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1965-02-25 第48回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十五日(木曜日)    午前十時四分開議  出席分科員    主査 相川 勝六君       青木  正君    荒木萬壽夫君       井村 重雄君    伊藤よし子君       大原  亨君    岡本 隆一君       加藤 清二君    神近 市子君       滝井 義高君    中村 重光君       華山 親義君    細谷 治嘉君       堀  昌雄君    兼務 川俣 清音君 兼務 田口 誠治君    兼務 辻原 弘市君 兼務 帆足  計君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     戸澤 政方君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (薬務局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (児童家庭局         長)      竹下 精紀君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (援護局長)  鈴村 信吾君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  坂元貞一郎君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   船後 正道君         文部事務官         (大学学術局審         議官)     岡野  澄君         文部事務官         (大学学術局審         議官)     村山 松雄君     ————————————— 二月二十五日  分科員高田富之委員辞任につき、その補欠と  して堀昌雄君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員堀昌雄委員辞任につき、その補欠とし  て岡本隆一君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員岡本隆一委員辞任につき、その補欠と  して伊藤よし子君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員伊藤よし子委員辞任につき、その補欠  として細谷治嘉君が委員長指名分科員に選  任された。 同日  分科員細谷治嘉委員辞任につき、その補欠と  して滝井義高君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員滝井義高委員辞任につき、その補欠と  して中村重光君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員中村重光委員辞任につき、その補欠と  して神近市子君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員神近市子委員辞任につき、その補欠と  して華山親義君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員華山親義委員辞任につき、その補欠と  して高田富之君が委員長指名分科員選任  された。 同日  第一分科員辻原弘市君、第四分科員川俣清音君、  第五分科員田口誠治君及び帆足計君が本分科兼  務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計予算厚生省所管  昭和四十年度特別会計予算厚生省所管      ————◇—————
  2. 相川勝六

    相川主査 これより会議を開きます。  昭和四十年度一般会計予算及び昭和四十年度特別会計予算厚生省所管を議題といたします。  この際、分科員各位に申し上げます。質疑持ち時間は、一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員になられた方は三十分程度にとどめることとなっております。質問者もたいへん多うございますから、何とぞ右御協力を願います。  なお、政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に要領よく、簡潔に行なわれますよう特に御注意申し上げます。  堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀分科員 本日は医療費の問題をお伺いをするわけでありますけれども、現在の健康保険というものの実際の状態が、少し詳しく分析をされておらなければ、私はそれに対する対策というものが正しく打ち出されない、こう考えるわけであります。  そこで、最初にちょっとお伺いをいたしますけれども健康保険全体につきまして、最近の受診率の動きを御説明いただきたいと思います。事務当局でけっこうです。
  4. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 健康保険のほうでありますが、特に政府管掌について申し上げたいと思います。  政府管掌についての最近の医療費の動向でございますが……
  5. 堀昌雄

    堀分科員 受診率だけでいいです。
  6. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 それでは最近の受診率についてだけ申し上げますが、一口に申しますと、受診率はだんだん少しずつ減っておる、こういう傾向でございます。
  7. 堀昌雄

    堀分科員 治療日数のほうは、やはり同じように、どういうふうな経過になっておるかをお伺いいたします。
  8. 坂元貞一郎

    坂元政府委員 治療日数のほうも一件当たり日数は大体横ばいかあるいは若干ずつ減っておる、こういうことであります。
  9. 堀昌雄

    堀分科員 いろいろと健康保険制度は各種の保険が組み合っておりますから、全体についての論議より、とりあえず政府管掌健康保険中心としてお伺いをいたしますけれども受診率が減ってきて、治療日数も減ってきたということは、大臣、一体どういうことを意味しておるとお考えになりますか。
  10. 神田博

    神田国務大臣 これはやはり医学医術進歩と申しましょうか、さらにまた新薬ができている、あるいはまた衛生環境が整備されている、そういった諸般のことからそういうことになっておるのではないか、こういうふうに考えております。
  11. 堀昌雄

    堀分科員 いま大臣お答えになりましたように、受診率が減り、治療日数が減り、平均寿命が延びてきて、特に悪質の疾患が減ってきたということは、まさしく科学としての医学進歩、それに伴っていろいろな新薬その他が開発をされてきた、これが私は非常に重要な役割りをしておると思うのであります。このことは、本来の健康保険制度目的を最も推進しておるといいますか、健康保険というものは、できるだけ早期受診をして、疾病をより軽く治療するということが私は非常に大きな柱だと思います。その目的にかなった実績があらわれておる、こういうふうに判断をするのでありますけれども大臣、いかがでございましょうか。
  12. 神田博

    神田国務大臣 私もいまの堀分科員の感想と同じ考えを持っております。やはり早期に診断をしていただき、早期治療する、いまそういうようなレールに乗りつつある、これは非常に好ましいことだ、こういうふうに考えております。
  13. 堀昌雄

    堀分科員 そういたしますと、財政的な面は一応離れて、現在の健康保険というものの姿を見ますと、ほぼ望むべき方向に動きつつあるのではないか、こういうふうに私は判断をするわけであります。実際医療というものが何のために行なわれるかということを厚生省に特に考えてもらわなければならないと思いますのは、われわれ人間が生きております中で一番大事なのは何かといえば、これは命がなければ生きておるわけにいきませんから、生きておるということ、命を守るという点は、これはわれわれの生存の上で最も重大な問題だと思うわけです。それではただ生きておればいいかというと、健康で生きておるのでなければ生きておる価値はないわけです。病気のままで生きておるのでは、生きておる価値は半減されるわけでありますから、健康で生きておるということがこれが働くことを可能にし、それが人間の文化に貢献をするわけでありますから、少なくとも医療本質というものは、要するに健康であるということ、そうすると、病気になれば健康の状態にすみやかに回復をさせるというのが医療目的なんでありますから、そのために現在ある科学進歩を十分に使うということが医療本質でありまして、医療というものの本来の姿を最初に確認しておかなければならぬと私は思うのです。その点はいま私が申し上げたように、科学進歩を十分に利用することによって人間の生命を尊重し、同時に健康な状態で愉快に働ける人間状態におくということが医療本質なんです。本質自体はそういう意味では科学進歩を十分に取り入れることなのだ、こういうふうに私は理解をいたしますが、大臣いかがでありましょう。
  14. 神田博

    神田国務大臣 いま堀分科員のお述べになりましたことは私も全く同感でございます。健康で、そして天命を全うする、これが生きがいのあることと考えておりまして、そういう意味でいま健康保険というのは大きな役割りに前進しつつある、こういうふうに理解しております。
  15. 堀昌雄

    堀分科員 そこで、私はいま医療の問題の本質に触れたわけでありますが、日本医療というのは、現在では社会保険医療を度外視して、ほとんど医療は存在しないわけです。日本の場合は現在皆保険になりましたから、医療ということはイコール社会保険医療ということになってまいっておるわけでございますね。そういたしますと、社会保険医療というもの医療というものイコール、同じであるということになりますと、社会保険医療といえども、いま私の申し上げたような健康を維持する、こういうことが同じようにやはり土台になっておらなければならない、こういうふうに私は考えてまいるわけです。その際に、健康保険医療であろうとも、医学医術進歩が取り入れられることが国民のためなのですから、ここで常に問題が出てまいりますのは、医療というものは本来裏側に経済行為を伴いますけれども経済行為目的ではないのです。医療というものは、そのことは現在の医療法その他に、主として営利目的としないというかっこうで幾多の制限が設けられておる点から明らかだと思うのです。現在、医師はいろいろな広告をすることが禁じられておるわけです。その広告——現在、医師が使っておりますのは、診療科目その他自分が行なっておるものを標傍するだけであって、営利目的とした広告をすることは本来禁止をされておるたてまえになっておるわけです。また課税上その他の問題におきましても、本来法人一般には幾らでも認められるわけですけれども医師の場合には営利目的としないために医療法人以外のものは認めない、こういう原則になっておるわけでありますから、営利目的としないということは、裏返していえば経済性の問題というのは二の次であって、やはり人間を尊重する、人間の命を守ることが第一だから、営利のためにそのことがそこなわれてはならないという趣旨にほかならないと私は考えるのでありますが、大臣いかがでございますか。
  16. 神田博

    神田国務大臣 いまの堀さんの御意見は、私もそのように理解しております。
  17. 堀昌雄

    堀分科員 そこで、本来の医療というものはそういう意味では経済の問題とは実は別個であって、医療があってそのあと経済がある。これが私は、日本だけではなくて世界一般にある医療というもの原則でなければならないと思うのです。ところが、社会保険医療という問題の中で、これまで私も診療に長く従事しておりまして常に頭を悩ましてきたことは何かというと、経済のほうが先行してその経済ワクの中、そういうこまかい仕組みの中で医療ワク組みの中に閉じ込められるということが実は非常に大きな医師の悩みなのです。自分医学的良心に従って診療したいというと、そういう医学的良心科学的な考え方経済という外ワクとが常にここで競合するのがいまの日本社会保険医療の姿なんですね。ですから、本来言うならば、いまの社会保険医療もまず医療が先行して経済あとからついていくということでなければ、医療というものは成り立たないと思うわけですが、残念ながら現在の日本社会保険医療経済外ワクのほうが常に優先をされて、経済的な問題から常にトラブルが起きてきておる。これが日本社会保険医療の過去から現在においての最大問題点だと私は考えておるわけです。ですから、医療あり方のほうから言うならば、こういうことになるべきでしょう。要するに、社会保険的な医療あり方ということならば、もちろんその医療自体医療科学的なあり方を逸脱をしてはなりません。さっき私が触れたように、営利目的とした医療も、現在の社会保険医療の中に皆無だとは申しません。ものには常に例外があります。しかし、一般的な良心的な医師というものは、少なくとも自分医師としての良心の範囲内において診療しておるわけですから、科学的に必要にして十分な処置はしておると思いますけれども科学的に必要でないものまでこれを処置しておるとは私は考えていないわけです。ところが、残念ながら医療費自体は年々膨張しておる。これはやはり科学進歩に対応した問題に間違いないのだ、私はこう考えておる。そこで、今度皆さんのほうでは、いままだ法案も出ておらないわけでありますから論議が少し先走るかと思いますけれども法案その他が出てしまってからの論議では、なかなかいまの日本の国会の仕組みでは修正その他が困難でありますから、問題点を提起しておきたいと思うのですが、皆さんのほうでおつくりになっておる健康保険制度改正案要綱というのをちょっと拝見をいたしますと、こういうことがここに書かれておるのです。「健康保険制度における現行の標準報酬制を総報酬制に改めるとともに、一部負担制改正を行なうことにより、この制度の将来の発展及び内容の充実を図る基盤を整備するものとし、併せて当面の財政危機の解消に資するものとすること。」こういうふうに述べられておる。大臣にお伺いいたしたいのですが、一体薬剤費の一部負担というもの目的は何でございますか。
  18. 神田博

    神田国務大臣 いまお述べになりました中にもありましたように、当面の財政を立て直そうということも大きな目的でございますが、私ども考えましたことは、同時に御承知のように国民保険はことしで七割給付の二年目になっております。四十一年度、四十二年度で七割給付が全部行なわれる。そこで、健康保険もひとつ家族給付を大幅に引き上げたいというのがねらいでございます。これを七割にするか、あるいは本人並みの、もっと八割、九割というふうに持っていくかという議論がいろいろございまして、いずれにいたしましても、その問題は四十年度はむずかしいが、四十一年度はもうどうしても頭を出さないと解決しないのじゃなかろうか、こういうことでございます。そのためには保険財政の基礎というものをやはり確立しておく必要があるのではないか、こういうことでありまして、赤字対策だけでなく家族給付率を高めたい、そのためにはひとつ保険財政基盤というものを整わせておきたい、こういう考えを持ちまして立案したわけでございます。
  19. 相川勝六

    相川主査 堀君にちょっと申し上げますが、さきに申しましたとおり持ち時間を大体四十分ぐらいまでと思ってお願いします。
  20. 堀昌雄

    堀分科員 いま大臣お答えを聞いておりまして、何か国民健康保険等にも非常に関係があるようなお話をしておられますけれども、ちょっと時間がないようですから私のほうから申し上げます。さっき私、受診率に触れましたけれども、これは皆さんのほうの統計で、ちょっと古いのですけれども昭和三十七年度で見ますと、受診率は、この中に一部負担というものの姿を非常に象徴的にあらわしていると私思うのですが、政府管掌健康保険の被保険者入院外だけで比べてみることにいたしますが、入院外は三・八五二%というのが本人政府管掌受診率であります。ところが、国民健康保険本人にまいりますと、これは二・一四九%で約一・七%ぐらい受診率が低いわけであります。いまお話にあったように国民健康保険本人は約七割給付ぐらいに現在なっておるわけですから、三割ぐらいの自己負担をしておるという状態であってもおそらくこの状態は昨年のものを見てもあまり変わらないのじゃないかという感じがいたします。受診日数を調べてみると、政府管掌健康保険が同じように入院外では大体十八・七日かかっておりますけれども国民健康保険では八日しかかかっていない。二分の一以下です。このことは何を意味しているかと言うと、もし患者に一部負担がそのつど行なわれるならば受診率は急激に減少するし、治療日数も急激に減少をするということを、私これは端的にあらわしておるものだと思うのですが、大臣はどうお考えになりますか。
  21. 神田博

    神田国務大臣 これはお述べになりましたような事情が出ないとも限らぬと思います。いまお述べになったような事情があらわれるということは・意識できると思います。
  22. 堀昌雄

    堀分科員 そうしますと、ここで患者薬剤費の一部を負担させるということは、いままで私が述べてきた早期受診早期診療ということを大幅に変更させる重要な制度上の変更になると私は思うのです。実は私厚生省に前もお願いしておりましたが、まだいい統計がないようですから、かつて国民健康保険がまだ十分普及していなかった当時の古い資料で見ましても、大体国民健康保険の場合には、所得の高い人はどんどん国民健康保険を利用して治療を受けるのですけれども所得の低い人は保険料は取られながら、あとの一部の負担にたえられないものだから、せっかく国民健康保険に入りながら受診しないで、富山の置き薬や何かで処置をしておる。こういう統計がだいぶ前に厚生省にあるわけですが、このことは、今度の健康保険における薬剤費の一部負担というものが実現をいたしますと、持っておる者は負担能力があるのですから月に二千円くらいは何でもない。どんどんかかるでしょう。しかし月に二千円というのは、所得階層が一万円の者と十万円の者との負担相違としては大きな相違があるわけです。何か一人二千円までの薬剤費負担ということが簡単に考えられておるようですけれども、この発想はどうも厚生省側発想ではないのではないか、私はこう感じるのですけれども大臣、どうですか。薬剤費一部負担というのは厚生省側発想ですか、大蔵省側発想ですか。発想出発点をはっきりしておいてもらいたい。
  23. 神田博

    神田国務大臣 両方相談いたしまして発想したわけでございまして、どちらがどうということではないわけであります。
  24. 堀昌雄

    堀分科員 ちょっと大臣、いまの答弁では満足しませんよ。なぜかと言うと、相談しますね。どっちかがものを言わなければ相手が答えられない。いいですか。そうでしょう。ものの相談というのはどっちかが先に言ったはずです。どっちが先に言ったか、これは重大な点ですから、これ一つだけ答えてください。あなたのいまの答弁答弁にならない。厚生省が先に答えたというならこれは重大問題です。私は大蔵委員ですから、大蔵省が先に言ったというなら話はわかるのです。
  25. 小山進次郎

    小山政府委員 先ほどの大臣答弁、御満足をいただけないようでありますが、事実のとおりでございまして、私どもの中にも一部負担やり方として薬剤に対する一部負担というものもあり得るのだという考え方はございました。もちろん一部負担やり方としてそれ以外のやり方というのもあり得るし、そういうものについての検討ということもいろいろしておったわけでありますが、どうも現在政府管掌保険中心とした被用者保険が置かれている症状から見ると、いささか薬は強過ぎるかもしれぬけれども薬剤に対する一部負担がむげに退けられない、こういうような考え方で両者の考えが一致したわけでございます。
  26. 堀昌雄

    堀分科員 小山さんちょっとおくれておいでになったから、私が前段でどれだけのことを申したか十分お聞きいただいてないかもしれないのですが、いままで貴重な時間を二十分も費して話をしてきたのは、いまの制度で、一部負担などというもの——せっかく今日まで健康保険医療を向上さしてきておるものをどういうかっこうで変更するかという点では、私は少なくとも健康保険のこの歴史の中で医療保険あり方としては最悪の問題をあなた方考えたと思うのです。厚生省というのはいろいろと偏見もあり、いろいろしますが、私は、少なくとも国民の側に立って医療考えておる役所だ、実はこう認識をしておったのです。だから今度の問題についても——大蔵省というところは違いますよ。これは金の問題だけを扱っておるところですから、事の本質二の次として、ともかく財政経済の問題をやるところだから、事の取り扱いは厚生省あとどうするかは別として、大蔵省としては薬剤費がどんどんふえてきて、それが健康保険赤字の大きな原因らしいと判断すれば、どれか歯どめをかけるとすれば薬剤費に歯どめをかけたらどうでしょうかというのは純経済的な段階ならあたりまえだと思う。私は何も大蔵委員だから大蔵省の肩を持っておるわけではない。ものの道理です。だから、初めに大蔵省が言いました、厚生省はいろいろと抵抗してきたけれども、どうも財政上ほかに道がないからしかたがない、おりましたというなら、私はものごとの筋ははっきりすると思うのですよ。しかしそうではなくて、いま小山さんの答弁のように、厚生省も一部負担考えておりましたということなら、一体あなた方はどういう覚悟に立ってこの社会保険医療というもの国民ものにしようということになるのでしょうか。私それは全然納得できないです。何もあなた大蔵省に遠慮することないですよ。言うべきことの筋を明らかにする責任があると私は思う。なければやはり厚生省はすべての国民から批判をされるに値するものだと私は思うのです。大臣処置は別として、あなた方はもっと良心的だと思っていたのだけれども、どうですか、やはりはっきり答えられないですか。
  27. 小山進次郎

    小山政府委員 先ほどの先生お話、私うしろのほうでお聞きしておりまして、先生のような考え方というものがやはり基調に一つ当然なくてはならないと思います。一部負担というものが正常な受診というものをいかに変えていくか、変え方をゆがめるというようなことであってはならぬという点はおっしゃるとおりだと思います。それでは逆に考えてみて、医療保険の中に一部負担というものなしに済ませることができるかという角度から考えれば、これは明らかにできないというのがむしろ今日では定説だと思います。社会保障制度審議会でもいろいろの角度から議論をしました結果、将来の医療保険の目標としては、本人家族を通じて九割給付、一割程度自己負担というものはやはり医療保険としてはなくちゃならぬものだ、こういうような判断に立ってあの答申をまとめておるわけであります。問題は、結局どういう形でそういう趣旨を実現するか、こういうことになるわけでございますので、やり方程度の問題についてはいろいろ御批判はあると思います。ただ、そういう考え方そのものは、決して単純に大蔵省から押しつけられたというものではなくて、そういうもの一つとしてはあり得る、こういう考え方で臨んでおったわけでございます。
  28. 堀昌雄

    堀分科員 現在も一部負担はあるのですよ。私、いま一部負担が全然ないと思ってないのです。初診の際に百円払っておる。もとこれは五十円だったのを百円にするとき、私ども抵抗した記憶があるのです。百円払っている。入院料についても一部負担をしておるでしょう。私は一部負担が全然いけないと言っているのじゃないのですよ。ただ、現状ですでに一部負担をしているのだから、これ以上一部負担をふやすということ、特に薬剤費に一部負担をかけ、診料のつど取られるということは、これは必ず受診日数を減らす最大の問題になりますよ。もし診療を受けていたとしても、金が十分にない時期がくるとしましょう。月末になって金がなくなったら、医者のところへは行けないのです。これが私がさっき申し上げたように、医療あり方経済の問題とがかみ合わない最大の問題だと思うのです。だから、初診料のとき百円、これがもしかりに百五十円になっても、そのこと自体はあまり大きなことにならないと私は思います。しかし、これがいまのように毎回そのつど取られて、一カ月二千円まで取られるということになったということは、これはいまの社会保険医療を破壊させるほどの重大な問題だと私は思います。時間がありませんから、またもう一ぺん私、社労のほうでも、そういう問題がかかるときに伺って論議をしたいのですが、この点は患者の側から非常に重要な問題だと思います。  もう一つ、私は、皆さんのほうで見のがされておる重大な問題があるのは、一体こういうことをやった場合における医師負担状態がどうなるかということなんですね。私、大臣にぜひひとつこういうことをやってもらいたいと思うのは、厚生省のお役人の皆さんは、健康保険診療というものを知らないのですよ。やったことのない人ばかりなんですよ。私は、少なくとも昭和二十一年に開業して三十三年に当選するまでは、十二年間というのは自分でずっと診療に従事をして保険医としてやってきましたから、いまの保険医療というもの最大のガンは、経済的な外ワクの問題が一つと、もう一つの問題は、診療報酬の請求書を書くための処置診療のときにしなければならぬということなんですよ、診療のつどこまかいことを書いて。だから、患者を診察するほうにエネルギーをとられるよりも、カルテを書き込むことのほうにずっとエネルギーをとられる。おまけに、月末から一週間診療報酬の請求をする間は、家族全部で朝の四時、五時まで働いているのです。じゃ、診療を休めるかというと、休める条件はないということでありますから、私は、三十三年に代議士に当選して何が一番うれしいですかと聞かれたときに、あの不愉快な保険診療をやらなくて済むようになった、こんなにうれしいことはない、代議士に当選したよりも、社会保険診療をやらないで済むというほうがずっとうれしいと私は新聞記者に話したのですよ。それくらいいまの保険医にとって、社会保険診療というものは、経済的な外ワクに締められておる圧迫感と、もう一つは、診療請求の事務——請求書を書くためには、診療のつどカルテがきちんと整理されてなくては、診療請求が書けない。患者を見ている時間よりはカルテに書き込んでいるほうの時間が多いのですから、そういう状態でいまやっている医者に、今度の場合、薬品と技術料は分離しているから、注射でも何でも技術料の分と原価の分を分離して、その原価の半額分をそのつど計算をして、そうして窓口でもらうというようなことになったら、医者はもう診療をやめたほうがいいのじゃないか。事務員を雇って、医者は中へ引っ込んで寝てたほうがましではないか、こう私は思うのです。これは保険診療をやったことのない皆さんの手で出てくるから、こんな実務に携わる者にとってとうていできないようなことを制度として考えられる。これは五割の負担であろうと、一割の負担であろうと、〇・一割の負担であろうと同じなんですよ。計算する点においては全然同じなんです。それだけの医師の事務的負担診療のときに与え、今度は請求のときに与えるのですよ。私、いまもしこれがこうなった場合に、一体自分たちが診療報酬の請求をするのに、いままででも、ともかく五日に診療報酬の請求書を出すときに、大体四日の夜から五日の朝にかけてというものはほとんど寝れない。しまいには疲れてくると、そろばんを家内と二人で置いていても、二人とも合わなくなる。疲労が高まると計算が合わなくなっちゃうぐらいに疲労こんぱいしながらやっておるものを、ざらにこんな負担をかけるということは、前段の患者の面からも大きな問題もございますけれども診療担当者としては、私は、これはもうとても耐えられることではないと思うわけです。私は、ずっと前、高田さんが保険局長のときに提案したことがあるのです。何とか診療報酬の請求を簡素化する手はないのか。医者は何も事務をするために大学を出ているのじゃないんですよ。医療に従事するために医学をやっているのです。それがいまの健康保険医師は、医療に従事しているのではなくて、請求事務に従事しておる。だから、このことを改善するというなら話はわかるのですけれども、これをさらに改悪するような制度というものは、これは私は重大な問題だと思うのです。この点厚生大臣はどうお考えになりますか。
  29. 神田博

    神田国務大臣 いまの窓口といいますか、薬その他受診の事務の複雑多岐だということは、いま堀さんのお述べになりましたような事情であることも私もよく承知いたしておりまして、今回の件につきましても、これによって事務が増加してはいかぬ。従来の事務をうんと簡素化してもらいたい。しかも今度のことがやられるようになりましても、うんと全体として簡素化できるような方法があるというのなら自分は賛成するが、これはその点を十分考えてもらわなければならぬ、こういうようなことでありまして、それはやりましょうというようなことが一つの前提になっておりまして……(「だんだん複雑になっていますよ」と呼ぶ者あり)複雑になって困っていることはよく私も承知いたしております。もう三十二年以来皆さんからお聞きいたしておりますので、おっしゃることはもう身にしみてよくわかっております。そこで、この際も十分その点に触れまして、ひとつ思い切って簡素化するようにということを命令しておりますが、私はこれはひとつぜひやりたいと思っております。
  30. 堀昌雄

    堀分科員 ぜひやりたいとおっしゃったところでやれたためしがないのですよ、実はこの問題は。そこで、私は一つ提案があるのです。それはどういうことかといいますと、いまの医療経済の実態調査ということを支払い側が非常にやかましく言われるのです。私は、長年医師会の調査を担当しておりまして、現在の日本医師会も調査資料があるのです。あれを一ぺん支払い側の皆さんが謙虚に見てみることにはならないのかということが第一点です。第二点は、これはかねての私の主張なんですが、大都市、中都市、小都市、農村というように、もしわれわれが調査するときサンプルとしてとるようなところに厚生省として、民間の診療所と同じような規模で同じような条件の厚生省診療所をひとつ全国に十なり十五なりこれは階層別につくって、そこへ技官が家族ぐるみでともかく三年なら三年間行って保険診療に従事する。一般の町の医者と同じように従事する。そのことによって私は、厚生省の技官が保険診療というものの実態に触れるチャンスが一つできる。そんなに長くやる必要はない。三年ぐらいやればいい。その資料を、厚生省事務当局をその外側にきちっとスタッフをそろえておいて、そこでやっておる診療を、これは、医師会の皆さんどうぞ見に来なさい、皆さん診療所と同じようにやっています——要するに、看護婦は平均が一人使っているから一人しか使いません。請求をする場合には奥さんも当然にやらなければいかぬ、いろいろな条件を同じような条件にしたものをつくって、そこでそこの資料を支払い側にも被保険者側にも医師にもみんなやって、なるほどこれはこうだということがわかるようなモデル診療所を日本全国の中に十五なり二十なりつくって、そこに技官が行って、ともかく三年なら三年そこでやってくると、なるほど社会保険というものはこういうものなんだ。こういう実感の上で制度に対するもの考えてもらうなら、私はもう少しこの問題の解決というのは具体的になるのじゃないかと思うのです。いまはともかく私どもでもそうですけれども、実際にやっている者ならわかりますけれども、本で読んだり話で聞いたりしただけではわからない苦しみというものはたくさんあるのですよ、これはすべての社会に。だから、その中に入ったときに、初めていろいろな社会保険医療問題点というものがからだの中から体験されて出てくる。そのときに初めて、私は支払い側や医師の側からの不信感というものが取り除かれる道が出てくると思う。だから、私はひとつ大臣に何とか早急に予算の要求をしていただいて、そういう診療所をつくって、そこへ厚生省の技官を家族ぐるみで派遣をして、その実態の中から現在のいろいろな資料を出していただけば、それはきまった資料がとれるのですから、二十の中で変化をすれば、要するに物価その他の変動で一体どういうことになるのか、医療の内容としては、こういう点はこう改めるべきではないか、いろいろな点で私は示唆に富むものが生まれてくるのではないかと思う。ともかく、現在は国立病院その他しか資料がとれないということでは、これは一般の個人の診療所が八五%もあって、この諸君が納得できるはずがないのですから、どうか大臣、それだけを私は約束をしてもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
  31. 神田博

    神田国務大臣 いまの堀さんの御提案といいましょうか、お述べになりましたことは、非常に示唆に富んだ、しかも私といたしましては、名案じゃないかと思っております。お約束することも私としてはできますか、しかし予算の裏づけもありますし、いろいろまだ検討の余地もあろうかと思います。非常に私貴重な御提案だと思いますので、十分検討させていただきたいと思います。
  32. 堀昌雄

    堀分科員 時間がありませんからこれで終わりますけれども、私はいままでのいろいろな保険の問題を見て、明らかに相互不信というものが重大なところにきておると思います。しかし、相互不信を解きほぐすのは、ことばでは私はだめだと思うのです。やはり行動の中で、みなが納得する方向を積み上げなければならないと思うのです。ですから、どうかいま私が申し上げました提案は、大臣はどうせ五月ごろおかわりになると思いますが、事務当局はたくさん残っているでしょうから、どうかひとつ事務当局、私の提案は十分記憶をしておいていただいて、これはひとつぜひ前向きな検討をしていただく、そのことが私は医療費問題の大きな解決の基礎になるのじゃないかと思うのですが、特にそのことを要望いたしまして、質問を終わります。
  33. 相川勝六

    相川主査 次に、岡本隆一君。岡本君に申し上げますが、あなたの持ち時間は、十一時十五分までにお願いします。
  34. 岡本隆一

    岡本分科員 一昨日のこの分科会は、かぜ薬の薬価の問題をめぐる分科会でございましたが、私もそれに関連して、薬価の問題についてお伺いいたしたいと思います。
  35. 相川勝六

    相川主査 それから、ちょっとせっかくの御質問でございますが、大体質問者も多うございまするし、取りきめで、同じ問題はひとつお避けになるように、同じ問題について答弁もあっておりまするし、速記録にもありますから、どうか前弁士の行なった以外の質問をしてください。
  36. 岡本隆一

    岡本分科員 かぜ薬でことし五人なくなった、昨年もやはり十一人の死亡者が出ておる。だから、昨年の十一名という死亡者の貴重な経験において、ことし適切な措置がとられておったら五名の犠牲者は出なかったかもしれない。そういう点において、何らか厚生省に薬務行政の上で非常に大きな欠陥があるのではないかと思うのですが、私は三年前に発生いたしましたサリドマイド禍のその後の問題についてお伺いしたいと思うのです。  昭和三十三年の一月に、サリドマイドがマルPからイソミンという名で発表されて、三十六年の十一月には、西ドイツのレンツ博士が、どうも奇形児が最近ふえてきた。それはサリドマイドが原因らしい、こういうふうな発表をしたのです。そこで、おそらくそのときにドイツのほうからマルPのほうに、これはどうせパテントを買ったんでしょうから、そういうふうな報告があったのだろうと思いますが、それに基づいて、大日本製薬からは調査の技術者を派遣しております。ドイツへ調査にやりまして、その結果、レンツ博士の報告はどうも信頼できない、こういうことで、販売をずっと引き続いて行なっておる。厚生省もそれを報告を受けて知りながらそのままに放置しておる。六カ月たってだんだん日本にもそういうような奇形児がふえてくるというようなことで、三十七年の五月になって製造をやめ、薬品の回収をやったのは三十八年の一月であります。だからレンツ博士がドイツでサリドマイド禍が発生しておるということを発表いたしました三十六年の十一月から一年三カ月の後に薬品の回収をやっておるのであります。その間に日本では九百三十六名のサリドマイドの子供ができておるのです。こういうふうな事態から一年以上も——レンツさんがサリドマイド禍の発生を発表してから一年以上も販売を継続させておる。また薬品会社は継続しておった。その間にまたどんどんそういうふうな奇形児が発生した。これに対して厚生省は、どこにその責任があると思われるのか、思っておられるのか、その点をまずお伺いしたいと思うのです。
  37. 神田博

    神田国務大臣 ただいまのお尋ねでございますが、先般かぜ薬でも問題を起こしたわけでございます。これは非常に遺憾に存じておりまして、適切な行政措置をとっておりますことは御承知のとおりでございます。そこでただいまお尋ねございましたサリドマイド禍の問題でございますが、この問題の経過につきましては、いまお述べになられたとおりと私も考えております。そこで一体これは政府は責任を感じておるか、一体どういう責任をとるのかというような意味にお聞きいたしたのでございますが、サリドマイド禍のあったことは事実でございます。しかもそれによって不幸なお子さんの生まれておることもお述べになったとおりでございます。こういうことになったことについては政治的にも非常な遺憾な点でございまして、何とも申し上げようもないと思います。法律的にどうこうという問題を離れて政治的道義的に大きな責任がある、私はこういうふうに考えておるわけであります。詳細なことは薬務局長から答弁させたいと思います。   〔主査退席、井村主査代理着席〕
  38. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 サリドマイドの報告がございましたのは、先生御承知のように昭和三十六年の十一月十八日にドイツのレンツ博士の報告がありましてそれが世界的に問題になったわけでございます。それで、厚生省側に報告が参りましたのは、大日本製薬のほうから三十六年十二月に事情が報告されたわけでございます。当時わが国では、医薬品と奇形との関係については学問的に全然未解明でございまして、またそのころ日本においてはこの種の奇形発生例も知られてないという事情にありましたために、外国の情報を集めることがまず先決だということで、大日本製薬のほうでは東京女子大の小山博士に依頼しまして、動物実験を行なったわけでございますが、その結果は奇形は生じないという報告を受けたのであります。それで、厚生省としましては、その小山博士の実験結果が判明する前に、いろいろな状況を勘案いたしまして、三十七年の五月にサリドマイド製剤の製造を中止し、また市販中のものについては妊婦はこれを使用しないようにという注意をいたしたわけでございます。その後八月になりまして、北海道においても西ドイツの場合と同様な奇形が起こったという報告もございましたので、九月に本剤の回収命令を出したわけでございます。  それで、サリドマイドと奇形児との関係につきましては、現在のところまだ学問的に直接関連があるというふうなことは確定されていないという状況になっておるわけでございます。
  39. 岡本隆一

    岡本分科員 マルPから調査員を派遣されたときに、西ドイツですでにその薬品を回収しておるということは御承知のはずです。少なくも製造会社が薬品回収の挙に出るということは重大なる決意です。非常な損害を覚悟しなければならぬ。これほどの措置をドイツで講じておるということを知りながら——この間のアンプル薬と一緒です。疑わしきは用いず、あぶないものは使わない、これが原則です。しかもこれは奇形と関係があるという相当科学的な根拠に基づいて、西ドイツでは製造を禁止し、回収をし、さらに引き続いて、翌年の一月にはイギリスでも回収しておる。少なくも二つの国で製造を禁止し、回収しておるほど相当これは奇形児と関係のある薬だ、危険だというふうなことがわかってきておる薬をなぜそのまま引き続いて販売することを認められたのか。また会社自体もそういう危険が内包しておるということを知りながら販売を続けたのか。これは私は重大な責任があると思います。その次には患者の発生数を見ていけばわかります。サリドマイド禍が始まったのはイソミンが販売され始めてからです。そして、三十三年には七十六名、三十四年には六十一名、三十五年には九十七名、三十六年には百五十三名、三十七年には三百三十七名と、だんだんイソミンが使われるのと同じ勾配でもってふえていっている。そして三十八年が二百十二名で、それ以来発生がぴたりととまっておる。サリドマイドを売らなくなったら、回収してしまって市販されないようになったら、そのときからこのサリドマイドの奇形児が全然なくなっておる。これはなるほど動物実験あるいは人体実験でもってそういうようなことを立証することは困難でしょう。しかしながら、この発生とサリドマイドの販売との関連性、経過、そういうふうなことから見ても、非常に密接な関連があるということは明らかなのです。それを、科学的に立証できておりません、あまりそれは白々しい言い方だと思うのです。これはひとつの社会的な統計というか、統計学的にもこれは立証できておるのです。ただ、そこにうまく人体実験が行なわれておらぬ。それは人体と動物ではまたおのずから条件が違いますから、動物の妊娠初期に与えていたか与えていなかったかということで何かその実験報告があるかないか私は存じませんが、しかしながら、一つの社会現象として、サリドマイドが売り出されてからこういう奇形児がどんどんでき始め、そしてそれが販売を停止したらぴたりととまった、この現実からでもはっきりとサリドマイドと関係のあることがわかっておるのに、あまりその御答弁は白白しいと私は思うのです。これは、厚生省、さらにまたそれを販売した製薬会社は、サリドマイド禍に対して責任を負うべきである。前に森永がミルクで大きな事故を起こしたことがございます。それは川崎さんのときだったと思いますが、砒素がまじっておって、非常に大きな事故を起こしました。あのときは森永がやはり責任を負うております。だから、こういうふうな事故に対しては、私は当然製薬会社が責任を負うべきであると思う。しかも危険を知りつつ販売したという、考えようによれば三十六年十一月にレンツ博士の発表があって、これはあぶないということがわかってから一年かかって在庫品を全部処分してから製造を禁止した、こういうことも考えられるのです。そういうように考えていったら、まさにこれは悪徳行為です。こういうような悪徳行為の結果、多数の犠牲者が出ておる。私のところへ申し出てまいりました子供さんの場合も、三十七年一月から服用しておるのです。そしてそのときに妊娠しておる。妊娠のごく初期なのです。そして一月からつわりが始まって、これはつわりにもきくというので、つわりが始まったので睡眠がとりにくいというので飲んでおる。これはレンツ発表があってからです。ドイツやイギリスで薬品の回収を終わってからこの人は日本で飲んでおる。しかも、サリドマイドの子供ができて、手が両手ともこういうふうに硬直したままです。足はどうもない、頭もどうもないのです。もう三歳になってきて、歩けるのです。しかし親はそういう子供を外に出したくない。子供は外に遊びに出たがるのです。だけれども、親はその子供を遊びにやってやりたいが出してあげない。その子がこれから幼稚園に行きたがる、学校に行く。その子の将来に対して非常な憂慮を感じておる。心配しておるのです。その親の気持ちもさることながら、同時にまたそういうふうな、指が一本よけいにありまして、こんな曲がったままなのですが、それじゃもう普通の職業にはつけませんね。だから、そういうふうな状態で一生生き抜いていかなくてはならぬその子供の運命を考えてみなくてはなりません。だから、そういうふうな事態を引き起こしてしまったことに対して、製薬会社はどういう責任を負うのか。またそれの販売を見過ごしておった厚生省はいかなる責任を負うのか。こういう問題は、やはり一昨日の薬禍の問題と関連して、国なり、同時にまたそれを販売しておったところの製薬会社は責任を負う必要がある。その点について私は大臣の見解を承りたい。
  40. 神田博

    神田国務大臣 いまのお尋ねのございましたこの責任の問題でございますが、これは私、率直なことを先ほど申し上げたわけでございます。政治上の責任というものはあり得る、こう考えております。だけれども、これは具体的に、では、一体どういうような責任をとるかということになりますと、なかなかこれは、もっと検討をしなくてはならぬじゃなかろうか、こういうふうに考えるのでございます。と申しますことは、いまのサリドマイドの問題にいたしましても、この事実はあったことでございますから、常識的にはもう岡本さんのお述べになったような事情であることも、私も考えは大体同じでございまするが、では、法律上どういうふうな責任をとるかというようなことになりますと、まだしばらくしないと、と申しますか、まだ研究の余地があるのじゃなかろうか、こういうようなことに考えられるわけでございます。医薬品の取り扱いについては、今後は特にひとつこういうようなことが繰り返されないように、厳重に扱ってまいりたい、こう考えておりますが、具体的にどうするかというようなことでございますと、ちょっとこの場合に明快なお答えができないことをまことに残念に思っております。
  41. 岡本隆一

    岡本分科員 常識的にも大体それが非常に強い関連があるということはわかるし、また政治的、道義的にも責任のあることはわかる。しかしながらそれをどうしていいかわからないから、今後こういう場合のことについては厳重に、ないようにやっていきたい、こういうふうな御答弁でございますけれども、それでは今後もそういう注意をしていられながらでも薬禍が発生をしたときに、しかも原因が明らかになった場合、被害者の救われようはない。現にこの患者家族からは請願書が出ておるのです。それもそう無理な注文をしておらないのです。ドイツでは、このサリドマイド禍の子供がたくさんできて、それに対する医療を専門的にレンツ博士を中心に研究をさして、それでもっていろいろな治療をやると一緒に、更生させて、その子を多少なり社会人として成長できるように何とか育て上げていこうというふうな施設をつくっておるのです。だから、日本にもそういうものをつくってもらいたい、そしてまた、そういうふうな医療に対する研究をするために、医者を派遣してもらいたい、同時にまたそういう施設へ収容して医療費がかかりますが、それについての費用を国なり製薬会社でめんどうを見てもらいたい、できたことについてはしかたがないにしても、せめてそれらの子供が、将来幾らかでも救われるような方法を講じてもらいたいという請願書を出しておるのです。そして一たんは、厚生省では、わかりました、それでは二人医者をドイツに出しましょうということになった。そしてまた、このお父さんは非常に熱心でして、レンツ博士とも文通しておるのです。そして博士から、政府のほうでそういう用意があるのなら何どきでも受け入れますという通知を受け取っている。ドイツでは受け入れ態勢ができております。その受け入れ態勢を持って厚生省にお願いに行っているのです。ところが、一たんそれを出すときまりながら、予算がないとかなんとかいう理由で、それがそのままうやむやにされてしまっている。だからそういう点についてあまりにも政府は冷たいではないか、責任のとり方があまりにも薄いではないか。同時にまた製薬会社に文句を言っていくと、製薬会社は、いや国が販売を許可しているのですから、国の許可がある薬を出して、売っておったのですから、私のほうの責任はございません。こう製薬会社は言う。政府のほうへ話を持っていけば、直接の責任は製薬会社だ、しかし政府としても何とかしたいと言いながら、きわめて態度は冷淡である。数が百九十七名だ、だから少数の被害者に対してはきわめて冷酷だ。しかしながら、これは明らかに国の行政の怠慢で、製薬会社の不徳義です。国の行政の怠慢から発生したところの不遇な子供です。九百何十名出たのが八百名は死んでしまっておる。そして生き残った約百九十名は大体みな手が悪いそうです。手が不自由だそうです。足は達者だそうです。しかも頭が正常者とちっとも変わらぬそうです。頭が正常であるだけ一そうその子供らはかわいそうです。そういうようなかわいそうな子供をつくっておきながら、現実においては何らの措置を講じておらない、これはあまり無責任だと思うのです。私はやはりこういう点については厚生省と製薬会社で責任を分担して、はっきりした責任の所在を明らかにされる方途を講じられる必要があると思うのですが、大臣いかがですか。
  42. 神田博

    神田国務大臣 いまお述べになられましたことを、私もドイツの本を見ましたが、ちょうどことしが適齢期になる。ドイツのサリドマイド禍の児童は、早いのは適齢期が来るそうです。その中で、ドイツ政府のいろいろやっております施設の模様なんかも拝見いたしました。たとえば、義手等なんか全部国費で、そして年々成長に合わせてかえてやっておるというようなことまで詳しく書いたのを先般拝見いたしまして、日本としてもあたたかい気持ちで考え直さなければいかぬ一まだ日本の場合は小さいですけれども厚生省やり方ですと、成人した場合義手等についての助成はありますが、幼児から成長期の者についてはないのでございます。そういうこともひとつ考えてみたいと思いまして、私、本を読みましたのは二週間ぐらい前の話でございますが、何とかひとつ特別に一とにかく知能が普通なのでございますから、だんだん年をとってまいりまして、いまお述べになったようなお考えをお持ちであると思います。ことに大ぜいでもないのでございますから、特別にひとつ考えてみたい、私いまそういう気持ちでおります。  それから国と製薬会社で何か救済策を考えたらどうだというようなこと、それからドイツへ医師を派遣したらどうだというようなこと、こういうことは具体的な問題でございますから、ひとつ検討させていただきたい、こう思います。
  43. 岡本隆一

    岡本分科員 幸い大臣もそういうふうな施設も見ておられるということを承りまして、私は非常に意を強ういたします。そしてまた昭和三十三年から発生が始まっておるのでありますから、その子供はもういまでは六つ、七つというふうに、そろそろ学齢に達するというふうな状態になってまいっております。だからいまこそそういう施設をつくっていかるべき時期が到来しておる、こういうふうに思われますので、ひとつ大臣のほうでも積極的にこの問題と取り組んでいただきまして、薬禍の発生の場合の、今後とも国並びに製薬会社のとるべき一つの責任の姿というものを明らかにしていただくことをこの機会にお願いいたしておきまして、次の問題に移りたいと思います。  非常に時間がございませんので、私は医療費問題についてきょうはもう少し突っ込んだお話をさしていただきたいと思っておったのですが、ごく簡単に重要な核心の問題だけ私は御意見を承っておきたいと思うのです。  大体医療費の構成でございますが、一がいに医療費医療費、こう言っておりますが、医療費を内訳いたしていきますと、たとえば私の病院の例、それから、これは私の近くに山城病院という組合立病院がございます。組合立病院は私のところと大体規模が同じ程度でございまして、患者の扱いなんかが非常によく似ているのです。だから、私の病院の例でお話しすれば、大体組合立病院の状況なんかも同じであろうと思うのですが、私の病院では現在人件費が五〇%です。厚生省のいろいろな講習会に、私どもの事務長やあるいは医長や副院長を何回も出しました。大体人件費は四五%をこえては経営は困難だというようなことを聞いて帰っておりますが、しかし現実に物価の値上がりとともに人件費も上げていかねばならないから五〇%になっているが、人件費四五%として、薬剤費三〇%、その他二五%でもって経営の一切をまかなうというようなのが実情でございます。   〔井村主査代理退席、主査着席〕 そういうことになりますと、医療費というのは大体半分は人件費だ、こういうことになる。だから、これは医療事業というのは御承知のようにサービス業です。一番その主体になるのは、いろいろな材料、資材ではなくて、人件費なのです。だから、物価が上がり人件費が上がれば、医療費というものは当然上がっていかなければならない、こう考えられます。さらに、一般の製造業でありますと、技術革新とともにどんどん省力をやるわけですね。人減らしをやるわけですね。ところが、医療事業というものは、技術革新が行なわれ高度になればなるほど人手がよけいかかるのです。だから、科学が進めば進むほど一般の製造業というものは人手が少なくなる。ところが、医療事業に関しては、進めば進むほど人手が多くかかる、こういうふうな実態なのが医療の姿なのです。だから私は、医療費というものに対する基本的な考え方というものはそこから出発をしなければならない、こう思うのです。そこで、前に岸内閣の時分に健康保険法の改正がございました。私、そのときに衆議院の本会議で質問いたしまして、医療費はそうした性格を持っておる、それだけではなしに、医療費というものは公共料金にひとしい。さらにまた医療事業というものは道義的にはストライキは許されない。だから公務員と同じような処遇が医療事業の従業員に対しては与えられなければならない。だから、医療費をきめるのは第三者機関で公正なものをきめて、人事院と同じような医療費の算定機関をつくる必要がある。そして、物価が上がれば、公務員給与は民間企業の給与と五%の格差ができたら算定し直して勧告しなさいということになっておりますが、それと同じように、物価が上がればそれにスライドして適正医療費というものを算定して、それでもって国に勧告する、政府に勧告していく。こういうふうな制度がつくられなければ、医療費の紛争というものはいつまでたっても絶えないと思うのです。私は、今日のように医療費の問題が紛糾しているということは、国民全体の不幸だと思うのです。これを解決していくのには、どうしてもそういうふうな機関をつくらなければならない。いま政府のほうでも、一部負担の問題は考慮しましょう、さらにまた内閣に医療問題の調査会を設けましょうというふうな構想をお出しのようでございますが、しかしながら、そういうふうな機関をつくっていただくにいたしましても、医療費というものの実態の本質というもの、あるいはその中を分析すればこういうものなんだ、性格はこういうものなんだ、だからやはりそういうような性格に従って第三者的な公正な医療担当者に対する報酬の算定機関というものがなくては、私はいつまでたってもこの紛争は絶えないと思う。だから、そういうような構想は、今度そういうような機関を出発されるとするならば、ぜひそこに基調を置いた方針でもって進んでいただきたい、こう思うのですが、大臣の御所見を承っておきたい。
  44. 神田博

    神田国務大臣 いまお述べになりましたような御意見はまことに貴重な御意見だと思っております。各方面からそういうような強い要望を耳にいたしております。実は私もやはり長い間そういう意見も持っておったのでございますが、どれが一体いいのか、どうすればいいのかというようなことは、今度のいろいろな経験も経まして、根本的に検討する時期に来たのではないか、こういう感じを持っております。たいへん貴重な御意見でございますから、十分検討させていただきたいと思っております。
  45. 相川勝六

    相川主査 岡本君、時間が参りましたので、ひとつ……
  46. 岡本隆一

    岡本分科員 もう一つ薬剤費の増加ということが問題になっております。だからこそ一部負担をさせるのだ、こういうふうなことでございます。ところが、その薬剤費の増加というものは、非常に薬物が進んできて、抗生物質であるとかあるいはホルモン剤であるとか非常に高価な薬品がたくさんできてきた。しかもそれがやはりどんどん使われる。そのことが、今日日本平均寿命が、男が六十五歳であったのが六十七にここ二、三年で延びて、女七十歳が七十二歳という平均寿命になってきている。だから、薬剤費がふえましても、そのことが、日本人のこれだけ世界の水準、先進国の水準に達するほど平均寿命が延びてきたということに対する大きな功績を持っておるとするなら、日本人が長寿をあがなうためには、少々薬剤費が高くなったところでこれは安いものだ。だからそういうふうな点について、政府のほうで、ただ保険経済だけを考えるのじゃなしに、薬剤費がふえたということは、日本医学進歩、同時にまたそれによるところの日本人全体の大きなしあわせにつながっておるということを考えていただかなければならぬと思うのです。そのことと同時に、大臣御自身でもそうではないかと思いますが、あなたがかぜをお引きになって熱が出た、そのときにそれじゃアスピリンだけで済ましておくかということです。やはりもうちょっといい薬はないかというので、せめてアスピリンと一緒にシノミンとかのズルファミン剤くらいは飲む、こういうことになろうと思う。それが二日、三日続いたら、これはもし肺炎であったら困る、だからアクロマイシンだとかアイロタイシンだとか肺炎をばちっとなおしてしまうような薬を肺炎と診断がつかないうちにお飲みになると思う。また日本の医者が現在ではやはりそういうやり方をしております。予防的な投与ということをやっております。だから、薬剤費が高くなる、そのことが肺炎におけるところの死亡率がぐんと低下している大きな理由なんですね。病気というものは、医者でなければおわかりにならないと思うのですが、たとえば肺炎になりましても肺炎の症状がずっとそろってくるのは五日目から六日目です。発熱したその日にレントゲン写真をとっても肺なんてきれいなものです。四日目か五日目にならないとレントゲンにすらかかってこないのです。ところが、レントゲンにかかるようになってから注射を始めても、薬を飲まし始めても、それは相当進行してからになりますから、なおすのにひまがかかるわけです。それでレントゲンにも写ってこない。早期の間にばっと肺炎の薬をやると、肺炎の姿をとらずに病気がなおってしまう。だから予防的投与というものも非常に重要なものです。そのことが大きな効果を占めている。それを乱用だという考え方は私は大きな誤りであると思うのです。もし一部負担でアクロマイシン、アイロタイシンをやりますと、そうすると半額といえば相当な負担患者に持たせます。医者のほうでためらいます。しかも、その人の身なりが貧しそうだと、どうもこの人はふところぐあいが悪そうだ、半額負担で五百円、千円負担してもらうのは気の毒だ、もう一日高価な薬を出すのをおくらそうか、こういうことになりますと、一日進行するのです。もう一日様子を見てと思っていると二日おくれてしまう。その間もぐんぐん進行してしまう。こういうようなことになると思うのです。薬剤費を節約したいというのは、なるほどわかります。保険経済を担当される方の考えはわかります。しかしながら医療担当者としては、そういうことでは困る。同時にまた早期にばっとやれば少量のお薬で済みます。そのかわりある場合は不必要なものを投与しているかもしれません。しかしながら、そのことによって多くの生命が守られるとするなら、薬剤費というものをそんなに問題にされる必要はない。むしろそれによりまして日本人の生命がこのように長命になった。平均寿命が延びたという功績を私らはたたえなければならぬ。だからそういう点において、今後保険経済の運営の中でもそういうようなことを十分に頭に置いていただかなければいかぬということです。私はこの点を強調しておきたいと思います。  きょうは時間がもうきておりますから、あとはまた社労の委員会に出て議論いたしたいと思います。ひとつ十分その点考えていただくようにお願いして私の質問を終わります。
  47. 相川勝六

    相川主査 次に、伊藤よし子君。伊藤君に申し上げますが、あなたの持ち時間は五十五分までです。
  48. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 先ごろ、二月十五日でございましたか、各新聞に非常に大きく母子保健法案ができて、今度国会に提出なさるということが報道されました。一月にも児童福祉審議会の答申なんかが出まして、たいへん一般にはこの母子保健法というものが期待されておるわけなんでございますけれど、私どももかねて四十六国会でございましたか、私の手元におきまして母性の保健及び母子世帯の福祉に関する法律案を国会に提出いたしまして、残念ながらいまこれは廃案でございますけれども、母性の保健の重要であることを常に考えておりますので、そういう点について、おくればせながら厚生省のほうで母性の保健について法案をお出しになることになったことについて、たいへん喜んでいる次第でございます。しかし、私はこの法案が委員会に提出されましたならば、いずれ詳しい質疑をいたしたいと考えておるわけでございますが、本日はこの法案関係で新たに四十年度の予算にどのような予算を計上しておいでになるか、その点だけひとつ伺いたいと思います。いままでやっておいでになった母子衛生とか、母子保健に関することではなくて、この法案ができたことによって、新しく予算をお組みになったものだけでけっこうですから。
  49. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 四十年度予算におきまして、新たに母子保健の対策としましてもらいましたものは、母子の栄養強化費でございます。金額にいたしまして一億八千六百万円であります。内容は生活保護の階層と市町村民税を負担しない方々に対しまして、ミルクを支給する、牛乳一本をそれぞれ妊産婦につきまして、あるいは乳幼児につきまして九カ月支給をする、こういうような内容のものが新たに加わったものでございます。
  50. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 それでは、その生活保護を受けておいでになる方と市町村民税を出さない方だけでございますね。
  51. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 さようでございます。
  52. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 何人くらいになりますか。
  53. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 両方合わせまして約十三万人でございます。
  54. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 私ども一般にはぜひ私のほうから出しましたもののようにすべての妊産婦、すべての乳幼児に渡るようにということを願っておるのでございますけれども、それでは非常に少ない階層の人たちだけに限られるわけでございまして、この点は、せっかく多くの期待をかけられておるのでございますから、すべての妊産婦、すべての乳幼児に渡るようにぜひしていただきたいと思うのでございますけれども、将来そういうふうにしていくという考えのもとにやっておいでになりますか。
  55. 神田博

    神田国務大臣 いまの伊藤さんの御要望でございますが、私どももできるだけひとつ網を広くかけたい、できるだけの範囲にと、こういうような考えでございまして、実は予算要求等は相当多くやったのでございますが、財政等の事情もございまして、四十年度はまだ初めのことでもあるし、市町村の事務ふなれということもありますし、こういうようなことでございまして、できるだけそういう考えのもとに進めてまいりたい、こう存じておる次第であります。
  56. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 それはぜひもう今回でももう少し範囲を広げていただきたいと思うのでございますけれども、せっかくの期待に反する——わずかでございますから、すべての妊産婦に渡るようにやっていっていただきたいと思います。  それから母性の保健というような大きいことでございますので、一番女にとって重要な分べんという方面につきましては、出産手当というようなものをこの法案ではお取り扱いにならないのでございますか。
  57. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 この法案には取り扱っておりません。御存じのように大体各社会保険において、こういった問題が現在手当として出されておるようなものがあるわけでございます。それらの社会保険の法律は法律としまして、この法案は主として妊産婦、乳幼児の保健指導、相談あるいは知識の普及、そういったものが主体になっております。
  58. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 私は本来この母性の保健というようなことを、そういう名前をお使いになる以上は、少なくとも一番婦人にとって大事な分べんについて取り扱われないということはおかしいと思うのです。中央児童福祉審議会の答申の中にもそのことが確かにあったように考えておりますけれども、もし母子衛生保健ということになれば、分べん問題を中心にしていってもいいと考えるわけでございますけれども、これはまた法案が出ましたときに特に申し上げますけれども、そういたしますと、従来母子衛生とか母子保健ということを取り扱われてきたわけでありますから、今度の法案で具体的に実際予算をつけておやりになったということは、ただいまの低所得階層に対する妊産婦あるいは乳幼児に牛乳を出すというそれだけになるわけでございますね。
  59. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 この母子保健法の主たるねらいといたしましては、第一は、母子保健に関しまして、国及び地方公共団体が母性及び乳幼児の健康保持に努力すべきことを明確にいたしましたのと、それから、母子保健に関しまする知識の啓発、あるいは妊産婦、乳幼児の保健指導等の事業を市町村長に権限を委譲した、こういった点、また、母子栄養強化につきましては、先ほど予算にはございますが、法律上の根拠ということにつきましては、市町村長は栄養の摂取について必要な援助につとめる、こういうような規定になっておりまして、直接予算の問題と母子保健法とは関係は現在のところございません。それから、従来予算措置としてやっておりました母子健康センターというものをこの法文の中に明らかにした、こういうことでございます。
  60. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 ただいまお触れになりましたように、今度の法案で大きくうたっておいでになるのは、いままで保健所等がやってきた仕事を市町村に委譲しておやりになるということでございますね。私は、その点でたいへん心配するのでございますけれども、ただでさえいままでの保健所の仕事というものは貧弱でございました。それが市町村に委譲されることによって、強化されればいいのでございますけれども、現在の市町村の状態では、ただでさえ国からのいろいろな仕事が多くてたいへん悲鳴をあげているような状態でございますので、もし今度またこの母子保健の関係のことが保健所から市町村に委譲されたことによって、ますます市町村の仕事が多くなってくるのじゃないか、すでにそういう不安を感じております。そういう点については、少なくとも国として財政的に市町村に——いろいうそれに関係する人の人件費等もかかるでございましょうし、ただいまおっしゃいました母子健康センター等でも、ほんとうにうまく運営されていくかどうかということには、財政的な裏づけがないといけないと思うのでございますけれども、市町村に委譲なさるについては、どのような財政的な裏づけを国家としてなさるのか、その点伺いたいと思います。
  61. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 先ほど申し上げましたように、市町村長に権限を委譲するわけでございますが、その財政的な裏づけとしましては、交付税によって算定したものが各市町村にいく場合——もちろん市町村によりましては、交付税をもらわないところがございますから、そういったところには交付税はまいりませんが、財政的にはそういった措置をしております。したがいまして、非常に心配される向きもあるわけでございまして、そういった面につきましては、法律上市町村長の義務を明確にうたうという必要がございますので、その点を法文で明らかにしたわけでございます。ただ、市町村につきましては、現在実際にやっております妊産婦、乳幼児の保健指導等につきましては、約六〇%くらいは実際は市町村において行なわれております。そういった面がございますのと、御存じのように、国民健康保険が全市町村に実施されておりますし、そういった保健施設活動というものも主として妊産婦、乳幼児の保健施設活動がおもでございますので、私どものほうといたしましても、最初から十分うまく運営されるということについては若干の懸念もございますが、それにつきましては保健所がまた協力して援助する、こういうようなことも法律上うたってあるわけでございますので、できるだけ身近なところでこういった妊産婦、乳幼児の保健指導が行なわれるということを期待しているわけでございます。
  62. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 この点は繰り返して申し上げておきますけれども、国のほうでそう委譲なすったといっても、実際そのとおりになりますと、なかなか運営がうまくいかないのが現状でございますので、特にこの点は考慮を払って、実際委譲したことによって母子保健が進むというような状態にならないと困ると思って、たいへん問題があると思うわけでございますから、なお一そうの国としての指導というのですか、財政的な裏づけというものも確実に市町村に回るようにしていかなければならないと考える次第です。特に母子健康センターを十カ年計画で、三百五十カ所を千カ所におふやしになるということでございますが、この母子保健センターをつくります場合には、現在国が補助しているわけでございますか、これはどういうことになっておりますか。また、その運営費等はどういうふうになっていますか。
  63. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 現在母子健康センターにつきましては、三分の一の国庫補助でございまして、百七十万の補助をいたしております。それから、運営費につきましては、これは市町村の負担になっております。
  64. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 私はそこに問題があると思うのです。三分の一の補助をするということになりますと、今度の法案ができましても同じでございますか。
  65. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 さようでございます。
  66. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 そうなりますと、あと残った三分の二は市町村でやらなければならないといたしますと、財政の困難な市町村ではそれができないということにもなりかねないと思いますし、特に運営の面で、せっかくできました母子健康センターでも運営費がないためにうまく運営ができないというような結果になりはしないかと思うのです。その点については、せっかくこの母子保健法ができてやっておいでになることになれば、ぜひもっと全面的に国が施設に対しても補助をし、あるいはまた、運営費も続いて出していかれるような方向に持っておいでにならないと、実際には私は効果が上がらないのじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  67. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 母子健康センターの補助金は県が三分の一負担いたしますので、毒町村は三分の一の負担になるわけでございます。それから、運営費につきましては、市町村財政の困難なところにつきましては、お話のような非常に運営上困るというような問題があることを承知いたしておりますが、その問題につきましては、地方交付税の特別交付税の対象になるということになっておりまして、そういった面で援助いたしており・ますが、国庫補助の規定は現在のところございません。
  68. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 母子保健法については、これの委員会に質問を譲りたいと思いますので、この程度で終わりますけれども、いまお聞きしているところでございますと、私たちが一般に母子保健法ができたということで、一般の婦人が非常に期待しているのに、実際その内容というものは、昨年できました母子福祉法とかあるいは老人福祉法のように、結局、宣言規定のようなもので、内容の伴わない、一般の期待に反するようなものになるのではないかと思うのでございます。せっかくこういう法案を国のほうで母子保健についておつくりになる以上は、もう少し予算もつけて、実際具体的にほんとうに効果のあるようなそういう法案でないと、単にいろいろ母子福祉法だとかあるいは母子保健法だとか名前はりっぱでございますけれども、実際には内容は従来やってきたことにちょっと色づけするような程度になりまして、私はかえっていろいろ事務が複雑になっていって、市町村なんかでは困るぐらいのことに結果においてなりはしないかというようなことをたいへん心配しますので、この点についてはひとつもう少し御検討になっていただきたいということを御要望申し上げておく次第です。  次に、私は、保育所関係の予算についてお伺いしたいわけでございますけれども最初に、現在全国にいわゆる保育にかけなければならぬ子供の数がどれだけございますかということと、それから保育所の数がどれだけあって、その定員が幾らであるかという点と、それから、全国的に見てまだ保育所が未設置の町村があると思いますが、その数をおあげ願いたいと思います。
  69. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 昨年の六月に全国の要保育児童というものを調査いたしたわけでございますが、それによりますと、要保育児童の総数が約二百万でございます。これに対しまして、その中で現在保育所に入っておる児童が約八十五万でございます。したがいまして、その差し引きました百二十万というものがまだ保育所に入っていないということになるわけでございますが、これにつきましては子供の数が少ない、あるいは相当散在しておる、こういうような問題もございます。一時的に保育に欠けるといった事情もございまして、一応私どものほうでは、そういった市町村の要望からいたしまして、どれくらいかというしぼった数にいたしますると、約三十六万程度になるわけでございます。これにつきまして今後保育所の緊急整備を考えていきたい、かように考えております。  それから未設置の市町村でございますが、未設置の市町村は当時九百二十二あったわけでございます。
  70. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 そういたしますと、まだ百二十万近い保育に欠ける子供がある、そのうち三十六万というのは、市町村が保育所をつくろうという希望のところである、まだ九百二十カ町村くらいが保育所がない、こういうことですね。  私がたびたび申し上げていることでございますけれども、御承知のように近年結婚してからでも働く婦人、共かせぎというのが年々ふえております。生計を助けるために、あるいはまた婦人が社会的な活動をするために、いま申し上げますように働く婦人というのはもう年々ふえておりますし、内職をはじめ、何らかの形で家事以外の仕事に従事する婦人の数は非常に多くなっていて、保育に欠ける児童は、いまおあげになったよりももっと膨大な数じゃないかと思うわけでございます。特に農村などに参りますと、主婦労働が多いわけでございますが、その上に最近農閑期にも働きに出ている。私が参りました一瞬村なんかでも、農閑期に二十台も三十台もマイクロバスなどが参りまして、ちょっと離れたところの工場へ働きに行っているとか、あるいは道路工事などの日雇いに出ているという方が圧倒的に多いわけでございます。そういうところでも非常に保育所を望まれておりますし、また都市においても、ただいま申し上げますように社会的に働く婦人が非常に多くなっておりますので、身近なところに何とか安心して子供を預けられる保育所がほしいという要望は、もうどこへ行っても聞かされるところでございます。特に都市の場合などは、朝、子供を預けて働きに行きますのは時間的にもたいへん困難ですし、いまの交通事情では、離れたところに預けるということは、実際ありましてもできないような事情にありますので、できるだけ数多くの保育所を要望する声は切実なのでございます。ところが実際にはなかなか皆さんの要望に沿うように保育所ができないという事実があるのでございます。こういう点について特に厚生大臣に、どうして保育所がみんなの要望のようにできていかないか、その隘路と申しましょうか、そういうものはどういうところにあるとお考えになっておりますか、伺いたいと思います。
  71. 神田博

    神田国務大臣 どうして保育所ができないかというお尋ねでございますが、いまも児童家庭局長がお答え申し上げましたように、年々新築はしてまいっております。三十九年度も新築が百四十五カ所というようなものでございまして、四十年度の整備につきましてもこれを相当上回りたい。補助費だけを待っておりますとなかなか行き渡らない点がございますから、今年は国庫補助による整備のほかに財政投融資等によってさらに増設をはかってまいりたい、こう考えております。御承知のように町村によりましては相当大きな変動がございまして、工場地帯とかいろいろの増加地帯もございますが、そういうところは補助金でやるよりも財政投融資のほうで差し上げたほうがいいのじゃないかということでございます。ただ、農山村に参りますと人口が散在しておりまして、ほんとうは農山村に季節保育所の要ることが多いと思いますので、こういうところにひとつ今後は力を入れてもっと普及させたいと思っております。
  72. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 大臣がおっしゃいましたように、私は保育所の新設に対して、場所によっては財政投融資などで、保育所をつくるにあたっての建設費などを全額融資するということも一つの道だと思うのですけれども、いまおあげになりましたように、現在九百二十カ町村くらいに保育所ができないという事実、そうしてまたもっと要望されているのにできないということには、やはり現在の一施設に対する補助、何十万かの補助金がございますね、これがいままでは七十万、こういう補助金制度というところに私は問題があるのじゃないかと思うのです。なぜならば、七十万あるいはそれが百万になりましても、ほんとうには建設費というものは四、五百万もいまの時代では当然かかるわけでございますから、そうなりますと、財政の豊かでない市町村ではつくろうと思ってもできないという事実があると思うのです。この点はどうお考えになりますか。
  73. 神田博

    神田国務大臣 いまお述べになった事情も十分承知いたしておりますので、これは何か抜本的な手を打ってまいりたい、こう考えております。
  74. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 現在でも九百二十カ町村も保育所ができないということは、私は保育所をつくるということに対する市町村長の行政責任がまだはっきりしていないという点も一つの問題だと思うのですけれども、いま申し上げましたように、この補助金制度というものを改めていきませんと、結局つくりたくてもできないという事情があるのじゃないか。この点をぜひ何とか改めていただきまして、法定のものは国家で出すというようなことにしていただかないといけないと思います。これはぜひこういう方向にやっていただきたいのですけれども、特に大臣のお考えをもう一ぺん伺っておきたいと思います。
  75. 神田博

    神田国務大臣 何しろ九百二十カ所にのぼる数字でございますし、さしあたって三十六万人くらいの児童を収容したいということでございますから、よほど大きな決意を持って財政折衝する要があると思っております。今後は十分留意しまして、できるだけ普及がすみやかに行なわれるように努力いたしたいと思います。
  76. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 それから具体的に、補助金の一施設七十万というのは今年度はどういうふうになっておりますか。もう少しおふやしになるお考えはございませんか。
  77. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 本年度の補助につきましては最低が七十万ということで、施設の規模で大体六十人程度が七十万程度でございますので、たとえば八十人、百人という場合には増額をいたしたい、かように考えております。
  78. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 それは八十人、百人と規様が大きくなると増額をなさるだけで、六十人の基準に対してはやはり今年度七十万で変わりはないのですか。
  79. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 七十万については変わりございません。と申しますのは、施設の整備費につきましては昨年と比べて約三億程度ふえただけでございますので、かりにふやしますと今度個所数のほうが減ってくる、こういう悩みがありますので、この程度でことしはやっていきたいと思っております。
  80. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 実際にはそういうことになりますと、いま建設費が非常に高騰しておりますので、同じ額であれば前よりも悪くなったということにもなりかねないわけでございますね。ですからこういう点は、せめて前と同じ額以上になるようにしていただきませんと、実際には私はますますつくりにくい事情になってくるのじゃないかと思いますので、ぜひこの点は改めていっていただきたいと思うのでございます。それと、いまのことにも関係するのでございますけれども、適正配置の問題でございますね。これは昨年の厚生白書にも出ているようでございますけれども、現在都道府県別の保育所の定員数と人口千に対する率は、最低が宮城県の二・九%で最高が高知の二六・六%というように、非常に大きな格差があるのでございます。これは別に各都道府県によって要措置児等の数がそう差があるとは考えられないのです。これもぜひ適正配置をしてもらわなければいけないと思いますが、こういう方面に対する厚生省対策はどういうことをやっておいでになりますか。
  81. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 本年度の設置の計画といたしましては、やはり未設置の市町村を優先的に取り扱いまして、できるだけ未設置の市町村を解消していく、こういう方向で努力をしていきたいと思います。
  82. 相川勝六

    相川主査 伊藤君に申し上げますが、もう時間がまいりましたので……。
  83. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 ぜひその点は、同じ児童に、住むところによって違うということがございませんように、適正な配置をしていただくように、また繰り返して申しますけれども、富裕でない、豊かでない町村にはできないというようなことのないように、そういうことを解消するような方向で積極的にやっていただきたいと思います。  それから老朽になった保育所などでございますけれでも、これの補助額などはどういうことになっておりますか。
  84. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 従来どおり社会福祉施設整備費の中で老朽施設分も考えております。
  85. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 こういう点も非常に問題だと思うのです。先ほどの母子健康センターの問題もそうなんでございますけれども、保育所の場合なども、結局国からある程度の補助を受けましても、現在その単価以上に建設費がかかりますので、市町村は、非常に超過負担が多くなっております。保育所の問題ももちろんですけれども、老朽の保育所などの改築をするにつきましても、そういう点も配慮して、もう少し、この方面に力を入れてやっていただくように、この点はぜひ強く御要望を申し上げるわけでございます。  それから時間がないようでございますが、もう一つぜひ聞いておきたいことは、保育所における最低基準の問題でございます。これは現在乳幼児が、三歳未満が九・一を今度八・一になさるのでございますね。九人に一人を八人に一人になさるというような予算が出ておるようでございますけれども、幼児のほうは相変わらず三十人に一人でございます。私はこの点どんな経験を積んだ保母さんでも、八人に一人では、乳児の世話をするということは非常に保母の過労になると思うのです。この基準をお上げになるのだったら、せめて五人なり六人に一人くらいにしていただきませんと、そしてまた三十人に一人ではなくて、二十人、できれば十五人に一人くらいにしていただきませんと、保母さんがますます過労になりまして、保母になり手もないし、結局子供にもはね返ってしわ寄せがくると思いますので、ぜひこの点は乳幼児についてはもう一人でも二人でも保母の基準を上げていただくように、いまからでもおそくないと思いますが、この点いかがでございましよう。
  86. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 御存じかと思いますが、最低基準につきましては中央児童福祉審議会の中で検討されたわけでございまして、三歳未満につきましては、お話のように六人に一人という線が出ておるわけでございます。また三歳児につきましては二十人に一人、それから四、五歳児については三十人に一人、こういう数字が出ておりますが、予算の問題と関連いたすわけでございまして、本年度八人に一人が実現したというところで、今後とも受け持ち児童数を少なくするということは全く同感でございますので、極力努力してまいりたいと考えております。
  87. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 こういう方面は弱いところでございますので、いつも予算、予算でしわ寄せがくる方面でございますから、たいへん弱い子供や婦人の問題には、ぜひ一そうの力を入れて、そういうものの予算獲得にもがんばっていただきたいと思うのでございます。  それから続いて、ぜひお伺いしたいことは、乳幼児を預かるところが同じ保育所の中にも少ないのでございます。しかし、いま一般の働く婦人にとっては、乳幼児を預けるということの要望が非常に強いのでございます。これもいまの基準の問題にも関係してくるし、措置費の問題にも関係してくると思いますけれども、どこも乳幼児保育をやりたがらないのでございますね。これはいまのように、八人に一人というような、保母になり手がないという点もありまするし、措置費が少ないために——どうしても人件費のほうにかかりますから、あえて保育所がそれを補ってまでやるということをやりたがらないために、乳幼児保育が少ないのではないかと思うのですが、こういう方面についてどういうお考えを持っておりますか。
  88. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 最近特に乳児につきましての要望が強くなっておりますので、そういう面で保育所の設備につきましても、乳児の専門の保育所をつくるように奨励いたしております。やはり一番の隘路は、お話ありましたし、前にお話申し上げましたように、受け持ちの児童数が多いために保母も重労働になりまして、なかなか集まらないという問題もございますので、最低基準の改善ということが前提になると考えております。
  89. 相川勝六

    相川主査 伊藤君、もう時間がまいりましたから……。
  90. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 もう一つだけ……。給与の問題でございますね。今度の予算によりますと、保育所の職員に対して二〇・九%のアップをするということですが、これは公立、私立全部を含めて二〇・九%上がるのでございますか。
  91. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 さようでございます。公私含めてでございます。
  92. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 そしてこれによって一般の公務員並みになるのでございますか。
  93. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 国家公務員並みになったわけでございます。
  94. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 保母がいま非常に少なくて困っておるわけでありますけれども、これも結局保母の待遇が悪いから、一般の民間の産業に出ていくということもあるのでございますし、御承知のように保母は一般のおつとめと違って非常に長時間勤務しなければならないような状況にあって、仕事もたいへんでございます。一般より上げてもいいくらいでございますから、ぜひその点給与を——今度これだけでもお上げいただいたことはありがたいのですけれども、特にこれを上げることによって従来ございました公立と私立との格差がいかがでございましょうか、なくなってまいりますかどうか、その点。
  95. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 保育所の中で十五万人以下の市町村——約八五%程度がそうでございますが、この辺の保育所につきましては、公私の格差というものはこれによってだいぶ解消するのではないかと思います。ただ大都市につきましては大都市自体ベースが国家公務員以上でございますので、大都市につきましては公私の差というものはある程度残ると思います。
  96. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 これで終わりますが、もう一つだけ、ついでながらちょっと伺いたいのでございますけれども、重度精薄児、心身障害児なども伺っておきたいのですけれども、施設の職員の充足と待遇のことなんでございますけれでも、昨年も重度精薄児扶養手当法が出まして、そのときにも申し上げたことでございますが、この方面は特に専門的な人でないとできないので、医師の充足あるいは職員の充足ということは現状でどうなっているかという点と、それからそこで働いている職員のベースアップの問題はどうなりましたか、それだけひとつ伺いたいと思います。
  97. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 重度心身障害対策の問題といたしまして一番問題がございますのは、やはり看護婦さんの充足の問題でございまして、もちろん医療法の基準には達しておりますけれども、私ども考えております二・五人に一人という看護婦さんの充足は非常に困難でございます。そういった面が、せっかく施設をつくりましても子供が入れないという問題がございまして、その対策にいま極力努力をいたしておるところでございます。  処遇の問題につきましては、これは先ほどの処遇と同じでございまして、大体施設職員につきましては、保育所でない収容施設のほうにつきましては、一三・三%のアップになったわけでございます。
  98. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 そこなんです。どうも片方は二〇・何%か上がって、特に困難で、なり手のないところが一三・何%しか上がっていない。私は非常にこの点不満なんです。ただでさえ施設も少ない上に、施設ができてもそういうところに働く方が少ない状態の中で、特別に待遇をよくしてもいいと思いますのに、少ないので、この点はもう一ぺん考え直していただきたい。この点は私強く要望しておきます。  もう一点だけ……。これは滝井先生のほうからもお話が特にあるようですから、一口だけでございますけれども、老人の福祉についてでございますが、いまの日本のたいへんおくれた社会保障の中でも、福祉年金制度というものは非常にいいと考えております。特に福祉年金がわずかでございますけれども老人に渡るようになりましてから、非常に老人は喜んでいるわけでございます。ところが物価が上がりまして、千円が千百円、今度二百円上がるのでございますか、千三百円になるといたしましても、これは老人の点だけ申し上げてあれですけれども、いまの時代ではぜひ少なくとも千五百円ぐらいにはしないと、むしろ実質的には上がったことにならないと思うので、たいへん喜ばれておりますので、できれば六十五歳から千五百円ぐらいに上げるようにしていただきたいということ、これは要望でございます。  もう一つは、昨年老人福祉法ができまして、老人クラブというのを各地に指導をなすってつくらしておいでになるわけでございますけれども、この老人クラブが、五十人ぐらい集まりますと、それに対して国が五百円ですか、それから県が五百円、市町村が五百円ですか、千五百円ぐらい補助金がいくのでございますね。しかし、これは地方におきまして、どうも実際にそれが渡らなくなっているような実情がございますが、クラブだけを、指導をなすってつくらしておいて、実際はどういう状況になっておりますか。その点だけひとつちょっと伺っておきたいと思います。
  99. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 老人クラブの点につきまして、私からお答え申し上げたいと思います。  いま御指摘のように、老人クラブに対しましては国が五百円、県が五百円、市町村が五百円というふうなことで、千五百円の経費を補助しております。これは、三十九年度は二万カ所を補助の対象としておりましたが、四十年度は四万カ所に対して補助をやりたい。これは市町村に対して現在補助をやっておりますので、その補助の実際の実施状況は、市町村を通じて各クラブに補助されているわけでございます。
  100. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)分科員 その点どうも上のほうではそういうふうになすっていても、実際下のほうでは渡っていないようなところもありますから、ただ指導してつくらせるだけつくらして、あとはどうなっているかわからぬというようなことじゃ困りますので、実情をもっと押えなければ、実際指導した以上、老人クラブが運営ができていくような方向に、もう少し御調査なすって指導してもらいたいと思います。しかし、私は結論的に申し上げれば、老人の福祉は、そういうこともけっこうなんですけれども、ぜひ先ほど申し上げました福祉年金なんかに集中して、福祉年金の年齢を下げて、六十五歳から、そうしてまた所得の制限も、多少今度は緩和するようでございますけれども、五人家族で百万ぐらい収入がある方でも、実際は老人には小づかいがなかなかもらえないという状況でございますから、こういう点もぜひ、せっかくなさるなら、老人自体に収入がない人には、せめていまの福祉年金ぐらいは渡るような、そういう方向で極力力を入れていっていただきたいということを強く要望申し上げまして、時間が参りましたので終わります。
  101. 相川勝六

    相川主査 次は細谷治嘉君。  細谷君に申し上げますが、零時三十五分見当にひとつ御終了を願います。
  102. 細谷治嘉

    細谷分科員 委員長に注意を受けないように質問いたしますから、答弁のほうもすきっとひとつやっていただきたいと思います。  私が質問いたしたい点は、地方病であります日本住血吸虫病の問題と大気汚染を中心といたしました公害問題、地方開発と公害問題との関係、こういう問題二点について質問いたしたいと思います。  まず第一に、日本住血吸虫病、三十二年から十カ年計画で、溝渠をつくることによって予防対策、が講じられておるのですが、今日これがどういう状態になっているか、おわかりでありますれば、全国五県ですか、山梨、岡山、広島、福岡、佐賀、全国五県になりますが、その状況をひとつお聞きしたい。
  103. 若松栄一

    ○若松政府委員 溝渠のコンクリート化のことでございますが、大体全国的に見まして予定の六割ちょっとぐらいが進んでいるところでございます。各県別に見ますと、残っておりますのは、一番多いのが山梨県の約三十八万メーター、それから福岡県の十六万メーター、その他の県は、残っておりますのはかなり少なくなっております。特に岡山県あたりは、もうほとんど完了した状態でございます。
  104. 細谷治嘉

    細谷分科員 私は、溝渠の問題に入る前に、この病気におかされておる者、あるいは予防対策の効果というものをまずお聞きしているのです。溝渠の問題はあとでお聞きします。
  105. 若松栄一

    ○若松政府委員 効果の点でございますが、これを端的に患者の発生で見てまいりますと、山梨県では、二十七年から若干異同がございますが、一番多い年で三十三年に千二百名程度患者が出ておりましたが、それが三十八年は二百九名になっております。佐賀県では、多いときが三十年で、約五百名の患者がありましたが、三十八年には五十二名、それから福岡県では多いときで二十九年が六百七名、三十一年に七百七十六名という患者がありましたが、三十八年では七名という報告が出ております。したがって、現在御承知のような駆虫健康診断、虫の除去、雑草の除去等をやっておりますので、逐次効果が上がっているものと存じております。
  106. 細谷治嘉

    細谷分科員 いまお答えがありましたように、十カ年計画で三十九年で満八年の工事をやったことになるわけでありますが、これによってかなりの効果をあげてきておるということはおっしゃるとおりであります。かつて、久留米の近くにお宮があるわけですが、春祭に行ってクリークを渡ると徴兵検査にとられない、こういうことがいわれました。クリークを渡りますと、この住血吸虫病におかされる。おかされるから背が伸びない、とにかく尺足らずになる。こういうことで迷信というものはこわいものでありまして、住血吸虫病におかされて徴兵検査で兵隊にとられなかったという有名な事実、伝説があるわけです。今日でも、効果はありましたけれども、たとえば筑後川に草原があります。そこに牛を放しておりますと、牛はほとんど感染されて、有畜農業ということを奨励したけれども、放牧は禁止されておる。あるいはせんだって私は久留米の市長に聞いたのでありますけれども、遺憾ながらこの問題が根絶せぬ限りはレクリエーション対策は立たぬ、こういうことを言っておりました。したがって、おっしゃるように効果はあがったのでありますけれども、まだ根絶するに至っておらぬ、こういうのが現況であるわけであります。  ところで、そういう現況の中で三十二年に寄生虫予防法が改正されまして、十カ年計画でこれを推進する、こういうことになって基本計画ができたわけです。先ほどちょっとお答えがあったように、その基本計画、三十九年度末で山梨県で五五%、岡山県で四八%、広島県で三三%、福岡県で三五%、佐賀県で五一%、全国突っ込みにいたしますと、四九%しか基本計画が達成されておらないのです。あと四十年度と四十一年度の二カ年なんです。そこで、この基本計画を完全に実施するお考えなのかどうか、これは大臣にひとつ伺いたいと思います。
  107. 神田博

    神田国務大臣 いま細谷さんのお述べになりましたような事情でございまして、私どもといたしましては、鋭意この期間中に所期の目的を達成したいという念願でございましたが、おくれておりますことをまことに遺憾に思っております。したがいまして、多少年限を延長いたしまして、この撲滅を期したい、こういうふうに考えております。
  108. 細谷治嘉

    細谷分科員 基本計画がおくれておるので、多少年限を延ばしてということでありますが、四十年度の予算案を拝見いたしますと、地方病予防施設費として、日本住血吸虫病に対する対策として、一億三千百万円の予算が計上されております。この金額は昨年と同額であります。ところで計画を見ますと、三十九年度は二十二万五千メーターの溝渠をつくっておるのです。物価が値上がりしたのに、四十年度ではやはり同じ二十二万五千メーターの計画になっておるのです。これは私は、各市町村についてよくいわれますような超過負担というのが起こっているのじゃないかということを懸念して、各市町村について個別に調べたのでありますけれども、幸い工事についての大きな超過負担は起こっておりません。しかし遺憾ながら今回のこの計画を見ますと、物価は相当上がっておる、特に工事費等は上がっておるにかかわらず、同じ予算で同じ延長をやるというのは、むろん溝渠の大きさということにも関係あるかと思うのですが、これは少しおかしいのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  109. 若松栄一

    ○若松政府委員 おっしゃるように、明年度の予算も同額でございまして、実は市町村の財政負担等もありまして、この一年は同額にしておるわけでございますが、大体期間を延ばす、全体計画を延ばさざるを得ないということを前提にいたしまして、あまりに集中しないようにという配慮もいたしましたが、おっしゃるように単価が上がっておるのに総額が上がっていないという点はまことに遺憾に思うのであります。将来もっと単価の増に見合うような予算にしたいと思います。
  110. 細谷治嘉

    細谷分科員 そうしますと、実情に合うように延長等はカットする、こういうふうに理解してよろしいのですか。この二十二万五千メーターはやる、その不足分については予算等の補正をする、こういう、どちらに理解したらよろしいでしょうか。   〔主査退席、井村主査代理着席〕
  111. 若松栄一

    ○若松政府委員 予算を補正するという意味でございませんで、予算の範囲内でやっていきたい。したがって事実上メーターがあるいは若干少なくなる可能性も出てまいるかと思います。先生御承知のように、実はこのメーターといいますものも、最近になりますと、特に筑後川方面は川幅が非常に大きくなってまいりまして、単価が非常に多くなってまいります。したがってこのメーターというものは、現実のメーターにはなかなかなりかねるという点はございます。
  112. 細谷治嘉

    細谷分科員 そこでお尋ねいたしたい点は、当初の計画というのは二百十七万七千六百十メーターであったのです。ところが途中で工事が予定どおりいきませんものですから、三十七年末に厚生、大蔵の妥協の結果——妥協されたのだそうです。そういうことで、三十七年末にこの基本計画は二割をカットした。もう一つ、厚生と大蔵とは関係なしに厚生省が基本計画から、まず全体の二割を一方的にカットしたという案があります。ところが今度のこの予算案を見ますと、総事業計画メーター数は百七十二万八千メーターとなっておるのです。いま私が申し上げた基本計画というのは二百十七万七千六百十メーター、ところが厚生と大蔵で予算の査定を通じて妥協をしたといわれるのは、三十七年度で残りについて二割をカットしょうという数字になりますと百八十八万二千七百九十三メーターとなるわけです。厚生省が基本計画から二割を頭からカットしたというのが百七十四万二千八十八メーターとなっておるのですが、この予算案の概要の説明書を見ますと百七十二万八千メーター、こういうふうに数字が変わっておるのですよ。この百七十二万八千メーターというのは、基本計画からいきますと、四十四万九千六百十メーターがカットされたことになっているのです。この数字はどこから出たのですか、御説明願います。
  113. 若松栄一

    ○若松政府委員 おっしゃるように、当初この仕事を始めます場合に、市町村からそれぞれ提出していただきましたものを基本計画といたしました。しかしその後都市化等の問題がございまして、宅地化したりあるいは都市化して農地でなくなる分がかなりあるだろうということで、実は二割程度はおそらくそういうことで実施しなくてもいいであろうということと、それから区画整理その他によりまして、従来のみぞを変更して区画整理等をやっていけばメートルが若干縮まるであろうというようなことから大ざっぱに八掛けをいたしたわけでございます。そういうことで三十七年に事業量の縮小をやったわけでございますが、その後いろいろの計算のやり方がございまして、いま先生のおっしゃったような計算もありますし、私どもの計算は、現在のところは当初の総事業量に対して八掛けということにいたしたわけでございます。しかし、この事業量につきましては、おっしゃるように実情に合わない点があるかもしれません。したがって、この事業量を絶対変更しないというつもりはございませんで、実情に合わしてやっていくつもりでございます。本年度も現在各町村から調書をとっておりまして、もう一度再検討する、したがって基本計画というものはもう一度検討し直すつもりでございます。
  114. 細谷治嘉

    細谷分科員 都市化等で溝渠が必要がなくなった部分もあるということでありますけれども、地元の今後の計画を見ますと、整理可能、結局基本計画はやらぬでいいというのは四万三千三百五十一メートルにすぎないのです。あとは基本計画どおりやっていただかなければならぬということなんです。  そこで私のお尋ねいたしたいのは、いろいろな経過でおくれたために重点的に基本計画を消化していこうということから、とにかく二割をカットさしてやってまいったわけですけれども、事実は、私が申し上げるように四万三千三百五十一メートルが基本計画から整理が可能だ、やらぬでいいということでありますから、基本計画はこの分を引いたものはぜひともやっていただかなければならぬものだ、こう思うのですが、これはひとつ大臣にお尋ねしたい。
  115. 神田博

    神田国務大臣 実はまことに恐縮でございますが、その基本計画を変更した事情を私よく承知いたしておりませんので、お答えが御満足できないかもしれませんが、その基本計画が実際に必要なものであってカットしたのか、事情が変わってカットしてもよくてカットしたのか、その辺によってだいぶ変わるのじゃないかと思います。しかし、私といたしましてはこの種の風土病は何といってもすみやかに撲滅することが肝要なことだと思っております。四十年度の予算は十分でなかったことはまことに遺憾に思っておりますが、これは残存事業を十分精査いたしまして、だらだらやらないようにして、できるだけ効果のあがるような措置をとりたい、こう思っております。
  116. 細谷治嘉

    細谷分科員 大臣、経過を御承知ないと思うのですが、もともと二百十七万七千メートルの基本計画ができたときに、地元からこれだけが必要ですと申請されたものを二割カットして基本計画ができた。そしてそのできた基本計画が大蔵と厚生の妥協案だといわれるもの、あるいは厚生省の一方的な案だといわれる、全体の二割カットという形で推移してまいっておるのですけれども、私がいま申し上げたように、地元の実情は、四万三千三百五十一メートル程度の整理は可能であるけれどもあとは全部やっていただかなければならぬというのが地元の切なる実情でございます。ここまで効果をあげて、あとわずかという段階———これを根絶するのですから、これは大臣が基本的にはぜひとも完成させるということでありますから、年限延長ということになりますれば、基本計画はそういう経過を経てできてきたものですから、この基本計画をやっただけでは足りないわけでありますから、この基本計画に立ち戻ってこれを完遂していただきたいということなんですが、いかがでしょうか。
  117. 神田博

    神田国務大臣 御趣旨よくわかりましたので、十分検討いたしましてそれに沿うようにいたしたいと思います。
  118. 細谷治嘉

    細谷分科員 基本計画はぜひ達成するという大臣の御決意のようでありますからもう一つお尋ねしたいのですが、この問題に一生をかけて研究をしておる久留米大学医学部の寄生虫学教室の岡部教授という方がおられます。この岡部教授が「日本住血吸虫撲滅対策問題点」という本を書いておられます。これは私の控えでありますが、それによりますと、こういうことが書かれてあるのです。御承知のように筑後川流域というのは、福岡県も佐賀県もかんがいは全部十メートル幅くらいのクリークでやります。それからクリークとクリークをつなぐため池があります。筑後川は国の直轄河川でありますから、国で改修工事をやっております。護岸ができてまいりましたから宮入貝等の生息はだんだんよくなったのですけれども、まだどんどん牛が感染するという状況でございます。それからネズミが一〇〇%感染する。それが伝染しているわけです。そこで岡部教授はぜひともこのクリークと筑後川の改修と同時に——いまやっておるこの基本計画は、一トンという小さな、具体的に言いますと一メートル真四角くらいのクリーク以下なんです。それ以上のものはできない。今度は、筑後川と溝渠の間をつなぐクリークとため池等にやはり宮入貝が生息しております。これが大水が行きますと、どんどん感染区域が広がるというのが、二十八年の水害あるいはその後の水害で実証されておるわけなんです。岡部教授は、そういう小さな溝渠ばかりでなしに、筑後川と結ぶクリークなりため池に対する予防対策薬剤散布ということ、セビンという最近研究されたものもありますけれども、そういうものについても溝渠工事のいまの基準の一トン以下、一立米以下ということでなく、そういうものを基本計画にプラスしてやっていただかなければならぬということを指摘しておられます。これをどうなさるおつもりか、お尋ねいたしたい。
  119. 若松栄一

    ○若松政府委員 御意見おそらくもっともなことだと思います。しかし、大きな川あるいは筑後川の支流みたいな形になりますと、一体河川であるのかわれわれが言う溝渠であるのかちょっと見当がつきかねます。したがって、河川改修としてやるべきなのか溝渠のコンクリート化の対象になるのか、そこら辺の判断が分かれてくるところだと思います。あるいは土木建設関係の仕事になるのか、そこら辺の実情をよく調べてみたいと思います。
  120. 細谷治嘉

    細谷分科員 これは河川でなくて、筑後川特有のかんがい用水をためておる幅十メートルくらいのクリークとため池なんです。ここに宮入貝が生息するところの本拠なんです。それに対策を講ぜずして撲滅対策は達成されないのじゃないかと私は思っておりますし、岡部教授もそのことを指摘しております。これは今度は第二次でありますから、ぜひ基本計画の中に織り込んでいただきたいと思っております。大臣は先ほど四十一年までと言うけれども、いままでの二倍くらいのベースでなければ厚生省が削減した計画すらも実施できない。いわんや基本計画は不可能なんです。三十八、九年のぺースでやりますと、基本計画だけを全うするためにも約四年かかるわけです。それにいま私が申し上げたクリーク等に対するある程度対策を講ずるということになりますと、   〔井村主査代理退席、主査着席〕 いままでのベースでは、やはり十年近い第二次計画をやらなければ完全な撲滅は期し得ないと思うのですが、ひとっこれに対する大臣の御決意をお聞きしたいと思います。
  121. 神田博

    神田国務大臣 事情に精通されている細谷さんからの例をあげてのお尋ねでございます。あまり詳しく事情を知らない私が申し上げることもはなはだ恐縮でございますけれども、私といたしましては、政府が一たん宮入貝の撲滅をはかろう、風土病の撲滅を期そうというかたい決意で発足したものでございますから、途中でやめるというようなことは断じてすべきことではない。この撲滅を期するために、ひとつやらなければならない、こう考えておりますので、予定が何年かかりますか、それにはできるだけ早い期間に撲滅することが効果があがるわけでありますから、計画を新たにして十分地元の期待にこたえる、こういうようにいたしたいと思います。
  122. 細谷治嘉

    細谷分科員 時間がありませんので、ちょっとこまかいことでありますけれども、これをお尋ねしたいのです。実は感染者、吸血病にかかっている人、たとえば鳥栖市あるいはお隣の町等では、国民健康保険でスタビナールという予防薬、治療薬を二十回以上注射しなければいかぬということです。ところが、副作用がありますからもうたいてい途中で放棄してしまう例が多いのですが、やっている場合に本人負担があるのです。その場合に、市町村は本人負担させるのが気の毒だものですから、市町村が本人負担分も負担しているのです。こういう問題については、小さいことでありますけれども、やはり徹底的に治療させるために、市町村も厚生省あたりでは気のつかないような悩みと負担をしているわけでありますから、こういう点について市町村の悩みを、たとえばこういう予防関係の費用の中で何らかの対策を講じてやるべきではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  123. 神田博

    神田国務大臣 いまの風土病の予防等につきまして相当額市町村が負担しておられるということについては、これはどうもお気の毒と申しますか、考えさせるものがあるようであります。直ちに私のほうから全部これを肩がわりするというようなわけにはまいらぬかと思いますが、この種のようなことはやはりこれは大きな社会問題でございますから、十分ひとつ検討いたしまして、将来善処するようにいたしたいと思います。
  124. 細谷治嘉

    細谷分科員 大臣からかなり前向きのこの問題に対する御方針なり御決意を承りましたから、ひとつこの線でぜひ十カ年計画を新たに検討し直して、四十二年以降万全の対策を講じていただきたいということを要望いたしておきたいと思います。  時間がありませんので、大気汚染の問題について、ごくポイントだけを御質問したいと思います。数日前のある新聞に出ておったわけでありますけれども、四日市の学校保健会なり四日市の学校医師会等で学童の健康診断を精密にしたわけですけれども、その結果によりますと、公害地域と非公害地域では明瞭な差が起こっておって、大体において八倍ぐらい咽喉等をおかされておる。四日市ぜんそく、こういうことが言われております。これは、最近の新聞に出たことばかりではなくて、この「恐るべき公害」という本の中にも、大体において公害地の学童の一割以上がのどをおかされておる、家族では三割ぐらいがおかされておる、こういうことが出ております。そういうことでこの大気汚染という問題は四日市の例ばかりじゃなくたいへんな問題になっておりますが、こういう問題にどう厚生省は対処していくか。事実、私ども公害問題を扱う場合に、厚生省が本気に腹をかまえてやらぬ限りは具体的には進まないのじゃないかと私は思うのです。この点についてひとつ大臣の所見を伺いたい。
  125. 神田博

    神田国務大臣 いまの現に起きつつある公害の被害の状況というものは、もうお述べになられたとおりであると私も考えております。私も先般四日市へ参りまして、実は親しくその実情を係官を帯同して参り調査をしてまいりました。百聞一見にしかずといいますか、あまりにひどいのに実は私も一驚を喫したくらいでございます。これをもっと早くから取り上ぐべきであったということはもう申し上げるまでもないことだと思いますが、手おくれであったと思います。しかし、手おくれは手おくれであったといたしましても、さっそくひとつ取り上げまして、特に公害問題に取っ組んでまいりたい、こう考えまして、今度の新年度の予算にも公害防止事業団というような公団もつくりまして、ひとつ真剣に取っ組んでまいりたいと考えております。除外の設備の設置あるいは土地利用の合理化その他一連の方途を関係各省と十分緊密な連絡のもとにどんどんと進めてまいりたい、こう考えております。
  126. 相川勝六

    相川主査 時間が参りましたから、ひとつ……。
  127. 細谷治嘉

    細谷分科員 公害防止事業団の話が出て、これも質問したいと思ったのですけれども厚生省の当初要求というのは大幅に大蔵からなたを加えられた。確かに事業団は発足いたしますけれども、やることは、新産都市の基本計画というもの、工特法に関する基本計画というものが認められたにかかわらず、そういう問題について取り組むというのは四十一年度以降に回されておるという現状なんです。端的に申し上げますと、第一のコンビナートにおける公害の被害ということは実態としてつかまれておるにかかわらず、第二、第三のコンビナートをつくる際にそういうものは生かされない。体質化しているのです。これは四日市ばかりじゃなくて構造的なものだと私は思うのです。こういう点で私はやはり政治の姿勢というものが必要であろうと思う。先だっての、一昨年ですか、厚生省の地域開発研究会が調査した結果に基づいても、こういう工業開発、都市開発という問題が抜本的に再検討されなければ、公害という問題は解決できないということを指摘しておることは御承知のとおりなんです。そういう点で、公害事業団ができましたが、通産との共管であります。なわ張り争いが起こるでしょう。しかも予算から見ても多くの期待ができない。もっともっと公害というものは前向きで——条例ができ法律ができても空文化しているのが現状であります。やはり主管をする厚生省が本格的に、体質化しておるこの公害問題あるいは新産あるいは地域開発と公害問題というものを、もっと社会開発を前提としてそういう経済開発が考えられるべきだという基本に立って進めていただかなければならぬと思うのです。時間がありませんので、これに対する大臣の決意を聞かしていただいて、その決意でひとつやっていただきたい、こう思うのです。
  128. 神田博

    神田国務大臣 いまの細谷さんの御意見は全くおっしゃるとおりに私も考えております。既存の公害についての取っ組み方、また将来新設される地域の公害問題に対する扱い方、これは両面ございますが、いずれにいたしましても私どもはかつてない熱意でひとつ取っ組んでみたい、こう思っております。それから公害防止事業団の誕生する経緯につきましてもいろいろ議論がございまして、われわれ十分ではなかったのでございますが、いろいろの都合であの辺で話がついたわけでございます。予算も、当初のことでございますから少ないことはおっしゃるとおりでございますが、その意気込みでひとつ大いにまじめに取っ組んで、しかも効果をあげようという考えでございますから、なおまた将来ともよろしく願いたいと思います。
  129. 細谷治嘉

    細谷分科員 厚生省の調査による報告書を拝見いたしますと、私は、その線でやっていく場合には、せんだって閣議決定された基本計画というものについて、その内容なりやり方について根本的に検討を加え直さなければ、この公害問題は依然として、体質的なものとして多くの害を国民の上にもたらすのじゃないか、こう思います。その辺も含めて、ひとつ厚生省として対処していただきたいということを強く要望しておきたいと思います。終わります。
  130. 相川勝六

    相川主査 次に、滝井義高君。  滝井君にお願いしますが、あなたはひとつ一時十分くらいまでに終了を願いたいと思います。
  131. 滝井義高

    滝井分科員 三点お尋ねをいたします。要領よく御答弁をお願いいたしたいと思います。まず第一は、清掃事業です。第二番目は、看護婦の量と質との確保です。第三番目は、老人福祉の中の、伊藤さんもちょっと触れておりましたが、老人クラブです。その三点です。政府に質問内容はいっておりますので、十分の答弁ができることを期待して質問をいたします。  まず第一に、清掃事業でございますが、この清掃事業の質問に入る前に政府に特にお尋ねをいたしたいのは、われわれはかつて生活環境施設整備緊急措置法という、下水道や下水道の終末処理、それからし尿処理、ごみの処理、これらのものの五カ年計画をつくる法律を通したのでございます。この五カ年計画の実施の内容は、一体現在どういう状態で進行をしておるかということです。同時に、最近政府は、中期経済計画の中において、生活環境の施設整備に関する計画をやはり立てておるようでございます。この五カ年計画と中期経済計画における生活環境の整備の計画との関係、この二点をまず御説明願いたいと思います。
  132. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 お尋ねのございました生活環境施設整備緊急措置法が国会で審議されましたときに、私どもがその緊急措置法で申し上げました五カ年計画は、おおむね当初の計画どおり現在進行しておりまして、昭和四十二年度末までに八千万人分のし尿を衛生的に処理し、ごみを衛生的に処理するという計画、しかもその内容は、約二千五百万人分を下水道で処理するという計画が初期の計画どおり進行いたしております。この計画と先般決定されました中期経済計画との関係でございますが、年度が一年ずれております。生活環境施設整備緊急措置法に基づきます五カ年計画は昭和三十八年度から四十二年度まででございますが、中期経済計画は三十九年度から四十三年度までの、一年のズレがございますが、中期経済計画の中で一月二十二日に決定を見ました、し尿、ごみ等を含めた生活環境関係の総ワクの中で十分この五カ年計画が遂行できるようになっておりまして、私どもとして、生活環境施設整備緊急措置法に基づく五カ年計画の閣議決定を近く行ないたい、かように考えております。
  133. 滝井義高

    滝井分科員 大臣、いま説明を聞いておわかりになりましたか。いいんですか。法律を通したときには、舘林さんをはじめ政府の諸君、自由民主党も立ち会って、生活環境施設整備のこの五カ年計画というものは必ずこのとおりに予算をつけてやりますと、こういうことになっている。ところがいま説明があったように、今度は突如として中期経済計画の中の環境衛生関係の施設の五カ年計画が出てきた。一体どちらが本物なのかということです。
  134. 神田博

    神田国務大臣 これは両方とも本物であるというふうに考えております。
  135. 滝井義高

    滝井分科員 両方とも本物と言っても、大臣は、中期経済計画の内容を知っているなら説明してみてください。非常に違うのです。下水道で言いますと、この緊急五カ年計画よりか今度の中期計画は千四十七億多いのです。それから下水道の終末処理で言うと、中期のほうが三百四十五億多い。それから、し尿処理で言うと三十八億少ないのです。ごみの処理で言うと百二十三億多いのです。違うのです。どちらでもいいと言っても、第一、年次も違いますし、それからいま舘林さんも、予算は五カ年計画どおりにいっていると言うが、ちっともいっていない。いっておりますか。五カ年計画で見ますと、たとえば四十年度でし尿とごみだけを見ると、し尿は二百五億円です。それからごみの処理が百億円でしょう。ことしの予算をごらんになると、どうなっておるかというと、し尿は四十四億九千万円の補助金と六十七億の起債でしょう。百十一億九千万円。この足らぬ分は、おそらくあなた方は自治体に追加しろということになるでありましょう。それから、ごみは九千四百万円でしょう。ごみの予算は補助金九千四百万円、起債が六十七億九千万円。そうすると、百億にごみがなるためには、あと三十二、三億の金を地方自治体が追加しなければならない。そんなもの一般財源で追加することができますか。いまの自治体はどこもここも赤字で、公営企業がみな赤字で困ってお手あげだ。それから国民健康保険にばく大な金をつぎ込まなければならぬ。人件費が上がってどうにもならぬといってお手あげのときに、ごみの処理に自治体が自己財源を三十二億も持ってこい、あるいはし尿にも相当のものを持ってこいということになると、これはできない。二つの計画をつくり、そして五カ年計画のとおりにやっておりますと言っておるが、ちっともやってない。一体これは、どちらの計画であなた方はやるつもりですか。しかも、いま言うように閣議決定した。中期計画も近いうちに閣議決定をいたします。二つの計画を閣議決定するなんというばかげたことはない。
  136. 神田博

    神田国務大臣 御承知のように、この計画に一年のズレがありますものですから、そこで私、先ほど来どちらも大同小異でそう違ってない。どちらも尊重してやっていくということでございます。
  137. 滝井義高

    滝井分科員 大同小異と言うけれども、下水道で千四十七億円も違うのですからね、大同小異じゃないですよ。それから、たとえばごみのごときは百二十三億も多いわけでしょう。そうしますと、これは最終年度になったら相当ばく大な事業量になってくるわけです。その分に対して補助金なり、あるいは起債というものをほんとうに認めてくれなければいかぬ。ところがいまの段階で見ると、そういう状態になっていないわけです。前の小林大臣はし尿大臣といわれたんです。し尿に全力を注いだ。だから、し尿だけは何とか曲がりなりにいっていますよ。しかし、ごみその他はいっていない。オリンピックその他のために、なるほど東京の下水道の終末処理場はできたかもしれないけれども、他の都市は全部いっていないでしょう。しかも補助金をたった九千四百万円つけて、ごみはこれで終わりだ、こういうことになる。ごみのための補助金の率というのは一体幾らですか。
  138. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 九千四百万円でございます。補助率は四分の一ということになっております。
  139. 滝井義高

    滝井分科員 緊急整備五カ年計画でごみを見ると、四十年度は百億やる。百億の事業をやるのに九千四百万円で、しかもそれが四分の一の補助ということでは計算が合わぬじゃないですか。これでやるというのなら、地方自治体は、いま言ったように三十二、三億の自己財源を持ち出さなければならない。われわれにあなた方が約束をした。この法律を通してくれたならば、五カ年計画は約束のとおりやりますという約束ですよ。約束をしたのを実行しないなどという、ばかな政治はないですよ。時間ばかりをここで制限するのが能じゃない。こういう約束をきちっと守らないから、結局時間が三十分で終わらぬことになってしまう。一体、大臣、これはどうするんですか。われわれが法律を通すときには、必ずこのとおりの五カ年計画を実施いたしますということで一われわれ、一筆はとらなかったけれども、今度の両党の確約になっておりますね。舘林さん知っておるはずです。当時の自由民主党の社会部長なり国会対策も、これは了承しておるはずです。それがいまになって、五カ年計画が実施できにくい状態にあるものだから、ごまかして、そして一年先に延ばして中期経済計画と同じでございますと言うが、同じじゃない。額も違うし、内容も違ってくることになる。
  140. 神田博

    神田国務大臣 いろいろお話しでございますが、いまの補助金が少ないということは、モデル地区だけにひとつ出そうというような考え方一つあるということでございます。それから融資の面で施設をやらせよう、こういうような考えがございまして、そういう考えでひとつ進めてまいりたい、こういうわけであります。
  141. 滝井義高

    滝井分科員 融資でやるといっても、融資が六十七億円しか出ていないわけですから、百億にならぬわけですね。国が責任を持って百億だけの事業量をやらせますと言うからには、それに見合う補助金を出してもらわなければいかぬ。百億の四分の一でしょう。九千四百万円がどうして四分の一になりますか。これはまるっきりつかみ金の見舞い金じゃないですか。だからこういう点が、国会で約束をされておることが絶えず破られてしまうんですよ。私、これは納得できない。これはもう一回やり直してもらいたいと思います。やり直してもらわなければ、約束を実行せぬような国会だったら、幾ら国会でやったってしょうがない。しかもその中期経済計画との関係がさっぱりわからない。大同小異、同じものですと言うなら、中期経済計画をつくる必要はない。違うからこそ、中期経済計画が必要になってくるわけでしょう。二つの計画があるんですよ。こういうめかけと本妻みたいなものをつくってはいかぬ。真実は一つです。政治も一つの道を歩まなければならぬ。  次に、こういう清掃事業において働く人たちの基準というものは、交付税を算定するとき、たとえば十万都市で例をとるとどういうことになっておるのですか。これがまた、自治省のもの考え方厚生省もの考え方と食い違っておる。本年はどういう基準で、交付税を算定するとき人数を認めていきますか。
  142. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 ちょっとここに三十九年度の資料がございませんが、三十八年度の人口十万人の市町村に対する地方交付税の標準の人員は、ごみ処理に吏員二人、雇用人二十七人、し尿処理及び終末処理場に吏員二人、雇用人十五人となっております。
  143. 滝井義高

    滝井分科員 それを四十年度に推計したら、どの程度になるのですか。どういうような予算を自治体で一体組んだらいいのですか。三十八年度の、二年も前のものをもって言ったって、いまのように世の中がどんどん進んできたら話にならぬ。し尿だってごみだって、急激に都市では増加しておる。
  144. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 ちょっとここに数字がございませんが、三十九年度は三十八年度よりかなり増員されておりますし、四十年度は、さらに増員するように自治省に連絡をいたしております。
  145. 滝井義高

    滝井分科員 自治省にあなたのほうからどのくらい要求しておりますか。
  146. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 三十九年度が、たぶん六十七人であったかと思いますが、さらにそれを、明確ではございませんが、八十人程度に増員する交渉をしておると思います。
  147. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、六十七人を八十人程度まで要求するつもりだ。自治省や厚生省が入って、荻野さんが委員長になってやっておる専門の委員会がありますね。これは一体幾らくらいにしたらいいと言っておりますか。
  148. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 百二十人であったかと思います。
  149. 滝井義高

    滝井分科員 これは厚生省と自治省が入って、しかも自治省の大先輩である荻野さん——地方財政の有名な人です。いろいろな本も書いておる。こういう公平なところで見て百二十人必要だ、それをあなたのほうが八十人程度要求をしておる、こういうのを認められる客観情勢がいまありますか。
  150. 舘林宣夫

    舘林(宣)政府委員 地方職員の増員というものは非常にむずかしゅうございますし、急激に人員をふやすということも実際上できにくいという事情から、漸次百二十人の線に近づけたいということで、本年度も前年に比べて二十人程度ふやし、明年度もその程度ふやすということでだんだん百二十人に到達いたしたい、かように考えております。
  151. 滝井義高

    滝井分科員 百二十人に到達するうちには、だんだんごみの量もふえてくる。ごみというものは文化の一つのバロメーターです。これでは追いついていけないですよ。し尿だってごみだって、なかなかたいへんなことになって、大都市は臭気ふんぷんたる状態になっちゃう。時間がないからだんだんはしょっていくが、中期経済計画による生活環境整備計画と五カ年計画との関係がさっぱりわからない。いまのような御答弁では、どっちも同じだ、同じなら二つつくる必要はない。同じでないからこそ二つ必要です。そうすると、一体いずれをとるかというとはっきりしない。どちらもりじですと言うなら、どっちをとっていいかはっきりしないでしょう。しかも五カ年計画のほうは閣議決定をしておる。中期経済計画は近く閣議決定するというのなら、あとのほうが本物になりそうな可能性もあるわけです。だから一番大事な社会開発をやる、社会開発は三本の柱が要ります。一つは住宅と生活環境の整備です。一つは社会保障の拡充強化です。一つは教育文化の向上です。そしてそれに過密都市対策を加える、こう言って予算委員会で答弁した。その第一の柱の生活環境の五カ年計画が、どれが本物かがわからぬようなことでは処置ないですよ。これは予算委員会が終わるまでに意思統一をして、明確に出してもらいたい。  次は、最近医療問題が非常にがたがたしてきている。ある厚生省大臣であった人が、医療行政だけが厚生行政ではないという名言を発した。まさにそうなんです。ところがいまや厚生行政というのは、医療行政に取りつかれてしまって、にっちもさっちもいかぬというのがいまの状態なんです。だから、おそらくいまの生活環境なんというものは忘れられてしまって、そういうように前の計画があるのに、またあとから、前の計画を取り消さぬうちにあとの計画が出るのじゃないかというような感じがするのです。こういう問題は、やはりひとつ快刀乱麻できちっと整理してもらうが、医療問題の中で、もう一つ重要な問題は看護婦さんの不足の問題です。  一体、現在看護婦の有資格者が幾らおって、そしてその働いておる人が幾らおるのか、そして現在の公的医療機関の看護婦の充足率というものは、どの程度にあるのかということを、先にざっと数字を言ってみてください。
  152. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 看護婦の有資格の者は、四十五万くらいであると思います。現在働いております数、これは病院、診療所、歯科診療所を含めまして毎年一万くらいずつふえておりまして、三十八年末におきましては十九万三千八百二十三名でございます。三十七年末は十八万三千三百四十名でございまして、大体一万くらいふえている、こういうような状態でございます。公的医療機関の看護婦の就業しておりますパーセントは、ちょっと手元にございませんで申しわけございませんが、国立病院関係につきましては大体現在九五.五%でございます。四月に卒業いたします人間をできるだけ確保させるようにいま努力しておるところでございます。
  153. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、もしいまのあなたの数字のように、国立病院の充足率九五%程度というなら、看護婦の不足の実態はないわけです。なるほど四・五%の不足をしておるけれども、このくらいのことなら何とでもなる。実際に医療法において、あるいは健康保険法においてきめられた人間が、一体どの程度に看護婦として配置されておるかということです。配置をされておるけれども、その中に資格のない、無資格者がおるということになればたいへんです。無資格者は一体どのくらいになりますか。看護婦さんという名前はあるけれども、実際に看護婦でなければ話にならぬ。
  154. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 病院、診療所、これは全体でございますが、働いております数といたしまして、先ほど申しました三十八年末の十九万三千八百二十三名というものは、看護婦、准看の合計でございまして、そのほかに無資格が十一万七千九百三十九名働いております。これは看護助手でございまして、先ほど申しました数に入っていないわけでございます。それから、先ほど申し上げました国立病院の数は看護婦の数でございまして、看護助手の数は入っていないはずでございます。
  155. 滝井義高

    滝井分科員 それならば、こういう国立病院より民間の看護婦の給料のほうがあるいは高いかもしれません。そうしますと、一体どうしてこういう実態の中から看護婦不足の声が出るのですか、その原因は一体どこにあるのですか。看護婦が不足だ不足だといっておるのに、そしていまのように公的医療機関では給料が安いのだからというので、みんなよそに行ってしまう。とすると、看護婦の不足の実態というものはないじゃないですか。とすると、あの声はうその声なんですか。
  156. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 全体の病院、療養所、これは医療法によります規定上の病院、療養所でございますが、それのベッド数と看護婦の数を比較してみますと、三十年末におきましては六・一ベッドに一人くらいいたのでありますが、これは結核も何も一緒に入っています。三十八年末におきましては五二二八というように、大体一〇%くらい改善をせられているのでございますが、御承知のとおり医療法では四人に一人、また結核、精神では六人に一人というのでございまして、こういうふうな医療法上の定数から比べますと、全体といたしまして一万七、八千の不足に、三十八年末でなる計算であったと思います。しかし、ただ医療法上の院病におきましての数の問題だけでなく、さらに診療所におきまして特に不足がはなはだしく起こっておるようにわれわれは感ずるものでありますが、また病院間におきましても、病院の地域差により、施設によりアンバランスがある。たとえば大学病院などにおきましては相当な、基準としております四人に一人以上の看護婦を持っておりますし、そういうようなところで施設によってのアンバランスも起こっておる実情でございまして、この要求は、医療技術の向上、また基準看護法の採用とか、さらに労働時間の短縮等によりまして看護婦さんに対する需要が高まっておる、そういうわけで供給が追いついていけない、こういう状態にあるのだと考えます。
  157. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、三十年には六・一ベッドについて一人であったものが、三十八年には五・三八になった。しかしこれは医療法に直してみると四人に一人、あるいは結核療養所だったら六人に一人だ、ところがそれが守られていないということなんですね、いまの答弁は裏を返して言えば。そのとおりにもうできないのだからやむを得ない。そのとおりにやったら一体どの程度の不足になりますか、こういう質問をしているわけです。この現状の把握なくして、医療費の問題だって、医療費対策だって立たないわけでしょう。だからその現状は、一万七千というけれども、その数が、どうもいまのようなことになるとあいまいもことしてくる。医療法の法律の規定に照らして——法治国家なんだから、法律の規定に照らして一体どの程度の不足になるのかということなんです。ある人によると四万と言い、六万と言う。医療法でやったら六万だ、あるいは四万だ、こう言っている。ところがあなた方は、不足は一万七千だ。一万七千の不足で対策を立てるのと、四万の不足で対策を立てるのと、たいへんな違いになるわけですよ。厚生省の数字というのは、そのときそのときでいつもみな違うのです。たとえば健康保険の質問をすると、八百四十億の赤字がございますと言っておったら、十日ぐらいたったら六百六十億になっちゃったのです。いずれこれは機会を改めて尋ねますけれども、こういう数は真実をあらわすのだから、お互いにこの数を基礎にして議論をしなければならないのに、一万七千の根拠はどういう形のものが一万七千なのか、いま言ったように六・一ベッドに一人置いて一万七千になるのか、医療法どおり四人に一人、結核は六人に一人で一万七千になるのか、そこらあたりをもう少し明確にしておいてください。
  158. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 資料を見ないとはっきり申し上げにくいのでありますが、一般病院は四人に一人でございます。結核、精神が六人に一人、らい療養所は入院患者四人に一人——療養所の中で入院というのはおかしいのでありますが、重症病棟に入院しておりますのが四人につき一人、あとは外来として計算し、三十人に一人、一般病院の外来は三十人に一人、診療所は一カ所当たり〇・七人、こういうふうに計算をいたしまして、三十八年末におきまして一万九千百六人不足という状態でございますが、こういうふうな計算から、昭和四十五年末までに二十六万七千人をこれで確保していきたいというふうな計画を立てて、看護婦及び准看護婦の増員増加に、また確保につとめておるわけでございます。
  159. 滝井義高

    滝井分科員 昭和四十五年までに、いま十八万人程度ものをとにかく二十六万人にしよう、こういうことになるわけですねねこれはなかなかたいへんな、困難な道ですよ。それは昭和四十年以降は、新規若年労働力というものは急激に減っていくのです。娘一人に婿八人になってしまって、相当の初任給のいいところでなければ来ないわけですよ。こういう点で問題がある。だから、こういう実態はあなたのほうで精細に調べて、そしてきちっとしたものにしてやはりその対策を立てられていかなければならぬ。そういうあいまいもこたる対策だから、船後さんのほうでちょっとやられる。船後さんおられぬけれども、やられてしまう。だから、もう少し精細に立ててやらないと、看護婦が足らぬ足らぬといって、三十九年度の予算が一億五千六百十万円、四十年度が一億六千九百九十三万五千円、一千三百八十三万五千円しか予算はふえていないでしょう。こういうことでは話にならぬわけですよ。もう少しきちっとした対策を立てて、ひとつ資料も出してみてください。この数字というのはしょっちゅう狂っておる。もう少ししっかりやっていただきたいと思うのです。  それから、時間がありませんからフルスピードで、第三番目の老人福祉です。伊藤さんがちょっと触れられましたけれども、少し突っ込んでお尋ねすることになるわけですが、三十八年の七月に老人福祉法が制定をされておる。そして老人に対するもの考え方が急激に変わってきたわけです。御存じのとおり、立法的に見ても、いままで、生活保護を対象とする老人の問題、低所得の老人の問題が、いままでの三十八年七月の老人福祉法の立法以前においては、中心として論議をされておったわけです。ところがあの法律ができて以来、老人一般に対する社会福祉をどうするかというより、もの考え方がぐらっと大きく転換してきたわけです。転換をしてきたために、わかりやすいことばでは、四つの問題が老人福祉の問題として前面に出てきた。一つは、老人の健康の問題です。一つは、老人の生活安定の問題です。一つは、精神的な安定の問題です。一つは、老人の救済の問題です。わかりやすい、しろうとわかりのことばで言えば、その四つの問題です。この四つの問題を基礎にして、いろいろの対策が講じられようとしておる。しかし、時間がありませんから対策のことはやめにして、まずお尋ねいたしたいのは、御存じのとおり日本の人口構造が急激な変化を遂げつつあるわけです。いわゆる富士山型の、ピラミッド型の人口構造がつぼ型の人口構造になって、老人人口がふえて、生産年齢人口がふえて十五歳以下のいわゆる若年人口が減るという、こういうつぼ型の人口構造になってきているわけですね。その場合に、私たちがこういう人口構造の変化に対応して老人というものをどう考えるかということで、新しく出てきていると思うのです。その場合に、こういうようにつぼ型に人口構造が変化しておる日本において、老人人口の推移は一体どういう形になっておるかということを、六十歳以上の老人人口はどれくらい、六十五歳以上どれくらい、これでいいですから、それをひとつ説明してください。
  160. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 これは厚生省統計調査部の人口推計による推計でございますが、昭和四十年を見てみますと、六十歳以上の人口は、総人口九千八百四十万のうち九百五十三万八千人でございます。六十五歳以上は六百十八万人。それが四十五年には、総人口一億三百三十二万のうち、六十歳以上の人口が一千百九万人、六十五歳以上の人口が七百三十五万人になります。
  161. 滝井義高

    滝井分科員 大臣、いまお聞きのとおり、六十歳以上が現在九百五十三万、人口の一割はあるわけですね。六十五歳で六百十八万です。これが四、五年すると、六十歳以上が依然として千百九万と非常にふえてくるわけです。六十五歳も七百三十五万と、老人人口が急激に増加をするわけです。そこで一切のことは抜きにして、老人福祉法では一年に一回健康診断をやることになっておるわけです。そうすると、あなた方は、一年に一回の健康診断を、法律ができたときにも法律違反をやって、三年に一回にするということをきめたわけですね。予算措置をしたわけです。ことしは二年に一回です。これは一体毎歳以上の人の健康診断をやるつもりなんですか。   〔主査退席、井村主査代理着席〕
  162. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 健康診断の対象は六十五歳以上でございます。
  163. 滝井義高

    滝井分科員 そうすると、四十年には六十五歳が六百十八万人おるわけです。六百十八万人の御老人の身体検査を三年に一回やりよるうちには、へますると死んでしまいますよ。なるほど平均寿命は延びて、男性は六十七歳、女性は七十二歳です。しかし女性のほうが、最近は百歳以上を見るとずっと多いのですけれども、三年に一回です。今度予算を奮発して二年に一回、二年に一回になったら、それじゃ六百十八万人全員、少なくともその半分やっておるかと思ったら、九十二万八千人でしょう。九十二万八千人しかやらないのです。これでは日本における疾病というのが、脳溢血とかガンとかあるいは心臓病という老人性の疾患になってきておるときに、二年に一回か三年に一回、しかも全員やるわけではないわけでしょう。一割ちょっとしかやらないのですね。だから、自分の番が回ってくるまでには十年かかってしまうのです。少なくとも、自分の番が回ってくるまでには五年かかるのです。こういう政策が老人福祉の政策です。こういうことでいいのかということです。また、こういうけちな予算を出す大蔵省大蔵省だと思う。少なくとも法律で一年に一回身体検査をやるのだときめたら、おじいちゃん、おばあちゃんのからだを見るのだから、全国の開業医、医療機関を動員して、たとえば日曜日一日は休診をやってもらってもやるぐらいの態勢をつくらなければならぬ。そういうことで予防ができて、医療費が減ってくるのです。こういうことをやっていないのです。こういうところにも、あなたと武見さんとがけんかせぬで協力してやったらいいのです。こういう点が抜けているのですよ。大事なところが抜けている。じょうずの手から水が漏れると言うけれども、へたの手からみな水が漏れてしまっている。こういう点は非常に不幸なことでございまして、自由民主党の支持者というものはみな御老人が多いのですよ。自由民主党が今日天下をとって、今日このように生産性が伸びてきておるというのは、現在の六十歳、六十五歳のおじいちゃん、おばあちゃんが働いたから  こそこの高度経済成長があり、自由民主党の天下があるのですから、恩人ですよ。この恩人に対する処遇というものが二年に一回、しかも百万人以下の健康診断しかやらない。こういうけちな政策をやっておって、人間開発の政治でございます。人間尊重の政治でございます。こういうばかげた  ことを言っている、そういうことではいかぬですよ。大臣、どういう反省をされますか。
  164. 神田博

    神田国務大臣 方針としては全体をやろう、対象は全体を考えておるわけでございますが、手が回らぬので、大体いま三分の一ぐらいのことを考えておるのであります。しかし、いま滝井委員のお話もございましたように、それは非常に大事なことでございますから、できるだけみんなに、ひとつまんべんなく回れるような措置を考えていきたいと思います。
  165. 滝井義高

    滝井分科員 これは三分の一にならぬですよ。六百十八万人のうち、九十二万八千人しかことし予算をやらないのです。ですから、六分の一以下です。だからそういう形、老人福祉を唱えながら法律をつくって、前向きの形をつくったけれども、身体検査は三年に一回だった。今度は少しやかましく言われたら二年に一回になった。来年は全員やるのならいいのだけれども、しかしいまの状態なら五年に一回でも回ってこない。そのうちには命がなくなってしまって、たいへんだ、こういうことになる。こういう点はもう少し科学的に検討してもらいたい。  それから、これで終わっておきますが、最後に老人クラブの問題です。現在の予算においては、老人クラブの予算が二億四千万円あります。去年は二万の老人クラブを認めておった。今度は四万の老人クラブになっておるが、老人クラブの現状というものは、一体どういうものがあるかということです。老人クラブの現状というものは、あなた方が当時おつくりになった意図というものは、  一体どこにあるかということです。したがって、その老人クラブをおつくりになった目的は何であり、そしてその老人クラブはどういうあり方をするものなのか。
  166. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 老人クラブは、これは私どもがつくったものではございませんで、自然に各地域の老人が自主的に結成をしたものが、老人福祉法が制定される以前からあったわけでございます。そういう現実に対しまして、老人福祉法の第十三条に、そういうふうな地域の老人の積極的な自主的な活動に対しては、大いに市町村に対しても、国もそれに対して援助をするようにつとめようということが規定されておりますように、そういう現実の姿に対して、それがいいことであるとして、市町村、都道府県、国が補助金を出すというのが老人クラブの実態でございます。したがいまして、私どもがこれに対してこれを一方の方向に持っていくとか、そういうふうな指導的なことは一切私ども考えないわけでございますが、老人クラブの本来の形は、老人の生活の向上なり教養の向上、あるいはレクリェーション、そういうふうなことで結成されておるものでございますから、老人の人口が増加するに従って、これは私どもとして、現在行なわれている自主的な活動である老人クラブをそのままの方向で指導をしていく、あるいは助成をしていくという方針をとっておるわけでございます。
  167. 滝井義高

    滝井分科員 私、少し調べてみた。老人クラブの先進国はイギリスで、イギリスは一九〇五年にできておるのです。日本でも、私が県会議員のころに新宿に生活館というのがあって、塚本哲という方がいらっしゃいます。この方がやはり相当熱心だった。日本でも調べてみると長野県にある。その発想はどういうところにあるかと言うと、結局青年団、婦人会というものができて、そして社会教育的な活動をやっておるわけです。ところが、老人だけはそういうものがない。老人にそういうものがないということはやはりおかしいじゃないか、地域の社会活動というものは、当然老人も地域の住民として地域の発展に寄与することができるはずなんだから、したがって青年なり婦人は青年団、婦人会があるならば、老人にもそういう地域的な社会活動をやる老人クラブがあっていいじゃないか、こういう形が出てきて、長野県で非常に発展をして成功しているのですね。全国的モデルケース的なものが相当できているわけです。そこで、いま全国の状態を見ると百鬼夜行ですよ。はなはだしいのは、補助金をもらって月に一回集まっていなくて、そうしてボスの選挙母体に利用して、春秋二回観光旅行をやる、こういうものもある。それから、酒を飲んで軍歌を歌って終わるのもある。ここはお国を何百里というようなのを歌うのでしょう、あるのです。それから敬老会的なものもある。それはいろいろあってもかまわぬけれども、やはり老人福祉法の精神から、これをもしあなた方がとうとい国の金を出してやるというならば、やはりそこに——これは社会教育の公民館その他でやられているのですよ。われわれのところにもあります。だから野放しにしておったのではいかぬと思うのです。これは率直に言って、さいぜん言ったように自由民主党の基盤の功績者です。それを厚生省の役人の立候補者の方が、その選挙基盤に利用するというようなことはないだろうけれども、そう痛くもない腹を探られるようなことではいかぬと思うのです。やはりこういうものに二億の金を出せば、その金が生きた形で使える形にしなければいかぬと思う。その結果、自然に自由民主党の選挙基盤になることはやむを得ぬと思うのですよ。しかし、やはりそういう金を出すならば、佐藤さんじゃないけれども、われわれの膏血をしぼった金なんだから、したがってそういうものが出ていけば地域社会に寄与して、あなたのいま言われるように老人の生活の向上ができ、教養の向上ができて、同時にレクリエーションができる、精神安定ができる、老人がおるために一家の家庭が明るくなる、老人がおるために一家が暗くなるのじゃないという形をつくることがほんとうだと私は思うのです。そういう点では、牛丸さんのところは低所得階層や貧しい人ばかりを相手にしておるけれども、中には、この老人問題については、青年団、婦人会の文部省の社会教育よりおれのほうは負けぬぞというぐらいの新機軸を一つ出したらどうですか。
  168. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 ただいまの滝井先生の御説は私どもは全く同感でございまして、老人クラブの実際の数は、補助対象四万よりははるかに多いわけでございまして、ただいまのような私どもの老人福祉法の趣旨に合ってないようなものは次第に整理をしていくように、あるいは目的に沿うように変革していくように、現在都道府県にも指導しておるわけでございまして、ただいま御指摘がございましたような方向に老人クラブを持っていくというのが、私どものこれからやっていく方針でございます。
  169. 滝井義高

    滝井分科員 これでやめます。しかし、せっかくこういう目新しい前進的なものをつくったのですから、その指導を、おとなですから、そうやってもらわなくてもかまわぬのです。しかしながら、やはり予算を出したら、その目的が達成でき、法の精神に合ったようなぐあいにこれを善導していく、ゆるやかにみんながその方向に流れるようにしていただきたいと思います。  これで終わります。
  170. 井村重雄

    ○井村主査代理 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後は二時より再開することにいたします。  この際、暫時休憩いたします。  なお、余分のことでございますが、午後二時は時間励行で行ないます。    午後一時二十七分休憩      ————◇—————    午後二時二分開議
  171. 相川勝六

    相川主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管に対する質疑を続行いたします。田口誠治君。  田口君に申し上げますが、あなたは二時三十五分まで。
  172. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間の制約もございますので、私のほうからも簡潔に質問申し上げて御回答いただきたいと思います。  まず第一に、私は精神病院の内容の拡充強化ということについて、若干質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、現在精神病院というのは公立、私立含めましてどれだけあるか、それぞれ別に数字をお示し願いたい。
  173. 若松栄一

    ○若松政府委員 三十九年の六月末現在でございますが、総数が十四万四千八百二十三、そのうち公立が二万五千八百四十二、法人あるいは個人のものが十一万八千九百八十一という数になっております。
  174. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これは私の把握しておる数字よりものすごく多いのですが、それに間違いないでしょうね。
  175. 若松栄一

    ○若松政府委員 間違いありません。
  176. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そうしますると現在、ただいま回答のありました数の精神病院があるわけなんですが、ただいまの数というのは、一般の病院の中に精神科を設けておる病院を含めて数に入っておるのか、それとも精神病専門の病院であるか、この点をひとつお答えいただきたい。
  177. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいま申し上げました病院の数はベッドの数でございます。ベッド数で出しております。それでこのベッド数は独立の専門の精神病院のベッドも、あるいは一般の病院における精神病床も含めております。
  178. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこで病院の数というのはどのくらいあるのですか。公立、私立を分けてひとつ数字を示していただきたいと思います。
  179. 若松栄一

    ○若松政府委員 病院数で申しますと、国立四十七、公立百十三、公的医療機関三十二、私立七百八十六ということであります。
  180. 田口誠治

    田口(誠)分科員 この私立の七百八十六というのは一般内科の中に精神科も含んでおるという、そういうのは入っておるのですか。精神病院独立のものですか。
  181. 若松栄一

    ○若松政府委員 これは総合病院で、精神科病棟を持っているものが含まれております。
  182. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこで、いま精神病患者の取り扱いにつきましては、今度精神関係の法案が提出されておりまするし、こういう方面へ政府としても人間尊重、人つくりというようなことから非常に力を入れておられるわけです。そこで公立の場合と私立の場合と仕分けをして、いま困難になっておりまするのは、おそらく私立病院の場合には、また総合病院の場合には、開放療養施設というようなものがないと思うのですが、精神病患者治療する上においては、時期がくれば開放療法というのも施されなくてはならないわけなんです。したがって大方の病院へ行ってみますると、そういうような施設が完備しておらないわけなんですが、こういう点についてどのように把握されており、それから必要があればどういうように拡大されていく用意があるか、ひとつお聞きをしたいと思うのです。
  183. 若松栄一

    ○若松政府委員 お話のとおり精神病の治療は単なる収容ということでなしに、化学療法を行ない、かつ開放的な社会化の方向で治療が進められなければなりませんので、そういたしますと、作業療法あるいはレクリェーション療法というようなことがぜひ必要になってまいります。これは世界的にそういう趨勢になっております。したがって公立の病院等におきましては逐次そういう形になっておりますが、残念ながら私立では、やはり大きな敷地あるいは余分な施設等が必要になってまいりますので、おそらく経営上の問題もございましてなかなかそういうところまでいかないという実態がございます。そういう意味では、私どもできるだけ公立の施設で、採算を度外視してもそのような適正ないい治療が行なわれるような方向に進めてまいりたいということで、その点の施設あるいはその他の公共の施設を増設するようにつとめてまいってきておるわけでございます。  なおそういう意味で、治療の方法といたしましてもいわゆる中間施設、病院と家庭との間の中間的な施設というものが必要であるということで、現在国立精神衛生研究所等で、まず今年あたりから試験的にやってみて、これを広げていきたいという方向で進んでおります。
  184. 田口誠治

    田口(誠)分科員 考え方は了解いたしますが、実際に予算の面その他から考えてみれば、いま回答のありましたような考え方を実現に移すということはほど遠いような気がするわけです。  それで私は、その他の施設のことは別といたしまして、いまの開放療法をする一番身近な公園、グラウンド、こういうようなものの施設に対する予算を今年どの程度持っておられて、何カ所くらい新設されようとしておるか、案がございましたらひとつお示し願いたい。なければないでよろしいですよ。
  185. 若松栄一

    ○若松政府委員 精神病患者の開放療法のために、特別に公園その他の施設をつくるということは考えておりませんので、予算はございません。
  186. 田口誠治

    田口(誠)分科員 精神病患者を療養する場合には、ある時点におきましては公園とかグラウンドとか、こういうところに開放をして治療する必要が絶対にあると思うのです。このことがなければ、退院させる時期とか、あるいは退院させてからまた再発するというようなことも非常にあるわけなんで、病院にはこうした施設が絶対必要であろうと思うのです。そういう点の必要性は別に考えておいでにならないのですか。
  187. 若松栄一

    ○若松政府委員 通常、病院の敷地内に運動場とか作業場、農場というようなものを持っておりまして、また雨天などにいろんなレクリエーションができるような体操場程度ものを持つというようなことは、公立の施設ではしばしば見られるわけであります。
  188. 田口誠治

    田口(誠)分科員 いま答弁ありましたようなことは若干ありますが、私は少なくとも国立の療養所には、いま申しましたような開放療法のできるような施設を完備しなければならないと思うのです。現在そういう予算もとっていない。またあまりそういう方面に力を注いでおいでにならないようでございますけれども、これは精神病患者を指導する上においては絶対不可分な施設でございますので、こういう点に厚生省としては今後心をいたしていただいて、開放療法のできるような施設を新設していただく、このように希望を申し上げておきます。  それから開放療法の関係もそうですか、精神病患者治療する場合には、健保なんかでかかった場合に点数に入らない部分があるのです。治療をしたものが何点と点数に入れられない、そういうものがあるわけなんですが、こういう点はやはり十分御認識いただいてあるかどうか。
  189. 若松栄一

    ○若松政府委員 治療で点数に入らないとおっしゃいますのは、たとえば作業療法とかレクリエーション療法ということばを使っておりますが、これについては現在点数の設定がございません。このようなことを濃密に行なうような場合に、将来そのような点数を当然設定すべきであると私どもも存じておりますが、そのための専門の、たとえば現在要請されておりますPT、OTというような専門職種というようなものの確立もまだできておりませんために、現在のところ点数設定ができない状態でございます。
  190. 田口誠治

    田口(誠)分科員 その点は研究していただきたい。  それから先ほど公立、私立のベッド数を数字でお示しいただいたわけですが、いま精神病関係のお医者さんの組合から、現在のベッドより倍くらいにふやしてもらいたいという要請が出てきておりますね。これは実際にベッドが足りないということであり、その施設が足りないということなんですが、この点につきましては今年度はどの程度内容を拡充されるのか。そしてまた今後、こうした直接の陳情が来ておるのだから、この問題を解決されるためには年次計画としてどういうようにしていかれるつもりであるか、その点をお伺いいたします。
  191. 若松栄一

    ○若松政府委員 精神病床の絶対数が不足だということは確かなことでございまして、現在十四万床ありますけれども、この十四万床のベッドの中に十五万人程度の者が収容されておりまして超過収容という形になっております。このことは具体的にはベッド数の絶対的な不足であるということになるわけであります。しかしこの数年間年々一万床程度ずつ増加いたしつつあります。したがって他の種類の病床に比べまして非常に伸びが早いということがございます。現在大体人口一万対十五程度でございますが、私どもとしてはこれを二十程度までは至急伸ばしていきたいということで、年次計画をもって設立を促進いたしております。本年度公立に対する補助金は二千五百床を予定いたしております。
  192. 田口誠治

    田口(誠)分科員 他の病院と比較いたしますと、ただいまのように病棟、ベッドを増設していただいておるわけなんですが、そうなりますと、患者の受け入れは毎年多く受け入れて治療ができるわけです。そうなると結局お医者さんが足りない、看護婦さんが足りない、現在こういう壁にぶつかっておるわけなんです。これを解消するのにどういう対策をいま講じておられるか、また現在の不足分をいつごろまでにどうして解消されるか、この点もひとつお伺いいたしたいと思います。
  193. 若松栄一

    ○若松政府委員 精神科の医者の絶対数が足りないということも事実でございます。しかしベッドをつくっていきます場合には、当然医者の手配をしなければならぬわけでございまして、そういう意味で現在一万床程度ずつ伸びてきておるということは、不足しながらもどうにかこうにかまかなってきておるという状態でございます。今後の点につきましても、やはり精神科の医者をすぐ何百人、何千人とつくり上げるというような芸当はできませんので、どうしてもある程度自然の需給にまかしていくということになるわけでございまして、この問題はたとえば戦後婦人科の医者が非常に多くなり、さらにその次の時代に整形外科の医者が非常に多くなって、最近は精神科の医者の伸びが非常に多くなっております。そういうことで、やはり需給が方向を大体決定いたすわけでございまして、これを人為的に養成するというようなことはいたさないつもりでございます。
  194. 田口誠治

    田口(誠)分科員 明確にしておいてあとで善処していただかなくてはならないことは、現在はベッド数が非常に足りない。病棟が足りない。このことは精神科のお医者さんの組合のほうから陳情のきておるとおりでございまして、ベッドなんかは必要に応じての半数くらいしかないということを言っておるわけであります。  そこで、いま伺いますると、ベッドにしても病棟にしても、年々計画を立てて相当数の増加をさせてあるわけなんです。そうすると病床なり病棟なりを増加させるにマッチして専門医を養成していかなくちゃならないのですが、こういう点のアンバランスはどういうように解消されるものか。一年に何名精神科のお医者さんが学校を卒業して出ていくかということと、それから片方では病棟なりベッドなりをふやして患者をふやすことになりますね。これがマッチしていかなければ病人だけたくさん来てもらっても、お医者さんがなければだめですし、お医者さんだけたくさんいても、患者がなければ非常に不合理でございますから、その点はどういうような、積算基礎というようなことにもならないでしょうけれども一つのそういう基礎を置して拡大強化をはかってもらわなければ、途中で問題が起きようと思いますので、その点の抱負を伺いたいと思います。
  195. 若松栄一

    ○若松政府委員 医師の数とベッドの数は、これはただいまも申しますように、ある意味では需給にまかしておくということがむしろ当然でございまして、ベッドをつくる場合に、病院をつくっても医者がいにくいという場合にはどうしても病院をつくることを差し控えますし、そうかといってベッド数がどれだけふえるかということは、私ども傾向としては把握しておりますけれども、幾ら幾らつくると国で全部つくるわけでございません。大部分のものが民間でございますから、これを統制するわけにもいきません。したがって大体医師の需給というものは、大学の教室で養成される医師の数を念頭に置いて、卒業生の中からそれぞれ獲得していくものでございまして、意識的に厚生省が何名精神科の医者をつくるというような計画は持っておりません。
  196. 田口誠治

    田口(誠)分科員 その点は、むずかしいことであろうと思いますので、一応御回答は了解いたします。しかし了解をしても問題を解決することにはならないのです。ここに宿題が残ると思うのです。この宿題はあくまでもやはり研究していただいて、そうして現在非常に精神病患者が多くなっており、そうしてまた政府としてもここ二、三年前と違いまして、精神病患者の取り扱いについては積極的になっておられるのだから、積極的になるということは、病院を新設し、ベッドをふやし、患者を収容する。そうすればそこへお医者さんも多く養成して送り込む。こういうことになるのですから、いまの答弁答弁として聞いておきますけれども、そういう宿題が残るのだから、その宿題を解決するために今後努力していただきたいと思います。  それから公立と私立の場合ですが、特に私立の関係では看護婦さんの獲得に困っておるのです。これは直接国としてどうこうすることは困難でありましょうけれども、総体的なこうした政策なり施策の方法としてこういう面をどうして解消していかれるのかということをお聞きしたいと思います。  その中で男の看護婦さんが非常に足りないわけです。それで私そこをちょっと忘れましたけれど、四十六国会にも陳情がありましたが、男の看護婦さんがいないために女の看護婦さんだけで宿直をしていて、非常に乱暴をされてけがをされたというような不祥事件も起きておるわけなんで、この男の看護婦さんの養成ということも、これは相当力を入れていただかなければなりませんが、こういう点の不足とか、あるいはときによってはただいま申しましたような不祥事件の起きたというようなことは把握しておられるのかどうか、把握しておるとするなれば、こういう問題をどうして解決しようとされておるのか、この点をお伺いをいたしたいと思います。
  197. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 精神病の関係の医師、看護婦の問題でございますが、いま公衆衛生局長が述べましたように、精神病の医師、精神病の看護婦というような養成でなく、医師、看護婦という全体で養成せられておりますので、その中で必要に応じて精神病関係を専門にやられる方が出てくる、こういうような立場になっておるわけですが、特にいまお話の男子の看護人、これはたいてい精神病関係がおもな需要でございまして、これが足らないのはお話のとおりだと思います。一方看護婦関係は、近ごろの化学療法、薬剤療法の進歩によりまして、女の看護婦さんだけでもかなりやれるという考え方もありますが、しかし実際に患者さんがあばれ出したり、その他の火災等の事故があった場合を考えまして、やはり男子がそこにおる必要があるというので、看護助手としての男の方がおられるほかに、資格のある看護人、準看護人をつくるというようなことが問題になっておりますが、現在看護人の養成は男女共学というような立場でやられておるのが大部分でございますが、特に男子だけの準看護人養成機関が現在徳島、兵庫、和歌山、京都、三重に二カ所くらいあると思います。これは準看護人でございますが、これは男だけの施設でございます。そうして養成せられております看護人が、正看護人の方が大体五十名くらい、準看護人のほうが三百五十人くらいが現在入学しておる、こういうふうに承知しております。しかし、いまお話のように需要がはなはだ多いので、その関係をふやさなければならないというので、三十七年から準看護人につきましては夜間コースもつくったのでございますが、なかなかうまくそれが発展しないで、現在一カ所にとどまっておると承知しております。
  198. 田口誠治

    田口(誠)分科員 こういう患者のおる家庭は非常にお気の毒でもございまするし、そうして他の家庭の状況とか、あるいは家族医師の懇談というようなことも非常に必要だと思うのです。したがって私はこうした病人を持つ家庭の家族会というようなものをつくりまして、そして医師、看護婦、そうした関係者が一堂に会合してそれぞれの意見を出し合い、その中において家庭の保護、協力によってこうした患者を早く全快させるということもあり得るわけなんで、私は家庭の人たちも一人の医師になったようなつもりで、看護婦になったようなつもりでやってもらわなくてはならないと思う。それには家族会というようなものをつくって、ときおりそうした人たちにお寄りをいただいて、そして実際に治療をしておる先生方と懇談をするということがきわめて必要ではないかと思うのですが、こういう点についてはまだお考えになったことがないのか、それともあまり必要であるとも考えておられないのか。私は非常にこの点は必要だろうと思うのですが、ひとつ御意見をお聞かせいただきたい。
  199. 若松栄一

    ○若松政府委員 おっしゃるとおり精神病の治療につきましては、単に病院あるいは診療所で治療すること以外に家庭が非常に大事な治療の場でございます。といいますのは、精神病の治療は要するに社会性の阻害された患者に社会性を回復させることでございますので、そういう意味では家庭における接触というものが一番長い時間でございますので、特に在宅患者につきましては家庭というもりがそれ自体治療の場であるということを承知いたしておるわけでございます。そういう意味でただいまお話しのありましたような患者の保護者の会というものがあって、そこでお互いに研さん練摩あるいは指導を受けていくということが大事でございまして、現にそういう組織が着々と方方でできつつあります。私どもも今後保健所において在宅患者の指導の体制を整えますので、それらの組織を通じてもそのような体制を整備してまいりたいと存じております。
  200. 田口誠治

    田口(誠)分科員 了解しました。それでただいままで質疑応答でいろいろと意見を聞かせていただき、また私のほうからも要望申し上げましたが、時間がありませんのであまり詰めての質疑応答はできませんが、先ほど来申しておりますように、精神病患者に対する国の積極的な治療対策というものができておるわけなんで、これにのっとって治療をしなくてはならない。それにはベッドが足りない、施設が足りない、そして開放療法をする適切な施設がない。そしてなお医師の不足、男女看護婦の不足、こういうことが今後の隘路として、行政の上においてまた予算獲得の上において徐々にこの問題を解消していただかなくてはなりませんので、その点は強く要望申し上げまして、この精神病院に対するところの質問は終わります。
  201. 相川勝六

    相川主査 田口さん、時間がきました。
  202. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこで、引き続き関連のあることですが、精薄児の対策については厚生省も非常に力を入れておられるわけでございますけれども、ここでお聞きをいたしたいと思いますことは、いわゆる知能の低い精薄児——精薄児の中でも知能五〇以下、どちらかといえば学校の特殊教育も受けられないという精薄児が相当に現在多いわけなんです。だからそういう数がどの程度あって、その人たちを一つの学園へ収容して知能に応じた勉強をさせ、職業の訓練をさして、そして知能に応じた仕事を社会人としてさせようとするには、いろいろ政策の上においても施策の上においても努力をしていかなくてはならないと思うのですが、現況をひとつ報告を願いたいと思います。
  203. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 全国の精神薄弱児の数につきましては約九十万人といわれておるわけでありますが、そのうち精神薄弱児施設に収容を必要とする児童は四万八千人と推定されております。なお、精神薄弱児通園施設というのがございますが、これは施設に収容する程度ものではなくて、毎日通っていくというようないわば特殊な保育所みたいな形になりますが、そういったところに入れる必要があるという子供が約一万八千七百人と推定されております。現在これらの児童につきましての施設の数といたしましては、三十九年七月現在で百八十八カ所ございます。収容定員は約一万二千でございます。それから通園施設でございますが、これは五十三カ所ございまして、約二千人が通園をいたしておりまして、それぞれ生活指導、学習指導及び職業指導を行なっておる状況でございます。
  204. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これ一言で終わりますが、質疑応答しておりますと長くなりますので、私のほうから一方的に申し上げて善処をお願いいたしたいと思います。  ただいまお聞きいたしますと九十万人の中で四万八千人が収容されており、通園の者が一万八千七百人、こういうことで非常に施設が足りない。またそうしたところで収容されておる人たちが少ないわけなんです。ここ数年前までは知能の低い子供を持った親御さんは子供を隠して家に置く、こういう考え方を持っておりましたけれども、最近は非常にさばけてきまして、どれだけでも知能に応じた勉強をさせ、そして職業を身につけさして、そして社会の一員として働かしたい、こういう考え方に変かってきておるわけです。したがってそういう点から考えますと、現在の施設はきわめて少ないし、そして収容されておる員数も少ないわけでございますので、やはり希望する者は全員が入れるような施設を早くつくっていただくと同時に、これは単なる勉強をさせるということでなしに、職業訓練までそこでさせるようにしてもらわなければ困るのではないか。岐阜県の場合をいいますと、岐阜県の県立は十五歳になるとその学園から出なければならない。そうかといって今度職業訓練所のほうへ行って訓練をしようとすると、十八歳にならないと訓練を受けられない。そこにブランクが二年なり三年なりできるわけです。せっかくずっとスムーズに上がってきたものをすぐ職業訓練に持っていけばいいものを、そうでなしに置くために、また逆戻りをするというようなことも非常にあるわけなんでございますから、そういう実態を知っていただいて、今後の施策に万全を期していただきたいと思います。   〔主査退席、井村主査代理着席〕  なお、これもそうですか、そこにつとめておる先生たち、指導員の方々の待遇というものは、特に国立でない地方自治体でつくっておるものなんかは非常に低いわけなんです。低いけれども、これは一つの法に基づいて予算を交付しておりますので、現在の交付では非常に不満足だから、こういう方面の交付金も多く出していただいて、そこへつとめておられる職員の方々の待遇改善ということも考えていただかなければならないと思うわけでございます。そういうことで、私の質問はあまり掘って聞いて申し上げてということが時間的にできなかったけれども、大かた内容はわかったと思いますので、賢明な厚生省において万全を期してもらうように強く要望申し上げまして、その結果はまたの機会——機会がなければ来年の予算の審議のときに、その前進方をお伺いいたしたいと思います。これで質問を打ち切ります。
  205. 井村重雄

    ○井村主査代理 次に、中村重光君。
  206. 中村重光

    中村(重)分科員 原爆の問題でお尋ねします。原爆の問題は、毎国会取り上げて、質疑応答の中では、歴代の大臣が非常に前向きの答弁をしておられます。ところがいざ予算編成のときになってみると、ぱっとしない。ところが厚生大臣御承知のとおり、昨年三十九年四月三日、四十六国会で、被爆者援護に関する決議案が衆参両院で行なわれたわけであります。特に、あなたはかって医療法を制定した当時の担当大臣である。今度こそは、これは画期的な原爆対策が講ぜられるであろうと期待をしておったわけであります。ところがふたをあけてみると、どうも変わりばえがしないというように感じておるわけであります。予算的には、昨年よりも二億数千万円ふえた。十六億四千五百万円程度になっております。この予算の中身を調べてみると、いわゆる援護の部に属するというものもあるように思われます。しかし、主として医療法を強化していくというところに重点が置かれたように感じます。そこでこの四十六国会におけるところの被爆者援護に関する決議、これをどのように理解をされたか、さらにまたこの決議の趣旨を生かすために、どの点が留意された点であるのか、その点についてのお答えを願いたいと思うのです。
  207. 神田博

    神田国務大臣 いま中村委員から、前国会の原爆被爆者処遇に対する精神が、今度の四十年度の被爆者に対する処遇にあらわれておらぬではないか、どの程度努力したかというようなお尋ねでございましたが、私も、これは省内あげて決議の趣旨を十分尊重いたしまして、努力をいたしたわけでございます。ただ遺憾ながら、結論から申しますと、ああいうことになったわけでございますが、しかし私は今度ので、相当大きく前進したんじゃないかと思っております。なかなかいままでこのこと自体も困難であって、前進を見なかった。とにかく二億数千万円の支出を増加してもらって、私は第一段としては大きく前進したんじゃないか、こう思っております。詳細なことはまた局長から答弁いたさせます。
  208. 中村重光

    中村(重)分科員 全然この決議を無視してしまったとは言いません。やはり決議を生かしていかなければならないという気持ちのあらわれは、私は見受けることができるわけですね。ところが大臣も御記憶だと思うのでありますが、この衆参両院で決議を上程するときに、実は社会党としましては、原爆によって生命を落とした人、今日まで約三十万でございます。残りまだ三十万程度の被爆者が非常に苦しんでおる。かつまたその被爆者は、原爆に見舞われて、非常に苦しんでおる。同時に死没された被爆者の遺族の方々は非常に苦しんでいるのだから、当然遺族補償というものをやるべきではないかというようなことで、実は私ども社会党の案は出した。ところが三党一致で提案するといったような関係上、私どもの案がそのままもちろん通るはずはなかった。しかしいろいろと折衝いたしまして、遺族補償という形を決議案の中には盛らなかったのだけれども、特に留意した点は、原爆被害者に対する施策としてはなお十分とは認めがたい。特に被爆というのを被害というように持ってきたのは、両者の歩み寄り的なものがあったわけです。したがって、今度は遺族補償というようなものも何らかの形で行なわれるのではないかという実は期待を持った。それと同時に、当然医療法は拡充をしていくけれども、援護法というものが制定されるものである、この点は確信を実は持っておったわけです。ところが、援護法の制定はなされなかった。そしてただいま私が申し上げました遺族補償といったようなことは全然考慮されなかったのではないか、こう思うわけであります。そこいらの点はどのように、省議の中でもいろいろ検討されたと思うのでありますが、経過、また考え方というものをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  209. 神田博

    神田国務大臣 いまお述べになられたことも省議といたしましては十分検討を加えた次第でございます。しかし、御承知のように、原爆被害者は、これは特別な被害者でございますが、内地が戦場と化したような当時の状況でございまして、これだけを抜いてそういうようなことをするというと、一般の空襲による被害者等に対する関係も考慮しなければならないじゃないかというような、いろいろなまだ検討を加えるべき点が多々ございまして、それで今回はああいう処置に終わった、こういうことでございます。
  210. 中村重光

    中村(重)分科員 この原爆被爆者が特別の被害を受けた人であるということをお考えになるならば、もう少しどうでしょうか、前向きの施策があってしかるべきではなかったかと思う。両者の歩み寄りというような形で行なわれた決議であるにいたしましても、原爆被害者に対する援護措置の拡充強化による生活の安定をはかることにある。これは提案者の説明の中におきましても明らかになされておるわけです。ただいま私が申し上げましたような内容に実はなっておるのであります。そうすると、いままで医療法の中におけるもろもろの施策というものが行なわれてきた。この決議を受けて医療法改正が行なわれ、またいろいろな施策が実は行なわれたわけです。ところが、ただいま私が指摘いたしましたような、被爆者の援護措置を強化拡充をして、さらに生活の安定をはかるといったようなことは、どうも施策の中には出てきていないように私は思うのです。原爆被害者というものは特別の被害を受けた人である、このことを肯定されるならば、当然具体的な形として出てこなければならぬと思うのです。もう少しはっきりした考え方をひとつお示し願いたいのです。
  211. 神田博

    神田国務大臣 いまお述べになりましたことももちろん検討を加えたわけでございます。その結果先ほど来申し上げているように、戦争のあと始末としての処遇としてはいろいろまだ残っておりますので、原爆のほうだけをそこまで先行させるのはどうであろうかというようなことで、今回はそれが実現できなかった、こういうことでございます。
  212. 中村重光

    中村(重)分科員 時間の関係がありますので、いろいろなことを言えないと思うのでありますが、戦争のあと始末というものは確かに残っている。とこがこの原爆の被爆者に対する措置というものは、国会としても特別にこれは扱ったわけですね。一般戦災者というものがある。それに対するところのいろんな措置もしなくちゃならぬでしょう。ですけれども、そういうものはあるけれども、特別に国会がそのことに対して決議というような形を付することになったのは、特に原爆の被爆者の問題に対して決議をしたというこの事実は、このことは私は当然政府としても尊重されてしかるべきであると思う。しかもまた、この決議がなされるにあたっては、昭和三十八年十二月七日の東京地裁の判決というものがあった。このことはまあ大臣も御記憶のことであろうと思います。現在、医療法があるが、しかしこの程度では不十分じゃないか、まあ政治の貧困を嘆くといったようなこことを指摘された。そういうことから直接これを受けたということは——それはまあ三党一致でございますからして、自民党は自民党のやはり受け取り方というものがあっただろうと思う。しかし、少なくともそういう原爆被爆者に対しては何らか特別のことをやらなくてはならぬのだという考え方が国会決議の中にあらわれたということをお認めになるならば、やはりその他の戦争被害者に対するあと始末というものは残っているであろうけれども、やはりこのことは特別にやらなければならぬということが当然私は態度として出てこなければならぬと思うのです。いまの御答弁では納得できないのです。そこで、また、いま提案するにあたってはこういうことであったが、将来はこうしなければならぬとか、もっとはっきりしたお答えをしていただきたい。
  213. 神田博

    神田国務大臣 中村委員のお気持ちは、もう私もそれはまことに同感でございまして、よくわかるのでございます。しかし、いろいろ先ほど来申し上げておるように、今回は、いま予算に組んでいる程度にとどまったということは、財政上の問題もあり、さらにまた、何もかもこの機会にやるというわけにいかなかった。   〔井村主査代理退席、主査着席〕 おっしゃっている気持ちのあるところは私もよくわかります。将来の問題としては別といたしまして、この段階でそこまで踏み切れなかった、こういうことでございます。
  214. 中村重光

    中村(重)分科員 援護法の制定をしなかったのはどういうことですか。
  215. 神田博

    神田国務大臣 そこまでは今回といたしましてはできないということで見送った次第であります。
  216. 中村重光

    中村(重)分科員 それじゃ国会の援護強化に対する決議というものを生かさなければならぬとお考えになりましたか。医療法の一部改正によって、いま提案されておる十九億数千万円の予算の中のどこを見て、国会の決議を尊重した、その趣旨にのっとって予算を計上したんだという答えが出ますか。
  217. 神田博

    神田国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、他の戦災者の問題もあるということが一つでございます。瞬時に、原爆の被害を受けたということは、これは特別な損害があるわけですから、そのほうを強く対象にして、まずそのほうの解決をはかりたい、こういうことで考えたわけであります。
  218. 中村重光

    中村(重)分科員 時間の関係があって、ただいまの答弁によってまだ質問したいんですけれども……。被爆者の範囲の拡大をしておるわけですが、これはいつも言われていることですが、当然これは撤廃すべきではないか。一昨年西村厚生大臣も、この撤廃についてやはり考慮しなければならぬという非常に前向きの答弁があった。ところが撤廃しておられない。そこで、はっきり三キロを四キロにでもするということで踏み切ったのかというとそうじゃない。放射能濃厚地区というものを広島、長崎だけに限っている。これはもう当然でありましょうが、そこを指定して、そうして二キロ以内に三日以内に入ってきた人ということで、若干その点は前進をしたと思うのです。しかし、もうすっきり撤廃をするということが正しかったんじゃありませんか。どうしてそこまで踏み切らなかったのですか。
  219. 神田博

    神田国務大臣 いまおっしゃったような議論もあったわけであります。しかしいろいろ検討を加えました結果、やはり地理的条件とか、当日の天候とか、あるいはまた入市の状況というようなことを考えまして、御審議を願うような範囲にとどまった、こういうことでございまして、多分に医学的、技術的なことになりますから、局長から少し答弁させたいと思います。
  220. 若松栄一

    ○若松政府委員 特別被爆者の範囲の問題でございますが、特別被爆者というものは、——原爆によって放射能の影響を受けて、そのために身体的な故障を起こしていて、疾病にかかりやすく、あるいはなおりにくいという特殊な人たちに対して医療の世話をしようという趣旨でございます。したがって、現在特別被爆者になっていない、たとえば三キロ以外の地で直接被爆をした人たち、この人たちが受けたであろうレントゲン量というものは、当時の計算によりますと〇・三七五レントゲンというようなことでございまして、レントゲン量からいいますと結核の間接撮影を受けた程度のレントゲン量になってしまいますので、事実上それ以遠の被爆者の方々が特別にそういう身体的障害がある、一般人と変わりがあるということが予想されませんので、これは学問的な根拠で制限せざるを得なかったということでございます。
  221. 中村重光

    中村(重)分科員 まあ委員会の答弁でございますから、私はそういう根拠というものを置いてお答えにならなければならぬと思う。しかし率直にいって、初め二キロだったのですね。これを三キロに拡大をした。いまあなたが言われたように、学問的根拠というものはそうはっきりいたしておるものではありません。これはなるほど二十五レントゲンであるとか、あるいは十五レントゲンであるとかいうことをいっても、しかしこれはそう権威のある学問というものは私はあるとは思わない。ところが、それならばこれを撤廃をしろというなら、それだけの根拠があってしかるべきだ、こうあなたはおっしゃる。また国民もそういうことでなければ納得せぬと思います。しかし私はこれを撤廃すべきであるということを根拠として言えると思いますのは、この三キロ以内、三キロ外、いわゆる近距離、遠距離ということでいまデータが出ておるのですね。原爆病院であるとかあるいはその他から出ておる。それによると、認定被爆者の距離だけを見ても悪性新生物といったようなもの、それからガン、こういうものは三キロ外のほうが多いのです。そういうことから当然これを拡大をする、あるいは撤廃をするということの正当性というものが私は認識できると思う。  それからあなたのほうで今度広島、長崎を拡大されたのですね。これもいろいろ根拠があるだろうと思うのでございますが、これも私はどうもそれだけにとどめるという根拠としては薄弱ではないかという感じがいたします。そこで、時間の関係もありますから、今度広島、長崎を特に地域的に範囲を拡大したその根拠はどこにあるか、それを簡単にお答え願いたい。
  222. 若松栄一

    ○若松政府委員 ほとんどの被爆の範囲の拡大は、一部は特殊な地域といたしまして、残留放射能が相当多量にあったという地域、それから一方は、入市者の問題でございますが、入市者の問題につきましてはどの程度のレントゲン量を受けたかということは、これは確認する方法がございませんので、したがってこれにつきましては、大体先生の先ほどおっしゃいましたような悪性腫瘍であるとか、あるいは認定患者の数とか比率というようなものを根拠にいたしまして線を引いたということで、この線は、おっしゃるように絶対的な線というのではないと思います。
  223. 中村重光

    中村(重)分科員 率直なお答えがありましたから追及いたしません。今度調査をなさるんでしょう、そういう点についても調査をなさるんでしょうから申し上げておきますが、いまの長崎の場合、当初予算折衝の段階では西山であるとかなんとかということを考えられたらしいのですが、このことは最終的に調査をしてきめるということでございますから、その点について申し上げておきますが、長崎の場合は、西山地区というものは特に放射能のカウントが多かった、高かった、こういうのですね。そこだけしか測定してないというのです。そのほかも全部測定しておって、ここは非常に低かったんだ、西山なら西山が特に多かったんだというならば、そういう根拠があるならばわかります。そうじゃないのです。はかったところだけが多かった。はかっていないところは少なかったという根拠はないじゃありませんか。だからいまあなたのお答えも根拠は非常に薄弱だということがいえるわけですよ。そうすると、私が先ほど申し上げましたように、遠距離のところでこういう悪性の患者が非常に多いというようなことも参考にしなければなりませんでしょうし、さらにまたダータとして出ているのは、二キロ以内の特定地区の被爆者の状態を見てみると、二キロの外、それが非常に多いということですね。平均からいって非常に多い。いわゆる三キロ以上が非常に多い。私はここで平均を出していますが、三キロ以上に特定被爆者というものが、パーセンテージでどの程度出ているかというと、二・一三四%、ところが現に特定地区に入っておる三キロ以内までの平均はどうかというと一・三九%、三キロの外が多いのですよ。はっきりデータもあるのです。だから、やはりこういうものをあなたのほうでは十分調査をしておきめにならなければ、これはもうたいへんなあやまちをおかす。だから私は範囲を拡大をする、あっさりと撤廃をする、こういうことをなさることが実情に即するんだ、こう申し上げているのです。それは、ただ範囲を拡大しなさい、三キロから四キロに拡大をしなさい、広島とか長崎、そういう地区から陳情があるから、それに迎合するということで申し上げているのじゃないのです。これが正しいという考え方の上に立って申し上げておるのでありますから、この点については、十月一日実施に対して調査をなさるんでしょうから、そういう際は、長崎あるいは広島の大学その他にもみんなデータがありましょうから、そういうものを御調査になって、十分実情に即するように措置してもらいたいと思いますが、この点、いかがでございますか。
  224. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいま範囲の問題につきましていろいろ先生のお手持ちの資料にあったように拝見いたしましたけれども、私どものいろいろ集めました資料で、やはり二キロ、三キロ、四キロ、離れるに従って減少いたしておるというふうに私どもは承知いたしております。ただ特定の小さな地域をとりますと、あるいはでこぼこが出てくるかもしれませんが、全体としてつかみますと、やはり従来の距離による認定患者の発生というものは距離に反比例しておりますので、私どもはその点では間違いないと存じておるわけであります。なお調査につきましても、現地でいろいろの要望も聞きまして調査内容等も定めて慎重にやってまいりたいと思っております。
  225. 中村重光

    中村(重)分科員 調査をやって実情に反しないように措置する、そこに重点を置いてお答えになるならば私はこれで納得しますけれども、そうじゃなくして、あなた方のほうでおやりになったことは、これは絶対だという考え方の上に立ってお答えになるならば、それじゃいま私が申し上げましたように長崎なら長崎の西山以外にどこを調査したのか、そのときはしていなかった。したところだけがいわゆる放射能のカウントが非常に多かった。していないところはわからぬじゃありませんか。そういうことなんだから、実情を把握してその上に立って措置してもらいたい、こう私は言っているのです。大臣どうなんですか。
  226. 神田博

    神田国務大臣 いまお話しのとおりだとすればそういうことになります。しかし私の聞いたのでは十分調査したというように聞いておりましたので、なお十分ひとつ政府委員から答弁させたいと思います。
  227. 中村重光

    中村(重)分科員 それから今度の予算の中で前向きというか、決議を尊重する姿勢を示していると思われるのは、被爆者の実態調査で三千八百万の予算をとって、これから調査をしようとしておられるのでありますが、この調査の目的、それから調査の項目、調査の方法、そういう点についてひとつお答えを願いたいと思います。
  228. 若松栄一

    ○若松政府委員 調査の目的はもちろん被爆者の実態の把握ということでございまして、その実態ということの中には健康上の問題、それから経済的な問題、生活上の問題というものを全部入れてまいりたいと思います。こまかな項目についてはまだ決定しておりませんで、近く現地へ参りまして現地側の要望等も入れて調査内容をきめたいと存じております。
  229. 中村重光

    中村(重)分科員 いままで調査は戦後何回おやりになりましたか。
  230. 若松栄一

    ○若松政府委員 残念ながら古いほうのことは存じませんが、原爆の法の制定のときと、それから三十五年に国勢調査の際に一斉調査をいたしております。そのほかには個別的な小範囲の調査は県、市等でやっております。
  231. 中村重光

    中村(重)分科員 私は、もう過去のことは責めようとは思いません。またあなたはその当時の担当局長でなかった。昭和二十五年は実はABCCが生存調査をやっているのです。昭和三十五年は広島、長崎が調査している。国自体が責任を持ってこの被爆者の実態調査をいたしておられないのです。大臣、私は何というか、その不見識というか熱意のなさに驚くんですね。しかし今度三千八百万の調査費を投じて調査をされるというのですから、それに期待をするわけですが、その調査は、私は国際規格による権威ある調査をやるべきだ、こう思うのです。したがってこの調査をするにあたっては、権威ある調査にするということについては、その調査の方法であるとか、それから計画の策定、そういうことに対しては委員会等をつくってやることが適切であると思いますが、その点はいかがでございますか。
  232. 若松栄一

    ○若松政府委員 現在のところ委員会というところまできておりませんが、御意見のようにほんとうに意義のある確実な調査をいたしたいと思いますので、何らかそのような機構も考えてみたいと思います。
  233. 中村重光

    中村(重)分科員 学識経験者等を入れてひとつ権威ある調査、身のある調査をなさいませんか。この点大臣からひとつお答えいただきたい。
  234. 神田博

    神田国務大臣 いま身のある調査をしろ、学識経験者その他を入れて十分な、しかもだいぶもう年を経ているのに政府においてはそういうことをやっておらないじゃないか、せっかくやるのだからしっかりやれというように承りました。私どももそのように考えておりまして、十分ひとつ慎重に企画いたしまして、そして迅速に調査をいたしたいと考えております。
  235. 相川勝六

    相川主査 中村君、もう時間がまいりましたから……。
  236. 中村重光

    中村(重)分科員 ちょっと待ってください、大事な点ですから。学者は国連に調査を依頼しろといっているんです。それから先般被爆者の巡礼団が渡米いたしました際に、ウ・タント事務総長に会って、そのとき国連の原子力委員会で調査をしてもらいたいということを申し入れをやった。ところがウ総長は、日本政府から正式な申し入れがあれば調査をする、こう答えている。私はこの原爆被爆者の立場、また非常な痛手を受けたこの被爆者のことに思いをし、さらにまたこの調査を権威あらしめるというようなことからいたしますと、そういうことも当然進んでやる必要があるのではないか、こう思いますが、その点に対しての大臣考え方を聞かしていただきたい。
  237. 神田博

    神田国務大臣 いろいろの御要望というか、二、三聞いたことがあります。それらを十分検討して、りっぱな調査を完了したい、こう考えております。
  238. 中村重光

    中村(重)分科員 被爆者白書をつくったらどうですか。そしてその白書を国連にも提出する、そういうことは非常に意義あることだと私は思います。また平和にも役立つし、原爆に対する認識を深めていくということについても大切なことだと思いますが、その点に対する大臣考え方はどうでしょう。
  239. 神田博

    神田国務大臣 こういう機会に原爆白書を公にするということは、私は時宜を得た処置かと考えております。十分ひとつ検討いたしまして、そういうように進めたいと思っております。
  240. 中村重光

    中村(重)分科員 沖縄の被爆者の調査とか認定、それから治療を当然やらなければいけないと思いますが、どうなさるつもりですか。
  241. 若松栄一

    ○若松政府委員 現在沖縄の問題につきましては沖縄民政府と折衝いたしておりまして、大体話がつきました。したがって、具体的な問題につきまして今度総理府と沖縄政府が具体的な取りきめをし、それによりまして調査団を派遣し、また必要に応じて治療をしなければならぬ患者があれば、日本内地に渡航させまして必要な治療を行なうという手はずを進めております。
  242. 相川勝六

    相川主査 中村君、もう時間が参りました。
  243. 中村重光

    中村(重)分科員 時間の関係がありますので、私の意見を申し上げて一、二点だけお尋ねしますが、調査、それから被爆者の認定をやらなければいかぬですね。当然調査に派遣をするということはあたりまえだと思います。しかしすべて被爆者を内地に連れてきて治療するということだけでなくて、やはり向こうに行って治療するということをおやりにならぬと、被爆者が日本へ必ず出てくるということになってくると非常に荷が重いと思います。そういう点は実情に即するようにやっていただきたい、こう思います。  それから特殊養護老人ホームと健康管理センターは社会局所管にされたわけですね。これは原爆治療の一貫性というのか、そういう点では公衆衛生局でいままでおやりになっておった。しかし今度はこれは特に社会局に移管をしたということはどういうことなんですか。
  244. 若松栄一

    ○若松政府委員 これは社会福祉施設の整備費という項目がございますので、その項目の中に置いたということで、予算上の組み方の問題だけでございます。
  245. 中村重光

    中村(重)分科員 動員学徒の問題ですが、動員学徒に対してはいつも軍人軍属と同様な扱いをしてもらいたいというような要望が非常に強く起きているのです。ところがそれは一向受け入れられない。当然これは同様な扱いをすべきであると思いますが、大臣、この点はどのようにお考えになりますか。
  246. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。私も考え方としては中村委員と同じ考えを持っておりますが、いろいろの事情がございまして、大体同じような扱いにするというような扱いでがまんを願うようにやっております。
  247. 中村重光

    中村(重)分科員 それから被爆者の障害年金もいつも問題になるのです。非常に扱いがつらいのですね。ですから、被爆者の心情ということに十分思いをいたされて、いま六項症程度しか障害年金の支給対象にしてないのですが、これをもっと拡大をする、少なくとも二項症ぐらいからこれを対象にしていくということが私は必要であると思います。その点どうなんですか。
  248. 神田博

    神田国務大臣 その点につきましても、私はできるだけ拡大をいたしたい、こういう考えでございまして、いつも予算折衝に努力いたしております。今後もなお努力いたしたい、こう考えております。
  249. 中村重光

    中村(重)分科員 単なるお答えにならないように、そういうお答えをなさる以上は当然実行される、こういうことでなければならぬと、私は思います。  いままで、冒頭に申し上げましたように、各大臣とも前向きな答弁をするのです。しかし、そのとき適当に答弁しておけばよろしいというようなことで、これが実現されない。あなたは医療法制定当時の担当大臣である。しかも、この決議を受けたときの被爆者の対策を直接担当した大臣であるわけでありますから、十分ひとつそのことに対しても、いまお答えになったことはそれを実現されるようにやっていただきたいと思います。  さらにまた、先ほど私が西山地区の問題を申し上げたのでありますが、当時調査に当たった九大工学部の篠原健一氏から、こういうことを言ってきております。西山地区の放射能カウントがあまり大きく、他を顧みるひまがなかった、こういう回答がしてあります。これを見ても、ここだけしかやらなかったということです。ほかはやっていないということです。だから、私が指摘いたしました点は、これも権威あるデータでありますから、局長先ほどお答えになりましたように、十分ひとつ実際の実情を調査して、実情に即するような扱いをする、こういうことにやっていただきたいと思います。  時間の関係がありますので、これで終わります。
  250. 相川勝六

    相川主査 次は神近市子君。  神近君に申し上げますが、まことに恐縮ですが、持ち時間は約三十分ということに……。
  251. 神近市子

    神近分科員 私は厚生省に対しまして、新薬についてお伺いをいたしたいと思います。  前によく麻薬のことで厚生省には参っておりましたので、そのときに伺ったことがあったようにも思うのですが、たとえば新薬の発売をしようという会社が願ってきたときには、どういうことで御決定になるのですか。薬事法というものを読んでみたのですが、どうもはっきりしないところがある。審議会というようなものとの関係、そういうことで、許可するまでの最長あるいは最短の期間の関係をちょっと教えていただきたい。
  252. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 新薬の許可にあたりましては、メーカーのほうから書類を持ってまいります。それで、メーカーが書類を出すときには、それぞれメーカーのところで薬事法の施行規則に基づきました資料を添付するわけですが、その中に、動物試験をやり、それから臨床試験、つまり患者の試験でございますが、臨床試験をやったデータをつけまして、それで厚生大臣のほうに申請があるわけでございます。そうすると、その申請を受け取って、まず薬事審議会の中に新薬の調査会というのがございまして、この調査会で学者の方々が検討して、それで調査会の結論が大体出たところで、薬事審議会の中に新薬特別部会という部会がございます。そこにかけまして、そこで大体許可の方向で適当だといった場合に、薬事審議会に常任部会というのがございます。その常任部会にかけた上で、厚生大臣の許可、こういう形になるわけであります。
  253. 神近市子

    神近分科員 それがいまお聞きしたでしょう。一番長くかかったのは何カ月ぐらいですか。短いのはどのくらいでそれが決定いたしましたか。
  254. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 申請をいたしましてから許可になるまでの期間は新薬の中身によってずいぶん差がございます。問題のある部分と問題のない部分とございまして、長いものは五年以上かかるものもございます。早いのは大体申請をいたしましてから六カ月から一年くらいかかる、こういうふうに御了解いただきたいと思います。
  255. 神近市子

    神近分科員 かなり慎重に扱われているということはわかりますが、五年もかかる場合もあるし、一番短いのが半年ぐらいですか。いま最長と最短を伺ったのですけれども、早くても五カ月、六カ月ということですか。
  256. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 大体そのように御了解願います。
  257. 神近市子

    神近分科員 外国から輸入されての薬と日本医学者方が考案されたものとの試験をなさるときの開きへそれはどういうふうになっていますか。何だか私の感じでは、外来の薬というと飛びつくように簡単にやっていらっしゃるような感じがするのですけれども、その点はいかがでございますか。
  258. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 外国から輸入されます薬につきましては、大体外国のほうの試験例なり、動物試験を含めましてデータがそろっておるわけでございますけれども、しかし日本国内において動物実験並びに臨床実験をやらなければ申請ができませんので、やはり申請するまでには相当な期間がかかると思います。それから国内で発見されたものにつきましても、発見されるまでの間にいろいろなデータを集めるわけでございます。それで新薬調査会にかかってからのスピードは、外国の場合と国内の場合は、薬の性質によってむろん違いますけれども、取り扱いを異にするということはございません。
  259. 神近市子

    神近分科員 今度問題になっております大正製薬が売り出したアンプル入りのかぜ薬ですね。これはどのくらいの日数をかけて御検査なすったのですか。
  260. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 大正製薬のアンプル入りのかぜ薬の許可はたしか三十四年にしたと思いますが、やはり通常の場合と同じように、大体許可までに半年ぐらいの審査をいたしておると思います。
  261. 神近市子

    神近分科員 それであなた方が検査なさったときに、ちっとも変な現象は御発見にならなかったというわけですか。
  262. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 いわゆるかぜ薬の解熱鎮痛剤につきましては、特に有効成分を指定いたしておりまして、発売するにあたっては特別の審査をいたすわけでございます。それで国立衛生試験所でその成分がきめられた処方どおりに入っておるかどうかということを十分審査した上で許可をいたしておりますので、そういうことは相当慎重に研究機関のほうで行なうというふうに私どもは聞いております。
  263. 神近市子

    神近分科員 五人死者が出て、一昨日だったか、また一人相当重態におちいっておりますね。そのときに新聞が伝えますところでは、会社側がいろいろ言っている。あなた方いろいろ指示をなさったが、現在はどういうことになっておりますか。
  264. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 大正製薬の薬につきましては、先週の土曜日の段階で事故が起きましたので、会社側から自発的に販売を一時見合わせるという申し出を受けました。それから月曜日、学者の方々の意見によって、なお研究結果が出るまでその他のアンプルの発売についても販売を自粛するということになりまして、業界のほうは大体自粛態勢をとるということを了解しておるわけでございます。実態は、末端におきまして現在販売が完全に自粛されておるかどうかということにつきましては、大体会社のほうの指令が徹底しておるというふうに私ども考えておるわけでございます。
  265. 神近市子

    神近分科員 そう考えたいのですけれども、大正製薬はこの問題が起こったときに不都合なことを言っております。どういうことを言ったかというと、年間に二千万このアンプルをつくった、いま出回っているのは大体四百万ぐらいだろうと思うけれども、これは薬屋の手に渡っているので、その薬屋の財産なんだから、これの販売を停止することはできないというふうなことを言っていたんです。私はそれを読みながらずいぶん不届きな話だと考えたんです。いま大体弊害がみんなに浸透して買いに行かないようですけれども、たまにはまた新聞も見ないような人もたくさんいるので飲んでいる。それで一昨日のような事案ができると思うのですけれども、これは一体薬の販売店と製薬会社というようなものは、一ぺん渡したらこれはもうそこの財産だからというふうになるので、この制限をすることはできないのですか。たとえば販売店、小売店と製薬会社は親と子のような関係だから、これはやめてくれというようなことは私は言えると思うのです。それで幾らかかるかというと、あのアンプル一本つくるのに薬は一円か二円しかかからない。それでアンプルをつくる人に、これは一体どれくらいかかるものかと聞きましたら、アンブルそのものも一円かそこらでできるということなんですよ。それでただ薬を入れて口をふさぐ。それからいろいろ印刷物や箱をつくる。そのために多少の手間はかかるから、まあ十円見当でできるのじゃないかという話をしていた。それで売るときにはあれは六十円ぐらいで売っている。そうすればそのときの開きはずいぶん大きいし、これは原薬に対する権利金のようなものはあると思いますけれども、それにしても非常に大きなもうけを小売店に得させている。そうすれば、これは有害だから、どうも薬の役を果たさないようだから販売をやめてくれ、そのかわりどのぐらいの借金になるか、それはあとの薬で補てんすることができるというようなことは、一体できないものでしょうか。あなた方、ここはもう理論ではなくて常識としてどういうふうにお考えになるか。
  266. 相川勝六

    相川主査 神近さんにちょっと申し上げますが、アンプル問題は、もうすでに二人の議員から質疑がありまして、速記録にも当然載っておるのでなるべく同一問題を繰り返さぬようにしてください。
  267. 神近市子

    神近分科員 私はあとでサリドマイドのほうを伺うために序論として……。
  268. 相川勝六

    相川主査 サリドマイドも午前中質問が済みました。
  269. 神近市子

    神近分科員 それじゃ何にも私はここに出てくることはない。私はまだ二、三申し上げるから、ダブってもしかたがないでしょう。
  270. 相川勝六

    相川主査 できればほかの問題がいいと思いますがね。
  271. 神近市子

    神近分科員 問題は幾らでも持っておりますけれども、このサリドマイドのことはぜひ私は私の見聞を聞いていただきたいと思います。まあ、そういうことで委員長からの御注意ですから、サリドマイドのほうに移りますよ。どの程度時間をおかけになって御検査なさるものか、私が最短最長というふうなことを伺うのは、このサリドマイドのときに、あなた方のなさったことが何ともふに落ちないということ、そして大正製薬とか大日本製薬とかいうような大きな会社には、そう言っちゃ怒られるかもしれないのですけれども厚生省のお役人が非常に弱いのじゃないかというような感じを持つからでございます。  それでこのサリドマイドの話に移りますけれども、これはあれを全面的にやめさせるまでに八カ月か九カ月かかっているじゃありませんか。あれはどういうふうにお考えになるか、私はちょうどベルリンでサリドマイドの子供を見る機会があって、いろいろ考えてきたのですけれども、ここに資料がございます。ドイツのレンツ博士は、これはいけない、どうもこれが奇形児の出生のもとらしいということを言われたときに、すぐにやめれば日本の被害は非常に少なかったのです。なくなった子供が八百何人、いま生きているのが二百人ばかりサリドマイドでおります。これの問題をどうするかということが、私が大臣にお尋ねしたいことなんですけれども、そのときに大正製薬は、このレンツ博士の発言は信用できないといって、八カ月くらいはあれを禁止しなかったじゃありませんか。そのためにこんなに多くの死者を出して、八百人くらいの子供を死なせ、そして二百人の奇形児をいまつくっている。そういうことで、どういう動機であのときはあんなにもたもたなさったのか。あのときはアメリカはすぐやめましたよ。イギリスはすぐやめたので三十人くらいで済んでいるのです。ドイツは即日それをやめた。われわれはその点がちょっと厚生省やり方に疑問を持つ。何か不満を持つ。そのときの事情をちょっとお聞かせをいただきたい。
  272. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 厚生省が情報を受けましてからあと、御指摘のように大日本製薬からヨーロッパの状況の調査の結果を私どもがいろいろと検討いたしますと同時に、厚生省自体としても三十七年の一月ごろからヨーロッパのあらゆる文献の収集をいたしておりまして、事態の究明に懸命になっておったわけでございます。その結果完全な奇形の解明はできませんでしたけれども、三十七年の五月には、万一の危険をおもんぱかって、大日本製薬のほうに自発的に製造を中止させたわけでございます。そして市販中の製剤については、妊娠の可能性のある者については、服用しないようなPRをいたしまして、そして市場から自主的に回収させる方法を業者に指示をいたしまして、その結果が大体九月ということになったわけでございまして、情報を知ってから相当期間は経過をいたしておりますが、その間何ら対策を講じなかったというわけではございませんで、いろいろと事態の究明その他に当たっておったわけでございます。
  273. 神近市子

    神近分科員 大体十カ月かかっていますね。レンツ博士の、これは危険じゃないかという話が発表されてから十カ月くらいかかっている。その間に——この方が警告を発したときには、一カ月延ばせば五十人から百人の子供がこれにかかるぞということを言った。そんなに危険なものを、何も産婦が睡眠ができないからといって、ぜひその薬を飲まなくちゃならないというあれはないじゃありませんか。なぜそのときにすぐおとめにならなかったのかということが一つ。  それから、この会社は、イソミンがいけないというと、すぐプロパンMという別の名前で同じ薬を出している。そういうことを御存じでしたか。イソミンのかわりにプロパンMという薬を出したということを御存じでしたか。
  274. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 薬の副作用が直ちにこういう結果になってあらわれるという原因結果の究明というものがはっきりしておれば、これは直ちにそれによってとるべき措置というものは生まれるわけでございますが、このサリドマイドの場合にはその辺がまだ完全な究明はできておらないわけでございまして、統計学的には一応森山先生統計がございますが、この統計も聞き込み統計によるものでありまして、中身自体は私どもは必ずしも明確ではないというふうに考えております。したがいまして、どのような関係があるかということを究明するのに時間がかかったわけでございまして、現在におきましても何らかの関係はあるかもしれないという点はあるにしても、これがはっきりそうだというふうな結論にはなっておらないことを御了承いただきたいと思います。  第二点のマルPの大日本製薬のプロパンMにつきましては、これは私このころの該当局長でございませんし、なおよく調査してみたいと思います。
  275. 神近市子

    神近分科員 いまこれが危険であるかないか必ずしもはっきりとわからないとおっしゃったのは、イソミソのことですか。
  276. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 さようでございます。
  277. 神近市子

    神近分科員 私は驚いた話だと思うのです。まあそれでも人生危うきに近寄らずですから、これは徹底的に中止を厳格にやっていただかなければならないと思うのです。これだけ世界的に——西ドイツの場合は二百人といっていました。日本はあなた方が十カ月もぼやぼやしていらしたおかげで八百人の子供が死に、そして二百人の奇形児ができてきているのですよ。それでいままだイソミンがほんとうに有害なのかどうかわからぬというようなことは、私はちょっとあなたの頭を疑う感じがするのですけれど、いかがですか。それで使わなかったアメリカには一人も出なかったということ、すぐやめたイギリスでは四、五十人で食いとめたということ、これを考えれば私どもは千人に近い八百人くらいの子供に、これを飲ませたということは、やっぱり厚生省の手落ちだと考えます。いかがですか。
  278. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 先生のおっしゃっておられます八百何十名という数字につきましては、これは昭和三十三年から昭和三十八年までの過去六カ年間の奇形の調査をおやりになった——これも各病院あるいは助産婦につきましての聞き込みの調査をやった結果でございまして、統計自体が必ずしも的確なものであるということはなかなか問題のあるところでございます。しかし関連性がなかったとは言えませんし、その辺は一つの貴重な統計とは言えましょうけれども、その点私どもは申し上げているわけでございまして、厚生省が発売をやめなかったからこういうことになったのだということとはちょっと違うのじゃないかと思います。
  279. 神近市子

    神近分科員 いまちょっとあなたがおっしゃったのは何年からなんですか。
  280. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 三十三年から……。
  281. 神近市子

    神近分科員 そうするといま四十年ですから七年間ですね。ここには調査の結果三年間に六百人と書いてありますよ。それは産婦や何かの、奇形児というよりはこの薬を使ったという場合だけを取り上げた数であります。ですから普通の別の場合の奇形児もあるかもしれないけれども、この薬による奇形児あるいは死亡児というのがこの数であります。いかがですか、この点。
  282. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 奇形の調査というのは必ずしもサリドマイドとの関連ということでやっておるわけじゃございませんので、過去何年間にどういうところでどういう奇形が出た、それの性別はどうかというようなことでやったというふうに私どもは承知をいたしておるわけでございます。
  283. 神近市子

    神近分科員 その点は幾らつまらない押し問答をしても時間が制限されているからしょうがないと思うのですけれども大臣にお伺いしたいのは、昨年の国会でですか、私は昨年ちょうど西ドイツに行きまして、それで自由大学の附属病院のオスカー・ヘレネ・ハイムというところにこれを見に行ったのです。大体西ドイツは二百人の奇形児ができていましたけれども、そのうちの三十八人を収容してあって、そしてちょうど昨年ですから二歳ぐらいの子供たちですが、それの訓練をやっていた。係りのお医者さまの話しでは、大体において頭だけは健康だそうですね。手が小さいか足が小さいかですけれども、頭だけは普通だ、頭脳だけは普通だということが取り柄で、それで例の手術の、骨の折れる手術を避けてあのままの姿で普通職業につけるようにするつもりだという訓練所を見に行ったわけなんです。大体六畳くらいの部屋にいろいろな道具がございまして、見せてもらいましたけれども、まるいボールのような大きなものがあったり、それから車があったり、長い棒があったりいろいろなものが並べてあって、それで訓練するのだということを聞いたのです。これで人並みの一人前の仕事ができるようになるならばたいへんしあわせだな。いま二つか三つですから、子供たちは自分たちがどんなに奇形かあるいは異様かということがわからないのですよ。もの心づいたときにこの子供たちが何を考えるのだろうかということを思うときに、ほんとうにかわいそうな気がしたのです。それで私はこのことをぜひお耳に入れたいと思うのは、昨年の八月、西ドイツから、サリドマイド児訓練所のヘップ・センターから、二名の留学生を受け入れるという承諾が来ているということですね。それは大臣御存じですか。
  284. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 京都のサリドマイドの子供を持ったお嫁さんのところに西独からの手紙が来たという話は聞いております。
  285. 神近市子

    神近分科員 二名派遣を西ドイツが承諾して、受け入れますからどうぞおいでくださいといったということはほんとうですね。もう少しはっきりものをおっしゃってください。
  286. 相川勝六

    相川主査 もう少し声を立てて……。
  287. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 西独からの手紙は政府からの手紙ではございませんで、レンツというお医者さんから父兄のほうへ手紙が行ったというふうに聞いております。
  288. 神近市子

    神近分科員 もちろん政府からではないでしょう。ヘップ・センターで、これはサリドマイドの子供たちの最上の訓練所です。そして西独保健省も協力いたしますということをいっておるのですね、そうでしょう。
  289. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 はい。
  290. 神近市子

    神近分科員 それで、厚生省は二人の医者を派遣するということを決定なさったのだそうですけれども、これはいつ御決定になって、予算はどのくらいとれておりますか。
  291. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 そういうお手紙が来ているのを聞きまして、専門のお医者さんあるいは学者の方に、こういうことで行くことができるかどうかという話をしたわけでございます。専門のお医者のほうの御意見としましては、現在日本におきましてもいろいろな文献で承知しておる、また西独へ行かれた方もございますし、その際義手等も持ってきておる、そういうことでございますので、いますぐ行く必要はない、こういうような結論になったのでございます。
  292. 相川勝六

    相川主査 神近さん、時間がまいりましたのですが……
  293. 神近市子

    神近分科員 まだ次の人が来ていないでしょう。
  294. 相川勝六

    相川主査 次の人、おります。
  295. 神近市子

    神近分科員 まだこれから肝心なことがあるのですから、お許しを願います。
  296. 相川勝六

    相川主査 せっかくでございますが、あとにたくさん質問者が控えておりますから……。
  297. 神近市子

    神近分科員 大体その派遣する予算をとるというふうな約束をしながら、まだ予算をとっていないのですか。
  298. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 特別にこのための予算はとっておりませんが、科学技術庁の中に海外派遣の費用がございますので、必要な場合はそこから出していただくということに考えております。
  299. 神近市子

    神近分科員 それでまだ必要がないなんというのはしろうと考えですよ。小さな子供を強烈に訓練しなければ、あの短い手だの短い足が力を持つことはできないのですよ。それで、私たちはこの問題をもっと真剣に皆さん考えていただかなくちゃならないと思うのですけれども、この子供たちをかかえた家庭では非常に金がかかるのです。特定の大学病院かどこかでなければ訓練ができないし、それで政府の——私はきょういろいろ申し上げたのですけれども、どうしても私は厚生省の手落ちだと思うのです。八カ月から十カ月も、あれだけの警告がきたのにあれを販売停止をしなかった。それにはやはり厚生省は責任を持つべきだと思うのです。だから、たった二人やったってだめです。私が行ってみたところは三十八人の子供がいましたけれども、昼間の訓練する人は四人おりました。ですから、夜は子供ですから休むのでしょうから、昼間三十八人に、二十人に二人、十人に一人というふうな割り当てでしょうから、たった二人を派遣しても私は間に合わないと思うのです。だけれども、予算の関係があって、優秀な人がこの技術を学んできて、日本でそういうふうな訓練をする人を養成するということになればまたいいと思うのです。だけれども、この予算だけはぜひお出しになるべきだ。もう出す金が予備費があるとおっしゃるのだから、たいした金もかかりはしないでしょうし、厚生省として自分たちがこれはどの大きな手落ちをしながら一これから二十年たってごらんなさい。あの子供たちが二十二、三歳になったときにどんなに悲しむかということを考えれば、いまのうちに手を打っておやりになることが、総理も言っていらっしゃる人間尊重の一つの姿ではないかと私は考えるのですけれども大臣はどうお考えになりますか。
  300. 神田博

    神田国務大臣 先ほども実はこの問題でお尋ねがございましてお答え申し上げたのでございますが、私ももうかれこれ二週間ほど前になりますが、ドイツの訓練しておる雑誌を拝見いたしまして、非常に心を打たれたわけでございます。同時にまた、神近委員のお話のように、このサリドマイド事件というものは政府側にも大きな道義的、政治的の責任があると私は考えております。しかもまた二百人近い児童がおるわけでございますから、ぜひひとつそういったドイツの例を導入して、そして子供たちの育成に資したいという気持ちを持ちまして、約十日ばかり前でございますが、新聞記者諸君にもその話をいたしまして、これはひとつ計画的に考えてみたい、ばらばらに考えないで、これからちょうど入学期を迎えてくるわけでございますから、ドイツの例もとりながらまたわが国の実情も考えながらあたたかい気持ちでひとつ施策を講じていきたい、こういうような考えを持っておるわけでありまして、ちょうど二週間ばかり前でございますがよい雑誌を手にいたしまして、いまのお話のことを読みまして、そこにはドイツの国の施策も載っておりましたので非常に参考になりまして、先ほど来から神近さんのお話もよく実は承っておるわけでございます。十分検討いたしまして、来年度予算には考えていきたいと思っております。  それからいまの医師を派遣するのはどうかという問題もなお検討させていただきたいと思います。
  301. 神近市子

    神近分科員 大臣の御同感を得てとても私はうれしく思います。私は子供を育てたことがありますので親の気持ちもわかるし、あの子供たちがもの心づいたときに何を感じるだろうと思うと、何だか非常にかわいそうでかわいそうで、行って見てごらんなさい。厚生省がああだこうだ、予算がどうでございますなんと言っていられないから。  それからもう一つは、厚生省と大日本製薬に、この奇形児をかかえた家庭は非常に金がかかる。それで、収容所かそういうものをつくってもらいたいという要請があったようですけれど、そのことについてはどういうことになっておりますか。どなたか御存じの方がありますか。
  302. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 現在のところこのサリドマイドの子供だけを収容する施設については考えておりません。収容する必要のある者につきましては、現在の肢体不自由施設を原則として活用するという考え方で進めていきたいと考えております。
  303. 神近市子

    神近分科員 これは非常に少ないそうですね。これに家庭の人が書いてあるのを見ますと、非常に少ない額でどうにもならない。それで豊かなうちならお金をかけることができるけれど、そして親なりの訓練をすることができるけれど、貧乏なうちなら生活に追われていれば、もう奇形児の子供なんかはほったらかしにしてあるのですね。これを収容して、そして何とか本に書いてあったような方法でこれを訓練していくということも一つ考え方、私はこれは大日本製薬が出すべきだと思うのですよ。それでこの大日本製薬——もうけさえすればいいというのがいまの日本の社会の生活を非常に毒していますね。私は大正製薬だとか大日本製薬だとか、われわれが聞いたらびっくりするほどの利潤を上げている会社が、自分たちがまいた不幸の種を助けてやるということはあたりまえだと私は思うのです。そしてこの会社に話しかけるには個人ではだめです。個人で話しかけてもだめです。厚生省が一番いい立場なんです。厚生省が会社に対してそれをアドバイスするなりあるいは半分命令なり、言うことを聞いてくれないとこの次の薬はというようなおどかしをかけてもいいと私は思うのです。あんなにもうけているんだから。それで私はぜひそれをやっていただきたいと思うのです。この間私の行きましたオスカー・ヘレネ・ハイムというのは、オスカーさんという人とハイムさんという御夫婦が一九〇五年まで一そのときはサリドマイドはなかったでしょうけれど、不幸な奇形児やなんかの身体障害者のために建てた病院だったそうです。それを一九〇五年にここの大学に寄付された。何でもない人がただ人類愛から、人間愛から寄付するのですよ。大日本製薬はうんともうけたじゃありませんか。いまもほかのものでもうけているじゃありませんか。私は厚生省がこれに五千万出せとかあるいは三千万出せというようなことをアドバイスするには一番いい立場でいらっしゃると思うのです。私はぜひこれは実現していただきたいと思うのですが、いかがですか大臣
  304. 神田博

    神田国務大臣 いろいろ御示唆がございましたが、ひとつ検討さしていただきたいと思います。
  305. 相川勝六

    相川主査 次は辻原弘一君。辻原君に申し上げます。まことに恐縮ですが、四時半までにひとつ……。
  306. 辻原弘市

    辻原分科員 主査の仰せに従いまして、時間は厳守をいたしたいと思います。なお大臣、それから薬務局長に、時間もございませんから、私は多くをお尋ねしようとは考えておりませんので、しろうとの全くのしろうとの意見として、少し薬の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。   〔主査退席、井村主査代理着席〕 もちろんこの分科会でそれぞれの専門的立場からも、薬剤の問題については触れられておるようででございます。あるいは私の質問の若干が重復する点があるかとも思いますが、私は一点だけ、本日お尋ねの中で厚生省のはっきりしたお考えを承りたいという趣旨のもとに、お尋ねをいたしたいのでございます。なぜ私どもが薬の問題をかくまで重要視してお尋ねをするかと言えば、それは薬は直ちに人間の命に関する問題でありますから、通例の商品、通例の物品というような考え方で、もし取り扱われるという傾向があるならば、これはたいへんなことであるからであります。現にそういう問題が今日起きておるから、特に私どもは痛切にこの問題についてメスを入れなければならぬ、こう考えておるのであります。  そこでお尋ねをいたしますが、いま薬剤費の総額はおおむね三千八百億円から約四千億円近いといわれておりまするが、近年、ここ二、三年の間にそれがどの程度の増加傾向を示しておるか、それを数字でもってお示しを願いたい。それからもう一つは、一体そのうちいかほどが外国に輸出をされておるか、まずこの点から承りたいと思います。
  307. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 薬品の生産額の推移は、過去三カ年の生産額を申し上げますと、昭和三十六年二千二百三十八億で、三十七年が二千七百八十億、対前年度増加率は三十六年は二七、三十七年は二四、三十八年になりますとこれが三千五百六十一億でございまして、前年度増加率二八%、こういうことになっておりまして、三十九年は推計でございますが大体四千億前後ということになろうかと思います。それから輸出の御質問でございますが、大体生産額の三%前後ということになっておりまして、三十六年からの数字を申し上げますと、三十六年が七十九億、輸出率は生産額に対しまして三・七%、三十七年が九十三億、三・五%、三十八年が九十六億、二・九%、以上でございます。
  308. 辻原弘市

    辻原分科員 いまの数字を見ても明らかなように、生産額は三十六年以降、これはすべて二〇%を上回る生産額を示しているにかかわらず、一方輸出を見ますると、三十六年以降逆に下がってきておる。一体私はこういう産業が、今日日本の至上命令である輸出の問題を含んであるかどうかということに、非常に問題があると思うのです。なぜ一体日本の薬が外国に輸出をされないのか、なぜ一体国際的にこれが活用せられないのか、この点の理由について、時間がありませんからこれは簡単でよろしゅうございますが、その原因はどこにあるのかということのエキスをお答え願いたい。
  309. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 第一は、日本の薬が外国の製品のパテントをとってきまして、それが国内で生産をされるということで、化学工業として戦後発展してまいりましたので、国内で独創的につくった医薬品がきわめて少ない。国内的な独創的医薬品ができれば、輸出は大いに伸長できるだろうということが言えるだろうと思いますが、それが少ないというのが第一点であります。第二は、申すまでもなく国内の需要が相当多いために、国内需要のほうに主として売られて、海外市場の開拓は、厚生省が相当熱心に努力しても、なかなかそこまで伸びないということだろうと思います。
  310. 辻原弘市

    辻原分科員 私はそれだけの理由ではないと思うのです。ということは、物は需要と供給の関係です。もちろんある特定のものについては、パテントの関係もありましょう。しかしそれぞれの製薬会社があれだけの設備投資をやって、しかも研究所を設け、鋭意研究し、しかも日本医学水準というものは急速に高まっているはずなんです。そういう観点からいたしますると、研究において、あるいは生産する能力において、施設において、私は日本が必ずしも外国からはるかおくれておるとは考えられない。私は外国に輸出できない、また外国がそれを買わないというところには、もっと別な理由があるのではなかろうかということで疑問に思ったので、私もいささか調べてみました。そういたしますと、問題は日本のようにあらゆる種類の薬が、あらゆる一般市販をされている薬が、安易に使用されているという傾向は、外国にはないということです。まずそこに問題がある。そこでひるがえって、それでは一体日本の国内にこれだけ強い需要があるというのは、何が原因だろうか。少なくとも他のいろいろな産業なり、他のいろいろな問題についての水準、バランスというものは、諸外国に比較をいたしますると、今日すでに日本は口を開けば先進国、こういうわけですから、薬だけが例外でないと思う。それが非常に大きな格差がこういうところにあらわれているということには、私はそれなりの理由があると思う。言いかえてみると、国内の需要というものが、海外の市況に比べてあまりにも異常さを示しておる、異常に強いということ、そこに問題があるのではないか。言いかえてみるならば、国内需要の大半は、約三%を除けば——医療費総額は約四千億になんなんとする。その四千億の大半というもの、これが国内で使用されておる、消費されておる、そこに私は問題があるのではなかろうかと思うのです。言いかえてみるならば、薬の乱売はさることながら、乱用、これが今日の日本のいわゆる薬業界における大きな問題ではなかろうか、こう思うのですが、簡単でよろしいから、一体厚生大臣はその点についてどうお考えになっておるか、伺いたい。
  311. 神田博

    神田国務大臣 いまの辻原委員のお述べになりましたことは、私も実はそういうように考えておりまして、このままに推移したのではいけない、こう考えまして、就任以来いろいろ調べてまいりまして、そういうような考えを持ったわけでございます。そこで今年になりましてから——昨年の暮れからそういう考えを持ったのでございますが、輸出に転換させなくちゃいけない、こういうような考えを持ちまして、業界の代表等に、また会合の席等にも参りまして、戦前は一七%ほどの輸出力であったわけであります。それが戦後ずっと三%をかろうじて維持している、こういうようなことでございまして、これではいかにも業者としてふがいないではないか。輸出立国を唱えている日本が、しかも化学工業においては製薬業者が断然トップでございます。その次が肥料会社でございますが、これは非常な差でございます。しかも設備投資額に至りましては、年々膨大な設備をやっておりますので、ぜひひとつ輸出に転換してもらわなければいけないということを強調いたしまして、また政府といたしましても、これは喫緊のことだということを申し上げまして、最高輸出会議のメンバーに厚生大臣は入ってなかったのでございますが、この間の会議から入れていただくことにいたしました。とにかく国内の競争もすでに限界にきていると私は思っている。これはいろいろございます。私は広告等の取り締まりも、なお再検討の要があると考えております。いろいろ諸般のことを考えまして、この際大きく輸出に転換しなければならぬ。輸出をするにはやはりするだけの段取りなり、準備が必要でございますから、すぐというわけにはまいりませんが、そういう下地を十分積み重ねまして、製薬産業がいわゆる国際競争力を持ってまいったと思っておりますから、この機会にいろいろ処置を講じまして、なお一そう飛躍をする輸出産業として伸ばしていきたい、こういう考えで指導するつもりでございます。
  312. 辻原弘市

    辻原分科員 大臣のおっしゃるように、輸出に転換できていければ非常にけっこうです。けっこうですが、私の考えるところによると、いまの医薬行政なり医薬界全体のあり方では、私はおそらくそれは単なる希望にすぎなくて、実際においては、これは外国へ行っていたずらにひんしゅくを買うだけだと思う。なぜ私があえてそういうことを言うかといえば、それは日本における医薬行政なり医薬界のあり方と、それから外国のそれとは、大きな隔たりがあるからだと思うのです。これはもう私が申し上げなくてもおわかりだと思う。なぜ一体命に関する商品が、他の一般的商品と同じように、マスコミに乗って売らなければならぬかというところに、私は大きな疑問を感ずるのです。私はそういう点もいろいろ専門家の方の御意見も聞きました。また専門的雑誌も実は読んでもみました。しかしいずれも遺憾ながらそれらには、現在の医薬行政に対する批判が横溢しております。外国では少なくとも今日、日本のようにテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、あらゆるマスコミに乗っけて、売らんかなをやっている国は見当たりません。ここに根本的な問題があるのじゃなかろうか、こう私は思う。  そこで問題は二つです。一つ厚生省でおやりになって、しかも大臣がそれぞれ諮問機関として活用されておる薬事審議会のあり方が、今日これでいいのかどうか、こういう問題があると思います。もう一つは、いま大臣がおっしゃられた、私もまた言いましたこの過当な広告をどうするかという問題です。薬を広告へ乗っけなければ売れないなんということでなければ、薬それ自体の価格を低めるものなんです。逆な言い方をするならば……。そういう意味で私は端的に大臣お答えを願いたい。  私が聞きたい点は一点なんです。過当広告、これをどうしてやめさせるかということなんです。これだけの広告費を使って、なおかつ製薬会社の決算が業界でいつでもトップです。遺憾ながら薬屋さん、製薬会社が倒れたという事例を私は聞かない。それほど薬はもうかっている。だからどうしてやめさせるかという一点にしぼられてくると思うのです。先ほどから強力パブロンその他のかぜ引きのアンプルがいろいろ議論されておりました。そういう問題もあげてここに問題があるのじゃないかと指摘をされておりますから、私はもっと端的に言いましょう。なぜ薬は専門家にまかして、専門的立場から一般国民にそれを活用しないか。言いかえてみれば、どんどんいかなるところへも広告をするというような薬は、これは一般の大衆薬、もちろん国民皆さんが買う買わぬは自由でしょう。しかしながら無責任に広告によって宣伝をして買わすという行き方は、これは規制をしなければならぬ。どうして規制をするか。一つの案としては私は専門家が、すなわち学会が専門的雑誌を持っております。少なくとも学会が認め、専門的雑誌においてその効用はしかじかであるという専門家の判定を下した以外の薬は、言いかえてみればその他に適当に宣伝されるような薬については、これは少なくとも政府管掌医療機関ないしは医療保険等の対象にはしないという厳密な取り扱いがあるならば、一面国民はほんとうに薬というものに対する信頼感が高まる。しかしながら強壮剤がほしいから、この程度ものでけっこうですという方は、それはその薬を別にお買いになっても差しつかえない。しかしそれはあくまでも専門家が使う薬ではない。こういう一つのセレクトを何がしかの方法でやるべきじゃないか。だから私の考えとしては、専門的雑誌以外に広告をして、そこでどんどん売っているような薬は、これはいわゆる本来の薬としては認めない、こういうような原則を確立すべきではないかと思いますけれども、その点について大臣はどうお考えになりますか。
  313. 神田博

    神田国務大臣 いまの辻原委員の薬の販売に対する広告の規制という問題をとらえる場合、いい基準の一つだと私も考えております。厚生省におきましても、製薬会社の広告宣伝が過当にわたらないようにという点につきましては、始終頭を痛めておりまして、昨年の八月にも一度改正をしたわけでございます。しかしこれが改正をしたとはいいながら、十分守られているかどうかという再検討の時期であることは、これは識者が異口同音に言われている際でございます。しかもまたいまもお話しございましたように、医薬用に使う場合と一般大衆用に使う場合とございまして、これを広告の上においてもどうするか、あるいは保険に用いる場合にどうするか、そういうことをそろそろ詰めて考える段階にきているのではないかということは、私も同感でございます。十分ひとつこういう機会でございますから、検討してみたいと思います。
  314. 辻原弘市

    辻原分科員 薬の広告費は大体七%といわれております。約四千億といたしますと二百八十億円程度広告費に使われておる。言いかえてみるとばく大なものです。もしそれがかなり規制をせられて、そうしてコストダウンに役立つとするならば、今日のような薬価の程度は私は十分引き下げられると思うのです。そういう意味でいま大臣がおっしゃられましたが、ただいたずらに過当広告はおやめなさいと言いましたところで、これは商売ですから、つくれば売らなければならぬ。売らなければ企業がぶっつぶれる。大ぜいの従業員をかかえておるから、これは私は経営者として当然だと思う。だから私も生産を認めておる以上、売るなとか、売ることを規制するなんということはできないと思います。ただ問題は、その薬自体が本来医療として活用せられるべきものであるか、それとも大衆がたとえば一種の嗜好品、あるいは単なる保健剤として活用せられるべきものであるか、これの区別が判然としてつくならば、一般国民が非常に助かるし、また宣伝したならば大量の消費口である医療用としてそれが使えぬということになりましたならば、おのずから広告しても、それは一般大衆には使ってもらえるけれども、しかしながら専門的には使ってもらえないということになれば、これはおのずから規制されてくる。だからそこに神田厚生大臣が英断をふるわれる時期がきておると私は思うのです。そのことは単に私の思いつきではなくて、これは大臣薬務局長も御存じだと思いますが、少なくともあなた方の内部においても、それは検討されたことなんだと私は思う。これは大臣はあるいは御存じないかもしれませんが、薬務局長、そういうことの案はかつて検討しておるでしょう。そういう点はどうですか。
  315. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 御指摘のような議論は、かつて保険が前の赤字のときに、七人委員会等におきましても薬を大衆薬と保険薬に分けて、それで取り扱いをはっきりしろというような御意見もいただいておりますし、先生の御意見、私どもまことに現在のいろいろな問題につきましての焦点をついた問題だと思いますから、今後われわれの重要な検討事項として、取り扱いにつきましては慎重に検討してまいりたいと思います。
  316. 辻原弘市

    辻原分科員 重ねて私はその問題について大臣に申し上げておきますが、従来薬事審議会というのは、これは厚生省の機関ではないのじゃないか、あれは製薬会社の系列に入った付属機関ではないかといわれているのですよ。こういわれているのです。しかもいま私が申し上げたようなことが、これはもうだれが考えても常識的であろうと思う。先般も私はある有名な大学付属病院の権威のある博士にお会いをいたしました。たまたまその方のおっしゃるには、ほんとうに嘆かわしい、日本のような国はございませんよ、どこの国に行きましても、広告で薬を売っているなんという国はありません。それだからいい薬、悪い薬の判別が、しろうとの一般国民ばかりじゃなくて、近ごろでは極端な例をいえば、開業医の皆さんだってそのマスコミに乗っかって、本来の医療ということと薬ということの結びつきについて、重大な間違いをおかしている点がある、こういう指摘をしている。そういうふうに一般専門家が、私も新聞その他でそういうことの意見を述べられてあるのを読みました。それだけやかましいのに、何で一体いままでやれなかったか。ここに問題がある。だからせっかくいい案をつくりながら、そんなことをされたのではたいへんだと業界から圧力がかかれば、それでひとたまりもなくて薬事審議会はもとより、厚生省の薬務行政というものは飛んでしまう。これは幾らやってもだめなんだというのが、良心的な医師なんかの現在の心境だと私は思う。それだから、せっかくこれほどいま医療問題がやかましくなっておるおり、国民的世論となっておるおりですから、いまこそ私は絶好の機会だと思う。そこに私は厚生大臣がほんとうに政治生命をかけられてでも——私はあるとは申しません。あるとは言わぬが、かりに業界その他の圧力があっても、敢然としてそれをはねのけて、そして国民大衆が希望しておる生命を守る医療として活用され得る、そういう薬剤行政をおやりになるか、いま私が申し上げたようなことをおやりになるか、そのことについての決意をここで表明しておいていただきたい。
  317. 神田博

    神田国務大臣 私就任以来、いろいろ薬務行政については考えてまいったわけでございますが、特に最近薬務関係につきまして諸般のトラブルといいますか、いろいろ不祥事件等もそこに発生いたしまして、世論がきびしくなったということももとよりでございますし、いろいろまたかくあらねばならないというような卓見、名案等もお聞きする機会にも恵まれてまいったわけでございます。いまの辻原委員のお話も、私はそういう点について重大な意味が含まれておると考えております。私といたしましては、やはりものごとをいろいろ改革すると申しますか、改めるということにつきましては、潮どきというか、時期があろうかと思っております。今日このようなときに薬務行政に再検討を加えて、そして改める点が多々あり得るように考えておりますから、こういう機会をのがさず、重夫な決意を持ってひとつ善処いたしたい、こう考えております。
  318. 辻原弘市

    辻原分科員 そこで、決意を承ったのでありますが、大臣、そういたしますとその手続、またあなたがその結論をお出しになる時期、これについてひとつ率直な御意見を承りたい。
  319. 神田博

    神田国務大臣 これは私も多少考えておりますが、できるだけひとつ事柄は慎重に考えまして、しかもこれを行なうにはやはりすみやかに、こういうふうに考えております。事柄が事柄でございますから、慎重に段取りをつけまして、しかもすみやかに、いわゆる迅速にこれをやってまいりたい。いろいろ庁内の意見もまとめまして、十分また識者の意見を聞きまして善処いたしたい、こう考えております。
  320. 辻原弘市

    辻原分科員 ちょっと大臣、私はいまの大臣お答えを額面どおりには受け取れないのです。なぜかというと、これはいま新たに起きてきた問題ではなくて、厚生省内部でも、もう数年にわたって検討を続けてきたものです。要は決断が下せなかったのです。そういたしますと、いま大臣のようなことになると、各界の意見も聞き、なるべくすみやかになどと言っておりますと、いま現に医療問題は煮詰めなければならぬ問題なんです。変な例を言うと、そろそろ内閣改造のうわさもされておる。おのずから時期は限定されるのです。しかもいま医療全体の問題で、薬価の半額負担なんということをあなたのほうでおやりになるものだから、もうどこへ行ってもその話で持ち切りです。先生、もう私らのように年収三十万以下の者は、とても薬代を払えません、いままではどうにか本人健康保険で薬はただでしたから、長期にわたる療養もその点については安心してかかっておりましたけれども、しかしこの薬が半分自分のふところになるとなったら、とてもとてもこんな療養はやっていけません。どこへ行ってもそういう声を聞くのです。そこで私どもは断じて薬価の二分の一なんということは認めません。認められない。しかもそのことの結論は、少なくともいまもめておる医療問題の中で解決をすべきものでありますし、また大臣もいま答申を求めて、そうして保険三法を国会に提出されるというとき、それと重大なからみ合わせがあるのです。だから薬価の半額負担、あるいはこの間新聞に出ておりましたが、私さだかにはわかりませんけれども、政府のほうでそれを二〇%に下げるとか、あるいはもう少しそれを引き下げるとかということも示されておったが、しかし問題はそれではその基準、一体薬価総額というものがどうなるのかということにおいて、その場合の持ち出しがうんと違ってくるのです。それをあげて国民負担にするなら別として、少なくともそれを国庫でもってある程度充当するということになれば、いわゆる国庫充当額の算定の基準というのは、薬価の一つ一つの基準をどうするかということに重大な関係がある。その基礎的なファクターがないと、これはやれる問題ではないのです。だから私はそういう意味で、これから検討いたしまして、すみやかにやりますなんということでは、黙って引き下がれませんということです。だからいまの時期にあなたが決断を下すかどうかということを、あなたにお伺いしている。どうですか。
  321. 神田博

    神田国務大臣 いまのお話の意図のあるところは、私もよくわかっておりますので、そういう意図に間に合うように考える、こういう意味で申し上げておるわけであります。
  322. 辻原弘市

    辻原分科員 そういたしますと、私はここで確認をしておきたいのですが、私の提案をいたしました現在の医療専門用に使われる薬、それからビタミン剤その他一般の保健剤、いわゆる大衆薬というものとの混同が、その選別がはっきりしないで、すべて広告にそれをゆだねて販売をしているというような傾向を改めるために、ここで広告費等の削減をはかり、コストダウンをするために、専門的雑誌以外に広告をする分については、専門医療薬とは認めないという原則を、この医療問題の中で確立をする、こういうふうに私は受け取りますが、よろしいですか。
  323. 神田博

    神田国務大臣 そのようなことも含めて検討したい。しかもすみやかな、そう時期をかけないで考えたい、こういう意味で御了承を願いたいと思います。
  324. 辻原弘市

    辻原分科員 私はいろいろの例証その他、残余の問題を省いて、あえてその問題だけ明確にお伺いをいたしておりますので、いま大臣お答えになり、私が締めくくって申し上げたその内容等を含めて、今度の医療費の問題の中で解決をするということばは、これは明らかに速記に残るわけでありますから、その点について違約がありますと、これはたいへんなことになるぞということだけは、ひとつお考えを願っておきたいと思います。特にこれはいろいろ同僚委員等からもお話がすでにあったかと思いますが、いまの薬の値段というのは、これは薬九層倍どころの騒ぎではありません。私は専門家の方にいろいろなことを聞いております。しかしそれはそれぞれの大衆薬を生産される会社に迷惑がかかってはいけませんし、そういうことを言うのが本旨ではないから省略いたしますが、たとえば人間一人ビタミンの所要量はどうかということについて、先般朝日新聞に東大の桜井博士の説が載っておりました。私はその説についても他の人にも聞いてみましたが、おおむねそういう見解が医学界の常識になっておるようであります。それによれば、一日の消費量というのはわずかに一ミリグラムです。そういたしますと、かりにそれを薬剤によってまかのうたといたしましても、年間を通じて二百円もあれば事足りる。もしそれに若干の諸経費を加えてみたところで、利益というものは、最近の商品コストから見ますとおおむねの商品が、かりにメーカーの段階であっても五割、六割という商品はまれです。利益幅が縮まってきておる。かりに倍だといたしましても、すなわち五割の利益があったといたしましても、その倍でしょう。ところがそういうビタミン剤に若干のくふうを加えれば、百円ないし二百円という高い値段でもって一般に売られておるのです。だからいかに大きな利益があるかということは、このようなごく簡単な一例でも一目りょう然です。しかもある権威あるお医者さんに聞けば、いろいろしておるビタミンの複合剤というものは、これは人間のからだに活力を起こさせるということは逆に、疲労を覚えさすような薬もある、こういうことです。だからもし日本が本格的に自信を持って海外に出せる、また海外もこれを買ってくれるというのは、まあせいぜいビタミン1くらいのものだろうという。それが薬についての専門家の実際の意見だと思う。   〔井村主査代理退席、主査着席〕 そういう意味から推して、今日せっかく厚生省は努力をなすっておられるけれども、事実においては野放し同然の薬務行政に、世論にこたえてピリオドを打つべきだということを私は強調する。大臣から先刻、今度の医療問題の中で必ず解決をいたしますというお答えをいただきましたので、時間が参りましたから、私はこれ以上のお尋ねはいたしません。その大臣の御答弁を私は十分記憶いたしまして、これからわれわれもこの厚生省の薬務行政、さらには医療費の行政にできるだけの協力をしていきたいと考えておりますので、ひとつただいまの答弁をお忘れのないように、本日ただいまからしっかり腹をきめて、結論を出していただきたいことを要望いたしまして、ちょうど時間ですから、お約束に従って質問を終わります。
  325. 相川勝六

    相川主査 次は帆足計君。  帆足君に申し上げます。質問者が多いですから、時間は三十分程度にいたしまして、あなたの持ち時間は四時までにお願いいたします。
  326. 帆足計

    帆足分科員 まず第一に、ただいま辻原分科員から御要望がありましたが、私どもはこのたびの医療保険制度の、健康保険制度改正をめぐりまして、とにもかくにも保険料は高くなる、薬代は払わねばならぬ、このはさみ打ちでは困るというのは、これは庶民の声です。全国民の声ですから、大臣は十分にこれは御理解なさっておられることと思います。日本における健康保険制度は、いま一大手術を要するところに来ておりますから、過渡期の措置として、一時切開手術をして、緊急値上げをして、医師諸公が安んじて、とにもかくにも業務に精励し得る条件をつくっておいて、それから段階的に検討をしようという順序になるのだろうと思いますけれども、その応急措置としてのはさみ打ちでは困るのでございますから、この際、薬代をいままで負担しないでよかった人たちに対して、薬代をも追い打ちをするということはおやめになるということを、私は声明していただきたいと思います。  それから日雇い労働者の諸君などは、ほんとうに貧しい人たちです。中産階級から上に対しまして多少の移動がありましても、がまんするでしょうけれども、日雇い労働者の諸君にとっては、今日取られておりますような負担がふえる、そしてまた病気にかかって、また負担がふえるということは、とうてい生活が不安定ですから、雨の日、天候のかげんに左右されるという業種も少なからずあるわけですから、それはひとつ大臣として格別の御考慮を願いたい。  私は外務委員会に属しておりますけれども、予算分科会ということになりますと、むしろこういう平凡な市民の率直な声を聞いていただくということは、専門家の発言よりも、かえって大臣にお役に立ちはしないかと思うのです。詳しいことを知らない私どもが、端的に日雇い労働者の諸君はちょっと無理じゃないか、それから保険料の値上げと薬価負担のはさみ打ちでは困るじゃないか、これは切実な庶民の声ですから、格別ひとつお心にとどめていただきたいと思います。
  327. 神田博

    神田国務大臣 帆足さんにお答えいたしますが、保険財政が一昨年来急激に悪化してまいっておることは御承知のとおりでございます。診療報酬も緊急やむを得ないということで、引き上げに伴いまして、さらにその財政赤字化してまいりまして、これを基盤をひとつつくらなければならない。ことに健康保険家族の方々は五割給付でございまして、五割自己負担をいたしております。国民保険家族は今年度で半分以上は七割負担になっております。この残りも四十一、四十二年度で全部七割給付でやろうということでございますので、健康保険家族の方々もやはりこの給付を引き上げなくてはならぬ、こういうようなこともございまして、それにはどうしても健康保険基盤を強化しなければならない、こういうことでございます。健康保険社会保険でございますから、同時にまた社会保障でございますので、社会保険のたてまえ上、両方が負担するのは当然でございますが、その金額が多くなるというような場合においては、政府が持つのは私は当然だ、こう考えておりまして、そういうような三者持ちというような構想で、健康保険の健全財政化をはかったわけでございます。あるいは一歩後退二歩前進というようなことにもなろうかと思いますが、とにかく保険財政の健全化ができなければ、むしろ社会保険そのものが崩壊してしまう。そういうことはどうしてもできない、こういうことでやったわけでございまして、これらの問題は御承知のように、ただいま社会保険審議会、社会保障制度審議会に諮問中でございまして、政府といたしましてはそちらのほうの御審議におまかせ願って、そちらのほうの答申を尊重して、その線で国会にお願いしたい、こういうことになっておるわけでございまして、ここでいまそれ以外のことを申し上げるということは、いささか審議会無視ということにもなりはしないかというきらいもございますので、ただいまの段階では審議会に御審議を願っておる。そうして答申を待って、その答申を尊重して御審議をお願いしたい、こういう段階でございます。
  328. 帆足計

    帆足分科員 これはひとつ厳重に申しておきますが、われわれは両方負担というようなことには、一般国民としてとてもたえられない。特に日雇い労働者の問題などについては、格別の御注意を願いたい。それから健康保険の問題は、私は保険料とか、薬価の問題だけでなくて、総合的に考えたほうがいいのではないかと思いますが、たとえば病院をつくりますと、日進月歩の時代ですから、今後の病院は冷暖房くらい本来ならば必要であるし、不燃化建築でなくてはならぬと思うのです。  先般私は人間ドックに入りましたが、国立病院ですから、二十年前に敗戦のころ憲兵隊に逮捕されまして、巣鴨の刑務所の刑務所病院にいたことがあるのです。あのときのほうがよかったと思うのです。またあのときとほとんど同じくらいで、たいへんなつかしい思いがいたします。病気して刑務所の病院がなつかしくなるというようなことでは困ると思うのです。これは明らかに、とにもかくにも医療行政の立ちおくれでありまして、生活上の困難にぶつかっておられて、御苦心のほどはわかりますが、病院ができ上がりまして、その病院の減価を償却しようとすれば、借金も払わなければなりません。したがいまして病院ができ上がった日は、病院の助手さんや看護婦さんたちの給料が上がらないということが確立した日と同じことになって、固定資産の償却にそれが利益金処分となりますから、二重に苦しむわけでございます。もちろん特殊法人に対して免税措置がいろいろあると思いますけれども、病院の改築、設備の改善等については、低廉な安い金利の融資が、いまのお医者さんの信用組合のような短期で、相当金利の高いものでなくて、住宅金融公庫のような三十年とか四十年くらいの資金が出てしかるべきではないか。というのは、でき上がりましたものは社会公共のものでありまして、院長さんのお昼寝する場所でもないわけで、患者さん、皆さんがここで助かる場所ですから、赤十字みたいなものです。したがいまして病院は思い切って、今後いいものをつくっていただいて、冷暖房その他進歩した設備が整う。それには十分な資金を、しかも長期で返済するのですから、別に国費の浪費にはならぬわけです。近ごろ病院の祝賀会がありまして行ってみますと、まことに粗末です。公団住宅より粗末な病院をつくっております。それはやはり健康保険制度にしばられて、支払いができないからである。しかも病院ができたお祝いの日は、この病院をかかえておって、それを償却できる日は院長さんが十年後——十年後といえば院長さんがおじいさんになったころ、そうしてやっと借金が済むまでは、看護婦さんの給料も十分には出せないというようなことですから、不動産、動産、設備等に対しまして、長期金融の道などもあわせてお考えになって、総合施策で日本医療制度が安心して医学進歩に立ちおくれず、国民に奉仕し得るようにしていただきたい。これもひとつ御研究を願いたいと思います。
  329. 神田博

    神田国務大臣 お説まことにごもっともでございまして、病院等はみな営利会社でなく、福祉法人でございますから、なかなか今日、物件費や人件費が高騰する時代には、私はたいへんだと思います。そこで融資の問題でございますが、厚生省といたしましては、病院等につきましては厚生年金あるいは国民年金から特別に融資いたしております。長期、低利の金を出すというような制度をとっておりまして、また開業医の方々につきましては、御承知のように医療公庫というのがございまして、医療公庫からやはり長期、低利の金を出す、こういうことをやっております。いずれも融資の要望額が相当多うございまして、十分に沿い得ないことは残念でございますが、将来はもっと額もふやして、いまお話もございましたように年限ももっと長期にして、そして病院経営がそんな苦しまないで、また絶えず更新して、新しい施設もしなければならぬわけですから、そういうようにはかってまいりたい、こう思っております。
  330. 帆足計

    帆足分科員 それでは御記憶にとどめていただきたいのですが、動産のほうは、医療機械のほうは別といたしまして、不動産のほう、すなわち病院の入院室、診療室などの増築等につきましては、七年とか、長いので十年とか聞いておりますけれども、年賦が、住宅になりますればどうしても普通の経費の三倍かかりますから、三十年でなければ無理だと私は思います。でないと、せっかくつくるのに——祝賀会に行ってみますと、見るもあわれなバラックなんです。したがいまして三十年年賦でなければ絶対に成立しません。これを深く御銘記のほどをお願いいたします。  それから先ほどの広告の点ですが、薬の広告というものは内容をよく知らして、医学進歩がここまできているということを淡々として知らして、そしてよい売薬を選ぶことができれば、それはいいことです。しかしテレビ、ラジオなどで瞬間的に叫んで、おい、へそないじゃないか、おまえ、へそあるかというようなことで、あとで薬の名前をどなる。いいと思うよなんと言ったって、ぼくらいいと思わないのですから、こういうことはやめてもらいたいのです。きょう私は、郵政大臣及び文部大臣に、劇のまつ最中に薬の名前を呼ぶことだけはやめてくれ。それは無意味なことです。薬の進撃を知らせるならば、別な方法で知らしたほうがいいのであって、インスタントラーメンを叫ぶと同じ勢いで一秒間叫ぶというような、そういうのは薬の権威上、化学の権威上、パスツールの名においてやめてもらいたい、こういうことなんです。いかがですか。そういうふうに御研究願いたいと思います。
  331. 神田博

    神田国務大臣 いまの薬のマスコミにおける広告については、もうお述べになったような非難が山積しているのが実情でございます。私も全く同感でございまして、先ほど来皆さんからいろいろ声を同じくしてそれをおっしゃっておられますので、十分検討を加えまして、御趣旨をひとつ実行してまいりたいと思っております。
  332. 帆足計

    帆足分科員 ただいまのテレビの問題は、売薬の広告が一番悪質です。奇妙な女の声を出す。言うもけがらわしいから言わないけれども、緩下剤の広告でしょう。ああいうばかな放送を聞いて、買うやつも買うやつだと思うのですけれども、そう言うたところで、まあとにかくよくないのです。テレビ会社も、幕間に広告を出して、言わんと欲することを上手に広告するという方法はあり得るのですから、私はテレビ会社の収益を悪くさして、また一そう番組を悪くさせるようなどということは、毛頭も考えものではありません。テレビもまた採算をとっていかねばなりませんから、それは十分な考慮が必要ですけれども、とにかく映画や劇の最中に薬の名を叫ぶことだけは、もうやめていただきたい。私はきょうも文部大臣と約束しました。おやめにならなければ、ぼくは文部大臣と郵政大臣の応接間に行って、そしてがんばる。場合によっては興奮してテレビをこわすかもしれない。厚生大臣に対しても同じことを申し上げますから、ひとつしかと、私ども冗談ごっこをここでやっているわけじゃないのですから、しかとお含みの上、実行に移していただきたい。きょうの御答弁は、文部大臣も郵政大臣も、幕間で叫ぶのはもうラーメンを含めてやめようという御答弁です。関係大臣と相談して、日本国民の品位のためにしかるべく措置しよう。私もこれにつきまして、外国の法律も多少調べてみました。外国でもおおむねそれは禁止しております。一つの映画を見るとき、特にすぐれた映画を見るときの人間の大脳の流れは、ナイヤガラの瀑布の流れほどのエネルギーが流れているそうです。それを薬の名前を叫んで中断するなんということは、これは無礼なことでもあるし、よくないことです。目に余ることです。したがって、これはきょうをもってひとつ最後の御答弁考えまして、やめましょう。これは党派を越えていることです。ただし、広告でも、たいへん美しい広告があるのです。スカラ座ですか、たまに家内と一諸に参りまして、合い間の広告はまことに優秀で、下のむすこは、建築の卵ですけれども、むすこも感心して、こんなすばらしいデザイナーがおるといって、勉強の刺激になったようなことです。ですから、そういうことも幕間にできるのですから、ひとつよろしく御実行のほどをお願いいたします。
  333. 神田博

    神田国務大臣 ほんとうにいろいろ例を引いた、示唆に富んだ、所説でございます。これは私もいまの文部大臣、郵政大臣とも相談してとこう思っておったのですが、もうすでに帆足さんのほうでそちらのほうも御連絡があるやに聞きましたので、非常に心強いあれでございます。十分連絡をいたしまして、ひとつそういう醜いあり方を是正いたしたいということを、はっきり申し上げておきます。
  334. 帆足計

    帆足分科員 きわめて明確な御答弁をいただきまして、ありがとうございました。やがて月曜にしてこの効果があられましたときに、国民大衆はどれほどほっといたすことでしょう。感謝にたえぬことです。  その次には、実は私のむすこも医者の卵ですが、再来年にはインターンの順序です。実際私は今度の健保問題は、全面的に厚生大臣を必ずしも攻撃しようと思わぬのです。というのは、どうにかせんならぬところにきているのです。新任の大臣があわてて、とにかく緊急告示をなさる。ちょっとしくじった。今後訂正なさるでしょう。そういうことであって、大臣が急がれた善意は、私の家自身が医者の家ですから、よくわかるのです。それは医師残酷物語というか何というか、非常な不合理が今日の医療制度にあって、商工省が産業の心配をし、農林省が農民の心配をするのに、厚生省は、昔宮中席次が低かったのでインヘリオリティコンプレックスを持っておられるのでしょう。大蔵省の前に頭が上がらない。そのためについ負担が弱い者にかかってきている。そうして医療制度が合理的水準になっていない、私はこういうことだと思うのです。いま福祉国家といわれる今日、厚生省の宮中席次は最高であるべきであって、総理大臣、その次には神田さんが厚生大臣であるから二番目にすわる。このぐらいの地位があって私はしかるべきものでないか。しかるにいまだに厚生行政というものは、一番最後のほうに取り扱われて、そうして自衛隊などというものは、まだ相当の予算を取って幅をきかせている。私は今日世界に軍備がありますから、何かなくちゃならぬとするならば、バチカン宮殿の前を歩いているような兵隊さんを置いて、場合によっては武者人形みたいなかっこうでもさして、二重橋の前でも歩いてもらえば、観光収入をふやすにも非常に都合がいいし、ぐあいがいいと思うのです。というのは、一たん緩急あればピカドンですし、それから自衛隊の諸君は、一たん緩急あれば退職して逃げてしまうのです。この前アンケートをとりました。そうしたら、自衛隊の奥さんたちは、やめさせていただきますわというのがとても多いのです。なぜやめるのと言ったら、いやいや、私たち生きるために自衛隊におるのであって、死ぬためにおるのじゃありませんから、やめさしていただきます。それはあまりドライじゃないか、ぜひとも死んでもらわなければ困るのだと言いましたら、社会党は平和の党でしょう、こう言うのです。世の中はこれほどドライになっておりまして、われわれは敗戦のエキスパートですから、三矢研究の頭の悪い諸君が国家総動員を考えられましても、みなやみのエキスパートでございまして、正直者が損をするということは知っておりますから、一たん緩急あるときまれば、もうかん詰めなどは一瞬にしてやみで消えてしまう。だれも政府の統制を守る人はないでしょう。いかなる力をもってしても、エホバの神々の力をもってしても、私は戦時統制経済は不可能だと思います。敗戦の国というものはそういうものであって、しかるべき上に立って、そして日本の防衛の適切な政策を保守党として講ずる、こういう心がまえでおられるならば、野党と与党との差は私は小さくなると思います。  それにいたしましても安全保障ということは、結局国土と命の安全保障です。だとするならば、安全保障を引き受けているものは、私はむしろ厚生大臣でなかろうかと思うのです。ダレスは中共兵のために殺されたでしょうか。ベトコンに射殺されたでしょうか。彼はガンのために倒れました。池田さんはソ連兵のために殺されたのでもありません。これもガンのために、ガンの先駆症状のためにいま御苦労なさって、せっかくわれわれは御回復を祈っておる状況です。だとするならば、今日の防衛は、防衛隊最高司令官はすなわち神田厚生大臣だ、私はそう思うのでございます。われわれはいま平均年齢七十二歳になりました。これは女性でありまして、男子はちと心がけが悪いから六十八歳とか承っております。心がけさえ直せば、家内と同じ年までは生きられるものと思いますが、しかし、だとすれば、人の命を守ること、そしてそれが二十年も延びたということは、すばらしい成績であって、私は化学療法の進歩に対しては、皆さんが祝日をおつくりになって、あるいは収穫の日に感謝し、あるいは国が生まれた日に感謝しようという、やさしい心ばえを持っておられるならば、私は科学進歩のために、なかんずく何よりもまず第一に医学進歩のために感謝する日、ペニシリンの日でもつくったらどうであろうと思うのでございます。  というのは、振り返ってみますると、三十年前には、親知らずを抜いたくらいで死んだ人がたくさんおるのです。肺炎で死んだ人は数知れず、結核もそうです。今日残っておるのは主として心臓病とガンです。私はガンの実情を、わが身に振り返ってみまして、十八才のときには私はバスケットボールの選手でしたが、突然喀血しました。それから約二十年ぐらい、ずっと微熱が出て苦しみました。石油を飲んだり、水を飲んだり、あらゆることをしました。最後に気胸療法ができましたころ、私は胸に一升ビン、ずっと空気を入れながらモスクワヘの旅行をして、気胸患者初めてゴビの砂漠を渡るということを、ウランバートルの駅の記念帳に書いたことがございます。今日のガンの状況を見ると、ちょうど三十年前の結核の状況に非常によく似ているのです。結核の病菌だけはやっと顕微鏡で見えるようになった。しかしどうしたら免疫ができるか、免疫よりも治療薬ができるか、殺す薬ができるかということが、当時の私どものただ一つの願いでした。それがやがてまずペニシリンの発見によって実現されましたが、それより前に御承知のようにまずプロントジル、それからズルフォンアミド剤、それからペニシリン、この化学療法の進歩の歴史というものは、いま私は振り返ってみる必要があると思うのです。そのころ医学界の一部は、やはり保守的でありまして、この化学療法をなかなか受け入れようとせずに、当時の平賀源内といわれた安田徳太郎博士、この変わり者の抜群の一種の先駆者的感覚を持っているお医者さんが、ズルフォンアミド剤を実験いたしまして、そしてこれがまだ当代医学界で認められないので、やむを得ず石橋湛山氏にお話しして、東洋経済新報に初めて発表されたのです。薬の専門の雑誌でなくて、経済の雑誌をかりて発表された。そうしてプロントジルからアルバジルに至る歴史を彼は書きました。やがてペニシリンがあらわれまして、これはチャーチルがそれによって肺炎がなおりましたために、一挙に世界じゅうPRができました。もしチャーチルが肺炎にかからなかったならば、ペニシリンの普及は私は三年くらいおくれたのではないかと思います。やがてストレプトマイシンができました。しかし一錠七万円から四万円も当時しまして、北海道の果ての米軍のある赤十字などに分けてもらって、そうして当時喉頭結核と腸結核、すなわち免疫性の結核にはそれがききましたから、それを急いで入手するために骨を折りました。
  335. 相川勝六

    相川主査 だんだん時間が来ますから。
  336. 帆足計

    帆足分科員 もうちょっとごしんぼう願います。重要なことですから……。そこで私は仁科博士と相談いたしまして、当時経団連の専務理事をしておりましたから、ストレプトマイシン国産の委員会というのをつくりまして、幸い政府当局の御理解があって、六億円か補助金が出まして、マイシンの国産ができました。当時私のあだ名は、ミスター・マイシンというあだ名をつけられましたが、私は生涯で最も光栄なあだ名であったと思っているのでございます。今日ガンの追及の戦いが行なわれておりますが、癌研究所の所長さんたちは相次いで倒れました。そうして敬愛する与党の党首も、その先駆症状のために休養を余儀なくされております。そうして今日かろうじて手術によって、早期発見の切開手術によって、かろうじて食いとめようとしているわけであります。これは私よく冗談を言うのですが、フグ料理みたいなもので、医学でなくて、フグ料理の専門家であるという冗談を言うのです。そのフグ料理の対象に私もならぬとも限りません。ところが最近電子顕微鏡並びに西ドイツにおいては陽子顕微鏡等の発達によりまして、ガンが小さな菌みたいな大きさで写真に写るようになってきました。しかしガンにも種類が多く、生体実験ができませんために、その後遅々としてはかどっておりません。またこの生物と無生物のあいのこである結晶物は、突然変異をするのが御承知のように特色でございまして、そうして外部の刺激を受けるために突然変異をいたしまして、何十種類かあるということもほぼ了察されております。これに対しましてちょうどインフルエンザ菌のように、インフルエンザ菌はそのときの紫外線や赤外線の影響等によりまして始終変わりますから、それに適合した免疫をつくるということは、非常に骨の折れる仕事でございます。ガンはもっと不安定でありまして、ガンとの戦いは、まさに三十年前の結核との戦いと同じときに来ております。
  337. 相川勝六

    相川主査 時間でございます。結論をお急ぎください。
  338. 帆足計

    帆足分科員 そこで最近の英国、ソ連、アメリカでは、どちらかといえばビールスに重点を置いてガンを追跡しておりまして、人工衛星においてモスクワとワシントンとどちらが勝つかというような競争が、いまやソ連とアメリカとの間において行なわれている状況でございます。光学機械の発達した日本におきましては、この問題について一つ役割りを果たし得る条件を持っておりまして、日本の電子顕微鏡学界におきましてはこの問題について、ガンに対してほぼビールスと見当をつけて、そうして追跡しつつある状況でございます。私はこの際主査のお許しを得て結論を述べたいのですが、ビールスの研究について、その追跡について予算を取る措置を厚生大臣考えていただきたい。もう九九%までガンの病源菌はビールスであろうということは、国際的にほぼ決定に近づきつつある方向でございます。同時にまたビールスを追及することによって小児麻痺、インフルエンザその他のろ過性病源菌を、次々とこれを把握し、つかまえるということが、同時にそれから免疫、治療の道を発見することでございますから、ビールスの研究について適当な研究機関があるならばそれを助け、不十分であるならばこれを補い、ビールス研究において日本が、ソ連、アメリカに対してひけをとらないように、この光学機械、精密機械工業においてすぐれた民族が、これにおいて一つ役割りを演じ得るようにしていただきたい。これは医学の問題と原子物理学と光学機械の学者との連合によって、解決し得る問題でございますから、直接厚生大臣が指揮されて適切な措置をとっていただきたい。  第二には、同時に残っておるのが心臓と血管の病気でございます。これにつきまして榊原教授のようなすぐれた心臓外科の練達の学者を持っておることは御承知のとおりです。榊原博士を中心として、心臓及び血管に関する研究所をつくろうという創立の準備がいまなされております。しかも資金に困っておりまして、一部は財界に援助を求めておりまして、私もこの相談を受けました。こいねがわくは、財界の援助だけでは足りませんから、政府におきましては、これに対しましても相当の資金を準備していただきたい。また榊原博士お一人だけのそのグループだけの御努力だけでは不十分だといたしますれば、それを助けるような方法とか、その学界の連合の方法だとかに、お力を添えていただきたい。自衛隊のジェット機の翼一つあるならば、どれだけ多くの貢献がなされるか。人間の生命を救うことが安全保障であるならば、もはや剣だけが無限の安全保障だけではなくして、学問の力もまた医学の力もまた安全保障であるということを知っていただきたい。  今日の課題は三十年前に私どもが結核を問題とし、結核によって有為な青年の大部分が死んでしまって、われわれ鈍才だけがこうして生き残りましたが、今日はガンと心臓と血管の病気によりまして、有為の人が働き盛りに倒れております。中国、ソ連に対して一定の国防計画を立てることも、保守党としては一応必要であるかもわかりませんけれども、それは適当な常識の範囲でいいのでありまして、こいねがわくは自衛自衛ということが命を守るということであるとするならば、ダレスが中共兵に狙撃されたのでもなく、池田さんがベトコンにねらわれたのでもなく、われわれ人類の共通の敵は、いまやビールスである。同時に心臓の病だということを御理解くださいまして、そういう点、大臣も私もこの二つの敵に対して対決する日が来るでしょう。そのための共同戦線です。したがって自衛隊の資金の半分を減らしてでも——これは極端な表現は心なき人を怒らして、問題が困難になると思いますから、これは取り消しますけれども、自衛隊の経費のみのことを考えずに、この心臓との戦い、ビールスとの戦い、心臓を守る戦い、この二つに全力をそそいでいただきたい。  また主査がもう時間がきたと言って、私の発言をとめる危険性のあるような御表情をなさっていますから、もう一つ一括してお尋ねしておきますが、最近の人工流産、妊娠中絶の問題は、非常に深刻な問題であります。私は国土狭小なこの国において、これはやむを得ないことだと思います。思いますが、人工流産というものは母体に非常な障害があるのです。男は楽しんでそれで済むでしょうけれども、女性もまた楽しむかどうかは存じませんけれども、とにかくその重荷はすべて女性にかかる。しかも人工流産の場合は、せめて三日間入院しておれば、そしてすぐれた医者にかかれば、それほど大きな弊害はありませんけれども、人生の現実はそれを許さず、一晩泊まらないで家へ帰る人が大部分である。そしてあとの手当ても怠りますために、母体に非常な障害を与えております。この数はどのくらいでしょうか、それもあわせて御発表願います。  それと私はその障害、そのばく大な経費、その精神的及び肉体に与える苦痛、その後にくる後遺症から見るならば、やはり事前の産児調節が必要だと思います。しかし産児調節につきましては、いろいろな方法がありますけれども人間が最も安心した状況のときに起こる現象でありますから、武装することはきわめて困難でございます。したがいまして最も簡易なる方法が必要であろうと思いますが、私はいままで書物を読み、多くの人の経験を聞いた範囲においては、リングの方法が一番いいと承知しております。なぜよいかと申しますと、リングはかつては金でつくるために非常に値段も高く、重量も重く、刺激も強かった。最近は化学ビニール製品等の進歩、合成樹脂の進歩その他によりまして、たん白質を刺激しない、軽く、やわらかな、ぜんまい状のものをつくることが可能になってまいりまして、しかも子宮内部においてはガンができること少なく、子宮の外部のほうにガンができることが多いというような諸事情もあり、同時に化学薬品がありますから、異常体質のときはすぐとりまして、そして適当に雑菌を防ぐ方法を講ずれば、弊害がなくて済みますから、これはひとつ政府としても研究を助長すべき問題である。しかるに薬事審議会というものがありまして、この薬万能の審議会の背後にはいろいろな問題があることは、もう皆さん御承知のとおりでしょう。私は薬事審議会に絶対に反省を促したいと思います。反省の実があがらなければ、この次の来年の分科会におきましては、私はいろいろの実例をもって反省を求めねばならぬと思っております。しかし医学進歩のことは、しろうとがちょうちょうすべき問題ではありませんから、時としてはかったるいくらいの慎重な審議が必要でございますけれども、私としてはいままでこの問題を研究し、一、二の本も書きましたけれども、その範囲ではこのリングの方法は、大いに研究すべき問題であると思います。できますことならば諸般の化学薬品の進歩などを考えまして、婦人科の専門医に対してはこのリングはすでに許可してよい段階が来ておるのではあるまいかと思います。これもひとつあわせて御研究を願いたい。ただいま御回答を得て、不十分でありましたならば、一言だけこれに対して要望を申し上げる自由をお許し願っておきます。
  339. 神田博

    神田国務大臣 ただいま帆足委員からガン、心臓、血管等の問題につきまして、いろいろ貴重な御意見、御示唆があったわけでございます。私といたしましてもこのガンの研究、それから心臓、血管等の問題につきましては、特にこれは重大な関心を持っておりまして、就任以来検討を続けており、また先般の予算措置等につきましても、またいろいろ特別の配慮をしたというような例もございますので、今後もひとつ十分留意してまいりたい、こう考えております。榊原先生の問題も私は実は承知いたしておりまして、ひとつできるだけ前向きで御協力申し上げたい、こう思っております。  それから最後に人工妊娠中絶の問題でございます。これは後遺症的障害等もございまして、不合理と申しましょうか、母体に与える影響の甚大なことはお述べになりますとおりの実情であることも承知いたしておりまして、これは何らか防止いたしたい、こういう所存でございます。リングの問題につきましても目下検討中でありまして、データを集めておるような最中であります。せっかくそういうものが整いますれば、これを世に送りたい、こう考えております。簡単でございますが……。
  340. 帆足計

    帆足分科員 ちょっと最後に申し上げておきますが、それでは心臓病及び血管の研究につきましては、政府としてはできるだけ積極的にあらゆる配慮をなさる。それからビールスの研究に対しても積極的態度を示される。それから人工流産はいろいろの難点があるから、リングのことをひとつもっと研究していただく。こういうふうに了承します。同時に、最初に申し上げましたようにインターンの学生の問題につきましては、私はちょっと厚生省は不礼な点があると思うのです。わが子のためであるからというわけではありませんけれども、仮免許のような形にして、指定病院に子供たちを割り当ててしまって、そして給与は適当にせよ、指導要綱もわれわれ十分承知しておりません。現状のままならばいい学校におる生徒たちは慈恵なり東大なりにとどまりますけれども、よいかげんの指定病院に振りまかれて、そして実際はインターンのときと同じように半人前の医者として取り扱われる。学校を出ても半人前の医者でありますから、やはり臨床指導の要項をきちっとなされて、そしてその期間はいま病院は十分な給料を払う力はないのですから、せめて子供たちに二万円くらいずつ払って、病院があと一万円を払うとか、または政府が幾ら負担して病院が幾ら負担するとか明朗な形にして、そしてまだ助手ですから給料はその高くある必要はありません。しかし宿直の場合は宿直室にベッドとか清潔な毛布くらい置く。そして指導要項というものがあって、指導教授がいたわってそして導く、こういうことになっておればよいのに現在なっておりません。これはまだ社労委員会において論議を続けることができるわけですが、学生たちがおこっておることも私はもっともなことだと思いますから、厚生大臣は面会謝絶などなさらずに、あのよき子供たちの、青年たちの意見をよく聞いてやってもらいたい。特に御注意を促す次第でございます。
  341. 相川勝六

    相川主査 華山親義君。  華山君に申し上げますが、大体五時四十分ころまでにひとつお願いします。
  342. 華山親義

    華山分科員 ただいま帆足委員からお話がありましたが、私も感銘を受けましたので、ちょうどこの機会に申し上げますが、私の子供はビールスの研究をいたしておりまして、突然うちに帰りますとともに二、三時間でなくなりました。病体の解剖もいたしましたけれども、原因はよくわからなかったのでございますが、先生方はおそらくビールスの感染であろう、ビールスがからだに入っておったのであろうというふうに言われております。やはりビールスとガンとの関係、ビールスといわゆる肺炎菌によらない小児の肺炎との関係等の研究中にそういうことになったのでございます。今後とも子供の冥福のために、この機会に私事を申し上げてまことに恐縮でございますが、どうぞひとつよろしくお願いいたします。  それできょうお聞きいたしたいと思いますのは、重度心身障害者の訓練、指導の問題につきましてお聞きをいたしたいと思うのでございますが、今度の臨時行政調査会の答申といいますか意見、そういうふうなものにも、国は重度心身障害者についてもっと力を入れるべきであるということを書いてあります。ところがこの辺につきまして、まことにいままでのやり方が不徹底、国としてはやっておらないのじゃないかという印象を受けるわけでございます。それにつきましてわれわれが聞いておりますところでは、国といたしましてはその子供を収容いたしまして、ある程度働ける人、世の中に出ても働けるような程度の人、そういう人はいろいろな施設に入れてやりますけれども、もう見込みのないような者はほったらかしにしておく、こういうふうな基本的なもの考えがおありになるのじゃないか、しばしばそういうふようなことを私は聞きますけれども、国の方針は現在そういうふうな気の毒な子供に対しまして、あるいは気の毒な家庭と言ってもいいかもしれません、両親に対しまして、そういうふうな方針で根本的におられるのでございますか、どうでございますか伺いたい。
  343. 神田博

    神田国務大臣 冒頭に華山さんの御子息さんが不慮の、そういう原因のわからない、しかもビールスの研究をなすっておられて倒れられたということに対しましては、私どもも心から深甚な弔意を表する次第でございます。  次にお尋ねのございました重度身心障害者の授産の問題でございますが、政府といたしましては、身体障害者はあくまでやはり生まれてまいったのでございますから、できるだけひとつお仕事になじむようにしたい。いろいろ手はかかると思いますが、そういうことをひとつ乗り越えて、何か世の中のお役に立つと申しましょうか、お子さん方がすべてを忘れてその仕事につかれる時間を持たせてあげたい、こういうことが念願でございます。ただ特に私ども施設を回ってみまして、非常に重度の障害者でございますと、はたしてそういう能力があるかどうかということを危ぶまれているのもだいぶあることは御承知のとおりでございます。しかし国の考え方としては、とにかくできるだけ職業に直結させて、そうして人生生きがいありと申しましょうか、生まれがいあるようなことを、一日一ときの間でもそういうような境遇に置きたい、こういうふうに考えております。まあ日本も振り返ってみますと、非常に人口が多くて仕事がなかったというような時代がございまして、人間が粗末にされた時代が多かったことは御承知のとおりでございます。近年非常に産業も高度に進んでまいりまして、どちらかといえば人手不足というような声が強くなって出ております。ちょうどそういう時勢にもございますから、なお一そう授産事業というものを心がけまして、できるだけ可能な限り適所適職を選びまして何らかの道をひとつ授けてまいりたい、そういうようなあたたかい気持ちで、またきめのこまかい指導をしてまいりたい、こういう所存でございます。
  344. 華山親義

    華山分科員 そういたしますと、政府の方針は、とてもものにならない、親が非常に苦しんでおる、そういう子供がおるわけでございます。それが島田療育園、琵琶湖学園等に収容されて、そこでめんどうを見ていただいておるわけでございますが、そういうふうな、もうとてもこういう子供は世の中に出ることはできないんだというような子供は、これは国のほうはあまりめんどうを見ない、何とかなるであろうと思う者はめんどうを見よう、こういう御方針であったかどうかを伺っておるわけでございます。
  345. 神田博

    神田国務大臣 私のことばが足りないので、誤解を招いたかもしれませんが、私の申し上げましたことは、すべて職業をひとつ身につかせるようにいたしたい、職業につかせるようにいたしたい、そういう指導をしたい。そうしてできるだけ施設を拡充しましてお預かりしたい、こういうことなんです。お預かりした上で職業をひとつ授けたい。しかしいまも例にとりましたような島田療育園とかこういう方面におります。あちらに参りましてもそう思われますように、成長されてもはたして仕事が持てるかどうか、こういう心配の力がございまして、できない方はやむを得ないが、お預かりいたしましてできるだけ天命を全うするようなことにいたしたいと考えておりますか、仕事まではどうだろうか。私も実は参りましてそういう感じを深く持ったことを率直に申し上げたのでございまして、すべてに職業を与えたい、授けたい、こう考えておりますが、島田に入っておるようなお子さんはどうであろうか、こう思ったものですから、仕事を授けたい、与えたいと思っても無理な者もあるのじゃなかろうか、しかしこれは大事なお子さんでございます。国のお子さんでございますから、お預かりいたしましてそうしてめんどうを見ていきたい、その心持ちには変わりはないわけでございます。
  346. 華山親義

    華山分科員 重度心身障害者につきましては、いま島田療育園なり琵琶湖学園なり秋津療育園、こういうふうな私設のものがあるわけでございます。国のほうは一向にこういうものをおつくりにならない、そういうふうに私には見えますけれども、しかしこうした子供を持っている父兄といたしましてはどうしてもそういうものをほしいんだという要望がございます。日本が社会保障の充実した文化国家になるならば、そういう子供もできるだけ収容して——国のためには、あるいは社会のためには将来とも役に立つとは私は思いません。社会のため、国のために役に立たないのだから、ほっておいていいんだということに私はならないと思う。そういう点につきまして、こういう重度心身障害者につきまして、いままでの大臣の御答弁では私は了解いたしかねるのでございますけれども、もっと力を入れて、たとえば九州地区にもつくろう、あるいは東北地区にもつくろう、そういうふうなもの考えはおありにならないのでございましょうか。
  347. 神田博

    神田国務大臣 そういう考えを持っておるのであります。しかし、御承知のようにああいう施設というものは、あれをお預かりするりっぱなお医者さんなりいろいろの手がありませんと、施設設備だけが先行いたしましても、あいてしまうというようなことがございますので、そういうことを考えながら国として九州にも四国にもいわゆる地区別につくってまいりたいという考えは持っておりますが、ただいまの段階といたしましては、すぐというわけにはいきませんが、できるだけ早くそうしたいという意図でございます。
  348. 華山親義

    華山分科員 そういうことでぜひひとつ進めていただきたいのでございます。新聞等にもございましたけれども、島田療育園におきましては昨年八十のベッドをつくった。しかしこれを看護してくれる保母さんとか看護婦さんとかいうものが来てくれないために、八十のベッドは患者を入れないであるというふうなことを聞きました。あれは新聞紙上にも大きく宣伝されましたが、現在どういうふうになっておりますか、お聞きしておきます。
  349. 神田博

    神田国務大臣 新聞に伝えられたとおり、あれは第一期工事、第二期工事、第三期工事というようなことでございまして、第三期工事ができ上がりまして、鉄骨でりっぱな二階建てができておりますが、保母が少ないというようなことが一番の理由でございます。入所希望者はあるのだが困っているということを私も親しく見てまいってじきじきに聞いております。いろいろ運営費等も苦労しておるようでございまして、財界から募集等もいたしておりますが、なかなかこういった不況の際なものでございますから、うまくいかないのだということを十分聞いておりまして、何らかお役に立ちたい、こう思って実はお約束もしてまいったようなわけでございまして、せっかくの設備でございますから、できるだけ充実させたい、こう考えております。
  350. 華山親義

    華山分科員 大臣はごらんになったそうですから、私から申し上げるまでもないのでございますが、私も見てまいりました。新聞等にも出ましたように、全くあの光景はもうこの世のものじゃないのです。身体不自由児の普通の学園等も見ましたけれども、そこはとにかくある程度朗らかな点もあります。それとは全然別個な世界なんです。極端なことを申しますと——やめておきましょう、ほんとうにこの世のものではないのであります。あの子供さん方をめんどう見るというふうなことは、これはちょっと宗教的な信念でも持っておる人でなければ非常に困難な状態です。それで私は考えるのでございますけれども、そういう精神的な人でもなければいけない、それは一つの要請ではございますが、もっとお金を上げたらどうなのか。普通の保母さんや看護婦さんの給料ではあそこで働けと言ったって無理だと思う。そういう意味で、とにかく国としてはそういうところにもつと一人の児童についてのお金を上げるようにしたらどうか。そういう考え方でなければ成り立たない。したがってせっかくの施設も運営できない、こういうことになっているのじゃないかと思われます。しかし、日本の国が、あるいは特定の人かもしれませんがそのとうとい気持ちによって設備はできたけれども、そこに患者を入れられないなんということは、ほんとうにこれは国辱だと思う。どうして国がそこにあたたかい手を伸べられないのか、私は了解をしかねるような状態でございます。承るところによりますと、国はとにかくほっておくわけじゃない、ある程度の補助金を出しているという話でございますが、端的に申しますれば、現在児童一人一日に対してどのくらいの補助金といいますか、お手伝いを国のほうでしていらっしゃいますか。
  351. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 重症心身障害児の養育費の補助金といたしまして三十九年度は年四千八百万円でございましたが、四十年度は一億二千三百万円に増額をいたしたわけでございます。その内訳といたしまして、児童一人一日あたりの単価は、医療費が六百十八円を八百四十八円に増額をいたしました。また、重症心身障害児一人あたり、これは重症心身障害児の加算のような形になりますが、百二十四円を百七十円というふうに増額をいたした次第でございます。
  352. 華山親義

    華山分科員 そうしますと、重症なるがゆえに特に手当をしているというのはこの百七十円でございますね。
  353. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 さようでございます。
  354. 華山親義

    華山分科員 どういう根拠で百七十円が計算されておりますか。
  355. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 これは、人手を非常に要するという点の人件費の問題、それから、先生ごらんになったと思いますが、特殊な費用がございます。たとえば一日に三千何百枚もおむつを洗たくしなければならない。そういった普通の児童と違ったものがございますので、そういったものを積算して出した数字でございます。
  356. 華山親義

    華山分科員 私は、人手がかかるということは、たいへんな状況でございますから、よくわかる。大体一人の看護婦さんですか保母さんですかが何人くらいを——普通だったならば大体四人というふうな話も聞いておりますけれども、専門家でないから違っているかもしれませんが、普通のところでは何人、この療育園の重症患者をみるところでは何人くらいにお考えになっていますか。
  357. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 普通の病院のほうでございますと、患者四人に一人というふうになっております。島田療育園の場合は、私どもといたしましては二・五人に一人くらいがほしいということで考えておるわけでございますが、実際的にはその二・五人に一人がなかなか埋まらないという実情でございます。
  358. 華山親義

    華山分科員 そうしますと、あそこで働く人も普通の病院で働く人もあるいは児童施設等で働く人も、給料の単価は同じでございますか。
  359. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 島田療育園の場合は普通の看護婦さんよりも一号俸アップがあるというふうに聞いております。
  360. 華山親義

    華山分科員 一号俸などというのではだめですよ。とにかく倍にするとか何とかしなければああいうところで働く人はおりません。私は、琵琶湖学園や秋津療育園は存じませんけれども、島田療育園は東京にあるはずでございます。あの山の中でしょう、多摩丘陵の山の中でしょう。映画に行けるわけでもない、夜学に行くことも容易にはできない、ああいうところなんです。場所によっていろいろな手当てをしようというふうなことはむずかしいかもしれませんけれども、一号俸アップ等であそこに人が行くと思うことが私は間違いだと思う。あの状況の看護、そういうふうな、まるでこの世でないような環境の中で、ほんとうに献身的に働こうという人に対しては、人を集めるというための手段として給料を上げるという考え方のほかに、あそこで働いている人には感謝しなければいけない。国がこれに感謝するという気持ちでもっと上げていかなければ私はおかしいと思う。そうでなければいけないと思うのです。そうでなければああいう施設というものは発展しません。国だって、つくりましても、そういう点は私は発達しないと思う。それで百七十円ということでございますが、百七十円で十分だと思ったのでございますか。大蔵省には要求したのでございますけれども大蔵省で削られたのですか。その点ひとつ伺いたいと思います。
  361. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 要求額としては一応三百五十円を要求いたしましたが、財政の都合でこういう結果になった次第でございます。
  362. 華山親義

    華山分科員 それはまことにお気の毒でございますけれども日本大蔵省というのはそういう気持ちなんです。とにかく道路とかそういうものには何ぼでも金を出す。しかしこういうようなことには金を出ししぶるんですね。三百五十円を要求して半分の百七十円に削るなんていうのはもってのほかだと私は思うのです。その三百五十円というときには、その俸給の単価はどのくらいにお見込みになりましたか。
  363. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 百七十円の根拠といたしました看護婦さんの俸給は国家公務員の看護婦さんの給料と同じでございます。
  364. 華山親義

    華山分科員 三百五十円の要求をなさったときもそうだったのでございますか。要求はどうだったかということです。
  365. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 要求につきましてはさようでございます。
  366. 華山親義

    華山分科員 そうしますと、私は必ずしも大蔵省ばかり責められない。厚生省がほんとうにああいうところをひとつ育ててやる、あの子供たちを何とかしてやる、ああいうところで働く純真な人人に対しては国としてもお礼をすべきじゃないか、そういうふうな考えがあるならば、一号俸アップというような官僚的なやり方じゃ私はだめだと思う。とてもあんなところでほんとうに働けるものじゃございません。ただでさえもいま女の子がレジャーブームか何か知りませんけれども、デパートだとか事務員だとか、そういうところに流れ流れていっている。看護婦さんでさえも保母さんでさえもできない時代に、ああいうところに働く人に対しても同じ給料をやろうといったって、これはもう初めからできないことはさまっているのです。ほんとうに大臣も言われるとおり、重度心身障害者について関心を持ち、こういう人も助けてあげなければいかぬ。そして、追ってだんだん国でもできるだけ早くそういう施設をつくっていこうというふうな気持ちがおありならば、まず琵琶湖学園、秋津療育園、島田療育園、その他あるかどうか知りませんが、そういうふうな施設の従業員に対しまして、私はもっと手厚い、一倍半でも、場合によっては二倍でも手当てをしなければ、とうてい育たないと思う。そういう点につきまして将来の大臣の御方針を伺いたい。
  367. 神田博

    神田国務大臣 いまの華山さんのお考え方は私もまことに同感でございます。実は私もっと早く見に参るとよかったのでございますが、予算等済んだあとで参ったものですから、帰りまして、これはもうなかなか容易ならぬことである、先ほど申し上げたような決意のもとでやらないと、なかなかこれは設備だけが残って、せっかくのことがもうむだになってしまう、だからほんとうにあそこに喜んできて、そうして子供たちの犠牲になってくれる——もうお祈りするような気持ちで働いていただくには、それ相応の私どもとしてのお手当てというものをやはり差し上げなくちゃいけない、これは生きた金なんだということを実は申し上げておりまして、来年度以降は十分その決意のもとに善処させていただきたいと思います。
  368. 華山親義

    華山分科員 ひとつよろしくお願いいたします。野党の者ですからそういかないかもしれませんが、そういうことでございますれば、これは人道上の問題でありますから、側面的に私もできることは一生懸命にやりたいと思いますからどうぞよろしくお願いをいたしたいと思います。  こういうふうな問題にからんで申し上げますか、現在児童施設がいろいろなところに多くのものがございます。こういうふうな療育園とは程度は違いますけれども、やはり人手不足に悩んでいる。私はいろいろな県庁の状態を見ておりますけれども、児童施設に働くところの保母、これが非常に少ない、数が得られない、したがっていたるところの施設で労働基準法違反が起きている。御承知と思いますけれども、地方公共団体といいますか、府県、市町村の現業職員は、これは労働基準法の適用を受けるのです。それで、私の知っているところの二、三のこういう施設では、労働基準監督署の是正勧告を受けている。婦女子ですから使える時間というものはきまっております。一週間に夜間勤務は何時間でなければならないということはさまっております。わかっておりながらみすみす労働基準法違反をやって是正を勧告されている。是正を勧告されましてもなかなか人手が得られない、まごまごしますと県知事とか市町村長はみな労働基準法違反で罪人になりますよ。そういう状態である。これとても程度は違いますけれどもやはり手当ての問題があるのじゃないか。一般公務員が机の上でする仕事、そういうふうなものと全然同じようなランクで考えている、そういう点に問題があるのじゃないか。何でもかでも金で解決しようとするのは悪いかもしれませんが、私はそういう点があると思う。こういうことにつきまして、これは大臣でなくてよろしゅうございますが、自分も非常に気をもんでいるのだ、心配しているのだというふうなお感じが事務当局のほうにございませんか。
  369. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 児童福祉施設関係の人々につきましては御指摘の点が多々あろうかと思います。そういった点につきましては四十年度予算におきましてもやはりまず手当ての問題を解決するのが一番だという考え方からいたしまして、施設職員につきましては三十九年の四月当時から比較いたしますると一三・三%の給与改善を行なったわけであります。そういったことによりましてできるだけいい人を得たい。ただ先生御指摘のような労働基準法の違反がないような人手を得たい、こういう考え方からしまして予算を計上したわけでございますけれども、まだこれをもって必ずしも十分ともいえませんので、今後努力をいたしたい、かように考えております。
  370. 華山親義

    華山分科員 一三・三%というものは、こういう施設に収容される人に限っての職務俸といいますかそういう意味でございますか。
  371. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 さようでございます。
  372. 華山親義

    華山分科員 一三・三%では私は十分じゃないと思います。そのお気持ちはよくわかりますが、私よく給料表のことは存じませんけれども、近く人事院等でまた給料表を研究されることもあろうかと思いますので、その点は人事院のほうに強く要望なすって、そういうことについてのことをよくやっていただきませんと、たいへんに困るんじゃないかと思うのです。それはもう私から申し上げるまでもないのですけれども、こういうところで働く婦女子、子供を自分で預かっておる婦女子というものは一刻だって目を離せないのです。一刻でも目を離して、そしてその子供に万一のことがありますと、その人は公務員なるがゆえに処罰されるのです。熱湯の入ったちゃわん一つひっくり返してやけどしたといったってたいへんな問題になるのです。その点は、これは相手がそういうふうな心なりからだなりに障害のある人を扱っておるのですから、一刻だって目を離せないのです。そういう点をよく考えていただきたい。この点につきまして、ひとつ今後ともああいう施設、重度心身障害者を預かってああいう施設に働く婦女子の問題につきましては、報酬を与えるという意味のほかに、感謝してあげるという気持ちでやりませんと、日本の社会保障施設というものは発展しないんじゃないかと思う。むしろ神聖な人としてこれを敬うようになって初めてできるんじゃないか、こんなふうにも考えますので、よくひとつ大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  373. 神田博

    神田国務大臣 いまの華山委員のお尋ねになりましたことは、もう全く同感でございます。実は、前段の保母さんの待遇改善の問題につきましては、厚生省といたしましても今度の予算要求の一つの山場でございました。保母になり手がないのです。それは仕事の性質上、過激な、そして責任が非常に重大だ、おっしゃるとおりなのでございます。そこへ持ってきて待遇が悪いと、こういうことなんですから、二重苦、三重苦の負担にあえいでいるわけでございます。私ども、このままでありますと、いまお話にございましたように、施設が残って人がいなくなるんじゃないかということをおそれたわけでございます。だから、どうしても今度は全面解決したいということで、大蔵省と十分やり合ったのでございます。結局、大蔵省といたしましても、事態はわかったからよそよりはよくしておく——一ぺんで全部引き上げるわけにいかぬから、とにかく二、三年計画でよくしようではないか、ことしはよそよりもこれだけよくするというようなことで、保母さんの代表の方にも、どうだ、この辺で、ことし一ぺんでやるつもりでかかったがなかなかうまくいかなかったのだが、大蔵省も事態は認識してくれているかということで確かめまして、それじゃ、そういうお気持ちであることがよくわかった、また大蔵省もわかったというなら、ことしはおっつけ仕事でないということもわかっておるから納得しましょう、こういうような御了解を得たような事態もあるのでございます。それだけ、私ども将来に大きな責任をまた負わされたわけでございますから、これは十分ひとつ善処してまいりたいと思っております。  なおまた、この機会に施設のことも繰り返してお話しのようでございますが、施設の問題、まことにお話のとおりでございまして、私も全く——私もよく施設は見るほうでございますが、特に島田学園あたりになりますと、全く、ほんとにお話もまともにすることが心詰まるような気がするわけでございます。いずれにいたしましても、待遇だけで人をかかえる、仕事をやっていただくというような根性は持っておりません。しかし、何といっても、真心を何であらわすかということはやはり一つの要素でございますから、ひとつ十分努力いたしまして、みんなそれぞれ——ああいう、ほんとうに神々しい姿だと思います。私は尋常一様でない仕事だと思っております。喜んで、とまでいかなくても、ぐちを言わないで、私どもひとつここへ来て働いているんだ、愛情があって帰れないんだというようなところまで持っていきたい、こういう気持ちでございます。
  374. 相川勝六

    相川主査 華山さん、せっかくですが、もう時間がまいりましたから……。
  375. 華山親義

    華山分科員 一言だけ……。  私は、金を持っている人は貧乏な人を、からだの丈夫な働ける人はからだの弱い人を、やはりめんどう見てあげなければいけないと思う。その一番ひどい例がこの重症の問題である。国は、そういう所得の再配分の意味におきまして重要な責任がある——あるのじゃなくて、政府でなければできないのですから、厚生大臣はほんとうに所得の再配分をどうするかという重責におられるわけでございまして、今後ともこの問題につきましてはよろしくおとりきめ願いたいと思います。
  376. 相川勝六

    相川主査 次は、川俣清音君。失礼ですが、大体三十分程度にしてください。
  377. 川俣清音

    川俣分科員 限られた時間でありますので、簡潔にお尋ねしたいと思います。  いよいよ予算委員会も最終段階に近づいておりますので、懸案問題をどうしても解決しなければ予算委員会が終了を見ることが困難じゃないかという事態にきておるのです。よしあしは別にして、そこへきている。そこで、政府全体の問題でございましょうけれども医療費の問題——私、内容は触れません。問題は何とか解決していかなければこの国会の有終の美がおさめられないようでございますし、また予算委員会も終了を見ない。延びるという結果になるのではないか。及ぼす影響は非常に大きいと思いますので、これは政府の答弁でしかるべきですけれども、担当の厚生大臣、どれだけの熱意をもってこれを解決しようという努力を払っておられますか。いや、これは困難だからということで放任をされて——放任ではないでしょうけれども、先へ先へと延びるような傾向であるのか。あるいは急いでこれを解決をしなければならないと考えておられるか。この点を聞かないと予算の終結を見ないわけですから、あえて内容は——いい、悪いという問題じゃないですよ、どういう決意でおられますか、それをお聞きしたい、こう思うわけです。
  378. 神田博

    神田国務大臣 いま川俣分科員からお述べになりましたことはきわめて重要なことでございまして、私委員会等を通じましていろいろお答え申し上げてありますとおり、政府の一応の意向は、審議会におまかせする、審議会の答申をまって、そしてこれを尊重してひとつ御審議を願いたい、こういうことでございまして、この真意を支払い側に十分お伝えできれば軌道に乗るのじゃないか、こう考えております。いろいろ雑音が入ったり、思わない支障が出たりしまして、あるいはまた支払い側も七団体ございますから、旅行者が出たり、その間いろいろ日がおくれているようでありますが、ほんとうに私ども社会保険としてどうしても——いまの日本健康保険制度というものは、これは世界に誇るべきいい制度だと私は考えております。たまたま、ときに財政が好転して思わないような増収があったり、また財政が悪化しましてびっくりするような赤字が出たりするのでございます。私、いつもこれは率直に申し上げるのでございますが、健康保険の歴史を見ますと、これは一つの事業みたいなものだ。公社にもあらず、公団にもあらず、もちろん会社でもございませんが、収支の均衡を見ながら保険者の体位の向上をはかっている。近代的な医学医術を入れまして、そしてそれはまあ予防までやって完ぺきにすべきものだと考えております。そういうようなことがよくいっておりますから、今日日本国民の本位が逐年向上し、そしてまた寿命が大幅に伸びてまいった。こう思っております。これは非常な功績だと思っております。そこで、この社会保険をどうしてもあるべき姿にしたい、それにはどうするかということを苦慮いたしたわけでございます。こういうような非常な赤字でございますから、私といたしましては、保険者も持つ、被保険者も持つ、また政府も持って、三本足でひとつこの危機を切り抜けよう。この危機は、私は決してそう長いと思っておらないのでございます。この前の昭和三十年、三十一年、三十二年のあの財政危機のときも、これはそう長くない、私の見通しはそうでございました。私は、まあ自分も事業をやっておりますから、そういう事業感覚であるいは見たせいかもしれません。今回の保険財政もそう長期見通しとして悪いというふうに見ておりません。いろいろの事情で出ていますが、それは赤字だというと、赤字の原因をつかめないで、みんな何だかただ赤字で驚いておるようでございますが、私は先ほど申し上げたような意味で、決してこれは不正赤字だとか不当赤字だと思っておりません。でございますから、私は私なりの考え方もあったのでございますが、政府全体としては、一番からかったのかもしれませんが、こういうことでむしろ保険財政というものを明らかにして、批判をしていただいたらどうでしょうか。そしてまた社会保険審議会なり社会保障制度審議会がございますから、そちらにひとつ十分御審議を願って、その結論を尊重していく、すなおに考えていく、こういうような考えを持っておりまして、この真意がわかっていただけますれば、私は軌道に乗ると思う。まあ軌道に乗れば、ひとつ予算案につきましても、ぜひ皆さんの御指導を受けまして、しかるべくひとつ誠実にお骨折り願おう、こういうふうに考えておりまして、いまの段階としてはいろいろあった案の中から、一応一つこういう考え方をとるということでございまして、審議会の答申を待って、そしてお願いいたしたい、こういう考えでございます。もう率直な偽らざるほんとうの心境でございます。
  379. 川俣清音

    川俣分科員 ここで審議会の意見を待ってというのは正道でございまして、そうあるべきだと思いますけれども、御承知のように、だれが悪いかは別として、混乱を起こしたあとの収拾をしなければならないわけです。あなたがわざわざ混乱さしたわけではないでしょうけれども、ずいぶん混乱が起きたということは事実なんです。だれがいいか悪いかは別にして、これは事実なんです。これを何とかして収拾していかなければ、この国会が終結を見ないという段階にきておるわけです。そこで審議会の意見を求めなければならないということはそのとおりです。しかし、それがおくれたからといって、おれの責任じゃないというわけにはいかない段階にきておるわけでありますから、国会としては、予算委員会としては、この収拾を見ねば終結を見ないわけですね。それは、審議会の意見を聞かなければだめだというのはそのとおりです。それが正道ですからそのとおりです。しかし、混乱が起きたあとの事態というものは、やはり大臣みずから収拾していかなければならないわけですね。そのためにやはり一定の見通しをつけていただかなければ非常にむずかしい問題でございましょう。審議会の意見もございます。前と違った意味において審議会の意見の尊重もしなければならないでしょうし、非常に困難な問題でありますけれども、何とか終止符を打たなければ、この委員会の終結を見ないわけですよ。そうすると、これはまた事態が大きく発展しますから、ひとつ大臣に今明日中にでも解決を見るような方法を打ち出していただかなければならない。どういうふうに打ち出すかということは、これはあなたの責任ですからかれこれ私は申しません。いままで分科員の諸君がいろいろ述べられたでしょうから、それらを参考にして早く結論を出して、政府の態度並びに厚生大臣の態度を表明していただかないと進まないということだけは事実なんです。あなたの言うところがいいの悪いの、いろいろ議論はあったのでしょうけれども、またいろいろな意見もあったでしょうけれども、何としてもそれを見なければならないというところにきておるのですから、責められておる問題です。あなたが悪口ばかり言われて責められておるのではなくして、こういう情勢になったことを十分考えて、その終結はやはり大臣が負わなければならないのだということで結論をつけていただかなければならぬ。今度は逃げるわけにいかないのですよ。いろいろ弁解もありましょう、いろいろなものもありましょうけれども、それだけでは済まされない事態だということを私は警告しておく。そうでないと、これは私のほうも始末がつかないのです。それだけ申し上げて、いや、こういう説明をしておる、ああいう説明をしておるだけでは、これは結末がつかないのですから、この点だけははっきり申し上げて、二、三日のうちにひとつ見通しなり、あなた方政府の決意なりを表明される機会を早く得たいものだと思うわけでございます。これが一点です。
  380. 神田博

    神田国務大臣 いまの川俣さんのおっしゃること、私もよくわかっております。こういうことになりましたことにつきましての私は不手ぎわをいろいろ痛感しております。前向きの姿勢で、相手のあることでございますけれども、先ほど来申し上げたような努力を払いまして、予算審議に支障を来たさないような努力を続けていきたい、こう考えます。
  381. 川俣清音

    川俣分科員 それでは前に進みます。東京都の水道料金の値上げについて大臣はどういうお考えを持っておりますか。お尋ねしたいと思います。
  382. 神田博

    神田国務大臣 東京都の水道値上げをどういうふうに考えているかということでございますが、これは率直に申しまして、実は水道料金は都道府県知事の責任できめることになっておるわけでございまして、私どもとやかく申す筋ではないのでございますが、しかし御承知のように、昨年は公共料金値上げを自粛しようということで待っていただいたわけであります。本年もそう事情は変わっておらないわけでございます。しかし、東京都は昨年は非常な水ききんでございまして、また水を導入するために相当大がかりな拡張をしなければならない。人口増加にも、また水の使用料の増加にも対応して水の導入をはからねばならない。巨額な起債が要るわけです。一面また電力費が要る、あるいは水が汚れておりますので、これを浄化する薬品費が要るというような問題、それから人件費の値上がりというようなことで、非常に水道財政が困窮しておることも事実でございます。もう一つは、水道料金が全国の大都市に比べましてわりあいに低いほうにあったことも事実でございますが、一口に申しますと、一ぺんにあんな値上げをされるということはいささか私どもも予想しておらなかったわけでございますが、多少は値上げをする事情がこないとも限らぬと思わないわけではなかったのでございますが、当面の問題として、ああいうふうにお考えになったようでございますが、いま東京都で審議をしておるわけでございます。私のほうにも値上げをする直前、その前日に御了解に参ったような次第でございまして、担当局長もびっくりしまして私に連絡があったわけです。私はちょうど国会におったわけでございますが、自治省とも相談いたしまして、起債の年限延長なりあるいは利息の引き下げと申しましょうか、低利の書きかえ、そういうふうなことで、またいろいろ行政簡素化その他によりまして、値上げの幅をできるだけ少なくいたしまして、そして非常にごうごうたる非難もございますので、そういう面でひとつ善処したらどうか、こういうことも考えまして、せっかく自治省とも連絡いたしまして、検討しておるという段階でございます。
  383. 川俣清音

    川俣分科員 私は、あなた方のほうの事務当局が怠慢だと思うのですよ。東京都の水道料金は絶対上ぐべきじゃないと思っておる。その理由をひとつ説明します。  太田道灌が江戸城を築くには水質を調べたり水源を調べて一番適当だと選んだのが江戸城なんです。これは歴史に明らかです。したがって徳川家はここへきてから水資源というものに対して非常な注意を払っておる。御承知のとおり井之頭公園というのがあります。あれは井戸のかしらだということで御用水源になっておった。いま何になっておりますか。すっかり枯渇したじゃないですか、いまから十数年前に。これは専門じゃないし、私時間もあまりないから言いませんが、杉は地下水を非常に吸収する力を持っている。いわゆる清水のわくところ、わき水の出るところはたいてい杉の木があるわけです。杉の根というのは地下水を非常に吸収する、保存する力を持っている。あそこにずっと杉があった。まず先に杉を切り、それから今度はあの近所はみな住宅地になっておる。これはだれがああいうふうにしたかというと、安井君の後援会の会長が安井自治大臣にあれを開放さしたわけです。あれは前は国有地であった。国有の保安林であった。水源保安林であったのですよ。それを東京都が買って、東京都の公園だからということで払い下げを受けたのです。これはかまわないです。国が持とうと公共団体が持とうと、水源地については十分な認識があるものとして、これは保安林であったけれども払い下げた。元来東京都は井戸には関係が深いのだから、東京都が持つことは必ずしも不当じゃない。水源地をみずから利権の対象にして売り払っておいて、その金はどこに入ったかというと、水道局に入ったのじゃないのですよ。水源地を売り払っておいて、なくなったから利根川へいかなければならぬ、どこへいかなければならぬ、導水路が長くなる。自分の持っておったものをみな処分しておいて、なくなったといってそれじゃやむを得ないのだということが一体言えますか。  まだあるのですよ。いま私ちょっと調べているのですよ。まだ地番がはっきりしていませんが、奥多摩の上流にこれも国有林だった保安林があります。これも東京都が払い下げを受けて、これを東京電力に売ったのです。これは東京電力に売っても、どうせ水の源ですから、これは必ずしも悪くはないと思う。東電は、また保安林で経済林でないものだから、赤字が出るということで売りにかかった。それを私がとめに行った。何だということでとめに行ったのです。それじゃ子会社にするということで、いま東電の子会社が水源地を持っている。東電はこれで助かっておるのですよ。みんな目先のことにとらわれて、利権になるような、売ってもうかるようなところはみんな処分して、これも東京都が東電に売ったのです。自分の持っている奥多摩の水源地を売って、いま近くにないのだから、いや導水路に経費がかかるなんて、みずから水源地を売ったら枯渇するのはあたりまえのことです。徳川時代からあれだけ苦労してあそこを保存しておったものをみんな売り払っておいて、いまや水源がありませんから水が枯渇いたしますなんていったって、枯渇するようなことをしたのはだれだというのです。都民は知らないでしょう。為政者は知らなければならぬはずです。したがって、大臣はこれを知らなかったかもしれないけれども事務当局は値上げをしなければならなかったといっても、これを売っておいて、その金が水道局へ入っておればまた別ですよ。水源の財源を売り払っておいて、いや金が足りなくなったといったって、大臣どうするのです。こんなことがありますか。自分でうちを売っておいて、なくなってから、うちがなくなったから何とかしなければならぬなんていったって、こんなばかな話があるわけないじゃないですか。そういうことをやるからこれは不当だと言うのですよ。このくらいのことは歴史的に明らかです。大臣はわからないでしょうけれども事務当局はそのくらいのことがわからないはずはないのです。いま井之頭に行ってごらんなさい。みんな住宅地になってしまっている。住宅地になったら、水は必要ではあるけれども、保存するという形ではない、使用するという形のものをそばに置いている。いまあの池に行ってごらんなさい。全く枯渇して、どろみたいな、普通の家庭の池みたいになってしまっている。水源地じゃないですよ。徳川時代から保存していた水源地を売り払っておいて、そして水が不足だという。よくもそんなことをあなた方は認める気になったものだ。私はふしぎでしょうがない。これは私はいま言うのじゃない。この前の国会のときにもこれを指摘しておいた。指摘しておいたことをその場限りにしておいて、それでいよいよ東京都は水がない。これを指摘すればよかったのです。なぜ一体こんなことをしたのか。自分で水源地を売った。これは幾らいったって、みんなあなた方が国費を出してやったものを、水源地を売ってしまって、いや水不足だから上げなければならぬということになったら承認できますか。どこかで断ち切らなければならぬ。普通の町村で水源地のないところと違って東京都は持っておった。江戸城はこれを非常に研究して持っておったのです。これは江戸城の歴史を見れば明らかなんです。それを先祖からいただいたものをただ利権の対象にして売り払っておいて、しかも上げなければならぬというのは無責任きわまるものだ。そのくらいの反省ができなければどうするのか。これを強く言った。しかも私は国会でたびたびこれを指摘しておるのです。菅礼之助がまだ社長時代、これは売ってはいかぬぞ、あとで東電は水がないときどうするんだ、余ったならば東京都へ売ってもいい、君が買ったのだから、また東京都へ戻すのはいいが……、私はこう言ったのです。林野庁に行って、これは林野庁の保安林を東京都が売ったのだ、売ったことは不当だから取り戻せ、これは取り戻す規定になっているから取り戻せということを言った。ところが、これに対しては、もうすでに東電へ売ったあとだから取り戻せないということであった。まだいまこれは電力水源になっています。電力水源だからまだいいのですよ。全く売り払ってごらんなさい。また観光地になるのです。観光資源とか利権の資源にはどんどんさばいていくけれども、重要な水資源を保存するという考え方がないのです。これを保存させるのがあなた方の使命じゃないか。こういうことで私は質問しておるのです。どうですか。
  384. 神田博

    神田国務大臣 川俣分科員から貴重なお話を承ったわけでございます。井之頭が徳川時代の水の本源であったということは、私も若い時分あの周辺に住んでおりましたので、記憶を新たにいたしたわけでございます。最近の井之頭を見ると全く面目一新で、残念な気持ちで一ぱいでございます。また、東京都の水源の保安林を東電に譲渡し、東電がまたこれを他に転売しようというのをおとめになったというお話、これはあなたのおかげで残ったわけで、これはひとつ残していくような措置をとらなくてはならぬと思います。いずれにいたしましても、前向きに考えまして、水道料金の値上げの幅をできるだけ少なくいたしまして、庶民の負担を増さないように努力いたしたい。一般会計からの補給の問題は私はあると思います。また、先ほど来申し上げたような短期債を長期債に振りかえるとか、あるいは高利の金を低利の金に振りかえるというようないろいろな手があろうかと思います。よく自治省とも相談いたしまして、また東京都ともよく連絡をとりまして、ひとつ十分こうしたことが反映できるように監督してまいりたいと思います。
  385. 川俣清音

    川俣分科員 補助してやること、融資をしてやること、それはけっこうです。しかし、そういうことをやっていると、そこに行ったやつがまた利権の対象にしたりするのです。いつまでも続くのです。それは補助してやってしかるべきだと思います。しかし、いつも安易にしてやると、東京都のような利権の巣くつみたいなところはえたりかしこしで、またそこを観光地に売るということになったらどう収拾するのですか。せっかくの善意がみんな利権の対象になったら困るのじゃないかという意味も含めているのですよ。普通のように、値上げしないで国で補助してやれという単純なものじゃないということを指摘したいのです。また利根の奥に水源地を見つけて、これもまた観光地として売られたら、収拾していかなければならぬのですが、東京都というのはそういう利権の巣くつの危険があるので私は指摘しておきたい。観光資源、決して悪いわけじゃないのですよ。しかし水資源などを観光地にするとか住宅地にするなんということは、これは利権屋のやることであります。
  386. 神田博

    神田国務大臣 御趣旨はよくわかりますので、厳重に注意を喚起して、将来再びそういうことをしないようにやらせたいと思います。
  387. 川俣清音

    川俣分科員 そこで、これから補助したり、あるいは融資してやっても、そういう売り払うときには全部戻させるということを強くやらないといかぬのじゃないかと思う。私は、補助するのが悪い、融資するのが悪いというんじゃないのですよ。誤解しないでください。しかしそういうことが安易に得られるというので利権の対象になったのでは、せっかくの努力がむだになるのじゃないか。例がなければ申しませんが、実例があるから指摘したい。  同様にもう一つ、東京でだんだんスモッグが問題になってきておりますが、スモッグ対策厚生省にないように思うのです。時間がないから結論で申し上げます。何といいましてもスモッグを防ぐには空気を清浄化することだと思います。それと同時に、水蒸気が蒸発するような形態にしておくことがじんあいを沈静させることであろう。これは私は科学者でないけれども、そうだといわれております。そこで東京はだんだん森林資源がなくなってきております。東京のうちで一番空気が清浄なのは宮城で、あともう東京都内になくて、普通のいわゆる健康体の人の健康を維持するに必要な空気は朝霞まで行かなければならないといわれております。この研究はどの程度あるかは別にして、たとえば日比谷公園にしても、あるいは芝公園にしても、だんだん樹木が少なくなっていくわけですが、何とかもう少し樹木を多くしなければ、文化が発展してくるとスモッグが出るような状態が自然にできるわけです。これをできるだけ人工的にというよりも自然的に対策を講ずることが一番いいことじゃないか。それにはもう少し自然公園といいますか、森林の多い公園をつくっていって、できるだけ空気を清浄化すると同時に、植物は御承知のとおりいい浄化作用を持っている。人間とともに生活するには、非常に貴重な浄化作用を持っているのですから、これを活用していくということが考慮されなければならないと思うのです。そういう意味からも、だんだん枯渇していくところの森林資源を厚生省考えていくということにならなければ、東京都にまかしておくと利権ばかりで——何でも利権ばかりではないでしょうけれども、目先のことに追われて大局を誤るような傾向があると思うのです。私はだれかれを非難する意味じゃなくして、そういう傾向があると思う。そこで厚生省あたりが大局に立って、こういう森林公園というようなものを東京都につくってやって、スモッグ対策を講じたらいいんじゃないか。これはいろいろ会社なども亜硫酸ガスなど出ないような規制をすることも必要でしょう。必要だけれども、万一出た場合でもそれを防げるような態勢にしておく。あなたのほうで、いまどのくらい出ておるかということを一々さがして回ることができないから、ちょっと出たときには浄化されるようにすることが必要だ。これは取り締まることも必要だが、取り締まることがなかなか困難でありますから、そういう浄化作用をする公園をつくっておくことが必要じゃないかと思うのですが、これに対してどうお考えになりますか。
  388. 神田博

    神田国務大臣 いまの川俣さんのお話は非常にもっともなお話でございまして、だいぶ前でございましたが、閣議におきましても二度ほどこの問題が大きく取り上げられまして、このまま放置するわけにいかない、どうしてもひとつ東京都の緑化運動と申しますか、これをひっさげてやろう。昨年はオリンピックに備えまして都市の花一ぱい運動というようなことで、非常に道路その他を美化したことは御承知のとおりでございます。本年はなおひとつそれに輪をかけて、たとえば私どもの担当しております宮城の前とか新宿御苑にいたしましても、なかなか木が枯れてまいっております。だからこれの代替をしてひとつもっとりっぱな庭にしようじゃないか。あるいは都市公園のほうは建設省が担当しておりますが、建設省がふんどしを締め直してやろうじゃないか。東京都にも連絡して都の公園も整備しろ。上野公園などはこのままでは木がみな枯れてしまうじゃないかというようなこと。それから何といっても住宅をアパートにしていくことは時代の要求でございますが、やはり家庭づくりというのは庭がなければいかぬ。アパートでもアパートとアパートの間に庭をつくって植樹する、花を植える。そうして一木一草が茂れば茂っただけ御承知のようなスモッグの解消にも役立つわけであります。これを取り上げてやろうということをそれぞれ事務段階に下げておりますが、御趣旨のことはなお十分ひとつくみまして、われわれの町を浄化しなければならぬわけで、これ以上よごれたらおれなくなるわけでありますから、御趣旨まことに同感でございますので、なお一そう気をつけてみたいと思います。
  389. 川俣清音

    川俣分科員 同感だと言われてそれ以上言いませんけれども、実際いまどういう問題が起きているかというと、目黒に林業試験所があって、あそこを解放せいという運動を自民党の人が先に立ってやっているのです。つくらなければならぬときに、逆に払い下げよという運動をやっているわけですよ。これはこの前の前に起きたのですが、そのときはちょうど河野君が農林大臣のときでしたが、河野君は賛成したらしいが、あとではそんなことはやめろと言って阻止した。また起こっているようです。これは無関心でおると侵略されるほうが多いのですよ。そこでもっとつくると一般の認識も高まってきて——木もまた一本植えたなら枯れるのです。やはり多数置かないと育たないのはあなた御承知のとおりなんです。そこでこれは美化もそうですけれども、もっと森林地帯というものをつくらなければ守っていけないわけで、森林地帯になって初めて浄化作用も完全にいくわけです。これはだんだん伸びていっているのですが、ほうっておいては最後はいまの東京の水源地みたいになりかねないのですから、東京都だけにまかせておいたんでは非常に不安なんです。東京都ですよ、やはりあそこを払い下げたいというのは。もう土地がないものですから何でもねらう。ねらっておりながらおかしいというのはどういうことかというと、もとの外ぼりの辺など、これも大蔵省から払い下げを受けて、何でも買っては住宅地にする。全くその辺の土地会社と同じなんです。大蔵省の持っているところはみんな買って、またこれを売り払っておる。これではいつまでたっても対策が立たないということになるから、思い切って資源をつくって守らなければならない。人間は多くなるのですから、当然水資源も確保しなければならない。空気の清浄化もしてやらなければならぬ。人間が少ないときにはそんなことは考えなくてもいい。これだけ多くなったときには先のことも考えてやらなければならぬ。東京都はそんなことは考えませんから、厚生省が勇断をふるってやらなければいかぬと思います。結局責任はあなたにかかってくるのですから。もう一ぺん答弁を求めて私の質問を終わります。
  390. 神田博

    神田国務大臣 繰り返すようでございますが、川俣さんの言う東京都の非常な空気汚染は、私も全く憂慮にたえない。先ほど来の閣議でも非常な重要事項として扱った例を申し上げたとおりでございます。ひとつしっかりふんどしを締め直して善処いたすと申しましょうか、趣旨に沿いたいと思います。よろしくどうぞ。
  391. 川俣清音

    川俣分科員 医療費のかわりにこういうところで取り返してください。
  392. 相川勝六

    相川主査 それでは、この際関連質問として華山君に一言。
  393. 華山親義

    華山分科員 ただいま東京都の水道の問題が出ましたが、大臣がおかわりになりましたけれども、その当時の厚生省の方々よく御存じなんです。私は昨年この分科会におきまして、それだけの問題を取り上げて早く処置をしないというと大きな問題になるということを申し上げている。昨年また東京の水飢饉の場合でも、私は早く政府がとにかく対策を講じなければ困るのじゃないかということを申し上げたのですけれども、ごもっともでございますということだけで何もおやりにならない。どういうふうな水道の状況になりましたかと言ってお聞きいたしますと、大蔵省のほうに交渉したところが、それは期間を延ばすのはいいけれども、そうすると水道のほうに回す起債が少なくなるというのだから、自分のほうはちゅうちょしているのだというお話さえもある。私は非常に残念だ。とにかく厚生省は少し大蔵省に弱過ぎるのじゃないか。そしてこういうどたんばになると、初めてあと始末のようなことをなさる。自分のことを言うのはおかしいですけれども、昨年水道の問題だけを取り上げて申し上げた。そのとおりになった。水道の耐用年数は現在大体五十年です。ところが融資の期間は、十八年とか二十年とか、そんなんじゃ高くつくにきまっているじゃないですか。五十年に延ばすべきだ。こういうふうに言ったのに対して、自治大臣は五十年は無理だから、四十年くらいというようなことを言っておりますけれども、そんなことじゃ全国の水道の問題に対して根本的な問題の解決にはなりません。金利だって水道に対しては政府資金が非常に少ない。金利が高くなる。関連質問でもございますし、時間もこざいませんからここだけにとどめますけれども、ほんとうに大臣、ひとつふんどしを締めてやってください。だめですよ、大蔵省の言うことだけを聞いていたのでは。あとでけつをぬぐうのは厚生大臣じゃないですか。お願いします。
  394. 相川勝六

    相川主査 本日の質疑はこの程度にとどめ、明二十六日午前十時より開会いたします。  午前は厚生省、午後は自治省所管について質疑を行なうことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十四分散会