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1965-02-08 第48回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月八日(月曜日)    午前十時十六分開議  出席委員    委員長 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 稻葉  修君    理事 小川 半次君 理事 二階堂 進君    理事 古川 丈吉君 理事 加藤 清二君    理事 川俣 清音君 理事 辻原 弘市君    理事 今澄  勇君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       荒舩清十郎君    井村 重雄君       植木庚子郎君    大橋 武夫君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    鯨岡 兵輔君       重政 誠之君    正示啓次郎君       田澤 吉郎君    登坂重次郎君       灘尾 弘吉君    西村 直己君       野田 卯一君    古井 喜實君       松野 頼三君    水田三喜男君       石田 宥全君    石野 久男君       石橋 政嗣君    大原  亨君       岡田 春夫君    小松  幹君       田中織之進君    高田 富之君       滝井 義高君    中井徳次郎君       中澤 茂一君    永井勝次郎君       野原  覺君    八木 一男君       山花 秀雄君    横路 節雄君       永末 英一君    林  百郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 高橋  等君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  櫻内 義雄君         運 輸 大 臣 松浦周太郎君         郵 政 大 臣 徳安 實藏君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 小山 長規君         自 治 大 臣 吉武 恵市君         国 務 大 臣 愛知 揆一君         国 務 大 臣 小泉 純也君         国 務 大 臣 高橋  衛君         国 務 大 臣 増原 恵吉君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣官房長官 竹下  登君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府総務長官 臼井 莊一君         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局長)  山口 一夫君         防衛庁参事官         (長官官房長) 小幡 久男君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (人事局長)  堀田 政孝君         防衛庁参事官         (衛生局長)  軽部彌生一君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  國井  眞君         防衛施設庁長官 小野  裕君         防衛庁事務官         (防衛施設庁施         設部長)    財満  功君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   小林 貞雄君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  高橋 正春君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         検     事         (法務省民事局         長)      新谷 正夫君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安川  壯君         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  佐竹  浩君         文部事務官         (大学学術局         長)      杉江  清君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     戸澤 政方君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (薬務局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (年金局長)  山本 正淑君         社会保険庁長官 大山  正君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  坂元貞一郎君         厚生事務官         (社会保険庁年         金保険部長)  実本 博次君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         食糧庁長官   齋藤  誠君         水産庁長官   松岡  亮君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         海上保安庁長官 今井 榮文君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         建設事務官         (都市局長)  鮎川 幸雄君         建 設 技 官         (住宅局長)  尚   明君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月八日  委員井出一太郎君、小松幹君及び野原覺辞任  につき、その補欠として鯨岡兵輔君、滝井義高  君及び八木一男君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員滝井義高君及び八木一男辞任につき、そ  の補欠として岡田春夫君及び石野久男君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員鯨岡兵輔君、石野久男君及び岡田春夫君辞  任につき、その補欠として井出一太郎君、野原覺  君及び小松幹君が議長指名委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計予算  昭和四十年度特別会計予算  昭和四十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 青木正

    青木委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  大原君の質疑を続行いたします。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原委員 前回予算委員会の散会まぎわに神田厚生大臣から問題の覚え書きにつきましてお答えがあったのであります。その覚え書きの原文とおぼしきものを私は持っております。若干違うところもあるのですが、大体同じです。最初に、自民党三役と厚相蔵相医療費値上げに関する覚え書き、こういう見出しがきちっとついておるようであります。  そこで、時間を効果的に使いますために、お手元にそれぞれ参考資料を配付いたしましたが、このいわゆる神田メモなるものはなぜ重要であるか、なぜこういう大きな問題になったのか、こういう点をかいつまんで明らかにして、そして質問に入っていきたい、こういうふうに思うのであります。  そこで、神田メモにおきましてはっきりいたしておることは、一月一日から九・五%の緊急是正を行なうとともに、前記の措置を行なうにあたり、昭和四十年度から薬剤費の一部負担保険料引き上げ改定などを行なうとあるのであります。このことについては、二月一日に田中蔵相横路質問に答えて、そのとおり決定したものであるというふうに議事録に残っておるのであります。つまり、一月一日の九・五%の緊急是正と四月一日の薬価負担の問題と保険料引き上げの問題がセットになっておるわけです。ここに問題の一つの本質があるわけであります。  それから、第二の問題は、厚相は、昨年十二月二十二日の中医協でこのメモの存在を確認し、二十八日には閣議後中医協にはせつけまして、九・五%値上げ患者負担引き上げについて決定をしましたということを中医協の席上ではっきり言っておるのであります。そこで、中医協を無視するなという反発が起きてきたのであります。  三番は、この神田メモを裏づける予算案は昨年の臨時国会で通っておる。これは、厚生大臣法制局長官から質疑応答において見解が示されたとおりであります。しかしながら、これは、予算を通しておいて、そして三者会談結論を背景といたしまして中医協社会保険審議会の民主的な運営、こういう土俵厚生大臣がぶちこわした、そういうところに問題のポイントがあるわけでございますから、この問題を度外視するわけにはまいりません。  第四の問題として、神田厚相は、昨年末ぎりぎりに支払い側協力を求めたときに、一月二十日までにまとめてくれと言いながら、その口の下から、何もわからない磯部会長らを内部であやつって、公益委員報告職権告示という未曾有の暴挙を神田メモの筋書きどおり強行したのである。特に、歴代厚生大臣がかつてやったことのないこのような職権告示は、一月九日午後十一時五十分、これは小山局長答弁ですが、というが、事実は一月十日の未明になされたのであります。これは証拠があるのであります。そして一月十三日に発表されました。つまり、十日にやりながら、九日の日付にでっち上げて、一日にさかのぼるという————ダブルプレーをやったのであります。  第五番、神田厚生大臣は、就任以来昨年四月の八%答申を八カ月も放任して、神田構想なる思いつき案を発表いたしました。そして非常に混乱させました。九・五%、一千億円の医療費引き上げを処理するにあたり、厚生大臣こそが職を賭して前進せしめなければならない医療保障を大後退させた。これは問題です、田中蔵相総理に国費の大幅支出を要求する立場にありながら、わずか三十億円で引き下がった。そして一五%の保険料引き上げなどを取りきめたのであります。赤字対策と称して総計千三百六十億円以上、これは、私がいろいろと資料を集めて推計をいたしましたが、この負担を全く一方的に職権告示で全国民に押しつけたのであります。健保、共済など、何も組合関係者も知っておりません。  六番、この問題はきわめて重大ですが、健保法中医協社会保険審議会に関する規定には、「厚生大臣ハ」というふうにあるのであります。ですから、問題は、田中蔵相自民党三役の政治責任もさることながら、法律的、政治的には当事者神田厚生大臣がこの当事者であるわけであります。  第七ですが、法制局長官答弁の、予算がきまっても、法律案が閣議決定されるまでに諮問されるならばよろしいというふうな答弁もありました。神田厚生大臣は、予算は財源の準備であって、法律案を続いて諮問したのであるから、法律案自体を拘束するものではないというふうな答弁もございましたが、そういう見解は、一般的諮問機関の場合においては適用されますが、この場合は適用できない。というのは、なぜかというと、第一は、保険料保険給付保険財政を媒介として直結しておる。医療費値上げをすれば保険財政に響いて、保険者と被保険者に直接響いている。これは一月一日以降に現実に影響をいたしておることがそのことを示しておるのであります。第二は、その結果、一月一日九・五%引き上げは、直接保険者及び被保険者権利義務影響をしており、職権告示で何も知らないうちに金を巻き上げられるという結果となったのであります。そのことは、四月一日以降の健保法改定既成の事実といたしておるのであります。十二月二十二日招集中医協はもちろん、一月三十日招集社会保険審議会も全く無視されたのであります。総理大臣は尊重されると言いましたが、三者構成中医協や、社会保険審議会医療保険審議するその土俵をぶちこわしたのであります。この責任であります。  ですから、第八、第九項に引き続きましてそのことを指摘をいたしておるわけでございますが、問題は非常に重要であります。  社会開発総理大臣はとなえておられますが、人間尊重をとなえておられますが、病気は貧乏の根源であります。このことは天下の公理であって、生活保護の実態がこれを実証しておるのであります。ですから、私は、政治の姿勢、責任政治のたてまえからも、国民を全くないがしろにした、ばかにしたようなそういう今回の職権告示措置につきましては、絶対に納得できない。これが神田田中メモをめぐる問題点であります。総理大臣は、その点をうなずいてお聞きいただいておりますが、神田厚生大臣は、そのメモなるものを、党と決定をした至上命令である、こう言って常に言い触らしたのであります。ですから、不信感がびまんをいたしました。全く民主的な運営ができなくなりました。そういう土俵がくずれてしまいました。そこに今日の混乱の原因があるのでございますから、それに基づいて私はこの状態を善処しなければならぬと思うのであります。  そこで、私は質問を続行いたしまして、この厚生大臣に対する質問を続けて、一定の段階で総理見解官房長官等見解をお伺いいたしたいと思うのでありますが、前の質問に続きまして私が厚生大臣お尋ねをいたしたいのは、一月九日に中医協公益委員報告を受けたと称しておりまするが、その前に支払い側と会いまして、十二日まで待ってくれ、十一日まで努力してくれ、こういう話し合いがあったのでありますが、厚生大臣別室におったはずでありますが、その公益委員報告というものは中医協答申ではないと私は思いますけれども、厚生大臣はどういうふうに考えますか。
  4. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。  いまの事実問題の、支払い側が十二日まで待ってくれということを公益委員に述べられた、その際別室に私がいたということは、これは事実に相違いたしております。私は、厚生省におりまして、そちらへ伺っておりません。  それから、第二点の問題、すなわち公益委員側が、支払い側診療側についていろいろ話し合ったが、支払い側の御納得が得られなかった、そこで、その際十一日までにひとつまとめたいということをよく述べられたという話を公益委員側から聞いております。以下公益委員の方々から聞いた話を申し上げるのでございますが、そのときに、十二日まで待ってくれということを公益委員支払い側からお話のあったことも聞いております。それはあとで聞いたわけでございます。そのときに、公益委員はこう言っておりました。十二日まで待つようにということであったが、十二日まで待った場合に、結論を得る、まとまる何らか保証といいましょうか、見通しがつけられるでしょうかという意味のお尋ねをいたした、こう言っておりました、それはわからない、こういうことでございまして、そこで、見通しがつかなくなってしまった。見通しがつかないということは、これ以上公益側として、会議を続けていくにいたしましても無理だ、支払い側が帰ってしまった、そこで、正規の会議はできない、そういう事情を具して、公益委員としてはこういうふうに考える、こういう御報告があったわけでございます。同時にまた、口頭で報告がございまして、その報告に基づいて、緊急是正を一方においてはしにやならぬのに、見通しがつかなくなってしまった、そこで決意せざるを得なかった、こういう事情でございます。
  5. 大原亨

    大原委員 私が質問をいたしておりますのは、こういうことであります。つまり、公益委員報告というものは、法律にいうところの中央医療協議会答申ですか、答申とは違うでしょう、そういう点を言っているのです。あなたが答弁しなさい。
  6. 神田博

    神田国務大臣 いわゆる答申ではございません。そこで、先ほど来、報告をちょうだいしたと、こう申し上げております。
  7. 大原亨

    大原委員 厚生大臣は、ここが大切なんですが、はっきりいたしました。年末には、一月二十日の国会再開前までに答申をしてもらえばよろしい、こういうふうに支払い側協力を求めて、公益委員の辞職を思いとどまってもらう、こういうことに厚生大臣協力をしてもらったはずであります。であるのに、十二日まで待ってもらいたいというふうに支払い側が申し出をいたしました際に、公益委員——いまいろいろと言っておりますが、その裏幕については私はいま時間がないから申し上げませんけれども、公益委員報告というものが出されました。この公益委員報告というのは、健康保険法と、健康保険法実体法を受けておるところの両協議会設置法、この設置法の中によりますると、文書によって中医協答申をすることが原則になっておるのでありまして、だから、これは答申でない、こういうことに相なるわけであります。したがって、公益委員報告に基づいて告示した厚生大臣の行為というものは、これは健康保険法の二十四条、四十三条、あるいは設置法違反をする、この二つの法律違反をする、はっきり違反をする、そういうふうに私は考えますが、いかがですか。
  8. 神田博

    神田国務大臣 先ほど来御答弁申し上げておりますように、諮問はいたしまして、そして、その諮問につきまして、相当日数と長時間をかけて審議をしていただいたわけでございます。しかるに、結論を得ることができなかった、公益委員といたしまして両者の結論をつかむことができなかった、こういう報告でございまして、大臣といたしましては、そういう場合には、大臣としてのやはり緊急是正をする必要が生じてまいるわけでございます。違法ではございません。
  9. 大原亨

    大原委員 厚生大臣、年末には、二十日まで十分待つ、公益委員支払い側もそれを了承し、そして十二日まで待つことについて話し合いがなされておって、その意思が通じておるのに、職権告示をいたしたわけであります、公益委員報告に基づいて。これは中医協答申ではないのであります。そのことを、厚生大臣は、中医協答申ではないということを知りながら、いままでの経過を知りながら、そういう事情を知りながら、法律違反をあえて犯したのであります。あなたはどの条文によって法律違反でないということを言うのですか。
  10. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。  先ほどお答え申し上げたように、私は幅を持ちまして公益委員にお取りまとめを願ったわけでございます。協議会諮問をしておいたものを、公益委員も、それならひとつまとめましょうということで努力していただいたわけでございます。その結果、もうどうしてもこれがまとまらない、こういうことでございまして、法律何条につきましては政府委員から答弁させます。
  11. 大原亨

    大原委員 だめですよ。大臣責任を持ってこの問題を処理しているのですよ。あなたが責任ある措置をしないで、かってのいいときは下僚にまかして、あちらこちらにおべっかを使いながらやっているから、こういう混乱があるのです。大臣、聞いていなさい。どういう根拠に基づいているか。前回以来、健康保険法と、それから設置法と、それらの関連法律を土台にしながら話を進めておる。質問を進めておる。どういう根拠で、中医協という三者構成の特殊の土俵、この土俵を無視いたしまして、そして職権をもってそのような告示をすることが合法的であるのか、どこが合法的であるのか、その法律上の根拠大臣みずから言いなさい。あなた言いなさい。政府委員が言う必要はない。そんなこと言っちゃだめだ。あなた言いなさい。あなたやりなさいよ。あなた答弁しなさい。だめですよ。必要なときにはあなた言っているんだ。この前もそのことは言っているんだ。
  12. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。  支払い側診療側、また公益側審議をお願いいたしまして、十分審議をして、その意見がわかったわけでございます。その意見がわかったのでございますから、諮問趣旨がわかったわけでございます。ただ、御承知のように、支払い側がお帰りになったものですから、総会は開くに至らなかった。しかし、審議結論というものはわかったわけでございまして、その報告をとった。  そこで、条文は、健康保険法の第四十条の十だそうでございます。
  13. 大原亨

    大原委員 四十条の十だそうです、——人ごとみたいなことを言っちゃだめじゃないですか。人のことじゃない。こういうことだ。あなたが答弁をはっきりしたように、公益委員報告中医協答申ではない。あなた、時間をかけたと言っているけれども、去年の四月に答申が出ているのですよ。それまであなたは何しておったのです。そのことをたなに上げといて、——待ってください。あなた、公益委員報告中医協答申でありません。前回質疑応答でもあったように、この中医協の場は特殊な場ですから、法律もその趣旨ですから、法制局長官も言っているように、これは答申を受ける。答申については文書ということが設置法にもちゃんとあるのだ。ここにちゃんとある。だから、その報告答申じゃない。公益委員報告によってやりました、こう言うのですが、これは法律の無視ではありませんか。法律をじゅうりんしたものではないか。そこが、一番初めから既成事実をおっかぶせたということが一つ。そして、たとえ反対であっても、理解をし、意思を通じて、公益委員意思表示中央医療協議会意思表示と認める場合がある。これは中労委やいろいろなところでもあるわけです。主張が異なった場合にはあるわけです。しかしながら、支払い側の代表が、延ばしてくれ、機関討議をいたしますからと言っている。その場合に、あなたは二十日まではよろしいと言っているじゃないか。そう言っておきながら、支払い側に対しては何も知らないうちに告示をして、この告示の仕方がけしからぬ。そういうことは法律違反ではないですか。健康保険法の二十四条、四十三条やあるいは設置法違反ではないのか、こう言っているんだ。あなたは別の答弁をしているんだ。
  14. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。  適法にやったわけでございまして、準拠法につきましては政府委員から答弁させます。
  15. 大原亨

    大原委員 大臣答弁大臣答弁しなさい。
  16. 小山進次郎

    小山政府委員 健康保険法第四十三条ノ十四の第一項には、前回来申し上げておりますように……。   〔発言する者多し〕
  17. 青木正

  18. 小山進次郎

    小山政府委員 診療報酬の額を定める場合には「中央社会保険医療協議会ニ諮問スルモノトス」と規定してございます。したがって、諮問をいたしまして、答申を得るための万全の努力をし、その結果各側の意見というものを事実上承知ができ、それをさらに会長報告によって確認をした、こういう事実がございますので、これは法律違反ではございません。
  19. 大原亨

    大原委員 こういう場合は私は認めるのですよ。何でもかんでも意見が一致するということはないのです。ないのですけれども、異なった意見であっても、いよいよ結論を出しますときに、——労働大臣もよそを向いておられるけれども、いろいろな労使の慣行等で三者構成その他の運営においてはそうなんです。ところが、やはり何千億円のこういう権利義務に関係する問題なんですよ。だから、違った立場の人々を、公益委員を中心に意見を調整しながら、たとえ異なった意見が出ても、その意見について、いよいよ最終段階に来た、こういうお互いの確認のもとに公益委員意見を取りまとめるということはあり得るのだ。その場合に、少数意見を付するという医療協における前例もある。そういう意見を取りまとめられるということは、あなたは二十日までやってくれと言ったのだから、公益委員もそれを知っておるのだから、支払い側もそのことを申し入れているのだから、だから、その事情を十分参酌されるものとして、そういう結論の段階には達しない、そういう了解のもとに帰っておるわけであります。それをだしぬけに立場を無視してやるということは、これは民法上の生命保険の関係ではないけれども、公法上の権利関係の変動であるけれども、そういう個人の財産権や利害に関係する問題、あるいは保険団体の利害に関係する問題について、そういう人々の意見について結論を出す段階についての了解もなしに、公益委員だけの報告によってやったところがいけない。公益委員報告答申ではありませんとあなたは言ったのだ。答申ではありませんと言った。公益委員報告ですと言ったのだ。だから、法律に基づく答申——これは文書と書いてある。その答申を待たないで、単なる口で言ったか、何かうにゃむにゃと言っておったけれども、報告に基づいて職権告示をすることは健康保険法の関係条文設置法違反をするのじゃないか、そういう点です。もう一回厚生大臣責任ある答弁をしなさい。いままでの経過を見てみなさいよ。二十日まで待ちますと言っているじゃないか。そう言いながら一方的にやったことについて説明しなさい。
  20. 神田博

    神田国務大臣 まとめるように御努力をしていただきたい、こういうことでおまとめをお願いしたわけでございます。その公益委員から、これはもうこれ以上まとまりません、しかも支払い者側も八%までは一月一日にさかのぼってよろしいという御返事を得ております。問題はあと一・五だけがまとまらないのだ、こういうことでございました。それで、十二日以降努力いたしてもこれはなかなかまとまりません、緊急是正で四月からやれと、こう言われておるんだ、そこで、これ以上お待ちになってもお困りでしょう、こういう御報告でございます。そこで、私は、公益委員の権威にかけまして、公益委員に、一たん文書による報告もちょうだいしておりますから、また口頭の詳細な報告も聞いておりますから、それをもう一ぺんやり直してくれ、こういう不見識なことは、ちょっと私は穏やかでないと思いまして、まとまらぬなら、これは、諮問は十分して議論は尽くしていただいて各界の意見はわかったわけでございますから、そこで告示に踏み切った、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  21. 大原亨

    大原委員 社会保険審議会に関する法律の十四条には、「左に掲げる事項について、厚生大臣諮問に応じて審議し、及び文書をもって答申する」、こうあるんです。ですから、あなたは、事は重大でありますから、たとえ意見の不一致がございましょうとも、文書をもって中央医療協議会の事態について報告を願いたい、こう言うことが当然じゃないですか。そういうこともやらないで、あなたがさきに答弁をされたように、いわゆる公益委員報告に基づいたけれども、これは中央医療協議会法律による答申ではないとあなたは言うんだ。だから、このことについて、そのことを無視したことにおいて今日の混乱があるわけで、その法律論争をしておるんです。あなたのやったことは、これは法律違反じゃないですか、こう言っておるんだ。
  22. 神田博

    神田国務大臣 当時の情勢といたしまして、支払い側は出席を拒んでおるのでございます。そこで、総会が成立しないのでございます。そこで、公益側からその間の事情を詳細文書をもって報告しておるのでございまして、それをまた今日の段階で報告をとれ、こうおっしゃったんでございますが、あれは三者構成でございますから、三者が出席しなければ会議にならない。支払い側がもう退去いたしましてそれに出席しない。出席を拒んでおるのでございますから、それ以上総会を開くわけにいかぬし、いわゆる正規の報告をとるわけにいかぬわけでございます。そういうことが明瞭になったわけでございますから、私はそのように踏み切った。こういうことでございます。
  23. 大原亨

    大原委員 全然了承できない。支払い側が出席を拒んだとあなたは言うけれども、十日の日曜日をおいて、十一日にはそれぞれの機関の討議を経て態度をきめたい、それまで待ってくれ、こういうことを言っておるのが、どこが出席を拒んだことになるのですか。あなたの独断ですよ。あなたは、その前には、一月二十日、国会再開までにまとめてくれ、こういうことを言っておるじゃないですか。何が出席を拒んだんですか。そういう段階はままあるにしても、そういう現象はあるにしても、公益委員辞任したこともあるけれども、この土俵というものに対する、医療保障という問題に対するそれぞれの国民権利義務に関する、税金にかわるような保険料や給付の問題がある問題について、あなたが一つの見識を持っておったならば、こういうばかげたことはないのだ。あなたと何にも知らないその会長は、世間では、弥次喜多みたいなものであって、気の向くまま、足の向くままにあちらこちらにぶらぶらして、行き当たりばったりだった、全く見識がなかった、こういうことを言っておる。あなたは出席を拒否したと言うけれども、それは重大なことですよ。支払い側は出席をとことんまで拒否して、ぶち破ろうという気持ちがあったんですか、明確にしてください。
  24. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。  私もいまのは少しことばが足らなかったと思います。九日に総会を開いて各側の意見をひとつ明瞭にしようということについて拒否された。それから、条件としては、いま大原さんのおっしゃるように、十二日まで待ってもらいたいということがあったことを承知いたしております。これについて公益側から、十二日まで待ちましたら総会にそういうことが反映されてものごとがまとまりましょうか、こういうことについての確約がなかった。そこで、公益側といたしましては、それではいつまで会議をやってもだらだらして答申ができない、こういう御判断だと思います。私は、基本的な考え方については大原委員のおっしゃる気持ちと変わっておりません。できるだけまとめていただきたいという基本的な考えにおいては全く同感であります。しかし、そのとき聞いた判断によりますと、これ以上日を幾ら使ってもなかなかまとまらぬ、しかし、その考え方は明瞭にわかった、九・五%のうちの八%というものはいい、それは一日にさかのぼる、一・五%の問題だ、だから大臣は、緊急是正なんだから、これ以上だらだらいってもめどがつかぬから、こういうことでございまして、その報告書並びに報告を聞きまして、そして責任において省議にはかってやったということは事実でございます。
  25. 大原亨

    大原委員 私は厚生大臣の真意がわからぬのです。あなたは事態の重大性を知っておりませんよ。あなたは、九日の日において出席を拒否した、こう言う。しかし、それぞれ機関を持っているわけです。保険団体も事業者団体も労働団体も、同盟会議も、それぞれ持っているのですから、機関に帰ってはかって、経過を了承して、ある場合においてはこういう意見を付するという場合もあるし、あるいは、反対であるけれども、この時点においてはこの問題についてはいかんともしがたいという、消極的な反対もあるでしょう。だから、前からあなたは二十日までいいと言っておったのだから、あなたは、こういう医療協という、いままでいろいろな大きな歴史があるが、みなが集まって医療保険の問題について討議するその土俵をぶちこわしたのだ。そこで、法律上の責任政治上の責任があるわけです。そこだけでは済まないのだ。現在の時点においては、法律違反であるないという議論を越えて、この事態をどう処理するか、こういうことについて、あなたは一応の見識というものがあってもいいはずだ。そうでなかったならば厚生大臣としては全く落第である。
  26. 神田博

    神田国務大臣 御意見として伺っておきます。
  27. 大原亨

    大原委員 これは私は全然了解できません。あなたは、公益委員報告は中央医療協の答申ではない、こういうことをはっきり答弁いたしておりますから、そういう前提に立ちまして、あなたの答弁は首尾一貫しない。法律的にも政治的にも一貫しない。この問題はあとの問題として、次の問題と関連をして私は追及したいと思うのであります。  次の問題は、国民権利義務に非常に深い関係のある財産権にかかわることについて、実施の時期を遡及してもよろしい、こういう法律的な根拠があればお示しを願いたい。
  28. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。  これは法律問題でございますので、そういった法律的なことは政府委員から答弁させますが、こういう例についての前例があるということも承知いたしておりまして、それに従ったわけでございます。
  29. 大原亨

    大原委員 時間の関係で私は質問を続けますが、政府委員も、この前の答弁によりますと、そういう意味のことを言っておるのであります。速記がございますからあとで読み上げますが、そういうことを言っている。前例があるということは、うしろにおられると思うのですが、川崎元厚生大臣のときであります。昭和三十六年です。私はいろいろ議事録を見ました。しかし、この場合の前例にならないのです。なぜかというと、昭和三十六年七月の中医協の場合においては、つまり権利義務、特に義務を負担する支払い側は、このことについて了承しておったのです。診療側は、病院側が一名代表いたしておりましたが、その他の人々は出席いたしておりませんでした。しかし、医師側のほうは、権利義務の関係でいうならば、不満ではあるけれどもプラスになるのです。財産権、既得権を侵害されないのです。だから、そのときは支払い側のほうが了承しておったのです。いまはそうじゃありませんよ。支払い側は、支払い側と一括して言うけれども、全国民を代表しているのです。全部の団体がそれぞれ自主性を持っているのです。それらの団体がこぞって反対しておるだけでなしに、知らないというところで職権告示がされておるのであります。だから、前には遡及した事実があるけれども、前例、慣例は法律根拠にはならぬ。だから、私は、遡及してもよろしいという法律根拠は何かということを聞いておるのであります。
  30. 小山進次郎

    小山政府委員 今回遡及するにあたりまして、二つの問題があったわけであります。一つは、すでにそのときまでに事実上決済が済んでいる患者と医療機関との間をどうするかという問題でございます。この点については、法理上いろいろの意見はありますけれども、これについて遡及をすることは避けるべきであるという判断のもとに、これは十四日から適用ということにいたしまして、実際上遡及をいたしておりません。もう一つの問題は、医療機関に保険者が支払い基金を通じて払う分でございます。これは、御承知のとおり、翌月の五日に請求を出しまして、翌月の二十日過ぎに逐次支払われるという仕組みになっております。この分については、実際の請求が出てまいりますのは翌月以降でございます。したがって、この分については、保険計算上の問題として、遡及しても支障がない、こういう法律解釈に基づいて遡及をしたわけでございます。
  31. 大原亨

    大原委員 それでは、ひとつこの問題は、私があとで実例をもって、いまの答弁がインチキであることを証明いたします。  もう一つ厚生大臣お尋ねしたいのですが、九日まではよろしいが十日以降はいけない、こういう法律根拠は何ですか。
  32. 小山進次郎

    小山政府委員 これは、形式上の基準というものはありません。やはりひとつの法律通念によって処理される問題でございます。
  33. 大原亨

    大原委員 その法律は、どういう法律根拠に基づいて、あるいはその法律の何条を基礎として普通の慣例その他を考慮した解釈というものがあるはずだ。全然根拠がないのに解釈があるはずがない。そういう法律上の根拠を明らかにしてもらいたい。これは大臣ですよ。大臣やりなさい。——あなたはだめですよ。あなたの答弁はこの前に聞いたのですよ。答弁しておる速記録がある。   〔発言する者あり〕
  34. 青木正

    青木委員長 いまの答弁に関連してですから。
  35. 小山進次郎

    小山政府委員 法律論として、遡及することが許されないという原則はないのでございます。どの程度に遡及するということが健全な社会常識のもとにおいて許されるかという、これは事実判断の問題でございます。そういう点から見まして、従来の慣例等を考えまして、いかにさかのぼっても、十日を過ぎてからさかのぼるということは適当ではあるまいということに、従来の行政の運用上なっているのでございます。
  36. 大原亨

    大原委員 五日まではよろしい、九日まではよろしい、一カ月はよろしい、二カ月はよろしい、そういうことをやれば独裁じゃないか。法律上の根拠なしに幾らでもさかのぼるのだったら、独裁じゃないですか。いわゆる神田メモというのは、審議会における各方面のそういう構成を無視し、意見、自主性を無視して、一方的に独裁的にやって、この土俵をぶちこわしたのだ。それだけではなしに、遡及した。その遡及には法律上の根拠はない。私は、いまの政府委員答弁は全然納得できないが、もう一回厚生大臣、いまの答弁を踏まえてあなたの解釈をお聞きしたい。どうなんです。   〔「法律運用は大臣責任だよ」と呼ぶ者あり〕
  37. 神田博

    神田国務大臣 これは、もちろん大臣責任でございますことは私は十分承知いたしておりますが、法律上の解釈は、やはりみなそれぞれ補佐官がございますから、その補佐官の十分な補佐によってこれを行なった。いま答弁がありましたような事情を十分承知いたしまして、そうして最終決定したいこういうことに御了承願いたいと思います。
  38. 大原亨

    大原委員 私は、国民権利義務に関係の深い問題について遡及して、そうして個人や保険団体に損害を与えるということはいけないと思う。だから、九日までは遡及してもよろしい、そういうものについて、法律的な根拠を明らかにしなさいといって、政府委員答弁したのです。あなたは政府委員答弁を何も聞いていないし、理解しておりはせぬ。政府委員答弁したことを聞いたならば、その上に立って、政治的にそれを踏まえて答弁ができるはずだ。あなたは厚生大臣の資格がないじゃないですか。全然法律政治のことも筋も知らないで、のこのこあちらこちらへ行って行きあたりばったりのことをやっているから、こんなことになるのだ。だから、法律のことについては政府委員答弁を許し、聞いたわけだ。だから、それを踏まえてあなたはどういうふうに判断するのだと私が追加して要求いたしました。つまり、政府委員答弁の中にも、慣例というものがあると言う。慣例は、私が指摘いたしましたように、支払い側が賛成すると反対するとでは、これは大違いです。だから、それは慣例にならぬと私は言っている。であるならば、政府のかってな解釈によって幾らでも——九日までならばよろしいと言っておいて、十日の午前零時二十分、おそらく告示文書ができ上がったのは一時、二時。そうやっておいて、実際には、法律上は官報に告示されて周知徹底されるときの時間、それが告示ですが、それが実際には十三日だった。それを九日の日付で一月一日にさかのぼっておる。こういうことをやるのは———————ダブルプレーだよ、法律違反を重ねて犯しているのだ。  そこで、私は、これは官房長官にお聞きいたしたいのでありますが、新聞報道等によりますと、あなたは、社会保険審議会や中央医療協の現状はいかにもまずい、そこで、支払い側の一部に工作をして切りくずす、たとえば事業主団体等を切りくずす、こういうふうな工作をするというふうに言われるのですが、これは、私の老婆心ですけれども、この問題はきわめて重大な問題ですから、フェアプレーにやらなければならぬと思うのです。おそらく、私はそういうことはないと思うけれども、官房長官はその点について、一部の報道につきまして事実かどうかをお答え願いたい。
  39. 青木正

    青木委員長 ただいまの用語のうちにやや穏当を欠くやのきらいもありましたので、その点は調べて善処いたしますから……。   〔発言する者あり〕
  40. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 大原委員の御質問でありまするが、まことにこの問題は重大問題でありますので、私といたしましては、各方面関係者等の御意見を十分に拝聴して努力をいたしたい、こういう意味合いの話でありまして、その点、御了承願いたいと思います。
  41. 大原亨

    大原委員 その答弁に関する限りは了承いたしましたが、もう一つお聞きしたいのです。やはり一部の報道ですが、官房長官の記者談話ですが、いま医療問題を審議いたしますのは、中央医療協と社会保険審議会があるわけであります。これは御承知のように、それぞれの構成、組み合わせが違いますが、三者構成であります。それから社会保障制度審議会は学識経験者をもって構成いたしておりまして、厚生大臣諮問機関ではありません。これは総理大臣諮問機関であります。そこで、政府あるいは一部の中におきまして、この際社会保障制度審議会の審議だけ何とか形を整えたならば中央突破すべきである、こういう意見があるやに——官房長官のおことばかどうかはっきりいたしませんが、あるやに私はその談話を通じまして伺ったのでございますけれども、その点についての真意をお聞かせをいただきたいと思います。
  42. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 いまの御質問趣旨でありまするが、両審議会ともに、もちろんこれは重要問題でありますからして、それらの申告といいますか、答申を得べき性質のものであると考えております。ただ問題は、御承知のようになかなか重要な関係に入ってまいっておりますので、はたして両審議会の答案が得られるかどうか。政府といたしましては、できますればもちろん政府の考えておるような考え方をもって答申をお願いしたいつもりではありますけれども、これは、いま御承知のような重要な関係になっておりますので、いずれにせよ審議会の考え方を十分に参酌してまいらなければならぬ、かように考えておるわけであります。
  43. 大原亨

    大原委員 まだたくさん質問があるわけですが、そこで私は、重要な問題につきまして総理大臣にお答えいただきたいと思うのです。つまり、いままでの質疑応答を見まして御理解をいただきたいと思うのでありますが、私どももこの医療保障の問題、社会保障の問題は、それぞれ主張の立場はあっても、私どもとしてはそれぞれの立場で主張を推進することが日本全体の国民医療を前進させるのだ、そういう確信の上に立ってやっておるわけであります。しかるに問題は、いわゆる神田メモを通じまして、これが中医協その他の場所におきまして既成事実として押しつけられる、決定として押しつけられる。そういうことが繰り返されて、そして結局は社会保険審議会中央医療協議会という三者構成土俵において、こういう重要な問題について積極的に意見を出して、それを取りまとめる、そういう雰囲気を全然つくらなかったというところに神田厚生大臣の大失態があるわけであります。あなたは資格がいなわけであります。あなたは、実際にはもう厚生大臣の機能はないわけですよ。厚生大臣の席にすわっておるのはおかしいのだ。それはそのことといたしまして、そういう重大な事態になっておるわけでございますが、この事態を救済する道はないことはないのです、これは総理大臣の決断ですけれども。というのは、厚生大臣法制局長官も言いましたが、予算措置をしたのは、これは財源の準備であって、法律案については、健康保険の改正案については、この原案につきまして諮問を求めておるのでありますという答弁を一応したわけだ。これは形式答弁であります。しかしながら実質は、申し上げたように、一月一日からあるいは一月十四日から窓口の支払いも診療点数も全部変わって、個人負担になるだけでなしに、四月一日に総報酬制の断行あるいは薬価の個人負担、本人の二千円までの負担、こういう事実が直結をいたしておる。そこに一般予算とは違う、給付と保険料が直結しておる特殊事情があるわけであります。だから、その事情を無視しておるところに、そういう一般的な答弁はおかしいわけですが、問題は、予算案としては国会に出ておるけれども、健康保険法の改正案について中央医療協や社会保障制度審議会の場においていろいろな積極的な討議の結果意見が出たならば、これは官房長官総理大臣も尊重するというのでありますから、出たならば、この問題については当然法律案について修正を加える、撤回する、修正を加える、いろいろあるだろうが、そういう問題について当然意見を尊重いたしますということが前提とならなければならぬ。そういう前提がないから、今日の混迷を来たしておる。そういう意味において、問題の中心がはっきりいたしましたが、総理大臣は、社会保障制度審議会、中央医療協の場を尊重し、そうして、そこの討議において意見が出た場合においては、それを健康保険法案改正の原案——原案は出ておるけれども、閣議は決定しておるらしいが、その原案にこだわらないで十分意見を尊重するんだ、そういう決意があるかどうかということについて、民主主義のルールについて調和を説く総理大臣はどう考えるのか、こういう点について御見解を示していただきたいと思うのであります。
  44. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たびたびお答えいたしておりますように、答申があれば答申趣旨を尊重する、これは私どものはっきりした態度であります。ことに今回は、この委員会を通じましても、また一般的にもたいへん問題になっておる医療保険の問題でございますから、特にただいま申し上げたような基本方針をはっきりこの席で申し上げておきます。
  45. 青木正

    青木委員長 滝井義高君より関連質問の申し出があります。大原君の持ち時間の範囲内でこれを許します。滝井義高君。
  46. 滝井義高

    滝井委員 さいぜんの官房長官答弁ですが、中央医療協議会なり社会保険審議会、あるいは社会保障制度審議会等がなかなか答申がもらえぬ情勢だ、しかし、政府としては政府の考え方を答申願いたい、こういう御答弁があったわけです。この政府の考え方というのは、神田田中メモが基礎になっておることは明らかです。  そこで、神田さんにお尋ねをいたしたいのは、この神田メモにおける薬剤費というのは一体何ですか。薬剤費の一部負担という薬剤費とは何か。これはあなた方二人がやっておるのだから……。薬剤費というのはどういうものか、ひとつここで御答弁願いたい。——政府委員答弁じゃだめですよ、あなたと二人でやっているんだから。薬剤費を聞いている。薬剤費とは何か。
  47. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。  薬価代というのは通称薬代、こういうふうに考えております。
  48. 滝井義高

    滝井委員 あなた方がそう言うだろうと私は思った。そこで神田さん、いいですか、人にたよってはいけないのです。ここは政治家がきちっと腹があるかどうかの大事な問題です。こういうように大事なところになると、人の意見をいつもたよっていくから問題になる。小さいところだと言うけれども、これがいまの問題の一番の大問題なんです。そして薬価代には三つあるのですよ。まず第一の薬価代は、薬価基準に登載をされておる薬価があるのです。一つは患者が窓口で医者に支払う薬価があるのです。支払う薬価を計算の基礎とするあなたが告示をする薬価があるのです。三つある。一体、大蔵大臣とあなたがきめた薬価、薬剤費とは何ですか。薬代とは一体何ですか、その三つの一体どれですか。
  49. 神田博

    神田国務大臣 お答えいたします。  滝井さんは専門家ですから、ひとつ私のほうも政府委員から間違いなく答弁させます。
  50. 滝井義高

    滝井委員 これは、私はメモのことを尋ねているのです。第一、こういう政治がいけないのですよ。こういうところに間違いがあるのですよ。いままでのあなたのすべての間違いは、こういうところにあった。ある場合には支払い側に話す、ある場合には医療側に話す、ある場合には公益側に話すという、話すときどきの基盤解釈というものをきちっとしておかぬから、こういう問題が起こってくる。厚生大臣と大蔵大臣メモをした。そして、そのメモに三役も立ち会っておった。その政府のメモに基づく答申をぜひしてもらいたい、こういうことでしょう。ところが、おきめになった薬剤費というのは一体何ぞやということを二人が意思統一をしていなくて、薬代の半額を負担するというのはナンセンスですよ。こういうナンセンスな、非科学的な政治をやっているところに日本の政治混乱がある。二人とも知らない。田中大蔵大臣、それじゃ一体薬剤費とは何ですか。これを一々事務当局に聞かなければならぬという政治がありますか。こんなに日本の九千七百万の国民が大問題にしている問題を、その二人のきめたメモ根拠がわからなかったということでは処置ないではないか。(「大体の方針だよ」と呼ぶ者あり)大体の方針といったって、これは一番大事なところじゃないですか。
  51. 小山進次郎

    小山政府委員 でき上がりましたメモを客観的に解釈してみますと、おそらく薬価基準によって計算される被保険者薬剤費分の半額を負担させる、こういう趣旨だと解釈すべきだと思います。どういう考え方ででき上がったかということは、私ども承知しておりません。
  52. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、薬価基準というのは、医者が買う値段ですか。
  53. 小山進次郎

    小山政府委員 御承知のように、薬価基準に基づいて医療機関が薬剤の対価の支払いを受け、またそれがほかの診療費と一緒になっていま患者の一部負担、たとえば家族の場合は五割、また国保では三割でございますが、それの計算の基礎になっているわけであります。そういう意味における薬価基準によって計算された薬剤費、こういうふうに理解すべきものと思います。
  54. 滝井義高

    滝井委員 厚生大臣、いまのはどういうものかわかりますか。私もわからぬのです。いまの答弁ではどうですか。平均薬価のことを言うのですか。
  55. 小山進次郎

    小山政府委員 御承知のとおり、薬価基準は、いま五千三百程度の薬品について各個別々にきまっております。その各個別々にきまっている薬価基準によって計算された薬剤の金を、それぞれ実際に投薬をされる場合に計算をして、その半分とかあるいはしかるべき割合で負担をしていく、こういうことになるわけであります。
  56. 滝井義高

    滝井委員 よくわかりません。とにかく薬剤費というのはよくわからない。わからないけれども、おそらくこういうことだろうと推定をしますがね。  そうしますと、神田厚生大臣、一体そういうことで半額をとれますか。いま国立病院の金は、本人だったら初診のとき百円、入院三十円とっているのです。幾ら未収があると思いますか。それが一体とれますか。国立病院としての未収が幾らあると思うのですか。——私が言います。国立療養所で十四億円ですよ。国立病院で七億円。いまの百円と三十円で二十二、三億円の累積があるのですよ。これだけあるのですよ。これから二千円を限度として、二千円をとれますか。絶対とれない。これだけあるのですよ。調べてごらんなさい。私は会計検査院へ行って調べてきた。そうして、いまのような何かわからぬような薬剤費のとり方で、これは医者の事務がたいへんです。一体どこで二千円を切りますか。こういうできぬことをどんどん——国立病院でさえも、いま結核療養所は十四億円の未収金があるのですよ。こういうことを平気で政府がやっている。これをやろうというのですが、これをやったら、療養担当者側はまた反対ですよ、とれないのだから。とれなくて、一枚の請求書を書くのに十分から十五分かかりますよ。私はやってみた。そうすると、これだけみんなから追い詰められておっても、まだ政府は答申どおりにやりたいということはだめですよ。だから、まだここで不幸中の幸いですよ、社会保障制度審議会も社会保険審議会も通っていないのだから。したがって、政府の案はコンクリートされていない。コンクリートされていないので、政府はこの際一歩下がって、静かに国民九千七百万の声を聞いて検討する意思があるかどうかということです。佐藤総理、これだけ答弁してもらえば、これから先の審議はスムーズにいきます。どうですか。
  57. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 滝井さんも専門家だからよく御存じですが、九千万国民意思を聞くという、これが今日までできておる各種審議会だ、かように思います。だから、その審議会において十分御審議を願って、そうして答申を出していただく、この点は、先ほど来答申があれば政府はもちろん尊重しますとお答えしておるとおりでございます。
  58. 青木正

    青木委員長 約束の時間がまいっております、大原亨君。
  59. 大原亨

    大原委員 いま私の質問に対する答弁と、それから滝井質問に対しましての答弁につきまして、総理大臣社会保険審議会中央医療協議会——前の答弁から、三者構成ではあるし、この場というものは調和の精神にしたがって答申を尊重する、こういうことである。そうして事態を収拾したいということですね。つまりこのことは、政府が提案をされております社会保険法の改正案の政府原案にはこだわらないで、十分ひとつ意見を言ってくれと、いままでの硬直いたしました態度というものを一てきして、そうして、こわれた土俵を民主的なルールに乗せるのだ、こういうたてまえでこの問題に対処するというお考えでございますか。いかがですか。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 何度も申し上げておりますように、これは三者構成だ、こういうところに問題があるわけです。支払い側、また受け取り側、また実際の診療の実情等々あるわけでございます。政府の考え方といたしましては、この審議を通じて、たいへんな後退ではないか、かようにいわれておりますが、私ども一番心配しておりますのは、この保険制度の基礎を強固にしない限り、この制度を続けていくということは非常に困難なのではないか、こういう意味から、今回の改正も、人によってはいろんな見方があろうと思いますが、まずいわば一歩後退二歩前進、こういう考え方のもとに整理をいたしておるわけであります。したがって、今日政府が原案を提案しておる、それにつきましては、十分の確信を持っております。よくこの間の事情を御了承いただくならば、おそらく政府の考え方を支持願えるのじゃないか。ただいま、政府の考え方にとらわれないで自由自在にと、かようなお話でございますが、私は、その点は各審議会におきまして、この政府の案に対しての御答申がいただけるのだ、このことを心から期待はいたしております。もちろんその審議をしてみないことには、この結論を出すわけにはまいらない、かように私は考えますが、先ほど来申し上げますように、何度も繰り返して申し上げますように、その答申趣旨は私ども十分尊重する、かようにお考えをいただきたいと思います。
  61. 青木正

    青木委員長 時間が参っておりますから……。
  62. 大原亨

    大原委員 総理大臣、いまの御答弁につきましてはなお明確でない点もあるのですが、しかし、厚生大臣との一問一答を通じて明らかになった事態に基づいて、両三者構成審議会の意見を尊重するという御答弁というふうに確認はいたします。うなずいておられますから、いたしますが、しかし、問題はいろいろとこれに伴う予算措置等、その他の問題がたくさんあるわけであります。この問題につきましては、なお触れる時間がないわけであります。しかし、いま薬剤の話がありましたが、私はしろうとですけれども、医療保険の中で一番の問題点は薬の費用であります。全部が、医者も犠牲を負い、国民もそれぞれ保険料を出しておるのに、薬業メーカーだけが野放しである。薬業メーカーに不景気なしだ。薬価基準に登録されるならば、価格が保証されて、そうして、それを割り引いて取引するならば幾らでも売れる、こういう仕組みだ。そうして、それが医者にかかり、患者にかかるという仕組みだ。それが総医療費一兆三十九億円の三〇・八%を占めようということなんだ。日本のように、五千種も薬が野放しのような状況で、メーカーの一方的な資料によって認可されておる、許可されておる、そういう国は世界じゅうどこにもないわけです。そんなことはないわけです。だから、そういうことで私どもが考えてみると、私は申し上げる時間がないから、これで徹底的に議論したいと思ったけれども、厚生大臣がだめだからなかなか進みやしないのです。昭和三十年に、今井一男さんその他学識経験者が七人委員会をつくって答申をしているんです。たとえばバルク・ラインの九〇方式にしても、バルク・ラインの五〇方式なりをとって、そうして、それで購入できないものに対しては、国が公団やあるいは特別の医師会等の事業団等に付託をいたしまして、コストを下げる方法がある、そうすれば、その薬代によって、分配については医者の技術料を尊重する、国民負担を下げていく、こういうことがあるのです。厚生省のメーカーとのつながり、メーカーと学者とのつながり、そういうもの等についても、私は全部資料を持っておるわけです。このことを徹底的に私は国会において議論をして、そして、私どもの打開の道を見出す一つの方途を見つけることができる、こういうふうに私どもは考えておった。だから、問題は事医療に関する問題で、命に関係する問題で、討議をすれば徹底的に討議できる。事は緊急是正の問題であるというふうに厚生大臣は言うけれども、緊急是正も行き当たりばったりで積み重ねていくと、矛盾が累積するわけだ。だから、しっかり見識を持った厚生大臣がこのことを処理しなければならぬ。そういうことは不適格なんだ、あれは。だから、事はきわめて重大であって、問題はたくさんある。あるけれども、前向きの形で前進をするということで、虚心たんかいに関係者の意見を聞いて、そしてこわれた土俵を再建をして、民主主義のルールを確立する、こういうことが私は必要ではないかという点で、総理大臣の御答弁に対しまして、私のそういう意見を留保いたしまして、将来この問題については徹底的に機会を設けて議論をする、こういう点をお話しを申し上げておきたいのであります。  最後に一つだけ。発言があるようですから、そのときに、私の質問に対しましてお答えいただきたいのですが、最後に一言ある。というのは、東京都の水道料金の六割四分三厘値上げというものが発表されました。次から次へと公共企業体、国民健保の七割とか六割とか五割とか値上げ案が発表されておるわけです。水道料金について私は二点にわたってお尋ねするのですが、いままでこういう東京都の水道料金値上げについて、どういう措置をとったか、あるいは将来どういう措置をとろうとしているのか。そういう心がまえの点について、公共料金に関係する問題といたしまして、総理大臣のお考えをお聞かせをいただきたいのであります。答弁いかんによりましては再質問いたしますが、これをもちまして大体終わりたいと思います。
  63. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 医療費の問題につきまして、いろいろ御議論がございました。社会党の御主張、これは私どもと基本的にどうも考え方が違っておるようですが、しかし、私は先ほど申しましたように、まずその基盤を強固にする、しかる上に医療保険を整備していく、こういう形で進みたい、かように私は考えております。  また、薬価基準のお話が出ております。代々の厚生大臣は、薬価基準をいかにきめるかということでたいへん苦しんでおります。この点も御了承いただきたい。薬価基準については、厚生大臣は何も知らないというような言い方でなしに、基礎的には薬価基準はいかにあるべきか、各五千以上の薬について、個々のものと真剣に取り組んでおる、この実情は御了承いただきたいと思います。  したがいまして、ただいま医療費の問題は、最後に私も申し上げておかないと気が済まない。たいへん神田厚生大臣を御非難のようですが、わが自由民主党、また同時に佐藤内閣といたしましては、神田厚生大臣を信頼しております。このことだけははっきり申し上げておきます。  さらにまた、水道料金のお尋ねがございました。この水道料金につきましては、もちろんこれは自治体のやることでございます。これは簡単に一方的に告示するものでもないだろう、かように思いますが、都議会等におきましても十分審議されるだろう。しこうして、この問題は、事前に政府側とは何ら打ち合わせはございませんでした。この点は、すでに官房長官から新聞等に発表いたしておりますように、事前に打ち合わせば全然ない。したがって、都議会において十分審議されるだろう、かように私は考えております。
  64. 青木正

    青木委員長 これにて大原享君の質疑は終了いたしました。  理事の方に申し上げますが、委員会休憩後直ちに理事会を開きますから、委員長室に御参集ください。  午後は一時半から開くこととし、この際暫時休憩いたします。    午前十一時二十七分休憩      ————◇—————    午後一時四十二分開議
  65. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十年度総予算案に対する質疑を続行いたします。  石橋政嗣君
  66. 石橋政嗣

    ○石橋委員 私は、主として外交、防衛に関して、佐藤総理並びに関係閣僚にいろいろとお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初にお尋ねしたいと思いますのは、ベトナムの問題でございます。アメリカは現在ベトナムにおいて全く進退きわまっておる、こういう見方をしておるわけでございますが、これは、何もわれわれだけではなくて、アメリカの国内におきましても、すでに有識者はそういう認識を持っておるようであります。また政府のほうでも、この通常国会の冒頭に行なわれました外交演説の中で、「ベトナムの政情と治安はとみに困難の度を加え、ベトナム国民の窮状にはまことに同情すべきものがあります。」と、ややこれに近い見解が述べられておるわけです。フランスの有名なガロアも、フランス人は、米国政府の南ベトナム問題処理の方法は、破局に通ずるものだと信じている、われわれは、ベトナムから痛切な教訓を得た、それにもかかわらず米国人がまさにわれわれがやったと同じことを繰り返しているのを見て、驚いているというようなことを言っております。  この現状、どろ沼のような現状からアメリカがはい出す道ということになりますと、私は、三つあるんじゃないかと思います。一つは、軍隊を完全に撤去させる、一切手を引いてしまうというやり方です。第二は、武力北進と普通いっておりますが、北ベトナムのほうにまで戦争を拡大することによって、直接北ベトナムなりその背後にあると称しております中国との武力対決の中で打開策を求めよう、こういういき方、これが第二として考えられるものだと思うのです。第三は、われわれがかねがね主張いたしておりますとおり、平和的な話し合いによって解決をはかる、こういう三つの道しか残されていないんじゃないかと思うのですが、アメリカにとって第一の道は、これは問題外ということになるわけでしょう。そうだとすると、残された道は第二か第三かということになるわけです。われわれが最もおそれておりますのが、この第二の道であることはいうまでもありません。アメリカと中国の間には、中国が核実験をしたとはいいながらも、まだアメリカとソ連の間にありますようないわゆる核手詰まりというような状態はないわけです。それだけにこの可能性が絶えず世界を脅かしておると見ていいのじゃないか。アメリカの軍部におきましても、幾たびかこの意見が述べられております。この考え方の裏には、核実験から核武装までの間に若干の時間がある、いまのうちに本元の中国をたたいてしまえ、こういう考えの裏には、さらに中ソの関係というものも考慮に入っておると思うのですが、こういう危険な道、この道を歩まれることを世界の多くの人たちは心配もしておりますし、日本としても重大な関心を持たざるを得ないわけです。これをどうにか防いでおるのは、ただ一つ、朝鮮戦争の経験ではないかと思うわけです。ところが、昨日来の米軍の行動を見ておりますと、いよいよもってこの第二の道を歩め始める決意をしたのではないか、こういう心配が出てくるわけです。これはたいへんなことであります。このことは、最近のパリ発の通信でも伝えられておりますように、パリで、あるいはサイゴンで、南北ベトナムの間に何らか和平交渉が行なわれておるのではないかというふうな報道が盛んに流れておる。こういうものをいまのうちにたたきつぶしてしまえというような考え方も入ってくるかもしれない。しかし、別の見方をすれば、コスイギン首相がベトナムに行った。あるいはバンディ大統領特別補佐官もベトナムに行った。これは南北違いますけれども。そういう一連の動きというものの背景から、やはりこの話し合いを考え始めたのではないか。その話し合いをするにしても、やはり有利な条件をここで確保しておく必要がある、そういう考え方の上に立ってこういう強硬な、一種の武力北進とも考えられる北ベトナムの南部地帯の爆撃というような乱暴なことを始めたのではないか、こういうふうな二つの見方が出てくると思うのですが、この点について、総理は一体どういう見通しを持っておられるか。最近ジョンソン大統領ともこの問題について十分話し合いをされて、情勢の把握もなさっておられると思いますし、アメリカの方針もよくのみ込んだ上で、支持したり感謝したりして帰られたのだと思いますから、その新知識の上に立って、この見通しをひとつ述べていただきたいと思うのです。
  67. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、最近ジョンソン大統領と会談をいたしましたが、この内容等についての大柱になることは、すでに本会議等で説明をいたしましたので、十分御理解をいただいておると思います。私自身の考え方を申しますと、極東、アジアの平和、これはたいへん私どもの心から願っておるところであります。ことに、日本がアジアにいる、そういうばかりではなく、その処置を誤るならば、これは世界的な平和にまで悪影響を及ぼすものだ、かように実は考えまして、たいへん慎重な態度でこれに処してほしい、私どもがこのことをジョンソン大統領に申しましたのは、申すまでもなく、平和、これを愛好しておる日本民族の念願なんだ、熱願なんだ、かような意味から申し上げたのであります。そうして、ただいまの情勢、ことに昨日の爆撃等からいろいろの批判が出てくる。またいろいろの意見が立つ、かように考えますが、私自身は、この種のものが戦争拡大への方向をたどらないこと、これがまた一つのポイントだと思います。  ただいまお話がありましたように、一、二、三と、三つに分けてのお尋ねでございますが、おそらく三の方向をたどることがこの事態を安定さす、あるいは落ちつかす方法だと思います。しかし、それまでに昨日のような処置がとられたということ、攻撃が行なわれたということ、そこで一部危惧あるいは不安の念を持つ者もありますけれども、私は、昨日のような爆撃行為、これを直ちに拡大破局への道をたどると、そういう結論は私自身は出したくありません。これは、どこまでも部分的な問題だ、かように考えて、そうして一日も早く戦火がおさまるようにそうしていま苦しんでおるベトナム住民の人々が、その生活が安定するように、またさらに向上するように、そういう意味に役立つことを心から願っておる。したがいまして、ただいま、きのう爆撃したばかりだ、アメリカはどういうような処置をとっておる、あるいは拡大する意向ではないか、かように言われますが、私は、さような考え方はおそらくないのではないか。また私どもも、ただいま、昨日までのところでは——きょう得ておる材料だけでこれを判断することもなかなか困難でありますけれども、ただいままで私どもが得た情報だけでは、ただ部分的報復手段、かようにしかこの問題はないのだ、その意味を持つものだ、かように思いますので、関係各方面で冷静にこの事態の成り行きを見ること、そうして、拡大を希望しないわれわれの気持ちを率直に表明すること、これが望ましい態度ではないだろうか、かように私は思います。
  68. 石橋政嗣

    ○石橋委員 戦争拡大を望まないという基本的な考え方の上に立っていろいろ述べられたわけでございますが、しかし、総理がほんとうにそういうお気持ちを持っておられるとするならば、いろいろと最近の言動の中にふに落ちない問題がたくさんあるわけなんです。いまここでおっしゃっていることと、ほかで言ったりしていることと違うのではないか、こういう懸念を私どもは持っております。それを具体的にお尋ねをしていきたいと思うのですけれども、いまの発言の中で、部分的な報復措置だというようなことをおっしゃいましたが、これは重大な問題だと思うのです。朝鮮戦争の場合を思い出していただいてもわかるように、三十八度線から北に行くという場合には、国連で決議をしております。鴨緑江を越えようかというようなときには、アメリカの国内でも大問題になりまして、マッカーサーが責任をとらされるという事態まで起きておる。現在のベトナムにおきましても、十七度線を越えて北に対して何らかの措置を加えるということは、これはたいへんなことなんです。単なる部分的な報復措置だなんだということで、これは解決のつく問題ではございません。  この問題はあとで触れたいと思いますが、私が、いま戦争の拡大を望まないんだ、アメリカとしてもそういうことは軽々にやるまいという希望的な観測までつけ加えておられるわけですけれども、それでは実際にそのような信念に基づいて総理は行動しておられるか。一つの例をあげましょう。これは、最近非常に国際的に問題になっております韓国軍隊のベトナム派遣であります。これに対しまして、総理がジョンソン大統領と会談の際に、これを支持するという表明をしておる。一体何事だと言わざるを得ないのです。首をかしげておられますけれども、このような見解をはっきりと述べておるのは韓国の李東元外相であります。イ・トンウォンと読むのですか。この李外相が、一月十九日の韓国の議会において、南ベトナムに軍隊を派遣するという韓国政府の決定に対して海外ではどういう反響を呼んでおるかという証言をしております。その中で明らかに、佐藤榮作首相は、さきのリンドン・B・ジョンソン大統領との会談の際、韓国軍隊を南ベトナムに派遣する計画に支持を表明した。韓国の国会でこれを証言しておるのですよ。拡大を望まないと言っておって、実際にはこんなことを言っておるじゃありませんか。この事実はどうなんです。
  69. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま外務大臣と、ジョンソン大統領と私が話したときに、こういう事態について触れたかどうか確かめておりましたが、外務大臣も、そういう話は知らないと。私個人的にジョンソン大統領と直接会いましたが、そういう話は出ておりません。これははっきり申し上げます。ただいま韓国の国会において証言をされたという、その証言があるじゃないか、かように言われますが、私は、それに責任は全然ございません。
  70. 石橋政嗣

    ○石橋委員 もし、総理がジョンソン大統領との会談の席上で、そういうことを言ってないというならば、韓国の議会で、しかも政府の責任者である外務大臣がうそを言ったということになりますよ。(発言する者あり)そう考えざるを得ない。あなたがうそを言っているか、韓国の外務大臣がうそを言っているか、どちらかしかない、明確にこういう報道が出てきておるのですから。それでは、あなたは、こういうふうな事実がないと、言った覚えがないとおっしゃるならば、早急に調べていただいて、韓国政府に対して厳重に抗議をいたしますか。いかがです。
  71. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、韓国とは、日韓交渉の妥結の方法についていろいろ協議をいたしておりますが、ただいまのようなお話が唐突に出てまいりましたけれども、これは、私、韓国の外務大臣のはっきりした事柄は、新聞だけの報道でとやかく判断するわけにはいかない、かように思います。(「国会の答弁だ」と呼ぶ者あり)国会の答弁が、速記その他議事録に載っておるかどうか。そういうことも一つの問題だと思いますが、とにかくいずれにいたしましても、問題は韓国内のことでございます。私自身に関係のないこと、私自身はそういうことについては責任は持ちません。
  72. 石橋政嗣

    ○石橋委員 日韓会談を進めておるからこそ、私は問題にしたいのです。韓国の国会で韓国の外務大臣が言ったことだから、おれは知らぬといって済むことじゃありませんですよ。あなたが、大統領との会談でそういうことを言ってない。言ってないにもかかわらず、韓国の国会で外務大臣が、言ったかのごとく言う。うそつきということになりますよ、ほんとうにあなたがおっしゃってなければ。そういううそつきの人を相手にして、まともな日韓会談ができますか。どちらかがうそを言っているということになるのだから。それを、向こうの国会で言ったことだから関係しない。そういうことを言ったかどうか調べもしないというのですか。いかがですか。
  73. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも片言隻句をとらえて、信用できるとかできないとか、こういうことは私は当たらない、かように申しておるのであります。私どもは、いま日韓交渉の本筋のものをやっておるのでございまして、これは十分責任の持てることです。ただいま各国にはいろいろのことがございましょうが、しかし、あまり内政干渉にわたるようなことは、私自身はしたくございません。
  74. 石橋政嗣

    ○石橋委員 これは、一月二十日のジャパンタイムズに、ソウル発としてちゃんと出ておるわけなんです。ジャパンタイムズの社長は、あなた方が信頼しております福島さんだと思いますが、そういうインチキな記事を載せるとは私も思いません。あなたがうそを言っているか、韓国の外務大臣がうそを言っているか、どっちかということになるわけです。これは、不問に付して済むような問題じゃないと思うのです。少なくとも冒頭に申し上げましたように、あなたがほんとうに南ベトナムの戦争が拡大することを何とか避けたいという真剣な気持ちがあるとするならば、こんなことばも出てこないはずです。こういうような立場に立って私はお尋ねをしたわけなんです。しかも、いま一つは、もしこういううそを言うということになると——いまの日韓会談の当の相手方の責任者なんです。そういううそつきの外務大臣とまともな交渉はできないという懸念も出てくるわけです。そういう意味でお尋ねをしたわけです。  なお、総理が渡米をいたします直前に、アメリカのUSニューズ・アンド・ワールド・レポートという社の記者と記者会見をやっておられるわけですが、そのときにも、南ベトナムの問題については、ジョンソン大統領と討議したいと考えておるということを述べておられます。その際に、日本として南ベトナムに対して具体的にどんな役割りを果たせるのかという質問をされたのに対して、憲法上軍備を禁じられているので、われわれは軍事的援助は提供することができない、しかし精神的支援以上の何ものかを与えることができればたいへんうれしい、非常に積極的な発言をしております。これも、憲法上の制約さえなければいまにでも出ていって応援したいぐらいの気持ちの表明なんです。それはさておいても、精神的支援以上の何ものかを与えたいと非常に意欲的に述べておられる。一体現状において、このベトナムにあなたは具体的にどういう援助を考えておられるのですか。
  75. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が申したのは、先ほど来申しておるように、ベトナム住民が非常に長い戦争で苦労しておる、この現状について心からの同情をしておる。したがって、私は先ほど来ことばを大にして申し上げておりますが、民生の安定にお役に立つこと、同時にまた、これが生活向上に役立つならば私はしたい。これは、米軍を支持するというようなことはどこにも言ってはおりません。よく読んでいただきたいのですが、ベトナム住民に対しての心からの同情であります。これは間違いございません。
  76. 石橋政嗣

    ○石橋委員 アメリカへ行きまして共同声明を出されたときに、アメリカが南ベトナムでやっていることに感謝をし、支持を表明しているじゃありませんか。矛盾していますよ。いまベトナムの民衆が非常に困っておる、苦況にあるその原因は一体どこにあるのですか。アメリカが武力介入をしてあのような紛争を拡大しておるところにあるじゃありませんか。それでなければ、あれほどばく大な金をつぎ込んで、しかも民衆の支持を得られない原因は一体どこにありますか。いま指導者になっておるグエン・カーン自身すら、やや反米的な傾向を帯びてきているという。テーラー大使とは意見が対立して、どうにもならぬ。このような状態の中で、あなたがほんとうに拡大を望まない、平和的に何とかこの紛争を解決してもらいたいという気持ちがあるならば、私はもっと別の考え方が出てこなければいかぬと思う。たとえば根底にあるとおっしゃっておる中国の問題にしても、アメリカと中国との間に立って何とかこれを緩和の方策を講ずべきじゃないか、こういうことも再三皆さん方から言われておる。ところが、私は、そういうこととはかけ離れた形で、逆に火種をあおっておるような感じがしてしようがない。第一、このアメリカの軍事介入というものが奇怪千万だと思う。一体、アメリカは何を根拠に南ベトナムに対してあのような軍事的な介入をしているのですか、その根拠を明らかにしてください。
  77. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まず、社会党の方に私がお尋ねするのも変ですが、社会党の方もベトナム住民のいまの苦しさ、これには心から同情されるでしょう。同情されないとは言わないだろう。私は、先ほど来心から同情しておるというのは、そういう立場です。これには間違いございません。そうして、いまのアメリカの兵隊があそこに出ておるのは、ベトナム政府から要請を受けて出て行っておる。これは、すでに御承知のはずなんです。これは、国連で国連軍が出かけるという、それに対して国連では一致することができなかった。安保理事会でこれが一致の意見がなかった。その後においてベトナム政府からの要請で出かけていっておる。これは、もうはっきりした事実なんです。ただいま言われるように、このベトナム住民がいま塗炭の苦しみにいること、この状態はだれも否定ができないだろう、このことをお互いに助けるという、これは社会党の方も私も同じだと思う。別にこれが戦争を誘発しているものじゃないと思う。こういう事柄でこれは戦争を誘発しているのだ、かような言いがかりをつけられることは、私は非常に迷惑です。
  78. 石橋政嗣

    ○石橋委員 アメリカの南ベトナムに対する軍事行動、武力介入は、これは南ベトナム政府の要請だとおっしゃいました。一体南ベトナムにそのような権威のある政府があるのかどうか、私は逆にこちらからお尋ねしたいくらいなんです。それこそ何カ月かの寿命しか保つことができない。くるくる、くるくるクーデターの繰り返し、一体権威のある民衆の支持を得た政権などというものがいま南ベトナムにあるのか、まずこういう疑問が出てまいります。  しかし、そのことは一応それじゃ伏せておきましょう。それでは、南ベトナム政府の要請に基づいて米軍が出ていったと、こうおっしゃるから、それじゃお聞きしますけれども、南ベトナム政府がそれじゃお帰りくださいといえば、米軍はすなおに帰りますか。
  79. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だんだん仮定のお尋ねがございますが、こういう仮定のお尋ねには私はお答えをいたしません。
  80. 石橋政嗣

    ○石橋委員 あなた方が南ベトナムに対する米軍の武力干渉——私たちのことばでいえば武力干渉、これは正当な行為だというから聞いておるんじゃないですか。正当だというなら正当な理由を言いなさいよ。何が正当なのか。南ベトナム政府の要請があったから、だから行ったんだから正当だというならば、それじゃお帰りくださいと南ベトナム政府が言えば、当然帰るのが筋合いじゃないですか。それも言えないですか。——言えませんか。言えないということは、南ベトナム政府の意向にかかわらず行きたいときは行く、とどまりたければとどまる、こういうことになるのですよ。なぜ言えないのです。
  81. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私のほうの権限の問題ではございません。おそらくそういう仮定の問題についてはお答えしないでしょうが、これは、問題はアメリカ政府が判断することです。
  82. 石橋政嗣

    ○石橋委員 アメリカ政府が答えることだというけれども、アメリカ政府自身が答え切らないのですよ。二月四日の大統領の記者会見で、南ベトナム政府から帰ってくれといわれたら帰るかといったら答えてない。答えてないということは、はっきり申し上げておきますけれども、南ベトナム政府の意思なんというのは問題にしてないということですよ。これを侵略と言わずして何と言いますか。南ベトナム政府が要請したからなどという気のきいたことはおっしゃらないようにしていただきたい、答えられないならば。  しかも、ますます奇怪なことは続いているわけです。これは、それじゃ仮定の問題じゃありませんからお聞きしますが、今度韓国の軍隊が南ベトナムに行くのは、これはアメリカの要請だそうですね。こういう証言がなされております。一体そんな権限がアメリカにあるのですか。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それは、米韓の問題ですから私は答えません。
  84. 石橋政嗣

    ○石橋委員 あなたは共同声明ではっきり述べておるのですよ。南ベトナムにおけるアメリカの現在のやり方を支持しているだけじゃなくて、感謝しているのですよ。やっていること全部をあなたは支持し、感謝しているのです。根拡も何もなしにアメリカの言うことなら何でもよろしい、何でも感謝します、そういうことじゃないでしょう。そうすると、アメリカがやっていることについて一応の関心は持っておられるはずです。しかも、ここの平和的ないわゆる解決というものをあなたは望んでおるとおっしゃるのだから、何とかして塗炭の苦しみにある南ベトナムの民衆を現状からはい出させたいと希望として述べているのだから、そういうものと逆行するような行為が出てくれば、疑問を持つのが当然じゃありませんか。あなた、お答えられないでしょう、根拠がないのだから。あなたがお答えないということは、根拠がないということに私は理解しておきますよ。アメリカが、南ベトナムに韓国の軍隊を派遣してください、——もってのほかです、そんなことは。何の権限がありますか。全然根拠ないですよ、こんなことは。これは条約にもないし、しかも、それだけじゃなくて、いわゆるアメリカの越権行為だということにも考えられる。少なくとも韓国の領域内あるいは近海においては、アメリカ軍は国連軍を自称しております。しかも韓国の軍隊は、このアメリカの司令官の指揮下に入っております。そういう韓国の領域内における指揮系統、片一方が命令をし片一方が命令を受ける関係にある、その系統そのまま南ベトナムのほうに持っていくなんというのは越権行為ですよ。アメリカは、まるでみずからが国連であるかのごとくふるまっておる。   〔発言する者多し〕
  85. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  86. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そういうアメリカに対して盲目的にあなたが追随し、感謝したり支持したりしている。そんなことでどうして平和的な解決を望んでおるなどという大きなことが言えますか。言っていることとしていることと全然違うということをはっきり申し上げたい。   〔発言する者多し〕
  87. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  88. 石橋政嗣

    ○石橋委員 しかも、韓国の軍隊が南ベトナムに行くというようなことになりますと、これは、われわれ日本にとっても非常に重要な問題として考えざるを得ない。いつこの十七度線の関係が三十八度線にはね返ってくるかもわからない。たいへんな問題ですよ。聞くところによりますと、この北ベトナムの南部地域に対する報復をきのうからやっているわけですが、これと関連した行為として私ども受け取っておるのですけれども、日本におきましても三軍が統合演習を始めておるようですが、そういう事実はありますか、防衛庁長官
  89. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 これは、先日来、かねてから計画されておりました帝都を中心とする防空演習を実施しておるのでございまして、現在のベトナム情勢等とは何らの関連はございません。
  90. 石橋政嗣

    ○石橋委員 もう少し詳しくお知らせを願いたいと思うのですが、帝都防空とおっしゃいましたけれども、日本に対して数十機の敵機が空襲してくるという想定のもとにやっているわけだ。南ベトナムにおいてあのような事態が発生したことと関連がないとおっしゃるけれども、十分に関係がありますよ。これがはね返ってきて日本に空襲というような事態も考えられぬこともない、そういう考え方の上に立ってやっておることは間違いないです。もう少し詳しくそれじゃ演習の想定をここでおっしゃってみぬですか。
  91. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 さっきの帝都と申しましたのは、東京を中心とするということばに訂正さしていただきます。  演習実施の概要につきましては、防衛局長から詳しく答弁をいたさせます。
  92. 海原治

    ○海原政府委員 お答え申し上げます。最近のベトナムにおける事態との関連において演習が行なわれているのじゃないか、こういう御質問でございますが、先生も十分御存じのように、私どもは年度の訓練計画というものを毎年年度の当初に立てて、これを実行しておるわけでございます。ただいま大臣から御説明いただきました演習も、ことしの年度の演習として昨年の二月ごろに大臣決裁になりましたものをただ実行しているわけでございますから、最近のベトナムとは何ら関係ございません。
  93. 石橋政嗣

    ○石橋委員 これ以上お尋ねしましてもおっしゃらないでしょうから、私は質問を次に移しますけれども、明らかに関連を持ってやっているのですよ。あなたたちはそれを否定するだけの話です。  それでは次に、中国の核実験成功によって世界の核戦略が一つの転機を迎えていると私は思います。これに関連しまして、日本の防衛という問題をいろいろ考えてみたいと思うのですが、その前に、この中国の核実験そのものについて、日本政府がどのようなとらえ方をしているかということをまずお聞きしておきたいと思う。これは防衛庁長官でけっこうですが、爆弾の種類なり威力なり、あるいはこれが水爆の完成とどういうつながりを持っているか、あるいは運搬手段としての航空機による運搬、これが可能になるのはいつごろと見ておるか、あるいは発射ミサイルの完成の時期、こういうものをいろいろ検討されていると思いますが、まずその辺の分析からお聞かせ願いたいと思います。
  94. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 中共の核爆発の実験につきましては、昨年の臨時国会においてもお答え申し上げましたとおりでございますが、わがほうといたしましては、いままでの情報によって察知しておりましたのよりは早く実験が行なわれた、そうしてまた、中共の核の進歩、発達というものが、世界が考え、またわれわれのほうとしても予想しておりましたのよりも相当進んだものであったということは、これは全世界が認めておるところで、御承知のとおりでございます。その後これが日本の防衛体制にどういう影響を及ぼすかというような質問もございましたが、われわれはあくまでも日本の防衛の基本方針でありまする核は持たない、核兵器の持ち込みは許さないという方針で、核はもっぱらアメリカに依存をしておりますので、核爆発が成功したから日本の防衛計画を変更するとか、あるいはこれに対処するというようなことは全然考えてはおりませんし、またその必要もないと認めておる次第でございます。  いずれにいたしましても、最初の核爆発の実験がありましても、これを核兵器として装備するまでにはまだまだいろいろな実験、研究を重ね、運搬手段においても相当の年月がかかるということが、これまた世界の常識でございますので、早急にこれは行なわれないであろうというような想定をいたしておったのでございます。わが日本自身としてこれらに対する情報をキャッチする機関も組織も何も持っておりませんで、アメリカの原子力委員会の発表等を参考にしておるだけであります。なお、これが運搬手段の開発ということは、いろいろな情報からいたしまして相当程度進んでおって、予想されたよりもかなり早く中共において第二回の実験が行なわれるのではないかというような情報も聞いてはおりまするが、確たる情報を持っておりません。
  95. 石橋政嗣

    ○石橋委員 その問題についてはいずれまたお尋ねをしますが、その前にちょっと参考のために聞いておきたいと思うのですが、これは、科学技術庁長官にお尋ねしますけれども、この間の本会議におきまして、自民党の福田議員が「わが国の高度の科学技術は、宇宙開発の面においても、世界の先進国の水準にすでに達しており、核実験のごときも、もしそれを欲するならば、いつでもこれをなし得る潜在力を持つに至っておるのであります。」と胸を張っておっしゃっておられた。確かに日本においては法律的にも原爆をつくることは許されません。政策としても、あなた方はこれをつくる政策をお持ち合わせになっておりません。しかし、そういうことを抜きにして、やろうと思えばという前提の上に立っての御意見だと思うのですが、そういう福田議員の前提の上でけっこうでございますけれども、そういう能力があるのか、あるとすればどのくらいかかるのか、この辺をひとつお教え願いたいと思います。
  96. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いまもお話がございましたように、わが国といたしましては原子力基本法というものが一般に存在しております。それから原子炉の材料のウラン、これは日本の資源がございませんから外国に依存しているわけでありますが、たとえば日米、日英、日加間にもそれぞれ二国間の条約、協定がございまして、これは平和的な利用にだけその物質は供給を受ける、そうして、必要に応じてはこれは査察の対象にもなる、こういうふうなかっこうになっておりますし、これは、一九五九年の状態でありますが、さらにその後、ウイーンに国際原子力機関ができました。これがまた日本との関係におきまして、日本における査察を担当することにもなっておりますことは御承知のとおりで、国内法の問題、あるいは国の政策としての問題、さらには国際間のそういうふうな約定の問題、いずれの点から申しましても、私はいまのような御質問にはお答えする立場にございません。
  97. 石橋政嗣

    ○石橋委員 自民党を代表して本会議で演説された福田さんは、胸を張ってこういうことをおっしゃっているが、あまり根拠はないというふうに理解しておきます。  そこで、本論に入りますが、中国の核に対処するためには独自の核武装の道を歩んでいくか——この場合には自力生産という道が一つあるわけですが、これはいま閉ざされている。そうしますと、アメリカから借りてくるなり、貸してもらうなり、供与してもらったりするという道があるわけですが、こういう道を歩んでいくか、それともアメリカの核戦力に依存するか、こういう二つの道が考えられるわけです。防衛庁長官答弁の中にも出ておったわけですけれども、当面政府は第二の、アメリカの核に依存するという道を選んだと理解してよろしゅうございますか。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本の国防、日本の安全、これは基本的に、ただいま御意見のありましたように日米安全保障条約、これを基礎にし、そうして国情、また国の予算上許す範囲において自衛力をつけて、これでわが国の安全を確保している、このことはよく御承知のとおりだと思います。
  99. 石橋政嗣

    ○石橋委員 私は、いま核の問題についてお尋ねをしているわけです。防衛庁長官がすでに答弁されているわけですが、私、今後質問を続けますために、まず総理に確認をしたわけなんです。結局、中国がやがて核武装をするだろう、これに対処する方法を、日本の防衛なり安全保障を考えていく場合に考えなければならぬ、そのためには二つの道が考えられるが、さしあたり独自の核武装というようなことは考えない、アメリカの核戦力に依存していこう、こういうお考えですかと念を押しておるわけです。
  100. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお答えいたしましたように、いかなる場合におきましても、わが国の安全確保、これは日米安全保障条約。それに基づいて、また国内において防衛体制を整備している、これは国内の国情に適応した処置でございます。そうして、わが国が核武装しないこと、核兵器の持ち込みを禁止していること、これは、先ほど来科学技術庁長官その他がお答えしたように、この態度には変わりはございません。
  101. 石橋政嗣

    ○石橋委員 この間の佐藤・ジョンソン共同声明によりましても、いまお答えになりました、いかなる武力攻撃に対しても日本を防衛するということを大統領も認めたし、安心なんだ、こういうことだと思うのです。そうしますと、この安保条約の第五条にいう「いずれか一方に対する武力攻撃」というものの中には、当然核攻撃も含まれるのだ、こういうふうに考えていいわけですね。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 武力攻撃の態業、これはいろいろに考えられるでしょうが、共同声明で申しましたいかなる攻撃に対してもというところであります、さように考えます。
  103. 石橋政嗣

    ○石橋委員 具体的に私聞いているわけです。いかなるというものの中には当然核攻撃も含まれるだろう。というのは、第五条にはいかなるなんということばはないのです。単に武力攻撃ということばがあるだけです。だから、この武力攻撃の中には核攻撃というものも当然含まれるというふうに解釈してようございますかと聞いている。
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 その武力攻撃、その中に入る、かように私は考えております。
  105. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そうしますと「いずれか一方に対する武力行撃」この中には核攻撃も含まれる。日本に対してかりに核攻撃が行なわれるということになった場合には、これは日米両国は共通の危険とみなして対処することになっております。そうすると、武力攻撃の中にも核攻撃というものが入ってくるということになると、この対処の方法の中にも、当然核による対処、こういう思想が入ってこなければ首尾一貫しないと思うのですが、核を使ってでも守ってあげます、こういうことなんですか。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、アメリカ合衆国がどういうような方法で日本を守ってくれるか、こういうことでございます。ただいまはその防衛手段、これは限定はいたしておりませんから、アメリカ自身のいろいろの考え方があるだろう、かように思います。誤解のないように申し上げますが、日本自身は縛られておることは、先ほど来何回も申し上げております。これは、自発的なみずからの意思によってこれは放棄し、これを縛っておる、この点を誤解のないように願っておきます。
  107. 石橋政嗣

    ○石橋委員 いかなる武力攻撃に対しても日本を防衛する、こういう大統領が約束をしておるわけです。このいかなるというものの中には核攻撃も含まれる、いまお認めになった。そうしますと、核攻撃が行なわれた場合に、これに対処する方法としては、核によって対処する、こういう場合もなければ首尾一貫しないじゃありませんか。
  108. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど私が答えたように、アメリカがどういうような方法で防衛してくれるか、これは一つの問題だと思います。ただいまお尋ねになりますようなこと、これは、論理的にはそういう結論が出てくるかとも思います。しかし問題は、そのときにアメリカがいかなる手段をとるか、これは別でございます。
  109. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そのようなことをおっしゃいますけれども、いま世界的に議論になっておるMLFの問題でも考えてみてください。フランスのドゴールは何と言っておりますか。アメリカが全面戦争までも覚悟してフランス防衛のために核を使ってくれるなどということは信じられない、こう言っておるのです。そういう重大な論争の争点になっておる問題なんですよ。そのくらいのことはおわかりだと思います。あなたは、いかなる武力攻撃に対しても守ってもらうという約束をしましたと言う。それではどういう方法を講じてでも、必要あれば核を使ってでも守ってあげるという保証をしてくれたのですか。ドゴールでもだれでも信用しませんよ。中国とソ連との間でも信用してないじゃないですか。あなたは簡単にそれを信じておるのですか。何とかしてくれるでしょう——絶対に核を使ってでも守ってみせるという約束をしてもらったのですか。
  110. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、共同コミュニケを信頼しております。これはアメリカと私との間ばかりでなく、同時に世界に声明したものだ、かように考えております。したがいまして、アメリカはいかなる攻撃に対しても日本を守ってくれる、かように私考えております。アメリカ自身がどういうような方法で守るか、そこまでは私聞いてはおりません。ただいまドゴールの話を出されました。ドゴール大統領はいろいろなことを言っておる。しかし、これは、一部不信があるかのように考えられるかわかりませんけれども、私は、こういう問題は世界的の問題ですから、世界的観点に立ってこれをきめるべきだ、かように思います。
  111. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それでは、ちょっと見方を変えてお尋ねをしてみましょう。  核攻撃に対して絶対に守ってあげます、こういうふうな答えを得た、私はそれを信じます、こうおっしゃる。すると、アメリカはそういう事態に核をもって対処する以外にない。核報復をやって日本をお守りしましょう、こう言われた場合には、これはもうけっこうですと言わざるを得ないわけですね。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、仮定の問題ですが、しかし、アメリカ自身がどういう処置をとるか、そのときになってみないとわからないのです。いま言われることは、おそらく日本をそういう基地に使うかという、こういうお尋ねだろうと思います。日本は、もうはっきり、たびたび申し上げたとおりでございまして、日本の国内に対する持ち込みも禁止している、こういう状況でございますから、この点では誤解のないようにお願いをいたしたい。
  113. 石橋政嗣

    ○石橋委員 先回りして考えておられますけれども、そういうことで聞いているわけじゃない。共同声明に堂々と書いて、あなたが国民に説明しているのです。中国が核実験をやった、やがて核武装するだろう、みんな御心配でしょうけれども、心配は要りません。たとえどこが核攻撃してこようとも、いかなる武力攻撃があろうとも、アメリカは絶対に日本の防衛の役割りを果たします、こう約束してくれましたと、こう言っているのです。そうしますと、核攻撃に対処するためには核によるほかにはないとアメリカが判断した場合に、それを受け入れるかどうかという問題が出てきますよ。守ってやろうと思う、そのためには核を使う以外にないと、アメリカがこう言う場合に、どう対処するのですか。
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも石橋さん、だんだん話がこんがらがってくるようですが、わが国の範囲ははっきりしておりますが、それについての核兵器の持ち込みだとか、あるいは核武装だとか、こういう問題は起こらないのですね。したがいまして、アメリカ自身がどういう方法で日本を守ってくれるかと、そこまで私は尋ねる必要はないのじゃなかろうか。ここはやはりアメリカは守ると言っている、これを信頼する、これが望ましい姿じゃないだろうか。私は、やはり社会党の方も同じようなお気持ちだろう、かように思いますが、いかがなものですか。
  115. 石橋政嗣

    ○石橋委員 私たち常識的に、核攻撃を受けたら核によって対処する以外にないと思うのですよ。ほかにそういう方法がありますか。ないでしょう。あなた方はいかなる攻撃にも対処するという、守ってくれるというといって説明している以上、守る方法について私たちが聞くのが何がおかしいのですか。核攻撃があろうとも安保条約で守ってやるのだと約束した。そうすると、核攻撃があった場合に、守る方法というのは、結局核兵器にたよらざるを得ないだろう、こう考えるのが私は筋だと思う。だから、アメリカのほうで、守りましょう、そのためには核兵器を使う以外にありませんがと言ったときには、これは無条件だということにならないのですか。基地だとかなんとかいうことを抜きにして聞いているのです。
  116. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはアメリカの対処する方法でございますから、案外アメリカ自身も言ってくれないかわからぬ。これは、やはり軍の機密かと思いますが、こういうことはアメリカと話をして、そうして信頼するという——これは、どういう方法でこれに対応する、それを事前に話することはいかがでしょうか。やはりしゃべらないのがほんとうじゃないかしらんと、私はかように考えます。
  117. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そういうことになるからこそ、ヨーロッパにおいてもあのような問題が起きるのです。やれMLEだ、やれANFだと、全部根底には自分の国中心なんですから、自分の国が迷惑するような方法を講じてまで、他国のめんどうを見るなんというような国は一つだってありませんよ、あなたが何と言おうと。アメリカが口で、いかなる武力攻撃に対しても守ってあげます、ああそうですが、安心しましたと、そんなことを口にしておるのはあなただけですよ。まともな人なら、そんな簡単なことを言うけれども、日本防衛のためにアメリカが多大な迷惑を受けるようなことをしてくれるだろうかと、疑問を感ずるドゴール的な発想のほうが私は正しいと思う。そういう疑問を持たないとすれば、これは、私に言わせればふしぎです。それは向こうさんまかせだ、こんなばかなことは私はないと思う。それじゃ、この中国の核実験が行なわれましたときに、いち早く観測気球のような形でアメリカのほうから出てまいりました特別安保という構想、こういうものがどうしても具体的になってまいりますよ、こんないまのあなたのお答えになるような程度のあいまいなものならば。この特別安保の構想というものについて、せっかくの機会に、どういうことを考えておったのかとお尋ねでもしてみましたか。
  118. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 特別安保ということをいま言われますが、これはどうも根拠のなかった議論ではないか。日米間には日米安保条約がある。これは厳然としてあるのです。そういう状態で、私は、もうこの特別安保なるものは必要はない、かように考えております。ただ、石橋さんも非常に重大な発言をしておられるが、一体社会党は、そういう場合にどういうような安全防備体制を考えていらっしゃるのか、やっぱり国民に教えていただきたい。私どもにもひとつ教えていただきたい。これは、私のほうからあなたのほうに申し上げます。あるいは質疑が逆になりますけれども、私はやっぱり教えていただいたほうが望ましいのじゃないか、かように思います。
  119. 石橋政嗣

    ○石橋委員 これは、私、最後の結論のところでお教えするつもりでした。しかし、早う聞きたいということですから。私たちの基本的な考え方は、アメリカと同盟を結んで、そして先ほどから例示しましたように、世界あるいは極東の緊張を激化するようなことをしておいて、自分みずから火種をあおっておいて、紛争の種をあおっておいて、そして守ってもらう、守ってもらうんだというようなばかなことはしません。すべてを緊張緩和のために、紛争の原因なるものを一つ一つつぶしていく、そういう形の中で、安保なんか要らぬ状態をつくるというのが基本的な考え方です。私がここで説明を長々しおったら——時間をそれだけ余分にくれればやりますけれどもね。  そこで、本論に戻りますけれども、日本、インドなど非核保有国に対して、中国の核武装に対応する特別の安保条約締結を検討するというのが当時の情報でした。これは、いまお聞きするところによると、あまり根拠のあるものじゃなさそうだというお話でしたけれども、やがてこういう問題が出てくる可能性はありますよ。現にヨーロッパで真剣に論議されておるのです。いまだにどうにもならない行き詰まった状態にありますけれども、たとえばMLFなりANFなり、どのような形でまとまるか知りませんけれども、ああいうものが真剣にヨーロッパで論議されておるということは、やがてアジアにおいてもそういう問題が議題としてあがってくるということを私たちとしては考えなければならぬ。そうしますと、ここでひとつはっきりお答え願っておきたいと思うのですが、MLFの構想でもけっこうです。ANFの構想でもけっこうです。ああいうもののアジア版というものがかりに日程にのぼってきたとしても、日本の立場からいえば、現行憲法のたてまえからいって、そういうものへの参加は絶対にできないというふうに理解してよろしゅうございますか。
  120. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日米安全保障条約、これは日本とアメリカとの関係で問題が解決できる、こういうものでございます。御承知のように、ヨーロッパは多数の国が入っておるNATOでありますとか、いろいろな構想が出ておるようですが、これとはだいぶ事情が違っておる、かように私は考えております。ただいまこういうものが起きたらどうするか、こういうことですが、起きましたら、そういう際に十分善処してまいります。
  121. 石橋政嗣

    ○石橋委員 現行憲法がある限り、あのような構想に日本が加わるということは私は不可能だと思うのです。検討するということは可能性があるということなんですか。
  122. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、可能性があるかないかを検討するということでございます。しかし、ただいまの憲法でそういう疑問はない、かような状況なら検討の余地はないという結論でございます。
  123. 石橋政嗣

    ○石橋委員 たとえばMLF構想の中で考えられているように、水上艦艇に各国の乗り組み員が乗る。その船の上に十基ばかりのポラリスを積む、そういうものに日本が加われますか。検討しなければわからぬのですか。ああいう構想がアジア版として出てきたときに、加わる可能性が万分の一でもあるのですか、現行憲法のもとに。検討するというは、——なければないと言ってくださいよ。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、たいへんむずかしい問題で、将来国連警察軍ができるとかいろいろな問題がありますが、いまの状態でも国連軍に日本は参加できない、こういう話がございます。しかし、これなども、十分平和軍隊だ、かような意味からはやっぱりその法理的な議論、論拠、十分検討してみる必要があるのじゃないか。私は、ただその投げかけられた問題だけをそのままほうっておかないつもりでただいま申し上げたのでございます。しかし、いま言われるようなこういう事態についてはどう考えるか。この具体的な問題については、いまの状態では参加する、そういう方法はない、かように私は思います。
  125. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それではいまヨーロッパで検討されておりますような、あのような構想のもとに何らかのアジア版ができたとしても、日本国憲法が厳存する限りこれには参加できない、こう理解してようございますね。
  126. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ、いいのじゃないか、私はそういう結論のような気がいたしますけれども、これはただ法理論でございますから、法律的によく法制局長官意見も聞いてみたい、かように考えます。
  127. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  この問題は、例の海外派兵というような一般的な問題とも関連があると思いますが、かつて私、参議院等で申し上げたことがございますけれども、日本の憲法、御承知のとおりに非常に厳格なる規定がございますので、例の国際紛争を解決する手段として武力の行使をすることはできないという条項のもとでございますから、通常の国単位の場合に、一国である日本国がその一国として参加するようなことになりますと問題だと思います。ただし、純粋の理論の問題として、そういうものが将来の国際社会の理想的な発展段階が遂げられまして、国際社会としての一国を超越した何かの機関が何かの機構を持つということになりますと、話はおのずからまた変わってくると思います。しかし、そういうことがない現状のもとでは、憲法九条のもとでは、非常にむずかしいのではないかと私は考える次第でございます。
  128. 石橋政嗣

    ○石橋委員 どうしてそうあいまいにされるのですか。MLF構想としてあげられているものを私は具体的に例示して聞いているのですよ。水上艦艇にNATO加盟国の各国が乗員を提供する。そこへもってきてポラリスミサイルを十基積む。そういう構想がいまNATOで進められている。アジア版といえば、日本とインドとアメリカだけになるのか、あるいはSEATO加盟国なり韓国、台湾が加わるのかは別として、特定の同盟関係にある国だけですよ、私が議論しているのは。そういうものの中に日本が入っていって、ポラリスミサイルについての何らかの関与をするということは、現行憲法のどこで認められますか。
  129. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 非常に理論的な問題として私申し上げておりますが、これからの国際社会の発展の段階では、いまのようにいろんな形が出てくるのじゃないかということを顧慮して実は申し上げましたが、いまの状態で、問題をいまおっしゃいましたような場面に限定して言うことになりますと、これは憲法九条のもとでは不可能じゃないかと私は考えます。
  130. 石橋政嗣

    ○石橋委員 あまりにも明確な問題を一生懸命ごまかすような答えをするものですから、いたずらに時間を食うわけです。MLF構想のアジア版といったようなものができても、日本は絶対に加盟はできない、これは理の当然だと思う。  そこで、問題になってくるのは核兵器というものについての考え方なんです。政府自身、現代の平和は核を主体とする軍事力の均衡の上に確保されている、こういう考え方をとっておられるようでございますが、間違いございませんね。
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりです。
  132. 石橋政嗣

    ○石橋委員 ということは、核兵器の持っております悪魔の一面と、それから平和の女神といったような一面とがあるという考え方になると思うのです。それをことばをかえて言えば、戦争抑制力とか抑止力とかいうものだと思うのですね。そういう点をお認めになっておることじゃないかと思うのです。違いますか。
  133. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核兵器自身が平和の女神ということではないでしょう。私はやはり世界人類、これが平和の女神である、かように考えるのです。この戦争を抑止しておるその力をやはり考えなければならない、かように考えております。
  134. 石橋政嗣

    ○石橋委員 あなた方の考え方はアメリカの考え方と同じなわけです。だからこそ戦力の増強、特に核兵器の増強というものにつとめておるわけです。われわれの周辺を見ましても、第七艦隊なり第五戦術空軍なり第十三戦術空軍なり沖繩の基地なり、一切核兵器によって装備されておる、これは厳然たる事実です。これは、戦争抑止力として働いておるのだ、こういう見方なんです。そうじゃないのですか。首を振っておられるようですが、それじゃどういうふうに考えておられますか。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 石橋さんに講義するわけでもございませんが、片一方で軍備拡張をやっておる。片一方で軍備撤廃を言っておる。軍縮を言っておる。ただいま当面しておるのは二つの問題です。私は、核兵力自身が平和の女神とは思わない。これは破壊力自身だ、かように考えます。しかしながら、やはり人類が希望しておる、その意味において、これが均衡がとれたところに戦争にならないで済んでおる、かように思いますが、むしろもっと軍縮に徹することが望ましいのではないか、それを私は考えるわけです。
  136. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それは、理想としてそう考えておる。しかし現実の問題として、片一方の陣営が強大な軍事力を持つ以上、やはり対抗上持たざるを得ない。持つことが結局抑止の働きを果たしておるのだ、こういうことなんでしょう。現にアメリカは、この核戦力というものに非常に大きなウエートを置いておるのです。これは間違いありません。先ほど申し上げたように、われわれの周辺における第七艦隊も、あるいは第五空軍も第十三空軍も全部核というものに相当のウエートを置いております。これは厳然たる事実。防衛庁だって第七艦隊が積載しておるところの飛行機が水爆なり原爆の搭載力を持っておるという事実は認めております。沖繩にありますナイキハーキュリーズなりメーズBなりが、これがミサイル弾頭を発射する能力を持っていることも認めております。日本の国内にありますF105が水爆の搭載能力を持っていることも認めております。全部認めておりますよ。ただ、認めていることと現実に弾頭がそこにあるということとは別だという奇妙な議論をしているだけなんです。まともな軍事評論家は、ナンセンスだと言っているのです。少なくともいざというときに、一分一秒を争う、そういう戦闘を予想しなければならぬ。日本の自衛隊でもばく大な金をかけてバッジを購入する。何のために買うんだと言ったら、敵機が襲来したときに一分でも一秒でも、ほんとうに秒きざみの時間を節約するために必要だ、こう言っているのですよ。そういう状態の中で、核発射能力があるということ、核搭載能力があるということと、核弾頭は別にどこかにあるんでしょうというような、そういう議論をすることは現在の軍事常識の中にない、こう言っていますよ、しかし、これは私はここに蒸し返そうと思いません、ばかばかしい議論だから。原爆を飛ばす力はあるが、原爆はそこにない。原爆を運ぶ力はあるが、原爆はそこにない、こんなばかばかしい議論をする時間がございません。実際にこの間から問題になりました原子力潜水艦の問題一つをとってみましても、サブロックが核兵器、核弾頭、核魚雷であることは認めました。しかし、発射する力はあるけれども、核魚雷そのものは持ってこないという、奇妙な議論を政府側は展開しておられます。私たちは、こういう議論をすること自体おかしいと思うのです。現に沖繩におきましても、ナイキハーキュリーズというものがあるということは、防衛庁も認めておる。しかも、弾頭は一定の比率の割合においてちゃんと確保されておるということを認めておるのですよ。これは常識だと思うのです。サブロックについても、核のものと、非核のものとを混載しておるということも、過去の答弁の中で認めております。この点は、もう一度確認しておきたいと思います。いかがですか、防衛庁のほうは。
  137. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 石橋先生から御指摘のとおりであります。
  138. 石橋政嗣

    ○石橋委員 サブロックも通常の魚雷とサブロック核魚雷と混載しております。認めております。もうはっきり認めたから、私はいつ言ったなんて言いませんが。それから沖繩のナイキハーキュリーズの場合でも、七対三とか六対四とかの割合で普通弾頭と核弾頭を準備するのであります、こういうふうに認めております。常識ですよ。それが日本に来たとたんに消えてなくなる、その魔法のつえは何かというと、事前協議だ、これを私はばかばかしいと言うのです。いざ鎌倉というときに、役に立たないような形で何で日本にやって来ますか。こういうばかなことで国民を欺いてはいけないということを申し上げておきたいと思うのです。  それからもう一つは、この原子力潜水艦が日本に来る目的であります。単なる補給と休養でございます。これまた国民を欺いておる。原子力潜水艦の基地となることは歴然としているじゃありませんか。いかがですか。
  139. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 わがほうとしては、あくまでも補給と休養のためにその入港を求めたものと考えております。
  140. 石橋政嗣

    ○石橋委員 今度はお認めになりませんでしたから、引用せざるを得ません。原子力潜水艦が日本に寄港するという問題が初めて出てまいりましたのは、三十八年の一月でございましたね。ところがそれ以前の国会答弁では、そんな答弁はしておりませんですよ。基地と補給基地というものを明確に分けておりますよ。基地と補給基地とが同じですか。それじゃ、その点からお伺いします。
  141. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 基地と補給基地は別であると考えており、この原子力潜水艦の寄港の問題は、外務省の管轄するところでございます。
  142. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それでいいですよ。外務大臣お尋ねしたいのです。あなたのほうが責任を持って、原子力潜水艦の寄港の目的は補給と休養だと、こう言い貫いてきました。私たちは、原子力潜水艦の基地に横須賀、佐世保がなるのだと言ってまいりました。ところが、基地というものと補給基地というものとは、専門家の防衛庁では明確に分けておる。あなたは原子力潜水艦の基地になると思いますか、補給基地になるのだと思うのですか。どっちです。
  143. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私は、佐世保も横須賀も補給基地と解釈しております。
  144. 石橋政嗣

    ○石橋委員 これは、防衛庁の見解ですからはっきり読んでお聞かせしておきます。「ただいまおっしゃいました基地という意味でございますが、私どもは、特に第七艦隊につきましても、いわゆる基地として考えられますものは、フィリピンのスビグ湾であるとか、韓国の釜山であるとか、あるいは日本の横須賀、佐世保湾、それからグアム、そういうものがいわゆる基地に該当するものでございまして、結局那覇が原子力潜水艦の基地であるというふうには、私どもの考え方の基地には該当しない、このように考えております。」いいですか。防衛庁の見解です。佐世保、横須賀はグアムと同格の基地なんですよ。そして、そのあとで、補給基地というものはこういうものなんだという御説明までいただいております。「先ほど申し上げましたように、補給基地という言葉でございますが、そこに船が寄りまして、食糧あるいは真水等を積み込む、あるいは乗員がそこで休養をとるということでは基地ということでございますが、通常の意味の基地ということになりますと、先ほど申しましたように、大きな港湾施設がございまして、そこで艦艇の修理等も行なわれますところを通常基地と申しておりますので、御指摘の那覇が、原子力潜水艦の基地としてグアムと並ぶような意味を持っているというふうには、私どもは考えておりません。」いいですか。佐世保、横須賀は補給基地じゃない。はっきりと第七艦隊の基地である。どうです。あなたは補給基地だと言うけれども、違うじゃありませんか。純然たる基地じゃありませんか。
  145. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 原子力潜水艦に対しては補給基地である、こういうことであります。
  146. 石橋政嗣

    ○石橋委員 第七艦隊に所属する原子力潜水艦も来るし、第七艦隊に所属しない原子力潜水艦も来ると言っておるじゃありませんか。それじゃいままでの答弁はうそですか。
  147. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 佐世保、横須賀は原子力潜水艦の基地とは解釈しておりません。
  148. 石橋政嗣

    ○石橋委員 いまの答弁と違うじゃないですか。第七艦隊に所属する原子力潜水艦と、第七艦隊に所属しない別個の原子力潜水艦と、両方日本に来るとあなたは言っているじゃないですか。そこの点を分けましても、第七艦隊に所属する原子力潜水艦は、これは第七艦隊の基地としての佐世保に来るのだ。はっきりしているじゃありませんか。
  149. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あくまで補給と休養のための寄港でございますから、この場合は、原子力潜水艦の基地ではなくて補給基地である、さような解釈をしております。
  150. 石橋政嗣

    ○石橋委員 これは、先ほど申し上げたように、昭和三十七年の八月二十九日、参議院の外務委員会で防衛庁が責任持って答弁をしていることなんです、私が言っているのは。基地と補給基地とは違う、教えてやると言わんばかりの態度で防衛庁が説明している。当時は、原子力潜水艦の佐世保寄港という問題が出ていなかったから、ちゃんとあたりまえのことを言っておる。おかしいじゃないですか。あなたは補給基地と言うけれども、佐世保、横須賀は第七艦隊の基地だと認めている。その点は認めますか。
  151. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 ただいま石橋先生から指摘されました防衛庁の見解は、原子力潜水艦の寄港という前の時点における答弁でございますので、その当時のいきさつ等からいたしまして、防衛局長から答弁をいたさせます。
  152. 石橋政嗣

    ○石橋委員 求める必要はない。外務大臣に聞いておるのだから、外務大臣から責任を持って…。
  153. 青木正

    青木委員長 発言を許しました。補足説明を……。
  154. 石橋政嗣

    ○石橋委員 責任回避だ。それはだめだ。   〔発言する者多し〕
  155. 青木正

    青木委員長 防衛局長に発言を許しております。お静かに願います。ちょっとお聞きください。
  156. 海原治

    ○海原政府委員 委員長の許可をいただきましたので、私からお答えいたします。  ただいま石橋先生のおっしゃいました基地についての解釈、さらに原子力潜水艦の寄港に関しましての補給基地としての解釈、これは、たしか私がそのとき御説明したと思いますので、私から申し上げます。  最初のほうの第七艦隊の基地ということ一般につきましては、基地ということばにいろいろ意味がございます。そこで、概括的に私が当時の事情を御説明をしたわけでございます。さらに具体的な例を申しますと、最近太平洋に配置されましたポラリスミサイルの発射できますところの原子力潜水艦、ダニエルブーンというものがございますが、こういうものにつきましても、たとえば、ミサイルの補給施設等のための基地としましては、アメリカのワシトン州のバンガーがございます。訓練基地としましてはハワイのパールハーバーがございます。さらに、前進基地としてはグアムがこれに相当いたします。このように、基地というものにはいろいろ意味が違って使われておりますので、概括的に第七艦隊が行動します場合の根拠となるところをかりに基地ということで呼びますと、これは横須賀、佐世保、グアム等が入る、こういう説明でございます。それから、後段のほうの補給基地ということになりますと、これは、具体的に条約の解釈に関連しましての細部の説明でございますので、こまかくこの基地の中の補給基地の意味を御説明したわけでございまして、決してこの基地と補給基地とが互いに矛盾するものではございません。もう一ぺん申し上げますと、大きく通常使われます基地の中に具体的な補給基地もございます。あるいは作戦基地もございます。さらには訓練のための基地もございます。さらには休養のための基地もございます。そのときどきの状況によりまして、このことばの定義をおきめいただきたい、このように感ずる次第でございます。
  157. 石橋政嗣

    ○石橋委員 先ほど防衛庁長官がいみじくもおっしゃったように、原子力潜水艦の寄港という問題が出てこない前の答弁でございます。そのときにはすなおな答弁をしているんですよ。基地というのは、少なくとも第七艦隊について言えば、横須賀、佐世保、グアム、こういうものが基地だとはっきり言っている。  そこで、外務大臣お尋ねしますけれども、第七艦隊の基地としては、それでは横須賀、佐世保は認めますね。
  158. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 第七艦隊の所属の原子力潜水艦については、佐世保、横須賀は補給基地であります。さように解釈しております。
  159. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そんなばかなことがありますか。まず私が聞いているのは、横須賀、佐世保は第七艦隊の基地だということをお認めになりますねと聞いているんです。
  160. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ただ基地と言ったんでは誤解を生じますから、補給基地でありますと、かように……。
  161. 石橋政嗣

    ○石橋委員 あなた、いまの防衛庁の説明を聞いておりましたか。基地というのと補給基地というのは違う。いいですか。そこで、お伺いしておるのは、横須賀、佐世保が第七艦隊の基地であるという防衛庁の説明、これはあなたは知っておるわけですね。
  162. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 第七艦隊の基地であるが、第七艦隊の所属原子力潜水艦については補給基地であります。
  163. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そんなばかなことがどうしてできますか。第七艦隊の基地であるけれども、第七艦隊に所属する潜水艦の基地でない、そんな日本語がどこにありますか。どういう理屈ですか、これは。
  164. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 よく落ちついて聞いてもらいたい。原子力潜水艦については、一般基地というわけにいかない。もし一般基地なるならば、原子炉の修繕から、あるいは原子炉に必要な燃料の補給であるとか、そういうことをしなければならぬのであります。ただ休養と補給、それだけやっておるのだから、補給基地である、こう申し上げたのです。
  165. 石橋政嗣

    ○石橋委員 あなたも最近日韓会談を一生懸命にやっておられるので、日本語を忘れたのじゃないかと思うのですが、基地と補給基地は違うという一つのはっきりした定義がなされておる。第七艦隊の基地として横須賀、佐世保がある。これもはっきり認めておる。ところが、第七艦隊の中に属しておる原子力潜水艦の基地にはならぬという理屈が一体どうして成り立ちますか。そんな規制があなたのほうでできますか、アメリカの編成について。
  166. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 補給基地であると言っておるじゃないですか。ただ基地——ちょっとお聞きなさい。
  167. 石橋政嗣

    ○石橋委員 委員長が発言を許可してから答弁してください。いかに国民を欺瞞するようなことをあなたは平然と言っておるかということを例示したい。横須賀、佐世保は第七艦隊の基地である、ところが第七艦隊に所属する原子力潜水艦の基地ではない、補給基地である、あなたは、アメリカの艦隊の編成に口ばしをいれる権限をいつもらいましたか。いつそんな権限を与えられましたか。編成上の問題にあなたが口ばしをいれる権利はない。第七艦隊に所属するものはあくまで第七艦隊として動いておるのだと言っておるじゃないですか。過去のあなた方の答弁を思い出してくださいよ。第七艦隊に所属している潜水艦だけが佐世保、横須賀に入れないということは非常に不便だ、航空母艦や巡洋艦やその他の乗り組み員は横須賀や佐世保に上陸して休養もできる、潜水艦だけは入れない、   〔発言する者多し〕
  168. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。
  169. 石橋政嗣

    ○石橋委員 これでは支障を来たすから、第七艦隊と行動をともにさせるためにも、佐世保、横須賀に入れさせる必要があるとあなた方答弁してきているじゃないですか。その第七艦隊の中で潜水艦だけわざわざはずして、ほかの艦は基地として使うが、潜水艦だけは基地として使わぬのだ、そんな理屈が一体どこに成り立つのかと言いたい。そんなばかなことがありますか。とにかく、あなた方は、うそにうそを積み重ねていますよ。先ほどお認めになったように、原子力潜水艦の攻撃型には、核魚雷のサブロックと、通常の弾頭の魚雷と両方混載しておる、こういうことを認めておりながら、日本に入ってくるときは核のほうはどこかに消えてなくなる、原子力潜水艦は補給と休養だけに来るのだと言う。第七艦隊は基地として使っておる。その第七艦隊に所属する原子力潜水艦は、これは基地として使うのじゃないと、全くつじつまの合わないことを言って国民を愚弄しようとしておる。これは、私は許されないと思う。  時間がありませんから、もう一つほかのことでお尋ねしますが、この原子力潜水艦攻撃型の寄港というものは、やがてポラリス型原子力潜水艦の寄港というものを招く誘い水になるということが私たちのかねがねの主張。これをあなた方は否定されております。そこで、一点だけお尋ねしておきますが、外務大臣、ポラリス型の原子力潜水艦が、サブロックと同じように、ポラリスミサイルを置いてきたから、持ってきておらぬから、補給と休養のためにちょいと入れてくださいと言ってきたら、どうします。事前協議の対象になるのですか、それでも。
  170. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 核兵器の持ち込みは絶対にわれわれは許さぬ、こう言っておりまして、それもアメリカは十分に承知しております。それで、寄港する場合には、われわれは艦内を監視する権限は持ちませんけれども、あくまで同盟国の言い分を信用して、持ってないという前提のもとにこれを許しておる。
  171. 石橋政嗣

    ○石橋委員 まともにお答てください。時間がないのです。攻撃型の原子力潜水艦が核弾頭のサブロックと通常の魚雷と二種類積んでいる、これは防衛庁が述べておるのです。ところが、日本に来るときには核のほうのサブロックは持ってこない、どこに置いてくるか知らぬけれども。だから、心配は要らぬから入れると言う。その理屈を発展させていくと、ポラリス型の原子力潜水艦が、ポラリスミサイルはどこかに置いてきますから、ちょっと補給と休養のために日本に入れさせてくださいと言ったら、事前協議の対象になりますかと聞いているのです。
  172. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 事前協議の対象にならないと考えます。
  173. 石橋政嗣

    ○石橋委員 これはたいへんだ。これは重大な問題ですよ。ポラリス潜水艦がミサイルを置いてくれば、事前協議の対象にならぬ、重大な問題じゃないですか。従来の答弁と全然違いますよ。
  174. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いま聞きましたが、ポラリスをはずして入るということはあり得ないそうです。したがって、事前協議の対象にならない。   〔発言する者あり〕
  175. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そんなことを聞いているんじゃないですよ。事前協議の対象になりませんか。なぜ対象にならないのです。なるのですか、ならぬのですか。いいですか、外務大臣、しっかり聞いてくださいよ。私たちは、ポラリスをはずしたときの質問をしているんだ。
  176. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あなたもよくおわかりにならぬようだが、私もよく了解しておりません。このポラリスをはずして入ってくるということはあり得ない。ポラリスすなわち核兵器である、こういう解釈でございますから、それは事前協議の対象になりますし、絶対に寄港を認めない。
  177. 石橋政嗣

    ○石橋委員 最初、なりませんと言ったじゃないですか。   〔発言する者多し〕
  178. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 だから、訂正したんじゃないか。
  179. 石橋政嗣

    ○石橋委員 訂正するなら、失礼なことを言うな。自分の無知をたな上げにして、何の失礼なことを言うなだ。取り消すならちゃんとあやまって取り消せ。失礼なことを言うな。あなたもわかりませんとは何だ。自分がわからぬのじゃないか。取り消しなさい。あやまりなさい。取り消すならちゃんとあやまれ。
  180. 青木正

    青木委員長 ただいまの石橋政嗣君の発言に対する外務大臣の発言は、やや明確を欠いておりましたので、この際明瞭にいたしていただきます。外務大臣椎名悦三郎君。   〔発言する者多し〕
  181. 青木正

    青木委員長 重ねて明瞭に御答弁願います。
  182. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あまり詳しくなかったようでございますが、ポラリスそのものは取りはずしができない。取りはずしができない。そういうものは取りはずしができないから事前協議の対象には初めからならない。  あなたもよく御存じないということは、適当でございませんから取り消します。
  183. 石橋政嗣

    ○石橋委員 政府のほうがこんがらがっているのですよ。いわゆる発射装置と弾頭そのものとを無理やりに区別しているのです。いいですか。サブロックの場合は、通常の魚雷もサブロックも同じ発射管を使うから、あなたたちのそういうごまかしが通ずるかもしれぬ。しかし、そういうへ理屈をこねるならば、ポラリスだって、核弾頭の飛んでいく部分だけ置いてきたと言えば、発射装置だけで来れるじゃないですか。そういう状態の中で来たいと言ったらどうするかと聞いているのです。そうしたら、あなたは事前協議の対象にならぬと言ったから、間違いないかと聞いているのですよ。そこからやり直しましょう。取りはずすことができないという前提であなたは答弁しておるからだめなんですよ。いままでの理屈で言えば、弾頭だけ置いてくるという理屈になるじゃないですか。
  184. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 事実に詳しい防衛局長から詳しく申し上げます。   〔「議事進行」と呼ぶ者あり〕
  185. 青木正

    青木委員長 議事進行ですか。   〔「議事進行、議事進行」と呼ぶ者あり〕
  186. 青木正

    青木委員長 ただいま外務大臣から、防衛局長補足説明させると、こう申しておりますので、一応補足説明をお聞きの上、議事進行発言を願います。一応お聞きの上、すでに発言を許可いたしておりますので、そのあとで、補足説明の後……。  海原防衛局長
  187. 海原治

    ○海原政府委員 委員長の御指示に従いまして、御説明申し上げます。  少し話が複雑になってまいりましたので、事実関係かつ技術的な問題でございますので、私から御説明いたします。  先ほど石橋先生の御質問に、サブロックというものは通常の魚雷と混載をしておる、こういうお話がございましたが、これは、混載はまだいたしておりません。艦によりましては混載するであろうということを海軍省の責任者が申しておるということを、かつて私は国会の委員会で御説明したことがございます。そして、こちらの太平洋方面に行動するかどうかということも、累次の委員会で御質問がございまして、その際にも明瞭に私から私どもの判断を申し上げてございますが、サブロックが常に通常の魚雷と混載されて、それが潜水艦に装備されるものというふうに判断いたしておりません。したがいまして、従来のところを申し上げますと、サブロックは、たしか本年度の初頭くらいから逐次実用段階に入ります。これにつきましては、スレッシャー・タイプの原子力潜水艦、大体この数は三十隻前後といわれておりますが、そのうちの二十五隻程度のものに混載されるであろう、こういう意味の説明が当時米海軍省の当局者からございまして、その意味のことを申し上げております。したがいまして、混載されるかどうかということは、その艦の任務によって決定されるものである、こういうふうに私どもは判断いたしておりますし、そのように御説明しております。  次に、ポラリス潜水艦につきましては、これは、何回も関係の委員会で御説明申し上げましたが、B52の爆撃機あるいは大陸内のICBM等々と同じように、常時核弾頭を装備しまして、十六発ポラリス潜水艦の中に格納されておりますから、これが弾頭を取りはずして行動するということは常識では考えられないことでございます。したがいまして、ポラリス潜水艦というものが一たん母港を出ますと、約二カ月というものはどこにも立ち寄らずに行動する、そのこと自体がいわゆる戦略的な意味があるものでございますから、先ほど来問題になっておりますような、弾頭の部分だけを取りはずしてポラリス潜水艦が出てくるということは、これは実際問題としては絶対にあり得ないことであります。そこで、その事実を御前提にして、ひとつ御論議願いたいと思います。
  188. 青木正

    青木委員長 議事進行に対して辻原弘市君の発言を許します。
  189. 辻原弘市

    ○辻原委員 非常にこんがらかっておることは、これは、もう先ほどから皆さん御承知のとおりであります。われわれはむずかしいことをお尋ねしているのじゃないのです。ただ、外務大臣が非常にいままでの答弁と違う新しい解釈のしかたをここでお答えになったから、それは、その後にお答えになったことと非常に食い違っておるから、取り消しなさいと言うのに、それを取り消さないままで議事が進行されているから、これが後日問題になりますので、その点を取り消しなさいという要求をしているわけです。問題は、これはあとから石橋君から詳しくさらに質疑を続けますが、ポラリスの問題については、これは池田内閣の当時ずいぶん議論をいたしました。その際に、いかなる形であろうとも、ポラリスについては寄港を認めない、同時に、これは事前協議の対象になりますということをはっきり言ってきているわけです。ところが、先ほど外務大臣は、あとで訂正はされたものの、ポラリスをはずして入港した場合には、これは事前協議の対象にはならないかのごとき答弁をここに残されておるわけです。だから、それをこの席上において明確に取り消してもらいたい。これが私どもの要求をした一点なんです。
  190. 青木正

    青木委員長 若干誤解もあるようでございますので、この機会に明瞭にしていただきます。
  191. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ポラリスは、ただいまの防衛局長の説明によりまして、はずして入港するということはあり得ないということがはっきりいたしました。したがって、さような事態においては、ポラリス潜水艦が寄港しようとする場合には事前協議の対象になります。ポラリスをはずして入港するということはあり得ないというのですから、核兵器をつけたまま入港する場合しか考えられない。そういう場合には事前協議の対象になります。このことをはっきり申し上げます。(「入れないんだ」、「答えが違う」、「あとで誤解を生ずるから、はっきり言っておきなさい」と呼び、その他発言する者あり)事前協議の対象になります。したがって、それを強行して入ろうという場合には、これは許さない、こういうことであります。
  192. 石橋政嗣

    ○石橋委員 二、三分の間に事前協議の対象になったりならぬようになったり、まことに怪しげな制度だということが外務大臣の態度とともに判明いたしました。  ただ、いま防衛局長答弁の中に、混載の問題について前の発言と違うようなものが出てきております。これは、一貫して、内閣委員会におきましても、参議院の外務委員会におきましても、通常の魚雷とサブロックが混載されるであろう、——もちろん、アメリカのことですから、推定の形で言ってはおりますけれども、はっきり述べているんです。この点は、時間がなくなりますからこれ以上申し上げませんけれども、とにかく、先ほどから申し上げておるように、非常に不明朗です。国民にまともなことを一つも話していないということだけを指摘申し上げておきたいと思う。  そこで、次に外交問題に入りたいと思います。  第一は、現在問題になっておりますニチボーのプラント輸出の問題です。輸出入銀行の融資をニチボーのプラントの輸出については利用させないということで、非常に中国を刺激しておるわけです。一体なぜ、倉敷レイヨンに対しては輸出入銀行の利用を認めておりながら、ニチボーに対してはお認めにならなかったのか、この点についての御説明を先に承っておきたいと思います。
  193. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 現実の取り運びをまず申し上げたいと思うのであります。  ニチボーのプラントにつきましては、四月末までに正式の契約をしなければいけない、こういう事実がございまして、そこで、この正月になりましてから、これを決裁しなければならないということで、現在ニチボーから輸出承認の申請の手続がとられております。御承知であろうと思いますが、代金決済が六カ月以上に及ぶ場合におきましては、標準外決済として、延べ払いは全般的にこの制度が適用されておりますので、時日も迫っておりますから、これは承認してよろしい、こういう取り扱いをいたしました。それで、これがなかなか話題を呼んでいる問題でございますので、私は、全くこれを事務的な処理をすべきであるという見解から、従来政府が終始一貫して申しておりますとおり、政経分離、民間ベースのたてまえで、これは一貫した態度でございますから、そのたてまえの中で事務的に処理するのが妥当であろう、こういうことで、承認書を出し、事務次官にこれを処理せしめた、こういうことでございます。したがって、この処理の段階におきましては、御指摘のような輸銀をどうこうという問題は、ここには出てまいらないのであります。  しこうして、この承認書が与えられました後においてはどうか。これは、すでに総理からこの席上でも申しておられますように、その後は個々の事業経営者が企業努力でこれをやっていく、それぞれの企業者がこれを自由の意思において判断をする、こういう行き方をすべきだと私どもは思っております。いまニチボーにおいては、契約に基づきましてどうやったらばいいんだということにいろいろ考慮を払っておると思うのでありますが、そのものずばりの輸銀ベースの問題についてかりに私にお尋ねがございますれば、最初の階段といたしましては、頭金を受け取ってこれを進めていくのでございますから、その限りにおいては、この夏ごろまでは、そういう輸銀ベースをどうするという問題は起きてこないと思うのであります。その間にニチボー自身がいろいろ考える。またシンジケートでやるというようなことも一方においては考慮きれておるというのが現在の実情でございます。
  194. 石橋政嗣

    ○石橋委員 この問題は、そういう御説明を聞いても一つも解決にならないと思いますから、私は、総理がはっきりと腹をきめる段階にきていると思いますので、総理にお伺いしたいと思うのです。  先日この委員会におきまして、吉田書簡というものは全然関知していないということをおっしゃいました。昨日も官房長官の談話でそのことを述べておられますが、まずそれから確認をしておきたいと思います。そのとおりですか。
  195. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 関知していないというか、当時の大平外務大臣もかつて参議院でさように答えております。私ども当時のいきさつそのものを詳しく知らない、こういうように、まあ軽く関知しないという、そういうことだけ御了承いただきたい。しかし、その後におきまして、吉田書簡というものがあったことも、またその内容も十分読んでおりますから、ただいまの状況において関知しないというその言い方は、やや強過ぎはしないか、かように思いますが、当時の事情は私どもは知らない、かようにお考えをいただきたい。
  196. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それじゃ私も表現を変えましょう。吉田書簡の内容もよくわかった。それでは吉田書簡の拘束を総理はお受けになりますか。
  197. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当時の吉田さんは、これは個人の資格でこのメモを出された、かように思いますけれども、当時におきまして、これは全然政府のやっていることと違う方向ではなかった、かように私は理解しております。
  198. 石橋政嗣

    ○石橋委員 佐藤内閣として拘束されるかと聞いているのです。
  199. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 直接ではございませんが、私はやはり拘束されるものだ、かように考えております。
  200. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それじゃ関知しないという発言とちょっと違ってくると思うのですが、きのうの官房長官の談話というのは、十分に書簡の内容もわかった上での発言なんですよ。関知しないというのは、私は拘束を受けないというふうに理解した。いまの総理のことばでは、ちょっとニュアンスが違います。どちらなんですか。
  201. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 拘束するというか、これはたいへん片一方のほうのこれに期待をかける、こういう事情であることだけを申しておるのであります。いわゆる自主的な判断でわが国の貿易は遂行するつもりでございますから、これは、しばしば申し上げたとおり、自主的な判断でするということであります。しかし、ただいま御指摘になりました吉田書簡というもの、これにつきまして、国民政府側においてこれに期待をかけておる、こういう事実は、私どもも認めざるを得ない、かように申すわけです。
  202. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そうしますと、これは全然従来の答弁、あるいは官房長官の昨日の記者会見の談話、これと違ってきたと私は理解します。違いますね。官房長官もそうですか。
  203. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 昨日の官房長官の談話というものは、私は全然これこそ関知しておりません。(笑声)これは事前に相談を受けたわけでもありませんし、またどういうようにおしゃべりになったか、それも私は知らないから、これこそほんとうに関知しておりません。
  204. 石橋政嗣

    ○石橋委員 岡崎さんが帰ってこられた談話によりましても、橋本官房長官の吉田書簡関知せずの発言は、非常に向こうで好意を持って迎えられておるようです、中国で。ところが、それは拘束されないんだという理解を中国側でしているからなんです。拘束されるんだということになれば、これはまた振り出しに戻りますよ。官房長官、どちらの意味だったのですか。拘束されるんですか、されぬのですか、吉田書簡には。
  205. 橋本登美三郎

    ○橋本政府委員 私の発言に関しまして御質問を受けておりまするが、関知しないというような発言は、総理がおっしゃられたような意味に御理解を願います。  なお、これに関連いたしまして、それはどういうような意味であろうかというような御質問でありまするが、私は、総理と一心同体でありますからして、総理の御答弁をもってこれにかえさせていただきます。
  206. 石橋政嗣

    ○石橋委員 そうしますと、これは、ひとつ前向きで私はお尋ねします。  いまの総理答弁によりますと、これは全然解決の見込みはございません。私はそう判断します。具体的に聞いてみましょう。関知せずという発言をしたって、要は実行だ。佐藤内閣が政経分離で中国貿易をどんどん発展させますと言っているが、口だけじゃないか、台湾の介入を認めて、全く商業ベースでやっているものまでチェックしてきているじゃないか、こういう中国側の言い分なんです。だから、ほんとうに誠意を示そうと思うならば、まずニチボーに輸銀の融資を認めなさい、実行でお示しなさい、中国側の態度は、こういう態度のように理解しておきます。  そこで、そういう点についてお尋ねをするわけですが、再度輸銀の利用をニチボーが政府に頼んできたならば、割り切っておやりになるつもりですか。認めるつもりですか、認めないつもりですか、それだけでけっこうです。
  207. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもがやっておることに、あるいは台湾の介入だとか、あるいは中共側でどういうようにしろとか、こういうようないろいろの御意見があるやに聞きますが、私は、これはやはり一国が貿易をやっておる、それは自主的にやって、とやかく言われないことが一番望ましいのではないか、かように考えております。私は、そういう意味でこの解決をする、かように考えておりますから、どうか社会党の方も御支持、御支援を願いたい、かように思います。
  208. 石橋政嗣

    ○石橋委員 あくまで政治と経済と分離してやるんだ、こうおっしゃいます。私たちの考え方から言っても、輸銀の利用が政治的な分野に入るなど、とは思わない。それを台湾が文句を言うからといって、あなた方のほうで遠慮するということ、そのこと事態が政経分離の原則と違うじゃありませんか。それこそ台湾政府の内政干渉をあなた方は受け入れた形になっているのですよ、何と言おうとも。それが問題になっているのです。だから、私は、今さらそのことは申しません。  それから、ニチボーがどうしてもこの際輸銀の融資を認めてくださいと再度言ってきたときに、許可をするのかせぬのか。せぬというならば、そのことによって契約の破棄が行なわれてもかまわぬ、あるいは日立造船以後の貿易がやれなくなってもかまわぬ、それだけの御覚悟をなさっておやりになるのですか。そこまで聞きたいのですよ。
  209. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど通産大臣がお答えしたように、私どもはこれを許可した。その後の契約がいかになるか、それをしばらく見ているわけでございます。ただいまのように、先ばしって必ずやるのだとかやらないとか、こういう詰め方はいかがかと思います。いま現実にいろいろ交渉している、こういうように考えております。いまの民間ベースでどういうような処理をするか、これが現在の状況でありますし、そう御心配にならなくても、契約ができるような段階であれば御心配はないんだろう、そういう意味の努力を私どもしているという状況でございます。
  210. 石橋政嗣

    ○石橋委員 実際には輸銀を利用すると同様の便宜をはかっているということも、私は承知いたしております。しかし、そういうことでは解決しないのです。しかし、まあ佐藤総理の立場にしてみれば、吉田書簡というものは、いわばお師匠さんが書いた手紙ですから、そんなものは知らぬと言えないのでしょう。しかし、そういうことでは、政経分離のもとに日中貿易を発展させると幾らお題目を唱えても、もう壁ができちゃっていることははっきりしているのです。だから、老いては子に従えということばもありますから、吉田さんもそうごたごた言わないと思いますから、この際は、ほんとうに中国との貿易を発展させる前向きの形で考えていかないと、いまおっしゃたような、拘束されるというような形が解決を求めようとしても、決してこれはめどはつかないと思いますから、そういうふうにひとつ慎重にやっていただきたいと思います。  時間がありませんから、最後の日韓に入ります。  政府は、非常に日韓会談の妥結を急いでいるようであります。これは、従来の首相の演説なり、外務大臣の演説なりあるいは答弁の中からうかがわれるわけですが、ここで私たちが非常に懸念をするのは、早期妥結ということによって従来の一括妥結の方針と矛盾を来たすのではないか、こういう心配をまずいたしております。懸案事項だけはたな上げしてしまって、そしてとにもかくにも早く国交正常化をやろう、そういう形の早期妥結というようなことを考えておるとすれば、国民の立場からいっても問題だと思うのです。いま懸案になっておる中で、特に困難を重ねている問題については、たとえば李ラインの問題、漁業問題一つとってみても、日本の国民としては非常に関心の大きな問題です。そういう肝心なものをたな上げして、そして早期妥結だということになると、これは問題だと思いますが、そういうことはおやりにならないとはっきり言えますか。
  211. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま漁業問題がいろいろ折衝の中核になっていることは、御承知のとおりだと思います。私どもは、これはわが国の漁業、漁民を守り、同時に公海自由の原則というものはぜひともこの機会に樹立したい。その上で、両国国民が納得のいくような、また魚族保存といいますか、そういう点も考慮されるというものでないといかないということで、特に力をいたしておるのでございます。したがいまして、漁業問題が解決を見ないうちに、いま言われるように妥結するだろうというようなことは、まずないとお考えになっていいと思います。
  212. 石橋政嗣

    ○石橋委員 何か、二月の十七日に外務大臣が出発されて、三、四日韓国に滞在するというお話でございますが、これは事実でございますか。国会開会中にたって行かなくちゃならないような緊急な問題でもあるわけでしょうか。高杉代表と交代してやれないような重要な問題があるのかどうか、このことをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  213. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ただいま国会開会中でございますので、なるべく国会の審議に支障のない日を選んで、わずかな期間でありますが、訪韓の約束をしておりますので、私の訪韓が日韓会談の進捗に貢献するところがあるならば参りますということを約束してありますので、国会の審議に支障ない限り参りたいと考えております。
  214. 石橋政嗣

    ○石橋委員 十七日にすでに日にちをきめておいて、国会の審議をにらみ合わせてもくそもないと思うのです。口だけの国会尊重だと思います。  時間がありませんから次に行きます。第一の問題は、いま総理からお答えがありましたが、もう一つ懸念しております問題の第二は、またもやこの日韓交渉が二元外交になるんじゃないか、あるいは秘密外交、裏取引というようなものが行なわれるんじゃないか、こういう心配がございます。こういう心配は絶対ないのか。具体的に言えというならば、最近河野国務大臣が盛んに日韓交渉に動いておられるようでございますが、これは、総理も了解の上でおやりになっているのか、この点です。
  215. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日韓交渉については、早期妥結は政府の方針でもあるし、いろいろ心配される方がございます。しかし、政府自身といたしましては、ただいま日韓交渉の代表をちゃんときめておりますので、それを主体に話をまとめること、これは間違いございません。
  216. 石橋政嗣

    ○石橋委員 私、具体的に申し上げたのですが、河野国務大臣が動いている部分についても、全部外務大臣なり高杉代表なりと連絡の上、総理も了解の上やっている、こういうふうに考えていいのかと聞いているのです。
  217. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 河野国務大臣がどの程度話を進めておりますか、ただいま言われるように、外務大臣あるいは高杉代表が全部を知っているかどうか、私はその辺は知りません。しかし、私に対しては、河野国務大臣、日韓交渉についてたいへん心配をしてくれております。したがいまして、河野国務大臣が私を助けるというその立場において協力してくれていることは、たいへん私もいいことだ、かように思っております。
  218. 石橋政嗣

    ○石橋委員 時間があれば詳しくやりたいところですけれども、それでは、外務大臣にそれだけ聞いておきましょう。ずっと連絡の上やっておられますか。
  219. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 絶対に方針が二途に出るような方法でやっておりませんから、御安心願います。
  220. 石橋政嗣

    ○石橋委員 懸念する第三の問題は、いわゆる高杉発言であります。この問題につきましては、政府は完全にくさいものにはふたという態度をとっておられますけれども、これはもう日本の国内におきましても、韓国におきましても、相当多数の新聞や雑誌等が取り上げて、いわば公然の問題になっております。これをひた隠しに隠すということは、韓国の新聞に書いてありましたけれども、日本人全体の意識が問題にされる、こういうように思うのです。そこで、この際もうはっきりしておいたほうがいいと思うのですが、総理は、この問題の高杉発言というものを御承知でございますか。
  221. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 高杉発言というものは知りません。
  222. 石橋政嗣

    ○石橋委員 知らなければ、私が最初に読んでみます。「わたしは経団連の経済協力委員長として、後進国の開発に力をつくしているが、韓国には国交が正常化していないため財界としても本格的にのりだせないでいる。せっかく請求権問題が無償三億ドル有償二億ドル、計五億ドルで大体の話がついているのだから、一日も早く国交を正常化して、この金をつかって韓国の国情にそった開発に日本が協力することになれば、両国民のためになると思う。  そういう念願からこの大役をひきうけた。だから、できるだけ早期に妥結させたい。さいわい日韓双方の政府はともに早期妥結をのぞんでいろので、その方向にすすむだろう。  交渉開始いらい十四年もたっているので、できるだけ早く解決したい。もちろん反対勢力のあることは知っている。左翼勢力は総力をあげて反対するだろう。しかし多少の反対があっても妥結するのが妥当だ。交渉が長びけば、ますますこじれてくるばかりだ。  日本としては韓国が六十万の兵力をもって北からの侵略をくいとめてくれていることを高く評価し敬意と感謝をあらわさなければならない。  しかし会談はあくまでも正常なルーリで、しかもおたがいの立場を傷つけないようにしながら、双方の了解点をさがさねばならない。考え方はいくつもある。三十六年間、日本は朝鮮を搾取したわけではない。善意でやったわけである。この交渉は、一般的にいわれる政治技術だけではダメで、枝葉末節にとらわれず、大乗的な立場ですすめなければならない。  実務的には折衝は終わっている。だから、外務省の役人が十三年も交渉して、ここでああだこうだといって妥結できないとするならば、よっぽど頭が悪いのだ。大きく、かかえこむような気持ちをもたなければならないだろう。」こういう談話のあとで記者団から「日本は朝鮮にたいする三十六年間の統治にかんしてあやまれという声もあるが……」という質問が出たのに対して、さらに高杉氏はこのように述べております。「あやまれというのはどうか——。交渉は双方の尊厳と国民感情を傷つけないようにやらなければならない。国民感情としても、あやまるわけにはいかないだろう。  日本は朝鮮を支配したというけれども、わが国はいいことをしようとしたのだ。いま韓国の山には木が一本もないというが、これは朝鮮が日本からはなれてしまったからで、もう二十年日本とつきあっていたら、こんなことにはならなかっただろう。われわれの努力は敗戦でダメになってしまったが、もう二十年朝鮮をもっていたらこんなことにはならなかったかもしれない。台湾の場合は成功した例だが……。  日本は朝鮮に工場や家屋、山林など、みなおいてきた。創氏改名もよかった。それは朝鮮人を同化し、日本人と同等にあつかうためにとられた措置であって、搾取とか圧迫とかいったものではない。  過去をいえば、むこうにもいい分はあるだろうが、わが方にはもっといい分がある。だから過去をむしかえすのはよくない。とくに日本は親せきになったつもりで話し合いをまとめるのがよい。  過去のことばかりもち出していたら、会談はこんごなん年かかっても話し合いはつかないだろう。むつかしい点はしぼられている。あとは具体的に国交正常化へどうもっていくかということだ」大体こういうことのようであります。このことについて、総理は御承知ないということでございますが、外務大臣は知っておられますか。
  223. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私もその事実を存じません。のみならば、高杉代表は、韓国側代表に対して、この発言について否定をしておられます。高杉代表の日韓会談に対する抱負なり熱情から見て、私は、失言があったというようには考えられない次第でございます。
  224. 石橋政嗣

    ○石橋委員 この談話が述べられたあと、同行しました黒田課長がクラブの幹事に相談をして、オフレコになったという事実は私どもも知っております。オフレコになった、だから表に出るはずはない、そういうことなら理解はできます。しかし、しゃべってないというのは、これは間違いです。おそらくこれだけ問題になったのですから、外務大臣も十分に慎重に調査をされたと思います。私がいま申しております点、誤りがございますか。しゃべったことと表に出さない約束だったということとは別でございます。この点はいかがです。
  225. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私は、まさかそういう発言をしたとは信じておりません。
  226. 石橋政嗣

    ○石橋委員 信じる、信じないの問題じゃない。私がお尋ねしているのは、事実だけです。外務省のほうから担当課長がオフレコにしてくださいと言ったことも事実、また表に出てきたときに、オフレコのものが出てくるのはおかしいじゃないかという抗議めいたことを言ったことも事実じゃないですか。これほどの重要な問題、向こうの国でも問題にしている以上、私たちはほおかむりをするということであってはならないと思います。そういう形の中で、どんなに無理をして政府同士が話し合いをし、早期妥結をやろうとしても、これは民衆の支持を得ることはできません。あなたがほんとうに真の友好関係を保とうとするならば、こういう不明朗な問題はきちきちと処理していくことから出発しなくてはならぬと私は思います。こんなものをうやむやにしておくということになりましたら、私は、日本のためにも、韓国のためにも、それこそ長い間尾を引く問題になるだろうと思う。はっきりさしたほうがいいと思います。あくまで事実かどうか、おっしゃってください。
  227. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 会談の際に、はっきりと高杉代表がこの問題を否定しております。高杉代表の人格及び日韓会談に対する熱情は、相当な評価をすべきものと私は考えております。
  228. 石橋政嗣

    ○石橋委員 少なくともこういう考え方を日本の国民感情という名のもとに持ち出されるということは、これはたいへんな問題です。あなたがどうしても認められない、わからないと言うならば、これは当の御本人に出てきていただく以外にないと思います。これは、委員長のほうでひとつ高杉代表の出席をお願いいたしたいと思います。取り計らってください。
  229. 青木正

    青木委員長 要求ですか。——ただいまの石橋政嗣君の御要望につきましては、理事会で御相談申し上げます。  時間がまいっておりますので、どうぞ。
  230. 石橋政嗣

    ○石橋委員 それでは、私、いろいろとお尋ねしたいことはあるわけですけれども、大臣は知らぬとおっしゃる。それでは、御本人に出席をしていただいて、その際にお尋ねをすることにしたいと思います。  したがって、本日の質問はこれで一応保留してやめます。
  231. 青木正

    青木委員長 これにて石橋政嗣君質疑は終了いたしました。  次会は明九日午前十時より開会いたします。  明日の質疑者は、午前高田富之君、午後野原覺君であります。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十五分散会