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田中国務大臣 地方自治の制度は非常にりっぱな制度であり、育てなければならないという基本的な考えは持っています。しかし、日本の戦後、これは占領軍政策の
一つの
重点でありましたメモケースの非常に強いものでありましたが、地方財政の伴わないところの地方自治、こういうところに非常に大きな問題があります。でありますから、国は、理想的な姿といえば、地方自治体で合理的な自治をやり、そうして、国はより高い立場で総合的な調整を行なうということは、制度の上では好ましいことであります。でありますから、いま地方交付税制度等をもちましたり、また特別交付税制度等をもって調整をとっておるわけでありますが、いずれにしましても、日本の戦前、戦中、戦後を見まして、東京、大阪というような二大拠点、それから表日本のごく少数の
府県、これらの自治体だけが自力でまあ何とかつじつまが合わせられ得る。あと少なくとも九州、四国、北陸三県、北海道、東北、こういうところは地方財源の非常に枯渇をしておるところであります。でありますから、地方自治の制度をとってこれを大いに育てていかなければならないといいながら、国の恩恵が
相当行なわれておるところの、しかも立地条件のいい表日本や、東京や大阪に住んでおる人たちの住民税が安くて、北海道や東北や、裏日本の豊かならざるところが住民税が高い。こういうような、地方自治の制度を採用したときのわれわれの理想からは遠い状態もございます。でありますから、私は、やはり地方のいま御指摘になっておる水道とか、また交通事業とか、確かにそういうものに対して国が財政上できるならばいろいろな措置をすることは好ましいことでありますし、また、できるだけ財政投融資等によって協力をしてきておるわけでありますが、やはり国の金の使い方には二つあります。
一つは、少なくとも事業的な独立採算ベースに乗るという立地条件にあるものに対しては、やはり自力でまかなってもらう。しかし、地域格差の非常にあるところ、このままにしておけば日本の総人口が表日本に集まってしまう、こういうことを避けなければならない、こういういわゆる北海道や、日本には五〇%に近い降雪地帯があるわけでありますが、この恵まれない地域であり、地方財源も枯渇しており、しかも人間は一県から毎年毎年一万人も東京や大阪へ集中的に地方から出なければならない。私は、こういう財源に恵まれない、立地条件の悪いところには国民の税金でもって高率補助を行なったり、太政官布告時代北海道は金額国庫負担制度さえ設けたのでありますから、やはりこういう財政にもバランスをとりながら国民すべてが国恩恵をあまねく受ける、こういうふうにやらなければならぬと思うのです。先ほども
経済企画庁長官が述べられましたが、三兆六千五百億といいますけれども、そのうちの一兆七千五百億は地方に対して支出をする金であります。でありますから、国の
予算は一兆九千億と見るべきであります。そのうち人件費を引いてしまうと非常に少ない金額であります。でありますが、その中から、きょうも議論になっておりますが、減税もしなければならない。また、国保や保険財政に対しても、国から何分の補助をしろというような歳出要求が非常に多いのであります。でありますから、乏しい財政の中で戦後育てようとしてわれわれが踏み切った地方自治の制度とどういうふうに調和をとっていくかというところに政治があるわけであります。私は、東京や大阪の水道ということに対しても、確かにわれわれいま物価の問題から考えても、また潜在人口を入れて千二百万も住むという東京の水道料金を上げたくありません。ありませんが、それよりも豊かならざる千葉県のほうがうんと高い、それよりももっと豊かならざる群馬県のほうが高い、こういう事実も見のがしてはならないわけでありますから、私は何でもかんでも全部を料金によってまかなうべきだという議論を持つものではありませんが、少なくとも日本において明治初年から百年間も投資が行なわれて、日本人の大多数が住んでおる他のところよりも豊かな地域であるというような自覚を持たなければいかぬと思います。そういう意味で、お互い自身が連帯的な責任を負いながら、九千七百万がほんとうに格差がない社会をつくらなければならない、こういう考え方によって私たちはいま地方自治と国の政治との調和をはかっておるのであります。いまの企画庁
長官、大蔵大臣の地方自治に対する考え方は、考え方としてはそういう考え方で私はいいと思うのでありますが、私先ほどからお伺いしているのは、
憲法にある地方自治の本旨——地方自治の本旨というやつはものさしなんです。このもしさしにあてはまらなければ、いかなる法律をつくって、これは無効なんです。違憲なんですよ。そういった重大な役割を果たしている地方自治の本旨ということは、口ではみな簡単に、選挙のときでも何でも、地方自治の本旨だ本旨だとそこらを歩き回っている。しかし、それをほんとうに理解している人たちがはたして何人あるかということです。ことに、この間うちからの
予算審議の過程の中で公共料金の問題が出てきた場合に、皆さんがお答えになっている考え方というものを見ますと、くどいようですけれども、ほんとうに地方自治がおわかりになっているかどうかわからない。地方自治の本旨は、やはり学説のあるところでありまして、これはさまっているのですよ。
一つは住民自治でなければならぬということなんです。したがって、
理事者や議会だけでもって——地方議会ですよ。
国会は国権の最高
機関ですから文句はありませんが、しかし、地方自治体におきましては、その自治権の最高の権威の所在というものは住民にあることは明白なんです。したがって、東京都のように
理事者だけでもって、あるいは議会だけでもって、あるいは
理事者と議会だけでもってものごとをきめたならばそれが最高の決定だなどという考え方を地方自治体が持っているということ自体が間違っていることを私は指摘したいのでありまして、そこで、問題になってまいりますのは、いま
経済企画庁長官は、自治体に対して国の
施策にも順応してくれるということが必要であるということを言っておられます。それから大蔵大臣は、この間と私はちょっとセンスが違っていると思うのでありますけれども、この前は自治体のことは自治体がやればいいのだという考え方が、そうじゃなくして、これは補完して、国もこれを補い、足してやるという考え方、これがなければいかぬということをいまおっしゃったのであります。
そこで、いま
一つ、やはり地方自治の本旨の
一つとしては、これは直接選挙によって
理事者並びに議員が選ばれるということでありますが、これは別といたしまして、自治体には自治体の固有事務がなくちゃいかぬということです。都道
府県には都道
府県の固有事務がなくちゃいかぬということであり、国には国の固有事務がなくちゃならぬ。それぞれが固有事務を持たずしていかに地方自治の本旨だと言ってみても、これは何も意味がないことであります。
そこで、お伺いいたしたいと思っておりますのは、そういった住民自治、それから同時に固有事務がなくちゃいかぬ、こういうことなんでありますが、一体地方自治体の固有事務とは何であるか。なるほど法律にはこれは例示されております。しかしながら、その固有事務は、はたしてあれが固定的なものであり、あれ以外の事務というものはやっちゃいけないのかということでもないと思うのであります。そういたしますと、いろいろないま問題になっております地方自治体の事務というものが、時代の進展とともに変化をもたらしてくる。こういうことなのでありまして、こういった変化に即応して、一体それを貫き通すところの地方自治体の固有事務というのは一体何だ、このことが明白にならないといけないと思うのであります。自治大臣、地方公共団体の固有事務というものは一体どうあるべきか、国の固有事務というものはどうあるべきか、この点についての御見解を承りたいと思います。