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1965-05-31 第48回国会 衆議院 予算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月三十一日(月曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 稻葉  修君    理事 小川 半次君 理事 二階堂 進君    理事 古川 丈吉君 理事 加藤 清二君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       荒舩清十郎君    井出一太郎君       井村 重雄君    今松 治郎君       植木庚子郎君    上林榮吉君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    重政 誠之君       正示啓次郎君    中曽根康弘君       中野 四郎君    西村 直己君       野田 卯一君    松野 頼三君       八木 徹雄君    石田 宥全君       石橋 政嗣君    大原  亨君       岡田 春夫君    片島  港君       勝間田清一君    高田 富之君       中井徳次郎君    中澤 茂一君       永井勝次郎君    野原  覺君       山花 秀雄君    横路 節雄君       小平  忠君    佐々木良作君       永末 英一君    加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 高橋  等君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         運 輸 大 臣 松浦周太郎君         自 治 大 臣 吉武 恵市君         国 務 大 臣 小泉 純也君         国 務 大 臣 高橋  衛君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣官房長官 竹下  登君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         国防会議事務局         長       北村  隆君         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官         (長官官房長) 小幡 久男君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (人事局長)  堀田 政孝君         防衛庁参事官         (衛生局長)  高部 益男君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  國井  眞君         防衛施設庁長官 小野  裕君         防衛庁事務官         (防衛施設庁総         務部長)    沼尻 元一君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         検     事         (訟務局長)  青木 義人君         検     事         (人権擁護局         長)      鈴木信次郎君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         大蔵事務官         (主計局次長) 中尾 博之君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         国税庁長官   吉岡 英一君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  坂元貞一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      久宗  高君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         農林事務官         (農林水産技術         会議事務局長) 武田 誠三君         食糧庁長官   齋藤  誠君         気象庁長官   柴田 淑次君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 五月二十六日  委員横路節雄辞任につきその補欠として岡良  一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡良一辞任につきその補欠として横路節  雄君が議長指名委員に選任された。 五月二十八日  委員川上貫一辞任につきその補欠として加藤  進君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員中澤茂一辞任につき、その補欠として重  盛寿治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員盛寿治辞任につき、その補欠として中  澤茂一君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員大橋武夫君、加藤高藏君、中村梅吉君、保  科善四郎君、前尾繁三郎君、前田正男君、片島  港君、中澤茂一君及び佐々木良作辞任につ  き、その補欠として井村重雄君、仮谷忠男君、  正示啓次郎君、上林榮吉君、八木徹雄君、中  野四郎君、石橋政嗣君岡良一君及び小平忠君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員井村重雄君、上林榮吉君、仮谷忠男君、  正示啓次郎君、中野四郎君、八木徹雄君、岡良  一君、勝間田清一君及び小平忠辞任につき、  その補欠として大橋武夫君、保科善四郎君、加  藤高藏君、中村梅吉君、前田正男君、前尾繁三  郎君、中澤茂一君、片島港君及び佐々木良作君  が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  予算実施状況に関する件  防衛図上研究問題等に関する予算小委員長から  の報告聴取      ————◇—————
  2. 青木正

    青木委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況に関する件について調査を行ないます。  この際御報告申し上げます。本委員会において問題となりました農業用ガソリン税の問題につきましては、過般の理事会においてその減免措置についてなお委員会において検討することになっておりましたが、その後三党間の協議により大蔵委員会において検討することになりましたので、さよう御了承願います。     —————————————
  3. 青木正

    青木委員長 次に、防衛図上研究問題等に関する予算小委員長より小委員会調査経過について報告をいたしたいとの申し出がありますので、この際これを許します。松野委員長
  4. 松野頼三

    松野委員 防衛図上研究問題等に関する予算小委員会審議経過及び結果を御報告いたします。  小委員会は二月二十四日より十一回にわたって開会いたしました。  第一回目の小委員会では、小委員会運営方法に関して小委員各位より意見の開陳があり、第二回目の小委員会では、社会党の小委員より、質疑を行なう前提として、防衛庁当局に対し、図上研究に関する文書原文資料として提出するよう要求がありました。  この資料提出質疑前提とするかどうかという点に関しては小委員会内部意見がまとまらなかったため、四十年度本予算審議期間中には小委員会として実質的な審議を行なうことができませんでした。その後も結局は研究報告書原文提出行なわれず、図上研究に関する防衛庁見解文書として小委員会提出されるにとどまったのであります。ただし、この資料の問題については、社会党の小委員より再三政府に対して提出要求があったのと並んで、他方、自民党の小委員よりは、そのような政府に対する要求よりも、むしろ小委員会としては岡田委員が発表された三矢研究の諸資料入手経路を明確にすることのほうがより重要であるとの発言もありました。  図上研究内容に関する質疑は、三月十二日の第三日以降の小委員会で行なわれました。  申し上げるまでもなくこの防衛図上研究は、さきに本委員会において取り上げられて以来、国民の間に重大な関心を引き起こさせた問題でありますだけに、小委員各位質疑は終始真剣に熱心かつ活発に行なわれたのであります。その詳細は会議録でごらんを願いたいと存じますが、なお、ここに重要な問題として三点についてだけ御報告をいたします。  まず第一点は、この図上研究性格はどういうものか、これは単なる研究ではなく、防衛計画とも当然に関連があるもので、いわば計画と呼ばるべきものではないか、また、この研究防衛庁のどの部局の責任において行なわれたものであるか明確ではないが、いずれにしろ、この研究内容については防衛庁として責任を負うべきものであり、したがって、その報告書も当然に国会提出すべきものではないかという質疑でありました。  これに対する防衛庁の答弁は、三矢研究統合幕僚会議事務局長が臨時に長となって実施した幕僚研究訓練であり、その性質上、何らかの結論を出すというようなものではなく、もちろん計画と呼ばれるようなものでもない、三矢研究に関する実施計画、与えられた想定研究問題及び関係幕僚の作成した答案等は、研究終了後五分冊にとじ込まれているが、これらは防衛庁及び統幕のいずれにおいても正規に決定された文書ではなく、責任を持って国会提出し得るものではないというのでありました。  第二の点は、三矢研究がたとえ研究訓練であったとしても、研究内容自衛隊として研究すべき範囲をこえ、閣議あるいは国会で決定すべき政治の領域に不当に介入している、しかもその考え方国家総動員体制というような旧軍時代の思想であり、さらに、核兵器持ち込み米軍基地提供の他州的承認など軍事優先考え方は現政府最高方針にも違反している、これでは自衛隊が憲法を守らず、民主主義を敵視しているように考えられてもやむを得ないではないかという点であります。  これに対する防衛庁側見解を要約いたしますと、三矢研究は有事における部隊の統合的運営中心的課題としたものである、問題となっている防衛庁以外の諸機関の施策のごときは、本来は想定として示すべきものを問題の形で研究員に解答させ、その解答をそのまま想定として次の問題に進むというやり方をとった、したがって、自衛隊組織運営に関するもの以外は項目を列挙する程度であって、立ち入って研究したものではない、いわゆる総動員体制についても種々の項目を列挙しているが、それらはそれぞれ権限ある機関によって処理されることを想定し、また、核兵器持ち込み等についても、政府の現在の方針をよく認識した上で最高政治判断にまつこととしている、しかも自衛隊出動時に関する現行の法制的裏づけの不備あるいは他の機関による研究不足等三矢研究研究員に必要以上の負担を与えた点もある、しかし、研究全体として、想定の出し方あるいは設問のしかた等において妥当でなかった面もあるので、その点は大いに反省して、今後この種の研究に際しては長官が十分に指導して誤解の起こらないようにしたい、ただ、自衛隊はあくまでも民主主義日本を守ることを任務としており、常日ごろ民主主義教育には十分力を入れているので、制服諸君政治介入の意図など毛頭持っていないことをよく理解してほしいというのでありました。  第三に、小委員会で最も大きく取り上げられましたのがシビリアンコントロールの問題であります。  質疑の要旨は、三矢研究のようなものが制服独走の形で行なわれたのもシビリアンコントロールが確保されていないためではないか、自衛隊総理大臣指揮監督をし、文民たる防衛庁長官が統括しているが、国防会議事務局なりあるいは防衛庁内局などの文官組織が弱体で十分その役割りを果たしていないため、制服組の意図するままに動かされているのではないか、しかも、シビリアンコントロールのかなめとなる国会も、事防衛に関してはつんぼさじきに置かれ、また、従来はややもすると防衛に関する無関心さを示してきた、このことは一般国民関心の低さとも相まってはなはだ危険な状態というべきものである、したがって、災いを転じて福となすために、国会もこの三矢研究調査を契機として十分防衛に対する認識を深め、政府もそれに十分協力をしてシビリアンコントロールの実をあげるべきではないかというのであります。これに対する防衛庁見解は、戦前の統帥権知立時代と比べてみてもわかるとおり、国会自衛隊政府自衛隊防衛庁内部内局と各幕僚監部との関係のどれ一つをとってみても、現状でもシビリアンコントロールにいささかの不安を生じてはいない、防衛庁内部あるいは国防会議その他で改善を要する点はいろいろあるから、これは改善していくが、国会によるコントロールがさらに強めらるべきことは言うまでもない、いずれにしろ、文民優位の原則というものはあくまでも国民全体の手によって守らるべきものである、今後とも一そう国民全体に自衛隊あり方について理解を深めてもらうよう努力したいというのでありました。なお、この国会によるコントロールという点に関しましては、小委員会の議事が全部終了したあとに開かれました五月十七日の小委員打合会におきまして、小委員会の果たした役割り重要性にかんがみ、今後とも衆議院内に自衛隊の実体を把握するための何らかの専門的な委員会を設けるべきであるという点で、自民、社会、民社の各党とも意見の一致を見たのであります。終わりに、長期間にわたって終始真剣かつ熱心に審議を尽くされた小委員各位に心から敬意を表して、小委員長報告といたします。(拍手)
  5. 青木正

    青木委員長 これにて小委員長報告は終わりました。     —————————————
  6. 青木正

    青木委員長 続いて、予算実施状況に関する件について質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  なお、この際質疑者に申し上げますが、質疑の持ち時間につきましては、先般の理事会における申し合わせの時間を厳守願うようお願いいたします。  勝間田清一君。
  7. 勝間田清一

    勝間田委員 不当に延長された国会もいよいよ明日最終の段階に立ち至りましたので、この際、日本社会党を代表しまして、若干の重要問題について質問をいたしたいと思います。  まず、国会運営について佐藤総理お尋ねをいたしたいと思うのでありますが、佐藤総理は、就任早々わが党の衆議院並び参議院における質問に答えて、調和を強調されて、しかも国会審議については単独採決はやらないという公約をされたのであります。しかるにもかかわらず、過般の十九日の国会延長に際しましては、最後段階に立ち至りましてついに単独採決を強行した。これはまことにあなたの公約を破っただけでなく、国会の正常な運営を破壊したものだと実は私は考える。ここに佐藤総理心境をひとつお聞かせを願いたい。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国会をかような状況で延期せざるを得なかったことは、私もたいへん遺憾に思っております。しかしながら、ただいま言われますように、国会審議はどこまでも調和の精神で、話し合いで片づけていく、これが原則であること、これは間違いございません。しかしながら、この時期におきまして私どもがいろいろ考えてみました際に、当時の状況ではまたやむを得なかった、私はかように考えております。
  9. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、国会重要法案について与野党ともにその見解を相違いたして、その扱いに対するいろいろの論議が起こってくるのは当然であろうかと実は思う。しかし、その際にいかなる方法によってこれを処置するかという問題は、お互いに真剣に考えていかなければならない問題だと実は思う。今回においては、総理自身が理解されておられるはずであるが、船田衆議院議長はすでに十四日においてこれが調停に入り、しかも十九日の朝はすでに船田議長会期延長の必要のないことを認めた裁定をした。しかも、その際においては、自民党幹事長社会党書記長民社党書記長等がこれに参加して確認をした。それが、わずか半日もたたない夕刻においては、社会党民社党共産党その他一切が参加しないままに単独でこれを実行するという処置に出た。ならば、一体国会はだれを信用したらルールが守られていくのか。ここにわれわれは重大な疑義を感ぜざるを得ない。一体今後どうしたらルールが確立されるのか。われわれはこうした議長を信用する以外に方法はないじゃないか。各党寄り集まり会議を尊重する以外に道はないじゃないか。これ以外に一体何か道があるのか、その点を佐藤さんはこの際明確にする必要がある。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当時は、御承知のように、議長が本会議に出まして、そうしてあの採決をいたしました。ただいま、議長を信頼してその国会運営協力するのが当然だと言われる。私ども自由民主党としては、議長が本会議に出られ、そうして採決をされた、かように私は信じております。また、そのとおりであった、かように思います。その以前におきまして、各党のそれぞれの責任者を集めていろいろ懇談をしたこと、これもただいま御指摘のとおりであります。しかし、最後段階になりまして、社会党の方が議長室を占領されたこと自身、これは私、社会党がいまのようなお話をなさる筋ではない、かように私は思います。
  11. 勝間田清一

    勝間田委員 社会党議長室を占領したという話でありますけれども、とんでもない言いがかりだと実は思う。言うまでもなく、当時社会党の役員は、十九日の午前における議長裁定にわれわれは信頼して衆参両院運営協力した。それを自民党が強硬に会期延長に持ち込もうという、議長圧力をかけるという状態であったから、われわれはあくまでも議長に対してその真意を要求をいたしておったのであります。しかるにもかかわらず、その際に窓を破って、そして灰ざらを突きつけて押し込んでまいったのは自民党諸君であるということをわれわれはよく見ている。議長圧力をかけて……   〔発言する者あり〕
  12. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  13. 勝間田清一

    勝間田委員 この会期延長せずという既定の方針を破らしたのは、これは実に佐藤内閣であるし、自民党そのものである。だから、単に社会党だけが議場に入れなかっただけではない、民社党も入れなかったし、共産党も入れなかった。あらゆる党が入れずに自民党だけが単独でやった。これが私は当日の実相であったと思う。まことにこうした状態をつくり出しておいて、一体佐藤総理にこれからお尋ねをいたしますけれども、今後の国会運営についてあなたは心境変化があったのじゃないだろうかと私は思うのです。依然として単独審議をやるつもりかどうか、ひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 かような状態会期延長したことはまことに遺憾だ、かように私も申しました。また、非常に残念だと、かように思っております。私は、どこまでも各党で話し合って、そうして国会運営をしていきたい。どこまでも議会政治を守る民主政治あり方としてのルールをつくりたい、かように私は考えております。だから、この上とも、社会党の方やまた民主社会党その他の方にも御協力を得まして、国会運営民主主義的にやって、そうして議会政治を守る、こういう立場でありたい、かように思います。
  15. 勝間田清一

    勝間田委員 国会運営という問題は、一法案の通過するかしないかという問題よりもさらに重要な問題と私たちは考えていかなければならぬと思う。ましてや、農地報償法案のように、千数百億の金を旧地主にばらまくといったような、いわば次の参議院選挙に重大な関係のあると思われるそうした法案の通過のために、あえて野党全部の審議を拒否して自民党だけで単独会期延長されて強行するといったような態度というものは、国会の権威を失墜させるだけでなく、一党の利益国会利益に優先させる、これはまことに間違った態度であるということを私は明らかにしておきたいと実は考える。したがって、今後の政府に対して私はここに警告を発しておきたいと考えるものであります。次に、私は、今日重要な問題になっておりますベトナムの問題について実は質問をいたしたいと考えるものであります。いま、ベトナム情勢は非常に重要な段階に差しかかっておるように思うのであります。すなわち、過去数カ月にわたるアメリカ軍北爆は、意味のない北爆と言われるほど、アメリカが企図したような南ベトナムの何らの反応も見られず、また北ベトナム反応も見られず、また南ベトナム民族解放戦線が何らか弱められたのではないかといったような徴候もあらわれてはおりません。そして北爆の一時中止もわずか五日間のゼスチュアで終わったのでありますが、最近アメリカは再び北爆を開始し、また大量の地上軍を増強しつつあるように見受けるのであります。去る二十八日の「ニューヨーク・タイムズ」は、「合意なき戦争」という論説を掲げてこの地上軍の増強の問題を取り上げておりますが、米国ベトナム介入はその基本的性格を変えつつあるようだ、もし米国がいまアジ7で大規模な地上戦にずるずる引き込まれるようであるとするならば、国民にその実態と理由を知らさねばならぬというように強く政府要求をいたしておるのでありますけれども、現に起こりつつある基本的な性格変化というものは、今日、単にアメリカ国民が心配するだけでなく、日本国民こそが重大な関心を持っておる問題だと思うのであります。しかも、聞くところによりますれば、テーラー大使は政情不安のために三回も帰国することを延期いたしたようでありますけれども大使のワシントンに帰ることは、今後の新たな戦略を考えるという意味においてはまことに重大な意味を含んでおるとさえ実は言われておるのであります。ここにおいて、いわば数カ月北爆において、北にも勝てなかった、南にも勝てなかった、今後アメリカがどのような態度をとるかということは、世界の関心であり、われわれ日本関心でなければならぬと実は思う。したがって、この際に、日本政府は、今後のベトナム情勢についてどのような判断をし、一体どのような態度をとろうとするのか、おそらく明確なものがあろうと思うが、佐藤総理見解方針をひとつお尋ねいたしたい。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ベトナム問題につきまして、またアメリカがとっております政策等について、いままでしばしば本会議等お尋ねがございました。そのつど、わがほうの態度、これに対する基本的な考え方をお答えいたしたのでございます。ただいままで、私ども在来からとっておりますいわゆるアジアの平和を守るというこの考え方に何らの変更はございません。できるだけ早くこの事態が平静に帰するようにあらゆる努力をしておるのが現状でございます。特にいま現状において在来からとってきた方針と変わりがあるかと言われますと、変わりはない、かように申す以外にございません。
  17. 勝間田清一

    勝間田委員 安保条約適用地域ベトナムを含ましているという政府立場政府はそういう立場をとっているならば、当然安保条約第四条による協議を私は要求すべきだと実は思う。また、そうした機会を通じてアメリカのとる態度を明確に知り、かつ、これに対する日本政府態度要求すべきだと実は思う。今日そうした態度をとっておらないで、そうして単に従来の方針に変わりがないという根拠は一体どういうところにあるのか、それを明らかにしてほしい。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 戦争性格とかあるいは戦争目的とかいうようなものが別に変更がないのでありまして、従来の性格なり従来の目的方針のもとにアメリカが軍事行動を継続しておるのでございますから、日本といたしましては別にこれに対して特別の考え方を持つ必要はない、こういうことになると思うのであります。
  19. 勝間田清一

    勝間田委員 全然わからぬ。それならば、現在の北ベトナムに対する爆撃は、依然として現在のままの爆撃が継続維持されると考えているのか、その点を明らかにしてほしい。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それは、日本といたしましては戦争の今後の戦略の方針について参画しているわけではありません。それを日本から言えとおっしゃっても、それはわからない、こう申し上げるよりしようがない。
  21. 勝間田清一

    勝間田委員 北ベトナムの爆撃が一体これから継続していくのか、やめられるのか、拡大していくのか、どう判断しているのか、それが一体わからないのか、それを明らかにしてほしい。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカは今後の爆撃を続行しようという積極的な考え方に立っておるのではない。つまり、この爆撃によって北越の領土を侵略するとか、あるいは北越の政権をかえるとか、そういったような考え方をもって軍事行動を起こしておるのではない、一日もすみやかにこれを終結したい、ほこをおさめたいということを言っておるのであります。しかし、問題は、今後北越の浸透が依然として続いておるならば、これに対して適当に対処する以外にない、こういうことを言っておるのでありますから、今後の爆撃はどうであろうかということは、むしろ北越の出方というものにかかっておる、こういうことになると思うのであります。
  23. 勝間田清一

    勝間田委員 自民党の松本俊一氏は、ベトナムの視察の報告において、北ベトナムの爆撃によって北ベトナムが平和交渉に応じてくるであろうとか、あるいは南ベトナムが現在の抵抗を弱めるだろうなどと考えることははなはだ疑わしいという報告をしている。私も過般ベトナムを訪問いたしてまいりましたが、全く松本氏と私は同感である。いま外務大臣の話によれば、北ベトナムの出方次第だと、こう言うが、一体外務大臣は、北爆を続けていけば北ベトナムは何らかの平和交渉に応じてくるなどと考えているのかどうか、お答えを願いたい。
  24. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 北ベトナム考え方を私は透視するわけにはいきませんけれども、少なくとも浸透工作をやめない限りはこれに対して適当な防衛の手段を講ずるというのは、これは当然だろうと思うのであります。その上で北ベトナムがどういうふうに考えるか、それはまた別問題である。少なくとも北からの浸透を防ぐという物理的な行動を起こしているにすぎないと私は考える。
  25. 勝間田清一

    勝間田委員 私は北ベトナムからの浸透問題はまた後ほど質問いたしますけれども、大事な点は、いまあなたが答弁された中で、また、この前総理大臣が青年部の演説の中で、またわが高田富之君の質問に対する答弁の中で、中国や北ベトナムの領土の一部を占領することや、あるいは中国に爆撃を加えることや、あるいは北ベトナムの政権を倒すようなことはしないという強い印象を受けた、これは、約束ではないが強い印象を受けたと言う。この強い印象を受けたという根拠は一体どこにあったのか、もっと具体的に示す必要がある。何となれば、あなたはしょっちゅう変えていらっしゃるから。だから、この際に客観的に、何ゆえに一体そう考えられたのか、具体的な例証をひとつあげていただきたい。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 このベトナム問題がいま国際の大問題になっていることは、これは私もお説のとおりだと思っております。したがいまして、しばしば申し上げますように、日本政府はこの事態ができるだけ早く鎮静することが望ましいのだ、こういうことをわが方の態度として申し上げました。また、アメリカ自身がどういう考え方を持っているのかということを聞いてみますると、もともと、こういう事態について望ましいかっこうだと、かようには思っていない。アメリカ自身も、いわゆる無条件で話し合いに応ずる、かような提案もしておるのでございます。だから、この点を十分理解していただきたいと思うし、日本国民も全部アメリカのこの提案というものをひとつ率直にそのまま受け入れて、そうして話し合いによる解決というものをアメリカ自身も希望しておるのだということを理解してほしいと思うのです。  私、先ほど来言われておりますそういう点、椎名外務大臣との質疑応答で繰り返されておりますが、ただいま申し上げるような基本的なアメリカ態度というものを理解するならば、これは、領土的野心を持ったり、あるいは特別に政権を交代させよう、かようにしておるものでないということがわかる。それが、ただいま言われる、北ベトナムを占領したり、あるいはさらに爆撃を進めてハノイにまで出かける、かようには思えないのです。だからこそ、私が本会議でお答えしたように、これらの事柄、アメリカ自身の真の目的が、お互いの独立を尊重し、そうしてお互いに内政干渉をしないという、それが一つの平和維持への道だ、かように考え、そのたてまえからただいまの北爆をやっておる、かように考えてまいれば、またその北爆途中におきましても無条件話し合いを提案したり、また過日は五日間も爆撃をしなかったりしたその事態から考えると、ただいま私どもが受けておる印象、これは正しいものだ、かように私は思っておる次第でございます。
  27. 勝間田清一

    勝間田委員 しかし、アメリカは、あくまでも北ベトナム政府が平和交渉に応じてくるまではこの爆撃はやめられない、またそのために爆撃をやっているのだということを彼らは明らかにしておるのだが、しかし、北ベトナムがこうした脅迫を受ける中で平和交渉に応じてくるなどと考えることはナンセンスだと私は思う。あり得ないと私は思う。そのことは今日すでに証明されているのじゃないだろうかと私は思われる。でありまするから、ここで新たな戦略を彼らは考えざるを得ないというのが、おそらく今日の重要な段階意味だと私は考える。でありまするから、この際にもう一度私はあなたにお尋ねするけれども、あなたのいまの答弁は、いわばジョンソンの声明の趣旨から見ればという類推だけれども、そうではなくて、具体的に、北ベトナムの領土を侵すようなことはしない、あるいは中国を攻撃するようなことはしない、あるいは北ベトナム政府を転覆させるようなことはしない、そういう具体的な提案として一体ロストウは言われたのかどうか、もっと端的にその点を表明せられたい。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はロストウに会っておりませんから、これはわかりません。しかし、私はロッジに会ったその感じでは、先ほどのような印象を受けた。これは私の印象でございます。ただいま勝間田君は、北ベトナムへ行ったら、北ベトナムが絶対に話に応ずるような態度にはない、こういうことを言われました。しかし、この事態を話し合いにより解決しようというのがやはり国際的な世論じゃないか、全部の方がそういうふうに思っておるのじゃないか、かように私は思います。したがって、北ベトナム関係があり、あるいは説得力を持つ方、これもやはり北ベトナムをして話し合いの場に顔を出すようにすすめるべきじゃないか。私は、そういう意味で、アメリカ自身に対しましても、ただいま言う無条件で話し合いに応ずるこの態度はどこまでも守ってほしい、かように思いますが、同時に、北ベトナムに対して話のできるような立場にある方に対しては、ぜひ、そういこじにならないでとにかく話し合いに応じて、そして平和への道をさがしたらどうか、こういうことをおすすめを願いたい、かように私は思いまして、あるいはフランスであるとか、あるいはソ連であるとか等にはそういう話し合いをいたしておるのでございます。あきらめないで、これはもうだめなんだ、こう言わないで、それを努力していただくことがやはり世界平和への道じゃないか、これは私どもがやるべきことではないだろうか、かように私は思います。
  29. 勝間田清一

    勝間田委員 外務大臣にロストウ会談の実際をひとつお尋ねをしたい。
  30. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ロストウ氏は主として事務系統の連中と話し合いまして、私との会談はごく短いものでございました。きわめてありふれた話にすぎないのであります。
  31. 勝間田清一

    勝間田委員 総理、いまの外務大臣の話だと、きわめてありふれた話だという。総理の話だと、強い印象を受けたという。しかし私はロストウに会ってはいない、こう言う。一体ありふれた話をした外務大臣の話の中からどうして総理のような結論が出たのか、それを聞かしてもらいたい。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それはそれぞれの感じ方の問題で、私のような神経の鈍い者は、ありふれた話だ、こう思っただけの話であります。   〔発言する者あり〕
  33. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  34. 勝間田清一

    勝間田委員 外務大臣、とにかく、いいかげんな答弁をして済むなどと考えて国会を侮辱するようなことはやめたほうがいい。第一に大切なことは、北ベトナムについての爆撃がさらに拡大されていけば、これはだれが見てもアジア戦争にまでなる危険性を持ったものであるから、世界がみんな心配をしているところである。その心配に対して日本政府はどういう見通しと対策を立てておるのかということ、これは日本みずからの立場から考えなければならないのじゃないだろうか。それになぜ端的に答えられないのか。その端的な回答を私はほしいのだ。それは国民要求しておるのじゃないか。それをのらりくらりやっておって、それでいいなどと考えておるのは私は大間違いだと思う。  私はこの際外務大臣にひとつお尋ねをしたい。この北ベトナム戦争が拡大するようなことがあればアジア戦争になる危険性を持つ。その危険性に対して一体いかなる見通しを持っているのか、またそれに対して日本はいかなる対策なり外交的な交渉を持っておるのか、このことを明らかにしてもらいたい。これをひとつお尋ねをいたします。
  35. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は、一言にして申しますれば、全然あなたと見解を異にするのでありまして、この北ベトナム戦争は決して拡大する性格のものでない、あくまで、北からの浸透なりあるいはベトコンの内部撹乱、テロ行為、そういうものに対する自衛的な軍事行動でありまして、それ以上のものでない、こういう観点から言いまして、アジアの大戦争になるなどというようなことは、これはもう全然考えられない、かように考えております。
  36. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、今日の状態を見ますと、北爆はすでに失敗をして、しかも、アメリカ計画の間違いというか戦略の間違いというか、重大な彼らの間違いから、北爆の失敗がさらに北爆の拡大になる危険性を持っていると思う。同時に、もう一つの大きな心配は、言うまでもなく、地上軍を増強をして、そして全面的な南ベトナムあるいは北ベトナムを含む動乱にまで発展する可能性が濃化した。これは私はたまたま「ニューヨーク・タイムズ」の社説をあげたのであるけれども、最近の地上軍の増強ぶりを見れば明らかに懸念されるところになる。したがって、今後のこの地上軍増強等から見まして、もし南ベトナムについてのさらに拡大された軍事干渉が行なわれるならば、これもまた私は第二の朝鮮動乱に発展する可能性があると実は思うのです。北爆と、そうして同時にこの南ベトナム地上戦の拡大という問題について、特に地上戦の拡大について、それならばどのように考えているのか、この点をひとつお尋ねしたい。これは外務大臣ひとつ。
  37. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は軍事専門家でもございませんので、どうも自信はございませんが、しかし、ただいまのところは、この地上軍の増強は主として南ベトナムの範囲に限られておるのではないかというような気がいたします。いわゆる地上軍の行動半径ということがポイントではないか、こう思うのでありますが、しかし、私の判断は、いずれにいたしましても地上軍増強もおのずから限度があり、またその行動半径もおのずから限度があるのであって、決して朝鮮戦争のような性格に発展する気づかいはない、かように考えております。
  38. 勝間田清一

    勝間田委員 私はこうした議論をいろいろしておっても意見の相違は解消しないと思いますけれども、先ほどの問題に私は返って、ベトナム問題の帰趨という問題は日本と密接な不可分な関係があるのだが、政府はどうして安保条約の第四条による日米協議会を要求して、これらに対する情勢判断並びに日本側の主張をやらないのか、この点をひとつ明らかにしてほしい。
  39. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 四条は随時協議を規定しておるのでございまして、随時協議とは、必ずしも数人集まって会議をするというような必要はない、電話でもよろしい、とにかく随時適当な方法によって協議をする、こういうのでございまして、会合形式による協議要求しているものでは必ずしもない、さように御了承を願います。
  40. 勝間田清一

    勝間田委員 電話でやるとかというような、そういうなまやさしい問題ではない。それなら私はもう少し聞きますけれども、向こうの情勢判断と今後アメリカがどういう態度をとるかということと日本側の主張というものをどのようなルートを通じて公式にやっているのか、それを聞かしてもらいたい。
  41. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 東京でも在日大使館と絶えず接触しております。それからまた、さらに形式を整えたものとしては、ロッジ氏の来訪あり、あるいはロストウ氏の来訪があるというような事柄が行なわれておる。それからまた、出先のワシントン大使を通じて絶えず国務省等と接触をしておる次第でございます。
  42. 勝間田清一

    勝間田委員 いまアメリカはなるべく多くの国国を自分の側につけて南ベトナムに動員しようといたしておりまして、SEATOグループあるいは米台安保条約、米韓安保条約、ANZUS軍事同盟、これら諸国にそれぞれの支援を彼は要求いたしておる。日米安保条約を結んでおる日本に対していかなる協力の要請があるのか、この点を明らかにしてほしい。
  43. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 南ベトナムに対しては特別の要請としてはないと記憶しております。ほとんどきわ立った協力の要請はございません。ただ日米安保条約の範囲内において日本が適宜経済的な協力をしておる、こういう状態であります。
  44. 勝間田清一

    勝間田委員 安保条約適用地域を拡大して、南ベトナムはこれを含めるということが政府の統一見解といわれておりますけれども佐藤総理はかつて青年の会合におきまして、ベトナム問題は安保条約とは無関係であるという演説をされております。どっちがほんとうでしょうか。佐藤総理、ひとつ聞かしてもらいたい。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる極東の地域ではございません。しかしながら、極東周辺というか、周辺ということばで表現すればいい、その範囲だ、かように思っております。
  46. 勝間田清一

    勝間田委員 極東地域の場合と極東周辺の場合とでは日本の義務は違いますか。
  47. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 極東の平和と安全に周辺に起こったできごとが影響を与えるというような場合に初めて日米安保条約の適用がある、こういう次第でございます。
  48. 勝間田清一

    勝間田委員 ということは、極東の平和と安全に脅威を及ぼしてこない間は周辺は適用地域ではないけれども、具体的な影響を及ぼしてきたときにそれは適用地域に拡大される、こういうことですか。どういうことなんです。
  49. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お説のような解釈で適当だろうと思います。
  50. 勝間田清一

    勝間田委員 それでは、現在は適用地域に入るのですか入らぬのですか。
  51. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいまの状況は極東の平和と安全に重大なる影響を与えておるものと考えております。
  52. 勝間田清一

    勝間田委員 これは、佐藤総理、あなたの先ほどの答弁とは違うじゃありませんか。佐藤総理、どこが違うのか。
  53. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど言うように、いわゆる極東の地域ではない、だから、極東の平和と安全に影響があるというか、その周辺で起こったその事態がそういう影響がありゃいなやという判断をする地域だ、かように私は答弁したので、別に答弁が違ってはおりません。いわゆる極東の地域か、こう聞かれるから、いや極東の地域じゃございません、周辺の地域です、かように申しただけです。これはちっとも別に矛盾はしていないのです。
  54. 勝間田清一

    勝間田委員 それでは、佐藤総理は、青年の前では、いかにも安心するように、ベトナム安保条約とは関係ありません、こういう演説をしておいて、きょうのこの予算委員会では、今度はその周辺だから、こういうように言い直す、これはあなたの二枚舌ですか。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまさら、いわゆる極東あるいは極東の周辺、その観念でこの国会で問題になると私は思わないのです。これは岸内閣以来、極東の範囲というのはずいぶんやかましかった。皆さん方も非常にこれを突っ込まれて、それで極東の範囲がきまる、また、その他の地域については、これは極東周辺、こういうことで観念的にそれはきまっているのだ、私はかように思っております。別に私が二枚舌も三枚舌も使っているわけではございません。この考え方はぴしっともう固まっておるのでございますから、誤解のないように願っておきます。
  56. 勝間田清一

    勝間田委員 それでは、あなたが青年の会合でベトナム安保条約とは無関係だと言ったことは誤りですね。
  57. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、青年大会で言ったこと、ちょっと私その点が明確でございませんけれども、ただいま言われるようなことは、どうもないような気がしておりますが、いろいろ記憶をたどっておりますけれども、ちょっと明確でございません。
  58. 勝間田清一

    勝間田委員 ここにちゃんと書いておりますけれども、しかし、そういう重大なことを記憶喪失ではたいへん困る。しかし、非常に大切なことは、政府の統一見解としてベトナムは極東の安全と平和に脅威を及ぼす周辺の地域であるという意味において、これを安保の対象地域に含ませる、現在はその状況にあるからやはりベトナムは含むんだ、こういう解釈でよろしゅうございますか。
  59. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 これは、先ほど総理から仰せになりましたように、安保条約の改定に際しまして非常に問題になった点でありますが、この当時の極東ということばの解釈としては、ベトナムというのは極東の周辺地域に入るということでございました。ところで、安保条約の第六条その他にもございますが、その字句は「極東における国際の平和及び安全の維持」ということでございまして、ベトナムがいわゆる周辺地域であるといたしましても、極東における国際の平和及び安全にいかなる影響があるかというところが安保条約の問題の中心になりますので、そこで、ただいま総理なりあるいは外務大臣からお答えしておりますようなことになるわけでございます。つまり、ベトナムにおける情勢が極東における国際の平和と安全に対して何らかの影響あるいは脅威を及ぼすというようなことがありますれば、アメリカ合衆国は、第六条にありますような、日本の施設及び区域を使って安保条約目的達成上のことができる、条約上はそういう関係になるわけでございます。
  60. 勝間田清一

    勝間田委員 総理、それだと、青年部での演説は、あなたは記憶にないようですけれども、間違っておりますから、機会があったらひとつ訂正しておかれたほうがよろしいかと思います。  そういう態度政府がとるということになってまいりますと、安保条約の義務というものに対する日本政府態度というものをどうしても聞いておかなければならない。そこで、当然今日考えねばならぬ問題は、基地の提供、特需等々の物資の調達、あるいは労務その他の提供、あるいは経済、医療その他の支援と、いろいろの安保条約から来る義務条項というものが私は問題になってくると思う。  まず一つ私はお尋ねしたいけれども、今日までの佐藤内閣の答弁を聞いておりますと、基地は直接攻撃の基地にならなければ事前協議の対象にはならないんだ、たとえば東富士の海兵隊が沖繩を経由して北ベトナムを攻撃しても、それは間接だから事前協議の対象にはならないんだ、あるいは佐世保の第七艦隊が今度十七隻行くえがわからなくなったわけでありますけれども、こうしたものも沖繩を中継ぎにすればいいんだ、こういうような答弁で終始をされてきた。私はそこでひとつ問題があると思う。直接攻撃にその基地が使われたか、間接的であったかということの客観的な判断というものは一体どういうようにするのか、これをひとつ聞かしてもらいたい。有効にその区別がつく方法は何かということをひとつ聞かしてもらいたい。もう一つの問題は、事前協議をする場合に、当然日本は拒否権があると私は思う。安全保障条約の中において、日本に重大な不安を与える場合においては当然拒否することがあり得る。これは間接においても直接一においても直接の場合でも拒否することはあり得る、こういう態度でなければならぬと私は思うのだが、この二点についての総理大臣の答弁をひとつ聞かしてもらいたい。
  61. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでしばしば申しましたように、いわゆる戦闘作戦行動、こういうものの場合には、これは基地だ、いわゆる事前協議をする問題だ、かように私は理解しております。また、事前協議は、ただいまお説のように、ノーと言う場合もある、これは自主的にやはりきめるべき問題だ、かように私考えております。それでよろしいかと思いますが……。
  62. 勝間田清一

    勝間田委員 戦闘作戦行動というものは、一体これはどこで明確になるのか。戦闘作戦行動であるかどうかという問題はどこで明らかになるのか。
  63. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本の施設・区域から作戦行動上の命令を受けて、そして発進する、こういう場合には事前協議の対象になるのであります。
  64. 勝間田清一

    勝間田委員 事前協議の対象になり得る、こういう佐藤総理のはっきりしたあれがここでありましたが、ここで私は一つの質問をしたいと思う。この際に中国に攻撃が加えられるとか、あるいは北朝鮮が攻撃を加えられるという場合においては、日本戦争の渦中に直接巻き込まれる可能性がある。したがって、この際に中国あるいは北朝鮮に攻撃が加えられることについて日本の基地を使用することを拒否することは、外交上においても、今日的な段階に処するためにも、私は絶対に必要な事柄だと実は考える。総理はその考えがあるかどうかお尋ねをしたいと思います。
  65. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 問題は、事前協議を受けた場合にノーと言うことがあり得るということを申しました。ノーと言うのは、日本の安全のために、また日本の国のためにこれは必要だという、そこはいわゆる自主的に考えるべき事柄でございます。ただいまいろいろ仮定を設けられて、こういう場合にはどうなるかと言われますが、私は、ただいま申し上げるような、事前協議を受けて、日本が意思決定をして、そうしてそれを相手方に話をする、その立場の場合は、日本の安全、日本のことを考えてだということを申しました。それより以上にお答えするわけにはいかない。いわゆる仮定の事実について、こういう場合をどうするかということはよけいなことで、私が答えを差し控えるべき事柄だ、かように私考えております。第一の原則だけを御了承いただきたいと思います。
  66. 勝間田清一

    勝間田委員 フランスはNATOに参加しておる一国家でありますけれども、御存じのとおり去る三月の九日に、アメリカベトナムをめぐって中国と戦火を交えることになった場合、フランスの援助を期待することはできないという通告を出した。私は、フランスが三月九日にこの明確な態度を表明したということは、今後のアジア情勢に対しての適切な処置であったと実は考える。私はあえてここに、単に事前協議の場合にノーと言うことが必要であると主張するだけでなく、現在の段階においてベトナムの問題が中国に波及したり、あるいは北朝鮮に波及するようなことがあったならば、日本は基地を提供したりすることはできないということを明確にすることはきわめて当然なことであり、きわめて有効な処置だと実は思う。佐藤総理見解を聞かしてもらいたい。
  67. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の考え方は先ほど申したとおりでございます。ただいまのは勝間田さんの御意見として伺っておきます。
  68. 勝間田清一

    勝間田委員 現在物資調達の面で、北ベトナムに対する攻撃、あるいは南ベトナムに対する武力干渉、たとえば各種の兵器等の調達は日本で行なわれているのですか、いないのですか、お尋ねいたします。
  69. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 兵器の点は聞いておりません。
  70. 勝間田清一

    勝間田委員 聞いていないということは知らないということなんですね。あるかないかわからぬということですか。答えになっていないから……。政府を代表しているじゃないですか。
  71. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカがこちらに持ち込んでおる武器を運んでおることはあり得ることと思いますが、日本の民間から発注、調達して向こうに持っていくということについては何ら聞いておりませんし、またおそらくあり得ないと考えております。
  72. 勝間田清一

    勝間田委員 政府は、将来そうした日本の民間から兵器を注文し、おるいはその調達を受けるということを拒否する意思がありますか。
  73. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今日においては、科学兵器の世の中でございまして、一体これが兵器になるのかならぬのかというようなボーダーラインにあるものもずいぶん多いのであります。そういったようなものの調達を一々日本が干渉して、これを許可するとかしないとかというような、民間に対してそういう統制経済をやっておりませんので、そういったようなことはただいま考えておりません。
  74. 勝間田清一

    勝間田委員 共産圏に対しては、御存じのとおりココム、チンコムをやったり、いろいろの貿易制限をあなたやっているじゃありませんか。ましてや非人道的な兵器が、あるいは各種のせん滅的な兵器が使われておる今日の状態のもとにおいて、日本が当然そうした提供を拒否するということはあたりまえじゃありませんか。
  75. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ちゃんと完成した兵器となりますと、非常に判断がはっきりしておりますので、それに対して、民間の提供に対して左右するという権能はありませんけれども政府としては適当な勧告を与え得る場合もあるかと思うのでありますが、そういうような完成した兵器については、ほとんど情報にも接しておりませんし、私はあり得ないと思うのであります。ただ、非常に複雑な科学兵器の部分品として提供するというようなことは、これはどうも統制しようがない。もしそういうことがあり得るとすればです。どうぞさよう御了承願います。
  76. 勝間田清一

    勝間田委員 ずいぶん外務大臣としては歯切れが悪いのですが、総理大臣にひとつお聞きいたします。私はこの物資調達という問題について、兵器——これは私も別にこまかい繊維類までか兵器であると解釈するつもりはありませんけれども、明らかに兵器と思われる部分が日本の工場で生産されたり、注文を受けたりして提供されることに対しては、私は当然拒否すべきだと思うのです。こうした兵器の提供に対する日本政府態度を明確に聞かしてもらいたい。
  77. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 かりにそういうようなことが明らかになりましても、日本の経済政策のたてまえ上これを拒否する、あるいはこれをやめさせる、強制力を加えるというようなことは適当でないと私は考えます。せいぜいそういう場合には勧告程度であろうかと思うのであります。
  78. 勝間田清一

    勝間田委員 これは私は政治論を言っておるのであって、勧告か拒否かといったような行政論を言っておるのではないのです。そういうことをやらせる方針かやらせない方針かということを聞いておるわけです。総理大臣、どうですか。
  79. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現状においては、ただいまのような状態でよろしいのではないかと私は思います。先ほど来言っておるこのなにも、外務大臣の言い方も、基本的な態度として、この問題ができるだけ早く終息するように、鎮静化するようにということを念願しておるのでございますから、その立場に立って自分自身で関与するということはできるだけ避けたいというそういう気持ちはあるわけでございます。だから、これはそういう意味で、現状においては現状のような態度が望ましいことではないでしょうか。むしろいまの態度でよろしい、かように私は考えております。
  80. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、この前沖繩に旅行に行ってまいりましたが、沖繩の住民が一番おそれておることはベトナム問題の帰趨で、沖繩の国民一体どうなるのだろう、端的に言えばこの不安。この沖繩はどうなるだろうという端的な不安に対して、私は日本政府は真剣にこたえるべき責任があると思う。まず第一に疑問に思う事柄は、沖繩百万の生命、財産を一体真剣にだれが考えてくれておるかということです。これを日本政府がよもや考えることができないとするならば、私は沖繩県民の失望だけでなく、重大な問題だと実は思う。今日まで佐藤総理は、講和条約の第三条をたてにとって施政権がないからということで言い続けてきたけれども、それなら憲法で保障されておる日本人としての当然の権利である、最も基本的な権利である生命、財産ということまで放棄されておるのかということです。私はそういう解釈はとれないと思う。現に沖繩の人たちが見ておる目の前でアメリカはクイックリリースをやっている。家族や子供は一時間か二時間で飛行機て乗って逃げる訓練をやっている。だから、彼らはいざとなれば一、二時間で逃げることができる。その訓練を目の前に見ているけれども、百万の沖繩県民は逃げることはできない。ここに今日の沖繩県民の第一の不安というものがあるわけです。私は沖繩の百万の日本人の生命、財産を守るために、日本政府はいかなる処置をとっているか、とろうとするか、このことをひとつ明らかにしてほしい。
  81. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩百万の人々、これは申すまでもなく私どもがこの生命、財産等について考える、これは当然のことだと思います。しかし、ただいま御承知のように施政権が日本にない、こういうことで、私ども考え方あるいは心配がただ心配だけに終わってしまう、こういう場合もこれまたやむを得ないのではないかと思います。こういう意味からも、私はアメリカに対しまして、十分今回の問題を拡大しないように、できるだけ早目にこれを鎮静さすように最善の努力をする、そのことがただいまの沖繩島民の問題にも関係を持つんだと思います。また、アメリカはどういう考え方をしておるかわかりませんが、私は、アメリカの軍そのものも、沖繩住民の理解なしに、また協力なしに十分にその効果を発揮することはできるものではない、かように思いますので、アメリカとしても沖繩住民の福祉、生命等については十分に考えておると思います。これが施政権を持っておるものの当然のことであるし、またそこに軍隊を持っておる国として、そういうことを考えるのは当然で、理解と協力を望んでおる  に違いないと思います。ただいま言われるような、クイックリリースというような問題は、私どもは全然知らない。そういうことはない、かように私は聞いております。陸軍あるいは軍自身の輸送等の計画については、いろいろやっておるということは聞いておりますが、住民自身についてクイックリリースというようなことをやっておるとは聞いておりません。問題は、やはり沖繩もまた日本本土も全体が一丸になってアジアの平和ということにもっと真剣でなければならない。そういう意味において、ただいまの勝間田さんの御意見に対しても私どもは十分力をいたしたいと思います。これは社会党もまた自由民主党もその区別はないんだ、ほんとうに平和のためにはどうしたらいいかということを真剣に考えるべきだ。また、できるだけただいまのような事柄についても、不安を醸成するようなことはお互いに発言を避けて、そうしてどっしりしたかまえでこの平和確保に努力する、こういう態度で臨んでいただきたいと思います。私は、そういう立場から、先ほど来の御意見も静かに伺っておりますが、そういう意味では何だかこの話を片づける方法、それには先ほどもベトナムについて、ベトナムにもやはり考え方を直していただかなければならないものがあるんじゃないか、こういうことを申したのもその点でございます。全体としてこのアジアの平和確保については、これはやはりお互いに最善を尽くしていきたい、かように思います。
  82. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、クイックリリースはまだ聞いていないということでありますけれども、現地で現に見てまいったわけでありますから、ひとつあなたもよく研究されて、こうした問題が沖繩百万の人たちにどういう精神的な打撃を与えているかということも、私はよく観察される必要があろうかと思います。しかし問題は、ただ沖繩県民の安全を願うという念願だけでどうも佐藤内閣は過ごしているのではないかとさえ思われるような節があまりにも多い。われわれは、やはりこういう沖繩の百万の生命、財産に直接関係のある地域なのであるから、ただアメリカに追従しているだけでなく、日本立場日本利益日本の平和のためにやはり日本は発言をすべきだ、そういう自主性ある態度をもって臨むべきだということをむしろ私は強調したいのであります。それが私どもの真意でありますが、しかし、ここで一つお聞きしておきたいと思うことは、沖繩が攻撃を受けた場合に、日本自衛隊がまさかここに出動するという場合はないと私は思うけれども、そう解釈してよろしゅうございますか。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の問題は、これは住民は日本国籍を持っておる、こういう意味から、日本政府はどういう考えだというお尋ねだと思いますが、これは、御承知のように施政権を持っておるアメリカが第一次的にこの防衛に最善を尽くすという、これはおわかりだと思います。わが国がやるにいたしましても、わが国は施政権を持っておりませんから、そういう考え方でこれに処していかなければならない。ただいま言われるように、日本はそういう場合にどうするのだ、こういうお尋ねが非常に簡単な、端的な表現でと言われるが、これはなかなかむずかしいことでございます。むしろそういうことも含めて十分検討しておく必要があるだろう、かように私は思いますが、ただいまいきなり出されましても、ちょっとすぐ即答いたしかねる、こういう問題でございます。
  84. 勝間田清一

    勝間田委員 沖繩県民百万の生命、財産を守る権利は、講和条約第三条によってできないのだ、施政権がないからできないのだ、こうきわめて割り切っておきながら、沖繩が攻撃を受けたときの自衛隊の出動という問題については、そうしてどうしてことばを濁されるのですか。どうして一体沖繩に日本自衛隊をやらなければならぬ理由が法律上あるのですか。それを逆に私はお聞きしておきたいと思う。
  85. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 沖繩は、先ほど総理が仰せになりましたような平和条約上特殊の地位にあります。特殊な地位の中身は、要するに合衆国が住民及び領域に対して立法、司法、行政の三権を行使するということになっております。したがって、防衛の問題につきましてもアメリカ合衆国が第一次的な責任を負うことは、これは言うまでもなく当然でございます。ところで、沖繩の地位というのは、平和条約上三条の地位でございますので、三条に反したようなといいますか 三条について協定した事項以外の事態が発生した場合に、日本国がそれに対して重大な関心を持つのは当然でありまして、かりに沖繩に対してこれを奪取するというような、これは理論上はむろん仮定の話でありますが、そういう場合には、日本もまたそういう場合の措置というものが考えられるわけでありますが、しかし、沖繩については、やはりアメリカ合衆国が立法、司法、行政の三権を持っておりますので、自由自在に日本自衛隊がそこに行ってどうするというようなことには当然にはなり得ないわけでございます。沖繩の地位の問題につきましては、第三条の規定との関連においていわゆる合意された議事録というものがございますことは御承知のとおりでありますが、その際には、一定の事態が生じた場合には第四条の規定に基づいて厳密に協議を行なうというようなことに相なっておりまして、そういう際にさらに細目の点についてのいろいろな処理の方法が考えられることになると思います。
  86. 勝間田清一

    勝間田委員 そうしますと、結局沖繩に攻撃が加えられた場合においては自衛隊の出動もあり得るということですね。いろいろ理屈を言われるけれども、あるということなんですね。
  87. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答えいたします。安保条約には、日本の施政権が行なわれておる日本の施政の区域、領域に対する攻撃がありました際のことが規定されていることは御承知のとおりでございます。ところでいまの問題は、それとはおそらくは離れまして、沖繩自身に対してそういう事態が生じたという場合にはともかくもどうなるのかということでございますが、その場合には、何度も申し上げますように、沖繩の地域というのは米国が立法、司法、行政の三権を持っておりますので、また三権を持っておるということは同時にその責任を持っておりますので、その責任を遂行する措置等はあげてアメリカがその責任を負う立場にあるわけでございます。そのことは明らかにいたしておきます。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる法律的には法制局長官の答弁でおわかりだと思います。安保条約とは別に、島民百万、これは日本国民だ、こういう状態ですから、そういう事態になれば日本の国として十分検討を要する。さらに私ども考えを新たにする場合もあるだろうし、あるいはそのまま法律上の義務だけで過ごす場合もあるだろうし、もう少し研究してみたい、かように私が先ほど申し上げたのはその点であります。これはいわゆる理論、理屈だけの問題ではない。だから、その点を十分御理解をいただきたいと思います。
  89. 勝間田清一

    勝間田委員 これは私は重大な事柄だと実は思うのです。日本人の生命財産を守らなければならないという日本の義務というものは厳然として存在しているべきものだし、またその意味において、私どもはあくまでも沖繩の県民を孤立さしてはならないし、あるいは犬死にさせてはならない、われわれは共同連帯の立場に立っていかなければならぬということはあくまでも主張しなければならぬと私は思いますが、しかし、いまの自衛隊の派遣という問題を総理のようにそういう拡大解釈を持って扱うということについては、私は絶対に了承はできない。むしろ生命、財産を守るがゆえに、現在の大きくいえば北ベトナムに対する爆撃をやめるという方針はもちろんのことであるけれども、施政権の返還なり、あるいは領土の返還なり、あるいはまた日本人の生命、財産に対する日本の当然の権利を私たちは主張すべきで、これを自衛隊の出動の一つの基礎にしていくなどという態度というものは、私はそう軽々にやるべきものでは断じてないというように思います。しかし、もし佐藤総理がそういうことを言われて、自衛隊の出動などという問題になってくれば、当然沖繩に対する攻撃は日本の参戦という問題にまで発展すると私は思う。そういう事態を私たちは考えていかなければならないということを考えてみますと、いままで外務大臣は、普通のことのように、何も事なげに問題を話されておりましたけれども南ベトナムの問題なり北ベトナムの攻撃の問題というものは非常な重要な内容を持っておる、日本の生命、財産に重大な関係を持っておるということが私はわかる。したがって、ここで私は若干の時間でありますけれども佐藤総理にひとつお尋ねしておきたいと思う。  結局、このベトナムの問題をながめてみますと、一つは南ベトナム民族解放戦線性格というものを誤ってとらえておる。これが私はアメリカの重大な誤算の一つだと思う。これは、言うまでもなく民族解放であり、独立であり、統一である。この民族的な要求を掲げてベトナム国民が戦っているのだということ、この事態の評価というものをきわめて間違っているというのがアメリカの、また日本政府のとっている政策の根本的な間違いの一つの原因だと私は思う。もう一つの大きな問題点は、北ベトナムを攻撃すれば南ベトナムがおさまるだろう、早く言えば、北のほうの堤の水を押えれば南のほうの水は引くだろう、この考えに立って北ベトナムの攻撃をやっているというところが、これも一つの大きな間違いだと私には思われる。結局民族の自決を完全に確保させて他国の干渉をやめるということ、北爆をやめて南からアメリカが撤退する等の五四年の協定を完全に実施するということ、このラインが私は最も必要な点ではないかと実は思う。この点に対しての佐藤総理見解をひとつ承らせてもらいたい。
  90. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まず、これにお答えする前に、前の沖繩問題で誤解があったら困りますから、さらにつけ加えて、ふえんして説明しておきます。  先ほど来言われました沖繩が攻撃をされたときにどうするか、こういうお尋ねに対しまして、いわゆる条約上の問題ではございません、またアメリカ自身が施政権を持っておる、そういう状態だから、アメリカがこの沖繩の島民の安全については全責任を持った処置をとるだろう。しかしながら、日本政府は、百万の島民、これは日本国民だ、こういう立場から、場合によりましたらいろいろな考え方をするだろうということを申した。別に自衛隊を直ちに派遣するとか、こういう結論を出したわけではございません。そのときになって日本国民らしき行動をする、こういうことだけをこの席において保留したのです。だから保留して、ただいま絶対に出て行くとか出て行かないとか、かような結論を出したわけではない。日本国民としては、そういう事態に対してはみずから考えるものもありましょうから十分検討しておきたい、こういうことを実は申したのであります。その点に誤解のないように願っておきたい。これは、わが党の方は誤解ないと思いますけれども社会党の方にも同様のお願いをしておきます。  次に、ただいまベトナム問題を、民族解放戦線、これを見誤っているんだ。確かにこの民族解放戦線というものについての理解は、私どもの見るところと、また社会党さんの見るところと、あるいはアメリカの見るところとそれぞれがみんな違っておるんじゃないだろうか、私はかように思います。で、その中に、ただいまお話がありました五四年のいわゆるジュネーブ会議のその結論というものをどういうように尊重していくのかということが残された問題だと思います。一応五四年にジュネーブで会議が持たれ、そうして一応の結論が出た。これではたしか北と南をそれぞれ十七度線で区切って、そうして両政権のあることを認めたものだ、私はかように思っておりますが、そういう状態ではないかと思います。それで、そのもとにおいていわゆる民族解放戦線というものが、南ベトナム南ベトナム内において住民自身の意思によってこれをきめていく、あるいは北は北の住民の意思によってきめていく、こういうことであれば問題ないと思います。しかしながら、南ベトナム内部において、いわゆる国論がなかなか統一しないといいますか、いろいろの動きがある。そういう場合に、これをいま勝間田さんは民族解放運動だ、かような表現をしておこられる。民族解放運動ならどんなことをしてもいいか、かように考えますと、私はそういうことは許せないんじゃないかと思う。民族解放運動だといっても、これは民主的にその解放運動をやっていく、押し広めていく、こういう事柄はあり得るだろう。しかし、武力によって、武力行動によって、あるいは破壊活動によってこの民族解放の目的を達しよう、これは私どもは賛成ができないのです。ここに問題があるのだと思います。だからこそ、この民族解放運動に対して北からの支援があるのじゃないのか、浸透があるのではないか、かような表現がされる。こういうところから、北を爆撃したらこの浸透なりあるいは支援なりというものをやめるんじゃないのか。そうすると、民族解放運動そのものがいわゆる暴力によらないで平和のうちにその目的を達するやいなや、これは住民がきめていくだろう、こういう形になるのだと私は思います。したがいまして、ただいま二つに分けてお尋ねがございましたが、私はそのいずれもがもっと事態を十分認識していただいて、そうしてこれは完全に南だけがいわゆる暴力によらないで、そうして民主的な方法によってこの目的を達しようというならばだれも文句言う筋のものじゃないのだ。しかしながら、暴力により、力によりその秩序を破壊して、そうして取ってかわろうという、しかもそれに対して特別な力が協力する、あるいはこれを応援する、こういうところに私どもの納得のいかないものがある。これをアメリカの従属的な考え方だと言われるが、私は、わが国におきましても、民族解放運動だという名前のもとにもしも暴力によってこの秩序を破壊して取ってかわろうとするならば、幾ら民族解放運動でもわが国においては許すべからざることだと思う。これはおそらく社会党諸君も賛成されるだろう。私は、わが国において賛成のできない事柄はやはりベトナムにおいても賛成できないのだ、同じような考え方でいくべきだ。民族的な要望というものはたいへん強いと思う。しかし、私はどこまでもこれは民主主義的に、いわゆる暴力によらないでそういう目的を達していくということでなければならぬ、かように私は思います。
  91. 青木正

    青木委員長 勝間田清一君、時間がまいっておりますので結論をお願いいたします。
  92. 勝間田清一

    勝間田委員 まだ十分あります。
  93. 青木正

    青木委員長 いや、五十四分までです。
  94. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、いまの佐藤総理のお話を聞いておって非常に事実を曲げておると思うのは、まずジュネーブ協定が締結されて以来今日までの経過をずっと見ておりますと、五四年の協定に調印を拒否して、単独でスミスの宣言を発したアメリカの当時の態度は、佐藤総理一番よく知っていると私は思う。五四年に協定が締結せられてわずか二カ月後に、アメリカはすでにSEATOの軍事同盟を締結して、ベトナム、ラオス、カンボジアをこの地域に含めさして、これをSEATO体制に持っていこうとした彼らの考え方というものは、もうはっきりジュネーブ協定を守る意思がないということをアメリカは当時から明らかにしておったと私は思う。しかもその後において軍事基地、軍事要員の増員等々を行なって、ジュネーブ協定の違反行為を行なっているということも事実だと私は思う。そうした事実を少しもあなたは考えずに、民族解放戦線のとっている態度が悪いなどというそういう一方的な解釈でこの問題を解決していくところに私は非常な大きな誤りが実はあると思う。  私は佐藤総理に、結局アメリカはそれならば何を最後目的としているかということを一つ示してみたいと思う。ジョンソンの声明に明らかなとおりに、南ベトナムの独立を達成すると言っている。そう解釈してよろしゅうございますか。同時に、私は南ベトナムの独立ということはジュネーブ協定の違反だと思うけれども、どう思われますか。総理、いかがですか。
  95. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 アメリカといたしましては、この南北統一問題等に入る前に、まず南越が外部から干渉されない独立を確保されることが必要だ、まず第一の前提条件としてそういう態度をとっておると了解しております。
  96. 青木正

    青木委員長 勝間田清一君、時間がまいっておりますので……。
  97. 勝間田清一

    勝間田委員 はい。  結局アメリカ最後にねらっているところは、言うまでもなく、かつて韓国においてとった南朝鮮に対する態度、それから現に沖繩にとっている態度、中国を二つに分けて台湾にとっている態度、南北ベトナムを分けて南ベトナムを独立させて、ここに何らかの形でアメリカの軍隊を駐屯させようという態度が結局アメリカのねらうところであると私は考える。アジアにおけるこの四つの、それにさらにSEATO、ANZUS等々の諸軍事同盟を考えてみまするならば、ここにアメリカの中国封じ込めの政策というものが明らかに看取できる。その態度の中にこそ今日の南ベトナムに対するアメリカの攻撃の意図が私は隠されていると思う。こういう事態であるがゆえに、佐藤総理はかつてアジア外交を積極的に前に進めると言ったのだが、最近のわが党の高田富之君の質問に対して、赤色帝国主義はおそるべきものだという、だんだんその本質を明らかにしてきている。そして中国との貿易の問題なども、輸出入銀行の資金の中国に対する差別待遇等の問題にまで発展して、今日のアジアの外交というものは著しく後退しておると思う。反動化していると私は思う。したがって、ここで私は佐藤総理に一つを期待することは、あなたが今日まで進められてきたアジアの前向きの外交ということと、最近あなたが主張し出した赤色帝国主義に対する対決という外交的態度というものと、どう一体関連づけられていくのか。今後のアジア外交というものに対して大きな変化が私は佐藤総理に起こっておるように思うのだが、それに変化があると見てよろしいのかどうか。  同時に、あなたがこの前のこれまた自民党参議院の某候補の激励会に行きまして、新宿の文化会館で、憲法を改正する時期がきていると思うという趣旨のあいさつをあなたはされたことが新聞に伝えられている。憲法改正は国民側がひとつその意思をもうあらわしていい時期だ、こういうような趣旨の演説をされている。私はそういうことを考えてみると、この際にやはり憲法改正に対するあなたの態度についても聞かざるを得ない。  したがって、ここで最後に、アジア外交を一体今後どう進めていくのか、憲法改正に対する態度をどうこの際に改めたのか、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思う。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の外交方針は別に変わってはおりません。今日も、いわゆる自由を守り平和に徹する、これには変わりはございません。重ねて申し上げておきます。したがって、いずれの国に対しても特別な敵対行動というか、いわゆる敵とするというようなことはしない。いずれの国ともつき合っていく、これが私の基本的な外交の考え方でございます。もしも最近において変わったというような御懸念があるなら、もう一度申し上げておきますが、全然変わっておらない。かように御了承いただきます。  また、参議院の某候補の会に私が出かけて行って憲法改正について発言をしたということで、憲法改正をみずからするのじゃないかというような御懸念でございますが、当時の新聞にもこの点を書いておったと思いますが、私は、これは国民自身がきめる問題じゃないか、ことにこの新憲法の三原則、平和、民主主義あるいは人権尊重、こういうような事柄はもう国民の血となり肉となっている問題だ、だから、こういう平和に立っておるこの新憲法はそういう意味で理解すべきことだ。しかしながら、この憲法を制定した当時の事柄は、調査会等の報告でも明らかなように、これはとにかく占領下において自由意思でやられたものでもない、これだけはいなめない事実だ、そういう意味で、国民自身がどういうような判断をされるかわからないが、国民自身がこの憲法というものを十分読んでみる、そうして考え方を新たにきめていく、こういうことがいいんじゃないかということを私は申したのでございます。政府自身がこの問題を取り上げてどうこうするとか、私自身がこの問題を取り上げて、いかにあるべきか、かようなことを申した覚えはございません。その点は新聞等も大体間違いなく伝えておるように思います。
  99. 青木正

    青木委員長 これにて勝間田君の質疑は終了いたしました。  次に石田宥全君。
  100. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 私は、冷害対策について若干の質問を申し上げたいと思うのでありますが、最初に気象庁長官にお伺いいたします。  一昨日のように東北、北海道では平年より十度も低温となり、水田には氷が張ったと報ぜられました。このように一部には天明の飢饉以来の悪条件といわれておりますが、気象庁の予想はいかがでございますか。太陽極小期国際観測年などとの関係もあわせて承りたいと思います。なお、これは世界的なものであるのか、あるいは極東など地域的なものか。国内でも全国的に考慮すべきものかどうかについてもお伺いをいたしたいと存じます。
  101. 柴田淑次

    ○柴田(淑)政府委員 気象庁長官の柴田でございます。ただいまの御質問に対して御答弁申し上げます。  ただいまのお話のように、本年は特に気候が異常でございまして、春以来、昭和九年以来三十年ぶりの不順な春であったようでございます。それに対しての最も異常な点は気候の点でございまして、全国的に——全国的にと申しますと日本全国という意味でございますが、全国的に申しまして、北海道から九州にかけまして、三月ないし四月にかけましては大体大きなところで平年よりも月平均気温が二度低いような状態になっております。北海道について申しますと、三月、四月とも大体平年よりも気温は一度程度低い。それから東北地方、北陸にかけましても、やはり大体平年よりも一度ぐらい低いというような状態でございます。しかし四月の気温になりますと、北海道はただいま申しましたように四月もなお一度でございますけれども、東北地方から北陸にかけましては大体もう少し低くなりまして、二度くらい平年よりも低いという状態でございます。  つきましては、その後の模様はどうでありますかと申しますと、五月の初めごろはやはり平年よりも低うございましたけれども、五月の十日ごろから気温はやや持ち直しまして、現在の平均の点におきましては、平年よりもやや高めになっております。これは北海道から九州までそういうような状態でございます。ただ平均としては高うございますけれども、ときどき寒くなる、ときどき寒波がくるというような状態になっておりますので、昨日あるいは一昨日のように、短時間、二日ないし三日程度平年よりも非常に低くなるというような現象が生じておるわけでございます。これは一つは異常気象と申すことができると思います。  さて、そういうような状態で今日まで経過しておりますので、先ほどの御質問に入るわけでございますが、今後の見通しといたしましては、楽観を許さないというのが結論でございます。たとえば六月から申しますと、六月は御承知のようにつゆのときでございます。このつゆの状態を見てみますと、やはり気温は低うございます。それから七月になりましての気温の状態を申しましても、やはり北日本では低目でございます。それから現在八月までの予報が出ておりますが、八月におきましては、西日本はそう低温でもございませんが、やはり東日本から北日本にかけては、平年よりも月平均気温としましては低いというような予想になっております。これにつきましては、太陽黒点のことがよく話にのぼるのでございますが、この太陽黒点が極小、すなわち太陽黒点が最も小さいときにはこういうような冷化が起こりやすいのでございまして、これは過去の記録が大体そういうような傾向になっているということからでございます。御承知のように、太陽黒点の最小は昨年でございました。今年は最小の次の年になっておりますので、やはり太陽黒点のほうから考えますと、今年の夏は楽観を許さないというような状態かと考えられるのでございます。  なお最後の、世界的なものかどうかというような御質問に対しましては、これは世界的なものでございまして、日本だけのものではございません。アメリカ、ヨーロッパは、やはり現在までの気温の推移は低いのでございます。  それからなお、こういうような低温につきまして……
  102. 青木正

    青木委員長 簡単に願います。
  103. 柴田淑次

    ○柴田(淑)政府委員 よく話にのぼるところでございますが、(発言する者あり)よろしいですか——では、これで質問に対してお答えを終わります。
  104. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 次に総理大臣に伺いますが、北海道、東北など、昨年の冷害と本年の異常気象を非観いたしまして、自殺者が、明らかになったものだけでも二十一件、二十五名に及んでいます。これは直接には冷害、凶作が動機となっているとはいえ、政府の農政に対する不信感が根底に大きく横たわっておるものと言わざるを得ません。農業だけでは生活できず、出かせぎには賃金不払いや、明治時代のような監獄部屋が存在し、行方不明などの問題があるが適切な対策も講ぜられてはおりません。構造改善事業で所得格差やひずみの是正が可能であるかのようにいわれてまいりましたが、いまやその弊害は深刻となり、宮城県角田市の構造改善事業では、二つの養鶏組合が三千万円の負債をつくり、農協から田畑の差し押えを受け、田畑を処分して借金は返済いたしましたが、一家離散の悲惨事を引き起こしたものなどもあり、農業の将来に対して自信が持てないことが根本問題であり、政府与党の責任はきびしく責められなければならないと思うのであります。  さて、この異常気象に対する情報活動、技術指導、食糧需給対策など、万般の対策を樹立するなど、必要な財政措置を講ずるため、参議院議員選挙後相当期間の臨時国会を召集すべきであると考えますが、いかがでございましょうか。
  105. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ことしの異常天候については、ただいま気象庁長官から説明いたしました。しかし、これが実際より以上に伝わっておる。確かにときどき氷が張ったり、また霜が降ったりする、そういう関係で被害もなかなか大きくございますので、いわゆる平均温度だけではこれを見るわけにはいかない、確かに異常天候であります。したがいまして、農林省におきましてもこれと真剣に取り組む、こういうわけで対策本部を設けて、そうして各省とも情報を持ちより、また最善の努力をしておるというのが実情でございます。ただいま構造改善その他についての御批判もございましたが、これは農業自身が、必ずしもいわゆる異常天候からのみきたものでもなく、今日の苦しい立場についての問題だと思いますので、政策的にもこれを推進してまいるつもりでございます。ただいまそういう状況下にありますので、参議院選挙が済んだら臨時国会を開け、こういうお話でございますが、御存じのように、参議院選挙が済むと三十日以内に臨時国会を開くことになっております。これは法律できまっておるものでございます。そういう際に、この臨時国会で何を審議するかということが問題でございますが、ただいま国会を開くか開かないか、かように言われれば、法律できまっておる、国会は必ず開きますということを申し上げ、またそれについてどういう問題を議するか、これはまた十分検討してまいりたい、かように思います。
  106. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 開会されることについてはそのとおりでありますが、ただ相当期間を要するということを私は指摘いたしたいと思うのであります。また営農資金の低利貸し付け、公庫融資の返済期限の延長、利子補給など、金融面の配慮が緊急に必要であると考えられます。私は、特に自殺農民の多くは負債償還を苦にしていることにかんがみ、昭和初期に私どもが厳しい弾圧の中に農家の借金棒引き運動を続け、遂に全国民の世論となり、政府もこれを実施せざるを得なかったのでありますが、政府は山一証券などに対し無条件、無制限の貸し出しの措置をされましたが、今日の時点においてこそ、農家負債整理に関する特別立法を行なうことが緊急の要務であり、農業に対する失政の償いであると考えるのでありますが、総理並びに大蔵、農林各大臣の所見を承りたいと思うのであります。
  107. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基本的には農業といわず、中小企業といわず、いわゆる経済のひずみを是正する、こういう意味で今日までも真剣に取り組んでまいりました。また、ただいまお尋ねがありましたように、ことしは特に天候異変等があり、そういうことと結びついて農業の応急救済対策、これを立てなければならないという状態になっております。先ほどお答えいたしましたように、対策本部等を設けておるのでございますから、詳細は大蔵大臣並びに農林大臣等からお聞き取りをいただきたいと思います。最善を尽くして救済をいたしたい、かように考えております。
  108. 田中角榮

    ○田中国務大臣 昨年度に被害がございました冷害に対する処置、また今年度の異常な状態、五月の二十九日の冷害、こういうものに対しましては、農林省に対策本部をつくりまして、各省各庁と連絡をとりながら検討いたし、また調査を続けておるわけでございます。調査の完了次第適切な処置をとってまいりたい、こういう姿勢でございます。御指摘のとおり、昨年、天災融資法関係とか、自作農維持資金の問題、開拓者資金の問題、再生産用種子購入費の助成の問題、政府所有のふすまの売り渡しとか、いろいろな問題に対して処置をいたしたわけでございますので、こういうものを参考にしながら、調査の結果に対して適切な処置を迅速にとってまいりたいと考え、万全な体制を整えておるわけであります。
  109. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御指摘のように、最近におきまする農家の負債は、年々増大しております。三十八年度の農家経済調査によりますると、全府県で二戸当たり九万九千円、北海道では四十万一千円に達しております。しかしながら、こういう借り入れ金の内容を見ますと、主として増大しておるものは農林公庫資金、農業近代化資金等の長期低利のいわゆる前向きの資金でありまして、昭和初年度の農業恐慌時代の資金のように、生活資金としてのようなものとは性質が違っておるように考えられます。そしてまた、こういう長期低利の前向き資金がふえておりますが、最近におきまする農家経済の規模拡大の状況等から見まして、全般的に経営のバランスがくずれておると、こういうふうには考えられません。しかしながら、今後の災害によりましてすでに借り入れておりまする資金の償還が困難になるような場合が予想されますが、御承知のように、当面天災資金につきましては、すでに貸し付けました金の借りかえ資金の貸し付け、または損失補償制度の活用によりまして対処いたしたい。それとともに、農林公庫資金及び農業近代化資金につきましては、実情に応じまして償還を猶予する等、貸し付け条件の緩和の措置を講じてまいりたいと思います。また、実情に応じまして、自作農維持資金の適切な融通によりまして農家経済の維持をはかってまいりたい、こう考えておりますので、当面農家負債整理のための特別立法措置は考えてはおりませんけれども、農家負債の動向につきましては、今後とも実情の把握につとめまして、その内容につきましても特段の検討を行なってまいりたい、こう考えております。
  110. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 次に、田植えのやり直しや追い苗しろのため相当量の種もみが必要と思われますが、種もみやビートの種の貯蔵量の現在量を承りたいと思います。また、耐寒性品種とわせものの栽培が望ましいといわれているが、藤坂五号やその系統のものはどれほど配付できたか、また、現在なおその手持ちがありますか、いかがですか。  政府は冷害対策本部を設置いたしましたが、看板をかけ、印刷物を配布しただけではないですか。末端の指導は普及員や試験場職員が当たるわけですが、これに対する予算措置はとられているでしょうか。従来は、国も県も普及員に対してはきわめて冷遇しておりまして、事務所の多くはほかの役所のひさしを借りており、事務員の一人もおらぬところが多く、今日なお修繕費もつかない自転車で広範な区域に十分に機動性を発揮し得るとお考でありましょうか。すみやかにオートバイ等の施設を充実すべきであると考えますが、特別の措置をお考えになっておられるかどうか、伺いたいと存じます。  天候不順には農薬の大量使用が避けられないのでありますが、政府は、数年前から農薬の補助金を打ち切っております。本年は、特別措置として二分の一程度の助成を行なうべきであります。  いまや食糧危機は世界的であり、FAOの発表では、すでに世界では一日一万人の餓死者があり、近く大飢饉のおそれありと警告をいたしております。わが国も、三十九米穀年度中に五十万トンに及ぶ新米を食い込んでおるのであります。配給に使える必要な米は世界じゅうをさがしても入手困難な実情にあると思いますが、配給に自信はおありでありますか、どうですか。  一面、昨年の冬作は、全耕地の三分の一、二百万ヘクタールに及ぶ作付放棄が見られるのであります。かくのごとく田園は荒廃し、農民はその方途に迷っております。政府は食糧対策の万全を期するため、本年生産者米価は百五十円キロ当たり二万円以上、一俵八千円以上とし、さらに減収加算を約束することによって米作農民に希望と勇気を持たすべきであります。かつてしばしば経験したように凶作年においてば、常に同一気象条件下、でも経済力のある農家の被害の率が低かったことを反省され、以上申し述べました諸点について、大蔵大臣並びに農林大臣から、全国の農民に納得のできるよう御答弁を求めたいと考える次第であります。
  111. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 詳しくはなお政府委員から御報告申し上げたいと思いますが、私からお尋ねの点につきまして申し上げます。  冷害につきましての種もみの貯蔵及び配付でございますが、これにつきましては、苗しろがいもち等によりまして腐ってしまったとか、あるいは発育が不十分だというものにつきまして、それぞれに補植をする、あるいはまきかえる、こういうものを配付いたしました。どれくらいそういう種もみの用意があったかということでございますが、食糧庁におきまして災害応急用種もみとして買い入れたものが五十九万一千トンあったわけであります。なお、一般買い入れもみも九百十トンを保有しておりました。その中には、夏は農協でもみ貯蔵中の耐冷性品種、いま御指摘になりました藤坂五号系のフジミノリ、こういうものが四百五十四トン含まれておったわけであります。こういうふうに種もみの保管、確保、また配付につきましては万全を期して今日に至っております。  なお、ビートの問題でございますが、このビートの再播種用種につきましても、災害対策用の備蓄種子の準備がされておりますので、被害農家に対しての供給は可能である、こういうふうに考えております。  技術指導に万全を期すべきではないかということでありますので、私どもも、改良普及員等を総動員いたしましてその対策を講じてきましたし、また講じつつあります。それにつきましての機動力といいますか、自転車等によっての指導では不十分でないか、こういうことでございますが、これにつきましては、四十年度は普及所の広域化に伴いまして、ジープ等の四輪車の設置に対しまして助成をいたしております。機動力が飛躍的に向上をいたしております。さらに、特にオートバイの増置につきましても助成することといたしております。その数字等につきましては省略いたします。  農薬等の問題でございますが、この農薬につきましては、零細補助だというようなことのために補助を打ち切っております。でありまするけれども、病虫害の防除につきましては、防除技術の進歩とか、新農薬の開発などによりまして一般によく行なわれております。特に労働力が不足しておりますので、雪かきといいますか、こういうことにつきまして非常に苦労をしております。そういう面につきましては、労力に対しての補助といいますか、これは非常に困難でございますけれども、資材、たとえばカーボンブラック等の資材等につきましては補助を出す、こういうふうに考えております。  こういうような災害でありますので、いまも御指摘のように、食糧に不足を生ずるおそれはないか。これは五十万トンほどの輸入を確保いたしておりますので、いまのところ配給等につきまして事を欠くということはないと思います。でございまするけれども、こういう冷害の対策を講ずると同時に、食糧、米の配給等につきましても、遺憾ないような準備をさらに進めていきたい、こう思います。  次に、生産者米価等につきましての御提案がございました。この生産者米価の決定は、大体七月初旬に行なうことに相なっております。米価の決定方式等におきましても生産費、所得補償方式、この方式をとる考えでございまするけれども、米価審議会等におきまして、いろいろそれのまたこさいな算出方法等につきまして検討いたし、明日あたり答申を得るわけでございます。この米価の決定等につきましても、慎重に取り計らいたいと思っています。  ちょっと数字に間違いがございました。災害応急用種もみの買い入れが五千九万一千トン、こう申し上げましたが、五十九・一トンの間違いでございました、訂正しておきます。
  112. 田中角榮

    ○田中国務大臣 こまかい問題につきましても、農林大臣いま申したとおりでございます。先ほど私が申し上げたとおり、三つの段階に分けて検討いたしております。昨年の冷害に対する具体的な施策は、先ほど私が申し上げたとおり、各般の施策を行なっております。なお、北海道に対しましても、融資に対しましても百億以上の融資を出しておりますし、またこの中に災害分として五十五億も見ておりますし、そういう昨年度のものは別といたしまして、今年度の異常な気候、また五月二十九日に起こりました異常寒冷という問題がございますので、こういう問題につきましては、農林省にいま対策本部をつくってそして、具体的に各省庁と連絡をとって、これが被害状況、対策等に対して現在検討いたしておるわけであります。でありますので、昨年度の冷害に対するいろいろな施策に加えて、今年度の応急のもの、恒久のものあわせて検討いたしておりますので、意見を早急にまとめて諸般の対策を進めたい、こういう考えでございます。その具体的な問題としては、昨年の例がございますので、これを参考にしながらしてまいりたい、こういう考えであります。
  113. 青木正

    青木委員長 永井勝次郎君の関連質疑を許します。簡潔にお願いいたします。
  114. 永井勝次郎

    ○永井委員 二十九日の異常気象による北海道地方の気象状況については、先ほど気象庁長官からお話がありましたとおりでございますが、道東地区では零下八度に下がって、水田が凍った、それから広い地域にわたって霜が降った、これの被害が相当にあるわけでありますが、農林大臣、これらの二十九日の被害状況をどのように把握されておるか、具体的にお示しを願いたいと思います。現地からの電報が、いま届いただけでもこれほどあるわけですが、私の手元にまとまりましたのを見ますと、北見地方が特にひどいそうでありますが、北見地方では、ビートの作付が二万五千ヘクタール、被害面積が一五%から二〇%、約五千ヘクタールの被害、これについては再播をするか、あるいは補植でいいか、ほとんど再播を必要とするような被害の実情であるということ、また水稲については八千五百ヘクタールの作付がありますが、被害面積が約三千ヘクタール、これも苗しろ関係のものが一番被害がここに集中しているのでありまして、直播のほうはまだ芽が出ないからそれほどたいした被害がないが、苗しろ関係が被害がある。空知地方では、ビート関係で六百ヘクタール内外の被害がある。こういうふうな状況であります。現地からまとめました被害の状況はどうなっているか、伺いたいと思うのであります。全体の被害から申しますと、このようにそれほどでないように見えますが、これを地域的な状況で見ますと、北見のほうでありますが、小清水町のごときは、ビート作付が二千百七十ヘクタール、被害面積が九〇%で千九百五十ヘクタール、こういうふうに集中的にやられるところはやられているわけであります。したがって、その被害の実害というものは、全面的に広がったのよりは、集中的にひどいのでありますから、打撃が多いと思います。これらに対して農林大臣、大蔵大臣にお尋ねをするわけでありますが、種子等に対してどういり対策を持たれるか。あるいはこれらの被害に対してどのような措置を講ぜられるのか。これらの被害の復旧について、たとえば肥料であるとか、労力であるとか、ことにことしは非常におくれておりますから、労力は集中して手不足になって賃金が高いのでありますが、これらに対してどういう措置をお考えでありますか。これを伺いたいと思う。  北海道は、水稲の関係については積算温度二千五百度、こういいますが、ことしはもうへこんでいます。大体においてことしは見込みがないだろうという、春先から頭をなぐられた形になっている。それから春と秋との限られた期間の中で営農をやるのでありますから、春が少しおくれても、秋が少し繰り上がっても、これは凶作ということに毎年なるわけですが、ことしの春先のへこみ方というもの、時期的なおくれというものは深刻であると思います。したがって、すでに昨年被害を受け、ことしまたこのような異常気象である、展望もよろしくない、見通しもよろしくないということで、新聞にあらわれた農家の親子心中だけでも二十数件今日あるわけであります。離農も頻発しておりますし、ことしの営農に希望を失っているという、こういう状態もあります。したがいまして、法律でこうある、あるいは手続としてこうあるという、そういう一時のがれやあるいは一般論ではなくて、もう少し農家を勇気づける、ことばだけではなくて、直ちに裏づけとなる財政金融の措置が講じられる、こういうことでなければ、今日の北海道の営農というものは深刻な結果になると思う。気象の異常だけではなしに、気象が異常であればそれを補うための財政金融、政治的な措置が異常を補うような形でなされなければならないと思うのでありますが、これらについて、農林大臣、大蔵大臣からお伺いいたします。ことに大蔵大臣はあと二、三日でかわるそうでありますが、かわりましても、事務引き継ぎにおいて、あるいは党の関係においてひとつがっちりとやっていただく。留任だという説もありますが、留任ならなおさらその点については明確にこの際伺っておきたいと思うわけです。
  115. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、農林省にいま対策本部がつくってございまして、各省庁との間で十分連絡をとりながら被害状況調査いたしておるわけであります。この調査の判明を待ちまして直ちに必要な手当てを行なおうということで、いま連絡をとっておるわけであります。具体的には、先ほどもちょっと申し上げましたが、昨年とりました例がございますので、こういうものを参考にしながら、できるだけ迅速に適切な手段をとってまいるということでございます。財政当局としても、農林省の報告等を待ちながらできるだけの措置をいたします。
  116. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほど気象庁長官から御説明申し上げましたが、第一に気象概況から申し上げます。  五月の二十九日に北海道の東部及び北部で著しく気温が下がりまして、北見では零下三・六度、釧路では零下二・三度、札幌では三度で、いずれも平年より七、八度低い、こういう状況であります。  第二に、水稲について申し上げますが、北海道では、もう私から申し上げるまでもなく、田植えの最盛期であります。一部の苗しろに影響がありましたが、昨年の経験もありまして、厚まきをしておりましたので、苗不足はあまりないような見込みでございます。網走地方では、水田に氷の張ったところもありまして、葉先の色の変わったものがありますが、再生できる見込みであります。しかしながら、田植えで労働力が非常に不足していることは、御指摘のとおりでございます。  ビートにつきまして申し上げますと、五月二十九日の朝、北見地区を中心に低温がありまして、芝糖よりの連絡によりますると、北見の気象通報所で零下三・六度、ところによりまして五度、七度、十度といわれております。被害状況は目下調査中でありますが、関係会社等の連絡による調査によりますると、日甜の美幌地区で約四百ヘクタール、ホクレンの中斜里地区で七百ヘクタール、芝糖北見地区、端野町、北見市、訓子府、生田原等の町村で被害が多いのでございますが、面積につきましては目下調査中であります。ビートの被害につきましては、生育の程度によりまして被害の差がありますが、生育の進んでおるものにつきましては、被害が比較的軽いように考えられます。ビートで直播をしたものは黒変しておりますが、成長点が残っておりますので、全部補植する必要はない、こういう見込みだという報告を受けております。  再播対策といたしまして、その種があるかどうかということでございますが、これにつきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、災害対策用備蓄種子の準備がされておりますので、被害農家に対しては供給は可能である、こういうふうに考えております。  労働力が非常に不足していますので、労働力を調整する対策を講じております。自衛隊等につきましても、労働力を供出してもらうという対策はすでに講じております。  なお、これにつきましては、災害の進捗度等調査の済み次第、財政金融的な対策を講じていくべきであるという御指摘のとおり、私どももそれはそういうふうに講じていきたいと思っております。ことに、昨年度の災害につきましては相当程度対策を講じてまいったのでございますが、こういう経験にも徴しまして、本年度の冷害につきましても財政金融の裏づけをもってこの対策の万遺憾なきを期していきたい、こう考えております。
  117. 青木正

    青木委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は正確に一時三十分より再開し、質疑を続行いたします。  この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ————◇—————    午後一時四十四分開議
  118. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。辻原弘市君。
  119. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は社会党を代表いたしまして、現在こじれにこじれておる、また混乱に混乱を重ねておる医療の問題につきまして、事をここに至らしめた政府責任を、私の質問を通じて追及いたしてまいりたいと思うのであります。同時に、医療問題に対し、私はいささか私見を述べつつ、政府の御見解をこの際明らかにいたしてまいりたいと思います。  最初に総理大臣に、これは当然のことでありますが、お尋ねをいたしておきたいと思います。  すでに今国会も余すところあと一日になりまして、新聞の伝うるところによりますると、その直後に内閣改造をおやりになるという、そういう心組みであるやに聞いておりますが、そういたしますると、各閣僚の任期というものは、逆算いたしますると数日であります。けさほど来の答弁を聞いてまいりますると、どうも私は心理的に、どこかにそうだから、まあ適当にという、そういう気分的なものがあるんじゃないかということがうかがえました。これは佐藤内閣にとってはまことに惜しいことであります。したがって、いやしくもそういう事態に立つ質問であり、答弁であっても、これは佐藤内閣全体として責任を負うべきことである。いささかもそれについては過怠は許されぬと私は考えるし、当然のことでもあろうと思うが、これはあらためて総理大臣からその点について承りたいのと、それからいろいろ伝えられておりまするが、一体いつ改造をおやりになるのですか、もしよろしければ、この席上において御発表願いたい。
  120. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いつ改造するか、それはできるだけ早くという、それだけの答弁でお許しを得たいと思います。できるだけ早い時期に改造したい、そういう気持ちを持っておる、御了承いただきたいと思います。  そこで、ただいまお尋ねがございまして、何だかどうも質疑についても熱が入らない、あるいは答えが十分でないのだというような感じを与えておるやにただいま御意見を伺ったのでございます。理論的には、言われますとおり、佐藤内閣の続く限り各閣僚とも真剣に、また施策について詳細にお答えする、これが理論的には間違いのないところでございます。また、私自身もさようにあってほしい、かように考えておる次第でございます。
  121. 辻原弘市

    ○辻原委員 各閣僚の更迭があっても、当然それらの発言が次期内閣に、また総理自身として責任をお持ちになるということでありますから、一言半句慎重なひとつ御答弁を願いたいと思います。  、厚生大臣にお伺いをいたします。  去るたしか二十一日の新聞であったと思いますが、ほとんどの新聞の紙面に大々的に報ぜられておりました私立岩手大学における付属病院の診療を拒否をしたという、この事実に関する事件であります。この事件の報道を見まして、またラジオで聞いて驚愕、驚嘆、非常な驚きをもってながめたのは私だけではなかったと思います。医療問題の混乱のときから、窓口においてトラブルが起きた場合に、事人命をあずかるいわゆる医療行政なんだから、そういうおそるべき事態の発生がないようにということを何人も祈ったと思いますが、不幸にしてその事実はわれわれの期待に反して起きたのであります。ここで、事件の詳細を述べる時間的なあれもございませんが、すでに厚生省においても調査をせられておると思いますから、それについて見解を承りますが、あとの質問の都合上概略を言いますと、そのお気の毒な当事者は、全国食糧に所属をする南部食糧協同組合の職員である清水幸一さん、この人が五月八日、八戸市の中央病院の紹介状を持ちまして、先に申した岩手大学の付属病院に参って診療を求めたところが、付属病院では岩手県医師会の申し合わせにより新料金制度による現金払いでやるから、治療費約五万円を必要とすると本人に申し伝えた。それに対して清水さんから保険診療を申し出たところ、それを拒否した。そうして紹介先である八戸中央病院に逆紹介の書面を付して送り返した。この間、新聞の伝えるところによりますと、八戸市と岩手病院の間では汽車で約三時間を要する。がたがたゆられながら再びもとのところに帰って、いわゆるキャッチボールをされて、その結果治療がおくれた。十日、ようやく八戸市の病院に入院をいたしましたけれども、時すでに手おくれで、十七日に清水さんはお気の毒にも死亡したという事実。まず私がお伺いいたしたいのは、いま私が申し述べたような事実が厚生省の調査によって明らかになったかどうか、この点であります。時間がございませんので、私がお尋ねをいたす範囲において簡潔にお答えを願いたい。
  122. 神田博

    ○神田国務大臣 お答え申し上げます。  いまお述べになったようなことと大同小異のことでございますが、調査班を三名出しまして厳重な調査をいたしましたところ、保険診療を断わった事実がありましたことは、お述べになったとおりでございます。ただ、治療費五万円を自由診療だから出せと言ったような事実はないようでございます。
  123. 辻原弘市

    ○辻原委員 私がここで重視をいたしますことは、一つは、岩手医大付属は自由診療であるということを患者に対して申し伝え、また、窓口においては新料金に基づくものである、こういうことで保険診療を拒否したというその事実なんです。その他のことについては、新聞でありますから正確にはわかりません。しかし、いま私が申しましたこの問題の中で一番中心の、自由診療だと称して保険診療を拒否した、またその自由診療を新料金のたてまえでやっておるという事実、これは誤りありませんね。
  124. 神田博

    ○神田国務大臣 調査の結果は、大体そのようでございます。
  125. 辻原弘市

    ○辻原委員 そのとおりだといたしますと、私は医療行政上、ここに二つの問題が派生すると思う。  一つは、少なくとも保険医については、保険診療を当該被保険者から求められた場合には、これを拒否することができない法律のたてまえがあると思う。明らかにこれに違反をしておるということ、それが一つであります。その事実をお認めになりますか。  それからもう一つは、去る四月二十二日に医療費の問題についての東京地裁の判決が出ております。それによれば、明らかに本訴決定までは五月一日以降旧料金によるものである、こう下されておる。そうだとするならば、この岩手医大の被保険者である清水さんが全国食糧傘下の職員であるとするならば、訴訟当事者の四組合の中に入る。これは明らかに地裁の判決にも違背するものである。  その二つの違反について、厚生省は調査の結果お認めになりましたか。
  126. 神田博

    ○神田国務大臣 いまお述べになりましたようなことがあったようでございます。  そこで申し上げたいことは、自由診療というのではなくて、新料金の診療をやったということだと思っております。  それからもう一つは、いま健康保険法の違反じゃないかということでございますが、これを診察されました医師は、私は適法にやったのじゃないかという報告を受けておりますが、病院の経営側と申しますか、大学側、いわゆる経営している責任者に健康保険法の違反がある疑いがある、こういうことでいま調査をいたしております。
  127. 辻原弘市

    ○辻原委員 はっきりしておきたいのですが、健康保険法には、医療機関の義務、いま一つは当該保険医の義務、これは区別をして規定されておる。いま厚生大臣の報告によると、診療を拒否し、自由診療に基づいての料金の提示を求めたということは、これは医療機関としての義務を怠った健康保険法の違反である。医師については適法にやった、間違いありませんか。
  128. 神田博

    ○神田国務大臣 御承知のように、大学の付属病院でございまして、そこに勤務している医師といたしましては、医師の良心に従って十分診察をされ、そうして指示されたようでございます。私どもは、これは医師が良心的に、しかもその職務を行なった、そこで、これは健康保険法に触れているとはいまのところは考えておりません。しかし、経営している側が厚生省の四月二十八日の通達なり、あるいはまたそれに基づいて裁判所の決定をされたこともふえんしておりますが、そういうことを無視したという点において経営者が違反をしている、こういうふうに考えております。
  129. 辻原弘市

    ○辻原委員 私立岩手医大付属病院が健康保険法の違反であるということについては、これは厚生省は結論として確認をせられますね。——そこで、医師は適法におやりなすった。これは私ども詳細わかりませんから、それに対して意見を申し上げるわけにはいきませんが、ただお伺いしておきたいのは、新聞が報道している範囲によれば、その際に、先ほども私が述べましたが、逆に八戸市に送り返したときに手紙を付しておる。その手紙には、岩手医大は保険は適用されませんからもう一ぺん返します、こう言っている。それは病院がやったのですか、医師がやったのですか。私は医師は診察をする、診察をした結果治療が必要だということになれば、当然医者の責任上治療を施すという、そこまでが医者の責任だと私は常識的に理解する。ただ見ました、だから適法に義務を果たした、そういうふうには理解ができない。見て病気の原因があるならば、なぜそれに治療をしなかったかということ、そこのところは一体どうなんですか。そうであっても義務違反にはならぬのか、これは将来前例になりますから私はお尋ねするのです。
  130. 神田博

    ○神田国務大臣 いま辻原委員のお述べになったことは、私もそのとおりに考えております。お医者さんは診察をして、その診察の結果病人にいろいろ注意して、そうして処置をとるべきものはとるというのが当然だと思っております。  このたび岩手医大のこれを担当したのは、加藤という医師でございますが、十分診察されまして、その結果、これは精密検査の必要があるように思う、そこで、精密検査をするには入院してもらわなくては困る、こういうことでございまして、大学の病院の本院におきましては満員だったそうです。そこで、特に大学の経営者がそういう料金制度を告示しておったものですから、掲示しておった関係もございまして、患者が入れるようにという意図をもって分院のほうにお世話をしたそうであります。そういう措置までとりましたというのでございます。ただしかし、いまもお話ございましたように、その際に、財政上の都合もあるから一ぺん帰りたい、こういうことであった。なお申し上げますが、その加藤医師の診察された報告によりますと、そのときには症状が非常に悪いというようなふうには見ておらなかった。精密検査の結果、よくひとつ状態を調べて、そして適当な処置を知りたいということをおすすめしたのだが、ふところぐあいの都合でどうしても帰る、こういうことで帰られた、こういうことでございます。そこで私は、医師といたしましてはやるべきことをやったのじゃなかろうか、問題は経営の問題でございまして、四組合の方々に対してそういうルールでやる、こういうことになりますと、そういう問題が起きた。これについて私は、管理者の責任は免れない、こういうことじゃなかろうかということでいま調査を進めておる、こういう段階でございます。
  131. 辻原弘市

    ○辻原委員 すでに事件が発生いたしましてからいち早く現地に調査団を派遣をして、そうしてそれが帰ったという話も私は聞いておる。しかし、鋭意調査といまあなたが言われたが、帰ったのじゃないですか。もう調査は終わったのじゃないですか。どうなんですか。それからいつ最終的に結論をお出しになるのですか。それからいまちょっと語尾を濁されたが、医師については責任がなかったのじゃなかろうか、適法にやったのじゃなかろうかとおっしゃったが、それはまだ結論が出ていないのですか。どうなんですか。
  132. 神田博

    ○神田国務大臣 御承知のように、この処分は当該知事がやることになるわけでございまして、厚生省といたしましては、そこで岩手県の担当部長を招致いたしまして、なお事情を調査しながら県と十分打ち合わせをして処置したい、こう思っております。そう日がかかる段階ではない、かように考えております。  それから医師のいまの問題でございますが、そこまで注意してやられれば、医師の立場としてはそれは適当に十分やったのだ、こういうふうに考えております。
  133. 辻原弘市

    ○辻原委員 私はいま神田さんが言われて、まあお医者さん一人を責めるわけではありませんけれども、しかしながら、窓口においてそういう保険診療を拒否し、しかも診察の結果明らかに病気であるのに送り返したということが、はたしてこれが医師の義務において適法しておるものかどうか、非常に疑問を感じます。いやしくも人命に関することですから、何かもっと適切な、もっと親切な方法が当然とられてしかるべきであった、こういうふうに思うのです。しかし、事実を私が見ているわけではありませんので、それについては申し上げませんが、いまあなたがここで言われたのを集約いたしますると、診療機関の岩手医大については、これは明らかに医師法違反である、医者についてはまだ明確ではない、こういうことですね。そういたしますと、岩手医大については、厚生省としては、違反であるならば当然処分が起きるはずでありますが、これはどういう処分をおとりになりますか。
  134. 神田博

    ○神田国務大臣 この診察に当たりました加藤医師は、三年ほど前までは仙台の大学の付属病院におつとめになっておった方のようでございます。まだ四十何歳でございますか、新進気鋭と申しましょうか、なかなかりっぱなお医者でございまして、私もちょうど直接お目にかかる機会がございまして聞いたわけでございますが、岩手医大は私立の関係もございましょうか、仙台の国立大学付属病院よりも患者に対して非常に親切だという感じを持って、自分は赴任以来そのような処理をしてまいっておる、今度の場合も、あの大学の卒業生から電話があり、そうして添書を持ってまいった病人でございますから、特に十分診察をいたした。その結果、十分内臓関係で調べてみたい、精密検査をしてみたいということで入院をたっておすすめした、こういうことでございます。しかし、入院をすすめたんだが、当人は健康保険証が使えないということで帰らんならぬ、こういうことでございました。そうすると、これは管理の問題になってまいりまして、当該医師といたしましてはそれ以上の権限がないということになろうかと思います。そこで、医師に対しましては、これは医師法違反というわけにはもちろんまいりません。健康保険法違反ということにもまいりませんが、大学側、病院経営側といたしましては、これは健康保険法に違反する、こういうふうに考えまして調査を進めておる、その結論はそう遠くない、こういうふうに考えております。
  135. 辻原弘市

    ○辻原委員 先ほどあなたが明言をされた診療機関としてとった態度が明らかにこれは健康保険法の違反である。そういたしますと、当然その違反については処分が行なわれると思う。手続は都道府県知事のあれにかかるものであるかもしれません。しかし、政府として、厚生省としてのそれに対する、当然これだけの事件を引き起こしているわけですから、態度がなければならぬ。その場合に一体どうしますか。
  136. 神田博

    ○神田国務大臣 今度の地裁の決定に伴いまして、全国でいままでこうした窓口トラブルが三百六十件ほど出ております。五月の二十四日以降はほとんど報告が出ておりませんが、五月二十四日までに三百六十件ほど出ております。そのうち二百六・七十件というものは最初の十日間ぐらいでございまして、いわゆる五月の一日から十日ごろまでに起きた事件でございまして、だんだんそれがおさまってまいりまして、五月の二十日から二十四日ぐらいまでの間には二件ということになっておりまして、二十四日以降はまいっておりません。地裁の決定に伴いまして、二重価格、二重料金立てということになりましてこういうトラブルを見たことは、これはもう政府といたしましてまことに遺憾に考えております。そのようなことのないように、それぞれ診療側あるいはまた支払い側と懇談を重ねてその根絶を期しておるというのが今日までの状況でございます。
  137. 辻原弘市

    ○辻原委員 具体的に処分をどうするのかということを聞いているのです。
  138. 神田博

    ○神田国務大臣 経営側の処分でございますが、これはいま県当局とも打ち合わせをいたしております。事情を聞きまして、厚生省から県に指示をいたしまして、その指示どおりに運んでいただくようなことにいたしたい、かように考えております。その前に調査官が参ったのでございますが、なお聞き取る事情もございまして、岩手県の部長に出頭を命じておる、こういう段階でございます。
  139. 辻原弘市

    ○辻原委員 指示をしたというのだが、どういう指示をしたのですか。
  140. 小山進次郎

    ○小山政府委員 先ほどお話がありましたように、保険医療機関としての岩手医大付属病院の健康保険法違反という事実は、これはほぼ確実だと思っております。そういう場合に行なわれる処置といたしましては、事の性質を考えましていろいろやるわけでございますが、健康保険法上における処分といたしましては、取り消しと戒告、この二つがあるわけでございます。これはいずれも地方医療協議会の議を経て知事が決定をいたすのでありますが、この病院はベッド約千をこえる病院でございまして、岩手県地方における中枢的役割りをしている病院でございます。そういうような実態、またこの病院の果たしている役割りというようなものを考えまして、どういう処分をすることが一番妥当であり、また将来のためによいかということを、目下各般の見地から検討している、こういう事情でございまして、県の厚生部長を招致いたしましていろいろ事情を聞きましたのは、そういった点についての最終的な判断をきめる場合の基礎になるようなことについていろいろ聞いておるわけであります。厚生省側として処分の方向について考えをきめる時期は、きわめて間近であると考えております。
  141. 辻原弘市

    ○辻原委員 すでに調査が完了して、厚生省としての見解も、いま大臣からはっきりこれについては違反だ、こう述べられた。違反であるとなると、当然健康保険法に基づいて、四十二条の十二でありますか、指定の取り消しという行政処分がある。だから、いまいろいろ何か処分に幅があるようなお話を聞いたのでありますが、もちろん病院の重大な性格というものを私は無視して言うわけではないが、しかし、明らかにそういうことをなからしめるためということで規定されたあれなんだから、違反の事実、しかも重大な人を死に至らしめるというような問題が発生したのでありますから、それを適当な形で済ますということは、これは今日の国民感情から申して私は許されないと思う。だから、そう遠くない時期に明確にするといま局長は言ったけれども、私はいま幸いこういう国会という公の場においてお尋ねをしておるのでありますから、その方向は大臣から明示すべきだと思う。しかももうあと二、三日であなたはいないんですよ。だから、いま明確にしておくべきです。
  142. 神田博

    ○神田国務大臣 ただいま小山政府委員からお答えをいたしましたとおりでございまして、健康保険の処分は、取り消しとそれから戒告、こうなっております。取り消しをするというようなことになりますと、これは岩手県の中枢である病院が動かなくなるということになります。しかも千以上のベッドを持っているわけでございまして、万一の事態に問題が出てくる、かように考えております。そこで、取り消しということはなかなかむずかしいんだ、現実の問題として考えた場合、これはやるべきではないというように考えておりますが、最終決定したわけではございません。そういうような考えを持ちながら、それならばどういうことにするかというようなことを詰めておるわけであります。
  143. 辻原弘市

    ○辻原委員 事人命に関するような事件が、いまの厚生大臣の話によると、厚生省の方針としては単に戒告で臨むというふうな、それがはたして制裁になるのかならぬのか全くわからないような形で済ますような、そういう答弁である。もちろん指定医を取り消すということは、診療機関にとってはたいへんなことで、診療機関のみならず、一般の患者に対しても迷惑をかける問題です。だから、私は直ちに指定を取り消せということは、ここでは極論はいたしません。いたしませんが、疑問を感ずる。これだけの事件が結局大山鳴動ネズミ一匹ではないか。しかも死に至ってはいないが、しばしば同じようなトラブル、同じように患者に迷惑をかけるような義務違反の事件が頻発しておる。それに対して事実上何らの制裁の方法がないではないか。私は、これについて非常に疑問を感ずる。総理は、それでいいのかという、こういう常識論にどうお答えになりますか。総理からひとつお考えを承りたいと思う。
  144. 神田博

    ○神田国務大臣 その前に、私からもう一言つけ加えたいと思います。  清水さんがおなくなりになったことにつきましては、これはまことに遺憾でございまして、つつしんで弔意を表する次第でありますが、その清水さんのおなくなりになった原因と病院のとった処置とが直接関係があるということには、報告はなっておりませんことをつけ加えて申し上げておきたいと思います。と申しますことは、先ほども申し上げましたように、精密検査もしたい、病名の十分の検討をいたしたいということ等でございまして、非常にお元気であって、この患者がその後幾ばくもなくぽっくりなくなるというようなことは、長い経験を持っておった医師として想像もつかなかった。そうやせていたこともなかった。発病してそうたいした時間を経過したわけでもなかったというような諸般の事情から勘案いたしまして、そういうようになくなるというような、重病人というようなふうには考えなかった。しかし、病気を少し調べてみたい、そこで精密検査をひとつ受けなさいということをおすすめ申し上げた、こういうことでございます。医師のほうから進んで申し上げたのだ。それを、先ほど来申し上げているようなことで、健康保険診療をしないということでお帰りになった。この点については管理者が違反をしている、私はこう申し上げておるのでございます。
  145. 辻原弘市

    ○辻原委員 理屈はいろいろあとからくっつくものだと思う。特に病気というものとの因果関係については、これは医学上もなかなか解明はむずかしい。しかし、実際問題として病人が長時間の汽車でゆられ、また帰されるというようなことが、医療機関なり医師の常識であろうか。私はそういう意味で困果関係があるということを申しておる。だから、あなたのように、何か医学上の理論の争いみたいに、全然因果関係がありませんなんということは常識では通らぬのです。そういうことは通らない。ほんとうに親切な医療機関であり、事人命を預かっている医療機関という名分に徹しておるならば、そんな不親切な取り扱いはいたしません。そこで診療をし、治療を加えることがよりベターであるということは、一般の常識なんです。だから、あなたの言われたようなことには常識上服するわけにはいかぬ。  そこで、そうおっしゃるから、それでは、これはわれわれの側から見れば、国民の側から見れば大きな人権問題です。当然法務省人権擁護局としてもこの点については調査をせられておると思うから、それについて調査の結果はどうであったか。厚生省、厚生大臣の言うがごとく何ら違法という事実との因果関係はなかった、こういうふうに明言ができるか、この席において明らかにしてもらいたい。——人権擁護局がまだ来ておらぬようでありますから、私はあとでその話を聞くといたしまして、この問題について、これは厚生大臣のみならず、総理大臣も深刻に考えてもらいたいと思うのです。国民の側は、私どもは、この岩手医大の問題は、単に岩手医大の付属病院の窓口で偶発的に、しかも単独に起きた事件とは考えておらない。そもそも一体何がゆえにこういう結果を引き起こしたのか、これが問題なんです。根源は一体どこにあるのか。それについての認識を厚生大臣、あなたはどうされておりますか。この事件の根源はどこにあるのですか。
  146. 神田博

    ○神田国務大臣 この根源はどこにあるかということでございますが、御承知のように、医療問題の治療費の問題につきましては、これは古い以前からの問題でございまして、支払い側、診療側と利害が相対立いたしておりまして、いつも紛争と申しましょうか、なかなか事が円満に進んでいないことは、御承知のとおりだと思っております。いろいろの経緯を経てまいりまして、そこで中央医療協議会というものができまして、公益委員を加えたいわゆる三者構成の委員会ができまして、そしてこの料金の問題を諮問をするということになっていることも御承知のとおりであります。私はそれにしたがいまして、一昨年以来の懸案であり、昨年の四月にもう答申の出たものを中央医療協に諮問いたしまして御審議を願ったわけでございます。審議は、私どもから考えますればもう十分進み(辻原委員「あなたは責任を感じているか、結果はわかっている」と呼ぶ)十分感じております。十分感じておりますので、この問題を何とか円満にひとつものごとをまとめたい、かようなことで苦慮していることでございます。
  147. 辻原弘市

    ○辻原委員 まとめたいと言っているが、一向にまとまらぬじゃありませんか。やることなすことが混乱に輪をかけているんだ、あなたのやっていることは。だから私は、これは一お医者さんの問題、一医療機関の問題としては考えられない。あなた方行政上の不手ぎわが結局その末端の窓口においてこういう事件を引き起こしておる。その根本はあなたにあるのだ。あなたのみならず、これは私は佐藤内閣自体にあると思う。総理は一体深刻にお考えになっておられますか。どうお考えになっておりますか。あらためて私は国民にかわって総理にここで釈明を求めたいと思う。
  148. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま医療問題について、辻原君の意見をまじえながらいろいろお尋ねがございました。もともと人命を預かっておる病院側におきまして、病人の扱い方について万全を期すべきであったと私は思います。なるほど料金その他の問題についてきまらない、そのためにかような事態を起こしたということ、その紛糾については私どももまことに遺憾に思いますけれども、しかしながら現実に目の前に病人を目にして、病人がたずねてきて診察を仰いでおる、そういう際に、こういう医療費そのものが問題になって診察が受けられなかったということは、まことに私は残念なことのように思います。ことに病院側の扱い方として、もっと親切な扱い方があってしかるべきではなかったか。ことに事は人命に関することだ。ただいまお話がありましたように、病人が不幸にしてなくなった。必ずしも診察を受けなかった、また帰された、それだけが直ちに原因になるとは思いませんけれども、しかし、たいへん大きな落ち度である、これだけはいなめない事実だ、かように私は思います。したがいましてこの問題は、起こっておる事柄が過日来当委員会その他国会におきまして問題になっておるように、医療保険そのものの姿、これが本筋になり、そして早くこの紛糾が片づかなければならなかったものだ。それがどうも長く時間がかかって、いまだにこれを片づけることができない。その意味におきましては、政府も中に入り、そして支払い者側といろいろ懇談も遂げております。基本的なあり方等についてもその方針はきまっておるように思います。今日、その方向で一日も早く事態を解決することが望ましい、かように私は思います。もちろん、こういう問題につきまして過去のできた事柄についての原因を究明し、さらにまたその責任を追及することも大事なことだ、かように思いますので、もちろん私はそれをなおざりにする考え方ではございませんけれども、事柄は人命に関する重大な医療問題だ、かように考えますがゆえに、これにあらゆる努力を続けまして、そして一日も早く解決したい、かように私は念願をいたしておるような次第でございます。
  149. 辻原弘市

    ○辻原委員 総理、東京地裁の判決は、いわゆる新料金の職権告示というものを、先ほど申し上げたように本訴確定まで停止をするということで、範囲は別として、少なくともそれまでは旧料金である、これは明確なんですね。ところが岩手医大のあれを見ると、新料金による自由診療だという、明らかにこれは地裁の判決にも服しておらない法律に反する行為だと私は思うのですが、その点についての総理の御認識はどうですか。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、先ほど来私が申しますように、人道上の問題だからあたたかい取り扱い方をしろ、こういうことをまず要求しますが、法律的に見ましても、この地裁決定には従わなければならない、これはまた、政府もそういう態度で、今日までこの地裁の決定が変えられない限りこれに従うべきだ、かような主張をいたしております。また政府も、そういうような考え方でこの問題と取り組んでおります。ただそれに承服はしない、こういう意味で、法律上許されておる手続をとってこれに反対抗告をしておるというのが実情でございますが、しかし、それが変えられない限り、その間においてはこの決定に従う、これは政府態度でもあります。
  151. 辻原弘市

    ○辻原委員 確かに総理のおっしゃるとおりだと私も思う。それがさつき厚生大臣の言われたように、この岩手問題を含んで、自後三百数十件にのぼる健康保険法の違反の疑い、診療拒否の事実、新料金による窓口の扱い、こういうことがなぜ起きるのですか。いま総理が言われたように、明らかに本訴の確定を見るまでは地裁の判決には服さなければならぬ。明らかに言われている。しかし、それが三百数十件も、そしてその特徴的な事件としては、人がなくなるという不幸な事件までを惹起しておる。なぜ一体法律が守れず、裁判所の判決にも反するというような行為が佐藤内閣の医療行政の中に発生するのか。なぜ法律が守れないのですか。あなた方は法律を守らぬでもいいという指導をしているのですか、厚生大臣。お答えを願いたい。
  152. 神田博

    ○神田国務大臣 先ほど三百六十件と申し上げましたのはそのとおりでございますが、これは四組合の報告を合わせて申し上げたのでございまして、全部一々確認して申し上げたわけでないので、ちょっとその意味を加えておきたいと思います。  それから、いま法を守らないのは一体どういうことかということでございますが、これは法を守らせるために、また守るために努力いたしております。すでに判決が出ましてから、私どもはそれぞれの機会に二本立て料金でひとつやれ、またこれは守らなくちゃいかぬということを、保険局長の依命通牒でも出しておりますし、大臣談話といたしましても出ておるのでございますが、御承知のように、お医者さんの数も十万人からにのぼっております。また、その他公私立の病院がございますが、国立、公立病院はみんな守っているように承知いたしております。大きな私立も守っておるというふうに聞いておりますが、岩手医大のように、一部そういう違反したものが出た、こういう機会でございますので、厳重にこれは順法するようにということを通達その他訓令をいたしまして、五月二十四日以降はそういうことが起きていない、こういうことを申し上げているわけでございます。
  153. 辻原弘市

    ○辻原委員 岩手医大の窓口に——岩手県医師会の申し合わせにより云々ということがいわれている。あなたはいま、お医者さんの数も病院の数もたくさんあるから、中にはそういう間違いをおかすものも出てくるだろうと言われたが、この事件の経過はそうじゃないのですよ。そうじゃないでしょう。医師会という名において自由診療である、こう言っているのです。そのことについては何らあなたは触れられておらない。これはどうなんですか。
  154. 神田博

    ○神田国務大臣 全国で違反の出ない県が二十二県からございます。あと、その残余の県が違反が大なり小なり出ている、こういうことでございます。  それから、いま医師会の通達があって、そしてということでございましたが、それはそのとおりでございまして、特に岩手県の医師会が反したような疑いのある通知を出しておる。これについてもいま調査をいたしておる、こういう段階でございます。
  155. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは医師会だけじゃありませんよ。私はこの間十九日の新聞を見て驚いた。何かというと、あなた自身が法律違反をやっていますよ。十八日の日本医師会長の武見さんとあなたとのいわゆる申し合わせ、覚え書きというものに驚いた。いまあなたは、現場が悪い、また医師会はそういうことをやってけしからぬとおっしゃっているが、あなた自体地裁判決に反しているような覚え書きをかわしたじゃありませんか。これはどうなんです。地裁判決は、さっき総理が言われかことは、私はそのとおりだと思う。その決定に服さなければならぬ。たとえ不服があろうと何であろうと裁判所の決定なんだから、本訴の確定するまでは当然そうあるべきだというのが法治国のたてまえです。それをあなたは十八日に、私は時間がありませんから内容は省くが、その趣旨は、要するに窓口において四組合の患者が払うのは新料金に基づくものとするという覚え書きを交換しているじゃありませんか。これは地裁判決に反しませんか。最高責任者である行政長官がその種の違反する行為をやって、どうして現場に、トラブルを起こしてはいけません、法律違反をやってはいけませんなどということが、白々しく言えますか。あなたは医師会を罰する力も、現地における医療機関を罰するだけの何ものもありません。みずから法律違反をやっているじゃありませんか。どうなんです。
  156. 神田博

    ○神田国務大臣 私と日本医師会との申し合わせにつきましてのお尋ねでございましたが、あれは決して法律違反をしたとは覚えておりません。御承知のように、患者の同意を得て新料金をお預かいりする、こういことでございまして、新料金でとっているのではございません。お預かり証を出しているところでございまして、私は違反しているとは考えておりません。患者の生命を守る、患者の病気を治療する、その最善の措置として申し合わせをいたしたのでございまして、そこで違反がなくなったということが事実でございます。
  157. 辻原弘市

    ○辻原委員 そう言うこと自体が、あなたは厚生大臣の資格はありません。厚生大臣ではなくて、少なくとも閣僚としての資格なしと、これは佐藤さんに私はあえて申し上げる。なぜかと言えば、テクニカルは別として、事実において新料金をとることは、これは法律違反です。同時に、あなたは患者というものの立場を理解しておらない。病気になったことはないのですか。病気になった病人の気持ちというものは、一日も早くなおしてもらいたい、治療を受けたい、その気持ちが一ぱいでほかのことはありません。そのときに診療する側のお医者さんなり医療機関が、あなたの病気は早く見なければいかぬけれども、しかしながら、かくかくのことでなければ見ることはできませんと言われたときに、患者はそれを拒否することが心理上できますか。患者と医療機関というものは決して対等じゃないのです。あなたはその患者、国民の感情というものを無視してやっているところに、私は資格なしと言っているのです。そういう考え方の上に立って医療行政をやるところに問題がある。総理大臣、どうですか。私は一患者です。私はいま何ものにもとらわれないで議論をしている。そういうばかな議論をあなたはしてはいけませんよ。それがそもそもの間違いだ。総理大臣どうですか。——答弁は要らないですよ。この話は神田さんに聞きたくないのだ。総理に伺いたい。そんなばかなことはないですよ。
  158. 神田博

    ○神田国務大臣 お答え申し上げます。総理の前に私からもお答え申し上げたいと思います。  私も頑健そうに見えますが、これはなかなか医者にかかっているからだでございます。医者と患者との立場も十分私は承知いたしております。私はまた家族もたくさん持っておりますから、十分承知いたしております。あの医師会との協定は、四組合の患者を守るという考え方で出ておりまして、そして冷静に考えて、私はそういう患者の立場を守るということで出ているのでございまして、しかも長い期間ではございませんし、まあそういうところは少し——おっしゃるお気持ちは私はよくわかります。よくわかりますが、トラブルをひとつ解消したい、そしてよく診療が行なわれるように、しかも同意でひとつやっていく、だから預かり金にしていこう、こういうことでございます。
  159. 辻原弘市

    ○辻原委員 それは厚生大臣から百万だら答えを聞いても、答えにはならぬですよ。答えにはならない。   〔発言する者あり〕
  160. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  161. 辻原弘市

    ○辻原委員 いま厚生大臣は、トラブルを解決したいがためにそういうことをやったのだと言う。それにも私は非常に疑問を感ずる。トラブルを解消するという名分があるなれば、あえて地裁判決にも反し、あえて法律違反にもなるような行為を行政大臣ができるとは、今日のわが国の行政上そういうことは許しておらぬです。その点、これは総理大臣にお伺いをいたします。  それからもう一つの問題は、少なくともいま医療問題がこういうふうに紛糾するのはどういう関係からかということを考えたならば、一方の当事者である医師会側とだけ話をしたことによって問題が解決をしたと言うことは、これは政治家としての識見、手腕に欠くるところがあると私は言うのです。少なくとも一方のうち、支払い側があるのです。厚生省がその三者の中に立って、三者の間において話をつけた話ならばまだうなずける。しかし、一方の側とだけ話をして、それはトラブルを解消する手段だからやむを得なかったなんということは、三百代言以外そんなことは言わないですよ。  それから、私は総理に御答弁を願うときに、もう一つお尋ねをして御答弁を願いたいと思うのですが、この武見さんと厚生大臣との話し合いの結果については、閣議及び総理にも報告をして了承を求めたと神田さんは言っておる。総理はそれを了承なすったのですか、お答えを願いたい。こういう法律違反の行政措置をあなたは了承なすったのか。それは佐藤さんに承りたい。
  162. 青木正

    青木委員長 厚生大臣神田博君。(発言する者多し)ちょっとお待ちください。ちょっとお待ちください。静粛に願います。
  163. 神田博

    ○神田国務大臣 辻原委員に申し上げます。御参考になることがいま参りましたので、いまのところに関係いたしておりますので申し上げておきます。  この東京高裁の裁判の決定がただいま行なわれまして、その書類が参りましたので、大事な主文だけ申し上げたいと思います。  原決定を取り消す、相手方の本件申し立てを却下する、こういうことでございまして、これはたいへんこの議論で御参考になると思いまして申し上げたいと思います。   〔発言する者多し〕
  164. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  165. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来お話がありましたように、裁判の決定に対しては私ども法治国の国民としてどこまでも守るのだ、そのたてまえだけはぜひとも御了承いただきたいと思います。また、社会党の方々におきましても、それは異存なしに聞くと、こういうことであってほしいと思います。  ただいま神田厚生大臣についてたいへんな糾弾の御意見が述べられたと思います。これは辻原さんの立場において辻原さんが申されたことで、私自身はただ静かに謙虚にその話を聞く以外に方法はない。私はさような意味で先ほど来のお話は伺っておきます。  また十八日の扱い方についてということでございますが、閣議等において話はしたかどうか。当時私一通りは伺ったように思っておりますが、しかし、これは閣議了承という問題では実はございません。ただ問題が、辻原さんが疑問にされるように、あれだけ社会問題まで引き起こした大きな問題だ、そういう意味だから普通の扱い方とは特別にあるべきだ、かようにお考えになるのも当然だと思います。そういう意味で神田厚生大臣は特に発言したということでございます。そういう意味の発言はあった、かようなことでございますが、私どもがいわゆる閣議で了承したとか、かように言うことは言い過ぎかと思います。これは厚生大臣が処理すべき事柄でございます。だが、全然知らないというものではございません。それを御了承いただきます。
  166. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは、私は言いにくいことをはっきり言っているわけだが、総理も逃げておられる。私がお尋ねをいたしました趣旨は、明らかにこれは地裁決定に反する申し合わせを厚生大臣がしたものである。それの報告を受けて総理大臣が了承を与えたか与えていないのか。なぜ私は了承を与えたか与えてないのか伺うのかといえば、たしか去る二月の二十七日であったと思いますが、そのとき支払い七団体との話し合いのついた際に、冒頭に、医療問題の取り扱いは自後総理に一任をする、事態収拾については総理に一任をする。神田さん、あなたはもう資格なしとそのときに断ぜられておる。自後は総理に一任をするということ。総理が一任を受けてその事態収拾に当たるということになっている。さほど重大な問題なんだから、当然総理が了承を与えるか、一任をされた総理として何がしの方針を示したはずだと私は理解をする。それもやっていないのだということになれば、あの申し合わせ事項はどこかに飛んでいるということになる。総理大臣、どうなんですか、その点。
  167. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えしたとおりでございますし、また神田厚生大臣が申しましたように、いわゆるこの決定を無視したとか、これをじゅうりんしたというものではないようでございます。その点は先ほどの神田厚生大臣の説明をひとつ御了承いただきたいと思います。
  168. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間がありませんから、私はいまの総理のあれについては、総理の逃げ口弁として理解をする以外にはないと思います。  そこで、私は次にお尋ねをしたいのでありますが、さらに驚くべきことは、去る二十九日に、今度は支払い九団体との間に、この武見会長と十八日に覚え書きを交換した内容とまるっきり逆な覚え書きを交換しておる。その趣旨は、窓口は当然地裁判決のとおり法を守る、あくまでも法を守るという趣旨において四団体に対しては旧料金でやる。この趣旨を徹底をするという申し合わせが行なわれておる。だから、時間的経過から考えて、九団体との間の申し合わせは二十九日でありますから、その以前になされた十八日のいわゆる医師会長との覚え書きというものは自然に消滅するものと、これも常識上私は理解をいたしますが、そのとおりでありますか、簡単に時間がないからお答えを願いたい、消滅するかしないか。
  169. 神田博

    ○神田国務大臣 では簡単に申し上げます。  ただいま支払い団体との申し合わせが日医との申し合わせとどういうことになるか。また支払い側との了解事項とどうなるかということでございますが、これはこういうふうに御了解願いたいと思います。いわゆる申し合わせで了解されている事項は次の三点でございます。第一点は「保険診療を受けられるものに自由診療を強要しないこと。」これは当然のことでございます。医師会ともこの点は確約しております。第二項は「基金への請求書に記載するものは便宜新点数表を用いること、この場合、基金でこれを旧点数表に計算しなおし」旧点数で支払いをする差額を預かっておくということでございます。これも両方共通で御了解を得た事項でございます。それから「窓口における取扱いは患者との間に合意がある限り便宜上新点数表による計算で処理し新旧の差額を預りとすること。一昨日、支払側と了解した事項ではこのうち」(1)、(2)、いま申し上げたのでございますが、「今後の問題としてこの方向に沿う処理の可能性を残し、(3)の窓口取扱いについては窓口においても旧点数で処理することを内容としている。この場合でも事実問題として医師と患者との間に強制されない自然の了解があって、便宜上の扱いになった場合まで問題とすることはしない」こういうことを申し上げたわけでございます。したがいまして、「いわゆる合意事項の目指す趣旨はある程度の調整を加えつつ実現への道を」たどっていこう、こういうことでございまして、私は矛盾をしていない、こういうふうに考えております。ただし、この点については支払い側とまだ完全な意見一致を見ておりませんので、きょうは三時からこの点について煮詰めよう、こういうことになっておったわけでございます。御了承願います。
  170. 辻原弘市

    ○辻原委員 支払い側のみならず、あなたが十八日に覚え書きを交換した医師会側は、この二十九日の支払い側との協約については完全に了解をいたしております。それから支払い側とはまだ完全に了解をしておらぬというのが、どの点について完全に了解されておらないのですか。これを明らかにしていただきたい。
  171. 神田博

    ○神田国務大臣 これは、いま後半に申し述べましたように、窓口扱いの場合に、支払い側は全部もうすべて旧料金でやるという考え方でございますが、私どもといたしましては、その申し合わせと同時に、一つの協定を結んでおりまして、「日医との申し合せにはふれない。」ということを申し合わせておりますので、それが生きていると申しましょうか、そういう関係がございまして、いま申し上げましたように、患者と医師の間に自然に合意できたものについてはそれは触れない。もし問題ができたとなれば、三者構成の委員会で処理していくのだ、こういうようなことを申し合わしたわけでございます。ただ支払い側としては窓口は一本だ、私のほうは日医との関係がございますから、自然にできたものはそれはひとつお認めしていただくんだ、この点が違っておる。これは三時にひとつ煮詰めようということでございましたが、御承知のように高裁の決定がございましたので、これは、先ほど申し上げたとおりでございます。
  172. 辻原弘市

    ○辻原委員 御田さん、私は手腕力量に足らざる点があるということを申し上げたのでありますが、今度あなたは分裂症です。しかもひとりよがりです。相手と交渉しておるのでしょう。しかも、私はここに覚え書きの了解事項というものを持っております、二十九日のも、それからあなたが武見さんとかわしたのも。どれを読んでみても、最初のやつは、窓口は新料金、二十九日のは窓口は旧料金、その間に解釈の幅なんかあるはずはありません。だからこそ、あなたは一たん二十九日に約束した後、新聞発表で、十八日覚え書きはこれは廃棄せられておるのが生きておるということを言ったがために、支払い側はまた硬化しておるじゃありませんか。あなたはきょうまとめる自信がありますか。了解を求めるんだと言っておりますが、了解を得られる自信がありますか。自信があり、それが現実であるならばあえて私は質問いたしません。しかし、少なくとも窓口は旧料金一本でいくというこの原則を貫かない限り、支払い側が了解する道理はありませんよ。また、あなたが一たん十八日に約束した窓口扱いは新料金でということについて、これを旧料金にするという完全な了解がなければ医師会との間の紛争はやみませんよ。あなた一人だけが何とかなるだろう。あと二、三日すればあなたお一人は何とかなるかもしれませんが、しかし、そういうぐうたら考え方で——だから私は冒頭に言ったんだ。何とかここ二、三日だけ現地でトラブルを起こさないように、ぐちゃぐちゃやっておればおれの任務はそれで終わり、あとはだれがなるか知らぬけれども、あとの者にまかす、かりそめにもそういう底意があってこんな分裂症的な取り扱いをやっておるということになれば、これはあなたがやめてからでも責任を問われますよ。私は、時間がありませんから、もうあなたの陳弁は要りません。明らかにこれは分裂しておる。ただまとめる自信があるかないかを承っておきましょう。三時からやるということだから、まとめる自信があるかないかを承っておきましょう。
  173. 神田博

    ○神田国務大臣 あなたのお持ち合わせのほかに、「日医との協定にはふれない」ということが紳士協定でございまして、それで私どもの解釈はそうである、ただ支払い側は、そうでなかったということを詰めようということでございましたが、先ほど私が申し上げますように、高裁の決定が……(「そんなこと関係がないよ」と呼ぶ者あり)いや、関係がありますよ。高裁で判決が下ったのでございますから、もうこの問題はこの程度にしていただいてよいのじゃないか、全部新料金になったわけでございますから、お含み願いたいと思います。
  174. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間がありませんから多くを申し上げませんが、その了解事項、その紳士協定なるものも知っておる。その経過を私は詳細に聞きました。あなたがいま言われた紳士協定の第一項にある十八日申し合わせ事項には触れないというその真意は、いたずらに医師会側を刺激することは好ましくないという判断を支払い側もしたにとどまる。それだからといって、そのことは触れないから十八日申し合わせば生きておる、こういうことは支払い側は理解しておりませんよ。それが理解されるようならば、一項の申し合わせ、すなわち旧料金でいくというのは死んでしまう。そんなばかげた約束をだれがしますか。これも常識なんです。そういうことをつらつらあなたが述べるところに紛糾の原因がある。三時から行ってごらんなさい。大もめだ。もめますよ。事態収拾なんかになりはせぬ。だから、私はいま総理大臣が時間の都合で退席されたが、総理にあえて言いたかったのですよ。こういうことを繰り返し巻き返しやってきておる。経過を振り返ってみますと、八%で話し合いがついたものを九・五%にし、また、一月九日には一方的に告示をやり、地裁判決については、ここには法制局長官もいるけれども、全くナンセンスな法解釈をやったでしょう。その結果二本立てになった。いまそこであなたは得々として高裁の判決について言われた。高裁の判決が出たってどうにもなるものではないのです。依然として地裁の本判決待ちなんです。  そこで、私は事のついでに法制局長官にも聞いておきますが、この間の予算委員会で大原君から執拗に行政訴訟法三十二条の解釈を聞いた。そうして政府は統一解釈をやった。私もずいぶん調べてみた。第三者は当該四組合及びその関係者だけなんだ、こうなった。ところが地裁判決は、いま私どもの常識で判断するところによると、おそらく申し立て人のいう決定がなされるだろう。そうすると、その場合その訴訟の範囲は、第三者はどうなりますか。本判決においても、依然としてこの問の仮処分判決と同じようにあなた方は第三者を解釈されますか。その点はどうなんですか。
  175. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  例の第三者の関係は、地裁の決定で執行停止がありました部分について、事件の関係で申し上げたわけですが、あの規定は、そもそも本案の判決についての規定にたしか準用されていたと思います。したがって、本案の関係についても解釈が変わるはずはないというふうに私どもは考えます。
  176. 青木正

    青木委員長 辻原君、時間がまいっておりますので……。
  177. 辻原弘市

    ○辻原委員 それだからたいへんだというのです。高裁の判決が出て、かりに仮処分の地裁判決が取り消されようとも、本訴の確定を見て、もしかりに申し立て人の言うとおりになったならば、これは恒久的に二本立てになるのです。根本的にそこに間違いがあるのです。だから、最近のいろいろな新聞の論説なり学者の意見を聞いてごらんなさい。政府があえて問題の範囲をしぼろうとして、無理な第三者解釈をやったために二本立てが起きた。そうすると、それにしぼられて、今度は本判決が出たときにもその解釈をとらざるを得ない。そうなると永久に二本立てだ。トラブルはいつ果てるともなく続くのです。地裁判決が出た。あなた方はまた高裁にやるでしょう。そこでどういう決定が出ても、また場合によると最高裁までいく。何年かかるかわからない。その間二本立てだ、そんなばかげたことがあなた方の医療行政の中に行なわれている。時間がないからそれらについての詳細は触れません。触れませんが、田中さん、あなたは今度は大蔵大臣から幹事長におなりになるそうですが、総理がおられれば総理にお尋ねしたいところだったが、少なくともこういうような矛盾に矛盾を重ね、誤りの上に誤りを重ねるような医療行政はやめなさい。厚生大臣は当然やめるでしょう。新大臣にかわったときには心機一転して事をもとに戻しなさい。職権告示を取り消して新しく出発し直すことが急がば回れ、一番早道なんです。もしそういうお気持ちがあるならばわれわれも建設的な提案をいたしましょう。事態収拾に協力をする。大蔵大臣、どうですか。そういうお考えがありますか、次期幹事長として。
  178. 青木正

    青木委員長 辻原君、時間がまいっておりますので……。
  179. 辻原弘市

    ○辻原委員 あと、簡単にやります。  総理がおられませんし、次期幹事長はお答えにならぬようでありますから、私はそういう要望を政府に対して強くいたしておきます。  次に、時間がございませんからはしょってお尋ねをいたしますが、大蔵大臣にこの際特にお伺いをしておきます。それは、かねて私も三月三日の委員会においてお尋ねをいたしました。大蔵大臣が政府を代表して私の質問に答えて、国庫負担分については社会党の要望に近づけるよう誠意を持って努力する旨の答弁がありました。引き続いて三月三十日、わが党とあなたとの間に協定が結ばれております。その協定の内容は、時間がございませんから詳細は省きますが、一つは三十九年度の国保清算負担分についての四十年度における財政措置及び金繰りの問題について、一つは、同じく国保について三十九年度補正における見込みの改定できなかったための処置及び水道起債についての問題、それについて協定が結ばれておりますが、これは当然あなたがおかわりになられても、内閣がかわっても正式な公約、また公の場における発言としてわれわれは確約ができると信じておりますが、どうですか。
  180. 田中角榮

    ○田中国務大臣 あなたの御発言に対して、政府の正式な御答弁として申し上げたわけでございますから、自民党内閣が存在する以上だいじょうぶだと私も考えておりますから、そう御理解賜わってけっこうだと思います。
  181. 辻原弘市

    ○辻原委員 私の質問並びに自民、社会両党間における協定は必ずこれは守る、この趣旨であることを了解いたします。  最後に、重大な問題でありますが、現実に明日でもって国会は終わります。そうなると保険三法はもうこれは事実上流れる。とするならば、当然そこに重大な収入の欠陥を引き起こす。一体その穴埋めをどうするかという問題であります。これは実際問題、これからの先を考えてみると、かりに現在の紛糾している医療問題が収拾をされて軌道に乗ったとしても、実際問題として答申が出るのはかなり先。臨時国会はおそらく十月以降でしょう。そうすると、保険三法がスムーズに上がったといたしましても十一月、そうすると四月から十一月に至る間のこの穴埋めを一体どうするか、金繰りをどうするか。これは政府管掌のみならず、国公、地公の共済組合についても言える。共済組合などは、いまだ医療が混乱をしているものだから、全然本年度の事業計画も立っておらない。これは全くたいへんな事態だ。一体大蔵大臣はその措置をどうなさるか。臨時国会の見通しはどうか、こういうことも触れてもらいたい。
  182. 田中角榮

    ○田中国務大臣 まず原則的にはできるだけ早く御答申をいただきたい。こういうことはいつまでもごたごたのまま置くべきではありませんから、勇気を持ってひとつ責任ある御答申を願いたい、こう政府は考えております。しかし、現実問題として、御答申のない場合に措置することはできないわけでありますから、その間つなぎ融資を考慮いたします。この保険制度がこわれたり、共済制度がこわれたりするようなことのないように金繰り措置をしなければならない、こういう考えでございます。第三点は、ただいま臨時国会等のお話がございましたが、これは十一月などというのではなく、参議院の選挙が七月の四日ということになっておりますから、七月四日から三十日以内に特別国会を開かなければならない、こういうことでございますし、この特別国会には補正予算その他の案件もあるわけでありますから、できるだけ早く答申を願って、できるだけ正常な状態に早くするということこそ望ましい、こういう考え方でございます。
  183. 青木正

    青木委員長 時間がまいっておりますので……
  184. 辻原弘市

    ○辻原委員 あと一、二点で終わります。そこで、歳入欠陥の総額はどのくらいか。それからいまあなたは特別国会と言われましたが、それは参議院選挙後の臨時国会だと思うが、その臨時国会は、考えてみると一カ月以内だから七月末か八月だ。そうすると、そこでやるという限りにおいては、それじゃそこで補正を出すのですね。補正を出さざれば、法律だけ出したってこれは意味はないのだから、その辺の関係はどうお考えになっておりますか。
  185. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いまのどのぐらい金繰りが必要かというような問題は、いま事務当局で検討しておりますから後刻申し上げますが、いつこれをやろうというのではなく、原則的には一日も早く御答申を願いたい。そうすると、政府はその答申の線に沿って法律を立案して、国会審議にゆだねるということでございますが、これはあなたが前提として、臨時国会はいつになるか、十一月か十二月だ、こういうお話でございましたから、十一月、十二月ではなく七、八月ごろにも国会は開かれるという可能性はございますから、できるだけ早くお願いしたい、こういう希望的な観測を申し上げたわけでございます。
  186. 中尾博之

    ○中尾政府委員 数字について申し上げます。  政管健保のいわゆる赤字と申しまして、四十年度に予定されまして、それに対していわゆる政府原案をもって対処するという計画になっておりまする数字は、六百五十九億円でございます。これがどういうことになりまするか、時期がおくれ、あるいは答申の内容等によりまして実施計画と変わってまいりますると、この計画も変わってくるわけであります。  なお、その他の保険、共済等のお話もございましたが、それらは、全体の今年度の集計というものにつきましての検討を遂げた数字は、まだまとめたものはございません。
  187. 辻原弘市

    ○辻原委員 最後に、これは政府に強く要望しておきたいことは、一つは、総理以下政府が医療問題については公正な立場から一大決心をもって収拾にあたることが必要である。それから政府責任によって生じた、いま私が申し上げましたような各般の医療会計、医療行政の混乱、それについては国庫負担を中心とした政府責任において始末をしなければ、日本の社会保障の中核である医療行政は、これは根本から破壊をされるということ、これについて特に私は引き継ぎ事項として厚生大臣にも十分聞いておいてもらいたいと思うし、大蔵大臣としても同様、次期内閣に対して十分その点を確約を実行できるよう申し伝えてもらいたいと思うのです。大蔵大臣、いかがでございますか。
  188. 田中角榮

    ○田中国務大臣 本件につきましては、もう皆さんのお気持ちもよく了解いたしておりますし、私のほうでも政府側の意向を明らかにいたしておるのでございますから、これで御了解いただきたいと思います。
  189. 青木正

    青木委員長 これにて辻原君の質疑を終了いたしました。  この際、午後四時半より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後三時二分休憩      ————◇—————    午後四時五十三分開議
  190. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石橋政嗣君
  191. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、本日、三矢研究を中心にいろいろお尋ねをしたいと思っておりましたが、先ほど勝間田議員の質問に答えられて総理がおっしゃったことの中に、非常に重要な問題がございますので、最初にその点についてあらためてお尋ねをしてみたいと思います。  と申しますのは、現在のベトナム情勢を中心に、日本国民、特に沖繩の皆さん方は非常に心配をしておる。これは、事実総理も御理解願えると思うわけです。特にこの沖繩の場合、ベトナム作戦の中心的な基地として使われておりますので、情勢のいかんによってはどのような形で報復攻撃が加えられるかもわからない、そういう心配のあることは事実なわけであります。そういう事態がもしあった場合に日本自衛隊はどうするのか、勝間田議員はこういう質問をしたのに対しまして、総理の答弁によりますと、いかにも出動ができるかのごときお答えが最初あったわけです。あとでお気づきになって、その時点で考えるというふうに釈明をされておられたわけでございますが、私は、その時点で考えるといったような問題ではないと思うのです。  基本的にお尋ねをしたいわけでございますが、確かに沖繩は日本の国土であると私たちも思っております。そこに住んでおられる大半の沖繩県民の方々も、言うまでもなく日本国民であります。しかし、立法、司法、行政すべての施政権はアメリカに把握されておるわけです。そういうところに、はたして日本の自衛権が及ぶのか、これは非常に重要な問題であります。総理のお答えによりますと、その時点で考えるということは、自衛権が及ぶ場合もあり得るかのごとき答弁に聞こえるわけでございますが、もし日本の自衛権が沖縄に及ぶということになると、従来もそれは明らかに憲法違反だというふうに、特に岸内閣によって答えられておるわけでございますし、若干変化があるように思われるわけですが、念のためもう一度お尋ねをしておきたいと思います。
  192. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だからこそ、そういう誤解がないようにと、私は二回申し上げたのでございます。いまの理論をとやかく言うのじゃない、日本民族として同じ沖繩の住民に対して、私どもはほっておけないような気持ちがあるのだ、これはだから理屈の問題じゃないのだ、そういう点でまた別な考え方もあり得るでしょう、こういうことを申したのですよ。だからいわゆるこの安保条約だとか、あるいはただいまの施政権の問題だとか、これはもう理論的にははっきりしておる、しかしながら、はたして沖繩住民がただいまのように攻撃をされる、そうして日本民族、日本国民としてのこの潜在主権を持つ私どもがそういうものをはたして見殺しにしてよろしいのか、何もしないでいいのか、そういうことは、そのときになって国民とともに考えてみる必要があるんだ、そういうことを実は私は申したのです。これは誤解のないように願いますよということを言ったのは、だから、理論ではないのだ、理屈では非常にはっきりしておるのです。しかしながら、理屈でなしに別なものがありはしませんかということを実は申し上げた。
  193. 石橋政嗣

    石橋委員 理論ではないとおっしゃいますけれども、やはりこれは理論的に考えていかなければならない重要な問題なわけです。私たちも国民感情として、そういう緊急な事態においてはほっておけない、そういう気持ちを十分に持っておる、そういうことは理解できるわけです。しかし、そういった気持ちがあろうとも、日本の自衛権を発動させるということは不可能なんだ、考える余地はない、だからこそ安保条約が締結されました際にも、相互協力及び安全保障条約についての合意された議事録として、もしこれらの諸島に武力攻撃が発生した場合には、日本政府は、同政府が島民の福祉のためにとることのできる措置を合衆国とともに検討する意図を有する、こういうふうに議事録の中にとどめておるわけです。島民の福祉のためにとらるべき措置というのは何か、これもずいぶん議論をしたわけです。これはあくまでも自衛隊の出動といったような軍事的行動ではないと何度も確認されておるわけです。それは、せいぜいのところ病人を内地に連れてくるとか、食糧を送るとか、そういう意味合いの住民の福祉のために手を差し伸べるということなんだ、それ以上はできないのだというのが従来の政府の一貫した態度であるし、また、そうなければ非常に危険な様相を持っておるわけだ。だから、かりそめにもそういう事態になったときに、情勢いかんによっては自衛隊の出動もあり得るかのごとき印象を残されることは非常に問題を大きく発展させますので、そこで私は再度お尋ねしておるわけです。自衛権の発動、自衛隊の出動、そういった軍事行動は、いまのように施政権をアメリカが完全に掌握している限り不可能であるということに変わりはないと思うのですが、いかがでございますか。
  194. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは石橋さんの研究されたとおり、この条文、この議事録等から出てくるものはお説のとおりであります。それが私が先ほど来申しておるように、これは理屈じゃない、私ともの国民感情として、やはり感情もこれは大事なことですから、そういう際に感情をも入れた一つの考え方が出てくるかどうか、それはそのときでなければわからないということを実は申し上げたのです。いま理論的に言われる限りにおいてお説のとおりでございます。
  195. 石橋政嗣

    石橋委員 大切な問題でございますから、やはりはっきりさせていただきたいと思ったわけです。特に最近三百人からの自衛隊の隊員が沖繩に行ったという事例もあるわけです。そういうことで何か既成事実をつくるというふうなにおいがしないでもない、非常に心配でございます。この点は防衛庁長官お尋ねしておきたいのですが、一体三百人という部隊が沖繩に何しに行ったのですか。
  196. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 沖繩に参りましたのは、幹部候補生学校の学生でございまして、ことしだけではなく、毎年各種の見学に参っておるのでございます。
  197. 石橋政嗣

    石橋委員 沖繩に毎年行っているわけじゃないでしょう。沖繩には初めて行ったわけですか、それとも毎年行っているわけですか。
  198. 島田豊

    ○島田政府委員 沖繩へ研修に行っておりますのは、ただいま長官から御答弁があったとおりでございますが、三十九年度におきまして陸上自衛隊の幹部候補生学校の学生が三百七十八名、航空自衛隊の幹部候補生学校の学生が二百十六名、それから統合幕僚学校の学生が六十一名、これは目的は、現地におきますところの史跡の見学並びに戦史の研修、さらに米軍におきますところのいろいろな施設、装備等の見学を兼ねまして、要するに幹部候補生学校の生徒なり幹部諸君が視野を広めるという意味におきまして現地に研修にまいっておるのでございまして、現地におきましてその他の目的、たとえば米軍の指導を受けるとか、あるいは共同で演習をやるとか、そういう目的で行っているものではございません。あくまでも研修を目的としたものでございます。
  199. 石橋政嗣

    石橋委員 その肝心のところの答えがないわけですがね。毎年行っておると防衛庁長官言われましたけれども、沖繩に毎年行っているのですか。
  200. 島田豊

    ○島田政府委員 三十九年度から参っております。今後も引き続きそういう計画を持っております。
  201. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは、これから沖繩に毎年行く予定を持っておられるわけですか。
  202. 島田豊

    ○島田政府委員 現地におきまして事情が許せば、われわれとしてはそういう計画を持っておるわけでございます。
  203. 石橋政嗣

    石橋委員 昨年度から始めた、で、おそらくだんだん数もふえていくのじゃないかと思う。そういう形で自衛隊員が沖繩に行くことが普通の状態になる、そういうねらいを持っているのじゃないかということを危惧するわけです。自衛隊が沖繩に行くということは、しかく簡単な問題じゃないわけです。先ほど総理もおっしゃっているように、感情としてはわれわれ理解できないことはありませんけれども、何としても沖繩というのは、現状においてはアメリカの施政権下にあり、しかもアメリカが台湾とか韓国とかフィリピンとかいったような国々と軍事同盟を結んでおるわけですが、そのいずれの軍事条約においてもアメリカの施政権下にある領域として、共同防衛区域になっておるわけです。いくらわれわれが日本の領土だということを主張しても、現実にはアメリカの領土として扱われており、そして韓国や台湾、フィリピンと共同防衛というたてまえを沖繩においてはとっておるわけなのです。そういう特殊な地点なのです。そういうところに、日本国民感情を利用してやすやすと自衛隊が行くということは許されない。非常に危険な様相を帯びてくるわけですから、慎重にひとつやっていただかなければならぬと思うのです。この点については、長官はあまり長くもおられないようですから、総理に特に念を入れて申し上げておきたいと思います。  そこで、本論に入りたいと思うわけですが、問題は三矢研究であります。小委員会が持たれまして、若干の論議はいたしました。しかし率直に申し上げて十分な論議が尽くされたとは思いません。なぜならば、一つには資料がないということなのです。岡田議員が提出をされました状況下の研究、No11、12といったようなほんのわずかな部分しか出されておらない、政府はがんとして出さない。肝心の資料がないところでどうして検討がされますか。しかも、私たちはこの三矢研究の中に盛られておりますいろいろな点について不安を持ち、純粋な気持ちでいろいろお尋ねをしても、まともに答えようとしない。とにかく弁護、擁護につとめるのみ、そういう態度防衛庁はとってまいりましたから、実りのある議論なんというものはできないわけです。私はこういう形でうやむやに終わらせてはならないと思います。二月初めに岡田議員が初めてこの席上で問題を提起しましたときに、総理は率直に驚きを示しました。私はその初心を失ってはならないと思う。何とか逃げ隠れしょうというような態度でこの問題を糊塗してしまえば、必ず私は悔いを千載に残すと思います。もちろん、社会党、われわれは、自衛隊は憲法違反だ、こういう立場を貫いております。事実、憲法違反の自衛隊をなくしてしまえば、こういう不安もなくなるわけですから、それが一番確実で、手っとり早い方法であります。しかし、そういう立場に立って議論をしたのでは全然平行線で、議論をしても始まりませんから、私たちは百歩譲って、実際に政権を担当する皆さん方としてもこういう配慮が必要なんではなかろうか。特にシビリアンコントロールという点に重点を置きながらいろいろお尋ねしておるわけでございますが、心配は要らぬ、間違ったことはしておらぬ、そういうおざなりな答えしかいままでは出ておりません。  そこで、きょうは、自衛隊最高指揮官である、国防会議議長である総理に私は謙虚な立場でひとつお答えを願いたいと思うわけです。私もそういう立場で、冒頭申し上げたように百歩譲ってお尋ねをしてみたいと思います。そうしなければ、われわれはこういった危険な計画研究というものを暴露したということだけではおさまらないわけです。かえってこういうものが表に出なかったときよりも悪い結果になるとすら思います。たいしたことない、ちょっと国会で問題にされた程度で、おとがめも別にないというふうな気持ちを政府諸君に持たせるということがどれほど日本の将来にとってマイナスになるか。これは佐藤総理在任中だけの問題ではないと思うのです。ひとつまじめにお答えをお願いしたいと思います。いままでの質疑の中で政府が明らかにしましたことは、三矢研究研究訓練の一つであって、年度統合防衛計画とか、あるいは長期にわたる第二次防衛力整備計画とかといったようなものとは全然関係ないのだ、こういうことを言い続けてまいりました。ところが、質疑の過程で関係のあることがはっきりしてきているのです。このことをまず認識を総理に改めていただきたいと思うのです。質疑の過程で明らかになってまいりましたことの一つは、まず、昭和四十一年度に完成いたします第二次防衛力整備計画、これが完成するわけです。その時点において日本の陸海空三自衛隊がどの程度の勢力になるか、どういう作戦に対応できるか、これが一番大きな目標であったということがはっきりいたしました。それから、非常事態を想定して検討した結果でありますから、逐次防衛計画に取り入れられてくるものがありますということも、これは認めております。それから、演習をやった結果は、各幕僚が真剣に考えた結果である以上、当然にその職責の上に反映してくるものでありますということも認めております。それに、去る二十七日、北海道におきます札幌地裁で行なわれております恵庭事件の証人として出廷いたしました、三矢研究の統裁官をつとめた田中義男さんの証言の中にも、三矢研究を作成した目的自衛隊防衛計画に資するためで、当然第二次防衛力整備計画、いやそれ以降の防衛計画に影響を与える、また、米国日本政府研究内容の実施を期待する資料である、こういう証言が行なわれております。明らかに防衛計画というものとつながりを持っておるわけです。しかも、統裁官たる田中氏の言によれば、米国日本政府研究内容の実施を期待する、こういうことまで言わしめている内容のものなんです。決して頭のトレーニングといったような簡単なものではありません。このことをまず知っていただきたいと思うのです。総理も、その後ずいぶん時間がたっておりますから、千四百十九ぺ−ジなんという膨大な資料を全部は読めませんでしょうが、しかし、重要な点については目を通されるかあるいは説明を聞いておると思いますが、全然空理空論に走ったいわば研究のための研究ではない、防衛計画とは何らかの形でつながりを持っておるものだということについてどのようにお考えですか。全然関係がないと総理はお考えになっておられますか。この点からお尋ねをしたいと思います。
  204. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 石橋さんたいへんよく研究していらっしゃるのですが、いまおっしゃる、別にことばじりをとってとやかく言うのではございません。研究のための研究というようなものではないと言うのですが、私は、もちろん、自衛隊がやることが意義なしに、あるいは遊びごとにやっておる、かようには私も思いません。いわゆるそれが防衛計画の一部であるかもわからない。しかしながら、あのとき問題になりましたのは、この問題自身が非常な具体性を持って、そうして防衛庁がこういうことをやっている、これは軍人のクーデターにつながるものだ、かような意味の誤解を受けていた。そういうものでないことはこれでおわかりだと思うのです。私は、先ほど来お話しになります、ただいまの石橋さんの意見をほんとに謙虚に私も考えておりました。しかし、三矢事件なるこの論争を通じて一体日本の国はどれだけの利益を得ただろうか。日本の安全はこれで前進しただろうか。一体どういうような気持ちでこれは論議されているだろうか。石橋さんがいま言われるように、自分たちはやっぱりこの問題を真剣に取り上げて、そうして日本の国の安全のだめに役立たすということ、そういう意味研究はしたのだ、こう言われながら、この結果がどうもその方向に行っておらない。まことに私はそれは残念に思います。ただいま言われる事柄も、研究のための研究か、あるいは防衛計画の一部としての研究か、それは私の議論するところではないと思いますけれど、私は、とにかく自衛隊諸君がこの国の安全のためにもう骨身を砕きいろいろの研究をしておる、これはそのまま私ども感謝の念を持ってそれを認めてやったらどうかと思う。そのことが私は大事だと思います。当初これが提案された際、とにかくいまの秩序を乱り、そうして暴力によって特別の陰謀でも企てておるかのような印象を受けるような問題でこの問題を提起された。そういうものでは絶対にないということが明確になった、私はかように思います。
  205. 石橋政嗣

    石橋委員 総理も三矢研究が単なる研究ではなくて防衛計画と何らかのつながりがあるということは若干お認めになったわけです。これは当然なんです。ずいぶん長い間この準備のためにも時間を費やしております。田中証言によりますと、三十六年から準備をしたということすら言われております。実際に研究を始めたのが三十八年の二月、五カ月間にわたって行なわれておるわけですが、非常に慎重に準備もされて、しかも長期間をかけてやっておるわけなんです。単なる研究といったようなものではないわけです。このことについてはある程度の御認識があるようでございます。ところがわれわれが、資料を出しなさい、どういうものを研究したのか、その内容についてひとつ国会において十分に論議しようじゃないか、今後こういうあやまちをおかさせないようにするためにも洗いざらい調べ上げようじゃないか、こういう提案を、政府の側から言えば執拗にと思われるほど私たちは要求し続けた。しかし、これに対して応ぜられない。応ぜられない理由として、防衛庁及び統幕・各幕僚監部のいずれにおいても、正規に決定された文書ではないから、政府責任の持てないものだから出せない、こういう答えを何度も繰り返しておられるわけです。この点も私たちにとってはふに落ちませんし、国民の方々も私は納得できないと思う。少なくとも統幕の議長責任においてなされた研究であります。このことははっきりしております。統幕議長から当時の志賀長官に対して、こういう研究をしたいと思うという報告もなされ、これに対する了承も与えられておるわけです。しかも、これまた田中証言によりますと、三矢研究防衛庁設置法第二十六条に基づいて行なった、これは小委員会において私も指摘したところでございますが、このことをはっきりと認めております。それから、昭和三十七年度の業務計画によって行なったということも認めております。  そこで、これは防衛庁長官お尋ねいたしますが、業務計画長官決裁だと思いますが、その点いかがですか。
  206. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 業務計画長官決裁の中に入ります。
  207. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、「三矢研究について」という、こういう薄っぺらな文書国会提出されたわけです。たったこれだけです、政府三矢研究について国会に出されたのは。この中に、先ほど申し上げたように、「防衛庁および統幕、各幕僚監部のいずれにおいても正規に決定された文書ではない。」、政府責任の持てるものではないということを書いておられるのですが、田中元陸将は、昭和三十七年度の業務計画によって行なった、統幕議長責任において行なったのだ、防衛庁設置法二十六条に根拠があるのだとはっきり述べておられるのです。そうすると、その根本は長官決裁を得ているのですよ。それを、関係がない、政府責任持てないというようなことでは言いのがれがきかないと思うのですが、いかがですか。
  208. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 もちろん長官決裁のもとに各種の研究をやっております。また、各方面総監部あるいは各部隊においても年次ごとにそれぞれ規模に応じていろいろな研究や訓練をいたしておりますが、その業務計画として長官は決裁をいたしましても、その結果をば取捨選択をいたし、内局において、長官においてこれを決定をするものと決定をしないものとがあるわけでございまして、いわゆる三矢図上研究なるものは業務計画によって行ないましたけれども、その結果においては、いわゆる単なる幕僚研究ということであって、長官においてその決定をいたさなかったものでございます。
  209. 石橋政嗣

    石橋委員 私は総理にいま言ったような質疑応答をよく聞いておいていただきたいと思うのです。防衛庁長官はまだあんなことを言っていますけれども、これは責任が回避できる問題じゃないのです。明らかにこれは法廷で証人として述べておられるのですから、よもや間違いはないと私は思います。何度も申し上げるように、長官決裁を得た業務計画に基づいて行ない、統幕の議長責任で行ない、防衛庁設置法二十六条に根拠があるということをはっきり言っております。これは責任のがれはできません。だから、出せる出せないという問題は、ほかの理由があったにしても、政府責任を持てないというような理由でこの提出を拒否するということは、これはできないことなんです。そのことを申し上げておきたいと思うのです。  また、この田中証言によりますと、非常に大切なことが述べられております。「研究は極秘に行われたもので、かつての国会での政府答弁のような大学のゼミナールの答案を集めたようなものではない」と開き直っております。これは、統裁官としてその地位にあった者としてみれば当然のことばでしょう。冗談じゃない、われわれはそんなふまじめな態度でやっているのじゃない、こういうせりふが出てくるだろうと思います。明らかに札幌地裁においてそのような証言が行なわれているのです。しかも、何か答案だけ書いて、そして五分冊にとじ込んで、そのままあとはお蔵入りのようなことをおっしゃいますが、そんなものじゃない。さらに田中氏はこう証言しております。研究は六本木の統幕事務局と市ケ谷の兵棋講堂で行なわれたもので、部隊と想定した兵棋を動かして、こまを動かして指揮演習をする点は戦前の軍隊と変わりない、こう言っております。単に集まった幕僚想定を書いたり、それに対して答解をしたり、そういう文章のものじゃないのです。五十三人の精鋭が——彼らに言わせると自分たちこそ一番精鋭だと言っておりますが、集まって、この場合はどうするかああするか、非常に真剣な論議をして、兵棋を動かしてやっているのだ。これは事実だと思うのです。兵棋というのはこまです。このような研究を単なる頭のトレーニングというような形でごまかしてはならないと思うのです。しかも、三矢研究の小委員会で論議した中で明らかになったのですが、五分冊にわたって各答案を集めている。政府文書によりますと、「研究の過程において、与えられた想定研究問題および関係幕僚の作成した答案等は、研究終了後、五分冊にとじ込まれている。」、こういうふうに述べられておるのですが、その第一分冊というのは研究全般の集約になっているのですよ。集約なんというのは、お互いの幕僚が出しっぱなしの答案の中から出てまいりません。やっぱり研究に参画した者の討議の中でしか出てこないのです。五分冊のうちの第一分冊は研究の集約であるということ、このことも私から申し上げていることを裏づけておると思いますし、また、われわれが入手しました内容を見ましても、「答解説明資料」というのがあるのです。これも論議の集約の形になっております。こういう意見があったがこの場合こういう意見を採用した、こういう形がとられているのです。決して参加幕僚のばらばらの意見を答案に書かせて、それをかき集めたといったようなものではない。この点についてもひとつ総理の御認識をここで新たにしておいていただきたいと思う。要するに、内容に入ります前に最高責任者である総理にしっかりと頭に入れておいていただきたいのは以上の二つです。三矢研究というのは単なる研究ではなくて防衛計画と密接なつながりを持っておるということ、それから、単なる研究ではなくて、政府責任を持てないと言って逃げられるようなインチキなものではないということ、このことだけはひとつ知っておいていただきたいのです。  そこで、しからばどういうことが検討されており、なぜそれがけしからぬと私たちが言うのか。先ほど申し上げたように、百歩譲って政府立場から言っても、これはおかしいじゃないかということばが出てこなければならぬとなぜわれわれが言うのか、そういう角度で二つ三つの問題をあげてみたいと思うのです。  その一つは、核兵器の持ち込みの問題なんです。これも先ほど申し上げました防衛庁が出しておりますこの「三矢研究について」というものによりますと、三矢研究では「政府の明確な方針が打ち出されていることをよく認識し、その判断最高政治判断に待つこととしている」、こう言っております。しかし、実際に内容を読んでみますと、そうなっておらないのです。文章をそのまま読んだほうが正確だと思いますが、時間がありませんから要点だけにいたしますが、佐藤内閣も、あるいはいままでの歴代内閣も、米軍の核兵器の持ち込みは絶対許しませんと国民公約しておられます。これはもうわれわれの耳にたこができるように聞いていることなんです。ところが、この三矢研究なるものによりますと、まっこうからそういう政府態度に挑戦をしておるのです。たとえば、「状況下の研究No12」というものの中にはこういうふうに出てきております。「核兵器の持込みについては、きわめて重大な問題であり、即時報復優勢の堅持という見地からすれば、国内持込みが有利な条件となることは論をまたないであろう。従って持込みは将来真に情勢上必要となった場合にはこれを認める肚を固めておく」とはっきり書いております。それから、同じく「状況下の研究No12」、これは「別紙第2」というところですが、「将来核兵器日本国内持込みが、ただちに必要な情勢となった場合は、持ち込まれた核兵器の使用に関しては事前に必らず日米両国政府の完全なる合意を必要とする条件のもとに承認する予定である。」、ほかにもまだ数カ所出ております。時間がありませんから全部読み上げませんけれども、No12とNo12というほんのわずかの部分を読んだだけでも、数カ所にわたって、核兵器の持ち込みは当然であり、これは承認すべきだという態度を打ち出しているのです。これは政府の基本政策に対する挑戦ではないのですか。何度も何度もいやというほど核兵器の持ち込みは認めないとあれほど言い抜いておるにもかかわらず、最も優秀と称しておられる幕僚諸君は、そういった政府考え方はナンセンスだ、核兵器の持ち込みは当然だと言っているのですよ。結局核兵器があるかないかによって優勢、劣勢がきまる、それだけではなくて、抑止力として効果を持っているのだから当然入れるべきだ、こういう態度三矢研究の中で打ち出しているのです。もし政府公約が事実ならば、なぜこれに対して批判が出てまいりませんか。なぜ出てこないのですか。研究だからかまわぬといって許される内容のものですか、こう言って私たちはお尋ねをしているわけです。その点についてまず総理の見解をお聞きしたいと思います。
  210. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、しかし、いわゆるシビリアンコントロールで、私のところで最終的に決定するのだ、これはいま石橋さんもそれをお読みになったと思う。そういうものでございますから、いわゆる一部においてそういう議論があったからといって、政府はそういうものは絶対に採用しない、かように申しておる。だから、別にとやかく言う筋のものじゃない。いわゆるシビリアンコントロールというたてまえから私が全責任を持ってそういうものを抑止する力もあるのです。それをまた私が持てと言われている。そういう状態でございますから、これは非常にはっきりしておる、かように思います。
  211. 石橋政嗣

    石橋委員 これが事前協議という問題に関連があるわけなんです。私たちが、事前協議というからにはノーの場合もあるかもしれぬがイエスの場合もあるんだろう、こう言った。それに対して、核兵器の持ち込みについてはイエスの場合はないといままで言ってまいりました。その点、それではまずお尋ねいたしましょう。どのような場合でもイエスの場合がないのか、どうか。
  212. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この核兵器についてはイエスというようなことを申すことは絶対にありません。これはもうノーではっきりしている。
  213. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、研究の余地なんてないじゃないですか。自民党政府の続く限り、われわれの内閣になればもちろんのこと、核兵器の持ち込みなんというのはいつの場合もノー。それを、イエスの場合があり得るならばこういう研究も必要かもしれません。しかし、絶対にイエスの場合がないのにどうしてイエスの場合の研究が必要になるのですか、防衛計画的に。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、いわゆる研究がこれで実を結んだといえば石橋さんの言われるとおりだ。しかし、幾らこれをやったからといって、私のところできめるときにそれはノーなんだ、事前協議をいたしましてもノーだ、持ち込みは許さない、こういうことですから、これはもう問題がないことなんです。だから、そういう研究をいずれの場合におきましてもずいぶん反対意見だろうが勇敢にやっておられる方がある。これは、そういう意味で、民主主義下においてはそういうことはあり得るんじゃないですか。これは上の人が幾ら考えたからといって、下は必ずしも盲従はしないと言っている。そこらは研究の自由だ、こういうことは言われるんじゃないですか。しかし、こういう事柄が耳に入った以上、その点はもう許さないのですから、どうか御安心をされて、もうそういうことは許さないんだ、これはノーだ、かように御了承いただいていいかと思います。
  215. 石橋政嗣

    石橋委員 ところが、三矢研究の場合にはノーという場合なんか全然出てこないのですよ。もういつの場合も、持ち込みは認める腹であるとか承認する予定であるとか、一貫しているのです。おそらくこの研究に参画した幕僚諸君の中には、核兵器の持ち込みを断わることができるなんということを信じている者は一人もおらないですよ。ここにあなた方はシビリアンコントロール、最終的には総理大臣である自分が判断するのだからだいじょうぶだと言うけれども、軍事的に検討する諸君は、核兵器の持ち込みを認めぬなんということはナンセンスだ、しろうとは何を言っているか、こういう態度です。こういう態度でいわば挑戦をされながら、気をつけろの一つも言い切れない。これではシビリアンコントロールというものが確立していると言えるか。形の上ではそうなっているかもしれぬけれども、われわれが絶えず国民に言ってきたことだからそういうことはかりそめにも言うものじゃないと叱責の一つもされておらないのですよ。一生懸命防衛庁長官なんかは擁護しているのですよ、いい研究をしていると。これで幕僚が反省しますか。あなた方は自信満々のような顔をしておられますけれども、相手は実力部隊なんだ。実力部隊の自衛隊が一〇〇%自民党の味方だなんて思い上がっておったらたいへんなことですよ。そういう点では慎重に考えを改めていただかなくちゃならぬと思う。これは少し古いのですけれども防衛大学の学生のアンケートによっても、日本の核武装は必要だという意見が圧倒的なんですよ。あなた方がここで何とわれわれを通じて国民に言われようと、七二、三%というものは、日本自体が核兵器を持つべきだ、アメリカ核兵器の持ち込みやなんかという問題でなくて、そういうことを堂々と言っているのです。いわゆる自衛隊のやがて完全に中堅の幹部となろうとする防衛大学の連中は、アメリカ核兵器の持ち込みが必要かどうかなんという議論の段階じゃない、日本自衛隊自身が核武装すべきだと、「小原台」という防衛大学の機関誌ですが、この中で七十数%が堂々と主張しているのです。自分が約束し、これを守るんだから、幕僚が何を言ったってだいじょうぶだ、そういう安易な考え方はおとりにならないようにしていただきたいと思うのです。そんなになまやさしいものじゃありません、実力部隊というものは。ここに一つ、明らかにいわば政府の基本政策に対する挑戦とおぼしきものがあるということを総理に申し上げておきたいと思います。  次は、私はもっと重要な問題だと思うのですが、日本の基地を使用する場合、特に米軍が戦闘作戦行動に出るために日本の基地を使用する場合、これは非常にわれわれも憂慮し、政府もこれに対して事前協議でこれまたチェックするということを長々といままで述べてこられた問題です。日本の基地を使って米軍が出撃する。そうしますと、当然日本の基地に対する報復攻撃というものをわれわれとしては考えざるを得ない。日本の基地に対して報復攻撃が加えられたら、それは日本の領域に対する攻撃だから、自衛隊も自衛権の発動に基づいて行動する、こういう形になる。すなわち、日米安保条約があり、日本に基地がある限り、アメリカとどこかの国との紛争、戦争というものにずるずると日本が巻き込まれていくということをわれわれは絶えず指摘してまいりました。これに対して、事前協議で防ぐからだいじょうぶだとこれまた言い続けてきたのですが、しかし、三矢研究はどうでしょうか。事前協議なんというのは実質的に無視されている。包括承認を与えるべきだと言っております。いまから板付の基地を使ってどこそこに出撃をします、よろしゅうございますか、横田の基地から出撃をいたします、よろしゅうございますか、そんなばかなことができるか、タイミングを失してしまうからだめだ、事前に包括承認を与えて、どこからでも米軍好きなところに出かけなさい、こういう態度をとるべきだと明確に書いてある。しかも、そういうことをやれば当然日本側に戦争、紛争が波及してくる、報復攻撃が考えられる、しかしそれはやむを得ぬと割り切っております。全くこれまた政府の主張と正反対の研究が行なわれているのですが、これについても依然として弁護、擁護をなさるつもりですか。まず総理の見解をお聞きしたいと思います。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 石橋さん、だいぶ乱暴な御意見をなさるようですが、事前協議で包括的な承認というようなことは考えられません。私どもそういうような気持ちは毛頭ございませんから、それはもう少し理屈を考えていただいて、この点はもっと明確にしておきたいと思います。
  217. 石橋政嗣

    石橋委員 私の意見じゃないのですよ。それじゃはっきり明示いたしましょう。「状況下の研究No12答解説明資料」というところに問題点がはっきり書いてあります。場所を指摘します。これはちょっと長いから、次の短いほうを読みましょう。次には、「条約第6条による事前協議事項の包括承認について」と書いてあります。短いからここの部分を読みましょう。「米側が基地使用の必要性を認めないならば、あえて全部を包括承認する必要はないが、作戦実施上是非使用を必要とするならば、寧ろその要請を受けいれたほうが防衛目的達成のためには、より有利であろう。またその都度、事前協議を行うことは作戦行動のタイミング上好ましくないので包括承認の形をとった。」、こういうふうに書いてあるのですよ。「状況下の研究No11」のところには、「この場合米軍が日本基地から戦斗作戦行動を行う場合は、日本への波及を促進し、また波及を免れえないものとするのであろう。」、——覚悟の前です。まだあります。「この際、米軍の日本からの戦斗作戦行動の実施は、これを契機として共産側の日本に対する航空攻撃を誘発し、もしくは促進するであろう。」、その結果ははっきり認めているのです。こういうことを認めれば当然波及してくる、敵側の攻撃が予想される、全部それを認めておるのです。認めておる上で、なおかつ事前協議の包括承認を主張しておられる。これが三矢研究内容です。ここにおいても、政府の言明などというものは彼らの念頭にはかけらほどもないということですよ。こういう考え方に対して、単なる研究だからいいというようなことばは私は出てこぬと思うのですよ。私が申し上げているのじゃない。ここに書いてあるとおりなんです。この点について、やはり何らかの措置というものが講ぜられてしかるべきじゃないのですか、注意するなら注意するというような。いかがですか。
  218. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 三矢研究が果然問題になり、シビリアンコントロール、それぞれ自衛隊あり方等につきましても基本的にずいぶん論議されている。私自身もこういう問題にぶつかり、そこでよほど実情についての把握も今度は正確になってきた、かように私自身思っております。また、防衛庁長官にいたしましても、こういう問題が起こり、世間を騒がしておるだけに、今後のあり方というようなものについては非常に慎重で、また勇気を持ってこういうものに処置していく、こういう体制を整えた、かように私は信じております。ただいまいろいろ誤解もあるようでございますが、三矢研究なるものが問題を提供した、そういう意味におきまして、まじめにこれらの問題を取り上げてみる、こういう気持ちになったことは非常な進歩である、かように私は考えておる次第でございます。ただいま防衛庁におきましても、そういう意味でよほど制服とそれから文官と一体となってこういう大事な仕事にぶつかっていく、こういう気持ちができた、かように私は思っております。一部だけでかってなことはできないのだということもよくわかった、かように思っております。
  219. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、シビリアンコントロールをいまのような形で確立しておるといって安心しておれるのかどうかという問題については、これからお尋ねしようと思っておるわけです、このような形でいいのかと。しかし、そこに入る前に、やはり政府国民に向かって公約しておる部分について明らかに挑戦しておると思われるような研究をしておることに対して何らの措置も行なわずに、どちらかというと弁明これつとめ、擁護につとめるというような態度ではたして彼らが真に反省をするかどうかという点で疑問を持っておるわけなんですよ。何の措置も講ぜられないで、国会で少し騒がれても政府・与党が一生懸命になって守ってくれる、だから安心して、政府の政策に反するものであろうと、憲法や条約を無視したものであろうと研究の名においてどんどん進めていけばいい、こういうふうな風潮ができることをおそれているわけです。そんなことはないというのは、ちょいと安心し過ぎると私は思うのです。だから、区切りをつけるためにも何らかの措置が必要なんじゃないですかと言っておる。そのお答えがないので、一つ二つと例をあげているわけです。これは政府に対する挑戦じゃないか、そういうものをそのままほうっておいていいのですかと、こう聞いておるわけなんです。
  220. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは別に政府に対する挑戦だとは私は思いません、石橋さんは盛んに挑戦だと言われているが、しかし、これはおそらく国の安全を確保する防衛隊として、防衛上あらゆる面でいろいろなくふうをこらしてみるというのは、彼らの本来の責務じゃないかと思います。それを採用するかしないか、それがいわゆる政治優先の立場でそういうものが決定される、かように思うのでございます。一がいにこれを政府に対する挑戦だときめてしまうことはとんでもない考え方だ、そういう誤解があるからこそ、一部においてこういう真剣な考え方についての理解を得がたいのだ、かように私は思います。どうかひとつ挑戦だというようなことばは撤回していただきたい、かように思います。
  221. 石橋政嗣

    石橋委員 最高指揮官である総理大臣防衛庁長官も全然知らない、直接責任のある内局の局長も知らない、そういうところで政府の基本政策と反するようなことを研究の名においてどんどん進めておる。これを挑戦と言わずして何と言いますか。政府が何と言おうとわれわれはこの道を行くのだ、こういう態度をはっきり出しておるじゃありませんか。これは明らかに挑戦ですよ。現に総理大臣も何も知らないと言っておる。防衛庁長官も知りませんと言っておる。内局も知らない。担当の一課長がほんの二、三回ちょいと顔を出したという程度だ。  そのことに関連してちょっとお尋ねをしておきたいのですが、田中元統幕事務局長の恵庭における証言によりますと、米軍のMAAGから二、三回三矢研究のオブザーバーとして参加したというように新聞報道がなされておりましたが、そういった事実は、防衛庁長官、ございますか。
  222. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 証言の詳細はまだ入手しておりませんが、いま石橋委員の言われる米軍のMAAGではなくて、米軍の将校が通訳を連れて一回傍聴というような形で来たことがあるという事実はございます。
  223. 石橋政嗣

    石橋委員 この点についても、総理、よく知っておいていただきたいのですよ。あなたも防衛庁長官も、あなたもといってもあなたの時代ではありませんけれども総理大臣防衛庁長官も全然知らない。内局の局長も一回も出席していない。担当一課長がほんの二、三回オブザーバーで顔を出した。その程度のことならば米軍のほうもしているのですよ。いま詳しくはわからないと防衛庁長官はおっしゃいましたが、米軍の将校が通訳を連れてこの研究に入っているのですよ。政治家や政府責任者が知らないところで制服同士は日米仲よくやっているのです。ここにも一つ問題があると思う。だから、日米共同作戦についても、条約のたてまえからいけば安保条約の第五条の発動がなければ日米共同作戦がとれないというのが筋だろう。しかし、この三矢研究の結論としては、第五条の発動がなくとも日本自衛隊防衛出動さえ許されれば日米共同作戦は可能である、こういうようなことすら堂々と述べているのです。ここにもいまの自衛隊の問題点が一つあるのです。あなた方政府責任者というものよりも米軍の軍人との間のほうにより緊密な連携が行なわれているということです。はしなくも三矢研究においてもそれがあらわれているのです。少なくとも、非常に回数が少ないようにおっしゃいましたが、田中証言によれば、内局の担当課長と同じ程度の回数は出席していると私は見ております。こういうことが一体許されますか。あなた方が知らないところで何がたくらまれているかわからないと疑ってかかっていいと思うのですよ。そうすることが私は真のシビリアンコントロールの確立に行きつく道だと思う。何もかも信じてしまうという態度の中からは、私は進歩はあり得ないと思います。現段階においては疑ってかかっていいと思うのです、特にこういう証拠が出ているのですから。  そこで、このシビリアンコントロールなんですが、防衛庁が出したこの資料によると、心配はない、もう全く万全だというふうに書いてあるのですけれども、そんなに安心しておっていい問題でしょうか。そこで、私は今後の問題として若干総理にお尋ねをしておきたいと思うのです。  その一つは、防衛庁長官その人の問題です。これは何も小泉さんを特定にあげて言うのじゃありません。歴代の長官の問題として考えていただきたいと思うのですが、いままでたしか十五年ぐらいになると思いますけれども、いま防衛庁長官は十九人目ですね。在職期間が非常に短いのです。もうナイキアジャックスとかナイキハーキュリーズと名前を覚えたらもうおしまいです。覚えぬ人もおるかもしれぬ。事実、そのときは覚えておったかもしれぬけれども、やめたとたんに忘れている人もいます。一体、そういう当面総理大臣を補佐する一番最高責任者である防衛庁長官というものがその程度であってシビリアンコントロールなんというものがほんとに確立しておりますと言えるのでしょうかと私は言いたいのです。在職期間わずかに数カ月です。もう兵器の名前を覚えるだけで精一ぱいです。この点について何らかの考えがあってしかるべきじゃないかと私は思う。それは、あまり実力者で野心のあるような者がなれば、これは大きなマイナスがありますけれども、そんな妙な者がなるよりは伴食大臣、これは小泉さんのことじゃございませんが、派閥の中の順番で、はいこの次という人が防衛庁長官になったほうが無難かもしれませんけれども、これは、長い将来について考えてみた場合にはそうばかりも言っておれないのではないか。もう少しじっくりと考え、掌握する能力を持ったそういう長官をつくる必要性を、こういう問題が出た時期においてお感じになっておりませんか。いかがですか。−
  224. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 石橋さんの御意見は御意見として伺っておきます。大体日本の閣僚が非常に任期が短い、そういうことは諸政遂行上いろいろ欠点のあること、これは御指摘のとおりだ、かように思います。
  225. 石橋政嗣

    石橋委員 それをお認めになる以上、今後考慮するということが入ると思うのですが、その点はお触れになっておりませんが、私は前向きの形でお尋ねをしておりますので、一つずつ締めくくりをしたいと思いますから、できればお答えを願いたいと思います。
  226. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この点では石橋さんの御意見を伺っておきますと、かように申したわけです。
  227. 石橋政嗣

    石橋委員 それから、この防衛庁長官の問題で一つただしておきたいと思うことがあるわけです。  それは、防衛庁長官が文民であるということが一つシビリアンコントロールの柱として常にあげられるわけなんです。ところが、現在の日本国憲法は軍備放棄をいたしておりますから、軍事条項というのは全然ありません。だから、シビリアンコントロールについても憲法にその根拠を求めることは不可能なんであります。しいてあげる方がこの憲法六十六条の文民条項というのをあげるのですが、ここで問題になるのは、制服諸君がこの文民条項に該当するかどうかということですよ。排除されるのかどうかということです。この点については政府の中でも妙な議論があるようでございますので、念を押しておきたいと思うのですけれども、将来内閣総理大臣考え方によってはユニホームの諸君でも防衛庁長官になり得るのかということです。この点いかがお考えになりますか。
  228. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはたいへん大事な問題ですし、ことに法制局でいろいろ検討しておりますから、間違わないように長官から説明させます。
  229. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 文民の解釈は、率直に申し上げまして、憲法制定当時から、政府のみならず学者の面におきましてもかなり問題になったところでございます。石橋先生御承知のとおりに、これは第九十回帝国議会で審議している際に、当時の貴族院でやっております場合に、アメリカのほうから、もっと詳しく言えば極東委員会でございますが、そこから要求がありまして、実は貴族院の段階で入った。当時、シビリアンでなければならないという、このシビリアンを何と訳すべきか、実はそのときから問題があったわけでございます。詳しいことは別としまして、さてそれでは解釈をどうするかということにつきましては、多くの学者は、旧職業軍人の経歴を有しない者というのがほとんど圧倒的な考え方でございます。政府のほうはどう言っておったかと申しますと、これも御承知のとおりに、旧職業軍人の経歴を有する者であって軍国主義的思想に深く染まっている者でない者、そういうようなふうに言っておりました。これにつきましては、憲法制定当時に実は国の中に武力組織というものがなかったわけで、これを意義あるものとしてつかまえようとしますれば、どうしてもそういう解釈にならざるを得なかった。そういう解釈から言いまして、いままで——いままでと申しますか、憲法制定当時からのそういう解釈の流れから申しまして、自衛官は文民なりという解釈にならざるを得なかったのであります。これは、憲法制定当時の日本における状況から申しまして、そう解することについていわれがあったと私は思いますけれども、さてしからば、いまひるがえって考えてみます場合に、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」という趣旨は、やはり国政が武断政治におちいることのないようにという趣旨がその規定の根源に流れていることはもう申すまでもないと思います。したがって、その後自衛隊というものができまして、これまた憲法上の制約はございますが、やはりそれもまた武力組織であるという以上は、やはり憲法の趣旨をより以上徹して、文民というものは武力組織の中に職業上の地位を占めておらない者というふうに解するほうが、これは憲法の趣旨に一そう適合するんじゃないかという考えが当然出てまいります。  結論的に申しまして、いままでくどくどと申し上げましたが、文民の解釈についてのいままでの考え方というものは、これは憲法が制定されました当時からの諸種の状況で了解されると思いますが、これにはいわれがなかったわけではないと思いますけれども、平和に徹すると総理がよくおっしゃいますそういう精神は日本国憲法の精神そのものでございますが、そのことから考えました場合に、自衛官はやはり制服のままで国務大臣になるというのは、これは憲法の精神から言うと好ましくないんではないか。さらに徹して言えば、自衛官は文民にあらずと解すべきだというふうに考えるわけでございます。この点は、実は法制局の見解として、佐藤内閣になってからでございますが、その検討をいたしまして、防衛庁その他とも十分の打ち合わせを遂げまして、そういう解釈に徹すべきであろうというのがただいまの私どもの結論でございます。
  230. 石橋政嗣

    石橋委員 この条項一つとってみても、現行憲法というものが一切の軍備というものを否定しておるということが明らかなんですよ。だから、法制局長官がおっしゃるような解釈しか出てこないわけなんです。ただ、いまの解釈によりますと、従来の法制局の見解よりも一歩前進しておりますね。この点変わっております。というのは、この文民条項によって排除されるものは軍国的色彩の強い旧職業軍人に限る、いままでの法制局の見解はここでとどまっておった。ところが、いまの高辻さんの答弁によりますと、やはり憲法の精神から言って、自衛官がそのままで防衛庁長官になる、国務大臣になるということは、これは排除されるべきだ、こういう一歩進んだ見解を述べておられますので、これはやはり総理大臣の追認が必要だと思います。どうぞお願いします。
  231. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も、法制局長官のただいま答弁したとおりだと、かように考えております。
  232. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは、今度は最高指揮官であるあなたの立場について若干お尋ねしてみたいと思うのです。  というのは、最近防衛庁を省に昇格しようという工作が自民党の国防部会を中心に執拗に繰り返されておるわけですが、その際の問題点の一つとして自衛隊最高指揮官というのは内閣総理大臣ということはさまっているが、これは内閣の首班としての総理大臣なのか、それとも総理府の長としての総理大臣なのかということが、これが問題になっているわけです。これまたずいぶん違ってくるわけです、その考え方によって。そこで、現在どのような考えをとっているかということについて総理にお尋ねしておきたいのですが、あなたの最高指揮官というのは、いまはどちらの立場最高指揮官になっておられるのですか。
  233. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 議論すればいろいろあるかと思いますが、私は内閣の首班としての総理と、その立場においてというように考えております。あまり議論してもという感じでございます。
  234. 石橋政嗣

    石橋委員 議論してもというよりも、私たちは国防省の昇格に絶対反対ですから、これは、簡単にそんなものをお出しにならぬように念を押しておきます、出したって通りませんから。  しかし、そのことよりも、国防省というものができた場合に、あなたがいま議論しないとおっしゃったけれども、議論しておかないとまたぞろこの考え方が出てくるのですよ、法案をつくる段階で。いま佐藤榮作は総理府の長として、すなわち防衛庁は総理府の外局ですか、総理府の長として自衛隊最高責任者なんだ、指揮官なんだということになりますと、今度は国防省なんというものをつくろうという考えの人たちは、それじゃ国防省ができたときには、国防省の担当大臣が最高指揮官だ、こういう理屈も出てくるわけですから、これはシビリアンコントロールの問題とも関係がありますので、議論は別としてというのではなくて、やはりはっきりしておく必要があると思うのです。しかし、いま述べられた見解が変わらぬというのであればそれでけっこうですが、いかがですか。
  235. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいまの防衛庁の省昇格問題にからみまして、その指揮権の所在の問題、これは当然に出てまいります。ただいま内閣総理大臣からお話がございましたように、指揮権の根源的所在と申せば、これは内閣の首長である内閣総理大臣であるということをお答えになりましたが、そうなりますと、いま御指摘のありましたような庁が省に昇格するという場合につきましても、いま申し上げたような点からの問題が依然として残ってまいるということになることは当然の結果でございます。
  236. 石橋政嗣

    石橋委員 それじゃ、最高指揮官たる内閣総理大臣、それから防衛庁長官という部分については一応結論が出ましたから、次に、これらの人たちを直接補佐するところの、いわばシビリアンコントロールの大きな柱になっております内局の局課長についてお尋ねをしておきたいと思うのですが、現在の自衛隊に切りかえられました以後においては、防衛庁内局の局課長に制服が侵入できる余地が法律上できているのです。保安庁時代には排除規定がございました。だから、ユニホームが内局の局長や課長になるということは法律的にできなかったわけです。ところが、現時点においてはこれが除かれておりますから、もし政府方針としてユニホームの諸君を局課長に登用しようと思えば、法律的にはその道は開かれているわけです。私どもは非常にその点問題があるのではないかと思うのですが、この点について、最高指揮官たる総理大臣、おかしく思いませんか、いかがですか。
  237. 麻生茂

    ○麻生政府委員 お答えいたします。現在、防衛庁設置法によりますると、石橋先生御承知のように、参事官についての規定は第九条にあるわけでございます。それから、第十八条には、「長官官房及び各局に、書記官、部員その他所要の職員を置く。」、こういうことになっているわけでございまして、これらの職員はシビルの職員であるということを念頭に置いてできているわけであります。先ほど御質問がありましたように、保安庁設置法時代に、幹部の保安官あるいは幹部の警備官の経歴のあった者はこうした局長とかあるいは——その当時は課長と申しておりましたが、課長とかには任用できないような、そういう資格制限の規定がございました。しかし、いずれにしましても、この十八条の職は文官職でございまして、内局の仕事に適するような資格を持っておる者をこれに充てるというわけでございます。したがいまして、制服の定員のある者を持ってまいりましてこれらの参事官なりあるいは書記官なり部員に充てるということは法の趣旨とするところでないというふうに考えているわけでございます。したがいまして、実際の運用におきましても、参事官とかあるいは書記官とか部員というものに自衛官をもって併任でも充てるというようなことはやっておりません。
  238. 石橋政嗣

    石橋委員 それじゃ、法律的にもそういう道は開かれていない、現行法においても開かれてないということですね。
  239. 麻生茂

    ○麻生政府委員 法の趣旨とするところは御質問のとおりでございます。
  240. 石橋政嗣

    石橋委員 時間がなくなりますから、私は最もシビリアンコントロールの基本の問題として、現在の内閣、この防衛問題、自衛隊に対する考え方、そういうものがややおろそかになっているのじゃないかという感じがするわけです。特にそれが象徴的に出ておるのは、この国防会議というのがほとんど開店休業だということです。国際情勢が非常に緊迫をしてくる、最近のようにベトナムを中心に日本国民の不安というものも非常に高まってくる、そういうときにおいても、別に国防会議というものが開かれたという形跡は全くございません。内閣は国防会議にまかせっきり、国防会議防衛庁にまかせっきり、防衛庁はユニフォームにまかせっきり、こういう感じが強いのです。ここにやはり一つの問題があるのじゃないか。この点についてのまず御見解を聞きたい。  それからいま一つは、われわれの問題でございますけれども、議会においても有効に自衛隊の実態を掌握するところの機関というのがないということがやはり問題であるような気がします。現在法案が内閣委員会提出されました段階において若干議論をいたしますけれども、それ以外において全然自衛隊の実態を調査し把握するという機関国会の中にないのです。シビリアンコントロールの最も根本は議会による掌握だと私は思います。そこで三矢の小委員会においては、ただ一つの結論といっていいのじゃないかと思うのですが、国会の中に委員会をつくれ、これだけが三党一致の結論になっているわけです。私は、これがもし実を結ぶならば、完全とはいわないけれども、三矢という災厄がまあ福と転ずることになるのじゃないか、こういうふうな気持ちがするわけですが、ところが、どうも自民党の中の国防部会も、それから防衛庁も、国会の中にそういうものをつくることを好まないようであります。つくるならば常任委員会にせい、法案もかけろ、そんなものでなければいやだというのがどうも漏れ伝わってくるところの真意のようでございますが、そういうことになりますと、これはわが党は賛成できません。したがって、国会の中に委員会ができるということは、これはもうあり得ません。何も実を結ぶことはないわけです。だから、そういった目先の問題にとらわれるのではなくて、やはりこの際総理大臣としてというよりは、国会の問題ですから、自民党の総裁として大局的な立場に立ち、日本の遠い将来をおもんぱかって判断を下すべきじゃないかと思う。法案をどうのこうのなんというけちなことじゃなくて、やはり議会が真にコントロールする能力を持つために十分に自衛隊の実態を把握することもできるような、そういう特別委員会をつくろうと割り切るべきじゃないかと思うのです。私は、そういうものをつくるからには、できれば西ドイツのように非常に権限の強いものをつくるべきだと思っております。西ドイツにおきましては、委員会委員の四分の一の要求がありさえすれば議会の付託がなくても独自の調査権を発動することができます。それぐらい強い権限を西独の連邦議会は持っているのです。そのほかに防衛受託者というような制度も置かれております。これにはいろいろプラスマイナスあるようでございますが、とにかくシビリアンコントロールの根源は議会だ、こういう思想が貫かれているのです。私は、現時点において慎重にひとつ総理はお考えになって、そういった目先の利害得失にとらわれた意見を押えて、国会の中に自衛隊の実態を把握し調査する、そういう特別委員会をつくるということに踏み切って、党の執行部に指示を与えるべきではないかと思いますが、この点についてのお考えをあわせてお聞きしておきたいと思います。
  241. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 石橋君の御意見ですが、国防問題について、政府といわず、国会といわず、国民といわず関心を持て、これについては私も賛成でございます。今後ともこの問題について、もちろん多額の予算も使っておるのでございますから、もっと国の防衛体制、そういうものについて真剣に考えることじゃないかと思います。ことに社会党は、自衛隊自身が憲法違反だ、かように言われるが、先ほど来の話、論旨を進められるにあたっては、百歩を譲ってということばを使われまして、そうして国防の大事なこと、また防衛の大事なことをるる説明されました。私もたいへん胸を打たれるものがあります。政府におきましても、今後は一そうこの防衛の問題について熱意を示し、そういう意味では国防会議あるいは国防会議議員懇談会等にとどまらず、これは万全の方策を立てたい、かように思います。  そこで、ただいままでの国防会議議員懇談会あるいは国防会議等の運用等についての御意見もございましたが、これも私は謙虚に御意見も聞いたつもりでございますし、今後はこういう点につきましても一そう力をいたすつもりであります。また、国会そのものにおきましてもいいお話を聞かしてくださいました。いま一歩その常任委員会ができるという、そこまでいくのではないだろうか、どうもお話によっては特別委員会を設けて、そうして現在の国防の問題を取り上げてみろとか、実情を把握しろとか、こういうような意味のように伺うのでございますが、私は、もうそこまでくれば紙一重で、今後は常任委員会設置、これにも必ず社会党は御賛成願えるのではないか、かように私は非常な希望、期待を持つのでございます。ぜひとも一そう、ただいまのように予算審議にあたりましても、また防衛の実務につきましても、また今後の体制につきましても、これは十分国会としてもこの問題を真剣に取り上げる必要があるだろう、かように思います。私はそういう意味で、さらに竿頭一歩を進められんことをこの機会に心から願いまして、お答えといたしたいと思います。
  242. 石橋政嗣

    石橋委員 その点に関しては私は安易な気持ちを持っていただきたくないと思うのです。冒頭申し上げているように、社会党は、現在の自衛隊は憲法違反という立場をとっておるわけです。そういう立場をとっておる際に、国防省とか、あるいはこれをまともに認知されたものとして扱うような一切のものを認めるわけにいかないのです。しかし、百歩譲ってという立場で私は議論を進め、国会の中の審議の問題についても、いま党の決定をいただいて特別委員会の設置のところまで踏み切っているわけです。あなた方は、一〇〇%寄って来いというようなことで、どうして一致点か見出せますか、社会党が百歩譲ったならば、あなた方も百歩譲って歩み寄って初めて一致点が見出せるのです。百歩譲ったのだから、もう百歩来い、あなたたちに一致しろというのは、これは妥協でも何でもありません。そういう現状をはっきりと御認識願って努力していただかなければ、これは元も子もないということだけは申し上げておきたいと思います。  そこで、時間がありませんからあと簡単にお尋ねしますが、四月の二十八日に、日本の基地から出発をしたRB47という偵察機が北朝鮮のミグ17に攻撃をされ、損傷を受けて横田に帰ってきたという事件がございます。これはちょうど安保条約審議の際に非常に問題になったU2型と同じ性格の偵察機なんです。そういうものが現在においても日本の基地から発進しているということは、総理がおっしゃっているような平和外交の推進などというものとは全くうらはらなことだと思うのです。この点については事実をお確かめになったかどうか、この点からまず御報告を願いたいと思います。
  243. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 私からお答え申し上げます。これは常時気象観測その他の要務で発進をいたしておるのでございまして、ベトナム情勢に直接関連があるものではございません。
  244. 石橋政嗣

    石橋委員 だれがベトナム情勢と言ったですか。(笑声)三十八度線よりも北のほうに行って攻撃されているのではないかと言っているのです。私まで笑い出したら質問にならぬのですけれども、U2型機の問題、当時盛んに黒いジェット機と言われましたが、あの当時も気象観測用の飛行機だといって最初ごまかしておったのですよ。ところが実際にソ連によって撃堕されるという事態が発生してから正体がはっきりしてきたのです。あれ以後U2型も依然として米軍によって使われているようですが、しかし主力は最近RB47というのがスパイ飛行機の主力になっていると私どもは思っております。あのころは非常に国内の世論が沸騰したものだから一応引き揚げた。またほとぼりがさめたから日本の国内に入ってきて、日本の基地を使用して、そしてスパイ飛行を続けているんじゃないか、こう申し上げておるのです。
  245. 海原治

    ○海原政府委員 ただいま石橋先生からU2との関係において御質問がございましたが、御存じのようにU2のUはユーテリティ、いろいろな多目的目的に使う飛行機でございまして、RBのRは偵察機、レコンニサンスの意味でございますから、ただいま大臣から御説明しましたように、RB47というものとU2は全然性質が違います。それで、どういう偵察をやるかということでありますと、これは気象観測、今回の中共の核実験等の場合におきましては、空中におきますところのいろいろの物質のサンプルを収集する、こういうことを任務といたしております。
  246. 青木正

    青木委員長 石橋君、あと一分です。
  247. 石橋政嗣

    石橋委員 アメリカの発表によると、中国の核実験の結果を分析するために何か収集したのはU2だといいますよ。そういう発表をしておりますよ。同じような目的にこれは使われておりますよ。
  248. 海原治

    ○海原政府委員 米国が中共の核実験に伴いますいろいろなデータを収集しますのは各種の方法がございます。御存じのように台湾にはU2がございます。そのほかの国にもU2がおります。日本におりますのはRBの47、これでございまして、本来本国に根拠地を持っておりますが、時々おりおり日本に飛来してまいります。
  249. 青木正

    青木委員長 時間がまいりました。——時間がまいりました。
  250. 石橋政嗣

    石橋委員 締めくくりをします。  RB47が日本の基地を使っておるということをお認めになりましたから、私はそれではこれ以上申し上げませんが、かつてU2型の発進の問題であれほど国内は沸騰しているのです。ところが、ほとぼりがさめたら、早くもこういうスパイ機が日本の基地から飛び立っておる。この事実はいま局長も認めております。総理大臣がおっしゃるような平和外交の推進だ何だといっても、北緯三十八度から北上して、そして北鮮の空から写真をとってくるような、偵察するような、そういう飛行機を日本から発進さしておいて、平和外交も何もありませんよ。こういうことはU2型と同じように、一刻も早く引き揚げてもらうような措置をとることが言行一致というものだ。それが平和外交だ。あなたがほんとうに平和外交といもうのを推進しておると胸を張っておっしゃるならば、そういうことからひとつ正していただきたいということを申し上げて質問を終わります。
  251. 青木正

    青木委員長 石橋政嗣君質疑は終了いたしま  次に横路節雄君。
  252. 横路節雄

    横路委員 私は、日本社会党を代表して、綱紀粛正について総理はじめ関係閣僚の所信をお尋ねをいたしたいと思います。  吹原事件においては、政治家を背景として銀行家と結んでの詐欺事件、東京都議会における当時の自由民主党議員の汚職、国民ひとしく憤激をしているところであります。山一証券は池田内閣以来の自民党内閣の経済政策の行き詰まりであって、しかもいままでの証券業界にとってきた政府責任はまことに重大だと思いますので、これらの点について逐一お尋ねをいたしたいと思います。  まず第一番目に、私は法務大臣にお尋ねをしたいのですが、法務大臣は、すでに参議院の法務委員会でも問題になり、また二十八日の衆議院の法務委員会でも問題があったのですが、去る十四日の閣議後の記者会見で、「森脇将光を逮捕したことによっていわゆる黒金念書は偽造されたものであることがはっきりし、また、この事件は政界とのつながりがないことがわかった。しかし、政治家としては徳義上の問題があるので、えりを正さなければならない。この事件の捜査は参院選挙前に片づくであろう。」こういうように言われているのですが、問題は、黒金念書は偽造だ、政界とのつながりはない、参議院選挙前に片づく、こういうように言われているわけです。この点について、あらためて予算委員会、当委員会お尋ねをしたいのですが、法務大臣がこういうように判断をされたというのは一体だれの報告を受けたのか、またどういう報告を受けられたのか、その点について最初にお尋ねしておきます。
  253. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 私は、直接検事総長からいろいろこうした事情を承るということは、検事総長にいろいろな影響を与えることを必配いたしまして、直接検事総長から話を聞くことはいたしておりません。しかし、私の職責上、私を補佐いたします事務次官あるいは刑事局長からは、事件の推移につきまして必要な段階においていろいろと報告を受けておるのでございます。そうした報告より私は判断をいたしまして、こうした発言になったわけでございますが、あのときの空気は、実は公式の発表をいたしましたあとでこの話が出て、実は雑談的に話したものが取り上げられたようなわけでございます。したがいまして、私が申しましたことは大体伝わっておるのでございますが、なお、森脇を逮捕したことによってすぐそうした結果がわかったというような点は、私は話しておらないつもりなのでございます。
  254. 横路節雄

    横路委員 刑事局長おりますね。ひとつ大臣のそばにでもすわって補佐しておいてください。あなたはこの間——あなたの答弁であったと思うが、十月十九日の黒金念書は偽造だ、こういうように言われたと思うんだが、それに間違いございませんか。どの念書が偽造なのか、あなたからひとつはっきりしてもらいたい。森協を逮捕したときの逮捕状ですね。
  255. 津田實

    ○津田政府委員 森脇逮捕に際しましての容疑といたしましての念書の偽造、これは三菱銀行の関係するものでありまして、これは森脇が三菱銀行に対して恐喝未遂をいたしましたその際に三菱銀行へ呈示いたしたものであります。
  256. 横路節雄

    横路委員 いまのお話で、黒金念書は三菱銀行に関するものに関して出したものが偽造だという。それならば私はあなたに一つずつお尋ねをする。  まず六月五日に黒金名義で借用書が出ている。相手方は平本一方だ。これは二十億円を借用するという内容だ。これには六月五日発行、実印がついてあって、そうして印鑑証明は六月五日、発行ナンバーは五五一二、世田谷区役所十二出張所、これには吹原名義の念書が入っていて——これは総理もお聞きいただきたい。吹原名義の念書は平本一方あて、自民党の総裁公選に必要な資金を準備するため黒金名義で二十億円借用するが、これについては池田首相をはじめ同党幹部も了承済み、返済については、公選の際陣中見舞いなどが入るので、それを充てるから心配は要らない。まずこの吹原名義はともかくとして、この黒金氏が出している実印を押し、印鑑証明のこの二十億円の証書は、そうするとこれは偽造ではないですね、これは三菱銀行関係ではないから。これはどうなんです。
  257. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ね関係のものにつきましては目下調査中でありますが、偽造であるというような疑いも十分ありますので、その点についてはなお解明をいたさなければならないと思っております。
  258. 横路節雄

    横路委員 刑事局長、あなたが一番最初私の質問に答えて、それは十月十九日の念書のものかと聞いたら、三菱銀行の関係のものだと言うから、それならば三菱銀行関係は十月十九日以降のことだから、したがって六月五日のことを聞いた。七月三十日付で黒金名義の念書はさらに入っているじゃないか、平本一方あて、返済がおくれているが、八月二十日までには返済する。その方法は三菱銀行からあなたの取引銀行である東海銀行に払い込むことによって決済する。刑事局長、その次は答弁してもらいたい。八月二十八日付黒金名義の誓約念書、平本一方あて、これは実印、そうしてこれは印鑑証明がある。八月二十八日だが、印鑑証明の発行日は八月二十六日、発行ナンバーは八五九七世田谷十二出張所、この内容は、返済がおくれているのは申しわけないが、近く返済するので期限を延ばしてほしい。これはどうなんです。一体この実印と印鑑証明はどうなんです。これはあなたは、どういうように答弁なさるのです。
  259. 津田實

    ○津田政府委員 これは、捜査中の内容になりますが、吹原が黒金泰美氏から預かっておった印というものがあるようであります。その印というのは、黒金氏名義の不動産あるいは電話加入権の名義を書きかえるために、黒金氏あるいはまた黒金氏夫人から預かったもののようであるという事実があります。ただいまお尋ねの念書につきましては、それが偽造であるという疑いが非常に濃厚でありまするけれども、この段階では、後に申し上げますが、本件の本日起訴いたしました事実と直接関係がありませんので、その点については詳細はまだ申し上げられないと思うのでありますし、また捜査も進行しておる段階でございます。
  260. 横路節雄

    横路委員 法務大臣、私はきょうこのことを一々聞いているのは、あなたが事務次官と刑事局長から聞いて、黒金念書は偽造だから、したがって黒金氏は関係がない、あなたは新聞記者会見でこう言っているのですよ。森脇逮捕により黒金念書の偽造が明らかになった、刑事上黒金の責任がなくなったので黒金は喜んでいる。これで政界に伸びる可能性はないと考えている、こうも言っている。だから私は念書について聞いている。念書についてはさらにもう少し聞きます。九月三日付黒金名義の念書は、平本一方あて、返済期限を延ばしてもらいたい、あなたが先ほど言った、森脇を起訴した十月十九日のは私も新聞その他で全文を見ましたから、これはどうかなと思う。ところが一体これはどうなんですか。十一月二十日付黒金名義の念書、平本あて、この実印と印鑑証明、発行日。印鑑証明は十一月十九日、ナンバーは一一七〇四、世田谷十二出張所、三菱銀行長原支店に預金した通知預金証書を本日引き出すとのことだが、これを十一月二十六日まで延ばしていただきたい、再度この件についてお願いすることはしないから了承してくれ。これは十月十九日の念書とは違う、十月十九日の念書は、御存じのようにまる印だ。この十一月二十日の念書は実印で、印鑑証明がついている。これは偽造なんですか、どうなんですか。
  261. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 この吹原を取り調べておりまする間に、黒金念書を偽造しておるという嫌疑がきわめて濃厚になってまいっております。私はそうしたことから判断をいたしまして、ああした発言をいたしたようなわけでございます。  なお、重ねて念のため申しておきますが、本日森脇外二名が起訴されております。ついさっきのことでございますので、詳しい内容は私は検討いたしておりませんが、もし必要とあれば刑事局長から説明をさせたいと思います。
  262. 横路節雄

    横路委員 いや、いずれこの委員会質疑の進行過程の中でお尋ねしていきます。しかし私は、黒金念書が偽造だと言うから、だから、私も十月十九日のまる印を押したものは偽造だろうと思う。あの文書を読んで、私もこれはだれが書いたのか、政治家たる者はこんなものは書かないだろうと思う。しかし、六月五日、八月二十八日、十一月二十日の実印を押したもの、一体これはどうなんですか。  それより刑事局長お尋ねするが、一体黒金氏は平本一方から二十億を借りた、この借用証が入っている。これは事実かどうか。これはどうなんです。これが一番の問題なんです。これは偽造なんですか。実印を押して、印鑑証明で平本一方に黒金名義で二十億借りている。十月十九日のものは偽造だと言うならば、それはそれでよろしい。しかし、六月五日のこの二十億はどうなんです。
  263. 津田實

    ○津田政府委員 黒金氏の印鑑が吹原の手に入っておることは、先ほども申し上げたとおりであります。したがいまして、その間においていかなる偽造が行なわれたかということが問題点になるかと思います。本仲に関連いたしまして、いまのような問題も当然検討されるわけでありまして、検討しておると思いますけれども、私はいまその内容は承知いたしておりません。ただ、本件にりきましては、先ほど大臣が申しました本日起訴いたしました事実、すなわち、森脇を勾留いたしまして、鋭意捜査をいたしまして、今日までにまとまった事実についての捜査並びに吹原のすでに申し上げました事実に関する捜査を中心に進めておるわけでありますので、ただいまお尋ねの点につきましては、現在捜査中であるというふうに申し上げるほかはないと思います。
  264. 横路節雄

    横路委員 いまなお捜査中であるならば、なぜ一体法務大臣は、森脇逮捕により黒金念書の偽造は明かになった——きょうは森脇を起訴したという。それは偽造の点でしょうか。十月十九日の点かもしれない。しかし、私が聞いているのは、六月五日の二十億借りた点はどうなっているんだ。その点についてはお答えがない。刑事上の黒金の責任がなくなったので黒金は喜んでいる、これで政界に伸びる可能性はないと考えている。法務大臣、これはあなたはどう弁解しようと、刑事局長はいま捜査の段階だと言っている。捜査中の段階なのにあなたがこういうことを言われることは、検察庁法第十四条における指揮権発動の、これは間接的な指揮権発動と同じことになるんですよ。だからあなたは先ほど私の質問に答えて、検事総長を呼んで聞かなかったのは、いろいろ配慮したんだ、だからおれは事務次官と刑事局長に聞いたんだ。あなたが検事総長を呼ばなかったというのは、検察庁法第十四条で、個々の事件については検事総長のみを指揮監督することができるというこの指揮権発動と疑われては困ると思うから、あなたは呼ばなかったんだろう。それなのに、なぜこんなことを言うんです。捜本中の段階だ。あなたはこの間法務委員会で何と言っている。私は傍聴者だから黙って聞いておった。私の判断は正しい。何が正しいんです。いま捜査の段階じゃありませんか。刑事局長は私に答えられないと言っているじゃありませんか。森脇が十月十九日に念書を偽造したことと、六月五日のこと、八月二十八日のこととは違うんですよ。本質的に違うでしょう。法務大臣、伺かお答えできますか。
  265. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 問題が多岐にわたっておるようですが、一つには二十億円の問題について、それからいま一つはいわゆる指揮権のようなことになりはせぬか、最後は、まだ捜査中の事件についてなぜあんなことを言ったか、この三点であります。  「三菱銀行の告訴にかかります三十億円の通知預金証書の詐疑事件並びに大和銀行関係のこの事件については、その犯行の動機、資金調達の有無及び資金の流れを逐一究明した結果、森脇及び吹原の間には約三年前から金銭貸借が行なわれているが、はなはだしい高金利のため雪だるま式に債務の額が増加し、本件最後の債務の大部分は、森脇に対する元本と高額の利息が累積したもので、現実に他の用途に使用できる余裕が全くなく、総裁選挙に関連して一部に伝えられるがごとき資金を出しておる事実は全然認められない。両名は右資金の調達または預け入れに籍口して金融の便をはかっていた事実が明白となった。」これはきょう地検より公式に発表したものを読み上げたのでございまして、捜査当局は、この点については取り調べの結果、こういう結論を出しておるのでございます。したがいまして、この二十億の問題というようなものは、全く彼らが金融上の便利のためにつくり話をやっておったんだという結論でございます。  次に、この指揮権の問題でございますが、あの談話によって検察当局が捜査を手控えするとかなんとかというような、そんな日本の検察陣ではないのでございます。私は、日本の検察陣は厳正公平にその使命を遂行いたしておるものと期待をいたしております。その点は横路さんも少し思い過ぎなんじゃないか、こう思います。なお、私が吹原の捜査の段階、森脇の起訴の段階等におきましていろいろと報告を聞きました結果、私自身がこれは政界と関係がないという判断をいたして話したことでございます。
  266. 横路節雄

    横路委員 刑事局長、私が聞いているのは、この金が総裁公選に流れたかどうかなんて聞いてないんですよ。高橋さんがそう言っておる。私は聞いていないですよ。私は総裁選挙に二十億流れたかなんて、どこに聞いていますか。私は、ただ二十億借りた借用証が正しいかどうかと聞いておる。いま刑事局長は、なお捜査の段階だから言えないと言う。そこで刑事局長、あなたは電話を移転するので、それで貸したというけれども、私たちだったら調べているわけですね。これは、黒金氏が前のうちを売った。これは吹原弘宣のものになっているわけですね。そして今度のうちを買った。それは去年の十月八日に所有権の移転登記をしている。宅地二百四十七・二七坪、一階六十六・八〇坪、二階七・五坪、まあ時価六千万円。私はここで考えられないことは、私たち個人だって実印を貸してくれ、それがどうなるかということはだれだって考えるのです。六月五日、八月二十八日、十一月二十日、六、七、八、九、十、十一、半年も実印を黙って貸している人がありますか。黙って貸していますか。そうして自由に印鑑証明を区役所に行ってもらってきているのです。この点について、私はまず一つ問題点を指摘しておきたいし、二十億の借用証の問題は一つも解明されていない。  次に、私は刑事局長お尋ねをするのですが、——まず佐藤総理お尋ねしたいのですが、この問題は三菱銀行が舞台になっておるわけです。昨年十月の十六日、三菱銀行の長原支店長のところへ吹原が行って、自由民主党の資金を二十億入れますよ、こう言った。たいへん恐縮ですが、総裁として、自由民主党の資金をそういうことをなさるのは幹事長とか、党の会計とか何とかいらっしゃると思うのですが、そういう方はだれだれでございましょうか、総裁として、たいへん恐縮ですが。この際三十億入れる、こう言ってだまし取ったというのです。自由民主党は、そういう場合におけるそれは幹事長なんですか。そういう役職はどなたになって、どういう役なんですか。ちょっと教えていただきたいと思います。(「そういう金はない。」と呼ぶ者あり)いやいや金じゃないですよ。役のことを聞いている。そう言って金をだまし取ったんだから、総裁として——金じゃないのですよ。それはどなたですか。
  267. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自由民主党の党の資金、これを扱っておるのは財務委員長、それと経理局長という職名の者がおります。また、幹事長もこういう事柄について口を出すだろう、かように考えます。
  268. 横路節雄

    横路委員 わかりました。(「社会党はどうなんだ。」と呼ぶ者あり)いずれ社会党も向こうにすわったらお答えしますから……。  そこで刑事局長お尋ねしますが、この長原支店長に、十月十六日に自由民主党の政治資金を三十億円預金したいと申し出て、支店長はそれを真に受けて、十月十九日吹原ビルで十億の通知預金証書、二十億の通知預金証書の二通を切った。まずここで一つ問題が出ますのは、一体その吹原を、普通の商取引ならば、この銀行の支店長は、ああそうか、三十億、たいしたものだなと思ったかもしれない。しかし、自由民主党の党資金ということを言ってきたときに、だれが銀行の支店長が吹原のような詐欺師を相手にしますか。あなたのほうに出ている訴えその他については、政治家の名前はだれをかたっているのです。私は介在しているとは言わない。だれがかたられたのですか。吹原弘宣はだれをかたって三菱銀行長原支店長を信用させてやったのですか。そのことはお答えできるでしょう、この段階に来たら。言いなさい、そういうことを。
  269. 津田實

    ○津田政府委員 起訴事実は、この吹原が長原支店に対して申し向けた事実は、同会社の事業資金に窮した結果、自由民主党本部の資金約三十億円を預金してやるという口実のもとにやったわけであります。それで通知預金証書を受け取る直前の十月の十六日、おるいは十七日の二回にわたりまして、やはり支店長らに対しまして、右自由民主党資金を直ちに預け入れる旨を通告いたしておりますが、人の名前は出しておらぬようであります。
  270. 横路節雄

    横路委員 刑事局長、出しておらぬようです、そんなことないんだ。あなた、長原支店長の調べには名前が出ているじゃないの。こんなことを支店長が——ほかの会社の金ならいいですよ、商取引の。自由民主党の金を三十億入れます、ああそうですか、だれが信用しますか。みな自由民主党笑っているじゃないですか。刑事局長、あなた国会は何でもごまかせばいいというような、そういうやり方ではだめですよ。はっきりしているじゃないか、はっきり言えませんか。ここで言えなければ言えない。もう一ぺん、知っているけれども言えないのか、どうなんだ、それは。はっきり言ったらどうです。だれの名前をかたらったのです。
  271. 津田實

    ○津田政府委員 いま申し上げましたように、その点は聞いておりません。またないようであります。
  272. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、私はこの問題は、普通の商取引ならいいですよ。三十億というと……。しかし、これは自由民主党の資金なんです。中で政治家が電話をかけたか、政治家の名前を使ったか。  もう一つ田中さんにぜひお尋ねしておきたいのですが、四月の二十八日、大蔵委員会で三和銀行の頭取上枝という方ですか、あの人を呼んだときに、あの人はこう言っているのです。少なくとも私の銀行では、十億とか二十億とかというそういう預金があれば、喜び勇んで私の手柄だというので、直ちに本店の重役に連絡してきます。ほかの銀行はどうか知りませんが、私の銀行はそうです。こう言っている。これが常識ですね。あなたのほうでは、この点についてはお調べになっていないのですか。この点については検察当局がやっているから、これはただ単に、まあそっちにまかせているんだというので、あなたのほうでは全然お調べになっていないのですか。当然これは本店の重役に長原支店長は通知をしていると私は思う。どうなんですか、これは全然お調べになっていないのですか。
  273. 田中角榮

    ○田中国務大臣 本件に関連をして、三菱銀行及び大和銀行等に対して、その間の経緯の報告文書で求めております。これは大域委員会質疑に対して、調査の上答える、こういうことでございましたので、所要の調査を行なって大蔵委員会で答えております。しかし、その後検察庁が強制捜査に踏み切っておりますので、それ以上の問題に対しては、捜査続行中でありますから控えられたいということでありますので、大蔵委員会調査の結果申し述べた以上のことは取り調べておりません。
  274. 横路節雄

    横路委員 刑事局長お尋ねしますが、この三菱銀行の当時の長原支店長の稻野氏は、検察当局で取り調べをしたのかどうか、取り調べをした際においていまの問題はどうなっているのか、本店の重役との連絡はどうなっているのか、政治家がその中に名前を使っているのかどうなのか、どうなっているんです。調べてないのか、どうなんです。
  275. 津田實

    ○津田政府委員 いやしくも詐欺の被害者でありますので、これは取り調べてないはずはないと思いますが、具体的にどういう人を本件について取り調べたかということを申し上げることは、将来の公訴維持にも影響することでありますから、その点は申し上げることを差し控えたいと思っております。
  276. 横路節雄

    横路委員 この長原支店長の稻野氏との中で、介在している政治家の名前が出ている。本店の重役に言わないわけがないのです。一体本人はいまどこにいるのですか。私は、これだけの問題を起こして、自殺のおそれなしとはいえないと思うのです。これはどこですか。警察関係ですか、保護しているだろうと思う。自宅で保護しているんですか。どういうかっこうになっているのですか。念のためにお尋ねしておきます。
  277. 津田實

    ○津田政府委員 その点は存じません。
  278. 横路節雄

    横路委員 存じません……
  279. 津田實

    ○津田政府委員 存じません。
  280. 横路節雄

    横路委員 こういう問題について全く存じない、全然タッチしていないのですか。私は大蔵大臣の田中さんにお尋ねしますが、三菱銀行の態度は非常に不可解なんです。なぜならば、なぜ不可解かというと、この十億の問題が、十億、二十億の通知預金証書が出ましてから、森脇はあとで十億を返していますが、この十億を返した前後に、平和相互銀行は十一月三十日に吹原に二億五千万円を貸しているわけです。私は、こういう点については、三菱銀行がてんでこの問題についててんとして責任を感じていない。自分の銀行は実害がないからいいんだという態度は、私どもはこれは納得できないのであります。  そこで、私は総理にひとつお尋ねをしておきたいのですが、念のために、総理が四月の二十七日、私の質問に答えてこの問題に触れましたときに、一面においては善玉と悪玉を見分けることは非常に困難だ、今日の問題は普通人では判断のできない事柄で、いわゆる犯罪人のほうがはるかに知恵が進んでいると言って、頭がよいという、そういう意味の問題だと思うということを言っているが、私はそうでない。これは詐欺数十回、逮捕十二回、そうして実刑を受けている。これが一体どういうように相手方に信用を受けているかということは、この間、まずここで大蔵省のほうから御答弁が一つございました。それは、吹原産業については、大蔵省からの御答弁で、吹原十四万八千株ですか、黒金三万二千株、滝寺三万二千株と、こうなって、大平さんまで四千株を持っていることになっている。北海道林産は、これまた吹原弘宣八万株、黒金氏六万四千株、滝寺氏三万株、大平氏三万株となっている。吹原冷蔵というのが、大和銀行の東京支店から、これは資本金六千万円で五億を借りている。冷蔵庫ができたかと思ったら、五反田のボーリング場になっていた。資本金六千万円で大和銀行の東京支店は五億を貸している。株主はだれか、調べてみたら、吹原弘宣十一万四千株、黒金氏が千六百株、前尾さんまでが四百株持っている。一体総理、どうなんですか。政治の姿勢——あなたはよく政治の姿勢ということを言われる。これだけの詐欺数十回、十二回、実刑を三年六カ月、ことしの一月は懲役三年、執行猶予五年ですか、そういう者がこれだけばく大なもの、しかも大和銀行の寺田副頭取の言によると、いみじくも、こう言っている。三十八年の七月閣議決定で、生鮮食料品が値上がりをしたから冷蔵庫をつくれ、冷蔵庫をつくれば、そこに生鮮食料品を入れておけば、値上がりのしたときに出せば、値上がりが下がるから、こういう閣議の決定があったから私は冷蔵庫に金を貸したのだ、できてみたらボーリング場だという。これがなんと株主は、大株主は吹原弘宜、黒金、そして前尾さんまで連ねている。自民党の前尾さんです。(発言する者あり)いやいや、四百株、わずかだって名前を使っている。総理、あなたはよく政治の姿勢と言うが、こういう点についてあなたはどうお思いですか。
  281. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま……   〔発言する者あり〕
  282. 青木正

    青木委員長 静粛に。
  283. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっと黙って。ただいまこの会社の吹原冷蔵、あるいはその他の会社について株主等をあげられた。それが政治家である。こういうことで、政治自身が直ちにかような事業に参画したようなお話でございますが、またそういうように普通とるのがあたりまえだ、私もかように思います。しかしこの場合に、いままで調べられたところによって、これが名前を使われたというようなことであったら、一体どういうようにお考えになるか、たとえば、あなた自身でもまた私自身でも、そういう名前がどこかで使われた、こういう場合もあり得るのじゃないか、かように私は考えます。特殊な政治家のみがこれに名前を連ねたということで、いかにも何かそれと一連の関係があるかのような疑惑を持つ、これは、いまの検察庁の取り調べによりましてその黒白を明らかにしたい、かように私は考えます。私自身政治家の姿勢を正せと、かように申しましたからといって、全然責任のない事柄、これで政治家を責めることはよほどそれは無理じゃないか、私はかように思います。だから問題は、この事態自身一体どういうことなのか、これはもっと捜査が進んで明確になる、しかる上でこれについての批判をすべきじゃないか、私はかように考えております。
  284. 横路節雄

    横路委員 これだけ世間を騒がせて、金融界の不信感が強まり、背景に政治家がいる、中小企業は倒産をする、しかし金は貸さない。こういう状態のときに、私が指摘をしても、あなたはよくおっしゃる政治の姿勢に対して、正そうというお態度をおとりにならぬ。関係はないと言う。そうじゃないんですか。関係はあるかどうかはこの進展を待ってとこういう意味ですか。——それじゃもう一ぺんその点をはっきりしてください。
  285. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま検察庁でいろいろ取り調べをしておりますから、いずれそういうことが明確になるだろう、しかる上でその責任をとるべきじゃないか、かように私は考えております。
  286. 横路節雄

    横路委員 刑事局長、この間大平さんと前尾さんを取り調べたね。これはどういう理由なんです。どういう理由で聞いたのです。全然関係なければ聞く必要がない。何を聞いたのです。刑事局長、何を聞いたのです。
  287. 津田實

    ○津田政府委員 捜査の段階に何びとを取り調べましたかにつきましては、これは捜査の将来の進展並びに公訴維持に影響がありますので、一々具体的には申し上げられない、差し控えたいと思います。
  288. 横路節雄

    横路委員 高橋さんは、法務大臣はばかに自信を持って、政界には関係ない、政界には関係ないと言う。政界に関係なかったら、ここで堂々と前尾さんと大平さんを調べた、しかし、これはこういう事実だ、これは関係ないならないと言えばいい。高橋さん、ここで言ったらどうですか。あなた、同じ仲間じゃありませんか。
  289. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 本件には、関連して多数の参考人等を取り調べておることは事実であります。が、取り調べにかかる個人の、個々の人についてその氏名を明らかにすることは、将来における犯罪捜査を円滑ならしめる見地から適当でないと考えますので、前尾、大平両氏を取り調べたかどうかを明らかにすることは御容赦願いたい。しかしながら、捜査の過程において、両氏が本件に関係がないことははっきりいたしておることを申し述べておきます。
  290. 横路節雄

    横路委員 高橋さん、法務大臣、関係ないならばない、呼ばれたのは何だとはっきり言ったらいいじゃないですか。かえってそのほうがはっきりするんですよ。かえって誤解しますよ。私は、はっきりしたほうがいいと思う。大平さんと前尾さんはこういう点で呼ばれた、ところがこういう点については何ともないのだ、これは言ったほうがいいんですよ。私は言ったほうがいいと思う。かえって国民は疑惑を持ちますよ。はっきり言ったほうがいいと思うんですよ。釈明する機会ですよ。
  291. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 この御指名の人が、吹原産業、北海林産興業あるいは吹原冷蔵の各社のどれかの株主名簿に載っておりますことは、事実のようでございます。しかし、これは吹原が両氏の了解を得ないで名義を使用した疑いが濃厚でございます。いずれにしましても、その点については本件と直接関係がない事項でございます。
  292. 横路節雄

    横路委員 そういうようにはっきり言ったらいいんだ、そういうことで参考人として出てもらったら出てもらって聞いたと。私のほうで資料をあげて言っているんだから。  刑事局長お尋ねしたいのですが、刑事局長御承知のように、吹原が去年一年間松屋で買い上げましたものですね。これは去年の四月からことしの三月まで純金大判一枚百五十万円、ダイヤ指輪一つ八百万円、純金きゅうす一つ百万円、パティック置き時計一つ四十五万円、純金湯わかし一つ三十三万円、純金ちょうしが一つ七十六万円、純金とっくりセット一つ七十万円、純金銘々皿一つ百万円、奥村土牛日本画「シャボテンの花」百五十万円、中村恵祥彫刻「翁」八十五万円、山口蓬春「桃の花」六十五万円、古美術大黒様四十五万円、これは、一年間吹原は松屋からだけ買っています。そうしてことしの二月下旬から三月上旬に純金の大判百万円のものを五枚、四月初旬に純金大判、百万円のものを五枚買っている。あとのほうは未払いだが、去年一年間のものは全部払っている。これは調べた結果どこへいっているのです。やっぱりどっかへ贈っているのでしょう。これはどこへ贈っているのですか。これは、私は去年一年間のものを調べたんですよ。その前の年もその前の年も行ってる。それから三越、高島屋にも行っているのですけれども、そこまでは私も調査が行き届きませんでしたから。松屋だけの分はどこへいっているのですか。
  293. 津田實

    ○津田政府委員 吹原を中心とする金銭の出入りにつきましては、ただいま十分検討いたしておる段階でございますが、個々のものにつきましては、私は現に承知いたしておりませんし、したがいまして、今後吹原に関係する捜査関係で明らかになるものというふうに思っております。   〔「松屋で送り先を調べたらわかるじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  294. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  295. 横路節雄

    横路委員 それでは刑事局長に、この松屋の特別口座の中に、名前はきょう言いませんが、某政治家夫人の特別口座があって、その一部の支払いは吹原弘宣がしていることは明らかなんですよ。私はきょうここで名前は言いません。そこでこれらの問題は、いまあなたが——これは去年一年間で、おととし、さきおととしと、前二年のものも出している。さらに高島屋、三越で買っている。これはさらにあなたのほうで調べるというから、ひとつその結果を私は待ちたいと思う。  そこで、私は刑事局長に次に聞きたいのだが、大和銀行の京橋支店長、支店次長は、これは商法上の背任ですかでこの前逮捕されたんですが、私はあなたにお聞きしたいのは、六月から九月末までに、預金もないのに大和銀行の振り出した預金小切手は毎日のように五億ないし十億になっている。私の計算では、最低三百億になっている、十月三日を除いて。幾らになっていますか。
  296. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねの事実は、本日起訴いたした事実にかかるものでありますから、その事実を申し上げます。  「吹原、それから大和銀行の支店長の東郷及び次長の木村は、共謀の上、大和銀行京橋支店の支店長または支店長代理であった東郷及び木村が、その任務にそむき、吹原弘宣の利益をはかり、昭和三十九年八月五日から同年十月五日までの間、前後数十回にわたり、交換決済の見込みの確実とは思われない吹原産業株式会社振り出しの他店渡し小切手と交換に吹原に対し京橋支店振り出しの額面合計二百八十一億一千万円の小切手を振り出し、同行に対し同額の財産上の損害を与えた。」もっともこれは累計額でありますので、個々につきましては、それぞれ切りかえ、切りかえというようなかっこうになったものと思われます。  なお、吹原及び東郷の関係では、「吹原及び東郷は、共謀の上、東郷が大和銀行支店長としての任務にそむき、吹原の利益をはかり、昭和三十九年五月二十六日から同年八月三日までの間、前後数回にわたり、交換決済の見込みが確実とは思われない吹原産業株式会社振り出しの他店渡し小切手と交換に、吹原に対し京橋支店振り出しの額面合計十九億七百万円の小切手を振り出し、同行に対し同額の財産上の損害を与えた」、このような事実について起訴をいたしておりますが、その事実が内容であります。
  297. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、いまお聞きのように、これは十月三日の分を入れて二百八十億ですか。十月三日の分を除いて二百八十億ですか。十月三日の分を入れてですね。入れないでですか。入れてですか。
  298. 津田實

    ○津田政府委員 起訴事実は昨年の八月五日から同年十月五日までのものでありまして……。
  299. 横路節雄

    横路委員 私は大蔵大臣にお尋ねをしますが、二百八十一億の——まあたいした預金はないのです。預金がないのにこれだけ振り出している。これで一体大和銀行というのは、京橋支店長、次長だけの責任なんでしょうかね。四月二十八日の大蔵委員会に来て、大和銀行の寺田という副頭取は、よくもぬけぬけといいますか、自分たちは責任がないのだ、だまされた、だまされたと言っている。この点について、一体大蔵大臣は大和銀行に対する検査、三菱銀行に対する検査、そういう点はどういうようになさるおつもりですか。さらにそういう点の責任はどういうようにおとりになるつもりですか。とらせるつもりですか。皆さんあげて——大蔵大臣、各社ともあげてこの金融界のルーズなこういうやり方について責任を追及しているじゃありませんか。どうなさるのです。
  300. 田中角榮

    ○田中国務大臣 大和銀行につきましては、本年五月検査をいたしました。その結果、吹原産業に対して十五億、吹原冷蔵に対して五億、合わせて二十億円の貸し出しがございます。これに対しましては担保が徴してございます。しかし、第二のこの京橋支店長の問題、これは常識的に考えますと、これらの行為が支店長だけの考えでやったのではないという立場に立って断定をしておられますが、私たちの調べました過程においてわかりましたのは、京橋支店長とそれから吹原との間に小切手・手形の交換、いわゆる融通手形の交換をし合った、こういうことでありまして、これは当然当時の日計表にも日報にも一切の書類には出ておらないという架空な状態において両落ちをやったと、こういうことであります。各個人企業が現在いわれております融通手形というものを出しますと、これもバランスの上には載っておらない、落ちなくなってはじめて融通手形であったと、こういうことでありまして、銀行検査の結果は、かかる種類のものは全然発見することはできないわけであります。なお、銀行首脳部の承諾のないままに行なったという個人的なものでありますから犯罪として起訴をされておるということでありまして、公判の過程において、これらの事実は全部明らかにせられるということでございます。いずれにしましても、一支店長が三十億円に及ぶ預金証書を詐取されたり、それからまた、累計何百億というような融通手形の発行をし合ったり、こういうことは、銀行の信用保持の上において重大な問題でございます。でございますから、異例ではございますが、大蔵大臣通達を出しましてきびしく戒めておるわけでございます。
  301. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、戒めた程度ではだめですよ。四月二十八日、大蔵委員会における大和銀行の寺田という副頭取の態度は、てんとして恥じないです。私はこの問題について総理にお尋ねをしたいのです。総理も聞きづらい点があるでしょうが、ひとつ私の話を聞いていただきたいのです。私は、吹原事件との関係で都議会の問題について総理にお尋ねをして、総理の所信を明らかにしてもらいたいと思います。  まず都議会の問題ですが、当時自由民主党の都議会議員の須貝某というのは、食肉販売移動車をめぐって業者から一千万円を恐喝して取ろうとして、未遂で逮捕、起訴されました。本人の恐喝は、自由民主党総裁公選に、自分は候補者に一千万円を献金しなければならないからよこせ、これがいわゆる恐喝したときの言い分であります。十五人の当時自由民主党の都会議員は、議長選挙にからんでいわゆる贈収賄をしたのであります。私は、逮捕、起訴された本人たちは、罪の意識が薄いのではないかと思うのです。なぜ自分たちが罪にならなければならないのだろうか。自由民主党総裁選挙には金がかかっているということは、世間周知の事実だ。しかし、これは自由民主党の総裁選挙だから何らいわゆる罪にはならない。ところが、実際には自由民主党の総裁に選ばれた人は、今日の国会情勢では、勢力関係では、それは総理になる。都議会議員団も、結局自分の内輪で候補者を一人にしぼって、それを本会議場で投票したのである。だから、逮捕された諸君からいえば、同じことでないか、私はこういうように考えているだろうと思う。私はこういう意味で、佐藤総理が自由民主党総裁として、先ほどから私はあなたの政治姿勢についてお尋ねをしているのですが、一体今日の——やがていずれは自由民主党の総裁選挙もくる、何もことしではございませんが。しかし、これらのことが、私はこの都議会議員における諸君の罪の意識のなさ、あるいは恐喝のときの理由からいっても、いまにして政治の姿勢をあなた御自身が自由民主党の総裁として正すのでなければ、三矢研究計画にあらわれたように、やがて軍事が政治に優先をしてくる、再びファッショの時代がくるというおそれが十分にあると思うのです。この際、やはりこの綱紀粛正に関して、これらの問題に関して——六月五日の黒金氏の二十億の問題だって何も解決をしていない、こういう問題をめぐって、私はあなたに自由民主党の総裁として、この際政治の姿勢を正す——あなたは、去年の七月の総裁選挙に、いまにして政治の姿勢を正さなければ、宗教団体の政治への進出が行なわれる。あなたはあのときに立候補のあいさつの中にそう述べていらっしゃる。私は、今日の吹原産業事件、ただこのことにとどまらない、東京都議会の問題、金融界の問題、ぜひこの際あなたの所信をこの予算委員会を通じて明らかにすべきだと思う。ぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  302. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ吹原事件から幾多の事例等を引かれてのお話でございまして、私は、確かに最近の各種の事件等については考えさせられることが非常に多いのであります。ただいま横路君も言われるように、これは、やはり政治家は政治家としての責任を正していく。また、国民も——別に国民責任を分担させるわけではございませんが、それぞれの分野においてその分を果たしていく、こういうことが望ましいのではないか、かように私も深く感ずるところのものがあるのでございます。こういう事柄は、詰めて申しますならば、私自身政治家で、ただいま総理をしております。したがいまして、いわゆる国の最高責任者とでも申しますか、私自身からみずから正していかない限り、国民にも難きをしいるようなことになっても相ならない。私自身がまずえりを正して、そして国民各界層の協力を得て、そして綱紀粛正もし、そしてほんとに日本の国らしい進み方をしたいものだ、かように私は念願しております。
  303. 横路節雄

    横路委員 私は、この問題についてもう一つ、これは総理に申し上げておきます。  先ほど刑事局長から、私が指摘をしました黒金念書二十億円の借用書の件、あるいは松屋で買い入れた件、この送り先、その他についてはいま捜査中である、こう言っている。だから、私はその捜査の結果を待ちたいと思う。しかし、この問題について法務大臣がどういうように弁解なさろうと、五月十四日の段階でこういうことをお話をなさるのは、やはり法務大臣としては造船疑獄の際における指揮権発動という、国民としては何としてもそういう忌まわしい感じを持っている。あなたが再びおやりになるのじゃないか、こういう感じを持っていたのであって、この談話というものは、私は不適当です。不適当です、これは。この点は総理はどうお思いになりますか。私は不適当だと思う。不適当です、これは。いま刑事局長は捜査の段階だと言っている。この点ははっきりしてください。
  304. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろんこの捜査上の問題は、事人権に関する点から見ましても、またその及ぼす影響など考えましても慎重に扱わなければならない問題でございます。先ほど来いろいろお尋ねがございましたが、政府委員からの説明がたいへん不十分だというような感がおありだったろうと思います。しかし、これは要するに、ただいま御指摘になりますように捜査途中の問題だ、こういう意味でこれも御了承いただきたいことであります。私はそういう意味から、確信のある事柄には違いないと思いますが、法務大臣が全部が終了しないうちにただいまのような話をしたことは、これはいかがかと思います。しかし、皆さん方のほうもそういう点についてぜひとも御理解をいただきたいのでありまして、おそらくそういう意味で答弁を非常にしいられたんじゃないか、そういう意味からその確信のある点を申し上げたに違いないと私は思いますので、そういう点は十分ひとつ御理解いただいて、そうして結論を出すようにしていただきたいと思います。
  305. 横路節雄

    横路委員 いや総理、誤解されては困りますよ。皆さんがしいたと言ったって、私が何でしいたんですか。ここにいる国会議員が何でしいたんですか。法務大臣が記者会見で言ったんじゃありませんか。それを総理は皆さんがと言うのは、どっちを向いて言うんですか。総理は、何か私らがしいたんじゃないか、こう言う。それは誤解ですよ。
  306. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 皆さんがということは、それは誤解だ、これは私もいさぎよく取り消しておきます。
  307. 横路節雄

    横路委員 それでは総理、私たちは適当にめしを食べますが、あなたはめしが食べられないで十時半までやるのは恐縮だと思うから、私はこれから山一をやりますから、あとでまて来ていただきますから、どうぞ。  それではひとつ大蔵大臣にお尋ねしますが、きょうはひとつ具体的に答弁をしてもらいたい。  山一証券の対策について、日銀は、二十八日の夜おそく大蔵大臣の認可を求め、了承を得て、二十九日日銀の政策委員会を開いて、いまだかつてやったことがない日銀法第二十五条という伝家の宝刀を抜いて、無担保、無制限で山一証券をはじめとするいわゆる資金繰りの苦しい証券会社に対して融資の方針を決定したが、いまだこういうことはない。いまだかつてないんです。そこで、山一証券が日銀法二十五条発動直前の状態は、一体どんなものであったのか。ということは、二十八日の状態はどうであったのか。二十二日からここでぺらぺらと言ってもらいたいが、二十八日どういう事態で、それを越せば二十九日こういう夢想になるから、そこでやむを得ず二十八日の夜十一時半に異例の記者会見をやり、二十九日の午前になってから発表した、こういうことになると思うので、したがって、二十八日の事態はどうであったのか。もしもこの措置をとらなければ、二十九日はどういう事態になったのか。そういう点について、ひとつあなたのほうから資料を出してもらいたい。株式投信の問題あるいは運用預かりの引き揚げの問題その他について、ぜひここで明らかにしてもらいたい。
  308. 田中角榮

    ○田中国務大臣 二十二日、二十四日、二十五日と人員で申し上げますと、来店顧客数が二十二日に一万四千三百五十四人、二十四日に一万七千二百六十五人、二十五日に一万二千九百三十六人と、こういうふうに落ちついた数字になっておったわけでございます。ところが、どういうことか、二十六日、七日もそういうことでございましたが、二十八日には二万八百三十八名、こういう高い数字になったわけでございます。こういう状態でございます。それから株式投信を申し上げますと、二十二日六億、二十四日八億九千五百万、二十五日六億九千万、二十六日五億四千九百万円となったわけでありますが、二十七日から七億、二十八日には十二億九千五百万円、こういうように高い数字になったというのが事実でございます。
  309. 横路節雄

    横路委員 運用預かりはどうですか。何だったら、証券局長そこにすわって、時間がないからやってくれ。証券局長でよろしいよ。
  310. 田中角榮

    ○田中国務大臣 二十二日八億、二十四日七億、二十五日四億七千万、二十六日三億一千万、二十七口が四億三千四百万、二十八日が五億六千四百万、こういうふうな数字でございます。これは買却数字を申し上げたのであります。
  311. 横路節雄

    横路委員 いやいや大蔵大臣、あなたはどうもこの問題について、これだけいまだかつてない日銀法二十五条の発動をなさったのだから、その直前の状態はどうだったのか、もっと親切に答弁されたらどうですか。一体運用預かりのは、全体で二十億ほど引き出しをしているんじゃないですか。株式投信はどうなっているのです。だから、そういう点、二十八日の状態はどうなって、このまま推移すれば二十九日はこうなるからというので私どもはやったんだ、こういう説明でなければ、これは国民は納得しないですよ。その点言ってください。
  312. 田中角榮

    ○田中国務大臣 だんだんと御説明を申し上げようと思っておったのです。公社債の引き出しが、二十二日が八千五百万、二十四日が一億八千万、二十五日が四千万、二十六日が四千八百万、二十七日が四千万、二十八日が五千五百万(「それは解約なのか」と呼ぶ者あり)売却引き出しと、こう頭をちゃんと申し上げておるのですから、よくお聞きください。非常に重要なことを申し上げておるのですから……。  それから割引債は先ほど申し上げたとおりでありますが、引き出しを申し上げますと、引き出しが二十二日が十億、二十四日が九億一千万、二十五日が五億、二十六日が四億六千三百万、二十七日が六億八千万、二十八日が五億六千万というような数字でございます。  それから、このような状態でなぜ日銀が特別な処置を行なったかということでございますが、これにつきましては、山一証券の問題を契機にいたしまして、市場不安というような機運がございました。このままで推移をしたならば、言うまでもなく投資者保護ということにはならないわけでございます。投資者保護には欠けるおそれもございますので、特別な処置を行なって信用不安を起こさないように万全の処置を講じたということでございます。
  313. 横路節雄

    横路委員 日銀は、日本の金融政策の運営のための銀行だ。それを一体無担保、無制限でやるというのは、私は許さるべきではないと思う。  そこで、私は大蔵大臣に順次聞いていきますが、これが最終的に、無担保なんですから、返済不能な場合は、その責任はだれがとるのですか。
  314. 田中角榮

    ○田中国務大臣 今度の処置は、日本銀行が日本銀行法二十五条の規定に基づく申請書を大蔵大臣あてに出しました。大蔵大臣がこれを認可し、山一証券に対しましては、山一証券から振り出しの手形を出しまして、これに対しては掛け目八割ということでございますので、残余の不足の二割に対しては、主力銀行がみずから担保を提供する、こういうことによる特別貸し出しでございます。
  315. 横路節雄

    横路委員 八割は事実上無担保ですね。山一証券は返済する能力がない。これがもしも返されないという場合には、市中銀行が責任を負うのですか、日銀が責任を負うのですか。それはどうなんですか。
  316. 田中角榮

    ○田中国務大臣 返せないということではなく、確実に再建をするという再建計画に基づいて金繰りをつけておるのでございますから、これはもう返せないという前提に立っておられるわけであります。
  317. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、返せない場合はどうするのかと聞いている。返せない場合、最終的にだれがどうなるのか。
  318. 田中角榮

    ○田中国務大臣 最終的な問題につきましては、日本銀行及び都市銀行との間でこれから検討をいたして最終的にきめるわけであります。
  319. 横路節雄

    横路委員 いまの件はいいですか。いま二割は、なるほど市中銀行、都市銀行が担保を出している。八割の山一の分は担保になっていない。そこで八割は焦げついた、返せない、その場合には、日銀と都市銀行とは話をして、ある場合には都市銀行にも負担してもらうんですね。その点はっきりしておいてください。
  320. 田中角榮

    ○田中国務大臣 都市銀行及び日本銀行との間で最終的にきめるわけでございますから、現在は最終的にだれがどのようにという決定はいたしておりません。それはもう返済をするということが前提になっておるわけでありますから……。(「できない場合どうするんだ」と呼ぶ者あり)現在きめてございません。できなくなるということではないわけでありますから、ですから、できなくなる場合には、それまでに処置をすればいいわけであります。
  321. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、大蔵大臣はいままではわりあいに当予算委員会では御親切に答弁していただいたのですけれども……(発言する者あり)私が聞いているのだから、私に答えたらいい。  読売新聞の……   〔発言する者多し〕
  322. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  323. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、私はまじめに聞いているんじゃないですか。私は、この問題は大事だから聞いているんじゃないですか。私がこのことを聞いているのは、読売新聞における日銀の宇佐美総裁との対談会で、二割は都市銀行は担保に入れたが、八割はいわゆる山一だ、無担保だ。これが焦げついて返せない場合は、最終的には、それは日銀がしょう以外にはないのです。こう言っている。だから、私はあなたに聞いているのだ。あなたがそう答えれば次に行くのだけれども、あなたはきまってない、きまってないと言うから聞いているのだ。その点はそうなんでしょう。そうならそうとすなおに答えてください。
  324. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、現在は返せるというたてまえに立っておる特別融資でありますから、現在の段階において、最終的に返せない場合の負担区分をきめてはおりません。しかし、返せないという仮定の問題を基礎にして考える場合には、日銀が残余の八割はかぶるのか、また国が損失補償法というものをつくって、国会の議決を経て国が負担をするのかというような問題については、そういう場合が起きる、またその損失補償が必要であるという段階にその決定を必要とするということであります。
  325. 横路節雄

    横路委員 今日多くの中小企業が倒産して、それが設備投資による金利の負担、売り上げが焦げついて運転資金が本来の用をなさないで、しかも回収ができない。もうどこだって全部金利の負担重圧です。それがいま日銀が最終的にこの焦げついたものをしょうのだということになれば、それは私は国民は納得できないと思うのです。  私はあなたにお尋ねしたいのだが、先ほど吹原事件で私はお尋ねしたのですが、金融界というのは少しずさんではないでしょうか。山一証券については、興銀、三菱、富士、それぞれ専務を派遣して一体何をしていたのです。私はここでこういう記事をひとつあなたに読んで差し上げたい。三菱銀行の頭取の談話ですよ。二十九日、「今回の特別融資を見ても、大蔵省、日銀はきわめて真剣に証券対策に取り組もうとしており、山一証券の取引先銀行としても成り行きにようやく安心している。」何を言っているかというのです。三菱銀行というのは、自分が専務を送っているのでしょう。自分が経営の主体なのでしょう。それを日銀と大蔵省に責任を負わせてのうのうとして、やっとこれで大蔵省もどうにかやるようになった、これなら何とかできるだろう、こういういわゆる金融機関の無責任きわまる態度というものに対して、私は非常な憤りを感ずるのです。私はあなたにひとつぜひお尋ねしたいのですが、一体こういう事態になったのはどこに原因があるのですか。日銀法二十五条という伝家の宝刀を抜いて、無制限、無担保でやる、こういうことをやるようになったこの原因は一体どこにあるのです。こういう経営を生んできた、こういう累積した赤字を生んできた、こういうやり方は、あなたはどうお思いですか。
  326. 田中角榮

    ○田中国務大臣 非常に重要な問題でございますから、時間をいただいて申し上げますが、こういうような状態になった最も大きな原因ということは幾つかございますが、その中に、高度の経済成長を続けてまいる過程におきまして、産業資金をどのような状態において調達をするかという資金計画は、当然つくられなければならなかったわけであります。にもかかわらず、今日の段階において考えるときに、まさに文字どおり金融偏重ということであったことは、いなむことのできない事実でございます。でありますから、日銀信用をもとにしてのオーバーローンの今日の状態、こういう金融偏重であったという一面、当然金融に対しては長い歴史の上でも保護政策がとられてまいりましたし、これが公共的使命と評価に対しては、何人もが認めるような状態で政策が行なわれてまいったわけでございますが、一面証券市場や公社債市場に対しては、へんぱな取り扱いが行なわれてまいったということであります。これは日本人自体のものの考え方が、証券市場というものはある意味における投機の市場である。産業資金調達の場として、また国民の資産を貯蓄をする場として、直接資本市場、間接資本市場というものは両々相まって初めて正常なものだという考え方には、遺憾ながらいままでの日本人はそういう考えでなかったことは事実であります。でありますから、預金に対する税法上の特例と証券に対する特例は、当然差がなければいかぬ、こういうものの考え方が一つの原因であると私は信じております。  それからもう一つの問題は、急激に伸びた証券市場が、拡張一途、いわゆる量的拡大にのみ目を奪われて、広く世界に目を転ずるような質的な競争、質的な整備というものを怠ったということでございます。また、それだけではなく、証券会社が店舗や不動産に過大な投資を行なったいうよな問題もその一因であります。なお、人員が四、五年の間に非常に膨大になったという問題もございます。そういうことは大蔵省、いや行政部の責任だということもございます。これは私もはなはだ遺憾であると考えておりますし、率直に認めておりますが、これは証券取引法の実態を見られるとわかるとおり、銀行に対しては、古い法律ではありますが、政府は非常に強い監督権を持つ免許企業でございます。ところが証券取引法は、昭和二十三年に届け出制度になったわけであります。届け出制度という制度の中で行政権の及ぶ限界というものは、これはおのずからあるわけであります。でありますから、この国会で、御承知のとおり、証券取引法の改正をしていただきまして、証券業を銀行のように免許企業にしなければならない。おそまきながらそのようになったわけでございますが、こういう幾つかの問題が累積をせられて山一証券というような問題が起きたわけでございます。先ほど中小企業に対してもというお話がございましたが、もちろん中小企業やそういう業態の金繰りというような問題に対しても、可能な限り最大の努力をしなければなりませんが、日銀法の規定するところ、信用を持するためにある日銀の機能でごごいますから、証券業が一証券会社であるとしても、これが信用不安につながるというようなことは避けなければならない使命を持っておるのであります。そういうところに今度の特別処置がとられたということを理解していただきたい。
  327. 横路節雄

    横路委員 私は、この問題について証券会社が資金集めのために、銀行よさようなら、証券会社今日はといって暴走したのに対して、あまりに政府は強い規制をしていなかった、こういう問題がある。しかも運用預かりが問題なのである。運用預かりについては、もう大蔵委員会でもやったんですが、あなたのほうでは、昭和三十八年七月五日に、証券業者の財務管理等について、あなたが通達を出している。そうして運用預かりにかかる有価証券については、大体純財産額の二倍、三倍をこえてはならぬというが、去年の九月で六倍半、ことしで約八倍になっている。ここは私は政府の誤まりだと思う。そこであなたは将来廃止すると言う。この運用預かりを廃止する場合に、これにかわるものは一体何を考えているのか。運用預かりはいつをめどにして廃止をするのか、一体それにかわるものは何なのか、その点について明らかにしてもらいたい。
  328. 田中角榮

    ○田中国務大臣 運用預かりは、基本的な姿勢として、できるだけ早い機会にこれを廃止する方向に持っていくということは間違いのないことでございます。なぜ一体こういうことが起きたかということは、証券金融の大宗がきまっておらなかったというところに最も大きな原因があるわけでございます。でありますから、運用預かりをだんだんとなくしていくという過程において、証券金融というものは道を開いていくということでなければならない、こういうことになるわけであります。なぜ大蔵省の行政指導の基準よりも何倍かだんだんと多くなっていったかということでございますが、これは、この間御説明申し上げたとおり、通達を出したのが昭和三十八年の四月ごろだと思いますが、七月に御承知のケネディショック、利子平衡税問題がございました。また、十一月にはケネディの暗殺事件がございました。海のかなたの政治的な問題が、日本のちょうど開放経済にスタートをした証券界に影響があったわけでございます。そういう意味では、証券市場の不安をなくしなければならないという意味で、証券業者の手持ちを売り出して、その上になお株式界を混乱せしむるような状態は招来できない状態でございましたので、通達を出したその後の世界的な変化がございましたので、運用預かり等は漸減すべきであったにもかかわらず、逆にふえた、こういう実情でございます。好ましい姿ではありません。
  329. 横路節雄

    横路委員 田中さん、あなたは、新聞で見ますと、いよいよ党の幹事長におなりになる。これは新聞で拝見して、大蔵大臣として予算委員会で御答弁なさるのはおそらくこれが最後だろう。しかし、私は田中さんにお尋ねしておきたいのは、諸外国では政府は株価にはタッチしないというのが原則ではないのでしょうか。田中さんくらい大蔵大臣としてまことに株価対策のために一生懸命だった人は、私はいないと思うのです。いまあなたが言ったこのケネディショックのときに、あなたは記者会見で何と言うたかというと、もしも今後も暴落が続くようだとうっかり手を出せないのではないかとの記者の質問に対して、あなたは、これ以上下がったら私が買ってもいい、こう言っておる。私は、きょう新聞をたんねんにさがして持ってきた。いいですか。これは非常に問題がある。あなたは今度はさらに何を言っているかというと、その次には、昭和三十九年の三月の四日には、あなたは三日午前の記者会見で、共同証券の株式買い出動をほのめかしたことから同日の株式市況は急騰したが、大蔵省内部では、この急騰は異常であり、共同証券が株式市場の騰貴材料に利用されるのは問題であるとの見方を強めている。そこで、五日の日にはわが党の堀君から質問をされている。今度は慎重を期そうということになっている。田中さん、私はあなたくらい株価対策に一生懸命で、そうしておやめになる最後に、こういう日銀法の二十五条のいわゆる伝家の宝刀を抜かなければならなくなったというのは、まことにあなたが一生懸命であっただけに——しかし、根本はどこかにちょっと——ちょっとというよりは、諸外国では政府は株価にはタッチしないというのが原則であるのに、あなたはあまりにも大蔵大臣として株価対策のために専心したためではないでしょうか。私はそのことをあなたに指摘をしておきたいと思うのです。何かありますか。
  330. 田中角榮

    ○田中国務大臣 株は需要と供給の上に立って形成せられるべきものでありまして、政府は関与をしない原則でなければならぬ、これは当然でございます。こういうことこそ好ましいことでございます。好ましいことでございますが、国会において投資育成会社などをつくれ、こういう議論があって法律をつくらなければならない戦後の状態であるということも事実でございます。でありますから、理想に近づけるために政府がてこ入れをするということは、現在の私企業形態は守らなければならぬ、政府は干渉してはならないという原則にもかかわらず、石炭にしろ、それから電力にしろ、肥料にしろ、海運にしろ、造船にしろ、政府がてこ入れを必要とする、そういうてこ入れをしなければ崩壊をする、こういうような状態が間々あるということは、これは戦後の特性でありまして、こういう事態というものにイデオロギー的な、また理想論だけで何も対処しないというならば、社会的な混乱が生ずるのでありますから、こういう場合に対して適切な措置を行なうということは、けだし当然のことでございます。  それから、私が証券市場対策に熱心であったということは、御指摘のとおりでございます。これは、私がこのようにしても、なお証券業はこのような状態なのであります。いまから一カ月、一カ月半前にあのような御審議を願った税法の改正におきましても、こういう措置がなぜ必要かという御議論がございましたが、私は、国際的な競争場裏に立って勝たなければならない日本の産業の状態から考えると、なおあれでも甘いとさえ考えておったわけであります。私は、一面において産業は景気はよくしなければならない、月給は上げなければならない、完全雇用にしなければならない、こういうことを言いながら、しかも一面日銀信用の金融でまかなってはならない、オーバーローンの解消をしなければならない。こういうならば、一体どこから金を産業資金を出そうとするのでありますか。長期資本は、当然証券市場や公社債市場によって得べきものであります。中小企業がいま困っているのは、長期資本を短期資本でもってまかなっておるというところに中小企業の混乱があります。こういうわかり切ったことに手をこまねいて、過去の観念だけで証券や公社債市場というものは特定の人の投機の場であるなどと考えることは、時代錯誤だと私は考えておる。これからほんとうに日本が国際的に立ち向かっていくためには、こういう問題は重要なことであるという観念のもとに取り組んでおるのでありまして、私の後任者も、みんなお互いがこういう問題と取り組んでいただくということでなければ難局に処せない、こういう考えであります。
  331. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、私が言っているのは、この問題は、いまでもなおあなたは今度の山一証券の問題で非常に批判されているわけです。あなたがケネディショックのときに記者会見をして、これ以上下がったら私が買ってもいいというようなことを言ったということは、新聞の社説でも取り上げられて、非常に指摘をされているわけです。そこで私はあなたにお尋ねしたいのですが、一体日本の景気というものは向上するのかどうか。景気は、刺激が強まって景気が回復してくるのかどうか。  ちょっとお聞きをしておきたいのだが、大蔵省は、二、三日前に各省に対して、公共事業は一〇%保留せい、一〇%削った分で公共事業の実行予算を組んでこい、こう言いませんでしたか。それはございませんか。二、三日前、各省に対して全部やったでしょう。どうですか、その点ひとつ聞いておきます。
  332. 田中角榮

    ○田中国務大臣 各省にそういう相談をしたかどうか、事務当局からまだ聞いておりません。聞いておりませんが、三十九年対四十年度の一般会計一二・四%増しでございます。しかし、これからいろいろな歳出要求というものも考えられるわけであります。その場合、一体財源をどうするか、こういう問題に逢着することはもう当然でありますから、一体自然増収でまかなえるのか、またまかなえないとしたならば、他に財源が得られるのか、そうでないとしたならば、節約等は当初から言っておいたほうがいいのかというように、財政当局としては当然考える問題を考えておるだけでございまして、現在まだ各省に対してどう節約するかというようなことは、決定いたしておりません。
  333. 横路節雄

    横路委員 主計局長、言っただろう。あなた主計局長として、各省に対して一〇%みな保留して、それを削減をして実行予算を組んでこいとあなた言っただろう。まだ大蔵大臣に言ってないだけなんだ。あなた言っただろう。言ってなければ言ってないで、各省喜ぶぞ、はっきりしたほうがよい。
  334. 谷村裕

    ○谷村政府委員 各省にいろいろ個別に、こういう経費の支出負担行為の承認をするとか、あるいは支払い計画をするとかというときに、将来のこともあるからこの程度のことは少しどうだろうかというふうに、個々に御相談をしたりしておることはございますけれども、具体的な形において正式に各省に一〇%どうこうというふうにお願いはまだいたしておりません。
  335. 横路節雄

    横路委員 まだしてない。  そこで大蔵大臣、お尋ねしますが、山一の赤字は幾らか。あなたはこの問大蔵委員会では、私が百五十億でないかと言ったら、そんなことは絶対言えないと言ったが、なに山一の日高社長が言っている。五月二十二日の朝刊に一斉に出ている。累積赤字は百五十億だ、こう言っている。そうでしょう。あなた、あのときずいぶんがんばって、秘密会でなければ言えない言えないと言ったけれども、その後私もちゃんと資料を持っている。そうでしょう。
  336. 田中角榮

    ○田中国務大臣 山一証券の概要をまず申し上げますと、山一証券の本年三月末の短期借り入れ金五百八十五億、長期借り入れ金百四十億、借り入れ有価証券が八百五十三億、資産の主要なものとしては、現金、預け金百三十九億、短期貸し付け金三百八十七億、商品有価証券百十四億円、保管有価証券九百三十八億円ということでございます。欠損金は、三十九年九月期における繰り越し欠損金九億ということでございます。それから総体的な累積赤字というものに対して、あなたは百五十億とか二百億とかいうことでございますが、そのような多額なものではありません。
  337. 横路節雄

    横路委員 いや、大蔵大臣、山一証券の社長が言っているじゃないですか。おれのほうは百五十億だ、こう言っておる。これはどう解釈したらいいのですか。自分の会社の社長がそう言っておるのに、あなた何で言えないのですか。
  338. 田中角榮

    ○田中国務大臣 こういう御発言が大蔵委員会でもございましたので、本日証券局長が山一証券の社長にただしましたところ、そのようなことを言った事実はないということだそうであります。
  339. 横路節雄

    横路委員 山一証券の再建について、これは去年の九月の有価証券報告書についておる監査報告ではっきりしておりますことは、いわゆる貸し付け金が百三十三億八千万円、おそらく焦げつくだろうとは書いてないが、この中で貸し倒れ引き当て金がたしかに四億八千万と決算では見ているけれども、三十五億見なければならぬ。しかし三十五億では足りないのです。最低五十億以上です。しかもこれは、大蔵大臣、あなた専門家だから知っているじゃないですか。山一証券のこれはどうなったのです。自分が二部の上場株だと思って買い込んだ。思うようにいかない。株価は下がった。しかたがないから自分の子会社に売った。手持ちさした。手持ちをさしたけれども、手持ちさしたのでは子会社がもたないから、その差額は全部金でもって貸してやった。それが百三十三億八千万になっておるから、実際にはそこのうちの百億ほどは返ってこないのです。そういうことは、大蔵大臣のほうがよく知っているじゃないですか。だから、百五十億の赤字もこれは少ないのだ。二百二十億ないし二百五十億と見ておくのが正しいのだ。これが当然じゃありませんか。それじゃ一体何ぼと、きょう山一証券は言っているのです。赤字は幾らだと言っているのです。
  340. 田中角榮

    ○田中国務大臣 証券というものが非常に重要な問題でございますから、こういう質疑になるわけでございます。昔は国会においては、もう証券問題は出しちゃいかぬ、タブーということだったそうでございますが、このごろは、非常に重要な問題でございますので、こういう御質問もあるわけです。ですが、何でも一体お答えできるのか、こういう問題もございますが、累積欠損金額というようなものにつきまして、これは個別の企業の秘密に属するものであるからということで、こういうものは答弁しないということになっておるわけでございます。それから、あなたがいま申されましたとおり、累積赤字の百五十億とか二百億とかいうことは、これは政府が真剣に検討して、会計監査を行なった後申し上げておるわけでございます。百五十億も、そんな巨大なものではございません、こう言っておるのでありますから、これで御了解を賜わりたいと思います。
  341. 青木正

    青木委員長 総理が見えましたので、時間が超過しておりますので、締めくくりをお願いいたします。
  342. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、あなたいま個別企業だから赤字は明らかにできないと言っておるけれども、それなら一体何で日銀法二十五条という伝家の宝刀を抜いてやったのです。総理の前で私は大蔵大臣にひとつお尋ねしておくのですが、山陽特殊製鋼でも、社長、重役が全部私財の提供を命ぜられた。この日銀法二十五条の適用で、先ほどからここで議論したように、無担保、無制限だ。しかもこれは日銀が最終的に責任を負う。一体山一証券をはじめとして、各証券会社は日銀から金は融資してもらう。自分たちのいままでの経営はたなに上げて、どれだけ自分たちが経営に責任を持つのか。かつての重役その他は、一体私財の提供その他についてどうするのか。たとえば、前の山一証券の社長は、去年の九月やめるときには五千万も退職金をもらっておるのだ。一体こういうことは、山陽特殊製鋼については、会社更生法の適用をして私財の提供を命ぜられた。日銀法二十五条は会社更生法の適用どころではないんだ。無担保無制限でやるんだ。一体こういう証券会社の経営者は、いままでのものに対してこういう私財の提供等はどうなさるのか、あなたにひとつお尋ねをしておきたいのです。
  343. 田中角榮

    ○田中国務大臣 山一証券のかつての経営者たちがどういうような態度でおるかということに対しては関心を持っております。しかも、このような特別な処置を必要とするのでございますから、これらの方々の自発的な協力こそ望ましいという考え方に立っておったわけでございますが、私たちが考えておるとおり、かつての経営者たちは何らか自発的に会社の再建に協力をするという姿勢がうかがわれますので、自発的な立ち上がりを持っておるわけでございます。
  344. 青木正

    青木委員長 締めくくりをお願いします。
  345. 横路節雄

    横路委員 それじゃ、私最後に総理にお尋ねをいたしたいのですが、この証券会社の経営は、三十八年九月決算から悪くなっているのです。ところが、ふしぎなことに、三十八年の政治資金を見てみると、たとえば山一証券は七百二十万円、日興証券五百三十万円、野村証券五百十万円、大和証券七百六十万円、大商証券五百七十五万円、山崎証券百五十万円ですか、合計三千二百四十五万円、そのほかに日本証券金融で、これが約百万円ほどある。そのほかに上田短資というのが百万円やっている。三十七年を見れば、それは経営のよかった状態かもしれませんが、同様に証券会社はやっている。大和証券九百十万円、大商証券百四十七万円、日興証券六百七十万円、野村証券三百三十万円、——野村は少ないんですな。経営がいいのに少ない。山一証券は七百八十二万円、こういう状態になっているのです。いま読みましたのは、全部、ここにございますこの政治資金規制法によって届けられた団体によって種別をして私は持ってきたのです。私は総理にお尋ねをしておきたいのですが、こういうように、三十八年といえば、もうすでに三十八年九月はいわゆる黒字から赤字に移ってくる境目で、それから九年にかけて赤字、実質赤字がある。それなのにこれだけ膨大な献金をしている。特に山一証券が一番多い。日銀法二十五条の適用で無制限無担保でやる。私は、政治資金を受けている団体その他についても、ほんとうからいえばいま一々読み上げるべきでしょうが、それは時間がございませんし、時間が過ぎていますから遠慮をします。しかし、受けている人はそれぞれ知っているわけです。こういう点については総理はどうお思いになりますか。いわゆる国家資金ですね。中小企業が倒産していく。おれたちにもああやってもらえればありがたいな、無担保無制限でやってくれたらおれたちは立ち直るのに、なんで一体証券会社だけやるんだろう、こういうことが起きているのに、この三十八年の状態では、経営の一番悪い山一証券からこういうばく大な政治献金を受けている。こういう点について、先ほど私は吹原産業事件について政治の姿勢、こう言ったけれども、これは同様です。きょう私が言ったのは、綱紀粛正は政治の姿勢、金融界の姿勢、証券界の姿勢。まず私はあなたにお尋ねしたいのは、一体こういう問題について、こういう政治献金が行なわれているという点についてあなたはどうお思いになるのか、そして、これに対してどうお考えになるのか、どう対処するのか、そしてどういう姿勢で臨まれるのか。
  346. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 三十八年九月あるいは三十七年等について、いろいろ政治資金、献金がいかに行なわれているかということを詳細にただいまお話がございました。もちろん、その受ける側におきましても、こういう事柄について実情をつまびらかにしておれば、その受け方もいろいろあるだろうと思います。しかし、そんなことはおそらくわからないで、会社側から、自分たちの決算内容のいかんにかかわらず、在来からのしきたりというか、そういうような意味でおそらく政治献金したに違いないと思う。これは私は、会社自身の経営者も経営上の責任をとるというその立場に立って処理すべきであっただろうと思いますし、また、いわゆる政治献金という名前におきまして金が簡単に動くということ、これもいかがなものかと考えます。問題は、最近言われておりますように、政治に金がかかると言われる、こういうことはお互いが慎まなければならないことだと思います。そういう意味におきまして、政治に金がかからない、そういう政治を行なうということ、これが私の一つの考え方でもあります。ただいま政治献金そのものについてのいろいろ実情など詳しく調べてのお話でございますが、問題はやはりさかのぼってみまして、ただいま申すような政治に金がかからないような、そういうことをしなければならないんじゃないか、かように私は思います。
  347. 青木正

    青木委員長 横路君、もう時間が来ておりますから……。
  348. 横路節雄

    横路委員 もうこれで終わります。  田中さん、これはあまり感心したものじゃないです。あなた、大蔵大臣として御存じでしょう、こういうものが出ていることね。私は、こういう問題について、あなたの後援者がお出しになったものなんだろうと思うけれども、こういう問題についてはやはり十分配慮して、さっきから総理が言っている政治家の姿勢を正すということ……。(田中国務大臣「ちょっとやってください」と呼ぶ)やったほうがいいですか。田中さんからわざわざ釈明したいというから……。実は田中さん、これですね。日銀法二十五条というのは信用という問題でしょう。ところが、これはあなたの後援者があなたを非常に尊敬をしてというか、あなたを神だなに上げて拝んでおけばお金が入るという気持ちがあったのか、あなたに夢をささげます一千万円というので出したものだと思いますが、別にこれを使うというものでなければ何でもないが、しかし、私は、やはりこういう点は、これもいま総理が言われている政治家の姿勢という点から言って、これは御注意なすったほうがいいのではないか、こう思いまして、あなたここで釈明なさるならば、この点はっきり釈明なすったほうが私はいいと思う。
  349. 田中角榮

    ○田中国務大臣 いまお話がございましたものは、一千万円札、こういうことで、新聞の五つ切り六つ切りというようなもので、俗に子供のおもちゃというようなものがございます。そういうことで、うしろには金物屋が刷ってございます。もう少し皆さまに見せていただくとよくわかったのですが、これは、私の選挙区の三条に非常におもしろい男がおりまして、いつもそんなことばかりやっておるのです。何か奇想天外なことをやっておる男がおりまして、暮れの大売り出しのときに、こういうものをもうけるようになりたいということで、あなたに夢をささげましょうということで、そういうものをどこかで印刷したようでございます。私はすぐ——その問題はあまりいいことではございません。しかも聖徳太子、私はそれを一番初め見ましたときには何だろうと思っておったら、聖徳太子に鼻ひげをかいて、私らしい。(笑声)こういうことでございます。いずれにしてもこういうことはよろしくないことであるから、早々にひとつ頒布したらこれを取り上げるようにと、私は強く、選挙に押してもらわぬでもいいからこれを取り上げなさい、こう言ってございますから。これはうしろのほうもよく見ていただいて、これがもし模造紙幣のように間違うようなものであったらたいへんなことでございますが、うしろは白紙でございますし、ずっと金物屋のいろいろな商売のことが書いてあるということでございます。私も聖徳太子になりたいということではございませんから、これは他人のやったことではございますが、私にいささかでも関係があればもう一度注意をいたします。
  350. 青木正

    青木委員長 これにて横路君の質疑は終わりました。  次に、小平忠君。
  351. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、佐藤内閣政治姿勢を中心に、内政、外交問題、さらに当面の冷災害対策について、佐藤総理をはじめ関係閣僚に若干質問をいたしたいと思う次第でございます。総理は内閣改造並びに党役員更迭問題などで連日お疲れのようであります。特に時間も相当おそくなっておりましてたいへん御苦労であろうと思うのでありますが、いよいよ今国会会期もきょうあすになりましたので、しばらくごしんぼうをいただきたいと思う次第であります。  まず最初に、佐藤内閣政治姿勢でありますが、戦後吉田内閣が政権の座についてからかれこれ満十六年、足かけ十七年という長期にわたる保守党政権が続いております。今日の政治の姿は、私は率直に申し上げて、一体この状態でいいのか。特に最近では宗教団体が政党名前で衆議院にまでも進出しようというかっこうを見せておるのであります。私は、このような現実の姿に対して、佐藤総理に、民主政治をいかにして確立するか、このことについて率直な御意見をお伺いいたしたいのであります。   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕
  352. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 終戦後廃墟の中から立ち上がった。これは、民主政治のもとにおいて初めて民主化が行なわれ、同時に国の経済発展の基礎もできた、かように私ども考えております。したがいまして、私どもの今後なすべき事柄、また現状におきましても維持しなければならないもの、これはどこまでも民主政治であり、議会政治であり、またそれを行なうところの政党政治が健全に育つことだと、かように私は信じております。しかして、戦後二十年、今日までの議会運営その他につきまして、やはりそれぞれ考えさせられるものがあります。民主政治はたいへんけっこうなことですが、やはり民主政治がおちいりやすいそれぞれの弊害がある。ということは、やはり民主政治そのものが責任の所在を明確にしないとか、無責任なことにおちいりやすいとか、あるいはまた国費、県費の乱費があるとか、これはいわば非能率、こういう意味だと思いますが、非能率、あるいはまたそれにからまる秩序の破壊、汚職、そういうようなものもある。こういうような点について思いをいたして正していくというか、それでなければ真の民主政治はなかなか育成強化できないんだ、かように思います。このことは、今日までの繁栄を遂げたその基本に民主政治というものがあるんだが、これは今日のこのままの状態でよろしいのか。また、今回のこの通常国会運営等につきましても、私どもはお互いに反省しなければならないものがあるんじゃないか。かような点も考えまして、一そう民主政治議会政治に精根を尽くすようにいたしたいものだ、かように考えます。
  353. 小平忠

    小平(忠)委員 総理のただいまおっしゃったことばはよく理解できますが、しかし、少しく抽象的でありまして、私がお伺いいたしたいのはもっと具体的な問題であります。率直に申し上げて、この十七年にわたる自由民主党の内閣というものは、結論的には、やはり総裁、総理はかわるけれども、政権のたらい回しなんだ。それはわれわれ野党が常に声を大にして主張いたしておるのでありますが、結局は、大体三百名という絶対多数の議席を持つ自由民主党というその形に、在野党の力が数の上ではハンデキャップがあり過ぎるために、委員会審議も本会議審議も、それば憲法なり国会法に示されたルールによってやっておるけれども、最近の姿を見ると、何か政党でもあるいは議会でも何でもない者が、あるいは代議士でも何でもない者がこの最も重要な法案あるいは予算に参加して、そうしてやみ取引がなされて、そこである程度のセリフができて、それを国会に持ち込んで一つのかっこうをつくっておるというようなことが実はあるのであります。やはり民主政治のほんとうの姿というものは、複数以上の政党が議会を通じて政策で真剣に論争するという形がなされなければならない。このことは、戦後保守党内閣ができて、あの吉田さんがこの委員会なりあるいは本会議なりを通じて、私はいまでも記憶に新たなものがあるのでありますが、民主政治とは健全なる野党をやはり育てなきゃならぬということもおっしゃった。ですから、その健全なる野党を育てないように仕組むのか、あるいは党利党略のために今日の議会政治をもてあそぶことが国家国民のためになるのか。私は、総理に率直に民主政治を育てる具体的な考え方をもっと掘り下げてお伺いいたしたいのであります。
  354. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 民主政治議会政治、これは議会政治を形成しております各党がそのつもりにならなければいけない。ひとり政権をとっている政党だけの責任では私はないと思います。ただいま健全なる野党の育成強化ということばを言われましたが、もちろん、私自身率いる自由民主党、これをりっぱなものにしたい、それで私は全力を注ぐつもりでおりますし、また現実にも注いでまいっておりますが、しかし、健全な野党を育成強化するというような大それたような考え方はいたしておりません。むしろ野党自身がみずから立ち上がって、そしていかにして民主政治を守るか、議会政治を守るか、こういうことで立ち上がることが望ましいのではないか、かように思います。問題は、私どもが三百名の党員を擁するとは申しましても、ただいまは国民自身が主権者であります。国民自身の支持がない限り、私どもは大をなすことはできない。そこに思いをいたして、絶えず、国民とともに歩む政治、そこに初めて私ども国民から支持を受けるものがあるのだ、かように考えております。  ただいま代議士にあらざる者が政治を云々したとか、あるいは案をつくったとかいうようなお話が出ております。これはあるいはいわゆる圧力団体というような表現でもしたがったのかと、かように私は考えますが、わが党においては、わが党の代議士諸公が政治をやっておる、かように私は考えております。しかし、先ほど申しますように、今日の民主政治は、どこまでも国民の支持がなければ政治がりっぱに行なわれるわけのものではございません。いかにして国民の支持を得るか、しかもそれが正しい、また健全な意味において国民の支持を得るか、これが私どもに課せられたその仕事、眼目ではないか、私はかように理解しておるわけであります。  要は、議会政治運営していくところの各党各派、こういうものがもっと真剣に立ち上がって、お互いに、他を育成強化するというような大それた考えでなしに、みずからがりっぱな政党になっていくところに真の意義があるのではないか、またそういう意味でわれわれ努力すべきではないか、かように思います。
  355. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、昨年の総裁公選にあたりまして佐藤総理のとられた態度は、いまなお記憶に新たなものがあります。あなたは、自民党の同じ中にあって総裁に立候補せられたときに、明確に当時の池田総理に対して、池田内閣のすなわち所得倍増政策は誤りであった、これはおれが総裁になったなら直すのだと、それは非常に大みえを切られた。私は、同じ党人であっても、いいことはいい、悪いことは悪いと率直に述べられるその勇気とその行動はいいと思う。しかし、池田さんが病のために中道に倒れられて、その後数カ月にしてあなたが総裁になり、総理の座につかれたのである。それから今国会を通じていわゆる佐藤内閣の姿を見ておりますと、結局は池田内閣の踏襲であり、佐藤色は出ない。これは私はわからないわけでないのです。あなたが総裁になり、そして池田内閣のあとを引き継いだときに厳にくつわをはめられて、ついに、内閣を改造するまでは、あるいはこの国会だけは踏襲するのであるという、もちろん注文もつけられたでありましょう。しかし、私は、いかにそうであっても、それを党利党略のために行なうことが国民のためにプラスになるのか、そのことを考えてみた場合に、やはり勇断をもって、あなたの所信をもって進むことがよろしいと思う。まあそのことは、会期ももう明日で終わって、一両三日のうちに大幅に改造される。そうして佐藤色を出すということであるから、その際には、やはりあなたの勇断をもって進むという体制をつくっていただきたい。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕  それで、民主政治を育てるということは、今日根本的な問題はいろいろあるけれども、その中で一番大きな問題は、各級選挙に最近は非常に金がかかる、これがガンであります。もしあなたが、今度の参議院選挙に臨みまして、総理、総裁としてあくまでも法定費用で選挙をやれ、それ以上に金のかかるような候補は出さないということで、自民党みずから範を示すようなことがあったならば、私は国の政治の姿勢も変わってくると思う、具体的に言うならば。その点はいかがでございましょうか。
  356. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる選挙に金がかかるということを言われます。また、政治に金がかかるとも言われます。こういうことはぜひ避けていかなければならないことかと思います。今日、清く正しい選挙、こういうスローガンのもとに選挙戦を展開しようとしておる。同時にまた、選挙費用の使い方等についても厳重な取り締まりをする、こういうつもりでおります。できるだけ公正——それが画期的にすぐ手のひらを返したごとく正しく清らかになることを希望いたしますが、今日までずいぶん長い間のしきたりでございますから、なかなか私どもの考えどおりにもいかないかと思います。しかし、あらゆる努力を尽くして、そうして清らかな選挙をする、こういうことに最善の努力を払っていくというのが、ただいまの政府考え方でもございます。どうか国民の皆さま方、また各政党の協力を得まして、そうしてただいま申し上げるような清らかな選挙をしたい、かように念願しておる次第でございます。
  357. 小平忠

    小平(忠)委員 私の前に、社会党横路君が当面のいろいろな問題を取り上げて、特に綱紀粛正の見地から質問をされました。また、総理なり関係閣僚の答弁も私はじっと傾聴しておった。私は、ほんとうにえりをただして質問し、答弁する問題であると思います。いま総理の御答弁を伺って、いまの非常に重要な段階において、確かに決意を新たにして新たな出発をされようとすることはわかるのです。  私は、さらに一つ具体的な問題として、東京都議会の解散が、ついに都議会の自主的な形で解散できず、本日衆議院の本会議を通過したすなわち特例法によって解散をせしめられる、まことに遺憾なことだと思うのです。この都議会を解散に追い込むというこの中身は、議長選挙をめぐる贈収賄が表面化して、これが発端で今日の事態になったということは明らかでございます。そうすると、この点で、私はさらに拡大して法制局長官に総理の前で次のことを御答弁いただきたいと思うのであります。いま総理は内閣改造をここ一両三日のうちにやろうと考えておる。その場合に、公務員たる大臣閣僚は総理が任命する。任命権が総理にある。その場合に、各派閥から自薦他薦で大臣になりたいということで、もしわいろあるいはそれに類するような行為があった場合に、これを都議会の議長選挙をめぐる贈収賄と同じように考えていいのか、この点、法制局長官いかがでしょう。
  358. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 贈収賄の構成要件は刑法に掲げられておりますが、その構成要件に該当するかどうかということの問題になるかと思います。どうもその点は、この刑法の構成要件上の規定をつぶさに見まして、必要があればお答えをいたしますが、要するに、その贈収賄に関する刑法の規定の解釈の問題になるわけでございます。そこで、その点についての具体的な問題については、私、しばらく時間をいただきまして、検討した上でお答えしたいと思います。
  359. 小平忠

    小平(忠)委員 都議会の議長選挙をめぐる贈収賄は、これは公職選挙法によって云々ではないことは法制局長官も御承知のとおりですね。これは刑法によって今回十七名のいわゆる逮捕者が出ているということ。そして、先ほど横路君もこの問題に触れたのですが、実際に都議会の議員はそれに責任を感じてない。これはどこにあるかということは、大臣の任命をめぐって従来やはり自薦他薦を通じて少なからずその問題は相当うわさにのぼっておるのです。だから、もし総理に対して自分が大臣になりたいためにいわゆる相当額の金品を出した場合に、都議会議長選挙で問われたと同じように刑法による贈収賄の罪が成立するのかしないのかということを私は伺っておるのです。
  360. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 実は、ただいま仰せになりました点、私申しわけないことですが、向こうに行っておりましたので伺っておりませんが、先ほどのことと関係がありますなら、いま条文についてよく調べておりますから、ちょっと時間をいただきとうございます。
  361. 小平忠

    小平(忠)委員 私から申し上げますが、これは刑法の第百九十七条によって都議会議長の選挙をめぐるいわゆる贈収賄が成立しているのです。だから、これは私から申し上げるまでもなく、大臣は総理の任命です。任命権を持つ総理に大臣になりたいためにわいろを使うという場合に贈収賄が成立するかどうかということを法制局長官に伺っておるのです。
  362. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 どうも非常に慎重を期してしまいまして、実はいま仰せになりました具体的な例を伺いましたが、百九十七条、公務員は「其職務ニ関シ賄賂ヲ収受シ」云々という規定になっておりますし、贈賄につきましては百九十八条に、百九十七条の関連で規定がございます。したがって、同様のことになると思います。つまり、いま御指摘の点と同じ結果になると思います。
  363. 小平忠

    小平(忠)委員 そうすると、選挙によらなくても、任命権のある総理に大臣になりたい者が結局わいろあるいは金品を出した場合には、あるいは収受した場合には、両方とも贈収賄が成立するということでございますね。
  364. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 刑法の百九十七条なり百九十八条の、職務に関しわいろを収受し、あるいはそれに規定するわいろを供与した者は、百九十七条、百九十八条によって処断されることになっております。
  365. 小平忠

    小平(忠)委員 そういたしますと、従来そういうことをたびたび耳にいたします。問題は、それでは贈収賄になるのであるけれども、検察当局なりがあるいは法に照らしてそのことを追及しないだけであるということで、現在は放免されておるというように理解してよろしゅうございますか。
  366. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来、私黙って聞いておりました。大臣を任命する総理がそのようなばかなことはしません。はっきり言っておきます。
  367. 小平忠

    小平(忠)委員 これはきわめて重要な問題であります。私は、およそ大臣を任命する総理はそういうようなことはないと思います。また、あってはならぬことである。  しからば、一歩話を進めます。都議会の議長選挙をめぐる問題が、自主的に解散できなくて特例法をつくって解散する、このことは一体どこに原因があるのか。それは、従来保守党内閣の総裁公選で多額の金が流れておるということは、何か公然と国民の中に流布されておるのであります。私は法制局長官にさらにお伺いいたしますが、総裁公選についていわゆる刑法の第百九十七条のような問題を適用されるのかされないのか、総裁公選について法制局長官の所見を伺います。
  368. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま申し上げましたように、第百九十七条等につきましては公務員ということになっておりまして、この規定が総裁公選の場合にそのまま適用になるということは規定の上からあり得ないことだと思います。
  369. 小平忠

    小平(忠)委員 私もそうだと思います。ところが、問題は、それではそのことは、総裁公選で刑法にいう贈収賄が成立しないから、結局従来二年ごとに行なわれる総裁公選でそういうようなことが行なわれることはよいのか悪いのか、この点を私は総理にお伺いいたしたいのであります。
  370. 青木正

    青木委員長 答弁がないようでありますので、小平君。——総理から答弁がないようでありますので、小平忠君。
  371. 小平忠

    小平(忠)委員 総理に伺っておるのです。
  372. 青木正

    青木委員長 答弁がないようでありますから……。
  373. 小平忠

    小平(忠)委員 総裁公選で、いま申し上げたように、いわゆる刑法にいう贈収賄が成立しないという法制局長官の答弁であります。しかし、刑法でいう贈収賄が成立しないから総裁公選で何億の金が使われてもそのことは差しつかえないというようにお考えかどうか、それはそうすべきではないとお考えか、総理の見解を承りたい。
  374. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 法律上罪にならないからといって、さような状態が許されるとは思いません。
  375. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、なぜこういうことをお伺いするかといえば、今日単に東京都議会だけの問題ではないのであります。あなたはいま佐藤内閣政治の姿勢を正すという意味において——これは自由民主党の歴代の内閣、歴代の総理がともすれば党利党略に走って、何年も長い間の今日のようなゆがめられた政治国民はほんとうに望んでいるのかどうか。佐藤総理こそ、あなたが昨年の総裁公選において述べられたあの姿勢で決意と勇断を持ってこの難局に処するという、私はいまほんとうに重大なときだと思うのです。いずれかの時代に今日のようないわゆる政治の姿勢を正していかなければならぬときが来ると思う。この場合に、あなたは単に一党の党利党略をかなぐり捨てて、日本の国家国民のために、後世に名を残すようなりっぱな総理であってほしいということから私は申し上げているのです。今日のこれらの問題はすべてここに基因するのです。申し上げたように、各級選挙においてことごとく金のかかるような選挙が、いわゆる政治を腐敗させ堕落せしめているわけなんです。このことを私は声を大にして総理に申し上げたい。  ついては、もう一つ私は総理に申し上げたいのでありますが、しからば参議院の選挙はもう目前であります。同時に、あなたは総理になられて、近くゆくゆくは解散をして国民に信を問うて、真に佐藤内閣の政策なり、佐藤内閣の姿勢を国民に訴えるときが間近に来るでありましょう。ところが、今日のごとき公職選挙法の姿においては、何年これを繰り返しても、今日のような政治姿勢、政治あり方は私は改革できないと思う。公選法の中身については、これは選挙制度審議会にゆだねて十分に第三者の意見を聞くというけれども、総理みずからが金のかからない選挙に切りかえるという勇断がなければおそらくこれは不可能でありましょう。そういう面で、私はこの公職選挙法について総理はどのようにお考えか、お伺いいたしたいのであります。
  376. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の政治姿勢についてたいへん力強い御鞭撻をいただきましてありがとうございます。厚くお礼申し上げます。  次に、公職選挙法についての私ども態度であります。御承知のように選挙制度審議会がただいま開かれております。その選挙制度審議会におきましては、できるだけ金のかからない清らかな政治、これはいかにあるべきかということで、いろいろ各界の有力者が頭をしぼっていらっしゃる。ただいまその審議会の結果、答申を待っているというのが私ども態度でありまして、私はできるだけ早くりっぱな答申が出てきて、そしてその答申の線に沿って改革すべきものは改革し、改正すべきものは改正してまいりたい、かように考えております。
  377. 小平忠

    小平(忠)委員 この問題は、総理自身が相当の決意と勇断をもってやらなければ、政党にあるまじき団体が政党をよそおって、だんだんとそういったような勢力が伸張するこの姿を見るときに、私は、ゆくゆくは近いうちに解散を行なうその場合に、もう取り返しのつかない方向に行ってしまう、このことを総理に強く明確に主張しておきたいのであります。  そこで、その公職選挙法の問題ともからみまして、参議院の選挙の半数改選というものは、これは憲法に示されている当然のことでありますが、この問題と同時に、あなたはこの国会が終った直後に大幅な内閣改造をして、佐藤内閣のいわゆる佐藤姿勢というものが明白になると思う。それによって参議院選挙を行なう、政策も新たに打ち出す。しかし私は、それによって佐藤内閣の実態を国民に信を問うという形じゃないと思う。最近の内政、外交諸問題について、私はすみやかに国民に信を問うて、佐藤内閣の形、姿勢というものを明らかにすべきであろうと思うのでありますが、総理は衆議院の解散をいつごろに考えておられるのか、この機会にお伺いいたしたいのであります。
  378. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 衆議院の解散はただいま考えておりません。
  379. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、佐藤内閣政治姿勢について率直にお伺いいたしました。国民のいま期待いたしておることは、やはり今日いかに押えようとしても押えることのできないような姿において物価は値上がりする、この物価をいかにして引き下げるか。さらに緊迫せる国際情勢に対処して政府がどのような所信をもって臨むかということなどを考えてみまするときに、私は、この重大な転換期にあたって、佐藤総理政治姿勢に対する明確なる所信を承りたかったから、実は失言もあったかと思いますけれども率直に申し上げた次第であります。  そこで、これに関連をいたしまして、当面の外交問題で二、三お伺いいたしたいのであります。新聞やあるいはラジオ、テレビなどで報道されておりまするところによりますと、外務大臣は留任という方向であると承っておるのでありますが、私は、この際きわめて重要な問題でありますから外務大臣に率直にお伺いしたい。とかくいままでどうも外相は何を言っているのかわからないというようなことが、外務委員会なりあるいは本予算委員会なり本会議を通じてございました。私は明確に御答弁いただきたい。と申しますのは、来月末に行なわれますAA会議に対しまして、佐藤内閣のこのAA会議に臨む基本的な姿勢、基本的な態度であります。この点を外務大臣はどのようにお考えか、率直にお伺いいたしたいのであります。
  380. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 約十年前に第一回のAA会議が開かれましたことは御承知のとおりであります。その当時の国際情勢から、もっぱらこの第一回のAA会議において各国の関心の的となっておりましたのは、いわゆる反植民地主義の主張であります。あるいはまた反帝国主義、こういう主張が非常に熾烈であったのであります。この十年の間に世界の情勢は全く一変いたしまして、アメリカをはじめとして、世界の植民地がこぞって独立をいたしたのでございます。まだ反帝あるいは反植——反植といっても、いわゆる新植民地主義に対する反対というような主張は残っておりますけれども、新植民地主義の実体を分析してみますと、独立はしたけれどもまだ実が入っておらぬ、その実が入っておらぬところにもつてきて、従来の植民帝国が依然として実力を持っておる、これがいわゆる新植民地の形をなしておる、これを何とか実体を確立しなければならぬというような主張がどうもそこに包含されておるように思われるのでありますが、結局、これは今日の低開発国というものをいかに育成するかといういわゆる南北問題ではないか、こう考えるのでございまして、まあいろいろ国々によりまして論議はありましょうけれども、とにかく共通問題といたしましては、この南北問題をいかに手ぎわよく合理的に推進するかというようなことが建設的な意見でなければならぬと、かように考えておる次第でございまして、したがって、これに対する日本政府方針も、重点をそこに置いて会議に臨みたい。こういうことで、いろいろその具体的な方法に関しまして、せっかく協議、考究を進めておるような状況であります。
  381. 小平忠

    小平(忠)委員 外務大臣がただいまのような答弁をされておりますと、せっかく外務大臣留任にきまったのが変わるかもしれませんよ。  それでは私からもっと掘り下げてお伺いいたしますが、問題は例のバンドン十原則ですね。このバンドンの十原則を確認して、さらにその後十年間の国際情勢、特にアジア・アフリカにおける国際情勢変化、こういったような問題についてどういう基本的な方針を持って臨むかという、そういうことがやはり非常に大きな問題です。特にこのAA会議に臨む重要な点は、やはり何といっても中国問題です。さらにベトナム問題です。こういったことについて、先般の中共の第二回のいわゆる核実験、これはまことに遺憾なことであるが、しかし、このことも、われわれが主張しておる中共の国連加盟を一日も早く推進するというような線が具体的に出てこない限りいかんともでき得ない。こういったことについて、私は、非常に大きく変化しつつあるアジア・アフリカの問題にどう対処していくかというところにやはり大きな基本的な問題があろうかと思うのです。  さらに、先般一部の新聞あるいはラジオニュースに報道されましたように、このAA会議にソ連が出席いたしたいということに対して、日本政府は反対であるということを表明されておる。これは事実でございますか。
  382. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは、過去において一回もソ連がアジアの一国として認められた国際会議もございませんし、世界の各国がソ連を目して、これはアジアの国であると、こういうふうに感じ、かつ、そういう取り扱いをしておらない状況であります。今回ソ連が、第二回AA会議に際しまして、版図がほとんど大部分。その重点がアジアにある、しからばこれはアジアの一国ではないかというようなことで、その参加に対して相当な意欲を示しておる、こういう状況でございますが、過去の実績から見ても、それから世界の各国の考え方からいいましても、どうも客観的に妥当ではない、こういうふうに考えますので、この問題を特に日本が取り上げて、そしてこの問題を中心にして対立状態をかもし出すというようなことははなはだ賢明ではない。こう考えましたので、どっちかというと、弾力性は持っているけれども日本としてはこの世界の大勢というものを見てその方向に同調する、こういう考え方を持っておるのでありますけれども、現実問題として、会議において率先してソ連の参加反対を主張するというような態度につきましては、これはよほど慎重を要するものである、かように考えております。
  383. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは慎重に考えたいということであって、ソ連の参加に反対はしないという意味でございますか。
  384. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 世界の客観的な情勢は必ずしもソ連に有利ではないという情勢を十分に看取して、慎重に対処したい、かように考えております。
  385. 小平忠

    小平(忠)委員 どうもはっきりわからなくなってしまうのですが、そうするとこの間の報道は、あれは誤りでございますか。
  386. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いろいろ研究の過程においては、報道がいろいろ伝えられておりましたが、十分に与党、政府の間において慎重研究した結果、ただいま申し上げるような結論に到達しておる、こういうわけであります。
  387. 小平忠

    小平(忠)委員 それでは、マレーシアの参加についてはいかがお考えでございますか。
  388. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 マレーシアは、これは疑いもなくアジアの一国でございます。いろいろ、どの系統、どの系統というようなことで、多少の異論を差しはさまれておりますけれども、これは、ほとんど大部分のAAの各国が、マレーシアは正当なるメンバーであるべきである、そういう主張を持っておるようでございます。この状況にかんがみまして、日本といたしましても大勢に順応いたしたいと考えております。
  389. 小平忠

    小平(忠)委員 もちろんマレーシアの問題は、これは日本政府としては積極的に推進されるという意図であろうと思うのですが、結論的に私が申し上げますならば、今日のごとききわめて複雑なアジア情勢、こういった観点に立ってただいまの外務大臣の御答弁を聞いていますと、結果的には私は少し不用意だと思う。この重要な会議に臨む日本政府態度としてはもっと慎重であるべきだ。これはきわめて重要な、特にAA会議に臨むその団長として川島副総裁をすでに決定をいたしておるような現状であるし、特に外務大臣も出席される。そういうような段階において、私は、少なくともこの時限において、明確にこのAA会議に対する政府の基本的な態度がもう決定されていなければならぬと思うのですが、どうも外務大臣の答弁を聞いておると明確でないのです。この際総理のAA会議に臨む基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思うわけです。
  390. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 AA会議に臨むわが国の態度、また基本的方針はどうか、これはなかなかむずかしいお尋ねでございます。私が申し上げるまでもなく外交の機微に触れる問題で、ときに外交は率直にお話しをして非常にいいこともあります。また、その話をしないと、いわゆる秘密外交といってずいぶん批判される、話をすることによって国民外交を展開する、こういうように支持なさる方もあります。しかし、ただいまAA会議に臨むわが国の態度は、これはたいへん私はAA会議を重要視しておるだけに慎重であってほしい、かように思っております。出かけて態度は宣明すべきもので、出る前からこれを明らかにしておくことがはたしていいか悪いか、そういう問題もあると思います。もちろん出かける方々がいろいろ検討もし、十分の準備をして出かけることは、これはもう申し上げるまでもないのでありまして、もう大体の準備はできたようでありますが、さらにまた引き続いてさらに打ち合わせをするという予定にもなっております。どうか、そういう意味のものでございますから、いましばらくその中身を明確にすることだけは、公表することだけはお許しを得たいと、かように思います。
  391. 小平忠

    小平(忠)委員 われわれは、特に外交につきましては超党派外交を主張してまいった立場であります。今回政府与党も、特にこのAA会議に野党である社会党民社党からも正式にメンバーを主席代表の顧問団として決定を見ているこの姿からいって、ただいま総理の御答弁のように、今日のきわめて重要なアジア・アフリカの情勢に対処するために、このAA会議が最も有意義な成果をあげるように私は特に総理に念願してやまない次第であります。  次に、国内問題でありますが、このことは国会終了後も参議院選挙をめぐって大きな問題点の柱でありますが、やはり国民生活の中でいま物価問題ほど直接国民生活に影響する問題はないのであります。この点について、この物価を具体的に引き下げねばならぬということについて、これは特に経済企画庁長官がどのような構想を持っておられるか。さらに私は不可解なことは、やはり物価を今日のような状態にこれは放任できないということから特に影響をもたらすのは、公共料金のいわゆる値上げをストップしておるというこの現実に対比いたしまして、先般運輸大臣が鉄道料金を明年一月から上げるんだ、こういうことを主張されているのでありますが、こういったことは総理自身がお認めなのかどうか、総理並びに運輸大臣、経済企画庁長官に私はお伺いしたいのであります。
  392. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 ただいまお尋ねの点は、私が岡山で申し上げたことであろうと思うのでありますが、御承知のように物価と運賃というものは、これは離すことのできないものでありますが、同時に、日本の輸送状況の緊迫している状況も御存じのことであると思います。でございますから、昭和四十年度を初年度といたしまして、向こう七カ年間の間に約三兆円の金をもって国鉄の輸送力の増強、いわゆる過密ダイヤの解消、あるいは幹線複線電化、または踏切その他の輸送安全の問題について相当の資金を投じなければならぬことは、国鉄基本問題調査会の答申を御存じのはずであると思います。この三兆円の金を、これをただ政府及び国鉄の剰余金だけでやるということはどうしてもできるものではないと思います。でございますから、国鉄のほうといたしましても、そのほかに政府の出資を三千億以上認めてくれと要求もいたしております。それでもそれは追っつくものではございません。どうしてもやはり運賃を上げる以外に道はないのであります。しかし、物価の問題に影響いたしますから、物価にあまり影響のない範囲内において運賃を上げていくということは欠くべからざるものであって、今年の予算から運賃を上げなければならぬということになっておりましたけれども、今年は消費米の値上げ、あるいは医療の問題の値上げ等がありまして、やはり物価に影響し、国民生活に影響するものでありますから、明年度ごろからはどうしても上げなければこの計画を実行することができないのであります。でございますから、今年の四十年度の予算を組むときから、近いうちにある程度の——率と期日はいろいろ検討の必要はございますけれども、どうしても運賃はやはり将来上げていかなければこの計画を実行することはできないと思っております。
  393. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 昭和三十六年度から三年度間引き続いて六%台の消費者物価の上昇を見ましたが、昨年以来物価抑制について非常な努力をしてまいりました結果、昨年度の消費者物価の上昇は四・八%にとどまった次第でございます。しこうして政府は、安定成長の基調のもとに物価を漸次安定的な方向に持っていこうという必死の努力をいたしておる次第でございます。しこうして、ただいまの鉄道運賃につきましては、運輸大臣としては混雑緩和その他の関係、通勤緩和等の関係から、そういうふうな要望を持たれることは当然であろうかと存じますか、政府全体としては、その時点において物価の関係も、その他いろいろの観点を考えあわせながら決定いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  394. 小平忠

    小平(忠)委員 ただいまの運輸大臣なり経済企画庁長官の答弁を聞いていますると、これは、先般の佐藤総理の施政演説なり、あるいは本国会でいろいろ答弁された、いわゆる公共料金は一カ年ストップをする、物価はやはりいかなることがあってもこれは上げないようにせなければならぬという、その佐藤総理の基本的な線と食い違いがあるのです。ですから、このことは、佐藤内閣が大幅な内閣改造をして新たな姿勢で臨まれる新政策の中でただいまのような考えでは、これはもうこの物価と賃金、この悪循環がやはり依然として繰り返されるということについて、私は重大なる警告を発しておきたいと思うのであります。  私の約束時間は一時間半でありますが、時間もだいぶおそくなっておりまするので、質問を重点的にしぼって、私は最後に災害問題について要点だけを率直にお伺いいたしますから、総理はじめ関係閣僚の簡単にして要を得た御答弁をいただきたいと思うわけであります。  本年の春以来のこのいわゆる気象不順による災害は、御承知のように豪雪災害あるいは融雪災害、最近の低温による災害、これは続発いたしております。先ほどの気象庁長官の答弁ではありませんが、いわゆる太陽黒点による影響か、単に日本だけでなく地球上全世界の問題であるということも指摘された。特に私は、この災害というのは忘れたころにやってくるというのでありますが、すでに桜も咲き終わって、いわゆる新緑の候を迎えて、おるきのう今日、一昨日、一つの例を申し上げますならば、北海道におけるこの異常気象というものは、地域によって異なっておりますけれども、降霜、結氷、そして氷点下七度ということは、これはいかなる作物も完全に参ってしまうわけです。ですから網走の美幌町における氷点下七度というこの気温は、ビートの苗が完全に参り、トマトやその他苗しろの苗が完全に被害を受けるというきわめて悲惨な状態を呈しております。各種災害について、政府はさっそく今回の場合も農林省に対策本部をつくって具体的な処置を講じておるというのであるけれども、やはりこの災害については、特に私は、政府がいまのうちから万遺憾なきを期してほしい、今日社会不安の中でいろいろな問題がありますけれども、今日の科学やあるいはあらゆる方法をもってこの災害を防ごうということに対して防ぎ得ないこの不可抗力な問題について、私は政府がほんとうに真剣にあたたかい手を差し伸べてやらなければならぬと、こう思うのでありますが、この点について現在、この春以来の各種災害についてどのような被害状況の把握なり認識なり、あるいは現状どのような対策を講じておられるか、私は重ねてお伺いをいたしたいのであります。
  395. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 災害につきましては、御案内のとおり、私どもも憂慮をいたし、その対策を講じてきておるわけでございます。全体的に見まするならば、十年前あるいはその以前から考えまして、災害のうちでも冷害の対策につきましては、技術的その他において相当進歩をいたしております。しかし、ことしの災害等は異常でございますので、その災害を見守りながら対策を講じておる次第でございます。現在までにおきましては、雪害あるいは低温による農作物の被害並びに今後予想される不順天候に対処するため、先ほど申し上げましたような対策本部を設置しておりますが、あるいは雪をなくする、消雪といいますか、その対策を講じて田植えの時期を失しないように、苗しろ用地の除雪あるいは資材の頒布、共同苗しろとか共同委託苗しろ等の設置を行なっておるとか、あるいは種もみの配付を行なっておるとか、いろいろこまかいことがございますが、そういうことを総合的に申し上げまするならば、いままでの技術陣によりまして、この前期の災害を克服していこう、こういうことを行なっています。今後におきまする災害対策等につきましては、この災害を見守りながら、財政的あるいは金融的あるいは技術的にこれを克服すべく万全の努力、対策を講じておる次第でございます。
  396. 小平忠

    小平(忠)委員 災害問題については、大体従来は農業災害は農林省、台風災害などにおいては、公共災害は建設省あるいは運輸省、こういった点について従来それぞれ処置はしてまいりましたが、私は、特に田中大蔵大臣が今国会最後に今度は幹事長に就任されるというこの時限において、私は率直に、過去長い間大蔵大臣は、特にこの新潟地方が各種災害にあっておる立場もあってか、特に災害については、あなたは特別な配慮をされたことについては私は率直に認めます。ただし、ともすればこの災害について、やはり最後は大蔵省に大なたをふるわれて、非常に罹災者のその希望にこたえ得ない点が多々あるのであります。したがって、どなたが今後大蔵大臣になられるかわかりませんけれども、特に災害だけは私はあらゆるものに優先して処置してやっていただきたい。山一証券に対して日銀法の二十五条を発動して、これは特に特別なる処置を講ずる。その気持ちがあれば、私は、災害についてはいかなる措置を講じても当然のことと思うのです。  そこで最後でありますから、私は総理にお伺いしたいのは、現在特に日本は台風の常襲地帯が非常に多いのであります。おそらく世界各国を通じて日本ほど自然災害の多い国はないと思うのです。そういう意味から、この災害を未然に防止する、あるいは災害が起きた場合にこれをどう処置していくかということについて、現在政府はどの程度具体的に考えておるのか、率直に申し上げて、具体的な内容としては、やはり今日の気象観測、農業気象、こういったことについて、私はこの国民の期待にこたえられておるような状態でないと思う。さらにもう一歩進んで、災害は人間の力では解決できないという、この見方は一体どうであろうか。日本は戦いに敗れて、確かに新たなるスタートをしておると私は思う。しかし、日本の科学陣を動員してやるならば、この台風などについても、これをさらに未然に防止するような方途が一体できないのか、そういう点を政府研究し考えておるのか、こういう点について私はこの機会にお伺いをしておきたいと思います。
  397. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 災害は忘れた時分にくるということでありますが、昨年の冷害凶作はお互いにまだ耳の底に残っております。去年、今年の雪の多いこと、また特に忘れられないのは、オホーツク海並びに北太平洋の氷の厚さ、これが今日の災いのもとであります。特にいま黒潮等がいままでは釧路の沖で戦っておったやつが金華山沖まで下がってきております。でございますから、大体東北、北海道は冷蔵庫の中におるような状況になっております。でありますから、農業気象に影響される度合いの大きいことは言うまでもありません。災害の防止、軽減を初めといたしまして、生産性の向上、経営の合理化等に資するために、かねてこの関係の気象業務を農業気象業務として展開しつつあります。ことに最近における異常気象との関係でこの問題を重大視し、種々の角度からその整備拡充に努力いたしております。御質問の点は、もちろん積極的な方針で具体的に策定を急いでおるのでございますが、しかし、今次の異常低温のような事態になお一そう的確な予報的効果をあげるためには、単に測候所、観測所等の強化ということだけではなく、根本的に、世界的に、少なくとも北半球における気象状況の一貫した関係地域との連携を強化して長期的に予報の向上を期するために、総合的判断を基礎にしなけれればならぬという結論になっておるのでございます。したがって、この点についても長期計画を策定いたしまして、深く配慮、研究しつつあるのであります。一部は、昭和四十一年の予算にこの予算を取りたいと思っております。なお、技術的の問題の詳細については、長官がきょう出席しておりますから、その内容長官から説明させます。
  398. 小平忠

    小平(忠)委員 長官の御説明はけっこうです。  私は、やはり今日のような状態において、ともすれば災害は、あたたかくなってくると、ああよかったな、そういう感じをしているところへもってきて——これは実は先刻長官が説明されているように、平均の気温の積算によると、それほど低くないのです。ところが、異常気温によって、これは一昨日の朝日新聞ですが、「北海道は冬に逆戻り」というような、こういう記事を見ただけでもぞっとするのであります。ですから総理は、特にこの災害問題については重大なる決意をもってこれを処置していただきたいということと、もう一つは、今日の科学陣を動員してもいいから、日本のように災害の多い国は、もっと予算的にもあるいは今後の調査研究についても配慮してほしいということを私は申し上げたいのであります。  時間の都合上、最後にもう一点私は総理と農林大臣に申し上げたい。特に赤城さんは名農林大臣としてほんとうに尽力されました。しかし、今度は大幅改造で、あなたも農林大臣のいすを交代されるのでしょう。しかし、私は非常に重要なことでありますからこの点をお伺いしたいのでありますが、本委員会においてもあるいは私は他の場合においても強く発言をし、また政府の所信をただしておるのでありますが、今日政府が農業政策に対して、特に近々米価も決定をしなければならぬ段階にきております。ところが、おそらく私は今度の参議院選挙でも、総理みずから、農業に対してはかくかく予算的あるいは各種の施策を講じていると演説をされるでありましょう。しかし、私は四十年度の予算現状を見て、食管会計の赤字一千九十六億、これをぶち込んだ額において一般会計の中で占める割合が一〇%をこしていると主張しても、これはあかないんです。この食管会計の赤字一千九十六億を差し引くならばわずか七%なんです。こういうような考えで今日の日本の農業を根本的に近代化していくことは、私は不可能だろうと思う。だから、少なくとも農林大臣は、次の農林大臣に——すでに四十一年度の予算の編成の作業が近々進められると思う。この場合に、食管の赤字をどう処理するか、本年度の米価はどういうふうに決定するか、さらに四十一年度の予算編成にあたって、少なくとも農業基本法に示される農業近代化の方向にかくかくの態度を示すということについては、私は、長い間赤城さんか日本農政に精魂を打ち込んで尽くされたその考え方を、少なくともこの最後委員会において明確にあなたの意見を聞きたい。  同時に、そのことは、やはり総理の最後の決断による。総理の日本の農業政策、特にかつていまから七、八年前においては、一般会計の中で農業予算の占める割合は一六・四%まで上げられたことがありました。それが月来今日においてはわずか七%では、これは農業に対して佐藤内閣が最大の配慮をしておるとは言えないのです。私はこのことを率直にお伺いしたいのであります。
  399. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 食管の一般会計繰り入れ千九十六億ですか、本年度予算になっております。こういうものをどういうふうに考えるかというような御質問かと思います。私は、食管制度を守っていくといいますか、堅持していく以上は、どうしてもこういう金は出るべきものだ、差額はどうしても出るべきものだ、こいうふうに考えておりますので、一般に常識的に言うように、赤字というふうには私は考えておらないのであります。そこで、そういうものは農業政策の積極面ではないじゃないか、ほかの会計にでも入れて、農業政策予算は農業政策予算として相当の額を獲得するようにしたらいいじゃないか、こういう御意見かと思います。ほかの会計へ入れろというのも一つの考え方であろうと思いますけれども、私は、これは決して農業政策でないというふうには見ておりません。農業における価格支持対策を講じておりますが、その価格支持対策の中で最も強力な米、麦等に対する支持対策としての費用でございますので、相当農業政策に重大な要素であるところの予算である、こういうふうに思います。でありますので、これがあるから、このためにはほかの予算が少なくなるじゃないかというような御心配もあるかと思いますが、これは一つの農産物価格支持対策の有力な要素としてこれを見ておると同時に、また、他の農業政策につきましては、いま農業基本法によって進めておるところの予算を十分確保して、そして農業を推進していきたい、こういうふうに考えております。
  400. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあことしは異常天候から、冷害というものがたいへんおそれられております。また、御指摘のように、台風常襲地帯というあまりいい地帯ではない、私のところをはじめそういうふうに言われておりますが、たいへん天災の多いところだ。しかし、天災は人力によってこれを防止することができるのじゃないのか、最近の近代科学によってこれとまつ正面から取り組んで、やはり自然の悪条件を克服することを努力すべきじゃないか、この説に対しましては、私もさように思います。今日まで化学肥料やあるいは農薬等が発達し、ある程度までいわゆる天災というもの、自然の災害を防除するというか、そういう効果があった、かように思います。さらにまた、進んだ科学陣容も動員するとか、あるいは長期気象観測をするとか、かようなことをはかりまして、そうして農業災害というものができるだけ少ないように努力すべきだと思います。  さらにまた、基本的な問題から農政、農業のあり方についての御意見でございますが、すでに御承知のように、農業基本法ができております。もちろんそれによって方向は示されておるとはいえ、なおわれわれの努力が十分でないものがございます。十分成果をあげ得ないものがある。一そう今後とも努力していかなければならないと思います。それが言われることき生産性の向上の問題であたり、あるいは価格の問題であったり、あるいは流通機構整備の問題であったり、さらにまた基本的には土地の問題であったり、各方面にわたる非常に広範な問題だと思います。いわゆる構造改造をも含めて、一そう私ども努力していかなければならないと、かように思います。それをただ単に予算の額だけで農政に対する力の入れ方を判断するということは、私は必ずしも賛成はいたしませんが、しかし、予算がなければ積極的に仕事ができないと、こういうこともございますから、どうしても予算の多寡によりまして力の入れ方等が云々されることもやむを得ないと思いますけれども、農政全般として私どもが努力しておることをとくと見きわめて、そして御了承のほどをいただきたい、かように思います。
  401. 小平忠

    小平(忠)委員 私は、ただいまの総理並びに赤城農林大臣の御説明によりまして、十分に了解いたします。どうかそのような基本的な考え方を、さらに前向きの姿勢で進めていただきたい。特に、今国会で強引に政府農地報償法案を通過せしめました。この農地報償法案によって計上される千五百億の予算的処置、これは十カ年の公債だからというけれども、やはりお金には変わりないのです。私は、それに千五百億のお金を投ずるという余裕があるならば、もっとこれを前向きの姿勢に、前向きの農業近代化のために配慮していただきたい。このことを最後に強く佐藤内閣に私は申し上げまして、私の質問を終わります。
  402. 青木正

    青木委員長 次に、岡田春夫君。
  403. 岡田春夫

    岡田委員 時間もたいへんおそくなっておりますので、五十分の時間を厳守して私は進めたいと思います。したがいまして、政府のほうでも要点だけを簡単明瞭に御答弁を願いたいと思います。  まず第一点として、先ほど石橋君の質問に対しまして佐藤総理大臣が非常に重大な答弁をされました。その答弁の要点を申し上げますと、三矢問題は日本の安全に利益があったかどうかといえば疑問であると、こういうような重大な発言を先ほどされておるのであります。私は、この問題について、非常に問題が重大でございますし、もう一度念を押しておきたいと思いますが、これまでのことをはっきりお話しになるなら、当然三矢研究なるものについては十分総理大臣はお調べになっているのだろうと思いますがこの点はどうでございますか。  それから第二点。三矢研究なるものは、防衛計画に関連があるものであるかどうか。それはお調べになった限りその点はおわかりだろうと思いますが、この二つの点についてお伺いをしたいと思います。
  404. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 三矢問題は、私は私なりに理解しておるつもりでございます。また、もちろん国防問題に関係があるものだ、かように考えております。
  405. 岡田春夫

    岡田委員 総理大臣は、それではお調べになったわけでございますね。——御答弁がないようですから、私それでは具体的に申し上げましょう。  私は、先ほど石橋質問でも社会党を代表して言われましたとおりに、政府原文資料を全く提出しない。しかも国会における政府の答弁というのはきわめてあいまいであり、したがって、国民の疑惑は決してこれによって晴れたものではなくて、逆に私は深まってきていると思う。私は、この機会に三矢研究なるものの真相を明らかにしたいと思います。  まず第一点、この三矢研究と称される図上研究は、業務計画の一つとして防衛庁長官の承認を得たものである。これは四月の二十二日予算小委員会において海原防衛局長の答弁で、このように言っております。「と申しますことは、先般申しましたように、このような図上研究というものは、長官の御承認を得ましていろいろやっておるわけでございます。そこで、統裁官が命ぜられましてつくりました実施計画というものは、そのつど上司にも一応は報告しておるわけであります。」このようにはっきり言っております。したがってこれは一部の幕僚研究ということでは済まされないものであります。  第二の点、三矢研究の実施の経過について申し上げます。  三矢研究は、昭和三十八年二月から六月の末まで五カ月間にわたって行なわれたのですが、これは前段と後段に分かれております。前段は基礎研究と称されて、二月から三月の末まで二カ月間にわたって行なわれております。これは本としては第一分冊に入っております。後段は状況下の研究と称されて、四月から六月まで三カ月間にわたる。私が前二回取り上げてまいりましたのは、後段の部分の一部分を取り上げたのであります。そしてこの五カ月間の会期中に研究参加者全員が参加をいたしました合同研究、あるいは合同図上研究は、約一カ月に及んでおります。しかも、最後に、六月二十二日には全員に対する田中統裁官のあいさつが行なわれ、その翌日二十三日から三十日までの間には取りまとめ作業が行なわれたのであります。これが真相であります。  第三点、実施の目的研究項目については、いままで小泉防衛庁長官その他が小委員会で答弁をいたしておりますのは、単なる幕僚研究であるとか教育訓練のためのゼミナールであるとかというような答弁をいたしております。しかし、これは全くうそであります。この実施の目的は、二月一日付の実施計画の中に目的が明確に出ております。その目的の中には、将来の防衛計画作成に資するとともに、国家施策を要求するものであるという意味のことが明確に書かれております。したがって、明らかに作戦計画と不可分の研究であり、実戦のための研究であることは間違いない。その実例として、実施計画の中に、主要研究項目が第二として列挙されております。その第一には、非常事態の生起に際し、特にその初動においてとらるべき国家施策の骨子、(イ)国として政治・外交上の方針の決定及びこれが示達、これが研究項目になっております。二、対米関係事項。第三、これは重要です。昭和三十八年度防衛及び警備計画における作戦構想の適否、これが研究項目になっております。この点からいって、明らかに実戦のための研究計画であることは間違いない。のみならず、三矢研究の実施にあたっては、先ほど石橋質問にもありましたように、東京府中の在日米軍司令部から米軍の部長クラス、大佐でありますが、数名が参加しておる事実、また実施計画の七ページに、対米関係の事項については、別途米側と意見交換を行なうと書いてあります。したがって、三矢研究は、単に自衛隊だけの研究ではない、日米共同の研究であると断ぜざるを得ない。これが三矢研究の真相でございます。総理大臣は事実を調査されたとおっしゃいますが、私はこの事実に間違いないと思いますが、総理大臣に御意見を伺っておきたいと思います。
  406. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 三矢研究そのものは、しばしば防衛庁長官から申したように、これは一つの図上演習だ、これはお認めになる。それはそのとおりだと思う。だから、その図上演習であるということ、その域を出ていない、これだけは私ははっきり申し上げたい。
  407. 岡田春夫

    岡田委員 そういう答弁では私は納得いたしません。あと具体的に私は伺ってまいります。その次に伺いますが、ではフライイングドラゴンについて伺います。小泉防衛庁長官に伺いますが、昭和四十年度フライイングドラゴンという計画は現実にあったかないか。これはこの前御質問をして答弁を留保してくれということでございましたので、この点を伺います。その内容はどういうものでありますか、その点を伺いたい。
  408. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 フライイングドラゴンという計画はございません。在日米軍と日本自衛隊幕僚問で非常事態に処するいろいろな研究や意思の疎通をいたしておりますので、それをメモにいたしましたものをフライイングドラゴンというニックネームをつけておるということは、私も聞いております。
  409. 岡田春夫

    岡田委員 それではもう一点だけ伺います。統幕3の登第三九甲の二八号という文章はございますか。そしてその文章の題目は何となっておりますか。
  410. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 ただいま御指摘のような番号の文書はございます。しかし、その件名や内容については、この際申し上げられません。
  411. 岡田春夫

    岡田委員 なぜ申し上げられないのですか。
  412. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 安保条約にございますとおり、非常事態に対して在日米軍と日本自衛隊が共同して外敵の侵略に当たることがたてまえでございますので、常時そういう研究をするのは当然であると存じております。これは協定とか計画というものでなくて、先ほど申しましたような、常時日米両国の幕僚間で研究をいたしておるメモでございまして、こういうことをこういう席上で申し上げることは、日本防衛力を減殺をいたし、国の利益に反すると考えますので、これ以上申し上げることを差し控えたいと存じます。
  413. 岡田春夫

    岡田委員 小泉さん、私は真相を全部言ってもいいのですが、きょうはこの場所においては、私あと時間があればやります。ほかの重要な問題がございますから、そちらのほうからやってまいります。  小泉さんにお伺いしたいが、陸上自衛隊第四師団、これは福岡にあるのですが、第四師団が海上自衛隊協力をし、五月下旬の予定で上陸用舟艇約三十隻を使って対馬の上陸作戦の演習を行なうことになっているはずだが、これはどうでございますか。
  414. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 それは年度計画にあります恒例の演習でございまして、詳しいことについては政府委員から答弁いたさせます。
  415. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 ただいまの演習につきましては、これは毎年各方面隊ごとに一回ずつ行なうことといたしておりますところの海上輸送演習並びに機動演習でございまして……。
  416. 岡田春夫

    岡田委員 やったのですか。
  417. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 これは現在計画中でございます。まだ、実施しておりません。
  418. 岡田春夫

    岡田委員 やってない。
  419. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 はい。
  420. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、対馬の上陸減刑というのは計画中であるということの御答弁がありましたが、昭和三十八年度防衛警備計画の中には、「対着上陸侵攻作戦」ということが六ページに書いてあります。そこで、この上陸進攻作戦において、こういう場合、米軍及び自衛隊が相手側の領土、領域に対して攻撃を加え、場合によっては上陸または占領することを作戦計画に入れているのではないかという疑問を感じますが、この点については、小泉さん、どのようになっておりますか。
  421. 海原治

    ○海原政府委員 私ども防衛計画では、ただいま先生が御指摘になったような事態は想定いたしておりません。
  422. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、この間札幌地方裁判所に出廷いたしました田中義男元統幕事務局長は、三矢研究の統裁官として次のように証言をいたしております。それは、状況下の研究No11の中に、ここにございますが、日米協同の対処方針というものが明記されております。この日米協同対処方針の(1)日本直接防衛作戦のハにはこのように書いてあります。「直接侵略に対しては、日米共同して迅速にこれを排除する。この際日本自衛隊は主として作戦の防勢面を担当し、米軍は全般作戦支援のほか、直接的に日本防衛上必要な攻勢面の作戦の大部および自衛隊の能力の不足する防勢面の作戦の一部を担当する。」という、この点の弁護人の質問に対して、田中元事務局長は、日本自衛隊は作戦の防勢面のみならず、攻勢面の作戦の一部も担当することがあるという意味だと証言をいたしております。この場合、作戦の攻勢面とは、当然相手側に対する米日向部隊の攻撃を意味しているものである。したがって、攻撃の中には、相手に対する爆撃、相手領域への上着陸、占領などを含むと解すべきである。これは明らかに憲法に違反するのみならず、自衛隊の侵略性を暴露したものであると私は考えておりますが、小泉さん、これはどうお考えになりますか。
  423. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 三矢図上研究はあくまでも幕僚想定に基づく研究であるということは、しばしば申し上げてきたとおりでございます。また先ほどの三矢図上研究委員長報告の中にも、そういう点が防衛庁側の答弁として明記されておるのでございまして、その想定に基づく演練でございますので、私ども責任を持ってこれは決定したものではない、防衛庁の正式見解ではないということを申し上げておるのでありますから、これに対するお答えは申し上げられないのであります。また、田中前統幕事務局長の恵庭事件に対する証言につきましては、私はまだ詳細にその証言の内容を受け取っておりません。新聞等に伝えられるところによっては、証言において相当の食い違いもあるというようなことも伝えられておりますので、証言については政府委員から答弁をいたさせます。
  424. 海原治

    ○海原政府委員 ただいまの田中証人の証言の中で、先生の御引用になりましたいわゆる防勢面と攻勢面との解釈に関連してのお尋ねと思いますが、この攻勢、防勢ということは、相対的なことばでございます。かつて防衛庁長官から自衛隊の役目とアメリカ軍の役目とにつきまして、自衛隊は内野を、アメリカ側は外野をと、こういう比喩でお話ししたこともございますが、そういうようなことでございまして、一部の攻勢面を担当することは、すなわちとりもなおさず外国の領土に対する攻撃である、こういうことにはならないわけでございます。たとえば北海道におきまして外敵が侵入いたしました、これに対しての反撃をするという場合には、その戦場は北海道内でございます。攻勢であるか防勢であるかということは、九のときの使用されます兵器であるとか部隊とか、こういうことできまってまいりますから、先生のおっしゃいますように、かりに田中証人が一部の攻勢面を担当すると申しましても、それはすなわち海外派兵的な外国の領土に対する攻撃ということにはならない。これは先般三矢小委員会におきましても、るる私ども考え方を申し上げたことでございますので、ひとつそのように御了解願います。
  425. 岡田春夫

    岡田委員 時間がありませんので、どんどん要点を申し上げてまいります。三矢研究の答弁を聞いておりますと、一貫して政府のとっております態度は、こういうことであります。三矢研究の文章には技術上、表現上まずいところがあったかもしれないので、こういう点については注意をいたします。しかし、第二、非常事態に対しては自衛隊が対応策を研究するのは当然である、こういう考え方であります。私もこの答弁を聞いておりまして、文章の表現がよいか悪いかということに対して議論をすることは、私は興味を感じません。それよりも、三矢研究によって行なわれた自衛隊の非常事態対応策、すなわち三矢研究を通してあらわれた自衛隊の本質を明らかにすることがきわめて重要であります。われわれは、かつて日本軍国主義がはなやかなりしころ、非常事態とか日本に対する侵略ということばを浴びるほど聞かされた。そしてこのようなことばの陰において、日本みずからが侵略をし、日本みずからが非常事態をつくっていったという、この事実をわれわれは忘れてはならない。今日非常事態の名のもとにおいて、それだけに、自衛隊がその陰に隠れてかりそめにも再び野望をもてあそぶということがあるならば、断じてこれは許すことができないと思う。この点について、佐藤総理はこのような危険性を阻止するためにいかなる措置をおとりになる決意を持っておられるのか、この点を伺いたいと思います。
  426. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん明確なお話のように聞き取れたのですが、どうも私は、非常な論理の飛躍があるようにお見受けいたしました。別に岡田さんの説を私が批評するわけでもありません。お尋ねですからそれに答えるのがいいかと思いますが、非常な論理的飛躍がある、これだけは訂正されたがいいように思います。私がただいま言うように、いまの自衛隊自身、いわゆる非常事態の名のもとにいいかげんなことはしておりません、はっきり申し上げておきます。
  427. 岡田春夫

    岡田委員 そういうことはありませんとおっしゃいましたね。私はそれは了解できないです。私は、そのためにここで新しい資料を発表したいと思います。それは、先ほど申し上げました三矢研究の前段、基礎研究と称されるもの、この基礎研究は第一分冊に入っております。四項目であります。そのナンバー4の対米関係の事項を中心に発表したいと思います。それは自衛隊が持っているきわめて危険な本質を明らかにしていると私は考えます。その自衛隊の危険な本質とは、まず第一点は侵略的な性格、第二は対米従属の性格、第三は反動性、反動性はことばを変えて言うならば専制支配性と言ってもいいと思います。  まず第一点、自衛隊の侵略性について具体的な例をあげたいと思います。お手元に配付をいたしました資料の中で、参考資料の(1)というのがございます。「核兵器使用について」、これの三ページをごらんください。  第一、この文書の中で、侵略性を私は三つに規定したいと思いますが、第一は、千島、樺太、北朝鮮に対する占領の事実が明文上明らかになっている。第二、中ソ、北朝鮮などを仮想敵国として、敵基地に対する爆撃。第三、アメリカ核兵器の持ち込みは言うまでもなく、アメリカ核兵器の使用についても明記をいたしております。  ここで一言申し上げておきたいのは、この文章を見ますと、この行動をとっているものがアメリカであるか日本軍であるかということは、文章上明確に書いてございません。しかし、先ほどの田中証言を中心に考えますと、主として攻勢面は米軍、そして攻勢面の一部を担当して日本軍も参加するということでございますので、米日両軍がこのような行動を行なうと考えるべきであります。  第一の点は、三ページの2をごらんください。カッコの中が本文の引用であります。「敵を海外に追撃し、千島、樺太等の一部の地域に限定して占領を企図する場合、この場合は、日本側は海外派兵問題が解決しない限り困難であり、主として米軍が担任するところとなろう。進攻地域は、千島列島、樺太の南半部等わが国防衛に直接脅威を与える地域に限定することが望ましい。」一七ページ、一八ページ。また、3には北朝鮮、千島、樺太、4にも同様に書いてあります。四ページ、「敵基地への爆撃について」、時間がありませんので、要点だけ読みます。四行目、「したがって海空作戦においては、敵の海空基地を攻撃することは、目的達成のためやむをえない作戦であると思われるが、この場合は主として「米軍の担任するところとなり、全面戦誘発の危険性を内蔵する。ただし反撃作戦目的を達成するため日本防衛に直接関係ある海空軍事基地に限定して、作戦する場合は、全面戦への発展の回避しうる可能性もあろう。」一八ページ。三、核使用について。核使用については本文の引用が長いですから、二ページ目に要約をしてあります。又アメリカ核兵器日本からの使用について)(1)全面戦へ発展せぬかぎり、核兵器の使用は認める。(2)核威嚇は最大限に利用すべきである。従って、核兵器持込みは、わが国の国是国民感情に反しても認める。(3)一定の場合、核兵器の先制攻撃は認めるが、これは消極的限定使用によるべきである。(4)核報復攻撃は当然行う。(5)戦略的核使用は出来るかぎり避けるべきである。」ということが書かれております。  私は、基礎研究の4にこのような内容が書かれているという事実を小泉防衛庁長官に伺いたいと思いますが、この事実はもし御存じなければ、海原防衛局長でもけっこうでありますけれども、御答弁を願いたい。
  428. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 三矢図上研究文書の中には、いろいろなことがたくさん書かれておりますけれども、それは従来申し上げましたとおり、一幕僚研究でございまして、日本国民の中にもいろいろな考え方を持っておる者がありますように、やはり幕僚研究の中にもいろいろな考え方が存在をするのでございます。それを取捨選択をし、防衛庁の正式見解として決定したものではございませんで、ただ単なる個人の研究、メモというものをそのままとじてあるだけでございますので、私どもはこれは防衛庁の正式見解でないということを常に申し上げ、またそういう幕僚研究に、さらに結論を求めて統一したこともないのでございます。
  429. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはそうおっしゃるけれども、この間、研究の要約があるということまで言ったじゃないですか。そのページは一四二ページだと言ったじゃないですか。あなたはその研究が単なる幕僚研究であるなんて、知らない者に言っているならそれでも通るかもしれませんよ。私、知っていますからね。持っているから言っているのですよ。あなた、この事実があるのをお認めになるのですか、どうなんですか。あるのですか、ないのですか。
  430. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 文書の中にありましても、それは取捨選択、決定をしたものではないということでございます。
  431. 岡田春夫

    岡田委員 文書の中にあるのですかと聞いているのです。あなたは知らなければ、梅原さん、お答えなさい。知らないのでしょう。知らないからわからない、答弁できない。
  432. 海原治

    ○海原政府委員 ただいま先生が要約されました要約のしかたに問題があるわけでございます。その例を申し上げてみますと、特に、いまお読みになりました二ページの「核威嚇は最大限に利用すべきである。従って、核兵器持込みは、わが国の国是国民感情に反しても認める。」こう要約されておりますが、その前のページを見ますと、「全面戦への発展の危険性、わが国の国是、国民感情等から、米軍の核使用は、なしうるかぎり、回避することが望ましい。」こうはっきり書いてあるわけです。このように書いてあるものを先生の場合には、国是、国民感情に反しても認める、こうなりますところに問題があると思います。したがいまして、先ほど大臣からも申されましたように、一々この字句を詳細に当たりませんと申し上げられませんが、先日来申し上げておりますように、いろいろとことばの使い方なり表現の方法なりにつたないところがございますので、見方によっては非常に間違った解釈になるおそれもあるということは、大臣からも私からも例をあげて申し上げておることでございますので、ひとつその点を御了承願いたいと思います。
  433. 岡田春夫

    岡田委員 あなたは、核使用の問題で例を要約の点で御答弁になりました。それじゃ、最初に読みました、千島、樺太、北朝鮮の占領について、これは原文そのものを、私は2を読んだのでございますが、これは違いますか。こういう事実はあるでしょうページ数まで書いてあります、一七、一八。
  434. 海原治

    ○海原政府委員 この問題は、冒頭、岡田先生も、原文を読むと、その行動が日本自衛隊によって行なわれるものであるか、あるいは米軍によって行なわれるものであるかわからない、こういうおことばがございましたように、この全部を読んでまいりますと、能力的に申しましても、朝鮮に対して自衛隊が出るはずはございません。このことは、解釈問題を通り越しまして、実体問題としてあり得ないわけであります。千島につきましても、ここに、「米軍が担任するところとなろう。」とあります。ただ、その前に、「主として」とございます。そうすると、副ということばがあるのじゃないかということになりますが、じゃ、その副の場合は何があるのかというようなことになりますと、これは問題はわかりません。こういう点がきわめて未熟であるということを申し上げておる次第でございます。
  435. 岡田春夫

    岡田委員 その事実はあるのですか、ないのですか、それを伺っているのです。あなたの解釈を伺っているのじゃない。これが書いてあるのかないのかということを伺っている。一七ページ、一八ページに書いてある。
  436. 海原治

    ○海原政府委員 私、先般申し上げましたように、全文を通読いたしましたが、各ページにつきましての記載は、これは覚えておりません。ただここに書いてあるような事項が答案の中に入っていることは事実でございます。
  437. 岡田春夫

    岡田委員 それでは海原さん、二回目に資料を全文配付してありますから、あとで読んでください。時間がまだ十七分ありますから、次をやります。第二は、自衛隊の本質の対米従属性の問題、これは基礎研究の4の第2に、「情勢の緊迫に応じ、とるべき統幕、在日米軍司令部相互間の連けいの在り方」及び第4に明記されております。  その中心は、第一は統幕と在日米軍司令部間の作戦調整所の開設です。第二、米太平洋軍、防衛庁間の調整機構の確立、この二つが明文上明らかになっております。これはお手元に配付しております参考資料の(2)をごらんください。これは日米統合作戦司令部の設置に該当すべきものであります。  第一の作戦調整所は、安保第五条発動前に日米阿部隊の作戦を調整する目的で東京の米軍施設内に設け、緊迫の程度を四段階に分け、統幕から派遣人員を定める。作戦調整所に付置すべき機構は、これの二ページに書いてある。二ページの(8)に日米合同広報局、地図海図資料室、捕虜収容所尋問班、ろ獲文書器材調査班、対情報中央資料室、情報展示室、通信暗号室、このようなものがつくられることになっております。  調整事項のおもなものは、これはたいへん長くなりますから省略をいたしますけれども、要点だけ言いましょう。  一ページに、情報関係として、たとえば(イ)に、航空写真撮影を含む偵察の調整、(ロ)作戦関係として、日米両軍の作戦準備、警戒措置、兵力展開、作戦方針、協同作戦、このようなことが書かれておる。また、広報活動と報道検閲——報道統制です。軍事地帯、戦闘地帯の設定などについても作戦調整所で調整することになっています。  また、アメリカ太平洋軍と防衛庁との調整機構は二ページ、三ページに書いてある。この点は、米太平洋軍と防衛庁との調整機構、その下に、統幕と在日米軍司令部の間の調整機構、第三は、各自衛隊と在日米軍三軍間の調整機構、これが明確になっておる。ここで重要なことは、日本防衛庁アメリカ・ペンタゴンの一ブランチである太平洋軍とが同格に置かれておることだ。そしてその下に統幕と在日米軍司令部、各自衛隊と在日米三軍との縦の関係が確立されている。これは統合作戦司令部であるということを明らかにしておる。また、この縦の関係では、アメリカの本国のペンタゴン、すなわちアメリカ国防総省並びにその上にアメリカの大統領があることを意味する。アメリカ大統領、アメリカ国防総省の独自性と優位性が確立されている。三矢研究自衛隊の手によってこのような機構を起草しているものである限り、これは明らかに自衛隊の対米従属性を明らかにしているものである。しかもこの作戦調整所は、フライイングドラゴン計画の中にも明記されている。だからこれは仮定ではない。このような事実が、基礎研究の4に書かれているという事実を小泉さんは御存じですか。
  438. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 ただいま岡田委員が読み上げられたことは、先ほどから申しますとおり、一幕僚研究想定でございまして、一つもそういう機関は実在をいたしておらないのであります。また、安保条約第五条発動の場合といえども、そういう機関を置くというようなことは、何ら決定もいたしておりません。  対米従属であるというおことばがございましたが、私どもは対米従属であるとは考えておりません。いわゆる日米共同して外敵に当たるのでございますので、対等の立場にあって防衛をするということに考えておるのであります。
  439. 岡田春夫

    岡田委員 小泉さん、防衛庁長官アメリカ太平洋軍司令官が同格で、対等である。その上にアメリカ国防総省の長官がいる、その上にアメリカ大統領がいる。これがどこに対等ですか。どういうように対等なんですか。
  440. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 そういう事実はないと申し上げているのでありまして、われわれはあくまでもそういうことでなくて、日米共同して外敵に当たる、いわゆる対等の立場にあって国の防衛をするという考え方をいたしておるのでございます。
  441. 岡田春夫

    岡田委員 じゃ、もう一点伺います。そのような機構がフライイングドラゴンの中に書かれている。これは仮定じゃないですよ。事実ですよ。あなたはそれを知らないんでしょう。フライイングドラゴンの別紙Cに書いてある。はっきりしていますよ。あなたは知らないんでしょう。
  442. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 フライイングドラゴンは協定でもなく、計画でもなく、在日米軍とわが自衛隊との幕僚の平素の意思の疎通、研究の交換のメモであります。
  443. 岡田春夫

    岡田委員 あなたはほんとうにそういつまでもおっしゃるのですか。フライイングドラゴンを出しますか。一九六四年四月六日日付ですよ。その文書の発令者はだれですか。あなたは御存じないでしょう。海原さん、文書の発令者はだれですか。一九六四年の四月六日付統幕3の、さっき言った登第三九の甲の二八の文書の発令者はだれですか。
  444. 海原治

    ○海原政府委員 この文書番号の文書と申しますのは、先ほど大臣からお答えしましたように、幕僚研究のメモでございます。したがいまして、その書式には発翰者というものはございません。相手の米軍と統幕との間で、だれが一応の担当者になってそういうメモをつくったかということが書いてあるだけでございます。
  445. 岡田春夫

    岡田委員 防衛庁統幕会議と在日米軍司令部が発翰者になっているという事実ですね。
  446. 海原治

    ○海原政府委員 その第一ページの右の肩にそういうことが書いてありますのは、その両者の間のメモだという意味でございます。先ほど先生が発翰者はだれか、こういう御質問でございましたので、そういうメモには発翰者はないということをお答えしたわけでございます。
  447. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ右肩に書いてあるこの二つの機関からこういう計画をつくれという指針が出されているわけですね。
  448. 海原治

    ○海原政府委員 そのような指針は出されておりません。
  449. 岡田春夫

    岡田委員 題目は指針じゃございませんか。違いますか。
  450. 海原治

    ○海原政府委員 特定の文書内容について、いろいろとことばについてのお尋ねでございますが、これは先生も御存じのように、なかなかむずかしいことばが使ってございます。プランニングということばを計画と訳したり、ディレクティブということばを指針と書いたり、日本語としてはこれもきわめてまずうございます。これは決して指針的なものではございません。先ほど大臣からもお答えいたしましたように、某年度におきますところの幕僚研究についてこうしようじゃないかということのメモでございますから、ひとつこれはそのように御了解願います。
  451. 岡田春夫

    岡田委員 あなたははっきり言わないけれども、われわれは大体わかった。在日米軍司令部と防衛庁統幕会議が出したものである。そういうものに基づいてフライイングドラゴンの計画が進められている。これは明らかです。それは否定できないでしょう。しかし、それはいいですよ、あとでまたやりますから。時間がありませんから、次に進みます。第三の自衛隊の本質、これはいわゆる反動性、別に言うならば専制支配制と言ってもいい点です。これは4ではありません。基礎研究1の別紙にあります。あなたのお手元に配付してあります参考資料の(3)にあります。これは総理大臣、よくお聞きください。国家総動員体制が事実においてつくられている。これは「基礎研究1によれば、「非常事態措置諸法令の研究」として、一覧表がつくられ、「大東亜戦争当時」の国家総動員諸法令に照応する諸法令が具体的に明記されている。」その項目は、「国家総動員対策の確立」「政府機関の臨戦化」「戦力増強の達成」「人的動員」「物的動員」「官民による国内防衛態勢の確立」という項目がつくられている。  そしてその内容は、これは私が整理したんですが、三つに分けております。  戦時国家体制の確立のために「国家非常事態宣言」「戒厳」、戒厳令です。「特別情報庁」「臨時防衛特別会計」これは臨軍費です。こういうことまで書いてあります。(2)国内弾圧態勢として「ストライキ制限」「国防秘密保護」「軍事機密保護」「防衛司法制度」軍法会議です。「特別刑罰設定」軍刑法。動員態勢として「一般労務徴用」「強制服役」その他が書かれております。  これは明らかに国家総動員体制を明確に指向したものであります。この事実は否定できないと思いますが、総理大臣、このような事実についてどのようにお考えになりますか。
  452. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどからお話を伺っておりましたが、図上作戦も解釈によってはいろいろむずかしくなるものだ、かような感じを私は受けました。先ほど来言われる、いわゆる自衛隊アメリカ従属性であるとか、あるいはその反動性であるとか、あるいはその侵略性であるとか、かように三つに分けて、いろいろ文書からこの結論を引き出そうとしていらっしゃるようです。しかし、これはその文書がいかようにあろうとも、私どもは現在の自衛隊が、非常に困難な状態のもとにおいても、わが国の安全確保のために、非常にむずかしい仕事に従事しておる、むしろ感謝もし、またこれに心から同情しているのが国民大多数の意見であります。  そういう際に、岡田さんのように、これをあげて非難されるけれども、私は国民は必ず私の言うことを信じ、また私の言うことに共鳴する、私はかように考えております。したがって、岡田さんも先ほど来のような自衛隊の攻撃はもうおよしになったらいいだろう。このことは国民自身がきめることだ、かように私は思います。
  453. 岡田春夫

    岡田委員 国民自身がきめるというのは、国会の議論の中でそれを判断するのは国民であるということです。おやめになったほうがいいですとは何ですか。私は事実を明らかにしている。あなたのほうの防衛庁でつくった事実を明らかにしている。私がつくったんじゃないですよ。小泉さんの配下がつくったんですよ。
  454. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もうこれ以上、あまりあなたと議論するつもりはございません。
  455. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、あなたは議論なさらないなら、もう一つ言いましょう。三矢研究はあくまでも架空の想定に基づくものではない。その証拠として、二月一日付実施計画、先ほど配付した「実施計画」の一四ページをごらんください。その別紙第3の「状況下の研究開始時における想定」をごらんください。この中のアジア情勢はあまりにも今日の情勢そのままである。要点だけ読んでみましょう。「(1)中共の食糧事情は予想外に好転しつつあり、またその軍事力は中ソ対立による援助の低下にもかかわらず、相当程度の作戦に応じ得る態勢にある模様である。」あと省略して「イ、一月上旬から南ベトナムにおけるベトコンの攻撃が本格化し、逐次その勢力圏を拡大しつつある。」「口、一月下旬、英領北ボルネオにおいて、マレーシア連邦結成に反対する勢力の反乱とこれに対するインドネシヤ軍の策応の動きがあり、英国は急遽本国から約二千名の戦略陸軍を英極東軍に派遣してこれを未然に防止した。」もうほとんど同じである。
  456. 青木正

    青木委員長 岡田君、御注意申し上げます。持ち時間はあと三分ですから。
  457. 岡田春夫

    岡田委員 あと三分。わかっています。  そのあとは、韓国の情勢についても書いてある。韓国の情勢は昭和三十八年の情勢ですから、憲法改正国民投票の問題が書いてあります。しかし、これに対して韓国の内部における不満が激化しているということが明確に書かれております。こういう想定が出されている。この南ベトナム、マレーシア、韓国の情勢、中国の情勢、こういう情勢は、今日のアジア情勢と全く同じである。ほとんど同じである。その情勢に基づいてこの三矢研究なるものがやられたということなら、これは仮定ではないです。もしこのような情勢が一歩発展をして、アジア全域に戦局が発展をして、朝鮮の三十八度線に火がついたというような場合においては、この三矢研究なるものは実戦のための計画として実行される問題である。私たちは、だからこれを黙視できない。防衛計画の不可分の一環としてこのようなものがつくられているというこの事実をわれわれは忘れてはならない。三矢研究は単なる仮定の問題ではありません。幕僚研究ではない。作戦のための研究計画である。防衛計画と不可分の問題である。アジアの今日の情勢に対応するものである。あなた、笑いごとじゃないのですよ。あなたの時期に日本の国が再び東条と同じような情勢にはまっても笑っておられますか。自民党諸君だって、自分の問題ですよ。社会党だけの問題ではないですよ、これは。あなた方の問題だ。(発言する者多し)このときに日本の動き方がどうなっても……(発言する者多し)考えてごらんなさい。これは社会党だけの問題ではないのです。自民党を含めた日本の全国民の問題です。だから三矢計画について、あなたはもっと真剣に答弁しなければだめです。  私はあらためて要求をします。総理大臣要求をしますが、三矢研究原文資料を直ちに提出をしていただきたい。私は、あなたのほうで出さない限り逐次発表していきます。  それから委員長にちょっとお願いしておきますが、——委員長資料の問題について、——委員長、これで終わりますから。資料提出を求めます。同時に、私が提出をいたしました資料は、速記録に掲載される——これは前例に基づいて掲載されるようお願いいたします。
  458. 青木正

    青木委員長 岡田君、時間が参りました。本日は、これにて散会いたします。   午後十時三十三分散会