○
泉政府委員 お話のとおり、基礎控除は二万円引き上げますと、
税制調査会の答申当時には
かなり概数で
計算いたしておりますが、平年度四百三十億、初年度三百八十億、それが一万円引き上げにとどめますと、平年度二百三十億、初年度二百億という
程度の金額になるわけであります、配偶者控除を一万円引き上げました結果は、平年度百十四億、初年度百億という
数字になります。その間金額的には相当大きな差がございます。
これはどうしてそういうふうになったかという経緯は、すでに
横路先生、御承知の上と存ずるのでございますが、念のため申し上げておきますと、
税制調査会の答申におきましては、課税所得三百万円以下の税率を緩和しようということが、
税制改正の
一つの大きなねらいになっておったのであります。ただ、その際には、従来最低税率が八%になっております。これは、
昭和三十六年に府県民税に財源を移譲する
関係上、一〇%の最低税率を八%に引き下げて今日に至っておるのでございますが、控除を上げますれば最低税率は若干引き上げてもいいというふうに
考えられますので、基礎控除を思い切って二万円引き上げます、そのかわり最低税率の八%は一〇%に直す、こういう
考え方で
税制調査会の答申ができておったわけであります。ところが、そういう改正をいたしますと、給与所得者の場合はほかに給与所得控除がございますので、必ずどの階層でも何がしかの
減税になるわけでございます。しかし、事業所得者の場合、独身の事業所得者というものは比較的数が少ないのでございますけれども、その階層で所得階層三十万円、いろいろな控除を引きまして課税所得が十万円になるところ、この辺では
減税が全然ないというような形になっておりまして、そのために、それではこういう
減税をした際に
減税の恩典を全然受けないというような階層がたとえわずかでも出ることは好ましくないということで、税率の改正はこの際見送りまして、そうして従来どおり控除の引き上げに重点を置いた改正を行なう、これは、
所得税の改正の
考え方についての大きな分かれでございまして、控除のほの改正を行ないますと、低額所得者には有利になる。しかし、従来の
所得税の改正が控除の引き上げに重点が置かれておりますために、低額所得者の
負担の軽減は相当はかられておりまするけれども、中堅所得層というべき人たちの
減税が必ずしも十分でないから税率改正をやろうというのが
税制調査会の
考え方であったわけでありますが、その点を
政府案におきましては、従来どおり低額所得者の
負担軽減にまず重点を置いて行なうという
考えで行ないましたために、税率の改正をやめまして、そういうふうにいたしますと、基礎控除の引き上げは、最低税率を引き上げる
関係で二万円上げることになっておったのだから、一万円にとどめてもいいではないかということになりました。しかし、またもう
一つ、それは財源の
関係もあったわけでございまして、初年度で申し上げますと、
先ほど申し上げましたように、基礎控除を二万円引き上げるのと、それから配偶者控除を一万円にするのとでは、基礎控除のプラス一万円分が初年度百八十一億でございます。配偶者控除のほうは百億でございます。八十億の差がございます。そこを、財源の点をにらみ合わせまして、せめて配偶者控除の引き上げをしようということにいたしたのであります。
お話のように、そのために独身の給与所得者、それから夫婦共かせぎの世帯の場合におきましては、基礎控除を二万円引き上げるより今回の
減税案のほうが
減税の割合が少ないということに相なっております。しかし、総じてみますと、そういう特殊な場合を除きますと、低額所得者の
負担の軽減が比較的
税制調査会の答申より多い。これは、たとえば収入金額のところで比較いたしてみますと出ておるわけでございます。