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1965-02-27 第48回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十七日(土曜日)    午前十時十一分開議  出席分科員    主査 中野 四郎君       小坂善太郎君    登坂重次郎君       有馬 輝武君    小林  進君       島口重次郎君    楢崎弥之助君       横路 節雄君    永末 英一君       加藤  進君    兼務 加藤 清二君 兼務 帆足  計君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  竹中喜満太君         防衛施設庁長官 小野  裕君         防衛庁事務官         (防衛施設庁総         務部会課長) 大浜 用正君         防衛庁事務官         (防衛施設庁施         設部長)    財満  功君         防衛庁事務官         (防衛施設庁労         務部長)    藤本  幹君         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     谷  盛規君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安川  壯君         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (大臣官房長) 谷村  裕君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (国有財産局         長)      江守堅太郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         水産庁長官   松岡  亮君  分科員外出席者         検     事         (民事局参事         官)      上田 明信君         検     事         (民事局参事         官)      宮脇 幸彦君         検     事         (刑事局総務課         長)      安原 美穂君         検     事         (刑事局参事         官)      大堀 誠一君         検     事         (刑事局刑事課         長)      伊藤 栄樹君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    柏木 雄介君         大蔵事務官         (主計官)   吉瀬 維哉君     ————————————— 二月二十七日  分科員石田宥全君及び岡田春夫委員辞任につ  き、その補欠として楢崎弥之助君及び小林進君  が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員小林進君及び楢崎弥之助委員辞任につ  き、その補欠として岡田春夫君及び島口重次郎  君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員島口重次郎委員辞任につき、その補欠  として有馬輝武君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員有馬輝武委員辞任につき、その補欠と  して石田宥全君委員長指名分科員に選任  された。 同日  第三分科員加藤清二君及び帆足計君が本分科兼  務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計予算外務省及び大蔵省  所管  昭和四十年度特別会計予算大蔵省所管  昭和四十年度政府関係機関予算大蔵省所管      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和四十年度一般会計予算外務省所管を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林分科員 外務大臣にお尋ねいたしますが、私どもは、外務大臣質問するという機会がなかなかございません。ところが政治の中心外交にあるのでございますから、私は、一日千秋の思いで今日を待っておりました。幸いにしてお目にかかる光栄に浴しましたので、きょうはひとつゆっくりお願いしたいのでありますけれども、いま主査から時間の制限がありましたから、私もつとめて簡潔にやりたいと思いますけれども外務大臣も明瞭、濶達にお答え願いたい。あなたのお答えは、本会議においてもどこにおいても、ふろの中でへをひるようで、どうも不明確でいかぬ。あれも作戦一つかもしれませんけれども、どうかこういう機会にはああいうことはおやめいただきまして、明確にお答えいただきたいと思います。  第一間として、これは実は私の本意でないのでありますけれども国民世論であります。われわれはよく日本国内を歩きますと、こういうことを言われる。どうもいまの外交はあぶないじゃないか、特にいまの佐藤内閣の裏側には岸信介あるいは賀屋興宣、それにいまの外務大臣椎名何がし、この三人がいて、一人は佐藤内閣の顧問となり、一人は外務大臣になっておる。この三人とも戦時中にわが日本指導者として、われわれに米英鬼畜だ、鬼畜米英と戦わなければならぬということを指導した人たちなんだ、その指導した人たちがいままた閣僚にすわって、そして、どうも怪しげな——国民世論でありますが、怪しげな外交政策内外政策を進めておられる、国民は非常に危険を感ずる、どうかひとつ岸にも聞いてくれ、賀屋にも聞いてくれ、椎名にも聞いてくれ、こう言われたのでありますけれども、三人のうち岸君は閣内を去った、あるいは賀屋君も閣僚の地位を去った、残る者はあなただけでありますから、この際ここであなたに聞いておかなくてはならぬ、こういろ順序になるのであります。米英鬼畜である当時、あなたは軍需省か何かにおられて、非常に実力を持っておられた。岸さんと表裏一体をなして、日本戦時中の中心をなして国民米英鬼畜を盛んに言われたのでありますが、その米英鬼畜の米と、今日日米親善外交と称して、盛んにアメリカを賞揚しておられるが、当時の鬼畜アメリカと今日のアメリカ本質一体違っているのかどうか、アメリカ性格戦時中と全く変わっているのかどうか、あるいはその本質において同じものなのかどうか、この点をまずお聞かせを願いたい。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 戦争中の指導者の仲間入りをさせていただきまして、たいへん身に余る光栄でございますが、私は指導者ではない、閣僚ではもちろんありません。いわゆる使用人であります。そういうことで戦時中働いたものでございまして、決して指導者なんというようなものではなかったわけであります。今日の情勢とその当時の情勢とは、日本そのものも非常に変わっております。(小林分科員アメリカは変わってないか」と呼ぶ)アメリカは変わっているか変わっていないか、あまり他人のことをとやかく言うのは適当でないと思います。(小林分科員「言う必要がある。あなたが変わっていれば別だけれども、あなたは変わってない。」と呼ぶ)私も多少は進歩している  つもりでございます。
  5. 小林進

    小林分科員 いまあなたのそばに後宮君がいるが、そんなのがアジア局長だとかいって、あなたについて韓国に行けば、やはり重要なことをやっている。基本条約調印もしているのだ。局長だって、国の基本に関する重要な調印者にもなり得るのだ。あなただってあのときの次官じゃないか。しかも、軍需という経済を進めていく重大な官僚の一番あなたはトップにいたのじゃないですか。そのあなたたち閣僚の下のいわゆる官僚トップにいて、米英鬼畜ということを盛んにわれわれに教えたのだ。そのアメリカと今日のアメリカ性格が変わっているのかどうか。いま外務大臣として対米政策を進めていく上に重大なポイントじゃないですか。その当時のアメリカといまのアメリカと同じかどうか。あなたはいまそのアメリカ政策を進めていく重大なポイントじゃないですか。それを聞いているんですよ。同じなのか。いわゆる鬼畜アメリカと今日のアメリカと同じかどうか。人が変われば聞きませんよ。当時のあなたといまの選挙違反選挙事務長を逃がしている椎名悦三郎軍需官僚であったあなたとは同じ穴のムジナじゃないですか。人が同じならば、やはり聞いてみなけりゃならぬ。どうぞ明確に言ってください。国民は怒っているんですよ。ちょろまかさぬでくださいよ。(「ことばが不穏当じゃないか」と呼ぶ者あり)ちっとも不穏当じゃないですよ。声の大きいのは地声だ。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その当時の軍需者は、いわゆる基本的には軍需資材のものを扱っている官庁でございまして、戦争を指導するとか、あるいはこれに関連するような仕事をしたわけでもない。ただ、一般民需軍需と、その配分等関係した次第でありますが、もっぱら陸海軍がそれぞれの立場において資材調達をし、われわれは民需を大体主眼にして、三者三つどもえになって大いに物資の調整をやったのであります。そういう観点から英米を見ておりますと、軍需資材関係においてもなかなか膨大な物量戦術でやってくるので、大いに歯がみをしてくやしがった次第で、幾ら生産に励んでもなかなか追いつかないというような体験を持っておりますが、あまり第一線に立って大いに作戦行動を指揮するとか、あるいは戦略というものを考えるという立場にはなかった。したがって、鬼畜米英ということばもはやったようでありますが、これは口にしたことはない。それで、その当時の日本立場と今日の立場ではだいぶ違っております。アメリカのほうは一体どういうふうに本質が違っているのか、あまりそのほうの勉強をしたことはございませんけれども、やはりアメリカも幾らか時勢の進運に従って頭も進歩しているのではないかと思います。
  7. 小林進

    小林分科員 これは、時間もありませんが、私はそういうような答弁では満足いたしませんよ。いやしくも当時はやはり閣僚におれば、閣僚会議もある、あるいは軍事指導会議もある、その中のあなたはメンバーとして重大な作戦にも従事せられて、特に軍需に携わるものは物資調達輸送などで作戦会議中心ですよ。これは、第二参謀と称して、戦時内閣においても軍の作戦においての重大なポイントなんですよ。あなたはその中において米英鬼畜をいわゆる指導してきた重要なポストなんです。それをあなたが輸送にあたって、米英鬼畜ということばがはやったようだなどということは、神聖なる国会の中において一体何事ですか。流行歌のようなことばじゃないですか。そういうふまじめなことではいけませんよ。この問題は私はとても了承できません。絶対やります。しかし、あなたが前非を悔いて、せめて新しい外交政策をやってこられるというならば、これは、前非を悔いて見るべきところがあるけれども、また同じ間違いを起こしているじゃありませんか。また日本歴史を逆転させるような反動的な外交を進めているじゃないですか。私は、いまの問題は留保しておきますよ。あなたの説明では了承できないから、また外務委員会でやります。私は、あなたの答弁で非常に屈辱を受けた感じがいたしましたから、この勝負はまた外務委員会でやらしていただきます。  次は、あなたに質問書を出しておきましたけれども、第二番目としては、これは、予算委員会総括質問の中で何回も言われたことだけれども答弁が明確でないからもう一回繰り返します。それは北京政府です。中華人民共和国という国は、膨張政策軍事的侵略政策をとっている、こういうことを言われているのですね。現にアメリカに行かれたときの日米共同のあいさつの中には、中共隣国に対する好戦的及び膨張主義的政策アジアの平和を脅かしていることに対して、深甚なる不安の念を表明する、そういうことを言っているんだけれども、それまでは、池田総理大臣佐藤さんも、みずからの口を通じて中国共産党、いわゆる北京政府侵略政策膨張政府をとっているということばは口にしなかった。ところがこの共同声明が出て、ニューヨークにおける日米協会の席上で初めて佐藤さんみずからが、われわれは中国侵略的傾向に対し米国と同じく、あるいはおそらく米国以上に不安の念を抱いていると、初めてここに中国侵略政策というものを口にしたのです。私どもは、こういう日米協会における演説を聞いてどきっとしたのです。これは、いまの内閣における全く新しい、池田内閣に見られなかった一つ主張なんです。一体具体的にどこを称して中華人民共和国がいわゆる侵略政策膨張政策をとっているとおっしゃるのか。これは、いままで予算委員会で明らかになっていないので、具体的に事例を示して、国民が納得するようにお話し願いたいと思います。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ニューヨークにおける総理侵略的傾向ということばに対する質問がこの国会においてあったようであります。それに対して、佐藤総理は、明確に侵略的傾向といった意味答弁しておると私は記憶しております。   〔小林分科員「明確じゃないんだ。明確じゃないからあなたに聞いているのです。」と呼ぶ〕
  9. 中野四郎

    中野主査 小林君に御注意申し上げます。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は明確だと思っております。でありますから、そのことばを、実は一々いま覚えておりませんが、大体私の記憶をたどってみるならば、平和共存政策というものを全然否定しておる、武力革命考え方に立っておる、インド国境問題における実例等から見て、侵略的傾向を持っておるものと思われるというような、はっきり私はいま資料を持っておりませんが、そういうような意味答弁であったと思うのでありますが、私はそれではっきりしているんじゃないか、こう思います。
  11. 小林進

    小林分科員 それではひとつ質問を変えてやります。外務大臣は、中華人民共和国を称して、いわゆる膨張政策侵略政策武力拡大政策をとっておるとお考えになるかどうか。これは、総理とは別に外務大臣の見解を伺いたい。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 侵略政策とは総理大臣は言っていない。侵略的傾向があって、いろいろ近隣圧力を感ぜしめるような姿勢をとっておる、こういうことでございますが、私は、この総理の増え方に全然同感でございます。
  13. 小林進

    小林分科員 それでは、侵略的傾向をとって近隣圧力を感じさせておるという、その具体的事例をひとつお示し願いたいと思います。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 核実験の問題一つ取り上げましても、いまほとんど世界の大部分が核実験停止核拡散防止政策ということに共鳴しておるさなかにおいて、あえて核実験を行なっており、将来もこれを続ける態勢にあるということは、少なくとも世界の平和を求める大勢に同調しておらぬということは言えると思います。
  15. 小林進

    小林分科員 どうもあなたの答弁は、ぐたらぐたらしてわからぬけれども、第一さっきの総理ことばを言われたのと核実験の問題について——それでは具体的にお伺いしますよ。平和共存を否定するというのは、中国は否定いたしておりません。しかし、現状のように、中国を軍事的、経済的、政治的に支配されておる現状のままの平和共存は否定いたしておりますよ。だから、平和共存、いわゆる平和三原則に基づいて他国領土侵略せず、他国を軍事的に支配せず、他国経済的に支配しない、完全独立国家独立国家の間における平和共存は、これを進めていこうじゃないか、これを明らかにいたしておきます。あなたは外務大臣をやりながら、そんなことを勉強できないのですか。  それから武力革命を肯定しておるから他国侵略政策に相通ずるとは一体何事ですか。これは、国内における自己主張する政権の樹立のために、相手側から武力攻撃を受けたときには武力をもって対抗しなければ革命というものは成立しないという思想論争です。国内における政権交代の問題です。こんなことが一体侵略戦争であるということの何の理論の裏づけになるのですか。日本だって徳川幕府を倒して明治維新になるときには、明治政府武力をもって徳川幕府を倒した。国内における政権交代武力が必要であるか必要でないかなどということは、これは他国侵略する武力戦争とは違うんだ。椎名さん、あなた、そんなぼやけた、そういう小ばかにした答弁をしてはいけません。インド中国との国境線の問題は、どちらが一体侵略国あり、どちらが一体侵略国であるという歴史上の証明があなたできますか。あなた、どちらの領土であるという証明ができますか。たまたま中国が強くてインドが弱いから、強い国のほうが国境線侵略しているなどというそういう素朴なものの見方をして、国民をだましちゃいけませんよ。私は、いまの中印国境紛争というものはこう解釈すべきであると思う。中国は、ダラク地区ですか、あの国境紛争地区中国のものと信じている。インドも、あの地区はやはりインド固有領土であると信じておる。お互いが長い歴史とそれぞれの環境に従って、自己の国土であると信じ合っている国同士国境争いであるという、こういう見方をするのが第三者としての正しい見方でなくちゃならぬ。それを否定するような確かなる確証があれば別でありますよ。あなたは、他国国境を同じゅうする隣接国家同士国境争いを、第三者として、縁もゆかりもない日本がそういうことを簡単に、中国共産主義であり、あるいはインドは非共産主義国家であるから、そうしてインドは弱い国であるから、だから中国共産党インド国境を侵害しているなどというそういう軽率なものの見方をしてはいけませんよ、あなた。それは俗論だ。俗論でないという、あれは確かに中国侵略しているのだという証拠があったら言いなさい。  それから第三番目の核実験の問題を言いますが、中国核実験をした。それは、日本社会党はいずれの国の核実験に対しても反対である、こういう原則をきめている。これは日本社会党の貞操です。操ですから、私どもはその立場に立って中国核実験にも反対をいたしております。反対をいたしておりまするけれども、あなたの言うような、外務大臣の品性をも落とすような、そういうばかげた理論で私は反対をしているのではない。いいですか。しかし、中国がなぜ一体核実験をやらなければならなかったか、その理由をわれわれは遺憾ながら認めざるを得ない。なぜかならば、いわゆるアメリカの核の独占です。日本基地にして中国封じ込め政策をやって、世界第一の七艦隊というものであの大きなシナ海を包囲しているじゃないですか。何の因縁があってあの大きなシナ海アメリカは包囲する権限があるんですか。一体、何の権限があるのです。しかも核を独占して、アメリカ中国の本土の頭上から核の脅威を与えているじゃありませんか。中国が反抗すれば一たまりもないと脅かしているという核の脅威を与えているじゃありませんか。しかも、問題は日本沖繩ですよ。日本国内における軍事基地です。アメリカ沖繩核基地を持って、四六時中中華人民共和国を脅かしているじゃありませんか。この脅威と不安の中で、中華人民共和国が、ソ連のフルシチョフにわれの防衛のために核兵器を貸してくれないか、こう言ったときに、フルシチョフはいわゆる日米の、そのあなたのおっしゃるケネディとの話し合いのもとでそれを拒否したために、頭上四六時中核兵器脅威を与えられ、世界一の七艦隊に包囲せられている、こういう大きな不安の中に置かれている中国が、自己防衛するために何らかの処置をとらなければならぬというのはあたりまえじゃないですか。遺憾ながらその脅威侵略だ。それが圧力ですよ。もしも隣国に対する圧力ということばがあるならば、このアメリカ中華人民共和国に対する無暴なる圧力なんだ。これに対して自己防衛するためにやむを得ず核実験をやった。しかし、私は、それを賛成をしようというのじゃない、私は反対なんだ。反対だけれども一体これについて日本外務大臣として、そういう非難をする権限がありますか、あなたはあるとお考えになりますか。一体中国を包囲し、中国圧力を加えているアメリカの第七艦隊基地を提供しているのはどこなんです。安保条約に基づいて、日本じゃありませんか。いわゆるばくち打ちの場所を提供しているようなかっこうで、この他国に大きな侵略を加えているアメリカ場所を提供しているのは日本じゃありませんか。一体中国を攻撃する、中国を軍事的に圧迫をするその沖繩基地を提供しているのはだれですか、日本じゃありませんか。ぼくはアメリカと一緒になって場所を提供しながら、六億五千万人の中国人民に昼夜の分かちなく脅威を与えているこの日本立場は、いわゆる共同正犯じゃないかと思っている。この日本アメリカ共同圧力に対して、自己防衛のためにやむを得ず中国核実験をやって、核拡散をしなければならない立場に立ったのじゃないかと私は思っている。これは、私が言っているのじゃない。言っているのじゃなくて、ここにも新聞の切り抜きがあるが、こういうことが国民世論の中にあるじゃないですか。中国はこのアメリカの原爆、水爆、ミサイル脅威からのがれるためには、いやおうなしにやはりみずから核を保有し、アメリカ核独占に基づく脅威から、中国核兵器をなくするからアメリカもやめよう、こういう提案の共同国になる資格を得るためにもやむを得ずこれをやらなければならなかったのだろう、こういうふうな主張も行なわれているのであります。どうです。あなたは、それでもなお中国近隣圧力を加えて侵略政策膨張政策をやっているとおっしゃるのかどうか。むしろ近隣に対して圧力を加えて膨張政策をやり、軍事的な脅威を与えているのは、アメリカ帝国主義とこれを協調して共同正犯立場にある日本のいまの政府じゃないのか、私はそう考えますが、一体どうなんだ。私はこれをお伺いしている。椎名さん、これは重大問題ですから、いま一回明確にお答えを願いたいと思うのであります。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほど申し上げるように、侵略をやっているとか、侵略主義であるとか、そこまで私は言っていない。少なくとも中共の今日の姿勢によって、安全が脅威されておるという傾きがある、圧力を感ずるというのがやはり現実だと思いますから、ただ理論の闘争を私はあなたとはやろうとは思いません。私は、あくまでさっき申し上げたような考え方であります。
  17. 小林進

    小林分科員 私は議論をしようというのじゃない。いまアメリカ日本は、かくのごとき第七艦隊といい、沖繩といい、核のミサイル基地といい、具体的にこういう形で相手国中国圧力を加えているじゃないか、それに対して中国近隣というか、一体どこの国とどこの国に圧力を加えているのか、具体的事例を示してくれと私は言っているのです。具体的事例はないじゃないですか。インド国境と言われるが、私が言ったように、あれはだれが白でありだれが黒であるということを言い得る証拠一つもないじゃないですか。私は、具体的事例を言ったのです。あるなら示しなさい。論争をしようと言っているのじゃない。具体的な事例を示せと言っている。  特に、日本国民が一番ふしぎにたえないことは、日本といわゆる北京政府との関係においては、蒙古のフビライが日本侵略して以来数百年ですか千年ですか、中国人民から日本侵略を受けた経験もないし、脅威を受けた経験もないのです。近世百年の日本歴史というものは、これにかわって中国侵略歴史なんです。繰り返し中国侵略したわれわれは、まだその涜罪も済んでいないのです。講和条約も成立していないのです。しかるに、いまの政府や自民党の一部には、日本にいわゆる借金の催促をしないのも、賠償の請求をしないのも蒋介石のおかげですなどと言っている。何を言っているのですか。われわれが迷惑をかけたのは、蒋介石個人じゃないのです。われわれが迷惑をかけたのは中国人民なんです。———————————————、数千万人の住みかを奪い、数千万人の人々の住みかを荒らしてあらゆる金銀財宝を侵略したものは、いま北京政府が—————いる六億五千万人の人民なんですよ。その人民には、われわれは今日に至るまで一つ侵略を受けたことがないし、一つも迷惑を受けたことがないのです。われわれが近世百年間あらゆる迷惑をかけておきながら、その涜罪もなしに、中国人民から——————————————————————にその恩恵をすりかえようなどという、そういう非合理な主張をしてはいけませんよ。  重大問題ですからもう一回繰り返します。いま北京政府————いる六億五千万人の国民、その国民を代表する北京政府から、われわれは一体どういうような侵略脅威を受けたか、どんな軍事的な脅威を受けたか、明確に事例を示して言ってください七国民が納得するような事例を示して説明してください。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 現実に侵略を受けたということは言っていない。ただ中国姿勢によって、膨張政策によって圧力を感じておる、これは現実だと思うのです。国民の大多数がそういう考え方を持っていると思うのです。
  19. 小林進

    小林分科員 冗談じゃありません。だれも圧力を感じていません。いまも言いましたように、近世百年の歴史の中に、具体的に何一つ侵略を受けたことはないじゃないですか。こちらこそ土足にかけ、あらゆる横暴の限り、悪いことをしてきたけれども、こちらは一つも迷惑を受けたことはないじゃないですか。そういう国民の大多数が圧力を受けたという具体的例証一つ示されないで、ことば国民を誤らせようとしている。それがあなたたち戦時中における米英鬼畜論なんです。あのときも、国民は決して米英を鬼畜だとは思っていなかった。その日本国民を、米英は鬼畜だということばであなたたちは欺罔して今日の迷惑をかけた。いままたあなたのような無能な外務大臣——私はあえて言わしてもらいます。無能です。それに外務官僚は、いまの日本外交を米英中心にした外交政策にしなければ外務官僚は出世していかない。それに、新しい感覚に基づく何の外交もやろうとしない無能な外務官僚、あなた方はともに日本の大きな外交政策を誤ろうとしておる。  それから、私は申し上げますけれども、あなたはいわゆる安保体制を堅持する。日本の安全の確保についていささかの不安もなからしめているのは、いわゆる日米安保条約のしからしめるところだ、中国核実験を行なっても、また中国はいま膨張政策をやっているけれども日本国民がそれほどの不安を感じないのは日米安保条約があるからだ、こういうことをあなた方は言われているけれども、間違いありませんか。この主張に間違いありませんか。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 間違いはないと確信しております。
  21. 小林進

    小林分科員 そこにも大きな間違いがあるのです。私どもは、中国核実験に対していささかの脅威も感じておりません。これは国民大多数の意見です。中国は、いまも言うように、蒙古のフビライが日本侵略して以来断じて侵略政策をとっていないことは、国民はわかっているからです一中国核実験をしようと核兵器を持とうと、中国社会主義国家は断じて日本侵略しないと国民は確信している。しかし、日本国民は現在非常に不安におちいっております。その不安は何かといえば、いわゆる日米安保条約に基づいてアメリカ軍事基地日本にあるということです。沖繩にああいう、ミサイル基地があるということなんです。あなた方はこれを逆に考えていらっしゃる。あれがあるから安全だと思っている。国民はあれがあるから不安に思っている。いま南ベトナムで戦火が拡大しております。あの南ベトナムで戦火が拡大しているときに、国民は大きな不安を感じている。沖繩戦争が起きたところでわれわれには関係ないじゃないかというのではない。日本アメリカ軍事基地があるから、この沖繩から飛行機が飛び立っていくから不安なんです。トンキン湾における第七艦隊のあの大きな戦力がこの日本軍事基地から出ていくからです。だから、南ベトナムにおける戦争が拡大すれば、日本はいつ報復攻撃されるかしれない、これが日本国民の不安なんです。この日本国民の不安をあなたはお認めになりますか。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日米安保条約の趣旨は、あくまで自己防衛防衛にあるのでありまして、決して事を好んで手出しはしない。日本の安全をあくまで守るというような決意を、先般の佐藤・ジョンソン会談においてもはっきりしたわけであります。われわれは、この日米安保体制あるがゆえに日本の安全というものが今日守られておる、かように信じております。
  23. 小林進

    小林分科員 それが重大な見解の相違なんです。いま南ベトナムへアメリカの飛行機がいっていますが、これはどこから飛び立っていますか。日本軍事基地から沖繩アメリカの飛行機が飛び立って行っておりませんか。あの南ベトナムの海岸における軍艦は日本軍事基地からいっていませんか、日本基地にして行っていないかどうか。
  24. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一々私も事実は存じませんが、おそらく行っておると思います。それは補給のために行っておると思うのです。
  25. 小林進

    小林分科員 日本国民が一番危険を感じているそういう重大な問題を、一々確かめていないとは一体何事ですか。あなたは何を確かめているのです。戦争を拡大するそういう飛行機や軍艦が日本の港や日本沖繩から出発して行っているというその事実を確かめ得ないで、何を確かめているのです。一体日米安保条約中心は何ですか。日本並びに極東の安全のためにこの防衛条約を結んだと言っている。おそらくアメリカ沖繩から、いわゆる南ベトナムの問題も極東の安全の条項に基づいて立っていくのであろう。さもなければ、戦争のために日本の港からアメリカの飛行機や軍艦が立っていく法的根拠はないはずです。何で一体出ていくのです。何であなたは黙ってそれを見ているのです。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あなたは沖繩のことをおっしゃったから、沖繩のほうのことは一々知らぬ、こういうことを申し上げたのです。日本からの軍艦の出港とか、あるいは飛行機の問題については、十分にこれを注意しておるつもりであります。
  27. 小林進

    小林分科員 では、日本の港からも出ていきますね。
  28. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、戦闘作戦行動ではない。
  29. 小林進

    小林分科員 戦闘作戦行動でなくても、出ていくということに対する危険を国民が非常に感じているということを、あなたは一体考えにならぬのかどうか。それからいま一つ沖繩軍事基地反対的に攻撃されたときに、わが日本に危険がないとあなたはおっしゃるのかどうか、あわせてひとつお聞かせ願いたい。
  30. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本の港から軍艦が出港して、日本が危険にさらされることはないかというお話でありますが、結局極東の平和と安全のために日米安保条約を締結しております。その安全を防衛するという意味において行動しているのでありまして、われわれはその行動に絶対に危険を感じないどころか、危険を防止するものであると考えております。  それから、沖繩の問題についても同じような考え方であります。
  31. 小林進

    小林分科員 これは、先ほどから繰り返して申し上げておりますように、日本国民はむしろ中国核実験などに対していささかの危険も感じていない。中国日本にもはや何らの危害も危険も具体的に与えたことは一つもない。むしろアメリカの極東における侵略政策、そのための日本国内軍事基地沖繩の、ミサイル基地があることによって日本国民は常時危険を感じているのだ。そういうことに対するあなたは国民の感覚を受け入れる気持ちが一つもない。外務大臣としては——ですよ。あなたは——です。もう時間がありませんから、これを繰り返していくひまはありませんが、私はまた、外務委員会等で同僚諸君の了解を得て、この問題を掘り下げていきたいと思います。  次にたった一つ、私はここでお尋ねをいたしておきたいことは、中国核兵器の全面禁止を目的とする世界の首脳会議というものを提唱しています。これは、周恩来首相から日本にもこの招請状が来たはずでありますが、政府のほうは、正式の国交が回復してないからということで、返事をお出しにならないやに私は承っておりますけれども、こういう問題は、アメリカに対して自主的外交ということが日本にあるならば、こういう全面的な核兵器使用禁止をしようという会議を実現する方向に日本がアドバイスするなり協力するなりやられたらいかがでしょう。私は、こういうことこそ生きた外交であると思いますが、いかがでしょう。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 すべて世界の首脳会議を開く場合には、いきなりやっては全く効果がないのでありまして、やはり相当根回しをして、タイミングをはかってやるというのが、私はほんとうのいき方だと思う。従来もそういうふうに行なわれておる。いわんやお互いに信頼感のない国が、いきなり首脳者が集まってみたところで、それは何の効果もない。ただそういうことを言うことそれ自体が一つの宣伝効果をねらっているものというふうに解されてもやむを得ないじゃないか、かように考えております。
  33. 小林進

    小林分科員 これは重大なことですから、聞いておきます。  それは、中国が十月十六日ですか、核実験をやった。やると同時に、一日かおいて世界に向かって声明を発表せられた。私どもアメリカの核脅威、核侵略防衛上やむを得ず核実験をやった、けれども、これは断じて先んじて使用しない、他国が、アメリカ帝国主義が使用した場合にこそ防衛上使用するけれども、先んじては使用しない、同時に、これは使用のためにつくるのではなくて・全面廃止の方向に向かってやむを得ずつくったのであるから、早急に世界の首脳会議を開いて、そして全面禁止、全面廃棄の方向へこの問題を処理していきたい、という声明を発表しましたが、この先んじて使用しないという主張、あるいは首脳会議を開いて早く全面廃棄をしたいという主張、この二点を、これは誠意のないものである、これは中国共産党の宣伝であるとあなたはお考えになっているのか。あるいはこれは真実を語っているものであるとお考えになっているのかどうか。二者択一で、あなたの——あなたのじゃない、日本政府のこの声明に対する考え方を承っておきたいのであります。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 首脳会談の問題については、いま申し上げたとおりであります。使用せぬという声明を出しておるのでありますが、どこの保有国でも、自分から先に使用すると言った国はないのです。みなこういうことを言っておるのであります。結局、これは世界の大多数が信用するかしないかという問題がある。
  35. 小林進

    小林分科員 残念ながら、アメリカは、どこの国も使用しない前にアメリカが先んじて核兵器を使用することがないなどという声明は一ぺんもいたしておりません。あなたはどこの国もと言っているけれども、言っていない。一番多く核兵器を持っておるアメリカは言っていないですよ。それから、いまも言うように、世界の多数の国は云々などということを言っているのではない。日本政府として、日本外務省として、いわゆる首脳会議を開くということと先んじて使用しないという、この二つの問題をどうとらえているか。他国の、多数の国のことを聞いているのではない。日本政府外務省はどうとらえているかということをお聞きしている。
  36. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 実際問題としては、もちろん先んじて使用するなどというようなことはいまの段階では言えるはずがない。また相当に核兵器を所有するようになっても、先んじて使用するというようなことは、これは全く考えておらぬと私は思います。いまの段階においては、それはだいぶ将来のことでありますけれども、そうなってもそういうふうに考えておるのではないか。ただしかし、保有している、そのことによって相当政治的な効果をねらっていることは、これはもちろん申すまでもないことであります。いま先んじて使用するとかしないとかいうような段階ではないのでありまして、全然これは問題にならない。
  37. 小林進

    小林分科員 そうすると、中国の言っていることはうそだということですね。実際上には問題にならぬが、言っていることはみなうそだ、宣伝だ、こうおっしゃるのですね。
  38. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 核兵器を持つに至っても自分みずから使用はしない、先んじては使用しないということは、私はおそらくほんとうだろうと思うし、また先にこれを使用すると言ってみたところが、だれも信用しないのですから、先んじて使用しないというのは本音だろうと思うのです。思うが、しかし、いまの段階においてあまり大した価値のある発言ではない。
  39. 小林進

    小林分科員 時間もありませんから、この問題はあとでまた掘り下げてお聞きしましょう。  アジア問題について、いまの世界のすべての問題がどうもアジアに集約された形で出ておりまするが、現在アジアにおける戦争の危機というか、アジアにおける混乱の基本的な原因は、一体どこにあるとお考えになっておりますか。もっと具体的に言えば、共産主義侵略によってこういうアジアの危機やアジアの混迷が招来されていると外務大臣はお考えになるのか、あるいは長い間大国の植民地政策によってしいたげられていたそれぞれの民族が、植民地解放と新独立国家の達成のために、いま独立運動を続けている、それをだれかが阻害することによって起きているアジアの混迷であるとお考えになるかどうか、この二つの問題についてお答えを願いたいと思います。
  40. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アジア全般についてのお尋ねでございますから、きわめてばく然たるお答えになると思うのであります。しかし、これを総合してみるのに、植民地解放はアジアにおいてはもうほとんど完成の域に達しておる。ただ、植民地から解放された国が、ほんとうに民族国家としてまだ十分な基盤の上に確立されておらぬという点が多々残っておる。それに、東西の冷戦と申しますか、それが入り込んできて、そして混乱を引き起こしているものと私は考えております。
  41. 小林進

    小林分科員 私は、植民地の解放というものに対しては、それぞれ解釈があると思います。あなたのようにほとんどの国が解放せられて独立国家になりつつあるという見方もあるし、まだ完全に解放もせられていない、完全に独立を獲得していないという見方もあると思います。これは論争ですから、そこに旧植民地政策やら新植民地政策という二つの見解が出てくると思うのでありますけれども、たとえて言えば、お隣の韓国です。あなたは完全な独立国家とお考えになるかもしれませんけれども、私どもは、アメリカによって軍事的、経済的、政治的に支配をせられておる不完全国家であると見ておる。韓国は、やはり不完全なる国家、部分的に植民地国家であると見ておる。こういうそれぞれの見方がございましょう。南ベトナムもしかりです。あなたは、南ベトナムは完全な独立国家とお考えになるかもしれませんけれども、私は、南ベトナムなどというものは、アメリカの植民地政策に基づいて軍事的、経済的、政治的に支配されている完全な植民地国家である、そう考えておる。いかがでございましょうか。この私の見方は間違っておりましょうか。
  42. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう解釈もあるようでありますけれども、これは、日本においては少数の解釈だと思います。いまアメリカが南ベトナムにおいて行なっておるあの状況は、南ベトナム政府の要請によってあそこに来ておるのでございまして、アメリカとしては何のために−それじゃ、ただ頼まれればどこへでも行くかということになりますが、頼まれても行かない場合もあるし、行く場合もある。なぜ行っているかといいますと、やはり共産主義、全体主義、そういうものが世界全体の繁栄に適当でない。民族によってどの政体を選ぶかということは自由だけれども、実力行為によってはたの政治的な目標が曲げられるというようなことじゃ、やはり自由主義国家陣営としては捨てておけないという気持ちで行っておるのでありまして、植民地政策だという考え方は、日本においては少数であると私は考えております。
  43. 小林進

    小林分科員 時間も迫ってまいりましたので、私も主査に御迷惑をかけてはいけませんので、ごくかいつまんでやりますが、アジアにおける問題は、あなた方がおっしゃるように、共産主義脅威から、アメリカは自由主義国家のチャンピオンとして自由主義国家の自由を守るために他国で軍事行動を進めておる、こんな子供だましの主張に感心する者はだれもいませんよ。それこそ日本外務省とこれを取り巻く一派の少数意見なんです。終戦直後のまだ神話に近いころには、そういう主張は通った。けれども、いまはだれもそういうことは信じていない。いまはアメリカこそアジアにおけるそれぞれの独立国家の独立を阻害している、そしてアメリカは、アジアの支配をさらに進めようとする野望をたくましゅうしているのであるとしか国民考えていない。だんだんその主張は強くなってきています。あなたは、いまいみじくもぼくが質問しない前に言われた。なぜアメリカはあんな縁もゆかりもない南ベトナムの中で軍事的、経済的、政治的な支配をしているのかということに対して、あなたは、二つの理由をあげられた。一つは、南ベトナム政府の、要請によってあの軍事行動を進めておる。そうでも言わなければ根拠がないから、そう言わざるを得ないであろう。その南ベトナム政府とは一体何だ。アメリカのかいらい政権じゃないですか。アメリカは一番最初に何をつくったか。私はあまり英語がわからぬから発音がよくできないけれども、ゴゴンジエムですか、ゴ・ジンジエムですか——どうもわからぬ、むずかしい。そのゴゴンジエムかゴ・ジンジエムかなどという、いわゆるかいらいの政権をつくり上げて、そのかいらいの政権からアメリカの軍隊の出兵を要請するような形をつくらせている。あそこへ軍隊を持っていったじゃないですか。共産主義侵略とは何です。一体南ベトナムにソ連の兵隊や中国の兵隊が、制服を着て、大砲を持って、鉄砲を持って、飛行機を持って行っておりますか。思想的な問題などというのはおのずから別個ですよ。ソビエト共産軍が一人でも来ていますか。中国の正規軍が一兵でも南ベトナムに来ておりますか。一人の兵隊も来てないじゃないですか。そういう共産主義侵略などという神話的なおとぎ話を理由にして、縁もゆかりもない南ベトナムに二万、三万の軍隊を引き連れて、同じベトナム人を南北に分けて、民族の血を流さしているじゃないですか。これがアメリカアジア政策じゃないですか。それに便乗しているのがあなたじゃないですか。お隣の韓国だって何だ。南北に分けている。その南朝鮮に李承晩などというものを当代の英雄のような形でアメリカは連れてきた。そして、韓国の大統領にして、まるでアジアにおける救世主のようにして、その李承晩政府に基づいて韓国を軍事的、政治的、経済的に支配をする。ところが、途中までいってもう利用の価値がなくなったら、ぽいとその李承晩をおっぽり出して、今度は、張勉でございますの、何勉でございますのといってかってほうだいな植民地政策を進めておる。南ベトナムだってそのとおりじゃありませんか。ゴ・ジンジエムでなくてはならぬような話をして、そのゴ・ジンジェムももはや用事がなくなったらぽっとおっぽり出して、さあだれでございます。かれでございますと、かってにかいらい政権をつくり上げて、アメリカのお気に召さなければそれを投げ出している。かいらいの一翼であると思ったグエン・カーンも、このアメリカのあまりにも飽くことなき植民地政策に、いささかの良心を持ち出してテーラーに反抗したら、もはやこれをそでにしようとしている。アメリカの軍事政策が続けられているじゃありませんか。ベトコンは共産党ではありませんよ。南ベトナムにおけるベトコンは共産主義者じゃないのです。私はあまり英語はわからぬけれども、ベトコンという名前は、日本語に訳せば民族解放軍だ。しかもあの南ベトナムにおいて、アメリカ帰れと言っているのは仏教徒じゃありませんか。仏教徒は共産主義者じゃありませんよ。学生は共産主義者じゃありませんよ。アメリカがつくったかいらい政権反対し、アメリカは本国へ帰れ、ヤンキー・ゴー・ホームと言っているのは、民族の独立を祈願している素朴な南ベトナム人じゃありませんか。そういう声があなたわからないのですか。アメリカは、南ベトナムにおけるアメリカのあり方を、自衛権の発動などと言った。南ベトナムでアメリカが守らなければならぬ自衛権は一体何ですか。外務大臣、教えてください。
  44. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 自衛権は、申し上げるまでもなく外部の侵略に対する自衛行為であります。
  45. 小林進

    小林分科員 外部の侵略といったって、アメリカの権益はないじゃないですか。南ベトナムにアメリカの権益がどれだけあるんですか。教えてください。
  46. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 南ベトナム政府から頼まれて、その防衛のためにアメリカ軍が派遣されておる、これに対する侵害に対しては、これを排除しなければならぬ。これが自衛行為であります。
  47. 小林進

    小林分科員 時間もありませんし、これ以上主査に御迷惑をかけては相ならぬからやめますけれども、いままでのあなたの答弁は、終始一貫一つとして答弁になっていません。そういうような外務大臣は、残念ながら————外務大臣だと私は申し上げなくちゃならぬ。非常に残念です。特に私は、答弁としてはあなたに何もこれ以上要求しませんが、一番最初に戻りまして、あなたが戦時中に軍需省の事務次官として戦争の最高指導をしながら、米英鬼畜ということをわれわれに教えられた。その米英鬼畜と教えられたアメリカと今日のアメリカ本質的にどう違っているのかというこの答弁だけはどうしてもあなたに聞かなければなりませんので、これはこの次の外務委員会であらためてお聞かせをいただきたいと思います。
  48. 中野四郎

    中野主査 ただいまの小林議員の発言中、もし不穏当なる言辞がありましたならば、会議録を調査の上主査において善処いたします。  楢崎弥之助君。
  49. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 二十五日の当分科会で日韓漁業の問題と関連をして李ライン撤廃の件について、大臣は、日本側としてはもちろん撤廃を前提として日韓漁業交渉を進めておるし、また、この李ラインの撤廃が日韓会談すべての基本の態度だ、そして、その点は韓国側も了承しておるという答弁をなさったわけであります。しかし、分科会が済んだ後、どういう魂胆かわりませんが、李ライン撤廃の問題に関する外相の答弁について記者会見を行なわれて、その弁解と申しますか、何か知りませんが、あらためて説明をなさったように新聞で読んだわけであります。あらためて記者会見をなさったその意味は、分科会で二十五日答弁された李ライン撤廃問題の答弁について、何か修正を加える意図があったのか、あるいは補足、補遺の意味であったのか、まずその点をお伺いしたいと思います。
  50. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非常にいろいろな問答が行なわれまして、それが必ずしも正確に伝わっておりません。新聞によっていろいろありましたが、その点は一々申し上げませんが、私も別にそれを修正するという意味はない。適当でないことば使いもあったようであります。そこで、私の真意はこうである、そういう点を要約して記者会見において発表したわけであります。
  51. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは、二十五日当分科会答弁された語句のうち、特に不適当と思われる個所はどこであるか。それをはっきりするためにあなたはわざわざ記者会見を後ほどやったとおっしゃった。
  52. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 李ラインの撤廃を前提としてということばがどうも適当じゃなかったように思われる、私はそう言った、言ったから適当じゃないと思われる。そこで、前提ということばは非常にまぎらわしいことばなんです。まずその前提を踏んでからやる場合と、そういうことを前提としてこの問題を進めておるというのでありまして、私の使った前提は、目的として漁業会談を進める、こういう意味であった。この前提ということばが非常にまぎらわしいことばなんです。だから、それによって誤解を生じた向きがあったのはやむを得ない。そこで、私はこの前提ということばをあらためてはっきりさせる意味において、目的として漁業会談をこれから行なおうとしておる。そして、あの記者会見のときには申しませんでしたけれども、漁業会談で問題は三つある。それは基線の問題と共同水域における隻数の問題、それから漁業協力資金の問題、この三つある。この三つが円満に妥結されれば、自然李ラインというものが消滅する、こういう趣旨で、そういう目的のもとに漁業会談を行なっておるということをはっきりさせたかったから、あの記者会談をいたしました。  もう一つ、この問題については、日本考え方については、国会においてしばしば言明しておることでもあるし、韓国側としては、日本のかような方針は十分了承しておる、承知しておるものと思う、これだけの趣旨でございます。
  53. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 負そうしますと、前提という意味は、前池田内閣の当時でも、池田総理自身、あるいは赤城農林大臣自身も、日韓会談の前提は、李ラインの撤廃だということを再三言われた。それで、その前提という意味について、あなたは外務省を代表して、二十五日、記者会見で明らかにされた。そうすると、いまの御答弁で承りますと、前提というのは、目的としてといまおっしゃいましたが、しからば、韓国側が、李ライン撤廃ということは了承しておる、あるいは合意に達しておるというふうに二十五日の分科会答弁でわれわれ聞いたわけですが、そうではないのですか。
  54. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この問題については、分科会の速記録をお互いに見るとはっきりするのですが、まず質問が、この問題については、李ラインの撤廃については合意をしておるか、あるいは合意するつもりかといったような、合意ということばが出た。そんな必要はない、こっちは初めから認めていないんだから、撤廃を合意するという必要はない、こっちが認めていないんですから。とにかく、いまの漁業会談の内容が次々と妥結をすれば自然になくなる、こんなものを何も別にこっちは認めたわけじゃないんだから、初めから国際法上、慣例法上不法、不当のものである、こう言っておるのだから、それをあらためて撤廃いたしましようと何も相談してきめる必要はない。でありますから、そんな必要はないんだということを再三申しましたので、合意などということは全然考えていないし、話題にもならぬ。  それから、了承の問題ですが、これは、撤廃を了承したかというようにあるいは伝わると、これはたいへんなことなんです。撤廃を目的として漁業会談をやろうとしているというわれわれの、日本政府のこの問題に対する方針が、日本ではこういうことを考えているぞということを承知している、こういう意味なんです。それを、漁業会談と離れていまさらそんなことを合意も了承もへちまもない、そんなものは。でありますから、日本考え方に対しては、ああいうことを考えているなということは了承、承知しているものと思う、こういう意味なんです。だから、その点が非常に激しい一問一答で、非常に盤根錯雑している。その点をはっきり真意を伝えるという意味において、私は特別に記者会見をお願いして、この真意を率直に申し上げた次第であります。
  55. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ただいまの外務大臣の御答弁を聞きますと、これは二十五日の野原さんとの一問一答をもう一ぺんここで再現してもらわないとはっきりしてまいらないと思う。しかし、大臣のいまのお答えは、たいへん慎重ではあるけれども、非常にあいまいなんです。じゃ大臣、こっちを向いてください。この李ラインの撤廃、これを日本政府としては最大の目的として日韓会談に入った、あるいは日韓漁業交渉の最大の目的としている、この李ライン撤廃の問題、安全操業の問題、これはそのとおりでございますね。
  56. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 最大というような形容詞は私は適当ではない。きわめて重要な問題にはいたしております。李ラインというものをはさんでいろいろのトラブルが起こっておる。これは容易な問題じゃない。こういうわれわれが初めから認めておらぬ李ライン、そういうものを口実にして漁船の拿捕をやったり、あるいはこれに対して抗議を行なったり、そういったようなトラブルはまことに両国のためにおもしろくないわけだから、このトラブルの原因だけははっきりさしておかなければならぬ。それには漁業会談を妥結させる、これ以外にない。それは会談のうちの重要なる問題の一つでございます。
  57. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 昨年の正月の池田さんの記者会見の中でもはっきり言われておるし、それ以降の本院におけるあらゆる委員会の機会に、この李ラインの撤廃問題がはっきりしないと日韓会談は御破算になるということは、池田総理はじめ農林大臣もおっしゃっているのです。この李ライン撤廃の問題がはっきりしない限りは日韓会談は御破算になる、椎名外相はこれをどうお考えになるのですか。
  58. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 李ライン李ラインというと、何かこっちも李ラインの存在を前提にして……。(「現実にある」と呼ぶ者あり)ございますから、別な表現で……。漁業会談の完成によって李ラインというものは置きかえられてしまう。でありますから、漁業会談の成否いかんというものは日韓会談の成否いかんに関係する。
  59. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 問題ははっきりしておるのですから、ひとつはっきり常識的なことばでやってもらわないとこんがらがってくるのですが、李ラインの撤廃——現実にあるのです。李ラインの撤廃が明確にならない限りは日韓会談は御破算になる、イエスかノーかでいいです。
  60. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 李ラインの撤廃ということばは、非常に誤解を生ずるから、漁業会談が成立しなければ全面会談はだめだ。
  61. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうじゃないのです。李ラインの撤廃がはっきりしなければ、漁業会談は交渉は成立しないのです。漁業交渉が成立すれば李ラインは撤廃される、その考えは、ライスカレーかカレーライスかの問答と一緒になるかもしれないが、これはそうじゃないのですよ。交渉の姿勢としては非常に大事なところなんです。李ラインの撤廃がはっきりしなければ漁業交渉は成立しない、イエスかノーか、それだけでいいです。私の聞いているのは、漁業交渉が成立すれば李ラインの問題が片づくというのではないのですよ。私はそういう答弁を期待しておるのではない。
  62. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ここまでくどくどしく繰り返しましたから、私のほうから申し上げますが、いわゆる漁業会談の交渉が妥結するということは李ラインの撤廃と同じでありますから、あなたのようにおっしゃってもけっこうでございます。
  63. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私の言うように言ってもいいというなら、イエスとおっしゃっていただけばいいのでして、したがって李ラインの撤廃が明確にならなければ漁業交渉は成立しない、したがって日韓会談は成立しない。
  64. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ちょっと待ってください。
  65. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いや、私の言ったことと同じでいいとおっしゃったでしょう。
  66. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 李ラインの撤廃ということが実現するということは、漁業会談が妥結するときに撤廃されるのです。ですから、漁業会談が交渉に入る前に李ラインの撤廃ということがきまるはずがない。(「この間は前提だと言ったよ」と呼ぶ者あり)だから目的に変えたのです。漁業会談の妥結がすなわち李ラインの撤廃そのものである。だから、その点については、漁業会談の妥結すなわち李ラインの撤廃。表から見るか裏から見るかによって、みな同じものですから、あなた方は裏のほうから見ている。
  67. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 同じことならどうしてそんなに言いかえるのですか。
  68. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 別なものだから……。季ラインの撤廃がまずきまって、それから漁業会談が妥結する、二つのものじゃない。だから、漁業会談の妥結すなわち李ラインの撤廃である、こういうことを申し上げている。
  69. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは、李ラインの撤廃がなければ漁業交渉は成立しないということと同じなんですね。どこが違うんです。
  70. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 何かちょっと違うような気がするけれども……。
  71. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ちょっと違うじゃ困ります。はっきりしてください。どこがちょっと違う。
  72. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあよろしゅうございます。
  73. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 じゃ認められたわけですね。李ライン撤廃が明確にならなければ漁業交渉は成立しないし、漁業交渉が成立しなければ日韓会談は御破算になる……。
  74. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 李ラインが撤廃になる……。
  75. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうですね。
  76. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 はい。
  77. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それではお伺いをいたします。  椎名外相は、一番懸案になっている漁業交渉の問題について、当然赤城農相といろいろと連絡をされながら、あるいは報告を聞きながら全体的な進行の見方をされる思うのですが、赤城農林大臣は、第一回の両国の農相会談で、李ライン撤廃ということは両方とも承知をして会談に入っておる−そうおっしゃっています。したがって、いま椎名外相も了承されましたように、李ラインの撤廃ということを何らかの形で外交的に保障ができる方法でこの問題を処理したい、こう答弁されておる。そうすると、ただいまの外務大臣の発言とやや食い違うのです。外務大臣は、もともと日本は認めてないのだから、そんなことを合意に達する必要もないとおっしゃいましたが、農林大臣の考え方と非常な食い違いがある。重大なことです。どう思いますか。
  78. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは、食い違いはないと私は思います。李ラインの撤廃ということについては、別に合意とかいうことを農林大臣は言っているわけじゃない。日本は、この撤廃をねらっているんだな、そういうことを向こうが承知している、それを口には出さないけれども、承知しながらいま漁業会談に入っている、こういうふうに言ているんですから、私の発言と少しも違いがあまりせん。
  79. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは韓国側も、李ラインの撤廃については、口には出していないけれども、心では了解して進めておるということですね。いまそうおっしゃった。
  80. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 李ラインの撤廃を承知して会談に入ったということは言い過ぎでございまして、相手方である日本政府がそれをねらって、李ラインの撤廃をねらっておるなということを同こうが承知しておる、敵状をお互いに感じておる、承知しながらやっておる、こういうことです。
  81. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、私は農林大臣の出席を要求したのですが、いまほかの分科会に出て諮るそうですから——これは御一緒でお伺いしないとはっきりしないと思うのですけれども、それはあと回しにしまして、それでは、李ラインの撤廃の問題については、韓国側と日本側とどこかで意見が違うのですか。
  82. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 別にまだこの問題について討議する、またそういう必要もわれわれは認めておりません。この漁業会談がすなわちこの問題の本質を左右する問題でありますから、李ラインの撤廃すなわち漁業会談、こういうふうに見ますと、漁業会談については、向こうの主張はいろいろあります。こっちの考え方と必ずしもまだ一致しておらぬ。一致してこれが解決したその段階において、李ラインの撤廃はわれわれとしてはこれで完結したもの、こういま考えながら会談を行なっておる次第であります。
  83. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 李ラインの問題で一番大切なのは、これは国際法的にも、あるいは国際慣行の上からも認められないのでしょう。日本はそれを認めていない。韓国がかってにやっておるのです。それで、いままでいろいろな問題が起こってきた。だからこそ、この問題についてはお互いに話し合わないと、また向こうがかってにつくるんだったらこっちは知らないんだということでは、この李ライン撤廃の保障がなくなるんじゃないですか。
  84. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 おっしゃるとおり、われわれはこれを認めておらない。認めておらないが、向こうは一方的にこれを設定して、そして漁船の拿捕等をやっておる。今度漁業会談がもしできますと、専管水域の基線が引かれる。その専管水域の外は共同水域ということになる。ただし共同水域、いわゆる公海ですが、そこの漁場は、もうもっぱら日韓両国の漁民がやっておる。ところが日本があまり乱獲するので魚族資源がだんだん枯渇するということを向こうが非常に心配しておる。その点については、こっちも全く同感でございますから、共同規制、つまりそこに入る漁船の隻数等を制限をいたしまして、そして、その魚族資源の保護をお互いにはかっていこうじゃないかというようなことが、いま漁業会談の論議の重要な一つになっております。
  85. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、漁業交渉が成立すれば、専管水域なり共同規制水域の問題が片づけば李ラインはなくなったものと思うとあなたはおっしゃっておるが、ということは裏返して言いますと、日本を拘束しない、あるいは日本の漁業と関係がないという保障があれば、韓国が国防ラインをかってに引いてもあなたは黙視されるわけですか。
  86. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 漁業に無害であっても、他の問題で必ずしも無害でないという場合には、そういうものは認めるわけにはまいりません。
  87. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは、問題をはっきりしたいのですが、それでは漁業の問題に関係がない、漁業の問題で日本側を拘束するようなラインでなくっても、とにかく李ラインごときものが、たとえ日本とは関係のないラインでも、漁業と関係のないラインであっても李ラインごときものが残るということは、大臣としては了承できないということですね。
  88. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どうも仮定の問題について、いま私は明確に態度を明らかにすることは控えたいと思います。
  89. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 仮定じゃないのです。あり得る問題なんですよ。いいですか。あなたの二十五日の分科会答弁、あるいは記者会見の内容が早速韓国側に影響していろいろな反響が出ているでしょう。大体それを一貫して流れておるものは、李ラインは残るということ、ただし、ニュアンスは別として、日本漁船の安全操業には関係がないかもしれないが、国防ラインは残るのだということは、向こうは言っておるのですよ。だから、仮定の問題ではないのです。そのときにはどうしますかということを聞いておるのです。そういうラインを認められるのか、黙視されるのか、同こうがかってにつくったのだから、日本政府としては関知しないという態度なのかどうか、これを聞いておるのです。
  90. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 仮定の問題でございまして、ただ向こうでそういううわさがあるというぐらいの程度では、われわれはこういう責任の場所で言明は避けたい、かように考えます。
  91. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは、李ラインごときものが残るということは絶対了承できないという意味ですね。いかなる形においても、たとえ漁業問題に関係ないとしても李ラインが残るということは絶対に了承できない、そういう態度で進まれるのかどうか。
  92. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 公海の上において日本を拘束するようなことがもし起こるならば、これはあくまで排撃しなければならぬと思います。
  93. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 だから私は聞いている。日本を拘束しないラインだったらいいとおっしゃるのですか、黙視するとおっしゃるのですか。ほかの日本以外の国については、国防ラインであっても、日本を拘束しないラインだったらあなたは黙視するというのですか。
  94. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 少しことばが足りないのであります。公海自由の国際的な原則に違反するものであれば、これは容認するわけにはまいらぬ、こう思います。
  95. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 わかりました。その点は私ははっきりしておると思うのです。そうすると、今度は漁業と関係のないラインでも、そういう公海自由の原則を侵すようなラインがもし残るとすれば、これは、またひるがえって漁業交渉に影響してくる、そういうことですね。あるいは日韓会談全体に影響してくる、そういうことですね。
  96. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 影響するかしないか、これは具体的にその問題に当面しなければわかりませんけれども、少なくとも日本としては容認するわけにいかぬ、これだけははっきりしております。
  97. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 時間がずいぶん経過しましたから、確認をしたいのですが、そうしますと、日本政府としては、一切のそういう公海自由の原則を侵すようなラインは絶対認めないということでやっておる。そうしますと、共同規則制区域の取り締まり権、あるいは違反をした漁船の裁判権等はどうなるのですか。
  98. 後宮虎郎

    後宮政府委員 その点、まだ目下話がよく詰まっておりませんが、原則論といたしまして、現在の李承晩ラインのごとく、沿岸国としての韓国が、一方的にその主権行為といたしまして監督あるいは裁判権を行なうということは認められなくなるということは、原則的に了解しております。
  99. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私がいまお伺いしておるのは、共同水域に限ってお伺いしておるのです。
  100. 後宮虎郎

    後宮政府委員 共同規制地区ということになるわけでございますから、いまの李承晩ラインの一方的な性格と変わってまいります。ですから、船の所属国でない国の政府相手国の船に対して管轄権を及ぼすとか、そういうことはできないたてまえになるわけでございます。
  101. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いまの問題は、一体農相会談の議題の内容になるのですか。検討する小委員会はどこですか。
  102. 後宮虎郎

    後宮政府委員 農相会談の議題の一環として審議が続いております。
  103. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、日本側は、沿岸国、つまり韓国が一方的にそういう取り締まり権なり、あるいは裁判権を持つということは妥当でないという態度でいまいっている。妥当でないとすれば、具体的にはどういう要求をなさっていますか、日本側として。
  104. 後宮虎郎

    後宮政府委員 目下まだ話し合い中でございますが、原則として、考え方といたしましては、旗国主義と申しますか、漁船の所属する国の政府、当該関係国のみが監督権等を実施するという考え方で話し合いを進めております。
  105. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、韓国側については韓国、日本側の船については日本、そういう態度ですね。
  106. 後宮虎郎

    後宮政府委員 そういう基本方針でやっております。
  107. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、その取り締まり方法なりはどのようなことが考えられておるのです。お互いに監視船を出すわけですか。
  108. 後宮虎郎

    後宮政府委員 目下その点、どういうふうなやり方でやるか、いろいろ国際的な先例等も参考にしながら話し合いが続いておりますが、まだ具体的には煮詰まっておりません。
  109. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 水産庁長官、お見えになっているそうですからちょっとお伺いしますが、いまの点に関して、昨日ですか、農林大臣が記者会見を行ない、そうして三日から始まる農相会談は、大体三、四日で片づく、大綱はまとまる。大綱がまとまればイニシアルするという記者会見のようですが、漁業交渉における大綱とは一体どういうことなんですか。そして、あとに残る部分というのはどういうことが予想されるのですか。
  110. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 これは、農相会談の経過におきまして最も双方が関心を持っている問題について妥結しようということになるわけでございますが、具体的にいまどれとどれとがということはちょっと申し上げかねまするが、大体直線基線の引き方、特に特定水域における直線基線の引き方、それから出漁する漁船の数、これも原則的な考え方であります。  それからいま御指摘のありました取り締まりあるいは裁判管轄等の問題は、あるいは事務的に片をつけられるかもしれませんが、そういった問題が中心になって大綱がまとめられるのではないか、かように考えます。
  111. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 じゃ、大綱というのは基線の問題、それから共同規制の問題ですか、内容はそういうものですか。
  112. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 もちろんその大綱の考え方のうらはらとなりまして、李ラインの処理の問題がございますが、基線の引き方、それから共同規制の主たる内容、特に漁船の隻数等の基本的な考え方、そういうものが中心になると思います。
  113. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 外務大臣が時間がありますから、外相に関係のある部分を、順序不同になりますけれどもお伺いします。  経済協力の問題です。請求権問題の解決と関連をして、有償二億ドルの内容は具体的にどういうことを考えておられるのですか。
  114. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これから請求権問題に触れて会談が進められようとしておりますが、まだこういう点は十分に討議もされておりませんし、その内容を申し上げる段階でないと思います。
  115. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それならば、請求権問題解決の第三項目である、民間ベース一億ドル以上というのはどういうことなんです。どういう協力の方法なんです。
  116. 後宮虎郎

    後宮政府委員 これは、政府が責任を持つものでなく、民間ベースの信用供与によって経済協力を実施していく、そういう趣旨のもので、政府が責任を持つというものではございません。
  117. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 政府が信用供与をしていくということですか。
  118. 後宮虎郎

    後宮政府委員 政府が信用供与の主体に直接なるわけではございませんで、民間同士の話し合いで売買契約、輸出入契約ができたのに対して、輸銀等の金融が普通の延べ払いの場合と同じように行なわれるということを大体予想しておるわけであります。
  119. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、第三項目の、民間一億ドル以上の問題は、輸銀の延べ払い方式などが中心になるだろうということですが、そうすると「一億ドル以上」と、わざわざ「一億ドル以上」という金額をそこに出されているのはどういうことなんでしょうか。
  120. 後宮虎郎

    後宮政府委員 当時国会にお配りいたしました資料にもございますとおり、いわゆる金・大平了解の第三項目の民間借款については、実は金額は明示してないのであります。大平大臣が当時国会で明らかにされましたように、先方がいろいろ国内政治上の要請もございまして、これは、どうせわれわれは青天井というたてまえをとっておるわけでありますから、先方がその青天井のところを解釈しまして、一億ドル以上というふうに国内的に言われても、われわれとしては異存はない、そういう話し合いになっているのでございまして、そういう具体的な金額については、両者の合意はございません。
  121. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 しかし、わざわざ一億ドルという金額をそこに示されておるのはどうしてですか。
  122. 後宮虎郎

    後宮政府委員 先ほど申し上げましたとおり、一億ドル以上を与えるという両者の金・大平了解ではなかったわけでございまして、民間借款のほうについては青天井というたてまえだったわけであります。そして、なぜそんな一億ドル以上という数字がよくいわれるようになったかと申しますと、これは、当時国会でも明らかにされましたように、青天井だから、韓国側のほうでこの総体のワクを六とか七とか、そういうふうに大きく見せる国内政治上の要請もあるので、一以上というふうに言われても差しつかえないということは言われたわけでございます。
  123. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、第三項目は全然民間ベースの協力をやるということと同じなんですね。
  124. 後宮虎郎

    後宮政府委員 そういうたてまえでございます。
  125. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、私はせんだっての外務委員会でも質問をしたのですけれども、わざわざ請求権問題解決の中にそれをなぜ入れなくちゃならないか、とすると、あの一億ドルという意味は、ある意味を持つのではないかということを言ったのです。なぜわざわざ一億ドルという文字をああいうメモの中に出したのですか、請求権問題解決の三番目の項目として出しているのですから。
  126. 後宮虎郎

    後宮政府委員 (ハ)の項目の中には、民間信用ということでうたってございまして、一億以上という数字は書きもので出てこないのでございます。それで、これはこちらとしてはあくまで青天井、こういうたてまえでございます。
  127. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 メモにあるでしょう。文字にちゃんと書いてある。
  128. 後宮虎郎

    後宮政府委員 従来からたびたび国会で御質問がありましたのですが、金・大平了解というものがあるのでございますが、韓国側がよく宣伝しておりますようなメモというものはないのでございます。この国会にお配りいたしました配付資料の中にも、第三項目(ハ)の中に一億ドル以上というその数字は出ていない、そういうふうになっております。
  129. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それはおかしいじゃないか。現実に文字の中にちゃんと出ているでしょう。どうして出ていないというのですか。
  130. 後宮虎郎

    後宮政府委員 先ほど申しましたとおり、先方が一億ドル以上というふうに宣伝−宣伝と言うと語弊がございますが、国内に説明することは差しつかえないということは、当時大平大臣から金部長に言われたところです。
  131. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そんなごまかしを言ってはいかぬですよ。メモの中にあるでしょう。これは金・大平メモですよ。(ハ)項にあるでしょう。
  132. 後宮虎郎

    後宮政府委員 国会にお配りしました資料には、(ハ)として「以上のほか相当多額の通常の民間の信用供与が期待される。」そういうふうになっております。
  133. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 時間がないから先に進みますが、それは残しておきたいと思います。  そうしますと、漁業協力——漁業交渉のうちの三つの懸案事項の一つである漁業協力は民間べースでやるのだという御答弁、しかも、輸銀の延べ払いを中心にして考えておるという御答弁です。それだったら、漁業協力の場合に限って金額をどうしてそんなに一致させなくてはいかぬのですか。韓国側は一億一千万ドル、日本側は七千万ドルという線まできておるという話ですが、なぜそんなに金額を厳密に一致させなくてはならぬのですか。
  134. 後宮虎郎

    後宮政府委員 交渉のときにあたりまして、昨印の赤城・元会談のときに、交渉の途上、先方は、青天井というのはいかにも無制限のようではあるけれども、実際的にはまた出すほうの責任、少なくとも道義的な責任感も薄からざるを得ない、だから、努力目標としてでも一定の数字を申してほしいということを強硬に主張いたしましたので、金額についてはまだ公に日本側の出した数字は外には出ていないというたてまえになっておりますが、ともかく一定額の数字について向こうへ提示した経緯はございます。
  135. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、漁業協力では金額の一致ということは重大な懸案になっていないのですか。水産庁長官、どうですか。
  136. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 もちろん重大な事項でございます。ただ漁業協定の内容そのものになるかどうかは別問題でございます。どれくらいの漁業協力資金が日本から出されるかということは、漁業折衝全体としては重要な事項でございます。
  137. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、請求権問題解決の例の民間ベースの協力とどう違うのですか。なぜ漁業協力に限ってそんなに金額を限定しなければいけないのですか。内容は輸銀の延べ払いベースだと言っているじゃないですか。どうしてですか。
  138. 後宮虎郎

    後宮政府委員 本質的には、御指摘のとおり同種の民間借款でございますが、交渉の経緯といたしまして、韓国側といたしましては、この漁業協定をまとめる際に、韓国の漁民に対して日本側がいろいろ考慮してやっていることを示す意味においても、何か漁業のための特別な協力という特別なレッテルのついたものがほしいという希望でございましたので、それに応じたわけでございまして、借款の性質につきましては、本質的にどちらも民間ベースというたてまえになっております。
  139. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 おかしいじゃないですか。民間ベースならば、そう限度を区切る必要はないのじゃないですか。請求権問題の解決の場合は、青天井だと言っておきながら、内容は輸銀ベースだ、漁業協力に限ってどうして金額を切るのですか。なぜですか。論理が一貫せぬじゃないですか。何か意味があるのでしょう。単なるレッテルという、そんなことはおかしいですよ。漁業協力は重要な経済協力だと言っておきながら——それでは、外務大臣はお帰りのようですから、いまの質問はあと回しにして……。日韓交渉が成立すれば条約になるのですか、あの人は協定と言っておりましたが。
  140. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 名前は別にどちらでもいいと思います。
  141. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 どちらになさる方針で進んでおられますか、それは問題が残りますから。
  142. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 韓国側とよく相談いたしまして、どっちかに落ちつける、こういう方針でございます。
  143. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 水産当局としてはどうなんですか。
  144. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 これは、どういう場合も必ずしも条約という名前をつけなければならぬということもございませんし、やはり話し合いでどちらがいいか、内容にもよると思いますが、きめてまいりたいと思います。
  145. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは、いまの点は今度の農相会談できまりますか。どういう形式にするか。
  146. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 条約という名をつけるか、協定の形でいくか、これは必ずしも農相会談できめられることではないと私は思っております。あるいは通常の首席代表間の話し合いでもよろしいのではないかと思いますが、これは、むしろ外務省のほうからお答えいただいたほうがいいのではないかと思います。
  147. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは外務省のほう……。
  148. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 条約でも協定でも、どちらでも差しつかえないと思っております。
  149. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは、先ほどの問題について御答弁をお願いしたい。
  150. 後宮虎郎

    後宮政府委員 先ほど申し上げましたとおり、借款の性質としては本質的に変わりはないけれども、やはり漁業協力という特別な目的のために、一つのレッテルと言うことばが悪いのか存じませんが、そういう漁業協力の目的のために充てられた借款ということをはっきりしてほしいという、むしろ先方の政治的な希望に応じてこういうふうにしているわけでございます。
  151. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それはおかしいじゃないですか。そういうことは理由にならぬじゃないですか。単なるそれだけの意味で金額をすったもんだして一致させようとなさって、いらっしゃるのですか。それで、請求権問題解決の民間ベースは、漁業以外農業もありましょうし、一般産業もありましょうが、それぞれ各部門別に額をきめて出したのですか。漁業に限ってなぜそうなさるのですか。
  152. 後宮虎郎

    後宮政府委員 漁業交渉の経緯上、この漁業協力というものは交渉全般をまとめるために非常に重要な要素になってきておりますので、漁業につきましては一般の協力とは別個のたてまえをとる。本質的には同じ民間借款でありましても、たてまえと申しますか、外観と申しますか、そういう漁業のために特別の配慮を日本側もしているということを示す政治的な要請に応じてそういうふうに考えておるわけであります。
  153. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それだったら青天井のほうがいいじゃないですか。民間ベースならどれだけでもやれる。どうして政治的にそのリミットをつくるのですか。
  154. 後宮虎郎

    後宮政府委員 理論的には確かに青天井のほうが無制限ということになるわけでございますが、やはり人間の感じといたしまして、一定の金額を示すことが、そこへ借款を供与する側にとりましても、もらうほうの側にとりましても、そこに一つの安堵感が得られるというところに政治的な感じの差が出てくる、そういう政治的な要請、考慮ということをねらっているわけでございます。
  155. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それだったら請求権問題解決のほうの民間ベースだって同じじゃありませんか。それを私は言っているのです。なぜそんなに区別なさるのですかということを言っているのです。政治的な意義があればどちらも一緒じゃありませんかということを言っている。一般請求権問題解決のほうの民間協力は青天井とおっしゃる。論理一貫せぬではないかということを言っている。なぜそんなに漁業に限って交渉の一つの重要な項目としてその金額の限定をなさるのですか。
  156. 後宮虎郎

    後宮政府委員 先ほど申し上げましたとおり、論理的には確かに不一致というお感じを受けられるかもしれないのでありますが、一般的な経済協力の場合には青天井ということで、民間の契約のできぐあいにまかせるという、いわば精神的に言えば非常にフリーな感じ方が強い。漁業の場合には、漁業協定全般を成立させるという非常に緊急な目的もありますので、フリーな感じといいますか、これを全然青天井でフリーという立場よりか、最小限度の天井額でも示しておくほうが先方も安心するし、漁業協定の全般の成立にそのほうが効果がある、こういう外交交渉上、政治上の要請に従ったものでございまして、純粋論理的に言うと、あるいは一般経済協力の場合と差があるかと存じます。
  157. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは理由になりませんよ、そんな答弁では。わからないじゃないですか。向こう側にとっては漁業協力のほうは多いに越したことはないのでしょう。日本側としては、水産庁はどうして粘っていらっしゃるのですか。
  158. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 もちろん韓国側としてはいろいろな、たとえば水産試験場をつくりたいとか、あるいは漁船の補修資材をほしいとか、いろいろな面で協力してもらいたい、そのためには金額もできるだけ多いほうがいいと思います。しかしながら、これはやはり漁業問題解決の一環として日本側が協力する姿勢を示すという意味で取り上げておるわけでございまして、その漁業協力の面が日本の漁業にとってもかなり問題でございますので、双方がこの辺がよろしいというところで話をつけるほうがやはり妥当である、こう考えます。
  159. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いま水産庁長官がちらっとおっしゃいましたところに実は意味があるのでしょう。単なる政治的に漁業問題に限って安心感を与えるというようなことじゃないのじゃないですか。つまり漁業協力については、問題の海域は西日本のわが国の漁業者にとって非常に大きな利害関係がある。したがって、韓国への漁業協力の内容いかんについては、日本がやり過ぎると日本の漁業者が困るという問題があるから、漁業協力の点についてリミットを設ける、そういうことなのでしょう。政治的な意味というのはそうじゃないのですか。
  160. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 制限を設けるといいますよりも、先ほどアジア局長が言われましたように、その金額を示すことによって韓国の国内事情、特に漁民感情緩和にも役立つ。単に無制限であるとか、金額を示さないという方法によりますと、幾らもらえるかわからない、一千万ドルで終わるかもしれないし、五百万ドルで終わるかもしれない、そういう面もございますし、こちらとしては、いろいろそういうものが最も重要な面だと思いますけれども国内的にも、どの程度の協力をやるかということは、あまり無制限であっては困るという面もございます。そういう意味で、どのくらいがよろしいかという話し合いが行なわれると考えております。
  161. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 時間がないから、この問題はまたあとに残しておきますが、共同規制水域の話し合いがもしまとまれば、その日本漁船の隻数と韓国の隻数は同じになるのですか。
  162. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 これはまだ話し合いの最中でございますし、両方ともかなり隔たった数字で論議いたしております。そこで、両方の隻数が同じになるということをいま申し上げるわけにまいりませんが、しかし、向こうも対等な条件を望むことは望むと私は考えております。
  163. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 共同規制水域については公平の原則でやるということですが、公平の原則とはどういう内容ですか、その考え方は。
  164. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 規制の態様はいろいろございますが、たとえば網目にいたしましても、両方とも同じ網目を使う、あるいはまき網の場合におきましては、灯火の明るさの問題で、明るいほうがどうしても魚をよけい集める、同じ魚場で一方の側が非常に光力の強い灯火を使いますと、そちらのほうに魚が集まってしまうというようなこともございますので、そうしたいろいろな漁具漁法の面でも全く対等の規制を行なう、こういうことでございます。
  165. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、隻数については両方の言い分がまだ隔たりがある、日本側の隻数を向こうが了承するということは、韓国のほうもその隻数を出すということになるのですか、ということを聞いている。
  166. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 現在のところ日本側としては、現量と申しますか、いわば現在やっておる実績を認めさせたい、少なくともそれを実質的に確保する程度の隻数を認めさせたいという努力をしておるわけでございます。韓国側としては、必ずしもそれには応ぜられないというところで論議が進んでおりますので、全く同一の隻数にするとかしないとかということは、向こう側もまだあまりはっきりしたことを申しておりません。
  167. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いまのところ隻数については、日本側が出しておる案について向こうが多いの少ないの言っておるんでしょう。そこで、日本共同規制水域内に入る隻数が韓国と了解ができたならば、韓国のほうは何隻出すかはまだわからないということですか。日本としてはどういう態度で臨んでいらっしゃるのですか。
  168. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 これは、まだ交渉の腹がまえの問題でございますから、日本側の方針につきましても、あまり具体的に申し上げることは控えさしていただきたいと思います。でありますが、これは、やはり共同規制水域で双方にとって公平であるという見地に立って処理すべきものだ、こう考えております。
  169. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、いまの考え方からすれば、日本の隻数が合意に達すれば、韓国の隻数も同じになるという大体の日本側の意向なんですね。
  170. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 その辺はまだはっきり申し上げかねますが、韓国は、現実には日本側よりも少ない隻数の場合が多いわけでございます。同じ船にいたしましても、規模の小さい、あるいは性能の低い漁船でございますから、これらの処理はただ数だけの一致というようなことになるか、別の形になるか、これは、まだちょっと具体的に申し上げかねるわけでございます。
  171. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 もし同じ隻数になるということになれば、韓国のほうは船が少ないんだから、既得権を与えるということになるわけですね。もし同じ隻数であればそういう形になるわけですね。
  172. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 まだ話がそれほど詰まっておりませんので、既得権を与えるということになるかどうか、これはちょっと申し上げかねるわけであります。
  173. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは先に進みますが、いわゆるフィッシング・ゾーン、これの入り会い権の話はどうなります。専管水域の中に対する日本漁船の入り会い権の問題。
  174. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 専管水域は、原則的には沿岸国が主として漁業をやる水域でございます。他の国際慣例といってもまだ新しいものでございますけれども、たとえば先般カナダが宣言した専管水域の場合におきましては、従来その水域において実績のあった国の船舶、漁船についてはできるだけ話し合いできめたいというような方針をとっておりますが、その辺につきましては、今後の話し合いの問題になると思います。
  175. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 あなた、おかしいじゃないですか。ずっと前からの経過をあなたは知ってないのですか。国際慣例は、過去数年その実績があれば、その時点から今後数年入り会い権を認めておるのが国際慣行じゃないですか。だから、当然日本としても入り会い権はある。どういう形で進めるべきかは今後の問題であるというなら話はわかるが、いまのようなあいまいなあなたの態度じゃ、いままでの委員会あたりで明確にしてきた線と全然違いますよ。日本関係業者はそれを望んでおる。簡単に考えてもらっては困ると思います。
  176. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 これは、漁業交渉全体が共同規制水域における隻数がどうなるか、それから各水域ごとの扱いをどうするかということともかね合いの問題でございます。全体の処理の上でバランスをとりながら処理してまいる、こういうことになるかと思います。
  177. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いまの御答弁では全然熱意が感ぜられないんですね。これは、やはりはっきりしてもらわないと困ると思うのです。入り会い権はあるのだ。もう一度その点ははっきり態度を表明していただきたいと思います。どういう形にするかは別問題かもしれないが、入り会い権はあるのだ。
  178. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 要するに日本と韓国との間の問題の水域において、相互に漁業の漁獲のやり方をどう調整するかという問題でございますから、特定の面についてこうやるのだ、こっちはこうやるのだ、初めから全然動かないという形での交渉ではないと私ども考えております。できるだけ日本側の従来の権益は守るということにおいてはもちろんでございますけれども、その間に調整ということはあり得る、こういうことであると思います。
  179. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私が聞いているのは、簡単なんですよ。入り会い権はあるのだという態度で臨むかどうか聞いているんです。調整の問題じゃないんですよ。その前段の問題です。どうなんです。
  180. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 これは、まだ両国の協定において専管水域を設定するかどうか、その専管水域の内容をどうきめるかという問題でございますから、最初から入り会い権があるとか、そういうこととちょっと問題が違うのではないか、こう考えます。
  181. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、あなたは、いまは国際慣行としては過去実績があった水域については、新しく専管水域になってもその水域には年限を限って入り会い権はあるという国際的な意味考え方は、あなたはどう思うんですか。
  182. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 新例があるということは申し上げましたけれども、この日韓の間にある水域全体において漁業の調整をどうするかという話し合いをしておるわけであります。その専管水域の内容等につきましても、他の水域をどう扱うか、どういう隻数を認めるか、そういうところと関連さして処理してまいりたい、こう考えます。
  183. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 たいへんあいまいで、私は答弁が非常に逆戻りしたような感じがするんですが、その点は私ども了承できない。いまのような態度は了承できない。  次に進みますが、李ラインで拿捕された漁船の問題であります。これもしばしばやったんですが、問題は多いんですけれども、特に一点だけ聞いておきたいのは、いま向こう側に拿捕された数は、一九五二年以降李ラインが設定されてから昨年の八月までに三百十九隻が拿捕された、そして百八十五隻は返還されていない。またさらにさかのぼって、一九四七年以来昨年の十月までをとってみると、拿捕された数は三百二十六隻で、未帰還の船は百八十八隻になっております。しかも、拿捕された漁船問題で損害賠償の問題が多いんですが、この点、特にどういうふうな処理をなさるおつもりですか。
  184. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 日本側といたしましては、向こうに拿捕された漁船の損害につきましては、その損害を補償するように要求しております。
  185. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そういうことを聞いてないんですよ。それは当然の話です。外務省はそのつど再三それは申し込んでおる。そうしてその請求権を留保しておりますよ。いろいろその損害内容はありますよ。特にそのうち形としてあらわれておるこの未帰還の船についてどうされますかということを聞いている。非常にわかりやすいから……。
  186. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 未帰還の船につきましては、常に外務省を通じまして早期の返還方を要求いたしております。しかしながら、だいぶ過去になったものにつきましては、韓国側ですでに老朽化したものもあるようでございますし、また他に転用されたものも実情としてはあるようでございます。これらのものについては補償を要求するということになるだろうと思います。
  187. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 いまのような点も今度の日韓漁業交渉の重大な内容になっておるのですか、どうなんです。
  188. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 先ほども申し上げましたように、漁業交渉の今度行なわれます大臣会談において、どことどこが解決されるか、あるいは解決するように取り上げるかということにつきましては、まだ具体的に私から一々正確なことを申し上げられませんが、そういった問題につきましては、もちろん日本側としては重要な関心事でございますから、何らかの形で折衝が行なわれる、こう考えております。
  189. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは、日韓漁業関係はこれで私は終わりたいと思います。  次に施設庁に簡単に二、三質問をして終わりたいと思います。  米軍に収用されておる物件のうち、所有者が国に買収を望んだときにはどういう態度で臨まれておるのですか。
  190. 小野裕

    ○小野政府委員 いま民間からお借りして米軍に提供しておる区域で、所有者が返してくれという場合、あるいは買ってくれという場合でありますが、私どもとしてはできるだけ御要望に沿いたい、買い上げる措置をとりたいと考えております。まあ例外的には、その場所の将来のことなどもありまして、しばらく貸しておいてもらうということもあり得るわけでありますが、場所によりましては、買い上げをしなければならないというふうに考えております。
  191. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 これは、実際に収用の場合に、国と所有者と契約をしたその契約書の中にも、希望をした場合にはこれを買い取る、あるいはその際の買い取り価格は、収用法等によりますと近傍類似の取得価格を考慮して相当な価格をもってこれを買うということがありますね、間違いありませんね。
  192. 小野裕

    ○小野政府委員 いい家を買い上げる場合に、やはり適正な価格でお買い上げをしなければならないという原則はとっております。
  193. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 具体的には、板付の基地内の土地の買収問題ですが、三十八年までは毎年少しずつ買い取られて、いま五十万坪ほどまだ残っておるわけです。三十八年度までは買い取りが進んでおりますが、三十九年度はどうなっておりますか。
  194. 小野裕

    ○小野政府委員 三十九年度ももう年度末も近づいたのでありますが、三十九年度におきましても、若干の坪数の買い上げを計画をし所有者の方とお話し合いをしておるのでありまするが、価格の点で折り合わずにまだ解決しないでおります。
  195. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 この買い取りの問題について請願が行なわれて、参議院で採択をされておりますね。そして、その採択は昨年の十二月十八日、参議院の本会議でされております。防衛庁の手元に回ってきておりますか。
  196. 小野裕

    ○小野政府委員 昨年の暮れちょうだいしております。
  197. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 この請願書に対するあなた方の回答はどういうふうになっておるのですか。
  198. 小野裕

    ○小野政府委員 私どもとしては、この請願の趣旨、内容を十分検討いたしまして、善処をいたしたいということで検討いたしております。
  199. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 善処をされるわけですが、これに対する回答と申しますか、結論は、期限はいつまでに出されるか。
  200. 小野裕

    ○小野政府委員 この回付されました採択請願に対するお答えはなるべく早く提出したいと思っております。
  201. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、期限は別に区切ってないのですか。私は区切ってあると思うのですが……。
  202. 小野裕

    ○小野政府委員 なるべく早くお出しするのが筋でございますが、一方では現実の買収交渉も進めておりますので、ちょっとおくれておりますが、なるべく早く出したいと思います。
  203. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 なるべく早くでしょうが、大体何日までには少なくとも出すという期限はあるでしょう。
  204. 小野裕

    ○小野政府委員 できるだけ急ぎまして、おそくとも来月中には回答を出せるようにしたいと思います。
  205. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 三月末までに回答を出したいという態度のようでございますが、それで、三十八年度までいろいろ買収をなさいましたが、この買収価格をきめる際のあなた方の基準は、一体何になっておりますか。
  206. 財満功

    財満政府委員 技術的な問題ですから私から……。私どもといたしましては、売買時点の相違、あるいは価格の相違というものを不動産研究所の指数で買収時の価格に換算いたしまして、それに近傍類似地の価格を加えて、当該の買収価格を決定する、こういう方法を三十八年度においてはとりました。その前は、そういうきめ方をいたしたものを年々スライドアップしてまいった、こういうことでございます。そこで、三十九年度の買収交渉にあたりましては、一応スライドアップいたしましたものにつきまして、権威ある不動産鑑定機関の代表者の方に委員会をつくっていただきまして、目下その委員会で評価の点をお願いしておる、そういうふうなことでございます。  まとめて申しますと、一つは、最初に申し上げた不動産研究所の指数によって定めまして、それに近傍類似地の価格を参照してきめるという方法と、それをスライドアップしてきめるという方法、そして、ある一定の年月がたちますと、単なるスライドアップで足りない場合がございます。さらにまた最初の方法に戻って補正を行なって、あとう限り適正な価格でお買い取り申し上げたい、こういう方向でございます。
  207. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 板付基地内の農地は、三十二年以降地目は農地から宅地に変更されているでしょう。
  208. 財満功

    財満政府委員 実は、買収当初三十一年のころから宅地として、あるいは宅地に準じまして評価してまいったものでございまして、農地として扱ってまいっておらないわけであります。
  209. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 三十一年は農地価格から出発されたわけですね。そして、その方式は継続されておって、その農地価格のスライド方式でやっておられるのですか。
  210. 財満功

    財満政府委員 三十一年度の買収開始の当時のやり方は、登記簿上の地目は農地でございましたけれども、しかし、当時近傍に県営住宅、共済病院、その他の敵地を宅地化の目的で一般に売買された実例がございます。したがいまして、われわれはそれに準じて扱ったということでございまして、先ほど申し上げました三十一年買収当初から、宅地としてあるいは宅地に準じて扱ってきた、こういうふうに考えております。
  211. 中野四郎

    中野主査 楢崎君に御注意申し上げますが、時間がきておりますから、どうぞ……。
  212. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 買収実例を勘案されておるとおっしゃいますが、昨年の暮れの関係者の調査によりましても、あの周辺は坪当たり大体平均して一万三千三百円という数字が出ておる。これは、御承知のとおりであります。そうすると、三十八年の買収価価は坪五千五百五十円、実例のほうが約二倍半高いのです。ということは、非常に低いということなんです。それで、三十九年度の買収の方針はどうなっておるのですか、具体的に伺いたい。
  213. 財満功

    財満政府委員 先ほど申し上げましたように、昨年度の五千五百五十円のスライドアップをいたしましたものに、私どものところで売買実例等を見て、先ほど申し上げたような不動産評価に関する機関の代表者の方々などにお願いいたしまして、委員会をつくりまして、そこでやっていただく、こういうことで現在その種の調査をいたしておる、こういうことでございます。
  214. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうしますと、これは全国的な関係もあるのですが、適当な所有者も含めたそういう評価委員会などをつくって今後やっていくということですか。
  215. 財満功

    財満政府委員 その他の地区につきまして、全国的にということではございませんが、板付飛行場周辺におきまして特に状況の変化が考えられますので、まず板付地区からそういうふうにやってみたい、こういうことです。
  216. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私の理解が悪いかもしれませんが、もう委員会をつくってやっていらっしゃるのですか。これからつくるということですか。
  217. 財満功

    財満政府委員 二十二日につくりまして、今日現在毛そうであると思いますが、地元においてやっておるところでございます。
  218. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、三十九年度も買収を行なうという方針でやっていらっしゃるわけですか。
  219. 財満功

    財満政府委員 そのとおりでございます。
  220. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 四十年度についてはどういう見通しですか。
  221. 財満功

    財満政府委員 四十年度の買収に関しましては、予算の成立後におきまして、実行計画の段階で検討していきたい、こういうふうに考えて、ただいまは、まだ具体的なものは板付については持っておりません。
  222. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 もう三十九年度の年度末になって、三月三十一日までに何とかしたいということですから、四十年度もいま予算が出ておるし、当然私は態度を明確にされてしかるべきであろうと思います。
  223. 小野裕

    ○小野政府委員 ただいまの説明では足りない点があったと思いますが、四十年度も引き続き買い上げをしたということは腹に持っております。準備もございます。ただ、予算の執行についての細部計画は、予算が成立いたしましたあとではっきりさしたいということで、心がまえとしては来年度も続けていきたい、こう考えております。
  224. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 最後に一点だけ。時間があればもう少しその内容を追及したいのですが、昨年ですか、大阪空港の拡張で一これは民間のほうですから運輸省が関係者ですね。板付の買収価格と違う非常に高い価格で運輸省は取引をされておる。同じ国の機関でどうしてそんなに違うのか。評価は、伊丹の場合は大体八千円くらいだと聞いておる。それが一万円以上、農地については一万円ちょっと、宅地については二万円近くで買い取られておる。同じ国の機関でどうしてそんなに買収価格が違うのですか。軍事基地のほうは、もうすでにとられておるところの買収だから、別に国は困りやせぬ。新しく買い取るほうは、それを買い取らなくては困るから、そんな高い値段を出す。これは不合理であり、不均衡である。いままでいためられておったその被害度は基地のほうが高いのだから、むしろそういう基地内の買収については勘案するところがあってしかるべきだが、逆になっておるというのはどういうことですか。
  225. 小野裕

    ○小野政府委員 それぞれ土地によりまして価格は違うわけでございます。私どもとしては、適正な価格というものをきめて買い取りたい、こう考えております。
  226. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それでは困るのです。それではどうして運輸省と違うのかということを聞いておるのです。それほど伊丹の土地の条件と違うのですか。違う条件というのは何ですか。基地内の土地だから、すでに収用している土地だから、安い賃料を払ったほうがいい、買い取るのは国としてはばからしい、そういう考えがあるからですよ。一貫した方針がないからじゃないですか。
  227. 財満功

    財満政府委員 技術的なことを申し上げてたいへん恐縮でございますけれども、先ほど申し上げましたように、権威ある評価機関の指数をもって、近傍類似地の価格をもとにいたしまして、それにいわゆる固定資産評価基準における一定の評点方式、つまり地況の問題を要素にいたしまして、たとえば街路の条件がどうなっておるか、交通機関との近接の条件はどうなっておるか、あるいは近所にある宅地の条件等の利用度の問題とか、あるいは画地条件、商店街がどの程度になっておるか、こういうような要素を入れてやっております。私、伊丹のほうと、板付のほうとどの程度に似通い、どの程度に違っておるか、つまびらかにいたしておりませんけれども、いずれにいたしましても、そのような諸要素を考慮いたしまして、先ほど申し上げたように、権威ある評価機関の評価をまちまして、適正な価格で買収いたしたいと思っておるのでございます。
  228. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 もうこれでやめますが、あなた方は伊丹の買収の内容について、調査をなさっていますか。具体的を例をあげていいですよ。土地の条件をいうならば、あそこの中村地区というのはどういう土地ですか。それをあんな高い値段で運輸省は買っている。もう少し施設庁もこういう点は調査なさって、各省で違わないような取り扱いをしてもらわぬと困る。問題はまだ残っておりますけれども、時間がないからきょうはこれでやめますが、はっきりしてもらいたいと思います。
  229. 中野四郎

    中野主査 午後は一時三十分より再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時四十一分休憩      ————◇—————    午後一時四十二分開議
  230. 中野四郎

    中野主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横路節雄君。
  231. 横路節雄

    ○横路分科員 一昨日、私のほうから資料を外務大臣に要求いたしてあります。それは西村関一分科員質問に答えまして、今回の基本条約の仮調印は全面妥結の第一歩である、こういうお話でございます。そこで、けさ午前中の各分科員質問にもありましたように、日韓予備交渉において両首席代表間に大綱につき意見の一致を見ている請求権問題の解決方式、1というので(イ)(ロ)(ハ)、2、こういうようになっているわけです。この問題につきまして、私が三十八年二月七日、本院の予算委員会総括質問で、御承知のように対日請求権の問題について質問をいたしたわけであります。韓国側の対日請求要綱、いわゆる八項目の内容につきましては、私のほうへ外務省が一月三十日に提出いたしてございましたから、ここにそのまま私のほうに出したものを持っているわけです。このことにつきましては、すでに当時小沢郵政大臣からも、逓信局関係については全部積算が終わっています。当時の大橋労働大臣からは、未払い賃金その他については全部供託を終えています。この八項目につきましては、全部私のほうでは積算を終えています。こういうことであります。これは、委員会で非常に問題になりまして、最後に、理事会でこういうようになっているのです。「政府としては、日韓会談のすみやかなる妥結に鋭意努力中である現段階において、いわゆる請求権等に関する資料を今直ちに公表することは差し控えさしてもらいたいが、調印のめどがつきそうになった場合はもちろん、」そこで一つ終わっているわけです。調印のめどがつきそうになった場合はもちろん出します。それからもう一つ、「なるべくすみやかな機会に御要求の資料を提出いたしたいと思います。」そこでまる二年たっているのです。その後どなたもこの問題を取り上げていないわけです。しかし、この間椎名外務大臣が韓国においでになられまして、基本条約について仮調印を終えられてきている。全面妥結の第一歩を踏み出されている。こういう事態でございますから、当然これは「なるべくすみやかな機会に御要求の資料を提出いたしたいと思います。」ということですから、もう積算は全部終わっていると思う。ここで資料を出していただきたい。八項目ですから、当然、そのうちの最後の条項は支払い方法その他でございますが、文書で出してください。そうして、それに基づいて私のほうから一々御質問いたしたいと思いますので、大臣、ひとつ文書で私に出してください。それなればこそ——私はきょうそのことを言ったのでは、きょう言ってすぐ答弁しなさいということは、私も社会党を代表して中野主査を助けてこの第二分科会の運営に当たっている担当ですから、そういう意味で私は一昨日資料要求をいたしたわけです。だから、文書で私にここで出してください。それに基づいて私のほうでは質問をいたします。
  232. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 全面妥結の第一歩を踏み出したということとめどがついたということとは、だいぶもう開きがありまして、ほんの第一歩を踏み出したというだけの話です。これからいろいろな内容等について折衝が始まる段階でございまして、遺憾ながら御要求に応ずるわけにまいりません。
  233. 横路節雄

    ○横路分科員 外務大臣、遺憾ながら御要求に応ずるわけにいかぬと言うが、二年前に、調印のめどがつきそうになった場合にはもちろん出します。そこでまず一つ区切って、同時に、なるべくすみやかに出します。大体いままで二カ年間、われわれのほうで聞かなかったのもあるいは少しおかしいかもしれませんが、しかし、ものには時期がある。二年たった今日出せないとは一体何です。あなたのほうで出せなければ、この第二分科会では外務省の予算だけは終えるわけにはいきませんよ。一体、韓国側の対日請求要綱、いわゆる八項目を日本側で積算した数字は幾らになったのか、そのことが明らかにされないで、一方的に無償経済協力は総額三億ドルだ、長期低利借款は総額二億ドルだ、先ほどの後宮さんのように、以上のほか相当多額の通常の民間供与が期待される、それは一億ドル以上だ。それは全部韓国側の対日請求要綱、いわゆる八項目の要求に基づいてはじいたものじゃありませんか。それがまる二年間たって出せないとは、一体何です。李ラインの問題については、あなたは野原君に答弁し、きょうは楢崎君に答弁している。この問題については、積算の数字があるはずだ。あなたのほうで全体について発表している数字だってあるじゃないか。あなたのほうで出せなければ、少なくとも第二分科会ではこの外務省予算だけは絶対に終えるわけにいかぬです。きょう終えるわけにはいかぬ。出さない限り終えるわけにはいかぬです。この第二分科会外務省の予算が終えない限り、一般質問に移るわけにはいかぬし、最後の締めくくり、総括質問に移るわけにもいかぬですよ。外務大臣、そういう考えであなたが出さなければ、何日予算がおくれたって、あなたの責任でやるならそれはかまわぬですよ。
  234. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これから外交折衝が始まらんとするでございまして、その段階においては遺憾ながら提出するわけにはまいりません。
  235. 横路節雄

    ○横路分科員 何をおっしゃいますか。あなたのほうは外交折衝を終えたんじゃないですか。終えてないのですか。それじゃ、「日韓予備交渉において両首席代表間に現在までに大綱につき意見一致をみた請求権問題の解決方式、1、(イ)無償経済協力は総額三億ドルとし、毎年三千万ドルずつを十年間にわたり日本国の生産物及び日本人の役務により供与する。但し、わが国の財政事情によっては双方合意の上、くり上げ実施することができる。(ロ)長期低利借款は総額二億ドルとし、十年間にわたり海外経済協力基金より供与する。その条件は年利率三・五%、償還期限二十年程度、うち据置期間七年程度とする。(ハ)以上のほか相当多額の通常の民間の信用供与が期待される。2、上記無償、有償の経済協力の供与の随伴的な結果として、平和条約第四条に基づく請求権の問題も同時に最終的に解決し、も早や存在しなくなることが日韓間で確認される。」あなたのほうできめたじゃないですか。あなたのほうでこのことをきめてなければ、私は聞きませんよ。請求権の問題について、こういう解決のしかたをしていなければ聞かないです。解決しているじゃありませんか。解決をしていれば、その根本になっている韓国側の対日請求要綱、いわゆる八項目の内容について、私が国会議員として聞くのは当然じゃないですか。予算委員として聞くのは当然じゃないですか。出せないとは何です。
  236. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、一応大綱について一つの案のまた案という程度のものができたのでありまして、これについて正式交渉をして、これからだんだん固めなければならぬ、そういう段階でありますから、ただいまの段階では、遺憾ながら出すわけにはまいりません。
  237. 横路節雄

    ○横路分科員 何をおっしゃいますか。三億ドル、二億ドルは、これは案で、動くのですか。念のために聞いておきますよ。三億ドル、二億ドルは、これからの交渉で動くのですか。いままでの外務大臣でそういう答弁をした人はありませんよ。三億ドル、二億ドルは動くのですか。これからの交渉で動くから、このいわゆる八項目の韓国側の対日請求要綱については、内容については出せないというのですか。動くのですか。外務大臣、その点ははっきりしてもいたい。動くのですか、三億ドル、二億ドルは。
  238. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やってみなければわかりませんが、大体ここらは動かないでいきたいと思っております。思っておりますが、とにかく最終的にまだ固まってない、こういう段階において、これを提出するわけにはまいりません。
  239. 横路節雄

    ○横路分科員 何を言ってますか。あなた、そういうことを言っていいのか。これはきまってるじゃないか。後宮さん、どうなんだ。後宮さん、あなたは三億ドル、二億ドルについてはさまっているんだろう。アジア局長どうなんだ。——アジア局長に聞いている。アジア局長、どうなんだ、これは。アジア局長どうなんだ。三億ドル、二億ドルが動くのか。そんなばかな話はないだろう。
  240. 後宮虎郎

    後宮政府委員 無償三億、有償二億ドルは、これは動かないと思います。
  241. 横路節雄

    ○横路分科員 動かないだろう。外務大臣、何を言っているのですか、あなたは。三億ドル、二億ドルは、これからの交渉で動くかもしれない、大体の数字だなんて、何を言ってますか。外務大臣、あなたは聞いてわかったでしょう。これはきまった数字なんですね。きまった数字なんです。その根拠になるものを出しなさいというんです。これをきめたのは三十七年の十一月だ。三十七年の十一月の国会から問題になっている。出しなさい。外務大臣、出しなさいよ。出したらいい。
  242. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 案の案としてきめた問題でありますから、あくまでこれは信義上軽々に動かすべきものではないけれども、とにかくまだいわゆるイニシアルもしておらぬし、それからいわんや正式の調印もしておらない。これがきまったという、そういうものじゃないのです。これはきまったというものじゃない。これでもう動かすことができないというふうに条約上きまってしまったという、そういうものでないということを私は申し上げておる。だから、この約束は、あくまでこれは両国の信義上守っていきたい。しかしながら、今度はこれをいかにして実行するかというような細則がまだきまっておらないのでありますから、その道程においては提出するわけにはまいりません、こう申し上げております。
  243. 横路節雄

    ○横路分科員 外務大臣、私が聞いたのは、その道程を聞いておるのではないのです。三億ドル、二億ドルのことを聞いて、アジア局長からそれは動かすことができないと答弁しているのだ。私はあなたが出さないなら、何時間でもこうやってねばりますよ。あなたのほうが、この三億ドル、二億ドルが最終決定ではないのだ、これは動くんだ——後宮さん、あなたは何でもたもたして出さないんだ。何でこれを出すことをおっかながっているんですか、内容を。——局長に聞いている。あなたは何でおっかながっているか。もうきまったんじゃないですか、三億ドル、二億ドルと。これは動かせないんじゃないですか。しかも、これは二年越しの懸案ですよ。私がいま初めて言うのじゃない。出しなさいよ。
  244. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これが、三億ドル、二億ドルが固まったから出せとおっしゃるならば、二年前にもうその程度、いま固まっている程度のことは固まっているのであります。状況は同じであります。
  245. 横路節雄

    ○横路分科員 基本条約について仮調印もしたとか、客観的な情勢が変化をしたんですよ。客観情勢が変化をしたから聞いているんです。あなたがこの間韓国に行かないで、基本条約について仮調印してこなければ、聞かないんですよ。これを出して何の支障があるんですか。何の支障があるのか。あまりにも金額が少なくてていさいが悪いんでしょう。この八項目を計算してみたら、あまり金額が少なくてていさいが悪いんでしょう。だから、国民の前に公表することはどうもぐあいが悪い。どうしてこういうものを一々——外務省というのは全く秘密主義だ。椎名さん、あなたは通産大臣をおやりになり、外務省へ行ってよくおわかりでしょう。外務省くらい官僚主義な、外務省くらい秘密主義なところはないのですよ。われわれが資料一つ要求しても出さない、こういう官庁というのは、日本では外務省以外にない。あなたがそうやってがんばっているならば、私だって気の長いほうだから、今晩十二時までやっていて、あなたのほうで返事をされなければ、当然第二分科会外務省予算の審議を終えるわけにいかぬし、たいへん残念なことだけれども、そのあとに続いている大蔵省の予算も引き続き審議はできないということになって、遺憾ながら第二分科会は、この問題が解決するまでは送りですよ。いま初めて言っているのじゃないのだ。
  246. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 とにかく折衝の段階でありまして、三億、二億が固まったから出せとおっしゃるならば、二年前に今日の程度まで固まっている。ただ第一歩を踏み出したというだけで、まだ全面妥結のめども何もついていない、外交折衝はこれから始まろう、こういうときでございますから、横路さんもこの間の情勢に対して御理解のないはずはない。ひとつ国家のために協力していただきたいと思います。
  247. 横路節雄

    ○横路分科員 あなたは全面妥結のめどがないなんて、何をおっしゃいますか。それじゃ、おととい西村関一君の質問に何と答えた。全面妥結のめどはありません、そう言えばいい。全面妥結の第一歩ですという。私はおととい西村関一君の質問にあなたがどう答えるかと思って注意をしていたんです。あなたが全面解決のめどがないのだ、こう言うならば、あるいは私聞かなかったのかもしれないですよ。しかし、あなたは全面妥結の第一歩ですと言ったじゃないですか。椎名さん、私は、そういうときには自分でちゃんとメモしているんです。だから、私はしんぼうしてまる二年間その機会を待っていた。当然これは二年前だって出すべきだ。しかし、機会を待っていたんだが、今度あなたが全面妥結の第一歩を踏み出したのだから、出してもらいたい。椎名さん、あなたがそうやってがんばっているなら、私も夜の十二時までこうやってがんばっています。外務省の予算は、第二分科会ではきょうは通らぬ。引き続き行なわれる大蔵省の予算の分科会は行なわれない。これは全くかかって外務省官僚主義、秘密主義だ。私がそのことを言うのは、あなたのほうでやっているじゃないですか。外務大臣昭和二十八年十月二十二日、外務省情報文化局長の談話で、総額について言っているじゃないか。韓国側の要求の金額を言っているじゃないか。全体の金額を言っているじゃないか。私は、ここにちゃんとそのときの文書をそのまま持ってきている。出しなさいよ、出さない限り絶対に審議を進めるわけにいかぬ。
  248. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 全面妥結の第一歩を踏み出した。踏み出したということは、めどがついたとか、そういったようなことではございませんで、いまの段階では、はなはだ遺憾でございますが、御要求に応ずるわけにいかない。三億、二億の数字が固まったから出せとおっしゃるならば、もう二年前にすでに固まっている。でありますから、問題は要するに第一歩ということの解釈だと思います。その第一歩は、ただ第一歩を踏み出したばかり、いわばそういう段階でありますから、これは御提出いたすわけにまいりません。
  249. 横路節雄

    ○横路分科員 しかし、あなたのほうで基本条約に仮調印して、めどがついたと言ったじゃないか。あなたは私よりはお年が十ぐらい多いかもしれないけれども、そう忘れてしまったらだめですよ。私も黙ってこのままいますよ。出しなさい。外務大臣、これはしんぼう比べだ、こうやって十二時までいよう、こうやっているよりしようがない。椎名さん、一番基本的な問題について、あなたは答弁しない限りだめなんだよ。基本条約より、一番基本的な問題はこの請求権の問題なんだから。そうでしょう、請求権の問題なんだから、一体向こうで要求してきたものの積算が幾らになっているのか、おれのほうで幾らやるかということは、言わない限りは審議できるものですか。あなたの仲間に出しなさいという人だってあるだろう。外務省だって、そんなにわけのわからぬ人ばかりでもないらしい。出したほうがいいという者だってあるらしい。そんなに隠すべきでないですよ。
  250. 中野四郎

    中野主査 ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  251. 中野四郎

    中野主査 速記を始めて。
  252. 横路節雄

    ○横路分科員 後宮さんは御存じだと思うのです。椎名さんは御存じでないかもしれない。日韓会談が決裂をしました翌日ですか、当日ですか、昭和二十八年十月二十二日、日韓会談に関する林外務省情報文化局長の談話。「日韓会談は昨日不幸にして不調に終わった。これは韓国側の予定の計画のようである。」非常に長い文章ですから、あとは省略します。これに対して、「請求権の問題は若干説明を要する。すなわち日本側は戦争前韓国にあった日本の公有財産は平和条約により韓国がこれを取得することは認めるが、日本国民が持っていた私有財産終戦時の価格で約百二十ないし百四十億円に対してはクレームを有すると主張する。」「これに対して韓国側は日本における財産約九十ないし百二十億円にクレームを持つという。この双方の主張の間に立って政治的に解決する方法として両方のクレームを相殺しようという提案がある。これは実際上二十ないし四十億円を韓国のために放棄することになる。この案は、昨年の日韓首席代表間の非公式会談において梁韓国代表が提案したものである。日本側としては、日韓間の友好関係樹立のため今回この案を真剣に研究するにやぶさかでないことを明らかにした。しかるに驚くべきことには、日本側が本案を考慮せんとすることを知るや、韓国代表は、梁氏はかかる提案をしたことはないと主張しさらに進んで日本人は在韓私有財産に対し、一切のクレームを認められない、」云々。この点は、私有財産の問題、公有財産の問題は別の問題である。しかし、ここで九十億ないし百二十億というのです。これはあなたのほうの正式の文書で出しておる。これは、たしかドルに直せば二千五百万ドルないし三千三百万ドルのはずだ。そうでしょう。  そこで私は、この内容について話をしてもらいたい。この内容について出してもらいたい。政府のほうでは、ないというならともかく、これについては全部あります。こう言うんだから。私は、いまこの昭和二十八年十月二十二日の外務省情報文化局長の談話の一部だけを読んだのです。全然これとは無縁でない。しかも小沢郵政大臣は、全部計算が終わっていると言う。大橋労働大臣も終わっていると言う。それなら出してもらいたい。外務大臣、今度はおわかりでしょう。あなた、水を飲んで一息入れたから、今度はひとつ……。
  253. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大平外務大臣が、いわゆる鋭意努力中の現段階において、これは公表することは差し控える、こういう答弁をしておりまして、調印のめどがつきそうになった場合は、もちろんなるべくすみやかに、こういうことを言っておりますが、この時限とただいまの時限では何ら変わりはないのでありますから、外交折衝をこれから始めようという段階においては、遺憾ながら資料の提出はごしんぼう願いたい。
  254. 横路節雄

    ○横路分科員 私、申し上げますが、二年前の大平外務大臣答弁したときといまの状態とは何ら変わりがない、こういうことでこの第二分科会を終えようとしても、それは終えるわけにいかぬですよ。二年間の歳月、しかも、あなたはこの間韓国に行って基本条約に仮調印をしてきて、全面妥結の第一歩だ一第一歩だというのは、めどがついたということでしょう。当然出すべきだ。出さない限り、これは審議を進めるわけにいかぬですよ。これはあなたの問題ではない。国会の問題なんです。
  255. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 全面妥結の第一歩をようやく踏み出したばかりという意味なんです。めどがついたというような段階ではありません。これから始まるのです。こういうわけで、提出はしばらくごしんぼう願います。
  256. 中野四郎

    中野主査 ちょっと横路君に主査より申し上げますが、この問題は、当分科会の問題ではありますが、外務大臣も直ちに答弁または提出できがたい事情もあるようなので、横路君に留保を願って、一日の予算委員会において扱うということにいたしたいと思いますので、御了承をお願いいたします。
  257. 横路節雄

    ○横路分科員 いま主査からお話がございましたが、そうすると、中野さん、こういうことになるわけですね。第二分科会主査報告が終わったあとで、いまの日韓会談の請求権問題については、あらためて予算委員会の本委員会において私から椎名外務大臣に重ねて問いただしていく、こういうわけですね。
  258. 中野四郎

    中野主査 主査報告に関連して御発言を願う、こういうわけです。
  259. 横路節雄

    ○横路分科員 外務大臣に申し上げておきます。いま中野主査からそういう取り計らいがございましたから、私は、三月一日の中野主査の第二分科会主査報告に関連をしまして、重ねてあなたにこの問題についてお尋ねをし、一々あなたにお答えをいただきます。申し上げておきますが、もしもその際に、きょうと同じように、お答えができない、資料提出ができないということになれば、もうそれは第二分科会の手を離れて、予算委員会全体会議に移っていますから、予算委員会全体の運営がどうなるかははかり知れないものがあろうと思います。そういうふうに言っておきます。これは、外務大臣、それだけのことを言っておかないと、あなたは、なあに、ここで少しねばっておけば、あとはやれるのだというように軽く考えられて、この問題を処理されようということはだめですよ。そのことだけは私は申し上げて、それでは、いま中野主査からお話がございましたように、三月一日の中野主査の第二分科会の報告に関連をしまして、重ねて椎名外務大臣にこの点についてお尋ねしてみたいと思います。  それでは、次の問題に移ります。  次に、基本条約の問題についてお尋ねをしたいのです。この本文の一、二、三のところの三ですね。「韓国政府は、国連総会決議一九五(III)に示されているような朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」、こうなっているのです。私、外務大臣にこの点をお尋ねしたいと思いますことは、いまの大韓民国は朝鮮における唯一の合法政府である、しかしその施政権は三十八度以南のみである、こういうのか。いいですか、私の言うことをよく聞いてくださいよ。大韓民国は朝鮮における唯一の合法政府である、しかしその施政権が及んでいるのは三十八度以南なんだ、大韓民国は三十八度以南の唯一の合法政府であって、施政権もまたそこに及んでいるのだ、そういうように言うのか、その点をひとつ外務大臣から。どちらのほうなんです。
  260. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約上の解釈の問題でありますから、条約局長から詳しく申し上げます。
  261. 横路節雄

    ○横路分科員 ちょっと局長、待ってください。いやいや、こういうことを、外務大臣、これは基本的な問題でしょう、あなた。条約局長には、いずれ施設庁長官と並べて、安保条約だとか地位協定だとか、そういうことの解釈などを聞きますよ。しかし、いま基本条約について調印をされてきて、この国会でもずいぶん論議したじゃないですか。外務委員会でもやった。本会議でもやった。だから、いまあらためて聞いているのですよ。ここに三に、「韓国政府は、国連総会決議一九五(III)に示されているような朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」というこの意味は、私は大臣に聞くのですよ、大韓民国は朝鮮における唯一の合法政府である、しかしその施政権は三十八度以南にだけ及んでいるというのか、それとも、大韓民国は三十八度以南の唯一の合法政府であって、施政権もまたそこに及んでいるというのか、それはどちらなのか、こう聞いている。大臣に聞いているのです。
  262. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、正確を期する上において、条約局長からきわめて正確にお返事いたしますから……。
  263. 横路節雄

    ○横路分科員 ちょっと待って、条約局長。いや、あなたにもいずれ答弁してもらいますが、しかし、私は、椎名さん、条約の基本なんでしょう。条約の基本について私が聞いているのですよ。条約の基本について聞いているのに、条約局長、どうしてそういうことをあらかじめよく外務大臣にお話しておかないんです。あなた。しかし、私は、こういう基本的な問題を——これは基本でしょう、基本条約というのは。一番の問題だ。それを、慎重を期す——慎重を期すというよりは、慎重ではなくて、外務大臣、そういう点はもっと的確にお答えいただきたいと思う。やはりだめですか。やっぱり条約局長でないとだめですか。——それじゃ……。
  264. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 いまおっしゃった二つのいずれも、このことばの正確な意味から少しずれているのじゃないかと思うのでございます。国連決議で言っているような意味において朝鮮における唯一の合法政府である、こういうことでございます。
  265. 横路節雄

    ○横路分科員 だから、どういうように言えばいいの。ちょっと日本語で言ってください。
  266. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ですから、いま申し上げましたように、国連決議ということをまず前面にお考えになりまして、そこで示されているような意味において唯一の合法政府である、こういうことでございます。
  267. 横路節雄

    ○横路分科員 きょう、私、国連決議の資料を持ってくるといいのですけれども、これもしかし、一九四八年十二月第三次国連総会における報告ですね。これだって、外務省アジア局で出した「朝鮮便覧」というのに載っているから、読んでみます。私のやっているのは、日本語でやっているのだから。いいですか。「国際連合臨時朝鮮委員会が観察し、且つ、協議することができたところの、朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に、有効な支配と管轄権を及ぼす合法な政府が樹立されたこと、この政府が、朝鮮の前記の部分の選挙民の自由意思の有効な表明であったし、また、臨時委員会が観察した選挙に基くものであることと、この政府が朝鮮における唯一のこの種の政府である」と認められる。そうでしょう。そうすると、これは結局朝鮮における朝鮮人民が大多数居住している朝鮮の部分、それは北緯三十八度以南、そこの唯一の合法政府である。そうでしょう。唯一のこの種の政府である。この点は、総理だって、北には朝鮮人民民主主義共和国があるというようなことは、はっきり認めている。この私のいま引用したのは、一九四八年十二月の第三次国連総会における報告だ。この文章のどこを読んでみたって、私はこの文章からいけば——あなたはいま国連の決議ということで言うたが、私は二つ言ったのだから、それじゃ条約局長、言ってごらんなさい、私ここであらためてあなたの言ったとおり書くから。この基本条約の第三というのは何を言っているのか、ひとつ日本語でゆっくり言ってごらんなさい。
  268. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 国連総会決議に示されているような意味において、朝鮮における唯一の合法政府である、こういう趣旨でございます。
  269. 横路節雄

    ○横路分科員 それなら結局大多数の朝鮮人が居住しているということだから、北緯三十八度以南じゃないですか。北緯三十八度以南の唯一の合法政府である。それとどこが違う。違うところがあったら言ってちょうだい。同じなんでしょう。そこをはっきり言いなさい。もったいぶったようなことを言ったけれども、結局だんだん聞いてみたら、北緯三十八度以南における唯一の合法政府だ、そういうことでしょう。国連総会の報告だって、そうなっているじゃないですか。それでいいでしょう。何かあるのですか。何をあなたはちゅうちょ逡巡しているのです。
  270. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 南の半分だけを見て、そこだけで唯一のと言うておるのかという御趣旨だろうと思いますけれども、この決議に書いてございますように、「朝鮮における唯一のこの種の政府」(横路委員「この種のでしょう」と呼ぶ)しかし、「この種の」という前に、「朝鮮における」といっております。朝鮮というのは、これは朝鮮半島全域をにらんで、その上で「唯一のこの種の政府である」という判定をいたしておるわけでございます。
  271. 横路節雄

    ○横路分科員 「この種の」でしょう。「この種の」というのは、朝鮮人民の大多数が居住している朝鮮の部分に有効な支配と管轄権を及ぼす合法な政府が樹立されているのだ、「この種の」。朝鮮全域にわたっていれば、何が「この種の」なんという、そんな日本語がありますか。どうして条約局長というのはそういう妙な日本語を使うものでしょうね。もう少し国語を、あらためて大学でも行かれて、国文科でもう一ぺん勉強されないとだめじゃないですか。この点はたいへん大事なことだから聞いているのですよ。「この種の」ですよ。いまあなたが言ったように、唯一のこの種の政府なんです。「この種の政府」でしょう。それは朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分についてだ。あなたのほうでは、いままでたびたび外務委員会だって、予算委員会だって、どこだって、北緯三十八度以北に現に多数の人民を支配しているそういう国のあることは認めているのでしょう。その点はどうなんです。この間穂積君に対して認めた。条約局長、どうなんですか。
  272. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 先ほどから申しますように、この決議の趣旨は、北のほうはとにかくこの種の政府はないということが含まれておるわけでございまして、「朝鮮における唯一のこの種の政府である。」それで、そこは地域的な限定だけじゃなくて、やはりいろいろ民意を反映するような選挙とか、その前に国連が監視できたとか、そういうことも全部ひっくるめて、そういう政府はほかにはない。朝鮮において大韓民国政府のみがこういう政府であるという意味を、この「朝鮮における唯一のこの種の政府である」ということで示しておる、かように解釈すべきものと思います。
  273. 横路節雄

    ○横路分科員 それでは、この一九四八年十二月の第三次国連総会における報告、外務省アジア局で出した「朝鮮便覧」のように、「国際連合臨時朝鮮委員会が観察し、且つ、協議することができたところの、朝鮮の人民の大多数が居住している朝鮮の部分に、有効な支配と管轄権を及ぼす合法な政府が樹立されたこと、この政府が、朝鮮の前記の部分の選挙民の自由意思の有効な表明であったし、また、臨時委員会が観察した選挙に基くものであること、この政府が朝鮮における唯一のこの種の政府である」と認められ云々。だから、この報告書からいけば、大韓民国というのは、北緯三十八度以南における唯一の合法政府なんです。何かそう言ったらまた都合が悪いのかね。また向こうにはね返るのかね。どうなんだ、条約局長、はっきりしなさいよ。ここは日本国会だよ。韓国の国会ではないよ。
  274. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 私は、ほかのことを顧慮してこう申しておるのではなくて、ことばを正確にそういって解釈するのが一番正しいであろうと申し上げておるわけであります。大韓民国の管轄権の問題は、御指摘のとおりでございます。大多数の朝鮮の人民の居住しておる部分に有効な支配と管轄権を及ぼしている、それは事実であります。しかし、その上にもう一つ、そこに同じ地域にほかに政府があるわけではないわけでありまして、そういった上で自由選挙のことをいい、国連の監視のことをうたって、最後に締めくくりとしまして、「朝鮮における唯一のこの種の政府である」と申しておる趣旨は、三十八度線以南しか見れなかった、北のほうは見れなかったけれども、北のほうにはこのような政府はない。朝鮮においては、大韓民国政府のみが国連としてこういうぐあいに宣言し得る、いわばレコメンド的政府であるという趣旨が含まれておると解すべきものと思います。
  275. 横路節雄

    ○横路分科員 だから、そのことは、北緯三十八度線以南における朝鮮人民の大多数を支配しておる。それは北緯三十八度以南のことを言っているのでしょう。朝鮮人民の大多数が居住しておるということは、北緯三十八度以南のことを言っているのでしょう。その点はどうなんですか。
  276. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 管轄権の点については、御指摘のとおりでございます。ただ「唯一の」ということば意味として、先ほど来申し上げておりますように、一応朝鮮全体をながめて申しておるのだという趣旨でございます。
  277. 横路節雄

    ○横路分科員 いまの問題については、いまの一九四八年の第三次国連総会における報告であなたのほうで出したものを見ても、どこからどういうふうに読んでみても、日本語でどういうふうに解釈してみたって、「唯一のこの種の政府である」ということは、北緯三十八度以南だ。そういうこじつけをやるのが条約局長であるということになると、日本条約局長というのは、一体どこの国の人かわからぬということになりますよ。  私は、このあと外務大臣に李ラインの問題が聞きたいのだが、あなたもことばを実際都合よく変えますね。私は、先ほど楢崎君に対する答弁を詳細に聞いていた。李ラインの撤廃を了承したという意味は、日本が撤廃の意思があることを向こうは知っている。しかし、あなたはこう言っているね。ここには新聞記者諸君がいるんです。新聞記者諸君は、みな一流の諸君で、たんねんに聞いて書いている。あなたはこう言っているんですよ。ここで私はあなたに一つだけ聞いておきたい。交渉が妥結することが李ラインが撤廃されることだ、李ラインが撤廃されなければ漁業交渉は妥結しない、漁業交渉が妥結しなければ日韓会談は妥結しない。これはあなたがさつきずっと楢崎君に言ったことだ。私は書いております。そこで、私はこの間の質問であなたが言っておることを、もう一ぺんここで聞いておきたい。漁業会談の成立は李ラインの撤廃を前提としており、われわれは韓国側が李ラインの存在を主張する限り、漁業交渉には応じない。一昨日そう言っている。そのことをもう一ぺん確認しておきます。それでいいんですね。そのことだけ確認しておきましょう。
  278. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ことばというものは、どう言ってもとかく明確を欠く場合があるのでありまして、よく私の言ったことを速記録によってただし、そして、それからお答えしたいと思いますが、とにかく引き続いて私は記者会見で、真意はこうである、つまり前提としてということは、前提ということばが非常にあいまいでいろいろな意味にとられておるようだけれども、結局李ラインの撤廃を目的として漁業会談を進める、こういうことなんです。でありますから、結局漁業会談が円満に妥結すれば、李ラインが自然に解消する、こういうふうに解釈しておるのであります。つまり専管水域外はこれは公海。その公海のまん中に李ラインというものを向こうが主張する。そういうことには触れないで、共同水域を両方で、漁業を行なう上において、資源を保護する上において設けて共同規制をやる。そういうようなことが漁業会談の重要な項目になっておりますが、その問題が妥結すれば、李ラインは、別に論じなくてもなくなっておる、こういうことなんです。それを前提とするとか何とかと言うと、李ラインの撤廃と漁業会談の妥結ということと、何か別のもののように取り扱われるおそれが出てくる。そういうことのないように、私の真意はここにあるということをさっそく伝えたような次第でございますから、どうぞ誤解のないようにお願いいたしたい。
  279. 横路節雄

    ○横路分科員 この問題一つだけ聞いておきたいのです。もう前提だとか何とかいうことを聞かないで、われわれは韓国側が李ラインの存在を主張する限り漁業交渉には応じない。この点はどうなんですか。この点だけ聞いておきたい。
  280. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 李ラインの撤廃に応じないとういことは、漁業会談が円満に妥結しないということと同じことなんです。
  281. 横路節雄

    ○横路分科員 どうもあなたも私の言ったことをなかなかまっすぐ答弁しない方ですね。さすがやっぱり椎名さんですよ、そこはうまいものです。私が聞いているのは、はっきり言っているのは、われわれは韓国側が李ラインの存在を主張する限り、漁業交渉には応じない。野原君にはそう答弁しているから、これでよろしゅうございますねと確認しているのですよ。
  282. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非常に不明確な発言をいたしましたが、李ラインの撤廃に応じなければ、自然漁業会談は成り立たない、そういう意味です。
  283. 横路節雄

    ○横路分科員 だから、李ラインの撤廃に応じない限り、漁業会談には応じないのですか。応じないというのと成立しないというのと、時間的にはずいぶん違う。
  284. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 うらはらの関係で、漁業会談が円満に妥結すれば李ラインは消滅するのだから、同じものです。前から言ったのと同じなんです。
  285. 横路節雄

    ○横路分科員 違うのです。あなた、だめだよ、そんなこと言って。そこだけ私は聞いているのです。もう一度言うなら、われわれは韓国側が李ラインの存在を主張する限り漁業交渉には応じない、あなた、こう言っているのだから、その点を確認しているのだ。それでよろしいならよろしいと言ってください。
  286. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 応じないというのは妥結しない、こういうことになるのです。表と裏と同じものなんです。
  287. 横路節雄

    ○横路分科員 時間的に違うのです。応じないと言ったのです。そのことは向こうは了承しておるわけですね。李ラインの撤廃そのことは了承しておるのですね。
  288. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう方針で臨んでおることを向こうは承知しておるはずである。だから、撤廃に応ずるとかなんとかいうのではない。日本考え方というものを向こうは知っておるはずだ、こういうのです。
  289. 横路節雄

    ○横路分科員 私はまだほかに二、三聞きたいことがあるから——ただ、椎名さん、あなたは、承知しておるはずだ、この間は、了承した、ですよ。小学校の五、六年生の国語を習っておる子供だって、承知しておるはずだ、と了承した、とでは、違っておるくらいのことはわかっておる。そういうことを言って、あなた、国会で小学校五、六年生だってわかるようなことばを言って、いかにしてごまかして逃げようかという、そういう態度はよくないですよ。椎名さん、よくないですよ。ほんとうによくない。  それでは、あとはこれはどなたですか、SEATO加盟国のベトナムに対する派遣人員がどうなっておるか、これは、私のほうに出した資料もあるけれども、ひとつ的確に答えてもらいたい。
  290. 後宮虎郎

    後宮政府委員 ベトナムに派遣されておりますSEATO加盟国の部隊といたしましては、御承知のとおり、米国が軍事顧問の形式で発表されておりますのが約二方二千、あとは顧問団のようなかっこうで豪州その他から行っておりますが、ほかには戦闘部隊としては行っておりません。
  291. 横路節雄

    ○横路分科員 その内容について発表してもらいたいと言っておるのです。南ベトナムに対する派遣人員です。SEATO加盟国の。あるでしょう。どうしてそういうことを用意してないのかね。じゃ、私が次の問題を聞いておる間にそれを調べておいてもらいたい。あるでしょう、あなたのほうには資料が。  そこで、私はぜひ聞きたいことは、MSTSの問題であります。施設庁の長官とあわせて条約局長に、今度あなた、ひとつ大いに多々ますます弁じてもらわなくちゃならない。「MSTS(米海軍極東海上輸送司令部)所属で政府雇用の日本人船員の乗組む船舶は八隻あり、これらの船舶は横浜を所属港とし、主として近海に就航しており、その航行中の寄港先については通報されていないが、当庁(施設庁)で知り得た範囲では、そのうち三隻の貨物船は、東南アジア方面に寄港することもある。MSTS所属の船舶に乗組む政府雇用の船員は、昭和四十年一月一日現在百四十五名であり、そのうち上記三隻に配乗されるものは六十五名である。」そうして、これは主としてどういうことになるかというと、米海軍所属の海上輸送隊、陸海空の人員、陸海空の物資、したがって、沖繩に寄って海兵隊等も乗せて行くことがある。そこで、私は、きのう施設庁の長官に条約上について聞いたのだけれども、どうもはっきりしないから、あなた専門だから聞くが、地位協定の第十二条第四項で、「現地の労務に対する合衆国軍隊及び第十五条に定める諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足される。」こうありますね。ところが、今度は地位協定の第一条の(a)項で「合衆国軍隊の構成員」とは、日本国の領域にある間におけるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍に属する人員で現に服役中のものをいう。」したがって、十二条にいういわゆる合衆国軍隊に対する労務者の提供というものは、日本国の領域の間にある合衆国軍隊に対しての提供だ、そうでしょう。条約局長、この点はどうです。この点は外務大臣に聞いても無理だから、あなたに聞きます。
  292. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 いまの第一条の定義は、合衆国軍隊の構成員についての定義でございます。十二条の合衆国軍隊というのには、別に合衆国軍隊という以上のクォーリフィケーションはついておらないわけでございます。
  293. 横路節雄

    ○横路分科員 それで何だというのですか。MSTS所属の政府雇用の日本人船員は、どこへ行ってもいいというの。南ベトナムへ行ってもいいというの、そういう意味ですか。
  294. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ただ十二条四項には、現地の労務に対する需要とございますから、現地というものは、もちろんこの協定では日本のことでございます。したがいまして、一般的には地上の労務である場合には、これは日本の領域に自然に限られることになりますが、船員などの場合には、船員の仕事の性質上、日本の領海内に限定されるというわけにまいらないのは、これは自然のことであろうと思います。
  295. 横路節雄

    ○横路分科員 そこで、第一条の(a)号に書いてあるじゃないの。「日本国の領域にある間におけるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍に属する人員で……」合衆国の軍隊に対して労務を提供するのでしょう。合衆国軍隊とは何か。この中における、地位協定の合衆国軍隊とは何か。それは、日本国領域の間における陸海空軍そのものをいうことは、この地位協定でそうきまっているじゃありませんか。
  296. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 先ほど申し上げましたように、第一条の(a)号では、「合衆国軍隊の構成員」の定義をいたしておるわけでございまして、合衆国軍隊というものを定義しておるわけではないのでございます。
  297. 横路節雄

    ○横路分科員 あなたは何を言うのです。合衆国軍隊とは何かといえば、一人一人が構成されて合衆国軍隊をつくっているのじゃないですか。たとえば日本における軍隊は、これは通称のことばで在日米軍という。しかし、それが一たん日本の領域を離れたら、在日米軍ではないのでしょう。この第一条にいう合衆国の軍隊とは、一人一人の構成員が集まって合衆国軍隊をつくっているじゃないですか。あなたが法律的な合衆国の軍隊と構成員とは別々だという、そういう解釈は成り立ちますか。この問題は、政府雇用の六十五名の諸君が、いま東南アジア方面に沖繩を回って行っていて、非常に生命の危険その他を感じている。下船する者等も出てくる。こういうことに対して、もっと的確にあなたのほうでこの条約の適用というものをなさる必要がある、こういう観点から私はお話しをしているわけです。これは、無制限にどこへ行ってもいいのですか。合衆国軍隊に提供した日本人の労務者は、この地位協定の第一条では、「日本国の領域にある間」だけですよ。そうでしょう。それはどこへ行ってもいいのだ、そういうことが成り立ちますか、条約局長
  298. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 どこに行ってもと言われると、またちょっと疑問になってきますがしかし、合衆国軍隊がこの条約に基づいて日本に駐留しておる、その目的に関連あるような活動に従事しておる船舶、そういうものであったならば、私はこの協定のワク内と観念してよろしいだろうと思います。ただ、いま御指摘のように、まあ理論上の仮説として、たとえば日本の労務者を募集して南米に連れていってしまうのは、この協定の範囲、らち外の問題だろう、かように考えます。
  299. 横路節雄

    ○横路分科員 しかし、条約局長がそういう条約の解釈をしてはいかぬですね。これは安保条約のときも、地位協定の問題は非常に問題になって、しかも、一条ではっきりと合衆国軍隊の構成員の問題——合衆国軍隊が日本を離れたら、それはいわゆる在日米軍ではないわけですね。日本が提供しているのは、いわゆる在日米軍に提供しているのでしょう。そうでしょう。俗なことばでいえば、在日米軍に労務者を提供しているのでしょう。まさかハワイにおける合衆国軍隊に提供しているのじゃないでしょう。アメリカ本国の合衆国軍隊に提供しているのではないのでしょう。南ベトナムの合衆国軍隊に提供しているのではないのでしょう。日本における合衆国軍隊に対して労務者を提供しているのでしょう。その点はどうなんですか。基本的な条約の考え方はそうでしょう。
  300. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 さしあたり問題のMSTSでございますか、これは、日本に根拠地、司令部のある輸送司令部の所属の船舶だそうでございます。そういうものの乗り組み員を日本人の中から募集するということは、この地位協定上少しも差しつかえないだろう、かように考えます。
  301. 横路節雄

    ○横路分科員 それは差しつかえないでしょうが、それを南ベトナムの戦闘区域に沖繩を通って連れていくということは、どうなんですか。日本の近海を航行することはいいですよ。それを南ベトナムまで連れていくということは、どういうことなんです。それは地位協定の違反ではありませんか。そのことを私は聞いているのですよ。
  302. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 その輸送部隊の任務の範囲内であり、しかも、その輸送部隊の任務というのは極東の平和、安全の維持に寄与するためである、そういうことであれば、この地位協定のワク内である、かように考えます。
  303. 横路節雄

    ○横路分科員 そうすると、それは極東の安全に必要であれば、どんな地域でもいいのですか。極東の範囲のことは国会でずいぶん問題になりましたが、極東の範囲がありますね。極東の安全に必要なためには、周辺の地域で問題が起きれば、ここも問題だ、こういうのでもいいのですか。極東の範囲だけはいい、こういう意味なんですか。その極東の範囲にいろいろな問題が起きてくれば、その周辺のところへ行ってもいい。その範囲はどこなんです。
  304. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 例の安保国会で極東の範囲という論争がありましたときにもそのことは問題になりましたが、これは、米軍の行動範囲を限定するものではない。極東における平和、安全の維持に寄与するという場合の極東というのは、フィリピン以北、日本周辺、中華民国、大韓民国の領域を含むということであるが、その平和、安全を確保するために必要な行動を、その範囲外にわたってアメリカ軍がとることは妨げられるものではない。ただ、その行動には、国連憲章その他から、自衛権の範囲内に限るというようなワクはある、こういうように御説明しておるわけでございます。現在でもそれで正しいと思います。
  305. 横路節雄

    ○横路分科員 施設庁長官、あなたは政府雇用の日本人の船員に、乗り組むときに、それの一人ずつ、お前は米軍が行動する極東の範囲のどこへも行くんだよ。だから、場合によってはインド洋にも行くんだよ。そういうことをあなたは念を押して雇用しているわけですか。その点はどうなんです。
  306. 小野裕

    ○小野政府委員 そういうような確認はいたしておりませんが、MSTSの活動がそういうものになっておるということは、志願し、採用される者は承知の上で行っておると承知しております。
  307. 横路節雄

    ○横路分科員 その点は、雇用される側からいけばそういうことではないですよ。雇用される側からいえば、日本近海の輸送に当たるものという考えで雇用された。長官、そうでしょう。それが実際件には沖繩を回って南ベトナムに行っている。これは全く違うというのが、今日雇用されている者の実態なんです。MSTS所属の政府雇用の日本人船員の乗り組む船舶が、最初は近海就航だが、それがだんだん東南アジア全体に拡大されているというところに問題があるし、いまの条約局長の条約解釈は、地位協定の解釈は、私は間違いであると思います。  時間がきましたから、最後にもう一つだけアメリカ局長に聞いておきます。  この前一般質問でも問題になりましたが、去年の十一月二十五日ごろで、LST乗り組み員に対しては、船員手帳にLST乗り組み員である旨の身分証明を行なっていたのを停止した。そうして、今度は一般旅券に切りかえたわけですね。一般旅券に切りかえたが、いままでだれも申請してこないわけでしょう。一般旅券に切りかえたというのはどういうわけですか。
  308. 安川壯

    ○安川政府委員 これは、一般旅券にするか、あるいは現在出しております船員手帳と申しますか、船員手帳にかわる証明書のいずれが適当であるかということは、もっぱら国内の法律の実施の問題でございますので、主管省であります運輸省、法務省の御判断にまかせてある次第でございます。それで、昨年になりまして、その関係各省で、一般旅券を出すほうが望ましいということで外務省に対して申し入れがありましたので、外務省としましては、船員のほうから旅券の申し入れがあれば、旅券法の手続に従って、その要件に従って旅券を出すという立場をとっておりますけれども、いまおっしゃいましたように、まだ現実には旅券の申請がないというのが実情でございます。
  309. 横路節雄

    ○横路分科員 これは、アメリカ局長、あれでしょう、やはりそのことが適当でなければ、一般旅券の交付は控えてもいいわけでしょう。
  310. 安川壯

    ○安川政府委員 現状でもし旅券の申請がございますれば、申請の手続が旅券法の手続に該当しておれば、出すことは差しつかえないと考えております。
  311. 横路節雄

    ○横路分科員 そうすると、いままで乗り組んでいる者は何でやっているのですか。
  312. 安川壯

    ○安川政府委員 これは、先日ほかの分科会で法務省と船舶局のほうから御説明がありまして、私は、それを受け売りするようになりますけれども、現在はいわゆる船員法の義務に基づく船員手帳ではないけれども、実際上船員手帳と同じように証明をしまして、それを出入国管理法上の旅券にかわる文書とみなしておる。このこと自体は違法ではない。しかし、法務省、船舶局としては、そのやり方よりも正式の旅券を出したほうが望ましいという御判断でございますから、私のほうは、旅券の申請があればいつでも申請に応ずるという立場でございます。
  313. 横路節雄

    ○横路分科員 この問題はアサヒグラフにも出ていますが、あれはLSTの五五〇ですか。サイゴンに着いたLSTには砲座がついているわけです。これは、船長から機関長から通信長から全部日本人だけでやっているわけですね。それで、船員手帳でやることはチェックできないわけですね。船員に対して関東海運局長証明書を一ぺん発行すれば、それで終わりだ。一般旅券であれば、あなたのほうでチェックできるわけですね。そういうところから一般旅券の交付ということに切りかえたのではないか。やはり私は、そういう意味でLST乗り組み員の一ここに十七隻の資料をもらっていますが、大砲を積み、機関砲を積み、そうして南ベトナムに対して武器弾薬の輸送に当たっている。アメリカの国旗を掲げて、全部日本人の船員だ。八百二十三名いるというようなことがアサヒグラフにも出ている。私は、そういう意味では一般旅券に切りかえてチェックしていくやり方がいいと思う。これは、やめるべきだといえば一般旅券は出さない。こうあるべきだと思う。  時間になりましたから、最後にアジア局長、先ほど私から質問した点について……。
  314. 後宮虎郎

    後宮政府委員 先ほどは失礼いたしました。  SEATO加盟諸国がベトナムに派遣しております人員の内容につきましては、アメリカが軍事顧問団約二万二千名、イギリスが行政指導及び英語教師として七名、フランスが経済技術援助使節団六十五名、研究所、学校等における教授四百十七名、合わせまして四百八十二名、フィリピンが医療チーム、専門家等合わせまして三十四名、タイが輸送用航空機の技術者を十七名、オーストラリアが航空技術者、それから外科医のチーム、それから酪農、農業等の専門家等全部含めまして百六十七名、それからニュージーランドが土木技師のチーム、外科医のチーム等合わせまして三十二名、そういう内訳になっております。
  315. 横路節雄

    ○横路分科員 韓国と台湾国民政府についてちょっと発表してください。
  316. 後宮虎郎

    後宮政府委員 韓国のほうは、目下のところ、保健チーム百三十名及び空手教官十名、それから中華民国のほうが、農業技術者七十一名、心理戦チーム十五名、その他の技術者九名、そういう内訳になっております。
  317. 横路節雄

    ○横路分科員 この間韓国が行ったでしょう。
  318. 後宮虎郎

    後宮政府委員 兵隊でございますか。——これは二千名出ることになっておりまして、第一陣八百名程度が着いたというふうに承知しております。
  319. 横路節雄

    ○横路分科員 私は、これで終わりますが、一つだけ。外務大臣、SEATO関係は全部出ているわけです。韓国も出た。台湾も出た。日本は、LST関係は、ただあれはMSTSの直接雇用だからわれわれは関係ないとは言えないのではないか。八百二十三名、十七隻、しかも写真を見ると、ちゃんと大砲を持ち、機関砲を持ち、アメリカの国旗を掲げ、全部武器弾薬の輸送に当たっているわけです。そうすると、SEATO関係、さあ日本だ、韓国だ、台湾だ、こうなるんですよ。これは、これから第二回のAA会議にお出になるそうだが、この場合に、日本人八百二十三名が日本から仁川を通り沖繩を通って南ベトナムに、しかも大砲、機関砲をちゃんと備え付けて武器弾薬の輸送に当たっている。それは明らかにわれわれ社会党が指摘しているように、日本、韓国、台湾、片一方はSEATO関係、第二回のAA会議でこういう点が指摘されますよ。だから、私は、そういう意味で、いままでのいわゆる船員手帳にLST乗り組み員であるということを証明する証明書についても、これは全部一般旅券に一々切りかえて、適当でなければやめさせる、そういう方向にいかなければ、今日の八百二十三名のこの南ベトナムへのアメリカの軍事輸送に当たっている、大砲、機関砲を据えつけて、アメリカの国旗を掲げ、日本人だけの船員でそれが運航されている、これは非常に問題です。だから、そういう意味で、やはり船員手帳に対する証明を全部一般旅券に切りかえるということで、前のやつは全部取り消してやるべきだ。いままでは一人もやってきてないというから、早急にアメリカ局長やりなさいよ。どうですか、おやりになるのでしょう。
  320. 安川壯

    ○安川政府委員 これは、第一義的に運輸省のほうで雇用関係を審査しまして、その審査の承認があれば、私のほうはいつでも出すということでございます。
  321. 横路節雄

    ○横路分科員 私の言ったそういう全体のことを考えておやりなさい、こう言っているのです。  終わります。
  322. 中野四郎

    中野主査 以上をもちまして昭和四十年度一般会計予算中、外務省所管に対する質疑は終了いたしました。
  323. 中野四郎

    中野主査 次に、昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算及び昭和四十年度政府関係機関予算中、大蔵省所管を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。帆足計君。
  324. 帆足計

    帆足分科員 ただいまは外務省所管外交基本的な問題について大論戦がありましたが、大蔵省に対しまして私がお尋ねしたいことは、ただいま戦後のあふりを受けまして、国民大衆の生活は、下はインフレーションで物価の混乱が続いております。上は税率がやはりたいへん重くて、そのために、一面、豊富な国家資金、それから集中されました銀行その他の金融資金で、設備資金のほうは従来急スピードで蓄積されまして、西ドイツ以上の生産の躍進を見たわけですが、その生産の躍進の背後には、至るところにアンバランスがあり、また国民生活の実態は、戦争の破壊のあとの苦しみがまだ解決していない状況であることは、大臣の御承知のとおりです。   〔主査退席、登坂主査代理着席〕 なかんずく住宅難、学校の不足による試験地獄、交通道路の装備と自動車とのアンバランスによる交通地獄等、切実な問題として解決を迫っておるわけです。予算委員会分科会におきましては、がくがくの議論も必要ですけれども、端的に一般の庶民の解決を要望しておる問題を述べまして、それが国民生活にとって切実であり、そして緊急な問題であるならば、その場限りの御答弁でなくて、それを官房においてやはり書きとめておきまして、そして大臣の座右のメモといたしまして施策の中に盛り込んでいただき、直ちに実行できないことは、次の機会にやっていただくということが望ましいと思います。政治は、大きな問題も重要でありますが、小さなことにも心を配ることがあわせて必要でございまして、そのようにして国民の要望が国会の論議を通じて政府の施策に反映されるならば、国民は民主政治というものに大きな期待を持ち、議会政治というものが値打ちのあるものに、すなわち国民の中に根をおろすようになるものと思います。残念ながらわが国の現状では、新聞のほうにも、国会開会中でも、国会という欄がありません、スポーツの欄、学芸欄等ありますけれども。英国のロンドンタイムズのように——イギリスでは常時国会が開かれておりますので、パーラメントという欄がスポーツ欄くらいの大きさでございますから、相当小さな問題でも国民生活にじかに響く問題は、そこで論議されたことが一般の市民にすぐ伝わるようになっておるのでございます。日本では、やはり過去の習慣がありまして、官尊民卑というか、政府が少し込み入ったことについて答弁をなさったことは、新聞で取り上げられますけれども、庶民の要望が述べられまして、それが、非常に切実な要望でありましても、紙面が限られておりますから、国民に伝わるよすがもない。そのために、やはり予算分科会の主要な要望事項は、それを整理いたしまして、大臣の座右に、また各局長の座右にそれが残りますよう、メモに書いた要点くらいがあとで整理されて御座右に残ることが望ましいと私は思っております。大臣はお忙しいですから、ときとしてはそれは大事なことであると心にとどめられても、忙しいためにそこまで行き届かず、また予算の都合上そこまで心持ちはあっても行き届かないということで、結局国会の論議などというものは、一場の茶番劇に終わって、何か大きな質問でもいたせば、ジャーナリズムもうなりますけれども、そうでない重要なことは、論議されておりますのにほとんど見過ごされてしまうということになりがちであると思います。したがいまして、私は、各分科会においてぜひ重要なことはメモをしておいて、後々まで大臣、次官、局長のもとにメモとして残るようにしておいてもらいたい。また、新聞では紙面が制限されておりますから、政治、経済の雑誌などでは——やはり重要な国民からの要望は、世間ではこれを質問といっておりますけれども、この用語を改めて、質問並びに要望、議員から民意を代表して質問並びに要望があった。それに対して政府はこう答えた。お答えの中には、直ちに実行しましょう、同感であるけれども、ちょっと時間がかかります。そういうことで積み重ねていけば、よほど明るくなるのではあるまいかと思っております。したがいまして、ただその場で互いに論争いたしまして、そしてそれに終わるならば−国政の方向を動かすような大問題につきましては、国民の注意を促すという意味で、大論戦はけっこうでございますけれども、日常の国民生活に対する問題につきましては、論戦が主たる目的でなくて、互いに意見を交換して、よいことは実行に移すということが必要であると思います。保守といい、革新といい、政治の道は二つありますけれども、しかし、国民生活は、毎日民族の命は流れておる。子供たちは同じ学校で机を並べて勉強しておるわけですから、必要なことは、党派の別なく身近かな問題は実行に移していただきたい、こう思うのでございます。私は、ただいま財政、金融のことは専門の担当でありませんで、主として外交のことに当たっておりますが、身近かな問題として痛感いたしますことの二、三を申し上げまして、施策の中に今後取り入れていただきたい、こう思うのでございます。したがいまして、私の要題に対しまして、ただ形式的な御答弁でなくて、ほんとうにその意のあるところを参考にしていただいて、施策に取り入れていただきたい、こういうつもりで質問をするのでございますから、大臣が心ここにあらずでお答えくださるならば、もうこのままやめて心けっこうでございますから、ちょっとお尋ねしておきたい。
  325. 田中角榮

    ○田中国務大臣 ただいまお述べになられたとおりでございまして、役所は国会でもって論戦があったもの、御質問があったものをメモにしておるということではなく、速記録その他非常に厳密にこれを検討いたしております。またそうすることが正しいことでございます。でございますから、国会で大臣が発言すれば、それは法律だ、こういわれるくらいでありまして、この間の農業用ガソリンの問題につきましても、非常にむずかしいといっても、何とかできればやろうじゃないか、こういう答弁に対して、再度また御質問があるようでございまして、こういう問題に対しても、非常に真剣に検討しておることは御理解いただきたいと思います。いいかげんな答弁ということはいたしません。私は、特に現在の法律をつくった事務当局、また現在のものを守っておる政府機構、こういうもののたてまえから、いままでの議論としてそういうことはむずかしいですという政府の意見であっても、将来、御説のように考えることがあると思いますというようなことまで御答弁をしておるわけでありますから、特に政治的に政府をいじめようというような御質問ではなく、お互いにひとつ国民のためをという御発言でございますから、どうぞひとつお続けいただきたい。私も真剣にお答えいたします。
  326. 帆足計

    帆足分科員 御答弁いただいて感謝にたえませんが、実は先ほども建設省の分科会で、住宅難の問題について聞いて話し合いました。これは非常に深刻な問題であることは、御承知のとおりであります。ベースアップだけでは問題は解決しません。すべて生活を安定させる方策は、総合的に考えねばならぬ段階にきておることは御承知のとおりです。また、文部大臣及び厚生大臣、それから郵政大臣と、三つの委員会で話し合いましたが、たとえば子供の教育にいたしましても、紀元節とか人間像とか、こういう大上段の議論が流行しておりますが、私はそういうことにはあまり興味はないのでありまして、そういうことよりも、四季四季の移り変わりのうるわしいこの国土に生まれまして、子供たちが健康にすくすくと育つことこそ、最大のしつけであり、最大の人つくりであると思っております。そこで、たとえば、小さな問題では映画がありますが、映画は選択して見に行きますから、いろいろ弊害がありましても選択の余地がありますけれども、たとえばテレビの問題などは、あまりにも犯罪そのものに興味を持つテレビが多過ぎるし、またテレビの中間に広告が入りまして、悲劇ハムレットの最中に、そのクライマックスにインスタントラーメンと叫ぶがごときは、これは人の心を傷つけるものである。英国の法律では、それは禁止されておるのです。広告というものは、商品学の知識、商品の日進月歩の状況を国民に知らせることで、非常に大事なことですけれども、それは幕間にやってもらいたい。英国では、テレビの法律でそういうふうになっております。私は、こういうことは解決し得る問題で、またテレビの営業に影響を与えないで解決する方法もあるのですし、最近は広告というものも、スカラ座などで見ますと、非常に進歩いたしまして、楽しみながら啓蒙される、商品学について知識を得るということも可能ですから、もう少しそういう卑近な問題を考えてもらいたい、こう要望いたしましたら、三大臣とも、賛成だから即刻適切な対策を講じようということでした。こいねがわくばそういうことの実現されることを私どもは希望する次第です。私などは、子供が大学の試験を受けますために、テレビを買ったのはわずか半年前でした。自分でつい疲れて帰りますと、テレビを見る。つい時間を過ごす。そうすると、幕間にたびたび卑俗、卑わいな広告が入りまして、いいと思うよとか、へそねえじゃねいかとか、それがまた適切な場所に入ればいいのに、全く前後の関係もないところへ入る。最近の大脳生理学によりますと、人がある演劇を見て注意が集中しておるときは、大脳の流れはナイアガラの瀑布のようなエネルギーをもって流れているそうです。それを突如として中断する。こういうことを子供のときから経験しますと、これは民族心理に重大な影響を及ぼすのでありますから、何事でも保守とか革新とかいいますけれども、目に余ることはないほうがよかろう。短い人生ですから、人生は美しく、常識的であることが望ましいわけですから、そういうことをお約束願いましたが、三大臣ともお約束してくださいました。一カ月後実現するかしないか。実現しなかったら、私は文部大臣のおたくに上がって、応接間でテレビにかじりついて見ておって、そして、約束を守らなかったら、テレビのガラスくらいこわすかもしれませんよということを約束しておきました。こういうことで、分科会というものは、外交の問題、軍事の問題等を除きましては、よく話し合って、よい国にしようということでいきたいものと思うのでございます。  最近痛感いたしますことは、大臣も御承知でしょう、相続税の問題です。この問題につきまして、私どもは児孫のために美田を買わずで、すべて近いレベルのところからすることがいいことだと思います。しかし、それにいたしましても、多少の保護というものが必要でございます。十数年前に、戦後の最初の民法ができましたときに、相続税の問題につきまして、まず妻の相続につきまして、これは税の問題と民法の問題とがからんでおりますけれども、民法で、妻の相続は三分の一ということに当時きまろうといたしました。私は、婦人議員の諸君はこれに猛然と反対するものと予想しておりましたが、当時緑風会におりましたので記憶も新たではございますけれども、三分の一で満足だ、こう言われる。私は、先代から引き継いだ財産は別といたしまして、苦労をして共にかせいだときは、糟糠の妻に対しては一定財産の範囲、すなわち天文学的な資本が資本を生んだというような、射幸的な、つまり幸運にぶつかったような収入でなくて、まさしく勤労収入と考えられるほどのものにつきましては、夫婦共かせぎでありますから、内助の功で最初から半分は妻のもの、半分は夫のもの、こう考えておりますから、相続の問題は、その夫の分の半分から出発すべきであろう。もちろん例外はありまして、先祖から受け継いだ巨大な財産とか、または資本経営によって得た特殊な財産というのは別にいたしまして、普通の勤労収入、または重役収入、または経営補助者収入というようなものについては、夫婦の共かせぎでありますから、これは最初から両方半々くらいの権利があるわけでございますから、二分の一は妻のものである。そういうノーマルな財産については、残った二分の一に対しては、妻が幾ら取る、子供たちに幾ら分ける、これが適当ではあるまいかと言いました。ところが、ある婦人の議員が、それでは二度目の妻のとき、母のときに困るではないか。二度目の彼女がすっかり取ってしまって、そして前に生まれた本来の子供たちを粗末にするということがあるではないかと言いますから、それはむしろ例外であって、そういうときには、妻の勤務年限ということばは悪いのですけれども、二度目の妻の年数、一度目の妻から生まれた子供たちの年齢など考えて、多少のそういう例外は例外として別な措置をするとして、現在の措置でいいでしょうし、また遺言状をもってこれを調整することができますが、糟糠の妻に対しては、二分の一は妻のものではあるまいか。これに対しまして、男女同権といわれる今日、妻が三分の一、はなはだしきに至っては、子供がいないときは−いまは親戚と申しましても、親戚は他人の始まり、相当個人主義的になっている。平素、病気のときに見舞いにも来ないような遺憾な場合もあるわけでございます。ところが、相続となると急に発言権を持つというようなことで、妻が現在の民法によって十分に保護されていないのではないか。大綱においてそれほど極端ではありませんけれども、この問題はもう少し研究の余地のあることではあるまいかという感を深くいたしました。私の申し上げることに御疑問がありましたら、おうちに帰って奥さんに御相談ください。そうしたら、帆足さんの言うことはもっともである、まあすばらしい議員がおる、奥さまはきっとこう言われるに違いないと思います。しかし、これは民法に関係のあることでございますから、これを修正しようといたしましても相当の手読がかかりますから、そういう深刻な問題があることをお含みくださいまして、それを前提として、今度は相続税の施行規則の場合にもう少し御考慮が必要であるまいかと思うておる次第でございます。  さてそうなると、それがどういう結果にあらわれるかということを申し上げましょう。  相続の問題につきまして妻の地位が十分に保護されていないということのほかに、第二の問題は、都会と農村と事情が違うのでございます。これは、御承知のとおりです。農村の問題は端的にあらわれておりまするから、農地がこまかく分散されると困るという事情がありまして、これがいろいろ論議されまして、実情に適するようにいろいろのくふう、工作が行なわれておりますことは、御承知のとおりでございます。政府も、これに対してずっと研究を続けられておることも承知いたしております。ところが、都会におきまして農村の田地に当たるものは、都会における住宅でございます。住宅と妻の地位、子供の生活とは不可分のものでありまして、今日私どもの生活をささえておる二つの要素は、一つは収入、一つは住宅、この二つが生活をささえておる二大要素でございます。私は、最近の医療問題や、また総評のベースアップの問題などに関連していろいろの困難にぶつかるたびに思うのですが、生活安定の対策は、今日の段階では賃金だけではだめです。また医療にいたしましても、医療の報酬だけではだめでありまして、やはり総合的な施策が必要である。すなわち、第一は賃金または報酬、第二は住宅、または病院の場合は病院の建築物でしょう。それから第三番目が社会保障、この三つの総合施策で生活を守らなければ、一本だけではちょっと無理があろうと思っております。そこで、住宅のほうと連関いたしまして、問題が多いのですけれども、大臣は孟母三遷の教えというのを御承知でありましょう。小学校のとき習ったことで、孟子のおっかさんが、環境が悪いからかわろう、そして、吉原のようなところから今度は繁華街に移ったのですが、また環境が悪くて、坊ちゃん、孟子はいたずらばかりして困るから、三度目に学校の近所に−今日でいえば文教地区でしょう、文教地区に移った。そして坊やの孟子はすくすくと育った。教育は環境に依存する、そのことを知っていた賢い母であるという物語でございます。今日孟子の賢いおっかさんがおりましても、孟子の母は大資本家ではなかったようですから、三度移れるでしょうか。一度住みついたところから他に移ることは、まず困難でございます。アパート住まいならとにかく、いわんや小さいながらも、ネコの額ほどでも、五十坪、百坪持っている中産階級のうちであれば、三度移るなどということは困難でありまして、移らない前に孟子は非行少年になってしまったかもしれません。とにかく今日では、住宅問題は非常に深刻な課題でありまして、大蔵大臣ですら、孟母三遷の教えなどという古めかしいことばにちょっとお気がつかれなかったというような住宅事情でございます。したがって、私が言いたいのは、孟子時代どころか、三十年前には、どこでも家を簡単に借りることができた。あまり夫婦げんかが激しいときには、気分を変えようじゃないかといって、三円ばかり奮発してよい住宅に移れば、心もすがすがしくなって夫婦の仲も円満になる。特にお年寄りをかかえているおうちでは、わずか三畳か四畳半の部屋でも、お年寄りの隠居部屋が一部屋あるだけで、家庭の中の空気がすがすがしくなる。こういうことが三十年、四十年前の東京市民の生活、日本国民の生活でありました。今日五十坪なり百坪、また二百坪のうちに住みますと、まず大体それはカタツムリのからのようなものでありまして、わが身についたものでございます。したがいまして、これは自分の身についたものほど大事なものでございます。かりに二百坪のうちがありまして、知らない間に近所の地価が高くなり、坪十五万円になったなどといいましても、驚くばかりでありまして、二百坪の土地に住んでおれば、わずか三十坪ぐらいの小さな住宅でありましても二、三千万もするとかいわれて、肝をつぶすばかりでございます。しかし、なんじの肝が三千万円になったといわれましても、肝を切って乾燥して反魂丹に売りに行くわけではございませんから、痛くもかゆくもない。そこには妻が住み、三、四人の子供が住み、そしてしあわせな生活が続くわけでございますから、高くなっても、固定資産税が上がるだけで、逆に迷惑を感ずるような今日の状況でございます。そういう五十坪、百坪、二百坪ぐらいの安定した家庭に、一たび無情の風が襲って御主人がなくなったときには、そのうちの値段は一千万、二千万、三千万に評価されます。私は、それは固定資産税の評価額でいくのかと思っていましたら、最近はそうではなくて、道路ぎわで査定する方式がありまして、そして、それは時価の大体三割引きぐらいの値段でございます。何でもないところが今日東京都内においては十五万円いたしますが、十五万円の三割引きの値段、すなわち十一、二万円で評価される。そうすると、百五十坪持っておりましても二千万近く評価される。そうして、それの三、四割のものが相続税として取られるとすると、百五十坪の土地に二十七、八坪の狭いながらも楽しいうちに住んでいる家庭が、一瞬にして数百万円の税金をかけられる。それをまかなうために、営々としてためたすべての貯蓄、退職金、保険料を全部相続税に払ってしまって、あとは残らない。かろうじて家を一軒食いとめた。ところが、その家はささやかなぼろ家でありまして、残された親子四人がやっと住むだけのうちでありますのに、四、五百万円の税金がかかってくる。そして、保険料と退職金で払ってしまったら、あとは何も残らない。そして、これは未亡人の涙に追い打ちをかけるような結果になっておるのではあるまいか。  そこで、どうしてこういうような深刻な矛盾が生まれたかということを考えてみますと、それは、結局家の問題であります。土地の値段がべらぼうに高くなって、その土地の値上がりが、空地であるか、貸家を持っているならば、売ってしまって一挙にお金持ちになるのですけれども、自分が住んでおるときは、高くなっても、迷惑なだけで何の役にも立たない。そこで、住宅問題は、今日は孟母三遷の教えの住宅問題ではなくて、自分の住んでおる家一軒に関する限りは、カタツムリのからのような役割りをなしておる、キツネが入って住む穴のようなものです。それが、ただ観念的に値段が高くなって、そうかなと思っているうちに相続税がおいかぶさってきたときに、そういう特殊の矛盾があらわれる、こういうことではないかと思うのであります。議員をしておりますと、当然市民の知り合いのお葬式にお見舞いする機会が多いのですが、そのたびごとに、私どもは特に中産階級地帯に住んでおりますから、百坪、百五十坪、また二百坪のカキの木の二、三本ある、間数にして五つ、六つ、二十七、八坪から三十二、三坪の御家庭で起こる問題は、ことごとくこの問題でございます。したがいまして、これは大蔵大臣が悪いのではなくて、ときの変遷によっていつしか住宅問題が特殊な深刻な問題を生んだ。そして、自分の住んでいる住宅がめちゃくちゃな値段になった。相続税を払うためにその百五十坪の土地を売り払ってアパートに住めば、確かに一ぺんに一千万円ぐらい金を握ることができる。しかし、アパートに住んでも、今度は一部屋のアパートでは親子四人が住めるわけではなく、親子四人が住めるくらいのアパートに住めば、今度は家賃がばく大なもので、それは言うべくして不可能です。そうすると、住んでいるわが家はどうなるかというと、結局未亡人が住む、子供たちが住む、おそらく長男が引き継ぐでしょう。そして、横にまだ多少余地があって建築法で許されるならば、次男か、からだが弱い末の娘のために、せめて六畳二間ぐらいの建て増しをして、幾つかの表札が並んでおる。一軒の家が二階になって、分割されて三家族ぐらい住んでおる。これが今日の日本の家族の風景でございます。今度はこれに相続税の現金収入の追い打ちがかかるという状況ですから、この問題については、これは、大蔵省当局が気がつかないうちに住宅の暴騰が起こったということからきた矛盾でしょう。現に私は自分のうちを売りまして、前にカボチャ畑になっておりました松林に移ったのですが、ほんとうに見る影もない丘の上の松林でありましたけれども、五、六百坪偶然——坪五十円ぐらいで買ったのでしょうか、持っておりましたところへいまのうちを売って民芸風のバラックをつくりましたら、とてもハイカラなので、社会党の代議士がこんなすばらしいところに住んでいる——すばらしいもへったくれもない。坪六十円の小さな丘、それがいつしかまたたく間に、わずか数カ年の間に、最近は坪二十万円などといってあいているところを人が買いに来る。ところが、戦争中ですから、われわれも大いに気ばって子供を生みましたから、四人の子供を生みましたから、四人の子供にこれを分ければ、幾らもありません。かろうじて子供たちに、児孫のために美田ではなくて、キツネの穴ほどのものをあれして、それによって卑しい思いをせずに過ごせるとするならばしあわせなことであると感謝しております。ところが、売った家は、わずか二百坪でありましたが、当時二百万円くらいで人が買いまして、坪一万円というすばらしい値段で売れて、感謝感激しておりました。それはわずか七、八年前のことです。それがいまでは、なんと売った場所が坪十五万円になっておる。家内がぐちをこぼすことこぼすこと、あなた、経済学者のくせに、しかもインフレの専門の学者のくせに、なんて早くあわてて売りました。とにかくちょっとの間に土地は上がってしまったのです。そのために、自分のうちが一千万も二千万もするということを気がつかないうちに、たった一つのわが住みか、わがカタツムリのからが、二千万になり、三千万になっておる。私は、これは財閥の相続税のことを申しておるのではなくて、きわめて平凡な一中産階級のお葬式の宵のことを申し上げておるわけです。これは、急激な土地の値上がりのために起こった悲劇でございます。これに対する社会保障的な控除は若干はありますけれども、それは、土地価格の観念的な暴騰に比べれば、せっかくの当局の控除もごくわずかでございまして、わずか百五十坪の土地を持っておる、子供を四、五人かかえておる未亡人が、ばく大な現金の税金を払わなくてはならぬ、こういうことになっております。  そこで、第一には、妻の取り分が現在三分の一ということに無理があることと、第二には、住宅問題の関係から、住宅が観念的に暴騰したために、現金収入で、ほとんど退職金も保険金も払ってしまわねばならぬ。家だけ残って、あとすっからかんである。ところが、また他方では、家のない人が非常に多いために、家のある人がそういうことを言うならば、それはほんとうにうらやましい苦労であると冗談を言う人もありますけれども、ものごとは公平に見ねばなりません。家のない人のためには、公団その他の応急手当を政府は急いでおりまするし、わずか百坪か百五十坪の家を持っておる人たちのためには、私は、この敷島のやまとの国に生まれてきまして、カキの木の二、三本ある家に住むことは、決してぜいたくではないのでありまして、その程度のことは保護されねばならぬと思う。あたかも農村において自作農が保護されねばならぬと同じ問題であると思います。したがいまして、大臣も十分にそこまで問題がきておることにお気がつかぬ部分もあったかと思いますけれども、非常に零細な住宅を持っておる人に、かえって比重としては大きく相続税がかかるように、いろいろな控除規定があるにかかわらず、現金で払わねばならぬ大きな負担がかかるように、いま、いつしかなっておる。これは、わずかこの五年間ばかりのできごとです。五、六年前はたいしたことがなかったのです。固定資産税がかかると思っておる方々にとっては、まず適当になさると思っておりましたところが、いまでは非常な金額になってしまった。こういうことでございますから、この席をかりて特に御注意を促す次第です。
  327. 田中角榮

    ○田中国務大臣 相続税法における妻の問題、これはいろいろ議論のあるところでございます。現在は、相続税額の五〇%の控除は、これは妻が取得したという場合にそういう制度がございますが、(帆足分科員「三分の一に対してね」と呼ぶ)私も、この問題でいまあなたがるる述べられたように、十分検討したこともございますし、また将来も検討していかなければならぬ問題だと思っております。私は、あなたよりもまだ極端な議論を持っておったわけです。妻と夫は同等と、私の家庭はそういうことを考えておりました。ところが、私が死ねば妻に対しては税金がかかる。妻が死んだ場合、両方とも死んだ場合に税金がかかるのが一番いいので、生きているうちにかけるのはおかしいのじゃないかという議論で、私も非常に検討してみたんです。あなたはどうかと言いましたが、私は、わが財産は妻のもの、妻の財産はわがもの、こういうつもりでおりますから、両方なくなったときに初めて相続税というものが生まれていいのじゃないかというように考えて、私はそういう税制をつくりたいというふうに考えておりますし、また将来も検討していきたい、こう思います。と思いますが、いまの制度は、先ほど申し上げたとおり、戦後の均分相続とか、いろいろな問題がございまして、そういう過程を経て現在の状態になっておるわけです。ただ、あなたがさつき言いました第二の妻ができた場合とか、後妻の問題とか、それから妻が別れた場合とか、こういう問題をいろいろと検討するものだから、こんなものになるのだと思うのです。これはまた、アメリカのように、初めから妻と夫の財産が画然としておればいいのですが、そうではなくて、日本は、共かせぎの場合は、何とはなく夫の通帳の中へみな一緒に積まれてしまう。妻がかせいだものでもって日常の生活をしておる。夫の月給だけは積んでおこう。こうなると、妻の名前にするよりも、夫の名前にする。何でもちょっと妻に名義を変えても、贈与とみなすとか相続したものとみなすとか、いろいろ税法上むずかしい問題がございます。私は、いまのものが戦後二十年たった今日、ようやくここまできておるわけでございますが、ここで終わりだ、これは最上のものでどうにもならないというものではないと思います。社会制度により合うような合理的なものをつくらなければいかぬ。まして夫婦別れなどというものが外国のようにあっちゃ困る。そういう意味で、私ども偕老同穴というような思想でございますから、そういうことであるならば、なるべく税制をうまくやって、共働きをした者が途中なんかで別れないでいいようなことになるならば、それこそ一石二鳥だと、私自身も相当考えております。私も死ねばすぐ妻に税金がかかってとても払えないという問題、私自身が思想的には少なくともいまの税制の中でも妻に五〇%——私はそういう演説をしたのです。妻に五〇%、あと残りの五〇%を、子供が三人おれば均等に、と言ったら、そうでなくて、妻は三分の一だと注意されたことがありますが、ひとっこれは十分実情に合うように——実情に合うというよりも、世の移り変わりに対応して、合理的な相続税ということは絶えず検討していくべきだと思います。  それから家の問題、これは、土地増価税とよく似ているのです。土地は売ったら、売ったときに利益を得た場合に税金がかかるのです。売買利得税。ところが、土地増価税ということは事実できませんと、こう言ったのは、それは九尺二間の小さな店を持っておって、依然として売り上げはたいしたことはない。しかし、町が非常に発展をしたので、坪当たり百万円する。百万円するといっても、他に転売をしたときに初めて利益が生まれるのであって、いま現状どおりの営業を続けていくということになると、これは農地と同じであります。農地などに対しては、大体いまの額で三百万円から三百五十万円までは控除されるということになっておりますから、農地というものはだんだん合理的になってきておりますが、家というのは、確かにあなたが言うように、家の控除というものはある程度認められないか。これは、現在の税制の中で議論をするとなかなかむずかしい問題でありますが、しかし私は、百坪という小市民住宅が半分になり、三代目には三分の一になり、五分の一になり、細分化に拍車をかけるというようなことも、やはり十分検討する必要があると思います。私自身も、特に未亡人とか婦人団体からそういう陳情を受けております。子供でも大きくなればいいけれども、おやじさんが急になくなった。まだ子供はみんな学校に行っている。しかし、税金は払わなければいかぬ。そういう意味で、この間もそういう対談が一つございましたが、二百坪とかその程度の、常識的に考えられるそういうものをまた細分化を進めるということではなく、すべての国民をそういうレベルまで引き上げるということで、一つの控除制度を設けてはどうかという提案もございました。まあ税制理論の上では、いろいろなめんどうな理屈があるようであります。しかし、新しい角度から、先ほどの妻に対する税と同じように、この住宅問題について、特に相続財産の中における住宅、しかも、それは夫がなくなった場合妻に名義が書きかえられる、両親がなくなった場合子供に名義が書きかえられる、これを転売をして利益を得たのと同じケースに考えて相続税を課すということに対しては、もう少し財源がだんだん豊かになれば、こういう問題は重点的に取り上げながら、細分化を促進するようなことのないような税制をやはり考えていかなければいかぬ、こう考えております。いまの状態では、現行の税理論の上ではいろいろな理屈がありますが、現実の問題として研究をしていかなければならぬ問題だと、みずからも思っております。
  328. 帆足計

    帆足分科員 小さな問題のようですけれども、きわめて切実な問題でありますので、重ねてもう一度お尋ねして、御答弁をいただきたいのですが、ただいまの大臣の御答弁をいただいて、私もたいへん満足でございます。しかし、この世の中のものごとと申しますものは、やはりしろうとが考えましたことが非常に大事でありまして、それが専門家の手に移ると、木を見て森を見ないようなことに逆になってしまうことが多いのでございますから、大臣の平素の御持論をどうして今度は実施のほう、手続のほうへ移すか。移すほうは技術でありまして、大臣の心持ちのほうが大事なことだと思うのでございます。  ここで、さっそくですが、ただいまの家屋の例を重ねて申しますと、私が痛感しておりますことは、不十分ながら御参考になると思いますが、自宅の場合と、それから借家、あき地、借地などの問題と区別して、自宅はとにもかくにもカタツムリのからである。そのカタツムリのからが不当に高く評価されておる、こういう事件が起こっておるわけです。すなわち自宅と一般とを区別する。それから第二に、これは社会政策的にお考えくださるとすれば、まあきわめて常識的に国民が納得する除外例とすれば、妻には百坪、子供たちには五十坪、それだけは少なくとも控除をする、そこへ往んでおる者には。カタツムリのからをはぐようなむごいことをするな、こういうことです。小さなトカゲの背中のうろこをはぐようなことはしないほうがよかろう。そういう意味に御理解くださって、御研究賜わらば幸いです。   〔登坂主査代理退席、主査着席〕  それから第二の、夫人の相続の問題につきましては、私は民法の問題は直ちに改正できない。したがって、税制上の配慮をなさる。たとえばピアノとかテレビに税金がかかっておる例がありますが、ピアノなどというものは、妻のものであることはもう明らかなんで、相続でなくて妻に与えるものです。亭主でもってピアノをひくというのは、よほどにやけた男か、才能豊かな人間に違いありません。文化人と自称する私も、ピアノは一向ひきません。これは妻のものとわかっておるものなんです。それでもこの前、ある例では相続の中に入れておった。私は、それはひどいじゃないかといって話をしようと思っておりますが、こういうことは、やはり大蔵省当局の、少なくとも大臣のお心に沿わぬことであろうと思うのです。本にいたしましても、「源氏物語」など妻が愛読しておるようなものを、夫の書斎にあったからといってやかましく言う。そういうようなことは、少し手かげんしたらよさそうなものだ。一番典型的なものは、テレビよりもむしろピアノなどの例です。お琴に手をつける税務署はさすがにいないように思いますけれども、ピアノはもうしじゅうあることです。それから、やはりあと調整するとすれば、民法はしばらくおいておくとすれば、税の控除です。もう少しよくしてもいいのじゃないか。妻の税の控除、それから税の実施上の大臣のお心持ちがあらわれるような方法を若干講じる。それから一般の宅地と自宅、自分の住む敷地を区別し、そうして、控除の坪数は一人当たり百坪、子供は五十坪というようなことをなされば、筋が通るのではあるまいかと思います。大資産家でも、今日ではたいへん困っております。しかし、それはそれとして、また研究すべき課題でしょう。しかし、私が申し上げましたのは、この東京市内に住んでおられる普通の中産階級、または家持ちの勤労階級の人たちです。これらは、自宅という概念が、とにもかくにも財産というよりも、わが身についた肝臓か肺臓と同じものです。死んで肝臓に税金をかけるようなものです。自宅に税金をかけるのは。イエス・キリストは、キツネには穴あり、されど人の子は住むところぞなしと言われましたが、しかし大蔵省当局は、その人の子のただ一つの寄るべに過酷な税金をかけるという結果に、いつしかなっている。これは、この五年間の移り変わりに生まれたことです。重ねて大臣のお気持ちのほどを伺っておけば、あと事務当局もやりやすいと思いますし、国民も喜ぶと思いますから……
  329. 田中角榮

    ○田中国務大臣 妻に対しては、非常にいろいろな変遷を経て今日に来ておるわけでありますが、妻に対しては、確かにあなたと同じような思想であります。私自身がいろんなことを考えまして、私が大蔵省に入ってからだと思いますが、妻がいなければ夫の収入ということは確保できないのでありますから、妻イコール夫、夫が死んだ場合は、妻については、妻の取り分に対しては課せず、妻が死んだ場合に初めて相続税を課税するという思想を貫かれないかということをいま考えておりますが、これはしろうと考えというようで、なかなか税理論の上ではいろんな問題がたくさんあります。でございますが、いずれにしても基本的なものの考え方に対しては大体同感でありまして、検討の価値がある、こういう考えでございます。  それから、もう一つは住宅の問題でありますが、住宅を持たざるものがたいへんであって、住宅を持てるものは特定な財産を持つ特定階級であるという考え方で長いこと今日まできておりますが、私は、そういう固定的な観念というものはある時期に修正をさるべきだと思います。でありますから、どうしても家を持つということは、まず家を買うときに不動産所得税がかかる。毎年毎年固定資産税を納め、その次に、また相続するとき、わが最愛の妻や最愛の子に渡すときにまた税金をとる。税金はよその国に納めるわけではなく、当然われわれ国民に返ってくるものではございますが、どうもそこの考えに、生活必需品というものの定義、限界、これは世の移り変わりによって変わらなきゃいかぬ、そういう観念は私にも理解できます。ですから、五十坪や百坪の家を持っているものが特定の財産家だということであれば、現状から向上しないものの考え方でありますから、全部をそのレベルまで引き上げなきゃいかぬ、こういう政治目標を持つ場合、やはりそれをやっと何十年かたって築いてきたものを、父が死んだということをもって細分化されるというようなことは、政策的にも大いに議論をし、検討する必要はある、こういう考え方は、私自身も理解しております。
  330. 帆足計

    帆足分科員 あとわずかな時間でございますから、ただいまのような御理解をいただいてしあわせですが、確かに私が申し上げたのは百坪、二百坪の土地について申し上げたわけですから、これは髪の毛の一部とお考えくださって——私はキューバにかって行って驚いたんですが、フィデル・カストロがやはり住宅政策をしております。あそこは地震がありませんから、レンガを積んだだけで簡単に家ができるんです。暑い国です。庭を非常に美しくしまして、千三百時間手伝った者には結局家をやるんです。家をやっても、やれば大事にします。そして、法外の値段が人に売ることは許されておりません。しかし、適正価格がきまっておりますから、それで人に譲り、また子供に相続させることも許されておりますが、与えたほうが、自分の家ならばくつろぐからいい。社会主義の国であるけれども家は与えよう、こういう政策をとっておりますが、またその家の美しいこと驚くべきで、そのことは、先ほど、私、大臣にくわしく申し上げましたから省きますが、その点については、大臣と意見が一致して幸欣のいたりです。  それから、もう一つ御了解を得たいことは、多少私は文化関係の仕事をいたしておりますが、この国で、日本の音楽も非常に優秀でございますし、同時に、日本ではヨーロッパの音楽も非常に愛されております。一つを例にとりますと、レコードにいたしましても、西洋音楽がこれほど普及しておりますのに、オペラをかりに——オペラは甘く美しいものです。人の心をとらえるものですが、レコードを販売いたします段階で、オペラは残念ながら一種類平均二、三百枚しか売れません。器楽になりますと平均五百枚から七百枚です。ですから、流行歌が何十万枚売れるのに対して、いかにオペラなどが苦難の道を通っておるか。藤原義江さんたちが、おみおつけでたくあんを食べながらフローレンスまで行ってオペラをおやりになる、その苦労と努力に私は心から敬服するものでございます。「売られた花嫁」というチェコスロバキアの優れたオペラがございますが、これがレコードにしましても二枚三千円。そうすると物品税が三百円かかる。最近ボリス・ゴドノフという優れたオペラがまいりますが、これをレコードにいたしますと二百五十枚くらいしか売れないのです。日本の中産階級は非常に貧しくなっておりますから。そうすると、三千円のものに三百円やはり税金がかかる。「お座敷小唄」ですか、それも印税一割、「売られた花嫁」のオペラも一割、税率は同じでございます。そこで、私どもはそういうクラシックとポピュラーと分けることを研究してみました。しかし、それはなかなか分けにくいのです。どこからどこまでがクラシックで一またポピュラーだからといって、品が悪いというわけではありません。ポピュラーはポピュラーの愛らしさがあるわけです。そこで私が考えましたのは、五百枚以下で、かりに三百枚でもけっこうです。たとえば、五百枚しか売れないような特殊のもの、すなわち日本の文化を維持し、日本の古典を維持するもの、日本の能にもそういうものがあります。ことし大臣賞をもらったレコードの中にかなりそういうものがありまして、二百枚、三百枚しか売れません。しかし、それは、日本のうるわしい古典を残し、外国の優れた古典を日本の専門家に、また特殊の愛好家に紹介するため、高い芸術の根を断たないための犠牲出版のもの、そういうものについては、私は枚数でいけばどうかと思ったのですが、枚数でいうと三百枚以下のものについては税率を安くする、それ以上のものについては普通にするとか、何か研究の余地がある。でないと、これを出版することが非常に困難な曲目にたくさんぶっつかっております。同じことは入場税の問題にもある。本来ならば入場税は安いほどいいのです。これを全廃してもらいたいというのが多くの人の希望ですが、しかし、全廃できないとすれば、私は交通税に少し毛のはえたもの程度にするのがほんとうであるまいかと思っておりますが、特に困っておりますのは特殊の場合、たとえば、日本でいえばオペラとか非常にむずかしいクラシカルな音楽会とか、それから特殊な能だとか、そういうものの場合に、赤字になっておるのに税金を払わねばならぬ。藤原義江氏がオペラなどやりますときは、いつも赤字赤字で、赤字にまた税金を払わなければならぬので、非常に見るに見かねるほど困窮しております。で、この問題につきましても、もう一度御研究の余地がある。それは、入場税というものの一般をやはり税率を安くすること。そういう特殊の温習会とか、クラシックとか、オペラとか、そういうものの取り扱いに対しては、たとえばどういうふうにしたらよいか、まだ私は研究の余地がありますが、一つのタイトルに対して連続三回なら三回やって何人までは免税にするというようなことでもするか何かしないと、とにかくそういう先駆的芸術の道を歩もうとする者、また特殊の芸術の分野において日本の伝統及び外国のクラシックを残していこうとする者は非常な苦しみをなめております。そのまま放って置くと怨嗟のまとになるような状況でありますから、御研究のほどを願いたいと思う次第でございます。
  331. 田中角榮

    ○田中国務大臣 前二段の問題は私も検討をする必要があると思いますが、この問題は非常にむずかしいことでございます。これは、物品税は何にでもかかる、こういうことでございます。砂糖でも、四キロまでは安くして四キロ百からは高い税金ということは非常にむずかしいことであります。いまのレコードの問題も、これは物品税でありますから、一枚でも百枚でも税金はかかる。これは税額においてよけい払うということになるわけであります。これは、ただあなたがそれを言っておるわけではなく、いわゆる文化的レベルの高いものとか、国で当然やらなければならない純文学とか、そういうものに対して考える、こういうことだと思います。これは、文部省か何かにちゃんとした審議会か何か設けて、そこでもって内容を審査する、そして、一つずつパスをしたものに対しては免税をする、こういう処置は、理論の上の話でございますが、とれるかもわかりません。しかし、この芸術というものは、確かに古典的なものなどを守っていくために、たいへんな出費をし苦労しておられる人がございますことはよく知っておりますが、これを税法の中にすぐ取り入れていくということは、現在の物品税の中では非常に困難だということは申し上げられると思います。歌は世につれ世は歌につれということで、時代によって非常にいいものだというものもございます。それと比較的に高度な芸術性を持たないものでも、大衆の生活と非常に密着している、こういう問題、いろいろな要素を考えますと、枚数五百枚までは一枚に対して十円、五百一枚から二十円、こういうことはとてもむずかしいので、文化保護といいますか、文化育成といいますか、芸術振興といいますか、こういう別な立場から免税点を設けられないかというようなことだと思います。これは、私自身も何回か陳情を受けたことがございますし、検討もしたことがございますが、現在のような消費税式な物品税の中では、これを救済することはむずかしいということだけ申し上げておきます。
  332. 帆足計

    帆足分科員 それでは時間ですから、入場税のことはまた御研究くださいますようお願いいたしまして、また大蔵委員会でお尋ねいたします。
  333. 中野四郎

  334. 島口重次郎

    ○島口分科員 田中大臣も御承知のとおり、三十九年度は暗い面の記録の更新でありまして、破産、倒産二・四倍、実に残念だと考えております。その原因がどこにあるかということを中小企業白書の中で検討してみますと、設備の過剰投資も大きな理由である、あるいは思惑もその原因である、労務者の不足も大きなウエートを占めるというように言っておりますけれども、特に昨年急激な破産、倒産が激増したのは金融引き締めの問題じゃないか、こう考えておるのであります。そこで、金融の引き締め問題に関連いたしまして、いろいろ政府の三金融機関等に昨年度は二六%の資金量を増大いたしまして対策をとったけれども、ただいま申し上げましたとおりの結果であります。そういう面だけが、相当政府では不十分だけれども、努力したあとは感じられますけれども、同時に国内で横行しておりますところのやみ金融と称するもののこの点に対する行政的な指導というのは、ほとんど等閑視をされてきておる、等閑視をされておるというよりも野放しをされておるのじゃないか。こういう面から、このやみ金融の中小企業、零細企業に影響いたします点が広く、かつ、深刻であると考えております。大臣も経済界のことはよく御承知ですからわかるけれども、銀行の金利ほど高いものはない。労務者であれば、休むとか休暇をとりますと労働賃金がもらえないということが多々あるけれども、金利と称するのは、休んでも、寝ていても、いつでもかかる。そういう面から金利ほど大きいものはないといわれております。特に銀行の金利ならまだいいけれども、利息制限法や金利の取締法から申しますと、それの三倍、四倍の金利を払っておる。特に昨年の経済情勢から見ますと、大企業のほうでは、台風手形であるとか、お産手形であるとかいうような、二百十日や三百日も手形を発行できない。そうすると、中小企業なり零細企業では、帳じりの面から申しますと黒字であるけれども、現金はなくて、現金操作に困りまして、高いものは月九分、あるいは六分、五分、三分というやみ金融から借りる。一度その世界に足を入れますと上がってこれないわけです。要するにやみ金融に足を入れますと破産、倒産に直結するのが昨年度の姿だったと思います。そういう面で、政府は町の金融に対する指導の問題をどう考えておられるか、まずお聞きしたいのであります。
  335. 田中角榮

    ○田中国務大臣 町の金融につきましては、利息制限次、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律の適用を受けておるわけでございます。これは、全般的なわが国の金融基調との関連において定まっておるものでございまして、非常にむずかしい問題であります。私も、初め、日歩三十銭を限度とする、これはばか高い話だ、こういうことで、そういう議論を前提にして考えてみたことがございます。ところが、昔などは、魚屋さんが朝四時に出るときに日歩三十銭の金を借りて仕入れをして、さっと一日で売って、日歩三十銭ではなく九十銭くらいもうけを生んだとか、いろいろなことがあります。ただ、私も事業の経験がございますが、町の金融を企業資金に導入したならば抜き差しならないということは教えられてもおりますし、私も確かにそういう例も知っております。百万円金がほしいのに、銀行は八十万円貸した、あとの二十万円だけはたいしたことはなかろうと町の金融に手を染めたために、それが利が利を生んでどうにもならなくなって、設備投資をしなければ父祖代々ののれんを守っていけたのに、あえて手を入れたために、新しくちょっと拡張しただけで元も子もなくしたという例を聞いております。この問題は私の所管ではございません。この問題はなかなかむずかしい問題でございますが、あなたもこういう実態をよく御承知でございます。私も何回か御質問を受けたこともございますから、あえて私からお答えするまでもないことでございます。
  336. 島口重次郎

    ○島口分科員 大蔵省所管ではないと言うけれども、金融政策を指導する面からいうと、やはり金利行政をつかさどるのは大蔵省である、こういう面から政府の金融政策全体の一環としてこれを指導強化をしていかなければならぬ、こう考えますが、その点はどうなんでしょうか。
  337. 田中角榮

    ○田中国務大臣 この問題は法務省でやるということでいままできておるわけでございます。ただ、全体の金利政策、金融政策という面からいえば、私たちもこういう問題に対して無関心でおるわけではございませんが、法律が制定されるときに国会でもって非常に議論がございまして、あらゆる方面から検討した例があります。でございますので、われわれは通産省に対しましても、やみ金融、いわゆる町の金融というものが産業資金に導入されるというようなことに対しては、ひとつ注意をするような指導をしてもらいたい、こういうことでございますが、私たち自身は中小企業に対しましては、政府三金融機関の資金量の拡大やその他全般的な金融政策で、中小企業の資金繰りというものには対処しておるわけでございます。
  338. 島口重次郎

    ○島口分科員 大蔵省所管でないというけれども、貸し金業を開業いたしますときには、大蔵省に届けなければならぬ、大蔵大臣に届けなければならぬ、こうなっているわけですが……。
  339. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いまの取り締まりの根拠法は、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律でございます。ただ昭和二十九年六月二十三日の法律でございますが、全く同じ日付で、貸金業の届出及び貸金業の実態調査に関する権限の委任に関する政令というのが公布されておりまして、それによりますると、届け出を受ける権限及びその調査報告の徴求、調査の権限は全面的に都道府県知事に委任されておるわけでございます。
  340. 島口重次郎

    ○島口分科員 その意味では大蔵省所管ではないと言えないと思いますが、どうでしょう。さらに都道府県知事に委任されましても、委任事項でありますから、その業務の実態、経過は大蔵省のほうに報告がきておるわけでしょう。どうですか。
  341. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これは、いわゆる全部または一部を委任することができるという法律に根拠がございまして、その届け出を受理すること、報告を徴求することなど全面的に、全部を都道府県知事に委任しておりまして、それらの集計をするということは事実上はやっておりません。ただし無関心ではございませんから、そういうことについての概略の調査の結果をこちらのほうで調べるということはあります。しかし、ただいま金額がどの程度動いておるかということにつきましては、届け出事項にもなっておりませんし、まあ業者の数というような点はわかっておりますけれども、どれくらいの金が動いておるかというような点は把握できないようになっておるわけであります。
  342. 島口重次郎

    ○島口分科員 動いておる資金量がわからない、届け出の対象になっておらないというのは、無関心ではおらないというけれども、業務の実態から見ると無関心なのじゃないですか。やはり届け出を大蔵大臣にしなければならない、その権限たるものを都道府県知事に委任している委任事項だから、当然委託者である大蔵大臣に来なければならない。これは当然なことですよ。そういう面から考えてみると、ただいまの状況で、大蔵大臣に届けを出している貸し金業と称するものは何千軒あるのか。それとも、ただいまのお話によりますと、もし正確にわからないとするならば、このやみ金融で動かしておるところの資金量を、推計でよろしいですから、どの程度あるかをお答え願いたいと思います。
  343. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 三十九年九月末で、届け出の件数は五万六千五百八十四件、そのうち休止しておりますのが二千九十四件ということになっております。  それから資金量のほうは、届け出事項になっておりませんし、また非常に変わるものでございます。そこで、都道府県の調査の実態を財務局に聞かせましたところ、ある程度ほんとうの推計だけを——別に届け出があるわけではございませんから、大体県内ではこの程度のものではないかという推計でございますので、それによりますと、これは昨年の三月当時でございますが、それぞれのところから出てまいりました数字は、二千八百四十四億円になっております。
  344. 島口重次郎

    ○島口分科員 これは二、三年前ですか、貸し金業と称するものの一定の基準を定めまして、届け出制度でなくして認可制度にしてはどうかというような議論もあったようでございます。ただいまの局長のお話によりますと、二千八百四十四億の資金量だというけれども、私は、おそらくこれの二倍あるいは三倍ほど動かしているのじゃないか、こう考えます。あるいは届け出をやらなくて貸し金業をやっておるものもたくさんあるのじゃないか、こう考えてみますと、昨年ある権威のある新聞社の報道によりますと、少なくとも乱千億、六千億の資金が流れておるのじゃないか、こういう推定をしておりましたが、それを一つの仮定にしてお話しいたしますと、大蔵大臣も御承知のとおり、ただいま政府の三金融機関の運営規模と称するものが、三十九年度におきましては三千八百五十二億円、四十年度におきましては四千六百二十五億円で、この政府三金融機関の資金量よりも多いのであります。そこで、この資金というものを有効適切に、しかも国民大衆から、雰細企業から喜んでもらえるような行政指導なり対策をとらなければならぬのが当然だと考えますけれども、大蔵大臣はどう考えますか。
  345. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほど申しますように、金利制限法や貸し金金利等の法律の適用を受けておるわけでございまして、これの金利の限度が高過ぎるじゃないかというような議論もございます。ございますが、いままで、本法を制定しますときには相当議論がございまして、現在の法律になったわけでございます。私もこの問題を考えたことがございますが、いままでは、およそのものは県知事に委任しておりますし、あとは法務省所管というふうなものの考え方で、この問題に対しては、大蔵省として深く研究したり、決定的な発言をしたことはございません。しかし、いま御指摘があるように、非常に大きな金額が動いている。また、町の金融ということで倒産をするような事件には、必ずこういう問題がからんでおるというようなこともございますので、新しい角度から検討いたしてみたいと思います。
  346. 島口重次郎

    ○島口分科員 鍛冶政務次官にお尋ねをいたしますが、利息制限法の解釈の問題、適用の問題で、昨年の十一月十八日に最高裁の判決がありましたが、あの判決は、結論から申し上げますと、賛成であるか反対であるか、あなたの解釈をお聞きしたい。  そこで、あの判決をめぐりましていろいろ議論があるのは、御承知のとおり、利息制限法第一条の第一項におきましては、いわゆる十万円以下は年二割、十万円から百万円までは一割八分、百万円以上のものは一割五分以上取ってはならない。それ以上取ったものは無効だという、いわゆる超過分に対するこういう無効宣言をいたしております。ところがその第二項におきまして、たとえそれ以上超過いたしましても、本人が超過分に対して任意に支払いをした場合には返還請求ができない。この二つの解釈をめぐりまして長い間論争があった。少なくとも二十九年以後におきましては、超過分でありましても、無効だということを第一項で宣言しているから、無効と解釈するのが妥当であるという解釈でありましたけれども、三十七年の十一月の最高裁で、いや、ただし書きのところで、第二項において超過分を任意で支払いしたときは返還を請求することができない、こうあるからこっちが正しいのだということで論争があり判決があり、今度さらに、超過をした分については無効だ、こういう判決になったのでございますけれども、その点、法務省の見解はどうなんですか。
  347. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 いま法務省はどう解釈しておるか知りませんが、私、この法律をつくるときには法務委員会で関係しましたから大体知っておるのですが、いまおっしゃるとおり、この利息制限法に規定してある以上はとれない、法律上とろうとしても無効だ、この原則は、その点は間違いないのです。ただし黙って払ってしまって、これを終わってしまえば、それまでも無効だからそれを戻せといっても、事実上はなかなかそれはできないだろう。これをこしらえるときもずいぶんわれわれも議論したのですが、事実上はできないだろうから、そこまでは、言ってもどうもしようがなかろうということで、こういうことになったわけです。したがいまして、払って、もうこれで済んだ、貸借がなくなった場合は、これはしようがありません。しようがありませんが、問題になるのは、まだ全部元木を返さないで、そして利息を黙って払う、そうすると、それがだんだんたまりますと、利息だけが元木の何十倍になってしようがない。こういう場合が出てくると、いままではたして任意で利息を払ったか払わなかったかということも考えられますから、そこで、その利息を制限法以上にずいぶん払っておるとすれば、元本の中へ入れたのだ、こういうことを考えなければならぬ、とわれわれも思っていたら、去年の暮れにそういう判例が出たので、これはたいへんおもしろいと思っております。これは相当議論はあるでありましょう。払ってしまったのだからという議論もありましょうが、しかし、元本がまだ残っているのですから、みな済んでしまったのじゃないのだから、そのとき計節してみれば、前にえらい無効のものが入っておるじゃないか、それを元本に繰り入れることは当然無効だ、こういう判例だったろうと思うのです。これはたいへんおもしろいことだと考えております。
  348. 島口重次郎

    ○島口分科員 今度の判決の場合は、超過分と称するのは、たとえ任意で払っても、それは認めるわけにいかない。したがって、民法四百十九条によって、第一番にはかかりました経費を差し引く、その次は利息を差し引く、それで余りましたら元金のほうに入れなさいという判決ですね。そこで、第二項があるからこんなに混乱する。第二項がなくなりさえすれば、最高裁で三年もこういう論争をしなくてもよろしいと思う。超過部分を任意で支払ったときは返還請求できないという、これがいつも問題の種なんです。これはどうですか、法律改正するなり修正をするお考えはないですか。
  349. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 私自身がしつこくこれを質問して、やめてもいいだろうと言った覚えがありますが、前からこういう規定がある、そこで、先ほど申しましたように、もう終わったらいいじゃないか、こういう考え方なんです。終わらぬとそういう議論が出てまいりますから、そういうことで判例も出たと思いますが、これは私ども、ここで変える意思あるかと言われても明確な答えはできませんが、相当考慮すべきものだとは常に考えております。
  350. 島口重次郎

    ○島口分科員 政務次官、あなたは前からこうなんだと言うけれども、この法律は二十九年に改正になった法律です。私、その以前の原文を持っておりますけれども、これがないのです。超過分を支払いしたときは返還請求をすることができないというのは前にはないのです。あなたが二十九年に法務委員会におりまして審議したとすれば、私実に残念だと思う。なぜならば、法律の流れと称するのは、時の流れに従いまして、いつでも経済的に力の弱い者に有利に改正される。だから改正なんです。時の流れに逆行して悪く改正されるのは改悪でありまして、改正ではないと思う。二十九年以前における利息制限法にはない。
  351. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 そう言われればどうも——それならば判例でそうなっておったはずです。それだからそういうことにしたと思います。だからずいぶん議論をしたのです。したんだが、いままでもそうしているんだから、いま改めてみても、それはどうもそこまで改まらぬだろうということで、そういうことになった、とうとうわれわれもしかたがないから賛成したことを覚えております。
  352. 島口重次郎

    ○島口分科員 政務次官、そういう判例だろうということで訂正いたしましたから、その点で御質問申し上げたいと思うのですが、前の利息制限法といまのと比較いたしますと、現在のは第四条で賠償額の予定制限と称するのがある。支払いをいたします約束日を決定した、もしその期日に支払いしなければ制限法の二倍までとってもよろしい、こうなっておるわけです。ところが旧法でいきますと、なるほど約束いたしました期日に支払いをしない、債権者が何がしか損害をこうむると思います。ところがその損害を請求する場合は、どの程度ほんとうの実害があったのかという実害を調査いたしまして支払いしてよろしいんだ、こうなっておるけれども、今度の新しいやつでは、直ちに二倍請求することができる、とることができる、こうなっておる。まさに時の流れに逆行いたしました法律の改悪だと考えているのでありますけれども、その点はどうなんでしょう。
  353. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 やはりこれも同様に議論したのですが、損害額の予定ですから、それくらいのことはいいだろう、そういうことでとうとうこういうことにおさまったと心得ています。
  354. 島口重次郎

    ○島口分科員 私、政務次官は何の御商売だかわからぬけれども、少なくとも中小企業、零細企業の経験者であるとするならば、年四割、年三割の金利を払ってとても商売ができるものでない。今日の中小企業、零細企業と称するのは、利益どころか営業費を支払いしてみずからの生活をすることで精一ぱいなんです。年四割とか年三割六分という金利を払って生活はおそらくできない。そういう現状だから、昨年のようにうんと破産、倒産が出てくる。政府のほうが利用しておるところの興信所の統計によりますと、最高の場合は昨年十一月の五百十八件と言っておりますけれども、零細企業、中小企業の破産、倒産者を計算いたしますと、おそらく一月一万、一万五千はいっているのじゃないか。この統計で出てくるものは、御承知のとおり一千万以上の負債のあるものだけが統計に出る。八百万、七百万、五百万あるいは百万以下で破産、倒産している数は、おそらく数え切れないほどあると思う。なぜそういう破産、倒産をするかというと、私がただいま言うように、こういう高利の金を借りているからであります。しかも利息制限法が、昨年の十一月までは、超過部分を支払いましても、任意で支払いした場合には返還請求できない。どこにいくところがあるのか。まさに利息制限法はざる法です。押えどころがないのです。そういう面から、どこが押えどころになるかと称すると、いわゆる金利取締法になる。金利取締法は日歩三十銭であります。月九分であります。年十割と八分、元金の倍になる。こんな利息を払って中小零細企業というのは生活ができるかということです。この問題は、もう一度政務次官からも田中大蔵大臣からもお答え願いたいと思います。
  355. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 私は、この法律はいいというのじゃありませんで、この法律をこしらえたときの議論を思い出してお答えするのですが、もう一つの貸し金業者を取り締まるのは、あれは日歩三十銭までは認めたのじゃないのです。貸し金業者といえども、利息制限法に拘束されることは当然でありまして、十万円以下の金でも年二割以上取れば、それは無効なんです。ただ無効なんでありますが、これを刑罰犯罪として処罰するというには、無効のものをやったからといってやるわけにいかぬ。そこで三十銭以上ということになってきたわけなんです。  それから、いまあなたのおっしゃるように、利息制限法でも、どうもそんなことでよくないじゃないか、もっと強くやってもいいじゃないかということを言われますが、立法者の議論からいいますと、とにかく契約自由の原則というものが民法上あるのですから、その原則を押えるというには、よほどの、これではいかぬ、とれ以上のことをやったら社会的の害悪である、こういうことでないと押えられぬから、この点まではやむを得ないだろう、こう言われて、ぼくらも、それはしかたなかろうというので、それはいいと認めておるのじゃ決してございません。契約自由の原則を押えることは、これまではしかたなかろう、刑罰に処するならば、三十銭まではしかたなかろう、こういうことで、契約自由の原則を圧迫する、そういうことの理論からここまで認めておるものであることを御了承願いたいと思います。
  356. 島口重次郎

    ○島口分科員 政務次官のおっしゃるとおりだと思うのです。そこで私は、先ほども申しましたけれども、昨年の十一月に最高裁の判決が出てくる前は、超過部分を任意で払った場合は返還請求できない。その解釈をしておったのです。そこで、金がなくて夜逃げをしなければならない、首をくくらなければならないという人間が金貸し業に行って、金を貸してください、こうお願いするのです。そうすると、おれのところは六分だよ、九分だよ、あるいは東京では「といち」ということばを聞いた。「といち」というのは何だと思いましたら、十日一割だから「といち」というのです。月九分じゃない、十日一割ですよ。おれのところは月九分でなければ貸さないのだ、あるいは一割でなければ貸さない、こう言われると、背に腹はかえられないから貸してくれ、それでもよろしい、こうなるのは当然なんです。そういう経済的に優先的な地位を乱用しては困るから一つの法律をつくっているのです。そうでしょう。それでなければ社会正義がないのです。法律が社会正義の具体的な表現でなければならない。そういう面から考えると、私がいま言ったように、昨年の最高裁判決が出るまで、合法的に、月九分であろうと取られておったのです。今度は取れないかもわからない。そうすると、押えるところがないのです。よろしゅうございますか、任意で払うのだから月九分でいいことになる。そうすると、法律の面では利息制限法の百万以上が年一割五分だ、こう言うけれども、そこにも問題があるのです。貸し金業の連中は、法の裏を考えているのです。第一回目の貸し方を三カ月間の期間で貸して、その期日に返済できなければ、その翌月から倍にすることができるのです。そうでしょう、四割になる。こういう状況であるから四割は通り相場なんです。最後にはやみ金融で、これ以上取られると体刑罰に処せられるところの日歩三十銭まで取っておるのが、ただいまのやみ金融の状況じゃないですか。そういう状況があるということをおわかりであるかどうかをお尋ねしたいと思います。
  357. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 大いにあると思います。それは確かに困ったものだと思うのですが、やはりすぐ争えばそれでよろしいのですけれども、渇する者の飲む水ですから、とうとうこういうものにひっかかってしまう。まことにどうも残念だと思いますが、社会の情勢に応じて、それは損害額の予定額が多過ぎるということであれば、これは考えてしかるべきものだと思います。ことにどうも、これをこしらえたときの十万円ときょうの十万円とではたいへんな違いでございますから、この点も相当考えなければならぬのじゃないかと心得ます。けれども、実際においては、もう背に腹はかえられないというか、渇するときにはやりきれぬからどぶでも飲むということで、どぶだと知りながら飲む人が多いことをまことに遺憾と思いますが、この点も大いに考うべきことではないか、かように思います。
  358. 島口重次郎

    ○島口分科員 どうも政務次官の答弁を聞いておると、そうだからどうにもならない、これでは答弁にならぬと思う。やはり不正なもの、社会正義に反するものは社会正義で押えるんだ、少なくとも法務省たるものはそれだけの気魄を持ってやらなければ、時の流れに沿うてこれはやむを得ないということではどうにもならぬと思う。そういう面から私は特に申し上げますが、大蔵大臣も聞いてもらいたいと思いますけれども、いま、やみ金融の刑罰にならない線は日歩三十銭、月九分です。この計算をしていくと、百万の金がありますと、一月九万円の利息が入る。大臣、御承知のとおり、義務教育を終わりまして高等学校に三年入り、大学に四年入る。親、親戚は心配して金を投資して大学を出てくる。りっぱな一人前の大学卒業者の初任給が二万五千円から二万六千円。ところが百万あったら月九万の収入がある。ところが三十万貸しますと、大学卒業者よりも多い収入がある。まさに大学の卒業者と称する者は、日本の国家なり社会で評価するのは三十万の値よりもないということになるのです。そうなりますと、若い青年諸君が希望を持って労働する労働意欲がなくなる、逆に百万さえあったら、おれはそういう労働をしなくてもよろしいから、何でも金だ、金さえ百万持ったらよろしいというような不労所得者を奨励することになる。まことに社会正義に反すると思うのです。  特に私は大蔵大臣からこの答弁をお聞きしたいのは、佐藤さんは人間尊重をいっておる。たかが三十万の金に大学卒業者以上の評価をするということは、非常に悪い思想が出てくると思いますけれども、そういう点はどうなんでしょう。
  359. 田中角榮

    ○田中国務大臣 もちろん町の金融に対しては議論の存するところでございまして、私も社会常識、社会通念からと申しますか、こういうことで絶えず検討を続けていくべきものだと基本的には考えております。しかも、こういう制度があるために社会に暗い話題をたくさん投げたり、しかもこのために倒産等が起こるということも事実でありますので、こういう問題に対しては観念的なものの考え方ではなく、現実問題としてより積極的に取り組んでいくべきだと思います。  率直に申し上げますと、本件についてはおおよそのものを府県に委任しておりますし、この法律の取り締まり関係に対しては、一切法務省所管という考え方でいままできたわけでございますが、法務省の意見も十分聞きながら、政府部内でも本件に対してはひとつ検討をしてみたいと思います。
  360. 島口重次郎

    ○島口分科員 この問題は非常に大きな社会問題ですから、大蔵大臣がただいま答弁したように、法務省のほうともよく御相談して、できるならばこの法律の所管大蔵省にやってもらいたい、取り締まりのほうは法務省でやらなければならぬでしょうが、そういうことで、積極的な前向きの姿勢で解決してもらいたいと思います。  さらに政務次官にお尋ねをいたしますが、最高裁の判決があったけれども、先ほど政務次官がおっしゃるように、利息も、経費も、元金も全部返還しておるという場合は、これは返還できるかどうかという解釈がまだ残るわけですが、その解釈はどうですか。
  361. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 どうもいま私に言われてもなんですが、ちょっと困難でしょうな。いまの元木に繰り入れるというのも、任意にと、こう書いてありますが、だれも喜んで払う者はありはしないのですから、責められるか、もしくは待ってもらうか、あとまた借りるか、そういうことでやるから、そこで任意に支払ったものと認めない、こういうことでやられたものと私解釈したのですが、さらに進んで、おまえよけい取っておるから返還せよということは、相当異論があるのじゃございませんか。第一、任意に払った場合は、どう書いてありましたか、(島口委員「返還の請求はできない」と呼ぶ)その任意に払うというのは、先ほどから言うように、契約自由の原則というのがありますから、それを守らなければならぬというところから出てきておるのです。したがって、その任意に払ったものまで取り返すということは、契約自由の原則をそこまで制限するわけにはいかぬだろうということで、私は解釈しておるのでありますが、いまの議論で、不本意ながら払ったということがわかれば、そこまでいったのだから、これはやってもよさそうでありますが、これは裁判の実情等も考えなければちょっと軽々には述べられぬと思いますが、だんだん進んでそこまでいくことを私は希望はいたしております。
  362. 島口重次郎

    ○島口分科員 やはり超過部分に対して任意で支払いしたものは返還請求ができない、この項があるとすれば、必要経費であろうと、利息であろうと、元金であろうと、まだ返済しない人は元金に繰り入れるからいいのですよ。ところが全部支払いしていると、返還してもらうより方法がない、ところが、全部支払いしておると返還の請求ができないとなると、ここにまた問題が出てくると思う。そうすると、事実上利息制限法で決定しておりますところの十万以下のものは年二割、十万から百万までが一割八分、百万以上のものは一割五分ということがきめられておりましても、守られないということになるのです。きめられておりながら守られない法律は要するにザル法ですよ。こういう法律の盲点であるということを、あなたのほうでわかりましたら、政務次官一人では明確な回答はできなくても、少なくとも前向きの方向でこの問題に対処する姿勢があってしかるべきだと私は考えます。そう考えると、私が先ほど申し上げましたとおり、二十九年以前の法律におきましては、この超過部分の任意支払いの返還請求ができないことはないのです。そういうふうにもとに戻す意思があるか、あるいは前向きの姿勢でこれに対処する、解決するという考え方があるかどうかお尋ねしたいと思います。  それから利息の率の問題でありますけれども、これも政務次官、当時法務委員会で議論したと言うけれども、中身を聞いてみるとどうもはっきりしない。この中身を見ると、当時の利息の率でありますけれども、百円以下は一割五分、ただいまは十万以下が二割となっております。そこで貨幣価値を考えてみますと、旧法というのは明治十年にできておるのです。だからかりに百円が千倍になったとするとちょうど十万ですね、それで利息が五分上がっている。旧法でいきますと百円から千円まで一割二分、現行法は十万から百万まで一割八分、それから旧法では千円以上、現行法では百万以上、現行法では百万以上は一割五分、旧法では千円以上は一割であります。利率がだんだん高くなっている。利率の面から申し上げましても、ただいま申し上げましたように、第二項の超過部分の返還請求はできないという面から見ましても、あるいは先ほど申し上げました賠償額の予定額の算定基礎の問題、現行法におきましては、直ちに二倍とってもよろしい、こうなっておるけれども、旧法におきましては、実際に損した額を計算して払う、こういうような解釈でやっている。非常に改悪をされているのです。こういう面から、ただいま申し上げましたとおり、政務次官一人では責任のある答弁はできないと思いますけれども、法務省に帰りまして関係者とよく御相談を願って、少なくとも前の法律に引き戻してもらうよう強く主張していただきたいと思いますがいかがですか。
  363. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 私はいま大蔵省ですから、いま法務省からここにきておりますので、そのほうからお答えを願うことにいたします。
  364. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 先ほど来、大蔵政務次官のほうで詳細お答えいただいたところで、おおむねそのとおりだと思うわけでございますが、利息制限法の関係につきましては、御通告の御趣旨もございまして、私刑事局から出てまいっておりますので、必ずしも責任あるお答えができないかと思いますが、利息制限法は一応司法上の権利関係を確定する手段として、民法、商法、その他の基本法令に付属するような形でできておりますので、おのずから取り締まり的な感覚というものとは多少ずれている面があるのではないかというふうに思います。なお、先ほど来御指摘の点は、よく拝聴いたしておりましたので、主管局等にも連絡いたしまして検討させたいと思います。  それからもう一つ、金利の取り締まりの関係でございますが、御指摘のやみ金融というものを私なりに分析してみますと、無届けの貸し金業を営む場合と、それから高金利を取る場合と二つあると存じます。先ほど来御指摘の点はもっぱら高金利のほうの御指摘だと存ずるわけでございますが、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、これは、先ほども銀行局長が仰せになりましたように、取り締まりの面はもっぱら法務省のほうで担当さしていただいておるわけでございますが、ここで申しております日歩三十銭という額につきましては、立法当時も相当検討したわけでございまして、刑罰を設けます以上は、必ずこの刑罰が実現されるということが絶対の条件になります。そういたしますと、社会の実態をよく見まして、苛察にわたらないところに刑罰の限度を引かなければならないわけでございまして、当時実態調査などをできる限りいたしまして、その結果三十銭というところ以上を刑罰で臨む、しかも体刑もあるわけでございまして、そういうことでやるのが、先ほど政務次官もおっしゃっておられましたように、契約自由の原則と刑罰をもって取り締まる場合との限界として相当であろうというふうに一応考えたわけでございます。  なお、御指摘の昨年暮れの最高裁の判例等が先導となりまして、将来一般的に市中の金利が下向くというようなことがあるといたしますと、私どもとしましても、立法当時きめました三十銭が相当であるかどうか、なお慎重に検討をする必要が生ずるのではないか、かように考えております。
  365. 島口重次郎

    ○島口分科員 法務当局のほうの見解、大体わかりましたけれども、ただ、実際社会において行なわれておる限度と称するのは三十銭以下だ、三十銭以上突破をいたしますると、刑罰の対象にするということは、貸し金業と称するものをあまりにも保護し過ぎるのではないか。一体日歩三十銭という高利を支払いながら中小企業なり零細企業が生活をし、営業できるかどうか、そういう面から、弱い者を保護するというような立場から、この法律を検討するのが当然当然だと思いますが、そういう点はどうなんですか。
  366. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 現在三十銭をこえる利息につきまして刑罰をもって臨んでおるわけでございます。それではもう少し下げたらどうだということを御指摘のように思うのでございますが、しからばこれを幾らまで下げればよろしいか、しかもその下がった部分については、法律にもございますように、三年以下の懲役というようなところまでいくわけでございまして、一般の行政法規上の取り締まり罰則の中では必ずしも軽くないほうに属するわけであります。したがいまして、いわゆる高利貸しというような者が行ないます場合だけに限定した法律ならばよろしいわけでございますが、その他のもろもろの貸し金全部にかかってまいりますので、相当慎重に考えてまいりませんと、非常に善意で貸した人、たまたま何かの都合で三十銭をこえて個人的な理由で貸したような人までひっかかるというようなおそれも生ずるわけでございまして、慎重に考えたいと思っておるわけでございます。
  367. 島口重次郎

    ○島口分科員 善意で貸した方々を保護しなければならない、こういうお話でありますけれども、あなたの常識から考えると、善意で金を貸した人が日歩三十銭、月九分というような高いお金をとるでしょうか。普通われわれの常識でありますと、善意で貸したとするならば、せいぜい銀行金利ですよ。銀行金利は高いところで日歩三銭ですよ。日歩三銭とするならば、三十銭というのは十倍ですよ。十倍で貸した人を善意で貸したと解釈されますかね。そういう点はどうでしょう。
  368. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 善意と申しましたことばは必ずしも適当でなかったかと存じますが、私が申し上げました趣旨は、常々三十銭あるいはそれ以上の金利で金を貸しまして、その利息をもうけることを業としておるような、いわゆる高利貸し以外の者もあり得るということを申したわけでございます。私ども考えますところでは、この日歩三十銭というところから下の部分につきましては、利息制限法なりで私法上の問題として解決するのが相当ではないか、こう思っておるわけであります。
  369. 島口重次郎

    ○島口分科員 やはり体刑的な刑罰を強くしておかなければ、それまでみんな上げますよ。それが現実の姿なんです。だから、あなたの議論の展開もわからないわけではない。客観的にいまの金融状況はどうなっておるか。あなたのおっしゃるように、利息制限法で規定されました年二割なり年一割八分程度で貸しておるなら、問題はない。実際におきましては、この日歩三十銭以上は体刑だというから、年十割の利息で貸している。年十割までは体刑にならない。そういう実情を客観的に判断してどうするか。やはり法と称するのは主観的な問題でなくて、客観的な立場から検討して、国民大衆を、零細企業をどう保護していかなければならないかというのが、私は法律だと思う。どうもあなたの法解釈を聞いていると一方的だと思う。そこで、あなたも代表的な立場でもないようでありますから、これ以上申し上げませんけれども、少なくともこれを日歩十五銭程度に下げるような前向きの姿勢考えてもらいたいということを、法務大臣にもお伝えしてもらいたいと思います。
  370. 伊藤栄樹

    ○伊藤説明員 御趣旨は法務大臣に伝えまして、検討したいと思います。
  371. 島口重次郎

    ○島口分科員 大蔵大臣に簡単に。今度の予算を見ますと、大蔵省のほうから中小企業信用保険公庫のほうに六十億の予算を計上しておりますね。これはどういうことがほんとうのねらいであるか。私の考えるところでは、おそらく今度中小企業対策で打ち出しました無担保、無保証の資金手当てではないか、こう考えておりますけれども、その点はどうなんですか。
  372. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いま御発言になったようなことではなく、全体的に保証の能力を増すということでございます。
  373. 島口重次郎

    ○島口分科員 信用公庫のほうに金を出して、公庫のほうでは都道府県の信用保証協会に融資をする、これが原則でしょう。そのほかに今度の無保証、無担保を強化するために、昨年の予算に比較いたしますると増額をしたと聞いておりますけれども、この点はどうなんですか。
  374. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 御承知だと思いますけれども、保険公庫の資金を各県にあります保証協会に融資いたしまして、保証協会がそれを金融機関に預託する、そういうことによって多少地方にある保証協会の保証能力全体をふやす、そういうことが出資の増額の理由でございます。むろんその中には、一部いまおっしゃいました無担保、無保証のものも、新しく制度を始めることに対するものも含まれていると解釈されることはけっこうでございますが、それだけのために出資の増額をはかったわけではありません。
  375. 島口重次郎

    ○島口分科員 時間もないようですから、無保証、無担保の問題はまた商工委員会で質問いたしますから、これで終わります。
  376. 中野四郎

  377. 有馬輝武

    有馬分科員 国有財産局長にお伺いをいたします。神奈川県の藤沢市辻堂の旧帝国海軍演習地あとの処分について、昭和三十五年十一月の国有財産関東地方審議会の決定事項をいかに処理したか、これを明瞭にしていただきたいと思います。
  378. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 三十五年十一月の関東財務局の審議会におきまして、辻堂にございます旧海軍の射撃場、全体で二十六万六千坪ございます。この転用の方針を諮問いたしました。その結果、その二十六万六千坪の土地を、学校、住宅公団、合同宿舎、道路、公園、そういったものに転用するという方針を決定いたしました。公園以外の学校、住宅公団、合同宿舎あるいは道路というようなものは、実際にこの方針に基づきまして処分をいたしまして、それぞれのものができております。このうち公園に予定をいたしましたのは約六万坪でございますが、この六万坪の公園は、神奈川県がこれをつくるのでございます。それで神奈川県ではここに公園を行なうという決定はいたしましたけれども、予算その他の措置をとらないまま、相当長い年月を経過いたしました。三十九年の秘めごろになりましても、依然として、公園をつくる方針ではあるけれども、予算その他の措置が全然行なわれていない。三十五年にきめまして、相当年月がたっておりますので、財務局のほうで神奈川県に対しまして、公園の計画はどうお進めになるのかというようなことを照会をいたしたのであります。それに対しまして、三十九年の初めごろでございますが、県知事のほうから横浜の財務局に対しまして、公園はこれを大体やめることを考えておる。サイエンスランドという会社がここでその目的の事業を行なうということになるならば、神奈川県は公園をやめてもいい、こういう御返事でございました。私どもといたしましては、何分、審議会に諮問をいたしまして公園にするときめたところでございますので、そういったところとのお話と全然違う計画を神奈川県のほうがおっしゃいましても、すぐさまそれを受け取るわけにいかない。また、そのころ、サイエンスランドという会社のほうからもそういった希望がございましたが、いま申しました理由で、これは公園ときまっておるところだから、いまのところ国としてはこれを受け付けることはできない、こういうことを申したのでございます。その後神奈川県の内部で公園を……。
  379. 有馬輝武

    有馬分科員 私の質問にだけ答えてください。何に払い下げて、そのうちどのように使われておる。それから所期のあれが達成されてないものについては、またそれなりにお伺いしますから、いまその審議会の決定に基づいて明瞭に処分されたものだけ、そして残っておるものは何ということだけ言っていただければけっこうです。
  380. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 審議会で方針をきめまして、二十六万坪をどのように処分をしたかということでございますが、相模工業学園に二万二千九百六十九坪、藤沢市に売り払い八千百三十一坪、藤沢市に売り払い予定が九千八百十六坪、合同宿舎に八千七百五十二坪、東京農地事務局——これは農地としての所管がえでございますが、八千七百六十三坪、住宅公団に現物出資をいたしましたのは四万七千五百八十二坪、藤沢市に無償貸し付けいたしましたのが二万九千六百六十四坪、道路として所管がえをいたしましたのが約六万五千坪、残りましたのは神奈川県に、いま申しましたような公園として無償貸し付け予定の五万六千八百五十坪、茅ケ崎市に売り払いを予定いたしております八千九百十七坪ということでございます。この二つが残っております。
  381. 有馬輝武

    有馬分科員 その神奈川県藤沢市の分が残っておるようでありますが、その神奈川県藤沢市に対して、いま局長から問わず語りで答弁があったんだけれども、長期にわたってそのままにされておる事態に対して、大蔵省は県に対して、この事業計画の提出を当然求めなければならぬと思う。それをいつ、何回、どういう形で求められたか、明らかにしてほしい。
  382. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 口頭で財務部から何度か県のほうとお話し合いをいたしましたが、それをいつ、何回行なったかということを、私、いまつまびらかに存じておりません。最終的に文書で照会をいたしましたのは三十九年の一月でございます。
  383. 有馬輝武

    有馬分科員 口頭で何回やったかわからないというけれども、三十九年まで四年間もなぜほったらかして置いたのですか。少なくとも国有財産法、会計法で、大蔵大臣は、その国有財産の管理状況、処理状況について常に報告を求めなきゃならない。特にそういった審議会の意向に反するような事態が出ておれば、当然それについて正式な報告を求めなきゃならぬはずでありますが、三十九年までほったらかして置いたその理由をこの際明らかにしていただきたい。
  384. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 六万坪のところを公園にするということでございまして、で、三十五年の十一月にきめましたのも、方針としてそういうことをきめたのでございます。もちろんその方針に従いまして、一日も早く公園になることが望ましいのでありますけれども、何分県のほうでは、これに伴いますいろいろの予算的な措置もいたさなければならない。県の財政上の御事情もあるわけでございまして、それに対しまして、とにかくすぐつくらないからけしからぬというふうにもまいらない一なるべく早くつくるようにといろいろお話し合いをするということは、そういう意味でしかたがないと思うのでございますが、四年以上もたったということで、そこで、一つの形式的なくくりをつけるという意味で、初めて文書を出したということでございます。
  385. 有馬輝武

    有馬分科員 四年間もほったらかして置いたようなケースがほかにもありますか。
  386. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 これも、私具体的にお答えすることは、その用意がいまございませんが、公園として無償貸し付けの予定をして、三、四年間公園としての予算をつけることができないために公園にしなかったというような例はほかにもあるだろうと思います。詳細調べて後刻御返事をいたします。
  387. 有馬輝武

    有馬分科員 あるだろうというようなことじゃなくて、私、さっき言いますように、あなた方は、国有財産法、会計法に基づいて国有財産の適正な管理についての重大なる責任を持っておるのです。具体的な例がほかにあれば四年間もほったらかして置いていいけれども、ここだけほったらかして置いたのじゃ問題が複雑になってくるので、いますぐほかに例があるかどうか出しなさいよ。
  388. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 この辻堂の海岸を公園にするといいますことは、方針としてきめたのでございます。具体的に県のほうから、もうすぐ公園にするから無償貸し付けをしてくれ、こういう話がそのときすでに進行しておったのではございません。二十六万六千坪の土地を計画的に処理をする、それを有効に使うというために、先ほど申しましたようないろいろの地割りをいたしまして、ここは公園の予定地とするというような意味でございます。したがいまして、もちろん早くできることが望ましいことではございますけれども、県が財政事情その他でそれに実際着手する時期が多少おくれるということは、場合によりましてはやむを得ない場合もあるかと思います。
  389. 有馬輝武

    有馬分科員 昨年国有財産法の第二十九条について用途指定の改正をやったのも、そういった事態が起こらないようにということがその配慮の根本にあったと思う。が、しかし、法改正を行なう前に、いま申し上げますような適正な管理をやる責任は大蔵省にあると思う。政務次官、どうですか、法律家だから。
  390. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 私もその法律をあまり知らぬので、的確な答えはできませんが、そういうものがあったらなるべく早く処分すべきだろうと思います。
  391. 有馬輝武

    有馬分科員 先ほどお述べになりましたものが、所管がえなり、譲与なり、出資なりされた時期を、それじゃ明らかにしていただきたい。
  392. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 相模工業学園に貸し付けをいたしましたのは三十六年の五月一日。それから藤沢市に売り払いをいたしましたのは、これは審議会より前でございまして、三十三年の九月一日でございます。それから合同宿舎に所管がえをいたしましたのが三十八年の三月でございます。農地に所管がえをいたしましたのは三十四年三月でございます。住宅公団に出資をいたしましたのが三十七年の三月でございます。それから藤沢市に無償貸し付けをいたしましたのは三十八年の十一月、道路に所管がえをいたしましたのは、何度かに分かれてやったのでございますが、私ここに明確に書いてございませんので……(有馬分科員「最終でいいです。学校用地は」と呼ぶ)学校用地は三十五年の五月でございます。
  393. 有馬輝武

    有馬分科員 建設省国道及び砂防。
  394. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 道路は事実上工事は進んでおりますが、まだ正式の所管がえはいたしておりません。
  395. 有馬輝武

    有馬分科員 所管がえはまだしてない。これを見ると、一番おそい関東財務局にあれするのでも三十八年の三月、これがさつき申し上げたように神奈川県の分だけ四年間もたってもおる。その理由をいま少し明瞭にしてもらわないと、財務局から話させたけれどもどうもはっきりしないのでというのじゃ、少し——少しどころじゃなくて、国有財産の管理として、いま政務次官からお答えがあったように、適正でないと思うのですが、その理由も少し明らかにしていただきたい。
  396. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 三十五年の審議会できめましたのは、転用方針の決定でございます。これが無償貸し付けということを三十五年の十一月にきめまして、それからあと何年間も公園にならないということでございますので、はなはだ国有財産の利用の方法として適当でないということでございますが、きめましたのは方針でございます。相当広大な地域につきまして計画的に処理をするという必要に基づいてこういった方針をきめたのでございまして、県におきましては、この方針に基づきまして、県の財政事情に応じつつこの公園の整備に着手するということでございます。したがいまして、直ちにできるということがもちろん望ましいことでございますけれども、多少実際公園に着手するまでに時間がかかるということは、私、方針決定という意味からやむを得ないのではないかと思います。
  397. 有馬輝武

    有馬分科員 あなた、少しいいかげんな答弁をするんだけれども、それじゃ、あなたが三十九年の事業計画を求められたのに対する神奈川県の回答はどういうものでありましたか。
  398. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 その前に一言申し上げますが、神奈川県から実際に無償貸し付けをしてくれという申請がございましたのは、三十七年の九月でございます。でございますが、この際も、依然として予算的な措置がございません。したがいまして、私どもとしては、どういう公園ができるのかということについて判断することができませんので、無償貸し付けには応じなかったのでございます。三十九年一月に、財務局から神奈川県に紹介したものに対しまして、三十九年三月十六日になりまして、本申請地については、公園として整備すべく検討中であるが、サイエンスランドの建設についてお申し出を受けておる、この内容を検討したところ、科学技術を中軸として、企業ないし産業一般の正しい姿を青年に呼びかける仕事で、生きた科学教室を兼ねた健全で理想的なレジャーランドとして、青少年のための社会的かつ科学的な心をはぐくむ施設として建設するもので、きわめて有意義であって、公園の趣旨にも合致すると認められるので、この際、県の施設計画を取りやめることとして、サイエンスランドの建設を促進することにいたしたい、同社に対する土地利用について特段の配意を賜わりたい、こういうような返事を三月十六日に神奈川県知事からいただいております。
  399. 有馬輝武

    有馬分科員 その三十九年三月十六日に初めて神奈川県が公園をつくる意思がないことを知ったのですか。
  400. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 正式に知ったのはそのときでございます。
  401. 有馬輝武

    有馬分科員 正式でも非公式でも、最初知ったのはいつですか。
  402. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 サイエンスランドの設立計画を私が知りましたのは、三十九年の二、三月ごろかと思います。私どもとしては、県のほうでどうも公園をつくるということについて、われわれがいままで考えておったのと違うことを考えておるのではないかということを感じ出しましたのは、そのころでございます。
  403. 有馬輝武

    有馬分科員 これは、関東審議会が決定したものでありますから、採択は当然大蔵大臣にあるけれども、これは違っておるなということを二、三月に感じたなら、なぜすぐ措置をしなかったのですか。
  404. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 財務部長から神奈川県に紹介いたしましたのは、それより前の一月でございます。その時分は、まだ、私どもは、サイエンスランドというものの計画については具体的に承知しておりません。一月に紹介を出しまして返事がきたのは三月の十六日でございます。その間、一方サイエンスランドのほうから私のほうに、これを使わせてくれという陳情もございましたが、財務部のほうから、まだ文書の出る前に、神奈川県では一体どんなことを考えたのかということを聞いたこともございません。その間においてそういう事情を察知したわけであります。
  405. 有馬輝武

    有馬分科員 私が聞いておるのは、二、三月にどうもおかしいということがわかったでしょう。だから、おかしければ国有財産の管理の責任者としては、当然それに対して一日を争って明確な事業計画を出させるとか、あるいはその取り消しを行なっていろいろな措置をしなければならぬと思うのです。それを九月までほったらかされておかれた理由をお伺いしておるわけです。
  406. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 私どもは、この問題は、審議会で公園ときまった土地でございますから、その審議会できまりました方針と違った計画というものについては、いわばかす耳を持たないわけでございます。したがいまして、県に対して、一体公園にするのかしないのかという正式の照会をいたしまして、最終的に県がもう公園にしないのだとおっしゃいますならば、これは私どもとしては、審議会に対しまして、当初神奈川県の公園として無償貸し付けをする予定で方針をきめたけれども、神奈川県のほうでは公園にする計画を御破算にいたしましたので、したがって、そのあとどういうことにしましょうかという御諮問をするわけでございます。その間、神奈川県の内部で、このサイエンスランドというものの可否をめぐりましていろいろの論議があり、県の中でも正面からこれに反対される方々もあったわけです。私どもとしては、そういった経過を少し見まして正式な回答を求めようということで、財務局長から、正式に県知事に対しまして、十一月に、この前の財務部長から出しました紹介に対する返事は、サイエンスランドにするならば公園をやめてもいいというような御返事でありますので、私どもとしては、そういう返事は聞くわけにはいかない、あとをどうするかというのは国がきめる問題であって、県がこうこうこういうふうにすれば公園をやめるなんということは、国が県に対してあの土地をどうするのかという質問に対する返事ではない。したがって、これは、われわれとしてはそういうことを聞く耳は持たない、もう正式にイエスかノーか、こういうことをはっきりきめてくれ、こういうことを申したのであります。
  407. 有馬輝武

    有馬分科員 まことに国の財産を預かるものはそうあってしかるべきです。ところが、さっきの答弁のようにでれっとしているから、東プラみたいな問題が起きてくる。私は、きょうは東プラの問題については聞かないけれども、この一つの問題だけで、国有財産のあり方についてこういった小さな問題を持ち出すことは、これは予算委員会の審議の過程で、あるいは与党の方には申しわけないと思うんだけれども、しかし具体的な問題を出さないと、あなた方大蔵省というところはのらりくらりとしているから、私は具体的な問題を出して、国民の財産ですから、あなた方のものじゃないですから、それで明らかにしたいということでお伺いをしておるわけです。  いまあなたは、サイエンスランドとかなんとかというのを盛んに言われたのですが、それはどういう会社なんですか。
  408. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 サイエンスランドと申します会社は、三十九年四月三十日に設立総会を開きまして、三十九年五月八日に設立の登記を完了いたしましてできました会社でございます。その事業目的は、科学技術振興に寄与する産業の紹介に関する施設をつくる。それから科学技術体育等の教育に役立つところの宿舎を経労する。その他図書館、博物館というような、これに関係する社会教育に関する施設を設置経営するというようなことを目的とする会社でございます。
  409. 有馬輝武

    有馬分科員 そういう会社について、理財局は有価証券の届け出を何月何日に受け付けておられますか。証券取引法四条による届け出がなされたと思うのですけれども、それはいつですか。
  410. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 正確に私記憶いたしておりません。ただ、設立総会が非常に迫っているから、早く有価証券の届け出書を受理してもらわなければ困るというような話を聞いたことがあります。四月の中旬ごろに、関東財務局の理財部において届け出書を受理したのではないかと思いますが、期日は明確ではございません。
  411. 有馬輝武

    有馬分科員 理財局の人は来ていませんか。
  412. 中野四郎

    中野主査 理財局は来ておりません。
  413. 有馬輝武

    有馬分科員 それでは、だれか連絡をして、その日を明らかにしていただきたいと思います。それからそのときには、効力がいつ発生したかも明らかにしておいてください。  次に局長にお伺いしますが、このサイエンス何とかという会社の発起人に神奈川県知事の内山岩太郎さんが入っておられたやに聞いておりますが、現在も入っておられるかどうか。その会社の設立当時入っておられたかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  414. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 サイエンスランドという会社をつくる計画がありまして、いろいろ財界なんぞに働きかけられていた過程において、内山知事が発起人というような役割りを果たされた時期はございます。ただ、設立総会以後正式の商法上の設立発起人というような形では参加されておりません。
  415. 有馬輝武

    有馬分科員 それから内山さんは、国有財産関東地方審議会の委員をずっとやっておられましたが、最初に就任されたのはいつで、あるいは現在もやっておられるかどうか、これを明らかにしていただきたい。
  416. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 関東財務局の地方審議会では県知事の方々を全部委員にはお願いしてございません。内山知事は、たしかこの審議会で辻堂海岸の方針をきめます際に関係のある方として、臨時委員をお願いいたしました。したがいまして、この三十五年十一月の審議会だけの委員をおつとめになったということであります。
  417. 有馬輝武

    有馬分科員 この地方審議会の構成は、国有財産法に基づきまして三十人になっておるのですが、その三十人というのは、臨時委員、常任委員というぐあいに分かれておるのですか。
  418. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 臨時委員と申される方は、原則としてございません。すべて通常の委員でございます。ただ、ほかの財務局では、各府県の知事の方をそういった常任の委員にお願いしてございますが、関東財務局では、そういう地方公共団体の方々からの委員は、地方公共団体の代表としての東京都知事、それから市長代表のだれか市長の方というふうに、代表の方々だけをお願いしてございます。本件については、神奈川県と非常に密接な関係のある諮問でございましたので、特に内山知事に臨時委員をお願いしたということでございます。
  419. 有馬輝武

    有馬分科員 その国有財産法第九条の三、四の中央審議会、地方審議会はそういうことができることを許しておるのですか。
  420. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 審議会のなにをきめますそれぞれの財務局におきまして、必要のあるときには臨時委員を任命することができるというふうに定めております。
  421. 有馬輝武

    有馬分科員 そこでお伺いしたいと思うのでありますが、国有地などの普通財産の処分についての基本方針をどのように立てておるか、これをお伺いしたいと思います。
  422. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 計画的に国有地を管理し処分をするということを一番の念願といたしております。行政財産のほうは、各省各庁が直接自分の役所の用に使う財灘でございますので、それが有効に使われるようにということを総括大胆の立場で見ておりますが、普通財産につきましては、特別会計に所属するものを除きまして、すべて大蔵省の普通財産として、大蔵大臣が大蔵大臣の立場国民経済あるいは国民の生活というものに最も有効にマッチするようにという観点から、これを処分をいたしております。また特別会計のものにつきましても、従前は、その売り払いにつきましては、特別会計を所管なさる所管大臣がこれを処分しておられたのでございますが、昨年国有財産法を改正いたしました際に、特別会計の所属の財産につきましても、これを処分するときには大蔵大臣と協議をして、その協議がととのってからあと売っていただくというようにいたしております。
  423. 有馬輝武

    有馬分科員 いま触れられた三十九年七月一日の第二次の法改正について、特に第二十九条について用途指定を明らかにされたその根拠、基本的な考え方をお聞かせ願いたい。
  424. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 従来の国有財産法では、必要のあるときには用途指定をつけるという形をとっておりました。国有財産法上無償で貸し付け、あるいは減額で売るというような場合には、それぞれ特別の理由があってその相手に売るのでございまして、相手方がこれを申請した目的どおり使ってもらわないと、無償で譲与する、あるいは減額して譲与するという目的がそこなわれます。したがいまして、そういう場合にはもちろん用途指定をつけておりまして、ただ予決令で随意契約を認められておりますような企業に対しまして時価で売り払うというような場合には、用途指定をつけようとすればもちろんつけられるわけでございますけれども、これは、われわれと企業との間の一種の信頼関係と申しますか、とにかく予決令で随意契約を認められるような対象となる企業であるから、しいて用途指定はつけないというような扱いをいたしております。でございますが、直接の契機となりましたのは、これがただ一つの例でございますけれども、東洋プライウッド事件が起きまして、われわれは、はなはだ遺憾でございますけれども、目的どおり使われずに転売されたというようなこともあります。これでは困る、したがって、一段と強くこういったことをきめようという意味で、用途指定を昨年つけたものでございます。
  425. 有馬輝武

    有馬分科員 当然の措置でありまして、東洋プライウッドだけではなくして、やはり神奈川県の問題なんかについても、私はそういった配慮が必要だったと思うのです。三十九年の七月一日にこのような法改正さえやっておるのですが、それについて神奈川県が、これは前の方針であったにしても、それをそのとおり行なわない意思が明らかにされ、あなた方も聞く耳を持たないとおっしゃっておるのですから、当然これは白紙に戻ったものと理解していいんですね。
  426. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 全く白紙の状態で検討いたしたいと思っております。
  427. 有馬輝武

    有馬分科員 これはあなたの所管じゃないけれども、そうすると、この六万坪の土地があって、初めて成り立つサイエンスランド株式会社は、この土地がなければ当然会社設立の意義は失われることになるのですが、これはあなたの局の直接の関係ではないけれども、私は、当然先ほどの届け出に対する何らかの措置がなされてしかるべきだと思う。善意の会社の発起人、こういった人たちに、大蔵省の怠慢によって——怠慢というよりも慎重を期するがゆえに迷惑をかけるような事態は避けなければならぬと思う。当然そういった措置が大蔵省としてなされたと思うのでありますが、いつ、いかなる方法で、それがなされたか、お聞かせをいただきたい。
  428. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 有価証券の届け出をいたしますころ、サイエンスランドという会社は、この事業を行なう土地は辻堂の海岸を予定するというようなことも申しておったのであります。私どもとしては、それは困る、辻堂の海岸というのは、サイエンスランドがもうそんなことをいう余地のない場所であって、公園にすることにきまっておるところである、したがって、サイエンスランドがその土地を使うというような事業計画であるならば届け出を受理するわけにはまいらぬということを、私どもは関東財務局理財部にその節よく申したのであります。それで、この有価証券の届け出の受理が、いかなる具体的な要件まで備わったならば受理できるかということについては、私、明確に御答弁する立場ではございませんが、事業をする場所そのものが具体的にきまっていなければ会社の設立を認めないというところまで規定しているものではなくして、こういう計画をこういう資金計画でやるということであるならば認めようということで、具体的な場所は定まらないまま有価証券の届け出を受理したということであろうと考えております。
  429. 有馬輝武

    有馬分科員 それは、あなたの所管でないから、いまみたいな答弁になるのですが、少なくとも普通の会社の場合、工場をどこにつくるのかというのと違って、この会社の性格上当然特定の地域が対象になって設立の発起がなされたと思う。それを、いまみたいなことでほったらかしていいのですか。これは常識的な問題ですが、あなたが担当局長でないからというようなことで、いまみたいないいかげんな答弁はできぬと思うのですが……。
  430. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 有価証券届け出書を受理するためには、会社の計画としての実体がどこまで備わっていなければならないかということにつきましては、その当時受理者が受理されたことにつきましては、私が先ほど申し上げましたような意味で受理されたのであろうというふうに理解しておりましたが、はたしてどういうことであるかということは、理財局関係のほうにお尋ねいただきたいと思います。
  431. 有馬輝武

    有馬分科員 いずれ所属委員会で理財局長にお伺いしたいと思いますけれども、これは大蔵省全体としても、憲法上保障されておる個人、法人の善意というものを非常に踏みにじるような経緯になっておりますが、法律家として鍛冶さん、どうですか。
  432. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 証券会社の許可については、実際はよくわかりませんが、おそらくこの会社の事業計画としてかようなものをやっておったのではないかと思います。したがって、いまから考えてみると、われわれとしてもあいまいなる計画だったといわざるを得ぬように思います。
  433. 有馬輝武

    有馬分科員 私が言うのは、そういった時日を遷延することによって、善意であるかもしれないけれども、その会社自体に対して理財局でもちゃんと届け出を受け付けておる。がしかし、その土地がなければ——いま江守さんの言うように、払い下げする意思は全然かす耳持たぬということですから、その会社は設立の意義がなくなってしまう。そういうことが常識的に許されるかどうかということを、法律家としての鍛冶さんにお伺いしておるわけです。
  434. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 ちょっとよくわかりませんが、証券業としての会社が設立されたのでしょう。その会社がやる事業であることは間違いありません。この事業がきまらぬからといって、証券会社の人がやられるのかどうか、それは、実際に出ないとわかりませんけれども、事務所はどこかにあるんじゃありませんか。
  435. 有馬輝武

    有馬分科員 私、詳しく説明しなかったので、局長答弁を鍛冶さんがお聞きになりながら答弁されておると思って、私は省略してお尋ねしておったのですけれども、ここに子供の科学博物館をつくるのです。そして入場料をとって、それによって運営していこうという、大ざっぱにいえばそういう会社なんです。
  436. 鍛冶良作

    ○鍛冶政府委員 この定款を見ますと、こういう事業をやりますというだけで、具体的にどこでどういうことをやるということをきめないで出して、許可をしておるようです。いいか悪いかは別でございますが、実際はそういうことです。
  437. 有馬輝武

    有馬分科員 この土地を払い下げられるということを前提として会社が設立され、また随意契約を盛んに陳情に及んでおるのです。田中大蔵大臣にも代表者から請願が出ておるのです。この会社にとっては、これはたいへんなことなんです。それをほったらかしておいて、大蔵省としてはたして適正な措置といえるかどうかということをお伺いしておるのです。  時間がありませんから次に局長にお伺いしますが、当然こういう経緯をたどってくれば、方針を大蔵省自体としても変えて、筋を通すとするならば、関東地方審議会に再度差し戻すべきだと思うのですが、どうですか。
  438. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 私どもといたしましては、辻堂海岸の六万坪の土地をいかなる目的に利用するのがいいかということをこれからきめまして、そうして県が、公園の計画が御破算になりましたので、公園にできなくなりましたので、こういう目的に使いたいと思いますということを、もう一度審議会に対しまして御諮問するつもりでございます。
  439. 有馬輝武

    有馬分科員 ぜひそういった措置をとらなければ、大蔵省の国有財産の管理というのは実にでたらめをきわめておるといわれてもしようがないと思うのです。この一件だけじゃなくて、先ほど東プラの問題も出ました。私は尋ねたいことは幾らでもある。しかし、具体例を出すことは、先ほども申し上げますように、予算委員会性格としてもあまりふさわしくないから一つだけ取り上げてお伺いしたのであります。  大蔵大臣にお伺いしますが、このように国有財産の管理は支離滅裂をきわめて、国民の大切な財産が何だかあいまいもことしたかすみに包まれているような印象を与えておるのでありますが、この点についての大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  440. 田中角榮

    ○田中国務大臣 国有財産の管理につきましては、大いに努力をいたしておるところでございます。先国会に国有財産法の一部改正法律案を出しましたのも、政府のこのような姿勢でございます。国有財産が支離滅裂に運営されておると、少し極端に御指摘になったと思いますが、そういうことはございません。これからも、こういうものに対しては、国民の財産でございますから、これが国有財産法の規定に適合し、特に公明正大であり、かつ国損を来たさないように、また合理的な運用ができますように国有財産の管理、払い下げ、交換その他につきましては、真に国民各位の理解を得られるような方法でやってまいりたいと思います。
  441. 有馬輝武

    有馬分科員 その大臣の言われるような趣旨が実際はすなおに生かされてないで、しかも法改正が行なわれた昨年の七月一日の前後を通じてこういった問題があいまいもことして、ぽやっと処理されておる。ですから私がお伺いしたのでありまして、いまの大臣の御答弁は、しっかり運営面で今後気をつけてやっていただきたいと思うのであります。  次に、六時八分までだそうでありますから、あと十二、三分しかありませんので具体的にお伺いすることはできませんが、エカフェで検討されておりますアジア開発銀行についての日本政府の態度を大蔵大臣からお示しいただきたいと思います。
  442. 田中角榮

    ○田中国務大臣 エカフェでは御承知のとおり、アジア開発銀行という構想がございまして、これはいま検討いたしておりますが、結論が出ないままになっております。また、こういうアジア開発銀行というものに対しては、日本政府も、これが審議に参加いたしておりますし、これが設立の方向に対して協力的な姿勢でございます。
  443. 有馬輝武

    有馬分科員 四月にはニュージランドでエカフェ総会に、このアジア開発銀行に対する骨子が議題として提案される。またウ・ニュン事務局長が近く来日するというようなこともいわれておるのですが、これは、早急に日本政府としての態度をきめるべきではないかと私は思うのでありますけれども、この点についてまだきまっておりませんということですが、もう目前の問題なんですがどうなんですか。
  444. 田中角榮

    ○田中国務大臣 アジア開発銀行は、その四月の会議で正式に決まるという状態ではないようでございます。本件が本格的に検討されるということは、大体今年の後半という意向のようでございます。その過程において、先ほども申し上げましたように、日本も前向きで検討に参加をしたいという姿勢でございます。
  445. 有馬輝武

    有馬分科員 四月だけじゃなくて、七月にバンコクでまたアジア諸国の政府代表者会議が開かれる。少なくとも新聞の伝えるところによると、このアジア開発銀行の構想に対しても佐藤総理も了承を与えたということなんですが、ただぽやっと与えたのですか。
  446. 田中角榮

    ○田中国務大臣 これは、御承知のエカフェが国連の下部機構といたしまして活動いたしておりまして、また、このアジア開発銀行構想というものがございますが、具体的なものが明らかにされてないということでございます。でございますので、日本もIMFにもまたIDA、IFCの関係国でもございますし、ガットの加盟国でもございますし、そういう意味で、これらのアジア開発銀行構想というものが検討せられる段階においては前向きで、基本的にはこれを設立するような方向で検討せられるわけでございますが、この過程において日本も協力をするという基本的な態度で検討に参加をいたします。こう申し上げておるのであります。
  447. 有馬輝武

    有馬分科員 日本も専門家会議に数回出ておるのです。そして、それから報告を受けて、たぶん私は佐藤総理もその了承を与えられたと思うのですが、それについて前向きに検討するということなんですけれども、それでは具体的にお伺いしますが、世銀とこの予想されるアジア開発銀行との関連についてはどうお考えですか。私がお尋ねする意味は、日本は世銀からの借り入れについては、インドに次いで二番目になっておりますが、そういった状態の中で、ここに出資し得る余力を持った国は限られておると思います。豪州、ニュージーランド、日本ぐらい、そういう中で具体的に設立を前向きにやるということなんですけれども、さてできてみた。ところが、低開発国の援助が当然主になると思うのですけれども、そういった出資の余力があるのかどうか、また、当然低開発国としては、出資してもらってもいいけれども、発言権については問題があるぞというようなことをいっておる。また、一次産品の問題も出てくる、そういう状況の中で前向きに検討するというのは具体的にはどういうことなのか、この際お聞かせ願いたいと思います。
  448. 田中角榮

    ○田中国務大臣 まだ確定的にこの問題が具体的に結論に達しておらないということは御承知のとおりでございます。また世銀との関係がどうなるのかということでございますが、本件は世銀とは関係がございません。大体、いま申し上げますと、構想は、加盟国としてはアジアにおける諸国全部、それからアジアの開発に関心を有する域外の諸国、こういうことを提起しておるようでございます。授権資本金は十億ドル、こういうことでございまして、うち、エカフェの域内国は六億ドルを拠出し、四億ドルは域外先進国の出資としたい、こういうような案が出ておるわけでございます。しかし、域内の国々が六億ドルということになると、いまも御指摘があったように、金を借りる国でありまして、自己資本が調達できるのかという問題もあるわけでありますから、こういうものが大きくなっていきますときに、国際的に現に存する機関との関係がどうなのか、また、アメリカのように力のある国が一体どれだけ出すのか、また、アメリカ中心になって出すというようなことになると、いろいろなまた別な政治問題も起こってくるでありましょう。ですから、この問題については、ことしの後半ごろから具体的な議論が進められるだろうということでございまして、日本もこれに参加するということは、もう総理大臣が明確に話をしております。ただ、この定款も内容もきまっておりませんから、このアジア開発銀行構想に対して基本的に賛意を表し、参加の態勢で討議に参加していくということしか現在の段階では申し上げられないわけであります。
  449. 有馬輝武

    有馬分科員 その定款その他についてもカオス状態にあるということであれば、この際、私は希望があるのでありますが、私は、性格としては米州開発銀行やアフリカ開発銀行と同じ性格のものになるだろうと思うのです。その際、私は国際連帯性を高める意味におきましても、アジア開発銀行というものには、政府代表も出られたバンドン会議経済面をより前進させる意味で方向づけるべきではないか。また、これは少し議論が飛躍するかもしれませんけれども、ここら辺でアジア開発銀行の中に——これは当然国連との問題も出てきますけれども、こういった経済的な問題を通じて中共等を考える必要があるのではないか。総理は、しばしば委員会、本会議を通じて、アジアの一員としての抱負を出しておられますけれども、そういった面で日本が役割を果たし得るのじゃないか、こう私は考えるのでありますが、この性格と、いま中共の問題について触れましたので、この点を大蔵大臣としての見解でけっこうでありますから、お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  450. 田中角榮

    ○田中国務大臣 アジア開発銀行の設立の構想は、御承知のとおり、一昨年の十二月マニラで開催されたアジア経済協力特別会議で提案されたものでございます。エカフェの事務当局としましては、大体来年中に開発銀行の設立の目途をつけたい、結着をつけたい、こういう考えのようであります。それによってそういう状態まで円満にいけば、来年の末に大蔵大臣会議を開きたいという意向のようでございますが、この問題は非常にむずかしい問題でありまして、大いに日本も域内諸国を——十億ドルのうち六億ドルといえば、二、三〇%の分担をしたとしても一億五千万ドルないし二億ドルということになるわけでありますが、ところが、いまそういう状態なのだから、日本がもっと積極的な姿勢をとったらどうか、これは押しつけがましい、お仕着せになってしまうとなかなかたいへんなことであります。でありますから、日本はとにかくこのアジア開発銀行構想の設立は必要だと思うし、またこの構想には基本的には賛成であり、これが成功するならば、それに参加するという基本的な態度を打ち出しておるのでありまして、やはり域内諸国、後進国が多いわけでありますので、こういう国々の盛り上がり、国際機関としての協力体制、それに対して、先ほどもちょっと私申し上げましたが、アメリカ中心になっても反発が起きるだろうし、またヨーロッパ先進諸国とのバランスもあるでありましょうし、日本がまたこれに対してイニシアチブをとるということになってもなかなかむずかしい問題がございます。少なくとも事務局が一つのスケジュールを持ってこれをまとめていきたいということに対しては、積極的に事務局案の提案に対して参加をして協力をしていくという体制が一番好ましい状態ではないかと思います。
  451. 有馬輝武

    有馬分科員 質問に触れないように触れなようにいま苦しい答弁をしておられるのですけれども、自主外交というものはそういうものではないのではないか。中共をどう考えるか、イエスかノーかはっきり答えていただきたい。
  452. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私は、いま外務大臣ではございませんので、やはりいまのお問いはアジア開発銀行というようなものに対して主点を置かれての御論議でありますから、これに対してお答えをしてきたわけであります。中共問題に対しましてはどうも明確な御発言がないようですから、もう一回明確に御発言をいただければ私が答え得るものでしたらお答えいたします。
  453. 有馬輝武

    有馬分科員 この前の臨時外相代理ではえらい張り切った答弁をしておられたんだから、臨時外相代理をやられた大蔵大臣に私が尋ねたいのは、せっかくこういった構想があるときに、しかもその定款その他についてはカオス状態、こんとん状態にあるときに、日ごろ言われておるところの自主外交というものを展開すべきではないか。その際に中共というようなものを前向きで考える必要があるのではないかという点をお伺いしておるわけです。
  454. 田中角榮

    ○田中国務大臣 非常に重大な問題でございます。私がお答えをできる範疇のものではないようでございます。これは、やはり外務大臣お答えになるべきことだと思います。もう御承知のとおり、中共はいまエカフェのメンバーでございませんが、国府はメンバーでございます。そういう問題、これがいま世界じゅうの大問題になっておるわけでございますから、私が答弁をすることは差し控えたいと思います。
  455. 有馬輝武

    有馬分科員 それでは、予定の時間がまいりましたので、これで私の質問を終わりたいと思います。
  456. 中野四郎

  457. 加藤清二

    加藤(清)分科員 いよいよこの分科会も大詰めになりました。主査の要請にこたえまして協力する意味におきまして、私はきわめて短時間に御質問をしたいと存じます。したがって、御答弁される側におかれましても白か黒か、やるかやらぬか、これだけでけっこうでございますから、ひとつ簡潔にお願いいたします。  問題を三点にしぼります。そのうちの二点は、すでに与党側におかれましても党内で決議をされた問題であって、決議をされたけれども行なわれていないという問題です。一つは、大臣が国会において確約されたにもかかわりませず、まだ実行に移されていないという問題、以上の三点でございます。  その第一は、入場税の問題でございます。これは、芸術議員連盟二百五十有余名の議員がこぞって賛成をしております。舞踊、洋楽、邦楽、能楽等々に関する課税の問題、これは、自民党公報委員会文化局も、これをすでに廃止するという方向で決議をしておられる問題でございます。文化振興の前向きの姿勢の確立のために、当面の問題として税制の面で入場税は撤廃すべきである、撤廃できなければ免税点の大幅引き上げをすべきである。徴税面では前納制をやめる、音楽、舞踊関係など必要経費控除率を文芸関係のように引き上げる。以上を決定決議されまして、政調会文教部会にすでに申し入れておられる問題でございます。この点について一体いかほど税収入が減るかと申しますると、これは同じ入場税の一・五%程度にしかなりません。金額にして一億程度でございます。これは、大蔵省調べでそう相なっております。この点について大臣としては一体どのように対処されますか、伺いたい。
  458. 田中角榮

    ○田中国務大臣 入場税等につきましては、昭和三十七年税制調査会の答申に基づきまして、大幅な減税等も行なったことは御承知のとおりでございます。  なお、御指摘になりました純文学とかいろいろな問題、特に芸術保護というような面につきましては、可能な限り最大な措置を行なったつもりでございますが、その後も各界からの要望もございます。かかる問題は将来の問題として、バランスの問題もございますので慎重に検討をいたしたい、こう考えます。
  459. 加藤清二

    加藤(清)分科員 慎重に検討ではわからないので、それではいままで慎重に検討していなかったかということにも反論したくなる。したがって、どうするかということをはっきりお答え願いたい。
  460. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いまはっきりお答えをできるようなものではないのでございます。御承知のとおり、三十七年に間接税関係の問題等、大幅な整理もいたしたわけでございますが、まだそれでは不十分であるという御指摘でございますが、諸般の事情もございますので、慎重に検討をいたしますと、こう申し上げておるわけでございます。
  461. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大体入場税というものは戦時課税で発足したものなんです。先進諸国でかかるものに課税をしているという国はほかにございません。しかも、日本におきましては二〇%課税、これは過酷に過ぎるということは、もう世界の人がみんなひとしく認めるところであり、おたくのほう、与党のこれに関係し研究していらっしゃる人もみんなそうだというておられる問題でございます。もはや慎重検討の時期ではなくして、即時撤廃の時期だと思います。いかがでございますか。
  462. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御主張の点は十分わかりますが、なかなか、税法の中ですぐこれを減免税を行なうという結論に到達しておらないのでございます。また、いませっかくな御発言がございましたから慎重に検討いたします。
  463. 加藤清二

    加藤(清)分科員 こういう押し問答をすると時間が長くなる。やるかやらぬか。それは、自民党としてはきめてもおれはやらぬならやらぬ、これでけっこうですから、そのように答えていただきたい。
  464. 田中角榮

    ○田中国務大臣 やる、やらぬということは、非常に簡単な表現でございますが、そこまでは慎重に検討しなければならぬことは御承知のとおりでございますので、御了解願います。
  465. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは次に、与党自民党の社会部会ですでに決定済みの、やはり税制の問題でございます。それは、物価を値下げする、流通部門を是正するという意味におきまして特に重要視される問題でございますが、御承知のとおり農協、漁協、中小企業等の協同組合、これは租税特別措置法の適用によりまして、留保所得の二分の一を損金に算入することができる、こういうことに相なっておるわけでございます。すなわち、これらには課税を軽くする。そして消費者物価の高騰を避ける、こういう意味で行なわれている問題であることは、大臣、よく御承知であります。ところで、これを同等の仕事をし、同等の貢献をしている森林組合、生活協同組合、これは二分一損金に算入することの適用が除外されているわけでございます。もともと入っていた。それが三十五年度より適用が除外されたわけでございます。一体、これはどういうことか。しかも、社会部会におきましては、森林組合も生活協同組合も除外さるべきであるという決議がなされておるわけでございます。これはどういうわけですか。
  466. 田中角榮

    ○田中国務大臣 そういう決議もございますので、森林組合は今年度から特例を適用するということでございます。生活協同組合にはいろいろ問題があるようでございます。問題の諸点に対して答弁の必要があれば、主税局長をして答弁させます。
  467. 加藤清二

    加藤(清)分科員 時間を一時間いただけるならこれから詰めをやればいいけれども、短く協力するというたてまえでございますから、私は詳細はよく知っておりますから、聞かなくてもよろしい。ただ、これは税収入はわずかなものです。コンマ以下です。一億にならない。ただの五千と六万です。わずかなものなんです。なぜイギリスにおいてはこれを育て——消費者物価を引き下げるために非常な貢献をしているこの生活協同組合に、世界じゅうどこを探しても、こういう税金をこんなにかけているというところはまず例を見ないのでございます。ただ、ひとりわが日本のみでございます。したがって、そのことが御理解いただけたればこそ、御承知の農協とか漁協、中小企業の協同組合はいわゆる租税特別措置法の適用を受けるようになっておるわけでございます。大企業に対する租税特別措置法は、すでにその効果が喪失したものまでなお今日継続させておきながら、最も必要なこれは除外していくというやり方は、これは、税の負担公平の立場からいってもあやまちであると私は断定をいたします。大臣の前向きの姿勢を要望したいのですが、どうなんですか。
  468. 田中角榮

    ○田中国務大臣 生活協同組合につきましては、権衡問題もございますし、特に日本に特殊な状況にある中小企業との問題もありまして、本件に関してはもう加藤さん十分御承知のとおりの経過を経て今日に至っているわけでございまして、いまこれに特別な措置を適用するという考えには至っておらないのでございます。
  469. 加藤清二

    加藤(清)分科員 いずれ別な委員会で詳細に検討してみたいと存じます。  三番目。これが最後でございます。過ぐる国会におきまして、大臣は悪質手形には刑罰を科する、こういうことを御答弁なさり、しかも、その夜の記者会見ではこれを大きく発表された。したがって、これはゴシック入りで報道されたわけでございます。大歓迎を関係者、国民から受けたわけでございます。ところで、あれ以来一年、悪質手形は横行して中小企業倒産の原因をつくっておりますにもかかわりませず、これに対する処置はほとんどなされていないのが現状でございます。そこで、だんだん尋ねてみると、これは法務省のほうにネックがある、こういうお話でございます。そこで、いかなる理由によって法務省はこの悪質手形征伐に乗り出さないのか。また、大蔵省はこれを是正したいという方向で話し合いが行なわれているにもかかわらず、法務省としてはこれをがえんじない。一年たってもやらない。こういう理由が明らかでございましょうから、この際はっきりしてもらいたい。
  470. 安原美穂

    ○安原説明員 加藤先生お尋ねの点につきましては、手形、小切手で振り出した際に、その振り出し人に支払いの意思がない、あるいはその能力がないことを知っていながら振り出しました際におきましては、明らかに刑法の詐欺罪をもって処罰できるわけでございます。そこで、そのような振り出しの際に支払いの意思、能力がないというものでない場合におきまして不渡りになりました場合ということになりますと、本人におきましては、その振り出しのときに支払い得るという見込みがあって出したものが結果において不渡りになったときに、これが処罰できるか、処罰すべきかどうかという問題に帰着するだろうと思うのです。  ところで、それはいわば一種の自分の先行きの金融についての見込みを間違ったという意味において、その不渡りになったことにつきましては過失はございますけれども、過失による詐欺罪というようなものを刑罰をもって臨むかということにつきましては、法務省当局としては非常に不安を感じておるわけでございます。
  471. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そういう認識だからだめなんですよ。下請代金支払遅延等防止法には、六十日以上のもの、すなわちお産、台風、七夕手形は悪質と規定して、六十日以上のものを振り出した場合は、振り出し人においてその割引料を負担せよとちゃんと明らかに書いてある。ところが、それが全然実行に移されていない。どうして最初から意図してそんなものを出す出さぬなんということがわかりますか。そんなものじゃない。下請代金支払遅延等防止法のときにさんざん論議がかわされて、手形サイトが六十日以上のものはこれは不良とするという、不良の範疇がここできまっておるのです。それをなぜ取り締まらないかということを言っておる。そんな大正時代の観念を言っておってくれちゃいかぬですよ。だから、手形サイトがお産、台風なんて、いつまでたっても直らぬじゃないですか。
  472. 安原美穂

    ○安原説明員 手形につきましては、先ほど申しましたように、詐欺になるものは詐欺で処罰する、そのほかのものは一種の過失による詐欺罪に該当するものということになるので、刑法上それを処罰する規定を設けることは非常にむずかしい問題があるということでございます。
  473. 加藤清二

    加藤(清)分科員 何を言っておるのです。大体今日横行しておる手形は、ほとんど全部手形法からは落第ばかりです。どうして落第か。手形法の第一条を出して読み上げてください。時間がないけれども、あなたがそういう抗弁をするから。そうですと言えば一ぺんに終わることなんです。その手形の具備しなければならない条件の中に、振り出しの日にちをつけなければならぬ。第七項目のところにあるはずだ。ところで今日横行しておる手形に振り出し日の書いてある手形がございますか。しかくさようとすれば、もはや手形の資格を喪失しているのですよ。これは偽造手形ですよ。そうでしょう、手形の条件を具備していないのだから。あなたは、今日行なわれている手形に振り出し日が記入されていないということを知っておりますか、おりませんか。
  474. 上田明信

    ○上田説明員 いまの御質問に対しまして、手形法上は白地手形というものが認められておりまして、振り出し日を記入しない手形も一応法律上は有効だというように規定されております。
  475. 加藤清二

    加藤(清)分科員 第一条の七項目を読んでごらんなさい。手形の具備しなければならぬ条件が一から八まであげられているでしょう。
  476. 上田明信

    ○上田説明員 別に十条がございまして、未完成で振り出された手形、これに該当するのじゃないかと思います。だから、その意味におきましては、おっしゃいますように、手形自体ではないけれども、それを俗に白地手形と一般にいっておるようでございます。
  477. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そういうばかなことを言っておるからいけない。手形のほんとうの精神はあなたのほうがよく御存じのはずです。手形は、これを一字一句たりとも発行者以外の者があとから書いてはいけない、額面は。六十九条、変造のところを見てごらんなさい。書いたものは無効になるはずなんです。ところが書いて無効になるということならば、初めから規定されたところの条件を具備しないものも無効なはずなんです。私は時間を約束しておるから、このことを論争しようとは思わない。しかし、かかる認識だからいけない。あなたたちは知らないのですよ。これを調べた経験がありますか。今日どのような手形がどう使われているか調べたことがないでしょう。調べたというなら、どこの場所でどういうものを調べたというデータを出してください。全然調べていない。これだけ不渡り手形があって、歴史始まって以来倒産が多いというにもかかわらず、全然手をつけていない。つけたと言われるなら、データを示してもらいたい。怠慢もはなはだしいのですよ。  そこで、時間の関係上私は先に行きますが、手形が具備しなければならない条件、これは、今度は銀行協会としても統一手形にするということになっておる。これは、去年の大臣の答弁あるいは大蔵省の努力によって、少しでも悪い慣習を除去しようという善意な前向きの努力なんだ。それにも必ず振り出しの日付は書き入れなさいとなっている。これを書き入れなければ、六十日以上の分について振り出し人において割引料、すなわち金利を持たせるといったって、いつから始めていいやらわからぬじゃないか。下請代金支払遅延等防止法をつくるときに、こんこん言うておいたはずだ。警告はすでに何回か発したはずなんだ。下請代金法が修正されるたびに警告を発しておいたはずだ。ところがいまだかつて法務省としてはこのことに手をつけたためしがない。それでうまくいけば手をつける必要はない。そのおかげで倒産がこれほど激しいのだ。あなたの兄弟やあなたの親戚で倒産してみてごらんなさいよ、本気になれるから。人ごとだからこうやってほっておける。これについて大臣の所見を承りたい。
  478. 田中角榮

    ○田中国務大臣 法務省とも打ち合わせをしておるわけでございまして、法務省がいまお答えをしたものも事実でございます。しかし、私がこの問題に取り組んでおりますのは、アメリカ等では手形に対する観念が日本とは全く違う、非常に処罰もきびしいということでございます。もう一つは、こういう純法律論もさることながら、現在の手形法による手形というものが乱れておって、それでもって社会悪ともいうべきものを非常に大きく持っておる。だから融通手形というようなものによって健全な企業までが倒産のうき目にあっておるということは、おおうことのできない事実であります。しかも同時に、過去六、七年間で国民総生産が倍になっておりますが、その間企業間信用は約三倍になっておる。これが正常な状態でないということは、だれが見てもわかるわけであります。この間において手形法が企図しておりますようなもの以外の、いわゆる不正常なものが相当流通しておるということは事実でありますので、私は、いまの刑法の詐欺罪で罰せられるということでなく、現在のこの状態をより合理的なもの、正常なものにするには、一時の時期でもどうしなければならぬかということは当然考えるべきだと思っております。そういう意味で、これは刑法の上でもって規定を変えるとかいろいろな問題は、権衡の問題や何かがあってむずかしいようでございます。特に審議会の議を経たりすると、大体二、三年かかるだろう、こういう話でありましたので、私はそういうものを待っておれないということで、現存手形用紙の統一とか、それから手形を発行しながら不渡りを出した者の買い取り期間を非常に短くするとか、また企業者の代表者がこれを出して、不渡り処分になった者は三年か五年、長い間振り出し人になれない、いわゆる取引を停止してしまうとか、口座の開設ができないとか、企業の代表者が小切手及び手形の振り出し人にならなければならないとか、こういう具体的な行政指導をやっておるわけであります。どうにもならないというなら、手形法ということよりも、いわゆるこの時点における手形の流通の正常化に関する法律とか、私は考え方によっては……(加藤(清)分科員「銀行法改正でもいい。」と呼ぶ)いや、銀行法改正でこれを処置することは、私も検討いたしましたが、なかなかむずかしいようですが、ある時期必要な単行法としてこれを規制することはできないか、私は、できるのじゃないかという考え方でいま検討をしております。でございますから、私はいま手形用紙とか、そういうものが統一をされることによって相当程度よくなると思います。それからもう一つは、小切手なのか、手形なのか、契約書なのか、全く区別がつかない状態もございます。しかも、いままで手形なるものは何ものかということを知らない人たちが手形用紙でお書きください、それで電気洗たく機は十万円に判を押してもらえばいいのです。名前は私が書き込みます。こういうものが現に横行しておるということは事実でございます。でございますので、この実態に対処して、より前進的合理的な方法を求めておるわけでありますので、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。
  479. 加藤清二

    加藤(清)分科員 これでおしまいにします。そこで、いまお聞き及びのとおりです。法務省としても、これは自分の任務なんです。ただ手形法はぼくらのところで握っているからよそのものには文句言わせぬと言ったって、手形が横行するのは企業間なんです。世の中なんです。今度銀行側でさえも、その不渡りのおかげでこげつきがたくさんできて困るというので、今度は統一手形を出すことになりましたので、これを機会に法務省が乗り出して、そうして、不正手形をチェックするという方向に前進できるかできないか。それから、今度は大臣に、私はこの不当なる企業間過大信用、そうして不渡り、不良手形のもらいからくるところの倒産、これを救うために、ちょうどこれは偽造紙幣と一緒ですから、銀行で統一手形を出したら必ず発行日を記入させる。記入して、きめられている六十日以上のもの、これが発見できるのは銀行の窓口に割引に来たときでございますから、ここでチェックをする。そうして、これを偽造紙幣と同じようにせめて報告をさせる。報告の義務を課したならば、これは、それだけでこの、不良手形の発行を未然に防止することに非常に効果がある。一点だけ提案いたします。まだたくさんございますけれども、これはいずれ大蔵委員会、商工委員会その他でやることにしますが、その一点だけ提案して、私は質問を終わります。
  480. 田中角榮

    ○田中国務大臣 加藤さんの金融正常化、手形の正常化に対する御熱意は十分わかりますし、私も同じ考え方でいま努力しております。ただ、銀行に対する大蔵大臣の監督というものは、銀行法に基づいておるわけであります。金融機関に個々の企業間の取引内容、そういうものを報告させるということは法律のたてまえ上非常にむずかしい。むずかしいというより、法体系の上ではできないということが定説でございます。ただ私は、先ほどから言っておるように、手形というものは通産省及び公取の所管ではありますが、下請代金支払い遅延等防止法があっても、どうもざる法だ。法律はうまくいっているのですが、これを運用する人間がざるじゃないかと、私はほんとうにそう思うのです。法律というものは、そうこまかく何でも規定すべきものではないのですが、これは、人間の程度の問題であります。私はそう思っている。すべてを取り締まるというのじゃなく、とにかくさいふに金がないのに手形を出すということは、これはまた太い話でありますが、そういうことが横行しておるということは、まあ人間尊重、人づくり政策をやっておりますから、いますぐここでどうすればいいかという問題がわかればとっくにやっておるのでしょうけれども、いろいろ法律の問題もありますし、大いに英知を傾けて検討いたします。
  481. 加藤清二

    加藤(清)分科員 法務省のほうはどうするか、統一手形が行なわれるについて前向きで調査に乗り出すことをするかしないか、いままで一ぺんもやっていないのですから怠慢ですよ。それを答えてください。
  482. 田中角榮

    ○田中国務大臣 政府部内で十分検討いたします。
  483. 加藤清二

    加藤(清)分科員 つまり法務省とよく協力して、いまみたいな立法的に困難だのなんだのというあほな答弁ではもう通らぬ時期に来ているから、そこを打開なさる、こういうことですむ。
  484. 田中角榮

    ○田中国務大臣 法律問題はまた法律問題でこれを軽々に変えるわけにはまいりませんが、実態はよく承知をいたしておりますので、政府部内においても関係各省と十分意見を調整し、実現できるような何らかの措置を考えたいと考えております。
  485. 中野四郎

    中野主査 横路節雄君。
  486. 横路節雄

    ○横路分科員 私に対してこの前大蔵省のほうから答弁が保留になって、答弁をきょうしなければならぬ点がある。それは、中期経済計画と税制調査会答申による昭和四十三年度の減税額ですね、それをひとつ説明してください。
  487. 泉美之松

    ○泉政府委員 先般お話のございました中期経済計画による昭和四十三年度の場合の減税規模という問題につきまして、先般は経済企画庁のほうの数字についてお話がありましたが、企画庁と違って私のほうで算定いたしましたほうを申し上げますと、御承知のように、租税及び印紙収入には、専売益金は一般会計の中で含まれておりません。それを除外する必要がございます。それから自然増収の二〇%を減税に充てるという税制調査会の答申の場合には、目的税でありますところの揮発油とか軽油引取税といったものはこれを除外して二〇%という数字を出しておりますので、それを除きます。それから、これは企画庁のほうの数字でも除かれておるはずでございますけれども、税外負担の分は除きます。それらを除きますと、税制調査会で考える場合の昭和四十三年度の減税後の税収入額は五兆八千百十四億でございます。自然増収額が六千九百四十七億と相なります。したがって初年度にその二〇%ということになりますと千三百八十九億、それから平年度額は税制調査会の答申では、初年度二〇%行なえば従来の経験からそれを平年度額に直せば自然増収額の二五%というものになるという想定でなっておりますので、平年度額で見ますと二五%千七百三十七億、かように相なるわけでございます。
  488. 横路節雄

    ○横路分科員 大蔵大臣、いまお聞きのように、中期経済計画による最終年度の昭和四十三年度の減税額というものは、一体どういうように想定されるかといえば、いわゆる税制調査会の答申の初年度の減税額の二〇%として千三百八十九億、平年度減税額として二五%千七百三十七億。田中さん、私きょうこれで最後を締めくくるわけだが、もう一ぺん予算委員会の全体委員会でお聞きをしたいと思うのだが、どこから所得税中心の三千億減税というのは出てくるものだろうね。それは、田中さんは、佐藤さんのまさに右の片腕であり、事実上、ことばが過ぎるかもしれないが、副総理格だ、最も信頼は厚いんだから。しかし、私は三千億減税の問題を総括質問のときに取り上げたんだが、こうやって中期経済計画の四十三年度、最終年度を見ると、初年度で千四百億、平年度で千八百億。そうすると、佐藤さんが総理をこれから何年おやりになるか、やはり政治家には政治家としてのある一定の限界がある。四十三年というと、これからまる四年もある。それでいて三千億には達しないわけで、この点はほんとうからいえば、重ねて予算委員会でやるほどこれは重要な問題だと思うのです。それなればこそ、私がこの間、本分科会で取り上げたいわゆる間接税千五百億の増徴——数字にはこだわらないというが、それをもって所得税に充てるというのは、千五百億を間接税で増徴しなければどうも三千億のつじつまが合わないというようにお思いになったのではないかと思うのです。  それで、一つだけ聞いておきますが、実際には、年度において三千億の所得税中心の減税ということは不可能なんでしょう。その点、ひとつ田中さん率直に言ってください。それでないと、いたずらに国民を惑わすものになります。
  489. 田中角榮

    ○田中国務大臣 現在、税制をそのまま守っていくというたえまえで、また安定成長を続けていくということであれば、三千億の減税ということは、よほどの勇気がなければなかなかむずかしいだろうということはわかります。それは、一般会計というものをいまのままで持っていってストップしてやるということであれば別ですが、歳出要求も依然として強いのでございますから、減税三千億ということを基盤にして申せば、そのように考えます。ただ総理が三千億と野にありましたときに申しましたのは、間々申し上げておりますとおり、これは減税に対しての熱意、基本的な姿勢を世に問うたものだ、こういうことでございますから、その間は十分御理解をいただきたい。  もう一つ、第三点目は、先ほど申し上げたとおり、税法が変わって、いろいろ状態が変わってまいりますから、そういう状態において直接税、いわゆる所得税中心に大幅に減税をしなければならないということでくふうをし、他に財源を見つけるようなことができるとするならば、私がいまの時点で申し上げれば、三千億の減税も不可能と言い切ってしまう問題ではないと思います。
  490. 横路節雄

    ○横路分科員 これは「税制調査会関係資料集」というものですが、利子所得の分離課税及び税率の軽減というので、昭和二十八年から数字が出ておるわけですね。二十八年十四億、二十九年三十億、三十年八十五億、三十一年百億、三十二年八十億、三十三年八十億、三十四年百億、三十五年九十億、三十六年九十五億、三十七年百二十五億、三十八年三百六十億、三十九年四百十億と、こういうふうになってきているわけですね。そこで、私はあなたにお尋ねをしたいのだが、何か考えてみればもう少しやりようがあるのではないか。こういう点からいけば、あなたの部内でも反対意見が強い。名前を私はいいませんが、ここに「財経詳報」というのがあるわけです。「財経詳報」であなたのほうの関係者の部内の方が書いているのを、私もたんねんに読ましてもらった。あなたのほうの部内でも、この利子所得に対する分離課税については相当異論があるわけです。これは四十二年の三月三十一日までですが、これは主税局長、あなたに聞いたんではうまくないですね。やはり大蔵大臣でしょうね。ですから、あなたにこれが一つ。  それからもう一つは、この間、私が総括質問で申し上げました、いわゆる配当所得に対するところの源泉選択制度を創設した。これは、実質的な分離課税なわけで、これもたしか四十二年の三月三十一日までですかね。こういう点については、これから税法の中で大蔵委員会でおやりになるのでしょうが、いまあなたは、三千億の減税というのは、総理の熱意のあらわれなんだ。そうしていろいろ税法について考えていくならば、幾分でも近づけていくことができるではないか、こういうのであるならば、大体これは税制調査会においても評判は悪き限りである。大蔵省部内においても、これも評判の悪き限りである。そうすれば、田中さんが、大蔵大臣をやめてもいずれ党に戻って税制でも担当してやるんだ、この間ここの委員会でいわれたことは、あなたはおそらく政調会長でも将来はさらにまたおやりになって、三千億減税の佐藤総理の公約実現のために一路邁進されるであろうと思う。それであれば、いまの二つの問題です。四十二年三月三十一日でこれまでの暫定的なもの、そのあと当然そうすれば利子所得の分離課税については、これは総合累進課税にすべきである。今度の配当所得については、源泉選択制度で実質的な分離課税をやっているが、これもやめるべきだ、こういう点について、ひとつ基本的な大蔵大臣としての——主税局長にこのことを答えろといっても、主税局長だって、いまここで答えるわけにいかぬだろうと思う。彼は腹の中できっと反対だろうと思うから。そこで、大蔵大臣としてこの三千億減税の佐藤総理の政治の方針を達成するためにもひとつ。
  491. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私も横路さんと同じように、大衆の投票を得て当選をしてきている者であります。でありますから、野党の皆さんにも反対、与党の一部でも議論があり、またいろいろ反対ばかりがあるというようなことをなぜやるか。これはほんとうに身を殺して仁をなす、こういうことでございます。そうでなければ、やはりほめられるようなことだけやっていたほうが一番いいということは、これはひとつ理解をしていただきたい。私がなぜこういうことに踏み切らざるを得ないか、こういう気持ちも十分お察しをいただきたいと思います。私は、自分の利益やそういうことを前提にしてかかる税制の改正を提案しておるのではありません。まさに有史以来敗れた歴史のなかったわれわれが戦いに敗れて、どうなるであろうか、こう思ったことは二十年前であります。戦後二十年でありますが、その前半の十年間は、われわれの時代に、一体われわれの子供のためにどういう生活が築けるだろうかということを真剣に考えたわけであります。そして、少なくとも去年の四月一日に八条国に移行して、新しい出発をしなければならない日本の状態を考えますときに、私は税の公平論、これはもうほんとうに守っていきたい。しかし、将来長い間にわたってより合理的な税負担の公平を守っていくためには、ある時期においてやはり一部の特別措置をとることも、またやむを得ないと思うのであります。いま日本一体なぜドイツのまねをしないか。同じく敗れて、同じ状態からドイツはうまく立ち上がった。日本の政治が悪いから、今日のように自己資本比率も少ないし、物価も上がるし、外貨準備も少ないのだ、こう言われるのですが、ドイツはただこうなったのではありません。御承知のとおり、ある時期は、もう資本蓄積と貯蓄に全精力を傾けたのであります。だから、そういうことを考えてみまして、私は個人的に指弾をされながらも、日本の民族のあしたにプラスをもたらせるならば、あえていばらの道を歩こう、こういう考えでこういう措置をとったわけであります。でありますから、この基本的な考え方は、ひとつどうぞ御理解をいただきたい。私もまた人の子であって、何も憎まれることばかりやりたいのじゃないのですが、これはもう責任の地位にある者がどうしても避けることのできない道である、こういう観点をもって今日に至っておるわけであります。しかし、法律は二年の時限法でございますから、これは、法律の特例措置をとった効果があってその目的が達せられたならば、こういう制度はやめるにしくはないわけであります。私も、一日も早くこういう措置が廃止し得るような状態こそつくらなければならない、こう考えておるわけであります。
  492. 横路節雄

    ○横路分科員 田中さんからいまお話しございましたが、利子所得の分離課税については、だれが考えてもこれは非常に不当だ。しかも個人の貯蓄はこれによって増さない。個人の貯蓄というのは、いわゆる可処分所得が増加されるように所得税を軽減していくことがいいんだ、統計上そのことは示している。  二番目、あなたはいまドイツの例をとられていろいろ言われたけれども、実際には株式市場に対する、証券市場に対する資金の導入とか、その他のことを言っているのでしょうが、しかし、会社に対しては金融面、税制でいろいろ措置をしているわけです。しかし、あなたがやめるにしくはない、これは暫定立法だ、だから四十二年の三月三十一日がきたならば、できるだけ廃止の方向にいきたい、こういうふうにいまあなたが言うから、それじゃそれで、私は次のことに移ります。  最後に、これは主税局長にお尋ねするのですが、この間私が総括質問でも取り上げたが、五人世帯の生計費です。課税最低額は五十四万四千二百五十九円、標準生計費は五十三万五千六百九十六円、この差が八千五百六十三円あるわけですね、この間、私、テレビを見ておりましたら、どこのテレビもこれを取り上げていました。一体これでつくれるものならつくってもらいたい。田中さん、私、こういう提案をしたいのです。この献立で国民の栄養が保持されて十分働けるものならば、大蔵省がひとつ東京のどまん中に給食センターをつくったらどうでしょうか。そして、これでちゃんとおつくりになったらいいんじゃないかなと思うんですね。  私は、主税局長にまずお尋ねしますが、これの一番の問題点は、計算の基礎である食料費は、三十七年六月から三十八年五月までの物価を基準にしているのでしょう。そうでしょう、それは違うのですか、その点、ちょっとはっきりしておいてください。
  493. 泉美之松

    ○泉政府委員 この点は、どの資料からお話しになっておりますかわかりませんが、今回発表いたしましたものはそうでございませんで、三十八年九月から三十九年八月までの物価をとっておるわけでございます。
  494. 横路節雄

    ○横路分科員 そうですか、三十九年八月は、はい、わかりました。  大体、それからでも物価は、少なくとも五%ぐらい上がっていますね。このごろは、物価がどんどん上昇するのは明らかです。しかも、ことしの暮れまでにいきますと、主税局長、あなたもお聞きだと思いますが、都市銀行は、ことし一年間の物価の上昇は約七%と見ているわけです。大体これは間違いないです。三十九年の八月から四十年の三月まで少なくとも三%ぐらい上がりますから、約一〇%上がりますね。そうすると、ここで食費の金額の二十四万九千四百二十円というのは、これはもっともっと額が上がるようになる。この点が一つの欠点である、こういうように私は考えているわけです。したがって、いま町でみんなが言っていることは、だれしもが台所で言っていることは、これでやれるならばひとつやってもらいたい、こう言っている。田中さん、あなたのうちに小さいお子さんがいらっしゃるかどうかわかりませんが、いま小学校、中学校などに行っている子供さんが三人ぐらいいまして、ほんとうはなま卵一日に一つずつ飲ませられないわけですね。なま卵を一つぱんと割って、卵とじかなんかにして分けるわけでしょう。なま卵を一つ割って三人の子供に分けるときには、子供は、一番先に取ったほうが得か、一番あとに取ったほうが得か、あなた、御存じですか。
  495. 田中角榮

    ○田中国務大臣 知りません。
  496. 横路節雄

    ○横路分科員 知らないでしょう。それはもうどの子供も必ず、弟ならば、兄さん、どうぞお先に、こう言う。兄ならば兄貴として、いや、弟君どうぞお先にと言う。どうしてかというと、三人で分けると、一番最初の者は白身だけ行ってしまう。一番最後の者だけが黄身が残るわけです。そういうことなんです。今晩、何だったら、ためしにやってみたらいい。なま卵ですよ。ですから、この計算というのは、そういう意味で、主税局長、あなたのほうでおやりになったんでしょうけれども、私がこの前指摘をしましたように、親は牛乳一本飲ませたい、それから、一日に卵一つ食べさしてやりたい——実際子供を持っていなければ、そういう経験はないわけですね。しかし、子供を持っていれば、みんなどこのうちでもそういう経験がある。これは、ひとつ十分考えてもらわんければならぬ。だから、みんな言っている。大蔵省で何とか給食センターをつくってもらえないかな、そうして、ほんとうにそれで十分働けるものができるようにしてもらいたいと。田中さん、どうですか、一ぺんおやりになったら。大蔵省直営の給食センターなんというのは、いいじゃないですか。これは、そういう構想でおやりになる。しかし、私が言っていますのは、まず問題点の一つは、生計費が三十八年の九月から三十九年の八月だというが、これはもう今年の三月までで、大体三十九年の八月から少なくとも一〇%近く上がっている。ですから、まずこれ自体が無理である。それから、この中に出ている献立表自体が、いま言いましたように、卵一つを割って卵とじにして五人家族がそれを食べると、こういうことですね。そういう意味で、ほんとうからいえば、時間があればこのことだけでもゆっくりやりたいと思いましたが、しかし、このことだけを指摘をしておきたいと思います。  最後に、本分科会もこれで終わるわけですが、実は最終段階に、大蔵委員会を特に終わりに置きましたのは、外務とか防衛庁とかと違いまして、何といってもやはり直接国民生活に一番密接な関連を持っておる。特に税というのはもう毎月払っていく。店で買い物をすればそこで払っていく。そういう意味で最も国民に密接な関係のある大蔵省所管関係について、一番最後に中野主査と相談をしていたしたわけであります。そういう意味で、重ねて私から大蔵大臣に、なるほど先ほど三千億減税は、佐藤総理の政治に対する姿勢、希望と言っておるけれども、ただ政治に対する姿勢、希望だけでなしに、やはり総理の在任中にこの三千億所得税中心の減税ができるように、そのためには、先ほどあなたが言われた四十二年三月三十一日で終わる利子所得の分離課税、これをやはり総合累進課税にしていって、それから配当所得の今度とられた源泉選択制についての実質的な分離課税もやめていく、先ほどあなたがお話しをされた点、こういう点をひとつあなたの手腕に期待いたしまして、その言明に期待して、私の質問を終わります。(拍手)
  497. 中野四郎

    中野主査 これにて、昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算及び昭和四十年度政府関係機関予算中、大蔵省所管に対する質疑は終了いたしました。
  498. 中野四郎

    中野主査 以上をもちまして、昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算及び昭和四十年度政府関係機関予算中、会計検査院、防衛庁、外務省及び大蔵省所管に対する質疑は全部終了いたしました。
  499. 中野四郎

    中野主査 この際おはかりをいたします。昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算及び昭和四十年度政府関係機関予算中、会計検査院、防衛庁、外務省及び大蔵省所管に対する討論採決は、先例によりまして、予算委員会に譲ることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  500. 中野四郎

    中野主査 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  これにて、第二分科会の議事はすべて終了いたしました。  この際、分科員各位、特に各副主査の方々の御協力を心から感謝いたします。  これにて散会いたします。    午後七時三分散会、(拍手)