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帆足分科員 総裁のお心組みのほどは十分理解できますが、私はただいまの御
答弁で、まあ三公社に比べて
国鉄は多少高いようになっておるという御
答弁かと思って、高いようになっておっても、
国鉄は激務であって、非常に危険な作業であるから、それは当然であろう、こういうふうにお答えしょうと思っておりましたが、逆に一時それよりはるかに低くて、それ並みにするのにお骨折りになったということで、御苦労のほどを察するにあまりあるわけでございます。私ども平凡な庶民の目に映る姿としては、郵便配達夫さんと
国鉄の第一線の方々だけにはせめてよい待遇を差し上げたいというのは、だれしも感ずるところであるまいかと思うのでございます。したがいまして、そういう
国民の理解と支援を背景にいたしまして、せっかく適切なる御
努力をお願いする次第でございます。
それから、これもまた平凡な
質問で恐縮ですが、原子力潜水艦云々とか、安保とか、そういう国運の運命に触れた論議も重要でありましょうけれども
予算委員会におきましては、平凡な、市民のだれしもわかること、だれしも言いたいことが国政に反映されることが、私はよいことであると思っております。駅というものは人生の会うところであり、別れるところである重要な場所でございます。したがいまして、その清潔なこと、できれば一種の風格のあること、一種のムードがあることなども望ましいことでございます。僻村の駅などで、秋に葉ゲイトウなどが色濃く輝き、コスモスの花が咲く、また夏の終わりなどオシロイバナが咲いているような風景を見まして、私は駅長さんや助役さん、また、それを担当している駅員さんたちの心ばえを思うて、ほほえましくいつも感謝の思いで夏の旅行の帰りなどに感ずるのでございますが、そういうよき心ばえの駅、従業員に
サービスよく春秋のおり、花でも植えて美しくし、そしてきたない構造の便所であろうとも、よく掃除が行き届き、中には新聞紙を八つ切りにして、そして落とし紙のない人のために用意もしてある。そういう駅を見ましたときは、しみじみと感謝したい気持ちになるわけでございます。こいねがわくは、そういう駅に対しては何らかの表彰制度でも一たぶんあることと思いますけれども、設けられて、寒村の駅であろうと、大きな駅であろうと、よき心ばえの駅長さん、助役さん、従業員の皆さんには報いるような方法があってしかるべきだと思います。駅というのはそういう場所であることを御了承願いたいのでございます。
それから便所につきまして、中には非常に清潔な、まるで豚小屋のような粗末な建物であるけれども、清掃されておって非常に清潔である、そういうところもありますし、近代的な堂々たる建築でありながら、便所にいくと、落花ろうぜき、そうして下のコンクリートの床はびしょぬれになっておるというところもたくさんあるわけであります。それについての御苦労談は、昨年の分科会で承りまして、乗客、一般市民の社会道徳に対する心がけの薄きことを総裁が嘆いておられることばを承って、私どもまことに、そのとおりと、
国民の公共
施設に対する自覚の足らざることを皆さんとともに嘆き、文部
大臣が、人づくりとかなんとかいいかげんなことを言うけれども、大切なものが日本の教育に欠けておって、文部
大臣は日教組とけんかすることを年中行事になさるよりも、駅の便所から美しくする、そういうきれいな心がけを、子供たちがどうしたら身につけるか、そういうことを
考えることのほうが私は大切でなかろうかと思ったりしておるのです。また議員からこういう注意がありましたときには、ぜひとも総裁がそれを聞きおかれ、部長や課長に気をつけろとおっしゃるだけでなくて、何回か通牒を出していただきたいと思うのでございます。それが私どもの第二の願いでおります。
第三は、冷暖房について感覚が鈍いということを、先日私は新聞に書きました。さっそく広報部から御返答がありまして、それは十分な注意をいたしますということでしたが、冷暖房に対して、空気の汚染に対して、感覚が鈍いことは、日本人のアジア的な通弊でありまして、事務所におきましても、近ごろは自動調節器がついておりますからよほど緩和されましたが、自動調節器が、ない場合は、一定の時間に窓をあけろということを、私がまだ月給取りであったころ主張いたしましたが、耳を傾ける者ごくわずかでありまして、よどんだ空気の中で平気で、せっかくのわずかばかりの一時間の昼の休みにも窓
一つあけようとせず、碁か将棋かさしておって、そのくせ五十四、五でころっと早死にしてしまう、こういう姿を見ながら、冷暖房、空気の汚染などに対する感覚の欠除、これは一体人間としてのあたたかい体温を持っておるのか、サンショウウオのような封建的、爬虫類的感覚からきているのか、私は心ひそかに残念に思っておるものであります。
今日冷暖房が列車にだんだん設備されるようになりました。中には自動調節もありましょうけれども、特に御注意を促したいのは、わがせこが旅するわけでありますから、とかく旅行のときには、家族のものが厚着をさせて出す風習が一般にあるのでございます。したがいまして、暖房列車の中の温度というものが、科学的に何度がいいと
考えられておるか知りませんけれども、一般に事務所に通うとき以上に多少厚着をしておる傾向があるということもお
考えくださいまして、私は多少温度を低目にしたらどうであろうかということも
考えておりますが、それはとにかくといたしまして、多くは、非常に過熱状況になり、あるときは突然冷たくなる。友人の多くが旅から参りますと、暑くて汗をかいてかぜを引いちゃったということは、至るところで聞かれることばであります。ましてや、上下二段、上下三段のときの上の段に寝ましたときは、非常な暑さで汗びっしょりになります。一等の場合は、シャツも何もぬいでしまってゆかたを着ますから調節することもできますけれども、二等の場合には、寝巻きがありませんから、シャツを着たまま暑さの中でぐっしょり汗をかいて、そしてやがてかぜをひいてしまう。事は小さいことのようで、私は小さいこととは思わないのでございます。そもそもわれわれは文明の仮面をかぶった野蛮人の気風がありまして、昼はべートーベンのシンフォニーに耳を傾ける友が、夜は黒田節ならまだましでありますけれども、チャンコ節に変わるというような卑俗愚まいな一面がこの民族にはありまして、そして温度の調節、空気の汚染などに対してはきわめて不感症でございます。そして、暑くてしかたがなくてもだれも言う者もなく、車掌さんに相談して一時暖房をとめてくださいとか空気を抜いてくださいとかということを頼めばよいのですけれども、それをも言わず、そして汗をかいて、結局かぜをひいて家内に迷惑をかける。そこで新聞にこのことを書きまして、広報部から御返答いただきましたけれども、その後私どものところへまいります友だちは、いろいろな線から参りますが、やはり暑くて困ったと言ってまいる者が非常に多いのでござざいます。
したがいまして、広報部のほうでせっかくよい御
答弁をいただきましても、それが車掌さんの下々、現場にまで徹底していなければ意味がないことでございます。また、暑いという注意を受けましても、列車内の温度を下げるのはすぐには下がらぬのでありまして、そういう技術面もお
考えくださることが必要であろうと思います。急ぐときには前のほうのドアをあけてしまって風を入れるということも必要かもしれません。また、ある部分はそれほど暑くないけれども、上のほうは非常に暑くなっておるということもありましょう。また、暖房の場所によって不均衡ということもあろうと思いますが、もう少し心こまかに御研究くださって適切な措置を講ずることが必要であると思います。弾丸列車も必要でありますし、その他大事なことはたくさんありますけれども、人生のしあわせは身近な問題にあるわけでございまして、
会社づとめにいたしましても、受付の少女の応対
一つ、しつけ
一つで、その
会社の風格はわかりまするし、また机の配置、室内のお掃除のしかた
一つで、またおはようの言い方
一つでなごやかにもなり、住みにくくもなるのが人生でございますから、そういうこまかな
サービスについて、広報部あたりではもう少しお心をとめて、聞いておくだけではなくて、何回か通牒を出して点検して確かめるというのでなければ無意味であろうと思います。また、総裁が便所をされいにせよと、ツルの一声言われましても、それが末端によく浸透し、そして数カ月後には実行に移されて、再び同じ注意を繰り返さなくてもいいくらいの
程度にまで浸透するということが必要であろうと思います。
とかくこの国では、
サービスのよい場所は過剰
サービス、
サービスの悪いところはむちゃくちゃ、公園などというものは、公園というよりもやぶといったほうがよいくらいでございます。また、下水などは、下水というよりはどぶといったほうがいいでしょう。そういうものをおいておって、一等国とか何とかいって、そして顧みることを知らない、恥ずべき土性骨を持っておりますから、言うべきことを言わず、この前の大東亜戦争のような分不相応のことをやって失敗に終わったということにもなるのでありまして、私はガダルカナルの断層はわれわれの頭の中にもあるし、日常の生活の中にもある。敗戦から何事かを学ぶとすれば、やはり日常の生活においても合理的生活が行なわれなければならぬ。建築においても室内の調度においても、執務の方法においても、すべて合理的でなくてはならない、こう思います。
大
国鉄ほどのものが、その
サービスの分野において、私どもからこういう注意を受けねばならぬということは、私はこれは、総裁の御責任というよりも、やはり日本のアジア的な封建残存の遺風であろうと思います。中国に行って驚きましたのは、その
サービスのいいことです。列車は日本より劣っており、まるで明治三十年代の混合列車のような形でありますけれども、その掃除の行き届いておること、清潔なこと、
サービスの行き届いておること、驚くべきでありまして、ぜひ
国鉄の管理をされておる方々は一ぺん北京にいらして、新しい中国の
鉄道の
サービスぶりをごらんになったらいいと思います。ハエで埋まっていたあの北京がどんなに美しい町になり、そしてヒマワリの種とスイカの種で足の踏み場もなかった中国の列車が列車そのものは粗末でありますけれども、どんなに清潔になっておるかということをごらんになられたら驚かれると思います。時間の正確なことをもって世界の誇りであった日本の
鉄道が、敗戦以来非常な苦難の道をたどりつつ今日までよくなってこられた御
努力に心から
敬意を表しますが、画竜点睛というか、そういうこまかな行き届いた管理についての神経がまだ不足しておる。大新宿の駅はできましたけれども、その管理がはたして適切に行なわれているかどうか、一度プラットホームから、洗面所から、便所の端に至るまで、一ぺん
運輸大臣もお歩きなさったらいかがかと思います。いわんやその他の駅々においては、
サービスなんという精神はあんまりたいして発達しておりません。もちろん、乗客側の社会公共的な感覚のないことは、これはまた驚くべきことでありまして、酒を飲むのはけっこうですけれども、飲んだものをプラットホームで吐き出すやつなどは、私はこれは軽犯罪法で直ちに逮捕するのもかわいそうです、武士の情けとして。(笑声)が、即刻罰金を課して、吐いたものくらいは翌日ちゃんとはきに来るか、それか五百円くらい罰金を出さすかして
——そういうトラなどというものに対して寛大でありすぎると思うのです。こういうのは進歩的弾圧を加えて私はけっこうであろうと思います。
いまのよき駅を表彰すること、それから便所の清掃その他についての通牒などを徹底させること、冷暖房についてもっとこれが重要な問題であるということ、乗客の一人でも暑過ぎるためにかぜを引かしたりなどしたならば、その責任は重大であること、そういうことを徹底さしていただきたい。事は小さいようでございますけれども、こういう問題こそ分科会にふさわしい要望でなかろうか、こう思って申し上げる次第です。