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1965-02-25 第48回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十五日(木曜日)      午前十時四分開議  出席分科委員    主査 中野 四郎君       大平 正芳君    小坂善太郎君       登坂重次郎君    石田 宥全君       岡田 春夫君    西村 関一君       横路 節雄君    吉村 吉雄君    兼務 加藤 清二君 兼務 川俣 清音君    兼務 野原  覺君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     谷  盛規君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安川  壯君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         外務事務官         (情報文化局         長)      曾野  明君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         通商産業事務官         (繊維局長)  新井 眞一君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         建設事務官         (計画局長)  志村 清一君  分科員外出席者         外務事務官         (経済局外務参         事官)     内田  宏君         外務事務官         (経済局米国カ         ナダ課長)   菊地 清明君         外務事務官         (経済協力局外         務参事官)   吉野 文六君         外務事務官         (経済協力局技         術協力課長)  佐々木正賢君         大蔵事務官         (主計官)   吉瀬 維哉君         厚 生 技 官         (公衆衛生局栄         養課長)    萩島 武夫君         農 林 技 官         (食糧庁業務第         一部長)    田中  勉君     ————————————— 二月二十五日  分科員岡田春夫君及び永末英一委員辞任につ  き、その補欠として西村関一君及び玉置一徳君  が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員西村関一君及び玉置一徳委員辞任につ  き、その補欠として吉村吉雄君及び永末英一君  が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員吉村吉雄委員辞任につき、その補欠と  して岡田春夫君が委員長指名分科員に選任  された。 同日  第一分科員野原覺君、第三分科員加藤清二君及  び第四分科員川俣清音君が本分科兼務なつた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計予算外務省所管      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。昭和四十年度一般会計予算中、外務省所管を議題といたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。西村関一君。
  3. 西村関一

    西村(関)分科員 本日はベトナム問題について質問をいたしたいと思っておりますが、それに先立ちまして、先日外務委員会において椎名外務大臣から日韓基本条約仮調印についての報告があり、これに対する質疑応答が行なわれたのでありますけれども、一点この際その問題に触れてお尋ねをいたしておきたいと思います。この基本条約仮調印というものは、外務大臣としてはこれで一応日韓会談妥結端緒についたというふうにお考えになっておられるのでありますか。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国交がまだ正常化しておらない両国関係を正常化しよう、こういうのが日韓会談だと考えております。したがって、両国国民的な機運というものが盛り上がる必要があるのであります。そういう意味において、かような会談前提として親善訪問がかなり意味のあることになる、こう考え向こうに行ったわけであります。会談前提第一歩となるべき基本条約の問題についてきわめて順調に話が進みまして、当事者間のイニシアル交換するというところまで進みましたことは、きわめて機運が熟しておるということを一面物語るものでありまして、私は、これが全面妥結の上において非常に効果があった、こういうふうに考えておるわけでございます。
  5. 西村関一

    西村(関)分科員 親善ムードが高まっておると言われますが、一面において韓国側の野党は一斉に日韓会談早期妥結反対の気勢を示して、大臣がおいでになったときにもかなり騒然たる状態があらわれたのでございます。そういう状態の中でなぜイニシアル交換なさるというところまで急がれたか。基本条約仮調印ということは、日韓会談の本条約が調印せられる場合においてはもちろん国会の批准を求められることば当然でありますが、韓国状態も必ずしも与野党一致してこれを支持するという状態でない、いろいろな懸案、法的根拠の問題とか漁業条約の問題とか、いろいろな問題が残っておりますにもかかわらず、なぜ双方基本条約イニシアル交換なさるというところまでかくもお急ぎになったか。そしてまた、そのようなことが日韓会談妥結への前進となったと言われますが、いろいろな問題が残っておるのになぜ事をそこまで進められたかという点についてお伺いをいたします。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 基本条約の問題は全面会談のまず第一歩だと思うのであります。その問題について両当事者の意見が合意すれば一応締めくくりをつける意味においてイニシアル交換した、その次にはまた次の問題、それに関して合意ができればそれも一応締めくくりをつける、こういうことでございまして、イニシアル法律的効果は別に政府を拘束するものではないのであります。事務的な段階の一つの手続にすぎない。でありますから、話がついたものから一応の締めくくりをする、こういうわけであります。しかも、漁業であるとか法的地位の問題とか、あるいは請求権の問題とか、そういう問題と比べて順序が逆だということはないのでありまして、もしやるなら基礎条約案から始めるのが順序でございます。そういう意味イニシアル交換をしたわけであります。
  7. 西村関一

    西村(関)分科員 基本条約についてイニシアル交換するということが一応日韓会談妥結への道を開いたというふうに政府はお考えになっておられますが、日韓会談についてはいろいろな疑問が一ぱいあるのにかかわらず、そういうことをなさった。それが基本的な諸案件とは別であって、話し合いのついたところから事務的に処理していくことは当然だということでありますが、基本条約イニシアル交換ということは、これは全体の妥結につながる問題だと思うのでありまして、その点は単なる事務的な処理だというふうには考えられぬと思うのでございますが、これは政府としては日韓交渉が全部妥結したというふうにはもちろん考えておられぬでしょうが、しかし、妥結へ一歩進めたというふうに考えておられると理解してよろしゅうございますか。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もちろん、これは各事項事項で合意して、それをまとめて全面会談の結末をつけるということになるのでありますから、そのうちの一つでもこういう締めくくりがつけば、妥結への一歩前進であるということは言えるのであります。
  9. 西村関一

    西村(関)分科員 この問題につきましては、ほかの委員からあと質問があるようでございますから、私は、一応そういうふうな見解をお述べいただいたということで、他の問題に移りたいと思います。それは、ベトナム共和国に対して、昭和三十九年度の予算の中から、閣議決定によって、予備費緊急支出をもって、ベトナム民生安定救済事業をなさったということでありますが、予備費緊急支出までやって、しかも五億三千五百万円と承知しておりますが、どういう理由で、またどういう事情のもとに、またどのような内容をもってこれをなさったか。そしてまた、今後この種の民生安定救護事業についてやっていかれるお考えであるか。お伺いをいたしたいと思います。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体この百五十万ドルの支出は、長い間の戦乱でベトナム国民が非常な悲惨な状況にあるのであります。これらの状況にかんがみて、人道上の見地から、ほとんど難民化しておるベトナムの現状に対してこれを緩和する、そういう趣旨でこの百五十万ドルの支出を決定した次第であります。その内容につきましては政府委員から御説明を申し上げます。
  11. 高野藤吉

    高野政府委員 ベトナムの百五十万ドルの支出につきましては、いま大臣から御説明申し上げたとおりであります。その内容につきましては、医療団の派遣及び医薬品等の代価、それから医療器械等、それから救急箱救急華購入費ラジオ購入費建築資材購入費等でございまして、民生安定のため緊急な援助をしたわけであります。
  12. 西村関一

    西村(関)分科員 この百五十万ドルの金をどういう方法ベトナム共和国にお送りになったのですか。
  13. 後宮虎郎

    後宮政府委員 一括先方政府関係機関に引き渡したわけでございますが、こちらのほうの送出にあたりましては、東南アジア文化協力会を使いまして、これが実質担当機関として、輸送、それから物資の調達に当たったわけでございます。それから、医療団につきましては、当方より長崎医大に当たりまして、長崎医大から三名の医師と二名の看護婦を送りました。
  14. 西村関一

    西村(関)分科員 東海アジア文化協力会というのはどういう団体でございますか。
  15. 後宮虎郎

    後宮政府委員 御承知のとおり、石井光次郎先生を会長として昨年発足いたしました団体でございまして、当初は主として東南アジアから日本に参ります留学生のめんどうを見ることを主眼としておったのでございますが、その後一般的な援助等にも参加できるように定款の改正をいたしまして、広く文化、それから社会事業的な援助等をやる団体になっております。
  16. 西村関一

    西村(関)分科員 この種の援護事業を行なわれるにつきまして、こういう民間団体を通じて多額の国費を、しかも問題の南ベトナムに送られるということにつきましては、何か事情があったのでございましょうか。他の国際機関を通じて送るというような方法、あるいは直接日本政府から南ベトナム共和国政府に送るという方法をおとりにならないで、なぜこの民間団体を通じて閣議決定された予備費緊急支出をそういう形で送られたか、何かその事情は特別な事情があったのでございます。
  17. 後宮虎郎

    後宮政府委員 一昨年韓国に飢饉のときに米をやはり日本側から人道的な見地から送付いたしましたときは、御承知のとおり赤十字社が担当したわけでございますが、このたびも一応赤十字ということを考えたのでございますが、赤十字を使います場合には国際赤十字との関係等についていろいろむずかしい問題があり、さらに、国際赤十字というものの了解を得るために少し時間がかかる、そういうようなことで少し行き悩んでおりましたときに、この団体が、立候補してくれましたので、これを使うことにしたわけでございます。
  18. 西村関一

    西村(関)分科員 私の聞いておりますところでは、日本赤十字社はこれを断わった、断わったので、この東南アジア文化協力会を通じてやったというふうに聞いておりますが、むしろ、いま局長が言われましたように、韓国に米を送った場合に赤十字を通じてやったというように、ひまがかかっても、そういう公の機関を通じてなさるべきではないか、日赤は特別法人でありまして単なる民間団体ではなくこういう半ば公の機関を通じてなさることが至当であろうと思いますが、それらの点について、ただひまがかかったから立候補された団体を通じてやったんだということだけの理由でございますか。
  19. 後宮虎郎

    後宮政府委員 国際赤十字との関係等もありまして、断わったと申しますとあるいは少し強過ぎるかもしれませんが、少なくとも消極的な反応であったわけで、それで他に実施団体を求めました次第であります。
  20. 西村関一

    西村(関)分科員 南ベトナム民生安定救援事業のために医療団を派遣し、またいろいろな資材を送られたということの内容については承ったのでございますが、南ベトナムサイゴン政府だけに、しかも多額賠償金支出が終わった直後に、あるいは終わるか終わらないうちに、これだけの予備費緊急支出をして、これだけの金を使って、なぜサイゴン政府だけにやらなければならなかったか。現に戦争をやっておるところでありまして、そのことは直接にはいろいろな効果が全然ないとは私は申しませんが、しかし、現在戦争をやっておるところの一方の側だけにこの種の援助をするということは、間接的に戦争に加担するというような結果を招くのじゃないかということを憂えますが、その点はいかがでございますか。
  21. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 南ベトナム政府からの要請もございましたので、救援の手を伸ばしたわけでございます。
  22. 西村関一

    西村(関)分科員 私の聞いておりますところでは、アメリカジョンソン大統領南ベトナムサイゴン政府を通じまして三十四カ国に要請をしておる、そのうち十九カ国がこの要請にこたえて返事をいたしましたが、他の十五カ国は一切返事をしなかったというふうに聞いておりますが、そのいま大臣の言われました要請は、どういう意味要請があったのですか。要請内容をお伺いしたいと思います。
  23. 後宮虎郎

    後宮政府委員 七月十五日付のベトナム共和国の当時のカーン首相から池田総理あての書簡によりまして、おのおのの国の立場に応じて可能な援助を、自由陣営としての自分の国の独立のために戦っているベトナムに与えてほしい、こういう要請があったわけでございます。
  24. 西村関一

    西村(関)分科員 これは明らかにジョンソン大統領サイゴン政府を通じて三十四カ国に要請をしておるというのでありまして、いわばアメリカ要請によってなされたということだと思うのでございますが、そのことにつきまして、現地に派遣せられた長崎医大医療班の方が、サイゴン市民病院において四カ月間非常に御苦労なさって、いい働きをなさったということについては、その労苦に対してはもちろんこれを認めるにやぶさかではございません。現地でたいへん感謝されておった、非常にいい働きをしていただいて、現地の住民が非常に営んでおったということは、私も聞いてまいったのであります。サイゴン病院院長のごときは涙を流さぬばかりにして感謝をしておりました。その限りにおいては、私はいい働きをせられたと思うのでございますが、こういう働きをするということは、ベトナムにおいては戦争をしている、この戦争のさなかにおいて一方の側のサイゴン政府側医療事業に協力するということは、それだけサイゴン政府側に軍医の関係医者が足りなくなってきているということから、医学、医術に協力するということは間接的に軍事目的に関与するというようなことに相手方からとられてもいたしかたがないじゃないか、この時期にそういうことをやるということ自体がやはり問題があるのじゃないかと思いますが、その点はいかがでございますか。
  25. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあゲリラ戦と言われておりますが、それが行なわれていることはむろん承知しております。いわゆる国と国との全面戦争というようなものではないのであります。それにかかわらず、とにかく長い間混乱のちまたになつて非常に民生が疲弊をしておる。そこで、要請がありましたので、同じ自由陣営としてこれは当然救援の手を延ばすべきである、さような判断のもとにいたした次第であります。
  26. 西村関一

    西村(関)分科員 もちろん宣戦布告あっての戦争ではございませんが、内戦の様相ではございますけれども、このベトナム戦争の実態というものは、大臣承知のとおり、国際的に微妙な関係のもとにあって、非常なむずかしい、けわしい問題を含んでおるのでございまして、そしてまた、ゲリラ戦と言われますけれども、事実連日連夜南ベトナムにおきましては苛烈な戦闘が行なわれている。宣戦布告のない戦争が行なわれている。そうして、その戦争様相というものは、一方の南ベトナム民族解放戦線側が非常な進出をしてきているということは、これはアメリカ側も認めておるところである。その全面積の三分の二以上あるいはその八割までが南ベトナム民族解放戦線の側の支配のもとにある、人口の二分の一までは南ベトナム民族解放戦線側の手にあるということが言われておるのでございます。これはサイゴン政府側主張南ベトナム民族解放戦線側主張との間には食い違いがございますけれども、しかし、第三者のアメリカ新聞記者等の報道によりましても、その比率はむしろサイゴン政府側に不利になってきておる、民族解放戦線側が勢力を増大しておるというのが、やはりまぎれもない事実だと思うのでございます。そういう苛烈な戦闘が行なわれておる地域にことさらに医療援助を行なう、あるいは経済援助を行なうということは、これはやはりジュネーブ協定精神にもとるものではないか。そのなさること自体長崎医大の方がやられた働きそのこと自体は、人道的な気持ちで医師の方も看護婦の方もりっぱに任務を果たされたと思うのでございますが、そういうことを行なわしめる日本政府のやり方それ自体に対して、今日のこの問題の中にこれを投じていくということは少しやはり問題があるのじゃないか、間接的にジュネーブ協定精神にもとってくるのじゃないかということを私は心配するのであります。その点につきまして重ねて大臣の御所信を承りたいと思います。
  27. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は、このゲリラ戦に悩んでおる民生救援の手を伸べることは一向差しつかえない、かように確信しております。
  28. 西村関一

    西村(関)分科員 悩んでおるのは、ゲリラ戦に悩んでおるところのサイゴン政府側人民だけではございません。その二分の一以上を占める、八割以上の地域にあるところの南ベトナム人民全体がやはり悩んでおるのでございます。その一方の人民だけが悩んでおるのじゃございません。南ベトナム全体の人民が悩んでおるのでございます。いまの自由主義陣営の中にありまして、サイゴン政府の側だけにしか援助ができない日本政府立場もわかりますけれども、何とかくふうをこらして、南ベトナム民族解放戦線支配のもとにある側の人民に対してもこういう救援の手を差し伸べるというお考えを、そういう創意くふうをなさるということであるならば、私はあえてこういうことをお伺いしないのでございますけれども、ただゲリラ戦に悩んでおるところの人民を助けることだけが正しいことだということでは問題の前向きの解決にはならないと思うのでございますが、いかがでございますか。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 解放問題に賛成であるとかあるいは反対であるとかいうような人民の区別をして、そうして救援の手を伸べたわけではございません。ただ、実際問題としては、ゲリラ地区には危険で入れない。でありますから、その結果どういうことになりますか知りませんが、とにかく人比の色合いを区別してやったことではないのであります。
  30. 西村関一

    西村(関)分科員 もちろん、そう簡単に入れるとは私も申しません。しかし、そういう姿勢を示すことによって、南ベトナム民族解放戦線側人たちの心をやわらげることもできるのじゃないかと思うのです。そうしてまた、そのことば、この苛烈な南ベトナムにおける戦争を平和に導く一つ端緒にもなろうかと思うのです。そういう姿勢日本政府がとるということは、私は平和への道に通ずると思う。そう簡単にベトコン地域に入れるものだとは私も考えませんが、しかし、そういう姿勢日本政府がする、あるいはまた北のベトナム民主共和国に対しても、いまは直接の外交交渉はございませんけれども、やはり、ジュネーブ協定によって、民主的な選挙によって一つになるということが約束せられておるのでございます。いまは不幸な事態に立ち至っておりますけれども、そういう状態にあるベトナムのごく一部分のサイゴン政府治下にあるところの人民に対する援助をなさるということにつきましては、私は重ねて出しますが、なさることそれ自体についてはあえて私は根本的に反対をするものではございませんが、しかし、そういう政府姿勢それ自体に問題がある。間接的にジュネーブ協定精神に違反するものではないかということを心配するから、このことを伺っておるのでございます。さらに、私が現地に参りまして見たところでは、多数の高価な医療器械医薬品が送られておりますが、全然——全然と言っては言い過ぎてあるかもしれませんが、使い方がわからない。また、薬の内容については、日本語と英語で書いてございますから、向こう医師や薬剤師の方が十分にこれを読みこなせとないというようなことから、また、器械取り扱いについても習熟しないために、全部それが倉庫の中にほうり込んである。こういうことでは、せっかくいま大臣の言われましたような日本国民の好意が十分に通じない。四カ月の医療団の努力は非常なものであったということを私は認めますが、しかし、多数の医薬品機械器具倉庫の中にほうり込んであって、院長は、何とかこれを使えるように早くしたいものだ、しかしどうにもしかたがないというようなことを言っておりましたが、そういう点に対するあとの親切な取り扱いもできていないということでは私はいけないと思うのですが、その点はどうでございますか。
  31. 後宮虎郎

    後宮政府委員 御指摘のようなケースも若干あったようにも聞いております。ただ医療器械薬品等は、一応先方と打ち合わせまして、先方要請してきました品目のものを送ったわけでございます。それから、医療器械につきましては、先方もなかなか使いこなせないので、もっと日本医者があそこに残留して訓練してほしいというような希望もございましたが、これは予算その他御本人たちの一身上の理由でできませんでしたので、かわりに、向こうから数名、来会計年度コロンボ・プランで呼びまして、その医療器械の使い方等訓練する、そういう方法向こうといま協議中でございます。
  32. 西村関一

    西村(関)分科員 それから、トランジスターラジオを二万台送られたということでありますが、これはどういう目的トランジスターラジオを二万台送られたのでしょう。これは向こう政府からは十万台という要求があったが、二万台に減らされた。これは予算関係でそうせられたと思うのですが、要求があったから送ったというのでしょうか、あるいは実際にトランジスターラジオが、いま大臣が言われましたような戦禍に苦しんでいるところの地方人たちに必要だという見地から送られたのでしょうか。その点はどうでございましょう。
  33. 後宮虎郎

    後宮政府委員 これにつきまして、ああいうふうに治安が乱れておりますと、中央政府のいろいろな布告とか新しい法律とか、そういうものがなかなか地方に徹底しない。ラオスでも同じでございますが、ああいう交通機関等の不便なところは、かえってラジオというのが案外一番近代的な、ラジオ一つの行政の機能を末端まで伝達するための器具になっている。そういうことから要請がございました。それと、もう一つはやはり、ラオスでも同じでございますが、これによりて地方の民衆の教育をやっております。この両方に備える用に充てるために、民生物資として送付したわけでございます。
  34. 西村関一

    西村(関)分科員 おそらくそういうことだろうと思うのでありますけれども、このラジオ向こう政府のどこに送られたというと、戦争心理省に送られておるわけですね。私が現地で確かめたところによりますと戦争心理省つまり戦争目的のために、サイゴン政府側心理作戦の用に使われるということは明らかだと私は思うのです。もちろん、日本政府としては、向こう政府に送って、向こう政府がどういうふうに使おうと、それは要請されたものを送ったのであるから、こちらの関知するところではないと言われますけれども、向こう政府戦争心理省に送られておる。これは心理作戦の用に供せられるということは明らかでございまして、これは戦略村の中にある住民に配置されて、そして心理作戦の用に供せられる。間接的にはこれは戦争の用に供せられる、また、それに日本政府は加担したという結果を生ずると思うのでございます。ただ単なる政府布告等を聞かせるためだ、政府の方針を聞かせるためだというのじゃない。現に戦争しているところですから、やはり戦争ということになれば、心理作戦というものは重要な要素を持つことは明らかでございます。そういう用に供せられるということが、全然日本政府としてはわからなかったはずがないと思うのです。現に戦争心理省に送られておる。そしてそこから配布されておる。だからといって、やはり北のハノイ政府からの放送ももちろん聞くでありましょうから、それはそれぞれ人民の意思によって自分の好むところのスイッチを入れますから、必ずしもサイゴン政府要請しているようなぐあいに使われてないかと思いますけれども、しかし、日本政府の送ったものがそういうことのために使われる可能性が非常に多いということについて、私は心配をするのです。戦争の用に供せられるということのために、日本政府経済援助という名目のもとに加担したということを現に言っているのです。現にハノイ政府においてはそのことを言っているのであります。そういうことに対して、どういう弁明ができるでしょうか。
  35. 後宮虎郎

    後宮政府委員 先方の当初の要請では、文部省と厚生省で使うということで、その説明に従って送ったわけでございますが、その後、御指摘のとおり、一部心理戦争省に行ったものもございます。しかし、大多数は当初の説明どおり厚生省等に送られたと承知しております。
  36. 西村関一

    西村(関)分科員 どちらに送られたにいたしましても、いま私が御指摘申し上げたような、そういう戦争している地域トランジスターラジオがどういう用をなすかということにつきましては、関接に戦争の用に供せられるという心配は多分にある。ある国は軍用犬を送っておるというところもありますが、軍用犬を送ったが翌日になるとみな骨と皮になっておった、全部食われてしまったというようなことも現地で聞きましたが、それは実際サイゴン政府の思っているようなぐあいに必ずしもこのトランジスターラジオが使われてない、北の政権の放送もじゃんじゃん聞いているというふうに私は思いますけれども、いずれにしても、戦争をしている地域でございますから、これはもうサイゴンから十キロも離れれば戦争しているのでございます。サイゴンにも砲声がどんどんとどろいておるような事態でございますから、そういうようなところでこのトランジスターのラジオがどういうことのために使われるか。ただ厚生省とか文部省とか、教育とか慰安とか娯楽とかいうことだけでなしに、戦争地域に送られるトランジスターラジオというものがどういうことに使われるかということくらいは、これは日本政府も十分にわかると思うのです。第一こういう援助をすること自体が私は問題があると思うのでございますが、しかし、援助をするといたしましても、なぜトランジスターラジオのごときものを送ったのか。たしか二万台、総額四千九百万円だと思いますが、そういうような多額な金を使っている。ほんとうに困っておるところの南ベトナム人民の救済のためにするというなら、もっと他に送るべき物資があったのじゃなかろうかと思うのですが、どうして、要請があったからといって、それをうのみにして、こういうものを送られたか、ちょっと理解に苦しむのであります。いかがですか。
  37. 後宮虎郎

    後宮政府委員 実は、このラジオ要請がございまして、検討いたしました。先生のおっしゃいますような見地からも検討いたしました。ことに予備費から出すのですから、はたして緊急と言えるかどうかというような点につきまして大蔵省ともいろいろ協議したのでございますが、たまたま当時新潟の大地震がございまして、あの治安と申しますか、交通通信がとだえた新潟でトランジスターラジオが非常に役に立ったということがわかりまして、やはり、交通通信の乱れがちな現地では行政機能等を維持するためにこれは必要だという先方の説明を受け入れて、送ることにした経緯がございます。
  38. 西村関一

    西村(関)分科員 今年におきましては、どういう援助をなさるお考えでございましょうか。
  39. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ケース・バイ・ケースでこれは取り扱うものでございまして、まだ何もきまってないのであります。
  40. 西村関一

    西村(関)分科員 まだ何もきめてないのだが、何かやるということはきめておられるのですか。
  41. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体の方針といたしましては、日本は、とにかく、特にアジアのうちにおいても東南アジアはあらゆる面において日本と非常な関係を持つ地方でありまして、これらの地方の平和と繁栄は、ひいては日本の平和と繁栄につながるものでございますから、そういう見地から、日本として応分のそういう建設的な協力をして、そうして一そう安定を招来する。こういうことは、大局的な見地から日本のこれら地方に対する姿勢でもあるのであります。しかし、まだどこで何をどうするかというような具体的な問題についてはきめておりません。
  42. 西村関一

    西村(関)分科員 やはり予備費から出されるお考えでございますか、そういう場合。
  43. 後宮虎郎

    後宮政府委員 いま大臣が御答弁になりましたとおり、特にこの目的のために予算費目がとってございませんから、もしこういうグラントのかっこう、贈与のかっこうで援助が行なわれるということになりますれば、いまのところ使える費目は、予備費だということでありますが、いまのところ具体的な計画はまだ何も出ておりません。
  44. 西村関一

    西村(関)分科員 これは、昨年も予備費支出についてはわれわれは反対をし、問題にしたのでございますが、こういうやり方で、特にベトナムのような問題の起こっておる、戦争が日増しに激化している地点に対して予備費を使うということは、これは問題がある。きょうは予算委員会でありますが、そういう点についても、もし政府が確固たる信念のもとにやるというならば、はっきりと予算に組んで、そうして国会の議決を経てやられるということが私は至当だと思う。そういう点に対しても、何かこそこそと、非常に大事なことを、予備費緊急支出閣議決定でやるということば、これはやはりわれわれとしては問題があると思うのです。いまの大臣のお考えでは、これに対してはあまり積極的な考えを持っておられないようでありますけれども、しかし、ケース・バイ・ケースで要求があれば検討してやることもあり得るという御答弁のようでございますが、現に、先ほど私が申しましたように、三十四カ国に要請をしたが、十九カ国しか返事がなかったという状態で、返事をしなかった国があったわけでありますから、そういう点に対して、もっとベトナム戦争を終結させるにはどうすればいいかという大局的な見地に立ってものごとを判断していくべきじゃなかろうかと思うのですが、そういう点、椎名外務大臣に、基本的な問題として、べトナム戦争終結のために日本政府としてはどうすべきであるかという点について、お考えをお伺いしたいと思うのです。アメリカが最近三回にわたって北ベトナムベトナム民主共和国地域を爆撃いたしました。報復爆撃と言っておりますが、アメリカジュネーブ協定に参加しておりませんけれども、しかし、あのときの単独宣言の精神から申しましても、報復爆撃などするということがジュネーブ協定精神に違反していることは明らかでございまして、そのことは妥当であるというようなことを大臣は答弁しておられるのですが、そういうことはこの戦争の終結の究極的なかまえだとは言えないと私は思うのです。ただ単にゲリラ戦に困っておるところの人民を救済するために物資援助を行なうのだ、医療援助を行なうのだ、それが日本政府の当然の義務だというようなことだけでは、このまかり間違えばたいへんなことになりかねないベトナム戦争に対して、アジアの善隣友好外交を主張しているところの日本政府として、ただアメリカ政府の言いなりになっておるということだけでは、アジアの一員としての日本外交の趣旨に沿わないと思う。もう少し前向きの姿勢で、自主的なかまえで、このベトナムの悲劇をどう最小限度にいまの時点において食いとめるかということについて真剣に考えていただきたいと思いますが、その点大臣はどうお考えになっておられますか。
  45. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 問題は、武力によって一定の政治目的を達成しようというようなことは賛成をいたしかねる。まあ問題はそういうところから発生しているのではないかと思います。御指摘のように、これらの内戦をすみやかに平和的な方法によって解決することが急務であると思いますが、それにはやはり順序があるように思われます。まず平和的な話し合いができるという環境をつくる必要がある、こう思うのであります。しかして、さような場合には、やはり、ジュネーブ協定の趣旨によりまして、これらの関係国の間で十分にまず討議されることが必要であろうと思います。日本としては、アジアの一員として、要請があれば、できることはいかなることでも協力するにやぶさかではない、かような考え方を持っておる次第でございます。
  46. 西村関一

    西村(関)分科員 大臣は、ジュネーブ協定関係国が国際会議を開いて、武力によらず、話し合いによって事態の収拾をはかる、解決をはかるということが望ましい、日本政府としても要請があるならば協力するにやぶさかでない、こういう御趣旨の御答弁でございましたが、そういう大臣の言われるような点については基本的に私も賛成でございます。どうかそういうかまえで、アメリカが報復爆撃をやったことは正当な自衛の措置だというようなことだけをおっしゃらないで——そういうことだけでは私は解決にならないと思うのです。報復爆撃をやればやるほど南ベトナム民族解放戦線軍の士気を鼓舞するだけで、これでもって事態が終息するといったようなことなどは考えられない。それから、第一、報復爆撃をやったのは、北のハノイ政権の軍事基地、集結基地、訓練基地をやったのだ、と言われますが、実際北のハノイ政権の軍隊が南に浸透してきたという証拠が一体どこにあるかということも私は問題だと思うのです。そういうどちらがジュネーブ協定に違反したかということについては、まだ結論が出ていない。両方がやり合いをやっているときに、これを一方的にアメリカの言い分だけにそうだと言うようなことでは、私は解決がつかないと思うのでございます。そういう点に対しても、外務大臣は、アメリカの北への報復爆撃は正当な自衛の措置として法的な根拠があるというふうにお考えですかどうですか。
  47. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御承知のとおり、日米安保条約というものが存在しておりまして、極東の平和、安全というものについては両国の間に共通の関心があるのであります。さような意味におきましても、やはりその締約国の処置、行動に対して一応これを信頼するのは当然のことだと思うのであります。
  48. 西村関一

    西村(関)分科員 きょうは時間がありませんので、また外務委員会で詳しくお伺いをしたいと思いますが、国連憲章の五十一条には自衛権の規定がありますが、この国連憲章五十一条の自衛権の規定によってアメリカがやったという法的根拠があるかどうか。「武力攻撃が発生した場合」ということでございますが、はたして武力攻撃が北からいつどの地点でどういうふうに行なわれたという証拠があったかどうか。そういう点に対して、日本政府日本政府なりに検討して、アメリカが報復爆撃をやったことは自衛の手段だというふうに結論づける、ただ日米安保条約の締結国であるところのアメリカを信頼するのだということだけでは、一方アジアの中の一員としての日本外交の自主性を常に主張しておられる政府としては、こういう現実のきびしい問題の処理に対してはあまりにも無定見といわなければならぬと私は思うのでありますが、その点いかがでございますか。
  49. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さきにお答えしたとおりに考えております。
  50. 西村関一

    西村(関)分科員 これはひとつあらためて、きょうは条約局長もお見えになっておりませんし、外務委員会でこの点はお伺いをいたしたいと思いますが、私の与えられております時間がもうございませんから、最後に結論として大臣にお伺いをしておきたいと思います。先ほど来いろいろ伺っておりますように、日本政府ベトナム共和国に対して経済的な医療的な援助を行なうということにつきましてもいろいろ問題がある、また、南ベトナムに対してだけ賠償金を払うということ自体にも問題があるということで、われわれは反対をしてまいったのでございますが、さらに、その賠償金の支払いが終わるか終わらないうちにまたこういう経済援助を行なうということは、一方の北のベトナム民主共和国を刺激する、そしてまた、問題をあとに残すということになると思うのであります。戦争終結への道に通じない問題が多分に含まれておると思うのでございますが、こういう点に対しまして、先ほど来大臣は、ゲリラ戦に困っているところの人民に対して救援の手を差し伸べるのは当然の義務だという考えのもとに御答弁がありましたが、将来、先ほど私が申し上げましたように、困難ではありましょうけれども、全南ベトナム人民に対して、あるいは国際赤十字社の手を通じて救援の手を差し伸べるとか、あるいはまた、外交関係はございませんけれども、北のベトナム民主共和国に対しても何らかの交流を行なうとか、そういう事柄を通じて、今日の非常に苛烈をきわめておりますところのベトナム戦争の終結に対して日本政府は創意くふうをはらっていく、前向きの姿勢で解決に努力していくという考え方を持っていただきたいと思うのでございます。また、ベトナムだけではなくて、カンボジアにおきましても、ラオスにおきましても、いろいろな問題がございます。カンボジアにおきましても、医療センター、農業センター、畜産センター等が日本援助によってなされておる。私もそのうちの医療センターと農業センターを見てまいりました。ああいう僻地で、日本の技術者の方、医者看護婦の方々が非常に苦労をしてよき奉仕をしておられるという状態を見てまいりました。特に、カンボジアのごときは中立主義をとっている国でございますから、こういう国に対して援助を行なうということは問題は何もないと思う。ラオスに対しましては、日本の商業べースによっていろいろな事業が行なわれておる。ビエンチャンの水道事業などもいい仕事をしているということも私は見てまいったのであります。そういうようなことで、日本がいろいろな形で東南アジアの諸国に対して、インドシナの諸国に対してそういう援助の手を差し伸べる、あるいは相互協力の手を差し伸べていくということは、私は願わしいと思うのでございます。いまプノンペンにおきまして、インドシナ全体の平和を来たらせるための人民会議が開かれておる、これも一つの注目すべき動きであると思うのでございます。こういうインドシナ諸国におけるいろいろな動きの中にあって、日本政府は独自の立場に立って、特にアジアの中の日本としてどういう協力の手を差し伸べていくか、どういう平和への協力をしていくか。ただアメリカの言い分だけをそのまま、日米安保条約の同盟国の相手国としてアメリカを信頼していくのだということだけでなしに、何とかこの非常に悲惨なインドシナ戦争を一日も早く終結せしめるために、ジュネーブ協定の条項が守られて一日も早く平和が到来することのために、北のハノイのホー・チミン政権に対しても——あるいは、サイゴンの政権は、いま御承知のとおりあのようなそれこそ不安定きわまるところの状態に立ち至っておる。軍人たちは権力の争奪に日も夜も足りないという状態で、民心は極度に不安におちいっておる。こういう状態の中で、日本アメリカに対しても、一日も早く軍事的な行動をやめて、話し合いの中で平和的にベトナム戦争を終結せしめる手を打つべきであるというくらいのことを言っていいんじゃないかと思う。戦争によっては、武力によっては絶対にこのインドシナの問題は解決しない、ベトナム戦争は終結しない、これはだれもがそう考えておるのです。私はサイゴンにおきましてベトナム・プレスという新聞社に編集局次長に会いましたが、もう十年もアメリカ援助をしてどんどんベトコンをたたけばベトコンはまいるかもしれぬけれども、十年はおろか一日たりとも同胞同士血を流し合うことは私は耐えられぬと言っておりました。南ベトナムにおける全部の人たちがもう戦争は一日も早くやめたいという気持ちになっているときに、アメリカが武力でもってこれを解決しようというようなことは、問題をいよいよ大きくするだけであって、終結への道をいよいよ遠くせしめるだけで、決して本来の解決の道にはならぬと思うのであります。そういう点に対しまして、日本政府としては、アメリカに対しても、また北のハノイのホー・チミン政権に対しても、アジアの平和のために独自の立場に立ってものを言うという毅然たるかまえ、しかもそれは国連という場があるのでございまして、ウ・タント事務総長も、国連の所掌事項ではないけれども関係諸国の国際会議を開いて一日も早く事態を収拾すべきであるということを言っているときでありますから、そういう点に対しても日本政府はもっと目を開いて、もっと真剣なかまえで、私は必ずしも外務大臣が不真剣だとは言いませんけれども、もう少し前向きの姿勢で問題の解決に当たっていただきたいと思うのです。最後に大臣の御所信を承りまして、私の質問を終わります。
  51. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、アジア、特に東南アジアの平和、政治的安定ということは、日本に直接つながる問題でもありますので、これらの地方の平和回復、政治的安定ということはいかなる国にも増して日本が望んでおるところであります。この日本目的、希望というものに向かって日本が一体何ができるかということになるのでありますが、御承知のとおり、軍事的な行動は一切できません。しかしながら、こういう混乱を静めるためには、御指摘のとおり、武力だけでは解決しない、やはり平和的建設というものが非常にものを言うのであります。場合によっては武力よりもはるかに平和建設に協力するという行き方のほうが効力を発揮する場合があるのでございますから、日本といたしましては、経済力あるいは文化力というものによってこれらの地方民生安定等に十分な協力をして、一日も早く平和の訪れるようにいたしたい、かような念願を持っておるのであります。ただ、さしあたりとしては、はたして話し合いによって平和的な解決ができる段階であるかどうか、これについてはいろんな見方がありますけれども、なかなかそういう段階ではない。しかし、そういう段階がいずれまいりましたならば、やはりさしあたりジュネーブ協定関係国によってこの問題がまず始められる、手始めにそういう行動がとられるべきである、かように考えるのであります。日本といたしましては、その間に要請があればアジアの一員としていかなる協力も惜しまない、かような考え方をいたしております。
  52. 中野四郎

    中野主査 石田宥全君。
  53. 石田宥全

    ○石田(宥)分科員 大臣にお伺いしたいのでありますが、いま西村委員からもお話がありましたように、東南アジアには非常に大きな問題が山積をいたしておるのでありまして、きわめて多角的に問題があるのでありますけれども、私は、そのほんの一部分である日本青年海外協力隊の問題について、特に本年度は国会の冒頭に総理大臣もこの問題に言及されておりますし、また、昨年来調査費があがって本年は若干の委託費というものが計上せられておるのであります。そこで、いわゆる東南アジアにおける平和部隊のあり方によっては日本の将来の運命に大きくつながるものとして、その問題にしぼって外務大臣にお伺いをいたしたいと思うのであります。今日、外務省からも資料をいただいたのでありますが、東南アジアでは平和部隊コンクールのような観を呈しております。特にインドなどには非常にたくさんの人たちが参っておりまして、ここではいろいろ批判もあり、現地人から歓迎されておる向きもあるようでありますが、しかし、インドにおけるアメリカの平和部隊の中には、宗教心に徹した一つの信仰と信念を持って、現地人と同じ生活をし、同じく作業をし、そういう状態の中に働き得る青年は歓迎されておるようであるけれども、少し大国意識を持ったり、あるいはおれは教えてやるんだというような気持ちを持っておる青年は、かなり鋭く批判をされておるようであります。そういう点から見まして、今度の政府が行なおうとする予算では、七千六百七十九万円ほどでありますが、これは事業委託をしようとしておる。この事業委託をしようとしておられる日本青年海外協力隊の目的、それから組織、隊員の資格、派遣の条件、派遣国及び活動の分野、そういうものについて、その本質が将来に及ぼす影響が大きいと思いますので、この点をひとつ、これは大臣でなくて事務当局でけっこうですから、詳しく伺っておきたいと思います。
  54. 吉野文六

    ○吉野説明員 海外技術協力隊の隊員の資格その他につきましてお答えいたします。元来、海外技術協力隊を発足させた趣旨は、開発途上にある諸国の要請に基づき、技術を身につけた心身ともに健全な青年を派遣し、相手国の人人とともに生活し、その中に入りながら経済的、社会的開発に協力したいというのがその趣旨でございます。わが国から送ります海外技術協力隊の隊員の資格につきましては、特に学歴とかそういうことには重点を置かない所存でございます。もちろん、海外に行く以上、ある程度の語学の知識は前もって備えていなければなりませんが、その点につきましても、派遣する前に約三カ月ばかり英語ないしは現地語の訓練をいたします。したがって、その程度の教養なり学歴は必然的に持たざるを得ないものだと考える次第であります。それから、先ほど申しましたように、心身ともに健全であることが何よりであり、かつ刻苦勉励に耐える体力というか、体格あるいは体質を持つような青年でなければならぬことは申すまでもございません。さらに、その上に、日本の青年が出ていって外地において何ができるかということを考えますと、まず第一に、開発途上にある国民の方々と協力して、その国の開発に努力するということでありますから、必然的に、ある程度の技術を備えていなければならないと思います。この点につきましては、専門家の派遣のごとく高度の技術を必要としないことはもちろんでありますが、たとえば、農業の技術、あるいは修理工の技術、あるいは日本語を教えるような場合には日本語を教える経験を持っておる、こういうような技術を持っていないと、単に熱意と精神力だけで相手国の青年ないしは相手国の国民の親善なり理解をかち得ることはできない。なお、われわれの特に重点を置く技術としては、たとえば水産技術、これは日本−の青年の先方に与え得る技術の一つだろうと思いますが、それから、中小企業、医療、家内工業、こういうようなものを考えておる次第でございます。
  55. 中野四郎

    中野主査 ちょっとこの際主査より御注意申し上げますが、時間が非常に制約されておるので、答弁を簡潔に願います。
  56. 石田宥全

    ○石田(宥)分科員 あなたは質問に答えていないのです。ほかのことを言っておるのです。私はあとで問題にするつもりですけれども、この事業委託をしようとする団体目的や組織や隊員の資格及び派遣の条件というようなことを聞いておるのですが、時間がないからもう触れませんけれども、この計画とコロンボ・プランの関係はどういう関係にあるのか。それから、この団の中には各種の民間団体が入っており、たとえば日本健青会、友愛青年同志会、産業開発青年協会その他労働組合が含まれておると言われておるのだが、これらの団体の性格や活動内容が実は知りたいのですが、時間がありませんから、きわめて簡潔に要点だけを伺いたいし、労働組合が入っていると言われるのですが、どこの何という労働組合なのか、これだけをちょっと簡単にお聞かせ願いたいと思います。
  57. 吉野文六

    ○吉野説明員 まずコロンボ・プランとの関係でございますが、一応形式的には無関係でございます。すなわち、コロンボ・プランによる技術協力はコロンボ・プランの技術協力として行なっており、海外技術協力隊の協力は別個の協力として、もちろん、コロンボ・プランによってわが国がすでに協力をしておる国々につきましては、その点を考慮する次第でございますが、直接関係はございません。なお、事業団に委託して行なう協力隊の派遣につきまして、種々の団体が参加ないしは関係するであろうということは、いまだこの点については何ら計画もできておりませんし、それから、具体的に団体の申し込みその他もございません。
  58. 石田宥全

    ○石田(宥)分科員 そういたしますと、昨年はわずかであるけれども調査費が計上され、総理府でも計上され、それに海外調査費というものが外務省で千五百カ月ほど組まれておって、その調査に基づいて本年度の予算が計上されたと理解をしておった一わけでありますが、そういたしますと、まだ目鼻がついていないということですか。
  59. 吉野文六

    ○吉野説明員 御指摘のとおり、昨年度調査団を数回にわたりまして出しました。その結果を目下研究中でございます。
  60. 石田宥全

    ○石田(宥)分科員 それではお話しにならないのです。昨年の調査団の中には国会議員も参加しているわけですが、どこの国からも歓迎をするという意向がなかった。なかったしまた平和部隊などというものを派遣すべきでないという強硬な意見を述べておる班長もおられるのですが、これは御承知だと思うのです。このことをなぜこういうふうに問題にするかというと、実はこれは海外でも問題になっておるのですね。日本の平和部隊編成に対しては外国の新聞や雑誌にも取り上げられておって、あなたはこれをあいまいにしておられるけれども、日本青年海外協力隊という民間団体の中にはかつての右翼団体の指導者がおって、そして大東亜共栄圏的な思想を持つ者がおると、外国の新聞、雑誌で指摘しておる。そういたしますと、私も昨年東南アジア十カ国ほど回ってまいったのでありますが、さすがに外務省の公館はそれをあまり大きくは言っていないけれども、技術協力などに行っておる人たちや、あるいは民間団体人たちの声を聞くと、日本の外交を見ておると、どうも日本の外交というものはこれは大臣よく聞いておいてくださいよ。日本の独自の外交じゃなくて、アメリカ外交の手先をつとめておるのじゃないか、いろいろな経済援助などをやっておるけれども、日本のマーケットの拡大のためのもの以外のものではないではないか、十カ国ほど回ったのですけれども、これはもう至るところその声が高いのです。いまここであなたはあいまいなことを言っておるけれども、私は、ある程度進んでおるのだと思っておる。実行予算が編成されておるのだから。しかも、昨年のうちに外国の新聞や雑誌がそのことを伝えておる。だから団体の性格というものをもっと明確にしなかったならば、いま私が指摘したような、外交はアメリカの手先の外交であり、経済援助日本のマーケット拡大のための援助ではないかという圧倒的な批判の中に、さらに大東亜共栄圏的思想を持っておるような団体人たちでいわゆる平和部隊などというものを派遣するというようなことになったならば、日本は四面楚歌になる可能性が十分ある。技術協力の問題については、コロンボプランとの問題についても問題がありますが、これはほかの委員がこの問題を取り上げるようでありますから、私はこの問題には触れませんけれども、そういう点で外務大臣、これはいまお聞きのとおりなんですね。なぜ一体実行予算を組んだのです。目鼻がついていないときになぜそんな実行予算を組んだのですか。しかも、調査費をちゃんとつけて調査をして、具体的な計画のないところに予算をあげて総理大臣が本会議の所信表明で施政方針演説でちゃんとやると言っておるじゃないですか。大臣、どうですか。
  61. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 来年の一月ごろに派遣する、実際に即してそういう実行計画をいまつくりつつあるわけでございまして、事業団を通じてもっぱら技術協力という形で、平和部隊というような行き方でなしに、技術協力、技術に即して低開発国の開発に協力する、そういう性格のものにしてまいりたいという意味でございます。
  62. 石田宥全

    ○石田(宥)分科員 ですから、コロンボプランというのは大体技術協力を担当する一つの計画であって、そのもとにかなり多面的な技術家が派遣されておりますね。だから、その関係を私は聞いたら、それとは直接関係はないのだ、こういう話なんですね。それから、三カ月くらいの訓練でというのですが、三カ月くらいの訓練で一体何ができますか。一体何ができるとお考えですか。現在派遣されておるインドにおけるいわゆる模範農場、四カ所ありますね。今年度はまた四カ所ふやされることになっておる。そこの四カ所のうちの二カ所の責任者と懇談をしました。ところが、彼らはこう言っておるのです。われわれのいわゆる模範農場なるものは成功しておる、われわれのやっておること自体は成功しておる、しかし、われわれがインドにおける宗教の問題やあるいはカースト制度というようなものが十分理解されないままに派遣されたために、自分たちがいまやっておることはまことにりっぱにできておるということは向こうも知っておるけれども、向こうの指導者というものが、カースト制度の関係などでみずからたんぼに入ることをしないと言うのです。あぜの上におって、そして自分よりもずっと階級の下のそういう者だけを動かそうとしておるので、はたして一体これが浸透させることができるかどうか疑問であって、われわれが引き揚げたならば消えてなくなるおそれすらある、こう言っておるのです。ところが、さきの答弁では、三カ月くらいの訓練で、こういうことです。一体、三カ月くらいで、ことば一つだって、あるいはインドを例にとれば宗教やカースト制度その他でもなかなか複雑ですよ。ビルマなんかに参りましても、最近はインド人の排撃が非常に盛んに行なわれておって、なかなか動揺しておる。一体、外務省の在外公館の諸君はどこか一部分だけを見て全体を見ないでおるのではないだろうか。全体をよく把握してないのじゃないだろうか、農村の実態というものを。だとすると、これは軽々に行なうべき事柄ではないのではないか。なるほど、従来のコロンボ・プランで行っている技術者の様子を見ますと、非常に専門的、高級的であって、向こう人民との接触が非常に少ないのです。だから、向こうのどこの国でもそうですけれども、そこの国の人民との接触が断たれたような技術陣すらあるわけです。たとえばフィリピンにおける水稲の研究所のごときはその一例でありますが、そういう点から見て、やはり私は、この海外骨年技術協力隊というような性格のものを考えることはよろしいと思うけれども、もし一歩間違ったとするならば、−日本東南アジアにおいて孤立をする運命に追い込まれるおそれが多分にある。だから私はこれをここで取り上げておるわけです。それから、もう一つここで大百に伺いたいことは、外務省からいただいた資料によると、中国、いわゆる中華民国の派遣隊ですね、示範隊と言っておるわけですが、示範隊の点についてはどうも実態を明らかにしていないのですね。ただここには、隊長一名、副隊長一名、隊員八ないし十六名と、こう書いておるんだが、これは一体どの範囲に中華民国の示範隊というものが東南アジアには派遣されておるか、そうして、同時に、それと日本の海外派遣隊というものの計画とが何か連携があって行なわれておるのではないかという疑いが持たれる。この点はやはり外務省の基本的な姿勢の問題だと思うのですが、どうですか。
  63. 吉野文六

    ○吉野説明員 中華民国の派遣しておる技術協力隊は主としてアフリカ地域に派遣されております。これはおそらく中華民国がこれらの国々からの要請ないしは自国の方針としてそのようにやっていると考える次第でございます。わが国に関する限りは、主としてわれわれは東南アジアに集中して派遣いたしたいと思っております。
  64. 石田宥全

    ○石田(宥)分科員 主としてアフリカです。それはね。これは二十四カ国に出しておる。けれども、フィリピンにも行っておるし、マレーシアにも行っておる。日本の農業技術にたんのうな人も、実は、南方に行くというと、日本の農業というものは温帯地帯農業だし、ところが、台湾では熱帯性の特性を持っておるので、東南アジアにはこの中華民国の農業技術者などが非常に入りやすいという条件があるわけですね。ことに、フィリピンにしてもその他にしても、これはインドネシアは別ですけれども、東南アジア全体が食糧難におちいっておるときに、台湾は米を持っていき、さらにその農業技術を体得した技術者を大体六名ないし八名で示範隊というものをやって、ちょうど日本のインドにおける模範農業のようなふうに現地に指導しておる。米の足りないところへ米を持っていって、そうして日本から直接行くよりも熱帯農業に習熟した台湾の青年が行って指導をやっておって非常に喜ばれておって、これは広がる可能性がある。いままではアフリカが中心で、オーストラリアにも行っておるけれども、東南アジア全域にこれは拡大の可能性があり要請が行なわれておるということを台湾政府は言っておるわけです。一体それとの関連というものはどうなのか。どうも何か関連があるように考えられるのだがどうか。これは日本の政治姿勢の問題ですから、ひとつ大臣に伺っておきたい。
  65. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 中国の農業技術に関する派遣隊との関係は全くありません。日本の海外協力隊の派遣とは何らの関係はございません。
  66. 石田宥全

    ○石田(宥)分科員 時間がありませんから、次に私は国際的に見たところの食糧事情について伺いたいのでありますが、いわゆるFAOでは、近く訪れるであろうところの世界食糧危機に備えるために基礎資料をつくっており、日本では農林省も厚生省もこれに協力をして資料をつくっておることば、皆さん関係者がよく御承知のところであろうと思うのであります。ところが、日本の外務省の態勢を見てみると、前には、河野さんが農林大臣時代などには、米が足りなくなったら東南アジアから持ってくればいいのだということを公言してはばからなかった。しかし、最近の国際的な食糧事情というものは非常に緊迫をしてまいっておって、昨年アメリカで開かれた会議の論争のことは、私、昨年の予算委員会で指摘をいたしておったのでありますが、その後漸次窮迫を告げてまいっておる。日本の米の事情などについても、たとえばイタリアは、EECの関係に輸出して、日本にはもう出さない。スペインその他では若干あるけれども、ほとんどそこからは買い付けば不能だという状態ですね。そういうふうな状態のもとにおいて、日本政府は非常に食糧問題というものを外務省は特に安易に考えておるのではないか。非常に安易な考えで食糧問題と取り組んでおるのではないか。安ければ外国から買ってくればいいという、そういう思想が外務省の基本的な姿勢のように考えられるのですが、そういう実態をよく御存じになっておるのかいないのか。ことに東南アジアでも同じことですが、ヨーロッパと同じ状態ですが、どの程度に一体外務省では認識をされておるのか。これは今後の非常に大きな問題であろうと思うので、ひとつお伺いをしておきたいと思います。
  67. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私も東北の農村地帯の出身でございますが、ただ安ければどこからでも買うがいいというようなものではないのでありまして、これは、ただいまの農業基本法に基づいて日本の農業の実態が漸次健全な歩みをたどって改善された暁においては、またそれに応じた考え方が出てまいると思いますが、ただいまの現状では、やはり、農村はただ農産物をつくっているところだというようなことではなく、住民の相当な部分が農村におるのでありますから、その実態を十分に考えながら食糧政策を進めていかなければならぬ、かように考えておるわけであります。
  68. 石田宥全

    ○石田(宥)分科員 どうも外務大臣はとんでもないこれは認識不足で、しろうとだから私は追及しようとは思いませんけれども、ことしの農業白書をごらんなさい。裏作の作付放棄は百五十九万町歩ですよ。表作の作付放棄は九千町歩ですよ。一体いま日本の農業というものは破壊されつつあるのです。反収も減収しつつあるのです。農業基本法ができて、そうして農業はいま破壊されつつあるというのに、農業基本法体制で将来何か増産されるようなお考えだとするならば、これはもうとんでもない話なんです。そういうことでは日本の将来の食糧事情というものははなはだ不安です。一体日本の輸入総額の中における農林水産物資の輸入はどの程度になっているか、御存じですか。
  69. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 政府委員からお答えさせます。
  70. 内田宏

    ○内田説明員 お答え申し上げます。昨年、昭和三−九年一月から十一月のわが国の輸入総額は十二億ドルでございます。
  71. 石田宥全

    ○石田(宥)分科員 私の聞いたことに答えてないのです。人口承の輸入総額は昨年は七十九億ドル、そのうち農林水産物資の輸入総額は三十二億ドルで四〇%になっておる。食糧だけならあなたのおっしゃる数字——それはちょっと違います。これは私は通産省から資料をとっておる。通関べースで、しかもわずかの違いがあるといってあとで訂正してきておるのです。そういう数字ですよ。四〇%も輸入をしておるのです。その上に、いま農業は破壊されつつある。この中において、よその国では外務大臣というものは非常に経済的な問題と取り組んでおる。ことに食糧問題では非常に敏感で、どこの国の外務大臣でもやっておる。日本外務大臣というものが食糧問題という重大な問題を経済べースで片づけようといったら、これはとんでもない話だ。食糧というものはほかのものと違って経済べースではいかない。いまインドでは一千万トンの食糧不足で、飢饉の状態に入っておる。これは外電が伝えておる。イギリスの新聞も書いておる。雑誌も書いておる。そういうような飢饉の状態になったとき、経済べースでどうやって食糧ができるか。そういう点では全く認識不足。これは佐藤内閣全体の姿勢だと私は考えるので、これはまた別の機会に徹底的にいたしたいと思うのであります。実は、第四分科会で私ちょっと質問することになって、迎えが来ておりますから、やめますけれども、最後に一つだけ、米作農民が非常に気にしておる問題がありますので伺っておきたいのでありますが、ことしのお正月のテレビの座談会で、林髞という人は米食をかたきのように考えている人ですが、その人はその座談会で、日本民族の将来を考えるならば、米作を禁止し、米食を禁止すべきであるということをテレビで首っておる。これは米作農民には非常なショックを与えているのです。ところが、厚生省の統計を見ると、これは非常に皮肉だと私は思うのですが、厚生省の統計では、脳溢血や心臓病や高血圧というものが、日本とイギリスとアメリカ昭和三十八年の比較が出ておる。人口十万人についての動態統計で、これは厚生省の方から聞けばいいのですけれども、時間がありませんから私申し上げますが、その脳溢血と心臓病と高血圧の合計が、日本は二百六十六人、イギリスは五百六十二人、アメリカは四百八十人、こうなっておる。これは私は林さんの常識を疑うのですが、厚生省の方の所見を伺っておきたいと思うのですが、昔のように白い御飯にたくあんとみそ汁だけで生活をするような状態ならば、あるいは高血圧その他の影響があったかもしれないし、体質も劣るかもしれないけれども、今日の段階で、食生活が改善された今日、米作を禁止し米食を禁止しなければ日本民族の将来憂うべきことであるというようなことをNHKのテレビ放送で行なわれるというようなことは許しがたい問題だと思うのです。これについて私はひとつ厚生省の担当の課長の所見を明らかにしていただきたいと思います。
  72. 萩島武夫

    ○萩島説明員 わが国の栄養の水準は、御指摘のような面もございますけれども、国内的には地域的にあるいは階層的に相当格差があるというのが国民栄養調査の実態でも出ておるわけであります。その格差の一番の問題は、やはり主食、副食の割り振りのしかたという問題が、栄養のバランスをとるという意味から相当問題になってまいるということでございます。厚生省の国民栄養審議会で、四十五年を目途にいたしまして、将来四十五年の体位を保っためにはこの程度のバランスで食事をとるべきであるというのが出ております。それによりますと、でん粉的な食べものは六〇%くらいにしたいということでございます。わが国の全体の平均は、三十二年で、でん粉からとる熱量が七二%、三十八年にはだんだん改善されまして六七%くらいになってまいっております。主食的なものがだんだん少なくなって、副食的なものが多くなりまして、栄養的な必要なバランスがだんだん埋まってきつつあるということが実態でございますけれども、先ほどの林先生の御発言そのものを私は聞いておりませんけれども、学問的な強調を少し多くなされたのではなかろうか、私自身はそう考えております。
  73. 石田宥全

    ○石田(宥)分科員 大臣、私は答弁は求めなくてもいいのですが、別の場でひとつ日本の食糧問題の将来というものを十分論議し、政府としてもやはり相当考えてもらわなければならないと思いますので、大臣自身も、もう少し世界の食糧事情というものをひとつ勉強していただきたい。答弁は必要ございませんけれども、要望申し上げて、私の質問を終わります。
  74. 中野四郎

    中野主査 午後は一時三十分より開会することとし、この際暫時休憩いたします。    午前十一時四十八分休憩      ————◇—————    午前一時三十分開議
  75. 登坂重次郎

    ○登坂主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。野原分科員
  76. 野原覺

    野原(覺)分科員 私は、主として、外務大臣が過日韓国を訪問されましたが、その訪韓問題を中心にお尋ねをしてまいりたいと思います。第一にお聞きしたいことは、私どもの常識によりますと、日韓問題の交渉は、首席は高杉全権ときまっておるようでありますが、どういうわけでか、過日の韓国訪問の際は高杉さんを連れていかなかった。これは何か事情があったのでございますか。
  77. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いや、別に事情はございません。全面会談の進行にも好影響を与えると思うから、一度外務大臣韓国を訪問してもらいたい、こういう向こうの外務部長官からの招待がありました。   〔登坂主査代理退席、主査着席〕 私から、全面会談推進のために好影響を与えるというならば、それは私はぜひ差し繰ってでもおたずねをしたい、こういうお約束をいたしました。それから日を繰ってみたのですが、なかなか適当な時間がとれませんでした。ようやく二月の中旬になってそのお約束を果たすことができた、こういう事情です。
  78. 野原覺

    野原(覺)分科員 あなたが韓国に旅行をされるとか、それから一ぺん遊びにいらっしゃいということで軽い気持ちでおでかけになるならば、私は高杉氏のことをお尋ねいたしませんが、あなたは韓国に行かれて大きな仕事をなさってきておるのであります。基本条約についての仮調印。これは後宮アジア局長がサインをしたようでありますが、やはりあなたが後宮局長にそれをさせた。それだけのお仕事をさせるのに、高杉さんに日韓の首席、交渉の全権に任命しておきながら、これは連れていかない。国民の私どもから考えますと、さてはやはり高杉発言があったのじゃないかな、高杉氏を連れていくと、やはり問題がこじれてはいけないからという配慮からお連れにならなかったのではないだろうか、だれしも国民は疑惑に思います。物見遊山で行くなら、あなたが一人で行ってきたらいい。日韓問題についての一つのやはり一歩前進する大事な約束を取りつけるのに、彼が病気でも何でもないのに連れていかない、こういうやり方からいけば、高杉氏を罷免さしたらどうですか。私はそう思う。それなら高杉氏という日韓の首席全権は罷免さすべきではないか、こう思いますが、いかがですか。
  79. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、高杉全権とは関係のない、私個人と言っては何ですが、日本外務大臣に一ぺん訪韓してもらいたいという向こうの招待にこたえて私が参りましたので、高杉全権は、御承知のとおり、向こうの代表は駐日大使の金大使でありまして、おのずからその任命のぐあいによっておわかりになるように、日本日韓会談の元締めをしておる、その場所が大体日本に予定されておるから、金大使が韓国の代表、これにこたえて日本は高杉代表、それで一週間に定期的に一回会議を重ねておるような状況でございます。
  80. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういう答弁ではだれも納得しないですよ。高杉氏は日韓交渉の首席全権ですよ。日韓の問題について特に基本条約仮調印をする、そういう大事な時点に連れていかないなんというようなことはおかしいですよ。しかし、この問題はしばらくおいておきましょう。そこで、外務大臣、よく聞いておいてください。次にお尋ねしたいことば、あなたは、韓国を訪問するにあたって、たしかその前日であったと思いますが、予算委員会で戸叶委員質問をいたしまして、どういう目的韓国にいらっしゃるんですかとこう聞いた。その前にもこれは外務委員会だかで問題になっておったかのように思いますが、戸叶委員に対してあなたはこう答えておる。重要な親善のためです。こうお答えになられております。戸叶委員は、そうじゃないでしょう、あなたはそれだけではないでしょう、こう執拗に質問を続けたのでありますけれども、あなたは重要な親善のためという答弁をひるがえさなかったのです。ところが、あなたが韓国を訪問されてからのあなたの行動、外務大臣の行動を見ておりますと、基本条約調印のために着くなりやっておるじゃありませんか。基本条約仮調印のための行動以外に何もないじゃありませんか。一国の外務大臣ともあろうものが、もうあと何時間、何日かすれば事態が明らかになるにもかかわらず、どうしてこのようなうそをつかなければならぬのか、しかも国会に対して。あなたは基本条約仮調印をなさるのではございませんかと聞いた。それでもあなたはそうすると言わない。どうしてあなたは国会にそういううそをつかねばならぬのですか。この点についてのあなたの所見を承っておきたい。
  81. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 やはり、すでに国交が正常化しておる国との間で特定の問題について協約あるいは条約、協定というようなたぐいのものを取りかわす場合と違いまして、これから国と国とが正常の国交を取り結ぼう、こういう日韓会談でございますから、多分に国民的なムードをつくって、その上に具体的な話し合いを進めていくということが、これは何といっても必要である。そういう意味において、親善——自分としては唯一の親善訪問だとは思っていない。まただれかが行くような場合があるかもしれない。しかし、そういう意味において、同じ親善でもきわめて重要な意味を持つものである、かように考えるということを申し上げておったはずであります。全くそのとおりでございます。ただ、しかし、それだけではないだろう、やはり会談の具体的な問題について話し合うという考えじゃないのかというお話がございましたが、それは、向こうが欲し、その機運に達すれば向こうの話し合いに応じ、そして話し合いの状況いかんによってはある段階を踏むというようなことになるかもしれない、なるかもしれぬが、そうなれば幸いである、しかし、あくまで重点は親善の訪問である、こういうふうに私はお答えしてあったはずでございます。どうぞさよう御了承を願います。
  82. 野原覺

    野原(覺)分科員 これは私ども国会議員として黙って聞き過ごし、見過ごしておくわけにいかないから、私はこの問題はさらに追及してまいりたいと思います。あなたは重要な親善と確かに答弁をされ、ただいまも確認をされたのです。あなたが答弁された時点における重要なとは何を考えておりましたか。
  83. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 手っとり早く申しますと、同じ親善の意味でも、行けばなおさらけっこうだが行かぬでも間に合うじゃないかというような場合もあるかと思います。しかし、私の場合は、やはり、機運というものを醸成して、しかる上に初めてこういう国交五常化の条約というものが成り立っていくのでありますから、その前提である機運というものを盛り上げる意味において絶対に必要である、そういう意味において重要である、こう考えたわけでございます。
  84. 野原覺

    野原(覺)分科員 日韓の国交正常化の機運を盛り上げるために絶対に必要である、何が絶対に必要であるかと言えば、椎名外務大臣が訪韓することだ、こういう御答弁のようでございますが、あなたは、訪韓をされてやはり国交正常化のために何か取りつけてきょうということを考えておられたのでしょう。いかがですか。
  85. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一歩でも二歩でも、もしこの機会において前進することができれば幸いである、そういう考え方は持っておりました。
  86. 野原覺

    野原(覺)分科員 一歩でも一二歩でも前進すれば幸いである、李ラインの問題が解決したら幸いだ、それから漁業問題の話が出て解決できたら幸いだ、ところが、李ラインや漁業問題や竹島問題というものが、あなたが韓国をたずねて解決できるような、なまやさしいものではないことは、あなたも知っておるし、だれでも知っておる。そんなもので解決するならば、日韓問題で政府はこんな苦労はしなかったでしょう。ただあなたがここで考えておったのは、国交を正常化するための基本条約、この基本条約をやはり仮調印しようではないか、事務的にもだんだん煮詰まってきて、やはり韓国に行ってソウルで仮調印しようじゃないか、そういう目的を持っておられたのでしょう。これは率直に御答弁ください。
  87. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あくまで親善訪問である。しかし、向こうの要望なりあるいは熱意というものがあって、ぜひこの問題について話し合いたいということなれば、もちろんこれに応じないという手はない。その話しぐあいによって、ある段階を踏むということが可能になった場合には、もちろん区切りをつけるという意味イニシアル交換くらいは、もしできればそうしたいという希望はありますけれども、とにかく、これは相手方のある問題でありますから、それをかってに一方的にきめたり、あるいは予定を立ててこれを公表するというようなことは適当でない、かように私は考えて、それで、そういうこともあり得るということだけはお答えしたはずであります。
  88. 野原覺

    野原(覺)分科員 そうすると、基本条約仮調印というのは、ソウルに行かれてから、向こうから唐突に話が出て、あの段階にまで到達した、私どもこう受け取っていいわけですか。
  89. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういうふうに唐突というわけでもございませんが、とにかく非常な熱意を向こうが示しておる。そこで、この問題については、お話の高杉全権と向こうの金大使との間においてだいぶ煮詰められてきておる。出発までにはだいぶ煮詰まっておった。そういうようなことで、向こうのほうが非常な熱心な要望がございましたので、話し合いを進め、ついに両方が合意するに至りましたので、イニシアル交換をした、こういう次第であります。
  90. 野原覺

    野原(覺)分科員 唐突かと言えば、唐突でないと言う。唐突でないならば、あなたが東京をたつときに、ソウルに向かって羽田をおたちになるときからのあなたのスケジュールにあったはずであります。これは何といってもあったはずです。もしなかったとすれば、あなたは何という軽率な外務大臣でしょうね。少なくとも日本を代表する一国の外務大臣が、おれば重要な親善でこれから韓国に行く、外国に行くというのに、自分のこれから行かれる——しかもあなたは国会の審議をやめていらっしゃる。ですから、私どもは、これば単なる親善ではないと判断したのです。ところが、あなたは、重要な親善だということで、重要なということの中身をついに明らかにしないままに韓国を訪問されておるわけでありまして、この点は私どもきわめて遺憾に思うのです。堂々と日韓会談を進めたらいいじゃないですか。日本韓国の国交正常化を結ぼうというのに、秘密の軍事条約を結ぶわけじゃないでしょう。日韓双方のためになる、しかもアジアの平和のためになるという確信があなた方にあって日韓会談が進められておるとするならば、自分がこれから韓国を訪問するなれば、その目的を国会で明らかにして——しかも質問があったのです。執拗な質問があったにもかかわらず、それをひた隠しに隠してこのような外交折衝を続けられるということは、これは何といっても秘密外交ですよ。これは国会議員のわれわれを全くばかにした外交のやり方です。質問がなくても、進んで明らかにすべきだ。進んで姿勢を正すべきだ。その目的国民に示すべきだ。ところがそれをやらないそういうことは、私ども全く納得ができないことであります。そこで、この際あなたに第三点としてお尋ねをいたしたいことは、基本条約について仮調印をしなければならなかった理由。御承知のように、日韓の間における懸案事項はたくさんある。財産請求権の問題、漁業問題、法的地位の問題、たくさんある。これが十何年の長い懸案になってきておることは、外務大臣がよく御承知のとおりです。これらの懸案事項については、まだいまだに解決の糸口にも来ていないように私どもは思うのですが、これらの懸案事項と別個に基本条約について仮調印をしなければならなかった理由があるならば——あなたは東京を立つときにはそういう目的はなくて行ったわけです。外務大臣、そういう目的がなくてソウルに行かれ、向こうで話が出たからおれは仮調印するのだ、あなたは東京に帰ってきてから閣議でも開いて、十分国民の世論も聞いて、もう少し時間をかけてやる手もあったんじゃなかろうかと思うのです。私は、あなたが目的を示して行かれれば、これはなるほど、向こう仮調印しても、こんな質問をいたしませんよ。あなたはいまだにその目的はなかったのだと言っておる。向こうに行って、話があったら、向こうから電話を入れて、そうして仮調印してしまう、そんなにまで急がなければならぬという理由が何かあるわけですか。これは私の疑問です。お聞かせ願いたい。
  91. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 急いでこういうことをしなければならぬ特別の理由があったかと、こういうお尋ねでございますが、もともと日韓会談は早期妥結ということを打ち出しておるわけであります。そのうちで最も煮詰まった基本条約案に対して、向こうが非常な熱意を示したのでございまするので、その話し合いに応じて協議した結果、合意に達したので、一応締めくくりをつける意味においてイニシアル交換した、こういうのであります。お尋ねの戸叶議員に対しましても「締めくくりというのは、仮調印なりイニシアルということもあり得るということでございますか。」という御質問に対して、私は、「そういうこともあり得るかと思います。」、こういうふうに申し上げておるのでございます。あくまで、その成り行きによってはイニシアル交換に達するということもあり得ることを当然予想して参ったのでございまして、特に急いでこれをどうのこうのということはない。それから、秘密とおっしゃいますけれども、この仮調印、いわゆるイニシアル交換をしたすべては公開した。それ以外に隠していることは何もないのですから、秘密外交でもなんでもないと私は考えております。
  92. 野原覺

    野原(覺)分科員 訪韓をするのに、国民目的も示さないで、国会でこれが問題になっておるのに、あなたはいま速記をお読みになりましたけれども、何がそんなことで明らかになりますか。これを明らかにしないで行かれることは、何といっても秘密外交ですよ。そこで、次にお聞きしたいのですが、基本条約について仮調印をなさった。仮調印をされますと、その中身を変えるということはやはり困難になってくるのではないか。日韓の間にはたくさんの懸案事項があるわけですね。漁業問題、李ライン問題、竹島問題あるいは財産請求権の問題等等、たくさん横たわっておる。これらの懸案事項がどのように解決されるのかはまだわからないわけです。これらの懸案事項の解決のいかんによっては、基本条約についてもやはりその内容に若干の修正をしなければならぬ不測の事態ということも私は起こってくるのではないかと考えますが、この辺いかがですか。
  93. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 イニシアル当事者間だけのものでありまして、一応事務的な段階においての手続にすぎないのです。したがって、今後その内容法律的に両国政府が拘束されるということはないわけであります。
  94. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、内容が更改される、変更されることもあり得る、そのほかの懸案事項の解決いかんによってはその内容の変更は当然あり得るのだ、こう理解してよろしいですか。
  95. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただ、お断わりしておきますが、法律上拘束されないということは全く明々白々でありますが、ゆえなくしてこれを変更するということは、これは国際法上から許されないことであります。あなたの御指摘のように、ほかの漁業問題であるとか、あるいは法的地位の問題であるとか、請求権の問題であるとか、そういうようなものが次々と固まっていった場合に、逆にどうしても一応イニシアル交換した基本条約に抵触するというような部分が出てまいりますれば、それはそれ相当の理由があるのでありますから変更し得るものと考えます。
  96. 野原覺

    野原(覺)分科員 諸懸案事項の解決いかんによっては、その内容についての変更もあり得る、こういうことです。ところが、諸懸案事項というのはどう解決するか、まだ海のものとも山のものともわかっていないでしょう。だから、そうなれば不測の事態ということを予想しなければならぬはずです。そういう不測の事態は、諸懸案事項の解決いかんによっては内容の変更はしても差しつかえないとはいうものの、やはり仮調印をしたその中身が単なるメモの交換とは違うはずです。事務折衝の段階だとはいうけれども、これはあなたが承認をして、後宮局長がサインをしたのです。一国の外務大臣の裏づけがあったサインだから、これは仮調印だ。だから、単なるアジア局長の個人のメモの交換でも何でもありませんよ。そういうことになってまいりますと、こういうやり方は、これから先の外交折衝の範囲を狭めてくるような、外交技術の上から言ってもまことに拙劣なやり方じゃないか。かつて請求権の問題で前外相の大平さんがメモを交換した。これにも問題があるというので私ども追及いたしましたが、基本条約について事務的に煮詰まってきても、これは将来どうなるともわからぬ事態があるのだから、メモの交換程度にとどむべきではなかったのか。動きのとれない仮調印に持っていったということは、これからの外交折衝をする技術、外交技術の上から言っても決して上手なやり方であるとは私は言えないと思う。いやそうじゃないのだというならば、理由をお聞かせ願いたい、外務大臣
  97. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 残っている懸案は、請求権の問題、それから法的地位の問題、漁業文化財、竹島問題、そういったような問題でありますが、われわれとしては、今回イニシアル交換した基本条約がこれらの懸案の折衝上じゃまになるというような考え方はいたしておりません。
  98. 野原覺

    野原(覺)分科員 では、核心に触れてお尋ねします。外務大臣、これから私は本論に入りますよ。  一番日韓の間で問題になってくるのは、李ラインなんです。これは、財産請求権その他がありますけれども、李ラインです。あの李ライン設定されて日本の漁船がどのくらいひどい目にあってきておるか。日本政府は長い間その不法を抗議してまいりましたけれども、一向にらちがあかないで、いまだに拿捕され、漁船員が抑留されておる。この李ラインの問題がやはり私ども日本国民としては一番関心が深い。日韓会談といえばすぐ李ラインを思い出す。だから、一番関心の深い問題から逐次あなたにお尋ねをしてまいりますが、基本条約仮調印をされるぐらい事務的折衝が煮詰まってきておるところから見れば、李ラインについても、つまり李ラインの撤廃についても何らかの話し合いがなされておると私どもは理解したいのですが、この辺はどうなっておりますか、李ラインは。
  99. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 漁業問題の残された重要な点は三点あると思うのであります。第一は、専管水域のいわゆる基線の引き方、それから、共同水域の魚族資源のために、いろいろお互いに漁船の隻数であるとかその他制約をすることになっております。その制約の問題。それから、最後に、両国漁業状況は非常に格差がある、その格差をできるだけ協力して縮めるということが両国のために非常に望ましいことでございまして、これを日本のほうで協力するために漁業の資金を提供する、してもらいたいという、その三点でございまして、表面からは李ラインの撤廃ということはうたってありませんけれども、これは、われわれは、事あるごとに、国際法上あるいは国際慣例上不法不当なものである、これを前提にしてわが漁船を拿捕するというようなことば、これはもう絶対にあり得ない、許すべからざることである、こういうことを声を大にして叫んできたのでございまして、これを撤廃するという前提のもとに両国の当局者が漁業会談を進めておるような状況であります。
  100. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、撤廃する前提のもとに漁業会談が進められておる。ということは、これは撤廃が前提だ。だから、漁業会談の結論がどう出ようと出まいと、撤廃ということはこれは当然のことなんだ、そのことを韓国は理解しておる、了解をしておる、撤廃はごもっともであります。李ラインの撤廃については同意をいたしますという、そういう双方の合意が成立をされて漁業問題の交渉がなされておる、こう理解してよろしいのですね。
  101. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体これはわれわれは初めから認めてないのでありまして、認めてないものを撤廃するということをわざわざ取りかわす必要はない。もし撤廃するということを何か両国当事者が申し合わせをするというのなら、その前提としてこういうものが合法的に成立しておったのだということになるのであります。これは、初めからこんなものは問題にしていない、こういうことでやっております。向こうのほうも大体そういうつもりで交渉に応じておると私は確信しております。
  102. 野原覺

    野原(覺)分科員 これは大事な問題で、あいまいにしては困ります。私は、李ラインの撤廃について双方の合意が成立しておるかと聞いておる。いるかないか、はっきりしてください。李ラインの撤廃は合意に達しているかいないか、これ以外にないのです。私の聞いたことに対して、どうなっているのだ、これははっきりしてください。
  103. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 漁業問題の交渉は、これはもう李ラインの撤廃を前提としてやっておるのですから、これをまず李ラインを撤廃するというような合意をする必要はない。こういうものはもう認めないという前提両国当事者が折衝しておることであります。
  104. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、李ラインは認めない、その前提の上に立って漁業交渉がなされておる。韓国も了承の上ですね、これは。
  105. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようでございます。
  106. 野原覺

    野原(覺)分科員 非常に重要な答弁をいただいたのですが、私はそこでこの問題をさらにお尋ねしてまいりたいと思う。きのうの朝日新聞の第七面に、あまり大きい記事ではございませんでしたが、この李ラインの問題が載っておるのであります。それば韓国からの報道が掲載されておるのでありますが、これによりますと、こう書いてある。李ラインを法規化しなければならない、これは野党が全部結束してこれを朴政府要求する、韓国の主権線であることを明らかにする、同時に、李ラインの法的な裏づけでございます魚族資源保護法、——この魚族資源保護法というのによって日本の漁船は拿捕され、漁船員は抑留されておる。この魚族資源保護法をもっと実のあるものに補充をして、日本の侵入漁船の捕獲、漁夫の処罰の規定をもっとはっきりしたものに直さなければならぬという動きが韓国の野党に出てきておるというわけであります。いかに朴政府が強力な政府であるとはいえ、こういった野党の結束した動きが出てまいりますと、李ラインの撤廃というものは困難になってくる。ほんとうにあなたが仮調印したければ、こうした国際法違反の李ライン撤廃についての仮調印をやりなさい。これは日本国民のためですよ。日本の国家のためですよ。世界どこの国に持っていっても不法不当なこの李ライン、この李ラインは撤廃をする、その撤廃した上に立って漁業交渉を進めるのだ、そういった仮調印イニシアルをやるならやったらいい。ところが、あなたが、これは明確に、いまの李ラインの撤廃については韓国も同意をした、こう替われるわけでありますから、私も一応そのことを信用したいと思いますけれども、どうも私はこの点が不安に感じられるのです。ということは、専管水域のきめ方、共同水域の線の引き方、きめ方、あるいは日韓の漁業格差をなくするという先ほど外務大臣が述べられた三点、この三点の解決のいかんによっては李ラインが残るのではなかろうかという、こういう不安もございますし、結局、李ラインというものは、韓国の世論、これは新聞報道でございますけれども、絶対に撤廃をさせないという韓国民衆の強い要求もあるように私どもは聞くのです。だから、これははっきりそこら辺を踏まえて、もう一度御答弁願いたいことば、李ラインの撤廃については、これは朴政府承知をしておる、その承知をしておることの上に立って漁業問題の交渉を進めておる、これは、あなた、もう一度はっきり国民の前にこのことを示していただきたい。
  107. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 漁業会談の成立が李ラインの撤廃を前提とするものでありまして、われわれは、李ラインの存置を向こう主張する以上、絶対に漁業会談には応じない、漁業会談の折衝には応じない。しからば、向こうの当局者はどうか、もちろんその前提のもとに会談をお互いに進めておる、こういう状況でございます。
  108. 野原覺

    野原(覺)分科員 李ラインを撤廃しなければ漁業の交渉に応じない、漁業の交渉がまとまらなければ日韓会談妥結はあり得ない、したがって、日韓会談妥結のためには、先ほど外務大臣が述べられた幾つかの事項、このうちのどの一つが欠けても日韓会談妥結ということはあり得ない、かつて池田総理が何回も明言してまいりましたこの大原則、大方針というものは今日も変わっていない、こう理解してよろしいですか。
  109. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 漁業会談は最も重要な問題でございまして、これはあくまで李ラインの撤廃を前提として会談が進められつつある。したがって、もしもこれが向こうが態度を変えて存置をするというようなことであれば、会談は絶対に成立しない、また、それ以上会談を存続し得ない、かように考えております。
  110. 野原覺

    野原(覺)分科員 非常に明確になったと思う。竹島についてはいかがですか。
  111. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 竹島については、すでに国会でも申し上げてあるとおり、少なくともその所属がはっきりきまるような方法を立てる、そういう方法を立てて、そうしてこの会談妥結をいたしたい、かように考えております。
  112. 野原覺

    野原(覺)分科員 それは従来の政府答弁と違うじゃございませんか。所属がきまるような方法を立ててではなかったはずです。小坂外相、大平外相の時代。少なくとも竹島の問題は領土の問題であるから、日本が国際司法裁判所に提訴をする、その提訴に対してこれが国際司法裁判所に係属するためにも応訴が要件であるから、その応訴を取りつける、国際司法裁判所の舞台に乗せるということで、これを妥結の条件にしたい、こういうことであったのです。いかがですか。これは従来の方針と違うですよ。
  113. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 解決のめどをはっきり立てるその一つ方法としては、国際司法裁判所に提訴して向こうがこれを応訴する、これも有力なる一つ方法である、こういうことを申し上げておったはずであります。
  114. 野原覺

    野原(覺)分科員 いや、それは解決のめどの一つ方法だ。それは単なる例示的なものにすぎないのだ。他の方法は幾つか考えておられますね。それは何ですか。
  115. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 現在は、この方法でひとつ折衝したい、かように考えております。
  116. 野原覺

    野原(覺)分科員 現在はこの方法で折衝したいということであれば、つまり、私が言った、従来小坂外務大臣それから大平外相時代の池田内閣の政府の基本原則、少なくとも応訴を取りつけることだ、これに尽きるのだ、こう理解していいわけですか。いやこれに尽きないほかの方法もあるのだ、どうもあなたの答弁ははっきりしないね。いかがですか、これははっきりさせましょう。
  117. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 現在の段階ではこれが最も適当な方法であると考えております。
  118. 野原覺

    野原(覺)分科員 これが最も適当な方法であると考えるということは、これ以外にないという方針と受け取っていいですね。
  119. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そうとられても困るのです。これ以上の方法があるならばあるいはそれに移るかもしれませんが、とにかく、いまは、これが一番最適の方法である、かように考えておるわけです。
  120. 野原覺

    野原(覺)分科員 これ以上の方法があればその方法によるわけですね。その方法によるわけでしょう。あなたは国の領土の問題を、たとえ島であれ解決しようというのに、そういうあいまいなことでいいですか。これ以上の方法があれば応訴の問題でないほかの方法をとるんだというならば、応訴という方式は意味をなさないじゃないですか。いやまだほかにもあるんだということになるじゃありませんか。外務省で考えておることがあるのでしょう。これはぜひひとつ答弁を願いたい。応訴以外の方法があるのかないのか、あるとすればそれは何か。  主査、これはぜひひとつ答弁してもらわないと私は質疑を続けることはできない。私もこんな押し問答をいつまでもやりたくない。あるのかないのか、あるとすればそれは何か。
  121. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この方法以外に適当な方法がないと断言はできませんから、これ以上のものがほかにあれば、これが不可能な場合にはその方法によるということも考えなければならぬと思うのであります。
  122. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、竹島問題の解決の方針はきまっていないじゃありませんか。竹島問題は食い逃げされますよ。あなたは一括解決、一括解決とはどの条件がいれられなくてもいけない、これは会談妥結のために必要なことだと先ほどあなたは答弁しておるんだ。ところが、問題は、竹島についてはどの方法であるか、まだこれ以上のものがあればそれも考えるというならば、竹島の問題はあと回しにしてあなたは会談妥結しようという腹でしょう。どうしても韓国は応訴しないのですよ。長い間韓国は応訴しないんだ。だから、一応国会にも国民にも、応訴でいくんです。これでごまかしておいて——日本国民をあなたがごまかすんです。ごまかしておいて、竹島の問題は結局うやむやにして、一括解決と言いながらこれをあとに残していく、こう私どもは思わざるを得ない。いかがですか。
  123. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいまの方法によって竹島の問題も一括解決したいと考えております。
  124. 野原覺

    野原(覺)分科員 ただいまの方法とは応訴です。これは、椎名さん、あなたが外務大臣になる前からの自氏党政府の一貫した方針ですよ。外務大臣としてのあなたの先輩の小坂、大平、これ以外にないと言ってきたのですよ。これでいくんだと予算委員会で言ってきたのです。それをあなたは、これ以上にまだ方法があればなんて、そういうような答弁は慎んでもらいたいです。これははっきりしませんよ。そこで、次にお尋ねしたいことは、今後の日韓会談の進め方であります。基本条約については仮調印をされたんです。そうなると、財産請求権は大平メモがある、漁業問題は農相会談が近く東京で持たれるようだ、それから李ラインは、漁業問題の交渉が持たれておること自体の中に撤廃を向こうが承認しておるということですから私ども安心いたしますが、ところが、ふしぎなことに、日本の漁船またいつ拿捕されるかわからないという。そこで、これからの会談の進め方はどうなるのかということです。一つ一つ個別に仮調印をして、最後に一括して判断をするのか、どういうことになるのだろう、これが国民の疑問点の大きな一つです。これはどう考えておられますか。
  125. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 諸懸案の解決は、それぞれ委員会を分けてただいま進めております。法的地位、それから漁業問題等でございますが、これらの問題が次々と事務段階において合意されたならば、これを一括して両国の代表者が署名をするということになっております。署名しただけではもちろん有効な条約になりません。それで、これが批准承認を国会に仰ぐことになるわけであります。国会の承認を得て初めて批准を交換して条約が有効に成立する、こういうことになるはずでございます。
  126. 野原覺

    野原(覺)分科員 そうなると、漁業問題は農相会談でやるようですが、漁業問題についての仮調印、それから法的地位についての仮調印、まあ一つ一つあなたがソウルで仮調印してきたように仮調印されて、仮調印したものをこう並べてみて、そこで最後にこれを一括して判断をして日韓会談妥結条約の調印、本調印、こういうことになると理解していいのですか。
  127. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようでございます。
  128. 野原覺

    野原(覺)分科員 そうすると、その日韓会談の一括妥結のめどを新聞では五月だとか六月だとかまちまちに書いておりますが、政府はどこに置いておりますか。
  129. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは相手のある問題でございまして、いずれも相当むずかしい論議を重ねていかなければならぬ問題ばかりでありまして、それを相手方に断わりなしにかってにスケジュールを組んだり、あるいは予想を発表するということは慎むべきことでございますので、ただいまの段階では申し上げることはできないのでございます。
  130. 野原覺

    野原(覺)分科員 悼むべきことか知りませんが、佐藤内閣の閣僚はあっちこっちで談話を出しておるのじゃありませんか。日韓会談妥結は五月ごろだと談話を出しておるのじゃありませんか。そうすると、佐藤内閣の閣僚は慎みのない人間だということに受け取っていいのですか。もちろん相手方があるのは私もわかる。相手方があるのです。相手方がありますけれども、日本としてのめど、日本としての望ましい妥結のめどをどこに置くかということは、これは当然立てても何ら相手に対する失礼にはなりませんよ。いかがですか。
  131. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ、同じ閣僚でも直接担当しておらぬ閣僚が、まあ大体五月ごろになりそうだとか、六月くらいになるという話だと言うことは、一向差しつかえない話だと思いますが、直接の責任閣僚として、私は、そういうことは公式の場所で発表することは控えたいと思います。
  132. 野原覺

    野原(覺)分科員 重要な国務ですよ。日韓会談は重要な国務です。たとえ関係のない閣僚といえども、私は、これはあなたのいまの論法からいけばきわめて遺憾なことだと思う。国務大臣ですからね。文部大臣は文教だけやりなさいということじゃないでしょう。憲法では国務大臣としての文部大臣ですよ。だからそういうことを言えば、あなたもきわめて軽率だと思うのです。いうならば軽率な閣僚の名をこれからあげましょうか。まあしかしそういうことはやめておきます。さて、その次に外務大臣にお聞きしたいことは、あなたは今度韓国に行かれてこういうことを言われておるのですよ。過去の関係は遺憾である、深く反省している、このことは共同声明の中にも書かれておるようです。日韓の過去の関係はきわめて遺憾、このことは、私は深く反省をしておるということです。これは韓国でそういうお話をされておる。これはどういうことですか。もう少し中身をお述べいただきたい。
  133. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日韓の間にたいへん過去に不幸な期間があったことを深く反省して、将来の日韓友好親善関係を築いていきたいという決意を率直に述べたのでございまして、一民族が長い歴史と文化的な伝統を持った他の民族を支配するというそのこと自体が、支配された民族の民族感情の点から見て、あるいはまた国際政治の観点から言っても正当なことではないと思われる、こういう気持ちで述べたのであります。
  134. 野原覺

    野原(覺)分科員 そういたしますと、明治何年でございましたか、伊藤博文が第一代の総督となって赴任をした日韓併合は間違いであった、日本韓国を併合してきたのは、これは日本の侵略である、このことはあなたは明確にお認めになるわけでございますね。
  135. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 深く反省すべきことであると考えます。
  136. 野原覺

    野原(覺)分科員 深く反省ではなしに、日本の朝鮮に対する統治、日本朝鮮統治、これを歴代の総督はやってきたわけです。この日本の朝鮮統治は誤っておった、これは日本の侵略なんだ、こういうふうな理解の上に立って、過去の関係は遺憾であるという、このことが生まれてきたと私は思う。これは間違っておりますか。
  137. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあいろいろなことばで表現することができましょうが、私は、長い歴史的な文化的な伝統を持った民族を他の民族が支配するというそのこと自体が、支配された民族から言って非常な不幸なことであり、その民族感情の点から見ても、あるいは国際政治の観点から見ても正当ではない、——正当ではないというのですから、間違いであるということにもなるかもしれぬ。
  138. 野原覺

    野原(覺)分科員 過去の日本の朝鮮統治は誤っておったということを椎名外務大臣がここでお認めになったわけです。そのお認めになられた上で、あなたは、深く反省しております。こう言っておる。これはだれに反省をしたのですか。だれに対して、椎名外務大臣日本外務大臣韓国のだれに対して、深く反省しておる、こう言っておるのですか。
  139. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 反省というのは、自分が自分を振り返ることをいうので、この反省の気持ちを韓国国民にまず初頭のあいさつにおいて述べたのであります。
  140. 野原覺

    野原(覺)分科員 韓国国民にということですが、北鮮の一千万のいわゆる人民、民衆に対してはどうですか。
  141. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は韓国を訪問して、韓国に向かってあいさつをしたつもりであります。
  142. 野原覺

    野原(覺)分科員 日本の植民地支配、朝鮮統治は朝鮮半島全土にわたって行なわれた。そうして、三十八度線から北には北鮮がある。この民衆には遺憾の意を表する必要はない、反省の誠意を見せる必要はない、あなたはそういうお考えですね。
  143. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 見せる必要がないというようなことでお話しになるとちょっと的がはずれるので、私はとにかく韓国を訪問して、韓国に対してあいさつしたんですから、自然に聞こえるようなら聞こえてもかまわない。
  144. 野原覺

    野原(覺)分科員 そうすると、三十八度線から南へ住んでいる、いわゆる韓国籍を持った韓国人民に対する反省あいさつ、だから北なんかはどうでもよいと聞こえるようなら聞こえてもよいということですか。これはたいへんなことですよ。私は、このことば、あなたの遺憾の意の表明、それから反省の誠意というものは、朝鮮の全人民、北であれ南であれ、朝鮮の全人民が、その先祖が、父が、祖父母が日本から植民地侵略をされた、そしてそのことを反省したんですから、たとえ北のほうに住んでおる者であろうとも、北鮮を日本が承認していなかろうとも、朝鮮の全人民に対する反省、遺憾の意の表明であると私は受け取った。ところが、そうじゃないんだ、朴に反対しておる人民なんかは用事がないんだ、そう受け取るなら受け取りなさい、——たいへんなことですよ。大問題ですよ。こんなことをあなたが言ったら、日本外務大臣が言ったら、あなたは先ほども言ったように外交の責任者だと自認しておる。北のほうの一千万の人民はどうでもいいんだ、おれの反省は、韓国に行ったんだから韓国に言ったんだ、そんなことを国際の電波に乗せられてみなさい、たいへんなことですよ。いかがですか。
  145. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ちょっと食い違いがあるように思われますが、韓国を訪問して、訪問した韓国に対するあいさつであります。でありますから、あくまで韓国に対するあいさつである、こう申し上げておるわけです。ただ、その中に、過去のあの事実は朝鮮全般に関係した問題でありますから、もちろんいまのような三十八度線からどうのこうのという区別なしに、韓国日本統治は深く反省すべきである、こういう意味であります。しかし、そのあいさつは韓国国民に対してのあいさつである、こういうふうに御了解を願いたい。
  146. 野原覺

    野原(覺)分科員 ところが、その韓国の民衆の中にも日韓会談反対をしておる者がある。朴政権とその一味がどのくらいの比率であるか、私もまだ正確な統計は知りませんが、統計をとれば、今日進めておる日韓会談反対しておる人が、たとえ韓国の中であろうとも多いのではないか、私どもはそういう懸念を持つのです。そこで、ほんとうにあなたが反省をしたいならば、いま会談を進めておる椎名外務大臣日韓会談のやり方は反対だ、李ライン撤廃反対だと叫んでおる人々に対してでもあなたがほんとうに誠意を見せたいと思うならば、いま韓国の民衆が北であれ南であれすべての人が共通に持っている願いをまず取り上げることが今日の日韓の問題処理の上にも必要ではないか。すべての韓国の民衆が共通して取り上げておることば何かといえば、南北の分裂を一日も早くなくしてくれということです。これはもう共通です。そうして、われわれは貧乏です。私どものこの生活をもっと豊かに、もっと明るい統一された朝鮮というものを半島全土の上に打ち立てたいというのが、老いも若きもすべての人の願いです。この願いを実現することが一番大事なことではないか。この願いが実現された上に立って、日韓の国交正常化を進める、それからでもおそくないんじゃないか、私はこう主張してきたわけですが、遺憾ながら政府も自民党も、われわれのこの主張に耳をかさないで、ごらんのような会談の進め方を強行しておるわけです。そこで、さらに次にお尋ねをしてまいりますが、昨日でありましたか、穗積委員質問したそうでありますが、私この委員会の始まる前に聞いたのです。東南アジア外相会議という反共会議だそうですか、こういう会議がある。そこで、あなたが韓国に行ったときに、向こうの李外相から呼びかけられた、そこで、あなたは、考えておきましょう、こうお答えになられた、これは間違いでございませんか。
  147. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、前に衆議院外務委員会で御質問がありまして、日本は、この東南アジア外相会議には出席しない、こういうふうに答えておいたのであります。これをおそらく知っての上だと私は見てとったのでありますが、何か外相会議に出席しにくいことがあるならば、そういう障害となるべき事柄を除去しても、ひとつぜひ日本の出席を希望する、ひとつ考えてみていただきたい、こういう話でございました、一応礼儀としても、研究しましょうという約束をして別れてきたのであります。ただいまのところ従来の方針を変更すべき何らの理由はない。かように考えます。
  148. 野原覺

    野原(覺)分科員 国会には研究しましょうと言わないで、向こうには研究しましょうと言った。国会では、あなたがいま指摘されたように、十二月十五日の穗積委員質問に対して、あなたははっきり、参加の意思はない、参加しないことにきめております。こう言った。はっきりしておる。私ははっきりしたほうがいいと思うのです。礼儀か何か知りませんが、向こうから言われたら、考えておきましょう、これが外交官の礼儀かどうか私は知りませんけれども、そういう国内と国外向けと二またかけたやり方というものは誤解を招きます。私は、外交でも、端的に率直に進めるべきではないかと思う。すでに国会ではそう答えておる。政府がそういう態度をとっておるならば、遺憾ながら参加できない、はっきりすべきです。はっきりしないところに、あなたの外交がたくさんの人から誤解を生んで、いろいろ批判の種を積み重ねていくということになるのではないかと思うのであります。時間が来たようでありますから、これで一応私の質問を終わります。
  149. 中野四郎

  150. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私は、この際、主として経済外交、特にアメリカ貿易を前向きの姿勢で与野党がともに協力しつつ前進させるということが肝要であると思いまするので、その立場に立って質問をしたいと存じます。そこで、まず最初に、一体日本アメリカとの貿易のうち、日本の繊維製品はどの程度アメリカに輸出されているのか、その金額、それから傾向ですね、だんだんふえているのか、だんだん減っているのか、と同時に、将来の見通しないしは期待、政府のいわゆる貿易計画等の概略をまず承りたいと存じます。
  151. 新井眞一

    ○新井政府委員 繊維局長の新井でございますので、アメリカの全般の問題につきましては、あるいは先生の御質問にぴったりお答えできがたい点があるかと存じますけれども、私ども繊維関係をやっております者といたしましては、対米関係の繊維品の輸出はきわめて重要な割合を占めております。
  152. 加藤清二

    加藤(清)分科員 これでは答弁になりませんので、いま私がお尋ねしましたことについてお答えを願いたいと思います。
  153. 内田宏

    ○内田説明員 お答え申し上げます。綿製品の輸出は八千万ドル、それから毛製品の輸出は八千万ドル、その他八千万ドルとなっております。
  154. 加藤清二

    加藤(清)分科員 まだ答弁になっていないですな。主査、こういうふうで時間が食ったときには、こっちの質問者の責任でございませんから、これはひとつあとでプラス・アルファの時間をいただきます。そんなもの、暗唱してもらわないといかぬ。簡単なことだから。
  155. 菊地清明

    ○菊地説明員 貿易全般と申されましたが、その中に占める繊維の割合は、一九六三年度統計がここにございますが、対米全輸出に占める綿製品の輸出の割合、これは、一九六三年度統計で申しまして、全輸出が十五億ドル、それから綿製品が八千三百万ドル、五・四%に相当しております。それから、将来の趨勢とおっしゃられましたが、大体綿製品の輸出は八千万ドル台をずっと維持しておりまして、先生御承知の日米間の綿製品協定がございますが、これの遂行率が、去年は九三%、その前が九〇%ぐらいと、遂行率も去年は上昇しております。今年ないし来年どうなるかという御質問ですが、これはなかなか将来の予見は困難でございますけれども、御承知のように、ただいまこれを拡大的な方向に持っていくように綿製品の協定の手直し交渉というものを申し込んでおる次第でございます。
  156. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私の質問をよく聞かせるように注意してくださいよ。私は、日米の貿易が大切である、与野党一致して前向きの姿勢で対策を練りたい、ついては日米の間における繊維製品と言うておる。綿のことだけ聞いておらぬのです。繊維製品の過去の実績は金額にして幾らで、それはパーセンテージにして幾らであるか、将来の見通し、これは減らすつもりか、ふやすつもりか、貿易計画があるはずだからそれを承りたい、こう言っておるのです。そんな、そばみたいにぼつぼつ、とぎれとぎれの答弁じゃ困る。針仕事じゃあるまいし。
  157. 内田宏

    ○内田説明員 お答え申し上げます。繊維及び同製品の輸出統計を申し上げます。対米昨年度一月から十月の間でございますが、繊維の統計は二億五千八百万ドルでございまして、それから綿織物は二千四百万ドル、絹織物は二千八百万ドル、それから人絹織物は七百六十七万ドル、スフ織物二百二十五万ドル、衣類は九千三百万ドル、これのパーセンテージを申し上げますと……
  158. 加藤清二

    加藤(清)分科員 毛製品は。毛製品が抜けておる。そんなことだから毛製品協定をやられるんだ。
  159. 内田宏

    ○内田説明員 毛製品は総計が七千九百万ドルでございまして、そのうち第一次製品は四千八百万ドル、二次製品は三千万ドルとなっております。
  160. 加藤清二

    加藤(清)分科員 まだ足らない。将来どうするかという問題。
  161. 内田宏

    ○内田説明員 ただいま菊地課長からもお答え申し上げましたように、この綿製品問題につきましては交渉中でございます。
  162. 加藤清二

    加藤(清)分科員 よう言わぬわ。貿易計画はどうなっておるかと聞いておるのに、交渉中だけで済むはずはないじゃないか。
  163. 新井眞一

    ○新井政府委員 ただいま全体のアメリカに対しまする輸出の中で繊維製品のパーセンテージを申し上げたわけでありますが、今後どういうふうな計画かという御質問でございますけれども、私ども、御承知のように、綿製品につきましては、一応来年までの計画がございますけれども、そのほかにつきましてはやはり何らの協定もございませんので、したがいまして、実際の貿易の実態からいたしまして極力増大をはかっていくという考え方をもちまして、具体的にどのくらいかという線につきましても、全体の輸出会議等もまだそこまでいっておりませんので、できるだけひとつ増大をしてもらいたい、こういうふうに考えております。
  164. 加藤清二

    加藤(清)分科員 全体の貿易計画がございましょう。その貿易計画が五十億から六十億になり、六十億から七十億になってきた。さすれば、その七十億ドルにもなんなんとするうちに占める繊維製品の輸出というものは非常に大きなファクターを持っておるはずなんです。それが何%で幾らくらいかの推定が基礎にならなければ計画はできないはずです。ただ努力する、それじゃてんで……。それじゃ、七十億ドルの積算の基礎は一体何であったかとお尋ねせんければならぬわけだ。大臣、あなた答えてください。それでなかったら七十億ドルというようなあれはできないはずだ。
  165. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいま輸出会議において鋭意この問題について検討中でございます。そのうちはっきりすると思います。
  166. 加藤清二

    加藤(清)分科員 ついせんだって下期の輸出会議が行なわれたことはよく存じております。しかし、その際に椎名悦三郎氏も出席のはずなんです。ここへどういう覚悟で臨んで見えたのですか。数字は持たずにお臨みですか。これは十五日、ついせんだってですよ。
  167. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は、これは、ほかに余儀ない所用がありまして、ほんのちょっと顔を出しただけで、また退席した次第です。
  168. 加藤清二

    加藤(清)分科員 かくのごとく貿易には不熱心である。ところで、それではお尋ねしますが、本年度は、綿製品の輸出許容量、これは一体十分に充足できる見込みですか。それとも、前年々のように九割程度消化しただけであとはできない見込みでございまするか。いかがでございます。
  169. 新井眞一

    ○新井政府委員 いまの御質問は、綿製品全般について、本年度輸出会議等できまった数字から見てどの程度完遂しつつあるかという御質問だと思います。それからいたしますると、まあ国内の情勢もございましたし、海外の情勢もございまして、非常な努力の結果かなりのところまでいっております。しかし、もし御質問内容アメリカ関係に対する綿製品の輸出がどうかということでございますと……。
  170. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そうです。
  171. 新井眞一

    ○新井政府委員 これにつきましてはいまのところ、一−十二月で締めましたところ、ワクに対しまして九三・七%という数字でございまして、これは見ようによりましてはかなり九割以上いっておるではないかという考え方もあろうかと思いますけれども、私ども、アメリカ関係につきましては三%、五%というふうなこまかいきざみでやっております関係上、九三・七%と申します達成率と申しますのはきわめてよくないと考えておる次第でございます。
  172. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私も同感でございます。さて、この日米綿製品の貿易がだんだんとふえるはずなのに減っている。特にアメリカの綿製品総輸入量に占める日本の輸出の占拠率は低下の一途をたどっている。香港、ポルトガルその他の輸出する占拠率は二倍、それ以上にふえている。にもかかわらず、日本だけは減っている。これはいかなる理由でございますか。数字がわからなければ、ここで私が全部そらで発表いたします。
  173. 新井眞一

    ○新井政府委員 数字も手元に六三年の対比がございますが、先生のお話しのように、実量といたしましてはわずかにふえてはおりますけれども、全体の伸びに対します日本のシニアと申しますか、これは五七年以降順次減少しておりまして、まあ最近においては大体スライドの形でございますけれども、ほかの関係から申しますと、総体的には先生のおっしゃるような状況になっておるというふうに考えております。
  174. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大臣に承ります。あなたは朝鮮問題についてはたいへん御熱心のようでございます。ところが、私は、事貿易に関する限りは、アメリカとの貿易が最も重要なウエートを占めると思います。その重要なウエートのうちで、綿製品、毛製品等繊維製品は斜陽心々と言われますけれども、具体的事実からなおこれは重大な要素を占めていると思います。そこで、大臣、あなたは、その最も柱となるべき日米綿製品協定、これは一体何だとお考えになりますか。同時に、なぜ、他の諸外国の輸出が二倍三倍にふえているにもかかわらず日本だけがだんだん減って二分の一以下になろうとしているのであろうか。この問題について大臣の所見を承りたい。
  175. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日米間に取りかわされたと申しますか二国間の繊維製品に関する協定の取りきめ方が日本にきわめて不利であるということに尽きると思うのであります。でありますから、今後これが改定の時期に際しましては、これの改善を強力に主張すべきだ、主張するのみならず、特にこれの貫徹に努力しなければならない、かように考えております。
  176. 加藤清二

    加藤(清)分科員 綿製品協定とは何かという質問が答えられておりません。どう認識しているかということ。
  177. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 詳しくは他の政府委員から答えますが、部門別の取りきめ方があまりにこまか過ぎて、きわめて実際的でない、そういう点が最も直さなければならない点であろうかと、かように考えております。
  178. 加藤清二

    加藤(清)分科員 アメリカ日本のみならず他の国とも綿製品協定は結んでおります。ところが、それと比較いたしますと日本が一番不利な内容で結ばれております。首振っておってもだめです。そういうことだったら、私詳細にやります。個々々。一番不利です。日米友好通商航海条約によれば、内国人と同等の待遇を与えられることになっているはずなんです。日本の輸入量は、アメリカから買います折りに他の国から買う以下の措置をとられたことがありますかありませんか。ところが、アメリカに限って、カナダに対するよりは、あるいは綿製品に関する限りは香港に対するよりは、その他発展途上の国に対するよりは、なお日本に対して過酷な仕打ちをしてきております。ほんとうはこれはどんな仕打ちであるか私があなたに聞きたいところですけれども、時間が何ですからあえて結論づけてまいります。なぜ日本はそれに甘んじなければならないのか。これは日米友好通商航海条約精神に反するではないか。いかがでございます。外務大臣
  179. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは日本の正当な主張をあくまで通すべきだ、かように考えております。
  180. 加藤清二

    加藤(清)分科員 通すべきである、ごもっともです。それはけっこうです。日本主張を通すべきだけれども、すでに結ばれておる日米綿製品協定は他の国々と比較したときに非常に過酷である、これは友好通商航海条約の条項に反するではないかとお尋ねしている。質問に答えてください。
  181. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 でありますから、どこまでも不利な点は改善すべきである、かように思います。
  182. 加藤清二

    加藤(清)分科員 わかりました。もし、この国際条約が確かに日米通商航海条約に違反するという証拠が立証された場合におきましては、いかなる措置に出られるのか、これは条約局長に聞いてみましょう。同時に、もし日米友好通商航海条約アメリカの州法とが競合した場合に、いずれが優先するか。
  183. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 具体的な事案の内容によりまして、通商航海条約にかりに違反するということでございましたら、そのことを先方に申し入れて、しかるべき救済措置を講ずるように要求するということに当然なるわけでございます。条約と州法との関係は、かりに条約のほうで州法について何らの留保をしておりませんでした場合には、これは条約のほうが優先すると思います。しかし、よくアメリカはそういう場合に州法の関係をリザーブすることがございますので、その関係はよく調査した上で判定しなくちゃならないと思います。
  184. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私は、いまのお答えは不満足です。ただいまお尋ねいたしました日米友好通商航海条約アメリカ国の州法とが競合した場合にいずれが優先するか、この問題は、綿製品協定、毛製品のやがて結ばれようとしている協定、私は結ばれてはいけないと思っているその協定に、たいへんな影響のある問題でございまするので、あらためてお尋ねをいたします。
  185. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 条約が優先するわけでございます。
  186. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そのとおりでございます。しかるに、今日の実態は何を優先させているかと申しすまると、あなたのおっしゃったことの逆の結果が生まれたり、生まれようとしているのでございます。これについて大臣は何とお考えでございましょうか。
  187. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国内法と条約と抵触する場合にはどっちが優先するかという御質問だと思います。私は、あくまで条約のほうが優先すべきであると思います。
  188. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そうです。そのとおり。その逆な場合が今日行なわれていたとしたら、外務大臣としてはどう対処なさいますか。
  189. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それはもちろん条約の当事国として厳重に抗議すべきであると考えております。
  190. 加藤清二

    加藤(清)分科員 もしその具体的事実が発見されたとしたら、その抗議はいつからお始めになりますか。
  191. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それがはっきりいたしますれば、直ちに抗議いたします。
  192. 加藤清二

    加藤(清)分科員 当然の処置だと存じます。日本国民としても、当然そうあってしかるべきであると思います。なぜかならば、日米友好通商航海条約は、双方の国のトップレベルの会談において双方合意に達した点でございます。それを行なうことが日米間の友好をより前進させることであるからでございます。にもかかわらず、そのことが守られていない、逆の行為が発生しているということは、やがて日米間の友好を妨げる原因になる、友好を汚す原因になるからでございます。私もその点は外務大臣と同意でございます。引き続いてお尋ねでありまするが、日米綿製品協定に関する限り、この問題がなきにしもあらずでございます。したがいまして、すでに改定の時期にさし迫っておりまするこの協定につきましては、外務大臣としては、経済外交の立場からいかような措置をおとりになりましょうか、お尋ねをいたします。
  193. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほどからこの問題を取り上げて質疑応答があったのでございますが、きわめて日本に不利であるという点が実施の結果だんだんと明らかになりましたので、これらの点の改正を強く主張いたすつもりであります。
  194. 加藤清二

    加藤(清)分科員 改正についての内容及び具体的な方法についてお尋ねをします。まず第一番に、私は、かかる問題は、すでに向こうがトップレベルでございまするから、すなわち、ケネディさんの選挙のときの公約、引き続いて大統領になられましたジョンソンさんの今回の大統領選挙の際の公約、それを受けて、先方の筆頭総務であるところのパストーレ議員、そのパストーレさんがつくっておられますパストーレ委員会の中に、御承知のとおり、ゴール下ウォーター氏あるいはケネディさんの弟のケネディ議員等も加わられましての話し合いが行なわれているわけでございまして、したがいまして、当方もいわゆるトップレベルの立場で話し合うことが、先方に対する礼儀であると同時に、スムーズにこれを前進させる原因になると思われますが、この点外務大臣はいかようにお考えでございましょうか、お答えを願います。
  195. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 技術的な問題でございますから、事務当局からお答えいたします。
  196. 加藤清二

    加藤(清)分科員 トップレベルの会談はどうするかということをまず聞いておる。内容のところはまだ至っていない。順番にやっていくから……。
  197. 新井眞一

    ○新井政府委員 前段の、改定内容はどういうことを申し入れておるかという御質問でございますけれども、御承知のように、これは交渉で、現在申し入れております段階でございますので、また、先生なかなかお詳しゅうございますので、ここで詳細申し上げることはいかがかと思いますけれども、先ほど来お話のありましたように、非常にこまかい取りきめになっておりますので、しかもその間弾力性もございませんので、さような運営上非常に不便を来たしております点につきまして、強く要望いたしておる次第でございます。
  198. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 トップレベルの会談も、もちろん必要に応じて適当な機会をつかんでこれを行ないたいと考えております。
  199. 加藤清二

    加藤(清)分科員 日米の経済協力会議、これは前向きで前進させることを佐藤・ジョンソン会談において話し合ってこられたはずでございます。その日米経済協力会議の過ぐる箱根会談におきましては、この問題が最も重要な問題として取り扱われておったわけでございます。来たるべき会議において、日本としてはこの問題を取り上げる用意があるかないか。
  200. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それまでに問題がまだ残っておりますれば、当然取り上げることにいたしたいと思います。
  201. 加藤清二

    加藤(清)分科員 残るか残らないかは、ただいま行なわれております青木ジュネーブ大使、そこの交渉、あるいは日本政府政府間の交渉、それが成功して、この問題を——はっきり言います。日米綿製品協定を解約してしまえば問題は残りません。ところが、解約せずしてこれを延長する、あるいは何がしの手直しだけをして継続するということになりますれば、必然的に問題は残ると存じます。したがいまして、私はお尋ねするんです。大臣、あなたは、それじゃこれの解約を迫られますか。徹底的に解約してしまわれますか。それをやられますか。さすれば何もあと考える必要はないんです。
  202. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいま、折衝中でございますから、解約するとかしないとかということをきめてかかるわけにはいかぬ、やってみた結果によって、問題が残れば、経済協力会議において折御したい、こう考えております。
  203. 加藤清二

    加藤(清)分科員 ただいま行なわれておりまする交渉の内容、それは、あしきを改めるという方向であるのか、それとも、全く思いものであるから、これは全部拒否するという方向でございますか。もし改めるという方向であるとするならば、その改める骨子を御説明願いたい。
  204. 新井眞一

    ○新井政府委員 いま御質問のございました点、こういうことだと思います。先ほど来の御質問にもございましたように、この日本綿製品協定なるものの前段として、ジュネーブで国際取りきめという六十七年にわたる長期のものがございまして、これに基づいて日米綿製品の協定というものが行なわれ、いま実施の段階である、こういう現状でございまして、しかも、日米綿製品協定なるものも、御承知のように、六三年から六四年、六五年という三年間の取りきめであるわけであります。現在六五年目に差しかかっておるわけでありまして、この現行の協定については、実際やってみた上での運用上の問題をこまかく書いてもらいたいということで、現在修正の交渉をやっておるわけであります。したがって、先年の御質問が六五年以降の問題ということにも関連をつけつつの御質問でございますれば、これは、私どもとして、あくまでも六五年までの現行の改正問題、修正問題を出しておるのであって、六六年以降の問題は別綱の問題でございます。あくまでも現行で取りきめましたものの不便な点を修正をしてもらいたい、こういうことにとどまっておるわけであります。
  205. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そうすると、拒否、撤回ではなくして、修正の方向である、こう聞いてよろしゅうございますか。もし修正であるとするならば、その修正に臨むところの骨子はいかんとお尋ねしておるわけでございます。まだお答えがありません。
  206. 新井眞一

    ○新井政府委員 一応、先ほど申しましたように、協定として日米間で六五年までの取りきめになっております。したがいまして、くどうございますけれども、その間の実際やってみた上での不便な点についての修正を要求しておるわけございます。そこで、その骨子はどうかということでありますが、先ほどもちょっと触れたかと存じますけれども、こまかい、あるいはその間の弾力性のないあり方、こういうものにつきまして改善をお願いいたしておるわけでございます。
  207. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大臣、あなたは、この問題につきまして、とくと御検討いただいて、よく認識を深めていただきたいと存じます。なぜかならば、箱根会談におきましては、日本側の代表は軽くひねられているからでございます。なぜひねられたか。それは、内容を知らざるのゆえか、あるいは先方のおどかしに負けたか、いずれかだからでございます。すなわち、先方の申し分は、御承知のとおり、条文だけをながめてみますと、たいへんけっこうずくめでございます。あたかも、日本の繊維製品貿易品が向こうへたくさん売れる、買ってもらえるかのごとき印象を与えておるのでございます。しかるに、これを実行に移す段階になりますと、それはのめないのでございます。実行に移し切れないのでございます。こういう姿、形になっておるからであります。それを見破ることができなかったか、あるいはおどかしにくじけたか、そのいずれかのおかげで、先ほど担当局長が申しますように、二億八千万スクエアあるいは三億スクエアと規定されておりながら、それを全部消化することができないのでございます。去年もおととしもよう消化しなかったではないか、こう言われますと、あたかも日本の輸出関係業者や担当係官が怠慢のゆえにそれを消化できなかったように受け取るのでございます。とんだ大間違いなんです。あなたの傘下にある大使娘、領事館の方々は、たいへんな御努力をしておられる。特に朝海大使のごときは献身的な努力をされているわけです。もちろん、業者は自分の利益に関係することであります。通産省もまた、輸出努力目標が達成できないということは、計画までも疑われる結果になりますので、みんな努力している。にもかかわらず消化できない。その間に他の発展途上の国の繊維製品はどんどんアメリカアメリカへと伸びている。その結果どうなるか。この協定が悪い証拠は、日本の業者が——はっきり申し上げましょう。日本の港から出すというと難儀をする。ところが、香港の港から出すと楽に入るから、香港へ持っていって、メイド・イン・ホンコンという名前をつけて送り出しておる。あなたの好きなメイド・イン・チョーセンという名前をつけて出すと送りやすい。こういうばかげた行為は日本人を軽べつする以外の何ものでもないわけなんです。それが日本政府を軽べつしておるということなんです。したがって、骨子を承りたいと言うっておる。修正の線でいくならば、いかなる点をどのように直すべく要求するか。その答弁いかんによっては、私は別の方策を出さなければなりません。別な対策を提案しなければなりません。したがって、骨子をもう一度御説明願いたい。
  208. 新井眞一

    ○新井政府委員 いま先年からいろいろお話があったとおりでございまして、あくまでも日米間の綿製品に関する正常なあり方というところに私ども考えを置きまして、現状いろいろな事情があってのことだろうと思いますが、非常にこまかい、しかも弾力性のないあり方でございますので、そういった正常なあり方、もっと申しますれば、先ほど申しました国際綿製品の長期協定というのも、やはり自由な工業品の貿易に対するやや一時的な例外的規程としてああいう取りきめができたわけでございますので、日米間の問題にいたしましても、徐々に自由にやっていくという考え方、むしろ正常な日米間のあり方ということに着眼し、それを骨子といたしまして修正を提案いたしておるような次第でございます。
  209. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そんな正常だとか自由だとかいうことばだけで直る問題じゃございませんよ。もとより、この条文の前文には正常と書いてある。しかも、増進と書いてある。ふやすと書いてある。日米友好では、内国人と何等の待遇ということばで扱われている。にもかかわらず、内国人はおろか、カナダと比べたら天地雲泥の差なんです。香港と比べても朝鮮と比べても、ポルトガルと比べても、なおそれ以上の過酷な制限を受けているわけです。たとえて言えば、——あなたがおっしゃらぬから私が言わなければならぬようになってくる。たとえて言えば、綿製品六十余の品目に縦割りが行なわれている。その基礎数に従って三億八千万とか三億の数字が構成されている。しかも、スイッチが全然きかない。こんなばかな組み方がどこにございましょうか。同じに、今度は横割りがある。季節ごとに区切られている。そして、この季節内にこれだけ納めればよし、しからざればだめである、こういうことになっておる。まるっきり、縦割り、横割り、碁盤の目のごとく締められて、その中へ入ればよし、しからざればだめだ、こういうことなんです。注文生産品が中に入れっこないじゃないですか。しかも、繊維製品は、御存じのように、イギリスの繊維製品のごときは一年前に注文しなければならないことになっている。その対策はとられていない。はやりすたりがあるようなものを、季節があるようなものを、できっこないじゃありませんか。電機製品とか陶器製品とかと違うのですよ。それならばそうあってもしかるべきだ。繊維は常に季節に動かされる。はやりに動かされる。こんな碁盤の目のように組み立てられた中へ、入ればいいと言っても入れっこない。それがやがて全体を消化し切れないところの原因になっておる。決して政府関係者が怠慢であったわけではない。業者が怠慢であったわけではない。要はこの取りきめに問題があるわけであります。そういう問題について交渉の柱にされるかどうかという問題なんです。これは大臣でなければだめだ。
  210. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私もその話は聞いております。それで、直ちに、日本にとってきわめて弊害の多い縦割り横割り、そういうものをもう少し弾力性があるようにしなければならないということで、御説のような内容についてただいま検討中でございます。
  211. 加藤清二

    加藤(清)分科員 日本政府の態度はきわめて優柔不断であると同時に、常に向こうのおどかしにイエスマンと相なっている結果は、これでも日本はだいじょうぶだ、これだけ押していっても日本はだいじょうぶだ、だからもう一つ、こういうことで毛製品協定はまた同じスタイルで結ばれようとしていることを大臣は御存じでございますか。
  212. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本は終始これには反対をしてきておりますから、そういうような協定は結ばれるはずはありません。
  213. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大臣、覚悟のほぞをきめてくださいよ。大事なところですよ、これは。しからばお尋ねいたします。ほんとうに拒否しているのは業界だけであって、政府はそのつど御都合主義で言を左右にする、ないしはその席の空気を乱さないということにのみウエートを置いている。そうして、その場限りの答弁をする。そういうことの累積がやがて同盟国である、同病相あわれむところのイギリス、イタリアに対しても疑念を抱かせる結果に相なりつつあることを、外務大臣は御存じでございますか。
  214. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういうような、該当する事実は、私はまだ聞いておりませんが、とにかく日本政府の方針はちゃんときまっておりますから、御心配のようなことはないと思います。
  215. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私は、それを前提において、以下順次ものを詰めて話を進めていきたいと存じます。ないことはありません。あなたがないとおっしゃるならば、私は具体的に大飯の名前をここであげなければならない。いつの日幾日どこの発言がどうイギリスに影響をしたかというと、きょうあなたがお答えになっておることは、おそらくやあすはイギリスの新聞にも出ますから、アメリカの新聞にも出ますから、それはやがてアメリカ、特にイギリス、イタリアの国民に及ぼす影響は非常に大きゅうございますから、それを覚悟してお答え願いたい。そこで、いまのように、甘木の業界はもちろんこの問題は拒否している。アメリカの業界は何とかして通そうということで、アメリカ政府に圧力をかけている。選挙の公約でもある。この力関係はやがて政府間の交渉に影響を及ぼしてくる、こういう問題です。そこで、これはあくまで分析して考えておかないといけませんので、政府の認識をまずお尋ねいたしますが、日本政府反対である、アメリカ政府はいま突き上げられておる、こういう状況です。その際に、アメリカの業界の中でこれを促進しようという動きと、そればいけないと、さようなことは日本国民に及ぼす精神的な影響が大きい、そのことばやがて共産圏貿易に追いやる原因になる、だから無理をしてはいけない、この二つの意見がございますが、あなたのほうはこれをどう把握しておられますか。まず情報網を持っていらっしゃる外務省から承ります。
  216. 菊地清明

    ○菊地説明員 先生御指摘のとおり、アメリカの業界にはいろいろな意見があることは承知しております。ただ、御承知のように、アメリカの場合は、日本の場合と違いまして、綿製品を生産している会社と毛製品を生産している会社は大体同じでございまして、大きなものをあげますと、バーリントンインダストリーズと、JPスティーヴンズと、ディアリン・アンド・ミリケンとの三つであります。それで、この業界、ことに大手の業界は、綿製品でこういった国際協定ができたことに味をしめたというと非常に語弊があるかもしれませんけれども、それで毛製品にまでこの協定を及ぼそうとしておる。それで相当米国政府に対して陳情を続けておるという情報は把握しております。それからもう一つの一般的に外交的見地ないしもっと広い見地から意見を述べておるという人は個々にはあると思いますけれども、これはなかなか把握が困難でございまして、ただ、輸入業者は、もちろんこういった国際協定には賛成しないということを言っております。大体そういうことであります。
  217. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大臣、そのことは認識しておられますね。それでは個々別にお尋ねいたしますが、アメリカの商務省はどういう態度でおられますか。
  218. 菊地清明

    ○菊地説明員 商務省は、一般的に申しまして、業界の利益を保護するという第一義的なあれもありまして、しかし同時に通商の拡大ということが商務省の立場でもあるわけで、その間の調整をやっておるかと思いますが、先生も御承知だと思いますが、バーリントン・インダストリーズの副社長のラブという人が相当枢要な地位におります。スペシャル・アシスタントというかっこうで入っております。どちらかといえば、商務省の態度のほうがアメリカの業界の意向を反映しておるというふうに私たちは承知しております。
  219. 加藤清二

    加藤(清)分科員 遺憾ながら、私が手元にとっている情報とはそれは違います。そういう受け取り方ができるような態度をとっておられるところもある。それはアメリカの業界と相対したときの発言なんです。しかしあなたが先ほどおっしゃられましたように、アメリカ国内にそれば結ぶべきでないという勢力がある。その勢力と話し合いをしたときには、き然たる態度で臨むということになっておる。あえて私は材料を提供してくれた人の名前はここで発表は差し控えますが、必要とあればあとで記録に残します。そこで、どうかといえば、商務省は中立的態度、むしろなだめ役に回っておると見るべきが至当である。もう一度ひとつアメリカの大使館に問い合わせて、あるいは日本側の廟社、あるいは日本側を代表する弁護士、あるいは日本側を代表する。ロビイスト等々に尋ねてみられる必要がございます。間違った認識から出発した結果は必ずよい結果は招かれません。そこで、次に、ハーター特使事務所の態度はいかん。
  220. 菊地清明

    ○菊地説明員 ハーター事務所は、御承知のとおり、アメリカの通商拡大法の実施、つまりケネディ・ラウンドの実施のためにできたオフィスでございまして、その創立の目的からして、通商の拡大ということがその存在理由でございますので、こういった国際取りきめが輸出制限的な方向に動くことには反対であると称しております。
  221. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そのとおりでございます。ハーター事務所は反対でございます。協定が結ばれることに反対の態度をとっております。次に、それでは、政府みずからというよりも、業界のスポークスマン的地位にあり、アメリカ政府を動かす非常な大きな力を持っていらっしゃるパストーレさん、この方はどういう態度をとっておられますか、及びこのパストーレ委員会、この態度は非常に重大な影響を及ぼします。
  222. 菊地清明

    ○菊地説明員 パストーレ上院議員は、御承知のとおりロードアイランドの出身の上院議員でございまして、パストーレ委員会という名前を冠した上下両院にわたる綿製品——繊維製品一般でございますが、に関する特別委員会のような形式をとった委員会がございまして、この委員会は随時公聴会を催しておりまして、こういった輸入制限等に対する賛成、反対、両方の議論を聞いておるわけでございます。パストーレ委員長自体のお考えは、あるいは先生のほうがもっと御承知かもしれませんけれども、まあどうしても業界のほうの肩を持たれるような発言が多いように承知しております。この委員会は非常に、一つのフィロソフィーといいますか、そういうものを持っておりまして、綿製品とか、それと競合する繊維製品の問題を取り上げようとしているように承知しております。
  223. 加藤清二

    加藤(清)分科員 当たらずといえども遠からずだと私は思います。あなたの答弁は。しかし、ミスター・パストーレは、アメリカ国会においてはもう大もの中の大ものなんです。したがって、このことの及ぼす影響は百も御承知の上なんです。ただ、業界からの圧力は主としてここへ集中してかけられるわけなんです。したがって、非常に苦しい立場に立ってみえる。これはまさに同情に値すると思うのです。しかし、だからというて、日本関係を破壊してまでこれを前進させるほどパストーレさんは常識のないお方であるとは思われない。だから、そのよき一例は、御承知でございましょうけれども、さきに食肉法が通りましたことがございましたですね、これに便乗してやったら一番いいチャンスがあったはずなんです。にもかかわらず、そのときにこれを除外してみえた。そうして、本件を立法措置に追い込むということのあやまちと、それから発生するところのアメリカ国の利害、同時にまた、圧力をかけているところの業界それ自体の損得勘定を計算されて、遠慮なさったはずなんです。すなわち、圧力をかけている業界といえども、御承知のとおり、綿花の一律価格制、原毛立法の延長、ケネディ・ラウンド、税制措置、開発資金、さきの綿製品協定の長期延長や毛製品協定よりはもっとウエートの大きい問題をたくさんかかえている。それをケネディさんにお願いしなければならぬ。したがって、一をとって十を捨てるようなことは業界としてもやられないはずなんです。ここらの認識を正確に把握するということが絶対この問題を前進させるのに必要だと思いますが、大臣としてはいかにお考えでございますか。
  224. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お説のとおりだと思います。
  225. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは、その線に沿って一体米国政府はどのような態度に出るでしょうか。ジョンソンさんとしてはどう処置をあそばされるでございましょうか。立法措置でおどかしをかけてくるのか、あるいは行政措置でこの問題に対処しようとなされるのか。前向きの姿勢で交渉するとおっしゃったあなたは相手の出方を考えておかなければならぬはずなんです。どう把握してみえます。
  226. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは話し合いで解決するのが一番大事だと思います。話し合いで解決したいと向こう考えるだろうと思います。
  227. 加藤清二

    加藤(清)分科員 つまり、行政措置とか立法措置のようなおどかしはかけずに話し合いで来る、そう見ていらっしゃる。そんなやすいものじゃないですよ。しからばお尋ねする。もし行政措置できたとしたならば、どうなさいます。現に箱根会談が行政措置でやられたのです。立法措置の上に行政措置でやられたのです。それを日本の新聞が書かなんだだけなんです。そういうふうに表現しなかっただけなんです。
  228. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、行政措置でかりにやるにしても、日本が合意しなければできないと思います。
  229. 加藤清二

    加藤(清)分科員 もし無理な行政措置で来た場合に、外務大臣としてはそれに合意しますか、しませんか。
  230. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これはあまり前提を置いて想像して方針をきめるということは軽率だと思います。私はまあ、行政措置ではやってこない、こう考えております。
  231. 加藤清二

    加藤(清)分科員 あなた、これは来年の話じゃありませんよ。もう二、三年前から継続されて、いま火がついておる問題ですよ。あなたの認識はおかしいじゃございませんか。ただ、あなたの態度を表明することがアメリカ国に対して失礼にあたるとでも誤解してみえれば別です。しからざれば、アメリカ国ははっきりした態度を示している。イギリス国もこれは絶対反対であると言うておる。イタリアも新内閣はこれについては絶対に反対であると。しかも、先般行なわれました国際羊毛会議においては、みんな、イギリスもイタリアも日本も一致して反対であるという態度を示してきておる。行政措置が来たならばかくかくにするということまで言うてきておる。いまさら何を言うておるのです。あなたは。
  232. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、武内大使からも話し合いでやるべきであるということを強く申し入れてありますから、そういう乱暴な措置には出ない、こう思います。
  233. 加藤清二

    加藤(清)分科員 いや、もし来たらという前提で言うておるが、来たらどうしますかと聞いておる。
  234. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 来ないと思います。
  235. 加藤清二

    加藤(清)分科員 来たらどうしますか。
  236. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いや、これは来ないと思いますから、だいじょうぶです。
  237. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私は、来たらどうしまかとお尋ねしておる。
  238. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 行政措置をこっちが反対しますから、無理に押しつけてくるわけがない。
  239. 加藤清二

    加藤(清)分科員 しからば、私はここに一つの試案を提供します。しかし、試案と申しましても、一日や二日で思案した試案ではございません。長年かかっていろいろ考えて、相手国も傷つけないように、相手の業界もおこらせないように、当然の言い分として言えることを考えてきておる。それがよかったらあなたはそれに賛成しますか。あなたが言わぬから、こっちが具体策を出すのだ。
  240. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 伺ってからきめましょう。
  241. 加藤清二

    加藤(清)分科員 しからば申し上げなければなりません。まず第一番に、綿製品協定の場合と毛製品協定の場合とでは前提条件が違います。すなわち、綿製品の場合は、アメリカ国内の関係メーカーが国際価格よりも二割高の綿を食わされていた。したがって、二割安の原綿で加工したものを入れたならば立ち行かぬようになる。そういう不利な同情すべき条件があった。ところが、いまやこれは、なくなられましたさきの大統領ケネディさんの英断によって、その前提条件は喪失したわけです。二割の補助金を与えるということによって。したがって、綿製品協定もいまや喪失してしかるべきなんです。いわんや、この毛製品の問題についてはそのような条件がございません。もう一つの問題は、御承知のとおり、綿製品に関する限りは、アメリカへの輸出国が発展途上の国でございます。しかもこれはガットに加盟していない国でございます。加盟していても、これはいわゆる八条国と十四条国の相違がございまして、同等にものを断ずることのできない相手国が多いのでございます。したがって、その制限をするの必要性を日本としても認めざるを得なかったわけなんです。しかし、毛製品を輸出する国は、これは全部先進国でございます。しかも、全部自由主義国家群に属する国でございます。しかも、この国は全部がガット加盟国でございます。したがって、この問題は、特殊な行政措置とか立法措置を行なわなくても、ガットの場で行なえるし、もし無理なことを行なえば、ガットでアメリカ自体がおしかりを受けなければならぬという状況にあるわけでございます。すなわち、先般イギリスが行ないましたところの課税の特別措置はガットにおいてたいへんな非難を受けて、いまや後退せざるを得ない状況に相なっておることは、外務大臣よう御承知でございましょう。こういう措置ができる。アメリカにとってみれば、おのれみずからが提唱してつくったところのガット、その上に上積みして別なものをつくらなければ統御ができないということは、アメリカみずからが自分の実力を卑下することになる。それを世界に宣伝することになる。さようなことをさせることば、友好国としてパートナーシップとしてとるべきわざではないと思う。だからこそ、日本は、ほんとうにパートナーシップであるというならば、勇気をふるって、さようなことはあなたの国にとってよろしくないということを、あなたみずから言うべきだ。私が外務大臣だったら、とっくに言っておる。私はこのことをすでに言ってきた。アメリカへ行って関係要路へ、言うてきておる。みんなそれはもっともであると答えておる。いいことを注意してくれた、よくサゼスチョンしてくれたと言っておる。だからこそ、具体策としては、ガットへ持ち込んで、その不当性を認識させて、後退させるという準備がなくてはならぬわけです。あなたは常に、日本は再軍備は要らぬとおっしゃる。ただ、万が一のことをおもんぱかってとおっしゃる。万が一のことをおもんぱかってそれほど重大な多額の経費を毎日使うのならば、この問題だって、向こうがどう攻めてくるかわからぬのだから、その対策があってしかるべきなんだ。いかがですか。
  242. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お説はまことにごもっともでございまして、大使からも、あるいはまたガットの場においても、機会ある事ごとにこの問題を御趣旨のとおり主張いたしております。
  243. 加藤清二

    加藤(清)分科員 次に、もし相手国が行政措置によらずして業界の無暴な圧力に耐えかねて立法措置で来るとするならば、私は二つの方法があると存じます。それこそ、日米友好通商航海条約立場から正しい認識を与えれば、あるいは先方の裁判所においてこれの白黒をきめれば、必然的に事は明らかになると思います。同時に、もう一つは、われわれ自体でできる問題がございます。すなわち、ことばは悪いかもしれないけれども、報復手段である。報復手段をとりさえすれば、これはとれるわざなんだ。報復手段の第一は、市場転換でございます。日米の貿易は常に帳じりが赤でございます。日本の赤でございます。買い過ぎでございます。少ないときでも赤が二億ドル、多きに至っては十一億ドルから十二億ドルの赤字を示し、この累積は今日に至っては七十億ドル余になっております。こういう状況でございますので、市場転換をする。主たるものでなくても、せめて余剰で余分に買えと言われて、何ともごめんをこうむるというくらいのことば言えるはずです。また、慢性的に累積しているところのこの日米貿易帳じりの赤、これを解消してくれと要求するのは、報復手段でも何でもない。当然な経済行為なんだ。経済上の当然のことなんだ。それすらもいままではよう言わぬでおる。まことに歯がゆいきわみなんだ。それくらいは言うべきである。もう一つ言い得ることは、貿易は自由化されたと言いながら、アメリカ貿易だけとってみましてもおわかりのとおりだ。日本の買いの自由は与えられたけれども、売りの自由は与えられていない。こんなばかな話はない。同時に、貿易の自由化だ自由化だと言いながら、中国をはじめとする共産圏の貿易はいまだにチンコム、ココムの亡霊によって束縛をされている。すでにイギリス、イタリア等自由土義陣営の国とといえどもこれはとっくの昔に放てきしておる。何がゆえに日本だけこの亡霊に取りつかれて延べ払いその他に関するものまでも制限を受けなければならないのか。ここらあたりに問題の材料は幾らでもあるはずなんだ。したがって、報復手段ということばが悪ければ、いわゆる正常な貿易の発展に寄与貢献するために、不当に差別をつけられているところのこの具体的事実を排除するくらいのことは、外務大臣日本から月給をもらってみえるあなたが日本人である以上は、当然言うてしかるべきだと思う。
  244. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 立法措置に訴えてまで、さような関係各国が反対しておることを私はよもややるはずはないと思いますが、もしかりにやったとすれば、それは通商航海条約に対する明らかな違反であります。これに対しては強く抗議をし、なお聞かなければ適当なる措置に訴えるべきである、かように考えております。
  245. 内田宏

    ○内田説明員 補足説明させていただきます。加藤分科員の御質問に立法措置というお話がございましたけれども、おそらく立法措置のような形をとりませんで、通商航海条約に抵触する形をとらないで、無差別で発動すると思います。その場合におきましては、ガットに提訴いたしまして、この問題の解決をはかることになると思います。
  246. 加藤清二

    加藤(清)分科員 さて、そこで、本件を私は今度は品月別に詰めていきたいと思っておりましたところ、主査から時間ということでございまするので、国会の正常化に協力する意味において、私はこの緯度にしたいと思いまするが、最後に、この問題はしかくさように簡単な問題でもなければ、日本の友好を前進させるためには、ほんとうにまつ正面から取り組んで、この際解決をしておくことが、将来に禍根を及ぼさないもとになると思います。そこで、大臣、あなたは前向きの姿勢でこれに対処すると言われました。同時に、毛製品協定については断然拒否すると、絶対反対であるとおっしゃられました。綿製品協定については前進してこれを正すと言われました。今日の段階ではこれはやむを得ぬでしょう。そこで、あなたにお尋ねいたしますが、この問題は、相手国は大統領以下トップレベルで常に処理しておられるのでございます。これと平等な立場においてものを言うには、外務大臣一人ではとうていできることではございません。したがって、日本国においても、アメリカ国に敬意を表し、友好を前進させる意味においても、総理、外務大臣、あるいは通産大臣、あるいは経企庁の長官等関係大臣の間において十分なる検討をなさり、その最高機関から大使その他関係事跡担当官に指示をなさる必要があると思いますが、この点はいかがでございますか。
  247. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 すでに方針がきまったことでございますから、そう総理から関係大臣間で協議するまでもないと思いますが、必要とあれば相談もいたします。
  248. 加藤清二

    加藤(清)分科員 すでに本件については、先ほども申し上げましたように、某大臣が、決して悪意ではないけれども、微妙なところで一歩勇み足をしたことが、イギリス及びイタリーの政府並びに関係業界にたいへんな誤解を招いて、日本の態度を疑うという結果を生じておるわけでございます。したがって、私は、そういうことを除去する意味におきましても、当然日本関係閣僚は常に共同歩調で外部に向かっては統一意見を発表される必要があると思うのでございます。したがって、私は、いまのようなことを提案いたしておるわけでございます。両度答弁を要求します。
  249. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これはもう既定方針として固まっておるのでありますから、何かの機会に誤解を生ずるようなことがあったかもしれませんけれども、この既定方針は動きませんから、だいじょうぶでございます。
  250. 加藤清二

    加藤(清)分科員 本件は、主査にもお願いいたしますが、アメリカ国におきましては、上院下院を問わず、与党野党を問わず、挙党的立場に立っての特別委員会を設けているわけでございます。すなわち、大もの中の大ものであるパストーレさんが委員長になられまして、その中には御承知のジョンソン氏の相手方でありましたゴールドウォーター氏も参加しておられます。ケネディさんの衣鉢を継がれるその弟さんもこの委員会に入っている。そして、常にハイレベルのところで大所高所に立っての問題としてこの検討が進めれらておるのが実情です。しかも、そのことば長きにわたっているわけでございます。一日や二日で今日スタッフができたり、あるいは将来簡単に解消できる問題ではございません。大臣がかわったり内閣がかわるたびに意見が変わるようでは、これは困った問題です。したがって、わが国におきましても、礼儀の上から言っても、この院内に、たとえば中野四郎さんを委員長として、これに相こたえるべき委員会をすみやかに設けて、日米友好を進めるべきだと思いまするが、この点、主査におかせられては、ぜひこれを予算委員長に申し入れて、さしあたって御協議を願っておきたい。私は、本件につきましては、次いで行なわれます一般質問ないしは総括質問におきまして必ずこの問題を提起いたします。友好国として当然のこととして行なうべきである。佐藤・ジョンソン会談において、すでに本件はジョンソンさんから佐藤さんに申し入れがあるのです。その問題をここでは云々いたしませんが、それに相こたえなければならない時期が来ておる。したがいまして、私は、そのアプローチに対しても、こたえるべき委員会を設けることが、国際的な礼儀から言っても必要であると思うのでございます。ぜひひとつ、主査におかせられては、予算委員長及びおたくのほうの関係の幹部、関係閣僚等に前進方を要望していただきたいと思います。このことが本予算を審議するにあたってもし成功したとするならば、これはアメリカ国も喜ばれることであるし、日本国の経済発展から言ってもまたけっこうなことである。しかも、この分科会は歴史的に世界的に記録されることと相なると思います。ぜひひとつそのことを走査において実行に移されたい。これについての主査の今日的見解を承って、私の質問を終わります。
  251. 中野四郎

    中野主査 加藤分科員の御趣旨は関係方面に申し伝えておきます。吉村吉雄君。
  252. 吉村吉雄

    吉村分科員 今度の国会の冒頭における総理大臣の施政方針演説の中に、次のようなことを言っておるのであります。内容は、「工業、農業等の技術を身につけた青少年が、東南アジア等の開発途上にある国々の青少年と起居をともにし、ともに働きつつ理解を深め合い、親善の実をあげることは意義深いと考え、これら青少年の派遣準備を進めております。」、こういうことを総理の施政方針演説の中で言われております。   〔主査退席、登坂主査代理着席〕 さらに、椎名外務大臣の外交演説の中でも、「新たに青年海外協力隊の派遣、職業訓練センターの設置等を予定しており、アジアを中心とする開発途上の諸国における人づくりに一そう貢献できるものと期待しておる次第であります。」、このように述べておられます。私は、このアジア諸国との技術協力の問題、これに関連をする予算上の問題、あるいは派遣をする場合に国内体制としてはどういうふうな体制をもって臨んでいこうとするのか、こういうことにつきましてお尋ねをしていきたいというふうに考えるわけです。それで、いま申し上げましたような総理の施政方針演説の内容、あるいは外務大臣の外交演説の具体的な内容というものは、どのようなものなのか、どうしてこれをやっていこうとするのか、これをまずお尋ねをしておきたいと思うのです。
  253. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アジアにおける諸国の多くは、いわゆる開発途上の国であります。しかし、技術の面において非常にまだ未発達でございまするので、従来から技術協力の面を経済協力とともにできるだけ推進してまいっておることば承知のとおりであります。しかし、十分な現状ではないのでございましてただ少しばかりの比較的高級な技術者を送って技術的な協力をするということよりも、もっとさらに多くの人を含む、そしてもっと下の方が一緒に向こうの連中とともどもに働きながら技術の訓練指導をするということがきわめて望ましいと考えますので、そういう方面に志のある青年で、しかもその所要の技術能力を備えておる青年に呼びかけ、そしてこれらの人たちをアジアの開発途上にある諸国に送りまして、いわゆる国づくりあるいはそのために必要なる人づくりというものに協力する、こういう趣旨で、来年度約七千数百万円の費用を計上いたしまして、これを実行に移したい、かように考えたわけでございます。
  254. 吉村吉雄

    吉村分科員 私は、この青年海外協力隊そのものについて賛成とか反対とかという立場で申し上げようとするのではないのでありまして、いまの外務大臣の答弁から見ますと、非常に抽象的になっておると思うのです。これではその外交演説の中で触れられたことを単にふえんしたにすぎないというふうに考えます。ただ、具体的な事柄は、外務省の予算の中の海外経済技術協力費二十億のうちで、七千九百万ですかいまの答弁によりますと七千九百万円を充てる、こういうことでございますけれでも、この七千九百万円の予算をもって、ただいま大臣が答弁をされたような事柄が一体具体的にできるのかどうかということを私は非常に疑問に思うわけです。それで、外務省がそういったことについてやるとするならば、この中にも少しく書いてあるのでありますけれども、そのような技術を身につけさせるために、一体外務省自体が何かやろうとするのか、ここに書いてありますのは、各種技術センターの新設云々ということが書いてありますけれども、この意味は一体どういうことを意味するのか、ひとつお尋ねをしておきたいと思うのです。
  255. 吉野文六

    ○吉野説明員 お答えいたします。青年海外協力隊に関しましては、各国の要請をまちまして、それに適当な青年がいるかどうか国内でこれを募集し、訓練し、そして派遣する、こういうような段取りになっておる次第であります。それから、ただいま先生の御指摘なさいました技術の訓練センターは、現地においてその土地の技術訓練希望者を訓練する、こういう目的でございます。
  256. 吉村吉雄

    吉村分科員 そういたしますと、建設省の方来ておりますか。——来ておりませんね。外務省独自の技術訓練センター的なものを国外に設置する、希望者をそこに収容して訓練していく、こういうお話でございますけれども、外務省自体がそういった技術を訓練せしめるというような、そういう作業のことまでここに入っているのかどうかということについて、私は疑問を持たざるを得ないのです。御存じのように、労働省には、労働省の中にたくさんの職業訓練所というものができておるわけです。さらに建設省ですが、きょうまだお見えになっておりませんけれども、建設省の予算面から見ましても、産業開発青年隊というものを建設省が計画をしておる。この産業開発青年隊というものは、昨年の予算分科会における私の質問に対して、当時の河野建設大臣の答弁によりますと、これは将来やはり海外技術協力をやっていこうという考え方でいるのだ、こういう答弁がございました。そうなってまいりますと、労働省として、これはもとより海外に云々ということではないでしょうけれども、職業訓練をやる。今度は外務省のほうでもそういうことをやる。それから、建設省は建設省でまた、産業開発青年隊の育成ということのために、これまた職業訓練的なことをいく。こういうことをやってを各省ばらばらにやっているということは非常にむだが多いのではないか、こういう気がしてならないわけでございますけれども、その点は一体関連があるのかないのか。特に私が申し上げたいのは、建設省の産業開発青年隊との関係は外務省としてはどのように把握されておるのか、この点お尋ねをしておきたいと思います。
  257. 佐々木正賢

    ○佐々木説明員 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。外務省といたしましては、御指摘のように、独自で技術協力を推進するという機能はもちろんございません。ただ、技術協力について外務省が相手国の要請を聞きながら推進する、そして実際の技術協力のやり方に際しては関係各省の協力を得ながらやるという体制で進んでおります。御指摘のように、海外訓練センターにつきましては、現在十五の協定を結んでやっております。たとえば、タイの南のほうに道路技術訓練センターを設置しておるのでございまして、これは建設省の協力、あっせんによりまして、関係技術者が向こうに行って、こちらから出した機材をもって相手国の技術者の訓練をやっているということでございます。それから、今度新しくフィリピンに一カ所中小企業のセンターも設けるということに予算要求しておるのでございますが、本件につきましては、通産省なり労働省の協力を得て実施するということにいたしております。それから、日本へ呼んできております研修生の研修につきましては関係各省の協力を得ながら、いわば官民協力一致の体制といいますか、協力をしながら実施しておる。実際の技術協力の実施は、外務省の所管である技術協力事業団を通してやっておるそういう実情であります。
  258. 吉村吉雄

    吉村分科員 そういたしますと、先ほどの答弁の中身とは少し違うようですから、話はわかりました。各省との相互的な協力の中でこれをやっていこう、こういう趣旨に理解をいたします。  そまで、お尋ねをしたいのは、その場合、派遣ということになるわけですけれども、派遣される青少年の身分関係は一体どういうふうになるのですか。
  259. 佐々木正賢

    ○佐々木説明員 派遣される青少年の身分でございますが、これは現実の問題といたしましてまだ計画の段階でございまして、はっきりした、身分をどうするかということはいまのところまだきまっておりません。おそらく現在の身分そのままでやっていただくということになる予定でございます。
  260. 吉村吉雄

    吉村分科員 施政方針演説の中でたいへん大言壮語されておりますし、ただいまも椎名外務大臣から、これに対する期待は非常に大きいかのごとき意見がございました。ところが、具体的にそれらの人の身分関係はどうかというふうに聞けば、それはまだ目六体化していない、こういうことでは、言うこととやろうとすることの内容が一致しないのじゃないかと私は思うのです。特に私がこのことについて触れているのは、実は、私は一つの非常に悲惨な事例を知っているからなんです。これは建設省所管の産業開発青年隊を修了した方であって、建設省のほうからのすすめに応じ、海外技術協力協会のあっせんによってタイ国に行った人でおる。働き先は民間の会社でございますけれども、不幸にしてこの方は現地で六カ月ばかり働いている中でなくなったのですけれども、その死因についても非常に問題がありました。しかし、これは日本でどうにもなるものではないので、外務省を通じたり何かして調べましたけれども治安が非常に悪い中で起こった死亡ではありましたけれども、いずれにしても、外務省の判断によっては、それは公務による死亡ということで、それで処理されたわけです。それまではまあまあとしましてもこの人の補償の問題になってまいりましたところが、その雇用主のほうでは全然誠意のない態度をとっておりまして、もう二年も過ぎたわけですけれども、その補償がまだきまっていない、こういう状態にあります。私はこれはたいへんな問題だと考えまして、その当時労働省のほうにも連絡して、一体海外に行った方々の労働災害については日本としてはどういうふうにするものかと聞きましたところが、それは国内法規に基づいてやろうという考えでございます。こういうふうに言われた。それはけっこうな話だと思いますけれども、民間ペースでそういう雇用関係が生まれますと、正直に言って、労働省がそういう法律見解を示したとしましても、実際には実行できないということになります。ですから、今回ここで特に海外技術協力のための青少年派遣ということを強調するとするならば、そういった問題について安心して行けるような体制をつくり上げるしかないのではないかと考えてお聞きした。ところが、まだ具体的なものになっていない。海外技術協力協会の手を経てやるという従来の態度を出ていないわけです。いま私があげました一つの事例から考えてみましても、これからこういう政策を進めようとする外務省としてはどのように身分関係をやり、あるいは不幸にしてそういう事故が起こった場合にはどういうふうにして遺族なりあるいはこちらの家族に対する救済策を考えようとするのか、ここらの点を明確にしていただきたいと思うのです。
  261. 佐々木正賢

    ○佐々木説明員 いま御指摘になりましたタイにおける死亡事故の件でございますが、御承知のように、日本からは各種のケースによって海外に多数の技術者が行っておるのであります。本件につきましては、私の承知しておるところでは、いわゆる向こうと本人との契約によって行っておった技術者だ、こういうふうに了解いたしております。ただ海外技術協力事業団の派遣しております専門家につきましては、海外技術協力事業団が派遣を委嘱するというかっこうでやっておりまして、この専門家の身分につきましては、もちろん事故があっ場合は海外技術協力事業団のほうに医療手当とか死亡手当というようなものを出させるように措置しておるという状態でございます。
  262. 吉村吉雄

    吉村分科員 このことは、私は先ほど申し上げましたような事例から申し上げているわけでありますけれども、いまの答弁によりましても、私はどうしても納得することができないわけです。これから青少年の海外派遣というものをやっていくということを強調されている。しかし、派遣する身分関係については民間ベースでこれをやっていこうということになりますと、きわめて不安定なままで行なわれるということになるでしょう。計画局長が来たという話ですから、これは前からの懸案事項でもありますので、私はこの際明確にしていただきたいと思うのですけれども、私がいま申し上げた事例については、建設省の計画局の中のある課長が雇用契約を結ぶ際に保証人になっているのです。これは個人としての保証であるかもしれない。しかし、当事者から言えば、建設省がやったところの産業開発青年隊に入って、そこを終わって、建設省からの話によって海外技術協力会の手を通じてタイ国に行った、こういう中で雇用契約の保証人に課長がなっているということになれば、当然の考え方として、国のほうで安心して行けるようにしてくれたものと理解をすると思うのです。そういうふうに考えるのが私は自然だと思うのです。ところが、先ほど申し上げたように二年過ぎても問題が解決しない。こういうことのために、政府のほうで海外技術協力を進めるためのいろいろの青少年募集作業というものが、私の知っている県では、この事例のためにだいぶ障害を受けたというふうに聞いているのです。こういうようなことを放置したままで海外技術協力を進めるということは、私はきわめて危険なやり方だと考えるのです。ですから、この点については、この海外技術協力を積極的に進めようということを強調しておる、そういう当の責任者である外務大臣の明確な考え方を聞きたいし、具体的な事例の問題については建設省の計画局長のほうからひとつ態度を明確にしていただきたい、このように考えます。
  263. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 海外技術協力のために海外に出かける青少年隊の隊員の身分関係についての御質問と思いますが、これは実はただいま研究中でございまして、その点はまことに遅延をいたしておりまして、さっそく、その身分関係等は、最も大切な問題でありますから、至急研究して安心して海外の職場において働き得るような基盤をつくりたいと思っております。
  264. 志村清一

    ○志村政府委員 ただいまお尋ねのございました件につきまして、先に御説明申し上げたいと思います。実は、昭和三十七年に国際建設技術協会という団体を通じまして、タイ国の法人である新東通商株式会社から、産業開発青年隊の修了者を二名ほどタイ国の農場で雇用したいが、あっせんしてもらえぬかという連絡があったわけでございます。その連絡を受けましたので、私どもといたしましても、青年隊の修了者に、こういう就職採用の要請があるけれども行く者はないかと言ったところが、村田君と中条君の二人が希望いたしまして、この両名とタイ国法人の新東通商株式会社との間で雇用契約を結んだわけでございます。その際、契約が正式な誤りのない契約であるということを保証するために、いわば証人としてお世話をした課長が署名をしたという事実がございます。その後三十七年の十二月に両名が出発いたしまして、タイ国のKY農場という個所で働いておったわけでございますが、たまたま村田君が作業中ブルトーザーの事故によりましてなくなったわけであります。それは三十八年の四月でございます。ところが、契約のいろいろな条項の中には死亡をした場合の約定がございません。この点、私どもの担当課長が証人になって契約を結んだ契約がいささか不備であったと考えられるわけでございますが、それにつきまして、当該タイ国法人の新東通商のほうでは、契約には書いてないが、日本の労災保険の規定に従った補償をいたしたいという申し出があったわけでございます。大体労災保険の最高額千六十日分の給与額約八十万円ほどの提示があったわけでございますが、御家族の方々の御希望もありますし、遠い国にあってそういう事故でなくなったということもございまして、吉村先生もいろいろわずらわせまして、私どもも間に入りまして、三十九年の七月に両当事者の和解ができまして、百二十四万五千五百円の補償を支払うということになったわけでございます。実は百二十四万五千五百円の和解ができましたが、その後、その支払いにつきまして、三回くらい分割でお支払いするという約束でございましたが約束どおり参りませんで、いまのところ約三十五万程度の支払いが済んでいるだけでございますので、その点、私どもも実は、この和解に立ち会った者といたしまして、タイ国の新東通商に対しまして、約束どおり早く支払ってほしいという催促もいたしておるような状態でございます。
  265. 吉村吉雄

    吉村分科員 私はその経過をどうごうというように言っておるのではないのです。こういうことをやっておったのでは、外務大臣が幾ら海外技術協力云々と言ってみたところで、こんな不安定な状態のままで日本人を海外に出すというそういうばかな話はないじゃないかということなんです。私の申し上げておるのは、だから、一つの事例として私は申し上げます。もしこれを法的な立場で言いますならば、死亡の際に労働災害補償法に基づいて補償ををするということを容認した、こういうふうになりますから、その限りではいいでしょう。しかし、法律的な意味で言うならば、そういう法律を適用させるためには、労働省としては当然労災法の中にその雇用主が掛け金なら掛け金を積まなければならない、こういう立場になるはずです。そういうことをやっていないから、こういう問題が起こってくるのですよ。これは、その人たちがまだ支払いもしていないから、結局だれかが中に入ってそこまで来たからいい。しかし、これが泣き寝入りになったらどういうことになるのですか。こういう状態のままで何十人かの青少年を海外に派遣しようということは、私はとんでもない話だと思うのです。派遣するなら派遣するらしく、何の心配もないような状態にしてやることが、国として一番大切なことだというふうに私は思うのです。初めに私が、では身分関係はどうなるのですかとお聞きしたのは、そこなんです。国家公務員なり何なりという立場でやるなら、いろんな点で相当安心ができると思うのですよ。そういう状態でなく、放置した民間ベースの中でかってに雇用契約を結ばせる。しかもそれに建設省の課長が立ち会ってやった。契約当事者立場になれば、当然、建設省のおえらい人が中に入っておるのだから安心だという気持ちを持つだろうし、家族の方々だってその気持ちを持つのは当然だと思うのです。それがいまだに三年にもなるのに解決していない。これは一つの事例でございますが、しかし、このままの状態でいくと、こういう事例が幾つも幾つも出ないとは限らない。これは死亡だから確かに大きな問題になった。それ以外の事故だってあり得るはずなんです。そういった点にもっと真剣に取り組んでもらわなければならないのではないかと思いますけれども、いま外務大臣のお話によりますと、身分の関係については十分検討をしたい、こういうお話でございますけれども、その検討というのは、一体どういうような方向で検討しようということなのか、あらためてこの際私は確認をしておきたいと思うのです。
  266. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 どういう方法と申しましても、とにかく、安心して海外に出かけて、そうして働けるような基盤をつくるべくあらゆる検討をいたしまして、早急にこの問題を解決したい、かように考えております。
  267. 吉村吉雄

    吉村分科員 それば抽象的にはそういうことでいいでしょう。ですけれども、派遣ということのことば意味は、国の雇用とかなんとかいう形で通常使われてしかるべきだと私は考えるわけです。ところが、先ほども申しましたように、そういう悲惨な事例が起こっておるわけですから、したがって、この政策を実施していこうとするのであるならば、やはりその身分関係は国家公務員なら国家公務員的の立場にするとか、そういうような方向にしなければ、いつまでたってもこの問題は解決しないと思うのですよ。
  268. 吉野文六

    ○吉野説明員 日本青年海外協力隊は、海外技術協力事業団に委託をして技術協力団から派遣するという形になるという見通しでありますが、技術協力団といたしましては、過去において何名かの技術者をすでに海外に出しております。その場合のことを十分しんしゃくいたしまして、身分関係もさらに研究中でございます。
  269. 吉村吉雄

    吉村分科員 労働省の基準局長、こういうことで日本人が海外に行った場合に、低開発国ですから、普通の法解釈でいけば、海外に行った場合には海外のその当事国の法適用を受けるというのが普通の法解釈だと私は思うのです。しかし、低開発国のために、そのような社会保険的な制度がない。したがって、一番いい方法として国内法を最低限度適用しようという考えだと思うのですけれども、しかし、そうだとしますると、先ほど大臣の御答弁によると、各省の協力を得てというお話ですから、このような場合には、労働省としては、不時の予測し得ないところの事故に対して、その補償措置なりなんなりというものを十分とった上で派遣なりなんなりしていく、こういうふうにならなければならないと思いますけれども、労働省としてはこういうふうな点についてはどう考えていますか。
  270. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 きわめて困難な問題でございますが、一応、これは先生御承知かとも思いますけれども、筋道だけ申し上げたいと思います。ILO、国際労働条約で、「労働者災害補償ニ付テノ内外人労働者ノ均等待遇二関スル条約」というのがございまして、これに加盟しておる国に派遣した場合におきましては、派遣された当該事業の雇用労働者として補償を受ける、ただ、その国の今度は労働者災害補償法の適用関係がどうなっているか、条約に加盟しておりましても、当該事業が、その国において適用事業になっていないということでございますれば、これは全然意味がない、こういうことになろうかと存じます。現行制度のもとで配慮するとすれば、その国の災害補償制度がどうなっており、その内外人の均等待遇に関する条約に加盟しているかどうかということが確認されれば、現体制においてもやや安心ができる。しかし、御指摘のように、後進国でそういう制度がない、こういうことに相なりますれば、もうこの条約は発動しない。手ががりは全然なし、こういうことになるわけでございます。しからば、現行制度のままで何とか名案はないかということになりますれば、その際においては、結局やはり身分関係に帰着するわけでございます。かりに、これはかりにの話でございますけれども、海外協力事業団の職員という身分を保有するという例をたとえば考えてみますると、海外協力事業団が労災保険に加入するというような方法考えられるかと思います。しかし、これはあくまでも仮定のことでございます。それ以上に、今度は純然たる私契約に基づいて外国の事業に雇用せられたというものについては、これは手が及びませんので、特別な立法で解決せざるを得ない、こういうことになろうかと思います。しかし、その場合の解決の方策としまして、立法理念をどうするかということになりますと、雇用労働者的な立場のものとして考えるか、そうでない国の特別の政策に基づく立法とするか、その辺にもいろいろ問題があろうかと思いますので、そこまで申し上げるのはいかがかと思います。私は以上のように考えております。
  271. 吉村吉雄

    吉村分科員 先ほどの前向きの姿勢で云々という話につきましては、海外技術協力事業団との雇用関係で派遣をする、こういう趣旨の答弁をされましたが、そう理解していいですか。
  272. 吉野文六

    ○吉野説明員 その点はまだ研究中でございますが、少なくとも海外技術協力団に木事業を委託して実施することになることと考えております。これが事業団においてどのような身分関係にするか、鋭意研究中でございます。
  273. 吉村吉雄

    吉村分科員 海外技術協力事業団というものはどういうことをやる事業団ですか。
  274. 佐々木正賢

    ○佐々木説明員 海外技術協力事業団は特別法によって設置されました事業団でございまして、全額政府予算の委託事業をやっている事業団でございます。そこだやっている事業は、政府の技術協力をやっている。それで、外務省は相手国政府と折衝した結果に基づいて、合意に達した研究、専門家の派遣なり研修員の受け入れなり、その他の事業を現実に実施しておるというようなことでございます。
  275. 吉村吉雄

    吉村分科員 私の理解では、この海外技術協力事業団というのは、海外諸国との技術の交流についてのいろいろなあっせんとかあるいは技術者の交流とか、こういうことについてやる事業団だというように大体は理解をしておる。ところが、先ほどの答弁の中では、海外技術協力事業団の雇用のような形で派遣をするようなことを考える、こういうお話でしたから、そうなってくると、この海外技術協力事業団というものの性格は相当変貌をするというふうになります。ですから、もう少し明確にしていただきたいというように私は思うのです。全部検討中だ検討中だと言われますけれども、検討中の事項を何も施政方針演説や何かで大々的に言う必要もないでしょう。だかう、そういうことを大臣の演説として言うのであるならば、こういうような方法でやります。青少年の派遣の身分関係についてはこういうようにします。事故が起こった場合にはこういうような補償措置も考えています。このくらいの答弁がなくて大臣演説ができるというのは、私はおかしいと思うのですよ。そういう点をもう少し総合的な見地から検討された上で、とにかく日本人を海外に派遣する、そういうことなんですから、きちんとしていただきたい。私は、低開発国であり、このこと自体にはあまり賛成はしない。非常に治安もよくないようなところへ行かせられる可能性が強い、こういうふうに考えるならば、国は国民のそういう派遣についてはもっと万全の備えというものをした上でやるというのが本筋じゃないか、このように私は思うのですけれども、これじゃ全く、これから検討する、これから検討するということでは、大臣の演説は何のためにやったのだか、私は疑問視せざるを得ない。どうですか、大臣
  276. 吉野文六

    ○吉野説明員 当面、日本青年海外協力隊が海外に隊員を派遣できるような段階に達するのは、おそらく来年の春ごろになるのではないかと見ております。それも、東南アジアの各国からわが国に対して、このような技術を持った青年をひとつ送ってくれという要請があって初めてわれわれは人選その他に入るわけであります。一方、その間において、われわれも、派遣する青年の身分関係その他についてとくと研究し、対策を立てるという所存でございます。
  277. 吉村吉雄

    吉村分科員 私はいまの答弁は非常に不満です。とにかく、総理大臣が演説をし、それから外務大臣も演説をしている。こういうことを進めていきますと、大みえを切っているのですから、その具体的な内容はこういうふうにするくらいのことは明瞭になっていなければならないと私は思う。ところが、そういうことについて何らの準備というものもなされていない。金額等の問題についても七千六百万とか九百万というのですから、どういうことをやるのかというふうに考えて、実はそれを疑問に思っておったわけですけれども、すべてこれからこれからというお話ですから、これ以上追及してもどうにもならぬでしょう。これからやるというならば、先ほど労働省の基準局長が答弁しましたように、海外に行った場合、その人に事故が起きた場合の補償の問題というのは非常に複雑な様相を帯びてきますから、もしあなた方が検討されるとするならば、この身分というものについては、国内における雇用関係の中で海外に派遣される、こういうような形にするか、あるいは国家公務員的な性格にするか、そういうようなことをやらなければ、とてもたいへんな問題を将来起こすであろう、こういうふうに私は考えます。将来のこの検討にあたりましては、そういう点を十分に考えた上で、そうして、同じ国民を派遣するのですから、何らの不安のない状態、そういう条件というものを各省の関係の中でつくり上げた上で初めて具体的な実施に移す、こういうことが約束できますか。
  278. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お説のとおり、これは準備が非常におくれております。いろいろな関係でそういうことになっておるのでありますが、御指摘のような点については十分に考究を重ねまして、有能な青少年が全く安心して十分に海外において活動できるような基盤を整備して、しかる後に実行に移したいと考えております。
  279. 吉村吉雄

    吉村分科員 外務大臣は答弁が非常にじょうずだそうですから、私もそのじょうずな答弁に対して再度言うのはどうかと思うのですけれども、いまのことは私は非常に重要だと思います。その準備が整ってからやるというのですから、整わないうちはやらないということになりますよ。これは、各省の関係からしますると、いろいろの準備作業というものが必要なはずです。労働省もそうでしょうし、建設省もおそらく関係すると思います。そういうようなことをやって、そうして、本人たちが安心のできる、先ほど私が具体的な例をあげたようなことの起こらないような、そういう万全の措置ができてからやるというふうに理解していいのでしょう。
  280. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようでございます。
  281. 吉村吉雄

    吉村分科員 いまの答弁は、私は十分これから監視をしていきたいと思うのです。なぜこのことを強調するかということは、先ほど申し上げましたように、えらい問題になって、そうして国がやる政策について全く不信感を持っておる。その周辺の人もやはり同じような気持ちを持っておる。私は、このことは一人の問題でなくて、実は国政に対するところの国民の信頼感の問題として重視をしたものですから、中に入って、先ほどの事例の問題についてはいろいろと努力をしてまいったわけですけれども、この経過については建設局長が先ほど述べられました。しかし、三年も過ぎてもまだ解決もしていない。こういう状態を放置したまま、また海外青年協力隊ということが出ましたから、これはたいへんなことだと思って、再三私は申し上げたわけですけれども、いまの未解決の問題等につきましては、どこが責任を持つのか私はよくわかりませんけれども、いずれにしましても建設省がそういうことであっせんをし、そうして当時の国際建設技術協会ですか、そこが中に入って出ましたことも事実でありますから、そういう点については責任を持って処理をして、国民の国政に対する信頼感というものを回復するようにやるのが行政府の当然の任務だと思いますのでその点はひとつ従来の行きがかりの上で建設省のほうで十分に努力をしていただきたい、このように考えます。さらに、いまの前半の問題につきましては、大臣からそのような答弁がございましたので、十分ひとつ労働省その他と連携をとった上で、そうして万全の措置をした上で初めて実施に移す、そういうふうにしていただくように特に要望をしておきたいと思います。終わります。   〔登坂主査代理退席、主査着席〕
  282. 中野四郎

    中野主査 横路節雄君。
  283. 横路節雄

    ○横路分科員 外務大臣に私は土曜日の勢頭に御質問をいたすわけですが、いまは資料要求だけしておきます。土曜日に資料を出してもらう。というのは、そのときになってからすったもんだしても困りますから。先ほどの西村委員質問に関しまして、あなたは、基本条約全面妥結の一歩である、こういううように御答弁されたわけです。そこで、あなたのほうでは、すでに日韓予備交渉において両首席代表間に大綱につき意見の一致を見ている請求権問題の解決方式というのが、去年の国会でも問題になり、すでに三十七年の暮れの国会でも問題になり、三十八年の二月の通常国会でも問題になり、私自身も予算委員会の代表質問で取り上げているわけです。ここで問題は、無償経済協力を総額三億ドルとする問題、長期低利借款は総額二億ドルとする問題、以上のほか相当多額の通常の民間の信用供与が期待されるという問題、これは資料をいただいております。ところが、問題なのは、あなたのほうから三十八年の一月の三十日私のほうに出していただきました韓国側の対日請求要綱、いわゆる八項目の内容であります。八項目の内容については、いま私がここで申し上げなくても、外務省のほうではおわかりだと思うのであります。この問題について私は三十八年の二月七日に一つ一つ取り上げたのであります。たとえば、当時の小澤郵政大臣は、逓信局関係として、(a)郵便貯金、振替貯金、為替貯金等、(b)国債及び貯蓄債券等、(c)朝鮮簡易生命保険及び郵便年金関係、(d)海外為替貯金及び債券、(e)太平洋米国陸軍総司命部布告第三号によりて凍結された韓国受取金、これはどうかわかりませんが、こういう問題については私のほうで全部資料が整っています。こういうようにお話をされているのであります。また、当時の大橋労働大臣は私の質問に答えてどういうように言っていますかというと、被徴用韓人の未収金、補償金その他の請求権の弁済を請求する問題については、被徴用韓人の未収金、戦争による被徴用者の被害による補償その他の問題については大橋労働大臣から丁重に答弁がございまして、関係事業主に対して、これは供託のためにその通帳を郵政省貯金局に引き渡すよう、かような措置をしている。そこで、この問題について三十八年の二月七日の国会でいろいろ私が二時間にわたって論議をしました結果、政府のほうとしては、なるべくすみやかな機会に御要求の資料を提出いたしたいと思います。こういうことであった。ちょうどまる二年たっているわけです。まる二年。そうしで、きょうの西村委員質問に対してあなたは、全面妥結第一歩である、こう言っている。したがって、韓国側の対日請求要綱のいわゆる八項目の内容、一から八まで、このうちの七、八は、これは支払い方法等の問題であろうと思う。この問題について一つ一つ、対日請求要綱については、たとえばあなたのほうでは、朝鮮銀行を通じて搬出された地金と地銀の返還を請求する、これこれとこれこれは搬出した、しかしこれは国債でこういうように返還してある、一つ一つこれは回答してもらいたい。ちょうど日韓会談妥結第一歩に至って、基本条約がいわゆるああいう状態になってきたわけですから、私はこの問題を土曜日の朝劈頭御質問いたしますから、出してもらいたい。もしもこの問題が出せないようであれば、本第二分科会における外務省の予算については、この問題が出せない限り審議は終わらないということになりますから、その点も十分御承知の上、これはもう二カ年にわたる懸案事項ですから、これがいまになってまだできないとかなんとかいうことは言わぬようにしてもらいたい。これは八項目ですから、一つ一つ幾ら、一つ一つ幾ら、金は幾らあったけれども、これはどういうふうにして返した、だからこれは返すべきではない、郵便貯金その他については、当時の郵政大臣は、おれのほうは全部計算済みだというのだから、これこれはこうだという、郵政省に聞いてくれればわかるのだから、これはこうなっておる、これはこれだけある、日本に来ている徴用された当時の朝鮮人についてどれだけの未払い金がある、これはこれだけになっている、供託したものはこうなっておるということ。これはもうまる二年たっているわけですから、ちょうどいい時期ですから。ちょうど私が質問して、当時予算委員会で非常にもめまして、一たん休憩をして理事会を開いて、委員長のとりなしでこのことがきまった案件ですから、ぜひひとつ出していただきたい。もしも出ないと、これは本分科会で外務省の予算は、それが出ない限りはいつまでたっても審議は前へ進みませんから、そのことだけを申し上げておきます。   〔発言する者あり〕
  284. 中野四郎

    中野主査 ちょっと書かないで……。   〔速記中止〕
  285. 中野四郎

    中野主査 速記を始めて……。  川俣清音君。
  286. 川俣清音

    川俣分科員 いよいよ予算委員会も最終の段階に来ておりますので、特に外務大臣にお尋ねしておきたい、こう思うのです。大臣は御苦労に韓国まで行ってこられたのですが、その結果国の予算に影響を与えるようなことが起こるのではないかと思いますが、その場合は補正予算あるいは債務負担行為の形をとって予算化されるのかどうか、その予算措置がどうなるのであろうかという点で確かめておかなければならないと思うのであります。政府はこの国会中は補正予算を組まない、こういうことでありますが、あるいは四十一年度に持ち越すのであるかどうか、そういう点をひとつ明らかにしてもらいたい。それについても、いま横路委員からの要求の資料が提出されませんと、私どもの判断もできないわけでございまするので、日韓会談に伴う予算はどう処置されるのであるか、この点を明らかにしてほしいと思います。
  287. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もし予算が間に合わなければどうするかということですか。
  288. 川俣清音

    川俣分科員 間に合わなければではないですよ。どういう形で予算化されるかということです。
  289. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それはまあ請求権の問題はいずれ妥結の見通しがついて研究を始めることになると思います。私は、事財政の問題でございますから、どうするかということはこの席でははっきりお答えいたしかねますから、よろしく御了承願います。
  290. 川俣清音

    川俣分科員 ここで、大臣、非常にやっかいな問題だと思うのですよ。というのは、従来の外交慣例から言って、全権大使でありますならば、全権大使のあと始末をしなければならないということになるわけです。これは当然な負担を負わなければならないのです。全権大使なんだ。したがって、全権大使として行ったからには、その全権を委任したのであるからして、それに対する予算措置を当然講じなければならないということになるわけですが、外務大臣は行政の長官なんですね。したがって、予算審議中でありますために、全権大使ではないだけに、国会の承認を符ない仮調印をいたしましても越権行為じゃないのかという問題が起こる危険性があるわけです。その点についてお尋ねをするわけですが、いずれにいたしましても、せっかくの努力と御奮闘でございますので、この御奮闘についてはいろいろな問題があるようでございますが、一応そう見ても、今度の国会の間に予算措置を講ずるつもりでお約束してこられたのか、あるいは数年後に、あるいは調印後に、いわゆる正式調印後になるというような話し合いでしてきたのか。韓国の経済事情は非常に逼迫をしておりまするので、この点については非常に急いでおるようにも見える。急いでおるからには早くきめたいという意思も動いておるように見えておりまするので、この国会で予算化される必要があるのか。いやそういう取りきめじゃないのだ、いつ予算化してもいいのだ、あるいは条約締結後でも予算化はいいのだ、こういう考え方で交渉してこられたか。その点を、行政の長官ですから、お答え願わなければならないと思うわけです。
  291. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約全面妥結をするめどがまだ立っておりません。ただほんの基本条約案というものが仮署名をされた。両国の事務の当局者である日本の外務省のアジア局長向こうの外務部のアジア局長との間に取りかわされた。これは一応事務的な手続にすぎませんので、法律的に見るとこれは政府を束縛する程度のものではない。ほんの第一段階の程度です。これが、全部にわたってイニシアル交換ができて、そしてこれを一括していよいよ本式に両国の間で署名されるということになると、今度は最後の手続である批准交換のために国会の承認を得なければならぬ。その承認を得てから初めて有効な条約になるわけでございます。それがいつになるかわからない。もし批准交換を国会で承認された時期がまだ年度内で、年度内においてもその条約のたてまえによって何がしかの予算措置を講じなければならぬという場合には、補正予算というふうな方法による以外にないと思いますが、これは大蔵大臣のほうの所管でございますから、ただ私の推測を申し上げておきます。
  292. 川俣清音

    川俣分科員 これは重大なんですね。というのは、仮調印されたそのことのよしあしは別として、その中に私どもが想定するものは、韓国側が非常に調印を急がれておるような経済情勢が出てきたりすると、それを受け入れるような話し合いのもとに調印ができたのか、あるいは外交の常識による、いわゆる批准後でなければ義務を負担しないという形の話し合いであったのか、どっちであったのか。それによって予算措置があらためて講ぜられることになりましょうが、もしもそういう約束であるとすれば、いまの国会開会中に予算化するかということの検討をしなければならないことだと思うのです。いやそれでも国会後に補正予算の国会を召集して補正予算を組むというやり方もありますし、あるいはその支弁方法としては外為を利用するという方法もございましょうし、何らかの必要が起こってくるのではないかという感覚を持っての質問なんですね。外為なら外為でもいいです。外為にいたしましても、いまのうちから予算の処置をしなければならないということになると思うのです。そういう点では、もちろん外務大臣として、外交の行政長官として、内容は別でしょうが、——全権大使の場合は全権を委任されたもの。そういうものを含めての全権大使ですから、したがって、全権大使が約束したことについては国家は裏づけをしてやらなければならないということになりますから、この場合は問題ない。外務大臣として行かれた場合は、どう予算化するか当然考慮されていなければならなかったのじゃないかという点で、大臣にお尋ねをいたしておる。もう予算は最終段階に来ておるので、どっちか態度を明らかにしていただかなければならない。したがいまして、いま横路委員からの要求のありました資料も早く出していただいて、国民の負担に関する問題はきめておかなければならないじゃないかということでこれは意地悪く言うのじゃないのです。明瞭にしないというと、どういうふうに予算化するということがはっきりしないと、予算委員会としては最終にならないから、あえてお尋ねをしておるということですから。
  293. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 条約が有効に発効するのは、いずれにしても国会の承認を得た後でありますから、幾ら早くてもそのあとになるわけです。そのあとにどうすればよいかということは、国会の批准の承認を得るときに初めて考えるべき問題でございますから、いまのところはその必要はない、こう申し上げておきます。
  294. 川俣清音

    川俣分科員 そうすると、批准をまたない限りにおいては財政上負担するようなことが約束されておらない、こう理解していいのですか。そういう話し合いになっておるというふうに理解してよいのか、そうじゃない、話は相当進んだ、こういうふうになるというと、そういうものも入っていなければならぬじゃないか。いやそれは仮約束だというものの、一体、義務づけられるのか、義務がないのか。この点を明瞭にしていただきたい。普通の場合批准を得なければならないということは、そのとおりなんです。また、そうあるべきなんです。しかし、そうじゃなくてかなり進行しておるとも世間に印象づけられるような説明も政府はなされておる。そこで、この点を明らかにしておいていただきたい。
  295. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 絶体に、条約が有効に成立する前には一文の支出も要らない。さような約束をするはずもありませんし、また、できもしません。いたしません。
  296. 川俣清音

    川俣分科員 そうすると、外務大臣の報告による、あの中には予算上の制約を受けるようなものは一つも含まれていない、こういうふうに理解してよろしいのですね。
  297. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 はい。
  298. 川俣清音

    川俣分科員 そうあるべきだと思うが、もしそうでなかった場合に問題が起こるのではないかということを、あらかじめ警告しておきたいと思います。次にお尋ねしたいのは、私、去年予算の理事として諸外国を回ってまいりました。その場合に、出先外交機関から、椎名外相の経済外交というものはどんなものでしょうか、どういう意味を持ち、どういうことをやればいいのでしょうかというような質問を非常に多く受けたわけです。いま経済外交が必要だということは、私どももわからぬわけじゃないけれども、経済外交とは一体どんなことをやることが経済外交なのであろうかという質問を受けた。ジェトロのようなことをやることのようにも思うし、あれを大いに援助してやることが経済外交のようにも思うし、もっと意味があるように思う、あえてしろうとの——これは悪い意味じゃないですよ。しろうとの椎名さんが外務大臣になったというからには、もっと何か意味がありそうだ、経済外交というものを推し進めていくに何か意味がありそうだ、そこで経済外交というものはどんなことを考えておるのでしょうか、私どももひとつ大いに経済外交を促進したいのだが、わからぬから教えてほしいという意味合いの、そのままのことばではないのですが、そういう意味合いの質問が多く出たわけです。大いに経済外交をやるために通産省出身の椎名さんが来たのだから、どういうことをやらなければならぬのかということについて出先機関が非常に期待をしながら、はっきりつかみたいということを言っておったようでございますが、椎名さんの経済外交ということはどういうことを意味するのか。どういうことが望ましいということで経済外交ということを強く打ち出しておられるのか。政府の発表によると、椎名外務大臣は大いに経済外交をやるのだということになっておりますが、一体どういうことをやるのを経済外交と言われておるのか、私ども質問されてちょっと返答に困ったような状態なので、外務大臣として当然出先機関の保護をしなければならない立場にあるので、経済外交とはどういうことをするのだということをこの際明らかにしていただきたいと思います。
  299. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は経済外交を別に看板にしておるわけではないのであります。もともと外交のほうはしろうとで、経済関係の省で役人をしておった。だから、やるとすれば経済外交だろう、それから経済外交だ経済外交だというようなことになって、私としてはいささか迷惑しごくな話なんです。しかし、経済外交というものは、人に言われておるようになっておりますが、たとえば各国との通商航海条約の締結であるとか、あるいはまた二国間におけるいろいろな経済その他の諸種の問題があります。みんな経済に関連してございますが、個々の問題をあげ来たりますと幾らでもあるのです。また、国際機関を通じての多数国間の、OECDとかガットとかいろいろな問題が取り上げられておりまして、従来よりも経済の問題を中心とする国際間のいろいろな組織というものが最近になってかなりにぎわしくなってきておるのではないか。同時にまた、従来の制限封鎖的な経済をこの際みんなに自由に開放して、そうしてお互いに国際間で調査をしていただいて全体の共存共栄をはかる方法とか、ずいぶんそういう方面がやかましくなってまいりましたので、こういうものがいわゆる経済外交の場面であるというふうに理解されておると思うのであります。私は何もこういう問題にたんのうであるとかなんとか、おこがましいことを言ったこともなければ、そんな考えをしたこともございませんので、一言申し上げておきます。
  300. 川俣清音

    川俣分科員 普通であれば、こういう国際外交が非常に激しくなっておるときに、世界的な動揺の激しいときに、よほどの経験者でなければ外務大臣がつとまらないのじゃないかという印象を持っておる人々の中で、あえてしろうとということばを使うが、しろうとでないと思いますけれども、見ればしろうとに見える椎名さんが外務大臣になったからには、それなりの意味があるだろうという好意を持って見ておるわけですね。そこで、経済外交を内閣では言っておるようだが、経済外交とははたして何であるか、とても出先機関の人員では、ジェトロと競争してというか、張り合ってと申しますか、協力してやるだけの組織も機構も持っていない、ジェトロのように相当の組織機関をもってしてもあれよりできないのに、もっとやれという意味だとすると、とてもできそうもないが、一体経済外交というものは何でしょうか、こういう率直な質問なんですね。これはせっかくの国の出先機関であるから、その出先機関予算の範囲内において有効に活躍してもらわなければならぬけれども、その方針がわからないということになったのでは困るのじゃないか、こういう質問なんです。だから、経済外交をやりたいということであれば、その方針を明示する必要があるのじゃないか。いや、おれはしろうとだけれども従来の外交を曲がりなりにもやるのだ、こういうことではなさそうに思います。それは、国際関係に目まぐるしい変遷があるだけに、よほどの経験者をもってしても困難じゃないかというときに椎名さんが出てきたのだから、何か別のものがあるだろう、その別のものは何だろうか、こういう疑問なのでありまして、その疑問が幼稚な疑問だというわけにはいかないようです。そこで、この際はっきりされて、出先機関が大いに活躍できるようにしたいものだという意味での質問です。どうですか。
  301. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ジェトロのような機関は、現実の商業取引のあっせんであるとか、あるいは具体的の商品の動き、そういう外国との取引に直接関係のあるような問題を具体的に調査して、そして一般の経済界に資するというのだろうと思いますが、これと経済に関する外交とはまた違うと思うのであります。そういうこともやはり頭に置かなければならぬけれども、しかし、やはり一般の政治と切り離すことのできない場面があるのでありまして、そういうもっと大きな視野から、経済の関係で多国間あるいは両国間の関係をスムーズに基盤をつくり上げていくということが経済外交の一つの特色ではないかと思っております。何もこういったことについて特に私が新しい主張をしておるわけでもございません。ただ、全般の国際間の問題に経済の問題が非常に顕著にあらわれてきておる。もとはそれぞれ軍備を持ってにらみ合って、経済の問題よりもまず自国経済で充足するアウタルキー政策が非常に目立っておったのでありますが、戦後は、そういうアウタルキー政策というようなことを考える国は地球上どこにもなく、有無相通ずる自由開放の経済である。したがって、経済の問題が国際間の問題としては非常に多くなってきている、こう考えておるのであります。いわゆる南北問題も、これは結局は経済の問題で、そういうことで、何かそういうことに特別め新しい一つの趣向が浮かんでもよさそうに思われますけれども、別に私としてはそういうことを特別に身につけているわけでもないのであります。従来の道をただ進んでいくという、そそだけのことでございます。
  302. 川俣清音

    川俣分科員 従来の方針どおりだといえば、別に変わらぬ。いままでも最大の努力を曲がりなりにも払ってこられたと思うのです。一人一人がみな優秀であるかどうかということは別にしても、最大の努力を払ってこられた、こう認めざるを得ないと思うのです。それをひとつここで画期的なものたらしめようとする意欲が外務省にあるのではないか、それにおくれてはならないというところから出てきた質問でありますから、何らかこれに回答を与えなければならぬじゃないだろうかと思うのですが、どうです。
  303. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本は軍事力というものはもう全く自衛権の範囲にとどめられておる。しかし、国際的な問題は非常に問題が山積しておる。従来は軍事力を大いに背景にして外交をしたというふうにいわれておりますけれども、今度はそういうことは一切できない。今後はひたすら経済その他の文化力というものによって日本の国際的な地位、と申しますと少し語弊がありますけれども、そういうものによって対外的に働きかけて、いわゆる共存共栄の実をあげていく、こういうことになってきておりますから、日本としては従来よりも非常にいわゆる経済力、文化力、そういうものをみがき上げるということがますます必要になってきた、こう考えるのであります。でありますから、外交を行なう上における基本的な姿勢としてはそこに基調を置いていく、こういうふうに考えております。
  304. 川俣清音

    川俣分科員 そういたしますと、いままでの出先機関及び外務省というものはそういう認識がないという判定なんですか。いまの国際情勢に対応するような考え方がないというならば別ですけれども、あえてそれならば外務省の新しい方針を出さないでもいいはずだと思うのです。また、これははなはだ失礼ですけれども、椎名さんを持ってこなければならないという理由もなさそうに見える。従来よりももっと進んだと申しますか、高度の外交を進めていかなければならないだろうという認識なんですが、さてその高度の外交とは何でありましょうかという質問であったと私は理解をするわけです。従来の君らの経験でやっていることは経済外交なんだ、こうは言っても、何か違うのじゃないですか。従来のことじゃない、こういう感覚を持っておられる。そこで、私はこう言ってきたのです。時間がないから言いませんが、社会党ではどういうのを経済外交と言いますかと言う。これは私は政府のことはわからぬけれども社会党のことなら言える。社会党としてはどういうことを経済外交と言っているのかと言うから、私はこう言ってきたのです。これは間違っているかどうかあなたに聞きたい。私は、お互いの国民の生活を考えてやるというのが経済外交であるし国民外交だ、国民外交すなわち相手国の国民生活を主体に外交を進めていくというのが、これが国民外交であるし経済外交だ、したがって、そこの国民の食生活に至るまで、日本はどういう点で寄与できるかというようなことも検討することが私どもの言う経済外交だ、私はこう言ってきたのですが、この説明は椎名さんの経済外交と違うのですかどうですか。こういうように聞いたらもっと答弁しやすいのじゃないですか。
  305. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局、お互いに経済力というものを増強するというのが経済外交のねらいだと思うのです。ですから、結局、あなたのおっしゃるように、国民から離れた経済というものはあり得ないのでありまして、私はそれでいいと思います。
  306. 川俣清音

    川俣分科員 そうすると、外務省が会議をやって教えることがちっとも徹底しないで、私が放言したことのほうが椎名さんの経済外交に合致するということになるのですが、外務省はいままで何をしておったのですか。そういうことをわからせないで、ただけつだけたたいておったということになると、椎名さん、あなたは何をやっておったのですか。それほど私は意地悪に質問をするわけじゃないのですけれども、そういうことになると思うのです。それが一事が万事で、外務省の出先が非常に混乱して、効果があがらない原因ではないかと、私はそう思うのです。どうか椎名さん、せっかく経済外交を期待されて大いに張り切っておるときでございますから、適切な指示を与えることが行政の長官として欠くことのできないことだと思いますから、この点をあえて要望しておいて、これは椎名さんのためにも日本のためにも私は申し上げておかなければならぬところじゃないかと思うのです。大臣だいぶ苦しくなるでしょうから、もっと意地悪くお聞きしようかと思ったのですけれども、人のいい椎名さんですから、そんなことも聞きたくないので、これで終わりますが、もう一つ伺います。私は、前にバンクーバーのそばに行きまして、赤城君と一緒に行ったときに、あそこに日本の漁民の移民がおったわけです。そのころは非常に生活が苦しくて、ほとんど漁業を放棄して離散しておったのですが、そのときに、魚がとれればとれるほど魚価が安くなって困る、そこで、とらないほうがいい、それを協定破りでとる人があるためにお互いに生活が苦しくなっているのだ、何とか方法はないかと言う。とったのを捨てるというようなことは、漁業及び農業においてはあってはならないのだ、たとい安くても、それをやることが必要なんだ、そこで、食わせることを考えたらどうだと言ったら、いや、この辺の人は肉は食うけれども魚は食わないのだという話だった。食わないなら食わせるようにしたら食うだろうというので、これはボイルしてミックスして冷凍にして、そうして食わせたらば食うのじゃないかということを話した。それじゃやってみましょうということで、現在やっております。小さなボイラーがある。そこへ入れて、みな魚をこわしてミックスする。日本人はあの魚の形がないと魚と思わないでしょうけれども、食いやすくするためには形をこわしたほうがいい。こわして、ミックスして、魚の骨もみなまぜて、そうしてボイラーにかけて、そしてそれをまた冷凍にしたのを箱詰めにして売っておる。これが非常によく売れるようになったために、いまそこで採算も合うし、漁民も非常に生活程度が高くなったということです。外交官だってそのくらいの認識を持っていいのじゃないかと思うのですね。従来は、外交というと、そんなことをやるのは実に下等な外交であって、もっと上等な外交だというふうに自分自身を非常に高く評価はしておったでしょうけれども、こういう生活に密着したようなことは最も下等な外交だと考えておったのじゃないですか。だから、もっとその国民に密着して、その生活を高めていくように考えられたらどうか。そのために妊娠率も非常に高まった、こういうことになっておる。それはそうでしょう、カルシウムをたくさん与えるのですから。そういう国民生活の改善まで援助してやるというところに、私は経済外交の主体が置かれなければならぬのじゃないかと思う。ただ商売上手にやるというようなことでは、商売人のまねなんか外務省ができるものじゃありません。商売人のまねはしゃちほこ立ちしたってできやしない。だから、できるものからやりなさい。観点が悪い。もっと三等なことをやらなければ外交官じゃないというその観点が悪いのじゃないかと思う。椎名さんに経済外交をやらせるには、もう少し勉強させなければならぬのじゃないかと思う。もう少し実態に触れるようなことを教えてやらなければならぬじゃないかと思うのです。こういう意味で、椎名さんの時代に、もう少し下がった外交と申しますか、あまり上等な外交でなくてもいいから、国民生活に近い外交を外務省は進めていくことが大切じゃないかと思うのです。そういうことをやると、ベトナムでどうだこうだというような問題も起こってこないし、韓国問題なんかについても、もう少し違った角度で話し合いがされるのではないか。あまり上等な外交よりも、もう少し下げたほうがいいのではないかと思うのです。下げると言っては語弊があるかもしれませんが、もう少し生活に密着したことを考える。韓国政府よりも、国民は一体どういうことを期待しているかということに重点を履いた外交を進める必要があるのではないか。時間がないから私は緒論だけ言いますけれども、もう少し観点をかえていかなければならないのではないか。従来の外務省の考え方、あるいはいままで日本がおかしてきた点から脱却して進めなければならぬのではないかと思う。韓国問題についてもそういう点から尋ねたいけれども、時間がございません。しかし、明敏な椎名さんですから、これだけ言えば十分わかるもの、私はそう理解して、質問を終わります。
  307. 中野四郎

    中野主査 本日の質疑はこの程度にとどめます。明二十六日は午前十時より開会して、防衛庁所管について質疑を行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十三分散会