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1965-03-01 第48回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月一日(月曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 稻葉  修君    理事 小川 半次君 理事 二階堂 進君    理事 古川 丈吉君 理事 加藤 清二君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    荒舩清十郎君       井出一太郎君    井村 重雄君       今松 治郎君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    大平 正芳君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       重政 誠之君    正示啓次郎君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       中野 四郎君    西村 直己君       野田 卯一君    古井 喜實君       松野 頼三君    水田三喜男君       森下 元晴君    石田 宥全君       石橋 政嗣君    大原  亨君       岡田 春夫君    阪上安太郎君       田中 武夫君    高田 富之君       中井徳次郎君    中澤 茂一君       永井勝次郎君    楢崎弥之助君       野原  覺君    山花 秀雄君       堀  昌雄君    横路 節雄君       竹本 孫一君    永末 英一君       加藤  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 高橋  等君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 愛知 揆一君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  櫻内 義雄君         運 輸 大 臣 松浦周太郎君         郵 政 大 臣 徳安 實藏君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 小山 長規君         自 治 大 臣 吉武 恵市君         国 務 大 臣 小泉 純也君         国 務 大 臣 高橋  衛君         国 務 大 臣 増原 恵吉君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣官房長官 竹下  登君         内閣法制局長官 高辻 正己君         総理府総務長官 臼井 莊一君         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官         (長官官房長) 小幡 久男君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  佐竹  浩君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (薬務局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  坂元貞一郎君         水産庁長官   松岡  亮君         水産庁次長   和田 正明君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         海上保安庁長官 今井 榮文君         郵政事務官         (大臣官房長) 淺野 賢澄君         郵政事務官         (電気通信監理         官)      畠山 一郎君         郵政事務官         (貯金局長)  武田  功君         郵政事務官         (簡易保険局         長)      田中 鎭雄君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         国税庁次長   喜田村建三君         自治事務官         (大臣官房参事         官)      宮沢  弘君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月二十二日  委員高田富之君、中澤茂一君、永井勝次郎君及  び永末英一辞任につき、その補欠として滝井  義高君、中村重光君、桜井茂尚君及び山下榮二  君が議長指名委員選任された。 同日  委員桜井茂尚君及び滝井義高辞任につき、そ  の補欠として永井勝次郎君及び安井吉典君が議  長の指名委員選任された。 同日  委員中井徳次郎君及び安井吉典辞任につき、  その補欠として田口誠治君及び藤田高敏君が議  長の指名委員選任された。 同日  委員田口誠治君、中村重光君、藤田高敏君及び  山下榮二辞任につき、その補欠として中井徳  次郎君、中澤茂一君、高田富之君及び永末英一  君が議長指名委員選任された。 同月二十三日  委員石田宥全君高田富之君、中井徳次郎君及  び野原覺辞任につき、その補欠として田口誠  治君、河野正君、肥田次郎君及び滝井義高君が  議長指名委員選任された。 同日  委員河野正君及び肥田次郎辞任につき、その  補欠として安井吉典君及び山口丈太郎君が議長  の指名委員選任された。 同日  委員山口丈太郎辞任につき、その補欠として  茜ケ久保重光君が議長指名委員選任され  た。 同日  委員茜ケ久保重光君、田口誠治君及び滝井義高  君辞任につき、その補欠として堀昌雄君、石田  宥全君び野原覺君が議長指名委員選任  された。 同日  委員堀昌雄君、安井吉典君及び加藤進辞任に  つき、その補欠として中井徳次郎君、高田富之  君及び谷口善太郎君が議長指名委員選任  された。 二月二十四日  委員石田宥全君岡田春夫君、高田富之君、中  井徳次郎君、中澤茂一君、永井勝次郎君、野原  覺君及び竹本孫一辞任につき、その補欠とし  て肥田次郎君、華山親義君、八木昇君、堀昌雄  君、田口誠治君、芳賀貢君、村山喜一君及び玉  置一徳君が議長指名委員選任された。 同日  委員片島港君、芳賀貢君、堀昌雄君、村山喜一  君、八木昇君、横路節雄君及び玉置一徳辞任  につき、その補欠として山口丈太郎君、安井吉  典君、中井徳次郎君、三木喜夫君、五島虎雄君、  横山利秋君及び吉田賢一君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員五島虎雄君、安井吉典君及び山口丈太郎君  辞任につき、その補欠として小林進君、楢崎弥  之助君及び森本靖君が議長指名委員選任  された。 同日  委員小林進君及び森本靖辞任につき、その補  欠として只松祐治君及び帆足計君が議長指名  で委員選任された。 同日  委員松祐治君及び帆足計辞任につき、その  補欠として河野正君及び田原春次君が議長の指  名で委員選任された。 同日  委員河野正君及び田口誠治辞任につき、その  補欠として高田富之君及び中澤茂一君が議長の  指名委員選任された。 同日  委員田原春次君、楢崎弥之助君、華山親義君、  肥田次郎君、三木喜夫君、横山利秋君及び吉田  賢一辞任につき、その補欠として片島港君、  永井勝次郎君、岡田春夫君、石田宥全君野原  覺君、横路節雄君及び竹本孫一君が議長指名  で委員選任された。 同月二十五日  委員水田三喜男君、石橋政嗣君岡田春夫君、  片島港君、高田富之君、中井徳次郎君、中澤茂  一君、山花秀雄君及び永末英一辞任につき、  その補欠として大竹太郎君、泊谷裕夫君、西村  関一君、只松祐治君、堀昌雄君、田口誠治君、  藤田高敏君、帆足計君及び玉置一徳君が議長の  指名委員選任された。 同日  委員松祐治君、泊谷裕夫君、西村関一君、藤  田高敏君及び堀昌雄辞任につき、その補欠と  して田原春次君、村山喜一君、吉村吉雄君、山  崎始男君及び岡本隆一君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員岡本隆一君、山崎始男君及び吉村吉雄君辞  任につき、その補欠として伊藤よし子君、板川  正吾君及び岡田春夫君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員伊藤よし子君、辞任につきその補欠として  細谷治嘉君が議長指名委員選任された。 同日  委員細谷治嘉辞任につき、その補欠として滝  井義高君が議長指名委員選任された。 同日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として中  村重光君が議長指名委員選任された。 同日  委員中村重光辞任につき、その補欠として神  近市子君が議長指名委員選任された。 同日  委員神近市子辞任につき、その補欠として華  山親義君が議長指名委員選任された。 同日  委員大竹太郎君、板川正吾君、田口誠治君、田  原春次君、華山親義君、帆足計君、村山喜一君  及び玉置一徳辞任につき、その補欠として水  田三喜男君、中澤茂一君、中井徳次郎君、片島  港君、高田富之君、山花秀雄君、石橋政嗣君及  び永末英一君が議長指名委員選任され  た。 同月二十六日  委員石田宥全君岡田春夫君、片島港君及び竹  本孫一辞任につき、その補欠として稲村隆一  君、茜ケ久保重光君、田口誠治君及び玉置一徳  君が議長指名委員選任された。 同日  委員石橋政嗣君、稻村隆一君、田口誠治君、永  井勝次郎君及び野原覺辞任につき、その補欠  として小林進君、吉村吉雄君、安宅常彦君、武  藤山治君及び細谷治嘉君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員武藤山治君、中井徳次郎君、中澤茂一君、  細谷治嘉君及び吉村吉雄辞任につき、その補  欠として栗原俊夫君、松平忠久君、永井勝次郎  君、有馬輝武君及び村山喜一君が議長指名で  委員選任された。 同日  委員松平忠久君及び村山喜一辞任につき、そ  の補欠として神近市子君及び華山親義君が議長  の指名委員選任された。 同日  委員神近市子辞任につき、その補欠として桜  井茂尚君が議長指名委員選任された。 同日  委員茜ケ久保重光君、有馬輝武君、安宅常彦  君、栗原俊夫君、小林進君、桜井茂尚君、華山  親義君及び玉置一徳辞任につき、その補欠と  して岡田春夫君、野原覺君、片島港君、中沢茂  一君、石橋政嗣君中井徳次郎君 石田宥全君  及び竹本孫一君が議長指名委員選任さ  れた。 同月二十七日  委員灘尾弘吉君、石田宥全君石橋政嗣君、岡  田春夫君、片島港君、高田富之君、中澤茂一  君、永田勝次郎君、山花秀雄君及び竹本孫一君  辞任につき、その補欠として橋本龍太郎君、楢  崎弥之助君、村山喜一君、小林進君、松井誠  君、金丸徳重君、華山親義君、坂本泰良君、泊  谷裕夫君及び玉置一徳君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員大原亨君、金丸徳重君、野原覺君及び華山  親義辞任につき、その補欠として帆足計君、  細谷治嘉君、茜ケ久保重光君及び卜部政巳君が  議長指名委員選任された。 同日  委員茜ケ久保重光君、卜部政巳君及び細谷治嘉  君辞任につき、その補欠として三木喜夫君、大  村邦夫君及び八木一男君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員大村邦夫君及び八木一男辞任につき、そ  の補欠として兒玉末男君及び大原亨君が議長の  指名委員選任された。 同日  委員兒玉末男君、泊谷裕夫君、中井徳次郎君、  楢崎弥之助君及び三木喜夫辞任につき、その  補欠として山口丈太郎君、山花秀雄君、野間千  代三君、島口重次郎君及び湯山勇君が議長の指  名で委員選任された。 同日  委員島口重次郎君、野間千代三君、山口丈太郎  君及び湯山勇辞任につき、その補欠として有  馬輝武君、肥田次郎君、西村関一君及び長谷川  正三君が議長指名委員選任された。 同日  委員西村関一君、長谷川正三君及び肥田次郎君  辞任につき、その補欠として田口誠治君、山中  吾郎君及び久保三郎君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員田口誠治辞任につき、その補欠とし  て桜井茂尚君が議長指名委員選任さ  れた。同日  委員橋本龍太郎君、有馬輝武君、久保三郎君、  小林進君、坂本泰良君、桜井茂尚君、帆足計  君、松井誠君、村山喜一君、山中吾郎君及び玉  置一徳辞任につき、その補欠として灘尾弘吉  君、石田宥全君中井徳次郎君、岡田春夫君、  永井勝次郎君、中澤茂一君、高田富之君、片島  港君、石橋政嗣君野原覺君及び竹本孫一君が  議長指名委員選任された。     ————————————— 三月一日  委員八木徹雄君、片島港君、高田富之君、横路  節雄君及び谷口善太郎辞任につき、その補欠  として森下元晴君、堀昌雄君、楢崎弥之助君、  阪上安太郎君及び加藤進君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員堀昌雄辞任につき、その補欠として田中  武雄君が議長指名委員選任された。 同日  委員森下元晴君及び楢崎弥之助辞任につき、  その補欠として八木徹雄君及び高田富之君が議  長の指名委員選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  主査報告聴取  昭和四十年度一般会計予算  昭和四十年度特別会計予算  昭和四十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 青木正

    青木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度一般会計予算昭和四十度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  去る二月二十二日から六日間にわたって審査を行なってまいりました分科会は、去る二十七日をもちまして全部終了いたしました。  この際、各分科会主査より、それぞれ分科会における審査報告を求めます。第一分科会主査植木庚子郎君。
  3. 植木庚子郎

    植木委員 第一分科会における審査経過並びに結果について、御報告申し上げます。  本分科会は、昭和四十年度総予算中、皇室費国会裁判所及び内閣の各所管経済企画庁及び防衛庁を除く総理府法務省及び文部省の各所管並びに他の分科会所管以外の予算につきまして、去る二月二十二日より二十七日まで、六日間にわたり、慎重審議いたしました。  審議に際しましては、二月二十二日午前、関係政府当局よりそれぞれ所管予算説明を聴取し、引き続き質疑に入りましたが、その間質疑者の数は延べ四十四名、質疑時間約三十八時間にわたり、終始熱心かつ円滑に行なわれたのであります。  質疑内容は、きわめて広範多岐にわたりますので、詳細は会議録をごらん願うこととし、ここではその二、三について御紹介いたします。  まず、総理府関係について、伊勢神宮式年遷宮に関しまして、質疑がありました。その内容は、昭和四十八年は、伊勢神宮の第六十回目の式年遷宮の年に当たっております。式年遷宮延喜式に基づきすでに千二百数十年にわたり連綿として続き、この間、戦国時代に一時中断されたこともありますが、徳川時代に再開されて現在に及んでいる。この行事文明史上驚嘆に値する事実であり、また、その建物は文化史的にも価値あるものである。ついては、今後ともこの行事が続けられることは、日本民族の誇りであると信ずるがゆえに、来たるべき遷宮に際し、これに要する経費を国庫で支弁する必要があると考えるが、政府の所見はどうか。たとえば内廷費に計上することはできぬか、または文化財保護の観点から、補助費として計上することはできないかとの質疑が行なわれました。これに対し政府は、憲法八十九条には政教分離に関する厳格な規定があり、伊勢神宮遷宮行事宗教的色彩がないとは断定しがたいので、国費の支出は憲法上疑義があり、不可能と思われる。また、内廷費とは、皇室経済法において、「日常の費用その他内廷諸費」をいうこととなっておるので、遷宮に要する経費内廷費に計上することは困難である。また、神宮は通説として宗教法人とせられておるので、これを全く宗教と切り離して解釈することはできない。文化財としては、文化財保護法にいわゆる民俗資料または史跡に近いものと言い得るかとも思われるが、慎重に検討する必要があるとの答弁がありました。  次に、法務省関係では、青少年の非行問題について、最近における青少年犯罪増加非行少年年齢低下犯罪集団化悪質化等まことに目に余るものがあるが、法務省としての対策費及び少年法改正に関する方針はどうかとの質疑がありました。これに対し、青少年非行化の原因は各種各様であるが、法務省としては、特に補遺に重点を置き、国の他の機関民間各方面の協力のもとに、相携えて総合的な施策を講ずるようにつとめている。その対策費は必ずしも十分ではないが、明年度要求額約二十一億円で、前年度に比べ約二億円の増加である。少年法改正については、現行法における少年処遇の決定は、すべて家庭裁判所で行なわれることになっており、同法施行後すでに十数年にもなっておるので、裁判所における調査及び審判内容相当充実してきたことは事実であるが、一面、家庭裁判所の処理に対する批判の声が相当にあることも事実である。非行少年をどのように処遇するかは、国の重要政策であるので、政府としては、現行制度の適否について十分再検討を行なう必要があると考えているが、さしあたり、家庭裁判所審判に何らかの形で行政機関が関与する必要はないか、非行少年に対する保証処分について、現在認められている少年院送致教護院送致、あるいは保護観察に付する処分のほか、さらに有効なものはないか、少年法適用年齢に関連して、少年と成人の中間年齢層に、たとえば、十八歳より二十三歳まで、というような部分を設け、この年齢層の名に対してもっと適切な特別の処遇を考えられないか、といった諸点を考慮しているが、これらはいずれも現行少年陶係の諸法制や、裁判所、検察庁をはじめ、刑務所、少年院少年鑑別所等の矯正各施設、あるいは保証観察所などの少年関係機関の機構の基本的構造に直接重大な影響を及ぼすこととなり、特に、少年法は、刑法の特別法として、基本法典一つでもあるので、その改正は慎重を要するものと考え、目下事務当局で鋭意検討中であり、まだ成案を得るに至っていないとの答弁がありました。  次に、文部省関係について、精神薄弱児教育に関し、義務教育年齢に該当する精神薄弱児肢体不自由児などは、全国的に見てその数もかなり多いと思われる。これらの日の当たらない児童教育し、能力をつけ、社会的活動を営み得るよう措置することは、きわめて重要と思われるが、これに対する政府施策は不十分と思われる。今後の教育施策方針はどうか、との質疑が行なわれました。  これに対し政府は、義務教育該当年齢層精薄児童数は、肢体不自由者を含め、約六十九万七千人と推定せられており、このうち、特殊学級及び養護学校に収容されている者は六万五千人で、収容率九・三六%である。肢体不自由児を収容する養護学校はかなり普及しているが、精薄児関係学校普及ははなはだ不十分で、一校の設置をも見ていない府県数が三十数県に及んでいるので、今後毎年八校程度ずつ新設し、数年のうちに少なくとも各府県に一校はこれを設置され、昭和四十四年度を目途として、都道府県設置義務が課せられるよう普及につとめている。養護学校教員については、現在十一大学養護課程を開設しており、明年度はさらに八大学にそれぞれ養護課程を新設して、その養成につとめることとし、なお将来は、国立の全大学にこの課程を設けて、養成に当たる方針である。精薄児を収容する小、中学校特殊学級については、昨年標準定数法改正し、毎年千学級ずつ増加計画を立て、目下実施中であり、昭和四十三年度までに五千学級増加し、各市町村の人口数に応じて、小、中学校ごとに一定の学級数を整備し、十年後には就学率をおおむね四〇%台といたしたい。また所要の教員については、一般の小・中学校教員をもって充てることとし、専門の養穫教諭の育成については、明年度特に二カ所の養成所を新設し、その充足をはかることとしているとの答弁がありました。  以上のほか、国会関係については、国会図書館の利用状況、特に国会議員利用状況、未整理図書整理促進の問題、国会職員処遇問題、図書館職員の綱紀粛正問題。  総理府関係では、沖縄における日本人の海外旅行の場合の旅券、産業開発住民福祉等の問題、科学技術振興、恩給、北海道開発、蔵王における国有林問題、青少年海外渡航の成果、東京遷都百年記念行事組織暴力団笠の諸問題、法務省関係では、LST乗り組み員の身分保障人権擁護同和部落対策等の諸問題、文部省関係では、教科書無償給与学校給食義務教育学校設備改善及び建築単価僻陬地児童遠距離通学私立大学振興中学校高等学校または大学に在学中の学生生徒に対する民間企業採用方法文化財保護等々の諸問題についても、真摯、活発な質疑が行なわれたことを申し添えておきます。  かくて、昨二十七日質疑を終了し、質疑終了後、本分科会討論採決は、予算委員会に譲ることに決定した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)
  4. 青木正

  5. 中野四郎

    中野委員 第二分科会における審査経過並びに結果について御報告申し上げます。  本分科会審査の対象は、昭和四十年度総予算中、会計検査院、防衛庁、外務省及び大蔵省所管であります。  審査は、二月二十二日午前、各省庁当局より所管予算説明を聴取し、午後より質疑を行ない、二十七日まで六日間にわたり、慎重に審査いたしました。その間、質疑者延べ三十一人、質疑時間通算約二十九時間に及びましたが、連日終始無心、かつ、円滑に質疑が行なわれたのであります。  質疑内容は、きわめて広範多岐にわたりますので、その詳細につきましては会議録に譲ることといたしまして、ここでは若干のものについて簡単に申し上げます。  まず、防衛庁所管について申し上げます。一、防衛関係費増加の割りに基地対策関係予算が少ないではないか。二、防衛庁長官は、第三次防衛計画を作成するように指図したが、陣上自衛隊については、隊員の充足率が不十分である現状を踏まえて検討するのか。またナイキハーキュリーズの導入を考えるかとの質疑がありました。  これに対する政府答弁は、一、基地対策費については、最重点施策一つとしており、三十九年度補正後に比べ、三十億円増の百二十四億円余の予算を計上したが、これは過去数カ年に比べても相当増加である。今後も予算の増額及び内容の充実には一そうの努力をする。二、第三次防衛一画については、その基本的大綱を事務的にまとめるように指示したものであるが、陣上自衛隊の編成については、あくまでも十三個師団という現状に立って考える。ナイキハーキュリーズの算入についても検討はするが、核武装はしないという内閣の既定方針に従っていくことには変わりはないとの答弁がありました。  その他、国防省昇格、三矢作戦図上研究、ジュネーブの軍縮委員会への出席、太田小泉飛行場の返還、ホーク大隊の配置計画、駐留軍労務者対策等の諸問題について質疑が行なわれました。  なお、ジュネーブの軍縮委員会への出席問題については、質疑者横路委員が、本委員会で主査報告に関連して再質疑を行なうことになっております。  次に、外務省所管について申し上げます。  一、三十九年度の予備費による南ベトナムに対する医療関係の緊急援助は、米国政府の要請によるものではないか。二、医薬品等物資の取り扱いは公的機関を通じてやるべきであり、トランジスターラジオは間接的軍事援助である。三、人道上の問題等からしてベトコン地域の人民にも援助すべきである。四、今後もこの種の援助はやるのかとの質疑が行なわれました。  これに対する政府答弁は、一、百五十万ドルの医療品等の緊急援助をしたのは、昨年七月に直接南ベトナム政府から要請があったからである。二、当初日赤に交渉したが、国際赤十字社及び時間的な関係で、東南アジア文化友好協会に依頼した。トランジスターラジオは、大部分が中央政府機能の徹底及び地方住民の教育用に使用されており、戦争に加担しているとは思わない。三、ベトコン地域には危険で行けぬが、解放問題とか人民の色合いを区別して南ベトナム側に援助したのではない。四、同じアジアの一員として平和の確立及び民生の安定のため、応分の経済的、文化的な援助は当然であり、今後も要請があればケースバイケースでやるとの答弁がありました。  その他、日本青年海外協力派遣隊、日米綿製品協定の改定交渉、毛製品協定の締結、経済外交の基本方針、中国の侵略政策の根拠、日韓交渉の基本条約仮調印、李ラインの撤廃、日韓交渉における対日請求権に関する資料提出等の諸問題について質疑が行なわれました。  なお、日韓交渉における対日請求権に関する資料拠出問題については、質疑者横路委員が、主査報告に関連して、本委員会で再質疑を行なうことになっております。  次に、大蔵省所管について申し上げます。  一、中期経済計画の最終年度における減税額は、幾らと見込んでいるか。二、蔵相は、間接税を千万百億円ぐらい増徴して、この見返りに直接税を三千億円減税したいと言明しているが、その根拠は何か。三、所得税の基礎控除を税調の答申より一万円少ない十三万円にしたが、これでは独身者や共かせぎ夫婦には減税が少ない。四、勤労学生の所得税控除は、各種学校の学生にも適用すべきであるとの質疑がありました。  これに対する政府答弁は、一、国民所行に対する税及び税外負担の比率は、三十八年度に比べ 〇・三%ぐらい上昇するが、国民所得に対する税収の弾性値等を考慮すると、相当の減税はできる。二、現在の消費支出及び財貨サービス等の動向、また間接税中心の西欧諸国の例等を考え、もう少し現在の税体系を弾力的に検討したいという気持ちを言ったもので、他意はないが、減税については実現するように努力したい。三、基礎控除は一万円の引き上げにとどめたが、配偶者控除を一万円引き上げ十二万円にし、課税税率の改正を見送った。減税の恩典は、独身者、共かせぎ夫婦には少ないが、低額所得名には相当あると思う。四、文部省で来年度に各種学校の規定を整備する予定であり、これをもとにして、技術系の各種学校の学生には適用したいとの答弁がありました。  その他、日銀法の改正、中小企業金融対策、歩積み、両建て、社内預金対策、地価対策、裁判所の二重予算権、国有財産の管理処分、高利貸しの取り締まり対策等の諸問題について質疑が行なわれました。  最後に、会計検査院所管につきましては、職員の旅費及び手当等の改善、国有財産の貸し付け及び処分についての検査方法等について質疑が行なわれました。  かくて、一昨二月二十七日全質疑を終了し、質疑終了後、本分科会の討論、採決は先例により本委員会に譲ることに決定した次第であります。  以上御報告申し上げます。
  6. 青木正

    青木委員長 次に、第三分科会主査相川勝六君。
  7. 相川勝六

    ○相川委員 第三分科会における審議の経過並びに結果について御報告いたします。  本分科会は、昭和四十年度総予算中、自治省、厚生省及び労働省所管に関するものであります。本分科会は、二月二十二日審議を開始し、政府から説明を求めた後、直ちに質疑に入り、二十七日までの六日間、連日慎重審査を行ない、質疑を行なった分科員は延べ五十人に及んでおります。  質疑内容はきわめて広範多岐にわたっておりますので、その詳細は速記録をごらん願うこととし、質疑の若干について御紹介するにとどめたいと思います。  まず、自治省所管について申し上げます。  国民健康保険につきましては、市町村の財源持ち出しの増加、しかもなお赤字の累積という危機にある際、一、三十九年度の赤字見込みに対し予算措置が行なわれていないのは何ゆえか。赤字見込み額の数字を本委員会において明らかにせよ。二、本来国の事務であるべき市町村の事務費は、実績に見合う国の支出に改めよ。三、緊急是正による医療費増加分に見合う保険者負担は国庫で見よ。以上の質疑に対し、政府は、一、三十九年度国保の赤字見込みに対する国の財源措置は、国の財政事情から見送らざるを得なかった。二、事務費は現在苦しい財政事情の中にあって、百五十円を二百円に引き上げたが、毎年努力を重ねていきたい。三、医療費の緊急是正は、六月までの特別措置を含めて、四十年度百八億円の補助を計上し、これに対し市町村は四十円億円の負担である。保険の強化をはかるためには、国、市町村、住民がそれぞれ応分の負担をすることはやむを得ないとの答弁がありました。  このほか、保険税軽減、低所得層の医療締め出し問題、国保返上論、地方住民税課税最低限の所得税とのアンバランス問題、交通対策、消防庁における人命救助予算及び非常勤消防団員の遺族年金制度の創設等の問題、新産都市計画における国、地方、民間の負担割合の明示、辺地整備、僻地対策の問題、地方公務員定年制問題、住宅公団に対する減免措置に伴う穴埋め問題、水道料金抑制措置など、公営企業経営問題などの質疑が取り上げられました。  次に、厚生省所管について申し上げます。  薬務行政につきましては、薬の誇大広告、医薬を大衆化することの危険性の問題、薬品による被害者に対する政府、業者の責任の問題、新薬のはんらん、類似品の横行、不良薬品の漸増などに対する監督機構の不備の問題、薬価引き下げ問題、薬代一部負担に伴う保険医の事務の増加問題などをただしたのに対し、政府は、薬に対する世論がきびしく高まっており、政府はこの機会を逸することなく薬務行政を慎重に、しかもすみやかに検討し、方針を決定したい。薬の被害及び責任問題は現在検討中であるなどの答弁があり、以上のほか、生活保護基準の予算の問題、市町村に保健所の権限委譲の問題、母性保障、重度身体障害児童施設に対する看護婦充足対策、老人クラブなどの問題、また精神病、原爆症、風上病、らい、ガン、心臓病などの疾病対策、さらに麻薬対策、公害防止、生活環境整備と中期経済計画との関係、水道料金の抑制対策など、分科員と政府との間に熱心な質疑応答がかわされました。  最後に、労働省所管について申し上げます。  出かせぎ労働者問題について、一、その調査は農林省の調査だけしかないが、その実態がつかめていない。二、保護対策が不十分である。三、賃金の保障がなされていない、などの質疑に対し、政府は、一、実態を把握する上からも、保護対策からも、職業安定所を通ずることが望ましい。出かせぎに出る者は、少なくとも市町村の出かせぎ相談所、職業安定協力員に相談してほしい。二、手配師などは厳重に取り締まる。三、政府は、職場に対して雇用条件の明示を指導し、賃金については元請業者が責任を負えるよう検討しているとの答弁がありました。  このほか、夕張炭鉱災害に対する補償問題、最低賃金制問題、港湾労働法の問題、失業保険給付及び法改正問題、国民の寿命延長と定年制問題、身体障害者の強制雇用推進問題、労災保険における障害等級表改正問題、職業訓練所の増設、政府、労使の定期交渉問題などについて質疑応答がかわされました。  かくして、二十七日、各所管にわたる質疑はすべて終了し、質疑終了後、本分科会の討論、採決は、慣例により本委員会に渡ることに決定した次第であります。  以上をもちまして第三分科会報告を終わります。(拍手)
  8. 青木正

    青木委員長 第四分科会主査古川丈吉君。
  9. 古川丈吉

    ○古川委員 第四分科会における審査経過並びに結果について御報告いたします。  本分科会は、昭和四十年度総予算中、農林省、通商産業省及び経済企画庁所管につきまして、去る二月二十二日各省庁当局より説明を聴取し、直ちに質疑に入り、二月二十七日まで六日間にわたって慎重に審議を行なったのであります。  質疑者延べ人員で三十六人でありましたが、連日にわたって各分科員の協力を得まして、円滑に審議を進めることができました。  時間の関係上、質疑応答の詳細につきましては会議録をごらん願うことといたしまして、若干のものにつきまして概要を御報告申し上げます。  まず、農政につきまして、農民の社会保障が非常におくれているが、農民年金制度を創設する考えはないか、また農業後継者育成についての対策いかんとの質疑に対しまして、政府答弁は、まず一般社会保障制度としての国民年金制度の充実をはかり、それで十分でない場合に農民年金制度の創設も考えられるが、いま関係各省と相談をしている。農業後継者育成対策としては、農業経営規模の拡大適正化をはかり、農業を安定した産業に持っていくことが根本であるが、昭和四十年度においては、予算措置として農業後継者育成資金及び農家生活改善資金の貸し付けワクを、それぞれ十億円及び五億円と、前年度に比べて大幅に拡大しているというのであります。  次に、中小企業対策につきまして、政府は、中小企業に対して抜本的な政策を行なうと言っているが、特に零細企業の振興及び事業転換についてどのように考えているかとの質疑に対しまして、政府答弁は、四十年度においては、特に小規模企業共済事業団を新設し、小規模企業者の福祉の増進と小規模企業の振興をはかるとともに、金融面において、無担保、無保証制度を創設するほか、政府機関の金融面で、資金ワクを二千四十五億円に拡大している。また、小規模企業者の事業転換については、経営指導員等の指導を通じて、障害なしにスムーズに転換できるものはしていったらいいと思うというのであります。  以上のほか、農林省所管につきましては、農業基本法、農産物の自由化、国連貿易開発会議と日本農産物、農業構造改善事業の推進、開拓地営農の振興、鶏卵価格対策、飼料政策、国内産牛乳の学校給食計画、小豆対策、米の需給状況、国有林の開放と経営、外材の輸入、繭糸価格の安定対策、農地の拡大と農地管理事業団、日ソ、日韓漁業交渉等。  次に、通商産業省所管につきましては、貿易構造の転換、日中貿易、日韓貿易会議、LPGの冷凍輸送、電力料金と合理化及び石炭の値上げ、電力会社に対する監査、肥料、外資導入等。  最後に、経済企画庁所管につきましては、物価対策と公共料金、新産業都市建設事業、水道料金、医療費、離島振興対策、金融調整と中小企業の倒産、中期経済計画と賃金、中部電力の電気料金作の各事項について、活発かつ熱心に質疑応答が行なわれました。  かくて、二月二十七日質疑を終了し、分科会の討論、採択は本委員会に譲ることに決定いたしました。  以上、簡単ではありますが、御報告申し上げます。(拍手)
  10. 青木正

    青木委員長 第五分科会主査今松治郎君。
  11. 今松治郎

    ○今松委員 第五分科会における審査経過並びに結果について、御報告申し上げます。  本分科会審査の対象は、昭和四十年度予算中、建設省、運輸省及び郵政省の各省所管の分でありまして、去る二月二十二日から二十七日まで六日間にわたり、連日慎重、かつ、熱心に審査いたしました。  初日に各省より一括説明を聴取したのち、直ちに質疑を行ないましたが、これらの詳細につきましては会議録に譲ることといたしまして、ここでは要点を簡単に御報告申し上げたいと存じます。  まず、建設省所管について申し上げます。  住宅問題について、政府は現下の住宅不足の解消をいかなる方法で行ない、また宅地の取得、造成及び地価の安定をどう進める考えであるかという質疑がございました。これに対しまして、政府から、昭和三十九年度から四十五年度までに一世帯一住宅を目ざして七カ年間に七百八十万戸の住宅建設が必要であるとの認定のもとに、このうち三百万戸以上を政府施策住宅とし、その他は民間の自力建設に期待することにしている。民間の自力建設に対しては、税法上の優遇措置はもとより、新たに持ち家制度を設けて一そうの促進をはかる考えである。これは過去の実績から見て十分に達成可能であると確信している。四十年度における宅地の取得、造成については、住宅金融公庫において取得五百万坪、造成三百六十万坪を予定し、住宅公団においては千五百十五万坪の用地取得、造成を行なうほか、宅地債券の発行などにより所期の目的達成に努力してまいりたいとの答弁がありました。  その他、多目的ダム建設の入札基準の問題、団地建設の適正化、国土縦貫自動車道の建設促進、地方道の開発、道路の建設補修に伴う地元負担金の不公平是正、土地収用のあり方等の問題について、熱心な質疑が行なわれました。  次に、郵政省所管につきましては、郵政事業はあまねく国民が利用するものであり、末端にまで血の通う行政を行なってもらいたい。特に簡易郵便局が行なう事業については、地元の利便を考えてもっと大幅な仕事を委譲するとともに、手数料、奨励金など待遇の改善について考慮してほしい。最近、大都市周辺の郵便の遅配が目立ち、住民の悪評を買っている。当局はこれら郵便遅配の解消、集配の改善等にもっと力点を置いてもらいたいなどの質疑、要望がありました。  その他、郵便局舎の建設と整備促進、職員の待遇改善、業務運営の改善合理化、郵便の日曜配達の廃止などの問題が論ぜられ、さらに町村合併に伴う電話の市外通話扱いの解消、電電公社の第四次拡大修正計画と資金計画の問題、及びラジオ、テレビの難視聴地域の解消、番組の質の向上、放送免許の改善等の問題について、終始熱心な質疑がございました。  最後に、運輸省所管につきましては、私鉄の整備と運賃値上げの問題、国鉄の七カ年計画と資金調達の問題、及びサービスの改善、業務運営の改善合理化等の問題が論議され、さらに北海道千歳と長崎県壱岐空港における日航機の事故に関する問題、海運収支の改善、その他農業気象観測の拡充強化、港湾の整備、観光事業の振興等、運輸行政各般の問題について、委員各位より熱心な質疑並びに要望がありました。  かくて一昨二十七日質疑終了後、分科会の討論、採決は本委員会に譲ることに決定して、全日程を終了いたしました。  以上、はなはだ簡単でございますが、御報告申し上げます。(拍手)
  12. 青木正

    青木委員長 以上をもちまして分科会主査報告は終了いたしました。  この際、理事会の協議に基づき、ただいまの主査報告に関連して、政府に対する質疑を行ないます。  質疑者は、横路節雄君、野原覺君及び大原亨君であります。なお、質疑の持ち時間は一人当たり一時間以内でありますから、御了承願います。  それではこれより順次質疑を許します。横路節雄君。
  13. 横路節雄

    横路委員 最初に、第二分科会中野主査報告に関連をいたしまして、第二分科会防衛庁予算審議の際に、私から小泉防衛庁長官にお尋ねをしたわけですが、御答弁がございませんでしたので、あらためてここでお尋ねをいたしたいと思うわけです。  それは、去る一月の二十日、衆議院の本会議におきまして、自民党を代表して福田赳夫議員から、ジュネーブにおける国連の軍縮委員会に積極的に参加すべきである、こういう意見の表明がございまして、それに対して総理から、先般アメリカに行って国連のウ・タント事務総長に会っていろいろ話し合ってみた際も、最近軍縮会議を強化するという立場でいろいろくふうされているというように聞いている。こういう際はたいへんいい機会だと思いますので、わが国がそのメンバーになることを心から願っております、こういうように総理が答弁をしているわけです。したがって、ジュネーブの軍縮委員会にわが国が参加する、こういうことを総理は表明をされた。しかも与党である自民党の代表質問に対して表明をされた。これに参加するということを表明した以上は、参加に対する基本的な方針はどうなのか、こういうことを私は防衛庁長官にお尋ねをしたわけですが、長官は、まだ総理から聞いていない、総理と十分御相談をしてお答えをいたしたい、こういうのですから、あれからだいぶ日にちがたっていますから、きょうはひとつ長官から、総理とどういうようにお打ち合わせになられたのか、防衛庁長官として、スイス・ジュネーブの軍縮委員会に参加されるわが国の基本的な方針についてお尋ねをいたしたいと思います。
  14. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 分科会における横路委員の質問に対しまして、その後総理とお打ち合わせを申し上げたのでございますが、総理は、本会議の福田委員答弁したとおりに、わが国としてジュネーブ軍縮会議に参加することは望ましいという自分の希望の意見を申し述べたのであって、防衛庁の関係についていまいろいろと指示するような段階ではないから、別に防衛庁長官にあらためて指示はしなかったのである、こういう意向の表明であったのでございます。
  15. 横路節雄

    横路委員 長官、私はいまの長官の御答弁は非常におかしいと思うのです。なぜならば、福田赳夫君の質問が具体的な内容にわたっていないのであれば、私はお尋ねをしないのです。ただ、いま参加することが望ましい、希望の意見を述べたものだ、したがって防衛庁長官に指示するものではない、こう言うけれども、明確に福田赳夫君は与党である自民党を代表して意見を述べている。具体的な意見を述べているわけです。あらためて私は、一月二十七日の本会議の速記録から、与党代表の福田赳夫君が具体的に何を提案されているかということについて、重ねて申し上げたいのであります。  第一点は、「核武装国に対しては、」——その前に、前ことばがあって、佐藤総理はこのような意味におきまして、一、「核武装国に対しては、全面的な核実験禁止はもとより、」第二、「さらに第一歩を進めて、核兵器の破棄を求めるとともに、」第三、「核武装をするに至っていないスウェーデン、カナダ、インド、西ドイツなどの国々に対しては、核武装の愚かさを説き、これ以上核が拡散しないよう呼びかけるべきだと思うが、総理の所見を伺いたいのであります。」ここで自民党は(拍手)と、こうなっているのであります。速記はそうなっているのであります。与党である自民党がこんなにはっきりと、ジュネーブの軍縮会議に対して参加すべきである、参加する内容についてこういう具体的な提案をしたのを、私はいまだ聞いたことはないのであります。総理はそれを受けて御答弁されておるのであります。防衛庁長官、あなたは、総理が希望の意見を述べたものであって、したがって、ただ望ましいということを言ったのであるから、総理としては防衛庁長官に別に指示するものではない。あなたは閣僚の一人として、軍縮委員会に参加するということになれば、当然あなた方は一体今日の日本の防衛力をどうするかということは、一番の課題になる。あなたが指示をしている六月中にきめるという第三次防衛一両の基本方針は、これによって大きく制約されてくる。こういうことについて長官は、ただ総理が希望を述べたのである、われわれには指示がない、だから私はそれしかお答えできない、それでは長官まるで——失礼なことばですが、子供の使いと同じになるではありませんか。重ねてもう一度長官から、ジュネーブの軍縮会議に参加する防衛庁長官としての具体的な方針というものがどうなっているのか、その点についてお尋ねをいたします。
  16. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 この総理の御発言に対しまして私が分科会でお答えいたしましたことは、自分としてもそういうような軍縮会議に参加するというようなことは望ましいと考えておるということを申しましたが、それは、国務大臣の立場としての私の気持ちを申し上げたのでございまして、軍縮会議に参加というような具体的な検討をすることは、防衛庁長官としては私どもはどうかと考えておりまして、これは、総理や外務大臣の処理される問題でございますので、参加されたあと、具体的にそういう事態になれば、またおのずから問題は別でございますけれども、いまのところはまだ参加しておられませんし、参加したいという希望の表明でございますので、私には、防衛庁長官としてはこれ以上お答えすることはできないのでございます。
  17. 横路節雄

    横路委員 防衛庁長官、あなたは国務大臣として、いまこうおっしゃったのですよ。ジュネーブの軍縮委員会に参加というが、具体的に参加というのはどうかと思う。どうかと思うというのは、これは反対だという意味なんですよ、日本のことばでは。それで、あなたは軍縮委員会に参加するのは反対だというわけですね。その点、はっきりしてください。どうかと思うという日本のことばは、反対だということですよ。どうかと思うというのは、疑義がある、反対だということです。
  18. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 これは、私のことば不足で誤解がございますれば訂正いたしますが、軍縮会議参加というようなことを防衛庁長官がいろいろ申し上げるということは、私は妥当でないというような意味を申し上げたのでございまして、私は、分科会で申し上げましたとおり、軍縮会議に参加ということは、国務大臣としては総理と同じように私も望ましいことではあるのでございまして、決して反対というような意味でないことを御了承いただきたいのであります。(「参加するのはどうかと思うと言った」と呼ぶ者あり)いいえ、参加を決定をするということでございまして、ことば不足でございます。
  19. 横路節雄

    横路委員 いや、防衛庁長官、やはりいまのことばは前のことばの取り消しなんです。前は、あなたは、具体的に参加というのはどうかと思う。というのは、疑義がある、反対だ。しかし、私に言われて望ましいと訂正された。私がいまそのことを言っているのは、この間分科会で私が指摘をしましたように、あなたは昭和四十二年の四月一日から始まる第三次防衛計画を、六月中に基本方針をお立てになることをきめている。しかし、十三個師団の十一月末の定員は九万九千七百四十三だが、現員は六万五千八百七十五名で、十三個師団の欠員は三万三千八百六十八名、言うならば、一個師団七千とすれば、約五個師団近く不足をしている。充足率は全体で六六%というが、幹部は八三・二%、曹は七九・三%、士は五七・九%というが、この間私が指摘をしたように、昔でいう一等兵、二等兵、一士、二士の充足率は四七・一%なんです。普通科連隊における一個中隊の定員は二百十三名だが、実際には百二十名足らずしかいない。私は、そういう意味であなたに、この第三次防衛計画を六月中に基本方針をお立てになるというが、当然スイス・ジュネーブの軍縮会議に参加する、一般的な軍縮を世界の各国と相談をするというたてまえからいけば、当然第三次防衛計画は——この十三個師団そのものだって、今日五個師団近く充足できない。だから、私はまずそういう意味で、ジュネーブの軍縮委員会に参加することと第三次防衛計画の基本方針との関係において、私は、第三次防衛計画においては十三個師団を増員するなどということは当然考えるべきではない、こういうことを私は第一の問題点としてあなたに申し上げた。  第二の問題点は、福田赳夫君が言っているように、核武装国に対しては全面的な核実験の禁止、第二点は核兵器の破棄、第三点は核武装するに至っていない国々に対して核武装の愚かさを説いて核の拡散をこれ以上しない、そういうのであるならば、第三次防衛計画の中心になるのは、十三個師団をどれだけふやすかどうかという問題と、あわせていま一番問題になっているのはナイキハーキュリーズを導入するかどうかということなんだ。だから、私はこの問題については、ナイキハーキュリーズについては、この間分科会でも指摘したように、明らかに第三次防衛計画でナイキハーキュリーズを導入するということになれば、これは一切アメリカ側からの供与を受けるわけだから、したがって、必要に応じては、時至れば核弾頭つきのナイキハーキュリーズを持つに至るおそれが十分あるから、したがって、第三次防衛計画においては、ナイキハーキュリーズは絶対に持つべきではない。こういう点を私は二つあなたに申し上げた。私は、軍縮会議のことはこのあともう一度あなたにお尋ねするが、十三個師団のこととナイキハーキュリーズのことは、このジュネーブの軍縮委員会に参加するという基本的なたてまえからいって、六月中に基本的な方針をおきめになるというのですから、どうするのか、その点をひとつお尋ねをしておきたいのです。
  20. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 ジュネーブ軍縮会議の問題は、今後具体的に検討さるべき問題でございますので、現在の段階においては、私どもは既定の方針によって第二次防衛力整備計画を推進をいたし、また先ほど申し上げましたとおり、第三次防衛力整備計画につきましても、大綱を取りまとめるよう指示をいたしましたのでございまして、現在の段階における今後の構想を進めておるようなわけでございます。  十三個師団の問題につきましては、御指摘のとおり欠員が多数ございますけれども、これはあくまでも今後諸施策を推進することによって定員が充足されるるよう最善の努力を払い、私どもは、現段階における十三個師団というものはそのまま持続して定員の充足を期したいと考えておるわけでございます。
  21. 横路節雄

    横路委員 第三次防衛計画ではどうするのか。ナイキハーキュリーズはどうするのか。二つ聞いているのですよ。
  22. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 第三次防衛力整備計画は、先ほど申し上げましたとおり、六月ごろまでに大綱の構想をまとめようという指示をいたしておりますので、第三次防衛力整備計画の十三個師団の問題、ナイキハーキュリーズの問題も、今後の検討にまたなければならないのでございます。
  23. 横路節雄

    横路委員 そうすると、あなたは核弾頭つきについても横付するのですね、核弾頭についても検討するのですね。
  24. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 ナイキハーキュリーズの核弾頭の問題につきましては、予算分科会で申し上げましたとおり、わが国の既定方針として核装備はしないという立場に立っておりますので、あくまでもこの立場に立って検討をいたすのでございます。
  25. 横路節雄

    横路委員 小泉さん、もっとはっきり言ってもらいたい。私は、核弾頭つきのナイキハーキュリーズはどうするのだと聞いているのです。検討するということは、入れる場合もあるし、入れない場合もあるということでしょう。あなた、もっとことばをはっきり言ってもらわなければだめですよ。もっとはっきり、入れるのですか、入れないのですかということを聞いておるのです。具体的に聞いているのですよ。
  26. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 分科会においてもたびたび申し上げましたとおり、いわゆる核弾頭はあくまでもわが方針として使用しない、この方針を堅持して進むのでございます。
  27. 横路節雄

    横路委員 核弾頭つきのナイキハーキュリーズは絶対に入れないということですね。  昭和四十年度の防衛本庁の歳出予算は二千八百五十二億六千九百九十六万九千円、国庫債務負担行為が五百六十九億七千三百三十五万円、それから継続費が百四十五億四千三百四十二万円、職員の定数は二十七万四千六百七十六人、非常に膨大になっているわけです。  そこで、小泉さんにもう一度お尋ねしますが、そうすると、このスイス・ジュネーブの軍縮委員会に参加する基本的な方針は、あなたにお尋ねをしたのではわからないのですね。総理をここにお呼びして聞かなければわからないですね。その点だけはっきりしておきたいのです。あなたでは御答弁できないですね。スイス・ジュネーブの軍縮会議に参加する基本的な方針は何か、あなたでは御答弁できないですね。その点だけもう一ぺん。防衛庁長官だから聞いているのです。
  28. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 総理におかれましても、本会議のときの答弁のとおり、希望を表明しておられるのでございまして、軍縮会議参加ということを防衛庁長官において具体的に検討することはできないのでございます。
  29. 横路節雄

    横路委員 いまお聞きのように、福田赳夫君は三つに分けて具体的な提案をして、それに対して総理がそれを受けてお答えをしているのです。ところが、いま小泉長官は、いま委員長がお聞きのとおり、初めは具体的に参加というのはどうかと思う。総理が参加するというのに、あなたは疑義があるというのはどうかと言い返されて、望ましいと思う。具体的な方針は何だ、ただ総理は望ましいと言っただけだ。これでは、本会議で福田赳夫君が具体的に質問したことに対して総理が答弁したことになりませんから、ひとつ総理に御出席をいただいて——いまだ歴代の総理で、軍縮委員会に参加ということの表明をされたことはない。また自民党の代表で、かほどまでに具体的に提案をされたことを私は聞いたことはない。そういう意味で、ぜひひとつ総理に出席をしていただいて、この問題についてさらに私は質疑を続けたいと思いますので、総理の出席を要求いたします。
  30. 青木正

    青木委員長 ただいまの横路節雄君の御要望につきましては、先ほど理事諸君にも御連絡申し上げましたとおり、総理大臣佐藤榮作君は午後零時四十分ごろまで渉外事項のために出席でき得ませんので、その間、次の質疑者質疑を願いまして、総理出席の後、横路君の質疑を続行いたしたいと思います。ほかの問題がございましたならば、総理以外の点についてお願いいたします。
  31. 横路節雄

    横路委員 私は先週の木曜日、第二分科会の外務省予算審議の際に、あらかじめ外務大臣に対しまして、韓国側の対日請求権の問題、いわゆる八項目の内容について、土曜日の朝までに資料を出してもらいたい、こういうことで要求をいたしたのでございますが、土曜日の午後になりましてから、外務大臣は、その資料については提出するわけにいかない。こういうのでありまして、中野主査のとりなしで、この本予算委員会で重ねて質疑を続けるようにというお話でございますので、私は、この問題について、これからひとつ外務大臣にお尋ねをいたしたいのです。  私のほうに三十八年の一月三十日外務省提出、韓国側の対日請求要綱として、いわゆる八項目の内容について詳しく出ております。この点につきましては、同じく三十八年の二月七日に私からお尋ねをいたしまして、この委員会でたいへんもめまして、最後にここにおります辻原理事が動議を出しまして、理事会を開いて、この問題についてはできるだけすみやかに提出をする、こういうことになっているわけであります。外務大臣、なぜこれが出せないのですか、出せない理由は何ですか、まず出せない理由をはっきりしてください、出せない理由を言ってください。韓国側の要求が不当だというのか、計算してみたら非常に少なかった、こういうのか、何か理由があるから出せないというのでしょう。出せない理由を明らかにしてください。
  32. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 三十八年二月七日の予算委員会において、大平外務大臣から日韓条約調印のめどがつけば八項目についての資料を提出する。概略こういったような答弁がありまして、それで予算委員会は了承されたのであります。まだ基本条約のイニシアルが交換されただけでありまして、いわゆる長い道中のただ第一歩を踏み出したという程度で、この段階では外交折衝にいろいろ支障がございますから、また提出の段階ではない、かように申し上げたわけであります。
  33. 横路節雄

    横路委員 いまあなたは、基本条約を結んだことはと言われるが、第二分科会では、全面妥結の第一歩である、こう言っておられるわけです。当時の大平外務大臣は、当時の記録で何と言っているかというと「なるべくすみやかな機会に御要求の資料を提出いたしたいと思います。」。二カ年たっているわけです。あなたはこの間私に何と言ったのです。横路さん、忘れていたのかと思ったよ。あなたそう言ったじゃないですか。これは、私が質問したのです。忘れてなどいませんよ。ただ時期を待っていた。そこで、私はこれから一つずつお尋ねします。  まず第一番に大蔵大臣にお尋ねします。第一項目は、一九〇九年、すなわち日韓併合の前年、朝鮮銀行設立のとき以後日本へ搬出された地金と地銀。これに該当する金塊は二百四十九トン余で、時価三億ドル余、さらに地銀は八十九トンで、約四千万ドルとなっている。これに対して日本の見解はどうなんですか。一つずつ聞きましょう。これはどうなんですか。日本の見解はどうなんですか。一つずつ聞きますよ。
  34. 田中角榮

    田中国務大臣 持ち返ってきたが、その数量は幾らか、時価に換算して幾らかというようなものも日韓交渉の過程における重要な問題でありますので発表しない、こういうことが政府在来の方針であります。そういうことであります。
  35. 横路節雄

    横路委員 だめだめ、大蔵大臣、あなたは何を言うのです。ここに文書に出ているじゃないですか、私に出したじゃないですか。何を言うんです。何を言うんです何を。だめですよ、そういうことを言ったんでは。ここに書いてある。外務省、出してあるじゃないか。(発言する者多し)この数字は、私が言うまでもなくはっきりしているでしょう。二四九トン六三三一九八六一、それから銀については八九トン一一二二〇五一二、はっきりしているじゃないか、みんな。だめですよそんなこと。  そこで外務大臣これに対して向こうでは、金については三億ドル、銀については四千万ドルと言うたんだが、これについて日本側はどういうように返事をされたんですかと聞いている。(「そんなこと言われないよ」と呼ぶ者あり)何を言っているか、おまえに聞いているのでない。
  36. 田中角榮

    田中国務大臣 外務省が外務委員会でもって申し上げましたのは、また大蔵委員会でも大蔵省の政府委員が申し上げております。韓国側の対日請求権の要網の第一は「朝鮮銀行を通じて搬出された地金と地銀の返還を請求する。本項の請求は一九〇九年から一九四五年までの期間中に日本が朝鮮銀行を通じて搬出していったものである。」こういう要求の内容そのものを申し上げたのでございまして、何トン、それがいまに換算して幾ら、これに対してどういうふうな交渉経過があるというようなことは申し上げておりませんし、またこれを申し上げることは、先ほど申し上げたように、日韓交渉の推移に関し後日発表したほうがいい、こういう考えであります。
  37. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、これは日本側がどう処理をされたんですか。いま私のほうで出したのは、地金については二百四十九トン、地銀については八十九トン、金については三億ドル、銀については四千万ドルと言ったが、そのことの数字は伏せて、それじゃ向こう側にどう答弁したのですか。
  38. 田中角榮

    田中国務大臣 何分にも相手のある話でございますし、相手の要求数字とこちら側から提示をした数字が食い違っておりますので、こういう問題は交渉の最終段階にならなければ申し上げられない。これは、国の利益を守るためにも、外交上の問題でありますので、いまつまびらかに申し上げられないということであります。
  39. 横路節雄

    横路委員 いや、私は、日本側ではどう答弁したのですかと、私は数量を聞いているのではない。あなたが言うから、それでは数量、金額は聞かない。相手にどう答弁したのです。
  40. 田中角榮

    田中国務大臣 向こう側の要求と、こちら側もそんなにないというような交渉をしたわけでありますが、日本側の言う数字と向こう側の言う数字が違うのでありますから、結論が出ておらぬということであります。向こう側は一体——提示をしたことは、あなたがいま申されたことだかもわかりませんが、それに対して日本側がどういう数字を提示したかということは、これはもう交渉の過程の問題でありますので、いま申し上げることは政府としても適当でない、こういう判断をしておるのであります。
  41. 横路節雄

    横路委員 郵政大臣はどなたですかな。郵政大臣、郵政大臣。対日請求権の問題は郵政大臣は関係があるじゃないか。郵政大臣は一体どうしたんだ。対日請求権の問題は、郵政大臣は関係があるじゃないか。だめですよ、これは。郵政大臣はどこに行ったんです。郵政大臣はどこに行ったんだ、一体。(「休憩だよ」と呼び、その他発言する者あり)休憩してもらわなければしょうがない。郵政大臣じゃないか。だめだよ、これは。
  42. 青木正

    青木委員長 ちょっとお待ち願います。ただいま連絡しております。当初の要求大臣に入っておりませんので……。
  43. 横路節雄

    横路委員 いや、待ってください、委員長。対日請求権の問題というのは各大臣全部に関係しているんですよ。分科会主査報告だから全部出ているでしょう、きのうわざわざ農林大臣は、赤城さんのほうは私に……。(発言する者多し)いや、待ってください。赤城さんのほうは、農林省のほうから私のほうに質問があるかと言うから、私はないと答えた。だから、私としては農林大臣には聞かない。しかし、あとのほうは別に聞いてこないから、あとの人はみなあるはずだから、ここにいるはずだ。
  44. 青木正

    青木委員長 ただいま連絡いたしておりますから、他の閣僚に対する他の御質問を願います。
  45. 横路節雄

    横路委員 いや、それはだめだよ。請求権の問題というのは、郵政大臣に大事な関係がある。
  46. 青木正

    青木委員長 いま参ります。
  47. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど横路さんの御質問がございました金及び銀等の問題につきましては、韓国側は不法に持ち出した、こういうことを基本にして言っておるわけであります。こちらは合法的な搬出である、こういうところで食い違っておるわけでございます。それから郵政関係の問題を、私がかわってよろしければ申し上げます。
  48. 青木正

    青木委員長 ただいま参りますから、他の質問をお願いいたします。
  49. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、私はあなたが前に郵政大臣をされたことを知っていますよ。だけれども、しかし、いま郵政大臣でないんだから、田中さんがいまかわって答弁されるというと、それはだめです。ただ、いまの御答弁ではっきりしたことはだんだん一つずつはっきりしてきたじゃないですか、外務大臣。たとえば、いま「朝鮮銀行を通じて搬出された地金と地銀の返還を請求する。本項の請求は一九〇九年」というのは、日韓併合の前年、朝鮮銀行が設立のときから一九四九年までの期間中、トン数はいま言ったようだが、いま大蔵大臣は、韓国側は不法持ち出しと言ったが、日本としては合法的な搬出だ。じゃ、大蔵大臣に聞きます。合法的搬出というのは、どういうことなんですか。
  50. 田中角榮

    田中国務大臣 合法的とは、法律上当然日本が搬出でき得るものであるというのが合法的であります。
  51. 横路節雄

    横路委員 それでは、大蔵大臣にいまお尋ねしますよ。合法的搬出というのは、やはり当時の正当な価格で買い取ったのでしょうね。そういうことでしょう。まさかただで取ってきたのではないでしょう。それはどうなんです。
  52. 田中角榮

    田中国務大臣 当時朝鮮銀行法がございまして、銀行法の規定に基づいて日本が当然搬出でき得る、こういう根拠に基づいておるのであります。
  53. 横路節雄

    横路委員 だから、朝鮮銀行法に基づいて正しい正当な価格で搬出したのでしょう。その点だけはっきりしてくださいしその点だけ言ってくれればいいです。
  54. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおりのようであります。
  55. 横路節雄

    横路委員 これではいまの点、第一項目ははっきりしたわけです。韓国側の要求は不当である。韓国側は、日本が金塊二百四十九トン、三億ドル、銀八十九トン、四千万ドル、合計三億四千万ドルを不法持ち出ししたというが、いま大蔵大臣の答弁で、朝鮮銀行法に基づいて合法的な持ち出し、正当な価格でそれは買い取ったのである。だから、対日請求権の問題は何になるかというと、これはもうてんで抹殺だ。これは一つずつこうなって、私はきょうは一つずつ聞いていきたい。  そこで、郵政大臣はどうしましたかな。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 いまの第一の金塊の問題でありますが、こちらの日本政府側の見解でございます。ただ外交問題でありますから、向こうはあくまでも不合法で持ち出した、こういう主張を続けておるのでありますから、これは、交渉の過程において最終的結論を得るということであります。
  57. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、第一項が非常に重大だと思うのは、対日請求権の中で三億四千万ドルのものについては、向こうは不法持ち出しだと言うが、こちらのほうは朝鮮銀行法に基づいて合法的な持ち出しだ、正当な価格で買って払ったのだ、だから、日本政府はもうこれは払って終わっているのだ、こういうのだから、第一項については、日本政府としては対日請求権の問題についてはもう消滅しているわけだ、そういう点は、いまの御答弁ではっきりした。  そこで、第二項について私はお尋ねしたいと思っていま待っているわけです。やはり来てもらわなければなりません。
  58. 青木正

    青木委員長 このままでお待ち願います。
  59. 田中角榮

    田中国務大臣 ちょっと横路さんに申し上げますが、いま第一条、第二条、第三条から第八条までと、こういうことでございますが、そういう問題につきましては、金額の問題とか法律的根拠の問題でお互いに対立をいたしているわけであります。でありますから、これを一つずつ解決して日韓交渉をまとめるというのではなく、日韓交渉がまとまった場合、その随伴的効果として対日請求権は消滅する、こういうことは政府が前々申し上げておりますので、まあ一項々々御指摘になって、という解決方法をとっておりませんから、日韓交渉は有償、無償、大平・金メモによって計五億ドルというもので、その他が片づいた場合、随伴的効果として対日請求権が八項目全部消滅する、こういう態度をとっておりますので、御理解をいただきたい。
  60. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、私が聞いているのは、日本政府のこれに対する見解はどうだ、こう聞いているのです。相手は相手で意見があるでしょう。しかし、日本の政府の見解をどうだと、こう聞いていっておるのだから……。   〔「郵政大臣はどうした」「休憩、休憩」と呼ぶ者あり〕
  61. 青木正

    青木委員長 ただいま参りますから、少々お待ちください。   〔「暫時休憩」と呼び、その他発言する者あり〕
  62. 青木正

    青木委員長 ただいま郵政大臣、衆議院に向かっておりますが、間もなく来ると思います。  郵政大臣が見えるまで暫時休憩いたします。  郵政大臣が参りましたら直ちに再開いたしますから、このままでお待ち願います。    午後零時一分休憩      ————◇—————    午後零時四分開議
  63. 青木正

    青木委員長 郵政大臣が見えましたので、委員会を再開いたします。——重ねて申し上げますが、郵政大臣が見えましたので、議事を進めます。  横路節雄君。
  64. 横路節雄

    横路委員 郵政大臣にお尋ねをしますが、韓国側の対日請求権のいわゆる八項目のうちの第二項に、「一九四五年八月九日現在の日本政府の対朝鮮総督府債務の弁済を請求する。本項に含まれる内容の一部は次のとおり。(1)逓信局関係(a)郵便貯金、振替貯金、為替貯金等。(b)国債及び貯蓄債券等。(c)朝鮮簡易生命保険及び郵便年金関係。(d)海外為替貯金及び債券。(e)太平洋米国防軍総司令部布告第三号によって凍結された韓国受取金。(f)その他。」これは大体総計幾らになっているのでしたか。
  65. 徳安實藏

    徳安国務大臣 その総額につきましては、彼我関係が非常に数字の点等につきましても相違もあるそうでございまして、あげてその折衝等は外務省におまかせしておりまして、数字は現段階においては申し上げられないことになっておるわけでございますので、御了承をいただきたいと思います。
  66. 横路節雄

    横路委員 郵政大臣、これは、郵政省のほうで積算した金額の数字はあるのですか。それともないんですか。それはどうなっているのですか。
  67. 徳安實藏

    徳安国務大臣 かつて三十五年に十四億幾らという積算を一ぺん出したことがあるそうでございますが、これとておよそのものでございまして、政府が責任を持つほどの数字ではないそうでございます。したがって、その後におきまして、政府で朝鮮側と話し合いのつくような数字が出ませんで、あげて外務省のほうで折衝していただいておるという状態でございます。
  68. 青木正

    青木委員長 横路君、ちょっとお待ちください。この問題に関連して外務大臣から先ほど来発言を求められておりますので……。
  69. 横路節雄

    横路委員 ちょっと待ってください。
  70. 青木正

    青木委員長 一応お聞きください。外務大臣椎名悦三郎君。
  71. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、たとえその間二年たったとはいいながら、日韓会談の進展の現段階におきましては、非常に微妙な交渉がこれから始まろうとしておるのでありますから、そういう数字上の問題は今日まだ発表の段階ではない。外交折衝の非常にこれから大切な段階に入るのでありますから、どうぞさよう御了承の上、ひとつ外交に御協力のほどをお願い申し上げます。
  72. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、あなたのいまの答弁は、全く筋が通らないのです。なぜ筋が通らないかといえば、この無償経済協力総額三億ドル、長期低利借款総額二億ドル、いわゆる日韓予備交渉において両首席代表間に大綱につき意見の一致を見ておる。請求権問題は解決をした。この五億ドルの数字はまだきまっていない、この五億ドルの数字は動くのだ、場合によっては三億ドルになるかもしれない、場合によっては十億ドルになるかもしれない、そういう交渉の過程だから、したがって、いまお話しができないというならば、私も外務大臣の話はそうかなあと理解できないわけではない。しかし、日韓予備交渉において両首席代表間に大綱につき意見の一致を見ておる。請求権問題の解決というのは解決したのだ。三億ドルと二億ドルという五億ドルについては解決したのだ。これが動くのですか、重ねて聞きます。動くのですか。
  73. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 法律的問題は離れて、責任ある者の間の一応の取りきめでありますから、あくまで尊重したい、かように思っております。
  74. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、動かないじゃないですか。動かないできまったのじゃないですか。きまったのだから、私は内容を聞いておるのだ。だから郵政大臣に聞きます。
  75. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それがきまったから発表しろ、こういうお話ならば、すでに二年前にそれはまっておる。だから、二年前と今日の段階では、その点においては同じなんです。だから、会談の妥結にめどがついて外交上の支障はないという段階ならば発表しますということを大平大臣は発言をして、それをその委員会が了承して今日に至っておるのです。今日は基本条約についてイニシアルの交換はしたけれども、これは長い道中の第一歩を踏み出しただけの話で、これが解決のめどというものではないのでありますから、どうぞさよう御了承の上御協力を願います。
  76. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、あなたはまだそうおっしゃるけれども、一項目ずつについてはきょう私が初めて聞いておるのです。まだだれも聞いていないのです。五億ドルについては動かないのだから。私は、これから郵政大臣にお尋ねしますが、あなたは先ほど三十五年には十四億円のおおよそ試算がある。これは朝鮮側で言った数字ですか、日本側で言った数字ですか。あなたがいま言ったから聞いておるのですよ。
  77. 徳安實藏

    徳安国務大臣 これは、逓信協会発行の逓信事業史に一応試算した金額として出ておったということでございます。
  78. 横路節雄

    横路委員 十四億円ですね。
  79. 徳安實藏

    徳安国務大臣 十四億円です。これは、すでに委員会でも御説明しておるそうでありますから……。
  80. 横路節雄

    横路委員 何だ、外務大臣、一つずつ聞いたらみんな言っているじゃないか。あらためていま私が聞いて何が不当なんだ。言っているじゃないか。じゃ、これから一つずつ聞きますよ。それは、いま私は予算委員会で初めて聞いたのです。郵政大臣、日本政府の計算によれば十四億円であるというのは、少なくとも予算委員会では初めて聞いた。これはたいへんいいことを教えてもらいました。(発言する者あり)何ぼうしろで言ったって、郵政大臣が言ったのだからしようがない。  それから第二項「一九四五年八月九日以後日本人が韓国内各銀行から引き出した預金額」、これは対日請求権の中に入るのか入らないのか。これは、ひとつ外務大臣に聞きます。
  81. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 数字のことについては、一切まだ発表の段階ではないということを申し上げておる。
  82. 横路節雄

    横路委員 数字じゃないよ。基本的な方針を聞いている。「一九四五年八月九日以後日本人が韓国内各銀行から引き出した預金額」、これは支払う必要があるのかどうか、これは請求権の中に含まれるのかどうか、日本政府の見解はどうかと聞いている。数字じゃないよ。見解を聞いているのだ。さあそれに答えてもらいたい。(発言する者あり)何だ失礼な。何だ、おまえ、理事のくせに。何だ失礼な。日本人らしくとは何だ。   〔発言する者多し〕
  83. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。——静粛に願います。   〔「懲罰動議を出せ」と呼び、その他発言する者多し〕
  84. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  85. 田中角榮

    田中国務大臣 ただいま御指摘になりました一九四五年八月九日以後日本人が韓国銀行から引き出しました預金額、こういう問題がございますが、これは、向こう側は請求だということを言っておりますが、日本側の態度につきましては、いま発表できない状態でございます。
  86. 横路節雄

    横路委員 態度だよ。金額でないよ。態度を聞いているのです。
  87. 田中角榮

    田中国務大臣 前段申し上げましたように、向こうからの要求はございますが、日本はこれに対してまださだかな結論を出しておりません。
  88. 横路節雄

    横路委員 いやいや、そんなことはない。それでは私はあなたにお尋ねするが、いわゆる軍令の第三十三号、一九四五年十二月六日布告がある。これは、大蔵大臣も御承知でしょう。これは八月九日以降だ。軍令三十三号の布告は十二月六日だ。日本政府は八月九日以降に対しては、軍令は実際には十二月六日に布告になっているのだから、この点はあなたのほうでは、いままで日本政府は、これは無効だという態度をとってきたのでしょう。軍令との関係はどうなっているのです。それでは、この軍令三十三号との関係はどうなんです。
  89. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 軍令三十三号で処分されるべき対象として残っておった預金は、これによって処分されたもの、その前にすでに引き出されておったものは軍令三十三号でもどうにもできなかったわけでございますから、これはその対象外である、かように考えます。
  90. 横路節雄

    横路委員 そうすると、大蔵大臣、いまお聞きのように、第二項の「一九四五年八月九日以後日本人が韓国内各銀行から引き出した預金額」、この点は、いま条約局長が言ったように、これは軍令三十三号で、一九四五年八月九日以降日本政府、その機関または国民、会社、団体云々というものは朝鮮軍政庁が取得し云々となっておるが、十二月六日に布告をしたから、布告前のものは無効だ、だから、これは対日請求権の中には含まれないというのがいまの条約局長答弁だ。この点もはっきりした。だんだんきょうは一つずつはっきりしてきたです。  では、次にいきます。第三項目は、「朝鮮から収入された国庫金中の裏付け資金のない歳出による韓国受取金関係」、この解釈はどうなっているのか、外務大臣、わからなければ条約局長
  91. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 お答え申し上げます。  総督府やそれから在鮮日本軍の支出につきましては、軍令の効果が及びますのは十二月六日以後でございますので、その点については責任はございません。それから在鮮の国庫金支出で朝鮮における歳入を超過した部分のうち、朝鮮銀行本店への送金手続がなされなかった分につきましては、朝鮮銀行本店における日銀代理店金が借り越しになっておったわけでございますが、その借り越し分につきましては、日銀から朝鮮銀行の東京支店に支払われて、決済済みでございます。
  92. 青木正

    青木委員長 横路委員に申し上げますが、先ほど横路委員から総理大臣の出席の御要望があります。総理大臣の出席は、なお若干おくれる模様でありますので、一時まで休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      ————◇—————    午後一時十一分開議
  93. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  なお、総理大臣は午後二時まで出席されますので、この点お含みの上質問をされるようお願いいたします。  横路君の質疑を続行いたします。横路節雄君。
  94. 横路節雄

    横路委員 私は、総理にお尋ねをいたしますが、それは、去る一月二十七日の衆議院の本会議で、与党の代表者である福田赳雄君から、総理に対しまして、ジュネーブにおける軍縮委員会に積極的に参加すべきである、しかも、与党から具体的な提案がございまして、その第一点は、全面的な核実験禁止、第二点は核兵器の破棄、第三点は核の拡散防止というので、特にスウェーデン、カナダ、インド、西ドイツなどの国々に対しては核武装の愚かさを説き、これ以上核が拡散しないように呼びかけるべきである。これに対して総理は、この点につきまして賛意を表されており、さらにウ・タント事務総長とお会いしたときに、軍縮会議を強化するという立場でいろいろお話があった。そこで、私は、この点は先般の二月一日の総括質問でお聞きする予定でございましたが、時間がございませんでしたので、分科会で質問いたしたのでございますが、防衛庁長官は、総理からまだお聞きをしていないということであり、その後、きょうお尋ねをしてみますと、その点がどうも、ただ総理の答弁は望ましい、希望の意見を述べたにすぎないということでございまして、それにしてはあまりにも福田赳夫君の質問が具体的であり、いまだかつて私もこういう具体的な提案を与党側から聞いたことはございませんので、そういう意味で、ひとつジュネーブの軍縮委員会に、積極的に日本が参加すべきであるという総理の基本的なお考え方、また具体的な方針というものがあれば、それについてひとつ明らかにしていただきたい、こう思うわけです。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本会議でお答えいたしましたとおり、軍縮会議のメンバーに日本がなりたいというこの気持ちは、はっきり持っておるわけであります。過日国連を訪問した際も、その意向のあることを明確にいたしたのであります。御承知のように、軍縮会議のメンバーは、十八カ国ということになっております。一九六〇年あるいは一九六一年当時、日本がこの軍縮会議のメンバーになりたいという意思表明をすでにいたしたのでありますが、これは、常任理事国である米ソの間で十分検討され、そうして、そのときは実現しないままで今日に至っておるわけであります。私どもは、軍縮会議のメンバーであること、これは、今日平和に徹する、こういう立場から考えますと、一そうその意向を明確にしておきたい、かような意味で本会議でもお答えをいたしたわけであります。防衛庁長官に尋ねたがというお話でございますが、ただいまの段階では、むしろ外務大臣にお尋ねをいただくと、明確に私の気持ちをまた率直にお答えしたのではないか、かように考えます。
  96. 横路節雄

    横路委員 そこで、平和に徹するというお気持ちはわかったわけですが、しかし、福田赳夫君の質問——というよりは提案ですね、これははっきりしているわけです。第一点は、核実験の全面禁止、第二点は核兵器の破棄、これは実に率直に提案をしている。第三点は、いわゆる核の分散、拡散阻止、こういう点でございまして、私は、核実験の全面禁止というようなことは、与党でもいままで意見を言われているのですが、軍縮委員会参加に関連して、核兵器の破棄ということを言われているのは、私寡聞にして、与党としては初めてではないか。そういう点、せっかくああいう福田赳夫君の提案が与党にあったわけですから、そういう意味で、総理として具体的にどういうようにお考えになられているのか、その点、ひとつお尋ねしたいのです。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その点は、私になって新しいのではございません。これは、もう岸内閣あるいは池田内閣当時から、核兵器というものに対して、日本政府ははっきりした態度をとっております。絶対に核兵器は持たないし、また持ち込みも許さないという、そういうはっきりした態度をとっております。ことに、世界唯一の被爆国である、そういう立場に立っての、これは心からの願いである、かように私は思うのであります。この点は、佐藤内閣になって事新しく申し上げるわけではありません。御承知のように、軍備について、完全軍縮ということがいわれ、一方では、これと背反するような軍備拡張競争も行なわれておる、これが世界の実情であります。今日軍縮会議のメンバーになりましても、完全軍備撤廃、こういうことは、なかなか現状においては容易に実現するものではないだろうと私も思います。しかし、少なくともこの二つの相反するもの、片一方で軍備競争をし、同時に、片一方で、軍縮といいますか、そういうものに対するブレーキをかけようという、そういう動きのあること、これは、横路さんもそのままを御承認になるだろうと思います。問題は、そういう場合に、核兵器の持つ人類に対する脅威、これをいかに考えるかということだと思う。私どもは、核実験一部禁止、一部停止ではあるが、モスクワの条約を、そういう意味では心から歓迎したのであります。これがさらに全面核実験禁止という方向になり、さらに核兵器は各国ともこれを持たない、こういう方向へ進むなら、このぐらい人類としてけっこうなことはないだろう、かように考えますので、そういう立場、これが与党の中の福田君からの質問であったが、これは別に事新しいものではございません。いままでもたびたびそういう基本的な態度は宣明してまいったのであります。さように御了承いただきたいのであります。
  98. 横路節雄

    横路委員 総理にあと一つだけお尋ねしておきたいのですが、やはり参加をするという以上は、いずれはわが国の防衛力についても漸次縮小していく、やはりそういう基本的なかまえがなければ、そこへいって、みんなで縮小しようじゃないか。最後は完全軍縮という理想に到達するわけですが、やはりかまえとしては、わが国としても漸次縮小していく、そういう基本的なかまえがなければ、私は参加する国としての心がまえとしてだめではないかと思うのですが、この点はどうですか。
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 わが国の防衛力を強化するにいたしましても、いままで私どもが申してまいりましたのは、国情、また国力に相応するものを持ちたいという防衛力の整備の基本方針をはっきりさしていると思います。ただいま私どもの自衛力自身は、まだたいへん不十分なものだ、かように私は考えます。ただいま申し上げる自衛力、国情、同時に国力に相応するという観点で見ました際に。しかし、ただいま仰せのごとく、将来の問題だと私は考えますが、自衛力の整備にいたしましても、おのずから限度があるだろう。それが先ほど言うような国力、国情に応じた、これが一つの限度だろうと思いますが、さらに一般の社会情勢も変わってくるなら、さらにこれも縮小することにおいて私どももやぶさかではない。これは、とにかくそこに国際協力という場があるのだ、私はかように考えております。
  100. 横路節雄

    横路委員 実は総理に一言だけ申し上げて、私はいま、午前中質問しております韓国の対日請求権の問題について、さらに質問を続行したいわけですが、午前中総理にお聞きをしておいていただくとよかったのですが、実は今日十三個師団九万九千のうち、実際には六万六千しかいないわけです。三万三千は募集ができないわけです。十三個師団のうち四個師団半といいますか五個師団といいますか、実際には充足していない。普通科連隊の一個中隊が二百十三名のうち、大体百四十名くらいしか充足されてない。六月中には第三次防衛計画が、基本方針ができるという、そういう中で、今日の現状を踏まえて、しかも日本がこれからいわゆる化学工業国として一方には技術革新をやる、一方にはそういう意味で非常に学術振興をやっていく、そういう点からいけば、中学、高等学校というものの生徒は、どんどんそちらのほうに就職の道が開かれていくという点からいけば、ただ単に十三個師団をふやしていくとか、そういう問題は、この際やはり考え直していくべきではないか、いまこそそういう実態を踏まえて、いま総理が言われた国情に相応しての自衛力というのであるならば、それに相応した考え方からいくならば、逆に縮小の方向にいくべきではないかということをけさほど申し上げたのでございますが、私は、これ以上この問題を聞いておりますと、対日請求権の問題で、あと時間がなくなりますから、以上で、私は総理の見解だけをお聞きをして、また何か適当な機会がございましたならば、さらに詳しくお尋ねをし、私たちの意見を申し述べたい、こう思っております。
  101. 青木正

    青木委員長 横路君に申し上げますが、総理大臣に対する質疑はお約束でありましたのでいたしましたが、すでに時間も参っておりますので、その点、お含みの上、自余の質問をお願いいたします。
  102. 横路節雄

    横路委員 それじゃ、先ほど項目についてちょっと間違った点がございます。八項目のうちの、先ほど私が三項目と申し上げたのは、第2項目の(1)が逓信局関係、(2)、(3)をお話しをしたのですが、大きい第3項目と第4項目を一ぺんにお尋ねしておきたいのです。これは外務大臣になりますか、大蔵大臣になりますか……。「一九四五年八月九日以後韓国から振替又は送金された金員の返還を請求する。本項の一部は下記の事項を含む。(1)八月九日以後朝鮮銀行本店から在日本東京支店へ振替又は送金された金員、(2)八月九日以後、在韓金融機関を通じて日本へ送金された金員、第4項、一九四五年八月九日現在韓国に本社、本店又は主たる事務所があった法人の在日財産の返還を請求する。本項の一部は下記の事項を含む。(1)連合軍最高司令部閉鎖機関令によって閉鎖清算された韓国内金融機関の在日支店財産、(2)SCAPIN一九六五号によって閉鎖された韓国内本店保有法人の在日財産」これはさきに言った軍令の解釈で、これは条約局長でけっこうですよ。先ほど言いました軍令の解釈は、やはり軍令三十三号は、一九四五年十二月六日、だから、これも返還の要はない、先ほどの条約局長の前段の答弁からいえばそうなりますね。それだけ聞いておきたいのです。わかりますね、あなた専門家だからね。私はいま早口で言ったけれども、あなた、おわかりでございましょう。時間がないから、そのとおりならそのとおりだと言ってください。
  103. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 先ほど私が答弁申し上げました趣旨は、軍令が施行されて適用の対象になり得るものは、つまり米軍の施政の範囲内にあるものは適用の対象になり得るけれども、もうすでに軍令が適用し得る範囲外に搬出されているものは、その対象にはなり得ないということを申し上げましたので、返還の問題には直接触れておらないわけでございます。
  104. 横路節雄

    横路委員 ちょっと条約局長。だから、十二月六日に軍令が出たんだから、その前に搬出したものは適用の対象にならぬでしょう。そこだけはっきりしてください。
  105. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 軍令の適用の対象になるかどうかという問題と、返還されるべきものかどうかということは、別問題だろうと思います。
  106. 横路節雄

    横路委員 条約局長、これは一九四五年十二月六日に軍令三十三号が出たんだね、向こうが八月九日から適用だといっているが、八月九日からどんどん送っているわけだ。軍令は十二月六日に出た、だから八月九日に送って——十二月六日以降のものについては確かにそのとおりになるが、それまでに送ったのはやむを得ぬでしょう、日本の解釈はそうなんでしょう、と聞いている。めしを食ったらだんだん答弁がおかしくなったんじゃないかな。
  107. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 日付の問題は確かにございます。この軍令は、十二月に出して九月にさかのぼらせるという趣旨になっておりますが、私が申し上げておるのは、その日付の問題じゃなくて、米軍の処分の効力を承認するという問題と、日本から返還するとかしないとかいう問題とは、別個の問題であるということを申し上げておるわけでございます。
  108. 横路節雄

    横路委員 それでは、私もできるだけ委員長に協力をして、あと十分しかありませんから、予定の時間内に納めたいと思うのです。ところが第五項は、「韓国法人又は韓国自然人の日本国又は日本国民に対する日本国債、公債、日本銀行券、被徴用韓人の未収金、補償金及びその他の請求権の弁済を請求する。本項の一部は下記の事項を含む。(1)日本有価証券、(2)日本系通貨、(3)被徴用韓人未収金、(4)戦争による被徴用者の被害に対する補償、(5)韓国人の対日本政府請求恩給関係その他、(6)韓国人の対日本人又は法人請求、(7)その他、」五項目はそうなっておる。  そこで私は、委員長にもう一度申し上げたいんです。この問題は、ここのうちの被徴用韓人未収金、これは労働大臣の所管なんです。また労働大臣、いないんですよ。まあ総理もごらんになっていただきたいんです。総理、私は、もうあと十分という時間の制限があるから、十分でやめようと思っておるんです。たいへん言いづらいことだけれども、主査報告ですから、総理は、おいでにならなくてもいいんです。しかし、各省関係のものは全部出ているわけですから、総理はお出にならなくても、各省大臣は全部出られるべきだ。しかし、先ほどは郵政大臣がお出になっていない。こういう予算委員会というのは、いまだかつてないんですね。予算委員会が時間がおくれてくるとかなんとかというのは、こういうことに原因をしているんです。私は、こういうやり方でどんなに予算委員長や、筆頭理事の二階堂氏が苦労されてもだめですよ。そこで私は、総理がおいでになったから、言いづらいことだけれども言っておきたいのです。先ほどもこのために三十分時間をとっているんです。委員長、私はまたここで、労働大臣の出席までどれだけ時間がかかろうと、待ってやるというのがほんとうからいえば、予算の審議からいえば当然だが、しかし私は、けさ十一時十分から始めて、初め一時間の予定というのが、郵政大臣がお出になっていない、あるいは総理の出席を要求されて出られたということがあるから、いま労働大臣の出席を得るまで、私はここで待とうかなと思うが——ここで私は、委員長に要求したい点がある。あともう五、六分で終わるわけですから、第一項からいままでの項で、いままで政府のほうが、いわゆる八項目については、政府は、回答できないんだ、こういっていた。ところが、きょうは具体的に回答されたわけです。だから、具体的に回答されたのですから、そのことをまとめて、この予算の締めくくり総括質問が始まる前までに、第一項、第二項、第三項、第四項というように、いままで政府答弁されたものをまとめてお出しいただきたいのであります。なぜならば、第一項については、合法的な持ち出してある。いままでの金額で明らかになっているのは、徳安郵政大臣が言った十四億円だけである。いま労働大臣に来てもらえば、未収金の問題は——前の大橋労働大臣は供託してあると言う。昭和二十八年の林外務省情報文化局長の談話によれば、当時相手方がこの交渉決裂のときに、要求したのは、いわゆる南北朝鮮を合わせて九十億だ、そのうちの、いまの郵政関係の問題や、いわゆる韓国人の徴用未収金の問題等は、北朝鮮にもだいぶ行っている。だから、千五百万ドルないし二千五百万ドル程度のものが五億ドルになる解決をしようとしているのだから、そういう意味で、私は本来から言えば、またここで労働大臣の出席があるまで待ってやるのが当然だと思うけれども、しかし私は、初めから言われている一時間の時間をだいぶ過ごしてやっていますから、私もひとつここでいままで答弁されているわけですから、それをまとめて締めくくり総括質問の前までに、文書で本予算委員会に出してもらいたい。第一項については、合法的に搬出したのだから、これは日本側としては払う必要はない。先ほどからいろいろ答弁があったわけですが、そういうようにしていただければ、ここに労働大臣はおらぬけれども、私はこれで質問を終わりたいと思うのです。この点は、ひとつぜひ委員長で取り計らっていただきたい。
  109. 青木正

    青木委員長 横路委員から御要望の第一点の、閣僚の出席の点につきましては、委員長からも厳重に注意いたします。  第二点の問題につきましては、その取り扱いにつきまして、理事会において検討いたすことにいたしたいと存じます。
  110. 横路節雄

    横路委員 理事会に一任いたしますが、ぜひ委員長においても、いままで答弁された点があるわけですから、ひとつまとめて出してもらいたい。  それから、私はこの機会に佐藤総理に申し上げておきますが、予算委員会の運営については、第二分科会は、われわれも野党だが、担当の中野主査に協力をして、土曜日の七時までにあげるべく、みなでやったわけです。しかし、こうやって閣僚がかってに出てこない、そのために審議がおくれる、こういうことは、総理の責任において、私は、十分注意されてしかるべきだと思うのです。  以上で私の質問を終わります。
  111. 青木正

    青木委員長 次に、野原覺君。  なお野原君に申し上げますが、先ほど申し上げましたように、総理大臣は二時までということになっておりますので、総理大臣に対する御質疑を先にお願い申し上げます。
  112. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、先ほど予算第二分科会主査から報告がございました、主として日韓問題についての私の質疑に関連してお尋ねをしてまいりたいと思うのであります。  総理もお見えでございますから、総理に対しましても私は若干お尋ねをしなければなりません。去る二十五日の午後一時過ぎであったと思うのでございますが、私が椎名外務大臣に質問をいたしましたそのあらましを、きわめて簡単に申し上げておこうと思うのであります。  私は、椎名外務大臣にこう尋ねたのであります。まず第一点は、椎名外務大臣が韓国を訪問されたが、ついに私どもに対しては、国会に対しては、その目的を明らかにして行かなかったじゃないか、このようなことは、外交の姿勢を正す上からもきわめて問題が多いということを指摘してお尋ねをしたのであります。  第二点は、基本条約の仮調印について尋ねたのであります。仮調印をしなければならなかった理由があるならば、その理由を述べてもらいたい。日韓の問題は、総理よく御承知のように、たくさんの懸案事項をかかえておる。横路委員が質問をいたしましたように、財産請求権の問題、あるいは最近新聞に報道されております法的地位の問題、その他たくさんの諸懸案事項があるのでございまするが、基本条約に仮調印をした以上、それらの諸懸案の事項についても、おおよその解決のめどがついておるのではないか。もしついておるならば、でき得るだけこれを国会に明らかにすべきではないかということも私はただしたのであります。ところがなかなか明らかにならぬのです。明らかになりませんから、明らかにすることもできない。いつ解決するか、そのめどすらもつかめない。今日の時点で仮調印をするということは、今後の外交折衝を進めていく外交技術の上からいっても、拙劣なやり方といわざるを得ないが、どうか、という点を私は指摘をいたしました。  第三点は、高杉全権の問題であります。なぜ高杉全権を連れていかなかったのですかと聞いたのです。高杉さんは首席全権であります。基本条約の仮調印をするというのに、なぜ高杉さんを連れていかぬのか。連れていかないところを見ると、さてはわが社会党がこの国会で追及したように、高杉発言をおそれたからではないのか。この点をはっきりしろと言いましたが、これもついにうやむやであります。  第四番目に私が聞いたのは、今後の日韓会談の見通し。  第五番目には、特に李ラインの問題について、私は重点を置いてこれを尋ねたのであります。この問題が実はこの分科会における報告に対する私の質疑の大部分を占めまするから、これはあとで十分ひとつ掘り下げて触れていきたいと思うのであります。  第六番目には、竹島の問題を尋ねたのです。竹島は日本の領土だという主張を政府は従来してきたのでございますが、その竹島が、単に島といっても、日本の領土だ。この領土の問題を今後どのようにして解決するのかという点をただしましたが、これまた一向に総理、椎名さんは要領のある答弁をしないのです。しないのですよ、あなたの外務大臣は。  第七番目に、私は共同声明の一字句を取り上げまして、過去の関係は遺憾でございます。深く反省しておりますと、外務大臣が韓国を訪問されて、これは韓国に向かってあいさつをしておる。そのことが共同声明にも入っておるわけでございますから、過去の関係とは一体何なのか、遺憾だというのは具体的にどういうことなんだ、反省しておるということはどういうことかということを、これは尋ねたのであります。  第八番目には、東南アジアの問題について、東南アジアの外相会議にあなたは出席しない。これは総理、昨年の十二月のいつでございましたか、外務委員会で外務大臣が明言したのです。東南アジアの外相会議には出ませんと、穗積委員の質問に答えておきながら、向こうの外務大臣から、韓国で、どうですか、この反共会議にぜひ日本も加わってもらいたいと要請されたら、国会では出ないといっておきながら、あいまいにして帰ってきたのであります。そのあいまいの点を私はついたのです。  以上が、私の実は二十五日の予算第二分科会における質問の概要でございます。  そこで、まず第一にお尋ねをしなければなりませんのは、先ほども申し上げましたように、李ラインの問題です。李ラインの問題については、外務大臣がきわめて重大な答弁をしたのであります。この答弁が重大でございまするがゆえに、分科会の審議であるにもかかわらず、二十五日の夕刊から二十六日の朝刊にかけて、日本の大新聞はこれを一面のトップに取り上げられました。この点からいっても、これはきわめて重大な内容答弁をしたのでありまするが、ところが外務大臣は、私にそのような重大な答弁をしておきながら、わずか何時間もたたないうちに、その日の午後六時、外務省で、記者を呼び集めまして記者会見をして、大臣談話を発表したのであります。私に対する国会答弁に関連した大臣談話なのであります。このことは、総理、まことに私は異例のことだと思う。国会答弁したことで、わずか一、二時間の後に今度は外務省に行って記者を集めて、それに関連した談話を出す、こういうことは、私は、めったにこれはあるべきことではない。この異例のことをした理由はどこにあったのか、これは、まず外務大臣から承っておきたい。
  113. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 まだ、速記について十分に研究いたしたいと思いますが、野原議員と一問一答でかなり激しい問答をいたしました。それで、その日の夕刊に、ある新聞が、李ライン撤廃について合意というような見出しで出たのでございまして、これは、どうも非常に誤解を生んだ。そこで、私の答弁したことについていろいろ、どの点が誤解の点であったかという点を考えてみたのです。合意というような問題については、たしかあなたからも、合意をするのかしないのかというような御質問があった。そこでわれわれは、李ラインというものを初めからもう認めていないのだから、撤廃について合意などという外交上の形でやる——大体われわれから見れば実体がないのだ、そういうことを私は話してあるのでございますから、それにもかかわらずこういう誤解を生んだのはどういうわけかということを考えてみた。それは、李ラインの撤廃を前提として漁業会談を進める云々というふうに、私は前提としてということばを用いたことを思い出したのであります。この前提ということは、非常に元来が味があいまいでございまして、前提として、それを目的としてという意味に使う場合と、それから前提としてということばは、それの前提を踏んだ上で、その上進む、こういう場合と、いろいろな意味に使われるのです。私は、あくまで李ラインの撤廃を目的としてという意味に使ったのでありまして、それは、あなたと私との質疑応答の内容をよく読めば、どなたでも私はそういう解釈に到達するものと思うのであります。そこで、どうもこの前提としてということが誤解のもとではなかったか、かように考えたものですから、たしか六時前後だと思いますが、記者会見をいたしまして、その点をはっきりと、自分の真意はこういう意味であるということを私から話した次第であります。
  114. 野原覺

    野原(覺)委員 外務大臣、そういたしますと、あなたの二十五日の夕刻における記者会見の大臣談話というのは、私に対する、予算の第二分科会における答弁を訂正したことになるわけですか。訂正した談話ですか。
  115. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いや、そうではありません。各新聞に季ライン撤廃了承とかいろいろなことが書いてありましたので、自分の、国会で応答した内容をせんじ詰めて言えば、季ラインの撤廃を目的とするものであって、わがほうの交渉方針は韓国側もよく了承しているはずだ、こういう趣旨だ、こういうことを記者諸君に誤解のないように伝えておくほうが今後のためにもなる、かように考えたのでそうしたわけであります。何も答弁を訂正したわけじゃないのです。
  116. 野原覺

    野原(覺)委員 訂正したわけではないということであれば、私に対するあなたの答弁は依然として生きておる、このように解釈してよろしゅうございますか。
  117. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 生きておりますが、私の真意は、あとで新聞記者にしゃべったとおりの真意であったと思うのです。
  118. 野原覺

    野原(覺)委員 総理、お聞きのとおりです。  私に対する答弁は生きておりますと言う。生きておりますけれども、真意は新聞記者に話したとおりである。それでは、私に対する答弁は真意でないのですか。
  119. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いや、でありますから、ことばが明確を欠くから、それで私の真意は、目的のもとに会談を進める、前提としてということは目的の意味だ、こういうことでございますから、これは、あの速記録を訂正しようとは思わないけれども、あなたが解釈する場合には、私の真意をひとつ考慮して解釈していただきたい。
  120. 野原覺

    野原(覺)委員 前提とは目的のことだ、それが真意だというならば、李ラインの撤廃が漁業交渉の前提だということをあなたは何回となく繰り返しておるのです。その前提は、つまり目的ということなんだ、漁業交渉をやって妥結したならば、李ラインが結果においては撤廃されるかもわからない、そういうことなんだ。それならば、これは明らかに訂正じゃありませんか。何を言っているのですか。
  121. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いろいろなぐあいに解釈されるきわめて不明確な文句であるから、私の言う真意はこういう趣旨であるということを言っているのです。
  122. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、私に対する答弁はそのままでは、あなたの真意がくみ取れない、そこで、あなたは記者会見によってあなたの真意をつけ加えられたんだ、あなたの舌足らずを補充されたんだ、このように理解してよろしいですか。
  123. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 注釈の意味でお話ししたのでございます。
  124. 野原覺

    野原(覺)委員 それが注釈であるかどうか、これから明らかにしてまいりましょう。その上で私は、総理に重大な点をお尋ねしたいと思うのです。  そこで、まず明らかにしたいことは、あなたが二十五日の夕刻、記者会見で発表された大臣談話、これは文書で出したか口頭で出したか、いずれにしてもその中身をここでお述べいただきたい。
  125. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 現在行なわれておる漁業交渉は、わがほうとしては李ラインの撤廃を目的とするものである。わが国のこの交渉方針は、韓国側もよく了承していると信ずる。こういうことであります。
  126. 野原覺

    野原(覺)委員 そこで、私に対する答弁の速記と比較しながら質問をしてまいりたいと思いますが、まずその前に、あなたが新聞記者の皆さんに発表された大臣談話についてお尋ねしておきます。これは、明らかにするために私はお尋ねしなければならぬのです。  委員長に申し上げておきますが、なぜ私がこのことに時間をかけるかというと、これは、総理もお聞き願いたい。国会において答弁したことを、院外において大臣が個人の談話で舌足らずを補充する、訂正するということは、私は国会審議の権威の上から断じて許すわけにいかぬ。そのようなことをやられたら、何をもってわれわれは、国会議員国会で審議をするんだ、このことは、総理、十分ひとつ考えてもらわなければならぬ。  そこで、私は明らかにするために時間をかけます。この問題は、私は非常に重大に考えておる。  そこで、あなたがいま大臣談話をお述べになりましたが、こう言ったですね。現在行なわれている漁業交渉は、わがほうとしては李ラインの撤廃を目的とするものであり云々、韓国側もよくこの方針は了承しているところである。こう言っておる。李ラインの撤廃を目的とするということを韓国側もよく了承しているというんだが、その了承ということはどういうことですか。何によって了承ということをあなたはつかんだのです。
  127. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この場合大事なことは、李ラインの撤廃そのものを了承しているという場合と、李ライン撤廃というわがほうの方針を承知しておる、こういう意味と、両方まぎれないようにしなければなりません。それで、私は、撤廃を目的としてこの会談を進めるというわがほうの考え方については、先方はこれを承知しておる、こういう意味で述べたのでございます。
  128. 野原覺

    野原(覺)委員 何を根拠に承知しておるとあなたは理解をされますか。
  129. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、しばしばこの国会において関係大臣から言明しておるところでもありますから、当然了承しているものと私は信じたのであります。まあ思うということを言ったか、あるいは了承しているものと信ずると言ったか、これはいまよくなにを調べてみたいと思いますが、とにかくわがほうの方針として、日本は何を考えておるかということは、向こうは了承しておる、こういう意味で申し上げたのであります。
  130. 野原覺

    野原(覺)委員 了承しておるということは、わがほうが了承しておるものと思うと一方的に認めることなのか、はっきり向こうが了承の意思表示をしてきたのか、それを聞いておるのですよ。   〔委員長退席、二階堂委員長代理着席〕
  131. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 先般の訪韓の際は、この問題について、私はどの首脳部ともこの問題を話題にしておりません。  そこで、向こうが日本に対してどういう認識を持っておるか、日本が漁業会談を進める腹はどこにあるのかということを、向こうが国会においてもしばしば言明しておる問題でもございますし、あるいはほんの事務当局の間でそういったようなことが繰り返されておったかもしれない。いずれにしても、日本の日韓会談に臨む態度というものはどういうものであるかということは、向こうは承知しておるはずである、こういう意味であります。
  132. 野原覺

    野原(覺)委員 こういうあいまいな答弁では、委員長、時間がかかって困る。  私は、このことに実は拘泥したくないのです。ところがいま、わがほうの李ライン撤廃をするという交渉方針は韓国側も了承しておる、こういう記者談話でございますから、私はこの了承についてお尋ねをしておる。  これは了承したものと日本が認めておるのか、それとも、韓国側も日本の交渉方針を、それでけっこうと認めたのか、日本が一方的にひとり合点をして、ああ了承しておるものだろう、こう思っておるのか、これははっきりしてください。それははっきり——何ですか、あなたはこんなことで……。
  133. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それに対して受諾をするという意味じゃないのです。いわゆる戦う前には敵情を偵察するということが必要なんですが、相手方の考え方、態度というものは、一体どういう態度でくるかというくらいのことを考えずにお互いに会談に臨むはずはありません。向こうとしては、日本は漁業会談によって李ラインの撤廃の目的を達する腹だなということを向こうが承知の上でやっておるのだ、こういうことであります。
  134. 野原覺

    野原(覺)委員 承知の上でということは、これは少しも明快でない。自民党の皆さんもお聞きのように、承知の上でということは、こちらの腹芸で、こちらが一人合点をしておる。相手側ははっきりその明示の意思表示がない。承知の上だがということを向こうが思っているんだろうというあなたの推測ですか。これはあなたの推測ですか。日本政府の推測ですか、重大ですよ。これははっきりしましょう。
  135. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これ以上は文句の争いになると思いますが、私は向こうがそれを受諾するというのではなしに、そういうことを承知して、そして会談に入ろうとしておる。承知ということは知ってです、知るということです。
  136. 野原覺

    野原(覺)委員 総理、私は外務大臣とこういう問答で時間をかけたくございませんが、承知しておるとは知っていることだ、三つ子に言うような答弁です。私はそういうことは聞いてないですよ。総理もお聞きのように、承知しておる、相手方が知っておるということは、何によって日本は判断したかと聞いておるのですよ。これは明らかにしてください。何によって判断しておるか。日本では腹芸ということばがある。腹と腹でいこうということがある。しかし、外交の交渉は、総理にお尋ねしますが、腹芸でいけますか、腹芸で。もし腹芸でいくならば、条約は要らぬのだ。国と国との外交交渉に、相手も知っているだろうというような、そういう推測で了承しているところであるというような発表をされては、はなはだ迷惑千万だ。だから、私は外務大臣に聞きますが、これはいつ、どういう方法で相手は了承しておるのか、これは述べてください。私はそれでなければ——ちょっと待ってください、外務大臣。あなたは、それでなければ新聞記者の皆さんに発表した大臣談話を取り消しなさい。新聞記者の皆さんには了承しておると発表したんだ、韓国は了承しておると発表したんだ。韓国が了承しておるならば、いつ了承したのか、どういう方法で了承したのか、それの答弁ができなければ二十五日の夕刻の記者発表は取り消しなさい。ここで取り消しなさい。
  137. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 李ラインについての向こうの解釈は、あたかも沿岸から百数十マイルのところに李ラインを引いて、そして、これは韓国の領海なりというような前提のもとに、そこに入るわがほうの漁船を拿捕してまいっておるのであります。今回漁業会談でまず——まだ残っておりますけれども、解決を見ないのでありますが、だいぶ両方で接近しておるのは、専管水域を十二マイル、こういう最近の国際慣行に基づいて十二海里の原則を、大体これは受諾しての上で、そうしてどういうふうに、この島や海岸線が屈曲しておりますから基線を、直線基線をどういうふうに引くかということが問題としてまだ残っておる。そうして、その基線以外はいわゆる共同水域として、両国の漁船がたとえば魚族の保護の趣旨から、隻数の制限はお互いにしなければならぬけれども、自由にこれは漁業の共同海域としてやる。この隻数の問題をどうするかというようなことが、いま会談の途中で問題になっておる、こういう状況であります。これらの事実からいいましても、李ラインというものを、大体日本がこれに対してどういう考え方で臨んでおるかということは、よほどのお方でない限りは、これはもう明々白々であります。いつからどうした、こうしたという必要はないと私は思うのです。
  138. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、あなたの答弁と、二十五日の記者会見との内容の違いを明らかにしなければならぬと思って、執拗にお尋ねをしたわけです。そのお尋ねをした結果明らかになったことは、李ライン撤廃する、漁業交渉の目的——あなたの言によれば、前提ではない。漁業交渉の妥結の結果、自然に李ラインは消滅をするというか撤廃をされる。そのことは相手方も了承をしているものと思う、こういうことのようですね。これははっきりしてください。
  139. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 日本の漁業会談に対する方針、態度なりというものを向こうは十分承知の上でかかっておる、こういう私は確信をしておりまして、それを申したのであります。
  140. 野原覺

    野原(覺)委員 その確信は、客観的な事実に基づく確信ではなく、推測によるあなたの思惑、推測によるものだ、こう理解していいでしょう。あなたは確信があるというが、客観的な事実があるならそれを言いなさいよ。言わないから私は助け舟を出しているんだ。
  141. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いま申し上げたとおり、両国の漁業会談は事務レベルにおいて相当煮詰まっておりますし、韓国の元農林大臣と赤城農林大臣との間で、いわゆる閣僚会談において相当のところまで煮詰まっておる。その内容は、専管水域の問題、それから専管水域以外の海面は、これは共同水域として、そして、将来いかに魚族資源保護のためにお互いに隻数その他の点において規制するかということにもう入りかかって、それで中断しておる。この事実から見ても、向こうのほうは李ラインというものを、日本はこれを撤廃を、あるいは消滅を目的としてこの会談に臨んでおる、そういうことを承知し、しかも、この会談に応じて相当進んだ程度までに、話が途中でありますけれども、そこまで煮詰まっておるということは、これはもう向こうが、この問題について日本は何を考えておるかということを十分に知っての上のことである、これはもう争う余地のない問題である、かように信じております。
  142. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたは、その信じておる根拠を言わないんですよ。言ったらたいへんだと思っておるんですよ。また記者会見をしなければならぬ事態が起こることをおそれておるでしょう。卒直にいって、これは、日韓の問題についての答弁は慎重にやらぬとたいへんだ、ひっかかっちゃいけないというあなたの警戒心でしょう。あなたの答弁はだれが聞いても矛盾だらけですよ。私は、総理の時間の関係もございますから、先に進みながらいまの点も明らかにしていきましょう。総理、私は予算の第二分科会で質問をしたところが、これは総理にこれから御答弁を要求しますので、よくお聞き願いたいと思うのです。椎名外務大臣がこう答弁したのです。「漁業問題の残された重要な点は三点あると思うのであります。第一は専管水域のいわゆる基線の引き方、それから共同水域の魚族資源のためにいろいろお互いに漁船の隻数であるとかその他制約をすることになっております。」速記に基づいて読み上げます。その制約の問題、それから「最後に両国の漁業の状況は、非常に格差がある。その格差をできるだけ協力して縮めるということが両国のために非常に望ましいことでございまして、それを日本のほうで協力するために漁業の資金を提供する、してもらいたいというその三点でございまして、表面からは李ラインの撤廃ということはうたってありませんけれども、これは、われわれは事あるごとに、国際法上あるいは国際慣例上不法不当なものである、これを前提にしてわが漁船を拿捕するというようなことは、これはもう絶対にあり得ない、許すべからざることである、こういうことを声を大にして叫んできたのでございまして、これを撤廃するという前提のもとに」、よろしいか、これをとは李ラインだ。「これを撤廃するという前提のもとに両国の当局者が漁業の会談を進めておるような状況であります。」、李ライン撤廃を前提として漁業の会談が進められておると、明らかに言ったのです。そこで、私は、それではその撤廃は双方の合意かと聞いた。日本は撤廃を主張しております、その主張を相手方も認めたのか、私の合意というのは、こういう意味だ。日本の主張を相下方が認めれば、これは合意だ。だから、撤廃は双方の合意かと聞いたら、椎名国務大臣「大体これはわれわれは初めから認めてないのでありまして、認めてないものを撤廃するということをわざわざ取りかわす必要はない。」、実に詭弁だ、これは。「もし撤廃するということを何か両国の当事者が申し合わせをするというなら、その前提としてこういうものが合法的に成立しておったのだということになるであります。これは、初めからこんなものは問題にしていない、こういうことでやっておるのであります。向こうのほうも大体そういうつもりで交渉に応じておると私は確信しております。」、そこで、私は次に質問をした。これは省きます。そうすると、椎名国務大臣「漁業問題の交渉は、これはもう李ラインの撤廃を前提としてやっておるのですから、」、また、二同出てきた。これをまず李ラインを撤廃するというような合意をする必要はない。こういうものはもう認めないという前提で、」三回出た、漁業交渉の前提は李ライン撤廃、三回出た。「前提で両国の当事者が折衝しておることであります。」、李ラインの撤廃は漁業交渉の前提だというので両国の当事者が折衝していると、はっきり言った。そこで私は、最後にだめを押しました。李ラインは認めませんね、李ラインは認めない、その前提の上に立って漁業交渉がなされておる、韓国も了承の上ですねと聞いたら、椎名国務大臣「さようでございます。」、李ラインの撤廃は漁業交渉の前提、韓国も了承したとあなたは断言したじゃないか。このことを新聞記者の皆さんが重大に取り上げたわけです。取り上げたところが、あなたは、あなたの私に対する答弁が終わって外務省に帰って、外務官僚に突き上げられたのですよ。大臣、たいへんですよ、きょうのあなたの答弁は事は重大ですよとあなたはやられたのでしょう。あわ食って新聞記者の皆さんを外務省に集めて、大臣談話を出したのじゃないか。経過はそうじゃありませんか。そうなりますと、李ラインの撤廃は漁業交渉の前提。ところが、先ほどの大臣談話は、漁業交渉はわがほうとしては李ラインの撤廃を目的とするものである、前提を目的ということに訂正をされております。そして、その先でこう言っておる。椎名国務大臣「漁業会談の成立が李ラインの撤廃を前提とするものでありまして、」、また出てきた。「われわれは李ラインの存置を向こうが主張する以上絶対に漁業会談には応じない。」、速記ですよ。漁業会談にいま入っておるんだ、赤城農林大臣は。農林大臣、おるでしょう、農相が漁業会談に入っておる。漁業会談に入っておるということは、李ラインの撤廃が前提だ。李ラインの存置を向こうが主張する以上絶対に漁業会談には応じない、漁業会談の折衝には応じない、こう言っておる。よろしいか。「しからば向こうの当局者はどうか、」、向こうの当局者とは韓国だ。「もちろんその前提のもとに会談をお互いに進めておる、」、こう言っておる。その前提のもとに会談をお互いに進めておる。これは、こういうことが韓国の新聞に載ったのでは、韓国の国民は李ラインの撤廃に反対をしておる、その突き上げが来てたいへんなんだということで、あなたは日本の国会を愚弄するつもりでしょう。われわれをだまそうとするつもりでしょう。これは、真実を言いなさい。あなたはこういう答弁をずっとやってきておるんだ。そうして、「こういう状況でございます。」、その次、椎名国務大臣「漁業会談は最も重要な問題でございまして、これはあくまで李ラインの撤廃を前提として会談が進められつつある。したがって、もしこれが向こうが態度を変えて存置するというようなことであれば、会談は絶対に成立しない、」、会談成立の条件だと言っておるじゃないか。妥結の結果じゃない、李ラインの撤廃は。会談に入ったことだ。だから、季ラインを撤廃するという言質を向こうが与えたのだとあなたは明らかに言っておるじゃないか。それを今度の大臣談話ではえんきょくに否定をしてごまかそうとしている。  総理大臣に聞きます。かりにこの大臣談話に問題がないといたしましても、国会において国務大臣が答弁したことを、院外において大臣がかってに、新聞記者集めて、大臣談話を出して、自分の真意を訴えるというこのやり方は、決して国会を重視したやり方でないと私は思います。総理の率直な御答弁を承りたい。
  143. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来椎名外務大臣と野原君との間で、問題になっている点をいろいろ議論されました。私は静かに伺っておりましたが、そのいずれもが、国会を愚弄するものではなく、国会を尊重するというその立場には立っている。椎名君のお話を聞けば、やや誤解を招きやすいような表現をしたということで、これは時期を失してはならない、かように思って記者会見をした、かように聞き取れたのでございます。   〔二階堂委員長代理退席、委員長着席〕 ことに、野原君がいま指摘になります季ラインというものは、これはもう今回の漁業交渉で最もたいへんなむずかしい問題であることは御承知のとおりだと思います。わが方はかねてから、国際法上この李ラインというものは不当不法なものだ、この観点に立ってあらゆる機会に主張をしておる。これが、交渉の段階におきまして、いかように相手方もこれを納得するか、あるいは納得しないか、そういうことが結局交渉の結果生ずるものだと思います。私は、交渉の結果、こういう点についても、両国が満足するような方法、そういう処理が望ましい、かように心から実は願っております。したがいまして、ただいまいろいろこの李ラインをめぐって論争されましたが、おそらくこれは、日本国民もまた韓国国民もたいへんに関心を持っておることだ、かように私も感じます。そういう意味で、国会においてこの点を明確にしろと、かように言われることも、わからないではございません。しかしながら、ただいまこの問題が一番の骨子になっておるということでございますから、しばらく日韓漁業交渉、その結論を待っていただきたい、私はかようにお願いをしておきます。
  144. 野原覺

    野原(覺)委員 骨子になっておることは、総理、私もよく知っておりますよ。これは重要なことなんだ。国際法違反、不法不当、日本の政府はこの日韓会談は李ラインの撤廃を重点にこの交渉をしてきたと言っても過言ではないのですよ。骨子です。それから、韓もこの季ラインは存置するといってがんばってきたんだ。これが日韓会談のまとまりを今日まで延ばしてきたということも、それは私もよく知っております。しかし、骨子であればこそ、私どもは尋ねなければならぬのです。あなたは政府を信用しなさいと言うけれども、政府がもし間違った結論を出して条約を締結する時点になれば、それは内閣不信任を出したらいいでしょうとうそぶくかどうか知りませんが、そういうわけのものじゃないです、私ども国会議員としては。やはりこれは、日本国民のために、日本のために有利になるような条約を結ばなければ、これは国民に申しわけないのです。だから私は聞いておる。外務大臣、私はあなたに端的に聞きます。あなたは私に対して、李ラインは認めない、その前提で漁業交渉がなされている、これは韓国も了承している、さようでございます、こう言ったのだから。了承しておる、こうあなたは答弁したのです。これは、あなたは訂正するつもりはないと一番最初に言った。訂正するつもりはない。私は、わざわざ二十五日の大臣談話は訂正ではございませんかとあなたに助け舟を出したが、これは訂正ではないとあなたは突っぱねた。とすると、私に対するこの答弁は生きておる。生きておりますね。いかがですか。
  145. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 注釈を加えただけで、その速記録を訂正しようという気持は、要求するつもりはありません。真意をそれによってくみ取っていただきたい、こう思います。
  146. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたの真意をくみ取れと言うけれども、われわれは、あなたが発言したその文章、ことばの中身を探って真意をくみ取る以外にないじゃございませんか。あなたの腹の中を見てくださいと言ったって、何が一体わかりますか。とんでもないことを言いなさんな。だから、あなたが訂正しないと言うならそれでよろしい。私は、訂正をしたらどうかと言わんばかりに言ったけれども、あなたは、間違いじゃないんだ、こういうことでございますから、これはこれでけっこうであります。  赤城農林大臣にここでお尋ねしておきます。
  147. 青木正

    青木委員長 野原君に申し上げますが、総理大臣のお約束の時間が参っておりますので……。
  148. 野原覺

    野原(覺)委員 それでは、赤城農林大臣はあとに回して、総理に大事な点を二、三お尋ねしておきましょう。  重要な外交問題の審議で、事ごとに一日か二日たてば取り消したり、それから、私の真意を見てくださいといったような、こういうあやふやな外務大臣のもとでは、ほんとうにわれわれは安心して外交審議はできない。いまあなたは、国会審議の訂正は院外で談話によって行なうべきではない。国会を通じて、舌足らずの点があったら補正しなければならぬし、訂正しなければならぬし、取り消ししなければならぬ。この原則は総理もお認めでしょう。国会は毎日行なわれておるのですよ。それを、なぜあわてて二十五日の夕方——あしたでも予算分科会はあったのです。進んで出てきて私を呼び出して、そして、国会答弁したことは国会で真意を補正する、こういうやり方をとることが私は国会の権威を重んずるゆえんだと思う。いかがですか。
  149. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 普通の場合においてはそうだと思います。ただ、外交の機微の問題等になりますと、これは時間を争う問題でございますから、私は、あのときに外務大臣のとった処置は適切であったような気がいたします。もちろん、私の先ほどお答えしたことと、また外務大臣がここでいろいろ問い詰められてお答えしておることも、これは同一であり、椎名外務大臣が特に別な方向で動いておる、かようには私は考えておりません。ただいまの前提についての論議なども、本日明確になったろう、かように私は考える次第でございます。
  150. 野原覺

    野原(覺)委員 一つもなりませんよ。あなたが罷免権を持っておる外務大臣でございますから、あなた自身の、御自身の責任になるからそういう助け舟を出されるか知りませんけれども、われわれは一つも訂正されたとは思っておりませんよ。そういう独善的なことを総理から答弁されちゃ困る。  そこで、総理にお尋ねいたしますが、あなたの日韓会談の方針は、池田内閣方針を踏襲されておる、私はこう思いますが、いかがですか。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、池田内閣当時どうであったか、これもやはり早期解決といいますか、早期妥結、こういう線をとっていたと思います。私、内閣を担当して以来、日韓間の国交を正常化することは、隣同士の国ではあるし、できるだけ早くしたい、こういう早期妥結という考え方をいたしておるわけであります。
  152. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、重要な御答弁を承ります。あなたは池田さんから政権のバトンを受け継いだのです。そうして、前の池田さんは、あなたと同じ自民党の総理じゃございませんでしたか。その自民党の総理、池田内閣がどういう日韓会談の方針を持っておったかということをあなたは御承知でないのですか。いかがですか、それは。たいへんなことをあなたは言いますね。
  153. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、別に基本的な線で違っておると思いません。また、ただいま議論がいろいろ出ておりますけれども、今日までも一括解決というその方針は変えておりませんから、早期妥結ということは申しておりましても、別に、変わっている、かように私は考えておりません。
  154. 野原覺

    野原(覺)委員 基本的な線で違わないということであれば、どこか違うところがございますか。あなたはこれから外交の責任者ですよ。最高の責任者ですよ。外務大臣なんて窓口ですよ。その最高の責任者は、前の内閣のとってきた外交方針、そのやり方、これは当然考えておるはずだ。どこか違っておるところがあればお示し願いたい。ないならないでけっこうです。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ないように思っております。もし違っていることがあったら、教えていただきたい。
  156. 野原覺

    野原(覺)委員 大体踏襲ということであります。そこで、私はお聞きいたしますが、きょうの三月一日の毎日新聞に金東作大使の談話が出ております。この談話を読んでみますと、ソウル発ロイター電、こう書いてある。「本国政府と協議のため二十八日帰国した金東作駐日韓国大使は同日記者団に、韓国政府は李ラインを国防・漁業資源保存ラインとして維持していく意向であると言明」したとある。これは、金大使の談話だけではない。私は毎日の記事を取り出しておりますけれども、これは、きのうおとといごろからどの新聞も、韓国側の情報として日韓会談の解説の中に取り上げておるのであります。  そこで、総理にお聞きしたいことは、李ラインが国防ライン、防衛ライン、漁業資源保存ラインと変更されることに対しては、どのような所見を総理はお持ちですか。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま大事な交渉をしておる際に、金大使の言動、これが新聞に出たからといって、それをとやかく批判することは差し控えたいと思います。ただ、先ほど来申し上げておりますように、李ラインというものは国際法上不法であり不当なものである、このわが国の基本的な態度でありますから、この点は御了承いただきたいと思います。
  158. 青木正

    青木委員長 野原君、総理の時間が参っておりますので……。
  159. 野原覺

    野原(覺)委員 李ラインは不当、これは池田内閣も言ってきた。池田さんはもっと明確に言ってきた。平和ラインとか何とかラインというような、そういうものを認める意思はありませんと池田内閣は言ってきた。あなたは、私がいま金大使の談話を出したから、これを批評してはどうかとおっしゃいますけれども、李ラインが魚族資源保護のラインになるか防衛ラインになるか、そういうことに対する基本的な方針がないのですか。金大使の談話じゃない、一体あなたにはそういう方針はないのですか、なければないでいいですよ。
  160. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国際法上不法不当ということは、これをそういうところへ線を引くことについて私どもが主張しておるわけですね。それが、ただいま言われるように、国防ラインあるいはその他のラインになるか、そういうような事柄についても、国際法上そういうことは考えられないんだというのが私どもの主張であります。だから、不法不当というその考えは非常にはっきりしているので、この点で日本の基本的方針について疑いがあろうとは私は思いません。
  161. 野原覺

    野原(覺)委員 そうしますと、いま韓国の政府から出されるところの情報を私どもが集めておりますと、どうしてもやはり韓国は、国内向け対策のためにも、李ラインを完全に撤廃することは不可能のようですね。これは、政府もその情報はとっておると思う。これは、韓国の国民感情の面から言っても容易でないようです。これは、国際法違反であれ何であれ、どうにもならない事態に今日来ておる。そこで、韓国では、この李ラインを防衛ラインとして残す、魚族資源保護のラインとして残す、その意見が韓国の政府筋においても強いのです。これは、総理も御理解願えると思う。そこで、いま私が言った金大使の談話はともかくとしても、李ラインを撤廃するかわりに、これを防衛ラインとして韓国から要求をしてくる。そういたしますと、日本政府は、ここで総理がはっきり申されましたように、これが防衛ラインとか魚族資源保護のラインということについては反対である、この点は、私ここで確認いたしておきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の態度は先ほど来申し上げておりますし、またこれは、日本政府、日本国民の熱願でもある、かように私考えます。せっかく交渉中でございますので、ただいまの御意見は十分拝承しておきますが、私、せっかく交渉中の問題でありますだけに、基本的態度を明確にするというだけで終えたい、かように思います。いずれにいたしましても、交渉によって明確になることでございますから、しばらくお待ちを願いたい。
  163. 青木正

    青木委員長 野原君に申し上げますが、たびたび申し上げますとおり、総理大臣との約束の時間が参っておりますので……。
  164. 野原覺

    野原(覺)委員 もう二、三の質問で終わりますから、これは委員長にお願いします。外務大臣の答弁がだめなんだから、こういうことになったのです。  そこで、総理、基本的態度は、私ははっきりしたと思います。そこで、総理に申し上げておきますが、実は、いまの李ラインに対しても日本は認めないできたのです。事は認めないじゃ済まないのです。日本は認めないにかかわらず、あの李ラインを侵犯したというので、韓国は海賊行為を繰り返してきた。漁船を拿捕した。漁船を抑留した。監獄にぶち込んだ。そういうことをやってきたのです。だから、韓国は、今度は防衛ラインだ、こう言って、あなたはそれを認めないんだと言ったって、これは苦い過去の経験から言ってだめですよ。これを認めないためには、日本政府の基本線を貫くためには、何らかの取りつけをしなければならぬと思いますが、私の説に賛同願えますか。
  165. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来私が申したのがもしも誤解があるとなんだが、私どもが言っているのは、李ラインというもの、その実体を残すということは、国際法上不当であり不法だ、こういうことでございます。したがいまして、ただいま言われるような漁船の拿捕だとか、あるいは船員の抑留だとか、こういうような事態が起こらないような最終的な取りきめは何とてもしなければならない、かように私は思います。ただいまの御意見はさような意味合いではないか、かように考えますが、問題はただいま折衝中なんだから、御意見も十分拝聴しておきますが、さように御了承いただきたいと思います。
  166. 野原覺

    野原(覺)委員 あと二問で総理に対する質問を終わります。私は、さすがは総理大臣だと思います。こう言っちゃ失礼ですけれども、椎名外務大臣とはやはり違いますね。はっきりおっしゃる。  そこで、あなたに大事な点で一点お聞きしておかなければならぬのは竹島の問題です。竹島は島根県に属する島で、日本の領土である。ところが、これをなかなか韓国はうんと言わぬで、独島といって、兵隊を派遣したり何かして、今日占拠しておる。そこで、日本政府は手をやきまして、過去において国際司法裁判所に訴えようじゃないかということに政府方針がきまった。ところが、国際司法裁判所に持ち出すためには、日本政府が提訴をする。提訴をするのに相手方の応訴が必要になる。応訴がなければ司法裁判所の舞台に上がらない。提訴と応訴だけでもないようですね。私、外交の専門家ではありませんが、専門家にお聞きいたしますと、合意趣意書というのをつくらなければならない。それで、日本のつくった合意趣意書に基づいて相手方が合意をするという条件が整って初めて竹島が国際司法裁判所の舞台に上がるということになる。そこで、私どもは、この問題を小坂外務大臣のときから大平外務大臣のときまで、実は池田内閣にいろいろお尋ねをしてきたのです。そうしたら、小坂さんも大平さんも池田総理も、こう私どもに明言をされた。その問題はぜひとも応訴を取りつける、合意趣意書は合意を取りつける、そのことが一括解決の中の一分野の竹島問題の解決になる、こう言われてきたのであります。この点は、私は池田内閣当時といささか変わらないと思います。これは、大事な領土の問題でございますから、少なくとも司法裁判所には持っていくのだということぐらいのことにしなければならぬと思いますが、総理、いかがですか。
  167. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの竹島問題、これはわが国の固有の領土だ、こういうことで主張されております。御承知のように、池田内閣時分からこれについての態度ははっきりしている。ただ、御承知のように、司法裁判所に応訴したからといって、これだけで解決するものでもございません。少なくともその解決は、他の時期にあってもこれを解決するめどが立つという、そういう方向であるならば、ただいまは国民もこの問題について了承がいただけるのではないか、かような意味合いを私どもは持っております。いまおっしゃる、国際司法裁判所に提訴する、また応訴願う、これも一つの方法だ、かように私考えておりますが、いずれにいたしましても、固有の領土であるというこの主張は、はっきり明確にいたしたい、かように私は考えております。
  168. 野原覺

    野原(覺)委員 総理に対する質問の最後であります。しかし、総理に対する質問を私は急いだために、私の論点も少しくずれたのでございますが、そこで、委員長にお願いします。そういうわけで、外務大臣、農林大臣になお私は二、三お尋ねしなければならぬのです。  最後の総理に対する質問は、日韓会談を進めておられる日本政府の最高の責任者である佐藤総理大臣としては、過去の日本と韓国との関係についてどのような御反省を持っておられるか、このことです。明治四十三年でございましたか、伊藤博文が第一代の総督に赴任して朝鮮統治をされた。あの明治の末期に行なわれた日韓併合は間違っておったとお考えか、朝鮮統治は誤っておったという考えをあなたはお持ちかどうか、これは明確にお示し願いたい。
  169. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 伊藤博文公は、実は同じ山口県で、同郡の方であります。先輩であります。私の隣村の出身であります。そういう意味で、たいへん日韓合邦、また統治時代、いろいろ思い出もございます。しかし、こういう事柄についての最終的な結論は、いわゆる歴史家のやることだろう、かように考えますが、私、この日韓間について特に考えたいことは、今日日韓が正常な国交関係を取り戻すとすると、これは明日のため、あるいは明後日のため、将来にわたる考え方でこの日韓国交の正常化をはかる、こういう態度であってほしいと思います。いろいろ過去については議論もあることだろうと思いますが、そういう事柄よりも、前向きといいますか、明日の日韓間、明後日の日韓間、将来にわたる日韓間正常化、それを考えていくべきだ。そういう意味で、大事な今日の交渉、これが妥結する、そういう場合に、両国が一つの希望を持ち、そうして進んでいく、こういうことでありたい。これは日韓間の国交正常化で、私の心から願うところのものであります。過去につきましては、いろいろの批判があり、またそれを弁護する考え方もあるだろう。しかし、それをこの際にとやかく申し上げることは、将来の日韓間の正常化をただいまのように見ていく私の立場からは、あまり有益なことでもないんじゃないか、かように私は思います。
  170. 野原覺

    野原(覺)委員 お約束ですから、これは総理の御退席を私も承認しなければならぬのでございますが、ただいまの総理の御答弁に対しまして所見を申し上げておきます。  総理も御承知のように、あなたの外務大臣椎名さんは、共同声明を、基本条約の仮調印に参りましたときにしてきたのである。その共同声明の中に、日韓の過去の関係は遺憾である、このことを強く反省しておるという意味の文言があるのです。そこで、私は二十五日の分科会でこの点を取り上げてお尋ねいたしましたら、外務大臣は、日韓の併合は間違いでした、朝鮮の統治は誤っておりましたと明確に答弁をしました。これは、佐藤総理と外務大臣との感覚の違いか、それとも日韓会談をうまくまとめなければならぬというので、心にもないことを外務大臣が国会答弁したのか。この点は、私ども、これから国会が五月二十日までございますから、これはあなたにもまた出ていただきまして、外務大臣にも出ていただいて、この点は私は今後追及してまいりたいと思うのであります。  以上で、総理、けっこうです。  そこで、委員長……。
  171. 青木正

    青木委員長 野原君に申し上げますが、持ち時間が参っておりますので、簡潔にお願い申し上げます。
  172. 野原覺

    野原(覺)委員 持ち時間に応じたいのですが、委員長も御承知のように、実にあやふやな答弁をされるものですから、議事を進めることが私も困難でございました。  そこで、外務大臣にお尋ねをいたします。一九五二年に李ラインは李大統領の宣言によって設定をされたのであります。それ以来、海賊行為が繰り返されまして、日本漁船は拿捕される、漁船員は抑留される、投獄をされる、こういううき目を見たのでございますが、これは、外務大臣でなくてもけっこう、運輸大臣でもけっこう、一体日本の漁船が過去においてどういうひどい目にあってきたと政府は考えておるのか。漁船拿捕の数、漁船員抑留の数、投獄された数、それらのものをお述べいただきたい。
  173. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 御答弁申し上げます。  韓国による拿捕数について、これは、四十年三月一日海上保安庁の調べであります。昭和二十二年以来現在までに、韓国より拿捕されたものは三百二十六隻でありまして、三千九百四名、このうち帰還したものは百四十一隻、その人数は三千八百九十六名、このほか、拿捕抑留中沈没または死亡したものが、船が三隻、人は八名であります。でありますが、現在未帰還はありません。ただ、船体は百八十一隻残っております。船員は全員帰還いたしております。  なお、年度別、数字別、詳細にわたっては水産庁のほうが詳細にわかると思いますが、われわれのほうはこれだけ以上、詳細はわかりません。
  174. 野原覺

    野原(覺)委員 では農林大臣にお尋ねいたしますが、佐藤内閣になってから逮捕された漁船、漁船員、それらの李ラインを原因とするいま運輸大臣が発表された事柄について、佐藤内閣になってからは一体どれだけの損害を日本は受けてきたか、逮捕されたか、これは御発表願いたい。
  175. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 政府委員から数字を答弁させます。
  176. 和田正明

    ○和田(正)政府委員 昭和三十九年におきます拿捕隻数は九隻でございます。拿捕人員は九十九名、現在未帰還の人員はございません。
  177. 野原覺

    野原(覺)委員 九隻とか九十九名だか、椎名外務大臣、これは抗議をしましたか。いつどういう形で抗議をしましたか。あなたは日韓の会談をまとめようと思って韓国に非常に協力的なんだが、どういう形で、いつ、何回抗議をして、それに対して韓国の政府は何と回答しました。
  178. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そのつど抗議を申し上げてあります。
  179. 野原覺

    野原(覺)委員 そのつど抗議と言いますけれども、これは、佐藤内閣になる以前から、つまり韓国は李承晩ライン、李ラインを設けてきてからこの方のことなんです。ただ抗議抗議で事は終わっておるのですよ。これは、日本の国民感情として了解できないのです。なぜこれを国際連合に持ち出すということを今日まで政府はやらなかったのか、その理由。
  180. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 かなり長くかかっておりますけれども、日韓間の問題はできるだけ平和裏に解決したい、話し合いによって解決したい、こういう考え方のもとにそのつど抗議をし、話し合いの機会を持つようにしてまいったのであります。
  181. 野原覺

    野原(覺)委員 国際連合に持ち出すことは平和裏の解決ではないのですか、お尋ねします。
  182. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それは平和的でないとは言いませんけれども、まあお互い一衣帯水の間柄でございますから、話し合いによって解決をつけたい、こういう方針のもとに従来この方針をとってきたわけであります。
  183. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたのようなふらふら腰では、残念ながらこれらの問題は解決できない。何ということを御答弁なさるのだ。国際連合を何のために設けているのであるか。国際法違反のラインを引かれて、そこを侵犯したからといって海賊行為をやられて、それでもあなたは黙っておるのでしょう。それで一体日本政府の外務大臣ですか。日本政府は一体何をしているのだ。これはたいへんなことなんです。  そこで、私は次にお聞きしますが、池田内閣のときに平和ライン及び漁業問題委員会というのがあったのです。あなたの私に対する答弁、これは、私よりもむしろ二十七日の予算の第二分科会における楢崎委員に対するあなたの答弁を読んでみますと、李ラインの撤廃は表の議題にはしない、これは私が先ほど読み上げた速記にもあった。表の議題にはしないのだ、こう言っておる。じゃどうするんだと言うたら、専管水域の設定、共同規制水域の設定、それから韓国に対する漁業協力資金の供与、この三つでいくのだ、いわゆる撤廃は表には出さぬのだ、こういうことを言っておりますけれども、しかしながら、前内閣においては、平和ライン及び漁業問題委員会といって、李ラインの問題が表に出てきておったんだ。これがいつの間にか消えてなくなっておる。この消えてなくなったのは、いつ、どういう理由に基づいて、前内閣の平和ラインを議題に出しておったものをなくしてしまったのか、その理由をお述べ願いたい。
  184. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 前内閣が平和ラインとか李ラインというものを表面これを認めたということは、私は聞いておりません、それで、この問題は全然向こうと前提が違っておる。向こうはこれがあるものとして拿捕行為をやる、こちらは、ないがゆえにこれは不当な行為である、こうして対峙してきたわけでございまして、前内閣の時代にそういうものが存在したということを存じません。
  185. 野原覺

    野原(覺)委員 前内閣じゃなければ、その前でもいいんですよ。これは、財産請求権の委員会、法的地位の委員会、いろいろあったでしょう。予備会談で、たくさんの委員会で分科会に分かれてやったんだ。そのときに、平和ライン漁業問題委員会と、平和ラインがついておったはずだ。なかったですか、あなた。たいへんなことを言いますね。平和ラインというのがついておったはずだよ。
  186. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 訂正いたします。漁業委員会という名前で残っておるそうであります。
  187. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、外務大臣の重大な食言であります。楢崎委員に対しては、李ラインの撤廃は表に出さない、私に対してもそういう答弁をしてきた。ところが、予備会談の中において平和ラインという名前は残っておるというじゃありませんか。これは食言ですよ。
  188. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 詳しくはアジア局長から申し上げます。
  189. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 御指摘のとおり、この平和ライン及び漁業委員会というのは正式の名前でございます。新聞等にはあまり長いので俗称漁業委員会といっておりますが、平和ライン問題を議するというたてまえはくずれておりません。
  190. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、外務大臣は、私に対する答弁並びに二十七日の楢崎委員に対する答弁の、李ラインの撤廃については表の議題にしないということは、これは間違いであったのだとあなたは取り消されますか。いかがですか。
  191. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 平和ラインをめぐって漁業問題の付議を進めておる、こういう現状でございます。
  192. 野原覺

    野原(覺)委員 表の議題にしないということは取り消しますか。表の議題にしない、あなたはこう言ったのだ。専管水域、共同規制水域、漁業協力資金の供与、この問題を解決すれば、結果として自然に消滅するんですと、こう答えてきたんです、長々と。しかしながら、平和ラインが予備会談の中に題目として残ったのは、表の議題じゃないですか。あなたの答弁は間違いであったと男らしく取り消しなさいよ。また記者会見でやりますか。取り消しなさいよ。
  193. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 少し研究さしていただきます。そして……。   〔発言する者多し〕
  194. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  195. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 正確にお答えする意味において、少し研究しますから……。
  196. 野原覺

    野原委員 お聞きのとおりです。委員会軽視もはなはだしい。私は承服できません。委員長、ああいうような態度は承服できないですよ。
  197. 青木正

    青木委員長 ちょっとお待ちください。打ち合わせのことを言っておるのでありますから。
  198. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、過去における外務委員会、予算委員会の椎名外務大臣の答弁の速記を調べてみなさい。もうそのつどそのつど答弁の中身が変わってきておる。これは全く信頼ができません。これは、委員長において外務大臣を呼んで取り消させない限り、私は次の質問はできない。
  199. 青木正

    青木委員長 外務大臣から答弁がありますから、お待ちください。
  200. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 表の議題としないということは、適当でございませんから、取り消します。
  201. 青木正

    青木委員長 野原君、時間がだいぶ超過いたしましたので、結論をお願いします。
  202. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、総理が退席されるというので、農林大臣に対する質問を留保しておきました。それで、農林大臣にお尋ねします。  あなたは、二月二十七日の分科会で、小林進委員の質問に答えて、日韓漁業交渉に臨む第一の条件は、李ラインを撤退することであると述べております。速記もございます。間違いありませんか、赤城さん。
  203. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 李ラインが撤退できなければ漁業交渉は意味をなしません。でございますから、漁業交渉は李ラインの撤廃ということを中心として交渉されるわけでございます。その他具体的・技術的な問題はありますけれども、そのとおりであります。
  204. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、外務大臣の見解と農林大臣の見解は明らかに違う。外務大臣は何と言ったか。専管水域、共同規制水域、それから漁業協力資金の供与、この三つで話をする、この三つで話をしていけば結果において自然消滅をする、それも、自然消滅をするだろうなんというようないいかげんなことを言っておる。ところが、あなたは、いや、李ラインの撤退が第一の条件だ、これは、外務大臣は私にも赤城農林大臣と同じような答弁をしておるのです。答弁しておるのだが、これは後宮局長も、私に対する答弁のときにはそばにおったんだ。そばにおって、専門家の局長の前で答弁しておる。後宮さん、よく知っておるはずだ。そう言っておきながら、今度は記者会見であのような、真意でないというようなことで、私への答弁を円滑に取り消そうとたくらんでおる。赤城農林大臣の言われることは、私はそのとおりだろうと思う。外務大臣、農林大臣のこの見解は、あなたの外交方針から言ってこれは間違いというごとになりますが、いかがですか。あなたはこれを認めますか。
  205. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 赤城農林大臣と私の真意はひとつも変わっておりません。どうすればこういったような障害をなくするかということを重点に置いて漁業会談を進める以外にないと、こういう趣旨でございますから、矛盾いたしません。
  206. 野原覺

    野原(覺)委員 外務大臣、変わっていないとすれば、もう一度申し上げます。日韓漁業交渉に臨む第一の条件は——交渉に臨むですよ、妥結の結果ではないよ。交渉に臨む第一の条件は李ラインを撤退することである、もう一度言いますよ。日韓漁業交渉に臨む第一の条件は李ラインを撤廃することである、御承認になりますか、あなたは。承認されますね、これを。
  207. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私の真意と変わらないと思います。
  208. 青木正

    青木委員長 だいぶ時間が超過いたしましたので、結論をお願いします。
  209. 野原覺

    野原(覺)委員 そうすると、漁業交渉の前提は李ラインの撤廃、そのことは韓国も了承しておるという私に対する答弁は、依然として生きておるわけであります。あなたは私に対する答弁を訂正しないと言うところからみても明らかであります。二十五日の記者会見の大臣談話は、私に対する答弁の訂正ではないとあなたがこう言われたところからも、もう一つは、李ラインの撤廃が漁業交渉の前提だ、それは韓国も了承しておるのだ、あなたは取り消さぬのですから、このことは生きておるわけであります。私は、このことをはっきりここで確認をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  210. 青木正

    青木委員長 次に、大原亨君。
  211. 大原亨

    大原委員 私は、第三分科会におきまして議論いたしました問題点につきまして、あらためてここに質問をいたしまして、関係大臣の所信をただしたいと存じます。  最初に質問をいたしたい点は、二十七日の土曜日の支払い側と政府与党代表との間におきましてかわされました了解事項をもちまして、一応事態は新しい段階に入ったという状態にあるわけであります。私どもが振り返ってみますと、九・五%の緊急是正をめぐりまして、厚生大臣は違法・不当なる職権告示を強行いたしまして、そして、中央医療協あるいは社会保険審議会などの三者機関、これを無視いたしまして、いまだかつてない未曽有の混乱状況におちいりました。私どもは、このような医療の総ワクの問題と、そしてだれがこれを分担するかという問題について、民主的なる機関や民主的なルールを破壊をした神田厚生大臣の責任を追及いたしたのであります。そして、これらの社会保険審議会やあるいは総理大臣の諮問機関である社会保障制度審議会などの機関を尊重して、民意に基づいてこの事態を収拾すべきことを、政府国会を通じまして強く要請をいたしたのであります。  で、了解事項ができました段階において、官房長官に、まず最初に、これらの問題に対しまする決意と将来の見通しにつきまして所信を明らかにしていただきたいと存じます。
  212. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 医療問題につきましては、国民の皆さんをはじめ国会の各位に対していろいろ御心配を相かけまして、まことに恐縮千万と考えております。  この問題は、御承知のようないきさつからして、手続によって法案を提出する順序がなかなか立ちませんために、私は、もちろんこれは厚生大臣の所管を取り扱うわけでありませんけれども、総理大臣の補佐として、また政府の一員として、この問題の解決は国民医療にとって大きな問題であるという立場から、かつまた、今日までこじれにこじれました問題の曙光を関係各位の御理解によって解決をいたしたい、さような決意をもって、御承知のように、せんだって来からして、両三回にわたって長時間にわたり、誠意を持って支払い者側ともいろいろ意見の交換をいたしたのであります。その結果、御承知のように、二十七日、七時間近い会談の結果、数項目にわたる了解点に達したわけであります。その中で、いま大原委員からの御質問は、政府直接の問題、ことに予算の関係として、各保険の財政の健全化に資するために政府は国庫負担の増額その他の措置をとるという項目についての御意向でもあり、もちろんその他の条項についても御質問であろうと思います。で、問題はこの予算の関係でありまするが、もちろん政府としてはいまただちにこれの措置は困難でありますけれども、これら各保険の財政等十分に勘案して、将来において、もちろん時期的にはいろいろな問題がありますけれども、これら保険財政の健全化のために最善の努力をし、予算上においてもできる限りの措置をいたしたい、かような回答をいたしまして御了解を願ったわけでありして、政府はこれら事項につきましては全く誠意をもってこれが善後措置を講じたい、かように考えております点を御了承願います。
  213. 大原亨

    大原委員 私ども、この第三分科会で、厚生、労働、地方自治省等を中心といたしましていろいろ質問を進めてまいりましたけれども、医療保険の問題、特に当面の薬務行政の問題等につきましては、九名以上の質問者が与野党から殺到いたしまして、非常に論議をいたしたわけであります。そこで、了解事項についての突っ込んだ質問は、さらに同僚委員から逐次なされると私どもは考えておりますから、私は端的にお尋ねしたいのですが、この分科会の論議を通じまして議論となりました薬務行政、そういう問題につきましていろいろと議論をいたしました中で、当然、今回の健康保険の三法改正に伴う本人の半額薬価負担、二千円頭打ち、こういう問題については、これは主客を転倒した政策である、こういう点を薬事審議会やあるいは薬価基準やあるいは保険財政の実情、運営の問題等から徹底的に議論をいたしたつもりであります。私は、当然のこととは存じまするけれども、保険三法の改正案の中の薬価の本人負担の問題についても、政府原案に拘泥をしないで、国会の審議と国民の世論を十分に聞いて、この原案についてこれを修正撤回をする、そういうことについても十分政府としても国民の意見を聞くという、そういうおつもりになっておられるかどうか、そういう点につきまして、言うなれば厚生大臣が二人あるようなものでありまして、官房長官も厚生大臣で、支払い君側とお会になる、政府を代表される、こういうことでもございますから、ひとつ、そういう点は非常に切実な問題でございましたから、官房長官から、政府の御意見といたしまして論議をされました点で、見解を明らかにしてもらいたいと存じます。
  214. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 ただいまの御質問は、職責上厚生大臣から御答弁申し上げるのが妥当と思いまするが、ただいま大原委員がおっしゃるように、支払い者側に対して政府を代表して私から答えてありますので、その関係上、私からお答えを申し上げます。  おっしゃいますように、実は、この問題につきましては、御承知のように、当予算委員会におきまして佐藤総理大臣からして、答申案が出ればこれを尊重して善処する、こういうような総理大臣の言明がなされております。当日の支払い者との会談におきましても、政府代表として私は、党からも幹事長、政調会長が出席されましたが、その三者代表が支払い者側に対しまして、答申案が出ますれば、どういう答申案が出るかわかりませんけれども、その答申案に対しては敬意を表し、かつまた誠意をもって善処する、この旨をお答えいたしておりますので、その方針をもって善処いたしたいと考えております。
  215. 大原亨

    大原委員 そこで、限られた時間ですから、単刀直入に問題の第一点に入ってまいりたいと思うのですが、予算委員会分科会の審議を通じまして、薬務行政のあり方の中で、当面をいたしております問題の劇薬入りのアンプルのかぜ薬、この問題は非常にたくさん議論をされたわけであります。その際に私どもは行政処分その他の問題を議論いたしましたが、厚生大臣のほうから、二月一ぱいのうちに専門的な機関の試験を完了するので、それを待ってそのようなことに対する政府の処置について決定をしたい、こういう答弁があったわけでございます。きょうは一日になっておるわけでございますが、試験の結果についておそらくわかっておると存じますので、簡略にその御報告をしていただきたい。
  216. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。  アンプル入りのかぜ薬の問題は分科会でお答えしたとおりでございますが、ようやく試験の分析結果が一応出てまいりました。内容は、許可いたしました基準のとおりでございます。しかし、大原委員がいま述べられたように、また分科会当時にいろいろおことばのやりとりがありましたように、議論がございますので、なお十分ひとつ調査いたしまして善処したい、こう考えております。
  217. 大原亨

    大原委員 きょうの新聞によりましても、引き続いてアンプルによるショック死が起きておるわけであります。基準に適合しているという検査の結果のお話でございますけれども、今日まで正月以来続いて起きてまいりました事態というものは、これは、ピリン剤という劇薬が入っておるアンプル入りのかぜ薬を服用いたしました者が次から次へとショック死をいたしておる。その診断書にも薬物中毒ということになっておるわけであります。したがって、これが基準に適合しておるからといって放任できる筋合いのものではないと存じますが、この点は、政府委員でもよろしいけれども、この法律関係をまず最初にひとつ明確にいたしていただきたい。
  218. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 けさ新聞に報道されました大阪のほうの事故につきましては、十時半から阪大におきまして行政解剖に付する、その結果を直ちに報告するようにということにいたしておりますが、まだ報告が参っておりません。それで、アンプル入りの感冒薬につきましては、一応、事故のありました従来の中身につきましては、法定の基準どおりの中身になっておるということがはっきりいたしましたので、現在学界の先生方十二人が集まりまして審議中でございますが、一般的な問題として、アンプル入りの感冒薬につきまして、たとえばスルピリン、アミノピリン等を含んだものにつきまして相乗作用がどういうふうになっておるかというふうな一般的な問題を国立衛生試験所でとりあえずやりました結果、内容につきまして現在審議中でございます。
  219. 大原亨

    大原委員 続いて質問をいたしますが、現在試験をいたしておるのはどういう名前の薬品なんですか。
  220. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 パブロンアンプル、それからテルミック及びエスピリン、エスピレチンにつきまして、主としてその中に入っておりますアミノピリン、スルピリンその他の成分につきましての試験検査の結果でございます。
  221. 大原亨

    大原委員 この中には非常にたくさんの問題があるわけですけれども、問題は、昭和二十八年に散薬、粉末剤といたしまして許可をいたしました薬品を、アンプル入りの水溶液という形態でつくらせたために、非常に弊害がいま続出して、そうして、劇薬の作用でショック死をしている、こういうところにあると思うのですが、これは、薬務行政上の重大なる手落ちがあるのではないか。私は、その間の承認、許可の関係について明らかにしてもらいたい。
  222. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 御指摘のように、現在のかぜ薬全般につきましては、二十八年にきめました配合基準に従っておりますが、その後剤形の変化、つまりアンプル入りの申請が出てまいりまして、それにつきましては、三十二年にこれを許可いたしております。それから、当時の許可したこと自体につきましては、学者の先生方に聞きましても、それ自体は決して不適当だということは言えない、しかし、いわゆるピリン系の中毒症につきましては、これが何回も使用されることによって人間の体内でこれが過敏症になってくるのではないか、つまり、抗原、抗体の影響によって過敏症になる可能性もあるのではなかろうかという学問的な研究の課題といたしまして、その面を主として学界の先生方を集めて現在検討いたさせておるような状況でございます。
  223. 大原亨

    大原委員 つまり、水溶液アンプルに入れますと、液状になりますと変質しやすい、あるいは非常に口ざわりがよろしいから次から次へと飲む、こういうようなことで非常に問題を起こしておるわけですけれども、この昭和三十二年に許可をしたというのは薬事審議会にかけない許可だと思います。これは、薬務局だけが許可をしたのだと思いますけれども、私は時間がないから十分議論できないが、こういうことは、明らかに国民の生命と健康を守るという厚生行政の立場からも、あるいは薬品としての使命からも、これは致命的な欠陥があるのですから、自主的なるメーカーの処置を求める以外に、行政官庁が断固たる法律上の根拠に基づいて許可の取り消しをなすべきではないか。こういう点について明らかにしてもらいたい。
  224. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 お答えいたします。  スルピリンなりアミノピリンが水溶液になった場合に非常に危険性がふえるのではなかろうかという点、これは、まだまだ学問的に究明されておらない段階の分野でございまして、一応基準に従いました中身につきまして申請が出た場合に、これを許可することにつきましては、当時としては客観的に妥当性があるということは、学者の方々も言っておるわけでございます。それからまた、こういった承認をするにあたりましては、従来とも下熱、鎮痛剤につきましての基準というものは内規上つくられておりまして、その基準に従った申請があれば、これは行政庁におきまして審査をいたしまして許可して差しつかえないという従来の慣例になっておるわけでございます。  なお、許可の取り消し等につきましては、薬事法の五十六条におきまして、その許可されたものが許可の基準に合ってない、あるいは不純物が入っておる等々の限定された中身につきまして、許可の取り消しあるいは販売の禁止等がやれることになっておりますので、現在のところ、基準に基づきまして適法につくられたものを直ちに販売禁止あるいは製造禁止という措置はとるわけにまいりませんので、業界の方々に呼びかけまして、積極的にその販売をとめるようにということを要請をいたしておるわけでございます。
  225. 大原亨

    大原委員 時間がないからあまりなにしませんけれども、このピリン剤の入っておるアンプルの中には、それ以外に劇薬として指定をされておる燐酸ジヒドロコデインというのが入っている、そういうことを学者が言っておる。そういうふうなのが十六種類ぐらいいろんなのが入っておりまして、それが複合いたしましていろいろな副作用を起こしてくる、そういうことがいわれておるのであります。したがって、分科会において議論をしたように、厚生大臣は私の質問に対しましてはっきり答えましたが、薬については、事命にかかわることであるから、疑わしきは許さず、こういう国際的な薬務行政の基準に従ってメーカー督励すべきである。でないと、日本のような薬務行政は、全く国際的に見てみるとでたらめであって、医薬品のメーカーの全く系列下に入っておるのではないか、こういうことが指摘をされておるわけであります。疑わしきは許さず、こういう観点から、基準に合っているの、あるいは法律に云々であるのというふうなへ理屈を言ってじんぜんと日を過ごすというようなことになれば、これはたいへんなことである。であれば、やはりアンプル入りの許可自体が問題となってくるのであって、そのことの検討も含めて、メーカーに対する製造の許可の取り消しをこの際行政処分として明確にしなければ、武器を売ってもうけるのを死の商人というけれども、もうけるために手段を選ばぬで宣伝して薬を幾らでも売って、そうして人の命を取って、しかもてん然としてその会社が栄える、そういうようなことはあり得ないことであります。そういう点については、これは厚生大臣の領域であると思いますけれども、厚生大臣ははっきりその点についての見解を示してもらいたい。
  226. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。  ただいまお述べになりましたような考えのもとで、私、処置したい、こう考えております。
  227. 大原亨

    大原委員 では、具体的にどのような措置をしますか。
  228. 神田博

    ○神田国務大臣 目下解剖も進めておる際でございますし、いろいろ学者の調査も進んでおりますから、早急に結論が出ると思います。その結論に従いまして処置したい、こう考えております。
  229. 大原亨

    大原委員 つまり昭和二十八年には、このようなピリン剤系のかぜ薬を散薬、粉末剤として許可をいたしておるわけでございます。粉末剤として医師が配合いたしまして服用いたしますと、アンプル一本分が二円か三円であります。しかし、強力パブロンとか、その他包装をいたしまして宣伝費を投入いたしましてやりますと、百二十円から二百円にはね上がるわけであります。薬九層倍どころじゃない、二十層倍も三十層倍もなっておるわけです。そういうことは、だれが考えても、国民の医療を守るという観点からも、あるいは保険財政という観点からいま議論になっておるけれども、そういう観点からも許さるべきではないのであります。しかも、街頭において自由販売の形において、このようなものが、甘いのであるからジュースと同じような形でがぶがぶ飲む、そういうふうなことは、まことに日本は医療行政においては恥ずべきであります。そういう点において、厚生大臣がその点をいまや明確に一歩前進をした見解をここにおいて表明するということに分科会においてなっておるのですから、その点をひとつ明確にしてもらいたい。
  230. 神田博

    ○神田国務大臣 いま大原委員が述べられたような気持ちで、しかも急いで処置したい、こう考えております。
  231. 大原亨

    大原委員 この問題は、関係いたしましてあとで申し上げますが、第二の問題ですが、日本の薬務行政においては私は根本的に欠陥があるというのは、薬事審議会のあり方であります。新薬の製造、販売の許可と保険薬として採用するやり方が、私は一つ大きな第二の問題であると思うのであります。これは全くでたらめである、だめであります。というのは、新薬の製造、販売にあたって、メーカーだけの提出いたしました書類によって書類審査を行なうというふうな国はないわけであります。この点については、分科会において善処をするということを、改善すべきことにつきまして、厚生大臣は、なまはんかではございましたけれども、若干の見解を披瀝いたしておる。この点について一歩前進をいたしました明快な、つまり薬事審議会にかける、そういう手だて、いろいろな条件、そういうものを抜本的にこの際改善すべきではないか、そういう点につきまして、厚生大臣の具体的な見解を明らかにしてもらいたい。
  232. 神田博

    ○神田国務大臣 この問題は、先般来予算分科会等におきましてるる申し上げたとおりでございます。厚生省といたしましても、いままでの薬事法そのものについての適用について、あるいはまた実施の面につきまして、十分考慮して、ひとつ重大な決意をもって前向きで善処したい、こう考えております。
  233. 大原亨

    大原委員 重大な決意で前向きでということで、五月にはやめるというふうなことになっちゃだめなんです。しかしながら、ここに議事録が残っておれば、これは、やってもらわなければならぬ。前の小林厚生大臣はぶあいそうな人でありましたけれども、国会におきまして、薬務行政については、いろいろな点において示唆に富む答弁をいたしておりました。それを、あなたは何が忙しかったか知らぬけれども、これはなかなか前進していないから、こういう事態が、次から次へとショック死の事態が起きておるわけでございます。  そこで、この問題についてさらに突っ込んで御質問いたしますが、つまりメーカーが出しまする書類審査用の資料というものは、メーカーが学者その他の臨床例その他の実験例を添付いたしますが、それが自由に変えられる。つまり研究機関その他、大蔵大臣に聞いてもらいたいけれども、大学の病院その他に対しまして研究費が少ない、そこで百万円、二百万円というふうに謝礼金、研究費を出しまして、そうして都合のいい報告資料をとりまして、それを厚生省に持ってくる。つまりメーカーの系列下に学者の研究機関も入っておる、薬事審議会の学者先生も入っておるというふうに、今日非常なきびしい議論があるわけであります。それだけではなしに、厚生省の役人もこの系列下に入っておる。政党が全部とは言わないけれども、私は資料を持っておりますが、この人々も入っておる。こういうことで、今日の薬務行政——新薬の許可や保険薬の採用は、まるで医薬品のメーカーの手による医薬品のメーカーのための薬務行政である、こういうふうに言われておるのであります。だから、データを書類で出して、そうして、メーカーがかってにでっち上げてやるというようなことは、これは医学専門誌においても、慶応大学の西垣薬局長が座談会で、プラスとマイナス、副作用の面をはっきり書いておったところが、マイナスの面は削除する、副作用の面は削除して、プラスの面だけで認可の書類申請をしておるからけしからぬというふうに言っておる。この点について、私は、抜本的に国際基準に基づいて改正するということを、厚生大臣はもう一回明確にしてもらいたい。
  234. 神田博

    ○神田国務大臣 薬務行政につきましては、いま大原委員がお述べになったようないろいろの非難も、最近特に耳にいたしております。おっしゃるように、国民の生命に関係のある重大なことでございますから、できるだけすみやかに抜本的な処置をとりまして、そういう声の出ないように、国民の生命を守る、安心して用いられる薬をひとつ厚生省が折り紙をつけるんだというようなふうに持ってまいりたい、こういう決意でございます。
  235. 大原亨

    大原委員 たくさん問題はございますけれども、外国では、たとえばアメリカの例を言うと、政府機関と医師会が科学的な比較法という方式によって、だれが見ても新薬の効果が判定できるような、副作用が明確になるような、使用方法について留意点が明確になるような、命にかかわることであるから、そういう厳重な規制をいたしておる。そうして、日本において特にけしからぬのは、メーカーがかってにそういうデータを変えるというようなことです。たとえば、これは公文書にするとか、あるいは嘱託をした医師、学者がはっきりと客観的に責任が持てるような、学者的な良心に従って責任が持てるような、そういう方式でデータをそろえるような方法をとるべきである。それらを含めまして、薬事法を改正するために早急に着手する、そういう点につきまして、厚生大臣から明快な答弁をしてもらいたい。
  236. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。  ただいまお述べになったような方向で善処したい、前向きで至急ひとつ検討したい、こう考えております。
  237. 大原亨

    大原委員 全く厚生大臣と意見が一致いたしました。これは珍しいことです。  それでは第三の問題といたしまして、重要な問題につきまして質問いたします。つまり医薬品のコストの問題でございます。医薬品のコストの問題につきましては、ピリン系の感冒薬の二、三円のものが、アンプルでは百二十円あるいは二百円で売られておる、そういう例を申し上げました。包装代や広告費に金がかかっているという例を申し上げました。東大医学部の桜井博士や京都大学高田博士などが、これは座談会や論文で出しておられますけれども、いま総医療費を増大させておる中で、薬の使用が非常に大きい。これは、政府の資料にあるとおりであります。その中でビタミン剤と肝臓薬が多いわけであるけれども、そのビタミン剤の原価というのは、活性ビタミンやなんかも加えているが、B1をとってみますと、一キログラムが七千円であって、かっけその他の一人の必要量が一ミリグラムである。これは七銭である。一年間の必要量は二百円である。これは、薬九層倍じゃなくて、百層倍ぐらいに上がって売られているわけです。そして、大量療法という宣伝までくっついておる。大量療法は、専門家の意見によると、神経痛その他の限られた効能しかないのでありますけれども、じゃんじゃん大量療法というものが宣伝されまして、それを患者が医療機関に要求する。そして、医者側もどんどんそれを使うというような事態もあるわけです。だから、肝臓薬その他につきましても、十ぐらい有名なのがございますけれども、原価につきましては約五、六円というふうにいわれておる。アンプルでもそうだ。だから、包装代とか広告代、そういうふうなものが非常にばく大なコストを形成いたしておるのではないか。したがって、誇大な広告によって、印象広告などによって、薬品を日清ラーメンとか、あるいは前田のクラッカーと同じようにテレビなどでじゃんじゃん売っている国は、世界にないわけだ。そういうでたらめなところはないわけです。人の命にかかわるような薬品について、そういう販売の形態をとる、そういうことについては、私は非常に間違ったことではないかと思う。まず第一に質問をいたしたい点は、昨年の小林厚生大臣以来きびしくその点を私どもは議論をいたし、追及をいたしておったのですが、これに対しまするいかなる措置をとるのか、そういう点を厚生省の責任ある見解として明らかにしてもらいたい。
  238. 神田博

    ○神田国務大臣 薬の誇大広告の規制につきましては、一昨年でございますか、三十八年の七月だと思いますが、規制する規則を出しております。しかし、いま大原委員がお述べになったように、特にその後もむしろだんだん増加するというか、規制の実があがっていないというのは、御批判のとおりでございます。私といたしましても、今回このような事件も出た際でございますので、こういう機会にひとつ十分自制できるような処置をとりたい。また、都合によりまして立法の強化をする必要があれば、これも行なってよろしい、こういうふうに考えておりまして、薬事行政につきましては、前向きに先ほど来お答え申し上げているとおりやってまいりたい、こう考えております。
  239. 大原亨

    大原委員 それは、あなたは前向きに努力するとか検討しますとかいうふうなことですが、そういうおざなりなことではいけないわけです。これは、議論し尽くしたのですから。私は、広告基準について昨年八月に政府が新しい方針をきめたということを承知いたしております。しかしながら、それをきめましてからでも、ちょっと誇大広告や印象広告らしいものがあれば、始末書をぽんと出しておけば、これは買収されたかどうか、そういうことはわからぬけれども、かってだということをメーカーは言っている。だから、いま悪質メーカーほど良心的なメーカーを駆逐しておる。悪貨は良貨を駆逐しておる。これは、薬務行政がでたらめである証拠です。だから、そういう面において、そういう人の命にかかわることについて、あの広告基準にあるように、副作用の宣伝をしなかったり、いいところばかりやったり、飲んだらすぐきくとか、飲んだらすぐ何だとかいうでたらめな広告をするということは許せないわけです。そういうことをやった場合に、厚生大臣として的確な処置をとらない、広告基準についてはいろいろとつくっておるけれども、これが実行されていない、そういう点に問題があるのではないか。そういう点は、政府はどのような法律上の根拠と、そして、政府の監督権を発動して、こういう問題について善処をするか、具体的にどのように解決をしていくか、こういう問題につきまして、あなたは検討するかもわからぬが、政府委員でもよろしいから答弁をしてもらいたい。
  240. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 広告の取り締まりにつきましては、薬事法の六十六条に誇大広告等の禁止の規定がございますが、これは、広告の中身が虚偽または誇大になった場合に、二年以下の懲役もしくは十万円以下の罰金という規定があるわけでございます。それは、どの程度のものが誇大であるか、あるいは虚偽であるかという解釈につきまして、非常に問題が従来ともありましたために、昨年、御指摘のように、広告適正基準の大改正をいたしまして強力に業者を指導していくということで、一応根本的な改正になりますので、大体指導期間六カ月ということで、各県の担当者並びにメーカーの広告担当者を集めまして、数回にわたって講習をいたしまして、この三月以降広告適正基準に基づく強力な指導をやることになっております。したがいまして、この適正基準の発動と同時に、従来は単なる始末書等で処置いたしました分につきましては、強力に行政処分をやる。場合によっては業務停止その他のこともやるということを、業界その他のほうにはっきり示しておるわけでございます。
  241. 大原亨

    大原委員 昨年の八月に広告の適正基準をきめておいて、本年の三月からやろうというわけでしょう。こんなにやかましくなったからやろうというわけでしょうけれども、なかなかこれは信用できない。国会が終わったころまたゆるめようというような魂胆だろうと思う。国会が始まりそうになると、三月からやりますというようなことを言う。厚生大臣、いかがですか。私は、人命にかかわるようなこと、人を迷わせるようなそういう広告については、事医薬品については許せない、こういうはっきりした観点をもって、具体的にどういう決意でこの監督に当たるのか、行政処分をもってやるのか、こういう点について、もう一回決意を示してもらいたい。もう一つ、どういう処分をするか。
  242. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。  いまお述べになりましたようなことは、ただいま熊崎政府委員からもお答え申し上げましたように、司法処分までもしよう、断固たる処置をとる、こういう決意でやるつもりでございます。
  243. 大原亨

    大原委員 政府委員のほうでは三月からやるというふうに言ったのだが、三月からやるとか、二月からやるとか、四月からやるとか、そんなあいまいなものですか。それは、局長や厚生大臣がゆるめたり締めたりするのは自由自在なものなのか。そういうことでやったのでは、これはメーカーの系列下に入っているのだから、何もできやせぬ。
  244. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 お答えいたします。  薬事法に基づきますいろいろな行政処分につきましては、従来の取り扱いその他等を勘案しまして、一回、二回というふうに違反があった場合には、これを一応勧告いたしまして、それで、数回違反が続いた場合に行政処分に付するというふうな取り扱いをいたしておりまして、広告につきましては、従来そういう取り扱いを実はやってなかったわけでございます。  行政処分の中身につきましては、これは、業務停止、場合によっては許可の取り消しというところまでいけるような規定に相なっております。
  245. 大原亨

    大原委員 規定に相なっておるというのだけれども、いままで行政処分をした例がありますか。  それから、もう一つ念のために聞くのだが、新薬として製造販売を許可しておるのは何万で、保険薬として採用しておるのは何千か、この数字をちょっと簡単に言ってみてください。
  246. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 行政処分の例といたしましては、従来とも年に二、三十件の業務停止、大体十五日程度の業務停止はやっております。ただ、広告につきましては、行政処分はこれからやるということを各業界のほうに達しておるわでございます。  それから、現在国内におきまして薬の製造許可の承認をとっておりますのは、大体五、六万品目にわたるということになっておりますが、実際に市販されておりますのは、大体二万品目程度というふうに御了解いただいていいと思います。そのうち、保険薬として薬価基準に登載されております品目は、大体五千品目でございます。
  247. 大原亨

    大原委員 二万も薬が市場にはんらんをしておって、そうして五千幾つも……。これは、世界一多いわけだけれども、とにかく薬価基準という厚生大臣が告示するマル公の——あとで言うが、マル公の薬価基準がきめられれば、薬品メーカーには不景気なしなんだ。そうして、放送宣伝、街頭の宣伝、看板その他じゃんじゃんできるわけだ。そういうでたらめな国は世界じゅうにないわけである。二万の薬が流通しているというけれども、たとえば五社にとって見ても、二、三回くらいミスをしたら、それ勧告だ、あと処分といったら、何万回もミスができてしまう。そういうぐうたらな監督や指導のしかたではいけない。厚生省の薬務局というのは、厚生省の通産省だといわれている。通産省は、通産大臣はおられないようだけれども、九頭竜川では一番高いところへ入札を許したようなところである。つまり厚生省の通産省だといわれているところが、これが医薬品メーカーを国民にかわって監督する、処分するなどということができますか。それは、制度上私は問題があると思う。アメリカでは連邦取引委員会という公取がきびしくやっている。私は例を引いたんだけれども、たばこからガンになるというような問題が起きたときに、ディンジャーといって赤いマークで書け、危険だとタバコの包装に書けと言っている。日本では、私はここへ持っているけれども、もうでたらめなんだ。全く薬の中の表示なんというものは、なってはおらぬわけである。見えやしない。表示してあるのか何かわかりやしない。成分だけは専門家が見ればわかるようにしているが、これをじゃんじゃんぽんぽん、甘口だからと飲んだら、これは副作用が出たりショックが起きるのは当然である。アレルギーの問題は議論しないけれども、アレルギー体質というものは、自分自身には自覚症状がない。場所によっても違いがあると専門家は言っている。だから、こういうでたらめなやり方というものはあり得ない。この点については、いままでの行き方について、いままでにとらわれることなくやるのだ、断固やりますという、こういうことを明確に国民の前に示してもらいたい。
  248. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。  いま例示されましたようなこと、特に今度のアンプルの災いで非常に世間を騒がしております。これを取り締まるにつきましても、非常なよい時期だと私は思っております。こういう時期をとらえまして、いままであるいはルーズであったかどうか、これは、御指摘の点は私はあると思います。十分ひとつ配慮いたしまして、厳格に適用していく、かように考えております。
  249. 大原亨

    大原委員 いまの問題につきまして、またあと時間がありましたら続いていたしますが、もう一つ、コストの問題と関係深い問題で、分科会におきましてこういう議論が提起されたのであります。これは、国際的な常識なんですが、医家向けの薬品、医家向けの治療薬と大衆向けの保健剤、これがごっちゃになっておるところから、医療費の増大とか、誇大広告とか、いろいろな弊害が出ているのであります。この二つを分ける。医療の専門家治療薬というのは医学の専門雑誌に出せばよいのであって、何も大衆に知らせる必要はないのである。大衆が保健剤として飲む場合には、栄養剤その他のかわりに飲むのだから、大量療法という、のはきわめて限られたときでありますから、そういうことについては明確に分離をすべきである、こういう意見がいま同席の辻原委員高田委員やその他各諸君から次から次へと出された。私もこの問題は提起した。この問題について、私は、きょうは明快な厚生省の答弁を聞きたい。これは、それぞれの機関に諮問をするのだろう。格間をするだろうけれども、どういう考え方をもって諮問をしていくのであるかという点を、そういう決意や、方針、方向というものを明確にしてもらいたい。これは、保険財政ともきわめて大きな関係がある問題であります。
  250. 神田博

    ○神田国務大臣 いま御例示になりました医薬用の問題、それから一般保健用の薬としての問題、これをひとつ分離して取り扱ったらどうだ、広告取り締まり、あるいは宣伝等についても両者別途に考えたらいいのじゃないかということは、分科会でもお答え申し上げたように、私は一つの考え方、卓見だと思っております。私もそういう考え方については賛成でありますので、これは十分検討いたしまして、そういう方向に持ってまいりたい、こういうことをお答えしたとおりでございます。
  251. 大原亨

    大原委員 それで、厚生省の中に、昨年以来、私どもが社労その他の委員会で議論をいたしました当時の以後のことですが、医者向け、専門家向けの治療薬と大衆向けの保健剤とを分離をして、そして、大衆には大衆にわかるようなそういう宣伝のしかたや啓蒙のしかたや注意のしかた、そういうものをやる。これはしいて飲まなくてもいいものがたくさんあるから——私は、薬屋の悪口になるからいまあまり言わぬけれども、それはともかくとして、そういう分けてやろうというふうな案があったけれども、それを、メーカーの圧力でつぶされた、こういうので私の手元へ投書がきている。そういう事実があったならば、幾ら厚生大臣が、これはよろしい、合理的であるというふうに考えても、できないわけだ。私は、国会においていろいろな意見を聞くけれども、こういう方針を基礎として改革をいたしたい、そういう決意を明快な答弁として議事録に残してもらいたい。その意味におきまして、重ねて質問をいたします。
  252. 神田博

    ○神田国務大臣 何かやる場合には、利害関係の違うものからいろいろ反対とか投書とかいうものがあることもあろうかと思います。私は、いまの問題につきまして、さような投書のあった話も実は耳にしておりませんで、ただいま承った次第でございます。とにかく、先ほど来お答えしているように、分けるような方向でひとつ指導したい。これは、薬務局もそういうことを承知いたしておりますから、十分ひとつ前向きで善処したい、かように考えております。
  253. 大原亨

    大原委員 あなたが知らないというのだったら、政府委員でもよろしい。そういうことを計画してもみ消された事実があるかないか。
  254. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 三十五年の薬事法改正の際に、現在の広告取り締まりの条文の中に、政令で定めるものにつきましては、薬事審議会の意見を聞いて広告制限をすることができるという規定がございますが、先生の御指摘のお話は、そのときの条文作成にあたってのいろいろな話ではなかったか、こういうふうに考えております。
  255. 大原亨

    大原委員 その事実は、それとは違うわけであります。ちょっと答弁をごまかしているわけです。ここにあるのは違います。そういうことで大臣から答弁がありましたので、この問題は明確にそういう方向で処理をしてもらいたい。  それから、このコストを規制する問題で、昭和三十五年以来薬価基準が訂正をされていないのじゃないか。薬価基準は厚生大臣の権限によってやるのでございますから、医師会その他の関係でいろいろいままでのなにがありましょうが、しかしながら、やはり支払い側、被保険者を含めて、この問題は納得できるような形で、技術を尊重しながら、そして医療費の不当な増大や薬の乱用等を防止をするような、そういうためにも、薬価基準というものを適正にしていく、実勢価格に応じて下げていく、こういう点につきまして、私は今回の了解事項等にもございますけれども、厚生大臣、政府としては、はっきりした見解を持ってやってもらいたい。この点、いかがですか。
  256. 神田博

    ○神田国務大臣 薬価基準の改定については、いまお述べになりましたようなこと、また先般の支払い側と政府・党側との約束もあるようでございます。十分検討いたしまして善処していきます。
  257. 大原亨

    大原委員 あなたの答弁はむにゃむにゃ言ってわかりはしない。検討いたします、善処しますと言われるのですが、この問題はやはり論議になっているのですから、政府の決意をぴしっと示してもらいたいのです。私は、これはいつも引例するのですが、いまや国民皆保険下の医療保険については、いろいろ議論が出ている。しかし、一致点は私はあると思うのであります。診療側、支払い側と対立いたしておりますが、武見会長は、医薬品メーカーに隷属して、それらちりちりいわされる、そういう医者から、国民の医療に奉仕する医者になるべきである。技術尊重ということを、そういうたてまえで言っておる。だから、被保険者や国民の側からいっても、やはり信頼される医師の診断を受けたい。そうして、むだな薬でなくて、あまり保険料をたくさん払わないでも、適正な保険料で国の社会保障として十分見てやってもらいたいということがあるわけですから、私は、十分論議を尽くす中において、薬価基準の問題も放任をしておくのではなしに、適正にしていく。こういうことをすれば、総医療費の一兆三十九億円の中で三千億円から四千億円ほど少なくとも薬代があって、私が自衛隊の中央病院その他を調べてみると、小売りの薬の実勢価格は二割五分くらい下がっておるのですから、一千億近い金が出るわけです。これを全部が全部被保険者というわけにはいかぬが、技術を尊重するたてまえを通しながら、そういう点において、広告の規制やあるいは大衆保健薬と医家向けの薬とを分化させる、そういう問題等総合的に取り上げていくならば、私は、ここには相当理屈の通った前向きの解決策があると思うのであります。薬価基準の問題については、緊急是正、緊急是正で追いまくられているが、しかし、そういう問題について十分考えるべきではないか。その点について、重ねて厚生大臣の所見を明らかにしてもらいたい。
  258. 神田博

    ○神田国務大臣 いまの御意見は、私は非常に貴重だと思っております。十分検討いたしまして、実行に移してまいりたいと、こう考えております。
  259. 大原亨

    大原委員 この問題は、これから十分検討なさる、その方向で検討するということですけれども、これは、やはり十分国民が納得できるような措置をとってもらいたい。そうすれば、私は一番下の下の下策だと思うけれども、本人の薬価の半額負担、そして二千円頭打ち、こういう保険法の改正は、私はやる必要はないと思う。結局貧乏人や長期療養者を苦しめる。日雇い保健だったら五百円くらい、政管健保その他の健保だったら一千円くらいの現金を持たないと、医者に行けない。医者に行っても、それを払わない人がたくさん出る。そういうふうな政策、医療費の薬品代の半額負担、二千円頭打ちというふうな案は、これは根本的に薬務行政の姿勢をたたき直すことによって、粛正することによって、直すことによってこの問題の解決はできる、こういうふうに私は確信するのであります。この点に対しまして、厚生大臣はいかなる所信を持っておられるか、明らかにしてもらいたい。
  260. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。  事柄は保険三法の改正問題でございます。この保険三法につきましては、先ほど来官房長官からもお答えがあったように、社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会に諮問中でございますので、その答申をまちまして十分尊重して善処したい、こう考えております。
  261. 大原亨

    大原委員 もう一回申し上げますが、私はそういうことを申し上げましたけれども、このたびの本人の薬代負担によって医療保険の十割給付は八割三分、八割に転落するわけであります。医療保障が後退するわけであります。ひずみの是正とか人間尊重とか社会開発と言っておる佐藤内閣におきまして、所得保障と並ぶ医療保障が後退するわけであります。そういう本人から薬代を取ることによって薬の使用量を下げていくというふうな政策は、これは、政策としても下の下である。こういうことは、いまや分科会の論議その他を通じて明確である。この点については虚心たんかいに、これこそ再検討するのだと、こういう点を厚生大臣は明確にすべきである。私は、あまりきわどい財政問題に触れて言ってないけれども、その問題については、あなたの手を離れて官房長官や総理大臣や三役のところにいっておるけれども、私は、あなたがやはり厚生大臣であって、法律上の厚生大臣の責任があるわけだから、その限りにおいては責任を果たしてもらわなければならぬ。そういう意味において、そういう改正案については再検討いたしますという点を明確にしてもらいたい。
  262. 神田博

    ○神田国務大臣 いまの大原委員のお尋ねの趣旨は十分わかりますが、先ほど来お答えいたしましたように、政府といたしましては、原案をそれぞれ審議会に諮問しておりますので、その諮問を願っておる際に、異なった意見をここで申し述べるということはいかがかと思いますから、差し控えます。
  263. 大原亨

    大原委員 そうじゃないのですよ。厚生大臣は中医協に対しても、社会保険審議会に対しても、政府としてこういう案でやろうと思います、総医療費の三%、三百億円分に匹敵する金額を診療費のほうの技術料に回したいと、こういうことも言っておられるのじゃありませんか。これは宙ぶらりんになっておるけれども、そういう案を示すことはできるのです。そういう意味において、いろいろな国会審議を通じまして、私は、財政上の問題はあとで同僚委員その他が逐次理事会その他で触れていくから言っておらないけれども、しかし、これは財政に関係がある。というのは、政管健保だけで二百五十三億円の薬一代を負担するんだ。全部の保険でいえば、相当の薬代の負担になる。これは、医療保障の後退なんだ。負担の増加なんだ。片方では、総報酬制で一五%の保険料を上げておいて、共済組合、健保もその他全部上げておいて、そして、一方においては給付を後退させるというふうなことはいけない。ましてや私は薬務行政の一点、コストの問題に問題を集中いたしまして、厚生大臣にきょうは分科会報告に関連をして質問をいたしたわけでありますから、その点について虚心たんかいに各方面の意見を尊重して、政府案を再検討いたします、そういう方向で諮問をして、そして、大いに社会保険審議会の議論を尊重して決定するということはできるはずだ。そういう主体性を示すことはできるはずであります。それをしも示さないのであれば、国会の議論というのは何のためにやっているのかわからない。もう一回明確にしてもらいたい。
  264. 神田博

    ○神田国務大臣 大原委員のおっしゃっている趣旨はよく私わかるのでございますが、すでに政府としては両審議会に諮問をしておりまして、そうして両審議会に託しておりますから、両審議会の有識者の審議に基づきまして、そして、その答申をちょうだいして答申を尊重していこう。これは、もう総理もしばしば予算総会にお述べになっているとおりでありまして、それ以上に私この機会にお答えするということは、ちょっと無理だと考えております。
  265. 大原亨

    大原委員 あなたは中央医療協とか社会保険審議会をけ飛ばして職権告示なんかやっておいて、問題を今日までかもし出しておいて、そして、いまになって社会保険審議会を尊重しますの、中央医療協を尊重しますのと、よくそういうことが言えましたね。そういうことはおかしいじゃないですか。あなたが改むるにはばからずというのだったら、もう少し進んだ議論をすべきだ。そこで私は、総括質問の中において、分科会の締めくくりの中において言うたが、あなたはその点についてもう少しき然たる明確な態度をとらなかったならば、あなたはこの前は中央医療協をけ飛ばしておいて、社会保険審議会をけ飛ばしておいて、今度は尊重しますのと言ったって、それは信用できないでしょう。だから、あなたが正しいと思うことは改むるにはばからずだ。そういう点で明確に見解を示すべきである。
  266. 神田博

    ○神田国務大臣 私も審議会を尊重すると言っておることは、もう前々から申し上げたとおりでございます。
  267. 大原亨

    大原委員 それでは、第四の重大問題を最後に質問いたしたいと思うのです。  この問題は、分科会において議論になったわけですが、今日全国の市町村でけんけんごうごうたる議論になっておるのであります。これは何かと言いますると、国民健康保険法の第七十条によりまして、国は療養費の二割五分プラスアルファにつきまして義務負担をすることになっておるわけであります。三十九年の当初予算に組みました予算では、三十九年末において医療費の増大その他で不足を生じておるのであります。それは、法律に従って年度内に補正をしなければ、全国の各市町村はすでにこれは出しておるわけであります。医療ですから一刻の猶予もできません。出しておるわけであります。三月三十一日まであと約一カ月ということであります。したがって、その議論をする中で、政府は最初六十六億円の負担金の不足分がある、穴があいておりますということを言っておりましたが、だんだんと資料を集めて議論をすると九十五億円、百億円に達するというようなばく大な金額であります。この穴埋めの義務負担について、政府は穴埋めをしないことは、これは法律違反である。他の法律もあるけれども、法律違反ではないか、こういうふうに私は指摘をいたしました。この点につきましては、予算の編成については大蔵大臣でございますから、大蔵大臣から明らかにしてもらいたい。
  268. 田中角榮

    田中国務大臣 現在まだ確定的数字をつかんでおりません。厚生省でいま検討いたしているようでございます。結論的には、額において多少不足を生ずるというような状態のようでございます。国が法律に上って当然負担すべきものについては、この最終的額が決定をいたしましたら、何らかの予算措置をいたしたいと思います。
  269. 青木正

    青木委員長 大原君の持ち時間がまいっておりますので……。
  270. 大原亨

    大原委員 ちょっと待ってください、大切な問題だから。政府委員でもよろしいから御答弁を願いますが、昭和三十九年の国民健康保険法七十条その他によって当然国が負担すべき金額について、どれだけの不足額が生じておるか、言うなれば、どれだけの迷惑を市町村にかけつつあるか、こういう点につきまして、ひとつ、大蔵大臣はわからぬようだから明確にしてもらいたい。
  271. 小山進次郎

    小山政府委員 この問題は、前回の分科会でも申し上げましたように、各市町村の医療費がどのくらいに落ちつくかというのは、まだこれを確定するのに相当の期間を必要とするわけであります。ただ、私どもがいままで仕事をやってまいりました経験から見まして、過般お答えを申し上げましたように、その不足額は九十億をだいぶこえそうだという大原先生の御判断にどうも近い結果になりそうだ、こういう感じを持っております。
  272. 大原亨

    大原委員 大蔵大臣に質問いたします。昭和三十六年、三十七年、三十八年には、これは当然の政府の義務支出といたしまして、三十六年には二月二十六日、三十七年には二月十五日、三十八年には二月十四日の年度内に、それぞれ二次補正、第三次補正で不足分につきましては支出をいたしておるのであります。したがって、現に市町村においては支出をいたしておるのであります。あなたが言われる精算は、それは翌年度に回ることはあるでしょう。でしょうけれども、いままでは全部補正をいたしておるわけであります。でなければ、現実に市町村はそういう負担をいたしておる。そういうことにつきまして、私はいままでの慣行から言いましても、補正予算を組まないということは、これは国の事務を市町村に団体委任しておるという国民健康保険法の精神からいって、その中において国の負担区分をきめておるという法律の精神から言いましても、これは法律の精神に違反をしないか。年度内に補正をしない、できないというのは、どういう理由ですか。
  273. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、現在厚生省でまだ集計ができないという状態でございますので、最終的な不足額が確定をすれば、何らかの予算措置をしたい、こういう原則的な考え方は、前段申し上げたとおりであります。今年度まだその数字が捕捉できないという問題が一つございますし、財源上の理由がございます。大体三十九年度の補正財源が確保できるかどうかというぎりぎり一ぱいの状態でございまして、財源の上でいま直ちに補正ができるという状態ではございません。
  274. 青木正

    青木委員長 時間がまいっておりますので……。
  275. 大原亨

    大原委員 もうちょっと、重要な問題だから……。大蔵大臣、これは国の事務であって、委任をしておきながら、百億円に近い穴があいておるのです。昨年は五十九億円を補正に計上しておる。一昨年は二十億円を計上し、その前は六十三億円、そういうふうに計上いたしておるわけです。ですから、これをほっておくというふうなことは、これは市町村の負担になるわけです。借り入れ金その他利子補給その他の措置を講ずるのですか。またはこの国会中に補正予算を出しまして補正をいたしますか。
  276. 田中角榮

    田中国務大臣 率直に申し上げて、もうすでに三月一日でございまして、三月三十一日までに補正ができるとは考えておりません。しかし、国が義務負担をしなければならないものにつきましては、最終的数字が確定次第、何らかの予算措置をいたしたいということを明らかに申し上げておきます。
  277. 大原亨

    大原委員 それは四月をこえて——予決令は四月三十日までに精算しろということに一応なっておる、国の予算上の支出については。そこで、三月をこえても財源を見つけてやる、こういう趣旨ですか。
  278. 田中角榮

    田中国務大臣 予決令の条項は、契約をしても三月三十一日までに支出ができないものに対して、四月三十日まで支出し、当該年度の支出として整理をすることができるということでございまして、本件とは関係ございません。でございますから、四十年度になりましても、政府が義務負担すべき額に対しては予算措置を講じなければならないわけであります。補正予算にするか、予備費を流用するかは、現在の段階では申し上げられませんが、財政的な措置はいたします。
  279. 大原亨

    大原委員 予備費は、三十九年度中の予備費はもちろんないわけです。四十年度の予備費からこの操作をする、そうして、当然義務支出については早急に負担をする、そういう方向で考えておるというふうに理解してよろしいかどうか。
  280. 田中角榮

    田中国務大臣 予備費からも支出できるわけでございますが、現在の段階において、予備費から支出するか、補正予算を組むかというような問題に対しては、申し上げられない段階でございます。
  281. 大原亨

    大原委員 補正で組む場合においては、当然この国会中の課題となる。そうでなければ、ずっとこえるということになれば、百億円に達する金を、三十九年は一カ年間で七十五億円の持ち出しをやっておる。市町村財政から保険へ入れておるわけだ。それで、百億円近い穴があくということになれば、これはすでに使われておるわけですから、これを放任するということは、いままでの年度内に補正予算を組んだ例からいいましても、国の義務負担の精神からいいましても、これはいけないのではないか。したがって、私どもといたしましては、非常に重要な関心のあるこういう問題について、大蔵大臣がもう少しその点について、この国会中に補正をするとか、あるいは確定し次第予備費から出すとか、そういう点については、当然いままでの例からいいましても、実態からいいましても、そういう明確な見解を表明していただくべきである。このことは、予算を審議する上において、了解事項その他を中心として、たくさんの財政上の問題がある。あるけれども、これを十分審議するけれども、私が指摘をいたしました点は分科会において徹底的に議論した問題です。これは、当然いままでやってきておる問題であって、出さなければならぬものである。その点について、金がないからないそでは振れませんというふうなことでは、国会予算審議もできない。国民健康保険法その他の法律がそのまま実行されていないということですから、この点については、大蔵大臣が明快な答弁をされぬということになると、私どもといたしましては、十分党内において意思統一をしてこれに対処しなければならぬ。この点について、重ねて大蔵大臣の答弁をいただきたい。
  282. 田中角榮

    田中国務大臣 国の財政の事情も考えていただきたいと思います。四十年度の国保の給付費の例を申し上げますと、千七百六十九億のうち国庫の負担部分だけでも千九十六億であります。保険料の負担分は六百七十三億であります。こういうふうにいわゆる国が負担をしておるものが六二%、こういう大きな支出を行なっておりまして、日本の現在の状態を見ますときに、世界においても、イギリスを除く最高水準をいっておることは事実でございます。でございますから、国がこのような問題に対して前向きの姿勢をとっておらないということではないわけであります。また、市町村財政と国との問題につきましては、国も市町村財政の健全化のためにあらゆる努力を行なっておることも御理解いただけると思います。ただ、具体的に三十九年度の国保の義務負担の問題につきましては、いま厚生省からも述べられたとおり、まだ現に数字をつかんでおらないわけであります。また、三十九年の財政事情を考えましても、三月三十一日まで補正をするというような状態でないことだけは明らかにいたしております。しかし、これをじんぜん目をむなしゅうして、最後には払わぬでいるというような考えは絶対持っておりません。いま補正予算とか、また予備費の使用とかいうことをさだかに申し上げられる段階ではありませんが、最終的義務負担の数字が確定をすれば財政措置をいたします、こう答えておるのでありますから、現段階においては御理解いただきたいと思います。
  283. 青木正

    青木委員長 もう最後にお願いします。
  284. 大原亨

    大原委員 いままでは二月中に、大きな金ですから推定でやって、あとで精算しておるわけです。だから、的確な数字が出なければやらないというようなことでは、実際上市町村が百億に近い金を支出しておるわけです。それは、基準財政需要額の対象でもない、交付税の対象でもないわけです。それを放任をしておくというふうなことは、財源がないからできませんというようなことだけではこれは済まされない。たとえば利子や配当所得その他の減税もいたしておるじゃないですか。四十年度の予算でしとるじゃないですか。そういう議論はたくさん発展するわけですが、ですから、このことについては、金額がはっきりいたしましたら精算しますという、そういうそっけないことではなしに、法律の精神といままでの前例に従って、当然市町村は財政困難なときで、期待いたしておるのですから、その点については、私は明確に、こういうときにおいてはやるんだ、こういう点についてもう少し具体的な、誠意のある答弁をしていただかなければいけないのじゃないかと思います。
  285. 田中角榮

    田中国務大臣 よく政府も理解をいたしております。しかし、財源上の問題がございまして、現在不確定数字に対して、あらかじめ予想して補正予算を提出できるような賦源状態にないということを明らかにいたしておきます。三十五年から三十八年までは、御指摘のとおり補正予算を組んでおりますが、財源のなかった三十四年以前においては、補正をいたしておらないのであります。御承知のとおり、三十五年からは、当該年度の自然増収が非常に高い経済成長でございましたので、非常に大きな補正予算財源を確保することができたわけでございますが、今度は安定成長になりまして、いまもうすでに三十九年度の補正財源さえようやく確保できるかどうかという段階でございまして、現在の段階において、三月三十一日まで補正予算を出せるか、こういいますと、まじめな立場で非常にむずかしい、こういうことを申し上げておるわけでございますが、いずれにしましても義務負担経費が確定をすれば、予算措置をいたします、こう答えておるのでございますから、予算措置をいたしますといって十一月までとか、来年の一−三月までとか、こういう考え方ではないわけでございますから、その間の事情は御了解いただきたいと思います。
  286. 青木正

    青木委員長 もう最後ですから……。
  287. 大原亨

    大原委員 大蔵大臣、国の義務支出の分については、四月をこえておくれた場合においては、借り入れその他の措置をするとか、あるいは利子を補給するとか、これは当然国の義務だから、国の事務をやっておるのだから、その中で国の義務負担を法律で定めておるのですから、そういう点を明確にしないと、年度内に今まで補正した、あるいはいままでと違って財源に大きな穴があいておるという実情から考えてみて、私は不合理だと思う。そういう点につきましては、この問題を強く指摘をいたしておきまして、また別の機会に議論する。ただし、この問題につきましては、本年度の予算、三十九年度の予算執行上の問題で、四十年度の予算とも密接な関係がある問題ですから、この問題については、予算の通過するまでに明確に態度を政府はきめてもらいたい。そうでないと、私どもといたしましては、この予算については問題がある。こういう点を指摘をいたして、私の発言はそういう点で留保いたしまして、別の機会に追及をする。こういうことで、発言を終わりたいと思います。
  288. 青木正

    青木委員長 これにて主査報告に関連しての質疑は終了いたしました。  午後六時より再開し、昭和四十年度総予算に対する一般質疑を続行いたします。  なお、この委員会休憩後、理事会を開会いたしますので、理事の方は委員長室にお集まりを願います。  この際暫時休憩いたします。    午後四時十六分休憩      ————◇—————    午後七時四十分開議
  289. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十年度総予算に対する一般質疑を続行いたします。堀昌雄君。
  290. 堀昌雄

    ○堀委員 委員部のほうに大蔵省から資料が参っておると思いますから、委員長ひとつ各委員及び新聞記者の諸君に資料をお配り願いたいと思います。あわせてこれもひとつ皆さんにお配りをいただきたいと思います。  きょうは三月一日でありまして、いよいよ確定申告の時期になってまいったわけであります。御承知のように、三月十五日が事業税その他についての確定申告の日時でありますけれども、そこで、この所得税の仕組みについて、最初に少し大臣にお答えできる範囲でお尋ねをいたします。  現在の所得税は、所得税法第二条で、所得のある者は全部課税をする、全部の所得に課税をするというのが所得税法の原則だと思いますが、大臣どうですか。
  291. 田中角榮

    田中国務大臣 そのとおりです。
  292. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、所得税というのは、すべての所得を合算して課税をするというたてまえになっておる。  その次に、累進税率というものが現在適用をされておりますね。御承知のように十万円以下が八%、最高は六千万円超七五%という累進税率がかけられている。   〔発言する者あり〕
  293. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  294. 堀昌雄

    ○堀委員 この累進税率がかけられておるというのは、大臣、これはなぜこういうふうに累進税率というものがかけられているのでしょうか。
  295. 田中角榮

    田中国務大臣 低額所得者には安く、より以上の所得者にはよけい払ってもらう、こういうことであります。
  296. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいまの大臣の御答弁のように、低額所得者はできるだけ安い税率で、高額所得者は担税能力があるから高い税率で所得税を払ってもらう、これが原則ですね。それをするためにはやはり総合をするということがないと、いまのような累進税率というものは生きてこないと思いますが、大臣、どうでしょう。累進税率というものを、所期の目的のように、低額所得者には安く、高額所得者にはたくさん払ってもらうためには所得を総合する。これは原則で、これと累進税率というものは不可分の問題だ、こういうふうに私は思いますけれども、大臣、いかがでしょう。
  297. 田中角榮

    田中国務大臣 間接税中心ではなく、現在のような所得税を含む直接税中心の税制では、このような累進課税制度がとられておるというのが普通であります。
  298. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、現在の給与所得または事業所得には、ほかに所得があれは必ず合算をして確定申告をするようにと、所得税法二十六条の第一項にこういう規定がありますね。このことは、要するに一つの給与とか事業の所得がある場合には、それ以外に所得がある者は原則として全部合算をする。そこで、たとえばある商売をしている夫婦を考えてみますと、夫婦二人で商売をやっておる。そうすると、これは主人が働いておるだけではなくて、奥さんも商売に従事をしておりますね。そういう場合に所得税法は、二人の働いた所得を一人の所得として合算をして累進税率をかけるように現在なっておりますが、これも、大臣は十分御了承だと思いますが、この意味は、やはりいま私が申し上げたような累進税率ということに関係があるのだ、こういうふうに理解をしてよろしいですか。
  299. 田中角榮

    田中国務大臣 同一生計内にありますから、まとめて累進税率をかけられておるということであります。私は、この制度に対しては、いまの相続税の問題とか、妻の控除とか、そういう問題から考えるとまだ完ぺきなものではない、ある意味においてはもっと前進的な税制にしなければならぬとは考えておりますが、しかし、現段階においてはそのとおりであります。
  300. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいま私が非常にわかり切ったことのような点を大蔵大臣に確認をしてまいりましたのは、わが国の税の体系というものはかなりきびしくなっておりまして、ともかく夫婦二人で共かせぎをしておっても、それをアメリカやあるいは西ドイツは、これはおのおのの所得に分けて、二分二乗するという制度になっておりますけれども、わが国の場合には、かろうじて専従者控除をわずかに認めるだけであって、現在は夫婦が一緒に働いておる所得ですらも合算をして、累進税率をかける。これほどきびしい税制であるということをまず頭の中に置いていただきたいと思うのであります。  そこで、この合算をしなかったり、累進税率をごまかしたりするようなときは、これは一体どういう処分を国は現在やっておるのでしょうか。これは、大臣で御答弁が無理なら、事務当局でもけっこうです。
  301. 田中角榮

    田中国務大臣 税金をごまかしたという場合には、追徴を行なうという制度と、体罰が規定されております。
  302. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの大臣のお答えのように、もしかりにごまかすようなことがあれば、これもまたかなりきびしい処分をするということが、裏側に措置としてくっついておるわけです。  そこで、労働大臣にちょっとお伺いをいたしますが、この三月に卒業をする高校生、これは、一体どのくらい就職をして、そして昨年に比べて、新中学卒、高校卒というのは、やはり依然として求人のほうが高いわけですから、おそらく給与条件、初任給も昨年よりは少し上がってくるのではないか、こう思うのですが、大体本年度の東京なりあるいは京阪神、名古屋というような主たる需要地の高校卒の給与というのは、大体どのくらいになるとお考えでしょうか。そして、大体何人くらいが就職をするというふうにお考えになるか、ちょっと承りたいと思います。
  303. 石田博英

    石田国務大臣 中学校高等学校卒業生のうちで、上級学校に進学をしないで、職業につく割合は、大体三五%くらいだと思うのでありますが、正確な数字はあとで事務当局からお答えさせます。  それから求人求職の倍率は、四倍くらいでございます。求人が求職者の四倍。ただ若年労働者に対する求職と求人の割合は、職業安定所に来ます数字だけでは、実際がわからないのであります。というのは、求職者は実数でありますが、求人のほうは水増しがあります。実数は五十万未満、四十八、九万くらいではなかろうかと思いますが、いずれ正確な数字は申し上げます。  それから給与は、超過勤務手当をまぜますと、一万四千四百九十円、昨年度に比べますと、約八%の増になります。金額で言うと、千百円、前年度と比較をいたしますと、この数年来の傾向を申し上げますと、規模別賃金格差は非常に縮まってまいりました。若干はありますが、ほとんどないにひとしいのでありますが、三十八年度は、超過勤務手当を含まない金額で一万二千八百円、本年は超過勤務手当を含んで一万四千四百九十円、こういうぐあいに相なっております。規模別賃金格差はほとんどございませんが、五百人以上は一万五千八十円、二十九人以下が一万三千七百六十円、こういうぐあいに相なっております。
  304. 堀昌雄

    ○堀委員 いま労働大臣がお答えになりましたのは、三十九年の三月に卒業した人たちの実績でございます。私が伺いたいのは、ことし卒業するであろう者は大体どのくらいになるだろうか。これは推定でありますから、推定として大体どのくらいになるだろうかということを伺いたいのであります。
  305. 石田博英

    石田国務大臣 ちょっといま正確な数字を持っておりませんから……。
  306. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いまお調べを願っておる間に、これは大蔵省の主税局のほうにお伺いをいたしますけれども、今度の税制改正で基礎控除等か少しふえましたから、独身者の課税最低限というものが変更になったと思います。これをかりに公務員として、この課税最低限で給与が与えられたとして、公務員ベースの夏期、年末その他の手当が与えられるとするならば、一体一カ月の平均給与は幾らになるのか、ちょっと大蔵主税局のほうでお答えいただきたいと思います。
  307. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。  今回の改正によりまして、独身者の課税最低限は平年分二十万二千五百二十四円、昭和四十年分は十九万六千六百七円に相なるわけでございます。そこで公務員の場合、四十年以降は四・二カ月分の期末手当及び勤勉手当が出ることになりますので、それを十二カ月の月給の上に足しまして計算いたしますと、平年分では一カ月当たり一万二千五百一円、それから四十年分の場合におきましては一万二千百三十六円と相なります。しかし、四月に就職いたしました者は一−三月の間の給与を得ておりませんし、それから、三月の期末手当ももらわないことになりますので、それを除外して計算いたしますと、四月採用の場合には平年分で一万五千八百二十二円、初年分で一万五千三百六十円の月当たり金額までは課税にならない、かように相なるのでございます。
  308. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお聞きになりましたように、平年分ならば一万二千五百一円以上の者には全部かかる。初年分、ことし卒業してこれから就職する人が、当年度だけいえばこれは一万五千三百六十円だ、こういう話でございます。労働省どうですか。いまの答え、まだ出せませんか。
  309. 石田博英

    石田国務大臣 まだ事務当局のものも出てまいりませんし、私の持っておりまする「賃金月報」では、賃金のほうは残念ながら出ておりませんが、就職者と進路の内訳の実数は大体出ております。高校四十年度卒業者の総数は百十六万でありまして、そのうちで上級学校進学者が三十六万、それから就職者が六十万、大体そういうふうな数字が現在出ております。  それで倍率は、推計でありますが、高等学校卒業生は二・三倍という倍率に出ておるのであります。賃金のほうはちょっといままだ見ておりますので……。
  310. 堀昌雄

    ○堀委員 本年度でなくて昨年度で申しましても、三十九年に卒業しておったときの初任給与は大体一万五千円ぐらいというのが大体の姿でございますから、要するに、去年卒業した者は全員所得税を取られる。ことし卒業した者も約六十万人ほど、まず地方で就職をして給与が少し安い人は例外でありますけれども、一般的に言って、六、七割はことし高校を卒業したらすぐ所得税を取られる。こういうのがいまの日本の所得税の実情だと思う。  そこで労働大臣、こういうふうに学校を卒業して就職したらすぐ所得税を取られるような制度というのは、あなた、労働大臣として一体どう思いますか。これは、非常に税金が高いということを如実に証明しておると思うのですが、労働大臣、どうですか。
  311. 石田博英

    石田国務大臣 私どもが学校を出まして月給取りになった時代は、大学を出ても初任給には所得税はかからなかったのでありますから、そういう点から見れば高いように思われますが、逆に申しますと、そのときは戦争にも負けていない時代でありまして、非常に負けて困難な時期にそれだけの収入を得られるようになったとも言えるのじゃないだろうか。ただ、さっき申し述べました昭和三十九年が一万四千幾ら、本年は、まだ集計が終わっておりませんけれども、上昇率は大体前年並みと推定されますので、一万六千円近くになるのじゃないかと思います。
  312. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの一万六千円とおっしゃると、六十万人ほとんど全部私は税がかかると思います。いま労働大臣は、大蔵大臣にちょっと気がねをなすって、ああいう答弁がありましたけれども、もう戦後ではありませんし、そして、いろんな貨幣価値をデフレートしてみても、いまの賃金に対してかかるというのは、デフレーターが大体四百五十倍くらいですから、そういたしますと、二十万円として、昔の四十何円にしか実は当たらないのですよ。昔の大学の卒業生というのは、石田さんが御卒業になったころは、おそらく八十円くらいが初任給じゃなかったですか。——まあ六十五円でもいいでしょう。六十五円でも税金がかからなかったのだから、いまのこれを見たら、現在の税金は非常に高い。  「昭和三十八年見込の所得税納税者階級別表」という資料を皆さんのお手元にお配りいたしました。これで見ますと、年にわずか三十万円までの所得で、税金を納めておりますものが五百七十一万八千人おるのです。よろしゅうございますか、大蔵大臣。三十万円以下の所得、これはもういまの一人で二十万円で大体あれですから、これは三十八年で少し古いですけれども、資料の新しいのがありませんが、納税者の三〇%がこの中に入っておるということは、これは日本の所得税というものは非常に高い、低額所得者に非常に多くの負担を与えておる、この人たちはいまの物価上昇の中で非常に苦しい生活をしておりながら、依然として所得税を払わされておる、こういう事実をまず最初に委員及び大臣各位に確認をひとつしてもらいたいと思うのです。どうですか、日本の税金は、やはりこう見ると高いですね。大臣、どうですか。
  313. 田中角榮

    田中国務大臣 安くはありませんが、いずれにしても、敗戦国で着のみ着のままであった二十年を振り返ってみますと、われわれの環境もよくなっておりますし、国民の税負担のおかげだと感謝をいたしております。
  314. 堀昌雄

    ○堀委員 どうもあまり答弁になっていないような気がするのですが、しかし、安くはないということは、日本語では高いということですからね。高いということで確認をいたします。  そこで、ひとつ皆さんにお配りをした資料で、横に三枚——まだ来ないですか。
  315. 青木正

    青木委員長 参りました。
  316. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとこの間の時間を抜いてください。皆さんに配る間、待っている間……。
  317. 青木正

    青木委員長 配付が済みましたから、どうぞ。
  318. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお手元に配りました資料の三枚目の資料をひとつごらんをいただきたいと思います。この三枚目の資料は、夫婦と子供一人、要するに三人世帯で、年に六十万円の所得があるとするならば、給与所得者、農業所得者、商業所得者、配当所得者では、どのようなふうに現在課税が行なわれておるかということを表にして、皆さんにお渡しをしたわけであります。  そこで、ごらんをいただきますと、給与所得者は、所得税額が一万二千八十六円、住民税が一万一千五百円、都合二万三千五百八十六円というのが給与所得者で六十万円、三人家族の場合の税金であります。農業所得は、同じ収入があった場合に、これは給与所得控除等がありませんから、所得税が三万六百七十四円、それに引き続き住民税がふえて一万八千六百八十円、農業所得者の合計は四万九千三百五十四円となるわけでございます。ところが、商業所得者は、このほかに県税としての事業税があと一万八千円加わりますから、同じ収入がある場合は六万七千三百五十四円、これだけの税金を払わなければなりません。ところが、配当だけで六十万円ある人を一応仮定をいたしてみますと、この人は千百四十八円という地方税を払うだけで、国税は一文も払わないわけでございます。これは、御承知のように、現在の所得税法十五条の七で、配当控除という制度が設けられ、これは特別措置で、一五%は税額で控除をするという制度になっておりますから、そこで、この税額控除を行なった結果、所得税がゼロになる、こういう仕組みになっておるわけであります。そこで、もし配当をもらっておるだけの人が税金がかかるのは一体どこからかかるかといいますと、同じ家族の構成で、年に百五十八万七千八十円になるまではかからない。これをこえてはじめて国税としての所得税がかかるということになるわけであります。ところが、給与所得者に同じ収入があったと考えるならば、十九万八千四百二十二円というのが所得税、住民税が七万四千八百八十八円、都合二十七万三千三百十円というのが、この百五十八万七千八十円の給与所得者の税金の総額であります。同じように農業所得者は、三十二万四千八百三十八円、商業所得者は三十九万二千百八十八円、しかし、配当所得者はわずかに二万百二十円の地方税を払えば、これで終わりになる。これがいまの日本の税制の実態であります。さらに、ここに利子所得がありませんから、ちょっと主税局にお伺いをいたしますが、もし銀行からの利子だけが百五十八万七千八十円あるとするならば、百万円までの今度新しく制定をされるであろう少額貯蓄免税を適用したとして、一体幾らこの人は税金を払うか、ちょっとあわせてお答えをいただきたいと思います。
  319. 泉美之松

    ○泉政府委員 百五十八万七千八十円の利子所得ばっかりの方がおるといたしまして、百万円までは、今回の改正による少額貯蓄の非課税限度の元本になります。したがって、かりに五分五厘の定期預金といたしますと、五万五千円その分で所得が減りますので、源泉課税の分が十五万三千二百八円、それに住民税のほうは、これは所得割りは課税になりませんで、均等割りだけ七百円課税になります。合わせて十五万三千九百八円の税額になります。
  320. 青木正

    青木委員長 堀昌雄君、先ほどの労働大臣の説明の中に、ちょっと数字の読み違いか何かあるそうでありますから、訂正を……。
  321. 石田博英

    石田国務大臣 私が申し述べました資料に、私自身の記憶と違いますので、調べ直させましたところ、間違っておりましたので、訂正いたします。  三十九年度の高等学校卒業者の求人、求職の倍率は、求人のほうが四倍であります。四十年度は大体二・九倍というところでございます。
  322. 堀昌雄

    ○堀委員 けっこうでございます。  そこで、いまの所得税の税制の中て見まして、配当所得というものは現状でも非常に優遇されておるということは、皆さんこれでおわかりがいただけると思います。利子所得も非常に優遇をされておりますことは、同じ給与所得が二十七万、農業所得三十二万、商業所得三十九万に対して、わずか十五万円で済むということでおわかりいただけると思うのであります。この税額控除でありますけれども、現在の日本の税制では、税額控除は、障害者控除として、本人または家族が身体障害者であるときに限って六千円、老年者控除は、本人が老年者であるときに限って六千円、寡婦控除は、本人が寡婦であるときに限って六千円、勤労学生控除も本人に六千円、要するにいまの日本の税制では、税額控除というのは、原則として六千円というのが限度であります。ところが、これは大臣のほうでも言い分があると思いますけれども、何はさておき、現在の所得税法及び特別措置は、税額において、配当所得は百分の十五の税額控除をやるという仕組みになっておりますから、以上のよう問題が起こるわけであります。現状で配当所得はきわめて優遇をされておる、こういうふうに考えますが、大臣、いかがですか。
  323. 田中角榮

    田中国務大臣 優遇されております。
  324. 堀昌雄

    ○堀委員 非常に優遇されておるということでございます。そこで、ことしはこれから、この間本会議で提案趣旨説明がございましたけれども、この優遇をされておる配当所得をさらに優遇をしようというのが、これが今度の租税特別措置の改正案でございます。これはもう本会議で趣旨説明がございましたから、皆さん御承知のように、一銘柄五万円までの配当所得については確定申告を要しないと、こういうことになるわけであります。現在は、その他の所得が五万円以上あれば、確定申告の際には必ず届けなければならぬというのが現在の税制のたてまえなんです。よろしゅうございますか、大臣。現在は、給与所行なり事業所得の人は、五万円以上その他の所得があれば、必ず合算して確定申告をしなければならぬ。ところが、この特別措置は、年に一銘柄五万円までならば確定申告は要りませんというのですね。全然逆なんです。これは、租税特別措置法第八条の四であります。その次に、今度は八条の三に、希望をすれば一五%の源泉税率で分離ができます。その分離には、一応形式として、その会社の株を五%以上持っておる者は、これは分離課税を認めません。それから最高限度は、一年に五十万円まではよろしい、それ以上はいけません、こういう仕組みでございます。そこで、大臣は、東京証券取引所に上場をされておる株式は、現在配当しておる会社が幾つあるというふうにお考えでございましょうか。
  325. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。  東京証券取引所に上場されておる銘柄数は約千三百でございますが、そのうち、配当いたしております会社は千でございます。
  326. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど堀さんが税法に対して非常に明快な御質問でありましたから、私もオウム返しに、非常に優遇されておりますと、こうお答えをしましたが、ちょっと訂正いたします。この皆さんにお配りをした百五十八万七千八百円という給与所得者の場合の税金は二十七万三千円であり、農業所得者の場合は三十二万四千円であり、それから商業所得者の場合は三十九万二千円、配当所得者の場合は二万円、こういうことでございましたが、これは、配当可能額の全額を配当したとすれば、これに対して、もとで五一・一八五という課税が行なわれておるわけでありますから、七十九万円余はもとで課税されておるわけでありまして、そう優遇されているものではないということであります。
  327. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、それはおっしゃるだろうと思って、私、ちょっとアローアンスがつけてあった。しかし、その趣旨は一体どういうことかというようなことをちょっと考えてもらいたいのです。いいですか。私がまあ資本金百万円の会社の社長であると仮定をいたしましょう。そうして、私は、その資本金百万円の自分の会社から配当を取るときには、私が取る配当も、会社が取られるのも同じことになるわけです、事実関係は、こういう状態なら。だから、そっちで先に取られたらこっちで減って、もともとだという感じがございます。よろしいですね。ところが、八幡製鉄のように資本金四百五十億円の会社に、私が千株や五千株持っておって、八幡製鉄が法人税を払ったら、それは私の分の先取りだというようなことには、これは大臣、いかないのですよ、実は。この配当控除が起きる仕組みというのは、少なくとも資本家という昔の名前の人たちが、自分の会社に対する資本を持っておる形であるときには、私はこの考え方も成り立つと思うのです。いまの大法人と株主の関係は、もはやそういう形の資本家ではないですよ。八幡製鉄の株二万株持ったら、おれは八幡製鉄の資本家だなんて、だれも言わないですよ。株主ではあるけれども、資本家ではないのです。だから、そのことは、会社とこちらとの間には直接の関係がないです、その限りでは。だから、少なくとも株を持って、配当があって、これだけ落ちるということは、何としたってメリットなんですよ、それは。だから、あなたも、まあそういうあれをお聞きにならぬときには、メリットだ、こうこられて答えられた。そうなんです。それは間違いなくそうです。まあそれはいいです。  そこで、いま主税局長が答えましたように、東京証券取引所の一部の上場の会社は、六百六十一であります。そうして、その有配の会社は五百七十二ございます。二部が六百八会社ありまして、それの有配が五百二十六、合わせて一千九十八という会社が、東京証券取引所では、いま配当を行なっているわけです。よろしいですか、大臣。そこで、私どもは、かつてこういう制度があったのを思い出すわけです。それは何かと言いますと、納税貯蓄組合という制度が数年前までございました。納税貯蓄組合に入れば税金が免税になるというので、たくさんの預金者が銀行の窓口で、まあまかしておいてください、あなたのやつを分割してあげましょう。もう甲の太郎兵衛、乙の何兵衛、名前を幾らもやって、実際の人口の三倍もの口数であったということは、これは大臣、御記憶に新たでございましょうね。どうですか。御存じのとおりです。そうすると、いまここに一千銘柄あって、五万円までの配当所得は確定申告を出さなくてもよろしいということは、一〇%の源泉徴収だけで税金は終わりになる、こういうことですね。これは分離課税ですよ、一種の、そうしたら、最高五千万円の確定申告をすべき人が、千口に分けて、五万円ずつ配当を取ったら、五千万円まで確定申告を出さなくてもいいのですよ、大臣。わかりましたか。そういうふうに一律はなっておるのですが、どうですか。そのとおりですね。お答えください。
  328. 田中角榮

    田中国務大臣 五千万円の配当ということでございますから、いま単純平均が百円でありますから、そうしますと、約十億の投資者、千社、そうすると、東京の一部、二部の上場会社のうち有配会社の株を全部五十万円ずつ持っておる、四十九万円ずつ持っておる、数字の上では、そういう計算になりますが、そういう人は日本にはないと思います。
  329. 堀昌雄

    ○堀委員 いまはありません。いまはありませんけれども、こういう制度ができると、これは、さっき私が納税貯蓄組合で触れたように、証券会社のほうでは、おそらく、あなたこれをひとつ五万円ぐらいずつに分けたほうが課税上有利ですよ、ひとつ銘柄を多くふやしましょう。現在国民の持っております株式の保有世帯というのは、約三百十万世帯です、平均三・五銘柄ぐらいを持っておるというふうに統計上はなっておるわけです。よろしいですか、しかし税金がこうなると、かつて銀行が納税貯蓄組合で分割をしたように、これは証券会社が必ず分割をすすめますよ。そうすると、上限は五千万円までいけるということは間違いがないのですよ。これは、いまいくかどうかは別としてそういう可能性があります。ありますね。可能性があると大臣も答えております。  そこで、ちょっとこれは主税局のほうにお伺いをいたします。五千万円の所得がある場合に、給与所得で五千万円の収入があったら、一体標準世帯で幾ら税金を払うのか。それからあわせてもう一緒に言ってください。現在の税法で、配当控除をして税金を納める形になれば、幾ら税金を払うのか。そうして、いまの確定申告をやめた場合には幾ら税金を払えばいいのか。ちょっと主税局のほうでお答えをいただきたいと思います。
  330. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。  所得の金額が五千万円の場合、その全部が給与所得であるといたしますれば、その負担税額は二千八百四十八万五千円でございます。それからその五千万円の所得が全部事業所得であるといたしますれば、その負担額は同じく二千八百五十七万三千四百八十円と相なります。それから五千万円の所得が全部配当であるといたしまして、従来のように総合申告いたしまして配当控除を受けることになりますれば、二千四百三万八千七百十円の負担でございます。これがもし今度の改正によりまして、全部一〇%の源泉徴収だけで済むということになりますれば、計算どおり五百万円の負担になるわけでございます。
  331. 堀昌雄

    ○堀委員 今度の税の改正の前に、いまお聞きになりましたように、給与所得だけであるならば二千八百万円、ところがいまの税制なら二千四百万円、四百万円しか、いまの税制では、給与所得と配当だけの場合に、五千万円なら違いがないのです。しかしいまの一銘柄五万円ずつで確定申告を出さなければ一〇%しかかかりませんから、いま上税局長が答えましたように五百万円になっちまうんです。いいですか、大臣。三十万円以下の所得の人が営々として税金を払って、五百万人からいる。高校生が卒業したら二十万円、わずか一万二、三千円の月給に税金を取りながら、片方では五千万円の配当のある所得者は、要するに他に比べて二千三百万円も減税が起こるというような、こんなべらぼうな制度がありますか。大臣、どうですか。
  332. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げたとおり、東京の上場会社のうち、有配会社一部、二部千社を全部五万円以下ずつもらったと、これは現実的にあり得ない、こういうことを先ほど申し上げたのですが、数字の上ではそういう数字が出ます。ただこれは、あなたの御説を先ほどからずっと拝聴いたしておるわけでございますが、これは所得税の場合とそれから配当所得の場合と、ただ数字的に比べるような立場でこの税制をつくったのではありません。政策的に、国として、また国民全体の幸福を守るために、ある期間こうしなければならない、こういう政策目的をもってやっておるのでありますから、そういうメリットを十分考えて、そうして国民的にどのようなプラスがもたらされるかという評価を必要とするわけであります。
  333. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、まだ横道に入りたくないのですが、何か国民的に有意義だとおっしゃるのですが、どういうかっこうで有意義なのか、じゃ具体的にお答えをいただきたいのです。
  334. 田中角榮

    田中国務大臣 いま国会の御審議の中で、きょう終幕に近くなっても、問題は保険の問題であり、また農業用ガソリンの問題であり、そういう問題はすべて一体何かというと、国が減税をするか、もしくはもっと投資をしなさい——歳出要求であります。こういうことを考えますときに、どうしても国は、税金でもってある一定の必要な額を徴収しなければならないという歳入の必要性が生まれてくるわけであります。もう一つは、もし国が金を出せなくとも、とにかく支払いが可能なように財投の資金でも何か出せと、こういうことがございますから、財政の原資も必要であります。また、中小企業に対して必要なものは金だと、こういうことでございまして、この貯蓄や資本蓄積に回される金は、その個人が配当を受けるという面からだけで評価すべきではなく、この金が国民全体にどのような利益をもたらしておるのか、こういうことを考えなければなりません。でありますから、個人が給与を受けて、それをどう使うという場合と違って、貯蓄や資本蓄積をやるためのほうが国民全体の生活のレベルアップのしんになるのだ、こういうことになりますと、ある一定期間そういうものが政策的に必要であるということは、もうこれはどうしても必要であります。でありますから、そういう意味で、そういうメリットを高く評価しなければならないと思います。
  335. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのは、だいぶ大臣、苦しい答弁だと思いますし、私もあまり説得力がないと実は思います。私は、証券問題については、少なくともかなり勉強したつもりでございますから。実は、証券というものがいま低迷をしておるのは、何も税制がこうなっておるから低迷しているわけではないのですよ。要するに、池田さんの再度経済成長によってどんどんかけ足をやらされて、おまけに企業は過当競争をやって、そうして自分の能力を越えて増資をして過剰な株をつくり、証券会社は、やはり過当競争をやって、そうして投資家にいろいろな迷惑をかけてきた。そのことが今日の資本市場の姿になっておるのであり、片や金融が正常化をしていないために、フリーマーケットのほうに、片方が締めつけられればそのしわが寄るというのが、これが現在の資本市場の姿であって、それをあなたが税制をこういうふうにやりたって、ここのところダウの平均はどうですか。きょうはとうとう一千二百六円まで来ましたよ。なるほど時価総額は、昨年の一千二百六円のときに比べればなおかつもう少し高いです。しかし、日銀の宇佐美さんは、もう日銀としてやることは全部終わりました、共同証券に出しました、証券保有組合に出しました、これで終わりですと言っているのですよ。あなたが手のうちを全部出した税制も、国民みな知っている。そうして、毎日株はだんだんだんだん下がりつつある。いいですか。いまあなたは何か株式に投資をすることを、これをもって誘引をしようと言わんばかりのお答えでございましたけれども、私は、証券に対する対策は、かねてから大蔵委員会では大臣に何べんも申し上げておりますように、これは金利の自由化であり、公社債市場の育成であり、金融の正常化を除いては、資本市場を整えることなどはとうてい不可能なのです。大臣、どうですか。あなたが、この税制だけをもっていまの資本市場を立て直そうなどと言ったって、これは立ち直りません。立ち直らないだけではなくて、こういう不公平な税制をやれば、現在でも納税思想は非常に低下をしておるのです。ともかく汗水たらして、奥さんと二人で八百屋さんか何かをやって働いて得た収入は、夫婦二人の分を一緒にして累進税率でぱっぱっと取られる。片方は寝ておっても、配当できたものは税金を一〇%納めたらそれで済むというなら、八百屋さんだって、ちょっとは脱税でもしたいという気持ちになるでしょう。私のおそれているのは、こういう制度をやることによって、それでなくとも納税思想が下がっておるときに、さらにそれに拍車をかけるようなことをやるべきではないのではないか。私は、ここに今度の税制の一番大きな問題があると思う。そこで、現在、よく池田さんは、日本は世界の大国の仲間入りをした、こら言われます。先進諸国の中で、一体配当でこういう特別の分離保税をやっておる国はありますか、どこですか、おっしゃってください。
  336. 田中角榮

    田中国務大臣 現在やっておりますのは、配当分離課税——制度は違うかもわかりませんが、配当、資本蓄積や貯蓄に対して戦後非常に高い税制をやりましたのは西ドイツがございます。西ドイツが今日になったのはそのためだといわれております。
  337. 堀昌雄

    ○堀委員 主税局にお伺いをいたします。西ドイツは配当分離保税をやっていますか。
  338. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。  御承知のとおり、西ドイツは、法人税におきまして留保いたしました場合は五一%の課税をいたしますが、配当いたしますときには法人税が一五%に軽減されております。それで、株主が優遇されていることになっているわけでございまして、お話のように分離課税になっているわけではございません。先進諸外国で、分離課税と申しますか、配当について源泉選択を認めておりますのはイタリアでございまして、これは、昨年イタリアの資本がスイスへ逃避することを防ぎますために、三〇%の源泉税率による源泉選択の課税が行なわれております。源泉選択をしない場合には一五%の税率で源泉徴収いたしまして総合課税をいたすという制度になっております。
  339. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣も税の専門家ではございませんから、お間違いがあっても私は別にとがめません。ただ、しかし、西ドイツははっきり総合所得なんです。いま主税局長が答えましたように、イタリアだけが三〇%の分離課税を、異常な、要するに国際収支の条件、おまけに株価が日本どころではない、ものすごい暴落という、資本市場がどうなるか、リラがどうなるかという段階における緊急の措置としてやっただけでありまして、この点はひとつ十分頭に置いておいていただきたいと思います。  そこで、私がここでもう少し申し上げておきたいのは、一体こういう税制がそれではどういう人に役に立つのか、ここに私は問題が一つあると思います。企画庁長官もちょっとお聞きいただいておって、もし私が申し上げることに誤りがあれば、おっしゃっていただいてけっこうです。これは、現在貯蓄に関するいろんな資料がたくさんございます。企画庁は消費者動向予測調査をお出しになっておりますし、総理府でも貯蓄動向調査が出ております。ただいずれもサンプルが非常に少ないのです。五千ぐらいのサンプルでございます。いろいろな資料の中では、証券貯蓄の調査リポートという、昭和三十九年に東京証券業協会をはじめ全国の協会がつくったリポートがございます。これはサンプルが二万です。サンプル二万世帯ということは、日本の場合には約千分の一でございますから、カバレージが非常に大きいという点、それから面接調査でございまして、三十六年と三十九年と二回やっておりまして、その値はほとんど同様な値が出ておるということで、私は、これが最もいま信頼するに足るのではないか、こういう判断で申しますから、もしあなたのほうで、それはだいぶ違うということであれば、特に発言を求められてけっこうだと思います。  そこで、この調査リポートで調べてみますと、さっきちょっと私が触れましたように、株式を持っております世帯は全国で一五%、六軒半に一軒の割合でいま株式を持っておるという調査結果が出ております。推計約三百十万世帯でございます。これが株式を持っておる世帯、そこで、その中で一万株以上ある世帯数は九%しかないのです。要するに、あとは一万株以下なんです。一万株というのは、大臣、いま単純平均約百円でございますから、いまの時価で百万円、大体平均利回りが五分から五分五厘か六分くらいにいきますか、大体年に五、六万円という配当所得というのが、これが一万株の限界であります。そうすると、要するに三百十万世帯の中で、五万円以上の年に配当所得のある家は、推計で約二十八万世帯くらいしかありません。この二十八万世帯にだけこれが有効に働くかというと、もっとこれはきめのこまかい見方をしてみなければなりません。というのは、それじゃ一体配当を受け取っておる状態はどういうことになるかと申しますと、五万円をこえる配当者は、この調査資料によりますと一三%でございます。五万円以上の配当のあるものは一三%、その中で二十万円超三十万円までのものは〇・八%、それから三十万円から五十万円が〇・七%、五十万円超が〇・八%、要するに高額に持っておる方は非常に少なくて、五万円から十万円の間が七・八%くらい、十万円から二十万円の間が三・七%ということで、実は株をたくさん持って配当をたくさん受け取っておる人というのは非常に少ないわけです。  そこで、今度ちょっと皆さんのお手元にお配りした資料の三枚つづりの一番前のを見ていただきたいわけでございます。この三枚つづりの一番前の資料というのは何かといいますと、現在の配当の税制というのは、いま私が申し上げたように、配当控除という問題と、源泉で一〇%を取るということと、この二つからいまは成り立っておるわけであります。そこで、この一枚目の二段目に「配当所得の源泉所得税の全部が還付となる所得階層」「配当所得に対する上積実効税率が」云々、こう書いてありますが、これをかりに所得の一〇%が配当である標準世帯、夫婦子供が三人の世帯で考えてみますと、要するに百万円までの場合は、これはもうとんとんなわけであります。そこで、「配当所得の源泉所得税の一部が還付となる所得階層」は、百五十万円までは、要するに総合課税をすれば配当所得の源泉保税がまた返ってくる。だから、そのことは、総合をしたほうがこの人たちは課税上有利なんだという層は、標準世帯では百五十万円までは、実はいまの制度がなくても、田中さんが無理してつくられる今度の新しい税制がなくても、メリットがあるのです。現状で損しないようになっているのです。そこで、今度の制度がほんとうにきいてくるのは、大体この百五十万円以上の所得階層でなければ、あまり有利にきいてこないわけです。  そこで、主税局にお伺いをいたしますが、年収百五十万円以上の所得のある所得者というのは、一体納税者の中の何%ですか。
  340. 泉美之松

    ○泉政府委員 三十八年度の実績で申し上げますと、ちょうど百五十万円というところで区切った数字がないのでございますが、百万円超のところで見まして、人員で八・二%であります。
  341. 堀昌雄

    ○堀委員 百万円のところで限って八・二%というのは、これはちょっと出し方としてうまくないのですけれども、まあこの中の資料で、その他の関係から調べてみますと、大体百五十万円超の所得階層というのは、納税者の分布で大体九%ぐらいということになると思います。そこで、その九%ですけれども、それではその九%がみんなみんなこれをやるかというと、私は必ずしもそうにはならない、大体平均していうと、皆さんのお手元に差し上げた分でいくならば、二百万円超が最も有効に使えることになるのではないか、こういうふうな推計をすることもあながち私は間違いではないのではないか、こういうふうに思います。そうすると、いま皆さんのお手元に差し上げた資料で二百万円超は二十七万三千人と三万五千人ですから、三十万人、私がさっき推計をいたしました二十八万人と、資料からくる三十万人、ほぼ同じところにくるのではないか。ですから、この制度の恩典に浴する者は、国民の二千万世帯の中のわずかに三十万世帯が恩恵を受けるだけに、非常に思い切った税制の不公平を招来する制度がとられたのだ、こういうことになりますが、大臣もしぶしぶでも御確忍になるでしょうね。要するにあなたが今度とる制度が役に立つのは、年所得二百万円以上の人に有効に働く、それ以外にはあまり有効に働かない、現状で十分だ、こういうことを私申し上げてきたわけです。そこで、その二百万円超の所得というのは約三十万世帯、全国世帯数の一・五%のためにあなたは税制の不公平のおそるべき措置を今度とろうとしておられる、こういうことになっておると思うのですが、どうですか。数の上では間違いないでしょう。
  342. 田中角榮

    田中国務大臣 昭和三十九年の四月一日現在、東証一部の上場会社六百七十五社で計算してみますと、この中でもって五千株未満が千四百九十八万一千六百三十八人であります。株式の総数で五六・八%、それから一万株までになりますと六十七万六千六百八十人、これが四百二十六万二千百八十二株、一四・二%、これを合せて約七〇%であります。この人たちに五万円までの支払い調書提出限度の引き上げということは非常に大きく作用するわけであります。しかしあなたが申されたとおり、二百万円以上というものに対しても今度の税制は有利であるということは事実であります。
  343. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大臣がおっしゃった、この大蔵省の調査によるところのこういう株数の何か資料があるのですけれども、これは、要するに個々の一人一人の状態になっておるわけでして、これもある一面かもしれませんが、東京証券取引所のこの資料は、あとで一ぺんごらんになればわかりますが、非常によく調査ができておりまして、りっぱな資料です。だから、この私が申し上げておる推計はまず間違いがない、企画庁長官、どうですか。大体いま私が申し上げておることは、大筋において数の上では間違いがないと思いますが、ひとつ企画庁長官からお答えをいただきたいと思います。あなたは税のほうの専門家でもあるのだし、お詳しいことですから……。
  344. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 私の検討いたしております点と多少相違はございますが、現在の税の責任の衝に当たっておるものでございませんので、これは大蔵省の見解に従うのが当然だと存じますので、その点を御了承願いたいと存じます。
  345. 堀昌雄

    ○堀委員 いやいや、私は政策の適否を聞いているのではないです。要するに、二百万円以上の所得者というのは三十万世帯ぐらいだというようなこととが、いまの百五十万円まで以下は源泉選択とか、いろんなものがなくても現行で十分なんだ。だから、今度の制度はそれ以上にきくとするならば、その主たる対象というのは、いま私が言ったように三十万世帯ぐらいだ、それは、持ち株からも配当からもいろいろな角度から推計をしてそうだということについて、数の上で企画庁長官からお答えをいただければいいので、税のことで聞いているわけではない、これは経済の問題ですから。皆さんのほうでも消費者動向予測調査等でおやりになっておることですから、ひとつその意味でお答えをいただきたい。
  346. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 大体私の見るところによりますと、分離課税の制度によって利益を受けるという階層は、大体百八十万円程度以上じゃなかろうかという見当をつけております。しこうして、その数については確たる推定はなかなかむずかしい問題でございまして、ただいまお示しのような予測調査というようなものも非常に有力なたよりになる資料でなかろうか、かように存じます。
  347. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、その有力な資料ではどうですか。いま百八十万円以上ということでしたら、ここに消費者動向予測調査を持っていますけれども、あなたのほうではこれはどうなっていますか。
  348. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 私どものほうでは、百八十万円以上の階層がどの程度の人数になるかという調査はいたしておりません。
  349. 堀昌雄

    ○堀委員 消費者動向予測調査の中には、いまそうおっしゃいましたけれども、実はあるのです。昭和三十八年八月、消費者動向予測調査結果報告書の中には、その五十六ページに、所得額の分布というのが調査対象についてちゃんと出ている、あなたのほうから。これには百四十万円以上ということになっていますが、それでもいいからお答えをいただきたいのです。
  350. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 ただいまその資料を私手元に持っておりませんので、事務当局をこれから呼びますから、しばらく御猶予願います。
  351. 堀昌雄

    ○堀委員 特に、私、時間を食いますからけっこうですけれども、こういうのは大体においてそんなに変わらないのです。これは大蔵省の統計から見ても、いま私、大蔵省の統計でそう言っていますから、変わらないのですが、要するに非常にわずかな人のためにこの処置がとられておることは、これは間違いがない。  そうして、もう一つ大臣に申し上げておかなければならないのは、五十万円までの分離課税ですね。これも、やはり理想数値でいけば五億円までいけるのです。千銘柄で五十万円ずつは全部いけるのです。理論的には五億まで実は源泉選択できるようになる。理論的にはそうなるのですよ。そうして、この仕組みを私調べながら驚いたのは、この三つの仕組みは交互にまぜて使えるということなんです。よろしいですか。まず私がある程度の配当をもらっておるとしますと、配当所得控除が一ぱいに働くところまでは申告をします。私は、配当がこれだけありますと言って申告をしますと、それに対して配当控除が働いて、場合によったら所得税のほうもぱさっと切ってもらえます。収入があると、所得税で払う税額までを配当所得控除でがさっと落とすことができます。その限度だけは申告をしておいて、その残りは五万円ずつに分けておいて、今度は確定申告をしないという手を使えば、両方でメリットが浮かんでくるわけです。そうして、さらにものによっては五十万円の分離課税をやったっていい、五万円以上の銘柄が持ちたかったら、五十万円の分離課税をやってもいい。大臣、あなたはこういうことになるということを御存じでこれをやられたのですか。どうでしょう、できますかどうか、まずそこからひとつ大臣に伺いたい。
  352. 田中角榮

    田中国務大臣 できるかできないかは主税局長から答弁しますが、私は、そういうものよりも、開放経済のベルを押しておる日本の産業の実態を見るときに、いまにして資本蓄積及び貯蓄に抜本的な施策を行なわないと、日本の産業自体がどうにもならなくなってしまう。日本の産業がみんな石炭企業のようになったらたいへんだ、こういう考えでやったのであります。
  353. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。お話しのように、配当につきまして総合課税、源泉選択、総合申告をしなくてもいいこと、それから申告して還付と、およそ四つの態様に分かれるわけでございます。したがってその四つのうち、総合申告をする場合に、追加納税する場合、これはきまってきますが、そのあとの三つの制度につきましては、お話しのようにいろいろ選択の余地がございます。ただ、この所得階層によりまして、つまり還付になるような所得階層の人は、還付のほうと、それから確定申告しないこと、あるいは源泉選択、これを使うことができますが、所得階層が上のほうになりますと、そこは課税所得のほうで申し上げますと、源泉徴収税率一〇%と申しますことは、配当控除の一五%を放棄いたしますので、合わせまして二五%の上積み税率、したがって課税所得にいたしまして、八十万から百二十万、総所得にいたしますと、先ほどお話がございましたように、世帯によって違いますけれども、百五十万から百八十万ぐらいまでは申告しなくてもいい。また申告すれば、あるいは源泉徴収税額の一部が還付されるという階層になるわけでございますが、その所得階層を越えますと、これは還付になりませんので、この階層の人は、むしろ課税所得が百二十万をこえますと確定申告をしないほうが得、それから源泉選択の一五%というのは、上積み税率が源泉徴収の一五%と配当控除の一五%を放棄することと合わせまして三〇%、ちょうどイタリアの源泉選択の税率と実質的に同じになりますので、それは課税所得にいたしまして百八十万円までは三〇%でございますので、課税所得百八十万超のへは源泉選択したほうが得だ、こういうことになりますので、所得階層によって必ずしも三つを全部とることができる場合と、とることができない場合とがございます。
  354. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、いまお聞きのとおり、これは自由自在に所得階層によっては使い分けて最大限にやることができるわけです。そこで、一体これによる減収は幾らですか。
  355. 泉美之松

    ○泉政府委員 今回の配当税制の改正によります減収額は、確定申告を必要としない一銘柄五万円以下、確定申告を必要としないことによる減収額が百十七億、それから源泉選択分による減収が五十三億、合わせまして百七十億円と相なっております。
  356. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いまお聞きのように、今度の制度で減収百七十億円は一体だれのために減税をするのか。私さっき申し上げておるように、約二百万円以上の所得の人、三十万世帯のために百七十億円の減税が行なわれる、こういうことなんですよ。大臣、よろしいですね。
  357. 田中角榮

    田中国務大臣 堀さんはそこだけ言われますが、五%を一〇%にも引き上げておるのです。これは非常なる勇気をもってやったんです。ですから、その増収があるわけであります。御承知のとおり利子所得の一〇%への引き上げが平年度において百九十四億、初年度においては二百八億もあるわけです。それから配当所得の税率の引き上げでもって百八十三億の増徴をやっておるのであります。これは特別にやったのだから、普通に戻ったのだ、こう言えばそうでありますが、これは、いまこのような開放経済に向かってたいへんなときにもかかわらず、こうして財源を得て、八百億にのぼる所得税中心の一大減税もやっておるという事実もひとつ御理解いただきたいと思います。
  358. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣は、三十万世帯に百七十億の減税はお認めになると思います。それはどういう目的でやったかということは別としても、事実はそういうことですね。そこで、いまあなたは五%を一〇%に戻して増収がある、これは、私も非常にけっこうだと思います。この措置は、税制調査会の四十年度の答申をちょっと読み上げますと、こういうことにっております。「利子所得(株式投資信託の収益分配金を含む。)に対し、源泉徴収税率を一〇%に引き上げるとともに、二〇%の税率による源泉選択制度を創設する。」、これが税制調査会の一つの答申です。もう一つは、「配当所得に対する源泉徴収税率の特例については、上記(イ)と見合ってその源泉徴収税率を一〇%に引き上げる一方、株式配当金について一銘柄につき年三万円までは確定申告を要しないこととする。」という答申が出ておったわけです。これは、もちろん税制調査会の答申を守っていただいて、私もその点は確かに非常に敬意を表します。敬意を表しますけれども、しかし、それと同時に、せっかくそれだけのメリットをやっておるのに、新たに百七十億の減税を三十万世帯にやったということは、どうも税制上から見ても非常に不公平な措置である。ちょっとうしろのほうでガソリン税の話が出ましたが、ガソリン税というものは、大体五十億から百億の間くらいの減税なんです。対象農家が六百万世帯くらいある。これに対して五十億か百億の減税がなかなかできないという話がある反面、三十万世帯に対して百七十億の減税というのは、私は不公平ではないかと思います。  さらにもう一つ、ここで私が気になるのは、なるほど今度は利子も源泉が五%から一〇%に引き上げられました。これは、私はたいへんけっこうだと思います。けっこうだと思いますが、なおかつ本来の税制は、二〇%の源泉徴収をして総合課税というのが所得税法の本法です。いいですか。そこで、主税局に伺いますが、この本法と一〇%源泉徴収との間の差額、現在でもなおかつ減収に至っておる部分は一体幾らありますか。
  359. 泉美之松

    ○泉政府委員 これは、計算のしかたによりますが、本年は少額貯蓄の非課税限度が元本五十万円から百万円に引き上げられまして、その分で減収になりますので、税率のほうで二〇%と一〇%というほうの計算は、少額貯蓄を引いたあとで計算をいたしておりますので、それによりますと平年度百三十億の差額ということに相なります。
  360. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、引き上げたけれども、なお百三十億実は減税の恩典に浴しておるわけです。そうして、ここでもう一つ私が触れておきたいのは、一体預金利子の分離課税の適用になる人はどういう人たちであろうか。今度は皆さんのほうでは、少額貯蓄免税の限度を百万円に引き上げるというお考えですから、分離課税が有効に働くのは、定期預金その他の貯蓄性預金を百万円以上持っておる階層に対して有効に働くわけですね。それ以下は免税なんです。百万円までの少額貯蓄免税で税金がかからない、そこでこの利子の源泉一〇%がかかる層というものをやはりこういう資料で調べてみますと、これがまたいみじくも二百万円くらい以上の所得のある人でなければ百万円の定期預金を持っていない。よろしいですか。そうすると、いま利子課税についての分離課税で百三十億の恩典もある。片や百七十億の恩典も同じ年収二百万円以上の層にダブって作用するわけです。大体資料で調べると、二百万円以上の所得階層は定期預金が百万円くらいあって、株も持っておる、こういうような階層に実はなっておる。そうして、一つ問題になるのは、この両方の制度は、最初に私が確認をしましたが、わが国の所得税はすべてを総合して累進税率をかけることになっていますから、片方は累進税率で本来上がるべきものが、分離課税で一〇%なり一五%なりで横向けに切れるために、所得がふえればふえるほどこの減税額は大きくなる。あなたが最初にお答えになった累進税率というのは何のためにあるのか、所得の少ない者は税金を安くして、所得の多い者から税金を取るためにあるのだとあなたはお答えになった。ところが、いまのこの処置をやるために、所得の少ない人にはあまりきかないのです、こういう層には。上へ上がれば上がるほど、所得がふえればふえるほど減税額がふえるというのがこの仕組みなんですよ。大臣、よろしゅうございますか、税の公平の原則、累進課税という原則は、この制度の適用によってこっぱみじんにこわされた。税制の面から言うならば、非常に重大な今回の措置であると私は言わなければならないと思うのであります。池田総理に、昨年、一昨年と私、大蔵委員会でこの配当課税の問題について伺いました。池田さんは、いろいろと、預金利子の分離課税についてはやむを得ぬと、こういう言い方でありましたけれども、配当所得の分離課税はいたしません、こういうことでした。本会議における答弁も、田中さんお聞きいただいたとおりであります。私は、池田さんが病気になられて総理をおやめになると聞いたときに、一番最初に頭にきたのは何か、配当は分離になるなということでありました。佐藤さんが総理大臣になって最初にやられる税制の問題の中で、過去から今日まで続いた日本の所得税の制度、総合し、累進をする制度をこっぱみじんにするほどのこの税制改革を、わずか三十万世帯のためにやるということが、そうしてその実情は、これからあと私が触れますが、実際には、あなたのおっしゃるように日本の資本市場にそんなに有効には働かないのです。これは田中さん、実に重大な問題なんですよ。あなたも、もちろん三年も大蔵大臣をおやりになっていますから、事の重大さには気づいておられると思います。  そこで、お伺いをいたしたいのは、いろいろと矛盾は制限がなければ拡大をしますから、ひとつ私がこれまで述べたことを冷静に考えていただいて、まあわれわれ絶対反対だけれども、しかし、いまの五万円の確定申告が野放しで天井が千までいくような状態、五十万円の源泉選択が千銘柄までいくような状態をそのままにしておいていいとは、あなたもお思いにならぬだろうと思うのです。これはどこかに歯どめをかけるべきではないのか。私は、具体的に、建設的に日本の税制を守るためには、どうしてもこの銘柄数に制限を、どこか歯どめをかけるべきだ、こう考えますが、大臣、どうですか。
  361. 田中角榮

    田中国務大臣 銘柄数に歯どめをかける、一つの考え方でありますが、主税局で、技術的に一番むずかしい、こう言っております。三十万世帯に私が特典を与えるためにこの特別の税制をつくったのではありません。いま一番大きなものは何かということを考えますと、開放経済に向かっておる日本の現状を考えますときには、とにかく企業の国際競争力をつけること、それから何千万の労働者が給与の源泉として毎日働いておるこの企業が、永久に大きくなっていくようにしなければならないということであります。外貨をかせぐ元を大きくしなければいかぬということが一つ。もう一つは、物価問題であります。ほかの国は、物価に対しては増税をやったり、所得政策をやったり、相当荒っぽいことをやっておりますが、そういうことをやらなければならないような日本をつくってはならない。少なくとも去年の九月のIMFの総会でもって各国の人たちが来たのは、日本の物価も上がっておるけれどもイタリアのようにならないか、コストインフレにつながらないか、切実に国外からもそういう心配をしてくれておるのであります。それで、あなたが先ほどから、金融の正常化をはかりなさい。金融の正常化をはかろうとしても、一体何ではかるか。日本の資本市場、公社債市場というものが育成発展されなければなりません。物価に対して一番寄与しておるものは何か、遺憾ながら国民消費であります。お互いにこういう大衆の耳にうまく入らないようなものの言い方というのは、お互いがなるべく避けておりますが、責任の地位にあるときに、いま物価、物価でもってこう責められており、われわれ自身も物価に対処しなければならぬというときに、国民の貯蓄熱ということをかき立てないでどうして一体この難関に対処していけるか。こういう問題を深刻に考えながら、ある時期、貯蓄の増強をはかり、資本蓄積をはかることによって、日本国民全体が恩恵に浴するのだ。そうでなければ、私は堀さんに三年近くおつき合いいただいておりますが、こんなにこの問題だけで手きびしくやられておるわけでありますから、やられるであろうということを承知しながらあえて踏み切らざるを得なかったという責任の地位、こういうこともひとつお考えいただきたい。私は、国民に喜ばれることだけじゃなく、一時的には艱難辛苦の道であっても、それが将来にほんとうに安定の大道を開くものであるならばあえてやらなければいかぬ、こういう考え方でこの制度に踏み切ったのであって、三十万世帯のためにやったのじゃありません。
  362. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、銘柄に制限をつけることは技術的に可能だと思います。主税局長、できませんか、答えてください。可能だと思うのです。十銘柄でも二十銘柄でも、どこかで歯どめをかけることは可能です、両方とも。
  363. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。  確定申告不要あるいは源泉選択ということは、結局申告書に記載が出てこないという制度になっておりますので、銘柄数を法律でかりに規定いたしましても、その実効を得ることは困難でございます。したがって、技術的に銘柄数に制限を設けましても、それは単に法律の規定上制限を設けただけでありまして、実効をあげるわけにまいりかねるのでございます。
  364. 堀昌雄

    ○堀委員 確定申告を出さないということと、支払い調書を出さないということは別個に考えていいのですよ、主税局長。いいですか、各企業、発行会社は、支払い調書は全部出せばいいのですよ。支払い調書が全部出ていれば、申告をして、あなたは十銘柄以上もし確定申告を出していなかったらチェックできますよ。それでもできませんか。
  365. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えします。  一銘柄五万円以下の配当につきましては、支払い調書を提出いたさない制度になっておりますので、このほうのチェックはできかねます。源泉選択分の五万円超五十万円未満のものにつきましては、これは支払い調書を提出させることによってチェックをするという手はございますけれども、五万円以下の分については支払い調書が出ませんので、その方法が実効を得られないのでございます。
  366. 堀昌雄

    ○堀委員 法律で、あなたたちは、五万円までは調書を出さなくていいというふうに書いているのです。書かなければできるのですよ。調書を出さすこと自体は何ら問題ではないはずです。大体私は、これまでやっておる三万円までの支払い調書を出さなくてよろしいという処理は、まさに脱税につながっていると思うのですよ。いまの税法のたてまえは、所得があれば申告しなさいということになっているのですよ。いいですか、局長。大臣も御理解いただきたいと思いますがね。ただ、便宜上三万円までの支払い調書を出さないということにすぎないのです。  国税庁、来ておりますか。実はあまり愉快なことではないのでありますけれども、   昭和39年分所得税にかかる少額配当所得の取扱い   1 措置  (1) 確定申告の指導にあたっては、少額配当所得についての申告しようようは行なわない。  (2) 少額配当所得を自主的に申告した者については、当該申告者はそのまま受理する。したがって、減額更正は行なわない。    ただし、申告期限内の申告書のさしかえにより、少額配当所得の自主申告を撤回することを認めてもさしつかえない。 いろいろ書いてあるのですが、これは東京の国税局が所管署に対して口頭をもって指示したということになっておるのですが、国税庁次長、どうですか。これは、あと全部読むとあれですから、ここらでやめておきますが、どうですか。
  367. 喜田村建三

    ○喜田村説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の点につきましては、配当所得の資料をどこまで調査するかという問題につきましては、なるべく高額者のほうから調査をしていこう、こういう処理をしておりますと、また、たまたま税務署の調査によってわかったという人だけに特に強く課税が行なわれるということがあってはならない、こういったような観点から、なるべく正直者だけが不利になるというようなことのないように、そうしたような観点から、調査のやり方として一応こちらとしての考え方を述べたことはあります。その結果、いま申しましたように、たまたま見つかったということのための不公平ということを避けるための考え方ということで、出したことはございます。
  368. 堀昌雄

    ○堀委員 大体国税庁というところは、高橋さんも長い御経験があると思いますが、税金を取るほうには熱心で、まけてやるなんということはあまりやらないのですけれども、配当だけは、何か知らぬけれども、もうゆるふんで、どうでもしましょうというようなことは、私は、これはやはり適当でないと思うのです。  そこで、吉武自治大臣、たいへん長い間おつき合いをいただいておそくなりましたが、実は私が非常に心配しておりますのは、今度のこの配当の措置のやり方によって、地方税のはね返りというものが現実に出てくるのではないのか。これは、伝えられるところによると、税制としては現行のままだということで処理をされるということに聞いていますが、あなたのほうでは、いまの確定申告不要のような条件になって、地方税として配当所得をどうやって把握しますか、これをひとつ自治大臣、お答えいただきたいのです。
  369. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 地方税は、選択をいたしましてもしなくても、従来どおり申告をさして取ることにいたしております。ただ、五万円以下は確定申告をしませんので、従来三万円以下について確定申告をしなかったと同様、五万円以下についても取り扱うことにいたしております。それ以上は、同じような取り扱いでございます。
  370. 青木正

    青木委員長 堀君、持ち時間もわずかになりましたから、結論をお急ぎ……。
  371. 堀昌雄

    ○堀委員 さっき途中で紙を配る時間があったから、あと五分。三十分まででやめます。私は必ず時間は守りますから、御安心ください。  そこで、いまあなたは五万円以下は取らない、こうおっしゃった。そうすると、さっき私が申し上げたように、配当所得の中の九一%というのは、地方税は取らないということになるのですね。配当は五万円以下のものが九一%あるのですよ、現在は。よろしゅうございますか。それはもう地方税では取れなくなるのですね、今度は。ずいぶん大きな減収になりますよ。よろしいのですか。それでもいいのですね。どうぞお答えください。
  372. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 従来、配当所得につきましては、三万円以下は確定申告をいたしませんので、地方税は取っていないのであります。今度は、三万円が五万円になりましたので、五万円以下は、同様確定申告をいたしませんから取らないのであります。
  373. 堀昌雄

    ○堀委員 自治大臣にちょっと伺いますが、あなたのおっしゃったことは地方税法に書いてないのですよ、そういうふうに全然。どこかに書いてあったら、自治省、答えてください。この中に、三万円以下は取らないとか五万円以下は取らないなんということは、一つも書いてない。所得は合算をして、所得税法弟九条第一項、第二項云々によって全部取る。ただし、九条の第二項の配当所得については、配当控除として都道府県民税については百分の一・二、それから市町村民税については百分の三を控除する、こうなっているのですよ。五万円以下、三万円以下は取らないなんということは一つも書いてない。何の法律の根拠で取らないのか、答えてください。
  374. 宮沢弘

    ○宮沢説明員 ただいま御質問の問題でございますが、分離課税になります分につきましては、租税特別措置法の規定を地方税法で兼ねるという措置をいたしておるわけでございます。それから、御指摘の五万円までのものでございますが、これは国税のほうで支払い調書が出てまいりません。したがって申告不要になるわけであります。これは、先ほど大臣が申し上げましたように、地方税といたしましては捕捉が課税技術上不可能でございますので、これについては課税をいたさないという考えでございます。法律の立て方といたしましては、ただいま御指摘の条文があるわけでございますが、法律なり政令で特別の定めをする場合を除くほか、所得税法に定めます所得計算の例によって総所得金額を算定をする、こういうことになっておりますので、したがって、政令の規定によりまして、五万円につきましては課税をしないという所得計算の規定を置きたい、こういうふうに考えております。
  375. 堀昌雄

    ○堀委員 それによる減収は幾らですか。
  376. 宮沢弘

    ○宮沢説明員 減収につきましては、なおいろいろ不確定の要素がございますが、大体私どものほうでは五十億円、こういうふうに見ております。
  377. 堀昌雄

    ○堀委員 いいですか、地方税で五十億円という。この五十億円がだれに作用するかと言ったら、いまの三十万世帯に地方税で五十億円、だから、さっきから計算をしますと、要するに今度の特別措置で百七十億、地方税で五十億、百三十億は利子の分離課税、三百五十億円というものが三十万世帯に対して減税になるわけです。それは違うほかのものもありますわね。しかし、支払い調書が出なくなったのだから、下もあるけれども上もある。よろしいですか、まことに地方税にまで混乱を持ち込む重大な改正であります。  時間がありませんから、せっかく皆さんの手元に配っております資料のもう一枚のほうだけごらんをいただきます。これは、昭和三十六年分の相続税の実態調査の資料でありますけれども、これをごらんになりましてわかりますように——一億円のところでごらんをいただきたいと思います。所得階層一億円のところでは、有価証券が四五・七%、一人当たりで、相続税額は一億二千六百二十九万三千円でありますが、その中の八千五百万円というのは、これは有価証券なのであります。実に現在の資産家は、一億くらいの資産になれば、この年に六十一相続が行なわれておりますから、一億円以上の相続税というものは相当にあるわけでありますが、これが、ごらんのように非常に多くの証券を持っておるということは、今後所得の把握、相続税の把握を困難にするという重要な問題もあるということを私は注意を喚起して、最後に田中さんにお伺いをいたしますが、これは、二年の時限立法になっておりますから、二年でやめてもらわなければならない法律ですね。あなたはいま何とかいろいろと理由を言われましたが、あまり説得力がないのです。時間がありませんから、あとは大蔵委員会でまたみっちりやらしていただきますけれども、ひとつ予算委員会では、これは二年の時限立法だから、時限でやめるということでなければ、これは、私どもは何としても承知ができないのですがね、どうですか。これは二年でひとつやめてください。
  378. 田中角榮

    田中国務大臣 二年間で政策効果があがって、廃止されるような日が来ることこそ望ましい、こう考えております。
  379. 堀昌雄

    ○堀委員 望ましいということでは、これはもう答弁にならないのですよ。  それじゃ、一つだけ聞きますが、どういう条件になったらやめるのですか、そこをひとつはっきり答えてください。
  380. 田中角榮

    田中国務大臣 いま二年間の時限立法で御審議をいただいておるのでございますから、今回は通していただいて、そして、私が企図いたしました政策効果が十分あがって、二年間の時限立法を延長しないで済むような事態こそ望ましい、こういうことでありまして、具体的には二年たってみてから申し上げます。
  381. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの答弁では答弁にならないのですよ。政策効果があがったらというのは、その政策効果というのはどういう状態なんです。まあ端的に言えば、株式が、大体ダウならダウが幾らぐらいになったらいいとか、あるいは時価総額がどうなったらいいとか、何か証券対策ですから、資本市場対策なら資本市場のあり方がこうなったらやめますということでなければ、政策効果があがったらなんというような抽象的なことでは、いまの答弁にならないと思うのです。
  382. 田中角榮

    田中国務大臣 戦前の自己資本比率は、御承知のとおり六一%であります。現在は二三%を割っております。またじき二二%になるかもわかりません。現在、いまこの税制の改正ということで自己資本比率を上げたい、また証券市場の育成もはかりながら公社債市場等の育成もはかりたい、こう考えておるのであります。これが六一%の戦前に返ればというような大きなことを考えても、なかなかそうできるものではありません。ですから、少なくともいまの状態では、もう二三%を割ったら割りっぱなし、こういう争態でありますので、これが二年間ぐらいのうちに二五%、二八%というふうに向上のめどがつくことこそ望ましいというのが、この政策に踏み切った大きな主点であります。
  383. 青木正

    青木委員長 これにて堀君の質疑は終了いたしました。  次に、阪上安太郎君。   〔委員長退席、古川委員長代理着席〕
  384. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私はきょうは物価と地方公営企業、特に水道料金についてお伺いいたしたいと思います。  予算審議も、かなり時日を費してきたのでありますが、私どもがこの予算審議の中から、政府の具体的な物価対策、これが出てくることを非常に期待しておったわけであります。ところが、現実は全然そういった具体的な政策というものをわれわれは知ることができなかったわけであります。むしろ結果的に見ますと、政府のこの物価対策の無策ぶり、これが暴露されました結果かえって値上がりムードを助長しておる、こういうことでありまして、非常に残念に思います。マクロであるとかミクロであるとか、そういった経済論議を重ねており、そして、一方においては何ら政治的な手を打たない、こういうような状態でありまして、物価は依然としてどんどん値上がりいたしております。そうして、閣議決定いたしております例の中期経済計画の年率二・五%、こんなものは全く空論だというような現状になってきております。三十九年度におきましても、上昇年率四・八%、これを維持することすらはたして可能であるかどうか、こういうようなことでありまして、物価の下方硬直性というものは非常にきびしい状態になってきております。私は、政府が無策だと言いましたけれども、ある程度抽象的な考え方を持っておられることは知っております。例の政府の総合物価対策、これがやはり経済の安定成長であるとか、あるいは流通機構の合理化であるとか、あるいは企業の競争条件の整備、こういったものを中心として十項目ほどあげておられることも知っております。しかし、そのほとんど大部分というものは、過去、ここ数回打ち出されたものでございまして、過去の総合物価対策の、あの効果のなかった物価対策のこれは焼き直しだ、こういっても過言でないと思います。ことに、今回新たに入っておるような消費の健全化、こんなものはだれが考えたって精神作興か何か知りませんけれども、全くこれは政策としては噴飯ものだといっても差しつかえないと思います。したがいまして、結論的には、先ほども言いましたように、ほんとうにわれわれ期待もしておりますし、国民もたいへん期待をいたしておった物価対策というものは、結局は具体的に何も出なかった、こういうことであります。  そこで、私、お伺いいたしたいと思いますことは、物価上昇の要因、こういったものについてひとつ伺ってみたいと思います。  戦後のわが国の経験した物価上昇というものは、ディマンド・プル・インフレーションだと思います。かつて、大戦直後ドイツが経験したような、そういうひどいものではありませんけれども、ディマンド・プル・インフレーションでありまして、総需要と総供給との関係からやはり生じておる、こういうことはいえると思うのであります。しかしながら、最近のこの緩慢な物価上昇、あるいは緩慢なインフレーションといってもいいと思いますが、これは、やはりそう単純なものではありません。こういったディマンド・プル・インフレーションのワク内に入りますけれども、新しいやはり特徴を持ってきておる。それは、例の高度経済成長政策がやはり作用しておる、こういうように考えるわけであります。そこで、どういうふうなものが加味されたかということになりますと、労働力の需給関係から当然くるであろうところの賃金上昇、これが第三次産業、特にサービス業、そういったものの生産性上昇を追い越しているというような一面の事実もわれわれは認めましょう。しかしながら、また同時に、食糧に対する需給構造の変化、これが供給が適応しないような動きになっておる、このことも事実だと思います。そこで、いま一つのやはり追加された要因というものは、公益事業の減価償却不足と新規の設備投資の一これは一部といいますか、地方公営企業にとっては大部だと思いますが、これが価格に転稼されておるというところに問題がある、こういうように考えるわけであります。  そこで、第一番に経済企画庁長官にお伺いいたしますが、こういった公益事業の減価償却不足、それと新規設備投資、これが価格に転稼しておるというこの事実を、あなたはお認めになりますかどうか、これをまず伺っておきたいと思います。
  385. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 お答え申し上げます。  先ほどのお話の中で、現在の消費者物価騰貴の原因が、一つはディマンド・プル、つまり総需要対供給の関係から出てきているという点、この点から御批判はございましたが、その総需要のうちの最も大きな部分を占めるところの個人消費、この個人消費が昭和三十六年から昭和三十八年度まで毎年一五%台の増加を示してまいったわけでございます。したがって、これがこういうふうな急速な増大を示しておる限り、国民総需要は非常に急速な増大を示さざるを得ぬということをわれわれは認めざるを得ないわけでございます。しかも、国民生活の内容充実ということは、これは当然に政治の目的でございますから、必要でございますが、しかし、その中にむだがあれば、また不健全なものがあれば、これを排除していく、そういうことによって、これを本来見通しとして立てております、たとえば昭和三十九年度においては一一・七%を一応見通しとして立てておるわけでございますが、それに近い状態に持ってくるということがどうしても一つの必要な条件、そういう意味で国民の協力をぜひ求めたいという趣旨から消費の健全化ということをお願い申し上げておる次第でございます。また、その次の原因としていろいろお述べになりました、つまりコストの関係から消費者物価の上昇が来る、つまり生産性の格差が大企業と中小企業との間にある、または農業と他の産業との間に生産性の格差が厳然として存在する、その中において賃金も所得も平準化の作用が行なわれてきている。そのために、コストから消費者物価を引き上げるという作用を持ってきている。また、特にサービス産業等におきましては、その作用が顕著にあらわれてきている。これはお話しのとおりでございます。  そういうふうな関係から、そういうふうないろいろな原因を探求いたしまして、それぞれの分野に対して消費者物価対策を今年の一月二十二日に十項目にわたって打ち立てたわけでございます。もちろんこれらの各項目につきましては、即効的な効果のあるものがそうあるわけではございません。たとえば、中小企業の近代化または農業の生産性の向上というような問題は、これは相当期間をかけていかなければならない、相当な長い期間を対象とするところの課題ではございますが、政府としては、これにあらゆる精力を打ち込んで、そして消費者物価の安定に邁進するという覚悟は必要であるという観点からこれをきめたわけでございます。しかし、根本は、何と申しましても、先ほど御指摘もございましたように、経済の成長を安定的な基調に持っていくということが総需要対策としてどうしても必要なところであろうかと存じます。そういうふうな観点からそういうふうな措置をとった次第でございまして、全体として、消費者物価の上昇は今年度四・八%というふうに見通しを昨年の末に改定をいたしました。これは、一月において全都市の消費者物価が二%上昇いたしましたけれども、二月の東京の消費者物価が〇・一%の上昇にとどまったというふうな観点から、大体今年度はこの目標におさまり得はしないか、またおさまるべくあらゆる努力を傾倒していきたい、かような姿勢で努力をしていく考えでございます。しこうして、来年度におきましては、それをさらに安定的な方向に持っていきたい、かような非常な決意をもってこれに臨んでいる次第でございます。  しこうして、お尋ねの地方公共団体等におけるところの公営企業の問題が今日一番私どもの頭を悩ましている問題でございます。もちろん、公営企業において相当赤字がだんだん累積しているという事実は私ども率直に認めざるを得ないわけでございまして、これを全面的に絶対にいかないというものの言い方を申し上げる趣旨ではございませんが、しかし、公営企業の中にもやはりもう少し合理化してもらえるところがありはしないか、または近代化をしていただけるところがあるのじゃなかろうか、そういうふうな観点から、地方公共団体に対しましても、国がこれほどまじめに一生懸命に物価に対してこれを安定の方向に持っていこうという努力をいたしております際でございますので、ぜひそれに対して御協力を願いたいということをお願い申し上げておる次第でございます。
  386. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで、現在の物価上昇が、ディマンド・プル・インフレーション、そういう要因であるということはお認めになっております。なお、最近のその速度が非常に緩慢であるということもわれわれも知っておりますが、なお、しかしながら、その緩慢な上昇カーブがあるということも、これは認められておる。そうして、その要因の中に、いわゆる公益事業の減価償却不足というやつは、これは非常に大きな要因をなしておるのだ、それから、設備投資がどんどん行なわれておりますが、過剰投資でありましょうが、こういった新規設備投資、これらのものがあわせて料金に転嫁されているということが非常に大きな要因になっておるということはお認めになると思うのであります。ところが、そうだといたしますならば、この予算審議の過程におきまして、過般、横路氏の質問等におきまして、総理は、物価問題は経済問題である、こういうふうにはっきりと言い切っておられます。二月の四日だと思います。しかし、はたしてそうであろうかということが考えられるわけでありまして、なるほど価格であるとか物価であるとかいうものは、経済要因であることは明らかでありましょうけれども、しかし、あなたがいまおっしゃったように、大体中期経済計画というものが一つの政治的な意図によって計画されたということであります。すなわち、年率二・五%というものを期待して、昭和四十三年度におけるところの収支の均衡を保っていくのだ、したがって、政治的に二・五%というものを設定されて、そこへ持っていくのだという、いわゆる政治的な配慮が行なわれておるということは、これは事実だと思うのであります。御案内のように、資本主義経済というものは、これはほうっておいたって景気、不況の循環をたどるものであります。それからまた、先ほど申し上げましたようなマクロ的な見地に立ってこれを見ていくならば、当然そこに自然的な調節が行なわれる。しかし、それではどうにも当面の、この経済成長政策に伴うところの追加された要因で、これをそのままでは放置できないという考え方に立ったからこそ、したがって政治的な配慮が行なわれ、政治的なある種の決断が行なわれたのじゃないかと思うのであります。そうしますと、これは古くさい話かもしれませんけれども、やはり単に経済問題だ、政府は御案内のように政経分離などというようなことばをしょっちゅう用いられまして、経済と政治と分離していこうという考え方はありますけれども、やはりこの物価問題にも同じような思想が働いて、そこで政経分離の考え方に立って、純然たる経済問題として処理していくのだ、こういうようにお考えになっておりますようでありますけれども、しかし、現実にあなた方がおやりになっておることは、もうそれではとうていこれは押えることはできないのだというので、政治的な配慮というものをなさっておるわけなんです。企画庁長官も同じような答弁を審議の過程でなさったように私は思うのであります。やはりこれは経済問題という単に切り離した形で考えるのじゃなくして、どうしても政治的に決断を持って処理しなければならぬ問題だ、こういうことだと思うのでありますが、この点についてのあなたの考え方を伺っておきたいと思います。
  387. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 戦後の日本のインフレを収束した後におきましても、日本が国際収支の壁にぶつかり、あるいは消費者物価の上昇のために幾度か引き締めという調整措置をたどらざるを得なくなったことは御承知のとおりでございます。しこうして、今後そういうふうなことを何度も繰り返すということは、円滑なる今後の日本の発展のために決して好ましいことじゃない。その調整の過程ごとにおいて何らかの摩擦によるところの犠牲を伴なわざるを得ないのが過去の実績であり経験でございます。そういうところから、何とかしてそういうふうな国際収支の壁にぶつかるということなしに、また消費者物価の上昇のために引き締めをしなければいかぬというふうなことにおちいらないように、あらかじめ国際収支においては経常収支においてバランスをとる、また消費者物価については何とかして年率二・五%程度の上昇率に安定させる、この二つの目標を定めて、これに向かってすべての経済の運営をやっていったらどういう姿の経済の運営が妥当であるかということを検討し、結論を得ましたものが中期経済計画でございます。したがって、そういうふうな目標を定めるということ自体、これは経済的な問題ではありますが、御指摘のように、同時にこれは高度の政治の問題であろうかと存じます。そういう意味では御指摘のとおり単純な経済の問題を離れて、高度の政治の問題であろうかと、かように存ずる次第でございます。
  388. 阪上安太郎

    ○阪上委員 物価の論争などはこの程度にとどめておきまして、肝心な話に入っていきたいと思いますけれども、いま確認されたように、やはり物価上昇の大きな原因をなしているものの中に公共料金がある、こういうことなんであります。で、この公共料金、特にきょうは地方公営企業の料金、それから値上がり構造、そういったものをひとつこれから取り上げていきたいと思いますが、過般の高田富之君の質問のときに、総理大臣、大蔵大臣の御答弁を伺っておりますると、どうも地方自治がよくわからないんじゃないかという印象を私は受けたわけであります。水道料金の値上げ、ことに東京都の大幅な料金値上げに対して、総理は、大幅な値上げ幅はこれは適当でないと思う、しかしながら、ある程度の値上げはやむを得ない。そういった値上げ幅については、これは自治体の自主性を重んじて、自治体がかってにやればいいことである。こういうような答弁を実はなさっているわけであります。大蔵大臣にしても、やはりこれと同様の答え方をしておられる。国から財政援助をせよ、こう言われるけれども、それはすべて国民の血税であるから、したがって、それを特定のそちらの人に回すというわけにもいかないのだ、やはり受益者の負担の原則に従ってこれはやるべきであると、こう大蔵大臣も言っておられる。何かここに地方自治に対する考え方というものが非常に皮相なところにとどまっておるのじゃないか、失礼だけれども、私はそういうように思うわけであります。自治大臣は、これはもう地方自治の担当者でありますので、あなたにお伺いする必要はないと思いますが、一つ大蔵大臣並びに経済企画庁長官に、地方自治の本旨は一体どんなものであるか、憲法九十二条に保障されておりますところの、地方公共団体の組織並びに運営については、地方自治の本旨に沿うように法律でこれを定める、こう規定されておりまして保障されております。一体この地方自治の本旨というものをどういうようにお考えになっておるか、これをひとつ参考までに伺っておきたい、かように思います。
  389. 高橋衛

    高橋(衛)国務大臣 新憲法の時代になりまして、地方公共団体というものが憲法上の完全な独立の機関であるということになったことは、私もよくその趣旨並びに精神は了承しておるつもりでございます。ただ、公共料金について私どもが絶ずえ公共団体に対していろいろ協力方と申しますかを要請申し上げる趣旨は、公共団体の公共料金等をおきめになります際に、独立採算制を基本にするということは、これはもう一つの原則でございますから、けっこうだと存じますが、またその間において、何かやはり物価を安定する立場から申しますると、財政全般の数字から申しますと、これは大蔵大臣から申し上げることが筋かと存じまするけれども、国の三兆六千何百億円のうち、国プロパーで使う金というものはそのうちの相当わずかな部分で、半分以上というものが地方を通して、地方公共団体の手においてこれが使用されることは御承知のとおりでございます。そういう関係から申しまして、全体の、つまり国民経済的な見地から申しますと、政府の財貨サービスの消費という面から申しますと、地方公共団体のほうがむしろ過半数の消費をつかさどる団体に相なっておるわけでございます。そういうふうな関係から、物価の安定に対しては、地方公共団体もまた政府方針に準じて、これに対して全面的な御協力、またそれについて熱意を持っていただきたい。これはもう当然の要請であろうかと存じます。しこうして、たとえば公共団体等において私どももよく経験をいたしておりますが、バスの事業にいたしましても、町村合併等の際において、その条件としてきわめて不採算的な部分をずっと新しく始めるというふうな卓例もございます。その他、そういうふうな、つまり必ずしも企業採算という面じゃなしに、その地域の政治的な理由によって、やむを得ずきわめて不採算な事業をやらざるを得ぬという事態の存在することも私ども認めざるを得ぬと存じます。そういうふうな部分については、これは、一般会計において負担することが理論的に成り立ち得るであろうと存じまするし、また、公営企業自体につきましても、民間の企業と比較いたしまして、それが完全に合理的に能率的になされておるかどうかという点についても、ぜひひとつ御勉強願って、国の物価安定に対するところの方針に衷心からひとつ御協力願いたい、そういうことをお願い申し上げることは、これは国として当然な要請ではなかろうか、かように存じておる次第でございます。
  390. 田中角榮

    田中国務大臣 地方自治の制度は非常にりっぱな制度であり、育てなければならないという基本的な考えは持っています。しかし、日本の戦後、これは占領軍政策の一つ重点でありましたメモケースの非常に強いものでありましたが、地方財政の伴わないところの地方自治、こういうところに非常に大きな問題があります。でありますから、国は、理想的な姿といえば、地方自治体で合理的な自治をやり、そうして、国はより高い立場で総合的な調整を行なうということは、制度の上では好ましいことであります。でありますから、いま地方交付税制度等をもちましたり、また特別交付税制度等をもって調整をとっておるわけでありますが、いずれにしましても、日本の戦前、戦中、戦後を見まして、東京、大阪というような二大拠点、それから表日本のごく少数の府県、これらの自治体だけが自力でまあ何とかつじつまが合わせられ得る。あと少なくとも九州、四国、北陸三県、北海道、東北、こういうところは地方財源の非常に枯渇をしておるところであります。でありますから、地方自治の制度をとってこれを大いに育てていかなければならないといいながら、国の恩恵が相当行なわれておるところの、しかも立地条件のいい表日本や、東京や大阪に住んでおる人たちの住民税が安くて、北海道や東北や、裏日本の豊かならざるところが住民税が高い。こういうような、地方自治の制度を採用したときのわれわれの理想からは遠い状態もございます。でありますから、私は、やはり地方のいま御指摘になっておる水道とか、また交通事業とか、確かにそういうものに対して国が財政上できるならばいろいろな措置をすることは好ましいことでありますし、また、できるだけ財政投融資等によって協力をしてきておるわけでありますが、やはり国の金の使い方には二つあります。一つは、少なくとも事業的な独立採算ベースに乗るという立地条件にあるものに対しては、やはり自力でまかなってもらう。しかし、地域格差の非常にあるところ、このままにしておけば日本の総人口が表日本に集まってしまう、こういうことを避けなければならない、こういういわゆる北海道や、日本には五〇%に近い降雪地帯があるわけでありますが、この恵まれない地域であり、地方財源も枯渇しており、しかも人間は一県から毎年毎年一万人も東京や大阪へ集中的に地方から出なければならない。私は、こういう財源に恵まれない、立地条件の悪いところには国民の税金でもって高率補助を行なったり、太政官布告時代北海道は金額国庫負担制度さえ設けたのでありますから、やはりこういう財政にもバランスをとりながら国民すべてが国恩恵をあまねく受ける、こういうふうにやらなければならぬと思うのです。先ほども経済企画庁長官が述べられましたが、三兆六千五百億といいますけれども、そのうちの一兆七千五百億は地方に対して支出をする金であります。でありますから、国の予算は一兆九千億と見るべきであります。そのうち人件費を引いてしまうと非常に少ない金額であります。でありますが、その中から、きょうも議論になっておりますが、減税もしなければならない。また、国保や保険財政に対しても、国から何分の補助をしろというような歳出要求が非常に多いのであります。でありますから、乏しい財政の中で戦後育てようとしてわれわれが踏み切った地方自治の制度とどういうふうに調和をとっていくかというところに政治があるわけであります。私は、東京や大阪の水道ということに対しても、確かにわれわれいま物価の問題から考えても、また潜在人口を入れて千二百万も住むという東京の水道料金を上げたくありません。ありませんが、それよりも豊かならざる千葉県のほうがうんと高い、それよりももっと豊かならざる群馬県のほうが高い、こういう事実も見のがしてはならないわけでありますから、私は何でもかんでも全部を料金によってまかなうべきだという議論を持つものではありませんが、少なくとも日本において明治初年から百年間も投資が行なわれて、日本人の大多数が住んでおる他のところよりも豊かな地域であるというような自覚を持たなければいかぬと思います。そういう意味で、お互い自身が連帯的な責任を負いながら、九千七百万がほんとうに格差がない社会をつくらなければならない、こういう考え方によって私たちはいま地方自治と国の政治との調和をはかっておるのであります。いまの企画庁長官、大蔵大臣の地方自治に対する考え方は、考え方としてはそういう考え方で私はいいと思うのでありますが、私先ほどからお伺いしているのは、憲法にある地方自治の本旨——地方自治の本旨というやつはものさしなんです。このもしさしにあてはまらなければ、いかなる法律をつくって、これは無効なんです。違憲なんですよ。そういった重大な役割を果たしている地方自治の本旨ということは、口ではみな簡単に、選挙のときでも何でも、地方自治の本旨だ本旨だとそこらを歩き回っている。しかし、それをほんとうに理解している人たちがはたして何人あるかということです。ことに、この間うちからの予算審議の過程の中で公共料金の問題が出てきた場合に、皆さんがお答えになっている考え方というものを見ますと、くどいようですけれども、ほんとうに地方自治がおわかりになっているかどうかわからない。地方自治の本旨は、やはり学説のあるところでありまして、これはさまっているのですよ。一つは住民自治でなければならぬということなんです。したがって、理事者や議会だけでもって——地方議会ですよ。国会は国権の最高機関ですから文句はありませんが、しかし、地方自治体におきましては、その自治権の最高の権威の所在というものは住民にあることは明白なんです。したがって、東京都のように理事者だけでもって、あるいは議会だけでもって、あるいは理事者と議会だけでもってものごとをきめたならばそれが最高の決定だなどという考え方を地方自治体が持っているということ自体が間違っていることを私は指摘したいのでありまして、そこで、問題になってまいりますのは、いま経済企画庁長官は、自治体に対して国の施策にも順応してくれるということが必要であるということを言っておられます。それから大蔵大臣は、この間と私はちょっとセンスが違っていると思うのでありますけれども、この前は自治体のことは自治体がやればいいのだという考え方が、そうじゃなくして、これは補完して、国もこれを補い、足してやるという考え方、これがなければいかぬということをいまおっしゃったのであります。  そこで、いま一つ、やはり地方自治の本旨の一つとしては、これは直接選挙によって理事者並びに議員が選ばれるということでありますが、これは別といたしまして、自治体には自治体の固有事務がなくちゃいかぬということです。都道府県には都道府県の固有事務がなくちゃいかぬということであり、国には国の固有事務がなくちゃならぬ。それぞれが固有事務を持たずしていかに地方自治の本旨だと言ってみても、これは何も意味がないことであります。  そこで、お伺いいたしたいと思っておりますのは、そういった住民自治、それから同時に固有事務がなくちゃいかぬ、こういうことなんでありますが、一体地方自治体の固有事務とは何であるか。なるほど法律にはこれは例示されております。しかしながら、その固有事務は、はたしてあれが固定的なものであり、あれ以外の事務というものはやっちゃいけないのかということでもないと思うのであります。そういたしますと、いろいろないま問題になっております地方自治体の事務というものが、時代の進展とともに変化をもたらしてくる。こういうことなのでありまして、こういった変化に即応して、一体それを貫き通すところの地方自治体の固有事務というのは一体何だ、このことが明白にならないといけないと思うのであります。自治大臣、地方公共団体の固有事務というものは一体どうあるべきか、国の固有事務というものはどうあるべきか、この点についての御見解を承りたいと思います。
  391. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 阪上さんのおっしゃるとおりに、地方自治は住民の自治でなければならぬということは当然でございます。しかしながら、国の固有事務と地方自治体の固有事務との間にはおのずから差はございますけれども、やはりだんだん国の事務というものの中には住民の福祉というものにつながるものが大きい分野を占めてきておるのであります。たとえば国民健康保険というのは、一体これは国の事務なのか、あるいは町村の固有事務かというと、一応国の事務になっております。しかしながら、この国保というものは住民の福祉に直接つながる問題であります。そのほか厚生年金の問題にしましても、あるいは環境衛生の問題にしましても、先ほど企画庁長官が申しましたように、国の三兆六千億という予算の中で、国の支出金というものは約一兆円にのぼっております。交付税七千億を除きましても、この国庫の支出金というものは地方の住民の福祉につながる支出金であります。でありまするから、理論的には国家の固有事務あるいは市町村の固有事務というふうに分けられるかもしれませんけれども、だんだんと、特に戦後における国の事務というものは、地方の——地方といいますか、住民の直接福祉に関係するところの事務になっておるわけでありまするから、そこは理論的に分ければ分けられぬことはございません。国の固有事務は、地方の住民に直接関係のないものもございまするけれども、だんだんとその分野が、住民の福祉につながっている分野が多くなっておるという点をひとつ御了承いただきたいと思います。
  392. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで、先ほど経済企画庁長官がちょっと指摘されておりましたし、また大蔵大臣もそう言っておられますが、租税収入の七割くらい、これが現実に国税として徴収されておる。それから三〇%、三割くらいが地方税という形で取られておる。しかし実際には、その金を使用するときには逆のパーセンテージが出てくる。そして、最終的には地方自治体が七割くらいは使っておる、三割くらいは国が使うということになる。ほとんど人件費だけだと先ほどおっしゃっていたのは、私そうだと思う。そういう実態を実は地方自治体が持っておるということです。したがって、租税収入というものは国全体で使えばよいものである。事務配分の関係から、便宜上一応取る場合には七〇%は国が取っておる。三〇%は地方税だ。こういうことだけれども、その比率が変わったって何も差しつかえない。ところが、事務配分というものは長い間懸案になっておりますけれども、ちっともやろうとなさらない。再配分をしようとしない。そうして、現状にそぐわないような固有事務というものが地方自治体に与えられておるということなんです。そこで、そうはいかないということで、国のほうでは事務配分をしようとしないで、委任事務という形で地方に国の事務をどんどんおろしてきておる。そうして、それに十分見合うところの財源措置が行なわれればいいけれども、それに見合うところの財源措置が行なわれていない。現実には超過負担がどんどんあるじゃありませんか。そういう超過負担等を含めて、国の事務が地方に大きく委任事務の形でしわ寄せされている。都道府県のごときに至りましては、固有事務というのはわずかしがなくて、九〇%近くは国の委任事務をやっている、こういうことであります。市町村の比率は、私はよくわかりませんが、大体あの別表の一、二、三、四を見ていくと、市町村においてすら、やはり四五%ぐらいは国の事務をやっている、こういう事務配分になっているわけなのであります。しかしながら、先ほどあなた方もおっしゃいましたように、事務配分というものは、必ずしもこれとこれとが地方事務であり、これとこれとが国の事務であって、これは一定不変のものであるというわけにはいかないものだということをおっしゃっておる。そういうことでございますならば、いろいろな財政需要が生じてくるところの事態が発生してきた場合に、国税は国が使うんだ、地方税は地方が使うんだというような単純なものの考え方で地方自治体をながめているということは、私は大きな誤りではなかろうか、こういうふうに実は考えるわけであります。  そこで、私は、地方公営企業におきましても、やはりもっとこれらの点からあたたかい考え方を持っていただきたいということなのであります。地方公営企業は、地方公共団体の事務でありましょう。自治大臣、どうですか。地方公営企業は地方公共団体の固有事務でありましょう。この点、どうなんです。
  393. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 もちろん地方公営企業は地方の固有の事務ではございますけれども、しかし、一つの企業でございます。したがって、普通の行政事務、あるいはまた普通の道路だとか下水だとか環境衛生的な施設と違いまして、これを利用する者がいるわけでありますから、先ほど大蔵大臣が申しましたように、やはり利用する者がこれを負担していくというたてまえ、私どもこれを独立採算制と言っておりますが、そのたてまえはやはり一応とっていくべきじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  394. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私は、簡単にいままで伺ってまいりました。自治大臣も相当地方自治には明るいと私は思っておりましたけれども、いまのようなおことばをいただくと、非常に私は、その点があやしくなってくるわけなのであります。私が伺っているのは、地方公営企業というものは地方の事務だろうと言っているのですが、その点は事務だが、しかしながら、これは企業であります。こういうような言い方をされているのであります。そこで、この地方公営企業は企業であるから、先ほどの大蔵大臣の論法によりますと、受益者負担、あなたもいま受益者負担ということをおっしゃった。一体受益者負担というのは何ですか。受益者負担の定義をひとつ伺いたいと思うのと、現在どういう種類がございますか、これを伺っておきたいと思います。
  395. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 御承知のように、公営企業は電車、バス等の交通、あるいはまた水道、あるいは……(阪上委員「受益者負担を聞いているのです」と呼ぶ)受益者負担の原則をとっておるのは、いま私が指摘いたしましたように、電車とかバスとかいったような交通、それからまた水道あるいは病院といったようなものを私どもはさしておるわけでございます。
  396. 阪上安太郎

    ○阪上委員 もう少し正確に言いますと、受益者負担というのは、現在のところ大体四種類くらいあると私は思うのです。一つは目的税を取っているところのもの、これは明らかに受益者負担です。きのうからきょうへかけて問題になっております国民健康保険税、こういったものは明らかに受益者負担です。これは、目的税という形において受益者負担が取られているところの事務であります。それからいま一つは、手数料であるとか使用料であるとかいうような形で取られておるもの、これはやはり受益者負担です。それからいま一つは、俗に税外負担といわれておるところのもの、これは無差別に、応能の原則は無視されて、税金のような扱いを受けないで、金があろうがなかろうが、貧乏人であろうが何であろうが平等に取られておるところの税外負担、PTAの会費その他を含めたものであります。そのほかに、地方公営企業という形で受益者負担をしいられているもの、それがいまあなたがお答えになったものであります。  そこで、考えなくてはいけないことは、こういった受益者負担を取られておるところの仕事の中にきわめて公共性の高いものがあるということなんです。むしろ公共事業としてやらなければならぬようなものが、財政投融資というような形で公営企業の中にぶち込まれているということなんです。そこで、こういったものに対する考え方を、ただそれが企業であるから独立採算制でなければならぬ、こういうふうにあなたは考えられてしまっておる。こういうところに、地方自治の本旨がわからないし、地方自治に対する理解が足らぬということを私は言っておるのです。地方公営企業の中で、たとえば東京都でこの間問題になった下水道事業というのがあります。一体、下水道に金を取るなんという考え方——一般税財源で下水道事業をやっておる反面において、公営企業という形で下水道事業をやっておる。こういうのはおかしいじゃありませんか。それほど公共性のあるものが地方公営企業の中にぶち込まれておるということなんです。このことから、私は受益者負担という考え方の中によく皆さんで考えていただかなければならぬ問題点があると思う。受益者負担だから一切がっさいこれは料金に転嫁していいのだというような考え方で、いわゆる独立採算制というものを頭に置いている。しかし、その中には公共性のきわめて高いものがあり、むしろ公共事業としてやるべきものがある。いま問題になっておる水道なども公共事業でやったって差しつかえないでしょう。それに対して、それは地方の固有の事務であり、企業である。したがって、赤字が出てきょうが何しようが国はわれ関せずえん、こういうような態度で一体地方自治が現在の危機を脱却することができるでありましょうか。  そこで、私はお伺いしたいのですが、一体地方公営企業というものはどういう性格のものであるか、私企業と地方公営企業とはどう違うのか、ここのところをひとつ自治大臣、御解明願いたいと思う。
  397. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 御指摘になりましたように、地方公営企業の中にはいろいろなものがあると思います。御指摘のような下水なんかになりますれば、公共性の度合いが非常に強いと私も思います。しかしながら、バスのようなものになりますと、民間の経営によって通るバスも、あるいは都営で通るバスも、バスとしては同じでありまして、ただそれが民営よりも公益性が強いから、公共団体のほうがやったがよかろうということでやっておるのでありまして、これは民営でやったからといって一向差しつかえないと思うのであります。病院にいたしましても、これは公益性が強いのでありますけれども、病院には民営の病院もたくさんございますし、また公営でやっておられるのもたくさんございます。別にそう差別をしなければならぬというものでもなかろうと思います。御指摘の水道になりますと、やや公益性の強い、あるいは公共性の多分に含まれているものも私はあると思うのでありますが、しかしながら、この水の使用につきましては、いろいろ利用する者によって差もあることでございまするし、従来からの関係から申しましても、利用者がこれを負担するというたてまえをとってきておるわけでありまするから、私は、やはりこれも独立採算といいますか、利用者負担というたてまえでいくのが原則でなかろうか、かように存じておるわけであります。
  398. 阪上安太郎

    ○阪上委員 あなたはそういうふうにお考えになっておるので、実は大蔵大臣に折衝されましてもやり込められてしまうんじゃないかと私は思うのです。それは、いまどき、自由経済下、資本主義経済の機構の中で私企業をやっておる状態を考えてみても、いまの地方公営企業のように独立採算をしいられておるような形のものはございませんよ。私企業ですらそんなことはやっておりませんよ、資本主義の経済機構の中で。少なくとも路線を延長するという場合に、どういう資金の調達をいたしますか。やはり自己資本をこれに充当するでありましょう。蓄積をされた自己資本、株式募集という形でやるでありましょう。御案内のように株式というものは、これは、元金償還をしなくていいわけであります。利益が上がらなければ配当をする必要もないでしょう。どうしてもいけない場合に、社債を発行するでありましょう。なおいかぬ場合において、やむを得ず借り入れ資本でやっていく場合があるでしょう。ところが、地方公営企業は一体どうなんです。水道の拡張をやっていく、地域開発はどんどん進めていかなければならない、新産都市も建設しなければならない、そういう場合に、その新しく設備投資をやっていく場合、あるいは地下鉄を延長する場合、いまのやり方を考えてみますと、一切がっさい借り入れ資本でやっておる。政府はあくどくもこれに対して元利償還を迫るじゃありませんか。そうして、それが赤字を出す、経営困難になってくる、ということになると、料金にこれを転稼していく、経常費からそういった設備投資まで一切がっさい含めて、現在の住民にすべて転稼していく、そして、料金でもって一切がっさいまかなっていく、こういう残酷な企業というものは、民間の企業にもそんなものは見出すことはできないです。なるほど、最近設備投資過剰でもって、銀行借り入れその他でもってたいへんまずい状態になってきておりますけれども、しかし、それは現在の特定の状態でありまして、経済が安定成長していくならば、やはり正常な姿を取り戻すでありましょう。この場合、一体地方公営企業というものは料金でもって一切がっさいまかなっていくのだというそういう独立採算性——自由主義の経済、資本主義の経済の中においてそんなばかなことはやっていない。これに対して矛盾を考えないばかりではなく、公共性の非常に高いものであって、経済性よりも公共性が優先しなければならぬところのものは、そういう形で運営されていく、そういうことがしいられておる。これが今日のいろいろな地方公営企業のひずみとなってあらわれてきておるわけなのであります。これに対しまして、自治大臣は一体これでいいのかどうか——先ほどは何か現行の独算性を原則としてやらなければならぬとおっしゃっておりますけれども、それではたしていいのかどうか、こういう点。それから、これは大蔵省といつも問題が起こるのでありますが、大蔵大臣は、一体こういうものに対する考え方は、現行の独算制というものがはたしてあんな状態でいいのかどうか、これをひとつ御答弁願いたいと思います。
  399. 田中角榮

    田中国務大臣 公営企業は公益性が強いものであるということは、そのとおりでございます。でありますから、これはもうけて、その企業がうんと黒字になって、一般会計の収入として入れなければならないというほど利益追求をすべきものでありません。これは、そのとおりであります。  それでもう一つ、大蔵省自身も、公営企業というものに対しては、この公益性ということを十分承知をいたしまして、財投等いろいろな協力もいたしておるわけであります。ただ、この上に一般会計でもって負担すべきものかどうか、こういう問題を御指摘になっておられるわけであります。  一般会計には二つの道があります。国の一般会計で補てんすべきか。もしくはその当該地方団体の一般会計から特別会計へ補てんすべきかという問題がございます。私は、公益性は強いけれども、国も減税をしたり、まだ豊かならざる低開発地の開発に全額負担の道を開いたり、災害復旧に対して高い補助率を行なったり、そういう歳出要求がございますから、バランスの上でいずれが国民福祉のために先にすべきかということを十分考えながら、比較検討の上評価をいたしておるわけであります。また、地方公共団体も、一般会計に企業会計からの繰り入れを求めておるものではなく、  一般会計で負担をするといっても、これも、その地方自治団体の管内における住民の税金によってまかなうものでございますから、より低所得者対策とかいろいろなものとバランスをとりながら、やむを得ない場合には利用者に応益負担という面で転嫁をするということもやむを得ないということでございます。でありますから、調和の点で、いずれが現在の点において優先すべきかという問題にしぼられると思うのであります。道路は無料公開が原則であります。ありますが、昭和二十七年に道路の五カ年計画法を設定しましたときに、ガソリン税を目的税に近いものにいたしたわけであります。その後、地方道路税に対しては目的税と規定をいたしたわけであります。ですから、あの当時も、道路はなければ歩けないのだから、これはもう当然無料公開でなければいけないということでございましたが、十四、五万キロの道路を短い間に解消するには、どうしてもこのような制度を採用せざるを得ないということで、有料道路の制度を採用したわけであります。でありますが、いまでも有料道路の制度を採用する場合でも、一木の道だけは無料公開の道がなければいかぬということを守っているわけであります。道路さえやはり有料道路の制度ができましたように、無制限に応益負担といって利用料に依存すべきではありませんが、いまの状態では財源のバランスを考えながら、いずれが住民福祉に優先するかというたてまえで考えますと、地方財政においても国の財政においても、あり余っておる財政ではありませんので、ある程度、ある時期には利用者に負担をしていただく、こういうことになるわけであります。国の問題を率直に申し上げて——これは率直で言い過ぎになれば取り消しますが、私も地方公営企業、特に水道の問題に対して、都会において水道をとめられれば水を飲むことができないのだから、こういう御議論もございましたし、私もその事実を十分承知をしておりますが、国民の中では水道の恩恵に浴さない部面の人もたくさんおるわけであります。でありますから、現在、国民総数から考えますと、やはり大多数の人たちは、まだ水道の恩恵というよりもみずから井戸の水とか、そういうものを使っておる。こういう状態から十分検討いたしましたときに、やはり国の投資が行われておって、まあ下世話なことばで申しますと、水を飲むにも金は要るけれども、水を売っても生きられる、こういう事業としてペイするような可能性のあるところには、公営企業というものが現に存在いたしておるわけであります。私は、ただ応益負担の原則ということだけを申し上げておるのではありません。国でも、金があれば公益性の強いものに対しては十分協力すべきでありますし、また財投等によっていろいろ処置もいたしておりますから、こういうものの幅も拡大をしながら、特に国が物価政策という面から一年も二年も三年も公共料金を押えておるということになれば、その一半の責任は国にもあるわけでありますので、資金的な問題に対しても国も協力をしてまいるという考え方でございます。
  400. 阪上安太郎

    ○阪上委員 自治大臣、どうですか。
  401. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ただいま大蔵大臣から答えたとおりでございますが、阪上さんの御指摘になりましたように、水道につきましては、バスその他とやや違いまして、相当の投下資金を要することでございまするから、それをそのまま料金にはね返ると相当の重荷になるということは言えると思います。しかしながら、水道は、一度大きい投下資金は要しまするけれども、一度投下しますると、長い間使えるわけでありまするから、長期にわたってこれを料金で払っていくということをいたしますれば、私はそう大きい負担にはならないと思います。現にいま大阪の水道料金は、非常に安い。東京の水道料金も、いままでは非常に安かった。これは過去における投下資金というものが相当長く使われてきたからでございまして、戦後、特に最近に至って水が不足いたしまして、新たなる設備をしなければならぬ、それに相当の大きい資金が必要になってきた、こういうことで困ってきたのが一つでございますが、したがって、これらの大きい資金を、長期にわたって比較的安い資金を世話をするということでいきますれば、長い目で見ればそう大きい負担にはならぬと私は思うのであります。ただ、現在までの問題を考えてみますると、遺憾なことは、急激な設備投資が行なわれましたために、政府資金だけではなかなかまかない切れなくて、民間の短期の比較的高い資金を使ってやってきた、それが一つの原因になりまして赤字がふえてきたということも言えるのでございまして、この点を政府がもっと考えて、できるだけ政府資金をこれに融資する、また比較的安い資金を世話をするということでいきますれば、長い間の——水道はまあ大体五十年は耐用年数があるといわれておるのでありまするから、五十年で償還するというわけにはいきませんけれども、これが二十五年や三十年というふうなことで考えていきますれば、私はそう大きい負担にはならぬと思うのであります。ただ、遺憾なことは、先ほど申しましたように、資金が足りぬために民間の七年くらいの、あるいはまた八分くらいの高い利子のものを使っておりまするので、まあそれがだんだんと積もってきて困ったような状況でございまして、したがいまして、四十年度の起債につきましても、水道につきましてはできるだけ政府資金を多くひとつ考えていこうというような配慮もいたしました。また、年限も、従来政府資金は二十五年でございましたが、これも目下大蔵大臣と折衝しておりまして、もう少し長く考えられないかということで、せっかく大蔵大臣も努力をしつつあるようなことでございまして、したがいまして、やはり水道も、原則としては利用者が負担していく、これは原則でございまして、どんな地帯においても、どんな場所においても、全部これは利用者でなければいかぬといって言い切るほどのことは私はないと思います。それは、状況によっては一般の地方団体の一般財源でやるという場合もございましょうし、また政府がこれに若干の補助をするということも考えられるでありましょう。現に簡易水道は、すでに政府が補助金を出してやっておることでございまするから、私は何もかも全部というわけじゃございませんけれども、まあ東京にしましても、大阪にしましても、やはり利用者がこれを負担していくという原則はひとつ立てて、ただ、その場合における資金その他は、公共性の強いものでございまするから、政府もまたこれに対してめんどうを見ていくということでいけるのじゃないか、かように存ずるわけでございます。
  402. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私は、大蔵大臣、自治大臣の答弁、そういう見地からはそれでいいと思うのでありますが、ただここで考えていただかなければならぬのは、その点のみではないのであります。一般会計から充当せよ、あるいは繰り上げ充用をやれ、それを無差別にやれというような考え方は私は持っていない。ただ私申し上げたいのは、聞きたいのは、そうして考えていただきたいことは何かというと、私企業でもああいう制度でやっているのに、なぜ償還年限、元利償還をしなければならぬような資金でほとんどまかなっていかなければならぬか、なぜそういうような金融措置をやっておるかということなんであります。いま聞いてみると、二十五年を若干延ばしていくようなおつもりが出ておるようであります。御案内のように、英国あたりではほとんどすべての公営企業が百年債でしょう。アメリカはほとんどが四十九年でしょう。五十年は永久と考えるのかどうか知りませんけれども、きわめて長期の金を貸しておる。ほとんど永久債だといっても差しつかえないような形で融資されておる。ここのところを私はやはり学びとっていかなければいけないんじゃないかということなんであります。過去の累積赤字から将来の新規設備投資の分まで、料金へ一切がっさい転嫁していかなければならぬというような残酷な行き方はないと私は思う。したがって、期限を大幅に、あなたの言うように三十年ぐらいのものではだめだ。うんと大幅に延ばすことによって、住民負担というものがきわめてわずかな部分で済むのじゃないか。いずれこれは返すのですよ、永久債といいましても。そういうようなものの考え方でやはり考えていただかなければいけない、こういうことなんであります。その方途がとられてこなかったというところに、今日の地方公営企業、ことに水道等の赤字の累積の原因があるのではないか。ほかにも理由はあります。ありますが、おもなる理由はそれであります。要するに資本コストでもう手も足も出ないということになっておるわなんであります。ここのところは、やはり真剣に考えてやっていただきたい、こういうことなんでありまして、そういう意味合いにおきまして、五年とか十年というようなけちくさい考え方でなくて、もっと思い切った措置が講じられなければならぬ、こう思うわけであります。もう北欧の三国なんかに行っても、あの都市は、この前も私は東京の水飢饉のときに自治大臣に質問しておったのであります。家庭用の水道料金なんというのは無料ですよ。カナダに行ってごらんなさい。トロントやあるいはウイニペッグあたりの市を回ってごらんなさい。家庭の水道料金みたいなものは無料です。それほど公共性の高いものであり、きわめて国民生活にとっては密接不可分なものだということは言えるわけです。それを依然として、いま言ったようなわけのわからぬような独算制で固執していこう、あるいはいま言ったような永久公債等を発行する余地はあるけれども、しかしながら、この永久公債にいたしましても、大体公営企業が利潤を目的として経営されていないのに、そんなものに民間がどうして応募してきますか。だから、ああいう条項が地方公営企業法にあったといたしましても、こんなものは全然開店休業ですよ。そこにもやはり問題がある。なぜ政府資金によるところの永久公債を発行するような方途を講じてやらぬのですか。その他いろいろな問題がございますけれども、きょうは、特に、水道が当面全国津々浦々に至るまで値上げムードでもってどこもかしこも値上げしております。値上げの議案を地方議会に上程しておる、こういうことでございます。  そこで、この際ひとつこれに対する対策を、私は質問というよりも御相談したいような気持ちであります。そこで、地方公営企業の現況、ことに累積赤字の現況は、これは申し上げるまでもないと思います。おそらく昭和三十八年度でもって総事業でもって七百億を突破するのではないか、そうして三十九年、四十年をこのままでいきますならば、さらに五〇%ぐらいずつ累積赤字が年率上昇していくのではないか、こういうことが考えられると思うのであります。この場合、三十九年度の赤字見込み、特に水道会計についてどの程度の見込みが見込まれるか、それから現状のままで、料金ストップをかりにしていくとして、昭和四十年度の見通しはどのくらいになるか。これは特に厚生省が管轄しておられることでありますので、厚生大臣からひとつお答えを願いたい。
  403. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私からお答えをいたします。  三十八年度までしかわかりませんですが、全体の公営企業の赤字が、法の適用事業につきましては三百七十六億でございます。それから法の適用のない公営企業が百三十億でございまして、合わせますと五百六億でございます。そのうち水道の赤字がどれくらいかといいますと、適用事業につきましては六十四億でございます。非適用の事業では二十四億、合わせまして八十八億でございます。しかしながら、これは、御指摘のように、最近になってだんだんと累増の傾向がございますから、三十九年、四十年になりますと、相当伸びるかと思っております。
  404. 阪上安太郎

    ○阪上委員 その三十九年、四十年の額はわかりませんが。大体推定どのくらいになるか、そんなものは見当がつきませんか。
  405. 柴田護

    ○柴田政府委員 三十九年度の初めから、三十九年中の料金を自粛いたしましたことに伴う赤字でございますが、詳細な計算は、各企業によって違いますのでいたしかねますけれども、推定いたしますと、大体百億前後だろうと考えられます。
  406. 阪上安太郎

    ○阪上委員 時間もだいぶたってきましたので、まあ理屈はもう先ほど言いましたから……。どうでしょうか、この百億、これを何らかの形において政府が、たとえば臨時交付金のような形において財政援助をしてやるというような考え方というものは出てこないのでしょうか。この点はどうでしょう。
  407. 田中角榮

    田中国務大臣 遺憾ながら財源の都合で、非常にむずかしいと思います。
  408. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは、たとえば工業用水道事業法に基づくところの工業用水道に対して、これは特定のものでありますが、八十億から補助金を出しておられましょう。財源がないとおっしゃるけれども、これは、大蔵大臣の腕一つで何とかなるでしょう。八十億円も工業用水道に対して出しておられる。そうして、料金はできるだけ廉価に押えろ。トン当たり四円五十銭くらいでもってこれが売られておる。これは一体どういうことなんですか。そして、先ほど言いましたような、上水道に対しては全然これは何ともできないんだ、こういうことでありますけれども、ここのところは何とかなりませんか。
  409. 田中角榮

    田中国務大臣 産業用水道につきましては、御承知のとおり、産業の国際競争力を培養するためとか、また製品原価が上がりまして、国民自体の消費価格が上がらないように、こういう面も十分考えて、企業のコストダウンという合理化推進のために、このような措置をとっておるわけでございます。  なお、いま御指摘がありました三十九年度の赤字と想定されるべき百億という数字でございますが、いまの状態でこれらのものに一般会計から補てんをしてやるというような財源は、非常にむずかしいということでございます。
  410. 阪上安太郎

    ○阪上委員 厚生大臣、来ておられますね。あなたのほうで例の昭和三十九年の一月二十四日に、「環境衛生関係に係る物価安定対策について」という通牒を出しておられますね。この場合、都市交通等に対しましても同様のものが関係省から出ておる、こういうことだと思うのでありますが、水道に対してはこの通牒が出ております。そして、要するに一年間ひとつ料金の値上げを抑制するという趣旨のものであります。しかも、こういうふうにうたわれております。「水道料金、清掃手数料等については、各事業の経営を合理化し、料金等の値上がりを抑制するよう自粛方について配意すること。」これを各都道府県知事に出されまして、関係方面に十分にこれを伝達して、そして自粛をしいてくれ、こういうかなり強い文書なんです。したがって、そのことのために、交通料金はこれは認可制でございますから、政府が認可しなければこれはどうにもならない。しかし、水道料金は、これは別に認可しなくても、厚生大臣のほうへ報告しさえすればそれでいいんでしょう。そういった事業であるにもかかわらず、あなたが出されたこの趣旨に基づいて、ほとんどの地方公共団体は、水道料金の値上げをストップしているのですよ。ところが都市交通その他につきましては、私どもも皆さんといろいろと協議をし、要請もいたしました。そうして、ああいった三十億のつなぎ融資、それから三十億の長期債というもので、あの急場を一応のがれたわけであります。その後交通料金の一部値上がりがあったために、現在の段階におきまして十五億の長期債というものがやはり依然として考えられているし、同時につなぎ融資についてもなお考えてやらなければいかぬという配慮が十分に含まれておる。ところが、水道料金につきましては、上げようと思えば上げることができたのであります。にもかかわらず、各地方公共団体が政府方針に従って、そうして、御案内のように、一年間料金をストップしておった。ところが今回は、その反動が一ぺんに出てきたのですよ。その結果、あっちでもこっちでもハチの巣を突っついたように水道料金の値上げが出てきたわけです。したがって、これに対しては、当然国の責任があると私は思う。ちょうど都市交通にとった態度以上に自由であるものに対して抑制を加えておるのですから、それ以上に配慮してやらなければいけない性質のものだ、私はこう思うのです。  そこで、大蔵大臣はいまそっけなく——あまりそっけなくもなかったけれども、ああいうような御答弁をなさったけれども、あなたとしては黙っておられぬ問題じゃないのではないですか。どうなんですか。これはどういう措置をいたしますか。交通はできたんですよ。ここのところはどうしてくれるんですか。
  411. 神田博

    ○神田国務大臣 お答えいたします。  水道の料金の値上げの抑制につきましては、いまお述べになりましたような通牒を出しまして、国の方針に御協力願ったわけでございます。たいへんよく御協力していただいたことは、お述べになられたとおりでございます。  そこで、本年度に至りまして値上げが各所に起こっておりますることも事実でございます。しかし、これにつきましては、なお現下の情勢から大幅の値上げというものは好ましくないというようなことで、値上げをされる事情も十分了承できますけれども、先ほど来もいろいろ御議論がございましたように、資金の供給とか、あるいは利率の低下というような諸般のことを考えまして、関係各省と目下交渉しておる、こういう段階でございます。
  412. 阪上安太郎

    ○阪上委員 依然としてやはり大幅な値上げをしてもらっては困る、これは当然のことでありましょう。それならば、よけいに過去のそういった協力したものに対する国の責任というものを、財政的援助の責任というものを明らかにすると同時に、将来に向かって——四十年度においても、やはりそれじゃ大幅じゃいけないけれども、小幅ならばやむを得ないということになる。それならば、その大幅と小幅の差額というものについても考えてやらなければいかぬでしょう。それでなければ協力できないじゃありませんか。その点はどうなんです。いま各省と協議しているとおっしゃいますが、どういう程度の協議段階なんですか。どういうような考え方でやっておられるのか。この点をひとつお伺いしたいと思います。
  413. 神田博

    ○神田国務大臣 値上げの理由が、御承知のように、資金の増大に伴う問題、いわゆる拡張計画に負うところが多いわけでございます。これらの資金をできるだけ長期に出したい、また低利に出したい、そういうことで自治省等と御相談をしている、こういうことでございます。
  414. 阪上安太郎

    ○阪上委員 将来に向かって低利かつ長期の地方債を発行することにつきましては、先ほど話を伺っておるのですよ。私が聞きたいのはそうじゃない。この減収補てんをどうするかということを伺っておる。それからまた、小幅に押えていくということになれば、その減収補てんをどうするかということを私は伺っておるのです。もう一ぺん御答弁願いたい。
  415. 神田博

    ○神田国務大臣 値上げの事情が市町村によって違うものでございますから、大幅に上げるほうだけをできるだけひとつ押えてまいりたいということでございまして、きめのこまかい点は、今後なお検討いたしたいと思います。
  416. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これは、大幅は押えていきたい、だから小幅に押えるんでしょう。押えなさるのですね。当然そうなると私は思うのですが、そうなると、当然減収が起こってくるじゃないか。その減収補てんをどうするか。国の施策に協力してやった減収補てんをどうするかということ。将来の四十年度以降の問題と、それから、昨年三十九年度、ほんとうに国の施策に協力した各地方公共団体における水道事業の減収補てんの問題をどうするかということですよ。このことを伺っておるのですよ。
  417. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 昨年ストップがかかったためにかえって今度値上げを大幅にせなければならなかったということは、御指摘のとおりでございます。したがって、こういう問題は、あまりストップするということでなしに、適切な時期に適切な是正をすることが、これは公営企業制度調査会におきましても答申がされておるところでございます。したがいまして、私ども、今回の水道料金の値上げに際しましても、実は決して大幅の値上げは好まないのでございます。できるだけ小幅といいますか、最小限度にとどめてほしいのであります。したがいまして、これを、公営企業制度調査会の中間答申にもございましたように——この中間答申のねらいというものは、三つあったことは阪上さんも御承知のとおりでございます。一つは、料金は適切なる時期に適切な是正が必要である、ストップをかけるのはよくないということが一つでございまするが、同時に、やはり合理化もあわせてやるべきであるというので、最近は、府県におかれましては、いろいろと財政の窮乏のおりでもございまして、いろいろと合理化をやっておられますけれども、まだ、しかし、地方の公営企業につきましては合理化の余地があるんじゃないか、かように私は存ずるわけでございまして、それをやるということが第二のねらいでございます。第三は、先ほど申しましたように、やはり急激に設備資金を要しましたために、民間の公募の資金を使うために、短期で利子が高いというきらいもございましたので、これは、私ども政府としてもできるだけ努力をしようということで、来年度におきましては、政府資金のワクを広げ、また、先ほど申しましたように期間もひとつできるだけ長くしようじゃないかというふうにいっているところでございます。したがいまして、政府施策に協力を願っておるのでありまするけれども、それを一々政府でもってまた補てんをするということは、これはなかなか、財政に余裕があればけっこうでございますけれども、むずかしいということでございまして、ひとつ地方団体においてできるだけの御協力を賜わらんことを願っておるわけでございます。
  418. 阪上安太郎

    ○阪上委員 いまの自治大臣の御答弁、これは、私は満足できないのであります。たとえば、地方公営企業制度調査会でありますか、その中間答申を見ますと、いまおっしゃったようなことが言われております。しかし、その合理化が、ただ単に賃金をストップしたり、あるいは首切りをやったりというような内容のものばかりをさしておるのじゃなくして、むしろ、先ほど言いましたような、政府がとるべき合理化があるじゃないですか。それから、賃金の問題でありますけれども、最近の水道企業をごらんになったですか。ここ三十五年、三十六年以降ずっと人件費の年々の増はやむを得ないじゃありませんか。ただ、問題は、その経営の規模の中における人件費の構成比は、毎年下がっておるじゃありませんか。最近はずっと横すべりの状態であります。企業は拡張し膨張していく、サービス行政であれば人を使わなきゃならないし、人件費が上がるのは当然であります。しかし、それが上がらずにずっと横ばいしておるという現状は、一体どうごらんになりますか。そればかりでなく、調査会は適正料金ということを言っております。しかし、何が適正料金であるかということは、何らそこに説明がついていない。そうして、それらの問題は、結局のところ秋ごろにさらに抜本的な公営企業の構造改善といいますか、これをやって、その結果適正料金というものはきめていく性質のものであるというような意味のことが言われておるのであって、その適正料金が何であるかわからない段階でもって、ただちに四十年度の単年度赤字だけは消してくれなんというような形が出てきておって、それを指導しておられるのが自治省だ、こういうことであります。私があなたにお伺いしたいのは、一体それはどういう内容のものでおやりになるか。端的に言いますと、あれだけの赤字が累増してきておるわけなんでありますから、それは、起債の充当不足であった点が非常に大きいし、先ほど言いましたような、元利償還しなければならぬというようなとんでもない金を貸しておったということも原因の一つでありますから、その結果やはり資本コストが上昇しておるということなのであります。その累増赤字に対して、当然これは解消してやらなきゃいかぬと私は思うのであります。その解消の方途を頭に置かれて、現在いろいろと作業中であるとかいうことになっておるわけでございますか。この点、さらにひとつ確認しておきたいと思います。自治大臣。
  419. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 先ほど申しましたように、三つの原則と申しまするか、適正な料金の改定はやむを得ないということと、合理化をあわせ行なって、その分だけでも料金の値上げを縮めるということと、もう一つは、政府といたしまして、できるだけ政府資金を融資する努力を払いまして金利を下げていく、こういうことで、一ぺんには解消できませんけれども、そういう努力によってこれを縮めていきたい、かように存じております。
  420. 阪上安太郎

    ○阪上委員 時間がまいりましたので、これで終わりますが、どうか大蔵大臣、自治大臣、ぜひこの問題を前向きで解決できるように御努力願いたいと思います。借りかえ債その他の方法等によってその他の累積赤字は解消していくんだ、一時にはできないけれども、長年にわたってこれはやっていくんだというような方途、それから、減収補てんについてはやはり考えてもらいたい、こういうことでございますが、まあこれらの問題は、いつまで論議しておっても切りがございませんし、予算理事会等におきましてひとつ、この問題を善処していただくことにいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  421. 古川丈吉

    ○古川委員長代理 理事の協議に基づき、次回は、明二日午前九時半より理事会、午前十時より委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後十時五十分散会