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佐藤内閣総理大臣 私は別に
矛盾しているとは思いません。思いませんが、ただいま誤解のないように願いたいと思いますのは、
河野さんはそのほうの専門家だからよく御
承知のことと思いますけれ
ども、いわゆる
医療保険、これは
医療保険制度でスタートしておるが、行く行くはそれが
医療保障の
制度になるべきじゃないか。いまその例として、金持ちと貧乏人、その間で薬剤費の一部負担というよう問題を提起しておるじゃないか、かような点から、どうも筋が少し違いはしないか、かような御指摘のようにただいまの御
議論を聞いたわけであります。確かに現行の
制度そのものが、いわゆる
医療保障制度というものにはなっておらない、これがしばしばいわれておることだと思いますが、いわゆる
保険料でまかなうのか、あるいは
国民の税金でまかなうのか、そういうところへいくと思います。現在の
日本のたてまえからいうと、これは患者の
保険料、そういうたてまえのほうがわかりいいんじゃないか。もう少し高度に国家が発達してきまして、そうして何もかもみんな税でまかなう、こういう
事態になれば、
医療保障制度の完璧を期することはできるかもわかりません。しかし現状においては、やはり
医療保険制度でいくんだ、この基本は、いろいろな
議論があるだろうと思いますけれ
ども、現状においてはこれはやむを得ないんじゃないか、私はかように
考えます。その
医療保険制度のたてまえに立って、そうして今日の薬剤費の一部負担、こういう問題を見ました際に、この
医療保険の
制度におきましても、非常に
議論されたもののうちにいわゆる医薬の分業の問題があったと思います。もうすでに
議論の時期ではなくなって、医薬分業は確定した、かようにいわれておるのですが、しかし実際は、必ずしも医薬分業が守られておるような状態だとは私は見ません。これは私がしろうとであるから、そういう点においてやや知識を欠いておるのかもわかりませんが、率直に申しまして、私は医薬分業がまだ完璧だとは言い得ぬのじゃないだろうか。かような状態でただいまの
医療保険制度を見ますと、陥りやすいものが乱診乱療、こういうことになるんだろう。そこらにたいへん最近の薬の発達等もありまして、医薬費は非常にかさんできておる、かように私は認めざるを得ないと思うのです。ただ、いま言われるごとく、金持ちは金にあかす、貧乏人は薬と選択して非常に限定される、こういうことで非常にまずいじゃないか、こういう非難も確かに当たろうかと思いますが、保険
制度そのものから見まして、いまのような診療あるいは投薬の方法を予定しないで保険
制度をつくった、こうすると、これが赤字にならざるを得ないんじゃないだろうか、かように思います。今回問題を起こしておる九・五%の改良の問題にいたしましても、やはり基本的にはこういう点にかかってくるんじゃないだろうか。だからこそ
官房長官と七団体との
話し合いというものが基本に触れておるのだ。先ほどの
大原委員に
お答えしたのはまことに簡単でございましたが、そういう感じを持つのであります。私は、こういう点をぜひとも今後は改めていただきたい。ただお医者さんのほうの立場も、薬が自由に使えるものと薬の使えないものがある、これが技術料の面でこのお医者さんの、診療側の利益を十分確保できれば別でございますが、ただいまのように、技術料についてはなかなかこれが診療側の
意見どおりにもならない、そういうような状態で他のほうに流れて、そして利益を確保しておる。しかしながら、お医者さんといっても、たとえば簡単な産婦人科であるとか、あるいはその他にもそういうものがあるだろうと思いますが、特殊なもので、薬はそうたくさん使えない、これは純技術料だ、こういうようなものもある、こういうふうに思います。たいへんこまかな話をして恐縮ですが、そういうような
事柄が十分
考えられなくて、むずかしい問題で、いざ困ればそれは全部
政府の責任だ、そこで
政府の
予算的
措置を要望される、こういうことではなかなかやっていけないんじゃないだろうか、今日非常な問題を起こしておりますのも、結局そういう支払い側あるいは診療側、受け取り側等の立場が利害相反しておる。そういう場合に、問題の解決をしないで、これは全部
政府の
予算的
措置でしろ、こういうような結果になっておりますが、大筋から申せば、現在はとにかく
医療保険制度だ、そのたてまえに立って、いかにあるべきかということをもっと掘り下げてみる必要があるだろう。さらにまた、各組合間でそれぞれの事情がみな違っておりますから、その組合間の保険
制度にいたしましても、現状のままで推移することはいかがと思う。それと、やはりこういうものも全体として
考えていく。先ほど来基本的に
人間尊重の立場に立って、憲法二十五条をお振りかざしになりましても、われわれはその方向で努力しているということで説明するだけでありますが、具体的には、ただいま申し上げるような
実情をもっと把握し、その
実情に沿っての対策を立てていって、そして完全な
医療保険制度をつくる。将来また財政的に高度国家ができれば、さらにそれも
社会保障全般の一環としての
医療保障制度、こういうことになっていけばたいへんけっこうなことだが、まだまだそういう状態をいま口にするのは非常に早い、かように私は思うのでありまして、将来の理想はそういう大きなところに置くといたしましても、現状はむしろ一歩後退、二歩前進を期待する、こういうようなのがいまの
実情ではないか。ただいまの改正な
ども、そういう
意味で、あれは非常に後退だ、かような非難を受けますがこれは、やはりただいま申し上げましたように、本来のその
制度を強固にする、そういうたてまえで
考えるべき時期にきておるのじゃないか、かように私は思います。