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1965-02-09 第48回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月九日(火曜日)    午前十一時九分開議  出席委員    委員長 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 稻葉  修君    理事 小川 半次君 理事 二階堂 進君    理事 古川 丈吉君 理事 加藤 清二君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       荒舩清十郎君    井出一太郎君       井村 重雄君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    大橋 武夫君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    小坂善太郎君       重政 誠之君    正示啓次郎君       田澤 吉郎君    登坂重次郎君       中曽根康弘君    中野 四郎君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       古井 喜實君    松野 頼三君       水田三喜男君    石橋 政嗣君       稻村 隆一君    大原  亨君       島上善五郎君    田中織之進君       高田 富之君    堂森 芳夫君       中井徳次郎君    中澤 茂一君       永井勝次郎君    野原  覺君       芳賀  貢君    山花 秀雄君       横路 節雄君    玉置 一徳君       永末 英一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 高橋  等君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 愛知 揆一君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  櫻内 義雄君         運 輸 大 臣 松浦周太郎君         郵 政 大 臣 徳安 實藏君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 小山 長規君         国 務 大 臣 小泉 純也君         国 務 大 臣 高橋  衛君         国 務 大 臣 増原 恵吉君         国 務 大 臣 吉武 恵市君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣官房副長官 竹下  登君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府総務長官 臼井 莊一君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房公務員制度         調査室長)   岡田 勝二君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局長)  井原 敏之君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  佐竹  浩君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         国税庁長官   吉岡 英一君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     岩間英太郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (大学学術局         長)      杉江  清君         文部事務官         (管理局長)  齋藤  正君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         通商産業事務官         (大臣官房長) 熊谷 典文君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      宮本  惇君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         建設事務官         (都市局長)  鮎川 幸雄君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月九日  委員石田宥全君小松幹君及び佐々木良作君辞  任につき、その補欠として稻村隆一君、島上善  五郎君及び玉置一徳君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員稻村隆一君及び島上善五郎辞任につき、  その補欠として芳賀貢君及び堂森芳夫君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員堂森芳夫君、芳賀貢君及び玉置一徳辞任  につき、その補欠として、小松幹君、石田宥全君  及び佐々木良作君が議長指名委員に選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計予算  昭和四十年度特別会計予算  昭和四十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 青木正

    青木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  高田富之君。
  3. 高田富之

    高田委員 本日は、主として、選挙の公正な実行を行なうにはどうするか、粛正選挙の方策というような問題、あるいはまた最近大きな問題になっております汚職の蔓延、この傾向に対しましてどう対処していくかというような問題を中心に質疑をしたいと思います。なお時間の余裕がございますれば、憲法や行政機構の改正問題にも論及したいと思うのでありますが、その前に、緊急の事項一つだけ最初に御質問申し上げたいと思います。  それは、先日東京都におきまして水道料金の大幅な値上げを突如発表いたしまして、たいへんな物議をかもしておるわけであります。これは、ひとり東京都民ばかりではございませんで、全国民的な重大な関心事でもございます。御承知のとおり、水道料金値上げの問題については、すでに昨年末十数カ所の市町村において決定を見ており、来たる二月、三月の定例地方議会におきましては、七十ないし八十程度の市町村も同様の料金値上げの準備をしておるというようなやさきでありますだけに、この東京都におきます大幅な値上げというものは、影響するところは直ちに全国的な問題でありまして、きわめて重大であります。政府は、特に物価抑制につきましては、今日までの総括質問でも明らかなとおり、いろいろ努力をされることを言明しておるわけでありますけれども、そのやさき、こういう問題が起こりまして、これをこのまま放置するということになりますれば、今日まで物価問題についていろいろとお約束されました言明も、事実をもってほごにされてしまうような重大な問題であろうと思うのであります。水道料金値上げ、もとより水道だけにとどまるものではありませんで、水を用いるその他の、たとえばふろ代であるとか、クリーニングであるとか、その他いろいろなものに直ちに波及してまいりますし、ひいては他の公共料金にも影響を及ぼす。おそらく物価対策上もこれをこのままにして過ごすことはとうていできない当面の最大の緊急を要する課題であろうと思います。おそらく政府におきましても、この一両日この問題について真剣に御検討なすったことと思うのでありますが、国民もいっときも早く明確な政府のこの値上げに対する抑制の具体的な対策を打ち出すことを期待しておりますので、この席をかりまして、政府のただいま考えております対策について、詳細具体的に御説明願いたいと思います。
  4. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。  東京都が水道料金値上げを突如計画されましたことは、いまお述べになったとおりでございまして、実は政府においても初めて承知したようなわけでございまして、目下、これが物価に及ぼす影響もございますので、検討関係各省と加えている段階でございます。  御承知のように、東京都の水道の問題につきましては、水源の確保とか、あるいは人口増加に伴う、あるいは一人当たりの消費量に伴う水量の増加等につきまして、相当大幅な拡張計画を持っております。これらの拡張計画を行なうにつきまして、元利払い等が増してまいりますので、値上げの必要に迫られておりましたことはわからぬでもないわけでございますが、今回突如として、しかもあまりに大幅な値上げでございますので、目下検討を加えている最中でございます。
  5. 高田富之

    高田委員 検討を加えている最中ということでありますが、そういうことでは国民はこの不安を解消することはとうていできません。  そこで、総理にお伺いしたいのでありますが、これは、単なる東京都の問題だというふうには私は考えられないと思うのです。地方自治体が全国的に財政的な極端な破綻状態におちいっておる、公営企業破綻状態にあるということにつきましては、先般来、昨年の臨時国会におきましても、公営企業あり方等について国会審議が真剣になされまして、与野党一致委員会決議政府に出されております。これは何としても政府自体施策のもたらした結果であり、これが対策というものは政府が手を打たなければどうにもならぬ段階にありますことは、多言を要しません。したがって、この東京都が突如やりましたことについて、総理といたしましてこれをどうするか。ただいま、厚生大臣検討しておるというようなことでございますが、おそらく基本方針というものは、総理がすでにお出しになっているのじゃないかと思う。これをひとつ総理から承りたいと思います。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この経過、これは、ただいま厚生大臣が説明したとおりであります。また、自治体自身がこの問題について真剣に審議するというその態度は当然のことだ、かように私は考えます。  しかし、政府自身が今日こういう案件に対してどういう考えを持っておるか、これをお尋ねでございますが、ただいまの自治権、それに干渉するような形もいかがかと思います。したがいまして、私は、その自治体自身がきめてくることだ、かように思います。  ことに、一つ指摘をしておかなければならないと思いますことは、この種の公共料金、これはやはり利用者負担において処理される筋のものだ、本来はさように思います。ただ、料金内容的にどういうような内容を持っておるか、これもよく精査してみなければ、当否はなかなかいえないことであります。したがいまして、しばらく時間をかしていただきたい。ただいま厚生大臣が申しておりますように、ただ何もかも上げることは反対だ、こういう簡単なものではないのだ。ことに私どもが注意をしなければならないことは、庶民の生活にどういうような影響を与えるか、そういう料金構成の面におきましても、十分の検討をする必要がある、かように私は考えております。
  7. 高田富之

    高田委員 ただいまの総理の御答弁の中で、自治体の問題であるから干渉はできないのだというようなことばがあったわけでありますが、先ほど来私も申し上げておりますように、自治体をここまで追い込んでおりますのは、これは政府のいままでの施策の結果であることは、ここで私が多言を要しないと思うのであります。しかも、水道施設等の問題は、たくさんの莫大な経費を要することでありまして、先般水ききんの際におきましても、中央政府がみずから乗り出して、そうして東京都と相談をしながら解決に当たった、これは当然のことなんです。今回のこういう事態におきましても、やはり責任を分担し、まず第一に政府がイニシアチブをとって、苦境にある自治体に対してしかるべき措置を講ずるという態度で問題を解決しなかったら、これは絶対に解決するはずがないと思うのです。したがって、単なる自治体干渉できない——干渉の問題ではないと私は思うのでありまして、当然政府のなすべき義務として、この際基本的な態度というものを明らかにしなければならぬ。  これは、事実かどうかわかりませんが、私ちょっとけさ耳にしたところによりますと、今朝の閣議におきましてこの問題が論議されたとか承っておるのですが、もし違いましたら御訂正願いたいのですが、その際、総理が、これは値上げはやむを得ないのだというような御発言をなすったとかというようなことをちょっと耳にいたしまして、たいへん心外に思っているのでございますが、事実でございましょうか、どうでございましょうか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当面する重大な問題ですから、これはきょうの閣議においてもちろん問題になりました。私は、ただいま言われるような結論を出しておりません。これははっきり申し上げます。したがいまして、この予算委員会においてただいまお答えしたとおりでございます。  ただいま、長い間のこれはひずみではないか、こういう御意見が出ております。そういう見方が、この種の料金等においては当然あるだろうと思います。これは、こういう問題が本来の収支の計算もされないままに今日まで長い期間ほっておかれた、こういうところに一つの弊害はあるだろうと思います。  ただ問題は、こういう時期に、政府が真剣に物価問題と取り組んでおるさような時期に、はたしてこういう事柄が適当であるやいなや、また適当としても、その料金がどういうような構成になっておるのか、そういう点について十分検討する必要があるのだ、かようなことを私は申しておるのでございます。  もちろん予算委員会は大事な場でございますから、きょうの閣議で議論の出ました点、これは、私が答えるとおりの状況でございまして、その他の約束をしたとか、あるいは一定の指示をしたとか、こういうようなものは全然ない、この点をはっきり申し上げておきます。
  9. 高田富之

    高田委員 そうしますと、もう一ぺん念のために明白にしておきたいのですが、今回の東京都の値上げは好ましくない、こういうお考えでこれから検討されるわけですね。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 時期としてはたいへんまずい時期だ、かように私お答えしたとおりであります。そういう意味で、この問題は十分内容的にも精査を必要とする。したがいまして、しばらく時間をかしていただかないと結論は出てまいりません。
  11. 高田富之

    高田委員 この問題をただあいまいなことで先に延ばすということでは、これは東京自体も、けさの新聞を見ましても、たいへんもめておるわけでありまして、問題をますます紛糾させる、不安動揺は一波は万波を呼ぶということになりますので、早急に明快な結論を出すべきだと思うのです。  そこで、ただいまも総理から、本来はこれは消費者負担すべき筋合いのものなんだということばが実はあったのでありますが、そういうお考えでは、これは、結局値上げもやむを得ぬという結論にならざるを得ぬと思うのです。これは、先般の国会与野党一致委員会決議にも明らかに指摘してありますとおり、公営企業あり方自体に対しまして抜本的な考え直しをしなければいかぬということが与野党一致結論になって、政府に建言されておるわけであります。消費者負担するのが当然だということでは私は解決しないと思うのです。公営企業あり方自体に対して根本的に再検討を加えなければならぬ段階にきている、こういうことであります。  そこで、ひとつ具体的に伺っておきたいと思うのでありますが、この際、やはり、ただ調べるとか、内容精査するとかいうのじゃなしに、大幅値上げ措置を出したのですから、これに対してはとりあえずストップをしてもらうように勧告をすると同時に、それをしなければならなかった財政的理由は十分あるわけでございましょうから、精査する間におきましても、とりあえずストップをする、また必要な資金については政府のほうでめんどうを見るということを打ち出して、ひとまずこの場を押えていく。そして、そのあとでゆっくり精査をされたらいいのじゃないですか。私は、その措置だけはぜひいまとってもらいたい。これは東京都民ばかりでなく、全国民要望でありますので、これをぜひとっていただきたい。これについての明快な御答弁をひとついただきたいと思うのです。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公営企業資金等につきまして政府協力しておることは、すでに御承知のとおりであります。これが予算編成の際にいつも問題になるわけであります。なおかつこういう問題が起こるのだ。ただいま、社会党としてはこれをとめろ、こういうお話でございますが、それは社会党の御意見として聞いておきます。
  13. 高田富之

    高田委員 何としましても設備をどんどん拡張しなければならぬ、需要もどんどんふえるということで、非常な借金を背負い込んで、元利支払いになかなか追いつけないという実情にございますので、先般の議会要望どおり利息に対しましてはこの際思い切ってこれを軽減する、あるいは償還期限を思い切って延長していくというような措置ぐらいは当然とるべきであって、これについてはおそらく厚生省や自治省のほうでは関係大臣も強く要望されているのだろうと思う。  これに対して、大蔵大臣のほうはどういうお考えを持っているのか、ひとつその点についての御見解を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  14. 田中角榮

    田中国務大臣 東京都が今回行なおうとしております料金の引き上げが非常に大幅であるということで、いま総理大臣から申されたとおり、関係各省庁の間でこの問題を十分検討しようということになっておるわけであります。  現在東京都が値上げをしなければならない原因はどこにあるのかということを検討いたしますと、年間三十万人以上の人間が自然増でふえておるということでございます。それからもう一つは、いままで料金を押え過ぎたという面もあります。これは、川を一つ隔てて見ればわかるのですが、東京都と埼玉県を比べてみて、埼玉県よりも東京都の水道料金は非常に安い。こういう例を見ても、東京そのもの料金を相当長い期間押えておったという事実もございます。何ぶんにも六割何分に及ぶということでありますので、政府としても協力でき得ることがあれば協力をしながら、合理的な結論を得たいというふうに考えております。財政的な面からただ利息一般会計から負担するとかいうことだけで片づく問題でないことは御承知だと思います。ものには限度がありまして、これらの公営企業そのもの料金を押えてその赤字分一般会計負担するということになりますと、当然原則としては応益負担、いわゆる受益者負担すべきものを住民全体の税金でもってまかなうというようなことが起こるわけでありますので、どういうところで調和すべきかという問題が当然考えられるべきであります。いま御指摘の中で、水道債の二十五年の期間をもっと延ばせとか、いろいろな問題の御提案がございましたが、自治省、大蔵省、また東京都との間にも十分検討すべき問題だと思います。
  15. 高田富之

    高田委員 いずれにしましても、需要の急増で、過密都市の膨張というようないまの経済政策の結果だと思うのでありますが、これに見合うための設備拡張ということに追いまくられておる、そのための元利支払いのために経営として成り立っていかないという事態にあるわけであります。そういう新設される設備費までも消費者負担させるということでは、成り立たないのがあたりまえだと思うのです。ですから、そういう設備関係資金というようなものについては少なくとも消費者に転嫁しない、それくらいの方針がなければ、これは当面を何らかの形で糊塗しましても、すぐ一年、二年先にはまた同じ問題を繰り返していくことになりますので、抜本的にこの際公営企業あり方については検討を要します。  そこで、その点を強く要望いたしておきますと同時に、当面の措置といたしまして、まず第一に、単年度赤字額に見合うつなぎ融資を行なってもらうということ、それから第二点は、累積しております赤字額のたな上げ措置をとってもらう。赤字のたな上げであります。それから第三は、さっき申し上げましたような設備資金の調達は政府資金でやっていく。それから一般地方債償還年限大幅延期と利子の引き下げ、先ほど申したとおりであります。なお、長期かつ低利の借りかえ債を発行する。それから基本的な問題としましては、いま申しましたような独立採算制というものを廃止していく。さらに、工業用水用水道事業に見合う国庫補助を上水道に対しても行なってもらう。これらの諸点につきまして、ぜひとも早急に御検討の上実施してもらいたいということを強く御要望申し上げておきます。いまの要望に対しまして、一言総理からお答え願います。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 要望なさることは御自由ですが、しかし、公営企業基本的あり方というものを十分検討したい、こういうお話が出ております。ただいまのようなお話の筋では、公営企業としての本来の性格も変わってくるだろう、私かように考えますので、とくとただいまの御意見をも含めて検討することにいたします。
  17. 高田富之

    高田委員 それでは、次の問題に論点を移したいと思いますが、ただいまの要望事項は、社会党といたしまして強く重ねて要望をしておく事項でございます。しかし、これに大体似通った同じような基本精神から、さきの臨時国会におきましては与野党一致決議として政府に出されておりますので、十分ひとつ御検討の上実施してもらいたい、こう思うわけであります。  次に、私は、選挙制度につきまして御質問をいたしたいと思います。  いよいよ参議院の半数改選も近くなりまして、ただいまそれぞれ予定されます候補者の諸君は必要な活動を展開中でございます。われわれといたしましては、最近、回を重ねるたびに、正直な話、次第に選挙がきたなくなってきている、だんだん悪くなってきている、これは事実だと思うのです。これは、おそらく総理も否定しないだろうと思うのですが、今度新しく佐藤内閣ができまして最初に行なわれます選挙でありますから、ひとつ佐藤内閣の面目にかけましてもこの悪弊を最大限度ここで粛正をして、いい選挙をやるように、必要な強力な施策をただいまから打ち出していただきたい。これにつきましては、私ども野党も全力をあげて御協力をいたします。したがって、これはなかなか並みたいていのことでは私はできないと思うのでありまして、相当な、異常な決意をもって臨んでいただかなければならぬと思うのです。  そこで、そういう見地から、いろいろ問題はあろうと思うのです、方法は具体的に考えられると思うのでありますが、まず第一に、制度としての問題かどうか、問題だとすれば、どういう点に問題があるかということなんでありますが、ただいま第三次の選挙制度審議会が作業を始めておるわけでありまして、特に木下委員発言がもとになりまして、選挙実態を調べる、どのような選挙が行なわれているか、腐敗選挙実態調査というようなことが提案されまして、非常なこれは人気を呼んでいる。これはぜひやってくれ、徹底的にやってほしいという国民の世論に裏づけられまして始められておる。これは、非常にいいことだと思います。私ども大いにこれには積極的に協力をしなければならぬと思っておるのでありますが、しかし、この第三次の選挙制度審議会なるものも、そういういいことはおやりになっておるわけでございますけれども、一面、一次、二次、三次ときまして、今度の審議会の主要な任務は、区制についての答申を求められている点にあるのだというふうなことで、先般高橋さんが会長に辞任され、御自身は選挙区制について相当の抱負をお持ちのようであります。聞くところによりますれば、池田総理のところへも、就任にあたっていろいろお話しに行っておる。そして、自分が引き受けたからには、必ず自分の考えに従ってはっきりした結論を出す、これがいわゆる小選挙区の方向で答申を出すのだというようなことがぱっと世間に伝えられまして、が然小選挙区論議というものが新聞紙上をにぎわすようになり、あるいは与党の内部においてもそれに相和するような議論がどんどん出てくる、こういうふうな情勢に実はいまあることも御承知のとおりでございます。  そこで、まず第一点にお伺いいたしたいことは、今度の第三次の審議会に対しまして、審議委員の人選が、ややもすれば小選挙区論者が多数を占めるような傾向に傾いているのではないかという疑いをもって見られておるわけであります。それが、政府・与党の考え方とマッチしているのではないか、こういう疑念を持たれておりまして、公正であるべきはずの審議会に最初からそういうふうな疑念が持たれているということは、はなはだこれは遺憾なことだと思うのですが、この点はいかがでございますか。
  18. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ただいまのお尋ねの選挙制度審議会構成の件でございますが、これは、そういうことは全然私ども考えておりません。御承知のように、選挙制度審議会は、第一回、二回、三回と重ねております。したがいまして、今度の第三回の選挙制度審議会を発足するにあたりましては、従来の選挙制度審議会委員三十名のうち、二十名は従来の方を残しまして、十人が交代をされたことになっております。その構成は、学者が約十名ばかりと、それから言論界の代表の方が約十名ばかりと、その他は、学識経験と申しますか、あるいは選挙管理委員等の代表の方をもって構成しているのでありまして、十人の交代をされました方の人選も、私どもは公正に選任をしておるのでありまして、中には、小選挙区制に賛成の方もございますが、反対の方もおありになり、また従来の残られた二十人の委員の中にも、小選挙区制に反対の方もあれば賛成の方もある、こういうことでありまして、人選にあたりましては、全くそういう意図のもとにやったということはございませんので、御了承いただきたいと思います。
  19. 高田富之

    高田委員 一応承っておきますが、しかし事実は、お一人お一人のあれを見ましても、ほとんど大部分が日ごろ小選挙区を主張しておられる方々であるということは、どうも事実のようであります。しかし、そういうことで答申を求めているのじゃないということでありますれば、話を先へ進めたいと思うのであります。  実は総理は、与党の総裁でもあられるわけなのでありますが、与党内におきまして、やはり与党内の選挙制度委員会におきまして小選挙区制を推進するというような方針をかなり最近は強く打ち出されておるように思います。その理由というものは、派閥を解消して党を近代化するには小選挙区制がいいのだというような御意見、あるいはまた、金をあまり使わないで済むようなきれいな選挙をやるには、選挙区が狭いほうが金がかからないのだ、ですから、選挙をきれいにしていく、派閥を解消する、そういったようなところに小選挙区がいいのだというふうな議論であるやに承るのでありますが、そういうふうなお考えが正しいと総理はお考えになりますかどうですか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自治大臣がお答えいたしましたように、ただいま第三次選挙制度審議会審議中でございます。私は、こういう問題につきましては、議席を持たない人、この審議会がおそらく公正な判断をして結論を出してくれるものだ、かように期待をいたしております。  ただいま御指摘のように、あるいは党内において、あるいは社会党の中におきましてもいろいろな議論があるだろう、これはお互いが代議士であり、あるいは議員であるという立場に立ってそれぞれの御議論が活発に展開されているだろう、かように考えますが、ただいまの審議会の委員の諸君がそういうような事柄に左右される、かようには私は思いませんので、この審議会の委員の方々が公正な判断をされるだろう、それを私は期待しております。
  21. 高田富之

    高田委員 いずれにいたしましても、そういう議論があることは事実でございます。しかしまた、最近の選挙を見ましても、一人一区の首長の、市町村長であるとか県知事の選挙であるとか都知事の選挙であるとか、そういうところを見てもわかるのでありまして、一人一区の小選挙区にしたからといって、それによって選挙がきれいになるとか派閥が解消するとかいうことはないことは、もう議論の問題でなくて、事実が明確に証明いたしております。問題にならぬと思います。それはもう別個の問題です。これは政治家の問題、政党自身の問題でありまして、これは、選挙制度に責任を転嫁しまして問題をすりかえましても、何ら解決する問題ではないことはきわめて明白でありますし、おそらくその点は総理にもよくおわかり願えると思うのであります。  そこで、私が心配しますことは、そういうふうな構成審議が行なわれ、同時に、与党内に小選挙区論が起こってくる、いつとはなしにそういうことになってきた場合に、かつての鳩山内閣のときにあの苦い経験をしておるのでありますが、小選挙区なんというものは、これはもう結果は明らかなんです。結果は、今日の多数党に絶対に有利、そして今日の小数党に絶対に不利でありますことは、理論上も統計上も事実上も明々白々たる問題なんです。したがって、そういうことを押しつけるということになりますれば、鳩山内閣のとき以上の大混乱は必至なんです。ですから、そういうばかなことはおそらく政府もおやりにならないと思いますし、われわれは、いまからそういうことのないように御注意を申し上げておきたいと思うのであります。それよりも問題は、第一次、第二次の審議会においてすでに答申されておって、しかもこれは、選挙を公明に行なうために、いい選挙を行なうためにということで一次、二次とも重ねて答申されておりますことで、いまなお実行されていない事項、これを与野党一致して誠実に実行していくことが、当面のやるべきことじゃないかと思うのです。この点についてひとつ総理のお考えを承りたいのでありますが、第一次、第二次の審議会の答申は、ともに政治資金規正法の改正、これを強く打ち出しております。これは、政治資金を出すのは個人に限る、会社であるとか団体であるとか、そういうところからは政治資金は取ってはならないというふうに抜本的な改正をやったらどうかということが主張されておるわけでございます。それからまた、高級公務員の立候補については一定の制限を設けるべきではないかということも指摘されておるわけであります。あるいは連座制の強化というような諸点が出されておるわけでございまして、これらの第一次、第二次の審議会の答申はいまなお有効なものである、これは生きておる、したがって、いつか政府は実行してくれるだろうということで、なかなか実行してくれそうもなければ重ねて政府に強く実行を要求しようという意向を審議会が持っておるということでございます。そういうことを何べんも審議会から催促されるまでもなく、この際、二回にわたりまして強く指摘されております答申の重要事項については、誠意をもって実行するということであってほしいと思うのでありますが、この点、総理いかがでしょうか。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 審議会の答申に基づいて、そうして、そのことは各党とも忠実に守る、こういうことで、これは政府だけの責任というわけでなくて、各政党ともこれに協力しておるというのがいまの実情ではないか、かように私は思っております。
  23. 高田富之

    高田委員 これは、全然政府・与党が誠意を示さない。私どもは、この答申に従って何とかひとつ政治資金規正の強化、連座制の強化、高級公務員の立候補に関する一定の制限というようなことについては強く今日まで主張し続けておるわけであります。しかし、一向これが実行されないということについては、はなはだ遺憾に考えております。問題は、やはりこれが根本だと思うのです。何しろ金の問題をきちっとしなかったならば、何をやったって、これはいかなる制限を加えましてもだめなんでありまして、選挙を腐敗させておりますもとは金の問題。これは単に選挙ばかりではありません、政治そのものも腐敗させておる。私は、どうしても政治資金規正については真剣に与野党一致して超党派的に取り組んでいかなければならぬ大問題だろうと思うのです。政治資金規正の問題は、実は多額の金が——いま選挙には法定費用の制限があるわけでありますけれども、この法定制限なんというものは、全然あってないのと同様でありまして、問題にならない。どんなに多額の金を使いましても、あの制限範囲内の届けをすればそれで事が済んでおる。こんなばかげたことはないのでありまして、実際には論外な、膨大な金が流れておる。これを規正しなければなりません。実はこの問題につきましては、政治資金がどんなふうに一体流れておるのだろう、国民には想像もつかないようなばく大な金が流れておるというようなことで、この前の臨時国会のときにも、わが党の武藤君が具体的に数字をあげて御質問をしておるわけなんです。これは、政府・与党が党として公式に政治資金を手に入れておるばかりでなしに、各与党内の派閥が半期に何億というようなばく大な金、しかも、これは公然とちゃんと正規に届け出をされた分だけであります。したがって、違法とかなんとかいうのではないのですが、しかし、国民の想像にはおよそ及びもつかないようなばく大な金が入っておるということを、いわゆる各派閥の名前まであげて、具体的数字をあげて御質問申し上げておるわけなんです。これは、非常に大問題でございます。そのときの答弁では、いや、これは合法的だから何でもないというような御答弁高橋さんからあったようですが、これは合法とか非合法とかいうような問題ではないのです。しかし、そういうようなことを考えますと、政治資金については、欧米各国ではやっておる、先進国ではすでにやっておることなんですから、やはりわが国におきましても、ここらで、いいところはアメリカにもイギリスにもならわなければならない。やはり個人から資金は集めておる。団体や会社からは集めないというのが基本的原則だと思うのです。もし一挙にそこまでいけなければ、政府から投融資を受けておるような会社や団体からだけはせめて政治資金を取らない、これくらいのことができないようでは、これはもう選挙を金のかからない、きれいな選挙なんと言ったって、問題にならないと思うのです。ですから、最大譲歩しましても、とりあえず、政府から財政的な援助を受けておる、投融資を受けておる、こういうところからは、選挙に限らず、政治資金というものは出してはならず、取ってはならないということにでもしたらいかがかと思うのです。私は、ぜひ必要だと思うのですが、この点は総理いかがですか。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま、政府の事業を請け負うとか、こういうようなものについての制限があると思っておりますが、この点は、法務大臣のほうから説明させます。
  25. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 政治資金に関する件でございますが、お話のように、第一回の選挙制度審議会、及び第二回の選挙制度審議会でも問題になっております。経過を申し上げますと、第一回の選挙制度審議会は、主として選挙のやり方についての答申でございまして、それは、大体選挙のやり方についての改正をいたしております。それから、第二回の選挙制度審議会は、御承知のように、定員是正の問題と、いま御指摘になりました政治資金の規正の問題でございまして、第二回は、そのうちの定員是正について改正をいたしまして、昨年通過したような状況でございます。したがいまして、今度の第三回の選挙制度審議会におきまして、第二回の答申の中にありました選挙区制その他選挙の基本的改善に関する検討を至急に進むべきであるという答申の趣旨を受けまして、第三回の選挙制度審議会にその諮問をいたしたのであります。したがいまして、第三回の選挙制度審議会は、区制だけと限定しておりませんで、その他選挙制度の基本についての改善方策ということにおいてこの政治資金の問題もあわせて御検討をしていただいているところでございます。いま御指摘によりましたように、政治資金は個人に限ったらどうかという意見はございます。ございますけれども、それはまた、それがいいかどうかという議論もまだあって、煮詰まっておりません。選挙制度審議会におきましても、内容についてのこまかい答申は出ておりませんで、政治資金の規正について改善をする必要があるのじゃないかという意味でございまするので、これは引き続き検討をいたしたいと思っております。  なお、公務員の立候補制限の問題につきましても、議論にはなりました。しかしながら、これを法律で規制するということが憲法その他の関係もあってどうかという議論もまだございまするので、これらの問題も引き続き選挙制度審議会において御検討を願うことにしておる次第でございます。  なお、御指摘がございましたように、政府から請け負いをしておるところの者あるいは外国人その他からの政治資金の規正については、現在政治資金規正法の中に規定をしてあるのでございます。
  26. 高田富之

    高田委員 それは、選挙法の中にありますものは百九十九条にあるわけなんですが、これは「当該選挙に関し、寄附をしてはならない。」衆参両院議員選挙に関し、「国又は公共企業体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならない。」あるいはその次にもあるのですが、国から補助とか利子補給、負担金などを受けている者は、一年間経過するまでは、当該選挙に関し、寄附をしてはならない。国から資本金、基本金その他全部または一部の出資を受けている者は、これも当該選挙に関し、寄附をしてはならない。こういうような規定があるのですけれども、これはまるでざる法みたいなもので、質問選挙に関してじゃないんだということになれば、それっきりになってしまうのですね。ですから、そういうことでなしに、一般的に政治資金そのものをそういうふうな特殊な関係のあるところから取ってはいかぬ、出してはいかぬ、これはどうしても私はやる必要があると思うのです。それはいかがですか。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょうどいま審議会でいろいろ検討しておる最中でございますから、その審議会の答申を待ってしかる後にやるべきことだと思います。
  28. 高田富之

    高田委員 いまのことは、先ほど自治大臣も言いましたように、第一回、第二回の審議会で重ねて答申をしておることなんです。したがって、これは、いま選挙制度審議会自体が、どうも政府は誠意がないみたいじゃないか、もう一回実行を迫ろうじゃないかということなんでありまして、すみやかにこれは実行していただきたい、こう思っておるのであります。  そこで、選挙制度につきまして、こまかい点はいろいろございますが、ここで申し上げたいことは、今度の審議会は、先ほど申しましたように、区制ということが中心の一つになっているわけなんですが、そういう問題は、さっき私が申し上げましたように、かりに第三者機関だからといって、区制なんかについて出てきたものをそのまま尊重するというようなことになれば、たいへんなことになるのです。これは、やはり与野党一致の土俵をつくるというような意味合いで、与野党の話し合いをつけてやるべきものなんであって、それは、さっき言いましたように、明らかに一方に有利、一方に不利だということが実証できるものなんだから、そういうことについては、たとえどんな意見が出ましても、与野党一致で取り上げるか取り上げないかということをきめるべきだという大原則だけは、私ははっきりしておきたいと思うのです。それが一点でございます。  それから第二は、ただいま申し上げましたような資金規正、高級公務員の問題、そういうふうな問題についての必要な改正は、答申を尊重してすみやかに急いでもらいたいということです。  それから、二、三並べまして、総理の見解を承っておきたいと思うのですが、何としましても、そういう制度的な問題以外に、この際どうしても政府が音頭をとりまして悪質な選挙違反に対する取り締まりを一段と強化する、同時に行政的な必要な指導もやっていく。それから、その次の項目といたしましては、何といいましてもこれは根本でありますが、政党自体の自粛、反省ということについては、具体的事例に即して自粛、反省の実をあげていくようにすることが必要だと思うのです。  そこで、私はここで提案したいのでありますが、いよいよ参議院選挙も近いわけなんでありまして、この際、選挙の腐敗を防止するために、与野党話し合いまして超党派的な機関をつくる。これは、必ずしも法的なものでなくてもいいかもしれません。超党派的なものを何かつくりまして、そうして従来選挙に関しまして悪質な違反を犯したというようなことのある者は公認をしない、それから、今度の選挙で好ましからざる違反を犯したというような場合には、これは政党から除名をして、しばらく政治運動から遠のいてもらうというような措置をとるとか、その他、運動に関しましていろいろ超党派的に話し合いをして、話し合いのまとまったことについては超党派的に責任を持ってこれを実行する、こういうふうなことを相談する超党派的な機関をすみやかにつくる必要があると私は思います。そういう点につきましては、具体的にはどうするかというようなこともありましょうから、さっそく各党代表者がこの問題のために懇談をしていただけばよろしいと思います。  以上の諸点につきまして総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基本的には、審議会の答申を尊重する、この態度は当然なことだと思います。ただいま御指摘のように、規正等については、十分各派で協議して、その意見のまとまったところでこれを実施しろ、かように言われるのでございますが、私は、第三者が好ましい機関ではないか。ただいま、もちろん、社会党の方も自民党の諸君も臨時委員でこの審議会に出て意見を述べても十分各党の意見は反映する、かように私は考えております。その上で、ただいま申し上げるように、現在の国会議員だけでこの話し合いをするということは、はたして国民が納得するだろうかどうか、ここはよく考えてみなければならないことだと思います。問題は、やはり国民のもの、その立場に立って選挙制度考えていくという態度が望ましいのではないか。ただ、私の意見を言わせていただくならば、ただいままでは、選挙というものはよほど個人的な立候補者、その個人的な立場の結果が出てくる、かように私は思いますが、今日の民主政治そのものから見れば、もっと政党の本来の姿に立って考うべきではないか、また、選挙民の立場も十分考うべきことじゃないか、かように私は思いますので、第一の提案については、なかなか私、両党で完全には意見が一致しないだろう、ことに現職だけでこういうことを論議するということはあまり望ましいことではないように私は思います。しかしながら、重要法案についてこれからは与野党で話し合いをしていけという、こういうたてまえだとただいまの提案を理解するならば、これは与野党で十分、重要法案については事前に打ち合わせをしていくということは好ましい姿だろう、かように私は思います。  第二の、選挙についての取り締まりを強化しろ、これはもう問題のないところであります。もちろん今日までもその態度をとってきておると思いますが、今後も続けてまいりたいと思います。  また同時に、第三の提案、自粛反省をしろという、これは国民に対して当然自粛反省があってしかるべきだ、これで初めて国民の代表にふさわしい、そういう立場になってくるのではないかと思います。  最後に、今日当面する選挙に対して超党派で話し合え、その中身はいかようになりますか、いろいろ具体的な問題を提示なさいましたが、これは、今日の選挙制度あり方、またお互いに清く正しい選挙を行なおうというその立場に立ちまして各党で話し合われること、私はたいへんけっこうなことだと思います。これは、こういうような事柄を通じまして、そうして国民の納得のいくような方法であるべきことだ、かように私は思います。  政治資金の問題については、先ほど自治大臣から御説明をいたしましたから、これはおわかりだと思います。この政治資金の問題、これはなかなかそれぞれの立場においてそれぞれの理由があるだろう、かように考えます。たとえば保守党の場合は、会社等からの支援が非常に多い。また社会党の場合は、組合等からの支援があるとか、いろいろの事情がございますので、これは一様に簡単には解決はなかなか見出せない、かように思いますが、十分、資金が清く正しい方向で使われる、また集められる、こういうことについては各党とも努力すべきでありまして、そういう意味において十分話し合ってみる、こういうことは、これは進歩だ、私はかように考えます。
  30. 青木正

    青木委員長 島上善五郎君より関連質問の申し出があります。高田富之君の質問時間の範囲内においてこれを許します。島上善五郎君。
  31. 島上善五郎

    ○島上委員 ただいまの政治資金の問題に対する総理答弁ははなはだ不十分であり、実態を、極端に言うならばごまかしております。選挙制度審議会の答申は、理想的には政治資金は個人に限るべきものである、会社も労働組合もやめるべきものである、しかし、さしあたって少なくとも政府から財政投融資、利子補給、補助金、交付金等を交付している団体からは政治資金は政党は受けるべきではない、こう答申している。これは当然だと思うのです。本年度の予算の中にも膨大な財政投融資があるでしょう。そのほかに補助金、交付金、利子補給がたくさんある。それらを交付している団体からは政治資金を受けるべきでないというのは、当然だと思うのです。これに対するお考えはいかがですか。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま審議会における議論を蒸し返してみましても私いかがかと思いますが、ただいまあげられましたように、個人なら個人だけに限るという、かような立場であるならば、非常に明確だろうと思います。ただいま言われるように、団体あるいは組合等から受けることは差しつかえない、しばしばまた組合、団体等から政治行動まで規制される、こういうような結果になる、そういう点を政治資金規制法では非常に重く見ているんだ、だから、たとえば外国人から選挙について援助を受けることはいかない、これは基本的なたてまえなんです。やはり日本人は、わが国の国民のその立場において正しい判断をする、政治活動も国民の信頼にこたえるようにする、こういうことだと思う。また特別な関係のある業者から支援を受けるという、それは、行政自身をゆがめるものではないか、同時にまた、出てきて、そういう方は利益代表になりやすいじゃないか、こういうような点で反省を求められておるものだと思います。そういう意味でいろいろ論議されておるので、まだその結論が出ておらない、かように私は考えておりますので、ただいま御指摘になりましたように——島上さんも臨時委員でしばしば出ていらっしゃる。だから、よく審議会の模様は御存じのはずなんです。これは、そういうところから資金を集めたらどういう弊害をかもすか、弊害がないなら、どんなところから資金を集めてもよろしい、しかしながら弊害がおそろしいのだ、そこに行政の腐敗があるのだ、また代議士自身が自由な立場において行動ができないのだ、こういうところを特に審議会は重く見ている。いかにしてその弊害を除去するか、こういう点に重点が置かれておる、かように私は考えております。
  33. 島上善五郎

    ○島上委員 私は、時間がありませんから、問題の焦点を簡潔に伺いますから、答弁も簡潔に願いたいと思うのです。  一般的な議論を私はここで蒸し返そうと思いませんが、政府から財政投融資、補助金、交付金、利子補給あるいは資金というものを出している団体からは政党が政治資金を受けてはならぬというのは、これは、選挙制度審議会の答申ですでにもう意見はきまっておるのです。これは、審議中じゃないのですよ。きまっておるのです。これは、国民考えても、あなたが考えても当然だと私は思うのです。右の手で財政投融資、利子補給、資金を与えておいて、左の手でもって政治資金を受けるということは、道義的にも許されないことですよ。これは、行政の腐敗ばかりじゃないのです。政治の腐敗ですよ。政治の腐敗の根本ですよ。しかるに、この答申を受けて前回行なった改正は、こういう改正です。さっき高田君が読み上げたとおり、「当該選挙に関し、寄附をしてはならない。」一年をこえる期間当該選挙に寄付してはならない。これは、裏を返せば、当該選挙に関してでなければ寄付してよろしいということになるんですよ。一年を経過したら寄付してよろしいということになるんですよ。そういうことを放置されてよろしいのですか。私は、いけないと思うのです。選挙制度審議会もそういう答申はしていないのです。国と請負その他特別な利害関係を伴う契約の当事者が、当該選挙に関してでなければ、幾ら寄付してもよろしいということになるのですよ。こういうことでよろしいのですか。これはざる法じゃなくて、大穴があいているのですよ。大きな抜け穴があいている。この抜け穴をふさがなければ、政治資金の源をきれいにすることもできなければ、選挙をきれいにすることもできないというのが私どもの主張であり、高田君の質問している趣旨なんですよ。それを伺っているのです。その他一般的なことは別の機会に伺いますから、よろしいから、これは、政治道義上そういうことを許されてよろしいかどうか、総理からぜひ簡潔でよろしいから伺いたい。
  34. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府結論を出してただいまのような法律をつくったのだと思いますが、なお、詳細につきましては自治大臣から答えさせます。
  35. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ただいま御指摘になりましたのも一つの問題でございます。しかしながら、この政治資金規制については、まだいろんな問題がございますので、引き続き今度の第三次選挙制度審議会で、選挙区制とあわせてこの問題も御審議を願っておるわけでありますから、このこまかい具体的な問題が出ました上で検討していきたい、かように存じております。
  36. 島上善五郎

    ○島上委員 そのような答弁を繰り返し伺っても、もう全く問題にならぬです。これは、政府が政治資金規制に対して熱意がないという証拠ですよ。ばく大な財政投融資、補助金、交付金を与えている先から、当該選挙に関してでなければどんな政治資金を受けても合法的であるといってすましておられる。そういう状態でよろしいというならば、これはもう何をか言わんやです。  そこで、私はもう一つ、先ほど高田君が質問したことについて具体的に一点だけ伺っておきますが、高田君の質問は、参議院選挙はもはや事前運動が活発な形で行なわれており、中には好ましくない形で事前運動が行なわれておる。これは、総理も耳に入っいていると思うのです。もしこのまま放置すると、前回の参議院をさらに上回った腐敗不正の選挙が行なわれるという心配がある。そうして、法律の欠点もあるけれども、法律を改正して間に合わせるということは、これはもう不可能に近いと思う。そこで、さしあたって、せめて各党がこの腐敗選挙、参議院の腐敗選挙を防止するために有効な手を相談する、そして、それを実行する、このくらいのことはやらなければ、自粛反省なんてことばで言ったって国民は信用しないと思うのです。自粛反省ということをことばでおっしゃるならば、その自粛反省の実を示すために、現に進行しておる腐敗不正の事前運動及び告示になってからの運動を防止するために、行政的な措置も必要ですけれども、各党が自粛反省の実を示すために話し合って、たとえば前回の選挙で買収等の腐敗選挙をやった前歴を持つ者は公認しないということを申し合わせる手もありましょう。その他選挙資金については、各党が法定費用を上回る公認料を出さぬというように申し合わせることも必要でしょう。法定費用がきまっていながら、法定費用を上回る資金を党や派閥から出しておれば、これを使いなさいということですからね。そういったような有効な手を相談し合って——どういうことを相談するか、それは先のことですよ。たとえばの話です。そういうことを相談して実行する。腐敗選挙を防止するための措置として、そういうことが必要でないかというふうに私は聞きましたので、これに対するはっきりとした答弁を伺いたい。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの最後の点は、私も賛成をしてお答えをしたとおりでございます。だから、これは各党でお話しになる、たいへんけっこうなことだ、前進だ、かように私も考えます。
  38. 高田富之

    高田委員 そこで、結局根本は何といいましても政党自体の自粛反省、この点は総理もお認めになったとおりであります。私は、この際、抽象的なことじゃなしに、具体的にこういう問題についてどういうふうに処置されたか、どういうふうな態度をおとりになるかというようなことが明白になりませんと、ただいまの総理の言明も国民は信用しないということになってはいかがかと思いますので、二、三の例を申し上げて、これに対する考え方なり処置の方針なりを伺っておきたいと思うのです。  第一に、これはもう先般来非常に世間を騒がせました、選挙違反の中でも最も悪質な、大がかりな選挙違反、例のにせ証紙事件でございます。これが先般、その中心人物であります松崎には懲役三年、以下、根本一年六カ月というような判決が下されたのです。この判決理由の中に非常に重大なことが指摘されておる。「松崎被告は自民党本部の事務局員で、党の活動費で買収をおこなったが、これは、あたかも自民党自体が買収をおこなったとの感があり、その責任はまことに重い。さらに、選挙を食いものにしていた肥後亨と結んだことは、選挙をいっそうみにくいものにした。」云々、こうずっとありまして、「しかし、根本の買収事件については、根本自身は、独断でやったと自白しているが、根本は長年川島正次郎議員の秘書を勤め、当時は川島国務相の秘書官をしており、その自供は疑わしく、この件について根本一人を厳罰に処するのはちゅうちょせざるを得ない。そこで、同人は執行猶予とした。」こういうことなんです。おそらくこれは、こういう判決が出るまでもなく、これは党の責任においておやりになったことでありましょうから、党の幹部の皆さんにはよくおわかりだったと思うのですが、一たんこういう判決が出ました以上は、これはもう相当の責任ある処置をおとりになるのでなければ、こういうことは根絶されないと思うのです。ちゃんとこれは裁判官自身が、自分一人でやったのじゃないから、これ一人を責めるわけにいかないといって刑を軽くしておるのです。じゃ一体だれがほんとうの責任者なんだ。だれがほんとうの責任を持つべきなんだ。その前文には、自民党自体選挙違反をやっておる、党自体がやったのだというようなことまで断定されておる。私は、こういう問題については、やはり相当えりを正して、厳然たる処置をとって、天下に今後の政治のあり方というものを明らかにし、不信の念を一点だに抱かせないようにする最大の方策が講ぜられてしかるべきであろうと思うのですが、どういうことをお考えになっておりますか。
  39. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 お尋ねの判決の内容につきましては、私つまびらかにいたしておりません。政府委員から答弁をさせていただきます。
  40. 高田富之

    高田委員 これは、事務的なことじゃございませんので、ひとつ佐藤総理大臣から御答弁を願いたいと思います。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆるにせ証紙事件、これは、判決が下った状況でございます。その判決を私どもは謙虚な気持ちで受けた。これは、ただいま聞くと、上訴をしているということでございますから、その結果を見て、しかる後に私どもが反省すべきものは反省する、こういうことをいたしたいと思います。
  42. 高田富之

    高田委員 抽象的には、先ほども総理は、政党の自粛反省というふうなことをお約束されているのですが、こういう具体的な問題で明確にやはりその態度をおとりになる必要があると思うのです。これだけ大きな悪質な違反で、しかも政界の相当重要な地位にある人々が責任を持っておる。こういう事件については責任がある立場にある。そういうときには、やはりこれは相当の決意を持ってやらなければ、国民が納得するような自粛反省の実があがったというふうには受け取らないわけであります。こういう選挙の結果、自分の党から出した公認候補者で、当選をして現にその地位にある者についてすらも、それをどうするというようなことまで一応これは問題になるかもしれません。あるいはその党自体がやっておるということであるならば、その当時の実情については、裁判官の手をわずらわすのではなしに、党自体が徹底的に調査をする、徹底的にくまなく調査しあげる、そうして政治的にその責任をとるということでなければ、上訴しているからいい。裁判がどうだというようなところへ問題をすりかえたのでは、これは全く無責任と言わざるを得ないと思うのです。そういう点についてのお考えを、ひとつはっきりこれは総理からお聞かせ願いたい。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま私、この事件についてはいかになっておるかということで聞いてみますと、この第一審判決は、党はもちろん不満でございますから、ただいまのように、また本人も不満でございますので、上訴しているということでございます。ただいま、その上訴審にどういう判決が出ますか、それを待つべきだ、ただ第一審の判決だけをお読みになりまして、党に責任がありとか、あるいは当時の国務大臣、ただいまの副総裁の名前をあげられる、こういうことは非常に遺憾だと私は思います。問題は、最終の判決までこういう事態を待っていただく、もちろんただいまのような点について大不満だから上訴している、この事実をひとつお考えをいただきたいと思います。
  44. 高田富之

    高田委員 大不満で上訴しているということになりますと、それだけを聞きますと、国民はどういう感じを受けますか。それほど悪いことをやり、とんでもないことをやって、なおかつこれを罪を軽くしようとか、なんとかしようという策をまだ講じている、こういうふうにしか受け取りませんよ。これは、正直に、そうですね、だから、そうあってはならぬとあなたがお考えになるならば、裁判官はどう調べたかしらぬが、党の調査ではこうなんだ、党の徹底した調査をしてみた結果はかくかくであるということを明白に出さなければいけませんよ、党の独自の調査を、そうして、党は独自に——これが罪になろうがなるまいが、それは別なんです。党として責任をとらせる者には政治的な責任をとらせて明らかにする。これをやらなければ、裁判官のほうに不服だからということだけでほっかぶりしようとすれば、これは、この腐敗選挙粛正しようとする熱意はないと断ぜざるを得ないじゃありませんか。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん党内におきましても、これは、党の責任であるかどうか、これを十分精査いたしたわけであります。そういたしますと、これは党の責任ではない、党はそういうことをやらせておらない、関与していない、こういうことをはっきり申しているわけであります。先ほど来、こういうことをやれば、自由民主党はなお悪をみずからおおうているのだ、こういうような批判を受けるという御指摘でございますが、私は、裁判に関する事柄は、必ず正しい判決を下される、かように思いますので、その判決を待つという、これが民主主義国におけるわれわれの当然のことだ、かように思いますので、先ほど来申し上げましたように、党自身も、こういう問題に関連のないこと、これを明白にいたしておりますが、なお将来ともそういうような疑惑を受けないように慎んでまいるつもりでございます。
  46. 高田富之

    高田委員 事実関係は、おそらく肯定するほかはないのだろうと思うのです。それについての判決の内容なり何なりについて異議があるということでありましても、私は、これは罪の軽重の問題じゃないと思うのです。かりに犯罪にならなくても、実際事実というものが基礎になれば、あとは政治的責任をとらなければならぬですよ。そういう観念が全然ない。だから、あとからあとから同じような事件が起こるのだと思うのです。きょうは時間がありませんから一々同じようなことをあげるまでもないと思うのですが、例の平井官房長の問題、山本代議士に関する起訴の問題なんかにしても、似たような問題でございます。  あるいは次にまた、これはまた新しい問題ですから、これについては前回の臨時国会のときにも質問がありましたので、その後のことについてこの点は触れておきたいと思うのですが、この間、大月市の市長選挙が非常な汚職、買収のたいへんな選挙だったということで、これまた司直の指弾するところになりまして、ただいま相当数の検挙者が出ている、これは新聞や雑誌を相当にぎわしておるような問題なんです。このよごれた選挙の典型的なものをやった大月市長選にからみまして、その前に市長のいすをたらい回しをするという約束をいたしまして、そうして保証金を一千万円積んだというような問題につきまして、これはまた実に重大な、前古未曽有の悪質な選挙の冒涜だと思うのでありますが、この問題について、中井委員から前の臨時国会のときに質問をしております。ところが、調査をする。まだ何も調査しておらない。これから調査をする、調査の結果もしそんなようなことがあれば厳重に処断をするというような御答弁総理がなすっておるわけなんです。その後、今日の選挙の結果がまたこういう問題になっておるのでありますが、その間、総理は、この委員会における約束に従いましてどういう調査をされ、どういう処置をとられ、政治的にどういうふうに、今後そういうことのないような措置をとって今日に及んでおるのか、あるいはとらなかったのか、ひとつ明細に御報告を願いたいと思うのです。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 党におきましては、もちろんかような疑惑を受けたという点でこれを除名したわけでございます。したがいまして、大月市長が再選挙に出ましたけれども、もちろん党とはもう関係のない人でございます。また、ただいま法務大臣から伺いますと、ただいま捜査中だそうでございまして、捜査の結果を待たなければいかようにも話ができないことであります。ただいま捜査の段階でありますから、その内容は申し上げません。
  48. 高田富之

    高田委員 前会の中井さんの質問のときには、この一千万円問題について、まだ事実は明らかでない、こういう御答弁で、調査するということでございましたが、そういうようなことは、新聞や雑誌には書かれておるわけですけれども、事実はどういうことなんですか。事実あったことなんですか、これは。
  49. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ただいま御質問になりました大月市長選にからみまして、昨年の十二月に、御承知のように、前市長井上武右衛門、それともう一人落合熊雄氏との間に候補の話がございまして、一千万円を信用金庫に預けたという問題でございます。これは警察当局といたしましては捜査を続けまして、その後十二月の十九日に送致をいたして、検察当局で目下取り調べ中でございます。
  50. 高田富之

    高田委員 井上氏は処分をしたから、これは政党には関係ないんだ、こういうことでございますが、ただいまの御報告にありますように、市長の任期を、井上氏は一年三カ月で、落合氏が残りの二年九カ月ですか、そういうふうに任期を二つに割りまして、そうして、必ずそのときにはやめる、で、保証金に一千万円を出す、この一千万円は党支部が預かるということで、事実党支部が預かっておる。違反すれば没収するんだ、そうして、先付の辞表を自筆で井上氏が書いて出した、こういうふうな問題なんです。これが、事情が暴露されましたためにこわれてしまって、そうして、今度のこれまた腐敗選挙、ものすごい腐敗選挙になって、またその方面で検挙されておる。こういう重ね重ねの徹底した腐敗、堕落ぶりを余すところなくこれは天下にさらしておる事件なんです。これに対しまして政党本部として、あるいはまた総理として、政界粛正という意味においてはこれまた先ほどの問題と同じでございまして、単に裁判所がどうするだろとか、検察庁がどうするだろうという、これは問題ではないと思うのです。政党の支部、れっきとした支部が責任を持ってそういうことをやり、これに立ち会っておりますのは県連の会長、県連の最高委員、現県知事、しかも、現県知事は現在の県連会長だそうであります。当時も県連の最高委員というようなことで関与しておる。また、支部のそういうことをやりました責任者は県会議員、いずれも社会的に地位もあり、相当大きな影響力を持つ政治家なんです。政党のちゃんとした機関なんです。こういうことに対しまして、たいした措置がとられていない。だから、そのあとすぐ、これがこわれたあとは前古未曾有の大買収選挙、もうほんとうにこれはあきれるばかりの買収選挙であったということを土地の人たちも訴えておる。現にどんどんいま検挙者が出ております。こういうこと、しかも、それは県連会長である県知事さんが先頭に立って応援して、そうして今度当選した方のほうなんです。自民党で推薦をして公然と応援をしたほうがもちろん反対の方にもあるんでしょうけれども、どんどんいま検挙者を出しておるというような騒ぎをしている。こういうふうな不明朗な取引のようなことをやった。こういうことに対する責任というようなものを鋭く追及するようなことが行なわれていないんじゃないか、私はこう考えざるを得ないのですが、何をおやりになったのですか。前回のこの委員会では、調べて厳重な処断をするというような御答弁があったのですが、何らこれに対して措置されていないんじゃないですか。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 知事はこの事件に関係ございません。ただいまのような実情を知事は知らなかったかような状況でございますので、私は、これは白だ、かような判断をいたしたわけであります。ただいまこういう事柄が公公然と行なわれるというわけのものではもちろんないのでありますから、それは、両者の間の極秘の扱い方でございます。したがって、これに直接関係しない者までやかましく言うわけにはいかない。ただいま申しましたように、党として、問題を起こした候補、これは除名した、この点で処断をいたしたわけであります。
  52. 高田富之

    高田委員 これは、公認しないのに立候補したから処断した、こういうことなんであって、この問題自体についての、その一千万円事件についてのあっせんをやったり、それをきめたりしました支部とか、それに立ち会ってそういうことを発表する席でもって手打ちなどの指導をしたとか、そういうことに対する政治責任は全然問うてないんです。井上という人は、公認しないのに立候補したから除名した、で、無所属でやった、こういうことにすぎないのであって、この重大な市長のいすを金でもって、そうして、二人の者でもって期限を分けてどうこうするというような、こういう問題についての、全く住民を愚弄するもはなはだしい、民主主義を根底から破壊する、政治家の端くれにも置いてはならない政治的罪悪、これに対する処置がないから、そのあとすぐまた同じような、こういうとんでもない違反選挙をやることになるんですよ。ですから、その点については、総理は、前回この委員会で中井委員質問にお答えになったことをそのままには実行していなかったといわざるを得ない。これはもう重大な問題です。そういうことについてもっと峻厳な態度をとらなければ、政界というものはどこまでどろ沼へ入っていくのですか。とんでもないことになりますよ。この大月の今度の腐敗選挙と同時に、北九州市のことまでいま出ていますけれども、やはり似たようなことをやっている。入場券を買い集めて買収して、かえ玉が行って投票する。そうして、市会議員であっても一千万円以上でなければ落選するんだというようなことが一般的に流布されている。こういうことがどんどん次から次に起こってくるんです。もっとえりを正して深刻にこの選挙の腐敗、政治的な腐敗、堕落に対してはメスをふるうということでなければならぬ、こう私は強く指摘しておきたいと思うのです。  それから、あまりこれこれと言っているひまもございませんし、みんな同じですから切りがないんですが、一つだけ、これまた暴力団を選挙の際に使うというような例が相当あるわけなんです。ただいま、暴力団狩りにつきましては相当警察当局も力を入れておる。かなりの摘発をやっておられることについては、非常にけっこうだと思っておるのですよ。しかし、根源は、何といってもそれをはぐくみ育てていく土壌というものがあるわけなんで、これにメスを入れるのは、やはり政治の責任だと思うのです。そういう点から申しますと、暴力問題についても、——きょうは時間の関係で暴力問題一般については後日に譲りますけれども、やはり政治家として、政党として、暴力組織や暴力団というものとのいかがわしいような関係というようなものは、これはもう徹底にメスを入れて粛正しなければならぬと思うのですが、これも、実例をあげて申し上げますが、先般行なわれました岐阜県の衆議院の補欠選挙の際でございますが、これは、先ほどの例と同じように、自民党の県連会長であります岐阜県の松野知事が昨年十二月に、これは新聞記者に語ったのでございますが、十二月二十七日選挙当日の夜、刺客が東京から派遣されたため、松野会長の身辺を十五人の警官が警備したという事実を明らかにした。暴力で投票を動かそうとするのは、軍閥時代以上で、民主政治を破壊するものだ、われわれは断固として戦わざるを得ないというようなことを公然と新聞記者団に語っておるし、事実、護衛を依頼いたしまして、警官十五人をもって護衛をさした。もちろん反対派のほうでも、そういうふうなことをやったのだというようなことが云々されておるわけなんですけれども、いずれにいたしましても、こういうことが事実として行なわれておるのです。これもきわめて重大だと思うのです。こんなことがある限り、暴力団狩りを幾ら警察当局が一生懸命やられましても、絶対根絶することはできません。こういうふうな問題を軽視してはいかぬと思うのです。これは、やはり政治上の重大問題として真相を突きとめて、そうして徹底的に根源をせん滅するようなことを、政治家として、党としてやらなければならぬ。この点についての真相はどういうことなんですか。
  53. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ただいま御指摘になりました件は、私聞いておりませんので、政府委員から答弁させていただきたいと思います。——ただいま政府委員にも聞きましたが、警察庁といたしましてもそういうものを聞いていない、こういうことでございます。取り調べたいと思います。
  54. 高田富之

    高田委員 これは、ひとつ早急に調査をしてください。こういうことを軽視することはいかぬと思うのですよ。非常に重大視しなければならぬと思いますので、これは早急に調査をして、本委員会に実情を発表され、しかるべき対策を実行してもらいたい。  私は、この機会に率直に申し上げたいのでありますが、今度の大月の問題などはほんとうに言語道断のことなんでありますが、そういうところへ新聞記者諸君や何かが調査に行く。調査に行って驚くことは、たいして罪の意識はない、地元の政治家などは何でもないということを言うと言っているんだな。また、驚くべきことは、そういうことが記事にも出ておりますよ。総裁選挙と同じようなことをただ地方でやっただけだ、こう言っておる。(笑声)どうですか。これは、私は全く重大な問題だと思うのです。いま非行少年がどんどんふえているのです。汚職のふえ方は所得倍増どころじゃないです。汚職天国といわれていますけれども、汚職というものは、最近では一年間に四割近くもふえているでしょう。激増しておるのですね。そうして、選挙違反は、回を重ねるごとにひどくなっている。根源は一体どこにあるのですか。私は、これは笑いごとじゃ済まされないと思うのですよ。そうして、地方へ行ったら、いまのようなことを地方の政治家は言うという。しかも、さっき私が調査してくれと岐阜県の補欠選挙の話を申し上げたのでありますが、これは、事のついでだから申し上げておきますが、自民党の総裁選挙に岐阜県から出てきた某代議員の方が中央へ行って、大会でもって某派閥から二百万円もらったということを、自民党県連会長である岐阜県知事の松野さんが市町村議長会の席で発表して物議をかもしたというのですね。これは、たいへんなことですよ。これだから、何と言ったってなかなか綱紀粛正ができるはずがないのです。新聞などを見ましても、去年の七月の総裁公選のときの記事などが出ておりますが、朝日新聞の紙上においてもちゃんとこういう事実は出ております。しかも、あなたの党の若手の新しい議員の八人の方が、ちゃんと名前も載っておりまして、総裁選挙についての感想を聞かれてお話をして、その八人の方の述べたことを記事として大きく出しておる。その中にだってちゃんとあるんですね。少ないもので二、三百万円、多いものは一千万円、その対象となった者は大体百五十人前後じゃなかろうかというようなことまでちゃんと出ているんです。また、当時の雑誌ですよ、国民がみんな読んでるんですからね。たくさん読まれる週刊誌みたいなものに、一字五十万円、池田の池の字、佐藤の佐の字が五十万円、いい原稿料だと書いてある。こういうことで政界の粛正選挙粛正、綱紀粛正はとてもできません。だから、さっきから島上さんも言っておる、私も主張しておりますように、政治資金規正というのは根本なんですよ。どこからかそういう金が流れてきて、そうして、そういう一文の税金もかからないばく大な金がどんどん贈与される。贈与税なんかは一銭もかかりゃしない。所得税も一銭もかかりゃしない。そんなばく大な金がどんどん流れる。こういうことを知った国民はどう思いますか。これは冗談ごとじゃないのです。どうしても政治の姿勢を正さなければ、汚職によって、腐敗選挙によって日本の民主政治は崩壊しますよ。どうですか、総理としての佐藤さんのしっかりした御所見をひとつ承りたいと思います。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話のごとく、ただいまの世相、いろいろ考えさせられるものがある。したがいまして、私はまず政治の姿勢を正せということを申しております。ただいま暴力について警察当局が真剣に、暴力を根絶しよう、そうして明るい社会をつくろう、かようなことを考えておる。また、一部の青少年の犯罪等に見られるものにつきましても、これまた、姿勢を正すことにより、その生ずる原因その他につきましても、十分これを把握して、そうして対策を立てて、さらにまた、ただいまお話しになりました公務員一般の綱紀粛正、そういう問題とも真剣に取り組んでおるつもりでございます。私は、こういうようなもろもろの事象に対しまして、もちろん、政府自身も断固としてこれらの根絶あるいは粛正、こういうことに努力するつもりでございますが、これは、国民全般の協力を得てはじめてできることだ、かように考えますので、政府の責任はもちろんでございますが、また社会党におかれましても、われわれのこの意のあるところを十分御了承いただきまして、御協力のほどをお願いをいたします。
  56. 高田富之

    高田委員 法務大臣にお伺いします。  公務員犯罪の趨勢、特に汚職の検挙人員数、最近の増加傾向、これをちょっと御発表願いたいのです。
  57. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 最近におきまする公務員の汚職事件は、全国検察庁におけるこの種事件の受理及び起訴人員から見ますと、年度によって若干の増減はありますが、ここ数年来おおむね横ばいの状況にあります。その件数を申し上げますと、受理いたしました件数は、昭和三十六年二千五百五十五件、昭和三十七年千九百九十三件、昭和三十八年二千二十五件、三十九年は一月から六月までで九百三十六件であります。そのうち起訴をいたしました件数は、三十六年が五百九十八件、三十七年が四百七十八件、三十八年が四百八十件、三十九年が二百八十八件、こういう内容になっております。
  58. 高田富之

    高田委員 この機会に、参考までに、汚職に関係して検挙されましたただいまの数字の中央の各省別のやつをちょっと御発表願いたい。
  59. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 お答えいたします。各省別の統計は、現在とったものは手元にございません。
  60. 高田富之

    高田委員 それは、それでは資料として要求しておきます。早急に出していただきたい。  何しろ汚職につきましては、特に最近は、なかなか知能犯的な、質的には相当悪質化した事件が多いわけでございます。先般は決算委員会におきましてもごく最近の問題を三件ほど取り上げておるわけでありますが、首都高速道路公団のいわゆるオリンピック汚職、それから通産省関係の平岡の輸出保険金詐欺事件というような問題、さらに運輸省航空局の消防車メーカーの納入に関する汚職事件というようなものがごく最近摘発されまして、たいへん衝撃を与えておるわけでございますが、最近は、この前にも例の新幹線汚職でありますとか、かなり大規模な汚職事件がずっと続いております。こういうふうに、官庁関係の業界との結びつきから収賄関係が起こるということが、これまた非常に自然のようなぐあいになってきておる。これは、捜査官も言っておりますように、罪の意識がほとんどないというような状態になっておる。特にこの間の高速道路公団の問題につきましては、検挙されたらすぐ部内で署名をとって嘆願書をつくるというような動きが起こるというようなこと、これは、あとであわてて押えられたようでありますけれども、非常にそういった点が麻痺しておるのです。こういうふうな汚職などにつきましては、ほとんど感覚麻痺なんだ。ですから、これを粛正しますためには、もちろん、さっき申しましたように、政治の根本というものを正すということが何といっても根本だと思うのですが、同時に、あわせまして、技術的な監査制度、部内監査制度というようなものをきちっと整えていくとか、あるいは、一たんそういうことがあった場合にこれに対する処置というようなものを明快にしていくとかいうふうなことによって、ほんとうにこれは政府をあげて取り組んで、部内からそういうものを出さないような措置をこの際講じてもらわなければならないと思うのです。そういう点につきましても、最近これらの汚職事件が相次いでおりまして、各省ともみなあるのでありますけれども、税務署の汚職なんかも最近非常に多いわけです。この間京橋あたりで摘発されておりますけれども、まるごと汚職みたいだ。署員全部汚職みたいな状況を呈してさえおるのですね。こういう状況です。そこで、これに対しまして事務的にはどういうふうにするか、監査制度はどういうふうに直していくとか、そういう機構上の欠陥はどういうふうに直すとか、あるいはこれに対して部内を引き締めるためにはどういうふうな方法をとっているかというようなことについて、簡潔でけっこうでありますから、ひとつ通産、運輸、大蔵、建設、考えを述べてください。
  61. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 通産省におきましては、先ほどちょっとお話が出ましたように、貿易商社平岡に関連する業務上の横領の事件があった次第でございますが、この事件が判明いたしました直後に事務次官を招致いたしまして、まずその事実を聞き取り、しこうして、全役所の諸君にこういう事態が再び繰り返されないように厳重に警告を発するように申し渡したような次第でございますが、何と申しましても、綱紀粛正の問題は、それぞれの心がまえが必要であろうと思います。また、上に立つ者の心がまえが、引き締める上においてさらに必要であろうと思いますので、私みずからがよくそのことを心に戒めまして全役人を引き締めてまいりたい、かように思う次第であります。
  62. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 御答弁申し上げます。  運輸省を預かる者といたしまして、自分の部内からかかる汚職を出しましたことは、私ども上司の非常な責任でございまして、その責任を痛感いたしております。これが起こりましたのはつい二週間ばかり前でございますが、最初に課長補佐の竹本というのが行きまして、その次に福田、徳田というような係員二人が召喚されたのであります。目下調査中でありまして、犯罪の内容は十分にわかっておりません。しかし、われわれは、当時直ちに省議を開きまして、今後かかることのないように、それぞれの課の課員に汚職の再び起こらないように十分警告を発すると同時に、官紀の粛正に対して極力努力するよう戒めておきました。
  63. 小山長規

    ○小山国務大臣 お答えを申し上げます。  いま高田さんがおっしゃいましたうちで三宅坂のインターチェンジの問題は、これは、公団側には起訴された者はおりません。この点は申し上げておきます。これは、建設業者のほうが横流しをした事件でありまして、この点はまたあとで申し上げる機会があると思いますが、公団側のほうにはございませんことを申し上げておきます。  これと別個の事件で、二人ばかり収賄の容疑をもってただいま起訴されておる者がありますが、これは、司直の取り調べ中でありまして、まだ詳細のことはわかっておりません。  ただ、私がこの際申し上げておきたいことは、いま高田さんも申されましたように、こういう事件が起こることは職場の空気がよごれておるのじゃないかということをかねがね注意をしておりまして、そこで、たびたび局長会議を開いたり、あるいは公団の総裁の会議を開いたりして申し上げておるのでありますが、平生注意をしておればおのずからわかるのじゃないか、そこで、監督の責任にある者はかねがね十分注意をして、問題が起ったときに監督者としての責任を問わないようにかねがね注意しておいてほしいということを始終申しており、また、部内の空気がそういう空気であっては困るものでありますから、厳正に仕事を進めると同時に、誘惑に負けないような、誘惑に負けるということが一番の大きな問題でありますから、その点を特に気をつけておる次第であります。
  64. 高田富之

    高田委員 いずれにしましても、通り一ぺんのことではこれはとても根絶できないのでありますから、総理以下内閣をあげてひとつ真剣に取り組んでいただきたいと思うのです。  なお、時間も迫ってまいりましたので、ここでちょっとふかしぎなできごとについて、国民が非常に疑問に思っておりますことがありますので、この機会に私は御解明を願いたいと思うのです。  実は、これは、この間も加藤委員から質問があったのですが、時間がなかったために十分御答弁をいただいておりません。例の電源開発会社の福井県九頭竜川の長野ダムの建設でございます。この問題につきましては、問題点を端的にずばり申しますと、この間も御質問がございましたとおり、一番高いところへ落札をしているという問題なんです。第一工区、第二工区と二つございまして、第一工区のほうは鹿島建設に落札されておりまして、これが四十一億三千八百万円、一番高いわけであります。最低は前田建設の三十九億。それから、第二工区のほうは佐藤建設が落札いたしまして、二十四億五千万円、これも一番高いのであります。一番安いのは、ここも同じく前田建設で、二十億八千万円。したがいまして、第一工区のほうの最低との開きが二億三千八百万円、第二工区のほうの最低との開きが三億七千万円、両方では六億八百万円という高いものに落札をした。入札で一番高いところへ両方とも落札をしておる。こういう世にもふしぎなできごとがございます。これは、一体どういうことなのか、ひとつ御解明を願いたいのです。
  65. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先日も御答弁申し上げたのでございますが、これは、電源開発株式会社の入札の方法によって起きた結果でございまして、通産省は電源開発会社に対する監督の責任がございますので、したがって、私がその答弁の衝に当たったわけでありますが、実はきょうそういう御質問があるということを認識しておりませんでしたので、いまここに詳しい資料がございませんが、概略で申し上げますと、限度額を設けまして、そして、その限度額に対して、甲、乙、丙、丁と四つの何%というくじをつくったわけであります。そして、その限度額に対してどのパーセンテージをかけるかということは、総裁がその中から一つくじでとったわけであります。そして、その限度額にかけたものが基準になる、こういうようなやり方であったと思うのであります。その四つの甲、乙、丙、丁のくじの中で高い%のくじがひかれた、こういうような入札の方法でございまして、私としてその入札の方法がいいのか悪いのかというところも追及してみましたが、従来そういう方法をとる、こういうことでございました。  なお、いま結果がそういうことでございますが、実は、こういう公共工事でございますから、それは安いにこしたことはないが、安ければ安いほどいいということでもない。その結果工事が粗漏になって、後日に大きな問題を起こしてもいけない、こういうこともあろうかと思います。また、過去に、安い工費で請け負って、そして、その後に値増しの要求をやむなくしたという場合もございまして、結局、これは入札方法の結果がそういうことになった、かように監督の立場にある私どもとしては判断をいたしたわけであります。
  66. 高田富之

    高田委員 あなたは監督の責任があるのです。こういう入札の方法があるのだくらいのことで、それで監督が果たせますかね。いいですか、申し上げます。いま言っていることだって、あなた自身にわかっていますかね。私はおかしいと思うんですよ。この工事は四十億なら四十億だということで会社で予算を立てますね。そうして限度額というものをきめる。それよりもあまり安くては弊害を伴う。たとえばいつだったか、皇居造成のときに一万円で引き受けるという事件がありましたが、そういうことはもちろん排除しなければならぬですよ。四十億なら四十億の予算がついたときに、一体、安く入札させるのが目的なんですから、安く入札させるのが目的ではあるが、限度をどこに引くか。これ以上安かったらこれはインチキだ、できっこないんだ、不正なんだということが断定できる線というものを引くんだろうと思うのです。私はしろうとだから知りませんけれども、これは常識問題ですよ。ところが、いまあなたの説明は、その一定の予算に対してパーセンテージをつくる、何%値引きするか、一割引くのか、八分引くのか、七分引くのか、六分引くのか、五つも案を出したというんだ。それだったら、そのどれも合理的ならば、一番大きいのをとるべきじゃないですか。そうでしょう。五%安くてもいいんだ、一割安くてもいいんだという理論的なものが会社で出たらば、一割を最低線に引いたらいいでしょう。その上にちょっと頭を出したところで入札ができればいいじゃないですか。それを、その幾つものパーセントの中からくじを引いたとは何です。そういうやり方が一体ありますか。それでいいですか。それで、どっちも最高値に落ちているんですよ。よろしいですか。偶然でしょうかね、これが。少しこれは頭を働かして監査してもらわなければならぬと思うんですよ。こういうことなんです。時間がないから私のほうからもっと詳しく御説明いたしましょう。いいですか、そのかわり責任は免がれませんよ、いいかげんな監督では。よろしゅうございますね。いいですか、これは第一工区は予算額は四十四億九千万円、これは会社の予算額です。落としました鹿島建設、そこが最高でございまして、さっき申しましたように四十一億三千八百万円。これは最高なんです。それから、その次、第二位の入札者間組が四十億九百八十万円で、その差は一億二千八百二十万円でございます。それから、第二位の間組と第三位の熊谷組との間はどのくらい開いておるかというと、熊谷組が四十億二百万円ですから、七百万円くらいしか開いてないんです。その次の西松建設、これが三十九億八千万円、これも二千万円そこそこしか開いておりません。一番下の前田建設、これが三十九億、これも八千万円しか開いておりません。ほとんど同じように入札されておるんです。みんな一流の専門家でありますから、あまり違わなく出るというのは、これは自然だと思うんです。大体同じようなところにそろって出ておりますが、最高の鹿島建設だけが飛び離れてぽんと高いところに出ております。そうして、これが合格しているわけです。安いのが全部ペケなんです。第二工区でも同じなんです。第二工区のほうは、会社の予算額が二十五億四千四百万円。それに対しまして、佐藤工業が落としたのが二十四億五千万円、そうして第二位の大成建設が二十二億八千五百万円、こういうことになっておりまして、これの開きが一億六千五百万円。第三位の熊谷組が二十二億七千五百五十万円、これはほとんど開きはございません。第四位の奥村組は二十二億一千万円、これも六千万円しか開いておりません。最後の前田建設が二十億八千万円、これも一億幾らでありまして、やはり飛び離れて開きの大きいのは第一位と第二位の間、こういうことなんです。この一番上のところが合格して、あとは全部ペケなんです。そうして、さっき申しましたように、パーセントをたくさんわけもわからないものをつくって、そのうち抽せんでとったらちょうどここへぶつかった、これで、ああそうですが、そういう方法がありますかということで監督は済むのですか。今日もこんなことは許しませんよ。だから、県会も議決しているじゃないですか。県議会が満場一致で決議しているのですよ。こういうでたらめなのは白紙に戻せ、戻さなければ協力せぬと言っているじゃないですか。それでもあなたは、これは正しいんだということで、どこまでも正しい正しいでこれを押しつけて事を運ぶことができる、また運ぶという考えなんですか、どうですか。
  67. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 この電源開発株式会社は、文字どおりの株式会社になっております。そこで、通産省としてどこまでこういう問題に介入していいかということについて、私も就任以来非常に考えておるのであります。やはり株式会社のたてまえがある、しかし通産省に監督の責任もある、こういうことですね。どこにけじめを設けるか、あまりこれが行き過ぎましても、これは、この問題ではありませんけれども、全体的な監督の問題として、株式会社に対して常にいろいろなことを監督していくというのはどうか、こういうことでございまして、今回の事件が起こりましていろいろ私も耳にして、それで、この点について最も冷静に判断をしなければならない。一体全体問題の焦点がどこにあるのか、こういうことは、先ほど申し上げたとおりに、その落札の方法にある。しからば、いま落札の方法について、パーセンテージのくじを引いたのがおかしいじゃないか、しかも、それが高いパーセンテージのくじになったのはおかしい、こういう御疑問が起こります。私もそれは起きます。起きますが、それでは何でくじを引くのかと申しますと、これは、まことに遺憾ではございますが、こういう予算が出る、そうすると、その予算が、極秘に計算をするのでございますが、何としても何となく大体の数字が漏れる、そうするとそこに不正が起きる、そういう不正が起きてはいけないから、そこでみんなの前で公然と、何%のところを基準にするかというその抽せんをとるというのでございます。その抽せんをとるということそのことは、そういう不正を防ぐ方法として、これは私はやむを得ないんじゃないかと思うのですが、その出た結果が不幸にして今回のようなことでございまして、この点はまことに遺憾に思うのであります。しからば、そういうことを感じておりながら、おまえはこれを放置するのか、こういうことでございます。しかし、私はこれを放置する意思はございません。国会においてこういうふうに論議がかわされておるということでありますれば、国権の最高機関ともいうべき国会でこういう論議がされておるということは、当然この会社のほうにも、また落札をした者のほうにも反映してしかるべきではないかと思うのです。ただ、ここで問題は、それじゃ、そんなことであれば入札し直したらいいじゃないか、これは、また一つ問題があろうと思うのです。一そう混乱を来たすと思いますので、私としては、ここで行なわれておるこういう論議が、これが会社にも、また請け負う者に対しても反映いたしまして、おのずから問題が解決されるのが一番適切ではないか、かように存じておる次第でございます。
  68. 高田富之

    高田委員 これは、単なる民間会社じゃありませんから、そういうふうにいいかげんなことでは済まされないと思うのです。それで、いまそういう方法があるなんとおっしゃいますけれども、同じ事業でありましても、第一工区と第二工区だけはこの方法でやっておりますけれども、関連する事業の請負は普通の競争入札をやらせて、一番安いところにみんなやっているじゃないですか。同じ会社が同じ時期にやる付帯工事は全部違った方法でやらせて、これだけがこういう特殊な方法なんですよ。  建設大臣にお伺いしますが、こういうふうな、いま通産大臣が説明したような方法が合理的な方法だということなら、あなたのほうでも採用しているのでしょう。どういうことなんですか。
  69. 小山長規

    ○小山国務大臣 私のほうの入札の方法は、事業量に応じまして、そして事業者の資産の内容、機械、技術陣の充実の度合い、こういうものでいろいろな総合点数をつくりまして、これをABCDその他に分けまして、そして、その有資格者の中から十人以上ということで指名をいたしまして、その指名された者が競争入札して、一番安い者に入る、こういうことでございます。
  70. 高田富之

    高田委員 いまのが全く正しいし、常識的だと思うのです。いまのならだれにもわかりますよ。しかし、いまあなたが御説明になったのは、御自分でもわからぬのですね。それが公正な入札方法であるとあなたは断言できますか、どうですか。
  71. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私は、正直にそのまま報告されたことを聞いて、そういうものか、ほかにもそういう例もあるという。それで、先ほども申し上げたように、どの範囲介入していっていいのかどうかというようなことから、——これは、実際おっしゃるように、私もふしぎに思うのです。思うのですが、しかし、それを下手に、これはおかしいから入札し直せいと言って、そして一そう物事が紛糾してもどうか、こう思うので、この方法はほんとうに正しいのか、前例があるのかというようなことで詰めていきますと、事務当局は、一応私が納得できるようなそういう報告をするものですから、これを紛糾させるのはどうかと思って、——しかし、先ほども申しましたように、こういうようないろいろ話が出ておるのでありますから、こういうことが当然会社にもまた請負者にも反映をして、おのずからこれは反省すべき問題があるならするでございましょうし、考えるべき点があれば考えるのじゃないかというように私は判断をしておるのでありますが、実はきょうそういうお知らせがなかったものですから、事務当局のほうがその落札の方法その他を御説明する上において適切だと思うのであります。私一応聞いた範囲では、これはこういうものか、こういうふうに判断したのでありますが、いま公益事業局長も呼んでおりますから、何でございましたら、ちょっとお待ち願って……。
  72. 高田富之

    高田委員 これは、いま聞いておりましても、大臣自身が納得しておらぬですよ。言われたことをただオウム返しに言っているだけで、御自分自身が、これは公正でいいやり方の一つなんだという確信をちっとも持っていない。持っていやしませんよ。だから、これは、全然監督の役をしておらぬと思うのです。私はしろうとだけれども、聞いて、こんなばかげた方法はないと思うのです。こんなでたらめがあるものですか。だれが考えてもインチキですよ。だから、問題になっている。問題になっているのはあたりまえですよ。地元の村会でこれは議決されて、高いところに入れたのは政治的圧力によるものであるから承服できない、その工事に協力せぬ、こういう決議をした。県会へ持っていったら、県会は満場一致で、そういうやり方には協力せぬと決議しちゃった。世界銀行へ行って、どうですか。世界銀行はふしぎに思っちゃって、金を貸さないと言いだした。世界銀行との交渉はどうなっているのですか、わかりますか。
  73. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 世界銀行のほうは、大堀副総裁が参りまして、いろいろ折衝の結果、機械類等に融資を受ける、こういうことになったように報告を受けております。
  74. 高田富之

    高田委員 そういうわけなんです。だから、その工事については世界銀行からポイされちゃっている。聞くところによりますと、それは、一カ月ぐらいの余裕を置いて、それまでにということになったらしいのですが、しかし、いま現地がそういう状況ですから、とても着工どころの騒ぎじゃありません。着工なんてできっこないです。そこで、いまここには関係者がおらないでわからないということでありますから……。
  75. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いま参りました。
  76. 青木正

    青木委員長 議事進行に関する加藤清二君の発言を許します。加藤清二君。
  77. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ただいま承っておりますと、国民の膏血が六億有余もむだに使われるおそれのある重大事件でございます。にもかかわりませず、答弁の通産大臣は、よくわからない、自分もふしぎに思う、こういう御発言でございまして、これでは結論に到達しないと思います。したがって、通産大臣もお気の毒ですから、よく御調査の上、午後劈頭に、この問題を正確に把握なさってからお答えいただく、このほうがスムーズにいくと存じまするので、委員長におかれまして御判断の上、スムーズに進行するよう御決定をわずらわしたいと思うわけでございます。
  78. 高田富之

    高田委員 委員長、けっこうです。
  79. 青木正

    青木委員長 これにて高田富之君の質疑は一応終了いたしました。  午後は二時三十分より再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後一時十六分休憩      ————◇—————    午後二時四十分開議
  80. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十年度総予算について審査を進めます。  この際、午前の会議で保留になりました電源開発株式会社の落札の問題について、通産大臣の説明を求めることにいたします。通商産業大臣櫻内義雄君。
  81. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 午前中の御質問に対するお答えの中で、入札の方法について、私の説明が明快を欠いたようでございますので、重ねて申し上げたいと思います。  見積もり制限額の出し方のところが問題であったかと思うのであります。今回の場合、会社の予算額が、先ほどお話のあったように、四十四億九千万円でございます。この会社の予算額に対しまして、工事の合理化、本店管理費の合理化、あるいは利益の切り詰め等によって可能と見られる七ないし九%を下回る額を見積もり制限額といたすのでございます。この七ないし九%、これで、先ほど私がお話ししたように、五つのくじでどの程度の下回る額にするかということをきめた、こういうわけであります。今回の場合は八・五という抽せんが当たりまして、その八五をこの四十四億九千万円にかけました四十一億八百三十五万というものがロア・リミットと、こういうことになりました、このロア・リミットの中に入ったのが鹿島建設であり、佐藤工業であった、こういうわけでございまして、私は、この入札の方法を聞きまして、これについて異議をはさまなかった。そういう方法でやったのかと了解をしたと、こういうことでございます。
  82. 高田富之

    高田委員 先ほどよりもややはっきりしてきておりますけれども、それでも、これはなかなか普通の常識人を納得せしめるには足らないと思うのです。なぜならば、私全然こういうことはしろうとですけれども、そう言われましても、合理的なパーセントが九%というふうに引かれれば、九%から下のものは、それよりも安過ぎるものは切るということなら理屈はわかると思うのです。けれども、九%から七%まで四つもこしらえて、抽せんでそのうちのどれかをとるなんということは、およそナンセンスだと思います。したがって、これは問題になりませんし、また常識論としまして、九%にしても、ちょっと辛いという感じがするのです。と申しますのは、やはりある程度の利潤を犠牲にしてもやろうとか、あるいは特別に労務の調達なり資材の調達にくふうをして安くして、奉仕して何とかやっていこうということになれば、ある程度の勉強価格というものはあるのであって、またそれが入札をさせるいいところなんであって、その中の安いところをとって初めて国民に対する負担をできるだけ軽くしようという精神がそこに生きてくる。これは、全然民間会社じゃないわけですから、こういうふうな国策会社でもってそういうやり方をやられました場合に、高くきまれば、結局これは国民負担になるわけなのです。電力料金などにもはね返ってくるわけなのです。国民負担にも関係するわけです。ですから、ただいまの御説明でも、とうてい私どもは納得ができません。一応そういう説明は承っておきますが、納得はできない。  そこで、続いてお尋ねいたしますが、この電源開発会社の資本金は幾らで、現在政府は幾ら出資をしているか。それから、政府資金が事業資金としてどれだけ投融資されておるか、参考までにお聞きしたいと思います。
  83. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 たいへん恐縮でございますが、公益事業局長が参っておりますので、詳細を申し上げさせます。
  84. 宮本惇

    ○宮本政府委員 お答えを申し上げます。  本日現在の電源開発株式会社の資本金は、総額六百十一億でございまして、そのうち六百十億が政府出資でございまして、一億が民間ということでございます。  それから、毎年どのくらいの金がつぎ込まれるかということでございますが、三十九年度は、内部資金を含めまして、総額四百二十八億くらいだと思っております。
  85. 高田富之

    高田委員 ただいまお伺いしますと、これはもう全く政府資金そのものでございます。六百十億も出して、一億しかほかから出ていない。ですから、全額政府出資と同じである。しかも、四百何十億の金が年間投融資されておる。こういう会社に対しまして、いま事業の主たるものは電源開発等の建設事業なんですから、こういう事業に対する監督は万全を期さなければならぬのは、これは当然だと思うのですよ。ですから、そういう入札方法などについても、先ほどお伺いしましたように、建設省ではちゃんと法規にのっとって、また建設大臣の御説明のとおり、常識的なことをちゃんとやっておる。しかも、これは法律にのっとってやっておられるはずです。それを、こういうふうな電源開発会社のようにほとんど全額国の費用でやり、資本金も全額国が出しておるというようなものに対しまして、政府関係機関と同様に、財政法なりあるいは予決令なりの方法に準じてこういう入札等についても規制を加え、監督をしていくというのが当然ではないかと思うのですが、どうしてそういうことが行なわれていないのですか。
  86. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 見積もり制限額のほうも、これは会計法規によっておるということを先ほど申し上げることを忘れましたが、法二十九条六にのっとって見積もり制限額の設定をしておる。これは念のために申し上げておきます。  それから、この監督につきましては、これは最初から私が御答弁に立っておるとおり、私にこの監督の責任があるので、こうやっていろいろ申し上げておるのでございます。ただ、私自身としてはどの程度までの監督が最も適切であるか、こういうことについては、従来の慣例に従いましてやっておるのでございます。一々の工事まで介入していくのがいいかどうかという点について判断に苦しみますので、従来の慣例からいたしまして、そういうこまかく見ていく方法はとっておりませんので、そういう従来のしきたりの上で私は監督をしてまいった。しかし、こういうふうにいろいろ問題が起こりまして、それでは不十分である、また、私としてもいろいろお話を聞いてみますと、考えなければならない点があろうかと思いますので、これから十分この監督の責任について私としては考えていきたい、かように思います。
  87. 高田富之

    高田委員 そうしますと、法にのっとってやったというようなお話ですが、これは、やはり財政法なり予決令なり、政府関係機関がやっておると同様に法にのっとってやっておるわけですか、大蔵大臣。ただいま条文で二十九条とかなんとかおっしゃいましたが、最初にいまの法規によってやっておるかどうか、それから二十九条のどこをやったのですか。
  88. 田中角榮

    田中国務大臣 政府関係機関は、大体会計法に基づいて予算などをやっております。会計法の二十九条の六と予算決算及び会計令の八十八条によりまして、最低価格以外の入札の方法を規定いたしております。
  89. 高田富之

    高田委員 それが、建設省のほうの説明を聞きますと、そういう方法をとっていないわけです。さっきのような特殊な方法をとっておりません。電源開発会社だけがそういう方法をとっているので非常におかしいということになるわけなんですが、この会計法にのっとってやるとしましても、問題にならないような極端な安値入札を排除していくという趣旨に解すれば、きわめて常識的であってわかります。わかりますが、先ほどの通産大臣の御説明になったようなやり方では、いまの御説明の二十九条ですか、二十九条にのっとってやればこうなるのだということに私はならないのだと思うのですが、どうですか。
  90. 田中角榮

    田中国務大臣 電源開発株式会社は、会計法にのっとって行なうという法律的な制約はありません。ありませんが、先ほど申し上げたとおり、政府関係機関であるというものは、大体会計法にのっとってやっております。この問題については、世銀借款の問題がございまして、世銀側でも、こういう入札の方法に対して、なぜ最低入札をしなかったのだという照会がございました。私から、これらの問題を調べまして、日本にはこういう制度がありまして、一時は、いまから十年前くらいだと思いますが、ロア・リミットの制度を法律化そうということでありまして、いろいろ問題があったことであります。現在政府関係機関等で行なっておりますものは、こういう制度で行なっておりまして、法律的には間違いはございませんということで、事情を私が先方側に述べまして、世銀側もこの事情は了承したという経過がございます。
  91. 高田富之

    高田委員 いずれにしましても、いまの大蔵大臣お話によりますと、世銀のほうでも疑いを持った、それは事実なんですね。疑いを持ったので、それに対する釈明のために総裁なり大蔵大臣なりが当たってお話をした結果、何らかの話し合いがついたといういまのお話でしたが、その話し合いのついた話し合いの内容は、どういうのですか。
  92. 田中角榮

    田中国務大臣 これは、電源開発会社及び通産省の要請だったと思いますが、私がウッズ世銀総裁に電報を打ったりいろいろ説明いたしました。その結果、制度上の問題として間違いはないということがわかりましたが、世銀の借款については、ただいま御指摘になりました工事は、世銀借款の金額の中から除くということで、世銀借款はそのまま承認になったわけであります。
  93. 高田富之

    高田委員 ですから、第一工区、第二工区のこの事業は除かれちゃったのでしょう。世銀の借款の中から除かれてしまった。そうして、残余の部分について若干の借款ができるのかどうかわからないのですが、それについては何かまた条件がついておるのですか。そこのところをもうちょっと詳しく御説明願いたいのです。
  94. 田中角榮

    田中国務大臣 世銀借款には、二千五百万ドルだと思いますが、数字に間違いがあればあとから訂正いたしますが、この金額の中でどういう工事をやるのかということで、こまかい内訳を世銀側と交渉するわけであります。世銀側も、その過程において、いまの入札の問題が起きまして、最低入札ではないということで問題がありましたが、この間の事情は適法であるということで、説明は向こうは了解したわけであります。しかし、二千五百万ドルの金は、そのまま電源開発に貸し付けることは問題なく貸し付けたわけでありますが、この問題になった入札工事の分だけは、世銀借款の内訳から落とす。落とした場合どうするかというと、他に電源開発の資金がございます。財政資金をつけたり、いろんなことがございますので、その資金の中からやるのであって、電源開発の内訳の中からは除いたということでございます。
  95. 高田富之

    高田委員 そうすると、内容的には結局除かれた、こういうことになって、これは国際信用の上から言っても相当重大な問題だと思うのです。それから、聞くところによりますと、その最終的な話し合いによるあれにつきましても、何か期限が付されて、いつまでに着工しなければというお話を耳にするのですが、それはどういうことですか。
  96. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 御質問のとおりに、期限はついております。
  97. 高田富之

    高田委員 それは、どういう期限がついておるのですか。どういうふうについておるのですか。いついつまでに着工することとかいうことになっておるのですか。
  98. 宮本惇

    ○宮本政府委員 お答え申し上げます。  世銀の九十億という金は、大体初年度、二年度、三年度、四年度まで四カ年にわたって、九十億が十二億あるいは二十四億というふうに、ちょっと数字を忘れましたけれども、毎年借りるということになっております。したがいまして、大体四十三年の十月ごろまでに金が借りられる。それから先は二十五年で四年間の据え置きで二十一年の均等償還、こういうことになっております。
  99. 高田富之

    高田委員 これは、電発の総裁が最近福井の県庁をたずねまして副知事に会って、そうして、世銀のほうの借款の関係があるので、これに間に合わせなければならないから、今月中に水利権を解決してもらいたいのだ、こういうことを言っておるわけなんです。調印後二カ月以内ということになると、三月十四日か何かになると思うのですが、いろいろな手統上ひまがかかるので、今月中にそれがほしいのだというような話をしておるのですね。ですから、そこら辺に期限があるんじゃないか、こういうことでお尋ねをしておるのです。
  100. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 電源開発の総裁が福井県に行かれたという話は、私は聞いておりません。しかし、いまの二カ月くらいの一応の期限があるというような話は私も耳にしたことがございますが、詳しい契約書を見ておりませんから、できますれば担当者からお聞きを願いたいと思います。
  101. 高田富之

    高田委員 大蔵大臣はおわかりになりませんか。
  102. 田中角榮

    田中国務大臣 期限は特別なものではございません。これは、私が三十八年にIMFの総会に出席をしました帰途、一億ドルの世銀借款のワクをきめてきたわけであります。この内容については、帰国後適当なものを考えましょう。その中には電源開発が一つあるでしょう。それから水資源公団も考えたわけですが、その後水資源公団は除外をして、東名道路に金をつけるというようなことで内訳は大体きまったはずであります。その中に九頭龍川の一件があったわけであります。この一億ドルというのは、こちらの事業計画の進捗状況を見て世銀が金を出すというシステムになっておりますから、この入札の問題が世銀借款から除外されておりますから、世銀は電源開発の仕事の計画を承認し、その工事の進捗状況を承認しながら金を出すということでありますから、貸し出しに対する期限というようなものは、大きな問題ではないと思います。
  103. 高田富之

    高田委員 そうしますと、いまの大蔵大臣の御説明がもし正しいとすれば、電発総裁は早く水利権がとりたいために世銀云々というようなことばを利用してやっておるのじゃないか、こういうことになるわけですが、事実今月一ぱいにぜひ水利権がほしいのだということを、たいへん強く県知事に要請しておるわけなんです。ところが、地元のほうでは、こういう納得のできない入札方法をとり、その他補償の問題等もそうなんですが、あらゆる点で解決しないうちに工事のほうの請負をきめたり進めようとしているということは、約束違反であるというようなことから、県会の議決をもってこれは反対しているわけなんです。現在どうにもならぬという段階にある。ですから、その条件が云々、その期日が云々ということは、単なる口実、方便に使っているのかどうかということについては、総裁なりあるいは副総裁なりを呼んで事情をこまかく聞かなければわからぬと思うのですが、政府のほうでは、そういうことはない、あり得ない、こういうわけですね。
  104. 田中角榮

    田中国務大臣 こちらが借り側でございまして、借り側の準備ができ次第金を出すというシステムになっておりますから、あなたがいま御指摘になったように、条件そのものは日本側で条件をそろえるということでありますので、期限を付されておるということはたいした問題ではないとお答えしたわけであります。いまの問題は、これは私の想像でありますが、三十九年度分が一億ドルでございますが、去年の九月のIMFの東京総会を契機にしまして、四十年度に一億五千万ドルの新規借款のワクを決定いたしておるわけであります。でありますから、利子平衡税問題等もありまして、世銀からはできるだけ早く借りたいという考え方もありますので、一億五千万ドルの内訳もそろそろ出さなければならない段階でありますので、その前年度分の一億はできるだけ早く消化したいということは、世銀借款を契約しておる私たちとしては、当然そう考えておるわけであります。世銀借款の九頭龍川関係の事業認証は行なわれたわけでありますので、電発当局としては、できるだけ早く地元をまとめて、事業の工程をつくって、その工程に合うように二千五百万ドルの金を引き出すということは考えなければいかないことであります。
  105. 青木正

    青木委員長 高田君に申し上げますが、だいぶ時間を超過しておりますから、どうぞ結論を…。
  106. 高田富之

    高田委員 承知しました。  先ほどの御答弁の中で、大蔵大臣は、この入札関係については法律そのものを適用しているというわけではないんだ、その精神なり何なりを準用しているという程度の御答弁。通産大臣のほうは、はっきり法を適用して、何条のこれによってというような御答弁。ちょっと食い違いがあるように思うのですが、そこをもう一ぺん明確にしてください。
  107. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 明白にしておきます。この会計法規において、この方法をとることができる、こういう意味合いでございます。もし先ほど法規にのっとっておる、こういうふうに申しておれば、それは言い過ぎでございます。会計法規においてこの方法をとることができる、こういうことでございます。
  108. 高田富之

    高田委員 それでは、時間の関係もありますから、結論的に御質問を申し上げますが、午前中もちょっと申し上げましたように、まことに不可解な最高値による入札、しかも、この同じ九頭龍川の工事でありましても、この第一工区と第二工区の仕事以外の道路の建設工事その他の土木事業の請負は、すべて普通の最低入札でやらしておるわけなんです。しかも最低で入札したものに、さらにまけろまけろと言ってまけさしておるというのが実情なんです。そういうふうなことをやっておきながら、この二つの工区の事業だけがこういう不可解な方法で最高値、しかも飛び離れた最高値の二人だけが入って、常識的にそろって入れておるものは全部ポイされてしまっている。これは、地元が納得しないのは当然だと思います。ですから、県会も議決をもって反対しておるし、私の得た情報によりますれば、あわててこの二、三日総裁が県庁へ行って、何とか早く解決したいというので頭を下げておるようでありますけれども、全部け飛ばされておる。問題にならないではねのけられておるというのが現在の状況でございます。そういうようなわけでありますので、この問題につきましては、さっき申しましたように、地元農民も、非常に不誠意なやり方をされた、特に補償問題も何も全然片づきもしないで、どんどん工事のほうばっかり、しかも不正な入札をさしてやっておるということに対して憤慨しておるわけです。埋没するところの補償の問題、あるいはそのために生活権を奪われるような周囲の補償の問題、さらに下流の農民にとりましても、そういう不正なやり方で、経験もないような者がやって、そして洪水でも起こったらどうなるかという不安までが重なりまして、たいへんな問題になっておるわけです。ですから、これは私ほんとうにしろうとですが、常識的に考えて許すべきことじゃないと思うのです。ですから、どうしてもこれは御破算にする、一ぺん白紙に戻す。そして、これは早く建設のできるように公正な方法でやり直す以外に私は解決の道はないと思う。それをやってもらえばすべては解決する。もしそういう決断がつかぬということになれば、これは、もっと徹底的に問題を追及していかなければなりません。再びこういうことのないように、禍根を断つための追及を続けなければならぬことになると私は思う。ですから、こういうことはひとつ白紙に還元すべしということを私は申し上げたいのですが、これについてのお考えを承りたい。
  109. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほど申し上げたように、私としては、入札方法については了解をしたのであります。おっしゃるような、常識的にいろいろな御批判があろうかと思いますが、しかし、私として考えましたのは、これをかりにおっしゃるようにやり直しをしてどういうことになるのか、これも想像されることをずっと検討していきますと、なかなか非常に困難があるのでございまして、やり直せばいいものだ、こういうふうに言い切れないと思うのであります。したがって、現在私の立場としては、入札方法はこれはやむを得ない。そして、こういうような批判、論議が行なわれておるのでありますから、これを会社の首脳部あるいは工事をやる方がよく頭に置いて善処すべきではないか、こういうふうに思っております。
  110. 高田富之

    高田委員 いずれにしましても、国家国民の血税を使うのに、だれが考えても不当なる使い方なんです。飛び離れた最高のものに工事を請け負わせるなんという方法はない。それから、ただいまの説明では、入札の方法が納得できたというけれども、だれも納得しない、こういう入札方法というものは。パーセンテージを幾つもこしらえて、くじ引きをして、その中へちょうど最高のものだけが入ってきた。何ですか、そんなばかげたこと。そういうことは通用しません。ですから、もしどうしても白紙に返すだけの決断がつかなければ、ここへ総裁、副総裁、それから前通産大臣の福田さん、全部証人として出ていただいて、国民全部にわかるように、国民全部が納得するような最後まで説明を願いたい、こう思います。委員長、それを取り計らってください。いいですね。
  111. 青木正

    青木委員長 これは理事会で相談します。
  112. 高田富之

    高田委員 それではただいまの証人喚問を要求いたしますから……。
  113. 青木正

    青木委員長 いまの問題を理事会で相談いたします。
  114. 高田富之

    高田委員 そうすると、ただいまの私の証人喚問は、理事会において相談をする、こういうことでございますね。
  115. 青木正

    青木委員長 そのとおりです。
  116. 高田富之

    高田委員 じゃ、以上をもって終わります。
  117. 青木正

    青木委員長 次に野原覺君。
  118. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、主としてILO八十七号条約の批准とこれに関連するところの諸問題、並びに文教政策の若干の問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。  そこで、まず第一にILOの問題から入ってまいりたいと思いますが、政府も御承知のように、過日、一月の十二日からであったと思いますが、二十六日までジュネーブのほうから、ILOから対日実情調査調停団が日本に来られまして、日本の労使関係の各般について調査調停がなされたようでございます。そこで、政府は、このドライヤー委員会から示されました提案に対して誠意をもって受諾されたやに私ども承るのでございますが、問題は、このドライヤー委員会の示された提案をどのように理解をするのか、どのようにしてこの提案の趣旨を実現しようと考えておられるのか、私はこれが重大であろうかと思うのであります。総理の御所信のほどを承りたいと思うのであります。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 詳しくは労働大臣からお聞き取りをいただきたいと思いますが、私は、ドライヤー委員会の話し合い、これは、まず第一にILO条約の批准の中期完了ということと、並びに労使双方がより話し合いをして、そうして相互に不信感をなくしようと、こういう点にあったと思います。しかも、第二点については、その具体的方法などは、いろいろこれから後に残された問題だ、かように考えておりますが、話し合いをして双方が理解を深めるということ、これは望ましいことだと、かような意味合いで賛成をしたのでございます。  なお、労働大臣から補足説明をさせます。
  120. 野原覺

    ○野原(覺)委員 詳しくは労働大臣ということでありますから、労働大臣からも承りたいと思います。
  121. 石田博英

    石田国務大臣 ドライヤー調査調停委員会から示されました提案は、まず第一は、八十七号条約の批准を急ぐべきである。そうして、それについては直接関係のある公労法、地公労法の改正というところにまず注意を向けるべきであるというのが第一点であります。  それから第二点は、このたび政府から提出せられました国内関係法は、提訴者及びこの委員会の審問の経過について、重要な部門についてこれを取り入れてあるということをノートする、こういう点であります。  第三点は、双方に実在する不信感を除去するために、政府、使用者及び労働者の代表者たちが定期的に共通の関心事について意見の交換を行なうべきである、そうして、その意見の交換の結果得た結論によって進歩のあとが見られたら、これを国会に報告をしろということが第三点であります。  第四点は、本年六月に開催せられまするILO総会に、政府の代表である労働大臣と労働者側の代表である事務局長とが来て、この提案受諾後の経過について報告をするようにと、こういう点でございまして、その点に基づきまして、政府としてはまず政府の主導権で行なうべき不信感を除去するための意見の交換を行なうために、官房長官より総評岩井事務局長に対して、総理、官房長官及び私、そして総評側の適当な人々との会談の申し入れを行ないました。それに対して総評側は、本日、先ほど二時でありますが、その前に五点ばかりあげて、その五点を中心とした準備会談、予備会談を開くべきである、こういうお申し入れを受けました。政府としては、いまそのお申し入れを検討中でございます。
  122. 野原覺

    ○野原(覺)委員 先ほど総理から、ドライヤー提案の趣旨を尊重して、八十七号条約の批准並びに労使間に横たわる相互信頼の確立についても努力をしてまいりたい、そうしてILOの精神に沿うように努力をしたい、こういう答弁であったように私は思うのであります。  そこでお尋ねをいたしたいことは、相互信頼の問題であります。私もドライヤーの提案を読んでみましたが、こう書いてある。現存する相互信頼の欠如がそれぞれの関係当事者にどの程度責任があるかについては、現在の段階では見解を表明しない。本委員会の当面の関心事は、将来に向かってこのような信頼をつくり出すためにとらるべき措置である。その次に、双方の信頼を実現するためには、従来の態度の重要な変化が必要である。さらに続いて、政府の最高レベルが必ずそのイニシアをとらなければならない。私は、こういう重要なところだけ飛び飛びに読んだのでございますが、先ほどの総理の所信でいいますと、この提案の趣旨を誠意をもって受諾した、この提案の趣旨の実現に努力をするということでございますから、私は、それならば政府は、今日まで日本の労働組合との間に大きな信頼感が薄れておる、信頼が欠如しておる、このことについてはどのような反省を持っておられるのか。これは、ドライヤーから指摘をされたんだ。相互信頼が欠如しておる。そうして、そのことを政府がお認めになって受けられたのであります。一体どういう御反省を政府としてはお持ちでございましょうか。これは総理に承りたい。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 必ずしもドライヤーの指摘したような認識どおりのもの、かようには私は思わない。ずいぶんことばが激しいようであります。しかしながら、私ども考えたときに、労使双方にもう少し意思の疎通がはかられていいんじゃないか。何だか労使双方はいつも対立的な関係にあるように、何かといえば会合がスムーズにいかない。これは、結局ドライヤーが指摘しておるように、やはり相互不信だろう。そういう点にあるだろう。もちろん政府としては、こういうことを他から指摘されるまでもなく、われわれがこれを解消していかなければならない、かように思っておりまして、官房長官がそういう意味でいろいろとあっせんをしておるというのが、今日の実情でございます。
  124. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、官房長官のあっせんを聞いているのではありません。相互信頼の欠如について指摘をされておる、だから、政府としては何か反省するところがないかということをお尋ねしておるのであります。あなたのほうは受諾をされたんですからね、反省するところがあるでしょう、何にもございませんか。労働大臣、いかがです。
  125. 石田博英

    石田国務大臣 提案を受諾したということは、これをそのとおりだと、一字一句に至るまで私ども承知したというわけではないのでありまして、提案の中に盛られております精神をわれわれがくみ取って、それを尊重するということでございます。  それからもう一つは、相互信頼というものは、確かに私も欠けておる面が非常にあると思いますが、いま総理お話しのように、どこに欠けておるかと言えば、やはりその欠けておることを、欠けてきたところの責任をお互いに過去に振り返って追及し合うよりは、前に進んで信頼感を獲得するような努力をすることが必要なんだ。われわれとしては、その努力をするのは、話し合いの場をできるだけ広めていきたい、そして、共通の問題について意見の交換をするというその勧告の趣旨を生かしていきたい、これが反省といえば反省でございます。
  126. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、労働大臣に一字一句について尋ねておるのじゃございません。問題は相互信頼だ。相互信頼というのは、一字一句じゃないのですよ。八十七号条約を早期に批准しなさい、しかしながら、同時に、相互信頼についても考えなさい、こうきておるのでしょう。この二本の柱が提案の趣旨でしょう。だから、私は相互信頼について尋ねておるのです。あなたは、いま、相互信頼については前向きに進めるということでありますが、これは、私も異存はありません。これはけっこうです。大いに前向きに、相互信頼の樹立のために私どもは努力をしていかなければならぬと思う。だが、その相互信頼を樹立するためにも、今日までのわれわれのやってきたこと、労使双方のやってきたことを、労使双方とも謙虚に反省しなければならぬと思う。その反省を聞いておるわけです。だから、その反省の点について、十数日問ドライヤー委員会が全国を調査された。その結論がどういう文言で出ておるかというと、双方の信頼を実現するためには、従来の態度の重要な変化が必要である、こう彼は断言をしたわけです。だから、政府が今日までとってきた従来の態度について、どういう点が重要な変化として要請をされておるのか、そのことをどう一体政府は理解をするか、承りたいと思う。
  127. 石田博英

    石田国務大臣 相互信頼感の欠除というものの裏返しは、やはり対立の存在であろう、こう思うのであります。その対立の存在は、これは相互的なものでありまして、その片一方がこうやったからこうするのだ、こうするからこうやるのだということをお互いに言い合っておったのでは、これは前進はございません。そこで、前向きにこれを解決する道は、やはり私は、お互いが共通の関心事について意見交換をするという機会を見出していく。そうして、この信頼感の回復ということは、長い時間かかって、そういう指摘を受けるような事態を、これは私は必ずしも全部ないとは申しません、それを認めているのでありますが、それを解決する道は、やはり時間をかけて、お互いに反省をしながらいくことだ。政府としてやるべきことは、いま御指摘を受けましたように、共通の関心事について意見交換の場を求めていくということだろうと思っております。
  128. 野原覺

    ○野原(覺)委員 労働大臣は、私の質問に答えてもらいたいのです。私は前向きにやることには異議はないけれども政府としては、何も反省するところがないのかと聞いておるのです。ないならないでよろしい。あるのか、ないのか、今日までの労働政策について。それを私は尋ねておるのです。
  129. 石田博英

    石田国務大臣 それは、先ほどから申しましたように、共通の関心事について意見の交換をすることが少なかったのではないか。したがって、それを共通の関心事について意見交換の場を求めていく、そういうことを考えているわけであります。
  130. 野原覺

    ○野原(覺)委員 意見の交換を求めることが少なかった、このことは、これは反省の一つだ、こういうことのようであります。  そこで、私は、次にお伺いいたしますが、この結社の自由と団結権の擁護につきましては、憲法の二十一条、二十八条に規定をされておる。ところが、公労法の四条三項と地公労法の五条三項という規定がございますために、この団結権が今日まで侵害をされてきたわけですね。このために労働組合、特に官公労働者は泣かされてきたわけです。このことについては、これは総理大臣でなくてけっこうです。あなたは、労働行政のベテランといわれるほどの方でございますから、労働大臣にお伺いいたしますが、このことについてはどう反省いたしますか。
  131. 石田博英

    石田国務大臣 公労法、地公労法の四条三項、五条三項というものは、その法律の制定せられました時限においては、それ相応の理由と効果があったものと思っておりますけれども、これが八十七号条約と違反することは、御指摘のとおりであります。わが国においては、民間の労使関係については八十七号条約の規定するとおりになっておりますが、そのところが現在まで八十七号条約に背馳いたしておりますので、したがって、今度の批准と同時にこれを改正する原案を提出いたしておる次第であります。
  132. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、記録を調べてみましから、昭和三十一年に公労法の改正審議会を持たれている。この公労法の改正審議会で公労法四条三項の削除がきまっておるんです。ところが、昭和三十一年の公労法の改正審議会の答申を政府は無視してしまっておる。この点については、あなたは反省するところがございませんか。
  133. 石田博英

    石田国務大臣 そのとき、立法の時限においては、私はこれはそれなりの価値と効果を持っておったと思います。しかし、現在の時点におきましては、この法律はやはり八十七号条約の要求するとおり改正するのが至当だと思っております。
  134. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理がいま手洗いに行かれたようでございますから、重ねて労働大臣にお伺いいたしますが、私は、端的にこういう点は政府も反省しなければならぬと思うのです。そういう反省点が薄らいでいるところに、これからあなた方が前向きに解決するといっても、熱情が出てこないわけです。ほんとうの信頼感が生まれてこないのではないかと私は思う。だから、私はくどくこの問題はお聞きしてまいりたいと思いますが、国労と全逓が提訴をいたしましたのが、国労の場合は一九五八年の四月に公労法四条三項についてILOに提訴いたしておる。全逓もその翌年に提訴をいたしております。それから七年の間、この問題を解決できないでいる。その間勧告を受けること十五回。そうして、そのつど日本の政府は、労働大臣と政務次官を代表としてジュネーヴに送って、早朝批准を約束すること十三回。石田労働大臣も何回か出ておる。しかも、それでもできないというので、、実情調査調停委員会が日本にやってきた。ILO四十五年の歴史で、結社の自由権侵害として調査調停を受けたのは日本が初めてだということになっておる。一体、この点については政府はどう反省をするのか、私は承っておきたいと思う。
  135. 石田博英

    石田国務大臣 昭和三十三年にいま御発言のような提訴がございまして、その後、日本政府も労働問題懇談会等の議を径まして、八十七号批准の方針を決定いたしました。早朝批准を目ざしたのでありますけれども、御承知のいろいろな事情のために今日まで延引をいたしましたことはきわめて遺憾なことと存じております。したがって、日本の国内において処理すべきことを国際機関の活動をわずらわしたことも同様遺憾なことと存じております。  ただ、ILOが団結の自由について調査調停委員会の発動をいたしましたのは、なるほど今回が初めてである。これは、わが国政府が受諾したから活動したのでありますが、そういう活動をしようとして当該国から拒否された、たとえばソビエトのような例がございます。わが国は国連尊重のたてまえから受諾をいたしました。これは、ILOの精神を尊重するというたてまえに発したものでありますが、しかし、先ほども申しましたとおり、時間が延びた、また国内で処理すべきことについて国際機関の活動をわずらわしたことは遺憾だと思っております。
  136. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理にお尋ねしますが、八十七号条約の批准を初めて閣議できめたのは一九六〇年であります。今日まで足かけ六年間、いまだに批准ができないのです。あなたがいま中座をされておる間に、労働大臣はいろいろな事情で批准ができなかった、こう申しておる。私は、このいろいろな事情というのが問題だと思うのです。今日は、政府はドライヤーの提案を受諾をした。そうして、どうしてもこの国会では早期に批准しなければならぬという決意のように私どもは承っておる。そのように伺っておる。いろいろな事情で批准ができなかったと言うが、このいろいろな事情とは、総理、どういう事情だとあなたはお考えですか。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ILO八十七号の問題は、ただいま御指摘のように、もうすでに六年間をけみしております。私は、いろいろの議論があるが、今回はぜひとも批准をしたい、こういう意味でいま努力をしておるのでございます。おそらく社会党においても、今回の批准については御異論はないだろうと思います。ただいま議論を蒸し返して六年間を顧みるということよりも、今回はぜひ通す、こういうことで御協力を願いたいと思います。
  138. 野原覺

    ○野原(覺)委員 問題は、いろいろな事情であります。これは、総理からは御答弁がないのです。私は、八十七号条約というのは、これは、政府も御承知のように、団結権を保護する条約だ。そうなれば、問題は関係するところの国内法にあるわけです。四条三項は国内法であります。四条三項だけではないのです。だからして、八十七号条約を批准するということは、団結権を尊重します、団結権を擁護しますということをILOに対して誓う時点に今日日本は差しかかってきておるというわけです。だから、団結権を保護するという国内法にしないことには八十七号条約批准の意義がないのです。これは、総理もおわかり願えると思うのです。問題は国内法にかかってくるわけなんだ。だから、団結権を侵害するところの法規については、これを削除しなければならぬのです。そうして、団結権を保障するような法律に国内法は改正をしていかなければならぬ。そうしなければ八十七号批准の意味がないのですね。だから、この点で関係するところの国内法について、これは、自民党と社会党の間に、与野党の間に意見が対立したのでしょう。そのことが八十七号の批准をおくらしてきておるということを、私どもはこれは率直に認めないわけにはいかない。このことはおわかり願えると思うのであります。  そこで、問題は、先ほど私が出しましたように、日本の労働組合、官公労というのは、長い間泣かされてきたのですよ、四条三項がありましたために。たとえば委員長が首を切られる、首を切られた委員長が次の大会で選出される。ところが、これは職員でないからというので、政府は団体交渉を拒否する。どうにもならぬですね。全逓も、国鉄も、そのほかの組合も、こういううき目にあわされて泣かされてきておる。ところが、それは何かといえば、政府ががんとして応じないところの四条三項なんだ。そこで私がここでお聞きしたいことは、八十七号条約を批准するということは——これは労働大臣でけっこうです。八十七号条約を批准しなければならないという義務はいつ発生したと、労働大臣、あなたはお考えですか、いつの時点で。
  139. 石田博英

    石田国務大臣 政府が批准の方針を決定をいたしたときに発生をしたと存じております。
  140. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、一九六〇年ですね。
  141. 石田博英

    石田国務大臣 私も、正確な日時は覚えておりませんが、たしか昭和三十五年であったと思っております。四年か、五年であったと思っております。
  142. 野原覺

    ○野原(覺)委員 昭和三十五年は一九六〇年です。それはなかなか正確だと思います。そこで、労働大臣、あなたはたいへんな答弁をされたのですね。あなたは、たいへんな間違いを犯しておる。そういう認識を持っておるから、いつまでたったって前向きの前進ができませんよ、相互信頼は。これは、一九五一年にILOに日本が再加盟したときに、ILOでは、日本とドイツとイタリアを爼上にのせて、経過を見ると、審議をしております。そのときのILOの選考委員会審議状況の記録をずっと見てみますと、ILOの労使委員が、日本の労働運動の権利はどう保障されておるかという質問をしております。これに対して日本政府の代表が、憲法二十八条で保障されておりますと答えたのです。そこで及第したわけです。これは、日本は平和を侵した国、ILOの精神に違反した国だというので、日本とドイツとイタリアは、この審判を受けたわけであります。団結権を保障しないというので、世界の平和を侵した日独伊はこの審判を受けまして、再加盟を許すための条件としては、団結権の保障を厳格に行なうことだ。これを要求したのですよ、一九五一年に。ILOの記録を見てみなさい。これを要求して、日本政府の代表が憲法二十八条を持ち出した。そこで及第したのだ。これは、労働大臣、大きな間違いであって、日本の八十七号条約批准の義務、その時点というものはILOに再加盟をした一九五一年ですよ。そのときに八十七号を批准しなければならなかったのだ。すでに一九四八年、その三年前に八十七号条約は採択をされておるでしょう。三年おくれて日本が再加盟をしたのだ。一九四九年には九十八号条約、これが批准になっております。ところが一九五一年にはいってから、八十七号条約を放てきしておいた。その後労働運動が激しくなって、委員長が再選されますというと、これは首を切られた委員長だ、団交権拒否だということで、労働組合を泣かしてきたのです。官公労働者は、このために長い間泣かされてきたのですよ。政府が間違っておったために泣かされてきたんですよ。このことをあなた方が反省しないことには、残念ながら八十七号条約批准の問題は、総理、解決できませんよ、残念ながら。そのことの反省がない限りは。いかがですか。
  143. 石田博英

    石田国務大臣 五一年にそういう議論があったことは承知しております。御承知のようにILOで行なわれました決議、条約、これは、それぞれの国内における事情を勘案して各国とも批准をいたしておるのでございます。わが国の憲法においては、御指摘のとおり、基本的に憲法二十八条によって団結権が認められておるのでございますが、同時に十二条、十三条によって、公共の利益との関係が生じてくることは御承知のとおりであります。それに制限を受けることは御承知のとおりであります。そうして公労法、地公労法のその条項は、法制定のその時限におきましては、私は、公共の利益との関連において制定されたものと思っておるのでありますが、その後、いろいろの変化、進歩に伴いまして、現在の時限におきましては、公労法、地公労法を改正いたしましても、憲法第十二条、十三条の規定に相反しないという判断のもとに、この改正を提案しておる次第でございます。
  144. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたがそういうつまらない詭弁を弄しますと、いたずらに時間を食う。私は、持ち時間が減りますから残念ですけれども、反駁せざるを得ないですよ。日本政府代表は、憲法の十二条を持ち出していないじゃないですか。二十八条だけ出したのだ、見てみなさい、議事録を、そこで、ILOはよろしいということになったのだ。ILOの生命は団結権の保障でしょう。これは、労働大臣、あなたよく御承知のはずだ。十二条は出していない。しかも、あなたは、そのときの時点では公労法四条三項が必要であった、いまの時点では必要でなくなった、これをどう説明しますか。なぜそのときの時点で四条三項が必要だったのです。いまの時点ではどう必要がなくなったのです。そのときの時点も、いまの時点も、ILOに再加盟したとき以来、四条三項なんというものは必要なかったのですよ。だからして、ILOでは日本を信頼したわけなんだ。ドイツ、イタリアはもうすでに批准をしておる。日本も憲法二十八条を示して団結権の保障を約束する以上は、これは問題ないというので、四八年採択の八十七号は当然批准されるものと期待をして再加盟を許しておるのですよ。そういう詭弁は弄してもらいたくない。  総理大臣にお伺いをいたします。あなたは、もう倉石修正案というものを御存じだと思う。この倉石修正案というのは、これは、総理総理大臣でないときのことでございますけれども、もちろん自民党の総裁でないときの話ではありますけれども、自社両党の折衝によって、しかも、これは、総評と自民党の代表、労使の話し合いの所産として生まれてきたものだ。長い間、これは一年半の経過を経ておるわけです。話し合いに基づく相互信頼の所産であったのですね。総理がよくおっしゃる相互信頼、話し合い、その所産が倉石修正案であったのであります。ところが、この倉石修正案がとうとう四十六国会ではつぶれてしまった。そして、これはつぶれたものとして自民党は今日主張しております。私は、四十六国会のILO特別委員会の特別委員であります。だから、特別委員会にずっと出ておりましたが、そのとき、自民党のある人が質問に立って、倉石特別委員長にこう質問したのです。もしこの修正案が成立しない事態になったらどうなるのですか、特別委員長の所見を尋ねます。こう言ったのです。そうしたら倉石特別委員長は、こう答えたんですよ。政治的、道義的に政府並びに自民党は責任を負わなければなりません。総理、よろしいか。政治的、道義的に政府並びに自民党は責任を負わなければなりませんと、特別委員長のその席から答えておる。これがついに四十六国会ではものにならなかったわけでございますが、この倉石修正案については、自社両党の話し合いの所産。これについて総理はどういうお考えを今日お持ちですか。
  145. 石田博英

    石田国務大臣 私の所管でございますので……。
  146. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理に要求しておるのだから、総理が答えられて……。
  147. 青木正

    青木委員長 発言を許します。
  148. 野原覺

    ○野原(覺)委員 委員長、かってに答弁者を変えては困りますよ。指名するなら、総理が答えられぬなら答えられぬということを言ってから、大臣、出なさいよ。——じゃ、今度だけ許しておこう。
  149. 石田博英

    石田国務大臣 いわゆる倉石修正案は、ただいまお話しのように、自由民主党の窓口として倉石忠雄君、社会党の代表として河野密さんがお出になりまして、いろいろ折衝をいたされたものでございます。当時の与党は、その折衝なされた成果について、与党幹部は実現に非常に全力を尽くしました。しかしながら、意見の一致を見ることができませんでしたので、その旨を社会党にお伝えをいたしました。その結果、社会党は、その道義的、政治的責任を追及して内閣不信任案をお出しになりました。その不信任案は、本会議において否決をされたのであります。したがって、現在の時点におきましては、倉石修正案というものは、その処置をもって両党の国会における審議を拘束するものとしては白紙に戻ったものと解釈をいたしております。しかしながら、前の特別委員会におきまして、政府原案と同時に倉石修正案についてもいろいろ質疑応答が行なわれました。その質疑応答の行なわれました部門について、私の前任者あるいは当時の閣僚がお答えをした部分につきましては、政府もその責任を継承いたしまして、そして今度の政府原案にそれを織り込んでおる次第でございます。
  150. 野原覺

    ○野原(覺)委員 はっきりさしておきたい。労働大臣は、倉石修正案は自社両党の公約であったことを今ここで認められたわけです。そうして、その公約を踏みにじったのは自民党であるということも認められたわけです。よろしいか、それで。
  151. 石田博英

    石田国務大臣 その案そのままそっくり実現するものを公約であったとは私は承っておりませんし、そう承知しておりません。その話し合いを両党の幹部が誠意を持って実現に努力をするということは、公約であったと考えております。
  152. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、当時社会党国会対策の副委員長をいたしておりまして、そうして書記長、幹事長会談に立ち会ったのです。この倉石修正案を実現することがどうしてもできない、まことに申しわけございません——何ならば証人に呼んでもいいんだ。当時の自民党の幹事長の前尾さんが、わが社会党の成田書記長にそう申し入れをしてきた。話しておりますよ。これは、私立ち会ったわけなんだ。まことに申しわけありません。それで、あなたのようなことで言うならば、倉石特別委員長が政治的、道義的に責任があると言うのは、これはどういうことですか。この認識は、倉石君の間違いですか、倉石君の間違いなら間違いでよろしい。倉石修正案を踏みにじったのは自民党だ。われわれは不満ではありましたけれども、約束したことだから何とかこれは実現させよう、そして八十七号の条約を批准しようじゃないか。佐藤総理の言う長い間の話し合いの所産だ、この所産だけはものにしようじゃないかと思って社会党は必死に努力をしたわけでしょう。それを踏みにじったのは自民党でしょう、率直に認めなさい。
  153. 石田博英

    石田国務大臣 実現に誠意をもって努力してできなかったことは、やはり遺憾でございます。それは遺憾でありまして、そのとき前尾幹事長がどういうことば使いをなさったか、それは私は承知しませんけれども、話し合いのまとまったものに一生懸命努力をしたにかかわらず、そのとおりならなかったということは遺憾であります。そうして、倉石委員長がどういうことばをお使いになったか、これは別としまして、その政治的、道義的責任は、社会党において内閣不信任案をもって追及をされたのであります。そして、それは否決ということで解決がついたものだと考えておる次第であります。
  154. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理、お尋ねしますが、話し合いの所産、話し合いを一年半続けた所産があなたのほうの政党の事情で踏みにじられたわけです。これでは、相互信頼を持てといっても持ちようがないじゃありませんか。だから、このことに対する政府なり自民党の皆さん方の自己批判を私は求めたい、反省を求めたいわけなんです。このことの反省がない限りは、話し合いましょう、相互信頼でいきましょう、相互理解でいきましょう、こういったって、では、あの倉石案についてはどうなんだ——総理から率直に、まことにこれは遺憾でございました、これは申しわけないことであった、こういうことならば、私どもは、政府・与党が反省しておるということを認める。総理は、この問題はいかがですか。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま労働大臣が詳しくそのときの経過を御説明いたしたと思います。私どもももちろん党員として、この約束した事柄を実現すべくあらゆる努力をいたしました。しかしながら、これが実現しなかったことはまことに遺憾であります。そして、ただいま申し上げるように、社会党が不信任案を出した。そして、これでこの問題は一応筋が引かれた、かように私はただいま考えております。もちろん、過去の問題も、これは大事なことでありますから、野原さんがいま追及されることはもっともだと思います。しかし、私どもは、今後は前進の方向でこの問題と真剣に取り組んでいきたい。ただいま新たに御議審を願うべく提案をいたしておりますので、どうぞよろしくお願いします。
  156. 野原覺

    ○野原(覺)委員 率直な総理の反省のことばを聞きましたので、私は、いよいよ本論に入りたいと思うのです。これからが本論であります。  先ほど労働大臣から、きょうは総評の皆さんと会見をした、こういうお話がございました。私も、これは新聞で承知をいたしておるのでございますが、一体政府が総評に話し合いを申し入れたということは、総理の意向をくんで、官房長官から総評にお話があったものと私は理解をいたしておりますが、これは、ドライヤー提案の趣旨に沿ってなされたものと思いますが、総理いかがですか。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、官房長官は私の意向をくんでお話をしておるわけであります。ただいままでのところ、ドライヤー特別調査委員会、これの趣旨に沿っておるものだと、かようにお考えになりましても、それは間違いではございません。私は、もともと話し合いをつけたい、そういう立場でございますから、この勧告がなくとも当然これだけのことはいたすつもりでございました。
  158. 野原覺

    ○野原(覺)委員 ドライヤー提案の趣旨に沿ってはいないと申しますけれども、ドライヤー提案の中に、このことが強くうたわれておるわけですね。だからして、あなたが趣旨に沿わない、とこうおっしゃって、あなたが自発的に…(「沿ってやったんだ」と呼ぶ者あり)じゃ、ただいまの私の発言は取り消します。  趣旨に沿ってやられたということでございますから、ちょっとドライヤー提案のこの定期的な話し合いについてという関係の文章を、私、読んでみます。読んだ上でお尋ねをしてまいりたいと思う。  政府、使用者及び労働者の責任ある代表者の間で、共通の関心諸事項について、定期に適当な時間的間隔を置いて意見の交換をすることを促進し、奨励することが、政府の一般的政策となることを明らかにすることが可能であるならば、それは一つの前進となるであろう。  これは翻訳でございますから、文章が長々となっておりますけれども、そこで、このような意見交換の第一義的な目的は何か。いまなお懸案となっている諸問題及び将来起こるかもしれないこのような諸問題を、相互理解によって解決するために必要な信頼を満たすことであるべきである。だからして、懸案となっておる諸問題、将来起こるかもしれないところのいろんな問題、労使間の問題、これを相互理解によって解決するために政府と総評、政府と労働者、労使間で話し合いをする、この趣旨でなされたもののように私は理解をする。総理答弁もそうであったと思うのであります。  そこで、お尋ねをしますが、それでは、いまなお懸案となっている諸問題とはどういう問題でございましょうか。労働大臣でけっこうです。いまなお懸案となっている諸問題について、これから話をするんだというんだが、いまなお懸案となっている諸問題とは、たとえばどういう問題が入るのですか。
  159. 石田博英

    石田国務大臣 たとえば公務員及び公共企業体の従業員の労働権の問題、あるいは公共企業体の理事者の、いわゆる当事者能力の問題、あるいは実質的な使用者及び被使用者との交渉以外に、その使用者あるいは被使用者と関連のある、あるいはまた一般的な政府機関との話し合いの問題、そういうようなことが入ると存じます。
  160. 野原覺

    ○野原(覺)委員 労働権の問題ということですね。公務員、公共企業体労働者の労働権の問題が入るということです。労働権ということになれば、交渉するということも労働権だ、団交権だ、当然これは入るということであります。それならば、私は端的に聞きますが、もう包み隠さないでここでは率直に触れましょう。日教組と文部大臣のいわゆる中央交渉というものが、この懸案となっている事項に入るか入らないか。
  161. 石田博英

    石田国務大臣 問題が、労働問題として取り扱われる性質のものであるかどうかということは別問題といたしまして、現在政府と労働側との間で意見の懸隔を生じておる問題の一つであることは事実でございます。
  162. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理にお伺いしますが、そうなってまいりますと、懸案となっている諸問題の解決を相互理解によって進めていきたいという念願で、きょうは労働大臣、官房長官が総評の岩井事務局長外数名の者に会われた、そういう念願でこの話し合いが進められておる、こう理解してよろしゅうございますね。
  163. 石田博英

    石田国務大臣 私が聞いたんでありますから……。  総評側から準備会談の議題として、そのことが議題の一つとしてあげてこられたことは事実でございます。ただ、ここで念を押しておきたいと思いますが、その提案の中に示されておりまする意見の交換ということは、そういう問題をどう取り扱うかということは、それは当然労使の間の問題でありますから、どう取り扱うかということは入っておると思いますけれども、そのことは、いわゆる団体交渉とか中央交渉、いわゆる交渉という名前のもとにそれを扱うものと、そう具体的に入っていると考えておりません。つまり、その問題をどう取り扱うかということは提案の中に入っておりますけれども、そのことを具体的にその事実の一つとして提示したものとは考えておりません。
  164. 野原覺

    ○野原(覺)委員 懸案の大きなものは中央交渉です。労働大臣、私は、目をおおってはいけないと思う。八十七号条約をほんとうに批准しなければならない、ドライヤーの提案の趣旨を実現しなければならぬという熱意があるならば、この中央交渉の問題に目をおおってはならぬと私は思う。だから、これは懸案の懸案だ。いまなお懸案となっておる諸事項が話し合いの議題にならなければならぬとドライヤーは指摘して帰ったのです、その指摘をあなたのほうは受けておる。日教組と文部大臣が話し合いをするということは、この懸案の中に入るでしょう。
  165. 石田博英

    石田国務大臣 それは懸案になっておる。その懸案をどういうふうに取り扱うかということは、むろん話し合いの中に入りますが、しかしながら、その交渉をするという事実が、その意見の交換という中に示されておるものとは考えておりません。
  166. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そうすると、中央交渉の問題も懸案の中に入るということのようです。中央交渉をどうするかということの中身の解決は別にして、これは入るということのようであります。  ここで、念のために労働大臣にお聞きしておきますが、意見の交換、意見の交換といいますが、これは一体どういうことなんですかね。意見の交換とは、あなたはどういうふうに理解しておるのか。
  167. 石田博英

    石田国務大臣 これは、ドライヤー氏から提案を示されたときに、総評側で、この意見の交換ということは交渉をさすのか、陳情をさすのか、話し合いをいうのかという質問がございました。それに対してドライヤー氏は、ことばはどうでもいい、要は共通の関心事について意見の交換をすればいい、することなんだ、人間関係でありますから、接触が深まるならば相互の理解も深まるのだ、そういう意味の説明がございました。私も同様に解釈をいたしまして、政府としても同様な解釈のもとにあの提案を受諾したのであります。
  168. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そうすると、意見の交換とは、両方が話し合いをして共通の了解点に達する、その成果を目的にするものだ、こう理解してよろしゅうございますか。
  169. 石田博英

    石田国務大臣 むろん、問題によっては、できるだけ話し合いの結論ができることは望ましいのでありますが、全部が全部話し合いがつくものと期待することも無理な点がございましょう。しかしながら、話し合いを繰り返していけば、相互の理解が深まっていく、そこに理解から生ずる相互の信頼感というものが生じてくる、それがいろいろな懸案を処理するための大きな前提になるだろう、こう考えておるのであります。
  170. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、実質的な成果を目的にする話し合いだということになる。意見の交換だということになりますと、これは、日本のことばでいえば話し合いであり、団体交渉といえば、協約の締結ということが背景に出てまいりまするから、私も、そういう強いことばはここではあえて触れませんけれども、交渉ということになる。労働組合の用語でいえば、この意見の交換は交渉ということになる。だから、そういうことをとやかく定義づけるということは、ドライヤーのほうも示してはいない。示していないから、まあこの問題はこの程度にしておきましょう。  そこで、労働問題のことでございますから、総理もなかなかお立ちにくいだろうと思って、私は、いままで総理答弁を要求しませんでしたが、事は、あなたがこの提案を誠意を持って受諾されて、この国会で八十七号条約を批准する、そういう決意を持たれておる問題でございますから、これからは、総理指名された場合には、総理にぜひ御答弁を願いたい。  提案の中にこうある。それぞれの場合に、意見の交換に何名の代表が参加すべきかを決定するのは関係当事者であります。われわれは、討議される問題と状況とに従ってあらゆるレベルで意見の交換が行なわれるのを見たいと思っております。あらゆるレベルで意見の交換が行なわれることが望ましいと、こう言っております。総理、だから、きょうは官房長官と総評の代表との間に意見の交換が行なわれた。この次は自治大臣と自治労の間で行なわれてもよい。あるいは国家公務員の共闘会議の諸君と総務長官との間で行なわれてもよい。その問題と状況とに従って、あらゆるレベルで意見の交換が行なわれることが望ましい、私どもはそれを期待します、こう言っておる。あらゆるレベルですよ。総理、あなたは、これはどう御判断になりますか。あらゆるレベルとは何でございますか。
  171. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのあらゆるレベルということばが私はあまり記憶に残っていないから、労働大臣にそういうことばがあったかと聞いておるのです。労働大臣も、いまちょっとふしぎに思っているようでございます。  なお、労働大臣からお答えをいたします。
  172. 石田博英

    石田国務大臣 ちょっとどこを御指摘か、私も原文を持っておりますが……。私が正式にドライヤー委員会からちょうだいいたしましたものの中には、そういうことはございません。しかしながら、まず先に示されておりますことは、政府、使用者及び労働者の代表者たちが共通の関心事について意見の交換を行なう、それから先、その意見の交換の成果をあげるために、いろいろな方法は考えられると存じます。双方の合意を得られるならば、いろいろの方法もとられてしかるべきものだと考えております。
  173. 野原覺

    ○野原(覺)委員 提案の中にないということですがね、これは、なるほど提案の中にはないかもしれないが、これは、希望表明を羽田飛行場を立つときに、新聞記者諸君に渡した声明の中に出ておる。これはよく調べてみてください。
  174. 石田博英

    石田国務大臣 いや、私は、そういう形式論を言っておるのではありません。政府が正式に受け取りました提案というものにはないのだということを申し上げたのです。実質的には先ほど申し上げましたとおり、当初提案で示されたような会談を政府のイニシアで開始をいたします。問題によってはいろいろな取り扱いが、その後、どの取り扱いが効果的であるかということが当然議題になってくるだろうと存じます。そういう場合は、双方の同意を得られればいろいろな形が行なわれるだろう、こう考えておるのであります。
  175. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは、ドライヤー委員会が日本を去るときに、自分は定期的意見の交換について提案をしてきた、この定期的意見の交換とはあらゆるレベルで話し合うことが望ましいのだ——これは、日本を去るときの声明書に載っておるわけです。私は、その中から引用してお伺いをしたのですが、あらゆるレベルとは、総理、総評と官房長官との話し合いだけではないと思う。これは、当然あらゆるレベルです。したがって、日教組と文部大臣の話し合いということもこの中には含まれてこなければならぬ。いつまでたっても日教組と文部大臣の相互理解というものは得られぬじゃありませんか。これは、いつになったら得られますかね。いつまでたっても得られぬじゃないか。日教組については、自民党諸君の中でいろいろ批判があるかもしれませんが、しかし、現実には、何といっても全国五十万の教員諸君のつくった堂堂たる教育者の組合なんだ。この日教組と文部大臣の不信感をどうしたらなくすることができると総理はお考えになりますか。
  176. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまいろいろお話が出て、文部大臣と日教組、こういうように具体的なメンションされたお話でございますが、またお尋ねでございますが、私がドライヤー氏と会ったときの話の中には、そういう個々の組合を具体的にあげた話は一つもございませんでした。これは、はっきりいたしておきます。また、この調査団がわれわれに示したものは、政府、使用者、組合の三者の複合会談というところに特に力を入れておりました。私は、この複合会談ばかりで事が足りるとは思いません。ただいま官房長官が岩井君と会って、いろいろの話をしている。これなども、これから先具体的にいかにこの問題を解きほぐしていこうか、こういうような意味合いの話し合いだ、かように私は理解しておりますので、ただいま野原さんがお尋ねになりましたような具体的な問題は、これからだんだん出てくる問題ではないだろうか。ただいまの調査団自体の報告としては、私が申し上げますように、また御理解だと思いますが、これは、三者の複合会談を提唱しておる、かように私は理解しております。
  177. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理から非常に含みのある御答弁があったわけであります。総評と官房長官がいま話し合いをしておる。複合体で話し合いを進めていくけれども、いずれはそこで解きほぐされて理解をしていけば、組合単独の話し合いということもあり得る、こういう含みのある発言でございますから、私は、この問題はここではこれ以上触れないでおきましょう。  そこで、次にお尋ねをしたいことは、関係国内法に関する見解というものは、提案によりますと——これは提案の中にあるわけですよ。労働大臣、よく見ておってください。これは、提案によれば、関係国内法に対する意見は留保されておりますね。どうなっておりますか、
  178. 石田博英

    石田国務大臣 関係国内法についての委員会としての最終的見解は留保されておりますが、しかしながら、その関係国内法は、提訴者の意見あるいは委員会の審問の経過というようなものを重要な部分において取り入れておるということをノートする、こう書いてございます。
  179. 野原覺

    ○野原(覺)委員 最終的には六月の総会に報告をされると思いますが、いかがです。
  180. 石田博英

    石田国務大臣 最終的な性格の見解というものは、あるいは報告されるかもしれません。しかし現在の時点においては、先ほどから申しましたように、審問の経過並びに提訴者の考えというようなものは重要な部分について留意されておるということをノートする、こう書いてあります。
  181. 野原覺

    ○野原(覺)委員 最終的な日本の国内法に対する見解というものを、彼は二週間日本を調査したわけでございますから、これは、六月の総会に報告をされる。その報告については、もちろん政府としては私は尊重されなければならぬと思いますが、これは、総理、いかがですか。
  182. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、あの勧告は、私どもはこれを了承した。また六月にどういうことが報告されるか、これもまだ内容がわかりませんけれども、おそらく内政干渉めいたような報告はしないだろう、かように私は期待いたしております。したがいまして、ただいま、ILO八十七号条約を批准する、そうして関係法規、それの批准を直接無効ならしめるような規定、これは、公労法あるいは地公労法の中にあるだろうと思いますが、そういうものの改正は、最小限度要求しておるだろうと思います。しかしながら、それ以上のことをどういうような形で報告されるか、おそらくあまり内政についての話はないのではないだろうか、かように思います。したがいまして、これはとくとその報告を伺いまして、しかる上で私ども態度をきめたい、かように思います。
  183. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理、この報告は内政干渉的なものはないだろうというあなたの御希望でございますけれども、内政干渉というのをどういうふうに理解されるかわかりませんが、やはり八十七号条約の精神にそわない法規があれば率直に指摘しますよ。これは従来やってきたわけです。ILOの三十二次報告、五十四次報告、特に五十四次報告などの中にはたくさん指摘をしてきておるわけです。そうして、公労法の四条三項が指摘されてきたわけです。三十二次報告で初めて指摘をされておる。だからして、これは、八十七号条約の精神にそぐわないと指摘されることもあり得るわけですよ。そうした場合には、総理はどうなさいますか。これは、もちろん総会の報告を尊重しなければならぬのでございますから、八十七号条約に関係国内法が、ここは違うじゃないか、こういう報告が総会で六月に採択をされる、その場合にはどう対処されますか。
  184. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろんILOの総会、それでどういう報告をされますか、これは、尊重すべきたてまえにあることは私が申し上げるまでもない。そこで、おそらく先ほど来申し上げますような公労法また地公労法、その条項が四条三項あるいは五条、こういうものが必ずこれに該当しているから、そういうものが指摘されるだろう。その他の問題は、私にちょっとわかりませんので、あるいは労働大臣がなお気づいておられる点があろうかと思いますから、説明を補足させます。
  185. 石田博英

    石田国務大臣 提案の前のほうをごらんいただければ、八十七号批准に直接関係があるものとして、まず先に関心を集中すべきだということをいわれておるのは、公労法四条三項及び地公労法五条三項でございます。そのほかの政府関係法案については、先ほどから何度も申しますように、提訴者及び審問の経過について重要な部分が相当取り入れられておる、こういうふうに書いておるのであります。この六月にどういう勧告が行なわれるか私は存じませんけれども、その勧告がILO八十七号条約の批准そのもの影響を及ぼすような勧告のものではない、八十七号批准ということは、いわゆる直接的には、ただいま申しました公労法、地公労法というふうに考えております。それから、同時にいろいろな提案がございましょう。結論が出るかもしれません。あるいは政府の提案そのままでけっこうだということになるかもしれない。しかし、いずれにしろそれから先、つまり条約と関係が直接あるものから先は、それぞれの国がその国の主権に基づいて国内法を制定すべきであると考えるのであります。意見はむろん尊重しますけれども、それから先の問題は、それぞれの主権に基づいて行なうべきものだと思っております。
  186. 野原覺

    ○野原(覺)委員 ILOに加盟しておる日本としては、当然その意見は尊重しなければなりません。私が心配をするのは、ここで指摘をされた場合に、国内法についてこの四十八国会で改正をやる、それをまた六月の総会で指摘をされる、こういう事態が起こりますと、朝令暮改のそしりを免れない事態考えなければならぬと私は思う。だから、お尋ねをしたわけです。しかしながら、尊重するということでございますから、この問題はこれでおいておきましょう。  そこで、総理にお尋ねをしますが、あなたは、先ほどわが党の高田委員質問に対して、こうお答えになっておる。重要法案については与野党が十分に事前に話し合うことが必要であると思う、これは速記に載っておるわけです。私は、八十七号条約の批准並びに関係の国内法というものぐらい重要案件はないと思う。そのほかにもたくさんありますけれども、これは六年間の懸案の案件です。だからして、そうなってまいりますと、当然あなたの御見解でいけば、重要法案でございますから、関係国内法の案件については与野党が事前に話し合うことが望ましいと私は受け取っておるわけでございますが、いかがですか。
  187. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、国会審議は、十分審議を尽くしていただきたいということでございますから、個々で話し合うということも、それはあり得るかわかりません。私が高田さんにお答えいたしましたのは、重要法案については、相互に話し合いができて提案するようなことができればたいへんけっこうだ、こういうお話をしたわけです。私は、やはりそういう態度で臨んでおればこそ、議運等でいろいろの折衝をし、この法案をいかに取り扱うかとかいうような話し合いがもうすでにできつつあると思います。しかしながら、さらにそういう重要法案について先の見通しまでつけることができれば、これは、たいへんしあわせなことだ、こう私は思っております。
  188. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この八十七号条約の批准と関係国内法案につきましては、これは、きわめて重要法案でございますから、事前に与野党が十分に話し合いをしておくことが国会審議の上からも必要ではないか、このように私ども考えます。これは、私ども適当な党の機関もあることでございますから、いずれその話し合い等も提唱しなければならぬかと思うが、総理は、高田君に答弁をしたこと、並びにただいま御答弁になったことを十分ひとつ念頭に置いて対処していただくようにお願いをしたいと思うのであります。  次に、文教政策に入りたいと思う。まず第一点は、一昨年六月、荒木文部大臣のときであったと思いますが、後期中等教育の拡充と整備についてという諮問をいたしまして、そうして第十九特別委員会、第二十特別委員会、この二つの特別委員会が持たれて、第十九特別委員会では、期待される人間像についての実は中間発表が先日行なわれておるのであります。この期待される人間像は、私もあの発表を読んでみました。しかし、時間の関係もありますし、中間発表で広く国民の各層、各界の意見を聞くということでございますから、私はここでは触れません。中身については触れませんけれども、この答申を受けて、文部大臣は今後どのような手続でこの期待される人間像を国民の中に浸透させていくのか、その手続について承っておきたいと思うのであります。
  189. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまお話しのように、期待される人間像につきましては、荒木文部大臣当時の諮問に対しまして、中間草案というものが先月発表されたわけでありますが、その発表いたしました経緯は、いまお尋ねがなかったわけでありますけれども、関連上申し上げますと、本来ならば、こうした諮問に対する答申は十分まとめ上げてから答申がされるのが慣例であります。しかし、一面において、同時に諮問されました後期中等教育のあり方がまだ答申をされておりませんし、それから、期待される人間像ということに関しましては、これは、もっと広く一般的ないろいろの意見も聞いてみたい、こういうような委員諸公の御意見でもございまして、そうして、これらの方々の御意見によって中間発表をされたわけでございます。したがいまして、これからの段取りといういまのお尋ねでございますが、委員諸公におかれましても、ああして新聞、ラジオ、テレビ等にも相当の反響を呼んでおることでございますから、こうした各界、各層の意見を謙虚に取り入れるべきところは十分に取り入れていただいて、十分りっぱなものにしたいという、かような意向であるわけであります。そうやって答申が最終的にできました場合に、どういうふうにこれを取り上げていくかということについては、ただいま、私といたしましては特に考えておるところはございません。ただ、そもそもの諮問の経過から考えまして、後期中等教育のあり方というようなことをはじめといたしまして、今後の文教施策の上にいろいろの面でこれは十分参酌してまいりたい、かように考えておるわけであります。
  190. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、これは、一月十一日の新聞であったかと思いますが、教育憲章的なものにしたいというあなたの談話が出ておったように思うのです。これは、答申を受けた文部大臣がどういうようにこれを取り扱っていくか。こういうことをなぜ私が聞くかというと、たとえば、教育勅語というのが戦前にあった。こういう教育勅語的なものにするのか、あるいはあなたが教育委員会、都道府県の知事その他に教育上考えていきなさいという訓令の形で出すのか、政令の形で公布をするのか、そういうことをここで明らかにしてもらわないというと、やはりこの人間像の問題についてのほんとうの論議は私はできないと思うのです。諮問をした文部大臣としては、諮問をしたときにこのことは考えておるのじゃありませんか。文部省は、ほんとうのところはどうなんですか。
  191. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 将来教育憲章的なものにする考えがあるかという質問がございまして、そういうこともあり得るでありましょう。しかし、何しろ本答申というものがこれからまだ十分練られましてからあるはずでありますから、これは、今後の問題として別に考えたい、かように考えておりますが、先ほど申しましたように、よいものができれば、もちろんいろいろの面におきまして教育政策上の参考にしてまいりたい、かように考えておるわけです。
  192. 野原覺

    ○野原(覺)委員 大事な点を一点、これは、総理にお伺いいたします。  期待される人間像が、今度は国民の各界の意見を聞いてりっぱなものがかりにでき上がったといたします。しかし、りっぱなものができ上がったにいたしましても、期待される人間像は、日本国憲法と教育基本法に明確に示されておるわけなんです。だから、私は、憲法及び教育基本法と質の違う人間像がうたわれるということは、これは相ならぬと思うが、総理、いかがですか。この点は文部大臣じゃない、総理
  193. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ちょっと申し残しましたから一言つけ加えますけれども、これによって一つの人間像の鋳型というようなものをつくり上げて、これを強制するというようなことは考えておりませんことを、申し忘れましたから申し添えておきます。
  194. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 期待される人間像、これは、ただいま文部大臣からお答えいたしておりますように、中間報告でございます。りっぱなものができたらどうするか、こういうお尋ねでございますが、りっぱたものができました際に、ただいま言われるうよな、あるいは憲法、あるいは教育基本法、そういうものと違うものができる、かようには私考えません。おそらくりっぱなものができて、またそれが優先するかどうか、そこらはできてから御相談にあずかったらいかがか、かように私は思います。
  195. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理、中間発表の人間像の中に、「自由であれ」という文章がございまして、「今日、自由だけが説かれ、責任は軽視され、権利だけが主張され、義務が無視される傾きがある。」、こういう文章がある。そこで、このことが週刊朝日に掲載されまして、朝日新聞の記者が主査の高坂氏にお尋ねをした。「この傾向は政清家にもっともはなはだしいのではありませんか」と新聞記者が聞いたのです。そうしたら、高坂氏が、「その通り。世の中の指導者がもっとも無責任です」と答えておる。政治家がもっともそのとおりだ、指導者が最も無責任だと答えておるのですが、指導者の中の指導者は、日本では官制上は総理大臣。あなたは政治家の総代でもあるわけですね。御所見を承っておきたい。
  196. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのような御批判がありますので、絶えず反省をし、みずからを清く正しくいたしておるわけでございます。
  197. 野原覺

    ○野原(覺)委員 今月の三日でございましたか、総理は都道府県の知事会議に出られました。そうして、内山神奈川県知事がこういうことを言われた。この新聞報道によりますと、「紀元節を早く復活するよう国でも考えてほしい」と要望されたとある。これに対してあなたは、「私も個人的には賛成だ。建国記念日としては二月十一日がいいと思う」と答えたという記事が出ておりますが、これは、事実でございますか。
  198. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  199. 野原覺

    ○野原(覺)委員 なおつけ加えてお尋ねしておきたいことは、従来は、議員立法の形でこの国民の祝日法に関する改正案というのが出ておるのであります。過去十回出ておるのですね。第二十六国会、二十八、三十八、三十九、四十、四十一、四十二、四十三、四十四、四十六、過去十回議員立法の形で提案をされたのだが、これは、ついに成立を見ていない。あなたは紀元節に賛成のようだ。二月十一日を建国記念日とすることに賛成のようでございますが、政府提案として今度はお出しになるやに聞いておりますが、事実でございますか。
  200. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういうような心組みで、政府自身がただいま研究しております。
  201. 野原覺

    ○野原(覺)委員 文部大臣にお尋ねします。文部大臣は、この二月十一日を建国記念日にすることについてどのようなお考えをお持ちです。
  202. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま総理大臣の答えたとおりでございます。
  203. 野原覺

    ○野原(覺)委員 新聞によりますと、文部省の臨時省議が六日に持たれまして、そうして、その文部省の臨時省議のその意見が報道されておる。こう書いてある。国民の祝日法改正案について検討した結果、二月十一日を建国記念日とすることについては現状では教育上問題があるので慎重にすべきで、時期尚早である、こう新聞が報道しております。文部省の臨時省議でこういう結論が出たのですか。
  204. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そのある新聞の報道は、事実を伝えておりません。今回政府提案の各種の法律案につきまして念を入れて準備をしようという申し合わせをいたしただけでございます。
  205. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、臨時省議としては、二月十一日を建国記念日にするということについては賛成だ、文部省も賛成だ、こういう文部省の省議ですか、方針ですか。
  206. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは、政府提案といたしましては総理府の所管でございます。したがいまして、文部省といたしましても、総理府の提案に対しまして積極的にこれを賛成する立場にあるわけでございます。
  207. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは、総理府の所管でありましても、私は、学校教育の責任は文部省にあると思う。学校教育の場で問題が起こるから、一応あなたの見解を聞いておるわけです。  そこで、総理、あなたが都道府県の知事会議で、この建国記念日二月十一日に賛成だ、こう言われておるのですが、そのあなたが、賛成される理由、それをひとつお述べ願いたい。
  208. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、私、建国記念日、ちょど国の祝いの日をひとつきめたらいいじゃないか。そういたしますと、これはいろいろの議論があります。とかくの議論がいろいろ出ておりますが、こういう事柄は、あまり議論しても、これは、考証するとかしてもはっきりしたながなか考証が出てこない、かように考えますと、普通に言い古されたところで日にちをきめたらどうだ、私は非常に簡単に考えております。やはりそれが私どもに一番なじみのいいものでございます。あるいは若い連中には、これはなじみにくい、こういう話もございます。おそらく、こういう事柄は、だんだん父兄その他が教えてくれることによってそういうものが固まってくる、かように私は思いますので、そういう意味では、二月十一日がどうであったとかこうであったとかいうせんさくはあまりする必要がないものじゃないか。そういう意味で、ただ適当な、われわれが、建国記念日、これをひとつ制定したらどうか、こういう提案を私は賛成しておる、こういう意味でございます。そうして、そこはさらっとひとつ考えて、二月十一日、こういう日を実はやっておるわけです。
  209. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは、総理大臣、あなたは簡単にお考えのようですが、建国記念日とは国を建てた記念日、国を打ち建てた記念日でなければならぬ。一体二月十一日という日がほんとうに国を打ち建てた日であるかどうか。これは、史実の上から非常に問題があるわけでしょう。問題があるわけです。そこで、今日の子供たちは、この点に非常に大きな疑問を持っておるのです。これは、文部省でも、学校教育の場で問題がある、こう言っておる。確かに言っておる。だから、疑問を持ってりおまするから、二月十一日が建国記念日だという根拠は、これはないわけですね。ただ、明治から大正、昭和の戦前にかけて紀元節をやってきたから、この日を建国記念日にするのだ、これだけのことです。いかがです。
  210. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ国民大多数の方になじみの深い日でございます。
  211. 野原覺

    ○野原(覺)委員 なじみが深いというだけで建国記念日を設定されては、私は、これはたいへんだと思うのです。各国の建国記念日を見てごらんなさい。フランスは建国記念日がある、革命の日だ。アメリカは独立をした日だ、ワシントンが。ところが、歴史の古い英国などは建国記念日を置いていないですよ、いつ国を建てたのかということがはっきりしないから。あるいは中華民国は国慶節でしょう。そういうようにありますけれども、根拠が薄いものを建国記念日だといって国民に押しつけることは、まっぴら私どもはごめんこうむりたいと思うのです。  そこで、お尋ねをしておきますが、あなたが二月十一日を建国記念日にするということは、これは、総理大臣としては御自由であります。御自由でありますけれども、祝日というものはあなただけのものではない。国民全体のものですね。したがって、国民がこぞって納得し、祝うことのできる日でなければならぬと思いますが、いかがですか。
  212. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国民大多数が支持する、そういう日が望ましい、かように考えます。
  213. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そうなりますと、国会政府が提案をして、そうして、野党が全部反対をするのに、学者、特に歴史学者を中心に、あるいは国民のそういった文化人が反対をするのに、この一片の法令を強引に押し切るということは、これは、祝日の法律第一条から見てもいかがなものかと私は考えますが、もちろんそういうことは総理もお考えでないと思う。いかがですか。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国民多数が納得するということを申しました。私は、国会においていろいろの反対があることも承知しております。しかし、多数派も賛成しておる、こういうことでございます。やっぱり国民の支持するということが一番望ましいことであります。ことに、祝祭日ということになれば、これは、私だけ一人できめるものではございません。これは、もうただいま御指摘のとおり、国民とともにきめる、大多数がきめる、そういう趣旨のものだと思っております。
  215. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そのことは、かりに政府が法案を出しましても、国民多数が反対をしておるというような判断がつけば、強引にその成立はをからない、押し切るようなことはしない、こういう意味に受け取ってよろしゅうございますか。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国民大多数が反対するような法案は、提案いたしません。
  217. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この問題は、政府が提案をして野党が全部こぞって反対をしておるような場合には、祝日法の第一条から見ても、これは強引に押し切るべきではない、このように私は思う。したがって、提案することは御自由ですけれども、そのことを十分配慮してもらわなければならぬと思う。国民こぞって祝うことのできる日でなければならぬからであります。  そこで、次に、これは自治大臣でけっこうです。内山神奈川県知事は、二月十一日を建国記念日として祝うんだ、神奈川県はお祝いをするんだ、こういう方針のようでございますが、これは問題はありませんか、自治大臣。
  218. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 神奈川県知事が県庁で、自分のところで祝おう、こういうことでございまするから、これはさしつかえないんじゃないか、かように思っております。県民全体に言っているのではないようでございます。
  219. 野原覺

    ○野原(覺)委員 新聞の報道によると、県民全体に言ったかのような印象を私どもは受ける。県庁の中だけであるから問題はないとあなたは言うけれども、しかしながら、建国記念日というのは国がきめるのでしょう。神奈川県がかってに建国記念日というものをきめていいのですか、いかがですか。
  220. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 神奈川県知事が自分の責任においてやられることでございまするので、強制されるわけでもございませんから、いいのじゃないか、かように存じます。
  221. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あちらこちらで民間団体がやるならば、これは、自治大臣として問題はないと思うのですよ。しかしながら、いやしくも知事が地方長官であるところの知事が、建国記念日は二月十一日なんだ、こう言って、たとえ県庁職員であろうともこれを押しつけていくということは、私は問題があると思う。建国記念日というものは神奈川県知事の内山さんがきめるものじゃないんだ。国がきめるものじゃありませんか。東京都は、八月十五日だと東京都知事がきめる、それから大阪は、五月三日の憲法記念日が建国記念日ときめる、こういうことになれば、一体これはどういうことになる。建国記念日というようなものは国がきめるものだ。国がきめるものを、知事がかってにそのようにきめて押しつけるということは、私は、やはりこれは問題があるように思う。この点はひとつ十分考えてもらいたいと思います。  そこで、文部大臣にお聞きいたしますが、前文部次官に内藤譽三郎氏がおられたわけですが、内藤さんは文部次官をおやめになって今日私学振興会の役員になっておると聞くのですが、何という役員ですか。
  222. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 監事をしておるようでございます。
  223. 野原覺

    ○野原(覺)委員 監事は、私学振興会法によりますと三名です。その監事の中の常任監事だと聞きますが、事実ですか。
  224. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 さようだそうでございます。
  225. 野原覺

    ○野原(覺)委員 監事と常任監事の違いはどこにあるのです。
  226. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 常任は、その名のとおり常任であろうかと思います。なお、詳しくは政府委員から御答弁いたします。
  227. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 私学振興会には常任監事と常任にあらざる監事がございますが、その区別は、常勤、非常勤の区別と存じます。
  228. 野原覺

    ○野原(覺)委員 常任監事となって給与を、これは常勤であれば出しておると思いますね。幾ら出しておりますか。
  229. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 ただいま手元に正確な数字がございませんが、十数万だと思います。
  230. 野原覺

    ○野原(覺)委員 十数万だということでございますが、その内藤私学振興会の常任監事、前文部次官は、次の参議院選に出馬することを声明しておるようであります。このことを文部大臣は御承知の上で常任監事の地位につかしたのかどうか、承っておきたい。
  231. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その辺のところは、私は実は正確にお答え申し上げられませんけれども、内藤君が退任いたしましたのは昨年の六月ですか、そのときに私学振興会に就職したのではなかろうかと想像いたします。
  232. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私の聞くところによりますと、彼は、文部次官をやめるときに、文部省内で、おれは次の参議院選に出馬するのだ、こういうことを話しておるのであります。だからして、次の参議院選に出馬するという事実を知って、時の文部大臣が内藤君をこの私学振興会の役員にしておる。これはもう間違いのない事実だろうと思うのです。  そこで、次官をやめたその者を、次の選挙に立つ、次の参議院選挙に出馬するそれを文部省の外郭団体の役員にするということは、私は、これはいろいろな意味で問題が起こると思います、私学振興会というものの性格から言って。これは、文部大臣、どう考えますか。
  233. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは、法律的には何ら支障のないことかと考えます。
  234. 野原覺

    ○野原(覺)委員 法律的には問題がなくとも、私学振興会というものは、私学に金を貸し付けるこれは特殊法人でしょう。そうすると、その選挙に立候補する者がそこの役員になれば、これは私学等の金を貸すというところの、つまり利益誘導と申しますか、何といいますか、そういうような疑いを受けるおそれが多分に出てくるじゃございませんか。このことをあなたはどう考えますか。
  235. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私学振興会におきましては、融資の業務その他につきましては理事長以下理事会がこれを行なうものでございまして、監事の役割りはおのずからまた別でございますから、利益誘導云々というようなここは、私はないと信じております。
  236. 野原覺

    ○野原(覺)委員 その点はおいおい明らかにしてまいります。監事の役目は、監察をする、会計の監事をやるわけでございます。しかしながら、彼がどのようなとこをしておるかということは、私はこれからおいおい明らかにしてまいりたいと思う。  私学振興会の常任監事になった内藤君は、まじめに出勤しておりますか。私の聞くところによれば、ほとんどと言ってもよい、月のうち数回しか役所に顔を出さない、そうして十数万円の俸給だけもらっておる、どこに行っておるかといえば、全国区の参議院選挙に自民党から公認をされたので、選挙の準備をやっておる、こういうことを私どもは聞くのです。これは、私はたいへんなことだろうと思う。文部大臣の所見を承っておきたい。
  237. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私は、実際出勤をどのくらいしているかどうかということは存じません。あえて怠慢とは私は言い得ないと思います。  それから、同時に、自由民主党として適当な候補者を公認することは当然なことであって、これは、いかなる職業でありましょうとも、法律その他で禁止されていない方々を公認することは、私は当然ではなかろうかと思います。
  238. 野原覺

    ○野原(覺)委員 常任監事が月のうち数回しか出ない。常任監事とは、先ほどの御答弁によりますと、常勤であります。常勤の監事だ。常勤しなければならない者が月のうちわずかしか出ないということ、そのことを指摘されておるにかかわらず、あなたは、私の責任ではない、怠慢ではない、こう断言をされますが、私学振興会の役員を監督する権限は一体どなたが持っておるのですか。
  239. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 どうもことばの端におとらわれになったようで、恐縮いたしますが、この点は訂正いたしますが、私は、出勤簿を見てないからといってそれを怠慢だとおっしゃられても、私はそこまでは手が伸びないという意味で申し上げたわけでありまして、どういう出勤の状態であるかは、御必要なんでございましょうから、取り調べます。
  240. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは、やはり調査をしてもらわなければならぬと思う。あなたはまだ調査をしていないようですから、だから、あなたの先ほどのようなああいう発言は慎んでもらいたい。  それで、昨年の九月十八日に内藤君は伊豆長岡温泉の伊豆ホテルに参っております。私はなぜこういうことを総理に名前をあげて言うかといえば、高級官僚、局長、次官をやめた者が外郭団体の役員になって一体何をしておるのかという、ほんの一例としてここで申し上げますけれども、だからして、綱紀粛正の立場から、これはたかが前文部次官のことじゃないかというような簡単なことばで聞きのがしては困る。伊豆長岡温泉の伊豆ホテルに行きまして、そこで教科書発行の合同契約会議があったのであります。その会議に出席をいたした者は、全国の特約業者五十八社長、有力な発行業者、これは教科書の出版会社です。これが十四社長集まったのであります。そこに内藤君が行きまして、立候補宣言をいたしました。もし自分が当選したならば、特約業者に対しては、業界の安定と教科書の供給手数料の値上げをしてやろうじゃないか。よろしいか。無償措置法で教科書の手数料が何%か下がったから君らもたいへんだろう、おれが当選したらこれをしてやろうじゃないか。それから、今度は、出版業者に対してはどう言ったかというと、その出版がうまくいくように定価の引き上げ——定価は、いまの定価では出版業者もたいへんだろう、定価の引き上げ考えなければならぬだろう、こういった意味の約束をいたしたというのであります。私は、これを聞いてがく然として驚いたんです。これが前文部次官だ。もし事実であるとすれば、公職選挙法上これは問題があると思いますが、法務大臣、どのような問題が起こると思いますか。
  241. 高橋等

    高橋(等)国務大臣 真相をつかんでおりませんので、真相をつかんだ上で御答弁申し上げるのがほんとうだと思います。私の立場としまして、真相をつかまないでとやかく意見を申し上げることは軽率だと思いますから、御容赦願います。
  242. 野原覺

    ○野原(覺)委員 真相をこれはつかんでもらいたい。  そこで、国家公安委員長にお伺いいたしますが、法務大臣が真相をつかむと言われましたが、あなたのほうはどうですか。
  243. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私も、まだそういう話を承っておりませんので、真相をつかみましてから考えたいと思います。
  244. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そうならば、その真相の報告は、予算委員会における問題でございますから、本委員会の開会中に御報告を願いたい。委員長にこれは要望いたしておきます。そこで、立候補の宣言をするということは、公職選挙法の事前運動に抵触するし、それから、一つの利益供与の約束をするということは、利益誘導罪になるんじゃないかと私は思います。そこで、その内藤君が月にたまたま何日しか出勤をしないということなので、いろいろ調査をしてみますと、昨年の十一月二十一日、大阪府の農林会館に行きまして、そこで教科書の特約業者、教科書の取り次ぎ、小売り店、発行業者——発行業者は、大阪には大阪書籍という会社があります。新興出版というのがあります。それから、大阪に支社を持っておるところの教科書出版会社の諸君を集めて、教科書の定価値上げと供給手数料の引き上げを、自分の選挙と結びつけて話をしておる。その足で四国に入りまして、十一月下旬、松山では東京書籍の四国担当の課長待遇をしておる長棟という人を連れて東京書籍です。かつて初等中等教育局長をしたときに、東京書籍、学校図書、たくさんの教科書会社を監督しておったのです。その東京書籍の長棟というのを連れて県の教育委員会、市の教育委員会、校長会の幹部、県教育委員会の職員を一堂に集めて一席ぶちました。高知、高松においても同様であります。ついで九州に入りますと、長崎で東京書籍の九州支社の中島という課長を連れて、これまた県の教育委員会、市の教育委員会、校長会を集めて一席ぶっておるのであります。このような事実がだんだんと明らかになってきたのであります。そこで、私は、東京書籍との関係が怪しいじゃないか、東京書籍だけがこうしてついていってやるわけでございますから、いろいろ調べてみますと、内藤君の自宅——十二月二十日から転宅をされたようでございますが、これは、東京書籍株式会社の寮だ。百坪に建坪五十坪、電話がついて、人に聞きますと、何でもあの人は女中さんまで会社からつけてもらっておるやに世間ではうわさが広まっておる。文京区駒込林町三十五番地。これは、電話帳を調べたら東京書籍の寮であります。そこに十二月二十日から入っておる。自宅の提供を東京書籍がしたのか、内藤君が買ったのかは知りません。知りませんけれども、全国方々を、自分が常任監事でありながら、その常勤しなければならぬことを彼は放棄して、そうして選挙運動に回って、東京書籍を連れていってはたくさんの者を集めて、東京書籍の採択の宣伝、販売の宣伝をしたかどうかはさだかでありませんけれども、内藤君は前文部次官です。前文部次官といえば、教育委員会では非常に尊敬をしておる教育界の実力者なんです。この人が東京書籍を連れていけば、はあ内藤さんは東京書籍を推薦しておるんだなぐらいのことは感づくでありましょう。こういうことをしておるわけです。  法務大臣、あなたは真相を調査してみなければわからぬと言いましたが、私は、ただいま委員長に、その真相の調査報告はこの委員会においてぜひ取り上げてもらいたいということを要求いたしておきました。これはぜひとも調べていただきたい。なぜ私がこのことを取り上げたかと言えば、内藤君は——私は、ここで国会に籍を置くこと十何年になりますが、私も文教関係にはタッチをしてきたのであります。内藤君は道義の退廃を嘆いて、そうして、小学校には道徳科を持っていかなけばれならぬという推進運動をした一人なんです。教員の勤務成績がよくないじゃないか、サボっておるじゃないか。これをたたくには勤評をやらにゃいかぬじゃないかと言って勤評をやった人なんです。よろしいですか。ところが御自分はいかがですか。私は、こういう事態というものは、全くこれは許すことができない。総理大臣、許すことができないのです。私は、先ほどこの人間像のところで総理に聞きました。主査の高坂さんが、いまの指導者が一番悪い、こう言っておる。そのことをあなたにもいかがですかという所見を問いましたが、勤評強行、道徳教育の強行、そうして、政治活動の禁止二法の立案、企画、作成にあたっては、大達文部大臣のときに、彼は課長であったか局長であったかは忘れましたが、非常な実は力を入れた。それが今日いかがですか。今日公職選挙法に違反しておるような疑いを犯しておる。勤評どころの騒ぎではない。私は、こういうことではこれは全くもうお話にならぬと実は考えて、ここで綱紀粛正の問題を提起する意味で、私があえて出したのです。個人のことを私はとやかく言うのは好みませんけれども、やむにやまれず私は出したのであります。総理の御所見を承っておきたい。
  245. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 野原さんが個人の名前をあげてこの席でいろいろお話しになった。もちろんりっぱな資料に基づいてお話しになっていることだと思います。先ほど来、法務大臣並びに自治省大臣等、十分調査いたしますと、かように申しておりますが、私、その調査報告を伺いまして善処したいと思います。
  246. 野原覺

    ○野原(覺)委員 綱紀粛正は、一片のおことばだけではなかなか実が結ばないと思う。私どもは、この点は十分ひとつ考えていかなければならぬと思います。  そこで、文部大臣にお伺いいたしますが、第四十六回国会閉会後の九月三十日の参議院文教委員会の速記録を見て、私は驚いたのです。なぜ驚いたかといえば、あなたは、わが党の参議院議員の諸君の質問に答えて、こう言っておる。遺憾でございます、取り扱いについては遺憾でございます、おわびいたします、慎重を欠いた点は遺憾でございました、こう答えておる。これは一体何のことですか。私は、赤棒が引っぱってありましたから、ずっと前のほうを繰って見ましたら、標準定数法の審議経過と、これに基づくいわゆる限度政令の制定をめぐって参議院で非常に紛糾をした質問に対するあなたのこれが御答弁であります。どういうわけで、平身低頭した、遺憾です、取り扱いについては遺憾でした、おわびします、こういう答弁が出たのか。これはひとつ文部大臣から御説明願いたい。
  247. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この問題は、いわゆる限度政令の問題でありまして、日にちはさだかに記憶いたしておりませんが、昨年の九月何日かに限度政令の改正案を閣議決定いたしまして、施行いたしたわけでございます。この問題につきましてはいろいろの経緯がございまして、与野党とも一昨年の標準法改正のときからずっと持ち越しておった問題でもございましたので、私からいえば、政令を施行いたします前に、改正令を出します前に、もう少し与野党の方に、こうこういうわけで、また内容がこうこうでこの政令を制定することにいたしましたというような手続をさらに十分にとるべきであった、それを遺漏があったという点をおわびしたわけでございますが、内容につきましては、私としては十二分に検討いたしまして、その基礎になる標準法あるいは国庫負担法等の趣旨にたがうものではない、かように考えまして、この政令を施行いたしたわけであります。
  248. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理、お聞きのとおり、文部大臣は自社両党の話し合いを無視して、いわゆる限度政令というものを閣議で制定をしたのです。あなたはお聞きになったと思う。この限度政令については、実は標準定数法が参議院の審議に回った。四十三国会で流れたのですね。四十四国会でも、また衆議院で流れた。四十五国会になってやっと参議院にいきましたけれども、会期末が迫って、この定数法は通らないということになったのです。そこで、自民党の文教部の諸君、予算の理事をしておる稻葉修君などが非常に心配をして、これは、通してもらわなければ困る、社会党としても困るではないかとも言っている。そこで、話し合おうではないかというので、社会党のほうは、わが党のほうはその要請をいれて、それではということになって両党合わせて十人ばかりで話し合いが持たれて、わが党の意見を出したのであります。それは何かというと、限度政令だ。限度政令はひとつぜひ出さないでもらいたい、こういうことを申しますというと、文教部を代表した稻葉君が、それはひとつ考えましょう、こういうことになった。そこで、われわれは、それではということで標準定数法を実は通したのであります。標準定数法を若干の修正をして、これを通したのです。ところが、そういう話し合いがあるにもかかわらず、その話し合いというものを無視して愛知文部大臣がこの政令を制定したのであります。総理はどう考えますか。   〔発言する者あり〕
  249. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事実と反するというお話がございますので、文部大臣が当時の状況をよく知っておると思いますから、文部大臣から答えさせます。
  250. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは、野原委員に対しまして御答弁を申し上げるのは、専門家に対してたいへん失礼であると思いますけれども、一日に言えば、ここ数年の間に児童生徒の数が三百万人以上激減するわけでございます。そこで、そうなりまして、その情勢をそのままにし、学級定数そのほかに手をつけないということになれば、機械的に七万六千人くらいの教職員の定数が、まあ常識的なことばで言えば、はみ出すわけであります。そこで、われわれの先輩、与野党の皆さま方に非常な御協力をいただきまして、その七万六千というような過員が起こらないように法律並びに政令を改正いたしまして、同時に、たとえば小学校の定員を五十人から五年間に四十五人を最高の学級標準にするというようなことで、法律、政令等をつくっていただいたわけでございます。それで、昨年の九月の問題とされました政令におきましても、政令を出さないというようなお約束は政府としてはもちろんいたしておらないわけでございまして、そういう配慮を十分にいたしまして、そして、法律の趣旨とするところが十分に行き渡りますように、また定数上過員が生じないように、また各都道府県別にわたりまして、何といいますか、これは悪いことばで恐縮でございますが、首になるような人が実際に出ないようにということを十分に配慮いたしまして、これならばできるという私は確信を持ちまして政令を出したわけでございます。ただ、先ほども申しましたように、与野党の、特に参議院の方々に対しまして、この政令をいよいよ出すときに、私ももう少し事前に御了解を得ればよかったなということを率直に考えましたので、その点をおわびを申し上げた次第でございます。
  251. 野原覺

    ○野原(覺)委員 では、文部大臣にお伺いしますが、自民党の文教部会の皆さんとは話し合いがついた上でこの政令を出されたわけですか。
  252. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その当時もお話しいたしましたように、私は、自民党の方にもこの点についてはおわびを申し上げたわけでございます。
  253. 野原覺

    ○野原(覺)委員 総理、お聞きのとおりです。法律を通すときに、これは与党と野党が話し合いをして、相談をして法律を通すわけですよ。そのとき与党の諸君も、この法律を通すにあたっては社会党意見をいれようではないか、限度政令は当分出させないようにする、まかしておきなさいと、こう約束をしたのです。そこで、安心をしておりますと、法律が通って、九月——八月でございますか、限度政令が出る、こういううわさが出たものですから、これは話が違うじゃないかというので、自民党の稻葉君のところにわが党の文教部長が話し合いをしておるわけです。そうしたら、稻葉文教部長は、いや、自民党が責任を持っておるのだからまかせなさい、こう言う。だから、わが党が文部大臣に会おうじゃないか、こう言いましても、いや会わなくてもよろしい、まかせなさい。法律を通すときに、政令が出るときに、まかせなさいまかせなさいと言って、ことばは悪いかしれませんけれども、結果においては逆なことになっておるのだ。稻葉君はこういうことを言ったそうですよ。(稻葉修君「私は断じてうそは申しません」と呼ぶ。)違うと言っておりますけれども委員長、この問題は、私どもはこれは倉石修正案以上の問題と実は考えております。ということは、稻葉文教部長が、社会党のこの意見は、法律を通す時の与野党の申し合わせ、すなわち当分政令を出させないようにするという申し合わせばわが党の総務会も了解をしておるのだということまで発言をしておる。そこで、わが党では、すっかりそれならばということで、これの通過を認めたわけですね。ところが今日、私どもの調査によりますと、昨年の十二月現在で教員が六千数百名ですか、この限度政令にひっかかるわけです。そこで、各都道府県では非常に驚きまして、今日大問題になっている。この政令は何とか撤回をしてもらいたい。都道府県議長会議決議をあげる。十四の都道府県がこの限度政令撤回の県議会の議決をあげる。そして請願が次から次と行なわれて、私の調査によりますと、自民党の国会議員の皆さんも五十数名この限度政令の撤回の請願に署名をしておる、そういういきさつのものであります。私は、両党がこれから国会を運営していく上について重要でございますからこの種の問題を出したのでありますが、総理は、一体どうお考えになりますか。
  254. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろお話がございましたが、なかなか法律案を通すということは容易なことではない。与野党の間にいろいろな話し合いがあり、またいろいろの取引もあるようなお話を伺いました。しかして、今日私ども考えて一番大事なことは、いつでしたか、皆さんのほうからも社会党を代表してチーフガバメント、こういうお話が出ておりました。その線に沿ってやはりこの問題とも真剣に取り組んでいくのが、私の本来の態度ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。ただいまのお話の筋、いろいろその当時の取り扱い、あるいは折衝の過程におきましてずいぶん御苦心になっておる、かようには私は了承をいたしますけれども、やはり私ども国民に対して責任を持つのだ、こういう意味で、安い政府と言いますか、金のかからない政府、そういう立場でこの問題に真剣に取り組んでいく。同時に両党におきましても、そういう態度でこの問題の解決に臨んでいただきたい、かように私は思います。
  255. 野原覺

    ○野原(覺)委員 社会党は、この問題については、限度政令の撤回か、もしくはこの限度政令にかわる何らかの措置をとらない限り絶対に承服できません。私は、このことを申し上げておきたいと思う。  なお、私の発言中、このことは私は重大だと思う。稻葉君は、九月の十日にわが社会党の豊瀬文教部長から文書で申し入れを受けて何度も会見はしているが、いまだこの始末がついていません。だから、私は稻葉君が初めから社会党を偽ったとは思いませんけれども、これは努力されたことは認めますけれども、結果においては、遺憾ながら自民党が社会党をペテンにかけたようなことになっておるわけです。だからして、この問題はぜひ総理におかれては考えていただきたい。私ども与野党が国会を運営していかなければならぬのです。倉石修正案は一方的に踏みにじる、法案を通すときに約束したことは、これは、政府と一緒になったかどうかは別にして、結果においてはとんでもないところの状態に置かれてある、こうなってまいりますと、私どもは、与党を信頼することができないような事態が次から次と起こってくるのであります。だからして、この問題は、どうかひとつ政府でも十分お考えいただいて、限度政令の撤回もしくは何らかのこれにかわる措置をとられるようにしていただきたい。これが国民の願いにかなうわけです。一学級の生徒数を三十名にするというのが世界各国の通例だ。ところが、今度の標準定数法では、五年計画で四十五名でありますからね。したがって、そういうことではなしに、義務教育費半額国庫負担法の精神に従って、都道府県の実際支出した額の半分は政府が持つんだという、教育費半額国庫負担法の精神をほんとうに生かすような措置を、これは総理におかれても考えていただかなければ、私どもはこの問題についてはこのまま引き下がるわけにはいかないということをあえて申し上げておきたいと思うのであります。重ねて所見を承っておきたい。
  256. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは、もちろん御承知のことと思いますけれども、先ほど申しましたのは、向こう五カ年の間に五十人から四十九人、今度は四十八人にいたしますが、最高でございまして、現に平均の定数は、児童数が三十人台になっておりますことを念のため申し上げておきます。世界的水準とほぼ同一水準になりつつございます。
  257. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 与野党とも重要なる議案につきまして真剣に取り組んでいただく。また政府も、そういう論議を通じましていろいろ考えることがございます。お互いに不信を買わないように、また御協力を願わなければならないことは非常に多いと思いますので、この上ともどうぞよろしくお願いいたします。
  258. 野原覺

    ○野原(覺)委員 以上で終わります。
  259. 青木正

    青木委員長 これにて野原覺君の質疑は終了いたしました。  次会は明十日午前十時から開会いたします。  明日の質疑者は、岡田春夫君、永末英一君、林百郎君であります。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十二分散会