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山田耻目君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
結社の自由及び
団結権の
保護に関する
条約八十七号の
批准の
承認並びに関連する
公労法、
地公労法、
国公法、
地公法の四
法案に対し、
民社党の
栗山礼行君より
趣旨弁明のありました、
自民、
社会、
民社三党による
共同修正案の指摘する
内容を含めて、
賛成の
討論を行ないたいと存じます。(
拍手)
日本が
ILOに復帰いたしましたのは一九五一年でございます。このとき
ILOに加盟しておる多くの国々から手きびしい
非難が繰り返され、再加盟も危ぶまれる
状態にありました。当時
日本政府を代表して三十四回総会に出席いたしておりました
日本代表は、
ILOの長老でありましたフランスの前
総理ポール・
ラマディエ氏の仲介の労を願い、その
非難を押えたのであります。そのとき
ラマディエ氏は、「われわれはこの
放蕩むすこの帰宅を快く迎えようではないか、全く違った
経験を経てきた
日本が、最もよき
経験として、その
社会福祉を最もより高い
段階に導くことにあるととを将来必ず認めるであろう、そのことを強く希望する。」という歴史的な発言を行なって、
日本の再加盟が
承認されたのであります。それ以来十四年、
ILOの
条約中最大の
基本条約といわれます八十七
号条約の
批准をめぐって、国内労組より
団結権侵害の提訴がなされ、
結社の自由
委員会より
日本政府に対し十六回の
批准勧告がなされ、
政府は、これに対し
批准約束すること十三回、
国会に本
条約及び
関係法案の
提出をすること七回、その間
ILO結成以来最初の
結社の自由実情調査調停
委員会の発動を見、
ドライヤーの
来日、いわゆる河野・倉石、
自民、
社会両党の合意案の作成など、幾多の変遷の歴史をたどってまいったのでございます。
しかし、本日ここに
条約八十七号の
批准の
承認にわが党は
賛成をし、
船田議長の裁定による
条約と関連四
法案の取り扱いについての三項目を支持し、これを基礎とする三党共同の
修正案の
実現を見るに至りましたことは、世界における六十七番目の
条約批准国としてまさにその歴史的な一瞬を画そうといたしております。(
拍手)わが党として実に感慨無量のものがございます。
私は、最後に、自後の
関係諸問題の取り扱いにつきまして、佐藤総理大臣に一言要望いたさなくてはなりません。
あなたは、本年一月
来日いたしました
ILO調査団の
ドライヤー委員長が示した提示案をお受けになりました。三点ございましたが、骨子となる部分は、
労使間に内在する根強い不信感を除去することを先決とし、
問題点を話し合うために定期的会談を開き、その結果を
国会に
報告することを示唆されておるのであります。このことの推進と実行は、総理、あなたの責任において、あなたのイニシアチブにおいて
措置するよう求められておるのでございます。あなたはそれもお受けになりました。
ドライヤー委員長のいう抽象的な表現による根強い不信感とは、一体いかなる原因による不信の感情を指摘しておるのでありましょうか。
ドライヤー委員長のいう不信感とは、
条約の精神に見合う必要適切な立法
措置によらなければ解消することのできないものであるということを述べておるのでございます。彼はこの本質をよく承知していながらも、内政干渉にわたらないよう、きわめて控え目に勧告したものと判断しなくてはなりません。(
拍手)
ドライヤー委員長の帰国後、
政府並びに
労働側は、定期的会談に至る事前の折衝を数回にわたって開かれたと承知いたしております。その
内容は、第一に、日教組の中央
交渉等の保証であり、第二に、
国家公務員、
地方公務員、
公共企業体等
職員の団交権等
労働基本権の保証であり、第三に、本
国会でただいま可決されようとする
国内法の取り扱いにあったと了解いたしております。この事前折衝の事実が具体的に証明しておりますように、内在する根強い不信感とは、
日本の官公
労働組合が当然保持すべき
労働基本権が、いまの官公
労働法体系の中では保障されていないというところに、
権利の問題として意識した不信感の根源が存在するといわなければならないのでございます。(
拍手)
したがって、以下、私は、わが党の
国内法の取り扱いについての態度を明らかにしておきたいと存じます。
船田議長の二十日の三党に対する裁定によりますれば、
国内法の取り扱いについては、第一に、「
施行期日の
規定にただし書きをつける。ただし、第〇条の
規定は、別に
政令の定める日から
施行する。」とあります。この点につきましては、裁定本文第三項にいう、「関連四
法案中の
問題点に関する
条項は、
公務員制度審議会の
答申を得るまでその
施行を延期し、
審議会の
答申はこれを尊重して
所要の
改正を行なうものとする。」とあることと関連して、三党とも前
向きの姿勢で
公務員制度審議会の
答申が、
ILOの精神にのっとり、
労使の信頼回復を根底として、早期に導き出されるための
努力をし合うという
趣旨のものと理解いたすわけでございます。(
拍手)
次に、わが党が
政府提案の
法案のうち、次の諸点について強く反対した
理由を申し述べておきたいと存じます。
一つは、
在籍専従制度の廃止についてであります。
在籍専従制度につきましては、西欧においてもその例があり、しかも終身雇用制の
わが国においては、一度離職をすればその後の復職はきわめて困難であり、企業別
組合が通常の
わが国の
労働組織において
公務員並びに
公共企業体職員にのみ
在籍専従制度を禁止することは、明らかに
組合の弱体化をねらう以外の何ものでもないではございませんか。
二つは、
登録、非
登録組合による
差別扱いについてであります。本来
登録の扱いは、法人格を取得することによる
差別も、それ以外に他の
目的を持つことも許されないことは明らかであります。
ILO五十四次
報告の中にもそのことは明確に指摘を受けておるところであり、
交渉、
在籍専従について
登録による
差別をつけることは、本
条約第二条並びに第七条に違反するものであると断ぜざるを得ないのであります。
三つは、
登録職員団体の構成員並びに
職員団体の
組合員の
範囲は、当然当該
組合が自主的に判断すべきものであって、
登録要件としてその構成員を制限したり、
管理職の
範囲を不当に拡大して、
組合の分断、弱体化をはかることは、
組合の自主制を害し、八十七号の精神に違反するものであって、これまた容認できないところでございます。(
拍手)
四つは、
交渉手続の制限や、チェックオフの禁止などは、本来
労使双方の話し合い、協定において行なうべきものであり、
法律で一方的に規制することは、国家権力の不当な介入といわざるを得ません。
以上、幾多の自由な
組合活動を制限する
法案の
提出を見たことは、きわめて遺憾であり、この点は、新しく発足する
公務員制度審議会において、
労働基本権前進の方向で検討されることを強く期待しつつ、
討論を終わる次第であります。(
拍手)