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1965-02-24 第48回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十四日(水曜日)    午前十時十七分開議  出席分科員    主査 植木庚子郎君       井出一太郎君    稲葉  修君       八木 徹雄君    石橋 政嗣君       辻原 弘市君    野原  覺君       三木 喜夫君    兼務 大原  亨君 兼務 上林榮吉君    兼務 川俣 清音君 兼務 横山 利秋君    兼務 吉田 賢一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 高橋  等君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府総務長官 臼井 莊一君         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     山野 幸吉君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         防衛庁参事官         (人事局長)  堀田 政孝君         防衛庁事務官         (防衛施設庁労         務部長)    藤本  幹君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安川  壯君         法務政務次官  大坪 保雄君         法務事務官         (大臣官房経理         部長)     勝尾 鐐三君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         法務事務官         (矯正局長)  大澤 一郎君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木信次郎君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         文部事務官         (社会教育局         長)      蒲生 芳郎君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         運輸事務官         (船員局長)  亀山 信郎君         郵政事務官         (人事局長)  曾山 克巳君  分科員外出席者         厚生事務官         (公衆衛生局企         画課長)    松下 廉蔵君         自治事務官         (財政局財政課         長)      岡田 純夫君     ————————————— 二月二十四日  分科員野原覺委員辞任につき、その補欠とし  て村山喜一君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員村山喜一委員辞任につき、その補欠と  して三木喜夫君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員三木喜夫委員辞任につき、その補欠と  して野原覺君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  第二分科員横山利秋君、第三分科員大原亨君、  第四分科員川俣清音君、吉田賢一君及び第五分  科員上林榮吉君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計予算総理府防衛庁及  び経済企画庁を除く)、裁判所及び法務省所管      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和四十年度一般会計予算防衛庁及び経済企画庁を除く総理府所管を議題とし、質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原分科員 きょうは、総理府関係沖縄問題と、それから組織暴力を中心とする問題、こういうふうに二点にわたりまして質問いたしたいと思います。  最初に沖縄問題ですが、これは時間の関係でできるだけ具体的な問題にしぼって質問をいたしたいと思いますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。  先般、私沖縄へ行ってまいりましたときに、沖縄同胞諸君お話では、沖縄の方が外国に旅行をいたします際に、外国へ行きました際に非常に戸惑う。アジアへ行きましても、ヨーロッパへ行きましてもそうです。というのは、旅券の問題です。旅券記載事項の中で国籍という欄があるわけですが、あるいはいろいろな手続の際に、国籍という欄にどういう表現のしかたをしたらよろしいかということで、非常に戸惑うだけでなしに、非常に肩身が狭い、こういうお話であります。沖縄の人がそういうふうに外国へ行きました際には、国籍の欄には大体どういうふうに記載をしているのか、国際慣例上も含めまして、どういうふうに記載をするようになっておるのか、こういう点をまずひとつお答えいただきたいと思います。
  4. 臼井莊一

    臼井政府委員 沖縄におきましては、御承知のように、アメリカ施政権がございまして、立法、司法、行政の三権を持っておるのでございますが、私ども承知いたしておりまする点では、沖縄住民に対しては琉球人という名称を使っておるように聞いておる次第でございます。
  5. 大原亨

    大原分科員 たとえば国際法上も、あるいは国連その他の国際舞台においても、琉球人というのは通らないと思うのですけれども国籍ということになりましたら、やはりどこかの国籍がなければいけない。こういう点はどうなんでしょう。私専門的にさらに究明してみたいと思うのですが、政府委員でもよろしいからひとつ答弁してください。
  6. 山野幸吉

    山野政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、沖縄住民海外に出ます際に、国籍の欄に琉球人ということが書かれるわけでございまして、この点につきましては、高等弁務官のほうでは、沖縄におる日本人という意味で琉球人ということを書いておるんだというような釈明が従来あったように思うのでありますが、政府といたしましては、これを正規の日本人というぐあいにしていただかないと、海外に出た場合にいろいろトラブルがある場合が予想されますので、この改定方について、現在も申し入れておりますし、話し合い中でございます。
  7. 大原亨

    大原分科員 それで、外国にはどの国でも大使館や公使館、領事館があると思うのですが、やはり沖縄同胞諸君外国に出られた際に、どこに相談をして、そういう行動その他について国際法上の権利を主張したり義務を履行したりする、そういう保護機関というものはどこなんですか。
  8. 山野幸吉

    山野政府委員 沖縄の人が海外に出ました場合の外交保護権の問題でございますが、これは申すまでもなく日本人として日本国が当たることになるわけでございます。その場合にも、施政権を持っておりますアメリカと共同してこれを行使するということになるわけでございます。したがいまして、琉球の人が外国へ行かれました場合には、日本大使館連絡をなさって、そうして場合によれば日米共同して外交保護権を行使する、こういうことになるわけでございます。
  9. 大原亨

    大原分科員 それでは、外交保護権は、第一次的に、沖縄同胞諸君に対しては日本政府が行使するんだ、こういうふうに考えてよろしいですね。
  10. 山野幸吉

    山野政府委員 そのとおりでございます。
  11. 大原亨

    大原分科員 沖縄に在住するところの日本人、こういう立場でアメリカとの間において考え方を統一する、こういう方向でありますが、私は、そのことは当然であると思います。  そこで私ちょっとお聞きしたいわけだけれども世界各国で、九十六万も人口がおるところで国籍がないというふうな、そういう事例はないわけでしょう。いまの答弁方針ははっきりいたしましたが、事実はあいまいな形ですね。そういう国籍がないというふうなことは、第二次大戦後においてはないのじゃないか、私はこう思いますが、いかがですか。
  12. 山野幸吉

    山野政府委員 お答えいたします。  国籍日本国籍を持っておるわけでございます。沖縄戸籍法におきましても、日本国籍を有する沖縄住民というものが戸籍に登録することになっておるわけでございます。ただ、外国へ旅行する場合の査証の面で琉球人ということを書かれておるということでございます。
  13. 大原亨

    大原分科員 だから、沖縄同胞諸君が言われるのは、外国へ行って、国籍がないというくらい肩身の狭いことはない、こう言うのです。これはやはり一つ人権のようなものですよ。民族自決権に基づいてそれぞれの国民国籍を保有するということは、これは当然のことなんですね。だから、それが琉球人という、琉球島に住む住民、こういうことの表示では、これはいかに考えてもやはりおかしいわけですね。だから、その点は潜在主権の問題が宙ぶらりんの形で議論されておりますけれども、これは私は明確にすべきではないかと思う。これは総務長官からお答えいただきたいのですが、そういう政府としての方針をはっきりして、そして日本本土人たちアメリカに対しましてもその点は明確にすべきである。戦後二十年たちまして、国籍がなくて、沖縄に住む住民ということはあり得ない、こう思います。そういう点について、日本政府としての考え方と今後の方針について明確にしてもらいたい。
  14. 臼井莊一

    臼井政府委員 ただいまの大原先生の御意見のとおりでございまして、政府といたしましてもやはり同様な考えで、現在も外務省を通じましてアメリカ側に、日本国籍旅券等の場合にリューキューアンと書いてあるのでございますが、そういうことのないように、やはり日本人というふうに記載することに一致するように目下交渉中でございますので、そういう方針に従って一そう進めてまいりたい、こう考えております。
  15. 大原亨

    大原分科員 これはいま特連局長の御答弁でわかったわけですけれども沖縄同胞戸籍は従来どおり変わっていないわけですから、これは日本人であります。したがってそのままの表示旅券においてもやって、対外的にも外交保護権をぴしっと規律正しくしていく、こういうことは国際法の当然の原則です。国際法の常識です。それを、旅券に、アメリカ側がたまたまああいう形にあるからといって、そういう基本的な人権ともいうべき問題の表示をひん曲げるということは許せない。私は、この点については総務長官考え方をはっきりお話しになりましたが、その点は重ねて明確にしてもらいたい。これが第一であります。  それから第二の点は、沖縄産業開発ですけれども、これも私は十分時間をかけてやることはできませんが、農林省や通産省その他と関係深いわけですけれども、基本的な態度としまして、やはり日本本土経済圏の中において沖縄自立をはかっていく、自主性のある産業開発をしていく、基地に依存した消費経済という不健全な形じゃなしに、やはりぴしっとした生産的な職業、労働に従事できるような方針で臨む、私はこういう基本的な態度について日本側がはっきりしておく必要があると思うのですが、その点については総務長官どう考えますか。
  16. 臼井莊一

    臼井政府委員 沖縄産業は、御承知のように農業水産業がそのおもなものでございまして、農業のうちでも、サトウキビパインがおもなものになっております。これは台風が通るとかあるいは土壌の関係等でそういう方向を強くとらざるを得ないのかと思いますが、しかし、水産方面のさらに一そうの開発とか魚礁を設けるということもやっております。さらに農業にいたしましても、現在以上に畜産をさらに奨励するとか、そのほか、パイン以外の果実あるいは蔬菜、こういうものについても、あちらの試験場等でも研究しておるようでございますが、私どものほうも、そういう点については産業開発という面において一そう努力をしていきたい。そこで、昭和四十年度の予算におきましても、十四億七千万の経済援助を実施いたしておりますが、そのほか技術援助とか、この額は昭和三十九年度に比しますると約三一%の増加になって、今後一そうそういうお説のような方向でひとつ努力してまいりたい、こう考えております。
  17. 大原亨

    大原分科員 それで私は、日本経済一環として沖縄経済自立させるのだ、生産的な職業の分野をそういうふうに開拓していくのだ、不健全な消費経済基地経済に依存する形でなしに、健全な生産的な産業を興していくのだ、これがやはり産業開発に対する沖縄本土政府との関係でなければならぬ、こういう方針につきまして、もう一度その方針にしぼって御答弁をいただきたい。
  18. 臼井莊一

    臼井政府委員 現在、ただいまお答え申し上げましたように、日本政府といたしましてもいろいろの経済援助をいたしておりますが、やはり沖縄自立経済になっていけるようにすることが望ましいのでありまして、そういう点につきましては、いま申し上げましたように、産業開発、こういうことにつきまして、あちらの琉球政府並びに米民政府においてもいろいろ計画策定中のようでございますが、私のほうといたしましても、あちらのそういう策定ができましたら、それをさらにこちらのほうもひとつ検討いたしまして、自立長期経済がある程度進むようにやっていきたい、こう思っております。
  19. 大原亨

    大原分科員 つまり、サトウキビをつくれば、サトウキビ値段や買い取りの制度というものが安定していないから非常に迷う。これはあとで質問しますが、パインをつくりましても、やはりこれはどうしたものであろうかという迷いが出てくる。こういうことは、沖縄軍政府のほうは、いままではとかく本土との緊密な関係を好まないというふうな意向も一部ではあったわけであります。全部が全部とは言いませんが、一部ではそういう意向があったわけであります。これでは、最前線で防波堤となって戦った同じ日本人に対する処遇といたしましても、日本といたしましてはあるべき姿ではないわけであります。したがって、そういう面で長期的な沖縄産業計画について、やはり日本十分日本本土との関係を前提として考えるべきだ。これは重ねて私は、御答弁ございましたから、答弁を求めませんが、そういう方針を明確にしてもらいたい。  それから、確かに、土地適地栽培という点からいえば、太陽の熱はたくさん受けるわけですから、本土とは特殊な農作物をつくっていく条件もある。ただし、サンゴ礁その他の土質の条件もあるでしょう。そこで問題は、サトウキビとかパインとかいうふうなものは、技術開発を十分に協力すると一緒に、やはり日本全体の中において砂糖は輸入する。足りないものでありますから、それを位置づけていくということが大切なわけであります。そういうことがないとやはり本土との一体感も出てこないし、そうして私ども本土としての責任も果たせないということになる。聞くところによると、砂糖買い入れ値段やあるいは量についても大体決定をしておるようでありますが、その決定はもう動かすことができないような決定のしかたであろうかどうか、こういう点についてお答えいただきたいと思います。
  20. 臼井莊一

    臼井政府委員 いまお話しのように、沖縄産業日本内地の需要との関連においてできるだけ、間接的な援助と申しますか、これを考慮するのは当然であります。そこで、たとえばパインにつきましても、自由化の今日でございますけれども、昨年末の関税率審議会におきまして、パインにつきましては現在の関税率の五五%、これを一年間延期いたしまして、一応四十一年の三月三十一日まで延期するというようなことも、やはり沖縄パインというものを考慮に置いての措置でございます。これは現在国会で御審議をいただいておるわけでございますが、砂糖にいたしましても、御承知のように、一応原糖におきまして一キログラム八十円、そうして六〇%政府において買い上げる、こういうことになりました。これは内地買い上げ価格とその比例考えまして、それと同様な考慮のもとにやったわけでございます。そこで、あちらのほうについても内地と同じように、不利のないようにという考慮のもとにやったのでございまして、その計算等につきましては、農林省において御計算を願ったわけであります。したがって、価格におきましては、これを動かすということは現在困難かと思います。六〇%を買い上げるという点につきましても、一応そうきまっておりまして、絶対に動かせないというわけでもないかとは思いまするけれども、一応これも内地との関連において、大体それくらいがよかろうということで決定いたしたわけであります。
  21. 大原亨

    大原分科員 一キログラムで八十円というのでは、再生産をまかなう金としては足りないということがあるわけです。それには、台湾糖キューバ糖国際競争ができるような技術上の指導日本本土予算をつぎ込んでやっていく、そういう展望と一緒に、やはり再生産ができるような費用をやらないと、やはり本土経済一環として見たことにならないし、地の利は得ているわけですから……。それで今度は、サトウキビは、やせている土地だからだめだというので、耕作を放棄しよう、あるいて製糖会社もストップする、そういう事態が出ておる。先行きがまつ暗であって、経済全体からいえば収入は基地に依存しておるけれども、たくさんの勤労者生産的な仕事をしているのはサトウキビパイン等でありますから、そういう人がとほうにくれる、こういう事態が私一は出てくると思うのです。そういう現状認識についてはどういうふうに判断をしておられますか。
  22. 臼井莊一

    臼井政府委員 この砂糖買い上げ値段決定につきましては、ただいま申し上げましたように、内地の原料の買い上げ値段と、沖縄のほうの事情奄美大島あるいは鹿児島、こういうものと比例をとって、それに劣らないようにということで食糧庁において計算をいしたはずでございます。当初は七十九円ということに出たのでありますが、七十九円五十銭くらいまではというのを、私のほうでもどうしても八十円台くらいにはしなくてはという、多少そこに政治的な考慮の要請もいたしまして八十円にきめたというようないきさつもあるのでございますが、ただ、いま申しましたように、六割の買い上げではたして適当かどうかという問題もございまして、この点については、沖縄におきましても、最近の事情も、それでは足りない、こういうことで、もう少し買い上げてくれぬか、六割以上にしてくれぬかというような要望もあるやに聞いておりますので、なおひとつそういう点につきましても今後とも十分注意をしてまいりたい、こう考えております。
  23. 大原亨

    大原分科員 買い上げ量については、将来ともやはり地元の実情を勘案して、必要があれば拡大するように努力をしたい、こういうことでございますね。  それから、実際に行ってみまして思うのですが、技術開発技術指導、それに予算を投入して、特連局あり方南方連絡事務所あり方にも関係をするわけですが、技術指導をして、そして国際的な視野で技術開発をしていく。そういうことで、やはり将来の見通しをつけていくというふうな、そういうところへもう少し本土政府としては力を入れるべきではないか。そういう点についていかがですか。
  24. 臼井莊一

    臼井政府委員 各方面技術援助という点についても考慮をいたしておりますので、いまの状態で基幹産業である糖業については、そういう点についてはより一そうひとつ努力をして、ただいまの御意見等につきましても、大いにそういう方向努力してまいりたい、かように考えます。
  25. 大原亨

    大原分科員 養豚やその他の多角畜産経営等も問題になっておるようですけれども、それらの問題も含めまして、十分本土技術沖縄の地理的な条件において適されるように、あるいは市場関係等十分見通しができるような、失望しないような、そういう体制をとってもらいたいということを要望いたします。  それから第三の問題は、沖縄における社会保障の問題ですが、本土社会保障も、医療保障所得保障の二つの面から見て十分ではない、児童手当その他国際的な基準に達していないものがたくさんあるわけですが、しかし、その本土と比較いたしてみまして、何といっても沖縄においては社会保障が非常に劣っておる。そういう点は、いろいろな財政問題等があるわけですけれども、私は、特連局を強化して、各省の専門家が出向いていって、具体的に沖縄同胞社会保障水準を引き上げるような専門的技術的な連携や指導、こういうものをやはり強化しなければならない。いまの特連局出張事務所南方連絡事務所は、情報をとるくらいのものであって、連絡機関程度であって、全然これは機能を発揮していないのではないか。だから、向こう側政府関係もあるけれども、しかし、本上としては当然に社会保障水準を引き上げていかなければ、これは私はならぬと思うのです。そういう社会保障水準を引き上げる問題と、南方連絡事務所機能を質的に発展させていく問題、そういう点についてひとつお考えを聞かしてもらいたい。
  26. 臼井莊一

    臼井政府委員 お説のように、沖縄におきましては、いわゆる福祉三法、そのほか結核等、相当社会福祉社会保障方面にも努力はいたしておりますけれども、まだまだ、ことに医療保険等におきましては欠けておりますし、その他の現在の社会保障にしても、必ずしも本土と比較して十分でないということも承知いたしておりますので、そこで、そういう方面援助を、たとえばこちらから無医村地区とかあるいは公立の病院に医師を送る、あるいは歯科医を送る、こういうようなこと、あるいは結核患者を五百人毎年こちらにお呼びいたしておりますが、今度はこれを六百人にふやしたいとか、いろいろ努力をいたしております。それにつけても、やはり南方連絡事務所の機構を充実しなければならぬということも、これも私ども考えておるのでございます。もう一つは、この点について近く日米協議委員会話し合いの場が広がる、こういうことになりますので、したがいまして、こちらの局のほうもそういう方向でいろいろ考えておりますが、なお、南方連絡事務所のほうにおいても日米琉技術委員会等仕事もふえてまいると思いますので、やはりお説のように今後十分検討してまいらなければならぬ、こう考えております。
  27. 大原亨

    大原分科員 社会保障水準引き上げの政策として、たとえば医師を派遣するとか、患者本土に呼ぶとか、あるいは戦争犠牲者の遺家族に対する給付措置等、そういう問題等も悪いことではないのですが、しかし、やはり沖縄における社会保障制度を確立していくことが大切であります。そういう面においては、医療保険制度なんかは全くないといってもいいわけです。皆無に近い。失業保険制度生活保護が若干ある。あと水準も低いし、条件も悪いわけだけれども国民健康保険とかあるいは職場保険とかいうふうな医療保険制度がないわけです。だから、失業保険制度や労災その他の制度も前進させると一緒に、医療保障所得保障のそういう制度的な問題を、本土の悪い点をそのまま入れる必要はないけれども、しかし、よりよい合理的な制度を入れていくことが、やはりこれから沖縄との関係ほんとうに緊密一体化する基本である。今日のようなときに、九十六万の同胞が、相当の教育水準がありながら、しかも国際的に見てみて、ILOの百二号条約があるけれども、その水準から見ると全く植民地以下の水準であるというふうなことは、これは私は放置することはできない。びほう策ではできない。根本的に制度確立ができるようなことを、本土から、南方連絡事務所等を強化して、厚生省、農林省その他専門官を派遣して、そういう制度上の問題を一体となって研究をしてやっていく、こういう心がまえや体制が必要である。そういう点についてのお考えを明らかにしてもらいたい。
  28. 臼井莊一

    臼井政府委員 いろいろ激励、御鞭撻をいただいて私どもほんとうにありがたいのでめりますが、全くそのとおりでございます。そこで、医療保険につきましては、琉球立法院のほうでも昨年の議会にもこれを提案したそうですが、これが継続審議になったというので、現在もこれが琉球立法院において審議中でございます。ただ、この問題で私どもがあちらへ参りましたときにもいろいろ話し合いをしたのですが、第一、医師が非常に少ない、そこで、どうしたならばこのお医者さんをふやすことができるかということが一番問題で、できればあちらのほうの大学にも医学部でもできるといいのですが、それができなくても、九州方面の大学に委託してでも医師をふやすようにしなければいかぬという問題があります。それから、現在も厚生省のほうから、その医療保険等の問題につきまして、いろいろ指導といいますか、相談と申しますか、そういうために係官が行っておるようにも聞いております。そのほか公務員の共済制度等の問題もありますので、極力そういう方向努力をしてまいりたい、そうして内地の相当県に劣らないようにできるだけすみやかにその水準を引き上げていきたい、こう考えております。
  29. 大原亨

    大原分科員 社会保障の中の一つですが、沖縄にやはり原爆被爆者がいることが明らかになったわけです。それに対する施策も本年度は若干前進をしておるというふうに考えておるわけですが、その大体の内容についてお答えいただきたい。これは政府委員でけっこうです。
  30. 山野幸吉

    山野政府委員 お答えいたします。  沖縄における原爆被爆者の取り扱いにつきましては、昨年末以来、民政府のほうから、本土の取り扱い等についていろいろ照会がございまして、それに対しまして私のほうから昨年十一月民政府のほうに回答を申し上げまして、二月に入りましてから、向こうのほうで、本土における原爆被爆者の取り扱い方についての私どもの説明書を見た上での提案がありました。それによりますと、民政府の承認を得た琉球政府日本政府との了解のもとに、沖縄に原爆被爆者の医療調査をする医師を派遣いたしまして、そうしてその確認のもとに、症状等によって治療を受ける必要のある者は本土に送って治療を受けさすというような手続についての提案が向こうからございまして、目下それをめぐりまして交渉中でございまして、遠からず話し合いがつくものと私ども考えておる次第でございます。
  31. 大原亨

    大原分科員 原爆被爆者については、内容的にはお話はなかったわけですが、結核と同じように、本土に被爆者が渡航する場合においては、その条件を備えた被爆者については、旅費を出し、治療費も出す、こういうことですね。特別被爆者について大体そういう措置をとるということですね。ただ問題は、やはり厚生省の専門係官が現地に行って、認定被爆者や特別被爆者、そういう認定をすると一緒に、やはり現地においてはよほど恵まれた者でないと、本土に渡って生活を放棄してやるわけにいかぬわけですから、現地において治療ができるような、そういう方法をとってもらいたい。そういうことを考えてもらいたい。これはひとつ要望しておきますが、いかがですか。
  32. 臼井莊一

    臼井政府委員 ただいま特連局長がお答え申し上げましたように、この点につきましては、実は昨年八月私が参りました際にも、ワトソン高等弁務官とその点お話をしました。現在、琉球政府に実情調査中であるので、それがわかったらそちらのほうに連絡する、こういうことで、ただいま特連局長お話し申し上げましたようなことになっておりまするので、そこで、やはりこの原爆の被爆者に対する法の適用は、こちらに参りませんと、こちらの費用で全部というわけにまいりませんので、やはりそういう症状があって、手当をする必要がある、こう考えます者につきましては、こちらのほうにお招きして、こちらで政府の費用で治療をする、こういうようにいたしたいと考えております。
  33. 大原亨

    大原分科員 つまりこういうことだと思うのです。本土との、あるいは沖繩に健康保険その他の社会保険ができると、現地でこういう治療をする制度もできる、こういう可能性が出てくると思うのです。しかし、それがなくてもできないことはない。その点、私は時間の関係で強く要望しておきたいと思います。  それから第四といたしまして、これは簡潔にお答えいただきたきたいのですが、沖縄における電気事業とか水道事業とか銀行の業務とかいうものが、たとえば銀行だったら五一%アメリカ側が資本を持つ、それから電気でも水道でもアメリカの軍の下請的な事業体があって、やはりそういう大切なエネルギーとか、環境衛生、水道とかいうようなものが自体の力でできない。そういう基幹的な公共性を持っておる企業についてはやはり自力でできるように、そういう財政投融資その他の制度一緒に、そういう企業をアメリカ基地経済に依存しないでもできるような、そういう方向本土としても十分考えていく必要はないのか、そうすべきではないか、この点について簡潔に考え方をお答え願いたい。
  34. 臼井莊一

    臼井政府委員 いまのお話でございますが、電気とか水道とか、そういう公共的なものは、知のように、あそこがアメリカ側の重要な基地になっております関係で、そこで軍の作戦上非常にこれらが重要な関係があると考えておそらくそうしておるのじゃないかと思うのでございますが、水道等についてもできるだけ市町村でやるとか、いろいろのことも考える必要があるかと存じますが、こまかいことは特連局長からお答えさせます。
  35. 山野幸吉

    山野政府委員 ただいまの御答弁に補足して御答弁申し上げます。  御案内のように、沖縄におきましては、電力にいたしましても、水力にいたしましても、それから水源にいたしましても、資源的に非常に限られているわけでございます。したがいまして、いま長官からお話しいたしましたように、基地との関係もございましょうけれども、電力、水道の基本的な施設についてはやはり軍のほうでやるという形になったと思うのであります。しかしながら、御指摘のように、経常的な、村なりあるいは町なりの簡易な水道等につきましては、簡易水道としまして市町村自治体等で行なうように、現役も市町村の事業としてやっておるわけでございます。ただ、基幹的なマスタープランに基づいて行なうそういう電気、水道等については、現在のところ軍政府のほうで持っておるということになっておりまして、漸次自治体の機能を強化する面からも、できるだけ地元住民の水道、電気等については地元でまかなえるような自治体の経営に持っていくという方向については、私どもそのように持っていきたい、かように考えておる次第でございます。
  36. 大原亨

    大原分科員 このような公営企業、公共性を持っておる企業は、やはり本上から償却を考えながら投資をしなければできないと思うのです。たとえば、中央銀行など五一%もアメリカが株を握っておるというようなことは、やはり金融制度や財政の一つ自主性の喪失、植民地性の暴露だと思う。そういう点は、あくまでも、基地経済、不健全な消費経済植民地経済から自立経済に向かっていく、政治面においては主席の公選、これは直ちにやる、そうして施政権の返還についてはっきりとした方針を立てる、こういうことは、沖縄の全部の住民の要望であると私は思うのです。他の政策のいろろいの点もありますけれども、私はその点で政府の決意をお伺いしたいわけです。  もう一つ、第五の問題は、戦争中にあれだけ大きな犠牲を払って、最後の知事さんも赴任しておったわけです。そこで軍用道路その他を日本の軍がつくったわけですが、その土地を取り上げました補償が全然なされていないのです。本土におきましては、そういう点は、補償が戦争中のものも最近にさかのぼってやられたこともあるのですが、一方的に取り上げた例ももちろんありますけれども沖縄においては、日本の軍の戦争中における土地の取り上げその他につきましても、全く補償がされてないわけです。占領中におけるアメリカに対する補償その他は別の問題として、アメリカ政府に対しても要求をすべき問題ですし、日本としても協力すべき問題ですけれども、そういう問題が沖縄において提起されておるわけですが、日本政府として、最前線の防波堤にしたわけですから、当然その点について配慮をしなければならないのではないか。第五の具体的な問題として、その問題に対するお答えと、全体の沖縄の施政に対する考え方についてひとつ明らかにしてもらいたい。
  37. 臼井莊一

    臼井政府委員 施政権を早期にかつ完全に日本に返してもらいたいということは、これは一貫した政府方針でございます。したがって、この点については、先般佐藤総理がアメリカへおいでになられたときにも、ジョンソン大統領にも強く表明をいたしたわけでございます。しかし、御承知のようなわけで、これが極東の自由国家の安全保障というような問題にからんで、なかなかすぐというわけにはいかぬような点もありまするが、しかし、それまでの間でも、住民福祉の向上のために日米協力してやっていきたいということでいろいろやっているわけでございますが、しかし、この点については、今後ともひとつできるだけあらゆる機会に政府の従来の方針どおり進んでいきたい。  なお、主席公選につきましては、やはり高度の政治性の問題でございますから、私からこうするああするということを直接交渉するわけにまいりませんので、これは外務省を通じて、アメリカの大統領の行政命令の関連もございまするので、そういう希望につきましてはもちろん申し述べてあるわけでございますが、それまでの間でも、自治権をひとつ極力拡大していきたい。幸いに、今度の日米協議委員会がどれだけ権限が広がるか、まだこれからの問題でありますけれども、その中でそういうことについての話し合いの場も得たいものである、かように、考えておる次第でございます。  なお、軍用道路に使用したものの補償につきましては、アメリカの軍で使用したそれについては補償があるようでございますが、日本の戦時中これを使用した分についてははたしてどうなっておりまするか、私のほうでまだそれを承知いたしておりませんが、それらについてもひとつ十分今後研究していきたい、こう思っております。
  38. 植木庚子郎

    ○植木主査 大原君に申し上げますが、持ち時間に近づきましたから、なるべく簡潔にお願いします。
  39. 大原亨

    大原分科員 それでは第二の問題に移ります。組織暴力の問題につきまして一つ質問いたしたい。  私は、池田内閣、いまの佐藤内閣の政治で高度成長とかその他はてんぷらであったけれども組織暴力の撲滅につきましては、警察庁その他が非常に力を入れてやっておられる。そういう点については国民がひとしく期待をしておるわけです。期待はずれになってはだめですけれども、期待をしておると思います。しかしながら、浜の真砂ではないけれども、幾ら取り締まりをしましても、次から次へと暴力団が事件を起こしていくという事態ではないかと私は思うわけですが、最近のそういう暴力団の数、あるいはそれに加盟しておるメンバー、そういうものの実態、動向について最初に警察庁から簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  40. 日原正雄

    ○日原政府委員 暴力団につきましては、昨年取り締まり強化のための対策要綱を定めまして、あらゆる面から取り締まりの強化につとめてまいっておるわけでございます。現在あります統計数字では、私どもの把握しております暴力団員数は約十八万人、五千団体という統計数字になっております。この取り締まりにつきましては、いろいろな方面から強化をいたしてまいっておるわけでございまいますが、まず、あらゆる不法行為あるいは対立抗争事件というものを徹底的に取り締まっていく。その取り締まりの結果、最近とみに対立抗争事件は減少をしてきております。ただ、依然としてやはり大規模な、しかも凶器を使った対立抗争事件がときどき発生いたしますので、これの早期鎮圧検挙ということに今後も力を入れてまいりたい。いま一つは、まず凶器をできるだけ取り締まっていこうということで、これも相当な成果をおさめております。昨年度におきましても、ピストルを中心にいたしまして、いろいろな凶器の押収が、一昨年に比して三割方の増加を見ております。それから、やはり暴力団を根絶していくためには、これらの現象面にあらわれた犯罪の取り締まりだけではだめだということで、資金源にメスを入れていかなければどうしても根絶できないということから、さしあたりわれわれの取り締まり面では、まず不法資金源というものに徹底的にメスを入れる。恐喝、賭博、あらゆる不法資金源を中心として資金源にメスを入れるということ。それから、さらに、チンピラばかりやっておったのではいつまでたっても根絶できないということで、首領、幹部級に対する取り締まりの強化、いわゆる頂上作戦というものにも力を入れてまいっておるわけでございます。  こういう状況で、昨年度は私どもとしてできるだけの力を注いでまいったつもりでございまいますが、何にいたしましても、一朝一夕でこれを根絶させることはできないわけでございまして、本年度も引き続き昨年度と同様に強力な取り締まりを加えてまいりたい。そういう意味から申しまして、長期継続的な、しかも強力な取り締まりが今後とも必要であるというふうに考えます。  今後の動向でございますが、昨年度において解散した団体が約三百団体というふうにいわれております。もちろん、その団体員の中には、他の組織に入る者もございましょうし、また新たな組織をつくる者も出てこようと思いますけれども、いまのところでは、われわれはとにかくあらゆる取り締まりの強化をはかっていって圧縮してまいるということで取り締まりを続けてまいっておるような次第でございます。
  41. 大原亨

    大原分科員 私は、これは警察の方と法務省の方、次官にお尋ねしたいのですが、中央政界にも一部にはそういうことがあると思うのですが、地方政界、都道府県会議員等の中には、組織暴力の暴力団に対しては懐柔政策でいくべきである、話し合いで懐柔して事件を起こさぬようにさすべきであるというような、これは一部ですが、そういう考え方がある。しかし、最近の警察庁やその他の方針のように、これは断固対決をして根絶しなければならぬ性質のものである、これは民主主義以前の問題である、こういう考え方で対処すべきである、私は、大まかにいって、こういう考え方があると思うのです。その点は、検察庁、法務省、政府としては大体どういう基本的な態度で致んでおるのか、こういう点をひとつお答えをいただきたい。
  42. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 組織暴力を根絶すべきこと、これはただいま大原先生のお述べになったところと私どもすっかり同感でございまして、ただいま警察庁からお答えしましたように、法務省、検察庁としてもそういう考え方をもって従来いたしてまいっておったのでございます。あるいは過去においては、何か、これを対決をして処置するということでなしに、うまくあやつっていこうというようなことを考えた者があるいはあったのかもしれませんけれども、現状においては、そういう考えは、政府全体においてもございませんし、法務省、検察庁はもちろんございません。これを完全に対決をして根絶していく。何と申しましても、特に法務省の立場は、御承知のとおり、法秩序の維持ということが主要なる役所としての目的でございますから、その点は何ものもはばからずして断固として処置をしてまいる、こういう基本的な方針に変わりはございません。
  43. 大原亨

    大原分科員 この問題はあとでまたちょっと触れるわけですが、その次の問題としましては、組織暴力へ暴力団が凶器を持ち込んでおりますけれども、その凶器は、ピストルや日本刀、特にピストル、そういうものは、どういうルートを通じて入っておるのですか。
  44. 日原正雄

    ○日原政府委員 これは昨年の統計でございますが、押収拳銃の出所を調べました一つの統計では、やはり一番多いのが密輸入でございます。まあ圧倒的に密輸入が多いのでして、あとは、手製とか、あるいは旧軍人関係とか、自己所持とか駐留軍関係とかいうようなことになっております。
  45. 大原亨

    大原分科員 最近、有名な俳優、石原裕次郎とか、そういうのが組織暴力団の間に入って密輸業者との仲立ちをする、スムーズな役割りを果たしながらそういうピストルを持ち込んでいる。こういう非常な暴力団の取り締まりにもかかわらず、たとえばフランスの機長がピストルを大量に密輸入している、こういう情報があるわけであります。私は、そういうこと等について、警察だけではどうにもならぬのじゃないか、その点について、取り締まりに当たっておられる警察当局として、どういう点をやったらその根絶ができるか、こういう点についてのお考えをひとつ発表してもらいたい。
  46. 日原正雄

    ○日原政府委員 私ども、とにかく暴力団から凶器を取り上げたいという考えのもとに取り締まりに当たっておる者といたしましては、やはり密輸入のものが非常に多いということでございますると、暴力団の手に渡ってからこれを追及していくということは非常にむずかしい、しかも動きも早い、隠し場所も非常に巧妙になってつかまえにくい、できればこれを水ぎわにおいて取り上げていきたい、いろいろ現実にはむずかしい問題もあるようでございますが、港なりあるいは空港なりにおいてわれわれは税関当局、空港当局と協力してやっておるわけでございますが、この段階においてもう少し強力に取り上げる方法を講じてもらえたらというふうに感じておるわけでございます。
  47. 大原亨

    大原分科員 それから、暴力団はきわめて組織的に多方面に活動し、ルートを持っていると思うのですが、凶器の問題のほかにもう一つの問題は、やはりお話がありました資金源だと思う。時間の関係ではしょって質問するわけですが、暴力団の資金源は、大体どこからどういうルートを通じて資金が入っておるのか、こういう点を二、三例をあげてお答えをいただきたい。
  48. 日原正雄

    ○日原政府委員 暴力団の資金ルートの解明は、まだわれわれ現在の段階では十分ではございません。したがいまして、はっきりしたことは、全貌を把握したわけではございませんけれども、一応私ども考えておりますのは、暴力団の資金源として考えられるものの中を、合法的な資金源、それから非合法な手段による資金源、こう分けて考えてみますと、合法的な資金源としては、ばく徒、テキヤ、青少年不良団等によって違いますけれども、露店、行商、あるいは土木建築業、興行、あるいは風俗営業というふうなものがあげられるようでございます。それからいま一つ、不法形態の資金源というものは、これはまちまちで、いろいろなことがありますが、あるいは賭博であるとか、あるいはショバ代、かすりであるとか、あるいは用心棒であるとか、あるいは白タク、景品買い、予想屋、のみ屋、いろいろな形態があるわけでございます。特に多いのは恐喝その他の手段によるものであろうかと思います。こういうふうに一応分けますが、ただ、この合法的な資金源の中にも、必ずしもそれ全部が合法的な資金源とはいえないものがある。不法な資金源がそのまわりを取り巻いております。これらの行動も、合法的な興行をするにいたしましても、入場券を売りつけるとか、あるいはその他の風俗営業の関係にいたしましても、暴力バーの例にも見られますように、不法な影がつきまとっておる状況にあるわけであります。
  49. 大原亨

    大原分科員 合法的な資金源と賭博その他の非合法的な資金源とのルートをお話しになったわけですが、合法的な資金源の中では、最近問題となっておるのは、たとえば興行で俳優との関係、地方巡業との関係が出てまいりますが、その興行との関係組織暴力団を排除するためには警察だけではできないわけであります。国の営造物や地方公共団体の営造物を使用させないという問題が最近自主的に出ているわけですが、まず国のほうにおいて、公共物については一切暴力団には使わせないのだ、これは民主主義以前の問題ですから、そういう点を明確にして、地方自治体の条例その他の解釈や適用についてきちっと全国的に連携ができるように、協力できるようにすべきではないか。そういう点について法務省のほうから、国の営造物についてのそういう連携を次官会議あるいは閣議等において、きちっと姿勢を正して、地方においても条例の適用その他解釈をすべきではないかと思うのですが、その点についてお答えいただきたい。
  50. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 ただいま大原先生お話しになりましたように、いろいろの興行をやるについてのいろいろの施設の利用、これは国の営造物を使用するということはあまりないのではないか、従来もあまりなかったのではないかと思うのでございます。これは具体的に確実に私が知って申し上げておることじゃございませんけれども、興行等のとき使うのは、営造物を使う場合でも地方公共団体の持っているものが多いのじゃなかろうかというふうに存じます。その公共団体の営造物を使わせることについて、最近はお話のごとく地方公共団体の管理者自体が自発的に暴力団を排除するという措置に出てまいっております。これは非常にけっこうな措置でございまして、今後こういうことはどういう形をとってまいるのがよろしいか知りませんが、奨励もし、激励もしてまいらなければならぬことである、かように考えます。  同時に、いまお話のございました、これは政府として全国的に歩調をそろえて措置するようなこと、これももちろん考えなければならぬことだと存じますので、ただいまお話しになりましたことは次官会議等においても打ち合わせもいたしますし、善処してまいりたい、かように考えます。
  51. 大原亨

    大原分科員 組織暴力団に対しまして国や地方の営造物を使用させない、これが憲法の精神でもあり民主主義の精神でもあるのだ、そしてそういう営造物の使用、管理規程の運営にあたってそういう点はきちっとするという点を次官会議あるいは閣議等において申し合わせをしてその趣旨の徹底を期してもらう、こういうことにつきましては、お答えがございましたけれども、重ねて要望しておきませんと、地方自治体において各個撃破にあいまして事実上くずれていって非常に困難な立場に立つ、そういう事態もあるやに聞いておるわけであります。自治省関係を通じてもこの点は徹底をしてもらいたい。この点をひとつ次官のほうからもう一回御答弁いただきたい。
  52. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 十分そういう措置を講ずるようにいたしてまいりたいと思います。
  53. 大原亨

    大原分科員 モーターボートや競輪その他国がやっている公共賭博、これはいろいろな点で最近は数年前とは違った情勢にあると思うのですが、しかしこれはいかような暴力団とのつながりが今日あるのか。これは警察のほうでその点についての情勢を握っておられればお答えをいただきたい。
  54. 日原正雄

    ○日原政府委員 いまとりあえず競艇等について暴力団が直接警備その他に入っておるということは聞いておりませんが、ただ一部、手をゆるめますと、のみ行為あるいは予想屋式なものが入り込みまして、われわれの取り締まりの対象になっておる場合はございます。
  55. 大原亨

    大原分科員 モーターボートその他でも、ニュースにもなっているわけですが、ほとんど暴力団に関係している人々がいろんな関連施設なんかを運営しているわけですよ。このことははっきりいたしておるわけです。これは私質問通告しておったのですが、運輸省見えておりませんけれども、そういう公共賭博は将来拡大をしない、縮小していくのだ——これは人間尊重を言う総理大臣にも聞きたい話ですが、そういう点についてひとつ政務次官のほうで、政府部内においても次官会議や閣議等において考え方を徹底してもらいたい。組織暴力との関係で十分自粛の措置をとるという方針を法務省としても発言をしてもらいたい。この点につきまして次官の御答弁をいただきたい。
  56. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 お答えいたします。  賭博的傾向のあるものを現状より拡大しないということは、少なくも法務省としては確固とした方針として立てておるような次第でございますが、他の省に関係する事柄等も相当多いようでございますので、これはまたそれぞれの省の当局に御趣旨のことはお伝えいたしまして、打ち合わせをしてまいりたいと思います。
  57. 大原亨

    大原分科員 風俗営業でパチンコ屋あるいはバー、キャバレーというようなところがやはり対象になるわけであります。暴力団がカスリを取るあるいは手数料を取るというようなことで資金源になっておるわけです。それを税金の面からとらえることは直接むずかしいだろうと思うのですが、風俗営業の取り締まりという面からも私はひとつ十分留意をしてもらいたい。  それからもう一つ私は警察のほうにお尋ねするのですが、組織暴力団が政治結社をつくっておるという現象が地方においてあるわけであります。それが数府県にまたがってあるわけであります。組織暴力団を基礎として政治活動が行なわれるということは、憲法で保障された自由ではありますけれども、それを中心として民主主義を脅かす、あるいは政治家との関係、政党との一部の関係、そういうものを非常に紊乱させる、結果として組織暴力を助長する、こういうことがあるのではないですか。その点について取り締まりに当たっておられる方々は情報がわかっているはずです。これは全部が全部ここで発表してもらうわけにはいかぬけれども、そういう点について実情はどうなっているかということをお答えいただきたい。
  58. 日原正雄

    ○日原政府委員 暴力団と政治結社の関係でございますが、現在のところ私の聞いておりますところでは、暴力団と認められるもので政治結社を結成しておりますものは、たしか十三団体であったと思います。これはつい一年前までは十五団体あったと思います。一時政治結社の結成がふえる時期がございましたけれども、現在ではこの傾向は弱まっているというふうに考えます。一つは、暴力団の中にも、政治に関与すべきではないという考え方もあるように聞いております。いま一つは、一昨年関東会結成後、暴力団取り締まりが非常にきつくなった、取り締まり強化を導いたというような考え方から、先日も関東会が解散いたしまして、現在のところでは減りつつあるように考えております。
  59. 大原亨

    大原分科員 時間がないから私は結論を急ぐわけですが、かりそめにも民主主義を標榜する政党の政治家が、そういう組織暴力団との関係で勢力伸長をはかったり、あるいは政敵の相手方を脅かしたり、派閥が違う相手方を脅かしたり、そういうようなことはあり得べきことではないと思うのです。これは民主主義の原則をじゅうりんする問題であるからでございます。先般の関東会の問題のときもテレビを見ておりましたら、有力な方、自民党の親分衆ですけれども、これがテレビへ出ておりました。国民はひとしくそれを見ている。見て、はっとしたと思うのです。これでは幾らやったってだめじゃないか、こういう印象を与えておるようであります。これはTBSであったかと思うのですが、そのテレビを見れば日にち等わかるわけですけれどもこのことが事実かどうか、私はさらに究明をしていきたいと思うけれども、そういう点、これは政治の姿勢を正さないといけない。総理大臣以下政治の姿勢を正さないと、民主主義というものはあり得ない。  それからもう一つ私が結論的に要望して見解を聞きたいという点は、組織暴力の問題については警視庁その他が今日非常に努力をしておるということに国民は非常な期待を持っておると思うのです。お礼参りその他の問題等についても、警察側が取り締まりについて十分配意をしてくれるだろうということで、ようやく組織暴力の排除について言いたいことを発言をするような、そういう空気が民衆の中にあると思う。しかしながら、この公共賭博その他のことは、警察だけの取り締まりではできない、検察庁の取り締まりだけではできない。これは政府全体が、自治省も運輸省も大蔵省も、たとえば税金の面においても、あるいは地方興行その他の面においても、あるいは芸能運動に干渉するという意味ではないけれどもこれを助長していくというそういう側面的な面からにおいても、関係官庁が連絡をとってやらなければできない。国民に呼びかけるにしても、関係官庁が連絡をとってやらなければならない。政党も姿勢を正さなければならない。そういう面において、きわめてこれは次から次へとこの団体と加盟人員は、やはり幾ら取り締まりをいたしましても凶器と一緒に絶えないというふうな現象があるわけですから、そういう総合的な対策を立てて、関係官庁の連絡を密にして、そうしてこの問題に対決をする、これを根本的に根絶をしていく、そういう点についての十分の御留意をいただきたい。これをひとつ次官のほうから御答弁をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  60. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 法律秩序を維持し、社会悪を除くということは、これは政府全体の常に心がけております方針でもございますので、従来とも各省それぞれの役割りがございますから、表に出たところは警察庁、検察庁でありましても、全体的に政府諸機関歩調を合わせてこの非違の糾明、法律秩序の維持ということにはつとめてまいっておるわけでありますが、今後もそういう方針でまいりたい、かように考えております。
  61. 植木庚子郎

    ○植木主査 本日の総理府所管に対する質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  62. 植木庚子郎

    ○植木主査 次に、本日の午後の予定になっております裁判所及び法務省所管につきまして、これより直ちに議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。上林榮吉君。
  63. 上林山榮吉

    上林分科員 日本の行政は頭でっかちで、しり細りであると俗にいわれていますが、法務省所管で、私は、そうではなくして、末端に血の通う行政をやっていただいておるものに登記所があると思います。これは私はりっぱな制度だというふうに考えておるわけでございますが、とかく行政機構の改革、こう言いますれば、一番やりやすいところからやってしまって、やりにくいところはあと回しになる。言いかえますと、頭の大きいほうにはあまり手を触れないで、抵抗力の弱い、小さいところに手を触れてしまう。こういうことになりがちでありました。私はただいま党の行政機構調査会の副会長をやっていますが、各省のいろんな行政機構の改革の話を聞きますと、その印象をいまだに払拭することができないでおります。まことに残念でございます。幸いにして法務省所管にはいま申し上げた登記所がありますが、ここは、いまそこにすわっておられる植木元法務大臣、あるいは賀屋前法務大臣、いまの高橋法務大臣、それぞれ気を配っていただいておるようでございます。しかしながら事務当局のほうのいろんな処置を聞いてみますと、統廃合という名のもとに、いわゆる国民の不便を顧みずにこれを機械的に統廃合してしまおう、こういう考えがまだ残っておるようでございまいますので、これは私はまことに遺憾なことだと考えております。  従来の沿革を申し上げますというと、これはところによってはその市町村が土地も建物も法務省に寄付して、そうして地域住民の便利のために登記所をつくったわけであります。しかし、たとえば人員が一人であるから休暇がもらえない、こういうような理由でそうした沿革も顧みることなくして、これを機械的に統廃合するというような方針は、私は末端に血の通う行政をここで遮断してしまう結果とひとしいことになるのじゃないかというように考えて、従来からまことに遺憾に考えておりますが、どうなんですか、経廃合ということは。私は部分的にはわかるのです。たとえば交通が非常に発達をした、あるいはまた同じ行政区画の中に合併された、こういうような特殊の事情の分はわかるのですよ。しかし、取り扱い件数が少ないとか、あるいは人員が一人であるからとか、これによって統廃合するという理由には絶対ならないと思うのですが、この基本的な私の考え方に対して、私はまず事務当局の答弁を求めてから、政務次官の答弁を求めたいと思っておりますが、これをまずひとつ明確にお答え願いたいと思います。
  64. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 登記所の統廃合の問題につきまして、たいへん御心配をいただいておりますことを恐縮に存じます。数年来登記所の統廃合ということが行なわれてまいったわけでございますが、これにつきましては、ただいま上林山先生からお話のございましたような、単に一人庁であるとか、末端であるとかいうふうな形式的な理由だけでやってきたのではないのでございます。御承知と思いますけれども、登記所の事件というものが最近非常に増加いたしております。私ども努力が足りませんせいかもしれませんけれども予算とか人員というふうな面におきましても十分それにこたえるだけのことがあるいはできてない面もあろうかと思うのでございますが、しかし登記所の事件が増加いたします一方、辺地にございます小さな登記所では、人員も一人で事件もそれほど伸びない。むしろ一人当たりの負担量をはるかに割っておるというふうな庁も相当数あるわけであります。そういたしますと、片方において非常に忙しい登記所があります反面、一方において平均負担量にも満たないというふうな登記所が出てくるわけでございます。特に一人庁の場合におきましては、これは行政機構でございますので、一人の役人が庁舎に勤務するという形態をとること自体が実は問題があるわけでございまして、相互牽制の面から申しましても一人庁というのは必ずしも適当でない。さらに一人当たりの負担量あるいは予算の面を考えてみますと、そういった登記所につきましては、人員あるいは予算の効率的な運営という面から考えましてもかなりのむだがあるのではあるまいか、こういうことが考えられるわけであります。そこで、先ほどお話もございましたが、交通事情が非常に発達してきたとか、事件数がそれほど伸びないというふうな事情、そういったもろもろの事情を勘案いたしまして、実は統廃合というものを実施してまいったわけでございます。この統廃合を行なうにつきまして、ただ一人庁であるからあるいは事件数が少ないからというだけの理由で単純にやったわけではございません。なるべく登記所の事務量を均分化する、さらに組織を適正に配置しようというふうな配慮から、登記所の統廃合というものが行なわれてきた、こういう事情にございます。
  65. 上林山榮吉

    上林分科員 従来までの統廃合をやったことについては、私はこれ以上ここでむずかしく申し上げようとは思いませんけれども、これからもしいままでと同じような考えでやろうとするならば、私が先ほど申し上げたような趣旨において、末端に血の通うようなりっぱな行政をせっかく法務省がやってきたのに、いま民事局長答弁を聞くと、事務量の均分化をはかるために、いわゆる事務を一升ますで割り切ったようにしていくために、いわゆるこれはお役人がよく考え考え方です。また、あなた方の考え方と同じように、大蔵省もそういう考え方を持つのですね。しかしあなた方の場合は、これは少なくとも現業省といえばその意味においては現業省なんですね。一番事情をよく知っておる方々であるわけですが、その方々が役人特有のいわゆる平均的な考え方に重点を置くということは、私は末端に血の通う行政を阻害する思想だ、こういうふうに思うのです。大所高所からそうしたような大きな問題を考えなければならぬことはありますよ。しかしこの登記所に関する場合においては、そういうような考え方はどうも親切な血の通ったやり方ではないじゃないか、こう考えるのです。  そこで私が申し上げたいことは、この一人局、表面はあなた方は事務量の均分化というようなことをおっしゃいますが、表面上はそこの一人局の人が——主として一人局の場合ですが、休暇をとりたいけれども休暇がもらえない、こうしたような苦情が出たために、それなら一人区はできるだけ廃止しよう、あるいは二人区、三人区をつくろう、こういう方向に進まれたのではないかと私は思うのです。それは私は半分は賛成です。しかし残念ながら半分は実情に沿わないやり方だと思うのです。そこでこれの解決策を考えなければならぬ。解決策を考えるには、言うまでもなく定員の増ということが第一でございましょう。定員の増について、これをフルに配置できないとするならば、暫定的にどういう方法をとるかという前向きの検討をしなければならぬ。それは、たとえば一県に必ず法務局がありますから、その法務局にせめて数名のプールできる人員を置いて、かねてはそれぞれの仕事をしていますけれども、やむを得ず一人局の者が病気になったときにはそこに救援に行けるように、休暇をとるときには救援に行けるような方法をとることは、定員の増を有効に使う方法なんです。これでいまの状態においては解決できるのです。それから第二は、いま公務員は住宅難でしょう。公務員は住宅難だといっているのに、いま地方に行きますと市町村が得付して、あるいは寄付しないでも、法務省がちゃんと登記所も住宅をつくっておるのです。これを、まあ若い人はともかくとして、相当年配の人たちは、住宅難をあわせて解決するという意味においても存置することがいいことではありませんか。そういう意味から、この法務局に数名の人間をプールして使えるようにしておくという考えは持っていないかどうか。幸い、登記要件の増加に対処して事務処理を円滑適正化するために事務官八十名の増がありますね。これはどういうところに振り向けるのか知りませんが、こういうものを何名かずつ二、三年の間に全部これを全国的に配置するという方針を立てるならば、われわれ国会としてもおそらく皆さんこれに協力をされるであろうと私は思う。これが何千名とか何万名とかふやせというのであれば問題になりますけれども、そういう大幅の定員増ではないのでありますから、こういうことを親切に考えてやるべきものではないかと思いますが、この点はいかがでございますか。
  66. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 御説のように一人庁におきましては休暇も満足にとれない、さらに一人庁といえどもそれを存置していけば、最近の住宅事情の窮屈な面も乗り越えていけるというふうな面も確かにございます。ただこの統廃合を始めました当時の考え方としましては、休暇がとれないからということを理由にしてやったのではございません。それに関連しましていまお話しのような休暇がとれないというふうな問題が出てまいりましたので、その後におきまして、そういった出張所の所長さんが休暇のとれるように日直手当の措置をいたしたりなんかしたわけであります。そうかといって、ただ休暇だけの問題でこの統廃合を考えているという趣旨のものではないことは先ほど申し上げたとおりでございます。  それから増員の問題でございますが、確かに仰せのように、各県にございます法務局の本局に、ある程度の人員をプールいたしまして、まさかの場合にはそこから応援をするというふうなことも、まことにけっこうな構想だと思うのでございまして、私どももそういうことを実は考えたこともあるわけでございます。ただ遺憾ながら、現在の財政事情から申しまして、余裕のある人員を置くということは非常に困難でございます。今回の八十名の増員も、実は事件の増加に対処するために、それに追いつくために、何とか最小限度のものをという趣旨で、この八十名の増員が認められているわけでございまして、いまお話しのように、この人員をあるプール財源的に使うということができますれば、これは登記所としても非常にありがたいわけでございますけれども、まだそこまでは至っていない実情にございます。これらの点につきましては、なお私ども事務担当者といたしましても、今後できるだけの努力をいたしまして、登記所の増員措置をはかりたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、今後どうする考えかというふうなことでございますが、先ほど申し上げましたような事情で、登記所の統廃合を実施いたしてまいりました。これは一口に申しますれば、登記所の事務の能率化ということをねらってやったわけでございますが、その後いろいろ経済事情あるいは社会事情等にもかなりの変転がございます。ある地区におきましては、事件数が非常に少なかったのに、急激に膨脹してくるというところもございますし、また場所によりましては、逆に事件の減少していくというふうなところもだんだんと出てまいっております。そういう状況にございますために、従来のような考え方でこの統廃合というものを実施していいものかどうかということにつきましては、私どもも謙虚に反省してみなければならないと思っております。かたがた、昨年臨時行政調査会におきましては、一人庁を廃山してこれを統合すべきである、統合によって一人庁を廃止すべきであるというような、内閣総理大臣に対する答申が出されておるわけでございまして、実は私どもとしてはその板ばさみになっておるような状況にございます。さりとて、このままこの統廃合を強引に実施するということはいかがなものであろうかというふうに思い至りまして、今後法務省としましては、この統廃合をどういうふうに考えていくか、取り上げていくかということにつきまして、さらに反省したいと思いまして、一応この統廃合全般の問題について慎重な検討を加えたい。そのために現在各地で話し合いの進められております登記所の統廃合問題につきましては、この際はこれを見合わせるという措置を講じました。  ただ、先ほどもお話ございましたように、交通事情が著しく便利になった場合とか、あるいは事件数が極端に減った場合という場合もございますし、また市町村の合併の結果、同一市町村内に市町村役場が、これは出張所を含めまして二つも三つもあるというふうなところもございます。こういったところにつきましては、市町村自体において、そういった事務所を一ヵ所にまとめたいというふうなところもございます。登記所の場合には、市町村の事務所と比べますと、一般国民の利用度がはるかに少ないわけでございまして、もしも市町村のほうでそういうふうに事務所を一ヵ所に集めるということになりますれば、市町村側といたしましても、登記所が各地に散在することは好ましくない、ついては登記所を一ヵ所に統合してもらいたいというような意見も出るわけでございます。あるいはまた、市町村の理事者が容易に統合に賛同していただけるというような場合もございますので、そういった場合には、法務本省におきまして慎重に検討を加えてこれに対して善処したい、このような方針に最近いたしたわけでございます。
  67. 上林山榮吉

    上林分科員 この問題は、ただいまの御説明で幾らかわかったのでありますけれども、しかしまだ不徹底だと私は考えるのであります。というのは、これは法務省の都合もあったが、どちらかといえば地元の要望というものが強くて、そうして、ところによっては土地を寄付し、ところによっては建物を寄付してまで、その地域の人々の利便をはかろう、こういう趣旨だったのです。だからよほどの事情、よほどの大きな変化、そういうものがない限り、あるいは地元がもう登記所は要りません、あるいはあなたがいま御説明になったように、合併によって登記所は一ヵ所にするように地元ではまとまりましたから、そのつもりでよろしくお願いをいたします、こういうような場合は別ですけれども、ただ平均事務量が云々、一人区が云々ということでこれを廃止されることは私どもはとらざるところであります。ことに臨調のほうでそういう答申が出たのも、それはある意味においては意味がありましょう。しかし未端のこういうことを緻密にお考えになったのかどうか、単に役人と同じような気持ちで、あまり事情のわからぬ人たちが、そういう答申をされたのではないだろうかという、この問題に限っては私は非常に疑いを持っておる一人です。そういう意味合いでいまの答弁を聞きますと、今後は地元と相談なしにやらない、廃止しない。あるいはまた地元が積極的に存置を希望するならば、それに応ずる。——ことしきめたけれども来年はまたやるぞ、来年きめたけれどもまた再来年はやるぞという通牒を、あなたのところの所管の法務局長は、それぞれの各県に出して督励しているのですよ。それはまたあなた方が、法務省が、いろいろな会議においてできるだけ統廃合をやりなさい、特に一人区は廃止しろ、こういうことをおっしゃるからそういう通牒などが出るのですよ。だから国会答弁とあなた方の行政の実際の運行と非常に食い違うのですよ。これがいわゆる地方においては大きな迷惑をするのです。   〔主査退席、八木(徹)主査代理着席〕  だから私は国会に答弁されたならば、これがやはり末端に届くようにしゃんとしてもらわなければならぬと思うのです。私どもはたとえば吹上の登記所とかあるいは喜入の登記所とかいう問題はもうよく知っておりますよ。これなどは土地も建物も寄付したのです。あるいはまた新しく建物も土地も寄付しようとするところもあるわけですよ。寄付しているのです。計算によりますと新しいところに移っていってしまうということになれば、やはり何百万か町村の住民の経費がかかるのですね。こういうことを考えて問題のあるものについては、ひとつ大臣にかわって政務次官、あなたもこの問題に非常に御理解を願っておる方の一人でございますが、ひとつこの際方針を、——いままではやむを得なかった。いままで五年間やったのでしょう、いままではやむを得なかった。しかしこれからはひとつ実情に応じたような、そして形式に流れぬように、地元が要望するならばことしはやめてまた来年回しにするかという、そういうことじゃなしに、相当長い期間安心して住民たちが利用できるようにしてもらいたい。そしてもしこれが解決が人員の関係でできないというならば、これは人員の要請は政府も国会もみなが協力して努力すべきだと思います。これは第一でありますが、政務次官、第二は、地方によっては役場が、嘱託をしてくれるなら一人くらいは人を出してもいいと言っておるのですよ。前向きですよ。いかに必要があるかということはこの一事でもわかるでしょう。土地は出す、建物は出す、人が足らないというのなら、嘱託くらいしてもらうならば一人くらい加勢やってもいいのですというところまであるわけですね。これはよほど地元が登記所の存置ということを要望しておる証拠ですね。私は形式論に流れない、もっとぴんとくるような御答弁をひとつ願っておきたいと思います。
  68. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 だんだん伺いました。国の行政目的は、しょせん国の健全な発展と国民の生活の向上、福祉の向上にあると思うのでございます。したがいまして、その行政は末端においては、上林山先生のお話しのとおり、血の通ったものにならなければならない、これは私どもも御同感でございます。  そこで、法務省関係の登記所の問題をお取り上げになったわけでございますが、登記所については、ただいま民事局長からもるる御答弁申し上げましたように、非常に僻遠の交通不便の地にあるとか、そこに一人か二人の役人がおりて事務をとっているとかいうことのためにいろいろの支障もあったようなことで、従来はこれらを整理統合して、そして官庁らしき官庁をつくって事務の能率もあげ、国民の利便もはかろうということで、整理統合を進めてまいっておったようなことでございます。しかしながら、考えますると、ただいま大前提にお話しになりましたように、末端に血の通う行政でなければならぬ、これは私どもも同感でございます。特に登記所のごとき国民の権利に非常に深い関係を持っている大事な仕事をあずかっているところにおきましては、これは申さば国民に対するサービスの機関でございますから、国民に対するサービスの機関ということになりますれば、国民の利便のことをまず第一に考えなければならぬ、かように私どもも思うわけでございます。高橋法務大臣はその点に非常に配慮をされまして、いま上林山先生のお話しになったような趣旨で、今後も登記所の存置問題を取り扱っていこうということに方針をきめられまして、今年初頭、ただいま民事局長が御答弁申し上げましたように、いままでの方針と違ったことになるわけでございますけれども、登記所の整理統合ということは取りやめる、地元において希望をするもの、あるいは何人から見てもこれは整理統合するのが当然だと思われるもの以外は整理統合はしない。そして、かえって国民の利便を増すように、一人区に対しては人をふやすとか、あるいはただいま御示唆になりましたような、法務局にある程度の人員をプールして応援をするとかいう措置をとるべきでございましょうが、むしろ一人区、二人区というような手の届きかねるようなところは人員を増加して、手の届くような措置を講ずるようにいたしたい。これを少なくも十年計画で完成していきたい、こういうことで三十九年度予算において二百人増員したばかりでございましたが、四十年度予算においてもさらに八十人ほど増員をいたしまして、この方針を今後も続けてまいりまして、国民のサービス機関としての機能を十全に発揮し得るように、そしてそれが血の通った行政となっていくようにいたそう、こういうことにいたしたわけでございます。  でございますから、ただいま重ねてお尋ねになりましたような御心配は、今後ないものと御承知おきを願いたいと存じます。
  69. 上林山榮吉

    上林分科員 ただいま高橋法務大臣にかわって大坪政務次官から明確な将来の方針をお聞きいたしまして、私はもちろんのことでございますが、関係住民は安心していることだろうと思います。どうかこれを裏切ることがないように、国会答弁と違った方向に進まないように私は特に要望をいたしたいと思います。例外の例外だというような場合は別でございますけれども、大体において増員をしていくという方針機能を発揮していく、こういう意味に私は拝聴いたしましたので、これをもって質疑を終わりたいと思います。
  70. 八木徹雄

    八木(徹)主査代理 横山利秋君。
  71. 横山利秋

    横山分科員 最近精神病患者の犯罪が激増しておる模様でありますが、これは春先になると通常出てくるものだと一般にはいわれておりますが、それにしてもあまりにも多いのであります。取り上げました幾多の新聞を簡単に列挙しますと、これは本月の二十二日、東京港区の都営アパートで強度のノイローゼにかかった元自動車運転手の夫が妻を刺殺する事件が起きた、それから岩国では異常性格の大工がアベックを刺して列車妨害をはかった、十五日には名古屋で猟銃を乱射して列車爆破をたくらんだ、また愛知県では金づちを振り回して八人に重軽傷を負わせた。まさに日ごと夜ごとの新聞を見ますと、精神病患者ないしはそれに疑わしき者の犯罪というものは全く激増しておるような状況を私は感じます。  今般本国会に厚生省から精神衛生法の一部改正に関する法律案が出ましたことは時宜に適すると私は思うのでありますが、それに関連いたしまして厚生省並びに法務省にいささか伺いたいのであります。  第一に、今日全日本において精神病者と一応指定をせられる者は、収容中の者、また自家療養をしておる者、その他の者等一体どのくらい存在をしておるのか、一説には十万人といわれるのであるが、詳細な数字をまず承りたいのであります。
  72. 松下廉蔵

    ○松下説明員 現在精神障害者につきましては、一々の届け出、登録等はございませんので正確に把握した数ではございませんが、昭和三十八年度におきまして全国的に抽出調査をいたしまして、それに基づいて精神障害者の数を推定をいたしております。その数といたしまして私どもが大体考えております数は、総数といたしまして百二十四万人、これは一応精神障害という定義に入る者全部をあげております。そのうちで狭義の精神病に入ります者が五十七万人、それから精神薄弱、これは特に重症の者だけを取り上げておりますが、これが四十万人、その他、これは強度のノイローゼ等でございますが、二十七万人、一応そういうふうに推定をいたしております。
  73. 横山利秋

    横山分科員 全く驚くべき数字で、私に何ともならぬ数字として最低線の十万をあげた人があるのでありますが、あなたのほうのお話によれば、まさに一けた違って、百二十四万の精神障害者がある、これはノイローゼその他をも含めた数でありますから、それを直ちにどうこうしなければならないと必ずしも思わないのでありますが、私の聞いたように直ちに何とかしなければならないと推定される者は一体どのくらいだと推定されますか。
  74. 松下廉蔵

    ○松下説明員 直ちに処置を要するとおっしゃる意味が、もし医療上直ちに入院治療を要するという意味で申し上げますと、一応推定いたしておりますのが二十八万人程度でございます。ただ、いま御指摘のような、特に私どものほうで略称で自傷他害と言っておりますが、自分を傷つけ、あるいは他人に害を及ぼすおそれがあるという者の数になってまいりますと、入院治療を要する者のうちでも数はだいぶ少なくなってくるであろうと思います。ただ実態調査でそこまでの数を推計することが実はできませんでしたので、正確な数につきましては、申しわけないのですが、いまのところちょっと手元に数字がございません。この中の相当、ある部分がそういった対象になるということになろうかということになろうかと思います。
  75. 横山利秋

    横山分科員 二十八万人の中で、少なくとも隔離を要し、あるいはまたみずからを傷つけ他を傷つける可能性のある者がかりに半分といたしましても十四万、私の推定をいたしました数字に近寄ってくるわけでありますが、精神病患者というものはもちろん自覚してないのでありますから、犯罪意識というものがない。先ほど大原君が暴力団を指摘しておりましたが、暴力団というものは意識がある。そして暴力をもって目的を達せようとしておる人たちである。この精神病患者は目的がない。しかしながら常にみずからを傷つけ他を傷つけるおそれのある人たちが十万人ある。その十万人をどういうふうにわれわれは本人を守り、かつ国民を守るかということは、まさに暴力団犯罪にも匹敵するような大事なことだと私は思うのであります。かつてライシャワー大使を傷つけた若い青年もそのおそれのある人間であって、十分な隔離ができなかった。当時われわれは国会におきまして、ライシャワー大使に対する問題について取り上げまして精神病患者措置について政府に迫ったのでありますが、今回政府がこれを取り上げて、精神衛生関係予算を厚生省において充実し、また法律案を提出せられたのは非常に時宜に適したものだと思う。ただしかし、私は厚生省のその関係予算を取り上げてみますと、たとえば措置入院では、三十九年度で五万八千人、四十年度で六万三千人、五千人を措置患者として増員するということが骨幹になっておる。あなたと私との数字についての議論と非常にかけ離れておるけれども、これはどういうふうにお考えなのか。厚生省としては病人をなおすという立場が主だと思うのですが、私が法務大臣及び法務省の諸君の前でただしたいのは、これによって犯罪を防止したいという立場から言うのであります。この予算及び今度出ました法律案をもってしてそれが可能であるかどうかという点について、厚生省の御意見を伺いたい。
  76. 松下廉蔵

    ○松下説明員 措置入院の予算的な数につきましては、ただいま御指摘のとおりでございます。全国的にいわゆる措置の対象になると申しますか、何らかの意味で害を及ぼすおそれのある者が十万程度はいるであろうという御推定でございますが、私どももあるいはその程度おるのではなかろうかと思います。これは先ほど申し上げましたように、まだ学問的な資料がはっきりいたしませんので、断言はいたしかねますが、現在ございます病床数が、三十九年六月末現在におきまして十四万四千八百床でございます。それに対しまして、現在入院しております数が十六万四千八百人、一〇九%程度の過剰収容で、いま病床の不足が一つのネックになっております。措置入院の要件といたしましては、直ちに入院させなければその精神障害のために自己または他人を傷つけるおそれがある、自傷他害のおそれがあるという者を対象にいたしておりますので、保護義務者の同意による入院、あるいは自分である程度意識を持っておりまして、ときどき危険があるからというので自発的に入院した者、そういった者に対しましては、原則的には措置入院の措置をとりませんで、むしろいわゆる野放しになっておるといいますか、在宅の者につきまして重点的に措置をとるようにいたしております。御指摘のような危険性のある者につきましては、保護義務者のある者等につきましては、いま申し上げました十六万人の中で相当の数が自発的な入院をもってまかなわれておりますので、非常に危険性の強い者につきまして、なお自分では入院できないような者について優先的に措置入院の措置をとることによりまして、ある程度のカバーは可能かと考えております。ただもちろん、御指摘のように厚生省の立場といたしまして、また国の立場といたしましても、これは危険性があると同時に、やはり気の毒な患者でございますので、治療するということも同様に本人の人権のために考えなければなりませんことで、そのために病床の増加ということもあわせて推進いたしたいということで、補助金あるいは国立療養所の増床、その他によりまして精神病床の数をふやすということも並行いたしまして進めて、できるだけ早く十分な収容ができるようにいたしたい、そういう方針で施策を進めております。
  77. 横山利秋

    横山分科員 ところが現にここ数日来の新聞を見ても、東西で、列車に爆薬をしかけた男、爆発をしていたら車内ほとんどの乗客が負傷するのは確実であったという記事。それから妻を刺殺して逃げた男は「白タクの運転手などをしていたが、ノイローゼ気味でぶらぶらしていた。付近でも有名な変わり者で、アパートの裏庭に小石を積んで変な形の石塔をつくったり、自宅の出窓やアパートの石垣に電線を張りめぐらし「おれの悪口を言うやつはこれで感電死する」と言いふらし、」という男。それから、アベック刺しの列車妨害は「内向性が強く「アベックを見ると無性に腹が立つ」という異常さを自供している。毎晩のように郊外を自転車や徒歩で歩き回っておりこれら殺人や殺人未遂事件はいずれも縁もゆかりもない人をねらい、いわゆる無動機の犯行だった。」こういう人たちがこの社会に一ぱいおるわけですね。あなたの言うようにベッド数がふえるといったところで、とうていこれでは追いつかないではないかという感じが濃厚にするわけです。刑事局長にちょっと聞きたいのですが、これは犯意ない犯行というわけで、一体結果としてはどうなりますか。
  78. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 刑事局長来るまで、私のほうで数字を若干握っておりますので、御説明申し上げたいと思います。  横山先先のお尋ねは法律的な問題でございますが、御承知のように、刑法では、いわゆる心神喪失者の行為はこれを処罰しないということになっているわけでございます。法務省のほうといたしましては、もちろん、犯罪を犯して検察庁に送られてくる者の中に、完全に心神喪失であるということが捜査の過程において判明する者がございますが、これは、刑法によりまして、起訴いたしましても、無罪ということになりますので、早い段階で、すなわち検察庁の段階で厚生省関係の病院に送り込むことになるわけでございます。ところが、心神喪失には至らない、また、いささか精神に障害はあるけれども免責を受けない、こういった者は、非常に再犯のおそれがあるわけでありますので、そういった者をいかに適正に法務省の関係で処理していくかということが問題なのでございます。  御参考までに申し上げますと、検察庁関係では、いわゆる精神異常、それから精神薄弱、性格異常、それからめいてい、心神喪失、麻薬中毒、覚せい剤中毒等にかかっている者につきましては、十分な配慮をする必要があるということで、統計的に一応見てみますと、全国の検察庁が受理しております犯罪者のうち、いわゆる心神喪失にはいかないが、精神に異常があって非常に危険だと思われる受理の人員が、昭和三十六年度が二万九千七百三十八名、昭和三十七年が二万九千七百五十二名、昭和三十八年が三万一千四百五十二名と、このように増加をいたしております。ところで、一方、検察庁で処理をいたしまして刑務所、少年院等に収容されてくる者、その中での精神異常のある者の数を一応調査いたしてみたわけでございますが、昭和三十六年に調査の総数が六万四千七百七十七名でございまして、これはほとんど矯正施設の全収容人員に近い数だと思っておりますが、そのうち精神異常者という数が一万六百七十四名、パーセンテージにいたしまして二〇%でございます。昭和三十七年が、調査総数が六万一千九百八十四名、うち精神異常者が九千七百四十六名、一五%、三十八年が、六万一千九十六名に対しまして八千八百二十三名、一四%、こういう数字になっているわけでございます。  そこで、法務省といたしましては、検察庁に受理した段階で的確に精神に異常があるかないかということをできるだけ早い機会に調査をしてめどをつけて、その段階で適切に処理できるものは、関係省庁のほうと十分な連絡をとって、そごのないようにする、そうしてふるい分けたうちで刑務所、少年院等に収容されてくる者については、矯正施設の中において適正な処理をしていきたい。さらに、刑務所、少年院等を仮退院、仮出獄等で退所した者につきましては、保護関係の機関と緊密な連絡をとってこの種精神障害者の再犯を予防していく。こういう対策で予算その他の措置を講じているような次第でございます。
  79. 横山利秋

    横山分科員 百二十四万の精神障害者が全日本におって、ずっとしぼっていくと、少なくとも三万人くらいは何とか隔離をしなければならぬという数字があるというお話のようであります。私は、厚生省の精神衛生法の一部を改正する法律案要綱をずっと拝見し、かつ予算を見てみましたが、厚生省関係においてこの精神衛生費を見ますと、三十九年度予算額百三十五億、四十年度が百六十三億、三十億の増加になっておる。この厚生省関係に対応して、これらの精神病患者を犯罪のおそれがあるとして法務省がどのように対処するかという点を調べてみましたら、法務省関係では、精神障害犯罪者対策として、三十九年度が千七百万円、四十年度が二千四百万円、増加いたしましたのがわずかに七百万円。その内訳を見ますと、検察体制の充実として、三十九年度はゼロ、四十年度は五百万円の増加です。それから矯正施設収容者適正処遇の充実が、三十九年度が千七百万円、四十年度が千九百万円、増加いたしましたのが二百万円。厚生省は精神衛生費として百三十五億から百六十三億に三十億増加しておる。あなたのほうは七百万円増加しておるわけです。どこをさがしてみても七百万円しかないわけです。いまの話でいばった話をなさって、万全を期しておるようなお話をなさるけれども、七百万円の増加で、この精神病者の検察体制の充実とか、矯正施設収容者適正処遇の充実とか、ちゃんちゃらおかしいと私は思う。あなたは七百万円の増加でできると言うなら、いまの刑務所はどうなるんだ、少年院はどうなるんだ、保護司の打ち合わせはどうなるんだ、ずっとひとつ御説明を願いたい。
  80. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 お答え申し上げます。  精神病者が非常に多くふえつつあるということ、それが、精神病者もそうでございますけれども、いわゆる病者と定義されるに至らない精神障害者が非常に大きく隠れた数字を持っておる。それがときどき表に出てきて凶悪なる犯罪行為を行なうというようなことに対する横山先生の御心配は、私どもも非常に同感でございまして、心配をいたしておるようなことでございます。ただ、御承知のとおりに、精神障害者というものは、平常状態ではなかなか平常人との見分けがつかないい、区別がつかない状態でございまして、これが思わざるときに思わざる方向で犯罪行為を犯すということになるわけでございます。法務省といたしましては、精神障害者の、まだ犯罪行為を犯すに至らない、そういう非行性があらわれない状態のものを突きとめるということはなかなか困難でございまして、法務省としてはそういうことの力はないわけでございます。これが犯罪行為を敢行するに至りまして初めて警察、検察の手にかかり、それの事後の措置として、少年院に収容したりあるいは病院に収容せしめたりというような措置を講ずるわけでございます。したがいまして、精神病者及び精神障害者の非行、犯罪ということに対して万全の措置を講ずるといたしましても、法務省関係のところにおいて処置する事柄は、厚生省でいたしますほどのことはないのでございまして、これらに対する措置は、現在あります全国の検察庁、保護観察所、少年院等あげて従来の方針によってこれを一そう深めていくわけでございます。したがいまして、予算の面において金額が十分でないから対策が十分でないというようには言えないのではないか。ごくわずかの金額でございますけれども、その金額をもって問題に取り組んでおります検察官あるいは少年院の職員、保護観察所の職員を激励してやっていくということが現状であるわけでございます。そのとおりひとつ御承知を願いたいと思います。
  81. 横山利秋

    横山分科員 ごくわずかの金といっても限界がありますよ。精神障害犯罪者対策が全予算の中で二千四百万円ですよ。増加したのは七百万円だ。あなたは現状でやると言うけれども、あなたは非常な認識不足だと思う。  それじゃ、あなたに逆に説明しますが、昭和三十九年度版の犯罪白書によりますと、受刑者が、三十九年十二月現在で五万二千二百五十三人、その中で精神障害は六千七百九十八人、一三%。受刑者の中で一三%が精神障害者だ。その六千七百九十八人の中で、医療刑務所に収容されている者はわずかに六百五十二人ですよ。こういうような医療刑務所のことについてはあなたもおそらく御存じだと思うけれども、十分に収容し切れない。この精神障害者受刑者の六千七百九十八人が十分に完治をしないうちにまた社会に出て行くわけです。社会に行ったら今度はどうなるか。社会に行ったら、いま法務省傘下の愛慈会という一つの精神病院がある。法務省傘下のたった一つの愛慈会という精神病院、その気違いを収容しておる気違い病院で、理事者が気違いのようにけんかになって裁判をやっていることは、御存じのとおりだ。まさにその意味においては法務省の精神障害者対策というものはゼロじゃないかと私は言いたい。厚生省は——あなたは課長さんですか。実は課長さんに来てもらおうとは夢にも思わなかったものだから、あなたに答弁を求めるのは無理かもしれぬけれども、厚生省として法務省に精神衛生法上求めるべきことはどんなことがあるか。精神衛現法の一部を改正する法律案を立法化した際に私も拝見しておるのですが、保護観察所の長の責任を明記してある。その他、刑を犯すおそれのある者、刑を犯した者が収容され、そして刑務所に入る、刑務所から出た者がまた社会に出る、そういう法務省関係の問題を抜きにしてこの精神衛生法の一部改正法案は議論できないわけですね。なぜこれを議論するかというと、みずからを殺傷し、人を殺傷するおそれがあるから、社会が心配しているわけなんです。それを担当するのが法務省でしょう。したがって、これを立法するに際して一体法務省と十分連絡をとったのか、司法行政に何を求めるのか、それについて議論をされた経過をひとつ承りたい。
  82. 松下廉蔵

    ○松下説明員 いま御審議願っております今度の精神衛生法の一部改正につきましては、数年来厚生省として検討しておったものでございますが、特に昨年の春先ほど御指摘のライシャワー大使に対する暴行事件等が契機になりまして社会的にも非常に大きな問題になり、厚生大臣の諮問機関であります精神衛生審議会に対して精神衛生法の改正に関する諮問を申し上げまして、七月に予算関係の中間答申をいただき、本年の一月十四日に一応の法律改正に対する最終的な御答申をいただきまして、それに基づいて関係方面と折衝し、法律案にしたわけでございますが、その精神衛生審議会の委員といたしまして、法務省から人権擁護局長に御参加をいただきまして、三十回近い回数を十分御審議いただきました。その内容といたしましては、したがって、私どもから法務省にお願いいたしたい事項、あるいわ法務省として厚生省にお望みになります事項、まず十分審議を尽くしていただきたいというふうに考えております。  なお、法案作成の段階におきましても、法務省とは条文のこまかい点に至りますまで十分連絡をとりまして法案をつくっておりまして、攻正の内容のうちで法務省に関連のあります事項を申し上げますと、ただいま御指摘の、特に措置入院は、本人の人権の保護という問題がからんでおります関係で、御承知のように、一般からの鑑定の申請または関係官庁からの通報に基づいて鑑定医に鑑定させ、鑑定医の意見が二名以上一致して、入院を必要とする、自傷疑いのために入院を必要とすると判断した場合に初めて措置入院をいたすたてまえとなっております。その前提となります申請、通報の面で、広い意味で法務省関係、警察庁も含めて申し上げますと、まず第二十四条によって、警察官の通報によりまして、従来は警職法第三条の要件で保護した場合だけが通報の対象になっておりましたが、それを広く警察官の職務執行に伴って通報の対象にするようにいたしました。それから検察官の通報につきまして、従来は、不起訴処分が決定し、あるいは刑が確定した場合に限って通報の義務があったわけでございますが、それを、それ以外の場合でも、検察官の判断によりまして、この法律によることが必要と認められたような場合には通報が行なわれることになっております。それからもう一つ、先ほど御指摘の、保護観察所の長に通報の義務を課した。これも保護観察中の者が六万何がしと伺っております。こういった者の中で、先ほどから先生いろいろ御指摘のように、精神障害の者も当然あることが考えられますので、そういった者に対して通報していただく、そういった一連の措置によりまして法務省関係との連絡を密にいたしますと同時に、また、入院をさせます場合にも、従来の法律は厳格に申請、通報の場合のみに限って認めておったのでございますが、最近の事例のように、突如として狂暴性を発揮するというようなケースもございまして、緊急に入院をさせる必要のある場合もございますので、特に入院をさせる必要がある場合には、申請、通報によらない場合でも、また入院手続におきましても簡略化いたしまして、とりあえず本人を病院に入れて治療の対象にするというようなこともなし得るように法律案を作成いたしまして御審議を願っておる次第でございます。
  83. 横山利秋

    横山分科員 大臣いらっしゃって、いまのお話のアウトラインをお聞きになっておると思うのですが、私が列挙しましたのは、最近一週間における異常性格の殺人、それから列車に爆薬をしかけた者、アベックを殺した者、妻を刺殺して逃げた者、全部日ごろ異常な行動があった。いま承りますと、百二十四万の精神異常者が日本におる。そこで私が詰めていった話は、厚生省は、精神衛生費に百三十三億を百六十三億、合計三十億の増加をした。それで精神衛生法の一部改正を今国会に提出しておる。それに対応する法務省は、精神障害犯罪者対策として昨年千七百万円、本年二千四百万円、七百万円の増加をした。検察体制の充実では、そのうち五百万円の増加をしておる。私が指摘をしたいのは、たとえば、いま受刑者が、五万二千人、その中で精神障害者は六千七百人、その中で医療刑務所に収容されているものが六百五十二人、白書に出ておる。医療刑務所のベッドが足らないといわれておる。それから、刑余者で病院に収容されておる——問題になっておる愛慈会ですね。法務省傘下の一つの精神病院である。その気違いを収容しておる病院で、理事者が、気違いのように裁判ざたのけんかをしておる。そうして患者は減るばかりである。いまお話の出た保護司及び保護観察所の責任がここに書いてあるけれども、それは先般法務委員会で私が指摘したとおり、地区の保護司連絡会議は国家補助は一文もない。みんな自分が銭を出し合ってやっておる。そこで新たに気違いのめんどうを見てやれ、こういう条項が加わっておる。検察事務についても新たに任務が加わる。けれども、それに対して全国で五百万円。先般私は鑑別所を見に行った。鑑別所や少年院の施設というものはまことにお粗末であって、ああいうところに入れたほうがいいのか悪いのか、裁判官が迷っておる。入れたら、かえってネリカン帰りだといわれる、雰囲気が悪いから、送るのがほんとうだけれども、まあやめておこうか。そうして保護司の保護観察にまかせるという雰囲気がある。そう考えてみますと、この法務省の精神障害者対策というものは、全然ではないが、一方では厚生省か——私は厚生省のこの予算や施策も十分だとは思わないけれども、それにしても、法務省との打ち合わせを三十回やったというけれども、法務省側における対策は全然ゼロではないか。何も、予算がふえなければできぬとは私は言わぬ。けれども、これは五百万ではあまりにもひどいじゃないか。一体法務省側としてはどういう相談をしておるのだと痛感される。あなたがいらっしゃる前に、わが党の大原委員が暴力団対策を議論した。暴力団対策はまさに天の声である。けれども、暴力団は意識して人を殺そう、目的をもって人に殺傷を加えようとしておる。しかしこの人たちは、いわば目的がない、だから無罪になるわけです。犯行しても無罪になる。無罪になるけれども、ほうっておけないということなんです。法務省の本問題に対する熱意は全く皆無ではないかと私は思う。どうですか。
  84. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 お答えいたします。  御指摘のとおり、最近また精神病者による犯罪が目立っております。これは最近ではございません。常に起こっておることで、最近ことにまた目立っておる。私は就任以来、この精神病あるいは精神薄弱者対策につきまして、法務省としても重点事項としていろいろ検討するようにということでやってまいった。今回とっております予算は、これは特殊のものでございまして、御指摘のように、検察陣あるいは更生保護のほうの関係なんかは予算が非常に少ない。ことに法務省としまして、これは厚生省なんかの分野のベッドをふやすとか、いろいろありますが、あるいは警察のほうで常時そうしたものをでき得る限り観察をしてもらうということもありますけれども、法務省自体としましては、犯罪を過去において犯した精神病者について常にこれを指導、観察するという、このことが一つの大切な仕事だと思うのです。それについては、やはりそうした委員たち、更生保護の人々の予算をふやしますということで今年もずいぶん努力をいたしましたが、わずか月額八十円という増加にとどまった、これは残念でございますが、近年逐次ふやしてまいった。しかし、こういうことでは実際いけないということで——金だけでこの人々が動いていくわけではございませんけれども、とにかくこうした人々に動くだけの報酬といいますか、報酬でなしに、経費というものを今後獲得していかなければならぬということを考えております。  また、対策方面では、いわゆる保安処分という問題が必要になってまいりますので、これはいま刑法関係の、例の法制審議会の刑法小委員会で検討をずっと続けております。大体成案を得ております。これを別に切り離していま提案ができるか、あるいは刑法小委員会のほかの結論と合わして次の国会に出すかという、タイムの問題についていま判断をいたしておる最中で、要するに、刑法小委員会の審議の進捗状況というものとにらみ合わしておるようなわけであります。  御指措のように、重要な施策につきます予算が非常に少ないことは残念でございます。今後十分に心してまいりたいと考えます。
  85. 横山利秋

    横山分科員 大臣、今後十分に注意するとかなんとかいっても、いま数万人の犯罪を犯すおそれのある精神異常者が、われわれのちまたの中に一ぱいおるのですよ。それに、私は十分だとは言わないけれども、厚生省の精神衛生の予算をずっと見ますと、微に入り細をうがって、打ち合わせ会費だとか、あるいは優性手術の問題だとか、あらゆる点に気を配ってこの精神異常者に対する厚生省としての立場をとっているわけですね。それが三十回もあなたのほうから担当者が参加して議論をして、法務省関係として精神障害犯罪者対策として七百万円増加をした、それで、あなたがどんなにここでいばっても、法務省として今日の話題の中心となっておるこれらの問題について対処できる、銭の問題でないと言い切れますか。私は法務省の本問題についての熱意を疑うのです。一体ほんとうに省議をもってこの精神異常者対策ということについて議論をしたかどうか疑っているのです。ことばの問題じゃない。きょうもきのうもこういうふうに狂った犯罪が続出しておるときに、法務省だけが超然としておるのではあるまいかという感じがする。法務省は犯行を犯した人間を収容してやればいいとお考えならば、この犯罪白書の中に、六千七百名もおる精神障害者の中で、医療刑務所は六百五十二人しか収容していない。しかし、この六百五十二人というのは精神異常者ばかりじゃないですよ。腹の悪いの、外科の手術したの、そういう者も入っているでしょう。そうしたら、いま全国の刑務所の中で精神異常者が一ばい散らばっているということじゃないですか。それの収容治療ができないということを意味しているじゃないですか。刑務所から出た人間はどこへ行くか。刑務所から出た精神異常者は、あなたのほうの御自慢の愛慈会へ行ったら、今度はそこの理事者が気違いのようになってお家騒動をやっておるという始末だ。だから、そのどちらの点から考えても、法務省の精神異者対策というものはゼロじゃないか。少しお考え直しをなさる必要がありはせぬか、御忠告申し上げているのです。
  86. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 先ほど申し上げましたのは、保護司の経費が非常に少ない、しかし、この保護司の方々は経費だけで動いていただいておるのではなしに、ありがたいことに、非常にこうした面についての関心を持ってやっていただいておることは感謝しておるが、しかし、実費にも当たらない、あまりに少な過ぎるのであるから、これが増額を続けていきたいということを申し上げておる。精神病者で犯罪を犯した経歴を持つ人で病院に収容しておる人も、現在二百数十名ございますが、一般の社会へ出ている人が相当数あるわけで、これにつきまして十分ひとつ保護司のほうでこれを常に観察をしていくということが法務省としては必要だということ……「一文も出さずにね」と呼ぶ者あり)これは金は出しております。金は出しておりますが、わずかしか出しておらぬ。先ほど申し上げたとおりです。それで、私といたしましては、就任以来、先ほど言いましたように、これが対策についていろいろ法務省としてやるべき仕事について指示を与えてまいっております。そしていま一番問題になりますのは、人権問題が伴う関係があって、保安処分をぜひやりたい、これをやりませんと、そう長く精神病院へ収容しておくわけにもいかないということでありますし、人権問題もありますから、やりたいということでかかっております。なお、実は昨日、事務次官、関係者を集めまして、私より特に、なお一つうこの問題について力を入れて、くふうをこらし、スピードを出すようにということについて、大臣として指示を与えております。
  87. 八木徹雄

    八木(徹)主査代理 横山君に申し上げます。お約束の時間が過ぎておりますから、なるべく簡明にひとつ……。
  88. 横山利秋

    横山分科員 私は、この精神病患者対策として法務省の措置について何ぼ質問しても足りないと思うのです。これは法務省としてよくお考え直しを願わなければだめな問題だ。各省の精神病対策、厚生省が主力におなりになるにしても、それを裏打ちすべき関係各省の熱意の不足によっては、こういうことは絶え間のないことだと痛感されるわけであります。特にこれは大臣に御記憶を願いたいと思う。  時間がございませんから、あと一、二お伺いしたいのでありますが、この精神衛生法の一部を改正する法律案要綱によりますと、今日までありました保護拘束制度——あぶないから拘束していくという保護拘束制度を廃止なさるわけですね。そして緊急の場合の入院措置として、四十八時間を限って入院をさせる。この文面だけ見ますと、人権問題ももちろんありますけれども、精神病患者の保護拘束を廃止して、四十八時間だけ入院措置をさせるということの——私の考えに誤りがあればいいのですけれども、危険性を考えるのでありますが、厚生省はどういうお考えですか。保護拘束制度を廃止した理由です。
  89. 松下廉蔵

    ○松下説明員 保護拘束制度と申しますと、これは先生御承知のように、いわゆる昔の座敷牢式なものでございまして、病院、診療所等の医療機関でないところ、主として個人の自宅でございます。実際上は、蔵座敷とかなんとかいうかっこうで、非常に人権侵害のおそれの強いものでございまして、しかもこれは都道府県知事の許可制度になっておりますが、最近数年間において一件も事例がございません。そういうことで、やはり人権を守らなければならないというたてまえで保護拘束制度を廃止いたしたわけでございます。  なお、緊急入院制度四十八時間と申しますのは、これは大体において緊急入院が行なわれるような精神病院は、精神衛生鑑定医が一人はおるであろう、そういう精神衛生鑑定医と知事との電話連絡によりまして、知事の措置として、とりあえず、あばれておる者にたとえば鎮静剤を飲ませるとか注射をするとかいうような緊急の措置をいたしますために、四十八時間で切っておりまして、先ほど申し上げましたように、措置入院は、同時に人権の非常に重大な拘束を伴うものでありますので、その四十八時間の間に、緊急にこの精神衛生法の二十七条から二十九条までに基づきます成規の手続をとりまして、必要な者については正規の措置入院に切りかえるという、いわばつなぎの時間というふうな意味で、四十八時間で切って人権保護との調整をはかっておるわけでございます。
  90. 横山利秋

    横山分科員 もう一つあなたに伺いたいのですが精神衛生法の第八条の中で、「「又は指定市」を削る。」この改正がありますが、これは精神衛生法で「都道府県又は指定市」とある、その「指定市」を削除なさるということですね。だから、府県に統一をされるというわけですね。このことについては、過ぐる数年前に府県と指定都市との間に大騒動があって、十六項目の権限委譲が行なわれた中にたしか入っておるのじゃないですか。その指定市を剤るということは、指定都市側の十分な了解が得られておりますか。私は、本問題については、かつて、指定都市と関係のものとして、非帯な大騒動をいたしまして、指定都市における問題を議論したことがございますので、これは一体なぜ削らなければならぬのか、指定市はこの点について了解をほんとうにしておるのかどうか、念のために伺っておきます。
  91. 松下廉蔵

    ○松下説明員 御指摘ごもっともでございますが、この法律は、指定市ということばの使い方でちょっと特殊な用語例を用いておりまして、ここの第八条でいっております「指定市」と申しますのは、現行法の第七条で書いております「保健所法第一条の規定に基く政令で定める市」で、所を持っておる市全部を指定市といっておりまして、地方自治法でいっておりますいわゆる六大都市ではないのでございます。  それで、ここを削っておりますのは、現在、精神衛生相談所というものが、原則的には——一、二精神病院に付設されておるものがございますが、ほとんど実態といたしまして保健所に併設するというかっこうで、実際上は保健所の仕事一体となりまして、精神障害者の訪問指導等を担当いたしております。今度置きます精神衛生センターは、そういうものとは別に、独立の建物を持ち、職員を持ちまして、国庫補助をつけまして、非常に高度の精神衛生面の指導あるいは、相談、あるいは調査研究等を行なう機関でございますので、まず各都道府県に置くということで、これは権能規定でございまして、置くことができるというたてまえになっておりまして、従来精神衛生相談でやっておりました仕事は、別途保健所のほうに予算措置をいたしまして、重要な保健所二百十二ヵ所に、精神衛生を担当いたします職員の予算的な補助を新たにつけまして、保健所の仕事といたしまして日常の訪問指導の業務をあわせて行なわせるように二本立てにしたわけでございます。そういうような関係で、一応形式上ここの字句を削除したわけでございまして、いままで保健所に精神衛生相談所を併設いたしまして努力をしておられた保健所を設置しておられる市に対して、今後権限を取り上げるとか、そういうような趣旨のものでは決してない、そのようにひとつ御了解いただきたいと思います。
  92. 横山利秋

    横山分科員 最後にもう一度法務大臣にお願いをしておきたいのでありますが、昨年東京で精神異常、精神薄弱、精神病質の中で検挙された刑法犯を調べてみました。すると、三百六十四件の中で殺人が六、強盗が四、傷害が三十八、嬰児殺しが八、それから放火が七、暴行が二十一、まさに精神異常、精神薄弱、精神病質の犯罪者というものは激増をしておる。したがって、このような状況の中で、法務省管下のそれぞれの機関としては、これらの問題について格段の努力をしていただかなければならぬと私は思うのです。あなたのおっしゃるように、また先ほどお話があったように、なるほど、お金で仕事をするものではない。しかしながら、いまの法務省傘下の問題として、私が先般法務委員会でも言ったように、保護司の人たちに対しても、名誉職ですからということで甘えているんじゃあるまいか。一番根幹になります地区保護司会の運営、それが根幹になると思うのでありますが、ひとつも地区保護司会の運営費としてお出しになっておらぬ。少し法務省は、自分たちの仕事が権威あり、そしてほかの各省と違った別な立場があるからという、悪く言えばうぬぼれ、よく言えばてんぜんとしておられる。   〔八木(徹)主査代理退席、主査着席〕  したがって、各省の関係がある、しかも法務省として最も重要な犯罪の新しい角度に対しての目が足らないんじゃあるまいか。これほど厚生省の微に入り細をうがった予算措置から比べてみて、法務省の精神障害者対策というものはけたはずれですよ。片方は百六十三億で、片方は二千四百万円です。決して私は単純比較しようとは思わないけれども、増加額が一方は三十億円、こっちは七百万円です。法務省の精神障害者対策というものが、七百万円の増加で私は決していいものとは思わない。あなたも決して思っていらっしゃらないだろうと思うのです。どこか法務省の姿勢に問題があるのではないか、どこかに決意と努力、認識の足りないところがあるのではないかと痛感をされるのであります。いろいろな資料は準備してまいりましたけれども、時間がございません。単純な予算比較だけではあなたも御納得をなさるまいと思うけれども、時間さえあれば、私は一つ一つ資料をもって、刑務所、それから保護司、あるいはそのほかの刑務所の精神病者あるいは少年院、鑑別所等々に散在いたします精神異常者の問題を一つ一つ取り上げたかったのでありますが、時間がございません。ひとつ法務省として大いに御反省を願いたい。大臣の御意見を伺って私の質問を終わります。
  93. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 精神障害者対策の経費につきましていろいろ法務省に御同情のある御忠告を承って、感謝いたしております。法務省といたしましてことしの予算措置につきましても何かやることはないかということで、実はいろいろとこの問題は研究いたしたのであります。しかし、先ほどから申しておりますように、法務省としてやる問題は、いわゆる刑務所に入っておる人々の対策の問題、あるいは犯罪を犯した人で社会へ出ておる精神病者に対する観察及びいま言った保安処分ということに重点を置いてやってきている。そこで、この保護司の予算の増加につきましても、もう少しこれはやらねばならぬということはわかっておりますが、どうもそこまでしかことしはやれなかったことは残念であります。なお、その他、刑務所に収容しておる人々の問題あるいは検察の経費等につきましても御注意もございますし、ごもっともでございます。十分ひとつ法務省として私も努力をいたしたい、こう考えております。
  94. 植木庚子郎

    ○植木主査 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は二時より再開し質疑を続行いたします。  この際、暫時休憩いたします。    午後一時七分休憩      ————◇—————    午後二時十三分開議
  95. 植木庚子郎

    ○植木主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  裁判所及び法務省所管について質疑を続行いたします。村山喜一君。
  96. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 LSTの問題につきまして先般来予算委員会質疑が行なわれたのでございますが、この政府委員答弁の中で相当な食い違いが出ているのであります。この議事録を見てまいりますと、施設庁関係答弁によりますと、これは三十七年の三月三十一日までは当時の調達庁があっせんをしておったという説明をいたしておりまするし、二月の十六日の松浦国務大臣の答弁では、三十七年の八月一日から従来防衛施設庁であっせんをしておったものを解雇した。そして直接米軍が自由に雇用するようになったんだという答弁であります。この員数も食い違いがありますが、一体このLSTに乗り込んでおります日本人駐留軍労務者は、三十七年三月以前並びに三十七年四月の一日から七月の三十一日、三十七年の八月一日以降はどういう雇用関係になっているのか。この点をまず明らかにしてもらいたいのであります。
  97. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 お答えいたします。  LSTに乗り組む日本人船員の雇用関係は、ただいま御指摘のように昭和三十七年、調達庁の雇用になる以前は、日本法人である米船運航株式会社の雇用関係にございました。米船運航株式会社がその業務をやめて以降、調達庁のいわゆる間接雇用、調達庁の雇用に相なって米軍に労務を提供いたしております。三十七年七月三十一日限りをもって調達庁の雇用をやめまして、その日以降米軍の直接雇用ということに相なっております。
  98. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 しからばこのLSTに従事する日本人労務者の身分というものは、現在は運輸省に言わせますとこれは船員法に基づく船員ではないということに相なっておるわけでありますが、従来、関東海運局長名とそれからMSTSの連名によりまして身分証明書らしきものが、あるいは船員手帳らしきものが出されておった。ところがこの手帳は、すでに日本の法律に照らし合わせまして、効力のないものであるという立場をとったがゆえに、現在発給を停止している、こういうふうにわれわれは受け取るのでありますが、今日まで支給されておりますその身分証明書的な手帳は効力を持っているものなのか。いわゆる船員の十年間の効力を持っているものとして、あなた方は認めておいでになるのかどうかという点をお聞かせを願っておきたいのであります。
  99. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 船員手帳は、船員法に基づく船員は、これを受有の義務を有しております。したがいまして、船員法の適用のない船員は、船員手帳を受有する義務はございません。ただいまお尋ねのLSTに乗り組んでおる日本人船員は、船員法の適用がなくなる直前まで船員手帳を義務として受有をいたしております。それが入国管理令上の一つの証明効力を持った入国管理令上の乗員であること、並びに日本人であることということについての証明をいかなる形でするかということは、これは法務省の御所管でございますけれども、私どもが打ち合わせたときは、何らかの方法によって証明することが望ましい。一般的には、外国船に乗り組む者は、出入国管理令にいう乗員手帳たる旅券を持たせております。このLSTの船員につきましては、従来船員法に基づいて受有しておりました船員手帳は、日本人であること、並びにLSTの乗員であること、出入国管理令上明らかにすることが必要である事項を証明するのに便宜であったので、これをもって出入国管理令上乗員たることの身分を疎明する資料として認められておったわけでございます。そういう出入国管理令上の取り扱いを受けて、当方で、従来使っておった船員手帳に対して、これがLSTの乗り組み員であるということを本人の申請並びに米軍側の乗員名簿というものに基づいて関東海運局が証明をいたしておったわけでございまして、日本の船員が船員法上受有義務を持っておる船員手帳とは、その点の性質、法律効果とかいうものは違うわけでございますが、出入国管理令上の身分を疎明する材料としての効果は、今日においても全然変わりはないものと考えております。
  100. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 船員法第五十条一項にいうところの船員手帳ではない。そこでLSTの乗り組み員にはその身分証明書的なものを現在出しておる。これが出入国のいわゆるインスペクトの管理の上から見ました場合に、証明に足りるものである、こういうふうに運輸省では見ておるわけでありますが、これは入国管理の立場からどういう証明なのか。旅券にかわるべき証明なのか、船員手帳にかわるべき証明なのか、それははたして合法的であるのかどうか、この点について御答弁を願いたいのであります。
  101. 八木正男

    八木政府委員 お答えいたします。  出入国管理令第二条の六号に「乗員手帳」という項目がございまして、その説明としまして、「船員手帳、旅券又はこれらに準ずる文書で乗員が所持するものをいう。」とございます。入国管理局としましては、ただいま船員局長から御説明のありました、いわゆる船員手帳の様式を利用した運輸大臣の証明、これをただいま申しました「船員手帳、旅券又はこれらに準ずる文書」とみなしまして、出入国上本人の身分を証明するに足る十分なる身分証明の書類として扱っております。
  102. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 そういたしますと、これはLSTの乗り組み員は法でいうところの乗員、これに該当しますか。
  103. 八木正男

    八木政府委員 出入国管理令上の乗員と認めております。
  104. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 そういたしますと、この入国管理の立場から考えまして、LSTの現在運航をされている状態というものが、どういう内容の行為がなされているか。そしてまた出入国管理という立場から、これらの日本人がベトナムあたりの戦闘地域において作業に従事しているという点から見ました場合に、はたしてそういうようなあいまいな甘い解釈で、あなた方がゲートのあたりから出てまいりますものをチェックできるかどうか。これを出入国管理という立場から見て業務上差しつかえがないのか。いわゆる日本国民としての生命、財産、権利というものが保障されている、こういう立場をあなた方はおとりになるのかどうか。その点について法務大臣、お答え願いたいのであります。
  105. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 乗員につきましては、ただいま御説明いたしましたように、出入国管理令の第二条六号によりまして、これは乗員であると認めております。乗員の出入国につきましては、これは自由でございます。入国管理の法上の規制は全然ないわけでございます。
  106. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 外務省にお尋ねしますが、入国管理局がいまとっておる立場からの身分証明書というものは、発給を停止した、三十七年の十一月二十五日以降は発給を停止した。停止しているということは、現在の船員法によるところの船員手帳ではない。また乗員だということでありますが、これは船長及び海員または予備海員という身分が日本国内において認められていないから、これについては身分証明書の発給を停止したのだ、こういうことになっておりまして、この立場から旅券というものを発行すべきである、こういう立場をとっておられるわけであります。その考え方は、現在の身分証明書の発給というものは、これを停止せざるを得ない、ということは、法律上疑義がある、したがって旅券に切りかえなければならないのだ、こういう法律的な解釈だというのでありますか。どうですか。
  107. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 船員手帳を利用した身分証明が法律上違法であるから、旅券に切りかえるというふうには考えておりません。一般に外国船に乗り組む日本人の場合の、外国船の出入国管理令上乗員であることの証明は、一般外国船については旅券によってやっておりますので、LSTについても当然旅券でやったほうが証明の資料が幾種類にもならなくて済む、つまり外国船の身分を証明する方法を統一したほうがいいのではないかという行政上の立場から、この旅券の発給が認められておる日本人に対して、これ以上船員手帳をもって身分証明とするという方法を停止しただけでございまして、すでになされました証明が有効であること、これは全然変わりはないというふうに私は考えております。
  108. 安川壯

    ○安川政府委員 外務省といたしましては、このLSTに乗っております船員に、ただいま運輸省から御説明のありました従来のやり方がよいのかあるいは旅券を出したがよいのかということを、法律的な立場からどちらがいいというようなことを判断する立場にございませんので、これはあくまで所管の国内官庁の御意見に従いまして、旅券を出せということならば、外務省としては成規の手続をとられて、そうして旅券を出し得る該当する事由があれば出すという立場でございまして、どちらがよいあるいはどちらのほうが適当だということは、外務省の立場としてはきめる立場にはございません。
  109. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 運輸省としては、一般外国船の乗り組み員について旅券で出しているから、それにそろえたいということでありますが、そうなりますと、これは一般旅券あるいは数次往復用旅券のどちらのほうをおとりになるのですか。
  110. 安川壯

    ○安川政府委員 旅券を出します場合には、この場合は二年間有効の数次旅券ということになります。
  111. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 しからばこのLSTは、一般外国船として認めるべきものなのか、それとも、いわゆる艦艇として見るべきなのか。この点については御承知のように、日米安全保障条約の関連規定として、日本国に対する合衆国艦艇の貸与に関する協定が結ばれている。その中において、LSTも日本に対して貸与されるようになっておるのでありますが、これを訳してみますと、上陸用支援艇、上陸支援艇となっておるわけであります。しかも、これはロケット砲を二門積んでおるし、さらに四十ミリの連装機関銃、これを三門、二十ミリの単装機関銃を四門備えております。こういうようないわゆる上陸支援艇の内容から見まして、はたしてこれは運輸省がいうところの船舶なのか。防衛庁の持っておりますいわゆる上陸用舟艇というものは艦艇協定によって貸与されたんですが、これは外国の一般船舶として認めているのかどうかという点、その内容から見まして疑義がありますので、この点を明らかにしてもらいたい。
  112. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 現在日本人が雇用されて乗り組んでおりますLSTは、一般商船ではございませんが、軍艦ではございません。私どもは一種の公用船というふうに考えております。
  113. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 現在アメリカが——日本人が雇用されておりますLSTは十七隻で、一千六百五十三トンクラスのものだと聞くのでありますが、積載トン数は四千八十トン、時速九ノット、これは間違いありませんか。
  114. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 そのとおりでございます。
  115. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 このLSTはそういうような、いわゆるロケット砲とか、あるいは重機関銃、連装式の機関銃あるいは単装式の機関銃、こういうものは装備しておりませんか。
  116. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 私ども承知しておる限りでは、一切武装はいたしておりません。
  117. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 現在米軍の直接雇用という形に伴って、ベトナムのいわゆるサイゴン側の支流をさかのぼるとか、あるいは南ベトナムの沿岸沿いにずっと北上をして、ダナンのあたりにおきまして日本人の乗り組み員が殺された、こういうような事件が出ているわけでありますが、現実にその運航をいたしておりますのは船長をはじめ全員日本人。しかもそれには、船籍はアメリカでありますから、アメリカの星条旗を掲げている。そういうような場合に、ベトコンから、軍需物資を積んでいるわけでありますから、攻撃を受ける。攻撃を受けて殺された、あるいはけがをした、こういうような形で戦争に巻き込まれたという形になった場合の生命の保障、いわゆる死んだあとの遺族に対する補償、こういうようなものはどういう国家的な保護が与えられておるわけですか。
  118. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 ベトナムにおける状況につきましては、私どもは現在までのところ戦闘行動にLSTが直接参加しているということは考えておりません。また、他動的に戦闘行動に起因する非常な危険がLSTに対して現実に起こるおそれが十分あるというふうにも、現在のところ考えていないわけでございます。ただ、お尋ねの、一般的に職務上船舶の運航をしたり、職務を執行している場合に、生命身体に危険がございました場合、これに対しては、雇用契約の雇用条件といたしまして、雇用主から補償がなされるわけでございまして、死亡の場合には最低百八十万円、これは最低額でございまして、給与に応じてそれ以上の金額が支給されるように現在のところ、雇用条件として決定をいたしておりますが、今日までその規定の適用を受けて災害補償を受けた船員はございません。
  119. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 十一月四日、ダナンで南ベトナムの警官に殺された斎藤賢三、これは補償の対象にならないのですか。
  120. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 ダナンにおいて不幸なくなられた斎藤賢三氏につきましては、これが公務執行に基づく——公務と申しますか、船舶乗り組み員としての職務の執行中に生じた事故であるかどうかという点につきまして、私どもが直接判断する立場にございませんけれども、これは当該遺族と雇用主である米軍との間の話し合いによっての事実の認定によるべきものだと考えておるのでございます。
  121. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 ここでMSTSに乗り込んでおります日本の駐留軍労務者、この諸君も、一体日本アメリカとの地位協定の中で、現在われわれが雇われているその地域の立場から見た場合に、条約の地域というのは日本の領域である、しかるに現在われわれがアメリカの雇用労務者として米軍の輸送船隊に乗り込んで作業をしている地域は、韓国からベトナムあるいはタイあたりに至るまで、現実に国際法上の戦争行為ではないけれども、ベトコンとの間の戦闘が行なわれている地域だ、この地域にわれわれを派遣をすることは、これは現在の地位協定の精神から見て、駐留協定に違反をしている契約ではないか、また、現実に戦闘が行なわれている地域で勤務しているということは、客観的な事実行為そのものから見ていかなければならないので、これはまさに戦争地域だとわれわれは見ているが、これに対して、われわれの生命をどういうふうに保障するのかということで、全駐労の労働組合のほうから調達庁に対しまして要求がなされていると思うのであります。それと同じように、それ以上にLSTの乗り組み員の場合には危険な行為に現在従事しているわけであります。とするならば、これらの日本人の生命を保障をするという立場をとってまいりますときには、当然日米安全保障条約なりあるいは地位協定に基づく内容から見まして、はたしてこういう仕事に従事することが正しいのかどうか。地位協定の精神に違反をしているのではないかとわれわれは見るのでありますが、この点についてはどういう解釈をお持ちであるのか。さらにまた、日本国憲法から見まして、このような地域に日本人を参加させるということは、憲法第九条の立場から見まして、明らかに違反行為であるのではないかと疑うのでありますが、これに対する法制局の見解を聞かしてもらいたいのであります。
  122. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  質問は二点ありましたようでございますが、まず第一に御指摘の、労務者が日本の地域から離れて、出かけて、向こうの需要のための労務を提供するということは、地位協定に違反するのではないかというのが一点でございます。ただいまの地位協定から見まして、そういう危険な場所におもむいたときにその保護をどうするかというような問題は、いろいろあり得るかと思いますけれども、地位協定がそのものを禁止しているといいますか、地位協定に違反するという根拠は、直ちに地位協定から出てくるものではないというふうに考えております。  それからもう一つの憲法九条の関係でございますが、これも万々御承知のように、憲法九条は武力の行使を中心とした規定でございますので、憲法九条に違反するというふうになることはやはりないのではないかというふうに思っております。
  123. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 調達庁は現在地位協定の十二条の四項によりまして、「現地の労務に対する合衆国軍隊及び第十五条に定める諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足される。」こういうことになっている。だから、現在あなた方のMLCやあるいはIHAの駐留軍労務者というものは、そういう立場から確保されているわけです。といたしますと、このMSTSの場合には、そういうような一応日本政府がタッチをして保護する部面がございますが、LSTにつきましては、日本政府はこれに対して保護する立場にない。とするならば、一体その役務の提供をする根拠というものはどこにあるのですか。職業の自由という立場ですか。
  124. 安川壯

    ○安川政府委員 十二条四項は、現地の労務の需要は日本国政府援助をもって行なうとなっておりますが、これは原則として日本政府が雇用主になる、いわばいわゆる間接雇用をとるということを原則にしておりますけれども、LSTの場合におきますように、米軍が直接雇用すること自体を排除しておるものとは考えておりません。したがいまして、特殊な場合には米軍が直接これを雇用いたしましても、これは協定に違反するということにはならないものと解釈しております。ただ、その場合にも、その次の十二条五項にございますように、雇用条件その他は日本の法律によるということがきめられておるわけでございまして、直接雇用いたします場合にも、雇用主である米軍は日本の国内法規を守る義務を負っておるわけでございます。
  125. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 そういたしますと、アメリカの軍隊なりあるいはかりにほかの、日本政府が三矢研究に見られるように仮想敵国とみなしているような国の軍隊が直接日本人を雇用して、そうして労務に従事させるということを禁止する法律はないわけですね。
  126. 安川壯

    ○安川政府委員 私はいま地位協定の関係から、米軍の場合につきまして申し上げたわけでございますけれども、一般的に外国の船に日本人が雇われる場合に、どういう国内法的な規制があるか、私、所管の関係でよく承知しておりません。
  127. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 私がその問題を取り上げましたのは、ここにアサヒグラフの二月二十六日号が出ているわけでありますが、硫黄島の現状について記載がされているわけであります。この硫黄島には現在日本人労務者が三十人いると、ワールド・ワイヤー・プレスが報道をいたしております。しかもその労務者は立川から出ていったという根拠があります。一体この硫黄島に現実におります日本人労務者は、どういう手続を経て日本から出ていったのか。現にまたそういうような事実が出ているわけでありますが、いかなる目的で日本の国を出ていったのか。入管ではこの事実を押えているのか。また、ここに働いていると報道をいたしております労務者の身分上の地位は、雇用関係は、一体どうなっているのか。この問題は、しかも基本的な人権に関する問題に発展をしてまいりまして、これらの硫黄島の地域は、御承知のように、郵便協定が結ばれている地域ではありません。したがって、軍事便として国内から家族は投函をして連絡をとっている模様であります。しかも、雇用の期間や滞在の期間、そういうようなものが明確にされていない。こういうような事実から見まして、アメリカ軍が日本人労務者を日本の主権が及ばない地域に、アメリカ軍の軍の用務として連れていく。これに対しまして、日本人を保護しなければならない法務大臣としては、どういう見解をおとりになるのか。入国管理という立場から見ましても、また、日本人が米軍なりあるいは他国の軍隊でもけっこうでありますが、そういうような軍隊の雇用労務者として戦闘行為に、あるいは軍の防衛活動といってもいいでしょうが、そういう活動に参加する職業上の自由というものが、日本人に認められているものかどうか。この点については法制局長官からお答えを願いたいのでありますが、これに伝えられております事実は、これはすでにワールド・ワイヤー・プレスからアサヒグラフのほうで版権を購入をして、出しているのでありますから、皆さん方もごらんになったと思うのですが、これについてお答えを願いたい。
  128. 八木正男

    八木政府委員 実はただいま御質問の硫黄島の駐留軍労務者のことは、私報告を受けておりません。おそらく人数といい、また、従来も日本の近所にあるそういった米軍の労務に駐留軍労務者が出た例はたびたびございますので、私のところまであがってこなかったと思いますが、事情はさっそくよく取り調べます。
  129. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 防衛施設庁はどうですか。
  130. 藤本幹

    ○藤本政府委員 ただいまお話しの硫黄島におきますところの労務者三十名につきましては、私ども承知いたしておりません。駐留軍労務者として向こうに渡っている人ではないというふうに考えておりますが、承知いたしておりませんので、内容はわかりません。
  131. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 法務大臣、ここは日本施政権下にない地域です。そこで日本人がそういう形で基地の労務者として仕事をしている。これに対して、国民を保護するという立場から、どういうふうにお考えになりますか。
  132. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 ただいま御指摘の事件につきましては、いさいを承知いたしておりません。十分調査をいたしました上で対処したいと考えております。
  133. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 高辻法制局長官は、これに対しまして、こういう形で調達庁も知らない、管理局も知らない、現実にはあるということが報道をされておる、そうした場合に、外国の軍隊によって日本人が雇用されて、日本施政権の及ばない地域においていかなる作業に従事しょうとも、これは憲法上国民を拘束するものは何ものもない、こういうふうに解釈していると受取っていいのですか。
  134. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 これは、憲法上の問題として申し上げるにつきましては、まず憲法というものがどういうものであるかというようなことになりますが、要するに、国民の権利なりは、基本的人権の発展の段階から申しましても、国権が国民に対していろいろな制限を課する、干渉し、侵害をするというようなことに対して、実は国民の権利を守るというような思想から発展してまいっております。したがって、国権の発動として国民がいろいろな制限を受け、侵害を受けるというようなことについての強固なる防波堤としていろいろな権利が保障されているわけでございます。したがって、ただいまの問題は、憲法が直接にどうするということよりも、むしろそういうことを何か現行法上禁止しているものがあるかどうかというような問題に結局なると思いますが、現在たとえば旅券法等でどこかに出かけていく場合に、危険なところには御遠慮願う、そういうものはないではございませんが、一般的にお尋ねのような問題につきまして、禁止している現行法上の規定はございません。
  135. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 そういたしますと、アメリカ軍であれ、あるいは他の国の軍隊の雇用関係については、これは個人の契約の自由だという立場からいった場合には、何ものもこれを制約することはできない。ただし、旅券法等で出国できないという事実はあるけれども、船員法によって船員の手帳を持っている者がそういう地域において協力をするということは自由である、こういうふうに受け取って差しつかえありませんね。
  136. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 先ほど申し上げましたように、憲法なり現行法の規定で、ただいま委員からお話しになりましたような個別の場合を除いて、一般的にこれを制限する規定というものは、私の知る限り、現行法の中にはないと思います。
  137. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 時間がありませんので、もうやめますが、この内容は、外務省のほうに一行だけお尋ねしておきたいのは、この硫黄島という島は、いわゆる日本国との平和条約第三条にいうところの南方諸島の中に入っておる島であるし、また現在は、日本潜在主権があるというふうに主張をしているけれどもアメリカとしてはこれに対して日本潜在主権を認めていない地域だと思いますが、これについてはどうですか。
  138. 安川壯

    ○安川政府委員 御承知のように、沖縄並びに小笠原島に対して日本潜在主権があるということはアメリカも認めております。私はこの硫黄島がその例外になっておるものとは了解しておりません。
  139. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 現在は日本人は一人もいないわけですね。
  140. 安川壯

    ○安川政府委員 そこの住民としては一人もいないと了解しております。ただ、小笠原鳥には、日本の混血児と申しますか、現地で外国人と結婚した者の子孫が一部占領中に小笠原に帰還を認められましたので、その範囲では、その人々は、混血児ではありますけれども日本国籍を持っておると了承しておりますが、その限りでは日本人はいると申して差しつかえないと思います。
  141. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 私が言う日本人というのは、日本国籍を持っているという意味なんです。欧州系の祖先を持っておる若干の人間がその島に居住を許されておるということは知っております。しかしながら、私がここで問題にしなければならないのは、現実に日本施政権が及ばない地域に、どういう形で日本から出ていったか知らないけれども、いろいろ巷間伝えられるところでは、立川の米軍の基地からアメリカの軍用機に乗せられて硫黄島に出ていった、こういうことであります。とするならば、米軍のいわゆる占有しております施設、ゲートから日本人労務者が出ていく。これに対しては、出入国管理としてはこれを規制することができない。こういうようなことでは主権国家たる日本は全くだらしがないといってもいいわけなんです。そういうような現実が現に報道をされておる。しかもそれはどこの労務者であるのか、身分がはっきりしない。米軍と直接雇用契約を結んだものなのか、あるいは防衛施設庁がこれに対して関与しているのか、それもわからない。しかもその身分はきわめて不安定のままで、言うなればアメリカの善意を信ずる以外に生命の安全についても保障されない。こういう形の中でパスポートも何も持たない者が日本から自由に出ていき、アメリカの軍用機で帰ってくる。LSTの問題にいたしましても同じようなものであります。船員法上の船員ではないのですから、これは一般の旅券を適用すべきだ。そういうような者が船員法の船員としての身分、効力があるかのごとく現在取り扱われている。その取り扱われた者がベトナムのあたりに出ていって働いている。問題が出たら、これはダナンのあたりで上陸してから殺されたので、公務執行外だということで、その問題についての遺族補償はまだ明確になっていない。これでは日本人として日本の国家に対する信頼性というものが私は失われてくると思う。法務大臣はいつまでにこれを調査して、そして私のほうに御回答をいただけますか。
  142. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 一言申し上げておきますが、入管局長からも答弁いたしました。私からも申し上げたことは、その答弁を受けてからでありますが、そうした事例について課長級において処理いたしておるかもしれない。しかし、それらは全部調査の上はっきりさしたいということを申し上げておる。そこでわれわれ聞いてないということでございます。できるだけ早く処理をしてみたいと思います。
  143. 八木正男

    八木政府委員 ただいまの御質問について、大臣の御答弁を補足いたします。  初めことばが足りませんで、入管局としては知っていないというふうにおとりになったと思いますが、これはそうじゃなくて、私のところまで報告があがってこなかったということで、おそらく局内には報告が来ておると思います。  それから第二点でございますが、立川の基地から行ったとしますと、これは地位協定に明文がありまして、立川の米軍以外の人間の輸送にあたっては、立川に駐在している入管事務所に本人をつれていきまして、そこで適法な出入国の手続を全部済ましております。ですからおそらく、私の想像でございますけれども、普通のそういった手続で硫黄島に行ったと思います。その場合は何ら問題はございません。また先生が最後におつけ加えになりました、仕事が終わって帰りにLSTに乗るというような場合、そういう例は私は存じておりませんけれども、もし将来ございますと、この場合はそのLSTの船長が入港前に、これこれの乗り組み員以外の人間が乗っておるということを入管のほうへ通知をしてまいりますので、その港において帰国の手続をいたします。
  144. 村山喜一

    ○村山(喜)分科員 終わります。
  145. 植木庚子郎

    ○植木主査 三木喜夫君。
  146. 三木喜夫

    三木(喜)分科員 私は、法務大臣がおいでになっておりますので、前半、法務大臣あるいは法務省に、青少年の不良化の問題について主としてお伺いいたしたいと思います。  御存じのように、累年青少年の犯罪が激増してまいっております。これに対しまして、少年法の改正等をめぐって、法務省では刑罰を重くするという方向、そういう思想のもとに動きつつあるやに考えられるわけです。しかしながら、現行法のままで、現在の施設ないしは制度の中でまだまだ反省してみて、そうして是正すべきものはないだろうか、こういうように考えますので、そういう立場から御質問をいたしたいと思います。  私は籍を文教に置いておりまして、昭和三十八年からこの青少年の不良化の問題について、ずいぶん国会でも取り上げて検討もいたしました。本来ならば一般質問で、各省庁に対しまして、それぞれの省庁に問題点があると私は判断いたしますので、お聞きしてまいりたい、こういうふうに考えておりましたけれども、本日は法務関係の立場からだけひとつ聞きたいと思います。  まず、この問題の発端は、御存じのように昭和三十九年一月二十日に、血染めの十六歳という見出しで、日立市において、東京の某私立学校の高校生が三人で強盗殺人事件をやりまして、新聞を非常ににぎわしました。続いて同じ年の二月の三日に、連続六ヵ所高校生が三人強盗をやりまして、これも東京都内自動車を使ってのスピード強盗であったわけです。この相次ぐ青少年のこういう凶悪な犯罪に刺激されましたか、当時警察庁にいたしましても、それから中青協にいたしましても、文部省にいたしましても、法務省関係におきましても、非常な決意でこの問題を見守り、調査をし、そして青少年問題に非常な関心を示したわけです。特に新聞等はこの問題を非常に取り上げて、いろいろな方面から議論をいたしました。こういうような状況で、原因等につきましてはここ一年ほどの間には十分探究され、それからこれに対するところの措置、いろいろな措置があると思いますが、そういう措置も十分になされたわけでございます。しかるに、その後こうした青少年の犯罪は減少したかどうか、こういうことを考えてみましたときに、やはり減少するどころでなくて、私端的に申し上げますと、あら手の犯罪がふえてまいっております。象徴的なものをあげますと、ハイティーンの窃盗団が金庫破りを二十軒やった。女性四十人に非行少年二十三人が乱暴をした。爆薬をぶって脅迫をして金をゆすろうとした。あるいは電話ボックスを片っ端からこわして窃盗団が二十二人こういうことをやっておる。それから最近では、警察を愚弄するというようなあの通り魔事件があったわけです。午前中も横山さんが取り上げられましたライシャワー大使の遭難の事件もその後あったわけです。こういうように青少年の非行が形を変え、しかも凶悪化の方向をたどっていくということ、そうしてその数も、昭和三十六年が触法少年、刑法少年が二十一万、三十七年は二十二万、三十八年は二十三万と、一万ずつふえていっておるわけです。いま全体の数を押えますと、虞犯少年も入れて不良青少年が二百万をこすだろうといわれます。そうすると同年齢の比率をもちますと、十人に一人が非行少年だということになるわけです。したがって父兄も社会もこれはただごとではない、いままでは人の子供のように思っておりましたけれども、決して人ごとではない、自分のうちの子供の問題だというように現在は取り組んできたわけです。  そこで私は、これはいろいろなところに行政上あるいは社会的に、あるいは家庭的に、また学校にもいろいろな問題はあろうと思いますけれども、法務省としてこの問題と取り組まれて、この点が問題だ、ここに問題点があるのだということを的確に押えられ、あるいは反省しておられるかどうか、それはどんな点かということを、これは少年法の改正なんかをめぐりまして刑罰を重くするとか、交通犯をきつくするとかいうような、そういう動きはありますから、その問題は私は後ほど触れるといたしまして、現実に何が問題だというところを最初にひとつお聞きをしておきたいと思います。
  147. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 青少年の非行につきましては、これは国家的に考えまして非常に大きな問題でありまして、早急に手を尽くさねばならない。これはもちろん国家としてもいろいろと各方面に総合的な施策を講じねばならない。したがって、御存じのとおり青少年協議会等におきましていろいろとくふうをこらしておるのでございまするが、なかなか一朝一夕にいかないという点につきまして、これは非常にむずかしい問題でございます。法務省といたしましてもいろいろの点があるのでございまするが、まず、たとえば暴力団等の手先に使われる青少年に対しましてこれを暴力団から切り離すとか、あるいは悪質な出版物等についてもこれを十分取り締まるものは取り締まりますが、これは法務省の力だけでいかない点もいろいろとあるのでございます。それとともに、警察と十分連絡をいたしまして、できるだけ補導の仕事に重点を置きまして、そうした深入りする前にひとつやってみたい。あるいはまた鑑別所におきまして、これを一般にも開放いたしまして、父兄たちのいろいろな相談にも応じるとか、いろいろの解決すべき問題もたくさんあるのでございます。  法の改正問題その他につきましては、後ほど御質問にお答えいたすことにいたしたいと思います。
  148. 三木喜夫

    三木(喜)分科員 いまあげました三十七年、八年、九年と一つの傾向として、青少年の犯罪が集用化したり、あるいは凶悪化したり、さらに年齢が少し低下してきた。これは特徴的にあげられていることです。特に昨年から本年にかけて、いま大臣が言われましたように、暴力団の第二軍的な役割りを持ってきたということが最近の特徴的なものです。しかしながら、それから引き離すというような努力を、警察が検察的な立場からこれをなさるのですか、あるいはそれを組織化して補導的な立場でするのか。ことばとしては引き離すということはやすい、それから不良文化財を取り締まるということもやすい、あるいはその他の暴力事犯というものをいろいろ補導するというようなことを言われましたけれども、これは鑑別所なんかを通じてですね、はたしてその体制があるのかどうか、そういう点からの検討をひとつ聞かしていただきたいのが本日の主眼でございます。  そこで、そういう抽象的なことでなくて、ひとつお聞かせ願いたい。特に私が注文したいことは、青少年を保護育成するという立場の施策に対して、法務省はどれだけの金を本年はあげておられるか。それから警察の立場からこれを検察する、非行をあげるという立場から、どれほどの金が予算として組まれておるか、これもあわせてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  149. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 青少年の保護育成と申しましても、法務省の関係いたしまする分野はいま申し上げましたような分野でございます。これらの予算につきましては事務官より御答弁をいたします。
  150. 勝尾鐐三

    ○勝尾政府委員 お答えいたします。  青少年の非行対策といたしまして、法務省の所管では、検察関係並びに収容施設である少年院関係、並びに非行青少年の性格等を鑑別いたします少年鑑別関係、並びに裁判に起訴されまして刑を確定して受刑いたします少年刑務所の費用、並びに仮釈放あるいは仮退院で社会に復帰した場合の青少年の保護観察関係の費用、さらに根本的には、これらを通じまして非行青少年の犯罪の原因がどこにあるかという予防的な研究の経費、大別いたしますと以上のようなことになります。  そこで青少年検察関係の充実強化経費でございますが、昭和四十年度は二億五千六百七十三万八千円が計上されております。なお青少年の検察と申しましても、一般の捜査費がそのほかにございますが、取り立てて申し上げますと、二億五千六百七十三万九千円、それから少年院の教化活動の充実経費といたしまして十億二千百五十万九千円、少年鑑別業務の充実の経費といたしまして二億九百九万円、それから少年受刑者の職業補導等を充実して更生に役立てる経費といたしまて四千四百五十八万三千円、さらに仮釈放あるいは仮退院で社会に復帰した者の保護観察を効率的にやるための強化充実の経費といたしまして五億九千二百七十七万七千円、さらに法務省といたしまして、犯罪の原因を根本的に探求するための研究の経費といたしまして三百五万五千円、合計いたしますと二十一億二千七百七十五万三千円、これは前年度に比較いたしまして一億九千四百六十万六千円の増額となっております。
  151. 三木喜夫

    三木(喜)分科員 予算的に対策を御説明いただいたわけですが、青少年の非行増加とこの経費というものを考えてみますと、昨年度に対しまして一億ということは非常に少ないと私は思う。それを実例をもって申し上げたいと思うのですが、問題点だけ出してお考えいただきたいと思います。  それは、どういうぐあいにすれば日本一つの大きな悩みである青少年の不良化問問が解決がつく、だろうかという立場から、私はいろいろな方面を当たってみましたが、法務関係では特に少年院です。少年院の施設あるいは指導方針、やり方というものを大々的に検討してみる必要があると私は思うのです。なぜかといいますと、いまだれかひとつ答弁してもらいたいのですが、少年院へ一度入った者は、中等少年院と初等少年院の場合に分けて、初等の場合は三〇%ぐらいがもう一回犯罪を犯して、そうして舞い戻ってくる。中等の場合は五〇%近いのではないかと思うのです。そういう点はどういうことになっておりますか。
  152. 大澤一郎

    ○大澤政府委員 少年院の収容者のうちで、少年院へ再び帰ってきた者の数でございますが、過去五年間の統計によりますと、決していい成績ではございませんが、漸減の傾向にある。昭和三十四年度は四二・七%が前に少年院へ入った経験のある者でございましたが、三十五年度は四〇%、三十六年度は三六・四、三十七年度が三二・四、三十八年度が二九・四%と、漸次少年院に入ってくる者の中で前に少年院に入っていたという者の数が減少しつつある状況でございます。
  153. 三木喜夫

    三木(喜)分科員 減少の様子も私は分析すべき要素があると思う。しかし問題は、どうして再犯をやって帰ってくる者が多いか、この点の問題点をお考えになったことがございますか。何が原因であるか、私は、そうあちらこちらの少年院へ行ってみることはできませんでしたけれども、近畿、それから東京付近、保護観察所、鑑別所は東京近辺、これだけおじゃまをしたり、意見を聞いたり、電話で聞いたりしてみますと、これはまず少年院の中に大きな問題があると思うのです。それを法務省としてはどういうようにとらえておられるかお聞きしたいと思いますが、大臣どう思われますか、私があなたに聞きたかったのはここだったのです。これが一番法務省においては性根を入れて見てもらわなければならぬところだと思うのです。なぜ帰ってくるか。そうして犯罪の再生産をしておる。これは問題点ですから法務省として一番こめかみに力を入れて考えてもらわなければならぬところだと思うです。その点はどういうところが原因でそういうように帰ってくるか。これはもちろん世間にも問題点はあると思うのです。しかしながら法務省自体、少年院自体はどういうぐあいに反省をしておられるか、あるいはどういうように対策を立てようとしておられるか。
  154. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 もちろん少年院といたしましても、設備あるいは教官の充実、いろいろなことでまだまだくふうを要する問題がたくさんあると思うのです。しかし先ほど大澤局長から申しましたように、少年院にいた者がまた少年院へ来るというのは、若干でありますがだんだん減っております。刑務所に入りました——少年ではございません、一般のおとなの人の再犯率から見ますと、これは少年院のほうが低い。それだからと言いまして、それでよいということを申しておるのじゃ決してございません。ただ十分この教化活動はやってまいるのでございますが、また事後においても、これはあまり少年院を出ました者をあとをつけ回すとかなんとかいうことではかえって悪いものですから、これが観察につきましても、指導についてもいろいろ苦心があることはもちろん御承知だと思いますが、何しろ少年院におきまして、ここへ入れたらもう次はやらないのだという特効薬はなかなかむずかしい。しかしそうしたことの起こらぬような努力はもちろんいたしておる。またお教えを承ることがあれば承らしていただけば幸福だと思います。
  155. 三木喜夫

    三木(喜)分科員 再犯で入ってくるということは、まず第一に、中で青少年の教育的な指導職業的な指導、それから行ないの指導ですかね、この三つに分類してやるいとまがないということです。人数が多過ぎるということです。収容しておる者が多過ぎる。これが一つの要素です。それから特に来年度は少年院の中等部のほうが相当の人数にふえてくると思うのです。これについては現地では、職業補導をやりたいのだけれども、補導をやってくれる人手がないということです。だから職業補導らしいものができないということです。せめて中等程度の職業補導をしたいというのですけれども、それができない、こういうことを漏らしております。まず人数が不足だということ、これは絶対的な条件だと思うので今年若干人数をふやしておられるようですけれでも、これは総理が、青少年の問題については愛情を持ってやっていきたいということを大きな国の政治の柱として考えておられるのですから、これについては、少なくとも思い切った措置をとってもらいたい、こういうぐあいに思うのです。それからもう一つの問題点は、機械とか設備とか、そういうものが非常に少ない、こういうように現地では言っておるわけです。こういうように考えてみましたときに再犯を犯す、犯罪の再生産をやる、そういうことのないようなかまえを少年院において十分とってもらわなければならないと思うのです。  それから先がた大臣は、不用意にことばを使われたと思うのですが、少年院へ入って出た者のあとを追い回っているわけにはいかぬ、こういうおことばがございましたけれども、これを追い回っていくというような指導をするだけのスタッフがないわけなんです。保護観察所におきましても、東京都では何人の人がどれだけの対象人物を見ておるかというと、六十人か七十人ほどのものが一万四千人ほどの対象人物を見ておるのですから、あなたがおっしゃるようなことは、とてもそれはやれないわけです。そして、これは保護司に頼むということですが、保護司も一人で平均三人、四人担当されて、とても手が回らない。しかも午前中横山さんが言われておったように、日給四百五十円、もちろんこれは奉仕の気持らでやっておられるのは非常にとうといことでございますけれども、そういうような報酬の状況で、あなたがおっしゃるようなアフターケア的なケースワークもできないわけなんです。これもひとつ考えてもらわなければいけないと思うのです。少年院に入れて、保護司をたのんでそして観察をしてもらう、保護をしてもらう、このことはいいと思うけれども、どっちかというと、外へ出しつばなしというようなかっこうがないかということをまずおそれるわけです。  それからついでに、もう一つ申し上げたいと思うのですが、これは場所まで言っては差しつかえができるかと思うのですけれども、あえて申し上げたいと思います。私は神戸の再度山学院へ参りました。まずここへ参りまして一番に感じたことは、水がないということです。それを一ぺん申し上げたいと思います。私は三十八年に行ってみました。そうしますと、六甲山の西のはたにあるところの鍋蓋山の中腹にありまして、海抜三百四十メートルの山峡に位置しておりますが、神戸の市中の人が、一日大体三百リットル水を使うのに、ここでは一人一日に五十リットル、九十人と二十人余りの職員がおりますが、百十人で一日水が十トン、そして貯水池は二百十八トンしかない。私は夏行ってみたわけなんですけれども、二つほどの竹の筒からちょろちょろと水が落ちてくる、それくらいの水をためておるわけなんです。どろ水です。それから、それでは足りませんので、下のほうから水を消防ポンプで押し上げて補充をして、そしていま言うような水の量になっておるわけです。もう一つ問題は、この少年院に行くのには、町へ出て買いものをするのには、みんなの買いものをだれかが請け負って、ジープに乗って買いものに行く、そして再度千六百メートルは人さんの土地を通らなければ、その山学院へ行けないというような状況にある。これは私きのう電話してみて、二年たったから改まっておるかと思って聞いてみました。しかし、何ら改ままってはいない。水道も、それから他人の土地を通っていくというこの道の状況も改まっていない。こういう状況に子供を置いておいて、そしてよくなれ、再び犯罪をするなというようなことは言えないと私は思うのです。これは端的な例でございますが、こういう点は、私はあなたがたの非をあげつらうわけではございません、青少年の犯罪を再生産せぬためにはどうしたらいいかという立場から、端的な例として申し上げるわけなんです。これは大臣としてどうお考えになるか、ひとつお考えを聞いておきたいと思います。
  156. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 いまのような施設があることは私は初めて聞きましたが、非常に遺憾でございます。十分そうした条件を選定してつくるべきだったと思いますが、できております以上、くふうをさせたいと考えます。  なお少年院の職員につきましては、近時相当充足してまいりまして、四人に一人の割りでめんどうを見ておるわけです。それから職業訓練その他も御指摘でございますが、できるだけそうした方向でやっておりますし、それに適するものについては一ヵ所にまとめてやるとかいうようないろいろなくふうはいたしておりますが、もちろんまだ満足すべき状況ではないといううことでございます。
  157. 三木喜夫

    三木(喜)分科員 それを受けまして、法務省におきましては、少年法の改正とか、少年審判の改善とか、昨年度から非常な動きがあったわけです。しかしながら本国会には少年法の改正案は見合わした。私はこれは賢明な策だったと思うのですが、この見合わされた理由、なぜ見合わされたか、それが私たちの納得のいくものなればけっこうだと思うのですが、そのことについて多少私たちも論議をしてみたいと思いますので、それをお聞かせいただきたい。
  158. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 この少年法が実施せられまして、もうすでに十五年くらいになるかと思うのでございます。わが国の少年犯罪をなくするということは、先ほどからいろいろ申し上げておるし、承っておりますように、法だけの改正ではやっていけないことはもちろんでございますが、日本の青少年の発育状況その他から見まして、二十歳までを少年とすることが適当であるかどうかということにつきましては、いろいろと国民の間にも意見が多いところでございます。私の考え方は、三十歳という制限は、いま大多数の者は成年に達している、もう少年ではないのだ、まず十八歳くらいが適当ではないのだろうか、これは外国の立法例から見ましても、大体そうした面が多いのでございますが、しかしそれだけではなしに、二十一歳から二十三歳ごろまでの間、これもまた完全に成年になっているとも言い切れない。要するに、精神の発育の状況がおくれている人もございます。肉体的に発育をしておっても、精神的に不十分な人もいるわけであります。そこで十八歳まで、要するに十八歳以上を少年法の適用から除外いたしまして、そうして十八歳以上二十三歳くらいまでを準成年というような考え方で、刑罰を科するものと保護でいくものとこの二つのたてまえでやっていったらどうだろうか、これがいまの状況から見て適当であるのじゃないだろうか。ことにそうした成人に、少年でない、もうすでに十分発育をしている人は、やはり一半の責任を負ってもらうということのほうが、むしろ犯罪の関連からいきましても自覚してくれるのじゃないかというような考え方で、まず年齢の点を考え、年というようなものを考えてみたらどうかということを中心といたしまして、その他家庭裁判所の審判に何らかの形で行政機関が関与いたしまして——けさほどもいろいろ指摘がありましたが、非常に多数のものが不開始処分というようなかっこうになっております。八〇%くらいがそういうことになっているというようなことで、やはり行政機関が関与して処理したら、これがうまく、妥当な線が出るのではないかというような点、あるいはまた非行少年に対する保護処分といたしまして、現行少年法は少年院や教護院に送致することと、保護観察所の保護観察に付することを認めておりますけれども、これらのほかにも再犯防止に有効適切と考えられるような保護処分をもう一ぺん考えてみたらどうかというようなものを総合いたしまして、実は私就任以来——もちろんこれは前から研究を法務省ではいたしておったのでございますが、就任以来これに重点を置いて検討を進めるようにということをいたしてまいったのであります。しかし以上申し上げますことはいずれも、現行の法制や関係機関の機構の基本的な構造に直接重大な影響を及ぼすものであります。また学界や法曹界あるいは一般社会におきましては、それぞれ意見があります。反対の強い意見もあるのでございます。これらのことを十分に調査研究をいたしまして、その改善の効果について確信を持った上で実現に移るということが、私は慎重な態度だと思うのであります。したがって、なお引き続いて事務当局では慎重な検討をいま続けております。急いでこういう基本的なものを改正いたしますと、社会に与える影響も非常に大きい。やります以上は十分なる効果のある確信と結論を得たいということで、いまなお検討を続けておる、こういうわけでございます。
  159. 三木喜夫

    三木(喜)分科員 なぜこれを延ばされたかということが大体これでわかりましたが、どうか、そういう慎重な考えに立たれることと、なおもう一つは、これを国会を通して法律として改めるというならば、あの期待される人間像のように、多くの人の意見を一ぺん徴してみるという手だてをして、一ぺんにそういうものに飛んでいただかないようにしていただきたいと思うのです。もちろんいまおっしゃったように、いろいろな点は昭和三十九年の三月十五日からこちら、あの問題があってからこちら、ほんとうに少年を保護中心主義でやっていくか、刑罰主義でやっていくかという、あなた方の主張と、最高裁、家裁なんかの主張とが対立していったということもよく知っております。しかしながら、そういう態度をとっていただかなければならないという根拠は、一つには一年たった今日、各地で集団的に学校では非行事件が起こってきたときに、これは退学さしたらいいんだというような学校の態度があちこちに出ております。私は学校の態度を非難するのではございません。また、そういうことをした子供たちも気の毒な立場にあります。環境は劣悪なるままにほっておかれて顧みられないというような状況を思いましたときには、同情するところは多いと思いますけれども、一挙に退学ということで世間にそれをほうり出してしまったら、まただれかがそれを引き受けて、その犯罪を犯すような子供を見ていかなければならぬ。これは学校としても十分考えなければならない点だと思うのですが、そういう気風を私は生むと思うのです。それで、いま大臣がおっしゃったように、十八歳の根拠なんかも四つほどあげられておりましたが、これなんかも、私たちはその立場はわかりますけれども、しかしそれでいいというものではございません。なぜかといいますと、法務省は何としても再犯を防ぐところの少年院の手入れを先にしてみて、そうして世の中に犯罪が少なくなってくれば、そういう心配はないのですから、さらにまたこの連絡協調、これが不備な点もございますし、現行制度の運用が十分でないということを私は各地で聞いてまいりました。これは反省して連絡協調をしっかりとっていけば、まだまだ救う面があるという反省の上に立ったことばがありましたから、私はそのように申し上げるわけでございます。  そこで、次に、あなた方は環境をよくするよくするとおっしゃっておりますけれども、こういうような雑誌が市中にはんらんしておるわけです。内容はどんなものかといいますと、女体のあからさまな暴露的な記事ないしは写真、絵、それが主体。犯罪と結合さした記事が必ずこの中に載っております。集団犯罪、それから閨房的なもの、これは極端に言いますと、またいろいろな規制をされるところのマスコミ方面からの反撃がありますけれども、しかしこれらも頭ごなしに取り締まるよりも、もう少し目を通していただいて、そうして相談をしていくかっこうで環境浄化をしてもらわなければならぬと思います。これをひとつ見てください。どの絵でも見てください。こういうようなのをごらんになったことがありますか。私は嘆かわしい点がたくさんあると思うのです。こういう出版とかあるいは文筆家に対して圧力をかけるという気持ちは全然ございませんけれども、こんなところをほっておいて、法律だけを強くし、あるいは取り締まりをきつくしてみたって、これではザルに水を入れたようなもので、子供たちをだんだんと、萎靡沈滞するといいますか、元気をなくし、ひねくれさしてしまう以外の何ものでもありませんので、どうかその点を十分考えて少年法の問題には取り組んでもらいたいと思うのです。  それからもう一点、せっかく防衛庁からもおいでいただいておりますので、自衛隊内で差別事件があったことについて、人権擁護委員会に訴え出ている問題についてお伺いしたいと思うのです。  事件は、御存じのように、陸上自衛隊姫路駐とん部隊のA一尉で、富士自衛隊学校で、上官から部下の前で屈辱的な差別的なことばを受けた。物品持ち出し業者にからむ黒いうわさがあって、進物を受けなかった反感がそれにからんでおる。A一尉の奥さんのB子さんは、自分がいては主人の出世の妨げになるということで、二児を置いて単身郷里に帰ってしまった。人事官に訴えて出ておるけれども、もみ消された。富士自衛隊に姫路自衛隊から問い合わせをしたけれども、事実はないという。訴えを受けたところの人権擁護委員会は、この事件を非常に重視して、A一尉が左官になる前で非常に大切なときであるということと、もう一つは、原因は汚職のにおいがするということで、根が深いということで徹底的に調べようとしておるわけです。そこでA一尉は、隊内で処置しょうとしたけれども、これが果たされなかったので、妻や子供がかわいそうだという立場から、そうして自衛隊の中にこんなことがあり得べきことではない、また、日本の国にこういう差別がいつまでも温存しておくべきでないということで、あえて提訴しておるのであります。奥さんは、私は涙で身を引く、公務員の世界がこんなものであるかということを見せつけられて、たいへんな思いをしておる。  こういうようなことが事件のあらましでございますけれども、私はこのことでことさらに自衛隊を誹謗してここで取り上げよう、こういう考え方はございません。ただどこであろうと、こういうことがもみ消されてしまうということ、弱い者がそのまま泣き寝入りしなければならないということは、たいへんなことだと思いますので、きょうは防衛庁のほうからも来ていただいて、そういう事実について調査されたかどうか。それから法務省として、これは人権擁護委員会に訴えられておりますから、どういうように処置をされようとしておるか。あるいはそういう訴えを聞かれたかどうか、そういう点についてお二方からお聞きしたいと思います。
  160. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 ただいま御指摘の事件でありますが、実は本日午前御連絡があるまで、私のほうには何ら報告がなかったのであります。御連絡がありましたので至急現地に照会いたしましたところ、本年の二月十九日に神戸地方法務局の姫路支局に大体御指摘のような申告があったわけでございます。もしそういう事実がありとしますと、これは差別的な言辞による名誉侵害の疑いが十分にありますので、慎重に調査を遂げまして、なるべく早く結論を出したい、かように考えております。
  161. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 お答え申し上げます。  本月の十八日、神戸新聞にただいま三木委員が御指摘になりましたような記事が出て、かつ、二十三日のアカハタにもかなり詳しい記事が出まして、いま御指摘のA一尉という、実名も実はわかったわけでございまして、私ども一昨日から現地姫路並びにそこで指摘をされております静岡県の富士学校等に調査員を派遣いたしまして、徹底的に調査をする態勢をとっております。  申し上げるまでもなく、差別感情等が部隊のような組織体にもしありますれば、これは団結を乱る一番困った問題でございますので、私どもとしてはどんなことがありましても真相を究明して、そういうような感情の一掃につとめてまいりたい、かように思っております。調査が仕上がるまでお待ちいただきますようにお願いをいたします。
  162. 三木喜夫

    三木(喜)分科員 お二人からああいうような表明がございましたので、私それにつけ加えて申しておきたいことは、富士自衛隊ではこのことがないというようなことを言っておる。そうすると、これだけ悲痛な問題として、たまらなくなってこういう訴えをされた人の行為が、うそかという疑惑を世間にばらまくと思うのです。そこで、富士自衛隊のほうも調べられたかどうか、これが防衛庁としては一番大きなキーポイントだと私は思うのです。よく調べてみる、ではなくて、すでに調べたのですよ。姫路から問い合わせたときには、ないと言っている。しかしながら、現実にこういうことをやられたと、悲痛な気持ちで訴えておる。私はまさかうそじゃないと思う。それがなぜこういう大きな組織の中では隠されていくか、こういうところに非常に疑問があるわけです。その点はどうですか。
  163. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘ございましたように、うやむやのうちに葬られるというようなことがあってはまことにゆゆしいのでございまして、私どもは事実を事実として究明しないで隠蔽するというようなことは、全然考えておりません。  また、そこの新聞に指摘してございますが、当時連隊の長が富士学校に照会をしたという事実の存否でございますが、当時の連隊長はすでにやめておられるわけでございます。なおまた、当時照会をした先の富士学校の担当者も全部かわっております。したがって、その事実は私どもが一昨日から、新しい調査員に命じまして事実の存否を確かめるしか方法がございませんので、最初の振り出しに戻りまして調べ直しをしておるという状況でございます。
  164. 三木喜夫

    三木(喜)分科員 そういうところで、まだ調査がはっきりしないという理由はわかりました。  そこで、御本人は政党の介入は欲しない、このようにおっしゃっておりますので、これは政治の問題として、しかも基本的な人権の問題として私たちは取り組んでいきたいと思います。社会党としては、これは御本人に迷惑をかけないようにして取り組んでいく心組みでおるわけであります。そこで法務省においても、人権擁護局におかれても、ひとつ十分国民が納得せられるように、こういう問題で泣いておられる方がたくさんありますし、これは日本の国にいまなお残っておるひとつの恥部です。こういう恥部を早くなくさなければ、いま青少年の不良化の問題をどうするかと言っておって、一方では恥部はそのままむき出しにしてほっておく、これでは困りますし、こういうようなものは、そのままほってある、相談も一ぺんもせられたことはない、もうけ主義的な、強い者勝ちになっておる、これでは困ります。どうかそういう立場から、これを納得のいく御調査をしていただいて、後日また国会に御報告を賜わるようにお願いいたしまして、時間も超過しましたので、ことば足らない点がたくさんあったと思います。率直なことを申し上げて失礼な点もあったと思うのですが、それはお許しいただきたいと思います。  以上をもちまして、私の質問を終わります。
  165. 植木庚子郎

    ○植木主査 川俣清音君。
  166. 川俣清音

    川俣分科員 法務省にごくわずかな時間をさいてお尋ねしたいと思うのですがまず第一に法務大臣にお尋ねしたい。   〔主査退席、八木(徹)主査代理着席〕  なかなかむずかしい質問になるかもしれませんが、農林省が所管しております保安林は、公有財産と見るのでありますか、あるいは事業財産と見ますか、あなたの見解をお聞かせいただきたいと思います。というのは、山形の問題に入るわけですが、国有林野特別会計で管理しておる財産で、これは明確じゃないのですが、明確にする必要があると思うのです。というのは、保安林整備臨時措置法によりますと、保安林は公共性が非常に高いものだということで、公有財産とは説明しておりませんけれども、他人の財産を簡易に取得するために、公共用の財産として買い取るという方向を打ち出しておるわけです。そうすると、公共財産のようにも見えますし、台帳面でいくと、国有林というものは民有林とは違って、保安林という指定をしないでも当然国の施策に沿って管理するのであるからして、あえて保安林という名前はつけておらない。ただ管理上は第一種財産、こういうふうに名づけておるわけですけれども、そういうところにたまたま事件が起こったわけです。そこでこの点をお尋ねしたのです。  なぜ私が公有財産かあるいは事業財産かと聞くのは、この管理の規定が異なるわけです。そこでお尋ねしたわけですが、質問の要点は、あるバス会社とある興行師が山形の蔵王にリフトをつくるということで、国有財産の賃貸を願い出たわけです。御承知のように、一方は保安林地域にあるために、保安林を解除しなければ貸し付けが不可能でございます。したがってこれは所属長官だけでは処分できませんし、大蔵大臣と協議を要することはもちろんのこと、保安林解除の公聴会等を開かなければ、規定の存するところ解除できないし、貸し付けもできないわけでございます。一方のバス会社のほうは保安林でなかった。片方は保安林地域であった。蔵王というところは、御承知のように国立公園にもなり、水源地にもなっておりまして、保安林地帯でございますが、たまたま保安林地帯を一方から貸し付けを願い出た。一方は保安林地でないところを貸し付けた。一方が早くできた。そうするというと、何かくさいことがあって早くやったのではないかというところの問題が起きまして、これを告訴したりなんかしておったわけですが、収賄等が行なわれたのではないかというようなうわさもあったようでございまして、これに基づいて検察庁が発動することは、これは当然問題ないと思うのです。ところが、この境界をあえて移したということが問題なんですね。わざわざ、貸し付けたくないので境界標を保安林地域のほうへ拡大していった、保安林を拡大したということが問題のようでございます。そこで検察庁は、証拠だということでこの標識を持ってきたわけです。境界標を参考に持ってきたという事件があるわけです。私はその内容を、どららが正しいか、刑事事件については関係しないのですけれども一体国有財産の増減表というようなもの、あるいは国有林——御承知のように、国有財産法というものがございまして、境界争いというものはなかなか困難なものです。あなたの地方法務局でも、境界争いの問題についてはかなり手を焼いておられるほど不明確なものです。ことに山というような地域になりますると、どこが境界であるかというようなことが非常に困難なのです。いまおそらく、民事事件でも、全国の裁判所に起こっておる事件で、境界事件が一番長く尾を引いて未解決の問題であるし、また係争の問題になっていると思います。なかなか片づかぬ問題である。それほど境界というものについては、なかなか争いがある、民間にもあるし、国有林と民間の間にもあります。したがって、地方財務局ごとに境界の査定をするに困難でありますために、あえて国有財産審議会の中に境界査定の特別部会をつくっておって、その部会の決定がなければ動かせないという形式をとっておるわけですね。それほど厳重に国有財産というものは守られておる。また御承知のように、国有財産を取得してそれを保全する上からは、国会にもその増減表を出さなければならないし、あるいはやかましい規定に基づいて、地番やあるいは境界や図面をつけて国有財産を保存しておることになっております。そういうことに関係なくかってに標識を動かしたのは越権行為だ、こういうことで取り調べを受け、留置されている。その証拠だということで標識を持ってこられたらしい。これはあるいは営林署の者も行き過ぎかもしらぬけれども、標識を動かすなんて、大蔵大臣の許可あるいは行政長官の許可なしに境界を動かすというようなことが行なわれておるとすれば、これは重大な問題ではないかと私は思いますが、大臣、どうお思いになりますか。
  167. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまのお尋ねの事件につきましては、山形地検に、有限会社北都開発商会というところからの告訴に基づきまして、いわゆる蔵王お釜リフトの建設をめぐる山形営林署長等に対する職権乱用等の事件として告訴されたものでございます。その事件の捜査の過程におきまして、裁判所の令状によりまして、ただいまお話しのようなものかと存じますが、石標を押収したというような事実はあるようでございますが、なお詳細の点については目下捜査中でございまして、事実そのものははっきりいたしません。ただいまおっしゃいましたような事柄については、裁判所の令状によって行なったことのようにいまのところは判断されますが、それがどういう事情によって、どういう必要によって行なわれたかということにつきましては、詳細判明いたしておりませんので、いずれ調査をいたしたいと思っております。
  168. 川俣清音

    川俣分科員 これは、内閣を含めて行政の事務なんですね。境界をどこにするかというのは、行政の範囲に属すべきものなんです。もしこれが裁判が許されたなら、裁判所が意見をつけて国有財産の増減表を出さなければならないでしょう。出しますか。出せないでしょう。これはどうするのです。増減表をつけなければならない。去年の報告事項と違うのですよ。内閣はどう責任を負うのです。減ってくるのでしょう。国会に出された報告は、依然として前のとおりの報告ですよ。この責任はどこが負うのです。農林省は、司法者がかってにやったことだから、私のほうは増減表を出さない、私のほうは依然としてもとどおりだと言うと思う。検事局は、いや減るべきだと、こう言うのでしょう。そういうことに関与してくること自体がおかしいのじゃないですか。司法と行政とはっきり分離しなさい。その責任の所在がはっきりしてるなら、境界の問題の紛争に入るということは非常におかしいと言わざるを得ないのじゃないでしょうか。ほかの問題なら別ですよ。非常にむずかしい問題であって、裁判が確定しても、いろいろまた抗告などをして、なかなか最終までにきまらないのが境界争いであることは、十分御存じのとおりです。いまの民事事件をたくさんごらんになりましても、境界争いというものは非常に紛争の種であります。それほど困難である。裁判が確定しなければ、境界というものはきまらぬ。御承知のとおり、そのために、国有財産におきましてもわざわざ国有財産審議会というのを御存じでしょう、これは法的に設けられている。そこに境界査定の部会まで設けまして、それでなければ行政長官といえども左右できないというものを、検察庁が自分の見解で、いやこれは動かしたのだというような見解を持つことは、こういう査定を経てからやるべきであると思うのです。面積を縮小するようなことを、どうして検察庁ができるのです。明らかに国の財産として登記されているもの、しかも国会に報告されたものが、それが間違いだという判断が、一体できるのですか。この点について。
  169. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま申し上げました境界標につきまして、これを営林署関係者が移動させたという事件でございますので、その境界標そのものを移動させたかどうかという事実を明らかにする必要があるわけです。ただし、境界標そのものを移動させたかどうかということと具体的な境界が変わったということとは、これはもちろん別問題でございますので、具体的な境界は変わりません。ただ標識の問題として、その標識を動かしたかどうかということが事件の焦点になっておるわけでございますから、そういう措置をとったものというふうに現在の段階では考えております。
  170. 川俣清音

    川俣分科員 境界標と境界とは違うのだと言う。これは、私どもに来ておりまする国有財産の現在帳は、前の境界標識に基づいてよこしておるものである。変更になったということはない。そうすると、国会に報告されたものは違うのだという見解は、検察庁はできるのですか。私は、国有財産のあり方からいって、この点はあくまでも法務省の見解を聞きたださなければならぬ。国会に報告されることがみんな間違っているんだということになったら、審議できませんよ。たいへんなことですよ。一々検察庁に聞かなければわからないということになったら、審議できません。そこまで一体法務省が関与してくるつもりですか。それならそれなりに私ども考え直さなければならない。
  171. 津田實

    ○津田政府委員 ただいま申し上げておりますのは、境界標自体を動かしたかどうかという事件でございます。境界標を動かしたことが何らかの犯罪にもしなるならば、これは当然そのことによって刑事事件として起訴される。そういたしますと、境界標が動かされたものであるか動かされたものでないかということは、当然刑事裁判所で判断される事項でございます。しかしながら、刑事裁判所が、動かした結果がこうだとかりに言ってみても、それが具体的に境界が動いたことにはなりません。具体的の境界につきましてまた争いがあれば、これは別の民事事件なり行政事件として判断されるわけでございます。
  172. 川俣清音

    川俣分科員 境界標というものは、そこにあって標なんですよ。これは普通のものと違うんです。境界標なんです。したがって、写真をとっておいて、動かしたとか動かさないとか判定するなら別ですよ。国の区域を変更するんですよ。あなた方が不明にするわけです。標識があるのを取るわけですからね。写真をとっておけばいいじゃないですか。動かしたか動かさないか、全体から見ればわかるでしょう。  私が問題にしているのは、国有財産の境界をきめておる標識を検察庁が持っていたということですよ。これは明らかに行政に関与していることです。物を盗んだ犯罪などと違うんですよ。境界標ですよ。そこにあって初めて価値のあるものなんです。もとのところへ置くというけれども、どうしてもとのところに置けるんですか。測量の十分な知識も持たない、全体の三角点からのにらみもつかない検察庁が、もとのところへ置くといったって、どこに置くのですか。標識というものは、そこへ置いておいて初めて価値のあるものなんです。再び動かしたならば、寸分違わないでもとのところへ置くことができるんですか。  だからして、面積が違うという観点に立たなければ動かせないはずなんだ。ここに置いたことが誤りだったということになれば、そこのままにしておいて初めて誤りか誤りでないかがわかるわけなんです。自分みずから動かして、これは動かしたものであるという判定がどこにできるんですか。そのことは、国有林というものに対する何の理解もなしに、とにかく何かやれば出てくるだろうというような見解でやられれば、これは別ですよ。しかしながら、国有林がもし悪いなら悪いなりに別な処分があってしかるべきだと思う。あるいは買収されてどうしたとか、動かしたとかということがあれば、それはそちらのほうを責むべきです。境界標をなぜ動かさなければならぬのか。こんなことをしたら、国有財産というものは守れませんよ。守れないのに、あえてなぜあなた方は動かさなければならないのか。これは明らかにあなた方の職権乱用ですよ。この点、どうです。
  173. 津田實

    ○津田政府委員 問題は、境界標を動かしたかどうかということが本件の刑事事件の焦点でございますので、境界標を動かしたかどうかということが問題になることはただいまお話しのとおりでございます。しかしながら、境界標自体は、境界標があることによって境界がきまるのではなく、本来その境界標があるべき場所にあるから境界がきまっておるというふうに考えられます。そういたしますと、その境界標を証拠物件としてかりに押収をいたしましても、その措置について、検証その他の方法によってあり場所が明らかとされておれば、必ずしも不当の措置というわけにはまいらないと考えております。
  174. 川俣清音

    川俣分科員 そんな詭弁はだめです。動かしたか動かさないか、そこに置いておいて初めて向こうは動かしたんだという判定ができる。それを持ってきて、何が判定できる。自分で動かしておいて、これは動かしたものだという判定がどこでできるのですか。そこへ置いておいて初めて動かしたか動かさないかという判定になります。みずから動かしておいて、これは動かしたんだといったって——あんたのいま乗ってこられた車をここに貫いた、それを動かしておいて、いや違うといったっておかしい。そのまま現場に置いておいて初めて、これは動かしたんだという判定ができる。これは常識ですよ。法務省というものはそれほど常識のない者が集まっておるのですか。みんな人間の常識からはずれた者の集まりだというなら、それはまた別問題です。  境界標については、国有林としてはほとんど致命的なものなんです。動かすと行政的処分ももちろん免れない。そういうものですよ。動かしたか動かさないかというのは、国有財産審議会できめるべきなんです。それも一人や二人ではいかぬというので、学識経験者、権威者を集めて、境界については特に厳重なる規定を設けて、境界をあらためて査定をするということになっておる。それに基づいて国の財産の増減表ができる。裁判所の決定や、あるいは検察庁の決定では国有財産を改正できませんよ。どういう手続をとるのですか。おそらくいままで手続をとられていないでしょう。これは誤謬のおそれがあるからという指摘も何もない。依然として大蔵省から出てくる国有財産の現在表にはもとのとおり変わりなし。国が、政府が責任をもって国会に出したものは誤りなしというのに、検察庁が誤りだというのはどこにあるのです。誤りであるかもしれないというのはどこにあるのです。まだ誤りとはきめていないでしょう。これには取り調べ中のものがあるから、誤りがあるかもしれないということを、文書をつけて国会に出しなさいよ。高橋さん、出されますか。これは内閣全体の責任ですよ。法務大臣の責任です。私、事件の内容を言っておるのじゃないですよ。
  175. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 私もそうした関係はあまり詳しくないのですが、きわめて常識的な返事になると思いますけれども、境界標を動かし、要するに検察庁のほうの犯罪の捜査上、裁判所の手続を踏んで動かした、持って帰ったといたしましても、この形の上ではその境界というものは変わっていないんだという判断で、おそらく大蔵省から書類が出ておるものと思います。私のほうでは、捜査の必要上それをやったが、いまのお話の境界が変わっておるかどうかといえば、まだ変わっていないんだという判断で、大蔵省がやったことと考えております。  現実には、いまあそこの場所に、一分一厘違わぬところにそれが立てられるかといわれますと、これは実際問題としまして、なお専門家にも検討してもらわなければいかぬと思います。
  176. 川俣清音

    川俣分科員 おそらく専門家に鑑定してもらわなければもとのところへ置けない、それは常識でもそうです。境界というものはそれほどむずかしい問題であります。山の中に家とか何かあって、あれから何軒目だということじゃないのですから、山の峰ですから、これは非常にむずかしいところにあるわけです。それをそのままにしておいて、写真でもとっておいて、調べてみたところが境界が変わっておる。これは移動したのだろう。これは、どこへ境界標を打ったかということは、林野庁でわかっておるのです。図面にちゃんと説明されておるのですから。おそらく、そこにあったかなかったかということがあとになって問題になったんでしょう。それをわざわざもし動かしておいて、悪意にとれば、別なところへやっておいて、そうして、いやおれはもとのところへ置いたということを負うということになると、これはたいへんな争いになってまいります。職権を乱用したということなんですね。犯罪になっておるのは、動かしたという、動かせないのに動かしたという職権乱用だというのです。  高橋さん、初めはそうじゃないのです。何か買収でもされてそっちへ動かしたのだろう、便宜をはかったのだろうということだったらしいのですが、だんだんやっていても、片一方は保安林で、これは解除しなければできないことがだんだんわかってくると、いやあれは標識を動かしたのだということに変わってきたようです。初めはそうでなくて、バス会社に買収されてあれだけ早く特別便宜をはからったという捜査であったようです。バス会社のほうに買収されて特別な便宜をはからって早く許可をした、おれのほうはおそく許可をした、というのが問題の争いのもとなんです。争いはそういうことなんです。だんだんやっていくと、その争いが成り立たなくなったものですから、職権乱用で告発した。こういう形になっているようです。  相手を職権乱用だというからには、みずから職権乱用なんかすることはないようにしなければならないと思うのです。私は、この間、会計検査院からみんな聞いていますけれども、会計検査院としては、標識など動かすことは適正ではないと思うという答弁をしております。それはどこが正しいかということを決定してあとに初めて動かす権限が生まれてくる、主管大臣に止まれてくる、動かす権限は主管大臣だけだというのです。そういう告示をしなければならない。そういうものを、自分だけの考えで、検察庁は権限を持っているかもしれませんけれども、それはやはり乱用じゃないですか。相手が乱用だといいながら、自分みずからが起用していることになるのじゃないですか。  こういうふうに、何か犯罪をこしらえてやれというふうな考え方でやるということになりますと、私ども国会としては、そんな余裕のある金はございませんから、検察庁の予算を削らなければならぬ。そんな遊びごとのようなことで国費を使われてはたまるものではない。そういうことになりはしませんか。国の治安を保護してもらうために検察庁を置きまして、国民の生活上不安なからしめようとするのであって、わざわざ犯罪をこしらえて、しかも、わからないのに犯罪をこしらえてやるなんという、そんな余裕が法務省にあるわけがないと思う。あれば、それは余り過ぎるからそういうことをやるのだろうから、削らなければならぬということになると思う。私は、予算の本委員会でどうしても主張しなければならぬと思って、いま聞いているわけです。もっともっとやらなければならぬ仕事があるときに、こうした自分がはっきりもしない、自信もないものをあえてやるような余裕があるのかどうか。この点高橋さんにお聞きしたいですね。しかも、その判定についてはわざわざ国が予算を組んで、境界の査定の委員会までつくっておるのです。その審議を待てば  いいじゃないですか。
  177. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 検察がわざわざ犯罪をでっち上げるためにやっておるというようなことは、私は毛頭考えません。検察はその立場に従って、職務に従って忠実に行動いたしておるものと御了解をお願いいたしたい。  境界標の問題につきましては、そうした必要からやったものと思いますが、いま初めて実は承ったようなわけであります。
  178. 川俣清音

    川俣分科員 私、ここで、実は身の危険も感ずるから、あまりはっきりしたことは言いたくないのですけれでも、このバス会社も、とかく県庁や何かをろうらくするというようなうわさがございますから−私は必ずしもそれに加担するわけではありませんよ、そういう意味でなくして、この佐藤某という人は、私たまたま秋田の営林局に行ったときに、許可がおくれておるというので、だだ踏んで、あそこであばれたことがある。そのときに何と言ったか。おれは高松宮が応援しておるのだから、君ら手をつけるな、というたんかを切ったのを私は聞いておるのです。これは組織暴力団であるかどうか別にして、ばく徒として有名であることも事実です。これは興行師になっておる。そして宮様をかついでおる。あとで宮様が顧問になっておるのです。初めは興行師であったのが、観光会社をつくって、顧問に宮様をいただいておるわけです。しかし、これはばく徒としての前科があるわけです。秋田の営林局へ行ってあばれたんです。警察を呼んできたことも明らかです。宮様の名前を言ったので警察がたじろいでいたということも事実です。私がおる間です。  したがって、単なるリフトの場所の争いでありますならばこれは別です。境界を動かしたということをもって告発されたからといって、その境界標を動かすというようなことまで追随するとすれば、これは私は非常に危険なことだと思うのです。大臣、そう思いませんか。あるいはその佐藤さんというのはりっぱな人かもしれません。たまたま興奮してあばれたのかもしれませんよ。ばく徒から足を洗って興行師になったことは事実です。明らかです。りっぱになったのだから文句はないだろうと言われればそれきりです。それが問題を起こしたのを、それに乗ったのではないでしょうけれども一もしも収賄によって特別なふうに相手方に便宜を与えたなら、そういう方面で大いにおやりになるならけっこうです。これはどんなにきびしくやられてもけっこうだと思うのです。境界を動かしたということに乗って、それに乗せられたということはどういうことなんです。動かしたであろうということはどういうことなんです。まだ、これは裁判が確定してから境界を動かしたのだ、決定してから動かしたなら別ですよ。それを犯罪の容疑ありということで、その証拠物件ですよ。容疑があるというようなことで、国有財産の標識を検察庁がそういう認識で動かされるということになったら、国有財産なんて守れませんよ。ここの国有財産の標識が間違っておるのだ、境界が間違っておるのだ、犯罪があるかもしれぬからといって、一々動かされたらどうなりますか。  私の言っておるのは、そのリフトを許可したとかしないとか、そういう問題じゃないのですよ。私は国有財産について非常な関心を持っておるのです。それだけなんです。この標識というものは、昔は木の柱であったものを、今度は石の柱にして、なるべく動かせないようにしてある。動かしたか動かさないかということは、その下の土壌を調査すればわかる。持っていったからといってわからないのですよ。むしろそこに置いておいて、下の土壌の変化を見なければならない。土が動いたか動かないか、そういうものを見なければならぬのですよ。大きな石でしょう。その石が、掘って入れたとすれば、その下の土壌の変化を見なければ、動かしたか動かさないかわからない。これは常識なんですよ。この標識を動かしたか動かさないか検査するのは、石を見るんじゃないのですよ。石の下にある土質を調査するのです。標識を調査するんじゃないのです。そのくらいことがわからないでやったとすれば、これはよほど能力がないというか、私の言うように、ひまがあってやったとより見られない。私はそういうことないと思いますよ、だけど、全く常識をはずれた話なんです。定石がここにあるでしょう。それを動かしたか動かさないかを見るのは、幾ら石を見たってわかりません。石の化学反応を見たってわかりませんよ。これは大理石であるとか、あるいは御影石であるとか、そういうことはできるでしょうけれども、動かしたか動かさないかということは、その下の土壌を見なければわからない。土壌が動いておるかどうか、土が動かされておるかどうか、そういうことでしょう。検事局はそのくらいの頭はあるはずじゃないですか。そうでなければ犯罪捜査なんかできやしません。  標識を持っていって、だれが一番喜んだかというと、その佐藤某なる者が一番喜んだ。ほら見ろ、おれの言うとおり標識を持っていったじゃないかといって、いばっておるじゃないですか。これは何なんです。おれの言うとおり持っていったというのは、どういうことなんです。新聞にも出ているでしょう。おれの言うとおり持っていった、おれのほうに誤りはないんだ、と言っておる。しろうとの話に乗せられる結果になったんじゃないでしょうか。どうですか。石の下の土の変化を見て初めて動かしたか動かさないかがわかる。新しいか古いか、そういうことが動かした動かさないかの基礎になるんですよ。それを、石を持っていって、この石が動かした証拠だなんていったって、動かしたか動かさないかということは、そこに石があって初めて動かしたか動かさないかが問題になるのでしょう。どこへ持っていったって、世界じゅう持って歩いたって、これは動かした石だ動かさない石だということは、それだけではわかりません。世界のどこへ持っていったって、この石は動かした石だ動かさない石だということがわかりますか。そこに置いておいて初めて、科学的な調査をして、下の土壌やその他のものを調べて、雑草の根等を調べて、これはよほど前にすでに雑草の根が腐っておれば、これは何年ぐらい前に動かしたものだ、これは上に置いたものだということがわかるはずなんです。これは常識がないじゃないですか。刑事局長、どうですか。
  179. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまのお話しの問題は、令状によりましてどういう事情でそういう措置をしたかは、先ほど申し上げましたように、いまわかっておりませんので、調査をいたしますわけですが、一般論としてということですと、本件については具体的事情が非常に問題になるわけでございますので、一般論としてはお答えはいたしかねると思います。
  180. 川俣清音

    川俣分科員 私は一般論としてまずお聞きしたいのですよ。一般論というのは常識ですよ。これが特別に一般からはずれているんだというなら別ですよ。一般論というのは常識論です。定説なんです。定説を変えるようなことがあることもありましょう。それはこういう事情だということになる。一般論も言えないというところに非常識さがあるということになるんじゃないですか。私はそう思う。一般論というのは常識論です。しかし、常識はそうであろうけれども、これは特殊事件だと言われるなら、それでもいいですよ。それならそれでもいいです。しかし、一般論が言えないという、そこに時勢から少々離れておる、常識以外なるものがあえて横行しているということじゃないかと思うのです。国民がまかしているのは、常識的な範囲でまかしておる。非常識なことやることをまかしてはおりませんよ。私はそう理解する。そんな非常識なことをやることをまかしてはおりませんよ。三権分立とはいいながら、常識の範囲で行なわれておると理解しておる。高橋さんどうですか、もう一度。
  181. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 先ほど来申し上げましたように、検察当局はこれは正しいと考えて捜査をやっているわけなんです。正しいと考えてというのは、自分の考え方が正しいと考えまして捜査をやっておるわけでございます。したがいまして、特定の人からだまされたり、扇動されたり、というようなことはわれわれは考えたくございません。また、そうあるべきものではないのでございます。  いまのこの標識の問題ですが、これは証拠物件としてどういう価値があるか、これは捜査中の問題で、当該検事の考え方というようなものがわからなければ、それが常識に当たっているか反しているかということは、ここでにわかにお答えをすることは適当ではないと考えますが、いま申し上げますように、標識を動かしておりましても、国としてはやっぱり変化はないのだという判断で国会へ報告が出ているもの、こういうふうに考えます。
  182. 川俣清音

    川俣分科員 おそらく検察庁は、国有財産法を知らないんじゃないでしょうかね。権限のある者が越権行為を起こした場合は、これは当然犯罪になる。何も知らない、権限のない者が、山へ行って、もしも標識をころがしたからといって、あるいは抜いたからといって、これは職権乱用になりますか、ならないでしょう。これは職権乱用にならない。これは標識破棄罪であって職権乱用にならない。これは職権があるのかないのかわかりませんが、私はそこまでは問題にしませんけれども、大体標識というものは、何人も動かされないものとしてあるわけなんです。たとえ検察庁といえども動かされないものとして存在している。私はそう理解をしておる。動かし得るものは、境界査定部会の決定を得て大蔵大臣が最終的に決定をするものだ、こう思う。その決定もないのに動かしたからといって、何も効力のないものを動かしたからといって、何が問題なんです。動かして効力のないものだったら、何で動かして悪いのです。け飛ばされた場合は、これは効力がないんですね。いまはけ飛ばされるような小さいものはなくなっているが、背はずいぶんけ飛ばされたり、抜かれたりしたものなんです。それは標識破棄でやられる。それだからといって標式が変わるわけではない。問題は石とか木とかにあるんじゃない。権限のある者がやったかやらないかということですから、権限がだれにあるかということがわかればいいのです。職権乱用か乱用でないかというようなことが問題になる。そういうほうから勉強なさったらいいんですよ。全く勉強しないでやられるところに私は疑いを持つ、こういうわけなんですよ。自信を持ってやられたかどうかわからないようなことをおやりになるから疑惑を持つ、こう申し上げておる。私も疑惑を持ちたくないんですよ。ほんとうに自信を持ってやられたのかどうか、これは疑問の点が出てくるから疑惑を持つ、こういうことなんですよ。  これについて、私は前に高橋さんにも廊下で話をしたことがあるんですけれども、私はこれを犯罪にしたくないとか、そういう考えは毛頭ない。悪い者を処罰して悪いとか、そんな弁護論では全くないのです。少なくとも国有財産のあり方について法務省ももっと真剣に考えてほしい、こういうことなんです。国益を保護する上からいっても、国有財産の保全についてはもっと考えてほしいというのが私の結論なんです。ただ犯罪を見つけるためにというようなことだけでなしに、国有財産をどうして保全するかという使命に徹してもらわなければ、そういう公務員については、この予算の不足のときに、その公務員としての待遇を与えるわけにいかないんじゃないか。国の財産を保全してもらわなければ、それは犯罪のためには何でもいいんだというような考え方をされたのではたまるものじゃない、こういうことなんです。そういう意味ですよ。個人の財産についても保全してもらわなければならぬことはもちろんであります。そのために保安関係がありますことはそのとおりです。しかし、国の財産についてももっと非常な関心を持ってもらわなければならぬじゃないか。わずかの犯人を見つけるために国に大きな損失を与えるようなことがあってはならないじゃないかというのが私の結論なんです。高橋さん、どうですか。もう少し国有財産法というものを勉強してもらいたいのです。この点ですよ。
  183. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 たびたびお答えしたとおりでございますが、事件を捜査いたしまするために、おのずから限度がある、国の非常な利益を害するようなことをやるということは、これは逸脱した行為だと思います。いまの問題につきまして、それに該当するかどうか、これはなお検討を要する問題だと思います。
  184. 川俣清音

    川俣分科員 法務省は責任をもってこれは調査されたいと思うのです。犯罪の調査でないのですよ。そういうことを行なうことが常識になっていることが私は非常におそろしいのです。なぜ動かさなければならなかったのかということを——犯罪は犯罪で別ですよ。別にその標識を持ってこなくても、犯罪捜査はできるのです。だから、犯罪捜査のことを制約する気はないのです。そういう標識を動かさなければ犯罪の証拠にできないんだという、その不確実さですね、そういうふうにして国益を侵してもいいのかどうかということについて、もっと真剣に考えてもらわなければならないという点、この報告を私は求めたいと思います。そうでなければ、これは国会としても法務省の予算について十分考えなければならぬと思う。国益を侵すものを擁護する必要はなし、そういうものに俸給を払う必要もなし、存在することも私は不必要だと思うのです。国益を侵す者を、犯罪者と私は言いませんけれども、国で行政的にこれを擁護する必要はないと思う。だから十分調査してほしい。個人の責任を追及するというような意味じゃないですよ。法務省総体でひとつ考えてもらいたいものだ、こういう意味なんです。一ぺん調査にやってください。どうですか。
  185. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 国会へ調査の報告をせよというおことばでございますか、ちょっと質問がはっきりしませんから、お伺いいたします。
  186. 川俣清音

    川俣分科員 私の質問としては、調査をされた結果に基づいて私ども意見をさらに述べたいと思うから、調査を願えないか、法務省の見解を明らかにしてほしい。いまここで明らかでないから……。
  187. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 そうなってまいりますと、具体的事件にはさわらないと考えると申されますが、おのずから現在捜査中の事件を調査せねばならないことになるわけでございます。捜査中の内容でその証拠品につきまして云々ということは、これは御期待に沿うようなお答えはできないんじゃないかということを私は申し上げざるを得ないのでございます。なお、全般的の問題としましては検討をさせていただく、先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。
  188. 川俣清音

    川俣分科員 私はあくまでも調査を要求するが、犯罪があったかなかったかという調査でなくして、そういう犯罪捜査のときに標識を動かすようなことが妥当なものであるかどうかという統一見解を法務省でやってほしい、こう思うわけであります。この犯罪があったかなかったか、あるいはどういう程度の犯罪か、そういう内容の調査ではもちろんないわけです。国の境界標なんというものを犯罪捜査と称して動かすことが一体妥当か妥当でないかというような見解を持つことは、決して犯罪には影響ないと思うのです。
  189. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 そうした抽象的な問題につきまして調査をいたすことは、もちろんこれは検討するという中に含まれたことと御了承願っておきます。
  190. 八木徹雄

    八木(徹)主査代理 次に、吉田賢一君。
  191. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 これから御質問をしたい問題は二つございますので、時間の関係もありまするから、できるだけ要点をお述べいただくように、よろしくお願いいたします。  一つは、昨年の暮れ、十二月二十二日に東京都の葛飾区葛飾郵便局内に起こりました暴行傷害の問題でございます。暴行傷害は毎日のごとく新聞も伝えておりまするし、またほとんど数知れぬほど起こっておるのでありますけれども、しかし、郵便局内という重要な公務の場所におきまして、公務員が暴行傷害を、しかも同僚の公務員に集団的にこれを加えたということは、これはいろいろな見地から見て、見のがすことのできない重要性を持っておると思うのであります。そこで、刑事局長に概要をひとつ御説明いただきたい。
  192. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねの事実は、警察送致の被疑事実によりますると、被疑者は佐藤某外四人でありまするが、それは葛飾郵便局の職員であり、全逓信労働組合東京地本葛飾支部の執行委員であったわけです。昭和三十九年十二月二十二日午後五時過ぎごろ、同支部を脱退いたしまして、郵政労働組合に加入して葛飾支部を結成いたしました小林某ほか二名を、葛飾郵便局内において多数の組合員とともに取りかこみ、共同して暴行を加え、その際に、右のうちの一人に全治約一週間を要する打撲傷を負わせた、こういう事実のようでございます。この事実につきまして、本年一月二十八日に所轄警察判から送致を受けまして東京地方検察庁においてそれを受理いたしておりますが、目下捜査中でございますが、早急に完結すべく努力をいたしておるところでございます。
  193. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 ただいまお述べになった暴行傷害事件に関連いたしまして、十二月二十八日、二十九日、さらにまた、さかのぼって同月の中ごろ、十四、五日ごろから二十日過ぎに至りますまで、同様に同じ関係の加害者が、局員が退局いたしますると、つまり郵政労働組合員が定時に退局いたしまして家路につこうといたしますと、うるさく尾行いたしまして自由を妨げたということ、こういうのも、一つあり方としまして重視すべき傾向なわけでございますが、これは直接腕力をふるいもしくは傷害を加えるという方法ではないのであります。しかし、人によりましては、これは非常に巧妙でありますけれども、自由を束縛すること重大なものでありますが、この点につきましてはいかがでございましょう。
  194. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねの事実につきましては私のほうは承知いたしておりません。何ともお答え申し上げかねます。
  195. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 私はその被害者から直接聞いたのでございます。定時に局を出ようといたしますると、一人々々尾行がついてくるそうであります。尾行がついてきて、察知いたしまして横町へ曲がると、また横町へついてくる。商店の表に立っているふりをすると、またついてくる。すれすれについてきて、あまりうるさく言うものですから、ついに警察に飛び込んだ。警察に飛び込んで公安の係に事情を訴えますと、現行犯として逮捕されてそして取り調べを受けたという事実も説明されましたし、あるいはまた、その次の段階にはもっと巧妙になって、いや、あれは夕ベの散歩であって、たまたまそで触れ合ったようであるからと、こういうことだそうですが、これは人体に直接危害を加えなくても、やはり自由を束縛する意味におきまして重視すべき一つの傾向でないかと思うのです。もしこのような方法が放置されましたならば、これは労働組合運動の上に一種の脅迫が加わっていて、自由公正な組合運動が阻害されてくるのではないだろうか、こう思うのでありますが、その点についてはどういうようにお考えになります。
  196. 津田實

    ○津田政府委員 先ほども申し上げましたように、その事実については全く承知いたしていないわけでございますが、一般的に申しまして、いかなる事柄にしろ犯罪に該当することでありますならば、もちろんこれについて適当な措置をとるべきでございますし、また当該犯罪が直接警察等に認知されない場合は、告訴なり告発なりの方法があるわけであります。それによりまして警察なり検察庁にわかりましたことに関しましては、十分の捜査をいたしまして適当な措置をとるべきものというふうに考えておる次第でございます。
  197. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 これらの人の被害者の説明によりますと、Aクラス、Bクラス、Cクラスに分けて、クラスには直接危害を加える、Bクラスにはそれよりやや穏やかな方法、Cクラスには説得の手段をもって臨む、こういうようなことが切々と訴えられたのでございました。そこで、最も重視すべき一つの点は、被害の重大でありました人は、一週間の傷害を受けております。これらに対する手段、方法は、相当御調査になっておると思いますけれども、全く公務員とは思われぬほどの一つの悪らつさを感ずるのであります。  大臣に伺いたいのでありますが、たとえば昨年九月末に臨時行政調査会におきましても、公務員のあり方について行政改革の意見が提示されております。それから国家公務員法によりますと、その壁頭に、公務員は民主的に行政を運営するということをもって公務員の重要な使命とし、また公務員制度の目的としているようであります。こういうようなときに、公務員相互の労働組合運動の一つの利害かあるいは対立か、そういったことによって暴力をもって相手を排撃する、もしくは粉砕するというようなことが行なわれるということになれば、これは民主的に運営する公務員の場所もしくはその組織構成というものを根本から否定するものと申さねばなるまいと思うのです。これは法務大臣といたしまして相当厳正な態度をもってお臨みになるべきでないかと思うのであります。公務員そのもののたとえば待遇を改善するとか、安んじて公務に従事し得るようにいろいろ土施策をするということと、それから厳正に規律を守って、いやしくも暴力によって職場の秩序を乱してしまうというようなことは公務員の中から絶対になくするということが必要でないか。ただにこれは法務省とか法務大臣の立場というよりも、また内閣といたしまして国務大臣の立場からしましても、これは重視すべき一つのできごととして、相当峻厳な態度をもってお臨みになることが、たとえば臨調のそういう国民的要請にもこたえることにもなるし、公務員制度の目的に沿うゆえんにもなるのですが、この点について大臣はどういうようにお考えになりましょう。
  198. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 労働団体が、組合が対立いたして、意見の相違によって暴力を一方が用いるというようなことは、いかなる場合もこれは許すことのできない非民主的な、しかも犯罪行為であると私は考えます。ことに公務員という立場でその職場においてそうしたことが行なわれるということは、これは公務員の持つ性格また秩序という、面から見まして、たいへん遺憾なところでございます。そこで、本件自体につきましては現在急いで捜査をいたしておる最中でございますから、大臣として本件に関する意見を申し述べることは差し控えさせていただきますが、抽象的に申しますれば、いまお述べになりました公務員自体の態度、そしてそれが暴力によってものを片づけるというような行き方に対しましては、これは法務大臣としてだけでなしに、内閣といたしましても厳正な態度で臨まなければならない、かように考えております。
  199. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 きょうは郵政大臣も見えておらぬのでありますが、こういったことは許すべからざる一つの傾向といたしましていまの間にこれを根絶するということが、公務員の秩序を維持する上においてきわめて重要な問題であることは申すまでもないと思いますので、高橋さんにおかれましても、閣議におきましても、どうか郵政大臣とも御相談の上、郵政省全公務員の立場のよくなりますために、これが根絶するために、その原因あるいはその実情、あるいは職務規律の上にどのような結果、影響があったのであろうかというような辺に至りますまで、法務省の立場じゃなしに、検察当局の立場、刑事事件の立場じゃなしに、公務員全体を統率する内閣の立場から、しかるべく郵政大臣とも御相談の上、適当な措置をおとりになってはいかがと思うのですが、これはいかがでしょう。
  200. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 いま捜査中の事件でありますので、もちろん、その結果を待って具体的な問題については相談をいたさなければならぬと思います。抽象的には、いま申し上げましたとおりの態度で進みたいと思います。
  201. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 結果を待ってということになりますと、もし起訴した場合には、判決の確定を待ってということになり、われわれの常識によりますと、一週間や一ヵ月で判決があろうとも思われません。あるいは一年かかるかもわかりません。二年かかるかもわかりません。公務員の正しい民主的秩序を維持する内閣の責任というものは、そのように刑事的事件の裁判的結末を待ってするというようなことだったら、これは政治じゃないのでございます。たとえば国家公務員法の七十九条、これは休職の規定でありますが、この二号によりますと、刑事事件に関し起訴された場合には休職処分に対するということになっております。起訴されたということはいまだ裁判確定じゃございません。あなたのいまの御説明によると、裁判確定を待って、しかる上というような趣旨に聞こえます。これはやはり行政ではない。また、国家公務員法のただいま読み上げた趣旨にも沿わないと思います。また、そもそもそういうようなことは内閣においてもとるべきではなくして、進んでその原因いずこにありや——たとえば、告訴、告発があったかどうか存じませんけれども、すでに検察の捜査段階に入っておるような事件につきましては、この法律の規定もあり、あるいはまた、結末を待たずしてなすべき事柄が多々あるのではないかと思います。そういうことを十分にしなければ、公務員の秩序を守っていくということはできません。もしそういうことにするならば、全国の数百万の公務員がいろいろと刑事的事件を引き起こしたようなときに、一々全部の結末がついてから内閣はしかるべく処置しますというようなことでは、これはやはり内閣のお立場を否定することになります。でありますから、これはやはりいまの段階におきまして可能な方法、適切な方法、なすべき手があれば、内閣としておやりになってはいかがでしょうか。これは郵政大臣がお見えになっておりましたらなお聞くのですが、事務当局ですから、内閣の一責任者としてのあなたにお伺いすることが適当であろうと思いますので、伺いたいと思います。
  202. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 私が申し上げましたことが若干徹底を欠いておったかと思いますが、捜査中の事件でございますから、一応捜査が終わったところで、私としましては、郵政大臣に、こういう事件なんだということをお話する、こういう立場でございます。郵政大臣がこの事件を見ていかなる考えを持たれるかは、これは別個の問題として私は考えたい、こう思います。
  203. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 一体民主的な運営の最も重要な立場にあるような人々、それから労働組合と申しますと、やはり悪を退けて世の中を正していくという立場があるはずでありますので、そういったふうに暴力ざたがあって、このように世人をひんしゅくせしめるということは、これは一体何かそういった社会的な底流でもあるのでしょうか。全体として綱紀が弛緩しているというような結果ではないでしょうか。毎日のごとくに新聞の社会面は綱紀紊乱の記事がない日はございません。これはことし一番多いという意味ではないのでありますが、ともかく郵政省所管の職場におきましてのできごとを見ましたときに、何か近ごろ流行の暴力を肯定するとか、少なくともものの解決に暴力をもってするとか、そういうような傾向が世の中にはんらんしているような感じさえわれわれは受けるのであります。こういうものを許していくというような傾向がもし一面にありましたならば、善良な国民はもうなくなってしまいます。全部が暴力に加担しなくても、嫌悪しながらもついてしまうというおそれがあります。私は役人の経験がないのですが、公務員の立場というものは、これは国会と違い、裁判所と違いまして、ほんとうに国家の権力を行使する場所でありますので——権力を行使するということは一つの力です。その力を行使するのは公務員であって、その公務員が同時に腕力を行使するというようなことでは、世の中はさかさまです。ですから、民間の暴力もさることながら、行政府の暴力というようなものは、かかる意味において私はもっと重視しなければならぬと思います。町の暴力団狩り、けっこうでございます。徹底的にやってもらわなければいけません。しかし、町の暴力は権力を持っておりません。やはり逃げ回っている立場です。けれども、公務員は権力の府にあって行政の執行をしております。ですから、その執行する立場にある者が、職場のいかんにかかわらず、暴力をふるうということは、許すことのできない、いまの時代の重大な罪悪ではないかと思うのです。こういう意味におきまして、一そう適切に峻厳な態度をもって臨むことが、その他のたくさんなざこを追い回すよりも、それは頂門の一針というよりも、ほんとうに大きな効果をもたらし得るのではないか、こう思うのであります。文芸春秋の記事なんかによりましても、女性の郵便局におけるリンチなんといって、でかでかと書いてありますが、私は郵政内部が他に比較して乱れておるというふうには思いません。思いませんけれども、いずれにしましても、官庁内の暴力というようなものが、実に珍しいことだ、不幸なことだというのじゃなしに、近ごろは少しざらに出てきたような感じさえいたします。こう思いますので、特にその点につきまして一そうの厳正な態度で臨まれんことを御希望申し上げておきたいのです。何かありましたら……。
  204. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、こうしたことはきわめて遺憾であって、こういうことが行なわれるということは、これはもう官庁としましては非常に綱紀に関することであり、またその職務を忠実に実行する、公正に実行する道ではございません。ただいま申されたことに私は同感でございます。
  205. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 郵政省の人事局長に伺いたいのですが、私は別な委員会におきまして、昨年郵政省内部のあちらこちらの局の横領事件なんかがございまして、どうかそういうあとがなくなってほしいなと思っておるときに、今度はまた方面が変わって暴力ざたになってきたのであります。やはりこれは郵政省の内部におきましても一つの企業的な仕事をやっておられまするので、その辺が何となく職場の規律を維持し、もしくは秩序を保っていくという上におきまして、上位にある管理の立場の人の弱いという面があるのではないであろうか。民主的な行政のあり方というものは個々の人の人格なり何なりを十分に尊重し、権利も尊重することはもちろんであります。しかし同時に職場の規律を厳正にするということはその一切を維持する根幹でございます。今回の葛飾郵便局の事件なり、郵便局の外において行なわれた事件なり、本田警察へかけ込んで、一一〇番へ電話をかけて、胸に一週間の傷を負わされたというような事件なり、こういうような事件がもうすでに去年の十二月二十二日のできごとでありまするから、いましばらくで二ヵ月たちます。こういうものは時を移さずしかるべく処置していくというような、打てば響くような規律維持の体制が欠けておるのじゃないだろうか、こういうふうにさえ私は思うのです。人事局はどういうふうな措置をするつもりであり、どういうふうに今日までなさってきたのであるか、この問題に対する御所見と御方針を伺いたい。
  206. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 私どもの職場で不祥事件を惹起いたしましたことはまことに遺憾に存じております。ただ、第一組合と第二組合がございました場合に、管理者の立場といたしまして、いわゆる不当労働行為というような問題もございまして、なかなか管理者が苦労する場合がございます。ただ、少なくとも本件に関しましては、私どもの調査によりましても、たとえ勤務時間外の行為であり、また行なった場所等につきましても、それぞれ若干の理由はあろうということも考えられますが、公平に見まして、いわば団結権の乱用といったようなあとが見られます。私どもといたしましては、この葛飾郵便局はかねて業務の面におきましても、必ずしも十分な運行をやっておりませんし、また職場規律の面におきましても十分でございませんので、かねて目をつけましていろいろと指導もし、また監督もしてまいったのでございます。その例といたしまして、昨年の十月に同じく第一組合、第二組合の問題でもめまして事件が起きました際に、職場規律を乱しました職員二人を停職処分に付しました。絶えずそういった形で留意しておるのでございますが、また今回もこういった不祥事件を見たわけでございます。ただいまの私どもの立場といたしましては、先生御指摘のとおり職場におきます暴力事件は、いろいろ片方のほうからする理由はございましょうとも、絶対に許すべきでないと考えておりますので、目下これにつきまして厳正な措置をとるべく態度を相談中でございます。
  207. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 ちょっとお待ちください。時間外には間違いございませんけれども、しかし、場所が郵便局内でございます。郵便局内におきまして行なわれた暴行であり、そしてまた傷害であり、ことに中には、いすにかけろとしいてかけさされて、いすを転覆さされて頭を強打している。しかもそのいすは、もちろん局内のいすであります。あるいは耳を引っぱられ、つばをほっぺたにかけられなどいたしまして涙ながらに歯を食いしばっておった瞬間があるというようなことであります。ですから、単に警察あるいは検察庁の刑事事件としての取り扱い、捜査という以外に、このように職場内がそういう暴行、侮辱、脅迫といったような場に使われるということは、重大な問題がそこにあると私は思うのです。こういうことを放任していきましたならば、それは犯罪のみならず、その他のことにこの営造物が使用される危険があります。やはりこれも物と人間との規律の関係から見まして厳に戒むべきことであります。そのようなことは、やはり私は少しゆるんでおるのじゃないだろうか。少し酷な言い方でございますけれども、これは、郵便局の郵便物が、年賀郵便が何千も何万もどこかへいってしまったという事件が起こったり遅配が起こったりする根本原因が何かその辺にひそんでおるのじゃないだろうか。要するに、いまおっしゃっておりました団結権の逸脱という考え方も、これも大事でしょう。労働組合があるべき姿が逸脱していったということ、これも大事でしょう。しかし反面から見ましたならば、もっとそれ以前の、国民に対する正しい民主的な行政を行なうべき公務員としての使命と責任があります。ですから、その面から見まして、国家のこのような場が一種のそういうリンチ的な暴行の場に使用されているということは、とんでもないことでありまするので、ここいらもやはり厳正な規律をもって臨んでいく。そうしなければ、国民に対して民主的に行政をやるなんといったって、それは口頭禅です。から念仏です。何もできやしませんよ。いま日本で、たとえば、あなたらごらんになったか知りませんが、臨調で書いておる公務員制度の改革につきましても、それはほんとうに民間の会社なんかと比べましたならば国民に対するサービスなんかよくありませんよ。ですから、そういうことも、あれもこれも世の中で指摘されておるときでありまするので、絶好のチャンスとしてこの機会に全国のあなたのほうの郵政省所管の各職場に対して厳正な規律を守るように何らかの措置がされなければならぬ。そして、あなたは人事局関係だから人間の身分関係を主としてお扱いになるのだけれども、身分以外に人と場と建物との関係を一そう適正に秩序立てていくということについての責任を感じてもらわなくちゃいくまいと思います。身分だけという問題ではなかなか処置しにくいです。何となれば、そこには情状もありましょうし、あれもこれもありまするので。ですから、ぴしゃっと線を引くところは引いていくということを厳にやってもらわなければいけません。きょうは局長さん一人ですけれども、帰って幹部会にでも御相談になりまして、大臣に吉田がこんなことを行っておったと言ってください。そうしなければいけません。そうしなければ、いま山のように積み上がっておる行政上の諸般の問題のうち、こういう秩序の紊乱しておるということはとんでもないことでありますので、厳にひとつその辺については、あなたのほうにおきましても可能な限り適切な方法を積極的にすみやかにとってもらいたいことを要望しておきます。
  208. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 ただいま先生から御指摘いただきましたように、私どもの職場におきましてなお暴力行為その他横領事犯、いろいろ犯罪の発出を見ておりますことは、これまたまことに残念にたえない次第でございます。ただ、当局といたしましても、じんぜん日をむなしゅうして何もしておらぬというわけでないのでございまして、特に前大臣、また現大臣におかれましても、非常に厳正な態度をもってこれに臨むべしというきつい御命令がございました。そのために、現大臣着任になられましてから、数回にわたりまして、職場規律の維持並びに官紀粛正等につきましての通達を出しました。つい最近におきましても出しておるのでございますが、なお依然としてそういった事態が絶えないのは、これ私ども指導努力の足らぬことを痛感する次第でございます。今回の事件におきましても、一そう先ほど御指摘のございましたような方針に従いまして努力するつもりでございますので、何とぞしばらく模様を御静観願います。
  209. 八木徹雄

    八木(徹)主査代理 吉田君に申し上げます。時間が過ぎておりますので、なるべく簡明に願います。
  210. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 おそれ入りますけれども、もう一問ありますので……。  これは富士自衛隊の学校で起こりました件についてであります。さきに他の委員からも御質問があったのでございますが、若干私も調査いたしまして存じております。私の郷里から数里離れたところの出身者が当人で、当人というよりも被害者なんでございます。そこでこれにつきまして伺いたいのでありまするが、第一、いま人権問題といたしまして姫路の法務局にすでに訴えて出ておりますのですが、これは大臣まだ御承知じゃないと思いますのですが、富士学校におきまして出納係長をしておりました山北という一尉の件なんです。これは非常に廉潔な人で、もう生涯を自衛隊に打ち込みたいというような、そういう人柄なんであります。出納係長が、上官でありまするある三佐から三佐事務室に呼ばれて、家への仕送り等の話をしておった際に、おまえも金持ちから嫁をもらっておるのかと思えば、そうではなしに貧乏人やったんか、そして部落から来ておるのか、こういうようなことでございました。そこで、部落から来ておるのかということ、貧乏人やったんかというようなことは、受ける側にとりましては、これはもう深刻な問題なんです。私も大正年間以来部落の差別事件には何べんも関与いたしまして存じておりますが、受ける立場から見ましたときの深刻さを考えますときに、これはゆゆしい問題として取り扱っていかねばならぬのでございます。ましてそれがもとになって、妻はことしの四月十日離婚いたしました。離婚いたしまして、いまは姫路のアパートに夫は住み、あちらの特科隊でありますか、そこに勤務いたしております。一尉であります。そういうようなことでございまして、やはり私どもは、部落問題というものが同和対策といたしまして何かと行政の対象にはなっておりますけれども、しかしその対象を誤り、もしくは重要な個所でなおこんな重大なことが起こされるということが放置されておりましたら、これは日本の現在と将来のために相当大きな亀裂を免じてくる危険があると思うのでございます。  そこで人権擁護局長に伺いたいのでありまするが、あなたのほうへはすでに相当報告が来ておると思います。まだ富士学校その他についてはあなたのほうは御調査になっておらぬかもしれません。しかし、できごとは昨年の一月二十一日のことなんであります。すでに一年以上経過しておるのであります。一年以上経過して、そして妻は最近離別し、やるせない気持ちで、命がけでこの問題を解決したいといって訴えて出たわけです。その以前に富士学校のほうへも上申書も出しておりますけれども、そのまま消えてしまっております。ついに訴えるところなくして、人権問題として出た、こういう経過をたどっておるのです。   〔八本(徹)主査代理退席、主査着席〕 いまの段階でどの程度までいっておるか存じませんけれども、その重要性にかんがみまして、私は少なくとも全貌は相当もうおつかみになっておると思うのであります。そこで可能な範囲でひとつ御報告をしてもらいたいと思います。
  211. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 先ほども三木委員の御質問にお答えいたしましたように、実は私どものほうには今朝当委員会から御連絡を受けまして、現地にさっそく照会いたしました結果、本年の二月十九日に神戸地方法務局姫路支局に御指摘のような申告があったということが判明した程度でございまして、まだ詳細な調査は済んでいないわけでございます。ただそれ以前に人権擁護委員の姫路協議会長のほうには連絡があった模様でございますが、正式に法務局の姫路支局に申告がございましたのはまだ本年の二月十九日、こういう段階でございまして、したがいましてまだ詳細を御報告申し上げる段階に達していないわけでございます。いましばらくの御猶予をいただきまして、問題はまさに御指摘のとおり、特に御本人、その御家族等にとっては非常に深刻な問題であり、同時に全般的な差別待遇の問題といたしましてもこれはとうてい放置することができない問題でありますから、至急に調査をいたしまして、できるだけの措置をとりたいと、かように考えております。
  212. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 防衛庁人事局長に伺いますが、あなたのほうにおきまして、これは相当な幹部級の間のできごとでございますが、全部否定するにはあまりに深刻さ、波紋が大きいのでございますね。何らかの概況はすでにおつかみになっておると思うのです。昔福岡におきましても連隊の差別事件があり、あるいは大阪の信太山事件でありましたか、等もあり、福岡等におきましては松本治一郎君なんかも立って相当糾弾したようなことがあったのであります。由来権力の最も盛んに行ない得る場所でこのようなことがありますると、もしそれが事実でありましたならば、その影響は非常に大きいのです。その内部的な影響というよりも、部落に対する影響は深刻であります。その部落に対する影響が深刻だということに対する理解と認識が乏しいところに問題が起こるわけなんです。そんなことは少々言うてもというところに問題が起こるわけなんです。ですからここはやはり腹の中に、心の中に潜在しておるか、社会のすみに潜在しておりまする差別観とか、先主観というものがあらわれてくるんですから、一体何を教育しておられるんだろうか。国民に対する奉仕、最も危険ないろいろな仕事を分担する自衛隊というようなところでこんな事件が起こるということであるならば、これはたいへんなことです。しかもこれは一年以上たっているのですよ。一年以上たってもどうもあなたのほうから詳細な報告ができぬらしいというようなことは、これは一体どういうものか。さっき三木君の御質問の場合にちょっとおりましたときに、あなたの御答弁でしたか、前任者、連隊長はもういなくなっちゃっているから、いまは一から振り出しで調査をしているというお話なんでありますが、これはとんでもないことであります。こういうことは重要な記録として残らなければなりません。ないというのは、いやしくも相当な地位にあったいまの一尉に単にとんでもないぬれぎぬを着せるだけでなく、逆にこれこそ同胞に対する大きな侮辱になるわけであります。でありまするから、ないというのはちょっとおかしい。調査の結論を何も得ていないというならなおさらおかしい。どういうふうになるのですか、ひとつ御説明願いたいと思う。
  213. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 お答え申し上げます。  いま吉田委員が御指摘のとおり、自衛隊の中におきまして一番大事なものは、やはり規律と団結でございます。その団結をそこないますのは差別観でございますので、かねて防衛庁ではこの問題を重視いたしまして、部隊長の会同、特に中級、上級幹部の教育等におきましては差別観を一掃するということについては徹底をした教育をいたしておるつもりでおります。ところが、たまたま今回新聞に報道されましたような事件が指摘され、しかもその当事者が中堅の幹部であるという点で、まことに申しわけないと思っておるのでございます。実はこのお話しの山北一尉は、確かに吉田委員の御指摘のとおり、一生を自衛隊にささげたいということを言い、非常にまじめなりっぱな隊員でございます。しかもそのまじめな隊員が子供さん二人もございますのに、奥さんとも別れておられるというようなことの原因が、もし新聞に指摘されましたようなことでございましたならば、放置することは絶対にできませんので、私どもも事実を徹底的にきわめたいというふうに考えております。新聞で指摘をされましたのは、御承知のとおり二月十八日の神戸新聞でございます。神戸新聞で発表になりましたときに、さっそく現地の第三特科連隊長は本人を呼びまして擁護委員会にそういう提訴をした事案があるかどうか、あるいはどういうことであるかということを本人に一部始終を聞いております。聞いておりますが、この事実は、彼が昭和三十五年の八月から昨年、昭和三十九年の三月まで勤務いたしておりました富士学校における事実でございます。しかも当人は一昨年、三十八年の四月に協議離婚しております。そういう事実がございまして、現在の連隊長はこの問題については本人からはいろいろと相談を受けていないのだそうでございます。ただ当人が妻と別れましたときの連隊長はすでに退職をいたしまして、現在自衛隊におりません。そこで山北一尉が当時の連隊長にどういうことを相談をし、連隊長はどういう処置をとったか、あるいは富士学校についてどういう調査をいたしたか、これはやはりあらためて調査をいたしませんとわからない問題でございますので、一昨日来陸上幕僚幹部からそれぞれ姫路と富士学校に人を派しまして、徹底的に調べを開始いたしておるところでございます。御指摘のように、すでに十八日の新聞であるからもう調べがついておるであろうという御指摘でございますので、調べがついてない点は非常に恐縮なんでございますけれども、もうしばらくお待ちいただきまして、資料等を準備いたしましてから御報告申し上げたいと存じます。
  214. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 ただしかし、妻の場合、あなたは新聞、新聞とおっしゃいますけれども、私が調べたところによりますると、出刃ぼうちょうをもって自殺をしかけた事実さえあるのであります。そして自衛隊をやめてくれるか、それとも自衛隊にどうしてもおるなら、私は離婚したいと言ってすっかり神経衰弱になってしまって、出刃ぼうちょうで自殺しかけているのです。そんな事実さえ実はあるのでございます。そういう事実が家庭に起こっておるのに、自衛隊の幕僚の方が知らなんだというのは一体どういうわけなんだろう。やはり自衛隊におる勤務時間中のみならず、家庭においてどうか、家族においてどうか、ことにこんな問題があったというようなときには、その辺まで状況は響かなくちゃいくまいじゃないか。こんな重大なできごとがあったということは、一部の人はよく知っておるのであります。たまたま新聞に出たので。新聞はそこまで書いておりませんけれども、そういうことなんです。ですから一年以上もたっておるのだから、私は相当資料があるだろうと思う。ことにそれを訴えた場合に否定をしたというような——どこで否定したか知りませんが、そういうことも伝わっておる。それはそちらでお調べください。しかしいずれにしましても、富士学校内で幹部が差別事件を起こしたのはほんとうだとして被害者の妻が自殺しかけた、離別してしまったというようなそんな状態になっておるということは、これは前代未聞ですわ。ですから最も重大視しなければなるまいと私は思う。一体何を目標に教育されるのですか。差別、差別といっても、ほんとうのそういった部落問題等につきましても、そこまで深く入っていくのだろうか。一体同和問題とか部落問題というものは、なるべくさわらぬように、なるべく回避するようにという傾向も相当あるのでございます。そうして差別しないようにということを言うことはありますけれども、もっと突っ込んだところに教育の基本を置いて、ねらいをはっきりして、人権の尊重であるとかあるいは先主観をなくするとか、差別を根絶するとかいうようなところまで進んでいかねば、同時にまたさっきからだんだんと議論しておりましたように、民主的なものはなくなってしまいます。民主的なものがなくなってしまいましたら、あなたの立場は全国民から離反してしまいますよ。そのとおりそうなります。でありますので、民主的な一切の問題をこういう部落問題の解決にありとさえ私らは言うておるくらいです。日本の部落問題の解決なくして民主主義の実現なんてありはしないと思うのであります。でありますから、どこまでほんとうの差別をなくすということに教育の基本を渇いているか知りませんが、部落対策、部落問題、同和問題、こういうことに対する考え方一体どうなっているのであろうか、この点もおっしゃっていただいて、そしてあなたも現実きょう資料がないとするならばやむを得ませんから、早急に正確な資料をひとつ作成なさって、お集めになって、そしてこれが解決をしてもらわなければなるまいじゃないか。どうしたら解決するのだろうか、一体どうなさねばならぬか、こういうこともやはり聞いておかなくちゃならぬ。今後の教育の資料にするとかいうのではいくまいと思うのです。こういう問題が起こったのがほんとうだとするならば、これは一体どうするのか、どうすることが解決になるのか、その点はどうです。
  215. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 お答え申し上げます。  資料の点につきましては、なるべく早く正確なものを準備いたしまして、御報告申し上げるようにいたしたいと思います。  それから、教育の問題でございますが、これは私所管ではございませんので、あるいは私から申し上げますのは適当ではないかと思いますが、しかし御承知のように、自衛官は全部ただいまは志願で入ってまいります。全国津々浦々から志願で入ってまいりまして、試験に合格をし、体格が一定以上の者であるならば全部入隊をいたすことになります。その場合に、もしわれわれの中に差別意識等がございましたならば、これは絶対に部隊の訓練も練成も運用もできないわけでございます。したがって、差別といったような前近代的な意識というものは、少なくとも全隊員が一致して持たないということが、私は絶対の要請であろうと考えております。したがって、教育の計画を立て、教育を実施する場合にも、差別観を払拭することを基本にしていたしておるわけでございまして、先ほどもちょっと申し上げましように、部隊長会同等では必ずこの問題が強調されておるということをつけ加えさしていただきたいと存じます。
  216. 植木庚子郎

    ○植木主査 吉田委員に申し上げます。だいぶ時間が経過しておりますから、なるべき簡潔にお願いいたします。
  217. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 人事局長にもう一ぺん伺っておきますが、伝うるがごときいま指摘しました事実ですね、事実がそのようであるとするならば、防衛庁といたしまして、あなたのお立場としましてどういう措置をもってこれに臨もうとされるのか。部隊長会議で差別をなくするということをしばしば言っておる。これも必要なことと思いますけれども、たとえば文書をもってこの問題に対する善後措置をどうするとかあるいは将来今後どういうふうに新たに同和教育といいますか、部落問題に対する教育指針といいますかそういうものも具体的に打ち出すことも必要ではないだろうか、こういうことも事後措置としましては当然考えるべきでないかと思うのですが、いかがでございますか。
  218. 堀田政孝

    ○堀田政府委員 お答えいたします。  もし報道されましたような事実がございましたならば、これはやはりそのような意識を持っておりました者は間違っておるわけでございますから、たとえばそれが課長でありあるいは指揮官である場合には、指揮官にふさわしくないということになるわけでございます。それぞれ処置をいたさなければならないと存じます。また同時に、その人が処置をされましても依然としてその意識を持ち続けておったのではいけないのでございまして、そのような考え方を改めてもらうように徹底した教育をいたしたい、かように考えております。
  219. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 大臣に一点だけ伺っておきたいのでございますが、由来人権擁護の問題は、とかくちまたにおきましてはあまり重視されないのであります。人権擁護週間とかありまして、また人権擁護について特別に委嘱された委員もございまして、法務局でおやりになっておりますけれども、やはり日本人人権を尊重するということにつきまして、もっと積極的な機構、人事、方針、具体的な施策等がせられていくのでなければならぬのじゃないであろうか。町の暴行、暴力なんかによって人権が侵されることはずいぶんとありますけれども、これは事件にならねば泣き寝入り、かぎ出していかなければそれは見つかってこないというのが、これが人権侵害、人権擁護の社会の実情なんであります。これをほんとう人権を擁護すべき法務省の一つの基本的な方針といたしまして、もっと積極的にこれらの機関を充実する必要があるのではないだろうか。ただ、ある週間に若干宣伝するというようなことじゃなしに、人権の尊重とか、人権に目ざめよとか、人権はかかる場合には侵されておるのだとかなんとかいうことを、私はもっと積極的に国民に周知徹底、浸透さしていくことが必要でないかと常々考えておるのですが、この点について何か積極的におやりなさらぬでしょうか。
  220. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 ただいま御指摘になりましたような事件がいまごろありとしますれば、驚き入ったことで、私たちの常識からは全く理解のできない事件であり、また当事者も非常にお気の毒だと思います。人権擁護の重要なことは、もう私から申すまでもありません。国民が民主的な生活を営みます上におきましてこれは大切なことであります。これらにつきまして、やはり相当国民に徹底をさす方法をこれからも検討してみたい。それと、予算の面でも、どうも人権方面予算が非常に取りにくいのでございます。なお機構その他につきましても私は十分熱意を持っております。どうぞさよう御承知願いたいと思います。
  221. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 いまの問題、大臣非常に大事な点にお触れになったのですが、実はこの四十年度の予算を見ますと、総理府関係、厚生省関係、文部省、農林省、それから建設省、労働省等合わせまして、いわゆる同和対策の予算と称すべきものが二十一億七百万円、こういうことになるのでございます。ところで、この予算の編成のあとを見てみますと、各省ばらばらなんです。これはやはり全体として予算作成の根本問題に触れてくるのでありまして、私どもも、一体同和対策の予算はどこに幾らあるかということをさがし歩いて聞き歩かなくちゃわからぬ。ところが、いまお説のように、きわめて重大な問題です。この対象部落民は三百万と称されております。六千部落と称されておるのであります。そしてこの差別があるということ自体が、社会を暗くしております。これも事実であります。そこで、やはりもっと総合的に統一して、そして各省間の予算等につきましても、もっと積極的にどこかで総合されていくべきじゃないだろうか。総理府におきましては、部落対策の審議会がありはいたしますけれども、施策の実施方面におきまして、もっと私は部落問題を重視して、統一すべきではないだろうか。このほかに、自治省関係におきまして特別交付税の交付がございますので、この点につきましても相当織り込まれているはずでありますから、ややふえますけれども、しかし、いずれにいたしましても、この重大な問題に対して統一的な総合的な施策を打ち出していって、そして、しからば各省何を受け持つかというふうにしていくのが私はほんとうだろうと思いますので、これをひとつ、法務大臣のお立場よりも、国務大臣といたしまして、内閣におきましてそのような意見の統一をおはかりになって、そして強く同和対策の行政を打ち出して行くことが非常に大事なことじゃないかと思いますのでこの機会に、そのような点につきましてひとつ御答弁をいただいておきたいと思います。
  222. 高橋等

    ○高橋(等)国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、内閣に同和対策審議会を置いて対策の審議を進めております。八月には結論を出すことになっております。同和対策審議会を通じまして、各省と十分なる緊密な連絡を今年度はとってみたい、こう考えます。
  223. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 文部省から初等並びに社会教育局長なんかも見えておりますが、実は文部省関係におきまして、学校教育並びに学校外における教育的な施策、これは非常に重要なことであるには違いないのでありますけれども、しかし部落問題に対する教育とか知識の普及、問題の解明とかいうものが一体何を対象にしてやっていくのかという点につきまして、どうも徹底を欠いておるのでございまして、これはやはりもっと積極的に、たとえば文書をもって、あるいはいろんな集会等を催しまして、一般の国民の問題に対する重要性を喚起せしむることをもっと積極的にやらねばいかぬのではないであろうか。とかくこの問題も、さきに一言しましたごとくに、部落問題はなるべく口に出さぬほうがいいだろう、なるべく回避したほうがいいだろうという意見すら相当あるわけなんです。だから触れないように、さわらないように、向こうのほうが改めてくれたらそれでいいので、あるいは部落自身がよくなってくれたらそれでいいんだから、こちらは別に悪いんじゃないんだ、そういうなような傾向も多分にありますので、やはり各府県とも、熱心なところはみな手不足、経費不足で困っておるのです。これらの文部省の方面におきましても、積極的にたいした予算はないようでありますが文部省と厚生省、建設省などは特に重要ないろんな仕事をやっておいでになるのでありますから、部落問題につきまして、もっと行き届いた積極的な、たとえば教職員に対する指導教育の問題でも訓練の問題でも、あるいはまた社会一般に対する施策にいたしましても、さらに積極化する必要があると思うのですが、この点はいかがでございましょう。
  224. 蒲生芳郎

    ○蒲生政府委員 ただいまの同和問題につきましては、そのことの重要性にかんがみまして、文部省といたしましては、昭和二十七年に、文部次官通達をもちまして、各国立の大学あるいは都道府県の教育委員会にあてまして、社会教育、学校教育を通じて積極的に、いわれない差別観を払拭し、そして長年にわたる陋習を排除する教育活動を展開するようにという指導をしてまいっておりますが、その後、昭和三十五年を契機といたしまして、約三百数十万円の予算を文部省といたしまして計上し、それぞれ関係社会教育、学校教育に対しまして、指導者の養成でございますとかあるいは同和教育の研究会、研修会等を行なってまいったのでありますが、その後さらに地区におきます公民館と申しますか、これを集会所と呼んでおりますが、集会所を設置してまいりまして、現在四十館ありますけれども、さらに明年度は十八館増加いたしまして、そして部落の住民の生活意識の向上とかあるいは教養の向上をはかる。と同時に、その部落の近隣の社会と密接な融合をはかるという趣旨でこの集会所を設置してまいっております。なお明年度におきましては、この集会所がただいま申しますような地区内とかあるいは地区の周辺につくります関係上、これの予算が市町村では非常に出しにくいということにかんがみまして、新たにこの集会所の運営費、事業費を約一千万円ばかり新規に計上いたしまして、そして講師の謝金でありますとかあるいは集会所の運営の事業費でありますとか、そういうものについて援助してまいりたい、こういうふうに考えております。なおただいま先生のおつやいましたように、もっと積極的にやるべきだということにつきましても、まあ一部には寝た子を起こすなというような考え方もございますけれども、文部省といたしましては積極的にこれを取り上げまして解明していく、そして一般の面につきましては、成人学級でございますとかあるいは婦人学級でございますとか、こういうところでこの問題を取り上げる、なお部落内につきましては、ただいま申し上げましたような方法によりまして部落民の方の意識を向上させていく、融和をはかっていく、こういう態度で臨みたいと思っておっております。
  225. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 それに関連しまして、地方自治体に相当責任を持たして、部落問題解決、差別根絶へ行政を進めさすという指導が大事ではないであろうか、したがいまして、たとえば都道府県等におきまして地方地区に行かれたり、あるいは学校においてさっきおっしゃったような学級を設けたり集会を設けたりする、それも大事ですけれども、しかし自治体自身がそれを意識しまして、公に行政の一つの科目として同和問題と回り組んでいくということを大っぴらにやることはできないものであろうか、なるほど教育あるいは社会教育あるいはその他の厚生事業あるいは環境改善とかいうこともそのつもりでやっていくということはありますけれども、その前にやはり部落問題を表に打ち出して取り組んでいくという体制が必要ではないであろうか、こういふうにも思うのですが、その点につきまして自治省の財政措置が直接自治体に相当積極化していきますると、この問題は常時同和問題とし、あるいは差別をなくする問題として、地方では行政が進展していくだろうと思うのです。そうしないと、ときどき何か集会をやりあるいは年に何回か学級で話をするというようなことではいくまい、また一方経済的によくするためにいろいろな努力はしておられますけれども、しかしそれは、直接部落問題であるという認識のもとに取り組んでおるのじゃないのでありまして、その地域における経済生活をよくするためにという、そういうことですから、一般問題として取り扱っておるのですから、一般問題としてこの辺は生活程度が低い、経済的にもっとよくしなければいかぬ、もっと環境をよくしなければいかぬ、こういうことになっておるのですが、そうではなしに、私はやはり部落問題そのものとして取り組んでいくということ、そのために地方行政の担当者に財政的な裏づけをして取り組ますという必要があるんじゃないだろうか、こういうふうに思うのですが、その点でどうでございましょうか。
  226. 岡田純夫

    ○岡田説明員 お答え申し上げます。  おっしゃいましたように、環境改善なり、あるいはまた就職指導あっせん等なり、地方団体は、この同和問題については、やはり具体的に積極的に取り組むべきものであるというふうに考えております。なお、それらの指導につきましては、自治省と申しますか、やはり各省協力して連絡をとってやるべきものであろうかと思っておりますが、自治省といたしましては、財源措置につきましては、これは全団体と申しますか、地域、地域の問題でございますので、特別交付税をもって対処いたしております。特別交付税によりまして、地方団体が補助事業の当然の地方負担分なりあるいはまたみずからのくふうと創意によりますところの単独事業等に積極的に取り組み得るように、できるだけ考えてきております。本年度間もなく特別交付税が配分になりますが、前年度に対比いたしまして、一割以上の増額配分になろうかと思います。もう一つ申し上げますと、九億四千万円前後にまでは到達しようか、こういうふうに考えております。御参考までに申し上げておきます。
  227. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 これはやはり同和対策費用というふうに打ち出していきませんと、一般財源として繰り入れられてしまいますと、何に使ってくるかわからぬ。だからどこかで削られたりあるいは減らされていくことになることも可能であろう、こういうふうに思いますのですが、その点どうでございますか。
  228. 岡田純夫

    ○岡田説明員 これは特別交付税あるいはまた普通交付税を通じまして、先生もよく御承知のように、交付税はあくまでも一般財源でございまして、どの費目につきましてもひもをつけるということが、地方団体の自由的な活動に対して阻止する場合もあり得るというふうに思いますので、指導指導、財源付与はあくまでも一般財源といたしまして配分いたしてまいっておりますし、そう考えてまいりたい、こう思っております。
  229. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 厚生省のほうに伺いたいのであります。いま部落予算を組んで種々の部落対策の事業を厚生省もやっておいでになるのですが、厚生省から出すところのひもつきになってくる補助金を当てにしていくというような消極的なことでなしに、積極的に、たとえば作業場の開設の問題にいたしましても、産業指導なり、経済的な指導なりを他の省ともそれぞれ連携をとりまして、積極的にその地域の経済開発に役立つ、そういうような面は打ち出せないものでありましょうか。何かその辺の労力が余っておれば、それを集めて作業場を開設する。こういうようなふうにも見えるのでありますが、ただいまのような経済界の変転目まぐるしいときにおきましては、もっと積極的な指導で、経済開発という大きな線と取り組んでいくというぐらいな方向にいかぬものでしょうか。余っておる労力をもって、お互いの部落の人の収入を少しでもふやしていけばいいというような、きわめて消極的なふうに見られますが、これでは少しよいものがあれば、労力はほかに去ってしまいます。決して部落の経済生活の実態はよくならぬというふうにも考えるのです。その辺は、ただいまの現状は私ども不十分であり、不満であり、もっと積極性がないととてもいけまいというふうに思うのですが、どうでございましょう。
  230. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 同和対策の問題は、生活環境なりあるいは生活指導なりという、いわば消極面と、ただいま吉田議員から御指摘がありましたように、積極的に経済的な活動を付与して、そうして産業開発に寄与するという面がございます。ただいまの同和対策は、厚生省は大体毎年四億、五億という補助金を出しておりますが、最近の傾向といたしましては、大型の共同作業場を設置するというようなことをやっておりまして、むしろこれはその地区に産業を振興いたしまして、現にその中の一部のものは大企業の下請け事業をやって、輸出品の生産に従事している。そして相当大きな利益をあげているという実情もございますし、ただいま御指摘のような点は、これからの同和対策としても、厚生省ではそういう点を配慮して、積極的に指導に乗り出している状況でございます。
  231. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 この点は、きょうは労働省が見えておりませんので、労働省も職業訓練をやっておいでになることも存じておるのですが、やはり職業訓練にいたしましても、経済の動きとの関連が非常に重要でありますので、基本的に、たとえば若年労働者をそこに収容いたしまして、特殊な技術訓練をするとか、そういうふうにいたしまして、優秀な工場が部落地区にできるという方向へ打ち出してもらいたい。何か知らぬけれども、その辺が補助金目当てで設置するというような感じを受けるほどに、消極的な存在のように思われてならぬのでありますけれども、この点はいまのような説明で私は意を強うするのであります。進んでやはり労働省の技術面、それから通商産業省との間の経済産業それ自体との提携の関係、こういう辺を密接におやりくださることによって、所期の目的が達し得るのではないであろうか。同時にそういうことをすることによって部落自身の地区改造になる。非常に過密地帯になっておりますことは御承知のとおりでありまして、小さ過ぎる住宅なんかがずいぶんとございますので、この辺につきましてもやはり一種の部落の新しい計画になりますが、そういう辺との結びつきにも一つの転機になると思う。たとえば地方の山林あるいは原野、そういったところを買収いたしまして、そこに移していくということになりましたならば、一種の疎開にもなりますし、それから下水道、排せつなんか厚生省でおやりになっておりますが、下水道とか排水作業とかいうようなものから、さらに一転して新しい地区づくりになる、新しい都市づくりになる、こういうふうにもなりますので、これは佐藤内閣のおっしゃる社会開発一環かもわからないです。これとやはり一挙両得の一つの目的を達し得るのではないかとさえ考えますので、そういうふうに相提携していかれることを希望しまして、これもまた審議会なんかで議論になっているか存じませんが、実施段階、行政実施庁といたしましては、どうしてもそういう方向へ進んでいってもらわぬと、根本解決の線に入っていかぬだろうと思います。そういうふうにやってもらえますかな。
  232. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 ただいまの御質問のとおりだろうと思いまするし、昭和三十六年でございますか、同和対策の推進要綱を内閣でつくりました中にも、そういう点は明確にうたってあります。ただ今日までの段階としては、生活環境の整備なり生活指導というものに重点が、どうしてもそちらのほうが条件が悪いので置かれていた。しかし、それからだんだんとただいま御指摘のような線に補助金の交付の実際の状況としても、多額に支出されているような状況でございますので、これからの同和対策の重点は、おのずからただいま御指摘のような点に移っていくであろうし、私どももそういう点に重点を置いてまいりたいと思っているわけでございます。
  233. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 それでは、人権局長に最後に伺っておきます。  私は、やはり同和問題の根本は、教育だけじゃなしに、あらゆる社会の要件の総合的な角度から考えていかなければいかぬと思っておりますのですが、同時にやはり、差別が人権の侵害になるということ、そして差別すべからざるということ一は、これはやはりさかのぼりましたら、母性から、あるいは幼児から、あるいは幼稚園とか初等教育とか教育の場面とか、そういうような面と、それから同時におとなの世界におきましては、たとえば経済面におきましても、あるいは社会面におきましても、政治面におきましても、一切の場合に差別観念、賤視的な感情、そういうものをなくするということへの努力をする。そういうことがなければ、この種の問題はあとを断たぬのではないだろうか。御承知かどうか存じませんけれども、ずいぶんとあるのですけれども、問題化するのは実は少ないのであります。といいますのは、さっきどなたかの御答弁になりましたように、嫌悪する、避ける、その感情も相当あるわけなんです。みずからも、私は部落民だと言うことが恥ずかしいということも相当あるわけなんであります。したがいまして、実際に人権が侵害されておる事実は、おとなの世界におきましても、あるいはまた子供の世界においても、ずいぶんあるわけなんですが、その辺まで深く掘り下げていくのでないと、私はこの種の事件の人権問題の解決はできないものであろうと思っております。  こう考えてまいりますと、できたことのあと始末をするというような人権行政ではどうにもならない。やはりできる前の予防、根絶こそ大事であって、そして、おとなも子供もおしなべてその問題と取り組んでいくということにならぬと、人権局のお仕事の徹底、完ぺきを期することはできない、こういうふうにさえ実は重要に考えておりますのです。  そうなってきますると、あなたのお仕事の分野から広がってしまいますけれども、広がるなら広がって提携されていかれていいんじゃないだろうか。国家の行政は総合的に、統一的にあるべきで断りますから、そういうふうに思っておりますのです。この点についてどういうふうにお考えになりましょうか。
  234. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 先ほど来御指摘のように、経済、社会、教育、あらゆる面からこの問題の解決に努力する必要があることはもとよりでありますが、やはり根本には差別意識の払拭、人権尊重、個人が個人として法のもとにおいて平等に尊重されるという人権意識を各人に徹底的に理解してもらうということにあろうかと存じます。  私ども人権擁護局、あるいはその下部機構といたしましては、具体的にあらわれました事件の解決に努力するとともに、この人権意識の普及徹底に従来も努力してまいりましたが、今後ともさらに一そうの努力をいたしまして、問題の解決に自分らとしてできることをいたしたい、かように考えております。
  235. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 最後に、人権局長になお御希望なり、伺っておきたいと思うのですが、いま当委員会で問題になりました富士学校の差別事件、この問題が相当明らかになりましたならば、私は、やはり公務員間における、官庁内部における差別事件としても考え、ないしは防衛庁全体としても考え等いたしまするので、そこでその重要性は、人権局といたしましては、全国的にしかるべき指示、通達、何かの方法で、このようなことの根絶を期する、そういう方法にお出になることも、あるいは必要なことではないだろうか、あるいは適切な方法ではないだろうか、こういうことを考えるのです。もっとも、それは人権局のお仕事の性質上、そのような予防的なことはしないというのならばこれはまた別ですけれども、もし可能であるならば、官庁内部におきましての差別根絶のために非常に大きな助けになるのではないだろうか、この機会にそういうことをすることも必要なことではないだろうか、こういうふうに考えるのですが、それはできないものでしょうか。もしくは、する法がありとするならば、適当におやりになる御意思はありましょうか、どうでしょうか。
  236. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 人権意識の周知徹底と申しましても、一般的に講演会等で話すよりも、やはり具体的事件に即してやるのが一番効果的であろうかと存じます。本日御指摘の事件につきまして、調査完了の上、あらためて十分に検討してみたいと存じております。
  237. 吉田賢一

    吉田(賢)分科員 終わります。
  238. 植木庚子郎

    ○植木主査 本日の裁判所及び法務省所管についての質疑はこの程度にとどめます。  明二十五日は、午前十時より開会し文部省所管についての質疑を行ないます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十七分散会