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1965-03-26 第48回国会 衆議院 本会議 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十六日(金曜日)     —————————————  議事日程 第二十一号   昭和四十年三月二十六日    午後二時開議  第一 所得税法案内閣提出)  第二 法人税法案内閣提出)  第三 租税特別措置法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  第四 所得税法及び法人税法施行に伴う関係   法令整備等に関する法律案内閣提出)  第五 市町村合併特例に関する法律案(内   閣提出、参議院送付)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 所得税法案内閣提出)  日程第二 法人税法案内閣提出)  日程第三 租税特別措置法の一部を改正する法   律案内閣提出)  日程第四 所得税法及び法人税法施行に伴う   関係法令整備等に関する法律案内閣提   出)  日程第五 市町村合併特例に関する法律案   (内閣提出参議院送付)  公害防止事業団法案内閣提出)の趣旨説明及   び質疑    午後二時七分開議
  2. 船田中

    議長船田中君) これより会議を開きます。      ————◇—————  日程第一 所得税法案内閣提出)  日程第二 法人税法案内閣提出)  日程第三 租税特別措置法の一部を改正する法   律案内閣提出)  日程第四 所得税法及び法人税法施行に伴う   関係法令整備等に関する法律案内閣提出
  3. 船田中

    議長船田中君) 日程第一、所得税法案日程第二、法人税法案日程第三、租税特別措置法の一部を改正する法律案日程第四、所得税法及び法人税法施行に伴う関係法令整備等に関する法律案、右四案を一括して議題といたします。
  4. 船田中

    議長船田中君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事金子一平君。     —————————————   〔金子一平登壇
  5. 金子一平

    金子一平君 ただいま議題となりました四法律案について、大蔵委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、所得税法案について申し上げます。  この法律案は、最近における国民負担現状に顧み、中小所得者に重点を置いて所得税負担軽減を行なうとともに、納税者の理解を容易にする見地から、現行所得税法の体系的な整備平明化をはかるため、同法の全部について改正を行なうことといたしております。  以下、その内容について概略御説明申し上げます。  まず第一に、所得税負担軽減をはかるため、諸控除の引き上げを行なうことといたしております。  すなわち、基礎控除配偶者控除及び扶養控除をそれぞれ一万円ずつ引き上げ、それぞれ十三万円、十二万円、六万円等とするとともに、専従者控除を三万円ずつ引き上げ、青色申告の場合には十八万円または十五万円、白色申告の場合には十二万円に改めることといたしております。また、給与所得控除につきましては、定額控除を一万円引き上げて三万円とし、二〇%の控除率を適用する限度額を十万円引き上げて五十万円までとし、給与所得の総体に対する控除限度額を一万円引き上げてこれを十五万円にすることといたしております。  右の結果、たとえば夫婦、子三人の給与所得者の場合、所得税課税されない限度は、現在の四十八万五千円から五十六万四千円に引き上げられることとされております。  なお、以上のほか、医療費控除限度額を十五万円から三十万円に引き上げるとともに、少額貯蓄非課税制度非課税元本限度額を五十万円から百万円に引き上げることといたしております。  第二に、現行所得税法整備合理化等をはかることといたしております。  改正されたおもなる事項について簡単に申し上げますと、まず、課税標準及び税額計算に関しましては、子供銀行預金利子等非課税所得に加えるとともに、割賦販売等による所得の計上時期について特例を設けることとするほか、出版業等事業を営んでいる青色申告者については、新たに返品調整引き当て金制度を設けること いたしております。  また、配偶者控除及び扶養控除につきましては、確定申告書にその記載がない場合でもこれを認めることとするとともに、その他の所得控除及び税額控除につきましても、確定申告書記載があれば期限申告でもこれを認めることといたしております。  さらに、所得税申告及び納付並びに還付の手続に関しても、予定申告制度を廃止するとともに、資産譲渡対価延べ払い条件つきで支払われた場合には、新たに五年以内の延納を認めることとする等、所要整備を行なうことといたしております。  次に、法人税法案について申し上げます。  この法律案は、企業内部留保の充実と企業基盤強化等に資するため、中小法人を中心として法人税率の引き下げを行なうとともに、所得税法の場合と同様、現行法人税法の体系的な整備平明化をはかるため、同法の全部について改正を行なうことといたしております。  以下、その内容についてその大要を申し上げます。  まず第一に、普通法人につきましては、年三百万円をこえる所得部分に適用される税率を一%引き下げて三七%とするとともに、年三百万円以下の所得部分に適用される税率を二%引き下げて三一%とすることとし、これに見合って、公益法人及び協同組合等特別法人につきましては、税率を二%引き下げて二六%とすることといたしております。  第二に、同族会社留保所得計算する場合の控除額を、現行所得金額の二〇%と百万円とのうちいずれか大きい金額から、所得金額の二五%と百万円とのうちいずれか大きい金額に引き上げることといたしております。  第三に、法人税法整備合理化につきましては、納税者の便宜をはかる見地から、設立第一期の中間申告を廃止し、さらに中間申告に基づく中間納付税額が二万五千円以下の場合には中間申告を要しないこととするとともに、損益の計算原則有価証券譲渡原価評価方法及び寄付金意義等を明らかにするほか、所得税の場合と同様の方針により所要規定整備をはかることといたしております。次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。この法律案は、先ほど申し述べました所得税法並びに法人税法改正とともに、四十年度における税制改正の一環をなすものでありまして、最近における経済情勢に即応して当面要請される諸施策に対応する税制上の措置を講ずることといたしております。  以下、その内容について概略御説明申し上げます。  まず第一に、資本市場育成等に資するため、利子所得分離課税特例につきましては、その税率現行の五%より一〇%に引き上げた上で、適用期限をさらに二年間延長することといたしております。また、配当所得源泉徴収税率特例につきましては、その税率現行の五%より一〇%に引き上げた上で、適用期限をなお二年間延長するとともに、株式配当金について新たに次の二つ措置を講ずることといたしております。  すなわち、その一つは、一銘柄につき年五万円以下の配当金については確定申告を要しないことといたしております。  その二つは、一銘柄について年配当金額が五十万円未満であり、かつ、その法人株式の五%以上を保有していない場合の株式配当金については、新たに一五%の税率による源泉選択制度を新設することといたしております。  第二に、鉱物資源の開発の促進等に資するため、新たに探鉱準備金及び探鉱費特別控除制度を設けることといたしております。すなわち、鉱業を営む法人または個人が、特定鉱物売り上げ金額の一五%かその販売所得金額の五〇%かのいずれか低い金額探鉱準備金勘定に繰り入れたときは、その金額損金算入を認めるとともに、毎期における右の準備金の取りくずし相当額は、その期中に支出された新鉱床探鉱費支出額限度として、探鉱費特別控除額として所得から特別に控除することといたしております。  第三に、国際競争力強化等に資するため、技術等海外取引特別控除制度適用対象に、新たに対外支払い手段対価とする建設請負修理加工及び映画上映権譲渡等による収入を加えることとし、その控除限度を、建設請負及び修理加工については、その収入金額の三%と輸出所得金額の八〇%とのうちいずれか低い金額映画上映権等については、その収入金額の三〇%と全所得金額の五〇%とのうちいずれか低い金額とすることといたしております。  第四に、中小企業育成助長のため、中小企業近代化資金助成法に基づく小売商業共同店舗につき初年度十分の一の特別償却を認めるとともに、同法に基づき集団化を行なう協同組合等から組合員不動産を譲り受ける場合の取得登記登録税軽減することといたしております。  第五に、最近における交際費支出状況に顧み、その損金算入割合を現在の三〇%から五〇%に引き上げることにいたしております。  第六に、特定公共事業用地買収等の場合の課税特例について、現行法ではその適用対象を、施行者の買い取りの申し出があった日から一年以内に応諾した者に限っておりますが、今回応諾の期間を六ヵ月に短縮した上、なお二年間本制度を存続することといたしております。  第七に、山林所得課税について、再植林費特別控除制度を創設するとともに、ブドウ糖の消費促進をはかるため砂糖消費税税率軽減することとするほか、本年三月末に期限の到来する事業用資産の買いかえの場合の課税特例個人新築住宅にかかる登録税軽減措置等について、その適用期限をさらに二年間延長することといたしております。  最後に、所得税法及び法人税法施行に伴う関係法令整備等に関する法律案について申し上げます。  この法律案は、今回の所得税法及び法人税法全文改正に伴い、これに関連する法律七十件について規定整備を行なうことといたそうとするものでありまして、おもなる内容は次のとおりであります。  まず第一は、現行所得税法及び法人税法またはこれらの法律規定に基づく命令によって設けられている制度のうち、特別の措置と認められる新規重要物産免税渇水準備金違約損失補償準備金及び異常危険準備金の各制度に関する事項については、現行と同じ内容のままでこれを租税特別措置法において規定することといたしております。  第二は、所得税法及び法人税法全文改正に伴い、国税通則法租税特別措置法等国税に関する法律について関係規定表現等を改めるとともに、その他の法律所得税法または法人税法の条文を引用しているものについて、それぞれ所要整備を行なうことといたしております。  以上の四法律案につきましては、参考人を招致して意見を聴取するほか、特に佐藤総理大臣の出席を求めて質疑を行なう等、慎重な審査を続けました。  おもなる論議の内容は、利子及び配当所得に対する特別措置所得税課税最低限物価上昇減税税制調査会答申政府案との相違点法人税の多段階税率租税特別措置税負担の公平、交際費損金算入制度租税法律主義通達行政等でありましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。  次いで、四法律案のうち、所得税法案に対しましては、金子一平君外二十五名より、また、租税特別措置法の一部を改正する法律案に対しましては、有馬輝武君外十二名より、それぞれ修正案が提出されました。  すなわち、まず、所得税法案に対する修正案内容を申し上げますと、不動産業者不動産等売買のあっせんをした場合には、当該不動産業者は、そのあっせんした不動産等売買に関する調書を提出しなければならないことになっておりますが、この制度を廃止しようとするものであります。次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案内容を申し上げますと、利子及び配当に対する特別措置を全面的に廃止して、これらを基本税制に戻し、総合課税とするとともに、消費生活協同組合についても、農業協同組合等と同様に留保所得非課税措置を適用しようとするものであります。かくして、四法律案並びに両修正案につきましては、昨二十五日、質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して武藤山治君は、租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案賛成修正部分を除く各原案反対の旨を、自由民主党を代表して砂田重民君は、所得税法案に対する修正案並びにこの修正部分を除く各原案賛成租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案反対の旨を、また、民主社会党を代表して竹本孫一君は、所得税法案に対する修正案並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案賛成修正部分を除く各原案反対の旨、それぞれ述べられました。次いで、まず、所得税法案について採決いたしましたところ、修正案全会一致をもって、修正部分を除く原案は多数をもって可決され、よって本案は修正議決となりました。次に、法人税法案について採決いたしましたところ、多数をもって原案のとおり可決となりました。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたしましたところ、修正案は少数をもって否決され、同案は多数をもって原案のとおり可決となりました。  最後に、所得税法及び法人税法施行に伴う関係法令整備等に関する法律案について採決いたしましたところ、多数をもって原案のとおり可決となりました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  6. 船田中

    議長船田中君) 四案中、日程第三に対しては、有馬輝武君外十二名から成規により修正案が提出されております。
  7. 船田中

    議長船田中君) この際、修正案趣旨弁明を許します。横山利秋君。   〔横山利秋登壇
  8. 横山利秋

    横山利秋君 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案について、提案者を代表いたしまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  修正案内容は、利子所得及び配当所得等に対する特別措置を全面的に廃止して、これを基本税制に戻し、総合課税を行なうことが第一。第二番目に、消費生活協同組合とその連合会がその所得の全部または一部を留保した場合には、その留保金出資総額の二五%に達するまでは、各事業年度における留保所得の二分の一について法人税を課さないことにしようとするものであります。  以下、その理由について御説明申し上げます。  御承知のとおり、租税特別措置法は、言うなれば取るのがほんとうだけれども、この際まけておくという法律であり、負担公平の原則租税中立性を侵し、総合累進の仕組みを弱め、また納税道義に悪影響を及ぼすなど、多くの欠陥があります。したがって、これを整理し縮減につとめるべきであるということは、従来から、わが党のみならず、税制調査会が一貫して唱えてきておるところでありまして、まさに天の声、地の声、人の声ということができます。(拍手)  調査会は、このような弊害があるから、百歩譲って租税特別措置が認められても、それにはきびしい制限があるとし、第一には、税制以外の措置で有効な手段がないかどうかを検討し、ほかに適当な方法が見出し得ない場合に限られること、第二に、この場合においても、少なくとも政策目的自体合理性判定政策手段としての有効性判定、及び第三に、付随して生ずる弊害特別措置との効果の比較、との三つテストを厳格に経た上でなければならないと述べております。ところが、現実はどうでありましょう。たとえば、最近五ヵ年間における特別措置による減収額は、三十五年度一千七十一億、三十六年度一千百十九億、三十七年度一千三百四十八億、三十八年度一千六百六十六億、三十九年度二千九十八億、四十年度における見込み額は、まさに二千四百九十七億円となっておるのであります。しかも、四十年度における政府減税計画は、税調答申における所得税の働く人々のための一般的減税額を約百億圧縮して、その分を不労所得である配当及び利子等をはじめとする特別措置の拡大に振り向けておるのであります。言語道断といわなければならないのであります。(拍手)  御承知のとおり、個人の受け取る利子所得については、本来支払いのつど二〇%の税率源泉徴収を行なった上、ほかの所得と総合して課税するというのが原則であります。ところが、二十八年現行制度が認められて、利子所得は他の所得と分離して五%の税率による源泉徴収だけで課税はしない、こうなっておるのであります。なお、利子所得課税につきましては、そのほか郵便貯金利子非課税少額貯蓄利子非課税、すなわち、元本五十万円までの預金利子等非課税とする制度があります。  そもそも、所得税納税者担税力に最も適合した近代的な租税とされておりますのは、所得税においてはすべての所得を合算して、それに租税担税力の基準を見出し、それに累進的に税率をかけること、それが前提となっておるからであります。  利子所得に対する分離課税制度は、まず第一に、所得税の基本的たてまえを根本的に破っておるのであります。第二番目には、利子所得に対する特別措置は、一部の高額資産を著しく優遇するものであり、この措置に伴って生ずる弊害が大きく、しかも、その弊害を償うに足るほどの政策的効果も何ら実証しがたいということであります。したがいまして、このような制度は、先ほど申し上げました三つテストのいずれにも合格しないものでありまして、即刻廃止しなければなりません。  政府並びに自民党は、従来からこれを弁護いたしまして、第一に、貯蓄増強に寄与することが大きいこと、第二番目に、企業国際競争力を強化し、国民生活の安定をはかるためには、貯蓄増強が緊要であること、第三に、貯蓄の動機を見ると、まだ生活保障的性格のものが大部分を占めておること、これらの理由をあげておりますが、はたしてこの特例措置は、国民一般大衆のために役立っているのでありましょうか。私は、もとより貯蓄増強の必要を否定するものではありませんが、この措置貯蓄増強にどのような効果を及ぼしているかということであります。  試みに、戦後における個人貯蓄動向の推移を見ますと、個人所得は可処分所得伸びに応じて増加を示しておる。つまり、所得伸びれば貯蓄伸びるのです。税制上の優遇措置とは関係がないのです。実例を示しますと、たとえば昭和三十四年には利子課税特例が圧縮されたのにもかかわらず、貯蓄は前年より大幅に伸びたのであります。逆に、昭和二十八年には利子課税特例が拡充されたにかかわらず、貯蓄伸びが鈍ったのであります。すなわち、貯蓄増強の道は、税制上の優遇措置を講ずることでなくして、国民の可処分所得増加、つまり、所得税一般的減税をはかることが最も肝要だと痛感をされるのであります。(拍手)しかも、利子所得課税特例は、右に述べたような事情のほかに、これが特に高額所得者の財産の秘匿のために利用されやすいことに思いをいたせば、全くその妥当性は認めがたいのであります。  次に、この特別措置税負担の公平を著しく害しているという点であります。  すなわち、利子所得に対する現行措置は、利子所得を他の所得と総合しないで、五%の税率による源泉徴収のみにとどめる制度でありますが、もしそうではなくして、総合して利子所得を他の所得の上積みの所得として考えるときに、税率の高い所得階層になればなるほどとてつもなく安くなるのであります。たとえば、七五%の最高税率が適用されている課税所得六千万円超の階層では、実に七〇%の減税になるのでありまして、所得税累進税率効果はこれによって完全に減殺さわるのであります。  以上申しましたような理由で、利子所得に対する特別措置は、この際どうしても廃止さるべきであると確信いたします。  次に、配当所得課税特例についてでありますが、御存じのとおり、個人配当所得については、支払い法人段階で二〇%の税率で源泉徴止した上、他の所得と総合して課税するのが原則となっていますが、現在はこの源泉徴収税率を五%としています。税調答申は、この特例についても今年三月末の期限到来とともにこれを本則に戻すべきである。ただし、二年間の経過措置として源泉税率を一〇%に引き上げる一方、一銘柄三万円以下の配当については確定申告を要しないこととするのが適当だと答申しております。ところが、政府改正案では、この申告の要らない限度を五万円に引き上げたばかりでなくて、一五%の税率による源泉選択制度を創設することにしたのであります。  そもそも、配当所得に対する課税は、現行制度のもとにおきましてもすでに相当な優遇措置を受けておるのであります。すなわち、所得の全部が配当所得であると仮定しましょう。現行法では、夫婦子供三人のいわゆる標準世帯の場合、百七十一万四千七百円までは一文も税金がかからないのであります。額に汗して働いた人の深夜の残業手当にまで天引き税金がかかることと比べてみて、まことに驚くべき不公平といわなければなりません。(拍手)その上、今度の改正後の所得税法を適用いたしますと、百八十一万九千三百円までは税金がかからないことになります。ところが、所得の全部が給与所得であると仮定いたしましょう。この税金がかからない限度は、改正後においても五十六万四千円にしかならないのでありまして、その両方を比べてみますと、実にその差は百二十五万円をこえるのであります。現状においてさえこれだけ優遇されております配当所得課税を、さらに一段と優遇しようとするのが今度の租税特別措置法改正案であります。しかも、配当所得を有する者は著しく高額所得者に偏しているということであります。たとえば、三十八年分について実態を見ますと、配当所得のまさに九一%程度は百万円超の所得者が有しており、したがって、配当所得優遇促進高額所得者にますます減税の恩典を与えるということになるのであります。政府は、今回の改正案立法理由として、流通市場の立て直しを通じて資本市場全般の再建を援助するのがその目的だと申しているのでありますが、この税法改正案が国会へ提出されたあと以降、今日に至るもなお株価は低迷しているではありませんか。  ところで、今回の改正案がかりに通過したとした場合に、所得階層別にはどういう影響がありましょうか。それは次のとおりであります。すなわち、おおむね課税所得が百八十万円をこえる者が今回新設される源泉選択制度を採用することによって有利となり、その以下の人は改正によって源泉徴収税率が引き上げられる結果、確定申告をしないならばむしろ増税になるのであります。すなわち、今回の改正はいわゆる中堅所得層までの人にとっては実質的にはほとんど変わりなく、むしろ改正の結果増税になる人も出る反面、高額所得層の人にとってはきわめて大幅の減税になるという、国民一般大衆に全く背を向けた悪改正といわなければならぬのであります。(拍手)現在わが国個人株主は約五百万です。三十八年度の統計によりますと、確定申告所得税を払っている株主は五百万の中のおおむね四十万。今回の配当課税改正は、この四十万人程度株主税金軽減する反面、残りの四百数十万の株主には何ら影響がないばかりか、かえって増税をもたらすこともあるというまことに驚くべき改正といわなければならぬのであります。  時あたかも、わが国現行税制の生みの親であるシャウプ教授は、この四十年度の日本税制改正を次のように批判いたしました。  すなわち、「富裕者の大きなグループに利益を与えるような税制は崩壊することを歴史は示している。もし累進所得税日本で崩壊すれば、おそらく一般売り上げ税にとってかわられ、低所得者層、特に子供の多い家庭は重圧を受け、勤労者のモラルは低下するであろう。」また、「経済成長株式市場健全化は重要だが、そのために所得税体系の崩壊という大きな犠牲を払うべきではない。」と申しておるのであります。全くそのとおりでありまして、われわれはいやしくも世界の笑いものにならないよう、また、日本税制史上に汚点を残すことのないよう、この際、利子及び配当に対する特例はいさぎよくこれを廃止すべきであると私は確信をする次第であります。(拍手)  最後に、消費生活協同組合留保所得の特別控除につきましては、同組合の実態並びに現在適用を認められております農協、漁協、事業協同組合等、及び今回の改正によりその適用対象となる森林組合との権衡上当然行なわれるべき措置でありまして、むしろおそきに失したというべきであります。  以上、修正案提案理由及びその内容を申し上げた次第であります。同僚諸君はひとつ心静かに、全日本納税者諸君の公平を求める切実な訴えに耳を傾け、また、徴税行政の先端に立って納税者に接している良心的な税務職員の苦しみに思いをいたし、この際、与党の諸君も勇気をもってわが提案に御賛成されんことをお願い申し上げて、理由にかえる次第であります。(拍手)     —————————————
  9. 船田中

    議長船田中君) これより討論に入ります。  日程第一ないし第四に対する討論と、修正案に対する討論とを一括して行ないます。武藤山治君。   〔武藤山治登壇
  10. 武藤山治

    武藤山治君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました日本社会党提出の租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案賛成し、政府原案四件に批判を加え、政府並びに与党の反省を促し、反対の意思を表明するものであります。(拍手)  反対理由の第一は、佐藤総理が昨年十月に公表した三千億円減税が全く顧みられず、実現されなかったという点であります。  いやしくも、政権を担当する与党第一党の総裁選挙に立候補するに際し、国内外に公表した政策については、誠意をもって実現に努力する責任がありましょう。しかるに、その責任を果たさず、所得税においてわずか八百二億円、法人税百八十四億円の小幅減税に終わったという政府案は、国民の期待を裏切り、三千億減税は宣伝に終わったことになります。道義地に落ちたといわれる現今、総理みずからがかかる政策態度をとるに至っては、三千億減税の公表は、結果において虚偽であったことになり、総理の政治道義の欠除を責めなければなりません。(拍手)  第二の理由は、税制調査会を無視し、答申を逆にねじ曲げた点であります。  政府原案による減税額は、所得税において税制調査会案を八十八億円下回り、租税特別措置において三百五十一億円の食い違いを生ずるような特別措置の拡大を行なったのであります。この拡大により整理増徴分を除くと、四十年度における特別措置による減税減収額の見込みは、国税二千四百九十七億、地方税七百五十三億、合計三千二百五十億円の膨大な額となるのであります。かかる政府特別措置の拡大は、大蔵当局はもちろん、税制調査会反対の意思を表明してきたところであります。各階層を代表する者をもって構成し、専門家を含めた税調は比較的妥当な判断をしているのでありますが、これらの専門機関の答申を全く無視し、配当の実質分離課税を田中大蔵大臣と佐藤総理大臣の力で断行するに至っては、全く承服できないところであります。(拍手)  第三の理由は、所得税制の内容の問題であります。  すなわち、所得税は、先進諸国においても総合累進課税を行ない、税法の基本的な大原則総合累進課税が採用されておるのであります。しかるに、わが国のみ、今回の改正で、配当所得について一銘柄年間五万円までの配当は、確定申告を必要としないことになり、加えて配当五十万円までには源泉選択制を採用するというのであります。この改正は実質分離課税にすることでありまして、前池田総理大臣は、かかる配当優遇はしないと再三言明し、総合課税原則を守ってまいったのであります。しかるに、世界に類例のない今回の措置を、池田路線踏襲の佐藤内閣が断行するのは、まことに理解に苦しむ暴挙といわなければなりません。(拍手)  しかも、田中大蔵大臣は、大蔵委員会において、この措置をとることに私の政治生命をかけていると悲壮な答弁をしたのであります。配当所得はいままでも優遇措置を受けているので、今回の追加優遇措置で恩恵を受けるのは一体だれなのか。主税局長の答弁によれば、源泉選択制度で三万人、調書提出不要制度で二十万人、合計二十三万人程度の者が今回の措置で恩恵を受け、一人当たり平均恩典額は、源泉選択分が十七万円、申告小要制度分五万五千円ということになるのであると説明いたしております。わずか二十三万人の人のために百七十億円の減税をしてやる。このことに一国の大蔵大臣が政治生命をかけるに至っては、ナンセンスと言わずして何と言うのでございましょうか。(拍手)  今回の改正で、いかに税制体系がアンバランスになり、所得税制が紊乱されるか、具体的に明らかにしてみたいと存じます。三人世帯、年六十万所得の場合、国税、地方税行わせて、給与所得者は二万三千五百八十六円の祝を取られる。農業所得は四万九千三百五十四円、商工業者の場合には六万七千三百五十四円となっておる。しかるに、配当のみの所得に対しては、国税はゼロ、地方税わずか千百四十八円の税しか取られないのであります。さらに配当所得者は、年間配当百五十八万七千八十円までは申告所得税がかからないことになります。しかるに、給与所得者では二十七万三千三百十円、農業では三十二万四千八百三十八円、商工業者は三十九万二千百八十八円の高額なる所得税を取られるのであります。  この一例をもって見ても、今回の改正が不公平、不合理なものであるかは何人も認めざるを得ないと思うのであります。(拍手)まさに階級利害の対立を露骨にあらわした、資本主義税制の悪い面が、前面に露骨にあらわされた悪改正と断ずることができるのであります。  御承知のとおり、配当収入は不労所得であり、資本があれば働かず労せずして得られる資産所得であります。日本国内に年間一千万以上所得のある者が、昭和三十八年に五千人、四十年の推定で七千人程度政府機関は発表しました。最高所得者は年間四億八千四百三十四万円の所得、一億円以上の者が三十人おります。これらの一千万以上の年間所得者所得内容は、その配当で占める部分が非常に大きいのであります。  佐藤総理の言う人間尊重とは、配当収入を得られ、今回の措置で利得を与えられるような、年所得二百万以上の者のうち、総数二十三万人程度の人間を特に尊重するのか。有業人口の何%であるか。納税人員の何%の人間を救おうとするのであるか。かかる配当所得の優遇は、まさに国民不在の税制と断ずることができるのであります。(拍手)世間で人これを称して、上が軽く、下が重い、すなわち軍艦税金だと非難をいたしております。  第四の理由は、所得税が低所得者にかかり過ぎることであります。  四十年分における課税最低限度額は、給与所得で見ると、独身者年間十九万六千六百七円、夫婦世帯で三十五万一千百三十円、夫婦子三人家族は四十一万三千百六十三円、五人世帯は四十六万八千六百八十三円以上に達すれば所得税が取られるのであります。この限度がいかに低いものであるか。よく政府、大臣は、もはや戦後ではない、日本も先進国になったと口にいたしますが、現在の税負担状況は戦前にまだまだほど遠い劣悪な実情にあります。すなわち、重い税負担となっておるのであります。高校卒はもちろん、新中学卒業者でも平年度計算で賞与四ヵ月分とし、月給一万三千円で課税され、九ヵ月しか働く期間のない四十年分でも、月給一万五千円以上に税金がかかる。まことに気の毒でかわいそうだと感じないではいられないのであります。  戦前昭和九年の限度額を今日の物価指数でインフレートしてみると、標準世帯の最低限度額は八十五万円となります。昭和十五年の所得税体系がやや整備された年をとってみても七十四万円になるのであります。しかるに、今回の所得税改正でも、平年度五人世帯六十三万三千七百六十二円、商工業の場合には驚くなかれ五十四万五千三百六十一円であって、戦前並みにいかにもかけ離れている。大きくは二十万円程度の差があるのであります。特別措置で年々二千億以上の減収措置を認めながら、低所得者層に対する課税はまことに過酷ではないでしょうか。わが党が戦前並み、標準世帯年収八十万円までに課税するなと主張するゆえんはまさにここにあるのであります。(拍手)  最後に、田中大蔵大臣は配当優遇措置理由として、預貯金の増強策のためだ、自己資本比率を高めるためだと主張しております。この理由は全く科学性がなく、すでに統計的にも税制との因果関係がないことを実証されております。すなわち、この措置合理性なく、効果もなく、弊害ばかりが露骨にあらわれてくることは必定であります。さらに、政府の施策の失敗から、物価騰貴ははなはだしく、実質国民所得は低下の傾向にあり、物価と税金との調整のあり方についても、多分に問題をはらんでおります。納税人員は名目所得課税されるために年々増加の一途をたどり、これらの納税人員をいかに今後処理するかの問題も大きな批判の点があります。さらに、同族会社に対する課税が重く、小法人は近代化もできず、今日の大企業との間にますます格差が拡大される中小企業のあり方に対しても、今回の税制措置はまことに冷淡であります。   〔議長退席、副議長着席〕  私はこれらの問題をめぐり、検討するならば、今回の政府案がいかに不適当なものであり、われわれが賛成できない理由は枚挙にいとまがないほどあるのでありますが、時間の関係でこれらの指摘をやめますが、私どもは今回の政府提案が、ただいま申し上げましたような数々の点に多くの納得のできない点を持つので、委員会におきましても徹底的に政府に反省を要求したところであります。したがって、私どもは、日本社会党修正案利子配当の特別優遇措置の廃止案に賛成をし、所得税は総合合算の課税を行ない、税金は応能公平の税原則を忠実に守り、これにより初年度八百二十五億円の税収を見込み、高額な金のある者から金を出させ、知恵のある者は知恵を出させ、それぞれ身分に応じ、公平で働けば働きがいを感ずるような住みよい日本をつくろうではないかという精神を実現するのが、日本社会党提出の今回の修正案であります。(拍手)私は、最後に、政府並びに与党は政府案を修正し、出直し、国民の信頼が得られるような税制にすべきことを強く要請し、社会党案に賛成政府原案反対の態度を明らかにいたし、討論を終わるものであります。(拍手
  11. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) これにて討論は終局いたしました。これより採決に入ります。まず、日程第一及び第二の両案を一括して採決いたします。日程第一の委員長の報告は修正、第二の委員長の報告は可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  12. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 起立多数。よって、両条とも委員長報告のとおり決しました。次に、日程第三に対する有馬輝武君外十二名提出の修正案につき採決いたします。有馬君外十二名提出の修正案賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  13. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 起立少数。よって、修正案は否決されました。次に、日程第三につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  14. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)  次に、日程第四につき採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  15. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 起立多数。よって、本案を委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第五 市町村合併特例に関する法律   案(内閣提出参議院送付
  16. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 日程第五、市町村合併特例に関する法律案議題といたします。条の規定の例による。この場合においては、当該市町村合併については、この法律は適用しない。(工業整備特別地域整備促進法の一部改正)第十三条 工業整備特別地域整備促進法の一部を次のように改正する。  第十三条及び第十四条を削り、第十五条を第十三条とする。(工業整備特別地域整備促進法の一部改正に伴う経過措置)第十四条 この法律施行の日の前日までに前条  の規定による改正前の工業整備特別地域整備促進法第十三条及び第十四条の規定の適用を受けた市町村に係るこれらの規定による特例に関しては、なお従前の例による。2 この法律施行の日から起算して二年を経過する日までに行なわれる工業整備特別地域整備促進法第十二条の市町村合併については、前条の規定による改正前の同法第十三条及び第十四条の規定の例による。この場合においては、当該市町村合併については、この法律は適用しない。     —————————————
  17. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 委員長の報告を求めます。地方行政委員長中馬辰猪君。   〔中馬辰猪君登壇
  18. 中馬辰猪

    ○中馬辰猪君 ただいま議題となりました市町村合併の特別に関する法律案について、地方行政委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、最近における市町村行政の広域化の要請に対処し、市町村の自主的合併を円滑にするため、十年間を期限としてこれに必要な特別措置を定めようとするものでありまして、第一に、政令指定都市以外の市町村合併市町村数の減少を伴うもののすべてに適用するものであること、第二に、合併について、市町村議会の議員、農業委員会の委員の任期及び定数、職員の身分の取り扱い、地方税の不均一課税、地方交付税の算定、災害復旧事業費の国庫負担、並びに都道府県議会の議員及び衆議院議員の選挙区などについて特別措置を講ずるものとすること、第三に、合併関係市町村は、合併協議会を設け、建設計画の作成や必要な協議を行なうものとするとともに、国、都道府県及び公共的団体などは、合併市町村の建設のために必要な協力を行なうべきものとすること、第四に、昭和四十二年三月二十一日までに、合併して市を置くか、または現在の町村を市とする処分の申請を行なったものについては、市となるべき人口要件をさしあたり四万以上とする特例を設けるものとすること。  本案は、参議院において修正議決されたものでありまして、三月十七日本付託となり、以後、熱心に審議を続けましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  三月二十五日、質疑を終了し、討論を省略して直ちに採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本案につきましては、自民、社会、民社の三党共同提案により、合併について市町村の自主性を尊重するとともに、今後事務配分の合理化と自主財源の充実をはかるべき旨の附帯決議を付することと決定した次第であります。  以上、御報告いたします。(拍手)     —————————————
  19. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  20. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  公害防止事業団法案内閣提出)の趣旨説明
  21. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出公害防止事業団法案の趣旨の説明を求めます。厚生大臣神田博君。   〔国務大臣神田博君登壇
  22. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) 公害防止事業団法案について、その趣旨を御説明申し上げます。  近年におけるわが国経済成長は、まことに目ざましいものがありますが、産業活動の急速な発展に伴い、東京、大阪等に見られますように、産業活動が集中して行なわれる地域におきまして、大気汚染、水質汚濁等による生活環境の悪化が、重大な社会問題となっており、また、それが産業の健全な発展を阻害する要因ともなっておりますことは、御承知のとおりであります。  政府といたしましては、従来、公害防止のための施策といたしまして、ばい煙の排出の規制等に関する法律、工場排水等の規制に関する法律等により、規制を行なう一方、企業に対する助成措置といたしましては、中小企業近代化資金、日本開発銀行等による融資、税法上の優遇措置等を行なってきました。  ところで、最近特に問題となっております産業集中地域の産業公害は、既成工業地域に見られるように、工場と住宅の無秩序な乱立によるもの、あるいは近年における技術革新の進展による大規模工場の集中立地化に伴うものでありまして、深刻にして複雑、かつ、広域的性格を有しているものであります。  したがいまして、政府といたしましても、従来の助成措置の強化と並びまして、このような産業集中地域における公害を早急に解消するために、積極的に、効果的な対策を実施する必要に迫られている現状にあります。  かかる現状にかんがみまして、産業集中地域における産業公害を防止するために、長期低利の財政資金を重点的に活用し、共同公害防止施設、共同利用建物、工場移転のための敷地、公害防止のための緩衝施設等の設置、譲渡、公害防止施設に対する融資等の事業を行なう公害防止事業団を新設することといたした次第でありまして、昭和四十年度におきましては、厚生年金還元融資十億円を含む資金運用部資金二十億円を事業資金として発足することといたしております。  この法律案は、このような事業団設立の趣旨に基づきまして、事業団の目的、業務の範囲を定めるとともに、役職員の任命など事業団の組織に関すること、予算、決算その他会計の方法事業団の業務についての厚生大臣及び通商産業大臣の監督等について規定しているものであります。  以上をもってこの法律案の趣旨の説明を終わります。(拍手)      ————◇—————  公害防止事業団法案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  23. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。重盛寿治君。   〔重盛寿治君登壇
  24. 重盛壽治

    ○重盛寿治君 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府提案公害防止事業団法案について、若干の質問を行ない、あわせていまや大きな社会問題となっております公害問題全般につきまして、政府の施策の基本的な考え方をお尋ねいたしたいと思うのであります。(拍手)  四ヵ年にわたる高度成長政策の矛盾は、国民生活の至るところに深刻な形でのしかかっており、単なるかけ声だけのひずみ是正では解決されない社会不安となってあらわれておるのであります。私がお聞きしたいと思う大気汚染、水質汚濁、騒音、地盤沈下などの公害もまさにその一つであります。  特に指摘しておきたいのは、こうした公害が高度成長政策とともに一そう累積してきているということであります。ちなみに、大気汚染が問題になっているのはほとんどが工業都市であります。とりわけ四日市に典型的に見られるごとく、今後石油コンビナートが推進される中で引き起こされていくところの公害は、非常に大きなものになっていく傾向があるのであります。  池田前内閣時代から、政府は社会保障、減税、会共投資を国の政策の最重点項目に掲げてきたが、社会保障、減税はおざなりにして、政府が特に力を入れたのは、公共投資であった。しかも、ここでいう公共投資というのは、鉄道、産業道路、港湾、工業用水、用地造成といった大企業の間接費用を引き下げるものに集中しており、国民生活に最も関係の深い社会投資はほとんど増額されておらないのであります。たとえば、大企業の間接費用を引き下げるための公共投資は、予算の中で一八%である。だが、生活環境整備のための公共投資はわずかに一・二%にしかすぎないのであります。また、本年度の厚生省予算の中で、公害対策費として掲げられた費用がわずかに一億七千万円に満たないというありさまです。さらには、本年度の通産省の予算を見ても、公害防止技術開発研究費に二億二千万円、新産業都市の公害事前防止対策費に至っては、わずかに三千五百万円が計上されておるという微々たるものにすぎないのであります。  かかる政府の方針は、地方自治体にも及んでおり、多くの地方自治体では工場誘致令をつくり、企業誘致に狂弄しておるが、その反面、住民への影響については何ら顧みられておらないのであります。地方自治体が工場誘致をする場合、固定資産税の減免措置や、土地を安く提供するなどの優遇措置をとり、企業の超過利潤は保証せられておるのでありますが、誘致のための費用は、結局、住民負担となり、しかも、公害という副産物まで住民に襲いかかっておるのであります。四日市の場合のごときは、町の中に工場が乗り込んできたということが言えるでありましょう。県や市が工場誘致をする場合に、都市計画を怠ったこと、住民のための公共投資が足りなかったこと、工場側が公害防止の設備を用意しなかったことなどを指摘できるのであります。国民を無視し、資本家の利潤を保証しようという自民党内閣の政策が、公害に典型的にあらわれたのであって、新産業都市と公害の関係がこのことを端的に物語っているといわなければならぬのであります。(拍手)  そこで、総理にお尋ねいたしますが、第一に、かかる事態を放置してきた政府の責任を、総理はどのようにお考えになっておるのか、明確にお聞かせを願いたい。  第二に、人間尊重が総理の政治目標である以上、何よりもまず公害の実態を明らかにし、諸外国の実例に基づいて、公害問題の抜本的解決をはかり、あなたの力説するところの社会開発政策の主要の一環として、公害を絶滅することが総理の任務であると私は考えますが、御決意のほどをお伺いいたしたいと思うのであります。(拍手)  第三に、公害防止には政府の財政政策の転換が必要であります。独占資本の間接コストを引き下げるための公共投資から、国民生活を守るという文字どおりの公共投資へ重点を置きかえるべきであると考えますが、総理のこの点における決断のほどをお聞かせ願いたいと思うのであります。  第四に、公害対策を抜本的にやるためには、地方自治体をその本来の任務であるところの福祉行政の推進に返すということが最も必要であるのであります。ちなみに、東京の下水道の普及率は二五八%であり、し尿処理なども不完全であり、公共用水の大腸菌の許容数は一立方センチ中二百五十以下が通常とせられておりますが、東京の多摩川下流では実に驚くべき十三万、神田川では約六万、目黒川では約四万になっておるといわれておるのであります。さらに隅田川に至っては悪臭を放ち、この流域に住む三百三十万人の都民は、せきやぜんそくが慢性化し、ラジオやテレビ、ステレオなどの金属部分は、購入後二週間くらいで腐食するという実態が明らかになっておるのであります。この地方には、メッキ、皮革など約一万の工場があるが、その九〇%以上が零細企業で、自力で必要処理施設を設置することのできないまま放置されておるのであります。水飢饉、交通地獄、公害放置等の首都に対して、池田さんは東京都には都政がないんだと言われた。もちろん、知事選挙のスローガンであった福祉都政の確立を忘れた知事にも大きな責任がありましょう。言うならば、地方自治体にすべて責任を押しつけて、政府はみずからなすべきことを何一つやってこなかったところに、その重大な責任があるといわなければならぬのであります。(拍手)国と地方自治体が一体となって、都市計画の整備、工場の配置規制、下水道清掃施設の完備など、生活環境の整備につとめなければ公害は断じてなくなりません。この点について、総理のお考えをお聞きしたいと思うのであります。  さらに、この際、厚生大臣にお尋ねするが、四日市ぜんそく、横浜ぜんそく、隅田川沿岸の人々の呼吸器系の疾患、さらに鉱毒による発病者など、現に公害のため病気になっている国民が多数あるのでありますが、これらは政府の責任で療養さすべきだと考えるが、大臣のお考えをお聞きしたいと思うのであります。  次に、政府の行なった公害調査についてお尋ねいたします。  政府は、前工業技術院院長黒川武雄氏を団長とする調査団を派遣したが、その結論は一体どうなっておるか。また、その結論に基づいて、どのような一体施策をとられたのか。さらに、富士石油、住友化学を中心とする三島・沼津地区に、事前に調査団を派遣したが、住民を説得できずに工場誘致は失敗しておる。このことは、公害のおそるべき現実に不安を持つ住民の要求を尊重できなかったところに原因があると思うのであります。  公害対策の樹立も必要であるが、この根幹となるべき公害絶滅のための科学技術の研究、開発が重視されなければならない。生産第一主義の考えが先に立ち、企業も国も、公害の防止技術の研究、開発に力を入れておらないのではないでしょうか。もっと大幅に予算措置を講ずるなど、抜本的な対策が必要だと思いまするが、以上の点について、大蔵、通産、厚生、三大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。次に、公害の法的規制について、通産、厚生、両大臣にお尋ねいたします。現在、水質保全法、工場排水法、ばい煙規制法、工業用水法をもって、それぞれ規制を行なっておりますが、率直に言って、効果はあがっていません。その原因は、結論から言うならば、政府が大企業に非常に気がねをして、ざる法になっておるからであります。たとえば、ばい煙規制法を見ても、第一に、大企業の圧力によって基準があいまいになる可能性があります。第二に、地域指定についても、企業の抵抗で地域指定をのがれる余地が十二分にあります。第三に、地域指定を受けたとして、知事が勧告を行なうのであるが、処罰が非常にゆるやかなため、罰金だけ払っておけばよいではないかということになりかねないのであります。第四に、現実に大気汚染の被害を受けた人に対する補償が全くございません。第五に、大気汚染の監視に住民参加が必要だが、その規定がございません。第六に、工場から発生する有害物質の種類は多く、その発生原因も多様であるのに、本法では、適切な規制を果たし得ない。公害対策を一歩進めるためには、現行のばい煙規制法、水質保全法、二法の改正が必要だと考えるが、どのようにお考えになりますか。  同時に、わが日本社会党は、近く公害排除基本法案を提出する予定であるが、少なくとも法的規制の内容は、一、公害除去の義務を企業に与えること、二、企業または施設が公害を引き起こしたときは、無過失賠償の責任をとること、三、公害除去の義務を果たさない企業は、操業停止処分にすること、四、公害の許容度は、人間が疾病になるところできめてはならず、われわれの生活の妨害の線できめなければならないこと、五、公害対策の国民の立場に立った一元化ができることが含まれなければならないと考えますが、厚生、通産、両大臣の御見解を承りたいと思うのであります。  最後に、公害事業団法案について質問いたします。  今回の政府の熱意は認めるが、いままで私が指摘いたしました多くの問題点を抜きにした対策では、その実効はあがりません。そこで、本案に対して、政府の考えをただしておきたいと思います。  第一に、事業団の事業費は、当初百億円の要求が出ていたはずであります。ところが、折衝の過程で二十億円に削られた。鉄鋼業などの大企業を見ると、公害防止に十億円程度の設備投資をしているではありませんか。二十億円で一体何ができるのでありましょう。政府は、これで十分だと考えられますか。今後増額する考えがありますか。さらに、資本金として、政府が出資し、必要に応じ追加出資する考えはありませんか。以上、予算が少ない上に、総花的にやろうとするところに、この問題の根本的な無理があろうと思うのであります。  第二に、この事業団は、政府の公害対策全般の中で、いかなる役割りを果たすのか、お聞きいたしたいと思うのであります。  第三に、工場移転、グリーンベルトの設置について、地価対策が必要であるが、その具体策はできておりますか。また、工場移転、工場の集団設置等については、労働問題、配転などが伴うのが当然でありますが、しっかりした対策があるかどうか、以上の点について明確なお答えをいただきたいと思うのであります。  きれいな水、清浄な空気、さらには健康なからだと不安のない生活を守ることこそ、人間尊重の政治であって、終戦以来すでに二十年たって、経済のひずみを直すだけでなく、国家全体のひずみ是正が必要なときに、政府は、産業公害のおそるべき実態に着眼し、抜本的な施策を講ずるよう重ねて要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  25. 佐藤榮作

    ○内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  最近の経済成長、その結果至るところに公害というような現象があらわれた、したがって、かような状態を引き起こした政府の責任をいかに考えるか、また、これに対していかにこたえるつもりかというお尋ねでございます。  私は、高度経済成長が偉大なる成果をあげたことは、もうすでにたびたび申し上げております。しかしながら、社会に対して貢献したことは、経済発展の面ですばらしいのでありますが、同時に、私どもが考えるような住みいい社会をつくる、こういう観点に立ってこの経済開発を見直す時期が来ているのではないか、こういう意味で、今回、指摘されます公害等の、非常に住みにくい社会をつくっておる事態に対しまして、政府は積極的に対処していくつもりであります。これがいわゆる私の申す人間尊重であり、いわゆる社会開発の考え方であります。(拍手)  この観点に立ちまして真剣に取り組んでいく。ただいままでのところ、お説のように、たとえば、ばい煙規制法だとか、あるいは水質保全法かとか工場排水法、こういうような法律によって規制を強化いたしておりますが、これだけでは不十分だ、さらに予防の措置も講じなければならないし、また、公害防止技術の開発も必要になってぐると思います。そういう意味で、各般にわたっての積極的な取り組み方をいたしたい。そうして公害防止事業団をつくることによりまして、特に産業が集中しておる東京、大阪あるいは四日市等の公害の事実がはなはだしい場所に対して、重点的にこれに対処していこう、こういうのであります。御指摘にもありましたように、総花主義的では十分の効果をあげない。重点的に、積極的に効果をあげるような処置をとっていきたい、これが私どもの考え方であります。  なお、このことをやるに際しましては、地方自治体との連携が緊密でなければならないことは御指摘のとおりであります。したがいまして、今回のこの法律案でも、事業実施計画を立てます際には、十分に事前に都道府県知事と協議する、また、知事は関係市町村と連絡をとってこれに対処する、打ち合わせをする、かようなことをとっております。これなどは、御指摘のとおり、実施計画を立てるには、十分地方の実情に応ずるということが必要だ、かように考えます。  その他の点につきましては関係大臣からお答えいたします。(拍手)   〔国務大臣櫻内義雄君登壇
  26. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 公害の事前調査をいたしましたにもかかわらず、三島・沼津地区に企業の進出のできなかったことは、まことに残念でございます。今後地域住民の安心のできる公害防止技術の開発研究を一そう進めるべく、通産省における研究指導の施策を強化いたしたいと思います。次に、大気汚染、水質汚濁についての規制基準は、諸外国の基準を参酌し、関係各省協議の上、決定をしておりますので、特にゆるいとは考えておりません。  また、社会党の公害排除法についてのお話がございましたが、公害の無過失賠償制度は、実情に照らして困難と存じますが、その他の御意見は参考にいたしたいと思います。(拍手)   〔国務大臣神田博君登壇
  27. 神田博

    ○国務大臣(神田博君) お答えいたします。四日市はじめ東京、大阪等の公害による患者の治療についての御質問でございますが、御承知のように、確実に公害に基因するというような証明はなかなかむずかしい段階のようでございます。しかし、これが確実に公害でありますれば、まず弟一に公害発生の企業がこの責任を持つということは、これは常識だと思っております。ただしかし、この場合におきましても、企業が数企業にわたっておりますから、企業の責任分担の割合となると、なかなかむずかしい問題が出てまいります。実際上の治療といたしましては公立医療機関でやっております。そこで地方公共団体が、国が援助して、やっておるというのが実情でございます。  さらに、公害問題を一元化して取り扱ったらどうか。公害行政の一元化でございますが、これは他の行政各分野とやはり直接の関連がございますので、非常に複雑多岐になっております。そこで、一元化することは困難な事情もありますが、実質上の成果をあげるために、現在総理府にできております公害対策推進連絡会議もございますので、これらを活用して十分成果をあげてまいりたい、かように考えております。  なおまた、この公害防止事業団の事業費の二十億円は非常に過小ではないか、将来増額する計画はないかというお尋ねでございましたが、これは今年度は途中でございますので、しかも初年度でございますので、いろいろ調査立案の関係もございますので、少額でございまするが、逐年増加して所期の目的を達したい、かように考えております。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇
  28. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 公害につきましては、政府が金を出したり、また地方公共団体が金を出すことによって解決をするという考え方もございますが、公害防止の基本的な責任は企業者であります。でありますから、企業者がこの公害防止に対してもっと積極的に責任を負うようにしなければなりませんし、そのためには法制の整備も必要だと考えます。しかし、現に公害を起こしておりますものにつきましては、国民生活とも重要な関係がございますので、政府もそのままでほっておくわけにはいかないわけでございます。その意味で、開発銀行の中で二十億の融資ワクをつくりまして、七分五厘という低い金利で公害防止施設に貸し出すようにいたしておりますし、また、中小企業金融公庫におきましても、一般ワクの中で、金利七%でこれらの施設に対して貸し付ける道を開いておるわけでございます。また、一般会計におきましても、ばい煙発生とか水質汚濁とか、また、下水道の整備、公害防止技術の開発研究とか、こういう公共的な面における施策の費用としまして百五十五億円の費用を計上いたしております。その上になお今般公害防止事業団の発足を見たわけでございます。初めは百億の要求でございましたが、私は初めはあまり賛成をしなかったのであります。まず、こういうことをする前に、企業責任ということをはっきりして、国や地方公共団体や、また企業が果たさなければならない責任の限界を明らかにすることが私は正しいと考えておったわけでございますが、先ほど申し上げたように、現に国民生活影響を及ぼしておりますので、最終的に事業団の設立に賛成したわけでございます。将来にわたりましては、自己責任による公害防止とあわせて、政府事業費の拡大を考えてまいりたいと思います。  なお、出資等を行なうかということでございますが、現在は、この事業を行なう事務費につきましては、政府の交付金でまかなうことになっておりますので、さしあたり出資をする考えはありません。(拍手
  29. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  30. 田中伊三次

    ○副議長(田中伊三次君) 本日は、これにて散会いたします。    午後三時三十一分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         厚 生 大 臣 神田  博君         通商産業大臣  櫻内 義雄君         自 治 大 臣 吉武 恵市君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君      ————◇—————