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1965-02-24 第48回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十四日(水曜日)     午前十時十一分開議  出席分科員    主査 中野 四郎君       大平 正芳君    小坂善太郎君       登坂重次郎君    石田 宥全君       華山 親義君    肥田 次郎君       横路 節雄君    横山 利秋君    兼務 加藤 清二君 兼務 川俣 清音君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  竹中喜満太君         防衛庁参事官  志賀 清二君         大蔵事務官         (大臣官房会計         課長)     新保 實生君         大蔵事務官         (主計局次長) 中尾 博之君         大蔵事務官         (主計局次長) 鳩山威一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  佐竹  浩君         大蔵事務官         (国有財産局         長)      江守堅太郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         中小企業庁次長 影山 衛司君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         国税庁次長   喜田村健三君         最高裁判所事務         総長      関根 小郷君     ————————————— 二月二十四日  分科員石田宥全君岡田春夫君及び横路節雄君  委員辞任につき、その補欠として肥田次郎君、  華山親義君及び横山利秋君が委員長指名で分  科員に選任された。 同日  分科員華山親義君、肥田次郎君及び横山利秋君  委員辞任につき、その補欠として岡田春夫君、  石田宥全君及び横路節雄君が委員長指名で分  科員に選任された。 同日  第三分科員加藤清二君及び第四分科員川俣清音  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計予算大蔵省所管  昭和四十年度特別会計予算大蔵省所管  昭和四十年度政府関係機関予算大蔵省所管      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和四十年度一般会計予算大蔵省所管昭和四十年度特別会計予算大蔵省所管昭和四十年度政府関係機関予算大蔵省所管を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。横路節雄君。
  3. 横路節雄

    横路分科員 きょうは大蔵大臣のほかに主税局長がおいでですし、分科会でもございますから、主税局長が補佐されて答弁していただきます。  第一番目は、中期経済計画の二〇ページの七に「財政収支」というのがある。ここに主税局長、第十表に「財政収支」というのがございまして、租税及び税外負担、三十八年度四兆二百十億円、四十三年度の財政収支租税及び税外負担は六兆七千億と、こうなっておるわけです。それで私、あなたにお尋ねをしたいのですが、私ども、この間の総括質問でも、今度の佐藤内閣経済計画の基本になっているのは中期経済計画である。そこで、ここにございます「四十三年度の租税および税外負担を六兆七千億円と見込む。国民所得に対する税および税外負担の比率は二二・三%となり、三十八年度の二二・〇%にくらべてやや上昇することになるが、国民所得に対する税収弾性値などを考慮すれば、かなり減税が可能となるであろう。」こうなっておる。そこでたいへん恐縮ですが、この三十八年度四兆二百十億円から四十三年度六兆七千億に至る国民所得に対する税収弾性値などを考慮した上の四十三年度の減税というものは、どういうように見込んでこの中期経済計画財政収支をお立てになったのか、その点についてひとつ伺いたい。
  4. 泉美之松

    泉政府委員 お答えいたします。まず、中期経済計画におきましては、税負担と、それから税外負担と合わせたものを基準にいたしておりますので、その中には税及び印紙収入以外のものが入っておるということを御了解いただきたいのでございます。  それから中期経済計画の立て方は、各年度ごと租税及び印紙収入及び税外負担をはじき出しまして、それを積み上げていくという形でございませんで、過去の計数を三十八年をベースにいたしまして引き伸ばすというやり方をとっております。そこで、大体の考え方といたしましては、そこに書いてございますように、租税及び印紙収入税外負担とを合わせました国民負担は、四十三年度に現在から約〇・二%程度増加する。お話のように、三十八年が二二・〇になっていますが、三十九年をベースにして考えますと〇・二%程度増加する、こういう考えに立っておるわけでございます。それには、基本的には租税及び印紙収入につきましては、御承知のとおり、所得弾性値が過去十年の平均をとりますと一・五でございます。つまり、国民所得が一伸びますと、税収の増加は一・五伸びる、こういうことになっております。そこから、税制調査会の答申にございますように、自然増収の二〇%程度減税に充てていくならば、弾性値関係からいきまして税収がふえてまいりますので、その二〇%を減税に充てていくならば、国民負担は若干は上昇するけれども、相当の減税が行ない得る、こういう前提でできておるのでございます。したがって、中期経済計画におきまして、四十三年に幾ら減税ができるかということは直ちには出てまいらないことになるのでございまして、方針といたしましては、毎年出てくる自然増収の二〇%を減税に充てていくという考えででき上がっておる次第でございます。
  5. 横路節雄

    横路分科員 主税局長、いまあなたが言われた、自然増収の大体二〇%を減税に充てるのでしょう。弾性値は一・五に見るのでしょう。そうすれば、その数値から計算をしていけば、四十三年度の減税の概算というのは一応出るのじゃないですか。いまあなたの言ったのは、数字からいっても出るはずでしょう。
  6. 泉美之松

    泉政府委員 先ほども申し上げましたように、中期経済計画は、四十三年度の目標数字は掲げておりますけれども、それまでに達します各年ごと数字をきめておりません。その間には各年ごとかなり変動があるという前提に立っております。したがって、四十三年におきましては、四十二年の租税収入に比べまして、自然増収がふえる分が幾らになるかということが固まりませんと、その二〇%という数字が出てまいらないということになるわけでございます。
  7. 横路節雄

    横路分科員 だって、あなた、弾性値一・五と言ったじゃないか。
  8. 泉美之松

    泉政府委員 それは、各年別に計算を積み上げてまいりますれば、お話のようなそういう数字をつくり上げることはできようかと思いますが、それは、まだ中期経済計画でそのようにでき上がってはおらないのでございます。
  9. 横路節雄

    横路分科員 そうですかね。大蔵大臣、実は私、この間大蔵大臣にあまりお尋ねしませんでしたので、きょうは細部についてお尋ねしたい。  それで、いまの点、経済企画庁の者を呼んで試算してみたのです。いまあなたのおっしゃるとおりなんです。弾性値は一・五に見て、それから自然増収の二〇%を減税に充てるということで私が試算をさせたのです。その数字は、実は私ここにはじいて持っておるのだけれども、あなたのほうでははじいてないのですか。実は、経済企画庁の者を呼んでこの中期経済計画財政収支についてはじかせましたところ、四十三年度におけるいわゆる減税は幾ぶんか変動があるかもしれませんが、大体千八百億程度でないだろうか、こういうわけです。それはどういう見方をしたかというと、やはり四十二年度を見て、弾性値一・五を見で、自然増収を見て、それから二〇%をはじいていくというやり方をしていったのです。そうしますと、大体千八百億になるのではないか、こういうわけです。これは、主税局長、あなたのほうで計算してなければ、ひとつ土曜日の午後までに数字をはじいてみてください。経済企画庁でははじいておるのだから、はじいてみてください。千八百億である、こういう見方をしているわけです。  そこで、私は、大蔵大臣にこの間総括の一番最初に申し上げた。総理所得税中心にして三千億減税、こう言われた。しかし中期経済計画最終年度の四十二年度で、この計画でいくと、経済企画庁試算に基づけば、千八百億程度減税であるということになると、ずいぶん違うわけです、三千億減税のほうが違ったのか、どうなのかということで、これは本来からいえば、総括質問ぐらいでもう一ぺん総理お尋ねをしたいものだなと思う気持ちが十分ある。この点は、四十三年度の中期経済計画最終年度のどころで、たとえば三千億の減税という数字がはじかれてきたものであるならば——佐藤総理総裁公選のときの公約は、これは初年度からやると言わなかった、政治姿勢として言ったんだ。臨時国会における井手君の質問にそう答えておる。きょう、私はその速記を持ってきているわけです。それが、四十三年度の中期経済計画最終年度で三千億という数字が出れば、それなりに一つ政治姿勢として受け取れないこともないではないが、しかし、千八百億だ、こう言う。減税問題というのは、今国会における一つの大きな問題ですから、これはぜひひとつ土曜日に——いますぐここでおやりなさいこう言っても時間ばかりとるし、またそういうことをいまここで急に言われて、局長にいま試算をしなさいと言っても、局長だってちょっとお困りでしょうから、土曜日の劈頭に、その中期経済計画、四十三年度における減税について、どの程度になるのか、いまあなたは全然考えられない、数字ははじけないと言うが、そういうものではないと私は思う。いいですか、その点だけひとつ約束しておいてください。一応はじくという約束をしてくだされば、次に移ります。
  10. 泉美之松

    泉政府委員 お話しの数字ははじいてお目にかけますが、これは、一応の計画でございますから、現実と必ず一致しなければならぬというような数字のものではないことをあらかじめ御了承いただきたいのでございます。
  11. 横路節雄

    横路分科員 それはいいのです。計画に基づいた試算でいいのです。なぜならば、総理も三千億減税というのは政治姿勢と言うのだから。しかし、それが政治姿勢ならば、いつかやらなければならぬ。しかし、四十三年といえば、これから四年もあとのことですから、ぜひひとつ考えてみてください。  それでは、主査、たいへん恐縮ですが、いまの問題は、ぜひひとつ土曜日に試算された数字をもとにしてもう一ぺんお願いします。  今度は大蔵大臣お尋ねします。これは、一つの新聞にしか出ていないのですが、田中大蔵大臣は二月八日の記者会見で、今後の税制改正あり方として、物価抑制観点から、間接税を千五百億円くらい増徴、この分を直接税減税に振り向けたいとの考え方を明らかにした。これは、非常に大きな記事になって出ておる。きょうはこれからひとつ大蔵大臣から——二月八日の記者会見で今後の税制改正あり方として、物価抑制観点から間接税を千五百億円くらい増徴、この分を直接税減税に振り向ける、まずこの点ですが、そうおっしゃったんだろうと思うのですが、まさか、これを否定はなさるまいと思うのです。そこで、大蔵大臣に、物価抑制観点から間接税を千五百億ぐらい増徴する、そして、この分を直接税減税に振り向けたいという田中さんの基本的な考え方についてひとつ明らかにしてもらいたい。
  12. 田中角榮

    田中国務大臣 二月のいつだったかわかりませんが、絶えずそんなことをやっておるのです。ですから、あまり何月何日の記者会見でどう言った、こういうことではないと思います。私も記者会見というものはひまがあれば——記者会見と言うよりも、記者と懇談して、また記者諸君は非常に専門家でありますから、そういったいい知恵も大いに吸収したいということで、普通の記者会見のように十分とか二十分とかいう話ではなくて、ひまがあれば一時間でもいろいろ懇談しておる、こういうことであります。その過程においてこういうことを言ったわけです。三千億減税ということに対して大臣どう思いますか、三千億減税はやりたいというのです。やりたいと言ってもそんなにできるのですか、それは、税制自体と根本的に取り組む必要もあるのじゃないか、いまの税制は戦後アメリカ税制として、シャウプ税制としてつくられてきて、そのおかげで超健全財政もやれたし、少なくとも経常収入をもって経常支出をまかなうというような超健全財政を保持できたことはこの税制おかげであって、ありがたいと思う。しかし、これからの将来を考えるときに、必ずしもいまの税制だけを金科玉条としてばかり考える必要もなかろうと思う。物価に影響しておるものは国民消費が一番大きいし、第二は財貨サービスだこういう数字が出ておる以上、もう少し税制というものを弾力的に考えてみる必要があると思う。たとえば、いまの日本税制に比べて、ヨーロッパ等では間接税ウエートを置いておる国もある。イタリアやフランス税制も十分検討すべきである。フランス等は七〇%以上間接税である。こういうことを考えると、いまの税制ばかりを守っていくということでなくて、西欧諸国税制、いわゆる間接税中心税制も検討する必要があると思う。私は、将来の税制考えるときには、間接税ウエートを置いて——三千億減税をすると仮定した場合に、直接税中心の現在の税制だけで三千億の減税ができるかということになると壁にぶつかる。そういう場合には、間接税で千五百億の増徴が行なわれるとしたならば、合わせて三千億の減税はかたいものではない、こういうふうに、非常に弾力のある状態における発言でございます。私は、案外そう思っておるのです。そういう税制というものを真剣に検討すべきである、こういうことを考えております。特に取引高税という、非常に時期の悪い時代にそういうものにぶつかったので、なかなか間接税というものに対しては消極的であったし、また、大衆課税というような先入観的なものの考え方間接税というものに対してはなかなかウエートが置けないといういろいろな事情を顧みまして、酒を飲むならば、一本飲む人より三本飲む人のほうがよけい税金を納める、飲みながら税金が納められるというようなことこそ好ましい税制だとも思う。もう一言申し上げると、実際においていま国民所得は非常にふえて、そうして、その徴税人口が、減税もしておりますが、徴税人員がなかなかこれに伴わない、直接税中心だとどうしても徴税人口が多くなる、ここらで間接税というものを考えることも前向きの姿だと思う、こういう発言でございますから、長い話でございますけれども、ああ、そういう環境においてそういう姿勢で話したんだなということをひとつ御理解いただければ幸いでございます。
  13. 横路節雄

    横路分科員 そうすると、いまのお話で、所得税中心の三千億減税ということは、直接税を中心にした三千億の減税は壁にぶつかる。だから、そっちのほうからやれるのは千五百億、間接税のほうから千五百億ぐらいよけいとって、合わせて三千億にしたい、これは初めて聞きました。なるほどそういうわけですか。三千億減税というのは、間接税を千五百億取って、それをそっちへ振り向けてやる、こういうことですか。
  14. 田中角榮

    田中国務大臣 断定されると困ります。私がるる申し述べておりますことは、全部一つでございますから、そういう意味でひとつ御理解いただきたい。これが三千億の減税総理が述べた三千億の減税と直ちに結びつけられているんですが、三千億とは間接税で千五百億増徴して、あわせて三千億やると総理は言ったのですか、大蔵大臣はそう言いましたよ、こういうことではございませんから、税制諸般の問題を広範の立場考えたときに、三千億減税はわしもやりたい、総理発言がないとしてもやりたい、現在の税制のものを考える場合に、そうありたい、ありたいけれども、ただやろうといってもできない、知恵を働かせなければいかぬ、こういう方法もあるんじゃないか、こういうものをミックスすればできるかもしらぬ、こういう希望的な前向きな姿勢考えたことでございますから、総理発言と直結はいたしておりませんから、あらかじめ申し上げておきます。
  15. 横路節雄

    横路分科員 しかし、田中さんはだれが見ても佐藤内閣実力者、第一人者ですから、そういうように御否定なされても、それに関連して考えるのは当然だと思います。  そこで、あなたに聞きます。間接税千五百億はどこから取るのかということです。私もしさいに検討してみた。私も、大蔵大臣が言った以上は私自身が納得したいので、少し考えてみた。まず私は私なりに、一体どこから取るんだろうと思ってはじいた数字があります。しかし、これは私が考えたことで、まず主税局長のほうから、どこから千五百億取るのか、先に明らかにしてください。
  16. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、主税局長と意思を統一して話したことではないことは御了解いただきたい。一つのものの考え方としてこういうこともある、それは全然例のない話ではない。フランスが現に八〇%に近い間接税ウエートを置いて税制を敷いておるじゃないか、こういうところまで話したのでありまして、それからさきの時点に対しては何にも話しておりません。ただ、そういうこともまじめに考えるべきだ、現在の税制だけを固定的に考えて、三千億というものを解決しようとすると、なかなかうまくいかぬから、こういうことも考えてみるべきだ。ちょうど、農業用ガソリン税で、できないできないというけれども、現行の税法だけでできないできないというからできないんで、そうではなく、切符制度なども考えてみろ、こういうことをあなた方が言われますが、それと同じケースのものでございまして、主税局長が千五百億云々というケースのものではございません。
  17. 横路節雄

    横路分科員 それでは、大蔵大臣、あなたは基本的な考え方として物価抑制観点からと、こう言われておるんですね。私、この間大蔵省から物品税その他について詳細に出していただきました。そこで、まず種類と数字を見ますと、たとえば第一種の第一類とあります。貴石、半貴石類真珠類貴金属製品、べっこう、さんご、こはく象牙製品七宝製品毛皮製品税額は三十億です。それから、その次に第二種の第一類というのがあります。これは、高級の普通乗用自動車、モーターボート、ゴルフ道具、金属の時計、税額は四十一億。その次、第二種の第二類というのがございまして、これは大型テレビジョン受像機だとか、大型電気冷蔵庫だとか、ビリヤード用具だとか、銃及び薬きょうだとか、羽ぶとんだとか、こういうものがかりに六十二億とします。これら全部で百三十億です。その他のものは国民生活に実に密接に影響しているわけなんです。まず大蔵大臣、私のほうからひとつ言いますね。これで百三十億、いまあなたがかりに倍取ると計算して、私が話をしてみましょう。これが百三十億。その次に、今度は大蔵大臣、酒ですね。いまあなたは、酒を一本飲んだ者より三本飲んだ者は三倍税金をよけい納めると言ったが、しかし、さらに税金をよけい取るとは言わないだろうと思う。ただし特級酒、まあ特級酒は、これは大衆のものでないからこれはよけい取っていいかな、こういくとすると、特級酒税額が二十五万石で百十六億ある。一級酒、二級酒は、これは一般大衆酒になったから、これは税金を上げない。次は、——大蔵大臣、いいですか、私の話を聞いてください。主税局長、ずっと私の話を聞いてからにしてください。それからウイスキーも、これは特級だ。特級は六十二億、酒の特級ウイスキー特級で百八十億だ。いま私は、あなたの話で、かりに倍になると仮定した場合における一つ基礎数字を話しておる。今度はたばこですね。たばこも、一般の安いものはよけい税金を取るわけにいかぬから、高いものということで、十本五十円——十本五十円というのも、これはさしたることはないと思うけれども、専売納付金というので……。とうきょう64というのがある。これが八億本で二百十六億円、それから新製品が今度出るそうだが、これが二億本で五十四億、富士が五億本で百二十億、合計これが三百九十億。これは、かりに十本で五十円というものです。二十本というのは計算しない。そうすると、これでどれだけ考えられるかというと、いいですか。物品税で百三十億考えた。酒の特級ウイスキー特級で百八十億考えた。たばこ十本入りの五十円、これで三百九十億、これで七百億だ。これをかりに倍にしたとして七百億しか取れないのですよ。物品税を上げた、酒も特級で上げた、たばこも十本入り五十円、これも上げた。倍に上げた。それで七百億しか上がらない。千五百億というのはどこから出るのでしょうかね。私は、実はあなたが千五百億と言うたから、私も田中さんの立場になりかわってどこから取るのだろうと思って一生懸命考えてみたのです。かりにいまのやつを倍にしてみたって七百億なんです。そうすれば、あなたは何か新しく税金を取ることを考えていらっしゃるのか、何かまた新しく創設することを考えているのか。まさか、田中さんが物価抑制のためといって間接税といったって、このたくさんのいま大衆の使っているものを——物品税がございますね、ここにございます千二百六十二億ですか、これをみな倍にするなんて、そんなことはできないでしょう。これは大衆の使っているものなんですから。やるとすれば、そういうものしか考えられないのだが、一体千五百億というのはどこから出た数字なのか。田中さんは、いや、おれの思いつきだと言うが、おれの構想だと言われても、やはり受け取った国民のほうからすれば、千五百億というのは何だろう、どこから取るんだろう、何を取るんだろうと思うのですよ。主税局長、あなたは苦笑いしておるけれども、そうでしょう。
  18. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げておるように、どうも横路さんは非常に専門的に、すぐ数字を並べられますが、政治的ベースにおいて考えたことでございますから、政治的にお考えをいただきたい。そうすればよくわかります。これは物品税やそういうもの、現在の税制の中でこれを取れるという考え方前提にしたものではありません。間接税ウeートを置いておる国があるのだから、日本消費が非常に堅調であるから、そういうことも十分検討して幅広く考える必要がある。そうすれば、窮すれば通ずる。いろいろな道も開かれる。こういう政治ベースで話をしたわけでございますから、千五百億に積み重ねていくという話ではどだいないのであります。しかし、一体そういう税が取れないか、こういうと、私は取れないとは思わないのです。昭和二十七年に、ガソリン税は、議員提案において道路整備財源等に関する法律ができた。私が中心になって与野党一致でもって、ときの政府反対でありましたが、道路整備のためにやった。当時は税収幾らだったか、二十八年は二百四億円であります。それが、今年度のガソリン税税収二千六百七十九億であります。これは、与野党一致でもって当時の政府の蒙を開いたといういい例であります。酒税はいま三千八百八十九億であります。ガソリン税は二千六百七十九億であります。専売納付金は千六百四十二億であります。合わせると八千二百億になります。こういうものが、いま徴税機構は広げないで合理的に徴収されておるのであります。そうすると、また横路さんは、そういうものの解釈をされる方ではございませんから、私も安心はしておりますけれども、じゃガソリン税を倍にするのか、こういうことじゃないのです。われわれはやはりちゃんと、ガソリン税は十何年前の二百四億から二千六百七十九億に増徴しておるのです。確かにガソリン業者やいろいろな反対はございました。反対はございましたが、当時年間八十七億であった道路費が五カ年間に四兆一千億計画になったのであります。ですから、税制というものは固定的に考える必要はない。ですから、いまの税制は守らなければいかぬ。しかし、国民消費の実態やいまの状態を考えるときに、間接税が四割だ、直接税が六割だ、大むねバランスがとれておると私たちも言ってまいりましたが、こういう税制の中に新しい道を求むることは、道なしとしない。こういう前向きな姿勢を出したわけでございますから、何もいまの物品税を倍にして、七百億を千五百億にしよう、こういう考え方ではないのでありまして、お互いが英知を傾ければ、また国民の声も聞きながらいろいろなことを考えれば、私は道なしとしない。こういう立場でオーム返しに出たことばが千五百億、こういうことでありますから、千五百億という数字を固定的なものとお考えにならないで、ひとつ高い立場で御批判願いたい。
  19. 横路節雄

    横路分科員 田中さん、いまあなたはガソリン税のことを言われたが、ガソリン税というのは目的税でしょう。だから、ぼくは千五百億ということばが出てなければこだわらないのですよ。だけれども、やはり間接税千五百億と出たものですから、やはり国民に与える影響というのは相当大きいのですよ。ですから、田中さんからこの際この機会に、これは直接税の減税——先ほどの話だって、それは佐藤内閣の方針だといわれては困る、これはおれの考えだ、三千億の所得税中心減税ということは壁にぶつかる、だから、間接税をある税度増徴していかなければならぬのではないか。こういうことを言われたのですが、千五百億の間接税というと、国民の受け取り方としては、やはり物品税とか、そういうものを考えますよ。そうでなければ、何かまた新たに新設というか、新たに創設するというのか、何かそういうものを考えるのじゃないかな、こういうように懸念をしますから、この際やっぱり田中さんからそういう点——あなたから、間接税ウエートを置いて、幅広く政治ベースでやるのだから、あんまり千五百億、千五百億なんということにこだわらぬでと言ってみたって、その数字が出ちゃったのだから、おれは千五百億ということは言うたけれども、そういう数字については検討したこともないし、それは話は別なら別だ。こう言ってもらわないと……。あなたごらんでしょう、こんなになっているのだから。こんな大きな字で出ているのだから、これは、やはりはっきりして国民に不安を与えないようにして……。
  20. 田中角榮

    田中国務大臣 国民に不安を与えるとは思わない。私も税制の所管大臣でありますから、よりよき道があるならば国民にPRをして、国民の反響を見る。これは当然なすべきであります。ただ、減税減税国民が喜びそうなことばかりやっておって谷底へ落とすようなことはできない。やはり、現在いろいろな数字の上でいうと、まあまあの税制でございます。と言いながら、私個人から考えても、皆さんがお考えになるように、やはり中堅層に対して、人生において最も高率投資をなさるような立場にある人に対しては、もっと減税をしたい、こういう考え方を持っております。ただ、減税をしろしろといったところで、いろいろ事情があるのでありますから、なかなかできない。この道を開いていくとすれば、より合理的な道はないか。たとえば、もし所得税中心に三千億の減税をするのであれば、千五百億間接税で徴税できるとしたならば、三千億の減税もできるという非常に積極的な切実な考えを訴えているのであって、国民が、いや、合理的ではあるけれども物を買ったら税金税金というのも困る、こういう気持ちが起きてくれば、また政府考えるのですから、私がそういう発言をして、それが記事に載って国民を惑わすものだとも考えておりません。私自身は、大蔵大臣でもやめたら、積極的に自民党の税制調査会にでも入りまして、そういう問題を真剣に検討したい、こういう熱意のあらわれでございますから、そういうことは当然——いまあなた方が、国庫に対してうんと政府は金を出せという発言をされると、すぐ新聞に載りますが、これは、やはり国民がそういうことを判断して、いずれの方法が正しいかということにだんだんと国民世論がわいてきて、お互いがそれに応じて政策を行なうということでありますから、そういうことは、お互い間々言うことであります。これは、私自身がそういうことに取り組んで勉強しようという姿勢を新聞記者会見で話をしておることであります。しかも、こういうことをきめたということで発表したわけではありません。三千億減税ということは必要だと思う、しかし、ただこれをいまの税制の中でやるといってもなかなかむずかしいという場合に、ガソリン税の例もあるように、もっと消費税といいますか、消費をしたものが税金を払う。私は、この間こういうことを言ったこともあります。日本人は住宅には金をかけない、しかし、ビルにはうんと金をかける、だから、いまの日本の中堅企業の実態を見てみると、資本金は十億円である、工場施設全部で十億円である、そして二十億円のピルを持っている、そして左前になる、こういうことに対しては不動産取得税というものをもっと考えていいのではないか、こういう話をしたことがあります。まだまだ考えれば、方法は幾らでもあります。お互いに将来のためにより合理的な政治を行なうためには、もっと前進的に積極的にものを考える、こういう過程における発言でありますから、千五百億というものは全く架空な数字であって、何ら考えておらない数字だ、こういうことを申し上げる必要はないと思います。私は、そういう自分の発言に対しても実現するように大いに努力をする、将来道を開くということに対して努力を傾けてまいりたい、こう考えております。
  21. 横路節雄

    横路分科員 主税局長お尋ねしますが、間接税は税として非常に逆進性といいますか、たとえば酒、たばこ、砂糖消費税、物品税——あなたのほうで資料はあるのじゃないですか。百万円の収入があって、酒、たばこ、砂糖消費税、物品税の総合を一〇〇とした場合に、五十万円の所得をもらっておるものは幾らの割合になるか、三十万円の所得をもらっておるものは幾らになるか、二十万円の所得をもらっておるものは幾らになるか。きっとあなたのほうではそういう数字があると思う。あるでしょう。
  22. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、間接税は古来逆進性の強いものとされております。ただ、間接税の利点というのは、先ほど大臣お話しいたしましたように、徴税費が安く、国民にあまり負担感を与えないで税収を上げることができる、そういう利点があろうかと思います。お話しの間接税につきまして申し上げますと、これはちょっと数字が古いのでございますが、われわれのほうで昭和三十五年の消費実態を基礎にいたしまして調べた数字で申し上げますと、所得階層別に申し上げますと、所得四十万円から五十万円までの階層におきまする間接税負担率と申しますのは、収入に対しまして六・二四%となっております。これが七十万から百万の世帯になりますと、間接税負担が収入に対しまして四・五%に相なる。このように、所得階層が上がるに従いましてこの負担の率は下がっていくという傾向に相なっております。十万円から二十万円の階層で見ますと、一二・八%に相なっております。
  23. 横路節雄

    横路分科員 大蔵大臣、いまお聞きのとおりなんです。間接税はまさに逆進性そのものなんです。だから、その点は、あなたがこれからかりに次の内閣改造でどういう地位になられるかわかりませんが、おれは税制調査会のほうにでもいってやるかもしれないというようなことをおっしゃっても、間接税そのものはこういう性格を持っておるものですから、そこで、一つだけお聞きしておきたいのですが、こういうことで何か新しく税をつくるとかなんとか、そういうことはいまはないでしょう。その点だけ明らかにしていただきたい。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 間接税が逆進的であるという説も知っておりますが、間接税大衆課税にならないように、その物品や、そういうものに対して税率を変えるというような問題はあると思うのであります。しかし、お互いにやはりアメリカ税制だけではなく、西ドイツの税制フランス税制もイタリアの税制もやはり考えて、いまの時代において日本により適合する税制はどうあるべきかということは、当然絶えず考えていくべきものと思います。それから、新しい税をどうするかという具体的な問題は、現在まだ考えておりません。これは将来の問題でございます。
  25. 横路節雄

    横路分科員 次に、主税局長お尋ねをしたいのですが、いま非常に交際費のことが問題になっておるわけです。いま実際に法人の交際費というのは一体どれくらいになっておるのですか。これは、三十八年でないとわかりませんね。三十八年でどれくらいになっておりますか。
  26. 泉美之松

    泉政府委員 先般国税庁から発表いたしましたように、三十八年度中におきまする法人の交際費支出額の総額は四千五百二十億となっております。ただし、これは利益を出してない欠損法人の出している交際費も含まれておりますので、それを差し引きまして、利益法人の出した交際費の額で見ますと、三千七百億余りになっております。
  27. 横路節雄

    横路分科員 主税局長、これはあれでしょう。資本金の千分の二・五プラス四百万円を基礎控除するわけでしょう。その基礎控除の額は幾らになっておりますか。資本金の千分の二・五プラス四百万円基礎控除する。そうすると、実際はその分は税金がかからないわけでしょう。その税金のかからない分は幾らですか。
  28. 泉美之松

    泉政府委員 三十八年当時におきましては、いまのような制度でございませんで、資本金の千分の一・五と、それから年三百万円との合計額になっておりますから、その点は違っております。それから、われわれのほうの統計に出てまいりますのは交際費の課税を受けておる法人の分だけしか出ませんので、交際費の課税を受けてない法人の分の控除額が幾らになっておるか明確でございません。そこで、われわれがこの四十年度について計算しておる点を申し上げますと、四十年度におきましては、交際費の課税を受けておるもの、したがって全体の交際費でございませんから、あらかじめ御承知いただきたいと思いますが、交際費の課税を受けている法人の支出は、交際費が三千二十億、そのうちから控除額が九百二十億、差し引き二千百億をベースにいたしまして、現在のやり方でありますとその三〇%を損金に入れない、それを今度の改正によりますと五〇%を損金に入れない、こういうことに相なっております。
  29. 横路節雄

    横路分科員 主税局長、千分の一・五プラス三百万を、千分の二・五プラス四百万を基礎控除にする、こういうふうに上げた理由は何なんですか。
  30. 泉美之松

    泉政府委員 交際費の課税といいますか、交際費支出をした場合に、その点を損金で見ない、御承知のように、社用消費の中には必ずしも緊急必要でない面もあるのではないかということで損金に入れないわけでございますが、その額といたしまして、先ほど申し上げましたように、交際費の課税は二十九年から始まっておりますから、当初は業種別に率を設けまして、それと前年の支出実績額と比べて計算しておったのでございますが、繁雑でございますので、それを昭和三十五年から、年三百万円と資本金の千分の一・五を合計した額をこえる部分の二割を損金に入れない、こういう制度にいたしたわけであります。しかし、その後の様子を見ましても、やはり交際費の支出はますますふえる傾向にございまして、必ずしも好ましい傾向と思われませんので、交際費の損金不算入の割合を三〇%に上げることにいたしたわけでございますが、その際に、三百万円ときめましてから年数もたっておりますので、四百万円に上げるということ、それから資本金基準で千分の一・五といたしておりまする基準につきまして、実情に合わないような面がございますので、千分の二・五に統一するということを三十九年に改正を行ないました。しかし、三十八年の実績を見ますと、やはりまだ相当の交際費の支出がございますので、今年さらにその制度を強化する、そして五〇%は損金に入れない、こういうことにしようとしておるのでございます。
  31. 横路節雄

    横路分科員 大蔵大臣中期経済計画の経済審議会の答申の中における国民生活分科会報告の中に、「法人の負担については、福利厚生費、社会保険保険料、公害防止施設費等と合わせて租税の問題も検討すべきであり、他方、社用消費等も再考の余地があろう。」こういうふうにいっておるわけです。主税局長、これは私のところに、あなたではないけれども、大蔵省のほうから、たとえば日本輸出入銀行の大口貸し出し先一覧表とか開発銀行の大口貸し出し先一覧表というのを借りておるわけです。たとえば東京電力は、資本金が、この数字に間違いがなければ千二百億です。ところが、貸し付け残高というのは六百四十九億まだ残っておるわけです。そうすると、千二百億の千分の二・五というと三億です。そうすると三億プラス四百万円、東京電力は三億四百万円は交際費として基礎控除できるのでしょう。これはたいへんなことだと思うのです。そして三菱重工が七百九十二億円、これだと約二億円になるわけです。日本鋼管が七百六十三億、これも約二億になる。日立製作所が七百八十八億、これはみな資本金です。これも約三億の交際費が基礎控除になる。関西電力が八百七十四億だ。こういうことは、なるほど基礎控除をして、それから今度は率を上げたというけれども、いま間接税のことをお聞きしたのだが、間接税増徴してどうするとかこうするとかいうこともあるけれども、こういうところにもう少し税について考えてもらわぬと、これは、国民のだれしもがどうも納得できない。私は租税特別措置法の税法のところを調べてみましたら、機密費もあの中に入っているのですね。機密費というのは、ポケットから出して、はいこれが機密費でしょう。租税特別措置法の中におけるこの交際費の中に、いろいろ調べてみると、機密費も入っている。機密費というのは、ポケットから出して、君百万、君五十万、君三十万、使ってよろしい。それは、役員会の承認を得るのかどうか知らぬけれども、承認を得るのだろうけれども、私は、そういう意味で、これは世間で相当国民全体から批判のまとになっているので、こういう点をもっともっと検討すべきであって、そういう検討をすべきところを、大蔵大臣がいち早く間接税とこう言うから、私はひとつきょうはその点をお尋ねしたわけです。交際費については、まだ年次別にさらに改正をしていこうというお気持ちもあるわけですか、主税局長、どうなんですか。いま東京電力なんかは三億交際費が基礎控除になっているわけですね。
  32. 泉美之松

    泉政府委員 交際費の課税につきましては、いろいろの考え方があろうかと思います。営業を継続していくためにどうしてもこの程度の交際費は必要だということもいわれております。以前は業種別に、どういう業種は従来の実績から見るとどの程度交際費を支出しているから、まあ平均よりちょっと下のところを基準にいたしまして、平均よりちょっと下のところまではまあ大目に見よう、それをこえている支出については損金に入れないというような考え方でやった時代もあるのでございます。最近のように、企業が営みます業種が非常に複雑になってきますと、一つの業種だけでしぼるということが非常に困難になる。そこで、少し荒っぽいやり方でございますが、ほんとうなら主税局というのはもっとこまかいやり方でやるのが本来のあれでございますが、交際費についてだけは荒っぽいやり方で、四百万円と資本金の千分の二・五というような基準でやっているのでございます。この点は、御指摘のとおりいろいろ問題のあるところでございまして、さらにもう一つは、前年に支出した額よりも交際費を締めて少なくしたというときには何らかメリットがあったほうがいいのではないかというような考え方もあるわけでございます。そういったいろいろな考え方を取り入れたいと思っていろいろ検討いたしましたが、税制がだんだん複雑になる一方でございますので、今回はこの程度にいたしております。今後はもっと実情に即したようなやり方に改めたいという考えは持っております。
  33. 横路節雄

    横路分科員 主税局長国民はこの点について非常に批判をしておりまして、たくさんの問題があるわけですが、私は、この問題の指摘はまた後に譲りたいと思います。  そこで、利子課税と配当所得の課税についてはこの前やりましたから、きょうは他の方がやるかもしれませんから、私は基礎控除の問題について主税局長にお聞きしたい。答申案は十四万円だったでしょう。基礎控除は十四万円が答申で、それをあなたのほうで十三万円にしたのでしょう。答申はそうでしょう。
  34. 泉美之松

    泉政府委員 税制調査会の答申は、お話のとおり、基礎控除は十二万円から二万円上げまして十四万円ということになっております。ただ、政府案の段階におきまして種々検討いたしましたあげく、基礎控除の引き上げは一万円にとどめました。そのかわりに、配偶者控除を一万円引き上げるということにいたした次第であります。
  35. 横路節雄

    横路分科員 そこで、主税局長、なるほどあなたの話を聞いていると、税制調査会の答申は、所得税の基礎控除は十二万円から引き上げて十四万円だった、しかし、それは一万円を上げて十三万円にした。しかし配偶控除のほうは、答申は十一万円そのままであったが、一万円引き上げた。だから、ちょうどつり合いがとれる、こういうことをお考えかもしれないけれども、全く違う。これは数字を見ると、この所得の基礎控除を十四万円に上げた場合に、私の数字に間違いがあれば指摘してもらいたいのだが、二万円上げた場合には初年度の減税は三百八十億、平年度で四百三十億円。ところが政府案で一万円上げた場合には、初年度二百二十億、平年度二百三十億ですか、そこの数字はちょっとあれだが、半分ぐらいでしょう。その点の数字を明らかにしてもらいたいのだが、配偶控除を一万円引き上げた場合には、初年度百億で平年度百十五億になるが、どういう影響を与えておるかというと、結局独身者、いま高校を出てきた、大学を出てきた者は軒並み税金が課してあるわけです。そこの点は、答申案どおり十四万になるか、政府の十三万にしたかというこの一万円が、非常に影響があるわけです。  いま実際には、夫が働いて妻はうちにいるというのが本来の姿かもしれないけれども、そうはいかぬから夫婦共かせぎだ。夫婦共かせぎの分は、やはり基礎控除が十二万が十四万と上がったほうがいい。そこで、私の数字に間違いがなければ、二万円上げたときには初年度幾ら、平年度幾ら。それが一万円にとどめた場合には幾らになるのか、そこら辺の数字の実態というものを明らかにしてもらいたい。
  36. 泉美之松

    泉政府委員 お話のとおり、基礎控除は二万円引き上げますと、税制調査会の答申当時にはかなり概数で計算いたしておりますが、平年度四百三十億、初年度三百八十億、それが一万円引き上げにとどめますと、平年度二百三十億、初年度二百億という程度の金額になるわけであります、配偶者控除を一万円引き上げました結果は、平年度百十四億、初年度百億という数字になります。その間金額的には相当大きな差がございます。  これはどうしてそういうふうになったかという経緯は、すでに横路先生、御承知の上と存ずるのでございますが、念のため申し上げておきますと、税制調査会の答申におきましては、課税所得三百万円以下の税率を緩和しようということが、税制改正一つの大きなねらいになっておったのであります。ただ、その際には、従来最低税率が八%になっております。これは、昭和三十六年に府県民税に財源を移譲する関係上、一〇%の最低税率を八%に引き下げて今日に至っておるのでございますが、控除を上げますれば最低税率は若干引き上げてもいいというふうに考えられますので、基礎控除を思い切って二万円引き上げます、そのかわり最低税率の八%は一〇%に直す、こういう考え方税制調査会の答申ができておったわけであります。ところが、そういう改正をいたしますと、給与所得者の場合はほかに給与所得控除がございますので、必ずどの階層でも何がしかの減税になるわけでございます。しかし、事業所得者の場合、独身の事業所得者というものは比較的数が少ないのでございますけれども、その階層で所得階層三十万円、いろいろな控除を引きまして課税所得が十万円になるところ、この辺では減税が全然ないというような形になっておりまして、そのために、それではこういう減税をした際に減税の恩典を全然受けないというような階層がたとえわずかでも出ることは好ましくないということで、税率の改正はこの際見送りまして、そうして従来どおり控除の引き上げに重点を置いた改正を行なう、これは、所得税の改正の考え方についての大きな分かれでございまして、控除のほの改正を行ないますと、低額所得者には有利になる。しかし、従来の所得税の改正が控除の引き上げに重点が置かれておりますために、低額所得者の負担の軽減は相当はかられておりまするけれども、中堅所得層というべき人たちの減税が必ずしも十分でないから税率改正をやろうというのが税制調査会考え方であったわけでありますが、その点を政府案におきましては、従来どおり低額所得者の負担軽減にまず重点を置いて行なうという考えで行ないましたために、税率の改正をやめまして、そういうふうにいたしますと、基礎控除の引き上げは、最低税率を引き上げる関係で二万円上げることになっておったのだから、一万円にとどめてもいいではないかということになりました。しかし、またもう一つ、それは財源の関係もあったわけでございまして、初年度で申し上げますと、先ほど申し上げましたように、基礎控除を二万円引き上げるのと、それから配偶者控除を一万円にするのとでは、基礎控除のプラス一万円分が初年度百八十一億でございます。配偶者控除のほうは百億でございます。八十億の差がございます。そこを、財源の点をにらみ合わせまして、せめて配偶者控除の引き上げをしようということにいたしたのであります。お話のように、そのために独身の給与所得者、それから夫婦共かせぎの世帯の場合におきましては、基礎控除を二万円引き上げるより今回の減税案のほうが減税の割合が少ないということに相なっております。しかし、総じてみますと、そういう特殊な場合を除きますと、低額所得者の負担の軽減が比較的税制調査会の答申より多い。これは、たとえば収入金額のところで比較いたしてみますと出ておるわけでございます。
  37. 横路節雄

    横路分科員 大蔵大臣、いまお聞きのとおり、やはりいま何といったって独身者、高等学校を出たばかりの者が、今度の改正で十九万九千円ですか、十六カ月で割ってみると、大体月一万二千百五十円くらいですね。月一万二千百五十円というと、高校出た初任給の者からどんどん税金がかかっていくわけですね。そういう意味で、私はやはり答申案のように、基礎控除額を上げていくということが正しい、こういうように思っておるのです。この点は、今度の国会にも所得税法案がかかっておるでしょうから、ひとつ十分そちらでも検討すべきだし、大蔵省としても検討していただきたい。  そこで、私は最後に大蔵大臣一つお尋ねをしておきたいのだが、納税者が勤労学生のときは、その者の算出税額から六千円を控除する。この控除額を勤労学生控除額という。これは所得税法の十五条の五ですか……。勤労学生とは、大学、高等学校、中学校の学生生徒で、次のいずれかに該当するものである。所得の総額が二十万円以下であること、自己の勤労による所得以外の所得の金額が十万円以下であること、こういうようになっておるわけですね。ところが、いろいろ陳情がございまして、実際にはいま各種学校というのがたくさんあるわけですね。そこで、働いているこれらの者たちにも、——ここには大学、高等学校、中学校といって、いわゆる各種学校を除くとなっておるが、この場合、各種学校はたくさんあるわけです。たとえば高等無線学校とか高等電気学校とか、こういうものを当然入れてもらいたいという陳情があるのだが、これは、大蔵大臣、どうですか。
  38. 田中角榮

    田中国務大臣 各種学校につきましては、文部省でいま取り上げておりまして、法律をつくろう。いまどうも私生児のような宙ぶらりんのことであるが、しかし、この卒業生が世の中のために裨益しておるのは非常に大きなものであります。特に働きながら勉強しておる、こういうものに対して文部省で話をしております。大蔵省としては、私学振興会の貸し付け金の中で、昭和三十九年度から各種学校の道を開いたわけであります。ですから、各種学校に対していままで非常に強い要請がありながらも国の恩恵という面では救済できなかったものが、だんだんと救済するようになってきております。この税法の中でも、将来私は、そういうものを取り上げていくべきだ、また特に文部省で法律を制定するということになれば、当然取り上げられると思います。しかし、その各種学校の中に、いろいろ千差万別なものがあるわけであります。クッキングスクールとか、花嫁学校とか。しかし、料理学校はまた料理をやりながら就職するのだ、こういう主張もございますし、いずれにしても、花嫁学校等を除いて各種学校をやはり対象にしなければならないだろうという御発言はよくわかります。これは、ひとつ技術的にも事務的にも十分検討してみます。
  39. 横路節雄

    横路分科員 実は田中さん、私、この間私のところに来ていた陳情書を整理していたのです。そうしたら、一つは全国工業技術学校協会会長田中角榮さんから、工業技術学校法制定促進方お願いに関する件、これはいま文部省のほうでやっておる。ところがもう一つは、同じく全国工業技術学校協会会長田中角榮さんから、紹介議員田中角榮で、衆議院議長船田さんあてで、そして、いまの工業技術系各種学校生徒に対する所得税法第十五条の五による勤労学生控除について請願の件というのが私のところにあるわけです。これは、一月十五日付なんですよ。私は、この間から陳情書を整理しておりましたら、これは田中さんから、何とまあ大蔵大臣がわれわれに陳情して、しかも紹介議員になられて、そして議長に出されている。しかも、いま言う花嫁学校ではなくて、このうしろにあるのは、高等無線学校だ、やれ高等電波学校だ、あるいは山形工学院だ、鶴岡工学院だ、工学校だ、あるいは工手学校だ、あるいは名古屋の第一工学校だ、電波専門学校だ、たくさんある。ここにあるのは工業技術系各種学校生徒ですね。私は、大蔵大臣が御自分で珍しいなと思って、きょうひとつお聞きしておきたいなと思っているわけですが、大蔵大臣がわれわれに陳情書を出すなんて、そんなことを、主税局長、そばにいてだめですよ。どうですか、主税局長、あなた御自分で。
  40. 泉美之松

    泉政府委員 勤労学生控除は先ほど二十万というお話でございましたが、これは、昨年の改正で総所得二十五万以下の場合に認められるようになっております。  この対象に各種学校の生徒が入っておらない、その点につきましては、お話のような点について私どもももちろん検討いたしておりまして、実は先ほど大臣が申し上げましたように、文部省といろいろ相談して、文部省が明年そういう各種学校の生徒について基礎法をつくる、その際に、各種学校の生徒のうちで勤労学生控除の対象にすべきものを両方で相談してきめようじゃないか、こういう話し合いになっておるわけです。お話のように、工業技術系統のような学校の学生でありますれば、これは、おそらくは勤労学生控除の対象に明年から入ることになろうかと存じます。
  41. 横路節雄

    横路分科員 最後に一つだけ。大蔵大臣、私はこれだけお聞きをして終わりたいと思うのです。それは、けさの新聞に、どの朝刊もトップでみな書いているわけですが、いま国会の最大の焦点になっている医療費の問題なんです。健康保険法改正に関する医療費の問題なんです。そこで、私はあなたにお尋ねをしておきたいことは、きょうの新聞を見ますと、政府は答申案を尊重します。尊重しますというのは、形だけでなしに、答申案を実際そのとおりやるという意味です。そうしますと、この間大蔵大臣から私への答弁に、たとえば政府管掌健康保険に対しては国庫から三十億出した、あと標準報酬制をボーナス等を入れた総報酬制度に直して、約三百億がそこで値上げになって、赤字が埋まる、薬価の二分の一負担で、被保険者一人月二千円で三百億埋める、こういうことですが、どういうように答申がまとまるかわかりませんが、しかし、どちらにしろ、とにかくすでにこの間国会で問題になりました、田中さんと神田厚生大臣と自民党三役との間にかわしたメモというものはもう効力がないというか、それは今日の社会保険審議会、社会保障制度審議会の審議からいって、私は根本的に変わってくると思う。そこで、たとえば薬価の二分の一負担についてはやめますとか、あるいは総報酬制度についてはやめますとか、それは、これからのことに待たなければわかりません。その場合に、とにかくどういうことになるかは予測できないが、あのままでないことは明らかです。そうすると、当然三十億の国庫負担では済まない。もしも全額見るとすれば、政府管掌だけでも六百億になる。これは、答申を待ったあとに、その結果を待って補正を組むことになるのか。どうするのか。その点だけは、ちょうどこの間総括で私があなたにお尋ねをしていた問題でもありますので、きょうの各新聞の朝刊は一面全部、しかも佐藤内閣としてはというようにはっきりしておりますから、この点をひとつここで明らかにしておいていただきたいと思います。
  42. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、日本の保険制度を完成していくためには、私たちが考えておることが正しいことだと思っております。でありますから、両審議会においても私たちの考えを十分述べて御理解をいただきたいと思いますが、しかし、結果的に政府の案とは違う答申が出るかもわかりません。私は、そういうことは望まないで、できるだけ私たちの考えに同調していただきたいと考えておりますが、これは、出てみなければわからない話でありまして、この両審議会における審議を通じまして国民が納得する、また医療費問題の真の解決になる、こういうことでございまして、またそれが実施可能なものであるということであるならば、この答申を尊重してまいるという考え方でございます。ただ、国庫負担その他、いま政府、特に大蔵省考えておるようなことと速いようなものが出ないと私は思いますが、そういうものが出た場合一体どうするか、これは、財政上の問題もございますし、とにかく答申をいただいてから後、原則的にはこれを尊重していくという姿勢を基盤にしながら考えてまいらなければならないと思います。
  43. 横路節雄

    横路分科員 大蔵大臣、いま答申を尊重していくということになれば、いわゆる田中さんが神田厚生大臣や党三役との間に交換したメモで、政府管掌保険で標準制から総報酬制度に切りかえて約三百億、薬価の二分の一の被保険者負担で三百億の六百億、これがどういうようになるか、これからの結果を待たなければわからぬが、しかし、答申を尊重するということになれば、国庫負担三十億では間に合わないことは事実です。その場合は、当然補正予算を組まなければならぬ。だから、答申を尊重するということは、補正予算を組んでその中で措置する、こういう意味でございますか。
  44. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、そういう答申が出ないであろう、こういう考えでございます。私たちも大いにこれから両審議会で政府の熱意を披瀝をするつもりでございます。こういう立場に立って申し上げているわけです。あなたは、政府案とは全然違うものが出て、大蔵省がまた予算を組まなくちゃいかぬだろう、こういう答申が出ますよ、こういう立場でございますが、これは、出てみなければわかりませんし、私のほうでは、そういう案は出ないように大いに政府の衷情を披瀝しよう、こういう考えでございますので、暫時時間をかけなければ申し上げられないということです。
  45. 横路節雄

    横路分科員 田中さん、私が聞いているのは、あなたは答申を尊重すると言ったからだ。あなたが答申を尊重しないと言えば、聞かないのですよ。ただ、あなたが答申を尊重すると言うから、答申を尊重する以上は国庫負担三十億では済まないのではないか、その場合は補正予算を組むことになるでしょう、こう聞いているのです。
  46. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、いずれにしましても、何でもというようなものが出るとは思いませんが、先ほど申し上げました、実施可能なものでございますならば、答申は尊重いたします、こういうことでございますので、出るのを待ってからまた申し上げます。
  47. 横路節雄

    横路分科員 このことは、いずれ予算の分科会が終わったあとの一般質問並びに総括質問で一番の焦点になるわけです。だから、大蔵大臣としては、きょうここで横路に妙なことを言うて、言質をとられるとまた問題になるから、きょうは何としても言わぬでおこう、こういうことなんでしょうか。それとも、あなたは可能な限りというが、実際きょうの新聞は、佐藤内閣としては答申を尊重する、それで支払い側を説得する以外にない、こう言っておるわけです。そうすれば、私は補正を組む以外にないのではないか、こう思うので、その点は、いまここで田中さんが妙な発言をされるとまた支払い側にはね返りますから、お聞きしておくのですが、可能な限りというのは、国庫負担三十億というのは動かさない、そういう意味の可能な限りですか。そこですよ。
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、何ぶんにも微妙な問題でございますので、暫時御猶予を願いたい。
  49. 横路節雄

    横路分科員 それじゃきょうのところは……。答申を尊重するということを大蔵大臣も言われたわけですから、大蔵大臣、申し上げておきますが、この問題は分科会が終わったあとの一般質問並びに総括の最大の問題点ですから、この点だけは、いまのような答弁で過ごすわけにはいかないのです。ただ、新聞を見ますと、今明日中あたりに支払い側と総理との懇談があるとか、いろいろ言われておりますから、私も、ものは解決をするという立場でいくべきだと思いきす。しかし、月曜日以降の一般質問総括では、いまの大蔵大臣の答弁では委員会は進みませんから、その点だけは申し上げておきます。  それでは、主税局長中期経済計画における最終年度における減税というのは、やはりわれわれとしても、皆さんのほうでお出しになったことですから、きちっと数字をはじいて出していただきたい、こう思っております。これは、土曜日の午後また重ねて質問いたします。
  50. 中野四郎

  51. 加藤清二

    加藤(清)分科員 内閣の大黒柱の田中大臣でございますので、実は野党の私どももきょうは選手をすぐってまいったわけでございまして、このあと川俣先輩、私の前は御存じの横路先輩、こういうわけでございますので、ひとつ私も先輩に負けないようにやらかさなければなりませんから、お手やわらかに御答弁のほどをお願いいたします。  とかく選挙になりますと、社会党の人間は全部マルクス主義者みたいに悪口かほめことばか知らぬけれども、言われるわけでございますが、決して社会党全部がマルクス主義者ではございません。いわんや金融論を論ずる場合には、御存じのとおり、マルクス流の金融論というものはほとんどございません。やはりケインズの関係であるという点においては、おそらくは大臣も私も一致するのではないかと思います。したがって、そのつもりでひとつお答えを願いたいと存じます。  さあ、国会が始まりますと、私のところへ手紙が殺到してくる。おかげで私はえらいうれしい悲鳴をあげておるのです。一人ぐらい秘書を余分に雇わなければならぬ。というのは、手紙の返事を書かなければならぬからです。その約四割ぐらいが歩積み、両建ての問題です。それからあとの四割ぐらいが金融の正常化の問題についてでございます。きょうここへ持ってこなかったのですけれども、現にきょうまできたので千六百枚ぐらいございます。これはたいへんなことなんです。実はこの間も、テレビであなたの姿を見たら胸がすうっとしたという書き出しがら始まって、歩積み、両建てで困っておる内情が事こまかに書いてある。ですから、歩積み、両建ての問題を論ずれば、これは古くて新しいのですが、切ればどこを切っても血の出る話ばかりなんです。幸い大臣も、この問題についてたいへん御努力いただいておりまして、中には、こうなんです。たよりがいのない政府、しかし、たよりになるのは田中大臣の時代だから、その時代にひとつ何とか姿勢を正しくしてもらいたい、こんなような——うそじゃございません。あとで大臣に個人的に見せます。したがって、国民は注目をしておるということだけは事実です。それから期待をしておるということも、これはもうはかり知れざる大きな期待なんですね。ですから、そのつもりでひとつしっかりと御答弁を願いたいと思います。  金融正常化の第一歩は、何と申しましても日銀法の改正から始まらなければならぬと思います。すでに政府におかれましては、その準備が整っておると新聞にも散見されているようでございます。そこで、お尋ねいたしますことは、日銀法の改正の詳細については大蔵委員会でまたお尋ねすることと存じますけれども、その基本となる改正の基本要綱は一体何と何でございますか、簡単でけっこうです。
  52. 田中角榮

    田中国務大臣 日銀法は、御承知のとおり、昭和十七年の総動員時代においてつくられたものでございます。   〔主査退席、登坂主査代理着席〕 でありますから、日銀法の全文そのものが国家目的の達成ということにウエートが置かれております。道路法等においても、これは大正八年制定の法律だったと思いますが、師団司令部と師団司令部をつなぐものを国道とするという趣旨の法律であったものが、新しい憲法にそぐうような改正が行なわれたということでありまして、時代に即応するような中央銀行法、こういうことがまず改正の第一点でございます。  第二点は、いままで大蔵大臣の認可を得なければならなかったオペレーションの問題とか、公定歩合の問題とか、準備率の問題、こういうものは一切日銀独自の権能でやれるようにしよう、日銀の中立性をいまよりも明確にしよう、こういう考えであります。  それからその次は、昭和十七年に制定をせられました日銀法が、戦後占領軍の治下にありましたときに、メモによって二、三直されたものがあります。これは、全く全文改正を行なわないで、占領軍の要請にこたえるということで木に竹を継いだような個所がございます。すなわち、実態となじまない政策委員会の制度、こういうものを実態に合うように直す、こういうことがございます。また、政府の認可を必要としておりました日銀券の発行限度額、こういうようなものを廃止する。また、いまの状態を変えて無資本の法人にしょう、こういうような問題がおもなる改正点でございます。
  53. 加藤清二

    加藤(清)分科員 日銀の中立性を守るということは、金融の正常化にあたっては欠くべからざる重要な案件であると存じます。  ところで、私どもがいままでこの日銀法をながめておりますと、いま、はしなくも大臣もおっしゃられましたように、非常に矛盾した点がございます。木に竹を継いだようなとおっしゃられましたが、たいへんな矛盾がございます。一例を申し上げますと、大蔵省設置法におけるところの主務大臣の権限と、それから政策委員会におけるところの権限と競合するところが非常にたくさんあったわけですね。すなわち、第十三条ノ二から十三条ノ三、特にこの十三条ノ三は、一項から十項に分かれて政策委員会の権限、管掌するところの事務が列記されておるわけでございますが、この点を一体競合しないようにしなければ木に竹を継いだという感じはぬぐい去ることができないだろうと思います。この点についてどのような配慮が払われておりましょうか、お尋ねします。
  54. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、昭和十七年制定の日本銀行法の条文はそのままにしておきながら、政策委員会というものを占領軍のメモによってその部分だけ挿入したわけであります。でありますから、木に竹を継いだ、こういう表現で申し上げたわけでございますが、今度新しい法律の中では、日銀の政策を決定する者は総裁を含めた役員会という構成を明らかにいたしまして、その中に政策会議というものを設けて、そして、そこで決定する、こういうふうに明確になっておりますので、十七年の法律に、占領軍の治下において挿入をしましたつなぎがばらばらであったものを明確に規定して、日銀の機能の中に十分これを消化したということでございます。
  55. 加藤清二

    加藤(清)分科員 その業務及び権限の面で矛盾と申しましょうか、競合が大蔵省設置法との間にあると同時に、日銀政策委員の選び方についても、これはまるきり矛盾したあり方がある。それは、アメリカのいわゆる国立銀行の関係をまねた、あまた大きな州を代表したそれの代表者が総合された国立銀行においてなさねばならぬ業務、それをそのままこちらへそっくり移植したのでございまするから、アメリカの植物が日本で育つには育ったけれども、いびつに育ったといわざるを得ない。特に私ふかしぎきわまると思いますることは、政策委員は、これは院議をもって決定されるはずなんです。ところが、その議長であるところの日銀の総裁は、閣議をもって決定されることに相なっておる。宇佐美さんも、御承知のとおりだ。あなたが閣議でおきめになったはずなんです。ここらあたりの、人を選ぶ場合の矛盾点と申しましょうか、これなども考慮に入れて、いわゆる権限と、それから機構と組織と、こういう面をほんとうに詳細に検討してかかるべきであると思われます。が、この点はどうなっておりますか、今度の改正では。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 確かにあなたが御指摘のとおりなんです。日銀の最終責任は日銀総裁である、こういう規定があるとともに、日銀総裁の上にあるような政策委員会の制度があったわけでありまして、それで、政策委員会の委員というものに対して、総裁、副総裁は二枚鑑札を使っておる、こういうことでありますから、総裁は内閣任命でありながら、政策委員会は国会の議決を経なければならない、こういうことになっております。これは、点領軍、特にアメリカシステムであります。これは、三公社をつくりましたときに非常に強くメモが要請をしてまいりました。その中で現に残っておりますものは、電電公社の経営委員、それから国有鉄道の経営委員か政策委員か、それに近いものであります。そういうものの中でも、電電公社総裁は経営委員を兼ねておる。どうも不分明であります。でありますから、今度は、日銀の代表は総裁である、しかし、政策に関しては総裁を含めた政策会議でもって決定する、独断で総裁はできないということにしておりますが、政策委員会というものは別なものであって、内閣に対しての国会のような、そういうものじゃないということを明確に割り切りまして、日本銀行の役員は総裁、副総裁、政策委員及び理事と、こういうふうにはっきり日銀の中の機構ということに割り切りました。そういうことになると、筋の上からいいますと、総裁は内閣の任命でありますから、政策委員も国会の議決を経ないで、行政命令でもって任命するということが筋であります。いままで政策委員というものが国会の承認を経てから発令をするということになっておりましたから、今度は、法律が変わっても政策委員に対しては国会の議決を経てという、こういう議論が一部あります。ありますけれども、筋からいいますと、いままでは木に竹をついだようなものでありましたから、これは、条文によってはしぼってあります。いわゆる総裁の上にあるものではないということでしぼってはありますが、メモのケースそのものが全然別なものに規定したわけでありますから、国会の議決を経るということになっておりますが、今度は筋において国会の任命を必要としない、こういう考え方でいま成案を進めておるわけであります。
  57. 加藤清二

    加藤(清)分科員 国会の院議の必要がないということは、だんだん自主独立になっていい面もございまするが、またこれは、慎重に検討を要すると存じます。同時に、銀行法はどうされますか。今国会に改正案を提出されますか、されませんか。
  58. 田中角榮

    田中国務大臣 日銀法は、御承知のとおり昭和三十五年の九月に提出された金融制度調査会の答申をしんしゃくしてやっておるわけであります。でありますから、銀行法の改正をやるにしても、当然金融制度調査会に答申を求めるということでやるべきであると思います。でありますから、まだ金融制度調査会に諮問もしておりませんので、銀行法そのものを直ちに答申を求めて今国会に出すというようなことは、時間的にもむずかしいし、その考えはございません。
  59. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そうしまするというと、日銀法をまず改正して、その様子をながめて、その結果銀行法の改正に取りかかる、こういう段どりでございますか。それとも、銀行法は全然手をつけぬでもよろしい、こういうお考えですか。
  60. 田中角榮

    田中国務大臣 ながめてというのじゃございません。非常に大きなものと二つ一緒に取り組めないということで、まず日銀法がようやく成案が得れる段階でございます。引き続いて銀行法というわけでありますが、これは、まだ事務当局ベースで検討の段階でございます。
  61. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私どもは、この重要な案件が改正されるに当たりまして、新聞、ラジオでほのかに承るという程度でございまして、その内容がどのように相なるのかとんと資料をいただいておりません。まことに遺憾でございます。そこで、でき得べくんばこの予算審議に間に合うように、資料の提出をせめて予算委員くらいには御提出になったって、ばちは当たらぬと思うわけなんです。ぜひひとつ至急日銀法改正に関する資料を提出していただきたい。主査、要求しておきますから……。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 まだ提案をいたしておりません。この間も予算委員会で御質問がございましたので、野党の皆さんの御意見も聞きます、こういうところで終わっておるわけでございますから、適宜ひとつ、党の話もございましょうし、あらかじめ私たちは、大体国会において皆さんが御発言になったような趣旨を体して改正をしておるわけでございますが、しかし、いずれにしても御相談をいたしたいと思います。
  63. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは、銀行局長お尋ねいたします。あなたは歩積み、両建てを改正するに当たって、たいへんりっぱな案をおつくりいただき、これを各銀行に通達なさったはずでございますが、その結果、すでに半年の余をたっているわけなんですが、あなたの命令以後一年と申しますと、六月ころと記憶しておりますが、そのころにははっきりした調査報告をしていただかなければならぬことに相なっております。しかも、さきの補正予算のおりに十二月から一月にかけて中間調査をしておる、その結果を報告する、こういうことに相なっているわけです。そこで、その結果を簡単にひとつ……。時間がございませんから、詳細は資料として御提出いただければけっこうでございますから。
  64. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 歩積み、両建てにつきましては、加藤委員も非常に御熱心にこれまで御努力されてまいられましたが、大蔵委員会におきましてこの問題が相当検討された結果、昨年の五月末現在における、不当なる不都合なとみなされる歩積み、両建ての金額を明らかにしました。そして、それを銀行につきましては一年間、つまり今年の五月末までに不当な分については全部なくする。それから相互銀行、信用金庫については、その割合が高うございまして、無理な面もあるので、二年間に全廃する、こういう約束になっております。私どもそういうことで強力に銀行等を指導いたしまして、五月末現在の数字を把握し、かつこれを検査によって誤りをなるべく直しまして、その金額は、今度十一月末現在でどのようになっておるかということを報告をとりました。これは、あとで資料を提出いたします。それを簡単に申しますと、その数字は、われわれの予想したよりもわりによく整理が進んでおる。これは、加藤さんの見方と違うのでございますが、つまり拘束を解除するとか、実際の預金そのものが大きく減るというのじゃなくて、一部は減りました。一部は、そういうものを解除、相殺等によって減ったものもございます。しかし、一部は拘束を解除して、いつでも自由に引き出してもよろしゅうございますということを相手に通告して、拘束しませんということであり、一部は、貸し出しのこの部分についての金利を引き下げて、金融機関のほうがあまりもうからぬようにする、そういうことによって債務者の要請にこたえるということになっておるわけであります。  その結果を申しますと、トータルでございますが、都市銀行につきまして、これは特に中小企業分が問題でございますので、それを申します。五月末現在では、貸し出し金に対して不都合な拘束預金、両建ては九・四%あった。それが半年たった十一月末には二・七%に減っております。この差額が整理された。それから地方銀行におきましては、六・一%あったものが一・八%に減っております。それから相互銀行は二・〇%、それが八・三%になっております。ですから、このほうは半減もいたしておりませんが、二年間でございますから、その半年のテンポとしては決して低くない。信用金庫の場合には、一一・七%が六・八%まで減っておる、こういう状況でございます。
  65. 加藤清二

    加藤(清)分科員 その不都合な歩積み両建てという範疇をどのようにとるかによって、その銀行の基礎数である九・何がし、それから相互の一三何がし、それから信用金庫の一一・何がしというものが変わっていくわけです。あなたが大蔵委員会へ御提出になりましたあの範疇でいけば、そんな一割や一割五分じゃございませんよ。てんでそれは話にならぬ。出発から話にならない。けれども、あなたのほうが調査なさって、これを把握しようとすれば、そういうことになるでしょう。私は、こういう例が非常に多いということを知っております。ということは、先ほども申し上げましたように、今国会だけで千数百枚のあれがきておる。まだこれからくるのですから、わざと千数百枚と言っておりますけれども、いままでだけでも千五百枚の余、葉書きだけでもきておるのですよ。うそじゃありません。一ぺん私の部屋へ見にいらっしゃいよ。それで、あすの委員会には私はこの陳情書を持って出るつもりでおります。葉書きだけじゃない、電話でもくる、手紙でもくる、たいへんでございます。あるいは直接本人が来る。私は、もうその苦情承り機関を一人で請け負っておって、党へくると、また私のところへみな持ってくる。かなわぬですよ、これは。がしかし、気の毒なことだと思っておる。それによりますと、中小企業金融公庫のひもつき融資まで両建て預金の対象にしておる。開銀のひもつき融資までが窓口で規制されまして、これが歩積み両建てのみならず、よそのほうへ向けられて融資されておる。こういう具体的な事実というものは、調査する方法と調査する場所を考えていただかないと把握できないのです。   〔登坂主査代理退席、主査着席〕  そこで、その調査する場所でございますが、一番いいことは中小企業を調査することなんです。いま席をおかわりになりました中野先生の選挙区の郷里でも、せっかく政府が助けてやるといってつくった工業団地、その団地の中心の大黒柱が倒れておる。なぜか、やっぱりこれは金融と手形の問題なんです。こういう具体的事実を、実は公取は直接被害者のほうに行って調べていらっしゃる。あなたのほうは加害者を調べていらっしゃる。どろぼうを簡単に調べれば、おれはどろぼうだと言う人はほとんどない。そこで、被害者のほうの調査をやってみえる公取に、どのような状況になっているかをひとつ御報告願います。
  66. 竹中喜満太

    ○竹中政府委員 私のほうは、昨年の九月末現在で東京、名古屋、大阪、福岡の中小企業約五百を選びまして調査いたしました。その結果は、その前にやりましたときと比べましてさして改善はされておりませんということになっております。ただ、しかし、これは大蔵省が本腰を入れて指導されましたのが昨年の七月、八月でございますので、現在はそれがそのまま通用するかどうかは多少疑問だと思いますが、当時としては、たいして改善されていないということでございます。
  67. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そのとおりです。私のほうでとっているデータも公取に似たり寄ったりでございます。この問題は、時間を急いではどうしても数字を変えるだけに終わるだろうと思う。銀行の中には、アルバイトを雇って、一カ月半ばかり夜勤をやらせて数字を全部書きかえさせたというところがあります。そして銀行局の調査に備えた。そして、その内容を申し上げますと、拘束預金であった定期を普通預金に切りかえる。しかし、それは銀行の合意がなければ絶対に出せない。つまり引き出せない。こういうことまで預金者を呼びつけてやる。預金者のほうは、何でそんなことをやるんじゃろうか意味がわからない。それからまた、歩積み、両建てのことを言うたら、いま貸してある金を引き上げてしまうぞ、絶対に言うてはいかぬ、特に加藤清二というやつには言うてはならない、こう言うている銀行がある。それが、何と私の選挙区のひいきの人にそういうことを言うものですから、筒抜けに私のところに聞こえてきてしまう。そんな笑うに笑えないような事実もあります。そこで、わが党としましては、これはまだまだ完成していない。だから、徹底的にやらなければならない。しかし、大蔵省や銀行局の御努力は確かに徐々ではあるけれども、きき目があらわれてきているということだけはうかがえます。したがって、決してあなたの努力が足りなかったと言うているのではありません。いまだ不十分である。緒についただけである。だから、ひとつ大いにがんばって、倒産対策の一助としても、金融正常化の大黒柱としても、ぜひこれは前進させていただきたい、こういうことを考えているわけでございます。そこで、われわれとしても、ただやれ、銀行局けしからぬぞと言うだけではいけないと思います。この苦情処理機関でございますが、これをひとつ立て直したらどうかと思われます。提案をしますから、ひとつそこで検討してお答え願いたい。いまあります苦情処理機関というのは、銀行の中にあるわけです。したがって、おおそれながら、おそれながらと訴え出る中小企業は一人もないのです。あったらそれは倒れてしまう。うらみ重なる井伊のやろうと言って乗り込んで、けんか過ぎての棒ちぎりで帰ってくるだけです。いわば戦争後進駐軍が悪いことをやりますと、進駐軍が裁判をいたしましたね、あのとおりです。みな無罪放免になって、本国に送還されてしまう。人殺しをしようとどうしようと、内輪の者が内輪に犯罪を処理するというのは、これはやくざ仲間のあり方です。したがって、これはぜひ銀行以外、銀行協会以外のところに——銀行関係の人も加わってもよろしいけれども、以外のところに処理機関をつくるべきである。わが党としては、すでにこれは党の中にできておる。県連にもできておる。その情報がみんな私のところに集まってくるものですから、それで実態がよくわかるということですが、しかし、それは公的なものでございませんので、いわゆる裁判権、司法権を発動させるというようなことはできない。ただ、助言をして差し上げるだけだということに終わるわけです。銀行の不正を是正させるというところまではいかないわけです。だから、銀行のいわゆる不当なる歩積み、両建てを是正させるに足る苦情処理機関をつくるべきである。それは、もちろん大蔵省も音頭をとってもらわなければならぬでしょう、大蔵省自体で。が、とにかく銀行以外のところにつくるということが最も肝要だと思われますが、これについての大臣のお考えを……。
  68. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおり、いま苦情処理機関は銀行協会等につくっておりますが、実情からいうと、あなたの言うようになるでしょう。それはよくわかります。しかし、実際において、各銀行に対しましては、自粛してやってくれ、やらないといよいよ大蔵省が徹底的にやりますよ、こういう相当強いことを言っているのです。そして、これは内容的には、先ほど銀行局長が述べましたとおり、相当自粛の実はあがっているということは事実であります。また、日銀及び大蔵省で随時検査をやろう、こういう立場をとっておりますし、また、それで悪いもの等に対してもいろいろなことを考えようということでありますから、私は、いままでとは違って、相当実があがるというふうに考えております。苦情処理機関はどこでつくるか、公取に置くか、大蔵省に置くか、第三者的なものを考えるかということは、あなたが切実なお考えとして御提案でございましたが、なるべくそういうことはしなくとも、銀行はやれ、やらなかったらほんとうに大臣命令を出すぞ、こういうぐらいに強い態勢をとっておりますから、私は実はあがるこう思います。それでもなおあがらないというような事態が出るならば、これは国会でも、六月ぐらいまでにはこの実情を明らかにして処置いたします、こう言明しておるわけでありますから、そういう実があがらないというようなことになれば、苦情処理機関ということだけではなく、通産省が実態調査をやるとか、まあ役所だけではだめだ、こういうことになれば、いよいよ苦情処理機関をつくらなければいかぬとか、借り主側の氏名を明らかにしてというのはなかなかむずかしい、報復措置がこわい、こういうようなことを言われておりますから、どうすればいいかというようなことに対しましては、もっと考えてまいりたいと思います。しかし、いまの状態では、そういうことを新たに苦情処理機関をつくらなくても十分実があがる、あがるようにひとつ強い指導をしよう、こういう考えであります。
  69. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私も、屋上屋を重ねるような監督機関はよろしくない、法は簡単なほどよろしい、法三章で事円満に運営できるならば、それに越したことはないと思っております。しかし、これはもう十年かかっておるのです。私が国会で歩積み、両建てを言うようになってから十年。だからこそ、最初に、古くて新しい話だ、なお切ればどこを切っても血の出る話だと申し上げたことでございますが、決してこれは作文でもなければ何でもない。私の実感なんです。そこで、でき得べくんばこれはつくるべきである。しかし、大臣のお説もございますので、私は大臣のおことばを信用して、そうして第一回の正式報告まで待ちましょう。しかし、ただ心配なことは、そのときに大蔵大臣、あなた引き続いて大蔵大臣をおやりになりますか。
  70. 田中角榮

    田中国務大臣 大蔵省におってもおらなくても、国会のあれでございますから、大蔵省自体が責任をとるのでございますし、内閣自体が方針を明らかにいたしておるのでございますから、御納得がいくような状態ができると思います。
  71. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは、先ほど銀行が江戸のかたきを長崎で討つと、こう言われましたが、かりにあなたが大蔵大臣をやめて副総理になられたとしても、その親分の総理は変わりないのですから、江戸のかたきを長崎でということになりますと、私はあなたが大蔵大臣でなければ、総理に向かってでもこれは談判をしなければならぬことになると思います。幸いあなたはどの立場におっても、かりに党へ帰っても、その金融機関の問題について、税制の問題について真剣に取っ組みたいと横路委員の質問にお答えでございまするから、たよりにしています。これは、また、ほんとうに中小企業もあなた、大蔵大臣をたよりにしていますよ。これは事実です。たよりにならぬのがいまの政府やり方だ、全くたよりにならぬ、だけれども、何やら大蔵大臣だけはたのもしい、この期待されておるのですから、その期待にこたえてやってくださいよ。ただ期待されただけでは困るのですから……。  さて、その苦情処理機関の問題と、もう一点私が提案したいこと、わが党の政策審議会が考えておりますることは、これは特殊指定でございます。どうしても銀行局長の言うことを聞かぬ。すでにあなた、銀行局長の命令は十二回にわたって出ている。自粛決議は六回、七回にわたって銀行は行なっているのだ。にもかかわらず、なかなかに実績があがらぬということは、これは、看板だけであるということなんです。その場の言いのがれだけであるということなんです。銀行協会の幹部側は、話はわかる。話せばわかる。そうです、とこう言う。しかし、末端の窓口に行きますと、この幹部の指導はすっかり消えてなくなってしまって、ただ自己の成績をあげよう、中小企業をどれだけ痛めつけようがどうしようが、かまっちゃいない、自己の成績だけあげる。支店長またしかりでございます。これがずっと行なわれている。親心子知らずどころの騒ぎじゃないのです。その原因は、銀行局、特に財務局等の指導のいかんにもありますが、きょうはそこは触れません。ただ、大づかみにして、六月の一年経過の報告を承ったときに、もし是正されていない、帳簿上は是正されたけれども、実態は全部抜けて通っているという事実がありましたおりに、どうしても特殊指定という問題が発生すると思います。この点について、今日の中小企業庁の長官はどうお考えでございますか。
  72. 影山衛司

    ○影山政府委員 先ほどの歩積み両建ての問題につきまして、中小企業に非常に御理解のあるおことばでございましたが、この歩積み、両建ての規制につきましては、私ども大蔵省のほうの御指導に全面的に信頼しておるわけでございます。私どもといたしましては、大蔵省と協力いたしまして、できるだけ歩積み、両建てがなくなるように指導していきたいというふうに考えております。
  73. 加藤清二

    加藤(清)分科員 公取の御意見。   〔主査退席、登坂主査代理着席〕
  74. 竹中喜満太

    ○竹中政府委員 昨年の六月半ばと思いますけれども、本院の大蔵委員会で歩積み、両建てにつきまして決議がございました。大蔵省は、行政指導によってその自粛につとめるとともに、その自粛の状況を監視し、公正取引委員会は要すれば特殊指定を行なうというようなことがきめられております。その線にのっとりまして、私どもといたしましては、必要があればいつでも指定ができますように検討を進めておりまして、それも最終段階に最近参っております。
  75. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大臣、すでに御案内のとおり、また、ただいまお聞き及びのとおりでございます。中小企業庁としても、すでに去年の私の質問に対して、一罰百戒であると答えておられる。簡にして要を得た名言である。私は、一生の記憶に残そうと思っている。公取の委員長は、もうすでに積極的にその日あるための準備を進めておられるのです。そこで、大臣に承わらなければならぬことは、あなたのおっしゃるとおり、余分な機関だとか、屋上屋を重ねるような法律の積み重ねはなきにしかず、けれども、あえて十年たっても、銀行局長の指示が十二回も出ていてもなお姿勢が直らぬ場合には、やむを得ざるの処置として特殊指定と苦情処理機関の設営については検討していただかなければならぬと思います。大臣の覚悟のほどを承わりたい。
  76. 田中角榮

    田中国務大臣 私も毎々申し上げておりますように、不当、過当ともいうべき歩積み、両建ての排除に対しては、非常に熱意を持っております。六月のその状況報告までには、おしかりを受けないような状態にまでしなければならないと考えております。同時に、この問題はあまり短兵急にやりますと、歩積み、両建ての制度が信用補完ということを目的としてとられたものでございますので、一時急激に私がやりましたときに、一部において、では金は貸せない、こういうことがあった。私は、そういうことはないだろうということで実情も調査をいたしたわけでございますが、いずれにいたしましても、これは銀行の自粛ということに待たなければなりません。同時に、借りる側も、銀行から金を借りたら必ず返すのだ、こういう基本的なものの考え方——初めは、歩積み、両建て何でもけっこうですから、金を貸してくださいといいながら、少し軽覆しそうになると銀行と衝突をする。私は、過当、不当ともいうべき歩積み、両建てが、金融機関というよりも、日本の全産業に対して非常に高い実質金利ということになっておって、これが企業圧迫になっているという面からも検討いたしておるわけであります。私は、現在の銀行法でも大臣命令で出し得る、こう思って検討した。銀行局は、長いこと、銀行法のたてまえからして、こういうことで大臣命令は出すべきではないという考えでありますが、私は、それをきっかけにして、銀行法というものの改正は必要だな、こうさえ考えたわけでありますから、私自身も非常に積極的な考え方を持っております。これから開放経済に向かって、銀行だけがのうのうとしておれるはずはありません。そういうことが許されるとしたら、それは、政府の施策が悪いからだ。私は、苦情処理機関とか、そういうものの考え方、特に金融機関が特殊指定を受ける、こういうことが起こってはこれはたいへんだと思っているのです。(「不名誉だ」と呼ぶ者あり)不名誉というよりも、たいへんなことだと思っている。だから、特殊指定を受けるぞ、しっかりやれと言っているのです。それでもなおほんとうに特殊指定が必要であるというような事態がこないように私もやります。徹底的にやりたいと思います。
  77. 加藤清二

    加藤(清)分科員 だからこそ、私は、先ほど銀行法の改正は御用意がございますかとお尋ねをした。銀行法の改正をすれば、いまの苦情処理機関の問題も、あるいは特殊指定の問題も一挙にここで解決できる、こう思ったればこそであります。しかし、銀行法の改正は先になるとのお答えでございますから、もう一つ、一番簡単な、今日即座にでもできることを提案いたします。  それは、あなたもただいまはしなくもおっしゃいましたが、歩積み、両建ては信用補完であるとのお説でございます。もしそれしかりとすれば、なぜ歩積み、両建てに対して余分な金利をとらなければならないのかという問題でございます。看板は明らかに信用補完とかけておきながら、不当な利潤追求という具体的事実、このうまみ、不当な利益、このおかげで絶対に根が絶えない。もしこのことをすることによって銀行は事務的に煩瑣をきわめ、損をするというかっこうになっておったならば、絶対にこれが行なわれるはずはない。もうかるからこそやるのです。貸し出し金利を日歩二銭五厘、二銭八厘と規定しておきながら、三銭、三銭五厘とりたいからこういうことをやる。この点について、銀行局長のほうは一銭五厘と指示をしていらっしゃいます。それ以上にとってはいけない。という意味は、事務費だけはとってもよろしい、こういう形です。しかし、とってもよろしいというところがありますと、それ以上にそれ以上にととりたいのが人情の自然です。したがって、さしあたってこのことだけはやれるのですから、あの一銭五厘を一銭にしてごらんなさい。あとで質問するコール市場もこれと同じことですが、これは、必ず是正できます。歩積み、両建ての場合の金利をぐうんと引き下げて、預金している分と借りている分との差額をなくする、こういうことについての提案はいかがでございますか。
  78. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 加藤さんの新しい提案のお気持ちもわかるのですけれども、いま私どもがやっておりますのは、ことしの五月末を目して、とにかく現在段階で把握されているものをなくするということと、そのなくする場合に、金利の内容は御承知の通りの数字がきまっておるわけです。これは、大蔵委員会の小委員会でいろいろ論議をした結果、さしあたりこの程度でやむを得ないというふうにきめられたわけです。ですから、せめてことしの五月末の以降については全部なくするといった、そこの段階までは新しい提案をすることは無理だろうと思います。ああいうことで約束して、銀行協会もさんざんやっていまの解消方策を決定しているわけです。私の名前で通達も出ているわけです。ですから、それをいまの段階で変えるということには私はちょっと困難があると思いますし、銀行としても簡単に承服できない面もありましょう。銀行の問題は別としても、あれだけ何回となく論議された結果の決定に従って私どもやっておるのですから、その問題が片づくまではしばらくこの方向でいきたい、それから後の問題につきましては、いろいろと御論議があるかと思いますが、それはまたそのときにしていただきたいと思います。
  79. 加藤清二

    加藤(清)分科員 あなたは人ごとだからそんなことが言っておられるのです。戦後最高の中小企業の倒産が続発しているのです。正月を越えて二月になったら、去年の二倍余の倒産があらわれているのです。もしあなたの知り合い、自分のきょうだいが倒れてごらんなさい。そうすると真剣になれますよ。あなたが真剣でないとは言いませんけれども、とてもじゃないが、ことしの六月が待ち切れぬ。このままの状態でいったらますます倒産がふえてくることは中小企業庁の長官や公取に聞くまでもないのです。だから言うのです。  しからば、あなたにお尋ねいたしますが、もし六月、一年の契約期間が切れた場合に、これがあなたの言うとおり実行に移されていなかった、思わしき結果が得られなかったということになると、あなたは不渡り手形を発行したことになる。したがって、経済常識からいっても、もしかしたら不渡りになるかもわからぬような経済状況だったら、請求するのがあたりまえじゃございませんか。いま請求しておくべきです。そうして、相手にその時期までの間に準備をさせるべきです。当然の義務です。だから、今日、伝家の宝刀を六月契約期日までには抜くぞよ、それがいかぬ場合にはこうするぞよというくらいの注意は与えてしかるべきだ。いままであなたのような観念であったればこそ、十一代にわたる銀行局長が何べん指示しても言うことを聞いていない相手です。これはいかがですか。
  80. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 五月末までにこれがなくならない、かなり残っておるということであれば、そのときには特殊指定もやむを得ないという決議はついております。ですから、われわれの監督だけでなしに、公取のほうにまでその問題はいってしまう。これは、銀行は非常にいやでございますから、その意味で、今度は、従来に比べれば相当本気になってやっておる。いままでの半年間の成績を見ますと、大ざっぱに申しまして四分の三は整理されていることになる。あなたは、われわれの味方でない、それはうそだとおっしゃるが、検査をやって調べた結果が大体この報告にほとんど誤りがないということはわかっておる。これは、どういうものを不当というかについては、さんざん論議してこうなっているわけですから、もちろん、私自身、腹の中で両建て、歩積みが大体一〇%くらいだと思っておりません。私も、客観的にこれは明らかに不都合だというものでなければ、われわれのほうで押えられないのです。だから、あとはまた新たな方法を考えない限り、次の手は打てないわけです。さしあたりこの目標をきめた範囲において完全にこれをやめさせる、それができなければ、先ほど言ったようなことになります。ですから、私のほうが不渡りを出したことになりまして、その結果が特殊指定ということになれば、銀行も不名誉でございますが、私にとってもはなはだ不名誉なことでございます。その気持ちはよくわかっておるつもりでございます。いかなるおしかりを受けましても、何も申すことはございません。その段階になって明らかにすべきことだと思います。
  81. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大臣お尋ねいたします。銀行局長もまことにけなげな覚悟をしておられるようでございます。もしこのことが期日までに成功しなかった場合には、特殊指定に踏み切るというおことばがございました。大臣のお覚悟を承りたい。
  82. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、銀行、金融機関の主管大臣として、特殊指定を受けるような状態は非常に不名誉なことだと思っております。不名誉なことというよりも、特殊指定というものを銀行にすること自体に対しても、そんなことがあってはいかぬ、そういう気持ちでございますが、歩積み、両建ての問題で実際的には経済界が混乱をしておる事実がありますので、私もひとつこれを機会に銀行局長とも相談をして、きょうの質問でいよいよこれは不名誉だけでなく、私がやめなければならぬというくらいの強い御主張のようでございますから、銀行局長は、うまくいくだろうという気持ちでおるようでございますが、これは特殊指定がいよいよやられるという状態であれば、私の名前でも何でも、銀行各行に対して、もう一ぺん、六月の期日までには十分実をあげられたということにで、万全の体制をとっていきたいと思います。
  83. 加藤清二

    加藤(清)分科員 次に、銀行よりももっとひどい金融機関が今日横行していることは、御存じでございましょうか。銀行よりももっとひどい預金でございます。歩積み、両建てどころの騒ぎじゃございません。元本をそっくりそのまま取られてしまうという預金が、今日金額にして一兆五千億行なわれていることを御存じでございましょうか。すなわち、工場の社内預金でございます。これについて、一体銀行局としてはどうお考えになり、大臣としてはどうお考えになるか。過ぐる予算委員会総括質問におきまして、私は労働大臣にのみこの問題をお尋ねしたわけでございます。重大なる決意をもってこの対策に臨むと石田労働大臣は答えておられます。さて、しかし、銀行法、相互銀行法、信用組合法等々の許可を得ずに、一兆五千億になんなんとする金が、銀行と同じような業務が許され、しかも、その元本が保証されていないというような事実は、これを放置しておいてよろしいでございましょうか。その結果、実例をあげてこれは申し上げます、倒れたところだけ。倒産した会社は、この元本の保証ができない、担保設定権もない。ついせんだって倒れました日本特殊鋼、あれは一億六千万円社内預金がございました。いろいろ血の出るような話し合いの末、よその者が入って、その結果六千万円だけは預金者に返りました。しかし、いまだに一億は返っておりません。もっとひどいのは、九州の炭鉱がつぶれた。退職手当金をもらって神戸で就職した。そのときに退職手当金をどないにしようか、金利が高いからというので社内へ預けた。しかし、その柴田ゴムは遂にぶっ倒れた。ここではびた一文も元本が返されない。炭鉱で悲劇にあい、またぞろこちらへ来て元も子も取られてしまったというのはこのことです。こういうことが今日の世の中にあってよろしいでございましょうか。まずそこからお尋ねいたします。
  84. 田中角榮

    田中国務大臣 社内預金がいま一兆五千億あるかどうかはさだかでございませんが、昨年の三月三十一日現在では約五千億、四千七、八百億という数字を労働省側から通知を受けております。現在一年半以上たっておりますから、相当大きなものになっておるだろうということは想像にかたくはございません。私は、社内預金には反対な思想を持っております。ですから、私は社内預金というものに対しては、大蔵省にまいりましてから好ましくないという考え方であります。労働基準法に基づく社内預金を、無制限に社内預金を育てるという思想のものではありません。これは、なるべく排除すべきものでありますが、長い歴史がありまして、やむを得ざる限度においてということで、労働基準法の規定がある、こう解しておるわけであります。また、それが定説でございます。これは、労使間の交渉によってきめるわけでありますので、もっと労働組合が強い態度に出て、労使の間で先取特権といいますか、先取り権を設定をするような状態で預金をするということは好ましいことだと私は思っております。現在の状態では、会社更生法の場合は拒否権が認められておるわけでありますが、破産法とか、そういう場合には、先取特権も何もないわけであります。制度そのものがあまり好ましいものではない。しかも、これは非常に乱に流れておる。これが、重役もみな預けておったり、それから職員の縁者や友人たちが退職金をもらえば、それを預けておく、それは一体何だ、わが社を愛するということよりも、利息が高い、こういうことに私は尽きると思います。利息が高いと思っているうちに、元も子もなくなってしまう、こういうことであります。無制限に保護をするというわけにはいかないと思います。無制限に保護をすれば、社内預金というものは郵便局のように膨大なものになりますから、そうもできませんと思いますが、まず社内預金の沿革、歴史、こういうものを十分検討して、まず月給、給与に見合う金額とか、そういうものに限定をして何らかの保護をする、こういうことは、いまの段階においては必要かと思います。労働基準法の改正ということになると、なかなかむずかしいと労働省当局は言っておりますが、むずかしいから何もやらぬということではなく、ある場合においては、何年間か時限的にも単行法でもできるわけでありますから、いまの実情にやはり合うように、労働者の権利を守ってやる。また、これは、そんなあぶないものは預金しなければいいじゃないかと言っても、つとめておって、首にするようなことは現在の状態においてできるものではありません。それはもうできませんが、ちょうどその利息が高いというのと同時に、隣でやったものをわしもやらぬというわけにいかぬ。特に愛社精神がないように思いやしないけれども、思われてもいかぬ、こういう盲点をついて存在するのが社内預金でありますから、きのうも労働省と話しまして、とにかく社内預金に対しては何らかの処置をとろう。労働基準法の改正が広範に及ぶから、とてもだめでしょうなどということではなく、現在の実態をやはり十分把握をして、何らかの処置は必要であろう、こういうふうにお答えをしたわけであります。でありますから、銀行局長にも、労働基準局長ともっと話し合って、もっとひとつ適当な処置をとらなければいかぬ、こう考えております。(「どういう処置をとるのか」と呼ぶ者あり)どういう処置といっても、社内預金の主管大臣は私じゃないのです。労働大臣です。そういうところにも問題がございます。ですから、これを認めるならば、大蔵省でもってこれをやるか、こういうことも考えてみたのですが、やるというときになると、なかなかいろいろな障害があるようでございます。しかし、現実に目をおおうことなく、積極的にこれに対処する必要はあると思います。
  85. 加藤清二

    加藤(清)分科員 処置は、必ずしも労働大臣だけでなくて、大蔵大臣で行なえる処置がたくさんございます。それで、私は一つ提案をいたしますから、それについてお答えを願いたい。  第一は日歩三銭、年一割以上の高金利でするということは、あなたも御存じのとおり、会社が損してそんなことをするはずはない。どうしてそんな高金利で社内預金の金利をつけることができるかといえば、これは、銀行から借りるよりなお得だからなんです。銀行から借りると、なぜそんなに高いか。それは、歩積み、両建てが原因になっておるわけです。だから、まず歩積み、両建てをなくして、中小企業が市中銀行から借りやすいように、さきに申し上げましたように、中小企業の資金需要というものはきわめて旺盛なんです。それに、政府は全体の需要量の八%にも満たないものしか出していない。だから、やむなく下からかきあげてくる、こういうことになるわけです。そういう基本的な問題がある。社長が、会社の会計がそれをやらなければならぬような空気ができあがっておるんです。それをまず除去してやるというこの親心がなければ、こちらだけ押えようといったって押え切れるものじゃない。しかし、財政投融資の問題とか、全体の融資の問題は、また別なときにやりまするから、きょうはこの問題に限っての対策を申します。ところが、おっしゃられましたとおり、これは労働基準法の十八条、これによれば、簡単にできることになっておる。だから、銀行局長の許可を得ぬでもできる。しかし、できることは簡単ですがね、一般の金融機関は、全部がこの臨時金利調整法の拘束を受けておるはずなんです。この拘束をここにも適用するようにすれば、いわゆる金利、利ざやのうまみというものがなくなるのでございますから、これをすれば甘い物にアリが寄らなくなると一緒で、甘いから寄ってくるのであって、これを辛くしたら寄ってくるはずはない。それは、ちょうど歩積み、両建ての場合でも、両建てさせてもなお金利がかせげないようにすれば自然に解消するでしょう。だから、臨時金利調整法、この適用をさせる用意があるかないか伺いたい。
  86. 田中角榮

    田中国務大臣 俗にいわれる社内預金には、臨時金利調整法は適用しておりません。金融機関じゃないということであります。これは何かというと、労働基準法十八条に基づく特定なものであります。だから、私のほうではあまりこういうものは好きじゃありませんから、ひとつ押えよう、こういう気があるのです。ところが、労働省のほうでは、労使が協調して契約に基づいてやるんだ、しかも、組合員の五〇%以上の同意を基準として相当しばっておる。だから、労働権との問題もございます。どうもそこがうまくいかないのです。私は、こんなものが何で一体いままで問題になりながら労働省と大蔵省の間で片づかぬのか、こういうことを言ってみたのですが、なかなか労働基本権というようなむずかしい問題がひっかかっているわけですが、この問題に対しましては、大蔵省と労働省、使用者、労働者も集めて、ひとつもっと合理的な方法を打ち出すということで懇談したらどうか、こういうことでありまして、いますぐこれを臨時金利調整法を適用するというような法律をつくるということは、非常に抵抗があります。ですから、いいときは、一割三分も一割五分ももらっているときは黙っているのです。これが取れなくなったときばかりわあわあ言ってくるというところに問題があるので、取れなくなるおそれがあるという趣旨のものですから、そういうものに対しては、ひとつもう少し法律的にも厳重にしたいという考えが、大蔵省側は非常に強いのです。特に私は強いのです。だから、あなたの御発言は検討いたします。検討いたしますというのは、臨時金利調整法を適用するということを直ちに検討いたしますということではなく、いま申し上げたように、関係者と懇談をして、より合理的な方向に対して検討いたします。こう申し上げておきます。
  87. 加藤清二

    加藤(清)分科員 つまり、これを是正し、労働者の預金を守ってやるために懇談会を開いて対策を協議する、こうおっしゃられるのですね。私は当然のことだと思います。労働大臣も、これについては前向きで具体的に対策を練る、こういう答弁でございますから、はしなくも一致しておるわけです。まことにけっこうです。  そこで、そうなりますると、問題になりまする点は、労働省は五千億と言うております。私は一兆五千億と言うております。どうしてそうなるかというと、労働省の調査は、労働基準法に基づく労働組合のあるところだけを調べておるわけだ、私どものほうは、各県に県連があり、労働組合の支部がございます。それらが労働組合を結成していない工場と常に関連があります。そういうところもこれをまねてやっているのですが、それをあなた方のほうでは調べていないわけです。労働法も適用していない、銀行法も適用していない、臨時金利調整法も適用していないというところにたくさんあるわけなんです。しかも、倒産はそこに一そう激しいわけです。新聞でちょっと出たりするのは、ほんの一部なんです。  それで、中小企業庁に承りたいことは、労働組合は結成していないけれども、労働者は雇っているという会社、そういう企業体は幾つくらいありますか。そして、倒産に瀕している、歩積み、両建てが解消する六月ごろまでの間の中小企業の倒産会社の推定は、去年より減るかふえるか。
  88. 影山衛司

    ○影山政府委員 お答え申し上げますが、非常にむずかしい問題でございまして、労働組合を結成していないところの中小企業の会社の数というのは、残念ながら私の手元に持っておりません。  それから、今後におきますところの中小企業の倒産の推定でございますけれども、これも、二月あたりは一応減りはいたしませんで、十一月程度の水準を保っているわけであります。今後の情勢につきましては、金融緩和というような問題もだんだんと出てきておりますので、その推移を見守ってはおりますけれども、私どもといたしましては、中小企業の倒産が少なくなっていくということを望んでおるわけでございます。
  89. 加藤清二

    加藤(清)分科員 お聞き及びのとおりですが、この未組織労働者——中小企業は企業全体の九九・六%もある。その数字は、みんなあなたのほうでわかっておるはずですから、こんなことで時間を食いたくないのですが、労働人口も三千万何がしとわかっておる。組織労働者は一千万何がしとわかっておる。そうなると、未組織のほうが多いでしょう。企業体からいっても未組織のほうが多いのです。そこに危険があらわれて倒産が続出しているんでございます。東京興信所の例の調べは、あれは一千万円以上だけです。ところが、それ以下のところで倒れる数がわんさとあるのです。そこで、元本を喪失してしまうという数が非常に多い。これは、いかに企業体が小さいからといったって、寄せ集めてみれば全体の組織労働者よりは多いのです。ここにもその実態調査を持ってきておりますから、大臣に一部差し上げます。各県でそういう調べをやっております。  さて、これについてそういう機関を設けてやられるというお話でございますから、時間がないので、本日のところはこの問題についてはその程度にいたしますが、もう一つ問題になる点は、これは、大臣にも検討していただかなければなりませんが、せっかくそういう労働者の金を、法律の保護を受けて預ける場所ができているのです。できているにもかかわらず、これが法律が不備であるがゆえに、そこへ預けることができないという事態が発生してきておる。すなわち労働金庫法によれば、第二章第十一条第一項第三号の会員規定の中に、国家公務員、地方公務員、健康保険組合員、共済組合員は取引の対象たり得るということになっている。会員になり得る。にもかかわりませず、共済組合法ではどうなっているか。もう時間がなくてやっておるひまがないから簡単に言いますが、労働金庫の会員となることができない。なぜできないか。金庫の出資証券が有価証券でないことから、資金の運用と見ることもできないわけなんです。したがって、会員となることができない。金庫の利用配当を受けることができないので、もし会員になっても利回りが低くなる。こういう問題がございます。  第二に、失礼な言い分ですが、本庁の指導がよろしくない、誤りがあるという点がございます。それは、いわゆる長期経理資金を労働金庫に預託することができない。ほんとうはできるはずだけれども、できない、いやじゃというのは、指導を誤っているからなんです。短期資金ならば一応よいことになっておりますけれども、この問題について、長期経理資金はこれを預託することをがえんじないような指導をしていらっしゃる。したがって、この点は、私のみならず与党の側からもすでに労働大臣のところにはいろいろ話がいっておるはずでございます。この問題は、ひとつぜひ検討していただきまして、せっかくできました労働金庫、しかも、ここは銀行局長、あなたの先輩のかつての今井給与局長が現在総元締めでやっていらっしゃって、きわめて正確、きわめて安全でございますから、ひとつ銀行局としても、この労働金庫法の機能が十分に発揮できるように、そうして危険に瀕しているところの労働者の預金が安全になるように至急御検討願いたいのでございますが、いかがでございますか。
  90. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この共済組合関係につきましては、まあ官庁関係なんか非常に大きいわけですが、その運用等について指導しておりますのは主計局でございますので、主計局のほうからお答え申し上げます。
  91. 中尾博之

    ○中尾政府委員 いま、実は長期の資金の運用は、いろいろな共済組合がございますので、お話が実はわかっておりませんので、通達その他を取り調べてまいっておりませんから、具体的に申し上げることができません。至急調べまして御返事申し上げます。
  92. 加藤清二

    加藤(清)分科員 わかりました。お聞き及びのとおりで、主計局長を呼んでおいても、代理が来て答弁ができぬそうでございますから、本件に関しては留保いたしまして、土曜日に行なう、こういうことで、本日はこの程度にして、以降は留保といたします。
  93. 登坂重次郎

    ○登坂主査代理 午後一時三十分より再開いたすことにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      ————◇—————    午後一時三十八分開議
  94. 中野四郎

    中野主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。肥田次郎君。
  95. 肥田次郎

    肥田科員 私は、主として昨日建設大臣にお伺いした点で、どうも納得できないというのですか、こういう点がありましたので、主管省であるところの大蔵省にお伺いしたいと思う点があります。  それは、まず一世帯一住宅というこのスローガンは、政府のほうでも早くから明らかにされて、国民に大きな夢と期待を与えていることはそのとおりでありますが、きのう伺いましたところでは、住宅計画について、昭和四十五年度までに七百八十万戸建てる。そのうちで政府関係では大体三百二、三十万戸、民間で四百五十五戸、合計七百八十万、こういうふうな計画があるということでありました。ところが、実際にそういう七百八十万戸というもので住宅計画が足りるのかということで伺いましたところ、四十五年度までの世帯増というものは大体四百二十一万世帯がふえる。それから古くなって倒れたり、あるいは災害で焼けたり、損壊をする。こういう種類のものが百八十一万戸あると予想する、こういうことです。それから、さらに自然的にあき家になるような家、あるいはスペアとして必要な家というものを考えると、大体これも八十万戸ぐらいになるだろう。現在は三十万戸ぐらいはそういう種類の中に入るあき家がある。こういう内訳でありまして、さらに現在の不足数は大体三百万戸、したがって一千万戸程度のものが実際には必要になる、こういうことであります。この一千万という数字考えてみますと、たいへん膨大な数字でありまして、これに対する資金対策が明確にされないと、この一千万戸の住宅対策はただ単に夢に終わってしまうのではないか、こういうふうに考えるわけです。  したがいまして、私が大蔵大臣にお伺い申し上げたいことは、この一千万戸も、三分の二ぐらいは実際には民間で建てることにならざるを得ないのですが、最近特に民間の住宅建設が活発になっておりますので、これらに対する四十五年度までの資金措置を大蔵省でどのようにお考えになっておるのか、この点をお伺いしたいわけです。
  96. 田中角榮

    田中国務大臣 住宅の建設が必要であるということは御指摘のとおりでありまして、四十五年度までに一千万戸計画ということをいま検討いたしておるわけでございます。しかし、住宅というものは大体民間を主にしてやるべきものであることも事実でございますが、戦後の住宅不足に対処しまして公営住宅法をつくり、住宅金融公庫、住宅公団、こういうもので公営住宅の建設にも大いに努力いたしておるわけであります。民間のものについてどういうふうな資金対策をやっているかということでございますが、工場等につきましては、労務者住宅、労働者住宅に対しては、公営住宅法に基づきまして資金的な措置を考えております。なお、保険会社その他につきましても、住宅投資を進めるように協力を要請をいたしております。  いままでは、住宅を対象としての貸し付けには戦前日本勧業銀行というようなものがございましたが、戦後不動産銀行の制度もございます。でありますから、不動産銀行の資金によってまかない得るものもあるわけであります。しかし、一般的な金融機関は住宅融資に対しては非常に冷淡というくらいなものでありまして、特に住宅は長期投資でありますので、そういう意味で、住宅資金というものに対して画然たるものはなかったわけでございますが、近ごろ各種銀行もハウスローンというような、いわゆる民間の住宅建設に対しての資金を供給しよう、そのかわりに住宅に対して積み立ててもらって、それが一定の限度に達した場合、約倍額ぐらいのものを融資をするというような制度をいま盛んに検討したし、一部においては実施しているようでございます。
  97. 肥田次郎

    肥田科員 厚生年金融資がございますね。一般の民間の工場、会社あるいはその他のものが建てるような場合に、これのワクを広げるというようなことはできませんか。
  98. 田中角榮

    田中国務大臣 住宅に対するワクをふやせという議論があることは承知いたしております。各省の間で十分検討を続けておるという段階であります。
  99. 肥田次郎

    肥田科員 特に民間の住宅建設が最近非常に活発になってきて、昨年の実績を見ても、政府機関で建てたものと民間で建てたものと一対二というような数字になっておりますね。ですから、実際には民間に依存せざるを得ない、こういうふうな実情だと思います。したがって、一千万戸という膨大な住宅の建設をこれから六年後にはもう完成しよう、一世帯一住宅ということになってまいりますと、ちょっとやそっとの融資では実際不可能なことだと思うのです。こういう計画がありますならば、実際にこれが実現できるのだという納得できる融資対策と申しますか、資金対策というものがぜひ講じられなければならぬと思って、昨日建設大臣にお伺いした点で、どうにも納得がいかない点を重ねてお伺いしたような次第であります。  それから、さらにお伺いしたいのは、この住宅を建てるにつきまして最も入手困難なのは、御承知のように、土地であろうと思うのであります。土地の入手につきまして、例の新住宅市街地開発法ができまして、最近いろいろな矛盾が起こってまいりました。これがいかに土地、住宅開発というものに関係が深いかという一例を聞いてもらいたいと思うのですが、住宅を開発する場合には、概して周辺の農村が対象になってまいります。農村が対象ということになりますと、当然片一方にはずっと大昔からの生活形態のままの農村の人々がおる。そのどこかにこつ然としていわゆる近代的な住宅ができる。その人たちの生活様式はおのずから全く異なった近代的なものである。こういうことで、それから後に起こるところの矛盾として、農村に永住しておる人々も目の前に見るところの近代的な生活様式をまねようとする、こういう問題が起こってまいりまして、結局は、農村の周囲へきてもらっては困るという声や運動が起こってまいります。大臣も御承知のように、農村で一時土地を売ります、そうしてとによく何百万か何千万かの金が入る。農民が土地を売るということは、現在までの生活環境がすっかり変わることなんですから、その土地を売って、そのかわりに入ってきた金である程度の生活維持はできるとしても、それは結局その範囲のものなんです。家族はどんどんそういう近代的な生活様式におのずから流れていってしまう。非常な出費を要する。そういうことのために、わずかの金はまたたく間になくなってしまう。こういうことがいわゆる住宅開発をやってもらっては困る、農村から土地を取り上げては困るという声になってきておると思うのであります。  そこで、私には一つの案がありまして、それに対しては実例がありますので、これをさらに延長していくという形態をとれないものか、こういうことについての質問があるわけであります。これは、おそらく関係方面に陳情がいっておると思うのですが、具体的には、大阪府の計画しておるところの住宅対策といたしまして、泉北の丘陵団地というものを考えております。これは、当初八百万坪のものを考えておりましたが、実際には三百七十五万坪でようやくこれを実現しようという具体的な計画ができた。けれども、ここでもいま申しましたような関係から、それらに対する一部の反対運動が起こっておるのでありまして、したがって、もしそこが実現不可能ということになってまいりますと、どこかほかのところに土地を見つけなければならぬという状態が起こっております。私は、特にこの問題をそういうことと結びつけてやる必要も大いにあると思いますが、それよりももっと根本的な問題として、現在あるところの大阪府の信太山の演習場がそういう住宅地に転用すべき絶好の条件にあるのじゃないかと考えます。これについては、もちろんいろいろな関係があるでありましょうから、まずそういう余地があるのかないのかということについて、これは防衛庁との関係もありますので、防衛庁にもそのことを言っておきましたが、いわゆる行政財産であるところの国有地、演習場こういうものについてどのような幅があるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  100. 田中角榮

    田中国務大臣 大阪府下だと思いますが、信太山演習場約七十六万九千坪がございます。この問題につきましては、その隣に住宅公団が住宅を建てておるので、この残余の演習場全部を住宅用地にしてはどうか、こういう御質問だと思いますが、防衛庁といたしましてはこれは部隊の配置の関係上、必要とする最小限度の土地でございますので、これを用途廃止をして住宅用地にするということは不可能だ、こういうことを防衛庁側では申しておるのであります。  いままでの状態を申し上げますと、旧陸軍の信太山演習場は百二十二万七千六百二十五坪、こういう大きなものがあったわけでございますが、昭和二十年に旧陸軍から大蔵省の普通財産に引き継いだわけでございます。そうして、この引き継ぎましたものの中から八十八万六千四百五十六坪を防衛庁に所管がえをいたしました。それから二十三万五千二十二坪というのは農林省等に所管がえをいたしたわけであります。なお、五万五千四十五坪は住宅公団へ現物出資として大蔵省から出資したわけであります。それから二万六千二百五十一坪というのは、住宅敷地等として売り払いを行なっておるということでございます。こういうことでありまして、現在残っておるといういわゆる防衛庁に所管がえをした七十万坪余のものは、いまの部隊の配置、そういう状態から、どうしてもこの演習場の用途廃止をすることは困難だというのが防衛庁側の意見でございます。でありますので、大蔵省としては、いまこれを所管がえをして住宅用地に転用するという考えは持てないわけでございます。なぜ必要なのかということにつきましては、防衛庁側からお答えをいたします。
  101. 志賀清二

    ○志賀政府委員 ただいまの信太山の演習場の必要性について御説明申し上げます。  私ども自衛隊の訓練場といたしまして、まあ一番理想的に考えますときには、方面隊といいますと、師団がその下にあるわけでございます。その方面隊をひとつ取り上げて考えますときには、大演習場が一つと、これはまあ師団対抗ができるという規模の演習場でございます。約三千万坪くらいというものを一つほしい。それから中演習場と申しまして大体一千万坪程度、これは連隊規模演習ができるという程度のものであります。これが二、三カ所はほしい。二ないし三カ所、最低二カ所はほしいということであります。あと、普通各連隊、大隊等につきましては、それぞれの所在地の周辺におきまして小演習場を一つずつ必要とするわけでございます。そのほかに基本訓練と申しますものは、まあわりあいに小さいものでございますが、これも付随的にどうしても必要なわけでございます。  信太山につきまして現在の状況を申し上げますと、信太山には普通科連隊が一個連隊と、それから陸曹の教育隊が併置されておるわけでございます。その陸曹のほうは、これは大体大隊単位と考えられるものでございます。そういうものを合わせますと、普通科連隊のほうでは大体基本訓練場が約六万坪と、それから小演習場として五十万坪。それから大隊単位と考えられる陸曹の分としては、基本訓練場が三万坪と小演習場が二十五万坪、合わせまして大体二十八万坪になるわけであります。両方合わせますとちょうど八十四万坪程度、そういうもの炉規模的に申しますと必要なわけであります。この陸曹と普通科連隊というのはその性質が違いまして、片方は下士官訓練をやるわけでございます。同じ場所で一緒にやるというのは、事の性質上できないわけでありますので、かりに同じ演習場を使います場合にも両方に分かれて使う、こういうふうなかっこうになるわけであります。信太山の場合は、面積が現在七十万坪余りあるわけでございますが、その数字自体から申しますと、現在もうすでに必要程度より小さくなっているというのが実情であります。  さらにまた、信太山の地形上の問題がございまして、これは非常にひだが入っておりまして、民有地が中に入り込んでいるという状態になっております。なかなか使いにくいところで実はあるわけであります。そういう意味から、非常に効率が落ちるという面がございます。しかしながら、信太山の駐屯地というものは、防衛上の見地からここからほかへ移すわけにいかないというふうな状況にありますが、そういうように多少不便ではございますが、どうしても信太山を使って訓練せざるを得ない、こういう状況に相なっておるわけであります。  現在までの使用状態を考えますと、これは三十八年度の実情でございますが、集計された面を概略申し上げますと、一年のうちの大体二百四十日間を使用しているという状態になっております。実際に使っておりますのは、この信太山の駐屯地の部隊以外に、伊丹市千僧周辺のいろいろな部隊も使っておりますし、また守山の普通科連隊も来て使っておる、こういうふうな実情になっておるわけであります。現在の状態では、演習場保有の状態が十分と言いがたい状況にありますので、そういうふうに遠くのほうからもやはり来て使わなければいかぬというふうな状態になっておるわけであります。この演習場におきましては、そういうふうな使い方の非常に悪いあれでありますので、実弾射撃ができないというふうな欠点もございます。そこで、究砲による演習で、主として中隊以下の訓練をやるというふうな状況になっておるわけであります。そういうものが、信太山の駐屯地があります際にどうしてもその周辺になくては困るというのがわれわれの立場でございまして、その辺の開発状況がだんだん近くなってきておりまして、もう少しどこかほかへ行ったらいいじゃないかという御意見がずいぶんあるわけでございます。演習場を駐屯地から離れて置くということは事実上不可能でございまして、それにかわるべき適当な土地というものは、私ども見渡したところでもなかなかないわけであります。したがいまして、現在の信太山をお話のように手放すということは、目下なかなか困難であるという状況でございます。
  102. 肥田次郎

    肥田科員 事情は説明を聞いてわかりましたが、これは、実は私も子供のときからよく知っておる土地なんです。おっしゃったように、ここには廠舎があって、そうして、いわゆる野砲の連隊がいまの信太山の駐屯地、それからその背中側に信太山の演習場、演習廠舎があって、そこで空砲射撃、あるいは主として歩兵の訓練をやっておった。そこで、実際私が考えてどうもおかしいと思うことは、これは時間を節約する意味で、話が一挙にここへ飛んでしまいましたか、この前に実は住宅公団のほうに払い下げられたところの、私のほうの記録では、決算委員会と、それから建設委員会との議事録による数字なんですが、二度にわたってこの土地が住宅公団に払い下げられていますね、この記録を見ると、きのう私は建設委員会で聞いたところとは、内容か少し違います。それはどういうふうに違うかというと、最終的には、これは現物出資になっておるんだ、まあこういうことでありましたから、それは一つの手段ですから、別にいいと思うのですが、住宅公団のほうでは、三十七年の十月に坪当たり四千百七十円で、これを五万五千坪買っておる。それからさらに三十八年には十五万五千坪、坪当たり五千九十円で買っておる。その金も払いましたと、こういうのが住宅公団の総裁の答弁として議事録に載っておるのです。そうすると、このトータルは二十一万坪になりますね。この二十一万坪の演習場の用地を払い下げたということは、いまおっしゃったように、現実には大臣のおっしゃったように、百二十二万坪何がしかあった。そうして、その他を整理をしたところが、実際には七十万幾坪になっておる。それで足りないというのに対して、何ですか、二十一万坪というものを三十七年から三十八年にかけてどうしてこれを放されたのですか。
  103. 志賀清二

    ○志賀政府委員 私どものほうで所管がえを受けましたのは、前の演習場の全部でございませんで、私どもが行政財産として受けましたのは、昔の信太山演習場のうちの大半ではございますが、全部ではございません。そういうわけで、私どものもらってあるうちのほうからその後どういうふうに変化したかというのと、先生のおっしゃるのとは若干食い違いがあるとは思います。ただ、私どもが住宅公団になぜやったかという経緯につきましては、実はこれは日本原、同じ中部関係でございますが、日本原の演習場というのがございます。ここが、これもまた中途はんぱな演習場であったわけでございます。というのは、実弾射撃をやるのに距離が少し短過ぎる。もう少し買い足すと長くなるという状況があったわけであります。それは買い足そうと思ったところが、もともと旧軍用地だったのですが、払い下げをされてしまったものですから、もう一ぺん買い戻さなければいかぬ、こういう状況にあったわけです。そこを確保するということが、全体の状況から見ましてわがほうの訓練計画上非常にプラスになるという面もありましたので、彼此勘案いたしまして処置をしたわけであります。その際に私ども取得しましたのは、そちらのほうはなっきり覚えておりませんが、約三十万坪近くのものを取得した、こういうことになっておるわけであります。それで演習効果を非常にあげることができましたので、片方で住宅公団と私どもは取りかえっこをするというかっこうになったわけでございます。
  104. 肥田次郎

    肥田科員 そういうふうに御説明になれば、それで一応説明としてはとれますが、現実に先ほどおっしゃったのは、私、書き間違えたら訂正いたしますが、信太山の駐とん部隊の最小限必要とするのは、大体八十四万坪だ、こういうようにおっしゃった。すると、これは現在七十七万坪あるのですが、いずれにしても足りないのでしょう。もっとほしいのでしょう。もっとほしいのに、なぜ二十一万坪も放されるのですか。あなたのほうの所管ではないとしても、そうした二十一万坪を放すのに、これはぜひ信太山の駐とん部隊ではほしいのだというふうになぜされないのですか。その点が問題なんです。  それから日本原の演習場がどうこうとおっしゃるけれども、それは、最近の射程の伸びた火砲の射撃演習をしようといえば、どんなところだって、いまの日本原でも、青野原でも演習に十分なところはないでしょう。富士山にでも行く以外にはないですよ。それを交換ということはともかくとして、現実に信太山はほしいんだという意思がおありなら、なぜ放されるのですか。もっとそういう土地があるなら接収をしたいという意思表示をされてもいいのです。信太山の周囲は、私はいまどこにどんなものがあるか言えとおっしゃられても、すぐ言えるくらいわかっているから、ここで聞くのですが、ほんとうにもっとほしいのなら、ほしいとなぜ言わないのですか。放す意思がないなら、なぜ売ってほしくないと言われないのですか。
  105. 志賀清二

    ○志賀政府委員 ただいまお話を申し上げましたのは実態でございますが、先生のおっしゃるように、ただ坪数だけで比較して議論することは、ちょっとむずかしいと思います。現実に私どもの手放したところは、実際にはひだみたいにいろいろ入っておりまして、使い方としましてあまり効率がよろしくないという面を手放したということでございまして、ほんとうにほしいのは、実を言いますと、あのまん中に入っております民有地のほうがむしろほしいわけであります。しかし、それは事実上困難でございますので、現状としては、いまそのまま使うという体制をとっておるわけであります。したがって、放したほうの部分は端っこのほうに当たりまして、効率的に言いましても、面積の議論でいきますと同じでございますけれども、まん中の辺の実際使いたいところが手に入らないでおる、こういうふうな状況でございますので、ただ面積の比較論だけでどうこうということは、ちょっとわれわれの効率の問題からいいますと、離れておるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。
  106. 肥田次郎

    肥田科員 そこのいまおっしゃっているところは、まん中に例のお寺がありまして、そのお寺の天井に坊さんの殺された血がついているというような、こういう因縁のある寺ですが、この地図でいくと、これになるのですか。そして、放された二十一万坪というのはどこになりますか。   〔文書を示す〕
  107. 肥田次郎

    肥田科員 いま効率を言われましたが、しかし効率を言われても、これだけのいま現在あるところの土地の比率から見て、二十一万坪というのは多いですよ。実際にもあなたのほうの数字をきのうちょっと聞いたら、十六万坪余りということになっていますが、それでも多いですよ。それでもそんな土地を放すのなら——私は放したことを言うのじゃないのですよ。もっとほしいと言われるのなら、なぜその土地を放されるのかということを聞いているわけです。
  108. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 いま数字の点で、私から少し詳しく申し上げますと、信太山の演習場は全部で百二十三万坪ございまして、防衛庁の演習場に渡しましたのは、そのうちの八十八万坪でございます。残りの土地は、あるいは農林省の農地にしましたり、地元の町営住宅にしましたりしましたが、もうすでにその中に住宅公団に出資した土地が五万五千坪ございます。それなら問題は、八十八万坪のうち、住宅公団に渡したのはどれだけかということでございますが、それはそのうちの十一万四千坪、一部分は出資、一部分は先ほどお話しのような交換で十六万坪を渡した。したがって、当初八十八万坪あった防衛庁の演習場が、現在七十七万坪弱ということになっております。したがって、防衛庁の八十八万坪のうちから二十万坪近くもの非常に大きな土地をさいたのはおかしいというのじゃなしに、防衛庁の演習場の中からさかれた土地は約十一万四千坪の土地を住宅公団に渡したということでございます。
  109. 肥田次郎

    肥田科員 いやいや、それはあなたのほうの考え方なんで、先ほどから私が聞いているのは、現在の七十七万坪では足りないんだ、もっとほしいんだと言われておるのですよ。ほしいんだと言われておるのに、三十八年と三十七年に公団の総裁が言っているのです。これは間違っていたら記録が間違っている。公団の総裁がよく知らないで言っていることになりますが、いずれにしても、それはたいして問題じゃないのです。ただ、現実に三十七年度と三十八年度に公団の総裁の言うのでは、防衛庁の演習場を二十一万坪買いました、こう言っている。あなたのほうの数字では、それが十六万坪になり十万坪になったとしても。だから、ほしいと言われる意思と、実際に放しているというその行動とが合わないじゃありませんか。こう言っているのです。
  110. 志賀清二

    ○志賀政府委員 先ほど御説明したと思いますが、その面積の数量だけではちょっと比較になりかねるのじゃないかと思うわけであります。私どもが必要とするという場所は、やはり先ほどちょっと地図でお示ししましたような、まん中の土地でございまして、端っこの細長い末端のほうをどうしてもほしいという土地というふうには、利用効率の問題からは考えられない。その辺はさいてもいいというふうなことで措置をされた、こういうことでございます。面積の数量からいいますと、なるほどほしいのに払い下げるというのはおかしいじゃないかとおっしゃられますが、場所が、そういう意味で利用効率の問題から、どうにもがんばって取得をしたままにしていましても利用効率があまり上がらないというところは、これはいろんな土地の運用上から見まして、効果的にもそういうふうに転用するのが妥当じゃないかということで、私どもはさくことに同意いたしたわけでございます。
  111. 肥田次郎

    肥田科員 これは議論になるようですからやめておきます。効率の面で、あなたのほうで専門的に一つ一つこの実例を示して言われれば、これは一応納得しますが、しかし、ただ単に効率、効率というだけでは、使途の内容が明らかにならないのですから、平面の土地がほしいんだ、こういわれる効率と、それから演習場として最も必要なというのは、起伏のある土地のほうが演習場は効果があるのです。使用価値というものがあるのです。だから、そういう面の効率というものはおのずから異なるものなんで、これは議論になるからやめます。  そこで、この問題に締めくくりをつける意味で、実は大蔵大臣にお伺いをするのですが、大阪府の府会議長が二代にわたって陳情書を出しております、この地域をぜひ払い下げてくれと。これに関連をして、信太山の演習場を含めて、泉北丘陵団地三百七十五万坪で、これは五万戸こういう住宅開発計画を立てて、すでに土地の買収も相当進んでおる、こういう実情であります。また、信太山の演習場の立地条件というものは、周囲がもう住宅市街地で全部取り巻かれてきてしまった、こういうふうな特殊な条件のもとに変わってまいりました。むかしは、いわゆる追いはぎの出そうな広漠たる荒地でしたが、いまではそういう風景はないのです。その周囲を循環できるような舗装府道がつきまして、りっぱな近代都市の形態を示してきているのですから、   〔主査退席、登坂主査代理着席〕 どんどんそのあかりに住宅が建ちます。離職者住宅も建ちますし、そういうものが至るところにその周辺に建ち並んできておるのです。それから、その中には、先ほどからお話しになっておりましたような、小さい部落であるけれども、部落があります。それから、現在警察やあるいはその他の官庁で使っておるところの施設もあります。こういうような条件のところですから、私は、大阪府でこの土地を払い下げてくれと言うこともこれは無理じゃないと思うのです。それで、特に私はそういうものとは別にしても、周囲がこのように市街地化したような状態の中では、それからまた、さらに大阪府が五万戸、十八万人の新しいベットタウンをつくるというのですから、そうなってくると、どうしたって不足してくるのはいわゆる一般の青少年対策用の施設とか、こういうものが不足になってくるのはものの道理でありまして、そういうような状況変化にあるのだから、これを払い下げてもらえないかということで、私も、なるほどそういう面ではもっともだという気がしたのですが、そういういまのような防衛庁の話でみますると、これはもう全然そこには期待が持てないということを、防衛庁のほうでははっきりされますか。それから大蔵省のほうでは、そういう事情にあっても当分は手放すわけにはいかないだろう、こういうふうにこの払い下げの問題については終止符を打つというようなことになりますか、どうでしょうか。
  112. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、もう防衛庁の行政財産としていま使われておるわけでございまして、大蔵省としていまこれを返してもらいたいとか、また他に転用するとか言える状態ではないわけでございます。でありますから、防衛庁がこういう状態であり、しかも、一部前には住宅公団に払い下げたけれども、いまの状態ではもっと大規模なものがほしい、こういうことを言っておりますから、条件が適合したような土地で、二百万坪くらいもあって、そうして、うまく交換でもするということになれば、これは解決する道があると思います。いま、防衛庁はどこかで見つければいいじゃないか、こういっても、なかなか防衛庁側としてはうんと言えないような状態のようであります。いま大阪側からこういう陳情があったことも、私承知しておりますが、防衛庁自体として、この演習場の解除の意思がない、こういうことでございますので、遺憾ながらと申し上げておくよりないと思います。
  113. 肥田次郎

    肥田科員 それはこれくらいにいたしまして、その次に、これは済んだことなんですが、これも建設大臣にお伺いしてもどうしてもすっきりしなかったと申しますか、そのままになりましたので、お伺いしておきたいと思うのです。  先ほどちょっとお話しになりました、防衛庁所管の土地を五万五千坪は最初に坪当たり四千百七十円で買った。それからそののち十五万五千坪は五千九十円で買った。この相場が、実は大阪の公団支所では、こんなものは高過ぎる、これはもう坪千円くらいが相場なんですと言っておるのですが、それが実際には平均すると、これは算術平均ですが、坪当たり四千八百何がしかになり、一方では民間の所有地、民間の山林原野、それから農地も含めての所有地を、いろいろな買い方をしております。これも議事録によると五つの会社が転売しておる。そして、最後に六番手で公団の手に渡っておる。そういう中に、価格の変化はありますが、しかし大体見てみると、どうも二千円あるいは二千円以下で買っているのではないかと思われるような面がある。一般民間の所有地が二千円から四千円くらい。五人の手を渡たって、六番手で公団が買い取った土地は、最終的の処理の方法として全面買収ということで、坪当たり四千百円、こういうことであと全部買い集めることになったという報告になっておるのです。それに対して、先ほど国有地であるところのこの土地が平均すると四千八百八十何円でありますか、それで、これが二十一万坪、その金を公団では払いました、こう言っておるのです。  そこで、お伺いしたいのは、私がきのうどうしてもわからないと言ったのは、大体一般の感情として、国が持っておる土地を払い下げたり、あるいは現物出資をしたりする際には、これはおおよそ民間の相場より安いのじゃないかという、こういう一般の感情というものがあると思うのです。ところがそれがあべこべでして、国の持っている土地を公団が買ったか、現物出資したか、高く買って、そして、民間の土地が国の所有した土地よりも安いのだ、この関係がどうにもわからない。建設大臣の言われるのには、いろいろな算定基準というものがありまして、したがって、固定資産税とかその他もろもろあって、そういうもので計算をしたら国有財産のほうが平均して四千八百何十何円という基準になった。民間のほうは二千円のところもあり四千円のところもある。こういう答弁で、これはあたりまえのことだと言うのです。そのあたりまえがわれわれはわからないのです。この点を、どういう算定方法で、どういう手段で国有財産が出資されたか、これをひとつお伺いしておきたいと思います。
  114. 田中角榮

    田中国務大臣 国有財産を払い下げる場合に、一般よりも安いかという考え方はいろいろ持っておるわけです。持っておるのですが、私も大蔵省へ行ってみて、払い下げの単価を聞いてみまして、高いな、こういう面があります。いやしくも国有財産を売り払うのに、物価をつり上げるような値段をつけてはいかぬ、こう私は言ってみたのです。あなたと同じような気持ちでいたわけです。とにかく地方公共団体には無償で貸し付ける場合もあるわけであります。用途指定によっては無償であります。東京都に公園等無償で貸し付ける場合もあります。そういう意味からいって、どうも少し高いのじゃないか、こういう考えでおりましたが、よく話を聞いてみるとそうでもないのです。国有財産の払い下げに対しては適正なる時価でと、こういう制限があるのです。国損を来たしてはならない。こういうことがありますから、適正な時価とはどういうことかというと、売買実例とか、そういうものを全部やって、大体三通か四通、多いものは五、六通も取りますが、不動産研究所とか、いろいろな専門家の鑑定評価を受けるわけです。鑑定評価の評価書によりまして売買する。こういうことになっておりますので、私は、この実情を知りません。知りませんが、あなたがいま御指摘になったように、民間で買い集めたものと同等くらいのものでもって住宅公団に売り渡すことはないじゃないか。住宅公団に出資または売り渡す場合には、時価よりも何割引きでもいいのじゃないかという常識論、私も大体そういう気持ちがあったのですが、いろいろ法律を調べてみますと、やはり適正な時価というものでもって払い下げる。住宅公団とか、そういうものに対してどのように評価をするか、相手と国とのつながりをどういうふうにするか。地方公共団体の場合、公団、公社である場合、特殊会社である場合、そういう場合の差をなかなかつけにくいということで、結局一律に適正な時価。その適正な時価が少し高かった、こういう結果だと思います。
  115. 肥田次郎

    肥田科員 話をされればそういうことになると思うのですが、やはり、これは何ぼ説明してやっても、二つとも疑問は一般住民から抜けないのです。たとえば土地の評価というものは、一般の人々は、砂れき層の何を植えたって育ちそうもないような、いわゆる普通にほっておけばこれは荒蕪地なんです。そういうところの土地、なるほど住宅を建てるという場合のことをいろいろやると、これはほかの土地よりか土盛りも要らないし、排水もいいしというようなことに考えて基準というものが出てくるかもわかりません。   〔登坂主査代理退席、主査着席〕 しかし、現実にそういうふうに片一方では千円、二千円、四千円、こう買いあさられて放しておるのです。そして、住宅公団が最後に手を伸ばした防衛庁の演習場というのが四千円、五千円、こうなっておる。これは、何ぼ説明してやっても納まらぬですよ。現実にそうなってくると、今度はもうあと土地を放す者が放さなくなります。演習場のあんな荒れ地をそんな値段で買うのなら、これはどっこいその倍出してもおれらは渡さないぞ、こういうことになるのです。ですから、二つのものがあるのですね。それで、結局は一般の土地をつり上げるということになる。片一方で、その土地を買うときには五人もの手で渡ったのですからね。いろいろな建設何とかというのが入ったのですから。個々に買いあさっておる人もある、いろいろなものがある。たいへんな買い方をしておるのです。これは、名前は言いませんが、ある人がこれは国会議員ですが、もういいかげんに放せよと言ったら、あなたの顔があるけれども、しかし、こんな買い方をされたら、この村落は絶対放さぬぞと言ってがんばっておる男もあります。そういうことになってしまうのですね。ですから、大体一つの基準があって、この基準から下げることがむずかしいからということで、そういう価格になったということは、これは説明を聞けばわかりますけれども、一般の人々は、これは納得できないことなんです。一般の人は、ほんとに公団というものは半官半民ですから、お役所と同じように考えておる。国の機関で建てる家の土地を、民間の土地より国の持っておる土地を高く買い上げている。それが出資であろうと何であろうと、そんなやり方はないじゃないか。こういう気持ちが一般の人々はある。しかも、その周囲は、これから三百七十五万坪の新しい住宅建設をしようということになっておる。
  116. 田中角榮

    田中国務大臣 ちょっと相済みませんが、私にもちょっと誤解がありましたが、これは、四千円で評価をしたそうですが、現金を住宅公団から収納して国庫の雑収入になったのではないそうです。これは、全部住宅公団に対しては評価をして、その金額で出資をした、こういうことだそうでございます。これは、金を取り上げた、こういうことになりますと、いろいろな問題があるかもわかりませんが、これは適正な価格で出資をする。ただ、その出資というときに、出資でも安ければコストが安くなるのに、こういうものは入居の料金等にみなはね返るじゃないか、こういう議論は生まれるわけであります。しかし、これは、さっき言いましたように、国有財産を適正なる価格でやっていわゆる国損を来たさない——どうも少し高く売った場合には問題になりませんが、安く売った場合には必ず問題になるわけであります。ですから、私も国有財産局の仕事を見ておりますと、大体高いほうに高いほうに、こういう思想がございます。これは、どうもあまり国損を来たすな、来たすな、こういう方向ばかりで考えていると、どうしても高く高く、こういうことになるわけであります。高くさえやっておれば文句はなかろう、こういうことでありますが、それは、いまあなたが御指摘になったように、国有財産を売り払う場合に、そのまわりをどうするか、物価をつり上げる、こういう問題は確かにあります。私も、国有財産の売り払い等によって物価をつり上げるというようなものの考え方はよろしくないと思いますが、このごろは適正にやっておると思います。
  117. 肥田次郎

    肥田科員 そういうことから私は建設大臣にいろいろ聞きましたところ、住宅政策も十分にいかないような懸念がたくさんある。つまるところ、これは、やはり大蔵省がしぶくて金が出せない、こういうことでした。そこで、私はここに来るまで考えておったことは、そういうふうに大蔵省のほうで金が出せないのなら、これは少々無理をしても、現実に放した先例があるのですから、演習場を少々放してもらったっていいじゃないか。いわゆる現物出資を拡大してもらって、金を出せないのなら、現物出資でこの問題を手助けしてもらえる道があるんじゃないか、こう思ったのですが、これはあまり希望の持てないことになりましたが、しかし、代地があるということが条件ならば、私らも文句なしに信太山駐とん部隊についても——私ら駐とん隊にあそこを出ていけとは言いませんよ。これは、土地の人も何十年となじんだものですから、そんなわからぬことは申しません。現実に周囲の人は、駐とん隊にはおってもらいたい。けれども、あんなにろくに演習もしないのに演習場を遊ばしておくのはもったいないじゃないかという気持ちはありますよ。ときどき行ってみてください。  そこで、もう時間が迫ってきましたので、最後にお伺いしたいのです。これは大臣の耳に入っておると思いますが、最近、特に公団あるいは公共団体で行なうところの住宅建設がきわめて精力的になってまいりました。ところが、ここで問題が起きるのは、いずれの場合でも、たとえば干里山のニュータウンにいたしましても、大体千二、三百円、実際にはどういう数字になるかわれわれもよくわかりませんが、話で聞くのは、千二、三百円から二千円ぐらいの価格で買い取って団地に着工するわけです。それで、いよいよ整備されてこれが売り出されるときには、二万から二万五千円くらいになってくる。いかにも高いじゃないかという声があるのです。この声を実際にその建設に携わっておる職員に、あんたら、こういう声があるが矛盾に思わないのかと聞いてみました。実際にたとえば整理をして、道路もとり、緑地帯もとる、そうしてするんだから高くなる。これはわかるけれども、しかし十倍にもなる道理というものがどうにもわからぬ、こういう話もいたしました。道路、下水、こういうものも一切がっさいやらなければならぬから、大体それに近いような相場になるということは聞きました。けれども、どうしてもこの点も納得のいかないところです。いろいろ打ち解けて話をしてみましたところ、そこの職員の言いますのには、やはりこの問題を解決するためには、土地を個々に売るのではなしに、その公共団体なら公共団体、公団なら公団が所有する土地として、それを賃貸しに転換してもらう以外にないだろう、いわゆる初期におけるところの一つの手段としての土地の公営といいますか、土地の国有の前段といいますか、そういうことをやらなければ、そういう不満は解決できそうにありません。われわれとしても、そういう問題に対してはそういう疑念を持っております。解決する方法としては、土地を国有化、公営化するということ以外にないでしょう。それでなければ、やはり、たとえば二千円で買っても、それは二万五千円から三万円近い土地になる、こう言うのであります。これは、私は一つのアイデアだと思うのです。将来住宅を建てるところの土地がやはり国有地ということになりますと、大蔵省関係が非常に強いので、そういう方面に対する一つの方向をどういうふうに考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  118. 田中角榮

    田中国務大臣 土地の国有ということになりますと、これは憲法上の問題もございますし、たいへんな問題でございます。しかし、社会生活が非常に複雑になってまいりましたし、東京や大阪のように過度に人口が集中しているというような状態のところを考えますと、一部私権制限というものが——公益と私益ということのバランスを考える場合には、やはり公益優先という立場で、土地観念に対しても新しい観念が生まれなければならぬだろうということは、私も考えております。これは、ニュータウン法というようなロンドンの疎開という状態でつくられた法律でも明らかなように、私権制限、公益は私益に優先することを規定いたしております。また日本の法律でも、そういう法律がないわけでありません。都市計画法による換地権という問題に対しては、法律で明らかに私権の一部制限を行なっておるわけであります。ですから、公営住宅法が誕生したのは昭和二十六年でありますが、この当時議員提案でできた法律の中に耐火建築促進法という法律がございますが、都市の不燃化の促進——この法律の原案には、ある一定規模以上の住居の用に供する住宅を建てる場合には、私権の制限を規定いたしておったわけであります。これは、現行法が成立する過程で削除せられて今日に至っておりますが、私は、土地の公益性ということによって、私権の一部制限はやはりやむを得ないという状態で進めていかなければならぬ問題だと思います。いままで二千円の土地が、造成をされて売り出されると二万円にもなる、そういう問題もあるようであります。いま角栄団地というのがありますが、これは私と何の関係もないのですが、私に会う人が、角栄団地もだんだん大きくなっておるので、おまえさんうんともうけているだろう、もしそういうことがあれば安く譲ってもらえないだろうか。私は、全くこの問題で参っておるわけでありますが、私と何も関係ない。私と同じような名前だと思って調べてみたら、角丸ですか、角田何がしでありますか、私と全く関係がないのですが、とにかく世論は、団地をつくればもうかる、土地造成をすればもうかる、こういう観念でおられるようでありまして、私自身もそれほどもうかるものじゃない、もうかれば税金でもってお預かりする、こういうことを考えてはおります。しかし、いずれにしても土地の問題に対しては、この問題はやはり相当積極的に解決をしないと住宅問題は解決せぬ。私は、土地だけの問題でなく、空間制限の問題とか、立体化の問題とか、いろいろな問題を考えておりますが、そういう新しい時代に対処したこれらの政策は、総合的に立案推進せらるべきだと考えております。
  119. 肥田次郎

    肥田科員 私の話の内容が少し足りなかったので、誤解されたと思うのですが、私は、具体的にこういうことを言っているのです。公団やあるいは公共団体が住宅開発をやる際に土地を買いますね、これは買うのです。買い取って、そうして、買い取ったものを個々に二万円だ、三万円だというような形で切り売りしないで、これは、その公団あるいは公共団体がつくったところの団地といいますか、その所有は当然公共団体その他にありますね。こういう形のものにする、所有権がそこになる。したがって、これを国有という形式をとるのがいまできないのならば、そういう形で暫定的にやって、最終的には、そういうふうな公団あるいは公共団体でつくる団地の土地の所有権というものは、これは公のものなんだ、個々には売らないのだ。そうすると、問題になるのは、入居する際の家賃が高くなるとか、いろいろ問題が出てきますが、しかし、それでも私は、みすみす十倍以上になったような土地を高い値段で買うという気持ちよりははるかによいのではないかと思う。特に鉄筋住宅ですから、その土地と住宅と結びついたものを持っていくわけにいかないのですから、売る際にはそのまま売ればいいわけですから、同じものだという意見もあるけれども、実際にはたから見れば、百姓が言うのは、おれの土地を二千円くらいで取り上げて、それをいま二万、三万の値段で売って、これが公団がやっている仕事なんだ、これが府がやっている仕事だ、こういう意見があるわけです。買うときは収用法でおどしています。収用法にかけるぞ、収用法にかければ、いま言った評価で坪千円から千五百円、それを三千円くらいで買ってもらうのはありがたいと思いなさいという式で片一方ではどんどんやっている。それは、およそ役所の意思と出先の行動とは全く相反するのです。そういうことでありますから、したがって暫定的な一つの方向として、公団あるいは公共団体が建てるところの住宅、開発するところの土地は、公団あるいは公共団体の所有にする、個々に売買するような形はやめる、こういう方向がとれないものだろうか、こういうことをお聞きしたわけです。
  120. 田中角榮

    田中国務大臣 一つ考え方であります。そういう制度をわれわれ自身も考えてはおります。ただ、資金の効率の問題と資金の回転率によりまして、貸し付けるということによって利用が非常にセーブされるという問題もございます。それからもう一つは、地方公共団体や公団が困っていることが一つあるのです。これは、日本国民性、国民自体のレベルをもう少し上げるということになると思うのですが、戦後非常に安い家賃で入ったわけです。それでも入るときは所得制限があったわけです。所得は三倍にもなっているのですから、どこかに出ていってくれといっても、出るところがないじゃないか、それじゃ少し家賃を上げましょうというと、家賃は供託しておって裁判になる。やはり公共の施設だ、国民の中の何人かが恩恵を受けておるのだ、こういう考え方前提にして、自分たちの所得が多くなったらだんだん上のほうに移っていく、そして、所得の少ない人に恩恵を及ぼしていくという考え方がないものですから、切り売りしたほうが得だ、量もよけい建つしということがいまのようになるわけであります。  だから私は、入居する者に対して選択権というものを与えるということが一つ考えじゃないか。というのは、都市改造などをします場合に、新しい条件のものをつくるわけであります。そしてここに移りなさい、こういうときには、家賃でもってやるか分譲を受けるかということについて、入居する人の選択権を認めるというような制度がこれからとらるべきだと私は思います。ただ、家賃を上げるのは全部悪いのだという考え方だけを強調しますと、より広い範囲に恩恵を与えることができないということになりますので、そういう点はひとつ十分調和をとりながら新しい時代に即応した体制をとるべきだと思います。
  121. 肥田次郎

    肥田科員 時間も過ぎましたので、これで終わりますが、やはり私が冒頭に申し上げましたように、昭和四十五年度までに一世帯一住宅だ、こういうことになってまいりましても、実際にこの数字を拾ってみると、どうしても一千万戸建てなければならぬ、こういうことになります。一千万戸の家といえば、これから後の価格は幾らになるか知りませんが、かりに一戸二百万としても二十兆ですか、そういうことになる。これは容易なことじゃないのです。ですから、ひとつそういう方法についても検討してもらわなければ、土地の収用という関係で実際に宅地開発というものとのいろんな矛盾がますます深くなってくるのじゃないか、こういうことを考えましたので、一つのアイデアとして御検討願いたいと思うわけです。私も、この問題は、大都市に住んでおりますといろいろと直接身に感じますので、特に申し上げたわけです。  最近の風潮を見てみますと、田中さんはやがて次の総理大臣だというような、これはひやかしではなしに、雰囲気が出てまいりました。私も、これから四、五年後にはそういうこともあるだろうということに期待を持って、そういう一つの新しい政策というものを御検討を願いたい、こう思う次第であります。
  122. 中野四郎

  123. 華山親義

    華山科員 未来の総理大臣にはなかなかお聞きをする機会もございませんし、大蔵省の方々にもお聞きする機会があまりございませんので、いろいろなことについて触れますからお許しを願いたいと思います。  これは大臣からお答え願わなくていいのでありますが、予算の中で各省等に報償費というものがございますが、あれはどういう性質のものでございますか。
  124. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 報償費の使途でございますが、これは、その省によりましていろいろございます。たとえば、永年勤続者に杯のようなものをつくって渡すようなものもありますし、それぞれの各省の事情によっていろいろあります。英語ではリワードというのがありますが、そういうような経常的な給与ではなくて、個別の事情に基づきました報償、そういったものを支払うために報償費という科目を設けておるのであります。
  125. 華山親義

    華山科員 昔機密費というものがありましたが、機密費とは違いますね。
  126. 田中角榮

    田中国務大臣 報償費と機密費との相違という問題に対して申し上げます。  報償費は、その沿革におきまして、従前の機密費の系統に属するものであります。もちろん形式的には、従前の機密費は法律上会計検査の対象にならない、これは、旧会計検査院法の二十三条に明らかになっております。そういう経費でございましたが、報償費は、法律上さようなたてまえになっていない点で異なるものがございます。前に申し上げましたような沿革に照らして、その本質においては従前の機密費に準ずるもの、こういう解釈をいたしておるわけでございます。
  127. 華山親義

    華山科員 会計検査の対象にならないとおっしゃいましたか。
  128. 田中角榮

    田中国務大臣 機密費はなりませんが、報償費はなります、こういうことです。
  129. 華山親義

    華山科員 各省の報償費を計上される場合には、資料を出させまして精査なさるのでございますか。
  130. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 各省の要求に対し、その説明を聞きまして査定を行なっております。
  131. 華山親義

    華山科員 その際には、こういうふうに使う、ああいうふうに使うということを全部精密にお聞きになりますね。
  132. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 報償費を増額いたします場合には、相当詳細な説明を聞いてやっていると思います。ただ前と同額が計上される場合も多うございますので、そういった場合は、前年度と同額ということで、そういうような場合には比較的簡単な説明で済ましておるわけです。
  133. 華山親義

    華山科員 この報償費を使った場合に、いろいろの書類をつけたり、それから役所外から話のあったような場合には、請求書をつけたりしなければいけない性質のものでございますか。
  134. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 会計検査のやり方につきましては、ただいま各省と検査院とのいろいろの打ち合わせに基づきまして、必要な書類の範囲をそれぞれきめておるわけでございます。
  135. 華山親義

    華山科員 それでは会計検査院では、各省がどういう経費にこれを使ったかということは明白なわけでございますか。
  136. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 その内容は、ものによると思いますが、検査院は大体の全体的な支出の説明は受けておると思います。
  137. 華山親義

    華山科員 大臣に伺いますが、機密費と同じ系統だと申されましたが、そうしますと、この報償費というのは政治的な意図を持って使ってもよろしい、こういうことでございますか。
  138. 田中角榮

    田中国務大臣 機密費と同様な系統に属するものである、こういうことを申し上げたわけでございます。しかし、何にでも使ってもよろしいというわけではないわけでありまして、おのずから報償——国の予算の執行でありますから、適正でなければいかぬことは論を待たないわけであります。
  139. 華山親義

    華山科員 政治的に使われるというふうなことは、趣旨として認められる経費のものでありますか、どうですかということです。
  140. 田中角榮

    田中国務大臣 政治的というものの中には、二つのものの考え方があります。一つは政党の利益というような一方的なものの使い方、こういうことは戒めなければならぬことは論を待ちません。しかし、政策的といいますか、政治的という広範な立場で使う経費ということはあると思います。
  141. 華山親義

    華山科員 それじゃ、別なことに移りますが、中小企業のことでお伺いいたします。  昨年は金融引き締めでございまして、中小企業には非常にしわが寄っているというふうにいわれますが、中小企業の金融対策といたしましていろいろ御心配なすっていられるのでありますが、どういうことをやっておられるか、伺います。
  142. 田中角榮

    田中国務大臣 まず中小企業につきましては、政府三機関の資金量を増大するということが一つでございます。それからなお、中小企業専門金融機関がございます。相互銀行、信用金庫、こういうものの育成をはかってまいりまして、中小企業金融の確立をはかっておるわけであります。また、下請け企業に対しましては、支払い遅延防止法の規定に基づきまして、いわゆる長い手形が出ないように、また、出た場合には、法定してありますように、利息を付してという、いわゆる法律の条文を守って、不当に大企業のしわが寄らないようにということも考えております。また、都市銀行や地方銀行に対しましては、中小企業の金融に対して格段の配慮を求めておるわけでございます。また、第四点といたしましては、金融引き締め下におきましても、中小企業に対してできるだけ中小企業の貸し出しワクを引き締めることのないように、また、公定歩合が上がったような場合でも、中小企業に対する金利をできるだけ引き上げないようにというような要請を行なっております。また、第五点としましては、歩積み、両建てによりまして中小企業が非常に高い実質金利に悩むというような問題に対しては、こういうことを避けるべく強い行政指導を行なっております。
  143. 華山親義

    華山科員 そういう指導がお役に立っているかどうか、私は、一生懸命やっておられたとしても非常に疑問に思う。統計的に見ましても、融資の月中増、あるいは減のこともございますけれども、前月に対するところの増でございますが、そういう増加の傾向を見ますと、中小企業は増加の幅が非常に狭いのです。これは、統計上明白なんです。いまここで時間がありませんからずっと述べませんけれども、たとえば——たとえばじゃない、これは実勢をあらわすものでありますけれども、三十九年の十月は二二・六、そういうふうな伸びしか示しておりません。これは全体におけるところの割合でありますけれども、二二・六、そういうふうな状況でございます。一般の場合においては、その増加の半分が大体中小企業に行っておる。ところが、金融引き締めの結果は二二あるいは三〇というふうに低下している。これは、大企業には金が向いておって、中小企業は増加しておるんだけれども、向き方が少ない、こういうことをこの統計は有弁に物語っておると思うのです。そういう点につきまして、専門家の銀行局あたりは始終統計の傾向をごらんになっておると思いますが、その間につきましてどういうお感じをお受けになっておりますか。
  144. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 大銀行におきまして、特に中小企業の貸し出しの比率がほぼコンスタントに下がっておる傾向がございます。私どもは、大銀行が中小企業に対して貸し出しを好まないのかという点も調べておるわけでございますけれども、必ずしもそうではない。大企業のほうに非常に資金需要が大きいことは事実ですけれども、大企業は、実は非常なオーバー・ボローイングになっておりまして、預金といいましても、言ってみれば借りた金を銀行に預けるということが大部分じゃないか。中小企業の中には、そうではなくて、ほんとうの意味の預金をするものもあるわけです。非常なオーバー・ボローイングになっていない。大企業はほとんど軒並みにオーバー・ボローイングになっている。そういう意味で、中小企業と都市銀行が非常に虐待いたしますと、かえって自分にはね返りが来まして、いいお得意さんをほかの金融機関にみな取られてしまうということがございますから、中小企業を一つの新鮮な預金の源泉と考えた場合、都市銀行のほうもかなりこれを重視するという考え方、そういう形態が見られます。ですから、決して中小企業を締め出そうなどということは考えていないはずです。ただし、数字の落ちますことの中には、一部は資本金がいつも——従来は一千万円、今回は五千万というふうに、資本金だけで中小企業か大企業かを分類しているわけです。そうすると、五千万の会社がかりに八千万の会社になったということになりますと、これは大企業に移ってしまう。そういうものもこの比率の低下の中にある程度含まれることは事実であります。それは全部だとは申しませんが、かなりの部分がそういった資本金の変更によって分類が異なってくる。だから、一千万をとりますと、一貫して低下してきております。また、五千万をとりましても少しずつ低下している。そういうことも原因の一つではないか。また、金融引き締めになりますと、大企業に貸し出しが重点的にいって、中小企業貸し出しが実質的にも少し押えられたという傾向があることも私は知っておりますが、指導といたしましては、中小企業に対する貸し出し比率を減らさないように、ふやし方も大企業と同じような割合でふやしていくように、そういう指導は常々やっておりますけれども、実績を見ますと、数字の上ではどうしてもそういうふうな低下の傾向があることは仰せのとおりでございます。
  145. 華山親義

    華山科員 私のいま申しました数字は、皆さんお手持ちのとおりでありますから申し上げませんが、私の申し上げましたのは、大銀行のことを言っているのじゃないのです。全部の銀行の合計を言っているのです。中小企業向け金融機関も都市銀行も地方銀行も合計した額で私は申し上げておるのです。  月中増、その増の総額のうちで何%が中小企業向けに行ったか、こういう統計が、御承知と思いますけれども、「商工金融」に出ている。これをごらんになればすぐわかることなんです。そういうふうなことで、増加する総額のうちで中小企業に向けて増加するというものが非常に低下の傾向をとる。ことに金融引き締め下においては低下の傾向をとる。こういうことは統計上明白です。したがって、金融梗塞は大企業よりも中小企業に強く当たっておる。これは、私は統計上明白だと思いますけれども、そうじゃないんだという何か数字的な御資料でもあったならばお示し願いたい。
  146. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 こちらの統計によりますと、全金融機関でとりました場合に、五千万以下の資本金の企業に対するものが全体の四五・六%、これを一千万以下でとりますと四一・四%。これが昨年の十二月の残でございますが、これをさかのぼりまして、三十八年の九月をとりますと、四〇・五%であります。それからさらに三十六年の三月でとりますと、四一・八%ですから、一千万以下についてだけとらえてみれば、総貸し出しの中での中小企業向けの貸し出しの占める割合は大体四割強という線でここ二、三年は推移しておるということになっております。
  147. 華山親義

    華山科員 これは、どの統計をとるかの問題でございますが 商工組合中央金庫から出ております「商工金融」でございますけれども、中小企業金融関係資料の「中小企業向融資状況」というのがあります。そのうち融資がどれだけ増したかという月中増でございますが、前月に比較して今月は幾ら増したかという増、その中で大企業も全部含めた総貸し出しと中小企業向けだけの貸し出し、これらの比率をとってみますと、一昨年の十月にはその比が五〇・三だった。すなわち増加したうちの半分は中小企業向けだった。ところが、昨年の十月は二二・六に下がっておる。増加した分で二二しか中小企業へいかなかったということなんです。これが今月ばかりではございません。私がいま申し上げました数字だけじゃない。明白に貸し出しは増加しているけれども、増加した部分は大部分大企業のほうに行ったのであって、中小企業には行かなかったということを物語っているのじゃないか、こういうふうに申すのです。残高が変わらなかったからといいましても、それは前からある金の残高ですから、その際に増したとか減ったとかいうことで、三カ月や四カ月でそう変わるものじゃないと思う。残高でごらんになるのはおかしい。増加額がどっちに向いたかということが、金融引き締めがどうなっているかというより正確な数字だと私は思う。そういたしますと、先ほど申し上げたような数字になる。私は、明白に中小企業に対して金融のしわ寄せが行っているのだと思います。その点、お答えがなくてもよろしいのでございますが、何か私の言っていることが、おまえは間違っているのだというふうなお考えでしたら、おっしゃっていただきたい。
  148. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私どもの考えでは、ある特定の時点をとらえますと、中小企業の貸し出しの比率が、明らかに増加額の中で下がっているということはある程度認めます。そう考えるが、残高で見て、構成比が四十何%か四一%というふうな線で、ほとんどあまり変わっていない。三十六年の三月が四一・八で、三十九年の九月には四〇・〇%、十二月には四一・四、また四一%台に戻っておる。こういうことでございますから、そういうふうに四〇%に下がったようなときには非常に圧縮されておると思うのです。また、それがもとへ戻ってきておるということですから、四〇%あるいは四一%の線がずっと続いていることから見て、特に全金融機関から見て、中小企業の貸し出しの占める率はそう著しく変化していない。ただ、ある特定の時点だけとりますと、その期間においては貸し出しが少なかったということは確かにあると思います。
  149. 華山親義

    華山科員 私は十一月のことを言いましたけれども、そうじゃないのです。よくひとつお帰りになったら調べていただきたい。貸し出し増の中に占める金融機関の中小企業向けというのは減っておりますから。  それから、ひとつコールマネーのことをお聞きいたします。都市銀行の勘定の十一月を見ますと、三十九年には一兆千四百二十九億、三十八年は五千五百四十二億、まるで倍加しておる。これは、どういう原因でございますか。金融引き締めがあればコールマネーはふえるものだという原則でもあるのですか。
  150. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 コールマネーにつきましては、確かに金融の正常化がうたわれましてからもかえって増加しております。引き締めがあればふえるのかということですが、若干その傾向があることは争えません。引き締めがありますと、コールマネーは非常に高くなります。金利が上がりまして、月越しですと三銭五、六厘まで上がっている。そうなると、よくないことですが、何も貸し出しの上に危険を伴うということでなく、十分な担保をとってコールを出すわけですから、出し手側からすれば、労せずして三銭五、六厘の日歩がかせげるということも加わりますので、どうしてもコールにたよりやすくなるという傾向があります。  しかし、これは言ってみれば、私は日本全体の金融構造的な問題であろうと思います。都市銀行の預金の伸びと、それ以外の金融機関の平均的な伸びを見ますと、どうもそれ以外の金融機関の伸びのほうが高い。そうして、都市銀行の融資先である大企業の資金需要というものは、銀行の大きさに関係なく伸びるわけでありますから、都市銀行は自分の預金量ではとうていまかない切れない。それをコールでとって補っておる。日本銀行の貸し出しは、非常に高かった時期に比べまして減っております。金融資金が全体として大きく伸びたにかかわらず、日本銀行からの借り入れ金は減ってきている。しかし、それでは十分でなくて、日本銀行の借り入れ金よりも大きな金がコールという形で都市銀行に集中され、それが大企業等の資金需要をまかなっておる、こういう姿になっております。日本の金融全体の構造の問題として、これは大いにこれからも検討を続けて、何らかの方策を立てなければならない問題であると考えます。
  151. 華山親義

    華山科員 私がそこをお聞きしようと思ったことを、銀行局長は先におっしゃったから別でありますが、実際私は驚くんですよ。一年の間に、金融引き締めが来て、三十八年の十一月には五千億台のものが倍以上になって、一兆一千億に達しておる。それで、日銀の借り入れば一兆二千億。コールマネーが一兆一千億ですよ。こういうふうなことは一体銀行として正常な姿でしょうか。幾ら日銀が引き締めても、コールマネーでどんどん金を集めてやる。金融引き締めは都市銀行にはないのではないか。これは、どういうふうにお考えになりますか。
  152. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 そのことがつまり金融が正常でない。だから、正常のための方策を講じなければならぬ、こうなっておるわけです。確かにおっしゃるとおりと思います。
  153. 華山親義

    華山科員 それで、コールマネーはどこから出てきますか。
  154. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 コールマネーは、大きなものとしては農林系統のものが一つ、信用金庫、これがかなり大きな分野を占めております。なお、コールマネーの中で証券関係の分が若干ございます。投資信託の金が一部コールに運用されまして、それは信託銀行からコールを放出して、証券会社が受け取るという形になっております。これを除きますと、実質は証券界の中でのコールのやりとりになるわけです。それ以外には、金額はずっと下がりますが、相互銀行も若干ございます。地方銀行も二千億くらいの残がございます。そういったすべての金融機関がコールを利用しているということが言えるのでございますが、その中には支払い準備として当然流動性の資金を持っていなければなりませんから、ある程度はやむを得ないといいますか、認められてしかるべきものだというふうなものもあるわけでございます。何ぶん社債というものの発達がきわめておくれておりますために、コールにおいて貸し出し借り入れという形で銀行と企業とがつながっておる、そういうことが非常な金融不正常化の一因になっております。
  155. 華山親義

    華山科員 私は、金融引き締めについて非常に多くあらわれたことは、このコールマネーが都市銀行において非常に多くなったということ、それから地方銀行、相互銀行、信用金庫、それらの庶民金融に当たるべき性格の銀行が、本来の仕事をあまりやらないで、これをコールローンに回しているのじゃないか、私は、中小企業金融機関が中小企業に金を回さないで、コールマネーに金を回すというふうなことは、これはもうたいへん問題だと思う。こういうことではいけないのだとあなたおっしゃるから私言いませんけれども、これについての金融の統制をやらなければ、私は中小企業というものは助からないと思う。こういうふうなことにつきまして、銀行局長は、銀行のいまのやり方が悪いのだと言われますけれども、具体的にどういうふうにすればこういうことが直せるのか、どういうことをお考えになっているのか、これは、大臣でもよろしゅうございますが、専門的のことでございますれば、銀行局長にお聞きしたい。
  156. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 信用金庫などがコールの運用に多く金を使って、中小企業金融をおろそかにしているのじゃないかというお話でございますが、実情を若干申し上げておきたいと思います。  信用金庫の全国の平均をとりますと、その預貸率は、平残で見まして、月額じゃございませんが、約八〇%くらいになっております。ですから、全体としてみますと、八〇%の預貸率というものは、言ってみれば指導基準に近いものでございますから、これは、中小企業に対して金を貸してないということにはならないのでございますが、何しろ信用金庫の場合、数が五百二十八もございまして、その中には預貸率の非常に低いのがある。その地域で預金を集めたけれども、適当な貸し付け先がないというような理由もございましょうが、八〇よりもはるかに低いというところも見られます。そういう金庫が、その反動といたしましてコールを非常に多く出していることは事実ございます。三割とか、極端な場合には四割もコールに回しているという例もございます。そこで、これにつきましては、あまりコールを多く出さないようにという内面指導を実はやってきたわけです。  最近、信用金庫の業界で自主申し合わせを行ないまして、預金に対しましてコールローンが二〇%をこえている金庫があった場合は、そのこえる額をすみやかにそこまで圧縮する、三八%も四〇%もしているところは二〇%まで圧縮しなさいというふうなことをきめておりますし、基準日現在におきまして預金に対するコールローン等の保有高が一〇%をこえている信用金庫は、当分の間、コールローン等の保有限度を基準日現在の保有の額にとどめる。額にとどめるということでございますから、預金が伸びるに従って率は低下するわけでございます。そういった申し合わせになっておりまして、信用金庫としてはかなり思い切った金融の正常化をしたわけでございます。  片方の相互銀行になりますと、これも中小企業金融の専門機関でございますが、平残の預貸率を見ると大体九〇%をこえておる。九〇%をこえるということは、むしろ資金ポジションから見ると、貸し出しが少し多過ぎるくらいにいっているわけでございます。でございますから、相互銀行について見る限りは、コールにあまり出し過ぎているということは言えないように考えます。
  157. 華山親義

    華山科員 古い話になりますが、私は、地方の県庁で役人をいたしておりまして、知事会議に出てきたことがあります。そのときに池田さんは大蔵大臣でいらっしゃった。コールマネーの形で地方からどんどん中央に流れるということは困るじゃないか、そういうことにつきまして規制の措置をとってもらいたいということを池田大蔵大臣に申したところが、それは、あなたの言うとおりだ、地方の金が東京に流れ込むというようなことは困る。——いまで言えば大企業に流れるわけでございます。そういうことをおっしゃって、一生懸命にそういうことがないようにつとめましょうとおっしゃってからもう七、八年たつのじゃございませんか。どういうことをその間になさったのか。池田さんは、最近まで大蔵大臣とか総理大臣をやっていらっしゃったが、この点については少しも改善されていない。私は、中小企業から集まった金はできるだけ中小企業の間で使わせるような指導があっていいのじゃないか、その点が徹底してないのではないか、そういうふうに考えますが、現在の自由主義の経済においてはこういうことになるのがやむを得ないので、大蔵省は一生懸命やってもいるけれども、その効果というものはそんなにないものだというふうにお考えになるのか。いままでの傾向を見ますと、池田さんがああおっしゃったにもかかわらず、今日でもこういう状態だとすれば、これは、自由主義経済から発する当然のことなのであって、大蔵省の力ではいかんともなしがたいものではないかというような気もいたすのでございますが、その点、大臣でも局長でもよろしゅうございますが、おっしゃっていただきたい。
  158. 田中角榮

    田中国務大臣 自由主義経済のもとでやむを得ないものとは考えておりません。率直に申し上げると、いままで少し銀行の自主性、金融機関の自主性ということを守り過ぎたという面もございます。国会におきましても、私は、系統金融機関の金は、自分の金で自分に利息をつけているということで、農林漁業金融公庫以外の金は使えない、これがみなコールやその他に流れておるということに対しても、もっと積極的に検討すべきだ、こう言うのですが、どうも系統金融機関の資金量というものを農村に回そうとすると、どうしても利子補給という、大体国がその差額を持たなければいかぬという一点ばり。こういうものをもっとお互いが勇気を持って、もっと前向きに検討するということにならなければ金融の正常化はできない。私はこう思いまして、大蔵省に参りましてから、とにかく金融機関の自主性ということを守らなければならないけれども、あまりにも野放しということはいけない。とにかく地方銀行は地方から吸い上げて、そして表日本や大都会にだけ投資をする。だから、銀行の支店の設置も東京や大阪だけに集中的な申請が出ておるというようなことで、一体地方銀行の制度そのものが守っていけるのか。このままではますますその格差が開くということで、こういうことに対して地方銀行が地方産業に投資をするということをもっと強めなければならぬ。その場合、支払い準備等に対しては、日銀とのつながりというものをあらためて、もっと新しい角度から検討しなければならない、日銀がいま都市銀行だけを掌中に納めておるというような状態で、中央銀行の機能を遺憾なく発揮できるわけはないのであります。私もそういうことを非常に声を大にして言ってきたわけでありますが、その過程において、地方銀行や信用金庫や相互銀行の公社債の持ち率を上げたり、また資金募集だけをあまり厳密に言うために、コールに流れて安易な経営の道をたどるというようなことではなく、各金融機関の持つ固有な性格また使命を十分考えて、新しい角度から検討すべきだということを強く言って今日に至ったわけでありまして、だんだんと金融正常化というものの素地ができてきた。時期としては非常にいい時期だ。  この間も私は一つのことを発見しました。それは、証券市場に金がない、証券金融ということにいろいろなことを言いながら、投資信託の金が三千億近くもコールに運用されておる。一体これは何をやっているのかということで、私も忙しいのでそうこまかいところまで目が届きませんが、とにかく目に映ったものに対しましては手きびしくやっておるわけでありまして、いままではなかなか改善ということはむずかしいことでございましたが、開放経済に向かって、時期としては非常にいい時期である。また、投資家そのものも投資意欲は沈静されてきておりますし、だんだんといままでの施策が芽を吹いてくる。こういう期をとらえて遺憾なき施策を進めるべきだ、こう考えております。
  159. 華山親義

    華山科員 大臣の言われるように、私も証券市場からコールが出ているということを新聞で見まして、実はどういうことなのかふしぎに思っておりました。それから、最近の新聞等を見ますと、コールレートが、金融が多少ゆるんだためでございますか、下がっている。そのために信用金庫の経営が不健全化するであろうというようなことが新聞に出ている。信用金庫というものは、金を集めてコールに出して、それが経営のもうかる実態だ。銀行はそれでいいでしょうけれども、金を借りるほうはたまりませんよ。それで金がない、金がないということを銀行が言う。  なお、お聞きいたしますが、政府系統のいろいろな金融機関に対してお出しになる場合はいいのでございますけれども、売りオペ、買いオペ等で地方銀行、中小企業向け銀行に資金を出されるということをときどき承りますが、あれは出したけれども、買いオペ、売りオペの結果、資金量は増したのであるが、その資金は中小企業にはたして向いているのか、コール等に向いているのか、それが中小企業に向いているという追跡ができるようになっておりますか。
  160. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いま御指摘のありました点を最近の実績で申し上げますと、中小企業向けの特別の買いオペをやった場合に、その期間における中小企業向けの貸し出しの純増額がどうなるか、これを見ますと、問題なく買いオペ額をはるかに上回っておるのであります。いずれの金融機関をとりましてもこれは確かなことでございまして、三十九年、昨年の十一月に実施しました買いオペに対する状況を見ますと、第三四半期中における各金融機関の増加額は、たとえば、中小金融だけとらえておりますが、買いオペの純増が百億あった、その間に都市銀行の場合には四百八十億円中小企業への貸し出し増額が見られた。それから地銀の場合には、買いオペが配分の純増では八十億であった、それに対して実績は千百六十九億であった。相互銀行は六十億の買いオペに対して九百十九億円の純増でございます。それから、信用金庫は六十億円に対して千百五十億円の純増、ですから、全体で売りと買いと両方差し引きまして貸し出しの純増だけを見ますと、三百億になっておりますが、その期間における中小企業貸し出しの増加は三千七百十八億になっている。ですから、その金がコールにいってしまったと見なくともいいのじゃないか思います。
  161. 華山親義

    華山科員 いま買いオペの話がございましたが、買いオペと売りオペの、残高はいま幾らになっておりますか。
  162. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 残高五百億円。
  163. 華山親義

    華山科員 中小企業向けでなくて全部についてどのくらいになっておりますか。——それはあとでお調べください。  次に両建てのことについてお聞きいたしますが、昨年のいまごろは、あまりその問題につきまして政府は取り組まれなかった。その後、銀行局から通牒が出て、私、状態を見ておりますと大体行なわれているようでございます。多少解釈の違い等がございまして、おかしな点もあるようでありますけれども、大体順調に行なわれておると思うのでございますが、私が大臣にお聞きいたしました際に、大体三割程度の両建てといいますか、歩積みが行なわれておる、慣行として三割程度の歩積みが行なわれておる、そういうふうな慣行が行なわれておる。それで、それは高過ぎるのではないかということを大臣にお聞きしたところが、こう然と、それは高いのだ、一割でいいのだ、そういうふうにお答えになった。大臣がそういうふうにお答えになって、われわれが銀行に行って、大臣がそういうことを言ったと言ったって役に立たないのではないかということをそのとき申し上げたのでありますが、その後銀行局長から通達によると、歩積み、両建ては慣行的に行なわれておるものは保証の意味でやむを得ないだろう。数字を持っておりませんから正確でないかもしれませんけれども、ないだろうというようなことを書かれて、そのあとに慣行的に行なわれているのは三割ないし一割である、こう書いてある。そうしますと、全部三割まではいいということになってしまう。大臣の御趣旨とは違うのではないか。一割でいいものだったならば一割にすべきだとお書きになればいいのであって、大臣が去年お答えになったことと違うようでありますが、その間の経緯はどうでございますか。
  164. 田中角榮

    田中国務大臣 歩積み、両建てにつきましては、非常に実が上がっております。都市銀行等につきましては、今年の六月、相互銀行等に対しましては来年ということになっておりますが、一昨年の十月、十一月と検査をした結果は、銀行当局から出ておるものと大体数字は一致しておりますので、過当、不当ともいうべき歩積み、両建てというものは相当排除されつつある。また、午前中の当委員会でも申し上げましたが、六月までかかってうまくいかない場合は一体どうなるか、公取当局は、そのときはそのときで準備をいたしております。そういうことでありましたが、いやしくも現在の金融行政の中で、少なくともその特殊指定を受けるようなことは非常に恥ずかしいことだ、そういう立場におりますので、国会でも明らかにしておりますように、歩積み、両建て排除の実があがるように、六月までに大いに努力いたします、こう申し上げておるわけであります。まあ、いまの金融機関から出ております歩積み、両建ての排除の計画は、まずすべてのものを一割にしよう、こういう最も合理的なものではございません。まず第一段階においてこれだけのことをやりましょう、これからだんだんとより正常なものにしていかなければならぬ、こういう考えでございまして、学識的に考えて過当、不当といわれない商慣習上の信用補完という立場から考えれば、一〇%程度でいいのではないかという私の考えは変わっておりません。
  165. 華山親義

    華山科員 そういたしますと、いま三割ないし一割ということで進めていらっしゃいますが、さらに大臣といたしましては、これが済んだならばといいますが、済まなくてもいいのでありますが、一割という理想に向かってはどんどん進んでいかれる御決心でありますか。
  166. 田中角榮

    田中国務大臣 数字で一割、こういう手きびしい気持ちで申し上げるのでありませんが、いずれにしても信用補完という立場から商慣習として生まれたものでございますから、少なくともそういう範疇を脱して、これが中小企業や借り主の不当な金利負担になる、こういうことは絶対に避けなければいかぬ。もう一つは、金融機関が貸し出しの金額だけを高く発表しておりますが、同時に歩積み、両建てをやって大いに預金競争の実を上げた、こういうから回りではどうにもならないということでありますので、実質的な資金の増加もはからなければなりませんし、慣行上許される、当然問題の起きない、議論を呼ばない常識の程度まで合理化していきたいという考えであります。
  167. 華山親義

    華山科員 三割ないし一割に固執されるわけじゃない、三割、一割ということよりもさらにもっと下げていく方向で前向きにお考えになっていらっしゃるわけですか。
  168. 田中角榮

    田中国務大臣 歩積み、両建てが過当、不当というふうに議論にならないようなところまで持っていきたい、こういうことであります。
  169. 華山親義

    華山科員 大臣のおっしゃることは、少し去年と違いますね。大臣はこれをごらんになったらいい。私達現在三割程度が慣行になっているんだというが、慣行といったって悪い慣行もある、いい慣行もある、慣行だからいいというわけじゃない、三割は高過ぎるじゃないかということを大臣に申し上げたところが、大臣は三割は高い、一割でいいんだとおっしゃったのです。それだったならば、一割に向かって邁進すればいいのであって、いま抽象的なことをおっしゃるのはおかしいじゃないですか。
  170. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、先ほど申し上げたのです。三割とか二割とかいうことよりも、常識的に考えて一割ということがいいと思います、この考えは変わっておりません。こういうことを明らかにいたしておりますが、ところが、そのほか一割からゼロに、こういう御発言のようなものがあったようでありますので、いわゆる歩積み、両建てという問題が議論にならないほど、正常な商慣習の範疇に属するまでは下げていかなければならぬ。三〇%というようなことは、正常なものだとは考えておりません。
  171. 華山親義

    華山科員 私も、まんざらしろうとでないから、ゼロにしろなどということは言いません。昨年だって、ある程度の保証のものはしかたがないと現在は思う、しかし、三〇%というのは慣行として高過ぎるじゃないか、そう申し上げたところが、それは高い、一〇%程度でいいんだとあなたはおっしゃった。ところが、今度通達を見たところが、三〇%程度は慣行として認めたじゃないですか。今度はそれでしかたがなくても、将来はあなたの考えられる一〇%——私はゼロと言っておるのじゃないですよ。一〇%までに進まれるのかどうか、そういうことをお聞きしているのです。
  172. 田中角榮

    田中国務大臣 御発言のとおり考えております。
  173. 華山親義

    華山科員 それから少しめんどうくさいというか、大臣はおわかりにならないと思いますが、税のことについてお聞きいたしますが、下請企業者が元請者にある一定の契約のもとに納品をした。手形の決済を受けない、こういう場合に、帳簿はどういうふうに下請業者は整理しますか。
  174. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 品物をすでに売り渡したような場合には、会社によって経理は少し違うかもわかりませんが、大部分引き渡したときに売り上げに計上する、こういうふうに取り扱いをやっておると思います。
  175. 華山親義

    華山科員 そうしますと、金をもらってないのですから、それはどういうふうな目に入りますか。またそうしますと、たな上げのほうは少なくなるわけでございますね。
  176. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 売り上げに計上して、益金に算入します。それから一方引き渡したほうの品物はたなおろしから落ちる、こういう経理処理をやるわけでございます。
  177. 華山親義

    華山科員 そうすると、売り掛け金になりますか。
  178. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 そのとおりであります。
  179. 華山親義

    華山科員 買っかほうはどうなりますか。
  180. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 品物によりますが、原材料の在庫あるいは製品在庫、こういうことに処理いたします。
  181. 華山親義

    華山科員 たなおろし資産が増すということでございますね。それからまた負債といいますか、未払い金が多くなる、こういうかっこうになるのですね。
  182. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 そのとおりでございます。
  183. 華山親義

    華山科員 そうしますと、長く払わないほうが税法上得じゃございませんか、そうなりませんか。
  184. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 税法上は、売り掛け金に経理いたしておりましても、売ったほうの会社の利益金に算入いたしまして課税になります。未収金になっておりましても、売り上げに計上した時期に課税ということになります。
  185. 華山親義

    華山科員 私、詳しいことを申しませんが、たなおろし資産についてはいろいろな恩典があります。値段が下がった場合の恩典、そういうふうなものもいろいろございますが、そこまでこまかいことはやめますけれども、しかし、税務として計算する場合には、片方のものは資産としては落ちちゃっているわけです。片方のほうは、その資産よりも高い値段で売っているはずですから、利益として計上されて、バランスの上では出てくるわけですね。それにまだ手形も出てないものに税金をかけるというのはひどいじゃないですか。
  186. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 現在会計処理といたしましては、品物を引き渡したときに売り上げに計上するというふうに統一的にやっておりますので、たとえば、もしそれが未収になっている、売り掛け金になっているというようなときには、たとえば貸し倒れ引き当て金を若干計上するとか、あるいはこれは御質問に少しはずれるかもしれませんが、昨年三月に売り掛け金が非常にふえた、こういったような場合には納税猶予、あるいは滞納処分の猶予、こういうことによって納税の延期ができるという措置を認めておりますので、たとえば非常に下請企業に対する支払いが悪くなって、下請企業がそのために資金繰りが非常に悪くなった、そういうようなときには、いまのような猶予を申請していただければ認める、こういう取り払いをいたしております。
  187. 華山親義

    華山科員 納税の延期をした場合には、延納金といいますか、そういうものは出すのですか、出さないのですか。
  188. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 いまの売り掛け金が、たとえばいままでよりも弁済期限までに三〇%以上伸びた、しかも、それがサイトが百二十日以上になっておる、そういうようなときには、納税の猶予とが利子税を免除できる。そうじゃなくて、ただ売り掛け金が前期よりも非常にふえた、そういうようなときには、日歩四銭の金利を二銭だけ免除できる、そういうふうな取り扱いをするようになっております。
  189. 華山親義

    華山科員 そうしますと、元請者が検収期間と称してなかなか金を払わないと、いろいろ税の特典は少ないし 税も多くなる、こういうことになるわけでございますか。
  190. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 実際の検収をすでにやっておる、実際に引き渡しを受けてしまって、大企業のほうの資産になっておるのに、ただ検収という手続だけをおくらしておるという場合には、やはり国税の取り扱いといたしましては、その下請会社の売り上げに計上して課税所得に算入するということになりますが ただ、一般に慣行として引き渡しはやる、しかし検収という手続がまだ済んでいない、そのために、いつも継続的に検収という時期を売り上げの計上時期にしているというような取り扱いをしているような場合には、単に引き渡しがあったというだけじゃなくて、検収が全部済んだときに売り上げに計上する、そういう取り扱いをやるようにしております。
  191. 華山親義

    華山科員 こまかな点に入りましたが、一般的にいいますと、中小企業者はサイトの長い手形を持っておる。検収期間といってなかなか手形ももらえない。しかし、バランスの上から出てくるところの利益というものは、それらが利益として計上されますから、現金がなくて税金が納められないというふうなことがずいぶん多い。私は、その点は大企業と違うと思うのんです。いわんや、中小企業は税金を納めるからといって銀行にかけつけたって、そんなに金は貸してくれるものじゃない。そういう意味において、中小企業に対して現在のようなサイトが延びるというふうな時代には、もっと広い措置がとられてもいいと思うのでございますけれども、そういうことをあなた方はやっていらっしゃいますか。
  192. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 先ほど申し上げました、昨年の三月の通達によりまして、いまの支払いのサイトが非常に延びたというようなときには、徴収の猶予ができるという措置をとりました。これにつきまして利用者がどれくらいあるかということは、はっきりまだ計数的につかめておりませんが、納税猶予全体としてはかなりの利用者が出てきておる。したがいまして、もっとこうした措置を十分周知徹底をはかって、そうした場合に、売り掛け金のサイトが延びたために、資金繰りで納税が困るというような場合には、納税の猶予を十分利用していただく、そういうふうにおすすめしたいと思っております。
  193. 華山親義

    華山科員 それから大蔵当局に伺いますが、収入でございますけれども、税の延納金といいますか、延滞金といいますか、延納金というものが整理される場合には、所得税ならば所得税として入るのでございますか。別の項として入るのでございますか。
  194. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 当該税目の税収として受け入れをいたしております。
  195. 華山親義

    華山科員 あれは所得税ですか。
  196. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 所得税の延滞金の場合は所得税、法人税の延滞金の場合には法人税というふうに整理をいたします。
  197. 華山親義

    華山科員 法人税じゃないでしょう。
  198. 田中角榮

    田中国務大臣 延滞税は税目別に整理をいたしております。それは、所得税の延滞税は所得税の収入として計上しておる。これは国税通則法の第六十条の四項、「延滞税は、その額の計算の基礎となる税額の属する税目の国税とする。」という点です。
  199. 華山親義

    華山科員 その点について資料をお持ちにならなければ困るのですけれども、額がどのくらいのものになりますか。
  200. 田中角榮

    田中国務大臣 いま申し上げました法律の規定に、延滞料は延滞料金ではなくて延滞税、そして整理は当該税目の税として計算をするというふうになっておりますので、集計をして統計をとっておりますので、これを全部分けるということになると、時間をかしていただかなければ計算はできないと思います。
  201. 華山親義

    華山科員 私は、この点について決して意地の悪いことをお聞きしているんじゃない。聞こうとしたことは、金のあるものは延滞税を納めても、そのほうが金利を計算すると得だから延滞税を出してもおくらしている。これが実態なんです。ところが、金のない方は、銀行からなかなか金を借りられない。そして、とどのつまりはしかたがないと高利貸しにでも行って金を借りなければいけない。ここで高利を出して、そしてなおかつ延滞をとられる。こういうふうな状況があるわけです。この延滞税というものについて幾らでも同じなんだ、どんなに多額のものでも、少額でも同じ税率だ。そういうことでないようにされたらどうか。中小企業等につきましては、そこに何らかの緩和が出てくるようなことを御研究になってみたらどうか、そういう点をひとつお願いをいたしたい。あれは、金のある大企業等につきましてはもうかりますよ。銀行で借りるよりは安いのだから、払えたって払わない。ちょびりちょびり払っていたほうが得なんです。金のないほうはそうはいきません。このほうは、金を借りようと思えば高い金利で借りてやらなければいけない。そういう点が違うのです。そういう点についてひとつ勉強して、大臣に申し上げて、大臣政治的の判断で、大企業を軽く見るというわけではありませんが、中小企業等を救っていただきたい、こういうことを申し上げて質問を終わります。大臣、いかがでございますか。
  202. 田中角榮

    田中国務大臣 お話の趣旨もわかりますし、お気持ちも十分理解できますが、どうも所得税のように、延滞税にも累進課税率をとるということは非常に技術的にむずかしいと思います。ですが、中小企業というものに対しては減免税を行なうとか、また延滞のケースで検討する場合に配慮しておるわけであります。  それから、いま、銀行から借りるよりも税を納めないほうが安いという御指摘がございましたが、御承知のように日歩四銭という非常に高いものでありまして、こんなものはとってはいかぬという議論さえございますときでございますから、銀行金利よりも確かに高い金利という罰則的なものでございますので、そういう銀行から借りて滞納しておったほうが得だというようなことは規定いたしておりません。
  203. 中野四郎

  204. 横山利秋

    横山科員 私は、予算の骨格をなす財政法についていろいろとお伺いをしたいのでありますが、私が財政法を議論をいたしますために、最高裁の事務総長においでを願ったのであります。どういうようなことを私が言いたいかは、順次ひとつ大臣に御判断願うために、しばらく聞いておっていただいてけっこうです。  最高裁事務総長にお伺いをするのですが、私の手元にございます昭和四十年度概算要求重点事項、これは、最高裁が大蔵大臣あてに四十年度予算として提出をされたものだ、この内容は間違いありませんね。——私も、この内容をつぶさに調べてみましたし、また私としても、今日の裁判制度についていろいろと調査をしてみました。御存じのとおり、松川事件は十五年かかりました。下山事件もまた十五年たっても犯人は行方不明で、時効になりました。吉田石松氏はまさに五十年の裁判の歴史を繰り返しておるわけであります。国民のすべてがいまの裁判制度について大きな期待を持ちながら、裁判について実効のあがることが時間がかかり過ぎる、こういう立場をとっております。地方裁判所一つを見ましても、なかなか審理がはかどらなくて、月に一回くらいである。なぜそうなるか、それは、裁判官の決定的な不足である。この予算要求を見ますと、裁判官はじめ職員を千二百七十五名要求されておる。千二百七十五名要求されて、大蔵大臣が承認をされましたのは十六名であった。十六名の簡易裁判所の増員要求を承認されたけれども、実は簡易裁判所の裁判官はあいにくと十六名欠員がある。簡易裁判所ばかりでなくて、あらゆる裁判所職員を網羅しておりますのは欠員ばかりである。どうしてそんなことになるのか。要するに、それは裁判所に働くことをいさぎよしとしない。気持ちの問題じゃない、生活の問題であります。したがって、弁護士になろうか裁判官になろうか、圧倒的に弁護士を選んで、裁判官になり手がない。増員の要求の前に欠員を充足するのがほんとうじゃないかと言いたい。けれども、それでも足らないからというわけで千二百七十五人の要求があった。この間、ある地方裁判所の下のボイラー室で七十二歳のボイラーマンがボイラーの前で倒れまして死にました。裁判所というのは、七十二歳のじいさんを最も重労働とするボイラーマンに使わなければやっていけないところであろうかという世間の話題になったわけであります。予算を見ますと、タイプ購入費十一台六十二万五千円と書いてある。いやしくも最高裁判所の四十年度概算要求重点事項にタイプライター十一台で六十二万五千円、司法研究会の委員会の設置のために百万円、百万円が重点事項だというのであります。私も各省の予算を見てまいりまして、裁判所所管の重点事項というものは何とみみっちいものであるかということを痛感すると同時に、何ということだろう、こんなことまで重点事項にしなければならぬのかということを痛感をした。他方、差し押えをする、競売をする執行吏、あれは国家公務員です。国家公務員でありながら、給料は国家公務員として政府からほとんどがもらってない。最低額は保障されるけれども、今度は上がって年に十九万円ですから、月に一万五千円です。まさかそんな執行吏はおらぬ。だから、もらわぬと同じです。だれからもらうかというと債権者からもらう、ないしは債務者からもらう、債務者や債権者の銭をもらって——百人ばかりの立ち合い屋がおる。それは、ブローカーないしは暴力団に関与している。いまの競売がどういうような実情で行なわれておるかということは、まさに多くの人が知っている。競売へ行く、しろうとが競売に行ったって落札は絶対にさせない。競売屋がかきねをつくって寄せつけぬようにしている。へたにもぐり込もうものならば、にらみつけて、おいちょっと外へ出てくれ、こういうことですね。この競売をうまく執行しようとする執行吏が、国家公務員でありながら銭は債権者からもらう。したがって、早く立ちのかせろ、早く明け渡させろということで、早く競売をやらせる。しかも得なようにするためには、その間に競売屋、立ち合い屋という職業的な者がおる。それから暴力団につながっている。執行吏の汚職が絶えない。こういう状況にある。したがって、タイプライター十一台六十二万五千円、私は、この数字を見てみみっちいと思うと同時に、これは何とかしなければならぬということを痛感したものであります。私のいま申し上げたような裁判の遅延、競売制度、それから人員運用その他について一体事務総長はどうお考えであろうか。いまの裁判制度が国民に大きな期待を抱かれ、たとえば松川事件の裁判のような有名な裁判で、一ぺんに裁判というものについて国民は見直した。非常なフットライトを浴びながら、実はそれじゃおれが裁判を受けようかというときになりますと、まずたいていの人はしり込みする。国民の権利を進んで行使しようという人があまりにも少ない。それでおって、その中で限られた者が裁判を受けて、その裁判がどういうふうになるかというと、じんぜん日をむなしゅうしているだけである。そういう状況について、事務総長はいまどういう御心境であろうか。いま裁判制度はまことに円滑に、まことに国民の期待に沿うておる、こうお考えであろうかどうか。御意見をひとつ率直に伺いたいのです。
  205. 関根小郷

    ○関根最高裁判所長官代理者 いま横山委員のお話、むしろ最高裁判所側に立っての……(横山委員「国民の側に立っていますよ」と呼ぶ)同時に、最高裁判所側にもお立ちになってくださって、非常に感謝しておりますが、ただ、いま申されました松川事件、八海事件、その他の有名事件につきましては、その事件担当の裁判官がつきっきりでやっておるわけでございますが、事件が複雑、しかも内容が非常にむずかしいということの関係から延びてきている。でありますから、裁判官が幾らふえましても、松川事件を短くするというわけにいかない。一般的な訴訟事件は、民事にいたしましても、刑事にいたしましても、大体の処理期間はそう長くはないわけであります。ただ、いま申されたような有名事件については、事件がむずかしいだけに延びている。でありますから、全体としてはそうおくれているわけじゃないということをわれわれは考えております。  しかし、いま申されました予算の要求につきまして、タイプライターとか、非常にこまかな数字が出ているということでありますが、これはごもっともでございますけれども、そういうこまかい数字を積み立てて何億、何百億という要求をするわけです。大蔵省に何百億だけを申して、こまかい基礎計算をしないと要求できない。そういうところから、こまかい計算が出るのは当然でございます。ただ、いま申されましたうちに、裁判所につとめるのがあまり魅力がないという点は確かにあると思いますので、今度の予算要求におきましても、特に内閣に要求いたしまして、環境整備という点でかなりの予算を組んでいただいたわけでございます。
  206. 横山利秋

    横山科員 そこで、この四十年度概算要求重点事項、合計いたしますと三百十五億、これは、財政法十七条によってお出しになったわけですか。
  207. 関根小郷

    ○関根最高裁判所長官代理者 おっしゃるとおりです。
  208. 横山利秋

    横山科員 十七条は、最高裁長官は、毎年これを内閣における予算の統合調整に供するため、内閣に送付しなければならないことになっている。そこで大蔵大臣に伺いたいのですが、十八条によって、特別に十七条の規定に基づくものは必要な調整を行ない、閣議の決定をしようとするときは、最高裁長官に「決定に関し意見を求めなければならない。」こうなっていますが、それをなさったわけですか。
  209. 田中角榮

    田中国務大臣 いたしました。
  210. 横山利秋

    横山科員 その返事はどういうことでありますか。
  211. 田中角榮

    田中国務大臣 いろいろ御意見がございましたが、最終的には両者合意に達した数字がいま御審議をいただいているものでございます。
  212. 横山利秋

    横山科員 合意をしたということは、減額を承認したということですね。
  213. 田中角榮

    田中国務大臣 概算要求をせられたものに対しては、減額をして大蔵省と裁判所の意見が一致したものを閣議に付議して決定した、こういうことでございます。
  214. 横山利秋

    横山科員 要求したものに対しては、あなたは最高裁に対して十八条によって意見を求めた。最高裁は減額を承認した。しからば十九条によって、内閣は裁判所の「歳出見積を減額した場合においては、国会、裁判所又は会計検査院の送付に係る歳出見積について、その詳細を歳入歳出予算に附記するとともに、国会が、国会、裁判所又は会計検査院に係る歳出額を修正する場合における必要な財源についても明記しなければならない。」ということになっている。なぜ一体歳入歳出予算にその見積もり予算を付記しないのか。なぜわれわれが修正する場合における必要な財源を明記しないのか。その点はいかがですか。
  215. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、最高裁判所及び国会は、意見ととのわざる場合には、別に国会に予算を提出する道が開かれております。でありますから、裁判所と政府との間に意見が一致しなかった場合はその理由を書かなければならないということでございますが、概算に対して事前に私と最高裁長官との間に意見を十分交換をいたしまして、合意に達したわけでございますので、概算要求に対して査定をした、こういうものに対して減額を最高裁長官が承諾をした。こういうふうに御発言になり、私がはいそうです、こう答えましたが、そうではないようです。いずれにしてもその予算に対しては、国会に提出をするときに、内閣とそれから最高裁の間には意見が一致をして、今度の予算の提出になったわけでございます。これが内閣と最高裁の意見が合わなかったという場合には、合わなかった理由を付記しなければならない、こういうことであると思います。
  216. 横山利秋

    横山科員 かってな解釈をしてもらっては私は困る。最高裁のいわゆる二重予算権というものは、最高裁の特別な立場、特別な権利をうたったものであって、大蔵大臣の恣意に基づくような解釈をしてもらっては困る。十七条は少なくとも毎年八月に出すのです。出したものがていさいのいい、いいかげんなものだと私は思わない。最高裁も最高裁判官会議をもって定めて、それによってあなたのほうにこの見積もりを要求をした。これが基礎です。三百十五億が基礎です。その三百十五億の基礎を大蔵大臣が意見を調整をして、最高裁に求めたものに対して、最高裁がかりに同意をしたところで、基礎となったのは十七条の三百十五億です。減額をしたという事実については、何らまぎれもない事実じゃありませんか。減額をし たとするならば、なぜ十九条によってその附記をし、なぜ必要な財源について明記をしないのか。この点はいかがですか。
  217. 田中角榮

    田中国務大臣 私が先ほど申し上げたものは間違いではないと思います。それは、最高裁と私との間に意見の交換をしましたときに、どうしても最高裁側の意見と私との間に一致を見ることができないという場合には、当然条文のとおり政府側の立場を明らかにじなければなりませんが、八月の末日までに概算要求をせられた数字を、合意に達した時点において最高裁側が自発的に概算要求の数字を下げたわけでございますから、法律に基づいて予算書にその理由を明記する必要はない、こういう解釈であります。
  218. 横山利秋

    横山科員 自発的に取り下げるなんということがあり得ますか。あなたが十八条によって意見を求める、これだけしかいかぬのだ、これだけでかんべんしてくれ。こういうことに立って、最高裁がそれはやむを得ないといって減額を承諾するのじゃないですか。
  219. 田中角榮

    田中国務大臣 そういう見方もございますが、法律論からいたしますと、最高裁は、概算要求の数字を絶対に変更はまかりならぬ、こう言った場合、国家財政の許す状況では減額をいたします、やむを得ない、こう言われた場合は減額でありますが、そうではなく、事実問題として私が最高裁の御意見を求めまして、お互いに意見の交換をいたしましたときにお互いが合意に達した。私の数字だけを向こうがのんだのじゃないのです。向こうは同じ立場において、法律に基づいて予算の審議を行なってよろしゅうございます、こういうことで、私もよろしゅうございます、こういうことになって合意に達したのでありますから、法律上は八月三十一日に提出をした最高裁の概算要求金額が、合意に達した時点においてみずからの発意によって減額せられた。私が減額したのではなく、減額ということばが間違うと悪いので、数字が最高裁の手によって修正をせられた。修正をせられたところがちょうど合意に達した、こういうことでございます。
  220. 横山利秋

    横山科員 そうすると、財政法十七条、十八条十九条を通ずる最高裁の見積もりは、いつの時点において出されるのですか。あなたのお話によると、何べんでも出されるわけだ。二回でも三回でも出されるわけだ。財政法の乱用になりますよ。財政法十七条による最高裁の見積もりはいつ出されるものであるか。それは、あなたの言う八月に出したものもそうなら、十二月に出したものもそうだ。十二月二十五日に出したけれども、また自発的だというので三十一日に出す。そういう財政法の一番問題になっておる最高裁の歳出見積もりというものが、大蔵大臣の恣意によって、いや、この間のあれは見積もり決定だけれども、もう一ぺん話し合ったら今度が本物だそうだ、そういうふうにいつの時点でもいいとあなたのようにかってに解釈されるようでは財政法の乱用ですよ。
  221. 田中角榮

    田中国務大臣 総理大臣及び各省庁長官は予算の概算要求を大蔵大臣にしなければならない、こういう規定がございます。それで、八月の末に概算要求をいたします。これは、大蔵大臣が閣議に付議する対案を作成するためには当然時間的な余裕が必要であるので、政令に基づいて八月三十一日という日までに概算要求の提出を求めるように法律は要求しておるわけであります。しかし、八月三十一日が切れたら一切要求できないということはないのであります。石炭の鉱山が爆発する、爆発すれば新しい事態が起きますから、新しい時点において概算要求の追加をする、こういうことはできるのでございます。しかも、国会もそのとおりでござ ます。八月三十一日までに概算要求をいただく。いただきますが、概算要求のときと状態が違ったので、国会議員の滞在費等をふやそう、こういう場合は、十二月の状態において出るなら、それはその時点においてお互いが合意に達すれば財政法の規定に基づいた原案となり、最終的に閣議の決定によって国会に提出をするということでございますから、最両裁判所の概算要求は八月三十一日に出されて、十二月の予算編成時期においてお互いが合意に達したので、裁判所はこの法律に基づいて、特別に内閣の予算書と別なものをお出しにならないということでありますから、適法な処置をしておるわけであります。
  222. 横山利秋

    横山科員 そうすると、大蔵大臣は、財政法十七条による最高裁の概算要求はいつでもいい、あなたの言うのはそうじゃないですか。八月の概算要求もそうなら、十二月だって十一月だって、いつだっていい、こういうわけじゃないでしょうか。鳩山さん、うしろで知恵をつけておるようですが、あなたの言いそうなことを私は言っておきますが、予決令の第八条「財政法第十七条第一項の規定により、内閣に送付すべき書類は、大蔵大臣の定めるところにより作製し、前年度の八月三十一日までに、これを内閣に送付しなければならない。」と書いてあるではありませんか。だから、最高裁の概算要求が、十七条による書類は八月三十一日に送付されたものがそうじゃありませんか。あなたの言うように、十月でも十二月でもいいというようなばかなことを言って、大蔵大臣がかってに解釈してもらっては困る。
  223. 田中角榮

    田中国務大臣 何月でもいいとは言っておりません。予算決算及び会計令の第八条によって、八月三十一日までに提出をしていただく。内閣はこれを大蔵大臣に送付をする。大蔵大臣はこれに基づいて対案をつくる。対案の過程において各省の意見も聞いたりして、最終的には国会に対して、閣議の決定をもって予算提出を行なうということであります。
  224. 横山利秋

    横山科員 わかりました。そうすると、あなたは少し訂正をされまして、十七条による要求は八月三十一日までに提出されたものをもってそうだという解釈になる。そうすると、それ以外にはもうないですよ。それが三百十五億だ。それが減額されたんですよ。あなたの言う言い方によると、話し合いをされた、こういうけれども、しかしながら、これが最後ですよ。十七条及び予決令の八条によればこれが最後ですよ。八月三十一日までに、これ以外にありますか。これが最後だとすれば、現に出ております予算は二百三十九億だ。減額されているじゃないですか。なぜ一体予算に付記をしないのか。なぜ財源を明確にしないのか。
  225. 田中角榮

    田中国務大臣 十七条及び予決令の八条に基づいて概算要求を提出しなければならないという手続規定をきめたわけでございます。しかし、それを変更してはならないということは、法律に制限はございません。また明らかに概算要求数字でございます。でございますから、これを最終的に決定をするときには、裁判所が大蔵省と意見が合わず、内閣の予算には承服しないという場合、内閣は最高裁の要求数字を減額して国会に提出をするわけでございますから、その場合には明らかにその事由を附記しなければならない、こうあるべきだと思います。でございまして、先ほどから申し上げておりますように、この予算を決定しますときには、最高裁の意見を大蔵大臣が十分徴したわけであります。徴した過程において合意に達したわけであります。合意に達したというのは、あなたから見ると、大蔵大臣がその最高裁の意思を踏みにじって、一方的にきめたんだ、減額したんだこういうふうにおとりになっておるようでございますが、そうじゃない。合意に達したときには、八月三十一日に出した概算要求数字をみずからが変更して、その時点において合意に達した、こういうことであります。国会の問題も同じことなんです。
  226. 横山利秋

    横山科員 あなたのことばをしっかり法律的に言いますが、概算要求ということばはなくします。十七条は「毎会計年度、その所掌に係る歳入、歳出、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為の見積に関する書類」、これです。それは予決令第八条によって、八月三十一日までに提出をする。したがって、私がこれが十七条によるものかといって聞いたら、事務総長は、十七条によるものだとお答えになった。したがって、これが十七条及び八条によるものだということがはっきりしたのです。概算要求というていさいのいいことばは抜きにしまして、十七条及び八条によるものだということはわかった。  それからもう一つ、財政法においては、今度はあなたが事務総長に意見を求めることになる。意見について事務総長が同意したかどうかはあとからお伺いします。しかし、同意をしようがしまいが、十七条による書類はこれである。結構としては十九条によって減額したことになる。したがって、大蔵大臣は減額した詳細を歳入、歳出予算に附記せよと財政法は命じてある。それから、国会が修正をする場合において、必要な財源について明記せよと、財政法はそれこそ明証をしてある。あなたはそれをやっていないじゃないですか。財政法違反ですよ。
  227. 田中角榮

    田中国務大臣 財政法の十七条、十八条、十九条の三条を見るわけでございますから、第十八条には「衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計検査院長に対しその決定に関し意見を求めなければならない。」こういうことでございます。それと第十九条に、ただいま御指摘になったものがございます。私は、裁判所や国会に対しまして二重に国会に予算案を提出することができる。みずからの予算に対して提出審議を求めることができるという条文と対比して考えますときに、あくまでも十九条につきましては、意見が異なった場合、その立場を十分に三権の立場から考えまして、当然内閣は、国会審議の過程においてその事情がよくわかるように、また二つ異なったものが出てきましたときに、内閣がなぜ減額をしたか、こういうものに対して、国会審議のために必要な条文としてこれを書かなければならないと規定したものでありますから、内閣が予算をきめるときに意見を徴して、この意見を徴した過程において合意に達したという場合には、十七条に基づく概算要求数字と異なった数字で予算が編成せられておる。合意に達しておる以上、十九条は適用はないものと考えます。
  228. 横山利秋

    横山科員 そんなかってな意見はいかぬ、合意に達したときには十九条を発動せずと、どこに書いてありますか。十七条における最高裁が出しました予算と、十九条における、「内閣は国会、裁判所及び会計検査院の歳出見積を減額した場合においては、」ということとどういう関係があるか、あなたは自分かってに解釈をして、最高裁から三百十五億の要求が出た。これは二百三十九億に減らした。減らしたけれども、それは最高裁がいいと言ったので十九条は発動しないのだ。かってな解釈ですよ。同意したらいい。それは同意をしようがしまいが、十七条はそのまま受けて十九条ですよ。最高裁が同意したら十九条を発動せぬでもいいということは、財政法のどこに書いてあるか。
  229. 田中角榮

    田中国務大臣 私も法律の大専門家ではありませんが、国会議員でございますから、立法府の議員でございますから……(横山科員「常識では困る」と呼ぶ)常識ではなく、十八年も議員をやっているのですから、そういう意味では私だけの解釈ではありません。便宜論をやっておるのではありません。十分法律的に考え三十九条は十七条に全部かかるものではない、こういう解釈をとっております。それはなぜかというと、八月三十一日までに概算要求書を内閣に送付しなければならない、提出をしなければならない、提出をして、内閣は大蔵大臣に送付しなければならない。大蔵大臣は、条を追うてずっと見ますと、対案をつくって閣議の決定を経なければならぬ。決定を経る過程において、特殊な権能を持つ最高裁判所、国会及び会計検査院とは意見の調整を行なわなければならぬ。こう書いてあるのですから、十七条と予決令の八条は八月三十一日までに事務手続として内閣に送付をすることを要求した手続法であります。ですが、それから決定をする。大蔵大臣がその対案をつくって閣議に付議し、最終案をきめるまでの間にはずっと数字を修正することを禁じておらないのであります。数字はいつでも動かし得る体制になっております。十九条は、十七条に基づいて国会及び最高裁判所が内閣に送付したその概算数字を減額して予算を決定する場合は云々とある場合には、これは当然でありますが、十七、十八、十九条をずっと読んでみる場合には、概算要求を出したものが確定数字ではなく、これは予算に対して対案をつくる場合に必要やむを得ざる処置として、法律的に、予算をつくる過程において必要な規定としてつくっておるものでありまして、これはみだりに変えるということではありませんが、その数字を動かすことを禁止しておらぬのであります。概算要求をした内閣総理大臣、各省各庁の長は、修正を否定する条項はどこにもありません。ですから自由——自由というほど解釈はいたしませんが、いずれにしても最高裁判所がお出しになったのと国会がお出しになったのと、各省各庁の長が出したものは動かせるのであります。ですから、自発的意思において動かせる。(横山科員「動かしてはいかぬとは言いません」と呼ぶ)動かせるものでございますから、十九条は内閣との意見が相一致せざる場合、減額をした場合に付記すべし、こう読むべきであります。これは私だけじゃなく、毎年毎年の大蔵大臣が全部こういう解釈をとっているのです。国会もそういう解釈をとっておるので、きょうあなたに初めてやられたわけでありますから、私の解釈が正しい、こう思います。
  230. 横山利秋

    横山科員 そんなかってな、冗談を言って逃げようといってもこれはだめですよ。私が初めて言ったというのには二つの理由がある。大臣、いいですか。  一つの理由は、最初大臣に静かに聞いてもらったように、いまの裁判制度は国民の期待に沿うておらぬ、これが特に私をしてそう言わしめたものなんです。第二番目は、この財政法の運用について、最近政府は非常にだらしがない。この問題ばかりではなくて、財政法について私は幾多の問題を持っておるわけでありますけれども、時間がないからきょうはこれだけにとどめたいと思うのですけれども、財政法の運用について、少し従来のものだけを考えてやっておりはせぬか。あなたの気がついたことは、私だって気がついておるのです。もうじきそれが出てくるだろうと私も思っておるけれども、それだってぼくは議論があるんですよ。私は、財政法をあくまでたてにとるのです。政府でかってにつくった政令や規程というものは、国会でも拘束するわけにはいかぬのですからね。法律論をもって、この財政法がわれわれを拘束する。政府がこの財政法というものを適当に恣意につくったり、そして財政法の精神をゆがめるようなことをしては私は承知しない。あとでどういうように御説明になるか知りませんが、これだけははっきり申し上げておきます。大臣、少なくともこれだけははっきりしてくださいよ。八月三十一日までに十七条の規定による書類を最高裁は出しますぞ。これは一本ですよ。十七条の書類はたったの一つですよ。あなたの言うように、十月になっても十七条の規定による書類が出せる、十二月三十一日になってもその書類は出せるのだ。こめ十七条の最高裁の歳出見積もりというものが、二つも三つもあっていいということは絶対に解釈が成り立ちません。  それから次に、十七条がそうであるなら、財政法はあなたが意見を聞く、聞いて同意、不同意をやる。同意であろうが不同意であろうが、十九条は十七条を受けるというのが私の解釈。あなたはそれを言うと、そんなべらぼうなことはない、そんなことをしたら予算はめちゃくちゃになってしまう、そういうことであなたは反対しそうだが、十九条はそんなことまでいっておらぬ。十九条は最高裁の出した予算を予算書の横っちょにつけておけと書いてある。ただ、それを国会が修正するときには、必要な財源を書いておけと書いてある。それだけの話じゃないですか。何もあなたびっくりこいて、そんなことをすれば大蔵大臣はえらいことになるというような感覚を持って反対をせられるというと、これはいけませんぞ。少なくとも財政法の一つの焦点となっていますこの最高裁、衆参両院並びに会計検査院の予算に対する独自性というものを、きょういま初めておれは言われた。いままでそんなことを言うやつは一人もいなかった、おまえさん一人だ。だから正しいと思う。そんな大臣の頭だから、最高裁の予算は年々歳々小さくなってしまう。最高裁というものをもう少し重視をしてもらって、二重予算編成権——編成権とまでは言わないが、この十七条から十九条まで一連の権限があるということを大臣は初めて知ったような顔をしておる。それではいかぬ。
  231. 田中角榮

    田中国務大臣 重要な問題でありますから明確に申し上げますと、裁判所や国会や会計検査院の予算というものに対しては、大蔵大臣は、各省、各庁の長が出された概算要求に対するような態度でいくべきものではないということは十分承知しております。これは、私が大蔵大臣に就任した直後、これらの会計検査院とか国会とか、それから裁判所の予算は大臣に相談しないできめる、原案をつくるなどということをやっちゃいかぬというぐらいに厳密にこの条文は読んでおるわけであります。ところがあなたは、さっき予算に書いてないということは法律違反だ、こういうところに集約をして御発言がございましたから、私は違法ではない、適法でございますと、こう言ったわけです。それはもう一ぺん申し上げますが、国会とか裁判所とか会計検査院とか、こういう独立機関の予算というものに対して、軽々なる考え方は絶対に持っていません。それを明らかにしておきます。  予算決算及び会計令の八条を先ほど申し上げましたが、財政法の十七条を受けておるわけでございますが、この十一条の二、これはもう知っておるのだ、こういうことでございますからあえて申し上げませんけれども、これは、減額をした場合、大蔵大臣は通知をしなければいかぬ。通知に対して増額要求があった場合、これがのめなかった場合、こういう場合には附記しなければならないと、こう十一条の三で受けております。でありますから、合意に達して予算ができた、こういう過程においては、概算要求の数字が自発的に変更せられて合意に達したということで、減額の通知を行ない、しかも増額要求があって、それをなお認めなかったというものではありません。ありませんから 予算書に附記をする必要はない。現在の予算書は適法である、こういう結論に達しております。
  232. 横山利秋

    横山科員 私は財政法を中心にして議論をする。あなたは予決令の十一条の二を引用なさったけれども、十一条の二というものは、これは財政法の立場を無視している。あなたがここまで抵抗なさるということは、要するに十九条がこわいということらしい。   〔中野主査退席、登坂主査代理着席〕 十九条はあなたを絶対拘束しているわけではない。われわれ国会議員が一般会計の予算を議論する場合に、農高裁、衆参両院、会計検査院は独自なものであるから、必ずしも内閣の恣意にまかせない。内閣の一般的判断にまかせない。この四つのものは、予算審議の際にそれぞれ意見があったらわれわれの目にとまるようにしろ。そのことが三権の分立のためにも必要であるという立場においてこれを明記してある。したがって、予決令の十一条の二というのは、これは財政法の精神をゆがめるものだという解釈を私はとる。この財政法の十七条から十九条に関する一連のこの考え方について、大蔵大臣はオーソドックスに考えなければならぬことではないか。十一条の二の予決令があるからといって、それに籍口されるということはよろしくない。また、先ほどのあなたの答弁と今度は論旨が少し違ってきました。先ほどは、十七条の書類はいつだってもいいという話だったけれども、これは、八月三十一日と確定をいたしました。  それならば、今度は事務総長にお伺いをいたします。あなたは、先ほど、私がいまの司法制度、裁判制度の現状を言って、ほぼ了承なさったんだけれども、かりに大蔵大臣のことばを取り上げて——私は反対であるけれども、十一条の二によって、減額をされた。そのときにあなた方は、この予決会によって、「歳出見積に係る予定経費増額要求明細書を作製し、予定経費要求書とともに大蔵大臣に送付しなければならない。」義務がある。真にこの三百十五億というものが妥当であれば、真に重点であるこれをやらなければ少なくとも今日の裁判制度は維持し得ないとするならば、予決令の十一条の二を発動する義務がある。権利じゃないですよ。これはまさに国民のために義務がある。その義務をなぜあなたは発動しないのか。いかがですか。
  233. 関根小郷

    ○関根最高裁判所長官代理者 法律論をまず申し上げますと、先ほど横山委員のおっしゃいました財政法の十七条、これは毎年八月三十一日に内閣に提出するわけでございますけれども、先ほど大蔵大臣がおっしゃいましたように、この八月三十一日に出しまする概算要求書が訂正できないということはないわけであります。いつまで訂正きるかということは、閣議で決定するまで訂正できるわけです。訂正というのは、われわれのほうで自主的に撤回する意味でございまして、その自主的に撤回するまでには大蔵大臣にもお会いいたしまして、いろいろ検討するわけです。しかし、最後にこれでいいということになれば、そこで撤回してしまう。閣議決定まで撤回できるという考えなのです。ですから、先ほど大蔵大臣のおっしゃったことは、私はちっとも間違っていないと思うのです。ですから、減額という問題にならないわけです。減額になるのは、内閣で決定したやつにこっちが不服があるときには減額ということになります。内閣の閣議決定の前にわれわれのほうで自主的に撤回せずに、あくまで八月三十一日に出しました概算要求を維持するならば、内閣の閣議でそれよりも低い額に決定されれば減額ということになる。そのときには、われわれはあくまで十九条で原案の提出権を行使することになります。これは法律論でございますけれども、実際は、確かにおっしゃるように、私どもはなるべく多い予算を要求しておりますから、心持ちは、確かに横山委員のおっしゃることはよくわかりますけれども、法律的には、先ほど大蔵大臣のおっしゃったとおりだと思います。
  234. 横山利秋

    横山科員 実態と法律論との混同が起きておると思うのです。私は予決令の十一条の二については賛同しがたいけれども、しかし、かりに予決令の十一条の二を認容するならば、八月三十一日に出た——これは十七条及び予決令の八条のものである。これはたった一つである。それから進んでいって、あなた方が自発的に一部修正があるかもしらぬけれども、基礎になるものは十七条及び予決令の八条である。それが大蔵大臣のところから減額されて意見を求められたそれが十一条の二によってあなたのほうが復活要求をされるという段階が法律では一つあるだけですよ。そうですね。私は、その法律論はそれでよろしい。問題は、あなたに聞いているのはそうじゃないのだ。もはやここでは法律論から進で、なぜその十一条の二による要求書を提出しないのか。あなたは、いま重点項目なり、あるいは現在の裁判制度が国民の期待にこたえておるとほんとうに思っておるのかどうか。私は調べてみましたけれども、この財政法が制定せられたのは昭和二十二年ですか、この十数年にわたって今日に至るまで、最高裁としてこの予算上明確にされておるこの問題が一回も発動されておらぬという点についてどうお考えなのか、承りたいのであります。
  235. 関根小郷

    ○関根最高裁判所長官代理者 いま横山委員のおっしゃるのは、八月三十一日に出しました概算要求につきまして、いろいろ内閣でも御協議になって、そうして年末に閣議決定があるわけですけれども、それまでは訂正できる。訂正いたしました以上は、減額ということはないわけであります。ただ、おっしゃいますように、それではそこで応ずることがどうか、減額という問題の前にわれわれのほうで撤回するのは非常にいかぬのじゃないかというお問いに帰着するのかと思います。これは実質論です。しかし、これはそのときの全般の予算状況、国の財政状況から見まして、われわれのほうでは、十九条の原案提出権を出すところまでにいかない前に訂正していいのだという考えでやったわけでございまして、ですから、減額の問題まではいかないわけです。したがって、原案提出権ということはないわけでございます。  なお、過去において、せっかく十九条で認められた原案提出権を最高裁判所は行使したことがないではないか、これは、実は二度ばかりまさに提出しかけて、国会へ提出の前にそういうことをやめた例と、国会に提出してしまった例とございます。でありますから、やったことはあるわけなのです。しかし、何と申しましても、この原案提出権というのは伝家の宝刀でございまして、そうたびたび抜くと威力がなくなる。横山科員「いっやったんだ」と呼ぶ)二十七年と二十五年です。(横山科員「抜いてないでしょう」と呼ぶ)いや、抜いたんです。ですから、われわれは実はこの原案提出権は、大蔵大臣としょっちゅう折衝する段階においてこれを忘れていることはないのです。伝家の宝刀があるということは考え抜いて、いま抜こうかいま抜こうかという気持ちだったのですけれども、抜いて成功する場合と、抜かないで成功する場合があるのです。今度の場合は抜かないでよかったという判定のもとに協議がととのったということに相なります。
  236. 横山利秋

    横山科員 三百十五億の要求を出して二百三十九億で協議ととのった。そろばんだけ申しますと、実は二百三十九億もらえばそれでありがたい、三百十五億も要らなんだ、山をかけていたんだ、まさかそういう気持ちじゃないでしょうな。いやらしいことを言うけれども、まさかそういう気持ちじゃないでしょう。最高裁としても、国民全般の財政負担なり大蔵大臣立場ということは判断しなければならぬ場合もある。私が言っていますのは、いまの裁判制度は国民の期待にこたえておらぬということですが、それについてあなたは一向口を開こうとなさらない。私が先ほどからるる話しているように、裁判はおくれおくれているじゃないか、あなたはそんな十五年もおくれておらぬと言うけれども、それは、私の言うことを逆手にとった話であって、いまの裁判制度というものが円滑にいっておるか。裁判所の職員は——大臣も聞いてくださいよ。裁判所だけこういう制度がある、書記代理、書記補。各省にはないです。私が、その書記じゃないけれども書記代理にしてもらうんだ、そうすると、名目だけは書記代理で、基本給のほかに四%の手当をもらいます。これは合法的にやっているのです。私は、一〇〇%の責任を負わされながら、下の給料のほかに四%のお手当がもらえるわけだ、こんな給与制度が裁判所で行なわれておる。この間七十二歳のじいさんがボイラーの前で死んだのです。それは特異な例だけれども、しかし、いずれにしても七十二歳のじいさんをボイラーマンとして裁判所で使っておったということは厳然たることで、この間ボイラーの前で死んじゃった。書記の代理だって、責任だけは全部一〇〇%負わされて四%のお手当をもらう、こんなのはほかの省にありません。私は、給料のことばかり言うわけじゃないけれども、いま学校を出て裁判官になるか、弁護士になるかといったら、圧倒的に弁護士にいきます。裁判官になり手がないのです。だから千二百七十五名、自動車だけが十一台、これは認可されたかどうか知りませんけれども、自動車はくれたけれども運転手は許可しなかった。予算にちゃんと自動車は買っていいとある。私は何でそんなことを言うかというと、この間最高裁の自動車に乗ったのです。前代未聞の古い自動車です。あんたの自動車とえらい違います。最高裁の自動車はほんとに古ぼけだ。それに、自動車は十一台買ったはいいけれども、運転手は認可しない。千二百七十五名の中で十六名の裁判官ですからね。これは少し余談になりましたが、とにかくそういう状況なんです。  私は、何も最高裁なり裁判所に働く人のためよりも、むしろ国民の憲法によって守られておるこの訴願権というものが円滑に運用されていないということを強く指摘したい。五十年は特異な例だろう、松川も下山も特異な例だろう。しかし、いずれにしても、裁判がじんぜん日をむなしゅうしているという批判を私がしたら、裁判官はおこるかもしれないけれども、国民の側としては、裁判をやったら泣くぞということで、権利の行使を妨げているわけです。ですから、大蔵大臣に対しては、とにかく財政法について疑義をただしました。財政法は、こればかりでなくいろいろありますから、日をあらためますが、最高裁も、財政法に基づく権利、それは最高裁の権利でなくて国民の権利を守るために存置がしてある。その国民の権利が行使されずに、今日の裁判に関する予算はあまりにも少ないということを指摘せんがためにやったわけなんであります。   〔登坂主査代理退席、主査着席〕 この点につきまして大臣が、今日の最高裁、法務省等に働く——経済省と違いまして、まさに日陰のところで働く人々についてどういうお考えをお持ちになるのか。今後このなり手がないというような状況について、どういう改善をお示しになろうとするのか。財政法の欠陥と同時に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  237. 田中角榮

    田中国務大臣 基本的な裁判所の予算に対してはあなたと同じ考えであります。私も、裁判所というようなところは、予算要求ということに対してはあまり技術的にうまい人たちだとは思いません。同時に、国の予算を使うということに対しては非常にきびしい態度をとっておられ方々でありますから、裁判所の予算ということに対しては、ただ経済的ベースとか時代の要請とかということで他の現業官庁が予算がふくれていくときに、こういうところに重点をより重く置かないと大きな欠陥になるという考え方で、私も書記官補の組みかえ等に対しては、三十七年、三十八年、三十九年と三カ年計画で全部これを行なったり——まあいまの予算が最高のものであるというふうには考えておりません。私自身も、ささやかではありますが、日本の司法制度の将来の確立確保という問題に対しては、予算上も十分配慮していかなければならないということは考えております。符に施設や裁判所の庁舎等も非常に古くなっておりますし、新しい憲法の規定の中で、裁判所自体の環境も新しく変えなければならない面もございます。同時に、はなやかな役所でないだけに、裁判所の要求に対しては、われわれももっと真剣に対処すべきであるという考え方でございます。将来にわたっても大いなる努力を向けてまいりたいと思います。
  238. 横山利秋

    横山科員 大臣のそういうお気持ちが去年の十二月にあったら、私はこんな質問せぬでもよかったと思うのです。  事務総長に苦言を呈しておきたいのですが、いま承れば、十年間も抜かない伝家の宝刀だそうです。十年間も抜かないとさびつきますよ。あなたも事務総長になられてから十年になりませんけれども、あなたの在任中には一ぺんは抜いて、大臣がいまおっしゃったことが速記録に載りましたから、これを大臣が履行しなかったら、やはり財政法による最高裁の立場、権利というものを断固として行使をする。決して私は、くどく言いますけれども、あなた方のために言っているのじゃないですよ。国民の権利を守ることがいまなおざりになっておる。あなた方は、去年よりはちょっとふえたらいい、それでことしはおさめようじゃないかということでは、いつまでたっても百年河清を待つようなものです。来年は数々とひとつ田中大蔵大臣——そのときはまだ、大蔵大臣あなたも御在任だと思いますけれども、断固として財政法の精神を生かすように要望いたしまして、私の質問を終わります。
  239. 中野四郎

  240. 川俣清音

    川俣科員 大臣お疲れだろうけれども、これはぜひ詰めておかなければ最終になりませんために、あえて時間をさくわけですが、予算委員会もだんだん終わりに近づいてきておるわけですが、この分科会である程度詰めて、早く結論を出したいというところからあえてお願いするわけですが、その前提として、実は本論は、大臣だからはっきり言いますけれども、農業用ガソリン税の問題なんです。これは懇案になっておる問題で、いずれ片づけなければならない問題で、これはどうも大臣だけ責めてもなかなか解決しにくい様子が見える。これは、大臣が詰めにくいとか解決しにくいというはずはないと私は思いますけれども、幾分弁護の意味でも、これをお尋ねしなければならぬ。その前に、農業用ガソリン税のときに、どうも困難だと言われておる点がありますので、別な毎度から私はお尋ねしたいと思うのです。  三十九年の農業所得のうちで、一番大きい費目として水稲所得があるわけですが、これは、税法にすると申告所得でありますが、だいぶ減ってまいりましたとは言いながら、対象農家が多いものですから、いまの税務署の職員ではなかなかこなし切れないというところから標準課税方式をとっておられるようですが、税法からいえば、これはやれないわけですね。この点はいかがですか。
  241. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 税法の原則的なたてまえから申しますと、一人一人の個別の所得を計算して申告していただくということが原則なのでございますが、ただ農家の方々は、とても全部収支の計算をやっていられることがなかなかむずかしい、できない。そういう場合には、そうした納税者の御便宜のために標準をつくって、それをお示しして申告していただく、こういう取り扱いであります。
  242. 川俣清音

    川俣科員 私ども、それはやむを得ないと思います。税務署の職員がこれをこなせるだけおりますれば、税法のたてまえを厳守すべきだということを強く主張しても、それはそのとおりでありますと言うほか道はないと思う。しかしながら、何といいましても税務署は農業問題については弱いのですから、実際わかりにくいものですから、標準課税をつけたほうが公平であるし、しかも能率も上がる、こういうことになると思うのです。これは必ずしも税法によらないですよ。だけれども、農業所得というのはむずかしいから、こういうことによってかえって公平を期せられるという便法もあって、あなた方はりこうでこういうことをやっておられるわけですね。そうすると、農業用ガソリン税も、これは消費者が当然減免されるべきものであるという原則はそのとおりです。それに標準なんという、あるいは一定のものをかぶせるということは無理だということはわからぬわけではない。一方においては、農業所得税は標準方式をいまお話のとおり公然とやっておられるのです。そうすると、大臣、あなた方はいままでこれは非常にむずかしいのだ、税の本来からいって好ましくないのだと言われたけれども、好ましくないことをやっておられるのです。当然なようなことにして厳然としてやっておられるのです。これはどうなんですか。片一方はできないと言い、片一方はやれるんだ、これは税を取るほうだからして、何としても取りたいというところからやるでしょうけれども、片一方の減免するほうからいえば、何とかこじつけてやりたくないというように、田中さんはそう考えないだろうけれども、どうも大蔵省はそう考えているんじゃないかと思うので、私はあえてこれを提起をしたのです。どうですか。
  243. 田中角榮

    田中国務大臣 農業所得につきまして標準方式をとるということは、これは、御承知のとおりデータも大体ございますし、大体できるものであります。しかし、農業用ガソリンになりますと、これは、Aはたんぼ何反歩を持っている、また山林は何町歩持っているというふうなものでは解決できないわけであります。これは、農耕機を持っておる人が必ずしも農民の数とは一致いたしません。農耕機でもって自分でもってやっておる人、また、持っておりまして、これを請け負いながらやっておる人、それから親戚だから貸してやろうということで借りてやっておる人、貸す人、しかも農業用のガソリンにつきましては、どうもモーターバイクとかいろいろなものに流用されるおそれもありますし、それから農耕機でやらないで、百年一日のごとくくわでやっておる人もあります。こういう状態でございますので、農業所得に対して標準課税をやっておることと同じように、反別幾らといっても、それは横流しになるという可能性も出てまいりますし、どうもなかなかむずかしい、こういう結論を技術的にとらえておるわけであります。
  244. 川俣清音

    川俣科員 いま大臣が言われたように、農業用のガソリンを使う農機具等が一定していないし、また使用者も非常に多数にのぼるんだということですが、しかも、この間の答弁によりますと、この対象の農家になるのは四百二十万戸に及ぶ、こういうことですね、そうでしょう。そうすると、これを見てごらんなさい、いま農業所得税を納めているのは何軒ですか。
  245. 泉美之松

    泉政府委員 農家で所得税を納めている戸数は約二十万戸でございます。
  246. 川俣清音

    川俣科員 大臣、お聞きのとおり、農家経営をやって税金を納めておるのが二十万戸、それが四百二十万戸からガソリン税を取ろうというわけですね。わずか二十万戸よりか税金を納める能力のないものから——早く言うとそうでしょう。農業所得税を納めるものが二十万戸で、その何倍から税金を取るつもりなんですか。ガソリン税とはいいながら、細々とやっておる、農業所得税も納めれない何倍もの者から税金を取ろう、こういうことでしょう、計算からいうと。性質の問題でなくて、対象農家になるとそうでしょう。いま二十万戸より農家から税金を取れないのに、ガソリン税だというと四百二十万戸は取れる、こういうことになっておる。これではほんとうにかよわい、負担能力のない者からでもトラクターを使えば税金をとる、ガソリン税をとってやる、こういうことになるのじゃないですか。これについて、これは大蔵省の役人じゃわからない、大臣から答弁してもらいたい。こういうことがはたして大臣どうか、普通の対象農家にならないような零細農家、戸数からいうと、内容はいろいろあるでしょうけれども、それから税金を取ろうという考え方、それはガソリン税だから、消費税だから取っていいということになるでしょう。消費税ですから、たばこからも、あるいは酒からも取っていいけれども、これは酒やたばこと違うんです。生活必需用品として使われるものなんです。嗜好品じゃないんです。それからまで税金を取ろうということは、大臣、もう少し寛大に考えてもいいのじゃないですか。私は無理を言っているとは思わない。これを解決できないような能力のない者がそろっているとは思わない。標準課税方式なんて、これは、ぼろがあるものをぼろでないように見せている。あとで説明しますけれども、みなぼろです。そのことは一向感じないで、四百二十万戸から税金を取ってやるんだというような考え方がそもそも無理だと大臣はお思いにならぬかどうか。
  247. 田中角榮

    田中国務大臣 それはよくわかるのです。それはよくわかるのですが、四百二十万から直接税金を取っておるわけじゃないのです。これは、御承知のとおり、ガソリン税というものは蔵出し税金でございますから、だから、税金を納められておる。しかし、零細な農業からも取るということに対しては、かけてならないということよりも、前向きな農業政策として考える場合に、零細な農業が非常に多いという実情から考えても免税にしなさい。こういうことから、農業用免税の問題が起きておるのです。ただ方法は、農業用免税をするとしても、四百二十万戸から取るのですから、これは一括してガソリン税を取っておる場合と、これを戸別に今度消費したものに対して的確に税金を免除してやろうということになると、これは四百二十万戸ですから非常に捕捉しがたい。その意味でどうするか、結局、非常に前向きに考えて農道整備のために五十億という金を特計しよう。そうすれば、実際において免税しにくい。いろいろな理由もございますが、しにくい。公平論とか、いろいろな問題が起きてくる。事実技術的にもむずかしい。しかし、何か農家に還元してやろう。還元しなければならない、こういう前向きな姿勢考えましたのが五十億を農林省予算で農道整備ということで特計したのです。ですから、これを特計するほうがいいのか、税金をまけてやるのがいいのか、こういうことになるわけですが、特計もしろ、税金もまけろ、こういう考え方もあるでしょうが、いま農業用ガソリン税問題に対処することとしては、技術的に非常にむずかしいので、やはり特計したことによって一律免税と同じような効果をねらおう、こういみじくもひとつ考えたわけであります。
  248. 川俣清音

    川俣科員 それじゃもう少し逆に聞いてまいりますが、大体この標準課税方式を各県別、市町村別に割り当てる場合にはどういう方式をとっているか。時間がないから、ほんとうはあなたにお尋ねしてからでいいんですが、私のほうで説明します。間違っておったら……。標準に基づいて、収量の高いところは必要経費が高い、収量の少ないところは必要経費が少ない、大体こういうことでいっているわけですね。これは、例をもってすれば、これを標準にして——この標準でも、あなた方が出された標準でも、いろいろなことがあるが、そういう方向でできている。これを標準にして、各税務署が査定をする場合には、収量の多いところは必要経費も多いだろう、それから、収量の少ないところは必要経費も少ないんだ、大体こういうしかたですが、そこで、税の対象になるものを見る、こういう押え方でしょう。これは間違いないでしょう。
  249. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 農業の所得標準の必要経費の算定でございますが、これは、機械的に収量に何%、そういったような経費の算定じゃございませんで、税務署がまず標準農家について実額調査をいたしまして、その調査の実績に基づいて算定しますし、またそればかりじゃなくて、各経費項目ごとにどのくらいの所要物資をその農地に投下したか、それからまた、その経費項目ごとに農業統計とか、あるいは農業用品の価格とか、これは前年度対比でどの程度伸びているか、そういうことを全部総合的に判断しまして、実際に調べたところに基づいて経費を算定しているのでございまして、事例的に経費を認めているのじゃございません。
  250. 川俣清音

    川俣科員 そんなことを言ったら税務署で困っちゃいますよ。そういうことならば、これを標準にして——この標準というのは実際調べたものである、こういうたてまえにおいて、各方面を調べた結果、これが大体の農家の基準になる、標準になる、こういう考え方なんですね。この考え方が悪いというのではないですよ。そうでなければめどがないじゃないですか。それよりも、肥料をうんと使ったということなら証明を持ってきなさい、この範囲内であれば、使わなくても大体この範囲だ、これ以上使ったというなら証明を持ってきなさい、こういうたてまえで、大体これを基準にしておられる。そのことには間違いないでしょう。
  251. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 先ほど申し上げましたのは、標準をつくる場合に、その標準の経費としてはどうかということを調べるのに、いまのような実態の調査に基づいて調べると申し上げたので、個々の農家に適用する場合には、いまのような標準をそのまま適用する、こういう結果になります。
  252. 川俣清音

    川俣科員 次長、お聞きのとおり、一つの基準といいますか、標準ということは、公平な方法としてやっておるわけでしょう。悪い方法というわけじゃないですよ。こうでもしなければ、実際にやれないであろうし、その必要経費を一々個々に当たって、おまえのところは多い、おまえのところは少ないというようなことではかえって不公平にもなるということで、大体の基準に合わせておる、こういうことなんです。そこのところを悪い方法とは言いません。だけれども、いま言うように、税金を取るほうが、まあこの程度ならばいいであろう、こういう基準なんですね。ガソリン税のほうは基準をつくれない、個々でなければ消費する実態がわからない、個々でなければわからないんだ、こうおっしゃるから——一体あれじゃないですか、必要経費が生まれてくるのは、トラクターを使っておる、何を使っておる、肥料を使っておる、こういうものが必要経費になっているんでしょう。内容がそうでしょう。個々の農家の——これはあなた方、総体でトラクター何台あるから何だ、それは標準を出されるでしょうけれども、この標準というものは、みな使っておるものを、大体この程度にすれば村総体からいけば間違いない、こういう基準が出ているわけでしょう。そうじゃないですか。
  253. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 先ほど申し上げました農業標準は、一応平均的な標準でございまして、そのほかに、たとえば、いまの大農具を持っている、農業用自動車であるとか、動力噴霧機であるとかいう場合には、標準外の経費として、一応標準ではじいた所得から、その個々の農家の実情に応じて、そういう保有状況、使用状況に応じて、その経費をさらに引く、こういう取り扱いになっております。
  254. 川俣清音

    川俣科員 そのとおり。そうすれば、この実態がもしも間違いないとすれば、私は大体妥当なものだと考える。とすれば、どのくらいガソリンのトラクターを使ってどのくらいの経費をかけておるのかが、それだけ経費を見ているのだから、その中から出てくるわけだ。ガソリンだけがわからない、経費のほうならわかるというのはどうか、こういうことです。自分のほうで調べた——これがいいか悪いか別ですよ。これが大体妥当だというようなことから、その妥当なもので、トラクターはどれだけ使ったかということは、平均でしょうけれども、出てくる。私のところは特別使ったというなら別ですけれども、大体平均このぐらい使うのだということが出ておる。それが標準になっているでしょう。そうすると、標準の中には、一体ガソリンはどのくらい、トラクターはどのくらいということが出てきているはずです。そこへいくと、わからないというのはおかしいじゃないですか。だから、税金を取るほうだというとよく調べるけれども、少し歩戻ししてやるということになるといやだ、こういうことじゃないですか。少し悪くいうと、そういうことじゃないかと言うのです。
  255. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 先ほど申し上げましたように、大農具、たとえば農業用自動車、動力噴務機というのは、標準外として、標準によってはじいた所得からさらに個々の農家の実情に応じて引く、したがいまして、一人一人の保有状況、使用状況によってそれぞれ個々に引く経費が違ってくる、こういう取り扱いになっておりまして、平均的にこの地方、この市町村ではこうしたガソリンを幾ら引くということで、そうした標準率の中から平均一律に引かれている、そういう取り扱いではございません。
  256. 川俣清音

    川俣科員 確かにそのとおり。特別に使用した場合には特別に控除する、特別といいましても、よほど特別でないと控除しない。これは標準の中に入っておる。こういう説明なら、一日でも借りたもの、半日でも借りたものは考えてくれるか、あなたがここで言明されるならさっそくやりますが、そうでない。大体標準に近いものの中にどれだけ入っておるか、それを非常にオーバーしたものについては特別控除する、こういうたてまえですね。肥料なんかと同じです。ですから、実態はみなつかんでおる。中には特別に使ったということの申請もあるでしょうし、あるいは標準の中よりも使っていないのだということもあるだろうが、実態をつかんでおられる。つかんでいなければ、この課税というものはおかしいということになる。大体の様子は知っておられるから課税できるのです。農業に要した費用の計算ができるわけです。ガソリンのほうはできないけれども、大体使ったことはわかる。ガソリンも使った中に入るのですよ。それはわからないけれども、機械を使ったのはわかるということになれば、それは正確かどうかということは別にして、大体標準の中のものであれば認めるし、それ以上使ったということになると、証明を持ってくるとか、どこのものを使ったとか、資料を出さないとこれは減額しないわけです。控除しないわけです。ですから、実態を把握されているということなんです。把握していない課税だということは言い切れない。把握の結果、これだけの農業所得を査定いたしましたと言わざるを得ないわけです。いいかげんな農業所得でやりましたなんて言えない。どのくらい必要経費として使ったかということを把握したというたてまえに立っておられる。個々であろうと総体であろうと、公平にするのにはどうするとか、職員が足りないからどうするということは別にして、総体としては把握をしている、こういうたてまえではないですか。そうでなければ予算が組めない。
  257. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 肥料は、農業標準の中に経費として算入されておりますが、農業用の機械の燃料費は、先ほど申し上げましたように、農業標準の中には入れずに、別に個々の実態に応じて引くということになっております。したがいまして、個個の課税を算定する場合には、一人一人の個々の農機具、ガソリン代が幾ら、燃料費が幾らであったかということは、最終的には計算いたしますが、一律に標準的なものとしては計算しておりません。
  258. 泉美之松

    泉政府委員 ちょっと補足して御説明申し上げますが、お話しのように、農業所得の課税にあたりましては標準率をつくっております。ただ農業用の機械につきましては、標準率の中に入れておりませんで、その償却費と、それに要したガソリン代、あるいは軽油を使っている場合もございますが、そういった場合の費用につきましては、別に標準外の経費といたしましてこれを査定いたしておるわけでございます。そういう意味では、もちろん農業所得の課税にあたってはある程度のところはわかっておるじゃないか、お話しのとおりわかっております。しかし、先ほど申し上げましたように、農業所得税を課税いたしておりますのは二十万戸でございます。それから農業用機械を所有しているものが二百万戸、先ほど申し上げました四百二十万戸のうち、あとの約同じくらいの二百二十万戸ですね。これは機械を持っておらぬで、あるいは農業協同組合の持っている機械、あるいは親戚の持っている機械、あるいは隣の持っておる機械、これを借りてやる、あるいはそういうところに請け負ってもらって機械を使用してやる、こういうようないろいろの形態になっております。  それかう、川俣科員も御専門家ですからよく御存じのとおり、農業機械にはいろいろな種類のものがございます。したがって、農業所得を把握する際には、種類は違っておっても減価償却費の額とかいうようなものはそう変わるほどのものでもございませんけれども、揮発油の消費量となりますと、軽油と違って汎用性があるだけに、その消費量をどういう機械は幾うという標準を、そこにきめようと思えばきめられないことはございません。しかし、その場合にも畑地であるか田であるか。その畑地の傾斜がどういうぐあいであるとか、あるいはどういう作業をする——噴霧器を使うのか、トラクターで耕すのか、あるいは脱穀機として使うのか、そういった作業の内容によっても消費量がいろいろ違うわけでございます。そういう意味で、非常にそういう場合の基準的な消費量というのを見出すのが困難でございます。昨年国税庁が実施いたしました実地調査の結果を見ましても、その消費量は、その最高と最低との差が何倍も違っておる。したがって、標準的な消費量というものをなかなか見出しがたい。ところで、これをかりに農業用揮発油の減免税をするということでやった場合は、消費量に対して少な目の数量をやると、これでは不足だと言われてしかられる。それでは少し多い目に差し上げるということになりますと、これがモーターバイクに横流れする可能性もある。その辺は少しおおらかにやったらどうだというお気持ちかもしれませんけれども、全体の揮発油の消費量のうちに占める農業用揮発油の数量が少ないものでございますから、そういう横流れ等の起きることによって、他の用途に使用される揮発油の取引に及ぼす影響をわれわれとしては非常に心配いたしております。そういうことがありますために、困難な理由を先ほど大臣から詳しく御説明申し上げましたが、そういうことも加わって、われわれとして技術的に困難である、こういうふうに思っておるのでございます。
  259. 川俣清音

    川俣科員 そうなると、農業の生産の必要経費というものをつかんでいない、遠く離れたものだという見解なら、私はガソリン税の問題はあえて問題としない。実態を把握しておるということになると、たとえば借りたにしましても、証明がなければあなたのほうの末端では認めないわけでしなう。証明を持ってこさせるということは、実態をつかむためでしょう。そうじゃないでしょうか。だから、農業所得税を課税する場合に、収量と必要経費を見て、その収益に対して課税をするというやり方、どういう経費をかけたかということを把握しなければならぬ、その把握はむずかしいのだ、確かにむずかしいことはわかる。畑と田とは違います。しかしながら、これは収量が違うということで、畑などはトラクターを使いましても、実際はなかなかトラクターとしての使用は認めない。収入の多い水稲の場合にはある程度認めるが、東京都下あるいは埼玉のような蔬菜地は別ですけれども、普通の農家のところにトラクターを使ったって絶対認めない。それほどやかましく農業について査定をしておられるのであるから、農業については実態をつかみにくいのだと逃げるのは、逃げるだけだと思う。相当な把握をしておられても欠陥がありますよ。これから指摘しますけれども、私はそういう指摘よりも、まず大蔵省は、農業について相当詳しく把握をしておるものだということを是認しての話なのです。そうすれば、ガソリンだって把握できないなんていうことはおかしい。いまの農業査定というものはみなでたらめだ、こういうことになる。あなたは首を振るけれども、わかっていたらどれだけガソリンを使っているか、どれくらいトラクターを使っているか、みなわかっているはずだ。現に農村でこれを把握しているかといえば、把握していない、当てずっぽうであるかといえば、当てずっぽうでないと言う。ガソリン税のほうへいくと、いや、農業の実態があいまいだ、こう逃げる。大臣、どうなのだ。農業収入を把握していなければ来年度の予算の査定はできやしませんよ。しかも、天候に支配されるようなものを、どのくらいになるかわからないものさえ、まあこのくらいだろうという長年の経験で査定をしておられるのに、ガソリンの査定は非常にむずかしいという。天候に支配される農業さえ、いま予算書を見てごらんなさい、米はどれくらいとれるか査定しているじゃないか。そういうむずかしいものでもやっていながら、ガソリンのことになると絶対できないようなことを言うのはおかしいじゃないかということなのです。
  260. 泉美之松

    泉政府委員 お話しのとおり、農業所得の課税にあたって使用した農業機械の償却とか、あるいはそれに要した原燃料代、これはもちろん経費として引いておりますから、その意味では、そういう実態はある程度わかっております。ただ、私が申し上げますのは、農業所得の課税をいたしておりますのは二十万戸、今度揮発油税の減免方式はいろいろございますけれども、われわれが最も理想と考える方式について検討すれば四百二十万戸、そのために資料をいろいろ整備しなければならぬとか、それから切符を発行してやっていかなければならぬ。そのために人手が非常にたくさん要る。税務署の職員をふやす必要があるという問題と、それから、かりに税務署の職員にそういう切符を発行させなくても、市町村とか農業協同組合に切符を扱わせればいい、そういう御意見もありましょう。そういうふうになりますれば、もちろん税務署の職員の数をそれほどふやさなくても済むでしょうけれども、それでも市町村なり農業協同組合なりの事務は相当ふえますから、そこではやはり職員をふやさなければ問題が起きてまいる。それから、税務署のほうでは横流し防止であるとか、あるいは免税の確認であるとかいうことのためにやはりある程度の人数はふやさなければならぬ。技術的にできないと申し上げているのではございません。技術的に非常に困難な上に、そういった人の増加というようなこと、税務署あるいは市町村、農業協同組合の事務の増加ということがなかなかたいへんなことである。したがって、行政的な能率の点から見ると、減免税の方式よりも、今回の予算的な措置のほうがより望ましいのではないかというのでございます。
  261. 川俣清音

    川俣科員 大臣、ここで問題は、行政上から、経費がかかることはできるだけ避けなければならぬ。国民から税金をとるときに、あるいは免税するときに、経費がかかるからおまえのところから多くとるのだという、一体そんなことはできますか。農業所得税はそれをやっているのです。どういうふうにやっているかというと、肥料を幾ら使ったといっても、これだけの収量でそんな肥料を使うわけはない、証明を持っていってもなかなか認めない。ところが農業の場合には、肥料を多く入れ過ぎたために減収している場合がたくさんあるのです。このときの肥料というのは、絶対あなた方は認めないですよ。何といったって、手が足りなくて、一々見て回れない、こういうのです。それはやむを得ない、そう思わせて押えつけているでしょう。ほんとうは申告納税だから、認めなければならぬでしょうけれども、税務署の職員が足りなくて、この程度で見てくれなければ、とてもそれは実態調査なんかできませんから、これでかんべんしてくれ、こういうやり方ですよ。実際に行ってごらんなさい。泣き落とし、くどきですよ。それでやっている。それでも納得すればいいです。悪いとは必ずしも言わない。なかなか苦心してくどき落としておる。くどき落とすのはなかなかじょうずになりましたが、それまでしてやっておるのに、ガソリン税のことになると、絶対それはできませんというのはおかしいじゃないか、こういうのです。大臣、どうですか。
  262. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど主税局長から申し述べましたように、絶対できないというのではございません。しかし、国家的に見て、よりベターだ、こういうことを申し上げておるわけでございます。でございますから、いろいろなことを考えて、農協とか町村とかそういうところに委託する、国税でもってそういうことをやることはなかなかむずかしい。そうすれば、税務署でやれば千五百人も増員しなければいかぬ。そういう人間はなかなか得られない。それだけではなく、一番こわいのは、税務署の出先と納税者との間に、横流ししているのじゃないかとか、そういう対立感情が起きることで、実際はこういうことをほんとうに思っているのです。そういうことをいろいろ考えてみまして、まごまごすると、百億の減税に対して二十億も三十億もきっとかかるようになる。こまかい技術的な問題を聞いてみますと、非常にむずかしいということなんです。それですから、やれないのじゃない。ただそういうことよりも、トラブルを起こしたり、いろいろなことをするより、よりベターな方法はないか、それはどうせやらなければならないのですが、ひとつ農業用ガソリンの減免税に見合うような金額を農道整備に入れよう、こういうことでやっているわけですから、いずれがベターか、こういうことでひとつ御検討いただきたいと思います。
  263. 川俣清音

    川俣科員 これは、いずれ別なところで詰めていいのですが、ここでひとつトレーニングだけしておいたほうがいいと思います。ただ、農業基本法のことですが、あの農業基本法の中には、今後農業構造改善事業として進める目標として、農道をつくるということが出ている。しかも広幅の農道をつくる。これで構造改善を進めていく。その予算もつける、説明はこういうことになっておる。私どもは、そんな説明をしたってできるものじゃないのだ、空論にすぎないのだといったけれども、いや必ず農業構造改善事業の基本方針に基づいて、農道も整備していく、こういう説明になっているのです。ガソリン税から持ってきてやるのではなくて、一般会計でちゃんとやりますという説明になっている。あのときの説明といまと違うのだということになれば別ですが、あれはあれなりに説明をされておるわけです。それじゃそのしかたが出ているかというと、あの説明には出ていない。ガソリンの見返りで埋め合わしておく、こういうことになるのです。説明どおりになってない。講ずべき事項なんという中には入ってこない。だから、結局早くいうと、一般会計で負担するものをガソリン税でやるんだ。それもいいでしょう。これも悪いわけじゃないけれども、農業構造改善で講ずべきことはやらないで、こっちで逃げるというような形は、基本的に誤りじゃないかと私は思うのです。だから、一般会計で出すべきものは出して、それほど農業というものは進めなくていいならいいでかまわないですよ。ですけれども、構造改善でこれはやります、いや、それは財政が困難だからガソリン税でやるんだという、そういう説明になっていないのですよ。それですから、この際やはり大臣の約束もありまするし、やはりできないなんていうことを言わないで、切符制だって必ずしも切符でなくたって通帳みたいなものでもいいのです。一括通帳みたいなものもないわけじゃないのですから、考えて、大蔵省のあの有能な役人が考えてできないことはない。なるべくやりたくないという立場に立てば、口実を見つけることはまことに上手ですからね。そうでなければ、税金をくどいてとるというようなこと、あの手腕なんていうものはたへんな手腕です。ほんとうに手腕ですよ。普通にとれるものじゃないのです。よほど上手な人でなければとれるものじゃない。なかなか、いまは物価が上がってきて、何かで埋めようといえば、税金を押えるよりほかに生活の道はないのです。ですから、なるべく税金を納めないことが、会社であれ、個人であれ、一番収入の道です。それを上手にとるというのだから、よほど手腕があるのです。その手腕をもってしてできないなんていうのはおかしいです。だから、できない、できないというのは、できないと言えば大臣は腰を上げないだろうというように見込まれておるのだから、この際やれるような者はいないかと募集してごらんなさい。やれるという人が出てきますよ。
  264. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げるように、やれないというのじゃございません。やれることはやれるけれども、それは非常に混乱が起きたり、いろいろな問題がありますので、よりベターな方法で農民に還元するということで別途計上をやる、こういうのです。また、農業基本法によって農道を整備しなくてもいいのか、そんなことはございません。農道は整備します。また、しなければならぬ。しかし、それにプラスアルファということで別途計上をしてあるわけでございます。しかも、一つには、ガソリンは四兆一千億、五カ年計画道路の特定財源にもなっておるわけでございます。でございますから、道路費用という面から、私のほうではこういうふうに別途計上だといっても、何も証明すべきものはないじゃないか。これは、政府の誠意を認めてもらうということであります。これは、国会でもってどうしてもわからないということを強調された場合どうするかということで、とにかくガソリン税、道路財源から法律改正をして移そう、そうすれば清算条項を入れておけばいいですから。しかし、そんなことは国会対策だ。明敏な社会党の皆さんも、そういうことはよくわかる、政府がそんなことをしてとにかくつじつまを合わせるよりも、思い切って五十億、六十億も出しなさい、こういうことがよろしい、こういうことでほんとうに考えた結果、よりベターな方法としてやったわけでございますので、これは、ぜひ十分お考えいただきたい。これは、私のほうでも国会で私がしゃべったのですから、四十年度の減税政策を検討するときには、まず第一番目にこれを検討してくれということを事務当局に口がすっぱくなるほど言っておりますが、大臣、遺憾ながら、こういうことをするよりも、国民の利益を守り、農業政策を行なうためには、このほうがよりベターです、こう言われて、私もまかれたわけじゃないのです。十分検討いたしましたが、やはりそうだという結論に達したわけでありますので、御理解を賜わりたいと思います。
  265. 川俣清音

    川俣科員 いまここで最後を詰めるところじゃないから、結論はいずれきめなければならぬと思いますけれども、とにかく四百二十万戸を相手にして無理に税金をとるなんていうことをしなくてもいいじゃないか。これは全く政治的判断です。そういう判断を大臣はしたものだと私は思う。個々の零細なものからでも、とれるものなら何でもとろうというような考え方をやめることも必要なんじゃないか。そんなに手数をかけてまで無理にとらないでもいいのじゃないか。そういう意味で、これはやらない。重油にしてもやっておりまするし、軽油にしてもやっておりまするし、決してそれほどむずかしい問題ではない。一括してやってやれないことはない。いまここで議論をして詰めようとは思わない。そういう問題が残されておるということを、この予算委員会が終結を見ないうちにここでひとつ言っておかないと、大臣、それは解決がつかないのだということを、警告の意味も含めて、配慮をされたらどうか、こういうことなんです。それで、大体、大臣もそろそろ決心されたことだと思うから、ここで議論するよりも、実を取らなければならぬ。花じゃない。大臣は花だけれども、こっちは実を取らなければならない。
  266. 中野四郎

    中野主査 本日の質疑はこの程度にとどめます。  明二十五日は午前十時より開会して、外務省所管について質疑を行なうこととし、本日はこれにて散会をいたします。    午後五時三十二分散会