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赤澤委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました
政府提出の
昭和四十年度
予算三案に賛成し、
日本社会党並びに民主社会党から提出されました組み替え動議に反対の討論を行なわんとするものであります。
御承知のとおり、明年度
予算は例年に比べて自然増収の見積もりがきわめて少なく、世上近来まれに見る編成難であると言われましたのにもかかわりませず、その予想を裏切り、四年連続年内編成をなし遂げましたことは、まことにみごとな手ぎわであり、しかも財源の調達にあたって公債発行やインベントリーの取りくずしなどを行なうことなく、健全均衡財政に終始した点、現下の経済
情勢から見てけだし当然のこととはいえ、まことに欣快に存ずるところであります。
私は討論時間の重大な制限を受けましたので、本
予算案の
内容にかかわる討論は全部省略いたしますが、あとで
委員長において会議録に掲載していただくようお取り計らいをお願いいたしたいと存じます。したがいまして、私は、ここでは
政府原案に賛成する
基本的理由のみについて申し述べてみたいと思います。
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〔参照〕
さて、最近における
わが国経済は年々目ざましい発展をとげたのでありますが、一方、その経済発展の陰に農業や中小企業等にひずみを生じ、国際収支の悪化と物価高を招来いたしましたこともいなめない事実であります。
しこうして、このような
事態に対処して、わが党並びに
政府は、一昨年以来引き締め政策を
実施してまいったのでありますが、その効果は昨年春ごろから次第に経済の各分野に浸透し、最も重視された国際収支は、最近輸入のおち着きと輸出の予想以上の好調によって漸次改善され、ようやく明るい方向に向かってまいったのであります。
また、国内経済も、鉱工業生産は次第に鈍化の傾向を示し、特に、三十八年度以来上昇を続けた設備投資も鎮静化のきざしが見えて、景気調整の効果は一応その目的が達成されたと思われるに至りました。
このような
情勢に即応して、昨年十二月には預金準備金の引き下げが
実施され、さらに本年一月早々には公定歩合の一厘引き下げが断行されたことは、まことに時宜を得た適切な措置でありまして、私はこの一連の措置を高く評価するものであります。
しかしながら、この間経済構造の変化もあり、さらに、景気調整が重なったため若干企業の倒産が見られ、また、物価は依然として安定を見ない状態にあることも、現実の姿であります。
また、国際的には昨年来本格的な開放経済体制に移行した
わが国経済にとって、一昨年来の
アメリカのドル防衛政策、続いてイギリスのポンド防衛等に見られるように、周囲の環境はなおきびしいものがあるのでありまして、国際収支の見通しも、目下のところは輸出の好調にささえられているとはいいながら、先行きは決して楽観を許さない
情勢にあると思うのであります。したがいまして、引き続き、消費者物価の安定と国際収支改善のために、本年はさらに格段の努力をしなければならないと思うのであります。
以下、私は、
予算審議を通じて行なわれた議論、及び両党提出の組み替え動議に反駁を試みながら、
予算のおもなる
内容に触れつつ討論を進めてまいりたいと思うのであります。
まず、減免の問題について申し上げます。
野党の諸君は、いつものことながら、また今回の組み替え案にもありますように、歳出については、社会保障費をはじめ、農業、中小企業、文教、公共事業など、おしなべて増額を
要求され、一方減税についても常に
政府案を上回る大幅を主張されております。
もとより、われわれも
予算の増額を望み、あとう限りの大幅減税を希望する点において決して人後に落ちるものではありません。しかしながら、社会保障費をはじめ、公務員の給与改善に伴う人件費、長期
計画に基づく公共事業等、いわゆる当然増経費が逐年増高し、いまや財政の硬直性が云々される中で、財政の健全均衡を堅持して
国民の
要望にこたえなければならない責任と使命は容易ならぬものがあるのであります。きびしい財源難の中で、減税については、所得税中心に初年度八百二十億円、平年度一千百五十八億円の思い切った減税を計上しています。この減税額は税制調査会の答申を上回るものであり、また、初年度の純減税規模としては戦後四番目の大幅となっています。
野党の諸君は、配当所得に対する減税をとらえて、これは大企業や高額所得者を優遇するものであると主張されるのでありますが、減税の
内容を見れば、この分はわずかに三十八億円、平年度においても五十三億であって、一方、所得税の減税は、初年度八百二十億円のうち実に八百二億円、平年度一千百五十八億円のうち九百二十二億円の減税となっているのであります。
申すまでもなく、配当所得に対する源泉選択制度創設の目的は、資本の蓄積をはかるという見地から利子所得とのバランスをとろうとするものでありまして、従来からの懸案をこの際勇断をもって解決したという実に画期的な措置であり、かつまた、このことはやがて次年度以降の所得税の大幅減税を可能にするための基盤づくりにも役立つものであります。
今回の減税額は、自然増収四千六百五十億円の十一.六%に相当するものであり、その結果、給与所得者の標準世帯における免税額は、現行の四十八万五千円から五十六万四千円に引き上げられたのでありまして、これを三十五年度の三十二万八千円と比較いたしますと、五年間におよそ二倍に近い免税額の引き上げを行なったことになるのであります。この事実に徴しても明らかなように、いかにわが党並びに
政府が
国民負担の軽減、なかんずく所得税に重点を置いて、毎年あとう限りの免税を断行しているかをうかがい知ることができるのでありまして、私はここに満腔の賛意を表する次第であります。
次に、社会開発について一言申し述べたいと存じます。
社会開発の積極的な推進については、特に
佐藤総理が熱心にこれを提唱されております。
予算の
内容を見まするに、これはただに総理の政治姿勢にとどまらず、随所にその熱意と努力のあとが反映されていることを認めるのであります。すなわち、
一般会計予算においては、住宅対策費、環境衛生対策費がいずれも前年度を二〇%上回り、さらに、社会保障
関係費は一九.九%、文教及び科学振興費は一五%と、いずれも
一般会計予算の伸び率一二.四%をはるかに上回っております。また、財政投融資
計画においても、
国民生活に密接な
関係を持つ厚生福祉施設
関係に二五%を織り込でおり、前年度に対する財投
計画の伸び率、二〇.九%をこれまた相当上回る配慮がなされているのであります。ことに、一般会計の中で公共事業費の伸びが一五%であるのに比較すれば、いかに社会開発
関係に力点を置いたか、まことに明瞭なところであります。
内容について二、三申し上げますと、社会保障
関係においては、生活扶助基準の一二%アップをはじめ、福祉年金の改善、精神異常者の通院治療費の半額公費負担など、低所得階層の引き上げにかなりの手厚い
予算措置が講ぜられ、総額五千百六十四億円の金額は、前年度に比べて八百五十七億円の増、つまり一九.九%の伸びとなっております。
また、公害防止事業団を新設して、ばい煙や汚水などの公害防止施設の整備に特に意を用いた点など、社会開発に対する情熱の端的な現われであると思うのであります。
さらに、住宅について、建設戸数の増加はもとより、公庫の融資率の引き上げや坪数の増加等、
内容の質的向上改善をはかり、新たにサラリーマンに自分の家を持たせるために、住宅供給公社制度を設けるなど、四十五年度までに一世帯一住宅の実現をめざして三百万戸以上の
政府施策受託を供給する
計画を推進しているのでありまして、私は、これらをみても、社会開発が単なるかけ声や政治姿勢ではなく、真にその目的を達成しようとする意気に燃えた
予算であると思うのであります。
その他、文教
関係におきましても、全小学生に対し教科書無償給付を
実施し、私学振興の充実、新たに辺境地遠距離通学者に対する補助金の交付等、
国民の
要望にきめ細くこたえている点も見逃すことのできないところでありまして、私は、これらがすべて今後の新しい社会開発のカテゴリーに入って、年々拡充され、しこうして人間尊重の政治につながることを期待してやまないものであります。
次に、農林漁業及び中小企業の問題について申し上げたいと存じます。
四十年度
予算にいま一つの特色ともいうべきものは、ただいま申し上げました減税と社会開発のほかに、前内閣以来の懸案でもあり、かねてわが党並びに
政府が最優先的に取り上げてまいりましたいわゆる経済のひずみ是正であります。
すなわち、まず農林
関係の
予算について見ますれば、一般会計において、食管会計への繰り入れと災害
関係を除いた純農林
予算は、前年度補正を加えた二千八十一億円を一七.一%上回る二千四百三十七億円となっております。また、財投
計画においても、農林漁業金融公庫の融資ワクを拡大し、三十九年度の一千七十億円に対し一千二百四十億円と、差し引き百七十億円の増加であり、さらに、農協系統資金を活用した近代化資金を六百億円から七百億円に、また、無利子の資金として広く農民に歓迎されておる農業改良資金も四十四億円から五十七億円に増額されているのでありまして、これらの
予算並びに資金をもって一連の施策を進めることによって、生産基盤の整備拡充、構造改善事業及び流通機構の改善合理化等を急速に促進し、同時に農産物の価格安定をはかることによって、農家所得の増大と生活水準の向上を促そうとするものであります。
農業政策の中でもさらに注目すべきものに、農地管
理事業団の新設があります。今日、兼業農家が農行全体の七六%を占めている農村の実情から見て、真に生産性を高め農家の経営規模を拡大して自立経営農家の育成をはかることは喫緊の
要請であります。このときにあたり本事業団の発足はまことに時宜に適したものでありまして、
わが国農政史を飾る画期的な施策の一つというべきであります。
なお、この際、本
委員会において問題となりました農耕用ガソリン税の減免問題について一言触れておきたいと思います。この問題については、しばしば大蔵大臣から説明がありましたように、
政府においては前向きの方向で真剣に検討を重ねられてようでありますが、徴税技術上きわめて困難であるとの
結論に達し、その代策として、従来の農道の整備開発費等に上積みして五十億円を計上して還元をはかっているのでありまして、私どもは、この
政府の誠意ある
態度と努力に対し深く敬意を表する次第であります。
農林漁業と並んでわれわれが最も深い関心を持ち、政策的に重視したものに、中小企業の近代化促進があります。本
予算の中小企業対策は、振興政策と保護政策の両面から現下のひずみ是正をはかることをねらったものでありまして、このため、一般会計の中小企業対策費は前年度より三十二%伸びの二百十八億円が計上され、また、財投面においても、中小企業三公庫に対し合計四千六百二十五億円を織り込んで、今日の中小企業の
要請に大きくこたえているのであります。これは前年度に比べて一九.八%の増額であり、さらに、このほか、新たに無担保、無保証の信用保険制度を創設して、需要の多い小口金融に新たな窓を開き、また、小規模企業共済事業団を新設して企業者の相互扶助による生活の安定に資するなど、今日の中小企業の実情に即してあとう限りの細かな施策が講ぜられておるのであります。その他、税制面においても特別な配慮が払われているのでありますが、これら各般の総合的施策が実を結べば、設備の近代化、構造の高度化、経営の協業化等がより一そう促進され、他産業との格差も次第に縮小の方向に向かうものと、大きな期待を持つものであります。
最後に、
医療費の問題について一言申し上げたいと思います。この問題については、目下
政府並びにわが党の代表と支払い者側団体の代表との間において円満なる収拾について努力が続けられているところでありまして、私どもは、正規の
機関である中央社会保険医療
協議会及び
社会保険審議会の公正なる答申がなされることを期待し、
政府はこれを尊重して実態に即して善処されることを希望するものであります。
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以上主なる施策の数点について申し上げましたが、要するに、私が
政府原案に賛成する
基本的な理由としては、第一に、四十年度
予算は、従来からの経済成長政策の
基本線に沿うて、長期的には公共投資の拡大をはかりつつ社会開発を促進し、同時に、農業、中小企業など、経済のひずみの是正にきわめて意欲的な
態度で取り組んでおる点。第二には減税をはじめ、当面する社会経済の諸
要請によくこたえ、かつまた、
予算規模を適度に圧縮して、国際収支や物価などに対して景気刺激を与えないよう十分な配慮が払われていること。大きく分けてこの二点であります。
これに引きかえまして、
日本社会党並びに民主社会党提出の組み替え案は、その
内容においていずれも現状では実現不可能な
要求であります。たとえば、反動経費の削減と称して、防衛費ほか八百二十五億円を減額しておりますが、これは国防あるいは国内の安寧を無視するきわめて無責任なものである。また、農業用ガソリン税の減免についても、
政府並びに税制調査会が十分に検討した結果、技術的にきわめて困難であるとの
結論に達したものを、さらにその廃止を
要求し、あるいは
医療費国庫負担の大幅増額並びに国の負担による公営企業の値上げ抑制など、かような組み替えに対し、残念ながら賛成することはできないのであります。
この際最後に
政府に
要望しておきたいと思いますことは、
予算の適正執行についてであります。御承知のとおり、
予算の不正執行は、毎年会計検査院が強く
指摘するところでありまして、三十八年のみを見ても六百十六件、二十三億二千二百万円にも及ぶというきわめて不名誉な数字であります。各省大臣におかれては、
予算執行にあたり特に厳正な
態度をもって臨まれるよう強く
要望いたしまして、はなはだ簡単でございますが、私の討論を終わります。(拍手)