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1965-03-18 第48回国会 参議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十八日(木曜日)    午前十一時十五分開会     —————————————    委員の異動  三月十六日     辞任         補欠選任      木内 四郎君     鈴木 一司君      青柳 秀夫君     鈴木 万平君      山本 利壽君     中山 福藏君      沢田 一精君     小林 武治君  三月十七日     辞任         補欠選任      鈴木 一司君     木内 四郎君      鈴木 万平君     青柳 秀夫君      中山 福藏君     山本 利壽君      小林 武治君     和田 鶴一君     ————————————— 出席者は左のとおり。     委員長         小柳 牧衞君     理 事                 草葉 隆圓君                 長谷川 仁君                 森 元治郎君     委 員                 木内 四郎君                 山本 利壽君                 岡田 宗司君                 加藤シヅエ君                 佐多 忠隆君                 羽生 三七君                 曾祢  益君                 佐藤 尚武君                 野坂 参三君    国務大臣        外 務 大 臣  椎名悦三郎君    政府委員        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省アメリカ        局長       安川  莊君        外務省条約局長  藤崎 萬里君    事務局側        常任委員会専門        員        結城司郎次君    説明員        外務省条約局外        務参事官     佐藤 正二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百  十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五  年十一月六日にへーグで、千九百三十四年六月  二日にロンドンで、及び千九百五十八年十月三  十一日にリスボン改正された工業所有権の保  護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条  約の締結について承認を求めるの件(内閣提  出) ○千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百  二十五年十一月六日にへーグで、千九百三十四  年六月二日にロンドンで、及び千九百五十八年  十月三十一日にリスボン改正された虚偽の又  は誤認を生じさせる原産地表示防止に関する  千八百九十一年四月十四日のマドリッド協定の  締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○国際情勢等に関する調査  (国際情勢に関する件)     —————————————
  2. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  本日は、まず千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にへーグで、千九百二十四年六月二日にロンドンで、及び千九百五十八年十月三十一日にリスボン改正された工業所有権保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約締結について承認を求めるの件。及び、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にへーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、及び千九百五十八年十月三十一日にリスボン改正された虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示防止に関する千八百九十一年四月十四日のマドリッド協定締結について承認を求めるの件の二件を一括して議題といたします。いずれも本院先議でございます。  両件の提案理由説明はすでに聴取いたしましたので、本日は、補足説明を聴取いたします。佐藤参事官
  3. 佐藤正二

    説明員佐藤正二君) ただいま議題となりました、リスボン改正された工業所有権保護に関するパリ条約、それから原産地表示防止に関するマドリッド協定について、補足説明させていただきたいと思います。  工業所有権保護条約は、明治十六年にパリで初めて現条約締結されまして、わが国明治三十二年にこれに加入しております。戦前、次々に、いまお話のありました改正がございましたわけでございますが、そのつど参加しておりまして、現在は、一九三四年−昭和九年に開かれました外交会議でつくられましたロンドン改正当事国になっております。  工業所有権と申しますのは、これは御説明の必要もないと思いますが、特許権とか実用新案権だとか、あるいは商標権意匠権というような、産業上のいわゆる無体財産権を総称することばでございますが、このような特殊財産権保護につきましては、各国はそれぞれ自国の実情に即して国内法保護措置をとっているわけでございます。しかし、だんだん国際的な交流が激しくなってまいりまして、物や技術も導入されるということが非常に多くなってまいりますと、工業所有権保護ということが、実際的に保証していく実際上の必要が出てくるわけであります。つまり、物や技術を輸出するような場合に、それらについての特許権だとか商標権というようなものが、輸出先国で法的に保護されていないと、その工業所有権者が不測の損害をこうむるというような危険もあり得るわけであります。そこで、工業所有権というものを統一のとれた形で国際的に保護していこう、そういう要請が生じてくるわけでございます。各国がそれぞれの国内法で行なっている工業所有権保護は、それぞれの国における商慣習とか、技術的な水準の程度だとか、あるいは法体系の問題だとか、そういうふうな問題が反映されまして、保護の態様が必ずしも同じであるわけではないわけでございます。そこでパリ条約は、まず条約当事国はほかの当事国国民に、自国民に与えられた待遇を与えることを約束し合っておるわけでございます。パリ条約に入れば、その参加国国民は、ほかの当事国において、工業所有権保護については、その国の国民と同等の権利及び便益が享有できる、そういうふうなたてまえになっております。それがこの条約の第二条でございますが、こういう制度になっておりますので、その物や技術を輸出する場合には、相手国パリ条約当事国であれば、その国で所定の手続を踏む限り、その国の国内法令に従って、特許権なり商標権なりというものを取得して、その保護が保証される、そういうふうなことになっているわけでございます。ただその内国民待遇だけでございますと、先ほど申し上げたとおり、各国国内法がいろいろ変わっておりますために、必ずしも十分な保護ができるというわけにもまいりません。それからまた、通常外国に住んでいる人が、たとえば日本に住んでいる人がフランス特許権なり何なりをとるということになるものですから、同じ手続をするのにもそれだけ時間がかかりますし、それから、いうんな問題で、手続その他でも不案内というようなハンディキャップがあるのでございますから、そこで、パリ条約では、特許商標出願については優先権制度というものをとりまして、この当事者の保護をはかっておるわけでございます。これは、どこかの条約当事国、たとえば日本特許出願、または商標登録出願工業所有権出願をした者は、特許については十二カ月、商標については六カ月というような優先権が与えられまして、ほかの当事国出願する場合は、その期間内に他人が先に出願してもこちらのほうが優先権がある、そういうふうな形になっておるわけでございます。これが原則規定でございまして、あと実体規定になるわけでございますが、こういった優先権制度で裏打ちされた内国民待遇相互供与義務というものがパリ条約の基本的なものなんでございますが、これだけじゃ十分な保護にならないために、パリ条約では、工業所有権国際的保護に必要とされる、各国が実質的に支障のない程度で、実体的内容について国際的基準を設けるということを規定しております。これは、実体規定内容については、特許権が実施されないままに放置されて、まあせっかくの発明が公共の利益のために活用されないというようなときに、特許の不実施を防止する規定だとか、それから、周知されている商標保護する規定だとか、そういうふうな非常に、何といいますか、基本的なものに対して統一法をつくれというような規定パリ条約の中に入れているわけでございます。  で、今度リスボン改正されました規定内容と申しますのは、これは非常に技術的なものでございますから、特に詳しく御説明することもないと思うのでございますが、一、二申しますと、たとえば条約によって保護される工業所有権の範囲にサービス・マークを入れたとか、商標権者の代理人や代表者が、商標権者の許諾を得ないで、かってに商標を登録出願する、そういうふうなことから商標権者保護する、そういうふうな規定を設けております。まあ、パリ条約については大体こんな程度でございます。  次に、原産地虚偽表示防止に関するマドリッド協定について、簡単に御説明いたします。このマドリッド協定と申しますのは、この前に御説明いたしましたパリ条約との関係は、ちょうど一般法特別法というような関係になっております。パリ条約の一部の規定について、これだけじゃ保護が足らないじゃないかということで、特にこれは自国同種系統の産品を産出する国が主唱してつくられたものでございます。したがって、フランス、イタリー、スペインというようなところの主唱によって作成されたものでございます。この協定につきましても、日本は戦後昭和二十八年にこれに加入しておりますが、わが国が現在当事国になっておりますこの前のいわゆるロンドン協定と申しますものは、これは簡単な協定でございますが、簡単に御説明申し上げますと、協定のいずれかの当事国、また国内場所を、たとえばシャンパーニュとかなんとかというような場所をあたかも原産地のような形で表示している、そういうふうないわゆる虚偽表示でございますね、シャンパーニュでできていないブドウ酒を、シャンパーニュ表示している。そういうような表示があった場合には、その生産物に対して、輸入の際において差し押え、輸入禁止等制裁を加えることができる。これが一番主要な規定でございます。それからそのほかに、原産地について、公衆を欺くような広告をやってはいかぬ、こういうような趣旨協定であります。今度のリスボン改正いたしましたのは、いままでは原産地虚偽表示に限っておりましたのを、今度の改正で、いやしくも原産地について誤認を生じさせるというような表示についても、同じような制裁ないしは禁止というようなものをかけるというのが、リスボン改正の主要な改正点でございます。  これらの改正条約及び協定に加入するについては、国内法を一部改正しなくてはならないわけでございますが、この点は、特許法等の一部改正法案及び関税定率法の一部改正法案という形で、別途商工委員会のほうにおはかりしているわけでございます。簡単でございますが……。
  4. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) 以上で説明は終了いたしました。両件の質疑は後日に譲ることにいたします。     —————————————
  5. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) 国際情勢に関する調査議題といたします。  本日は、当面の国際情勢について外務大臣質疑を行ないます。なお、大臣出席は午後一時三十分まででございますが、先刻の理事会で協議の結果、質疑の順序及び時間につきましては、社会党が七十五分、公明党が十五分、民社党が十五分、共産党が十分と決定いたしておりますので、その点お含みの上御発言を願います。羽生委員
  6. 羽生三七

    羽生三七君 きょうはベトナム問題で外相所見を伺いたいと思いますが、実はこの問題は、去る二月十七日、参議院の本会議で私緊急質問佐藤総理に伺ったのでありますが、当日外相は韓国を訪問されることになっておりましたので、御答弁を承ることができませんでしたが、その後の予算委員会におきましても、ほとんどの質問佐藤総理に集中しておりますので、ベトナム問題について外相意見を詳しく承る機会がなかったので、きょうあらためてお伺いすることにいたします。  それで、外相はさきに、ベトナム問題についてはある程度これはやむを得ないという肯定的な発言をされておったと思いますが、最近のこの拡大するベトナム危機を前にして現在どのようにお考えになっておるか。まず最初に、外相所見をお伺いをいたします。
  7. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) やはり北越からの指令あるいは人員、物資の浸透が基調をなして、そして南越に対するテロ、破壊行動その他の攻撃が行なわれておるという事実を肯定する限りにおいては、最近における南越及び米軍側のこれに対する反撃は、これはやむを得ざるものである。かように考えます。
  8. 羽生三七

    羽生三七君 これは非常な重大な御発言をなさっておると思います。世界中がこれだけ心配しておるのに、アジアの一国である日本外相が、依然として今日のような事態になってもこれをやむを得ないとして肯定をされておる。佐藤総理の場合ですら、そんな発言をされておりません。それで、もし、この爆撃がだんだん北方へ及んでおるわけでありますが、さらにこの戦争拡大をしていく場合、これは中には事態収拾のために有利な条件を獲得するための北ベトナム爆撃ともいわれておりますが、かりに事態が収拾できなくて戦争がさらに拡大をして、朝鮮戦争の二の舞いのようになったときには、これはどうなりますか。そのときに一体日本立場というものは責任上どういうことになるのでありますか。いまのような御答弁でいいのでありますか。
  9. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あくまで現実事態に対しての私は発言をいたしておるのでありまして、将来についての予想に対しては、まだ何も申し上げておらぬのであります。
  10. 羽生三七

    羽生三七君 これはとんでもないことだと思います、私は。将来のことについて——将来拡大しては困るから現時点でどう収拾するかということを質問しておる。
  11. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 適当な限度を越えた拡大は、もちろん、これはもう日本としては望まないことでございまして、これに関しましては、あらゆる機会においてアメリカに対してこの意思を表明しておるのでございます。
  12. 羽生三七

    羽生三七君 佐藤総理は、参議院の本会議の私の質問の際に、こう答えております。「過日訪問した際にも、意を尽くしてベトナム問題についての意見の交換をいたしました。その後におきましても、外務省を通じまして、それぞれ連絡を持っている。」——これは速記録のとおりに読んでおる。いま外相も、アメリカにいろいろな意見を述べておると言いましたが、具体的には日本外務省としてはどういう連絡を持っておるのか。何をアメリカに言っておるのか、お聞かせいただきたい。
  13. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 向こうのほうから反撃意図をあらかじめ知らしてくる場合が、一、二回ございました。そういうような場合にはもちろんのこと、一々ここではっきりまだ覚えておりませんので申し上げかねますが、あらゆる機会をとらえて、そうして、戦火拡大はこれは日本としても望まない、できるだけ戦火拡大を控えてもらいたい、かような意思表示は絶えずやっております。
  14. 羽生三七

    羽生三七君 それは、先ほど外相が言われた、やむを得ざる処置という御答弁と非常にこれは食い違っておると思うのです。そこで、アメリカから爆撃のつど日本了解を求めてくるといいますが、その場合に、外相が、いまのように、拡大を望まないというのはそれはわかりますけれども、日本から積極的にアメリカに対して不拡大要請するというようなこと、そういうことはやらないのですか。向こうから爆撃する際に日本了解を求めて、それについてどういうことを言っておるかそれは知りませんが、日本から積極的にアメリカ戦争不拡大を求める、そういう意思表示というものを外務省はやっておらないのですか。
  15. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは、先般総理が訪米の際私もついて行きましたが、これは爆撃があったからどうというものじゃなしに、ベトナムにおける戦火拡大はこれは望まない、できるだけこれは拡大しないようにしてもらいたい、こういうことを概括的に話してありますから、それをただ繰り返すということは意味がないことであります。このことは最高首脳者から向こう最高首脳者に対して話してあるのであります。
  16. 羽生三七

    羽生三七君 それはね、繰り返しては意味がない——そんな外交認識でどうして世界じゅうが関心を持っておる重大な事件に対処することができますか。これはもう機会あるごとに繰り返し繰り返しそれを述べるところに、不拡大を述べるところに日本外交の私は意味があると思う。そこで、いよいよ爆撃がだんだん北へ及んでいく場合、いまソ連や中国も一応声明の程度でとどまっておりますが——あるいは若干の武器援助はあるかもしれません——しかし、もしこれがいよいよ拡大する方向に進んだ場合にどうなりますか。そのときに、あと、もう取り返しがつかないような事態になったときに何の発言をしたって全く意味のないことだと思います。そういう意味で、日本が積極的に、この場合すぐアメリカ軍の撤退というようなことは、日本外務省としてはあるいは政府としては言えなくとも、少なくとも軍事行動を即時停止して、いずれかの形にしろ国際会議等の場で事態収拾をはかるような、そういうアメリカの態度の変換を求めるということは、これは当然あっていいことで、繰り返して述べて意味のないというようなことで外交なんかできるはずはありません。繰り返し繰り返し、不拡大を述べるだけじゃなしに、事態収拾のための積極的な姿勢日本アメリカに対して要求すべきではないか。いかがですか。
  17. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 繰り返すか繰り返さぬかということの問題でございますが、あらゆる機会をとらえてこの申し入ればするつもりでございます。  それから、今後の問題につきましては、いままでのところこれはやむを得ざるものと、こう考えておるのでございますけれども、今後どの点まで一体これはやむを得ざるものであるか、あるいはそのやむを得ざる限度を越えるものであるかというようなものにつきましては、これは現実に即して判断をいたしたいと、かように考えております。
  18. 羽生三七

    羽生三七君 いままでは南ベトナム要請によってということで来たわけです、きょうまで。ところが、最近の動きを見ておりますと、いまやアメリカ軍が、米軍が直接介入するということになってきております。ですから、いままでの日本外務省説明というものはかなり根拠が薄弱になってきたわけです。南ベトナム要請というよりも、むしろアメリカ軍が直接この戦争介入しておる、こういう事態になってきて、いま外相が、今日まではとにかく、今後のことは十分考えて検討するというお話でありましたが、そんななまぬるいことでなしに、積極的にその意思表示をすべきである。もういままでの外務省説明理論的根拠はかなりくずれてきております。直接介入でありますから従来と違った条件が出てきたと、だから、従来と違った、もっと積極的な姿勢をわれわれが要求することは決して不当ではない、いかがでありますか。
  19. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もともと南ベトナム政府要請によってアメリカ南ベトナムの独立と自由を守る、そういう趣旨において軍事介入をしておるのでありまして、たまたまある戦闘行為南ベトナム軍共同行為をとるとか、あるいはそうでなしに、アメリカだけの単独行動であったとかというようなことは、そう大きな区別では私はないと考えております。要請によって、この外部の侵略に対して守るという約束のもとに入っていくものでありますから、共同動作をとるかあるいは単独動作をとるかというようなことは、性格の上において非常なそこに違いが出てきたというような考え方を私はとることはどうかと考えております。
  20. 羽生三七

    羽生三七君 日本日本単独でもし動けないような場合でも、アメリカに対して直接働きかけることができないような場合でも、あるいはソ連なり、フランスなり、あるいはイギリスなり、あるいはAA諸国のいずれかの国なり、そういうところへ積極的に話をかけて、ともに共同してこの不拡大のために努力する、そういう意図もないのですか。そうすると、日本平和外交ということを、平和外交基調としてとか、あるいはアジア外交日本外交基調であるとかということを何回も言われている、具体的に日本平和外交というのは何ですか。その問題をいまのアメリカに要求するだけでなしに、関係諸国に向かって要請をして、何らかの具体的な日本外務省としての役割りを果たすべきだと思いますが、いかがですか。
  21. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ、いまそういう行動をとるかどうかということを別問題にして、平和のために単独をとるかあるいは共同動作をするか、これはいずれの場合でも平和目的のために、これが是なりと考える場合には、単独の場合もあり得るし、また、共同の場合はなおさらよいという場合も考えられるのでありまして、その形に私はこだわるべきものではない。ただし、いまのところは、さような段階ではないと、また、そういうような要請外部からない、こういう次第でございます。
  22. 羽生三七

    羽生三七君 そんなことじゃ困ると思う。外部から要請があったからやるなんて、そんなことを私は聞いているんじゃない。要請があるとないとにかかわらず、アジアの一員である日本が、しかもアジア外交基調にするということを言われて、しかも戦争がこれだけ拡大をして、朝鮮戦争の二の舞になるかもしれないといわれているような時期に、全くいまの外相お話を聞いておると、答弁を聞いておると、傍観者立場です。アメリカのやり方を肯定するだけで、積極的な不拡大、平和への希望というものはほとんどくみ取れない、そんなことでいいのですか。積極的にこの機会にさらにアメリカ不拡大のための申し入れをするという考えはありませんか。
  23. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いままでの経過から見まして、いずれもやむを得ざる行動であると、こう考えております。将来、この問題についてどういう外交方針をとって、そうしてどういう行動をとるかということについては、この際申し上げるまだ段階ではございません。
  24. 小柳牧衞

  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ほどの外務大臣の御答弁を伺っておりますというと、南ベトナム政府要請があるとかないとかということはたいしたことではない、ほぼ同じようなことである、こういうお話でございます。アメリカ軍最初ベトナム爆撃をやりましたのは、アメリカダナン空軍基地その他の基地あるいはアメリカ軍の宿舎がベトコン攻撃を受けまして非常な損害を出した、それに対する報復という形をとっておったのであります。そうして、その際にも、大体南ベトナム空軍等共同行動をとってまいりました。しかしながら、その後の発展を見ておりますというと、もうそういうようなことではなくて、アメリカ軍の兵舎もあるいはアメリカ軍空軍基地も別にやられておらないのに、ただベトコンが跳梁するということだけでどんどんと爆撃を始めております。そうして、始めのうちは十七度線のすぐ北でありましたけれども、いまやすでに十九度線を越えて爆撃をやっておるのであります。私どもは、そこに、もはやいままでとは違ったものが看取されるのであります。で、こういうような戦争というものは、不拡大不拡大言っていても拡大していくのがどうもならわしのように思われます。日本がいわゆる満州事変を起こしましたときに、常に政府不拡大方針ということを言っておりました、しかし、不拡大方針を声明するそのかたわらからどんどんどんどん戦線が拡大されていった。いまアメリカ軍ベトナムでやっておりますことは、大体においてそのような形でございます。ちょっととどまるところを知らない。最近また、伝えられるところによりますというと、あるいは爆撃がもっと北にのぼり、そうしてベトナムの軍事基地だけでなくて工業施設への攻撃考えられておると伝えられております、さらにまた最近では、アメリカの軍隊をタイ国へ上陸させる、こういうようなことも伝えられております。私どもは、まだそれが実現されてはおらないかもしれないけれども、そういうことが実現されるであろうということは予想されるほどになってきておるのであります。もはや単なるアメリカ軍に対する直接攻撃に対しての報復ではなくて、もっともっと深刻な形をとってきておる。それゆえに、世界は非常にこり問題に危倶を感じておりまして、ずいぶん多くの国々が、たとえば非同盟諸国というような中立的な立場にある国のみならず、いわば自由主義陣営の立場に立つ国においても、このアメリカのいまの戦争拡大の傾向に対してかなり強い反対がある。そうして、それに対して反対の動き、あるいは何とかしてこれを押えていこう、そうして話し合いをつけて戦争拡大を防ごう、こういう動きが出ておることは私から指摘するまでもない。日本が、ただ、アメリカのやっておることはこれはやむを得ざることだと、今後拡大されることは望ましくない、こんなようななまぬるい立場であっていいのかどうか。欧州の国はアジアに非常に遠い。しかしながら、日本アジアの国なんです。そうして、ベトナムとはそう遠い距離にあるのではない。しかも、日本におりましたアメリカ軍のうちの一部が、あるいは沖繩を飛び石にいたしましてベトナムへ出動しておるような事態も起こっております。こう考えてまいりますというと、日本がこの問題に対してもっと積極的な立場をとることは当然ではないかと思うのでありますが、ただいまの外務大臣お話を聞いておりますというと、まことにどうも消極的で、暗にアメリカを支持する、こういう態度でございますが、外務大臣は、いまたとえばソ連外務大臣がイギリスをたずねて、イギリスの外相ベトナムの問題を収拾するために話し合いをしておること、あるいはソ連フランスの間においてこの問題について話し合いが行なわれておること、ウ・タント国連事務総長が一つの提案をなして動いておること、こういうことは御承知だと思うのですが、それらの内容について、国連大使なり、イギリスにおける駐英大使なり、あるいは駐仏大使なり、駐ソ大使なりから報告があって御承知であるかどうか、まずこの点をお伺いしたいのであります。
  26. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ソ連外相とイギリス外相との会談につきましては、まだわがほうの在外公館から詳しい情報は得ておりません。また、フランスも同様でございます。ウ・タント事務総長の提案というのは、個別に数カ国の出先の代表者に話をしたことが漏れて新聞に伝わったようでございますが、必ずしもフォーマルな形式で一斉に呼びかけたという程度のものではまだないのであります。したがって、この問題に対するウ・タント事務総長の考え方はまだ全貌としてつかみ得ない状況でございます。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 フォーマルかインフォーマルか知りませんけれども、ウ・タント事物総長がそういう提案をなしたということは、これはもうまぎれもない事実でありまして、アメリカ政府もそういう提案があったということを言っておる。しかも、先週武内駐米大使はアメリカの国務省をおとずれ、そうして、このベトナムにおけるアメリカ行動の今後の意図といいますか、そういうことについて聞いておるようでありますし、あるいはまたウ・タント事務総長等からなされました提案に対してアメリカがどういう態度をとるかということを聞いておると伝えられておる。日本の国連大使もニューヨークでぶらぶら遊んでおるわけじゃないと思います。そういうような重大な問題があったときには、積極的にウ・タント事務総長に接触をして、そうして、ウ・タント事務総長がいかなる意図を持ってそういう提案をされたのであるかということは少なくとも確かめなければならない任務は持っておる。もしそれをしておらぬとすれば、これはたいへんな怠慢だと思う。このウ・タント事務総長の提案なるものは、いまだほんとうにキャッチしていたいのですか。その点もう一ぺんお伺いしたい。
  28. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまジュネーブ会議当事国九国の中から、直接当事国を除いた他の七カ国に呼びかけて、そうして何とかこれを収拾する道はないかというような意図を持って話しかけたという程度のことでございまして、その内容につきましては、ウ・タント事務総長の十分なる、具体的な提案はどうもまだなされないように思われる、こういう報告でございます。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 国連の事務総長がこういうような事態の収拾に動き出したということは、お認めになるのですね。
  30. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは認めます。
  31. 岡田宗司

    岡田宗司君 日本外交は、国連を尊重していくと、こういうたてまえであると思う。また、国連の事務総長がこのベトナム問題を収拾するために動くということは、これはやはり世界にも非常に大きな影響を及ぼしますし、また、ソ連フランス、イギリス等が動いておりますのとも関連して、私どもかなり重要な手がかりになるものと思う。外務大臣はこのウ・タント事務総長が始めました、こういう時局収拾のための動きというものについて、これを支持されるのでありますか。それとも、支持されないということで、黙って傍観をしているという態度をとられるのか。それとも、アメリカのとった措置はやむを得ないのであるから、そういうウ・タント事務総長の提案なんかはこれは必要のないことである、こうお考えなのか、その三つのうちのどういう立場をおとりになるか、はっきりお答え願いたい。
  32. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まず問題のしさいを考えてみるならば、アメリカ南越政府要請によってその独立と自由を守るために軍事介入をしている。したがって、北からの侵略がもうはっきりとまったということが確認できるならば、いつでも軍を引く、軍事行動をやめる、そうして話し合いによって南越の独立と自由を守る会談に入る、こういうことを言っているのに対して北越は、べトナムのことはベトナムにまかせろ、まずもってアメリカがいま軍を撤退することが唯一の解決の方法である、こういうことを言って、南越の独立と自由をどうするかということについては何らの約束はない。結局、アメリカ軍の撤退後においては、これは北越の支配にまかされる、こういう事態が明瞭である、こういうことでございまして、双方の意思が全く食い違っている。この場合に一体どうすれば問題の根本的解決になるかということに私はあるであろうと思います。そこで、この問題をどうして収拾するかということについて、それぞれ関係各国が大いに頭を悩ましており、日本におきましても、またしかりでございます。それで、このウ・タント事務総長の行動を待たず、日本といたしましては、同じアジア、同じ東南アジアに位しておるのでありますから、政治的にも経済的にも、あらゆる面において非常な関心を持たざるを得ないのであります。この問題の解決に役に立つということならば、日本はいかなることでも骨身を惜しまない。しかし、ただ問題を紛糾させるだけ、あるいはまた効力のない、効果のない動き方をするというだけでは、日本外交というものを軽んぜしめるということにただなるだけでございますから、その点は十分にタイミングをはかってそして単独で、あるいは共同して効果のある外交行動がとれるという場合には、これは率先してとるべきである、こう考えておりますけれども、今日の場合、まだそういうチャンスが出てこない、こういうのがわれわれの考え方であります。
  33. 岡田宗司

    岡田宗司君 いまのお話を伺っていますと、ウ・タント事務総長等の提案というものは、どうも両方の主張が食い違っておるので、なかなかそれをまとめるということができそうにもない。だから、そんなものはいまのところむだだ、そういうふうにお考えになってるようにとれる。そして、もう少したったら、あるいはもっとずっと長くたったら、あるいは日本は独自でそういうことをやるのだというふうにも承れるのですけれども、いまこそ私はこの重大な時局に臨んで、日本がやはり何らかの形でこの事態の収拾に寄与するところがあってしかるべきだと思うのであります。日本がイニシアチブをとって、日本が世界をリードして、そしてこの問題を片づけるというようなことを言うよりも、むしろ、ウ・タント事務総長なりジュネーブ会議の議長国なり、あるいは前から関連があるフランスなりというものが動き出しておる。こういうようなときこそ、日本がやはりそれらの国々と歩調を合わせるなり、協議をするなりして、やはり事態の収拾に動き出すということが必要じゃないか、いまこそその時期ではないかと思うのでありますけれども、外務大臣は、いままだその時期ではない、ぽかんとして見ているほうがいいんだと、こういう考え方なんですか。そしてまた、ウ・タント事務総長等のやっておることは、まだ両方の主張に食い違いがあって、とうていまとまりそうもないから、そういうものはむだだ、だから日本としては、それに対しては考慮する必要はない、こうお考えなんですか。そこをはっきりさしていただきたい。
  34. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ウ・タント事務総長としても、十分に問題の核心を理解した上での行動であるということも、われわれは信頼しておりますし、決してこういうことがむだだということは考えておりません。ただ、まだ働きかけた数国の間の会合も持たれておらない、こういう段階でございまして、もしウ・タント事務総長のほうから、日本日本としての一つの役割があるからひとつ共同してやろうではないかというような申し出があればもちろんのこと、あるいはなくとも、おそらくむだにはならない、十分に有効に動けるという確信がつけば、これはもうあらゆる場合において日本が言っておるとおり、日本が応分の協力をするということに決してやぶさかでない、こういうことを言っておるのでありますから、ただぽかんとして見ておるというような態度ではございません。
  35. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、ただいまのお話から、ウ・タント事務総長なり、あるいはその他の国々が、今後この事態を収拾するために動き出す、そういう場合には、協力を要請されなくても日本はそれに協力をする用意がある、こういう御発言と解してよろしいのですか。
  36. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだウ・タント事務総長の提案がはっきり形を整えない今日の段階において、用意があるというようなことはいささか先走り過ぎておると思います。
  37. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、日本としては、ウ・タント事務総長なりあるいはその他の国国の動きが具体的になってきたならばこういう調停の動きに対して協力をする、こういうことはあり得ることなんですね。
  38. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それが合理的な事態の収拾ということを目標にする限りにおいては、そういうことはあり得ると考えております。
  39. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは次に伺いますが、韓国の外務部長官がいまアメリカへ行っております。アメリカアメリカ政府に対して、韓国はさらに一個師団戦闘部隊を南ベトナムに派遣する、こういうことを言っておる。前にすでに二千の工兵部隊その他の特殊部隊を送っておりますが、そういうように、韓国はきわめて積極的に南ベトナムを支援し、アメリカ行動を支持しようとしておる。で、これは韓国がアメリカ要請に基づいてやったものと私は承知しておりますが、そのアメリカ要請に非常に積極的にそういう計画を進めようとしておる。アメリカは、韓国のみならず、昨年の秋、二十一か二十二カ国に対しまして、南ベトナムにおけるアメリカ行動を支持して協力することを要請いたしました。日本もその要請に応じて、医者とそれから医療品を送ったわけなんです。その後もアメリカ要請があったのかどうか、その点をお伺いしたい。
  40. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その後はございません。その要請というのは、アメリカからの話もあったようでございますが、やはり決定的な要請としては、現地の南越政府からさような要請があったのであります。これに従ってあの百五十万ドルの援助物資を送った、こういうことになっておりますが、その後まだ具体的な要請はございません。
  41. 岡田宗司

    岡田宗司君 あのときには、南ベトナム政府もそうであったのですけれども、アメリカが北大西洋同盟条約の国、あるいはSEATOの国、あるいはまたANZUSの国、それからアメリカと相互防衛条約やあるいは日米安全保障条約のような条約を結んでおる国に要請をした、それに日本がこたえた、こういうわけなんですけれども、今後そういう要請がありました場合に、日本政府としてはいかなる態度をとるつもりですか。かように事件が拡大をしてまいっております。これからも南ベトナム政府——それはうしろにはアメリカがおるんでありますから、アメリカも同じようなことでございましょう——南ベトナム政府なりあるいはアメリカ政府なりから、何らかの形でこの南ベトナムにおけるアメリカ行動を支持する、あるいは南ベトナム政府のやっていることを支持するということを求められました場合に、日本政府としては、いまの拡大の傾向からいって、そして、日本政府としてもその事件の拡大を好まないという立場からして、はっきりお断わりになる心がまえをお持ちかどうかお伺いしたい。
  42. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今後引き続いて要請があった場合にどうするかということでございますが、財政事情というものも考えなければなりません。それから、同じ自由陣営の南越国民の窮状というものにも十分に目を向けて考えなければならない。そういう要請がありました場合には、これらの諸点を十分に考慮してさらに考究をいたしたいと考えております。
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 場合によると、そういう要請にこたえて援助するつもりなんですか。
  44. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その場になって考えてみたいと考えます。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 その場になって考えるということは、概括的に言って、援助するということも含まれているわけなんですか。
  46. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういうことも含まれておりますし、それから援助しないということも含まれております。
  47. 岡田宗司

    岡田宗司君 ばかげていますね。そういう返事は。この戦争拡大ということと関連してみますと、私どもは多少援助するということだけでも非常に日本は方々の国からも誤解されるし、また、日本国民自身も、それによって南ベトナムにおけるいまの戦争に巻き込まれるおそれがあるということに不安を覚えるだろうと思う。そういうことまでして、この何だかわけのわからない戦争、特にアメリカが北にまで戦線を拡大し、さらにこれからもタイに兵隊を上陸して、東南アジアの戦局を拡大するということがわかっておるのに、そういうところへ多少の援助でもするというようなことは、私はきわめて危険で、国民を納得させることはできないと思うのです。そういうことはないということを私は外務大臣ははっきり言い切ってしかるべきだと思うのですが、いかがでしょう。
  48. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは、いまの段階でははっきり申し上げるわけにはまいりません。
  49. 羽生三七

    羽生三七君 関連。松本俊一氏がきょう出発したようですが、これはどういう理由で政府が派遣するのですか。
  50. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 現地の公館からも詳細な報告を受けております。しかし、あのインドシナ三国の状況を一まとめにして、これを大局的に見た情報というものはないのでございまして、かねてそういうことを感じておりましたので、今回松本君をわずらわして三国の状況を大局的な見地から、それからまた、その他の問題等につきましても十分に現地について観察してもらうように同君を派遣することにいたしました次第でございます。
  51. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いしたいのは、かねがね晴ベトナム政府のほうから要請があって借款を与えるという話が行なわれていたと思うが、その点について御説明願いたい。
  52. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政府委員からお答えいたします。
  53. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) お答え申し上げます。おそらく先生御指摘の借款というのは、賠償協定か成立いたしましたときに、経済開発借款に関するベトナム政府との間の交換公文に規定されている九百十万ドルの借款のことだと存ずるのでございますが、これは御承知のとおり、民間ベースで動く民間借款を政府が援助するというだけの約束でございまして、これを動かすことにつきまして、砂糖工場とか若干プロジェクトの話は出たことはございますが、結局、商談が成立せず、いまだこの九百十万ドルは全然動いていない状況でございます。
  54. 岡田宗司

    岡田宗司君 この問題について外務大臣にお伺いしたいのですが、いまの南ベトナム政府というのは、これはもういつかわるかわからぬほどちょくちょくかわっております。国民の支持の全然ない政府である。ときにはアメリカのCIAの陰謀によってひっくり返されたりできたりする政府、まことに不安定な政府であります。こういう政府を相手にいたしまして、日本が経済援助のための借款、これは政府借款ばかりでなく、民間借款でも与えることはできない。また、そのために事実上話も行なわれてない。今後南ベトナム政府から日本政府に対して、この借款について日本政府の援助を求めてきた場合  あるいはそういうことは考えられるわけです一その際に、一体日本政府はどういう態度をおとりになりますか。こんな当てにならない政府に対しては、話にも何にもなるものじゃありませんから、そういう点はお考えになってそういう借款はお断わりになる、そういう態度をおとりになりますか、どうでしょう。
  55. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政変の頻度によって対外信用云々ということは、これはまあ多少考えるべき要素も含んでおりますけれども、結局、政変が一つのバトン・タッチで、あるいはそこに対外的な権利義務というものを一〇〇%引き継ぐというような場合は、あまり政変の頻度ということは問題にならないかと思います、しかし、この九百十万ドルの問題は、これは民間べースの借款ということになっておりますので、あくまで民間が資金を出すか出さぬかということを基本的にきめる問題でありますから、政府の指示というものは介入する余地がない、そういうことを御了承願います。
  56. 岡田宗司

    岡田宗司君 条約の交換公文なんかできめたそういう場合には、政府があっせんしたり援助したりということは普通行なわれていることなのでありまして、まあ、南ベトナム側においてもこれというりっぱな資本家がおるわけでもないんで、いずれそういうものは南ベトナム政府が主としてやることになるでしょう。そうなってくると、ああいう政府というものは相手にならない。まあ、日本の民間側が応じないのは当然だと思うんですけれども、南ベトナム政府から何らかの形で日本政府に対してそれを促進するように求められてくるということがないとも限らないので、私は、その点について政府はその場合どうするかということをお伺いしたわけなんです。それに対してお答え願います。
  57. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ、そのときになって、これは考える問題でございまして、まだどうこうということは申し上げにくいんでございます。
  58. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから、いまワシントンを訪問中の韓国の外務部長官が、十五日にラスク米国務長官と会談した後に記者団に対して、日本を含めた東アジア八カ国外相会議をソウルかバンコクで開くことを希望している。ラスク国務長官も、東アジアと西太平洋の安全保障のために役立つものとしてこれを支持したと諮っておるんであります。で、この点について李外務部長官は日本政府にもすでにこの点を申し込んでおる。こういうふうに私は聞いておるんでありますけれども、これに対して外務大百はどういう見解をお持ちでありますか。
  59. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは、先般訪韓の際にも李長官から要望がございました。重ねての要望でございましたので、一応考究をいたしますという約束をして帰ったのでありますが、いろいろ考究いたしましたが、この八カ国外相会議出席することにつきましては、ただいまのところ、当初の国会でも申し上げましたが、意思をひるがえす考えはございません。
  60. 岡田宗司

    岡田宗司君 どういうことかはっきりしない、意思をひるがえすことはございませんというのは。その八カ国外相会議に加わる意思がないと、そういうことでございますね。
  61. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そうでございます。
  62. 岡田宗司

    岡田宗司君 この八カ国外相会議日本、韓国、タイ、台湾、マレーシア、フィリピン、ニュージーランド、オーストラリア、いわゆる太平洋自由諸国であって、もしこういうような会議日本が加わるということになると、日本はいわゆる反共陣営に連なることになります。そうしてSEATO、ANZUS、さらに韓国の希望をいたしております北東アジア条約機構ですか、こういうようなものにつながっていくおそれがあるのでありまして、私どもは、こういうことには絶対反対であります。日本政府はこういう会議には加わらないという態度を堅持していただくことが私はしかるべきことだと、そう思いますので、この点については私の意見を述べておきます。以上で私の質問を終わります。
  63. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この韓国の提案しておるアジア外相会議というものの性格についてはっきりこれこれであるから加わらぬというのではございません。とにかく、いろいろ考究した結果、加わるべきではないという結論を得ましたので、ここで加わらぬということを申し上げる次第でございます。御了承願います。
  64. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) 森委員
  65. 森元治郎

    ○森元治郎君 私は日韓について若干お伺いしますが、ただいま問題になった外相会議出席問題ですか、いろいろ考えた末、出るべきじゃないという結論に達した。椎名さんもあまり専門家じゃないから、いろんな人から聞いて、出るべきじゃないと結論したんだろうが、この出るべきじゃないという理由を伺いたい。
  66. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 理由はいろいろございますが、これは、まあ、申し上げていいことも、申し上げてぐあいの悪いこともございます。それで、まあ、理由は申し上げないで、とにかくはっきりと出ないことにいたしましたからどうぞ。
  67. 森元治郎

    ○森元治郎君 それならなぜこっそりと  いいですか、政府として、外務大臣として出ないと決心した日本政府が現場の粕谷大使をこそっと十日の会議出席させた理由は何でありますか。
  68. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは、あるその関係国の首脳者から、いきなり外相会議をやるやらぬというようなことはいかにもどうも唐突過ぎる、そこで一体何をやるか、どういうふうにこの会議を催すかいうような点について、準備会議と、言っちゃどうもかた苦しくなるけれども、まあ、全然責任を持たず、出先の公館長が集まってそうしてフリー・トーキングをやってみたい、そうした上ではっきりと見当をつけたほうがいいのではないか、したがって、そのフリー・トーキングの場には、出たからといって特別の義務を課するわけではない、出ないからといって、また外相会議に正式に出席する資格を失うわけでもない、そういう意味で、ごくとらわれずに会談をしたい、こういう申し入れがありましたので、しかも、それがバンコクでやる。そこにもいわゆる堂々たる日本の大使がおりますし、アジアの数カ国が集まって何らとらわれずにフリー・トーキングをやるという場合にすら、まあごめんだというのも、あまりにどうも偏狭過ぎると、こういう考え方から、出てみたらよかろうという指示を与えました。そういうことでございますので、何もこれには責任も何もないと思います。
  69. 森元治郎

    ○森元治郎君 きわめて無定見外交の代表で、うまい汁が吸えそうならこれに乗っかってもいい。大体、そのとき出ないと決心したんでしょう、政府としては、向こうの韓国にこの間いらしたときに、出てくれないかと覆われたときに留保して帰ってこられて、あなたの説明では、そうして出ないと決心した人が、非公式だからちょっと出てくれないか、——いやしくも日本政府の代表、大臣の命令下にあるものを非公式に忍ばせるようなかっこうで——これは非常に無定見で危険な外交だと思うのです。それについてどうお考えになるか。無定見だということはあぶないということだ。根本方針が違うということが第一点。  それから、十日でありますから、報告が来ているはずだが、何という報告が来ましたか。拘束はしないけれども、フリー・トーキングをしよう。おしゃべりをしよう。した結果は報告したはずでしょう。
  70. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もうこれは一切外部には発表しないということのようでございまして、内容は、およそ情報はございます。ございますが、そういうことでございますので、この席で申し上げることはできない。とにかく、出ないということをお話したのです。
  71. 森元治郎

    ○森元治郎君 出ないと、とにかく出ないと決心した。しかし、人は出ている、報告は来ている。来ているが、この席では言えないと。亀大問題じゃないですか。この席では言えない。この席が一番大事なんですよ。ほかに大事な席はないのです。国会が一番大事なんです。あなたは行政府の長官なんですが、ここは立法府なんですから、ここであかしてもらいたい。
  72. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 十一日にバンコクで開かれました準備会議につきましては、これはい左大臣申されましたとおり、会議内容は外へ発表しないという会議の申し合わせになっているのでございますので、詳細はその意味で発表されておらないのでございますが、当時新聞発表が行なわれました。その要旨を申し上げますと、タイ国外務省の招待によって、アジア及び太平洋地域における国々の代表及び大使が、今日タイ国の会場で集まって、この地域に直面している共通の問題と、共通の利害関係のある事項についての協力関係を協議するための可能性を探求するためインフォーマルな討議を行なった、こういうプレス・リリースを行なって、それだけが発表になっております。
  73. 森元治郎

    ○森元治郎君 政府から新聞発表聞かなくても、空には電波が飛んでおりまして、あなたがわざわざここで言わなくてもわかっているのです。そこで、それに秘密会議出席してここで言えないような、しかも、大臣は参加しない、非常に疑惑を国民が持っておるので、そういう、南ベトナム戦争に関連しそうなANZUSと加盟国あたりに、北のほうからわざわざ南に下がって顔を出すということは、これは政府の方針からとるべきではないから、今後は絶対にそういうことをしないと約束されるかどうか、それが一つ。  それから、大臣自身も、今後はこういうものには出ない。この種会議、東南アジア外相会議のいわゆる自由陣営ですか、出ないとお約束ができますか。
  74. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今後のことはお約束できません。とにかく、今回の外相会議には出ないことに決定しております。
  75. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、あなたも浪花節だから、やはり日本の大ものが出てくれぬと会議が成り立たぬ、こういうような調子で来られれば、そうかなというので出て行くんですよ。これは絶対出ないことに私はすべきだと思う。もう一つ、その外交の基本は何に置かれるのか。私は、自分の国の利益ということが非常に大事だと思うのです。日本の場合は、何かと道義的といいますか、うわずってしまって、利益を忘れるようなことが言われてしまって、アメリカはいつでも、マクナマラの一証言を見ても、大統領を見ても、いつでも、南ベトナムで腕力をふるうことは、全部おれの利益だ、安保条約もおれの利益だということで突っぱるのですが、いまだ日本政府から、日本の利益だということばを聞かされないが、外交の木についてどうお考えになりますか。
  76. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは申し上げるまでもなく、外交基調は、日本の利益、国家的利益というものを基調にすべきことは申し上げるまでもありません。今度の、いま計画されているアジア外相会議には、これははっきり申し上げますが、これは出ません。
  77. 森元治郎

    ○森元治郎君 今回は出ないが、今後とも出ないという約束はできないと、しかし、この種会議である限りは出られないのは当然だと思います。これを信じまして、日韓の本質に入りますが、十六日の閣議で総理大臣は、たいへんラッパを吹きまして、大局的見地からすみやかにこの際交渉をまとめるように期待する。これをどういうふうに外務大臣はお聞きになったか。椎名君や赤城君その他法務大臣何をやっているのだ、しっかりやれ、こまかいことにわずらわされているのじゃないか、こういうふうにも聞こえるが、並び閣僚としてどういうふうにお聞きになりますか。
  78. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは私から発言いたしまして、日韓の交渉、会談の現段階及び見通し等に対する発言を行ないまして、それから総理から  関係閣僚が相当おります——できるだけ韓国の要望の線に沿って、できるだけ早く妥結するために協力してほしいという号令がかかったのでございます。これは総理大臣として当然なことでございまして、別にどうという、所管の問題でもありません。非常に大声援を得た気持ちでおります。
  79. 森元治郎

    ○森元治郎君 確かに号令だと私も聞こえたのですが、韓国の線に沿ってというのは、私が先ほど申し上げた、日本の利益に沿って、すみやかにというのがほんとうだと思うが、総理は、韓国の線に沿ってと言ったのですか。
  80. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その点は総理のおことばを一々覚えているわけではございませんが、誤解のないように申し上げておきますが、韓国も非常に妥結を急いでおります。とにかく早くきめてほしいということであります。日本としては、あくまで国家的利益に基づいてこの交渉に応じているのでありますが、国家的利益はそこなわれなくとも、場合によっては、のろのろしている場合もある。そういうことのないように、事務的な問題であっても、一つきまらないことが全体の妥結に非常な障害を及ぼすので、諸君、関係閣僚においても、その点は協力してもらいたい、こういうわけでございます。韓国の主張に盲従しろ、そういったことでは毛頭ございませんから、誤解のないように。
  81. 森元治郎

    ○森元治郎君 とにかく早くやってくれというラッパが吹き鳴らされて、総理としてはまことにごもっともである、外務大臣も急ぎましょう、こういうことになるのですが、一体、一括解決というのは何と言うのですか。まだ政府としていまだかつて方針を示さないのですが、包括される案件対象というものは何と何ですか。大臣はよく、頭が悪いとか、うまいことを言って逃げるけれども、たとえば、法的地位もあれば、基本関係、竹島もあるし、あるいは文化財もあるだろう。あるいは貿易関係もあるだろう。一括とはどれと、どれか一括に入るのですか。
  82. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) このうち貿易関係は、木会談の促進に好影響を与えるものとして、並行してこの会談を進めて、いまのところ日本の輸出が、向こうから日本に入るものの三倍以上になっております非常な不均衡である。そういうことに対する韓国側の不満がございます。で、これらの問題を是正、し、また、将来の拡大均衡ということも願って、そうして貿易会談を進めることか、本来の日韓会談の促進にいい結果をもたらす。こういう意味で、これは別途やっております。で、会談の諸案件のうち、基本条約、それから請求権問題、漁業問題、法的地位の問題、竹島問題、文化財の問題は、これは日本の好意によって、国有のものであれば、これを向こうにある程度贈与してもよろしいという程度のことを考えておるのでありまして、個人が犠牲を払って買い求めた文化財までよこせというようなことは、これは筋が通らないことでございます。でありますから、いま申し上げた基本条約、漁業、法的地位、請求権、それから竹島と、これを一括して解決したい、こういうのでありまして、そのうち竹島の問題については、両方ともわが領土であるということを現在は言っておるのでありまして、この問題の解決が終局的につかない場合には、終局的につく方法を決定して、そうしてあとの四件とともに一括妥結というところをねらっておるのであります。
  83. 森元治郎

    ○森元治郎君 これは、急げとなれば、なかなかむずかしい問題があるのは、いま大臣のおっしゃった竹島方式ですね、どんぴしゃりには解決はしないが、こういう方向でひとつ解決しようということでみんなきめるならば、きょうだって解決は全部できると思うのですね。そういうおつもりですか。いわゆる要綱だけをきめてしまう要綱主義でいくのか、いわゆる協定ができるまできちんとやっていくのか、みんなたな上げでいくのか、どうなんですか、根本方針は。
  84. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 解決のめどをはっきりとつけて、そうして一括妥結というところまで持っていくのは、竹島だけでございます。あとの問題については、何銭何厘まではじき出さぬでも、とにかくこの方法によっておのずから結論が出るということであれば、これはまあ、すべての条約協定がそういうふうになっておるようでありますが、微細な点まで一々取り上げて右左をきめるというよりも、それは正常な国交関係が樹立された後においてきめるということのほうが、むしろ妥当であるというような場合も多々あるのでございます。竹島のような問題は、これだけでございまして、あとは十分に話し合いをつけて、たな上げなどをするようなことのないようにいたす考えであります。
  85. 森元治郎

    ○森元治郎君 それじゃ、竹島だけをひとつ伺いますが、解決のめどというのはどういうことですか。解決のめどというのは、日本はいままで国際司法裁判所に出しておったが、いつの間にか引っ込めちゃった、そのうち第三国の調停にまかせようと。それもまた、何かもやもやしちゃった。めどというのは、どういうことですか。
  86. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまのところ、一番いい方法は、国際司法裁判所に提訴して、向こうも応訴する、こういう方法が一番はっきりすると思いますが、これでひとつ進んでみたい、こう考えます。
  87. 森元治郎

    ○森元治郎君 時間が五、六分しかないのですが、大臣、そんな話はそれは昔の話なんですね。これは第三国でやろうと、向こうは逃げておるわけです。どうなんですか、解決のめどは。妥結点はできたのですか。
  88. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ今度話しておりませんが、あくまでこの方法を材料として、これでやってみたいと考えております。
  89. 森元治郎

    ○森元治郎君 どうです、そこにだいぶ政府からお役人さんが、説明員が、資料を山ほど持って来ておられるのだが、時間は短かいけれども、もう頭の中にいやというほど知っておるはずだから、問題点のあるところをずらっと並べてもらいたい。もしできなければ、私が言いますが、焦げつき債権がどうなっているのか。たとえば、あるいは大平・金メモは、これは条約協定がどんな形になっておるのか。焦げつき債権の処理の方法がわからない。また、あの二億ドルの有償の支払い方、これはたいへんな違いがあって、まだ解決してない。法的地位でも、日本にこれから少数民族ができるようなことでやっていくつもりなのか。魚は東経の何度何分ていったって、やっている人はわかるが、国民にはわからぬ。しかし、簡単にわかる方法は、従来の既得権益——隻数にしろ、関西の漁民が働いていたあれだけの隻数と金額があげられるかどうか。これによって、そういうことの説明を早く発表すべきだと思う。いま、ノリを買うとか買わないとか、何だかごまかしたようなことばかり言っていないで、日本の利益にかんがみて、各案件についての経過を大至急ひとつ発表してもらいたい。焦げつき債権ばかりじゃない、それは。法的地位もあるし、文化財もあるし、あるいは魚。どうです。ひとつ急いでやってください。ひとつ、未解決の点、ポイントを。
  90. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま、激しい折衝をやっている最中でございますから、それを全部お開きにするわけにはまいらぬのでございますので、御了承を願います。しかし、申し上げ得る部分もあると思いますので、アジア局長から申し上げます。
  91. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 外務当局といたしましても、できるだけ早い適当な機会に、一度交渉の現段階について問題点等を発表いたすことを検討いたしておるのでございますが、とりあえずは、いま先生の御指摘になりました諸点の進捗状況を申し上げますと、まず、焦げつき債権の償還の方法等につきましては、国会に配付になりました資料にございますように、一定期間にこれを償還するということだけがきまっておりまして、この具体的の方法、期間——何年間でというような点については、これから始まる折衝にまかせられておるわけでございます。
  92. 森元治郎

    ○森元治郎君 たな上げだ、それは。
  93. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) たな上げではございません。これは必ず規定しなくてはいけないあれでございます。  それから、有償二億ドルの償還期限が二十年か二十七年か、いわゆる七年の猶予期間というものを二十年の内ワクにするのか、外ワクにするのかという点で、両者の意見がまだ一致してないのは、御承知のとおりでございまして、これは要するに、一般の請求権関係は、金・大平了解は、ごく大綱だけの合意になっておりますので、こういうきめのこまかい詰めというのは、これから行なわれることになっておるわけでございます。  それから、法的地位に関係しますいわゆる永住権を与えられる韓国人の範囲いかんという点でございますが、これにつきましては、おおよそ両方歩み寄っておるのでございまして、終戦前から日本におりました者、それから、それの子供、それから、この協定が効力を発生してから五年以内に生まれた者、これについては、一定の、この協定に基づく永住権を享有できるように、ここまでは合意されておりますが、これから先の者をどの程度の措置をするかということは、△後残されている問題で、まだ若干双方の見解の相違があるわけでございます。  それから、漁業の基線の問題と申しますか、いま行なわれています農相会談につきましては、いま御指摘がございましたように、農林大臣のほうで、日本側の実績が確保されるということを非常に念頭に置きまして、そうして、その目的のために、その目的を考慮に入れて、この共同規制地域におきます稼働船の隻数の問題、それから漁場の配分——配分と申しますか——日韓間における漁場の線の引き方等、従来の実績が確保できるということを念頭に置いて、目下交渉しておられる、そういう段階でございます。
  94. 森元治郎

    ○森元治郎君 二十一日に李長官がアメリカからの帰りに寄る。あとわずか五日でございますが、滞在が五日というと二十八日までに総理大臣の指示に従ってこれこれの案件を全部まとめられる見込みなんですか。まとめる目的で作業を進めておられるのか滞在期間にいま懸案の五つの問題が全部仕上がるんですか。仕上げるつもりなんですか。
  95. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 仕上げるといいましてもイニシアルの程度までだろうと思いますが、かりに目標を立てても、これは相手もあり、それからまた、あくまで日本の国益というものに立脚して交渉を進めるのでございますから、スケジュールをつくっていつ幾日までにまとめるというようなことは、これは初めから不可能な問題だと思います。でありますから、必ずしも李長官滞在期間中に是が非でもまとめるというような考え方をもって交渉しておるわけではございません。できるだけ急いで、そういうことが精一ぱいのところでございます。
  96. 森元治郎

    ○森元治郎君 私は町間を守るほうですが、わずか一分経過だからもう少し許してもらうがイニシアルくらいはといういま大臣答弁がありましたが、イニシアルくらいはというのは、これはひどいものですね、イニシアルというのはどういうことなんですか。
  97. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 現在の進捗状況から申しますと、あと残っております問題につきまして、ただいま、前の基本条約のようにテキストまでちゃんとできて、それにイニシアルをするというところまでいけるのかどうか非常にこれはいまのところ何とも予想がつかない。ここあと二、三日の折衝状況にかかっておるわけであります。イニシアルといたしましては、この間の基本条約、もしすべてがうまくいきまして、さっき御指摘になりました問題のどれかについてイニシアルができるような段階にたとえなったといたしましても、要するに、イニシアルの方法といたしましては、条文のテキストまでまとまって、それについてやる場合、そこまでいかなくて、要綱についてやる場合、いういう国際先例もございますので、これはそのときまでに話の煮詰まった状況いかんによってイニシアルのしかた等も変わってきますし、あるいは全然イニシアルとまでいかないこともこれはあり得るわけでございます。
  98. 森元治郎

    ○森元治郎君 そうすると、ちょうどここにあなたがやった基本条約の全文と、それか要綱の二つがあります。要綱までいくことが前例に従ってあり得るわけだという御答弁があったわけです。なぜこうやって要綱要綱でやっていくのか。李長官がいるうちに要綱で、むずかしい問題は全部あと回しにしていこうという方針だが、非常に最近早くなってきて、あしたにでも、戦争が起こるような騒ぎだが、大臣どういうことですか、急ぐというのは。
  99. 椎名悦三郎

    ○国務大里(椎名悦三郎君) イニシアルは釈迦に説法でございますから申し上げる必要はないと思いますけれども、まあ、交渉に当たった当事者同士で一応の締めくくりをして確認し合うという程度でございまして、これをもって対外的に拘束するということはできない。それだけの法律上の効果は生じないのであります。しかし、締めくくりとしては、大体要綱でも話のまとまったものから一応締めくくりをする。そういう事務手続上のこれは段階にすぎないのでありますから、これをやったからといって別にどうということではない。結局、これを整理いたしまして、ちゃんとした条文にこれを直して、そうして正式署名をし、それから国会の批准承認ということになるのでありまして、イニシアルはほんとうの事務でございますから、そう大きな意味は私はない。ただ事務を処理する上において、とにかくそうしたほうがはっきりする、こういう程度のあれでございます。
  100. 森元治郎

    ○森元治郎君 そこのイニシアルは非常に簡単なものだというように話がまとまって両方で確認し合う、それが最終目的なんですよ。あと直してこういう文章にするなんということは、条約局長にまかせておけば一時間くらいでできますよ。そのイニシアルが大事なんですよ、外務大臣は通産大臣じゃないんだから。重大な問題です。それで終わりなんですよ。あとは批准とか国会へ出すとか事務手続なんです。私はこれで質問終わりますが、それをやってしまおうということは、おそらくこれは将来に大きな問題が派生して、せっかくよくやろうと思ったことが激しい食い違いで、問題が幾多各方面に起こってくるから、私はいまのようなやり方には反対であります。ことに目標が、日本と朝鮮が仲よくするという問題じゃなくて、その次の目的、もう中共に対抗する伏線か知らぬが、対抗していくというところがポイントであるから、私はこれに反対いたします。
  101. 羽生三七

    羽生三七君 関連して。交渉の当事者間の合意ができない場合に、最高のレベルで、トップ・レベルで政治的に解決するというようなことはやることはないと了解してよろしゅうございますか。
  102. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それはないということを断言することはできないと思うんです、一般的に申しまして。ただ、そういうことはなるべくしないほうがいい。
  103. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) 曾祢委員
  104. 曾禰益

    ○曾祢益君 私はこの間予算委員会総理大臣に対して日韓問題の基本的な問題の質問をいたしましたので、またその際に、日韓交渉にあたっては、特に詰めの際であるから、あくまでも安易な妥協を排して拙速を避け、懸案の一括かつ合理的な解決に努力されたいということを申したのであります。その点についてはもうきょうは質問を展開するつもりはございません。ただ予算委員会のこの間の同僚田畑委員日本側の韓国に貫いてきた財産の請求権問題に関しまして、大臣の御答弁がちょっと簡単に過ぎて誤解を招きはしないかという点があったので、その点を関連質問で伺ったんですが、関連質問であったために、私ももう少し私の質問の真意を了解していただきたかったんですが、できておらないので、何かすれ違いの質疑になってしまったので、この問題、しかし重要ですから、もう一ぺん質問したいと思います。  これはこの間の予算委員会で田畑委員から、いま申し上げましたように、日本人の韓国に残した財産、これは法人の場合もあるし、自然人の場合もあるが、その請求権についてはどうなっていますかという質問に対して大臣は、請求権等は一切ないと、こういう状態であります、こういう答弁をされたわけです。それに私は関連いたしまして、つまり、大臣の御答弁アメリカの解釈に従って日本の請求権を放棄している。サンフランシスコ平和条約第四条の解釈として、アメリカ戦争中にやってしまった没収行為を合法的に認めるというだけじゃなくて、同時に、請求権は捨てるということをアメリカとも合意している。その点を言われたと思うのです。その点は確かにそうなった、ただ問題は、これは無償で放棄したということでない。アメリカのいわゆる、何といいますか、平和条約第四条の解釈に関する口上書にも書いてございますように、「日本国が平和条約第四条(b)において効力を承認したこれらの資産」——というのは、日本国及び日本人の韓国における資産ですね、この「処理は、」「平条約第四条(a)に定められている取極を考慮するに当たって関連があるものである。」、こう言って、さらにその意味として、「関連がある」ということは、結局、韓国と日本とが取りきめする場合に、「韓国内日本資産を韓国政府が引き取ったことにより日本国に対する韓国の請求権が」どの「程度まで消滅され、又は満たされたと認めるかについての決定を含む」であろう。まあ、俗にいうならば、確かに大臣の言ったことそれ自身は間違ってない。請求権という形では放棄した、残念ながら。ただ、そのことが韓国側の日本に対する請求権の際に考慮されるということは、まあ日本の最大の要求としては、少なくともそれを、その分だけ、日本が評価した分を韓国の請求権から差し引く、相殺する、こういうことが日本側の従来の主張であったと思うのです。その点は、いまや政府としては、大平・金了解によって、両方の請求権の問題は、まあ、目的の有償、無償の、援助の随伴的結果として消滅したものとみなそうじゃないかという大まかなどんぶり勘定方式をとっちまったから、どうでもいいようにも見えるけれども、しかし、いまの、同僚森委員に対する御答弁にもあったように、大平・金了解なるものは、事のよしあしは別として、まだそのイニシアルすらしてないわけですね。いわんや韓国にわいては、野党側より、請求権の大平・金メモなるものは根本的にやり直して白紙にして、つまり三億ドル、五億ドルでも足りぬぞという国粋的な要求すらある。したがって、そうなると、日本側の財産権に対する政府の見解、外務大臣の見解を議会で伺ったときには、韓国がどうその点できておるかということも十分に考慮しながらやる必要がありはせぬか。これはたいへん老婆心で、失礼かもしれませんが、思うわけです。私は、国民日本政府に対して、在外財産をどうしてくれという問題に触れて、あるいに関連させて考えているのではなくして、あくまで、日本としては、まだ韓国との間に請求権の問題は解決しておらないのですから、おらない時点で考えるならば、日本が無理な主張をしてはいけませんけれども、従来主張しておった程度の主張を、内閣が変わったから日本が渋ったんだというようなインプレッションを与えるのは、日本のためにならないのではないか、こういう意味において伺いたかったわけです。  したがって、もう一ぺん申し上げましょう。確かに大臣の言われたように、前段は正しいので、結局、日本側は公的財産も、私的財産も、平和条約第四条によって韓国側にも結局主張しなくなった。アメリカのあっせんもあって、これは認めざるを得ない。しかし、それが無償でやったのでなくて、そういう日本が捨てたということは、両方の請求権の問題を解決される場合にですね、考慮されるべきである、日本側の主張としては。それだけ、その分をどういうふうに評価するかは別として、それだけ韓国側の対日請求権から差っ引かれるという、この解釈だけは従来と変わっておらないのじゃないかというふうに私は考えるのですけれども、もう一ぺんその点に対する御見解をはっきりと伺っておきたいのであります。
  105. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のとおりに、この請求権そのものとして処理される限りにおいては、もうはっきりと、この問題を明らかにして、そうして相殺の観念をそこに含ませるということは筋であると思います。しかし、御承知のとおり、対日請求権はもういかに調べても、あの大戦乱がありましたし、それから時間もたっておるというので、とても、とことんまでこれは追及ができない。むしろこの際、大平・金了解によって経済協力という形においてこの際片づけると、こういうことになりましたので、非常にその点は薄くなっておると思うのでありますが、しかし、さような事実が、経過の途中において、経過においてそういうことがありましたことは、十分に考慮に入れてしかるべきものと考えますが、その点は、なお条約局長から申し上げさせたいと思います。
  106. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 大体の趣旨は仰せのとおりでございたますが、ただ、日本側の請求権がなくなった分だけ、向こうのものも相殺される、そういうふうにはっきりこう、その分だけ、相互放棄というような性質のことでは法律上ないということが、同時に日韓間で確認されておるわけでございまして、その点を除けば、仰せのとおりでございます。
  107. 曾禰益

    ○曾祢益君 どういうことなんですか。
  108. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 要するに、請求権までも失わしめられたという事実は関連ある事実として、特別取りきめ締結の際に考慮されるべきことであるというだけでございまして、完全な相互放棄という法的な観念そのものじゃないということでございます。
  109. 曾禰益

    ○曾祢益君 むろん相互放棄じゃないでしょうし、韓国もしちゃいないでしょうけれども、韓国のほうの計算の際に、アメリカのほうの口上書に書いてあるように、やはり韓国側の請求権の中からどの程度消滅するか、あるいは韓国側の請求権を満足したかどうかということをですね。両国の取りきめでやれと、こう言っておるのですから、日本側の主張としてはそれは、計算はなかなか困難である。韓国側の請求権だって結局計算が困難であるから、大平・金了解みたいな、ことばは悪いかもしれないけれども、どんぶり勘定できめちゃったのですけれども、両方とも計算が困難であるけれども、日本側の主張としては、韓国側がかりに一億なら、日本側はかりに四千万ドルなら四千万ドル、七千万ドルなら七千万ドルというものがあって、その分は引いて、そうして計算すべきだという主張を従来しておった。その点は変わらないと思うんですよ。韓国側と書いた書きものの了解というのは、それはアメリカのエード・メモワールにあるように、両方の特別取りきめの際に放棄したことか考慮されるということしか書いてありません。相殺ということばつかってないのですけれども、しかし、日本の主張としては、その分だけ差し引かれるべきだと、こういう主張をしておったことは間違いないと思う。また、その主張は、韓国側はそのまま認めてなくても、その主張は正しかったと思う。また正しいと思う。その点をお伺いします。
  110. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘の事実は、十分に考慮せられるべきであると、この点は折衝の際に向こうにも想起させていくつもりでございます。
  111. 曾禰益

    ○曾祢益君 もう一つ、在日朝鮮人の法的地位の問題に関連して伺いたいのですが、これはむろん韓国と日本との協定条約ができるわけですから、鮮側にそのまま適用されるものではないわけです。しかし、現実には、日本に北鮮系人がいる。彼らは日本側に、この法的地位で韓国ときめたいろいろな権益、権利等を権利として請求することはできないわけなんです。しかし、そうかといって、一切そういうものを認めないということにすれば、これは現実には非常な国内治安上もやっかいな問題が起こる。したがって、それらの問題について、これは基本条約の解釈の問題にも関連いたしますが、元来は北鮮系人に適用しない。しかし、国内における朝鮮人については現実にどういうふうな解釈でこれを適用していくのか。この点はどういうふうにお考えであるか。非常にデリケートな問題であると思う。基本的な日本姿勢ですね。やはり韓国側のあまり文字どおりの管轄権を国内で無理やりに認めるということは適当でないと思うので、その点に関する外務大臣のお考えを伺っておきたい。
  112. 椎名悦三郎

    ○国務大農(椎名悦三郎君) これは非常にデリケートな問題でございまして、あらゆる方面から研究をして結論を得たいと考えて、ただいま努力中でございますが、アジア局長からお答え申し上げます。
  113. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 御指摘のとおり、この問題は、この条約上の権利義務を亨有する韓国人と、それから、実際上日本にたくさん居住していながら、自分は大韓民国人でないという立場をとっている人に対して、事実上どういうふうにこれを扱うかという非常に微妙な問題でございますので、これは交渉の実は最終段階まで持ち越されておりまして、まだこの問題、正面から突っ込んだ討議をしていないというのが実情でございます。ただ、先日参議院予算委員会で高橋法務大臣もお答えになりまして、ちょうどいま曾祢先生のおっしゃいましたと同じ考慮を述べられまして、権利義務の問題とは離れて、治安上その他の見地から実際的な考慮をしたいと、そういうふうにお答えがあったのでございますが、そういう基本方針に基づきまして、今後詰めの段階において適宜処理を要する問題だと思っております。
  114. 曾禰益

    ○曾祢益君 もう一点だけ。非常に技術的に見える問題ですけれども、これも予算委員会でも質問したのですけれども、実は領海の範囲の問題です。これは協定の案文もできておらないのであまり心配し過ぎているきらいがあるとお考えかもしれませんが、いわゆる漁業関係協定に関連する話の進み方からいうと、いきなり専管区域というものが出てきてしまって、それの基線の引き方がどうだ、専管区域の基線から十二海里というようなことばかり出てしまう結果になりはぜぬか。そういう場合に、一体領海との関係はどうなるのか。これは領海の問題に触れない、触れるとやっかいであるから触れないという考慮が外交上わからぬことではないけれども、同時にまた、その点をあいまいにして、いきなり十二海里専管区域がいいのかどうかということについては、非常に国際法規上、日本のやはり領海あるいは専管区域、大陸だなあるいは李承晩ラインというような外国の主張に対抗する日本立場上、やはり領海の問題について従来の三海里説は無理だと思うけれども、国際海洋法会議等に主張した六海里、それからあと六海里が専管区域だというような基本的主張は曲げない。曲げたと思われるようなつくり方は非常にマイナスだと思う。直接領海問題をきめる趣旨でない約定であることはわかっておりますけれども、それらの点はどうお考えであるか。
  115. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘の点につきましては、将来疑問の起こらないように、十分に考慮してこれを詰めていきたいつもりでございますが、なお、詳細は条約局長から申し上げます。
  116. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) これまでの日韓間の交渉ではまだ取り上げておりませんが、ただいま大臣からお話がありましたように、条文作成の段階において何とかいま述べられたような御趣旨が取り入れられるように努力してまいりたいと思います。
  117. 曾禰益

    ○曾祢益君 けっこうです。
  118. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) 野坂委員
  119. 野坂參三

    ○野坂参三君 私はベトナムの問題についてだけ外務大臣に主として質問したいと思いますが、これも、この問題と日本との関係について特にお聞きしたいと思います。  まず第一に、先ほどから羽生委員岡田委員のほうからも申されましたが、いまの戦局を見ますと、どこまでいくかわからない拡大の危険が非常にあると思うのです。総理外務大臣も、国会の中で今日までこの問題が提起されたときいつも、拡大する考えアメリカにないとか、また、不拡大を念願しているとか、あるいは二月十二日には椎名外務大臣が衆議院で、アメリカ不拡大の方針、これを了承したとか、つい最近、三月三日には、外務大臣は、米国は依然として戦争拡大を欲していない、米国を信頼する、こういうように申されております。ところが、これを言われると、その翌日ごろに、どういうわけか知らぬけれども、拡大されているんですね。たとえば、最近三月三日に、先ほど申し上げましたような椎名外務大臣の、アメリカは依然として戦争拡大を欲していない、これを信頼すると、こういう意味を申されましたが、もう数日たって八日にアメリカはラオス国境付近の銃撃をやっておる。さらに十一日には、北ベトナム南部の攻撃を十二機でやっておるとか、さらに十四日には、コンコ島の攻撃爆撃機、十六機でやっておる。十五日には、フークイを爆撃している。これは問題になりました十九度線を突破した爆撃です。さらに十六日には、チュンリエン付近の爆撃を出動した軍艦四隻によってやられる。このようにしてだんだん、アメリカ自身も限定とか報復とかいう条件のもとで北ベトナム攻撃すると言い、日本総理外務大臣不拡大を望んでおる、そうしないであろう、と言われておるにもかかわらず、現実の事実はこういう発言を国会でしておられるその翌日、翌日にどんどんやっております。この点は日本国民が非常に不安に思っておりますし、日本だけではない、世界、特にアメリカの内部において非常に不安の念が高まっております。きょう新聞の報道によりますと、アメリカの老婦人が焼身自殺——自分の体を焼いて、抗議をする意味で自殺をはかったというニュースも入っております。われわれは、これは決して対岸の火事ではなくて、日本国民に降りかかっている、もうすでに火の粉がかかっている、かかるのではないかというふうに考えておりますが、不拡大を念願しておると、こう言われますけれども、事実はそうではない。裏切られてどんどん北から北へ進んでおる。この不拡大の念願と現実との間に大きな開きがあります。で、外務大臣にお聞きしたいのは、今後もアメリカ側としては不拡大の方針でこれ以上拡大しないという一体確信をお持ちになっておるのかどうなのか。あるいは拡大する可能性があると、このようにお考えになるのかどうか。これが一つの質問です。  もう一つは、先ほど羽生委員質問に対して、外務大臣は、こう答えておられます。アメリカ側の爆撃——これはまあ正確じゃありませんけれども——「その限度を越えることを望まない」と言われております。越えた場合には、そのときは意思表示するという意味のことも言われたと思います。そうしますと、一体外務大臣の言われている限度というのは、どういうことを基準にして言われているのか。これも具体的に御答弁願いたいと思います。
  120. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) アメリカ自身も決して不必要な拡大を望んでいるわけではない。戦争不拡大を望んでおるということを申しますが、次から次へと拡大していくのはどうか、こういうお話でありますが、アメリカ自身も言っているとおり、しかし、結局、拡大するかしないかという問題は、北越の浸透、北越の侵略というものが問題のかぎを握っておるのであって、われわれのほうでは不拡大を念願しておるけれども、なお引き続いて人あるいは物資を浸透させ、そうして南越においてテロ、破壊行動等をどんどんやるということであれば、これはどうも不拡大を望んでおるけれども、これでとめるというわけにいかぬと、いわば、こういうことを絶えず声明しておるのでございまして、私はもちろん不拡大日本としては望んでいくべきである、拡大はやってもらいたくないのでありますけれども、この北越の浸透、侵略行動が、これを誘導するという形においで、常に行なわれておるのであります。限度を越えるというのは、結局、そういうことが、徴候がもう見えないのに、なおその勢いにまかして攻撃を加える、こういうのが限度を越えたものである、かように考えます。
  121. 野坂參三

    ○野坂参三君 いま、北ベトナムのほうが侵略とか攻撃するからその報復のためにやる、こう言われております。この問題については、外務大臣あるいは政府側と私たちとは根本的に観点や立場が違います。いまのあの軍事情勢、あの発展、ジェネヴァ協定、あそこから出発しましても、この歴史が証明しておるし、現実アメリカ軍のやっていることは明らかにこれは侵略です。侵略行為だと思うのです。これについては、時間がありませんのでこれ以上触れませんけれども、いま言われましたように、北ベトナム政府が今日までとってきた政策は変えないということを繰り返し声明しておりますが、そうしますと、アメリカ側としてはさらに北へ北へと爆撃を進めていくのかどうか。直ちに北ベトナム政府が態度や政策を急変するという見通しもないと思います。あり得ないと思いますが、そういうことになりますと、やはりいま外務大臣の、言われましたように、アメリカ側としてはさらに北へ北へと進んでいくという、こういう見通ししかないじゃないかというふうに考えられますが、これはどうでしょう。
  122. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ第三者の立場から戦争の遂行の今後の問題について簡単に予想することは控えたいと思いますが、日本としては、あくまで早くベトナムの動揺が沈静することをこいねがっておる次第であります。
  123. 野坂參三

    ○野坂参三君 そうして念願ばかりされておりますけれども、事態は悪化悪化のほうをたどっておると思いますが、しかし、時間がありませんので、次の質問に入りたいと思います。  それは、まず第一にお聞きしたいのは、いまベトナムで行なわれておるアメリカ軍事行動、これに対して日本の領土である沖繩から爆撃機とか、あるいは軍隊とか、第七艦隊とか、これが出動しておることはもうはっきり公表もされております。さらに日本アメリカ基地、これからも出動しているということも伝えられております。むろん横須賀とか佐世保、この軍港から第七艦隊の一部が出動しておることもはっきりしております。こう見ますと、日本はこの戦争はこれは歓迎しないと、こういうことを言われますけれども、具体的にはすでに日本基地から飛び立つアメリカの飛行機や軍隊が、あるいは軍艦がベトナム戦争に直接参加しておる、こういう事態が起こっております。しかも、これが日本基地から出動する、軍港から出動するということになりますと、日本本土もベトナムアメリカ戦争に加担している、これは事実である。否定することのできない事実であると思います。こういう事実を外務大臣としてはお認めになりますかどうか。これに対して政府としてはアメリカ側に対してどういう一体態度やあるいは要請や抗議というものをやられておりますかどうか。
  124. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 安保条約にも、日本の施設を利用してそれから直接作戦行動として進発する場合には事前の協議が必要であるということになっておることは御承知のとおりであります。今回のベトナムの問題に関しては、直接日本基地あるいは日本基地を使って直接にこの作戦行動を行なっておるものとは考えられません。
  125. 野坂參三

    ○野坂参三君 直接には考えられないと言われますけれども、これは具体的事実はどうかということをお聞きしたいのです。直接とか間接とか申されますけれども、たとえば日本基地を飛び立った爆撃機が沖繩に一時立ち寄って、それからさらにベトナムに行く、これは直接ではないか、ただ形式上沖繩にちょっと寄ったということだけだと思うのです。私が申し上げたいのは、このような事態が今後続く限り、いまベトナムアメリカが北ベトナム攻撃しておりますが、この攻撃としては、北ベトナム政府が自分の基地から南ベトナムベトコンを援助しておる、だからアメリカ側は攻撃すると、こういうふうな論法を持っております。もし、この論法を日本ベトナムとの関係に当てはめてみますと、いま北ベトナム攻撃しているアメリカの、たとえば爆撃機とかあるいは軍艦とかというものが、沖繩とかあるいは日本基地や軍港から飛び立ったものであるということがはっきりするならば、もし戦争拡大した場合、北ベトナムやその他から日本基地攻撃すると、こういうふうな事態が起こってもやむを得ないんじゃないかということが考えられますが、この点はどうでしょうか。
  126. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本の港を出てアメリカの艦船が、あるいは沖繩に、あるいは直接向こうに参りましても、これは補給のためでありますれば、決していわゆる作戦行動基地になるのではないのでありまして、事前協議の対象にはならない。補給のために出ていく艦船もたまにあるようでございますが、これはもう直接の作戦行動ではございません。それから、航空機につきましては、何しろ距離が遠い。でありますから、どこかほかに移動して、そこから直接作戦行動をとるということは考えられますが、その航空機の移動すらもわれわれはその事実を認めておりません。さような状況であります。
  127. 野坂參三

    ○野坂参三君 ちょっと私の第三の質問についてお答えないと思いますけれども、私の申しますのは、アメリカがいま北ベトナム攻撃しているその口実は、北ベトナムが自分の基地から南を攻撃、侵略するということばをつかっております。だからやるんだと、こう言っておる。もし立場を変えて、北ベトナム側からいえば、アメリカ攻撃日本基地が利用されている。したがって、日本基地攻撃することもできるんじゃないかといわれてもしかたがないと思いますが、この点お認めになるかどうか。
  128. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 実際問題としてそういうことは起こり得ないと思います。
  129. 野坂參三

    ○野坂参三君 実際じゃない。私のはいま理論的なことを言っている。
  130. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一応戦闘機なら戦闘機、爆撃機なら爆撃機が他の基地に移動して、そうしてそこを根拠として、基地としてベトナム攻撃するということは考え得るのでありますが、さような場合にはいわゆる作戦行動基地にはならないのでありますから、さようなことは起こり得ないと思います。
  131. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) 時間が超過しておりますがね。
  132. 野坂參三

    ○野坂参三君 それでは、まだありますが、この点はぜひお聞きしたいのは、これはもう新聞には発表されておりますけれども、南ベトナムに対する日本側のいろいろな援助、たとえば医療品とか医師とか看護婦とか、これが派遣されたことはもう御存じだろうと思います。それからさらに輸送船、これにはアメリカの軍隊とか軍需品、兵器が積まれておるともいわれておりますが、一本の船員がここで働いておると、こういう事実もあります。そのほか軍事的調達も日本でやられているということもありますし、先ほど問題になりました経済援助ということもありますが、いま申しましたように、これは普通の事態ならば平和的な貿易とかあるいは援助という形になりますけれども、いまベトナム戦争状態です。アメリカ側と南ベトナム政府は交戦国の一つになっております。これに対する医療品、お医者さんにしましても、あるいはいろいろな物資の輸送にしましても、これはアメリカ南ベトナム側の兵たんを日本が一部受け持っておると言っても差しつかえないと思います。これ自身が、いまの事態においては、日本があの戦争にすでに間接にあるいはある意味においては直接に関与しておる、こう言って差しつかえないと思いますが、こうした具体的事実がどういうようになっておるのか、今後もこのような南ベトナムに対する援助を続けられるのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  133. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 医療品の援助は、ただいまのところ具体的に計画をしておりません。それから、輸送船に日本人の船員がいるとかいったようなことは、これは別に日本アメリカ戦争遂行行為に協力しておるというたてまえには解釈することが非常にむずかいと私は考えております。
  134. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) 時間が超過しておりますから。
  135. 野坂參三

    ○野坂参三君 それではやむを得ません。まだ質問残っていますけれども、では、これで打ち切ります。
  136. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) 他に御発言もなければ、本日はこの程度で散会いたします。  次回は三月二十三日午前十時を予定しております。    午後一時三十五分散会      —————・—————