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1965-03-03 第48回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月三日(水曜日)     午前九時九分開議  出席委員    委員長 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 稻葉  修君    理事 小川 半次君 理事 二階堂 進君    理事 古川 丈吉君 理事 加藤 清二君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       荒舩清十郎君    井出一太郎君       井村 重雄君    今松 治郎君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       大平 正芳君    上林山榮吉君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       小坂善太郎君    小山 省二君       重政 誠之君    正示啓次郎君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       西村 直己君    野田 卯一君       古井 喜實君    松野 頼三君       水田三喜男君    八木 徹雄君       石田 宥全君    石橋 政嗣君       大原  亨君    岡田 春夫君       片島  港君    小林  進君       高田 富之君    中井徳次郎君       中澤 茂一君    永井勝次郎君       野原  覺君    山花 秀雄君       横路 節雄君    佐々木良作君       竹本 孫一君    玉置 一徳君       永末 英一君    加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 高橋  等君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 愛知 揆一君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  櫻内 義雄君         運 輸 大 臣 松浦周太郎君         郵 政 大 臣 徳安 實藏君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 小山 長規君         自 治 大 臣 吉武 恵市君         国 務 大 臣 小泉 純也君         国 務 大 臣 河野 一郎君         国 務 大 臣 高橋  衛君         国 務 大 臣 増原 恵吉君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣官房長官 竹下  登君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府総務長官 臼井 莊一君         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官         (長官官房長) 小幡 久男君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  島田  豊君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         検     事         (民事局長)  新谷 正夫君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         公安調査庁長官 吉河 光貞君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安川  壯君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主計局次長) 中尾 博之君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  佐竹  浩君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      渡邊  誠君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (管理局長)  斎藤  正君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (薬務局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  坂元貞一郎君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         食糧庁長官   齋藤  誠君         水産庁次長   和田 正明君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         運輸事務官         (航空局長)  栃内 一彦君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 三月三日  委員中曽根康弘君及び竹本孫一辞任につき、  その補欠として小山省二君及び佐々木良作君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員佐々木良作辞任につき、その補欠として  玉置一徳君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小山省二辞任につき、その補欠として中  曽根康弘君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小林進辞任につき、その補欠として片島  港君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計予算  昭和四十年度特別会計予算  昭和四十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 青木正

    青木委員長 これより予算委員会を開会いたします。  昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、審査を進めます。  この際、辻原弘市君より議事進行に関して発言を求められております。これを許します。辻原弘市君。
  3. 辻原弘市

    辻原委員 私は、この際、昨夜行なわれました医療費の問題に関する滝井委員最終質問に対する政府の御答弁は明白でない点がありましたので、あらためてお伺いをいたしておきたいと思います。  政府は、社会保険審議会の答申を尊重することはもちろん、国庫負担の増額については社会党の要望に近づけるよう努力する御意思がおありになりますかどうか、この際、政府の誠意について明確にお伺いをいたしたいと思います。
  4. 田中角榮

    田中国務大臣 御要望はよくわかりました。できるだけ努力をいたします。
  5. 青木正

    青木委員長 一般質疑を続行いたします。岡田春夫君。   〔発言する者あり〕
  6. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  7. 岡田春夫

    岡田委員 昨日の質問を続行いたしたいと思いますが、きょうはあまり時間がございませんので、具体的な問題に入っていろいろ質問をいたしてまいりたいと思います。(発言する者あり)ちょっと静粛にしてくれませんか。
  8. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  9. 岡田春夫

    岡田委員 私は前回の質問三矢計画質問をいたして、まいりましたが、政府のほうの御答弁が不十分であったために、質問は中断されました。しかも、昨日も再三にわたって政府要求をいたしたのでございますが、また昨日以前においても要求をいたしたのでございますが、いわゆる三矢計画と称するものの原文はいまだに御提出がございません。そこで、私が手に持っております三矢計画と称するものの資料をこの際公表いたしたいと思います。しかし、時間がきわめて制限をされておりますので、千四百ページにわたる全文を公表することは困難であります。そこで、本日は、その中の一部分だけを限って公表いたしまして、残りの部分は、小委員会あるいはその他のときにおきまして適宜公表をいたしてまいりたいと思います。  そこで、まず第一には、きょう公表したいのは、三矢計画の中で「第三動研究問題」状況下研究No.12並びにNo.11及びNo.16。No.12は昭和三十八年六月十日付のものであります。No.11ないしNo.16は六月十五日付のものでございます。  まず小泉防衛庁長官伺いたいのでありますが、このような文書があるのかどうかということから確認をいたしてまいりたいと思います。いかがでございますか。
  10. 小泉純也

    小泉国務大臣 お答え申し上げます。  岡田委員が先般当委員会に御配付になりましたものと一字一句違わないというわけではございませんが、ほぼそれと同じような内容のものがございます。
  11. 岡田春夫

    岡田委員 私の御質問は、重ねて申し上げますが、ただいま申し上げましたNo.12NO.11、このような文書防衛庁にはありますかと伺ったのであります。
  12. 海原治

    海原政府委員 お答え申し上げます。  No.11、No.12、こういう番号の文書はございます。しかし、先日のこの予算委員会におきまして私が申したことでございますが、当時、統幕3の第38−30号という文書につきましても、そういう名前の文書はございますということはお答えいたしております。しかし、その文書内容は、先生の御指摘になりましたような事項を持っておるかどうか、これは調査してお答えしたい、こういうお約束をした形になっておりますので、そのことを申し上げますと、先生の御指摘になりましたような事項はこの実施計画にはございません。さらに、当時非常に問題になりました、研究員国会に対していろいろと要請をするような、法律を審議させて可決させるというような表現のところでございますが、こういう文書は全然ございません。先生の御配付になりました文書にもございませんので、詳しくなりまして恐縮でございますが、No.11とかNo.12とかいうもの、そういうナンバーを打ちました文書はございます。その内容についてはおのずから別問題である、こういうことをお答え申し上げておきます。
  13. 岡田春夫

    岡田委員 ひとつ政府説明員に御注意を願いたいと思います。私は時間が限られているから要点だけを御質問しているのに、ことさらほかの問題について時間をかけるような答弁をされております。このような時間は私は時間の中に入れませんから、理事のほうから御注意願います。しかも、私が質問していない点について盛んに答えております。こういう点は私は認めるわけにはいきません。
  14. 青木正

    青木委員長 質疑者答弁者も簡潔にお願いいたします。
  15. 岡田春夫

    岡田委員 それでは状況下研究No.12、それから小泉防衛庁長官は、この文書を見たと、このように、この間答弁されておるのでありますから、防衛庁長官からお答えを願います。説明員答弁は私は認めません。  No.12の内容は、韓国情勢の推移に伴う国策要綱をはじめ「別紙第1、用兵基本に関する事項」「別紙第2、外交及び安保条約運営に関する事項」「別紙第3、経済に関する事項」「別紙第4、要員に関する事項」「別紙第5、民防衛、治安に関する事項」「別紙第6、心理戦に関する事項」「別紙第7、国防中央機構の整備に関する事項」、並びに「国策要綱に応ずる当面の施策の骨子」、並びに別紙A、B、説明資料、これらによって「状況下研究No.12」は構成され、「状況下研究No.11」は、第一、答解に対する基本的態度、第二、情勢判断、第三、日本に対する事態の波及と日本防衛の準備、このような内容であると思いますが、防衛庁長官からお答えをいただきたいと思います。   〔発言する者あり〕
  16. 青木正

    青木委員長 私語を禁じます。(発言する者あり)静粛に願います。
  17. 小泉純也

    小泉国務大臣 岡田委員指摘された書類を拝見いたしましたが、全文にわたって私はまだ精読をいたしておりませんので、政府委員のほうから答弁をいたさせます。
  18. 岡田春夫

    岡田委員 だめです。防衛庁長官答弁してください。読んでいるということはわかっているじゃないか。しかも資料は、この間から自民党を含めた予算理事会で、No.12、No.11を出せということはわかっているじゃありませんか。その内容をわからないという話がありますか。防衛庁長官答弁しなさい。だめですよ。
  19. 小泉純也

    小泉国務大臣 岡田委員指摘のような内容のものはございますが、私は全部を精読していないから、詳しいことは政府委員から答弁をいたさせます。
  20. 岡田春夫

    岡田委員 政府委員答弁は求めません。  それでは、私は具体的な問題について入って、まいります。  No.12、No.11の中に、このような重大な問題があるということをまず指摘いたします。第一点は、核兵器持ち込みが明確に規定されている。第二の点は、海外派兵が明確に規定をされている。第三の点は、昨晩高辻法制局長官質疑応答をいたしましたが、それに関連する問題として、日米共同作戦が明確に規定されている。第四は、安保条約第五条の規定適用しないで、それ以前に日米両国共同防衛行動に入ることを規定している。第五点は、外交権防衛庁の手によって完全に侵害されている。すなわち、安保条約第六条に基づく交換公文事前協議条項——自衛隊はこの事前協議条項包括承認させるということの規定を明確にしている。それのみならず、第六点としては、交換公文の半前協議に基づく戦闘作戦行動においては、北朝鮮侵略日本から提案をしている。このような事実が明文上明らかになっている。この点を私は一つ一つ読んでまいりたいと思います。  第一点は、No.12の別紙第2「外交及び安保条約運営に関する事項」の2の(4)によれば、核兵器持ち込みでございますが——総理大臣もぜひお聞きいただきたい。総理大臣非常に関係がある。「将来核兵器日本国内持ちこみが、ただちに必要な情勢となった場合は、持ち込まれた核兵器使用に関しては事前に必らず日米両国政府の完全なる合意を必要とする条件のもとに承認する予定である。」すなわち、持ち込みを認めながら、そのあとで、使用することで合意をするならば持ち込みを認めるというのであります。この点がNo.11の中にも「日本防衛のための核使用について」という条項がございますが、この中で、日本側は「将来情勢に応じ真に必要と認める場合は、核兵器の持込みに同意する。」と書いてある。また、No.12の説明資料5の(3)においても同趣旨の記録があります。これが第一点であります。  海外派兵の問題であります。海外派兵は、No.12の別紙第1「用兵基本に関する事項」の1の(3)に「自衛隊用兵地域は、わが国施政下にある全領域並びにその周辺海空域とし、海空部隊がその外域作戦する必要がある場合は、あらかじめ定めてあるものを除き、その都度指示する。」すなわち「その外域作戦する必要がある場合は、」ということは、日本領土、領海、領空並びにその周辺地域のその外域でありますから、したがって、公海、相手側領土を含む外域と解すべきである。したがって、これは海外派兵と断定されてもいたしかたのないことである。  第三点、日米共同作戦についてはNo.12の「用兵基本に関する事項」の1の(1)によれば、「日米共同作戦の準拠は先に定めた「日米共同作戦要領」による」と明文している。  第四点は、昨晩問題にいたしました安保条約適用の問題でございますが、これは「用兵基本に関する事項」の1の(2)であります。「防衛出動を下令された部隊は、日米安全保障条約第五条の適用を受けない事態においても、わが国防衛上必要と認めた場合は、前号による日米共同作戦実施することができる。」  第五点は、外交権に対する侵害の具体的の事例として、この点については、No.12の別紙第2に、自衛隊自身が「外交及び安保条約運営に関する事項」というものをきめていることそれ自体が、憲法七十三条の外交権を侵害するということになることは明らかであるけれども、それのみならず、その2の(3)によれば、「条約第六条の実施に関する交換公文による事前協議については、米軍要請があった場合は、核兵器の我国への持ち込みを除いては、全面的に包括承認を与える。」このように明文上明らかにしている。なお、これに関連をして、この事項の中に、「なしうれば韓国との国交回復をはかる。」ということを、自衛隊制服日韓国交回復まで干渉しているのであります。  第六点は、戦闘作戦行動実施の問題でありますが、No.11の中で、このような侵略的なことばが明確に書かれているのであります。「(3)日本間接防衛作戦」の中「ロ、朝鮮作戦作戦区域について」、これに対して日本提案としては、「日本からの戦斗作戦行動実施に当っては、つとめて北鮮領域に限定し、満洲等北鮮以外地域事態の拡大することは、慎重に考慮されるよう要望した。」このように書いてある。これに対してアメリカは、「作戦上必要があれば、北鮮領域に限定することなく、満洲等にも攻撃を加えることも考えられるが、事態を局地的に解決することが米側方針であるので、現情勢では、共産側南鮮以外地域を拡大しない限り実施しない方針である旨回答した。」こういう意味のことが書いてあります。  私は、時間がありませんので、あまり長いこと質問いたしませんが、ただいま申し上げた核兵器日本国内への持ち込み海外派兵の問題、日米共同作戦の問題、そして安保条約適用が行なわれる以前に日米両国共同軍事行動をやっている問題、第五は、安保条約包括承認を、外務省の権限を侵犯してこのようなことを自衛隊が決定している事実、第六は、日本側から北朝鮮侵略提案しているという事実、これらの事実は、憲法上断じてこのようなことを、いかにこれが仮定であるといっても、許すわけにはいかないと思います。これは仮定でありますからというような総理大臣の御答弁では、私は許すわけにはいきません。仮定であるから相手の人を殺してもいいという殺す研究などできないわけであります。(発言する者あり)ここにもだれかいまつまらないことを言っておりますが、図上研究だから何をやってもいいというならば、図上研究なら相手の人を殺してもいいということを認めることになる。そういうことを私は許すわけにはいきません。しかも正式の防衛庁の一機関が、国民税金を使ってこのような陰謀をやっているということは、断じて許さない。われわれはこういう意味において総理大臣の明確な答弁をお願い申し上げます。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 岡田さんが先ほど来御指摘になり、また御意見を述べられました。私は静かにそれを聞いておりましたが、まず岡田さんは三矢計画ということをおっしゃいました。おそらく、ことばは十分知っていらしてそうして三矢計画ということばを特に使われたんだと私は解釈します。しかし、今回のこの研究は、正確に申せば、三十八年度統合防衛図上研究三矢研究実施計画、こういうものです。だから、まず第一に、三矢計画ということばは用語として不適当だ。いかにも、計画を持っておる、具体性がある、かように考えることはよろしくない。まず第一にそれを訂正していただきたい。だから、これは研究先ほど来申すように、どこまでもこれは想像的なものであり、また一部において、その隊員の一部がかような結論を出したという、それだけでございます。だから私は、これを一々議論すれば、それは必ず議論はあると思う。しかしながら、こういういわゆる想像、あるいは妄想的なその研究について内容を一々議論することは意味がないことである、私はかように考えます。
  22. 岡田春夫

    岡田委員 総理大臣、いまの御答弁は、これは国会速記録を通じて、テレビを通じて、ラジオ、新聞を通じて全部報道されるんですよ。こういうことは意味がないとおっしゃることは、あなたは自衛隊制服を援護しているのでしょう。クーデター計画の手先になっていることを意味するじゃありませんか。そういう意味を明らかにしていることではありませんか。なぜ具体的に調べないのですか。さっきから私は、仮定の問題なら何をやってもいいということは許されないということまで言っているじゃありませんか。しかも、国民税金を使っている自衛隊がこういうことをやって、許すことはできないのです。だから、あなたは右翼的であるということをいわれるのですよ。なぜ自衛隊のそのようなことを徹底的に調べないのですか。そのようなことだから、小委員会はやれないんですよ。あなたは、そういう形で自衛隊の内部を弁護しながら、かれらの言うなりになろうとする結果を招きつつあるじゃありませんか。そうでないならないとはっきりおっしゃったらどうですか。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、テレビを通じて国民に訴えておる、そういう立場で申し上げ、岡田春夫君のただいまの三矢計画なるものの御訂正を願っておるのだ。ただいまことばのうちに、軍部がクーデターを云々している——クーデター云々はもってのほかです。これほどこまでも図上演習なんです。図上演習、したがって私は、そういう意味で……。   〔発言する者あり〕
  24. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これを掘り下げて、ただいま御指摘になりましたように小委員会でこれを掘り下げて、そうして、これをどこまでも掘り下げてみようじゃないか、国会を通じて明確にしようじゃないか、さような誤解があってはならない、これが私の主張でもあります。また私は、この席においてしばしば申し上げました、シビリアンコントロール、これこそは、新しい憲法のもとにおいてわれわれが守り抜いておるその態度なんです。このことをはっきり申し上げておく。したがって、この問題は、先ほど来申しますように、いずれ小委員会において明確になる、そういうものなんです。だから、その小委員会のまだ結論も待たないうちに、ただいまのように、この計画があるとか、あるいはクーデター計画だ、そうして私が右翼だ、さような非常に飛躍した論理は、これは賢明なる国民の皆さまがはっきりされると思う。とんでもない話だ。
  26. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ私も申し上げましょう。あなたは、私はいま軍人クーデターをやると言ったと言いましたね。私は制服と言ったのですよ。御訂正なさいよ。まずあなた訂正しなさい。私が三矢計画と言ったのは、この間海原防衛局長も言っているじゃないか。三矢計画というのは俗称であります。俗称ならば、三矢計画と言ったって同じことじゃないか。あなた、研究という計画をやっているのは、それは計画じゃありませんか。研究という計画はないのですか。何を言っているんですか。あなたがやるんなら幾らでもやりますよ。あなたの本質がそこにあるんですよ。小委員会には資料も出さないで、一番肝心なことはごまかして、小委員会でおやりなさいとは何ですか。そんなことを言ったら国民は笑いますよ。何を言いますか。そんなことをして制服を弁護するようなことはおやめなさい。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 軍人クーデターということが気になって、私は制服と言ったとおっしゃるが、ただいまのところ、制服すなわち軍人でしょう。けれども、私は……。
  28. 岡田春夫

    岡田委員 何ですか。軍人ですか。それを聞けばいい。訂正しないでくださいよ。そうですね。ああそうですか。   〔発言する者あり〕
  29. 青木正

    青木委員長 お静かに願います。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっと待ってください。軍人という意味ではございません。ちょっと待ってください。いわゆる制服、これを私が軍人と聞いたのです、あなたのことばを。だから、制服クーデターだとおっしゃるなら、それはもう制服でよろしゅうございます。私のほうがその点は違います。けれども、先ほど来申し上げておるように、計画ということばは使われると困る。それは国民の皆さんとすれば、必ず計画でそういう計画があるのだ、かように考えたら、これはたいへんな誤解を招くと思う。これはどこまでも演習だ、これをはっきりすること、演習であることだけは岡田さんも認められたほうがいいんじゃないか、かように私は思います。
  31. 岡田春夫

    岡田委員 総理大臣とこういうことだけで申し上げし合っていてもしようがありませんが、あなた、三矢研究と称する計画ですよ。三矢計画じゃありませんか。何をおっしゃるのですか。  それじゃ具体的に小泉さんに伺いましょう。小泉さん、研究研究だといって逃げるでしょう。これに基づいて実際のことをやっているでしょう。違いますか。実際の問題があるのを具体的に伺いましょう。  まず第一に、先ほど申し上げた日米共同作戦要領なるものをお出しください。日米共同作戦要領に関連して、あなたのほうでこういうのがあるでしょう。統幕3の登第39の甲の28、フライイングドラゴン改定のための計画指針、協同作戦計画という計画があるでしょう。計画ですよ、総理大臣。協同作戦計画ですよ。実際の計画ですよ。小泉さん、これ、実際問題あるでしょう。昭和四十年度の協同作戦計画があるでしょう。はっきり言いなさいよ。具体的にやってください。出しなさい。あるならばある、その資料をお出しなさい。協同作戦計画をお出しなさい。
  32. 小泉純也

    小泉国務大臣 ただいまお読み上げになりました三矢図上研究は、全員の意見を統合して結論を出したものでもございませんで、各一人一人の幕僚の答案でございます。そういうことからいたしまして、いまの日米共同作戦云々の計画というような問題につきましては、政府委員から答弁をいたさせます。
  33. 岡田春夫

    岡田委員 だめです。もう一度念を押すために聞きます。防衛庁長官、その間に打ち合わせてください。  先ほど申し上げた登録番号ですよ。はっきり登録番号まで私言います。登録番号統幕3登第39の甲28、一九六四年四月六日付フライイングドラゴン改定のための計画指針、これによって昭和四十年度協同作戦計画がすでに決定をされている。必要があれば私また資料を出してもいいですよ。あなたのほうがあるのだから資料をお出しなさいよ。私は政府にかわって資料を出す義務はないですからね。私はあなたのほうが出さないから出しているだけで、必要があれば幾らでも出してもいいですよ。だからあなたのほうがお出しなさいよ、防衛庁長官
  34. 海原治

    海原政府委員 先ほどからのお話を伺っておりますと、三矢計画であるか、研究であるか、まずこの点についての問題があると思います。
  35. 岡田春夫

    岡田委員 そういうことを聞いているのじゃない。補足の答弁なんか要らぬ。そんなこと聞いているんじゃない。
  36. 海原治

    海原政府委員 これは、先ほどから申しておりますように、三矢研究でございまして、先ほど先生が私の名前を御引用になりまして、防衛局長三矢計画と言ったじゃないかとこうおっしゃってりおますが、私速記録を持っておりますが、私そのように言っておりません。私はあくまでこれは研究だろうと申しております。三矢ということにつきましても、読みますと三矢とかスリーアローという名前で呼ばれておるという報道がございますが、そういうニックネームは用いておりませんということを私は申しております。したがいまして、先ほど先生は、私が、防衛局長三矢計画と言ったじゃないか、こう言っておられますが、この点はひとつ御訂正願います。  次に、年度の計画でございますが、これは、いままでたびたび機会あるときに申し上げておりますが、私どもは毎年年度の統合防衛計画、これを受けました陸海空の防衛計画、こういうものは毎年作成いたしております。
  37. 岡田春夫

    岡田委員 小泉さん、伺いますが、それじゃそういうものは毎年つくっている、そのようにあなたの下僚は答弁をしておりますが、昭和四十年度協同作戦計画というものはあるのでしょう。
  38. 海原治

    海原政府委員 実施計画の細部でございますので、私からお答えすることをお許しいただきます。  先生申されましたような協同作戦計画という名称はいまだかつて使用したことはございません。
  39. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ海原さん、海原さんのさっき言ったのは私の思い違いでしたから訂正しておきます。しかし、フライイングドラゴンという計画はあるでしょう。
  40. 海原治

    海原政府委員 フライイングドラゴンというのは英語でございますが、私どもの航空自衛隊、あるいは海上自衛隊等におきましては、毎年アメリカとの間でいろいろな共同演習をいたしております。こういう際にはいろいろニックネームと申しますか、そういう略称を用いておりますので、あるいはそういう中の一つであるかもしれませんが、私自身は具体的にそのフライイングドラゴンというものが何年度のどういう計画であるかということにつきましては承知いたしておりません。
  41. 岡田春夫

    岡田委員 ごまかしてもだめですよ。防衛庁長官伺います、防衛局長は知らないそうですから。フライイングドラゴンというのは公文書の中に使っているのですよ。防衛庁長官が決裁した文書の中にあるのですよ。しかも、英語でフライイングドラゴンと書いてあるのですよ。あるでしょう、フライイングドラゴン。はっきりおっしゃいよ、防衛庁長官
  42. 海原治

    海原政府委員 ただいま問題となっておりますような計画につきましては、防衛局長として私が補佐をする立場でございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、いろいろなニックネームはございますので、先生はいわゆるアメリカ日本との協同作戦計画、これに関連してフライイングドラゴン、こういうことをおっしゃっております。したがいまして、私は先ほど申しましたように、そういう協同作戦計画はない、これははっきりしています。そういたしますと、フライングドラゴンという名前がないものにつけられるはずはないのでございます。しかし、ほかの、先ほど申しましたように、年度の演習の際にフライイングドラゴンという名前が使われているかもしれない、これは、調査しなければわからない、こういうことでございますので、防衛局長が一応事務的な責任者でございますから、私が知らないことは長官もお知りにならない、そういうふうに御了解を願います。
  43. 青木正

    青木委員長 岡田君、時間がまいりました。時間がまいっておりますので、結論をお急ぎ願います。
  44. 岡田春夫

    岡田委員 海原さん、そういうことをおっしゃっちゃだめですよ。私、時間がないとこれほど言われておりますから、言いませんけれども、あなた、極秘ではないのですよ、機密なんですよ。機密資料昭和四十年度協同作戦計画というものがあって、その四月六日付の計画指針には、フライイングドラゴンというのは公文書の中に英文で書いてあるのですよ。これについては私は答弁を求めません。あなたは御存じないならばお調べください。  もっと具体的に言いましょう。小泉さん、何も知らない、知らないじゃ困りますよ、実際の問題として、この中に、実際の計画ですよ、総理大臣、お聞きください、想定ではないのですよ、計画で、日米交戦規則というのがあるはずだ。交戦権を行使する日米交戦規則というものがあるはずだ。きのうは交戦権の問題を高辻さんに聞いた。日米の交戦規則というものがあるはずだからお出しなさい。あるのかないのか、小泉さん、はっきり答弁なさい。交戦権を行使する交戦規則があるはずだ。
  45. 海原治

    海原政府委員 きわめて事務的なことでございますので、再度私からお答えいたしますが、日米交戦規則ということばそれ自体きわめて熟しておりません。日本アメリカとが交戦するような規則というものはございません。私どもはあくまで、昨日法制局長官からお答えいたしましたように、交戦権を持っていないということははっきりいたしております。したがいまして、そういうような、私から言わせれば未熟なことばを使われました公文書があるとは考えません。
  46. 岡田春夫

    岡田委員 何を言いますか。
  47. 青木正

    青木委員長 岡田君。時間がまいっておりますので、結論をお急ぎ願います。申し合わせの時間がまいっております。
  48. 岡田春夫

    岡田委員 ちょっと待ってください。海原さん、あなたも知らないうちに統幕がやっているのですよ。あなたが隠しているか、あなたが知らないかですよ。知っているんだけれどもごまかしているんですよ。小泉さんなんかますますだまされているのですよ。総理大臣もだまされているかもしれない。いいですか、フライイングドラゴンの中のL項に——ちょっと待って。間違えるといけないからはっきりしておきましょう。いいですか、フライイングドラゴンの別紙L項には日米交戦規則というのをはっきりあなたのほうで書いてありますよ。日本アメリカがけんかするなんて、戦争するなんて、そんなばかな話がありますか。安保条約を結んでおいて、そんなばかな話がありますか。L項日米交戦規則ということばが不十分ならばあなたが悪いのですよ。あなたが悪いのですよ。防衛庁が悪いのですよ。あなた方がこういうものをつくったから悪いのですよ。交戦規則はお調べになってお出しください。防衛庁長官、時間がありませんからお出しください。お調べになってお出しください。  それから続いて言います。   〔発言する者あり〕
  49. 青木正

    青木委員長 お静かに願います。
  50. 岡田春夫

    岡田委員 資料をお出しください。  それから防衛局長は事務的なことにたいへん明るいそうでありますから、伺いましょう。防衛局長、非常事態下の日米両国部隊の協同作戦のために、防衛庁統幕会議と在日米軍の間にFTS(共同企画小委員会)及びFTC(共同企画委員会)なるものがあるはずだが、どうですか。知らないなら知らないとお答えください。
  51. 海原治

    海原政府委員 このことは従来いろいろな機会にお答えしておりますが、日本アメリカとは同盟関係でございます。有事の場合に備えてのいろいろな幕僚の研究はいたしております。このこともすでに何回かお答えいたしております。こういう幕僚のグループで研究いたします前に、それを小委員会とかあるいは委員会とか便宜呼ぶことがございますから、先生のおっしゃっておりますものは、そういうたぐいのものではないか、こういうように考えております。
  52. 岡田春夫

    岡田委員 そういうたぐいのものなんてまだ私言っていませんよ。どういうたぐいの内容であるなんて私書っていませんよ、海原さん。FTS、FTC、こういうものがあるでしょうと聞いたのです。共同企画小委員会並びに共同企画委員会防衛庁長官、答えてください。あなたの中の機関ですよ。海原さんばかりに答えさせないで、海原さんに聞いて答えなさい。防衛庁長官、答えなさい。あるかないか言いなさい。田中さん、指図したらだめですよ。防衛庁長官、そういうことはだめですよ。
  53. 海原治

    海原政府委員 先ほどお答えいたしましたように、幕僚レベルでいろいろな研究をいたしておりますので、そういう幕僚のグループのことをコミティーとか委員会とか呼ぶことは通例ございます。その一つではないかと思います。さらにFTCとか、FTSとかでおっしゃいますが、これにつきましては略語でございますので、私も十分調査した上でお答えさしていただきたいと思います。
  54. 青木正

    青木委員長 岡田春夫君、時間がまいっておりますので、御注意を願います。
  55. 岡田春夫

    岡田委員 もう一度伺いますが、それは、あなた御存じないのですね。知らないのですか。あるということを知っているのですか、ないのですか。防衛局長防衛庁長官に答えさせなさい。防衛庁長官、何にもわからないじゃないですか。答えさせなさい。
  56. 海原治

    海原政府委員 最初私へのお尋ねでございますので、私からお答えいたしますが、そういう幕僚のグループがあって研究をしていることは知っております。それがいまおっしゃいましたような公的な名前とはなっておりません。さらにFTCとかFTSとか防衛庁はいろいろな略語を使っておりますので、その内容につきましては、私政府委員でございますので、慎重を期す上に、調査の上お答えさしていただきたい、こういうことでございます。
  57. 青木正

    青木委員長 岡田君、時間がだいぶ超過いたしましたので……。
  58. 岡田春夫

    岡田委員 これで終わりです。いいですか、FTS(共同企画小委員会)、FTC(共同企画委員会)これは公文言の中に出ております。しかも、これはきわめて重大ですが、防衛庁長官総理大臣防衛局長も知らないらしい。知って、おるような顔をしてごまかしておるようですが、これは総理大臣、ぜひお聞きいただきたいのは、このような日本の運命を左右し、日米間に新たな権利義務を発生させるようなこのような事実は、昭和三十八年の了解覚書という条約交換によって行なわれている。いいですか、これは、条約が交換されている。協定であります。外務省もよく覚えておいてください。こういう秘密協定がつくられているのです。これは外務省は知らないはずだ。防衛庁制服の中でこのような秘密協定を結んで、日本を危険な状態に追い込むような、このような危険なことがいま行なわれている。しかも、これは秘密協定であります。国会にかけられていないのであります。こういう秘密了解覚書というのが昭和三十八年に結ばれて、それに基づいて防衛庁の統幕会議と在日米軍の間に新たなる機関として、このような略に称してFTS、FTCが設定されているのでありますが、防衛庁長官が御存じないならば、これについてはあらためてあとで御答弁を願わなければならないのですが、これについてどうしますか。これは、答弁してもらわないとだめです。こういう秘密協定が結ばれているのです。秘密協定です、これは。だめですよ。こういう秘密協定のあるのは重大問題ですよ。時間があるとかないとかの問題じゃないですよ。資料を出さない限りだめです。
  59. 青木正

    青木委員長 議事進行に関し、辻原弘市君から発言を求められておりますので、これを許します。辻原弘市君。
  60. 辻原弘市

    辻原委員 これは、ただいまの岡田委員要求のみならず、われわれ衆議院の予算委員会理事会においても、本問題に関する資料については、これは全般的に出すことを要望いたしておるのであります。しかも、特に具体的にはNo.1112については政府に対してもその提出の協力を求めておるのであります。しかし、今日衆議院の予算委員会における最終的な質問の段階におきましても、政府はその予算委員会理事会の申し合わせにも協力をせず、提出をいたしておりません。さらにまた、ただいま岡田委員から指摘をいたしました二つの秘密協定にかかわる資料につきましても、再三の岡田委員答弁を求めるその質問に対しても、政府資料はもとより、答弁についても協力をいたしておりません。したがって、われわれはあくまでこの要求をいたしております従来のNo.1112並びにただいま岡田委員が具体的に指摘をいたしました、また防衛庁長官並びに海原防衛局長が答えられなかった資料については、当委員会さらにまた小委員会にすみやかに提出することを要望いたします。  なお、念のために具体的にその資料指摘をいたしておきます。第一に日米共同作戦要領、第二に日米協同作戦計画、統幕三登第39の甲、先ほど岡田委員から略号としてフライイングドラゴンと言っておりますが、正確には統幕三登第39の甲であります。次に日米交戦規則、さらにはまた昭和三十八年日米間の了解覚書、以上の四点の問題についてあらためて資料要求いたします。  第二の問題につきましてはさらに念を入れて申し上げておきますが、昭和四十年度における協同作戦計画、フライイングドラゴンであります。したがって、この提出をすみやかに当委員会に行なわれるよう委員長要望いたしておきます。
  61. 青木正

    青木委員長 前例に従いまして処理いたします。
  62. 辻原弘市

    辻原委員 なお前例に従って、岡田委員から要求のあります、ただいま指摘をいたしました資料について、これを速記録にとどめられんことを特に要望いたしておきます。
  63. 青木正

    青木委員長 前例に従って処理いたします。  これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に石田宥全君。   〔「こっちの要望を聞かぬでどうして予算が通るんだ。」「資料を出すようにはっきりしろ」と呼び、その他発言する者あり〕
  64. 青木正

    青木委員長 石田宥全君。——石田宥全君。   〔発言する者多し〕
  65. 青木正

    青木委員長 このままの形でしばらくお待ちください。   〔「休憩、休憩」と呼び、その他発言する者多し〕
  66. 青木正

    青木委員長 石田君、石田君。   〔発言する者、離席する者多し〕
  67. 青木正

    青木委員長 このままの形で十分間休憩いたします。    午前十時四分休憩      ————◇—————    午後四時四十七分開議
  68. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十年度総予算に対する質疑を続行いたします。  理事協議に基づき、本日の一般質疑は一人当たり一時間の範囲においてお願いいたします。  石田宥全君。
  69. 石田宥全

    石田(宥)委員 先般来問題になっておりますいわゆる三矢問題は、わが国における議会制民主主義のためにきわめて重大な影響をもたらすものであり、これは与野党を通じてわが国の議会制民主主義擁護のために協力一致してこの陰謀を粉砕すべきであると私は考えておるのであります。したがって、この問題についてこそ与野党一致、これがために戦うべきであると考えたのでありますが、遺憾ながら、委員長はじめ与党の各位の協力を得るに至らず、私は、はなはだ残念に存ずる次第でございます。  そこで、委員長から一時間の範囲内の時間を与えられたのでありますけれども、私の質問の予定を変更いたしまして、これまた前国会以来問題になっておりまするガソリン税の問題一本にしぼって、きわめて短時間に質疑を終わりたいと考える次第でございます。  まず最初に田中大蔵大臣にお伺いいたしますが、税制にほおよそ応能の原則、応益の原則、こういうものがあることは、税制のイロハであります。ガソリン税は応益税の中での目的税であると考えるのでありますが、いかがでございましょうか。
  70. 田中角榮

    田中国務大臣 道路整備の財源に使用せられておりますし、一部は地方道路税として目的税に採用されております。
  71. 石田宥全

    石田(宥)委員 実は、先般の大蔵大臣の御答弁では目的税的なものであるという答弁があったので、目的税か、目的税的なものであるかということでこれは性格は変わると考えて御質問を申し上げたわけでありますが、目的税であるということが明らかになれば、それでよろしいのであります。  そこで、目的税といたしますれば、これは道路整備の財源としての税金であります。道路整備のための税金ということでありまするならば、当然、道路を主として使用するところの自動車その他に課税さるべきものであって、たんぼの中を走り回るところの自動耕うん機やその他の農機具に課税さるべきものでないことは、これは言うまでもないところだと思うのであります。たんぼの中を走らせる自動耕うん機やその他の農機具に課税されて、航空機やあるいは工業川のガソリンに対しては課税されないということは、一体どういう意味なのであるか、どういうわけか。
  72. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたが、地方道路税は目的税でございますが、ガソリン税は目的税的な税でございますことは御承知のとおりであります。御承知のとおり、当該年度におけるガソリン税収入と同相当額を道路整備の財源に盛らなければならないということになっておりまして、国税であるガソリン税は、揮発油税は目的税というのではなく、目的税的な税である、こういうことは再三申し上げておるわけであります。  なお、航空機や産業用に使われておるもの等に対する減免の措置は、その事業を国家的な立場に立って考えるときに育成強化をしなければならないという過程における減免税制度でございます。
  73. 石田宥全

    石田(宥)委員 大蔵省が作成されました資料によりますと、この農機具の対象件数が四百二十万件ということになっております。昨年の予算委員会における農林省の農政局長答弁によれば百五十万件、こういうことになっておるのでありますが、この点は、大蔵省の基礎数字がどこから引き出されたか、はなはだ疑問に思うのであります。これは自治大臣にお伺いいたしますが、各市町村では、財政が非常に緊迫をいたしておるものでありますから、軽自動車税としてかなり綿密に台数、馬力を登録をしてあるはずでありますが、その総数は幾らくらいになりますか。——これは予告してあるんだから、ちゃんと調べておきなさい。
  74. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 約百万台だそうでございます。
  75. 石田宥全

    石田(宥)委員 それでは、農林省の農政局長、どれくらいの台数ですか。
  76. 昌谷孝

    昌谷政府委員 自動耕うん機の台数を昨年申し上げた数字が、先生先ほどおっしゃった数字とほぼ見合っておるようでございます。
  77. 石田宥全

    石田(宥)委員 この点は、自治省の約百万件、農林省の約百五十万台、これはあまり相違がないと思います。それは、自動耕うん機は軽自動車税の対象として把握されておるけれども、農林省のほうの脱穀調製機等はやはり登録されておらない関係がありまするから、おおよそこの程度ではないかと私は想像するのでありまするが、大蔵省の四百二十万件というのはどういう計算なのですか。計算の基礎をひとつ承りたい。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 四百二十万件の基礎を申し上げますと、動力耕うん機の保有台数は百七十四万三千台でございますが、これを借りて使う者がございますので、そういうものを含めて百九十八万五千件というふうに計算をいたしております。そのほか動力の防除機が三十四万六千件、それから汎用原動機が五万一千件、賃借等請負によるものが百七十七万七千件といたしまして、四百十五万九千件、それに林業用のもの二万件、漁業用のもの四万件、合わせまして四百二十一万九千件、こういう計算でございます。
  79. 石田宥全

    石田(宥)委員 借用のものというのを入れれば、これは架空の数字になると思うのです。そうでしょう。実際の数字ではないわけですね。借りて使うということになれば、一台のものを十人で使えば十台になるわけです。だから、これは私は大蔵省がためにせんがための作為的な数字だと判断せざるを得ないと思うのでありますが、しかし、それはそれといたしまして、昨年の予算委員会または本年の予算委員会を通じて、大蔵大臣はその実態の把握が困難であるということを一つの理由とされておるのでありますが、実態の把握については、これは、先ほど自治大臣からお話のありました登録件数が明瞭でありますし、さらに実態把握の方法は簡単に幾らでもあるわけです。  そこで、その他の理由としては、税制調査会の答申ということを常に主張されるのでありますが、税制調査会は、かつて臨時税制調査会があり、最近においては恒久的な総理府の諮問機関としての税制調査会ができておるのでありますが、最近できました税制調査会の答申が完全に実施されたことがありますかどうですか。
  80. 田中角榮

    田中国務大臣 税制調査会の答申は、おおむね答申尊重、こういうことでございます。
  81. 石田宥全

    石田(宥)委員 答申は尊重されるけれども、答申どおりにやったことは一回もないじゃないですか。自分の都合のいいことはやる、都合の悪いところはとらない、きわめて明瞭なんです。そういうことを理由にして、航空機からも税金は取らない。工業用のガソリン税もこれは取らない。たんぼの中を動かす自動耕うん機やあるいは農作業場に備えつけてある脱穀調製機に使うものは、これは税金を取る。こんな矛盾した、こんな不公平な、こんな不明朗な税金の取り方というものは一体ありますか。ほかにこんな取り方をやっているものはありますか。そういう不合理は、不明朗な、不明確な税金の取り方というものはやめるべきであるというのがわれわれのたてまえなんです。どうですか。
  82. 田中角榮

    田中国務大臣 本件につきましては、予算委員会理事会等でも詳細申し上げましたとおり、昭和三十四年当時からこの問題が議論を呼び、大蔵省といたしましても十分検討いたしたわけでございます。しかし、技術的に非常にむずかしいということでそのままになっておったわけでありますが、昨年予算委員会の御質疑もございましたし、私の答弁もありましたので、本件に対して新しい角度から検討をいたしたわけでございます。なお慎重を期する意味で税制調査会の答申も求めたわけでございますが、減免税をやるといたしましても非常に技術的にむずかしい、こういうことになったわけでございます。その間の事情はおおむね申し上げてございますが、御質問があれば申し上げます。ただ、端的に申し上げると、ガソリン税がいま蔵出し税でございまして、少数の製造業者から税金を納めるておるわけでありますが、これが、全国各末端までまいりまして、その末端において農業用、ガソリン税の減免をするといたしますと、もう税は先取りで払わられております。そうしますと、非常に大きい四百二十万件というような切符を集計して税を払い戻すということになるわけでございます。技術的に非常にむずかしい。しかし、本件に対しては何らか政治的な解決を必要とするということで、御承知のとおり、四十年度の予算案につきましては、五十億、農道整備費用ということにいたしまして別途計上をいたしておるわけでございます。でありますので、ガソリン税自体において減免をするという方法もございますが、技術的に困難であるということで、結論的には、農道整備に別途計上をいたしておるということになったわけでございます。
  83. 石田宥全

    石田(宥)委員 第一、法律上疑義がある。それから、行政上困難だとおっしゃるけれども、大蔵省はもっともっと困難なことをやっていらっしゃるのですよ。自由業の所得の把握、あるいは農業の所得の把握をごらんなさい。反当たりの所得というものを計算される場合には、一石当たりの米の生産費は、——大蔵大臣よく聞きなさい。一石当たりの米の生産費は、低いところは二千五、六百円から、高いところは一万五千円もするところがあるのですよ。二万円もするところがあるのですよ。それを、反当たりの収益幾らというふうにちゃんと押えて、標準をつくって、これは国税で徴収するばかりじゃなくて、その標準で住民税までやらしておるじゃないですか。これくらいめんどうなことをやりながら、ガソリン税の免税ができないなどということは、やる気がないからだ。やる気があれば、このくらいのことは簡単にできる。教えてあげましょうか。これは、大蔵省では、膨大な人員を、要するという数字を出しておられる。膨大な人員を要するし、簡単にはなかなか人員の確保も困難だ、こう言っていらっしゃる。初年度で四千八百六人の人員を要して、二十四億三千万円の経費を要するといって主張しておられるが、さっき自治大臣から答弁があったように、第一、町村でちゃんと把握しておる。町村で把握し切れないものは、農業委員会を使いなさい。農業委員会は、設立当初と情勢が変わって、いまでは仕事がなくてあくびをしておる。あなた御承知かどうか知らないけれども、この前の参議院議員選挙のときをごらんなさい。全国の各県の農業会議の中で、三十七県もが自民党のある派閥の候補者のために選挙違反にひっかかっているじゃないですか。仕事がないからそういうことになっているのですよ。そういうところに委託をして調査をさせる。あるいは農協を使いなさい。自分たちの減免税が行なわれるということなら喜んで協力しますよ。何でこんな膨大な人員と予算を必要としますか。台数はそれで把握ができる。馬力も登録されておる。耕作面積はきまっておる。この基礎の上に何で一体脱税の余地がありますか。何で一体横流しの余地がありますか。反当たりの収入の標準をつくるよりは何百分の一も何千分の一も簡単な手数でできるのですよ。それを困難だ困難だと言っていることは、やる気がないからなんだ。やる気があれば、それは簡単にできます。だから、問題は、大蔵大臣は、大いにやるつもりになって努力した、おれも農村の出身だからとよくおっしゃるのだけれども、一体大臣、農道というものをよく御存じですか。農道というものは、これが一つ問題なんだ。農林大臣は道路の拡幅を盛んにやっていらっしゃるですね。道路の幅を広げてたんぼをつぶすと、つぶれたたんぼはとたんに国有地になるのですよ。そうして、五メートルも五・五メートルもの道路になれば、どこのトラックでも乗用車でも通るけれども、その道路の維持修繕費は全部農民が負担しておるのですよ。一体、こんな不合理な問題をかかえておいた上に、さらにガソリン税を取るとは何事です。農民の負担によって農道は維持修繕が行なわれ、拡幅してつぶした農地は全部国有地に編入されておるじゃないですか。あなたも御承知の、新潟市周辺の亀田郷の土地改良区をごらんなさい。農地がつぶれて道路になった坪数は、いまの新潟市周辺の坪当たりの単価に直すと八十億に相当すると言っておる。国営で土地改良が行なわれて、国から四十億の補助金はもらったけれども、農地がつぶれて、それが道路になって、いま売り渡すときには、農民のものではないから、当然国がそれで金を取る。その金額が八十億にのぼるということを亀田郷土地改良区の理事長は訴えておるのです。そういう実態の中で、一体、ガソリン税を取るなどということがいかに不当なものであるかということは、おわかりにならないですか。これくらい明瞭なものはない。前向きに前向きにとおっしゃるのだが、もっとひとつ前向きな答弁を期待したいと思うのですが、どうですか。
  84. 田中角榮

    田中国務大臣 ガソリン税の問題につきましては、先ほどから申し上げたとおり、農業用につきまして減免税ができるかどうかということに対してはうんと検討したのであります。私も初めからこれをやらないという姿勢に立っておるものではございません。先ほどから申し上げたように、三十四年からこの問題は問題になっており、昨年も議論になり、大蔵省もできればやりたいということで検討したのです。検討してできなかったという理由は、ここにたくさん書いてあるのです。もっと膨大もないものがございます。私はただ、こういうことを十分検討した結果、これは農業用のガソリンの減免税をしないために故意につくったのではないのであります。やるためにはどうしてやるのかということで前向きに検討いたしました。いたしましたからこそ、私は、この問題に対して、農業用、ガソリン税に対しては検討いたしますと国会で言明したが、できるものをやらないということになったらたいへんなことであるから、あらゆる角度から検討しなさい、こういう非常に強い態度でこの問題を検討したのであります。その結果、どうしてもできないということでありますし、それはできないというよりも、農民のためによりベターな方法はないかということで、農道に五十億別途計上をいたしたわけであります。四百二十万というものに対して農協を使えばいいではないか、また、農業団体のひまなものがある、こういうことでございますが、国税でそのような民間の経済団体を利用してやっておるという制度はないわけでございます。しかも、四百二十万件というものに対して減免税を行なおうとすると、非常に徴税技術上のむずかしさがあることは、この間も申し上げたとおりであります。しかも、このガソリン税というものそのものの徴税のやり方が、蔵出し税金であるということで、一ぺん税金を納めるわけであります。そして、切符制度ということになって、農民が切符を持っていったものに対しては税額を控除した安い値段でもって売る、そうして、その窓口で、スタンドで売ったものが、各メーカーの名前の書いてある切符を、これだけ売りましたということで集計をして、その納税者からその部分だけを還付する、こういう方法以外にないわけであります。でありますから、いま農業所得に対して標準課税を行なっておるからという問題と本件とは、事の性質も違うわけであります。でありますから、まあ百億の減税に対して、来年、再来年伸びていくものでありますから、そういうものに対して百億の徴税費がかかってもいいのだ、こういう議論になれば、これはイデオロギー議論になりますから私はあえて申し上げませんが、国民のために、農民のために、よりベターな方法は何か、こういう評価をいたしまして、その結果、税の体系もくずさず、農民とまた税の第一線におる人とのトラブルも起こさず、そしてよりベターな方法として農道整備のために五十億を別途計上することがいい、こういう判断に立ったわけでありまして、農道整備ということに対しては、長いこと石山さんなども大いに声を大にしてこられたのでありますから、非常にいい制度をとった、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  85. 石田宥全

    石田(宥)委員 国税を地方団体の職員等に委託することは云々というお話でありますが、私はそういうことを言っておるのではないので、実態の把握はそういうところに委託をすることが可能ではないか。切符を発行するということは税務署がおやりになればいいことであって、そういうことは軽油引取税でも行なっておる。それは地方税だから、こうおっしゃるけれども、そこがやる気があるかないかの分岐点なので、やる気があればやれるということ。  そこで、農道について云々ということを盛んに効能書きをお述べになったので、割愛をするつもりでおりましたけれども、どうも質問せざるを得なくなったのですが、一体、大臣、国営土地改良を行なったところと県営土地改良を行なったところの農道のキロ数はどれくらいあるのですか。その他の農道のキロ数はどれくらいあるのですか。
  86. 田中角榮

    田中国務大臣 政府委員から答えさせます。
  87. 中西一郎

    ○中西政府委員 ただいま手元に資料がございませんので、至急調製して、すぐ持ってまいります。
  88. 石田宥全

    石田(宥)委員 効能書きはりっぱに並べられるけれども、その基礎数字は農林省にもないじゃないですか。農林省にもない。大蔵省にもない。一体、五十億ずつ農道整備費に回して、何十年かかれば日本じゅうの農道が整備できるのですか。あるいは百年もかかるでしょう。あるいは百年でもできないでしょう。そういうことで、何かあんまり効能書きをあんたが述べるから、私は質問する。  まあこの程度で私はやめますけれども、官房長官にひとつ伺いたいのでありますが、佐藤内閣は中小企業と農業のひずみの是正ということを盛んにおっしゃるわけです。いまお聞きのとおりなんですね。農道というものは、広げれば広げるほど、だれもかれも、どこの車も通るけれども、その維持管理費は農民が負担をしておる。そうして、たんぼが農道になったとたんに、その所有権は国に移る。こんな不合理な制度の上に、さらに、たんぼの中を動かすところの機械やあるいは農舎の中に据えつけておる機械の、ガソリンに税金を、しかも高率な税金を取るなどということは、不合理とお考えになりませんか。不合理とお考えになりませんか。  それから、もう一つついでに聞きますが、これはおとといですか、本委員会でわが党の堀委員が出された資料でありますけれども、「夫婦子一人(十三歳未満)で年所得六十万円に対する職業別にみた課税額調べ」、これによりますと、給与所得者は所得税と住民税を合算して二万三千五百八十六円、農業所得者は四万九千三百五十四円、商業所得者は六万七千三百五十四円、こういうふうに、同じ所得であっても税金は農民の税金が非常に高い。非常に高い。その土に、昨年は——これは佐藤内閣の責任とは言いませんが、昨年は農地の評価がえが行なわれて、農地がうんと高くなった。しかしこれはいまストップしておるけれども、農民のあの広い宅地の税金は二〇%上げたでしょう。二〇%以上上がったところもあります。山林も上げております。こういう不合理なことをやって、農業や中小企業のひずみの是正というようなことを総理大臣は言っておるが、一体どうお考えになりますか。そんなことを今後もお続けになるおつもりですかどうか、所信を一伺いたい。
  89. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 石田さんの御質問の根本の精神は、日本の農村、日本の農村の青年、こういうものをどう考えておるのかということが基本のようであります。税制等の問題は、所管大臣、大蔵大臣等からありますからして、その基本の問題についての考え方ですが、御承知のように、これは私が申し上げるまでもなく、日本は豊葦原の瑞穂の国ということで、われわれは、私自身も農村の出身であります。石田さんが農村の現在の状態を憂えられて、そこで、佐藤内閣の社会開発の精神は農村にも及ぶのかどうかという根本問題について私にお固いがあると思いまして、その点からお答えを申し上げますが、もちろん、今度の予算の面から考えましても、まだ佐藤内閣は発足間もないのでありますから、石田さんの御満足のいくような、農村の開発が不十分であることは、もちろんこれからの問題であります。私たち、今度の社会開発等におきましても、農村の近代化と農業の近代化、この二つの問題があろうと思います。農業の近代化については農林大臣がかねがねから主張されておりまするが、私の関係といいましょうか、これは広い意味でありますけれども、農村の社会の近代化、これは今日では最も重大なときに差しかかっておると考えておりまして、われわれは、この農村青年が日本の国のいしずえであると申しましょうか、日本の経済があるいは工業経済あるいは他の経済の発展があろうとも、その日本民族の中心といいましょうか、精神の置きどころは、農をもととするところの精神であるという考え方で、農村社会の近代化につきましても最大の努力を払うつもりでおりますので、御了承願いたいと思います。
  90. 石田宥全

    石田(宥)委員 農政問題についてはきょうは割愛をいたします。これは、農林大臣も見えておりますけれども、時間の関係委員長に協力をいたしたいと思います。  ただ、ガソリン税の問題につきましては、本委員会でもしばしば論議が行なわれ、さらにこれは理事会においても数回にわたって論議が行なわれたのでございまして、これについて理事会としていかなる経緯になっておるか、これについてひとつ委員長から御報告を承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
  91. 青木正

    青木委員長 申し上げます。  本問題につきましては、理事会におきましても慎重に検討をいたしまして、この問題のために両三回にわたり理事会を開会し、政府当局の意向等も聞いたのであります。しかしながら、ただいま石田委員の申すごとく、政府側の答弁もわかり、さらにまた、われわれ理事会といたしましても、本委員会の意向もわかりましたので、この問題につきましてはさらに検討の要あろうと考えまして、理事会におきましては次のごとく申し合わせをいたしたのであります。  農道整備事業等については農林漁業用揮発油消費量の伸びの見込みを勘案して予算の増額に努力し、なお農業用ガソリン税の減免措置について委員会において検討する、  かように理事会において決定いたした次第であります。
  92. 石田宥全

    石田(宥)委員 質問を終わります。
  93. 青木正

    青木委員長 これにて石田宥全君の質疑は終了いたしました。  次に、小林進君。
  94. 小林進

    小林委員 どうもかぜを引いておりまして頭が痛いのでございますが、党の命令でございまするので、あえて質問をさせていただくわけでございまするが、政府側においても、私どもの要求いたしておりまする閣僚、大臣が全部おそろいになっているかどうか、委員長において御確認をお願いいたしたいと思うのであります。よろしゅうございますかな、委員長。そろっておりますか。——総理大臣はお見えになっていないようでございまするが、委員長、どういう事情でございましょうか。
  95. 青木正

    青木委員長 総理大臣の都合につきましては、橋本官房長官から御説明願います。
  96. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 佐藤総理大臣は、一両日前からかぜを引いて熱が高うございまして、けさほど無理して出てまいりましたが、まだ熱が多少高いものでございますから、目下しばらく静養しておりますので、御了承願います。
  97. 小林進

    小林委員 それでは、残念でありまするけれども、私はかぜを引いておるけれどもしゃべらなくちゃならない、総理大臣はかぜを引けば休まれるという、人間的な差別があるようでございまするが、それ以上の深追いをすることは時間の関係上省略をいたしまして、私は第一番目に南ベトナムの問題についてお伺いをいたしたいのでございまするが、今朝の新聞の伝うるところによりますれば、南ベトナム軍とアメリカ軍による第四次の北ベトナムに対する爆撃が行なわれておるのでございまして、この百六十有余機による北ベトナムの爆撃は、従来の限定報復爆撃ではなくて、制裁爆撃である、かように報道をせられておるのでございまして、これは米国の戦争政策に対するむき出しの積極政策であり、米ソ仏並びに国連事務総長等の話し合い解決に対する逆行を行動で示したものであるというふうに報道をせられておるのでございまして、まさに戦争の拡大への危険はますます増大をしつつあるのでございます。これに対して、中国の要人ということばで報道せられておるのでございまするが、中国政府の権威ある人は、二日における米国の第四次北ベトナム爆撃は、これまでにない北ベトナムと中国に対する重大なる挑発である、米国はこれ以上爆撃を拡大できないと思うが、もしこれ以上やるならば、中国は実際行動で米国をたたくであろう、こういうことを言っておるのでございまするし、また、ソ連も、ソ連のモスクワからの報道によりますれば、ソ連の世論は米国の新たなる侵略に対して一致して抗議をしている、こういうふうな報道をいたしております。一月二十六日には、ソ連のコスイギン首相は、インドシナ情勢正常化の第一の条件として、米国がソ連の友邦である北ベトナムヘの攻撃を中止することを呼びかける、北ベトナムの軍事行動が続く限り米ソ間の話し合いも共存外交の発展もあり得ないということを強調して演説をいたしておるのでございまするが、その演説の終わらざるうちに、こういうような無鉄砲な、従来の三回にもないという大きな規模の爆撃を行なわれているのでございまして、ソ連としては北ベトナムに対して安全保障の約束をいたしておりまする以上、これ以上北ベトナムの流血と破壊を静観することができないような状態にいま置かれているのではないかというのが世論でございます。  以上のような中国の立場、ソ連の立場等をも勘案いたしまして、戦争への危機はさらに醸成をせられ、一歩また戦争へ近づきつつあるものと見なければならぬのでございまするが、これに対する日本政府の御所見は一体いかがでございますか、総理大臣にお伺いをいたしたいのであります。
  98. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 米国・南ベトナムの共同声明を見ましても、北ベトナムが挑発行為あるいは挑発攻撃をやはり現在においても継続されておるという前提のもとに、第四次の爆撃を行なったということを言っておるのであります。そして、その理由といたしまして、北越の海上に、たしか二月十六日でございますか、武装した一隻の船艦があって、その中に多種多様の兵器、弾薬を搭載して、そして、これを南ベトナムに輸送し、いわゆる侵略行為を続けておるということがあらゆる角度からりっぱに証明されておる、従来の陸上からの浸透のみならず、海上からの浸透も非常に活発に行なわれておる、すなわち、これはいわば侵略の継続である、そして、この二週間の間にいろいろなテロ行為が行なわれて、善良な南ベトナムの人民が大体百数十人このために命を奪われておるというような状況であるからして、これは侵略の継続である、これに対する防衛の意味の報復攻撃を行なった、こういうことを言っておるのでありまして、この事実にして確かならば、そのとおりであるならば、私は、やはりこれは当然の自衛行為である、かように考えるのでありまして、さらに、米国は依然として戦争の拡大を欲しておらない、こういうことを言明しておるのでございまして、この言明をわれわれは信頼いたしまして、これ以上の不当な戦争の拡大はないもの、かように考えておる次第であります。
  99. 小林進

    小林委員 あなたはいま何かアメリカが発表いたしましたベトナム白書か何かの一節をお読みになって、どこかの軍艦の中に、あるいは中国製やソ連製の戦争資材が載っていたの、爆弾が載ってたのというようなことを、言われておりまするが、そういうような戦争資材の判断というものは、私はあとでも申し上げますけれども、日本だって、一体南ベトナムに何を送っているのです。そういう物を送るということと、みずから軍人が他国に駐屯をし、飛行機やジェット機をもって爆撃をすることとは、おのずから性格が違う。あんまり人を小ばかにしたような、子供だましのような答弁をしないでくださいよ、全く。私がいまも言うように、アメリカは、そういうふうに、第三回までも、ベトコンの攻撃があった、そのために補給基地である北ベトナムを報復的に爆撃したと言っている、しかし、第四次には、ベトコンの攻撃がないにもかかわらず、いわゆる制裁の意味をかけて、戦争を拡大するという立場でアメリカが爆撃をしているから、この第四次の爆撃は、前三回の爆撃とは全く性質を異にしているという、こういう報道が行なわれて、戦争の危機が一歩一歩近づいているじゃないか。これに対して、あなたのお話によれば、依然としてアメリカの自衛権の発動である、こういう主張であります。そんな甘っちょろい解釈で、一体日本国民が納得するとお考えになりますか。私は、いまここでお伺いいたしたいことは、この南ベトナムにおけるいわばアメリカ軍のこの不法不当なる爆撃に対して、日本国民は、外務大臣や一部のウルトラ反動は別にいたしましても、日本国民の大多数は非常に不安を感じている。非常に危険を感じている。その危険を感じているという事実は、これは前々から例の笠信太郎氏等の主張でありますが、総理大臣はいち早くこの南ベトナムの危険を回避するためにアメリカに飛んでいくべきであるという、こういう主張に対して、日本国民が各種各様を問わずいずれも賛成をして、その笠信太郎氏の、総理大臣アメリカに飛ぶべきであるという主張を支持しているというこの一事をもっても私は明らかであると思います。あなた方は一体危険をお考えにならないのですか。官房長、この笠信太郎の、日本はいま危険に瀕しているから、南ベトナム問題に対して早くアメリカへ飛んで行って、そういう不当な攻撃をやめさせるべきであるという、こういう提案に対して世論があげて賛成をし支持しているという事実に対して、政府は一体こたえられる意向があるのかないのか。外務大臣じゃだめです。ひとつあなたの考えを私はお聞きしておきたい。いかがですか。官房長、——長官
  100. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 笠信太郎氏の論文は、現在の共産主義という看板を掲げておる新興国でも、二、三十年ほうっておけばだんだんおとなしくなるというような趣旨のことが書いてあるのでございますが、そういう非常に長期的な見方もございましょうが、現在のベトナムの情勢に対してどうするかということであろうと思うのであります。それには、まずもってベトコンによる国内撹乱というような問題を沈静さして、しかる後に平和的な解決の方法に移る、こういう手順が一番適当であると、かように考えております。
  101. 小林進

    小林委員 私は、時間がありませんから、一九五四年におけるジュネーブ会議に基づくその協定を、翌一九五五年、アメリカがフランスになりかわって南ベトナムに駐屯をして、このジュネーブの協定を破ったなどという歴史的な問題を一々ここで述べて反論をしようという気はないけれども、北ベトナムに対するアメリカの攻撃は自衛権の発動でないということだけを、私は明瞭に申し上げておきます。自衛権の発動などというのは、日本の外務大臣だけが言う実にふざけた主張です。これは私は了承できない。  ただ、いま私があなたにお聞きいたしたいことは、日本国民はこれに非常に不安を感じているという事実なんです。アメリカの北ベトナムの爆撃に対して非常に不安を感じている。なぜ不安を感じているかといえば、この戦争が拡大せられれば、被害を受けるのは日本国民だということを、国民はいわゆるからだに感じているということなんです。言いかえれば、依然として日本の航空墓地からアメリカの飛行機が飛び立っていっている。立川だ、あるいは方々のいわゆる飛行基地から、このベトナムに行くアメリカの軍事飛行機が飛び立っている。あるいは日本の港々では、この戦争にかり出されるアメリカの軍艦が出入りをしている。これをあなた方は、これは戦略のために、作戦のために出かげていく軍艦でも飛行機でもない、単なる移動にすぎない、いわば沖縄というアメリカの基地に一つクッションを置いて、その沖縄からいわゆるベトナムに出動しているのであるから、作戦計画でもなければ、だから安保条約に基づく事前協議の対象にもなり得ない、こういうようなことで、この南ベトナムから北ベトナムに至るアメリカの、日本を基地とした一切の作戦行動を手放しにながめているじゃありませんか。これを日本国民は知っているがゆえに、この戦争を拡大されたらわれわれの身の上は一体どうなるんだと真剣に考えている。こういう国民の不安を率直に取り上げて政治的な解決をする、あるいは政治的な安心を与えるというのが、これが一体政府のとるべき態度であると私は思う。官房長、あなたは、——官房長官、あなたは、官をつけるに足るならば、いますぐ明確に答えを出しなさい、そこに出て。答弁するときになればこういうわけのわからぬ外務大臣にまかしておるから、つい私のほうも官を節約するということにならざるを得ないのであります。いいですか。この国民の不安を率直に受け入れて、それを政治的に解明をするというのが、これが政府の役割りじゃありませんか。いま日本国民要望しているのは、それはマレーシアの問題もありましょう、インドネシアの紛争解決の問題もありましょうけれども、いまわれわれが足元でほんとうに政府要望いたしておりまするのは、この大きな危険なるアメリカの北ベトナムに対する無差別に近いような爆撃に対して、日本国民にその安全を保障せよということなんです。なぜそれをおやりにならないんですか。第三次に次ぐこの大きな爆撃、世界の世論は全部アメリカも非難しております。アメリカはこの第一次、二次、三次、四次の爆撃によっていよいよ孤立するだろうという。英国もフランスも支持しておりませんよ。ソ連と中国は、もう一歩ひどければ、先ほども言うように、実力行動に訴えるぞと言っておるのです。そういう危険な状態にあるにもかかわらず、あなたのほうの外務大臣は、これは自衛行動だ、戦争はこれより大きくしないとアメリカが言っておるから安心だなどというような、こういう無責任任な外務大臣の答弁じゃ国民は納得するわけにはいかぬのであります。どうですか、あなた。アメリカに飛んでいくか、あるいは適当なる方法を直ちに講じて、こんなむちゃやなことをやめさせるような具体的な方法を一体おとりになる考えはないのかどうか。あなたで答えられなければ総理大臣を呼んできなさい。総理大臣を呼んで答えさせなさい。——あなたの考えている時間なんか、これは時間に入りませんよ。そんなことをしていたら、きめた時間をだめにしてしまう。
  102. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 小林さんのお気持ちはよくわかります。これは佐藤総理が常日ごろ申しておりまするように、日本外交の根本は平和に徹することである。したがって、世界、平和もしくは東南アジア、アジアの平和に関しましても、徹するの精神でやってまいりたい。いまおっしゃるように、南ベトナムにおいて、いわゆる一種の戦いといいましょうか、爆撃等が行なわれております。こういうような事柄に対しましても、もちろん、総理は、かつてこの委員会におきましても、皆さんに対しましても、日本外交としては、これの拡大することをぜひとも避けたい、こういう気持ちで、平和の志をもって外交に精進をいたしておるわけでありまして、その気持ちは小林さんと全く同様であります。
  103. 小林進

    小林委員 いまの私の質問に答えないじゃないですか。具体的な方法を講じなさいと言うのに、気持ちは同じだなんて、こんなことは答弁になりませんよ。こういうのは、これは質問時間に入れちゃいけませんよ。いま一回あなたこれはやりなさい。国民は、だから心から危険を感じている。だから、いまの笠信太郎氏のように、早くそういう爆撃をやめるために、国会の審議なんかよりも、もっと先に早く総理はアメリカへ飛んでいけ、こういうような具体的の提案をしたときに、国民はあげてこれを支持しているじゃないか。なぜこの世論にこたえるような具体的な行動に移らないのか。単に仲裁をせいとか、南ベトナムの問題に背伸びをせいということじゃない。わが国民は、この南ベトナムにおけるアメリカの軍事行動に、はだ身に感じて危険を感じているというのだ。その国民の危険を払拭する意味において、いわばアメリカに対して何らかの外交的な手をお打ちなさい、打つことを国民要望している、なぜそれにこたえないかと言っておるのです。具体的な方法をお示しになれば、それでよろしいのであります。
  104. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 北ベトナムに対する適当な限界を越える、いわゆる戦争拡大の行動につきましては、先般アメリカを訪問してジョンソン大統領と会談した際にも、佐藤総理からその旨をアメリカに対して申し入れておりまして、また、先方もこれに賛意を表しておるのであります。いまさらその問題のためにわざわざアメリカに飛んでいくという必要は、私はなかろうと思うのです。アメリカも、これ以上の戦争拡大は望んでおらぬ、ただ、しかし、挑発行為が継続しておるんだから、それに対して適当な自衛の措置を講じておるのである、かように言っているのでありまして、アメリカ自身も戦争の拡大を望んでおらぬ、こういう段階でございますから、いまこのためにわざわざ訪米する必要はない、かように考えます。
  105. 小林進

    小林委員 私はこの外務大臣の答弁を求めているんじゃないのですよ。この人は何も外交も知らないのです。人心も知らないのです。何も答弁にもなっていない。だから、私が外務大臣に質問しますといったら、人が来ましてこういう通知をよこしました。あの外務大臣は、あれは後藤新平のおいっ子だ、後藤新平は、大正十年東京の市長をやっているときには、ヨッフェなどを呼んで日ソの国交回復を先べんをつけた先覚者である、そういう先覚者のおいでありながら、何で一体そのおじの血を引かないで、こういう反動的な外交方針をやっておるんだろうか、その点をよく教えてやっていただきたいと。実に嘆かわしいことでございまして、こういうような答弁だけしていられるというと、私の質問が次に進まないのであります。私は、ベトナム問題——問題を五つも六つも用意しておるのでありますから、ベトナム問題についても、いま少し実のある答弁をしていただかなければ困るのでありまするけれども、いまも申し上げまするように、アメリカの不当なる爆撃を中止せしめるような話し合いをするという行為とともに、日本政府といたしましては、先ごろジョンソンと会談せられたときに約束された医療の援助の問題等も、これは、人道に名をかりた、アメリカのやっぱり戦時行動へのこれは後方活動にすぎない。もしほんとうにいわゆる後進地域における、医療の援助をやらねばならないならば、南ベトナムだけじゃない、北ベトナムから、ベトコンから、あるいはラオスの右派にも左派にも超派的にこれを援助するならば人道的な援助でありましょうけれども、あなた方が南ベトナムにやっている医療援助というものは、アメリカ軍の後方だけを援助していく、こういう援助のしかたは間違いです。そんなのはおやめになったらよろしい。  それから、いま一つは、これも不可解でありまするけれども、あなた方の政党の野田卯一さんやら、長谷川さんやら、保科さんやらが行かれて、九百十万ドルのいわゆる開発資金の打ち合わせをしてこられた。その開発資金に対しては、この前の予算委員会で、これは大蔵大臣が説明をされておりまするから、九百十万ドルの五年前の対ベトナムとの協定に基づいて、日本が民間借款をするということだけは認めるけれども、一体政府でないような自足党の代議士が、その内容について何で立ちふさがって話し合いをしてきているか、これが一つふしぎであります。そういうようなことをやるのは、口で平和を唱えながら、だんだんしかし日本が一つのアメリカの一方的な軍事勢力の中に巻き込まれているという形をつくりつつある。なお、私は時間がないから申し上げまするけれども、九百十万ドルというその貸し付けの、借款の内容は一体何かといえば、酢酸を多量に売り込んでいるという事実がある。その酢酸とは何だ、これは毒ガス用だ。その他化学兵器、軍事兵器に使われる原料であります。さっき外務大臣は、何とか、北ベトナムにどことかの大砲や資材を送っていると言うけれども、わが日本みずからもそういう戦争資材を売っているじゃないですか、持ち込んでいるじゃないですか。そのほかに、プラント輸出も、この九百十万ドルのワク内において行なわれておるけれども、その中には、例のテーラー構想に基づく平和村建設の材料としてそれが多量に含まれているという、こういうような援助のしかたを人道の名においておやりになることは、南ベトナムの援助をおやりになることはおやめになったらよろしいと私は思うが、いかがですか。時間がありませんから簡単に言ってください。
  106. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いまのお話は、私は初めて伺う話でございまして、過去において百五十万ドルの医療班を中心とする援助をやったことはありますが、続いて九百何がしという話は、全然私は存じません。
  107. 小林進

    小林委員 勉強していないから知らないのであります。あとでゆっくり勉強をおやりになったらよろしいと思うのでありますが、ベトナム問題はこれくらいにしておきます。  次は、日中問題についてお伺いしたいのでありますが、総理大臣は、就任以来、中国問題は前向きに解決をする、中国問題こそは重大なる政治の要諦であるから、これを何とか友好親善、平和の形で解決をしたいということをしばしば言われている。ところが、実際にあらわれてくるものは全部逆であります。池田内閣の当時に比較いたしましても後退した形であらわれてくる。  その具体的な例は何かといえば、第一に、佐藤内閣が生まれて間もないころ、いわゆる中国の北京市長でありますナンバー五か六、この彭真北京市長が訪日をせられるということを拒否せられた。第二には、岸あるいは石井等、わが日本の自民党のいわゆる顧問と称せられる方々が台湾を訪問して、一億五千万ドルですかの借款の提供を約束をしてこられた。これも中国に対していたく刺激をしておるのであります。三番目には、国連において椎名外務大臣等が中心になって、いわゆる重要事項指定方式をとって、あくまでも中国の国連への復帰をじゃまをするという、こういう露骨な妨害行為をやられた。第四番目には何かといえば、首相がすなわちアメリカに飛んでいって、新春の早々でありますが、ジョンソン会談をやられて、極東の安全の名において中国を包囲するという、日米安全保障条約をさらに再確認をしてこられたということだ。しかも五番目には、その一月の十四日、日米協会において、中国は侵略的意図を持っている——これは池田さんは総理在任中ついに言われなかった。佐藤さんも言われなかったが、とのジョンソン会談の済んだ翌日の一月十四日、日米協会において、中国は侵略的傾向を持っておる、こういうふうな主張を行なわれた。第六番目には、いま問題になっておりまするニチボーのビニロン・プラントの問題であります。輸出入銀行を通じて金を貸し付けるということを吉田書簡に基づいて拒否せられた。しかも第七番目には、日韓会談の締結を非常に急いで、米韓、台韓、日米の軍事同盟をいよいよ強化するような方向へいま政治を進められておるという、数え上げても、佐藤内閣が生まれてこれくらい具体的ないわゆる反中国的、中国敵視的政策を進められているわけでございまして、こうした敵視政策や反中国的政策をやる一方、幾らか前進した進歩的中国政策があるかといえば、残念ながら、池田さん時代より比較して前進した事例というものは一つもないのであります。佐藤さんの志と違っておるかもしれませんけれども、具体的にあらわれておるものは一つもない。いわゆる池田内閣時代の政経分離方式、国連における重要事項指定方式、民間ベースにおける貿易の促進は、池田さんと佐藤さんは同じでしょう。けれども、その中の民間べースにおける貿易の促進の中のいわゆる輸銀べースは、いやしくも池田さんは、倉敷紡績のビニロン・プラント輸出をいわば輸銀の金でおやりになったが、それさえも佐藤さんは拒否をせられておるのでありまするから、この一点だけでも、池田内閣に比較して佐藤内閣は対中国政策で非常に後退をしておると見なければならぬのであります。私はこの際、佐藤さんが、ほんとうにこの六億五千万あるいは七億の中国大陸と千年の友好を思い出して善隣友好をおやりになるというならば、いま私が申し上げました、こういう具体的な事例の上に、一つだけでもよろしいのですが、前進した形というものを何らかの形で示さなければ、私は今日中国問題の解決にはならないと思う。佐藤さんが言うごとく、前向きで中国問題と取り組んでいきたいという、その気持ちに間違いがないならば、ひとつどこかで具体的な形があらわれてこなければならぬと私は思うのでありますが、その具体的な形のあらわれとして、いまこの危険なる状態にある中国と日本との関係であります。政府は一体どういうふうにこれを解釈せられるか知りませんけれども、いまのこの状態は、長崎国旗事件とやや同じような非常に危険なる状態の中においてある。兄岸信介氏が、国旗事件に基づいて中国との親善関係を断ち切って、敵対関係に出た。弟佐藤榮作氏がまたその亜流を踏まんとすることが私は残念でたまらない。少なくとも中国問題に対しては、私は岸さんと佐藤さんはその真情において違っておると信じております。私は違っておると思います。違っておると思っておりますけれども、いまも言うように、形にあらわれてくるものは違っていない。どうでありますか。具体的にひとつ前進した形のものをお示しになって、長崎事件の愚を繰り返さないように、前向きな中国との和解状態をつくり上げるというお考えが一体ないかどうか、官房長官、お聞かせを願いたいのであります。——ちょっと待ってください。要求しない大臣がのこのこ出てくるのは非常に困ります。   〔「外務大臣ではだめだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  108. 青木正

    青木委員長 政府の見解を外務大臣がお述べになりますから……。
  109. 小林進

    小林委員 私はやりませんよ。   〔「外務大臣ではだめだ」、「官房長官、官房長官」と呼び、その他発言する者多し〕
  110. 青木正

    青木委員長 官房長官
  111. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 小林さんのだんだんのお話を承りましたが、私個人の生活を申し上げれば、かつて私も五、六年ほど中国におったことがあります。私いろいろ感ずることは、お互い東洋人がこういうような状態でおることは、もちろん好ましい次第ではありません。総理も、当委員会あるいは本会議を通じまして、少なくとも日本外交方針は、いかなる国ともいわゆる親しい関係を持ちたいのである、ましてや中国がわが日本の隣国であり、そこには六億五千万の人民がおられる、したがって日本は、いわゆる安全保障条約によって日本の安全性を保っておりますが、これは日本の防衛のための措置であって、決して隣国を敵視する考えのもとにつくられておるものではない、かようなことも申しております。私、過去の経験を通じて今日まで感ずることは、お互いの皮膚から考えましても、また伝統、歴史の上から考えましても、その関係はもちろん思想を越えての感じを持っております。そういうようなたてまえから考えましても、かつ日本の将来から考えましても、あえて敵を求めるべきではないということからして、佐藤総理はあえて中国といえども敵視政策はとっておるものではないということを明らかにいたしております。かような精神で、今日までいわゆる平和外交佐藤外交として続けてまいっておるのでありますから、要は時をかしていただき、その間に少なくとも佐藤平和外交の本質を出してまいりたい、かように考えておる点を御了承願いたいのであります。  具体的問題については所管大臣から御説明を願います。
  112. 小林進

    小林委員 どうも、私は具体的な反動政策をこうやって八つも示して、前進的な例は一つもないから、前進的なものを具体的にでもおやりになったらどうですかということをお尋ねした。官房長官、あなたは内閣の大番頭だから、あなたを通じて佐藤さんに言っていただきたいのだ。終戦後歴代五人の総理大臣の中で、わが日本外交を大きくしたものが、二つの型がある。いわゆる官僚出身の吉田元総理大臣をはじめにいたしまして、岸信介、池田勇人、これらは全部いわゆるかつては米英鬼畜と言ってわれわれに、アメリカはけだものだ、鬼だと言って教えたその人たちが、アメリカ一辺倒の外交を進めた。当時政党人にして官僚の経験のない鳩山さんが、日露の国交を初めて回復をせられた。第二代目の、これは志半ばに倒れられた石橋湛山氏が、彼の首相になるときの第一の外交政策は、いかにして日中問題を打開するかという日中問題の打開に石橋内閣の運命をかけられた。けれども志半ばに倒れられた。もしも石橋さんがあの病気がなかったら、日本と中国との関係は十年の昔に正常に帰したと私は思っている。この石橋、鳩山の線へ佐藤さんが乗って進んでいくか、やはり官僚的な、中国やあるいはソビエトを敵視して、そうしていわゆる岸さんをもって一番頂点とするこういう追随外交、われわれに言わせれば半植民地的、こういうふうな外交の亜流に佐藤さんを引っぱっていくか、私どもは重大な佐藤内閣の分かれ道だと思っている。私どもはその観点で見ているのです。大番頭のあなたが、願わくはこの鳩山と石橋の線に乗っていって、石橋さんが夢に描いたこの中国との国交回復を何とか打開していただきたいというのは、単に社会党だけの希望じゃない、いまでは国民の世論ですよ。しかも世界の大勢です。それをおやりにならぬ。私は、中国との関係は親善友好でいくと佐藤さんが言われたから、こいつはうまくいくぞとほのかに期待したのでありますけれども、あらわれてくるものは全部反動なんだ。そこで具体的なものを何かお示しになったらいかがですか。具体的な事例をお示しにならなければ私が言おう。いま中国との関係を一番危険なる状態におとしいれているものは吉田書簡です。一体この吉田書簡というのは何です。内閣の閣僚でもない、政府の役人でもない、単なる一私人が、台湾の政府に送ったその書簡が、日本の運命を決する、こういう民主主義下におけるあいまいもことした不明朗な外交のあり方が一体ありますか。その意味においていまここで一つ吉田書簡というものを国民の前に明らかにしてもらいたい。国民は非常に疑惑を持っております。こういう私信が——私信でごさいましょう。こういう私信が一国の外交を左右している点において、国民は非常に危険を感じておる。どうか、さっきの三矢事件じゃないけれども、この吉田書簡というものを国民の前に明らかにして、いま国民がおそれている不安を除去する上において出していただきたい。これをまず私はお願いをいたします。  同時に、第二番目としては、この吉田書簡というものが無効である。私信であって効力がない。あなたが一番最初に言明をせられたとおりです。ここで再確認をしていただきたいと私は思うのであります。
  113. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 便宜私から……。おっしゃるとおり吉田書簡はあくまで個人的な書簡でございますから、これに直接左右されるということはないのであります。ただ、たまたま中共に対する貿易上の政策が、この書簡の内容政府の考え方が一致いたしますので、それで、この書簡にあらわれたことをわれわれは否定しない。この線に沿うてやっているんだ。個人の書簡に拘束されるのではなくて、たまたまわれわれの考え方がこの書簡と内容を一にしておるので、そういう誤解を生じたのであります。
  114. 小林進

    小林委員 それでは、これは重大な発言ですから確認いたしますけれども、吉田書簡の内容は、対中国の民間輸出に対しては輸銀の金を使わせないといっている。中国人民共和国に対する輸出には、輸銀の金は使わせないといっておる吉田書簡の考えは政府の考えである。政府は使わせない。いまの答弁はこういうことであると受け取ってよろしいかどうか。よろしゅうございますか。
  115. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 未来永久にこういう方針をとるかどうかということにつきましては、ただいまは考えておりません。現時点において中共に対する貿易政策、そういうものは大体この線に沿うてやってまいりたい、こういうのであります。
  116. 小林進

    小林委員 現時点においては、輸銀の金は中国の貿易には使わせない、こういうことでありますな。輸銀の金はソビエトにも行なわれている。東ヨーロッパの共産圏に対する民間貿易にもこれは使われている。輸銀の金は、国情のいかんをとわず自由に使わせるというのが法律のたてまえでありますけれども、政府は、将来は別として、現時点においては中国貿易には輸銀の金を使わせない、こういうことでございますな。いま一度……。
  117. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 さようでございます。
  118. 小林進

    小林委員 これは重大な問題です。使わせないと言うんですな。これはたいへんなことでございますが、その点はちょうだいをいたしておきましょう。
  119. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ニチボーに関してはさような方針をとっております。
  120. 小林進

    小林委員 これは、だんだん自民党政府のいわゆる反動性が明らかになったわけでございまするが、それでは次にお伺いをいたします。  官房長官、最近の新聞紙の報道するところによりますれば、岸内閣の長崎国旗事件と同じような最悪の状態が起こることをおそれて、石橋湛山氏、松村謙三氏等、自民党における進歩派の元老が、中国の中日友好協会の廖承志会長を日本に招待するという計画をお持ちになって、この旨を二月二十七日に佐藤首相に通達をされた、こういうことが報道をせられておるのでございまするが、この点、官房長官、間違いありませんか。なお、首相自身も廖承志氏が来日をせられればできるだけの待遇をし、首相みずからも会見をしたいということを言明せられたやに言われておるのでありますが、この点は間違いございませんか。
  121. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 石橋先生がせんだって佐藤総理を訪問されて、廖承志さんを日本に迎えたい考えを持っておる旨のお話があったと聞いております。これは、御承知のように、せんだって、これもわれわれは新聞を通じて知っておるのでありまするが、お断わりをなさってきておりますので、今回の石橋さんの御計画がそのとおりできるかどうかはまだきまっておりませんので、総理といたしましても、いまの時点においてはいずれとも申し上げようもありませんが、もちろんそういうことはできますれば十分に配慮はしたいという気持ちでお答えになったんだろうと思います。
  122. 小林進

    小林委員 もし廖承志氏が、いまのところは承諾されるような様子もないのでありまするが、承諾されるかもしれない——、これは夢じゃない、されたとしたら一体その入国を承諾されるかどうか、法務大臣。
  123. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 簡単にお答えいたしますが、廖承志氏個人につきましては、入国をお断わりするような理由はございません。また現在伝えられておりまするような入国目的でございますれば、これはもちろん差しつかえないと思うのでありますが、具体的にそうしたことがきまりましたときに、あらためて検討さしていただきます。
  124. 小林進

    小林委員 時間がありませんから、まことにこの点をきわめていく余地がないのでありますけれども、あなたは同じ中国共産党の、かつては彭真氏の入国を拒否をせられた。廖承志氏の場合は個人的にも拒否する理由はない。ではどうして違うのですか。どこに違いがあるのですか。その違いをひとつお聞かせを願いたい。
  125. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 外国人の入国を認めるかどうかということは、国の利益を害するかどうかということが大きな基準になるわけでございます。彭真氏の場合は、個人につきましてはもちろん問題はなかったんでありますが、この委員会でも御答弁申し上げましたような、共産党大会へ出られる、この目的は日本の利益に反し、また治安に関係がある、こういう判断のもとにお断わりを申し上げたのであります。
  126. 小林進

    小林委員 私はこれはおかしいと思う。彭真氏は共産党の大会に出席せられる——私は共産党員でもありませんし、共席党と主張を異にいたしておりますけれども、しかし共産党は日本の民主政治下においても合法政党であることは間違いない。その合法政党が党の大会に呼んだお客さんを、国のためにならぬとは何だ。自民党のためにならぬということならばいいけれども、国という名前で、自分たちの政党のためにならぬからという、そういう国の名目で拒否せられるということは、これは私は正当な理由じゃないと思う。じゃ、いまの場合は、あなた方の自民党の元老である石橋湛山氏や松村謙三氏は、同じ政党の元老だから、それを招待者が自分の政党に所属する者であれば、これを喜んで迎える。自分たちの政策を批判したり反対する政党のお客さんだから、これを拒否する、そういうふうないわゆる基準、これは私ははなはだ不当なやり方だといわざるを得ないと思う。どうですか、あなた。私は、時間がないから続けて言いましょう。  実は私がそういう質問をするのは、私も昨年の十月、日本社会党の第四次訪中使節団で中国へ行って会談をいたしました。この後の会談は交互でやろということで、ことしは、今度は日本社会党が中国の代表団をお迎えをして、そうして第五次の日本社会党と中国側との会談を開くことになっておる。あなたは、いま、松村さんや石橋さんがお迎えになる廖承志氏は喜んでこれを迎えると言われたが、日本社会党が確約をいたしました、この秋の——秋になるかもしれません、春になるかもしれません、あるいはまた一、二カ月後になるかもしれませんが、われわれが迎えるこの使節団を、一体あなたは拒否されるかどうか。どうです。私どもがお迎えするお客さんを——おいでにならぬかもしれませんけれども、まあ私ども党できまったわけではありませんけれども、でき得べくんば周恩来総理あるいはこれに準ずべき方をひとつお迎えして、大々的に国内集会をやりたいと思っておる。どうですか、これに対してあなたは拒否せられるかどうか。
  127. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 具体的に入国の問題が出ましたときに、その目的その他を勘考の上決定をいたしたいと存じます。
  128. 青木正

    青木委員長 小林辻君に申し上げますが、申し合わせの時間が切迫してまいっておりますので、結論をお願いいたします。
  129. 小林進

    小林委員 私は六時三十分まで……。
  130. 青木正

    青木委員長 いや、二十分までになっておりますので……。
  131. 小林進

    小林委員 それでは、中国問題で私はさらにお伺いいたしたいのでありまするけれども、中国が一つであるという問題について、日中国交回復の問題——国交回復の問題について総理大臣はしばしば言われておる。中国は一つである、こういう主張をせられておる。中国は一つであるとするならば、私は、台湾は本土と一体であり、大陸を支配する北京政府が中国の正統政府であるという、こういう原則を受け入れなければ、中国は一つであるという理論は成り立たないと思う。そうじゃありませんか。御承知のとおり、言うまでもなく一九四九年、昭和二十四年十月一日に北京政府というものは、人民共和国はでき上がっておる。そのときには、昭和二十四年にはもう蒋介石は追っ払われて、そうして台湾に行っておる。台湾に移籍しておるのだ。その二年後の一九五一年九月にサンフランシスコで講和条約が成立した。そうして日本と連合国との間に話ができ上がった。そのときは、もうこれは中国の大陸を支配しているものは北京政府だ。蒋介石は台湾にいた。そのときに各連合国は北京を承認すべきか、中国を承認すべきかで非常に迷った。イギリスとソ連はそのまま大陸の北京政府を承認した。アメリカは国府との、いわゆる台湾にいる国民政府との国交を継続した。こうして半年たった一九五二年、昭和二十七年のその四月、日本と台湾との間に——だから北京政府ができ上がって三年、四年のあとだ。そのあとに日本と台湾との間に日華平和条約というものが締結された。しかし、その当時の関係者——この中にも関係者がいるでしょう。一々名前を言ってもいいですよ。その日華条約を結んだときの当時の関係者がその後明らかにしたところによれば、これはいまではもう公然の事実になっている。この日華条約わが国の自由意思によって結ばれたものではない。ダレス国務長官の強要によってこの日華条約を締結されたのであるということが、これは明らかになっている。公然の秘密になっている。だれも知らない者はいないですよ。すなわちサンフランシスコの講和条約は一九五一年の九月に調印された。われわれ国会において、五一年の十一月の十八日には日本国会はすでに批准をしていた、その批准を求める……。
  132. 青木正

    青木委員長 小林委員、時間がまいりましたから結論をお願いいたします。
  133. 小林進

    小林委員 その発効を待っているときに、ダレスが二人の上院議員を帯同してきて、日本はすぐ国府、台湾政府との国交を樹立してもらいたい、そうでなければ平和条約アメリカの上院で円満に取り運ぶことができない、取り結ぶことができないといって強要をせられた。当時日本はまだ占領下だったでしょう、まだ講和条約の批准をしていない前でありますが、このダレスの脅迫の前に屈服をして台湾政府と平和条約を結んだという、こういう状態なんであります。この状態はだれも否定できないと思うのでございまして、こういう意味で、いま政府が、こうした国際的な流動の中にあって日本の百年先の大計を考えときに、いまこそ佐藤内閣は、この北京における大陸の政府が、中華人民共和国がすなわち中国の唯一の政府である、こういうことを確認して一向差しつかえないと私は思う。ただ全面的な講和条約とか、あるいは直ちに台湾を否定するというようなはことは困難である、外交上困難であろうとも、理論的に、筋の上において、中国の政府は大陸の政府であるということをここで言明すべきであると私は考える。これは一向差しつかえないと思う。どうですか。中国は一つであるというのは大陸政府である。どうですか、ここで言明されませんか。言明することは一向差しつかえないでしょう。
  134. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御承知のとおり、いま日本と台北政府との門に国交が正常化されておりまして、中共とは政経分離の原則のもとに、経済、文化等の交流をしておるという状況でございますが、これを、いま直ちにこの事実をくつがえすということは、極東の平和と、安全にとってきわめて好ましくない事態を生ずるのでございますから、その意思はありません。
  135. 青木正

    青木委員長 時間がまいりました。これにて小林君の質疑は終……。
  136. 小林進

    小林委員 十三年前わが国がいわゆる二つの中国のうちの一方を選んだのは、わが国の完全な自由意思のもとに……。
  137. 青木正

    青木委員長 時間がまいりますので、結論をお願いします。
  138. 小林進

    小林委員 行なわれたものではないということをまず認めなくてはならないと私は思う。  それからいま一つは、今日の台湾政府は亡命政権であると私は思う。いいですか、亡命政権である。その一つは、中国の民衆の支持を失って、革命によって追放せられた亡命政権、こういう亡命政権を、これを日本相手にしていかなければならないという理論的根拠は一つもないじゃないですか。亡命政権であることをお認めになりますか、台湾政府は。中国の六億五千万人の民衆の輿望を失った亡命政権であるという、この事実の上に立って私は中国政策を進めてもらわなければならないと思う。わずかに二百万人です、革命に追われた蒋介石が、同族を含めて二百万人を連れて、中国の一省である台湾へ亡命をしたにすぎない。人心は離れておりますよ。それを正当な政府のごとく相手にしていくところに私はアジアの混迷、あるいは外交の混迷があると考えている。この亡命説論をお認めになるかどうか。
  139. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 正常な国交を結んでおる政府に対して、その政権の性格についてとやかく批判することは避けたいと思います。
  140. 青木正

    青木委員長 小林君、時間が来ておりますから、申し合わせの時間がありますので、ただいま……。
  141. 小林進

    小林委員 委員長にお伺いいたしますけれども、この日韓会談に関係いたしまして……。
  142. 青木正

    青木委員長 結論をお願いいたします。
  143. 小林進

    小林委員 結論を急ぎますが、中国問題について、亡命政権論も、それを口幅ったく言われないということでございまして、暗黙の中には私はお認めになったのだと思う。いかにそういう台湾政府との国交が困難であるかということは、これでおわかりになったと思いますが、時間もないことでございますから、中国問題は残念ですけれどもここら辺にしておきまして、最後に日韓問題につきまして御質問をいたしておきたいのでありますが、この日韓問題で、私が一番危険であるというのは高杉晋一氏、韓国の代表に選ばれたのでありますが、この人の発言があるとかないとか外務大臣は取り消されておりますけれども、「エコノミスト」の二月九日号の中にこういうことを言っておる。「日本はできるだけ韓国のために尽すということの責任があるように思うのですね。主十八度線に六十万の兵隊を釘づけにしておいて、そうして国費の三二%をそれに費しているのだから、これはたいへんな仕事です。アメリカも多大の犠牲を払っているのだが、それが、自由の防衛、ひいては日本の防衛にもなっているんです。僕はあそこで日本の安全を保障していると見ていいと思うのですがね。日本には平和憲法があって軍備に多額の金をかけられない。国防費が割合少くてすんでいる。これが日本の産業発達の大きな原動力になっているのじゃないかと思うのですよね。だからそういうことを考えるといま、韓国の払っている、共産主義の防壁となっているところの大きな犠牲に対しては、日本は感謝し」そのために補償するのはあたりまえである、こういうような主張をしておられるのでございまして、日韓会議の目的は、三十八度線に韓国の軍隊六十万人がいて、日本の安全を保障しているのだから、その安全料として韓国に、あるいは会談を続け、賠償するのがあたりまえである、こういうふうな主張を高杉氏がしておられるということを、一体政府は正常なものの考え方であるとお考えになるかどうか。釜山赤旗論だとか、台湾が日本の赤化の防衛論であるというがごとき主張は、この日韓会談に対ししばしば行なわれていることは非常に危険である、この附随を、もしこういうふうな韓国の三十八度線が、先ほども私は——三矢事件と同じだ。いわゆる防衛線であるというこの主張で日韓会談を進めているという高杉晋一氏の考え方を、政府は一体認められておるのかどうか、間違いであるのかどうかということを、これはひとつ外務大臣にお聞きをしたい。  それから次に……。
  144. 青木正

    青木委員長 晴間がまいっておりますから…。
  145. 小林進

    小林委員 もうこれで終わりますから。これは、赤城農林大臣にお伺いする。第二に外務大臣にもお伺いをするのでありますけれども、いわゆる李ラインの問題であります。季ラインの問題について、いわば外相は李ラインが明確にならぬ限り両国農相会議は成立しないし、したがって日韓会談は成立しないと、この二月二十七日の国会委員会に明確に言明をしておられる。ところが農林大臣もいわゆる漁業交渉は李ライシの撤廃が条件である、こういうことを明確に言われておる。ところがこれに対して韓国は、李ラインは存続している。——韓国の放送によると、二日の午前、大統領官邸で東京での日韓農相会談に対する韓国の最終態度をきめる首脳会議を開いた。それによると、朴大統領が承認した韓国政府方針は、一つは李ラインの絶対の存続だ。二番目には済州島を本土に含め、その外側に基線を設ける。三番目は赤城試案と韓国側のこれまでの主張を折衷させる。共同水域の日本漁船隻数を減らせる。これが絶対の条件であると言っておる。
  146. 青木正

    青木委員長 時間がまいりましたので簡潔に願います。
  147. 小林進

    小林委員 日本は李ラインを認めない。向こうは絶対に存続させるというが、こうした二つの問題について農林大臣は一体いかがに考えられるか。これは、最初から漁業交渉は成立する問題じゃないじゃないですか。おやめになったらどうか。そんな漁業交渉はおやめになったらどうか。なおかつやって、この問題をあなたの思うとおりに解決する考え方があるのかどうか。世間一般は、結局日本政府は李ラインを認めることによって日韓交渉を成立せしめる以外にはないだろうといわれておりますけれども、這般の事情をお尋ねしておきたいのであります。
  148. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日韓の漁業交渉につきましては、再々答弁しておりまするように、李ラインがあるということではいけません。これがなくなることでなければなりません。李ラインの撤廃ということが、実現しなければ、これは無意味だと思います。しかし、いま漁業交渉をしている最中でございます。いかにしてそういう目的を達するかということを交渉中でございますので、あまり深入りした御答弁もできませんし、あまり深入りした御質問も、この際は遠慮していただけばけっこうでございます。
  149. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日韓の会談を進めておるのは、結局歴史的に、あるいは地理的に、非常に長い間関係のあった両民族が一日も早く国交を正常化しまして、そして共存共栄の道をともに進むという趣旨で日韓会談をやっておるのでありまして、あなたの言われるように防共云々、そういうようなことはないのでありまして、高杉発言につきましてとやかくいろいろ世間で言われておりましたが、これらの問題については、高杉氏自身が韓国の代表者に対して、かようなことがないということを言っておるのであります。同氏の日韓会談成立に対する非常な熱意から見て、これを逆行せしめるような言動があったとはわれわれはとうてい信ずることはできません。
  150. 青木正

    青木委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  これをもちまして昭和四十年度総予算に対する一般質疑は終了いたしました。
  151. 青木正

    青木委員長 この際、去る二月九日の高田富之君の質疑に関し吉武国務大臣から、また同日の野原覺君の質疑に関し高橋法務大臣及び愛知文部大臣から発言を求められておりますので、順次これを許します。  吉武国務大臣。
  152. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 去る二月九日、本委員会において高田さんからの質問中、岐阜県の衆議院議員補欠選挙の際に、暴力団の介入したようなことがあったようだがどうか、こういう御質問でございました。その後取り調べてみますると、昨年の十二月二十七日に投票が行なわれましたが、選挙運動の期間中に東京の暴力団関係と見られる二名の人が岐阜に応援に来たということでございました。現地においてその動向を調査いたしましたら、某候補者の事務所にいたことが確認されました。当時知事は、その候補と別の人を応援しておりましたので、警察当局が、知事の投票当日における行動について問い合わせましたところ、その某候補者の事務所を訪問をするかもしれないということでありましたので、警察は万一の場合を考えまして、知事の身辺を警戒するために、パトロールカー一台、警察官三名をつけまして、自宅に待機させましたが、当日、翌日、知事は外出をすることもなく、またその暴力団関係の人の行動につきましても、別に不法の行動と認められるものはなかったということでございます。
  153. 青木正

    青木委員長 次に、法務大臣高橋等君。
  154. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 先般野原委員から内藤誉三郎君の行動につきまして、いろいろと御質問がありました。その内容につきまして直ちに調査に着手をいたしました。まだ現在調査中でございまして、最終的の報告がまいっておりません。御了承願っておきます。
  155. 青木正

    青木委員長 文部大臣愛知揆一君。
  156. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 去る二月九日の野原委員の御質問につきまして、御指摘のありました内藤誉三郎君につきまして調査いたしましたところ、昨年七月私立学校振興会監事に就任いたしまして以来、毎月おおよそ半ば程度の出勤状況でございましたので、本人に対しまして二月十七日、職務に精励するよう厳に注意をいたしておきました。
  157. 青木正

    青木委員長 これより昭和四十年度総予算に対する締めくくり総括質問に入ります。  川俣清音君。
  158. 川俣清音

    ○川俣委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、本委員会における最終の締めくくりの質問をいたしたいと存じます。本来は締めくくり質問は三時間の割り当てでございまして、今日までその用意をしておったわけでございますが、本日のごたごたからいたしまして、議事を進行する上においてこれを半分に節減をいたし、さらに節約をして質問をいたしたいと思いますので、答弁政府側におきましても、要点を、要領よく明確に答弁されまして御協力を得なければ、私の協力はむだになりますので、この点だけ申し上げておきます。  佐藤内閣が成立以来、日は浅いとは言いながら、ここに国会を迎えて初めての予算審議でありますので、やはり基本態度をお尋ねしなければならないと存じます。そこで、民主国家の国民大衆をどう前進させる気概を持っておるか、またはどれほど誠実に執行力を発揮するかということの態度をお尋ねしなければならぬのでございまするが、抽象的でありまするので、ここに具体的に一つ一つ尋ねていきたいと思うのです。  この予算が、物価高に悩む国民に、どれだけ安心を与えることができるかどうかということが一番の要点だと思います。もだえておる国民、不安におののいておる国民に、どれだけの安堵を与えておのおのの生業に前進させることができるかということが、佐藤政策の基本でなければならないと存じます。そういう意味で、一つ一つお尋ねしていきたいのでありますが、まず第一に、あなたを包むひとつの悪い空気があります。とかく自分に不利な空気というものは避けたいのでありまするけれども、これとやはり正直に取り組む必要があるのじゃないかと思うのです。そういう意味指摘をしてまいります。どうしてもあなたを包む空気は、また官僚政治になるのじゃないかという不安であります。官僚政治が批判をされるのは何かというと、官僚政治はとかく権力主義になりがちである、権力主義は独裁の方向へ進むというところに国民の不安が生まれてくるのではないか、こういう点であります。  そこで、具体的にお尋ねをしていきたいのでありますが、総理大臣は平和に徹するということを言われた、まことにけっこうです。そうでなければならないと存じます。しかし平和に徹するには、民主主義の土台に立たなければほんとうに平和に徹するということにはならないのじゃないかと思うのです。もちろん民主主義にも大きな意欲を持っておられると思いますが、この点についてひとつ御回答をいただいて次に進みたいと存じます。
  159. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私、就任いたしまして以来、日本は民主主義、そのもとにおいてまた平和国家をつくるのだということも申しておりますし、まことに抽象的ではありますが、私は国民とともに歩む政治をする、かように申しております。こういう事柄がいわゆる民主主義、その原則をどこまでも守り抜くということではないかと思います。ただいまのお話、御意見にありましたように、とかく前身が官吏であった、こういうところで、これは官僚ではないか、官僚はえて権力主義、同時に経済的には統制経済のほうに向くのではないか、かような疑問を持たれる。佐藤にやはりそういうものがあるのではないか、こういうことでございますが、私はそういう点は、いままでの答弁、また私の所信表明等を通じて、国民の各界の方々に御理解を得つつあると思います。私が自由経済のその原則に立ち、そうして平和に徹する、民主主義をどこまでも守り抜く、自由を守り平和に徹する、この説明こそがただいまの点を如実に説明しているのではないかと思います。御了承いただきます。
  160. 川俣清音

    ○川俣委員 そこで私は、国会における長い経験から、議会の先輩でありました——私ともの先輩では総理に納得いかないと思いまするので、かつて政友会の重鎮であった大先輩島田俊雄さんは、若きわしらの議会政治の時代に教えてくれたのは、官僚というものは口先ばかりで、弁解を先に用意をして実行しないのが官僚群である。したがって、この官僚群を排撃し後退させなければ、議会政治は成り立たないのだと言って、私を激励、鞭撻をしたのが島田俊雄先輩でございます。そこで私は、それをいま思い起こすのでございます。われわれの先輩だとなかなかあなた方は理解されないでありましょうが、島田俊雄先輩でございます。さらに、これは田中さんの先輩ではないでしょうけれども、大蔵省の先輩である高橋是清は何と言ったか、何と私に教えてくれたかというと、官僚というものは金の価値は知らない、拝むことだけは知っていても価値は知らないのだと、こういうふうに教えてくれた。ほんとうの金の価値は知らない、拝むことだけは知っておるけれども、ほんとうの価値は知らないのだ、それを私はたたき直さなければならないと言っておられたことを私は記憶するのであります。これらの観点に立って私は質問をしていきたいと思う。私の最も恩師でありまする安部先生は、私に教えて何と言ったか。相互信頼と敬愛の道を進むことによって民主主義が達成されるんだと、こう言った。相互信頼と敬愛の道を進むことによって、初めて民主主義というものは達成できるのだということを教えられた。私この恩師の遺訓を守って、できるだけ相互信頼と敬愛のもとに進みたいという念願でいままでやってきましたが、なかなかそこに達することはできませんけれども、民主主義を発展させるにはこの気持ちを持たなければならないし、そうでなければ真の民主主義はでき上がらない、こう思っておりますが、佐藤総理はどうお考えになりましょうか。あなたが池田さんのあとを受けて、忍耐とか寛容とか、調和を加えておりますけれども、これは消極的な表現です。消極的な表現。もっと積極的なものがなければならないと思います。そういう意味において最も具体性のある、行動性のある、生きておる民主主義は、やはり相互信頼と敬愛の念のあるところにあるのじゃないかと思うのですが、これはもう一歩進めて、忍耐でもいいし、あるいは寛容でもいいから、それよりももっと積極的に、政治を運営していく上に相互信頼と敬愛の精神がなければ、これに徹しなければ、あなたが民主主義と言われてもそれは不十分でないかと思いまするので、質問の前にまずこれをお尋ねをしたいと思います。
  161. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 敬愛あるいは相互信頼、これは私が唱えておる人間尊重、いわゆる人格の尊重であります。人格を尊重することによって、初めて相互信頼も生まれる、敬愛の精神もできると思います。私はそういう意味合いにおいて人間尊重ということを説いておるのであります。しばしば調和、寛容ということを説いておりますが、これはどちらかというと消極的なものであります。御指摘のごとく、積極性は人格を尊重するところにある、かように私考えます。
  162. 川俣清音

    ○川俣委員 私は、そこにイデオロギーが脈々として、心あたたまるものがあると思うのでございます。そこで具体的にお尋ねいたしますが、きょうも予算委員長をはじめ自民党の理事の諸君、今日までお互いに苦労してこの予算委員会の運営にあたってきたわけですが、事、みんなの協力にかかわらず、そごをいたしまして、たいへん停滞をいたしております。そこで、先刻幹事長及び書記長会談が行なわれまして、この前進について話し合いができたのでございますが、この話し合いを単に政党と政党の話し合いばかりでなくて、政府も総理もこの話し合いについてはお聞きになっておるでありましょうし、やはり責任を持っておられるのじゃないかと思います。あるいは深くは聞いておられませんかもしれませんけれども、党の責任者である幹事長及び書記長会談については、これをお認めになるのではないかと思います。認めないわけじゃないだろうと思いますが、積極的にこの御意思を承っておきたいと思います。
  163. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府と与党は一体であります。ただいま御指摘のごとく幹事長・書記長会談、そこで申し合わせましたことは、私どももその線を守っていく、また尊重していくこういうことに変わりはございません。
  164. 川俣清音

    ○川俣委員 そこでいよいよ具体的に入りますが、佐藤総理の国会での施政演説とジョンソンの国会へ出された教書とは非常によく似ておる、さすが佐藤も相当な成長を示したものだという批評がございます。また、それと反対に、似て非なるものだ、やはり値打ちの差がここに出ているという批評をする人もございます。批評は自由だと言いながら、ここで世界的なジョンソンと、たまたま佐藤総理の構想が似ておることは、決してこれは悪いわけではないけれども、あまり隔たりがあるのだというと情けないとも思えまするので、ここでこれを明らかにしていきたいと思うわけでございます。  ジョンソンの教書は、かなり具体的であります。こういうことを発案をして、これをだれに命じてどうするのだということが明確であります。それと同時に、構想もまた深くして、しかも深遠であって、なかなか具体的であります。早くいえば住みよい町をつくる——住みよい社会でなくして、町をつくる、きれいな町をつくるのだという積極性を持っております。こういう点では確かに一歩進歩しておると思いますが、社会開発の考え方も、もちろんそこにあると思いますけれども、どれだけ実施していくのかどうか。ジョンソンのほうはかなり具体的に実施力を示しておりますが、あなたのは構想はなかなか悪くはない、似て非なるものといわれてもかまいませんが、どれだけ実行していくのかというと、どうも心細いという感じを与えておるのじゃないか。なかなかいいことを言うけれども、一体ほんとうにやる気があるのかどうかというのが、一番強い批判ではないかと思いますが、これに答えるには、あなたは何と答えますか。
  165. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、私は社会開発を唱えた。そしてジョンソン大統領は、一月になりましてグレート・ソサエティー、こういうことばを使われた。その表現のしかたは違いますし、また国情も違っておりますから、ねらいは必ずしも全部同一ではありません。しかし、ジョンソン大統領のねらいは、人種の差別待遇をなくすること、あるいは貧乏を追放すること、あるいは地域開発に力を入れることと、大体の考え方は私のねらっている社会開発というその思想と同じではないか、かように思います。ただいまひずみを是正する、かように申して、各産業間の均衡のある発展を期そう、また地域開発に特別な力をいたそうとする、あるいは若年労働あるいは技能労働、これらの不足をいかにして解消していくか、これはやはり人間の資力の開発に重点を置こうということであります。また、住みいい生活のできるそういう環境をつくろうということ、これが私どものいわゆる社会開発の念願であります。もちろん現状をもっていたしまして、この仕事がわずかな期間にでき上がるとは私は思いません。しかし、私どもの政治のあり方、特にこういう点に力をいたして初めて人間尊重の政治になるのじゃないか、御賛成をいただくならば、ぜひ御協力を賜わりたいと思います。
  166. 川俣清音

    ○川俣委員 もしも佐藤総理とジョンソンの違いがあるならば、佐藤さんはほんとうに平和に徹するという覚悟をきめておるだろうが、ジョンソンはどうも二丁拳銃を下げて、神の衣に隠れているような印象を受けるというのが、世界的な批評でございまして、そういう点でもあなたのほうがすぐれているようでございますが、間違いのないようにしていただきたいと存じます。  次に、三矢研究の問題については、別に触れるわけですが、私が非常に懸念をしておりますのは、いろいろ詭弁を使われておりますけれども、何としても私ども憂慮にたえないのは、たとえ研究といえども、人道に反するような研究を行なうというようなこと、あるいは民主主義に反するような研究を行なうというようなこと、あるいは議会政治を破壊するような研究を行なうということは、研究に名をかりてもこれは許さるべきではないと思うのです。なぜかというならば、国の予算の範囲において活動すべきである。これは自衛隊の設置法の趣旨でもあるのです。法規の上からも、国の経費を使って国を破壊するような研究は行なわるべきではないと私は思う。研究だからいいのだというようなことは許されないと思うのですが、総理、どうでございましょうか。
  167. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いわゆる三矢研究なるものが、ただいまのようにいろいろな批判を受けている。そういう意味研究が行き過ぎではないか、あるいは節度をはずしているのではないか、かような御批判のあることも伺っております。これらのことは、いずれ小委員会において明確になることだと思います。この三矢研究そのものを私が弁護するわけではありませんが、一国の繁栄はその安全のもとにおいてあるのだ、そういう立場から、私どもは防衛力、自衛隊、平和憲法のもとにおいてそれをつくっているのだ。その関係において、この国の安全をいかに確保するか、そういう意味研究自身は、やはり社会党の方といえども御了承いただきたいと思います。もちろんそれが度を過ぎるとか、あるいは節度が過ぎているとか、その方向を誤っているとか、かような御批判につきましては、いずれ小委員会において明確にいたしたいものだ、かように私は思います。
  168. 川俣清音

    ○川俣委員 だんだん時間を節約してまいりたいと思いますので、長くは申しません。そういう意味におきましても、どんなことをやっているのか、われわれの想像するようなものであるかないのかということを明らかにする必要があるので、わざわざ小委員会をつくったのでございますから、ものを隠しておいて判断をしてくれでなくして、出すものは出して、それは誤解であった、ここは文章が悪いのだとか、そういうことを示すことによってこの問題が解決せられる。いたずらにものを隠しておいて、批判はするなということは議会政治の上から好ましくないと思いますので、この点を特に注意をいたして、前に進みたいと存じます。  さらに総理大臣にお尋ねしておきたいのですが、あなたも前内閣に関係しておられた時代から、また党の重鎮として、池田内閣がとってまいりました公共料金のストップによりまして、水道料金などがストップしておって、国民生活に非常な寄与をしたことは御承知のとおりでございます。と同時に、最近その期限が切れたということで、各地に値上げのムードというよりも、むしろスピードのかかった怒濤のようなあらしが起きているわけでございますが、それにいたしましても、今日まで政府に協力をしてまいりました地方公共団体の独立採算制を持った水道等に多くの赤字を出しておりまするし、これは人間の生きていく水道のものでございまするから、どんなに高くなろうとも水道料金は払うでありましょうし、これを使用しなければなりません。また補給してまいらなければなりませんでしょうから、これに対してやはり救済の措置を講じなければならないと思いまするので、先般来話し合いが行なわれておりますが、政府はこれを起債等について救済措置を講ずることになっておりますが、間違いないかどうか。この点、大蔵大臣でけっこうですから、御答弁願いたいと存じます。
  169. 田中角榮

    田中国務大臣 公営、すなわち上水道事業等の資金につきましては、起債、融資等、調達についてさらに特別の措置を講ずるよう努力をする所存でございます。
  170. 川俣清音

    ○川俣委員 それと同時に、もう少し水資源についても、原料でありまするもとを培養することにつとめなければならぬじゃないかと思うのです。大臣、だいぶ大きな金をかけまして下久保、矢木沢のダムをつくったわけですが、私はかつてあの山の奥をヘリコプターで通ったことがある。前から計画がある。ところがあの様子を見ると、あそこのダムをつくる上流は、かなり山が荒れておりまして、一定の水位を保持できるかどうかということは、非常に懸念されるところでございます。そういう点で、金をかけるなというわけじゃありませんけれども、やはり有効にかけていかなければ、それが消費者にはね返ってくるわけでございます。先般私は分科会でも、東京の水資源である井之頭を枯渇さしたではないか、あるいは多摩の奥の水源地も、これも東京都が売り払ったじゃないか。みんな自分の水源池を売り払って、いまでは遠くへいかなければならないというようなことをやらしておることは好ましくないじゃないかということを指摘しましたが、時間がありませんからあえて述べませんが、どうせダムをつくるからには、有効な、田中さんの常に言われるような有効な国費の投資が必要だと思っておりまするから、この研究も十分尽くされなければならないと思います。  次に、今度具体的に入ります。  農林大臣おいでになりますので、お尋ねしたいのですが、私は、農業が大きな岐路に立っておる、こう思うのでございます。それは農業の近代化が叫ばれ、近代化のために努力をされる施策を講じてきておられまするが、農業の近代化というのは、確かに生産性を高めるためには非常に役立っておることでありまするし、また農民一労働時間の所得も増してまいりまするから、所得が増すことは確実でございますが、ここに危険があるのではないか。すなわち、食糧の絶対性から見た場合、あるいは土地の生産性から見た場合は、逆な結果がくるんじゃないか。これをいまにして検討しておかなければならないのではないかと思いますが、大臣、どのように今度は配慮されまするか。この点について、大臣ばかりではなく、閣僚全体にひとつ勉強願わなければならぬかと思いまするので、農林大臣にまずお尋ねいたします。
  171. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、現在、農業におきましても労働力が相当減退しております。また、他産業との関係で所得も増加しなければなりません。そういう意味におきまして、労働の生産性を上げる近代化政策ということも、必要欠くべからざるものだと思います。しかし同時に、日本の食糧事情を考えまするというと、食糧に対する需要は相当増しております。一方、輸入の面を見ますというと、輸入が相当ふえて、世界におきましても、食糧の輸入国として有数な国になっております。これは国民生活の安定上からも、あるいは外貨の安定その他からも、考えていかなくちゃならぬ重大な問題でございます。そういう意味におきまして、やはり食糧を増産するといいますか、自給する、こういう方向を相当考えなくちゃならぬ、そういうことを考えまするというと、労働の生産性ばかりでなく、土地の生産性、こういうところに力を入れて、技術の改良、あるいは土地改良、基盤の整備、こういう面で相当土地の生産性を高めるということに一そう力を入れていかなくちゃならぬ、こういうふうに考えています。でありますので、どちらを重点にするかということではなく、両々相まって進めていかなくちゃならぬのが現段階だ、こういうふうに私は考えております。
  172. 川俣清音

    ○川俣委員 これは、大臣は両々進めていくというのですが、今後、日本の場合に農業の近代化に取り組まなければならぬこと、そのとおりでございますが、将来大きな欠陥が生まれてくるのではないかということを私は憂慮しておる。なぜかというと、機械化されてまいりますと、天然災害に対する力が弱まってまいります。天然災害に対して鈍感になってまいります。自分の労力で農業をやっておった場合には、天然災害に対する対応力と申しますか、それが非常に敏感になっておる。今度私は農村を回ってみたのですが、大きなスプレーヤーがあった場合には、早く消毒しなければならぬのじゃないか、いや、この機械を使うにはこの程度の病気の蔓延ではまだ早い、こう言うのですね。まだ早い。人力でやった場合には、早くやらないとおくれるということになる。スプレーヤーを使うと、まだ早い、経済的にまだ早いということになって、そうすると、農作物に対する愛着心から病気を防ごうとした観念から経済的な観念に変わってまいりますと、農業のやり方に大きな欠陥がくるのではないかと、私は年寄りだからそう思うのかどうかわかりませんけれども、そういう感じを持つのです。非常に憂うべきことだと思う。現にあなたと一緒に八郎潟の試験農場——あれは試験農場ですよ。あれを見ても、コンバインの力によって五十人、百人分の力を発揮しますけれども、あそこに植えつけられた稲を見ても、稲が多いのか、ヒエが多いのか、どっちをつくっているのかわからない。   〔委員長退席、小川(半)委員長代理着席〕 あれを労力でやってごらんなさい。あなたも百姓をやったことがあるでしょう。自分でやっていれば、ヒエがあんなにあることはとても気になって、まず取らなければならぬ。コンバインは機械ですから、ヒエがあろうとなかろうと、そんなことはかまわない。一緒くたです。これが毎年繰り返されると、ヒエをつくるのか稲をつくるのかわからなくなる結果になってくる。機械は感じがないのですから、常に農作という感覚を持った者がつくるのと機械が動くのとでは、こういう大きな違いがくるのでありますから、日本の将来にとりまして、私は大きな欠陥がくるのではないか、こういうふうに心配をするので、この点についてはよほどの研究が必要ではないか。大蔵省は、機械化に努力されるのはけっこうです。なかなかよく金を出して機械化のために促進されていることは認めますけれども、こういう点に欠陥もあるのだということを見てまいらなければならぬのじゃないか。それだから農業機械化の予算を削れというようなことではなしに、効率的な農業ということよりも、どうして日本の農民をやっていくか。どうもこのごろは、人間不在なんといいますけれども、人間に対する政策よりも、機械に対する政策のほうが多いような感じがする。人間でなくて機械のような感じがするわけです。農村に機械化が入っていったならば、いままでの農村というものはすっかり姿が変わるのではないかということを私は憂慮するのですが、佐藤さん、どうでしょうかね。佐藤さんと私はあまり年が違わぬから、同じようなことになるのか、それともあなたのほうが少し進歩的だから、いや機械化のほうがいい、こうおっしゃるのか、この点を佐藤さんに聞いておきたいと、こう思う。
  173. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私に農業のことをお尋ねでございます。ただいまヒエと稲との関係をるる御説明になりましたが、私がアメリカで経験した話を御披露いたしましょう。  これはサンフランシスコの南のフレスノで国府田修、アメリカの米づくりの王だと言われている国府田農場に私は行きました。そうして国府田さんが言っているのには、私のところでは飛行機でもみをまき、そうして水を張り、そうして機械で全部刈り取っております。そうして一番問題になるのはヒエなんだ。アメリカには害虫はあまりいないが、ヒエがどうしてもたくさんはえるのだ。けれども、このヒエは稲と違って水を張れば枯れます。だから、ヒエがはえたと思えばできるだけ早目に水を張ることです。水稲は必ず水の中で育ちますが、ヒエは枯れます。こういうことなのですが、私は、この話を非常におもしろい話だと思う。農業から育てられたあなたが、ただいまのようなお話をされるが、これはやはり大きくなってヒエを取るわけにいかない。小さなうちにこれはヒエと稲を区別して、そして水を張ることなんです。一週間も張れば必ずヒエは枯れる、こういうことを国府田さんは申しておりました。自分のところでは別に施肥をやるわけではないので、水回りだけよく気をつけて見ておるのだ。そして、水さえ潤沢であれば、ただいま言うような雑草は枯れます。あそこは大体害虫のいないところのようです。だから、比較的に米づくりは楽だということであります。ただ、私はその刈り取ったあとのたんぼに立ってみました。そうすると、落ち穂が非常に多い。これは機械刈りですから、どうしても落ち穂が多いのです。この落ち穂が多いことはたいへんな損害ではないか。ことに私どものように農民の愛情によって一本一本の稲を育てておるこの気持ちから見ると、あれだけ多数の落ち穂があっては、これは一体どういうことだ、たいへんもったいない、こう私が申しましたら、しかし、これをみんな一々かき集めますと、それこそ労賃がたいへん高いものになりまして引き合わないのです。ここにやはり農業の経済性も主張しておられました。私は、やはり機械化というほうが、今日労働力に困っておられる農村の方々を救う道であり、また農業の行き方ではないか、かように思いますので、私は機械化を進めたい。いろいろそのたんぼの構成その他でなかなかそう簡単にいかないものもございますけれども、その大農のところ、ただいま言われる八郎潟のようなところだと、これは進めていいのではないか。さらにまた、いま御承知のように耕うん機が至るところで動いておる。これをごらんになれば、とにかく農村労働は非常な変化だ、かように思いますので、やはり労働力を軽減すること、機械化すること、これがやはり農業の近代化の方向ではないか、かように私は思います。
  174. 川俣清音

    ○川俣委員 佐藤さんと農業論争をしても間に合いませんから、次に、もっと具体的に赤城農林大臣にお尋ねしますが、ことしも米価の決定が近くなってきておりますが、ことしも、従来どおり生産費及び所得補償方式で米価を算定し、米価審議会にかけて決定をするという方法をおとりになるのですか、ことしは変わった方法をおとりになりますか、この点をお尋ねしたいと思います。
  175. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 生産者米価の決定につきましては、従来どおり生産費及び所得補償方式によって決定いたしたい、こう考えております。
  176. 川俣清音

    ○川俣委員 大蔵大臣お聞きのとおり、ことしも従来と同じように生産費及び所得補償方式で米価を試算し、米審にかけて決定をするという答弁でございました。それでよろしいですか。
  177. 田中角榮

    田中国務大臣 農林大臣のお答えしたとおりであります。
  178. 川俣清音

    ○川俣委員 そういたしますと、いまの物価の値上がりの状態からいたしまして、農業パリティ指数はかなり上昇しましょうし、中期経済計画から見た物価の上から見ても、労賃の値上がりと当然生産費の値上がり、あるいは所得補償の上昇というものが出てまいりまして、昨年よりもおそらく二千円、三千円の商い計算が出てくるのじゃないかと思うのです。ところが、予算面では昨年どおり二万五千一円、なぜ一円をつけたかは別といたしまして、一万五千円ときめて、予算では一万五千円で買い取るという予算方式をとっておる。これは例年のとおりです。例年のとおりが悪いとは申しませんが、どういうことになるであろうか。この開きが食管の赤字をさらに拡大をするということになる。この拡大をどう解決するであろうか。いま千五十五億ばかりの調整金を見て、マージンの値上がり、政府経費の値上がり等については処置される用意はされておりますが、生産者米価が上がったときにはどう処理しなければならないか。私から言いますと、どの程度見込まれるかわかりませんけれども、この三月三十一日に従来のような取得修正主義をとりましても、取得価格に修正を加えましても、消費者米価の値上がりは必至ではないか、この七、八月ごろには値上げをするのじゃないと思われるのですが、どういたしましょうか。どうも消費者米価の値上がりによりまして、いまではとうふも上がった、豆も上がった、何も上がったということで、みそ、しょうゆをはじめ、日常品が上がってきております。さらに消費者米価を上げると、もっと高く物価を引き上げる情勢が生まれてくるのじゃないか、なかなか政府としては苦しいところに追い込まれるのじゃないかと思いますが、どう処置されますか、この点をお伺いいたしたい。
  179. 田中角榮

    田中国務大臣 食管の赤字が、食糧勘定だけで千八十七億も非常に大きな赤字が出ております。しかも、これは一月から米価の値上げをしてでございます。でございますから、生産費所得補償方式をとりまして、本年また生産者米価を値上げしなければならないようなことになりますと、この一年に二回も値上げができるとも考えておりません。そういう意味では、国の一般会計の負担が非常に大きくなるということでありまして、とにかく物価の抑制ということで、生産者米価をうんと上げなければならないというような事態を招かないように、十分施策を進めていくべきだと思います。いずれにいたしましても、六月ごろ二十九年度と同じように四十年度産米価格がきまるわけでありまして、そのときになって審議会の御答申を願いながら慎重に検討してまいりたいと思います。
  180. 川俣清音

    ○川俣委員 これは、総理もお聞き願いたいのですが、米価のほうはこういう算定方式になっておりますが、関係の深い麦価のほうは、食管法によりまして、大体農業。パリティが上がれば自動的にといいますか、必然に上げざるを得ない計算方式になっておる。ところが、農業パリティが非常に上昇しそうでございます。現に上がっております。物価の変動がすぐ。パリティに影響いたしておりますから、パリティ指数は上がっております。そうすると、麦価を上げなければならない、同じ食糧である米価は抑えるということは、非常に困難ではないかと思うんです。何か対策を講じておかなければならないのじゃないかと思いますが、そればかりでなく、食管会計からいうと、補正予算を組んで処置しなければならないのじゃないかと思うのです。これは大臣御承知のとおり、三月三十一日に評価がえをするといいますか、在庫品の評価をするわけですから、そこで赤字分が出てくるわけです。赤字分がはっきりしてくるわけです。明確になるわけです。そうすると、いまの一千五十五億の調整資金では足りないということになってまいりまするし、引き続いて麦価の決定をしなければならないともなると、補正予算を組んで処置しなければならないということになってくるのじゃないか。どういまから処置するか、やはりこの国会中にでも明瞭にしておかなければならない問題じゃないかと思うのです。これは別に補正予算を組めとか何とかいうことは別にして、そこへ追いやられるのじゃないか。大臣の答弁を願いたい。
  181. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、生産者米価は年々上がりますが、消費者米価というものはそう年々上げられるものでもございません。でありますから、生産者米価が引き上げられて消費者米価が据え置かれるということになりますと、一般会計の負担は非常に大きくなるわけでございます。この問題につきましては、御承知のとおり、食管会計の制度そのもの、また消費者米価と生産者米価とのあり方、こういうものを検討していただいておるわけであります。米価審議会に小委員会をつくりまして、いろいろ御検討願っておるわけでございますけれども、何ぶんにも消費者米価の問題は国民全体の非常に影響のある問題でありますので、政府も従来慎重な態度をとっておるわけであります。昨年度は食管の赤字が千二百四十億程度、今年度も食管会計で千八十七億も赤字を予定しておるわけでありますから、この上すぐ生産者米価が引き上げられるということになると、財政上は非常に困難な問題に逢着するわけでございます。六、七月に四十年度産米の生産者米価が決定されるわけでありますから、いまどの程度上がるのか、据え置くのかという議論をするには非常に早いと思います。いずれにしましても、財政上も豊かでない状態でありますし、この問題には政府は慎重に対処してまいりたいと思います。
  182. 川俣清音

    ○川俣委員 これは慎重というようなわけにはいかないので、大体の見通しがもう立てられなければならなくなっている。大蔵大臣、麦価だけはどうしても上げなければならない。麦は上げて米は上げないというわけにはいかなくなってくるのじゃないかと思うのです。赤城さんのように、いやスライドして消費米価を上げるんだということになると単純にいきますけれども、これが諸物価を上げる要因になるというところに悩みがあるわけです。食管会計からいえば、上げてバランスをとるということも一つの方法でしょうが、それがいま申し上げたような諸物価に非常な影響を与えておるのですから、ここで上げるわけにはいかぬ、一般会計では負担できないという悩みが出てくるのじゃないか。これはやはり解決しなければならぬ。慎重なというわけにはいかなくなってくる。即刻やはり対策を立てなければならぬのじゃないかというのが、私の質問の要点なんです。慎重にということで逃げられないのです。まだ方策がないでは済まされないのじゃないかと思うのです。私は、これはあなたを責めるわけじゃないのです。食管のことをあまり責めても、大臣自身をはじめ、大蔵大臣無理なんですから。だけれども、用意だけはしなければならぬ、検討はしなければならぬのじゃないか、こう言う。それを何とか慎重に慎重にでは、これは破綻をするであろう、こう思うのです。目に見えているのです。それは、赤城さんのように割り切って、いやスライドして生産者価格が上がれば消費者価格も上げるんだと言っていままでは来たけれども、それではいけなくなってきた。さらに、食管会計の赤字が出るんだから、財政負担ができるかというとできない。自然増収もないのでできない。ここへきているのです。どう処理されますか。案がありますか。ないと言って投げ出しますか。どうします。この点をひとつお聞かせ願いたい。
  183. 田中角榮

    田中国務大臣 即刻片づけたい問題でございますが、即刻片づかない問題であるということも御承知のはずでございまして、まあたいへんな問題であります。消費者米価を上げれば簡単でありますが、しかし、これは一般会計の負担は少なくなるけれども、国民生活にたいへんな影響があります。ではこれを全部一般会計で負担をすればいいかといっても、税の自然増収は求め得ない状態である。まさに進退きわまれりということでございますが、しかし、これも現実の問題でありますので、現実の問題に対処しまして積極的、かつ慎重にと、こう申し上げざるを得ないのでございます。いずれにしても、六、七月の米価決定までには、あなたの御意見もまた十分お聞きをしまして、できる限りの措置をいたしたいと思います。
  184. 川俣清音

    ○川俣委員 これは何とかこの国会で方向を打ち出しておかなければ、いたずらに不安が出てくるであろう。特にやみ米を助長するようなことになると、経済的にも困難を来たすのではないか。やはり一定の見通しを立てておかないと、食糧に不安を与えたり、流通に偏向を与えるようなことになったならばこれは追いつく手は打てないのじゃないか。そういうところから質問をいたしたわけでございます。総理も、これは自分の責任で解決しなければならぬと思いますから、これを解決しておかなければならないと思うのです。これは、たいへんなときに総理を引き受けられたと同情はしますけれども、みずから買って出たのでありまするから、これはやはり解決をつけなければならないと思うのです。そういう意味で、私の質問をつづめてまいりまするけれども、食糧の需給が非常に悪化しておりまして、外米も入れなければならない、価格もむずかしいということになって、四方八方から責められる、非常な苦境な年だと存じます。  そこで、さっきから残されておる最後の問題がございます。いわゆる公共料金の据え置き等によりまして地方団体が赤字を出しておる救済手段として案が立てられておるはずでございまするので、厚生省、大蔵省からもう一度、よく徹底しなかったそうですから、公共料金を据え置いたためにこうむった減収と申しますか、並びにその金融措置について、政府が考えられている案をお示し願いたいと存じます。
  185. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども述べましたが、公営企業、すなわち上水道事業等の資金につきましては、起債、融資等調達につきまして、さらに特別の処置を講ずるよう努力をいたす所存でございます。
  186. 川俣清音

    ○川俣委員 いよいよ最後にこれで終わりたいと思いますが、私どもは協力をするということは、時間を省略することも協力でありましょうが、さらに熱心に今後の政府の施策に大きな力を与えてやることも協力だと思うのです。ほんとうに時間を節約することだけに骨を折られないで、総理も参議院にただ早く送りたいという安易な道を選ばないで、十分衆議院においても検討をして審議の実をあげていただきたい、私はほんとうに心からそう思うのです。いたずらに時間を延ばすことはお互いに注意しなければなりませんけれども、審議はどうでも、早く参議院に送れば事足りるというような考え方を一掃してまいらなければならないのでございまして、私はこれだけの注意を与えまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  187. 小川半次

    ○小川(半)委員長代理 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  この際、加藤清二君から議事進行に関して発言を求められております。これを許します。加藤清二君。
  188. 加藤清二

    加藤(清)委員 三矢問題はきわめて重大な問題でございまするがゆえに、この際、総理の答弁を確認したいと思います。  三矢問題の資料の提出については、本日、自社両党の幹事長・書記長会談で、資料要求についてその申し合わせを確認いたしました。よって、政府におかれても、これらの経緯を尊重されて、誠意ある態度を示されるものと信じますが、いかがでございましょうか。
  189. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 幹事長・書記長会談で確認されました申し合わせは、政府におきましても誠意をもってこたえたいと存じます。
  190. 小川半次

    ○小川(半)委員長代理 次に佐々木良作君。
  191. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は、まず質疑に入る前に、ただいまも議事進行に関して発言のありました三矢問題につきまして、ちょっと触れたいと存じます。  本日の委員会が、再度この三矢問題を契機といたしまして紛糾いたしたことに対して、私ははなはだ遺憾の意を表するものであります。そしてまず第一に、わが党は、この三矢問題に対しましては、本予算案の審議とは別に、あくまでも国民の前にその真相が究明されることを要求いたしまして、そのため、わが党の主張に従いまして三矢小委員会が設置されたのでありまするから、したがって、本日以降におきましても、当小委員会を存続をさせて、当小委員会において政府は必要な資料を提示し、真剣な審議に入られることを要望するものであります。  さらに第二に、政府自民党は、三党国対委員長間で約束があったのにもかかわりませず、三矢小委員会において、従来資料も提出せず、かつ、事実上審議をボイコットしたことに対しまして、私は重ねて自民党政府に対して遺憾の意を表するものであります。  防衛問題は、日本政界にとって従来タブーとされてきた観があります。しかしながら、独立国家でありまする以上、その手段、方法等についていろいろ意見の分かれることがあることは当然であると存じまするけれども、この問題を完全に政治の外に置いてよいものであろうか、私自身さえも大いに反省をいたすところであります。従来の惰性の中で日本政界がこの問題から逃避し続けるとするならば、それは政治家として怠慢のそしりを受け、ひきょうな態度と評されてもいたし方がない状態が生ずるのではないかと思うのであります。三矢問題は、この意味におきまして、われわれに任務の自覚を促したものだとさえ私は考えるのであります。しかるに、この問題の審議に対しまして、従来自民党政府は事実上審議を逃避し、回避し続けたわけでありまして、その意味において、私は、自民党は自信がこの問題に対してなかったのか、勇気がなかったのか、あるいは何かうしろめたいことでもあったのか、われわれを疑わしめざるを得ないものがあったように思うのであります。  念のために総理に申し上げますが、この三矢小委員会は、本委員会とは並行審議というたてまえをとって、本予算案の審議を妨害しないということは、あらかじめ三党国対委員長間の約束であったわけであります。にもかかわりませず、この小委員会においては、いま申し上げましたように、本質的な討議は一度もされておらない。堂々とこの小委員会において本問題に取り組む態度をとらなかったことが、本委員会において、本日むしろ逆の事態を出来した大きな原因であるとも考えるわけであります。私は、この際、佐藤総理大臣の御所見を一応伺って、質問に入りたいと思います。
  192. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 独立国家として、国防、安全、これはたいへん重大な問題でございます。当然政治家たるもの、これに深い関心を抱かざるを得ない。ただいま佐々木君の御意見、私も敬服して拝聴した次第でございます。  ただいまの三矢小委員会は、そういう意味合いにおいて、この真相を明確にする、そうして国民に訴えるものがあって、今日のわが国の安全の問題も一そう国民の理解を得ることになるのではないかと思います。そういう意味合いにおいて、小委員会が運営されることを心から願います。また、今日までこの問題をめぐりまして再三国会の審議が渋滞いたしましたことを、佐々木君と同様、私もまことに同感に存ずる次第であります。
  193. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 質問に入りたいと思いますが、いろいろ時間の関係もありますので、私は、党の代表といたしまして、医療問題について、それからまた日韓問題について、ただすべきものをたださなければならないわけでありまするけれども、その前に、国際金融の問題につきまして、本委員会におきまして必ずしも審議が十分でなかったと思いまするから、まずこの問題からお伺いをいたしたいと思います。  総理大臣に端的にお伺いいたしますが、このたび、二月の十日でございましたか、ジョンソン米大大統領の国際収支に対する特別教書が出されまして、その中で、異常なまでのドル防衛策が展開をされておったのでありまするが、これは一体何をほんとうに意味するものであるのか。私の見解によりますと、これはその対策の問題よりも、真にこの教書の意味するものは、国際通貨としてのドルの深刻な不安を表示したものだと思います。昨年暮れのポンドの危機、一月上旬世界の金市場を襲った金の暴騰、フランス政府の通貨制度改革の要求など、まさに一九六五年、ことしは、国際金融体制に大きな波乱を巻き起こす年になるだろうということは、なおそらくいま世界の常識的な見解にさえなりつつあるわけでございまするが、この問題についての佐藤内閣の認識、お考え方の基本について承りたいと思います。
  194. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一口にドル防衛と申しますが、あるいはポンド防衛と一口に申しますが、ただいま佐々木君の御指摘のように、国際通貨としてのドルあるいはポンドの持つ意義、それはまことに高いのであります。また、そういう意味合いにおいて、この価値、このドルの価格を維持したいという、そこにドル防衛の真の目的があるのではないかと、かように思います。私どもは、かような意味合いにおきまして、ポンド防衛につきましても相応の協力をした、こういうことはすでに御承知のことでございます。
  195. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 おそらく田中大蔵大臣、そのそばにおってお考えになっていただいておるだろうと思いますけれども、いまの総理大臣の御答弁は、ほんとう言うと、私の質問に対して答えてはおられません。昨年の暮れから国際的な金融市場を襲っておるところの、その構造的な変化と構造的な不安に対しまして、日本はどういう姿勢で取り組むかという問題であります。時間もございませんから、この辺はほんとうに困るけれども、佐藤総理大臣、あなたは一ぺん数年前にインドのIMF総会かなんかに行かれる際に、私はこの委員会において、今後発展するであろうところのドル不安の問題が国際的な金融のベテランの間でどんなに扱われておるか、はっきりとその辺の感触を味わってきていただたきいということを申し上げたことがあると思います。その意味で、いまの総理大臣の認識、これはたいへん不満でございます。田中大蔵大臣、この問題につきまして、大体基本的なお考えを伺いたいと思います。ただ、私は重ねて申し上げますけれども、実際問題として、世界貿易が拡大するにつれて、いわゆる国際流動性というものは増加していかなければならぬだろう。しかしながら、御承知のように、実際問題としては、統計に従えば、ポンドは横ばいでしょう。それから、金はほんとうにほんの少ししかふえておりませんで、もっぱらドルの増加というのが国際流動性の不足を補っていることになっていることは、御承知のとおりです。ところが、そのドルの増加は、アメリカの国際収支の赤字で生み出されたものでしょう。したがって、ここにドル不安の根本的な問題があるのでありますから、いま総理大臣が言われたように、単にドルの価値を維持するために私どもとしても協力いたしたいと考えますみたいな認識では、日本国民の大きな不安を救済する答弁には、総理大臣、なりませんぞ、これは。私は、少なくともドゴール式の金本位制復帰論であるとか、あるいは新準備単位論であるとか、こういうところまで発展するのはどうかと思います。しかしながら、IMFの世界銀行化論というものが、現実にアメリカの大きな力として弧をあげつつあるところを見ても、この現行制度を補強するための合理的な考え方、通貨制度の改革というものが、本気になって取り上げられなければならぬ段階にきておると思うのです。大蔵大臣、ちょっとともかく考え方をお示しいただきたいと思います。
  196. 田中角榮

    田中国務大臣 国際流動性の問題及び国際新通貨の問題につきましては、昭和三十七年のワシントンにおけるIMF総会から、この問題は問題になっておるわけでございます。率直に申し上げると、アメリカ、イギリス、カナダ等を中心にするドル及びポンドの現在の国際通貨で足るという議論をなしておる国々と、それからフランス、ベルギー、オランダ等、金本位制に返りながら新しい通貨をつくるべきだという議論とに大別されておるわけでございます。昨年の九月、東京で行なわれました東京総会において、この流動性問題に対して結論を出したいということで、十カ国の大蔵大臣会議及びIMF事務当局等で十分検討したのでございますが、東京総会では、国際流動性問題につきましては、IMFの増資で一応結論を出したわけでございます。それで、新通貨そのものに対しては、いまドゴール大統領を中心にしたフランス政府のような考えに同調するものではなく、現存十カ国大蔵大臣会議の専門会議で、日本も参加をして検討をいたしておるわけでございます。また、ドゴール大統領を中心とする金本位制に返るべきだということは、御承知のとおり、ヨーロッパは長い金の歴史がございますのでこのような議論をいたしますが、現在の通貨制度そのものが管理通貨という立場をとっておりますので、現在の段階において金本位制に返るということが不可能であろうということは、アメリカや私たちもそう感じておるのであります。いずれにしましても、この国際流動性の問題に対しては、IMF及び十カ国の大蔵大臣会議で、十分将来の問題も含めて検討をいたしておることを御理解いただきたいと思います。  それからドル及びポンドの不安の問題でありますが、ポンド不安につきましては、去年の十一月から問題が表面化したわけでございますが、IMFからの十億ドルの引き出し、また、日本を含めた十一カ国からの三十億ドルのポンドに対するてこ入れ等を行ないまして、現在安定的な状態であることも御承知だと思います。私は、現在直ちにドルやポンドが切り下げられるというような危機ではなく、国際通貨であるドルやポンドの安定ということに対して日本も一翼をになっていくべきだという考えでございます。また、一説にありますとおり、ことし五月、六月、七月ごろのポンド及びドル不安説に対しては、そういう事態は起こらないという認識に立っておるのであります。
  197. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 基本的ないまの国際通貨制度の改革問題や、ドル不安問題、これはもうすでに学者の論争の段階を離れて、政府のほんとうの責任者が、しかも国際的な視野において意見を交換しながら具体的に取り組まなければならぬ問題になっておることは、大蔵大臣御承知のとおりであります。その意味において、どうかこの問題は、なかなか鎖国的慣習になれている日本人の中では理解しにくい問題であるかもしれないけれども、はっきりとした姿勢で取り組んでいただき、世論にも大きな問題として投げかける状態で私は取り組んでいただきたいことを希望いたします。  それから大蔵大臣が第二段に触れられましたところのポンド危機の問題、大蔵大臣は、いまポンド危機は小康状態を得ておって、したがって今後も大体この安定状態を続けるだろうという観測でございまするが、私は必ずしもそう楽観しておりません。むしろ五月末あるいは六月初めの危機説というものについて、相当大きな関心を持って私は不安な気持ちでながめておるわけでございますが、先ほどお話にありましたところの、昨年の暮れのときの対英緊急融資の期限の再延長にはフランスは応じないという立場をとっておるが、その期限は五月末にくるわけであります。したがいまして、この五月末から六月へという危機説の根源は私はここにあると思うのですが、これに対して昨年の十一月と似たような国際協調の線で救済し得るかというのは、これははなはだ疑問だと思います。総理大臣、ちょっと認識の程度を、この問題についてどの程度お考えになっておりますか。——ぐあいが悪いか、大蔵大臣か、困ったな。
  198. 田中角榮

    田中国務大臣 日本も五千万ドル程度、十一カ国として負担をいたしておるわけであります。この期限到来に対しては延長をいたしておりますが、再延長にフランスが応じない、こういうことを契機にしてポンド不安説があるということも理解できます。まあ、ポンド不安を根本的に解決するには、イギリスの経済そのものの力がつくということが必要になるわけでございますが、現在、国際通貨であるポンドやドルというものは、アメリカやイギリスだけの問題ではなく、すべての国々の問題でありますので、ただ一国の立場によってポンドに対する応援を打ち切るというようなことは起こらないと思います。また、そのような視野によって考えるべき問題でないと思います。五月に対してフランスが一体どうするか。いま新しい通貨制度をドゴール大統領を中心にして声を大にしておりますから、政治的ポーズとしては五月に打ち切る、再延長に応じないということを言うかもわかりませんが、現実的にもし必要があれば、また十一カ国のほとんどすべてがポンドに対するてこ入れがなお引き続いて必要である、こう考えるときに、フランスは必ずしもこの考え方を支持しないというふうには私は考えておらぬのであります。それは、この十一月にポンド危機がございまして、十億ドルのIMFの引き出しが行なわれ、十一カ国でもって三十億ドルのてこ入れをするときに、新通貨の問題を考えるときに、必ずしも賛成ではないが、しかし、いま新通貨が直ちにできるわけでもないし、国際流動性の問題が直ちに別な方向において解決するような段階でもないので、現実問題として、国際通貨であるポンドの不安に対してはわれわれ共同して除かなければならぬと、こう非常にはっきりした姿勢を天下に明らかにいたしておるわけであります。でありますから、政治的な姿勢としてはいろいろのことを五月まで言うかもわかりませんが、五月の状態においてなおてこ入れが必要である、延長が必要であるという大多数の考えがきまるような事態でフランスが十一カ国からはずれる、そしてポンド不安が非常に強くなるというようなことは起こらないのではないか、私はこういう見方が正しいと思います。
  199. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 いまお話しのように、要するに十一月のポンド危機は、御承知のような国際的な協調体制で一応救済されたわけでありまして、その後何ら、アメリカ経済自身が立ち直ってきたり、国際収支がほんとうに不安定さを安定化してきたりしておる徴候は見えぬわけでありますし、実際に危機発生以来イギリスから逃げていったところの大量の短期浮動資金が、ポンドに対する信用を回復してイギリスに帰還しつつあるという状況もございません。したがって、問題はほとんど唯一、五月末ごろを中心として、なお国際協調が続けられ得るかどうかということにかかってくると思うのです。いま大蔵大臣のお話でありますというと、フランスが協調を続けるだろうという感じ方、これは大蔵大臣、たいへん甘いんじゃないですかな。現実に二月四日のドゴール大統領の声明の内容や、二月十一日のフランスの大蔵大臣の話の中には、確かに政治的な含み、いろいろなものを持っていますよ。それから、国際通貨改革に対する一つのアドバルーンみたいなものもあるし、それから、それよりも、EECに対しましての直接アメリカからの投資がひど過ぎるという点を一番ポイントにしていることも事実だ。しかし、それがためにこそ、はっきりとゴールド・ウォー、金戦争の名のもとに、持っているドルを金にかえようという傾向をはっきり示して、今後はドルによってわれわれのほう向きに支払われることはごめんです、金でくださいよということをはっきりと言っておるし、そうして西ドイツの動きを見ても、事実EECの動きは、ほとんどこのフランスの動きに大なり小なり似たかっこうで追随せざるを得ない。御承知のように、この三月の二日か一日かでありましたか、EECの昨年のこの報告の中で、十五億、ドルぐらいな外貨準備の増加があった。それはみんなドル紙幣だ。しかし、こいつはみんな金にかえようというEEC自身の方針を打ち出しているでしょう。その辺から見て、いまお話のような形でフランスやEECが従来の国際協調を続けるという見方は、大蔵大臣さん、私は甘過ぎると思う。したがって、甘い、からいということをいま議論してみたところでしょうがないから、もし私のように、これはなかなか困難だという前提に立った場合には、御承知のように、そのとき、昨年の暮れのときに動員された国際協調のための援助資金というのは、大蔵大臣どのくらいです、大体四十億ドルでしょう。その四十億ドルが、似たぐらいな状態でその期限が切れるときに、やはり役立ち得る状態にあるかどうか。そしてフランスのいまの声明が生きてくる日と、こう考えてごらんなさい、どれだけの金が動員できますか。国際協調のためどれだけの金が動員されるか、その見込みはどれぐらいと思っておられるか。
  200. 田中角榮

    田中国務大臣 いまから五カ月先の話でありますし、またドゴール大統領を中心としたフランス政府は強い態度をとっておりますが、先ほど申し上げたとおり、昨年の十一月には、われわれは、新通貨制度や国際流動性問題に対して、アメリカやイギリスとは意見を異にしておるけれども、いますぐにこの問題が解決するというのではない。その意味では現実を直視して、イギリスに対する、いわゆるポンド防衛に対する協力を惜しまない、こういう基本的な姿勢を明らかにしたわけであります。でありますから、私は、今度の五月、六月になっても、もしその四十億ドルのうち、十一カ国が協力をしたものは三十億ドルでありますが、この延長を必要とするというような事態が起こるとしたならば、フランスがそれからはずれるという考え方を端的に考えるのは間違いだと思います。それはどういうことかといいますと、フランスを含めた十カ国の大蔵大臣会議の下部機関である専門委員会でこれらの問題を検討いたしておるのであります。でありますから、その結論を待たずして、その過程においてフランスが自説だけをとって、私はポンド防衛の責任は負わないというようなことを言うべきではないと思いますし、また言わないと思います。フランスが三億五千万、ドルの金を買うということも声明いたしましたが、これも声明をしただけで、直ちにこれを全部金にかえるというような極端な政策もとっておらないのでありますし、私は、現在の状態においてポンドの不安説をかき立てると、断定的にこれを承認するというような立場はとるべきでもないと思いますし、そうはならないということは正しいと思います。
  201. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 問題を提起することによって、こういう不安をかき立てること自身が経済界に一つの影響を与える、まあ言うならば、こういう見方は、とかく役所あるいはその政府からは出る話です。しかしながら、国際的に見て、御承知のようにこの問題はずいぶん論議し尽くされ、そうしてほんとうに各政府とも取り組んでおる問題でありますから、私は、そういう問題のとらえ方ではなしに、本気にとらえていただきたい。私は、むしろ国民の一人として要望、お願いをしておるぐらいなつもりであります。重ねて申し上げまするけれども、私は、フランスの決意はそうなまやさしいものではないと思います。   〔小川(半)委員長代理退席、委員長着席〕 先ほど申し上げましたところの大蔵大臣の談話の中で、はっきりと今度のポンド危機やドル危機に対する援助融資については、一はIMF資金によるものと、それから二は、御承知のような一九六二年の取りきめでありますところのIMFの一般借り入れ取りきめ、この二つだけによるべきであって、ほかの援助はすべて拒否する、こういう話をはっきりと打ち出しておるわけでございます。そして、もしそのような状態になるとするならば、そうすると、御承知のように、いまの対英緊急融資の期限が五月にくることを、その延長をはっきりと応じないという方針を打ち出しておるわけでありますし、また米銀連とのスワップ協定、説明すると長くなるのでやめますけれども、スワップ協定によるところの対ポンド、ドル援助も拒否する、こういう強い姿勢をとっておるわけでありますから、これをそのまま額面どおりに受け取ってまいりますと、イギリスが五月末ごろにもし似たような状態が再発いたしましたような場合には、現実に国際的に協調融資し得るものはIMFからの追加引き出しの十五億ドルと、それから先ほどの三十億ドルの緊急融資の中のアメリカ分担分の十億ドル、私は勘定に入れられるのはこの二十五億ドル、この前のときの四十億ドルに対して二十五億ドル、当てにし得るものはこれだと、そういうふうな、言うならばぎりぎりの立場に立っての観点も私は十分に御検討いただきたい。そういう意味で、今度の危機というものに対しましては、どうかひとつことばのがれでなしに、本気で取り組んでいただきたい。  重ねて私が要望いたしますのは、ポンドがあぶなくなると、御承知のように金価格が上がる、金価格が上がれば、また当然にドル危機というものを惹起する危険性をはっきりとはらんでおるというふうに私は思うからであります。私はこの点を強く要望いたしますし、それから一貫して、私が数年来持ち続けておりますところの、この国際金融の中におけるドルの位置というものに対して、日本人は言うならば非常にアメリカに対する信頼感が強くて、政治的だけではありませんで、常識的に、経済的な信頼感が強過ぎまして、向米一辺倒的な経済観やあるいはドル過信という感じがあり過ぎるということを私は強く警戒をするからであります。上格別ひとり任意を喚起いたしておきたいと思いますので、そのように方針で御検討を続けていただきたいと思います。  これと関連いたしまして、時間がなくなりますので追い込んでまいりますが、私はずっとこれまで同じ観点から、御承知のような金の手持ちが少な過ぎるということを言い続けてまいりました。そうして、昨年の暮れから似たようないまの国際危機説も含んだ動きがあるわけであります。これを目がけて、私はよく知りませんけれども、ソ連から、御承知のように、新聞の一部伝えるところによりますと、昨年でありましたか、二億ドル程度の金の売却、金を買わぬかという提案があったと伝えられておりますが、これに対しまして、ほんとうにそういう話があったのか、あったとするならば、それをどういう方針でどう措置されたのか、なお問題は継続しておるのか、この辺に対して、ひとつ明確にしていただきたいと思います。
  202. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、私の講演発言に関する問題でございますが、その後十分調査をしましたところ、ソ連政府から正式に金の売却を申し入れたという事実はないようであります。私がそういう話を申し上げたのは、いまの、ドゴール大統領を中心にする新しい通貨制度、また国際流動性に対するフランス側の見解、そういう事態に対処して日本が現在とっておる考え方を申したときに、必ずしも金を買わなければならないというような状態ではないのですという、一つの引例として申し上げたのでありまして、正式にソ連政府から金の売却を申し込んだという事実はありません。
  203. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 そうすると、正式になくても、その話によっては相談に乗るような感じの話はあったのですか。
  204. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、ヨーロッパやソ連を旅行されてきたいろいろな方々からは、そういう問題が何回かございます。ございますが、これは正規なものでもなく、その信憑性というものに対しても責任が持てないということでありますので、公式な席上で申し上げる政府答弁といたしましては、ソ連政府から正式に金売却の話はありませんでした、また日本も、なかった問題に対して政府が拒否をしたという事実もありません。こう申し上げておくわけであります。
  205. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 しかしながら、私は、現在の国際的な状況から見ると、公式か非公式か、あるいはその前の打診か知りませんけれども、あり得る話のような感じがするわけであります。もしそのような話がきたとするならば、本気で御検討なさいますか。
  206. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘がありましたように、日本の外貨準備がそう豊かなものではない、また貿易量は非常に大きくなっておりますので、外貨準備高に対して流動性を確保しておかなければならないということで、二月末の外貨準備高は二十億四千万ドル程度になると思いますが、こういう状態におきましても、金の割合は約三億ドルということでありまして、いままで金を買うというよりも、流動性を確保しなければならないという立場にあったわけでございますが、しかし、金を買わないというのではなく、金が買い得るような状態であり、しかも外貨準備の流動性に支障を来たさないというような状態であれば、金は買わないということはなく、買ってまいりたいということは、この席を通じて明らかにいたしております。
  207. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 お話のように、三億三百万ドルというふうなものらしい感じであります。ところが、フランスはだんだんと、御承知のように金にかえつつありますし、EECもその傾向にあります。これはたいへん大きな杞憂だといってしまえばそれまでのことでありますけれども、金の価格を倍に上げるなり、あるいはドルの価値を半分に下げるなりという事態が起きる場合には、外貨準備の大きさというものが全然違ってくることになるわけであります。御承知のように、フランスの例をとってみるならば、いま外貨準備が五十億ドルだ、そのうち金で持っておるものが四十億ドルだ、こういうお話でありますが、それがいまのような事態が起きれば直ちに九十億ドルの外貨とかわる。ところが日本の場合には、二十億ドル程度持っている、その中で金が三億ドル程度だといたしますと、そのような事態が起きても二十三億ドル、こういう状態でありまして、もしこれを個人財産、自分の金を自分で管理しているという、そういう感じに立って、証券界が不安な状態になったようなことを考えてみてごらんなさい。そうすると、私はじっとしておれないような感じさえ持つものであります。しかし、そういう見方あるいはそういう見解を出すこと自身が一つの大きな不安の種にもなりましょうから、したがって、私はこれ以上追及しようとは思いません。しかし少なくとも、言うならば後進国でない国におきましては、その準備を着々と進めつつある段階でありますから、十分配慮されることを特に私は要望いたしまして、次の質問に入りたいと思います。  次に、医療問題について伺いたいと思います。  総理にお伺いいたします。二月二十七日、いわゆる支払い者側七団体と政府与党との間に約束されました了解事項というものは、一般的にたいへん評判もいいようでありますし、これを契機にして、長年紛糾を続けてまいりました医療問題もうまくひょっとすると解決するのではなかろうか、その一歩を踏み出すのではなかろうかという一般世論の期待も相当にあると私は考えるわけでありますが、まず佐藤総理は、そういう観点に立って、長年のこの問題を、これを契機にして解決しようとされるのか、それであるならば、当然にこの約束を誠実に履行する、そして医療問題をここから再出発させるということがまずかまえの出発点であろうと思われますが、総理の決意を承りたいと思います。
  208. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、医療問題はたいへんな問題でございます。これが持つ意義、国民皆保険のその立場におきまして、同時にまた、国庫負担のあり方等からも見まして、また支払い側あるいは受け取り側、それぞれの複雑な関係もありますので、これはなかなか乱麻を断つというような簡単に結論を引き出せるわけのものではないと思います。しかし、今日これが問題になりましたこの機会に、ひとつ再出発する、そういう意気込みで真剣に取り組んでまいりたい、かように私は考えております。
  209. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 この約束は誠実に履行するということはもう言わなくてもいい、必ずそういうつもりでおるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  210. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 抽象的な問題でございますが、大体気持ちが十分これには反映されております。私もこの案をつくります際に相談にもあずかったので、よく了承しております。
  211. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 総理に申し上げますけれども、私は医療問題に対しましては完全なしろうとでございます。おそらく総理もそうだろうと存じます。医療問題というのが、私はくろうと衆の間にあまりくろうとに扱われておるところに、ほんとうは大衆的な問題でありながら、何だかわけのわからぬ状態になっている一つの原因があるような気がいたします。したがいまして、総理、私はあげ足をとったりするということは一切いたしませんから、しろうとして、常識人としての御判断に基づいて、明確にお答えをいただきたいと思います。まず約束は誠実に履行する、こういう方針はお変わりございませんですな。
  212. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  213. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 これは、大体論議の外に置かれておるようでありますけれども、そのまず第一の約束事項に、「今次医療問題収拾の取扱いについては佐藤首相に預ける。」と書いてある。しろうとが読みましたら、何のことだか私はさっぱりわかりません。聞くところによると、責任問題云々ということが一つの問題になっておるようでありますが、ここで私はあらためてお伺いいたしておきたいと思いますことは、責任問題ということでありますというと、神田厚生大臣がおられるところでぐあいが悪いかもしれませんが、職権告示から直接引き起こされた現在の混乱についての責任問題というのが第一次的な問題であることは間違いございません。しかしながら、この問題は、同時に、三十九年四月十八日の中央医療協答申、いわゆる八%引き上げ答申とされているもの、相当問題はあるようでありますけれども、これは答申であることは間違いないのでありますから、この答申自身と直ちに本気になって取り組んで、政府の責任において実施するなり、何なりをしなかったという怠慢、その責めは私は免れないと思うわけであります。事実、それ以降は、本年一月十三日に職権告示の直後、いわゆる解散総会ということで、それまでの間全然中央医療協は開かれず、その後また中央医療協の機能を停止してしまっておるわけでありますから、したがって現在の問題の責任という意味におきますると、三十九年四月十八日中医協の答申を実施にも移さなかったというこの怠慢は政治責任から免れることはできないと存じます。この意味におきまして、まず第一に書いてあるところのこの総理大臣に預けられた問題は一体どういうふうに取り組もうとされておりますか、姿勢をお伺いいたしたいと思います。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま佐々木君も御指摘になりますように、中庭協の答申、それからが問題の始まりだと私思います。今回の職権告示、それからが必ずしも問題だとは思いません。しかし、とにかく私自身に預ける、こういうことでございますので、私はただいま預かっておるという状況でございます。
  215. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 いまの御答弁をもし支払い者側団体が聞いたら、また、激高しますよ。そんな形式的に、預かっておるということではなしに、私ははっきりと総理大臣は責任を感じ、そしてその政治責任を感じて善処する。善処されることを期待して私は総理に預けられておる問題だと存じます。責任問題でございますから、必ずしもこれ以上私は追及しようとは思いません。申し上げることは、その政治責任を明確に感じとられること、そしてそれは、悪いけれども神田厚生大臣一人の問題ではない。先ほど申し上げましたように、問題の出発点は、一番短くとりましても、三十九年四月十八日にさかのぼらなければなりません。そうしますと、その責任というのは自民党内閣の政治姿勢という問題に関係して、自民党内閣自身が政治的な責任を感じなければならない問題だ、こういうふうにもっと広く責任を感じて、その立場から私は思い切った立て直しの方途に着手されんことを望むものであります。  次の質問に入ってまいりたいと思いますが、この支払い者側との了解事項の中で立て直しを約束されておりますが、立て直しの柱になっておりますのは、私しろうと的に考えてみますと、中医協であるとか、保険審議会であるとか、保障制度審議会であるとか、これらの機関の尊重、第三者の意見をいれよう、当事者の意見をいれようということになっておる。そういう考え方の機関尊重という姿勢と、もう一つは保険財政の健全化のために思い切って財政の国庫負担を行なわなければならない、この二つが私は柱だと思います。きのう滝井委員からずいぶんと具体的な追及がございまして、田中大蔵大臣はなかなか言を左右にして具体的な返事をされませんでした。したがって、私はいま具体的な返事を求めようとは思いませんけれども、もし総理大臣が最初お話しになったような決意でもってこれに取り組もうとされるならば、この二つの柱、機関を尊重すること、そして本気になって、従来とは角度の違った立場から財政の国庫負担に対して相当な決意をしなければならないであろう、この二つが柱だと思いますが、総理大臣の御所見を承りたいと思います。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 第一の、機関を尊重することは当然でございます。ただいまこれによりましてようやく機関が動き出そうとしておる、そういう際でございますので、第一項についてもいろいろお尋ねになりましたが、これはいろいろ関係があるだろうというので、あなたも質問を打ち切られたようです。私もこの二項以下に書いてありますその内容等につきましては、これはどこまでも正しい姿勢で審議会が運営されることを期待しておりますので、その審議そのものをとやかくどちらかの方向に方向づけるような発言は実はしたくない、かように私考えておりますので、しばらくそれについての答弁は保留させていただきたいと思います。
  217. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 保留というのはどういうことですか。いまの約束を実行するかしないかわからぬという意味ですか。
  218. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん書いてありますことは、私は、そのとおりだ、かように申しました。また機関を尊重することも、これは間違いございません。しかして、これから後の具体的な措置等につきましては、私はこの際に申し上げません、かように申しておるのであります。
  219. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 具体的な措置につきましては、昨日来滝井委員等を中心にずいぶん詰められましても、大蔵大臣は断固として具体的な御答弁はなさらなかったことを承知いたしております。いま私は、大蔵大臣を差しおいて総理大臣自身に求めておりますものは、この約束を中心にして本気になって問題と取り組もうという姿勢を求めておるわけであります。その際に、官僚的に、総理大臣まだばたばたと逃げられるような根性では、この問題の解決は私は不可能だと思いますよ。もう一ぺんはっきりといまの御決意を承りたいと思います。
  220. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど申しました私の決意は、はっきりいたしております。別に誤解はないだろうと私思います。御承知のようにいろいろ関係者が入り組んでおりますが、それを処理しよう、こういうことで新しい立場に立って、そして結論を出してください、審議会におきまして十分御審議を願いたい、このことを申し上げておるのです。そうして、その審議はどこまでも私ども答申を尊重いたします、このことをはっきり申し上げておるのであります。
  221. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 時間をいただきさえすれば、いま詰めなければならぬことはよく知っておりますけれども、何しろ時間がないないでせめられるので私は困るわけです。しかしながら総理大臣、いまの姿勢はよろしくない。私は端的に申し上げます。私は専門家でなくてしろうとです、だから総理大臣に対して常識的なお答えをいただきたい、こう申し上げておるのであります。したがいまして、責任問題につきましても、首を切るとか切れとかいうことを私は言っておるのではありませんし、それからこの約束の趣旨の基本的な考え方が、従来の方針とはひとつ志を新たにして国庫負担というものを相当考えなければならないなあ——いままだ具体的に数字を出して私迫ってはおりませんよ、これからも迫りゃしませんよ、きのうあれだけ滝井さんが詳しいのを言ったのだから。したがって、その方針ぐらいははっきりとされなければ問題は前進しませんよ。
  222. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この申し合わせの中に方針ははっきり書いてあります、これをお読みくだされば。私、これを尊重する、かように申しておりますので、御了承いただけると思います。
  223. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 時間の約束を私は都合によって破棄いたします。書いてあるものを読めばわかるみたいなことなら、私は答弁を求めません。はっきりともう一ぺん御答弁いただきたい。
  224. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この第二、「各種医療保険財政の健全化に資するため、財政事情の許す限り、極力国庫負担の増額等必要なる措置を講ずる。国保……」。
  225. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 総理大臣、そんなこと読まぬでもいいですよ、この時間の忙しいのに。
  226. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これがはっきりいたしておりますので、ただいまのお尋ねに対してはこれで答えができている、かように私思います。
  227. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 総理大臣、少し落ちついて常識的にお答えいただきたいと思いますね。私はあげ足とりもせぬと言っているじゃありませんか。しかもこの約束の中には、はっきりと財政事情の許す限りという条件もついていることを承知しておりますよ。しかしながら、はっきりと、今度はわれわれとしても腹をきめなければ、相当覚悟を新たにしなければこの問題の解決は困難だぞ、やりましょうという姿勢ぐらいは、あなた答弁されたっていいじゃないですか。もう一ぺん御答弁願います。
  228. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この書いたものをちゃんとお見せした、ちゃんとこれを示したということは、私どもの方針がはっきりしているのです。これまた非常に簡単な書き方がしてありますから、ただいま言われるとおり、私どもは答申によりまして、そうして私どもの許す限りこれを処置する、かように申しておるのであります。
  229. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 大蔵大臣にお伺いをいたします。私が先ほど質問をしておる際のこの行き来は、大蔵大臣御承知のとおりだと思います。そして繰り返して言うようでありますけれども、具体的数字をめぐってのいろんないきさつも承知いたしております。この間——きのうは滝井さんがあれだけ言っても、あなたの方針はがんとしておられて、抽象的なことでぴたりとしておられたことも承知いたしております。しかしながら、それにもかかわらず、今度の予算と、それから予算の裏づけになるべき法律の政策とがない。したがって、本来からいうと、これは御承知のような必ずしも一ぺんに法律的な違反問題ではないかもしれませんけれども、普通でいうならば、このような予算案というものは非常に大きな政治責任を巻き起こすものであることは間違いございません。そのことは大蔵大臣もきのうの答弁の中ではっきりと認めておられるわけであります。同時に、内閣の責任において今度取り組もうとしておる問題の姿勢も御承知のわけでございまするが、したがって、私は、数字の明示はなくても、総理大臣のいまのあいまいな答弁にもかかわらず、大蔵大臣としては相当の覚悟を持って四十年度の中に適当に、私どもはおそらく補正予算の形で審議しなければならないだろうという問題を含めて覚悟をされておると思いまするが、大蔵大臣のひとつお気持ち、御所信を承っておきたいと思います。
  230. 田中角榮

    田中国務大臣 財政問題につきましては、財政上可能な限り誠意を持って努力をいたしたいと思います。  なお具体的な方法でございますが、これは、答申が出てみなければわからぬわけであります。いろいろ数字も違ってまいりますし、例を言いますと、薬価負担が五〇%の場合には二百五十三億という金になるわけでありますが、これが四〇%になるのか、三〇%になるのか、五〇%をのんでもらえるのか、こういうことによって必要な金額が違うわけでありますから、いま具体的に申し上げられないということは御理解いただけると思います。これはもう審議会の答申のいかんによって数字が変わるわけであります。具体的な方法、特にいま政府が御審議願っておる予算では間に合わないというようなものが出た場合には、予備費になりますか、補正になりますか、借り入れでもって行なうかは、答申に接してから具体的に検討してまいるということでございます。
  231. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 もう一点だけこの問題で大蔵大臣に重ねて聞いておきましょう。大蔵大臣の言われるとおり、それから普通の皆さん方の御答弁のように、三法を中心とする審議会の答申が出なければそろばんがはじけないということは道理です。しかしながら、同時に、実質的な考え方に立ちまするならば、財源計画も資金規模の構想も何にも示さずに審議会に対してこの問題を審議してくれと出されて、それをほんとうに審議できる立場に審議会は置かれるであろうか。逆に申し上げまするならば、むしろある程度の方針、金の裏づけの方針をもって審議会に対して意見を求めるのでなければ、ほんとうに機関を尊重したところの諮問にはならぬはずであります。したがって、この辺はどういうふうにお考えになっておいでになりましょうか。
  232. 田中角榮

    田中国務大臣 私が承知をいたすところによりますと、この交渉の過程においてある程度、あなたがいま御指摘になったように、政府が可能な財源を出して、この範囲でなければならないというようなことを明示されることが審議をすることに非常に効率的であるという話もございましたが、そういうことを裏返して考える場合には、審議を拘束することにもなるわけであります。でありますから、平たい立場で真剣にひとつ御検討願う。政府案がいま諮問案として提出されておりますけれども、これにこだわらず、答申を尊重いたしますということが、より審議会の公正な意見を求める道であるということで、金額等明示すべきではない、拘束をすべきではない、こういう結論に達し、相手側もこれを認めて合意に達したわけでありますので、答申が出ましたら、政府はその答申に対して対処するということが最も合理的だと思います。
  233. 青木正

    青木委員長 佐々木君に申し上げますが、そろそろ時間も近寄りましたので、御協力をお願い申し上げます。
  234. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 約束は一時間半ですよ。私、そういうことを言われるなら一時間半かっきりやりますよ。よろしゅうございますか。  先ほど大蔵大臣お話しのように、この問題は、考え方によって鶏と卵の関係であります。したがって形式的に、お話のようなかっこうで向こうが出るまで待つなんというのもほんとうの答弁ではございませんし、それからはっきりと数字を出していけといえば押しつけということになることも承知いたしております。しかしながら、一つのいい結論を得ようとするならば、政府の可能な考え方を披瀝しながら、十分に相談をすることが常識的な扱いだろうと存じます。したがって、この問題の取り扱い方につきましては、わが党はもちろんのこと、社会党さえも同様でありましょうし、それから支払い団体も約束をしておるのでありまするから、関係者一同がいろいろ動きをすると思いますので、われわれは十分なる監視態度を続けてまいりまして、先ほど総理大臣が言われたような意味で、ほんとうに審議会のあり方、その結論を、あるいはその結論の出し方を尊重しておる状態をつくられるかどうか、その推移を見て私どもはまた批判、検討をいたしてまいりたいと思います。当然に先ほどのように、それの資金の始末もあとになってくる問題でございますから、あわせて私は検討を続けたいと存じます。  官房長官、ちょっと問題が小さいような大きいような、私よくわかりませんから、ついでにお伺いをいたしておきたいと思います。  このお約束の中に、薬価基準の引き上げ問題、それから医療経営実態調査、それから保険医療機関の監査というようなことが約束をされております。私はしろうとでわからぬけれども、この問題に触れるとしかられるところがあるぞという話でございましたが、しかられるところがあろうがなかろうが、この問題は文字どおり本気に官房長官取り組まれるというおつもりでしょうな。決意を承っておきたいと思います。
  235. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 先ほど総理大臣から答弁がありましたように、この医療問題は国民全体にとって重要なる問題であります。従来の医療関係問題が必ずしも私は正常で進んできたとは思っておりません。ことに今後の新しい社会、ことに総理が申しておりますところの社会開発の思想から考えましても、これらに対してはまっ正面から取り組んでいく、そういう意味で単に財政問題だけにかかわらず、医療問題全体にわたったということが、この問題に対して佐藤政府がいかに真剣に取り組んでおるかということを御了承願いたいのであります。その方針をもって前向きに、真剣にこの問題の処理に当たりたいと考えております。
  236. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 薬価基準の問題が出ますと、その動機から考えましても、従来医療協の中で技術料という問題があったよしに承っております。そして、私しろうとでほんとうにわからぬのでありますが、説明を聞きますと、たとえば頭蓋骨の中の脳みそを手術するというような一番むずかしい手術でも、いまの何とか点数によると二万円にもならぬくらいな金だとかいうお話を聞き、こんな調子だからほんとうは名医になればなるほど収入が減るんだ、こういうお話も承るわけであります。もしほんとうにそういう状態であるとするならば、これは私はほんとうに重大な問題だと思います。したがいまして、それらの問題については、たとえば技術料等の問題であるので、それが実情に合わぬといわれるのならば、これは私は値上げ修正をしてもかまわないのではないか。それらを含めて、そういう不合理があるとするならば、いまお話しのように診療報酬体系とかというものもほんとうに実情に合うように、そして名医は名医らしく払えるように、薬代が安くなれば安くなっただけのまた戻りがあるように合理的な措置がとらるべきだ。私は、ちょうどいいチャンスでございますから、それらについて根本的に検討を加えられることを強く希望しておきたいと思います。  最後に、この医療協のお約束の最後に、調査会を設け云々というのがございます。それをいま私が申し上げたような意味で、医療制度の再出発のためにほんとうにやろうといわれることでございまするならば、はなはだけっこうなことでありますし、その成果を大いに私は期待いたしたいと存じます。しかしながら総理大臣、今度のこの予算書の中にも似たように調査会だとか、あるいは公団だとか、あまり世間で評判のよくない措置がずいぶんたくさんある。そして、それは従来擬装的な民主主義あるいは官僚の責任回避、そういうような意味で調査会とか審議会とかいうものは雑草のごとき状態ではえ茂っておることを御承知だと思います。その雑草の一つのようなことにこれがもしなるとするならば、きわめて重大なる問題だと思います。したがいまして、私はどんな調査会にするのかということよりも、この問題発生の経緯にかんがみまして、総理に、確固たる方針をもって臨まれるかをお伺いをいたし、あわせて、最後に中医協の改組問題ということに触れられておりまするが、これは聞くところによりますと、税制調査会のようにこれを内閣直属にして、総理大臣がじかに諮問をして、内閣自身がほんとうに考えるような相談機関にしたら、こういう意見もあって、この中に含まれておると承っておるわけでございまするが、その内容、その是非論は別といたしまして、ちょうど私はこの医療問題を本気で取り組み、都合によっては抜本的な改革を行なう絶好のチャンスと思うわけでありますので、これらに対してどのような姿勢で取り組まれるか、真摯な姿勢で取り組まれんことを希望して、質問を終わりたいと思います。お答えだけいただきます。
  237. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ御意見を拝聴いたしましたが、私どもがこの問題に取り組みました基本的な考え方は、冒頭に申しましたように、これは国民のまことに重大な問題でございますし、その立場に立って、政府ももちろん誠意を持って、熱意を持って、そうして抜本的な対策を講ずべきその時期がきているのではないか、かように私は考えております。したがいまして、ただいまお示しになりました点については、私どもどこまでも誠意を持って、またその抜本的改革についてほんとうに熱意を持って踏み出したい、かように考えております。
  238. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 医療問題を終わって、先ほど申し上げましたように、私は日韓交渉が煮詰めの段階にきつつあるように考えましたので、この問題についてほんとうにいま国民に知らすべきものは知らされたいという意味で、私は問題を具体的に詰めたいと存じておりました。しかしながら、いろいろ委員長だのその他から、時間、時間のお話がございますので、したがって、これは割愛をいたしますが、別な最近の機会において、はっきりと私は国民の前に明らかにされながら、ひとつ国民とともに日韓問題は取り組む姿勢をとられんことを希望いたします。もしこの問題が秘密外交のそしりを受けたり、独善のそしりを受けるような状態で取り組まれますというと、わが党の考え方も御存じのはずでございまするが、わが党を含め、善良なる国民すべてがおそらく反対側に回らざるを得ない結果になるだろうことを御承知いただきまして、この問題の取り組み方について一段と御努力あらんことを希望いたしまして、質疑を終わりたいと思います。
  239. 青木正

    青木委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  これにて締めくくりの総括質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十年度総予算に対する質疑は全部終了いたしました。(拍手)     —————————————
  240. 青木正

    青木委員長 この際、日本社会党の川俣清音君外十四名より、また民主社会党の今澄勇君外二名より、昭和四十年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議がそれぞれ提出されております。     —————————————
  241. 青木正

    青木委員長 これより両動議について順次その趣旨弁明を求めます。  加藤清二君。
  242. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、日本社会党の提出にかかわる昭和四十年度一般会計予算特別会計予算政府関係機関予算を撤回のうえ編成替えを求めるの動議の提案趣旨の説明を申し上げたいと存じます。  しかし、いまちょうど、もはや秒読みの時期が来ておるようでございます。ことごとに時間時間とせき立てられます。自分たちが質問に答えられずに立ち往生するときには二十分も三十分も立ち往生しておきながら、われわれの質問に対しては、時間、時間、時間で追い込む、これが政府の常套手段でございます。しかし、なお私は、国会の正常化は必要であるがゆえに、国会の正常化に協力する意味におきまして、前段を割愛いたします。委員長、聞いておってください。このとおり割愛していきます。したがって、これはぜひひとつ記録に残していただきまするよう、委員長において善処されることを、最初に要望いたします。     —————————————  わが党は、前段に述べましたこの基本方向に沿って、政府予算の全面的編成替えを行なうことを要求するものでありまするが、特にこのたびは国民生活にとって緊急なものだけに限って必要最小限度の重点的な組み替えをここに要求するものでございます。  すなわち、その重点組み替えの第一は、所得税の減税についてであります。政府は、少なくとも所得税の利子、配当所得に対する特別優遇措置を取りやめ、それによって起きる約八百二十五億の増収をはかるべきでございます。その増収分を所得税の一般減税の拡大に振り向け、所得税の標準世帯課税最低限を年収六十万円にまで引き上げるべきであります。  そもそも、昭和四十年度の税制改正にあたりまして、大蔵省では、当初は標準世帯六十万円まで課税最低限を引き上げることを計画していたのが、財界の圧力に屈して、一般減税のほうは課税最低限の引き上げをわずかにとどめ、それにかわって、利子所得の分離課税の特例が延長され、あまつさえ配当の源泉選択分離課税が新設されたという経過があったのであります。よって、わが党は、この利子、配当の特例を取りやめることにより、その財源を一般減税に振り向け、四十年度において六十万円まで課税最低限を引き上げることを要求するものであります。課税最低限を八十万円まで引き上げるというのがわが党の本来の主張でありまするが、最低限の要求として、この際少なくとも六十万円までの引き上げはぜひとも実現すべきであり、利子、配当の特別措置をやめればそれが実現できるではないかという、きわめて遠慮した立場に立って要求をいたすのであります。  次は、農業用のガソリン税の免税であります。これについては、すでに論議の余地はないのであります。もはやこの問題は論議がし尽くされたのでございまして、残る問題は実行だけでございます。わずかに五十億の特別措置でこれをすりかえるというような政府態度は、全国の農民とともに、日本社会党は断じて、断々固として承認できないところであります。(拍手)先刻予算委員長が表明されました与野党一致の理事会決議を実行に移し、農業用ガソリン税の免税に踏み切るべきであると思います。委員長、よろしいですか。  次は、歳出に対する必要最小限の組み替えであります。まず、警察庁の経費のうち特に反動性の著しい警備警察関係の経費、防衛庁の経費のうち航空機、軍艦、武器弾薬等の直接の戦争手段に関連する経費、防衛施設庁の経費のうち駐留軍に対する施設提供等の諸費と防衛相互援助協定による米軍顧問団への交付金、及び革新勢力に対するスパイ活動を主たる任務とする公安調査庁の経費など、反動的軍事的経費のうちから八百二十五億の支出を削除すべきであります。そして、この削除した財源をもって次のような事項に対する支出の増額を行なうべきでございます。  その第一は、医療費に対する措置であります。医療費問題についての取り扱いは、政府は徹頭徹尾国民を無視し、また、この問題の取り扱いについて確立されている従来の手続、慣例をじゅうりんして事を運んできたのでございます。その結果、中医協の民主的な審議を無視して……   〔発言する者あり〕
  243. 青木正

    青木委員長 お静かに願います。
  244. 加藤清二

    加藤(清)委員 医療費九・五%引き上げの職権告示を行ない、その引き上げのしわか患者への薬代半額負担と被保険者への総報酬制採用による保険料大幅引き上げによって負担させようとして、その問題でいまや社会保険審議会の会議すら満足に開けません。進退ここにきわまれりとは、まさにこのことでございます。事ここに至った根本原因は、政府医療費に対する国庫負担を惜しみ、これをあげて国民の負担に転嫁させようとしたところにございます。そこで、政府は、この際医療保険に対する国庫負担増額措置をとり、もって当面の混乱した事態の打開の糸口を切り開くべきでございます。  医療費問題についてのわが党の態度は、一、医療保険に対する国庫負担を最低二割は行なうということを制度化する、二、医療技術尊重の原則に立った適正な社会保険診療報酬支払い体系を確立する、三、薬九層倍といわれる医薬品の価格を引き下げ、また薬価基準を適正化すること、四、各種医療保険の被保険者負担や給付水準に種々の格差があることにかんがみ、これらをより高い水準で統合し制度の抜本改正をはかる、以上四つの措置を昭和四十一年度より講ずることにより、医療保障制度の正常な運営をはかるべしというのがわが党の態度でございます。  この態度を踏まえて、さしあたり四十年度においては、第一に、薬代の患者負担、保険料の引き上げ、総報酬制の採用はやらずに、政府管掌健康保険には医療給付費の一割相当分の二百五十六億、日雇い労働者健康保険には医療給付費の三割相当分の八十五億、組合健康保険と共済組合短期給付分には医療給付費の一部として六十億、国民健康保険には医療給付費の一割相当分の二百八十二億、それぞれ国庫負担を増額すべきことを要求するものであります。これでは保険財政の赤字対策として不十分でありますので、不足分に対して政府資金の貸し付けを行ない、さらにまた、医薬品価格の引き下げによる医療費の節減をはかるべきであります。総医療費のうち薬剤費は実に四千億もの巨額にのぼっております。たった一割を引き下げるだけで優に四百億の医療費を節減することができるのであります。製薬会社が過大な宣伝費用をかけ、原価のきわめて安いものを高い価格で国民に売りつけるのみならず、その薬の乱造乱売競争の中で、かえって国民の健康や生命を破壊するというゆゆしい事態すら招いているのが今日でございます。これにかんがみ、この際政府は、断固として薬務行政に手を加え、医薬品の価格引き下げを断行すべきであります。こうして、当面四十年度における医療費九・五%引き上げの影響を患者、被保険者にしわ寄せすることなくこれを処理すべきであります。  また、支出増額の第二は、水道料金の値上げ抑制のための予算措置であります。われわれ日本社会党は、地方公営企業については、その経営を改善するため、永久的性格を持つ設備は政府資金を原資とする永久公債によって資金を調達し、公営企業債の償還期限はこれを四十年程度に大幅に引き延ばし、金利も五分以下に引き下げ、独立採算制についても、これを機械的にとるのでなく、弾力的に改廃する等の抜本的措置をとることを主張いたしておりますが、さしあたり、いま問題になっております水道料金値上げ問題については、政府が強い決意をもって値上げ抑制を行ない、値上げ抑制に協力した地方公営企業には、三十九、四十年度の減収補てんとして約百二十億の臨時特別交付金を交付すべきことを要求するものであります。また、三十八年度まで六十八億にのぼる累積赤字については、これは一般会計の支出とは別でありますが、財政投融資資金によって借りかえ措置をとるべきことを要求するものであります。  第三は、義務教育費、特に教科書無償配付の拡大であります。政府のかねての計画では、本年度は中学一年まで教科書が無償配付される予定になっていたのでありまするが、これを政府は切り縮めまして、小学校六年までにとどめたのでございます。まさに血も涙もない政府の本質が暴露されたといわざるを得ません。わが党は、この公約無視を強く糾弾し、ここにわずか二十二億で足りる支出を増額して、中学一年にまで無償配付を拡大すべきことを主張するものであります。  かくて、歳出における反動的、軍事的経費の削減要求が八百二十五億、それに対し、医療費、水道料金、教科書に関する支出の増額要求が八百二十五億、合わせて増減相均衡することに相なるわけでございます。  すでに申し述べましたとおりに、わが党の政府予算に対する組み替え要求は、きわめて基本的、抜本的組み替え要求でありまして、そのうち、ここにわずか八百二十五億、一年じゅうハレバレ予算のわずか八日分にしかすぎません。そういうきわめて限定された範囲で、当面どうしても放置できない重点的な組み替え要求提案し、これを御説明いたした次第であります。これらの重点要求は、すなわち国民の重点かつささやかな要求であります。この要求をはたして佐藤内閣が受け入れるか、それともこれをあえて拒否するか、いまやここに九千万国民の瞭がそそがれておるのでございます。  私は、佐藤内閣及び自民党がもしも一片の良心と大企業に与える温情の万分の一なりとも持ち合わせるならば、ここにまじめな態度国民の重点要求を受け入れるべきであると思うのでございます。この点を強く要望いたしまして、日本社会党の、昭和四十年度予算に対する組み替え要求動議の提案趣旨の説明を終える次第であります。  よろしく慎重御審議の上、満場一致の御賛同をお願いいたしまして、終わります。(拍手)
  245. 青木正

    青木委員長 次に、玉置一徳君。
  246. 玉置一徳

    玉置委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、政府提案にかかります昭和四十年度予算三案につきまして、政府がこれを撤回し、以下私が述べる趣旨にのっとり、すみやかに組み替えを行ない、再提出されるよう要求する動議を提出するものであります。  なお、わが党動議の詳細につきましては、本委員会資料として委員各位のお手元に配付されておりますので、御参照くださるようお願いいたします。  まず、組み替え要求の理由を御説明申し上げます。  私どもが政府案の組み替えを要求する最大の理由は、政府は現在の不況と物価高の根本原因がどこにあるかの真因を究明する誠意もなければ勇気も持たず、いたずらに大型予算を編成して国民の血税を浪費しているからであります。  佐藤内閣は、前池田内閣の所得倍増政策の失敗の是正を緊急当面の課題として発足したにかかわらず、予算編成、金融政策、証券業対策、基幹産業対策に見られるように、政府の施策はいずれも所得倍増政策の不況時版にしかすぎません。現在の不況は、単なる金融引き締めによる景気後退だけではないのであります。すなわち、政府の所得倍増政策による長年にわたる過剰投資の結果、各産業、各企業は軒並みに過剰生産、過当競争を続けております。金融機関はこのような不健全経営に融資を続け、信用膨張の行き過ぎを招来しておるのでありまして、現在の不況とはこのような経済構造上の根本欠陥に根ざしており、物価面の真の原因もこのような信用膨張にあるのであります。政府は、財政経済政策の全力をあげて、不況と物価高の抑制のため、その根本原因をなくするようつとめるべきにもかかわらず、今次予算に見るも、全くこの任務を放棄しているものと断ぜざるを得ません。  さらに具体的に政府案について見ますならば、政府の減税案は、三千億減税の公約にもかかわらず、八百億減税にすぎません。給与所得の減税については、給与所得者五人世帯で所得税免税点を年収五十六万四千円に引き上げたものの、これは三十九年度の標準家計ですら赤字になる金額でありまして、ましてや、物価上昇のやまない四十年度には、さらに赤字を累増するものといわざるを得ません。  政府案の減税は、国民の実質所得の向上はおろか、物価高に対する防波堤の役割りも果たしておりません。政府案の歳出予算編成について私どもが最も憂慮する点は、最近は、人口増加、国民生活水準の向上、物価高に伴いまして、既定経費の大型化、しかも固定化が避けられないのであります。新規政策を積極的に実施していくための豊富な財源を確保することがますます困難になってきております。このような財政構造の変化に応じまし、予算の重点約編成、行政費用の節約など、新しい観点から新しい財源を確保することが必要となっております。ところが、政府案は、僅少の財源を名目だけの新規政策にわずかずつ配分したり、後年度の財政負担を加速度的に膨張させるように無責任な予算計上を行なって表面だけをとりつくろっております。  また、財政投融資計画を見ますと、一兆六千億円の新規原資の六割は国民の零細なる貯蓄や積み立て金でありますが、投融資の対象の約半分は直接大企業に向けられております。  さらに、地方財政計画との関連を見ますと、いまや、ほとんどすべての地方自治体は、多方面にわたる住民行政水準を引き上げるために、再び財源不足におちいって、地方公営企業の料金引き上げが続出しておることは御承知のとおりであります。これに対する政府の施策は、地方交付税率を〇・六%引き上げたほかは、地方税の増税でまかなわせようとしております。政府予算編成は、国の予算の財源難のしわ寄せを地方財政に押しつけているものというべきでありましょう。  私どもは、政府案が各面にわたり以上のような重大な欠陥を持ったものと判断し、ここにその組み替えを要求する次第でございます。  まず、歳入予算につきましては、税制改正により、所得税減税は、五人世帯給与所得者年収七十二万円までを免税とするよう要望いたします。また、法人税は、年所得三百万円以下の法人経営を三段階に分けて、税率を二三、二八、三〇%にするよう要望します。さらに、租税特別措置法につきましては、大企業もしくは高額所得者に対する恩恵として固定してしまっている多くの減免措置の改廃、並びに、中小企業経営に対し、新たに初年度特別償却制の創設と、勤労性個人事業者に対する給与所得者並みの特別勤労控除の減税恩恵を付与するよう提案いたします。このほかの税制改正については資料を参照していただくことにいたします。  さらに、地方財政の自主財源を補給するために、たばこ消費税率を現行の百分の二十四より百分の三十に引き上げるよう要望いたします。  以上の歳入予算の組み替えによりまして、政府案に比較しまして増税一千百億円、減税二千五百五十二億円、差し引き一千四百五十二億円の減税増加とし、専売益金は、たばこ消費税卒の引き上げにより三百二十億円の減収といたします。したがって歳入合計約一千八百億円だけ政府案より減少になるものと想定いたしますが、明年度の租税自然増収は、政府見積もりよりも八百億円多く見積もりますので、一千八百億円よりこの八百億円分を差し引いた一千億円は、政府案よりも歳入減として想定いたします。このように、初年度二千五百億円の大衆減税を行ない、歳入予算規模は政府案よりも一千億円少ない三兆五千五百八十億円を計上するのが、わが党の歳入組み替え要旨であります。  次に、歳出予算組み替えにつき説明いたします。  わが党の歳出組み替えの最重点は、国民医療費負担、地方公営企業公共料金、生鮮野菜価格の三つの点につきまして、国が強力かつ具体的な物価抑制策を実施することにあります。  すなわち、国民医療費負担につきましては、本年の一月にさかのぼり、医療給付を七割に引き上げるよう、国が財政支出をすること、地方公営企業の赤字補てんのための政府引き受け地方債の発行を認めること、五カ年計画をもって、大都市に野菜を供給する主要農村に対して、国費をもって大規模冷凍施設を建設して、冷凍野菜の大量貯蔵、大量供給の道を開くこと、この三つについて、国が責任を持つ当面の物価抑制対策として、その第一年度予算を計上するよう政府要望いたします。  次に、歳出予算のうち、政府案よりも重点的に政策を増強すべき項目として、社会保障関係、文教関係、住宅と住宅環境関係、中小企業と農業、沿岸漁業の近代化促進対策費関係、さらに石炭、海運、繊維など、国の助成保護を必要とする産業対策費関係がありますが、これらについては、お手元の資料を御参照いただくことにして、説明を省略いたします。  最後に、私が歳出予算細み替えのポイントとしてぜひとも説明申し上げねばならない点は、一般行政費の節約についてであります。冒頭に申しましたように、国の歳出予算は、既定経費が巨大となり、しかもこれが固定してしまいますので、財源増加がなかなかこれに追いつけなくなっております。このときにあたり、求めるべき新たなる財源は、歳入予算にあっては、課税公平の鉄則によりまして、超過利得、高額資産、高級消費に対して応分の課税をあくまで徹底することであります。歳出予算にありましては、行政改革によりまして行政能率の向上をはかり、積極的に予算節約を断行することであります。この意味で、わが党は、人件費部分を除く歳出予算全体につきまして平均五%の経費節約を行なうよう提案いたします。  以上のような歳出予算組み替え要旨によりまして、政府案に比較して、歳出の増額が二千六十億円、歳出減額が三千六十億円、差し引き一千億円だけ政府案よりも歳出規模を減額するよう提案いたします。  政府が本国会予算案を提出してより、今日までの予算審議を通じ、残念ながら、政府答弁は、現在の不況と物価高を克服しようとする政策に欠け、ビジョンを持たず、かつはまた、自分で用意した施策についてすら検討不足というありさまでございました。私は、いまやわが国の経済構造の変化、財政構造の変化に伴い、政府がわが党の組み替え方針に従いまして、まず明年度予算を補強するよう切望いたしまして、組み替え要求動議の提案説明を終わりたいと思います。(拍手)
  247. 青木正

    青木委員長 以上をもちまして趣旨弁明は終わりました。     —————————————
  248. 青木正

    青木委員長 これより討論に入ります。  昭和四十年度総予算三案及びこれに対する編成替えを求めるの動議二件を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。  赤澤正道君。
  249. 赤澤正道

    赤澤委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提出の昭和四十年度予算三案に賛成し、日本社会党並びに民主社会党から提出されました組み替え動議に反対の討論を行なわんとするものであります。  御承知のとおり、明年度予算は例年に比べて自然増収の見積もりがきわめて少なく、世上近来まれに見る編成難であると言われましたのにもかかわりませず、その予想を裏切り、四年連続年内編成をなし遂げましたことは、まことにみごとな手ぎわであり、しかも財源の調達にあたって公債発行やインベントリーの取りくずしなどを行なうことなく、健全均衡財政に終始した点、現下の経済情勢から見てけだし当然のこととはいえ、まことに欣快に存ずるところであります。  私は討論時間の重大な制限を受けましたので、本予算案の内容にかかわる討論は全部省略いたしますが、あとで委員長において会議録に掲載していただくようお取り計らいをお願いいたしたいと存じます。したがいまして、私は、ここでは政府原案に賛成する基本的理由のみについて申し述べてみたいと思います。     —————————————   〔参照〕  さて、最近におけるわが国経済は年々目ざましい発展をとげたのでありますが、一方、その経済発展の陰に農業や中小企業等にひずみを生じ、国際収支の悪化と物価高を招来いたしましたこともいなめない事実であります。  しこうして、このような事態に対処して、わが党並びに政府は、一昨年以来引き締め政策を実施してまいったのでありますが、その効果は昨年春ごろから次第に経済の各分野に浸透し、最も重視された国際収支は、最近輸入のおち着きと輸出の予想以上の好調によって漸次改善され、ようやく明るい方向に向かってまいったのであります。  また、国内経済も、鉱工業生産は次第に鈍化の傾向を示し、特に、三十八年度以来上昇を続けた設備投資も鎮静化のきざしが見えて、景気調整の効果は一応その目的が達成されたと思われるに至りました。  このような情勢に即応して、昨年十二月には預金準備金の引き下げが実施され、さらに本年一月早々には公定歩合の一厘引き下げが断行されたことは、まことに時宜を得た適切な措置でありまして、私はこの一連の措置を高く評価するものであります。  しかしながら、この間経済構造の変化もあり、さらに、景気調整が重なったため若干企業の倒産が見られ、また、物価は依然として安定を見ない状態にあることも、現実の姿であります。  また、国際的には昨年来本格的な開放経済体制に移行したわが国経済にとって、一昨年来のアメリカのドル防衛政策、続いてイギリスのポンド防衛等に見られるように、周囲の環境はなおきびしいものがあるのでありまして、国際収支の見通しも、目下のところは輸出の好調にささえられているとはいいながら、先行きは決して楽観を許さない情勢にあると思うのであります。したがいまして、引き続き、消費者物価の安定と国際収支改善のために、本年はさらに格段の努力をしなければならないと思うのであります。  以下、私は、予算審議を通じて行なわれた議論、及び両党提出の組み替え動議に反駁を試みながら、予算のおもなる内容に触れつつ討論を進めてまいりたいと思うのであります。  まず、減免の問題について申し上げます。  野党の諸君は、いつものことながら、また今回の組み替え案にもありますように、歳出については、社会保障費をはじめ、農業、中小企業、文教、公共事業など、おしなべて増額を要求され、一方減税についても常に政府案を上回る大幅を主張されております。  もとより、われわれも予算の増額を望み、あとう限りの大幅減税を希望する点において決して人後に落ちるものではありません。しかしながら、社会保障費をはじめ、公務員の給与改善に伴う人件費、長期計画に基づく公共事業等、いわゆる当然増経費が逐年増高し、いまや財政の硬直性が云々される中で、財政の健全均衡を堅持して国民要望にこたえなければならない責任と使命は容易ならぬものがあるのであります。きびしい財源難の中で、減税については、所得税中心に初年度八百二十億円、平年度一千百五十八億円の思い切った減税を計上しています。この減税額は税制調査会の答申を上回るものであり、また、初年度の純減税規模としては戦後四番目の大幅となっています。  野党の諸君は、配当所得に対する減税をとらえて、これは大企業や高額所得者を優遇するものであると主張されるのでありますが、減税の内容を見れば、この分はわずかに三十八億円、平年度においても五十三億であって、一方、所得税の減税は、初年度八百二十億円のうち実に八百二億円、平年度一千百五十八億円のうち九百二十二億円の減税となっているのであります。  申すまでもなく、配当所得に対する源泉選択制度創設の目的は、資本の蓄積をはかるという見地から利子所得とのバランスをとろうとするものでありまして、従来からの懸案をこの際勇断をもって解決したという実に画期的な措置であり、かつまた、このことはやがて次年度以降の所得税の大幅減税を可能にするための基盤づくりにも役立つものであります。  今回の減税額は、自然増収四千六百五十億円の十一.六%に相当するものであり、その結果、給与所得者の標準世帯における免税額は、現行の四十八万五千円から五十六万四千円に引き上げられたのでありまして、これを三十五年度の三十二万八千円と比較いたしますと、五年間におよそ二倍に近い免税額の引き上げを行なったことになるのであります。この事実に徴しても明らかなように、いかにわが党並びに政府国民負担の軽減、なかんずく所得税に重点を置いて、毎年あとう限りの免税を断行しているかをうかがい知ることができるのでありまして、私はここに満腔の賛意を表する次第であります。  次に、社会開発について一言申し述べたいと存じます。  社会開発の積極的な推進については、特に佐藤総理が熱心にこれを提唱されております。予算内容を見まするに、これはただに総理の政治姿勢にとどまらず、随所にその熱意と努力のあとが反映されていることを認めるのであります。すなわち、一般会計予算においては、住宅対策費、環境衛生対策費がいずれも前年度を二〇%上回り、さらに、社会保障関係費は一九.九%、文教及び科学振興費は一五%と、いずれも一般会計予算の伸び率一二.四%をはるかに上回っております。また、財政投融資計画においても、国民生活に密接な関係を持つ厚生福祉施設関係に二五%を織り込でおり、前年度に対する財投計画の伸び率、二〇.九%をこれまた相当上回る配慮がなされているのであります。ことに、一般会計の中で公共事業費の伸びが一五%であるのに比較すれば、いかに社会開発関係に力点を置いたか、まことに明瞭なところであります。  内容について二、三申し上げますと、社会保障関係においては、生活扶助基準の一二%アップをはじめ、福祉年金の改善、精神異常者の通院治療費の半額公費負担など、低所得階層の引き上げにかなりの手厚い予算措置が講ぜられ、総額五千百六十四億円の金額は、前年度に比べて八百五十七億円の増、つまり一九.九%の伸びとなっております。  また、公害防止事業団を新設して、ばい煙や汚水などの公害防止施設の整備に特に意を用いた点など、社会開発に対する情熱の端的な現われであると思うのであります。  さらに、住宅について、建設戸数の増加はもとより、公庫の融資率の引き上げや坪数の増加等、内容の質的向上改善をはかり、新たにサラリーマンに自分の家を持たせるために、住宅供給公社制度を設けるなど、四十五年度までに一世帯一住宅の実現をめざして三百万戸以上の政府施策受託を供給する計画を推進しているのでありまして、私は、これらをみても、社会開発が単なるかけ声や政治姿勢ではなく、真にその目的を達成しようとする意気に燃えた予算であると思うのであります。  その他、文教関係におきましても、全小学生に対し教科書無償給付を実施し、私学振興の充実、新たに辺境地遠距離通学者に対する補助金の交付等、国民要望にきめ細くこたえている点も見逃すことのできないところでありまして、私は、これらがすべて今後の新しい社会開発のカテゴリーに入って、年々拡充され、しこうして人間尊重の政治につながることを期待してやまないものであります。  次に、農林漁業及び中小企業の問題について申し上げたいと存じます。  四十年度予算にいま一つの特色ともいうべきものは、ただいま申し上げました減税と社会開発のほかに、前内閣以来の懸案でもあり、かねてわが党並びに政府が最優先的に取り上げてまいりましたいわゆる経済のひずみ是正であります。  すなわち、まず農林関係予算について見ますれば、一般会計において、食管会計への繰り入れと災害関係を除いた純農林予算は、前年度補正を加えた二千八十一億円を一七.一%上回る二千四百三十七億円となっております。また、財投計画においても、農林漁業金融公庫の融資ワクを拡大し、三十九年度の一千七十億円に対し一千二百四十億円と、差し引き百七十億円の増加であり、さらに、農協系統資金を活用した近代化資金を六百億円から七百億円に、また、無利子の資金として広く農民に歓迎されておる農業改良資金も四十四億円から五十七億円に増額されているのでありまして、これらの予算並びに資金をもって一連の施策を進めることによって、生産基盤の整備拡充、構造改善事業及び流通機構の改善合理化等を急速に促進し、同時に農産物の価格安定をはかることによって、農家所得の増大と生活水準の向上を促そうとするものであります。  農業政策の中でもさらに注目すべきものに、農地管理事業団の新設があります。今日、兼業農家が農行全体の七六%を占めている農村の実情から見て、真に生産性を高め農家の経営規模を拡大して自立経営農家の育成をはかることは喫緊の要請であります。このときにあたり本事業団の発足はまことに時宜に適したものでありまして、わが国農政史を飾る画期的な施策の一つというべきであります。  なお、この際、本委員会において問題となりました農耕用ガソリン税の減免問題について一言触れておきたいと思います。この問題については、しばしば大蔵大臣から説明がありましたように、政府においては前向きの方向で真剣に検討を重ねられてようでありますが、徴税技術上きわめて困難であるとの結論に達し、その代策として、従来の農道の整備開発費等に上積みして五十億円を計上して還元をはかっているのでありまして、私どもは、この政府の誠意ある態度と努力に対し深く敬意を表する次第であります。  農林漁業と並んでわれわれが最も深い関心を持ち、政策的に重視したものに、中小企業の近代化促進があります。本予算の中小企業対策は、振興政策と保護政策の両面から現下のひずみ是正をはかることをねらったものでありまして、このため、一般会計の中小企業対策費は前年度より三十二%伸びの二百十八億円が計上され、また、財投面においても、中小企業三公庫に対し合計四千六百二十五億円を織り込んで、今日の中小企業の要請に大きくこたえているのであります。これは前年度に比べて一九.八%の増額であり、さらに、このほか、新たに無担保、無保証の信用保険制度を創設して、需要の多い小口金融に新たな窓を開き、また、小規模企業共済事業団を新設して企業者の相互扶助による生活の安定に資するなど、今日の中小企業の実情に即してあとう限りの細かな施策が講ぜられておるのであります。その他、税制面においても特別な配慮が払われているのでありますが、これら各般の総合的施策が実を結べば、設備の近代化、構造の高度化、経営の協業化等がより一そう促進され、他産業との格差も次第に縮小の方向に向かうものと、大きな期待を持つものであります。  最後に、医療費の問題について一言申し上げたいと思います。この問題については、目下政府並びにわが党の代表と支払い者側団体の代表との間において円満なる収拾について努力が続けられているところでありまして、私どもは、正規の機関である中央社会保険医療協議会及び社会保険審議会の公正なる答申がなされることを期待し、政府はこれを尊重して実態に即して善処されることを希望するものであります。     —————————————  以上主なる施策の数点について申し上げましたが、要するに、私が政府原案に賛成する基本的な理由としては、第一に、四十年度予算は、従来からの経済成長政策の基本線に沿うて、長期的には公共投資の拡大をはかりつつ社会開発を促進し、同時に、農業、中小企業など、経済のひずみの是正にきわめて意欲的な態度で取り組んでおる点。第二には減税をはじめ、当面する社会経済の諸要請によくこたえ、かつまた、予算規模を適度に圧縮して、国際収支や物価などに対して景気刺激を与えないよう十分な配慮が払われていること。大きく分けてこの二点であります。  これに引きかえまして、日本社会党並びに民主社会党提出の組み替え案は、その内容においていずれも現状では実現不可能な要求であります。たとえば、反動経費の削減と称して、防衛費ほか八百二十五億円を減額しておりますが、これは国防あるいは国内の安寧を無視するきわめて無責任なものである。また、農業用ガソリン税の減免についても、政府並びに税制調査会が十分に検討した結果、技術的にきわめて困難であるとの結論に達したものを、さらにその廃止を要求し、あるいは医療費国庫負担の大幅増額並びに国の負担による公営企業の値上げ抑制など、かような組み替えに対し、残念ながら賛成することはできないのであります。  この際最後に政府要望しておきたいと思いますことは、予算の適正執行についてであります。御承知のとおり、予算の不正執行は、毎年会計検査院が強く指摘するところでありまして、三十八年のみを見ても六百十六件、二十三億二千二百万円にも及ぶというきわめて不名誉な数字であります。各省大臣におかれては、予算執行にあたり特に厳正な態度をもって臨まれるよう強く要望いたしまして、はなはだ簡単でございますが、私の討論を終わります。(拍手)
  250. 青木正

    青木委員長 石田宥全君。
  251. 石田宥全

    石田(宥)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府提案昭和四十年度一般会計予算案、昭和四十年度特別会計予算案及び昭和四十年度政府関係機関予算案並びに民主社会党提案の編成替えを求める動議に反対し、社会党提案昭和四十年度各予算案を撤回のうえ編成替えを求めるの動議に賛成の立場から討論を行ないたいと存じます。  昭和四十年度予算案は、佐藤内閣にとりまして初めての予算編成であります。その意味におきまして、国民に多大の犠牲を押しつけました池田内閣の高度経済成長政策を転換し、この間に生じました多くの矛盾を解決すべき絶好のチャンスであったのであります。国民の大多数は、佐藤総理の政治姿勢ではとてもそうはならないとは思いながらも、この生活の困難を少しは解決してくれるのではないかとかすかな期待を持ったのであります。しかし、佐藤内閣は、このかすかな期待さえも裏切って、国民犠牲、大資本木位の経済政策をなお継続し、一そう拡大して昭和四十年度予算案を作成したのであります。いま政府昭和四十年度予算案の特徴を要約すれば次のように言うことができるのであります。  第一に、この予算案は、インフレ促進予算であり、国民の負担をますます拡大させる物価上昇の予算であります。佐藤総理大臣が就任第一声で行なった公約は、物価の交差でありました。社会開発という看板も国民の生活内容を豊かにすることである以上、まず高度成長の矛盾の最たるものである物価高騰にメスをふるい、安定させることが何より優先的な政治課題であったはずであります。しかるに、政府は、経済成長率の見込みをはるかにこえる三兆六千五百八十億円もの超大型予算、膨張予算を組んだばかりでなく、財政投融資計画では、昭和三十九年度の伸びを上回る二〇・九%の伸びを示しております。   〔私語する者多し〕
  252. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  253. 石田宥全

    石田(宥)委員 この財投計画の中身を見まするならば、今年度予算案を貫くインフレ的性格は明確になるのであります。財政計画一般会計予算に対する比率は、昭和三十二年度の二五%から、四十年には四四%に達しようとしているのであります。これは国家の資金の多くを国会の議決の対象外に置き、しかも本来一般会計で行なうべき事業を財政投融資へ肩がわりしているものでありますが、その財源調達のやり方を見れば、インフレ政策そのものであります。すなわち、財投原資のうちで公募債借り入れ金は、昭和三十七年度の千四百八十二億円から、四十年度の三千二百六十億円へと、わずか四年間に二倍半にも達しているのであります。   〔私語する者多し〕
  254. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  255. 石田宥全

    石田(宥)委員 現在の金融メカニズムでは、政府がこれだけ民間資金を借金すれば、その分だけ日銀が通貨を民間に放出する仕組みになっていますから、財投の公募債借り入れ金は、日銀引き受けの赤字公債と何ら選ぶところはないのであります。かかるインフレ政策が基本にあってこそ、急速な物価上昇が起こっているのであります。しかも、四十年度の財投計画では、国鉄を中心に多額の債務負担行為を認め、また大幅な利子補給制度を採用したのでありますが、これらはいずれも日銀信用、通貨の大幅な追加創出の要因となり、インフレの原因となっているのであります。さらに、前年度剰余金の二分の一以上を国債償還に充てるという従来の規定を五分の一に切り下げ、五分の四を当年度一般会計財源に繰り入れることにしたのも、重大な措置であります。これと将来の公債発行が結びつくことを考えますと、そこにはかけ足のインフレという展望が浮かび上がってくるのであります。  こうしたインフレ政策の反面、国民の負担、生活の苦しさを軽減する予算上の措置は何らとられていないばかりか、むしろ積極的に国民の負担を重くする予算になっているのであります。昭和四十年度予算案の第二の特徴はこの点にあります。すなわち、政府は、食管会計へ繰り入れる財源を節約すると称して、消費者米価の一四・八%の引き上げを断行しました。この米価の値上げは、とりわけ低所得階層の負担増加をもたらすものであります。また、厚生大臣の職権告示という不法な手段で九・五%の値上げを行なった医療費国民全体で約一千億円の負担増となるのでありますが、これに対して、国民健康保険と政府管掌健康保険への国庫負担増は、わずかにスズメの涙ほどの四十五億円にすぎません。医療費引き上げのほとんどすべてを保険料引き上げと患者の窓口負担増額にかぶせ、国民の負担に転嫁しようとしているのであります。あまつさえ薬代の半額患者負担の算入によって、社会保障以前の社会保険の体系からさえも後退しようとしているのであります。また一方、歳入面での税金についても、大衆に対する税金はますます重くなっているのであります。たとえば、五人家族の場合の所得税の課税最低限は、昭和四十年度には五十四万四千二百五十九円と、形式的には引き上げられています。しかし、物価高の中で名目所得は一〇%程度ふえたとしても、生活実感は少しも楽にならないにもかかわらず、税金はますますふえてくるのであります。しかも、課税最低限を算定する根拠となった最低食料費は、一日一人外食費を含めてわずか百六十五円という飢餓的水準であります。まさに、生計費どころか、最低生存費にまで食い込んでいると言えるのであります。また、住民に多大の負担増となる地方公営企業料金の値上げ問題についても、何らの対策を立てず、むしろ独立採算の仕組みを強めることによって、そのしわ寄せを住民に許せ、政府は責任を回避しているのであります。何らの処置もとらず、しかも政府のインフレ政策に基本原因があるにもかかわらず、佐藤総理が東京都の水道料金の値上げを非難するのは、まことにおこがましいといわなければなりません。無責任に値上げする東京都知事も、値上げの基本要因をつくりだしておきながら知らぬふりをしておる佐藤総理も、同じ穴のムジナだといわなければなりません。(拍手)  かくして、本年度予算は、国民、とりわけ所得の低い階層ほど負担が重くなり、生活が困難となるものでありますが、その反面、資本家、金持ちには手厚い優遇措置を見ているのであります。すなわち、昭和四十年度予算案の第三の特徴は、資本家、金持ちに奉仕する予算であるという点であります。まず、税制では、法人税率の一%引き下げ、利子所得の分離課税の存続、配当所得の源泉選択制の採用等で資本蓄積の促進、資産所得の保護をはかっております。ことに、配当源泉選択制の採用は、株式市況の回復をねらったものでありまして、日本銀行が株価回復のために二千億円もの資金を流し込んだこととあわせて、まことに露骨な大企業保護、資産者保護の措置であるといわなければなりません。一方、支出面でも、大企業の産業基盤整備に奉仕する公共事業費が、一般会計と財政投融資を通じての太い主軸となっております。すなわち、四十年度予算の中で、公共事業関係費は六千八百八十億で、全体の一八・八%を占めて、歳出項目の中で第一位を占めているだけではたく、経済審議会のまとめた中期経済計画の投資予定額をさえも上回っているのであります。これに反して、住宅、環境衛生などの予算は、わずかに全予算の一・二%を占めているにすぎず、これでは社会開発の看板が泣こうというものであります。また、予算復活折衝の過程で、F104ジェット戦闘機三十機の追加生産が承認されたのでありますが、これは、軍備拡張のねらいを持つものと同時に、三菱重工など兵器産業からの強い圧力に屈服したものにほかなりません。造船、海運資本に奉仕する外航船舶利子補給も、前年度に対し倍以上にふえているのであります。  第四に、いままでの予算委員会を通じて明らかにされた昭和四十年度予算案編成に当たった政府の政治姿勢の中に、私たちは最も大きな危険を感ずるのであります。政府は、アメリカ軍隊による北ベトナム爆撃、侵略活動をやむを得ないものであるとして正当化し、また、日韓国民の多数の反対を押し切って、東北アジア軍事同盟の結成を目的とする日韓会談の早期妥結を目ざして、基本条約の仮調印に踏み切ったのであります。この仮調印の行なわれた翌日には、韓国軍隊が南ベトナムに向けて出発したのでありますが、このことは、すでに東北アジア軍事同盟へと実質的に動き出した象徴的な事実であります。一方、わが国が最も友好を推し進めなければならない中国を敵視し、アメリカの軍事援助で維持されている台湾政府には一億五千万ドルもの資金を惜しげもなく与えるのに、中国へのプラント輸出に対する輸銀資金を使わせないというのは、まことに反動政策のきわみであります。佐藤内閣は、アジアの平和を確立し、アジアの国々と平和で平等互恵の原則にのっとった友好を打ち立てるのではなく、アメリカと組んでアジアの緊張を激化し、戦禍を拡大するに狭奔しているのであります。三矢事件も、佐藤内閣のこの政治姿勢の中で考えるならば、まことに危険きわまりないものといわなければならないのであります。  国民にとって平和と安定した生活を確保することが政治の使命であるとするならば、こうした佐藤内閣の政治、経済姿勢、その反映である昭和四十年度予算は、国民多数の期待に沿って転換させなければならないのであります。社会党提案予算組み替えの動議は、こうした国民の最低限の要求であると考えるものであります。佐藤内閣並びに与党が、この最低限の国民多数の要求さえ満たすことができないとすれば、もはや政権担当の能力と資格はないものというべきであります。  私は、この立場に立って、政府原案の昭和四十年度予算案並びに民主社会党提案の編成替えを求める動議に反対し、社会党提案の組み替え動議に賛成するものであります。(拍手)
  256. 青木正

    青木委員長 永末英一君。
  257. 永末英一

    ○永末委員 私は、民社党を代表いたしまして、今澄勇君等提出にかかる昭和四十年度予算三案の編成替えを求めるの動議に賛成をいたし、政府提案予算三案に対して反対、社会党提案のこれら予算案の編成替えを求めるの動議に対して反対をいたします。  われわれは、この予算委員会を通じまして、佐藤内閣がどういう政治姿勢に立っているかということをきわめたいと存じてやってまいりました。佐藤総理は、ジョンソン・アメリカ大統領との会談の結果、自主平和外交をもってモットーとする、こういう姿勢で臨まれたのでありますが、われわれの考えるところによりますと、自主外交とは、アメリカのとっておる外交方針に対して、われわれがもっと多くの自由な手をどうやって持っていくか、そこにけじめがあると考えました。その一つの判断の分かれ目は、対中国政策に対してわれわれがどのような自主的な立場をとるかという問題であります。ところが、本委員会におきまして明らかになりましたように、北京政権、中国の国連代表権に対する姿勢もきわめてあいまいであり、また、台湾問題につきましても、わが党が明確な方針を示したにかかわらず、佐藤総理は、たとえば吉田書簡に道義的には拘束されるなどというような表現を用いて、日中貿易のためにいま一番必要な輸銀融資をつけるという問題に対しましても、混乱を惹起をいたしました。私どもは、この点から判断をいたしまして、まことに自主性に欠けるものがあると考えるのであります。  第二点は、私どもの考えるところによりますと、自主外交の基は、何よりもまずわれわれの国の平和と安全についてわれわれが第一の責任を持つという体制をつくるところから生まれると思います。現在の世界は、残念ながら、これらの各国の軍事力と見合いながらそれぞれの国の外交が展開せられていることは事実であります。このような観点に立ちまするとき、私どもは、核戦略下の現時点におきまして、国民とともにどうやって自国の安全を保持していくか、このことを国民に訴え、国民とともに考えていかねばならぬと存じます。三矢研究問題のごときがこの予算委員会において問題となりました。これに対する政府の対処のしかたはまことに遺憾であります。私どもは、この図上研究が、政府が現実に持っておるところの統合年度防衛計画あるいはまた業務計画等とどういう関連にあるか、さらにまた、佐藤総理がシビリアンコントロール、文民優位は確保されていると言われるのであるならば、どのような度合いにおいてこの文民優位のかまえがはっきりしておるか、これはこの予算委員会においてはっきりと国民に対して示されねばならなかった問題であります。私どもは、国防会議やまた防衛庁内の内局が、その他の幕僚監部に対してどういうようなかまえをとり、この幕僚監部の動き方に対して統制を加えておるか、こういうことを国民に明らかにするのが大事ではないかと考えました。私どもは、この点について、現在の時点においてまことに内閣の態度はあいまいであると存じます。しかし、これらの問題は、小委員会においてわが党は徹底的に究明するかまえであります。さらにまた、こういう問題をほっておいて、古い神話に基づいた紀元節の復活をやれば自主性が回復する、これは本末転倒であります。そこに問題があるのではない。現実の問題にいかに自主的なかまえをするか、これが問題の根拠であろうと思います。  また、平和外交の点につきましては、現在わが国が安保体制下にあることは事実であります。しかし、われわれは、安保体制下にあってわれわれが平和を守ろうとする場合には、この安保条約なるものがわが国の安全に、日本の自由によらずして日本の平和を脅かすようなことがあってはならないと考えます。その観点に立つならば、この条約の解釈はきわめて厳格にされるべきであると考える。ところが、椎名外務大臣は、安保条約の第一条に、各締約国はそれぞれの国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも慎むことを約束すると厳密に規定しているにかかわらず、アメリカ国が北ベトナム国に対してやった爆撃に対して、これは第一条の例外であるというような国際条約に対して例外を認めるがごとき発言をされましたが、きわめて遺憾であるといわなくてはなりません。私どもは、平和を求めていくためには、平和憲法のもとに核武装せずにわが国の平和を追求するとするならば、たとえば常設国連軍に対する積極的な接近、さらにはまた核兵器拡散防止のための日本の努力方針、これを明確に内閣に示したのでございますが、これらに対するかまえがまことに不十分でございました。  こういう態度でございますから、予算の編成につきましても、国民とともにやっていく姿勢に欠けているのではないかと考えます。すなわち、佐藤内閣は高度成長から安定成長に切りかえるということを言われました。それであるならば、第一に、高度成長がなぜいまの時点で悪いかということをはっきりとさせなくてはなりません。われわれの考えるところによれば、これまでの高度成長政策は、税の自然増収という名の大衆収奪、第二には、財政投融資という名の借金政策、この二つの柱によってささえられてきたと考えます。すなわち、税の自然増収は、所得税の弾力性によって、所得税の伸びのほうが国民所得の伸びよりも大きい。さらにまた、このことは、財政規模の膨張のほうが個人所得の増加よりも大きいという形になってあらわれます。すなわち、現在のわが国の所得税法の持つ累進構造、細説いたしますと、所得税を徴収されているものは、低額所得者まで含めて二千万人に達するのでありますが、低いところから始まって中堅所得者には高度の累進に移り、高額所得者には比例税として移るような、こういう所有税法のもとでこういうことが行なわれており、すなわち、このことによって、政府は、いわば国民のふところから資金を集め、これを経済拡大の起爆剤として使用しているのであります。これとともに、日銀信用の供与、さらにまた市中銀行の貸し越し、これらをからみ合わせながら、いわゆる経済界には過剰投資、これによって物価の値上がり、これがはね返っては各企業の損益分岐点の上昇と相まって株式の下落、不況状況を呈しております。  私どもは、これを定安成長に切りかえるためには、第一に、税制の持つ景気の自動安定機能を復活させなければならぬと考えます。現在、政府は、租税特別措置を行なって、この税制の持つ景気自動安定機能を破壊をいたしております。たとえば、大企業に対する特別償却制度を続けていけば、これによって設備投資が行ない得る利得があると大企業は判断をいたします。それによって加速度が加わり、こうやって高度成長が行なわれてまいりました。このことは、私どもは、いままでの経済復興を求めるという趣旨では一理はあったかもしれません。しかし、佐藤内閣が安定成長を言うならば、この辺に対して景気の見通しとともに改変を加えられるべきものだとわれわれは判断をいたします。  また、景気の安定を求めるためには、税制に対しては、わが党の案が示しますとおり、課税最低限を引き上げること、中堅所得者に対する税率を低下させること、租税特別措置の種目、その範囲を縮小すること、これによって租税負担公平の原則を貫くということが必要であります。このためには、今回提案の配当分離課税のごときはとりやめるべきであります。  さらにまた、財政投融資につきましては、これが最初は産業開発から始まり、生産基盤の培養へと転じてまいりましたが、いまや一般会計の補助金による事業を、この財政投融資の中における多数の公団、公社また各種の金庫等の政府関係機関に分割をいたしまして、ここに原資を供与し、低利の利子補給をするという形になっておる。いわば一般会計の吹きだまりの形でございます。これが大きな景気刺激の役割りをいたしておる。私は、そういうことを考えました場合に、政府が予想される経済成長率に見合った財政投融資の膨張率を算定すべきであって、今回のように昨年度よりも大きな膨張を示すようでは、決して安定ではなくて、やはり景気刺激を起こす一因となると考えます。公社、公団の乱設は抑えるべきです。そうして財政投融資は国民福祉に還元するよう用いらるべきであると考えます。  予算編成につきましては、ことしは、一般会計、財政投融資ともに大きな利子補給の制度をつくられました。これが後年度非常に膨大な金額となって財政を圧迫することは当然であります。また、政府保証債の発行あるいはまた政府関係機関の利用債、縁故債の大幅増額等を行なうことは、確かにこれは景気刺激の因でございます。さらにまた、前年度剰余金の国債整理基金繰り入れ率を切り下げましたが、これらのことは、現下の安定成長のためには望ましくない制度でございます。私どもは、安定成長、すなわち物価の安定があり、そして減税によって国民の可処分所得を増大すること……
  258. 青木正

    青木委員長 申し合わせの時間内でお願いします。
  259. 永末英一

    ○永末委員 これによって初めて本格的な資本蓄積ができると考えます。これが社会開発の基礎であるとわれわれは考えます。
  260. 青木正

    青木委員長 申し合わせの時間内でお願いします。
  261. 永末英一

    ○永末委員 物価値上がりにつきましても、公共料金をケースバイケースで引き上げるようなことは、なしてはならぬことでございます。医療費の問題につきましても、大衆負担によって医療会計の赤字を埋めるというような予算の立て方に対しましては、先ほどから質疑がございましたが、真剣に反省をされる必要があると私どもは考えます。地方団体の問題につきましても、事務を与えて、そうして国がこれに財政的な保障を与えない、こういうやり方をやめるべきでございます。たとえば、国民健康保険制度の運用につきましても、本委員会において十分討議されたところであります。また、地方団体に対して、零細な多数の補助金をもって仕事を縛り、そうして彼らに単費を持ち出させて赤字を増大する、こういうやり方をやめるべきでございます。農業、中小企業予算につきましても、政府はきめこまかい対策を盛り上げたと称するのでございますが、しかし、開放経済下における経済構造の変革の見通しに対して方向感覚のないあれやこれやの施策にすぎないのではないかと私どもは考えます。  これを要するに、私は、佐藤総理が人間尊重の精神にのっとって、この予算を組んだという誠意は疑いません。しかし、予算に書き上げられました数字は、佐藤総理の趣旨とは違って、人間尊重ではなくて、資本尊重に偏しているのではないか、このようにわれわれとしては考えざるを得ないのでございます。(拍手)  この意味において、私は、先ほど今澄勇君が提案いたしました組み替え動議に賛成をいたします。また、社会党案につきましては、基本的な立場において見解を異にするものでありますから、この組み替え動議には反対をいたします。願わくば、わが党の動議のとおり賛成されんことを望みます。終わり。(拍手)
  262. 青木正

    青木委員長 加藤進君。
  263. 加藤進

    加藤(進)委員 私は、日本共産党を代表して、昭和四十年度予算案に反対するものであります。  今日、アジアと日本情勢はきわめて緊張した局面を迎えております。それは、何よりも、アメリカがベトナム民主共和国に対する爆撃を続けて、侵略戦争の拡大に公然と乗り出しているからであります。このような緊張激化の中で、佐藤内閣は、このアメリカ侵略戦争拡大に積極的に加担しながら、二つの中国の陰謀、日・韓・タイ軍事同盟の結成、自衛隊の強化と核武装などを進め、アメリカの沖縄永久占領を承認し、特に、日韓会談を強行してしゃにむに妥結調印を急いでおります。こうして軍国主義の復活強化を進め、また国内反動体制の強化をたくらんでいるのであります。さらに、今日国会で暴露された三矢作戦なるものは、自民党政府が朝鮮と中国に対する侵略戦争を想定し、これに対処する一切の準備を整えつつある何よりの証拠であります。しかも、政府は、かかる重大なる問題を国会で明らかにせず、予算を通過させようとしておるのであります。この問題は国会内の単なる話し合いや取引などでうやむやにすることは絶対に許し得ない性質のものであります。同時に、佐藤内閣は、立法、司法、行政の三権にわたる軍国主義的再編成を企て、紀元節の復活を提唱し、反動教育を強化し、憲法の改悪さえ企図し、自民党のごときは、憲法改悪は立党の精神であるとさえ呼号しておるのであります。このような政策を強行するために、佐藤内閣は今回未曾有の大膨張予算を編成したのであります。  すなわち、第一に、本予算案には、三千億を突破する防衛関係費をはじめ、大量の軍需発注、科学技術費、公共事業費などに隠された経費を合わせてばく大な軍事予算が組み込まれておるのであります。こうして、政府は、自衛隊の増強、ジェット戦闘機の生産、国産兵器の量産化、核兵器の開発、防衛庁の省昇格をたくらみ、旧軍人恩給さえ大幅に増額しておるのであります。  第二に、この予算案は、安定成長の名のもとに依然として高度成長政策を進め、独占資本の一そうの集中……。
  264. 青木正

    青木委員長 加藤君、時間がまいりました。これにて……。
  265. 加藤進

    加藤(進)委員 強化をはかろうとするものであります。このために、政府は、道路、港湾、国鉄、電力等々に対してばく大な国家投資を行ない、独占資本にのみ奉仕しているのであります。  第三に、本予算案は、独占資本をして帝国主義的対外膨張と侵略の方向をとらせるために、経済協力の名のもとに膨大な国家支出を行なおうとするものであります。特に、アメリカのかいらい政権である台湾、韓国、南ベトナムに対して巨額の借款を行なおうとするものであり、かかる予算案に対してはわが党は絶対に賛成し得ないのであります。  さらに重大なことは、本予算案が人民生活を根底から破壊しようとしていることであります。今日、人民生活にとって最大の問題は、物価の上昇であります。佐藤内閣は、消費者米価、医療費をはじめ各種の公共料金を次々に引き上げ、その結果は、バス、水道料金から授業料、保育料に至るまで、とめどもない引き上げを許しております。このために、人民生活に直接響く諸物価は、みそ、しょうゆからふろ代に至るまで高騰するのは必然であります。低賃金、低収入に悩む勤労人民は、この急激な物価上昇のもとで、家計の赤字と借金に苦しみ、わずかに日々の生活をささえるために、老人、子供に至るまで一家総かせぎを余儀なくされ、なおかつ家計の苦しみはいささかも解決されておらないのであります。かかる物価値上がりに対し、政府は具体的に何らの施策を講じてはおりません。本予算案のどこを見ても、人民の生活の苦しみの根底にある物価上昇を抑制する何らの支出もないのではありませんか。逆に大衆課税はますます加重され、政府の言う減税とは、法人や配当所得者等、主として大資本には減税であり、勤労人民にとっては物価上昇による名目所得の増加によって大増税となり、人民の生活と営業を一そう悪化させるものであります。  物価と税金だけではありません。本予算案は、労働者に対して低賃金と苛酷な合理化をしいるものであります。北炭夕張の大惨事こそ、人命を無視して強行する政府の合理化政策の姿を端的に示すものであります。政府の高度成長政策は、至るところに災害、公害を激増させ、勤労人民の生命と健康をはなはだしく脅かしております。  このとき、政府は、無法な医療制度の大改悪をたくらんでおるのであります。すなわち、保険料は二割以上の値上げ、入院料は二倍、薬価はその半額が人民負担となっております。これは、社会保障制度としての医療制度を根底から破壊するものであります。これによって、被保険者は事実上必要な診療を受けることさえできなくなるのであります。だからこそ、今日、勤労者、人民はこぞってこれに反対しておるのであります。しかも、許しがたいことは、この悪法を、法律としてもなお成立せず、また当然踏まなくてはならない審議さえ経ずこれを予算に計上し、そのまま通過させようとしていることであります。まことに言語道断といわざるを得ません。  さらに、生活困窮者に対する生活保護費、勤労者に対する住宅建設に至っては、何一つとして人民の要求に合致するものではありません。  本予算案はまた農民に対しても、また、現在政府の高度成長政策の結果軒並みに倒産しつつある中小企業、零細企業に対しても何らの救済方策をも講ぜず、全くこれを放任しているばかりか、高度化、近代化の名のもとに、中小企業の切り捨てさえ強行しておるのであります。  以上、本予算案は、人民に対する大収奪と独占資本の擁護を軸として、アメリカの指図のもとに軍国主義の復活、対外侵略を企図するものであり、日本経済の自主的、平和的発展の道を閉ざし、日本を一段と対米依存と従属のもとに縛りつけるものであります。  わが党は、このような政府提出四十年度予算案に絶対に反対するものであります。同時に、民主社会党の予算組み替え案にはもちろん、日本社会党の組み替え案に対しましても、人民の要望を十分に満たすものであるとは言い得ないのであります。したがって、わが党はこれにも賛成しがたいのであります。  以上をもって反対討論を終わります。
  266. 青木正

    青木委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、川俣清音君外十四名提出の、昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算及び昭和四十年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  267. 青木正

    青木委員 起立少数。よって、川俣清音君外十四名提出の動議は否決されました。  次に、今澄勇君外二名提出の、昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算及び昭和四十年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  268. 青木正

    青木委員長 起立少数。よって、今澄勇君外二名提出の動議は否決されました。  これより昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  269. 青木正

    青木委員長 起立多数。よって、昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、おはかりいたします。委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  270. 青木正

    青木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  271. 青木正

    青木委員長 これにて昭和四十年度総予算に関する議事は全部終了いたしました。(拍手)      ————◇—————
  272. 青木正

    青木委員長 この際一言ごあいさつ申し上げます。  去る一月三十日に総予算の審査を開始いたしまして以来、終始真摯なる論議を重ね、慎重な審議を尽くしましたが、特に、予算審議の過程において問題となりました重要な事項について、与野党間において協議、検討を加え、予算審議に万全を期してまいったところでございます。本日ここに円満に審査を終了するに至りましたことは、ひとえに委員各位の御理解ある御協力のたまものでありまして、委員長といたしましては衷心より感謝の意を表する次第でございます。  連日の審査に精励されました委員各位の御労苦に対し深く敬意を表し、ごあいさつを申し上げる次第でございます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後九時四十二分散会      ————◇—————