○野間千代三君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
説明のありました
昭和三十九年度の
観光の
状況等に関する
年次報告、
昭和四十年度において講じようとする
観光に関する
政策について、佐藤総理をはじめ関係大臣に質問をいたしたいと存じます。
第四十三回国会において成立した
観光基本法は、その前文において明らかなように、
観光の向かうべき新たな道を明らかにし、その
政策の目標を示すものとして制定されたもので、
観光政策の目標は、国際
社会の相互理解の増進を念願として、
国民をして健康で文化的な
生活を享受しようとするものであります。
ところで、
政府においては、はたしてこの
観光立国の高い宣言に対して真に理解を持っておられるのかどうか。ただいま
年次報告の
説明を聞いた限りにおいては、遺憾ながら疑いを持たざるを得ないのであります。このように
年次報告が平板で、関係各省の
報告書類の寄せ集めで、したがって残念ながらお粗末であると断ぜざるを得ないのは、ただに
観光政策の貧困ということに限られた問題ではないのではないか。
観光政策が目標としている国際
社会の相互理解、すなわち、平和外交に対する無関心、
国民生活の安定に対する不熱心、そういう
政府の姿勢そのものに真の原因があるのではないかと私は思うのであります。(
拍手)
そこで、私がまず第一に総理にお尋ねをしたいのは、
観光基本法の目標を実現するためには、世界のすべての人々をして、たずねてみたい意欲を抱かしめるに足る平和な豊潤な国家を創設することが緊急な要務であろうと思うのでありますが、今日の
わが国の政治情勢は決して諸
国民をして
観光に来訪せしめるに足る平和な国情にはなっていないのではないかということであります。
すなわち、日韓両国の
国民大多数が反対している日韓会談の成り行きをはじめ、
アメリカのベトナム侵略への
政府の盲目的な追随外交、日中国交関係も、総理のしばしば言明しておられた
経済外交そのものすらとんざしている実情にあります。そして、国内には激しい物価騰貴からの
生活不安、はては四十分おきに一人の
国民の生命を失うという交通戦争、まさに何の
観光ぞやといわねばなりません。(
拍手)首相は、国会をはじめ、あらゆる機会に、私は平和を心から願っておると、何回とも知らず述べておられます。しかし、政治は宗教ではありません。祈って待つものではありません。平和外交あるいは日中、日朝間の善隣外交等の推進、そして国内
経済の安定についてどのように考えておられるのか、具体的な
施策をお尋ねしなければなりません。
第二の質問は、
観光事業そのものの持っている国の
経済に与える重要性についてであります。
昭和三十九年度の世界の貿易の総額は千五百八十四億ドルで、そのうち
観光による輸入の総合計は百億ドルに達しております。品目別貿易高の実に第一位にあって、この見えざる貿易は、各国の
国際収支の動向に重要な地位を占めつつあります。イタリアのごときは、
観光収入七億四千八百万ドル、その他スイス、オーストリア、スペイン等の諸国においても、それぞれ輸出産業中の一位ないし二位を占めておる現況にあります。ところが、
わが国においては、ただいま御
説明のありましたとおり、その
受け取り額は七千万ドルにすぎません。しかも一千六百十六万ドルの赤字を出すありさまでありまして、
政府の発表した通商白書をして、
わが国経常収支の悪化は、貿易外収支赤字幅の拡大によるところきわめて大きく、経常収支の均衡
確保のため、運輸、
観光などを中心とする貿易外収支の
改善がきわめて緊要であると嘆かしめておるのであります。
政府は中期
経済計画で一九六八年一億八百万ドルの収入を予想しておりますけれども、かかる実情に対する首相並びに関係大臣の所見を伺いたい。
これに関連して
外客誘致の問題でありますが、国際連合
経済社会理事会でも検討されました出入国手続の簡素化についてであります。
わが国の繁雑な旅券、査証、通関等これら出入国の手続の簡素化について検討さるべきであると考えますけれども、関係大臣の所見を伺いたいと存じます。
第三に、
観光資源の保護助成と積極的な開発についてであります。
わが国は、恵まれた自然と、歴史によって洗練された伝統によって多くの
観光資源を有しておるのでありますが、こうした資源の管理、保護、修理、開発に対して、
政府の四十年度予算としては合計してただの二十三億七千三百三十六万円にしかすぎません。加えて産業開発との不調和、
観光諸団体への指導不足等から、あたら日本の明媚な天然資源は無秩序、低俗化、荒廃にまかされ、多くの国宝等もまた、
政府補助の不足から、たとえば東大寺の屋根のごときは、関係者の努力にもかかわらず、雨漏りの窮状にあるといわれております。
運輸大臣は、総合的な
観光政策の確立と
観光資源開発について、文部大臣は、国宝建造物その他資源の保全について、建設大臣は、
観光と産業開発の調和について、それぞれの
対策をいかに考えておられるか伺いたいと存じます。
第四の問題は、
国民旅行の助成策であります。
年次報告によると、
国民消費構造の中の教養娯楽費の占める割合が向上し、文化的支出のウエートは大きくなったと
説明しております。
国民生活白書もまた、余暇瞬間に対する家計費の支出が一九%に達したと手放しで喜んでおるのでありますけれども、はたしてそれをそのまま
国民生活の豊潤化と受け取っていいものかどうか。
生活白書はこのようにレジャー、消費の増加を報ずる反面、日本の
生活水準は主要七カ国の平均の三七%
程度にしかすぎない、カロリー摂取量は西欧諸国の七割
程度、南アフリカの水準にも達しないと
報告しておるのであります。
すなわち、日本のレジャーは、喧騒と公害の都市から、あるいは労働と緊張の職場から逃避して一時の刺激を求めるいわゆる日本型レジャーではないでありましょうか。余暇を楽しんでおるのは実は一つかみの有産階級にしかすぎないと思います。
国民大衆をして正しいレジャーに指向するためには、人間形成に寄与することのできる余暇と労働との有機的な結合をはかる労働
政策こそ
政府に強く望まなければならないと思います。
政府の方策は、その点についてどのように考えておられるか。西欧諸国では、有給の
旅行休暇制が実施され、また、
政府出資による
旅行金庫法が制定されておるのでありますけれども、旅館、
ホテルの従業員の労働条件
改善とあわせて、これらに対する関係大臣の所見を伺いたいと思います。
第五の問題は、修学
旅行の問題であります。
修学
旅行は、児童生徒の国土への愛情の育成を通じて、その国をとうとぶ人格陶冶の機会であって、真の愛国心は中教審の期待される人間像などによってつくられるものではありません。しかるに、今日の修学
旅行の実態は、交通事故、食中毒、すし詰の旅館、疲労と心労の連続であります。かつまた、最もそれを必要とする僻陬地学校においては、
対策のないままに修学
旅行すらできない実情であります。また、要保護児童に対する補助もまた少額に過ぎると思いますが、修学
旅行のあり方とその補助の方策をどのように考えておられるか。
私は、基本的には義務教育学校における修学
旅行は、教育の重要な一環として、交通宿泊費などその基本部分はこれを国庫
負担とすべきであると考えるのでありますが、文部大臣並びに大蔵大臣の考えを伺いたいと存じます。(
拍手)
第六に、
観光総合行政機関の確立による
観光政策強化の問題であります。
今日、
観光関係の行政は、運輸、厚生、文部、建設、農林、外務、通産、経企庁、総理府等
政府機関のすべてに散在をしている実態で、おそらく、一つの書類の決裁を求めていくならば、一つの
観光ルートになるでありましょう。
観光行政
強化のため、これが整理統合をはかる必要があると考えますけれども、関係大臣の所見を伺いたいと思います。
最後に、国際
会議の
誘致招聘の問題であります。
観光平和立国を宣言した
わが国が、国際
社会の相互親善の増進のために、国際的な諸
会議を
誘致して
わが国の
施設を活用することは、
国民のひとしく希望するところではないかと思います。との問題についての
政府の所見を伺いたいと思います。
私は、日本の
政府は、平和のために戦う権利と義務があると考え、
観光政策もその重要な
施策の一つであることを
政府に反省を促し、
政府の善処を求めて、以上、質問を終わりたいと存じます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕