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1965-02-27 第48回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十七日(土曜日)    午前十時十六分開議  出席分科員    主査 古川 丈吉君       赤澤 正道君    仮谷 忠男君       橋本龍太郎君    卜部 政巳君       大村 邦夫君    川俣 清音君       兒玉 末男君    坂本 泰良君       桜井 茂尚君    田口 誠治君       中澤 茂一君    永井勝次郎君       西村 関一君    華山 親義君       山口丈太郎君    兼務 小林  進君  兼務松井  誠君    兼務 村山 喜一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         国 務 大 臣 高橋  衛君  出席政府委員         経済企画政務次         官       伊東 隆治君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  鹿野 義夫君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      久宗  高君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         農林事務官         (畜産局長)  檜垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  林田悠紀夫君         農林事務官         (農林水産技術         会議事務局長) 武田 誠三君         食糧庁長官   齋藤  誠君         林野庁長官   田中 重五君         通商産業政務次         官       村上 春藏君         通商産業事務官         (大臣官房長) 熊谷 典文君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         通商産業事務官         (繊維局長)  新井 眞一君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      宮本  惇君         工業技術院長  馬場 有政君         中小企業庁長官 中野 正一君  分科員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁調         整局参事官)  庭山慶一郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局参事官)  中島 清明君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    塩谷 忠男君         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         通商産業事務官         (企業局産業資         金課長)    新田 庚一君     ————————————— 二月二十七日  分科員灘尾弘吉君、中澤茂一君 永井勝次郎君  及び竹本孫一委員辞任につき、その補欠とし  て橋本龍太郎君、華山親義君、坂本泰良君及び  玉置一徳君が委員長指名分科員選任され  た。 同日  分科員華山親義委員辞任につき、その補欠と  して卜部政巳君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員卜部政巳委員辞任につき、その補欠と  して大村邦夫君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員大村邦夫委員辞任につき、その補欠と  して兒玉末男君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員兒玉末男委員辞任につき、その補欠と  して山口丈太郎君が委員長指名で、分科員に  選任された。 同日  分科員山口丈太郎委員辞任につき、その補欠  として西村関一君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員西村関一委員辞任につき、その補欠と  して田口誠治君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員田口誠治委員辞任につき、その補欠と  して桜井茂尚君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員橋本龍太郎君、坂本泰良君、桜井茂尚君  及び玉置一徳委員辞任につき、その補欠とし  て灘尾弘吉君、永井勝次郎君、中澤茂一君及び  竹本孫一君が委員長指名分科員選任され  た。 同日  第一分科員村山喜一君、第二分科員小林進君及  び第五分科員松井誠君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計予算経済企画庁農林  省及び通商産業省所管  昭和四十年度特別会計予算農林省及び通商産  業省所管      ————◇—————
  2. 古川丈吉

    古川主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和四十年度一般会計予算中、経済企画庁農林省及び通商産業省所管並びに昭和四十年度特別会計予算中、農林省及び通商産業省所管を議題といたします。  質疑に入ります前に一言申し上げます。本日も多数の質疑者の質問が予定されておりますので、質疑持ち時間本務員は一時間、兼務員もしくは交代して分科員となった方は三十分にとどめ、議事の進行に御協力願いたいと存じます。  質疑を行ないます。質疑の通告がありますので順次これを許します。  華山親義君。
  3. 華山親義

    華山分科員 農林省にお伺いいたしますが、本米穀年度の米の需給計画、大体予算のほうでは承知いたしておりますけれども、詳細にお聞かせ願いたいと思います。
  4. 中西一郎

    中西政府委員 本年度の米の需給事情お話でございますが、三十九年産米で千二百五十八万トン、玄米の推定実収になっております。そこで前年の産米に比べますと二十三万トンの減産であります。御承知のように北海道冷害がございまして、それの減収が……
  5. 華山親義

    華山分科員 私の持ち時間は三十分ということでございますから、簡単に私がお聞きすることだけ詳しくおっしゃってください。
  6. 中西一郎

    中西政府委員 二十八万トンの減産がございましたが、他府県では若干の増産がありましたけれども、差し引き二十三万トンという減産でございます。そこで輸入の手配をいろいろいたしまして、大体本米穀年度は十キロ配給を維持できるという見通しで推移できる、かように考えております。
  7. 華山親義

    華山分科員 輸入は総額で幾らで、どの地域からどのくらいということでございますか、お伺いいたしたい。
  8. 中西一郎

    中西政府委員 輸入の米の期首持ち越しも相当ございますが、現在の輸入見通しでは四十八万トン、準内地米三十三万トン、普通外米六万トン、砕米九万トンを計画しております。
  9. 華山親義

    華山分科員 地域別にはどうなっておりますか。
  10. 中西一郎

    中西政府委員 地域別には、台湾十五万トン、それから加州米が若干、スペインが少量でございます。そういう程度でございます。その他若干。
  11. 華山親義

    華山分科員 何か少し計算がぴちっと合わないようでありますが 若干とかなんとかということは、そういうことは未確定なんですか。
  12. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 ただいま官房長から申し上げました数字は準内地米について申し上げたわけでございます。準内地米につきましては、御承知のように、輸入先台湾スペインそれから加州あと韓国みたいなところがこれに該当するわけであります。したがいまして、ソースの面からいいまして、台湾米はすでに十五万トンという成約をいたしておりますので、これは確定いたしております。その以外の地域にどんどん輸入を進めておる段階であります。大体三十三万トンの輸入計画に対応いたしまして、台湾の十五万トンのほかは加州スペイン等で充当するというような形になっております。  普通外来、これは御承知のように輸入先タイ、ビルマというところでありますので、これもいまタイにつきましても契約を取りきめまして進めておる、こういう段階でございます。
  13. 華山親義

    華山分科員 三十三万トンということで今後見通しといたしまして十分でございますか。
  14. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 ことしの主要食糧計画を立てる際におきまして、大体昨年度におきまする実配量はこれを維持する。こういう前提で、ただあと人口増加考えまして主要食糧需要量を想定したわけでございますが、前年度需要量といたしまして、六百七万八千トンに対応して、四十年度においては六百十三万九千トン、こういう数を実は見込んでおるわけであります。これに必要な供給量といたしまして、国内供給量を除いた輸入米を想定いたしますと、大体輸入米としては三十二万トンの需給売却をすればいまの計画に合う、そこで三十三万トンという輸入計画を一応立てておるわけでございます。売却量としては三十二万トン、輸入量としては三十三万トン、こういう予定を立てておるわけでございます。  そこで問題は、今後の端境期におきましては、これによってもある程度早食いをするといいますか、早期出荷米によって需給の調整をするというふうなことが当然起こってまいるわけであります。したがいまして、今後のことしの作況いかんということも一つの要素だと思いますが、それらも含めて用意をする必要があろう、こう考えております。
  15. 華山親義

    華山分科員 今年の分は、三十三万トンということは、先食い程度にもよると思いますが、非常にぎりぎりの線、私は間に合わないのではないかという気もいたしますが、中間的な長期といいますか、目先長期日本の米の需給はどうなるものでございますか。このままでいきますと、やはり三十万トンないし五十万トン——五十万トンといえば大体一カ月の配給量になりますが、そういうふうなことについて、外米輸入というものが増加する傾向に今後の目先はあるものでございますか、どうですか、伺いたい。
  16. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 長期見通しにつきましては、農林省といたしまして、たびたびいろいろの見通しを出しておるわけであります。一つ農業基本法に基づきまして四十六年度長期見通しを立てておる、またさきには中期経済計画において需要並びに生産見通しを立てておるわけでございます。これによりますれば、大体四十三年におきましても、生産消費につきましては安定した均衡する基調に立っておるわけであります。消費量につきましては、御承知のようにでん粉全体の一人当たり摂取量漸減傾向にあります。米も 大体一人当たりとして消費量を見ますると、三十七、三十八年の傾向をたどりますと、明らかに横ばいないし微減の傾向をたどっておるわけでございます。したがって、全体の消費量といたしましては、人口増〇・九%くらいずつが伸びていくだろう、こう想定しております。米につきましては、大体三十二年から三十八年までは年々反収してと一・五%ずつ増加している。したがいまして、まあ大体人口増に見合う全体の生産量が伸びていく、こういうことであります。長期的な動向として見ます場合においては、まあ大体均衡しておるのではないかと思われるわけであります。  ただ問題は、短期的に見ますると、実は昨年も一昨年に比べまして十九万トン減産、ことしもまた、三十九年産米もまた北海道冷害が大きく響きまして二十三万トンの減産、こういう短期的な生産の減少が出てきます。それに応じて需給上必要なものは輸入せざるを得ないということになると思われるわけであります。  それから、短期的な必要量輸入に加えまして、今後も一応従来の趨勢でたどった生産の伸びが期待されるし、またそのような努力も必要になってくることと存じますが、そういうような生産努力にかかわらず、需要に対応して所期の生産があがらなかったというようなことになりますれば、それに応じて輸入量の増大をせざるを得ない。こういうことになってくると思います。  結論的に言いますと、長期的ないまの趨勢のもとにおいて考えますならば全体の基調は均衡している、しかし、そのときどきの作況が大きく需給には影響いたしますので、去年、ことしといった短期をとりますと、やはり相当輸入をせざるを得ない、こういうことでございます。
  17. 華山親義

    華山分科員 私は政府を攻撃するわけではございませんけれども、米につきましての確固たる政策がおありにならないのではないか。いまの大臣ではないのでございますが、前の大臣等におきましては、米は東南アジアから輸入すればいいので、東南アジアに対しましては日本工業製品を出せばいいのだ、こういうふうなことを言われた。現実には、東南アジアの米は輸入したって日本では食えないでしょう。しかも東南アジアでは、もはや米の輸出というものはそう今後有望なものではない。スペインはEECと結びますから、そう簡単に入れられるものではない。台湾でも、あの民政を安定しようと思えば、私は日本の言うとおり唯々諾々に米を出せるものと思いません。できることがあるとするならば、アメリカの加州はあるいは資本的生産でございますからできるかもしれないのでございますけれども、日本の米は非常に重要な段階に来ているのじゃないかと思われるのでございまして、ここで農林大臣の御所見をお聞きしたいのでございますけれども、かつてあったムードのように、米はもうつくらなくたっていいのだ、むしろ米をつくる上りも、選択的拡大ということばにあったとおり、あの当時はそういうムードではなかったかと思うのでございますが、果樹をつくれあるいは酪農をやれ、こういうふうなお考え農林大臣はお持ちでございますか。やはり米はもっと増産しなければいけないのだ、こういうものの考え方でおいでになりますか。基本的なお考えをいまここで伺いたいと思います。
  18. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話のとおりに私も考えまして、米というものはやはり日本で自給するのが日本農村経済におきましても、あるいは日本経済全体につきましても大事なことだ、こう思っております。需給関係からある部分は輸入に仰がなくてはなりませんけれども、輸入先等につきましても、いまお話のような状況でございます。でございますので、米は日本で自給すべきものだ、そういうふうに進めていかなくちゃならぬ。  それから選択的拡大の問題でございますが、私はその当時からも考えを申し上げておったのでございますが、水田選択的拡大の対象にして、これは果樹にするあるいは畜産にするといっても、実際無理なことでございます。あるいは裏作等飼料作物をつくるというようなことはありましょうけれども、しかし、水田を放棄して選択的拡大方向へ持っていくというのは無理な仕事でございます。そういう意味におきまして、やはり米の増産をするようにして、国内におきましても、米の点におきましてはできるだけ自給度を増していく。こういうことが政策としてとるべきことだということを深く信じておる次第でございます。
  19. 華山親義

    華山分科員 二、三年前の傾向から見ますと、土地改良にいたしましても、米のための土地改良ならばこれは認めない。土地の開拓にいたしましても、そこに一応水田というものを設けようとすると、それはいけない。こういうふうな状態であったのでございますが、日本経済動向というものが相当変わってきておると思いますので、米というものを軽視する観念、そういう観念は払拭していただくように、大きな声明でもひとつ大臣出されまして、そして米はつくるのだ、米は増産するのだという基本方針を明示していただきたいと思うのでございます。県庁等におきましては、幹部の方はわかっているかもしれませんけれども、米はもうあまり将来つくらなくたっていいのだという観念がまだ農民には残っております。そういう方面農民を激励する意味からも、米をつくることに財政的にも力をあげていただきたいし、また米はつくるのだというふうなことで、ひとつ農林省方針を明確にわかるように農民に知らせていただきたい、こういうふうな気持ちがいたしております。  次に伺いますが、これから発生した問題でございますけれども、酒よりは食べるほうが大切でございますからなんでございますが、昨年は米は酒屋さんに加州米を渡された、日本の酒までが日米合作になってしまったわけでございますけれども、ことしもやはりそういうふうな、酒屋さんには日本の米は渡せないというふうな状況でございますか。私は日本の米を渡せと言うのじゃございませんよ、食べるほうが大切でございますから。どんな状況でございますか。一応ここで伺っておきたい。簡単でよろしゅうございます。
  20. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 昨年度は、いま御指摘になりましたように、加州米一万二千トンを酒米として、酒の増量米として配給いたしたのでございます。本年度も、昨年度の酒の原料米の量に対しまして相当増加を要請されておりました関係で、内地米だけではまかなえないということで、台湾米を一万トン酒用として配給することにいたしております。
  21. 華山親義

    華山分科員 日本の酒が外米によってつくられるなどということは有史以来初めてだろうと私は思う。これは米がいかに窮迫しているかという一つのあらわれじゃないかと思う。私はやはりどうしても米というものは増産していただきたい、そういう方向農林行政を進めていただきたいと思うのでございます。それで、米産地の連中が出かせぎに来ております。これは米産地がああいう積雪寒冷地帯であることからも出るのでございますけれども、そのために農業が粗放になって、米の反当たり生産量が下がるという御心配はございませんですか。県庁等に行ってまいりますと、そういう傾向はないという人もありますし、確かにそういうふうな徴候がある、あるいは堆肥の投入量が少ないために、地力の減退を来たして、将来悪い結果が出るのではないかというふうなことを言う人もありますけれども、この出かせぎという現象によって産米に影響するようなことがないかどうか、この点についてのお考えを伺いたい。
  22. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 的確にそういう数字が出ているかどうか、私把握しておりませんけれども、常識的に考えましても、出かせぎはもとからあるにはありましたが、最近の出かせぎは、農作、ことに稲作なんかに間に合わないころ帰にってきたり、あるいはまた現金収入に追われて肥培管理といいますか、そういう方面を怠るという傾向はあると思います。でありますので、出かせぎによって増産ができない、あるいは減収といいますか、そういう傾向は私はあろう、こういうふうに推察いたします。
  23. 華山親義

    華山分科員 出かせぎの問題につきましては、私は憂慮すべき事態であろうかと思います。農林大臣は、農業ということのほかに、やはり農村農民の環境ということをお考えになっていただく立場じゃないかと思うのでございます。過日労働大臣には、このことだけで分科会お話をいたしたのでございますが、私は非常に困った事態だと思うのでございます。  それでひとつ、ここに農業上の問題について、基本的なことにも関連いたしますので見解をお聞きいたしたいのでございますが、最近の農業構造改善あるいはそういうふうな政府の特段な恩恵を受けないでも、自分でいろんなくふうをして、借金をして機械を買って、省力農業を行なっております。この点私はいいと思うのでありますが、その省力農業によって余った力を利用する方法がない。そういうことのために、農業構造改善事業であっても、農家経済にとって、省力農業によって余った労働力所得に結びつけなければ何にもならないのであります。今日の農業構造改善をなさろうとする基本の欠陥はそこにあるのである。それですから、やむを得ず余った力というふうなことのために、あるいは借金を返すために地方から東京に出かせぎに来るという現象を生じていると思うのでございますが、省力農業によって余った労働力をどういうふうに使うかということについて農林大臣の御意見をひとつお伺いしたい。
  24. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは古くから、やはり稲作は一年じゅうやっているわけではございませんので、農閑期というものがあるのでございます。御承知のように最近におきましては、労働力不足に対処して、機械力でもって労働力不足を克服していこうということで、いわゆる近代化ということで機械が入ってまいりました。そこで今度は一そう短期間に作業が終わりますので 労働力が余ってくる。この余ってくる労働力は、ただ遊んでおるというわけにはいきませんし、農業の副業というようなものがなくなってきておりますから、勢いを金銭所得を得ような方向に向いていく、こういう趨勢はいなまれない趨勢であると思います。一方、オリンピック・ブームであるとか、あるいは経済成長によるブーム等によりまして、都会方面へ相当出かせぎに出る、そして出かせぎの問題が社会問題化してくる。私は、そういう意味におきまして、いまの出かせぎ問題は、単に農業問題ばかりではなく、社会問題化している。その面からも考えなくちゃならぬと思いますが、その余った労働力をどうするか、結局、所得の面は、所得を得させる方法は必要であろうと思います。でございますので、できるだけ農村工業的な面を興さして、そういう面で農業と直接関係のある方面にその労働力が使われるようなことが一番望ましいと思います。それからまた、農業に固執するわけではございませんので、やはり地域開発等によりまして、遠くでなく近くにおいて金銭所得が得られるような対策も必要だ、それによって社会問題化しているこの出かせぎ問題もある程度緩和できるんじゃないか、こういうふうに考えております。
  25. 華山親義

    華山分科員 労働大臣農林大臣と同じようなことを同じように言われるのでございますけれども、それは実現しないから困る。そしてまた、そういうふうな効力が政府に見えないから私は困ると思う。それで、言うことは言われても、そういうふうな努力が見えないことを私はまことに遺憾だと思うのでございます。私は、農林大臣もごらんになっていると思いますけれども、出かせぎ者のいわゆる飯場は、まことに困った状態でございます。もうたいへんな、これがまだ日本産業が高度に成長したというその国の存在するだろうかと思われるほどのひどい状態。それから私が昼参りますというと、出かせぎ者の人たちかどうか私がたずねていった出かせぎ者はおりませんでしたが、出かせぎ者の人たちか、あるいは棒がしらであるか、私存じませんが、飯場で車座になって花札を遊んでおる。農村地帯には、少なくとも私の農村地帯には、花札などというものはなかった。ああいうふうな弊風、風潮が農村地帯に入っていくならば、私は、農村健全性が失われるのではないか、こういうふうにさえも考えます。また今後、いろいろな意味農村地帯は、よかれあしかれあすこから日本の将来非常に心配すべき労働力が出るのではないか。その際に、その父兄が現在あのような労働状態に置かれたならば、自分の子弟を労働者にする気になるのであろうか、将来の日本労働事情から考えるならば、今日あのような状態は私はやめなければ、りっぱな労働者農業から出てこないだろうと思う。そういう意味からも、根本的からも、また現在の出かせぎ労働者立場からも、至急に飯場改良賃金不払いをなくすこと、有給の休暇を与えること、労災等につきまして、農林大臣としても自分の問題として十分に取り組んでいただきたいと思うのであります。  それから、現在のような状態でございますので、何とか当面のことはならないのかということにつきまして、昨年農林大臣にお伺いしたところ、私からもお願いしたのでございますが、とにかく農業に関しては多くの仕事が残っている。労働力を要する多くの土地改良なり、あるいは農道のことなり、たいへんな事業が残っておるのでございますが、その点につきまして、昨年は農林大臣は、そういう仕事をやって、いわゆる興農事業をやって、出かせぎしなくても済んで、そして自分産業のために農民の人にやってもらうというふうにしたいと農林大臣もおっしゃたのでございますけれども、ことしは、あまりそういう意味での積極的な予算がないと思うのでございますけれども、いかがでございますか。
  26. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 出かせぎ者等に対する労働対策は、単に労働行政ばかりではございません。池田さんのことばを引用してはどうかと思いますが、民族の苗しろといいますか、労働力の苗しろでありますので、農業労働力が健全であることが必要であるわけでありますので、労働行政面というばかりでなく、私のほうでもその対策については十分協議の上、善処したいと思っております。それから、地方で農業労働力の余ったもの、あるいは農閑期といいますか、そういうものをさばく対策が、去年から考えてことしの対策にあまりないじゃないかということでございますが、一例を申し上げてみますと、たとえば土地改良につきましては、全体的な予算の伸びは非常に少ないのでございますが、九百二億ばかりにしまして、一七・数%というふうに伸ばして、土地改良なども思い切ってやってきた。土地改良の中でもガソリン税の見合いもございますが、圃場整備とか、農道、それから林道、こういうものに力を入れて、そういう労働力をここで吸収していきたい、こういうことも考えているわけであります。一例でございますが、御期待に沿うほどよくいっていないかもしれませんが、相当の面で考えてはみたわけでございます。
  27. 華山親義

    華山分科員 昨年もおっしゃったのでございますが、そういう観点から、出かせぎ者があまり出てこないで済むように、そういう面で現地における農業仕事、冬における仕事というふうなものを、政府が積極的に興農事業等においてお考えくださるよう、特にひとつそのことを農林省の重要な予算項目としてお考えを願いたいと思う次第でございます。それでは、もう時間が来ましたから希望をいたしておきますが、農林省に対する質問も十分でないのでございますが、私は農林省と通産省と両方に質疑をお顔いをしておったのでございますけれども、通産省のほうはできません。将来——将来ではありません。あすかしれません、あさってかしれませんが、時間があったらもう一度通産省に質問をする時間を与えていただきたいと思います。
  28. 古川丈吉

    古川主査 これにて華山君の質疑は終了いたしました。次に、松井誠君。
  29. 松井誠

    ○松井(誠)分科員 私は、離島振興の問題について、所管庁である経済企画庁にお尋ねをいたしたいと思います。離島振興法ができましてから十三年、離島の公共事業は確かに離島振興法のおかげで急速な伸びを見せておりますけれども、しかし、この離島の振興については、もちろん問題がないわけではございません。時間がございませんので、その中で一、二点だけお尋ねをいたしたいと思います。離島の公共事業というのは、離島振興法によって本土の公共事業よりも高率の補助がなされておりますけれども、この高率の補助がなされておる理由、こんな自明なことをお尋ねをしなければなりませんのは、御承知でありましょうけれども、それだけ高率の補助がなされて国の補助金が多額に出、それだけ地元の負担が軽減をされるわけでありますけれども、その地元の負担が軽減をされるというのは、具体的にどういう形になってあらわれてきておるか、高率の補助のおかげで、高率の補助分というのは、具体的にはだれの利益になって還元をされるような形で公共事業が行なわれておるのか、たとえば本土に比べて三割なら三割高率の補助がある。それだけ地元の負担が軽減をされ、その軽減をされた分は県なり市町村なりの公共団体の経費が軽減をされるという形になるのか、あるいはまた受益者といわれるほんとうに離島に住んでおる住民の負担が軽減をされるという形で還元をされるのか。その実情より前に、そういう高率補助というのは、一体どういう理由で離島に限って高率補助がされるのかという理由から最初にお尋ねをしたいと思います。
  30. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 ただいま御指摘のとおり、離島振興につきましては、本土よりもより高い補助率をもって公共事業等の施設を助成をいたしておる実情でございます。これは、なぜその補助率を高くするかという点につきましては、よく先生御承知と思いますけれども、要するに、離島は産業の条件または国民生活の面におきましても、またその土地の住民負担能力等の面から見ましても、高い助成をしなければ本土と同じような、また本土に近いような施設が行ない得ないような実情にかんがみまして、そういうふうな観点から離島については特に高率の補助をするというたてまえに相なっておるかと存じます。
  31. 松井誠

    ○松井(誠)分科員 高率の補助をしなければ離島の公共事業はなかなか本土並みにいかない、それはそのとおりでございますけれども、その原因というのは一体どこにあるのか、離島の公共事業について高率補助をしなければ負担能力がない。その負担能力がないその負担というのは一体どこのことをいうのか、具体的に離島に住んでおる住民の負担能力がないということが原因なのか、あるいは離島を含む市町村なり都道府県なりという地方公共団体の負担能力がないということが原因なのか、どういう理由で高率補助をされたのかということをもう少し具体的に……。
  32. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 都道府県単位につきましては、都道府県自体として別途に措置しておる。これは特に後進地域等については補助金のかさ上げ等の措置をその県全体に対してとっていることは松井先生御承知のとおりでございます。しこうして、離島については、その上にさらに地域住民の負担能力が非常に少ないとか、または特に高率の補助の助成をしなければその施設の完成が困難であるというふうな観点から、離島については特に補助率を増額しておる次第でございまして、したがって、都道府県に負担能力がないからという趣旨によるものではないのでございます。
  33. 松井誠

    ○松井(誠)分科員 念を押しますと、都道府県については別途かさ上げの法律などもあって、したがって、具体的に地元の負担能力がないというその意味は、離島に住んでいる住民の負担能力がない、そういう意味である、こういう御趣旨だと思うのです。そうしますと、高率補助の分は地元の負担を軽減するという形で還元をされるというのがこの高率補助の本来のたてまえ。現実に、それでは一体離島の公共事業の高率補助というものは、そういう住民の負担軽減という形で具体的に還元をされておるかどうか、そういう実態についてどういうようになっておるかをお伺いしたい。
  34. 鹿野義夫

    ○鹿野政府委員 離島について補助を出す場合に、その地元といいますか、裏負担の金は府県と地元で持たれるわけですが、府県のほうがどの程度持ち、地元がどの程度持つかということにつきましては、各府県ごとに若干の出入りがございます。たとえて言いますと、基幹林道の場合には国から六五%の補助を出しますが、府県が二五%持って、地元の組合等が一〇%持つという組合もございますし、残りの分について府県が二〇%持って地元が一五%持つという程度の違いのところもございます。大体において府県の持つ分よりも地元のほうが五%前後は低くなっておりますので、まあ国の率が内地の一般の補助率に比べますと大体一〇%前後は高くなっておりますから、地元についても、内地の場合と比較すればかなりの軽減になっているということがいえると思います。
  35. 松井誠

    ○松井(誠)分科員 かなりの軽減になっておるだろうということは私も想像ができますけれども、いまの長官の御答弁のように、本来高率補助というものが、これが都道府県という意味ではなしに、文字どおり地元の負担能力を配慮しての上のことであるとすれば、その高率補助分だけそっくりそのまま地元の負担の軽減となって還元をされるという形でなければ本来の趣旨に沿わないではないか。何がしか、多少の軽減にはなっておるということだけでは足りないではないかと思うのですが、いまの御答弁をもう少し数字的に、いま基幹林道の一例をあげられましたけれども、大体本土と比べてその高率補助分が約どれくらいか、大まかな平均として、どれくらいが地元の負担軽減になっておるかというおよその大まかな傾向はわかりませんか、数字的に。
  36. 鹿野義夫

    ○鹿野政府委員 各事業について非常に詳細な補助率がございますから、全部を一括申し上げにくいことでございますが、個々の補助率のことで申し上げれば、たとえばいまの基幹林道の例をとりますと、内地につきましては五割補助になっておるわけですね。その五割補助につきまして、残りについて大体半分を都道府県が持ち、地元が大体半分を持つというふうなことになりますので、二五%くらいが都道府県であり、二五%くらいが地元である。その場合に離島の場合ですと、いまの六五%ですと、府県の持つ分が二五%である。ですから地元が一〇%ということになりまして、五〇%を六五%の補助率に上げた分が一五%そのまま地元の負担軽減になっているという場合があります。それから、若干と申し上げましたのは、府県が二五%を二〇%くらいしか持たないという場合がございまして、その場合には地元の軽減が一五%のうち五%くらいが減って、一〇%くらいの軽減である。負担率が一五%という程度のものになる。実情はその程度の出入りがあるようでございます。
  37. 松井誠

    ○松井(誠)分科員 大まかな平均的な数字もわかりませんけれども、そうしますと、大体の傾向としては高率補助分が、普通は地元負担の軽減となって返っておるのか、大部分というようなきわめて大まかな言い方でありますけれども、少なくとも実情は高率補助の分の大部分は地元に返ると考えてよろしゅうございますか。
  38. 鹿野義夫

    ○鹿野政府委員 大部分は地元にいっているというふうに私は考えておりますし、それが府県のほうで財政の事情その他でもって、自分のほうの負担分を軽減したいというような動きといいますか、希望もございますけれども、私らの立場といたしましては、できるだけそういうことのないようにということで府県のほうにも注文等をつけております。実情は長い過去の経過的な結果として、いま申し上げましたような若干の出入りがございますので、できるだけこういう点も是正していきたいというふうには考えております。
  39. 松井誠

    ○松井(誠)分科員 その場合に、たとえば昨年でありましたか、土地改良五%補助率が上がる。そこで地元では今度はそれだけ五%地元負担が軽減をされると思った。これは当然だと思いますけれども、期待をする。そうすると案に相違して、五%の負担の軽減にはならなくて、地元の負担の軽減になったのはその半分である二・五%、あとの二・一五%は県の負担の軽減という形になってしまう。これは五%アップということで喜んでおったのが、半分はぬか喜びになってしまうという失望を地元の人たちは受けておる。これは当然だと思う。そういうように具体的に補助率が上がった場合には、特にその点が非常に目立ってくるわけです。いまのようになるべくそれがまるまる地元に還元をされるようにという指導をなされておるそうでありますけれども、私も実は少し調べてみましたけれども、相当府県によってまちまちでありますし、事業によってまちまち。しかも、大まかに言えば大部分は還元をされておるかもしれませんけれども、事業によれば必ずしも大部分と言えないくらいに府県の負担の軽減となっておる場合がある。そういうのをなるべく高率補助分はそっくり地元の負担軽減にするようにという行政指導だけでいいのか。あるいはこういう考え方があると思うのです。これだけ高率補助になったおかげで府県の負担が軽減をされるとすると、府県では、その軽減をされた分だけ別の形で離島に還元をすべきじゃないか。別に県の単独事業というものを起こして、離島の振興のためにその仕事をするという形で還元をすべきじゃないかという考え方もある。どっちがいいかでございますが、企画庁の指導としては、具体的に地元負担の軽減という形で還元をするという指導をされておるわけですか。
  40. 鹿野義夫

    ○鹿野政府委員 おっしゃるようにそういう方向で指導をいたしております。
  41. 松井誠

    ○松井(誠)分科員 たとえば昭和二十八年に離島振興法ができて高率補助になった。その高率補助分が、十三年になるわけですが、十三年で全国的におそらく何十億という数字になっておる。その数十億というものが具体的に一体離島にどういう形で還元をされておるか。その一つ一つ事業の負担軽減という形で還元をされておるか、あるいは別途の単独事業を施行するという形で還元をされておるか、そういう大まかな傾向の調査というようなものはされたものがございませんか。つまり大体どのくらいの高率補助分が具体的にはだれのために役立ったかという大まかな傾向の調査はございませんか。
  42. 鹿野義夫

    ○鹿野政府委員 ただいまもその点については調査を進めておりますが、何ぶん数が多いので計数的にまとまったということでまだ御報告できる段階でございません。ただいま進めておりますから、近いうちにでもまとまれば機会を得て御報告できるものと思います。
  43. 松井誠

    ○松井(誠)分科員 もうすでに十三年たっておるわけですけれども、たとえば昨年の五%上がったそれが具体的に地元負担の軽減として一〇〇%還元をするようにという指導も具体的に昨年の場合されておると思いますが、それがいま申し上げましたように、私が具体的に一つの例をあげましたのは、これは新潟県の場合ですが、そういう例がおそらく全国的にもあるだろうと思う。もう十三年目で、同じような指導をされてやはりそういう事態がいまだにあるということになりますと、そういう指導の方法、指導というだけで一体この問題の解決をすることができるのかという点について私は疑問がわくわけですが、具体的に昨年の補助率アップの分が地元の負担の軽減として、それではどういう形になって還元をされておるかという、昨年の分の具体的な実例の調査はございませんか。
  44. 鹿野義夫

    ○鹿野政府委員 ただいま手元に持っておりません。申しわけございませんが、御返事いたしかねます。
  45. 松井誠

    ○松井(誠)分科員 そのベースアップの分だけでも具体的にどうなったかという調査はされておりますか。
  46. 鹿野義夫

    ○鹿野政府委員 ただいまするということで事務的に進めておる段階でございまして、その点まだ結果的なものを、取りまとめておりませんので、御返事いたしかねます。
  47. 松井誠

    ○松井(誠)分科員 いままでの高率補助の分がまるまるいますぐに地元の軽減という形で返しておるということは、いろいろ条例の関係もありますからむずかしいといたしましても、少なくとも昨年度の補助率のアップの分くらいはやはり一〇〇%地元に還元をされるような強い指導の態度がないと、この情性で長いこときたやり方を変えるというわけにはいかない。昨年も私はたしか言ったと思いますけれども、離島振興ではなくて、実は都道府県の振興と言われるゆえんは、離島振興法による高率補助がそのまま地元の負担軽減にならないで、案外府県の負担の軽減になった。それだけに終っておるとすれば、これは離島振興法の精神をはなはだ侮辱するものだと思う。そういう長い間の経過があるわけですから、この辺でひとつ強い態度で御指導をいただきたいと思うのです。そういう点について長官いかがでございましょう。最近のいままでのおよその傾向は御承知になったと思いますけれども、これはなかなか簡単な方法では直らない。府県では補助率がアップされると、まるまる府県の振興という形にはならないにしても、何がしかの分は府県がそれで助かるということになる。それでは、せめて府県が助かった分だけでも離島の単独事業を起こすという形であらためて還元をすることがはっきりしておればいいですけれども、それはもちろんはっきりしておらない。結局、地元の人たちが一生懸命に運動をして、やっと補助率が上がったと思ったら、喜んだのは県であったということになったんでは何にもならない。この際ひとつ企画庁が強い態度であらためて指導されるという、そういう決意がおありかどうかをお伺いをしたいと思います。
  48. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 最初にお答え申し上げましたとおり、この離島振興法によるところの補助率のかさ上げは、どこまでも当該都道府県の助成ではございませんので、その離島という地域の振興のために必要な助成でございます。したがって、それが実質的には都道府県の助成になるというふうな結果が出たのでは、この法律の目的は達成できないということになろうかと存じます。したがって、具体的に当該事業についてそれだけの補助率を増した分だけ、その当該都道府県において補助率を減らすというような、または幾ぶんでもそれを値切るというふうな形があったのでは、この法律の目的は達成できぬかと思います。もちろん、その場合に、その軽減になった分を別途に他の単独事業に回すというふうなことがあったのかもしれませんが、そういうような点については、ただいま局長からお答え申し上げましたとおり、実情の調査中でございます。  それで、この離島振興法に基づくところの予算は、四十年度におきましても九十三億何千万円という相当大きな金額を計上いたしておるのでございますが、これが実行につきましては各省庁、それぞれの主管の各省庁に移しかえをいたしまして、各省庁でこれが実行をお願いいたしておるのでございますが、その際に、ただいままでのところは補助事業の条件等として、そういうことを厳格に書いてはなかったようでありますけれども、そういうふうな実情が、もしもこの法律の目的とするところと違ったような事態が相当あるということであるならば、これはその点さらに厳格な措置をとって、そして法律の目的が達成できるような方向に強力な指導をしていきたい、かように存じます。
  49. 松井誠

    ○松井(誠)分科員 もしも法律の趣旨に反するようなことがあれば、というような条件つきなことでなくて、これはもう長い間の問題で、実はいまに始まった問題ではない。そういう実態というものを、ほんとうの具体的な実態の調査は、必ずしも全国的な精密な調査はなかったかもしれませんけれども、そういうものが一般化をしておるということも、これは公知の事実です。ですから、そういう事実を踏まえて、ひとついま長官が言われた指導の方針で、ほんとうにその離島振興法の所期の目的を達するようにひとつ御指導をお願いいたしたいと思います。  離島振興の問題についてもう一点だけお伺いをいたしたいと思うのです。それは離島振興法ができて十三年、最近特に離島振興というものがいままでの成果なり結果なりというものを反省をして、離島振興そのものが曲がりかどにあるという、そういう認識がだいぶ一般化してきたと思う。その中心は、いままで離島振興といえば、いわゆる離島振興法による公共事業を伸ばすという、そういうことが離島振興の中心になっておったけれども、しかし、それだけでは足りないではないか。むしろ、そういう基盤整備的な公共事業と並んで、あるいはむしろその前提として、基本的なやはり産業の振興というものがなければ、離島の振興というものにはならないのじゃないかというふうに、離島振興に対する基本的な考え方の転回といっては大げさかもしれませんけれども、そういう考え方に変わってきつつあるやに伺うのですけれども、そういう問題についての長官のお考えをひとつ簡単にお聞かせをいただきたいと思うのです。
  50. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 お話のとおり、離島振興についてどこに重点を置くかという問題でございますが、少なくとも最小限度に光と水、この施設を十分に助成をして差し上げる。それから生活の基盤になるところの産業の振興、さらに社会開発的な施設ということで、必ずしも経済的な問題のみならず、全般的に島民の福祉の向上について、本土との格差をできるだけ縮小するという方向で総合的な調整のとれた助成をしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  51. 松井誠

    ○松井(誠)分科員 いままではその公共事業の基盤を整備するということに重点を置かれてきたわけでありますけれども、しかし、論理的に言えば、それはやはり総合開発の一環としての公共事業の整備計画でなければならぬ。ところが、そういう総合開発計画というものがなくて、公共事業の整備計画だけがいわば先にひとり歩きをしておる。ここでやはり総合開発の計画というものをまず立てて、その上に公共事業の整備というものを乗っけるという、考えてみれば当然の本来の姿でありますけれども、そういうような反省というものはいま行なわれているのではないか。したがって、その離島について具体的に総合開発計画を立てる。それとまず、取り組んで、それの一環としての公共事業の整備、離島振興法による公共事業の整備というものは、その総合開発計画の上に乗っかるという当然の順序にいまならなければならぬという反省があるのじゃないか、それが曲がりかどといわれるいまの離島振興事業の姿ではないかと思うのですが、いかがですか。
  52. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 ただいまお話しのとおり、各離島ごとに、その離島の持っておるところの自然的な条件または歴史的な条件、経済的な条件、そういうふうな特性を十分に生かして、そうしてその離島が将来どういうふうな方向に発展すべきかという一つのビジョンを持ち、そういうふうな総合的な観点から一つ一つの施設について順序を追ってやっていく、最も能率的に効率のあるような方向でやっていくということが望ましい方向でございまして、ぜひそういうような方向に行きたいということで指導いたしておる次第でございますが、何ぶんにも非常に離島の数が多いということ、それからそういうふうな指導の運用に十分でないというふうな点もございまして、理想のとおりいってないことは事実でございますけれども、その方向に鋭意今後努力をいたしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  53. 松井誠

    ○松井(誠)分科員 一点だけ。ちょうど農林大臣もおられますのでお伺いをしたいと思のうですが、島の総合開発といえば、どっちみち農林漁業というものが中心にならざるを得ないと思う。そういう場合に、いつも痛感することでありますけれども、たとえば農業基本法というのが専業化をする農民というものを考える、あるいは沿岸漁業振興法はやはり専業化をする漁民というものを考える。そうなりますと、局というような非常に悪い条件で半農半漁という部落が圧倒的に多いというところでは、一体国の農業政策なり、漁業政策なりというものが、どっちも素通りをしてしまって、半農半漁というそれを総合的に考えるという政策がないと、やはり島の総合開発計画を立てるといっても、たえば漁業の構造改善農業構造改善というものを考えても、国の企画にはどっちも当てはまらないという半農半漁の中途はんぱな部落が非常に多い。ですから、この半農半漁という部落の形態というものを総合的に考えて施策を立てるということが必要ではないか。たとえば農協と漁協というものがありますけれども、農協の組合員と漁協の組合員とはほとんど同じだという場合がある。そういうものをやはり二つが一緒になることによって農協と漁協とを総合的に考えるということのためには、農協と漁協が一緒になるというようなことも考えていいのではないか。そういう半農半漁の部落を総合的につかまえて、総合的に開発をするというそういう方策をとるということになると、残念ながらいまの国の農業政策基本的な方向、漁業政策基本的な方向のワクからはみ出さなければならぬ。そういうことを企画庁に要求するのはちょっと無理かもしれませんが、やはり島の総合開発というものを考える場合には、そういう問題にどうしても必然的にぶち当たらなければならぬではないか。その点について、農林大臣もおられますので、農林大臣と長官の——いますぐにお答えをいただけないかもしれませんが、そういう問題がある、それを一体どういう方向考えるかという示唆だけでもけっこうですから、お伺いいたしたいと思います。
  54. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農業面から言いましても零細であり、あるいは漁業の面からも零細な部門が離島であると思います。でありますので、一般的な自立経営農家というようなことは、その拡大という方向には非常に困難な場合があると思います。どうしても協業といいますか一協業組織で、農業のほうにかんがみましても、漁業にもそういう面がございますが、農業面からいいますならば、特に協業面で共同作業等をし、あるいは共同施設等を行なっていく。たとえば島等によりましてもミカンなどを植え付けておる、長崎などが多いのでございますが、そういうところでミカンの栽培というようなこと、それに協業を加えていく、こういうような方向農業面では指導していきたいと思います。  それからいまの農業と漁業、これは町方調整するような、労働力を調整するような関係もありますので、そういう面からも協業というもの、共同事業というようなものによって何とか立っていくというような方向考えていきたいと思っております。
  55. 古川丈吉

    古川主査 これにて松井誠君の質疑は終了いたしました。  次は、卜部政巳
  56. 卜部政巳

    卜部分科員 まず農林大臣にお伺いをいたしたいと思います。  農業構造改善を実施しまして三年を経過しようといたしておりますが、十年間で三千百市町村にわたるところのすべてを実施するという、このような計画であるのでありますが、大体どのような進捗状態であるのか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  57. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ここに事務当局からの報告もありますが、事務当局から……。
  58. 昌谷孝

    昌谷政府委員 御承知のように、実質的には三十七年度から開始をいたしまして、ちょうど四年目になるわけでございます。その間にパイロット事業として進めましたのが七十二地区ございます。それから一般事業として今日まど年々積み重ねておりますのが、一三十九年度で約七百二十近い個所にのぼっております。三十七年度に着工いたしました地区につきましては、しいて三年間に補助事業を終わってしまおうとしますと無理がいきますので、四年目あるいはものによっては五年目まで持ち越して補助事業を継続するつもりでおりますけれども、しかし、地元の段取りが非常に進みまして、すでに三年目で一応の予定いたしました補助事業を終わりますものが約百二十幾つ出てまいります。それらのことを考えますと、パイロット事業を含めまして今日までに約八百の構造改善事業に着手した市町村があるわけでございます。御承知のように、三十九年度からは村のある地区で事業をやりました市町村におきましても、他の地域での希望があれば、ここで再び構造改善事業を同じ町村について実施するというような道を開いておりますので、それらを含めまして、かなり着実に進んでおると思います。当初考えました都市化、工業化の著しい地域を除いて、一応三千二百近くの仮対象市町村といいますか、事業を実施するであろう予定市町村を頭に置いております。それらは計画地域を先行させることで、逐次予定どおり進んでおります。
  59. 卜部政巳

    卜部分科員 そういたしますと、順調という一つの抽象的なことばではなくて、現在行なわれておるこの改善事業が何十%の姿になってあらわれておるという、そういう形でひとつ御回答願いたいと思いますが、その点ひとつお願いいたします。
  60. 昌谷孝

    昌谷政府委員 先ほど申しましたように、一般地域として三十九年度までに着手をしております個所が七百二十一カ所ございます。四十年度にさらにそれに四百五十地域を加える予定にしておりますが、そういたしますと、全体の約三分の一以上のものが四十年度までに事業に着手をするという姿に相なるわけであります。私どもといたしましては、必ずしも府県が条件の熟していない村で無理に、構造改善事業の当該府県の実施個所数をふやすのにあまりこだわりまして、条件の熟していないところで無理に事業をやらせるというような結果になることを極力避けて、実質的に村の体制の整ったのを見きわめて着手をするということに重点を置いておりますので、その意味で若干当初の何と申しますか、年次計画という形で当初お示しいたしましたものと比べれば若干落ちておりますが、それにいたしましても、四十年度でおおむね予定町村の三分の一について着手をするという形ができるわけでございます。
  61. 卜部政巳

    卜部分科員 いま御説明のありましたように、一年の間に計画を作成して、また認可を受けて、それから翌年から実施に入る、こういうことであるわけでありますが、これは一九六一年と六二年にそれぞれ五百市町村、それから三百市町村が計画指定を受けておりますけれども、しかし実際問題といたしましては、その指定が五〇%、さらには六二年度のそれが五〇%なんですから、四百三市町村にすぎないというこの事例はどういうふうにお考えでありますか。
  62. 昌谷孝

    昌谷政府委員 計画地域が始まりましたのが御承知のように三十六年でございます。事業の実施にかかりましたのが、三十七年度のかなり後半に至ってやっと事業計画がまとまり、事業の着手に入ったというような事情がございまして、三十六、三十七の両年度は、むしろ私どもの考えておりますこの事業の内容を地方によく御理解いただくということに多くの時間が費やされたわけであります。したがいまして、当初予定をいたしましたと申しますか、一番最初に理想的な姿で描きました進度と比べますと、そういう意味で三十七年度あるいは三十八年度については、幾ぶんその理想的な進度との比較においては落ちております。このことは進度が落ちても、なおかつ初年度計画地域あるいは実施地域については、実施過程でかなりぎくしゃくした問題が事実起こっております。それらのことを考えますと、あまりそういった進度といったようなものにとらわれないで、むしろ納得がいってからやるという行き方が本来望ましいということで、趣旨をむしろよくわかっていただくことに重点を置いております。そのようなことが、着手をいたしました三十七年、あるいは二年目であります三十八年あたりの着手の進度に、幾、ぶんそういった御指摘のような点があったことは免れませんが、そのことがかえって今後の事業の実質的な充実した進展に寄与しておるというふうに評価をいたしております。
  63. 卜部政巳

    卜部分科員 いまおっしゃられましたように、農家みずからがその必要性を感じ、末端からわき上がってくるような、いわゆる周知徹底と同時に、そういうような姿がほうはいとして出てこなければならないとする宣伝なり浸透、そういうことを行なっておるということは事実であります。だが現実にこの指定を返上するという問題や、さらには議会等においてこれを決議するところが多多出てきておると思うのであります。私たちの局限県においても数多くその例を見るわけでありますが、いまおっしゃられておりますように、そういうような宣伝をやっておきながらそういう問題が出ておるということについて、大体どのように把握されておるか。ということは、大体何町村がそういう指定を返上したのか、そういうようなものを農林省あたりはつまびらかにしていないと思うのでありますが、その点はどういうふうになっておりますか。
  64. 昌谷孝

    昌谷政府委員 これは御承知のように、事業の内容といたしますところが土地基盤の整備と、その整備された土地基盤の上での共同施設あるいは近代化施設という形でのいわば大型販売というようなものを事業の目的として掲げておりますが、そういった土地改良自体でも、御承知のように在来の土地改良でも地元の足並みをそろえるまでには、関係者のかなり時間をかけた御懇談なり御説得なりを必要とするのであります。いわんや、従来の農法からさらに飛躍をして、これを機会に大型の農法に伸びていこうという試みでございますから、そういった普通の土地改良に加えてさらにむずかしい問題を含んでおります。十分な懇談と納得がその成功の基礎になると思います。  その意味におきまして計画地域というものが一年先行しておるわけでございますが、得承知のように三十六年度五百の計画地域をつくりました中で、議論がまとまって順調に事業の着手までに盛り上がっていきましたところが、先ほど来申し上げておりますように、初年度におきまして百七十幾つ、三十八年度において二百二十幾つといったような姿でございます。計画地域と実施地域とのずれと申しますか、計画地域の中で実施にまで盛り上がっていかなかったところが年々少しずつ残っております。先生がいまお話しのいわゆる返上という形で理解をすべきものもその中に含んでおると思いますが、しかし、私どもは必ずしも返上——そのときの姿としては議論がまとまらずに、この際は見送ろうということでございますから、返上ということばが適当であるかどうか問題でございますが、しかし、それらのところも、具体的な例といたしまして、その時期には話がまとまらなかったけれども、逆に隣で話がまとまってうまく進んでいる村の実態を見て、さらにもう一回相談をし直して、この次はわれわれのところがやってみようじゃないかというふうになっている村も相当ございます。そういう意味におきまして、返上と申しますよりも、着手を繰り延べて準備期間をさらに置いておるというふうに見て差し上げるのが、それらの村の実情に近いのじゃなかろうかというふうに考えております。
  65. 卜部政巳

    卜部分科員 私はただ返上という問題だけを指摘をした、そこら辺に問題があったと思いますが、結果、事業の返上と同時に延期をしたところ、これはいま局長がおっしゃられたとおりに、これも大体一緒だと思うのです。さらに計画を変更して実施に入ったところなどもあると思います。そういうようなものについての農林省の把握というものと同時に、これを全国的につまびらかにするという措置は行なうのか行なわないのか、この点をひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  66. 昌谷孝

    昌谷政府委員 御承知のように、この構造改善事業の地区ごとの具体的な計画の審査指導は、各地方農政局におきましてかなりのスタッフを集中いたしまして、村ごとに、県の担当課をもちろん通じてでございますが、具体的な指導は地方農政局ことにやっております。地方農政局におきましては、計画地域それぞれの個々の問題について直接お話も聞いておりますし、また計画の内容についても御相談に乗っておるわけでございます。地方農政局段階におきましては、すべて計画町村あるいは、実施町村の実施の経過、盛り上がりの経過については逐一具体的な村の問題としてかなり精細に承知をいたしております。私どもの本省におきましては、それらの総体の結果の数字を、先ほど申しましたようにそれぞれの年次の地域ごとの計画地域として計画段階に入った村、それからその中からさらに進んで事業実施に入った村の一般的な指標による報告は受けております。それらを通じてかなり精細な把握はできておるように思っております。
  67. 卜部政巳

    卜部分科員 農政局長、くどいようでありますが、把握はできておると思うのであります。しかし、そういう問題をどのようにつまびらかにしたか、こういうことを私は聞かんとしておるわけですが、その辺はどういうふうにつまびらかにしたのでありますか。
  68. 昌谷孝

    昌谷政府委員 仰せの、つまびらかにするということの具体的な事柄について私があるいは十分理解ができておらないのかもしれませんが、その事後措置というような趣旨でございましょうか。それとも原因を究明して、その原因に見合った対策を立てたかという御趣旨でございますか。(卜部分科員「そうです」と呼ぶ)原因を究明してそれにふさわしい対策を立てたかという御趣旨でございますれば、私どもとしてはそれなりに努力をしておるつもりでございます。たとえば、一般的に申しまして、先ほど全国的な進度を申し上げましたけれども、この構造改善事業で一番計画段階あるいは実施段階で村が御苦労なすっておられますのは、概括的に申しますと、都市近郊の農村と、それから純山村の農村でございます。平地農村あるいは平地山村といったやや標準的な普通の農村の場合には進度も進んでおりますし、また計画のまとまりもよろしいわけです。私どもとしては、そういった、傾向に対処いたしますために、都市近郊あるいは純山村におきまする構造改善事業の進め方を現地の実態に適合させるために、現在指導しております。事業の進め方にさらに手を加えると申しますか、弾力性をふやす、あるいはその地域にふさわしい計画の立て方の指導をするということがまず必要なこととして、当初の一、二年の経験から考えました。それらにつきましてはすでにかなりの専門家の力によりまして、具体的なそれらの地域にふさわしい計画の進め方の指導指針等についての御提案もいただいておりますので、それを現地に即して実施に移そうと思っております。また一般的に申しまして、土地改良事業を急速に進めるということになりますと、やはりこれは土地改良一般の問題としてなかなか関係者の同意が得にくい、特に新しく農道の幅員を拡幅するというようなことになりますと、減歩だけでは片のつかないような問題も出てまいりまして、なかなかむずかしいわけでございます。それらの土地改良事業一般に内在する困難な問題につきましては、これは制度的にどうのこうのということよりも、やはり根気よく懇談をし、お話し合いを重ねるということが最もふさわしいと思うのでありますが、しかし、それにいたしましても、限られた事業予算の中で土地改良により重点を置きたい村、あるいは近代化施設は少しあとから、土地改良が済んでからむしろ着手したほうがいい村等々がございます。そこで事業の内容としての、土地改良事業近代化施設に充当すべき事業費の割合等につきましても、これが当初から非常に弾力的にやっておったつもりでございますが、極端な場合には、所定事業費の全額が土地改良に集中しておる村があります。また、別の極端の場合には、すでに土地改良の終わっておるような村における構造改善事業の場合には、事業費の全部が近代化施設に集中しているというような村もございます。それらの弾力的な計画の運用ということが一つでございます。それからもう一面は、計画段階で御相談に乗るための専門家の助言を濃密にするということであります。その意味で、御承知構造改善の推進のための協会がコンサルタント活動を続けております。これは村の御要望によりまして、数名の専門家グループを派遣をいたしまして、計画段階での御相談に乗って、この当該村での構造改善事業はどういうふうにやるのが一番技術的に見ていいか、あるいは地理的に見ていいかという点についての専門的の助言を与えております。なお、四十年度からは、その土地改良の調査設計についての技術者の手薄というようなことを補います意味で、さらに調査設計についての具体的なコンサルタント活動を濃密に行なうというような準備を与えて、計画が地につきますような努力を重ねておるといった次第でございます。
  69. 卜部政巳

    卜部分科員 きょうは時間がございませんから、農業基盤の整備とその他に対しまして、いろいろと申し上げたいことがありますが、これは後日の委員会に譲るといたしまして、私が質問をいたしたい、この中から導き出していきたいということの中で一つだけ訴えておきたいと思うのでありますが、一つに、いま農政局長いろいろとおっしゃられておりますが、何だかんだいいましても、この改善事業は、農林省考えておるように、政府考えておるように、意のままに進捗を示していないのではないか、私はこのように考えます。それはやはり零細農民がはだで感ずるいわゆる土地が収奪をされる、こういうような状態というものが私は一つの抵抗となってあらわれてきておるのではないだろうか、こういうふうに考えるのです。そこで、私たちの島根県あたりでも、市町村議会あたりを歩いてまいりますと もうごまかされないぞという、これは町長のことばもあります。さらに、先生、私は農業改善事業でもってもうかるやつを一つ発見をいたしましたなどと言いますから、何ですか、こういうふうに聞いてみますと、これは鳥を飼うことだ。鶏だろうかと思いますと、そうじゃない、これは月給取りを飼うことだ、これ以外にはもうないのだ、こういうことを習うのであります。これは冗談のように見受けて、これは私たち冗談で受けとめてはならない問題だと思うのです。それほど深刻だと私は思うのであります。こういうような状態の中では、その構造改善事業がうまくいかない。赤城農林大臣は、私の政治生命をかけても、そのためには、構造改善事業を私は失敗したとは言いませんが、農林大臣がその中で言われたことばは、管理事業団を今度は設置をする。今度提案をしてくるわけでありますが、そうしたことから私は考えてみますならば、その意図たるものが明らかだと私は思うのであります。こういう面について、もし管理事業団が提案をされるということになりますと、農民の猛反抗を受ける、このことはもう明らかだと思うのでありますが、これを撤回をする意思はないかどうか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  70. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農地管理事業団が小農の収奪ということには考えていません。他産業との格差是正からいいましても、あるいはまた農業所得の点からいいましても、経営規模が大きいということは有利であります。でありますが、農業につきましては、経営規模の拡大と、それからまた現在のままで質を強化する。童を広くする面と質を強化する面と二つがあると思います。事業団のほうは、量をふやす、こういう面でございますが、それが必ずしも小農の収奪というところにはつながってはおりません。現在土地が七万町歩も移動しておりますので、その移動を経営規模の拡大のほうに方向づけていこう、こういうことでございます。質の強化ということにつきましては、土地基盤の整備その他資本装備等をよくして、小農であってもやっていけるような方法、それをまた共同化、協業化するというような形で、これも見方によっては経営規模の拡大でございます。一人一人の経営規模はふえておりませんけれども、共同体としての経営規模はふえておる。こういう考え方でございますので、小農を収奪する、こういうような考えはございません。もっとも農業の中には、農業でなくてほかのほうが生産業であるという人がございます。これは農業という部類に入るか入らぬか非常に疑問でございます。そういうものまでこれで十分に立っていくだけの方途ができるかどうかということは疑問でございますが、しかし、農業に従事しょう、こういう熱意とか、そういうものに対しましては、先ほど言いましたように、やはり協業化という方向に持っていきまして成り立つようにやっていく、こういうことでございますので、決して御指摘のようなことではないと私は考えております。でありますのでこれを撤回するということじゃなくて これはぜひ協力していただいて推進していただきたいと私は考えております。
  71. 卜部政巳

    卜部分科員 まだ農林委員会等におきましても、骨格が提案されておりませんが、大体私たちが把握するところでは、十年間で五千四百億を投ずる、こういうことで三十二万ヘクタールの土地を吸収する、こういう構想だと思うのです。さらに一ヘクタール以上の上層専業層の規模を平均五十アール拡大をしていくという考え方であろうと思いますが、そういうことについては間違いございませんか。
  72. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そういう計画目標も立ててもみたのでございますが、いまのところでは、それは第一次的に考えたのでございます。希望としては五町でございますが、いまの一町五反だけでもなかなか到達できないのでございます。そういう計画はまた練り直すほかない。いま考えておりますことは、四十年度におきましてはパイロット的に、百町村、それに対して一千町歩という小規模のものでパイロット的にやっていこうという考え方でございますので、いま御指摘のようなことは、なおよく企画、計画等を立てていきませんと、それでいくという確信は持っておりません、
  73. 卜部政巳

    卜部分科員 先ほど大臣は、私たち賛成をしてもらって云々ということと同時に、それは零細農民土地を収奪するものではないという、まことにごりっぱなことを申し述べられました。しかし、近代化への移行の問題とからめていろいろと農林金融の問題をながめて見ましても、とにかく零細農民に対しましては、担保なりさらにそういう面におきますところの資格条件というものがないということで、そういう資金の貸付けを行なってはいない。こういうようないきさつ等からながめて見ましても、明らかに農林省政府考えております百万戸自立農家に向かって零細農民を切り捨てていこうとする意図は明らかである。そしてまた同時に、今度の管理事業団もその方向に向かって大きく前進をしようとする、こういうことについて私は指摘したいと思います。だがしかし、この問題はここでまた時間がございませんので、この管理事業団の問題はそうなまやさしく通過をすることはない。同時にまた猛反攻を受けるであろうということを銘記すべきであるということを申し上げまして、次の方向に進んでいきたいと思います。  実は、これは私たち島根県の例でありますが、農民の離農が相次いでおりますし、さらにまた、その中から当然予想されておりますのは、農民の老齢化、さらにかあちゃん農業といわれるようなことが出てきておりますが、私はこのかあちゃん農業というのをここで論議しようというのではありませんけれども、しかし、ここに出てきております私たちの島根県の資料の中にも、農家の主婦の母体がむしばまれまして、神経痛だとか高血圧だとか結核、さらに死産、未熟児、人工中絶、発育不良児などがずいぶん多くなっておるわけであります。それで、これも御承知のように農業新聞なんかにも書いてありましたけれども、農村婦人が肩こりや足腰の痛みなどを訴えておるのが七割にのぼっておる。こういう状態というのはやはり動力農機具による事故だとか、さらには農薬中毒のこわさというものがあった。同時にまた耕うん機の広範な普及につれて農道の不整備や、さらには危険な作業環境が問題になっておる。こういうふうなことの中で農民の婦人の方が出かせぎの疲労だとか、さらに未熟な耕うん機の操縦等によりまして事故を誘発している、こういう点につきまして十分農林省としても考えるべきじゃないかという、こういう問題等が出てきておるわけでありますが、この点に対しましてどういう措置をしようとしておるのであるかをお伺いいたしたいと思います。
  74. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 普及事業といたしまして、生活改善方面に相当力を入れております。ことに婦人の生活改善指導員等を増員いたしまして、農協とタイアップしてそういう方面の改善に力を入れております。あるいはまた機械等を相当入れておりますので、そういう面で機械傷害等も出てきております。これは労働省と協議をいたしまして、労災の対象にそれを入れていこうという準備をいたしております。
  75. 卜部政巳

    卜部分科員 大臣、きわめて抽象的な御答弁なんですが、これは私のところの診療所でとった調査なのでありますが、これは能義郡の伯太というところでありますが、ここの保険診療件数のベストテンに出てきております。人口わずか七千六百人ですが一その中にも歯痛の場合が三千百二十六件、アデノイドが二千五百二十四件、湿しん、できものが一千百五件、外傷が一千八件、胃痛が百七十八件、神経痛が八百七十八件、高血圧が七百六十九件、腸炎が五百九件、リューマチが四百二十九件、さらに聴器障害が四百二十七件、こういうようなわずか七千六百人の人口の中で調べた中でこういうものが出てきておるわけであります。この点に対しまして島根県のほうの林業の動きなどという、そして林業対策、農林対策などというそういう振興計画などを見ても、婦人の地位が高まって農業のその場合におけるところの主役的な役割りをする、こういう状態になったとしか指摘をできないような措置しか予算措置がないのです。それをいま大臣がおっしゃったように、ただ適当な、いまのそういうものを設けておるなどということをおっしゃいますが、現実にそういうものが設けられておらないじゃありませんか。こういうものが設けられておらないから、こういうような事故が発生をし、農村の婦人の方がこのような状態で疲労をし、さらに病弱、また病気におかされておるというこの状態を私は真剣に考えるべきだと思うのです。この点に対する農林大臣の、ただ抽象的にこの分科会における答弁ということではなくて、どういうことを具体的に行ないたいか、またどういうものについてどうする、こういうような明確な御答弁を願いたい。
  76. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 特にというものはございませんが、医療の問題等につきましても、健康保険とかその他やっておりまするし、現状がそういう傾向でありまするから、特に農村だけということはいまやっておりません。しかし、いまの生活改善の方面でいろいろ御相談にあずかって、そういう面の改善を加えておるということは先ほど申し上げた次第でありますが、病人がふえてきた、これに対しましてどういう対策をいま現にやっておるかということにつきましては、いまやっておらぬということを申し上げて、ひとつ……。
  77. 卜部政巳

    卜部分科員 私の言っておるのは、いまのかあちゃん農業と言ったらおかしいのですが、ことばの上ではかあちゃん農業と言われておりますが、農村の婦人の方がそのような立場の中で今日ほんとうに困って、おられるわけです。これは単なる家庭環境の整備だとか、台所の整備だとか、そういうものじゃないと思うんですよ。そういうものじゃなくて、むしろ出かせぎに行くところの、また季節労働に出ていくところの御主人、同時に自分もその中にまじって出かせぎをやっていかなければならぬ、さらに春耕期になれば、さっそくそういう方向でもって自分が主役を演じなくてはならぬ。こういうことの中では、やはり耕うん機も使わなくてはならぬという、こういう肉体的な労働と、それに対するところのオーバーロードというものがそのからだをむしばましていく、こういう点について農林大臣は、単にこれは農民だけの問題ではないので、これはまた一括考えたいなどというような態度ではいけないと私は思うのです。むしろ農林大臣でありますから、そういう問題は真剣に考えなくちゃならぬ。この点は私の政治生命をかけてまでもこの問題にひとつ対処していくというくらいの気魄があって、いいのじゃないかと思うのです。その点についてくどくど申し上げませんが、大臣のほうから農民の婦人の方に対するおことばとしても、何かここにひとつ明らかなものを出していただきたい、こう思います。
  78. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど病人に対する対策というふうに聞いたものですからああいうようにお答えしたのでございますが、農業労働が相当過重である、それから男の労働等が相当減ってきておる。こういうようなことに対して農業面でどういう対策を講ずるかということでございますが、これは農業全体で考えるほかはないと思います。一口で言えば近代化といっておりますが、とにかく労働力を節約する、労働力を省いてやっていけるということになれば——女子でも農業がやっていけるような体制に持っていくというようなこと、これは一面から言えば一つ機械化でございます。あるいは栽培の技術の点等におきましても、省力栽培と申しますか、力仕事を省いてやっていくような技術を相当普及いたしておりまするし、あるいはまた共同化という面でこれは相当やっております。ことしの対策等にいたしましても、農協等を中心にして機械を入れていく、その機械のもとで協業化、共同作業をやっていけるというような施策なども施しております。でございまするから、これはどの点でこの点でということでなく、そういう農業対策全般としてやらなければならぬ問題でございますから、一口に申しますれば近代化と申しますか、省力的な重労働から解放するという政策全体の立場でやっておるということを申し上げる以外にはないと思います。
  79. 卜部政巳

    卜部分科員 大臣、まあ農業近代化もわかります。さらに共同化もわかります。さらに管理事業団の設置等において、いまあなたが言うような御指摘というものは、そういうような集団化の中で企業というものを大きくさせる、そうしてその中でそういうような婦人に対する労働のしわ寄せというものを解決していきたいという大臣のその構想はいいですよ。だけれども、現実にあるこの農村状態というものを私はいまとらえておるのです。だから、その問題はその問題として、現実に起きておるこういう問題に対して大臣はどのように対処しようとするのか。たとえば私が申しましたように管理事業団の問題は、そうたやすくそういう方向になりはしませんよ。私はこれは断言します。そういう大臣考えておりますような構想の中で打ちひしがれておるというのでは、あまりに農民の方がかわいそうであります。そういう点について、今日のこの時点でどういうふうにしてもらいたい、こういう点を私は言っておるのでありますから、ひとつその問題について申し述べていただきたい。
  80. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ですから、先ほどから言っておりまするように、管理事業団は別個でございます。それはただいま問題でございませんが、労働力を省く技術、その普及の指導もやっておりまするし、それからまた共同化、これは共同化する気持ちにならなければなかなかやれませんけれども、でありまするから、農協等を中心として共同化作業というようなことをいたしますことによって、婦人の労働力も相当節約できたり、省ける、こういうようなことで共同作業等も進めております。それから、ことしの予算等にありますように、相当大きな機械を入れまして、その機械のもとで共同作業をなおやっていけるというような課題なども、ことしの予算に盛ってありますので、管理事業団とは別でございますが、現在の労働力不足あるいは労働過重に対しまして施策としてはそういうことをしておる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  81. 卜部政巳

    卜部分科員 大臣、私は思うのでありますが、ともかく管理事業団の問題は別といたしまして、農業の共同化云々ということもございますが、現実に農村を歩いてごらんになっておりますか。たとえば共同経営に参加するという状態の中では、やはりそれなりに農民の苦しみというものが実際問題としてあるのですよ。実際問題として、自分たちがその土地を共同経営していく、そしてそこには資金を投下していかなければならないときに、そういう借金を払えない。それだったら農村から離脱していったらいいというような状態も出てきておるわけであります。しかるがゆえに、いま大臣がおっしゃっておるように、農村労働力を、さらに婦人のオーバーロードというものを解消する以前に、そういう人は農村を離脱していくというような状態が出てくるのではないか、また現実に出てきておるのが実情であります。そういうようななまやさしい答弁では私は納得できないのであります。時間が経過して、盛んに事務当局のほうから経過しておりますということですから、あまり詳しくは申し上げませんが、しかし大臣、この面については十分御配慮願いたいことをお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  82. 古川丈吉

    古川主査 これにて卜部君の質疑は終わりました。  次は、大村邦夫君。
  83. 大村邦夫

    大村分科員 私は、金融引き締めが各企業にどういった作用を及ぼしたのか、またその影響はどういうふうにあわられたかについて御質問したいのでありますが、まずその前に、ぜひ必要なことを聞いておきたいのであります。  それは、御承知のようにここ数年間国際収支が悪化しまして、それに伴い、是正策として、昭和三十六年度に次いで、三十八年の暮れから金融の調整が開始されました。この金融の調整の推移、動向と、それが金融市場にどういう影響をもたらしたかについて、まずお聞きしたいのであります。
  84. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 問題は大蔵省主管の問題だと存じますけれども、私のカバーする範囲で総体的な点だけをお答え申し上げますが、昭和三十八年の暮れから、国際収支の悪化と消費者物価の上昇、そういうふうな問題に対処するために金融引き締めをいたしましたことは御承知のとおりでございます。昭和三十八年の十二月に、まず日本銀行に対する金融機関の預金の準備率の引き上げをいたしました。さらにその後、窓口の規制等の措置を一月に入っていたし、三月に入って公定歩合の二厘引き上げをいたした次第でございます。これらはすべて日本銀行を通じて、日本銀行と取引のあるところの都市銀行等、いわば大銀行を対象として、自的は主として大企業におけるところの設備投資の抑制という措置を通じて、経済全般の行き過ぎの是正と申しますか、調整を目的として金融の引き締めをいたしたような次第でございます。したがって、直接にはそれらは日本銀行と取引を有するところの大銀行が対象でございまして、直接には中小企業との結びつきはなかったわけでございますが、現実の姿としては、これがやはり大企業から下請に対する代金の支払いの関係と、いま一つは地方銀行とか相互銀行、信用金庫または農業関係の金融機関等からの、つまりコールの方法によるところの資金の都市銀行に対する集中、吸収と申しますか、そういうような方法を通じて、中小企業にも相当大きな影響を与えたことは実情でございます。
  85. 大村邦夫

    大村分科員 ただいまの御答弁によりますと、金融の調整、引き締めは大企業の設備投資抑制をまず目的としたが、中小企業にも、直接的にはなかったにしても、コール資金の問題あるいは下請の支払い遅延等の形でかなりの影響があった、こういう御答弁だったと思うのです。そこで端的に聞きますが、この金融調整によって大企業と中小企業とどちらが大きな影響をもたらしたか、この点について、現象面でけっこうですからお尋ねします。
  86. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 これは金融の引き締めという事柄だけの問題であるかどうか、その点は非常にお答えしにくい、また分析のしにくい点でございますが、とにかく昨年一年の経過を見てみますると、鉱工業の生産は、引き締め下であるにもかかわらず相当な伸びを示しております。また、設備投資等について見ますると、これは中小企業と大企業とを区分して見当をつけること、また実績を調べることは困難な事態でございますが、全体の趨勢考えてみますると、当初の見通しが四兆一千億円でございましたが、それが昨年末に四兆六千五百億円というように、引き締め下であるにもかかわらず、設備投資はさらにある程度上昇してきたという結果を来たしております。反面、不渡り手形が相当ふえてまいった。それから中小企業の倒産が、秋ごろから暮れにかけて、今日もその情勢がまだなおあとを引いておるようでございますが、相当、件数、金額ともに増大してまいったというような点から、現象面におきましては、これは中小企業に相当大きな影響を与えたものと、これは率直に認むべきである、かように存じております。
  87. 大村邦夫

    大村分科員 中小企業にはかなり大きな影響をもたらしたことを率直にお認めになりました。大企業の設備投資がこの金融調整によってどのように抑制をされたか、具体的にちょっとお尋ねしておきます。
  88. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 先ほどもちょっとお答えいたしましたように、大企業と中小企業を別に見ることは非常にむずかしゅうございまして、大体趨勢的に各企業に当たってその設備投資等の従来の実績を見、または将来のここ短期間の先行きの計画等をずっととって見ました結果の数字が、先ほど申しましたように、当初の見通しが四兆一千億円であったのに対して四兆六千五百億円と、こういうふうな数字になってきているのでございますが、しかし、その中で傾向的に申しますと、大企業におけるところの設備投資が依然として相当大きくて、中小企業における設備投資はある程度スローダウンしてきているというのが傾向のようでございます。
  89. 大村邦夫

    大村分科員 ことばじりをとるわけではございませんが、先ほど金融引き締めの目的の中で、設備投資の抑制ということがありましたけれども、私が申し上げるまでもなく、今日設備投資は高度成長政策の中でどこが一番飛躍的にやられたかといえば大企業です。したがって、設備投資の抑制が金融引き締めの目的の中に一つあった、大きな要素をなしておるとすれば、大企業についてどれくらいの設備投資が抑制をされたかくらいは把握をすべきだとぼくは思うのです。込みにして、これは中小も入っております。前年度四兆一千億円ありましたが、今年度は引き締めにもかかわらず四兆五千億円に増加を示しました。こういうことでありますが、私はこれは数字は出ておると思います。ないですか。そこら辺を把握しないと、せっかくの目的というものが達成しないと私は思うのです。これは大企業と中小企業と——私ども社会党はよく御承知のように自民党さん、政府は大企業中心の政治をやっておるのだ、こういうことを申しますが、やはりそういう点は明確かに解明をしてもらわないと、あなたたちも、いや、そんなことはないとおっしゃっても、現実に設備投資がどんどんやられる。それは一体どこがやられておるのか、それはよくわかりません、合計でございますから。それから、金融引き締めをやって設備投資が伸びるというのは、どこかから資金が出なければならない。今日内部保留が少ないとかなんとか問題になっておるようでありますが、一体そういう資金はどこから出るか、そういう点も触れて私は次にお尋ねしたいのであります。設備投資の大企業と中小企業に分けたその抑制の中身について、もう少し具体的に御説明を願いたいと思います。   〔主査退席、仮谷主査代理着席〕
  90. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 大村さんよく御承知だと思いますが、実はわれわれも、過去のことについては、ずっと法人企業統計その他をよく精査をいたしまして、その実績をとって、わかっておるわけでございますが、最近の事柄になりますと、ことに引き締めの結果としてどうなってきたかという、その傾向としては、ばく然たる傾向が見当がつく程度でございまして、的確にはそれはつかみ得ないというのが、残念ながら現状でございます。それで、三十七年の引き締めを解除いたしまして、三十八年の実績は、中小企業におけるところの設備投資が非常に急速に伸びたという実績が出ております。三十九年度に入ってその勢いはなおある程度は続いておったのでございますが、先ほども申しましたとおり、金融の引き締めの実際の結果として、たとえば下請関係の道を通じ、あるいはコール資金の吸収を通じて、大企業のほうの設備投資の抑制はそれほどなかったのではないかという見当をつけておるわけでございます。しかし、いずれにしても、当初の見通しの四兆一千億が四兆六千五百億というような大きな金額になっておりますわけでございまして、それが区分してどららがどうなっているかというその明確な見当というのは、なかなかただいまの段階ではつけにくい。それほど、いずれにウエートがあってどうなっているという明確な形には、まだ出てきていないというのが現状でございます。
  91. 大村邦夫

    大村分科員 私は正妻大企業の百七十六社の昭和三十九年の一月から九月までの設備投資に要する支出額を実は持っておるのですが、私のような専門家でない者がそういうのが把握ができて、行政をつかさどっておられる大臣のほうでそういうものがないというのは、一体どういうわけなんですか。
  92. 島田喜仁

    ○島田(喜)政府委員 ちょっと通産省関係で申しますが、全体の三十九年度の設備投資の中で、御承知のように電力、石炭、鉄鋼、石油精製、石油化学等十三業種を中心にいたしまして、通産省所管の業種につきまして、三十九年度の当初に大企業が計画しておりました設備投資の総額が大体一兆八千七百八十億ぐらいになるわけでございますが、それを調整をいたしまして、大体三十九年度は、推定でございますが、一兆六千億ぐらいの数字に調整をいたしております。これは通産省所管の電力等の大企業を中心に考え数字であります。
  93. 大村邦夫

    大村分科員 小さく全部把握するというのはむずかしいでしょうから——まあ本来はやるべきだと私は考えています。そこでお尋ねをしたいのは、金融引き締めで設備投資の抑制をやる。にもかかわらずかなり伸びがある。いまおっしゃいました十何社かの設備投資の内容を見ますと、ある程度は規制されておりますが 全般的には伸びておる。そうしますと、これらの資金というものは一体どこから出るのか、そこら辺についてお尋ねをしたいのです。と申しますのは、企業の利潤が低下し、内部保留を国際競争力の強化に備えて蓄積をしなければならないというのが、政府のお考えのようであります。そうしますと、勢いどこかから資金を調達をしてこなければならないと考えるわけであります。一方では政府は金融引き締めをやっておるのですから、にもかかわらず設備投資が伸びるような資金というのは、一体どこから出ておりますか。私しろうとですから……。
  94. 向坂正男

    ○向坂政府委員 いまちょっと数字が手元にございませんが、資金調達の面からいいますと、まず借り入れ金で調達していく、それから逐次内部留保なりあるいは増資なり社債なり、できるだけそういうものに切りかえていくという形になろうかと思います。
  95. 大村邦夫

    大村分科員 先ほど私は金融調整による金融市場への影響についてお尋ねしました。その中に、大臣はコールレートの問題、コール資金の問題にちょっと触れられたと思うのですが、コールレートがかなり上昇したというのは御承知と思いますし、説明の要はないと思います。一方また銀行は、資金繰り難と採算へのかなりの圧迫を受けたことも事実であります。そうしますと、他から資金を借りる場合に、銀行は金融引き締めでそういうように資金繰りが困難なのですから、一体どこから借りるか。私はこのコール資金というのがかなり作用していると思うのです。その点はどうなんですか。私の調べたところでは、都市銀行のコールマネーあたりを見ますと、一兆円をこえるほどです。一方では、コールローンとコールマネーの関係を見ますと、コールマネーについては都市銀行あたりがぐっとふえておりますね。こういうものがかなり放出をされたんじゃないかと私は思うのですが、そういう点はどうなんですか。これも大企業と中小企業との関係、なかなかわかりにくいですか。しかし、かなりの金が私は大企業に流れておると考えるのです。なぜかといえば、コールレートがずっと上昇しまして、昭和三十九年一月ごろと、その後の三月、四月ごろを見ますと、大体翌日もの、無条件、月越しもの等を見ましても一銭高になっております。そうしますと、採算ベースに乗せて、あまり企業信用の置けない、資産のない中小企業に流れないで、大きなところにいく、そういうことになるんじゃないかと私は思います。その点をひとつ御解明願いたい。
  96. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 コールの残高が一兆円をこしましたのは昨年の秋ごろからです。その後だんだん増額いたしまして、今日もなお一兆三千億円程度に東京、大阪の両市場のコール残高がなっておることは御指摘のとおりであります。その出し手は、的確にはわかりませんが、大体推定されるところでは農業団体、農林中金、その他農業関係の金、それから地方銀行、相互銀行、信用金庫等の方面、または信託銀行その他投資信託関係の金、そういうものが出し手になるかと思います。したがって、取り手はほとんどが都市銀行になっておることは実情でございます。本来コールというのは短期資金でございますから、短期資金の金利がそんなに高いということは正常な状態であるとは思えません。日本銀行が都市銀行に対する金融の引き締めを相当強度にいたしました結果として、しかも設備投資その他必要な融資はどうしてもしなければいかぬというふうな関係から、そうしたコールの残高がどんどんふえてきたという実態は認めざるを得ぬと存じます。御指摘のようなことが原因になってこの金額がふえてきた、こう見ていいかと存じます。ただ、このコールの金利も昨年末ごろまで三銭五厘というふうな、これは月越しものでございますが、非常に高い金利になっておりましたが、それが年を越しましてから大体二銭五厘程度、一銭程度落ちてまいりました。したがって、これはだんだんとまたもとの形に戻るであろうということを私どもは期待いたしておる次第でございます。
  97. 大村邦夫

    大村分科員 時間がないから、あまり数字を並べても結論が出ませんので数字を並べませんが、昭和三十九年の四月から九月、金融機関、たとえば都市銀行とか長期信用銀行、信託銀行、地方銀行、相互銀行、こういうものの貸し出しと実質預金の関係を、三十八年の四月から九月、つまり前年の同期と比較しますと、かなりこの金融引き締めが影響しておるように思うわけでございます。そうして、そういうふうに資金繰りが銀行では困難である。一方では、コールマネーによりましてどんどん借り受けて、銀行はなかなか思うように貸してくれないから、コールマネーのほうに資金を依存をして、設備投資にかなりの金が回る。その金は大企業のほうに主として回っておるということは私は指摘ができると思うのですが、次に外資導入の関係です。国内で資金の調達がむずかしい。一方、アメリカ等に依存しましても、利子平衡税等の関係があっていろいろ問題のあるところでありますが、かなりの外資導入というものが私はやられておると思うのです。これもやはり設備投資なり運転資金に回っていっておると思いますが、この点はどうでしょうか。
  98. 新田庚一

    ○新田説明員 今年度について申しますと、外資導入が通産省所管関係の設備投資に渡りました比率は、全体としまして、平均しまして四%ぐらいでございます。ただ業種によりまして、石油の関係とか、あるいは石油化学の関係とか、そういったところは若干それよりも多い。そういうふうに業種によってでこぼこがございますが、全部ならしまして四%ぐらいということでございます。
  99. 大村邦夫

    大村分科員 それは主として大企業ですね。中小に貸すようなところはいないでしょうね。  次に買いオペについてでありますが、これは金融引き締めというよりも、むしろ逆の面になるかもしれません。本年の一月に入って公定歩合の引き下げをやられ、金融緩和が若干やられたわけであります。そのときに問題になる買いオペについて、一体その資金は、都市銀行等を通じて企業に流れる場合、大企業と中小企業との区分、どっちに多く流れるのか、その比率をちょっとお尋ねしたいのです。これは、政府は金融緩和でやられる措置でありまして、中小企業の倒産がふえる、そこで都市銀行の資金繰りを少しでもよくしてやって、行政指導で中小企業にも少しでも多く貸しなさいという指導をされると思うのですが、はたしてその効果があるのかどうか、そこら辺を検討するためにお尋ねするわけです。
  100. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 御承知のとおり、オペレーションの操作は、財政資金の対民間収支が時期的に非常に大きなアンバランスがございます。税金の納入時期には相当巨額な金が政府に納入されて市中の金繰りがつらくなる。またはその逆に支払いのほうが非常に多い月もございます。そういうことで各時期ごとの財政資金の対民間収支の不均衡をバランスをとっていくということがその主たる目的でございます。また、年末等特に民間資金が——財政資金の揚げ超であるなしにかかわらず、民間資金が枯渇するというような場合は特別の措置をする場合もございますが、これはいずれもきわめて短期的な問題でございます。しこうして最近は買いオペ等につきましても、ことに年末等におきましては中小企業向けの買いオペということで、特に中小企業の金融に役に立つような金融機関に対して買いオペをそれぞれのところに指定してやるということをいたしておりまして、必ずしも大企業とか中小企業とかへんぱな措置はとってない次第でございます。
  101. 大村邦夫

    大村分科員 私、考えますに、政府のほうでも行政指導はされると思うのですが、はたしてそれが実効を伴うのかどうか。これは内部介入、銀行の支配介入といいますか、内部までタッチができないいまの状態の中で、買いオペをやって、そして中小企業についても資金の提供をできるだけ多くしなさいと指導しても、それがはたして効果的にやられるかどうかについて私は疑問だと思うのです。そこらはやはり的確に——これは非常にむずかしいかもしれませんが、中小企業対策として、あるいは大企業対策としても、そういう中身というものはやはりある程度知っておかなければならないと思います。
  102. 塩谷忠男

    ○塩谷説明員 お答えいたします。ただいま企画庁長官から御答弁がございましたオペレションでございますが、日本銀行が全体の資金の需給調節のために行ないますオペレーションは、財政資金の状況あるいはその他の金融状況等に応じまして、あるときには買いオペレーションを行ない、あるときは売りオペレーションを行なう。そういう意味を持ちまして、これは全体としての通貨量の調整のために行なうものでございますので、特に中小企業あるいは大企業に対する影響ということは格別考慮のうちには入れておらないわけでございますが、ただいま企画庁長官から御答弁ありました中小企業向けのために特に行ないます買いオペレーションは、資金運用部資金によって行なうものでございまして、たとえば一昨年の十二月に金融の引き締め措置がとられました際に二百五十億円、昨年三月に百億円、四月に二百億円、六月に二百億円、十一月に五百億円と、買いオペレーションが行なわれました。この対象は、都市銀行をはじめ、相互銀行、信用金庫にわたる各種金融機関でございまして、これは買いオペレーションによって各機関の資金繰りを楽にして、それによって中小企業向けの貸し出しを行なう、こういう仕組みになっておるわけでございます。この指導といたしましては、町負いオペレーションによって買い上げた金額に相反する金額以上の中小企業向け貸し出し、あるいは信用保証協会の保証付融資を行なうということを厳格に指導いたしておりまして、これはオペレーションのつど、その中小企業向けに行ないました貸し出しの実績報告をとることにいたしております。したがいまして、前回行ないましたオペレーションによりまして中小企業向け貸し出しの実績のあがらないものにつきましては、次回のオペレーションにおきましてオペレーションの金額を削減する等、その他のいろいろな措置をとって実績のあがるように指導しておるのでございますが、たとえば昨年の十一月に行ないました年末金融のためのオペレーションでございますが、これは先ほど申し上げましたように五百億のオペレーションを実行いたしたのでありますが、各機関のそれぞれの中小企業向け貸し出しは、オペによって買い上げた金額の数倍あるいははるかにそれよりも多い倍数になっておるのが実情でございます。
  103. 大村邦夫

    大村分科員 私はどうもそういう点がよくわからない、というより納得できないのですが、数字上そういうふうにはっきり出るのですか。私の聞くのは、買いオペをやりまする五百億の中身なんです。いま言われるのは総体的な貸し出しですから、買いオペをやったからふやしたのか、あるいはそうではなくて他の理由からふやしたのか。ここら辺は、馬づらにニンジンではありませんが、おまえのところはよく貸さないから次は規制するぞといっても、銀行は一つの企業でありまして、採算に乗せなければならない。あまり信用を膨脹して危険な道を歩みたくない。そこら辺について私はきわめて疑問に思っている。どうです。  私の持ち時間が来ましたので、実はいろいろお尋ねをしてみたいと思いましたが、この程度で一応締めくくりますが、金融調整なるものが、今日のいわゆる過剰生産を呼んだところの過大な設備投資の抑制にある。しかし、結果的にはある程度その効率作用はしたけれども、まだ十分な目的は達せられない。それはいわゆる貿易自由化等を控えて大企業、中小企業とも設備の近代化がまだまだ行なわれなければならないというそういう実態を踏まえての結果だと思いますが、金融引き締めをやって一番困るのはどこか。いまの質問からそう考えてみますと、やはり私は中小企業ではないかと思うのです。銀行からの貸し出し額を規制いたしましても、一方ではコール資金がありまして、それでどんどん貸し出す。しかもその金額たるや、短期といえども残高は一兆をこえるような巨額でございます。あるいはまた外資の面につきましても、平均四%といえども、これは中小を対象ではない、大企業対象である、さらに買いオペの問題については、若干解明はしておりますが、これもはなはだ疑問の点がある。これらを総合してみますと、結局金融引き締めをやって困るのは中小企業だ。その回答はつまり倒産としてあらわれておるのではないか。大企業の倒産を私はあまり聞かないのです。これは産業の再編成などいろいろな形で合併はしておりますから、そういう面からも救済をされていくかもしれませんが、何といっても金融引き締めのしわ寄せというものはやはり中小企業に寄せられるのである。その答えは、再三申しますように倒産としてあらわれておると考えるわけです。したがって、結論、要望になるわけでありますけれども、そういう今日の情勢を十分大臣は踏まえて、中小企業に対して——大蔵と折衝したが、なかなかうまくいかないとかよく通産大臣あたりも言われますが、何としても重点的に、わが国の産業経済に及ぼす重大な影響——全産業の九九・八%を占めておる企業でありますから、より積極的に今後施策を講じていただきたい。このことを結びとして申し上げまして、まだまだ問題点はいろいろあるのですが、私は商工委員ですから、委員会でまたやらせていただくことにしまして、きょうはこの程度にしておきます。
  104. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 答弁を要しない事柄かもしれませんが、その点一言だけ申し上げておきたいと思います。政府といたしましても、物価対策上まず第一に、生産性の上昇の割合が大企業と中小企業には現実として相当差がございます。つまり、生産性におけるところの格差がございます。そういう中で物価の騰貴という原因が相当大きく伏在しておるということは事実でございます。したがって、中小企業におけるところの生産性の向上をどこまでも助成していきたいというところから、中小企業の三金融機関の原資を増しますとか、または設備近代化資金を増額してやるとか、または企業の診断、指導をやっていただくとかいうことで、そういうふうな生産性の格差を縮小する。そして中小企業におけるところの設備近代化、合理化をどんどん進めていただくということには、政府としてはぜひ力を尽くしていきたい、かように考えておる次第でございます。  しこうして、倒産等が相当増加してまいりましたことは、私どもも非常に重大に考えまして、いろいろその原因等も探究し、そしてこれに対する対策も講じてまいっておるわけでございますが、先ほどお話のありましたように、これが金融引き締めだけの結果であるというふうには私ども見てないのでございます。構造的な要因と申しますか、たとえば企業の見通しが誤ったとか、または労賃と申しますか、人件費が非常に高くなって、そのために設備の近代化がおくれているというふうなことのために、それが倒産に追い込まれたというふうな、つまり構造的な要因も相当大きく場を占めておりますので、そういう点も個々の企業について、きめこまかに指導していただいて、そして何とかしてそういうふうな犠牲者を少しでも少なくするという方向に、政府としてはあらゆる努力を傾注していきたい、かように考えておる次第でございます。
  105. 仮谷忠男

    ○仮谷主査代理 これにて大村君の質疑は終了いたしました。  次は、兒玉末男君。
  106. 兒玉末男

    兒玉分科員 大臣にお伺いしたいのでございますが、きわめて限定された時間でごごいますので、要点だけをかいつまんで質問しますので、ひとつ明確な御答弁をいただきたいと思います。問題は、国有林の開放の問題と、それから農業後継者対策、さらに農道整備、この三点についてお伺いしたいと存じます。  まず第一点の、国有林の開放の問題でございますが、この点は、昨年の十月でございましたか、農林大臣の諮問機関でございます中央森林審議会から、地元農林業の振興のために、売り払い、貸し付け、部分林の設定など、国有林野を積極的に活用する措置を拡大すべきだ、こういうふうな答申がなされておるわけでございます。確かに今日、国有林を通じて、地元農林従業者に対していわゆる生活の向上をはかることは、きわめて重要な問題であろうかと思考されるわけでございますけれども、国有財産の開放ということは、相当慎重な配慮がなければ、いたずらに、いわゆる特定の人たちの利益のためにこれが独占されるという危険性が私は多分にあろうかと思うわけでございます。  そういう観点に立ちますならば、現在林野庁として、また農林大臣として、特に自民党は国有林開放の対策委員会等においてもきわめて活発な動きが展開されておるようでございますけれども、農林大臣並びに林野庁長官は、今日国有林開放に対してどのような態度を持っておられるのか、この点についてお伺いしたいと存じます。
  107. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は根本的な考え方から申しますと、林野というものは公有といいますか、さらに進んで国有のほうがあるべき姿だ、望ましいのだ、こういう観点に立っているものでございます。  国有林の開放につきましても、明治の初めごろに、民有林を国有林に編入したというようないきさつ等もあろうかと思いますが、根本的な考え方から、林野というものは国民のためのものだ。くどく申し上げる必要はありませんが、治山のためにも、森林資源のためにも、あるいは国民衛生のためにも、林野というものは公共のために存在するのが理想である。でありますので、国有林の開放を漫然とすることには私は反対であります。もう一つは、国民の財産を特定の人のために払い下げて、特定の人だけがこれを使うというような考え方はどうかと思うのです。国民全体が国有林によって恩恵をこうむるということが必要だと思います。そういう意味におきまして、開放ということは慎重に扱わなくてはならぬと思います。  しかし、いろいろな事情もありますので、活用といいますか、それを公共的に使っていくということに国有林がその役割りを演ずるということは、これまた私は必要だと思います。そういう意味におきましては、部分林の設定によって利用を拡大する、あるいは昨年度次官通牒を出しましたが、いま農業構造改善をしておりますので、この構造改善に寄与できる、しかも、保安林等として残しておくべきものでない場所において、構造改善等に協力するという場合の活用というようなことは必要であるというふうに考えておりますが、根本的な考え方は、土地の所有権を移動するような開放については、相当慎重にしなくちゃならない。もし、国有林を使うということでありまするならば、活用の方面に重点を置いて、活用につきましても、各営林局等において審議会を設けまして、具体的にその適否を判断するようなことにいたしまして進めていきたい、こういうふうに考えます。
  108. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 ただいま大臣が申し上げましたとおりでございます。国有林といたしましては、国土保全を第一として、森林資源の維持培養、それから木材の供給、あるいは価格の安定等、そういうものについてできるだけ寄与していく、さらにはまた国民の保健休養の場としてその整備をはかるというような使命を与えられている、そういう考え方に立ちまして、国有林野の整備を進めていくべきものである、こう考えております。したがいまして、農業的な国有林の活用あるいは林業的な国有林の活用にいたしましても、そのような国有林の機能との調整をはかりながら考えていかなければならない。なお、その活用の場合におきましても、零細化するようなことは避けまして、林業の場合には小規模林業経営者の規模の拡大、したがって林業経営の近代化という場合に、やはり協業体、森林組合等を主体にしまして、しかもその活用の方式としましては部分林を中心とするというような考え方で進めてまいりたい、こう考えております。
  109. 兒玉末男

    兒玉分科員 私たちの得た資料によりますと——国有林開放対策協議会でございますか、こういうものが全国の市町村に対して、具体的に大体どの程度の国有林の開放を現実の問題として要求をしているのか、またこのような全国の関係の市町村の要求に対して、今日農林省としてはどういうふうな具体的な対策を持ってこれに対処しようとしているのか。多少問題が進みましたが、そういうふうな全国の国有林開放対策協議会等の動きに対する農林省としての態度はどういうふうな対策を検討されておるのか、この点をお伺いしたい。
  110. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 市町村に必要な国有林開放の調査をしているというようなことも漏れ聞いております。しかし町村合併のときに、町村合併を推進するために、市町村に国有林の払い下げをやりました。その実態を見てみますと、おこる人もあるかもしれませんが、私の近くなどで聞いたのでは、国有林を払い下げてもらって木を売った、木を売った金で学校をつくるとかなんとかしたのですから、まんざら無用といいますか、それを有効に利用しなかったとは申しません。しかしそのあとの管理につきまして、立ち木を目当てとして国有林の払い下げを受けたというような傾向が非常に強いのであります。でありますから、それは公有林として町村でほんとうに管理をし、税の負担なども軽減しておるところもありますから、一がいには言えませんが、先般申し上げたような例もありますので、国有林の払い下げ等につきまして、そう希望があるから全部にわたってその希望どおり払い下げるというようなことにつきましては、よほど慎重に考えて、むしろ締めていかなければならぬというふうに考えております。  そこで、それにどう対処するかということでございますが、これは国有林地帯の人々の希望、要望等も考えて、やはり部分林の設定というようなことで、国有林を利用するような形で進めていくことが一番適当でないか、こういうふうに考えております。
  111. 兒玉末男

    兒玉分科員 長官にお伺いしたいのでございますが、先ほど、部分林の設定ということを重点として活用を考えたいという御答弁でありますけれども、私の宮崎県の場合におきましても、須木村というところ等は全町村の約八〇%が国有林によって占められまして、非常に根強いところの開放への運動が高まっておるわけです。一部の住民においては、あたかもこれを個人に払い下げをしてくれるのだ、こういう一つの説が非常に飛びまして、大きく問題を提起したのでございますが、私たちしろうとの判断においても、山の管理、それからいろいろな造林等の技術的な面についてはかなり長期の経験と管理そのものが、個人の単位でそう簡単にできるものではないのじゃないか。少なくとも山林を所有することによって得る収入というものは、一般の企業と違って相当長期の管理によって初めて利益が得られるのじゃないかと私は思うのです。そういうふうな山の管理において直接的に利益を得るというのには、大体どの程度の年限を要するものか、たとえば一ヘクタールなら一ヘクタールの山を管理するために、大体どのような資本が要るものか、いわゆる部分林にした場合の地域住民の利益、こういう一つの専門的な立場から長官の見解を承りたいと思います。
  112. 田中重五

    ○田中(重)政府委員 いまの宮崎県の須木村等の御事情については、お説のとおりだと思います。それでそういう地区でありましても、林業の構造改善を進めていく場合、経営規模の拡大ということ、さらにその経営の近代化、それを進めていくための機械化等、あるいはまた林業生産基盤の整備としての林道、そういうような仕事について、やはりその地域の森林組合等を主体といたしまして協業化を促進する形で、その協業体自体が仕事を進めていく、個々の経営者をその協業体に組み入れていくというような方向で進めてまいるように、昭和四十年度は林業構造改善事業の実施の初年度でございますが、そういうことで県あるいは市町村等を指導している次第でございます。  それから、植栽をする場合、部分林として国有林を活用していくというような場合には、現在でも部分林制度は国有林野法で認められているわけでありますけれども、営林署長が相当経営の中へ介入しまして、そしてまたその事業自体が国有林の経営計画の中に組み込まれて、分収権者の側が自主的な意欲を発揮して経営するということが拘束されるような状態になっておったわけであります。そこで、これからはまず分収歩合についても、できるだけ造林者の立場に立って有利なような分収歩合を考えていく、それから植栽自身につきましても、ことに将来のことを考えますと、いたずらに大径木を造林するという考え方はやめて、できるだけ早く、しかしながら、じょうぶに育てていくような品種の培養、そういう培養の結果得られたものでできるだけ造林をしてまいる、そしてその植栽本数なりあるいは間伐、主伐の時期の決定、そういう問題についても、造林者の意思を十分に尊重して考えてまいる、そういう考え方でございます。いずれにしましても、造林者本位の部分林の活用ということで進めてまいることにいたします。  そこで、最後のお話の、どれくらいの費用というか収入というか、そういうことになりますと、これは造林される樹木の種類、それからその経営の方針としての伐期の進め方、ことにその時点における木材価格の推定等について非常に問題がございます。しかしながら、大体投資された金が、少なくとも五分五厘ないし六分程度に回るような、そういうところへ持っていくようにしたい、こういう考え方でございます。
  113. 兒玉末男

    兒玉分科員 この点はあと一点だけにしぼりまして、次に移りたいと存じますが、私たちが非常に懸念することは、さっき大臣も御答弁がありましたとおり、これがかって気ままに開放されたら、必ず零細な農民というのはすぐ立ち木を売り払ってしまって、そうしてそれが結局一部の大資本の山林地主に吸収されてしまう。せっかくの国有林の開放が、特定の人だけを太らせる結果になることをわれわれは懸念するわけであります。同時にまた、この開放の問題は、現在まで上長年国有林のいわゆる山林労働者として働いている、国有林関係の、林野庁関係の職員の労働条件にも関連する重大な問題でありますので、その辺、この開放問題については相当慎重な配慮と、それから、やはり国の貴重な財産でありますから、長期の展望に立ったところのきちんとした計画を立てられてこの開放問題に取り組んでいただきたい、こういうふうに要望申し上げまして、次に農業後継者対策についてお伺いをしたいと存じます。  最近農村におきましては、ほとんど若い者が全部都会へ行って、今後の日本農業にとって非常に重大な問題が提起されておるわけでございますが、これは単に農業関係の教育をよく充実するとか、あるいは後継者に対する資金援助をするとか、そういうふうな問題だけで解決できない重大な問題がひそんでいようかと存じますが、この農業後継者対策について大臣はどういうふうな対策をお持ちであるのか、見解を承りたいと存じます。
  114. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 後継者というものをどういうふうに規定するかという問題もあると思います。農村の青年を全部後継者としてこれにとどめていこう、あるいは育成していこうということは、これは無理だと思います。従来としても、五人子供がいれば、そのうちの一人かせいぜい二人ぐらいが農村にとどまっている。ところが、その一人か二人もだんだんいなくなるということで問題が起きてきていると思います。先ほどもお話がありましたが、農村の後継者として残っているというものを見てみますと、やはり経営規模の大きい人はわりあいに後継者として残っておると思います。二反歩や三反歩を耕作してそれで残っていろというのでは、これは残させるほうがなかなか無理があると思います。共同化等によって、そういうものは農業をやってもらうということが必要であるということを考えて、その方向に進めておりますが、そういう意味におきまして、やはり経営規模が相当適正であるということが必要である、そういう方向へ持っていきたいという考え方も一つは持っておるのであります。  それから何といたしましても、農業が魅力のある、というまではいかなくても、農業というものが安定してやっていける産業だというところへ持っていかなければならない。それが後継者対策としての根本問題だろうと思います。そういう意味におきまして、農業を質的に強化していく、こういう面から考えまするならば、いまの農地が改良されて、機械化も十分行なわれている、労働力も省けていけるというようなことなどが必要でありますので、農業政策そのものが後継者対策につながっておるわけであります。しかし特に後継者対策をどうするかということでございますが、農業も、経営面におきましても、技術面におきましても、だいぶ高度化したといいますか、変わってきておりまするし、それから同時に、経営として成り立つか成り立たぬかというような面も相当考えなくちゃなりません。そういう面におきまして、農業のあり方等をほんとうに実地に研修するといいますか、そういう機会を得させるということが必要だろうと思います。大体農村におきまして、高等学校等にみんな入っておりますが、高等学校等へ行けない面、あるいはまた高等学校へ入ったからといって、必ずしも農業にとどまる者ばかりだけ、農業高等学校ばかりではありません。そういう意味で特別の教育機関といいますか、伝習農場的な教育機関によって、農業の経営のあり方、あるいはまた最近におけるように花とかあるいは養鶏とか、そういう小さい耕地でやれる業態もありまするし、大きく機械化によってやっていくという面もありましょう。そういう新しいあり方等についての実地の訓練といいますか、伝習といいますか、そういう機会を——それは伝習農場とばかりは限りません。あらゆる機会を通じて、会合等も通じてそういう機会を与えて、ほんとうに農業というものに興味といいますか、農業に密着していくような経営方法、あるいは気持ちというものを養っていくということが必要であると思います。あるいは生活改善面においてのそういうことに寄与するという面も多いと思います。そういう面におきまして、何といいますか、後継者を残して、いい後継者にしていきたい、こういうふうにいろいろな方策を講じておる次第でございます。
  115. 兒玉末男

    兒玉分科員 私の県等におきましても、今年度の高校卒業者の大体七八%からほとんど八割以上炉全部県外へ出ていって、農業県といわれる私の県等においても、この問題が非常に重要視されておるわけでありますが、県の知事等もSAP運動等を通じまして、いろいろな面で農業経営に対する思想的な、何といいますか、頭の切りかえということで盛んに努力しておるわけですけれども、それでもなかなか残らない。そういう点から考えますと、何と申しましても今日の農業経営の中において一番問題である農産物の価格の安定、それから流通部門の抜本的な改革あるいは農業経営の近代化、こういうことにもう少し農林省が力を入れないと、幾ら頭の中の教育だけやっても、今後の日本農業の発展を期することは困難ではなかろうか、こういうふうに考えるわけですが、こういうような点に対する一つの見解。  それから時間がありませんので、余った点はまた後日に譲りますが、農林省の施策の中において農業後継者育成資金の拡充という欄で、昨年度は四億五千万、本年度農業改良資金制度の一環として、後継者育成資金を新設して十億の貸し付けワクを設定してあります。この十億の金は具体的にどういうふうに使われるのか、またその対象の人員というものはどの程度あるのか、それから昨年の実績はどういうふうにあがっているのか、この点についてお尋ねして、後継者の問題は終わりたいと思います。
  116. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 確かにおたくのほうのSAP運動等もいい成績をおさめておるようでございますが、それに関連して、お話のように価格政策というものが大事だということは私も同感でございます。原則的に申し上げるならば、少ない労働力で多くの利益をあげるという意味におきまして、生産性の向上ということが必要でありますけれども、しかし農業面におきましては、他の業態のように短日月にその目的に到達するものじゃございません。どうしても価格政策というものが並行して行なわれなければならない、こういうことでございますので、現在農産物の七割程度につきましては価格支持対策を講じております。しかしこの価格支持対策につきましても、非常に強化されているものと、非常に薄いものと、こういう濃薄の差はあると思います。こういう点がありますので、価格安定、価格支持対策につきましても、いろいろそういう面を勘案して、強化すべきものは強化する、新しく設定するものは設定するというような点を考えて価格安定対策を講じていきたいと思います。  それから後継者の資金でございますが、これは昨年度農業改良資金として無利子、五カ年ということで設けました。   〔仮谷主査代理退席、主査着席〕 ことしは全国のワクといたしましては五十七億円になっております。昨年の成績を見ますると、各県とも希望者の申し込みが非常に多いのでございます。御承知のように、家族の中の後継者等が、世帯主といいますか、そういう人から独立して——何もうちを分けるわけじゃございませんが、会計面で独立して自分が養鶏をやってみよう、あるいは養豚をやってみよう、あるいは花をやってみよう、こういう積極的な独立企業精神をもってやろうという人が資金の必要を感じている、こういう青年等に貸し付けるものでございますが、希望が非常に多いのでございます。多いので、ことしも去年よりは——去年は四十五億のワクでございましたが、ことしは五十七億というふうにふやしたのでございます。なお農政局長から詳しく御説明申し上げますが、これは各県にワクを割り当てまして、その希望者を募って、その希望者の中から選定して貸し付けるというようなことをしております。
  117. 昌谷孝

    昌谷政府委員 後継者育成資金は、ただいま大臣からお話のありましたようなことで、三十九年度が初年度でございますが、一応四億五千万の貸し付けワクを改良資金の中に特別に設けたわけでございます。実行上は、他の技術導入資金等から回しまして約六億、それらの経験にかんがみまして明年度は当初から貸し付け予定ワクを十億円というふうに、五十七億円の中の十億円を特に後継者資金として予定をいたしております。なお実行過程で多少の弾力的な運用をいたしたい。  貸し付けの中身といたしましては、大きく申しまして二種類と申し上げていいと思いますが、一つは個別的に後継者が父親の単なる補助者という立場から責任を持って部門を分担するということでやっております。もう一つは、それらの後継者が村の中で共同で新しい種目をやってみる、いわば協業でやってみるということでございます。実績的に申しますと、やはり個別にやるほうが圧倒的に希望が多うございまして、共同で新しい試みをするというほうは実績的にはごくわずかでございます。なお、三十九年度の実績で申しますと、この部門別のどんな部門が選ばれたかということでございますが、酪農二〇%、野菜一八%、養豚一六%、養鶏二八%、果樹一二%、それから花卉、和牛等、そういう内容になっております。
  118. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど申し上げた五十七億は、改良資金の総額のワクでございまして、後継者資金のワクではございません。その点ことばが足りませんでした。
  119. 兒玉末男

    兒玉分科員 時間がなくなったという催促でありますので、もう少し後継者問題はお聞きしたいのでありますが、最後に農道関係の整備について一括して御質問したいと思います。  これは農業用ガソリン税の問題でわが党の主張もございますが、私は、特に一般の港湾とか、一般道路等のこういう公共投資、しかもたとえば港湾等の場合は特定の一つの資本が受益するわけでありまして、それに対してはばく大な公共投資がなされておりますが、肝心の農業用の道路助成については非常に微々たる資金しか出されておらない、しかも農業用のガソリン税の中から出た収益をもって、政府は今年度どの程度の資金を落としているかよく知りませんが、とにかく、今日の農業経営の実態から判断しますと、特に近代化改良化あるいは基盤整備等の作業によって相当な機械が導入されております。ところが、大多数の農道の補修、整備、維持というのは、地域住民の自己負担において、ほとんど全額農民の犠牲においてこれがなされておる実情であります。北朝鮮の場合は社会の制度が違いますが、特に金日成の農業政策を見ますと、とにかく、暗渠排水、それから農道等については、一〇〇%国の費用においてこれがなされている。私はこれはきわめて傾聴すべき政策でなかろうかと考えるわけであります。先ほど大臣の答弁にありまするように、日本農業の将来ということを考えてみます場合に、今後のいわゆる農業近代化等を進めていく上において、農道の整備ということは私は非常にウエートが高いかと考えるわけであります。そういう点について、特に大蔵省の方もお見えになっておりますので、ガソリン税の中からこれに充当するということより、むしろ一般財源の中から積極的に、少なくとも農道の五〇%程度は助成資金を出す、こういう思い切った農道政策を確立していくべきではなかろうか、私はこういうことを考えるのでございますが、この点について大蔵省並びに大臣の御見解を承りたいと存じます。
  120. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農道は私は非常に大切だと思います。土地基盤の整備をしていくということ、それにつきましても、いまのような農地の分散しているような状況は一日も早く直していきたい、交換分合等によって集中化していきたい、これが労働力対策上もまた生産性をあげる上においても大事だと思います。そういうことをやるようにしておるのでございますが、なかなか思うようにいきません。そこで、一面におきまして私の考えておることは、農道を相当つくり上げたらどうか、農道をつくれば、農道の近辺といいますか、農道の近所等におきましては、どうしても区画整理とか圃場の整備ということが必要化されてくる、そういうことによって耕地の集団化が促進されるということになりまするならば、労働力対策の面におきましても、生産を上げる面におきましても、非常にいいことだ、こういうふうに考えていますので、農道は相当思い切ってやっていきたい。  それから、もう一つは流通対策でございます。運賃か非常に軽減されるということは、価格流通対策の画におきましても大事なことでございますが、そういう面につきまして、農道が一つ産業道路的に利用されるということが必要だ、こういうように考えております。でありますので、本年度におきましても、一般農道は十三億円の予算でございますが、土地改良等における農道分だけを引き出して計算してみますると、開拓道路まで入れると百十五億くらいの予算が農道に入るということになっております。それはガソリン税の分の三十四億の農道も含めてでございますが、全体といたしまして百十五億くらいの予算でもって農道を手がけていきたい、こういうふうに考えております。それで、これはいまのお話のようにガソリン税に見合ってということばかりではなく、これは恒久的といいますか、もっとどんどん農道の建設を、一般財源からも出して、そうしてふやしていきたい、こういうふうに考えております。
  121. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 ただいま農林大臣のお答えいたしたとおりでございまするが、全般として、農業のための道路政策という点から見てまいりますと、御承知のとおり、現在、道路整備事業としては、建設省の関係予算といたしまして、二千数百億という非常に大きな予算が計上されております。この予算の内容といたしまして、開拓道路であるとかあるいは農村地域の地方道であるとかいうようなものは、いずれも道路整備五カ年計画に組み入れられます。そして相当の工事が行なわれているわけであります。一般的な交通の用に供します地方道につきましては、現在の道路法のたてまえもございまするので、これはやはり道路事業として五カ年計画等で進めていくということが至当であろうと思います。最近数年の道路事業の時期的な配分を見てまいりますると、大都市の交通難という問題がございまする上に、オリンピック事業などもありまして、やや配分が都市に重点が置かれてきた点は御承知のとおりでございます。最近に至りまして、建設省のほうでも、地方の道路を重視するという方針で、四十年度予算配分方針においては、そういう点がかなり重視されるように伺っております。したがいまして、全般としての道路政策といたしましては、農業の実態あるいは農村の実情ということを考えまして、五カ年計画の上にこれを強力に織り込んでいくということが筋であろうと思います。現在問題になっております農道は、御承知のとおり、土地改良法に基づいて行なわれるものでありまするから、これはやはり、土地改良事業のたてまえといたしまして、地域農民の方の負担をお願いするということはある程度当然であろうかと思いますが、この事業につきましても、従来の実績等を考えまして、四十年度予算から、いわゆる団体営の農道事業につきましては、従来非常にいろいろの補助率がございましたけれども、これを統一いたしますとともに、補助率の若干の引き上げを行ないまして、大体補助率四割に統合をするということにいたしております。さらに、いま御説明のありました、農業用の揮発油税財源の見返り事業につきましては、まだこれから実施の基準をきめることになるわけでありまするけれども、現在のところ考えておりますことといたしましては、基幹的な道路につきましては補助率を三分の二にする、その他は二分の一というような形で、従来の農道事業にない高率の補助をいたしますと同時に、事業の規模といたしましても、かなり大きなものができるようになる、こういうふうに考えております。こういう事業を推進していきますことによりまして、御要望のような線にだんだん進んでいくもの、こういうふうに考えております。
  122. 古川丈吉

    古川主査 これにて兒玉末男君の質疑は終了いたしました。  午後は二時二十五分から再開し、経済企画庁所管、農林省所管及び通産省所管について質疑を続行することにいたします。  暫時休憩いたします。    午後一時二十六分休憩      ————◇—————    午後二時三十一分開議
  123. 古川丈吉

    古川主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十年度一般会計予算中、経済企画庁所管、農林省所管及び運商産業省所管、並びに昭和四十年度特別会計予算中、農林省所管及び通商産業省所管について質疑を続行いたします。  質疑の通告があります。順次これを許します。村山喜一君。
  124. 村山喜一

    村山(喜)分科員 私は三十九年度産のカンショでん粉の問題につきまして農林大臣に質問をいたしたいのでございます。  先般大臣も九州各県の生産県の代表の方々とお会いをされただろうと思うのでございますが、ことし、でん粉の全国的な生産量は、台風その他の関係から二割ほどの減収で、約六十一万トン程度というふうにわれわれも聞いているのでございますが、その後におきます予算措置が、食糧特別会計の農安勘定におきまして、五万六千トンの予算措置がされました。当時、予算措置をする時期におきましては、これで十分であろうというふうにわれわれも見ておりました。なお予備費が二十億あるので、この中で措置ができるのではなかろうかというように説明も受けておりましたので、そのようなことを地元の人たちにも話をいたしておったのであります。ところが、その後の経済の推移を見てまいりますと、御承知のように、砂糖がキロ当たり小売り値におきまして百円を割るという、そういう状態が出てまいりました。そして、カンショでん粉について生産原価を調べてまいりますと、金利負担まで含めますと、大体十キロ当たり千五百三十円くらいの原価になるようであります。ところが、生産地におきます中心的な相場というものは千四百七十円くらいしかしない。これは買い入れ基準価格の千六百八十円に比べまして大体二百十円くらいの差が出てまいっているわけであります。そういうようなことで、市況がきわめて不安定な状態に相なりました。そこで、業者にいたしましても、あるいは農協系統にいたしてましても、それぞれ自主的な調整をやりながら、販売の増大につとめてはおるのであります炉、現実はなかなか市況がさえませんので、でん粉の手持ち見込み量というものが膨大な数にのぼってまいっておるわけであります。そういうことから、政府に対しまして、予算が成立をしたならばこの予備費二十億を含めました全部を投げ出してもらって八万トンの買い入れをやってもらわなければ、どうにもやりくりができないというような状態に追い詰められているようであります。そういうような状況から、いま政府におきましては、砂糖懇談会の価格安定対策の答申を受けられまして、いろいろ準備も進められているようでありますが、ここで大臣に、こういうようなカンショ作の地帯というのは、特に鹿児島、宮崎というような所得の全国的にも低い地域でもありますし、台風災害のひんぱんに襲った地帯でもあります。われわれが聞くところによりますと、六十をこえた農家の主人が、水稲もやられ、カンショの価格も下落をして手取りも少ないために、出かせぎに行かなければならないという状態がもうひんぱんに出ているのであります。そういうような状態の中において、なお原料安の製品安という形が出てまいりますと、きわめて重大な問題であると思うのでございますが、大臣は、これらの実情にかんがみまして 予算が成立をいたしました暁においては、この要望の八万トンを即時買い上げてもらうということに対しまして措置をされる決意があるのかどうか、こういうことをお尋ねをしておきたいのでございます。
  125. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御事情お話のように私どもも聞いております。でありますので、予算が成立いたしましたならばお話の線に沿うべく、準備といいますか検討を事務当局にもさせておるところでございます。
  126. 村山喜一

    村山(喜)分科員 農林大臣のお答え、了承いたしますが、これは大蔵大臣にもそういうような要請をし、大蔵大臣も、実情はよくわかるので期待に沿いたいという説明を陳情団にもされたようでございますが、これに対しましては大蔵当局はどういうふうに考えておるか、お答えを願いたいのであります。——それじゃ、いまの問題は大蔵省のほうから見えましてから答えを聞くことにいたしまして、次の問題に入りたいと思います。  支持価格が貫当たり三十円ということできまりました。そこで ことし私も、地元の農民総決起大会というのが初めて開かれまして、そこでいろいろ農民の諸君の切なる要望が出ているのを聞いてまいったのでございますが、そのときに農協の代表の方が言うには、この基準価格と現在われわれが委託販売としてあなた方からもらっておる原料の価格との間では、政府が買い上げをするということになった場合においては差額払いについても責任を持ちます。こういうような答弁をいたしておるわけでございまして、過般農林委員会におきまして同僚の児玉君の質問に対しましても、そういうような委託販売のものについては精算払いが可能である、こういう答弁を食糧庁長官からもされているようでございます。あなたが昨年出されました通達によりますと、いわゆる基準価格に満たない価格で買い上げた原料イモからつくり出したでん粉については、政府の食管会計の買い上げの対象にしない、こういうような線を強硬に指導されたわけであります。ところが、業者が取り扱っているでん粉については、大体全体の三分の二の量を持っているわけでございますが、その業者の諸君もでん粉の手持ち量が相当ございますので、これを政府に買い上げてもらいたい、こういうようなことを要求いたしているわけでございます。そしてまた、政府に買い上げてもらった分については、差額払いといいますか、調整の意味において支払いが可能であるし、また自分たちもそういうふうにいたしたい、こういうような考え方でございます。ところが 通達と業者の諸君が考えているその内容におきましては、考え方がちょっと違う。といいますのは、業者の諸君は、政府が買い上げてくれた分についての差額払いは、全体の調整的な立場で、原料イモを提供いたしました農家に還元ができる、しかしながら、政府が買い上げてくれないものについては、これはもういたし方がないんだこういうような考え方を持っているわけでございます。とするならば、政府の行政指導というのは、基準価格の線で業者の諸君も協力をしなさい、こういう形で通達を流した。それがそのような形ではね返ってきているわけでございますが、この業者の買い上げましたところのイモのでん粉につきましては、価格差額払いというものがはたして可能であるのかどうか、もし可能であるとするならば、それをどういうふうにしてやるのかということについて、方法考えておいでになるならば、お知らせを願いたいのであります。  なお、それと同時に、金融の措置の問題でございますが、原料手当資金として、それぞれ商工中金等を通じまして金融措置がされました。おもにでん粉業者の諸君は地方銀行の資金を借りてやっているわけでありますけれども、商工中金の資金も三月の中旬には引き揚げられ、また、地方銀行あたりにつきましては、地方公共団体の預託金がそういうような地場産業を救うという意味において預託をされておったものが、年度末の関係もありますので、これを引き揚げなければならない、こういう状態の中にありまして、この原料手当資金の返済の問題についてもきわめて苦慮しているような状態であります。これらの状況の中から、中央におきましては、大きな企業は公定歩合の引き下げの恩恵を受けまして金利負担が一億も二億も軽減をされたところもあるようでありますが、これらの中小企業関係の業者の諸君は、恩恵が行きわたっていないわけであります。そういう立場から考えてまいりますと、これらに対する今後の措置というものをどういうふうに考えておられるのか。三十八年は原料高の製品安、三十九年度産は原料安の製品安という状態でございますので、相当な業者が倒産の危険の状態にまで追い詰められている、こういうように私たちは見るのでございますが、これに対するところの措置をどういうふうに考えて実施しておられるのか、お尋ねしたいのであります。
  127. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 お尋ねの第一点は、商人が基準価格以下で買い取った原料イモで生産したでん粉を、その後において政府が買い上げるのか買い上げないのか、買い上げるとすれば農民に支払う方法があるのかどうか、こういう御質問でございますが、私のほうは農安法のたてまえから言いまして、基準価格以下で、そこで最終的に仕切って、でん粉業者からは買う意思を持っておりません。したがいまして、当時におきましても、農協はもちろんでありますが、一般のでん粉業者についても、委託販売をするものについては将来に精算する道があり得るわけでありますから、そういうことを指導いたしたわけでございます。したがって、その支払い還元方法は、委託販売以外の場合におきましてはあり得ない、こういうことであります。  それから、第二の、でん粉業者に対する金融の問題でありますが、これは、農安法とはまた別に、つまり、でん粉企業としての金融をどうするかということは、これはまた、食糧庁としては、別個の見地から、当然円滑な流通資金の措置をはかるという意味において考えるべきものであるというふうに考えております。そこで、いまお話がありましたように、原料手当資金につきましても相当資金手当をいたしたわけでありますが、その返済期にだんだん入ってまいりまして、業界のほうとしても、これに対する資金手当を要望する向きが出ておる。系統資金につきましては、これは農林中央金庫から当然必要な資金は出るようにあっせんいたしたいと思っておりますが、一般のでん粉企業につきましても、そのような要望もございますので、いま全国的に全国団体を通しまして必要資金量について調査を取り進め中でございます。その結果によりまして、あるいは期間の若干の延長だとか、あるいはそれにかわるべき資金の融通とかいうようなことを考えてまいりたい、こう思っておるわけであります。商工中金であるとかいうようなところが対象になるかと思います。
  128. 村山喜一

    村山(喜)分科員 売買の精算払いが済んだところにおいては、なるほど農安法の立場から、これは追加払いといいましても、そういうような買い上げは、困難でありましょうから、事実上の問題として差額払いも実施はされないと思うのであります。しかしながら、これは内金としてお渡しをいたします。政府その他において買い上げてもらうようなことになったならばその分については後ほど精算をいたしましょう、こういうような契約でその業者が買い入れた場合には、それはどういうふうになりますか。
  129. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 とかくそういうふうなことによりまして、出回り期においてはイモの価格がたたかれ、そして、イモの取引が一段階しますと、今度はでん粉の値が上がってくる、こういうことがしょっちゅうイモの取引についてはあるわけであります。したがって、いまお話しになりましたような事態でありますならば、そのでん粉が上がった場合においてもどんどん農民に精算払いをしておるというようなことが明らかであれば、あるいは委託という形式をとったものであるということも立証できるわけでありますが、事実でん粉は出回り期よりも相当上がっておるわけでありますけれども、はたして農民にそれだけのものが返っておるかどうかということになりますと、私は非常に疑問であると思う。それが、いつも出回り期におきましてイモの価格がたたかれ、その後になってでん粉の価格が上がるという事態ではないかというふうに思われるわけであります。ですから、そこはやはり、でん粉企業に対する救済は救済、イモの価格の支持は支持方法でということで、われわれとしては対処してまいりたい、こう思っております。
  130. 村山喜一

    村山(喜)分科員 ただいまの点についてはわかりました。この点は今後明確に実施していただいて、損害がいつも農民泣かせという形にならないように、あなた方のほうで努力を願っておきたいのであります。そこで、大蔵省の宮崎主計管、おくれて入ってまいったようでございますが、先ほど私のほうから回答を求めておりますのでお聞きになったと思いますけれども、それについての答弁を願いたいと思います。
  131. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 でん粉の買い上げの問題についての御質問でございましたが、遅刻いたして恐縮でございます。四十年度予算におきましては、先ほどお話がありましたように、予算といたしましては五方六千トンということでございますが、残りは予備費に予定をしておるという形でございます。御承知のとおり、この数量は三十九年産のでん粉全体に対して措置をするというふうに考えておるわけでございますから、現在のような市況からいたしますと、できるだけ早く買い上げなければならぬということだと思いますけれども、また、一方からいきますと、これを発動して全量買い入れる、予算を全部使うということになりますと、あとは何ら買い上げの手段はないということにもなるわけであります。その辺、今後の見通しということもあわせ考えまして、農林省のほうのお考えも伺った上でやっていきたい、こういうふうに考えております。
  132. 村山喜一

    村山(喜)分科員 きわめて消極的な答弁でございます。大蔵大臣はそうしましょうというような答弁をしているのでございますので、主計官あたりのところで今後の操作の問題がどうだこうだということで押えないように、事務官僚の諸君に私要望を申し上げておきます。  そこで、次の問題は、このあと十分ぐらいしかありませんので、簡単に進めますが、 コーンスターチの規制の問題についてであります。これは三十八年に大体十四万トンぐらいの生産がされていたものが、三十九年度は二十八万トンないし三十万トン、四十年度は、設備がほとんど完成をすることによって、これをフルに活動をさせると四十万トンぐらいの生産処理がされるのではなかろうか、こういう見方もされているわけでございますが、これにつきましては、でん粉と競合いたします部門等につきましての調整の問題なりあるいは販売分野の問題等あるとは思うのでありますが、これらにつきましての行政指導というものによりまして、はたして調整が販売分野と生産面におきまして可能であるという自信を食糧庁としてはお持ちになっておるのかどうか、この点について、自信がおありであるならば、自信がある、決してその点は心配はかけない、こういうふうにお答えを願いたいし、それは単なる生産規制だけではだめだ、やはり輸入制限とかあるいは関税の引き上げの問題にまで考え方を及ぼさなければならない、こういうようなお考えでありますかどうかをお尋ねしたいのでございます。  それと、もう一つ、南西諸島のサトウキビからつくります甘蔗糖の問題でございますが、これは、昨年台風の災害がございまして、きわめて大きな損害を受けたということで、中西官房長にも私そのとき話をいたしたのでございますが、その当初の見込みから、災害の回復対策と気象条件に恵まれまして、今度は予想以上の生産回復という姿が出てまいりました。当初の見込みは大体六万トンくらいであろうというふうに見込んでいたものが、八万二千四百トンにも及ぶというような状態になってまいりました。大体政府におきましてはこの生産見込みの六万トンのうちの九〇%を買い入れるという方針だというふうにわれわれは聞いておったのでありますが、その六万トンの九〇%ということになりますと、現実に生産をされる見込み数が八万二千四百トンに上昇をしてまいりますと、政府の買い入れ率の低下が予想をされるわけであります。そうなってまいりますと、これにつきましてはきわめて不安定な状態ということになりますし、特に奄美大島関係あるいは種子島、屋久島というような僻遠の地におきます農業生産計画が完全に狂ってくることになるわけでございますが、これにつきましては、政府買い入れ分について最終的に生産実績の九〇%以上の買い入れ措置をおとり願いたいという要望が強く出されてきているわけであります。  なお、そのほかに、分みつ糖の製造圏外の含みつ糖の保護の問題でございますが、これらについての対策もあわせ考えていただかなければ、分みつ糖をつくれるような地帯にない僻遠の地帯でつくっております黒砂糖等でございますので、これらの住民の生活を保障するという立場から、その製造圏外の含みつ糖の保護対策もあわせ考えておられるとは思うのでありますが、これについての見解をお尋ねしたいのでございます。  なお、時間の関係で最後の問題に移りたいと思いますが、二十六日の新聞によりますと、砂糖類問題懇談会が価格安定対策を答申いたしました。それに伴いまして砂糖の相場も急騰をいたしているようでございます。元売り商の仲間置場渡しの価格を調べてみますと、これは前日に比べてキロ当たり一円五十銭上がっておるようでありますし、先物も、三月期で一円七十銭高、四月期で二円高というような価格がすでに出ているようであります。これらは砂糖類問題懇談会の答申の糖価対策に対する期待が強まってきてこういうような強含みになってきたのだという相場の評価がなされておるわけでございますが、政府が、昨年の十月だったかと思いますけれども、糖価安定の問題につきまして日本国内産糖を保護すると同時に国際的な競争力を強めていくというような立場から、糖価安定法案を次の国会に出してやるのだ、こういうようなことで作業に入られてから、もうすでに数カ月を過ぎるわけであります。ところが、この糖価安定の措置につきましては、初め考えられておりました線としては超過金制度というものによって措置しようという考え方があったようでありますが、この答申によりますと、弾力関税あるいは価格差補給の財源措置というような方向で、基準価格をつくり、用途規制等も行なって、事業団をつくって砂糖の価格安定をはかっていくのだ、こういうような方針が述べられておるわけでありますが、これにつきまして、どういう方針政府としては糖価安定法案というものをおつくりになり、いつごろこれについては国会に提案をされる見込みであるのか、この点について承っておきたいのであります。
  133. 赤城宗徳

  134. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 四点の御質問につきましてお答えいたします。  第一は、コーンスターチの生産規制の内容として、行政指導だけでうまくいくかどうか、こういうことでございますが、生産規制自身につきましては、第一次的には、御指摘にありましたように、国内でん粉との競合を避け、あるいはコーンスターチの生産増大に伴う価格に対する不利な影響を避けるということにあるわけでございますが、同時に、だんだんに生産も増大いたしてまいりまして、コーンスターチ業界自身におきましても若干販売競争を激化しつつあるやに見受けられるわけでございます。そこで、われわれといたしましては、一次的には、まずでん粉のおのおのの固有用途についての分野調整をはかるということについて指導してまいったわけでありますが、どうもその後におきましては分野調整を越えまして生産量そのものが増大しつつあるわけであります。そこで、いわば、勧告操短とは違いますけれども、勧告操短と同じ手法を使いまして業界に生産規制の措置をとる必要があるのじゃないかという考えでございますが、これは、勧告自身に基づきまして業界に十分受け入れる条件があるかどうか。確かにお話のように、これに違反しても別に法律上どうということはないわけでありますから、そういう意味におきましては、一応は励行される保証というものはないと思いますけれども、しかし受け入れる態勢というものがだんだんできつつある事情にございます。また、両でん粉業界の健全な発達という意味から言いますと、そういう意味からの生産規制も必要であるというようにも考えられますので、われわれとしては、まずこの措置を進めていくということでこの成果を見守りたい。もちろん、これについては、先生御指摘のように、不十分である、あるいは関税割り当て等の措置を研究すべきじゃないか、こういう御意見もございます。それらも含めまして検討したいと思っておりますが、第一次的には、いまの行政指導によってある程度の効果が期待されるのではないか、こう考えております。  それから、第二点の奄美大島等におきまするサトウキビが、当初予算当時よりも生産が非常にふえたではないか、したがって、当初買い上げの、九割、つまり五万四千トンの買い上げ量では不十分である、こういうことでございます。確かに、その後の生産状況を見ますと、御指摘のような八万トンをこえる数字というものが出ておるようでありますが、確定はいたしておりません。予算当時におきましても、だんだん若干ふえてきたような経過がありまして、これが粗糖として回るべきもの、あるいは黒糖として回るべきもの、必ずしも状況いかんによってはっきりしない分野があるのじゃなかろうかというふうに思われるわけであります。いまのところは同じような問題が、沖繩についても、あるいはほかのビートについても、生産量の変動というものは当初のときより若干の変動は免れないと思うのです。しかし、現在のところは、まだ今後の問題でありますので、従来の考え方で一応処理していきたい、こう思っております。  そこで、しからば、残った含みつ糖はどういうふうな対策を講ずべきか。これも確かに、どうも分みつ化できない地帯が島嶼部についてはあるわけです。われわれも十分承知いたしております。そこで、これらの分みつ糖化を促進するという方向は今後とも続けていきたいと思いますが、残る地帯におきまする黒糖につきましては、これはできるだけそれらの地帯におきまする黒糖の固有用途を確保していきたい。これと競合するのは、実は沖繩の黒糖になる。国内生産の黒糖ぐらいのことであるならば、大体固有用途ということでさばかれていくのではないか。そこで、これにつきましては、毎年沖繩、奄美の関係者と、鹿児島県庁、それから食糧庁も陪席しまして、需給調整の会議を持っておりますので、そこで、分みつ糖に変え得ない地帯の黒糖についての生産、あるいは市場の調整をはかることによって安定をしていきたい、こう考えておるわけでございます。  それから、第四点の、砂糖の懇談会の答申について今後どういうふうにするか、こういうことでございますが、砂糖の価格の安定につきましては、昨年以来の著しい糖価の変動に基づきまして、何らかの措置が必要ではないだろうか、こういう実は事務当局としての見解もとっております。そこで、これにつきましては、その安定する方法いかんにつきましては、利割関係が非常に錯綜し、また、方法自身についてもいろいろの考え方が成り立ち得るわけでございます。そこで、懇談会を設けまして、第三者の学識経験者の意見を聞こうということにいたして今日までまいったわけでございます。食糧庁としては、この案を参考に何らかの案をつくりたいというふうに考えておりますが、まだあの案自身が別に農林省としてあるいはもちろん政府案として適当だというべきものではないわけであります。これを骨子といたしまして事務当局の一つの成案を得るように努力したい、こう思っております。
  135. 村山喜一

    村山(喜)分科員 時間が超過して済みません。  大臣、一言、糖価安定法というようなものをいつごろお出しになるのか、その見込みだけお伺いします。
  136. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 できればこの国会と思いまして、せっかくいま検討中でございます。
  137. 村山喜一

    村山(喜)分科員 終わります。
  138. 古川丈吉

    古川主査 これにて村山喜一君の質疑は終了いたしました。  次は、山口丈太郎君。
  139. 山口丈太郎

    ○山口(丈)分科員 農政は新米ですから、ひとつそのつもりで答弁を願います。  まず私のお尋ねしたいのは、農業改善事業についてでありますが、改善事業の机上プランは非常に大きく宣伝をされております。しかし、私も一農民でありまして、現在も耕作をしておるわけですが、どうも見ておると、私は農民として、農林行政の実感に触れることができません。一体この改善事業の重点施策というものはどういうものなんでありますか、お聞かせを願いたい。これが質問の第一です。
  140. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 目的としては、農業生産性が上がるということ、所得がふえること、こういうことをねらっておるのでございますが、そういう面におきまして、従来のままの農業ではやっていけないという段階でございますので、内容といたしましては、何といたしましても、機械化を進めるというようなこと、共同化を進めるという意味におきましても、基盤ができておりません。土地改良等によって相当基盤の整備されているところもございますけれでも、まだ基盤の整備が土地の集団化というようなところまでもいっておりません。でありますので、まあ一口に言えば、農業近代化を進めるために基盤を整備しなければならない、急速に基盤を整備しようということで、そういうことを行なっておるのでございます。もう一つは、資本装備といいますか、農業の経営に対しましての経営を強化する、こういう意味におきまして共同事業等を推進さしておるわけでございますが、そういう共同施設等をつくらしていく、適地適作といいますか、試作物といいますか、あるいはミカンであるとか、あるいは畜産物であるとか、ところによってはタバコなども入っていますが、そういう最も適しているものをそこで生産するための資本装備を強化する、こういうことで共同施設等を進めておる。内容としましては、基盤を整備するということと、共同の経営の施設などについてこれを強化する方法をとるというようなことでございます。
  141. 山口丈太郎

    ○山口(丈)分科員 いま大臣からお述べになりました諸施策については、私ども農民としてもよく承っておるわけであります。しかし、末端の私ども農民としましては、そのどれも施策の面で届いておらない。旧態依然たる施策をやっている。たまたま政府の施策が私どものほうに届いてくるといたしますると、まあ言われるところの、たとえば土地を集約化する、協業化していく、土地の供出をやる、これなども、そのこと自体は届いてきましても、農民にそれを受け入れてそれに協力させる体制というものはできていない。その方向を少しも示していない。たとえば、私が少量の土地しか持っていない。こういう百姓は一刻も早くやめて、会社へでも行って働いたほうがいいじゃないか、こういう考えでありましょうけれども、しかし、農民がそうして土地を手放しても、肝心の生活を支えるための働く場所、その他のいわゆる施策というものは何ら関知するところでないという考え方、実際を言えば。でありますから、いつまでたったってそういうものは実行できない。ただ机上のプランとして宣伝をしているにすぎない、こういうことになる。ほんとうに農民の存在する農政をやろうとすれば、もっと親切に、農家をつくれば片方においてその土地を手放していく犠牲者が出るのでありますから、したがって、それらの人々が安心をして生活を営むことができるだけの施策をまず最初に行なった後に協業化していく、こういう方法をとらなければ、農業の経営拡大なんということは全くかけ声だけであって、もしこれに予算をつぎ込むとすれば、むだなことばかりやっていることになる。いかがでしょうか。農林大臣、見解をひとつ伺いたい。
  142. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまのお話は、いま行なっております構造改善よりも、もっと進めた、今度法案として出ております管理事業団の話のほうかと思います。すなわち、経営規模を拡大していこう、こういう施策に対しまして、農業を難れてほかへ行く受け入れ体制を先へつくって、そうして土地を手放したらいいじゃないかという、順序が違っておるという御質疑かと思います。そういうことも考えなくちゃなりませんが、私は、よりよい受け入れ体制の職業があるならば、職業は自由でございますから、どんどんそういうふうに入っていくと思います。そういう意味におきまして、受け入れ体制をつくっていくということがこれは必要でございますが、そのことは、全体として農業以外の問題としても考えなければ、そこまでいかないと思います。ただ、私どもがいま考えておりますことは、そういう離農対策といいますか、そういう対策も講じて自立経営農家を拡大するということは、うらはらとして必要だと思います。いまのところは、せっかく農地が七万町歩ほど全国で移動しております。その移動しておる農地が、必ずしも自立経営農家の規模の拡大というところに土地の移動が行なわれておりません。でありますので、受け入れ体制をつくってこれを離農へ追い込むということは少しく急激なやり方であり、そういうことが完全にできるのを待って経営規模の拡大ということでは、なかなかむずかしかろうと思います。そういう意味におきまして、いま七万町歩も流動しておるのを経営規模の拡大のほうに回していこう、こういうことがねらいでございます。しかし、これでは、離農対策といいますか、受け入れ体制を考えて——一言で言えば離農対策ということでございましょうけれども、そういうことも追って考えていかなければならぬ、こういうことでございますが、御指摘の点は、順逆と申しますか、順序が逆ではないかということではないかと思います。そういう意味におきまして、私は必ずしも御意見には反対ではございませんけれども、いまやろうとしておることは、経営規模の拡大をまず現状において進めていく、こういうことでパイロット的にやっていこうということでございます。
  143. 山口丈太郎

    ○山口(丈)分科員 それでは、その経営規模拡大というのは、私の見ておるところによると、既耕農地を、弱小の農民を一ところに集約して、そうして離農する者はどっかへ行って働きなさい、こういう無責任なやり方なんですけれども、私はそれは政府の無責任さだと思うのです。やはり、それだけ政府がやるのなら、もっとそういう末端のことを先に見てやるのがあたりまえなんです。そのなにをこしらえてから、こういうわけだから、ここで働く人はというきわめて自然な形において、ここで働く人は働きなさい、それで耕作ができなければこういうところへ預託したらどうですかというのがあたりまえです。ところが、何かやろうと思ったら、国家権力みたいに法律をつくったり、権力をもって集約するようなことをやる、そうして、先のことはほったらかしだ、自分の生活の責任は自分でやったらいいじゃないかということを言わんばかりの農政です。これは農民に対して農政不存在だということになりましょう。困りはしませんか。  それから、事業団のことを言われましたが、これは絶対反対です。そんなべらぼうなことをして、国家権力をもって農民土地をまた召し上げようという考え方は絶対いかぬ。何のためかわからぬ。しかも、農民から税金をとって、その税金を使って農民の首切りをやる、そんな農政なんてやめておきなさい。ほんとうですよ。農政存在せぬというのだ。それだったら、農林省はほんとうに要りません。逆だ逆だと言っても、私は逆のことを言っておるんじゃない。ものには順序がありますよ。だから、私は思うのに、こういうふうにやろうと思うのだったら、たとえば農村に——この東京でも阪神間でも、過密都市だと言っているんでしょう。兵庫県の日本海側、鳥取県や何かでは、現に兵庫県の北浜だけでも一万二、三千人ずつ人が減っておる。あそこら辺の年をとった人に私は聞いてみると、わしらは人間の製造会社みたいなものだ、せったく一生懸命に、ままならぬ中から都合して大学まで卒業させて、そして、これは土地におってもらって、進んだものを取り入れてきて土地で働かせようと思っているんだ、ところが、そうじゃなくて、それはどんどんどんどん阪神間の資本家のほうに取られてしまう、そして嫁取りすら心配しなければならぬようになる、そして、政府農業近代化近代化というてかけ声ばかりは勇ましいけれども、わしのほうにはちっとも潤わぬじゃないか、こんなつまらぬことをやってもらうのだったら、農林省、農政不在だ、こういうことを言っておるのですよ。ですから、やはりそういうところへ少なくともこの近代工場なりなんなりをどんどんと誘致をしてやるなりなんなり、もっと積極的な施策をやった後にこれをやるのなら、私は話がわかる。ところが、ある地区では、農村へある会社が行くと言ったら反対しているんですよ。理由は何やと言ったら、純朴な農村にそんな近代工場をつくったら、労働組合ができるさかいに、農村がわやになるから、そんなのやめとき、阪神間にどんどん集中しておきやいいんや、こんなことを言っておるのです。むちゃですよ。暴露すればそんなことを言っているんですからね。まるっきりかけ声ばかりで何にもなっていない、こういうことになるのです。そういう点では、もっと親切に、いま言ったようにやるべきだ。  それから、都市の近郊のところでは、これは建設省の所管になるのだそうですけれども、道路でも農村にもっとどんどんつけてやって、そして交通機関を整備してやる、これ以外にないのですよ。こうしてやれば、いままで一時間で通ったとところが三十分で工場に通うことができるようになります。そうすればこれはいけますよ。そういうことはちっともしない。そうして農村の開発もへったくれもあるもんじゃないのですよ、こういうものは。  それから、私はもう一つ聞きたいのだけれども、新しく農地を開拓しなければ、いま言われたように七百万坪ですか何か知らぬが流動しているといっても、これは工場とか宅地にどんどんつぶされていっているわけですね。そうすると、これはしまいには鉄ばっかりかじって米はかじらないということになりますね。私は戦時中にえげつない目におうた。自分でとった米を自由にできない、自分のとった米のために豚箱行きせんならぬという情けない話になったのです。農民はあの戦時中にどれだけいじめられましたか。わしらはちびっと百姓やっておるのに、むちゃや、自分のとった米で自分が豚箱行きせんならぬ、こう言ったものです。国家権力はそんなえげつないことをやっておる。今度いま既耕農地のことばっかりを対象にされているように見えてならぬ。八郎潟に多少のモデル農村をつくるんだとおっしゃているけれども、その他全国で一体農地の開発ということについてどういう考えをお持ちですか。ちょっと大臣からお聞きしたい。
  144. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農地の造成ということは、つぶれる土地も多いのでございますので、特に考えていかなくちゃならないと思います。そういう関係で、あるいは干拓あるいは開墾、ことしなども長崎湾の干拓なども予算に入れておりますが、そういうことから、土地の造成をしていかなければならぬ。あるいは酪農の関係から言いましても、草地の大々的の造成というようなことで草地をつくって、自給飼料に依存するようにしていく、こういうこと。しかし、その既耕地も、これはなお質的に既耕地を強化する必要がありますし、いまお話−のように、土地がつぶれ、また外に出る人が多いのでなかなか食糧の増産ということが困難な状況になっておりますから、そういう点で、食糧の自給ができるようにするのには、既耕地につきましても、その基盤であるその土地改良するとか、こういうことで、かんがい排水はもちろん、土地の集団化、あるいはいまお話のありましたように建設省関係の道路というようなものもあります。これによって農村も稗益するところが多いのでございますけれども、農道というようなもの、あるいは林道というようなものもつくって、既耕地につきましても、生産が上がるように、労働力が少なくなってもそれをやっていけるようなかまえといいますか、措置をどんどん考えていく、こういうことが必要である、こういうふうに考えて、既耕地につきましても相当力を入れていく。また農地の造成等についても力を入れる。いまお話のように、自給度というか、農産物を生産していかなくちゃなりません。そういう点におきましては、先ほどお話がありました農地管理事業団というものは、権力でもってやるという考えを持っていません。むしろ、受け入れ体制をつくってそこで追い出すということにすると、これは権力的なやり方に堕するきらいがあると思います。先ほど申し上げましたように、非常に人が減っておるのは御承知のとおりです。七十万くらいずつ減っております。でありまするから、その減っている人々があとに残って食糧の自給体制に協力していけるというのには、やっぱり機械化するとか、あるいは経営規模が大きいほうが食糧の自給度というものが大きいのでございます。御承知のとおり、一反歩や二反歩だけの農業ではなかなかやっていけない。でありまするから、そういう面では、受け入れ体制として、私どもは、地方産業都市とかあるいは工業開発地域とか、いま神戸のほうの例を引かれましたが、農村で工場の進出を拒否しているという例を聞きましたけれども、私などのほうでは、むしろ工場を誘致するというようなことで、出るならば遠くに出ないで近くにおいて就業の機会を安定して得られるようなことも考えております。でありまするから、私は、工農両全といいますか、そういう面で進めていく過程において農業の面におきましては経営規模が拡大できるようなことになれば、そのほうが望ましいことでありまするから、そういうのをあっせんする機関として事業団というものを考えておるのでございますが、これは権力的にやることとはまるで逆でむしろ歯がゆいという論者もあるのです。権力的にやったらいいじゃないかという論者もありますけれども、私は、そういうことをやって小さい農家を追い出すというようなことは、これは政府として為政者としてなすべきことじゃない、ただ、出ていく現状に即応して、農業の面からはやはり農業生産を、増し、あるいは農業機械化してよくやっていけるような体制を整えていきたい、こういう考え方から、そういう構想をもって対処しておるわけであります。
  145. 山口丈太郎

    ○山口(丈)分科員 そこで、私はお伺いしますが、いま農村人口はどんどん減っていく、何とかこれを農村に引きとめる方法考えなくてはならぬ、そのためには漸進的に近代施策をやっていく、こういう大臣考え方であろうと私は思うのです。まあラジオ、テレビの対談その他で私は大臣の意見をかかさず拝聴しておる。非常に共鳴しておるわけですけれども、どうも今日の農村の現状というものは、実際に政府がやっておいでになること、それから農村の現実とではあまりにも違う。そこで、私は、もう少し深く農民の中に入るような施策から、手ぬるくてもそういう順序を経てやってもらいたい、こう思うのです。そのためには、どうしてもやはり農村の開発が必要である。農村開発といえば、何といっても、でき得るならば近代工場の誘致も必要でありますし、また、経済圏に近いところでは、どうしても農村と都市との流通関係をよくしていくということが必要になってくる。そのためには、どうしても道路その他の公共施設をいま少し促進をしていくということに力を注いでもらわなければならぬ。私はこのように考えておるわけです。    〔主査退席、仮谷主査代理着席〕  そこで、いま聞きますと、農地の拡大についていわゆる既墾農地の分はおよそ御答弁によって了承いたしますけれども、いわゆる未開墾地の農地の拡大という面について、どうも積極性がないのではないかと思われるのです。これをやはり積極的に助成をしなければならぬ。まだまだ適地があるのですから、これを積極的にやはり開発する。そのための公団などをつくったほうが、同じつくるならいいではないか。そして、どんどん機械によって耕地の開発をやる。これを積極的にやってもらったほうがいいのじゃないかと思うのですが、いかがですか。そういう計画はないのですか。
  146. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 実は、そういう機械公団というものがありまして、機械公団で開墾等をして土地をつくっておいて、そこへ入ってもらうという事業を数年来進めておるのでございます。今度もその法律の改正を御提案申し上げておる。その改正は、そういう機械公団によって、今度はなおさらに、さっき申し上げました草地の造成等にまでひとつそういう機械公団が手をつけていく、こういうことを考えて御提案申し上げておるような次第でございます。そういう意味でございまするから、いまのお話のような線はなお強化していく、そういう公団もあるのでございますから、機能も十分発揮さしていきたい、こう考えております。
  147. 山口丈太郎

    ○山口(丈)分科員 ここで聞いてみると、われわれの欲していることはみんなやっていることになっておる。ところが、いま申したように、末端に行きますと、さっぱり施策というものがない。地方に行けば、地方農政局など出先機関はたくさんある。ところが、実際は、政府の意図する農政を推進していくというためには、単に役所に腰をかけて、書類を出しっぱなしに出してさえおけば事足りるというのではないのですよ。もっと農政に携わる者はわらじきゃはんで農民の末端に接触するという必要があるのじゃないかと私は思うのです。今日の農政は全く机上農政と言われてもやむを得ないのです。百姓のことは何にも知っていないのです。知っておるといったら、大臣、驚くなかれ、いろいろ災害などのときに保険がありますね、水稲災害保険とか共済保険ですか、それで金を取りに来るときだけだ。これはやっておるなということがわかります。さなきだに収入が低いのに、それで多額の税金を納めているのに、また強制的に保険を取りに来る。災害にあったらくれるのかと思ったら、調査とか、何だかんだとむずかしいことを言って、そのときだけえらい人がやってきて調査はしていってくれるけれども、何にも金はくれぬ。どこへ消えてしまうのかわからぬ。それで、ここで質問してみたら、金は何億出ていますと言う。これは一体どういうことですか。こんな農政なんかないですよ。これは大臣ばかり責めてもしょうがないのですが、実務に携わっている事務当局は何をしておるのか、具体的にその現況を答弁してもらいたい。
  148. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 末端まで浸透しないのはまことに遺憾でございます。わらじばきで歩けということですが、私もうちで百姓をやったのでありまして、兼業農家でありますが、そういうわけで、実態は把握しているつもりであります。政策面で私どもよいことだと考えても、そのことが下まで反映していないということはまことに残念であります。地方農政局などをつくりまして、つとめて末端と接触を持ちながら、末端こそよくしていかなければならないと考えております。そういう点で、事務当局を督励いたしまして、ほんとうにはだに触れて末端に浸透するように一そうつとめていきたいと考えております。
  149. 山口丈太郎

    ○山口(丈)分科員 まだまだ質問したいことがたくさんあるのですが、時間がまいりましたから、時間を守って、お約束どおりこれでやめますが、いま申し上げたように、ここで質問応答をやっておると、けっこうずくめです。そのとおりに、私ども百姓のはだにじかに響くような農政をやってもらうならいいんですよ。ところが、ときたま農林省関係に行くと、えらい人が机の上にでんといるんですよ。そうして、行ってだれに話したらいいのかわからない。私くらい心臓が強くてもそれなんだから、ほんとうの百姓の人なんか全然、農地局長あたりにだあっとやられたら、へえっと縮み上がってしまって何もできやしませんよ。それでは困るんですよ。何も私は他省のことを言うのではないが、建設省あたり、来てやってくれと言えば、ほんとうにわらじばきで災害のときなんかやってくれるが、農林の人は全然来ないで現地まかせだ。そうして、取ることだけは強制的に差し押えをしてまで取るというのだから、めちゃですよ。大臣も百姓をやっておられるなら、私も百姓をやっておるんです。兼業農家には間違いありませんから。もっと事務当局を督励してもらうとともに、中西官房長とかえらい人がおりますから、笑声)これは笑いごとじゃないのです。もっと事務当局は、こういう農民に不平を書わせないような施策をほんとうにやってもらいたい、これを希望して質問を終わります。
  150. 仮谷忠男

    ○仮谷主査代理 これにて山口君の質疑は終了いたしました。  次は、西村関一君。
  151. 西村関一

    西村(関)分科員 時間が限られておりますので、問題を集約いたしまして、農林統計についてお尋ねしたいと思います。  農林統計の仕事が始まってから十八年の年月がたっておるのでございますが、農業基本法下における農政のあり方を検討し、さらにこれを進めてまいる上に統計の持つ意義、またその仕事の重要性というものは、いよいよ増してきておると思うのでありますが、予算の面から見ますと、どうもあまりこれが重視されていないというような印象を受けるのであります。また、臨時行政調査会の答申等もあり、農林省内におきましても統計業務の役所の所管についていろいろ機構の問題が論議されておると聞きますが、じみな、あまりぱっとしない縁の下の力持ちのような、しかも非常に労の多い仕事をやっておる統計業務に従事しておるところの公務員の諸君は非常な不安を抱いておると思うのでございまして、こういう点につきまして大臣はどういうふうなお考えを持っておいでになるのか、農林統計のあり方についてまずお伺いしたいと思います。
  152. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農業そのものも、俗に言いますと、近代化をして経営として成り立つようになっていかなくちゃならぬというような考え方はますます強くなり、また、そういうふうに動いているわけでございます。したがいまして、国会関係だけのお話を申し上げても、御承知のように、農業基本法ができましてから、農業白書、あるいは漁業については漁業の白書とか、また林業につきましても林業白書のようなものを出して、その動向あるいは行なった施策等に御批判を仰ぐわけになっております。そういう点から見ましても、あるいは経済の実態から見ましても、その基礎でありますところの統計というものがものを言うといいますか統計によって合理的にものを判断して、政策の樹立もそれを基礎としていくという必要がますます加わってくると思います。そういう意味におきまして、統計そのものはすぐに政策にあらわれませんが、政策を決定し、政策の欠陥等を是正していく点におきまして、非常に重要な役割りを農林統計はやっていると思います。そういう意味におきまして、臨時行政調査会等におきまして、統計等のほうを何か粗末にするようなにおいの感覚を持っているようなことも論議されたようでございますが、私はそれは間違っておると思います。私どもとしましては、統計に対しましてその重要性を認識し、そしてまた、働いている諸君に対しましても、ちょっとまずいと申しますか、あまり重んぜられないようでございますが、重んじていくような考え方を私はとっております。
  153. 西村関一

    西村(関)分科員 いまの大臣の御答弁、まことにけっこうだと思うのでありまして、そういう趣旨に従ってこの問題を処理していただきたいと思うのでございますが、現在農林統計業務のあり方につきまして何か省内で論議されておることがありますれば、この際承っておきたいと思います。
  154. 久宗高

    ○久宗政府委員 統計調査部長がFAOの会議に行っておりますので、便宜、経済局長でございますが、私からお答えいたします。  ただいま大臣からお話のございましたように、統計の足、取りから申しますと、面積の調査でございますとか就業調査から、ウエートがやはり経済関係にずっと移ってまいってきているわけでございます。そこで、調査の内容といたしましては、新しい企画といたしましては、すでに四十年度の施策の中で二、三申し上げているわけでございます。考え方といたしましては、やはり、ここまでまいりまして、運営から申しますと、幾つかの調査が過渡期にございまして、その重点の調整に苦慮しているわけでございます。御指摘のように、運営になかなかむずかしい問題がございますので、調査の重点が移ってきたことによりまして、実際の調査マンの調査能力なり、その配置なり、さようなことについて検討を進めておる次第でございます。
  155. 西村関一

    西村(関)分科員 調査の過程において地方へ移してよい調査、あるいは地方と重複しているところの調査、また、あまり必要と思われないような調査は整理する、そして、他の必要な方面に人員を回していく、こういうような考え方が一部あるというふうに聞いておりますが、この点はいかがでございますか。
  156. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農林統計ばかりでなく、その他のことにも関連するかもしれませんが、農林統計等におきましては、統一的、総合的ということが必要だろうと思います。やはり、一番中央へ全部の統計をまとめて、その統計を利用するのは、中央的、地方的、いろいろこれはあろうと思います。そういうことでありますので、これを分散して、地方でやるべきことは地方へまかしてしまうということは、これは統計の面におきましては私はとるべき方法ではないというふうに考えております。
  157. 西村関一

    西村(関)分科員 統計の性質から申しまして、やはり国家が責任を持って、全体として総合的に統計をしなければ、統計の持つ意義というものが非常に薄らいでくるという見地から、大臣がそういう確固たる方針をもって農林統計に臨んでおられるということは、まことにけっこうだと思うのでございますが、時代の推移に従って、また農政の進展に従って、統計業務というものも、重点的に、それぞれに即応した業務をやっていかなければならないということでございますから、やはり、中央が責任をとって、全体的な視野から統計を進めていくということが望ましいのでございまして、そういう見地から、一部言われておりますような、農林統計の仕事は整理すべきものもあるのだから、人員をもっと減らして、農政の他の分野に人員を転換していったほうがいいのじゃないかというような議論が一部あるやに聞きますので、そういうことから農林統計業務に従事しているところの諸君の士気を阻喪させるというようなことがあってはならないということを考えますがゆえに、そのような御質問を申し上げたわけでございますが、ただいま大臣から、そういうことは考えていない、よりその重要性を認めて、国家の責任においてやらなければいけないのだということを申されましたので、そういう基本的な方針を堅持していただくということを理解いたしました上で、二、三のことを続いてお伺いをしたいと思うのでございます。  昭和四十年度予算を見ますと、統計には新規事業が非常に多いようでございます。先ほど局長の言われましたように、いろいろな事業がふえておりますが、しかし、定員表によりますと、部におきまして五名減になっておりますし、事業所におきまして二十八名の減になっておる。これはどうもうなずけないのでございまして、ますますその仕事の量がふえていく、そしてまたその重要性が高まっていくのに、農林統計業務に対しましてそういう定員表によるところの人員が減っていっておるということは、いかがなものかと思うのでございますが、これはどういうわけでございますか。
  158. 久宗高

    ○久宗政府委員 これは、地方農政局におきます調査との関連におきまして、そちらの分野でやったほうが適当なものにつきまして、たとえば園芸なんかに若干そういうような問題がございまして、そのための人員の調整をいたしたわけでございます。
  159. 西村関一

    西村(関)分科員 地方農政局につきましては、物の農政から人の農政への、農民個々のその地域的な農業状態、あるいはまた農民個人個人の実態に即したきめのこまかい農政を行なっていくという立場から地方農政局というものが発足しておる。われわれは屋上屋を重ねるからということで反対をいたしましたけれども、農政局が発足をしておる。そういうきめのこまかい、農民に密着したところの農政を行なっていく、地域性を重視したところの農政を行なっていくということから地方農政局が発足したのでございますが、しかし、それは、その意味におきましては一つの意義を持っておると思うのでございますけれども、先ほど大臣もお述べになりました統計の統一性、統計の独立性という立場から、地方農政局が重点に調査をやるということではないでしょうけれども、しかし、そちらのほうへ人が移っていって、そちらで仕事をするというようなことがこの予算面にあらわれてまいりますと、あるいはまた人事の定員数の減という形であらわれてまいりますと、私は、統計の統一性、独立性という立場から若干問題があるんじゃないかというふうに考えますが、いかがでございましょうか。
  160. 久宗高

    ○久宗政府委員 いまの私のお答えがまずいので、統計の制度、どっちが分担するというような問題じゃございませんで、全体のもう二万二千五百人に近い方の中で、地方農政局なり本省の研修の関係というようなものを調整をいたすわけでございます。全体の調査の制度が変わって、それによって動かすというものではございません。
  161. 西村関一

    西村(関)分科員 なぜ私がこういうことをお尋ねするかと申しますと、地方の統計事務所は地方農政局に合併すべきであるというような議論もどこかでなされたというふうに聞いておりますし、また、そうではなくて、地方農政局と併置されるような別個の地方的な機関を設けるべきだというような議論も行なわれておると伺いますが、その点まだ煮詰まっておるとは思いませんけれども、地方農政局のの中に統計事務所がが入るというようなことにつきましては、これは先ほど私が申しましたような理由から問題があると思うのでございますが、それらの点についての議論の過程ではあろうかと思いますけれども、もしこの際何らか経過についてお述べいただければ、参考になると思うのであります。
  162. 中西一郎

    中西政府委員 御承知のように、地方農政局の発足にあたって国会で法案を審議願いましたときに、農林省の原案は、地方農林局ということで、農林行政、あるいは畜産の行政、さらに統計調査の関係を、それぞれのブロックの機構の中に織り込んで御提案申し上げる予定でおったのです。その後いろいろな御意見がありまして、一種の妥協ということもあって、その三つをはずして地方農政局というような形に最終的にはまとまりました。今度の臨調の答申では、先ほど来先生のおっしゃっておられる地方公共団体のほうへ統計のある部分を移したらどうかというような趣旨での意見でまとまりました。そこで、そういう臨調の意見に対しましては、先ほど大臣お触れになりました統計の統一性あるいは総合性ということで、われわれは必ずしも同調しない気持ちを持っておるわけです。しかし、やはり流動し変化しつつある農業の実態に合ったような農政の機構というものは必要である。まだ結論は出ておるわけじゃございませんけれども、経済の実態に伴いまして、農業地域的な活動の分野がだんだん拡大しております。そういう意味で、統計も一つの地区だとかあるいは市町村、県という把握でなしに、一つの大きな経済圏としての把握をする。ある県の産物が二、三県隣りを越えたようなところの原料として移動するということが非常にふえてまいっております。そんなこともあわせ考えまして、臨調の御意見に対するわれわれの態度をいずれきめなければならない。その際に、振り返って、地方農林局をつくろうとしたときの農林省考え方をさらに練ってみて、反省すべき点もあろうと思いますが、それをもとにしてまたさらに前進するようなことを考えたらどうか、こういうようなことで目下検討中の段階でございます。
  163. 西村関一

    西村(関)分科員 農林統計関係の人頭庁費を予算の面から見ますと、ほかの同種類の機関より平均三千六百円安いという数字が出るのでありまして、これで、地方の出張所あたりの職員が、非常に悪い庁舎で、しかもこのような経費で非常な不便を忍んで、困難な、あまりほかの人には効果が認められないような仕事をやっているのでありまして、そういう点につきましては、下部の末端の出張所の状態をよく把握をしていただいて、これはもっと予算をふやすべきではなかろうかと思うのです。実際、あるところでは、ラジオも置けない、テレビを村の人が寄付しようといっても、電気代がかさむからといって、それも断わらなければならないというようなことさえも聞くのでございまして、この人頭庁費がほかの同種の事業所、機関と比べて非常に安いということは、要するに、従事している人たちに対して何とか改善しなければならぬ点ではなかろうかと思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
  164. 久宗高

    ○久宗政府委員 この点は御指摘のような問題がございます。そこで、今回の予算編成におきましても最後までもめた問題でございます。一応従来は一万二千円ということでございまして、これを一万四千四百円というふうに上げたわけでございます。御指摘のように、必ずしも十分でない点がございます。そこで、別途通信費につきまして約四百万近いものを組んでいただくというようなことをいたしまして、一応今回の予算は終わったわけでございます。なお必ずしも十分でないという点がございます。
  165. 西村関一

    西村(関)分科員 通信費等で苦労なさって、それをつけて幾らかでも努力あとを示されたという点は認めますけれども、いまも御答弁のありましたように、これは非常に低いのでありまして、大臣、この点よくお考えを願って、実際地方の出張所はこれでも国の役所かと思われるようなぽろぽろの家で仕事をして、そして炭代もない、油代もない、電気代も非常に少ないというようなところで非常に苦労している。それではまっとうな業務をやれといっても無理だと私は思うのです。実際、各地を回ってみましてそういう実情を見、また訴えられますので、何らかの機会にこの点を特に大蔵省にも聞いてもらって、こういう状態に対して農林省が要求して、こういう末端行政に携わっておる、非常に苦しんでおるところの人たちの実態をもよく把握してもらって、予算を一ふやしていただく御努力を願いたいと思うのでございます。  そういうような点から、さらにオートバイにつきましても、今年の予算要求では、六人に一台であったものを四人に一台までふやそうというふうになっておるようでございます。これだけふやそうという気持ちを出しておられるということはけっこうだと思うのですが、ほかのすでに従来からあるオートバイが老朽化しておる、使いものにならぬというようなものもたくさんあるのでございまして、こういう点も ひとつきめのこまかい、あたたかい親心のある配慮をこういう面にも示していただかないと、実際足で調査をしなければならぬ業務の性質上、末端の出張所の職員がオートバイさえ十分にないという状態で非常に苦しんでおります。  それからまた、欠員の補充がございませんから、平均年齢は四十歳になっておる。これなども、いかに統計業務がまま子扱いをされてきておったかということがわかるのでございます。やはり給与の面においても格段の違いがある。どうも農林統計の仕事をやっておる人は何となくひけ目を感ずる。人事の交流なども考えられておりますけれども、どうも上席のポストは一部の者に独占されてしまって、農林統計業務に従事しているところの人たちはいつも日陰者の扱いをされておるというような状態でありまして、昇給、昇任の差も非常に大きい。こういうことなども改めていただかなければならぬ点だと思うのであります。  統計が正確であって、そして的を射ておって行政に密着をしていかなければ、ほんとうの農林行政というものの実をあげることはできない。先ほど大臣もその点はお認めになったところでございまして、統計がずさんであれば、それだけ政治が暗くなってくる。統計が正確を期し、そして意欲を持ち、そのときどきに適応したところの統計を出していくことによって農政が伸展すると思うのでございます。そういう点について、予算の面から、また昇給、昇任の点からも、農林統計業務に従事している人だけがまま子扱いされておるということのないように、そういういわば縁の下の力持ちをしている、労多くして報いられるところの少ない仕事をしている人ほど厚い配慮をすべきではないか。この点は、アメリカでは統計業務を非常に重んじている。統計がものを言って、農林行政などどんどんやっている。こういう点、予算の面からも非常にまま子扱いされているという気がしてなりません。私の与えられました時間がまいりましたから、その点について大臣の御所信を承って、私は質問を終わらしていただきたいと思います。
  166. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話しの点、一挙に解決するというわけにはまいりませんが、十分その方向で措置をしていきたい、こう考えております。
  167. 西村関一

    西村(関)分科員 通り一ぺんの御答弁じゃなしに、大臣、実情をよく把握していただきたい。実際困っているのですから。それでは意欲をわかせろといったって意欲がわきませんから、そういう点については、非常にくどいようでございますけれども、大臣農民のことはよくおわかりになっておられるのですから、そういう点について、非常にじみな仕事である統計業務に従事している方々の苦労をよく把握していただきたいということをお願い申し上げます。
  168. 仮谷忠男

    ○仮谷主査代理 これにて西村関一君の質疑は終了いたしました。  次は、小林進君。
  169. 小林進

    小林分科員 限られた時間でございますから、ひとつ簡潔に質問をして、簡潔にお答え願いたいと思うのであります。  太平洋漁業協定の問題、日米加三国漁業協定の問題、これは、総理大臣もことしの一月行かれて、ああやってジョンソンと会って、握手したりだきついたり、いろいろなゼスチャアをやってこられた。ところが、ゼスチャアは別として、内容は何もない。あのときには、日米航空協定や太平洋漁業協定や綿製品の輸出入の問題をひとつ早急に解決したいと言われた。あの文章をもってすれば、緊密な協議、協力をはかることによって云々という表現で共同宣言を出してこられた。大臣はどういうふうにお考えか知りませんけれども、あれはアメリカの占領政策下におけるわが国の屈辱的協定である。ジョンソンにだきつかなくてもいいから、ああいう協定こそ具体的に一つ一つ解決しなければいけない。国民は憤りにたえない。アメリカは人道主義のようなうまいことを言っているけれども、ああいうことばかりやっている。悪い国だ。そこで、せっかく共同声明の中に問題も出てきたのでありますし、交渉の先頭に立つ農林大臣に、その後の経過がどういうふうになっているか、お聞かせを願いたいと思います。
  170. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日米加の漁業条約の改定問題につきましては、もう三年になりますが、進めております。お話のような趣旨で進めております。占領中に一方的に押しつけられた漁業条約でございますから、対等の立場に立ってできたものではございません。したがいまして、向こうの案でなく、私のほうの案を提示して、アブステンションですか、ああいう制度をなくしていこう、こういうことで案を提示しまして、その提示を去年の委員会ではのんだのでございますが、それは形式的にのんだだけで、そういう字句を条文の中から排除しただけで、実質的にはまだ私のほうのほんとうの要求をいれておりません。ことしもそのことでいずれ日米加三国の会議が開かれるわけでございます。でございますので、御趣旨の点は、申し出といいますか、おっしゃられるまでもなく、私のほうでも強く主張をして、対等の条約に変えていきたいと思っております。
  171. 小林進

    小林分科員 私は赤城農政というものを第三者の立場で見ている。私が農林委員なら、いままであなたにぼかすか言っただろうけれども、わが党は私を農林委員にしてくれないものだから、しょうがなく第三者として見ているのですが、残念ながらあなたの農政には見るべきものなしだ。ただ一ついいなと思うことは、いまの日韓会談において、彼らが李ラインを主張し、日本の船を不当に拿捕するから、そのかわりにおまえのところにはもう漁船をやらない、売らないと言ったことだけです。あれはあなたじゃなかったかな。あの点は、さすがにいいわい、剣道六段赤城農林大臣いいところがあると言える。赤城農林大臣の農政に見るべきものがありとすればそれ一つだ。われわれは独立国家の国民ですよ。そんなに屈辱的な条約や協定にあくまでも甘んじる必要はない。武力はなくても、正当なルールのもとに堂々と戦うというのが日本国民の矜持であり、国民がうしろから拍手を送っていることなんです。漁船を売るとか売らぬとかいうあなたの態度は、さすがに見上げたものだと思う。この日米加漁業交渉だってそのとおりだ。それはいまおっしゃったとおり、対等の形式論はできたけれども、実質的に何もくれなかったという話でしたけれども、これはけしからぬです。こういうことは国民は非常に憤慨している。実は運輸大臣をつかまえて航空協定の問題も教えてやろうと思ったけれども、あまり分科会が重なるものだから、時間がなくて非常に残念だけれども、これだけはひとつ腹をきめてやってくださいよ。何にもない抽象論ばかりで、日本の総理大臣がジョンソンに抱きついて対等に五十分も話したとか、鬼の首でも取ったような話をしているが、あれもコンプレックスです。外国の新聞はあんなことを言いませんよ。一人で五十分話したから対等だなんて、そんなことを書く日本の新聞も新聞なんだ。内容はばかなことを書いているけれども、それよりは、こういう屈辱的な漁業交渉一つでも、総理大臣になりかわって腹をきめてひとつやってくださいよ、共同声明の中に入っているのだから。これは時間がないからあなたに要望しておく。  次に来るのが日韓会談です。私は午前中も椎名君をしかっておいた。なんであんなばかな基本条約をやってきたと、かたくしかっておきましたけれども、結局あの基本条約から延びてあなたのところに漁業交渉が来るわけです。三月に韓国に行きますか。まずそこから聞いていきましょう。おいでになりますか。
  172. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 来てくれという話があったのでございますが、向こうへ行かないで、向こうから用があれば来てもらいたい。
  173. 小林進

    小林分科員 いいですね。これは非常にいいですよ。大体その勢いでやってください。それから、一体漁業交渉というのは、何でもない、李ラインの問題ですよ。私も学生時代国際法を勉強したが、国際法なんというものは、自分の国の沿岸から十二海里とか十八海里とかいろいろあるが、原則は十二海里ですね。その十二海里までが領海で、それからはだれのものでもない。それが国際法の原則ですよ。その国際法が改められない限りは、公海はだれのものでもない。それをかってに海の中に李ラインというものをつくって、そこへ入ってきた日本の漁船を拿捕したり、いじめたり、監禁をしたり、拘禁をしたりするのは、ギャング的行為じゃありませんか。そういうようなことを行なわれながら、基本条約を結んだり、国会を空白にして出かけていって、過去に悪いことをいたしました、反省いたしますなどというわび証文をなぜ一体入れてこなければならぬのか。あまりしゃべっていると時間がなくなりますから、サンフランシスコ講和条約についてはやめますが、その意味において、李ラインは当然漁業交渉のときには撤廃されるのでしょう。撤廃交渉されるのでございましょう。どうですか。李ライン撤廃して、国際的な公海の原則に立って、対等の原則に立って漁業交渉をおやりになる、漁業交渉の内容はそういうことでございましょうね。お伺いいたします。
  174. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そのとおりでございます。
  175. 小林進

    小林分科員 農林大臣、明快で、これもたいへんいいと思います。  時間がないから国内問題に移ります。最近地方を回って歩きますと、供出をやっておりますにかかわらず、さらに倍加いたしまして、白米でもいいから米を出してくれ、あるいは、いままで供出を契約した上に一割だけ加えてくれ、あるいは五分だけよけい出してくれと、非常に供出を求められているということでございますけれども、一体これはどういうわけですか。  国内で米が足りないのですか。
  176. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 北海道の不作がありましたので、あれで二十八万トンぐらい足りなくなったので、結果においては二十三万トンばかり予定より減っております。しかし、四十八万トンぐらい輸入することによって、それも大体めどがついております。国内輸入米でもって、米が足らぬということはございません。したがって、私もまことに不行き届きでございますが、いまのお話のように、予約以上に出せ出せという強制的なことをやっておることは私の耳には入っていないのでございますが、なお調査してみます。
  177. 小林進

    小林分科員 強制をしているわけじゃないのだけれども、いわゆる予約をいたしました契約量を出しても、さらにそれ以上追加して一割以上出してくれという懇願をされているということを聞いた。だから、国民にはどうも米が不足しているのじゃないかという不安が若干流れておりますから、いまお尋ねしたのでありますが、何か四十八万トンの輸入の契約もできているとおっしゃったが、私のお伺いしたいことは、そういうょうなことから勘案いたしまして、農業基本法によって、いわゆる成長産業だ、もう米をつくる必要はない、くだものをつくれ、畜産をやりましょうなどという農業政策の失敗が、こうした米の不足へ来たのじゃないかと思いますが、それをお伺いしようと思う。どうですか。   〔仮谷主査代理退席、主査着席〕
  178. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農家の収入から申しましても、小林さんのようなところは農業県で、米が主でございます。収入の面から言いましても、やはり、選択的拡大ということも必要であるが、そのために米を放棄していいという理由はございません。これは、選択的拡大を強調し過ぎて、米の生産を放棄というか、あまり力を入れないように世間に映ったということは、まことに農政として残念だと思います。私は全然そういうことは考えておりません。ことに、さっき華山さんにも御答弁申し上げたのですが、米作地帯を選択的拡大の対象として、水田を酪農や果樹にしろと言ったって、これは無理です。やはり米作は米作として水田でやっていくべきでありますし、やはり米は自給度を増していかなければならぬ作物でございます。そういう点でございますから、一般に米を放棄したようなふうに伝えられたのはまことに遺憾でございますが、そういうことはございません。
  179. 小林進

    小林分科員 時間がないから一問一答の形でどんどんいきます。これも質問が出たと思いますけれども、私は聞いていなかったから、重複してまことに悪いと思いますけれども、お聞きするのですが、三十三年でございましたか、農地の信託制度というものをおやりになりました。その後経過はどうなっておりますか。
  180. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 まことに時宜を得た政策で、信託制度というものはいい制度でございましたが、残念ながら成績はまことに悪くて、信託件数がごく少ないというような事情でございます。
  181. 小林進

    小林分科員 信託件数はどれくらいございましょうか。
  182. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 七十五件でございますが、これにはいろいろ理由がありました。農協で信託することになりまして、農協の規約にそういうことを掲げなくては事業をやれないということで、規約をつくるのに一年以上ひまどったということもあります。あるいは、信託料といいますか、賃貸借の額等の点もございます。そういうことで、七十五件で、ごく少ないわけであります。
  183. 小林進

    小林分科員 農林官僚がかねや太鼓で宣伝しておりました、これくらいりっぱな新制度はないと、当時の農民にあのくらい宣伝をしたこの農地信託制度が、いまみたいに全国六百十万町歩の農家を尋ね歩いてわずかに七十五件。農林省の農政の実情見たり枯れ尾花だ。私は、一事が万事、それを言いたいのです。何というはな恥ずかしいお話でございましょう。こんなことを企画された農林大臣であるなら、これは一つだって農民の前に顔向けできませんよ。あの当時は宣伝慫慂にこれつとめて、しかも七十五件。まことに恥ずかしい。これが日本農林省の企画する農政の実情の姿です。  次にお伺いしましょう。三十五年から企画されまして、三十六年から実施に入りました農業基本法のその後の結果は一体どうなっておりますか。ちょっと読み上げましょう。農業基本法第一条の「国の農業に関する政策の目標は、農業及び農業従事者が産業経済及び社会において果たすべき重要な使命にかんがみて、国民経済の成長発展及び社会生活の進歩向上に即応し、農業の自然的経済的社会的制約による不利を補正し、他産業との生産性の格差が是正されるように農業生産性が向上すること及び農業従事者が所得を増大して他産業従事者と均衡する生活を営むことを期することができることを目途として、農業の発展と農業従事者の地位の向上を図ることにあるものとする。」、他産業との格差の是正、所得の均衡が農業基本法を制定されました農林省の重大なる企画でございました。その後の経過はいかがになりましたか。所得の格差が是正をされましたか。他産業との所得の均衡は保たれましたか。どういう結果になっておりますか。それを承りたいと思います。
  184. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農業基本法は、申すまでもなく、そういう方向に持っていこうという一つ方向づけの宣言法のような形であります。たとえば憲法でいう健康にして文化的な生活を営むことを保障するというようなものでありまして、そうなくてはならぬという方向に持っていく。その方向に持っていくのには政策の裏づけが大切で、裏づけがないと、ただ宣言だけではできません。そういうことで、各種の政策の裏づけをしてまいりましたが、国全体の経済の問題といたしましても、高度経済成長政策というものをとってきました。したがいまして、農業そのものの進度は相当あったのでございますが、他産業に比較いたしまして、比較生産性等につきましても落ちてはおりません。おりませんが、進んでもおりません。他産業生産性に比較いたしまして二九%程度で、いまのところ横ばいということであります。それから、生活水準の他産業の従事者との比較におきましては七七%程度でございます。これは少しく上がっております。でございますので、全体としては横ばいというような程度でございまして、その目的にはまだ遠いのでございます。
  185. 小林進

    小林分科員 他産業との生産性の格差、所得の格差を縮めるために農業基本法をつくるのだということで、私どもは、だめだ、そういうようないままでの政策じゃだめだと言ったのにかかわらず、あなた方はわわわれを笑われた。だから社会党はだめだと、社会党を笑われた。そして、これができれば、きのうおとといにもそういう格差が縮まって、他産業との均衡は保たれるような夢を農民に抱かせた。何ですか、いまのあなたの答弁は。横ばいだと言っている。横ばいだということは、ちっとも目的を達していないということじゃありませんか。これは私の資料じゃないのです。産業構造分科会農林漁業分科会の報告です。これはあなたの機関でしょう。そうじゃないですか。それに基づいたところで、何ですか。他産業との格差は、昭和三十年には比較生産性は三六・七%、三十七年度は二九%、農業基本法をつくって改善事業をやったら、かえって下がっているじゃありませんか。三六・七から二九と格差が拡大しているじゃありませんか。それから、農業と製造業に対する比較生産性の問題は、三十一年から三十三年まで三〇%前後だった。これはあなた方のところの資料なんです。三十六年に二五%、三十九年になってそれでもまだ二九%だ。三〇に至らないですよ。農業構造改善事業農業基本法をおやりになって、格差を縮める縮めると言ったところで、三十年より開いておるじゃないですか。これはいまの農地信託制度と同じに、農業基本法に基づく農業改善事業は明らかに失敗をしたということの例証じゃないか。失敗をお認めになりますか。農林省の農政は農地信託制度とともにここ数年間失敗いたしましたということをお認めになるかどうか。お認めにならぬと、私は資料をあげてどかんどかんとやりますよ。お認めになればよろしい。
  186. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、非常によくやったと思います。これをやらなかったらもっとひどくなった、こう思っておりますので、決して失敗だと思っておりません。
  187. 小林進

    小林分科員 それじゃ、農業基本法はどこにありますか。このままにしておけばだんだん格差はひどくなってどうにもならないから、それを防ぐために農業基本法をつくるのだということだったら、それはあなたのおっしゃるとおりでございましょう。ところが、そう言っていないじゃないですか。他産業との格差をなくするんだと言っておる。それがなくならないで、だんだん格差がひどくなったというならば、基本法の目的に相反しておるじゃないですか。あなた、失敗じゃありませんか。他が伸びようと伸びまいと、他がどうあろうとも、他との格差を短くして均衡化するのが農業基本法の目的であるのにかかわらず、その格差が広がったんだから、反対の方向へ行ったんだから、それならこれは失敗じゃないですか。そうじゃありませんか。そういう当然の理屈をあなたはお認めにならぬのですか。一体どうですか、農林大臣
  188. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 あなたも御承知のように、工業と農業は違います。一年に一回しか収穫ができない、そういう間で格差を是正するというのですから、農業基本法が三十六年にできた、その翌年から格差がすぐ直ったというわけではございません。いま三十年度あたりの統計をとられたようでございますが、三十七年、八年、九年あたり、最近におきましてはずっと横ばい。これを捨てておいたならば、他産業が非常に成長したものですから、これは農業生産性の比較なんかずっと落ちたはずでございますが、そこまで保っていっておるということは、やはり農業基本法に基づいたもろもろの政策を遂行してきたからだと、こう私は考えます。
  189. 小林進

    小林分科員 ぼくも法科の出身ですが、ぼくはそういう理屈はわからない。農業基本法に基づいてあなたのお話を聞いておるのですよ。文章はそうじゃないのじゃないですか。これでは農業が立ち行かなくなるから、農業基本法をつくってそれを救済するんだというなら、あなたの理屈でいいけれども、他産業と均衡にすると言っておるじゃないですか。格差をなくすると言っておるじゃないですか。格差がなくならないで、かえって農業をよけい持っておった地方に格差が広がっておるじゃないですか。いまあなたのほうの統計で読み上げた。それじゃ農業基本法の趣旨と相反しておるじゃないか、それをいうのですよ。これは実にすなおな文章の解釈のしかたじゃないですか。それをなぜお認めにならないのですかと私は伺っているのです。
  190. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 格差を是正するということには、積極面、消極面があると思います。積極的に格差を是正していくことが望ましいといいますが、そうしなくちゃなりませんが、経済の全体から考えますると、消極的にこれをささえて格差を大きくしないということも一つ政策でございます。いまの格差の点についてだけは、生産性においては二九%、所得水準においては七七%という横ばい程度でございますが、その中でも農業の階層によっては相当違います。六十万円の収入を得ている人とか、あるいは耕作反別が一町五反以上の人とか、こういうものをとってみますならば、格差は非常に是正されて進んでおります。ただ、全体の平均を見ますと、申し上げましたように横ばい。これは、他産業が進んでおるので、相対的なものでございますから、そういう意味におきまして、努力がむなしいというようなことはございません。
  191. 小林進

    小林分科員 あなた方の農業構造改善農林漁業分科会の報告書によると、その結論としてはこういうことを言っている。政府は、農業と他産業との生産性の格差が是正されるように農業生産性が向上をすること、及び農業の従事者の所得が増大して他産業の従事者と均衡する生活を営むことを期することができるようにすることを目標とした農業基本法をつくった、これに基づいて各般の農業施策が展開された、これらの施策と格差是正なり所得均衡という理念との関係は必ずしも明らかにされていない、必ずしも成功していない、むしろ逆の結果があらわれている、政府の、あなた方の調査会の報告にもちろんとそういう報告をしている。あなた方がその報告書にも失敗していることは明らかにしているじゃないですか。それをあなたは牽強付会の弁をもって、失敗じゃない、失敗じゃないと言われるけれども、現実に農村は空白の状態になっているじゃないですか。あなたが村長をやっていられた村をみずからかえりみてわかるでしょう、あなたの足元を見れば。農民不在の農業が営まれている。そういう状態じゃありませんか。  そこで、私は、赤城農林大臣にお尋ねをいたします。現在第二種兼業農家というものが燎原に火を呼ぶがごとくいま燃えあがっておりますが、大体五、三、二でございましょう。五が第二種兼業農家、三が第一種兼業農家、二割から二割四分程度がいわゆる専業農家という、かくのごとく農村は転落の過程を歩みつつある。転落の詩集であります。  さて、第二種兼業農家が、いまは出かせぎ労務者となって、秋の農繁期もそこそこにして、都会へ都会へとなだれを打って動きつつあるわけだ。この第二種農家の性格論争であるが、これをあなたにお聞きしたい。第二種兼業農家とは、いまさらあなたに申し上げなくてもいいように、主たる経営の所得農業以外の収入、すなわちいまは大体勤労所得労働所得でありますが、肉体労働に基づく所得を主にいたしまして、農業による収入を従たる生活費として暮らしている者を第二種兼業農家と言うことは、あなたも御承知のとおりです。これは純粋の意味における農民であるか、労働者であるか、その性格を承りたいのであります。
  192. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 第二種兼業の中でも、しさいに検討いたしませんと即断はできませんが、第二種兼業の中には、お話のように、農業が戦争中の家庭菜園的なもので、労働による収入が主たるもので、農業は副業的なものだというようなものでありますならば、労働者としての性格であると思います。しかし、そういうものでなくて、農業における所得は他の所得よりも少ないといたしましても、農業をつとめていきたい、精進していきたい、農業で食っていきたいといいますか、食っていきたいが食っていけないというような立場農業をさらにやっていこうというような関係の者は、これは農業者と私は見ていいと思います。でございますから、第二種兼業そのものを、一がいにこれは農業者じゃないんだ、労働者農業は副業だというふうばかりには規定できないと思います。
  193. 小林進

    小林分科員 ぼくはその定義が非常にむずかしいと思うのです。これは労働大臣にも私はお伺いしたい。一体農民であるか労働者であるかという区別をどこできめるのですか。しかし、いまは非常に区別することが差し迫っておるから私は申し上げる。現在季節労働で都市に出てくる農民なんかは、満足な健康保険にも入れない、失業保険にも入れない、労災保険にも入れない。そして、つまらない縁故かなんかで出かせぎに行って、不安定ないわゆる職業の最下低につとめてみたものの、給料ももらえない、あるいはけがをしたけれども労災保険ももらえないという気の毒な人がたくさんいる。そういう者が放置をせられておる。それがみんな、あなたと言っちゃ非常に言い過ぎるかもしれませんけれども、今日における経済成長政策、誤れる独占資本主義的ないわゆる経済成長政策の犠牲になって、農民では食えないから飛び出して、世の下積みとして働きながら悲惨な状態に投げ出されておるのが多いのです。出かせぎの問題はここでもたくさん論ぜられただろうから、私は繰り返して言いませんけれども、それをだれが一体責任を持つのですか。出かせぎは労働省の範疇だといって、農林省のほうは農林行政でめんどうを見ない。労働大臣に聞けば、いや第二種兼業農家というからやはり農民と言えるだろう、労働省のほうじゃないと言う。こういう人生の最下低で苦しんでおる人たちに対する血の通った行政というものはないんじゃないですか。こういう零細なる農業をおじいちゃんやおばあちゃんにまかせながら働きに行っておる農民を、労働者とみなして労働政策の対象にしながら彼らを保護していくか、あるいは、あくまでも農民として農業で食えるようにそれを措置していくか、何らかの措置を講じるように政府も腹をきめてかからなければいけないと思いますので、それで私はいま性格論争をやっておる次第です。一体、農民としてあくまでも農政の範疇に入れて、こういうような悲惨な出かせぎをして、けがをしても投げ出されているような、下積みにさせられておる者を農政で救済していくだけの自信がありますか。農民としてあくまでも所得を均衡ならしめ、格差をなくして、りっぱに暮らしていけるようにするだけの自信のある農政を持っておりますか。あるならひとつお聞かせを願いたい。
  194. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど言いましたように、第二種兼業のあり方だと思います。一反歩や二反歩で、たとえば新潟で農業しておる、これを農業でもって食べさせるように、ほかの仕事はしなくても食べていけるようにやれといっても、ちょっとできないと思います。でございますから、これを労働行政の対象として、相当これをめんどう見ていこうというものもあります。それから、私のほうの農業面として、農業生産に寄与するというか、一生懸命やろうという者は、共同化やその他によりまして、農業の面においてこれを対象として、生活及び生産を進めていくという方法をとらざるを得ませんし、また、もっとひどいのがあります。農業問題の対象よりも社会保障の対象として生活保護とか、そういう面でやっていかなければならぬものもあります。でありますので、そういうそれぞれの具体的なものに行き届いた方法を講じていかなくてはならぬと思います。
  195. 小林進

    小林分科員 いまの答弁ではまことに不確実そのものです。そんなことで農村問題は解決できません。いまの答弁はいただきかねます。  時間がありませんから、次にいきましょう。農地管理事業団というのをことしおやりになる。これは四十年度赤城農政の中の特徴としては見るべきものの一つです。あとは何にもない。農地管理事業団、これは一体何ですか。一千町歩、千ヘクタールについて、売買する者に金を貸してやる、これで新しい農政の息吹きが出てくるのでしょうか、どうですか。どういうふうにお考えになりますか。私は子供だましより悪いのじゃないかと思っておりますけれども、どんなものでございましょう。大臣の御心境をひとつ承りたい。
  196. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 考え方の基礎から申し上げないと、ひやかし的な質問をされてもどうも困るのですけれども、いまの比較生産性、あるいは所得水準の格差、こういう点をこまかく分析してみますと、比較生産性等におきましても、一町五反以上の農家におきましては他産業との比較生産性が四〇から五〇%、さっきの二九%より、そういうふうになっています。あるいはまた、生活水準にいたしましても、その土地の他産業の人々と比較いたしますと、一町五反以上の農家は九〇%以上になっております。そういう点から見まして、比較生産性につきましても、あるいはまた生活水準等につきましても、保有規模が大きければ大きいほどいいわけでございます。でございますから、これは農業基本法にも書いてございますように、自立経営農家が多くなるということは非常に望ましいことであり、農業の健全なる発展だと思います。また、生活の点におきましてもそうです。しかし、これを強制力をもって土地の再配分をするというのは、非常に革命的な、おそるべきことでございます。共産国家のようなことはなかなかできません。そういうことでございますから、そういう経営規模を大きくするということは望ましいけれども、強制力やあるいは権力でもってこれをやることは好ましくない。しかし、実際の面におきまして、七万町歩からの農地の移動が行なわれております。それから、労力も不足しています。そういう事態でございますから、その移動する農地を経営規模の拡大のほうへ方向づける、こういうあっせん等をしていくことは必要でございます。いまでも、自作農創設ということで、低利の資金を土地取得に対して出しておる、こういう制度を設けておるのでありますが、これがなかなかはかばかしくいっておりません。そういう面から考えまして、これをあっせんをする機関を設けてやっていこう。しかし、権力的、強制的に堕するようなことになりますと、何か小農を追い出すような、非常に刺激を与えるようなことになるので、そういう事態は起こさしたくない、こう考えておりますので、協業というものと相まって経営規模の拡大をするのには、流動する土地をその方向方向づけていくあっせん機関が必要だ。しかし、いま言ったように、それが一挙にどうこうというようなことは考えものでございますので、パイロット的に百町村を選びまして、そういう方向に持っていきたい、こういう熱意のあるところに政府機関の管理事業団というものが介入いたしまして、規模を拡大していく方向に持っていこう、その目標がまことに少ない目標でございますが、一千町歩のあれを目標として、こういうことでございます。
  197. 小林進

    小林分科員 時間がありませんから、大臣の御説明に対して一々きめのこまかい質問をするわけにはいきませんけれども、あなた方が農業基本法をおつくりになって農業構造改善事業をおやりになるときには、日本の基準農家、二町歩の農家を百万戸つくるなどというようなことを宣伝せられた。それが、五年もたっているけれども、一体そのキャッチフレーズはどうなりました。いま何もできてない。七万町歩の農地の移動ができたといって、その移動の内容は一体何ですか。その移動の内容は決してあなた方の望んでおるような方向なんかに動いてない。こうして農民が悲惨な状況におちいって、あと継ぎもいない、じいちゃん、ばあちゃんというけれども、かあちゃんまでも働きに行かなければ食っていけない、こういう悲惨な状況にまで追い込んで、もう手も足も、始末も負えなくなって、ようやく言いわけ的に出したのが、十年間に三十三万ヘクタール、ことしはさしあたり六千ヘクタール、六千町歩を移動するような方向に持っていこうという、これは赤城さんが考え抜いて、困り抜いて、窮余の策だろう。それも大蔵大臣の一喝を受けてへなへないたしまして一千町歩。まず六百十万町歩の中の千町歩を一年間で移動して、一体二町歩なら二町歩の自立経営農家が何千年かかったら百万戸できるのですか。そういう数字にも何もならないようなことを出している。いまのわが日本の農家は=F平均一町歩強でございましょう。それを二町歩農家を百万戸つくるといえば、少なくとも百万町歩を移動しなければ百万戸の自立経営農家はでき上らぬじゃないですか。百万町歩を移動するといえば、一年間に一万町歩ずつ移動したところで百年かかる。それを千町歩ずつ一年間で移動するといえば千年かかるじゃないですか。あなた、冗談じゃないですよ。あなた、笑い話じゃないよ。千町歩移動して千年かかって二町歩の平均農家を百万戸つくってもらうような、そういう数字にもならぬような、笑い話のようなことを出して、これで赤城農政でございますの、いわゆる格差是正でございますのといって、あなた、笑わないでいられますか。私は顔で笑っておりますけれども、腹の中では泣いてますよ。
  198. 古川丈吉

    古川主査 小林君に申し上げますが、時間が……。
  199. 小林進

    小林分科員 腹の中で泣きながら、もう時間もありませんから、一つ簡単に言いますけれども、そんなことではいけません。  これで終えますが、マイロの輸入。あなた方も、麦をつくらないようにして MSAからでないアメリカからの援助物資をどんどん入れるようにして、アメリカの資本家を豚のように太らせるけっこうな農政をおやりになっておりますが、そのマイロの輸入について、私の聞くところによれば、三井物産と日本飼料工業会と全購連と三者で一生懸命いま獲得運動をやって、何かマイロを輸入すると見返りで三年間で六十四万ドルの金をアメリカの余剰農産物のほうで貸し付けてくれて、またそれでもって食糧の輸入ができる、こういうからくりができ上がっておるというので、そのマイロの輸入を獲得しよう、六十四万ドルの金を借りるような方向へいこうということで競争しておるようでありますが、これはどこが獲得されましたか、ちょっとそれをお聞きしたい。
  200. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまその飼料の問題を御答弁する前に、簡単に農地管理事業団の考え方について申し上げます。  一年に一万町歩ずつやれ、これは、共産主義かあるいは社会党の国家社会主義的なやり方でやるのならば、これはできないことはありません。しかし、いまの自由経済のもとでやろうということにおきましては、そういう計画を立ててもそれはできないことでございます。でございますので、そういう方向は非常に好ましいことでございますが、私どもは、パイロット的にこれをやろう。計画的に五十年、三十年かけて強制的に土地の併合、移動というものをやろうというような考えではございませんので、そういう計画になったわけでございます。  なお、飼料の点につきましてのいまの御質問につきましては、畜産局長からお答え申し上げます。
  201. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 米国のマイロをいわゆるGSM方式、回転借款方式で輸入をしたいという飼料輸入関係の向きからの考え方がありまして、一昨年あたりからアメリカのCCC当局または農務省と接触しておるようですが、いまだに決定いたしておりません。
  202. 小林進

    小林分科員 マイロはまだ決定されないのですか。  それから、農林大臣、私は何も計画的にやれと言うんじゃないのですよ。ただ、あなたたちが、農業基本法の中で、二町歩の基準農家を百万戸つくるという数字をおあげになったから、おあげになった以上は、それは自由主義でやろうと共産主義でやろうと方法は幾つもありましょうけれども、仕事というものはやはり目的に向かって進行していかなくちゃならないじゃないですか。何も進行していないじゃないですか。私はそれを言っているんです。それをやってないで、だんだん農村が悲惨な状態におちいってきたら、ことしになって、やはり農業近代化をやるためには相当規模の大きな農家をつくらなければならない、あるいは協業を推進しなくちゃならない、協業を推進するために農地管理事業団というものをつくって、農民が容易に農地を手放し、容易に取得できるような方法を講ずるんだということで、そのためにはさしあたり農村から千町歩のたんぼを買い上げる、農民には三分か何かで三十年の年賦償還で金を貸してやるという。こういうことをおやりになったからといって、それは自由主義でも何でもおやりになることはけっこうだけれども、たった千町歩では、あなた方が農業基本法で御計画になった規模の農家を百万戸つくるには千年もかかるじゃないかという数字を申し上げたのです。そうでしょう。一年に千町歩では千年かかるじゃないですかということを申し上げたのです。それが千年も万年もかかるなんて、浪子と武男じゃないですけれども、そういう数字にもならぬようなことを出して、これが新しい革新農政だの、これが新しい農業政策だのと言ったところで、農民にははなはだ迷惑だと私は言うのです。それよりは、いま少し地についた——農村では、あと継ぎもない、嫁も来ない、おっかさんは雪おろしに行って屋根から落ちたけれども、労災ももらえない、工場へ行ってなれない仕事をして機械にまかれて足を痛めたけれども、労災ももらえない、失業保険ももらえない、そういう事実がごろごろあるから、そっちのほうも少し血の通った農政らしいものをおやりになったらどうですかと私は申し上げているのです。共産党だの社会党だから強制的にやる、計画的にやるというような、何も問わないことまであなたは言わなくたっていいじゃないですか。私はそんなことを言っているんじゃないのです。  そこで、このマイロの問題ですが、いまの飼料は何ですか。いまの麦だってそのとおりですよ。日本で麦の増産をしているときには、アメリカから入ってくる麦との格差がちょうど半額ぐらいだ。それを、だんだん裏作をなくしたり、農民に麦の増産をやめさせて減産させてきて、どんどん輸入の麦を高めながら、飼料の値段をだんだん上げながら、今度はトウモロコシを入れます。マイロを入れますといういまの飼料政策なんというのは何ですか。みんな濃厚飼料に変わってきた。その大半は輸入だ。あなたたちは、大好きなアメリカの余剰農産物のトウモロコシやマイロの輸入を叫ばれて、番頭と言っては悪いけれども、私は、日本農林省畜産局なんというのは、アメリカの余剰農産物買い入れの番頭じゃないかと思っているのだ。ほんとうにそれくらいみんな高い濃厚飼料を輸入させて、そうして、やれ斜陽産業でございますの、畜産でございますの、牛乳を飲めの、バターを食えのと言いながら、畜産農家が裸になってだんだん貧乏して百億だの二百億だの赤字になるような畜産農政をやっているじゃないですか。飼料農政をやっているじゃないですか。そういうようなことを一体なぜやっているかと私は言っているのだ。その一番極端な例がトウモロコシの輸入だのマイロの輸入だ。これを輸入するために横浜の港を大きくしたり倉庫をつくったりして、そうして独占にあなた方は飼料輸入を慫慂しているじゃないか。そんなことをやらせるよりは、アメリカの飼料に奉仕するよりは、同じ買うなら少し東南アジアから買ったらどうです。それよりは国内の自給飼料をまず助成して、それができ上がってから畜産を奨励したらどうです。もし畜産行政をほんとうにおやりになるのならば、飼料が先ですよ。飼料を奨励してから畜産をおやりなさい。何も飼料がないのに、一生懸命畜産奨励をしたりして、そうしてみなアメリカへドルを奉仕して、食糧の輸入費の増大している状態は何ですことしは十八億ドルですか、来年になったら二十五億ドルも食糧輸入に要するだろうと言っている。それが、みんなアメリカに奉仕しているじゃないか。そんな農政が農政と言われますか。飼料をつくることを先にやって、それから畜産行政をやりなさいと私は言っているのだ。畜産局長、私が言うことが間違っているかどうか、言いなさい。
  203. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 お話のように、濃厚飼料の材料であります飼料穀物が近年急速に輸入の面で増大しておることは事実でございます。これは、畜産物の国内需要が御承知のように急速に増大しておりますので、それに対応する国内飼料の供給というものが伴なわないということから来るやむを得ない結果でございます。したがいまして、私は、国内の飼料の自給をできる限り高めるということが必要であるという点については、小林先生の御意見と全く同感でございます。しかし、現実の問題としましては、家畜の必要とする飼料をいかにして円滑に供給するかということが、同時に飼料行政の任務と心得ておりますので、アメリカのみらず、できる限り輸入の市場というものを拡大をいたしまして、輸入の円滑をはかるということも重要な飼料行政の一環であるというふうに心得ております。  なお、東南アジア、中国等からの輸入も漸次増大をいたしておるのでございまして、たとえばタイ国からは、三十七年に三十五万トン、三十八年に四十三万トン、三十九年には七十万トン、中国については、三十八年に十万トン、三十九年に十五万トン、四十年には二十五万トンの輸入というふうに計画をいたしておるのでございまして、アメリカへの飼料輸入の依存度も漸次解消していきたいという点については、先生の御意見と同様の見解で措置をいたしておるつもりでございます。
  204. 小林進

    小林分科員 これで終わりますが、あなたたちがどう言おうとも、結果論から見れば、農業基本法をつくって農業改善事業などという太鼓をたたかれて、そうして、やれ成長産業でございますの、選択的拡大でございますのといって畜産を奨励した。その奨励をした農民の現状はどうですか。それは特別に特殊な例外としてあるいは黒字になっておるものもあるだろうけれども、農業全般は全部赤字じゃないですか。畜産農家は全部赤字じゃないですか。総計いたしまして畜産農家の持っておる借金は百億円とも言われ、百五十億円とも言われている。選択的拡大畜産農業の中で、そういうことはどうです。それを集約している牛乳会社は、いわゆる明治だの森永だの協同乳業だの、これが九億とか十億とか十二億という利益を出している。利益を出して、彼らは利益配当をしている。しかし、農民は、百億から百五十億の赤字で、いま呻吟しているじゃないか。今度は、農民がこの赤字の中で使う飼料は、どんどんとアメリカから入ってきて、そしてアメリカの飼料会社は豚のごとく太っているじゃないか。こうやってみんな利益の配当をしているじゃないか。もうかるから、またその金を日本の飼料会社に貸し付けて、そして三年間に六十四億ドルも貸し付けて、それを回転しながらアメリカの余剰農産物を買わせようという、結果はそうなっておるじゃありませんか。農林大臣、こうなっておることを否定されますか。これが日本農業の実態だ。それはあなたは決して悪人だとは言わない。赤城農林大臣農民を愛する点において小林進に劣らざるものと私は考えております。考えておるけれども、結果はそうなっておるじゃないか。農業基本法をつくって農業改善事業をやった。畜産農家を奨励した。農民借金がふえているだけなんだ。そして、その農民を相手にするいわゆる乳業会社は九億も十億も利益をあげておるし、飼料会社は利益を得ておる。そしてアメリカ製の余剰農産物を買う。アメリカの輸入飼料はどんどんふえておる。この結果は間違いないと思いますけれども、これが一体正しい農政のあり方か、これが普通の姿であると農林大臣はお考えになるかどうか。もし普通の姿でないならば、これを改正して農民を助けてくださるか、私はそれをお尋ねしておきたい。それで私の質問を終わります。
  205. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 アメリカに奉仕すべく日本農業をやっておるわけじゃございません。結果においてはそういう見方もありましょうけれども、私は、やはり、日本農業というものを日本農業として独立するといいますか、ほんとうにやっていくことに対しまして農業基本法のあり方というものが進まなかったこと、あるいはまたそういう点についての御批判はございますけれども、大体農業基本法の線に沿うて日本農業を強化していくということに万全の努力をいたしたい、こう考えております。
  206. 古川丈吉

    古川主査 これにて小林進君の質疑は終了いたしました。坂本泰良君。
  207. 坂本泰良

    坂本分科員 私は、農林大臣経済企画庁長官、通産大臣、通産大臣はきょうはおられないようですが、この三省の関係になりまする、さらにまた建設省の関係にもなるわけですが、国土総合計画の一環としての筑後川総合開発計画、ダム建設計画についてお伺いしたいのであります。  御存じのように、筑後川におきましては、建設省において、いわゆる下筌、松原ダムという問題で、これは治水事業の一環として計画されましたが、その後、実際は最初からの計画でありましたが、多目的ダム法によるところの発電、これが付与されまして、地元民の強力な反対にかかわらずいまこれを強行しているのでありますが、この建設省のやり方は浮いてきて独走の感がある。この筑後川の水系は、現在水は金よりもとうといといわれておりますが、いまいろいろの総合計画が立てられておるのであります。  その点についてお伺いしたいのでありますが、まず第一に、下筌ダムの上流になります川畑というところにダムをつくって——これは、下筌にあの百メートル余りのダムサイトに水をいっぱいためますと、そこの地点はまた数メートルの水がたまる。この地点でございますがここに川畑ダムの計画がなされ、そのダムの水は有効貯水量十一万トンでありまして、これを菊池川上流の迫間川、菊池市半尺に持ってまいりまして、この十二キロの間はトンネルする、そしてこの迫間川にこの水を持ってまいりまして、ここにダムをつくり、その水を菊池平野、さらに山鹿平野に続くところのかんがい、水田並びに畑地の水に使用する、そうしてその水をさらに菊池川に落としまして、白石堰、現在総合開発の中心として、加藤清正がつくりました白石堰の改修がいまできておりますが、ここに持ってまいりまして、そしてこの水を新産都市に指定されました長洲地区と荒尾地区の工業用水にこれを使用する、こういう計画農林省九州農政局と熊本県の間に計画されておる、こういわれておりまするが、まずこの点はそのような計画があるかどうか。私の申しましたのが多少違ったらば、当局の計画を御説明願いたいと思います。
  208. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ただいま筑後川水系の水資源開発促進の事業につきましての構想をお述べになりましたが、実はまだその構想等は県の構想でございまして、その構想を農林省に持ってきたということは聞いています。しかし、まだそういう具体的な問題等につきましては私承知しておりません。この筑後川の水資源開発水系の問題は、筑後川の総合開発ということで、現在経済企画庁において基本計画の検討を行なってはおります。まだ現地におきまして、いまお話しのような総合的な検討につきましては、私のほうの地方農政局等も設置されておりますので、九州地方の建設局、福岡通産局及び関係各県等との間で意見を十分交換しまして、総合調整に持っていくということをしておる最中といいますか段階でございまして、実は、いまお話しのような構想等につきまして、農政局長のほうでは一応聞いておるようでございますが、それの相談にあずかるというような段階ではまだございません。
  209. 坂本泰良

    坂本分科員 経済企画庁のほうはあとでお聞きしたいと思いますが、今度は別に、御存じのように、筑後川は、北の上流が二大支流に分かれておりまして、阿蘇外輪山を源とするところの水は大山川、九重山を源とする左側の玖珠川。玖珠川のほうに参りますと、この一番上流のほうになりまする九重町の猪牟田に貯水量六万三千トンのダムをつくって、これを湯布院から山香町を経まして国東半島に持ってまいりまして、ここに、この水を利用いたしまして大規模なミカン園をつくる計画をしておる。さらに、その水は、古田——これは従来のたんぼの水が足りないのに水を補給する。こういうようなことを聞いております。これの補給水に使う。こういうような計画が大分県並びに九州農政局の間に計画されておる、こういうふうに承りますが、この点いかがです。
  210. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 大分県からは、いまの国東半島のかんがい計画につきまして、また、熊本県のほうからは、いまの菊池台地のかんがい計画につきまして、それぞれ陳情がなされておることは承知しています。これも現在九州農政局におきまして筑後川水系の農業開発計画につきまして調査を行なっておる段階でございます。それで、筑後川水系全体の問題として検討をしていくということで、まだ農林省としては詳しく承知しておる段階ではございません。
  211. 坂本泰良

    坂本分科員 そこで、この筑後川の水を、一方は熊本県に持っていく、一方は大分県に持っていく。そこで、そういうふうに水を使ってまいりますると、今度は筑後川の本流に対する流域の水が奪われてしまうのである。だから これはたいへんだというので、久留米市長を会長とする筑後川流域利水協議会というのができております。これは実は、下筌、松原ダムの反対に対しまして、建設省がかいらい的につくった協議会であるわけです。下筌、松原ダムは、治水計画として洪水調節ダムとしてつくるわけでありますが、実際はそうでなくて、時間がないから詳しく申し上げられませんが、実際はそうでなくて、筑後川の上流に十一カ所のダムの予定地を選びまして、そして調査をしたのです。それが、率直に申しますと、九電の発電の関係になりまして、下筌、松原に持っていった。というのは、下筌、松原まで持って上がらないと——しかも玖珠川でなくて大山川のほうにだけダムをつくるのはどうしたわけかと申しますと、その上流にダムを持っていきまして、そして百メートル以上のダムサイトをつくる。そうして、その水の落差を利用して、九電がこれに約十万キロワットに達する発電所をつくる。そこに問題があったわけなんです。建設省は治水のダムだと申しますけれども、その治水の作用は、裁判にもなりまして、鑑定人も出て、その鑑定の結果によれば、そう洪水調節に役はなさない。皆無とは言わないけれどもなさない。その発電の落差に持ってくるためにこのダムを持ってきたのであるからというので、反対の非常な理由になったわけです。そういう反対に対して建設省が、いや、下流の農民あるいは下流の市民は、洪水調節をしてもらうのを望んでおるのだということで、そうして、このダム反対をくじくための一つの手段として、この協議会が持たれた。ところが、この下筌のほうは、いまダムサイトのほうだけが土地収用になりまして、ダムができるまでにはまだ三、四年かかりますけれども、その協議会が今度驚いて、洪水どころではないのだ、筑後川流域の水がなくなってしまうのだというので、ここで大分県と福岡県の両県が水争いの問題になる、こういうようなことが展開しそうでありますが、この流域の問題につきましては、農林大臣、企画庁のほうはどういうふうに見ておられるか、また、どういうふうにこれを推進しなければならないか。企画庁のほうでは、あわせて北九州に対する工業用水の問題につきましては、建設省が最初ダムをつくろうといたしました久世畑ダムを、今度はまた下筌、松原のほかにここにダムをつくって、そうしてこのダムの水を北九州のほうに持っていく、こういうような計画があるようでありますが、あわせてその点も御説明願いたいと思います。
  212. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、筑後川水系は、水資源開発促進法に基づきまして、水資源開発水系に指定されておりますので、それぞれの面において計画を検討しておる次第でございます。農林省といたしましては、九州農政局を通じ、また陳情等によりまして、これから検討を続けていく段階でございまして、いま非常に詳しく御説明がありましたが、そういうところにまでまだ立ち入っての構想や検討はいたしておりません。逐次検討を進めていきたい、こう思っております。
  213. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 先ほど来農林大臣からお答え申し上げておりますとおり、この筑後川水系は、昨年の十月に水資源開発水系として指定をいたしたのでございますが、その後十一月に第一回の筑後川部会というものを開催いたしまして、同水系におけるところの水資源の総合的な開発及び利用の合理化についての基本的な問題の審議を行ないまして、引き続いて同部会は現地におきまして調査を行なったのであります。現地における調査は、関係行政機関、地方公共団体及び地元利害関係者から詳しく事情と意見をお聞きいたしますと同時に、筑後川水系及び関係地域の現状を、現地について視察いたしたのでありますが、その結果に基づきまして、基本的な事項についての検討をただいま行なっておる最中でございます。したがって、地方関係者及び関係各省のいろいろ御調査、検討の結果も持ち寄りまして、それらを経済企画庁において調整しました上で基本計画の作成を行ないたいという予定でございます。基本計画は大体今年度内くらいに何とか取りまとめたいということで、先ほど申し上げましたとおり、それぞれ現地における調査をただいま行なっておる最中でございまして、今後の構想がどうなるかという点についてはまだ何ら結論を出しておる次第ではございません。
  214. 坂本泰良

    坂本分科員 時間がありませんから先に進みたいと思いますが、ここでもう一つ聞いておきたいのは、先ほど冒頭に申し上げましたように、この洪水調節ダムを、さらに、九電の発電の下筌、松原合わせますと約十万トンの発電をするいわゆる多目的ダム法によるダムということになりまして、すでに、すでにと申しましてもほんの一部分でございますが、下筌ダムのダムサイトが、昨年警察官を動員して、そして土地収容委員会はあまり調査もせずに決定をしまして、これを強行したわけです。そして、いまそのダムサイトの点だけについてダムの基本的の調査をしている段階にあります。このダムができるのはまだ三、四年先になるわけですが、建設省が最初ごまかしでやり、いわゆる直轄河川法によるところの治水ダムの基本計画をようやくつくりますると、今度多目的ダム法のダムにいたしまして、そうしていま申しましたような工事を進めておるわけでありまするが、昨年十月水資源開発の指定を受けましたから、これとの関係はどうなりますか。その点をお伺いしたい。
  215. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 御承知のとおり、昨年の十月に水資源開発水系として指定をいたしたのでございますが、下筌、松原のダムにつきましては、その以前に建設省として建設を決定しておられたものでございまして、この筑後川の総合的な開発、水資源の開発という点からは、まず需要方面が一体どこまであるかというふうないろんな現地の事情もございますし、また御要望もございますし、利害関係者の方々もございますので、そういうふうな方々の意見を調整して、まず需要の検討を行ない、しこうして、同時に、これからそういうふうな農業用水または北九州等におけるところの工業用水その他必要な水の供給をするのにどういうふうなダムをつくることによってその水の供給ができるかというふうな問題は、それとの見合いにおいて総合的に決定して、いきたい、かように考えておりますので、基本計画を立てる場合におきましては、下筌、松原のダムは、すでに決定された計画として、それを全体の計画に組み入れていく、こういう形に相なろうと考えております。
  216. 坂本泰良

    坂本分科員 そこで、まずここに考えなければならぬのは、下筌、松原ダムを遂行しましても、結局はやはりこれは大きい筑後川の総合開発計画の一環に入ると思うのです。そこで、この建設省のダム、下筌、松原を完成するにしてもあと四カ年くらいを要する。そうでありまするならば、先ほど申しました下筌ダムのバックウォーターのところよりずっと手前の、下筌ダムで貯水したその水の中に川畑ダムをつくることになると、この川畑ダムの建設によって、もう下筌ダム、松原ダムの必要性は、全然ないとは申しませんが、半減されると思われるわけなんです。なおまた、玖珠川のほうの猪牟田ダムというのは、実地検証に参りました際に建設省の申し立てによると、これは調査はしたけれどももう全然ダムはできないんだ、地形上も地質上もできないところであるから、この猪牟田ダムは放棄したんだ、こういうことになっておりましたけれども、いまこの大分県あるいは農政局の専門的の調査によりますと、地質が少し悪くても、いまは技術が進んで、金さえ少しよけいにかければ、簡単に言いますとコンクリートその他をよけいに使ってやれば技術的に不可能でない、こういうことになって、そうして、建設省の調査では全然問題にならない、こういうところにはできないんだと主張したところにダムができることになっておる。建設省がいかにうそを言っておるかということは事実でここに証明ができておるわけですが、そういうわけで、少なくとも下筌、松原ダムは水没がたくさん出る。学校が二つ、約三百戸なんですが、さらに今度川畑ダムをつくりますと、中津江村と申しますか、その村の全部が水没をするということになるわけです。ですから、このダムサイトと申しますか、高さを半分に下げればその被害がずっと少なくなるわけです。当時、私たちの反対派の主張は、十一カ所にダム建設して、ダムサイトを低くすれば、ほんの川の両域の被害だけであって、ああいう三百戸も下筌、松原ダムによって水没をするというようなことは免れるから、建設省はそのような十一カ所に低いダムサイトをつくって、小さい堰堤をたくさんつくってやったほうが、下流の洪水の調節になるのじゃないかということなのですが、また、そういうような観点も出ておるわけなんです。  そこで、時間がありませんから一つだけ伺いますが、川畑ダムの大きい計画がございますから、下筌、松原ダムは、この際建設省のメンツなんかはなくして、そうしてダムサイトを半分くらいに下げる、そうして水没住民を少なくしなければならない、これが私は問題じゃないかと思うのです。ただ九電の発電に寄与するだけであってはならない。これは、一言申しますと、九電のいわゆる発電のダムをつくるのには、国家の補助も少ないし、発電会社は相当の金がかかるのです。これを治水ダムとして建設省がつくれば、その金はほとんど建設省が出してつくる。というのは、農民その他から集めた税金によってこれをつくるわけです。だから、この下筌、松原ダムは露出資本に奉仕するところのダムであって、断じて洪水調節の重要なダムではないと主張したのはそこにある。したがって、川畑ダムをその上流につくりますれば、この下筌、松原ダムの計画というのは、これは半減する、半分にして計画を変更しなければならない、こういうふうに考えられまするが、経済企画庁のほうではどういうふうに考えておられますか。
  217. 村上春藏

    ○村上(春)政府委員 この問題は、私どもちょっと関係がございますので、少し余分なことを申し上げましてもひとつどうぞおしかりなさらないで……。  こういうことでございます。昭和二十八年六月二十六日と記憶しておりますが、非帯な大きな洪水がございました。この筑後川は、最大商水量六千トンと見ております。この二十八年の六月に出ました水が約一万トン、こういうことでございまして、私はそのときちょうど原鶴温泉におりまして、私自体が死んだというラジオがあって、死んだという新聞が出たわけでございますから、非常に関係が深いわけでございます。そういうようなことがございまして、どうしても、下流の七十万の住民の安全のために、ダムを多目的ダムとしてつくらなければならぬ。多目的ダムのほうが、利水ダムのほうが重点でございます。そういうことで、結局、これを完全にやりますのには、筑後川の現在の川を五割ばかり大きくしなければ、最大高水量に……
  218. 坂本泰良

    坂本分科員 そういうことはわかっている。下筌、松原の計画変更をすべきじゃないかということを私は聞いているわけですから、その点についての返答をしてください。
  219. 村上春藏

    ○村上(春)政府委員 いまの先生のお尋ねのダムの計画は通産省の関係ではございませんので……。
  220. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、昨年十月に水資源開発水系として指定をいたしました際には、もうすでに、建設省としては、また国の方針として、下筌、松原ダムを築造するという前提のもとにこたを水系に指定をいたしておる次第でございます。したがって、ただいまのところ、政府としてこれを変更する意思はございません。
  221. 坂本泰良

    坂本分科員 ただいまのところないと言うけれども、少なくとも本年度内には、先ほど御説明がありましたように取りまとめられたい。これはすでに昨年の十一月に水資源局長も調査に回られ、下筌、松原のあの反対派のところにも寄られて、いろいろ調査をされておるわけであります。なお、この十一月に都立大の助教授、名前はいまちょっとわかりませんが、その方も、民間のほうでも調査をいたしまして、今回この水資源開発の指定になった上においては、これは筑後川総合開発としてやられるから、下筌、松原は従来の建設省が主張した洪水調節ダムとしてはもう必要であるかないかというような点についても調査が進められておるわけです。反対のほうでもその調査を進めておりますが、先ほど申しましたように、鈴木水資源局長お見えになって調査をしておられる。ですから、本年度内にそういう計画ができれば当然、下筌、松原も入ると思うのです。やはりそれも中に入れたところの総合開発計画でなければならぬ、こういうふうに思うわけなんです。ですから、ばく大な費用をかけていま下筌、松原ダムを強行する必要はないじゃないか。  さらにまた、いまダムサイトの点だけが強制収用されました。今度はそれに関連する、そのダムで水没する広い全体から考えますとほんのわずかなところを、たとえばダムをつくる場合にその水を流す隧道、そういうような工事を本年度はやっているようなわけです。そういうのは、ことしじゅうにこういう計画ができるならばやめて、農林省、建設省、経済企画庁、通産省とあわせて総合的に検討されて、そして建設省のあんな警察官を動員し権力を行使してやったメンツにかかわらず、やはりあやまちは改むるにはばかるなかれというので、総合的の計画の一環としてこれを考慮しなければならぬ。そうするならば、この下筌、松原の工事は何も予算を何十億も取って進める必要はないと思いますが、そういう点についてはいかがでございますか。
  222. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたとおり、また、ただいまお話のありましたとおり、十月に水系の指定をいたしました直後直ちに水資源局長その他関係の者が現地におもむきまして、それぞれ現地の御意見も伺っておりますし、また、各省または地方公共団体の御意向も十分伺ってまいっておるのでございます。しかし、何ぶんにも、これは、需要の面から申しましても、また供給の面、つまり、どこがダムサイトとして適当か、どの程度の水を供給できるかというような問題は、技術的にも非常に重要な問題であり、慎重を要する問題でございます。そういうことで、先ほど何とか今年度内に結論を得たいということを申し上げましたが、あるいは場合によっては時期がおくれる可能性もありはしないか。もちろん今年度内に何とかダム計画を取りまとめたいということで、いま鋭意仕事を進めているわけでございますが、ただいまお尋ねの点につきましては、先ほども申しましたとおり、すでに、水系の指定をいたしましたときには、政府としては下筌、松原のダムを建設するということを決定しており、その前提のもとにこの水系の指定をし、筑後川計画をその前提のもとに立てていく、こういうことに相なっておりますので、その点を御了承願いたいと思います。
  223. 坂本泰良

    坂本分科員 そこで、私は、早急に立てられるなら下筌、松原ダムは、地域住民の利益という点を考えれば、権力で強行せずに、せっかく建設省が計画を立てた後においてこういう水資源開発という大きい問題が出てまいりましたから、その一環として一時工事は中止でもしてやらなければならぬ、こういうふうに考えるのです。  そこで、問題は、現在まで、ダム建設等が行なわれました場合は、工事事務所だけができまして、中央できまったのをやたらに強行して、地域住民の利益とか不利益とかは無視してどんどん進めるわけです。それで、私は、ぜひお聞きしたいのは、こういうような総合計画によって起こるべき問題は、各省にまたがるわけで、各省にまたがるから、この問題を処理するためには、中央に各省の権限争いその他のないような機関を設けることも必要でございましょうが、まず当面の問題としては、各省の総合的な出先機関を設けまして、そこでこの計画を立てる、こういうふうに、まず、その総合計画を立てる方法として、これをつくらなければならぬ。やはり、公共補償というものは、ばく大な補償が要るわけですから、この公共補償を十分に住民のために総合的に配慮するためにこれが最も必要と思うわけですが、まずとりあえず各省の総合的出先機関を設けて、一体となってこの総合開発の問題に取り組み処理する、こういう方法はいかがでございますか。こういう点についての所見があれば、経済企画庁のほうも農林大臣のほうも、その所見を承っておきたい。
  224. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 先ほど来御説明申し上げておりますように、水資源の開発については、ただいまお話しになりましたように、農業用水または工業用水については通産省、上水道については、厚生省、洪水調節その他については建設省というふうに、関係の面が非常に多うございまして、それで、水資源開発促進法も、これができ上がるまでに相当に難航いたしましたことは、先生御承知のとおりだと存じます。それで、そういうふうな関係から、水系に指定をいたしまして総合的な基本計画をつくろう、この基本計画の作成自体についても、いろいろと意見の調整に非常な困難を感ずるのが従来の例でございます。そういうことで、現地に局長がみずからおもむいたり、または相当な人に現地にも行っていただきまして、そうしてじかに現地のいろんな御意見を伺うというような非常に慎重な態度のもとに、基本計画をつくり上げるわけでございます。そういうことで、いよいよ基本計画が決定いたしますと、その工事をどの部分は、どこが分担するということもまた同時に決定するわけでございまして、そういう意味で、基本計画がまとまる過程においては、非常に総合調整が必要でございます。そういうことでございますが、いよいよ工事の実行という段階になりますると、ただいまお話しのように、補償等について、たとえば庁の分担が変わることによって補償の基準が違う、取り扱いが違うということになりますと、これまた弊害が生ずるおそれがありますので、その点は現地において十分に連絡をしてやっていただくという処置をいままでもとっておるわけでございますが、そういうことでただいまのところは十分じゃなかろうか。そこに膨大な出先機関をつくるということは、ただいまのところは、そう必要がないというふうに感じておる次第でございます。
  225. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現地における総合的検討については、私は賛成でございます。私のほうといたしましても、九州農政局も設置されておりますので、建設省の九州地方建設局とか通産省の福岡通産局及び関係各県等の間で意見を十分交換して、総合調整に資するというような方法をとることは適当なこと、こういうふうに考えております。
  226. 坂本泰良

    坂本分科員 この問題はこれで打ち切りまして、四国電力の問題につきまして簡単にお尋ねいたします。  四国電力株式会社は、いろいろ政治的にも左右され、その運営等も問題があるわけでございますが、先般高知県における穴内川事件というのが起こりまして、この事件は、穴内川に四国電力のダムをつくるというので工事が進められたわけですが、この現地である土佐山田町には公共補償費として四国電力より四千四百万が出ておるわけであります。よって、町議会はこの決定に基づきまして百五十万を支出することになって、これによって現地において駐在所その他の建設をやったわけであります。ところが、そのほかに、土佐山田町の山田警察署がありまするが、この山田警察所に治安対策費として三百万円を支出する、二十五万を追加いたしておりまするが、この三百万の金は警察の公金に入れずに別途これを支出し、非常にでたらめな支出をしておるというので高知県議会で問題になりまして、公金か、公金でないかというような問題等が起きまして、その二度目の署長でありますか、それなんかは、退職しましたが、りっぱな自宅を建築しておるというので、非常に贈収賄のにおいがぷんぷんとしておるわけなんです。そこで、これが県議会で問題になりまして、警察本部長はもう平あやまりです。これを公金に入れずに公金外にしておいて、そして、その金がでたらめであるし、その内容も、私は調査しておりますからはっきりわかっておりまするが、いずれにしても、約半分は飲み食いに使われておる、こういうようなことで、県議会で問題になり、すでに告発をいたしたわけでありますが、高知の検察庁は、あとから料理屋あたりの受け取り書を持ってきまして、そしてその支出についてつじつまを合わせたから、不起訴処分にしておる。これに対しては、高知の社会党の支部を代表しまして県会議員が告訴をして、さらに不起訴になりましてから検察審査会に申し立てをやりまして、いま審理中であるわけであります。  そこで、私は通産省にお聞きしたいのは、こういうような電力会社がダムを建設するにあたって、一応四千四百万という金を公共補償費として出しておる。これはどうしてこんな金をたくさん出すかと申しますと、この金を出さないとやはり水利権の獲得ができない、水利権の獲得について知事の副申書と申しますか、これをもらうのには、やはりその町の同意がなければならぬ、そういうような関係で四千四百万という補償費を出しておりまするが、そのほかに三百万出しておる。その三百万の出し方について、四割を四国電力が出しまして、そして、あとの六割を、実際ダムの工事をする建設会社が六社あるわけですが、その六社が出す、一社が一割出したと思うのですが、そういうふうにして、金の捻出をいたしまして、一応四国電力が三百万払って、そしてあとその六割だけを建設会社から取り立てておる、こういうようなことをやっておるのですが、これは、通産局の監査の問題等もあって、実は、この監査につきましては、昨年の五月参議院の法務委員会で究明をしまして、そして、その監査調査員と申しますか、それはすでに転任を命ぜられておる、そういうような結果になっておるわけです。ですから、こういう点についての監査、監督、これはどう行なわれておるか、その点について承りたい。
  227. 宮本惇

    ○宮本政府委員 お答え申し上げます。  問題は三つございますが、第一の点は、そういういわゆる治安対策費というものを電力会社が出すことがいいか悪いかという問題でございます。この点につきましては、確かに御指摘のように四千四百万円のいわゆる公共補償を払っておりますが、御承知のように、通例といたしまして、ああいうダム地点にダム建設が始まりますと、いろいろな工事の人夫が入るというようなことで、山田町のほうからそういうものを出してくれないかというお話がございまして、そして警察も一緒に入りましていろいろ折衝して、四百五十万円を払うということにしまして、そのうちの百五十万円を山田町が出す、残りの三百万円を四国電力が負担をする。確かに、本来そういう警察官のいろんな派出所あるいはそういうものは当然国あるいは公共団体の費用でまかなうべきものであるとは思いますが、現実に予算はなかなかないというようなことで、したがいまして、実際そういうところに人夫が入って、そしていろいろ問題になるから、ある意味ではそういうところへ警察が来ていただくほうが便利であるというような立場、いわば受益者負担的に出したと思います。この点は実は本来は好ましくはないと思いますけれども、往往にして警察のほうから御要求があるわけで、実際問題としてやむを得ざるものとして、いままででもそういう例はあるわけでございます。  それから、もう一つは、先生御指摘の、それを四割、六割で建設業者に分担させたという問題でございます。実際その人夫を使いますのは土建業者の方でございますので、その辺は、協議の上、六割、つまり一社一割程度持とうということで、必ずしもいいとは思いませんが、しかし、いままでのあれから言って、実情やむを得なかったのではなかろうかと考えております。ただ、しかし、こういうことがいいことか悪いことかということになりますと、ここに根本問題がございます。したがいまして、先ほどお話しのような電力会社がいろいろ補償を払う場合の公共補償の基準というものをはっきりさして、そういう場合にはどうするということを今後はっきりきめるべきであると思いまして、現在、建設省その他と、そういう基準をつくるべく折衝中でございます。  それから、最後の点でございますが、御指摘のように、昨年、私、参議院の決算委員会で亀田先生から御注意を受けまして、その後厳重なる、何と申しますか、戒厳令を局内にしきまして、厳重にやっております。したがいまして、今度は大蔵省も来年度予算を非常に増額していただきまして、わが局に関する限りは、今後検査、監査については一切業界のお世話にならない、昼めしもいただかないということで厳重にやっておりまして、その点につきましては、全く問題がないようにいまやっておる次第でございます。
  228. 古川丈吉

    古川主査 坂本君、結論をお願いします。
  229. 坂本泰良

    坂本分科員 結論が二つありますから、もう一つ……。  この問題は氷山の一角であって、全国にいま多数のダム建設が行なわれ、もう相当ダムもできておるし、今後も建設されると思うのです。その場合において、こういう点を、やむを得ざるというようなことで見のがすわけにはまいらないと思うのです。と申しますのは、公共補償費として四千四百万出して、その中から町議会は百五十万を出して駐在所なんかをつくっておりますから、それは巡査の五人や十人はふえるでしょう、巡査の五人、十人ふえましても、それは児の警察費でまかなうべきものである。決してその会社、業者から金を取って、人夫が悪さをするかわからぬというので取るべきじゃない。この場合はわずかなけんかくらいはあったでしょう。しかしながら、労務対策費として三百万も出す必要はなかった。このうちの大部分は、私は明細を持っておりますけれども、治安対策費として、会社、土建屋、警察側その他町の有志がどんちゃん騒ぎをして、料理屋で飲んだり食ったりしておる。その金が半分にも達しようとしておる。さらにまた、行方不明になっておりまするところの金は、どこに行っておるかわからない。ある警察署長のごときは、やめてから建築をしておる、そういうようなこともあるようなわけでありますから、この点は、あらわれたのは氷山の一角でありますから、今後絶対こういうことはないようにしなければならない。また、会社が何でこんな金を出すかというと、仮払いで出しておる。そうして、あとで建設費、工事費の中にこれを繰り込む、そういう経理の処理方法をしておるのでありまして、こういうのはほんとうに許しがたきものであるし、先ほどお話がありましたように、この検査に参ったその者がまた会社と飲んだり食ったりするとかマージャンをやるとかいう問題がそこに出ておる。こういう点はひとつ今後厳重に監査をしてやらなければならぬと思うわけです。  そこで、もう一つお聞きしておきたいのは、四国電力会社は高知県が大株主であるわけです。したがって、現在は小松という高知県議会の議長が四国電力の取締役に就任をしておる。株の配当は高知県に行っておりまするが、この小松議長が、議長なるがゆえにこの四国電力の取締役になって、取締役には報酬並びに賞与その他があるが、これを個人に入れている。個人に払っている。これはやはり、大株主は高知県である、高知県を代表して取締役になっておれば、その周知県にこれは帰属すべきである。まあしかし、実際その取締役として、これは何べんも行かぬでしょう。ほとんど、取締役というのは、行かずに、出ずに金をもらうというのが大きい会社の原則のようですから、ほとんど行かぬでしょう。そうしてその金をもらう。こういう点についての通産省の監査の点ですね。この点はどういうふうにやり、またどういうふうに指導されておるか、それを承っておきたい。
  230. 宮本惇

    ○宮本政府委員 御指摘のように、四国電力の総資本金の百二十億のうち、高知県の持っております株が約八億四千万円ということで、これはほかの電力会社もそうでございますが、県庁は大株主でありますために、往々にして県会議長が非常勤の重役ということでお入りになっている例はあるわけでございます。それで、確かに、配当が県に行くのは、これは当然でございますけれども、ただ、問題は、現在大体非常勤の重役でございますので月に約五万円見当のものが行っておるわけでございます。しかし、県会議長という資格ではお入りになってはいますが、その金をどう使うかという問題は、やはり県を代表して入っておられるのですから、もらったものは当然県に帰属すべきであるとは思いますが、その辺は、むしろそのお入りになっている重役の心がまえと申しますか、そういう点、いわゆる商法に従って非常勤といえども一応月五万円程度のものは払うということで、そのお渡ししたものをどう使い、あるいは全然渡さないことができるかどうかといった点は、これはいろいろ研究をいたしたいと思いますが、その点は、むしろその県会議長の小松さんが^自分は県を代表してきているのだから、そういう金はそのためにお使いになっていただくことのほうがいいのではないか。これを出さないでいいかどうかという点は、もう少し研究さしていただきたいと思います。
  231. 坂本泰良

    坂本分科員 私は、これは株主であっても県を代表してやるなら県の代表だから、俸給を支給し、賞与を支給するなら、そちらにやるべきである、個人にやるべきものじゃないと思うのです。しかしながら、こういう弊害を除去するためには、県が大株主であっても、県の代表としてその県議会の議長を取締役にするということ自体について私は問題があると思います。こういう点をひとつ御検討いただきたいと思います。  これで終わります。
  232. 古川丈吉

    古川主査 これにて坂本泰良君の質疑は終了いたしました。  次に、田口誠治君。
  233. 田口誠治

    田口(誠)分科員 長官が早くお帰りになるような予定になっておるものですから、十分にお聞きしたい点がありますけれども、まあ演説はやめて、率直にお聞きをしたいと思うのです。  あなたのほうでお立てになった中期経済計画は、福祉国家を実現するのにこれは非常に重要な経済政策として注目を浴びております。そこで、池田さんのとりました所得倍増計画並びに高度経済成長計画の中には、物価対策というものがほとんど入っていなかった。したがって、そのために物価が非常に上昇をして、日本経済が発展をし生産性が伸びても国民生活が安定をしておらなかったということで、昨年は公共料金の一年間ストップ、こういうことになったわけであります。したがって、こうした経済政策を立てる場合には総合的な対策を立てなければならないということを、池田さんの立てた経済政策の実態を見ても十分に知ることができるわけなんです。   〔主査退席、仮谷主査代理着席〕  そこで、私は、今日の中期経済計画の中で一つだけ落ちておると思いますことは、もちろん、今度は、物価の対策あるいは経済の伸び、貿易の収支、あらゆる面にわたっておりますけれども、最も重要である賃金の上昇率というものが全然盛られておらない。こういうことになりますと、賃金の上昇率というものは物価にも関係がありますし、経済成長にも関係がありますし、生産性の向上にも影響のあるものでございますから、このように中期経済計画を立てられたのに、なぜ賃金対策を十分に取り上げて数字的にお示しになっておらないのかという点をまずお聞きしたいと思うのです。抽象的には文章になっておりますけれども、読んでみたとて、それがどうあらわれくるかということについてははっきりしておらないので、この点をまずもってお聞きいたしたいと思います。
  234. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 この中期経済計画をお持ちでございましたらごらんいただきたいと思いますが、十九ページの5の「雇用と賃金」のところにその点を触れておるわけでございます。簡単に御説明申し上げますと、勤労所得は三十八年度に比べまして約七割四十三年度において増加する。国民所得に対する勤労所得の比率は三十八印度の五四%から五六%に上昇する。これはラウンドナンバーになっておりますか、詳しくは申し上げません。そういうことを書いておるわけでございます。この内訳としては、経済審議会の労働分科会においてその内容について詳しく検討いたしておる次第でございますが……
  235. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それは文章は出ておりますけれども、いま言ったのは、数字的にいつどうなるか、こういうことが明確でないから聞いておる。
  236. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 労働分科会の報告は別途提出してございますが、この労働分科会の報告の百八十ページの2に「賃金水準と賃金格差」という項がございます。ここの第八行にその点の詳しい積算の根拠が掲げられておるわけでございます。しこうして、勤労者一人当たりの勤労所得の増加率というものを三十八年度から四十三年度にとって、これは四四%ということに相なっております。その四四%を年率に引き直しますと、名目で七・六%ということに相なっております。しこうして、この計画期間中におきましては、消費者物価の上昇を二・五%、これは、基本的な条件として、この中期経済計画を作成いたします際の前提条件として置いたわけでございます。これでもって実賃の伸び率を年率に引き直しますと五・一%に相なっておる次第でございます。
  237. 田口誠治

    田口(誠)分科員 見落としておりましたので、不明な点が一カ所明確になりました。  そこで、そうした数字があげられておるのですが、この計画を立てる場合に、何と申しましても、最も前提となるものは、貿易の収支の関係、それに物価の関係、これが国民生活に相当影響を及ぼしてくるわけです。したがって、この中期経済計画の中に立てられておるもろもろの数字と、いま御答弁のありました物価の上昇の数字とを比較対照してみましたときに、これはそのまま了解のできぬ面があると思うのですが、この点の内容をもう少し私どもに自信の持てるように御説明いただけませんか。
  238. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 中期経済計画の性格は、田口先生御承知だと存じますが、要するに、四十三年度に国際収支が経常収支でバランスをとるということ、同時に、この計画期間中におけるところの消費者物価の上昇率を二・五%にする、そのためにはどういうふうな経済運営をやったらいいかということを各経済諸元について求めたものが中期経済計画ということに相なっている次第でございます。しこうして、そういう詳しい数字の内容についてはなお総合計画局長から御答弁申し上げることにいたしますが、要するに、賃金の上昇につきましても、名目で七・六%、実質で五・一%という状態にあれば、消費者物価の上昇も二・五声程度——もちろん賃金だけではございません。いろいろな経済諸元がございますが、そういうふうな条件のもとに経済の運営が行なわれれば二・五%の消費者物価の上昇というものが達成できる、こういうたてまえとなっておる次第でございます。また、政府としては、何とかそういう方向に、たとえば経済の運営を、過去十年の平均におきましては大体実質で一〇%程度経済成長率でございましたが、それを安定的な基調にのせるという趣旨で、実質八・一%の上昇にとどめようというふうなこと、またはその他各般の施策を中期経済計画の中で強調いたしておる次第でございます。
  239. 田口誠治

    田口(誠)分科員 いまの消費者物価と国際収支の関係が最も重要な二本の柱になっております。それからいろいろと賃金の問題等も出てくるわけでございますが、いまの答弁でもう少し私はっきりいたしておきたいと思いますことは、物価の上昇率といいましても、これは、この計画表に載せられておるパーセンテージを年次的に見ますと、もうこわれておるわけですね。したがって、これを完全にこの計画数字で自信を持ってこの中期計画が完成できるかどうかということは、この物価の上昇率一つ見ても、私は非常に不安な面があると思う。したがって、ただいま申しましたように、国際収支あるいは消費者物価の関係が何といっても大きな柱になっておろうと思いますので、これに関連をした賃金対策というのがおそらくいま御答弁がありましたように出てきておると思うのですけれども、物価の関係がこわれておる今日、非常に賃金の関係にも影響してくるのではないか。もっとも、今年度計画どおりにはなっておらぬでも、来年度うんと押えるということになりますれば、これはつじつまが合ってきますけれども、そうでない場合には、これは大きく狂いが出てくるわけなんです。国民の心配をしておることはここにあろうと思うので、その点をひとつもう少し丁寧に御説明をいただきたい。
  240. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 消費者物価について、三十九年度から中期経済計画が始まるわけでございますが、年率二・五%を目標として計画をつくったということは、先ほど申し上げたとおりでございます。ところが、三十九年度については、計画ができますまでにすでにその大部分の時間を経過しておる次第でございます。もっとも、当初の経済見通しを立てます際におきましても、実質成長率を七%程度というふうに押えてかかってみたのでございます。また、同時に、国際収支の悪化その他の消費者物価の上昇等の観点から、経済の引き締めを一昨年の暮れからやってまいったことは御承知のとおりでございます。そういうふうな情勢下にもかかわらず、三十九年度の実質成長率のただいまの見通しは、当初の見通しの七%をこえまして、九・四%という状態に相なっており、また、その他、これはいい数字ではございますが、国際収支の面も当初の見込みは総合において一億五千万ドルの赤字という想定でございましたが、これが赤字ではなしに若干の黒字になるという見通しにただいま変わっておるような次第でございます。そういうふうな関係で、今年度消費者物価は、昨年の暮れに改定をいたしまして、大体年度内四・八%程度の上昇にとどめるという考え方のもとに、政府としては非常に強い決意をもって物価に対して対策を講じておる次第でございます。  しこうして、昭和四十年度に対しては、これは計画ができました後の新しい年度ではございますが、これまた、物価の影響というのは、その年度にそういう新しい経済運営方針をとったからすぐその効果があらわれるという性格のものではございませんので、どうしても、前年におけるところのいろいろな経済諸情勢の動きというもの、その影響がその次の年度に相当部分残ってくるという事態もあります。そういうところから、どうしても実際に効果をあらわすためにある程度の時間を要するという面から、昭和四十年度につきましても、見通しとしては、計画の二・五%に対して四・五%という目標を置きまして、これに対してあらゆる努力をしていく、これを実現するために、これを確保するために、これ以下にとどめるためにあらゆる努力をしていこう、こういう考え方になっておる次第でございます。
  241. 田口誠治

    田口(誠)分科員 答弁の内容からいきますと一つの筋を通した計画を立てておいでになりますが、繰り返すようですけれども、物価の上昇率を、お考えになっておるようなぐあいに押えていくということは、きわめてむずかしいと思います。したがって、これに対する一つ考え方があると思うので、私はこの点も承っておきたいし、そして、この計画を推進していく上においては、何といっても、池田さんの高度経済成長計画が物価対策で失敗をいたしたということから、私はこの物価の問題にどうしてもこだわりが出てきておるわけです。それによって労働者の賃金の問題も取り上げていかなくちゃなりませんので、私の目から見ましては、政府考えておられるように、物価の抑制政策というものはなかなか成功しないというように考えられますので、こうやればできるという自信のほどをひとつ明確にしてもらいたいと思います。
  242. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 もとより、自由主義経済でございますので、政府がコントロールし得る、自由にし得る範囲というのは、国民経済のうちのわずか二割程度でございます。しかしながら、その二割については、もちろん政府としてはちゃんと姿勢を正して物価安定のために努力をしていくということは当然でございます。そのほかに、物価の関係は、田口先生よく御承知だと思いますが、需要供給の関係、それからコストの関係、双方から来ると存じます。  そこで、需要供給の関係で申し上げますと、たとえば、個人消費物伸びというものが、昭和三十六年度から三十八年度に至る過去三カ年度間毎年一五%台の伸びであったわけでございます。これを今後計画においては相当スローダウンしていく、大体一〇%程度のところにスローダウンしていくということを一つの前提にいたしておるのでございます。個人消費は国民総需要のうちの過半数を占めておるところの要素でございまして、これがどんどんふえていくということになれば、どうしても需要供給の面から物価は相当上がらざるを得ないという傾向を持ちますので、この点を、国民の消費の健全化、または貯蓄の奨励というふうな方向によって、いま少しく安定した状態に持っていかれるということを前提にしてこの計画はできております。   〔仮谷主査代理退席、主査着席〕  しこうして、なぜ個人消費が伸びるか。一つの原因としては、やはり可処分所得がどんどんふえていくという面から来ると存じます。可処分所得はもちろん賃金の上昇によって起こってくる。今日、労働需給が、特に若年労働者の階層におきまして非常に逼迫いたしておりますので、どうしても所得、賃金の平準化の作用がここ二、三年急速に強くなってまいっております。したがって、大企業における賃金の上昇は、当然に中小企業に及び、また、賃金形態ではございませんが、農村所得についても、農産物のい七割五分を政府が買い上げておるような状況でございますので、その価格決定にも当然及んでいくというような過程を通じまして可処分所得が増大する。可処分所得が増大しても、それが貯蓄に回れば、個人消費はそれほど増大いたしませんが、やはりそうむやみに貯蓄に回るものではございません。大体貯蓄に回る率というものは常識的にある程度きまっておるものでございますから、それが自然個人消費の増大になっていくというふうな面から、物価の上昇の一つの大きな力になってくる、かように存じておるのでございます。いま一つは、先ほど申しましたように、中小企業等におきましては、また農業等におきましては、生産性の向上が非常に困難でございます。事実上、生産性の格差が、大企業と中小企業の間、または製造業と農業の間にございます。その格差が存在するにもかかわらず、賃金、所得は平準化の作用を持ってくるというところから、農業、中小企業またはサービス業等におきましてはコストの上昇という観点から、これまた消費者物価を押し上げるという力を持ってくるわけでございます。  そういう双方の要素がある程度緩和されるということがなければ、この二・五%が達成できるということはなかなか困難でございます。そういう観点から、やはり、あまりに高度な成長はそういうふうなひずみを来たしやすい傾向を持っておりますので、経済全体の成長につきましても、先ほど申しましたように、過去十年の実績が一〇%程度の実質成長率でございましたものを、八%程度まで下げていこう、そして経済全体を安定的な基調に持っていこう、さような考えをもって中期経済計画がつくられておるような次第でございます。
  243. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そういう計画計画でよろしいですけれども、私どもが考えまして、計画どおりにいかないという点を、先ほど来物価の問題でまず指摘をいたしておったのです。先ほど長官がお帰りになる時間のお知らせもありましたので、ここで少しやりとりをしたい点がございますけれども、次の機会に譲りたいと思います。  そこで、長官のお見えのときにお聞きをしておきたいと思いますることは、昨年は、公共料金の引き上げを一年間ストップを行ないまして、物価の上昇を抑制するということをやったのです。公共料金が国民の生活に非常に大きな影響を及ぼすということから、政府のほうでは政策的に一年間ストップという政策をとられたわけでございます。ところが、民間事業の場合には、これがやはりそこの会社の収支の面に大きい影響があるわけなんで、したがって、この料金をどれだけ引き上げるか、また幾らにするかということは、ただ単なる、その会社が赤字になったから引き上げるのだ、黒字であるからこれは引き上げを許さないのだということだけでは、これは正しい認可料金とは言えないわけなんです。したがって、私は、正常な認可料金というものはどういうものであって、どういうところに基礎を置いて積算されるものかということをお聞きしておかなければ、今後におきましても、他の物価が非常に上昇してきた場合には、まず認可料金のところでひとつ手を打て、こういうことになりますると、その企業、その部分だけが物価の上昇に対する犠牲になるということになりまするので、ほんとうに正常な認可料金はどういうものであるかということを、これは企画庁のほうでも明確にしておいていただかなくてはならないと思う。ただ単に認可料金を政策的にそのときの経済情勢によって使われるということになりますると、私はこれは非常に問題があろうと思いますので、この点についてお聞きをいたしたいと思います。
  244. 高橋衛

    ○高橋(衛)国務大臣 お話のとおり、一年間公共料金のストップをいたしましたことによりまして、その対象となった企業は相当赤字その他の関係で苦労なすったことと存じます。そういうふうな協力を求めざるを得なかったのも、物価の騰勢をここでもって一段落さして、そしてそのムードを何とか転換していきたいという意図から始めたことでございます。しこうしてこれが一年間経過いたしましたけれども、今後とも、政府といたしましては、非常に渋い線でもって公共料金を抑制していこうという、その方針そのものについては何ら変更がないわけでございますから、そういうふうな考え方のもとにケース・バイ・ケースに審査をしながら一々検討していきたい、かように考えているわけでございますが、ただいま、その基準を一体どこに置くのだというお話でございますが、政府といたしましては、その企業が合理的にまた能率的に経営をした場合に、それがペイするという限度、その限度までは見て差し上げることが正しい、かように考えておるわけであります。もちろん、その最小限度でもってぜひ協力を願いたい、かように考えておりますが、しこうして、抽象的には、そういうふうに能率的にまた合理的に経営した場合にどうなるかということで一応割り切れるわけでございますけれども、具体的にはその判断は非常にむずかしい問題に相なるわけでございます。したがって、過去において相当赤字が累積しておるとか、そのままではとうてい経営を継続することが困難であるというふうな状態の場合には、やはり、その経営が相当まずい場合もあるいはあり得るかもしれませんが、認めざるを得ないような場合もあるかと存じます。しかし、たとえば公営企業と私企業とが同時に並行しておるというような場合に、一方において非常に能率的な経営が行なわれておるというものが存在いたします際には、一方が能率的または合理的に経営した標本が、お手本があるわけでございますから、そういうふうなお手本に従って政府としては判断していきたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  245. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それでは、いまの問題は、具体的に問題をとらえて取り扱っておられる局長さんのほうがよけい勉強もし自信を持っておられると思いますので、お聞きをいたしたいと思います。  いまの長官からの答弁からいきますと、何と言っても、私企業の場合には、私企業の経営実体が成り立つように、また、成り立たない場合に公共料金の引き上げを行ないますというような考え方であるわけなんです。そうなりますると、私企業の会社の経営そのものに対しまして、相当政府としては目を光らせたり、あるいはいろいろと手を貸したりするような、どちらかと言えば、自主性を企業が失うようなことがあり得るわけです。いまの論法からいけば。それではいけないと思うのです。私企業にいたしましても、公営事業にいたしましても、それぞれの経営の能力を発揮してやっておりまするけれども、やはり、それぞれの企業には能力の限界があり、そうして事業の運営のしかたが違っておるわけなんです。じょうずに運営をするところとへたなところがあるわけなんです。だから、じょうずに運営をしないところは、これは赤字を出してくることになる。赤字を出したところへは、それでは気の毒だから公共料金を引き上げてやろう、こういう料金のきめ方では私はいけないということを申し上げておるのです。少なくとも、政府が認可をして料金をきめるものは、認可料金の積算的な基礎がなければならないと思うのです。これを伺っておかなければ、昨年のように、物価の上昇によって非常に国民が困っており、国民から政府に対して批判が多い、何とかこれをしなければならないというので、公共料金の引き上げを一年間ストップをかけた、こういうことになりますと、もう公共料金ではないのです。昨年あたりの料金は、もう政策料金である。池田内閣の経済政策の失敗の政策料金が昨年やられておった。これが今年もまた引き続きやられておるということです。したがって、私は、少なくとも公共料金をもって私企業なり公営事業を運営していこうとすれば、おのずからその適正な基礎がなければならないと思うのです。その基礎をどうして、どこに置かれるのかということを私はいまお伺いをしたわけなんです。そのことをお伺いをしたら、やはり赤字があまり多く出れば上げていかなければならないというようなことで、それでは何だか私企業に対しましても干渉的なことになろうと思いまするし、企業が事業運営に自主性を失うというようなことにもおのずからあの論法からいくとなるわけでございますから、そういうものではいけないから、やはりほんとうに適正な認可料金というものはどうしてはじき出すものか、どういうものであるかということをお伺いしているのです。この中期経済計画の中にはこの物価の上昇率を何%で押える云々とは言っておられまするけれども、はや昨年はくずれております。おそらく今年も政府考えどおりにはいかないと思いますので、そういうことになりますと、いつもしわ寄せというものは公共企業体、あるいは公共事業をやっておる私企業にしわ寄せが向けられていく、こういうことになりますので、それでは政治ではありませんから、やはり政治は政治としての経済政策をとっていただかなくてはならないということから突っ込んでお聞きをしておるわけなんです。ふだん長官よりも具体的にそうした面について研究もし心をいためておられる局長さんなり、どなたかからひとつ御答弁をいただけば幸いだと思います。
  246. 庭山慶一郎

    ○庭山説明員 お答えいたします。公共料金と申しましても、私企業が経営しているものが多うございます。御承知のように、電力にいたしましても、ガスにいたしましても、地方鉄道にいたしましても、これは民間の私企業として経営されておるわけでございまして、私ども、そういう料金を検討いたしますときは、やはりその私企業として能率的な経営が行なわれているかどうかということを一番基本にいたしまして判断をしておるわけでございます。どういう基礎によって、どういう計算をされるかというお話がございましたけれども、それはやはり、全体といたしまして、その企業が適正な人件費、それからその資本に対して適正な償却をいたしておるかどうか、また、現在は個人の資本投下によって行なわれておるわけでございますから、そういう株主の立場考えて、全体として合理的な経営をやってるかどうかということを基本にして考えておるわけでございます。公共料金を認可し変更し、いろいろいたしますときには、その点が一番重要な問題になろうかと思います。
  247. 田口誠治

    田口(誠)分科員 私が聞こうとする質問に対しては抽象的なんです。おそらくそういう点については始終目を光らしておると思うのです。銀行へ行って会社が金を借りる場合には、バランスシートを提出します。そうして、銀行はその事業内容を見て金を貸すのだから、おそらくそういうような点は十分にやっておられると思うのですが、そこで、問題は、経営のへたな会社があったとすれば、赤字はどれだけ出たとて、この公共料金というものの額には何らあなたのほうでは取り上げるということはない、その点ははっきりしておりますね。
  248. 庭山慶一郎

    ○庭山説明員 おっしゃいますように、現在は、その根本的な、基本的なたてまえは自由企業でございますから、もしへたな経営をいたしますと、その企業はつぶれるわけでございます。そういうものを基準にいたしましてその料金の認可をする、そういうへたな企業でも立ち行くようなものを基準にいたしまして、認可料金を認可いたしますと、どうしても上がるべからさる範囲まで料金を上げなければいかぬ。もしそういうことをいたしますと、これはこの企業の電力なりガスなり、それからまた鉄道なり、そういうものを利用する一般大衆にやはり御迷惑をかけることになりますので、私どもは、いろいろそういう点について最後の意思決定をいたしますときには、そういうものはもちろん考えておりません。つまり、合理的な経営によってなお赤字が出るような場合には、その赤字は、これはやはり公共料金だからといって、強権で押えつけておくということはやはり好ましくないんじゃないかというようなことを基準にいたしまして、公共料金に対する私どもの判断をいたしております。
  249. 古川丈吉

    古川主査 田口君に申し上げますが、時間が過ぎておりますから、結論をお願いいたします。
  250. 田口誠治

    田口(誠)分科員 協力します。  そこで、もう一つ突っ込んでお聞きいたしますが、お聞きするよりも希望を申し上げておいたほうがいいと思う。これはやりとりをしておったら長くなりますので……。  あなたのいまの答弁のような考え方でおやりになることが正しいと思いますが、実際的には、幾つかのいろいろな認可される料金の中には、頭からこれは収支がとれないというものもあるわけなんです。こういうようなものについても、私は適正な料金をきめてやる必要があろうと思うのです。首をかしげていらっしゃるから、何があるのかわからぬというようなことだろうと思いますが、一つの例を引いてみますと、運送屋の小荷物の配達料金なんというものは、これはてんで収支なんかは度外視をしなければならぬ部分が入っているわけなんです。その他の方面でもうけるから、そういう損をするところがどうにかこうにか埋まっていくだけであって、もう頭から問題にならぬものもあるわけです。だから、こういうようなこともやはり十分に検討される必要があろうと思う。したがって、時間もございませんので、もう一つ、この問題はどうだ、これはどうだといって、その実情を申し上げて答弁を求めても、それは検討しますということになろうと思いますので、いつかあなたのおひまのときに、私のほうに電話なりいただければ、私のほうから直接その内容をお示しして、そうして、こういうものがあるのだということを申し上げ十分に認識をしてもらって、検討をしていただきたいと思うわけでございます。そういう点はひとつ御研究をお願いをいたしたいと思います。  そこで、これで終わりますが、一つだけ電力関係でお聞きしたいが、岐阜県の徳山のダムの関係は、多目的ダムでこれは行なうということになっておりますが、いつから工事にかかるようになっておるのか、まだ、そういう点は全然計画に入っておらないのか、その点だけ答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  251. 宮本惇

    ○宮本政府委員 徳山のダムの問題は、だいぶ前の電源開発調整審議会におきまして、揖斐川が電源開発会社の調査河川というのに指定されて、いろいろな計画が行なわれておるわけでございますが……
  252. 田口誠治

    田口(誠)分科員 経過はわかるから、結論だけ……。
  253. 宮本惇

    ○宮本政府委員 まだ具体的にいつごろからやるかということはきまっておりません。将来実施されると思いますが、水系指定問題ともからみまして、今後企画庁とも慎重な打ち合わせの上検討したいと思います。
  254. 田口誠治

    田口(誠)分科員 板取のダムは……。
  255. 宮本惇

    ○宮本政府委員 板取のダムにつきましては、むしろい建設省が調査し、おやりになっておるようですから……。
  256. 古川丈吉

    古川主査 これにて田口誠治君の質疑は終了いたしました。  桜井茂尚君。
  257. 桜井茂尚

    桜井分科員 私に与えられた時間は非常に少ないようでございますので、常に簡単に申し上げます。ですから、御回答のほうも非常に簡単に率直にお願いいたします。この前、私委員会で御質問いたしましたら、実は何の答弁もなかったので、続いてでございますが、お伺いをしたいのでございます。  実は、御承知のように、国連貿易関発会議で第一次産品の問題が非常に問題になりまして、この問題は低開発国とわが国との関係で今後も非常に重大な問題であろうと思います。そして、それの影響するところは非常に大きい。しかも、それが現実に、実はもうかなり影響していると私は思うのです。そのこまかなことはもう伺いません、あとで伺いますから。  そこで、たとえばトウモロコシ、イモ、落花生、コンニャク、あるいはお茶等あるのでありますけれども、これら一連の関連の中で、たとえばでん粉は昨年千六百八十円と決定になり、カンショは三百円と決定になりました。しかるに、現実に農家の庭先で売られましたのは、沖繩でございますと百八十円から二百円、そして、農家では、でん粉屋さんに、もらっていってくれ、それでももらってくれなかった。二月上旬で、でん粉は千五百円でございます。したがって、農協のほうで、販連のほうで買い上げている。このでん粉にしましても、処理に困るというような状況でございます。そういうような状況で、今後これはどうしたらいいかというようなことなんでございますが、でん粉に一番大きく影響を及ぼすものとして砂糖がございます。そこで、政府のほうでは何か砂糖の事業団をおつくりになるそうでございますが、それはおつくりになるつもりでございますか。
  258. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 国内の甘味資源を助長、助成していくというような観点から、砂糖全体について考えをまとめていかなくちゃならぬじゃないか、政策を樹立していかなくてはならないのじゃないか、こういう観点から、実は、いま食糧庁が中心になりまして、学識経験者等にその意見を徴しておるのでございます。大体意見がまとまったのが食糧庁のほうへ参いっております。その中に事業団構想というものがあります。しかし、具体的にどういうふうにやっていくかということにつきましては、影響するところが相当多いので、なお検討を加えておる最中でございます。
  259. 桜井茂尚

    桜井分科員 では、具体的にお伺いしても、おわかりにならないのか、お答えができないのかということになると困るのですが、事業団で大体基準価格をつくって課徴金を取るというようなことが新聞に出ておるのですが、そこで基本価格というものをもしおつくりになるとしたら、大体どの程度に予想しておるのか、ごくごく大づかみでけっこうなんですけれども、御回答願いたい。これは、なぜかと申しますと、でん粉価格に非常に影響いたしますので、現在売らなければならなくなっておりますから、ごく大づかみでけっこうですから、大体基準価格は幾らくらいにするつもりですか。
  260. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど申し上げましたように、そこまでの検討につきまして、なお考究している最中でございます。上限・下限あるいは標準価格というものを幾らくらいにするということ等につきましても、まだ結論は出ていないのです。でありますので、考え方については食糧庁長官からも申し上げたいと思いますが、いま答申になっておる考え方その他について、実際に幾らに標準価格をするかというようなことは、まだきめておりません。
  261. 桜井茂尚

    桜井分科員 ごく最低でもけっこうですし、たとえば百十五円とか、二十円とか、あるいは幾らですか知りませんけれども、何かこう大づかみなところでも、これ以下には絶対に下がらぬというくらいのところは発表できませんか。
  262. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 懇談会で基準価格という思想を打ち出しておりますが、ただ思想と考え方を出しておるだけでありまして、将来国内産糖の実現すべき目標価格というのをきめてからにすべきである、それを中心に下限なり上限なりを考えたらどうか、こういう思想が出ておるわけであります。それでまた、基準価格に至るまでの間においては、いわば財政負担、それ以外のものは売買調整課徴金、資金調整によってやる、こういう考えを打ち出したものでございますので、まだその基準価格をいかにすべきかというのは今後の検討の問題になって、いままだここで申し上げる段階にないわけでございます。
  263. 桜井茂尚

    桜井分科員 時間が非常に少ないものですから、なるべく簡単にお答えを願いたい。  実は、その上限・下限のそういう価格の設定をすべきだということを昨年私は提案を申し上げているわけなんです。いずれにしましても、まだその程度までにいっていない。しかし、政府としては、何としても国内の混乱を除去する抜本的な考え方をとる、この点だけは間違いございませんか。
  264. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 その方向で検討を進めておるわけでございます。
  265. 桜井茂尚

    桜井分科員 次に、前の方からもはや御質問があったかとは存じますが、観点がちょっと違いますので御質問いたしたいのでございますけれども、コーンスターチが、昨年十四万トン、今年は二十七万トンくらいになるだろうといわれている。カンショでん粉が大体昨年よりも十三万トン減、そうしますと、ほぼとんとんでありますが、でん粉生産対策としては、来年度は大体政府の買い上げが十万五千トン分、今年度は何か予算では八万トンくらいでございますが、事実でございますか。
  266. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 予算といたしましては、カンショでん粉五万六千トン、バレイショでん粉二万トンを一応予算として考えております。
  267. 桜井茂尚

    桜井分科員 そういたしますと、それだけではやはり全体の需給関係から言って何かちょっと不安心な点があるのであります。その点につきまして、政府としては、それでだいじょうぶだ、このようにお考えでございますか。
  268. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 政府としましては、とりあえず予算に計上をされたもので手当てをしていく、こういう予定をしているわけであります。
  269. 桜井茂尚

    桜井分科員 とりあえずということで、あとでまた追加するかもしらぬ、こういうことでございますね。
  270. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 予備費もあるのでございますが、予備費も含めてとりあえずそれでやってみる、またどういうような情勢になりますか、そのときになってみないとわかりませんが、その対策はまたそのとき考えたいと思います。
  271. 桜井茂尚

    桜井分科員 その点は関連しておるのですが、実はコーンスターチ業界にしましても、現在では過剰生産、過当競争ぎみで困っている状態でございます。これの生産規制を何とかしなければならないのではないか。ということは、いわゆるカンショでん粉、バでん等の関係もあり、いま関係協会のほうからも言われておるのでありますが、これの措置はどういうようにするつもりでございますか。
  272. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 先ほど村山先生に御説明申し上げたのでありますが、われわれといたしましては、生産規制を関係団体とも協議をするつもりであります。
  273. 桜井茂尚

    桜井分科員 それができれば非常にありがたいのでございますけれども、実はその点でも昨年質問しておいたのですが、中小企業団体の組織に関する法律の一部改正というのが昨年の五月に通っておるのであります。これをもし直ちに適用するならば、昨年でもできたはずなんであります。どうしてそれをいままでやらなかったのか、その点についてお伺いいたします。
  274. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 御指摘のとおり、中小企業団体の組織に関する法律につきまして、商工組合ができますと、地区内の同種の資格事業を行なっている大規模な事業活動の企業に対して、施設の拡大の停止だとか、あるいは計画の変更だとかいうような特殊の契約を結ぶことができるということにはなっておると承知いたしておりますが、ただ、でん粉と、それからコーンスターチにつきましては、同じでん粉ではありますけれども、資格事業としては違うものではないか。したがって、でん粉業者がコーンスターチの業者と、コーンスターチの生産の拡大あるいは計画の変更等についての特殊契約を結ぶということは、これは資格事業としては違うものではないかということで、この面の運用はどうも困難であるというふうに考えております。
  275. 桜井茂尚

    桜井分科員 私は、生産物が同じでん粉でありますし、用途も違う違うとおっしゃっていますが、横流しして現実につくっておるのでありますから、必ずしもできないとは思いませんが、そうお考えならば、政府のほうで別の規制の方法をとってくださるならば同じことですから、あえて固執して申し上げる必要はございません。ただ、コーンスターチのほうで十四万トンつくるといたしますと、トウモロコシが約二十万トン輸入されます。二十七万トンつくりますと、四十万トンであります。そうなりますと、御承知のとおりに、急にコーンスターチが大きくなってまいりました関係上、そして日本のえさ需要というものが非常にふえてまいりました関係上、トウモロコシの国際市況というものが非常に上がっております。えさの値段がどんどん上がってきておる。こういうような状況で、コーンスターチの増産ということがトウモロコシの国際市況を高め、それを輸入するということを通じまして、日本畜産に関しまして原料えさの騰貴という結果をめぐりめぐってもたらしております。さらに、コーンスターチの場合におきましては、コンスをつくって、コンス以外にえさが二五%もつくられます。したがって、コーンスターチ業界のほうでは、場合によれば、えさでもうければ、コンスをちょっとくらい安く売ってもいいというようなかっこうになるわけです。この点はそこまで揣摩憶測する必要はないかとも存じます。しかしながら、いずれにしましても、そのような形でコンスが増産される、しかも過当競争の状態、みずから困っているというほど増産されて、そしてしかも国際市況を高めて、逆に日のえさの値を上げ、一方では日本農民の三番目の生産物であるところのイモ生産農家というものが非常な迷惑をこうむり、困難な状態になっている、こういうような結果であります。しかも、えさの値上がりは激しいのであります。おとといですか、武藤さんが御質問しておったようでございますが、鶏にいたしましても、このえさの値段は年々非常に上がっておりますし、卵の値段は非常な勢いで暴落いたしております。たとえて言いますと、三十五年を一〇〇にしまして、三十九年の下半期には鶏の卵のほうでは八二というぐあいに指数から言って下がり、一方、成鶏の配合飼料は一〇六・六、このように上がっております。しかも、この二月からは大幅に値上がりしておりまして、全購連でさえもが五%から一〇%の飼料価格の値上がり、こういうような状況でございます。これでこの養鶏というものをどういうぐあいにしたらやっていけるのか。政府選択的拡大ということを申しておるのでありますけれども、どうしたらいいか。しかも、最近におきましては、政府の奨励に基づきまして羽数も多くなりましたし、ですから、農家は自分の身上を投下いたしまして、大規模な、農民としてでき得る限りの設備投資をいたしておる。そうしますと、減らそうと思っても減らすことができないのであります。こういう場合にどうしたらよろしいのでありますか。政府の施策をお伺いいたします。
  276. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 なるべく簡単にお答えを申し上げます。  トウモロコシの国際市況が上がっておりますことは御指摘のとおりです。このおもな原因は、アメリカにおける作付面積の減少と昨年の夏の干ばつによる減収が大きかったわけでございます。コーンスターチ用のトウモロコシの輸入がトウモロコシの国際価格に影響がないとは申せないと思います。ただ、飼料用のトウモロコシの輸入量が約三百万トン、コーンスターチ用のトウモロコシの輸入量は三十九年二十五万トン程度承知しておりますが、数量に非常に違いがありますことと、品質が、えさ用は黄色種を主としておりますので、それほど大きな影響とは考えておりません。国際飼料穀物の価格の上昇は、これは輸入国としてある程度私は避けがたいことであろうというように思っておりますが、これが特別な事情によって不当に変動いたしますことは避けるように政府として調整する必要がございますので、四十年度予算で十五万トンの政府操作用のトウモロコシのための必要な予算を計上して、今後対処したいと思っております。  鶏卵価格の低落は、何度も御説明申し上げましたが、三十八年まで比較的鶏卵価格は安定的であったということから、三十八年の秋から昨年にかけて育雛数が爆発的に増大したということで、鶏卵の過剰状態を招いて価格低迷を続けておるということでございますが、根本的には、消費の増大をはかるという方向と、生産消費動向に即して安定的に増大をしていくという方向をとることが基本的であろうというふうに思っております。
  277. 桜井茂尚

    桜井分科員 簡単に申し上げます。  非常に抽象的過ぎて、何を言っていらっしゃるかちっともよくわからないのです。最近におきましては、副業のときの養鶏と違うのです。副業のときは、鶏がたくさん卵を生むようになったらどんどんふやしていく、低落したらやめたってそれでいいのです。ところが、農家が身上をかけて投資してしまった、そうした場合の養鶏というのは、縮めることができない。ですから、これに対する政府の施策をよほどしっかりと立てていただきませんと、農家は政府方針に従ってやったにかかわらず、身上をかけてつぶれてしまうということになる。だから、それをどうするか、こう言っているのです。
  278. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 消費の拡大につきましては、鶏卵が蛋白質食品として割り安であるという趣旨を徹底するために、消費の宣伝に努力をいたしております。それから、加工業者に対する割卵を指導いたしまして、そのための所要資金のあっせん等をいたしてまいっております。暴落時におきましては、農業団体による調整保管を行なわせまして、それに対する経費補助を考えておるわけでございます。なお、生産の調整の問題については、行政指導を農業団体等を通じてやっております。
  279. 桜井茂尚

    桜井分科員 もう一問で終わります。ごく簡単であります。  それは豚にしても同様だ。豚も同じように経営が大きくなって困っておる。そうした場合に、最近におきましては、豚コレラがもし発生いたしますと、一挙につぶれてしまいます。経営の管理がよくなって発生率は減っておりますけれども、しかし、かからないということではない。関東地方は非常にかかっております。この豚コレラに対して、こういう災害に対しまして、農業の豚に対する共済制度をおつくりになる意思があるかないか、この一点だけ農林大臣にお伺いいたします。
  280. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまのところは長野県ほか三県で任意共済で実施しております。
  281. 古川丈吉

    古川主査 これにて桜井茂尚君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、経済企画庁所管、農林省所管及び通商産業省所管に対する質疑は全部終了いたしました。  この際おはかりいたします。  昭和四十年度一般会計予算中、経済企画庁所管、農林省所管及び通商産業省所管、並びに昭和四十年度特別会計予算中、農林省所管及び通商産業省所管に対する討論、採決は先例によりまして予算委員会に譲ることといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  282. 古川丈吉

    古川主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  これにて本分科会の議事は全部終了いたしました。  連日御熱心に御審議を尽くされました分科員各位に心から敬意を表しますとともに、運営に寄せられました御協力に対しまして厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。    午後七時一分散会