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1965-04-27 第48回国会 衆議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    三月三十一日  次の委員会開会要求書が提出された。     予算委員会開会要求書  懸案事項並びにアジア情勢の危機に関して、審  議を致したく、速やかに委員会開会致された  く、衆議院規則第六十七条第二項の規定によ  り、左記連名により要求します。   昭和四十年三月三十一日  予算委員長 青木正殿   予算委員       川俣 清音     加藤 清二       辻原 弘市     石田 宥全       石橋 政嗣     大原  亨       岡田 春夫     片島  港       高田 富之     中井徳次郎       中澤 茂一     永井勝次郎       野原  覺     山花 秀雄       横路 節雄     今澄  勇       佐々木良作     永末 英一 ――――――――――――――――――――― 昭和四十年四月二十七日(火曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 青木 正君    理事 赤澤 正道君 理事 稻葉  修君    理事 小川 半次君 理事 二階堂 進君    理事 古川 丈吉君 理事 加藤 清二君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       荒舩清十郎君    井出一太郎君       井村 重雄君    今松 治郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    重政 誠之君       正示啓次郎君    登坂重次郎君       西村 直己君    野田 卯一君       古井 喜實君    松野 頼三君       水田三喜男君    石田 宥全君       石橋 政嗣君    大原  亨君       岡田 春夫君    片島  港君       河野  正君    高田 富之君       中井徳次郎君    中澤 茂一君       永井勝次郎君    野原  覺君       山田 長司君    山花 秀雄君       横路 節雄君    佐々木良作君       永末 英一君    吉田 賢一君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         厚 生 大 臣 神田  博君         国 務 大 臣 吉武 恵市君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         警  視  監         (警察庁長官官         房長)     浜中 英二君         防衛庁参事官         (衛生局長)  高部 益男君         法務政務次官  大坪 保雄君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         検     事         (訟務局長)  青木 義人君         大蔵事務官         (主計局次長) 中尾 博之君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  坂元貞一郎君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      宮本  惇君         郵政事務官         (人事局長)  曾山 克巳君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    加治木俊道君         大蔵事務官         (主計局長)  谷村  裕君         専  門  員 大沢  実君     ――――――――――――― 三月四日  委員高田富之君及び玉置一徳辞任につき、そ  の補欠として松原喜之次君及び佐々木良作君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員松原喜之次辞任につき、その補欠として  高田富之君が議長指名委員に選任された。 同月五日  委員登坂重次郎辞任につき、その補欠として  福田赳夫君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員高田富之辞任につき、その補欠として松  原喜之次君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松原喜之次辞任につき、その補欠として  高田富之君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員高田富之辞任につき、その補欠として松  原喜之次君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松原喜之次辞任につき、その補欠として  高田富之君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員高田富之辞任につき、その補欠として松  原喜之次君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松原喜之次辞任につき、その補欠として  高田富之君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員片島港君辞任につきその補欠として阪上安  太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員阪上安太郎辞任につき、その補欠として  片島港君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員井村重雄君、上林榮吉君、仮谷忠男君、  正示啓次郎君、中野四郎君及び八木徹雄辞任  につきその補欠として大橋武夫君、保科善四郎  君、加藤高藏君、福田一君、前尾繁三郎君及び  前田正男君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員片島港君辞任につき、その補欠として小松  幹君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小松幹辞任につき、その補欠として片島  港君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員片島港君辞任につき、その補欠として多賀  谷真稔君が議長指名委員に選任された。 同日  委員賀谷真稔辞任につき、その補欠として  片島港君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員福田一辞任につき、その補欠として中村  梅吉君が議長指名委員に選任された。 四月二十六日  委員大橋武夫君、加藤高藏君、中村梅吉君、福  田赳夫君、保科善四郎君、前尾繁三郎君、前田  正男君、佐々木良作君及び加藤進辞任につ  きその補欠として井村重雄君、仮谷忠男君、正  示啓次郎君、登坂重次郎君、上林榮吉君、八  木徹雄君、中野四郎君、春日一幸君及び川上貫  一君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員石田宥全君片島港君及び春日一幸辞任  につき、その補欠として河野正君、山田長司君  及び吉田賢一君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員河野正君、山田長司君及び吉田賢一辞任  につきその補欠として石田宥全君片島港君及  び佐々木良作君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員井村重雄君、上林榮吉君、仮谷忠男君、  正示啓次郎君、登坂重次郎君、中野四郎君、八  木徹雄君及び川上貫一辞任につき、その補  欠として大橋武夫君、保科善四郎君、加藤高藏  君、中村梅吉君、福田赳夫君、前田正男君、前  尾繁三郎君及び加藤進君が議長指名委員に  選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  予算実施状況に関する件      ――――◇―――――
  2. 青木正

    青木委員長 これより会議を開きます。  先般日本社会党及び民主社会党より正規に予算委員会開会要求いたされておりましたが、昨日の理事会協議の結果、本日、予算実施状況に関する件、特に医療問題及び綱紀粛正の問題について調査を進めることになりましたので、御了承願います。これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。なお、各質疑者の持ち時間はおのおの一時間半でありますから、あらかじめ御了承願います。  大原亨君。
  3. 大原亨

    大原委員 私は、委員長からお話がありましたように、本日は、非常に、重大な事態になっております医療問題を中心といたしまして、総理大臣関係大臣所信をただしたいと存じます。その質問に入ります前に、これらの問題を処理するために重大な関係がある若干の点につきまして総理大臣に御伺いいたします。その一つは、佐藤総理の手による内閣改造でありますが、内閣改造を近く行なうというふうに世間では考えておるし、言っておるわけでございますが、一体いつ内閣改造をおやりになりますか。ひとつ総理大臣考えをお聞きいたします。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ内閣改造について御心配をいただいておるようでございますが、私のところにもいろいろの意見を述べる方がございます。私はまだ決心をしてはおりません。ただいま各方面の御意見をそのまま伺って、それに対して、イエスもノーも、またその時期などについても何にも申し上げてはおらないはずでございます。ただいま、そういう点については、私自身、いまお話がございましたが、せっかくのお尋ねでございますが、そういうことはお答えをできない、かように御了承いただきたいと思います。
  5. 大原亨

    大原委員 私が内閣改造の時期について質問するのは、後に質問することと深い関係があるからお伺いいたしておるわけでありますから、できるだけ国民の前に質疑応答を通じてあなたの気持ちをはっきりさしていただきたいと思うのであります。つまり、会期延長が行なわれますると参議院選挙前に内閣改造ができないだろう、こういう話もあるわけであります。そういう時間的な制約があるわけですが、特にもう一つの問題は、会期延長を、地主報償の問題でやはりこれが強行突破をはかるためにやるのじゃないかという話もあるわけであります。地主報償の問題は、私は、農林大臣の御出席をいただいて、あの人が旅先でいろいろ談話を発表しておりましたので、それがかんにさわりましたからお聞きいたしたいと思っていたのですが、このように医療問題が非常に微妙になっているときに、千四百六十億円もの国費を使って、前向きの営農費とか農業の基盤整備などにどんどん投入するというならばいいけれども党利党略のためにこういう法案強行突破するということはいかがなものであるか、こういう点につきましてもう少し虚心たんかいに総理大臣の御見解を明らかにしてもらいたい。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国会の御審議はただいま衆参両院におきまして、熱心にいただいておるのでございます。ただいま言われますごとく、会期を延長すれば選挙にも関係がすぐ出てくる、一体その点を政府はどう考えるかというお尋ねでございます。私は、ただいまの状況のもとにおきまして、ただいま会期延長という必要はあるかどうか、まだ結論を出しておりません。問題は、政府がぜひとも成立を期待して法案を提出いたしましたこの国会のあらゆる法案、そういうものにつきまして、その審議経過等を見まして、しかる後にきめるべきだ、かように私考えておりますので、せっかくのお尋ねでございますが、ただいまの段階で、会期延長だとかどうこういうことに触れる前に、ぜひとも国会におきまして本来の職責を果たしていただきたい、どうか十分御審議を尽くして、そして法案成立に御協力願いたい、この考えでいっぱいでございます。  ただいま旧地主に対する農地報償制度についてのお尋ねでございますが、これなどは、党利党略だと言われますけれども、私が本会議でその趣旨をはっきりいたしましたように、これは今回の問題ではございません。もう長い研究の期間経過いたしたのでございまして、たまたま今度参議院選挙がある、その前にこの法案成立するような段階になっておる、ただそれだけで、これは党利党略だときめてしまうのはいかがかと思います。私が申し上げておりますように、本会議等趣旨を声明しておりますごとく、今回のこの農地報償制度そのものは、御承知のように、農地改革に対しての地主方々協力を多として、国民がそういう意味で何らかの報償考えてしかるべきではないだろうか。あの制度は、私が申し上げるまでもなく、日本民主化、これにたいへん貢献した改革だと思います。通常の状況のもとにおいてはかような改革は容易にできるものではない。私は、あの改革がほんとによくできた、血を流すというような悲惨事を起こさないで、そうして平穏裏にあれだけの改革ができ、そうしてわが国の民主化ができ、また今日の経済発展基盤ができた、かように考えまして、たいへん旧地主方々のこれに対する御協力、これは私どもが確かに感謝の意をあらわしてもしかるべきじゃないだろうか、かように私は思います。もちろん、当時、強制買収についての買収価格、これは適法であり、最高裁の判決等もありましたけれども、そういうものでございますが、私はこれを党利党略だと言われることはたいへんに残念に思います。とにかく、あの制度に旧地主協力はした、同時に、しかしながら心理的には非常な影響をこうむった、この事実は見のがすことができない、私かように思いますので、これは、ただいまのお尋ねの中に引用された本筋のお尋ねではないと思いますけれども、同時に私ども所信を明らかにして、国民に対するわれわれの考え方も明確にいたしたい、かように思います。問題は、そういう事柄があり、会期延長、そういうことに関連するのではないか、かように言われますが、私は冒頭に申しましたように、重要法案が幾つも出ておりますが、これらのものが審議ができて、そうして成立を見れば、たいへん私どもけっこうだ、かように思いますので、最善の努力をいたすつもりでございます。
  7. 大原亨

    大原委員 私が御質問いたしたい点は、これに関連してもたくさんあるわけでございますが、私どもは、医療の問題をずっと予算委員会や各委員会を通じまして衆参両院議論をしてまいりましたが、やはり私は振り返ってみて、この点は総理大臣に率直な御意見をお伺いしたいと思うのですが、あなたは総理大臣になられたときに内閣を改造すべきじゃなかったか。予算委員会でいろいろ審議をいたしておりまして、約束をいたします、この約束議事録へ残っておりますから、佐藤内閣の責任で守っていただきますけれども、しかしながら、ようやく事に習熟した者がすぐかわっていくということや、あるいは大臣在任期間が少ない。特に社会開発を言っている佐藤内閣で、厚生大臣は非常に重職であるということは、経済企画庁の長官とともに最重の地位であるとあなたは発言しておられるわけです。結局は、在任期間が短いものですから、勉強が足りない、あるいは食い逃げをやる、結局下部の役人も、やはり大臣のどこを信頼してやっていいかわからぬものですから、迷う、事なかれ主義になる、あるいは判断を誤る、そういうふうな事態が次から次へと累積いたしておると、私は厚生行政医療財政でも考えるのであります、私は、そういう点から言って、やはり予算審議という前に、あなたは内閣改造直後に新陣容をもってやるべきじゃなかったか。しかし、もういまとなってはそういうこともできぬとするならば、これらの論議経過を振り返ってみて、すみやかに内閣改造をやって、そうして、七月になるというのと、五月すぐやるというのではだいぶん違うわけであります。特に厚生大臣については、御承知のように、国民からも非常な批判を受けている。一長一短あると思うけれども、大きな批判を受けている。特に医療保険の問題については大きなガンになっているわけであります。私は、そういう点で、総理大臣としてのそれらに対する所見を簡潔にひとつお答えをいただきたい。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお尋ねのうち、大部分が御意見のようでございますから、私は拝聴いたしましたが、御指摘のように、もともと国務大臣はその職に長くいることは望ましいこと、これは申すまでもございません。また、それに経験者がつくこと、これも望ましいことだと思います。神田厚生大臣はもうすでに二回も厚生大臣をしておられ、今回が三度目だと、私はかように拝承いたしておりますので、その意味では、期間の短いとか長いということ、有経験者であるという意味におきまして十分御信頼ができるのじゃないか、私はかように考えます。ただ、いまの状況のもとにおきまして、厚生大臣身分等につきましては、そうまではっきりは言われてはおりませんが、過日官房長官関係団体等との話し合いの席上でもこれらの問題が出ております。これは、全部私を信頼してひとつおまかせを願いたい、かように申しまして、私がただいま預かっておる、こういう状況でございます。その預かっておる時期が一体いつまでなのか、こういうような意味お尋ねがございますが、いましばらくお待ちをいただく、そうすれば、この問題も私の考え方が明確になっていくだろう、かように思います。
  9. 大原亨

    大原委員 逐次厚生大臣大蔵大臣関係大臣にはこまかな質問をいたしてまいりますが、その前に、総理大臣に大きな問題につきましてお聞きをいたしたいと思うのです。  総理大臣は、やはり内閣総理といたしまして、医療問題がこんなに大混乱におちいったのはなぜであるかということを真剣に考えてもらいたいと思うのです。あなたは、総裁立候補や組閣にあたりまして、社会開発人間尊重ということを言われて、少なくとも社会保障医療保障は大きな政策の柱であったわけであります。それが、いろいろな経過をたどりまして、厚生大臣職権告示をめぐりまして国民不満が爆発したのであります。三兆六千億円の今年度の予算を編成されるにあたって、八百二十億円の減税をやるのだと言われながら、事の理由、いろいろな問題はともかくといたしまして、職権告示ということで一方的に独裁的に九百五十一億の医療費が増大をする、そうしてそれに伴うて保険料を上げていく、あるいは薬代を負担させるということで、非常に大きな国民の反撃を受けたのであります。特にこの問題は違法であるということにつきましては、私どもは追及をいたしたわけですけれども、これが、今回職権告示効力停止決定東京地裁判決となってきたのであります。私は、これらの問題について総理大臣はいかなる考え方で善処しようとするのか、その心がまえにつきまして、現在の時点におけるひとつ決意を明らかにいたしてもらいたいと存じます。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あの当時職権告示をなぜしたか、こういうことにつきましては、毎回すでに当委員会等におきましてもその経過をよく御説明したはずでございます。政府といたしましては、当時の実情から見まして、この職権告示に踏み切らざるを得なかった。ただいま、これは違法だと、かように言われますが、私どもは違法だとは考えておりません。したがいまして、地裁決定に対しましても直ちに抗告をしておるというのが実情でございます。政府は、りっぱな処置であった、――やむを得ない処置であった、かように私ども考えておりますので、これは法廷において争う考えでございます。
  11. 大原亨

    大原委員 総理大臣答弁は、りっぱな措置であった、あるいはやむを得ざる措置であった、どっちが本意か、ひとつあとの答弁の機会にお答えいただきたいと思いますが、どっちが本意か。りっぱなことであったかどうか。そんなことを言ったら国民は怒りますよ。その点はひとつはっきりしてもらいたい。つまり、いまの医療保険医療行政は、国民不在保険行政であるというふうに言われている。私どもは、中央医療協議会のこの答申を無視いたしました職権告示につきまして、健康保険法精神や、あるいは中央医療協議会設置法の法文に即しまして、これは違法である、職権告示をすることは手続上も違法であるし、あるいは内容においても緊急性がないし、特に、遡及実施するなどというふうなことは、これは刑事罰不遡及の原則、憲法の精神から言っても不当である、利害関係者に多大の不利益や迷惑を与えていることは事実ですから、そういう点を指摘してきたわけです。この点は、普通の諮問機関とは異なって、関係者に多大の利害関係を及ぼすものでありますから、その構成利害関係者を代表する三者構成機関になっている。このことについては、当然あなたは尊重するというたてまえをたび重ねて言われたわけでございますが、今日まで国会議論を通じまして、私どもはそういう論議をいたしてきたのでございます。今回の東京地裁位野木判決は、私どもが言いましたことの正しさを、正当性を裏づけた、こういう結果になっておるわけであります。ただいまのあなたの御答弁では国民は納得できないのではないか。これから医療の問題は、一党派の問題ではなしにほんとうに国民的な立場で十分議論をしていかなければならぬ。こういうことについて国民が重大なる関心を持っておる。その要求気持ちに対してこたえるものではないのではないか。これは、こまかな議論は別にいたしまして、やはり大きな基本的な問題点でございますから、総理大臣はその点について国民が納骨できるような見解をこの際お示しをいただきたいと思うのであります。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま私が繰り返して申しましたように、前言を訂正いたしましたように、私は、職権告示はやむを得ない処置であった、百方手を尽くしたけれども、こういう処置に出ざるを得なかった、かような意味を申したのでございまして、したがって、それをめぐって訴訟が起きた、かように考えていいかと思います。そこで、ただいまの即時抗告をいたしましたことも、地裁決定に対して私ども不満である、かような意味即時抗告をいたしたわけであります。事柄は今日裁判にかかっておる問題でございますから、裁判手続を経て、そうしてその場におきまして政府所信を明確にする考え方でございます。もちろんここでいろいろ議論をいたしましても、それは法律論になりますから、結局裁判所で決定をいただく以外には方法はないと、かように思いますので、法廷政府所信々明確にしていく、かように御了承いただきたいと思います。
  13. 大原亨

    大原委員 法廷政府所信を明らかにしたいというふうにお話しなのですが、今日この問題は、各界各層や各種の機関において議論をされて、国会におきましても微に入り細にわたって相当の議論を積んできたわけであります。したがって、国権の最高機関である国会において内閣総理大臣がはっきりした見解を示すということは、私はこれは当然なさるべき義務ではないかと思うのであります。特に、東京地裁位野木判決効力停止決定がございましたが、その効力停止決定の際におきましても政府は主張する場面があったはずであります。その結果といたしまして効力停止の仮処分が出されまして、現在本訴が争われるというふうな段階でございまするけれども、私は、問題の解決は時日の遷延を許さないのではないか、これが実態に対する私ども認識であります。おくれればおくれるほど矛盾混乱拡大をするのではないか、こういう点に対する認識を欠いてはならぬと私は思うのです。  もう一つの点は、医療の問題は、これはお互い全国民の命と健康を守る問題ですから、たとえば労使の間におきましても妥結点が見出されるのであります。この問題について利害関係者話し合いが一致しないということはないはずであります。こういうふうにはめをはずして困難が拡大をし、矛盾がどんどん増大いたしまして、これからは現実に旧料金と新料金が、二つの料金が五月一日からは行なわれるということになるのです。一方は百円払って医者にかかるというのが、一方は四百円払ってかかるというふうな、そういう事態も出てくるのであります。盲腸の手術をいたしましても二、三千円違うというふうな事態が出てくるのであります。だから、言うなれば、この執行停止決定をめぐりまして、今後の、将来の問題をめぐりまして非常に大きな問題が出て、くることは、私は当然であると思っております。だから、本訴において堂々と争うというのならともかくといたしまして、私は、抗告をする、こういうふうなことは、これはいかなる見解であろうか、これは疑義を持つのであります。  その前に、私はその見解をただす前にずばりと一つ総理大臣にお聞きしたいと思うのですが、あなたはこの問題につきまして指揮権の発動をされますか。つまり、異議の申し立てをいたしまして効力無効の決定をたな上げにするか、ストップするか、そういう指揮権の発動をなさいますか。これは重大な問題ですから、あなたの心がまえがここに出てくると思いますので、あなたには御経験のあることでもありまするし、ひとつお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま政府即時抗告をいたしました。これは、政府考え方を端的にあらわしておるのでございます。この即時抗告で、地裁決定政府には不満だ、こういう意味即時抗告をいたしておるわけでございます。これで、先ほど来申し上げますように、法廷において政府所信を明確にして争っていくつもりでございます。したがいまして、ただいまのようなことは考えておりません。
  15. 大原亨

    大原委員 指揮権の発動、異議の申し立てば今後といえども考えていない、これは、政府の部内では今日議論をしている人があるわけですが、これをはっきり総理大臣は御答弁になったものというふうに私は理解をいたすわけであります。  そこで、もう一回、総理大臣には大まかな点をお尋ねするのですから……。つまり、旧料金と新料金が、抗告をされましてもやはり二つあるということになるわけであります。法律的な論争はあとからいたしますが、こういうことは、先ほど例をとって申し上げましたけれども医療を受ける国民の立場あるいは医療機関の立場から言いますると、あるいは保険財政を処理する当事者の立場から言いましても非常に大きな問題であります。その期間が一カ月、二カ月は続くわけであります。今回の効力停止決定も二カ月以上かかっておるわけですから、続くわけであります。そう想定できるわけであります、こんな大きな論争でありますから。少なくともそういう事態があるわけでございまするけれども、そういう事態に対してどういうふうに総理大臣としてはお考えになっておるのか、この点はくどいようですが、もう一回明らかにしてもらいたい。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど大原さんも、こういう事態が長く続けばあと取り返しがつかないことになるのだ、こういう考え方を述べられました。私も、政府側の立場におきましても、こういう状態が長く続くことは、これはたいへんだ、かように考えます。場合によりましては、なかなかあとへ返らない、取り返しのつかないような事態だ、かように考えます。その点は同様の結論だと思いますが、ただ、結果といたしまして期待されるものは、私どもとすれば、政府決定を有効なものとして、そうして全部がそれに右へならえというような仕組みでいってほしいと思いますし、また、大原さんはそこまでは言われないけれども、二つになってはいけないのだし、いまのような四団体が争っておるそれと同様のものを他のものにも及ぼせ、こういうお気持ちだろうかと思います。しかし、法律のたてまえ、また判決のたてまえ等から見ましても、この点は遺憾ながら他にまでは均霑しない、かように私ども考えておりますので、できるだけこういうような状態が長く続かないように裁判所におきましても善処されることを希望しておる次第でございます。
  17. 大原亨

    大原委員 それでは、総理大臣がその件に触れられましたので、いよいよ本論に入りたいと思うのですが、行政事件訴訟法の三十二条には、「処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する。」、「前項の規定は、執行停止決定又はこれを取り消す決定に準用する。」というふう一になっておるわけであります。  これは、厚生大臣お尋ねをするわけでございますが、第三者に対してその効力を有するということは、その立法の精神は行政の、画一性というたてまえから言いましても、これは当然全部の国民に及ぶ、保険関係の被保険者その他保険団体に及ぶ、こういうふうに解釈すべきであると思いますけれども、これに対してどういうふうにあなたはお考えになっておりますか。
  18. 神田博

    神田国務大臣 ただいまお尋ねがございましたことは、執行停止決定は当事者たる四組合のみに及ぶとの政府見解の根拠いかんと逆に聞いておられると思います。私どもはこのように考えております。東京地裁が行なった執行停止決定の効力については、決定の主文中に、「各申立人に対する関係において」「停止する」と述べておりすす。また、判断の中で、「取消判決において取り消されるのは、その立法行為たる性質を有する行政庁の行為のうち、当該行為の取り消しを求めている原告に対する部分のみであって行為一般が取り消されるべきではないと解すべきである」、こう述べておることから考えまして、この決定が四組合のみに効力を及ぼす前提で出されたものであることは疑いのないものだ、かように考えております。これに対して、行政事件訴訟法、いま例示されました第三十二条第二項において執行停止決定は第三者に対しても効力を有すると規定されておることから、四組合以外の健康保険組合、政府管掌健康保険、共済組合及び国民健康保険等医療保険全般に執行停止の効力が及ぶとする意見があるが、これはとるべきではない、かように考えております。しこうして、同法にいう第三者とは、本来訴訟制度がもっぱら当事者の権利救済を目的とする性格を持つものであることから、当事者の権利救済を法律的に確保するに必要な限度において考えられるものであり、それをこえて広く当事者と何らの法律関係に立たない者までも含むものと解すべきではない、すなわち、本件の場合、たとえば四組合からの診療報酬を受ける医療機関や療養費の支給を受ける組合員等については、これらに決定の効力を及ぼさなければ四組合が決定によって受けられる利益は無意味なものとなるから、これらの者は本決定の効力の及ぶ第三者となるが、四組合以外の組合や政府管掌健康保険、共済組合及び国民健康保険等の保険者や被保険者については、決定の効力を及ぼさなくても四組合の利益は何ら阻害されることはないから、これらの者は第三者に含まれず、決定の効力は及ばない、かように考えております。なお、このことは、今回の決定においても判断の中に明らかに述べられておることであります。
  19. 大原亨

    大原委員 第三者とは、厚生大臣、あなたは想定問答集をぺらぺらお読みになりましたけれども、今度はそれを離れて議論いたしましょう。これは具体的な問題で、第三者とは何をさすのですか。
  20. 神田博

    神田国務大臣 第三者とは、申すまでもなく、いわゆる四組合以外の者を第三者、こういうふうに考えております。
  21. 大原亨

    大原委員 その点は非常にはっきりいたしました。つまり、法律第三十二条の第三者に効力が及ぶという第三者とは、これは当事者以外の国民のことをいうのである、こういうふうに言われた。それはこれでおきます。  それで、さらに質問を続けますが、この判決は、判決のたてまえから言って、四組合に関する決定をした、こういうことは事の性質上私は理解するのであります。しかし、その決定が、いわゆる厚生大臣職権告示が違法である、そういう前提のもとにおける決定であることからも、その決定は、当然その決定精神から言って全部の保険に及ぶべきである、関係者に及ぶべきである。このことは、三十二条の精神から言っても、あなたのいまの御答弁から言いましても、これを否定する理由は私はないと思うのであります。その点につきましてひとつ御答弁いただきます。
  22. 神田博

    神田国務大臣 今回の決定がいまお述べになりましたような事由で出されたことについては、おっしゃるとおりと私も記憶いたしております。そこで、そういう決定があるから全部にひとつ対象として考えろという、これは政治的な問題でありますならばまた別でございますが(「行政の問題だよ」と呼ぶ者あり)私どもは、この地裁決定は間違っている、そこで即時抗告をいたしております。でございますから、そういうようなわけにはまいらない、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  23. 大原亨

    大原委員 東京地裁の今回の決定をめぐりまして、総理大臣が言われるように、政府が争うたのであります。その主張点が否定をされて、今回の効力停止決定になったのであります。普通、たとえば民事関係における労働関係等をとってみましても、第一組合、第二組合、第三組合あるといたしますか、そうすると、一つの組合との間における協定というものは、会社や当局というものは全部の従業員に及ぼすのであります。これは法律上のたてまえからそうなんであります。ましてや、事は行政権力の、行政行為の問題です。だから、行政の画一性とか公権力の均衡というふうな点から考えて、国民を差別するということはないじゃないですか。そうであるならば、三十二条の第三者、あなたが言われた当事者以外の第三者にも及ぶということでなければ、この決定というものは意味がなくなるじゃないですか。裁判所で争うこともさることながら、最高の議決機関国会において多大の混乱を巻き起こしているこの問題について、私は、もう少し国民が納得できる解釈をする責任があなたにはあると思うのでありますが、さらに具体的な御答弁要求いたしたいと思います。
  24. 神田博

    神田国務大臣 私先ほどからお答え申し上げておるように、政府といたしましては、この裁判所の判決に対して不服だと即時抗告いたしております。このたてまえから申し上げまして、それは、やはり地裁決定の限度においてとどむべきものである、こういう考え方でございまして、それを拡張してやるべきものではない、こういう考え方でございます。私どもお答え申し上げておることに御納得いかぬようでございますから、法律的見解でもございますから、政府委員から重ねて答弁させていただきます。
  25. 大原亨

    大原委員 厚生大臣、もう一回ひとつ。あとは専門的な議論を聞きますが、もう一回あなたがお答えいただきたいと思うのです。つまり、第三十二条は、第二項において、執行停止決定その他取り消しなども第三者に及ぶんだということを言っているのです。わざわざ第二項で取り上げて言っているのです。そうして、東京地裁効力停止執行停止決定は、これは決定をしておるのです。だから、いまの時点におきましては、これは明らかに決定であります。地方裁判所の判定であります。ですから、行政の立場から考えてみて、後の争う場合異議申し立てばしないというふうにはっきり言われたから、これは明らかになりましたが、争うことの是非は別といたしまして、この時点においては、これはやはり公平に国民に対してこの決定趣旨を履行すべしというのが行政事件訴訟法の三十二条の第二項の精神です。その点についてのあなたの御答弁は、不服だから抗告しているということだけでは説明になりませんよ。行政大臣ですから、少なくともこういう重大な決定をなされる際には、私は十分その点について国民が納得できるようにしてもらいたい。たとえば、きのうの放送討論会でも、やはりそういう問題が提起されておったと思うのであります。これは全く、官房長官――官房長官出席要求しているのですよ。官房長官の御答弁や、これは党の関係ですから、三木さんがどういうことを言われようがかってかもしれないけれども、これは全く国民を納得させていない。こういう考え方で、法律の根拠も明らかにしないようなことで、政府の責任者が法律を根拠として国民に重大な影響を及ぼすことをやっておるのであろうかという疑惑を生んでおるのであります。行政大臣である厚生大臣は、少なくともこの点については私は明確な見解をひとつ示してもらいたい。第二項の精神から言ってそうです。第三者に及ぶのですよ。三十二条の第二項は第三者に及ぶのです。いかがです。
  26. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 純粋の法律問題でございますので、私から一応お答え申し上げます。  お話のように、第三者ということばはかなり広いことばでございますが、しかし、忘れてならないことは、この第三者というものが用いられておりますのがまさに行政事件訴訟法でございますし、その訴訟におきましては、御承知のとおりに、特殊の構造というものがございます。そういうような訴訟における構造上の関係から、あそこにおける第三者もおのずから限度がある。それにつきましては、実は、私が御説明申し上げるまでもなく、例の決定自身が、二つのポイントをあげて、三十二条一項の趣旨をかなり詳しく説明をしております。その説明によりますと、いま仰せのような四組合以外の組合にそれがわたるというような解釈は全然しておりませんので、むしろ逆に、四組合だけに関係をするだけであるということを、るる説明を加えております。私、必要があればそれを申し上げますが、決定自身に詳しく書いておりますので、あえて説明は省略いたしますが、理論上構造上の問題と、決定自身が、その観点から第三者の範囲はこういうものである、四組合だけに限られるということを述べておることを申し上げたいと思います。
  27. 大原亨

    大原委員 これは法制局長官としては非常に粗末な答弁です。あなたはこの判決文のどこを言っておるのですか。これは、裁判の性質上、四組合の当事者に対しまして決定を下したのだということは書いてありますよ。あなたが言われるような拡張解釈ができるようなことはないわけであります。それは、行政府がこの法律の精神判決の内容に基づいてこれはどうやるかという問題、どうやらなければならぬかという問題がそこに出てきておるわけであります。これは、広く言えば法律解釈の問題でないかと言われるかもしれないが、つまり、法律解釈の問題です。だから、私が厚生大臣お尋ねして明らかにしたい点は、この決定の理由は、職権告示が違法である、こういう判断のもとに、こういう効力停止決定がなされておるのですから、一つの行政処分から二つの効力が発生するということは、国の行政においてあり得ぬことであります。いまの法制局長官答弁は、観念的に抽象的にざっと言われたようでございますけれども、実際の法律関係は、責任を持って適用する厚生大臣一つの行政処分から違った二つの効力が発生するなどというようなことは、その結果として関係国民が差別を受けあるいは不当な扱いを受けることはあり得べからざることです。この法律の精神を規定したのが三十二条なんです。三十二条の立法の精神から言って、あなたの御答弁は全然納得できませんよ。もう一回ひとつ具体的にはっきりわかるように御答弁してください。
  28. 神田博

    神田国務大臣 いま大原さんのお尋ねでございますが、あなたのおっしゃることは、そのとおりの文章になっておることは、これは私も議論しようと思っておりません。ただ、しかし、政府といたしましては、この職権告示が適法のもとに行なわれたんだ、事情やむを得ずこれはやったんだということでございまして、そこに裁判所との見解の重大な相違がございます。そういう観点に立ちますと、先ほど来私が御答弁を申し上げておるとおりでございまして、そして、四組合に限るのだ、しかも裁判所がそういうことを言っておりますから、そういうことについて拡張解釈すべきじゃない、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  29. 大原亨

    大原委員 つまり、位野木決定、広く言えば判決効力停止決定というものは四組合ですよ。しかし、第三十二条第二項に従って、これは第三者に及ぶんですよ。一つの行政処分から二つの違った効力が発生するということはあり得ぬのであります。職権告示一つなんだ。一つの行為から二つの効力が発生して、国民が旧料金、新料金で差別を受けるということはあり得ぬことです。行政のたてまえから言っても、立法の精神から言っても、ないんです。このことについてはっきり答弁できなければ、この議事進行はできませんよ。あなたはこの解釈自体について資格がないということになる。
  30. 青木義人

    青木政府委員 法務省の訟務局長でございますか、いまの三十二条の解釈の問題についてお答えいたしたいと思います。  本件は行政事件訴訟法の抗告訴訟であります。抗告訴訟は、権利救済を求めた原告のために、その権利救済のために設けられている訴訟なのであります。したがいまして、その訴訟の性質上、それに対する判決は、その権利救済を求めた原告との関係において判決なり停止の決定の効力が生ずるわけでございます。権利救済を求めない他の同じような立場に立つ人には、これは効力は及ばないというのが、抗告訴訟の本質であります。もしもそこまで及ぶということであれば、これは同法に規定してあります民衆訴訟でなければならぬ。民衆訴訟は法律が特に規定している場合にのみ許される、こういうふうに行政事件訴訟法に規定されておるわけであります。本件は、抗告訴訟の関係上、申し立てた原告との関係においてのみ判決なり停止の効力が生ずるわけであります。ただ、三十二条の第三者といいますのは、直接原告との関係において法律関係に立っておる第三者、この取り消しなり停止決定の結果原告に救済を与えるためには、第三者に効力を及ぼさなければ原告の救済の目的が達せられないという限度における第三者であろう、かように思っておるわけであります。したがいまして、本件におきましては、四組合の組合員あるいは被扶養者あるいはまた医療機関、こういうものが四組合との関係においては第三者に当たっていて、この決定の効力が及ぶ、こういうふうに思っておるのであります。この決定もその趣旨で記載されておると思われる次第であります。
  31. 大原亨

    大原委員 神田厚生大臣を代表者として、厚生省の役人と法務省の役人が代人というかっこうで抗告を行なっておるわけであります。実質的には厚生省と法務省が抗告をしているわけでありますけれども神田厚生大臣答弁と法務省の答弁とは違っているじゃないですか。法務省は第三者をかってにきめているじゃないですか。その点は厚生大臣のほうは法律の精神をずばりとすなおに言っている。というのはこういうことである。旧料金と新料金が併存する。そうして、その間をめぐって、皆保険下のいまの日本制度においては幾多の矛盾が出てくる。たとえば、厚生大臣職権告示は違法である、こういうたてまえの上に立って、窓口において患者、被保険者が、新料金は解釈上も当然無効であるから旧料金で支払いますということになると、そうすると、あらゆる医療機関その他窓口は非常に混乱するのです。つまり一つの行政処分から二つの効力が発生するということ。これは、この立法の精神から言っても、あるいは法律解釈から言いましても。あるいは行政の画一性、公権力の均衡、平等、こういう点から言っても、広く法の精神から言ってその解釈をきちっとしなければならぬのであります。これは両省にわたって意見が違いますけれども内閣総理大臣、あなたはひとつずばりと答弁してください。
  32. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいまの三十二条一項の関係でございますが、これは、私、そばで伺っておりまして、厚生大臣と法務当局の見解に相違はないと思うのであります。その基本線は、さっき申し上げた決定の判断の中に三十二条一項の趣旨を述べております。御承知かと思いますが、その趣旨は、原告に対する関係で行政庁の行為が取り消されたという効果を第三者も争い得なくなること、換言すれば、原告は何人に対する関係においても以後当該行政庁の行為の適用ないし拘束を受けないことを意味するにとどまり、それ以上に取り消し判決の効果を第三者も享受し、当該行政庁の行為がすべての人に対する関係で取り消されたことになること、すなわち、何人も以後当該行政庁の行為の適用ないし拘束を受けなくなることを意味するものでないというべきであるということを述べております。この趣旨は、両当局が仰せになりましたことで、四組合に関しては、それは第三者の関係は出るけれども、四組合以外の他の組合についてはそういう関係は出てこないということを申しておるわけでございます。
  33. 大原亨

    大原委員 いやいや、全然わからぬのだ。つまり職権告示をいたしました厚生大臣と四組合との関係判決がなされておるのであります。で、その効力は、三十二条の二項で、厚生大臣は、他の組合、国民に及ぶんだと言っておるのであります。厚生大臣が言っております。あなたはそれを聞かなかったから間違ったのかもしませんけれども、とんでもない話なんだ。厚生大臣、あなたの答弁が間違いですか。あなたの答弁と法務省の答弁と、これは違うのですよ。同じように名前を連ねているが、違うのですよ。あなたは、第三者とは、限定をされてないから国民だとすぱっと言ったのだ。だから、ぼくが言っているのは、裏返して、立法の精神は、行政処分というものが二つの違った効果を国民に及ぼすということは、これは事実上あり得ない。そういう立法の精神から言っても、第三者というものは、利害関係者に対して公平に適用するということは、この訴訟法の始末としまして、効力の及ぶ範囲としまして法律が定めておって、そしてやっておるというふうに私は考えとるのです。あなたの答弁は違うのですよ。違うのですか。
  34. 神田博

    神田国務大臣 私と訟務局の局長との答弁に食い違いがあるようなことのお話でございましたが、食い違ってはいないと思います。もしそういうふうにお聞きとりでございましたら、そのほうを訂正いたしますから。先ほど私が申し上げましたように、お述べになったような、全般に執行停止の効力が及ぶという意見があるが、これはとるべきではない、こう申し上げております。「同法にいう第三者とは、本来訴訟制度がもっぱら当事者の権利救済を目的とする性格を持つものであることから、当事者の権利救済を法律的に確保するに必要な限度において考えられるものであり、それをこえて広く当事者と何等の法律関係に立たないものまでも含むものと解すべきではない、すなわち、本件の場合、たとえば四組合から」と、こういうような意味で申し上げておりまして、結論は同じでございますので、もし誤解があったら、そのほうが間違っておるというふうにお聞き取り願いたいと思います。政府見解は同じだというふうにお考えに願いたいと思います。
  35. 大原亨

    大原委員 これで時間をとっちゃしょうがないのだが、法律関係がないとあなたは言っておるのですが、法律関係はあるのですよ。皆保険下においては職権告示は全部の国民に及ぶのです。違法なる職権告示によってこういう事態が起きているのですから、全部法律関係はあるのですよ。だから、一つの行政処分が二つの効果を及ぼすことはない。それに対して説明してごらんなさい。そんなことはないはずですよ。
  36. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 私は法務政務次官でございますが、先ほど大原さんも言われたように、この訴訟は法務省で担当いたしておるというようなことでございますから、本日は大臣が病気のために出席いたしかねておりますので、私がかわりまして一言だけお答え与え申し上げたいと思います。  それは、行政処分は効果が二つあるはずはないという御説は、そのとおりだと存じます。この問題は、四組合から、厚生大臣職権告示に対して異議の訴訟が起こされております。取り消しの訴訟が起こされております。それがいわゆる訴訟の本案でございます。今回のものは、その訴訟の判決を待つまでの間に職権告示の効果がどんどん及んでいくと、将来われわれの主張しているような取り消しが裁判所によって許された場合に経理上の混乱を来たすから、とりあえずその厚生大臣の行政処分の効力の停止を求めるということでございます。これは、しかしながら、先ほど厚生大臣も申されましたとおりに、私どもは、合法的なものである、違法ではない、かように考え抗告をいたしておる状況でございます。したがいまして、その行政処分の効果という毛のについての最終的判決裁判所においてなされるまでは、これは、私どもはやはり私どもの主張として進めてまいるのでありまして、その本案の判決があったとき初めて行政処分の効果に対する最終の結論が出るわけでございます。その際に行政処分の効果が二通りに分かれるか分かれないかという議論が行なわれるということはあり得ると存じます。現在の段階では、処分を一時停止するという決定でございます。したがいまして、それに対しては即時抗告をいたしておりますが、いずれは、本案の判決において、ただいま大原さんの御主張になるような結論が出てこなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  37. 大原亨

    大原委員 これは、いまの法務次官の答弁もそうですが、結局、三十二条の精神というものは全くじゅうりんされているわけです。三十二条の精神は、第三者に及ぶというふうになっておるんですから、その説明は、全く法律関係を一方的に小さく解釈しているのであります。全く法律論としても成り立っておらぬと思う。  そこで、私はまたあとでこの点を追及するといたしまして、今回の職権告示執行停止決定の理由となっておるところは、判断の根拠になっておるところは、職権告示が違法であるという。これは、私どもが今日まで繰り返して独裁性と厚生大臣の勇み足を追及してきたわけですが、そのことを裏づける判断の資料といたしまして――これは国民の良識なんです。どの論説を見てもそうですよ。新聞社の論説を見てごらんなさい。そういうことを根拠にいたしまして、執行停止決定効力停止決定がなされておるのであります。ここが重大であります。私はいまの御答弁には全く納得できないということで、そういう観点から問題を進めますと、そういう根拠の上に立ってこれから本訴が争われるわけで、東京地裁本訴における判決というものは、そういう前提に立つ限りは、これがひつくり返るという理由はないわけでございますから、当然本訴において政府側が、厚生大臣が負けるという結果が予想できるわけであります。政治的な圧力を加えたり ――これは、異議申し立て、指揮権発動はされぬというのですから、この問題ではかかることはありませんけれども、そういうことが十中の八、九分までは予想できるわけであります。じゃここでひとつ想定いたしましょう。そういう場合において、本訴が確定いたしました際にどういう事態が発生いたしますか。これは、法解釈については法務省だけれども、こういう行政のもたらす結果について検討するのは厚生大臣です。本訴がこの決定趣旨に従って確定いたしましたならばどういう事態が発生するか。このことにつきまして厚生大臣は検討されておると思うのだが、その点につきまして御答弁いただきたい。
  38. 神田博

    神田国務大臣 いまの決定のような裁判が確定をした場合に一体どうするかというような、簡単に申し上げますとお尋ねでございました。実はそういうことは予想しておりませんので、私ども裁判に勝つ、いろいろ検討を加えまして、十分な当方の資料を整えまして即時抗告をいたしましておりますので、その考えを持っておりますので、大原さんのいまお尋ねになりましたようなことは、この段階においては考えておりません。
  39. 大原亨

    大原委員 それは、申し立て人から、四組合から問題が提起されたときにそういう答弁をするなら、まだへ理屈はへ理屈にいたしましてもまかり通るかもしれぬ。しかし、現実に職権告示効力停止についての決定があったのですよ。その結果というものが現実に国民の中にあらわれていくわけですよ。そして、そのことが本訴の確定ということになっていくわけであります。そのことについて想定しないでおいて、抗告でございますの、そういうことはありませんのなんということは、あなたは全く無責任ですよ。そういう無責任な見通しのないことを積み重ねてきたから、今日のこういう混乱になったのだ。あなたは、そういうことだって、全く資格がないのですよ。だから、本訴が確定したならばどうなるのですか。法律的にどうなって、現象としてどういう現象があらわれてきますか。そのことが厚生省の医療保険に及ぼす影響がどうかということを言っているのだ。そのことを想定した場合にどうか。
  40. 神田博

    神田国務大臣 先ほど来お答え申し上げているとおり、私どもは自信を持って即時抗告をしておる、こういうことを考えております。そういうわけでございますから、いま大原委員の述べられたように、負けたときにはどうするかという、これはもちろん難いでございますからそういうこともあり得ることは、私はなしとは言いません。しかし、現段階におきましては私どものほうに歩がある、こういうふうに考えておりますので、その点を御了承願いたいと思います。  なお、法律的な問題がどうなるかについては、訟務局長答弁したいと言っております。
  41. 大原亨

    大原委員 厚生大臣、あなたは保険行政を預かっているのですよ。一兆三十九億円の保険財政を持っている各種の保険を預かっている責任者ですよ。そして、この仮処分というものは、職権告示が違法であるという理由、判断で執行停止決定がなされているのですよ。だから、これが政治的な圧力その他がないことを常識とするならば、このことは本訴において確定するはずですよ、理由があるのですから。裁判所の理由は動かぬはずですよ。そうすれば、そういうことは十中八、九予想できるわけですよ。そのときのことを予想いたしまして、あらゆる国民が納得できるような、混乱が起きないような、そういう政治判断や行政上の判断をするのが厚生大臣の職務じゃないですか。あなたは全く職務を放棄しておる。当然、法律的に行政上どういう事態が来ますかということを私が言うことは、むちゃな質問ですか。これは国民のだれだってそのことを聞きたいと思っている。新聞だって何だって、そういうことは当然だと言っている。この混乱をどうするのだ。そういうことを想定しないで、行き当たりばったりのことでどうしますか。あなたは五月に大臣をやめるのだというようなことを想定しているかもしれぬ。そのことで私は総理大臣質問いたしたのだけれども、あとはしり抜け観音だということか。そういう無責任大臣ですか、あなたは。いかがですか。
  42. 神田博

    神田国務大臣 いろいろおことばがあったようでございますが、私は責任を持って申し上げておることでございます。責任があるからき然として申し上げておるけでございます。御了承願います。
  43. 大原亨

    大原委員 裁判所は独立しているのですよ。この独立した裁判所が、職権告示は違法であるとして、そうして、その判断に基づいて執行を停止したのです。その上に立って、本訴は、あなたの意思にかかわらず、国民の納得するようなことが出るべきですよ。これは、今後そういうむちゃなことがないようにするためにも明確にすべきだという裁判所の見解ですよ。だから、これをどう処理するかということが政治なのです。その立場を忘れて、自分は勝つのだというようなことを言っても、昔の神風のときと同じだ。大東亜戦争と同じことだ。勝つ信念でやりますというようなことだけではだめですよ。客観性のある議論をしなければだめですよ。そういう無責任な厚生大臣というものは、厚生大臣の資格はないですよ。あんな者は罷免しなさいよ、総理大臣。不見識ですよ、あんな者は。  総理大臣お尋ねします。国会論議を通じまして、裁判所の判決にございますけれども中央医療協議会や社会保険審議会は、普通の諮問機関とは違って利害関係が非常に錯綜しているのだ、だから、中央医療協の公益委員国会が任命するようになっている、こういう法律の趣旨を述べて、この趣旨についてはあなたは賛同されて、いままで保険関係三法で独走しておる、職権告示で独走しておるが、そのどっちもだめになっちゃったのだ、医療費のほうもだめになったし、保険三法のほうもだめになろうとしておる、そういうことではいけないということで、虚心たんかいに総理大臣は問題を預かって支払い側と話をされた。つまり、調和の精神がほんとうにあなたの本音であるならば、それはそうでしょう。医療の問題について一致点がないことはない。私が言っているように、大いに議論をして一致点を見出すべきだ。だから、その法律のたてまえから言って、厚生大臣から預かって――これは、預かってというのはていさいがいいことばだが、たな上げしておいてぽんとやって、そうしてやられたわけですよ。そういういままでの審議経過あるいは実際に行なわれた経過から見てみて、私は、いまの厚生大臣のあのような御答弁は全く無責任である、言語道断であると思う。直ちに罷免すべきではないですか。総理大臣、いかがですか。
  44. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は信頼しておりますので、ただいま御要望がございましたが、それには従いません。ただ、しかし、先ほど来の御議論を聞いておりまして、私自身の感じを申し上げますと、地方裁判所で今回決定をしたその決定の結果、混乱状態が、政府は起こらないことを希望しておりますが、そういう事態が起こる、かように言われておりますけれども、私ども即時抗告をいたしましたことは、裁判所の事実認定につきまして、私ども考え方が違っておる、いわゆる審議会において十分の審議が尽くされてないという事実認定のもとに今回の決定がなされたものだと思いますし、また、大原さんの御意見を聞きましても、審議会等で答申も出ないのにそれを職権告示というのは乱暴じゃないか、かような意味でこれは違法だ、かような仰せでございますが、ただいままで私どもが厚生省関係から聴取いたしたところでは、十分審議は尽くした、しかしながら、不幸にして結論を出しておらないのだ、これは、どうも審議会自身の構成等から見まして、ただいままで利害相反するものが二つあるわけで、それらが対立して、十分審議はしたけれども結論を出しておらない、そういうところで、厚生省としてはやむを得ず職権告示をしたのだ、かように実は申しておるのでありまして、基本的な大事な点は、その点に非常な食い違いがあるのだろうと思います。そういう意味で、結局今回の即時抗告ということで争って、十分私ども考え方を徹底さしたい、かように実は思っておるのでございます。ただいま決定は見、そうして即時抗告をし、またそれと並行――並行といいますか、本来なら率先してまるべきだと思いますが、本訴もただいま進行中でございます。本訴がどういう結論が出ますか、判決を受けるか、それによりまして、事態についての最終的判決が確定すれば、最終的の決定を見るのだと思います。ただいま中間的な事態において、国民も冷静であり、また政府も冷静にこれに対処していくというのが望ましい態度ではないか、かように私は思うのでございます。こういう問題が起きた際に、この職権告示、これを四団体が反対し、そしてそれの決定を見た、そこでその他の団体も全部右へならえだとか、かような事柄で問題を紛糾ささないように、国民自身の良識にも私は訴えたい、かように考えておる次第でございます。
  45. 大原亨

    大原委員 総理大臣が言われることは、私は二分の一ぐらいわかるのです。半分ぐらいわかるわけです。私は冷静にやっておる。冷静にやっておるから、事の経過というものは重大であると言っておるのですよ。保険のたてまえから言って重大であると言っておるのですよ。その点についての見通しや配慮というものが厚生大臣にはまるでないじゃないかと言っておるのですよ。本訴が確定するという段階では、政府にとっては痛いかもしらぬけれども、負けるという段階があり得るわけですよ。これは十分想定できる。その場合にはどうなりますかと私は言っておるのだ。そうすると、おそらく、私どもが言い得ることは、一月一日にさかのぼって職権告示が無効であるということになりますると、九・五%というものが現実に否定をされるということになるのですよ。そうしたら、そのときの混乱は、いま以上混乱を助長するのではないですか。もしそうなったらどうしますか。総理大臣、これはたいへんなことですよ。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねのように、最終判決決定する。そういたしますと、ただいまのような事態も起ころうかと思います。そういうことがございますと、行政上の処分がたいへんな混乱を来たす、重大だ、かように思います。先ほど大原さんも、こういうものはあまり長くかけないで結論を出すべきだ、こういうことを言われました。私も同様な考え方を持っておりますということは、それらの点をも心配しての結果でございます。
  47. 大原亨

    大原委員 地裁効力停止決定で、現実にはそういう一つの処分から二つの効果があり、そうしてそれが波及拡大をしていく、違法な職権告示であるという前提で拡大をしていく可能性があるわけです。  そこで、私は冷静な提案をするのですが、裁判にもございますように、中医協に対するいろいろな理解のしかたについて政府が間違っておるということを言っておるわけです。政府の言い分は間違っておるということをほとんど断定的に言っておるわけであります。これはわれわれが今日まで議論してきたとおりであります。そこで、結局、中医協のそういう少数意見を保留するという形があるかもしれない、不賛成だという保留があるかもしれないが、共通の土俵を守るという立場において意見を取りまとめるという、そういう結果に基づいた結論というものはそれ以上さらに完全であるけれども、昨年の春の四月の八%の問題があるわけで、だから、これを受けて厚生大臣が告示をすれば、これは根拠があるのです。残っているのは一・五%ですけれども、しかし、九・五%について、この際実際には医療機関はべース改定もしておるわけですよ。入院費につきましても、それを想定して契約をしておるわけですよ。だから、医療機関は困るのですよ。こういう事態になりましたら非常に困るわけです。だから、そういう現実を踏まえながら、中央医療協というものを軌道に乗せるためにはどうしたらいいのか。中央医療協において一致点がございましたら、行政上の措置といたしましても、五月一日以降は職権告示を撤回する、こういう行政上の措置をとって善後措置ができるわけです、中央医療協を軌道に乗せれば。それで、総理大臣質疑応答を二月の六日、八日、ずっと重ねまして、総理大臣は終始、中央医療協や社会保険審議会は尊重するというたてまえでやるのだということを言って、社会保険審議会は一応尊重されておるかっこうだけれども、遺憾ながら、厚生大臣に対する不信感、対立を激化させたということの現実があって、うまくいっていない。このことは官房長官総理大臣がよく知っておられることだ。だから、そういうことを通じて考えてみた場合において、この際行きがかりにとらわれないで冷静に事態処置する方法がある。しかしながら、中央医療協のほうはさっぱり動いておらない。中央医療協は医療費一つの結論を出す、片方はそれをどうして埋めていくかという保険料や薬代の負担について出しておるわけですから、これは表裏一体であることはしばしば認めたとおりであります。だから、そういう問題に関係しておることを総合的に判断をして、もう少し大所高所から問題を解決するというたてまえの上に立ってこの問題を善処すべきであって、抗告したからわしらは勝ちます、あとは野となれ山となれ、こういうふうな暴論は許すことはできない。これはこまかな法律問題ではございませんが、総理大臣は、大まかな点について、私の考え方について、ひとつ所信国民の前に明らかにしてもらいたい。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申し上げたことは、即時抗告したからあとはどうなろうと、という意味ではございません。とりあえずの処置としては即時抗告せざるをえないというのが今回のたてまえでございます。しかし、ただいま基本的な、根本的な問題についてお触れになりました。中央医療協議会あるいは社会保険審議会を尊重するという本来のたてまえは、これは毎度説明して、おりますように、政府考え方に変わりはございません。ただ、事態は、官房長官を中心にいたしまして、七団体等といろいろ折衝を重ねてまいりました、基本的な方向はいかにもきまったようでございますが、しかし、なかなか審議会等が円滑にまだ運営されるような状況になっておりません。私もたいへん実はあせっておりまして、すでに官房長官が取りまとめました基本的な案は、よほど以前でございます。一カ月以上たちまして、その後の進展を見ないことについて、もちろん責任も感じ、非常にあせってはおります。しかしながら、事柄を円満に解決したい、かような観点に立てば、これも、ただいま職権告示が問題になりますように、一方的な処置もなかなかできかねる、かようなたてまえでございますので、各委員方々も、ぜひとも協議会を通じて十分御意見を述べられるように、できるだけ早く協議会に帰られるように、これを要望しているのがただいまの状況でございます。したがって、片一方でそういうように医療協議会等を本筋に乗せること、それについての努力、これが不十分だ、かようなおしかりを受けるかわかりませんが、政府としては万全を尽くしておるつもりでございます。ただいま起きておる地方裁判所の決定、それに対しては即時抗告した、こういうことでございます。こういう際に、私は基本的な問題もあろうかと思います。いわゆる社会保障制度、また社会保険制度、こういうものもやはり十分区別して考えていかなければならないのじゃないか。何もかもいざとなればみんな政府にかけ込む、こういうたてまえでも困るだろう。本来から申しますならば、政府は、社会保険制度、そういう法制のりっぱなものをつくって、そして法律の番人であればいい、かようなことも言われるかもわかりませんが、わが国の社会保障制度あるいは社会保険制度等におきましては、ただいま発達の段階でございまして、全部にまとまった体系的なものもまだ基礎づけられておらない、こういうような不満もあるように見受けます。そういう事態がただいまのような混乱状態を次々に起こしておるのじゃないだろうか。一日も早く本筋に返るように、やはり基本的な七団体と取りきめた事柄等が軌道に乗ってくるように、具体化されるように、そういう処置をとっていけば今日のような会議どももっと御審議をいただくのにも非常に便利になるのではないか、かように思いますが、どうも思想的な混乱もずいぶんあるようでございまして、社会保障制度、そのうちの社会医療保険、かような考え方で見ていき、同時にまた、政府の責任、財政的処置等もそれに合わす考え方でそれぞれの処置をとっていかないと、なかなか、大蔵大臣も参っておりますけれども、財政的にもたいへんな問題だ、かように思います。これはひとり国民医療の問題というだけでは片づかないのでありまして、重大な医療の問題であるだけに、その保険制度を万全のものにし、同時にまた政府の財政的な関係をいかに処置していくか、かように考うべき事柄ではないか、かように私は思います。
  49. 大原亨

    大原委員 総理大臣以下大蔵大臣も御理解いただきたいのですが、この本訴が確定する際に、政府が勝っても負けても非常に大きな問題になるのですよ。私は、勝った場合のこと、本訴がこの処分どおりに確定した場合のことを言っておりますが、これが政府側が勝って四組合側が本訴で負けた場合でも、たいへんなことになるのですよ、五月一日にさかのぼって。だから、事はきわめて重大ですから、いま抗告しておりますからそこで勝負しますというようなことをぬけぬけと言うような厚生大臣は資格ないのだ。厚生大臣に私は恨みがあるわけじゃないけれども、この問題は実に大きな問題ですよ。取り返しのつかない問題です。だから、総理大臣がイニシアチブを発揮して、内閣改造じゃないけれども、やはり特別に厚生大臣はこの問題については責任をとってもらわなければいかぬ。国民の前に明確にしてもらわなければいかぬです。私は党派のことにこだわって言っておるのじゃないのです。これをきちっとしてやるためには、やはり社会保険審議会と中央医療協が虚心たんかいな気持ちで現在の時点においてどうするかということをきめて、中央医療協が発足する条件のことを申し上げましたが、八%でいくか、九・五%を認めるにしても、社会保険審議会のいわゆる分担との関係を十分考えながらせんじ詰めてやれば、医療の問題は事命にかかわかる問題ですから、一致点があるのだという信念で、イニシアチブを総理大臣が売抑されることを私は建設的に意見を言っているわけですよ。総理大臣、もう一回御所信を明らかにしてもらいたい。
  50. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの基本的な、建設的な考え方については、私刑に異存はございませんし、政府がもっと積極的に本筋にこれを乗せたい。官房長官を中心にしての申し合わせなどもできるだけこれを早く具体化する、そうして、ただいま御指摘になりましたように、基本的な問題の医療制度そのものが本筋に返るように、この際に改正すべきものは改正したい。真剣に取り組んでまいるつもりでございます。
  51. 大原亨

    大原委員 厚生大臣お尋ねいたしますが、健康保険関係法案政府管掌、日雇、船員の三法案は、この国会は遺憾ながら時間切れである。これに対する改正案が出て、その上に立って政府がこの法律案を再検討する時間も切れたようである。そういう点に対する見通しにつきまして、もう国会もいよいよ最終段階でございますから、明らかにしてもらいたい。
  52. 神田博

    神田国務大臣 健保三改正案に対してのお尋ねでございますが、審議会等の経過も説明申し上げましてお答えいたしたいと思います。  社会保険審議会に対しましては、本年の一月三十日に健康保険等三制度の改正案を諮問いたしました。その後三月二日に第一団の総会が附かれ、以後おおむね週一回の割りで現在まで八回にわたって審議が行なわれております。すなわち、同審議会においては、医療保険の赤字の原因は何か、三法の改正案に対する審議会の答申をどの程度政府は尊重するのか、今回の法改正の性格は抜本改正か財政対策か、薬価基準の引き下げ問題をどのように取り扱うか、法改正が行なわれない場合の財政措置をどうするか、過般支払い側と政府与党との間に取りかわされた了解事項の取り扱いをどうするか等の論議が行なわれております。近くこのような総括的質問が終える段階となっておりまして、その後各委員問題点を出し合って、それによって審議を進める、こういうことでございます。  また、社会保障制度審議会においては、二月の一日に諮問をいたしておりますが、二月の五日、健康保険等三制度の改正案について第一回の総会が開かれ、その後現在までに総会が十一回、総合委員会が三回開催されました。その間、答申の取り扱い、赤字の原因、医療費の緊急是正、薬価基準の引き下げ等に関する総括質問の後、答申を作成する場合に骨格となるべき事項として、一、医療費混乱の原因、二、医療費増高の状況、三、医療費構成決定、四、医療費増高の原因、五、当面の対策、六、根本的対策の方向、七、根本的政策のための基本原則、この七つの問題点が整理され、現在この項目について審議が進められております。  そこで、両審議会がこの会期中に一体答申が間に合うかどうか、また、政府がその点について法律案を出せるかどうかというお尋ねでございますが、いま申し上げたような事情でございまして、答申そのものがこの会期中に間に合うかどうかということも、ここではっきりしたお答えができかねるような状況でございますので、これは大事なことでございますから、十分審議会とは連絡をとりながら進めてまいりたい、かように考えております。
  53. 大原亨

    大原委員 官房長官お尋ねすればいいのですが、官房長官は何回呼びましてもあらわれてこないのです。大体予算関係法案予算案が審議されておるときに国会に出すことが慣例であり、たてまえであります。もうこれは事実上時間切れであります。総理大臣、そうですね。官房長官にかわってひとつ……。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 慣行として過去においても大体そういうような結果に、また、今後もそうするようたつもりでございます、しかし、私は、もちろん国会開会中であれば審議期間中十分審議を尽くしていただきたい、かように思いまして、ぜひとも法案成立に御協力願うように、よろしくお願いをいたします。
  55. 大原亨

    大原委員 審議してくれと言ったって、法案がないじゃないですか。何をあなたはおっしゃいますか。できるだけあなたに協力したいのはやまやまだけれども審議してくれと言っても、法案がありゃしないですよ。そういうあまり中身のないような議論はよしましようよ。はっきり言ってくださいよ。  厚生大臣、もう法律案は出ないでしょう。この次はいつ出しますか。
  56. 神田博

    神田国務大臣 当予算委員会あるいは本会議等におい、もしばしば申し上げておりますように、両審議会の答申を尊重いたしたい、これは十分尊重するという誠意を披瀝いたしておりまして、しかも両審議会におきましては鋭意いま審議を続けておる段階でございます。審議会の答申が参りますれば直ちに御審議を願う、こういうような考えでおります。
  57. 大原亨

    大原委員 そんな非常識なことを言っちゃだめですよ。こんな重要法案について、はい出しました、通してくれということなんか。それで強行突破をやるのでしょう。地主補償でも何でもそうでしょう。大所高所から、総理大臣、どうですか、もうそれはだめでしょう。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大長秋が答えたのは、予算関係法案という一般的な話でございまして、いまの保険三法、これは答申が出てまいりません。答申が出ればこれを尊重する、かように申しておりますから、答申のないうちに政府が出すようなことはいたしません。それだけは御了承いただきます。もうただいまの時期、よほどおくれておりますし、いま答申を急いではおりますが、どうも今回の会期中に間に合うかどうか、私は心配しておるような状況でございます。
  59. 大原亨

    大原委員 率直な答弁で、間に合わぬと思いますが、大体次の臨時国会ということになるわけでしょう。常識の話が。  総理大臣、あなた、官房長がおられぬから気の毒ですが、次の臨時国会になると思うので、臨時国会は大体いつごろなんですか。これはやはり健康保険三法の執行上問題ですからね。総理大臣、あなたの決断でひとつやってみてください。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの法案を出す出さないは別といたしまして、臨時国会は、参議院選挙が終わると、六月の終わりになりますか、それが終わると今度臨時国会を開く、これは特別国会じゃなく臨時国会だと思います。そのときにただいまのような法案が出るか出ないか、これは十分考えなければならないことだ、かように思います。
  61. 大原亨

    大原委員 六月終わりということを言われましたが、大体会期延長をされないというふうに私は理解をいたします。六月終わりに国会を開こうと思いますと、会期延長なんか一切できないということになります。実際上選挙が済んですぐあとでやるというわけにいきませんし、六月終わりということでありますが、それは大切な問題ですが、本筋じゃないからともかくといたしまして、そこで、健康保険関係三法が直接あるいは間接に影響を及ぼすことによって、予算上どれだけのそういう期間の見通しがあるわけですが、質問を通告いたしておきましたからお答えがあると思うのですが、予算上どのくらいの穴があきますか。大蔵大臣、時間が迫ってまいりましたから、ずばりお答え願いたい。
  62. 田中角榮

    ○田中国務大臣 答申が早急に出されることを期待しておるわけでございます。出れば尊重でありますから、国会に法律を提出すれば尊重するか、尊重します、こう言っているんですから、尊重する法律が出れば、これはもう野党の皆さんも短い期間でも通してくれる、こう思っておるわけであります。出ない場合、予算で予定しておる一五%の保険料の引き上げが行なわれないということになりますから、そうなりますと、その一五%の保険料分だけで三百四十二億円収入に穴があくということになります。四十年度の予算としては、全額借り入れ金で支払い資金を調達するということになると思います。それから、本人の薬剤費の二分の一の自己負担ということを諮問しておりますが、これが実施できないということになりますと、歳出予算に二百五十三億円の不足ができるわけであります。そうすると、合計五百九十五億という穴があきます。
  63. 大原亨

    大原委員 厚生年金でも八百億円ぐらい見通しておられるわけですが、それでさらに地主報償は千四百六十億円やろうというわけですね。ずいぶん気前のいい内閣だ。それはともかくといたしまして、健康保険関係の三法案で、これが客観情勢ははっきりいたしましたが、それだけ大穴があくわけであります。これに対しましてはどういう措置をとられますか。
  64. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、一五%分につきましては借り入れ金でまかなわなければならぬと思います。もう一つの薬剤費の二分の一自己負担二百五十三億円につきましては、二百六十億円の予備費のワクを計上してございますから、それでやむを得ずまかなうということになると思います。しかし、私はそうならないことを期待しておるのであります。これだけの大問題になっておるのでありますから、審議会もひとつ誠意をもって積極的に審議をしていただいて、この国会に間に合うような答申を早く出していただきたい、私はそう思います。
  65. 大原亨

    大原委員 重ねてくどいようですが、障害になっておるのは、厚生大臣がいままでやってこられたことですよ。これは厳然たる、天下のだれもが認めておる事実です。それを隠蔽しておるからこういうことになっておるわけです。くさいものにはふたをしてほいかぬことです。これは、総理大臣がうなずいておられるから、さらに私は追及しないけれども、重大問題です。大蔵大臣、社会党との約吏の間がいろいろ議論があって、国民健康保険の三十九年度の過年度分が百三十二億円であった。しかし、いま調べてみると、当然国民健康保険は国の事務である。したがって、国が負担をすべきものが調整交付金の一割分を入れまして百六十億円になる。私の推定では百六十五億円にふえておる。これは当然国が負担すべき問題であります。その金額と一緒に、この問題の処置について、こういうことで大混乱になって、国民健康保険は、事務費のものであるけれども、過年度分の当然支出すベき問題が非常に膨大な金額にのぼり、その上に三十億円以上も結果として地方財政から持ち出す、交付税の対象にならない、こういう事態が起きまして、全国では国民健康保険が崩壊の危機にあるのだということで騒然たる問題になっておるのであります。百六十五億円三十九年度分だけでも穴があいておるということを確認なさいますか。これをどうされますか。
  66. 田中角榮

    ○田中国務大臣 去る予算委員会で、辻原委員が社会党を代表せられて質問をされ、その質問お答えをいたしております。三十九年度の不足分につきましては、現在大体百二十何億円だと思います。これは政府が法律によって当然負担をすべき額が百二十二、三億になるのじゃないかと思いますが、こういう問題につきましては、できるだけ早い機会に補正予算措置をいたしたい、こう考えます。三十九年度の財政調整交付金で補正ができなかった面がございます。この分がどのくらいになるかわかりませんが、これは、いま諮問をいたしております医療三法等に対する答申があるわけでありますから、そういうことも勘案をしまして、全般的医療保険に対する財政負担の問題等とあわせて考え、何らかの措置考えたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。それから、地方団体で、財政的にお困りになるという場合に対しましては、つなぎ融資を行なうということも明らかに申し上げておるわけでありますから、こういう措置考えてまいりたい、このように考えます。そのほかにどういうことになるかというと、四十年度の金繰りという問題もあります。四十年度に交付をすべきものがございますから、こういうものの繰り上げ支給ということも考えられるわけであります。金繰りに対しては、できるだけ公平に積極的な姿勢で対処してまいりたいと考えます。
  67. 大原亨

    大原委員 所定の時間が来ましたから質問を打ち切りますが、この際ひとつ田中大蔵大臣お尋ねをするのですが、あなたが新潟かどこかに参られまして談話を発表されました。これは最初に質問申し上げて、大蔵大臣はいらっしゃらなかったのですが、内閣改造の時期とも深い関係があるわけで、私は重ねて言いませんが、田中大蔵大臣は、参議院選挙後七月を過ぎて――総理大臣の六月末に臨時国会を開くという調子のいい弁答とちょっと違うのですが、七月ごろに内閣改造をするんだ、こういう情勢の見通しを話をされておったわけです。あなたは実力者てありますが、ちょっと若干ニュアンスが違うように思いますが、あなたの見解をひとつお聞かせ願いたい。
  68. 田中角榮

    ○田中国務大臣 内閣改造に関する限り、これは総理の権限でございますから、私がお答えできるものではございません。新聞に報道されたことに対する質問がございますから、その問の事情を申し上げます。内閣改造はいつごろになりますか、こういう端的な御質問がございました。新聞では参議院選挙前と書いてありますね。新聞に書いてありますからそういうこともあるのかと思っておる。総理大臣の意向を聞いたことはありますか。こういうことでありますから、総理大臣の意向は聞いておりません、こう申し上げました。参議院選挙の前に行なうということになりますとどういうことが考えられますか。仮定の問題でありますが、そういう場合いろいろな問題があるから、参議院選挙前、参議院選挙後、どっちかでしょうな。こういうような問答でございますが、こういうことが新聞の記事になりますとああいうふうになるわけですから、これは全く質問に対してオウム返しに答えたことであって、仮定の質問であっても、私がそういうことに答弁をすること自体がおかしいのかもわかりません。何なら総理大臣からお聞きください。
  69. 大原亨

    大原委員 そうなれば、総理大臣、一言聞かなければならぬわけですが、会期を延長するということになれば内閣改造参議院選挙前は時間的にできない、こういうふうに、選挙があるからといわれておるのであります。会期延長総理大臣されませんね。これは土俵ですからね。国会の土俵ですからね。これは非常に大切なんです。非常にこれはこれから段取りを皆さん方保険の問題について立てるについて大切なんです。その点をはっきりひとつお答えいただきたい。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えいたしましたように、政府が法律案を出しましたのは、それをぜひとも成立を期して出したものでございまして、それがもしも期日がなくてできないというようなことがあれば、法案が大事でございますから、会期の延長ということもあろうかと思います。しかし、先ほど申しましたように、ただいまさような事態考えておりません。これは、もう与野党とも法案審議に一そう精出していただきたい。これをただいま皆様方にも御要望するだけでございまして、私は会期延長などまだ考えておりません。そういう点は、いずれは党においていろいろ御相談するようなことが――延長するとすれば党において相談することだと思いますが、ただいまさような状態ではございませんので、どうか御審議に御協力のほどお願いいたします。
  71. 大原亨

    大原委員 わかりました。  それで、これは最後ですが、総理大臣は、六月未に臨時国会を開いてこの健康保険法関係案その他の善後措置をしたい、こういう御答弁をされたわけですから、それを逆算いたしますると、大体半分くらい腹の中がわかるわけです。ただし、いろいろな質疑応答の中でぐらぐらいたしますから、その点は推定いたしかねますが、私は、健康保険法のこの問題の本論、医療問題の本論に返りまして、やはりこの問題は大所高所から総理大臣がイニシアチブを発揮して、そして行政に対する信頼が失墜しないように、そして医療に対する医師側あるいは支払い側その他国民意見が一致するように、はっきりした責任体制をもってやってもらいたい、こういうことを強く申し上げたい。厚生大臣が全部が全部悪いわけじゃない。たとえば強力パブロンなんか、ピリン系のアンプルのかぜ薬なんかは、これは国会議論いたしましたらぴしゃっととめた。これは非常に大きな勇断と思う。やはり薬の行政を正すと薬代を半額上げぬでもいいというのが私ども議論ですから、これは議論を大いに発展させていきたいと思ったけれども、時間がございません。したがって、この問題に関する限り厚生大臣の責任は免れない。その点で、私は、その点を処置しながら、この乱脈をきわめ矛盾拡大しつつある。緊急是正の積み上げでにっちもさっちもいかないこの医療費の問題についてはっきり方針をきめて、社会開発社会保障医療保障というのは非常に重要な問題でございますから、これに総理大臣が取り組まれる、そういうことを強く要望いたしまして私の質問を終わりたいと存じます。
  72. 青木正

    青木委員長 次に、河野正君。
  73. 河野正

    河野(正)委員 午前中いろいろ当面する医療費問題についての質疑があったわけですが、私は特に角度を変えまして、いろいろ何点かについてお尋ねを申し上げたいと考えております。今日までいろいろ医療費問題をめぐっての紛糾が続いてまいりましたが、やはり根本的には、現在の医療制度のあり方にいろいろ紛糾の原因があるということを私は強く感じてまいっておるわけでございます。この医療問題は国民に直結いたしまするきわめて重要な問題でございますし、しかも今日の医療費問題をめぐります紛糾というものが基本的には医療制度から端を発したとするならば、やはりそういう点に強力なメスを入れるということなくして今日の紛糾を解決することはとうてい不可能だ、私はこういう考え方に立っておるわけです。しかるに今日九千万国民の健康なり生命を守る医療問題というものがここ数年来いろいろ紛糾を続けまして、そしてあるいは社会問題あるいは政治問題というものを提供をして、国民に対して非常に大きな不安を与えておるのが今日の現状でございます。そこで、この問題の解決は、いま申し上げますようにやはり根本をえぐるということなくしては抜本的な解決をはかることは困難でございますから、そういう意味でまず総理大臣にこの際率直にお伺いをいたしておきたいと思います点は、憲法第二十五条におきましては、すべての国民は健康で文化的な生活を営む権利が与えられておる。それからもう一つは、国は、すべての生活部面において社会保障及び公衆衛生の向上、増進につとめる義務があるわけでございます。総理は、今日までしばしば口を開けば社会開発人間尊重精神を訴えられてまいったわけでございます。そこで、そういう総理として、憲法第二十五条に示されております健康にして文化的な生活、あるいはまた社会保障、あるいは公衆衛生に対して向上、増進について国としてはつとめなければならぬ、こういう憲法のたてまえ、この点が私は総理のかねがねの主張と非常に大きな関連があろうかと考えております。したがって、そういう基本的な点について総理が明確な態度を示される限り、今日次々と起こっております医療費問題をめぐる紛争解決というものは根本的には解決ができない、私はこういうことを考えますがゆえに、いま私が指摘をいたしました憲法第二十五条の精神と、それからさらに総理が今日までしばしば口を開けば主張されてまいりました社会開発あるいはまた人間尊重精神、こういう問題、あるいはまたこれは医療制度の基本問題と思いますが、そういうたてまえから、ひとつ総理が明確に所見を披瀝されますことをまずお願いいたしたい、かように考えます。
  74. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま河野君が御指摘になりますように、憲法二十五条の精神、これで政治も行ない、また国民協力も得ていくというのが私の基本的態度でありまして、御指摘になりましたとおり、私も同様の考え方を持っております。ただその際に希望を申し上げれば、憲法二十五条の精神、これは政治家に対して非常に強く要望されますが、これは同町に関係者一同、国民全体が健康にして文化的国家をつくるのだ、こういう熱意をあらゆる面において示していく、そうして、第一に協力が最も必要なことだ、私はかように考えます。
  75. 河野正

    河野(正)委員 いま総理がかねがね唱えてまいられました人間尊重、あるいはまた社会開発という点と国民の健康を守る、こういう基本的な問題との関連について所見を伺ったわけでございますが、私は、この社会開発という問題は人間尊重の施策を推進していく一つの大きな施策である、こういうように私どもは理解をいたすわけでございます。したがって、この憲法第二十五条では社会保障というものを増進、向上せしめなければならぬということが政府に義務づけられておるわけでございますが、そういう社会保障を増進、向上させるということと社会開発という問題というものは相関連をしていかなければならぬ。いろいろ社会保障の政策を進めていくが、それでは足りない面についてはやはり社会開発のいろんな施策で補っていく。この社会開発社会保障の増進、向上というものは常に一体となって推進されなければならぬ、こういうように私ども考えるわけでございます。国民の多くの者は、総理がしばしば社会開発人間尊重を唱えられておるわけでございますから、したがって佐藤内閣というものは医療保障という問題について非常に大きな熱意を持っておるんだ、こういう理解に立っておると思うのです。しかりとするならば、やはり総理の主張でございますから、総理はそういう国民の期待に対して強くこたえなければならぬ、こういう義務というものが私は総理に与えられておると思いまするが、その点はいかがでございますか。
  76. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお話になりました、私が社会開発をしばしば唱え、また御協力を願っておりますが、ただいままでいわゆる経済開発ということばはしばしば使われ、またそれによって生活は確かに向上した。しかし、この経済開発はやはり基本的に社会開発という観念のもとに経済開発をしていかないと、十分直接に国民の生活に効果が上がってこない、こういう点でいわゆる社会開発という理念のもとに経済開発をすべきだ、両々相まって全きを得るんだ、こういう考え方でございます。同時に、このことは私が唱えますいわゆる人間尊重という基本的な政治のあり方にも関連してくるわけであります。この人間尊重はもちろん個人の人格尊重ということにもなりますが、同時に人命の尊重ということが人間尊重のうちの大きな柱であることは申すまでもないことで断ります。そういう観点に立って、国が持つ憲法二十五条の精神によるいわゆる健康にして文化的生活、そういう立場から一般的にいわゆる福祉国家の建設だ、こういう意味社会保障の完成を努力していく。その場合に、ただいま申すような人間尊重、人命尊重、こういう観点に立って医療保障、さらにまた医療保険、こういうものに特段の留意をする、こういう考え方でございます。私は、いわゆる社会保障のうちで医療保険という玉のがどういう地位を占めるか、またどういう価値を占めるか、それは特に考えていただきたいと思うのです。河野君は、特にお医者さんで、長い間診療側を代表しておられることだと思いますが、こういう立場に立って人間尊重の理念、そうして同時に憲法二十五条の健康にして文化的国家建設、それに御協力を願う。ただいま申し上げるようなやはりそういう考え方が望ましい。こういう意味で、政治の姿勢ももちろん政府としてとるべき点は明らかでありますけれども、同時に関係国民が全部協力してみずからの手によりこの健康にして文化的国家をつくるんだ、福祉国家をつくるんだ、こういうところへ意気込んでいただきたい、かように考えるのでございます。ただいまことばを非常に簡潔に申しましたので、不十分かと思いますが、大まかに申せば、いわゆる社会保障の完成を期するが、またそういう意味から医療保障という制度ももちろん考えられていく。その場合においても、やはりいわゆる医療保険という制度、が望ましいということで今日日本医療保険制度ができ、そうしてまた医療保障制度を完成していく、こういうように考えてしかるべきではないか、私はかように患っております。
  77. 河野正

    河野(正)委員 国民の理解といたしましては、総理はしばしば社会開発なり人間尊重、人命尊重という点を主張せられておりますので、したがって、私は先ほど憲法二十五条の精神というものを取り上げたわけでございますけれども、その精神ともかね合わせて、むしろ今後政府の進むべき道というものは社会医療保険から医療保障という方向にだんだん脱皮していくのではなかろうか、こういう期待というものを総理の今日までのしばしばの言動の中から私は受け取っておる。したがってこの憲法二十五条の精神からいいましても、あるいはまた今日まで総理のしばしば言っておられまする言動から言いましても、やはり方向としてはむしろ医療保障という方向に進むべきではないかと国民も予期いたしておると私は思う。ところがこれは一例でございまするけれども、いずれいつの日にか健康保険法の改正が出てくるといたしまするならば、この健康保険法の一部改正の中では総報酬制の問題いわゆるこのたびは保険料というものが一挙に二倍も三倍も上がっていく、国民に非常に大きな負担をかけていくという問題が一つございますし、もう一つは薬剤費の一部負担、半額負担という問題等が実はまだ姿を見せませんけれども、これが政府がいま考えられておられまする健康保険法一部改正の大きな柱だということは、これはもうすでに社会保障制度審議会あるいはまた社会保険審議会に諮問をされておりますから、政府の意図というものは明らかでございます。これらの点を見てまいりますると、私はいま総理お答えになった人間尊重、人命尊重という問題と矛盾をする。笑っておられますが、たとえばこの一部負担の問題一つを取り上げてまいりますと、これは金持ちと貧乏人との問に診療行為の差というものが出てくるわけです。これは、一部負担を負い切れる人は自由に医療行為の恩典に浴することができますけれども、一部負担ができぬ人は、医者にかかろうと思っても医者にかかることができないという問題等が現実に出てまいります。そういたしますると、医療というものが金持ちと貧乏人とによって差別される、こういう問題が現実に起こってくるわけです。そういうことを考えてまいりますと、政府の方針は、なるほど総理は人命四重、人間尊重という非常にきれいなうたい文句でございますが、実際にはそういう美名に隠れて、国民に対しては金持ちと貧乏人との間に医療の差別をつけていく。これは、私はやっぱり医療保障の非常に大きな後退、あるいはまた医療保障の大きな崩壊だというふうに考えなければならぬ。そうしますと、これは総理の今日までの言動ないしは憲法第二十五条で示されました内容に大きく矛盾する、私はこういうふうに考えるわけでございますが、この点はいかがでございますか。
  78. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は別に矛盾しているとは思いません。思いませんが、ただいま誤解のないように願いたいと思いますのは、河野さんはそのほうの専門家だからよく御承知のことと思いますけれども、いわゆる医療保険、これは医療保険制度でスタートしておるが、行く行くはそれが医療保障制度になるべきじゃないか。いまその例として、金持ちと貧乏人、その間で薬剤費の一部負担というよう問題を提起しておるじゃないか、かような点から、どうも筋が少し違いはしないか、かような御指摘のようにただいまの御議論を聞いたわけであります。確かに現行の制度そのものが、いわゆる医療保障制度というものにはなっておらない、これがしばしばいわれておることだと思いますが、いわゆる保険料でまかなうのか、あるいは国民の税金でまかなうのか、そういうところへいくと思います。現在の日本のたてまえからいうと、これは患者の保険料、そういうたてまえのほうがわかりいいんじゃないか。もう少し高度に国家が発達してきまして、そうして何もかもみんな税でまかなう、こういう事態になれば、医療保障制度の完璧を期することはできるかもわかりません。しかし現状においては、やはり医療保険制度でいくんだ、この基本は、いろいろな議論があるだろうと思いますけれども、現状においてはこれはやむを得ないんじゃないか、私はかように考えます。その医療保険制度のたてまえに立って、そうして今日の薬剤費の一部負担、こういう問題を見ました際に、この医療保険制度におきましても、非常に議論されたもののうちにいわゆる医薬の分業の問題があったと思います。もうすでに議論の時期ではなくなって、医薬分業は確定した、かようにいわれておるのですが、しかし実際は、必ずしも医薬分業が守られておるような状態だとは私は見ません。これは私がしろうとであるから、そういう点においてやや知識を欠いておるのかもわかりませんが、率直に申しまして、私は医薬分業がまだ完璧だとは言い得ぬのじゃないだろうか。かような状態でただいまの医療保険制度を見ますと、陥りやすいものが乱診乱療、こういうことになるんだろう。そこらにたいへん最近の薬の発達等もありまして、医薬費は非常にかさんできておる、かように私は認めざるを得ないと思うのです。ただ、いま言われるごとく、金持ちは金にあかす、貧乏人は薬と選択して非常に限定される、こういうことで非常にまずいじゃないか、こういう非難も確かに当たろうかと思いますが、保険制度そのものから見まして、いまのような診療あるいは投薬の方法を予定しないで保険制度をつくった、こうすると、これが赤字にならざるを得ないんじゃないだろうか、かように思います。今回問題を起こしておる九・五%の改良の問題にいたしましても、やはり基本的にはこういう点にかかってくるんじゃないだろうか。だからこそ官房長官と七団体との話し合いというものが基本に触れておるのだ。先ほどの大原委員お答えしたのはまことに簡単でございましたが、そういう感じを持つのであります。私は、こういう点をぜひとも今後は改めていただきたい。ただお医者さんのほうの立場も、薬が自由に使えるものと薬の使えないものがある、これが技術料の面でこのお医者さんの、診療側の利益を十分確保できれば別でございますが、ただいまのように、技術料についてはなかなかこれが診療側の意見どおりにもならない、そういうような状態で他のほうに流れて、そして利益を確保しておる。しかしながら、お医者さんといっても、たとえば簡単な産婦人科であるとか、あるいはその他にもそういうものがあるだろうと思いますが、特殊なもので、薬はそうたくさん使えない、これは純技術料だ、こういうようなものもある、こういうふうに思います。たいへんこまかな話をして恐縮ですが、そういうような事柄が十分考えられなくて、むずかしい問題で、いざ困ればそれは全部政府の責任だ、そこで政府予算措置を要望される、こういうことではなかなかやっていけないんじゃないだろうか、今日非常な問題を起こしておりますのも、結局そういう支払い側あるいは診療側、受け取り側等の立場が利害相反しておる。そういう場合に、問題の解決をしないで、これは全部政府予算措置でしろ、こういうような結果になっておりますが、大筋から申せば、現在はとにかく医療保険制度だ、そのたてまえに立って、いかにあるべきかということをもっと掘り下げてみる必要があるだろう。さらにまた、各組合間でそれぞれの事情がみな違っておりますから、その組合間の保険制度にいたしましても、現状のままで推移することはいかがと思う。それと、やはりこういうものも全体として考えていく。先ほど来基本的に人間尊重の立場に立って、憲法二十五条をお振りかざしになりましても、われわれはその方向で努力しているということで説明するだけでありますが、具体的には、ただいま申し上げるような実情をもっと把握し、その実情に沿っての対策を立てていって、そして完全な医療保険制度をつくる。将来また財政的に高度国家ができれば、さらにそれも社会保障全般の一環としての医療保障制度、こういうことになっていけばたいへんけっこうなことだが、まだまだそういう状態をいま口にするのは非常に早い、かように私は思うのでありまして、将来の理想はそういう大きなところに置くといたしましても、現状はむしろ一歩後退、二歩前進を期待する、こういうようなのがいまの実情ではないか。ただいまの改正なども、そういう意味で、あれは非常に後退だ、かような非難を受けますがこれは、やはりただいま申し上げましたように、本来のその制度を強固にする、そういうたてまえで考えるべき時期にきておるのじゃないか、かように私は思います。
  79. 河野正

    河野(正)委員 いろいろと詳細なお答えをいただいたわけでございますが、私は、この基本問題はやはり今度の東京地裁の位野木裁判とも関係をいたしておると思うわけです。と申し上げますのは、やはり医療費の引き上げというものが緊急是正に端を発して、今度の位野木裁判判決ということになったわけですから、したがって私は、医療問題に対します政府の取り組む姿勢というものがやはり問題になってくると思う。そういうことで、いまの問題と関連をして、もう少し突っ込んでひとつ総理の御所見を承っておきたいと思うわけでございます。なるほどいま総理お答えになったように、政府としては憲法第二十五条の精神に沿うて努力中だ、あるいはまた人間尊重なり社会開発の前進のために努力をいたしておるのだ、こういうお答えであったわけでございまして、具体的には政府はそういう方向で進んでおるけれども、現実の問題としては、やはり完全な医療保険制度というものをまずワンステップとしては達成していかなければならぬ、こういう意見であったようであります。しかしながら政府は、当面としてはこの医療保険制度の完成に向かって進むべきだという方向は別としても、一応この方向というものは患者の負担中心の施策だ、患者負担を中心とする医療制度一つの方向だというふうに理解せざるを得ぬと思います。ところが、当面はそうであったといたしましても、究極はわれわれは憲法を尊重しなければならぬわけですから、やはり憲法第二十五条の方向に向かって進んでいかなければならぬと思うのです。そうすれば基調としては、政府医療問題に取り組む姿勢としては、当面は医療保険という制度であるとしても、究極はやはり憲法二十五条の精神に沿うて医療保障というものを達成していかなければならぬということですから、やはり姿勢としては、将来憲法二十五条に示されておる社会保障医療保障という方向に向かって前進するのだという姿勢というものは当然とられなければならぬと思うのです。そこで、社会保障か、あるいはまた保険主義かという問題はございますけれども、基調としては、どこまでも憲法二十五条に示された社会保障医療保障というものが基調にならなければならぬ、こういうふうに私どもは理解するわけでございますが、その点はいかがでございますか。
  80. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 理論的にはたいへんわかり  やすいことでございます。河野君の所論について、私も同様に賛成をしたいのでございます。しかしながら、社会保障医療保障をまかなうものが税金だ、こういうことを考えてみますると、現状におきましてはなかなか、税は高いと言われるし、減税もまた必要だと言われる。だから、こういうことは、やっぱり国がよほど経済発達をし、そうして高度経済になりまして、国民負担ということがいまほど論議されないような社会状態になったら、いまの御説のようなことになろうかと思います。しかしながら、どうも現状におきましては、私が自説を固執するようですが、やはり保険制度のほうが望ましいのではないだろうか、そういうことによりましてやっぱり本筋を改めていく、そうして初めて国民協力を得られるのではないだろうか、かように私は思うのでございます。特に貧乏人等につきまして、これが非常に負担ができないとか、こういうようなものについては、これはいわゆる社会保障制度の面でできるだけのめんどうを見るというようなことじゃないだろうか、かように思います。基本的なものの考え方をすれば、そこへ行くのが望ましい状態だ、また憲法もそれを明示しておりますから、当然われわれも努力すべきことだ、かように思います。しかし、現状はほど遠い段階ではないだろうか、かように私は思います。
  81. 河野正

    河野(正)委員 私は、ものごとには段階がございますから、そこで段階を踏むということについては異論はございません。しかしながら、段階を踏むといたしましても、究極の目標というものはどこにあるのだ。この目標というものはまたきわめて重要だと思うのです。この目標なくしていろいろやられますと、私は、さっきからいろいろ論議がありましたように、医療問題の紛争というものをもう繰り返すだけで抜本的解決をはかることはなかなか困難だろう、こういうように理解をいたすわけでございます。そこで、憲法で示された方向が一つの目標であるといたしましても、その過程の中で保険制度というものが行なわれていくということならば、私どもも一応、承認はできませんけれども、まあまあ了承することにやぶさかではございません。しかし、それにしても、今度の健康保険法の一部改正ではないが、やはり総報酬制をとりますと、患者の保険料が二倍、三倍と、そういう結果が出てくるし、それからもう一つは、薬剤費の半額負担ということになりますると、貧乏人は思うように医者にかかることができない、医療というものが金持ちと貧乏人によって差別される。こういう現象というものは、やはり前進する過程の中とはいいながら、総理は一歩後退二歩前進というようなことばを使われましたが、医療保障へと前進していかなければならぬ過程といいながら、そういう後退の方向をとるということは好ましいことじゃない。この点は、いろいろ聞いてまいりますると、やはり自民党の諸君の中にもかなり強い批判がございます。それほど国民というものはいま政府の方向というものについては非常に大きな抵抗を持っておる。この点はぜひ理解を願わなければならぬ点だろうというように私ども考えております。したがって、われわれは、やはり現在は医療保険の完全なものを達成していくということが当面の任務であるといたしましても、究極は完全な医療保障の達成ということになければならぬということをひとつぜひ総理も確認を願いたいと思うのです。これは後ほどひとつお答えを願いたいと思います。  それから、先ほどから申し上げておりまするように、今日医療問題をめぐります波乱というものが続いておるわけですが、こういう事態というものは、これは国民いずれも好ましいことでないことは明らかでございます。医療問題の混乱があって得するものは一人もないわけですから、したがって、こういう混乱というものはすみやかに収拾をしなければならぬ。これは当然だと思います。と同時に、今日までここ数年間というものは、全く年中行事のように医療費問題を中心にする混乱、紛糾というものが続いてまいっておりまする現状でございますから、当面している今度のは、いま足元に火のついた東京地裁判決の問題をすみやかに解決する必要があると同時に、もう一つ医療費問題の混乱、紛糾を呼び起こしてまいっておりまする根本的な病根の根っこを断ち切る方策というものも並行して早急にやっぱり確立しなければならぬ、こういうように私は考えるわけでございますが、それならば、総理としてはこの医療問題解決の抜本的な腹づもりについてどういうふうにお考えになっておりまするのか。この点、私はきわめて重要な問題だと思うので、医療問題の抜本的な解決策、それらに伴いまする総理の腹づもりというものをひとつ明確にお聞かせをいただきたい。
  82. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基本的な態度については、先ほど来申し上げる憲法二十五条、この趣旨に基づいての行く行くは社会保障の一環としての医療保障であるべきだ、こういう点はわれわれのたいへん実現しにくい、また悲願だ、かように考えてもいいかと思います。これは確かに一つのわれわれの理想である。そういう意味で、その方向への努力をしてまいりたい、かように思います。ただいままで申し上げましたように、結局は保険料でまかなうのか、あるいは税でまかなうのか、こういう問題になるのでございますから、これがわれわれの悲願だというのが、現状から見ましてただいま適当することばではないか、かように私は思います。  そこで、ただいまお説の中にもありましたように、総報酬制を採用したこと、これが先ほど申すような一歩後退というような意味でもございますが、これは、しかし事務的には処理し得るというか、いわゆる一定の限度を設けるということで了承が得られるのではないだろうかということを事務的には考えたもののように思まいす。  また、第二点で、幾らかの現金を持たなければ、ならない、そのために貧乏人は診療も受けられない、せっかくの制度がそれでは死ぬるじゃないかということでございます。これはたいへん一般の、心を打つ問題でありますし、いわゆる現金を持って行って診療を受けるというそういう事柄が今回の制度改正で非常な批判を受けておる、これも確かに後退の部類になるだろうと思います。しかしながら、この点は、先進国等におきましても、その診療の状況等から見まして、やはり現金を持つということもやむを得ないのじゃないか、こういう経験を持ったところがあるようでありますし、あるいはまた国によりましては、現金で支払ってあとで保険料でこれをまかなって補てんしていくとか、こういうような、私ども考えたより以上にずいぶん究っ込んだ考え方をした国もあるようであります。それぞれのものが医療制度医療保険で悩んだ暁といいますか、悩んだ結果がいろいろなくふうをしたので、必ずしも診療を受ける側から見ましてそのほうがよろしい、かようには言えないような状況だと思いますが、それぞれにその発達の過程におきましては、こういうような悩みもあるのだということを御了承いただきたいと思います。私は、国費あるいは保険料等の負担が日本のように低いところは他の国に比べてもないのじゃないか、そのよくも保険料の安いところでいまのような医療保険を実施しておる、そうして国民の健康管理をやっておる、かようにも実は考えるのでありまして、いままでの関係方々の努力というものに非常に敬意を表するものでありますが、最近になりましてややこれが乱れてきた。したがって、各保険組合などもそれぞれみんな赤字を出しておる、こういうことで非常に悩みが深刻になりつつあります。この深刻になりつつあるそのもとについて、これはやはり根本的に真剣に取り組まなければならないのではないか、かように私は現状について考えるのであります。それを一体いかにするかということでございますが、これは、まことに組合の数も非常に多いし、制度自身から見ましても、健康保険制度国民保険制度と大まかな二つの柱がございます。さらに組合保険等もございますし、たいへん制度自身も複雑多岐にわたっておると思います。これだけを片づける、これはなかなかたいへんな大問題だと思います。しかし現状におきましては、との大問題に触れざるを得ないときになっているのじゃないか。そういう意味で各界の有識、また経験者等を集めての審議会で十分その基本的な制度についての構想を練っていただきたい。それでなければ、各方面の方々の満足を得るようなものはとてもできないと思います。ただし、この点に真剣に取り組むことが私の内閣一つの使命でもある、かように実は考えておるのでありまして、ただいまお尋ねになりました基本的な問題、それと真剣に取り組んで今日にしてこれを正さないと、おそらくたいへんな国家の負担になるだろう、そして、その負担も生きてくれればよろしゅうございますが、十分の効果をあげることができず、また各組合間の不公平、こういうような問題になると、大きな社会問題であるばかりでなく、政治問題にもなるだろう、かように思いますので、これはひとつ真剣に取り組んでまいりたい。相当の時日を要することだとは思いますが、これは真剣に取り組むべき問題だ、かように私は考えております。
  83. 河野正

    河野(正)委員 いまの医療費問題をめぐります紛争を解決するために、やはり抜本的な施策というものを推進しなければならぬ、そういう質問の中でいろいろ総理からお答えを願ったわけでございますが、医療保険の中身につきましては、多種多様の組合等もあるし、あるいはまた給付内容も非常に多種多様の内容を持っておるし、そういうことからそれぞれ国民の間にアンバランス、格差、不公平というものが存在をいたしておることは、いま総理からもお答えのとおりです。したがって、それらの一切の格差なりアンバランスなりを解消する、これは医療保険の一元化という問題に通じていくと思うのです。私どももそのことがきわめて望ましいということで、今日までいろいろと訴えてまいったわけです。たまたまいま総理からも、いろいろな医療保険の内容における格差なりアンバランスなり不公平なり、そういうものを、時間はかかるけれども逐次取り除いていきたい、結局、究極には医療保険の一元化ということに通じていくと思うのですが、そのように理解をしてよろしいかどうか。
  84. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま、河野君はその道の人ですからよくおわかりだ、これはたいへんな、複雑多岐にわたるものでございます。いままでも、人によりましてはある程度プール制――その一元化する前の方式としてプール性を提唱しておる方もあります。しかし、現状におきましては必ずしも各組合の協力を得ておるような段階だとは思いません。したがいまして、先ほど来申しますように弊害といいますか、いま生じておる事態、これについての認識をはっきりして、そして将来あるべき姿というものを予想し、また実施可能な面から順次これを軌道に乗せて、そうしてわかりやすいものにしていく、将来は、行く行くはこういう制度が単一化され、そして先ほど言われるような医療保障、そういう形に発展していくことが望ましいことだ、かように私は思いますけれども、それには非常な時日を要し、段階を経なければこれはできるものではない、かように私は考えておる次第でございます。
  85. 河野正

    河野(正)委員 いろいろいま御見解を承ったわけでございますが、結論的に申し上げますと、いろいろないまの医療保険の中におきましては、さっき申し上げましたが、アンバランス、格差あるいはまた不公平というものが内在をいたしておるわけです。そういう弊害を、長年はかかるけれども逐次取り除いていきたい、そして単一化、一元化という方向に進んでいきたい、そういう努力を続けていきたいというふうな構想をお示し願ったというふうに理解いたしますが、そのとおりでけっこうでございますか。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 確かにそのとおりでございます。しかし、非常に簡単に、ただいまもうすぐできるようにお考えになりますと、この問題はそうではない。私は、そういう方向であるべきだ、しこうして、その取り組み方は慎重にやっていくつもりでございます。
  87. 河野正

    河野(正)委員 私は、やはり総理が今日まで口を開けば人間尊重社会開発、それから人命尊重、こういうことを訴えられてまいっておりまするたてまえからも、いまの新しい方向、御見解と申しますか、そういう点について今後最大の努力を続けられ、そして一日も早くそういう内容の整った医療保障というものが確立するように、この辺はひとつお願いをいたしておきたいと思います。そこで、いろいろ今後医療制度に対しまする抜本策が、いまの単一化の問題もその一つの方向だと思いますけれども、いろいろはかられてまいるわけでございますけれども、その際に、いまの法のたてまえ、たとえば健康保険法第二十四条ノ二の問題もございます。あるいは、また社会保障制度審議設置法第二条第二項等の問題もございますが、よりりっぱな、よりよい制度というものを確立していく。そのためには、法のたてまえからも、政府としては各審議会の意見なり答申なり、そういうものを十分尊重を願うというたてまえになっておるわけです。ところが今回の東京地裁の位野木裁判というものは、ある意味におきましては、政府がいま法律のたてまえからいって当然意見なり諮問というものを尊重しなければならぬそういう審議会というものを軽々しく取り扱ってきた、そういう点に対します一つの警告であったというふうにも私は理解することができると思うのです。そこで、今日医療紛争という問題がしばしば繰り返されるということは私どもの好むところではない、また国民の好むところではないわけです。今度の東京地裁の教訓というものは、やはり審議会の意見なり答申というものを十分尊重しなかったというところに問題があるわけでございますから、したがって政府としては、この審議会というものに対し大いに反省をする必要がある、審議会に対しまする取り組み方、態度というものについては大いに考え直す必要があろうというふうに私は考えるわけでございますが、これらの各種審議会に対しまする今後の政府の態度、方針、この点はきわめて重要でございますから、率直にひとつ御意見をお聞かせいただきたい。
  88. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 各種の審議会に対する内閣の態度は、もうしばしば申し上げたとおりでございますから、重ねて申し上げませんが、もちろん審議会を設けて、そしてその道の権威者の御意見を聞く。したがいまして、これはただ拝聴するというだけじゃございません。審議会がそれぞれ手続を経て答申される答申は、その趣旨を十分尊重する、そういうことでなければなりませんので、もちろんその態度に変わりはございません。今後とも審議会は必要によりこれを設置し、また各界の権威者の意見を求めて、そして答申を得て、それを尊重して行政をやっていく、これは変わりはございません。ただ私は、ただいま問題になっております両審議会等につきましていろいろ考えさせられるのでありますが、本来から申しましてはっきりその立場が違っておるものを一緒に集めて、そして審議会を構成したこと、これがいい方法であったかどうか、これもやはり私ども考えさせられるのであります。時にそれらの方々が自分たちの意見が尊重されないということで、この審議会から脱退される、そして審議会が開けない、そうしてそこで協議されない、そのために審議会の運用ができない、これが政府の責任だと直ちに言われる、こういうことが起こるというこれ自体も私はやはり考え、見直すことが必要じゃないかと思います。審議会の委員になられた方は、もちろんその団体を代表する、こういう資格で御意見は述べられない、かように思います。やはり審議会にはそれぞれの団体の代表であるかのような形では出て見えますけれども、しかしながらそれにはとらわれないで、公正妥当な御意見をなさる、国民全体のための審議会の委員としての活動をなさる、かように期待をしたいのであります。したがいまして、今回などもどうか早く審議会に帰られて、そして本来の仕事のその審議を尽くしていただきたい、こういうことを政府が申しておりますのも、かような意味合いでございます。私は、今回審議ができないとか、あるいは脱退するとか欠席するとか、こういうような事柄につきましてたいへん遺憾に思っております。どうか、政府自身も審議会の答申を尊重するという立場を堅持しておりますので、各委員方々におかれましても早く審議会に帰られて、そうして十分の御意見を全体の福祉のために述べられるように期待する次第でございます。
  89. 河野正

    河野(正)委員 いま総理はきわめて一方的なお答えであったわけでございます。と申し上げますのは、なるほどそういう面もあるかと思いますが、しかし私は、審議会のすべてがそうであるというふうには理解をいたしません。むしろ私は、政府がこの審議会に対して非常に軽視の態度をとってきた、この辺が非常に問題だと思うのです。一例をあげて恐縮ですけれども、たとえば社会保障制度審議会に二月の八日に精神衛生法の一部改正が諮問されまして、二月十日に審議が行なわれて、そして精神衛生法に対しまするいろいろな意見が述べられたわけです。ところが政府は、もう社会保障制度審議会と並行して、精神衛生法が取りまとめられました。こういう新聞発表をいたしておるわけです。こういう具体的な事実を見てまいりますると、やはり政府が、審議会というものを単に事務的に形式的に機械的に取り上げられ、またある場合はとの審議会を隠れみのとして取り扱う、こういう傾向があったと私は思うのです。ですから、審議会の中の一部面については、あるいは総理がおっしゃったようなことがあるかもわからぬ。ですけれども、私は全般的にいえることは、やはりいまの政府審議会というものを非常に軽々しく取り扱ってきた。具体的な例はたくさんあるのです。時間がございませんからいま一例だけ申し上げましたけれども、そのような事例があることをあわせ考えますると、私は、やはり今度の東京地裁位野木判決というものも、そういう政府審議会の意見なり答申というものを軽々しく取り扱うということに対する一つの警告であったというふうに理解をいたしまするがゆえに、今日までしばしば委員会において総理が御答弁をなさったということであるけれども、私は、やはりこの位野木裁判を契機として、政府はこの審議会に対する態度というものを改めなければならぬというように考えるわけでございますが、いかがでございますか。
  90. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま河野君が指摘なすったような事例も間々あると思います。私も、長い官吏生活等から見まして、審議会等をさような意味に使った場合もございます。しかし、審議会自身が最初の原案から案を作成するという場合もございますし、またものの順序として、政府が何か案を持っておれば、その政府の案を出してくれということで、政府の原案というものを審議の中心にして基礎に取り上げて、そして議論する場合もございます。これは一朝一夕に簡単に審議会を尊重したとか尊重しないとか、こういうことには、その事例はなかなかならないと思います。しかし、御注意もございましたから、できるだけ私ども考え方は、その答申はどこまでも尊重するということで、それには政府考え方に変わりはございませんので、各省も督励いたしまして、十分誤解のないようにいたしたいものだ、かように今後とも気をつけてまいるつもりでございます。
  91. 河野正

    河野(正)委員 これは審議会の意見なり答申を尊重する程度の問題でございます。幅の問題でございますが、私は、やはり尊重する以上は完全尊重というたてまえが貫かれぬ限りは、いろいろな問題というものは解消しないと思うのです。  そこで、大蔵大臣も御出席でございますからひとつお尋ねをしておきたいと思います。それは、健康保険法が今度の国会で出てくるか出てこぬか、これは明確でございませんが、もうすでにこの健康保険法が改正をされるのだという前提で、四十年度予算というものが通過をいたしておるわけです。そこで、われわれがいまの審議会の意見尊重と関連をして考えるわけでございますが、もし完全尊重をされるというたてまえがとられるという場合に、これは予算上及ぼす影響というものは非常に大きな影響が出てくる場合があると思うのですけれども、たとえば審議会のほうが、一部負担は困るのだ、あるいは総報酬制は困るのだ、極端に言いますと、そういう意見というものが審議会に出てくるということもやはりこれは予測しなければなりませんし、そうすると成立、通過をいたしました予算との関連性というものが、審議会の意見を尊重するということになりますと出てくると思うのです。ですから、ややもいたしますと、いままでの状況を見てまいりますと、そういう予算に影響を及ぼすような場合には、これは審議会の意見というものを軽視する、そして予算の執行というものができるような形で進めていく、こういう傾向というものが強かったと私は思うのです。ところが、特に今度は東京地裁で、審議会の意見を尊重しなかったということでこの新しい問題というものが提起されているわけですから、したがって、私は、総理がいまお答えになったように尊重するということでなくて――尊重というものは完全頭重だということが貫かれなければならぬというように私は思うわけでございます。この点については、総理から完全尊重が願えるのかどうか、あるいはまた、もし完全尊重されるということになると、この健康保険法で、あるいは予算の問題と関連をして新しい問題が出てくるということも予想されるわけでございますが、この点は総理からと大蔵大臣からお答えをいただきたい。
  92. 田中角榮

    ○田中国務大臣 審議会は非常に慎重に検討しておるのでございますから、私は政府がこなし得る答申を出していただけると思います。現在の保険医療の全般を通じて見ますと、とにかくイギリスを除いては最高ランクにあるわけでございます。そういう状態から考えて、日本の財政負担ということを考えないで答申をされるとは思いません。保険でも医療でも、御承知のとおり保険料でまかなうか、国民の税金でまかなうかということなんです。それ以外にまかなう方法はないわけであります。ですから、政府がどこからか金を持ってきてやるのでなく、国民の税金を財源としてまかなうのか、受益者負担ということが原則か、こういうことで、世界的ないろいろな例もあるわけでありますから、こういうものと日本の国力とを十分検討されて答申せられると私は思います。ですから、そういう立場で答申が出れば、当然これを尊重いたします、こう答えておるわけでございますから、完全実施ということでございます。しかし、財政収入がいままでのように財源もなく、相当大きな減収も出ておる、こういう状態から考えまして、社会保障の中で二〇%近い対前年度比で増しても、その内訓は、四十数%は医療保険だ、こういう状態を十分に検討された上に、将来の財政負担、国民の税でどの程度まかなうものか、こういうことは十分検討されて、広い視野に立って答申をされると私は思いますから、いまの段階においては、完全実施をするという基本的な政府考えで間違いはないと思います。しかし、これはもう財政負担ができないというようなものが出れば、これはもう国会であらためて御審議を願うということになるわけであります。
  93. 河野正

    河野(正)委員 いまの大蔵大臣答弁については非常に問題があると思うのです。あらかじめ政府の方針に沿うような答申が出てくるかのような答弁であったわけですけれども、それでは審議会の自主性というものが全然なくなってしまうと私は思うのです。ですから、審議会の自主性というものがやはり非常に重大な問題になってくると私は思うのです。その際には、あるいは政府の方針と反するような答申が出てくるかもわからぬ、そういうことは当然考えられるわけでございます。したがっていまのようなお尋ねをしたわけです。そこで、この審議機関というものが御用機関でございますれば別でございますけれども、これは公正な中正な審議会であるということが理想でございますから、したがって、その審議会の自主性というものを尊重するとするならば、やはり政府の方針と反するかもわからぬ。政府の方針と反したならば完全尊重せぬのだということでは困るのであって、政府の方針と反しても、やはりそういう答申が出てくるならば尊重するというたてまえが貫かれなければならぬ。そこに審議会の大きな意義があると私は思うのです。それをなくすると、審議会の意義というものは全然なくなってしまう。そういうことになりますから、隠れみのとして使うのではないかというような批判も出てくると思うのです。そこで、私はこの審議会の答申なり意見というものについては、完全尊重というたてまえというものをここで強く主張するわけです。これは社会保障審議会でも、尊重ということは一体どういう尊重だということで、非常に各界、各方面の強い意見があるわけです。これがないと、やはり審議会のほうでも意欲をもって審議しないですよ。どうせわれわれがまじめに審議しても、政府がかってに尊重せぬというようなことになれば意味ないというようなことで、だんだん審議会の皆さん方が意欲をなくしてしまうと思うのです。そこで、私は、やはりたてまえとしては審議会の意見なり答申というものは完全に尊重するのだ、こういうたてまえというものが貫かれるということが、よりよいりっぱな法律をつくるということに相なってくると私は思います。そういう意味で、基本的なものは完全尊重するのだというたてまえが貫かれなければならぬと思いますが、総理から伺いたい。
  94. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま大蔵大臣が答えたとおりでございます。私もしばしば申し上げますように、審議会の答申は尊重する、かように申しております。しかし、国会に対し、また国民に対し責任を持つものは、これは政府でございます。審議会が持つわけではございません。ただ政府が尊重するゆえんは、政府の施策が間違っては困るのだ、ここで各界の権威者の意見を徴する、そうして、その意見を聞いてそれを尊重していくのでございますが、責任を負える範囲において、政府が最後に決定をしていく、これは河野さんもやはり御了承いただかないと、やはり国会に対して責任を持ち、また国民に対して責任を持つものは政府である。その立場は私どもは忘れるわけにはいかないのであります。したがって、ただいま大蔵大臣から御説明いたしましたように、もちろんこれが政府の御用機関という意味ではございません。ときには政府の気に食わぬことも答申されるだろう。ただ政府においてそれを処置するに差しつかえないといいますか、いわゆる責任が持てる、かように思えばこれは尊重していくだろう、かように思います。しかし、いわゆる完全尊重ということばはどういう意味かわかりませんが、きめたとおりやるのだぞ、これは、政府の責任というものと審議会の責任というものはやや違いますから、そういう点では政府が最終的な責任者だ、こういう立場で決定をする、かように御了承いただきたいと思います。私は、それで別に審議会の権能を阻害しておるとは考えませんし、また審議会の委員方々も、政府がかってなことをやるのだからおれのほうは審議、答申はしない、かような状態にはならないと思います。政府は責任を持ってそういう点がこなせるかどうか十分検討もする必要がある、かように私は思います。ただいま大蔵大臣の答えたことと、私の先ほど来説明していることには矛盾はないのでございまして、同一の見解を持っております。
  95. 河野正

    河野(正)委員 時間がございませんから、いろいろ異論がございますけれども、ここで論議するわけにまいらぬと思いますけれども、私がいまの問題を特に取り上げてまいりましたのは、今度の東京地裁判決を見ましても、政府職権告示というものは違法ではないというが、ところが裁判所のほうでは、これは意見を聞いただけではないか、答申ではないのだ、そこで、これは違法行為だということで、この中身の問題についての見解の相違から今回の判決が出てきていると思うのです。そういう意味で、いまの尊重の問題というものは、やはりこの問題にも関連する重要な問題でございますから、私はあえて提議をいたしたわけです。しかし、時間がございませんから、したがって、今度の位野木判決そのものについて一、二お尋ねをいたしたいと思います。  これも保険者連絡協議会――健保連、国保中央会、共済連、地方公務員共済組合協議会、これが二十六日総理厚生大臣に対しまして、今度の判決の効力というものは全保険者に及ぶのだ、そのように処置をしろ、こういう要望書を提出されたというように私ども承っております。いろいろ午前中論議されておりますから、いろいろお伺いいたしませんが、そういうたてまえを保険者がとるといたしますと、勢い、この四つの保険者だけでなくて、他の保険者のほうでも旧料金だというような主張なり、あるいは行動をとってくる可能性があると思うのです。そうしますと、今度の原告でございます四つの保険者団体、二十二万七千ということでなくて、全保険者に及びますと非常に重大な問題だと思いますので、医療機関の窓口では新旧二本立ての料金でいざこざが起ってくる、こういうように思います。私は、この点は非常に重大な問題だと思います。こういうような事態が出てきた際に、総理は、行政事件訴訟法第二十七条のいわゆる異議申し立て、これは即時抗告をしたって異議申し立てができるわけですから、そういう大混乱というものが全国的にほうはいとして起こってきた、そういう場合に、最後の強権発動をされる御意思があるのかないのか、この点をひとつお答え願いたいと思います。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 午前中にもお答えいたしたとおりでございまして、ただいま私ども即時抗告をいたして、そうして法廷で十分私どもの主張を明らかにしたい、かように考えておるのでございまして、さような異議申し立てをする、いわゆる指揮権発動というようなことをする考えはただいま持っておりません。
  97. 河野正

    河野(正)委員 しからば全国各地で大混乱が起こってきたが、その具体的な収拾策はどういうことをお考えになっておりますか、ひとつお聞かせいただきたい。
  98. 神田博

    神田国務大臣 そういう混乱を来たさないように十分話し合いをし、また窓口も指導してまいりたい、かように考えております。
  99. 河野正

    河野(正)委員 そういう混乱を起こさせないように十分話し合いを進めていきたいということは、どういう話し合いをお進めになりますか。
  100. 神田博

    神田国務大臣 予想されますことは、健康保険組合あるいは当該組合なりに御相談をする必要があると思います。支払い側全体としての御相談の余地もまたあろかと思っております。いろいろ考慮いたしておる最中であります。
  101. 河野正

    河野(正)委員 中央医療協議会についてはどういう態度をおとりになりますか。
  102. 神田博

    神田国務大臣 中央医療協が現在のような開店休業的な状態になっておることはまことに遺憾でございます。ことに薬価問題の是正も緊急なものを控えておりますので、この点につきましても十分御相談をいたしまして、これも活用いたしたい、こういう考えでおります。
  103. 河野正

    河野(正)委員 いま中央医療協議会が空中分解しておるわけでありますが、政府としては中央医療協議会をひとつ開催させるという努力をし、そうして問題の解決をはかられる、こういう御意思がございますか。
  104. 神田博

    神田国務大臣 あらゆる手を打ってひとつ十分検討して善処したい、かように考えております。
  105. 河野正

    河野(正)委員 あらゆる手ということでなくて、いま具体的に中央医療協議会の開催の努力をし、そうして再諮問なら再諮問をするというような処置をおとりになりますかと私は言っておるわけですから、とるならとる、とらぬならとらぬ、こういうふうにひとつお答えいただきたい。
  106. 神田博

    神田国務大臣 再諮問をするというような前提では考えておりません。円満に事が運んでいくようなことの御相談をしたい、こういう考えでございます。
  107. 河野正

    河野(正)委員 それからこの裁判が、もし原告が言っておりますように職権告示が無効だ、緊急是正が無効だという判決が出た場合に、医療機関には非常に大きな損失を与えると思います。あるいはまたこの四つの組合にいたしましても、一月、二月、三月、四月と診療報酬をとっておるわけですが、それを医療機関が払い戻さなければならないというような問題も起こってくると思います。そうした場合の処置はどういう処置をおとりになりますか。
  108. 神田博

    神田国務大臣 今度の決定では、さかのぼってやるということは非常な時間と混乱を来たすから、その必要はないというようなふうに動いておるように記憶いたしております。それから、いまのいろいろ仮定された問題につきましては、その時限においてそれぞれ配慮いたしたい、かように考えております。
  109. 河野正

    河野(正)委員 いまの厚生大臣は非常に不勉強ですよ。あの判決をごらんになっていただくとわかりますが、そういうことが予想されるから停止したほうがよろしい、停止しておかないと、たとえば一年後、二年後になりますと、さかのぼって一年、二年の差額を戻さなければならないことになる、そういう事態が起こったらいけないから仮処分するのだ、五月から以降は停止するのだ、こういう判決の内容です。ですから、もし原告の言い分が通りますと、戻さなければいけないわけですよ。そういう経緯の問題についてはどうなさいますか。こういうことをお尋ねしておるわけであります。
  110. 神田博

    神田国務大臣 先ほどのお答えも兼ねて訂正いたします。また申し上げますが、それはその時点でそれぞれ配慮いたしたいと思います。
  111. 河野正

    河野(正)委員 その時点と簡単におっしゃいますが、たとえば窓口でも、新料金は御承知のように、時間がございませんから一例だけ申し上げますが、乙表の初診料は六十円が二百四十円、甲表が二百十円が三百九十円、こういう金頭が違うわけでしょう。そうすると、本人の場合はまあいいとしても、家族の場合一体どうなっているんだということになりますと、なかなか複雑なかっこうになってくるわけです。それからその時点で考えるとおっしゃっても、現実にその時点がきたらたいへんなことなんです。本人の場合は比較的処理できますよ、全額負担ですから。ですけれども、家族の場合は半分出しておるわけですね。一体新料金を出しておるのか旧料金を出しておるのか、いろいろな問題が出てまいりまして、厚生大臣がおっしゃるような簡単なことではない。この間の医療機関の迷惑というものはたいへんなことだと思うのです。それをいまおっしゃるように、その時点で考えますなんてなまやさしいことでは、これは被保険者の場合も家族の場合もあるいは医療機関の場合も決して納得できぬと私は思うのです。ですから私は、やはりそういう事態が起こったらどうするんだということは当然明らかにされておく必要があると思うのです。それが私は国民を安心させるゆえんだと思うのです。いま国民は非常に不安を持っているわけですね。医療機関も非常に不安を持っている。ですから、政府はそれらの方々関係者方々を安心させる必要がある。私は国会で追及するのが目的じゃないわけです。国民に安心していただこうということでここでお話ししているわけなんです。だから、その時点になったら考えますよということではなくて、抽象的なことではなくて、やはり国民が安心されるような答弁というものを明確にされる必要があると私は思うのです。
  112. 神田博

    神田国務大臣 ただいまお尋ねのような混乱の起こることを非常におそれているわけでございます。そこで即時抗告いたしたといういまの時点でございます。問題がそれで解決したわけじゃなく、今後そういうことが起こり得るわけでございまするから、十分検討いたしたいと思っております。
  113. 河野正

    河野(正)委員 そういうことで国民は安心しないと思うのです。国民の不安は尽きないと思うのです。それで、午前中も厚生大臣やめろというふうな激しい追及もございましたが、紳士を自認する私も、やはりそういうことじゃやめてもらわなければいかぬ、そういうことを言わざるを得ぬと思うのです。そこで、もちろん厚生大臣の責任というものは、今日の医療問題に対して混乱を起こさしているわけですから、重大だと思うが、時間もございませんから、議事進行に協力する意味でひとつ明確にしていただきたいと思いまする点は、今度の職権告示は違法だという判決が下ったわけですけれども、この職権告示については、これはもう厚生大臣のみならず、総理をはじめ与党の首脳部も一緒になって踏み切られたと思うのです。そういう意味で、私は今度の責任というものは、単に厚生大臣のみの責任ではなくて、総理以下、佐藤内閣全体にわたって、今度の責任というものはあると思うのです。この責任はどういうふうにお考えになっておりますか、ひとつ率直にお聞かせをいただきたい。
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この種の問題でかような混乱を生じたこと、私はまことに遺憾に思っております。先ほど午前中にもお尋ねがございましたが、こういう問題ができるだけ早く、裁判所の決定決定でございますが、ただい左私ども抗告しておる、そういうものについての決定を、即時抗告に対する決定といいますか判決といいますか、判断が早くとり行なわれること、同時にまたこの種の問題が他にふえんしないように、広がらないように、この木判決もできるだけ早い機会に結論を出していただきたい、これは裁判所に対して私どもそういう気持ちでおります。またもちろん裁判所に対しましても、この基本的判決につきましては、私どもは十分政府側の主張を尊重された判決があるものだ、かように期待いたしておりますが、こういう事態がいつまでもペンディングであることは一番困ったことだ、かように思います。そういう意味で早く結論を出していただくように、それを願ってやみません。
  115. 青木正

    青木委員長 時間がまいっておりますので……。
  116. 河野正

    河野(正)委員 所定の時間がまいりましたから、いまの点に関連をしてお尋ねをしておきたいと思うのですが、午前中から三十二条についてのいろいろな見解が取りかわされたわけですけれども、その見解とは別に、この保険者団体というものが三十二条の法文に基づいて他に波及するのだ、こういうたてまえをとっておりますために起こってくる混乱があると思うのです。ただ法律論の解釈じゃなくて、実際に保険者団体というものがそういう判断で、そういう解釈でこの医療費問題を処理してくるという可能性が一つ出てくると思うのです。ですから、私は単にここで法律論だけでこの問題を処理するわけにはまいらぬと思うのです。現場では保険者団体の見解でいろいろの医療費問題が処理されるという可能性が出てまいりますので、そのために起こってまいる混乱というものがもう一つあると思うのです。ですから、総理お答えになったような、単に三十二条に対する解釈だけではいかぬ面があるわけですね。というのは、そういう解釈で今度は向こう側が医療費問題を処理してくるわけですから、そこで起こってくる可能性があるわけです。これは単にいま総理がおっしゃったような法律解釈だけではなくて、これを中心として新たに起こってくる問題というものが当然予測されるわけですから、私は、これらに対する対策というものを総理は当然お考えになっておかないとたいへんな混乱が起こってくると思うのです。これらの点についてどういうふうにお考えになりますか、明確にお答えいただければ私の質問を終わりたい、かように思います。
  117. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今回の地方裁判所の決定では、先ほど来法制局長官がその判断の内容を読み上げましたように、三十二条の問題はないわけでございますが、しかし、この問題をめぐっていわゆる支払い者の各団体がまちまちの行動をとるということ、そういうことでは御心配になるような混乱を来たすだろうと思います。私は、この四団体については決定があり、その他の団体については決定がないのでありますから、その点は明確にされまして、その他の団体は良識のある行動をとってほしい、かように思います。もちろん判決が川まして、そうして遡及して、これの現状についての救済の問題等が起こりますけれども、それらの問題は、先ほど厚生大臣からお答えしておりますように、四団体についてはいろいろの問題があろうかと思います。それも善処しなければならない、そういう意味では、早く問題が解決することだ、かように最終的な結論を出していただくことだ、かように思いますが、その他の団体につきましては、良識のある御協力を願ってやまないものであります。そういう点で、厚生省におきましても、各団体に対しまして実情をよく説明し、その問に混乱を起こさないようにいたしたいものだ、かように考えます。
  118. 青木正

    青木委員長 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後は本会議散会後直ちに再開することといたします。  暫時休憩いたします。    午後一時二十九分休憩      ――――◇―――――    午後四時八分開議
  119. 青木正

    青木委員長 休息前に引き続き会議を開きます。  予算実施状況に関する件について質疑を続行いたします。山田長司君。
  120. 山田長司

    山田(長)委員 私は日本の将来のことを考えまして、この機会に、最近東京都議会の贈収賄の事件とか、あるいは吹原産業の事件とか、いろいろ黒いうわさが次から次と起こってきておりますので、これはただ単に中央の政治だけじゃなくて、地方政治にもかなりの不信を国民がいだく事件がたくさんに出てまいりましたので、一応この機会に、やはり粛正すべきものは粛正し、処理すべきものはすみやかに処理し、それからいっときたりとも国民生活に不安なからしむる方途を講ずる努力を払われることが政府要路者のとるべき急を要する問題だと思いまするので、この機会に、政治、外交あるいは教育や経済や社会問題等を申し上げることは時間的にできませんので、特に粛正に関する問題を数点にわたりまして、総理大臣はじめ関係閣僚に伺っておきたいと思うわけでございます。  最初に、数点のことを伺り前に、私は特に総理に伺っておきたいことは、実はきのう、おとといと私は大阪のほうへ行ってきたのでありますが、実はいろいろ検察当局の調べている問題につきましてどうしても検察審査会に対して――実は検察審査会というものは、いまの状態ではおざなりの感じがするのです。それはどうしてかというと、せっかく専門家の検察当局がいろいろな問題につきまして不起訴であるという結論を出し、そして不起訴ではないはずではないかというのでまた専門家が、検察審査会前に一応申し立てをする。申し立てをされたあとの検察審査会というものは、御承知のように、法律知識のない人が選び出されて――大阪の事例を見て私はびっくりしたのでありますが、法律知識のない人が十一名中ほとんど婦人ばかり検察審査会の審査員になりまして、それで、しかも任期が半年であるというので、法律的手続その他を教えているうちに任期がきてしまって、それでかわった。こういう事例を聞いてきたわけです。私は、せっかくその検察ファッショなるものをなくしようとして検察審査会なるものが設けられたけれども、いまのような状態で法律知識のない人が出て、それで任期が半年でかわってしまう。こういう状態では、せっかく検察行政の適正化をねらっておりながら、実際においてはそれができずにかわってしまうという結論がありはせぬかと思うのです。私は、この検察審査会なるものの審査員の任期というものは、半年という短い期間ではなくて、これは少なくとも一年以上の歳月を必要とするものと思うのです。こういう点について総理大臣の御所見はどんなふうにお持ちになられるか、まずいろいろな問題を伺っていく前に、このことをお伺いしておきたいと思うのであります。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 制度上の問題で、短くはないかというのがただいま御指摘になったところでございます。私の経験から申しますと、検察審査会はむしろしろうとであるという、全然法律家でないという、こういうところに、検事のとった措置の適正なりやいなやという判断が自由にできる。むしろ一般の意見、そういう意味意見が尊重されるものじゃないか、かように私は思いますので、しろうとであることはさしつかえない、また期間も一年というのがいいのか、あるいは半年というのがいいのかわかりませんが、むしろあまりそれにとらわれなくて、自由自在に一般人が検察当局の起訴あるいは不起訴等の適正なりやいなや、そういう判断を自由にするというそのほうがむしろ意味があるんじゃないだろうか、かように私は思いますので、ちょっと山田さんの御意見と違うようですが、私はむしろしろうとであることが望ましいんじゃないか。そういう方をいろいろまた教育をして、そして法律家にすることはないんじゃないか、かように私は思います。
  122. 山田長司

    山田(長)委員 総理のおっしゃられることも実はわからぬわけじゃないのでありますが、実際にその衝に当たった人たちの話を伺いますと、事務局が審議会のあり方を話をしておるうちに、一カ月に二回ぐらいしか会合を持たないので日が過ぎてしまうというのです。おまけに、もう少し会合を持ったらいいのじゃないかと言ったところが、予算が少なくて、会合をもう少しひんぱんに持ったらいいのだけれども、なかなか会合が持てない、こう言うのです。そうしますと、その結果として、普通の裁判上の事件というのは、御承知のように二審もあるし、三審もあるけれども、検事がこれは不起訴であると言ったらば実際どうにもならなくなってしまう場合が多分にあって、それで申し立てをするわけなんでありますから、その申し立てに対しては、審査員の人たちにまるきり法律のわからない人たちが集まったのでは、それはほんとうにしろうとが常識判断をするということがよい場合もあるでしょうけれども、実際において予算の点等でそれが回数を持つことができないというようなことになりますと、実際は全体の常識判断さえも実はできずに終ってしまうというようなことを伺ってまいりました。実は大阪へ参りましたというのは、審査会に書類が出ておるのがあるのですけれども、今月の末に審査員がかわってしまうので、またこれは新たになるから、また新たに勉強させなければならないから、とても近いうちには間に合わぬ、こういうことなんです。それで私は、これはずいぶん実際にぶつかってみて不備があるものだということを痛切に知ったわけなんてすけれども、そういう点で、せっかくこういう制度を設けたが魂が入らぬという感じがするのです、予算の面が少なくて。こういう点でもう少し開くようなことができないものですか、予算の面で。この点はどうなんですか。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 検察審査会が、その仕事がうまくできないというこの実情は、むしろ法務省のほうからちょっと説明さして――そのほうがいいかと思います。もちろん、こういう制度が有効適切に働くように考えるのが政府考え方でございますが、実情はどうなっておるか、もう一度法務省のほうから説明させます。
  124. 津田實

    ○津田政府委員 検察審査会につきましては、公訴権の実行に関しまして民意を反映せしめ、その適正をはかるという趣旨でできておりますことは、御承知のとおりでございまして、これは外国にあります大陪審の制度にのっとったものであります。したがいまして、一般民衆の方々が、どなたということなく参加できる機会があるということがたてまえでありますので、先ほど来御質疑のような制度になっているわけでございます。  なお、検察審査会の予算の問題につきましては、これは最高裁判所の予算の中に組み込まれておりますので、最高裁判所がその必要に応じまして予算を認められて検察審査会の予算に充てておる、こういうことになっております。法務省といたしましてはそのほうには関知はいたしておりません。
  125. 山田長司

    山田(長)委員 御承知のようにこの審査会の審査員というのは、選挙人名簿に従って選び出されて、それが抽選で審査員になるというような制度のために、日当八百円を支給され、それからもし予備員である場合には日当五百円しか支給されないというようなことのために――実際これはほんとうに重要なことだと思うのです。検察官必ずしも神のさばきができるものとばかりは私は考えないのです。そしてまた、さばいていることについて全く公平無私なさばき方をしたということも、中には必ずしもそうでない場合もあり得ると思うのです。それが日当八百円しか出されないということになりますと、一日千円かあるいは千二百円もいま取っている人がいるのですから、その人たちはせっかく審査会に出ていくために足が出るというようなことでは、大体審査会に出ていく意欲を失っちゃうと思うのです。こういう点について、それは裁判所の関係予算の範疇に属することではあるかもしれないけれども、全国的にいろいろあることだと思いますから、この点はどうかひとつ予算の面で十分御研究されて、そしてせっかく設けた制度に活を入れるような努力をしていただきたいということを総理大臣に申し上げておくわけですが、どうですか。
  126. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 よく御意見は伺っておきます。
  127. 山田長司

    山田(長)委員 次に、わが党の綱紀粛正委員会で実は扱った問題なんでありますが、これは一四国の高知県に起こった問題だけとして考えられないものでありますから、この機会に一応当局の人たちから、こういう場合にはどういう処理をすればいいのかということについてのお答えを願っておきたいと思うのであります。  それは四国電力が穴内川の水力発電所の工事に昭和三十五年十二月から三十八年九月まで着手をいたしました。その間に高知の山田警察署に対して総額三百二十五万円にのぼる金を治安協力費なる名目で現金寄付を行なったのであります。それで、この受領をした当時の森田、中澤という署長、これらの山田警察署長は、そのあと県に対して当然行なわなければならない所定の寄付の納入手続というものを怠ってしまいまして、それで寄付金の大半は交際費と飲食費に消費してしまいました。それで当時わが党の人たちは、去年の六月から九月の県の定例議会に、高知県の監査委員会に対して、地方自治法の規定による監査請求を高知県に対してしたのでありますが、これが全然取り上げられなかった。そればかりでなしに、現金の寄付を行なった四国電力は、一般の企業と異なる公益性の会社であるにかかわらず、その寄付金のうちの百九十二万五千円は、穴内川の発電工事を請け負ったところの鹿島、大成、間、西松、奥村、松村、これらに対して負担金を出させた。その負担金を出させたほかに、この贈収賄にからみましてわれわれが調査に行ったばかりでなしに、地元のわが党の県会議員団の人たちも調査団を派遣してこの調査に当たったのでありますが、この三百二十五万円の寄付金はどういう目的でもらったのかという質問に対しまして、ダム工事で労働者が多数集まり、治安が乱れるから特別の施設が必要なので警察から寄付を願い出た、こういうことが答えられました。それから第二点は、使用者側の四国電力あるいは土建業者から治安維持のために金をもらうことはいかなる意味かということを原警察本部長に明確な答弁を迫ったところが、よくありませんという答弁だけで、何も答えなかった。この点、警察は根本的に、金額ではなくて、やはりこういう問題につきましてはもっと明確な態度があってしかるべきではないかと思うのであります。それで、さらに第三点として寄付金の使途を、どういうものに使ったのかということをわれわれが行って調べてみましたところが、施設費と修繕費と防犯対策費と防犯補償費と、ほとど大半は飲食費と交際費に使っているということがわかったのであります。一体こういう寄付金を警察側で要求したものであるか、あるいは四国電力側でこうすべきであるということを言ったのであるかわかりませんけれども、いずれにしても、この点が不明確なままに次の検察当局の調べにまでいったところが、検察当局では、公金であるべき金だが公金ではないと、何だかさっぱりわからぬ答えを出したのです。一体、これは末端の警察署に起こったことでありますけれども、やはり明確な打ち出し方が出されなければ、威信を持っている警察というものが国民から全くばかにされる機構になりはせぬかという気がするのでありますが、この機会に、これらの問題についてどうお考えになられるか、関係大臣に伺っておきたいと思います。
  128. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ただいま御指摘になりました高知県の穴内川の電源開発工事に関する件でございますが、御指摘のように、電源開発工事をいたしまする際、労務者が約二千名ばかり集まっておりますので、これに要する交通あるいは災害の防止あるいは防犯というようなことのために警察署に申し出があって、警察官宿舎あるいはまた車両の施設等の現物提供をして、その他の金を合わせまして三百二十五万円というものを受け付けておるようでございます。この問題につきましてはすでに告発の手続がとられまして、その後捜査の結果不起訴処分になっておるのであります。しかしながら、この種の金を受け付けて使うということは、私どもといたしましても、これは穏当を欠くものだと思います。調査いたしました結果によりますと、警察本部長の承諾もなしに、現地の署長限りで処理していたようでございます。本件につきましては、ただいま御指摘がございましたように、住民訴訟も提起されて目下訴訟中のことでもございます。私どもといたしましては、今後このようなことのないように注意をしてまいりたいと思っております。
  129. 山田長司

    山田(長)委員 ただいまの問題につきまして社会党の高知県連ので、検察審査会に申し立てがなされておるようであります。いずれこれらの結論が出るものと思われますが、先ほど前段に私申し上げましたように、検察審査会というものができておりまする以上、やはりこれがいま遺憾の意を表されましたように、明確な結論が出ますことをこの機会に望んでおく次第であります。  次に、これもたびたび大阪に行って調べていることでございますが、近江絹糸で当時の社長である丹波秀伯氏が一億二千万の横領をした事件であります。これを何で私たちが調べておるかといいますと、政治献金に五千八百万円しているという事実が出ておるのです。しかもそれは井嶋検事正、卜部特捜部長、それから竿山担任検事、そういう人たちの前で、実はわが党の議員が七名ほど参りましてそのいきさつを伺ったのでありますが、そのときに五千八百万円間違いなく政治献金しているという答弁でありました。しかるにこれが不起訴になってしまったのですが、この点についてどうも不可解でありますので、これを法務委員会で実は過日大臣質問したのでありますが、私はそれでもなお了解ができませんでしたので、総理大臣にあてて実は質問状を出しました。その質問状の答えを見まして、どうも私はさらにこの答えに了解できない点がございまして、きょうは伺うわけなんでありますが、いろいろ時間の関係等でこの質問事項を詳細に伺っておられないのでありますけれども、二、三国政調査権の問題について伺っておきたいと思うのであります。  この不起訴処分にしました一億二千万の金というものは、一体これが会社のために使われようが、個人のために使われようが、やはり横領であることには間違いないと思うのです。それで、政治献金として五千八百万の金額まで明らかに当時の特捜部長はしているわけなんですけれども、これが不起訴になった根本理由というものは一体どういうところにあったのかということなんです。これは総理大臣がみずからこの答えをお書きになったものかどうかわかりませんけれども、この点、ひとつ不起訴になった理由というものを、同時に一億二千万円というものはほんとうに使い込んじゃっているのですから、それが政治献金であるというならば、知っておきたいのは、これは一体政治献金をだれにしたのかということは明らかにしなくちゃならぬと思うのです。しかしこれは不起訴になっておる事件ですから、この点がどうもわれわれの理解に苦しむところなんです。この点、ひとつお答え願いたいと思うのです。
  130. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねになりました近江絹糸に関する事件は、近江絹糸紡績株式会社の元社長丹波秀伯が同元取締役西村貞蔵と共謀の上、同社資金中より合計一億二千万円を横領したという事実について告発があったわけであります。それに対しまして、大阪地方検察庁におきましてこれを捜査いたしましたが、告発状に記載されました程度の金員を丹波秀伯らが同会社の資金より引き出したことは認められたのでありますけれども、その使途について捜査を尽くしましたところ、その使途は多方面にわたっておりますが、丹波個人の利益のために費消したと認め得るものがなく、丹波自身も会社のために費消したと弁解しており、これをくつがえすに足る証拠がないので、右容疑につきましては、結局犯罪の嫌疑不十分として不起訴処分に付したのであります。これが不起訴処分の理由でございます。
  131. 山田長司

    山田(長)委員 ただいまの答弁ではやっぱり理解できないのです。個人のために使用したのではないという場合には、やはり世の中にたくさんあることでありますが、贈収賄にならなければならぬと思うのです。個人のために使用したとするならば、これは横領にならなければならぬ筋合いのものです。この点がただいまの御答弁では、個人のために使用したのではないから横領にはならないのだ、こういう見解にあなたの答弁ではなっておると思うのです。個人のために使用したのではないならば、これは涜職であるとか、あるいは収賄であるとか、こういう新たな事案が発生しなければならぬと思うのですが、この点はいかがですか。
  132. 津田實

    ○津田政府委員 横領あるいは業務上横領につきましては、個人あるいは第三者のために費消したというような場合が通常の形態であります。本件につきましては、丹波秀伯らが会社の資金よりそれだけのものを引き出したことが認められることは、先ほど申しましたとおりでありますが、これを会社のために費消したと丹波秀伯は弁解をいたしております。この弁解をくつがえすに足る証拠はございません。したがって、告発事実に該当する事実は嫌疑不十分でありますので、不起訴処分にした次第であります。
  133. 山田長司

    山田(長)委員 そのいまの答弁を聞きますと、ますます不可解になるのですよ。それは会社のために使用したということであっても、世の中によくある贈賄の罪は、これは何も個人の利益ではなくて、会社のために贈賄をする場合がたくさんにあるのでありますが、これが贈賄をしたというならば、それじゃだれに贈ったのかということが出てこなければならぬ筋だと思うのです。いまの答弁では全然その点がそれじゃ贈ったのは贈賄にならないというのですか、どうなんです。
  134. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお答えいたしましたのは、告発事実に基づく、いわゆる丹波秀伯らの業務横領関係の事実について申し上げましたわけであります。したがいまして、その告発の捜査の関連におきまして、あるいは何らかの犯罪があるかという問題があるわけであります。しかし、この問題につきましても、これらの犯罪があるという端緒はございません。したがいまして、他の事件、他のただいま例としてお述べになりました贈賄とかいうような問題は、この事件の関連においては起こっておりません。したがいまして、他に事件は認められないということでございます。
  135. 山田長司

    山田(長)委員 実はこの問題は、もう一年半ほど前から私は担当して調べていたのでありますが、どうも世間で、この事件が終わらないうちに関係者はみんなかえられてしまうのだという話を聞いておったのであります。そんなばかなことはないと思って、実は当時の賀屋法務大臣に、そういうことが流布されておるけれども、この事件の結論が出るまではひとつ転勤を見合わせてもらいたい、こう言っておったのでありますが、それが去年、当時の担任の竿山検事は北海道のほうに飛ばされてしまった。それからさらに特捜部長は、これまた神戸のほうへ転勤、それから井嶋検事正もこれまた転勤、こういうことだったので、一体次々にこの担任の人たちを動かしてしまったというのはどういうわけなんだというので質問したところが、みんな転勤の時期にきたという。まことに表面は転勤の時期ということでいいのかもしれないけれども、この事件の結論まではひとつ転勤をさせないようにというので、当時賀屋法務大臣には言っておったのでありますけれども、それでさせないという確約は得なかったけれども、とにかくそれに近いことばは言われたわけだったのでありますが、これはかわってしまった。いまの答弁を聞きましても、これでは会社のためにというので贈ったならば、これは犯罪にならぬという意味の答えになってしまうと思うのです。大体これは国政調査の重大な問題になると思うのであります。刑事局がこのことについてとやかく言う筋じゃなくて、やはり国政を担当する国会が最高の行政の立場から見て、これらの結論は当然国会審議で明らかにすべき筋合いのものだと思うのです。ところが、今日までの刑事局長答弁は、いつも捜査の秘密に属しておるから言えないと言っておるけれども、捜査はとうに終わっちゃっているのですよ。このとうに終わっちゃっているものを、捜査の秘密に属して言えぬということになりますと、これは国会調査権に私は大きな支障を来たすと思うのであります。この点がどうして秘密に属するのか、秘密に属する理由をひとつこの機会に聞かしてもらいたいのです。それと同時に、国政に大きな支障を来たすというのであなたは言わないのかもしれませんが、何で政治献金をしたものを明らかにすることが国政に大きな支障を来たすのですか、この点を明らかにしてもらいたい。
  136. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 私から一応お答え申し上げます。  山田さんすでに御承知のとおり、先般山田さんから提出になりました総理あての国政調査権と検察権との関係に関する御質問に対して文書をもってお答え申し上げておりますから、政府考え方は一応御了承いただいているものと存じます。そこで、いまの会社のために出した金というものが自分のために費消したものでなければ、すなわち横領にならないから罪にならない。しかしながら、それは贈賄というようなこともあるのではないか、そういう点を追及する必要があるのではないかという趣旨お尋ねであるかと思うのでありますが、それらの点は、先ほども刑事局長お答え申し上げましたように、検察庁におきましては告訴に基づいて十分捜査も一いたし、調査もいたし、検討もいたした結果、犯罪にならない、刑罰法令に触れないということで不起訴処分にいたした次第でございます。このことは、御承知のとおり、当時の答弁書にも掲げておきましたように、検察官の行ないます捜査権の行使というものは非常に強権を持っておりまするし、したがって被告発人本人はもちろんのこと、関係の向き向きについても秘密裏の調査を進めることが少なくないわけでございます。そういう場合には、したがいましてそういう捜査を受けたり調査を受けたりする人の個人の名誉に関するごとき秘密事項もあるわけでございます。そういうものを国政調査の場として、ただいま御論議いただいておりますかような場において一々明らかにするということになりますと、個人の秘密を暴露するということになりますし、非常に大切なる人権の問題にも触れてくるということになるわけでございますから、その点は十分注意をいたしたい、それが一つ。  さらに捜査をいたしますにつきましては、いろいろ捜査の方法なり技術なりという点を検察庁は検討いたしております。いつ、だれからどういうことを聞いたか、その人の答えがどうであったかというようなことが公になりますると、その事件を離れて他の事件の捜査の場合にもこれが影響してくることになるわけでございます。ほかの事件の捜査にも大きく響いてくるおそれがあるというようなこと等も考えまして、国政調査権と検察権に関する秘密の擁護という点について、どうしても必ずしも皆さま方の御納得の行き得ないものが残ってくるということは、ひとつこれは御了承いただかなければならぬのじゃないかというように考えておるわけでございます。
  137. 山田長司

    山田(長)委員 政治献金として五千八百万の金を出したということが、当時の特捜部長からわれわれに言明されておるのですよ。しかるにこの五千八百万という金額が明らかになっているのに、このもらった者は明らかになっていないのですから、それならば、もらった者が明らかになっていなければ、これは横領なんですよ。会社のために使ったと言っているけれども、会社のために使ったというならば贈賄ですよ。これが明らかにならないというようなことになりますと、これを明らかにしないということになれば、これは検察ファッショですよ。政界に身を置く者としては、当然不明朗な事態というものを明らかにしなければならない責任があるんですよ。あなた方のことばを聞いておりますと、全くこれは都合のいいことだ。私はこんなことでは、質問者に対する答えというものには全然納得しません。五千八百万の金というものは、それでは政治献金だったのですか、横領だったのですか、調べた結果は。どうなんです。
  138. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 私どもの検察庁から聞いております点では、政治献金でございます。横領の事実はないようでございます。
  139. 山田長司

    山田(長)委員 政治献金ならば、だれにやったのですか。
  140. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 その点が、先ほどお答え申し上げましたように、個人の秘密にも関することでございますし、そういうだれにやったということについて調査を遂げたというそのいきさつというものが明らかになりますると、将来この種の捜査というものができにくくなるという検察官としての立場があるわけでございます。そこで、幾らだれにやったかということは、これは捜査の秘密としてごかんべん願いたい、かように申し上げているわけでございます。
  141. 山田長司

    山田(長)委員 何でこのことを強く言うかといいますと、実は各地も全部調べてみたんです。政治資金規正法にのっとって受け取った人があるのか、それから、一体それは事実か事実でないか調べてみた。そうしたらば、この会社から百万円の献金があっただけで、全然数字的に出てこない。ですから、これはいま言うように、数字的に献金がはっきり出ていない以上は、横領でなければならぬのですよ。あなたはそういうことを言うけれども、これは政治献金じゃないですよ、横領ですよ、自治省の届け出の中に出てないのですから。五千八百万政治献金とあなたはいまここで言明したが、この点は、これは横領でなければならぬはずですよ。どうです。
  142. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 政治献金と私は申しましたが、政治資金規正法に基づいて届け出があるいはなされていないかもしれません。それは、しかしながら、出すほうの側では政治献金と了承をして出したと私は思うのであります。ただ、いろいろの他の法律関係等も考えて、政治資金規正法の中に届け出がないということは、あるいはあり得る場合があるかと存じます。
  143. 山田長司

    山田(長)委員 五千八百万はその数字で出たとしても、一億二千万のあとの残りはそれじゃどうなったんですか。
  144. 津田實

    ○津田政府委員 先ほど申し上げましたように、一応告発事実に該当する一億二千万につきましては全部捜査を遂げておりますが、犯罪となるべきものはないという結論に達して不起訴にいたしました。
  145. 山田長司

    山田(長)委員 どうもこの事件は納得が全くいきません。それで、強い圧力がかかって検察庁がへこたれてしまったんだということが流布されておるのです。私は、やはりこういう問題については、もっと明確な態度で、私が壁頭申し上げましたように、やはり粛正すべきは粛正し、そして処断すべきものは処断するという検察当局の心がまえがなければ容易ならないことであるから私は伺っているのであって、第一、刑事局長がそう最後まで言い切れる筋じゃなくして、五千八百万については何が名誉に関係するのですか。そういうけしからぬ事態というものを明らかにしないほうがあなた方は国のためになると思っているのですか。どうなんです。
  146. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 もちろん検察当局としましては、粛正すべきものは粛正し、糾弾すべきものは糾弾するというたてまえでいたしておることは間違いございません。それを各検察官が勇敢に、常に勇気を持ってやり得まするように、公表のできない事柄については公表をいたさない、こういうことでなければならぬというように考えるわけでございます。この当該事件のことだけでなしに、一般的に犯罪捜査をいたしますについては、いろいろな聞き込み等をいたすわけでありまして、そういう場合に、聞き込みをいたした事柄等が一々公になるということでは、次の段階において検察官の活動をはなはだしく鈍らせるおそれがあるわけでございます。もちろんある程度の疑いを持ってお話しになったかと思いまするが、この問題について、他の問題についても同様でございますけれども、上層部から圧力をかけて措置を曲げさしたというようなことはございません。
  147. 山田長司

    山田(長)委員 どうも全く納得できないことなんでありますが、時間の関係等でこれはあらためてまた伺うことにいたします。  次に、いま新聞やラジオ、テレビ等で盛んに問題になっております吹原事件についていろいろ伺いたいと思います。なぜこれが最近のジャーナリズムに大きく取り上げられておるかというと、私から申し上げるまでもなく、当時の官房長官であった黒金氏がこれに関係があるということでジャーナリズムが大きく取り上げているものと思うのであります。そこで私最初に伺っておきたいことは、一体通知預金の証書というものは、一銀行の支店からそうなまやさしく発行されて出される筋合いのものであるかどうかという点です。私はこれはゆゆしい問題だと思うのです。これは一三菱銀行の長原支店の発行になったものであるが、もし全国の各支店等でこれに類似するような事態が起こったならば、日本の経済界は大混乱するばかりでなしに、全く容易ならない事態が起こると思いまするから、これはただ単に三菱銀行の支店で通知預金の証書を発行したということで簡単に解決がつく筋合いのものじゃないと思うのです。少なくとも日本屈指の大銀行の支店で発行されたこの通知預金証書というものが日本国民に与えた影響というものは、私は実に大きいと思うのです。少なくともこの預金証書というものは、何と言っても金が出なければならぬ筋合いのものですが、これが偽造されたとか、あるいは詐取されたのだとかいうようなことが流布されておるようでありますけれども、これは容易ならない事態だと思いますので、総理大臣と、大蔵大臣にもこれは当面の責任者として伺っておかなければならぬと思うのですが、この点、まず最初に総理から伺っておきます。
  148. 田中角榮

    ○田中国務大臣 ただいままで知り得た事情で捜査に直接影響がないと思われる問題に対して一応申し上げてから申し上げます。  過日、大蔵委員会要求もございましたので、吹原弘宣及びその関係会社に対する問題に対して調査をいたしました。市中銀行の融資の状況及び同人に対する三菱銀行の告訴問題、また関係銀行の融資の状態等を調査いたしたわけでございます。現在までに判明しました概要は以下申し上げるとおりでございます。  まず、市中銀行の融資について申し上げますと、大和銀行は吹原産業株式会社に対しまして冷凍倉庫三カ所の建設資金として十五億円、吹原冷蔵株式会社に対して五反田の冷蔵倉庫、ボーリング場建設資金として五億円の貸し出しを行なっております。また三和銀行からも五反田の冷蔵倉庫、ボーリング場建設資金として六億円の貸し出しがあります。なお、三菱銀行につきましては、本年の四月二十日現在で北海林産興業株式会社に運転資金として千八百六十九万円、吹原の家族名義で二千万円の貸し出しがございましたが、現在は全額返済されております。  また、三菱銀行の吹原弘宣に対する告訴問題につきましては、御承知のとおり、検察当局において目下捜査中でございますので、具体的に申し述べることを差し控えたいと存じますが、銀行を通じまして承知をしている概要は次のとおりでございます。吹原弘宣は、三菱銀行長原支店にかねてより個人預金取引がございましたが、昨年十月十四日ごろより、支店長の更迭祝いと称して大口預金の申し出を行ない、同月十九日、同人振り出しの他行あて小切手と引きかえに通知預金証書二通、二十億円と十億円を巧みに騙取いたしたわけであります。長原支店におきましては、間もなく当該小切手の資金化が困難であることに気づき、証書の返還を求めましたが、言を左右にしてこれに応じないので、同日中に吹原より、本証書は入金なく無効の証書である旨の念書を徴求いたしました。その後も証書の返還を求めて五カ月余り推移をするに至りました。本年三月十七日、外部のうわさにより銀行の本部がこの問題を知り、同支店長を喚問したところ、右のような事実を知り、以来本部によって当該証書の返還交渉を行なってきたわけであります。四月十二日に至り、証書のうち十億円の一通は返還されましたが、残り一通につきましてはなお回収せられておらないわけでございます。なお、同支店の勘定処理といたしましては、本件は入金されていないので、当然のことながら元帳に記入されておりません。したがって計数上にはあらわれておりません。これだけ御報告を申し上げまして、この報告をもととしてただいまの御質問お答えをいたします。  一体銀行が発行する預金証書というものはどういうものによって発行するのかということでございますが、当然個人に交付をする場合には、その人の同銀行に持つ預金残高の範囲内、もしくは現金が入金をせられた場合、そののちに発行すべきことは論を持たないところであります。入金もありませんし、同人の当座残高も三十億などあったわけではありませんから、その意味では、現金が入るからといってその巧みな言に惑わされて、現金の入金を待たずして証書を交付したというところに騙取せられたという事実が生じたわけでございます。
  149. 山田長司

    山田(長)委員 どうもわれわれには理解のできないことでありますが、一体日本の金融機構に携わる人たちというものは、大体支店長などというものは十五年ないし二十年の歳月この仕事に携わって、絶対にだいじょうぶだという太鼓判が押されるような人でなければ支店長になれない。それだから銀行に対する信用というものは国民の間からもあるものと思うのです。ところが、今度の事件というのは、御承知のように京都から転勤して一カ月、しかもこの一ヵ月の間にこれらのことがとんとん進んで、三十億の金となれば、少なくとも支店だけでどんな場合でも――私の知っておる支店長やあるいは銀行の取締役や頭取等に、実はこの質問をする前に聞いてきたのです。そうしましたところが、三十億の金の証書をつくるというような場合には、どんな支店でもこれは本店に問い合わせをしないようなものはないというのだ。それが今度の場合には、支店独自にやられたというふうな印象を持たされているけれども、支店独自でそんなことがやられるものとすれば、なおこれはゆゆしい問題です。日本の経済界に及ぼす影響は大きいばかりではなく、国民自体が銀行に対する信頼感というものを全く失墜してしまうと私は思うのです。この点、反駁してたいへん恐縮ですが、もっとしんのある説明のしかたをしてもらわないと納得ができません。どうです、その点もう少ししんのある御説明を願いたいと思うのです。
  150. 田中角榮

    ○田中国務大臣 銀行の支店長は、どこでも貸し出しの支店長権限というのは一千万円以下くらいが常識だと思います。しかし、本件は貸し出しではなく、預金の問題にかかっておるわけでございます。一つには過当競争ということもございます。当日はちょうど新旧支店長の交代の日であったというようなこと――私どもとしましては、銀行から報告があった事実だけしか申せないわけであります。そのほかは検察当局がいま強制捜査に踏み切っておるわけでありますから、当然明らかにせられると思います。しかし、私の立場といたしましては、金融行政の担当者として銀行からの調査を行なって、報告書に基づいて国会に対して御答弁申し上げるという以外にできないわけでありますから、常識的に考えてひどいものだというようなことは私もわかりますけれども、公式のこの席で調査報告以外には、私からは申し上げられないということは御了承いただきたいと思います。ただ、金融というものに対して国民に信用をつながなければならないという観点におきましては、各銀行に対して、かかる問題に対してはより態度を正すようにという措置はいたしたいと思います。
  151. 山田長司

    山田(長)委員 実は、報告だけしか報告できないと言われるので、どうもそれ以上知っておるのを全部言えといってみてもなかなか言えないだろうと思うのです。だけれども、これは国民全体が常識的に判断してみた場合に、一支店長の仕打ちとは全然考えられないのです。ここに問題があると思いなす。それからこの事件も、ただいまの大臣の御答弁によりますと、支店長の更迭の騒ぎの最中でこういう粗漏があったようなものの言い方でありますけれども、実は私の調べた範囲によりますと、この吹原なる者はいわば青年です、四十歳くらいの人ですから。この人は総理大臣官邸に木戸御免で、フリーパスだという。ここで問題は、黒金官房長官とのいろいろな打ち合わせが行なわれたということが流布されておるわけですが、こういうことで、やはりこの支店長との関連が考えられないということはあり得ないと思うのです。しかし大臣は、ここでは報告だけだということで、それ以上のことは答えられないというから、私はそれらについてこれ以上のことを言うことを差し控えますが、実はこの預金証書を持っておる人に会ってまいりまして、コピーをとってきました。一体この二十億の預金証書というものを出す以上は、三菱としても、こんな架空な名義の人に対して当然通知預金証書というものを出すはずがないと思うのです。これは架空名義のものであるのか、ほんとうの名義のものであるのか、おそらく支店として調べていないはずはないと思う。この点、報告書には架空名義で出したという報告がありますか。それとも架空名義のものではなくてほんとうのものに出したという答えでありますか。
  152. 田中角榮

    ○田中国務大臣 報告には架空名義だとは書いてないそうでありますが、現在銀行局で考えると、架空名義であろう、こういうことであります。
  153. 山田長司

    山田(長)委員 これは架空名義という大臣からの御答弁でございますが、少なくとも二十億という金額の通知預金証書が架空名義で発行されておる。もしこんなことが日本の一流銀行と称せられる三菱――支店とはいうものの、支店は同時に本店に直結しておる大銀行であって、三菱の責任ある人たちがこれについて全く関知しなかったということになると、これはどうも解せないことになる。これは全く納得できません。本店には全然連絡なしにこの架空名義の二十億という預金証書を発行したものですか。本店は全然知らなかったのですか、どうですか。
  154. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほど申し上げたとおり、その後返せない、入金がないということがわかりまして、同日付で出した証書は無効であるという本人からの一札をとったわけであります。その後十億円の一枚はこれを回収したということでございます。あとの二十億円の一枚は現在まだ回収ができない、こう御報告申し上げたわけでございます。これは、先ほども大蔵委員会銀行局長答弁をしましたが、三菱銀行に対して二十億円の証書を持ってきて、現金化がこれでできますかということで提示をした方がございます。ですから、現在少なくともまだどこに行っているかわかりませんが、一回は森脇氏の手に渡ったものだということは事実として認定できるわけであります。
  155. 山田長司

    山田(長)委員 けさテレビ会社がこの二十億の本物の証書を写しました。いずれこれは今晩かあしたの朝、その本物を映すだろうと思います。私はこの事実を見たとき、日本の三菱銀行ともあろうものが、全然関知しないで通知預金証書を発行したという事例につきましては、まことにこれは不可解であるし、日本の金融銀行の面から考えてみますと、重大問題だと思うんです。それで、宇佐美さんがこれを知っているのか知らないのか。問題はこれです。いずれこれは、私は宇佐美さんにどの委員会かへ当然来てもらって、前後の事情を御答弁願わなければならぬと思うのです。実は私は、これに必ず関係あるだろうと思われる節のものは次のような理由からです。実はトランジスターのラジオがアメリカへ向けて輸出をされます。六石のトランジスターが、昨年の価格によりますと、規制価格というものは約十ドルであります。ところが、アメリカの現地相場は八ドルでありますので、この差があるわけでありますが、これは十ドルのLC、すなわち輸入信用状をもらわなければ輸出ができません。そこでこの輸入信用状、これは大臣、ちょっと聞いてください。実は同じ三菱銀行の神田支店で十ドルの銀行認定書を出しました。それで、銀行認定書を出しまして、これが取引ができる事態にさせようとしていた。いままでずっとやっておったのですが、させようとしていた。大体大メーカーが主としてやっている仕事なんでありますが、これは中小メーカーがこういう仕事をして多くもうけていたわけであります。それで、これが問題になって、外国為替の管理法違反になって、それで宇佐美日銀総裁は東京地検の特捜部の主任の野村検事に取り調べを受けているはずです。さらに副頭取の、これは当時は中村という外国為替部の部長ですが、現在副頭取になっておりますけれども、この人たちが取り調べを受けているはずであります。一体これにつきまして、私は、特捜部はこの取り調べの内容はもうすでに終わっていると思いますが、宇佐美さんが全然この長原支店の問題に関係がないと断定せずにいるのは、こんな問題で取り調べを受けておるのですから、おそらくこっちにも関係があるのではないかということが大体推測できるわけであります。特捜部におきましては、宇佐美日銀総裁はどこでお調べになりましたか、それと、その結論はどういうふうに出ましたか、この際ひとつ明らかにしていただきたい。
  156. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまお尋ねの件は、全然承知いたしておりません。
  157. 山田長司

    山田(長)委員 これは全然知らぬということですか。あなたは局長であって、それで、調べた野村検事が主任であったということまでわれわれに流布されておるのでありますから、これは知らないじゃ済まないのです。至急に調べて御回答願います。だれかあなた以外に関係者はいませんか。
  158. 津田實

    ○津田政府委員 先ほど神田支店の関係の事件についてお尋ねがあるということを承知いたしました。地検に照会をしてみましたが、神田支店関係の事件というものは知らないということでありますので、ただいまお尋ねのような事件があるかどうかは私は知りません。
  159. 山田長司

    山田(長)委員 銀行から認証が出なければ取引ができないということから、当然これがために認証が出て、これが始められたことでありますが、それではついでにこのことも調べてください。この為替管理の係長であった田中さんという人は、このことのためにアフリカのレッセンブルグに転勤をさせられました。この転勤を理由にいたしまして漏れたとは言いませんけれども、やはりこの機会に、これは外国為替の管理法違反でございますから、当然銀行当局にとりましても大問題でなければならぬはずです。これが実は特捜部で握りつぶしをされてしまったのではないかという声があるのです。これは、特捜部でほんとうに握りつぶしをしてしまったものとすれば、私は日本の警察制度の将来のために非常に残念にたえません。そういう点で、この真実はいずれ明確にしてもらわなくてはならぬと思うのでありますが、為替管理の係長の転勤等の問題につきまして、これらのうわさはどなたも全然お聞きになっておりませんか。
  160. 津田實

    ○津田政府委員 私のほうには、全国のすべての事件の報告があるわけではございませんが、ただいまお尋ねのような事件については何ら報告がございませんし、先ほど申し上げましたように、本日の午後、地検のほうに照会いたしましたが、全然さような事件は知らないということであります。これ以上は何もわかりません。
  161. 山田長司

    山田(長)委員 それでは、これはいずれほかの委員会におきまして、この仕事に関係のあった人を証人に呼んでいただきたいと思います。これは予算委員会でなくて、ほかの委員会でもけっこうだと思うんですが、岡島という経理課長を呼んでいただけばわかると思いますから、この人をいずれ呼んでいただいて明らかにしたいと思います。やはり大銀行が、ただ一つの通知預金証書の問題をめぐりまして、それだけで事が済まないような問題が出てきておるわけでありますから、これらについて明らかにしていただきたいと思います。  次に、念書が発見されまして、念書が出ております。新聞等によりますと、この念書につきましては、当事の黒金官房長官は何も関係ないと、こう言われておりますが、この念書につきまして、こういう添え書きがしてあります。「総裁公選に資金が必要なために借用します」、こういう念書で書かれてあります。これは、いずれこの念書の所有者をやはり呼んで明らかにすることが政治の明朗化のために必要だと思います。この念書の日にちは三十九年六月五日でありますから、おそらく選挙前の日にちだと思います。さらにこれに印鑑証明がついておるという点は――新聞等によりますと、自筆ではないし、全然自分は関知しなということを言われておるようでありますが、今日の民法上における証書の取引については、それが、第三者であろうと、タイプ印刷であろうと、自筆で書き、実印が押してあるというような場合には、これは証書とみなす筋合いだろうと思うのであります。やはり全然関係がないものとして扱われる筋合いのものではないと思いますので、これは、いずれ明確にしなければならない筋合いのものだと思います。新聞等によりますと、記者会見の席上で森脇氏が言ったことばによると、三菱銀行で、三十億の預金がされれば、三菱から六十億の融資をする。融資計画は宇佐美と黒金氏とでやるんだというふうなことが書かれておりますけれども、この点について、これはゆゆしい問題に属してくると思いまするので、一応総理に所見を伺っておきたいと思うのでありますが、一体日本の金融界に、国民が最も信頼している金融の世界に、こういう事例が、しかも公然と新聞の騒ぎになり、テレビの騒ぎになる。これは全くゆゆしい問題だと思いまするので、この点どうあるべきであるか、その所信を伺っておきたいと思うのですが、どうですか。
  162. 田中角榮

    ○田中国務大臣 とにかく、どういう理由にしろ、三十億にも及ぶ通知預金証書を詐欺されるとか、騙取されるとかいうことは、これは各銀行に対しては、私たちも金融行政の上で十分な配慮をしなければなりませんし、金融機関自体も、かかる事件が起きたことに対しては深く反省をして、将来国民の信をつなぐようになさなければならないということを考えております。  第二の問題でありますが、森脇氏が新聞にしゃべったということが事実かどうか、私は事実だとは現在の段階では思いません。いかに何でも六十億とか三十億とかいうものが、大銀行であっても、融資ができる、そういうことがあり得るはずはないわけであります。大蔵省でも銀行検査をやっておりますし、日銀でも銀行検査をやっておりますが、六十億、三十億というような、一口で頭取だけの考えでそういうものができるということを信用した人があるとすれば、それは別でありますが、そういうことは少なくとも金融の中には存在しないと私は思います。
  163. 青木正

    青木委員長 横路節雄君より関連質問の申し出があります。山田長司君の持ち時間の範囲内においてこれを許します。持ち時間は残り十三分ほどでありますから、念のために申し上げます。
  164. 横路節雄

    横路委員 いま山田委員から金融界のあり方について御質問がございましたので、それとの関連で総理お尋ねをしますが、最初に刑事局長お尋ねをしておきます。  吹原弘宣という男の前歴です。これは、私たちも新聞では承知をしているのですが、国会でまだ明らかになっておりませんから。これが一体詐欺その他で逮捕されたのは、何年にどういう件数があるのか、処分はいつどうなっておるのか、それについ、判決はどうなっておるのか、その点が一つであります。  それから、時間がありませんからまとめて…。第二の点は、吹原産業についての株式の発行数が一体どれだけになっているか。その次に、具体的にその点で聞いておきますが、黒金前官房長官が株を持っているというが、その持ち株は幾らになっているのか。黒金氏が官房長官のときの秘書官である滝寺氏も常務取締役であるというが、この株はどれだけ持っているのか。なお、これは明らかなようでありますが、その次に、間違いがあるかどうかをはっきりとお尋ねをしておきたいのですが、大平前外務大臣についても同様に株を持っているということでございますので、この点について。なお、吹原産業についてその他政治家に、政界関係で個人として株を持っている諸君があれば明らかにしていただきたい。  吹原弘宣の前歴、前歴というのは詐欺、逮捕、それから処分、判決、それから吹原産業のいまの株式の発行数、それから、それぞれのいま申し上げた諸君の個人の持ち株数ということについてお尋ねしておきます。
  165. 津田實

    ○津田政府委員 まず最初にお尋ねの吹原弘宣の前歴でありますが、これにつきましては、つい最近のものといたしまして本年の一月二十八日、詐欺及び横領罪によりまして懲役三年、五年間執行猶予の判決を受けております。これは、本年の二月十二日に確定をいたしております。そこで、それ以外の前歴の点でありますが、これは、なるほど吹原はいま被疑者ではありますけれども、これは復権等の関係もありますので、公開の席で申し上げることは差し控えたいと思います。  それから吹原産業の株式関係でありますが、吹原産業株式会社につきましては、現在資本の額は一億六千万円であり、発行済み株式の総数は三十二万株であります。ただし昨年の六月四日、株式総数を発行し得る総額は百二十八万株ということになっておりますが、現在の資本の額は一億六千万円でございます。  そこで、持ち株数でありますが、持ち株数の点につきましては、ただいま検察庁のほうにおいておそらく捜査をいたしておると思いますけれども、この事件にどういう関係があるかわかりませんので、必ずしも的確に捜査をいたしておるかどうかわかりません。したがいまして、株主の分布と申しますか、そういうものにつきましてはただいまお答え申し上げる段階になっておりません。  なお、取締役につきましては、現在代表取締役が吹原弘宣であり、ほかの通常の取締役は滝寺和夫、鎌田正義、川崎政雄、渡辺久、伊藤三郎、監査役は吹原フミ子ということになっていることを申し上げます。
  166. 横路節雄

    横路委員 あなたは最近の前歴について、いま四十年の懲役三年、執行猶予五年、この点についてはお話しございましたが、その前については復権等もあるからお話しするのはどうかと言うが、昭和二十七年の五月二十七日に懲役三年六カ月、東京地裁判決昭和二十八年六月の二日恩赦、二年七カ月十五日に減刑、こういう点も明らかになっているじゃありませんか。それから、いま個人の持ち株については答える段階ではない、――そんなことはない。そういうことはありませんよ。予算委員会でこの問題は――金融機関というのは、やはり公的な性格を持っているんだ。国民は政界とのつながりで非常な疑惑を持っているんだ。なければないでよろしい。なければ、ないと答弁さるべきなんだ。答える段階でないというのは一体何ですか。ここで答弁しなさい。何ですか。関係がないならばないと答えるべきであって、ここで答弁できない、答える段階ではない、――なぜ私が聞いているかというと、こういういわゆる詐欺の前歴、現に処分を食っている。前には懲役三年六カ月、今度は懲役三年執行猶予五年、こういうものについて、個人の持ち株数がどうなっているか、政界との関係があるか、あるだろうとみんなが疑っているから、なければないと明らかにしてもらいたいと聞いているんです。ここで明らかにしなさい。そんなことが答弁できないで一体どうするんだ。こんなことができなければだめですよ。
  167. 津田實

    ○津田政府委員 吹原産業株式会社の株主の構成が秘密であるとは私は申しておりません。ただ東京地検におきましては、二十二日に捜査をいたしまして、多数の証拠書類を押収いたしております。したがいまして、正確な株主構成は、それを厳重に調査してみた上でないと申し上げかねるわけであります。私が申し上げる段階でないと申しますのは、正確な数字を申し上げるわけにはいかないということであります。それは、そのときに至って申し上げるということになります。しかしながら、不正確なことは申し上げることはできません。
  168. 横路節雄

    横路委員 それでは、いまここで何万何千何百何十何ぼとまではいいから、何万何千とまで言いなさい。言えなかったら、あなた、いまこれから電話をかけて聞きなさい。そんなことができないで一体どうするんだ。
  169. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 私から一言お答え申し上げます。  これは、先ほど刑事局長が申し上げましたように、ただいま東京地検におきましてはたくさんの証拠書類等を押収してきておりまして、その整理に忙殺されておるような状況のようでございます。したがいまして、皆さん方の御期待にただいま直ちに沿うわけにまいらぬことを遺憾に存じますが、いずれは明らかになってくるものと存じます。ただいまの段階ではまだ整理がついておりませんし、そういう状態のものを法務当局がここで明らかにするということは、将来またどういうものが出てくるかわかりませんから少し危険ではないか、かように考えるわけでございます。そこのところはひとつ御了承願いたいと存じます。
  170. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、私は……。   〔発言する者あり〕
  171. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  172. 横路節雄

    横路委員 国民がひとしく疑惑の目をもって見ておるのです。いま山田委員から指摘のように、昨年七月の自民党の総裁公選に関係があるのではないか、黒金官房長官関係があるのではないか、そういう疑惑の目をもって見ておるのだから、私たちはそういう意味でこれを明らかにすべきだ。なければ、ないでよろしい。だから持ち株をはっきりすべきだ。なぜここで持ち株がはっきりできないのですか、いま直ちに電話をかけて開きなさい。刑事局長、電話をかけて聞きなさい、政務次官、だめですよ。政務次官、いまあなたここで言いのがれをして、この予算委員会だけごまかせばあとはいいだろう、あとはしばらく来月の十日かそこらまで予算委員会がないから、何とかごまかせるだろう、それではだめですよ、あんた、そんなことだったら時間は何ぼでも延ばす。だめですよ。
  173. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 さようなつもりでおるわけではございません。先ほども申し上げましたように、山ほどたくさんに積み重ねられた状況でございまして、そして、ただいま地検としては告訴が出ております。預金証書の詐欺による騙取ということの告訴でございますから、その点について調査を進めておるわけでございます。ここで直ちに株主の――これは、実は昨日も調べてみたのです。でありますけれども、書類はたくさんうず高く重なっておって、いま調査は困難である、その点だけについて強く要求をいたしますと捜査にさわるおそれもございますから、私どもは了承を願っておるわけでございます。   〔発言する者あり〕
  174. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  175. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 いずれは明らかになると思いますから、ここで私どもは言いのがれをするような気持ちが全然ないことだけを御了承願いたいと思います。   〔発言する者あり〕
  176. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  177. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、大蔵省が調べてあるでしょう。私がこのことを聞いておるのは、黒金さんが関係しておるとか、大平さんが関係しておるとか、だれが関係しておるとか、こういうふうにいわれておる。私はほかの人のことを聞いておるのではない。いまのところ私は何を聞いておるかどうかいうと、個人の持ち株数を聞いておる。そこで、黒金さんはどれだけあるのか、世間では八万六千株あるとかいっておるが、どうなんだ。大平さんは幾らあるんだ、黒金官房長官のときの秘書官の滝寺氏は幾らあるんだ、このことについてすなおに、言ったらいいんだ、何を一体隠しておるんだ。   〔発言する者多し〕
  178. 青木正

    青木委員長 御静粛に願います。
  179. 加治木俊道

    ○加治木説明員 証券関係の通知書が出ております。その通知書の内容によりますと、その付属書類で、最近に増資いたしまして、これが一億六千万円になっておりますが、その直前の株主の持ち株数が一応こちらに報告されております。  その内容によりますと、吹原弘宣、これが七万四千株、右近保太郎という人が三万二千株、黒金泰美という人が一万六千株、それから滝寺和夫という人が一万六千株、高橋邦雄二千株、鎌田正義二千株、大平正芳二千株、大野操一郎だと思いますが二千株、田中蔵六二千株、松目明正と読むのでしょうか、二千株、桜田重雄二千株、岩倉淳一二千株、吉田和夫二千株、前波市三二千株、川崎政雄二千株、合計十六万株、かようになっております。
  180. 青木正

    青木委員長 もう時間が参りますから……。
  181. 横路節雄

    横路委員 私は、このことをそういうふうにすなおに答弁してくれれば、何も時間がかからなくて済むのです。  その次に大蔵大臣にもう一つ聞いて、あと総理に聞きたいのですが、森脇氏が三菱銀行に行ったときに、先ほどから問題になっておる十億、二十億の通知預金証書を持っていった。その前に持っていった大和銀行の三十億円のいわゆる預金小切手ですね。ありますね。これを、あなた大蔵委員会でも答弁しているんだが、あれは大和銀行には三十億は入れていないのでしょう。入れてあってあれは預金小切手が出たんですか。その点だけ一つ聞いておきたいと思うのです。
  182. 田中角榮

    ○田中国務大臣 三菱銀行が三十億円の通知預金を騙取される前に、大和銀行の京橋支店だと思いますが、これが吹原との間に長いこと先付小切手を交換しておった、こういう事実がございます。尊入植金ではなくて、交換をしておった。同日付の小切手を振り込めば両方とも落ちる、こういうことをやっておったらしい。それがだんだん大きくなってしまって、最後に三十億円でありますか、吹原と交換した場合に、吹原のほうが落ちなかったということで、これは取り戻しをして、銀行では実損は受けておらないという事実はございます。
  183. 横路節雄

    横路委員 それでは、私は総理に聞いて終わりますが、総理、私は二十九年の、いまあらためて造船疑獄のことを思い出すのですが、私はこの吹原弘宜というのは、これだけの逮捕歴を持ち、これだけの詐欺その他の前歴を持ち、処分を受け、判決を受け、それからこういうような人間であるのにかかわらず、一体政界のこれらの関係者が、吹原産業にこれだけの株を持っている。そして、いま大和銀行の三十億円については、明らかに預金がされていないのに、これは小切手を振り出している。私はあなたにここでお尋ねをしておきたいのは、ここに金融機関のあり方、それからあなた御自身保守党としての――私は今日総理大臣というばかりではなしに、自民党総裁として、いまいろいろ当議会でも問題になっている保守党の都会議員の逮捕の問題、そのことはそれにとどまらないで、この問題は同時に、この吹原産業に前官房長官その他の諸君がこういうように関連している。私は、この問題がこういうように発展してきた原因がそこにあるのではないかと思いますので、この点についてのこの金融機関のあり方、またこれらに関係したこれらの政界の諸君について、あなたはどういうようにお考えになっているか、あなたの所見をひとつ承っておきたい。
  184. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は金融機関全体として、そう間違ったことはない。とにかく本筋はどこまでもこれは正しい、かように思います。しかしながら、一、二の犯罪者、あるいは詐欺師、そういう者にだまされるというか、そういうところのものは、普通人より以上の知恵を働かせるというところに犯罪が起こる、かような点で特別な留意をしなければならない、私はかように考えております。ただ、いまの吹原産業に政治家が関係しているということで、いかにも前歴等についての知識のなさとか、あるいは政治家自身が非常にルーズではないか、こういう言い方ではないかと思います。そういう見方をされておるのではないかと思いますけれども、もちろん前歴というものがその人の信用にも関することは、これはよくわかっております。しかし、一面においてやはり善悪、善玉か悪玉かを見分けるということは非常に困難なことでありますし、またすでに犯罪を行なったと申しましても、それが十分改悛といいますか、そういうことでりっぱになった、こういう場合においては、その事業について協力することもあり得るだろう、かように私は思います。しかし、いずれにいたしましても、今回の問題は普通人では判断のできない事柄、いわゆる犯罪人のほうがより知恵が進んでいるというか、より頭がいいというか、そういう意味の問題だと思います。しかし私、先ほど来いろいろあげられた事柄について感ずるところがございます。その点は、最近のこの種の犯罪、これも十分調べてみなければどういうことになるかわかりませんが、先ほど山田君が御指摘になりました高知県の問題であるとか、あるいはその他の問題等についていろいろ黒いうわさがあるという事柄、あるいは都議の事件自身は、もうすでにただいま捜査に入っておる、かように考えまするが、そういう点をつくずく考えてみまして、どこかに非常な狂いがあるのではないか、大きな狂いがあるのではないか、私ある評論家などの意見も聞いておりますが、政治の大もとを正せ、こういう意見を述べておられます。私最近の経済界のあり方なり、あるいは山陽特殊鋼が会社更生法の適用を見たり、あるいはただいまのような問題などを考えますと、とにかくこの際に政治、あるいはわれわれの生活の大もとを正していく、こういうことを考えないと、どうも残念ながらそういう事態に発展せざるを得ない問題ではないか、かように私は痛感しておるような次第でございます。あるいはお尋ねになりましたことに私の答えておることが筋が違うかもわかりませんが、私はいまの世相その他についてほんとうに感じておる次第でございますので、十分これらについて戒心してまいりたい、かように私は思います。
  185. 青木正

    青木委員長 山田君、もう時間が参っておりますので、結論をお願い申し上げます。
  186. 山田長司

    山田(長)委員 重大な問題につきまして実はまだいろいろお尋ねしたいことがあるのですけれども、どうも委員長からの指示もありますので、最後に一点伺って私の質問を終わらせます。実は昨日の新聞を見ますると、麹町のマンションの倉地という人を殺した三男の倉地健治という人が自首して出て、問題は一応片づいた形になっておりますが、実はこの機会に何で私ははそんなことを聞くかというと、ただいまいろいろ質問申し上げたことに関連があるかどうかわかりませんが、前の総理の秘書官であった中村さんという人が、目黒の公務員宿舎の給水塔の上から飛びおりた。それで、自然落下でその地点に落ちるはずがないのに落ちて死んだ。これは事故死として処理されてしまっておる事件、少なくとも十五、六貫の目方のある人が落ちていながら、屋根の上にはさっぱり落ちた圧力の形跡がなかったということは、当時その現場を見た人の話であります。落ちる物理的な地点ではないところに落ちた、こういうことが言われております。  これと関連いたしまして、なぜ私は倉地君の死をここで取り出して申し上げるかというと、実は倉地という人は死ぬ数時間前に私の部屋に参りました。私の部屋に来て――この原稿は彼の最後の原稿です。それで、この人は私の部屋に二度ほど来るし、それからここの議員食堂でもお目にかかっておりますが、そのつど、私はつけられておるということを言っておった。それで、この最後の原稿を、彼は見ておいてくれと言って私に置いていった。帰るときに、第一議員会館の前のほうに、私はつけられて三人ばかりの人がいるのだ、私は裏から出るからというので、私は四階から見ておりましたが、裏から帰って行った。その晩の死であります。私は何でそんなことを言うかというと、この原稿を整理したあと、あしたの「マスコミ」の新聞には吹原産業事件の問題を扱って書いてあって、これから校正をするのだという話だった。  私はここで検察当局に伺っておきたいのでありますが、聞くところによると、その新聞の原稿が、京橋の新橋寄りの印刷所でありますが、その印刷折で紙型のまま行くえ不明になっておるという話を聞いております。これはほんとうであるかどうか、盗まれたものであるかどうなのか。この内容はどういう内容であるかということについては、私はそのときつぶさに聞いたのでありますが、新聞を見てくれという話だった。それで、あと「マスコミ」の言論時代社へ電話をかけましたけれども、もう連絡がとだえて――社長が死んだあとでありますから、連絡がとだえてしまったと思いますが、連絡がないのであります。まだいろいろ伺いたいのでありますが、この真相が明らかに新聞に載せられておったものかどうか。私は彼からそのときに原稿の内容を全部聞いておりませんので、いまわからないのでありますけれども、検察当局あるいは地元の警察等で、その紙型がなくなった行くえについて聞いておるかどうか。それからこれは洗ったかどうか。この点がわかったならば一応お答え願いたいと思います。
  187. 津田實

    ○津田政府委員 ただいまのお尋ねの件については、私は何も承知いたしておりません。あるいは警察関係であるかもしれませんが、ただいま警察関係の人は見当たりませんので、私としては承知いたしておりません。
  188. 山田長司

    山田(長)委員 まだいろいろ聞きたいことがあるのでありますけれども、いずれ各委員会等におきまして詳細にわたって伺うことにしまして、私、時間がきましたので、これで終わります。
  189. 青木正

    青木委員長 次に吉田賢一君。
  190. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 第一に、いま質問になりました、いわゆる吹原問題を御質疑をしてみたいと思うのであります。  この問題は、一面金融業務の非常にじみな問題でございまするが、同時にまた、社会的に与える影響、あるいはまた行政、政治全体にわたるいろいろな角度から思いますると、きわめて重大な問題であります。  そこで、まず大蔵大臣に伺いたいのでありまするが、先ほど来の御答弁によって聞いておりますると、あなたは三菱銀行から受けた報告をもとにして、この範囲以外に出ない。こういうことで終始答弁しておられるが、しかし大蔵省、大蔵大臣は、銀行に対しましては大きな監督権がございますことは申すまでもありません。申すまでもなく、これは許可業務でもございますし、あるいはまた業務に関しましては、銀行法によりましても報告を求めることもできるし、またあなたのほうでは、常時か、定期か、特別か、それぞれ検査もしておいでになる。特に国会で問題になり、あるいは世上問題化せられまして相当大きな衝動を与えておるおりからでもありますので、そのような監督的立場から考えてみましても、単に銀行の報告に基づく以外に出ない、それ以外にあるいは知識はないとおっしゃるかもしれませんが、それではきわめて任務不十分になるのではないだろうか。したがいまして、あなたのほうは、大蔵省は特に三菱銀行の吹原事件につきまして、業務上の報告、あるいはまた命令とか、その他検査等はやった事実がないのかどうか、その点、まず伺っておきたい。
  191. 田中角榮

    ○田中国務大臣 銀行の検査はやっておりますが、先ほども申し上げましたように、大和銀行の問題も、また三菱銀行の問題も、全然計数の上に出てこないのであります。全然その入金もない、実損もないということでありまして、銀行検査をやってもこういう問題をつかむことはできないような状態であったことは事実でございます。それから、ちょうどいま日本銀行と大蔵省で定期検査を行なおう、こういうことをきめておったやさきの事件でございます。でありますから、銀行から報告書を徴しまして、現在それをもとにしてお答えを申し上げておるということであります。  この報告書の中でまだ申し上げるようなこともなくはないと思いますが、それらの問題に対しては、検察当局が強制捜査に踏み切っているということで、捜査上の問題もあるので、その捜査に直接関係のあるようなものに対しは公表することを遠慮してもらいたいというようなものもございます。そういうことがなくとも、当然政府として捜査に協力しなければならないという面もございますので、現在の状態では、私個人としては、や雑誌その他文書等を見て知り得た知識と、正式には銀行当局から、国会の資料要求に基づきまして調査をした結果に基づいて御報告を申し上げておる次第でございます。  しかし、これらの問題に対しては、銀行ももちろん深く反省すべきでありますし、監督の責任にある大蔵省としましても、はなはだ遺憾であるということを考えております。
  192. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 三菱銀行に何らの実損がないというお話がいまありましたが、損害があるかないかは調べてみなければわからないのじゃないでしょうか。三菱銀行は、重大な損害であるかどうか知りませんが、ともかく三十億円の金額を記載した証書を、十億円と二十億円でありますが、詐欺せられた、そういう告訴も出ておるのであります。大蔵省で直ちに三菱銀行に損害がなかったという判断に至るには、相当調査ないしは当時の業務、あるいは書類等の報告を求めて、あるいは検査をして、その上の判断でなければ、簡単に何らの損害はなかったとは言えないと思うのです。それは一体何かの勘違いなのですか。
  193. 田中角榮

    ○田中国務大臣 あなたの言うような考え方をされると、もちろん実損というものはなかったということは、最終的にならなければわからないということはわかります。しかし、大和銀行が出しました三十億円の先付小切手は全部回収いたしましたし、実損はなかった、こういう報告でございます。それから、三菱銀行につきましては、十億と二十億の二枚の証書を騙取されたわけでございますが、十億はこれを取り返したということでございます。あとの二十億、これが現在どうかはわかりませんが、三菱銀行に提示された、森脇氏が提示したのでございますから、少なくとも提示したときには森脇氏に渡っておったということでございます。しかし、森脇氏が提示はしたけれども、これは吹原弘宣から事家入金がないのであって、無効である、こういう証書をとっておりますし、また御承知のとおり、これは他に入質したり担保に供したりすることのできないという条項を書いてあるものだそうでございまして、告発しておりますから、最終的に実損がないと思います、こういう銀行当局の話のようでございます。しかし、正式に言えば、現在未回収である二十億は三菱銀行は支払わないでいいということが法律的にきまらなければ、実損がないということは言い過ぎかもわかりません。
  194. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しかし、二十億ないし三十億円という金額は、国民にとってはきわめてばく大な金でございます。そこで、三菱銀行が出したものが十億円返ってきて、あるいはまたさらに返ってこないものについては無効でありますということを吹原が書いた一書を取っておる。それだけで三菱銀行に何ら損害がなかったというようなことは、これは相当調査し、もしくは事実を調べた上でないと言えないことではないでしょうか。それならば、一方二十億の証書を持っている森脇将光氏は、そうすると二十億円の返還の請求権が三菱に対してないという前提にでも立っておるんであろうか。いずれにしても三菱の支店から出た十億円、二十億円というばく大なこの銀行の証書ですね。しかもこれは金を支払いますという証書なんです。そういう証書の効力とか行くえというようなものを明らかにすることなしに、大蔵省は一体この問題をめぐって当該銀行に対する監督、調査ができないということが一体言えるの、でしょうか。それとも、そういうことはいま言いたくないというのがほんとうなんでしょうか。まさか専門家のあなたのほうとして、百人近くも検査官を持っているあなたのほうが、二十億円の証書がどこにあるかというようなことぐらいは知らぬはずはないですが、それならばたれかが損なんでしょう。だれも損がないということにでもなるのでしょうか。だれも損がないのなら、一体三菱銀行が何の損もないのならば、紙切れを詐欺せられて告訴したということにも半面なるわけですね。そういうことも言い得るのです。そんなことで一体大蔵省が監督権を発動いたしまして調査した、報告を求めたということになるんだろうか。これは非常に国民といたしまして、大蔵省のその態度のすっきりしないことに疑惑を感じます。
  195. 田中角榮

    ○田中国務大臣 私はそうは考えません。これは、もう現に三菱銀行が告訴をしておるのであります。検量庁は強制捜査に踏み切っておるのでありますから、大蔵省は、現在の状態においては国会で銀行を調査して報告を出しなさい。こういう大蔵委員会の資料要求がございましたから、私のほうでは直ちに関係銀行から事情を聴取して――事情聴取だけではなく、文書で提出しなさい、こういうことで調査をいたしたわけでございます。ところが三菱銀行の件に関しましては、三十億のうち十億円の分は回収いたしたわけであります。あとの二十億円が大蔵省の銀行行政の所管の中で、これはどこの銀行が預かっておるとか、どこの銀行が割り引いたとかということであれば、これは大蔵省でもって直ちに捜査できますし、調査もできる。二十億円の行くえというものも突き詰めることはできますが、大蔵省の所管でない人が持っておるということになると、だれが持っておるのかは、これは私のほうでは調べがたいのであります。しかし、検察庁では吹原弘宣その人を逮捕しておりますから、調査の結果、現在二十億円のものが、どのような理由に基づいて、どういう事情で、だれがいま所持をしておるのかということは当然わかるわけであります。いやしくも国会の席上でございますから、私たちはいま職務に基づいて調査した結果しか申し上げられません。しかし新聞にも出ておりますし、また三菱銀行の調査の結果は、こういう時期に森脇将光氏なる者が三菱銀行に参りまして、これを提示をして現金化できますか、こういう申し出がありました、こういう報告はございますから、その時点においては、森脇将光氏の手元にその二十億円の証書があったということは御報告できます。しかし、森脇氏は現在第三者にこれを渡したのか、現在どこにあるのか、森脇将光氏のところにあるんだろう、こういう常識的なことは考えられますが、責のある御答弁はできないわけであります。
  196. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大蔵省といたしましては、平常の業務に対する報告ならいざ知らず、いずれにしましてもこのようなばく大な金額のものが、預金をせずして、からで出されたという事実がある以上は、特におひざ元の東京都内のできごとでもあるし、相当精密な調査、検査がなければなるまいと、こう思うのです。  それでは一つ一つ聞いていきますが、これは権限を超越した重大な支店長の行為であったというような、そういう認定にはなっておらぬのでしょうか。それはどうなんです。
  197. 田中角榮

    ○田中国務大臣 結果論でございますが、まあ理屈を申し上げれば、預金競争とかいろいろな問題がございますでしょうが、とにかく三十億円の証書を出すのに、いかに預金競争が激しいからといっても、どうも常識的には、私も銀行マンとしては失格といいますか、これは手きびし過ぎるかもわかりませんが、いずれにしても妥当を欠く。多少功名に走り過ぎたといえばそれっきりかもわかりませんが、どう考えても、銀行の支店長といえば相当な古手であり、もうベテランでありますから、大銀行、都市銀行の中で、大和銀行と三菱銀行が三十億ずつある時期、少なくとも騙取されたということに対しては、この大和銀行の京橋支店長及び三菱銀行の長原支店長というものは、どうもはなはだ遺憾である、こうはもう十分考えます。ですから、これからの銀行に対する金融行政を指導してまいる上においては、かかる事件は絶対に起きないように、起きないためにはどうしなければならないかという具体的な問題は銀行に対して拝承をするつもりであります。
  198. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今後の問題は別といたしまして、起こりましたこの事実につきましては、一体なぜそんなものを出したのだろうか。三十億円というそういうばく大な全額は、われわれ通常の生活常識から考えまして想像もできない大きな金額なのであります。気違いか、何か強制かでなければ、何かがなければ普通にはできないことであります。しかし、気が違っておったとも、あるいは強制的な何かがあったということの何の情報もない。そしてまた、常人であったということにもなっております。りっぱに判も押しております。ことに森脇将光氏自身の言うところによりましても、印鑑証明さえ取っておる。彼は高利貸しとして日本で有数な人であります。高利貸しをもって生涯りっぱにやっていくということを自任している人なのであります。この人から印鑑証明まで支店長が取られておるというようなことで、手が込んだことをやっておるのです。そこまでやっておる。この三十億円の預金証書を発行するということは、大蔵省は、一体なぜしたのだろう。これは穏当を欠くとか遺憾なとかいう、そんななまやさしい判断では、それは監督になっておらぬです。そんなようなことでは大蔵省は銀行監督なんてできやしませんおそらくそうです。それは山陽特殊鋼の銀行代表の取締と同じことで、つんぼさじきに置かれておる。それでは国民に対しては相すまない。だから大蔵省といたしまして、一体あなたは、何が原因でそんなめちゃくちゃな発行をしたのであるか、どういう御判断ですか。
  199. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほども私が御報告を申し上げましたが、三菱銀行の長原支店長が騙収されたときも、自分だけの責任でございます、こう言っておるわけです。それから大和銀行の京橋支店長が騙取をせられたときも、自分だけでございます、それで、事件になりそうになってから大和銀行も本部へ話をあげております。それから三菱銀行も、同じくいよいよえらいことになったということになって、吹原に一札を書かしてから銀行の本部へあげた、本部が驚いて回収をやりまして、十億回収した、こういう報告でございます。これは普通であれば――あなた非常に手きびしく言われております。私も非常に峻厳な気持ちでおりますが、これは普通でございましたら、本件に対しては、両行の事情を十分監督行政上徹底的にやります。また、国会国民の誤解を解くべくやるのは、これはあたりまえのことであります。しかし、時あたかも検察庁が強制捜査に踏み切ったわけでありますから、われわれはそういう意味で銀行局として調べ得るものは調べますが、強制捜査でもって本人は逮捕されておりますから、私は、相当早い機会にこれらの事実に究明せられる、こういうふうに考えておりますので、現在このような答弁をしておるわけでございますが、これは、検察庁が強制捜査に踏み切らないような事態であれば、当然大蔵省の監督行政としては発動せられて、その事実を明らかにせらるべきだと思います。
  200. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 検察庁が三菱銀行の告訴に基づいて捜査を開始しておるということだが、しかし、大蔵大臣は常時銀行に対する監督は行使せねばいけません。何も検察庁が検察権を行使したからといって大蔵省の行政権限が停止剥奪されるものでも何でもありません。完全に両立しなくちゃなりません。それならば、私はしろうとですから詳しい銀行業務の実態は存じませんけれども、たとえば、ここに写真がありますが、大川忠志なる者に対する通知預金証書、ナンバーは二八六一となっております。それらかまた、二十億円につきましては、これは玉田善利ですか、これが並び番号二八六二となっておる。こういうものになっております。そういたしますと、これはやはり日々本店に集計報告されるのだろうと思う。あるいはまた、あなたのほうもどういう検査をされておるのか、あるいは報告を求めたか存じませんけれども、十月にこのようなものが発行せられて、本年の三月になりますまで、六カ月間も欠番のままで書類が整理されてしまうというようなことは、専門家のあなたのほうの百人もおる検査官がそれも見つけることができないというようなことじゃ、これは全く大蔵省無能と言わねばならぬ。ただ、あなたのお説によれば、いろいろと説明した、ああ言ったこう言ったという、それだけなんです。しかし、検査とか報告を求めるとかいうようなことは、ああ言ったこう言ったということのその裏も、またその前もうしろも、いろいろなものを調べなくちゃならぬ。こんなもの、われわれしろうとが考えても、こういう大きなものが出ておって、欠番というぐらいなことは見つからぬはずはないと思うのですが、それは一体どうなんです。
  201. 田中角榮

    ○田中国務大臣 ちょっと誤解があるようでございますから正しておきたいと思いますが、銀行には銀行検査官が常駐しておりまして、毎日毎日の伝票を繰って検査をしておるのではありません。これは一年に一ぺんとか二年に一ぺんとか、非常に銀行の数が多いので、限られた検査官で銀行業務を監査するということになりますと、先ほど申し上げたとおり、ことし日銀と大蔵省で手分けをして監査をしょう、こういう日程をきめた直後でございます。でございますから、一年間はこれらの銀行に対して大蔵省は検査をしておらないわけであります。おりませんし、また、事実検査をしたとしてもなかなか見つからないものであるということは、銀行の帳簿に載っておらぬのであります。銀行の帳簿にも銀行の集計にも全然載っておらないわけであります。ですから、それを調べるとすれば、その支店の証書の枚数が何枚あって、台帳に載っておるものが何枚あって、書き損じが幾らあって、そして残りが幾らかというところまでやらないと、わからないということでございます。
  202. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 銀行で、預金が入らなかった、現金が入らなかったので帳簿に載せなかったというようなそういう御説明ですが、十億円とか二十億円とかいうばく大な支払い証書が書かれて、それが六カ月間も本店も知らなければだれも知らないでほうかぶりしていけるというようなことでは、一体これは帳簿になるのですかそんなことで。常駐検査をしておらぬからとおっしゃるが、それも無理からぬことであります。無理からぬことでありますけれども国民の疑惑は、そのようなことであったならば帳簿のごまかしということは平気でやれるのじゃないだろうか、こういう疑惑を持ちます。特に、どう考えても、欠番で日々の集計報告というものが本店に半年間もわからずにおるということはあろうはずがない。そういうようなことは、あなたのほうも、すでにこの預金証書をごらんになっておるでしょうから、また写しもごらんになっておるでしょうから、事件発生後におきましても、支店と本店との関係とか、あるいはどこにそういう原因があってこれが発行されるに至ったとか、あるいは利害があったとか圧力があったとか、いろいろ世上流布されるような原因があったかなかったか調べるのが、これが検査じゃないのだろうかと思う。平常の検査ならいざ知らず、こういうような重大な犯罪ありというようなことが訴えられて、そして世上疑惑の的になったようなときには、平常の調査、検査だけで済ますというようなことはとんでもないことだと思うのです。それはどうなんですか。
  203. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほどから何回も申し上げておるのでございますが、国会の資料要求もございましたし、私たちも、この事件が報道せられましたので、直ちに銀行当局を呼んだりして、現在大蔵省で必要な調査は行なっております。おりますが、あなたもよく銀行行政を御承知だと思いますが、これは、全然数字に入っておらない、こういうものでございます。今度の倒産会社なんかを見るとわかりますが、バランスに入っておらない融通手形を出し合っておる、こういうものは、検査をしても、これが不渡りになるとか、これが表ざたにならなければわからないわけであります。ですから、私も、あなたの疑惑と同じように、幾ら何でも、十億、二十億合わせて三十億のものを支店長だけで一体できるのかというような問題も聞いてみました。聞いてみたのですが、報告としては、ちょうど二つの銀行とも、問題が不渡りになっていてどうにもならなくなったといってから初めてその話を上へ上げた。これも、どうも考えれば、自分が功名にあせってやって失敗をして、盛んに取り戻そうとして努力をしたが、ついに万策尽きて話を上へ上げたということは、これもあり得る話でございます。しかし、こういう問題は現在検察庁が調べておりますから、こういう問題も全部明らかになるだろうというふうに考えておるわけであります。
  204. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 検察庁が調べておるといって、何も検察庁は、銀行業務のいま申しましたような辺は告訴の範囲外ですよ。私の申しておりますのは、それはある程度の関連があるといたしましても、やはり正常な銀行業務のそのうちにおきましてこの大きな金額の証書が発行せられて、欠番のまま数カ月経過しておるということにつきましては、これはやはり大蔵省といたしまして相当調査をしなければなるまい、これを申し上げておるのであります。
  205. 田中角榮

    ○田中国務大臣 これはもう、先ほども申し上げましたとおり、いままでも調査をいたしましたし、また、銀行行政上、監督上、当然なさなければならない調査は引き続き行ないます。
  206. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 一体、この十億円、二十億円の預金証書が発行せられて、そしてまた、吹原がこれを詐取したといわれ、森脇が十億円を引きかえに返して、また二十億円のみを持っているといわれておりますのですが、これは一体あなたの判断では、どこも被害がないところの案件だというふうな御判断になるだろうか。それともだれか一体被害者があるのか、被害者はだれだとお考えになっておるのです。
  207. 田中角榮

    ○田中国務大臣 被害者はだれかということは、最終的にならなければわかりません。これは、最終的に法律がきめるわけであります。現在の段階において大和銀行は一体どうかというと、三十億は全部回収いたしましたから、これは問題はありません。実損はございません。これは問題はないわけであります。あとは、三菱銀行は三十億のうち十億は回収いたしました。これも、金を出さないで回収したわけでありますから、実損はいまのところ二十億ということになるわけであります。これも、実損というのは、その二十億は取り戻せない、これが何らの補償なくして最終的に三菱銀行の手に入れば、三菱も金の上の実損はない。ただ、信用とか、社会に対して非常に御迷惑をかけたということに対して深く反省しなければならないということであります。看板にどろを塗ったという大きなマイナス面もあるのでしょうが、金額的には数字の上で実損はないということは言えるわけです。あとの問題は、森脇氏が損をするのか、吹原が損をするのか、これはどうも最終的に判断せられないとわからない問題でございますので、いまにわかにだれが一体この事件の結末を迎えるときにマイナスを背負うのかということは判断できません。
  208. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 やはり銀行監督の大蔵省の任務、行政上の責任はそこにあると私は思うのでございます。たとえば大和銀行にしましても、三十億円という小切手が出たり入ったりしております。何のために出たり入ったりするんです。三菱銀行にいたしましても、十億円、二十億円というものが出て、そして結局今日は損害なしと言い、また、ばく大な損害があるかのごとくに告訴もいたしております。最初に申しましたように、ほんとうに無効ということであるならば、紙を取られたのだから別に告訴をしなくてもいいじゃないですか。また、通常のわれわれの常識から考え、ますれば、無効ということであるならば、新聞広告でも一応しますよ、あれは無効でありますからと。だから、どこかへ流布されて転々しても、私のほうは払う義務はありませんとかなんとかやるべきです。何もやらないで数ヵ月経過している。そこに国民はまた大きな疑惑を持ちますよ。  いずれにしても、反面からはこういう点をお考えになりませんか。この点はひとつ総理に伺いたいのでありまするが、法律上の損害の帰属はだれになるか、被害者は法律上だれになるかということはしばらく別にいたしまして、銀行というものがこのような事件のために相当大きな信用を傷つけられたという感じはお持ちになりませんか。一体、三菱銀行にいたしましても、また他の銀行にいたしましても、預金者の信用、特に大衆預金というものは信用以外に何もありませんです。信用とか安全とか収益の確保とかいうようなものを失って、そこで一体銀行の信用を維持する手はあるでしょうか。こういうことを思いますと、被害者の立場、一種の被害者としまして国民が登場してくるのじゃないだろうか。国民が、零細なと言うと語弊もありますけれども、大衆の預金というものが、この信用を傷つけられることによって重大な被害を受けるという立場になるのじゃないだろうか、こういうふうにも考えるのですが、これはどういうふうにお考えになっておりますか。
  209. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる一般的に信用を害した、こういうことは言えると思います。しかし、善意また正常な預金者が、これでは何ら迷惑はこうむっていないのです。ただ、問題は、かような不正な、また無効な証書が社会を動き回って、そうしてこれの通知預金証書で金が融通された、こういうところに信用の問題があるわけでございます。私は、そういう意味から、もちろんこの全体の、どういうからくりでこういうことがやられたかというような事柄は検察当局がよく調べることだと思います。その上で明らかになることだと思いますが、現段階におきまして、一般の信用、そういうものに関係がある信用をそこねた、こういう点はお説のとおり私も認めるものであります。しかし、善意あるいはりっぱに預金している人、それには迷惑が直接かかっておるわけではございません。それらの点は区別して考えてしかるべきじゃないか、かように思います。  いずれにいたしましても、これは正常な状態であるならばもちろん犯罪を起こしていない。先ほど来大蔵大臣答弁しておりますように、詐取されたというものであり、それが本来の帳簿にも載らないものだというような事態でありますだけに、この信用を害しておるということについて、特にわれわれが今後留意していかなければならない。その立場にある者ほどんなことでもできるのか、それはたいへんじゃないか、こういうことになるわけであります。したがって、銀行の幹部が特に行員全体についても十分注意を促し、また、公僕としての立場を守るように必ずこれからは直していくだろうと思いますが、しかし、もともとこういう犯罪者というものは、われわれの考えられないようなことを考えますから、そういう点で、全部について今後は絶対にありませんとなかなか言い切れないのじゃないだろうか。大蔵省が銀行検査をずいぶん忠実に、また着実にやっておりましても、こういうものが全然検査の材料、対象として出てこない、そういうところにむずかしさがある。この点は同情のある御了承をいただきたいと私は思います。
  210. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、なぜ一体こういう問題が起こったのかにつきましては、また別の角度から、やはりこれは日本の政治行政の姿勢をもっと正して、このような事件の発生する余地なからしむるようにする、その面が非常に欠けるところがあるのじゃないであろうかということを深く憂うるのであります。  そこで、人の名前を申してまことに私も言いづらいのでありますけれども、森脇将光君の直接の話によりますと、森脇氏は吹原に初めて会ったのは、三十七年の八月、所は総理大臣の官邸、黒金官房長官の部屋です。十数億円のあるトラブルがありまして、そして、吹原、黒金、森脇は官房長官のこの部屋でいろいろと相談いたしまして、――申すまでもなく森脇は金貸しであります、高利貸しであります。高利貸しが、初めて会った吹原に、このような場所におきまして相当協力を求められまして、これは相当解決をしたらしいのであります。トラブルの解決について森脇が顔を出すということは、融資によってしたということは、これはおわかりと思いますのですが、そういうような一つ経過的な背景のあるということも、総理ひとつ頭に置いておいていただきたいのです。官邸というもの、公邸というものを個人のそういうトラブル解決の場にしたり、また、そういうようなことにくちばしをいれたり、当時はやはり官房長官でありますから、重要ないわば内閣の大番頭、その部屋でそのようなことがあるということはとんでもないことじゃないだろうか、そういうところにやはり綱紀の弛緩した何かがあるのじゃないだろうか、こう思うのであります。もしそれが森脇でない場合はともかくといたしまして、どうぞ、場合によりましたらここへ証人に、あるいは参考人に喚問していただいて、そういうことを私に言ったことがあるのかないのか明らかにしてもらってもよろしゅうございます、はっきり申し上げますから。そこにやはり問題のよって起こるような根本の原因があるのじゃないだろうか、こう思うのであります。その点につきまして総理はどういうふうにお考えになりましょうか。
  211. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、この事件、あまり個人的な名前を実はあげたくないのであります。ただいまそれぞれの材料を持ってお尋ねだと思います。しかしながら、やはりプライバシーに触れますし、また名誉に関する事柄でございます。そういうような点こそ、先ほど来申しますように、検察当局の取り調べを待って、そして明らかにすべき事柄ではないだろうか。途中におきましてとやかく言うことは、これは私差し控えたいと思います。したがいまして具体的な人ではございませんが、ただ総理官邸がこういうような事柄に使われる、そういうような点につきましては、もちろん慎重であるべきだ、かように私は思いますので、前官房長官がどういうような実情で、また実際にそういう場所を提供したかどうか、そういうことは私は一切触れませんけれども、役所であるというようなところ、また、ことに総理という立場に立ちますれば官房長官総理の女房役である、こういうような立場である人でございまするので、実際にどういうことをしたかというようなことには触れたくない。ただいま言われますような、総理官邸は、こういう点からもりっぱに、介入しないような、そういう場所でありたい、かように私は思います。
  212. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 さきに報告がありましたように、黒金さんは相当大きな株主でもおありになります。そういうような私的関係があるといたしましても、やはり重要な国政上の地位は地位、その私的な利害は利害として判然区別していって、ガラス張りの中においてやるというようなことが欠けておるのが今日の一つの世相ではないだろうか、こういうように考えられます。ことに、それはもう明らかでありまするように、あらゆる悪罵漫罵を世間からされているところの吹原氏のことでありますから、その周辺の私の利害と公の業務との混同というようなところに大きなミスの源があるんじゃないだろうか。現に、森脇将光君の言うところによりましても、黒金さんのいわゆる彼は念書と言っておりまするが、やはり金の取引につきまして森脇に差し入れましたところの重要な書類でありますが、これは、実印も押し印鑑証明もつけたようなものを今月二十三日か四日に東京の地検に七、八通提出したと言っております。こういうようなことになってきますと、やはりそこに相当何か深い関係があるんじゃないだろうか。やはり銀行も、そういう社会的にえらい地位にあるような人が関係しておるような会社であり人であるというと、言うと言わずと一つの圧力を感じるのじゃないだろうか。あってはならぬことでありますけれども、これがいまの世相でありますので、総理が深く案ぜられておる点がそこにあると私は思うのです。だから、それをなくするということがやはり国会一つの責任でもあろう。そうすることによってこの種の事件が起こらなくなり、また行政そのものも筋も通り、監督そのものも徹底もするしというようなことにもなってくるんじゃないか、こう思うのであります。だから、そのような事実も次から次にいろいろと出てまいりますということは、何としても遺憾なことであります。それが直ちに犯罪と関係があったなかったと、そういうことを私は申し上げているのじゃないのであります。いずれにしましても、大きな疑惑のあるその渦の中に隠現出没なさることが実に私は残念です。だから、事なければいいと思いますけれども、いずれにしても、三十億円をある場所を舞台として、――日本一流の上位四行のうちの第二位です。資本金から見ましても富士と同じですし、また預金量から見ましても富士の次にあると思います。そういうものを相手の舞台で大詐欺をやってのけるというのと相棒を組んでおったという印象は、国民にはぬぐうことができないと思うのです。たいへんな大きなマイナスであります。こういうことをしゃんと正すということが、私は国政掌理の責任者のほんとうは筋だと思うので、議会政治だとか、あるいは政治の大道であるとか、何とかかんとか文句はいろいろとありますけれども、こういうことにき然として臨んでいただくことがなければ、とてもとても、いまのこの世相で、総理がどんなにいろいろとおっしゃっても、こういうことが次から次と起こってくるのではなかろうか。山陽特殊鋼なんかも、似たような小さいケースですけれども、同じような事情が伴っておりますし、こういうことにつきまして、ひとつ重ねてあなたの御決意のほどを伺っておかなければならぬ。
  213. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど横路君に私もお答えしたとおりでございまして、ただいま吉田さんの御指摘のとおり、これはたいへんな問題だ、かように思います。政治はもちろん清潔でなければいけませんし、また、経済界におきましても、この種の事柄が犯罪として行なわれる、そうしてそれがあちらこちらに害毒を流しておるということに対しましては、ただいま山陽特殊鋼のお話もありましたが、事柄は小さな事柄でありますが、大もとを正していく、そういう気持ちでない限りかような事態は改善されない、かように思います。また、総理である私としては、その大もとを正していく、かような考え方で取り組んでまいりたい、かように思っております。
  214. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、一身の名誉を保持するために、たとえば黒金泰美氏も、やはり適当な時期に一身上の弁明をするという措置に出なさるほうが、国会の品位を保持する上においても必要ではないかと思う。だから、いやしくも何らかの疑惑を受けたようなときには、進んでその身の潔白を証明するというようなことが私は必要でないかと思うのですが、これは人さんのことでありますから、あなたに求めるわけでも何でもありませんけれども、そういったふうにお互いに行なう、そしてお互いにそれに協力する、こういうことが、お互いにあやまちをおかさぬことにもなるのではないか、こう思っておるのでありますが、この点につきまして、ひとつ重ねて御意見がありましたら伺っておきたいと思います。
  215. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 吉田君の予算委員会における発言、これはもちろん関係者といたしましてもえりを正して聞くことだ、かように私は思います。
  216. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それから、やはり私は、貸し付けのほうも大事ですけれども、預金も非常に国民にとっては大事なことで、その公的な機関が銀行でありまするので、銀行の立場といたしましても、偶然でありましょうが、宇佐美頭取は日銀の総裁になっておられる。そうしてまた、当時の実情から見まして、ばく大な天文学的な数字の証書が自分の支店から発行されておったというようなことでありまするので、これはやはり宇佐美総裁におきましても、事情が許すならば、自分の在任の当事のできごとでございまするので、いまの頭取が、これは私の責任でというようなことをおっしゃったやに伝わりますけれども、だれの責任というんじゃなしに、やはり頭取その他の全重役は一蓮托生責任を負うべきで、頭取はその頭取の立場において責任を負っていくということがなければ、あっちの責任だこっちの責任だ、わしは知らなんだということでは、これはやはり国民が納得しないと思うのであります。こういう意味におきまして、これは内閣といたしましてもしかるべく宇佐美現日銀総裁から、この事件に対する関係あるいは所見、そういったものを国会において明らかにして、国民に対して身の立場ないしは責任の関係を釈明するということが、これまた政治の大道をほんとうに切り開く上において必要でないだろうか。それもしない、何もしない、疑惑のままで検察庁の調べにまかしておくというのでは、これはどうも筋でない、こう思うのです。これはどうしたものでしょう。総理、どうです。
  217. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 吉田さんの御意見、十分伺いました。ただいまあまり先ばしったこともしない、こういうことでございますから、もう少し経過などを見まして、しかる上で善処するようにしたいと思います。
  218. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それでは、大蔵大臣に伺いまするが、この現在地検にかかっておる問題は、それはそれといたしまして、やはりこの吹原問題につきましては、大和銀行の関係は、これは相当重視すべきじゃないかと思っております。私は主として三菱のことを申し上げましたのですけれども、やはり大和が三十億円の小切手を出したり入れたりしたことは何としてもわからぬ。わかりません。これも詐取せられたというようなことでしょうか。一体、銀行というものは、かりに自分の大きな失策がありましたときに、他人に責めをかけて、詐取せられました、詐取せられましたということで済むのでしょうか。そこで、大和銀行といたしまして、この三十億円の小切手は詐取事件として内部処理でもしたということにあなたのお調べではなっておるのでしょうか。その点はどうなんですか。
  219. 田中角榮

    ○田中国務大臣 先ほどちょっと申し上げましたが、報告に基づきますと、大和の京橋支店長と吹原とは非常に長いつき合いのようでございます。そして、まあ初めは小さい額で両方でもって先付小切手の交換をし合っておった。それがだんだんだんだん積み重なってきて、三十億、三十億というといずれにしてもでかい金額でございまして、私もびっくりしたわけでございますが、これは三菱銀行のように唐突というのではなく、長いことやってきて、その一番最後に三十億の小切手というものの交換を行ないました。ところが、その小切手は、吹原は三十億の金もあませんし、落ちないということで、結局取り戻したというものでございます。取り戻したというだけれども、一体これは、そういうことはもちろんもう支店長限りの持ち合い、こう言っておるわけでございますが、ちょうど手形で言うと融通手形、こういうことと同じであります。小切手の先付を交換をして金繰りをつける、こういうようなことをやっておって、最終的にはようやく取り戻した。これも銀行の勘定以外のことでございます。各会社で融通手形を簿外にしておるというのと同じことで、どうにもならなくなってから、ようやく話を本店に上げた、こういうことでございます。これを取り戻した。その取り戻す間に、この京橋支店の小切手が京橋支店に戻るまでの間に三菱の事件とすりかえになった、まあ常識的に考えるとそういうことになるわけであります。そしてその小切手は、見せ小切手のようになって大和に返った。大和はそれを一体どう処理したか。帳簿にないことでありますから、結局書き損じというようなことで処理した、こういうことでございます。これは全然帳簿にないのです。帳簿にない小切手です。でありますから、結局、棄却処分といいますか、そういうことで事務的に処理をした。これ以外にないわけであります。でありますので、どうもそれはたいへんなことだと、私もびっくりいたしました。そういうことが真相でございまして、調査の結果をそのとおり申し上げました。
  220. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 一体、この大きな金を扱っておる人には、金の数学ということに対する感覚が麻痺してしまうのですかね。私どもしろうとで、また貧乏人ですから、なかなか億というとぴんと来ませんわ。試みに毎日一万円ずつ使っておって一体三十億円いうたら何年くらいかかるのだろう思うて計算してみますと、八百年くらいかかりますね。一日一万円ずつ使って八百年かかりますね。といったようなものが出たり入ったりして、書き損じでございますと言うて処置ができるというのは、まことに天下これほど奇怪無類なものはないと思うのです。一体、どういうことで、信用第一の、信用以外に何もないはずの銀行業務というものが国民に対してこたえ得られるのですか。そういうことが東京都内にざらっとあるということになったら、大蔵省としましても人ごとだと思えぬと思うのだ。そんなことであります、けしからぬと言うべきでなしに、とんでもないことで、自分たちのこれは大きな行政上の失態もあったのじゃないだろうかというくらいでなければならぬ。これは、銀行法によれば、免許事業でもありますし、免許取り消しということも法律に書いてある。こんなようなことを思いますと、もっとやはりする手はしゃんしゃんと峻厳に公正に打つべきでないだろうか。何もこれで業務に干渉してとやかくと役人風を吹かすという意味ではありませんが、いいこと悪いことについては、もっとしゃんとした態度がなければいかぬと思う。とんでもないことが行なわれまして、そうして平気で書き損じなんて言って、そんなことは人はほんとうにしません。ナンセンスですよ。これはほんとうにそう思いますね。これは、率直にお述べになっておりまするから、今後の大きな指針として相当何か手を打ってもらわねばいかぬ、こう私は思っておりますが、どうですか。
  221. 田中角榮

    ○田中国務大臣 全く御説のとおりであります。私も、本件の決着を見ましたら、この事件を契機にしまして、金融機関に対してはもっと身を正すように、正すだけでなく、こういう事件が起きた場合いかに処分するかというような問題に対しては真剣に検討して、銀行行政の強化をいたします。
  222. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 法務大臣が見えておりませんので、次官と局長に伺いたいのでありますが、やはりこれは、あなたのほうでは、いま三菱銀行から詐欺被害事件として検察庁へ告訴があった、告訴があったので、捜査の秘密の理由で国会にも十分な報告ができぬというのが、どうも先ほど来のお説の概況らしいのであります。ただ、しかし、国会で国政を審議いたしまする上におきまして、あなたのほうも検察庁としまして、行政権の発動以外に何もないわけであります。そこで、重大な金融機関の大きなミスですか失態ですか、そのような不信な事実が発生いたしまして、そこで国政調査に少しでも協力するという態度がなければならぬことと、それから、それが妨害になるというととはとんでもないことであります。検察庁も捜査の秘密を守って捜査を実行する権限があるのだろうけれども国会もまた国政調査の権限を持っておるのです。ことに国会調査に貢献するというくらいの態度が私は当然なければならぬと思うのです。どうもその辺が、捜査の秘密に籍口して、不必要な分までも国会審議を妨害しておるような感じがないでもないということさえ思われるのであります。厳にそれは小さい範囲にとどめて、そうして早急に結論を出すということにするということにせねばならぬ、こう思うのですが、この点は次官どうですか。
  223. 大坪保雄

    ○大坪政府委員 吉田さんのお話で、何か私どもがことさらに不要に隠しだてをしたりして国会の国政調査協力してないような印象におとりいただいたようなことでございまして、まことに恐縮に存じます。もちろん私どもはさような考え方はないのでございます。先ほど株主の名前の発表を迫られましたけれども、事実、先ほども申し上げましたように、昨日も調べ得られないかということを私から特に刑事局長に話し、刑事局長から地検のほうに当たってみたのですけれども、押収物件が山をなして、いまそういうところにまでなかなか及びかねるということでございました。それをあえてしろということになりますと、やはり捜査をいささか遅延せしめるというようなことにもなるのではなかろうかというので、私はそれ以上追及をいたさなかった。そのことを申し上げようといたしたわけでございます。私どもは、検察庁が厳正に公正に、そしてまた、犯罪の内容が社会的にやられる影響というようなこと等も考えて、捜査をすみやかに、するべきものは進めるように、それを期待いたし、また激励もいたしているようなことでございます。ただ、いま本件につきましては、たびたび申し上げますように、告訴によって調査、捜査を始めまして、現にその被疑者を逮捕して取り調べもいたしておるというような段階でございますので、なるべく厳正公正に、かつすみやかに事件の取り調べを進めるようなことだけを念願いたしておるというようなことでございます。  繰り返して申し上げますが、捜査の内容にまで現段階において触れまして御答弁を申し上げるということは、御遠慮願いたいとかように考えるのです。決して、国政調査協力をしないと、こういう考えではないのでございます。
  224. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 刑事局長に伺いたいのですが、この告訴せられたということは、要するに通知預金証書を詐取せらられたということが告訴の内容らしいですね。そういたしますると、事はしごくそれ自身は簡単であると思うのです。私は、一面いろいろな疑惑が行政、政治にまつわってあるという心配が実はあるわけです。だから、それは何も積極的にどうしなさいということは必ずしも言っておりませんが、消極的でも、なければない、あるならあるということをはっきりするという、反面そういう任務もあります。むしろそれは国会がすべきでないかとも思いますけれども、その点は、捜査権と国政調査権が少しこんがらかっている面がないではありません。いずれにしましても、重要な官房長官の名前まで出てきて、その人の発行した文書が検察庁へ出されているというようなことは、ともかく何といっても日本の政界にとってはたいへんな私は事実だと考えるべきです。そんなことはしょっちゅうあるんだというようなことになってしまったら、これはなおさらたいへんです。ですから、そのような方面に対しましても、全然何の関係もなければないと、あるいは事場合によれば政界へ波及やむを得ないとか、あるいはあらゆる面において厳正に捜査権は発動していくんだというような、その辺は不必要にあなたの立場を主張なさるようなことがないように、これは国会にとりましても一面非常に迷惑なことなんです。かりに告訴事件が一つあると、あんなものは別に何も払う義務はないんだということで、反面から言うと紙切れです。三菱銀行は払う義務のない紙切れがとられたんだ。それも、しかし告訴した。じゃあ、払わなくていいものが、そんなような紙切れ同様のものが、無効のものが告訴せられて、それゆえに、捜査段階においてあらゆる広い範囲の疑惑が政界で投げられながら、国会といたしましては調査権の発動も十分にできない、こういうことになってきまするので、この捜査というもののあり方いかんというものは悪影響も及ぼすことが大きい場合があり得ます。こういう点につきまして、私は、ほんとうはきょうは法務大臣に来てもらって十分に検察のあり方について伺ってみたいと思ったぐらいなんです。さっき株主の名前の点まで隠されるようなことがありまして、これは何という態度だろうかと聞いておったくらいなんです。ですから、根本的に、これらにつきましてはほんとうにき然として、最も能率的に――山ほどあるものが調べられないと、そんなあほなことはありません。そんなばかなことはありません。被疑者当人の周辺の一番重要なものは会社の構成でありますよ。資本の状態でありますよ。資金その他の経済の実情でありますよ。そんなような一番身近なものまでも、膨大な資料押収のために、証拠押収のために調べられないというような、そんな非能率なことだったら、いつのことやらわからぬというようなことにもなってしまうのであります。そうなりますと、一面また捜査不信になります。司法権不信になります。だから、輪に輪をかいてあらゆる疑惑に発展するということさえ私は考える。ここらを十分に考慮していくのが国会の責任だろうと思うのです。刑事局長、どのように考えておられましょうか。
  225. 津田實

    ○津田政府委員 この件は、先ほど来御審議になっておりますように、今月六日三菱銀行が吹原弘宣を告訴した預金証毒二通の詐欺事件から捜査を開始しておるものでございます。したがいまして、当面はその告訴事実につきましてその内容を明らかにする捜査に全力を注いでおるわけでありまして、本月の二十三日には被疑者も逮捕いたしております。したがいまして、捜査上取り調べ等をいたします範囲は、勢いこの告訴事件に集中されてくるわけであります。しかしながら、その捜査の過程におきましていろいろ関連事件の端緒を得ることももちろんございます。したがいまして、そういう関連事件の端緒を得ました場合におきましては、これらについて厳正な捜査をすることは当然でございまして、これは従来の検察権の運用上当然やっておることであります。本件もまさにその例外ではございませんから、そのとおり捜査は准展するものというふうに考えております。  それから、先ほど私が吹原産業株式会社の株主構成について申し上げなかったということについては、誤解があると私は思うのであります。私は、昨日も検察庁に対しまして株主構成等はわからないかということを厳重に問い合わせたのでありますが、先ほど申し上げましたように、本月の二十二日に捜索をいたしまして差し押えた資料は膨大なものにのぼっております。しかも当面の問題は、勾留されている被疑者についていかにして告訴事実を明らかにするかということに全力が注がれておるわけです。したがった、株主構成というものは直接には吹原弘宣の詐欺事実と具体的な緊要な関係があるということは検察庁ではおそらく考えられない。したがって、その点についての捜査並びに解明について時間を要しておるということは、私は当然だと思います。これは部外の方は非常に奇異だと思われ、私がそれを秘匿しておるのではないかというお疑いがあるかもしれませんけれども、これは、捜査に従事しておる者としては私は納得できることだと思うのでありますから、本日大蔵省側が御調査結果をこの席で発表されましたが、発表されることについては何ら私どもは異存も何もありません。それが捜査の進展を妨げるとも考えておりません。したがいまして、私がここで申し上げなかったのは、少なくとも私が申し上げることは、検察庁が調査をして間違いないという結果でないと申し上げられない。このことは、検察権の運営上非常に重要なことでございます。したがいまして、正確なことを申し上げるためには日時を要するということを申し上げておるのであって、私が故意に隠しておるということではありません。もしそうだとすれば非常な誤解であるということをこの際解明しておきたいと思うのであります。
  226. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 いまあなたのお説も一面わかるのでありますけれども、やはり事は単純な告訴事件ではございませんです。社会的背景は非常に重大でございます。また、社会に与えておる印象、影響というものもきわめて大きく評価しなければならぬ問題であります。もしほんとに詐取されたというのであるならば、三十億円の預金証書を詐取されるというような、そんなようなことがあり得るのだろうかという疑惑を国民は持ちます。だから、いろいろな意味におきまして非常に重要でありまするので、私、はそれは直接関係があるとかないとかいうよりも、全力をあげて捜査をして、ここでは当然問題になるような簿囲のことでありますから、吹原産業の構成なんかは問題になるまいというようなことは、そういうお考え方自身がおかしいと思うのです。これはあたりまえのことなんです。吹原産業の実態、特にそれの構成、株主名簿あるいはまたその業態、資産、負債等につきましても、そんなものはいち早く身辺を明らかにしておかなければなるまい、私はこう思うのであります。ことに、細君が監査役なんかしておるような会社でありますから、公募会社でも何でもありませんよ。そんなような会社なんですよ。ですから、いろいろな傍系会社を持っておりますけれども、これはだれもほんとうに公知の事実なのであります。だから、家の中のことであります。そのようなことがあなたのほうではなお明らかにならずに、大きな資料と取り組んでおるのだというようなことをおっしゃっておるから、私は、何という、少し陶が抜けておるのじゃないかとさえ実はちょっと感じたのでございます。誤解も何もしておりません。事の重要性からそのように判断をいたしたのであります。時間の関係がありますから、私は吹原事件はこの程度で終わります。  厚生大臣、たいへんお待たせ申しまして申しわけありません。大蔵大臣はよろしゅうございます。たいへんお待たせ申しましたが一、二点伺っておきたいのであります。それは、東京地裁の出しましたこの決定の効力の問題でございますが、だんだん前に委員の諸君から午前中も伺っておりましたが、私はこういう点が一つは非常に重要でないかと思うのでございます。この職権告示の効力の停止の東京地裁決定でございますが、この決定は、申すまでもなく行政事件訴訟法に基づいた決定でございますが、この決定は、厚生省のお考えといたしましては、また、この決定の主文自体にも、四組合に効力は限定するような記載にもなり、また、御意見がそのようでございます。ところで、御承知のとおりに、行政事件訴訟法の三十二条の二項、それから三十三条の四項は、いずれも、たとえば行政処分停止の判決は、これは前者のほうにおきましては第三者に効力が及ぶ、それから後者のほうにおきましては他の行政官庁を拘束する、この規定が決定に準用されております。そこで、この決定に準用されておるという趣旨にかんがみまして、他のすべての関係者にも、あるいはまた他の関係行政庁もこの効力を判決と同じように受けるという趣旨にこの二つの条文はなっておりまするので、この点から見ますると、私は、やはりこの決定自体の主文にもその点において誤りもあるし、それからまた、それなるがゆえに他の第三者に直ちに効力が及ばないのだというふうな考え方で行政処理をするということは、これはいかがなものであろうか。なるほど、決定でありまするので、正確には決定の主文自体がその効力の範囲をきめておるのでございますけれども、第一、この種の行政処分の停止の決定でありますので、やはり全体に及ぼすということにしないと、この法律の条文に矛盾するのではないだろうか、こういうふうに思うのであります。これにつきまして何か判例でもないかというふうに思うて調べてみたけれども、適切な判例はないようでございますが、この点につきましては――法制局の長官見えておりますね。済みませんが、ちょっと先に、法制局といたしまして、その点についてどのような御見解でございますでしょうか。いま私がだんだん述べましたことは御理解いただいたかと思いまするけれども、これはいかがなものでしょうか。
  227. 青木義人

    青木政府委員 お答えいたします。  行政事件訴訟法には第三者と規定いたしておりまして、特に限定されている文字では用いてないわけであります。ただ、抗告訴訟におきましては、原告となる者が自己の権利の救済を求めるための訴えなわけであります。したがいまして、原告と同じ立場にある者でも、その権利救済を申し立ててない他の者には抗告訴訟の判決の効力は及ばないものと思っておるわけでございます。それでは第三者とはどういうものをいうのかということに相なろうかと思いますけれども、当該行政処分に関連いたしまして原告になっている立場の者と直接の法律関係を持っておる者、すなわち取り消し判決によって原告との関係において権利を侵害されるというようなものが第三者に入るわけでございます。本件の場合におきましては、四組合につきまして、その組合員の医療を担当する医療機関であるとか、あるいは組合員であるとか、またさらに組合員の被扶養者であるとか、かような者が第三者に該当するわけでありまして、他の、四組合以外の組合に効力が及ぶ、こういうことには相ならぬのではないかと思うわけであります。原告のほうとして権利救済を求めない者に効力が及ぶということになりますと、これは抗告訴訟の本質から離れることに相なります。その訴訟法の本質からさような解釈に相ならざるを得ないのではないか、かように思っておるわけであります。
  228. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 さようにいたしますと、一体この条文は何のためにつくったのであろうか、こういうことになります。市民的な権利義務の個々の関係だけを、その利害関係者との立場において処分停止もしくは取り消しの申し立てをするというような、そういうような問題じゃございません。やはり、いわば千数百万の全体にかかる問題でございます。だから、あなたのお説によりますと、申し立てをしあるいは訴えをなしてその判決を受け決定を受ける者だけに効力が及ぶということであるならば、この規定はもう要らぬことになるのではないか。第二条第二項もしくは三十三条の四項を設けた理由は一体どこにあるのだろうか。だから、あなたのお説によりますと、九州の果てから北海道の果てに至りまするまで同じ立場にある組合なら組合がすべて申し立てもしくは判決を求めるか、それが九九%まで求めて一部は求めないというようなときも、いずれも求めた者だけに効力が及ぶということに結果はなるのではないだろうか。そういうふうなことではこの規定を設けた趣旨に全く反するのではないだろうか、こうも思います。もっとも、また半面から見ますれば、自分はそう思わないという組合もあるかもわかりません。これは全く異例でありますけれども、そのようなことも、この場合は別として、この場合は全国的にそれぞれ考え方は一本でありまするが、あるケースによりましては、そう思わぬというのがあるかもわかりません。したがいまして、同一に結果が帰するということもあるいはいかがかと思う場合があろうと思いますけれども、しかし、この処分たるや、一つに帰するというべきではないだろうか。たとえば、大阪と東京と同じ種類の訴訴が起こって、もしくは申し立てがあって、違った決定がなされたということになりますると、結局これはどこか上級裁判所で一本にきめなければいかぬものではないだろうかとさえ思うのでありますが、その辺の関係はどうなりましょうか。私は三十二条の二項と三十三条の四項がありまする限りは、やはりそこらにつきまして結果は同一に帰すべきではないかと思われますが、どうなんですか。
  229. 青木義人

    青木政府委員 この三十二条の規定は、この行政事件訴訟法が昭和三十七年に改正されまして、それの前の行政事件訴訟特例法時代にはかような規定はなかったのであります。それが現行法の行政事件訴訟法に規定されましたいきさつは、従来判決の既判力が訴訟の当事者以外の第三者に及ぶかどうかということにつきまして学者の説が二説に分かれておったのであります。その分かれておったというのは、本件の場合に当てはめてみますと、四組合との関係において、医療機関である、あるいは組合員であるというものもやはり第三者であります。この第三者に判決の既判力が及ぶかどうかということについて行政事件訴訟特例法時代には学説が二つに分かれておったのであります。その問題を解決するためにこの三十二条という規定が現行法上置かれたわけであります。さような関係で、この第三者というものは、従来の学説の経過から見ても、訴えを起こさない他の組合にまで及ぶ、こういうような解釈にはならないのではないかと、立法の経過からも考えておる次第であります。
  230. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういたしますと、政府の行なった行政行為は、訴えを起こした者、申し立てをした者と、しなかった者にまちまちな結果を来たす、こういうことになっていいんでしょうか。そんな不統一な行政というものはあり得るのだろうか。この種の問題を特に限りましてですね。だから、申し立てする、しないにかかわらず、判決もしくは決定がありましたならば第三者にも効力は及ぶということは、やはり、おっしゃったように、行政なるものは国民に公平に同じように結果を及ぼさなければいかぬという一つの立場があるのではないだろうか。行政処分は一たんしたけれども、訴訟を起こした、申し立てをした者、しなかった者にまちまちに適用せられていくというようなことになりましたならば、一体帰一するところのない不統一な行政行為ということにも事実上なってしまうのではないでしょうか。そういうことも考えられるのですが、この趣旨はそういうことではないはずなんです。ないはずでありますから、だから、その点につきまして考え方が平行していくのなら、いまのところ一応裁判所にまかすといたしまして、しかし、厚生大臣といたしまして、やはり同じ国民で同じような立場の組合員に対しまして、一にはその決定の結果が及び、他には及ばないというような、行政の結果が二、三になるというようなことでは、これは行政的にも政治的にもきわめて重大なことで、結果はやはり加入者側におきまして一つ混乱を来たすということになるのではないでしょうか。実にその点は憂慮することになると思いますが、これは、大臣どうなんですか。
  231. 神田博

    神田国務大臣 いまお尋ねのございましたような混乱が起きはしないかということにつきましては、私も実に憂慮いたしておる一人でございます。法律の解釈が先ほど訟務局長から述べられたようになっておりますと、私もやはり政府といたしましてはその法律解釈に従っていく、事を進めていくということになろうことはやむを得ないと思います。そこで、考えられることは、この混乱に十分備える方途を講じまして、そしてできるだけ次の処置が早く行なわれるようにいたしたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  232. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 混乱をいたしましたら次の処置をそのときにするようなふうにも受け取れるのですが、やはり行政は反面においてもっと政治性がなければいけませんから、ことに、もみにもんでもみくちゃになったようなこの案件でありますので、やはり、またそのときになってやるということでは、これは手おくれでありますので、私は、行政処分が一に帰するように、これはいけないというので停止処分が出たならば、早急に、根本的に態度を改めるかどうするかということにつきまして、政府といたしまして最高の方針を決定すべきだと思う。そして、いずれにいたしましても、司法部から一つの抗議が出たのです、ある意味におきまして。司法部から抗議が出たので、行政処分に対する司法部の大きな批判ということになるわけです、下級裁判所ではありますけれども。やはり、そういう意味におきまして裁判の尊重ということも当然あるべきことと私は思いますので、そういう混乱を予想せられて、何とかそのときにいたしましょうということでは、無方針、無計画もはなはだしいと申さねばなりません。やはりこれは、いまの時点におきまして混乱を生じないように、そうして司法部の意向も尊重するようにということも行政内部におきまして十分に協議をせられて、しからばそれに対する対策はどうか、こういうことはまた別途考慮していく、こういうことになってきませんと、いまの訟務局長お話等によりましてみると、厚生省はなすがままにめちゃくちゃに混乱する結果をじっと見ていなければならぬ、またそのときになって厚生省として何とか適当に解決していこうということになりますので、これは行政混乱、また利害関係者一つ混乱を招くということになりますので、これはとんでもないまずいことだと私は思いますが、もっと積極的にいまの間に方針をお立てになって対処するというふうにすべきだというふうに思いますが、どうでございましょう。
  233. 神田博

    神田国務大臣 ただいまお述べになりました裁判の尊重につきましては、これはもう当然のことでございまして、そのように処置いたしてまいる予定でございます。しかし、政府といたしましては、過般の措置があやまちはないという考えのもとでございまして、即時抗告をした、こういうことでございます。訴訟でこのことをすなおにひとつ解決いたしたい。  そこで、いま御心配していただいた混乱の問題でございますが、これは、十分ひとつ窓口の扱い等につきましても注意を喚起し、なおまた、関係方面との話し合いその他によりまして、できるだけ混乱を防いで、この期間をひとつ穏やかに過ごして、そして最後の円満な解決をはかりたい、かような所存でございます。
  234. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 終わります。
  235. 青木正

    青木委員長 以上をもちまして質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時十九分散会