいろいろ御指摘がございましたし、ほかの方からもいろいろ御注意がございます。私どもとしましても、実は私、帰りまして、全部の意見も聞き、いままでのような態度ではこれはいかぬじゃないか。やはり現在の法律で新しい権能として加えられたものでございます。もっと積極的に会計検査院としてはすべきではないか、こういうようなことも、自己批判的なこともいたしまして、現在、主十七年度についてはどうもちょっと手おくれになってしまったわけでございます。三十八年度分につきましては、それぞれのケースについて厳重な検討を加えて現在おる。それから、これからも、三十八年度もどっちかというとちょっと手おくれでございます。昨年の十二月の初めに検査報告ができてしまって、すでに年を越えている状態で、はなはだ申しわけないのでありますが、これからの会計検査院態度としては、やはりこの処分要求というものをもっと積極的にやっていかなければ相ならぬ。これは、いろいろな事実を見つけるという検査と並行しては、なかなか実際問題としてできないのであります。やはり個人責任追及という新しい仕事——ある不当な事実、違法な事実を見つけ、それを確認いたしますと、新しく、その個人責任が帰属すべきものかどうか、こういうことも、新しい立場で、私どものほうでは検定参事官というのがおりますが、これがそういうことを担当しておるのであります。各局長のほうだけでこれは検討できません。で、検定参事官のほうへも事案を移して、一つ一つ慎重な検討をしていくということにならざるを得ないのでありますが、これからはそういう方向にひとつどんどんと積極的にやっていこう、こういうふうにいま考えているわけでございます。  先ほど横川先生が、だれもかれもが悪いというのにさっぱり責任者が出てこない、こういう御質問でございましたが、これはやはり、大ぜいの人がかかってやった仕事の結果でございますから、どうしても責任が分散されてしまう。一人の人に責任が集中するというケースは比較的どうも少ないのじゃないかと思うのであります。分散されますと、結局、処分も大ぜいの人が受けるかわりに、一人一人の人は軽くなってしまう、こういうのがやはりその実態ではないだろうか、こう考える次第でございます。会計検査院といたしましては、繰り返して申し上げますが、従来どうも少し消極的過ぎた、これは十分に私どもとしては感じておるのでございます。これからはもっと積極的に取り組んでいく。現に、昭和三十八年度につきましては、おくればせながら目下厳正な検討をしているのであります。どうぞひとつ御了承を願いたいと思うのであります。
  6. 横川正市

    横川正市君 私は、考え方として厳罰主義だけで姿勢を直すものだというふうには実は考えていないのであります。しかし、たまたまここに三つの問題をあげましたのは、たとえば、建設省案件は、二千二百万の請負工事のうち七百四十五万の戻入を指示した問題、これを一つとってみますと、説明によりますと、台帳の記入間違いが原因になっておったようです。それを直した結果、今度は処置として、実際には、何か検査の結果、耐久力がその面だけ強く補修されたと思われるので、その分を引き去った五百何十万かは戻入させたいという処置があります。この処置なんかは、典型的な私は問題の処理のしかただと思うのです。それからもう一つの同じ建設省のやつで、退職後逮捕されて、そして実刑一年六カ月という、そういう処分を受けておるのに、本人は行政上の問題では何ら停職をされておらないから、退職金共済年金も全部一般人と同じようにもらっているという案件で、それが、数年後に発覚した事件ではなしに、全く目と鼻先の数カ月の間に、退職、逮捕、それから起訴処分と、こういうふうに行なわれている事件です。これも私は、結論から言いますと、処分やり方としては典型的なやり方だと思うのです。それともう一つは、国鉄近江鉄道への一億円の問題ですけれども、この三つを三者三様に考えてみますと、形は違っているけれども、非常に重要な問題を含んでいるというふうに私は考えるわけです。この「会計検査情報」の中にも出ておりますように、最近の政府内部の者の考え方の中に、法律法律だと、しかし、違法行為をやったからといって、そのことがいわゆる支出した負担よりか利益が多くなればそのほうがいいじゃないか、こういう考え方行政に当たっておるという点が指摘をされておる。まあそういったことは、法律というものは、何もかにも全部悪いものをすくい上げて、いいものだけが日常活動ができるというようなものではなしに、やはりいろいろな対人関係とか、あるいは地域の実情とか、いろいうな問題があって、そういう中で法律は自然と生かされるというふうに運営されるものだ、こういうふうな解釈は立ちますけれども、しかし、脱法行為ということが、利益だけを主眼にして、そうして法律を破るということに対しての不感症が慢性化するということについては、これは私は重要問題だと思う。だから、そういう点からいきますと、もっとこの検査の結果というものが、再び同じようなことで指摘を受けさせない、まあ犯罪として起こる問題については、これはたくさんありますから、やむを得ざるものがあっても、いま言ったように、近江鉄道のような欠損だとか、あるいは入札におけるこういうような大きな間違いであるとか、犯罪が発覚する、しかもこれがどうも、何といいますか、やくざの代参みたいなかっこうで、だれかだけが責任を負うて処罰を受けるというような、そういう印象とか、そういったものが総じて出てくるということに対して、私はもっと何らかの方法を講ずべきだと、こういうふうに思うのです。  そこで、いまのこの近江鉄道の場合ですが、運輸当局の答弁では、これは非常に遺憾な支払いでしたと、こういうことになっているのです。それから、あなたのほうも指摘いたしております。それから、私のほうも、こういうばかげたことがあり得るということは、これはおかしいと思っております。そこで、法的にも実際的にもこういうばかげたことが行なわれたという結果について、私は近江鉄道に対して一億円の国に対する戻入処置というものが何らかの形でできないか。たとえば、いろいろなかっこうで金は支払われたけれども、それは間違いだったから返してくれということはあり得ることなんですね。どういうかっこうで出されたかわかりませんけれども、結果から見て、第三者が、これは間違いだと、たとえば裁判の結果が間違いだとか何とかいうことになれば、国損に対して戻入させるという方法は、これはとり得るのじゃないかと思う。三者が三様にこれは間違いだったと言いながら、一億円は依然として近江鉄道に渡っているという、こういうばかげた始末というものは、これはどう考えてもおかしいわけですよ。もしそれがそのまま通るとするなら、これは何か、長いものに巻かれるとか、強いものにはしかたがねえとか、いろいろ、言ってみますと、間違いをただすのに、相手方の力に屈したことの問題だけが私は最終的な処理にならないかと思う。ですから、言ってみますと、話し合いの結果がどちらからとってみても間違いだという案件に対して、このままでは処理になっておらないわけですよね。具体的に言うと、指摘はしてみたけれども、この点の取り扱いについて、これはもしどうしてもだめなら、改善要求だとか、取り扱い者に対しての責任追及とか、いろいろあるのじゃないかと思うのですけれども、こんな案件でも、このまま三十七年度承認されますと、もうあとは一億円もうけっぱなしは近江鉄道国会は非常に残念ながら手をこまねいて結論を聞いたということになってしまうと、こういうことになるわけですけれども取り扱いとして何らかの方法というものをこれは考えられたかどうか、やむを得ざるものとしてこれは放任するのかどうか、その点をひとつ明らかにしてもらいたいと思う。
  7. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 各省あるいは国鉄あたり処分が非常にあまいということがまず第一段の御指摘でございますが、これは同感でございます。  建設省工事についてまず御指摘がございましたが、建設省のこの請負工事というものは、実はあまり歴史が古くないのでございます。これは河川関係直営工事ということは、相当昔からこれはやっておりますし、自分で人夫、労力を調達いたしまして、また材料を買いまして、国が直接工事をやるという仕事でありますが、これは非常に歴史が古いのであります。請負にどんどん出すというのは、道路改良ということを国でやるようになってからの事態でございます。いま建設省でも、そう古い歴史を持っている請負工事でいないのでございます。それで、御指摘がございましたのは、道路関係工事でございますが、こういうものについて、どうも最近検査の上で、ちょうど補助工事で出てくるような施行不良、りっぱな技術者が監督をし、検収をして金を払った工事が、会計検査院が行ってみますと、もうこわれておったり、あるいは設計どおりできていなかったり、また設計が非常に甘かったりというようなケースが非常に多い。ぼつぼつと補助工事には多いのでありますが、直轄工事にはこんなものは実はあまりなかったのであります。それが、請負工事が少ないということで、なかったわけでありますが、このごろのように請負工事が多くなってまいりますと、主として道路でございますが、そういうような非常に悪いものがぼつぼつと出始めているわけであります。先ほど先生が御指摘になりましたのは、たぶん橋の……。
  8. 横川正市

    横川正市君 五七一号。
  9. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 橋の塗装と思いますが、これなどは、設計がまことにへたな、うまい設計でなかったのでありますが、これなども実は建設省としてはあんまりやったことのない仕事でございます。これは昔はみんな都道府県がやっていたのでございます。国道の改修あるいは維持補修というようなものを国が直接やり出したのは、そう古いことでは実はないわけなんです。それで、これも、建設省としては初めて橋の塗装ということを——ちょっと変でございますが、国のほうはそういうことはあまり実はやっていなかったわけであります。府県にみんなやらしておったわけなんですが、これは初めてやった工事でありまして、従来の東京都なり神奈川県なりの都道府県のやっていた設計を大体において踏襲したわけでございまして、こういう性質でございますから、悪いことをやった、へまなことをやったからといって、いきなり会計検査院個人責任を追求するというのはどうであろうか、実は少し甘いかもしれませんが、そういうふうに考えておったわけでございます。それで、現在ではもうすでに、直営工事ほどの歴史は持っていないにしても、相当全国的に大きな国道工事請負工事をやっている段階でございます。それで、いつまでも出来高不足とか、つくったらすぐこわれてしまったとか、あるいは道路として不適当だ、こういうようなものが出てくるのじゃいかぬ、こういうことで、相当強い態度会計検査院としては臨むべきではないだろうか、こういうふうに現在考えて、建設省あたりに厳重な総括的な注意を出しているのが実情でございます。そうして、もうこれからはこういうものはやったらかんべんせぬぞ、どんどんと懲戒要求するぞ、こういうふうなところに現在の会計検査院としてはいる段階でございます。少し甘過ぎるかもしれませんが、たくさんの工事検査しておりまして、個人責任追及していこうという当事者になりますと、その程度に実はなってしまうのでございます。これは第三者としてごらんになると、非常に甘いという御印象を受けるかもしれませんが、われわれとすれば、その辺が精一ぱい、いままでのところじゃ精一ぱいというようなことになるわけでございます。これからはどんどんと私どもとしても三十一条によって要求するという積極的な態度をとるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。  それから、国鉄の例の景色補償でございます。これはまことにどうも変な問題でございますが、どうも初めから実は、まことにけしからぬと、こういうので、検査報告に載せることにずいぶん私としては積極的だったわけでございます。これは一億円あとでここへぱっと載せたわけでございますが、ところが、これは会計事務職員だけの責任追及するのは実態としてはどうも酷なようでございます。会計検査院法の三十一条なり、あるいは予算執行職員の個人責任追及する法律がございますが、これはあくまでも会計事務職員だけが対象になっております。この検査報告にあがります事態は、必ずしも会計事務職員だけの責任に帰すべきものと、そういうものに限定してはならないのでありまして、とにかく悪い事態は、これはみな検査報告にあげるわけでございます。この近江鉄道景色補償などは、どうも会計事務職員だけを責めて、それだけを処分要求をするというのは、ちょっと実情に合わないのじゃないだろうか、そういうふうに私としては考えておる次第でございます。
  10. 横川正市

    横川正市君 これは大蔵当局にお聞きいたしたいと思うのですが、この近江鉄道景色補償の金を払うのには、たとえば支出にあたって、最終的決裁は、これは運輸大臣か、あるいは国鉄総裁かが判こを押したものだと思うのですが、どういう最終的な始末で補償金が支払われておるわけですか。
  11. 鍋島直紹

    政府委員(鍋島直紹君) それは事務的に調べてすぐ御返答いたしますから、ちょっとお待ちいただきます。
  12. 横川正市

    横川正市君 通例こういう支払いをするときには、局長限りでの決裁でやられるか、それとも、総裁決裁とか、あるいは運輸大臣決裁とか——これは国鉄総裁ですか。
  13. 鍋島直紹

    政府委員(鍋島直紹君) 私は国鉄総裁じゃないかという考えを持っておりますが、もう少し調べましてその点お答えいたします。
  14. 横川正市

    横川正市君 そこで、この案件は全くつかみどころのない幽霊みたいな結果で、結果的には近江鉄道が一億円だけもうけたということになるわけですね。それで、たとえば国鉄総裁決裁で払われたけれども、結果から見ればこれは支払うべきものではなかったと、こういうふうな認定に立った場合、その金を国に戻入させる、そういう処置をこれはとれないのですか、払ってしまったらしかたがないということですか、どういう処置なんですか。
  15. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) これは不当な支出ということで、会計検査院も批難いたしました。ほかでも、まことに遺憾だということで、これで納得している、これでいいのだという資料はその後に出ていないわけでございます。これは御指摘のとおりでございます。しかしながら、これは当事者間の契約で、国鉄近江鉄道の契約で、一億円払うということで払った事態でございます。その後に新しい事実というものは別に出ていないわけであります。その契約が悪いと、こう言って会計検査院も批難し、一般の人もそれを認めて、遺憾だと、こう言っておるわけでございますが、その後に新しい事実というものが出れば別でございますが、契約を結んでしまってから払ったもので、これを取り返すというのは、政治的にいろいろ返させるとかというのは、これは別でございますが、法律的にこれは当然に取り返す、あるいは訴えて回収するという範囲にはちょっと入らないのじゃないだろうか、こう考えておる次第でございます。
  16. 横川正市

    横川正市君 どうも私はそういうことで泣き寝入りをさせられる。だれかがこれはこのことによって何らかの責任をとっておればいいのですけれども、だれも責任をとっておらないわけですね。だから、結局会計検査院としては、国鉄当局と近江鉄道との間で契約として行なわれたものだ、だから不当な支出だと思うけれども処置なしと、こういうことになると、たとえば近江鉄道に一億円もうけられたのは、これはやむを得ないとしても、国鉄当局は支払わなくてもいい。支払う必要のないものを払ったということで、国に損害をかけたという責任を私は当然とられるべきじゃないかというふうに思いますが、その点はどうお考えでしょうか。
  17. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 先ほどもそのように申し上げたつもりでおりますが、実は私どもとして懲戒要求をするのは、対象は御承知のとおり会計事務職員だけであります。会計検査院法三十一条もそうであります。また、予算執行職員等の責任に関する法律もそうでございます。どうもこのケースは会計職員——これは先ほど御質問が大蔵省のほうにございましたが、形式的には大阪の幹線工事局長の決裁で払っておるわけでございます。しかし、この問題に限りませんが、大きな問題になりますと、形式的な決裁権者は局長でありましても、実際にはもっと大きなほうと十分な協議を遂げて払っておるのが実情でございます。これなんかも私も直接聞いたのでありますが、もっと大きなところと相談して、局長が決裁しておるケースでございます。そういたしますと、会計事務職員だけを、会計事務職員は局長以下になってしまうのでありますが、会計検査院法なり何なりの対象になる懲戒処分を要求される人は、局長以上の人は入らないわけでございます。そうしますと、どうもこれは会計検査院としては、会計事務職員だけを責めつけるというような結果になることはちょっといたしかねるわけでございます。それ以上の人の責任についてはどうなるかということは、これは会計検査院として、ちょっとまた言う立場にないわけでございます。どうぞひとつ御了承願います。
  18. 横川正市

    横川正市君 実際これはどうものらりくらりとして、結果的には国会は泣き寝入りということになるわけですかな。
  19. 相澤重明

    理事相澤重明君) 委員長から会計検査院長に。いまの横川委員質問に対する答弁でありましたが、国有鉄道法では、国の決算と同様に、内閣は、日本国有鉄道の決算をした場合には、会計検査院提出をして、会計検査院に送付をして、決算をしなければならぬ。あなたのほうで見てもらわなければならぬ、こういうことになっておるわけですね。その場合に、先ほどから言われたように、不正不当と認めた場合には、改善意見が出せるわけです。その場合の措置を、高度の政治性のものとして御答弁をいただいているようだけれども、その点が横川委員が何か割り切れないものがある、こういう指摘をされていると思うのです。そういう点については、いまの答弁の範囲内ですか、それともまた何か検査官会議ででも御相談もあったと思うのですが、いま一度ひとつ聞かしてほしいのですが。
  20. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 国鉄会計検査の対象になるというのは、いま委員長のおっしゃったとおりでございます。国と同じように会計検査を——これはかつては国の一部であった時代もありますが、それ以後引き続き同じような検査法律でも指示され、また私どもも同じような検査をずっとしております。国と全く同じようなこまかい検査もしているわけでありますが、近江鉄道のようなケースにぶっつかることはこれは実際初めてでございます。それで、今後こんなのがちょいちょい起きちゃ困るのでありまして、これは不当事項として、そのケース限りの案件として、実は処理したわけであります。改善要求というようなことになりますと、改善要求のようなものは、いま適当でない状態をよくするとか、あるいは将来また同じようなものが起きるであろうというような場合に、改善要求を出して初めて効果があるわけであります。情勢がよくなるわけであります。今回のようなのは非常にたぐいまれなるケースでございまして、これは一件限りの不当事項として国会に御報告する、こういうので十分ではないだろうか、こういうので、これについてはちょっと改善要求というようなものの対象にはならないというふうに判断したわけでございます。
  21. 横川正市

    横川正市君 非常に何と言いますか、始末について歯がゆい思いを実はすることは、これは新幹線をめぐって土地がずいぶん騰貴いたしましたね。で、これはたしか国鉄職員をやめてブローカーになって数十億とかもうけて、ハワイかどこかへ行って何かやったという事件もありますよ。しかし、そういう事件を私どもが見たときに、ちょっとべらぼうに土地が上がってけしからぬじゃないか。新幹線の最終予算の計画にさらに追加予算を要求して、ようやく新幹線ができた。ずいぶんけしからぬ話だということであっても、土地だから、必要に応じて業者間の話し合いである程度高くなったのだということでは、これはやむを得ないものだと思う節は私どももとれるわけですよ。ところが、この近江鉄道の場合は、新幹線が通って、乗っている乗客が何分間か外の景色が見えないで、新幹線の土手を見るのだ、その土手を見る補償料を国鉄近江鉄道に払う、まあこんなことがそのまま認められたら、私はこれはとんでもないことになるのじゃないかと思うのです。で、この問題の処理は、実は払った払わないとかいう数字の上での処理よりか、もっと実は私は払ういきさつになった裏のほうが重要だと思うのですけれども、それはここで審議する範疇ではありませんから、それには触れませんけれども、そういうことが行なわれて、一億の始末については、全く三十七年の決算に私どもが最終的に結論を与えるときに、ずいぶんべらぼうなことをして近江鉄道に一億円もうけられたわいということだけを知ってこの始末をつける結果になるというのは、全く残念なんです。だからそういう意味合いからいけば、たとえば会計検査院長という立場のあなたが、佐藤内閣総理大臣にお会いして、こういうべらぼうなことが行政上行なわれたということについて、行政責任、あるいは政治責任の問題もあるので、この点については政治の場でもう少し明確に解決をつけたらどうですかというような意見具申ぐらいのものはできないものですか。こんな形で私どもが泣き寝入りをさせられるような結果というようなことについては、これは全く私は了承しかねるわけですね。しかし、時間の都合できょうの午後になれば、三十七年度を上げざるを得ないということになるわけです。そういう議会はもちろんだが、国民も絶対納得しないものに、しかも一億というような国損をかけたものに、何らの回答を与えないで始末をつけるということはちょっとできかねるのですがね。検査の結果からいってみて、あなたのほうの処置がないということでは私はないと思うのですが、その点は私の意見に対してどうお考えですか。
  22. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 会計検査院といたしましては、御承知のようにこの法律に書いてあることどおりのことをやっていく——いけばいいと言うと、これはまた語弊がありますが、いくべき立場にあるわけでございます。これは先ほどからいろいろお話が出ておりますように、検査報告に載せて国会に御報告する。それからまた、改善要求として取り上げるべきものは、改善要求として処置する、こういうふうに会計検査院としてやるべきことを法律で指示されているわけでございます。それ以上にということになりますと、ちょっとこれはやはりまことに景色補償なんというばかばかしいものは、私どもとしても、国民の一人とすると、実にこれは遺憾であります。が結局、会計検査院という、法律で設置され、そして法律によって行動をするべき国家機関としての立場に立ちますと、そう国民としてどうもはなはだけしからぬと思ったからといって、どうも法律できめられたワク外の行動をとるということは、これはちょっと実はいたしかねる次第であります。はなはだ遺憾でございますが、その辺でひとつ御了承願いたいと思うのでございます。
  23. 鍋島直紹

    政府委員(鍋島直紹君) 先ほど御質問ございまして、調べましてと申し上げておきましたが、小峰会計検査院長から御答弁もございましたように、近江鉄道の問題で実際支出をしておりますのは、支出官として決裁しておりますのは大阪の新幹線工事局長でございます。それは国鉄総裁から委任された事項について決裁をしておる、こういう形をとっております。
  24. 横川正市

    横川正市君 これはもう尋ねあぐねてしまってくたぶれてしまう事件なんですが、きょうは政務次官しか出ておりませんから、責任ある答弁はもらえないだろうとは思いますけれども、いま私どものほうで検査院当局といろいろ質疑をいたしておりますこの近江鉄道の件の取り扱いとして、私どもは非常な疑義を持っておるわけなんです。政府の考え方は最終的にどういう考え方で、やむを得ないで支出したのだといってこれは始末をつける、そういうことだろうと思いますけれども、もう一度念のために意見を聞いておきます。
  25. 鍋島直紹

    政府委員(鍋島直紹君) 近江鉄道の問題につきましては、先般大臣も答弁があったと思いますが、会計検査院から指摘ございますように、まことにこの内容は、常識ではちょっと考えられないといいますか、計算上出てこないような状態になっております。したがいまして、その実際上の検査の概況は委員長から言われたとおりでございます。この会計検査院の不当事項としての報告を十分審査いたしまして、さらに政府としては、こういうことが今後絶対にないような措置を講ずべきであろうと私は考えております。
  26. 相澤重明

    理事相澤重明君) ちょっと小峰会計検査院長、いませっかく大蔵政務次官から御答弁があったが、国鉄が損害補償をするのは、どういう理由によるものか、鉄道営業法によるものか、鉄道運輸規程によるものなのか、あるいは民間の商法によるものなのか。いわゆる法律の根拠は何をさしておるのですか。
  27. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 国鉄が一般に補償をする場合には、いま御指摘の地方鉄道法でございましたか、その鉄道関係の法律にいろいろ基準がございます。それによってやっておるのでございまして、本件もたしかその一般の補償——ちょっと確かでないので調べて御返事いたしますが、一般の補償と同じ扱いをしていた、そういうふうに考えております。
  28. 横川正市

    横川正市君 会計検査院長、実はこの補償をしなければならないというので、何かたとえば土地の買収の場合とか、土地の立ちのきを要求する場合とか、あるいは耕作地を購入する場合とか、いろいろの場合があって、補償とか購入とかいういろいろな形のものがありますね。近江鉄道のように景色が見えなくなるというのは、一体この補償とか賠償とか何かそういうものはありませんから、無形のものに対する賠償の何かそういう規定みたいなものがあるんですか。
  29. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) これは一般の営業補償というようなものの補償もございますし、無形のものに対してその補償をするというようなのは一般の事例でございますから、それもその同じような扱いだったと思いますが、法律の根拠をもし何でしたら条文はすぐ調べてお答えいたします。
  30. 横川正市

    横川正市君 鍋島さんね、まあやむを得ないこととして今後こういうことを行なわないというけれども、今後こんなことはおそらく出てこないと思うわけですが、その政府の行政機関が取り扱うものとして、営業補償ならば、たとえば立ちのいたらそこで営業ができなくなるから当然生活問題として要求されて、それに対する権利権能というものが補償代価になると思うんですが、近江鉄道と新幹線とで並行して走るという、そういうことで右か左かわからぬけれども片一方の景色がしばらくの間見えなくなったという、それは一体近江鉄道というのは、景色を見せるために走っている観光用の鉄道なんですかね。そうでなくて旅客輸送であって、どこからどこまでの公共輸送ということで営業許可をとっているんだとすれば、景色が見えなくなったからという補償なんというのは理屈としてはこれは成り立たないのじゃないかと思うんですが、どうお考えですか。
  31. 鍋島直紹

    政府委員(鍋島直紹君) いま横川委員の御指摘がございましたが、私も十分これをつまびらかにいたしておりません。ただ三十七年度決算の検査報告によりましてお答えをするわけでございますが、補償形式としては、これによりますと、御承知のとおり新幹線ができてまあ風致が減殺される、したがって、それに伴う旅客収入のまあ減収がある、その補償を要求せられているのに対して、いろいろその基礎を考えながら、ちょうど一億円を概算払いしてまあ納めたというような状態になっているのでございます。したがいまして、ただこの景色が見えないからという意味でなくして、この場合は理論的根拠——これが妥当であるかどうかはこれは別にいたしまして、理論的根拠としては風致を非常に害される、したがってそれに伴う旅客の収入減がある、それをどの程度の減であって、何カ年間という一応の計算をして約一億を出しているというのが現実の決算書にあらわれたようでございます。ただこれがしからば、会計検査院としては、これはこういう計算をして補償したものが不当である、そういうものがはたして妥当であるかどうかという点につきまして、不当であるという指摘を受けて実は不当事項の中に記載されているのが現実であろうと思います。まあ常識的に考えまして、そういうものが計算して出てくるものかどうかということは、これは非常にむずかしい問題であろうし、いままでにかつてないような補償ではなかろうかと思います。したがって、財政当局としましては、やはり一つの大きな問題として、運輸省その他ともよく打ち合わせをして、やはり今後このようないわば疑惑を招くといいますか、基礎が十分でない、会計検査院の御指摘のとおりのようなものにつきましては、さらに再度こういうことが起こらないようにすることが政府としての態度であるというふうに考えております。
  32. 横川正市

    横川正市君 私は、再度起こらないのじゃなくて、この案件始末を、このままやむを得ないことだというふうに始末をつけるのは非常に気持ちの上で納得しないのですよ。結局、まあ不当に物を高く売った場合には、これは罰則があって、いろいろ始末をつけるように法律というものはあるわけです。それから売買なんかでも、不当なものについては、これはいろいろな意味でそれを正当なものにするという手段とか方法とか法律とかはあるわけですよ。ただ、契約事項で、契約としてしまったから不当だけれどもしかたがないという、そういうことであっては、私はこれは故意でも契約を結んで金を支払って、それで契約を結んでおるのだからしかたがない、というような結果になりかねないと思うのです。それでは社会正義というのは許されないのだと思うのですね。そういう意味で、この始末はどう考えてみたって、旅客輸送を目的として近江鉄道は許可をいただいているはずで、新幹線が通ったからといって旅客が減るという理屈は、これはへ理屈もはなはだしいと思うのですよ。そういうことで金が払われたということは、これは言ってみますと、不当なものであるということがわかれば、不当なものはもとへ戻す必要があるので、もとへ戻す手段というものは全然ないかどうかという点をこれはお聞きしているわけです。ただ契約があるから払ったのだというだけでは、私はその不当性について何らの答えにはなっていないと思うのですがね。
  33. 鍋島直紹

    政府委員(鍋島直紹君) 横川委員のお話しは重々よくわかります。したがって、これは不当な事件として会計検査院から御指摘を受けているわけでございますが、会計検査院としての態度はいま小峰院長が言われたとおりです。ただこれを、それでは再度調査するのか、これが妥当なりやいなやという点につきまして、一たん契約をしたものを返してもらうというようなことができるかどうか、その点は、私もいま事務的にかつ実際上の問題として明確にお答えをする知識を持っておりません。なお、これは運輸省とも協議をすべき問題であろうと思います。この点は今後取り調べてまいりたいと思います。ただ横川委員の言われておりますお気持ちは重々わかるわけでありまして、そういった線に沿って話してみたいと思います。
  34. 相澤重明

    理事相澤重明君) ちょっと委員長から……。法律上の問題ですから、やはりきちっとしないと困るので、後刻法律上それが妥当なのかということをお調べになってお答えをいただくのがいいと思うのです。  そこで、とりあえずひとつ一点ずつ確認をしておきたいと思うのです。まず損害補償というものは鉄道営業法に規定をしてあったものかないのか。鉄道営業法を見るというと、そういうものについては別にないわけですね。この点はどうですか。
  35. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 実はいま先ほどの委員長と横川委員の御質問につき、法律上の根処というものを調べてお答えしようと思っておりましたのですが、この鉄道営業法とか地方鉄道法とか、そういうものについて根処のある取り扱いではございません。一般の私法上の、民法上の補償契約、補償基準というようなものが実はあまりないのでございます。それでこの件は検査報告にも書いてございますように、通例の補償限度を逸脱していると、検査報告にも通例の補償限度を著しく逸脱する、こういって批難しているわけでございます。補償というものはこの営業補償をはじめとして、一体どれだけという計算はなかなかむずかしいわけでございます。これなどもその一つの例でございます。いままであまりこういうものを補償の対象に取り上げたことはないわけでございまして、法律上の根拠は、いま申し上げましたように民法、こういうことでございます。先ほど鉄道営業法と申しましたが、これは全然ございません。
  36. 相澤重明

    理事相澤重明君) それではさらに時間の関係がありますから、やはり会計検査院が、あなたのほうで書いておることですが、この地方鉄道法について述べているので、地方鉄道法の十七条関係はどういうふうに解釈しているのですか。これは運輸省並びに大蔵省もこれは関係のあることです。会計検査院はもちろん決算のたてまえがありますから。これは運輸省も当然主務大臣は答弁がなくてはいかぬと思う。
  37. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) いま委員長御指摘の地方鉄道法の十七条と申しますのは、本件では批難しないほうの、この検査報告で、同会社から同会社線施設の防護補強工事費等二億六千二百十五万円及び沿線風致阻害観光価値減殺による旅客収入減補償一億五千四百万円——この一億五千四百万円の風致補償のほうが先ほどお話しになっているわけでございます。いま委員長御指摘の地方鉄道法の十七条は、前段の先ほどお話しになっている以外の二億六千万円、こちらの関係でございます。
  38. 相澤重明

    理事相澤重明君) 大蔵省なり運輸省は御答弁ありますか。
  39. 鍋島直紹

    政府委員(鍋島直紹君) 先ほど申し上げたとおりよく取り調べてございますが、大体の権限としましては、大蔵省は予算の権限で、あとは一切国鉄の総裁の執行権になって、その決算は内閣のほうに出て大蔵省が便宜上これをそろえて提出するという形をとっております。しかしいま、先ほどお答えしたとおりの問題でもございますので、事務的にさらにこれは研究をしてみたいと考えております。
  40. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 近江鉄道の補償につきまして、地方鉄道法十七条の適用のあるべき事態ではなかったかという点につきましては、最終的に近江鉄道側が新幹線の同鉄道横断を拒むに至ったときは別といたしまして、当時は並行敷設、横断等に基づく補償額について当事者間の交渉が継続中であったわけでありますので、同条を発動すべき段階には至っていなかったというふうにわれわれとしては考えております。
  41. 相澤重明

    理事相澤重明君) 同条を発動しなかったから補償料をよけい出した、お話し合いできめた、同条を発動すれば主務大臣の権限でできるはずですね、十七条は。その解釈はどういうことなんですか。いまのあなたの説明では、話を進めておったから発動しなくてもよろしい、しかし近江鉄道はそういう補償料、横川委員の言うようなものを出さなければつくらせないぞ、拒否をしたことにはならぬのですか。その解釈はどういうふうに行なわれておりますか。
  42. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 法律的の御質問でありますので、ただいまのようにお答えを申し上げたわけでございますが、委員長がお話しのように、全体の補償のあり方については数度御説明申し上げてあると思いますが、全体のいろいろな路線の選定その他の経過からいたしまして、こういうような形に当時の状況からして取りつけざるを得なかったということでございます。
  43. 横川正市

    横川正市君 まあ大蔵政務次官が先ほど答弁をいたしておりますので、私はやはり内閣で運輸省あるいは国鉄当局、大蔵当局とでこれは十分話し合って、私どもが納得し、国民が納得するような一つ結論というものを出していただくように、これはぜひやっていただきたいと思います。そうでないと、これはもうだれがどう考えてみたってこんなばかげたことを議会の中で論議して、大手を振って議会を通ったなんということは、私はこれは絶対に容認をするわけはにいかないわけですから、そういう意味で、いまの問題については、大蔵当局がひとつ主宰をして、この問題についての明快な結論を出していただくようにこの際お願いをいたしておきたいと思います。  実は会計検査院当局に国有財産の問題等について、最終段階ですから質問をいたしたいと思いました。ただ、その時間がありませんので、要望を強く申し上げておきたいと思いますのは、三十七年のこの地方財政再建促進特別措置法の施行をめぐって、前後に分かれるわけでありますけれども、私のきわめて遺憾とするのは、この四十年度の予算の中においても、文部省はたくさんあるわけですが、文部省だけでなしに、法務省それから最高裁判所というようなところまでこの地財法や促進法の違反事項として、土地やその他の地方公共団体から国への提供を行なっている案件というのがあるわけであります。そこで、先般の総理大臣や大蔵大臣の答弁では、国有財産との交換の問題とか、あるいは別途の方法でできるだけすみやかに財政負担をかけないような処置をとりたい、こういう答弁がありますので、これは将来見ていきたいと思いますけれども、国有財産の処理あるいは管理についてこの検査を、まあ言ってみますと、もっとしっかりした検査をしてもらいたい。いろんな点で私どもはふに落ちかねる問題がたくさんあるわけですから、質問すればたくさんあるわけです。二時間くらいあるわけです。きょうはやめますけれども、ぜひひとつあなたのほうで機能を動員して、これを従前の取り扱いでなしに、もう少し重要項目として取り扱っていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。私の質問は終わります。
  44. 相澤重明

    理事相澤重明君) お答えありますか。
  45. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 国有財産に関しましては、いろんな問題がこれは非常に多い案件でございます。検査報告で不法占拠とか、安く売り過ぎたとか、管理が悪いというようなケースが毎年出ているわけでございます。改善事項でも国有財産に関するケースは、三十六年度以来相当実は一番多く出ているのでございますが、なお、いろいろ御指摘の点も私どもがいままであまり気がつかないような面も多々あるようでございます。いろいろ御注意に従いまして、今後とも十分な検査をしていきたいと、こう考えております。
  46. 二宮文造

    ○二宮文造君 本論に入ります前に、決算並びに検査報告取り扱いについて、会計検査院長にお伺いしておきたいのですが、憲法第九十条の「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会提出しなければならない。」こういう規定がございますが、私ども常識で考えてみますと、提出しなければならないということは、承認も含むのではないかと、こういうふうな常識的な解釈があるわけです。ところが、この点非常に不勉強であったのですが、この委員会で問題になりますのは、決算並びに検査報告の承認ではなくて、従来の慣例として審査報告を承認するないしは不承認というふうな段階になると、このように聞いております。長年会計検査院に関係をされておりますし、あるいはまた毎年毎年労苦の結晶を報告されておるわけですが、その院長が憲法のこの九十条の解釈をどのようにお考えになるのか。従来の承認を含まないのか、ただ、国会内閣提出すればそれで終わりなのか、この点についてお伺いをしておきたいと思うのです。
  47. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 二宮先生の御質問でありますが、実はこれは明治以来の大問題と申しますか、いろいろ意見が分かれているところでございます。明治憲法をそのまま口語体に直したのが現在の憲法でございますが、決算に関する限り、九十条は旧憲法の七十二条の文語体をそのまま口語体に直したという程度の条文でございます。これは決算の承認を求めるという表現を入れている国、それからまた政府の責任の解除を求めるため国会に決算を提出する、こういうような表現で国会の議決を経るというふうな取り扱いをしている国が実は多いのであります。日本ではそいつを十分に承知の上でこの明治憲法をつくるときに、承認とかあるいは責任解除とかという文字を実は削ってしまったわけであります。それでその後も、そういうふうに規定いたしました関係で、何べんかこれは議論が国会で起きております。戦後もその点につきまして、衆議院あるいはこの参議院の決算委員会でもいろいろな公聴会的なことをおやりになったこともございます。しかしながら、その旧憲法以来、政府はもちろんでありますが、どうもこの承認という字を入れてない、政府の責任解除を求めるためというような目的もわざわざ入っていない、こういうようなところから考えまして、日本の制度としては、やはり二宮先生のおっしゃったように、承認を求めるために国会に出すのではなしに、報告として国会に出す、こういうのが現在までに行なわれております取り扱いを裏づける意見と申しますか、通説というとちょっと行き過ぎなんでございますが、現在までに行なわれております、新憲法になりましても行なわれております取り扱いを裏づける意見と、こう申し上げたらいいかと思うのでございます。これは立法論あるいは改正意見としては相当強い承認案件、議案とすべきだ、結局、承認ということになりますと、両院を通す、流す議案と、こういうことになるかと思うのでありますが、そうしなければいけない。そうしなければ新憲法で予算が——御承知のように旧憲法時代、予算は協賛であります。帝国議会の協賛、内閣があくまでも主導権を持っているわけであります。現在の憲法では、これは国会の議決、こういうことになりまして、国会のほうが主導権を持つように現在の憲法では予算は変わっておるのであります。そういたしますと、決算も変えなければ平仄が合わぬではないか、こういうような有力なる意見はございますが、現在の取り扱いといたしまして、あくまでも承認、国会の意思が入るような取り扱いはしていない。単なる報告、こういうことになっているわけでございます。
  48. 二宮文造

    ○二宮文造君 きょうが三十七年度の最終日ですし、やがて審査報告なるものが委員長の手元から出されまして、この委員会でそれを承認するかしないかというようなことになるのですが、例年の審査報告の末尾に「前記決算については右の警告を与えることとしたほか、異議がない。」、こういうような表現をしますことは、警告決議以外のものは承認するというふうな表現であると私は思うのですが、そうしますと、国会提出をして承認を求めるものではないのだということになりますと、この例年の審査報告の案文の(二)のほうは国会はよけいなことをやっていることになるのですが、この点はいかがですか。
  49. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) どうも私として国会の審査報告の内容を云々する立場にございませんので、ひとつ御了承願いたいと思います
  50. 二宮文造

    ○二宮文造君 それでは「異議がない」というふうに表現することは、承認の意思を示すものであるというふうにお考えになりますかどうか。ただ、この解釈だけでけっこうです、国会と離れて。
  51. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) この承認ということばは、先ほど私、一般の学説なり意見なりとして、承認とか、あるいは政府の責任解除を求めるためとかいうようなことを申し上げましたが、これは日本の憲法なり財政法には使ってないのでございます。それで、ここに承認とお書きになりましても、それは法律の文字をおうむ返しにお使いになっているのじゃないのでございます。これはどういう字をお使いになりましても、どうもこれは、さっきの、憲法に承認とかあるいは政府の責任解除のためとかいう規定のある国の使い方とは、これは違うと思うのでございますが、どういう字をお使いになるということは、これは国会が御自由におきめになることでございまして、これを使ったからといいまして、さっきの、憲法なり何なりに承認という字が使ってある国と同じように考えるということは、私どもとしてはしない、するわけにはいかないわけでございます。
  52. 二宮文造

    ○二宮文造君 政務次官がいらっしゃるので御意見をお伺いしたいんですが、私どもは当然、この決算並びに決算検査報告というものを国会提出しなければならないという字句は、承認を含むものであると、こういうふうにすべきであると思いますが、これはまあむずかしい問題で、ここでどうこう言うわけにはまいりませんが、要望事項として、今後、決算委員会の同僚委員ともお話をしまして、そういうふうな方向に変えてまいりたい、こう意を含んでいただきたいということだけ申し上げておきます。  で、会計検査院長にお伺いしますが、時間がありませんので、具体的な事例からさっそく入りたいと思います。といいますのは、院法の第二十九条の必要掲記事項の問題でございます。問題の国立高専の用地のことにつきまして、昨年の三月二十六日の本院の予算委員会第二分科会の席上で、会計検査院の樺山局長が、その用地の借り上げの問題につきまして、「このように長期間にわたりましてペンディングの状態で、当該の土地を借り上げる、あるいは使用しておるというような事態に対しましては、会計検査院といたしましても、好ましい事態であるとは考えておりません。」と、こういうような答弁をされておるわけですが、院長も同様趣旨のお考えでございますか。
  53. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) いまの二宮委員の御質問でありますが、前回、私ここに出ましたときに御質問がありまして、樺山局長の表現と同じようなことばを使いまして御説明申し上げたように記憶しております。現在でも、決して好ましい状態ということは考えておりません。
  54. 二宮文造

    ○二宮文造君 同日ですが、さらに樺山局長が、寄付の問題につきまして、「寄付を受けるかどうかきまりましてから意思表示をするということにいたしたい」、こういうような答弁をされておりました。あるいはまた、「寄付を受けるというお話がございましたが、文部省当局が寄付を受けるという行為があって初めて検査院の問題になるのでございます。」と、このように答弁されておるんですが、やはりこれも、院長、同様の趣旨でお考えになっておられますか。この局長の見解そのままでございますか。
  55. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 国立高専の用地の問題でございますが、まだこれは寄付を確かに受けていないというふうに私聞いておりますが、やはりこれは寄付を受けてからきめると申しますのが、妥当と申しますか、局長と同じ考え——寄付を受けてから検討するというのが、検査院としてはいいかと存じます。
  56. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで問題になるんですが、寄付を受けたときに初めて会計検査院の問題となる。そして、そのときに検査をして、不当であれば改善意見を出してと、こうおっしゃるんですが、そういう行為があって後に改善意見を出して、その事態をどう解決することができるか。先ほども問題になりました近江鉄道の補償料の問題でも、国鉄の石田総裁は、交渉に負けたのだと、るる説明されておりました。また、いまも横川委員質問で、非常につかみどころのない結末になってまいりました。ある行為があって初めて検査院がその態度を表明する、その反面、国民に実害を与えるという行為は残るわけですが、ただ、それを、そのことには目をつぶって、将来に対する警告、そういう批難事項の指摘のしかただけで、会計検査院がその検査に非常に忠実であった、国損防止の立場からも好ましい処置であったと、こういうふうに私言えないと思うのですが、たとえば院法の第二十五条には、「会計検査院は、常時又は臨時に職員を派遣して、実地の検査をすることができる。」——当然建物の実地検査もしているわけですから、そのときには、この用地はどうなっているのか、適正な用地の獲得になっているのか、そのことを考慮しないで、ただ、その検査の対象は建物だけである、たとえ、その土地が不法占拠であろうが何であろうが、あるいはまた、賃借権が確立していようがいまいが、そういうことは全然問題にしないで、建物だけ検査するという態度でありますと、この実地検査という意味が全然なくなってくるわけなんですが、この点いかがですか。
  57. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 寄付なり何なりの会計行為の検査というのは、あくまでも、やはりその行為が行なわれてから検査するというのが、これがたてまえでございます。本件の国立高専のような場合は非常に異例——寄付を受ける行為をしないで使っている、そして、それをだんだん交換のほうに振りかえていくというような事態でございます。どうも一般の会計行為が行なわれてから検査をするというのではおそ過ぎる——御指摘のような結果も出るかと思います。これは十分にひとつ検討いたしまして、局長のこの前の発言というのを、もっと早めるというようなところへいくほうが適当かと、いま御意見拝聴しますと、そうとも考えられます。そして、また、実地検査なんかにもすでに行っていると思います。十分にこれは検討いたしまして、早くやらなければいけないことならば、早くやる方向に進みたい、こう考えております。
  58. 二宮文造

    ○二宮文造君 ぜひそのようにやっていただきたいのですが、やはり院法の第三十六条に、「会計検査院は、検査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官庁その他の責任者意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。」と、こう明確な規定があります。いまの院長のお話を聞いておりますと、まことに困った問題で、と、こういうようにおっしゃってはおりますが、すでにそれが三十七年、三十八年、三十九年、さらに今年度も、そういうふうな無償借り上げ、国立高専の設置にあたって用地費を組まないというふうなことが、これだけ長く行なわれて、三十八年のあの検査報告にも、そのことが指摘されておりませんし、また、それを出そうという意思も今日まではお示しにならなかったわけです。としますと、この三十六条の規定というものが死文になってしまうわけです。したがいまして、私は、院長が早く出すと、こういうふうなお話でございますから、それは三十六条に規定されたことに、もう一つ前向きで会計検査院がお進みになるというふうに了解しているわけでございますが、それでよろしゅうございますか。
  59. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 御趣旨に従いまして、早く結論と申しますか、検査を十分にいたしまして、これはどういう結論が出ますか、これは検査してみないと、何とも申し上げられませんが、十分な検討を早期に行なうということだけを申し上げておきます。
  60. 二宮文造

    ○二宮文造君 いまのことは言わでものことでございますが、「財政法会計法要綱」、これは院長の著書でございますが、その一三六ページ、「会計検査院の機構改革」の項の(四)のところに、「検査の効果を早く行政に反映させる方途を講じた。会計検査窮極の目的は、非違の摘発にあるのでなく、これを是正させ、将来同種の非違をくり返させないところにあるが、旧制度では、天皇を通じてのみこれができるようになっていた。結局、実効はなかったわけであるが、新制度では検査の結果によって、直ちに、主務官庁に是正改善の意見を述べ処置を要求し、又、法令制度の改正を求め、」と、こう、うんちくを傾けていらっしゃるわけです。私はこれを忠実にやっていただきたい。これは言わでものことを申し添えておきます。  もう一つ、先般、私、院長に補助単価の問題につきましてこの決算委員会でお伺いいたしました。そのときに院長は、「予算単価というものは純然たる行政の問題で、この点は検査院検査対象の外だ」と、このような御発言がございました。その当時の私の質問は、「予算単価で一つのものができ上がるか上がらないかということは、検査院段階ではないですか。予算単価でこれこれの仕様書のものが、完全な形で仕様書のとおりにでき上がるかどうかというところが行政の部門であって、検査院としてはタッチするところではないのですか。」と、こう私は伺ったわけです。それに対して院長は、「会計検査院で調べている範囲におきましては、予算以上の契約なり設計書なりが出てくるということはないのであります。必ず予算できめられたとおりの設計書なり契約書なりが出ておりまして、これに対して何割か初めきまったとおりの補助金を支給しているというのが現在の取り扱いでありますし、会計検査院が実際に見ているのは全部そうなんであります。」、こういうようにお答えになっていらっしゃるのですが、この問題に対する文部省の答弁を聞いてみますと、「実際の市町村の負担は、国の補助金の裏側の負担にとどまらず、相当多額の負担をいたしております。国の補助金は実際には四分の一ないし五分の一になっておったのが実情であります。」——その理由として四つ述べておりますが、要するに、補助の原則が法にきめられた負担区分のとおり行なわれていない、こういうように明確に答弁をされております。にもかかわらず、会計検査院がその当該建物、教育施設なりを検査したときに、その事実が出てこないということになりますと、私は会計検査そのものの効果を疑うわけです。この点はいかがですか。
  61. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 前回、二宮先生の御質問に私数回立ちまして御説明したわけでありますが、実は予算単価というものにつきまして、文部省関係では、昔は非常にその予算単価がきつかった、実情に合わない、だんだんいろいろな非難がありまして、だんだん改善されている、現在ではまあ大体いいところまで来ていると、こういうふうに聞いて、それを前提に実は御説明したわけであります。それから、ほかの予算単価につきまして、私、農林省とか建設省の公共事業費等をずっと検査しておりまして、これを頭に置きましていろいろ農林省の話、それから文部省検査の話、それから公共事業費関係の予算とか、こういうことを頭に置きまして実は御説明したのでございます。公共事業費におきましては、いま予算単価の問題というのは、ほとんど解消しておりまして、実際には単価以下でやっているというような場合は間々あるような実情でございます。それで、文部省の関係につきましては、帰りましていろいろ具体的な計数なんかについても実は調べてみたのでありますが、これはまことにどうも恐縮でございますが、最近までやはりこの予算単価ではできないという面なんかがあるということを実は最近私は知ったようなわけで、この前の御説明、はなはだ至らない部分があったかと思うのでありますが、どうぞひとつ御容赦願いたいと思うのであります。  本日は、文部省の部を調べてまいりましたので、これから御説明したいと存じます。  文部省の文教関係施設というのは、昔は私、抽象的に聞いておりますところでは、単価が辛くて実際に合わないという事態にあったようでございます。これをただ単価だけで考えてはいけないような事態のようであります。構造比率と申しますか、ある学校を建てるときに、コンクリートはどの辺までコンクリートでよろしい、こっちの部分は木造でやってよろしい、こういうような構造比率というような問題もあるようであります。それからまた、たとえば屋内体操場のようなものは、従来は補助対象に取り上げなかった。しかし、学校では必要がある、屋内体操場なんかもつくらざるを得ない。そうして、そういうようなことをやってまいりますと、文部省が認めた構造比率では困る、木造として指示されたものも、やはりコンクリートで建てなければぐあいが悪い、こういうような関係で、補助の指令よりもいいものをつくる、あるいは補助の対象に入っていない屋内体操場なんかもつくる、こういうことになりますと、ただ、予算単価だけでなくて、やはりその面からも地方の自己負担がふえてしまう、こういうようなことになる。また一方、予算単価も実情に合わない金額で補助されるというような、かなり複雑な面が幾つかあったようでございます。最近、構造比率とか、屋内体操場というような問題は、こういうようなものについては、法律なり制度の改正がございまして、実情に合うように三十九年度あたりからこれは直っているようであります。  それから補助単価も、三十九年度あたりになりますと、大体実情に合った予算単価というものが予算できめられてきておるというようなことを聞いたのでございます。それで、また、国会の議決をいただいた予算単価を、実施の場合に当局が対象をふやす、そんな関係で、予算の補助単価を実際に公共団体に交付する補助単価は、予算単価よりも減ってしまう、少し減る。こんなようなことも実際には行なわれているようであります。現在では、三十九年度になりますと、先ほど申し上げましたように、大体実情に合ってきている、こういうように聞いている次第であります。
  62. 二宮文造

    ○二宮文造君 院長の御説明でございますが、たまたま手元に「昭和三十八・三十九・四十年度主要予算単価調」、これは大蔵省で二月十二日につくっていただいた資料でございます。もっとも、構造なんかの違いはありますから、一がいに言い切れないと思いますけれども、同じ鉄筋コンクリートというところを見てみますと、官庁営繕の庁舎の場合には、三十八年度で、鉄筋コンクリート三階建ての場合に、坪当たりの予算単価が八万九千九百九十一円となっております。三十八年度です。それから一枚めくりまして、今度校舎の分ですが、その一番上の鉄筋コンクリート造で六万七千八百円。さらにその下の高校校舎のところで、高いとは言いながら七万一千四百円、ここに大きな差が出ております。このように予算単価、特にそれが地方財政と密接な関係のある予算単価のきめ方が低いという場合に、それを検査院段階で取り上げて国に改善を申し出るというふうなこともあって私はしかるべきじゃないかと、こういうふうな意見をこの前申し上げたわけです。それに対しまして、それは純然たる行政の問題で、どうも検査院としてはタッチすることができない、こういうふうな院長の御答弁のようであったと私記憶しております。しかし、それでは三十六条の規定、三十六条に行政の改善を求めるというふうなことがこれまた死文になってしまう。したがって、こういう問題につきましても、それが結局は、再三申し上げますように、地方財政が超過負担をしてまいりますと、勢いはね返ってくるのは、住民の税外負担という形に現在はね返っております。財政が窮屈ですし、施設はつくらなきゃなりませんし、ただ国の補助金にたよるだけではどうも施設ができませんので、そういうふうな好ましからざる状態が行なわれております。それを会計検査院段階指摘することが私は財政秩序を確立する、あるいは公平の原則というふうな、いわゆる会計検査院の持つ使命の重要な部分じゃないか、この点をぜひ取り上げるべきではないかと、こう私は思うんですが、院長の御意見いかがですか。
  63. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 予算単価の決定が大蔵当局と当該の行政庁の間の折衝によってきまるわけでございます。その意味におきましては、これはやっぱり行政の問題だと思うのであります。会計検査院が直接口を入れる性質の以前の問題のようにも思うのでありますが、しかし、この行政やり方につきまして、一方で地方に負担をかけるような結果を来たすという点で、行政やり方を変えたら、何かしたらどうかというようなことは、会計検査院としてもこれは意見を言えるわけでございます。この前はどうも切り離したような——実は質問の趣旨も私なかなかのみ込めない面もございまして、結果において切り離したようなお答えになったかとも思うのでありますが、十分に御趣旨のあるところもよくわかりましたので、十分にひとつ検討いたしまして、将来の検査をきめていきたい、こう考えております。
  64. 二宮文造

    ○二宮文造君 それからもう一点、先ほどの国立高専の用地の無償借り上げの問題でお伺いしたいんですが、これは用地を借り上げるということは、通例考えてみれば借地権なわけです。ところが、先ほどお話し申し上げましたように、寄付とかあるいはそういう事態が発生してから会計検査院は問題を取り上げる、現在、契約もない無償借り上げの形である場合には、会計検査院としては、それは不当ではないかと、こうは指摘をしないかのような御意思でございました。しかし考えてみますと、これは借地権というものはりっぱな民法上の債権でありますし、当然そこに国の教育施設が立っているとすれば、そこには暗黙であれ借地権が成立していると、こう私は見るわけです。しかしそれを規制する内部規則といいますか、そういうものが会計検査院お持ちでないから、あえてそれを見のがして今日のようなよろしくない事態が平気で行なわれているわけです。そこで私はお伺いしたいのですが、会計検査院の債権の管理というのは、あの債権管理法でしたかの二条の金銭債権に限って会計検査院は管理——管理といいますか検査の対象になさるのですか。あるいはまたほかに考え方、ありますか。
  65. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 債権の管理についての御質問でありますが、債権の管理は大体金銭債権が中心になるわけです。で、法律できめてある範囲でありまして、いまの国立高専の場合に、一体借地権ができているかどうかという点も、ちょっとできているということは、私としてはいまの段階では申し上げられないのでありますが、かりに借地権がありましても、借地権は債権管理法の管理の範囲には入っていない、こういうふうに承知しております。
  66. 二宮文造

    ○二宮文造君 そうしますと、そこで問題が起きると思うのです。先ほど無償借り上げの形であっても、それが具体的に契約の形に変わらなければ、検査院としては、その地方財政に対する圧迫であるとかなんとかいう、あの法に違反するという意思表示ができない理由がそこにあると思うのです。で、問題がちょっと変わりますけれども、現在は無償借り上げの形です。そうしてそれが国会で取り上げられまして非常によろしくないというので、いま等価交換という段階を進めていらっしゃいます。それはそれで別の問題としまして、その無償借り上げということは、それは寄付なのか、寄付でないのか、寄付行為が起こって初めて会計検査院の問題になる、こういう御答弁に対して、私、伺いたいのは、無償借り上げというのは、現に寄付行為なのかどうかという解釈ですが、これはいかがですか。
  67. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 寄付という範囲でありますが、寄付はいろいろなものがございますが、当事者の合意で借りているというような場合は、これはただであっても寄付とはならぬと、こういうふうに考えております。
  68. 二宮文造

    ○二宮文造君 そこで昭和二十三年一月三十日の閣議決定事項でございますが、その閣議決定事項の中に、各官庁に対する寄付金の抑制についてという事項の中に、「財政の窮迫化に伴い、最近諸官庁(学校を含む。)においてその経費の一部を諸種の寄附に求める傾向が著しいが、」云々という前文がありまして、その4の(ロ)のところに「公共施設の寄附(適正賃貸料を下廻る借入の場合を含む。)」——このようにカッコしてあります。いまのところをもう一度全部読みます。「公共施設の寄附(適正賃貸料を下廻る借入の場合を含む。)にあっては、所定の手続をなし、且つこれを公表するものとすること。」、このように閣議で決定しております。それからまた昭和三十年の九月の二十八日に、内閣官房長官の各省事務次官に対する通知で、同様趣旨、二十三年の趣旨を再び確認をしております。この閣議決定事項の解釈から考えていきますと、こういう無償借り上げの形、適正な賃貸料を下回る——下回るところかゼロですから、この場合は明らかに閣議決定事項の趣旨にも反しておりますし、この解釈からいきますと、寄付行為として扱って当然ではないか、このように私は思うのですが、重ねて院長の考え方を承りたいと思います。
  69. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) その二十三年の閣議決定のいう「寄附」というのには、どうもこれは確かにカッコがございまして、「(適正賃貸料を下廻る借入の場合を含む。)」と、こうございます。三十年の閣議決定もこれを受けております。この抑制——閣議決定でいう寄付の中には確かに入ると考えざるを得ないわけでございます。先ほど私、寄付の中には、普通寄付と申しますと借りているということが寄付の中には常識的には入らないように申し上げましたが、この閣議決定のいう寄付の中には、まさにこれは入ることになるわけでございます。
  70. 二宮文造

    ○二宮文造君 そういたしますと、当然先ほどのその予算委員会における局長の答弁の解釈のしかたは変えていただかなければなりませんし、また国に対しましても、適正な措置を会計検査院としてもお願いをしなければならぬということになります。それでよろしゅうございますか。
  71. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 先ほど申し上げましたように、おっしゃるとおりに会計検査院としては、これから検査態度を決定いたしてまいります。
  72. 二宮文造

    ○二宮文造君 ところで、そういう問題が今後も続発されるような考え方も出るわけです。したがいまして、会計検査院院法で内部規則をおつくりになることを許されていると思うのです。したがいまして、そういう金銭債権を主にするというような狭い考え方じゃなくて、そういう借地権を含むような、あるいはまた現在問題となっております、国立高専の問題だけを考えてみましてもこの三十八条の「この法律に定めるものの外、会計検査に関し必要な規則は、会計検査院がこれを定める。」。いわゆる独自の内部規則をおきめになる権限を持っているわけですから、金銭債権を主体とするような狭い考え方じゃなく、物件に対しても、会計検査院として意思表示ができるような内部規則をおつくりになったほうがよろしいのじゃないか、このように思うのですが、いかがですか。
  73. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 会計検査院は規則制定権を院法の三十八条で与えられております。それによって、いろいろこまかい規則をつくって検査の運営をしているわけでございます。検査対象というものは、やはりこの法律で別にきめられまして、その範囲を守っているわけでございます。それで借地権とか物件とかいうようなものが、いまの債権管理法なり何なりの法律で入っていないわけでございます。こういうものについて検査院自分の規則を自由につくる、検査対象にするというのはいかがかと思うのでありますが、いろいろ御意見もございますししますので、十分に検討はいたしたいと、こう思っております。
  74. 二宮文造

    ○二宮文造君 じゃその点はまた先の問題にして、最後に要望を申し上げておきます。  たびたび申し上げますように、会計検査院は、憲法規定された独立の検査機関でございます。その権能を正しく法で規定されたとおりに運用されて、それが先ほども申しましたように国損の防止とかあるいは財政秩序の確立とか、さらには公平とかということの立場から、ひいてはそれが住民に対する福祉の保障になるわけです。で、従来ややともしますと行政部門に押されまして——と言いますとまた院長も一言あるかと思いますけれども、何がしか私たちが考えてみて、検査報告にあらわれるあの指摘事項についても遠慮があるような気がするわけです。非常に不十分です。したがいましてその方針、趣旨に基づきまして的確な格段の奮起を望んで会計検査立場に立っていただきたい、これを最後に要望として申し上げて質問を終わりたいと思います。
  75. 浅井亨

    ○浅井亨君 だんだんと時間がまいりまして、同僚議員からもいろいろと質問がありまして、もはやないのでありますけれども、一言だけひとつ付け加えて質問したいと思います。それはいわゆる検査報告を見ましても、現在のいろいろな状態から私が判断しました結論は、どうも検査院のあり方というのは、事務的なおざなりなように私は感じられるわけです。そこでほんとうに検査院というあり方は、国損防止についてほんとうに誠意を持っておられるかいないかということを疑わざるを得ないような気持ちがするわけなんです。そこでその一つの例といたしまして、東北開発株式会社でございますが、その設立された三十二年度以降から、その計画といたしましてむつ製鉄が計画されておりました。ところが今度三十八年度の決算報告を見ますと、会社発足以来実施した事業は、用地買収等にとどまっている状況である。このように報告されておるわけなんです。その中を私が聞いております点では、六億何がしかの国費が投入されておる。それがいわゆるむだになってくるんじゃないか。こういうふうに聞いておるんですが、現在はそれはどのようなことになっておるかということをひとつ説明していただきたいと思います。
  76. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) まず二宮先生からいろいろ御激励のことばがございました。ちょっと一言、会計検査院、非常にどうも皆さまからごらんになりますと、なまぬるい点もあるかと思います。私ども、実はあまり政府には遠慮してないつもりでやっておるのでございます。そのために会計検査院は、法律上、内閣から独立の地位にあり、したがいまして私ども身分保障を旧憲法以来つけていただいているのでありまして、これで遠慮していては、身分保障なんか何のためにあるかわからないということになるわけであります。私どもの気持ちとしては絶対に遠慮なんかしているつもりはございません。ただ、至らぬ点も多々あるかと思います。その結果、非常に不十分な検査だというような御印象を与えたかもしれませんが、その辺は非常に私どもとしては残念でございますが、決して政府に遠慮するというようなことは、いままでも考えたことございませんし、これからもそういうことは一切やらんつもりで検査は進めていきたいとこう考えております。  それから浅井先生質問、むつ製鉄でございますが、これは東北開発がむつ製鉄の設立を決定いたしましたのは、三十八年四月設立になったわけでございます。それまでにいろいろな検討をいたしまして、結局あそこの製鉄資源というものを何とか生かそうということで、三菱グループ、三菱製鋼ほか二社でございますが、三菱グループの技術を提供し販売をやってもらうということで、三菱グループと提携をいたしましてむつ製鉄を設立したわけでございます。これは三十八年四月でありますが、ところが御承知のように、それからその設立のときには、経済企画庁も関与いたしまして相当十分な検討をして設立したわけでございます。私どもいろいろ実地検査どもいたしましておったのでございますが、当時の情勢として、これはつくってもだめだということは実は考えられなかったのであります。ところが、御承知のようにそのころから鉄鋼市況が非常に悪くなりまして、最初採算をとったときの値段では売れなくなってしまったわけであります。こちらの面から会社はなかなか企業化を進めて、着手するということができないような状態になった、こういうふうに聞いております。現在では閣議決定などもあったようでございますが、やはりまだ何とかこれを続けていきたいというような地元の非常に強い声もあるようであります。まだはっきりとやめてしまうという行為には着手していない、こういうふうに聞いております。
  77. 浅井亨

    ○浅井亨君 いま聞いておりますと、三十八年度の四月に設立したと、だけれども、私の聞いておりますところによりますと、三十七年度にすでに製鉄の企業は非常に危険だと、いまあなたもそのように、不況になってきたというようにおっしゃったように思うのですが、それは三十七年度に不況ということはわかっていたのじゃないですか。
  78. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 設立の登記とかそういう表向きの行為は、三十八年四月にあったわけでございまして、話はこれはもちろん前からあったと思います。早急にぱっと設立登記ができるわけでございません。ですが、三十七年度中からそんなに鉄鋼市況が悪かったというふうには、実は私ども聞いておりません。経済企画庁も関与しておりますし——第三者的な国家機関でありますが、これも関与しておりますし、十分な調査はした上で設立の運びに至った、こういうふうに実は承知しているわけであります。
  79. 浅井亨

    ○浅井亨君 いまの私の質問のときにあなた自身が、この設立当時、これはあぶないんじゃないかと、このようにおっしゃったように私は聞いたんですがな——不況であってと——そうですか。——それは聞き落としかもしれませんが、またあとで続んでみて考えます。  まあとにかくそういうわけですが、三十八年度の分にはこのむつ製鉄のことについてちょっと問題が触れてあります。そういうことでございますので、三十八年度の決算審議の中でまた詳しい内容的なものを検討してみたいと思っております。それまでに、検査報告のあの簡単なのじゃなくて、もうちっと内容的に詳しいものをひとつ資料として出していただきたいと思います。もう時間もありませんから、この点で私もやめたいと思いますけれども、ただひとつ資料をそれまでにはっきりしたものを、報告というようなあんまり簡単じゃなくして、内容的にもわれわれ知恵の浅い者がわかるようにひとつお願いしたいと思います。
  80. 小峰保栄

    会計検査院長小峰保栄君) 先ほど設立当時もうすでに不況だったという、あるいは会社があやしかったと、こういうような趣旨の説明は実は私した覚えはございません。あるいはことばの使い方がまずかったので、そういうふうにお受け取りいただいたとすると、これは直さしていただきます。  ただいまのむつ製鉄の検査資料でございますが、これはどういう程度でお出ししたらよろしいか、ちょっとあれですから、先生と後ほどいろいろ御相談いたしまして、適当なものをお出ししたい、こう考えております。
  81. 浅井亨

    ○浅井亨君 ええ、いいです。     —————————————
  82. 相澤重明

    理事相澤重明君) ただいま委員異動がございましたので、御報告いたします。  小林篤一君及び沢田一精君が委員辞任され、その補欠として野本品吉君及び稲浦鹿藏君が委員に選任されました。  以上でございます。     —————————————
  83. 相澤重明

    理事相澤重明君) 他に質疑のおありの方はございませんか。——他に御質疑もなければ、昭和三十七年度決算外三件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 相澤重明

    理事相澤重明君) 御異議ないと認めます。よって質疑は終局いたしました。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  85. 相澤重明

    理事相澤重明君) 速記起こして。  それではこれより討論に入ります。  昭和三十七年度決算についての本委員会の議決の内容の文案につきましては、委員長及び理事打ち合わせ会において打ち合わせた結果を取りまとめましてお手元に配付いたしてございますが、これより専門員にその文案を朗読させます。
  86. 池田修蔵

    ○専門員(池田修蔵君) 朗読いたします。  二ページの「二、本件審査の結果」というところから朗読いたします。  (一) 本件決算について、予算及び関係法律が適正かつ効率的に執行されたかどうか、予算、関係法律及び諸施策に反省、検討を要するものがなかったかどうかという観点に立って、慎重に審査を行ってきたのであるが、その審査の過程において明らかにされた事実及び会計検査院指摘事項等にかんがみ、内閣に対し、次のような警告を発する必要を認めた。   (1) 行政管理の乱れるのは当該責任ある公務員の綱紀弛緩に基因するところが多い。政府は綱紀の粛正に一段と留意し、殊に業者との関係が深い当局者においては業者との接触に際し格段に清廉な態度をもって臨むべきである。     また、不正不当事項の責任者に対する行政処分については、いたずらに温情に堕することなく、これが執行を厳正にすべきである。   (2) 歳出予算の繰越額及び不用額が多いのは、各省庁において予算さえ獲得すればよいとの安易な態度があることにも基因するので、歳出予算の計上については一層合理的根拠に基くよう配慮すべきである。   (3) 補助金等の整理統合については、本院においてもるる警告したところであり、その後補助金等合理化審議会及び臨時行政調査会の答申等もあり、政府においても近年の予算編成方針における重点としているが、実績が十分とは認められない。これを一段と強力に推進し、それによって捻出された財源を有効に活用すべきである。   (4) 防衛庁の経理は往年に比し著しく改善されたとはいえ、なお同類の不当な事態が必ずしも少なくない。例えば物件の在庫状況の調査等が不十分なため不急不用の調達をなし、不経済となった事例が跡をたたない。防衛庁における物資、器材等の調達は年々増加しているので、その調達に当っては必要量の調査に万全を期し、不当経理の一掃に努むべきである。   (5) 基地問題ことに基地周辺における騒音防止対策、安全対策等民生安定に関する諸施策について、政府はこれを一段と強化するとともに、米駐留軍接収施設にもとずく損害の補償及び同施設の解除返還については、積極的にその解決に努力すべきである。   (6) 国有財産の管理処分については、先ず財産の実態を明確に把握すべきであり、不法占拠等を排除するとともに、処分については相手方の選定等実情に即応し、かつ適正な価格をもって処理をなすべきである。   (7) 国の教育施設等に要する用地の調達については、地方財政法第十二条及び地方財政再建促進特別措置法第二十四条第二項の趣旨にかんがみ、地方公共団体に実質的な負担のかかることなきよう国有地の使用、国有地と地方公共団体の土地との等価交換又は有償借上を行うなど国と地方公共団体との間の財政秩序を正すため早急措置すべきである。   (8) 公立文教施設整備費補助に関して、国の負担対象となる基準が不十分であること、補助基本単価が実施単価に比し低価であること、耐久建築の構造比率が予算においては実際より低いことにより、地方公共団体における実質負担が増大している問題については更に改善を推進すべきである。   (9) 農林省所管の工事、物件、保険、補助金等に関し、経理当を得ない事例が最も多いのは遺憾である。農林省は経理全般にわたってさらに一層厳正を期し、不当事項の絶滅に努力すべきである。     農業構造改善事業は政府の農業基本対策の重要な柱の一つとして実施されたものであるが、昭和三十七年度はその初年度であったとはいえ、事業の執行方法が悪かったなどのため進捗が後れ、その対策費四十三億余万円のうち十三億余万円の繰越を生じ、殊にパイロット地区事業において渋滞している。今後は政府の重要施策においてかかる渋滞のないよう事業の遂行を督励すべきである。     農産物殊に生鮮食品の流通合理化と価格安定については、なお十分であったとは認め難い。これが生産者、消費者双方に及ぼす影響の大きさにかんがみ、一層意欲的な努力を払うべきである。   (10) 郵政省部内における職員の不正行為は、当局の防止努力にもかかわらずその跡をたたない。防犯監察と業務面におけるけん制策を更に拡充強化し、これが実効ある運営をはかってその絶滅を期すべきである。   (11) 近年物価、労賃、地価の高騰が甚だしく公共事業の予算額増加の割には事業量の実績が少く、社会資本の充実は行われ難いと認められる。また土地問題は公共事業の施行のみならず、住宅など国民の生活にも及ぶ重要な課題であり、政府は抜本的な対策を検討すべきである。     道路整備については、住民生活に直接関係のある地方道にも力を入れ、また有料道路制については、高速自動車道路以外の一般的な道路についてもプール制の採用について検討し、採算の悪い有料道路の無料開放に資すべきである。   (12) 日本国有鉄道における東海道新幹線用地買収に関し、近江鉄道株式会社に支払った補償費のうち、旅客収入の減少に対する一億円は関係工事が工期の制約下に行われたとはいえ、妥当な補償とは認め難く、将来かかることのないよう厳に慎しむべきである。  (二) 前記決算については右の警告を与えること   としたほか、異議がない。  以上、朗読を終わります。
  87. 相澤重明

    理事相澤重明君) 本件につきまして討論の通告がございます。これより順次発言を許します。横川正市君。
  88. 横川正市

    横川正市君 三十七年度の決算の終局にあたって、私は日本社会党を代表して審査報告による警告を付したほか、異議ないものとして討論を行なうものであります。  まず、これらの決算の審査にあたって、前回決算審査を行なったその最後に、再びこういうような問題を繰り返すことのないように強い要請をいたしたにもかかわらず、同種のことが三たび、四たび指摘することになった点を遺憾といたすものであります。  さらに審査にあたって痛感されることは、議会の審査にあたって議会側の不備を補うため行政諸関係者の協力についてであります。各案件に対し、できれば質問を受けないことを望むといった態度等が見られ、指摘を回避するような好ましくないことは慎しんでもらいたいと思います。さらに私は決算の重要性から見て、みずから積極的に審査に協力をし、資料等についても進んで議会に提出するように努力すべきでありまして、この点今後の問題として強く要望をいたしておきたいと思います。  決算の取り扱いについて、さらに本院決算委員会は、予算執行の結果を、国民の立場に立って正当かつ公平な審査を厳正に行なうべきものと考えておりますが、しかし、その重要性を認めながら、その意を尽くすことのできなかった点を強く私どもは反省をいたしております。これが是正のためとして、できれば本院における決算の取り扱いについては、まず本会議に決算案件を付して、決算の内容に対する疑問等を国民の前に明らかにされるよう取り扱うことが必要であろうと考えます。  さて、本決算におきましても、また公務員地位を利用する悪質な事件あとを断たず、また法の盲点を利用して脱法行為による不正案件も目立っていることは、寒心にたえないところであります。これらを通して、直感的に公務員の綱紀の紊乱を目のあたり見せられるようで、極端な表現をかりなくとも、担当者の無責任と内部の腐敗を私どもは不愉快な思いで見せられたのであります。それゆえに国損に対して発見されたものは不運、だれもがやっているといった等の非良心的な無反省で予算執行に当たっておるということは、言語道断なことでありまして、責任者の厳戒を要するところだろうと思います。  国や公社等を検査した結果、その処理に疑問や納得がいかなかったところがあるとして、公文書で質問を発する事項は、毎年一万件を下らないといわれておるのでありまして、いまの検査能力においてこのとおりでありますから、全体の何割かに該当するものだと思います。こういうような予算の執行については、国税の使用ということが日の丸親方というような考え方で、国民に奉仕する精神というものは、全く欠けた結果であると考えるわけであります。  また、法に対する厳正さも、たとえ法律に違反しても、限られた国の予算の中から効果をあげるためとか、積極的な陳情、地元の熱意等で用地の提供がなされた結果、地元負担より実利が多いとか、自発的な提供は地財法に違反しないなどは、税外負担の重大性を無視し、また法律無視の行為が数ある案件となって出てきている。そういう根本に問題があると思いますので、行政を行なうものの良心の麻痺を見るような結果になり、この点はすみやかに是正されるべきものと強く指摘をいたしたいと思います。こういうようなことは、いっときも早く改善をされるべき問題ではありますけれども、毎年繰り返して指摘をするというようなこういうことに対して、私は検査の結果、あるいはまた審査の結果から厳罰主義を押しつける、こういう考えで言っておるわけではありませんけれども、やはり反省のあとの見えないそういう問題に対しては、その処理や罰のしかたに対しては、一段とこの点について考究すべき問題があると思うのであります。いずれにいたしましても、具体的な問題で今年より明年は、こういうようなことが一件でも二件でも少なくなるように、また行政のその全体に対して国民からの信頼が起こってくるように、当然このことについて行政当局の注意を促すものであります。  さらに会計検査院立場に対しては、指摘事項や国会への報告件数が多いということだけにとらわれることなく、行政の根本に触れて姿勢を正し、もって行政能力により国損を全部消滅させるというまでに厳として処置すべき点があろうかと思われますので、この点については一そうのくふうが必要であると思います。  以上、私は申し上げまして討論を終わります。
  89. 相澤重明

    理事相澤重明君) 野知浩之君
  90. 野知浩之

    野知浩之君 私は自由民主党を代表いたしまして、昭和三十七年度決算につきましては、お手元に配付されております委員長及び理事打ち合わせ会の結果を取りまとめた議決案どおり議決することに賛成いたすものであります。  昭和三十七年度決算の審査にあたりましては、前年度決算と同様、会計検査院検査報告中心の審査に限ることなく、むしろ、国会としての独自の立場から、国会が議決した予算及び関係法律が、はたして適正かつ効率的に執行されたかどうかという点を主眼といたしまして、さらに必要とあれば政策の批判にまで及ぼうという大きな視野に立って、決算の総括的及び個別的審査を行なってきた次第であります。その結果、政府に対し将来の財政運営上改善を望みたい事項は、議決案に列記されているとおりでありますが、この際、特に次の点を申し添えておきたいと存じます。  まず、防衛庁、農林省等における不当事項、郵政省における不正行為など、会計検査院によって指摘される事項が、その件数において、その金額において旧態依然たるもののあることは、はなはだ遺憾であります。これらは当該責任ある公務員の綱紀の厳正が十分に保たれていないことに基づくのでありまして、毎年度決算審査の結果、繰り返し声を大にして申し上げていることでありますが、ここにあらためて内閣に対し、綱紀の弛緩を厳に戒め、不当不正事項を絶滅し、もって公務員が全体の奉仕者として、国民の信を失うことのないよう、特段の努力を傾けていただくことを切に要望するものであります。  ことに業者との関係の深い当事者におきましては、業者との接触に際し、常に清廉な心を持して事に臨むことはもとより、いわゆる「瓜田に履を納れず、李下に冠を整さず」いやしくもはたから疑いの目をもって見られるがごとき言動にわたることのないよう、格段の自重を切望する次第であります。  昨年九月、内閣行政改革に関する意見書を提出いたしました臨時行政調査会は、その予算、会計に関する意見の中で、予算の執行及び決算が軽視されていることを問題として、予算の執行実績を具体的に把握し、さらに決算の結果が予算に十分反映されるようにしなければならないと主張しているのでありますが、この点、私も全く同感であります。  私はこの際、政府が臨時行政調査会答申の趣旨を、将来十分生かすための具体的施策を講ぜられますよう強く要望いたしますとともに、国会の決算審査に対しましても、ただ、単に一そう協力するというだけにとどまることなく、むしろ、積極的にこれに耳を傾け、その声を財政運営上現実に生かしていくという心がまえに徹することを切望いたしまして、私の討論を終わります。
  91. 相澤重明

    理事相澤重明君) 二宮文造君。
  92. 二宮文造

    ○二宮文造君 私は公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和三十七年度決算外三件を承認できないことを表明するものであります。  この際、特に申し述べたいことは、先ほど朗読されました本件審査の結果に関する案文は、今後の予算執行にあたって、政府に対する警告決議にも相当するもので、まことに重要であり、それに異議を抱き、あるいは反対いたそうとするものでないことを明らかにしておきます。したがって不承認の意思は、前記審査報告案文の「(二)前記決算については右の警告を与えることとしたほか、異議がない。」という字句に対するものであります。以下、先ほどの本委員会の警告案文と重複することを避けながら、若干の点につき承認できない理由を申し上げます。  第一点は、この決算が国会提出されますまでの過程について疑点が残るのであります。御承知のように憲法第九十条におきましては、「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会提出しなければならない。会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。」と規定し、会計検査院は、会計検査院法、財政法、国有財産法等々の関係法に基づいて組織と権限がきめられているのであります。  この組織と権限が憲法並びに法律によって保障されているのは、検査院機能の発揮によって、国民大衆の生活に利益をもたらさねばならぬからであります。またその責務を検査院に果たさせるためであります。  ところが検査報告を見ましても、委員会の審議の中で表明されました検査院当局の意見を聞きましても、検査院が国民大衆のために背負っている責務を十分果たそうとする姿勢とは受け取れませんし、多分に行政の現状あるいは惰性に流されている点がうかがわれるのであります。たとえば、本決算委員会において指摘したように、文部省所管の国立高専の用地等につきまして、地方公共団体より国が無償借り上げしている事態が、全国的に国の施策として実行されておるにかかわらず、三十七年度検査報告には何の報告も記載もなされていないのであります。  当委員会では、何人もの同僚委員が、あるいは地方財政再建促進特別措置法の立場から、また財政法、地方財政法の立場から、法律違反の疑いが濃いとの質疑が行なわれたのであります。昭和三十九年三月二十六日、会計検査院第二局長は、本院の予算委員会第二分科会で、三十七年度、八年度の設置校についていえば、期成同盟会等から敷地の寄付申し出のあるものはあるが、文部省はまだこれが寄付採納をしていない。同盟会から寄付を受けることが脱法行為であるかどうかは、同盟会の実情を十分調査して、また裏面の事情等を十分検討した上でないと、一がいには申されない。文部省側がまだ未処理段階であるから、会計検査院としてなお検討したいと思う。また、会計検査院はこれに対していろいろ検討はもちろんいたさねばならないが、文部省において寄付を受けるかどうかきまりましてから意思表示をいたしたい、とも答えているのであります。  これが会計検査院法の各条を忠実に実行している機関の態度とは、どうしても思えないのであります。文部省の寄付受納が決定しなければ、院法第二十五条の常時検査規定と、院法二十条の是正をはかるとの規定は死文となるおそれがあります。  また、国立高専の用地を寄付しているのは、同盟会等と述べておりますが、その中に、地方公共団体から国が地方財政法第十二条、再建特別措置法二十四条二項本文の禁止規定に違背して寄付を受けていることを隠しているわけであります。  また、同じく用地について、地方公共団体より無償借り上げの実態となっているのに対して、検査院は、このように長期間にわたりペンディングの状態で、当該の土地を借り上げる、あるいは使用している事態は、会計検査院といたしましても好ましい事態であるとは考えられないと答弁しておりながら、国の債権管理に関する内部規則の制定、あるいは法定、あるいは法令、制度または行政に関する処置を要求することなどを通じて、実質的な是正、改善の方向に努力していないのであります。  そのため、当決算委員会でたび重なる質疑が行なわれているにもかかわらず、四十年度予算でも、全く同様の方法で、国立高専の設置がなされようとしておるのであり、会計検査院としての院法第二十九条第三号の「検査の結果法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項の有無」に関する検査報告必要掲記事項、並びに院法第三十四条、第三十六条の改善の意見または処置を要求するという規定を立法精神どおり解釈して、財政秩序の確立、ひいては会計検査院の権威を保持すべきであるとの疑義が残るのであります。  したがって、そうした過程での検査院検査しか受けていなかったこの三十七年度決算は、内閣国会提出以前において大きな欠陥があるはずでありますし、言いかえるならば、憲法規定に基づく検査を十分に実施しないで出された本決算の内容を承認できないのであります。  さらにさきの国立高専の用地問題においても指摘しましたが、政府はその財政運営には法の規定を遵守すべきであります。今日、地方公共団体は、国の補助金あるいは負担金について明らかに超過負担の重圧にあります。義務教育施設、公営住宅、国民健康保険、国民年金事務費など、国の負担区分が適正でないために、全国都道府県市町村の財政全般にわたって影響し、それが直ちにいわゆる住民の税外負担にはね返っていることは、周知の事実であります。財政の効率的運用は当然のことながら、このように政府はしばしばその誤りをおかしているのであります。問題の国立高専用地取得は、一方で、支出に計上すべき費用を計上せず、他方では無償で財産を取得したり、無償借り上げを行なうなど、実質的に見て支出と収入の混同を来たし、財政法の精神から見て、区分処理の原則を、形式的にはともかく実質的に破壊し、しかもそれが偶発的でなく、全国的な年次計画の中で行なわれ、現に四十年度においてもこの種方式が計画されていることは、全く理解に苦しむところであります。ここに政府の善処を求めるゆえんがあり、その意味でも三十七年度決算について承知しがたいのであります。  さらに内閣の決算提出に関する趣旨についての疑義であります。本日、委員長より御提案なさって賛否の意思をお問いになっているのは、昭和三十七年度決算そのものではなく、審査報告書案なのであります。したがって、内閣国会提出に対して、決算委員は直接賛否の意思表示をしないという取り運びになっているわけであります。それが決算取り扱いの慣例とは申せ、はなはだ不本意なものが残るのであります。決算審議の過程を通じて財政運営の姿勢を正し、その効率的運営の指針とすることが望ましいわけであり、決算提出の方式から改正すべきであると思うのであります。したがって、ここに従来の慣例どおりおざなりの報告扱いの提出方式をとっている三十七年度決算につきまして承認しがたいのであります。  以上政府の格段の配慮を強く要望して、不承認の討論といたします。
  93. 相澤重明

    理事相澤重明君) 田上松衞君。
  94. 田上松衞

    田上松衞君 民社党を代表して、昭和三十七年度一般会計歳入歳出決算外三件に関しまして、委員提出の議決報告に賛意を表しつつ、本決算を承認することを前提として討論いたします。  とかく決算の審議というものは、予算審議と異なりまして、死んだ子の年を数えるものだという観念が、従来の日本国民の多くにあったことは遺憾のきわみでもありまするが、大きく反省を求めらるべき事柄であると痛感しておるわけであります。  最近ようやくすぐれた先進国の知能にならい、わが国でも、政党や会社、あるいは各種団体等の中に、予算審議の前にまず過年度決算の審議に真剣に取り組むべきことを必要とするという空気が発生しています事柄は、すでに識者の関心を誘っていることでもあり、少なくとも行政当局者とともに会計検査院等は特にみずからの実践を通じて、国民のすべてにこうしたものの考え方、あり方等を指導をすることが今日要望さるる国づくり、人づくり等の角度から見ましても必要なことだろうということを考えるわけであります。  私個人といたしましては、きょう初めてのピンチヒッターでありまして、二十数回にわたりますところの本委員会での審議には参加しておりませんですけれども、いま申し上げるような感覚を持ちまして本委員会の審議状況をながめておったわけでありますが、その中で痛感いたしましたことは、国民を代表する立場での本委員会の委員の諸君が、切実真剣に審議をなされているのであります。これに対応いたします行政当局の日常不断の反省と努力と及び勇気が不十分というよりもむしろ欠如しておったといううらみを感ずるわけであります。  いま限られた時間の中で、その具体的な事例を一々列挙することの煩は避けますけれども、しいて一、二点だけをあげてみますならば、委員提出の議決報告にものぞかせていますとおり、まず根本的な行政姿勢がよたよたしてしまっているという事柄であります。どことなしにたよりない、足りない抜けているものがある、こういうものが感じられるわけであります。この姿勢の中に頑強な柱を一本ぴしゃりとぶち込むことが、私は絶対必要である、こういうことを感じました。  公務員の綱紀紊乱に関しては、その原因を明確に究明し、把握いたしまして、これが措置を厳正に講ずることによりまして、国民の信頼にこたえるべきである、こう感ずるのであります。  また、各省を通じまして、当初述べたように、次年度予算編成の主軸というものは、過年度決算の合理的な根拠を基本とさせる誠意と勇気と誇りを持つように努力すべきであるということが、まず姿勢として考えるのであります。  さらに補助金等の整理統合の上に見る経理面の実績の不十分、不合理というようなものと問題点は、あまりにも多う過ぎると考えるわけであります。  委員報告の警告事項も、なおその一部を摘出したにすぎないものであると私どもは了承しているものであります。明敏であるべき行政当局者が、先刻朗読されましたところの委員長の報告書、さらにはただいま述べられました各党代表からの討論の中に見られますところのもろもろの警告、あるいは意見ないし要望、こういうもの等を十分にくみ取られまして、今後の生きた行政に資されるように心から要請しつつ、委員報告に賛意を表し、本決算を承認することを表明いたしまして、私の討論を終わりたいと思います。
  95. 相澤重明

    理事相澤重明君) 以上をもちまして討論通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  それではこれより採決に入ります。まず、昭和三十七年度一般会計歳入歳出決算昭和三十七年度特別会計歳入歳出決算昭和三十七年度国税収納金整理資金受払計算書昭和三十七年度政府関係機関決算書を問題に供します。本件につき、お手元に配付いたしました案のとおりに議決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  96. 相澤重明

    理事相澤重明君) 多数を認めます。よって昭和三十七年度決算は多数をもって配付案のとおり議決せられました。     —————————————
  97. 相澤重明

    理事相澤重明君) 次に、昭和三十七年度物品増減及び現在額総計算書昭和三十七年度国有財産増減及び現在額総計算書昭和三十七年度国有財産無償貸付状況計算書を問題に供します。以上の三件につきましては、いずれも異議がないとの議決をすることに、賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  98. 相澤重明

    理事相澤重明君) 多数と認めます。よって右三件は多数をもって異議がないと議決されました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の内容につきましては、ただいまの本委員会の議決内容によりこれを作成することにいたしまして、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 相澤重明

    理事相澤重明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、大蔵大臣より発言を求められておりますので、これを許します。田中大蔵大臣
  100. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) ただいま御決議の点は、十分尊重いたしまして、各省各庁と十分連絡をいたし、その趣旨の徹底をはかりまして、万遺憾なきを期したい所存であります。
  101. 相澤重明

    理事相澤重明君) 本日は、これにて散会いたします。    午後一時散会